勇者「ハーレム言うな」(1000)

-アリアハン-

チュンチュン

母「勇者ー、起きなさ…」ガチャ

勇者「やあ、母さん。おはよう」

母「あら…早起きね。支度も終わってるみたいだし」

勇者「うん。じゃあ王様に挨拶して旅に行ってくるよ。時々帰ってくるから心配しないで。今までありがとう。感謝してるよ」

母「えっ…もう?……勇者、何をそんなに焦っているの?」

勇者「なーにを言うかな母さんはもー。僕が焦ってるってそんな節穴だよ色々な穴がもうさー」イソイソ

母「……勇者?」

勇者「ん?何?」




母「……ちゃんと皆に挨拶したの?」

勇者「フッ!!」バッ

母「あっ窓から逃げやがった!」

-城-


コンコンコンコンコンコンコンコンコンコン

勇者(あけてーっ!あけてーっ!)ヒッソォォォ

門番「あれ、勇者さんどうしたんですか?開門まではまだ時間が…」

勇者「あ、門番さん!すみませんちょっと門早めに開けてくれませんか!できれば!内密に!」

門番「いや開門に内密もクソも無いと思いますが…それに私も門番としてのプライドがあります。勇者様と言えど時間外に城にお通しするわけには」

勇者「ルイーダさんの酒場の定食五食奢る」

門番「こっちの門番専用の門からどうぞ」

勇者「やっすいっすね。プライド」

門番「低賃金ですからね」

-王の間-

王「大臣、今日の私のスケジュールは」

大臣「二時間後に勇者殿との会合です」

王「……で?」

大臣「以上です」

王「暇だな」

大臣「世界は平和ではないんですがね」

王「だって他の国はアリアハンは田舎だって言って会議とかに呼んでくれないし」

大臣「弱小国ですからね」

王「言うね」

大臣「いつまでオルテガ殿の伝説にすがりつくおつもりですか」

王「ちょっと私が傷付くって事も考えなさいよ?」

大臣「やかましいよ」

王「なに?オッサンの癖に生理かなんかなの?」

勇者「王様!」

王「あれ?勇者ではないか。え?あれっ早くね?」

勇者「ちょっと諸事情により巻き気味で旅にでます!今までありがとうございました!」

王「えっ、ちょっと落ち着きなさい。ちゃんと何喋るかもちゃんと考えてるんだから」

勇者「五秒でお願いします」

王「え、えー…。えっとうん、が、頑張って?うんもうこれでいいよなんか。」

勇者「ありがとうございます!行ってきます!」

王「あっ、ちょっと待て!僅かだが路銀と装備を用意したから」

勇者「お気持ちだけで結構です!」

王「えっうん。あ、そうね。偉いね。勇者はね。」

勇者「それでは行って参ります!」

王「あ、ルイーダの酒場で仲間はちゃんと…」


王「いない」

大臣「超ダッシュで行っちゃいました」

大臣「なんであんなに急いでたんでしょうね」

王「原因はまぁ…あれじゃろうなぁ」

大臣「あぁ…まぁ確かにあれじゃ仕方ないかもしれませんね」

王「しかしろくに路銀も仲間も無い状態で旅に出るのは…不安じゃな」

大臣「まぁ…歴代の勇者や彼の父、オルテガと比べると…だいぶ、と言いますかあまりにも、と言いますか」

王「うん、弱いからな」

大臣「魔法の才能は皆無、ホイミすら使えず、戦闘も努力してはいるが戦士や武闘家と比べれば圧倒的に劣る…」

王「…だからこそ、彼女達も…」

大臣「……まあ勇者殿的には複雑でしょうからね」

王「………健闘を祈るしか無い、か」

-街の裏道-

タッタッタッ

勇者(路銀は小さい頃から今まで修行でモンスターを倒して手に入れた金がたんまりある)

勇者(装備はその金で買った銅の剣がある!)

勇者(今は何より時間短縮が目的だ。できるだけ裏道を通って誰にも見つからずにこの街から…)

?「あれ、勇者くんじゃない」

勇者「ホゲェーーッ」

勇者「みみみっみみっ……あ、なんだルイーダさんか」

ルイーダ「どうしたの?そんな変な声出して…」

勇者「いやはは……いえちょっとびっくりしただけです」

勇者(うわああああビックリしたああああぁいきない計画が頓挫したかと思ったあぁああああああああ!!)ドッキンドッキン

ルイーダ「そーお?ならいいけど……そうだ勇者くん、朝ご飯食べた?」

勇者「え?あ、いえまだですけど」

ルイーダ「わお、ちょうど良かった。今朝美味しい魚が手に入ったの。今日の昼旅立つんでしょ?ウチでご飯食べていきなs」

勇者「そういえばもう食べたんでした!うっかり忘れちゃってましたよー!お腹一杯でランニングしてたんです!太るからね!しょうがないね!」ワーイ!!

ルイーダ「あらそう?残念。しょうがないね?」

勇者「はい!!それじゃ僕はこの辺で!」タッタッタッ

ルイーダ「ふふ、ランニング頑張って」

勇者「はい!行ってきます………」タッタッ…ピタッ

クルッ

勇者「……ルイーダさん…」

ルイーダ「?どうしたの?勇者くん」

勇者「え…と、なんていうか、うん…ありがとう」

ルイーダ「?やっぱりご飯食べてくの?」

勇者「い…いえ…その、今までの事、です。」

ルイーダ「……」

勇者「他の勇者様がたや父さんと違って落ちこぼれで色んな人から見捨てられてた僕を、僕として接してくれた大人って…ルイーダさんくらいだったから……」

ルイーダ「…勇者くん」

勇者「だから、ありがとう」

ルイーダ「……そのお礼を言われる覚えなんてないわ」

勇者「えっ?」

ルイーダ「だって勇者くんは、落ちこぼれなんかじゃないもの」

勇者「…ルイーダさん」

ルイーダ「ふふ。ホラ、行くんじゃなかったの?『ランニング』に。」

勇者「うん……うん」

ルイーダ「早く終わらせて、お腹空かせて戻っていらっしゃい。美味しいご飯用意して待ってる」

勇者「うん……ルイーダさん」

ルイーダ「なーに?」

勇者「……行ってきます」

ルイーダ「はいな♪」

タッタッタッ……


ルイーダ「ふふふ……すっかり男らしくなっちゃって」

ルイーダ「……しばらく寂しくなるな……」

ルイーダ「……でも」




ルイーダ「挨拶するのは……私だけじゃないでしょ…?」ニヤーリ

-街の外-

タッタッタッ……

勇者「ハァッ……ハァッ……」ゼェゼェ

勇者「ハァッ………せ」

勇者「成功だあぁーーッ!!」

勇者「やった!やったぞ!!一人だ!一人旅だ!」

勇者「ようやくこれで…何の心配も無くなる…」

勇者「……」

勇者「これで良いんだ」

勇者「手紙もちゃんと書くし…」

勇者「……これで良いんだ」

勇者「…」

勇者「うしっ!しんみりするんじゃない!」

勇者「まずは次の街を目指す!頑張るぞ!!」

勇者「朝出発は正解だったなぁ。ちゃんと道を見失わなければ昼過ぎには着くかな」

勇者「よし!出発だ!」

勇者(待っていろよ魔王!諸悪の根源……そして父さんの仇…)

勇者(必ず討ってやる!)


・・・・・・




勇者「と意気込んでみたのは良いんですがね」

-森- 夕方

勇者「この体たらくですよ」←迷子

勇者「まず最初の敗因はですね。僕がどうしようもない方向音痴だったって事ですよ」

勇者「えぇ。実家の近場でもこのとおりです」

勇者「そして次の敗因はあれですね。地図とコンパスを忘れてしまいました。」

勇者「はい、どうも。バカです」

勇者「野宿はもう決定なんですが僕は魔法が全然使えませんので火は手で熾します」

勇者「………」

勇者「いやね、実際やってみると分かると思うんですが、これ難しいんですよ。木の板に枯れ草敷いて木の枝でゴリゴリやって火をおこす奴」

勇者「……はい。マッチを忘れた僕が馬鹿です」

勇者「……」

勇者「なきたい」

勇者(あっれー…僕って落ちこぼれではあったけどここまで酷かったっけー…?)

勇者(……)

勇者(そうか……今までは……)

勇者(………)

勇者「って何出発早々恋しくなってんだ!」

勇者「こういう事に巻き込まない為にも決意したんじゃないか!」

勇者「シャキッとしろ!勇者!」パンッ!

勇者「よし!晩御飯探しだ!」


-森の中-

勇者「おぉっ。またキノコゲット!」

勇者「探せばあるもんだなぁ。この一帯は山菜の宝庫だ」

勇者「おぉっまたゲット!」

勇者「…」

勇者(何かがおかしい)

勇者(僕にしてはうまくいきすぎてる気が……)

勇者(ん…?そういえば誰かが前に何か言ってたような…)


ーーーーーーーーーーー

?『キノコや山菜があまりに多い所はー…』

ーーーーーーーーーーー

勇者「……魔物の縄張りの可能性が高い」

ガサガサッ

勇者「……今また確信した」


勇者は魔物に囲まれた!

勇者「僕は馬鹿だ」

勇者「くそっ!囲まれた!」

勇者(やばい…夕食時だからか数が多い……20はいるぞ…)

魔物「グルル…」

勇者(…仕方ない。やるしか)

スカッ

勇者「あれっ」

スカッスカッ

勇者「……」

勇者「剣を荷物置いてる所にわすれちゃった」

魔物「……」グルル…

勇者「……」



魔物「ガアアァアッ!!!」

魔物の群れはいきなり襲いかかってきた!

勇者「ですよねーーッ!!!!!」

ズガァン!!

勇者「うおっ!」

魔物の攻撃ははずれた!

ズシャアッ!!

勇者「うわぁう!!」

魔物の攻撃ははずれた!

勇者(ヤバいヤバいヤバいヤバい!分が悪すぎる!!)

勇者(なんとか走って荷物の場所まで…)

勇者「くっ…!」ダッ

魔物「ガアアァアァアアアッ!!!!!!」

グシャアッ!!

痛恨の一撃!

勇者「うがぁあっ!!!」ドサァ

魔物「グルル…」

勇者(ヤバい…これシャレになんない)ズキズキ

勇者(早く剣を…っ!)ヨロッ

魔物『ガアアァアアァアアアァアアアァアア!!』

魔物の群れは一斉に襲いかかってきた!

勇者「……っ!」

勇者(しまっ……)







「みーっけ」

ゴキィッ!!

魔物「ゴエァッ」

会心の一撃!魔物は倒れた!

勇者「……え」

「やーっと見つけたわよ」

勇者「………(あぁ)」

「まぁ話は後ね。覚悟してなさいよアンタ。」

勇者「……ぶ(情けない)」

「私を置いていった罪は重いわよ」

勇者(結局失敗だ)

勇者「………武闘家」



武闘家(女)「袋打だきの刑、だかんね!」


ザッ…

勇者「!」

魔物「ガアァッ!!!」

勇者「武闘家!うしr」


「めらっ!!」

ボシュアッ!!

魔物「オゴァェアアァアア!!」

魔物は燃え尽きた!

「ゆーしゃーっ。大丈夫だったー?」

勇者「ま、魔法使い!」

魔法使い(女)「やっ。まほうつかいですよっ」

勇者「…ということは」

「アタシもいるぞーっ!!!!!」

グシャアッ!!

魔物「グゲェッ!!」

魔物は倒れた!

勇者「戦士!」

戦士(女)「勇者のばかーッ!!!アタシたちのこと置いてこうとしやがってー!!!」ウガアア

勇者「でも……なんで…」

「勇者くんっ!!」タッタッ

勇者「そ、僧侶!」

僧侶(女)「もう!なんでいつも無茶をするんですか!!私もう心配で心配で……あっ!!!ケガしてる!ホイミッ!大丈夫!?」ポワッ

勇者の傷が回復した!

勇者「ご…ごめん」

「それくらい良い気味です」

勇者「…あっ」

僧侶「もう!そんな事言っちゃダメ!商人ちゃん!」

商人(女)「私達を置いていくだけでなく昔私が教えた事も守れない勇くんは一度八つ裂きにされてしまえばいーです」

勇者「商人……そうか…あれって商人の言葉だったか…」

勇者「でも…皆なんでここが…」

商人「そんなんそこのそいつの得意分野じゃないですか」

勇者「えっ……盗賊!」

盗賊(女)「……勇者、ばか」

勇者「えっ、ご、ごめん」

盗賊「……心配、したんだよ」ダキッ

僧・商「!!!!!!」

勇者「うわっぷ…!ちょっ、苦しいよ!」

僧侶「と、盗賊ちゃん!」

商人「離れっ…」

バチーン

勇者「へぶぁっ!!」

「……心配して来てみれば、なんなのコレは」

盗賊「……あぁっ、勇者…」

勇者「うぐっ……あ、遊び人……!!!」

遊び人(女)「こ、ここ、この破廉恥馬鹿!」

遊び人「馬鹿!勇者ちゃんのあほ!分からず屋!」ペチンペチン!!

勇者「い、痛い痛い!ごめん!止めて!謝るから!」

武闘家「何やってんのアンタら」

商人「あ、お疲れ様です。片付きました?」

魔法使い「かたづいたよーっ。らくしょうっ」

戦士「アタシの敵じゃねーよっ!!」アハハハ

僧侶「大丈夫?ホイミいる人はいますか?」タタタッ



ザッ…

勇者「っ!僧侶!あぶなっ……!!」

僧侶「えっ…」



魔物「ゴアアアアア!!!」

勇者「っ!!間に合わ…」







「油断大敵だよ、みんな」

ドサッ

魔物を倒した!


勇者「………えっ」

僧侶「っ!…危なかった……ありがとう!」

勇者「な…」

「何呆けた顔してるんだい」

勇者「なんで……お前まで……」

「まだ認められない年齢とはいえ本当は血筋的にはわたしの仕事なんだよ」



勇者「…………女勇者」



女勇者「全く、頼りにならないね。お義兄ちゃん」

今日はここまで


こんな風に妄想駄文を垂れ流してくよ。つまらないって人はごめんね。そっとスレを閉じて頂けると幸いです。

がんばるます。

俺得な匂いがぷんぷんするぜぇ!!

ーーーーーーーーーーー
-森の中- 夜



女勇者「…で?何か言いたい事はあるかな?」

勇者「……すみませんでした…」←正座

武闘家「謝るより先に説明しなさいよ」ゲシゲシ

勇者「い…痛いっ!堪忍してっ」

戦士「なぁ…勇者、なんでアタシ達を置いてったりなんかしたんだよ…」

勇者「……」

戦士「アタシ達みんな、子供の頃からの腐れ縁じゃん?なのに何で…黙って…」

遊び人「そ、そーだよ!何か相談くらいしてくれても良いじゃない!勇者ちゃんのあほっ!」

僧侶「私たち、一緒に旅に出るってずっと昔から誓いあってたじゃないですか!」

勇者「いやアレは子供の頃の話だし……」

盗賊「……今でも、気持ちは、変わってないよ…?」

勇者「うっ…!」

商人「勇くんの事ですから、おおかた私達が強すぎて面目が立たない、とか足手まといになるから、とかそんなくっだらない理由なんでしょうがね」

勇者「うぅっ…!」

魔法使い「ふふ、よしよーし」ナデナデ

武・商「なでなでするなっ!!」

魔法使い「えーっ」

勇者「と…ところであのさ…僕も聴きたいことがいくつかあるんだけど…」

女勇者「質問を許可するよ」

勇者「うん…ありがとう。質問、なんだけど、何で僕が街を出たって事に気付いたの?盗賊のタカの目があるにしろまだ街の中にいるかもって思わなかったの?」

商人「勇くんは馬鹿ですね」

女勇者「まず私は母さんにお義兄ちゃんの様子の異変を伝えるように仕向けてたし、それに」

武闘家「鋭い女って、私達だけじゃないのよ」フフン

勇者「…………………ルイーダさんかよぉぉおぉおぉおぉお」チックショォォォ

遊び人「…アリアハンに住んでる男はルイーダさんに勝てるとは思わない方が良いよね」

女勇者「で?他の質問は?」

勇者「あぁ、うん。もう一つの質問なんだけど」

女勇者「うん」

勇者「なんで女勇者がいるの?」

女勇者「?」

勇者「いや?じゃなくてさ。お前は旅に出るの一年後って約束だったじゃない」

女勇者「私がここにいるのに理由なんて無いよ。しいて言えば『私がここにいる』というのが理由かな」

勇者「やかましいよ?母さんや王様にはちゃんと言ったの?」

女勇者「その点は抜かりなくクリアしたよ」

勇者「抜かれよ……」

女勇者「なんだい。何か不服そうな物言いだね」

勇者「いやまぁ……いや、いいや…」

僧侶「みんな、勇者くんも疲れているみたいですし今日はこの辺で許してあげませんか?」

武闘家「んー…まだ小突き足りないけど僧侶が言うなら許してあげよっかな」

商人「しょうがないですねぇ」

勇者「そ……僧侶ぉ…」キラキラ

僧侶「『今日は』、ですけどねっ!」ニコー

勇者「えっ」

戦士(僧侶静かに激怒してやがる…)

盗賊「……と、なれば…今日はもう遅いし…野宿、だね…」

魔法使い「おーっ」ウキウキ

武闘家「全く…初日にこんな近場で野宿することになるとはね…」ハァ…

勇者「うっ…ごめんね」

戦士「まぁいいじゃんか!久々に皆でお泊まりだ!」

女勇者「確かに久々だね…。ふふ、少しガラじゃないけどウキウキしてきたよ」

商人「そうと決まればまずは夕飯ですね。ここらで採れるのは…」

勇者「あ、そういえば山菜はさっき僕が採ったやつが……あったあった、これなんてどうかな?」

僧侶「まぁっ!こんなに沢山…勇者くんありがとうございます!」

遊び人「おばかな勇者ちゃんでもたまには役に立つね」

勇者「傷つくからよして」

商人「………勇くん」

勇者「へ?どうした?」

商人「このカス野郎」

勇者「いきなりの暴言は止めようよ死にたくなる」

商人「勇くんはピンチを助けてくれた私達に恩を返すどころか廃人にしてしまうつもりだったのですか?」

勇者「えっ!?」

魔法使い「?どーゆーこと?」

盗賊「……このキノコや山菜は、全種類、もれなく毒……」

武闘家「えっ」

戦士「こわい」

商人「これはグリズリーをも一口で昇天させる猛毒のもの、こっちはバブルスライムの餌でもある猛毒の葉、こちらは一日中笑いが止まらない笑い茸、そちらは理性を簡単に崩壊させてしまう媚薬茸……よくもまぁ数ある山菜の中からこんなラインナップをチョイスできるもんですよ」

女勇者「びっ……!………ふ、ふふっ。流石と言わざるを得ないね、お義兄ちゃん」

遊び人(びっ!びびびっび、びびっ、媚薬ぅ!!!?)///カァーッ


~~~~~~~~~~~

勇者『媚薬茸を食べちゃったよ……僕のここも、もはやベニテングダケさ……遊び人っ!!』

ガバァッ

遊び人『やぁっ!勇者ちゃん、止してっ!まだこんなの私達には早いよ!それに今勇者ちゃんはキノコのせいで…』

勇者『キノコのせいじゃ無いよ』

遊び人『え……』

勇者『君が魅力的なのがいけないんだ』

遊び人『あ……勇者ちゃ………』

~~~~~~~~~~~

遊び人「いや~~~~~~っ!!!!!!」///バタバタ

一同「!!?」

遊び人「勇者ちゃんのばかっ!すけべっ!えっちぃっ!!!」///ペチペチ

勇者「ごっ、ごめん!悪気は無かったんだ!謝るからっ、いたっ、痛い痛い!」

戦士「となると山菜採り直しか……」

勇者「も、もう一度僕が採ってくるよ!」

商人「勇くんは馬鹿ですか?馬鹿でしたね。もう一度私達を[ピーーー]つもりなんですもんね」

勇者「……ぅぅ……面目ない……」

魔法使い「よしよーし」ナデナデ

盗賊「……勇者、よしよし…」ナデナデ

勇者「ちょっと勘弁して…この年でそれは生き恥すぎる…」

盗賊「……こんな事も、あろうかと」

ゴソゴソ…

勇者「?」

盗賊「……道中、採っておいたよ…」ジャーン

一同『おーっ!』

女勇者「流石盗賊ちゃんだね。頼りになるよ」

僧侶「昔から山菜採り上手でしたからね」フフ

盗賊「……私、山の幸泥棒…」エッヘン

戦士「あーっ!お腹減ったよー!何でもいいから食べようぜ!」

武闘家「そうね。先ずは火を熾しましょ」

勇者「あ、それは僕がy」

魔法使い・女勇者『めら』

ボッ

勇者「ぐぬぬ…」

勇者「……じゃあ料理は僕が!」

遊び人「いいよ、勇者ちゃんは休んでて?私がパッパッと用意しちゃうから」

魔法使い「あそびにんは料理とくいだもんねーっ」ワクワク

戦士「遊び人っ!一丁旨いやつお願いなっ!!!」

遊び人「まかしといてっ!」セッセセッセ

勇者「……」

商人「じゃあ使えるキノコや山菜はここに置いておきますね」

遊び人「ありがとー」カチャカチャ

武闘家「?その毒キノコとかは捨てないの?」

商人「はい。毒は毒ですが中には高く取り引き出来るものもありますからね。日持ちも良いですし非常時の路銀としてとっておきます」

武闘家「しっかりしてるわね。セコいわ」

商人「やかましいですよ」

アハハハ……



ポロッ

魔法使い「あれーっ?あそびにん、きのこがおちてるよ?」

遊び人「え?あ、本当?ごめんね。とってー」

魔法使い「もったいないもったいない……はい♪」

ーーーーーーーーーーー

女勇者「それじゃあ…」

一同「いただきまーす!!」

戦士「~~~~っ!!うっめーー!!」パァァァ

魔法使い「おいしーっ!」

武闘家「……っはーっ……本当に美味しい…遊び人、すごいわねぇ」

僧侶「私時々、なんで遊び人ちゃんが遊び人をやってるかが分からなくなります」

遊び人「や、やめてよぅ……」

戦士「いや本当にうっめーよ!なぁ勇者?」

勇者「……」

戦士「……?勇者?」

遊び人「……勇者ちゃん、美味しくなかったら…無理して食べなくてもいいんだよ……?」ショボボン

勇者「えっ!?あっ、いや、ごめん!美味し過ぎてボーっとしてた!本当に美味しいよ!」アセアセ

遊び人「ほっ…ホント?」

勇者「うん本当に!遊び人は本当に料理上手だよね!お嫁さんにするなら一番憧れるタイプだよね!」パクパク


………。



ざわっ……

遊び人「えぅうっ!!!!?///」カァァァ

勇者「?どうしたの?みんな」

女勇者「おっ、お義兄ちゃん!?」アセアセ

武闘家「ゆ……勇者アンタっ…」アセアセ

僧侶「な、何を言ってるんですか!!」アセアセ

勇者「えっあっ、えっ?」

遊び人「え、あ、えう///」プシュウウウ

遊び人「勇者ちゃんのばかーっ!!!!///」ダッ…タッタッタッ

勇者「えっ!?遊び人っ!?」

<スケベーッ

勇者「何で!?」

盗賊「……勇者、女の子に、軽々しくあんな事言っちゃ駄目だよ……」

魔法使い「そ、そーだよっ」

勇者「そっ、そうか…ご、ごめん」

戦士「……料理、練習しようかな……」ボソリ

商人「………」

戦士「?商人?どうした?黙りこくっちゃって…」

商人「……いえ、何でも無いです……」

戦士「そうか?」

商人(………このスープのこのキノコ……)

商人(いやまさか、そんな事は無いですよね)

商人「杞憂杞憂っ」

戦士「…?」


………

ーーーーーーーーーーー


戦士「おー…もうお腹パンパンだ…」フゥ

武闘家「美味しかったわよ。御馳走様。遊び人。」

遊び人「そう?なら良かった。お粗末様♪」

勇者「……」

勇者(おかしい)ドッ…ドッ…

魔法使い「ふいーっ…このお茶もおいしいねぇ」

勇者(これは紛れもない異変だ)ドクン…ドクン…

盗賊「……ちょうど、香りの良い茶葉が、生えてたから……」

勇者(その…なんだ…今僕は…)ドッキンドッキン

僧侶「私盗賊ちゃんのお茶大好きなんですよね」フフフー

女勇者「私もだよ。盗賊ちゃんは淹れ方が違うんだろうね」

勇者(今僕は…)ドッドッドッドッ




勇者(今、猛烈に、邪な気分だ)

勇者(なんだ!?いつにも増して皆が色っぽく見える!)

勇者(確かに皆普段から美人だしセクシーギャルだけれども!)

勇者(皆幼なじみだからそういうのとは違ったのに!)

勇者(今日はなんかもう…皆の体が悩ましくて気が狂いそうだ!動悸が止まんない!)

勇者(気を……気をしっかり持つんだ勇者!!)

商人「はーい皆さん、ではそろそろ寝ましょうか」

武闘家「そうね。明日も早く出発したいところだし」

戦士「見張り役はどうする?交代制にするか?」

女勇者「今日は皆疲れているし周りには弱い敵しかいないから、聖水をテントの周りに撒くだけにしよう」

魔法使い「さんせーっ。ねむいからねぇ」

遊び人「まぁちょっと怖いけど大丈夫よね」

商人「しかし一つ問題があります」

盗賊「……どうしたの?…」

商人「このテント、八人用なんです」

一同「………っ!!」ざわっ…


商人「…皆察しが良くて大変助かります」

勇者「?どういうこと?大丈夫だよ?僕は毛布が一枚あるから焚き火のそばで…」

商人「……勇くんがコッソリ逃げ出さない保証はありません」

勇者(あ、そういう手もあったのか)

商人「だから、勇くんの見張り役が必要なんです」

商人「勇 く ん を 一 晩 す ぐ そ ば で 見 守 る 係 が ね」


一同「………ッッッ!!!!」

勇者「えっ、えぇえ!?」

商人「あ、勇くん。川で水浴びに行ってきて下さい。私たち女の子の方が長くなっちゃうんで私達は後で大丈夫です」

勇者「え?あ、うん。わかった…」テクテク

商人「……行きましたね」

商人「ということで皆さんはテントでお願いします」

武闘家「ちょっと!何でそうなるのよ!」

商人「いえ、提案者ですし?私が犠牲になれば皆は安心して…」

武闘家「わ、私の方が適任よ?ほら、万が一強い魔物が襲ってきたらやっぱり前線でいつも闘ってる私が一番じゃない?」

戦士「そ、それを言うならアタシだって適任じゃないか?ほら、パーティーの中でアタシが一番女っぽくないし、一番何事も起こらないと…」

僧侶「それでしたら私が適任です!私は聖職者ですので間違いは絶対に…」

盗賊「……ルビス教って、男女の戒め、無かったよね…」

僧侶「ぬぐぐ…」

盗賊「……私は、よく、勇者に抱きついてるから、免疫ができてるから、私が適任だよ…」

魔法使い「だ、だめだよぅ。ゆーしゃはわたしがだきつくんだからっ」

女勇者「どんな主張なんだい…どうやらやっぱり私が適任みたいだね。私は最年少なせいか多少発育に乏しいし何より兄妹だ。間違いが起こる事も無いさ」

武闘家「血は繋がってないじゃない!」

ギャーギャー

遊び人「……はぁ、皆さ。勇者ちゃんの事は考えないの?」

ピタ…

戦士「え…」

武闘家「勇者の…事?」

遊び人「さっきから聴いてれば勇者ちゃんを腫れ物扱いみたいにしてさ。勇者ちゃんが可哀想だよ」

女勇者「う……」

僧侶「そ…それは言葉のアヤと言いますか…」

遊び人「確かに…勇者ちゃんはスケベなとことかあるけどさ……」

遊び人「それでも、勇者ちゃんだったら私たちの事を第一に考えてくれるよ?」

魔法使い「……うん。そうだね」

盗賊「……勇者、優しいからね…」

商人「そ……そんな事、言われなくても分かってます」

遊び人「うん。で、でも勇者ちゃんも我慢できない事も……かも…だ、だから、ひゃ、百戦錬磨の遊び人のわ、わわ私が一緒に寝るねっ!!/////」カァァァァ

一同「ッオーーーーイ!!!!!!!!!!!」

商人「良い話がどこに行きやがりましたか!!!!!ってか何が百戦錬磨ですかこのド処女が!!!!!」ギャー

遊び人「しょしょしょしょ処女ちゃうわ!!!!!!///」カァァァァ


ギャーギャー


勇者「……何を騒いでるんだろう」チャプン



………………
…………
……

この世界的には死んだら蘇生とかできないのかな

ーーーーーーーーーーー

勇者「さっぱりしたー…」

勇者「皆ー、もう水浴び大丈……どうしたの皆」

一同「…………」グッタリ

女勇者「何でもないよ♪あ、お義兄ちゃんの見張り役は私になったよ。よろしく」フフン

勇者「そ、そう?まぁお前なら大丈夫か」

武闘家(じゃんけんにっ…!!)

商人(負けたっ……!!)

>>54
そこは色々あるので後々語りたいと思います。

あと一応ですが基本3とかの名称でいきますが>>1の記憶力があまりに悪いのでパラレルな世界として認識していただけると幸いです。

そして携帯&その場で展開考えてるので遅筆だけどごむんね

忘れてた、今日はここまでです。


>>1
メール欄に「saga」と入れると禁句もちゃんと出るようになるぞ
「殺す」「死ね」「オナニー」

「sage」とも一緒に使えるぞ

ageちまったごめん

登場人物まとめ

・勇者(主人公)

アリアハンの勇者オルテガが拾ってきた少年。本来の勇者である義妹の代わりに先立って旅立とうとする。心優しいが優柔不断。小さい頃から修行に明け暮れているが弱い。趣味は修行。


・女勇者

オルテガの娘であり勇者の義妹。平均的な実力ではグループ内NO.1。真面目でどんな事もそつなくこなす柔軟な思考の持ち主。その反面一度取り乱すとボロを出しまくる。幼なじみグループ内では最年少。趣味は兄いじり。

・武闘家

勇者の幼なじみ。強気な性格でいつも弱気な勇者の尻を叩く役割。反面いつも勇者の事を心配しており、何かと気にかけている。性格的にいつもツッコミに徹してしまう。趣味はショッピング。

・戦士

勇者の幼なじみ。父子家庭で育ったためか男のような性格に。しかし時折年相応の女らしさを見せる事もある。勇者とは悪友であり修行仲間。勇者の努力を誰よりも知っている。趣味は筋トレ。

・魔法使い

勇者の幼なじみ。見た目は利発そうな美女であるが人一倍呑気な性格であり楽天家。喋り方にまでそれが表れるので他人をイラつかせる事もしばしば。趣味は勇者と遊ぶ事。

・僧侶

勇者の幼なじみ。職に相応しい母のように心優しい少女。しかし同様に母のような厳しさも持ち合わせており勇者に何かと世話を焼く。極度の心配性であり、とある事情で勇者から片時も離れないように心がけている。趣味は歌う事。

・商人

勇者の幼なじみ。パーティーの資金面を全て取り仕切っており、やりくり上手。毒舌で皮肉屋ではあるが憎めない性格。何かと勇者を毒舌でからかうが本当に傷つける事は無い。甘え下手。趣味は節約。

・盗賊

勇者の幼なじみ。勇者の一つ年上で最年長。いつもボーっとしていて寡黙。完全に勇者のお姉さん気分であり、独占欲が強い。諸事情により盗賊をしている。趣味はガーデニングと山散策。

・遊び人

勇者の幼なじみ。少々妄想癖があり耳年増。その職に相応しくない真面目な性格であり、家事を得意とする。諸事情で遊び人となっているが本人は不服な模様。しかしバニーガールの格好をする事自体は密かに楽しんでいる。とある事情で勇者を人一倍気にかけている。趣味は家事、読書。

こんな感じかなぁ

主人公が弱いのはあまり最初から主人公が強くて無双してマジカッケーっていうのが好きくないからです。良いとは思うけどね。成長ものが好きなんさ。ごむんね。

あとsagaの存在完璧に忘れてた

まぁ基本糞SSなんでそんなに気張らずにウンコをする最中に読むみたいな感覚で軽いノリで読んで頂ければ嬉しいです。

ーーーーーーーーーーー
-森の中-夜



女勇者「それじゃ、みんなおやすみ。また明日会おう」

武闘家「……おやすみ」

戦士「うぅ、勇者!また今度一緒に寝ような!」

商人「何バカ言ってるんですか!ホラ!テントに入って!」

遊び人「勇者ちゃんのばかぁっ!おやすみっ」

盗賊「……落ち着いて……」

僧侶「勇者くん、おやすみなさい」

勇者「うん、みんなおやすみ」

魔法使い「みんなまたあしたねーっ」

一同『あんたはこっち!!』

……

女勇者「よし、じゃあ私たちもそろそろ寝ようか。明日は早いからね」

勇者「うん、そうだね」

勇者(まだ体は火照ってるけど…相手が女勇者で良かった)

勇者(これなら何事も起こらないだろ)




…………………




勇者(なんて馬鹿な事を考えてた時期が僕にもありました)

女勇者「すーっ…すーっ…」zzz…

勇者(眠れるかこんなん!!!!)ドッドッドッドッ

勇者(駄目だ…絶対に何かおかしい…!女勇者がいつもの百倍悩ましく見える…!)ドッキンドッキン

勇者(女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹女勇者は妹)

勇者(だが義妹だ)

勇者(うぉおぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉぉお!)ドッキンドッキン

女勇者「……んぅ?お義兄ちゃん…?」モゾ…

勇者「んぇっ?あっ、あぁ。ごめん起こしちゃった?」アセアセ

女勇者「……眠れないのかい…?」

勇者「ん、ま、まぁね。でももうすぐに寝るよ」ドキドキ

女勇者「……お義兄ちゃん……」

ギュッ

勇者「んおっ!?どどどどうした!?いきなりっ」ドキーン

勇者(そんなにくっついたらヤバいヤバいヤバいいぃいいぃいいぃい!)ドッキンドッキン

女勇者「………ついてきて、すまなかったよ…」

勇者「…………」

女勇者「でもお義兄ちゃんも悪いんだ…。自分の体質の事も、ちゃんと分かってるだろう…?」

勇者「……それは、……そうだけど…」

女勇者「じゃあ、お願いだから無理をするのはやめなよ……皆お義兄ちゃんが心配なんだ…。武闘家ちゃんも、商人ちゃんも……。」

勇者「…………」

女勇者「勿論、私も」

勇者「…………」

女勇者「お願いだから、父さんみたいにいなくならないでくれ………」

勇者「………ごめんな」

女勇者「………ばか…………」

女勇者「……すーっ……すーっ……」zzz…

勇者(………ごめん、それでも僕は……)

ドッキンドッキン

勇者(うぅっ、まだ劣情が収まらない…)

勇者(………)チラッ

女勇者「すーっ……すーっ……」zzz…

勇者(………)ドッキンドッキン

勇者(…ごめん、女勇者)

ゴソ……

………………
…………
……

ーーーーーーーーーーー

-森の中- 早朝


商人「………んぅ」ムクリ

商人「ふあぁ……」

商人(丁度良い時間帯に起きれました)ムニャムニャ

商人(皆はまだ寝ていますか……)

商人(……川で顔を洗いましょうかね)

商人(タオルタオル…)

ゴソゴソ……

商人「……」

ゴソゴソ

商人「……無い」

ゴソゴソ!

商人「無い…無いです!」

武闘家「…んー?何が無いのよ…」ボリボリ

商人「あ、すみません起こしちゃいました?」

武闘家「…まあそんな隣で忙しなくされたらねぇ。で、何が無いのよ?」

商人「いえ……今日売って路銀にするはずだった媚薬キノコが無いんです」

武闘家「?なんでそんなんが……」

商人「………そういえば思い返せば昨日の晩御飯の中に似たようなキノコが入ってたような……」

武闘家「遊び人が間違えて入れちゃったって事?でも私達何ともないわよ?」

商人「まぁ、それもそうなんでs……………………………………やべっ」

武闘家「どうしたの?」

商人「あのキノコ……この時期はオスの催奮効果しか持たないんでした…」

武闘家「………オスにしか効かないって事?」

商人「はい…そして今回それを口にしたオスはただ一人……」

武闘家「……つまり…」

商人「………」

武闘家「………」






商・武『女勇者が危ない!!!!!』

ダッ

ガバッ

武闘家「勇者っ!!」

商人「勇くんっ!!」








女勇者「すーっ……すーっ……」ムニャムニャ

武闘家「……あ…あれ?何ともなってない?」

商人「着崩れもありませんし毛布の乱れも……あれ?勇くん?どこ?」

武闘家「あ、本当だ。いない」

商人「………!!!!!まさか逃げっ…!!」

武闘家「しっ、ちょっと静かに」

商人「…………?」

武闘家「…………こっちよ」テクテク

………………

ーーーーーーーーーーー

-森の奥-

商人「ちょっと…こっちに何があるんですk」

武闘家「しっ…………………………ほら、アレ」

商人「………………あれは」


ブンッブンッ

「9533……9534……」

ブンッブンッ

勇者「9535……9536…!!」

商人「………勇くん…」

勇者「ふっ…!!ふっ…!!」ブンッブンッ

勇者(あんな劣情を抱いてしまうのは、僕が弱いからだ…)

勇者(皆が僕を心配してついてきてしまうのは、僕が弱いからだ)

勇者(皆にあそこまでさせてしまうのは、僕が弱いからだ!)

勇者(僕が本当の勇者じゃ無いのは、僕が弱いからだ!!)

勇者(僕は弱い!!強くならなきゃいけない!!)

ブンッブンッ

勇者(…何が何でも)

ブンッブンッ

勇者(何が何でも強くならなきゃ…!)

ーーーーーーーーーーー


ブンッブンッ


商人「……」

武闘家「………あいつの手見てよ、血まみれよ」

商人「……」

武闘家「あんな怖い顔して、きっと一晩中鍛錬してたんでしょうね」

商人「……」

武闘家「『勇者ちゃんは、私達の事をちゃんと考えてくれてる』……か」

武闘家「………あいつからしたら、有り難迷惑かもしれないけど」

武闘家「……旅の間だけは……支えてあげたいね……」

ブンッブンッ

商人「………勇くんは馬鹿です」

武闘家「……」

商人「体が火照ってしょうがなかったんなら…私に言ってくれれば…」

武闘家「……」

商人「大爆笑しながら指さしてからかってあげたのに」ニヒッ

武闘家「………プッ」

商人「……フフッ」

武闘家「あははっ!本当にね。」

武闘家「……せっかくの友達なんだから」

武闘家「大事な、幼なじみなんだから」

商人「さ、戻って皆を起こしましょうか」

武闘家「そうね。遊び人起こさなきゃご飯食べられないし」

商人「勇くんも朝ご飯の匂いに気付いてもどってくるでしょう」

テクテク…

武闘家「あれ?商人?そっちは違うよ?」

商人「…ちょっと探し物に行ってきます」テクテク

武闘家「………あぁ……ふふふ、優しいわね」

商人「あの痛々しい手の傷を朝食時に見せつけられるのも嫌ですからね。無茶をした罰としても一番滲みる葉っぱを持ってきてやりますよ」テクテク

武闘家「………はいはい………本当、素直じゃないわね………」クスッ

武闘家「……」

ブンッブンッ

勇者「フッ!!フッ!!」

武闘家「……」

武闘家「……」

武闘家「……ばか…」

武闘家「……」

武闘家「……」

武闘家「…………ごめんね………」

クルッ…

スタスタ…


……………
…………
………
……

今日はここまでです。ねこ

ーーーーーーーーーーー

-森の中- 朝

一同『いただきまーす!』

戦士「んーっ!やっぱ遊び人のスープマジでうまいっ!」

遊び人「大袈裟よ。もう」

魔法使い「おいしいよぅ?」

ワイワイ

勇者「……」

僧侶「…大丈夫ですか?まだ痛む?」

勇者「あっ、いや!全然!商人のおかげでもう全然大丈夫になったよ!」

商人「まったく勇くんはアホです。川に行く途中に転んで手を傷つけるとか子供ですか。私が丁度薬草持ってて良かったです」

僧侶「んもう!商人ちゃん!そんな事言わないの!」

勇者「あはは…本当ごめんね」

武闘家「……」

勇者「ん?どしたの武闘家?食べかす付いてる?」

武闘家「……んーん。何でもないわ」フフ

女勇者「それで、どうするんだい?」

勇者「へ?」

盗賊「……これからの、旅の計画……」

遊び人「まさか計画たててないって事はないよね?」ジトー

勇者「はは、まさか。ちゃんと立ててるよ。」

勇者「先ずはレーベに行こうと思う」

商人「まぁそれしかありませんよねぇ。ここから陸路で行ける場所ってレーベくらいしかありませんし。でも問題はそれからですよね」

武闘家「船でもあれば楽に移動が可能になるんだけどね。アリアハンにそんな財力求められないし…」

僧侶「でもオルテガさんは船で移動していたんですよね?」

盗賊「……オルテガおじさんは、この大陸を出たときは一人だったから…イカダ使ったって言ってた……」

戦士「さすがお師匠!かっこいい!!」キラキラ

女勇者「ふふ、自慢の父だよ」

勇者「まぁ、レーベに行ってまずは情報収集しようと思ってさ。ルイーダさんの店で気になる噂も聴いたし」

僧侶「?噂?」

勇者「まぁ、あくまで噂なんだけど、レーベの近くのいざないの洞窟奥に旅の扉っていうものがあって、そこから違う大陸に行けるらしいんだ」

戦士「なにそれすげぇ」

魔法使い「わたしもきいたことあるよっ。ほんとにあるといいねぇ」

勇者「今はまだ噂でしかないからね。それを確かめに行こう」

女勇者「了解したよ。もう迷わないようにね。リーダー」クスッ

勇者「すみませんでした…」

ーーーーーーーーーーー

-道中- 昼前


戦士「りゃっ!!」

武闘家「はっ!!」

女勇者「やぁっ!!」

グシャァッ

魔物「ギエェッ!!!」

魔物の群れを倒した!

女勇者「ん、こんなものかな」シャキン

僧侶「みんなお疲れ様。怪我はないですか?」

戦士「なんともないぜ!」

武闘家「一撃で倒せるからね」

勇者「……実際みんな強くなったよなぁ」

商人「まぁ天才ですからね」

勇者「商人は戦闘してないじゃん」アハハ

魔法使い「……」

トコトコ…

魔法使い「……ゆーしゃ?」

勇者「ん?どうしたの?」

魔法使い「だいじょーぶ?」

勇者「あぁ、手はすっかり大丈夫だよ」

魔法使い「……んー、ちがくて…まぁいいやっ」

勇者「?まぁ心配してくれてありがとう」アハハ

………………
…………
……

-レーベ- 昼過ぎ

戦士「着いたーっ!!」ワー

魔法使い「ばんざーいっ」ワー

商人「遂にこの地に降り立ちましたー」ワー

武闘家「何回か来たことあるでしょ…」

盗賊「……来るときは皆一緒だったから…あんまり新鮮味ないね…」

僧侶「あはは、でも来るのは久しぶりですよね。何年ぶりだろう…」

遊び人「最後に来たのっていつだったっけ?」

女勇者「まぁそんな事よりまずはこれからの計画だ。どうするリーダー?」

勇者「うん、まずは情報収集の為に宿を二泊とろうと思う。その間に皆で聞き込みをしよう」

遊び人「二泊するの?」

戦士「了解だ!聞き込むぜー!」

魔法使い「おーっ」ワー

女勇者「了解だよ。早速行ってくるね。宿はお願いできるかな?」

勇者「うん、まかされたよ。じゃあ宿に行ってくる。何かあったら宿に来る事。皆オーケー?」

一同『りょうかーい』

勇者「それじゃ一旦かいさーん」

商人「……」

テクテク…

勇者「宿は…こっちだったかな…」

商人「こっちですよ、勇くん」

勇者「うおぉ!?商人っ!びっくりしたぁ。ついてきてたの?」ビクゥ

商人「驚きすぎです……ちょっと話がありまして…」

勇者「ん?何?」

商人「…言いにくいんですがここで宿を二泊とったりしてあまり無駄遣いするのは…」

勇者「あぁ、そういえば言うの忘れてたんだけど、道中の宿や武器のお金は僕が出すよ。商人の管理してるお金は生活用品や食費、皆の欲しいものをお願いしていいかな?」

商人「はい?何言ってるんですか?昨日私に旅の費用って言って渡したお金が全財産じゃ……」

勇者「いや、あれは三分の一くらいなんだ。宿や武器はお金かかるからね。皆の買いたい物が買えなくなるのもなんだから分けておいたんだよ」

商人「三分っ……!?ちょっと、勇くんいくら貯めてたんです…?ちょっとやそっとで貯まる額じゃ……」

勇者「はは……まぁ修行ばかりしてたからね。気付いたら、って感じだよ」

商人「……良いんですか?少しくらいは老後の為にとっておかないんですか?」フフ

勇者「ははは、まぁこの旅の為にとっておいたお金だからね」

勇者「その後なんてどうでもいいさ。……………危険な旅だし」

商人「……」

商人「……っ!!」ムカァッ

ゲシッ

勇者「いたっ!!!し、商人!?どうさたのいたぁっ!!!蹴らないで蹴らないで!」ゲシッ

商人「……つぎ」

勇者「へっ?」

商人「次そんな事言ったら……ただじゃ…おかないんですからねっ……!!!!」

勇者「………商人」

商人「皆で世界を平和にして……皆で帰るんですからっ……次そんな弱気になったら……!」フルフル

勇者「……商人…」

ナデ…

勇者「ごめんね。…意地の悪い冗談だったよ」

商人「………」

勇者「誰も死なせはしないよ。僕が死んでも守るから」ナデナデ

商人「………馬鹿!!」

バシンッ

勇者「いたぁっ!!」

商人「もういいです!勇くんのバーカ!おたんこなす!」スタスタ

勇者「ちょ、ちょっと商人!ごめんね!?」

スタスタ

商人(勇くんの馬鹿!!いつもそうやって私達の事ばっかり…!!)スタスタ

商人(私が言ったのは……!)スタスタ

商人(………)スタスタ

商人「……勇くんのばか…っ!!」

-レーベの宿屋-

勇者「そうですか…いえ、ありがとうございました」

勇者(これで宿屋の店員や客の話は全て聴いたな…旅の扉の話は出るけど手掛かりは無しか…)

勇者(皆は何か収穫あったかな?まだ誰も戻ってきて……)

ソッ…

?「だーれだ?」

勇者「魔法使い」

魔法使い「うおっ、そくとうだねっ。魔法使いですよっ」パッ

勇者「声で分かるよ。どう?何か収穫はあった?」

魔法使い「んー、なにも。でもまだ始まったばかりだよっ、聴きこみはにんたいなのです」

勇者「はは、そうだね」

勇者「ま、時間はまだあるから落ち着いていこうか」

魔法使い「そうだね……………ゆーしゃ、やすむ?」

勇者「へ?なんで?」

魔法使い「そのぉー…なんていうかー…うぅ」

勇者「そうだ、魔法使い。もし良かったら今から魔法の勉強と訓練を少しだけ付き合ってくれないかな?」

魔法使い「へっ?いまから?」

勇者「うん、そうなんだけど……駄目かな?」

魔法使い「ううん、ぜんぜんだいじょーぶだよっ!…だけど」

勇者「?」

魔法使い「むちゃはだめだよ?」

勇者「ははは、了解。じゃあお願いします先生っ」アハハ

魔法使い「うむ!くるしゅうない、ちこうよれ!」

勇者「それなんかちがうよね」

ーーーーーーーーーーー
-宿屋・自室-

勇者「この詠唱が…」カリカリ…

魔法使い「うんっ。そーそー…ゆーしゃは理論面ではぱーふぇくとなんだよねぇ」

勇者「はは…実技がなぁ」

魔法使い「がんばってるんだけどねぇ」

勇者「才能が無いんだろうねぇ」

魔法使い「んー、ゆーしゃのばあいは才能ないわけじゃないとおもうなぁ」

勇者「?そうかな」

魔法使い「うん…いつか絶対使えるようになるよっ」

勇者「だといいなぁ」カリカリ

魔法使い「……」

勇者「……」カリカリ

魔法使い「……」

勇者「……」カリカリ

魔法使い「……♪」

…………

勇者「ん、一段落ついたっ」パタン

魔法使い「おぉう、おつかれっ」

勇者「よし、じゃあ次は…」

魔法使い「きょうはもうおしまいねっ」

勇者「え?いやでもまだ…」

魔法使い「こんをつめすぎるとだめだというよっ」メッ

勇者「んー、わかった。それじゃ聴きこみに…」ガタッ…

魔法使い「…ゆーしゃ」

勇者「ん?どした?」

魔法使い「……いま、どーゆー状況か、わかるかね?」

勇者「へ?」

魔法使い「……えいっ」

ドンッ

勇者「うわっ」

ボフッ

勇者「ちょ…魔法使い?」

魔法使い「ふたりきりだね」コト…

勇者「へ…?」

魔法使い「ゆーしゃとわたし、ゆーしゃはベッドのうえ…」ノシッ…

勇者「ま…魔法使い…?」ビク

魔法使い「…ゆーしゃ…」ギシッ…

勇者「ちょ…まほ……」

魔法使い「……こわがらないで………わたしが」ギシッ

勇者「だ、だめっ」ギシッ

魔法使い「…一一一一一一一一一一一きもちよくしてあげるから」

勇者「ま……魔法使いっ……!!」

魔法使い「えいっ。眠りきのこっ」ペイッ

勇者「もがっ」モグゥ

勇者「」ゴクン

勇者「ンアオッ」

ガクーーーーン




   快☆眠

勇者「すー……すー……」zzz…

魔法使い「ぬふふ…あさからねむいのを隠そうとしていたのなんて、まるっとおみとおしだよっ」フヘヘ

魔法使い「ゆーしゃはすぐにむちゃをするからねっ。おしおきだよっ」

勇者「すー……すー……」zzz…

魔法使い「……だめだよ」

魔法使い「むちゃは…だめ」

スッ…

魔法使い「……」

勇者「すー…」zzz

魔法使い「……」

チュッ

勇者「…ん……すー……」ムニャムニャ

魔法使い「えへ……おでこくらいならゆるしてねっ」

魔法使い「……おやすみ、ゆーしゃ」


ガシャンッ


僧侶「…………お茶を…………もってきたんですが………」カランカラン…


魔法使い「あっ…しゅらばのよかんだねっ」

一一一一一一一一一一一

-宿屋・食堂- 夜


「「「いただきまーす」」」

勇者「……頭がガンガンする」ズキズキ

遊び人「勇者ちゃん大丈夫?」

商人「昼からずっと寝ていればそりゃあ頭も痛くなりますよ」

戦士「うめー!」ペカー

勇者「はは…そうだね…」

僧侶「ちょっと…魔法使いちゃん…あのキノコ、後遺症とか大丈夫なんですか…?」ポソポソ…

魔法使い「うん、だいじょーぶっ」ポソポソ…

勇者「でも…僕、宿屋にいつ入ったっけ……」

魔法使い「……たぶん」

僧侶「絶対あれ後遺症じゃないですか!!」ガタン

盗賊「……!?……どうしたの?…落ち着いて…」オロオロ

僧侶「あ…す、すみません…」

勇者「そもそも僕はなんだ……?……僕は…キノコ神だ………」

女勇者「で、みんな何か収穫はあったかい?」

武道家「私は何も無かったわ」

遊び人「私も…。…でも何か違和感を感じるのよね…」

戦士「違和感?何に?」

盗賊「……それは、私も感じた……」

武道家「あんたたちも?そうよね。私も感じたわ」

女勇者「違和感というと?」

武道家「んー…なんていうか、年寄りと若者の反応が違うのよね…。旅の扉の話をした際に…」

戦士「反応が?」

遊び人「うん、若い人に話しかけると本当に知らなかったり、場所や噂しか知らないって事が多いんだけど…お年寄りの人に話しかけると、何かを隠してるような話し方をするの…」

勇者「場所は分かったの!?」

女勇者「あぁ、言ってなかったね。ごめん。いざないの洞窟の位置や旅の扉の存在は早い段階で判明したんだ」

武道家「でも随分昔に旅の扉への道に大きな壁が作られていて行くことができないんだって」

勇者「そっか…なんとか突破できないかな…」

遊び人「うん…その方法を探してたんだけど、見つからなかったよ…」

女勇者「んー…、その違和感とやらが気になるね……」

商人「まぁ、地道に情報収集するしかないですね」

戦士「だなー」

勇者「うん………いつつつつつつつ…」ズキズキ

僧侶「ちょっ…大丈夫ですか?」オロオロ

勇者「だ、大丈夫だよ。でも少し気分が悪いから夜風に当たってくるよ」ガタッ…

魔法使い「わたしもいこーか?」

勇者「大丈夫大丈夫」ハハ…

スタスタ……

僧侶「………」

魔法使い「………」

僧侶「………」ジトー

魔法使い「…み、みないでよぅ…」

-レーベ- 池

勇者「いてて…どんだけ寝てたんだ僕は…」テクテク

勇者「……大きな壁か……。どう越えるかな…」テクテク

勇者「……顔洗おう」

バシャバシャ

勇者「……ふぅ…」

ザッ

?「少しいいかねぇ?」

勇者「へ?」

お婆さん「あんたら…今日街にやってきた子達だろう?見かけない顔だね」

勇者「はい、アリアハンからやってきました。魔王を倒すために旅しているんです」

お婆さん「ほぅ、では勇者様なのかい」

勇者「僕は一応…ですが、妹は紛れもないオルテガの娘、歴とした勇者です。僕は拾い子なので歴とした…とは言えないんですけどね」

お婆さん「ほぉ!あのオルテガ殿の!!………ではあんたたちにはコレを言っても良かろうね」

勇者「?」

お婆さん「旅の扉の所へ行きたいんじゃろう?私はその方法をしっておるよ」

勇者「本当ですか!!!?」ザッ

お婆さん「うむ……あんた、『魔法の玉』の噂…知っておるかね?」

勇者「魔法の…玉…?」

お婆さん「そうじゃ。魔法の玉とは…」

?「婆さん!」

勇者「!!?」ビクッ

お婆さん「おや、爺さん」

お爺さん「何やっとるんだ!もう夜じゃ!家に入れ!」

グイッ

お婆さん「おやおや、せっかちな人だよ全く…」スタスタ…

勇者「ちょっ…ちょっと待ってください!!」

ピタッ

お爺さん「……なんじゃ、お前さん」

勇者「魔法の玉の事…教えてください!!魔法の玉とは何なんですか!?」

お爺さん「……婆さん、話したのか」

お婆さん「てへっ☆」

勇者・ジジィ「」イラッ☆

お爺さん「……帰るぞ婆さん」

スタスタ…

勇者「お、お願いします!!どうしても僕達は向こうの大陸に行かなければならないんです!」ダッ

お爺さん「若者よ」

勇者「…?」ピタッ

お爺さん「今はまだ、教える事はできん。わしはお前さんが何者か知らん。丁寧に自己紹介されても信じる事はできん。お前さんがかつての馬鹿な貴族共と同類では無いと限らん」

勇者「……どういう…」

ガチャッ

お爺さん「…ここが、わしの家じゃ。お前さんが魔法の玉を知りたくば、旅の扉をくぐり抜けたくば、まずはこのドアを開けるが良い」

お爺さん「……そうすれば、わしも真実を託そう」

バタン

勇者「ちょっ……待って下さい!」ダッ

ガチャッ…ガチャッ

勇者「……開かない…」
………………
…………
……

-宿屋・部屋- 夜

勇者「…一ということがあったよ」

僧侶「勇者くんお手柄です!」パアァ

女勇者「でも…その扉を開けないといけない、というのはどういう事だろうね…」

戦士「力を示してみろって事じゃないのか!?私がそんなドアぶっ壊してやるっ!」ワァ

武道家「それだったら私も加勢するけど…本当にそんな問題なのかしら?」

遊び人「私は違うと思うなぁ。それだったら別の形でも力は示せる訳じゃない?」

戦士「うっ…」

遊び人「私は…何か、『扉』っていう点で別の意図を感じるなぁ」

商人「別の…意図?」

遊び人「うん、そのお爺さんは私達を試そうとしてるとは思う。だからこそこれは簡単にはクリアできない問題だと思うよ」

遊び人「お爺さんは『力技』では無い何か…その『扉を開けるまでのプロセス』を私達に課題として叩きつけてきたんだと思う」

勇者「そうか…」

遊び人「私の予想だったら今、その扉を見に行ってる盗賊も……」

ガチャッ

盗賊「……ただいま…」

戦士「あっ、盗賊!どうだった!!?」

盗賊「……だめ。開かなかった…」

遊び人「やっぱりね」フゥ

武道家「なるほどね…」

盗賊「……もともと私は、鍵穴を開けるの好きじゃないし…ごめんね…」

商人「盗賊ちゃんが謝る事じゃありませんよ」

盗賊「……怪盗バコタくらいなら、開けられるかもしれないけど…」

武道家「バコタって今この大陸で盗みを働きまくってるあの大怪盗バコタ?そりゃあんなに有名な怪盗だったらねぇ」

僧侶「でもそんな鍵暴きが苦手な盗賊ちゃんが私は好きですー」ポワー

盗賊「……ありがと…」テレ

戦士「…………それだ」

武道家「え?」

戦士「それだよ!!盗賊!」

盗賊「……どれ?…」アセアセ

戦士「バコタだよ!!私達がバコタをとっ捕まえるんだよ!!」

女勇者「あぁ!」

僧侶「なるほど…!バコタを捕まえれば被害は収まりますし、正義は示せますし、腕も示せます!」

勇者「ここに連れてきて鍵を開けさせる事もできる!」

武道家「確かにそれだったら合点がいくわね…」

戦士「よぅし!それじゃあ皆でバコタを捕まえよう!!」

勇者「そうだね!まずは計画を一…」

商人「……あのー」

僧侶「ん?どうしたの商人ちゃん?」

戦士「なんだ?」

商人「………大変言いにくいんですが…バコタは今アリアハンの地下牢にいますよ」

一同「「「…」」」

一同「「「えっ」」」

商人「最近、私達がアリアハンを出る少し前に捕まって投獄されたらしいです」

女勇者「あっ…!そういえばそうだった…!」

戦士「え…えぇーっ」ヘニョニョ

僧侶「それじゃあ…連れてくるのは無理そうですね…」シュン…

遊び人「また振り出しかぁ」ハァ

勇者「……いや、バコタに会おう」

武道家「えっ?会ってどうすんのよ?」

盗賊「……会っても、どうすることもできないよ……?」

勇者「話を聴くことならできるさ。……せっかく掴みかけた手掛かりだ。限界まで手繰り寄せよう」

僧侶「勇者くん……」

戦士「……そうだな!じゃあアリアハンに一旦戻ってみるか!」

勇者「……そういや一旦戻るのか……あんな別れ方をしたからなんか戻りにくい…」ウゥ

武道家「あはは!我慢しなさい!」バシバシ

勇者「痛い痛い!」

アハハハ…

魔法使い「………」

女勇者「…?どうしたんだい魔法使いちゃん。さっきからやけに静かだけど…」

魔法使い「……んーん」

魔法使い「なんでもないよっ」

女勇者「……?」

勇者「よしみんな、明日はアリアハンだ!」

一同「「「おーっ!!」」」

魔法使い「……」

魔法使い(まほーの……たま……)

………………
…………
……

一一一一一一一一一一一

-街中・老夫婦の家- 早朝


ガチャッ

お婆さん「うぅ…朝は冷えるのう…」

?「あの…すみません」

お婆さん「ん?あんたは…」

魔法使い「…おはよーございますっ。ゆーしゃのなかまの、魔法使いですっ」

お婆さん「あぁ昨日の子の……悪いねぇ、こんな朝早く来てもらってなんだけど扉を開けさせるわけには…」ガチャ

魔法使い「い……いえっ、ちがうんですっ」

お婆さん「?」

魔法使い「わたしは…ちょっと、魔法の玉のことがききたくて…」

お婆さん「……悪いねぇ、それもじいさんに口止めされているから…」

魔法使い「すこしでいいんですっ!」

お婆さん「……」

魔法使い「魔法の玉は……どんな道具なんですか……?」

お婆さん「……」

魔法使い「……魔法の玉は…だれにでもつかえるんですか?」

魔法使い「だれでも魔法をつかえるようになったりしますかっ」

お婆さん「……」

魔法使い「わたしきいたことあるんですっ!魔法をつかえない人でも魔法を使えるようになるどーぐがあるって!」

お婆さん「……」

魔法使い「『魔法の玉』は……」

魔法使い「魔法をつかえないひとに………魔法をつかわせてあげることができますかっ!?」

お婆さん「……」

魔法使い「……っ」

お婆さん「……すまないね…。わたしには何も言えないよ」

魔法使い「………そう…ですか」

魔法使い「……すみませんでしたっ」

タッタッタッ…

お婆さん「……」


………………
…………
……

一一一一一一一一一一一

-道中- 昼

戦士「……なぁ」

武道家「…うん」

遊び人「…どうしたんだろうね…」


魔法使い「めらっ!」

魔物「グギェッ!」

魔物は燃え尽きた!

魔法使い「みんな!いそごうっ!」

盗賊「……あののんびり屋の魔法使いが…」

女勇者「…あんな魔法使いちゃん、初めてみるね」

勇者「ま、魔法使い?そんなに慌てなくても…」

魔法使い「あわててないよっ!いこ!ゆーしゃ!」

商人「どういう風の吹き回しでしょうねぇ」

僧侶「…………」

…………
……

-アリアハン- 昼過ぎ

王様「あぁ…暇じゃ…」

大臣「しりとり」

王様「え?」

大臣「り」

王様「えっ、あ、うん。…えっとね、りんご」

バターーン

魔法使い「おーさまっ!」

王様「うわぅっはいっ!!?」ビクーン!!

魔法使い「ただいまっ!」

王様「えっうん!おかえりっ!」

魔法使い「ばこたのめんかいゆるしてね!さよならっ」

バターーン

王様「」

大臣「…嵐みたいでしたね」

王様「…嫌われてるのかな、わし」

大臣「ごりら」

王様「いきなりの暴言だね」

大臣「ら」

王様「あ、続いてるのね」

-地下牢-


スタスタ…

勇者「王様はなんだって?」

魔法使い「おっけーだったよ!」

武道家「本当かしら…」

兵「牢屋の中といえども極悪人です。心してください」

僧侶「うぅ……」ゴクリ

商人「少し緊張しますね…」

スタスタ…

兵「…こちらです」

バコタ「あぁ?なんだお前ら!!?なに見てんだォラァ!!!!?」

ガシャァーン!!

僧侶「ひぃっ…」ビクゥ

盗賊「……こ、怖い…」ブルブル…

魔法使い「……」

ツカツカツカ…

勇者「ちょっ…魔法使い!?」

バコタ「…っんだテメェ…」

魔法使い「うるさいよっ!!!!!!!!!」ニャー!!

一同「「「!!!!!!!!!!!????」」」ビクーン!!

バコタ「…な…なんだよォラァ……」

魔法使い「…ぴっきんぐ…」ボソッ

一同「「へ?」」

魔法使い「…ぴっきんぐ術をおしえてよばかーっ!!!!!」

ポカポカ!

バコタ「いたっ!ちょっ!お前っ杖ってちょっ!痛い痛いっ!!」

女勇者「ま、魔法使いちゃん!?」アセアセ

戦士「おち、落ち着けよ!」アセアセ

バコタ「やめろよぉーっ!!誰か止めてよぉーっ!!」ヒギイィィィ

商人「あ、泣き出した」

勇者「魔法使い!!やめてあげて!!」

………

魔法使い「ごめんなさい…」

バコタ「もうやだ…」メソメソ…

遊び人「ほらー、泣いちゃったじゃない」

商人「………これが大怪盗バコタ…」

戦士「どうしようもねぇな…」

勇者「魔法使い…焦らなくていいんだからね?」

魔法使い「……うん…」

武道家「でもどうしようかしら…バコタもあんなんなっちゃってるし…情報聞き出せるかな…」

バコタ「もうやだ……しにたい………雲になりたい……」グスッ…グスッ…

遊び人「メンタルよわいね…」

バコタ「こんな小娘達に馬鹿にされるしボコされるし……ナジミの野郎には捕まって特製の鍵奪われるし………出家したい……」グスッ…グスッ…

…………

一同「「………鍵?」」

魔法使い「いま鍵がなんていったのーーっ!!!!!!!!はきなさいっ!!!!!!!」ニャー!!

バコタ「い、イヤァアァアアアアア!!!!!ママァァァァァアアァァアァ!!!!!!!!」

勇者「魔法使いっ!!」

…………
……

一一一一一一一一一一一
-アリアハン・街中- 昼過ぎ


勇者「…一一つまりバコタの話をまとめると」

女勇者「うん、バコタを捕らえたナジミっていう老人が、バコタが開発した何でも開ける事ができる盗賊の鍵を没収して所持してるって事だね」

商人「一一で、その老人がいるのが」

盗賊「……あそこ」

武道家「…ここから西に見えるあの塔ってわけね…」

戦士「……あそこの最上階に住んでるって…どんな物好きだよ…」

僧侶「でもナジミ様って結構有名なお方ですよ?」

勇者「え、そうなの?」

僧侶「はい、大賢者ナジミ。ルビス様の御心に近き人間と言われています」

戦士「そんなえらい奴の塔だったのかアレ…」

遊び人「小さい頃から存在は知ってたけど何なのかは知らなかったね」

勇者「よし、じゃあまずレーベに戻って…」

女勇者「あれ?魔法使いちゃんは?」

勇者「えっ?……本当だ。いない」

盗賊「……さっきまでいたのに…」

商人「?…一体どこに」

タッタッタッ…

魔法使い「おまたせっ」

勇者「魔法使い!どこに行ってたの?」

魔法使い「ちょっと家に聖水をとりにいってたんだっ」ニヘヘ

武道家「聖水?なんでまた」

遊び人「あるに越したことは無いけど…」

魔法使い「じゃ、いこうか!!ナジミの塔っ!」

一同「「え?」」

魔法使い「え?」

魔法使い「行かないの?ナジミの塔…」

勇者「いや、行くけど今からは行かないよ?」

女勇者「一度レーベに戻ってからでも遅くはないだろう?」

魔法使い「だ、だめだよ!まだ日はたかいよっ?いかない手はないよっ」アセアセ

僧侶「………」

戦士「…ま、魔法使い?」

魔法使い「さっきもね、まちのみんなに塔の話をきいてきたんだよっ!」

商人「……魔法使いちゃん…」

魔法使い「あの塔はね、孤島にうかんでるようにみえるけど、じつはね…なんと、ナジミの塔の西にあるどーくつから地下づたいにいけるんだって!」

遊び人「……魔法使い…っ」

魔法使い「でねでね、そこからおしろの地下にも……」

勇者「魔法使いっ!」

魔法使い「」ビクッ

勇者「…どうしたのさ?今日はどうしてそんなに焦ってるの?」

魔法使い「……それはっ…」

女勇者「一回落ち着きなよ……ね?」

戦士「楽天家な魔法使いのキャラじゃねーよー!今から行ったら夜になっちまうぞ?」

商人「危ないですよーっ食べられちゃいますよーっ」ガオー

魔法使い「……」

盗賊「……ゆっくり、いこ…?」

武道家「うんうん。はやる気持ちは皆だけど、焦りは禁物よ」

魔法使い「……」

勇者「大丈夫。焦らなくても……ね?」

魔法使い「………わかった……」

-道中・夕近く-

テクテク…

勇者「もうレーベに着く頃には夜かなぁ」

戦士「おなかすいたーっ」

武道家「早いわねアンタ…」

遊び人「あ、さっきアリアハンでルイーダさんの店に行けばよかったね」

女勇者「あ、そういえばそうだったね」

商人「…ルイーダさんの魚料理が食べたいです…」ジュルリ

戦士「やめろーっ!腹減るからやめろーっ!」ウワァ

武道家「へえ、商人は魚派?私はスープ派だわ」

女勇者「私はサラダ派かな」フフ

戦士「やめろーっ!」

盗賊「……私は山菜料理派だな……」

盗賊「……魔法使いは…………………あれっ…」

僧侶「?…どうしました?…………あっ!!?」

僧侶「みんな!魔法使いちゃんがいませんっ!!」

勇者「えっ!!!!?」

女勇者「なんだって!!?」

遊び人「いつのまに…!?」

戦士「っ…!!珍しく一番後ろを静かに歩いてると思えば……っ!!」

-ナジミの塔西の洞窟-


タッタッタッ…

魔法使い「…」ハァッ…ハァッ…

魔法使い「わかった…」ハァッ…ハァッ…

魔法使い「わかったよ…」ハァッ…ハァッ…

魔法使い「ナジミには…わたしがあってくるっ……!!」ハァッ…ハァッ…

タッタッタッ…


…………
……

今日はここまでー


もう五時間書きっぱなしでつらい
しかし遅筆で申し訳ない

今回はたくさん書き込んでくれてすごく楽しかった!
貼りつくんでこれからも宜しくです!

>>152

なんとありがたい…
本当にレスってありがたいなぁ

頑張ります

-道中・夕方-

タッタッタッ!!!

勇者「…多分魔法使いはナジミの塔に行ったんだ…!!」タッタッタッ

女勇者「…これでアリアハンに戻ってた…とかそういう笑い話であってくれればね」タッタッタッ

商人「あはは、それサイコーです」タッタッタッ

武道家「まぁどっちみち、ただじゃおかないけどね」タッタッタッ

遊び人「無駄足であることを祈るよぅ本当に…」タッタッタッ

戦士「それにしても、なんで魔法使いはあんなに焦ってたんだ!?」タッタッタッ

盗賊「……わからない……」タッタッタッ

僧侶「………」タッタッタッ

僧侶(……私は…分かりますよ…魔法使いちゃん)

僧侶(あなたに相談されていた事や…魔法の玉という言葉……あなたが焦らないはずがありませんからね…)

僧侶(………でも)

僧侶(それが皆に心配をかけていい理由にはなりません…!!)

勇者「……っ」タッタッタッ

勇者「無事でいてくれよ……っ!!」タッタッタッ


…………
……

-ナジミの塔・内部-

魔法使い「めらっ!!」

ボシュアッ!

魔物「グギェエッ!!」

魔物の群れを倒した!

魔法使い「ハァッ…ハァッ…!」タッタッタッ

魔法使い(さっきからすこしずつモンスターが……聖水のこーかがきれたんだ…)タッタッタッ

タッタッタッ…

魔法使い「……あっ…」

ピタッ

魔法使い「日がしずみかけてる…」

魔法使い「……」

ダッ!

魔法使い「……まってて」

魔法使い「まっててね…ゆーしゃ!」

魔物「グギッ」

魔物の群れが現れた!

魔法使い「…んもうっ!」

魔物「キシャアァァァ!!」

魔法使い「めらっ!!」

ボシュアッ!!!


一一一一一一一一一一一
勇者『どうしたのさ…?』
一一一一一一一一一一一

魔物「グギャッ!」

魔物を倒した!

魔物「ガアァァァッ!!」

魔法使い「めらっ!」

一一一一一一一一一一一
勇者『焦らなくても一…』
一一一一一一一一一一一
…一一なにいってるのさ

魔法使い「………っ」ハァッ…ハァッ…

魔物「キシャアァァァ!!」

魔法使い「……っ!!」


…一一なにいってるのさっ!

一一一一一一一一一一一
勇者『まほうつかいはすごいねっ』
一一一一一一一一一一一
…一一いちばん…


…一一いちばんあせってて、いちばんさきにすすみたくて…すすめなくてつらいのは

魔法使い「め」

魔法使い「らぁー一一一一一一一一一一っ!!!!!」

…一一一一ゆーしゃなのにっ

-十年前・アリアハン-

魔法使い(小)『………』トボトボ…

町人A『あの子……見かけない顔ね…』

町人B『あぁ…あの子ね…城内の孤児院に新しく入ってきた子らしいわ…』

町人C『なんでまた……親を魔物に殺されたりとか…?』

町人B『ううん…なんでも……その、邪悪な方の魔法を使えるんだって…。で、親が気味悪がって…』

町人A『あぁ……それは…仕方ないわね』

町人B『ねぇ?魔法を使えるって言っても…邪悪な魔法だったら…』

町人C『たしかに気味悪いわよねぇ。僧侶様の魔法や勇者様の血族ならまだしも…』

町人A『まぁでもお城でちゃんと【矯正】されて邪悪なりにも魔王退治に役に立つようになるんじゃない?』

町人B『お城もそのつもりで引き取ったんだろうしね…早く役に立つようになってほしいわ』

ヒソヒソ…

魔法使い『……』トボトボ

ザッ

?『みかけないかおだ!』

?『かおだ!』

魔法使い『ふぇ?』

勇者(小)『みかけないかおのきみっ!ここはぼくのなわばりだぞ!』

戦士(小)『だぞ!』

魔法使い『……ふぇ?』

町人A『あらやだ……【落ちこぼれ】の方の勇者様だわ……』

町人B『あぁ、【隠し子】?』

町人C『ちょっとやだー!』

クスクス…

魔法使い『……?』

戦士『ばばぁっ…!』ザッ

勇者『せんしっ!だめだよ!』

戦士『でもー…ゆーしゃー…うー…!』

勇者『だいじょーぶ!それよりもまずこいつだ!』

戦士『…そーか!』

勇者『そーだよ!』

魔法使い『……?』

勇者『きみっ!なわばりにはいりたかったらぼくのなかまになるんだっ!』

魔法使い『…なかま?』

勇者『そうだ!』

戦士『だ!』

魔法使い『…わたし』

勇・戦『うぇ?』

魔法使い『…わたし、こわいから、だめだよっ…』

勇者『こわくないよ?』

戦士『ねぇ?』

魔法使い『…わたし、まほーつかうから、こわいから、めっなんだってっ…』

勇・戦『………まほー?』

魔法使い『……うん…』




勇・戦『すっげーっ!』キラキラ

魔法使い『ふぇ』

勇者『すっげーっ!まほーすっげーっ!なにできんの!?』キラキラ

魔法使い『わかんないよぅ…いろいろ』オロオロ

戦士『つえー!いろいろつえー!』ワヒー

魔法使い『えぅ…』

勇者『ぼくもね!まほーつかいたいんだ!』

魔法使い『……ほんとっ…?』

勇者『うん!まほーのこと、おしえてよ!……えーと』

魔法使い『………魔法使い……』

勇者『え?』

魔法使い『わたしのなまえ……魔法使いっていうんだっ…』

戦士『魔法使い!魔法使い!』ピョンピョン

勇者『これからよろしくね!魔法使い!』

魔法使い『……一一一一うんっ!』


…………
……

-アリアハン・街中-

勇者『あ、魔法使い!』

魔法使い『あ、ゆーしゃ!やっ!』

勇者『魔法使いも今から城で魔術訓練?』

魔法使い『うんっ!ゆーしゃもでしょ?いっしょにいこっ』

勇者『そうだね』

テクテク…

勇者『もう僕達も10歳か…旅立ちまでもうすぐだなぁ』

魔法使い『はやいねーっ。わたしもついていくよっ!』

勇者『うむ!共に精進しようぞ!』

魔法使い『わたし【めら】をせんとーようにきたえることができたよっ』

勇者『本当!!?おめでとう!』パァァ

魔法使い『ぶいぶいっ。ゆーしゃもまほーのひとつくらいはやくおぼえなよっ。おるてが様のむすこなんだからっ』

勇者『はは…手厳しいなぁ』

一一一一一一一一一一一

魔術講師『…一一今日はここまでとする』

<ありがとうございましたーっ

ゾロゾロ…

勇者『……』

魔法使い『ゆーしゃっ!かえろっ』

僧侶『勇者くん、帰りますよ』

勇者『……あぁ、うん。そうだね!』

魔術講師『あぁ…勇者は少し残ってくれ』

勇者『……はい』

魔・僧『……?』

一一一一一一一一一一一
-教室の前-

魔法使い『…』ソローリ

『………』ボソボソ

魔法使い『…(なにをはなしてるのかな…)』

バンッ

魔法使い『わわっ』ビクッ

勇者『……っ!』タッタッタッ…

魔法使い『ゆーしゃっ!?』

タッタッタッ…

魔法使い『……いっちゃった…』

魔術講師『誰かいるのか?……魔法使いか』

魔法使い『せんせー…ゆーしゃ、どうしたの?』

魔術講師『………魔法の道を諦めてもらった』

魔法使い『えっ…!?どうしてっ』

魔術講師『…才能のあるお前なら分かるだろう?』

魔法使い『っ……』

魔術講師『……魔法だけが、勇者の道ではないさ…』

魔法使い『………』


…………
……

-アリアハン・勇者の家-

コンコン

勇者母『はいはーい』

ガチャ…

勇者母『どなた……あら、魔法使いちゃん!』

魔法使い『おかーさんこんにちはっ』

勇者母『しばらくみないうちに美人になったわねー!あ、魔術訓練をもう卒業できたんだって?』

魔法使い『え?なんでしってるのっ?』

勇者母『勇者がまるで自分の事のように嬉しそうに何回も話すのよ!おめでとう!』ウフフ

魔法使い『…ゆーしゃ…』

勇者母『でもごめんねー。勇者も女勇者も今いないのよー』

魔法使い『…ゆーしゃはどこにいったかわかる?』

勇者母『ちょっとわからないわね…。本を一杯もって街の外に出て行ったのはチラッと見たけど…』

魔法使い『…ありがとっ!わたしいってみるねっ』ダッ

勇者母『また今度ゆっくりご飯でも食べていってねー!お祝い作っておくからー!』

魔法使い『ありがとーっ』タッタッタッ…


…………

一一一一一一一一一一一


……!……!


テクテク…

魔法使い『いつもゆーしゃがしゅぎょーしてるのは…ここらへんだっけ…』

……!……!

魔法使い『!なんかきこえたっ』

魔法使い『こっちかな……』

テクテク…

魔法使い『あっ』

勇者『…!…!』

魔法使い『ゆーしゃだっ。おーい、ゆ…』ダッ…

勇者『メラッ!!!メラァッ!!!!!』

魔法使い『ーしゃ……』ビクッ…

勇者『ハァッ……ハァッ…!!!!!』ゼェゼェ

勇者『……んでだよ』

勇者『なんで使えないんだよ!!!』

ガンッ!!

魔法使い『!!!』ビクッ

勇者『なんで皆使えるものが使えないんだよ!!なんでこんなに頑張ってるのに使えないんだよッ!!』

ガンッ!!ガンッ!!

魔法使い『…!!(ゆーしゃ、そんなにいわをたたいたら手がっ…!!)』

勇者『なんで強くなれないんだよッ!!!!!なんでこんなにッ……!!!!!』

ガンッガンッ!!

ピタ…

勇者『……なんで…』

魔法使い『……っ』

勇者『……なんで…………本当の息子じゃないんだよぅ……』フルフル…

魔法使い『………!!!!!』


……………

………

勇者『メラッ!!……くそっ……メラッ!!』

魔法使い『……』

魔法使い『(…もうよるになっちゃった…)』

魔法使い『……コホン』

魔法使い『おーいっ!ゆーしゃーっ!どこにいるのーっ!?』

勇者『』ビクッ

テクテク…

魔法使い『あ、ゆーしゃ!もうよるだよっ!おかーさんしんぱいしてたよっ!』

勇者『…やっ。魔法使い。ごめんごめん、散歩してたら眠くなっちゃってさ、こんな時間になっちゃったよ』アハハ

魔法使い『……手がちまみれだよ?』

勇者『えっ…あ、さっき転んじゃってさ!』

魔法使い『……』

ゴソ…

魔法使い『…うごかないでねっ…』

勇者『魔法使いっ!?別に大したことないから大丈夫だよっ!ハンカチが汚れちゃうって…』

魔法使い『いいのっ…よしできたよっ』キュッ

勇者『ごめんね?』

魔法使い『いいってばっ。それよりはやくかえろ?』

勇者『うん……そうだ、魔法使い、魔術訓練卒業おめでとうっ!』

魔法使い『えっ…?』

勇者『ヒャドも覚える事ができたって?街の人たちも皆騒いでたよ!』

勇者『ヒャド使える人なんでルイーダさんの店にもそういないんだから!』

魔法使い『…(なんで)』

一一一一一一一一一一一
勇者母『まるで自分の事みたいに一一…』
一一一一一一一一一一一

勇者『本当にすごいよ魔法使いは!まぁ僕は前から知ってたけどね!』アハハ

魔法使い『……っ(なんでっ)』

勇者『少し前の実技でも……!……!…!…………!…!』

一一一一一一一一一一一
勇者『まほーをつかいたいんだ!』
一一一一一一一一一一一

魔法使い『(なんで…なにもしてあげられないわたしに……やさしくするの……っ!)』

一一一一一一一一一一一



-アリアハン・勇者の家-


ガチャ…


魔法使い『……ゆーしゃ、きたよっ…』

勇者『……魔法使い』ギシッ…

魔法使い『だいじょーぶだよ……ちゃんとべっどにねてて』

勇者『…ごめん』

魔法使い『いいんだよ』

スタスタ…

魔法使い『ゆーしゃ…』ギュ…

勇者『魔法使い……?』

魔法使い『ゆーしゃ…ゆーしゃ…っ…!!!!!』ポロポロ…

勇者『………』

魔法使い『……っ!!』ポロポロ…

勇者『……ごめん、守れなかった。何も、守れなかった』

魔法使い『ちがうっ…ちがうよっ……ゆーしゃはわるくないっ…』ポロポロ…

魔法使い『もう…るびす様なんてしんじないっ…!るびす様なんてだいきらいっ……!』ポロポロ…

勇者『……駄目だよ、魔法使い。ルビス様は悪くない』

勇者『守れなかったのは僕が弱かったからだよ』

勇者『悪いのは僕だ』

魔法使い『………っ!………ちがうっ!ぜったいちがうっ!』ポロポロ

勇者『……魔法使い…』

勇者『約束するから…四年後……旅に出て』

勇者『必ず……全部……終わらせてくるから…』

勇者『だから……』

勇者『そんな悲しい事はいわないで…』

魔法使い『……!!』ポロポロ…

魔法使い『…!!(また…)』ポロポロ…

魔法使い『……っ!!(また、ほかのひとのことばっかりだ……!!)』ポロポロ…

魔法使い『………!!(ゆーしゃ自身のことはぜんぜんかんがえてないんだっ…!!)』ポロポロ…

魔法使い『……っ』ポロポロ…

魔法使い『……(それなら…)』

(それなら……っ!!)


一一一一一一一一一一一
-ナジミの塔-

魔法使い(あのとき、ちかったんだっ…)

魔法使い(ゆーしゃが…わたしにくれたもの…っ)

魔法使い(わたしのみてるせかいが…)

魔法使い(まほーをつかえて、みんながそばにいるせかいが)

魔法使い(どんなにすばらしいか、みせてあげるんだってちかったんだっ!!!!)

魔法使い(もうゆーしゃをおいてけぼりにしないって…ひとりにしないって!!!!!)

タッタッタ…

魔法使い「もうすぐちょーじょーかな…」ハァッ…ハァッ…

魔法使い「もうすこしで…魔法の玉が……」ハァッ…ハァッ…

ガサッ

魔物「グギャアッ!!」

魔物が現れた!

魔法使い「っ!……じゃましないでっ!!」

魔法使い「めらっ!」

ボシュアッ!

魔物「ギギャァッ!!!」

魔物を倒した!

魔法使い「よしっ……たおし…」

魔物「ギャアッ!!!!!!」

ガサァッ

魔法使い「えっ…」

魔法使い(あ…もういっぴきうしろにいたんだ…)

魔法使い(あ、だめ…)

魔法使い(そっちからこうげきされたら…)

魔法使い(塔からおちちゃう)

魔法使い(だめっ)

魔法使い(よけられない)

魔法使い(あ)

魔法使い(だめ)

魔法使い(ゆーしゃ)

魔法使い(ごめん)

「魔法使いぃ!!!!!!!!」

ドンッ

魔法使い「えっ…」

魔法使い(おされた?)

魔法使い(たすかった)

魔法使い(たすけられた?)

魔法使い(だれに?)

勇者「……っ!!」

グラッ

魔法使い「…………ゆーしゃぁっ!!!!!!」

ガシィッ

勇者「ばっ…!」

魔法使い「……っ!!」

魔法使い(ギリギリで…手をつかめた…!)

ギリッ…

ヒュウゥッ

勇者「バカっ!!離せ!お前まで落ちるぞっ!!!」

魔法使い「ばかはゆーしゃだよ……!ぜったい…」

ギリッ…

魔法使い「ぜったい………はなさないっ…!!」

ギリッ…

勇者「魔法使いっ……!!」

タッタッタ!!

女勇者「お義兄ちゃん!魔法使いちゃん!!」

武道家「大丈夫っ!!?」

勇者「みんなっ!!!」

魔法使い「…よかっ…!」ギリッ

ガザッ

魔物「グギャアッ!!」

戦士「!!!魔法使い!!後ろっ!!」

魔法使い「…えっ?」

ドンッ

魔法使い「きゃ…!!」

勇者「う……!!」

ズルッ

僧侶「きゃああぁぁあー一一一一っ!!」

勇・魔「っ……!!」

ヒュウゥ……

ヒュウゥ…

魔法使い(あ…やばい…おちてる)

ギュッ

勇者「……っ!!!!!」ギュゥゥッ

魔法使い(ゆーしゃ…抱きしめてくれてる…わたしがわるいのに…)

魔法使い(わたしがわがままいって…かってにさきばしって…ゆだんして…)

魔法使い(わたしがわるいのに……ゆーしゃは、こんなときも他人のことばっかり…)

一一一一一一一一一一一

勇者『魔法使い、なんだかメラしか使わないね?』

魔法使い『えっ?うん、めらかひゃどしかつかえないんだよぅ、こまったねっ』

一一一一一一一一一一一

魔法使い(……ごめんね、ゆーしゃ。わたしうそついてたんだ)

魔法使い(あたらしい魔法をおぼえて…ゆーしゃをおいてけぼりにしたくなかったんだ)

魔法使い(ごめんね…)

魔法使い(ゆーしゃはうそついてたわたしをきらうかな。あたらしい魔法をおぼえたわたしをきらうかな)

魔法使い(……なんでもいいや)

魔法使い(ゆーしゃがたすかるならなんでもいいっ!!)

魔法使い「ゆーしゃっ」

勇者「…っ!!魔法使いっ!!」

魔法使い「……ごめんね」

勇者「……っ……!?」

魔法使い「……少しだけ」

魔法使い「少しのあいだだけ、わたしをだきしめていてねっ」

勇者「……っ!?……魔法使いっ………」

魔法使い「……」スゥッ…





魔法使い「るーら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

バシュン!!

勇者「………っ!!!?」

シュゥゥゥ…

勇者「………飛んでる……?……魔法使い、お前っ……この魔法っ…」

魔法使い「ごめんね」

勇者「……」

魔法使い「だまっててごめんね…、おぼえちゃって…ごめんね…」

勇者「………ばか」

ギュッ

勇者「……覚えるために頑張ったんだろう?」

魔法使い「……っ!」

勇者「……ありがとう」

勇者「………魔法使いがいてくれて…よかった」

魔法使い「……ゆーしゃっ……」

ギュッ…









塔のテラスみたいな出っ張った部分「ハロー」

ゴンッ

勇・魔「ぎゃんっ」

めちゃくちゃに面白い・・・みんながみんな色んな想いで
勇者を支えて、支えられて、感動してしまった

エロはいらない。マジで完結させてほしい
つか本に纏めてほしいぜ!

魔法使いは一番の賢者候補だぜ!

一一一一一一一一一一一-ナジミの塔・夕方-



魔法使い「…」←正座

勇者「…」←正座

武道家「で、なんか言うことはあるかしら」

魔法使い「…すみませんでしたっ……」

戦士「落ちてくるお前たちを受け止めるのも苦労したんだぞ…」

遊び人「わたっ……私は…グスッ…てっきりもうっ…グスッ……2人とも落ちちゃったかと……!!」グスッ…グスッ…

勇者「あの…」

女勇者「なんだい」

勇者「なんで僕も正座?」

商人「ノリです」

勇者「ノリかー」

盗賊「…魔法使いは、なんであんなに焦ってたの…?」

魔法使い「………それは…」

僧侶「……っ!」

ツカツカツカ

武道家「ちょ、僧侶?」

バッチーン!

一同「「「!!!!!!!!?」」」

魔法使い「………っ…?」ジンジン

戦士「あの温厚な僧侶が…」

商人「人を叩いた…!!!!?」

僧侶「……っ!…魔法使いちゃん…人の為に行動するのは善い事です…!!」フルフル…

僧侶「だけど…!!自分の身も省みない事は悪い事です!!」ポロ…

僧侶「誰も心配しないと思ったんですか!!何のための仲間ですか!!」ポロポロ…

魔法使い「……そーりょっ……」

ギュッ…

僧侶「……無事で良かった…!」ポロポロ…

魔法使い「……そーりょ……ごめんね…」ギュウゥゥ

武道家「……ま、このくらいで勘弁してあげましょうか」

盗賊「……うん…言いたい事は全部言われちゃった……」フフ

女勇者「じゃ、ナジミに会って早いところ帰ろうか」

戦士「丁度上が最上階っぽいから後は楽だな!」

商人「終わらしてご飯食べましょう」

盗賊「……そうしよう…」

勇者「…っ!」←正座


…………
……

-ナジミの塔・最上階への階段下-

女勇者「…この階段の上にナジミが…」

戦士「どんな奴なんだろうな」

僧侶「それはもう…大賢者の風格を身に纏った方だと…」

勇者「…とりあえず行ってみるか」

タッタッタッ…

勇者「……」

おじいちゃん「ぐぅ」zzz

勇者「……」

おじいちゃん「ぐぅ」zzz

勇者「……」

おじいちゃん「ぐぅ」zzz



タッタッタッ…

武道家「ちょっと、どうだったのよ」

勇者「おじいちゃん寝とる」

戦士「えっ」

勇者「どうしよう。ふつうに寝とる」

女勇者「どれ」

タッタッタッ…

おじいちゃん「ぐぅ」zzz

女勇者「……」

おじいちゃん「ぐぅ」zzz


タッタッタッ…

女勇者「ねてる」

勇者「どうしようね」

武道家「まじか」

盗賊「……呼び掛けてから行ってみようよ……」

僧侶「私もそれがいいかと…」

勇者「よし」

勇者「すみませーん」

タッタッタッ…

おじいちゃん「ぐぅ」zzz

タッタッタッ…

勇者「だめ。ねてる」

戦士「ぐっすりか」

遊び人「普通に起こしなさいよ!!」

女勇者「ごめんごめん、ちょっとあまりに拍子抜けだったから…」

勇者「しかし…」

………

おじいちゃん「むにゃ」zzz

勇者「この人が大賢者ナジミ…?」

戦士「なんていうか…隙だらけだな」

おじいちゃん「ふがっ」

一同「っ」ビクン

おじいちゃん「むにゃ………おっぱい」zzz

勇者「勘弁してくれよ…」

おじいちゃん「……ん…」パチ…

女勇者「…あ……!」

おじいちゃん「ん……んー?」グシグシ

女勇者「…」

戦士「…」

武道家「…」

僧侶「…」

盗賊「…」

商人「…」

遊び人「…」

魔法使い「…」

おじいちゃん「…」

おじいちゃん「…おっぱいが…いっぱい」ボソリ

戦士「おい!!コイツ魔物だよな!?魔物だよな!?」シャキン

勇者「斬っちゃだめ…!気持ちはわかるけど斬っちゃだめ…!」

おじいちゃん「なんてのう、よくきたな女勇者よ」

女勇者「……え…!?」

武道家「ちょっと……なんで名前を知って…」

おじいちゃん「わしはナジミ。おぬしらが来る事は夢に見ていたよ。お主らが来た理由は盗賊の鍵じゃろう?」

僧侶「………!?」

盗賊「……凄い…」

ナジミ「ほれ。女勇者よ」

チャリ…

女勇者「えっ、あ、はい!」アタフタ

ナジミ「よくここまで来れたのう。早いところ魔法の玉を手に入れるが善いじゃろう」

武道家「…本物の大賢者なのね…」

ナジミ「そんな大層なものでは無いぞ」ハハハ

ナジミ「わしが予め見ることのできる未来というのは断片的でのう。今日の出来事も鍵を渡すという事以外は分かっておらんかったよ」

戦士「それでも十分すげーよ…」

ナジミ「まぁ試して悪かったのう。レーベの魔法の玉を作っておる爺さんに言って、お前さん達に鍵を探させるように指示を仰いだのはわしじゃ」

魔法使い「なんでそんなことっ…!」

僧侶「魔法使いちゃん…」

ナジミ「まぁ聞け。おぬしらは何故旅の扉が封じられたか知っておるか?」

女勇者「………存じません」

ナジミ「……そうか…では教えよう」

ナジミ「その昔の事だか…アリアハンは戦争大国じゃった」

一同「「「!?」」」

遊び人「うそっ……」

商人「あんな平和な国が…?」

ナジミ「それは今でこその話じゃ。昔は数え切れない兵が旅の扉をくぐり抜け、戦地へと赴いたものじゃ」

ナジミ「それと同時に数え切れない敵国兵が旅の扉をくぐり抜け…略奪を図りに来た」

ナジミ「まぁそんな戦争時代も長くは続かん。アリアハンの王が変わり、色んな協定が結ばれ、戦争は落ち着いたかに見えた」

ナジミ「だが、名誉を狙った愚かな貴族共が独断で人を集め、旅の扉から無数に出でて、勝手に戦争を始めおったのだ」

…一一馬鹿な貴族とも限らん一一…

勇者(そっか…それで、あのお爺さんは…)

武道家「…レーベで感じた違和感ってそのせいだったのね…」

ナジミ「それらを鎮圧した後に、諍いをこれ以上増やさぬ為に旅の扉に屈強な壁を築いた。だから、そこを通る者は厳選する必要があったのじゃよ…。許してちょ」テヘペロ

戦士「」チャキッ

勇者「落ち着いて…」

ナジミ「さぁ…行くが良いオルテガの娘よ……。」

ナジミ「これからの旅路は辛く険しいものになるじゃろうが…」

ナジミ「ルビス様はそなたら八人を見守っておるよ」


………………………。



一同「「「はい?」」」

ナジミ「え?」

戦士「やっぱりボケてるんじゃ…」

女勇者「ナジミ様、私達は9人ですよ」

遊び人「1人仲間はずれとかやめてよ」アハハ…

ナジミ「…何を言うとるんじゃ?おぬしらは……」

武道家「ちょっと…シャレになんないわよ…」

僧侶「やめてくださいナジミ様…不吉ですので…」

魔法使い「ほんとだよっ」

ナジミ「……?」

盗賊「……夢が外れたのかな…」

商人「勇くん、男だからハブですって」

勇者「ハハハ…マジでよして」

ナジミ「おい」ガタッ

商人「へっ?」ビクッ…

勇者「?」

ナジミ「おぬし…誰じゃ」

勇者「……?」

ナジミ「おぬしじゃ。男のお前さんじゃ。おぬし、何者じゃ」

女勇者「ちょ…ちょっと」

ナジミ「おぬしは夢に出てきておらん…わしはおぬしを知らん…!」

遊び人「や…やだぁ…!やめてよ…!」

戦士「おいじいさん!シャレになってねーよ!」

勇者「………?…ぼ、僕はオルテガの息子です…と、言っても拾い子ですが…」

ナジミ「……」

ガタッ

ナジミ「…こんな事は初めてじゃ…どうやらわしも衰えてきとるようじゃの」

勇者「……」

ナジミ「取り乱してわるかったのう……悪いが今日は引き取ってくれんか………なんだか疲れたようじゃ……」

ナジミ「………おぬしら9人の幸運を…祈っておるよ」


…………
……

今日はここまで

なんかもう色々申し訳ないね


毎日更新してくれるのは有難いが無理はするなよ?
面白いんだからさ

うん、無理はしないでほしい
すごく面白い!
本家ドラクエ3よか全然イイ!

レスありがとうございます

>>176
おそれおおすぎる…
本当にありがとうございます

>>192 >>193
ありがとうございます。無理はしない範囲で頑張ります。

一一一一一一一一一一一

-レーベ・老夫婦の家- 夜


女勇者「着いたね…」

戦士「腹へった…早いとこ魔法の玉を手に入れようぜー」

盗賊「……早く終わらせて、ご飯をみんなでたべよう…?」

勇者「そうだね、僕もお腹ペコペコだよ」アハハ

魔法使い「…………」

勇者「…一一。…一一!」アハハ

魔法使い(…ゆーしゃ……)

商人「しかし魔法使いちゃんがあんな凄い移動魔法を覚えてたなんておどろきましたよ」

遊び人「あれのおかげでここまでひとっ飛びだったもんね!」

魔法使い「………」

僧侶「……魔法使いちゃん?」

魔法使い「えっ?あっ、うん、すごいでしょっ」

武道家「うん、なかなかやるじゃない」フフ

魔法使い「えへへっ」

僧侶「……」

勇者「よし、じゃあ僕が行ってくるよ」


…………
……

-老夫婦の家・二階-

お爺さん「……」

ガチャッ…

お爺さん「………」

ギシッ、ギシッ、ギシッ

お爺さん「……来たのう」

ガチャッ

勇者「……こんばんわ」

お爺さん「……いらっしゃい。…待っておったよ」

-レーベ・池-

戦士「よっ…!」

ピッピッピッ…ポチャン

戦士「くそっ…三回か」

遊び人「勇者ちゃん…1人で平気かな…」

女勇者「まぁ、魔法の玉をもらってくるだけさ。大丈夫だよ」

盗賊「……うん…」

武道家「にしても少し長いわね…」

商人「あれ?魔法使いちゃんは?」

遊び人「またいなくなったの!?」

僧侶「あ、いえ。お花を摘みに行ってくるそうです」

武道家「なんだ、良かった」ホッ…

戦士「なんで花なんか…」

商人「トイレの揶揄ですよ」

僧侶「………」

武道家「……ねぇ」

女勇者「どうしたの?」

武道家「今日のナジミ様の言葉、どう思う?」

戦士「……」

遊び人「……」

商人「……」

僧侶「……」

盗賊「……」

女勇者「……どうであれ」

女勇者「私達がお義兄ちゃんの味方である事は変わりないよ」

戦士「…そうだな」

武道家「…そうね」

僧侶「………」

僧侶(…魔法使いちゃん……)

…………
……

-老夫婦の家-

お爺さん「…ナジミ様からもう全て聞いておるじゃろう」

勇者「…はい」

お爺さん「試してすまなかった。お前さん達ならこの魔法の玉を託せそうじゃ」ゴソ…

勇者「…」

お爺さん「海の向こうでは、今もアリアハンからの勇者を今か今かと待ち受けておるよ」

お爺さん「ホレ…魔法の玉じゃ。受け取ってくれ」

勇者「……」

お爺さん「……?どうかしたのか?」

勇者「……実は」

お爺さん「?」

勇者「実は、ナジミ様に…ナジミ様の予知夢に僕は出てこなかったらしいんです」

お爺さん「…ほう」

勇者「他の仲間達は、みんな予知夢に出てきているのに」

お爺さん「……」

-お爺さんの部屋・ドアの外-

コソッ…

魔法使い「………(ゆーしゃ…!)」

勇者「だから……これは…僕が受け取っていいのかな…って……」

お爺さん「………」

勇者「……もしかしたら僕は」

勇者「………いえ、すみません」

お爺さん「………」

お爺さん「…お前さんはここで歩みを止めるのかね?」

勇者「…………」

勇者「……止めません」

勇者「誰がなんて言ったって」

勇者「絶対止めてやるもんかっ」

勇者「皆を守るって決めたんだ」

勇者「誰になんといわれようと!

勇者「どんなに弱くて、魔法が使えなくても!」

勇者「オルテガの本当の息子じゃなくても!」

勇者「僕は、僕に出来ることをやりたいんだ!!」

魔法使い「……一一一一一一一一一一一一っ!!!!!」


お爺さん「……」

勇者「……」

勇者「…………すみません、取り乱しちゃって」

お爺さん「…十分じゃ」

勇者「えっ?」

お爺さん「お前さんなら、この玉を手にするのに十分じゃ」

スッ…

お爺さん「宜しく、頼みもうしたぞ。勇者殿」

勇者「………」

勇者「……一一はい」

勇者は魔法の玉を手に入れた!!

魔法使い「……」


…………
……

一一一一一一一一一一一

翌日


-老夫婦の家・玄関- 早朝


ガチャ

お婆さん「…水汲みも年々辛くなってきたのぉ…」

?「あ、あのっ…!」

お婆さん「ん…?…あぁ、なんじゃまたお前さんか」

魔法使い「あのっ、すみません。おじーさんはいますかっ」

お婆さん「すまないねぇ、まだ眠っておるんじゃ」

魔法使い「じゃ、じゃあおばーさんでもいーんですっ」

お婆さん「?わたしで良いなら聴くがどうしたんじゃ?」

魔法使い「あ…あのっ、魔法をつかえないひとでも…魔法をつかえるようになるどーぐのこと…なにかごぞんじないですかっ」

お婆さん「その事か…」

魔法使い「ちょっとしたことでもいーんですっ。うわさとか、きいたはなしとかっ…なにかごぞんじないですかっ」

お婆さん「……」

魔法使い「……っ」

お婆さん「すまないねぇ。昨日と同じような答えですまないが、じいさんもわたしもそのような道具の話を聴いた事はないよ」

魔法使い「……っ」

魔法使い「……」

魔法使い「……そうですか…」

お婆さん「すまないね…。わたしは池で水汲みしなきゃならん。あんたも来てその悲しそうな顔を水で洗い流しなさい」

魔法使い「……はい…」

テクテク…

魔法使い「………」

お婆さん「………あの坊やのためかい?」

魔法使い「………」

お婆さん「……ラブなのかい」

魔法使い「………らぶ」

魔法使い「………うぅん、ちょっと…ちがうかな」

お婆さん「そうかの?」

魔法使い「ゆーしゃは……なんていうか、…あやういっていうか…もどかしいっていうか…」

魔法使い「……わたしが、ずるいっていうか」

お婆さん「……ずるい?」

魔法使い「…ん…、…よくわかんないや」

お婆さん「…ほぉ」


-街中・池-

チャプ…

お婆さん「冷たくて気持ちがいいね」

ピチャ…

魔法使い「……ほんとだ」

お婆さん「……あの子と何かあったのかね」

魔法使い「…」

お婆さん「……まぁ無理に話さなくてもいいがのう」フフ

チャプ…

魔法使い「…わたしが」

お婆さん「ん?」

魔法使い「…わたしが見てるせかいを、ゆーしゃに見せてあげたい」

お婆さん「ほぉ」

魔法使い「…ゆーしゃといっしょのせかいに居たい、いっしょにわらいたい…」フルフル

お婆さん「……」

魔法使い「…『ゆーしゃがかわいそう』なんて…おもっちゃうじふんを消したい…っ!!」ポロポロ

お婆さん「……」

魔法使い「……っ」ポロポロ

お婆さん「……」

お婆さん「ホラ、顔でも洗いなさい」

魔法使い「……」グスッ

お婆さん「この池で顔を洗うとね、とびきり美人になってしまうんじゃよ」

魔法使い「……」

魔法使い「……うん」

バシャバシャ

魔法使い「……ぷぁっ……」

お婆さん「ホレ、この手拭いで顔を拭くんじゃ」ホイ

魔法使い「……ありがとうございます…」

フキフキ

魔法使い「……ふぅ…」

お婆さん「……すっきりしたかね?」

魔法使い「……うん」

お婆さん「じゃあ水面で自分の顔をみてごらん」

魔法使い「えっ…うん」

お婆さん「…ホラ」

魔法使い「………」

お婆さん「泣き顔よりとびきり美人な顔が映ったろう」フフ

魔法使い「……ぷっ…」

お婆さん「ふふっ」

魔法使い「あははっ!……ほんとだねっ」

お婆さん「当たり前じゃよ。六十年、毎朝わたしが顔を洗っておる池じゃ」フフン

魔法使い「あはははっ!なにそれーっ」

お婆さん「ふふ…」

魔法使い「あはは…」

お婆さん「実は、これも魔法なんじゃよ」

魔法使い「えっ…?」

お婆さん「うちのじいさんみたいな夢見がちな魔術研究者に六十年も付き添っていればね、分かる事もたくさんあるのさ」

お婆さん「毎朝何気なく交わす挨拶、何気ない一言、毎日通う池」

魔法使い「……」

お婆さん「気付けば、魔法なんてどこにでも溢れておったよ」

魔法使い「……」

お婆さん「魔法は、色んな魔法があるからね」

お婆さん「何があったかはわたしには分からんが……」

お婆さん「みんな、同じ世界を見る事はできるのさ」

お婆さん「あの子も、あんたもね」

魔法使い「………うんっ」

魔法使い「ありがとう、おばーちゃんっ」

お婆さん「ふふふ…こちらこそ老人の小言につき合ってくれてありがとうねえ」

魔法使い「うぅん!たのしかった!……わたし、いくね!がんばってみるよっ」

お婆さん「うむ、いってらっしゃい」

魔法使い「じゃあまたねっ」

タタッ

お婆さん「最後に一つだけ」

魔法使い「んぇ?」ピタッ

お婆さん「ラブには色んな形がある」

お婆さん「お前さんのそれも、ラブじゃろうよ」

魔法使い「……」

お婆さん「……そして覚えておくといい」

お婆さん「『ラブ』は一番強い魔法なんじゃよ」パチッ☆

魔法使い「……ふへへ」

お婆さん「……ふふふ」

ダッ

魔法使い「ありがとうおばーちゃん!でもうぃんくはやめたほうがいいよっ!むりがある!」タッタッタッ

お婆さん「ひどっ」

タッタッタッ…

お婆さん「……ふふ、わたしの若い頃を思い出すのう」

?「あんなに美人だったら良かったんじゃがな」

お婆さん「おや?いつからいたんだい、じいさん」

ザッ…

お爺さん「割と前からじゃ…よくもあんなこっぱずかしいセリフを連ねる事ができるのう…年考えろ」

お婆さん「ふふっ、女はいつまで経っても心は女の子なんじゃよ」

お爺さん「あぁそうかい…」

………………
…………
……

-いざないの洞窟-

勇者「やぁっ!」

ズバッ

戦士「やぁ一一っ…」

ずばーん

魔物「ギャアッ」

魔物の群れを倒した!

武道家「ちょっと戦士ー、やる気出しなさいよー」

商人「どうしたんですか戦士ちゃん、いきなりそんなヘロヘロになっちゃって」

戦士「……だってよ」

戦士「魔法の玉っていうからどういうもんか気になるじゃん?」

戦士「で、やっとの事で手に入れて使ってみて…するとどうだ」

戦士「爆薬だよ!壁爆破させるための爆薬だよ!爆薬かよっ!!」キィーッ!

僧侶「そ…それは」アハハ…

盗賊「……言わない約束…」

魔法使い「そんなこともないよっ?」

戦士「えっ?」

魔法使い「あのかべはとくしゅな魔法でつくられてたからねっ。あの魔法の玉の内部魔原子と、あるいっていのすぴーどでゆうごうさせないとえーてるはかいねんしょうがおきないこうぞうになってたんだよっ!」

戦士「ようするに魔法って事か」

魔法使い「そーだよっ」

武道家「…魔法使い、調子取り戻したみたいね」コソッ

勇者「そうだね。良かったよ」コソッ

僧侶「……」

タッタッタッ…

僧侶「……魔法使いちゃん?」

魔法使い「ぇ?なに?そーりょ」

僧侶「……ゆっくり」

魔法使い「……」

僧侶「ゆっくり、みんなで、支えていきましょう」ニコッ

魔法使い「……うん」

魔法使い「…しんぱいかけてごめんね、そーりょ」

僧侶「ふふっ」ニコッ

魔法使い「だいすきだよーっ!うりゃーっ!」ガバァッ

ダキッ

僧侶「こらっ…んもう」フフフ

魔法使い「えへへ」ギュゥゥ

盗賊「……よかったよかった……」ナデナデ

魔法使い「うおぉ、なでなでだっ。もっとしてー」ニャー

勇者「………ははっ」

勇者(元気出たみたいで……本当に良かった)

…………
……

一一一一一一一一一一一

女勇者「……やっと着いたね」

遊び人「……ここが」



-旅の扉-

勇者「…一一旅の扉か」

武道家「すごいわね…泉みたいなのが渦巻いてる…」

商人「ここから別の大陸に行けるんですね…どういう構造なんでしょうか」

戦士「ようするに魔法って事だ」

商人「この脳筋…」

僧侶「…少し怖いですね…」

盗賊「……きっと、大丈夫…」

勇者「…一一みんな」

一同「「?」」

勇者「ここから先は、違う大陸へと続いてる」

勇者「もう簡単に、旅からは戻れないと思う」

一同「「………」」

勇者「…一一みんなが、引き返すなら、今しか一一…」


戦士「勇者、おっさきーっ!!」

勇者「えっ」

バッ

スゥゥ…

勇者「ちょっ、戦士っ一一…」

商人「御託はいらないんですよ!勇くんのあほっ!」

バッ

スゥゥ…

勇者「商人!?」

武道家「私たちが引き返すとでも思ってんの!」

バッ

スゥゥ…

僧侶「もう私たち、覚悟はできているんですからねっ!」

バッ

スゥゥ…

盗賊「……無駄だよ……」

バッ

スゥゥ…


勇者「……みんな…!」

遊び人「……私達は、死なないよ」

勇者「……っ!」

遊び人「皆もいるし……なにより、勇者ちゃんがいるんだからっ」

バッ

スゥゥ…

勇者「…………」

女勇者「……ふふ…やれやれって感じだね」

女勇者「……腹を括りなよ、お義兄ちゃん」

女勇者「私達はもう立ち止まれないんだ。それなら、皆で足並みを揃えて歩いてこうじゃないか」

タッタッタッ…

勇者「女勇者っ…」

ピタッ…

女勇者「……しかし」

勇者「?」

女勇者「皆、お義兄ちゃんの事を理解してるんだね」

女勇者「なんだかんだで…お義兄ちゃん1人では、引き返さないんだ」クスッ

バッ

スゥゥ…

勇者「……」

勇者「……みんな」

ザッ…

魔法使い「…ゆーしゃ」

勇者「……魔法使い」

魔法使い「……わたしたち…わがままかもしれないけど……」

魔法使い「……それでも」

魔法使い「ゆーしゃと、ゆーしゃといっしょのせかいをみていたいの…」

魔法使い「みんなで…みんなであるいていきたいのっ!」

勇者「………」

魔法使い「…だめっ…?」

勇者「………」

魔法使い「………」

勇者「ごめん、魔法使い」

魔法使い「………っ」

スッ…

勇者「くよくよしていて……ごめん」

勇者「……行こう」

勇者「行こう、一緒に」

魔法使い「ゆーしゃ…!」

勇者「ホラ、手を…」

魔法使い「……うん」

ドクン

…一一一一あれっ

一一一一一一一一一一一

勇者『これからよろしくねっ!魔法使いっ!』

一一一一一一一一一一一

勇者「魔法使い?」

魔法使い「う、うん」

魔法使い(……)

魔法使い(ゆーしゃの手…こんなにおーきかったっけ…)

ギュ

ドクン

魔法使い(…そーいえば)

一一一一一一一一一一一

勇者『………っ!』ギュゥゥ

一一一一一一一一一一一

ドクン

魔法使い(なじみの塔のとき…わたしをだきしめてまもってくれたときのゆーしゃのむね……)

魔法使い(むかしより…ひろくなってた……)

ドクン

…一一一あ

魔法使い(そうか)

一一一一一一一一一一一

魔法使い『ゆーしゃといっしょのせかいをみていたいっ…』ポロポロ…

一一一一一一一一一一一

魔法使い(ばかだ…わたし)

一一一一一一一一一一一

お婆さん『気付けば、魔法なんてどこにでも溢れておったよ』

一一一一一一一一一一一

…一一一一とっくに


魔法使い(…おばーちゃん)

一一一一一一一一一一一

お婆さん『お前さんのそれも一一一一…』

一一一一一一一一一一一

魔法使い(ほんとだね)

ギュ…

勇者「行こう!魔法使い」

魔法使い「……」

…一一一一一一わたし

魔法使い「……うんっ!」

…一一一一一一わたし、もうとっくに…

一一一一一一一一一一一

…一一『ラブ』は一番強い魔法なんじゃよ一一…

一一一一一一一一一一一






魔法使い(わたし、もうとっくに、こてんぱんにされてたみたい)





…一一一一その日、勇者一行がアリアハンの大陸から旅立った一一一一…

つづく

第一章 -完-

今日はおしまひ

やっとアリアハンの大陸から出ることができたよ遅すぎワロンロン

引き続き頑張りますので見ていただけてる方がいらっしゃれば、どうかよろしくです。

一一一一一一一一一一一


?『……ぱぱ……ぱぱ……!』

?『……なんで…なんでわたしをおいてったの……』

?『……やだよぉ……』

?『……おいてかないで……!』

ガチャ…

?『……』

?『……』

?『……だれ……?』

?『……』

ギュ…

?『……』

?『……わたしを……こわがらないの…?』

?『……わたしといっしょに…ないてくれるの…?』

?『……』

?『……いいこだね…』

?『……』

?『……あなた……おなまえは……?』


一一一一一一一一一一一

一一一一一一一一……


チュンチュン…


盗賊「……………ん」モゾッ…

盗賊「…………」

盗賊「…………夢」

盗賊(……懐かしい夢だったな……疲れてたからかな…)

ガヤガヤ…

盗賊「………」

盗賊「……賑やか…」

盗賊(……そっか…)

ムクッ…

スタスタ…

盗賊(……そうだったね…)

ピタッ…

盗賊(……もうアリアハンの大陸じゃないんだ…)

窓< ガチャッ…

盗賊(……たどり着いたんだ…)

パアァッ……



盗賊「……ロマリア、に……」



-娯楽大国・ロマリア-

ガヤガヤ…

盗賊「……」

盗賊(……凄く、活気のある所だなぁ…)

盗賊(……こうして、窓から見下ろすだけでも、人が多いのがわかる……)

盗賊(……皆、楽しそう…)

盗賊「…………」

盗賊「……良い、街……」

コンコン…

盗賊「……はい…」

ガチャッ

勇者「や、おはよう盗賊」

盗賊「………」

勇者「皆疲れたのかまだ起きなくて困ってるんだよー。今日は王様に謁見しなきゃなのに」タハハ…

盗賊「………」

勇者「?盗賊?どうし…」

ギュッ

盗賊「……おはよ、勇者…」

勇者「…~!!…わぷっ!?と、盗賊!いい加減いきなり抱き付く癖は治してってばっ!!」

盗賊「……勇者が、可愛いのが、いけないんだよ…」

勇者「男に可愛いはやめてよ……全然褒め言葉じゃないんだから」

盗賊「……うりうり…」ナデナデ

勇者「ちょっと…もうやめてって…」

ペシッ

勇者「いたっ」

盗賊「……?…」

勇者「ま…魔法使いもやめてよ」

魔法使い「んもー、とーぞくおこして食堂ではなしあいをするんでしょっ?でれでれしないのっ!」

盗賊「……魔法使いも、おはよう…」

魔法使い「とーぞくっ!おはよっ」ニヘヘッ

魔法使い「かおをあらったら食堂にきてねっ。それじゃゆーしゃ、いこっ」

勇者「うん、そうだね。じゃあ盗賊、また後で」

魔法使い「といっても、おきてるの三人だけだけどねぇ」

勇者「あはは、でも魔法使いが早く起きるのは珍しいよね」

魔法使い「えー、そんなことないよぅ?」

アハハ…

盗賊「……」

盗賊(……なんだか魔法使い、少し変わったかな…)

盗賊(……少しだけ…しっかりした気が…)

盗賊「……」

盗賊「……よきかな、よきかな…」

パタン

-食堂- 朝

テクテク…

戦士「おはうぇー…」

勇者「おはよう戦士」

魔法使い「おはよっ」

商人「おはようございます。やっぱり最後は戦士ちゃんでしたか」

武道家「戦士、あんたいい加減朝弱いのなおしなさいよ」

戦士「やりたくてやってるわけじゃねー…ふぁ…」

女勇者「だめだねこりゃ…」

コトッ

遊び人「はい、ハニートースト頼んどいたよ」

戦士「食べます!」シャキン

僧侶「ザメハより効果ありますねコレ」

戦士「ゆーひゃ、ひょうはろーゆーよれいらの?」モグモグ

遊び人「コラ!飲み込んでから喋りなさい」ペチン

戦士「まうっ」

ゴクン

戦士「んはっ、勇者。今日はどうゆう予定なの?」

勇者「うん、今日はまず王様に謁見しようと思ってさ」

戦士「あー、そっか。各国滞在する時はその国の王様に挨拶しなきゃならないんだっけ」

女勇者「魔物から受けた被害状況も知りたいしね。いろんな情報も欲しいところさ」

商人「………で、謁見した後は?」ウズウズ

遊び人「?なにそわそわしてるの?」

商人「いえ、そのう」モジモジ

勇者「ははは、大丈夫だよ商人。その後は各自自由行動にするから市場とか道具屋には自由に行っていいよ」

商人「マジですか!うおー、マジですか!」キラキラピョンピョン

魔法使い(…じ、じゆーこーどー……っ……!!)

僧侶「たしかにここはアリアハンよりお店が賑やかですから商人ちゃんは気になってしょうがないですよね」ウフフ

商人「ですです!」フンスフンス

遊び人「私もちょっと食材とか見て回りたいかな」

女勇者「まぁはしゃぐのは謁見してからだよ。まずはこの国の状況を聞いてからだ」フフ

武道家「そうね。…でもやっぱり久々のショッピングも楽しみだわ」テヘヘ

盗賊「……」ボー

勇者「…盗賊?どうかした?」

盗賊「……ううん…なんでもない…」

遊び人「あ、勇者ちゃん」

勇者「ん?なに?」

遊び人「あの、自由行動の時なんだけどさ」

魔法使い「っ!」

勇者「うん、あ、お金?」

遊び人「違う違うっ!……自由行動の時…さ、もし良かったら…あのぅ」

勇者「?」

遊び人「一緒n」

魔法使い「ゆーしゃっ!」ガタッ!!!

勇・遊「「!!!!!?」」ビクゥッ!

勇者「ど、どうしたの?魔法使い?」

魔法使い「あ、あのねっ。きょうはそのっ、おさんぽ日和だとおもうんだよ、わたしはっ」アセアセ

勇者「?うん、そうだねぇ」

魔法使い「だ、だからねっあのっ」

遊び人「ゆ、勇者ちゃんなんか食べたいものある!?」アセアセ

魔法使い「!?」

勇者「へっ?いや、特には…」

魔法使い「ゆーしゃっ、そういえばロマリアは娯楽もすごくさかんらしいよっ!」アセアセ

遊び人「!!?」ムムッ

勇者「あぁ、宿の主人もそういってたね」

魔法使い「だからs」

遊び人「遊びたいな!私すごく遊びたいな!」アセアセ

魔法使い「っ!わ、わたしも!」ムムム!

遊び人「だから勇者ちゃん!」

魔法使い「ゆーしゃっ!」

遊・魔「「できればわたしと一一…!!!」」

勇者「ははは、そんなに楽しみなの?じゃあ2人で行っておいでよ」

遊・魔「「 」」

勇者「僕も行きたいけど用事あるんだよなー。後でどんな街だったか聴かせてよ!」

遊び人「あ…いやその……はい」ショボボン

魔法使い「…ぜんしょいたしますよぅ……」ショボリンコ

商人(……魔法使いちゃん…なんだか変わりましたね…にしても勇くんがアホで良かったです)ズズ…

盗賊「………」

戦士「うめー!」ペカー


…………
……



一一一一一一一一一一一

一一一一一一一一一一一

-ロマリア・宿屋外-

商人「ん、あっちに見えるのがロマリア城ですね」

僧侶「わぁ…改めて見るとロマリア城も大きいんですねぇ…」

勇者「僕たち、ほぼアリアハンかレーベしか行ったことなかったからかな、他の城ってなんだか新鮮だね」

女勇者「でも心なしかちょっとロマリア城の方が華やかな気がするよ」

戦士「早いとこすましちゃおーぜ!」

勇者「そだね、行こうか」

町人「ん?おいあんたら」

勇者「はい?」

町人「あんたら、よその国の人達なのか?城にでも行くのかい?」

女勇者「あ、はい。アリアハンから来ました。今から王様に挨拶しに行こうと思いまして」

町人「アリアハンからか!!そりゃまたとんだ長旅じゃねぇか!」

武道家「いやはは…(旅の扉で来たって話はしない方が良いのかしら…)」

町人「じゃあ良いことを教えてやるよ」

勇者「良いこと?」

町人「この国の王様はお調子者だ。気をつけな」

一同「「?」」

一一一一一一一一一一一

-ロマリア城前-

遊び人「さっきの人の話どういう事だろうね?」

戦士「なぁ?お調子者ってそんなに気をつける事か?」

勇者「まぁ何はともあれ行ってみようよ」

テクテク…

城門兵「おい」

ジャキッ

城門兵「そこの集団止まれ。通行証や書状は何かあるか?」

勇者「すみません。アリアハンから参りました、勇者一行です。書状はこちらです。是非ロマリア王に謁見させて頂きたく一一一一…」

城門兵「あ、失礼致しました!勇者殿であられましたか!」ジャキッ

勇者「いえいえ、そんな…」

城門兵「先ほどの無礼をお許しください!勇者殿とはつゆ知らず…いや良く見れば精悍で屈強そうなお方だ!」

勇者「え…」

城門兵「何卒、何卒ご勘弁を!わたくし汚い豚畜生めなので…デヘデヘ」サスサス

戦士「おいなんかもうすでにおかしいぞ大丈夫かこれ」

一一一一一一一一一一一


城兵「勇者様のお通りだー!」

城兵「開門!!かいもーん!!!」

城兵「王様の元にお通ししろーっ!!」

城兵「出迎えだー!!」

城兵「歌だ!!歌を歌え!!」

城兵「寝そべってカーペット代わりになるんだ!!」

城兵「花だ!!花を撒くんだ!!」

城兵「キャーッ!!勇者様がたステキーッ!!」

戦士「うっるせーよ!!お前ら普通にしてろよ!!見ろよ!勇者のシャイモードが発動しちゃったよ俯いちゃったよバカ!!」

勇者「/////」カァァァァ…!!

一一一一一一一一一一一


-ロマリア城・王の間-

ロマリア城「よくぞきた!アリアハンの勇者よ!」

勇者「お初にお目にかかります。勇者オルテガの息子、勇者であります」

女勇者「その妹、勇者オルテガの娘、女勇者であります。彼女たちは同じアリアハンから立ち上がった同士達でございます」

ロマリア城「よい、そんなに堅くなるでない。勇者オルテガの噂は我らも聞き及んでおるぞよ」

ロマリア王「…一一ん?そなた、オルテガの娘と言ったか?」

女勇者「はい。何か?」

ロマリア王「うむ、いや書状には勇者はオルテガの息子とだけしか書かれとらんが…」

女勇者「はい。うちのアリアハンの王の書き忘れです」

ロマリア王「えっ」

女勇者「書き忘れです」

ロマリア王「あ…うんごめんなんだか怖いねキミ」

ロマリア王「……。…。………。」ペラペラ

勇者「……。…………。」ペラペラ



武道家(なんだか普通の王様ね)ヒソヒソ

魔法使い(そうだねっ。べつにおちょーしものってわけでもなさそうだね)ヒソヒソ

僧侶(噂は当てになりませんからね)ヒソヒソ



女勇者「それでは…現在進行している明確な魔物からの被害は無い、と」

ロマリア王「うむ」

勇者「そうですか…お話ありがとうございます。2、3日ほどロマリアに滞在させていただきます」

ロマリア王「あいわかった」

勇者「それでは、僕達は失礼致します」

女勇者「お話ありがとうございました」

ロマリア王「…」

スタスタ…

ロマリア王「……」

スタスタ…

ロマリア王「……」

スタスタ…


ガタッ!!!!

ロマリア王「ちょ一一っとスト一一一一ップ!!!!!!!!!」

勇者「へっ!!?」ビクゥッ

ロマリア王「……」

勇者「……どうかされましたか?」

ロマリア王「…まだ、旅を続けるつもりか?」

勇者「え?あ、はい。それはもう」

ロマリア王「……………………………ならば頼みがある」

女勇者「頼み?」

ロマリア王「………じつは、ワシの金の冠が盗賊団に奪われたのだ」

勇者「………はぁ」

ロマリア王「……」

ロマリア王「……取り返してきて」

勇者「えっ」

女勇者「えっ」

ロマリア王「…取り返してきてくれぬか!?頼む!!」

ロマリア王「由緒ある冠なんじゃ!あれを盗られたと知れたらワシの面目がたたんのじゃ!!」

商人「……え」

遊び人「えぇー…」

戦士「なんか話がおかしくなってきたぞ」

女勇者「お、お言葉ですがロマリア王、それは城内騎士団や巡回隊、自警団などに命ずればよいかと……」

ロマリア王「……」

勇者「……」

ロマリア王「………もん」

勇者「えっ?」

ロマリア王「………らんもん」

ロマリア王「別にワシ、お主らを勇者だと認めておらんもん」

……………。

勇者一行(((え)))

王妃(え)

大臣(え)

兵((え))


((((えぇーっ…))))ガビーン

ロマリア王「でも?別に?金の冠もってきてもらえれば?考え変わるかも?みたいな?」

商人(訂正しましょう)ヒソヒソ

魔法使い(だね)ヒソヒソ

僧侶(噂は良く当たりますね)ヒソヒソ

戦士(…このオヤジ)

遊び人(……とんだ)

勇者・女勇者((……とんだお調子者だ……))

ロマリア王「で!とにかくだよ!やるのかやらんのかどっちなんじゃ!」

勇者「いや、あの…」

女勇者「もし行く先で盗賊団に遭遇する事があれば、取り戻しておきますね!」ニッコー

勇者(うおぉ…女勇者の営業スマイルだ…)

女勇者「では失礼します」

スタスタ…

ロマリア王「ちょっ…まっ、まちなさいよーまちなさいよーきみたちったらー!」

スタスタ…

勇者(…女勇者)ヒソヒソ

女勇者(ここは一先ず帰ろうお義兄ちゃん。盗賊退治するかはまた皆できめよう。ここで返事しちゃうと後々面倒くさいよ)ヒソヒソ

ロマリア王「待ってくれ!お願いじゃよ!」

盗賊(………)

スタスタ…

ロマリア王「むぅ…っ!」

大臣「お抑え下さい…無理な懇願をしているのは王の方ですぞ」

ロマリア王「わかっておる!……じゃが…!」

バッ

ロマリア王「なんとか、なんとか取り戻してはくれぬか!?」

ロマリア王「お願いじゃ…!お主たちなら勝てるんじゃ!」

ロマリア王「あの」

ロマリア王「…一一あの盗賊王カンダタに!!!」

スタスタ…

ピタッ…

勇者「?」

女勇者「……?どうしたんだい?」

戦士「いきなり立ち止まって」

僧侶「…どうしたんですか?盗賊ちゃん」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……パパ?…」

今日はおしまいです

一一一一一一一一一一一

-ロマリア・街中-

テクテク…

盗賊「………」

勇者「……盗賊、どうしちゃったんだろう」

女勇者「……さっきのって、どういう事だろうね」

商人「うーん…」

武道家「深く詮索はしない方がいいのかもね」

ピタリ

クルッ…

盗賊「……みんな、ごめんね……」

勇者「えっ?」

盗賊「……なんか、私、聞き間違えちゃったみたい…」

僧侶「聞き間違え?」

盗賊「……うん…」コクリ

盗賊「……それよりも、自由行動を、するんじゃないの…?」

商人「あ、そうでした!」ハッ

女勇者「謁見も早く終わった事だしね。みんな、羽でも伸ばそうか」

勇者「よし、じゃあ各自解散!!」

一同「「「おー一一っ!」」」ワァッ

盗賊「………。」

一一一一一一一一一一一

-ロマリア・市場-

ガヤガヤ…

僧侶「わぁ一一っ…賑やかですねぇ」キラキラ

商人「ですね!ですね!」キラキラ

僧侶「アリアハンにも市場はありますが…こんなに賑やかではないですよね」

商人「それもそうです。アリアハンの大陸はアリアハンとレーベくらいしか街と呼べる街がありませんから人口は少ないですが、この大陸は数多くの街が存在するので人口が多いのです」

僧侶「ほー」

商人「同時にその街の中でもカザーブのような山岳地帯ではなく交通の便の良い平野に位置しており、貿易のしやすい海の近くでもあり、イシスなどのオアシスに依存している砂漠地帯国では大量には育てにくく保存もし難い農作物の問題も全く無いのがこのロマリアです。そりゃ栄えますよね!」フンスフンス!!

僧侶「なるほどですねぇ」

僧侶(ふふ…商人ちゃん嬉しそう。猫みたい)クスクス

商人「わぁわぁ!」ニャン

僧侶「うふふ」クスクス

ガヤガヤ…

僧侶「ん…?あれ、勇者くんじゃないですか?」

商人「あ、本当ですね!」

商人「おーいっ!!勇く一一一一ん!!」ブンブン

勇者「……。……。」ペラペラ

店主「…。………。」ペラペラ

僧侶「気付きませんね…」

商人「まぁこの人の多さじゃあ仕方ありませんね」

勇者「……。……。」ペラペラ

スタスタ…

商人「あっ、行っちゃいました」

僧侶「せっかく一緒にお店を見てまわろうと思ったのに…何の用だったんでしょうね」

商人「何の店に行ってたんでしょうか………行ってみましょうか」

テクテク…

僧侶「……あ…」

商人「ここは……」

僧侶「……ふふふっ……勇者くんらしいですねっ」クスクス

商人「……余計な出費を認める訳にはいきませんが、まぁ……許してあげましょうか」クス

僧侶「……」

商人「……」

僧侶「…私たちも買ってく?」

商人「…まぁ、勇くんだけってのもなんだか嫌ですし……何より日頃お世話になってますからね。しょうがないです」

商・僧「「すみませーん」」

…………
……

一一一一一一一一一一一
-総合用品店-

女勇者「へぇ…こんな大きな店に武具や道具…服まで売ってるんだ」

戦士「うおー!見てみろよ女勇者!売ってるのがアリアハンと全然違う!すげー!」

女勇者「ちょっと騒ぐのはよしなよ恥ずかしいよ……でも本当だ…これはすごいね」

戦士「でも槍かー。アタシ剣が好きだからなー。浮気はなー」

女勇者「良いんじゃないかな?いろんな武器に恋してみるのも」

戦士「アタシは一途なんだ!」

女勇者「ふふ、そうかい。真っ直ぐだね。良いことだと思うよ」

戦士「ふへへ!」

女勇者「……戦士ちゃんが自分の本当の気持ちに気付かない事を祈るよ…」ボソリ

戦士「へ?なんだ?」

女勇者「…ん、なんでもない」

戦士「防具もなー…あれっ」

女勇者「あ、武道家ちゃん」

武道家「……」ジーッ

戦士「なに見てんだアイツ……あそこは…服売り場?」

武道家「……」ジーッ

女勇者「……ドレスを眺めているね」

戦士「…………プッ」

武道家「……」…サッ

女勇者「……ドレスを当てがって、試しているね」

戦士「……………ププッ」

武道家「……♪」キュルン☆

女勇者「……回ったね」

戦士「あーはっはっは!!」

武道家「!!!!!!///」ビクン

戦士「なーにやってんだよ武道家ー!」

武道家「あ…あんたら!こっ、これはそのっ!///」カァァ

女勇者「ごめんごめん、武道家ちゃんがあまりにも楽しそうだったから眺めていたよ」

武道家「うっ…うぅ///」カァァ

戦士「武道家にはそんな服より武道着だろー!!にあわねーよー!」アハハー

女勇者「えっ」

武道家「えっ」

戦士「もっと頑丈で身を守れそうなやつにしろよー!」

武道家「……」プルプル

女勇者「あっ…あの、武道家ちゃん、そんなことは、あのっえとっ」アセアセ

戦士「武道家はせっかく男っぽいんだからさー!ホラ、こっちのヤツとか」

武道家「………わ」プルプル

女勇者「えっ?」

戦士「ん?」

武道家「……わよっ…!」プルプル

戦士「え?なんだって?」

武道家「うるさいわよっ!!!!!!戦士のばかっ!!」

女勇者・戦士「「!!!!!!!!?」」ビクゥッ!!

武道家「あほっ!!脳筋!!ごりら!!おたんこなすっ!!」

ダッ!!

女勇者「あっ、武道家ちゃんっ!?」

タッタッタッ…

戦士「えっ?えっ?」

女勇者「……はぁぁぁ一一……戦士ちゃん、君って人は本当に……」

戦士「えっ?あのっ、アタシ…えっ」

女勇者「……あんな事言われたらそりゃ傷つくよ…女の子なんだからさ」

戦士「そうなの!?……ご、ごめん…誉めてたつもりだったんだけど」

女勇者「あれで!?」

戦士「あ、女勇者も同じく男っぽいと思うy」

ダッ

女勇者「戦士ちゃんのばかっ!!あほっ!!おたんこなすっ!!露出狂!!」

戦士「えっ!?女勇者!!!!?女勇者ー一一一一っ!!!!!?」

…………
……

一一一一一一一一一一一

-ロマリア・街中-

もぐもぐ…

遊び人「はーっ、なんだかんだ楽しかったね」

魔法使い「ねーっ。ちょっとモンスターとーぎじょうってとこは怖くていけなかったけどねっ」

遊び人「ね。輪投げとかの方が面白いよね」

魔法使い「ねーっ。このアイスもおいしいねっ」

遊び人「うん!」

魔法使い「♪」モグモグ

遊び人「……」

魔法使い「…」モグモグ

遊び人「…………」ジー…

魔法使い「……?どーかした?」

遊び人「……」

遊び人「……魔法使いは…」

遊び人「……勇者ちゃんの事、どう思ってるの…?」

魔法使い「……えっ?」

ザァ…

…………
……

一一一一一一一一一一一

-ロマリア・町外れ-

シュタッ

盗賊「……っと…」

盗賊(……この岩壁の上が、辺りを一番見渡せるかな…)

盗賊「……」スゥ

盗賊(……ッ…!)

盗賊はタカの目を使った!

盗賊(…………)

盗賊(…………)

盗賊(……ふぅ…駄目だ…)

盗賊(……記憶には無い景色が、広がってるだけ…)

盗賊(……でも)

盗賊(……でももしも、ここが私の生まれた…私の記憶の中の土地だったとしたら……)

盗賊(……王様が言っていた、カンダタは一一…)

盗賊(……)

盗賊(……でも…)

盗賊(……)

……!…!

盗賊(……ん?…)

……!……!

盗賊(……なんだろう、街の外で、何か…)

?「…!…!」

魔物「……!…!」

盗賊「……あっ!」

盗賊(……人が、魔物に襲われてる…!)

盗賊(……助けなきゃ…!…)

ダッ

タッタッタッ…

盗賊(……魔物は、何匹くらいだろう…!…)

盗賊(……早く行かないと……!)

タッタッタッ…

?「……!…!」

魔物「…グギャッ…!ギャッ……!」

盗賊(……見えてきた……)

盗賊(……あっ……)

ピタッ……

?「おりゃっ!!ぐあっ!!」ガスッ!!ズバッ!!

魔物「グギャァ!!ギアァア!!」ゴシャッ!!

盗賊(…………)

盗賊(……勇者)

勇者「ぐっ…ぅ!おりゃあっ!!」ズバァ!!

魔物「グギャアッ!!」グシャッ!!

魔物の群れを倒した!

勇者「…ハァッ……ハァッ…」

ドサッ

盗賊「……勇者!!…」

ダッ

タッタッタッ

盗賊「……勇者、大丈夫!?…」

勇者「えぁっ!?とっ、盗賊!?」ビクゥ

盗賊「……傷を負ってる…!なんでこんな、1人で、無理するのっ!…」

勇者「あはは…大丈夫だよこれくらい、薬草もちゃんとあるから!」

盗賊「………でも!…」

勇者「……ちょっと散歩してたらさ、街の外に出ちゃって…いきなり魔物と遭遇しちゃったよ!あはは、馬鹿だよね!」

盗賊(…………下手な、嘘…用事があるって言ってたのに、散歩なんて…)

勇者「いやぁ、なかなか強かったけど新しい武器にしたからか心なしか一一…」

盗賊(……それに、さっきの魔物から攻撃されても、付きそうにない傷がたくさん…)

盗賊(……)

盗賊「……勇者…」

勇者「へ?」

盗賊「……お願いだから、無茶しないで…」

勇者「……うん、ごめんね!」タハハ

勇者「あ、そういえば盗賊!これそこに生えてたんだ!」

スッ

盗賊「……?……あ……」

勇者「それ多分高いお茶の葉でしょ?盗賊お茶好きだからさ、摘んでおいたんだ!あげるよ!」

盗賊「……こんな、可愛い袋に入ってたの…?」

勇者「うっ、いや、丁度レーベの店で買ったクッキーの袋が残っててさ!」アセアセ

盗賊「……」

盗賊(……お茶の値札が貼ってある…本当に嘘が下手………)

勇者「あはは…………それでも飲んでさ、一休みしてよ」

盗賊「……え…?」

勇者「何かあったなら、僕たちに相談してほしいな。」

盗賊「……」

勇者「…いつも皆の姉さん代わりをしてる盗賊は、自分のしてほしい事を皆に言えないんじゃないかと思ってさ」

勇者「…僕たちも、甘えてるだけじゃなくて何かしてあげたいんだ」

盗賊「……」

勇者「…ははは、僕じゃ頼りないかもしんないけどね」タハハ

盗賊「……っ!…」

ギュッ…

勇者「わっ!!?と、盗賊っ!だから抱きしめるのは一一…」

盗賊「……1つ目の、ワガママ…」

勇者「え?なになに?何でも一一…」

盗賊「…抱っこさせて……」

勇者「ぐ…ぐぬぬ…」

盗賊「……一一2つ目の、ワガママ…」

ギュッ

盗賊「……一一もう」

ギュゥゥゥッ

盗賊「……もう、無理して強くならないで…!」

勇者「……」

盗賊「……」

勇者「……ごめん、そのワガママはきけないよ」

盗賊「……どうして…」

勇者「…」

盗賊「……私には『仲間を頼れ』って言っておいて……自分は頼らなくてもいいって……ワガママだよ…そんなの…!」

勇者「……そうかもね」

盗賊「……じゃあ…!」

勇者「でもこれは『誰かにどうかしてもらえる事』じゃない、『何が何でも自分でどうにかしなければならない事』なんだ」

盗賊「……!…」

勇者「…大丈夫!皆やった事だよ!僕が少し遅れてるだけさ!」

勇者「僕だって頼れる時は皆に頼るしね!心配しないでよ!」

ムクッ

勇者「っし!じゃあ僕はまだ少し『用事』があるから先に戻ってお茶でも淹れて待っておいてよ!」

盗賊「……うん…」

勇者「にへへっ!それじゃあまた後でね!」

タッタッタッ

盗賊「……」

盗賊(……勇者…)


…………
……

一一一一一一一一一一一

-宿屋・食堂- 夜


商人「あー!楽しかったです!」タハー

僧侶「ですねー!こんなにはしゃいだのは久々です!」ルンルン

武道家「……」ムッスー

女勇者「……」プクー

魔法使い「?ねぇせんしっ。ふたりともどーしたの?」

戦士「色々あってさー。…なぁいい加減機嫌直してくれよー!アタシが悪かったよう!」

魔法使い「あははっ、せんしがひらあやまりってめずらしーねっ!」

ワイワイ…

遊び人「……」

勇者「遊び人、街はどうだった?」

遊び人「えっ!?あ、楽しかったよ!」

魔法使い「ゆーしゃこそ用事はどーだったの?」

勇者「ん?あぁ、なんとかスムーズに終わったよ」ハハハ

盗賊「……」

武道家「盗賊はどうだった?楽しめた?」

盗賊「……えっ?うん……」

僧侶「あ、そういえば!商人ちゃん!」

商人「ん!そうでした!盗賊ちゃんにおみやげがあるんです!」

盗賊「……えっ?…」

戦士「あれ、お前たちも?」

商人「えっ」

女勇者「へっ、皆もかい?」

遊び人「え、女勇者たちも?」

一同「「「……」」」

戦士「せーので出すぞ」

魔法使い「りょーかい」

「「せーのっ」」

ザッ!

商人「…」

僧侶「…これは」

遊び人「……お茶の葉が」

武道家「…いっぱい」

………………。

一同「「「あはははははっ」」」どっ

女勇者「こんなに人数居て全員盗賊ちゃんにお茶の葉をプレゼントって…あはははっ!」

戦士「幼なじみって考える事はやっぱ似るんだな!」アハハハ

盗賊「……みんな…」

魔法使い「…なんだかとーぞく、つかれてるみたいだったからねっ」

僧侶「もし宜しければお茶でも飲んで、ゆっくりしてくださいね」

商人「とは言ってもこんなに贈られても迷惑かもしれませんがね」テヘヘ

武道家「迷惑じゃなかったら、受け取ってくれないかしら」

盗賊「……っ…!」

盗賊「……」

盗賊「……みんな、ありがとう!…」ニコ

盗賊「……そして、ごめん……」

戦士「えっ?」

遊び人「もしかして、駄目なお茶の葉だった?」アセアセ

盗賊「……ううん、お茶の葉は、凄く嬉しい。…大切に飲むね……」

魔法使い「てへへ」テレテレ

盗賊「……そうじゃなくて、こんな事してもらってなんだけど、お願いがあるの…」

武道家「お願い?」

盗賊「……うん…」

女勇者「珍しいね…」

商人「そうですね…」

勇者「……そのお願いっていうのは?」

盗賊「……」

盗賊「……私と…」

盗賊「……私と一緒に、盗賊団を…一一カンダタを退治してほしいの…」

盗賊「……」

盗賊「……一一私の父、カンダタを…」

今日はおしまいです


超どうでもいいけど俺の頭の中で盗賊はARIAのアテナさんのイメージなんだ

勇者「……!」

女勇者「……え?」

武道家「今なんて……?」

盗賊「……」

盗賊「……今まで黙っていてごめんなさい…」

盗賊「……私の父は、カンダタ盗賊団の頭領、大盗賊カンダタ…」

盗賊「……私は、昔そのカンダタに捨てられた一人娘なの…」

盗賊「……いつか巡り会えるかも、なんて思って、盗賊業についてみたけど、こんな形で出会うなんてね…」

戦士「……それで」

遊び人「……あの時、立ち止まったんだね…」

盗賊「……私の記憶の中の父は、王様の冠を盗むなんていうような、私利私欲の盗みは働かなかった…」

盗賊「……戦争国の兵器を強奪して破棄したり、農民を苦しめる領主の館に攻め込んだり、奴隷会館の貴族達の奴隷を強奪して解放したり…」

盗賊「……決して、正義では無かったけど…私はそんな父の背中を見て育ったの…」

勇者「……」

盗賊「……もし、今この大陸にいるカンダタが、私の父だったら…」

ギュッ…

盗賊「……もしそうだったら、私が止めなきゃ!それを、確かめに行きたい!…」

女勇者「……」

武道家「……」

僧侶「……」

盗賊「……っ…」

盗賊「……だめ、かな…」

戦士「…これからやる事は決まったな」ニヒッ

魔法使い「だねっ!」フンス

盗賊「……えっ?…」

女勇者「……盗賊ちゃんからのお願いなんて初めてだ。腕がなるよ」

武道家「とりあえずそのバカンダタって奴をとっちめないとね」

遊び人「捕まえてみて人違いならそれはそれで良し」

商人「王様に突き出せば報奨金を貰えるかもですしね」

僧侶「もし、人違いじゃ無かったら」フフ

勇者「…一一ぶん殴って更正させる!で、盗賊を置いていった事を詫びさせる!って事でいいか皆!」

一同「「「お一一一一っ!!」」」

盗賊「……!!!!…」

盗賊「…みんな、ありがとう……!」

…………
……

一一一一一一一一一一一

-宿屋・食堂- 朝


一同「「「いただきまーす」」」

女勇者「にしても、情報が欲しいね」モグモグ

商人「確かに…カンダタ盗賊団が今どこにいるのか…」モグモグ

遊び人「もし違う大陸に渡られてたら手の出しようが無いもんね」

戦士「う゛ぇ あー…」

武道家「戦士…ちゃんと目を覚ましてきなさいよ…」

僧侶「また1から聞き込みをする事になりそうですね」

魔法使い「がんばるよっ!」

勇者「いや、それについては考え…とも呼べないけど、少し考えてあるんだ」

盗賊「……え、何?どうするの…」

武道家「なになに?」

勇者「ロマリア王に話を聞いてみようと思う」

…………。

一同(((………)))

勇者「気持ちは分かるけどそんな露骨に嫌な顔しないの!!!!!!」

戦士「だってあのおっさんだろ…?調子に乗ってあること無いこと言うって絶対」

遊び人「戦士が嫌悪感のあまり目覚めた」

武道家「戦士おっさん嫌いだよね」

勇者「…無いこと…言われそうだなぁ……でも手近な手掛かりがそれしか無いわけだからさ。縋ってみようよ」

商人「そうですね…それしかありませんか」

僧侶「聞き込みより早いですしね」

女勇者「と、いう事で朝食後はお城に行く。皆大丈夫?」

魔法使い「りょーかいだよっ!」

戦士「二度寝していい?」

武道家「あんたも行くの!!」

…………
……

一一一一一一一一一一一

-ロマリア城-

王様「はぁ…」

大臣「気を落とさずに……元々盗まれたこちらの失態でもあるのですぞ」

王様「うっ…」

大臣「それを魔王討伐に向かう勇者殿に解決させようなど…勇者殿からすればいい迷惑なのですから…」

王様「別に?わし?あの者の事?勇者だって?認めとらんし?」

大臣(この糞野郎…)

王様「でも?泣いて懇願してきたり?金の冠取り返して跪けば?許してやらん事もない?みたいな?」

大臣「この糞野郎…」

王様「えっ」

大臣「やべっ」

?「失礼します!」

大臣「あ、誰か来ましたぞ」

王様「ねぇ、今なんて言ったの?ねぇっ」

スタスタ…

勇者「ロマリア王、再び申し訳ありません」

大臣「!?…勇者殿!?」

王様「あっ!?」

ガタッ!

王様「よくぞ来た!勇s……ゆ、ゆっ、ゆんゆゆ一一ん!!!!!!」

勇者「!!?」

大臣「もうあんた本当に黙ってて…」

王様「いっ……今更何の用じゃ!!さ、寂しかったわけじゃないんだかぁねっ」

大臣「して、どうされましたかな?勇者殿」

勇者「はい、もしカンダタについてご存知の事があれば何か教えて頂けないでしょうか?」

王様「なになに?今更来て点数稼ぎー?どうなのそれどうなのよー。他の国だったら打ち首もんよー?絞首刑よ火炙りよー?そこんとこどうn」

大臣「勇者殿…そなたがたが気にする事では無いのですぞ?」

王様「わしはー?優しいからー?別にー?寛大な心持ちでー?善処したげよーかなー?なんてー?思わなくもなくなくなーい?」

勇者「いえ…僕達にも少しカンダタに思うところがありまして…。それを解決しなければ、旅を再開するのは難しいのです」

王様「どーしてもってゆーならー?別にー?報奨を与えてもよろしいしー?よろしい気もしなくもなしによろしいしー?」

大臣「そうですか…そういう事でしたら、先日にロマリア兵がカンダタの一味の1人をひっ捕らえたのですが…」

王様「いやわしここらへんの頭張ってるし?今こんなんだけど筋肉まじすげーよ?今引っ込めてっけどビルダーよ?ダービル。ムカついたら壁とか良く殴っちゃうんだけど見る?わしの部屋」

勇者「!!!それは本当ですか!?少し話をしたいんですが今はどこに!?」

王様「まじキレたら何すっかわかんねーからねわし。あーやべーキレたらごめんねー。まじ周り見えなくなっから。さっちん教会送りしちゃったりしたから」

大臣「この城の城郭の右側…勇者殿から左側の階段から行ける事のできる最上階に投獄されています。兵には話を通しておきますので行かれると宜しかろう」

勇者「ありがとうございます!失礼します!」

スタスタ…

大臣「うむ…何か有力な手掛かりになれば良いが…」

王様「マジでわし無双だったかんねー。でもわしも歳じゃからー。そこで許してあげちゃったわけじゃけどー。別にバラモスとか…って感じじゃけど手柄は?ニュージェネに?譲ってあげようっていうか?」

大臣(…革命でもするかなぁ)


…………
……

今日はこれだけです申し訳なひ

しかも内容アホだし

土日は仕事だからあまり書けんのです書きたい
頑張って完結させようと思いますので何卒よろしくお願いします


http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2178772.png


http://n.pic.to/4qohg

るよー

一一一一一一一一一一一

-ロマリア城内-

スタスタ…

戦士「…一一で、王様はどうだった?」

勇者「うん。大臣がすごく良い人だったよ」

僧侶「……王様は?」

勇者「大臣がすごく良い人だったなぁ」

女勇者「よし。もう何となく分かったよ」

商人「勇くん1人で行かせて良かったかもしれませんね」

武道家「…で、何か情報は得られたの?」

勇者「うん、実は一一…」


-ロマリア城・階段-

スタスタ…

女勇者「カンダタ一味の1人、ね。こんなにスムーズに見つかるとは思わなかったよ」

戦士「そいつに吐かせればいいんだもんな!」

盗賊「……」

遊び人「……ねぇ盗賊」

盗賊「……なに?…」

遊び人「盗賊は…昔の盗賊団の仲間の事を覚えてるの?」

盗賊「………うん…」

遊び人「…もしさ、その人が…盗賊の知ってる人だったら…そのカンダタは……」

勇者「……」

武道家「……」

商人「……」

スタスタ…

盗賊「……うん…」

盗賊「……でも…」

盗賊「……やる事は、変わらないから…」

盗賊「……止めないと…いけないのは、変わらないから……」

スタスタ…

遊び人「……そっか」

遊び人「……ごめんね、なんだか」

盗賊「……ううん…」

盗賊「……心配してくれて、ありがとう…」ニコ…

…………
……

-最上階・牢獄-

勇者「ここだ…」

女勇者「あそこの牢かな」

盗賊「……行こう…」

スタスタ…

ガシャアァン!!

勇者「!!?」ビクゥ

僧侶「はひぃっ!!!!?」

?「だから俺は関係ねぇって言ってんだろ!!なんべん言ったらわかんだ!!」

魔法使い「おぉっ、いせいがよろしいねっ」

囚人「あれ?誰だお前ら、見かけねー顔だな…オレはてっきり兵士がまた聞きにきたのかと思って…」

女勇者「……盗賊、見覚えは?」

盗賊「……」

囚人「……?なんだ?何か用か?」

盗賊「……見覚えは、ない…」

商人「…そうですか」ホッ

僧侶「同じカンダタさんって名前の盗賊なのかもしれないですね」

囚人「カンダタ!?だから俺はカンダタとは何の関係もねーっての!!」

一同「「「……えっ?」」」

囚人「俺も確かに褒められねぇ沙汰を起こしてきたけどよ、カンダタとは何も関係ねぇよ!!」

遊び人「か…カンダタ盗賊団の一味だから捕まったんじゃないの?」

囚人「たまたまアイツらが荒らした家に空き巣に入っちまって捕まっちまったんだよ!」

武道家「でも、大臣はロマリア兵がカンダタ一味の1人をひっ捕らえたって言ってたんでしょ?」

勇者「…よく考えたら、ここの人達はお調子者が多かったね…」

女勇者「……」

戦士「ロマリアはもう終わりだ…馬鹿ばっかりでどうしようもねぇ」

囚人「なんだ?お前らもしかしてカンダタ探してんの?」

僧侶「はい…でも手掛かりがたった今潰えたところで…」

囚人「それなら、オレ知ってるぜ」

勇者「え」

盗賊「……え…」

囚人「カザーブって村の西にシャンパーニの塔ってのがあるんだが、今ではそこを拠点にこのあたりで悪さを働いてんだ。だからシャンパーニの塔に行けば会えるんじゃねぇかな」

女勇者「…………え」

遊び人「…………」

囚人「シャンパーニの塔は昔からいろんな盗賊達の住処になってて俺も一時期は……ってどうしたんだよ、固まっちまって」

戦士「いや…なまじ諦めてたぶん、すんなり居場所が分かっちまって拍子抜けというかなんというか」

魔法使い「びっくりだねぇ」

商人「……申し訳ありませんが」

囚人「ん?」

商人「あなたが本当にカンダタの一味ではなく、これも私達を騙す罠ではないという保証は無いですよね。迂闊に鵜呑みにしてしまうのは少し危険かと」

僧侶「しょ…商人ちゃん」

女勇者「でも確かにね…」

囚人「まぁ、それもそうだよなぁ。でもアイツのせいでオレはこんな所に居るんだぜ?いや、盗み働いたオレも悪いんだが」

武道家「あ、それもそうか」

囚人「とりあえずカザーブに行ってみな。ここから北にまっすぐ、すごろく場って娯楽施設を越えたらカザーブだ。村の奴らもシャンパーニの塔にカンダタ共がいると言うだろうさ」

囚人「何の用かは知らないけど、もしお前ら自信あるんならやっつけてやれよ」

一同「「………」」

囚人「…どうした?」

勇者(泥棒なのに…)

女勇者(この国の奴らがアレだから…)

戦士(すごく良い奴に見える……っ!!!!!)

…………
……

一一一一一一一一一一一

-宿屋・勇者の部屋- 夜

女勇者「とりあえず、進路は決まったね」

勇者「うん。まずはカザーブに行って情報収集、もしシャンパーニの塔の件が確かなようなら色んな準備を整えてシャンパーニの塔って感じだね。皆、大丈夫?」

戦士「おうともよ!」

僧侶「了解です!」

盗賊「……うん…」

商人「では明日は早い出発になりそうですね」

魔法使い「だねっ!今日ははやくねなきゃだよ」

女勇者「ん。今日はもう各自寝てしまおう。皆、解散だ」

勇者「それじゃ皆、おやすみ」

スタスタ…

遊び人「おやすみー」

僧侶「おやすみなさーい」

商人「おやすみなさいです」

戦士「ふぁぁ…おやすみー」

盗賊「……おやすみ……」

パタン…

勇者「………」

-盗賊の部屋-

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊(……眠れない…)

盗賊(……嫌なことばっかり考えちゃう……)

盗賊(……もし…)

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「……ばか…」ボソ…

盗賊「……甘えるな、私…」

…………
……

一一一一一一一一一一一

-翌日・道中- 朝

テクテク…

商人「なんていうか…前方に山岳地帯が並んでいるんですがまさか…」

勇者「うん…どうやらここを突っ切ってかないとカザーブには着かないみたいだ」

商人「どあー!マジですか!ちょっと地図見して下さい……………………ホントですね…とんだ中継商村です」

戦士「なんだそれ?」

商人「国同士の商業がある程度栄えて流通ルートが確率されたりした際に作られたりする、言わば休憩ポイントみたいなものです。特にこういう山岳地帯を越えなきゃならない所には必須なんです」

武道家「あぁ…なる程ね。って事はカザーブはこのノアニールって町とロマリアとの中継商村ってわけね」

商人「はい。そしてどうやらカザーブの東に小さい雪原がありますね。ここでとる事ができる氷を運ぶ中継点でもあるのでしょう。ロマリアでは氷がしばしば商的に利用されていましたからね」

魔法使い「あぁ、あのときたべたアイスもそのおかげだったんだねっ。遊び人っ」

遊び人「え?あ…………うん、そ、そうね」

魔法使い「?」

遊び人「お、おいしかったね。あはは…」

遊び人(……昨日の事思い出しちゃった……)

一一一一一一一一一一一

サァ…

魔法使い『…なんでそんなこと?』

遊び人『別に…ただ魔法使いは…勇者ちゃんの事……どう思ってるのかなって思って…』

魔法使い『…んー…』ペロペロ

パクッ

魔法使い『……すきだよっ』

遊び人『!!!!!!……っ……わ、私達はっ…魔王を倒す旅に出てるんだからっ……それを忘れちゃ…駄目だよ…』

魔法使い『みーんな、だいすきっ』

遊び人『……えっ』

魔法使い『ゆーしゃも僧侶も女勇者も戦士も武道家も盗賊も商人も、みーんなだいすきっ!』

魔法使い『もちろん、遊び人もねっ』ニヘヘ

遊び人『…魔法使い…』

遊び人『そ、そういう事じゃなk』

魔法使い『わかってる』

遊び人『……えっ…』

魔法使い『…わかってるよ…ゆーしゃへのこの思いも…』

遊び人『…魔法使い…!』

魔法使い『……でも、このきもちをことばにしちゃうっていうのが、どーいう事かっていうのもわかってる』

魔法使い『わたしたちのたびが、どんなものかってゆーのも』

遊び人『……』

魔法使い『……』

魔法使い『……でもね』

魔法使い『たびがおわったら……わからないよ?』フヘヘ

遊び人『……へ』

魔法使い『まおーをたおしちゃったら、世界が平和になったら……わたしたちも、ふつーのおんなのこになっちゃうからねっ』

遊び人『そ、それは…』

魔法使い『……ゆーしゃを本当にささえてあげなきゃいけないのは…』


魔法使い『たぶん、それからだと思うの』

遊び人『…………』

魔法使い『にへへっ』

魔法使い『……遊び人にも、ゆーしゃはあげないよっ』

遊び人『っ!わっ、私はそんなのじゃなくてっ!!ただっ…!!///』カアァ

魔法使い『あはは!うーそ!』

タッ

魔法使い『…みんなで、ささえてあげよっ!』

魔法使い『そして、“みんなで”旅をおわらせようねっ!』

一一一一一一一一一一一

遊び人「……」

勇者「遊び人?どうかした?今から山越えるけど……大丈夫?」

遊び人「……ううん、何でもないよ」

勇者「そう?何かあったら言いなよ」

遊び人「……うん、ありがとう」

遊び人(……勇者ちゃん……)

…………
……

一一一一一一一一一一一

-カザーブ- 夕方

ドサッ…

僧侶「や…やっと着きました…」

商人「なんべん死ぬかと思った事か…」

武道家「だらしないわよー。でも魔物倒すより山越える方がある意味キツいわねー」

女勇者「お義兄ちゃん、早いところ宿をとろう。皆クタクタだよ」

勇者「だね。ちょっと行って空室確認してくるよ。皆待ってて」

テクテク…

戦士「しかし小さな村だなー」

魔法使い「わたしはすきだよっ?のどかでよさげな所だよねぇ」

?「あら、嬉しいですね」

魔法使い「ぇ?」

村娘「カザーブへようこそ。見かけない方々ね。ロマリアの人たち?」

女勇者「いいえ、私達は旅の者です」

村娘「あら、そうなの?旅のお方がこんな辺鄙な所に?」

武道家「実は私達カンダタを追っているんです。何かご存知な事は無いですか?」

村娘「カンダタ…。ごめんなさい、名前しか分からないわ」

女勇者「そうですか…すみません」

村娘「あ、でもそういえば、カンダタを遠い国から追ってきたって人が最近この村に来たわね」

僧侶「!!!本当ですか!?」


一一一一一一一一一一一

テクテク…

勇者「宿は良しと……聞き込みは…明日からになりそうだなぁ」

?「ちょっと君、いいかな」

勇者「?はい」

?「見かけない顔だね。……そして良い筋肉をしている……」ゴクリ…

勇者「えっ」

?「あぁ、いきなりすまない。わたしは旅の憲兵だ。ちょっと聴きたい事があるんだ」

勇者「あ、はい。何でしょう」

憲兵「……可愛い顔してるな…」ゴクリ…

勇者「え」

憲兵「いやすまない、わたしはカンダタを追って此処まで来たんだが、君は何かカンダタについて知らないかい?」

勇者「!!」

憲兵「……何か知ってそうだね…可愛いね」ゴクリ…

勇者「え」

憲兵「いや気にしないでくれ。少し話がしたい。酒場に行かないか?君の知っている事を聴いてみたいんだ。軽く何か奢るからさ」

勇者「は、はい!!」

勇者(こんなに早く手掛かりが見つかるなんて!)

憲兵「うむ。……可愛い尻だな…」ゴクリ…

…………

………

戦士「勇者おそいなー」

武道家「部屋が空いてなかったのかしら」

スタスタ…

遊び人「あっ。戻ってきたよ」

僧侶「……隣はどなたでしょうか」

勇者「みんな、お待たせ。宿はとれたよ。皆休んどいて」

商人「……それはどちらさんですか」

憲兵「……」ジー…

商人「……あの」

憲兵「あぁはじめまして。旅の憲兵です」

勇者「憲兵さんは遠い所からカンダタを追ってここまで来たんだって」

女勇者「あぁ、ではあなたが…」

憲兵「……」ジー…

女勇者「……あの」

憲兵「あぁ、だからカンダタの事を知ってそうな彼に話を聴こうと思ってね」

勇者「ちょっと酒場に行ってくるよ。男同士で話もしたいらしくてさ」

武道家「あ…あぁ、うん。いってらっしゃい」

遊び人「き…きをつけてね?」

勇者「あはは、酒場に行ってくるだけだよ。じゃ、行きましょうか」

憲兵「……」ジー…

勇者「……?」

憲兵「……」ゴクリ

勇者「どうかされました?」

憲兵「あぁ、すまない。では行こうか」

勇者「はい!皆、また後でね」

スタスタ…

女勇者「……」

武道家「……」

商人「……」

僧侶「……」

遊び人「……」

戦士「?みんなどうした?」

魔法使い「手掛かりみつかってよかったねぇ」

僧侶「……勇者くん…大丈夫ですかね」

商人「……おもに勇くんの尻が、ですけどね」

戦士「は?尻?何言ってんだ?」

女勇者(めっちゃお義兄ちゃんのお尻見てた…)

…………
……

一一一一一一一一一一一

-酒場-


憲兵「…一一ってくらいかな。わたしが知っているのは」

勇者「なるほど…ありがとうございます!」

憲兵「いやいや…どうって事ないさ」

勇者「それではすみません、僕はそろそろ…」

憲兵「まぁまぁ、もう少しゆっくりしていきなさい」

勇者「で…でも」

憲兵「わたしの奢りなんだ。ホラホラ呑みなさい呑みなさい」

勇者「ぼ、僕お酒は、その」

憲兵「わたしの酒が飲めないっていうのかい?」

勇者「…い、いただきます!」

憲兵「うむ、グイッと行きなさい」

ゴクゴク…

勇者「ぷはぁっ」

憲兵「はは、良い飲みっぷりだ!」

勇者「うぅ…くらくらしますぅ…なんかぽわぽわして…」

憲兵「ははは、気持ちがいいだろう!もっと呑みなさい!」トポトポ…

勇者「はいぃ…」ポワポワ

憲兵「もっともっと…気持ちよくしてあげるからな…」ゴクリ

…………
……

一一一一一一一一一一一

-宿屋・盗賊の部屋-

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊(……また…眠れない…)

盗賊(……憲兵さんが知っているのは…憲兵さんが追っているのは…)

盗賊(……私の…パパなのかな…)

盗賊(……)

盗賊(……私は、どうするんだろう…)

盗賊(……どうするのが、正解なんだろう…)

盗賊(……)

盗賊(……勇者…)

盗賊(……)

盗賊「……」ムクリ…

盗賊「……勇者、帰ってきたかな…」


-宿屋・勇者の部屋-

コンコン…

盗賊「……」

盗賊「……」

コンコン…

盗賊「……」

盗賊「………勇者…?」

ガチャッ…

盗賊「……」

シーン…

盗賊「……まだ帰って来てない…」

…………
……

一一一一一一一一一一一

-酒場・出口-

店員「ありがとうございましたー」

カランカラン…

憲兵「よっと…ほら、大丈夫か?ちゃんと歩けるか?」

勇者「はひぃ…大丈夫ですぅ」ヨロヨロポワポワ

憲兵「駄目そうだな…どれ、わたしが運んでやろう」

勇者「すみませんれす…」

憲兵「よっ…と」

ヒョイッ

勇者「あれぇ」

憲兵「どうかしたかい?」

勇者「おかしいですよぅ?これはーおひめさまをだっこするときのだっこですよぉ」

憲兵「ははは、大丈夫だよ」

勇者「大丈夫ですかー」ポワポワ

サワサワ

憲兵「ハァ…ハァ…」

勇者「お尻に手があたってますよーぉ。くすぐったい」ニハハ

憲兵「ふ……ふふ」ハァハァ

憲兵「大丈夫だよ…お姫様…」ゴクリ…

憲兵「良い所に…連れて行ってあげるからね…」

…………
……


-宿屋-

ガチャッ

主人「あ、おかえりなさい…ま……せ…」

勇者「やどやですねぇ。はこんでくれてどうもれすー」ポワポワ

憲兵「……」スタスタ

主人「あ、あの…」

憲兵「私の部屋の鍵。早く」

主人「え…」

憲兵「早く!!」

主人「ひっ!は、はい!!」

チャリン

憲兵「……」スタスタ…

勇者「ありがとうございました。もう大丈夫れすよぅ」

スタスタ…

勇者「あれぇ?どこにいくんれすか?」

スタスタ…

勇者「すみませんー。もーおろしてくださひぃー」

スタスタ…

<おろしてぇー…

…………。

主人「……あわわ…!!」

-憲兵の部屋-

ガチャッ…

スタスタ…

ポイッ

勇者「わぁっ」

ドサッ!

勇者「わぷっ…あれぇ?ベッドだぁ」フカフカー

カチャカチャ…

憲兵「ハァハァハァハァハァハァ」

勇者「な…なんですかぁ…なんでふくをぬいでるんですかぁ…」

ファサッ…

憲兵「それはね…」←パンツ一丁

憲兵「君が可愛すぎるからさっ!!!!!!辛抱たまらんッッ!!!!!ハイヤゥッッ!!!!!!」

憲兵はいきなり襲いかかってきた!!

勇者「や…やめひぇっ」

ズザッ

勇者は後ずさりした!

憲兵「やめないッッ!!」

ガバァ!!

だが憲兵に押さえつけられた!

勇者「ぼ、ぼくおとこだよぉっ」

ググッ

勇者は抵抗した!

憲兵「それは必然ッッ!!」

グイッ!

しかし押さえつけられた!

勇者「うぅっ…」

グググ…

憲兵「無駄無駄ァ!!観念するんだ!!これは今日!私が!君を見た瞬間から!決まっていた事なんだッ!!」

勇者「やめろぉっ……」

グググ…

憲兵「なんだぁ?顔も可愛らしいが力も可愛らしいなぁ!?実は女なんじゃないのか君ィ!!」

ピタ…

憲兵「!やっと観念したk……」

勇者「……よわいんだ…」

憲兵「え?」

勇者「…ぼくは…よわいんだ…」

憲兵「あぁそうだね。だからわたしに身を任せて…」

勇者「…ぼくは…いつもよわいんだ…!」

ポロポロ…

憲兵「……?」

勇者「ぼくが…よわいのがいけないんだぁ…!」ポロポロ…

勇者「ぼくがよわいから…みんなないちゃうんだぁ…」ポロポロ…

勇者「ぼくがよわいからおねぇちゃんもないちゃうんだぁ…!」ポロポロ…

憲兵「……君…」

勇者「ぼくがよわいから……まもれなかったんだ…!」ポロポロ…

勇者「まもれなかったんだ……!」ポロポロ…

勇者「とぉさんも…!」ポロポロ…

勇者「……そして…」ポロ…

勇者「……」

憲兵「……」

勇者「……くぅ……くぅ……」スピー

憲兵「……」

憲兵「……」

勇者「くぅ……くぅ…」zzz

憲兵「……」

勇者「くぅ……くぅ…」zzz

憲兵「……何か…嫌な過去でもあるのだろうか……」

勇者「くぅ……くぅ…」zzz

憲兵「……」

勇者「くぅ……くぅ…」zzz







憲兵「泣き顔も寝顔も可愛いなあ!いただきまーす!!」ムラムラハァハァピョーン

盗賊「……ナイフっ!!…」ヒュン!!

憲兵「エンッ!!!!!」

ドサァッ

盗賊「……峰打ちだよ…」

憲兵「」ビクンビクン

盗賊「……次、勇者に手を出したら…」

ヒョイ…

盗賊「……刃を正面にして、投げてあげる…」

スタスタ…

勇者「…くぅ……くぅ…」zzz

盗賊「……勇者、大丈夫?…」

ユサユサ…

勇者「…ん……んぇ?」

盗賊「……勇者、部屋に帰ろうか。肩貸したげるから…」

ヒョイ

勇者「えぇ?……あ…、おねぇちゃんだ」ポワポワ

盗賊「……!…」

勇者「えへへ…おねぇちゃんだー」

盗賊「……その呼び方、久しぶりだね。…酔ってるんだね。お酒臭い…」

勇者「ぎゅー」ダキッ

盗賊「……!……ふふ、ぎゅー…」ギュウゥ

盗賊「……ほら、歩くよ…」

スタスタ…

勇者「おねぇちゃん…」

盗賊「……どうしたの?勇者…」

勇者「みんなまもるからね……」

ピタ…

盗賊「……勇者、あなた…」

勇者「みぃんな、だいじょうぶだからね…」

勇者「なかないでね…」

勇者「おねぇちゃんも…まもるから…なかないでね…」

盗賊「……っ…」

勇者「………くぅ…」zzz

盗賊「……」

勇者「くぅ……くぅ…」zzz

盗賊「……覚えててくれたんだね…」

ナデ…

勇者「ん……くぅ…」zzz

盗賊「……………………………ありがとね、勇者…」

…………
……

一一一一一一一一一一一
チュンチュン…

-宿屋・食堂- 朝

勇者「う゛え゛ー…」

魔法使い「おぉ、ゆーしゃがよわっておるね」

僧侶「大丈夫ですか?はいお水」コトッ

勇者「ありがとう…うぅ、頭がズキズキする…」ズキズキ

女勇者「慣れない酒を無理して飲むからそうなるんだよ」

勇者「本当にね………やばい……昨日の事なんにも覚えてない…」ズキズキ

盗賊「……それがいいと思う…」ズズ…

勇者「そういえばロビーで倒れてる僕を盗賊が部屋まで連れて行ってくれたんだって?ありがとう」

盗賊「……どうって事、ないよ…」

商人「盗賊ちゃん、大丈夫でした?酔った勇くんにいかがわしい事されませんでした?」ニシシ

勇者「ちょっと商人…よしてよ」

戦士「でも酔っ払った勇者って想像つかねーな。盗賊、どんな感じだった?」

勇者「戦士まで…」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……甘えん坊…」ボソ…

一同「「「!!?」」」

女勇者「あっ、甘えん坊て!!」

商人「幼児退行って事ですか?うわーきもー勇くんきもー」

僧侶「わぁ、見てみたいです」クスクス

遊び人「勇者ちゃん、それはちょっと引くよ?」アハハ

魔法使い「いいなぁ。わたしもみたかったなぁ」

武道家「どんな赤ん坊だったのかしら」フフ

勇者「みんなやめてー…」

盗賊「……お姉ちゃんって呼ばれて、ぎゅーってされた…」

一同「「「  」」」

盗賊「……可愛かったよ…」ニヤリ

今日はおしまいです

素晴らしく寝る

今日は仕事で書けそうにないくやしい

>>302はなんとなく描いてみました。次も誰か描くかなぁ。


http://www.doutup.org/uploda/www.dotup.org2183931.png


http://j.pic.to/2htw8


るよ!
おかしいね!昼なのにね!

-道中- 昼前

スタスタ…

勇者「あっ!あれがシャンパーニの塔かな!でかいなぁ」

勇者「でもナジミの塔よりは小さいかな?ねぇみんな」

盗賊「……」

武道家「……」

僧侶「……」

遊び人「……」

勇者「?みんなどうしたの?」

商人「い、いえ?何でもないですよ?」

遊び人「ほ、本当だね!でかいね!」

武道家「ホラ!前向かないと魔物が出たとき対処遅れるわよ!」

勇者「えっ、う、うん。ごめんね」

スタスタ…

女勇者(……ね、ねぇ盗賊ちゃん。さっき聞いた話は本当なんだよね?)ヒソヒソ

盗賊(……残念ながら、本当だよ。そして幸い、お尻は無事…)ヒソヒソ

商人(盗賊ちゃんグッジョブです本当に)ヒソヒソ

武道家(で…でもさ……盗賊はもう気付いてるでしょ?アレ…)ヒソヒソ

盗賊(……うん…)






-近くの岩陰-

憲兵「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」



勇者「っ」ブルッ…

魔物使い「どーしたの?ゆーしゃ」

勇者「いやなんか寒気が…」

戦士「風邪か?」

僧侶(どうしましょうアレ)ヒソヒソ

盗賊(……また何かしてきたら、ナイフの的にするよ…)ヒソヒソ

武道家(死んじゃう)ヒソヒソ




-近くの岩陰-

憲兵「ハァハァハァハァ勇者きゅん……ハァハァハァハァ」ムラムラ

憲兵(可愛いなぁ…勇者きゅん可愛いなぁ…)ハァハァ

憲兵(昨日は誰かに不意をうたれて何もできなかったが…)ハァハァ

憲兵(それがまたッ!後を引かせるッ!!)ハァハァ

憲兵(…)ハァハァハァハァ

~~~~~~~~~~~

戦士「えー、そこは頑張れよう!」アハハ

勇者「あはは、努力するよ」

~~~~~~~~~~~

憲兵(勇者きゅん……なんでそんなに可愛いんだ……そんなに可愛かったら…わたし…)

憲兵(……………………興奮しちゃうじゃないか)

ズギュゥーz__ン




商人「なんかさっきから嫌な予感しかしないんですが…」

テクテク…

盗賊「……」

盗賊(……シャンパーニの塔…近づいてきた…)

盗賊(……あの中に…)

盗賊(……あの中に、もしかしたら…)

ガサッ

魔物「キシャアッ!!」

魔物の群れが現れた!

魔物の群れはいきなり襲いかかってきた!

勇者「っ!!盗賊!危ない!」

盗賊「……えっ…」

ドン!

勇者は盗賊を庇った!

魔物「キシャアッ」

魔物の攻撃!!

ビュルッ!!

勇者「うぶぇっ!!なんだこのイモムシお化け!!糸吐くのかっ!!」

~~~~~~~~~~~

-岩陰-

憲兵(白い糸まみれ勇者きゅんとか!マジイラプション!!)ハァハァ


~~~~~~~~~~~


女勇者「な、何かよく分かんないけど早くあのモンスター倒さなきゃいけない気がしてきた!皆!」

武道家「うん!速攻よ!」

…………


魔物「グゲ」

ドシャアッ

魔物の群れを倒した!


戦士「っふぅ、弱くてよかったぜ」

魔法使い「なんだかこのあたり虫のまものがおおいねぇ」

遊び人「勇者ちゃん、盗賊、大丈夫?」

盗賊「……ごめんなさい。私は大丈夫…」

商人「…少しボーっとしてましたけど…本当に大丈夫ですか?」

盗賊「……うん…。本当にごめんね…」

商人「いえ、大丈夫ならいいんですが…」

盗賊「……勇者、ごめんね。ボーっとしてて。庇ってくれてありがとう…」

勇者「……」

盗賊「……?…勇者?…」

勇者「え?あ、うん。大丈夫だよ。キャタピラーに糸吐かれただけだし」

女勇者「いきなり襲いかかってきたのがさまようよろいとかじゃなくて良かったよ」

戦士「だけど盗賊、ボーっとしてると危ないぞ?」

盗賊「……ごめんなさい…」

勇者「まぁまぁ、皆何ともなかったんだし。先を急ごう」

遊び人「そうだね」

僧侶「では、行きましょうか」

戦士「本当に大丈夫か?おぶってこうか?」

盗賊「……大丈夫、ありがとうね…」

スタスタ…

商人「……?勇くん、何してるんですか?」

勇者「え?あ、ちょっとね」

商人「遊んでないで早く行きますよ。置いて行っちゃいますからね」

勇者「ごめんごめん」

…………
……

ドクン… ドクン…

盗賊(……もうすぐ…)

ドクン… ドクン…

盗賊(……もうすぐ、会えるかもしれない…)

ドクン… ドクン…

盗賊(……でも)

盗賊(……でも…もしかしたら…)

盗賊(……もしかしたら、パパは…)

「ねぇ」

盗賊「……!…」ビクッ

勇者「……大丈夫?」

盗賊「……勇者…」

盗賊「……大丈夫だよ…ありがとう…」

勇者「……」

ザッ…

武道家「……とうとう着いたわね」

女勇者「……世界の盗賊達の塒……」

-シャンパーニの塔-

魔法使い「おっきぃねぇ…」

商人「下に立つと余計高く見えますね」

武道家「商人は特にね」フフ

商人「誰がチビビューティーですか!!」

遊び人「ビューティー言うとらん」

女勇者「気を引き締めないとね……」

戦士「じゃあ早速行こうぜ!」

スタスタ…

盗賊「……」

ドクン… ドクン…

一一一一一一一一一一一
『盗賊…………すまない』

『大丈夫、安心しなさい。私はいつも傍にいるよ』

『……絶対、迎えにくるよ』


一一一一一一一一一一一

ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…

盗賊「……」

盗賊(……行かなきゃ…)

盗賊(……恐いけど…行かなきゃ…!)

ギュ

盗賊「……!?…」ビクッ

勇者「……」

盗賊「……勇者?どうしたの?…突然、手なんか握って…」

勇者「……無理しないで、良いんだよ」

盗賊「……え…」

勇者「……もし、盗賊が真実を確かめるのが怖いなら…僕が目の代わりをするよ」

盗賊「……」

勇者「もし、知るのが嫌なら…無理に知ることはないんだよ……」

盗賊「……勇者…」

盗賊(……そっか…そうだよね…勇者も…)

勇者「……だからさ、何でも…僕達に頼っ…」

ギュッ

盗賊「……大丈夫」

盗賊「……大丈夫だよ。行こう…」

勇者「……」

勇者「……うん」

スタスタ…

…………
……

-シャンパーニの塔・内部-


スタスタ…

勇者「雰囲気も暗いね……なんだか邪な気配をたくさん感じる気がするよ」

女勇者「よ…邪な気配…ね」

商人「はは…」

僧侶「……」チラッ



-壁の陰-

憲兵「ハァハァハァハァ」ムラムラヴギヴギムラムラヴギヴギ



僧侶「……凄く、邪ですね……」

遊び人「どうしよう、なんか悪化してない?あの人……」

武道家「薄暗い所に来てリビドーが解放されちゃったのかな…」

勇者「ん?どうしたの?そっちに何か…」

僧侶「いえいえ!?何にも無いですよ!?」アセアセ

商人「そ、そういえば勇くん、昨日カンダタの話は聴けたんですか!?」アセアセ

勇者「あぁ、うん。実は憲兵さんもカンダタに直接会った事は無いらしくてさ。盗賊のお父さんかどうかは分からなかったよ」

魔法使い「え?あったことないの?」

遊び人「意外だね?」

勇者「と言うのもワケがあって、憲兵さんが一一…」


-壁の陰-

憲兵「ゆ、勇者きゅんがわたしの話をしている!」ドッキュン!

憲兵「思考回路はショート寸前……」

憲兵「…今すぐ」


ダッ

憲兵「今すぐ会いたいよッッ!!!!!!」タッタッタッタ

タッタッタッタ!

勇者「ん?」

僧侶「へ?」

武道家「げぇっ!!」

勇者「あ、憲兵さん」

憲兵「勇者きゅぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅん!!!!!!」ダダダダダダダ

商人「ぎゃーっ!!なんか凄く目が血走ってます!キモいキモい!!」

戦士「な、なんだ!?」

女勇者「み、皆!お義兄ちゃんを守って!」

遊び人「勇者ちゃんは私たちが守るからね!!」

勇者「え?え?」

憲兵「勇者きゅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅ」



ガコンッ

憲兵「うぅうぅぅぅぬわー一一一一一一一一ッ!!」

ヒュウゥ…

勇者「け、憲兵さぁーん!!!!!」

商人「…………え」

魔法使い「おちてった…」

女勇者「……何この落とし穴」

勇者「これがカンダタのやり口なんだって……アジトに落とし穴を仕掛けて敵を好きなタイミングで落とすらしい……」

武道家「……それで直接会った事無かったのね…」

勇者「死にはしないらしいから安心だけど」

商人「ちっ」

…………
……

テクテク…

女勇者「でも、この塔の中のどこにいるんだろうね」

武道家「探し回るのは避けたいわね……魔物もいるし」

勇者「あ、多分最上階にいるらしいよ」

僧侶「それも憲兵さん情報ですか?」

勇者「うん。カンダタは基本的に落とし穴を有効的に使うために高い所に居座るんだって」

魔法使い「なるほどっ」

戦士「そうと決まりゃ、登るだけだな!」

女勇者「だね」

盗賊「……」

盗賊(……さっきから聞くカンダタの情報…)

盗賊(……なんだか、パパとは…)

盗賊(……)

盗賊(……どうしよう…)

盗賊(……嫌な想像しか…浮かんでこない…)

…………
……

ここからPC

あとさっきの画像上間違えてました
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2183931.png
これです

-シャンパーニの塔・最上階-

勇者「……着いたね」

僧侶「皆、怪我はないですか?」

女勇者「皆ほぼ無傷だよ」

遊び人「……」

盗賊「……」

盗賊(……この扉の向こうに…)

盗賊(……)

盗賊(……怖い…)

勇者「……」

勇者「…盗賊…」

盗賊「……どうしたの…?」

勇者「これはもしかしたら、なんだけど…」

勇者「……場合によっては、戦闘になるかもしれない」

盗賊「……うん…」

勇者「……」

盗賊「……大丈夫…」

盗賊「……私は、大丈夫だよ…」

勇者「……」

勇者「……皆…」

勇者「最善の答えを探して…」

勇者「最善の行動をしよう」

女勇者「…うん!」

魔法使い「ほいさ!」

戦士「おうともよ!」

勇者「よし!行こう!!」

ガチャッ……

勇者「……」

パサッ

カンダタ子分A「フルハウス」

カンダタ子分B「うわマジか」

カンダタ子分C「お前ズルしたべ」

カンダタ子分A「してねっての」

カンダタ子分E「いいなあ」

カンダタ子分D「ねぇ誰か来たべ」

カンダタ子分B「うわマジだ」

カンダタ子分E「誰?知り合い?」

カンダタ子分C「しらねえ」

カンダタ子分B「オレも」

カンダタ子分ズ「「「こんちわー」」」

勇者「あ、こんにちわ……」

カンダタ子分A「親分んとこ行く?報告」

カンダタ子分C「めんどくせえっぺ」

カンダタ子分E「でも後で怒られるべ」

カンダタ子分A「チッ……行くか」ガタッ

カンダタ子分B「てかお前勝ち逃げじゃね?」ガタッ

カンダタ子分D「ずっけぇ」ガタッ

カンダタ子分C「なにそれ」ガタッ

カンダタ子分A「ずるっこいって事だべ」ガタッ

カンダタ子分D「そそそそ」

カンダタ子分C「へぇ」

ゾロゾロ…

勇者「……」

女勇者「なんというか……うん、やる気ないな」

戦士「バイトかよ」

商人「盗賊ちゃん、今の人たちに見覚えは…?」

盗賊「……無い……」

僧侶「……そうですか…」

魔法使い「……」

戦士「……」

盗賊「……大丈夫だよ…進もう…」

女勇者「……うん」

勇者「……親分の所に行くって言ってたな」

遊び人「階段を昇っていったから……」

勇者「……皆、上だ。行こう」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊(……パパ…)

…………
……

-シャンパーニの塔・最上階-



タッタッタッ…

カンダタ子分B「親分」

?「なんだ?」

カンダタ子分C「侵入者です。剣とか持ってたんで親分を狙ってんだと思います」

?「そうか……で、半殺しにしてやったか」

カンダタ子分A「いえ、報告しにきました」

?「え?」

カンダタ子分E「いえ、侵入者が来ましたって報告をしに来ました」

?「いや、侵入者は?」

カンダタ子分A「もうすぐ来るんじゃないっすかね」

?「いやいやいやいや!!!!止めろよ!!なんで侵入者に侵入許してんの!?」

カンダタ子分C「そんなこと言われても…」フゥ

カンダタ子分B「なぁ」ハン

?「呆れてぇのはこっちだ馬鹿!!」

タッタッタッ…

?「……チッ…来たか…まぁいい」

?「……このオレの首狙うたぁいい度胸だぜ」

ダッ

勇者「……」

?「……」

勇者「……お前がカンダタか」

ニヤァ

カンダタ「この盗賊王カンダタに何か用か?ガキが」

勇者「…………盗賊」

盗賊「………っ…」

カンダタ「あん?よく見ればメスのガキばっかりじゃねぇか」

カンダタ「なめられたもんだぜ…………それとも子分にでもして貰いにきたか?」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………違う…」

勇者「…………!!!!」

カンダタ「あ?何だって?」

盗賊「…………パ…」

盗賊「……パパじゃ……ない…!…」

カンダタ「はぁ!?」

盗賊「…………パパは…」

盗賊「…………パパはこんな、変な覆面パンツじゃなかった……!!…」

カンダタ「えっ」

カンダタ子分ズ「「「「ふふっ」」」」

カンダタ「おいお前ら」

勇者「……盗賊…」

カンダタ「なんだその女……パパパパうるせぇな」

盗賊「……パパは…」

カンダタ「あ?」

盗賊「……本当のカンダタは、どうしたの……」

盗賊「……カンダタ盗賊団の皆は、どうしたのっ…!!!…」

カンダタ「あぁ?何言って……」

カンダタ「…………ははぁ、そういう事か」

盗賊「……答えて……!!……」

カンダタ「嫌だ、と言ったら?」

盗賊「…………」

チャキ……

遊び人「と、盗賊……」

僧侶「と、盗賊ちゃん……」

盗賊「……何がなんでも、聞き出す…」


カンダタ「おー、こえーこえー」

盗賊「……ふざけないでっ……」

スタスタ……

勇者「と、盗賊!!落ち着いて!!」

女勇者「盗賊ちゃん!」

カンダタ「そっかぁ……そんなに知りてえかぁ」

カンダタ「なら、教えてやるよ」

盗賊「……!…本当に…」

カンダタ「奴は死んだよ」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

カンダタ「俺が殺してこの盗賊団を乗っ取った」

カンダタ「それだけの事だ」クク

盗賊「…………嘘だ…」

カンダタ「マジだぜ?だって表沙汰には滅多に出ない事で有名だったカンダタの名が今ではこんなに悪名高くなってんだぜ?」

盗賊「…………嘘だ…」

カンダタ「このご時世にまだ偽善的な事をほざいてやがるから謀叛起こしてやったのさ」

カンダタ「今はもう…………クククッ」

カンダタ「今はもう、豚の糞にでもなってるだろうよ」

盗賊「…………嘘だ!!…」

ダッ

勇者「盗賊!!!!」

カンダタ「なんだぁ?そんなに俺が憎いかぁ?」

カンダタ「俺に復讐したいのかぁ?」

ガコンッ!

一同「「「「ッッ!!!!!???」」」」

カンダタ「させるかバーカ」ニヤァ

ヒュウゥッ!

魔法使い「きゃああっ!」

武道家「やぁ――――っ!!!!」

遊び人「きゃ―――――っ!!!!」

女勇者「ッッ!!!!!」

僧侶「いやぁ――――っ!!」

商人「わわわぁ!!!」

戦士「……やぁっ…………!!!!」

勇者「………みんなッ!!!!」

盗賊「……ッッ!!!!……」

ガシッ

盗賊「……ッ…!!!…」

盗賊(……間一髪で床を掴めた!!…)

盗賊(……ッ…勇者の手を…!!…)

パシッ

勇者「!!!!盗賊!!!」

盗賊「……待ってて…!!今引き上げるから…」

ググッ……

ドサッ

勇者「ハァッ…ハァッ…!!」

盗賊「……ハァ……ハァ…」

盗賊「……ごめん、一番近い所にいる勇者しか、掴めなかった……」ハァハァ

勇者「ううん、ありがとう……でも皆が……」ハァハァ

盗賊「……皆は大丈夫だよ…でも、勇者は……。自分の体質…分かってるでしょ?…」ハァハァ

勇者「……それは、そうだけど」ハァハァ

盗賊「…………」ハァ…

盗賊「……ごめんね…」

勇者「え?」

盗賊「……私が、冷静さを欠いたから、こんな罠に……」

勇者「…………」

盗賊「……本当に、ごめん……」

勇者「……ううん、いいんだ」

盗賊「…………」

勇者「…………」

盗賊「…………ごめん…」

勇者「…………」

盗賊「……ごめんね…こんな時に…」

盗賊「……なんとなく、最初から嫌な予感はしてたんだけどね……」

盗賊「…………」

盗賊「…………おいかけなきゃ…」

盗賊「……でも、みんなも助け…」

盗賊「…………」

盗賊「…………どうしよう…」

盗賊「………わからない…」ポロ

盗賊「……私、わからないよ…」ポロポロ…

盗賊「……どうすれば……」ポロポロ…

盗賊「……どうすればいいんだっけぇっ…」ポロポロ…

盗賊「……どうすれば皆助けられるんだっけ…」ポロポロ…

盗賊「……どうすればパパは、迎えに来てくれるんだっけぇ…」ポロポロ…

盗賊「……私はっ……」ポロポロ…

盗賊「……どうすればっ……」ポロポロ…

盗賊「……これっ……」ポロポロ…

盗賊「……どうし……」ポロポロ…

盗賊「……どうすれば、止まるんだっけぇっ!!……」ポロポロ…

盗賊「……私は、どうすれば……!!!!…」ポロポロ…

ギュッ

盗賊「……っ……」ポロポロ…

勇者「……盗賊……」ギュゥウゥ

盗賊「……ゆ…勇者ぁ……わたしっ…わたしっ……!!!!」

勇者「盗賊はいいんだよ」

勇者「泣いていいんだ」

勇者「それでいいんだ」

盗賊「…………っ……?…」ポロポロ…

勇者「今まで、僕たちの事ばかり心配してくれて、ありがとう」

勇者「……小さい頃の僕を、助けてくれてありがとう」

勇者「……今は自分の心配をしてあげて」

盗賊「…………っ……勇者……」ポロポロ…

勇者「…………」

勇者「…………今度は僕が救う番だ」

パッ…

盗賊「…………?……」ポロポロ…

勇者「待ってて。すぐ戻るよ」

盗賊「…………勇……」ポロポロ…

勇者「…………」ニコッ

ダッ

盗賊「……勇者……」ポロポロ


…………
……

-シャンパーニの塔・最上階下・屋外-


スタッ

カンダタ「ヒャハハハ!!!!あんな簡単に引っかかりやがった!!!!」

カンダタ「やっぱり落とし穴に落ちてく奴らの間抜け顔は最高だぜ!!」

カンダタ子分B「性格暗いッすね」

カンダタ「えっ」

カンダタ子分C「俺全然笑えなかったすわ。キモ…」

カンダタ「俺もお前の反抗期具合に笑えないわ」

カンダタ子分A「なんか色々親分キツイっすよね。思想とか体臭とか」

カンダタ「お前のがキツイわ。え?体臭キツい?」

カンダタ子分D「馬鹿じゃないんすか?」

カンダタ「ちょっとはオブラートに包めよ!!!!」

カンダタ「はぁ……まあいい、金の冠もちゃんと持ってこれたしな」

カンダタ「ここが目をつけられたなら移動しねぇといけねーが、コレと持ってる財宝を売りゃちったぁマシなアジトも作れるだろ」

カンダタ「じゃあ行くぞお前ら!」

スタッ

「待てよ」

カンダタ「……あん?」

勇者「待てよ、カンダタ」

カンダタ「…………しつけぇ野郎だ。命は勘弁してやろうってのによ」

カンダタ「なんだ?金の冠が欲しいのか?生憎これは……」

勇者「そんなのいらない」

カンダタ「…………あ?」

勇者「いらないよ、そんなの」

カンダタ「じゃあ何の用だ?まさか俺を退治しに来ましたってか?ヒュー!かっこいいねぇ正義の味方!」

勇者「そんなのどうだっていい」

カンダタ「…………じゃあ何だ」

カンダタ「子分になりたいのか?財宝が欲しいのか?」

勇者「どうだっていい」

カンダタ「…………」

勇者「どうだっていいよ、そんなの」

勇者「お前は、お前はさ」

勇者「盗賊をさ、泣かせたんだ」

勇者「…………お前はさ」

ギリィッ

勇者「……………………盗賊を、泣かせたんだよ」

今日はここまで

―――――――――――

-シャンパーニの塔・最上階-

盗賊「…………」


~~~~~~~~~~~

勇者『今は自分の心配をしてあげて』

~~~~~~~~~~~

盗賊「…………」

~~~~~~~~~~~

勇者『今度は僕が救う番だ』

~~~~~~~~~~~

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「……違う……」

盗賊「……違うよ、勇者……」


…………
……

―――――――――――

-十年前・アリアハン-

タッタッタッ

盗賊(小)『わぁ……きれいなところ…』

?『……アリアハンっていうところなんだ』

盗賊『あっ、パパ』

盗賊父・前カンダタ『船の碇もちゃんと下ろせたよ。じゃあ行こうか』

盗賊『うん』

テクテク…

盗賊『ねぇパパ、ここでは何をするの?』

盗賊父『…………』

盗賊『わるい人、やっつけるの?』

盗賊父『…………』

盗賊父『もうすぐ、わかるさ』

盗賊『……?……うん』

テクテク……

-ルイーダの酒場-


ガヤガヤ……

客『ルイーダちゃーん、こっちにロマ一丁追加ねー!』

客『ルイーダちゃん、サラダ一つー』

ルイーダ『はいはーい!』

客『ルイーダちゃんは偉いねえ、こんなに若いのに店を持つなんて』

客『ルイーダちゃん、店終わったらどっかいかない?』

客『あ、てめっ、何言ってんだこの野郎!』

ルイーダ『あはは、喧嘩しないでねー。追い出しちゃいますよー』

カランカラン

ルイーダ『あ、いらっしゃいま…』

スタスタ……

ルイーダ『せ…………』

客『なんだ?あの野郎、見かけねえ顔だな』

客『しかも酒場に子連れかよ……』

スタスタ……

ルイーダ『……カンダタさん……?』

盗賊父『…………久しいな、ルイーダ』

-ルイーダの酒場・店じまい後-

カランカラン……

ルイーダ『ありがとうございましたー!』

ルイーダ『……ふぅ…やっと終わり…』

ルイーダ『ごめんなさいね、待ってもらっちゃって』

盗賊父『いや、こちらこそすまないね。いきなり押しかけてきて』

ルイーダ『いいんですよ!お久しぶりです!』

盗賊父『以前私がアリアハンに来た時以来だから随分と久しいね……ルイーダも大きくなったな』

ルイーダ『あはは、あの時はまだ子供でしたからね』

盗賊父『はは……時の流れってのは早いよ、本当に』

ルイーダ『…………あの、そちらは』

盗賊父『娘だよ、私の。ほら、盗賊。挨拶しなさい』

盗賊『…………は、はじめまして……』

ルイーダ『やだ可愛い!!カンダタさんいつの間にこんな可愛い子を!!!!』

ダキッ

盗賊『う、うぅ///』カァァ

盗賊父『…………』

盗賊父『すまない、この子をちょっと宿で寝せてくるよ。すぐ戻る』

ルイーダ『はいはい、お酒冷やして待ってますね!盗賊ちゃんまたね!』

盗賊『……うん……///』

盗賊父『…………』

…………………………

…………………………

ルイーダ『…………え…………』

盗賊父『…………本当だよ……』

ルイーダ『……』

盗賊父『……サマンオサの旦那は行方知れず、ホビットの旦那と私を置いて、オルテガはネクロゴンドに旅立ったよ』

ルイーダ『…………』

盗賊父『ホビットの旦那はカタギの人間だ……サマンオサの旦那の二の舞になる事を恐れたんだろうさ』

盗賊父『私は、元々盗賊でオルテガを陰から支える役だった』

盗賊父『…………しかし、今回ばかりは単身でネクロゴンドに向かうオルテガについていくつもりだったんだ』

盗賊父『……でもあいつ、それを拒みやがった……』

盗賊父『…………俺に娘がいる、って理由だけでな…………』

ルイーダ『…………』

盗賊父『……笑えるよ……自分にも子供が居るくせに……』

盗賊父『……でも一番笑えるのは、それを、拒まれた事を、娘とまだ一緒にいられる事を喜んだ自分が確かにいたって事だ……』

ルイーダ『…………カンダタさん……』

盗賊父『…………でも……』

盗賊父『…………オルテガに、ある事を頼まれたんだ』

ルイーダ『……?』

盗賊父『……その頼まれ事は、いつ終わるかもわからない……』

盗賊父『…………今回アリアハンに来たのは、ルイーダにお願いがあってきたんだ』

…………
……



―――――――――――

-宿屋-

ガチャ……

盗賊『……すー……すー』zzz

ナデ……

盗賊『……ん……』

盗賊『…………ぱぱ…………?』

盗賊父『…………』

盗賊『……どうしたの……?』

盗賊父『…………』

盗賊『……なんでないてるの?……』

盗賊父『……盗賊…………すまない……』

盗賊父『しばらく、お別れだ』

盗賊『…………』

盗賊父『今日から、お前はここで暮らすんだ』

盗賊父『ここは平和だから、何も心配する事はない……』

盗賊『…………やだっ…………やだよっ』

盗賊父『…………』

盗賊『……ぱぱとお別れなんてやだよ……』

盗賊父『…………』

ナデ……

盗賊父『大丈夫、安心しなさい。……私はいつも傍にいるよ』

盗賊『やだっ!ぱぱ……』

盗賊父『…………すまない』

盗賊父『…………ラリホー……』

パァッ……

盗賊『…………ぱ……ぱ……』

盗賊『…………ど……して…………』

盗賊父『……絶対』

盗賊父『絶対、迎えにくるよ』

盗賊『…………ぱ…………ぱ』

盗賊『…………』

盗賊『……すー……すー……』zzz

盗賊父『…………』

スッ……

盗賊父『…………この子に』

盗賊父『……ルビス様の幸がありますよう……』

…………
……



…―――――そうして、パパは私の前からいなくなった

―――――――――――

-ルイーダの酒場-


カランカラン

盗賊『……いらっしゃいませ……』

客『あれ?何この子』

客『ルイーダちゃん、新しい子雇ったの?』

客『まだ子供じゃないか!』

ルイーダ『その子、私の友人から預かってる子なの。いいって言ってるんだけど手伝うってきかなくて……』

客『でもさっきからよくやってるよその子』

客『助かってんじゃないの?ルイーダちゃん!』

客『ルイーダちゃんドジなところあるしな!ガハハ!』

ルイーダ『…………ロマとポルトガ、十丁追加、ね♪まいどー☆』

客『ちょっ』

アハハハハ

盗賊『…………』

ルイーダ『…………』


…………
……

―――――――――――

カランカラン……

ルイーダ『またいらしてねー♪』

ルイーダ『…………ふう、今日はありがとうね。盗賊』

盗賊『…………いえ、大丈夫です……』

ルイーダ『でも、店なら大丈夫なのよ?あなたは外で遊んでても……』

盗賊『…………ううん、大丈夫です……』

ルイーダ『……』ウーン

盗賊『…………』

ルイーダ『……まぁとりあえず明日は休みにするからさ、街を散歩でもしておいでよ』

ルイーダ『まだちゃんと見て回ったこと無いでしょ?良い所よ!』

盗賊『…………』

盗賊『…………はい…………』

ルイーダ『…………』

ルイーダ『……(笑ってくれないなぁ……)』


…………
……


-アリアハン・街中-

テクテク…

盗賊『…………』

~~~~~~~~~~

……――――絶対、迎えに来るよ――――……

~~~~~~~~~~

盗賊『…………』

盗賊『……(いつ、むかえにきてくれるのかな)』

盗賊『……(あした?あさって?)』

盗賊『…………』

盗賊『…………(私がわるいこだから、捨てられたのかな)』

盗賊『…………』

ワーワー

盗賊『…………?……』

盗賊『…………けんか…?…』

盗賊『…………(子供たちが、けんかしてる)……』

ガスッ  ドガッ

子供A『嘘つき!嘘つき!』

子供B『どうせ戻ってこないってうちの母ちゃんいってたぞ!』

子供C『バーカバーカ!!!!』

盗賊『…………(…けんかっていうより、いじめてる?)』

?『………っ!…』

ガスッ  ガスッ

子供A『本当の息子じゃないくせにー!』

子供C『だからそんなに弱いんじゃねーの?』

子供B『どうせお前の父ちゃんも弱いから戻ってこねーよー!』

?『…………うるさい!!』

子供B『うわー!拾い子がきれたー!』

子供C『やっちまおーぜー!』

子供A『口だけオルテガの嘘つき息子ー!!!!バカ勇者ー!!!!』

盗賊『…………!?……』

ドガッ  ガスッ

勇者『とうさんはくちだけじゃない!つよいんだ!』

盗賊『……(あの子、オルテガおじさんの……!?……)』

勇者『とりけせ!!とうさんをわるくいうな!!!!』

勇者『とうさんは、もどってくるんだ!』

勇者『ぜったいぜったい、もどってくるんだ!!!!』

盗賊『…………!!……』

ガスッ ガスッ

子供C『絶対戻ってこねーよー!馬鹿じゃねーの!?』

盗賊『…………ッ!!…』

スタスタ……

子供B『どうせ今頃魔物に食べられてるぜー!!』

子供A『ぎゃははは!!!!』

勇者『…………ッ!!』

ヒュンッ

子供C『アオッ』

子供B『え?』

子供A『へ?』

ドサッ

勇者『…………?……』

子供C『……ありのまま起こった事を話すぜ……いつの間にか地面に仰向けになって寝ていた……何を言って(ry』

子供A『な、何だお前!!』

子供B『あっ、こいつ!!』

盗賊『…………』

子供B『ルイーダの所に最近来た盗賊の子供だ!!』

子供A『と、盗賊……?』

子供B『うわぁ!!殺される!!!!』

ダッ

子供A『ひいいっ!!!!』

子供C『ま、待てよ!!!!』

タッタッタッタ……

勇者『…………と、とーぞくの……』

盗賊『…………』

ダダダダダダ……

?『こら―――――!!』

盗賊『……?……』

戦士『ゆーしゃをいじめるな――――!!!!』

魔法使い『なーっ』

武道家『ぶっとばすぞ!!!』

勇者『み、みんな!』

盗賊『…………』

武道家『ゆうしゃ、だいじょうぶ?』

勇者『みんな、どうして』

魔法使い『ゆーしゃがいじめられてるってきいたからっ』

戦士『おまえかー!ゆーしゃいじめてたのはー!!』シャー!!

盗賊『…………』

勇者『せんし、ちがうよ!そのひとは……』

スタスタ……

勇者『あ……』

盗賊『…………』スタスタ

戦士『まてー!くびおいてけー!』

魔法使い『わぁっ、ぶっそうだねっ』

盗賊『…………』スタスタ

盗賊『…………(……1人なのかなって思ったけど……)』

盗賊『…………(あなたには、友達がいるんだね)』

盗賊『…………(…………うらやましいな……)』

…………
……


―――――――――――

-ルイーダの家-

カチャ……

盗賊『……ごちそうさまでした……』

ルイーダ『うん、お粗末さま♪』

ルイーダ『ところで、今日はどうだった?良いところだったでしょ?』

盗賊『…………はい……』

盗賊『…………』

盗賊『…………あの……』

ルイーダ『ん?どうしたの?』

盗賊『…………オルテガおじさんのこどもに会いました……』

ルイーダ『あら、勇者くん?女勇者ちゃん?どっちかしら』

盗賊『…………おとこのこでした…………』

ルイーダ『じゃぁ勇者くんね!可愛い子でしょー!』

盗賊『……………………』

ルイーダ『…………どうかしたの?』

盗賊『…………いえ……』

~~~~~~~~~~

子供『ルイーダの所に最近来た盗賊の子供だ!!』

~~~~~~~~~~

盗賊『…………すみません……』

ルイーダ『んもう、盗賊は謝ってばかりなんだから!』

盗賊『…………すみません…………』

ルイーダ『…………盗賊?』

盗賊『………………本当に、すみません…………』

ルイーダ『…………』

…………
……

―――――――――――


-アリアハン・街中-

ガスッ ドスッ

勇者『……うっ……!!』

子供B『この前はお前のせいでとんだ恥かいたじゃねーか!』

子供C『うらっ!!うらっ!!』

勇者『……ぐっ……!!』

子供A『今日はさすがにこねーよな!うらっ!!』

ガスッ

勇者『やめっ……!!』

ヒュン!

子供ABC『ゥワァ―――――オ!!!!』

ドサッ

勇者『…………あっ……』

盗賊『……………………』ゴゴゴゴゴゴ

子供A『ウワー――――!!!!出たー!!』

子供B『盗賊だ―――――!!!!』

子供C『首取られる―――――!!!!』

ダダダダダダ……

勇者『…………』

盗賊『…………』

勇者『…………あ、あのっ……』

スタスタ……

勇者『…………あ…………』

盗賊『…………』スタスタ…

タッタッタッタ

戦士『ゆーしゃ!だいじょうぶか!!』

魔法使い『いたいとこある?おまじないする?』

武道家『あ!』

盗賊『…………』スタスタ

武道家『あの女!!またあいつにやられたの!?』

勇者『ち、ちがうよ!!あのひとはたすけてくれたんだよ』

武道家『?じゃあなんでにげるようにかえってくの?』

勇者『…………なんでだろう…………』

…………
……

……………………




勇者『…………(あれからなんかいもあのひとにたすけられました)』

子供A『とりゃー』

子供B『えい』

子供C『いじめてやるー』

ポカポカ

勇者『…………(さいきんだんだんいじめっこのようすがおかしくなってきました)』

子供B『せーい』ソワソワ

子供A『りゃー』ソワソワ

子供C『ぱーう』ソワソワ

ポカポカ

勇者『…………(なんだこれ)』

スタスタ……

子供ABC『!!!!』

勇者『あ……』

盗賊『…………』スタスタ…

子供ABC『キタ―――――――――――――――!!!!!!』

勇者『!?』ビクッ

盗賊『…………』

ヒュン

子供ABC『足払いキタ――――――――――――――――――――!!!!!!!!!』

ドスゥーン

子供ABC『女王様…………』ウットリ

勇者『…………(きぜつしている)』

スタスタ……

勇者『…………あ』

盗賊『…………』スタスタ…

勇者『…………』

勇者『…………また、おれいをいいそびれちゃった…………』

-ルイーダの店-

カランカラン……

盗賊『…………ただ今戻りました……』

ルイーダ『あら、おかえり。勇者くん大丈夫だった?』

盗賊『…………はい……』

ルイーダ『ここなら色んな人が集まるから勇者くんが苛められてればすぐわかるから便利よね』

盗賊『…………仕事のとちゅうでぬけだしてすみません…………』

ルイーダ『だからいいのよー。気にしなくて。っていうか貴女がんばり過ぎよ?』

客『そうだぜ?盗賊ちゃん。だってルイーダちゃんより働いてるんじゃない?』

ルイーダ『っさい!!』

盗賊『…………』

ルイーダ『…………?盗賊?』

盗賊『…………すみません…………』

ぽてんっ

ルイーダ『ちょ、盗賊!!??盗賊!!!!』

客『きゃぁぁ!!盗賊ちゃんが倒れたわ!!』

客『!!医者だ!医者と神父よべ!!』

客『この中に僧侶職の奴はいるか!!?』

ワーワー

盗賊『………っ…』ハァ…ハァ…

…………
……

-ルイーダの家-

ガチャッ

ルイーダ『あ、神父様!!あの子は、あの子は大丈夫ですか!?』

神父『えぇ、どうやら疲れが溜まっていただけのようです。』

神父『なれない土地で馴れない人々に囲まれていますからね……仕方ない事ではあります』

神父『でも回復呪文を唱えておいたので体力は回復しましたから2、3日もすれば呪文でどうにもならない熱も引いて良くなりますよ』

ルイーダ『…………良かった……』

神父『ルイーダが気に病む事はありませんよ。疲れと言っても精神的なものですから』

ルイーダ『…………でも、どうにもしてあげられなかったのも事実ですから…………』

神父『…………まぁこれからも優しく接してあげてください』

ルイーダ『はい……。今日は本当にありがとうございました』

神父『あ、お礼なら私にではなくこの子に言ってあげて下さい』

ルイーダ『え?』

神父『ホラ、ちゃんと挨拶しなさい』

ヒョコッ

?『……こ、こんにちわ……』

ルイーダ『あら可愛い、こんにちわ』

ルイーダ『神父様、この子は?』

神父『昔、私が引き取った子でね。そういえばルイーダの所に連れてくるのは初めてでしたね』

神父『この子は回復の呪文の才に長けていまして、盗賊ちゃんを癒してくれたのもこの子です。ホラ、自己紹介しましょう?』

?『は……はい、そ、僧侶っていいます…はじめまして』

ルイーダ『…………僧侶ちゃん、か。はじめまして。私はルイーダ』

ルイーダ『…………盗賊を助けてくれてありがとう』

僧侶『…………えへへ///』テレテレ

神父『うふふ、マジプリティ。マジプリティですよ僧侶』

ルイーダ『し、神父様?』

神父『失礼。取り乱しました。それでは私たちはこれで』

ルイーダ『はい、今日は本当にありがとうございました』

ガチャ………バタン

ルイーダ『…………』

ルイーダ『……盗賊……』

…………
……

-アリアハン・街中-

子供A『…………りゃー』

子供B『…………』

子供C『…………てい』

勇者『…………』

子供B『…………』

子供C『…………』

子供A『…………ハァ…………』

勇者『…………あのおねえちゃん、こないね』

子供ABC『…………』

スタスタ…

子供B『…………かえろかえろ』

子供C『……お腹へったなぁ……』

子供A『…………ハァ……』

勇者『…………』

勇者『…………どうかしたのかな』

勇者『…………』

勇者『!そうだ!』

タッタッタッタ…

…………
……


-ルイーダの酒場-

カランカラン……

ルイーダ『はい、いらっしゃーい』

勇者『ルイーダさん!』

ルイーダ『あら!勇者くん!!お久しぶりね!相変わらず可愛いわね~』ウフフ

ナデナデ

勇者『んへへ……あ、ちがうの』

ルイーダ『え?』

勇者『あの、えと、しろいかみのおねぇちゃん、いる?』

ルイーダ『しろいかみ…………?……あぁ、盗賊の事ね?』

ルイーダ『ちょっと今病気なのよ。だから私の家で寝てるわ』

勇者『だいじょうぶなの!?』

ルイーダ『え?うん、大丈夫よ』

勇者『…………』

ルイーダ『…………』

ルイーダ『……お見舞い、行ってくる?』

勇者『!!うん!』パァァ

ルイーダ『じゃあ、コレ。家の鍵よ。二階の私の部屋で寝てるわ』チャリン

勇者『うん!ルイーダさん、ありがとう!いってくる!』

ルイーダ『はいなー』

タッタッタッ…

ルイーダ『…………』

ルイーダ『……元気出してくれるといいなぁ……』


…………
……


―――――――――――


…――――ぱぱ

盗賊父『大丈夫、ちゃんと迎えに来るよ』

……―――――ぱぱ

盗賊父『いい子にしてるんだぞ、盗賊……』

……―――――やだ……行かないで

盗賊父『ちゃんと』

……―――――やだ、やだ

盗賊父『“私達”は、いつでもお前を見守ってるよ』

……―――――やだ

……――――隣にいるのはだれ?

……―――――まま…?

……―――――ぱぱ?まま?

盗賊父・母『…………』

…………―――――やだ、行かないで、行かないで

盗賊父・母『…………』

…………―――――置いていかないで

…………―――――わたしを、置いていかないで!!!!

ガバァッ!!

盗賊『ハァッ……ハァッ……!!』

盗賊『…………』ゼェゼェ

盗賊『…………夢……』ゼェゼェ

盗賊『…………』

盗賊『…………』

盗賊『…………ぱぱ…』

盗賊『…………ぱぱ……!!』ポロ…

~~~~~~~~~~


ガチャッ

勇者『おじゃまします……』

勇者『にかいの……ルイーダさんのへや……』

トコトコ……

勇者『ねむってるかな…………』

『……!……!』

勇者『……なにかきこえる』

『……!…!…』

勇者『ルイーダさんのへやだ』

勇者『おきてるのかな……』

カチy

『……ぱぱ!!!!……ぱぱぁ!!!!』

勇者『!!!!』ピタッ

『……やだっ!!!やだよぉっ!!!!』

勇者『………!!…』

『……置いていかないで…早く帰ってきてよぉ…!!!!』

盗賊『……ぱぱぁっ!!!!……やだよぉ!!!!……』ポロポロ

盗賊『……ぱぱ…!!………ううぅっ…!!!!…』ポロポロ

盗賊『……ぱぱ…!!…………ぱぱ!!…』ポロポロ…

盗賊『なんで…………!!』ポロポロ…

盗賊『なんでわたしをおいてったの…………』ポロポロ…

盗賊『…………』グスッ…グスッ…

盗賊『…………』ポロポロ…

盗賊『…………』ポロポロ…

盗賊『………やだよぉ……』グスッ…グスッ…

盗賊『…………おいてかないでぇっ………!!!!………』ポロポロ…

ガチャ…

盗賊『っ』ビクッ

盗賊『…………』グスッ…グスッ…

盗賊『…………』グスッ…

盗賊『…………だれ…………?』

ギィ……

勇者『…………』

盗賊『…………!』

盗賊『……(オルテガおじさんの……)』

テクテク…

盗賊『…………』ポロポロ…

勇者『…………』テクテク…

ギュッ……

盗賊『…………?』ポロポロ…

勇者『…………』

盗賊『……わたしを……こわがらないの……?』

勇者『…………』フルフル

勇者『………っ…』ポロポロ…

盗賊『…………』グスッ

盗賊『…………わたしといっしょに…ないてくれるの……?』

勇者『………グスッ…』ポロポロ…

盗賊『…………』

ナデ……

盗賊『……いい子だね……』グスッ

勇者『…………』ギュッ

盗賊『…………あなた……、おなまえは…………?』グスッ

勇者『…………勇者……』グスッ…

盗賊『…………そっか……』ポロポロ…

ギュッ……

盗賊『……ごめんね、勇者……』ポロポロ…

ギュゥ…

盗賊『…………もうすこし、こうさせて……』ポロポロ…

盗賊『…………もうすこしだけ、泣かせて…っ…』ポロポロ…

勇者『…………おねぇちゃん……』ポロポロ…

盗賊『…………………どうしたの…………?…』グスッ

勇者『おねぇちゃんも…………』

勇者『おねぇちゃんも……おとうさんがいなくなって…………さびしかったの…?』ポロポロ…

盗賊『…………』

盗賊『…………あ…………』

盗賊『(……そうか……)』

盗賊『(……そうだよね……)』

盗賊『(……このこも……ぱぱに…オルテガおじさんに…………)』

勇者『…………っ』ポロポロ…

勇者『こわいよねぇ………やだよね……!』ポロポロ…

ギュウゥ……

勇者『……やだよっ……!!』ポロポロ…

盗賊『…………』グスッ…

盗賊『(…………わたしだけじゃないんだ)』

盗賊『(……わたしだけじゃなかったんだ……)』

ギュウッ

勇者『………っ…』グスッ

盗賊『…………もう、泣き止もう……?』グスッ

勇者『…………』グスッ

盗賊『……わたしにも…いまはルイーダさんがいるし、勇者もかぞく…いるんでしょ?……』

勇者『………グスッ…』コクッ

盗賊『……だから…いまのかぞくと、ぱぱを待とう?…』グスッ

勇者『…………っ…』コクッ

盗賊『…………わたしも……』

盗賊『…………わたしもいっしょにいるから、さびしくないよ……?』

勇者『…………!』

ぐしぐし

勇者『……うんっ……!!』ニコッ

盗賊『…………ふふ』ニコ

…………
……

-アリアハン・街中-

勇者『まってー!ぎぶぎぶ!!』

子供B『キャメルクラッチ!!』

勇者『いたいいたい!そういうのなしっていったのにー!』

子供A『まぁそう堅い事いうなって!』

子供C『本気ではやってないから!』

勇者『いやぁ―――っ!!』

?『……うりゃ…』

ヒュン!!

子供ABC『キタ――――――――――!!』

ズッテーン

勇者『あ!おねぇちゃん!』

盗賊『……勇者、だいじょぶ?』

子供A『女王様、今日の足払いも最高っす!』

子供B『またお願いしまっす!』

子供C『それでは失礼しまっす!!』

タッタッタッタ…

盗賊『……だからって勇者をいちいちいじめないで…あと女王様はやめて…』

勇者『おねぇちゃ―――ん!!』

ダキッ

盗賊『……あっ……ふふ、よしよし……』

勇者『えへへー』

タッタッタッタ……

戦士『だいじょぶか、ゆ……あ!!』

武道家『な、なにあまえてんのよー!』

魔法使い『あー、とーぞくだーっ』

勇者『あ、お、おねぇちゃん!は、はなしてっ///』

盗賊『…………』

ギュウッ

戦士・武道家『『!?』』

盗賊『……勇者は独り占め……』ニヤーリ

勇者『ちょ、おねぇちゃん!///』カァァ

魔法使い『やぁ――――!!わたしもとーぞくとゆーしゃとぎゅってするのーっ!!』

ギュウッ

盗賊『……魔法使いも、ぎゅ。……』

魔法使い『にへへへー。あったかいねぇ』

戦士『わ、わたしもー!!』

武道家『え!?じゃ、じゃあわたしも!』

ギュウゥ

勇者『み、みんな、くるしい……』

魔法使い『にへへっ』

戦士『……っ』ギュウゥ

盗賊『……みんな、ぎゅ。……』フフ

武道家『なんだこれ』

…………
……

-アリアハン・街中-

スタスタ……

盗賊『……次は、魚屋さん……』

盗賊『………あ…』

勇者『…………』スタスタ…

盗賊『……勇者だ……』

タッタッタッタ…

盗賊『……勇者っ!…』

勇者『?あ、おねえちゃん!何してるの?ってお使いか。見る限り』

盗賊『……うん、もうあと一件だけだけどね。勇者は…?…』

盗賊『………(よく見たら、傷だらけ)…』

勇者『あ、うん。ちょっと遊んでたんだ』

盗賊『……そうなの…?…』

勇者『うん。じゃ、僕まだ色々やらなきゃいけない事あるからっ』

盗賊『……あっ…』

勇者『またね!』

タッタッタッ

盗賊『…………』

盗賊『……(……勇者も、もう11歳だもんね、お年頃だよね……)』

盗賊『…………』

盗賊『……(でも……ちょっとは、特訓の事、隠れて修行してるって事、言ってくれてもいいんじゃないかな……)』

盗賊『……寂しい……』

…………
……

-アリアハン・郊外-


タッタッタッタ……

盗賊『……ハァ……ハァ…』

盗賊『……(……この辺だと、思うんだけど……)』

ブンッ ブンッ

盗賊『……!!…』

盗賊『……こっち…!!…』

タッタッタッタ……

盗賊『……ハァ……ハァ…………あ!……』

盗賊『………勇者!!!!…』

勇者『……ふっ…!!!!………ふっ…!!!!…』

ブンッ ブンッ

盗賊『………!!!!!…』

盗賊『………何やってるのっ!!!!…』ダッ

ピタッ

勇者『…………え?あ……いたんだ……』

盗賊『……何やってるの!?…神父様に、あと1ヶ月は安静にって…!!!!…』

勇者『あはは、大丈夫だよ。平気平気』

盗賊『………っ!!!!…』

バチンッ

勇者『………っ…』

盗賊『……バカッ…!!!!…』

ギュッ

盗賊『……バカ……』

勇者『…………』

盗賊『…………』

盗賊『……勇者まで……』ポロ…

盗賊『……体壊して、勇者までいなくなっちゃったら、どうするの……!!!!……』ポロポロ…

勇者『…………』

盗賊『………っ…!!!…』ポロポロ…

勇者『……お……』

勇者『はは、大げさだなぁ。大丈夫だって』

勇者『今日だって少し調子が良かったから素振りしてただけだし』

勇者『心配しすぎなんだよ。“盗賊”は』

盗賊『…………』

盗賊『……え……』

……―――――その時、わたしは分かった

勇者『昔からそうなんだから……皆も心配しすぎだよ』アハハ

勇者『このままじゃ僕なんにもできなっちゃう』

……―――――『おねぇちゃん』じゃなく、『名前』で呼ばれた時

勇者『…………強くなれなくなっちゃうんだ』

……―――――勇者が私を、必要としなくなった時

盗賊『…………』ポロポロ…

……―――――あぁ、そうか

盗賊『…………っ!!……』ポロポロ…

……―――――私は、勇者を救ったつもりでいて

盗賊『……ッ!!!!……』ポロポロ…

……―――――実は

勇者『……泣かないで……』

ギュッ

勇者『……泣かないで…僕が、僕が何がなんでも守るから』

勇者『…………今までの分、守れなかった分も、守るから』

勇者『…………盗賊』



……―――――私の方が、救われていたんだ

-シャンパーニの塔・最上階-

盗賊「…………」グスッ

盗賊「(……違うんだよ…勇者…)」

盗賊「(……私の方が、救われてばっかりなんだよ……!!)」ポロポロ…

盗賊「(……初めて会ったときも、その次も、今日に至るまで……)」

盗賊「(……私の方が、助けられてばかりなの………!!!!!………)」

盗賊「…………」

盗賊「……何やってるの、私……」

盗賊「……泣いてる、場合じゃない……」

ギュッ!!

盗賊「………勇者…」

盗賊「(……だから、お願い……)」

ダッ

盗賊「…………っ!!!!……」タッタッタッタ

盗賊「…………私に……」タッタッタッタ

盗賊「…………」タッタッタッタ

盗賊「……これからは私に、あなたを救わせて…!!!!…」タッタッタッタ…

タッタッタッ…

…………
……

-シャンパーニの塔・最上階下・屋外-


ゴシャァッ!!!!

痛恨の一撃!

勇者「がぁっ…!!!!…」

ドシャッ

カンダタ「なんだよ?意気込んできた割には全然大した事ねぇな?」

カンダタ「時間の無駄だ…………てめぇら、行くぞ」

カンダタ子分B「うっす」

カンダタ子分C「でもいいんすか?」

カンダタ「あ?」

カンダタ子分A「あいつ、まだ立ち上がってきてますよ」

ザッ…

勇者「…………」ヨロ…

カンダタ「…………この野郎」

スタスタ……

カンダタ子分E「?親分?」

カンダタ「フッ!!!!」

ガッ!!!!

勇者「っ!!!!」

ガッ!!!!

ガッ!!!!

ガッ!!!!

カンダタ子分B「うっわ……エグ……」

カンダタ「っらぁ!!!!!」

ゴシャアッ!!!!

勇者「っっ!!!!!」

ドシャァッ

カンダタ子分D「うぇ……ありゃ死んだな……」

カンダタ「…………行くぞ」

カンダタ子分A「う、うす」

カンダタ子分B「……あ……」

カンダタ「…………あぁ?」

チャキッ……

勇者「…………」ヨロッ…

カンダタ「…………まだ剣を構えんのか」

カンダタ「…………」

カンダタ「…………死にたいらしいな」

ジャコッ……

カンダタ「もう手加減しねぇよ」

カンダタ「真っ二つにしてやらぁ」

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

痛恨の一撃!!

勇者は倒れた!!

勇者「…………」

カンダタ子分C「うわ……!!」

カンダタ子分D「もうありゃ駄目だ……左腕が千切れちまってるよ」

カンダタ子分A「ってかもう死んでるんじゃね……?」

カンダタ「…………」

勇者「…………」

カンダタ「…………死ん…」





ギロッ





カンダタ「…………!!?」ゾッ

勇者「…………ッ…………」

カンダタ「…………」

カンダタ「……そんな体になってもまだやる気か……?」

勇者「…………お前は…………」

勇者「…………盗賊を…傷つけたんだ……」

勇者「………今まで…………さんざん…………父の帰りを待って…………」

勇者「……それを信じてきた…………盗賊の……気持ちを……」

勇者「……………………踏みにじったんだ…………」

勇者「…………お前が……盗賊の……父を殺して…………」

勇者「…………」

勇者「…………お前は……」

勇者「………それを笑ったんだ…………!!!!」

グッ…………

カンダタ「…………!!!!」

カンダタ「まだ……立ちやがるか…………!!!!」

ヨロッ…

勇者「…………まだ」

勇者「まだ、右腕が、残ってるぞ…………カンダタァッ…………」

勇者「まだ、立てるぞ………!!!!…」

カンダタ子分B「ひっ……!!!!」

カンダタ子分E「親分!アイツ狂ってるよ!!!!」

カンダタ「…………」

カンダタ「…………惜しいな」

カンダタ「違う形で会ってたら、子分にしてやりたかったぜ」

スタスタ……

カンダタ「…………だが」

ガシッ

勇者「…ッ」

カンダタ「もうテメーは駄目だ。俺に牙を剥いた」

ブンッ!

勇者「!!!!!!」

カンダタ「落ちな。真っ逆さまにな」

ヒュウウウ…………

カンダタ「…………行くぞ、てめぇら」

カンダタ子分ズ「「「う、うす!!」」」

「……待って!!!!……」

カンダタ「あん?」

ザッ

盗賊「ハァッ……ハァ……」

カンダタ「…………てめぇか」

盗賊「…………っ…」

盗賊「………勇者は…」

盗賊「……勇者はどうしたの…!!!!…」

カンダタ「あぁ?アイツか」

カンダタ「死んだよ。殺した」


盗賊「…………」


盗賊「      え ? 」

カンダタ「ホラ、そこに血の水溜りあるだろ」

カンダタ「そこでこの斧の錆びにして、こっからブン投げて落としてやったよ」

カンダタ「今、地上に降りれば愉快な肉塊が見れるぜぇ」



ガッ!!!!



カンダタ「!!!!!????」

盗賊「  お、お前ッ  お前ッ!!!!  」

ガッ!!!!ガッ!!!!

カンダタ「なっ!!なんだこの女!!素早ッ……!!!!くっ!!!!」

ガッ!!!!ガッ!!!!

盗賊「  勇  者をッ  なん、で勇者をッ !!!!!」

カンダタ「…………ッ!!このッ!!」

盗賊「  よ、くもっ  !!!! 」

ガッ!!

盗賊「……っ…!!!!…」

カンダタ「…!?」

ドサッ

カンダタ子分A「大丈夫ですか?親分」

カンダタ子分B「こいつは俺らが取り押さえときますんで」

盗賊「……はなっ…離してッ!!!!………私は…そいつにッ…!!!!!……」

カンダタ「…………ふぅ、すまねえなお前ら」

カンダタ「……しかし油断ならねぇな…流石はカンダタさんの娘ってところか…………」

盗賊「…………お前が……!!その名をッ………呼ばないで…!!!!」

カンダタ「まぁそういがむないがむな!」

カンダタ「すぐにあのガキの所に連れてってやるからよ」

盗賊「…………ッ…」

盗賊「…………っ!!…………」ポロポロ…

カンダタ「お?なんだ?死ぬのが怖いか?」

盗賊「…………守れなかった…………!!!!」

盗賊「…………守れなかった!!!…………」

盗賊「…………私が、グズグズしてたから…………!!!!」

盗賊「…………守れなかった…………!!!!!!」

カンダタ「…………」

カンダタ「おい、お前ら」

カンダタ子分ズ「は、はい!」

カンダタ「そいつ、突き落とせ」

カンダタ子分B「!!……うす!!」

グイッ

盗賊「……ッ」

―――――――――――

勇者『おねぇちゃん!!』

―――――――――――


盗賊「…………ッ!!!!…………」


―――――――――――

勇者『さびしかったの?』

―――――――――――


盗賊「…………!!!!…………(勇者…………!!!!!!)」


―――――――――――

勇者『………守るから』

―――――――――――


ポロポロ…

盗賊「…………ゆーしゃぁ…!!!!……ごめんねぇ…!!!!…」

カンダタ子分C「ひ、ひいいっ!!!!」

盗賊「………?…」

カンダタ「!!??どうした!!?」

カンダタ子分A「あ…………あそこ!!」

カンダタ子分B「あの淵の所…………!!!!」



カンダタ子分C「誰かしがみついてますっ……!!!!」



カンダタ「な!?…………!!!!」

盗賊「…………!!!!??…………」

カンダタ子分E「親分!!俺もうやだ!!アイツ化けもんだよぉ!!!!」

カンダタ子分A「きっと這い登ってきたんだ!!!!」

カンダタ子分C「もうとっととズラかろうぜ!!!!」

カンダタ「お前ら!!落ち着け!!!!ちゃんと確認して来い!!!!」

カンダタ子分B「で、でもぉっ!!!!」

カンダタ「っ!!!えぇい!!!俺が行く!!!!お前らはそいつ見てろ!!!!」

スタスタ……

カンダタ(ありえねぇ……!!ありえねぇ!!)

カンダタ(ありえねぇ!!あの状況から這い上がってこれるワケがねぇ!!!!)

カンダタ(もし這い上がってこれるやつがいるんなら……そいつは化け物だ!!!!)

カンダタ(化け物…………)

~~~~~~~~~~

ギロッ

勇者「…………!!……」

~~~~~~~~~~

カンダタ「」ブルッ

カンダタ(いや!!そんな筈はねぇ!しっかりしろ!)

ザッ

カンダタ「…………」

カンダタ「…………これは……!!!!!!!」

ブラ・・・

カンダタ(これは…………!!!!さっき俺が切り落としたアイツの左腕!!!!)

ネバッ

カンダタ(粘着力が強い“何か”で、淵にくっつけられてやがる!!!!)

カンダタ(誰がこんな…………!!!!アイツがあの瀬戸際で…………?いや、考えにくい!!!!)

カンダタ(何だこれは…………!!!!まさか罠か!!!??)クルッ!!

カンダタ「おい!!お前ら!!!!」

カンダタ子分C「は、はい!!」

カンダタ「何も変わったことはねぇな!!??」

カンダタ子分D「はい!!ありません!!」

盗賊「…………?……」

カンダタ「…………」

カンダタ(何にしてもココを早く離れたほうがいいな……)

カンダタ「よし、お前ら!その女をここから早く突き落として……」

「させねぇよ」

カンダタ「……あ?何だ?」

カンダタ子分A「…………」

カンダタ子分B「…………」

カンダタ子分C「…………」

カンダタ子分D「…………」

カンダタ子分E「…………」

盗賊「…………」

カンダタ(…………何だ?)

カンダタ(今、“誰が”喋った?)

カンダタ(…………)

カンダタ(何だお前ら)

カンダタ(“何で俺の後方を凝視してるんだ”?)

「言ったろカンダタ」

カンダタ(後ろ)

「右腕は残ってるぞって」

カンダタ(後ろに)

「言ったろカンダタ」

カンダタ「…………!!!!」


バッ


勇者「絶対、許さないって……!!!」

カンダタ「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇええええぇぇぇぇぇぇぇえええぇぇええええぇぇ!!!!!!!????」


ズバァッッ!!!!


勇 者 の こ う げ き !!

会 心 の 一 撃 !!

カンダタ「っぎああああああああああああ!!!!!!!!」

ドシャァッ!!!!

盗賊「勇者!!!!!!!!」

勇者「今だ!!盗賊!!」

盗賊「ッ!!!!」

バッ

カンダタ子分B「あっ!!!」

カンダタ子分A「まっ……!!!!」

タッタッタッタ……

盗賊「……勇者!!!!大丈夫!!!??」

勇者「…………平気だよ…」

盗賊「……でも、腕が!!腕が……!!」

勇者「…………盗賊が平気で、良かったよ……」

盗賊「…………ッ!!!!」

ギュッ!!

盗賊「…………勇者ぁぁ!!!私、わたしぃっ!!!!!」ポロポロ…

勇者「…………」

盗賊「……勇者が死んだんじゃないかって……!!!!!もう…………だめかって…………!!!!」ポロポロ…

勇者「…………盗賊、一先ず、離れるんだ」

盗賊「…………ッ」グスッ

ザッ

カンダタ「…………ッッ!!!!っの野郎ォ…………!!!!」

カンダタ「てめぇ…………どうして上がってこれた……!!?」

勇者「…………お前のやり口は憲兵さんに聴いていてたんだ」

勇者「……落とし穴を多用して……相手を階下に落としたりして撒くってやり方さ」

勇者「それを聴いて、思いついたんだ…………コレをね」

カンダタ「!!!!っ…………それは!!!!」

勇者「運が良かったよ……この辺りにキャタピラーが生息してくれてて……」

カンダタ「キャタピラーの糸……!!!」

勇者「こんな事もあるかなって思って、回収しておいたんだ……本当に運が良かった」

盗賊「…………あの時の…!!!!…」

カンダタ「…………ッ!!でも、お前は虫の息だった筈じゃ……」

勇者「まさかお前らと一人で対峙する事になるとは思わなかったんだ…………」

勇者「だから……お前が“僕を片付けた”と思い込んでしまう状況を作るしか、道がなかったんだ」

勇者「お前にどうしても、一発入れられるようにするにはね…………!!!!」

カンダタ「…………!!!!」

勇者「あとは演技と運次第…………さすがに左腕を持ってかれた時は、どうしようかと思ったけどさ」

勇者「そして運良くお前が僕を投げ捨ててくれた……それからが大変だったよ」

勇者「この糸を使って、なんとかぶら下がって……こっそり懐に入れた左腕を糸の粘膜で塔の淵にくっつけて……」

勇者「あとは窪みに隠れて、機が熟すまで薬草で止血、回復……」

勇者「……そして、油断したお前に一撃をお見舞いする」

勇者「これを右腕一本でやらなきゃならなかったからね…」

勇者「……本当に、骨が折れたよ」

カンダタ「…………」

勇者「…………僕は凡人だからね」

勇者「こういう手でも使わなきゃ、お前に一発入れられなかったんだ……」

カンダタ子分B「…………」

カンダタ子分A「…………ど、どこが凡人だよ…………」

カンダタ子分C「化け物だ…………」

カンダタ「…………お前、名前は?」

勇者「…………勇者……」

カンダタ「…………お前、俺の子分にならねえか」

盗賊「…………ッ…………」

勇者「…………」

カンダタ「子分になれば、命は許してやるし色んな富もくれてやるぜ」

勇者「…………」

んべっ

勇者「…………ならないよ……バーカ」

カンダタ「…………満身創痍なのにまだ強がるか……ますます気に入ったぜ」

カンダタ「…………だがいいのか?」

ジャキッ

カンダタ子分A「…………!」

カンダタ子分B「…………っ」

カンダタ子分C「…………ッ!」

カンダタ子分D「…………!」

カンダタ子分E「…………」

カンダタ「…………お前ら、今、とんでもなくヤバイ状況なんだぜ?」

盗賊「…………っ!!…………」

勇者「…………」

勇者「…………お前は」

カンダタ「あ?」

勇者「お前は……僕が単にお前を殴るためだけにこんな事をしたと思ってるのか……?」

カンダタ「…………?」

勇者「……僕がだらだらと喋っていたのも、意味はないと思ってたのか?」

カンダタ「………」

カンダタ「……」

タッ……

カンダタ「…………まさか」

タッタッ…

カンダタ「まさか、お前」

タッタッタッタ…

勇者「…………言ったろ、僕は凡人で弱い」

タッタッタッタ!!!!

勇者「だけど……お前を許すつもりは無いんだ」

カンダタ「時間稼ぎをっ……!!!!」







ドカァ―――――ン!!!!!!!!!



カンダタ・子分ズ「「「!!!!!!!!?????」」」


武道家・戦士「「だらっしゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」


カンダタ・子分ズ「「「「きゃああああああああああああああああああ!!!!!なんか床から出てきたぁああああああああああ!!!!!!」」」」

武道家「だから言ったじゃない!!屋上行くなら階段探すより天井突き破ったほうが早いのよ!!!!」

戦士「最初さんざん迷ってたのお前じゃん!!!!」

カンダタ「お、お前ら……あんなに深い落とし穴に落としたのにピンピンしてやがるのか……!!!!」

カンダタ子分B「ってか何あの力!!」

カンダタ子分E「あばれざるかよ!!!」

武道家「」ぷっつーん

勇・戦「「あ」」

武道家「だれが猿畜生不細工女じゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」

ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

カンダタ子分「い、言ってなおごごごごごごごごごごべべべべべべべべあぁああああああああ!!!!!!」

ドシャァッ!!!!

カンダタ子分Eを倒した!!

カンダタ子分B「子分EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!」

ダッ

戦士「おっと、あんたは私だよ!」

カンダタ子分B「お、俺は何もッ!!」

戦士「……は?」ギロッ

カンダタ子分B「ひっ!!!!」ビクゥッ

戦士「……あんたらが」

チャキッ

戦士「あんたらが、盗賊を悲しませたんじゃねぇーかぁッ!!!!!!!」

ズゴシャァアッ!!!!!!

カンダタ子分B「ひぎぃああああっ!!!!!!」

カンダタ子分Bを倒した!!!!

盗賊「…………戦士…………!……」

タッタッタッタ…!!

カンダタ子分D「ま、また来た!!!!」

カンダタ子分C「ひいぃっ!!!!」

女勇者「戦士ちゃん!武道家ちゃん!!なんて滅茶苦茶な進み方するんだい!!」

魔法使い「みてるぶんにはおもしろかったよっ」

商人「やっと着きましたね……せっかく時間かけた塔を一階からやり直しってどんな罰ゲームですか」



ワイワイ

カンダタ「ぜ、全員集まりやがった……」

カンダタ(さっきまではどうせ集まってもただのメスガキだと思ってたかをくくってたが…………)

ゴクリ

カンダタ(ぜ、全員さっきの二人みてえな滅茶苦茶な強さだったら……)

遊び人「それよりも勇者ちゃんと盗賊だよ!!!!」

戦士「それもそうだ!あ、いた!おーい!勇者、盗賊!!」

商人「勇くん!盗賊ちゃん!何やってたんですか!?」

武道家「二人だけいつまでたっても落ちてこないから心配したのよ!!」

タッタッタッタ

女勇者「…………お義兄ちゃん、見た感じボロボロじゃないかい…………?」

僧侶「ゆ、勇者くん!!怪我はないですか!!??大丈夫ですか!!??」

盗賊「……僧侶!!!!早く来てっ!!……」

遊び人「……!?ど、どうかしたの?…………勇者……ちゃ……」


ブラ…

勇者「あはは……ごめん…………このザマだよ……」

僧侶「……………………」

商人「…………ゆ、勇くん…………う…………」

戦士「……………お前………腕が…………」

魔法使い「…………え…………」

遊び人「……………………き…………」

女勇者「……………………」

遊び人「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」




カンダタ「あれ…………これヤバイ雰囲気だよね」

カンダタ子分A「親分の糞野郎!やりすぎだよ馬鹿!!!!」

カンダタ「と、とりあえず逃げるぞッ!!!!!」ダッ

カンダタ子分A「は、はいっ!!!!」ダッ

魔法使い「べぎらまぁっ!!!!!!!!!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!

カンダタ子分A「ぎやああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

カンダタ子分C「うわああああああああ!!!!カンダタ子分Aが!!!」

魔法使い「ゆーしゃに……ゆーしゃにあやまってっ…………!!!!」

カンダタ子分C「ひっ!!!」

ゴシャアッ!!!!

カンダタ子分C「ゴエェッ!!」

カンダタ子分D「グギャァ!!」

商人「…………っ!!ゆるしませんっ…………!!!!」

遊び人「…………あんたたち……!!!!……よくも…………!!!!」

盗賊「……僧侶!!…勇者は大丈夫!?ちゃんと治る!!??…」

僧侶「…………っ!!安心して下さい…………」

僧侶「……切り傷などの簡単な傷以外で…“この”ホイミを使うのは初めてですが…」

僧侶「……絶対…絶対に治してみせます…!!!!」

勇者「……ごめん……」ゼェゼェ

僧侶「勇者くん……喋らないで!!」

勇者「……血が…いっぱい出たし…安心しちゃったから……少し、クラクラするんだ……」

勇者「……ごめんね、僧侶…」

僧侶「私のことは良いんです!!!!しゃべっちゃ…」

勇者「……『それ』使うの…辛いだろ……?」

僧侶「……!!!!……」

勇者「……ごめんね……」

僧侶「…………ばかっ……!!」

カンダタ「ひ、ひいぃっ!!!!」

女勇者「待ちなよ」

カンダタ「な、なんだお前ら!!!!滅茶苦茶だ!!!!」

ヒュンッ

ゴシャァッ!!!!

カンダタ「…ッッ!!!!!!」

ドサッ!

カンダタ(攻撃が見えなかった…………!!!!化け物だ!!!!)

女勇者「…………許さないよ?」

女勇者「盗賊ちゃんのお父さんを殺して、お義兄ちゃんの腕を奪って」

女勇者「それで逃げようなんて」



ジャキイッ!!!!

女勇者「…………絶対許さないんだからッ!!!!」

カンダタ「ひ……!!!!!!」

カンダタ「ま、待て!!!!何だ!!!!腕くらい!!!!」

カンダタ「見たところお前のところにも僧侶がいるじゃないか!!!!」

カンダタ「腕くらい回復呪文で元通りになるだろう!!??」

女勇者「…………うるさい!!」

ゴシャァッ!!!!

カンダタ「ぐあァッ!!!」

女勇者「お義兄ちゃんは…………!!!!お義兄ちゃんには…………!!!!」

ゴッ!ゴッ!

カンダタ「…………?」

ピタッ……

カンダタ「………?何…………」

女勇者「…………」

女勇者「…………効かないんだ…………」

女勇者「…………お義兄ちゃんには、回復魔法は……魔法は効かないんだ…………!!!!」

カンダタ「…………え?…………」

女勇者「…………」

女勇者「…………お義兄ちゃんには……」



ギリッ……

女勇者「…………ルビス様の……御加護が無いんだよっ…………」

今日はおすまい

次の投下には第二章終わらせたいなぁ

レスありがとうございます


あの、なんか現時点で突っ込みたい事があったら仰っていただけませんでしょうか。質問でも突っ込みでも疑問点でも答えられる範囲のものは答えていきたいと思いますので…何卒

>>467
ツッコミたいところと言っても悪い意味ではなく
子供C「ありのまま起こったことを話すぜ・・・・・」とか
神父「めっちゃプリティハァハァ・・・・・」とか

そういう部分です。爆笑しながら読ませてもらってます
変な書き方してすみません

一一一一一一一一一一一一


-カザーブ・宿屋-

ガチャ…

女勇者「!!!」

商人「僧侶ちゃん!」

戦士「勇者は!?」

僧侶「……」

僧侶「……腕をくっつける事は出来ましたが、神経までは不可能でした……すみません……」

遊び人「……そっか……僧侶が謝る事無いよ」

魔法使い「……うん、そーりょ、ありがと…」

武道家「……勇者はどうしてる…?」

僧侶「少し、血を失いすぎたみたいで、今はぐっすり寝ています……」

戦士「そっか……」

僧侶「……今は、盗賊ちゃんが傍についてあげてます……」

僧侶「……だいぶ責任を感じちゃってるみたいです……」

武道家「……盗賊は悪くないのに」

戦士「あぁ、悪いのはあのカンダタだ」

女勇者「……みんな、まぁそう悲観するのはよそう。まだ希望はあるんだ」

女勇者「……もし」

女勇者「カンダタが逃げる際に言った情報が本当なら……」

魔法使い「……うんっ」

戦士「勇者は完治するかもしれない……!」


一一一一一一一一一一一一

-シャンパーニの塔-

カンダタ『……回復呪文が効かねえ……?』

女勇者『……』

カンダタ『……そんな事が……あるのか……?この世界で生まれた人間に……』

チャキッ

女勇者『……あるんだよ……!そしてその人間であるお義兄ちゃんを……お前は……!』

カンダタ『……』

カンダタ『(あいつ……それを知っても尚、俺に立ち向かって来やがったのか……あの小娘のために……!)』


盗賊『……勇者っ…!!……勇者ぁっ……!!…』ポロポロ…

勇者『…………』ゼェゼェ

カンダタ『……』

カンダタ『(……とんでもねぇ野郎だ…!!)』

ジャキッ!!

女勇者『覚悟はできてるだろうねっ!!』

スタスタ…

カンダタ『……ちょっと待ってくれ!』

ピタ…

女勇者『……今更“待て”かい……ふざけないでくれるかな…っ』

カンダタ『……アンタらに有益な情報を幾つかやる』

カンダタ『……それでこの場は見逃してほしい』

ギリッ

戦士『お前ふざけるのも大概にっ…!!』スタスタ…

女勇者『戦士ちゃん、待って』

戦士『……っ!!』ピタ

女勇者『…………その情報によるよ』

女勇者『その情報で……お義兄ちゃんは救われるのかい?』

女勇者『お宝がどうこうのなんて……下らない事じゃないだろうね』

カンダタ『……それは、話した後でアンタらが判断してくれ……』

女勇者『……』

チャキ…

女勇者『いいよ、話してみてくれるかな』

戦士『女勇者!!』

女勇者『落ち着いて、戦士ちゃん。例え嘘臭くても何か縋れる物があった方がいいじゃないか』

戦士『……』

女勇者『……尤も、下らない事であれば…斬ればいい』

女勇者『さぁ、話してみてくれ』

カンダタ『……』

カンダタ『……まず一つ目だ』

カンダタ『カンダタさんの娘さん、だったな』

盗賊『……何……っ……!!!…』

カンダタ『……俺がカンダタさんを殺したっていうのは、ありゃ嘘だ』

盗賊『……え?……』

カンダタ『カンダタさんは盗賊団を解散させて旅に出ちまっただけだ』

カンダタ『まだ新入りだった俺は、俺達を置いていったカンダタさんを恨んだ』

カンダタ『元から偽善的な行為も嫌いだった俺は、カンダタさんへの復讐の意味も兼ねて名前だけ継いで本当の盗賊団を結成したんだ』

カンダタ『今あの人が何をやっているかわかんねぇが、あの人の事だ。どっかで元気にやってるだろうよ』

盗賊『……………!!…』

カンダタ『……二つ目』

カンダタ『……ここから北のノアニールって村……』

カンダタ『……その村の西にエルフの隠れ里があるって噂だ』

女勇者『……エルフ?』

カンダタ『……エルフの連中は、薬草類の扱いのエキスパートって話を聴いたことがある』

カンダタ『万病を治し、どんな怪我でも元通り……例え腕が千切れていようとな』

女勇者『……!!』

カンダタ『……もし上手くいけば、ルビスの加護が無いそいつも……元通りになるんじゃねぇか』

女勇者『…………』

戦士『……根拠は』

カンダタ『それは、アンタらの判断に任せる』

カンダタ『三つ目』

カラン…

カンダタ『今言った情報が本当だという誠意として……まぁそんなもん元凶の俺が言うのもなんだが』

カンダタ『……これはアンタらにやる』

武道家『あ……』

商人『……ロマリア王の金の冠…』

カンダタ『これをロマリア王にやりでもすりゃ礼を貰えるだろうよ』

女勇者『……』

カンダタ『……そして四つ目』

カンダタ『この世界には、“監視者の塔”ってのが四つある』

魔法使い『……かんししゃの、とう……?』

カンダタ『……随分前に四賢者が、この世を監視するために、世界の各地に建てたっていう塔だ』

カンダタ『アープ、ガルナ、シャンパーニ……そして今唯一の生存者、ナジミ』

一同『『『!!!!』』』

武道家『……なるほどね…』

戦士『そんなすげーもんだったんだな……』

カンダタ『そして、監視者の塔にはある秘密がある』

女勇者『……秘密?』

カンダタ『……四賢者みたいなルビスに近い所にいる奴どもが住んでやがった塔だ』

カンダタ『どうやら塔自体もルビスの力をはらんじまってるみたいでなぁ』

カンダタ『……これらの塔はなぁ』

カンダタ『人間がたけぇ所から落ちても、ルビスの力で、死なねぇように……傷一つ付かねぇようになってんのよ』



ダッ


カンダタ『こんな風になッ!!!!!!』

女勇者『あっ!!』

カンダタ『お前らっ!!逃げるぞ!!!』

カンダタ子分ズ『っ!!』ダッ

遊び人『あ、こいつらっ!!』

戦士『待てっ!!』

カンダタ『へへん!捕まるかもしんねぇってのに誰が待つか!!』タッタッタッ

ピタッ

カンダタ『だけどさっき言った事は嘘じゃねぇぜ』

女勇者『!』

カンダタ『俺がやっといておかしい話だが、そいつを助けてやってくれや』チラッ…

勇者『…………』ゼェゼェ

女勇者『……?』

カンダタ『……』

ニヤリ

カンダタ『……そいつはなんとしても子分にしてやりてぇからな』

バッ!!

カンダタ『あばよ!!』

遊び人『あっ…まっ……!』

ヒュウゥ…

戦士『くそっ!!』

武道家『……逃げられた!』

…………
……



一一一一一一一一一一一一

一一一一一一一一一一一一

女勇者「……今はあの情報を頼りにするしかない」

武道家「……うん」

商人「……目下、次の行き先は……」

戦士「あぁ」

僧侶「……エルフの隠れ里、ですね」

魔法使い「りょーかいだよっ」

女勇者「うん……みんな」

女勇者「なんとしても、お義兄ちゃんの怪我を治そう」

一同「「「おうっ!!」」」

…………
……

今日は少ないけどおしまいまい

一一一一一一一一一一一一

-宿・勇者の部屋- 深夜


勇者「……」

勇者「……んっ……」

勇者「……?……いつつ……」

勇者「……気を失ってたのか……」モゾ…

「……大丈夫…?…」

勇者「!」

盗賊「……まだ痛む?…」

勇者「盗賊……いたんだ」

勇者「……僕は大丈夫だよ……僧侶のおかげで、今は少し痛むくらいだ……」

勇者「でも手は動かないや……あはは、なんだか変な感じだよ」

盗賊「……」

盗賊「……ごめんなさい……」

勇者「え?」

盗賊「……ごめんなさい、勇者……」

盗賊「……私のせいで、腕が……」

勇者「ううん、盗賊のせいじゃ無いよ」

盗賊「……そんな事っ…!!!……」

勇者「僕が弱かったからだ」

盗賊「……!…」

勇者「僕が弱かったから、変な意地を張って力量違いの敵に挑んだから、腕を失った。……それだけだよ」

ガタッ

盗賊「……どうしてっ!!…」

勇者「!」

盗賊「……どうして、勇者は……!……全部、自分のせいにするの……!……」

盗賊「……勇者は、悪くないじゃない……!」ポロ…

勇者「……」

勇者「……でも…本当の事なんだよ」

勇者「僕が強かったら……みんなにこんな迷惑をかけずに済んだんだ」

盗賊「……っ……」ポロポロ…

盗賊「……勇者……」ポロポロ…

盗賊「……お願い…」ポロポロ…

盗賊「……もう……」ポロポロ…

勇者「……無理だよ、盗賊」

勇者「……僕は、例えどんなに弱くても旅をやめる事はないんだ……」

勇者「……何があっても、やめる事はできないんだ」

盗賊「……っ……」グスッ…

勇者「……ホラ、泣き止んでよ……!」

勇者「盗賊のお父さんは……死んでなかったし……」

勇者「まだ希望は残ってるんだから……エルフの隠れ里って希望が…」

勇者「……寄り道だから、皆に迷惑かけるのは……申し訳ないけどさ」

盗賊「……っ……!」グスッ…

勇者「……」

盗賊「……!……」ヒック…

勇者「……盗賊」

盗賊「……?……」グスッ

勇者「……僕は、もう“弟”じゃない」

盗賊「……え……」

ギュッ……

盗賊「……?…勇者、手が……」

勇者「僕は、もう“男”だよ」

盗賊「……」

ドクン…

盗賊「……えっ……」

勇者「僕はもう、守られてばかりは嫌なんだ」

ギュッ

…一一一一ドクン

盗賊「……ゆ、勇者、手、がっ……」

盗賊(……やだ、やだよ)

勇者「誰かが泣いて、それを安全な立場から傍観するなんてまっぴら御免だ……!」

ギュゥゥ

…一一一一ドクンッ

盗賊「……ゆ、勇者っ…」

盗賊(……やだ、なんだか、変だよっ…)

勇者「僕は、守られるだけじゃなく、皆を僕にできる範囲で守っていきたいんだ」

ギュゥゥ!

…一一ドクン!

盗賊「……!…」

盗賊(……勇者の声が、手が、眼差しが…なんか、だめっ…)

盗賊(……違う人みたいで……でも、やっぱり勇者で……だめっ!)

盗賊「……ゆ、勇者、あの……」

ギュゥゥ

盗賊「……あっ……」

勇者「……こんな事…」

勇者「こんな事言うのは情けないかもしれないけどさ……」

盗賊「……」

勇者「皆、それぞれに助けられて、皆、それぞれを助けていきたいんだ」

勇者「……だから」

ギュッ

一一ドクン!!

勇者「あと少し、僕の成長を待って」

勇者「皆、僕1人で守ることができるくらい、強くなるよ」

盗賊「……」

盗賊(…………あぁ…)

ドクン ドクン

盗賊(……そっか…)

ドクン ドクン

盗賊(……勇者は、もうあの頃の勇者のままじゃないんだ……)

ドクン ドクン

盗賊(……あの頃の勇者に依存していたのは私の方で……)

ドクン ドクン

盗賊(……今、それを気付けたのは……私が……)

ギュッ

勇者「だから、泣かないで。……盗賊」ニコ

盗賊(……私が、今の勇者を一一一一…)

盗賊(……成長した、勇者の事一一一一…)

ドクン   ドクン

…………
……

……………………



勇者「…すー……すー…」zzz

盗賊「……」

盗賊「……寝ちゃった…」

ギュッ…

盗賊「……手、握ったまま……」

勇者「すー……すー……」zzz

盗賊「……」

盗賊(……寝顔も、もう、あの頃とは違うんだね……)

パッ…

スクッ

盗賊「……」

盗賊「……おやすみ…勇者……」

勇者「すー…すー…」zzz

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……」

ソッ…



チュッ……


盗賊「……」

勇者「ん……すー…」zzz

盗賊「……」

盗賊「……ほっぺくらいなら、狡くても、奪わせて……」

盗賊「……」

盗賊「……」

盗賊「……そこから先は、正々堂々、奪うから……」

スタスタ……

ガチャ…

盗賊「……」

勇者「すー…すー…」zzz

盗賊「…………」

勇者「すー…すー…」zzz

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「……大好き」ボソ

パタン……

勇者「すー…すー…」zzz

…………
……

-宿・僧侶の部屋- 深夜


モゾッ…

僧侶「……ん…」

僧侶「…………ふぅ……」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶(……眠れない……)

ムクッ…

僧侶「…………」

僧侶(……エルフの隠れ里……か……)

僧侶「…………」

ザワッ…

僧侶(……っ……!)

僧侶(……また…!)

ザァッ……

ザ……ザ…

僧侶「……っ…!やめて…!」

僧侶「……それ以上、“喋らないで”…っ!」

ザァッ……

僧侶「……っ!!……」

僧侶「…………」

ザァッ……ザ…

ザ…



僧侶「……っ…」

僧侶「……」

僧侶「……こんな…」




僧侶「こんな耳……無くなっちゃえばいいのに……っ……!!」

第二章 -完-

今日はおしまい


更新遅れ気味で申し訳ないです。



ホラ、よく言うじゃない。
急がばおっぱい、ってさ。


……すみません

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2211109.png

http://f.pic.to/2voes


ますよー

-幕間- 




【Someday My Prince Will Come】



――――――――――――
――――――――――――


…………

『…………』

『ここは、冷たい所ね……』

『…………』

『あなたは、今どうしているかしら』

『…………変わっていないのかしら』

『何を思っているのかしら』

『何を想っているのかしら』

『…………』

『忘れてしまったかも、しれないわね』

『例えば、コレが、あなたの夢だとすれば』

『あなたは、悲しまずに済むのにね』

『例えば、全て、夢だったとしたら』

『…………』

『やめましょう、こんな事を考えるのは』

『こんなの、不毛だわ』

『不毛』

『私が、一番嫌いな言葉』

『あなたを、苦しめる言葉』

『私の好きな言葉?』

『…………』

『……そんなもの、無いわ』

『言葉に思考を依存させるのって、好きじゃないの』

『言葉の為の行動が好きではないの』

『私は、あなたが好きだわ』

『私は…………』

『…………』

『やめましょう』

『今更、何になるのかしらね』

『今、正に、言葉に縋ろうとしたわ』

『馬鹿ね、私』

『愚かだわ』

『あなたはこんな私を笑うかしら?』

『それとも、悲しそうな目でみるのかしら?』

『それとも……』

『…………』

『駄目ね、私』

『…………』

『縋れる事のできるものは、好きではないわ』

『私の弱さが露呈してしまう』

『だめ』

『だめ…………だめ』

『…………だめ』

『…………ふふ』

『だめ…………拒絶よ?』

『思考の邂逅を拒絶』

『あなたは…………』

『…………』

『…………』

『ここは、冷たい所ね』

『何を言っても、何も返って来ないの』

『何をしても、何も返って来ないの』

『あなたが恋しいわ』

『あなた…………あなた』

『…………私、まるで乙女じゃない?』

『乙女…………乙女』

『…………あなたも』

『あなたも一緒に、沈んでくれる?』

『あなたも、この暗い最果てに』

『…………一緒に沈んでくれる?』

『…………』

『…………あなたなら、沈んでくれるのでしょうね』

『…………』

『駄目よ』

『あなたは、駄目』

『あなたには、まだ多くのレーゾンデートルがある』

『あなたは、こちらに来ては駄目』

『…………』

『だめ』

『だめ……ふふ』

『思考の邂逅を拒絶』

『ふふふ…………言葉遊び』

『懐かしい、言葉遊び』

『…………眠くなってきたわ』

『……あなたも…………』

『…………』

『…………』

『…………』

『…………あなたもいずれ、こちらに来るのかしら』

『…………』

『許さないわ』

『……来たら…………許さない』

『…………』

『悲しいわけじゃないの』

『…………悲しいわけじゃないわ』


『…………』

『もう、時間みたいね』

『…………』

『また、会いましょう』

『…………』

『…………悲しいわけじゃないわ』

『こうして、会えるもの』

『…………強がり?』

『……ふふふ……』

『…………』

『…………お互い様よ』

『…………もう終わりみたい……』

『…………』

『……悲しそうな顔をしては駄目よ』

『…………』

『…………』

『…………』

『あなたに』

『……………………』

『…………言葉にしては駄目ね』

『言霊……か』

『…………』

『じゃあ、最後に』

『最後に、これだけを言葉に』


『愛しています。心から』

『…………』

『…………おやすみなさい』





…………
……

第三章

―――――――――――

?『きれいだね!』

?『…………ホント?』

?『うん!ぼくはそうおもうよ!』

?『……えへへ///』

?『みんなとも、ともだちになろうよ!!』

サッ…

?『ホラ、いこ?』

?『……』

ニコッ

?『うんっ!』

…………
……


―――――――――――


「……りょ……そ…りょ…………」

僧侶「…………」

「僧侶ってばっ!」

僧侶「はひっ!」ビクッ

魔法使い「……僧侶、だいじょうぶ?」

僧侶「え、あ」

武道家「今凄くボーッとしてたわよ」

商人「無理もありませんよ、勇くんの看病をずっとしてたんですから」

遊び人「大丈夫?僧侶は休んでおいたほうが……」

僧侶「い、いえ!大丈夫です!すみません、ボーッとしちゃって……」

魔法使い「むりはいけないよ?」

盗賊「……大丈夫?……」

僧侶「ううん、ホントに大丈夫。ありがとね」

女勇者「……まぁ、何かあったら言う事。いいね」

女勇者「……コホン……じゃあ、今日の予定を発表するよ」

―――――――――――

-宿・勇者の部屋-

勇者「…………」

勇者「…………ん……」

勇者「…………朝か……」

モゾッ……

勇者「…………」

勇者(……感覚は戻ってない……)

勇者(くそ……こんな所でも皆の足を引っ張って……)

ガチャッ……

勇者「!」

僧侶「おはようございます勇者くん。お体の方はどうですか?」

盗賊「……おはよ。お茶、淹れてきたよ……」

勇者「あぁ、おはよう、二人とも」

ズズ……

勇者「体調の方はもう完璧だよ。僧侶のお陰だ。ありがとう」

僧侶「いえいえ!私はそんな大層な事!」

勇者「ううん、本当にありがとう」

僧侶「…………えへへ、どういたしまして」

勇者「……盗賊もありがとう、看病してくれて」

盗賊「……ううん、昨日の事で、お礼を言うのは、私の方だよ……」

勇者「だからもういいんだって昨日あれ程……それを言ったら僕だって……」

勇者「……ふふ……この話は堂々巡りになっちゃうからおしまいね」

盗賊「…………うん」フフ

僧侶「…………」

僧侶(な、なんでしょう……この『二人の秘密』的な……)

勇者「そういえば、皆は?」

僧侶「あ、皆それぞれ支度をしていますよ」

勇者「あ、そうか……よし。僕も支度しなくちゃ」

僧侶・盗賊「「え?」」

勇者「え?」

僧侶「勇者くん……?……あの、もしかして」

盗賊「…………一緒に、エルフの隠れ里まで行く気?……」

勇者「え?うん」キョトン

―――――――――――

テクテク…

魔法使い「ゆーしゃ、だいじょーぶかなぁ」

商人「勇くんはああ見えてもなかなか丈夫ですからね。きっと大丈夫ですよ」

魔法使い「うん、そうだねぇ」

バタバタワーワー

商人「…………?」

魔法使い「なんだか騒がしいねぇ」

商人「勇くんの部屋からですね」

魔法使い「入ってみようか」

ガチャッ…

魔法使い・商人「「…………」」

勇・僧・盗「「「…………」」」

商人「…………僧侶ちゃん、盗賊ちゃん」

僧侶・盗賊「「…………はい」」

魔法使い「…………なんで、ゆーしゃのうえに……うまのりになってるのかな?」

僧侶・盗賊「「……えと……」」

魔法使い「……なんでっ……ゆーしゃは……半裸なのかなっ」ムムムムム……

勇者「いや、あの、これは」

商人「…………」

商人「…………ケダモノッ」

勇者「……違っ……」

魔法使い「はやくゆーしゃのうえからどきなさぁ――い!!」

僧侶・盗賊「「はいっ!!」」ビクッ

…………。

僧侶「それで……勇者くんがどうしても行くって聞かなくて……」

盗賊「……だから、ベッドに寝かしつけようとしてたの……」

商人「なんですか……つまんないですね」

勇者「なんだよつまんないって!!」

魔法使い「……ゆーしゃ」

勇者「ひっ!?す、すみませ……」

魔法使い「もうげんきそうだね?」

勇者「へ?……あ、うん。腕は動く気配は無いけど」

勇者「もう体調はバッチリだよ……皆のおかげでね」

魔法使い「……えへへっ、そっか」

ニコッ

魔法使い「よかった…」

勇者「う!?うん、あ、ありがとうね!!」ドキッ

僧侶・盗賊「…………」」ムッ

商人「…………ケダモノ」ボソリ

勇者「だから何で!?」

…………
……

―――――――――――

-宿・ロビー-

女勇者「…………お義兄ちゃんは置いていく」

戦士「あの怪我だしなぁ」

武道家「まぁしょうがないわね。私たちでちょちょいっと行ってきましょ」

遊び人「だね。女勇者、今からの陸路は?」

女勇者「うん、まずは……」

パラ……

女勇者「この地図の……ここの、ノアニールって所に行こう」

武道家「そうね……エルフの隠れ里がどこにあるか分からないし」

遊び人「うん。ここを拠点に探すのが一番良いね」

戦士「探し回るのは苦手なんだよなぁ……」

女勇者「できれば今日、明日で終わらせたいところだね……」

遊び人「そうね。早く終わらせないと……いけないのに僧侶達遅いね?」

「おまたせしましたー……」

女勇者「あぁ、それじゃ行こ……か……」

武道家「…………」

戦士「…………おい」

遊び人「…………なんで勇者ちゃんがいるの?」

勇者「…………」

女勇者「…………」

戦士「…………」

武道家「…………」

遊び人「…………」

勇者「…………」

勇者「ダメカナ」

女勇・戦・武・遊「「「「ダメダヨ」」」」

武道家「なにやってんのあんたは!!」

戦士「おとなしく寝てろ!!!!」

勇者「うぅ…………」

僧侶「ホラ、言ったじゃありませんか。戻って寝ていて下さい」

魔法使い「あんせいにねっ」

勇者「めんぼくない…………」

…………
……


-道中- 昼

テクテク…

盗賊「……ノアニールは、そんなに遠くないみたい……」

女勇者「この調子で行けば夕方には着くかな」

戦士「はやいとこ着いて宿確保しようぜ」

魔法使い「ん、いそぎぎみでいこうっ」

僧侶「…………」

僧侶(……勇者くん、大丈夫かなぁ……)

遊び人「どうしたの?僧侶。浮かない顔して」

僧侶「いえ……勇者くん大丈夫かなぁって……」

戦士「大丈夫だよ!あいつ意外と丈夫なんだから」

女勇者「うん。心配する事は無いよ。早いところエルフの所に行こう」

僧侶「あ、いえ。そうではなく」

商人「?どうかしたんですか」

僧侶「…………私たちが居なくなって、特訓とかしてるんじゃ…………」

一同「「「「…………」」」」

女勇者(…………なんていうか)

戦士(ありえるっていうか)

商人(やってそうというか)

武道家(ほぼ100%やってるっていうか)

魔法使い(それしかそうぞうできないっていうかっ)

盗賊(……確実に、それしかないっていうか……)

遊び人(…………てか絶対してるっていうか)

((((不安だぁ――――――――――!!!!!!))))

戦士「み、みんな!!!!急いでいこう!!!!」

武道家「そ、そうね!」

遊び人「エルフを早く探しだそう!!」

商人「なんかたらたらしてたら勇くんの怪我が増していきそうな焦燥感が……」

女勇者「よし!!皆、ノアニールだ!」

盗賊「……こっちだよっ……」

魔法使い「お、うおおう」

僧侶「魔法使いちゃん!心配なのは分かるけど戻っちゃだめ!!」

ワーワー

…………
……

-その頃の勇者-

ペラッ

勇者「…………」

勇者「…………」

ペラッ

勇者「…………」

勇者「…………」

勇者「…………」

勇者「…………メラッ」

シーン…………

勇者「…………」

勇者「…………」

勇者「むなしい」

…………
……


-道中- 昼過ぎ

盗賊「……あそこだ……」

戦士「あ!ホントだ!」

商人「マッハで着きましたね」

魔法使い「あそこが……」

-ノアニール-

遊び人「…………ノアニールだね」

女勇者「…………?」

僧侶「…………どうかしましたか?女勇者ちゃん」

女勇者「…………いや、なんだか違和感が……」

武道家「違和感?…………言われてみれば、確かに……」

魔法使い「なんだろうね?」

女勇者「とりあえず、入ってみよう」

…………
……


――――――――――――

-カザーブ・酒場-

カランカラン……

店員「らっしゃせー」

勇者「あ、すみません。オレンジジュース1つ……」

ゴクゴク……

勇者(暇な間は僕にできる事をやっておこう)

勇者(まずは情報収集からだ……)

勇者(旅の助けになる情報ならいくらでも欲しいからな)

店員「お客さん、見ない顔だね?旅の人?」

勇者「あ、はい。僕は――――…」

バンッ!!

「だからホントなんだってー!!!!」

勇者「っ!!?」ビクッ

女性「信じてってばー!!」

男性「そんなつまんねぇ嘘じゃなくてもっとましな嘘つけよー」

店員「あー、申し訳ないね。さっきからあそこのテーブルあんな調子なんだよ」

勇者「あ、いえ、僕は全然……」

男性「大体、エルフなんて居るわけないだろ」

勇者「……!」

女性「本当にいるかわかんないけど、ノアニールの話は本当なんだって!!!!」

女性「あなたはこの村にきたばかりだから知らないだろうけどさー!!」

男性「はいはいわかったわかった」

勇者「…………」

店員「ごめんねお客さん、騒がしくて……」

勇者「あの」

店員「はい?」

勇者「あの女性が言ったノアニールって……」

店員「あぁ、ノアニールね……本当におかしな村でね」

勇者「何かあるんですか?」

店員「うん、実は…………」

…………
……

-ノアニール・入り口-


テクテク……

遊び人「あ、戻ってきた」

女勇者「戦士ちゃん、商人ちゃん。そっちの建物の中はどうだった?」

戦士「あぁ……どこもかしこも全部同じだ」

商人「…………村の人々、全員……」

――――――――――――
-広場-


村人「…………」zzz

老人「…………」zzz

――――――――――――
――――――――――――
-道端-

村娘「…………」zzz

子供「…………」zzz

――――――――――――
――――――――――――
-宿-

店主「…………」zzz

女性「…………」zzz

――――――――――――


戦士「……――――皆、眠ってやがる」

魔法使い「こういうむら……ってわけじゃなさそうだね」

武道家「“村内一斉お眠り大会”って感じの行事とかね」

戦士「何言ってんだお前」

武道家「えっ」

女勇者「様子が明らかにおかしいし…………僧侶ちゃん」

僧侶「はい…………駄目でした。ザメハも効きません」

商人「そりゃまた…………これはどういう事なんですかね」

戦士「魔王の仕業…………とか?」

遊び人「それは考え難いと思うな。もし魔王によるものだったら、こんな回りくどい事しないと思う」

盗賊「……うん……誰も死んでないし……」

武道家「じゃあこれは…………何なのかしら…………?」

女勇者「…………一先ず、エルフを探すのを優先しよう」

戦士「これほっとくのか?」

女勇者「いや、そんなつもりはないよ」

女勇者「ただどうやら、皆無事に生きているみたいだし、しばらくアクションが無くても平気だと思うんだ」

女勇者「でも、お義兄ちゃんの場合はリミットがあるかもしれない」

商人「まぁ、一定時間越すと腕の細胞が完全に壊死して…………って事も……」

遊び人「ちょ……やめてよ……」

商人「例えですよ、例え」

魔法使い「うん、そうかもしれないね」

女勇者「そして私には、これがエルフとは関係ないとはあまり思えないんだ」

武道家「…………あぁ、確かに……」

戦士「?どうして?」

女勇者「僧侶ちゃんのザメハが効かないって事は、これが魔法によるものではないって事だよ」

商人「…………なるほど」

戦士「あ、そっか」

女勇者「薬草の扱いを得意としているエルフならあるいは……ってね」

盗賊「……エルフを探そう……」

遊び人「うん。そうだね」

戦士「よし!!いっちょ気合いれるか!!」

女勇者「じゃあ各自この一帯の森などを探索しよう」

女勇者「もし体力が危うくなったらこの村に戻って休むこと!いいね?」

一同「「「「おー!!!!」」」」

女勇者「じゃあ各自探索開始!」

僧侶「…………」

僧侶(…………エルフ…………か)

…………
……

-ノアニール周辺-

ガサガサ……

戦士「くっそー……全然みつからねぇ」

商人「戦士ちゃん、探し方がアレですもん」

戦士「え?なんで?」

ヒョイッ……

パタン

戦士「…………ここにもいねぇ」

商人「…………エルフが草の根元や石の裏に居るわけ無いでしょうバカ」

戦士「あっ!!バ、バカって言った!!!!」

商人「バーカバーカ」

戦士「うー!バカって言うほうがバカなんだぞ!!」

商人「バーカバーカ」

戦士「うぅ……!!武道家ぁ~!商人がいじめるぅ!!」

武道家「仲良くしてろよ!!」

…………
……

――――――――――――

ガサガサ……

魔法使い「んー、なにかがせーそくしてるようなこんせきなしだよ」

盗賊「……こっちも……」

女勇者「タカの目でも何も見つからないかい?」

盗賊「……うん、建物とかは何にも…………」

女勇者「そうか……まぁ、慎重に探そう」

魔法使い「うん!なんとしてもみつけるよっ!」

盗賊「……私もっ!!がんばるっ!!…」

女勇者「おぉ、盗賊ちゃんやる気だね!」

盗賊「……うん……」

盗賊「……勇者のためなら、なんだってできる……」

女勇者・魔法使い「!」

女勇者「盗賊ちゃんはお義兄ちゃんの事、弟みたいに可愛がってるからね」フフ

魔法使い「とーぞくおねぇちゃん!がんばろうね!」アハハ

盗賊「…………」

女勇者「……………………?」

魔法使い「……あ、あれ?とーぞく……?」

クルッ

盗賊「…………」

盗賊「……弟じゃ、ないよ……」

女勇者「…………えっ…………」

盗賊「…………勇者は、もう…………」

ニコッ……

盗賊「…………男……だから…………」

女勇者・魔法使い「っ!!!!??」

女勇者「ととととと盗賊ちゃんっ!!!?そそ、それは一体、どどdどういう」アタフタ

魔法使い「まま、まさか、きのうのよる……ゆーしゃと……!!」アワワ

盗賊「…………?」

女勇者・魔法使い「「男女のかんけいになったってこと!!!!??」」

盗賊「……えっ……」

女勇者「あ、ゆ、許さないよ!!そんなのは!!義妹みとめないよそんなのは!!!!!!」

魔法使い「う、うえぇーん!!!」ポロポロ……

盗賊「……いや、あの、違…………」オロオロ

…………
……

-ノアニール周辺・森- 夕方


ガサガサ……

遊び人「うー、見つかんないなぁ……」

僧侶「そうですねー……本当にいるんでしょうか」

遊び人「カンダタは嘘ついてるようには見えなかったけどなあ……」

僧侶「うーん、噂を聞いただけだと思いますし、その噂の真偽の程は……」

遊び人「分からないしね……むぅ」

ガサッ

僧侶「……もう日が暮れてきちゃいましたね」

遊び人「一回戻ろうか?誰かが手がかりを見つけて戻ってるかも」

僧侶「そうですね。戻りましょうか」

テクテク……

遊び人「しかし夕方の森って薄気味悪いよね……」

僧侶「そうですね……夜になってしまう前に抜けださなくちゃ……」

遊び人「…………僧侶、森に伝わる怖い話……知ってる?」

僧侶「や……やめて下さいよ……」

遊び人「…………こんな風が肌寒い夕方の森にね……」

僧侶「ひっ!……もうやめて下さいよぅ……!」

遊び人「旅人が森の中を歩いているとね……」

僧侶「あ、遊び人ちゃん!!やめて!怖いから!」

遊び人「後ろから……呼ぶ声がするんだって……」

僧侶「遊び人ちゃん!」

遊び人「で、何かな……て……後ろを振り向けば……」

僧侶「遊び人ちゃn」

ヒュン

遊び人「そこには――……!!!」

クルッ

遊び人「…………あれ?」

遊び人「…………僧侶?」

シーン……

遊び人「……僧侶?……僧侶?」


…………
……


――――――――――――

ガザッ!!ガサガサッ!!

ドスンッ!!!!

僧侶「きゃうっ!!!!」

僧侶「……いたたた……あれ?」

僧侶「あ……遊び人ちゃん……?」

シーン……

僧侶「……あぁ……」

僧侶(そっか……足元が傾斜になってるのに気付かずに、落ちちゃったんだ……)

僧侶(……上……高いなぁ…………登れそうに無いか)

スクッ……

ズキッ!!

僧侶「…………痛っ!!」

僧侶「…………足挫いてる……」

僧侶「……ホイミッ!!」

ポワァッ

僧侶(……歩けるようになるのは少しだけ時間かかるかな……)

ザァッ…………

僧侶「…………」

ザァッ……

僧侶「……っ……」ブルッ

――――――――――――

遊び人『森に伝わる怖い話、知ってる?』

――――――――――――


僧侶「……っ……」

ザァッ……ザッ……


――――――――――――

遊び人『……呼ぶ声がするんだって……』

――――――――――――


ギュッ…

僧侶「…………やめてっ…………」

ザワァッ…………ザァッ………

僧侶「…………やめてっ!!……」

ザァッ…………ザァッ…………!

僧侶「……それ以上……“私に話しかけないで”……!!!!」

ザワッ……!ザワァッ……ズザァッ……!!!

ザあぁぁぁああぁぁぁぁああぁぁあぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁあ
あぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁあ
あぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁああぁぁああぁあ―――――――――――――ッ

……―――――呼ぶ声がするんだって―――――……

僧侶「……―――――やめてッ!!!!!!!!!!!」


ザァッ…………ザ…………

ザ…………

…………
……




僧侶「ハァッ……!!ハァッ……!!」ゼェゼェ

僧侶「……ハァ……!!」ゼェゼェ

僧侶「…………」ゼェゼェ

ギュッ……

僧侶「…………勇者くん…………」

ガサッ

僧侶「!!??」

魔物「グルルル……」

魔物が現れた!!

僧侶「!!!!」

僧侶(しまった……!!……今出てこられたら……!!!!)

ズキィッ!!

僧侶「っ!!!!」

僧侶(まだ足が……!!!!)

魔物「グガァッ!!!!!!」

僧侶「!!!!」

魔物はいきなり襲い掛かってきた!!!!

魔物「グガァ―――――ッッッ!!!!!」

僧侶「……―――――!!!!!!」

ギュッ……

僧侶(勇者くんっ…………!!!!)

ヒュンッ!!!!

ドッ!!!!

魔物「グギェッ!!!!」

僧侶「……えっ……」

ドサァッ!!

魔物は倒れた!!

僧侶「……!?」

僧侶「…………これは」

魔物「」ピクピク……

僧侶「…………」

僧侶「…………矢……?」

「大丈夫っ!?」

僧侶「!!??」

?「よかった……無事みたいね」

僧侶「……!!!!」

?「狩りから帰る途中で良かった……弓がなくちゃどうしようもなかったし」

僧侶(……赤い目、白い肌)

?「この辺りをこの時間帯に歩いてたら駄目だよ……魔物が餌を探す時間だよ?」

僧侶(…………そして、尖った耳…………)

僧侶(…………この女の子…………)

?「立てる?」

僧侶「…………エルフ……」

エルフ娘「?どうしたの?歩けないなら肩貸そうか?」

僧侶「あ……いえ、ありがとうございます」

グイッ……

エルフ娘「よいしょ……あれ?……はじめまして……だよね」

僧侶「え?あ、はい」

エルフ娘「おかしいなぁ……まぁいいや」

僧侶「?」

エルフ娘「早く里に戻ろうか。日が落ちちゃう」

僧侶「はい…………」

僧侶(連れて行ってくれるのかな……)

……………………

エルフ娘「あ、里が見えたよ」

僧侶「……あれが……(あんな所に……)」

エルフ娘「…………?」

僧侶「…………」

エルフ娘「……あなた、お名前は?」

僧侶「え?あ、申し遅れました、僧侶と申します」

エルフ娘「んん……?聞かない名前ね……」

僧侶「?」

エルフ娘「お家はどこ?」

僧侶「はい、アリアハンという所に」

エルフ娘「んんん?」

僧侶「?どうかされました?」

エルフ娘「いや、なんでもないよ」

エルフ娘「私はエルフ娘!よろしくね」

僧侶「はいっ」

…………
……

-エルフの隠れ里・入り口-

エルフ娘「よし!着いたよ!!」

僧侶「ここが…………エルフ娘さん」

エルフ娘「ん?」

僧侶「今日は、助けて頂いた上にここまで案内してくださって、ありがとうございました」

エルフ娘「ううん、そんなの全然大丈夫だよ!」

エルフ娘「だって数少ない仲間じゃない!」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………はい?」

エルフ娘「…………え?」

僧侶「仲間……ですか……?」

エルフ娘「だってそうでしょ?ホラ」

ファサッ

僧侶「あっ……!?」

エルフ娘「ホラ、やっぱり」

エルフ娘「その耳」

エルフ娘「あなたも、エルフじゃない」

今日はここまでなんだよ

一気読みー。これは期待
ただ、文章が若干読みづらいのを直してくれないかな・・・?

一番気になるのが、同じ人が喋っている時の名前と段落スペースなので、

勇者「あいうえお

    かきくけこ
    さしすせそ」

魔法使い「いろは」

↑みたいに・・・まぁ個人的意見なんで流してくれてかまわない
女勇者は貧乳

――――――――――――

-ノアニール・入り口-  夜


女勇者「……遊び人ちゃんと僧侶ちゃん、遅いね」

戦士「んー……これはちょっと遅すぎやしねえか」

商人「あの2人だったらもう戻っててもおかしくないんですがね」

魔法使い「こんなに暗くちゃなにもみえないものねぇ……どーしたんだろ」

盗賊「…………」ソワソワ

武道家「…………ねぇ、もう探しにいかない?やっぱり何かあったんじゃ……」

戦士「でもこの辺りの魔物はあの二人でも楽に倒せるよな?」

女勇者「危険は魔物だけじゃないさ……もしかしたら2人ともこの町の人たちみたいに…………」

一同「「「「……………………」」」」

武道家「や、やっぱり探しに行くわよ!!」

盗賊「……うんっ!!……」

魔法使い「う、うおおおう」

戦士「落ち着け!!魔法使い!!」

女勇者「じゃあ何人かは残って……」

商人「……あれ、何か聞こえません?」

武道家「え?」

盗賊「……?……」

………ーイ

………オーイ…

魔法使い「ほんとだ!!」

……オーイ…ミンナー…

戦士「この声……」

女勇者「遊び人ちゃんだ!」

タッタッタッタ……

遊び人「おーい!!!!!みんなぁ――――ッ!!!!!」

戦士「遊び人!!おせーよ!!心配しただろうが!!」

商人「まったく……僧侶ちゃんはどうしたんですかー」

ズザァッ

遊び人「ハァ……ハァ……!!!!」

女勇者「どうしたんだい遊び人ちゃん?僧侶ちゃんは?」

遊び人「そ、僧侶が!!!!」

盗賊「……え?……」

遊び人「僧侶が消えたの!!!!消えちゃったの!!!!」

一同「「「「「えっ!!!!??」」」」」

遊び人「一緒に歩いてたんだけど、ふと後ろを振り向いたらもう居なくなってて……あぅぅ……!!!」

武道家「お、落ち着いて遊び人!!」

商人「それはどこの辺りですか!?」

遊び人「西の方の森……っ……!!探し回ったんだけど、全然、どこにも居ないの!!」

魔法使い「遊び人、おちついて、おちついて!ね?いっしょにさがしにいこ?」

戦士「皆!!西だ!西の森に行くぞ!!」

…………
……

――――――――――――

-エルフの隠れ里・入り口-

僧侶「…………私……?」

エルフ娘「そーだよ、どこをどう見たってエルフじゃない」

僧侶「…………そうなん……です……か?」

エルフ娘「えっ」

僧侶「…………」

エルフ娘「…………」

僧侶「…………」

エルフ娘「…………えっと、まさか」

僧侶「…………私、人間じゃ……ないんですか……?」

エルフ娘「…………自分がエルフだって気付いてないの……?」

僧侶「わ、私は…………」

ザッ……

?「何をしているんです!!!!」

エルフ娘「!?」

僧侶「!!??」

?「その者から離れなさい!!その者はエルフではありません!!」

エルフ娘「エ……エルフ女王さま……!」

僧侶「……!?……エルフの……女王様……?」

エルフ女王「その者はエルフではないと言っているでしょう!!早くこちらに来なさい!」

エルフ娘「は、はいっ!!」

ダッ!!

僧侶「あっ……!」

エルフ女王「全く……帰りますよ」

エルフ娘「は……はい、でも……」

エルフ女王「……私の言う事がきけないのですか」

エルフ娘「はいっ!!」ビクゥ

スタスタ……

僧侶「あ、あの!!」

スタスタ……

僧侶「あの!!聞いてください!!!!」

エルフ娘「じょ、女王様…………」

エルフ女王「歩きなさい」

エルフ娘「は、い…………」

スタスタ……

僧侶「…………!」

僧侶「助けてください!!」

僧侶「私の、私の大切な人が怪我をしたんです!!」

僧侶「私じゃ……私じゃ助けられなくて……!」

エルフ娘「女王様っ……」

エルフ女王「歩くのです」

僧侶「何か、治す方法はありませんか!?」

僧侶「何でも良いんです!!何か……」

僧侶「何か……」

僧侶「……」

スタスタ……

僧侶「…………行っちゃった…………」

?「…………無駄じゃよ」

僧侶「はいっ!!?」ビクゥ

老人「……彼女達には何を言っても無駄じゃ」

僧侶「あ、あなたは……」

老人「わしはただの人間じゃよ……エルフではない」

老人「……ここのエルフ達は人間達を酷く憎んでおる……何を言っても無駄じゃよ」

僧侶「…………ど、どうして……」

老人「…………」

ギュゥッ

僧侶「…………せっかく……せっかく見つけた、手がかりが…………どうして…………!!」

老人「…………」

老人「…………一先ずここを離れるんじゃ……立てるか?」

僧侶「…………」

僧侶「…………はい」

…………

――――――――――――

-森の中-  夜

ガサガサ

僧侶「…………」

老人「…………」

僧侶「…………」

老人「…………」

僧侶「…………あの」

老人「…………どうかしたかね」

僧侶「……なんで、エルフは人間を嫌っているんですか」

老人「…………」

老人「…………の責任じゃ……」ボソリ

僧侶「……え……?」

老人「…………」

老人「また全て話そう……」

老人「……まずは、わしの村に行くんじゃ……」

僧侶「…………?」

…………
……

-ノアニール・入り口-

戦士「よし!!!!準備は良いか皆!!」

女勇者「おうともよだよ!!」

魔法使い「かもんだよ!!」

商人「そういうのいらないですから!!」

武道家「早く急いで探すわよ!!」

遊び人「うん!!盗賊!何か感じ取れるものがあったらすぐに言ってね!」

商人「頼りにしてますよ!」

盗賊「……うん!まかせてっ……」



盗賊「…………あれ……」

戦士「どうかしたのか?」

………

盗賊「…………足音が、聞こえる……」

女勇者「ホントかい!?」

武道家「僧侶!?」

商人「なんですかー、もー。探しに行こうとした瞬間に帰って……」

盗賊「…………違う……」

魔法使い「え?」

盗賊「…………僧侶の、女の足音じゃ……ない……!!」

……

武道家「…………誰でしょうね」

………ザッ…

戦士「…………聞こえてきたな……」

……ザッ…ザッ…

魔法使い「…………っ」

…ザッ…ザッ…ザッ…

盗賊「…………あ、…………この足音…………」

ザッ……ザッザッザッ

女勇者「皆、いいかい?来るよ」

ザッザッザッザッザッ

商人「旅人か、魔物か……それとも…………」

盗賊「……いや、あの……みんな……」

ザッザッザッザッザッ

一同「「「「…………っ……!!!!」」」」

ザッ


勇者「…………」




女勇者「…………」

戦士「…………」

魔法使い「…………」

商人「…………」

武道家「…………」

遊び人「…………」

盗賊「…………」

勇者「…………こんばんみ」

一同「「「「…………」」」」

勇者「…………」

勇者「…………」

勇者「来ちゃった」テヘ☆

一同「「「「「来ちゃったじゃねぇ!!!!!!」」」」」

戦士「テッメーはああぁあああ!!!!!!」

勇者「ひぃいッ!!?」

武道家「アンタは本当に何考えてんのよバッカじゃないの!!!!???」

遊び人「病み上がりの体で!!!!!こんな夜に魔物にでも出会ったりしたらどうするつもりよ!!!??」

勇者「いや、これ、ホラ!!聖水!!ウォーター!!ホーリーウォーターあるから!!」

商人「聖水の効果は絶対ではないって昔説明しましたよね馬鹿なんですか阿呆なんですかドMなんですかこのオタンコナスが」

勇者「うぐっ」

盗賊「……勇者……」

勇者「はひっ!!」ビク

盗賊「……ばかっ……」

勇者「うぐぐっ……」

魔法使い「ばかぁ――――っ!!」

勇者「うぉ!!??」

魔法使い「なんでそういうところをちゃんとかんがえないのばかぁ――――!!ばかばかぁ――――!!」

ポコポコ

勇者「痛い痛い!!ごめんごめん!!!!」

女勇者「お義兄ちゃん」

勇者「は、はい!!?」

女勇者「正座」

勇者「…………はい」

女勇者「私達は僧侶ちゃんを探しに行くから、ずっと正座ね」

勇者「僧侶!?僧侶がどうしたんだ!!?」

遊び人「ちょっと居なくなったから探しに行ってくるの!!」

勇者「わかった!!俺も――――……」

一同「「「「せ・い・ざ」」」」ドドドドドドドドドドド

勇者「……」ピシッ……

女勇者「どこかの馬鹿のせいで遅れたけど、出発しよ――……」

「あれ?なんで勇者くんがここにいるんですか?」

女勇者「え?」


ザッ


僧侶「しかもなんで正座?」

遊び人「僧侶!!無事だったの!!」

ガバッ

僧侶「ひゃっ!」

遊び人「よがっだよぅ~!!あだじほんどにどうじようがどおもっだよ~!!」ウエェェエン

僧侶「あ……」

戦士「心配かけさすなよな……でも無事で何よりだよ」

武道家「怪我は?怪我は無い?」

魔法使い「そーりょー!!」ダキッ

僧侶「わぷっ!」

魔法使い「ふえぇ」ウエェェエン

盗賊「…………無事で、良かった……」

僧侶「…………うん、皆ごめんなさい」

勇者「本当に良かったよ」←正座

女勇者「でもどうしてこんなに遅くなったんだい?」

僧侶「はい、ちょっと足を滑らせてしまいまして……足元の急な斜面を滑り落ちてしまい、迷っちゃいました」

武道家「よく無事だったわね」

僧侶「はい、その時に…………あ!そうでした!」

商人「どうしたんですか?」

僧侶「私、エルフに会ったんです!!」

一同「「「「え!!!!!??」」」」

遊び人「ほ、ホントに!!?」

女勇者「大手柄じゃないか!!」

戦士「ど、どうだった!?」

盗賊「……何か、薬草の手がかりは…!!…」

僧侶「…………」

魔法使い「…………僧侶……?」

僧侶「…………すみません……」

僧侶「…………話を聞く事が…………できませんでした…………」

魔法使い「……そっか。僧侶があやまることないよ!」

戦士「そうだぞ!何はともあれ無事で良かったよ」

僧侶「はい……ここまで無事に帰ってこれたのも、おじいさんのおかげです」

女勇者「?? おじいさん?」

僧侶「はい!そこにいらっしゃる……」

クルッ

僧侶「…………」

僧侶「…………あれ?」

武道家「…………そ、僧侶」

遊び人「…………言い難いんだけど……」

魔法使い「僧侶、最初から一人だったよ?」

僧侶「えっ!?そ、そんなはずは……!」

盗賊「…………」

僧侶「た、確かに『わしの村に行こう』って途中まで……」

商人「…………それってまさか……」

戦士「…………幽霊?」

武道家「ちょ……やめてよ……」

女勇者「な、何か用事があって村の外にいるんじゃないのかな!?」

商人「……この暗い中ですか?」

遊び人「それに、こんなに皆が眠ってる村に一人だけ眠ってない人間なんて…………」

魔法使い「…………うぅ」

武道家「…………なんか…………魔物より怖いわね……」

女勇者「と、とりあえず……今日のところは……」

勇者「あのさ」

一同「「「「きゃあっ!!!!!!!!」」」」ビックゥゥ!!!!

勇者「うおおぉっ!!??なになに!!??」ビクッ

遊び人「あ、勇者ちゃんか……急に男の声が聞こえるものだから…………」

武道家「死ぬほどビックリしたわ…………」

商人「ってか勇くんの事忘れてました」

戦士「ビックリさせるなよ!!全く!!」

勇者「あ……なんかごめん」

女勇者「で?どうしたんだい?」

勇者「あ、うん。いや、この村の事はカザーブで聞いて来たんだけどさ」

商人「あぁ、カザーブでもう少し聞き込みしていけばよかったですね」

戦士「で?それがどうしたんだ?」

勇者「うん。この村の人達は皆眠ってるんだよね?」

僧侶「は、はい」

盗賊「……そうだけど……」

勇者「……じゃあさ、あの灯りはなんだろう」

一同「「「「「…………え?」」」」」

勇者「あの、あっちの町外れの灯り……」

武道家「…………ホントだ…………」

遊び人「…………」

魔法使い「だれか……いるのかな…………」

商人「…………マジですか。こんな村に?」

僧侶「…………あの、おじいさんですかね」

戦士「あ、あぁ!そうじゃねえの!?」

女勇者「多分そうだよ!きっと!」

勇者「…………ちょっと、僕見てくるよ」

女勇者「お、お義兄ちゃん!!」

戦士「何言ってんだよ!!お前が行くならあたしが――――……」

勇者「ははは、戦士こういうの苦手じゃないか」

戦士「うっ」

勇者「大丈夫、ちょっと行って戻ってくるさ」

勇者「普通の村人だったらそれでOKだし、幽霊だったらそれでOK」

勇者「この辺りの魔物は火を嫌がる種類ばかりだから灯りを点すとは思えないしね。大丈夫さ」

遊び人「じゃ、じゃああたしも」

商人「いきますよ!」

勇者「すぐ行って帰るだけだから大丈夫だって」

勇者「じゃ、行ってくるよ」

スタスタ……

魔法使い「……ゆーしゃ…………」

盗賊「…………男らしい…………」

女勇者(な、なんだろうこの二人のこのうっとりした目は)

…………
……

スタスタ……

勇者「……」

勇者「……ふふっ」

勇者(皆、普段はあんなに強いくせに幽霊とかの事になるとあんな調子なんだよな)

勇者(あぁいうとき、女の子なんだなって感じるよ)

勇者「……」

勇者「……」

勇者(…………あいつは……)

勇者「……」

勇者(……………………馬鹿か、僕は)

勇者(馬鹿か、僕は)

スタスタ……

勇者「…………」

勇者「…………考えるな、馬鹿が」

…………
……

-ノアニール・町外れ-


スタ……

勇者「…………」

勇者(……やっぱり、この家から灯りが漏れてる)

勇者(…………入ってみるか)

ガチャッ

勇者「…………おじゃましまーす……」

勇者(…………)

勇者「……こんばんわー……」

シーン……

勇者(埃は……そんなに被っていない)

勇者(生活感がある……という事は人間か)

勇者(火もどうやら新しい……家の中にいるのか)

勇者「あの、すみませーん!」

シーン……

勇者「…………」

勇者(出掛けたのかな……?)

勇者「…………すみま」

ガバァ!!!!

?「ウワァアアアアアアアアァアアア!!!!!!」ヒゴエエェェェェェェ!!

おっさんがいきなり襲い掛かってきた!

勇者「いやああああああああああああ!!!!!!!!」

ゴスッ!!

?「外したか!!くそ!!強盗覚悟オォォォォォオォ!!!!」

勇者「ま、待ってください!!!!僕強盗じゃありません!!!!」

?「嘘付けェェェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」

勇者「そもそもこんばんわとかわざわざ言う強盗が居るわけないでしょ!!!!」

?「それもそうか」グググ……

勇者「温度差すげぇな!!じゃあその振りかぶった檜の棒を収めてください!!」

?「あぁっそんなこと言われても振りかぶった棒は急には……止まれ、止まれ――――ッ!!」

ヒゴシャアッ!!

勇者「オゴエェッ」

だめでした

?「ごめんよ、ごめんよ名前も知らない誰か――――……」

…………
……


ピチャ……

ギュ  ポタポタ

?「本当にすまなかった、これで冷やしてくれ」

勇者「ありがとうございます……いててて」

?「君は……旅人かい?ここいらじゃ見かけないが」

勇者「あ、はい。アリアハンから来ました」

?「アリアハンから!!それは長旅じゃないか!」

勇者「アリアハンをご存知なんですか?」

?「あぁ、今でこそ私はこの村で植物学者をしておるが、昔は色んな大陸に行って植物を研究したものだ」

勇者「……学者さん……なんですか」

村学者「あぁ……アリアハンは良い町だったなぁ……」

村学者「……」

村学者「……この村も」

村学者「この村も、……昔は…………」

勇者「…………?」

村学者「……いや、すまない。こちらの話だ」

村学者「…………すまないが、その左手は……?」

勇者「あ、はい。先日切り落としてしまいまして……動かないんです」

村学者「そうか……すまない」

勇者「いえいえ!一応この村に辿り着いたのもこの手が原因といいますか……」

村学者「? どういう事かね?」

勇者「この辺りにエルフが住んでいると聞きまして」

村学者「……」

勇者「薬草のエキスパートのエルフなら、この腕を治す方法も何か知っているかなと……」

村学者「……気の毒だが、それは無理だ」

勇者「…………え……」

村学者「結論から言えば彼女達の薬草の技術でその腕を治す事は可能だろう」

勇者「……?」

村学者「ただ、その方法をエルフから授かるのは……無理だ」

勇者「……なぜです?」

村学者「…………私がこの村に来たのは、20年程前の事だ」

勇者「…………」

村学者「その時は、ここも小さいながらも活気のある良い村でね……」

村学者「私がこの村を愛するようになるのにそう時間はかからなかったよ」

村学者「この村に骨を埋めたい…………そう思っていたんだ」

村学者「掛け替えの無い友人もできた…………」

村学者「…………愛する人だってできた」

村学者「…………」

村学者「しかし、ある日を境に……全て眠りについてしまった」

勇者「…………ある日?」

村学者「…………近くにエルフの隠れ里があるのだが……」

勇者「はい……それは……」

村学者「そこには、エルフの隠れ里を取り仕切る女王様が住んでいてね」

村学者「……………………その、女王様には、娘がいたんだ」

勇者「…………娘…………」

村学者「うむ……」

村学者「それはそれは綺麗でなぁ…………」

勇者「…………」

村学者「…………それはそれは、…………綺麗だったんだ……」

村学者「…………」

村学者「その娘さんと…………この村の私の親友が」

村学者「…………恋に落ちてしまったのだ」

…………
……


-18年前・ノアニール-



村学者『…………おぉ……この細胞は……』

コンコン

村学者『? 入ってくれ』

ガチャ

青年『やあ、村学者。こんにちわ』

村学者『あぁ、お前か。どうしたんだ?』

青年『…………紹介したい人がいるんだ』

村学者『…………紹介?この村の奴らなら大抵もう知ってるぜ?』

青年『いいから来てくれないか?時間はとらせないからさ』

村学者『いや、いいけど……』

…………

スタスタ……

村学者『何の人だよ?』

青年『まぁまぁ、来てくれって』

村学者『…………』

村学者『!』

村学者『…………お前さ』ニヤリ

青年『?』

村学者『……恋人?』

青年『!!』

村学者『……おいおい図星かよこの野郎!』

青年『あ、あはは』

村学者『どんな不細工を捕まえたんだよ!!ってかこの野郎いつの間に~!!』

青年『…………』

村学者『……?どうし……』

青年『…………小さい頃からさ、好きだったんだ』

村学者『…………』

青年『……ずっとずっと、大好きでさ』

青年『…………夢みたいだよ。本当に』

村学者『…………』

村学者『なんだぁー?早速のろけかぁ?』

青年『か、からかうなよ~』

村学者『はははっ!!とりあえずそのカワイコちゃんを見せてくれよ!!』

青年『その言い方やめろって…………』

…………
……

-ノアニール・郊外・丘-





サァァッ……

村学者『…………おいおい』

青年『ん?』

村学者『何もこんな所でなくてもいいんじゃないか?』

青年『…………』

村学者『どっか、店で何か飲みながらとかでもさ……』

青年『…………駄目なんだ』

村学者『…………え?』

青年『ここじゃなきゃ、駄目なんだ』

村学者『……?』

青年『…………』

青年『…………あ!』

村学者『? 来たのか?』

青年『あぁ! おーい!こっちだ!』

……―――私はその時、自分の目を二度ほど疑ったよ―――……

村学者『…………』

青年『ちょっと連れてくる』ダッ

……―――1度目は、その娘が―――……

村学者『…………おいおい』

青年『……。…。…』

?『…。……。…』

村学者『…………あれ……』

?『……。……』

村学者『…………』ゴクリ

……―――エルフだったって事に―――……

女エルフ『…………こんにちは……』

村学者『(…………エルフじゃねぇか…………!)』

青年『…………紹介するよ、彼女は女エルフ……彼は、僕の友達の村学者だ』

女エルフ『……よ、よろしくお願いしますっ……』

村学者『あ、あぁ』

……―――そして、2度目は―――……

青年『……彼女はちょっと恥ずかしがりやなんだ』ハハ

女エルフ『も、もう……そんな事言わないでください……』

村学者『…………』

……―――そのエルフの―――……

女エルフ『……。…。…』

青年『…。……。…』

村学者『…………』



女エルフ『……』ニコッ…



ザァァッ……



……―――あまりの、美しさに―――……

今日はおしまいだよ

全然進まなくて申し訳ないです
忙しいのよ師走近いからね


勇者「…………」

村学者「…………そして知り合って以来、私達は友人として……数々の楽しい時間をすごした」

村学者「あの頃は本当に楽しかった……何も、心配など……していなかった」

村学者「…………しかし、あの二人は違った」

村学者「彼と彼女は、互いを愛するにつれ……大きくなる苦悩を抱えていたんだ」

勇者「…………愛するにつれ……ですか?」

村学者「…………エルフは、人間を好いていない」

村学者「特にあの里の連中は、人間を憎んでさえいる」

勇者「……」

村学者「その里の女王を母に持つ彼女だ……」

村学者「どうしようもなく、悩んでいたよ。里をとるか、愛をとるか」

村学者「……そしてある時、青年は里の女王に直々に彼女との交際の許しを請いに行ったのだ」

勇者「どうだったんですか……?」

村学者「…………結果は最悪、青年は追い出され女エルフは里に幽閉されることになった」

村学者「…………それで彼らの愛は余計に強まったのだろう」

村学者「青年は女エルフを連れ出し、女エルフは青年と一緒に里を逃げた」

村学者「…………それから1年、彼らは姿を消した」

村学者「私でさえどこに居るのか分からなかった……」

村学者「当然、エルフの里とノアニールは大騒ぎさ……」

村学者「しかし、ある日、里を逃げてから1年たった後に……」

村学者「彼らは姿を見せた」

村学者「…………どうしようもない状況でね」


――――――――――――

-ノアニール・村学者の家-

コンコン……

村学者『……?誰だ…………こんな夜中に……』

村学者『はーい』

ガチャッ……

村学者『どなたでしょうk…………』

青年『…………久しぶりだな』

女エルフ『…………』

村学者『お、お前ら!!』

…………
……



カチャッ

村学者『全く……居なくなるくらいなら連絡をよこせってんだ!』

村学者『心配したんだからな!!本当にお前らは…………』

女エルフ『…………』

青年『…………すまなかった』

村学者『…………まぁ、無事でよかったよ。ホラ、茶が冷めるぞ』

青年『…………ここにも、長くいられないんだ』

村学者『?どうしてだ?』

青年『…………今、ここに居るとエルフ達に見つかってしまう』

村学者『それがどうした!女エルフを連れ出したからか?そんなもの、謝ってしまえば……』

コトッ

村学者『…………?これは……』

青年『…………エルフの里から逃げる際に、持ち出して来てしまったんだ』

村学者『これは、一体?』

女エルフ『…………夢見るルビー…………』

女エルフ『…………エルフの里に伝わる……秘宝です』

村学者『なっ……!!』

村学者『どうしてそんなものを……!!』

青年『……』

女エルフ『……このルビーは……持っている者に幸せを与えると言われています……』

女エルフ『……私は、…………幸せになりたかった……』

村学者『…………!!』

女エルフ『…………でも』ポロ…

女エルフ『私の頭の中から…………私から、“エルフである”という事が離れない……!!』ポロポロ

女エルフ『彼を愛せば愛するだけ……苦しくなっていくんです……!!』

青年『…………もう、どこにも行き場がないんだ』

青年『気付けば……ここにやってきていたよ』

村学者『…………』

村学者『(…………そうなのだ。彼女はエルフだ)』

村学者『(エルフと人間の恋……奇異の目を向けられないことなど無い……)』

村学者『(…………しかし行き場が無いからといって、今、里にルビーを返しに行けば恐らく、青年は……)』

青年『…………』

青年『…………このルビーは、西の洞窟の奥に……捨てに行こうと思う』

女エルフ『……っ』ポロポロ……

村学者『…………そうか』

村学者『……その後は、どうするんだ?』

女エルフ『…………』

青年『…………』

青年『……もう……』

青年『…………もう何も、縋れるものなど無いんだ』

村学者『…………ッ』

ガタッ

村学者『何を言っているんだ!!』

村学者『俺が!!友がいるだろう!!俺に頼れ!!俺だけはお前らの味方だ!!』

青年『……村学者……』

村学者『俺は世界を転々と旅してきたんだぞ!!』

村学者『お前らの居場所なんてなぁ!すぐに見つかるさ!』

女エルフ『……村学者さん……』

青年『…………ありがとう』

村学者『っ!』

村学者『ま、待ってろ!すぐに昔使ってた地図をもってくるから!』

ガタッ

スタスタ……

女エルフ『…………』グスッ

青年『…………ありがとう、村学者……』

青年『…………』

青年『…………すまない…………』

…………
……


村学者「……そして私が地図を持って戻ったときには、もう二人は居なくなっていた」

村学者「……私の嘘が、彼らにはわかってしまったんだろう」

村学者「エルフと人間が結ばれる事を許される場所など……見たことも無いという事を……」

勇者「……」

村学者「……そして、私は彼等を追って西の洞窟に行ったのだが……すぐに魔物に怪我を負わされ、彼らを見つけることはできなかったよ」

村学者「彼らはエルフの秘薬か何かで魔物を避けて行ったのだろう……考えたくも無いが、魔物に喰われた後も無さそうだった」

村学者「そして、怪我を癒すためにこの村に帰ってみれば……後は、君も見た通りさ」

勇者「……これは、エルフ達の仕業なんですか?」

村学者「……あぁ。その時、女エルフは我慢できずに里の近くに行ってしまったらしくてね」

村学者「それを見つけて追いかけるエルフ達から、泣いて逃げる彼女を見た女王は、彼女が青年に捨てられてしまったものだと思い込んだらしく……」

村学者「激しくお怒りになって、この通りだよ……」

勇者「……そうだったんですか」

村学者「それから私は、この村に来る盗人や魔物達、好奇の目で見に来る人々から村を守っておるのだ」

村学者「…………時が経っても、眠った人々が年老いずにいるのは、エルフなりの情けなのかもしれんがな」ハハハ

勇者「…………」

村学者「……まぁ、このとおり、エルフ達は人間を毛嫌いしている。」

村学者「さっき言った様に君のその手を治す方法は……残念ながら見つからないだろう」

勇者「……話して下さって、ありがとうございます」

村学者「いや、こちらこそ話に付き合ってくれてありがとう。そういえば、一人かね?」

勇者「あ、いえ。仲間を待たせて……しまった!忘れてた!」

村学者「あぁ、それは悪かったね。もうこんな夜だ。宿は宿屋の二階を使うといいよ」

勇者「えっ、でも……」

村学者「いいのさいいのさ、家具達も長年腰を下ろされずに不貞腐れておるだろうよ」

村学者「宿屋の主人には、目覚めた後私が言っておくさ」

勇者「あ、ありがとうございます!」

村学者「では……今日は色々と悪かった。もう仲間の所へお帰りなさい」

勇者「はい。失礼しました!」

ガチャッ

バタン……

村学者「…………」

村学者「…………待てよ……」

村学者「……もしや、彼等なら……」

…………
……


――――――――――――

-ノアニール・入り口-

武道家「ね、ねぇ!勇者遅くない!?」

商人「い、一時間くらい経ったでしょうかね…………」

戦士「どうするよ!い、い、行くか!」

魔法使い「そうだね!みんなでいけばこわくないよ!」

遊び人「そうね!そうよね!じゃあ行きましょう!」

盗賊「……うん!……あ」

女勇者「どうかしたのかい?盗賊ちゃん?」

盗賊「…………足音……」

武道家「勇者!?勇者よね!!」

オーイ

魔法使い「あ!ゆーしゃのこえだ!」

僧侶「無事で良かった……」

戦士「おーい!勇者ー!こっちだぞー!」

商人「さすがに村灯りが無いと松明だけじゃ良く見えないですね」

女勇者「あ、きたきた」

タッタッタッタ

ぬぅっ

勇者「いやぁ、遅くなってごめんよ」

女勇者「あ、お義兄ちゃ……だれだ貴様!!!!」ヒィ――――!!!!!

一同「「「「きゃぁぁ――――――――――!!!!!!!!」」」」

勇者「えっ!!!??どうしたのさ皆……あ!!!!」

勇者(そういえば僕、殴られて顔が腫れてるんだった!!!!)

勇者「いや、ちがっ!!!!」

女勇者「お義兄ちゃんを返せ―――――!!!!」

ゴシカァッ

勇者「めたりかっ」

…………
……


-宿・ロビー-


勇者「…………いつつつ」

女勇者「ご、ごめんなさいお義兄ちゃん……」

勇者「いや、大丈夫だよ」ハハ

戦士「しかし本当にいいのかよ?勝手に宿に泊まって……」

勇者「あ、うん。大丈夫だって。町外れに住んでる人から許しを得たよ」

遊び人「え!?やっぱり人だったの!?」

武道家「何かエルフやこの村の話は聴けた?」

勇者「うん……じゃあ、聴いた事を全部話すよ……」

…………
……






…………

商人「はぁー…………そんな事があったんですね……」

武道家「なんというか……これまた最悪な状況ね……」

遊び人「なんとかしてエルフに薬草をもらって村の人達を目覚めさせてもらいたかったけど……」

魔法使い「うん……これはむずかしそうだねぇ」

戦士「…………うー、難しい話はわかんねーよー……」

盗賊「……難しい……?……」

僧侶「…………」

勇者「うーん……なんとかしてエルフの誤解だけでも解きたいなぁ」

女勇者「でも駆け落ちしたのは事実だよね……難しいんじゃないかい?」

一同「「「「うーん……」」」」


僧侶「…………もう一度」

勇者「え?」

僧侶「もう一度、エルフの隠れ里に行きましょう」

女勇者「もう一度かい?」

僧侶「えぇ。もう一度エルフの女王様と話をして、なんとか説得をしてみましょう」

遊び人「うーん、それしかないよね……」

武道家「じゃあ今日は暗いから、明日の朝行ってみましょうか」

戦士「そうだな!場所はもう僧侶が知ってることだし、怖くないぜ!」

勇者「よし!明日はエルフの隠れ里だ!」

武道家・遊び人・戦士「「「アンタは留守番!!!!!」」」

勇者「へ?」

商人「なーに鳩が豆鉄砲くらったような顔してるんですか!!今日のこと忘れたんですか!!」

勇者「で、でもさ」

盗賊「……縄ならあるよ……」

勇者「え、ちょっと待ってその縄で一体どうするつもりさ、ねぇ」

魔法使い「きちゃだめ!あんせーにねてるんだよ!」

女勇者「来たら…………分かるよね?」

勇者「…………寝てます」

女勇者「ん。それでよし。それじゃ皆、寝ようか」

一同「「「「おー」」」」

僧侶「…………」

テクテク……

魔法使い「おふろはどうしようねぇ?ゆーしゃ」

勇者「な、なんで僕に聞くのさ」

魔法使い「ち、ちがうよ!えっち!おふろはちゃんとつかえるかなってこと!///」

勇者「え、あ、ご、ごめん!」

魔法使い「もう……すけべっ///」

勇者「いやいやいや!」

盗賊「……縄……」ボソ

勇者「え!?だからその縄で何をするつもりさ!!」

ワーワー

僧侶「…………」

タッタッタッ

勇者「なんだよ二人とも!!ちょっとやめ……」

クイッ

勇者「うぇ?」

僧侶「…………勇者くん」

勇者「?どうしたの僧侶??」

僧侶「…………」チョイチョイ

勇者「?」

僧侶「耳を貸してください」

勇者「ん……」

僧侶「……」

ボソリ

僧侶「(後で、勇者くんの部屋に行っていいですか?)」

勇者「え!?」

勇者「な、何言って……」

僧侶「…………」

勇者「……」

勇者「うん。わかったよ」

僧侶「……ありがとうございます」

勇者「ううん、気にしないで」

スタスタ……

勇者「…………」

魔法使い「ゆ、ゆーしゃ?僧侶となにをはなしてたのっ」

勇者「ん?……ううん。なんでもないんだ」

魔法使い「…………」

盗賊「……魔法使い、部屋行こうか……勇者、おやすみ……」

魔法使い「りょーかいだよっ。…………ゆーしゃ、おやすみ」

勇者「うん。二人ともおやすみ」

…………
……

-宿・勇者の部屋-

勇者「…………」

勇者(僧侶、どうしたんだろう)

コンコン……

勇者「……どうぞ」

ガチャッ……

僧侶「……すみません、我侭言って」

勇者「いいんだよ、別に。何かあったの?」

僧侶「…………いえ……」

勇者「?」

僧侶「…………」

勇者「…………言い難い事だったら、無理しなくても……」

僧侶「……勇者くんは」

勇者「?」

僧侶「…………今日、勇者くんが来てくれたのは……」

僧侶「…………」

僧侶「……本当は、私のためなんでしょう?」

勇者「……!」

勇者「ち、ちがうよ?僕は別に……」

僧侶「嘘つかなくてもわかります!」

勇者「……」

僧侶「勇者くんは、優しいから……」

勇者「……ごめんね」

僧侶「……ううん、こちらのセリフです」

勇者「…………何かあったんだね?」

僧侶「…………」

勇者「エルフに会ったとき……何か言われたんだろ?」

僧侶「……」

僧侶「私は…………」

僧侶「…………」

僧侶「……わかりませんでした」

勇者「…………そっか」

僧侶「……私は」

僧侶「私は……」

ギュッ……

僧侶「……エルフ、なんでしょうか」

勇者「……僧侶」

僧侶「……ご、ごめんなさい」

僧侶「だって……急に不安になって……」

僧侶「私、こんな目だし、こんな耳だし……」

僧侶「……私……!」

勇者「僧侶」

ナデ……

僧侶「……あ……」

勇者「よしよし」

僧侶「……」

勇者「……なんだろうと、僧侶は僧侶だよ」

勇者「前も言ったとおり、その目も、その耳も」

勇者「僕は綺麗だと思う」

ニコッ

勇者「……ね」

僧侶「…………はい……」

僧侶(あぁ、ルビス様、お許し下さい)

僧侶(私は汚らわしい者です)

僧侶(色んな事を悩んでも、結局は)

僧侶(……―――勇者くんから、この言葉を聴きたかっただけなのです)

勇者「ん。今日はもう寝よう?」

僧侶「……そうですね。ご、ごめんなさい」

勇者「大丈夫だって。気にしないで」

僧侶「は、はい。おやすみなさい」

ガチャ……

勇者「……僧侶」

僧侶「はい?」

勇者「…………いや、おやすみ」

僧侶「……?はい。おやすみなさい」ニコッ

バタン……

勇者「……」

勇者(大丈夫かな……)

…………
……


――――――――――――

-ノアニール・入り口-  朝


女勇者「それでは今日はエルフの隠れ里に向かいます!」

一同「「「「おー!!」」」」

女勇者「頑張ってエルフを説得しましょう!!」

一同「「「「おー!!」」」」

女勇者「それでは点呼!いーち!」

遊び人「にー!」

魔法使い「さーん!」

戦士「しー!」

僧侶「ごー!」

商人「ろーく」

武道家「ななー」

盗賊「……はち……」

勇者「きゅー!」

女勇者「よし!一人多いね!!砂にしてしまえ!!」

ぎゃー

勇者「わかったよ……おとなしくしてますよ」

戦士「不貞腐れんなよ……」

商人「お土産買って来ませんから」

武道家「すぐ戻ってくるわ」

僧侶「…………」

勇者「……」

テクテク…

勇者「僧侶」ボソッ

僧侶「…あんっ…………あ、勇者くん?ど、どうしたの?」

勇者「…………無理しないでね」

僧侶「……大丈夫ですよ」ニコ

女勇者「それじゃ、みんな!出発だよ!」

…………
……


-道中・森の中-

ガサガサ

戦士「あー、こっちにこんな所あったのか」

遊び人「全然気付かなかったよー」

僧侶「私もおじいさんに案内されるまでは…………あ、次はこっちです」

武道家「こりゃホントに“隠れ里”ね」

女勇者「盗賊ちゃんのタカの目でも見つからないわけだよ」

僧侶「あ、そこ気をつけて下さいね」

魔法使い「よっと」

僧侶「魔法使いちゃん、大丈夫?」

魔法使い「このくらいどーってことないよっ!」

僧侶「ふふふ、もうすぐ着きますからね」

魔法使い「……僧侶」

僧侶「はい?」

魔法使い「…………きのうは、なにかあったの?」

僧侶「…………」

魔法使い「その……エルフのことで……」

僧侶「……」

僧侶「大丈夫です」

僧侶「今日は、それも確かめたいと……思っています」

魔法使い「……そっか」

僧侶「はい!あ、皆さん、見えてきましたよ!」

…………
……


-エルフの里-


タッタッタッ……

エルフ村民「エルフ女王様ー!!」

エルフ女王「なんですか、騒々しい」

エルフ村民「人間です!また人間が来ました!」

エルフ女王「……またですか……」

エルフ女王「……敵意はありそうですか」

エルフ村民「そ、それはわかりませんが……」

エルフ女王「?」

エルフ村民「昨日、エルフ娘が連れて来た者が中に……」

エルフ女王「…………」

エルフ村民「ど、どうしますか!?」

エルフ女王「……放っておきなさい」

エルフ村民「え、しかし……」

エルフ女王「…………ちゃんと説明しなければ気が済まないようですね」

エルフ村民「?」

…………
……

スタスタ……

戦士「ほぉー……ここが隠れ里かぁ」

魔法使い「でもぜんぜんえるふがいないねぇ」

女勇者「いや、木陰を見てごらん」

武道家「皆隠れてるわよ」

戦士「え?」


エルフ村民「……」ジーッ

エルフ村民「…………」ヒソヒソ

エルフ村民「……」ブツブツ


魔法使い「わわわ、ほんとだ」

戦士「そんなに人間が嫌いなのか?」

商人「きっと皆戦士ちゃんが怖いんですよ」

戦士「ひでー!」

僧侶「……女王様はどこでしょうか……」

女勇者「あ、あっちの高台の方じゃないかい?」

僧侶「あぁ、そうですn……あ!」


エルフ娘「!」ビクッ


僧侶「昨日の!」

盗賊「……?……」

武道家「誰?」

僧侶「昨日私を助けていただいた方です!会えて良かった、改めてお礼が……」

エルフ娘「こ、こないでっ!!!!!」

僧侶「!?」

エルフ娘「やめて、近づかないで!」

僧侶「あ……あの……」

エルフ娘「……っ!!」

ダッ

僧侶「…………」

戦士「…………なんだよ、穏やかじゃないな」

武道家「そんなに全力で逃げることかしら」

僧侶「…………あはは、逃げられちゃいました」

魔法使い「…………」

僧侶「それじゃ、進みましょうか……」

…………
……

-エルフの里・女王の玉座-

ザッ……


僧侶「……こ、こんにちわ……」

エルフ女王「……また来たのですね……愚かな」

商人「おーっと。いきなり暴言飛びましたよ」

女勇者「商人ちゃん、しっ!」

武道家「でも友好的ではないのは確かね」

エルフ女王「何の用ですか。すぐに立ち去りなさい」

僧侶「お、お願いがあります!」

エルフ女王「…………」

僧侶「私の仲間の腕を治してあげて下さい!」

魔法使い「わ、わたしからもおねがいします!!」

盗賊「……おねがいしますっ!……」

一同「「「「おねがいします!!」」」」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「できぬ相談です。立ち去りなさい」

戦士「な、なんでだよ!そのくらいあんた達なら軽いんだろ!!?」

遊び人「戦士、抑えて!」

エルフ女王「理由は簡単です。私が人間を好きではないからです」

戦士「……っ!」

エルフ女王「……立ち去りなさい」

女勇者「…………違う方法を探すしかないのか……」

僧侶「…………」

僧侶「…………そ、それでは」

僧侶「ノアニールの人々を、解放させてあげてください!」

魔法使い「…………僧侶……」

僧侶「…………お願いします……」

エルフ女王「…………それもできぬ相談です」

僧侶「…………お願いします!」

エルフ女王「できないと言っているでしょう。立ち去りなさい」

僧侶「…………っ」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「理解できませんね…………なぜあなたがあの村を救いたがるのです?無関係でしょう」

僧侶「…………」

僧侶「勝手ながら……娘さんのお話は伺わせて頂きました」

エルフ女王「…………!」

エルフ女王「それがどうしたというのです……!」

僧侶「…………なぜ、ですか」

戦士「そ、僧侶?」

僧侶「なぜ、駄目だったのですか」

武道家「どうしたの僧侶?」

僧侶「どうして、二人の愛を認めてあげなかったのですか……!」

魔法使い「…………っ」

エルフ女王「……………………」

僧侶「どうして、どうして二人の愛を人種の壁だけで引き裂いたのですか!」

女勇者「僧侶ちゃん落ち着いて!」

エルフ女王「……………………」

僧侶「…………失礼致しました……っ」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………ふ」

エルフ女王「ふふふふふ…………」

僧侶「…………?」

エルフ女王「やはり…………」

僧侶「……」

エルフ女王「やはり、親に似るものですね」

僧侶「!?」

戦士「お、親!?」

盗賊「……どういう事……?」

エルフ女王「親がそういった煩悩を持っていれば、やはり子供に受け継がれるのですね……」

僧侶「ど……どういう事ですか……」

エルフ女王「……教えてあげましょうか?」

僧侶「っ!!」ドキッ

エルフ女王「その昔、違う大陸にエルフの国はありました」

エルフ女王「里ではなく、国です」

僧侶「……」ドクン ドクン

エルフ女王「その国は、戦争で滅んでしまいました」

エルフ女王「人間によって、滅ぼされたのです」

僧侶「っ!!」ドクンドクン

女勇者「…………まさか」

遊び人「…………ちょっと…!」

エルフ女王「人間の侵略は残忍を極めたものでした……」

エルフ女王「…………その際に」

ギリッ

エルフ女王「…………たくさんのエルフの女性が……辱められました」

僧侶「……!!」ドクンドクン!!

商人「や、やめてください!!」

戦士「えっ……?えっ?」

魔法使い「もうやめてっ!」

エルフ女王「…………その時、生まれた汚らわしい存在」

エルフ女王「エルフのような寿命を持たず、中途半端な耳を持つ、望まれぬ、汚らわしい者達」

エルフ女王「それが、あなた」

女勇者「……」

遊び人「……」

武道家「……」

戦士「……?」

盗賊「……」

商人「……」

魔法使い「……っ」



僧侶「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……―――――“ハーフエルフ”なのですよ」

僧侶「…………」

僧侶「っ!!!!」

ダッ

女勇者「あっ!!僧侶ちゃん!!」

魔法使い「まって!!」ダッ

商人「っ!もう!」ダッ

武道家「追うわよ!!」ダッ

盗賊「……!」ダッ

戦士「?どういう事だ?」

遊び人「馬鹿言ってないの!追わないと!!」ダッ

戦士「…………?」

エルフ女王「フン。汚らわしい……やっと姿を消しましたか」

エルフ女王「あなたも早く立ち去りなさい」

戦士「…………んー、よくわかんねーけどさ」

エルフ女王「?」


シャキン

エルフ女王「っ!?」

戦士「…………もっぺんアイツの事“汚らわしい存在”とか言ってみろ」

戦士「アンタが誰だろうとあたしは知らない。首、刎ねるからな」

ジャキッ

戦士「おーい!待ってー」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………フン……」


…………
……

今日は終了おっぱい

全然進まないおっぱい。早く進めたいおっぱい。
見てくれた方、感謝申し上げます。

タッタッタッ

魔法使い「僧侶っ!」

僧侶「……っ!」

魔法使い「まって…………まって!」

タッタッタッ

ガッ

僧侶「っ!」

ドサッ

魔法使い「!!!!僧侶!」

タッタッタッ

僧侶「……」

魔法使い「だ、だいじょーぶ?怪我は……」

僧侶「……」

魔法使い「……」

ギュッ

魔法使い「……だいじょーぶ……」

魔法使い「だいじょーぶだよ……僧侶……」

僧侶「……」

僧侶「……魔法使いちゃん……私……」

僧侶「…………私」

僧侶「やっぱり……人間じゃ無かったんですね……」

ギュウゥ……

魔法使い「……僧侶……」

僧侶「……薄々、分かっていましたけど……」

僧侶「……私……私」

僧侶「……」

僧侶「汚れた存在……なんですね」

魔法使い「っ!!」

グイッ

魔法使い「そんなことないっ!!」

僧侶「……私……私っ……」

魔法使い「僧侶は僧侶だよっ!!けがれてなんかないよっ!!」

僧侶「…………魔法使い…ちゃん……」

魔法使い「僧侶はわたしたちのしってる僧侶なのっ!いつもわらってて、やさしいけど、おこったらこわい僧侶なの!」ポロ…

魔法使い「じつはよわむしで、じぶんよりほかのだれかが傷つくのがこわい、わたしたちがだいすきな僧侶なのっ!」ポロポロ…

僧侶「……っ…」

ザッ…

女勇者「……そうだね。私の知ってる僧侶ちゃんも、そんな感じだよ」

武道家「怒らせたら本当に怖いけどね」

僧侶「……女勇者ちゃん、武道家ちゃん……」

スタスタ…

商人「たまーに鈍くさいところもありますがね……そこもチャームポイントですし」

遊び人「あと寂しがり屋なところもね」

盗賊「……可愛い、妹だよ…」

僧侶「……皆……」

女勇者「……だからね」

武道家「気にするな……っていうのは、流石に無理があるかもしれないけどさ」

ザッ

戦士「まぁ、みーんな僧侶が大好きで、これからもお前の仲間って事だよ」

商人「あっ、戦士ちゃんおいしいトコ全部持って行きやがりました」

僧侶「…………皆……」

ギュウゥ…!

魔法使い「……っ!」ポロポロ…

僧侶「…………」

僧侶「……っ……」ポロ…

ナデ…

僧侶「……」ポロポロ…

僧侶「……ありがとう……」ポロポロ…

武道家「あーもう!ホラ!泣かないの!」

遊び人「だ、大丈夫?えっと」オロオロ

盗賊「……ハンカチ…ホラ、顔あげて…」

僧侶「………っ」グスッ

僧侶「……はいっ」

魔法使い「……っ…!」ポロポロ

商人「……なんで魔法使いちゃんの方が泣いてやがるんですか」

盗賊「……魔法使いも、泣き止んで……ね?…」フキフキ

僧侶「魔法使いちゃん……ホラ、私はもう平気ですから……」

魔法使い「………っ」ポロポロ

魔法使い「……よ……」ポロポロ

戦士「ん?なんだって?」

魔法使い「………しいよ……!」ポロポロ…

魔法使い「わたし、くやしいよ……!」

魔法使い「あのひと……僧侶のことなにもしらないのにっ……!僧侶のことばかにした……!」

魔法使い「わたし、くやしい……!」

僧侶「……魔法使いちゃん……」

女勇者「……そうだね」

女勇者「じつは私もね……心中穏やかでは無いんだ」

遊び人「お、女勇者?」

武道家「落ち着きなさいよ、それは皆同じで……」

女勇者「それは分かっているさ。だからこそ、余計にあの女王の鼻の穴をあかしてやりたいのさ」

商人「…何考えてるんです?」

戦士「まさか仕返し?お前らしくもない」

盗賊「……ぼ、暴力は良くない……」

女勇者「あぁ、仕返しさ。ある意味ね」

武道家「?どういう事?」

女勇者「……お義兄ちゃんから聴いた話の限りでは、女王は女エルフが青年に捨てられたと思っている筈なんだよ」

遊び人「うん…そうね」

女勇者「そしてコレは憶測だけど、女王は青年が女エルフを騙して夢見るルビーを奪ったと考えてるんじゃないかと思うんだ」

商人「あぁ、確かにそれだと色々と納得がいきますね」

戦士「だけど……それがどうしたんだよ?」

女勇者「……だったらさ」

ザッ

女勇者「それを、覆してやれば良いと思うんだよ」

盗賊「……というと?…」

女勇者「夢見るルビーは青年が奪ったんじゃなく、苦しんだ2人が手放した、という事を突きつけてやればいい」

武道家「……そっか」

遊び人「2人が夢見るルビーを捨てたのは、西にある洞窟……」

商人「村学者って人の話からすれば……他人が洞窟内に入ってルビーを拾う可能性は少ないですからね……」

盗賊「……まだ洞窟内にある可能性が、高いね…」

戦士「……拾いに行くか!」

ぐしっ

魔法使い「……僧侶をかなしませたしかえしだよっ!みんな!いくよっ!」

女勇者「あ……私のセリフ…」

僧侶「…………」

僧侶(みんな……)



…………
……

一一一一一一一一一一一一

-ノアニール・宿・勇者の部屋-

ギシッ ギシッ

勇者「1682……1683…」

コンコン

勇者「うおぅっ!は、はい!?」ビクゥッ

ガチャッ

村学者「おぉ、やはりまだいたか。おはよう」

勇者「あ、村学者さんでしたか……おはようございます」

村学者「あれ?君1人かい?仲間とやらは…」

勇者「みんな、今日の朝にエルフの里に行ってしまいました……僕は手がこんななんで留守番です」タハハ

村学者「そうか……では、私の家に来ないかね?お茶でもしようじゃないか」

勇者「え、そんな……良いんですか?」

村学者「私もたまに客人が来るくらいで寂しいのさ。良ければ話し相手になってくれんかね?」

勇者「僕でよければ、是非!」

村学者「ふふ、決まりだね。行こうか」

…………
……

-村学者の家-

カチャ…

村学者「ほぉ……旅の扉か……話にしか聞いたことは無かったが…」

勇者「はい、それで…………ってすみません、なんだか自分だけ話しっぱなしで……」

村学者「いやいや、楽しかったよ。貴重な話を聞けた」

勇者「……ちょっと質問をしてもよろしいでしょうか?」

村学者「ん?なんでもどうぞ?」

勇者「少し気になったんですが……十数年もの間、建物の朽廃や汚れなどはどうされてたんですか?」

村学者「あぁ、そんな事か。私がやっているんだよ」

勇者「村学者さん1人でですか!?」

村学者「まあね。最初は面倒だったが、最近ではもう日課のようなものになってしまったよ」

勇者「どうりで宿が綺麗だと思いました……お風呂もちゃんと使えましたし……」

村学者「ははは、中々に快適だったろう」

勇者「はい……あの」

村学者「……なんだね?」

勇者「失礼ですが」

ゴチャッ……

勇者「御自宅の掃除は忘れてらっしゃるんですか?」

村学者「本当に失礼だな!!」

村学者「いやね?やろうやろうとは思っているんだよ?っていうか埃とかは拭き取ったりしてるしさ」

村学者「ただ職業柄ね?やっぱりね?物が増えちゃうんだよ。ね?だからこれは仕方ないんだよ?ね?」

ドシャアッ!

勇者「……」

村学者「……」

パラパラ……

勇者「…………荷物が雪崩を……」

村学者「……近々片付けるとするよ」

勇者「ははは……」

ガラ…

勇者「……あれ」

村学者「どうかしたかね?」

勇者「……あそこの壁の……」

勇者「…………あの絵」

村学者「あぁ、荷物の影に隠れてしまっていたね……」

村学者「……あれは、私と青年と女エルフの肖像画さ……」

勇者「…………」

村学者「私が一番右、左が青年。そして真ん中が女エルフだ。旅の画家に描いてもらったんだ」

勇者「……あれが……」

村学者「何か気になる事でもあったかね?」

勇者「…………」

村学者「?」

勇者「……いえ……」

勇者「綺麗な……人ですね……」

村学者「…………そうだろう」

村学者「……綺麗な、綺麗な……女性だったよ……」

村学者「……もっと、3人で色々な思い出を作りたかった……」

村学者「……今思うと、短い間ではあったが……生涯最高の時であったよ……」

勇者「……」

勇者「……2人は」

勇者「居なくなっていた一年間……どこで何をしていたのですか……?」

村学者「……それは、私にも分からなかったよ」

村学者「違う大陸に渡ったという噂もあったが……それすら真実かも分からん」

勇者「……」

村学者「……ただ一つ、言えることは」

村学者「彼らに、安息や幸せは……無かっただろうね……」

勇者「……」

…………
……

今日はおしまい

短すぎるギギギくやしいのうくやしいのう


-エルフの隠れ里・入口付近-


スタスタ…

戦士「どうする?一回ノアニールに帰って勇者に西の洞窟に行くって言っておくか?」

女勇者「いや、やめておこう。ついてきかねない」

遊び人「今は回復に専念させないとね」

無道家「とにかく早くここを出ましょ?エルフの視線が気になってしょうがないわ」

エルフ村民「……。………」ヒソヒソ

エルフ村民「………。…」ヒソヒソ

僧侶「はい……そうですね」

魔法使い「…………あれ?」

盗賊「……どうしたの?…」

商人「忘れ物でもしたんですか」

魔法使い「ううん、ほら。あれっ」

女勇者「どうしたん……あ」

戦士「?どうしたんだ?」

魔法使い「あそこにエルフじゃなくてにんげんがいるよっ」

商人「あ、本当ですね。こんな所にどうしたんでしょうか」

盗賊「……おじいさん一人で……」

僧侶「……」

僧侶「…………!おじいさん!!」

老人「ん……おぉ、お前さんか」

武道家「知り合い?」

僧侶「この間私を街に連れて行ってくださった方です!」

遊び人「あぁ、この前言ってた……」

商人(おばけじゃなかったんですね)ホッ

僧侶「おじいさん、その節はありがとうございました!」

老人「ワシはなんもしとりゃせんよ。そう気にしなさんな」

僧侶「でも、街に着いてから姿のほうが見当たりませんでしたがどうされたんですか?」

老人「…………」

老人「……わからんのじゃ」

僧侶「え?」

老人「……途中から気がつくとここに座っておったよ」

武道家「……それ、大丈夫なの?」

老人「はっはっは……まだボケとりゃせんよ」

女勇者「……おじいさん、すみませんが質問してもよろしいでしょうか?」

老人「ん?あぁ、なんでもどうぞ」

女勇者「おじいさんは……ノアニールに住んでらっしゃるんですよね?」

老人「いかにも」

女勇者「それでは……何故、村の人々の様に眠ることなくここにいらっしゃるのですか?」

老人「…………」

老人「…………わしが眠らずに済んだのは、エルフが怒って皆を眠らせた際にロマリアに用事で足を運ばせていての」

老人「あの村におらんかったから眠らずに済んだのじゃ」

女勇者「なるほど……でも、どうして村ではなくここにいらっしゃるのですか?」

老人「…………」

老人「……わしの……息子のせいなんじゃ」

女勇者「え?」

老人「わしの息子がエルフの姫さんなんかと駆け落ちしたばかりに……皆は眠らされてしまったんじゃ」

一同「「「「!!!!」」」」

武道家(この人……)

遊び人(青年の父親なのね……)

老人「だからこうしてエルフの女王さんに謝りに来ておるんだが……」

老人「……全く話なんか聞いてもらえんよ……」

老人「エルフの伝宝をわしの息子が盗んだということになっとるのだ……エルフは未だに怒っておる……」

老人「………わしはもう、どうすればいいか……」

女勇者「……おじいさん……」

僧侶「……」

僧侶「……まかせてください」

老人「え?」

僧侶「私たちに任せてください」

僧侶「必ず、青年さんが伝宝を盗んだのでは無いと……」

僧侶「二人の愛は本物だったのだと……証明してみせます」

魔法使い「…………僧侶……」

老人「…………どんな策があるかは分からんが……」

老人「わしは老いぼれすぎた……お前さんたちに望みを託すとするよ」

戦士「任しとけって!!必ず女王の鼻をあかしてやるからさ!!」

魔法使い「大船にのったつもりでいてねっ!」

僧侶「頑張ります!」

老人「…………頼んだぞ……」

…………
……

.

-エルフの森-

ザッザッザ…

女勇者「薬草は皆ちゃんと持ってる?」

戦士「もってるぞー」

遊び人「商人と盗賊が採ってきたのもあるからいっぱいあるよ」

商人「フフン!ありがたく使うといいですっ」

武道家「あんたねぇ……」

盗賊「…………」

魔法使い「? ……どうしたの?盗賊」

女勇者「しっ」

魔法使い「?」

武道家「そのまま……普通に何事も無いかの様に歩いて」ヒソヒソ

魔法使い「…………」

魔法使い「……きょ、きょうは良いおてんきだねぇ」

商人「めっちゃ曇りですやん」

武道家(駄目だわこの子)

戦士「何やってんだお前ら?」

遊び人(戦士は戦士で全く気付いて無いし……)

戦士「あれ?盗賊は?」

魔法使い「あ、ほんとだっ。いないよっ」

女勇者「…………君達はホントに……」

戦士・魔法使い「え?」

ガサァッ!!

?「きゃぁああぁっ!!!!!!」

戦士「!!??なんだなんだ!!?」

魔法使い「ひめいだよっ!?うしろのほうから……」

武道家「…………盗賊!どうだった!?」

戦士「へ?盗賊?」

魔法使い「どゆこと?」

商人「本当に気付いて無いみたいですねこの二人」

女勇者「さっきから後ろをつけて来る気配がしていたんだ」

僧侶「それで盗賊ちゃんが回りこんで捕まえてくれたんですよ」

魔法使い「え?そうだったの?」

戦士「盗賊すごいな!」

武道家「あんたらが鈍すぎんのよ……」

ザッ

盗賊「……みんな……」

女勇者「あ、盗賊ちゃん……どうだっt…………」

エルフ娘「ひっ……ひぃぃ!」ガクガクブルブル

盗賊「……こんなん出ましたよ……」

遊び人「エ、エルフ?」

商人「なんでまたエルフが……」

僧侶「あ、貴女は!」

魔法使い「あれ?おしりあい……って、僧侶をたすけてくれたエルフさん?」

女勇者「あ、本当だね……でもどうして」

エルフ娘「こ、殺さないで!」ガクブル

武道家「殺さない殺さない!」

遊び人「そんなに怯えないでいいよ?」

僧侶「何もしませんから、落ち着いて……ね?」

エルフ娘「う……うん」

戦士「…………」

戦士「……がおー……」

エルフ娘「!?」

戦士「がおー!!」

エルフ娘「や、やぁ――――!!!!」ガクブル

ポカッ!

戦士「あいたっ!」

武道家「このバカ!あそぶな!!」

戦士「あはは、ごめんごめんつい……」

武道家「全く……」

武道家「ごめんね、そんなに怯えなくても何もしないから……」

魔法使い「がお――!!」

エルフ娘「やぁぁ―――――!!!!!!」

武道家「お前もか!!!!!」

……………………

エルフ娘「…………っ」ガクブル

僧侶「あはは……大丈夫ですか?」

遊び人「もう、二人が遊ぶからだよ!」

戦士「はは、悪い悪い」

魔法使い「めんぼくなひ……」

女勇者「はぁ……それで、エルフ娘さんはどうして私達を尾行してたのかな?」

エルフ娘「…………」ブルブル

武道家「駄目ね……すっかり怯えちゃってる」

商人「んー、じゃあ僧侶ちゃんが聞いてみればどうですか?」

商人「そうやって僧侶ちゃんに隠れてるって事は僧侶ちゃんなら大丈夫という事だと思いますし」

僧侶「そうですかね…………エルフ娘さん?」

エルフ娘「……な、何?」

商人「やっぱりですね」

僧侶「あの……どうして私達を尾行していたのですか?」

エルフ娘「そ、それは……」

戦士「……まさかあの女王に尾行しろとか言われたのか?」

エルフ娘「ひぃ!」

戦士「あ……悪い」

僧侶「……女王様に何か言われたのですか?」

エルフ娘「…………」

エルフ娘「……ううん」

エルフ娘「私が勝手に……尾行したの」

エルフ娘「こんな所……女王様に見られたら処罰されちゃう」

僧侶「ではどうして……」

エルフ娘「……」

エルフ娘「た、確かめたくて……」

僧侶「え?」

エルフ娘「人間がどういうものなのか……確かめたくて……」

僧侶「……?」

エルフ娘「そ、それに女王様が貴女に悪い事しちゃったから、助けてあげたいと思って……」

僧侶「……!」

女勇者「……ちょっとすまないけど」

エルフ娘「!」ビクッ

女勇者「そう怯えないで……ちょっと質問だけど僧侶に対して、君は否定的ではないのかい?」

エルフ娘「……う、うん」

僧侶「そ、そうなんですか?でも、私ハーフエルフですし、貴女もさっき私を避け……」

エルフ娘「……あれはあそこで貴女と仲良くしたら後で怒られるから……ああするしかなかったの」

エルフ娘「それに……皆ハーフエルフを恨んでいるわけじゃないんだよ」

僧侶「……それは……?」

エルフ娘「ハーフエルフだって望んでそうなったわけじゃ無いから……」

エルフ娘「……若いエルフは、皆そんなのどうだっていいと思ってる。……人間は怖いけどね」

武道家「若いエルフ……?」

エルフ娘「う、うん……ハーフエルフを毛嫌いする人って、戦争時代に生きてた人達が殆どなの」

エルフ娘「その人達は、間近でエルフが人間に犯されるのを見ていたりするから……」

商人「……そ、それはキツイですね……」

エルフ娘「うん、それに…………」

エルフ娘「…………皆、この里に女エルフしか居ないの気付いてた?」

盗賊「……言われて見れば……」

遊び人「…………男のエルフっていないね?」

女勇者「…………まさか」

エルフ娘「……うん、その戦争の時に全員殺されちゃったらしいの」

エルフ娘「……皆の、目の前で、妻達を犯されながら」

僧侶「…………」

魔法使い「……っ」

戦士「…………そりゃまた胸糞悪い……」

エルフ娘「私はその時母の胎内にいたから覚えていないけどね」

エルフ娘「この里にいる若いエルフは大抵が私と同じだよ」

エルフ娘「…………でも、そういう事があったから、年上のエルフ達はハーフエルフが苦手みたい」

女勇者「んー……それはまた…………」

エルフ娘「でも……私はおかしいと思うんだ」

僧侶「え?」

エルフ娘「……私は貴女が忌み嫌われるような存在だと思えないの」

エルフ娘「こんな優しそうで、綺麗なのに」

僧侶「え!?いえっ私はそんな滅相もないっ///」アタフタ

エルフ娘「……女王様も……なんだか変だったし…………」

僧侶「え?」

女勇者「変って……何が?」

エルフ娘「…………ハーフエルフが里を訪れてくることは多々あったの」

エルフ娘「その際に女王様が入里を拒否する旨を伝えるんだけど……」

エルフ娘「あんなに露骨に邪険に扱う事は無かったわ」

エルフ娘「貴女を追い出した時、なんだかまるで何かに怒ってる様だった」

エルフ娘「いつもなら悲しい顔でやんわりと断るだけなのに……」

僧侶「……」

女勇者「……なんでだろうね」

エルフ娘「……わからない」

エルフ娘「でも……それも確かめたかったから、付いてきちゃったの……ごめんなさい」

僧侶「いえ、何もお気になさらないで下さい。お気持ち本当にありがたいです」

武道家「でも、あまりオススメはしないわよ?」

戦士「今から危ない洞窟の中に行くんだぜ?」

エルフ娘「うん、それは承知の上よ。さっき聴かせてもらったから」

エルフ娘「弓の心得はあるんだ。エルフならではの特技もあるしね。薬草は軽いものしか作れないけど」

遊び人「特技?」

エルフ娘「うん、貴女も持ってるんでしょ?僧侶」

僧侶「え?と、特技ですか?あのっ、お手玉とかなら……」

商人「なんか勘違いしてますねこの子」

エルフ娘「そうじゃなくて……あなたも聴こえるでしょ?植物達の声」

僧侶「!!!?」

女勇者「ほ、本当かい?僧侶ちゃん」

戦士「お前そんなビックリ素敵特技が!」

僧侶「あ、あれは幻聴なんかじゃなかったんですか!?」

エルフ娘「幻聴じゃないよ。私達の耳はあらゆる物の声を聞き取るためにこんなに長くなったんだよ」

僧侶「そ、そうだったんですか……」

僧侶「…………では猫さんの声なんかも頑張れば……」

武道家「何を期待してんのよ……」

エルフ娘「あー、ハーフエルフの場合は耳が少し短いから植物が限界らしいよ」

僧侶「…………そうですか…………」シュン

女勇者「何を期待してるんだいってば……」

魔法使い「きもちはわかるよぅ。すっごくわかるよぅ」

エルフ娘「…………そんな私でよければ、少しだけ手伝わせてくれないかな……?」

女勇者「そんなの大歓迎だよ!よろしくお願いするよ!」

武道家「こちらこそお願いしますって感じよ」

魔法使い「たすかるよー」

商人「まぁ何人居ても困りはしませんからね」

盗賊「……よろしくね……」

遊び人「ありがとう!(勇者ちゃんが居ない間で良かった……こんなに綺麗な子勇者ちゃんが鼻の下を伸ばさない筈が無いよ)」

戦士「少しの間だけどよろしく頼むぜ!」

僧侶「…………ありがとうございます、エルフ娘さん」ニコッ

エルフ娘「……うん!」

…………
……


――――――――――――

-エルフの隠れ里-

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王(…………なぜ……)

エルフ女王「…………っ……」

スタスタ…

エルフ村民「……女王様、大丈夫ですか?」

エルフ女王「……何がです」

エルフ村民「体調があまりよろしく無い様なので……」

エルフ女王「私は平気です。席を外しなさい」

エルフ村民「……しかし……」

エルフ女王「外しなさい」キッ

エルフ村民「……失礼いたしました」

エルフ村民(あんなに機嫌の悪い女王様なんて久々ね……)

スタスタ……

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………女エルフ…………」ボソリ

…………
……



-ノアニール-

カチャッ

村学者「……ところで、勇者君」

勇者「はい?何でしょう」

村学者「君は……腕に自信はあるかね?」

勇者「腕……ですか?」

村学者「うむ……少し頼みごとをしたいのだが……」

村学者「いやしかし、こんな事を無関係の君に頼むのも……」

勇者「……」

勇者「腕には……」

村学者「え?」

勇者「腕には自信あるわけでは無いですがやる気はあります!!!!」

村学者「ん――――もうそれでいいやっ!」

勇者「やったー!」

村学者「採用だ――――ッ!!よっ!!あんたが王様っ!」

勇者「いや真面目にしましょう、どんな用件ですか」

村学者「え?あ、うん、ごめんね。実は…………」

…………
……


-ノアニール西の洞窟・内部-


コツコツ……

魔法使い「うわぁー……やっぱりくらいねぇ」

盗賊「……皆、足元気をつけてね……」

女勇者「エルフ娘ちゃん、大丈夫かい?」

エルフ娘「うん……ちょっと怖いけど、大丈夫だよ」

僧侶「無理はしないでくださいね」

エルフ娘「……うん」

コツコツ……

女勇者「しかしお義兄ちゃんは大人しくしているだろうか」

商人「……どうでしょうね」

戦士「大人しくしてるんじゃないか?あれだけ言っておけば」

遊び人「えぇ?でも勇者ちゃんの事だよ?」

盗賊「……筋トレとかしてそう……」

魔法使い「うーん、ありえるねっ」

エルフ娘「…………」

僧侶「あはは……」

エルフ娘「……ねぇ、僧侶ちゃん?」

僧侶「?はい、どうかしました?」

エルフ娘「皆が今話している勇者って…………」

僧侶「勇者くんですか?私達の大事な仲間なんです」

僧侶「今回エルフを訪ねたのもその勇者くんの怪我を治したいからで……」

エルフ娘「…………大事……なの?」

僧侶「え?」

エルフ娘「その勇者って人の事…………大事なの?」

僧侶「…………」

僧侶「…………はい」

僧侶「……とても、とても大事な人です」

エルフ娘「…………耳貸して」

僧侶「?はい、何か?」ヒョイッ

コソッ

エルフ娘「……好きなの?」ボソッ

僧侶「へうっ!!?///」

僧侶「なななっ、何言ってるんですか!!!!私はそんな……!」

エルフ娘「……真面目に、答えて」

僧侶「…………」

僧侶「……」チラ

女勇者「全くお義兄ちゃんには手を焼くよ」

武道家「昔からああだものね」

商人「あんなおバカ滅多に居ませんよ」

魔法使い「たしかにゆーしゃはおばかさんだねっ」アハハ

盗賊「……そういう所も、可愛い……」

遊び人「盗賊は勇者ちゃんに甘いんだからー」

戦士「たまにはガツンと言ってやらないとさー」

ワイワイ

僧侶「…………」

僧侶「……勇者くんは」

エルフ娘「…………?」

僧侶「……――――勇者くんは……」

…………
……






……―――――勇者くんは、私の―――――……





――――――――――――

-十数年前・イシス南西の修道院-

スタスタ……

シスター『僧侶?どこに行ったのですか?僧侶?』

僧侶(小)『……』

シスター『僧……あぁ、この部屋に居たのですか』

僧侶『…………』

シスター『…………?どうしたのですか?僧侶……またその本を読んでいるのですか』

僧侶『……あ、しすたーさま』

シスター『僧侶は本当にその本が大好きですね』フフ

僧侶『あのね、おひめさまをね、わるいどらごんがつれてってね』

シスター『はいはい』ウフフ

僧侶『それでね、おうじさまがね、たすけてくれるの』

シスター『それは素敵なお話ですね』

僧侶『…………』

シスター『僧侶?』

僧侶『…………わたしにも、おうじさまはくるのですか?』

シスター『王子様?』

僧侶『……わたしが』

パラ……

僧侶『わたしが、こんな、おばけみたいなみみだから、おひめさまとはちがうから』

僧侶『だから、こないのですか?』

シスター『…………僧侶』

僧侶『こんなみみだから、みんなわたしを、こわいこわいするのですか?』

シスター『…………』

僧侶『こんなみみだから、ぱぱとままは……』

ギュウ……

シスター『僧侶、違いますよ』

僧侶『しすたーさま』

シスター『貴女のその耳はお化けみたいなんかじゃありません……たいへん可愛らしいものですよ』

僧侶『…………』

シスター『だから、いつか王子様がちゃーんと迎えに来てくれますよ』

僧侶『…………ほんと?』

シスター『ええ』ニコッ

僧侶『……えへへ』

シスター『それでは、ごはんにしましょう?』

僧侶『はい!』

シスター『今日はあなたの好きな豆のスープですよ』

僧侶『わあ!』

…………
……




……
…………


シスター『…………身支度はできましたか?僧侶』

僧侶『はい!』

シスター『……では、僧侶をお願いします……』

神父『はい。お任せ下さい』

僧侶『……どなたですか?』

シスター『…………今日から、貴女はこの方と遠くで暮らすのです』

僧侶『…………えっ……』

神父『よろしくお願いしますね。僧侶さん』

シスター『……さぁ、お行きなさい』

僧侶『しすたーさまは、しすたーさまはいっしょにいかないのですか?』

シスター『…………』

僧侶『そんなのやです!そんなの……』

シスター『……神父様、お願いします』

神父『……よいのですか?』

シスター『……お願いします……早く……』

僧侶『しすたーさま!やです!いいこにします!いいこにしますから!』

シスター『僧侶!!』

僧侶『っ』ビクゥ

シスター『いい子なら言う事を聞くのです!!お行きなさい!』

僧侶『……しすたーさま……』

シスター『……早く……行くのです……!』

僧侶『…………』

ダッ

神父『あっ……』

僧侶『……っ!』タッタッタッタ……

神父『……本当に、良かったのですか』

シスター『……ここはもう危険です……僧侶をよろしくお願いします……』

神父『…………』

シスター『…………早く……』フルフル

ポロッ……

シスター『あの子を……あの子をお願いします……!』ポロポロ…

神父『…………はい。お元気で…………』

スタスタ……

シスター『…………』

シスター『……あの子に』

シスター『あの子に、ルビス様の幸がありますよう……!』ポロポロ…

…………
……


-アリアハンへの商業船の上-

ザザーン…  ザザーン…  


僧侶『…………』

ギシッ

神父『……ここにいたのですか』

僧侶『…………』

神父『…………隣、失礼しますね』ヨッコラショ

僧侶『…………』

神父『……シスターを恨まないであげてください』

僧侶『……す』

神父『?』

僧侶『…………たしが……から……です』

神父『?……なんですか?』

僧侶『……わたしが』

僧侶『わたしが……おばけみたいだから……』

僧侶『わたしが、おばけみたいだから、すてられたんです』

神父『……!』

神父『僧侶さん、顔をあげなさい』

パッ

神父『!』

僧侶『……ヒック……グスッ……!!』ポロポロ…

僧侶『わた……わたしが……わたしがおばけだから……!!!!』ポロポロ…

神父『…………』

ギュッ……

神父『それは、違いますよ。僧侶さん』

僧侶『……グスッ……うぇっ……ヒック……!!』ポロポロ…

神父『シスターは貴女が大事だからこそ、貴女を私に預けたのですよ』

神父『最近あの辺りの魔物の力が増してきていたのです』

神父『そんな中、子供を育てるのは、その子供にとって危険だと判断したシスターは、貴女を私に託したのです』

僧侶『ヒック……本当……?』ポロポロ…

神父『はい。……あのシスターが貴女を大事に思っていない筈がありませんよ』

僧侶『……う、うわぁぁあぁぁん!!』ポロポロ…

ギュウゥッ……

神父『…………もう、泣かないで下さい』

神父『(…………何故子供達がこのような思いをしなければならないのか……)』

僧侶『うっ……うっ……!!しすたーさまぁぁ……!!!!』ポロポロ…

神父『(……私は、この子をなんとしても幸せにしなければ……)』

…………
……


-アリアハン・教会-

僧侶『神父さまー』

神父『…………』

僧侶『神父さま……ここにいらっしゃったのですね』

神父『ん……あぁ、僧侶ですか。どうかしましたか?』

僧侶『おすがたがみえなかったので……』

神父『すみません、書物に夢中になっていました……それでは、みんなでご飯にしましょうか』

僧侶『…………あの、わたしは……あとでたべます……』

神父『……まだ、孤児院の子供達とは馴染めませんか……』

僧侶『ご、ごめんなさい……』

神父『いえいえ、責めているわけではないのです。ゆっくり馴れていけばいいですよ』

僧侶『……はい』

神父『…………』


――――――――――――

-教会・食堂-

カチャカチャ……

僧侶『……』モグモグ

シーン……

僧侶『……』モグモグ

僧侶『(……さみしい)』

ガタッ

僧侶『!?』

神父『前の席、失礼しますね』

僧侶『神父さま?……どうされたのですか?もうごはんはめしあがったのでは……』

神父『ちょっと回復呪文の勉強で疲れてしまいましてね……小腹が空いてしまいまして』

僧侶『…………』

神父『……一緒に食べましょう?』

僧侶『…………はいっ!』

……………………

神父『それでその呪文がですね』モグモグ……

僧侶『神父さま、たべながらおしゃべりはだめなのです』

神父『……』モグモグ……

ゴクン

神父『はは……失礼しました。それでは片付けましょうか』

僧侶『…………あ、あの……』

神父『……?どうしましたか?』

僧侶『……その……かいふくじゅもんのはなし……もっときかせてくれませんか……?』

神父『……!』

僧侶『…………』

神父『…………』

神父『……回復呪文、勉強してみますか?』

僧侶『!!はいっ!』

…………
……



――――――――――――

パラ……

僧侶『…………このじゅもんは……』

ガシャーン

僧侶『!?』

僧侶『(どうしたのかな……だいどころのほうから……)』

テクテク……

僧侶『!神父さま!』

神父『あいたた……あ、僧侶……驚かせてすみませんね。お皿を割ってしまいまして』

僧侶『神父さま、おててが!』タッタッタッタ……

神父『あはは、お皿を拾う際に切ってしまいました』

僧侶『……いたそう……』サスサス

神父『大丈夫ですよこのくらい……』

僧侶『…………』ブツブツ……

神父『…………?僧侶……?』

僧侶『……かごを……せよ……』

僧侶『……ホイミ』

ポワァッ

神父『!!??』

僧侶『……!しんぷさま!できました!いたくないですか!?』

神父『……僧侶、貴女は……もう、ホイミを……!?』

僧侶『はい!べんきょうしました!』

神父『…………!!』

神父『(まだ僧侶にホイミを教えてから3日しか経っていないのに……!)』

僧侶『だいじょうぶですか?いたくないですか?』

神父『(…………この子は、凄い能力を秘めていますね……)』

神父『……もう全然痛くないですよ……ありがとうございます』

神父『……僧侶は凄いですね』ニコッ

僧侶『!!…………えへへ///』

神父『(なにこれかわいい)』

神父『…………あれ、僧侶……そういえば、その帽子は……』

僧侶『あ……すみません、神父さまのぼうしをかってに……』

神父『いえ……それは良いのですが、最近いつもその帽子をしていますね?』

僧侶『あの……その…………』

神父『?』

僧侶『…………これなら……みみをかくせるので……』

神父『…………!』

僧侶『……みんなに、みられないですむので……』

神父『……そうですか……』

僧侶『…………すみません』

神父『いえいえ、いいのですよ。僧侶のお好きな様にして構いませんよ』

僧侶『……ありがとうございます』ニコ

神父『…………』

神父『(ナデナデしたかった!!!!)』

…………
……

――――――――――――

-教会・食堂-

神父『それでは……頂きます』

孤児・教徒一同『いただきまーす!』

ワイワイ

僧侶『…………』モグモグ……

神父『……』モグモグ…

神父『(僧侶も皆と一緒に食事ができる様になりましたね……会話はあまりしませんが)』

僧侶『……』モグモグ…

?『ねぇ!』

僧侶『はひ!?』ビクッ

?『……そうりょちゃん……だよねっ』

僧侶『は、はい……』ビクビク……

魔法使い『わたしは魔法使いっていうんだよっ!』

僧侶『……ま、まほうつかい……ちゃん?』

魔法使い『うんっ!おしゃべりしよう?』

僧侶『お、おしゃべり……!?』

神父『(魔法使い……最近なんだか明るくなった気がしますね……)』

神父『(良き友にでも出会ったのでしょうか……)』

魔法使い『……!……!』ペラペラ

僧侶『…………』オドオド

神父『…………』

神父『(皆マジプリティ!!)』

…………
……

――――――――――――

-アリアハン・街中-

テクテク……

僧侶『おかいものー♪おかいものー♪』

『あら、僧侶ちゃん!』

僧侶『ふぇっ!?』

ルイーダ『この間は盗賊を助けてくれてありがとうね!』

僧侶『あ……』

ルイーダ『確かこの辺りに盗賊も居るはずなんだけど……』

ルイーダ『あ、いた!おーい!盗賊!』

盗賊『……!ルイーダさんだ…』

戦士『あ!ルイーダさーん!!』

武道家『…………となりにいるのはだれ?』

魔法使い『…………あ!』

タッタッタッ……

魔法使い『僧侶ちゃん!』

僧侶『あ……魔法使いちゃん……?』

ルイーダ『あれ、魔法使いちゃんと知り合い?』

魔法使い『うん!』

盗賊『……どうかしたんですか?…』

ルイーダ『盗賊!この前盗賊が倒れたときに助けてくれた僧侶ちゃんよ!』

盗賊『……!…あなたが…』

盗賊『……ありがとうございました…』

僧侶『え……あの……その……』

ルイーダ『……僧侶ちゃん?どうしたの?』

戦士『僧侶っていうのかー!あたしは戦士だ!よろしくなー!』

武道家『わたしは武道家。よろしくね!』

魔法使い『もうすぐ勇者もくるとおもうんだけど……』

ルイーダ『あら、勇者くんもいるの?』

タッタッタッ

『おーい!』

盗賊『……あ…勇者だ…』

勇者『ごめんね!ちょっとおくれちゃった…………あれ?』

僧侶『!』ビクゥ

勇者『そのこはどなた?』

僧侶『あの……わたし……その』

ルイーダ『?』

魔法使い『……僧侶ちゃん?』

武道家『どうしたの?かおいろわるいよ?』

戦士『おい、だいじょうぶかよー』

サッ

戦士『ねつでもあるんじゃ……』

僧侶『!!?』

僧侶『(てが……ぼうしに……)』

僧侶『やめてぇっ!!!!!!』

一同『『『!!!!??』』』ビクッ!!

僧侶『あ…………その……』

僧侶『…………ごめんなさいっ!』

ダッ

ルイーダ『あ……僧侶ちゃん!?』

盗賊『……びっくりした……』

武道家『どうしたのかしら』

戦士『なんだよ、ねつをはかろうとしただけなのに……』

魔法使い『僧侶ちゃん、ぼうしにさわられるのがいやだったんじゃないかな?』

戦士『ぼうし?』

魔法使い『うん。あのね、僧侶ちゃんはいつもあのぼうしをしてるから、だいじなぼうしなんだよっ。きっと』

戦士『だいじかー。だいじならしかたないなー』

勇者『…………?』

…………
……


-教会・僧侶の部屋-

パラ……

僧侶『…………』

コンコン

神父『僧侶?いますか?開けますよ?』

ガチャ

神父『……僧侶?食事の時間ですよ……?』

僧侶『…………』

神父『…………本を読んでいたのですか』

僧侶『……えっ?あっ、神父さま!?すみません!わたしきづかなくて……』

神父『いえいえ、いいんですよ……その本は?』

僧侶『…………わたしが、しすたーさまにもらった、だいすきなえほんです……』

神父『そうなのですか……可愛らしい本ですね』

僧侶『……』

神父『……僧侶?』

僧侶『…………すみません……なんでもないんです』

僧侶『ごはんのじかんですか?すぐにいきます!』

神父『……』

…………
……

――――――――――――

-教会-

スタスタ……

神父『僧侶ー?いないのですかー?』

教徒『神父様、どうされたのですか?』

神父『あぁ、いえ。僧侶をちょっと探していまして』

教徒『僧侶ちゃんなら街の外れの方を歩いていましたよ』

神父『街ですか?』

教徒『はい』

神父『そうですか……。ありがとうございます』

神父『(だ、大丈夫かな……変な奴にからまれてたりしないかな)』

神父『(あんなに可愛いからな……心配です)』ギギギ

教徒『(神父様の顔めっちゃ怖い……)』


――――――――――――
――――――――――――


-アリアハン・町外れ-

僧侶『んしょ…………』

トサッ

僧侶『……ふぅ』

僧侶『…………』

僧侶『(ここなら、だれもこないかな)』

スッ

ファサッ

僧侶『……』

僧侶『(おそとでぼうしをとったの……ひさしぶり……)』

僧侶『…………』

ゴソッ

僧侶『……あった』

パラ……

僧侶『……』

僧侶『“そして、おひめさまは、わるいドラゴンをたいじしたおうじさまと”』

僧侶『…………“すえながくしあわせにくらしました”』

僧侶『…………』

僧侶『(……わたしには)』

僧侶『(わたしは、こんなみみだから、おうじさまなんてこないのかな)』

僧侶『…………』

僧侶『(…………いつか……)』

僧侶『(もしかしたら……いつか神父さまがたにも、すてられて…………)』

ザッ

僧侶『!?』

ザッザッザッ……

僧侶『……!!』

僧侶『(だ、だれかくる!)』

僧侶『ぼ、ぼうしっ……!』

ザッ

僧侶『!』

勇者『……あれ』

僧侶『……!!』

勇者『…………きみは』

僧侶『やだぁっ!!!!』

勇者『!?』ビクッ!!

僧侶『み、みないで!!おねがいします!みないで!!』

勇者『…………?』

僧侶『このみみは、なんでもないんです!みないで!おねがい、みないで!!』

僧侶『(みられちゃった……!みんなにしられちゃう……!)』

僧侶『(もうありあはんに、いられなくなっちゃう……!)』

勇者『…………』

僧侶『……っ……!』フルフル…

勇者『……』スタスタ……

僧侶『…………!』ビクッ

勇者『…………みみ……かくしてるの?』

僧侶『…………』ビクビク

勇者『…………』

勇者『こんなにきれいなのに』

僧侶『……』

僧侶『……え?』

勇者『そんなにきれいなのに、かくすのはもったいないよ?』

僧侶『……きれ……い?』

勇者『まえがみもこんなにのばして……』

ファサッ

僧侶『あっ……!』ビクッ

勇者『……わぁっ……めもまっかで、るびーみたい!きれい!』

僧侶『う……うそです……』

勇者『うそなんかじゃないよ?』

僧侶『だって……わたし、おばけとか、まものみたいだし……』

勇者『おばけ?まもの?』

僧侶『……はい』

勇者『ぜんぜんちがうよー!ようせいみたいだよ!』

僧侶『…………ようせい?』

勇者『うん!まえにえほんでよんだんだ!』

勇者『ようせいはすごくきれいなんだって!』

勇者『きみ、えほんでよんだようせいそっくりだよ!』

僧侶『…………ほ、ホント?』

勇者『うん!ホントだよ!』

勇者『そもそも、おばけとかまものはね』

うにょーん

勇者『ほーんなへんなかおなんらよー』

僧侶『…………』キョトン

僧侶『……ぷっ』

僧侶『あははっ、あははははっ!』

勇者『ほーらほらー』

僧侶『そ、そのかおやめてください……あははははは!』

…………
……




……
…………

勇者『へぇ、とおいところからきたんだ』

僧侶『はい。ここにはふねできました』

勇者『いいなぁ。ぼくもふねのってみたい!』

僧侶『…………そういえば……勇者くん……でしたっけ?』

勇者『んー?』

僧侶『……勇者くんは、こんなところでなにをしようとしてたのですか?』

勇者『……んー、だれにもいっちゃだめだよ?』

僧侶『はい』

勇者『……ぼくね、みんなにかくれてとっくんしてるんだ』

僧侶『とっくん?』

勇者『うん!ぼくのとうさんはゆうしゃだったんだ!』

勇者『だから、ぼくもゆうしゃになりたいんだ!』

僧侶『ゆうしゃ……ですか?』

勇者『うん!』

勇者『ゆうしゃになって、みんなをまもるんだ!』

勇者『おかーさんも、女勇者も、戦士も、武道家も、魔法使いも、盗賊も、るいーださんも』

勇者『このまちのひとたちも、せかいじゅうのひとたちみーんな!』

僧侶『……すごい……』

勇者『うん!……そして』

ザッ

勇者『もちろん、僧侶もまもるよ!』

僧侶『……えっ』

勇者『なにかあったらかけつけて、僧侶をなかせるわるいやつをやっつけてあげる!』

僧侶『…………』

勇者『……あれ、いやだった?ごめんね?』

僧侶『……い、いえ……あの……』

勇者『?』

僧侶『わ……わたしも……いいんですか?』

勇者『もちろんだよ!』

僧侶『で、でもでも、わたし……おともだちにもなってないし……』

勇者『え!?』

僧侶『えっ?』

勇者『ぼくとともだちになるの、いや!?』

僧侶『そ、そんな!わたしは、その!』

勇者『じゃあ、なりたい?』

僧侶『え!?あのっ、その』

勇者『……』

僧侶『……はい』

ニコッ

勇者『じゃあ、もうともだちだね!』

ギュッ

僧侶『あっ』

僧侶『(おてて……にぎられてる……)』

勇者『きょうから、僧侶のぴんちにはぜったいかけつけるよ!』

勇者『よろしくね!』

僧侶『…………』

僧侶『……は……』

ニコッ…

僧侶『…………はい……』

勇者『えへへ!わらったらもっときれいだね!』

僧侶『…………ホント?』

勇者『うん!ぼくはそうおもうよ!』

僧侶『……えへへ///』

勇者『みんなとも、ともだちになろうよ!!』

サッ…

勇者『ホラ、いこ?』

僧侶『……』

ニコッ

僧侶『うんっ!』

勇者『みんないいやつなんだよ!きっとすぐなかよしになれるよ!』

僧侶『…………』

僧侶『(…………かけつけてくれる……)』

僧侶『(……ふふ)』

僧侶『(おうじさまみたい♪)』

…………
……


――――――――――――

-教会-

パラ……

僧侶『~♪』

ガチャ…

神父『僧侶……おや、ご機嫌ですね?』

僧侶『あ、神父さま!』

神父『何かいい事でもあったのですか?』

僧侶『はい!きょうはおともだちがふえました!』

神父『おやおや!本当ですか!それはいい事ですね!』

僧侶『はい!』

神父『(良かった……少し明るくなったみたいですね……)』

僧侶『……それに』

神父『ん?どうしました?』

僧侶『……』

僧侶『わたしのおうじさまも、できちゃいました』エヘヘ

神父『』

神父『』

神父『』

神父『』

僧侶『……神父さま?』

神父『え?あ、はい?あ、すみません、取り乱しましたね』

神父『(…………そそそそそ僧侶にまさか恋人!?いやそんな早すぎますしかし)』

僧侶『~♪』

神父『(どこの馬の骨ですかどうしてくれましょうこのキューティーエンジェル魁僧侶に手を出すとは良い度胸である)』

僧侶『神父さま?』クビカシゲ

神父『……』

神父『(可愛いからいっか!!)』

…………
……


――――――――――――

-教会-

ゴソゴソ……

僧侶『んしょ……』

教徒『あら、僧侶ちゃん。どこかにお出かけ?』

僧侶『はい!勇者くんたちとお出掛けしてきます!』

教徒『そうなの……あれ?神父さまは?』

僧侶『今日は町の西の方で火贈りの儀式があるそうです』

教徒『そう……僧侶ちゃん、気をつけてね。最近変な人達がうろうろしてるみたいだから』

僧侶『はい!それではいってきます!』

ガチャ…

タッタッタッ…

教徒『ふふ……僧侶ちゃん、すっかり馴れて明るくなったわね

教徒『昔来たばかりの頃はどうなるかとおもったけど……』

教徒『すっかり変わっちゃって……お友達のおかげかしら』

ガチャァッ!!

バターン!!

神父『僧侶!!火贈りの儀式をマッハで終わらせてきましたよ!』アソボッ

教徒『(コイツは変わんねぇな……)』

…………
……



-街の中央-

ガヤガヤ……

僧侶『…………』

僧侶『(あれ……勇者くんたちいないなぁ)』

僧侶『(……先に町外れに行っちゃったのかな)』

僧侶『…………行ってみよう』

タッタッタッ……

……

ザッ

『…………見つけたぜ』

『……あぁ……』

…………
……


-町外れ-

タッタッタッ……

僧侶『……』

僧侶『…………いない……』

僧侶『(あれ?約束の日って今日でしたよね……)』

僧侶『(みんなどこに……)』

オーイ

僧侶『……?』

オーイ!ソウリョー!

僧侶『……あ!』

僧侶『勇者くーん!おーい!』

タッタッタッ……

勇者『おーい!ごめんごめん!』

勇者『(遅れちゃったから先に行っちゃってたんだ……でも会えて良かった)』

僧侶『勇者くーん!こっちですよー』

ザッ!

勇者『!!僧侶!!!!』

僧侶『……え?』


ガシィッ!!

僧侶『!!!!!』

男『よしっ!!!!捕まえたぞ!!』

男2『馬車だ!馬車に連れ込め!!』

僧侶『むー!!む――――っ!!』

男3『へへへっ、騒ぐなよ嬢ちゃん』

ジャキッ

僧侶『……――――ッ!!』

男3『これ、分かるだろ?ナイフ。騒ぐと危ないぜ?』

男2『早くしろ!』

勇者『そ、僧侶!!!!』

男『よし!!準備はいいぜ!!』

男3『ずらかるぜっ!!』

ガタンガタン!!

勇者『僧侶!!僧侶――――ッ!!!!』

僧侶『む――――っ!!!!』

男『なんかガキが追っかけてきてやがるぜ?』

男3『ガキなんかほっとけよ。どうせ追い付けやしないさ』

僧侶『(勇者くん……!!!!)』

ガタン…  ガタン…

タッタッタッ……

タッ……

ヒョイッ

勇者『(…………僧侶の帽子……)』ゼェゼェ

勇者『……僧侶っ……!』

…………
……


ガタン  ガタン

僧侶『…………』

男『しっかしとんだ上玉だなぁ』

男3『こんなに簡単に捕まるなんてなぁ』

男2『おい!お前ら、手ぇ出すなよ!大事な商品なんだからな!』

僧侶『…………!』

僧侶『(商品……?)』

僧侶『(私……売られちゃうのかな……)』

男『そういやボスってどこにいるんだっけ?』

男2『ここから西の森に隠れてる。ちゃんとその時にそいつの目利きもするんだ。傷物にすんなよ』

男『へーへー』

男3『でもそりゃあ厳しいぜぇ?こんな上玉、俺が喰っちまいてえよ』

男『お前そんな趣味あったのかよ!まだガキだぜ!』

僧侶『……』

僧侶『(…………私、食べられちゃうんだ)』

僧侶『(…………)』

僧侶『(…………やだ……)』

僧侶『(やだよ……)』

僧侶『(助けて…………助けて……!!)』

僧侶『(…………勇者くん……)』

…………
……

-アリアハン大陸・西の森-

男2『ふっ!!』ピシィッ

ヒヒーン

ガタン…

男『お、着いたぜ』

男3『ちょっと待ってなお嬢ちゃん、もうすぐボスが来るからな』

僧侶『…………!!』ビクビク

男2『ボス!ボース!!』

『ばっか野郎、大声で盗人の名前呼ぶ奴があるか』

男2『あ、ボス!』

ボス『ちゃんと捕まえてきたんだろうな』

男2『はい!この中です!』

ボス『どれ……』

バサッ

男『あ!ボス!お疲れ様です!』

男3『どうです!噂通り、アリアハンにいましたよ!上玉でしょう!』

ボス『…………』

僧侶『…………』ビクビク

ボス『…………おいおい』

男2『どうかしましたか?』

ボス『コイツ、エルフじゃねぇぜ』

男『えっ!!?』

僧侶『(…………エルフ……?)』

男2『でも、耳もちゃんと長いし……』

ボス『馬鹿、エルフの耳ってのはもっと長えもんなんだよ』

ボス『コイツは……多分いらねぇもんが混じってんだ』

僧侶『(…………え……)』

男2『…………いらねぇもん?』

ボス『あぁ、コイツはいわゆる』

ボス『“汚らわしい”方のエルフだ』

僧侶『(…………)』

僧侶『(汚らわ……しい……)』

男『汚らわしい方のエルフっすか……』

ボス『あぁ、だから捨てられたか何かで修道院かどっかに預けられてんだろうな』

僧侶『(…………そっか)』

僧侶『(…………そうだったんだ)』

男3『……って事はボス』

ボス『なんだ?』

男3『コイツは……傷物にしても良いって事……ですかね』ヒヒヒッ

僧侶『(…………)』

ボス『……馬鹿野郎』

ボス『そいつはまだ商用価値はあるんだ』

バサッ

ボス『……殺さない程度にしとけよ』

男3『ヒヒヒッ!!話の分かるボスだぜ!!』

男『おいおい!マジでお前そっちなのかよ!』

男3『お前も混ざってみろよ!目覚めるぜぇ!』

男2『全く……程ほどにな。俺はパスだ』

バサッ

スタスタ……

男3『へへ……腰抜けが』

僧侶『(…………何をされるんだろう)』

僧侶『(…………食べるの?)』

男3『うへぇっ!見れば見るほど……!』

男『……たまにはこんなのもいいかもな』ヒヒッ

僧侶『(…………)』

僧侶『(…………いいや)』

僧侶『(……汚らわしい存在なら……どうでもいいや)』

男3『いただきまーすっなんつってな!』

僧侶『(…………勇者くん)』

ガスッ!!

男3『ゴェエェッ!!!!!』

男『!!?』

僧侶『…………』

僧侶『…………』

僧侶『(……うそ……)』




勇者『ハァ……ハァ……!!』ゼェゼェ

僧侶『(……――――勇者くん!!!!)』

僧侶『……む――――!!!!』

男『こ、このガキ!!どこから……』

勇者『僧侶に手を出すなぁ――――ッ!!!!』

ゴスッ!!

男『あぐっ!!!!』

ドサッ

勇者『……ハァ……ハァ!!』ゼェゼェ

勇者『そ、僧侶!!』

ダッ

僧侶『む――――!!!!』

勇者『今解くから……!よし!』

僧侶『…………ぷは……』

僧侶『…………ゆ』

ガバッ!!

僧侶『勇者くん!!うわぁぁぁぁん!!』ポロポロ……

勇者『よしよし、もう、大丈夫だからね……!』

僧侶『……私っ、怖くて……私っ……!!』

勇者『僧侶、今は一先ず逃げよう!』

勇者『この二人は気絶してるだけだし、外の二人に気付かれたら……』

『誰に気付かれたらだって……?』

勇者・僧侶『!!!!?』

ボス『……お前、舐め腐った事してくれてるな……』

勇者『……僧侶、後ろに隠れてて』

僧侶『…………っ……』サッ…

ボス『正義の味方気取りかぁ?』

ジャキッ

ボス『……オスのガキには商的価値は無え』

ボス『バラバラにして大ガラスの餌にでもしてやるよ』

――――――――――――

ジョボボボ……

男2『……しかし割りに合わねぇ仕事だぜ…………』

男2『あんな上玉のガキを奪っても俺等の懐には雀の涙……』

男2『ほーんとトホホだぜ……』

『隣、いいですかな?』

男2『あ?』

ズズズズズズズズズズズズズズズ

神父『……』←馬上 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

なんだか屈強な馬『ブルルッ……』ゴゴゴゴゴゴ

男2『』

神父『……今仰ってた上玉のガキって……髪の青い女の子の事ですかな?』

男2『えっ?ああ』

男2『…………あっやべっ』

神父『……』ニコッ




神父『血尿をブチ撒けろッ!!!!!!!』

ゴッシャァ!!!!

男2『ぶぎぇ!!!!』

男2『がふっ……!ちょ、ま……』

神父『僧侶は……あの子はどこです……吐きなさい』

男2『まさか……あのガキを追ってアリアハンから……!?』

男2『は、早すぎる……一体どうやって……』

神父『この私の相棒、ファイヤーバードの足腰の屈強さの賜物です』

男2『ファイヤーバード……?』

なんだか屈強な馬『ブルルッ……!』

男2『…………』

男2『馬じゃん!!!!!!!』ガーン

神父『……あの子の居場所を吐きなさいと言っているでしょう!』

神父『私とファイヤーバードの夢のタッグがそんなに見たいのですか!!!!』

男2『見たくないです!!吐きます!!あっちの方の馬車の中です!!』

神父『そうですか……僧侶は、あの子は無事でしょうね……?』

男2『…………そ、それは……』

神父『……』

男2『……』

神父『ファイヤーバ―――――ド!!!!』

馬『オボゥエァアッ!!!!!!!』

神父『聖人!!』

馬『アギャギャ(合体)!!!!!』

神父・馬『馬士無双!!!!』

男2『しゃべった!今その馬喋ったよ!!』

神父・馬『ファイナルッ……』

神父・馬『クロス/ファイヤー/ハリケ――――――――――ン!!!!!!!』

男2『ただのパンチじゃねぇかあああああああぎぃやあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!』

ゴッシャァァァァァァァァァ!!!!!!

神父『…………ふぅ』

男2『』ピクピク

神父『……早く行かなければ……』

ダッ

神父『(アリアハンに突如落ちて来たキメラの翼に括り付けられた僧侶の帽子……)』

神父『(それに一緒に添えられていたメモのおかげでこの状況を知り、駆けつける事ができましたが)』

神父『(……この字は僧侶の字ではありません。知らない子供の字です)』

神父『(……という事は、僧侶を助けようとしている子供の命も、危ないという事!)』

神父『……待っていてください!見知らぬ子……そして』

ピシィッ!!

神父『僧侶ォ――――ッ!!!!!!!!』

馬『ヒッヒーン!!!!』

パカラッパカラッ

…………
……

-馬車の中-

ゴシャッ

勇者『がぁっ……!!!!』

ドシャッ

僧侶『勇者くんっ!!』

ボス『しぶてぇガキだな……』

僧侶『もうやめて下さい!!私なら何しても良いですから……勇者くんには!!』

ボス『うるせぇな!黙ってろ!』

パシィッ

僧侶『きゃっ!!』

勇者『……!!』

ボス『ったくうるせえガキどもだぜ……』

勇者『お前ぇっ!!』

ガスッ!!

ボス『つっ……!!』

ボス『…………っのガキがぁ!!!!』

グサァッ!!

勇者『…………!!!!!!!!』

僧侶『勇者くんッッ!!!!!!!』

ドサァッ!

ボス『あーぁ……弄り殺してやろうかと思ってたのにもう殺っちまった』

勇者『…………かふ、かふ』ガタガタ

僧侶『いやぁっ!!!!ナイフが、ナイフがお腹に!!!!』

僧侶『しっかりして!しっかりして下さい勇者くん!!』

ボス『ちっ……だからうるせぇんだよこの糞アマ……』

ガシッ

ボス『……』

勇者『そ、りょ、にさわ、るな』ギロッ

ボス『っ』ゾッ

ボス『…………さわんじゃねぇ!!この糞ガキ……』

ソッ

ボス『…………?』

ボス『(なんだ?)』

ボス『(何か、俺の足に何くっつけやがった?このガキ)』

ボス『(…………これは)』

ボス『(こんな所で……これを使っちまったら)』

ボス『おい、まて』

勇者『…………』ブルブル

勇者『ふ、っとべ』

勇者は人攫いのボスにキメラの翼を使った!!

ボス『てっめぇえええええええ!!!!!』

しかし天井に頭をぶつけてしまった!!

ゴキィッッ!!!!

ボス『ゴギェエァッッ!!!!!!!』

ドサァッ!!

人攫いのボスを倒した!!

僧侶『ゆ、勇者くん!!!!』

勇者『そ、りょ、たお、したよ』ガクガク

勇者『も、大丈、ぶだよ』ガタガタ

僧侶『喋っちゃだめ!!駄目です!!』

僧侶『……待っててください!』

僧侶『私が、私がすぐに……』

僧侶『…………ホイミッ!!』

――――――――――――

馬『ブルゥァアッ!!!!』

神父『どうやらあの馬車のようですね!!』

スタッ

ダッ!!

神父『僧侶ッ!』

ガバァッ!!

神父『…………』

神父『…………これは……どういう事でしょうか』

男『……』

男3『……』

ボス『……』

神父『……(気絶している……)』

僧侶『ホイミッ!!ホイミッ!!』

神父『!!!!!!僧侶!!よかった!!無事で……』

僧侶『ホイミィッ!!ホイミィッってばぁっ!!!!』ポロポロ…

神父『……?僧侶……』

僧侶『し、神父さまぁっ!!!!』

神父『ど、どうしたのです!この子は……勇者君?』

僧侶『効かないんです……効かないんです!!』

神父『……え?』

僧侶『私の回復呪文が……ホイミが効かないのぉっ!!!!』ポロポロ…

勇者『……ゼェ…ゼェ…』ドクドク

神父『……そんな馬鹿な……』

神父『ホイミ!』

ポワッ……

シュゥッ……

勇者『……かふっ……ハァ……ハァ』ガタガタ

神父『……!!??』

神父『(ど、どういう事なのでしょうか……こんな事……ありえない……!)』

僧侶『神父さまぁっ!!!!』

神父『…………っ!ひ、一先ずアリアハンに運びましょう!』

…………
……

-アリアハン・教会-

ガチャ

勇者母『!!神父様!』

神父『……』

勇者母『勇者は……どうなんですか!?』

神父『……申し訳ありません……手は尽くしたのですが……』

勇者母『…………そん、な』

女勇者『やだぁっ!!お義兄ちゃんをたすけて!!神父さまっ!!おねがいっ!!』

神父『…………もって……今夜でしょう……』

勇者母『…………なんで……なんであの子だけ回復魔法が……!!』ポロポロ…

女勇者『うわぁあぁぁぁぁん!!!お義兄ちゃぁぁぁぁん!!!!』ポロポロ…

神父『…………』

神父『(…………私は、何もできないのでしょうか……)』

…………
……

-教会・治療室-

僧侶『ホイミッ!!ホイミッ!!』

ポワッ……

シュゥ……

勇者『……』ゼェゼェ

僧侶『……ハァ……ハァ』

僧侶『(なんで……)』

僧侶『(なんでこんなに祈ってるのに……回復しないの……!)』

僧侶『(ルビス様……!お願いします……!)』

僧侶『……ホイミッ!!』

ポワッ…

シュゥ……

勇者『……』ゼェゼェ

僧侶『…………なんで』

僧侶『なんで……!!』

僧侶『(ルビス様……お願いします……)』

僧侶『(私の大事な人なんです……)』

僧侶『(私の…………)』

僧侶『(私の王子様なんです……!!)』

僧侶『(どうか、ご加護を…………!!!!)』

僧侶『ホイミッ!!』

ポワッ……

シュ……

勇者『……』ゼェゼェ

僧侶『…………なんで……』

ペタン……

僧侶『なんで……』

勇者『……』ゼェゼェ

僧侶『……』

勇者『……』ゼェ……ゼェ……

僧侶『(……あ)』

勇者『……』ゼ……ゼ……

僧侶『(……駄目、勇者くんが)』

勇者『……』ゼ……

僧侶『(死んじゃう)』

勇者『……』……

僧侶『……』

僧侶『(そっか……)』

僧侶『(祈らなければいいんだ)』

僧侶『(ルビス様が勇者くんを嫌うなら)』

僧侶『(祈らなければ……)』




僧侶『……ルビス様に、祈らずに唱えればいいんだ』

ポワッ……

ズキッ!!

僧侶『…………ッ!!』

僧侶『(行き場の無い祈昇化エーテルが……!体の中で暴れてる……!!?)』

僧侶『(こんなの……はじめて……!!…………でも)』

僧侶『(…………まだ)』

僧侶『(まだまだ、エーテルを暴発させないと……!!)』

僧侶『(どんな手でも……)』

僧侶『(どんな悪手でも…………勇者くんの命を手繰り寄せてみせます!!)』

勇者『……』

…………
……


-教会・廊下-   翌早朝


スタスタ……

神父『…………僧侶が部屋に居ない……という事は……』

神父『未だなんとか堪えているか……それとも…………』

神父『…………』

神父『……(私は、なんと無力なのでしょうね)』

神父『(子供一人救えない……神父失格です)』

スタ……

神父『……ふぅ』

コンコン

神父『……僧侶、入りますよ』

シーン……

神父『……?』

ガチャ…

神父『……僧侶?』

神父『……!!』

勇者『……すー……すー』zzz

僧侶『すー……すー……』zzz

神父『ゆ、勇者君が……息を……!!』

神父『ど、どうやって……』

神父『(まさか、僧侶が……!!?)』

神父『……僧侶……』

ソッ……

神父『!!…………これは……』

神父『(これは、体内でエーテルを暴発させた際にできる痣……!)』

神父『(しかしこれは通常、悪魔を召喚させたり、人知を超えた魔力に接する際にできるもの……!!)』

神父『…………僧侶……あなたは……』

僧侶『……すー……すー』zzz

神父『…………』

神父『はは……寝ている姿は無邪気な子供そのものですね』

神父『…………』

神父『(……涙の痕)』

すっ

僧侶『……ん……』

神父『……』

神父『(……貴女を、そうまでさせるのは……この前言っていた王子様が)』

神父『……』チラッ

勇者『……すー……すー』zzz

神父『…………彼だから……ですかね』

…………
……


-ノアニール西の洞窟-

スタスタ……

僧侶「…………勇者くんは、私の……王子様なんです」

エルフ娘「?王子様?」

僧侶「はい……ちょっと頼りない」

僧侶「でも、凄く頼りになる」

僧侶「……私の、大切な大切な…………素敵な王子様なんです」

エルフ娘「……ふぅん」

僧侶「……あはは、こんな風に言うとちょっと照れ臭いですね」

エルフ娘「……じゃあ、好きなんだ?」

僧侶「…………」

僧侶「耳、貸してください」

エルフ娘「?」ヒョイッ

僧侶「…………」

僧侶「     」ポソッ

エルフ娘「!」

僧侶「…………そ、そんな感じです///」

エルフ娘「…………ふぅん」ニヨニヨ

僧侶「に……ニヤニヤしないでくださいよぅ///」

エルフ娘「あはは、ごめんごめん」

エルフ娘「(でもようやく分かったよ)」

エルフ娘「(エルフの姫様と村の青年の愛を頑なに証明しようとしてたのは……)」

エルフ娘「(…………自分と重ねちゃってたんだね)」

僧侶「…………でも」

エルフ娘「…………?」

僧侶「皆には……言わないで下さいね」

エルフ娘「え?どうして?」

僧侶「…………」



女勇者「だからお義兄ちゃんは昔からああなんだよね」

商人「あぁ、それすごく分かります!」

遊び人「でもそこらへんも可愛らしいよね」

武道家「可愛らしいで片付けられる問題かしらー?」

盗賊「……可愛いよ……」

戦士「どんなもんかなそれはー」

魔法使い「わたしはいいとおもうけどねっ!」


僧侶「…………」

エルフ娘「…………僧侶ちゃん?」

僧侶「…………」

僧侶「多分、それを誰かに向かって口にしてしまったら」

僧侶「……この関係は、壊れてしまう気がするんです」

エルフ娘「……」

僧侶「…………だから」

ニコッ

僧侶「旅が終わるまでは、ガマンですっ」

エルフ娘「…………そっか」

僧侶「そうです!」フフ

エルフ娘「……応援するよ。頑張って!」

僧侶「ありがとうございますっ!」

魔法使い「んぇ?なにをがんばるのっ?」

戦士「なんだよ二人とも、さっきからいないと思ってたらそんなとこでお喋りかよー」

僧侶「えへへ」

ザ……

エルフ娘「…………!」

僧侶「……!」

ザァッ……

武道家「?二人ともどうしたの……」

エルフ娘「しっ」

武道家「?」

戦士「ど、どうしたんだよ」ヒソヒソ

僧侶「……そこの辺りの雑草の声が聴こえるんです……」

女勇者「……なんて言ってるんだい?」

エルフ娘「……先客がいるって」

商人「えっ?」

僧侶「先に……洞窟の奥に入っていった人間がいるんだって言っています」

女勇者「……先客」

遊び人「……人間」

一同「「「「……………………」」」」

スタスタスタスタ

エルフ娘「……?みんな、どうしたの?」

女勇者「いや……ちょっとね」

商人「……すこーし濃い心当たりがありまして……」

戦士「それが結構ありえる話なんだよ……」

武道家「というか十中八九それなのよねぇ」

魔法使い「まだなんともいえないけどね……」

盗賊「……けれど、ほぼ確実……」

遊び人「…………みんな」

女勇者「…………なんだい?」

遊び人「…………もし、そうだったら……どうする?」

僧侶「決まってます♪」




一同「「「「ぶっ飛ばす!!!!!!!」」」」



エルフ娘「人間怖い……」ガクブル

…………
……

-洞窟最深部-

勇者「…………やっぱり……」

勇者「…………よし。戻るか…………」

……

勇者「……?」

ド……

ドドド……

ドドドドドド……

ドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドド!!!!!!!

勇者「あっこれやばい」

ズザァ――――ッ!!!!

勇者「……や、やぁみんな。こんばんみ」

女勇者「ゼェ……ゼェ……」

勇者「なななななんでみみっみんながここにいらっしゃるのでしょう」

武道家「……ゼェ……勇者」

勇者「ななななななななななななな何でしょう」

戦士「…………言い残す事は?」

勇者「許してください」←土下座

戦士「却下だ!!みんな!!コイツ砂にしろ!!」

ワーヒギイィィィィィ

エルフ娘「……あれが王子様?」

僧侶「…………頼りない時は本当に頼りないんです…………」

…………
……


http://i.pic.to/2m5oj


今日はここまで

急いで描いたから今見返すととんでもねぇな

もうすぐ出勤だよ!畜生が!

>>1
大きい画像をくれさい

………………………


勇者「…………ずびばぜんでじだ」ボロッ

女勇者「お義兄ちゃんはあれだね?よほど私達に幽閉されたいらしいね?」

魔法使い「ばかばかばかばかぁ―――――っ!!!!」ポカポカ

商人「本当にグズ野郎ですね脳味噌は正常なんですか?」

遊び人「なんでわざわざ危険な所に行こうとするのよ!!!!」

勇者「で、でもホラ。ウォーt」

戦士「ホーリーウォーターはどうでもいいんだっつの!!効き目は絶対じゃないっつったろ!!」

勇者「はい……」シュン

エルフ娘「……(この人が、僧侶ちゃんの……)」

勇者「あれ?どなた?」

エルフ娘「ひ、ひぃっ…」

魔法使い「ゆーしゃ!こわがらせちゃだめだよっ!」

戦士「そうだぞ!」

勇者「え?あ、ご、ごめんなさい」

女勇者「君達が言うかい……」

女勇者「彼女は今回探索に付き合ってくれたエルフ娘ちゃんだよ」

エルフ娘「よ、よろしく……」

僧侶「以前森で迷った私を助けてくれた方でもあるんです」

勇者「あ、そうなんですか。それは本当にありがとうございました」

エルフ娘「あ……いえ(なんだか……優しそうな人……)」ニコ

勇者「!」ドキ

勇者(エ、エルフってやっぱり噂通り神秘的なんだなぁ)

魔法使い「…………」

盗賊「…………」

僧侶「…………」

勇者「?どうしたの三人とも、なんか僕の顔に……」

コツンッ ツネッ ペチッ

勇者「あいたっ!」

勇者「な、何するのさ!僕何か……」

盗賊「……ごめんね、でも……ばかっ……」

魔法使い「……し、しらないよっ!ゆーしゃのおばかっ」

僧侶「…………何か?」ニコニコ

勇者「あ……いえ、なんでもないです……」

盗賊「……でも、なんでこの洞窟に来てたの?……」

武道家「本当よ。まさかアンタも……」

勇者「あ、そ……それなんだけど」ゴソッ

スッ

勇者「…………こ、コレ」

エルフ娘「!!!!こ、これは!!」

勇者「……その地底湖のほとりで見つけたよ」

僧侶「…………まさか」

エルフ娘「……夢見るルビー……!!」

女勇者「!!こ、これが!?」

戦士「まじかよ!!ひゃっほー!!」

盗賊「……こんなに早く、見つかるなんて……」

遊び人「やっぱり勇者ちゃんもこれを探しに来てたの?」

勇者「………………うん、村学者さんに頼まれてね」

勇者「そしてさ…………」

カサッ

勇者「……ルビーは箱の中にしまわれてたんだけど」

勇者「…………これが一緒に入ってたんだ」

女勇者「?…………それは?」

戦士「なんだ?やたらと古そうな紙だな」

勇者「…………」

勇者「…………女エルフと、青年の……書置きだよ」

一同「「「「!!!?」」」」

武道家「本当に!?」

商人「……なんて書いてありましたか?」

勇者「…………」

カサカサ…

勇者「……“お母様”」

勇者「“お許し下さい”」

勇者「“私達はエルフと人間。この世で許されぬ愛なら”……」

勇者「…………」

盗賊「……勇者……?………」

武道家「……どうしたの・・・?」

勇者「…………“この世で許されぬ愛なら”」

勇者「“せめて天国で一緒になります”」

一同「「「「!!!!」」」」

魔法使い「…………そんな」

盗賊「…………」

遊び人「そんなのって……ないよ……」

エルフ娘「……姫様…………!!」

僧侶「…………」

ギリッ

僧侶「…………そんなの……っ……!」

勇者「…………」

女勇者「……恐らく」

サァァ……

女勇者「この、地底湖に身を投げたんだろうね……」

戦士「随分前の事なんだろうな……」

僧侶「……」

僧侶「…………行きましょう」

商人「……僧侶ちゃん?」

僧侶「……隠れ里に戻って、この手紙とルビーを……女王様に渡しましょう」

魔法使い「…………僧侶……」

女勇者「…………そうだね」

女勇者「それじゃぁ皆、戻ろうか」

…………
……

-洞窟内部-

テクテク……

戦士「…………しかしなぁ」

商人「どうしたんです?」

戦士「何も……死ぬ事は無かったんじゃないかな」

女勇者「……どうだろうね」

女勇者「私も彼女らの行動を肯定する気にはなれないけど……」

女勇者「……私達の分かり得ない苦悩が、彼女らにはあったんじゃないかな」

戦士「…………うん……」

武道家「……二人は、どんな気持ちでこの道を歩いていったのかしらね……」

勇者「……」

勇者「……」チラッ

僧侶「…………」

僧侶「(…………“許されぬ愛”……か)」

勇者「……」

魔法使い「……どうしたの?ゆーしゃ……」

勇者「ん?ううん、なんでもないよ」

エルフ娘「…………」

エルフ娘(…………姫様……)

僧侶「……」

僧侶「エルフ娘さん?」

エルフ娘「ん?どうしたの?」

僧侶「…………エルフ娘さんは、女エルフさんの事……」

僧侶「……その、お姫様の事、知ってるんですか?」

エルフ娘「……」

エルフ娘「……うん」

エルフ娘「すごく、いい人で、凄く綺麗で」

エルフ娘「……憧れの人、だったよ」

僧侶「……そうなんですか……」

エルフ娘「……実はね、今回ついてきた理由にもそれがあるの」

僧侶「え?」

エルフ娘「あんな素晴らしい人が、あんなに夢中になるなんて」

エルフ娘「恋って、人間との恋ってどんなものなんだろう……って思ってね」

僧侶「……そうだったのですか」

エルフ娘「うん……それに」

僧侶「?それに?」

エルフ娘「……」

エルフ娘「ううん、なんでもない」

僧侶「?」

エルフ娘「……さ、行こ?」

僧侶「……はい」

エルフ娘「……」

エルフ娘(……それに、貴女が……僧侶が……)

エルフ娘(…………)

盗賊「……!」

ピタッ

遊び人「?どうしたの盗賊?」

戦士「忘れ物か?」

盗賊「……水の音……」

武道家「水?」

盗賊「……うん。来るときは気付かなかったけど、水の音が近くでする……」

盗賊「……地底湖の水が少しだけ、洞窟の地形のせいで階上に流れこんでるのかも……」

戦士「本当かよ!なぁ、行ってみようぜ!」

女勇者「でも先を急ぐから……と言いたいところだけど、私も少し喉が渇いてしまったよ」

魔法使い「じゃあちょっとだけひとやすみしよっかっ」

商人「そうですね。そこのおバカの怪我の様子も怖いところですし」

勇者「おおおおおおおおバカちゃうわ!」

盗賊「……じゃあいこっか。こっちだよ……」

…………
……

-洞窟内・泉-

魔法使い「…………わぁ…!」

パァァ………

サァァ……

遊び人「……凄く……綺麗……」

戦士「……す、すごいな……」

女勇者「なんというか、なんともロマンチックな所だね……」

商人「わぁ、見てください!なんだか水が光ってるような……」タタタッ

盗賊「……あ、こんな所で走ったら……」

コツッ

ドテッ

商人「ひうっ!」

武道家「あーぁ、転んだ……」

戦士「あはは、アホの子だ」

遊び人「戦士に言われるとすっごいムカつくよね……そのセリフ」

盗賊「……大丈夫っ?……」タッタッタッ

商人「うぅぅっ、石なんて死滅すればいいんですっ……」

盗賊「……あぁ、擦り剥いてる…一回洗おう?…」

ピチャ…

商人「じ、自分でやれますってばー」

ポワァッ

盗賊・商人「「!?」」

女勇者「!!……商人ちゃん、今……」

武道家「怪我が、一瞬で……」

商人「は、はい……治っちゃいました……」

勇者「……い、一体どうして……」

チャプン……

魔法使い「……やっぱり」

戦士「?何がやっぱりなんだよ?」

魔法使い「……このいずみ、かいふくこうのうがあるよ」

遊び人「……いや、それは分かるけど」

魔法使い「……でもこれ、ただのかいふくじゃない」

戦士「どういう事だ?」

魔法使い「……この泉じたいが、祈昇華えーてるなの」

魔法使い「……ううん、ただしくいえば」

魔法使い「…………祈昇華えーてるを強制変換したもの………」

女勇者「……祈昇華エーテルの強制変換って……まさか、僧侶ちゃんの“あの”ホイミの……」

魔法使い「うん、あれ。……祈昇華えーてるの強制変換って、おーきな代償と才能がないととりあつかえないんだけど」

魔法使い「…………たぶん、えるふのおひめさまが入水するときに……」

魔法使い「……ふたりのそんざいとじぶんの魔翌力をむりやり祈昇華えーてるに変換したんだとおもう……おそらく、むいしきに」

魔法使い「しんじゃうときに、なにかをつよく、ねがったみたいだね……じゃないとこんなにつよく具現化されないから……」

勇者「…………」

エルフ娘「…………一体、何を願ったのかな……」

勇者「……」

勇者「……悲しくて……でも、優しい願いだよ。きっと」

盗賊「……そうだね……」

戦士「……あぁ」

遊び人「あ、そうだ!」ヒラメキーン

武道家「どうしたのよ?」

遊び人「これって僧侶の“あの”ホイミと同じって事なんだよね?」

遊び人「それじゃさ、勇者ちゃんの腕をこの泉に浸せば治るんじゃない!?」

戦士「あ、そういえば!」

女勇者「お義兄ちゃん、やってみなよ」

勇者「うん……」

ピチャ……

勇者「…………駄目だ、なんともならないよ」

遊び人「え!?ど、どうしてっ」

魔法使い「……たぶん、僧侶の“あの”ほいみは、ゆーしゃのために強制変換してきせきてきにできたものだから……」

戦士「僧侶じゃないと駄目って事かー……」

勇者「あはは、何だかごめんね」

勇者「でも僧侶がそれだけ凄いって事だよ。ね?僧侶」

僧侶「…………」

チャプ……

勇者「…………僧侶?」

僧侶「…………」

勇者「……僧侶」

僧侶「あ、え?はい、すみません、ぼーっとしてて」

勇者「……大丈夫?」

僧侶「はい!大丈夫ですよ!」

僧侶「本当に綺麗な泉ですね!こんな、に」

僧侶「なんだか、凄く透き通ってて、キラキラ、してて」

ポロ

僧侶「でもそn……あれ?」

ポロ…

僧侶「あれ?おかしいですね、なんだか、あれ」

ポロポロ……

僧侶「あはは、なん、私、ごめんなさい、なんだか、あれっ」

ポロポロ……

僧侶「変ですね、止ま、止まらな、私、私っ」

勇者「……」

女勇者「……だ、大丈夫かい?僧侶ちゃん」

戦士「ど、どうしたんだよ」

僧侶「わ、私も、よくわからなくて、っ」ポロポロ……

僧侶「この泉を、見た瞬間、から」ポロポロ……

僧侶「なんだか、色んな、気持ちが、っ」ポロポロ……

僧侶「寂しいような、暖かい、ような」

僧侶「悲しいような……っ」

僧侶「懐かしい、ような……っ……!」ポロポロ……

エルフ娘「……」

エルフ娘「……(やっぱり)」

エルフ娘(やっぱりだ)

エルフ娘(僧侶ちゃん、やっぱり……)

魔法使い「僧侶、もう、なかないで……」ナデナデ

僧侶「す、すいませっ、わ、私……」

戦士「…………僧侶……」

女勇者「……皆、行こうか」

女勇者「……ここは、冷えるから……」

僧侶「…………はいっ…」グスッ

勇者「…………」

勇者「…………」

…………
……



-洞窟・外-

戦士「おおぉ!お日様だ!……っつっても夕日だけど」

魔法使い「あはは、ポカポカするねぇ」

遊び人「中は少し寒かったからね」

武道家「……いつの間にか晴れてたのね」

勇者「……僧侶、大丈夫?」

僧侶「……はい、心配をお掛けしました」

僧侶「もう、大丈夫です!元気です!」

勇者「……あはは、よかった」

女勇者「……それじゃ、日が落ちる前に隠れ里に行こうか、皆」

商人「そうですね。早いとこ女王様の鼻をあかしちゃいましょう!」

エルフ娘「…………」

盗賊「……?…エルフ娘ちゃん、どうかした?…」

エルフ娘「…………いえ……」

…………
……


-エルフの隠れ里-


エルフ女王「…………」

タッタッタッ…

エルフ村民「エルフ女王様ーっ!!」

エルフ女王「…………はぁ……騒がしいですね、今度はなんです」

エルフ村民「人間です!この前の人間達がやってきました!」

エルフ女王「……っ」

エルフ女王「…………また、ですか」

エルフ女王「追い出してしまいなさい」

エルフ村民「そ、それが……」

エルフ女王「……?」

エルフ村民「エ、エルフ娘も一緒に同行しているんです……!」

エルフ女王「……!?……な……」

スタスタスタ……

エルフ村民「!!来ました!!」

エルフ女王「……!」

女勇者「……女王様、度々申し訳ありません」

エルフ娘「…………女王様」

エルフ女王「あなたたち……!!まさかエルフ娘を人質に……!!」

エルフ娘「違うんです!!女王様!!この人間達と一緒にいるのは私の意志なんです!」

エルフ女王「……どういう事です……!」

僧侶「……女王様、お話をさせて下さい」

エルフ女王「っ!!!!……貴女は……っ」

エルフ女王「貴女はなぜそうやって私の前に姿を現すのです!!」

僧侶「……」

エルフ女王「貴女なんて見たくも無いのです!!私の前から早く消えなさい!!」

戦士「……コイツっ……」

武道家「戦士、ストップよ」

エルフ女王「なぜ……なぜ……そのような顔で……!!」

エルフ娘「女王様!!」

エルフ女王「っ……!!」

エルフ娘「女王様、逃げないであげてください!!」

エルフ女王「…………エルフ娘……私は……っ」

エルフ娘「お気持ちはお察しします……!でも、今だけは……!」

エルフ娘「お願いします……!私ならどんな処罰も受けますから……!」

僧侶「……エルフ娘さん……?」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……いいでしょう」

エルフ女王「話があるなら早く済ませなさい……エルフ娘に免じて話だけならば聴きましょう」

エルフ娘「……女王様、ありがとうございます……」

女勇者「……ありがとうございます」

女勇者「……今回はお見せしたい物があって伺わせていただきました」

エルフ女王「…………何です」

女勇者「……」

ゴソ……

女勇者「…………これです」

エルフ女王「…………?……」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………それは……」

エルフ女王「…………それは、まさか……」

エルフ娘「……夢見るルビーです……」

女勇者「……お返しします」

エルフ女王「……!!?ほ、本物……!」

エルフ女王「なぜ、あなた達がコレを……!!!?」

女勇者「……西の洞窟の、地底湖の傍で……見つけました」

エルフ女王「わ、私は…………てっきり、あの男が……!!」

エルフ娘「……そうでは無かったんです」

女勇者「……そのルビーの傍に、このような物を見つけました」

カサ……

エルフ女王「……?……」

カサカサッ……

エルフ女王「…………これは、あの子の字……」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………な……」

エルフ女王「ま……まさか……あの子は……!」

エルフ娘「……恐らく、姫様は……」

エルフ娘「…………あの青年と……地底湖へ……」

エルフ女王「お……おぉ……」

エルフ女王「な…………なんということ……!!」

エルフ女王「私が…………私が…………!!」

エルフ女王「私が、あの2人を……認めなかったばっかりに…………!!!!」

僧侶「……」

勇者「……」

女勇者「……出過ぎた真似かと思いましたが……どうか知っていて欲しかったんです」

エルフ女王「……………………」

エルフ娘「…………女王様……」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………側近……アレを…………」

エルフ側近「は、はいっ!」

女勇者「……?」

タタタッ

エルフ側近「女王様、持って来ました!」

エルフ女王「…………これを、あなたたちに捧げます……」

女勇者「……失礼ですが、これは……」

エルフ女王「…………目覚めの粉です……それを村に撒けば……村の人間は目覚めるでしょう……」

一同「「「「!!!!」」」」

エルフ側近「女王様、良いのですか?」

エルフ女王「……良いのです……そして欲しがっていたのは……傷の完治薬……ですか……?」

女勇者「え?あ、はい」

エルフ女王「……明日、もう一度ここを訪れなさい……」

遊び人「…………え……」

武道家「……それって……」

商人「まさか……」

エルフ女王「…………貴女がたに……差し上げましょう……」

戦士「本当か!!?」

魔法使い「ありがとうございますっ!」

盗賊「……よかった……」

エルフ女王「…………この事を知らせてくれた、せめてものお礼です……」

エルフ女王「………………今日は疲れてしまいました…………また明日訪れなさい……」

女勇者「はい、ありがとうございます」

エルフ娘「皆、よかったね!」

僧侶「エルフ娘さんのおかげです。ありがとうございました」

武道家「うん、本当にありがとうね」

エルフ娘「そんな、私なんにも……」

エルフ側近「エルフ娘、女王様はお疲れです。早く帰ってもらいなさい」

女勇者「おっと、それじゃ私達はここでお暇させてもらうよ」

エルフ娘「あ、ごめんね。それじゃ、また明日ね!」

僧侶「……はい、また明日」

スタスタ…

エルフ娘「…………」

エルフ女王「…………エルフ娘……」

エルフ娘「……はい」

エルフ女王「……私は……てっきり……」

エルフ女王「……私は……」

エルフ女王「……あの娘にも、酷いことを…………」

エルフ娘「……間に合いますよ」

エルフ娘「…………まだ、間に合います」

エルフ女王「…………」

…………
……

-ノアニール・入り口-

村学者「…………」

村学者「勇者君……まだだろうか……無事であればいいが……」

村学者「…………!」

オーイ!

村学者「……勇者君!」

勇者「村学者さーん!」

村学者「無事だったか!!良かっ……」

村学者「……ん?……」

ザッ……

勇者「ただ今戻りました!!」

村学者「……えっと、その娘さんたちは……?」

女勇者「あなたが村学者さんですか。はじめまして。勇者の仲間一同です」

村学者「……」

勇者「…………どうしました?」

村学者「……女の子ばっかりだね……」

勇者「う……」

村学者「あ、いや、それより、どうだったかね?」

勇者「安心してください。無事に夢見るルビーを手に入れて、エルフ達の誤解を解きましたよ」

村学者「本当かね!」

勇者「はい、その際にこの目覚めの粉を貰いました。これで皆目が覚めるはずです」

村学者「お…………おぉ……!!」

ギュッ

村学者「ありがとう……ありがとう……!」

村学者「なんと……なんとお礼を言っていいか……!!」

勇者「…………村学者さん……」

勇者「……」

女勇者「……お義兄ちゃん」

勇者「……うん」

勇者「…………でも、悲しい知らせもあります……」

村学者「…………どうしたんだね……?」

勇者「…………これを」

カサッ

村学者「…………これは……」

勇者「…………2人の、書置きです」

村学者「…………」

カサ……

村学者「…………」

村学者「…………そうか」

村学者「…………なんとなくだが、そうではないかと思っていたよ……」

ギュッ…!

村学者「……あの……バカ……」

勇者「…………」

村学者「…………こうしてる場合ではないな。早く皆を目覚めさせねば!」

勇者「そうですね!ではこの目覚めの粉を早速……」

村学者「…………」

勇者「…………」

村学者「…………どうするんだコレ」

勇者「……飲むんですかね」

女勇者「でも女王様は撒けって言ってたよね」

戦士「撒く……撒くつってもなぁ……」

魔法使い「みんなにまいてまわるの?」

遊び人「皆に撒いていったら骨が折れるよね」

商人「なんかもうちょっとバーッて撒ける方法ないんですかね」

武道家「でも一人一人撒いていくしかなくない?」

盗賊「……風が吹くの、待つ?……」

僧侶「…………(風……?)」

僧侶「!!」ピコーン

僧侶「皆さん!私にいい考えがあります!」

戦士「へ?」

遊び人「いい考え?」

魔法使い「なになにー?」

村学者「いい考え?…………」

村学者「…………!!!!?」

僧侶「はい!私の……」

村学者「ちょ……ちょっと、いいかね」

僧侶「はいっ?」

村学者「ちょっと、顔を見せてくれないか」

僧侶「……?はい……」

村学者「……」ジッ……

僧侶「…………?あの……」

女勇者「?どうかされたんですか?」

戦士「なんだいきなり……」

魔法使い「ま、まさかひとめぼれっ!?」

商人「アホな事言ってんじゃないですよ」

勇者「…………」

村学者「…………」

僧侶「…………?」

村学者「…………君は……」

僧侶「はい……」

村学者「…………」

村学者「…………そうか……」

村学者「そう、だったか」

僧侶「…………あの……」

村学者「……すまなかったね」

村学者「…………君が、撒いてくれるかい?」

僧侶「え?」

村学者「……この村を、君の、君の手で元通りにして欲しい」

村学者「……それで……」

村学者「…………それで、報われる気がするんだ……」

僧侶「…………?……」

勇者「…………」

村学者「…………頼めるかい?」

僧侶「…………」

僧侶「…………はいっ!」

――――――――――――
――――――――――――

-村の中央-

僧侶「それじゃ、いきますよ!」

勇者「OKだよ!」

商人「やっちゃってください!」

戦士「派手にやれよ!」

盗賊「……飛ばしすぎちゃ、だめだよ……」

村学者「……」

僧侶「いきます!」

村学者「……」

村学者(村学者、女エルフ)

村学者(…………この村の時がまた、動き出すよ)

村学者「……」

村学者(…………君達の――――……)

村学者(……君達の“安息”は)

村学者(……)

村学者(ちゃんと、あったんだな)



僧侶「バギ!」

ザァァァッ!!!!

僧侶は目覚めの粉を使った!

目覚めの粉は風に乗って村中を包み込んで行く……

…………
……

-翌朝-


-エルフの隠れ里-

エルフ女王「…………」

スタスタ…

エルフ女王「…………来ましたね」

ザッ……

僧侶「……おはようございます」

女勇者「お薬を頂きに参りました」

エルフ女王「……いいでしょう。私が直に治療します」

商人「マジですか」

戦士「なんだなんだいきなり親切になったな」

エルフ女王「…………勘違いしないで下さい」

エルフ女王「これはあなた達へのお礼であって、人間を許したわけではありません」

戦士「……そうかい」

エルフ女王「その怪我を負っている者をここに」

女勇者「ほら、お義兄ちゃん」

勇者「あ、ハイ!」

魔法使い「きんちょーしてる」クスクス

エルフ女王「あなたがそうですか……」

勇者「は、はい。お願いします」

エルフ女王「わかりました、それでは…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………?……」

勇者「…………エルフ女王様?」

エルフ側近「女王様?」

エルフ女王「…………あ、いえ……失礼致しました……」

エルフ女王(…………この者…………)


…………
……





……
…………

エルフ女王「…………終わりましたよ」

戦士「え、もう!?」

商人「なんだか薬草を見た事も無い使い方してましたね」

女勇者「お義兄ちゃん、どうだい……?」

勇者「……」

盗賊「…………」

僧侶「……勇者くん……」

ピクッ

勇者「……!」

ピク……ピク……

勇者「動く……動くよ」

勇者「動くよ!皆!」

遊び人「……」

武道家「……や」

一同「「「「やった―――――!!!!」」」」

女勇者「良かった!!良かったよお義兄ちゃん!!」

戦士「全くこの野郎は心配かけやがってー!!」

遊び人「もう無茶しちゃ駄目なんだからね!!」

勇者「皆、本当にありg……」

盗賊「……勇者ぁっ!!!!」

ダキィッ!!

勇者「わぷっ!!」

商人「盗賊ちゃん!?」

盗賊「…………良かった……ごめん、ごめんねぇっ……!!!!……」ポロポロ……

魔法使い「…………盗賊」

武道家「…………(ずっと責任感じてたものね……盗賊)」

勇者「……心配かけて、ごめんね?」

盗賊「……勇者ぁっ…!!…」ポロポロ

ワーワー

エルフ女王「…………全く、騒がしい……」

ザッ

僧侶「……女王様」

エルフ女王「…………っ!!!!……な、なんです……!」

僧侶「……ありがとうございます」

僧侶「私の大切な人を助けてくださって……」

ペコッ

僧侶「……本当に、ありがとうございます」

エルフ女王「…………!」

女勇者「……私達からも、お礼を言わせて下さい」

一同「「「「ありがとうございます!!」」」」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………用は済んだのでしょう、早くここから立ち去りなさい」

戦士「えぇっ、なんだよ冷てーなー」

エルフ女王「言ったでしょう、私は人間を許したわけではないのです」

エルフ女王「…………早く、立ち去りなさい」

女勇者「それじゃ、皆。行こうか」

戦士「もう完璧に繋がったのか?」

勇者「うん!もう完璧!」

商人「ちょっと強く引っ張ったらブチッといきませんかね」

勇者「いきません!ってかいかせません!」

ゾロゾロ…

僧侶「……」

エルフ女王「…………なんです、貴女も早く……」

僧侶「……本当にありがとうございました」

エルフ女王「…………」

僧侶「……それでは、失礼します」

タッタッタッ……

エルフ女王「…………」

ヒョイッ

エルフ娘「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ娘「行ってしまいましたね」テクテク

エルフ女王「……いたのですか」

エルフ娘「……女王様」

エルフ女王「…………なんです」

エルフ娘「……いいんですか?」

エルフ女王「…………」

エルフ娘「……今なら」

エルフ娘「今なら、手が届きますよ?」

エルフ娘「追いかければ、追いつけるんですよ?」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………今更」

エルフ女王「……………………今更です」

エルフ娘「…………」

…………
……


-エルフの森-

スタスタ…

戦士「あれ?そっち行くのか?そっちよりこっちの方が……」

僧侶「いえ、まだやる事が残っています」

女勇者「……戦士ちゃん、忘れたのかい?」

戦士「?」

僧侶「…………まだ、2人の事を伝えないといけない方がいらっしゃるので……」

戦士「…………」

戦士「あぁ……そっか」

武道家「……伝えるのも、少し辛いわね」

盗賊「……でも、教えてあげなきゃ……」

魔法使い「むらがもとにもどってるってしらないかもしれないし……ねっ」

勇者「?なになに、なんなの?」

僧侶「えっとですね……」

僧侶「…………あ!いました!」

僧侶「おじいさん!」

老人「なんじゃ……お前さん達か」

僧侶「よかった、いらっしゃったんですね」

老人「どうしたんじゃ……?何か用かね?」

女勇者「……実は、伝えなければならない事があって……」

老人「……?」

僧侶「……西の洞窟で、青年さんと女エルフさんが書き残した物を見つけたんです」

老人「……!!?そ、それは本当か!!」

僧侶「はい……こちらです……」

カサ…

老人「…………」

老人「…………」

老人「…………!!……」

老人「…………な、なんという……」

僧侶「……おじいさん……」

老人「それでは……息子は……青年は……」

ギリッ

老人「嘘じゃ……嘘だと言ってくだされ……!!」

僧侶「……」

老人「……」

老人「わし……は……」

老人「それでは……わしは今まで……」

老人「……倅よ……!」

僧侶「おじいさん、ですが、村は……」

魔法使い「!!!!そ、そうりょ!」

僧侶「えっ?」

勇者「お、おじいさんの体が!!」
  

パァァァァッ……


僧侶「!!!!」

遊び人「光に、なってく……!」

老人「…………なんじゃ……これは」

商人「こ、これはどういう……」

戦士「何が起こってるんだ!!?」

「……魂が昇華を始めたのよ」

僧侶「えっ!!?…………!!」

女勇者「エルフ娘ちゃん!!」

エルフ娘「……きっとこの人は魂だけの存在だったんだ」

エルフ娘「その魂をこの地に結び付けていた切っ掛けが無くなって、昇華を始めたんだよ」

盗賊「……魂だけの、存在……!!?……」

魔法使い「で、でもでも、おじいちゃんはちゃんとさわれたし、ちゃんとはなせたし……!」

エルフ娘「エルフって霊的なオーラを纏う生き物なんだよ……そんな私達が住む森だから、霊地になっちゃってるんだ……」

エルフ娘「多分、この森で朽ち果てたそのおじいさんが魂をそのままに骸化しちゃったんだと思う」

エルフ娘「…………本人は、気付かないまま」

僧侶「…………そ、そんな……」

武道家「な、なんとか!なんとかならないの!?」

エルフ娘「……もう既に亡くなってる人だから……なんともならないよ……ごめん」

老人「…………いいんじゃ」

僧侶「お、おじいさん……!!」

老人「なんとなく……分かっておったよ」

老人「……エルフさんや……」

エルフ娘「…………なんでしょうか」

老人「……女王様に…………最後に……伝えてくれんか……」

老人「…………わしの倅に代わって言わせてくれ」

老人「…………すまなかった…………と」

エルフ娘「…………はい。伝えておきます」


パァァァァ……


僧侶「お、おじいさん!体が!」

老人「……なんじゃ……皆……どこにいったんじゃ」

僧侶「おじいさん、私達はここです!」

魔法使い「ここにいるよ!」

老人「…………何も聴こえん……何も、何も見えん……」

戦士「どうしちまったんだよ……!」

エルフ娘「……この世から存在を消し始めているんだ」

エルフ娘「今はもう、向こうの世界の事しか見えていないんだよ……」

僧侶「お、おじいさん……!!」

パァァァァ……

老人「…………」

老人「…………」

老人「…………お……」

老人「…………おぉ……!!」

僧侶「……え?」

商人「……僧侶ちゃんの後ろをずっと見てますね……」

女勇者「……一体、何が……」

パァァァァ……

老人「…………そこに」

老人「そこにおったのか……!!」

僧侶「………?」

老人「……」

老人「……そうか」

老人「…………御主達は…………」

ニコ…

老人「…………幸せ…………じゃったのか…………」

パァァァァ……

……





シ……ン……

僧侶「……おじい……さん……」

勇者「…………」

遊び人「………おじいさん…最後に何を見ていたのかな……」

盗賊「…………わからない……でも」

エルフ娘「…………うん。すっごく、幸せそうに笑ってた……」

女勇者「……祈ろう」

女勇者「おじいさんが……向こうで幸せになれるように」

僧侶「…………」

僧侶「……っ」グスッ

僧侶「…………そうですね!」

………………………

エルフ娘「……それじゃ、皆。お別れを言いに来たんだ」

エルフ娘「最初は怖かったけど……楽しかったよ。ありがとう」

武道家「本当に短い間だったけど、楽しかったわよ」

魔法使い「こんどはちゃんとゆっくりおはなししようねっ」

戦士「ってか一緒に来いよ!一緒に旅しようぜ!」

遊び人「無茶言わないの!!」

エルフ娘「あはは、それも面白そうだね!」

エルフ娘「……だけど、私はこの隠れ里を……この森を守らなきゃ」

エルフ娘「生まれてから50年……守り続けてきた場所だもの」

僧侶「…………」

女勇者「…………」

商人「…………」

盗賊「…………」

勇者「…………え?」

エルフ娘「?どうしたの?」

女勇者「…………エ、エルフ娘ちゃんて、今何歳?」

エルフ娘「50だけど」

一同「「「「…………」」」」







一同「「「「っっっっえ――――――――――!!!!!!???」」」」

エルフ娘「人間怖い!!!」ビックゥ!!

………………


エルフ娘「よし、私戻らなきゃ!それじゃ……みんなまたね!」

僧侶「また、お会いしましょう!」

エルフ娘「うん!それじゃ……」

ザッ……

エルフ娘「……と、最後に」

タッタッタッ……

エルフ娘「勇者くん」

勇者「はい?」

エルフ娘「…………」チラッ

僧侶「…………?」

エルフ娘「……」

勇者「あの、どうしたn」

エルフ娘「……お姫様は」

勇者「え?」

エルフ娘「お姫様は、案外近くにいるのかもよ?」

ニヤッ

エルフ娘「王子様っ♪」

僧侶「なっ……!!///」

勇者「???」

エルフ娘「へっへっへ!それじゃ、みんな!さよなら!」

魔法使い「うん!またね!」

武道家「また会いましょう!」

戦士「じゃあな!」

商人「死んでなければまた会いましょー!」

遊び人「またお話しようねー!」

盗賊「……お世話に、なりました……」

勇者「色々と、ありがとう!」

女勇者「必ず世界を平和にしてくるよ!」

エルフ娘「頼んだよ!」

僧侶「…………エルフ娘ちゃん!」

エルフ娘「!」

僧侶「…………ありがとう!またね!」

エルフ娘「……」

ニコッ

エルフ娘「……うんっ!!」

…………
……

-森・出口-

遊び人「いい娘だったねー」

魔法使い「なんだかちょっとさびしいねっ」

戦士「よく考えたら最初のビビリ具合が嘘かの様に馴れてたな。最後」

武道家「でもまさかあんなに年上だったなんてね」

商人「私てっきり同い年くらいかと思ってましたよ……」

盗賊「……エルフは、寿命長いっていうからね……」

女勇者「彼女達で言うところの十代後半くらいなのかもね」

僧侶「あはは……」

勇者「……」

ゴソ…

勇者「……」

勇者「……(……やっぱり、言うべきだよな)」

テクテク…

ツンツン

僧侶「へ?」

勇者「……僧侶」

僧侶「どうしたんですか?勇者くん」

勇者「……皆に気付かれないように、こっちに来て……」

僧侶「?」

トコトコ……

僧侶「どうしちゃったんですか?皆先に行っちゃいますよ?」

ザッ……

勇者「……僧侶」

僧侶「……は、はい」

勇者「……言おうか言うまいか、迷ったんだけどさ」

勇者「……僕だけが知っているのもなんだから……言うよ」

僧侶「……?」

勇者「……村学者さんの家に、絵があるんだ。肖像画」

勇者「村学者さんと青年と女エルフを描いた、肖像画なんだけど」

勇者「それを見た時にさ……ある事を思ったんだ」

僧侶「……ある事……?」

勇者「……うん」

勇者「実は、洞窟に行くのを承諾したのも、それがきっかけだったりするんだけど……」

僧侶「……どういう事ですか?」

勇者「…………その肖像画を見た時に抱いた疑惑がもし当たってたら、2人は何かを必ず残すんじゃないか、と思ってさ」

勇者「……皆が見つけちゃう前に、探しに行ったんだ」

勇者「…………そして」

カサ…

勇者「……案の定、見つかったんだ……コレがね」

僧侶「…………それは?」

勇者「……はい」

パサッ……

僧侶「……書置き……?もう一枚あったんですか?」

勇者「……隠していて、ごめん」

勇者「……もし、僧侶が全て知りたいなら……それを読んで」

僧侶「……」

勇者「…………」

僧侶「……」

僧侶「……大丈夫」

僧侶「読みます」

勇者「…………」

カサ…

僧侶「……」

――――――――――――


これを読んで下さっている方へ



これを読んでいるのは、私の知っている方でしょうか。
私を、私たち2人を、憎んでいる方でしょうか。
それとも、見ず知らずの、冒険者の方でしょうか。
それとも

もし、この書置きが、この文字が目に入ったのであれば、
この手紙を、イシスの南西にある修道院に届けていただけないでしょうか。
そこに、私達の子供が居る筈です。何卒、何卒。



我が子へ。


もし貴女がこの手紙を読んでいるならば、貴女は文字が読めるほどに大きく
なったという事でしょうか。もしそうであれば、私は嬉しい。

貴女は私たちを恨んでいるのでしょうね。
確かに、私たちは貴女を一人残し、修道院を後にしました。
言い訳はしません。私たちを恨んでください。嫌ってください。
ただ、これだけは知っておいて欲しかったのです。

私たちは、貴女を、何よりも愛しています。

私たちの事情に、貴女を巻き込むわけにはいかなかったのです。
もしできる事なら、貴女の成長を見守っていたかった。
幸せな家庭を築き、3人で生きていきたかった。
でも、それは叶わぬ夢なのです。ただそれだ(ここから数文字、インクが何かの水滴で滲んでおり解読不可)

貴女に、素敵な仲間や家族、そして素敵な未来が訪れる事を、切に祈っています。

上手く愛してあげられなくて、ごめんなさい。
貴女に、この手紙が届くといいのだけれど。





ママとパパより


――――――――――――

僧侶「…………」

僧侶「…………これ…………」

勇者「……僧侶、言ってたよね」

勇者「昔、イシスって国の南西にある修道院に住んでたって」

僧侶「…………」

僧侶「…………っ」ポロ…

勇者「…………村学者さんの家にあった肖像画の女エルフは…………」

勇者「…………僧侶そっくりだったよ」

僧侶「…………パパ…ママ……?」ポロポロ…

勇者「…………勝手に、ごめんね」

僧侶「…………勇者……く」ポロポロ…

僧侶「……これ、私……!」ポロポロ…

ザッ……

勇者「……あ……」

僧侶「……」ポロポロ…








エルフ女王「…………やはり、そうでしたか」

勇者「エルフ女王様……」

僧侶「エルフ女王、様……私、っ」ポロポロ…

エルフ女王「…………」

勇者「…………気づいていたんですか」

エルフ女王「…………えぇ」

エルフ女王「…………この娘の顔を見た瞬間から……薄々と気付いていました」

僧侶「……私っ…その…、やだ、涙っ」ポロポロ…

エルフ女王「…………」

勇者「…………女王様……」

僧侶「私っ、パパ……ママッ……!!」ポロポロ……




ギュッ



僧侶「…………」ポロポロ…

僧侶「……………………女王…………様……?」ポロポロ

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……顔を……もっと見せておくれ……」

僧侶「…………」ポロポロ…

エルフ女王「…………私の……可愛い……」

ギュウゥ……

僧侶「…………」ポロポロ…

エルフ女王「…………ごめんなさい……」

ギュウゥ……!!

僧侶「女王……様、くるし……」ポロポロ…

エルフ女王「ごめんなさい……!!」

ポロ…

勇者「…………!」

僧侶「…………女王様……」ポロポロ…

エルフ女王「私のせいで…………貴女を悲しい目に……!!」ポロポロ…

エルフ女王「…………それなのに……」ポロポロ…

エルフ女王「それなのに…………貴女に、辛く当たって…………!!!!」ポロポロ…

僧侶「…………っ」ポロポロ…

エルフ女王「あの子を信じる事もせずに……!!自分の考えを押し付けて……!!」ポロポロ…

エルフ女王「…………私は……っ……!!」ポロポロ…

僧侶「…………女王……様」ポロポロ…

ギュウゥ!!

僧侶「………ぅ…」ポロポロ…

僧侶「うあぁぁぁぁぁん!!!!」ポロポロ…

勇者「…………」

ソッ……

テクテク…

勇者「(しばらく、2人きりにしておこう……)」

女勇者「お義兄ちゃん」ボソッ

勇者「おうっ!!!?」ビクゥッ

一同『『『『し~~~~~~ッッ!!!!』』』』

勇者「み、みんな!?い、いたんだ?」ヒソヒソ

商人「そりゃあんなにコソコソされたら不自然だなって思いますって」ヒソヒソ

勇者「ですよねー……」ヒソヒソ

女勇者「まぁ、薄々感づいてはいたけど……」ヒソヒソ

遊び人「あの2人が祖母と孫だったなんてね……」ヒソヒソ

武道家「優しい僧侶と怖いエルフ女王……か」ヒソヒソ

勇者「…………そんな事ないよ」ヒソヒソ

武道家「え?」ヒソヒソ

勇者「今のエルフ女王……とても優しい顔してる」ヒソヒソ

戦士「…………」

戦士「……あぁ。……そうだな」ヒソヒソ

盗賊「……じゃぁこれ以上覗くのも悪いし、向こういこっか……」ヒソヒソ

女勇者「だね」ヒソ

商人「全く皆盗み聞きなんて悪趣味なんですから」ヒソヒソ

戦士「お前もだろ!」ヒソッ!

勇者「静かに静かに」ヒソヒソ

スタスタ……

ピタッ……

クルッ

魔法使い「…………」




僧侶「………っ…!!」ポロポロ…

エルフ女王「…………」ポロポロ…

ギュゥウゥ…



魔法使い「…………」

魔法使い(よかったね…………僧侶)

スタスタ…

…………
……



……
…………


エルフ女王「…………」

僧侶「…………」

エルフ女王「……随分、時間が経ってしまったようですね」

僧侶「…………はい」

エルフ女王「…………」

ギュッ…

エルフ女王「…………できる事ならば」

エルフ女王「できる事ならば……ずっとこうしていたい……」

エルフ女王「……でも、貴女は、行ってしまうのでしょうね」

僧侶「…………はい」

エルフ女王「……」

エルフ女王「……勝手な言い分ですが」

エルフ女王「……もし、もし貴女が良ければ」

エルフ女王「この隠れ里に、一緒に住みませんか……?」

僧侶「…………!」

エルフ女王「見たところ……魔王討伐の旅に出ているのでしょう……」

エルフ女王「……そんな危険な旅はやめて、私と一緒に……」

パッ……

エルフ女王「……あ……」

僧侶「…………っ」ゴシゴシ

僧侶「……ごめんなさい」

僧侶「私は、行かなければならないんです」

エルフ女王「……」

エルフ女王「……そうですか」

僧侶「…………私の」

僧侶「私のこの力で、守りたい人達が……」

ザッ

僧侶「守りたい人が、いるんです」

エルフ女王「……」

エルフ女王「…………そう」

エルフ女王「……良い仲間に、巡り会えたのですね」

エルフ女王「今の貴女は……とても強い顔をしています」

僧侶「…………はい」ニコッ

エルフ女王「…………ふふ」

エルフ女王「そうやって笑う顔も、あの子に瓜二つ……」

僧侶「…………ママに……ですか?」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「また、全てが終わったら……ここに帰ってきなさい」

エルフ女王「その時は、貴女の母の昔話を……聞かせてあげましょう」

僧侶「本当ですか!?」

エルフ女王「……でも、そのかわり」

エルフ女王「…………どうか無事に、戻ってくるのですよ」

ゴソッ

エルフ女王「……貴女に幸があるように、これを……」

僧侶「……それは……」

エルフ女王「……夢見るルビーです……お貸しします」

エルフ女王「旅の間、このルビーが守ってくれるでしょう……」

エルフ女王「…………全てが終わったら、これを私の元に……」

僧侶「……」

エルフ女王「?どうしたのです?」

僧侶「……ごめんなさい」

僧侶「私にそのルビーは、必要ありません」

エルフ女王「…………そうですか」

僧侶「…………はい」

僧侶「……そのルビーの加護が無くとも……私には」

ニコッ

僧侶「…………守ってくれる、強い仲間達がいっぱいいますから!」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………貴女は、強く育ったのですね」

エルフ女王「……人間を許すことはできませんが」

エルフ女王「…………貴女の仲間たちには、お礼を言わなければなりませんね」

僧侶「……はい、皆きっと喜びます」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……さぁ、もうお行きなさい」

エルフ女王「貴女の仲間が、待っていますよ」

僧侶「……はい。色々と、ありがとうございました」

エルフ女王「…………それでは、また会いましょう」

僧侶「……はい、失礼します!」

タッタッタッ…

エルフ女王「…………」

僧侶「…………」タッタッタッ…

エルフ女王「…………」

僧侶「……っ」タッタッタッ…

エルフ女王「…………っあのっ……」




クルッ




僧侶「『おばあちゃん』!!」





エルフ女王「!!!」

僧侶「…………っ」

ニコッ!

僧侶「いってきます!おばあちゃん!」

エルフ女王「……」

ニコ……

エルフ女王「……いってらっしゃい」

僧侶「…………はい!!」

タッタッタッ…

エルフ女王「…………」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……そこにいるのでしょう?」

ガサッ

エルフ娘「……あはは、す、すみません」

エルフ女王「……いつから見ていたのです」

エルフ娘「……割と、最初からです……」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……処罰ですね」

エルフ娘「えぇっ!!すすすすみませんでしたっ!」

エルフ女王「……ふふ、冗談です」ニコ

エルフ娘「!!」

エルフ娘(……女王様のこんな顔……初めて見た……)

エルフ女王「……」

エルフ女王「……人間を、皆許すことはできませんが」

エルフ娘「……?」

エルフ女王「…………あの子に、ハーフエルフという境遇の子に」

エルフ女王「あそこまで幸せそうな顔をさせる人間もいる……」

エルフ女王「…………少しだけ、考えを改めなければなりませんね…」

エルフ娘「……女王様…………」

エルフ女王「…………戻りましょう」

エルフ娘「ふふふ……女王様?」

エルフ女王「なんです?」

エルフ娘「あの子が、戻ってきた際に、あの勇者くんとやらと良い関係になってたら、どうします?」

エルフ女王「…………」

エルフ娘「うふふふ……」

エルフ女王「…………」

エルフ女王「……それがあの子の望みならば、良いでしょう」

エルフ娘「ですよね……ってええ!!!?」

エルフ女王「……行きますよ」

エルフ娘「女……女王様、今、なんて……!」

スタスタ…

エルフ娘「女王様ー!」

…………
……


タッタッタッ…

僧侶「…ハァ……ハァ…!」

僧侶(パパ、ママ)

僧侶「…ハァ……ハァ…!」

僧侶(天国で、私の事を見てくれていますか?)

僧侶「……皆、どこだろう……」

僧侶(お二人は今、幸せですか?)

オーイ……

僧侶「!!」

僧侶(…………私の事は、心配しないでください)



女勇者「おーい!僧侶ちゃーん!」

戦士「こっちだぞー!」

遊び人「もう行っちゃうよ!ダッシュダッシュ!」

武道家「ダッシュすると商人みたいに転んじゃうわよ!」

商人「いつまで引きずるんですかそれ!///」

盗賊「……おいでー!……」

魔法使い「……そーりょーっ!」


僧侶「みんな!」

僧侶(……――――私は今、幸せです)

僧侶(……大切な仲間と、そして――――……)


「……僧侶!こっちだよ!」

僧侶「…………っ」

……――――そして

僧侶「…………」


僧侶「……はいっ」


……――――私には





勇者「行こう!僧侶!」




……――――私には!







僧侶「……はい!勇者くんっ!」






……――――王子様がいるんですから!



……
…………

-イシスの砂漠-




魔物B「グギャァァッ!!」

ドシャァッ!!

魔物A「ひ……ひぃぃっ!!!!」

「……待ちなよ」

魔物A「で、デタラメだ!!こんなのっ!!こんな強い人間が……!!」

「ほう、この辺りの魔物には珍しく言葉が理解できるんだね」

「では君に問うよ」

「アッサラームで攫われた子供……一体どこに隠しているんだい?」

魔物A「っ……!!……へっ!もう喰っちまったぜ!あんな小せぇガキ……」




ザンッ!!!!


魔物A「っぎゃあああああああああああああ!!!!」

「では、君が殺されても文句は無いだろうね?」

魔物A「じょ、冗談だ!!!!ひ、東の岩陰に隠してるんだ!!」

「……そうか」

魔物A「お、お前、何者なんだっ……!!!?」

「……僕かい?僕は……」

グシャァアァッ!!!!

魔物A「ぎゅあぎgy」

ドチャッ……!!

グチャッ!!

「…………教えてあげるよ」

「僕は」




ジャキンッ





「勇者だよ」

第三章  -完-

今日はおしまいです

やっと第三章完結したよーおっぱい

>>799

魔法使い
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盗賊
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2305095.png

僧侶
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2305096.png

僧侶(小)
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2305097.png


これが大きさの限界なんですごめんそ
こんなんでよければ

読んでいただいている方々、本当にありがとうございます。

そして大変恐縮ながらお願いがあるのですが、何か質問があったら仰って頂けませんでしょうか。
ちょっとここまで来ると自分でも見落としている部分が多々ありまして、皆様に
伝わっていない部分があるのではないかと不安になってきました。

どんな事でもいいので
「こいつのここの心情わかんねぇよ」とか「あれどうなったの?」とか
「こいつは何を食べて生きてんの?」とか「頭大丈夫か?」とか
「仕事はいいの?」とか「結局どのおっぱいでもいいの?」
などなど、答えられる範囲で答えていきたいと思いますので、何卒お願いします。

-番外-


【花咲く乙女よ穴を掘れ】


http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2317143.png

-エルフの隠れ里-

タッタッタッ……

エルフ娘「ハァ……ハァ……!」

エルフ村民「あれ、エルフ娘」

エルフ娘「!!」

エルフ村民「どうしたの?そんなに急いで」

エルフ娘「あ、あはは!なんでも無いよ!気にしないで!」

タッタッタッ……

エルフ村民「……?」

………………………………

-エルフ娘・家-

タッタッタッ……

ガサッ

エルフ娘「ハァ……ハァ……」

エルフ娘「……や、やった……!」

エルフ娘「拾った!!拾っちゃったよ!!」キャー

エルフ娘「人間の……“王子様”の絵本!!」

エルフ娘(人間の王子様ってどんなものなんだろ……)

エルフ娘(エルフ女王様に聴いたエルフ族の王様と王子様達とはやっぱり違うのかな……?)

エルフ娘「……ご開帳っ!」

ペラッ

エルフ娘「……」

エルフ娘「……」

エルフ娘「……」

パタン……

エルフ娘「……うん……」

エルフ娘「やっぱり絵本じゃあまり分かんないよね……」

エルフ娘「……」

エルフ娘「あーもー!!!!気になるー!!」ジタバタ

エルフ娘(姫様や僧侶ちゃんがあんなに夢中になった人間の男……)

エルフ娘(僧侶ちゃんは勇者くんを王子様って言ってた……)

エルフ娘(たぶん王子様って、その種族の一番かっこいい男が君臨するんだよね)

エルフ娘(…………王子様)

エルフ娘(私も王子様がほしい!!)ズドーン

-エルフの女王の祭壇-



エルフ女王「バカですか貴女は」

エルフ娘「やだー!欲しいですー!そんなのやだやだぁー!」ジダンダ

エルフ側近「……何を言ってんのこの子……」

エルフ娘「やですー!」

エルフ女王「はぁ……だから私たちは人間を許したわけでは無いと何度も言っているでしょう」

エルフ娘「ぶー!僧侶ちゃんには許したくせに!贔屓です!」

エルフ女王「あれは、あの勇者とやらが信頼に値しそうな男だったからです」

エルフ娘「ぐぬぬ」

エルフ女王「いいですか?人間の男というものは本当にろくでも無いものなのですよ」

エルフ女王「貴女は村に居るごく僅かな男エルフと結ばれなさい」

エルフ娘「えぇーっ!だって皆まだ子供じゃないですか!」

エルフ女王「時が経つのを待ちなさい」

エルフ娘「年下は趣味じゃないんですー!!」

エルフ女王「この子めんどくさい!」

エルフ娘「……」

エルフ娘「わかりました」

エルフ女王「え?いきなり何を納得したんですか?まぁ無理だとわかってくれたなら……」

エルフ娘「私が、素敵な優しい人間の男性を連れてくれば許していただけるという事ですね!!!!」

エルフ女王「そうですそうです、そうしてエルフは……」

エルフ女王「……」

エルフ女王「え?いやちょっと待」

エルフ娘「行って参ります!!!!」

ドヒュン!!!!!!

エルフ女王「ちょ、エルフ娘!!!!エルフ娘!!!!」

エルフ側近「行ってしまいましたね……」

エルフ女王「……全くあの子は……」ハァ…

エルフ側近「良いのですか?」

エルフ女王「……あの子のことです」

エルフ女王「……まぁ、じきに飽きるでしょう」

…………
……


-ノアニール周辺・草原-

エルフ娘「とは言ってもなぁ……」

トボトボ……

エルフ娘「そんな当てあるわけないんだよなぁ」

エルフ娘「……人間の知り合いなんて勇者くん達しか居ないし……」

エルフ娘「王子様……どこに居るのかなぁ」

エルフ娘「……」

エルフ娘「……ん?王子様?」

エルフ娘「王子様……そうだよ!!」

エルフ娘「なんで私気がつかなかったんだろう!!王子様っていったら王国がある所にいるわけだよ!」

エルフ娘「それなら……王国に行けばいいんだ!」

ザッ!!

エルフ娘「ここから一番近い王国と言えば……ロマリアだ」

エルフ娘「よし!ロマリアに行くぞ!!」

エルフ娘「そしてそこで王子様をゲットしてやる!」

エルフ娘「善は急げ!よーし!!待ってろー!王子様ー!」

タッタッタッタ……

…………
……


-ロマリア- 




ワイワイ

エルフ娘「……う、わぁ――――……!!」

エルフ娘「こ、こんなに人っていたんだ……!すっごーい!!」

エルフ娘(私エルフの隠れ里から出たことあんまり無いから知らなかったよ……ふわぁ……!)

エルフ娘「すっごーい……!!」

町人「?」

町人「……?」

ジロジロ……

エルフ娘「……!」

エルフ娘(な、なんだろう、凄く見られてる……)

エルフ娘(耳はフードで隠してるし……エルフだってばれてるわけじゃないよね……?)

エルフ娘(怖いなぁ……)ビクビク


町人(すっげぇ美人……)

町人2(いいなぁ、肌が凄く綺麗……)

町人3(他国の人かな?綺麗な髪と目の色だなぁ)

町人4(お近づきになりたい……)

エルフ娘「……」ビクビクコソコソ……

-ロマリア・広場・噴水-

ザァァ……

エルフ娘(……来てみたのはいいんだけど、これからどうすればいいんだろう?)

エルフ娘(お城に入ろうとしたら門番に追い返されてしまったし……)

エルフ娘(これだけ人がいるんだもん、一人くらいは王子様の知り合いとかいないかな?)

エルフ娘(……沢山の人達に話が聴ける場所とか無いかな?)

エルフ娘「……」

通りすがり「……(うわ…すっげぇ綺麗な人だな)」スタスタ

エルフ娘「あの、すみません」

通りすがり「は、はいっ!!?」ビクン!

通りすがり(は、話かけられた!!ラッキー!!)

エルフ娘「あの、この辺りで一番人が集まって、色んな人に話が聴ける場所ってありませんか?」

通りすがり「え……?そうですね……うーん」

通りすがり「あ、酒場なんてどうですかね?」

エルフ娘「酒場?」

通りすがり「はい、この道をこう行ってですね……」

エルフ娘「ふんふん……なるほど!」

ダッ

エルフ娘「早速行ってみますね!ありがとうございますー!」

通りすがり「いえいえ……お気をつけて!」

タッタッタッタ……

通りすがり「……」ヒラヒラ

通りすがり(……可憐だった……///)ポー

…………
……


-酒場-


カランカラン……


店主「らっしゃーせー!」

エルフ娘「ふわぅっ!!い、いらっしゃいました!!」ビクッ

店主「?」

ガヤガヤ

エルフ娘「わぁ……凄いなぁ……人が本当にいっぱいだ……」

エルフ娘(昔だったら驚いて逃げて帰ってただろうなぁ)

エルフ娘(僧侶ちゃん達と過ごしたからか、もう結構平気だ……)

店主「おう、嬢ちゃん」

エルフ娘「は、はいっ!!?」ビックゥ!!

店主「何飲むんだい?」

エルフ娘「え……?飲む……?」

店主「ほらよ、メニューだ」

ホイッ

エルフ娘「……?」

エルフ娘(なんだろう……ここの書いてあるものをくれるのかな……)

エルフ娘(人間の街ってすごいなぁ……!)キラキラ

エルフ娘「じゃあ、このミルクセーキっていうのを……」

店主「あいよっ」

エルフ娘「……ふぅ……」

エルフ娘「……」チラ

ガヤガヤ

エルフ娘「……」

エルフ娘(これだけ居れば一人は王子様とお友達な人間もいるよね)

エルフ娘(楽しみだなぁ……王子様♪どんなだろうなぁ)

店主「嬢ちゃん、おまちどおっ」

コトッ

エルフ娘「おおおぅ……これがミルクセーキ……」

店主「キンキンに冷えててうっまいぞぉー」

エルフ娘「…………」

…コク

エルフ娘「……!!」

エルフ娘「な、何コレ!凄く美味しい!!」

店主「うっめぇだろー!!俺特製だからな!」

エルフ娘「こ、これは元はなんなの!?」

店主「ミルクだよ。カザーブで採れたできたての牛乳だ」

エルフ娘「あぁ、だから“ミルク”セーキなんだ!」

エルフ娘「人間って凄いなぁ……!」ボソリ

店主「嬢ちゃん、見ない顔だけどどこあたりから来たんだ?」

エルフ娘「えっ!?」

エルフ娘(ど、どうしよう!!流石にエルフの里って言ったらまずいよね……!)

エルフ娘「え、と……ノアニールから来ました!」


-端のテーブル-

?「……!」




店主「え?ノアニール?」

エルフ娘「はい!」

店主「あれ……?あそこは村民が全員眠りの呪いにかかってるんじゃなかったけか?」

エルフ娘「え」

エルフ娘(しむぁった―――――!!!!!!)

店主「あ、でもそういや最近その呪いを勇者一行が解いたって噂あったな!」

エルフ娘(あ、そうだった)

エルフ娘「そ、そうなんですよー!私最近起きちゃって……」

?「…………」

店主「へぇー!あんたも眠ってたのかい!」

エルフ娘「あはは、その、はい……」

客「えっ!?なになに!?ノアニールがどうしたって!?」

店主「聴いてよお客さん達!この娘最近までずっと昔から寝てたんだってよ!」

客2「へぇー!!本当かよ!!ずっと何十年も!?」

エルフ娘「はは……はい……」

客「ちょっと待ってよ、それじゃお嬢ちゃん何歳なの!?」

エルフ娘「えっと……ね、眠ってた時間加えたら50歳かなーなんて……」

客2「えええええええええええええ!!!!!!!!!」

店主「そりゃすごいな!!!全然見えねえ!!!!!!」

客「全然楽勝でいけるよ!!!!!」

エルフ娘「あははは……」

エルフ娘(半分は本当です……)

客2「ねぇお嬢ちゃん、もしよければもっと聴かせてよー」

客「ここだけじゃなくてさ!宿に来て一緒に話そうぜ!!」

エルフ娘「あはは……」

エルフ娘(なんだか面倒くさくなってきたなぁ……王子様の事聴けそうにないし……出よう)

エルフ娘「えと、それじゃ私そろそろ行かなきゃ……」

客「えー!」

客2「つれねぇなぁー」

エルフ娘「すみません……それじゃ……」

スタスタ…

店主「……?おい、ちょっとお嬢ちゃん?」

エルフ娘「え?はい」

店主「お勘定」

エルフ娘「え?」

店主「いや、だから勘定。お金。ゴールド」

エルフ娘「…………ゴー…………ルド?」

店主「…………おいおいマジかよ?飲み逃げか?」

エルフ娘「…………あ!!」

エルフ娘(そういえばなんかエルフ側近さんに聴いた事がある気が……)


――――――――――――

エルフ側近『人間は、物々交換をしない生き物なんですよ』

エルフ娘『え?じゃあどうやって物を手に入れるの?』

エルフ側近『人間にはお金というものがあって、その金の塊や紙切れで取引するのです』

エルフ娘『へー。あまり興味無いかな』

エルフ側近『いつか苦労するときが来るかもしれませんよ?』

エルフ娘『来ないよー。大丈夫大丈夫』アハハ

――――――――――――


エルフ娘(いま正に苦労してます――――――――――っ!!!!!!)

エルフ娘「あ、あの、私っ」

店主「……払えねぇなら、兵に来てもらう事になるかもしんねぇけどいいんだな?」

エルフ娘「あううっ……!!」

客「…………おい」

ボソ

客2「……あぁ」ニヤッ

店主「それじゃ、待ってな。今駐屯所に……」

エルフ娘「ま、待ってくださ――――」

客「店主のおっちゃん!」

店主「あ?」

チャリン

客2「これで足りるだろ?」

エルフ娘「!!」

店主「…………いいのかい?お客さんがた」

客「いいっての!このくらい!」

客2「あぁ、これでチャラにしてやってくれよ!」

店主「…………嬢ちゃん、まいどあり。そいつらに礼を言っておくんだな」

エルフ娘「あ、あのっ、本当にいいんですか!?」

客「全然大丈夫だって!」

エルフ娘「あ、ありがとうございます!」

ペコッ

客「……」チラッ

客2「……」ニヤッ

客「じゃあさ、少しだけ話し相手になってよ!」

エルフ娘「え?」

客2「ここを出てさ、もっと静かな所で話してくれないかな?」

エルフ娘「は、はい!それなら全然!」

客・客2「「……」」ニヤッ

客「……そうと決まれば、行こうか!」

エルフ娘「はい!」

エルフ娘(良かった……人間ってやっぱりいい人もいるんだなぁ)

?「…………」

…………
……


エルフ娘「…………あの」

客「ん?」

客2「何?」

エルフ娘「えっと、話すんじゃ……」

客「うん。だから静かな所に来たんだよ」

エルフ娘「え……でも……ここ……」


-路地裏-


エルフ娘「なんだか……お話しするには……暗くて、人がいなくて……」

客2「……」

客「……あのさぁ」

エルフ娘「?」

客2「もうだいたい分かってるんだろ?」

エルフ娘「え……な、何がですか……?」

エルフ娘(何だろう……いきなり雰囲気が……)

客「…………それは」









ガバァッ!!

エルフ娘「きゃぁっ!?」

客「こういう事だよ!!!!」

エルフ娘(押さえつけられっ……!!やっ!!、動けない!!)

エルフ娘「は、離してください!!!!」

客「マジでわかってなかったのかよ」

客2「いいじゃん、いい事しようぜー奢ってやったんだからよー」

エルフ娘「い……や……っ!!」

エルフ娘(やだ…………力、強いっ……!)

ゴソッ

ムニュッ

エルフ娘「っっ!!!?きゃあああああああああああああ!!!!!!」バタバタ

客「うほー!!柔らけー!!」

客2「おい!早くひん剥いちまえよ!!」

エルフ娘「いやっ、いやああぁっ!!!!」バタバタ

客2「ほら、暴れんなって」

スルスル……

エルフ娘「!!!!!!」

エルフ娘(服が…………!!いや、嫌ぁっ!!!!)



――――――――――――


エルフ女王『いいですか?人間の男というものは本当にろくでも無いものなのですよ』


――――――――――――


エルフ娘(女王様っ、女王様ぁっ!!!!)

エルフ娘(…………誰か……!!)

エルフ娘(誰か助けて…………!!)

エルフ娘(…………お)


エルフ娘(王子様っ……!!)

スルッ

客2「こんな美人初めて抱く……ぜ……」

客2「…………………………」

客「……………………え」

客「……え……その……耳……」

?「おらァああああああッッ!!!!!こん棒雨あられッ!!!!」


ゴカアッ!!!ドゴォッ!!!


客・客2「「あひんっ」」

ドサァッ!

エルフ娘「…………え……」

?「…………ふぅ、弱くて良かった……大丈夫かね?」

エルフ娘「…………」

?「ホラ、とりあえずコレを羽織りなさい」

ファサッ

エルフ娘「…………あなた……は……」

エルフ娘「王子…………様…………?」

?「王子?何を言ってるんだ?……私は」


ニコッ


村学者「植物学者だよ……ノアニールに住んでいる、しがない……ね」

エルフ娘「…………」

エルフ娘「……あ!!!!わ、私、この人達に耳を見られ……!!」

村学者「安心しなさい。ちょうどいい薬草を今日の取引に持ってきてたんだ……」ゴソッ

スタスタ…

村学者「……よいしょ……これでよし」

村学者「こいつらにはここ一週間の記憶がふっ飛ぶ強烈な毒草を食べさせた。君がエルフだという事も忘れるさ」

村学者(ついでにミルクセーキの代金の硬貨も口に挟んどいてやったけど)

エルフ娘「…………あ、あなたは、驚かないの……?」

村学者「…………はは、君を今日酒場で見かけた時から気付いていたからね。今更さ」

エルフ娘「な、なんで……私に気付いたの……?」

村学者「…………」

エルフ娘「…………?」

村学者「君達のお姫様……女エルフと、私は、親友だったからさ」

エルフ娘「!!!!!!!」

村学者「言っただろ?私はノアニールに住んでいるんだ」

エルフ娘「…………」

村学者「……いや、こんな雑談をしている場合では無いな。他人に見られたら事だ。早く帰ろう」

スッ……

村学者「立てるかい?」

ブルブル……

エルフ娘「…………あ……足が、震えて…………」

村学者「…………」

ヒョイッ

エルフ娘「…………あ…………!」

村学者「…………私が運ぶよ。君は耳を隠していなさい」

エルフ娘「…………」

エルフ娘(…………こ、これ……絵本で見たお姫様抱っこ……)

ギュッ

エルフ娘(…………あぁ……)チラッ

村学者「……」スタスタ

エルフ娘(……なんて……逞しい……)

村学者「……」スタスタ

村学者(デスクワーク派の俺にはこれ辛い!!!!!)

…………
……


-エルフの隠れ里-

エルフ娘「……というわけでした」

エルフ側近「バカか―――――!!!!!!」

エルフ娘「うおぉっ!!びっくりした」ビクッ!!

エルフ側近「滅茶苦茶危険にさらされとるがな!!!!だからあれ程言ったのに!!!!」

エルフ娘「まぁまぁ、無事に帰って来れたんだから……」

エルフ側近「全く……で?」

エルフ娘「へ?」

エルフ側近「ロマリアの王子様には会えたの?」

エルフ娘「ううん、会えなかったよ。というかいないんだって」

エルフ側近「え?そうなの?」

エルフ娘「うん、王子様は居なくて跡継ぎは適当に探して決めるんだってさ。ロマリアは」

エルフ側近「へー……残念だったわね」

エルフ娘「?そうでもないよ?」

エルフ側近「あら?あんなに楽しみにしてたのに……」

エルフ娘「うん……人間って全員がいい人じゃないんだってこの体で味わったからね」

エルフ側近「うんうん、まぁいい薬よね」

エルフ娘「…………それに」

エルフ側近「ん?」

-ノアニール・村学者の家-

村学者「ぶぅぇえっくしょい!!!!!!!」

村学者(ず……うぅ……風邪かな……)

村学者(医学も研究する身であるのに……情けない)

村学者(……風邪に効く葉でも採りに行くかな……)

村学者(……こういう時伴侶がいれば、気ままに風邪をひいて看病してもらうんだが……)

村学者「……」

村学者「…………むなしい」

村学者「はぁ…………行くか」

――――――――――――



エルフ娘「……それに、王子様じゃなくて……」



――――――――――――

ガチャッ

村学者「……ん?」

村学者(……何か玄関先に…………)

村学者「……これは……」


ファサァッ


村学者「…………花…が」

村学者「…………」

村学者「……フフ」

村学者「…………そうか」


エルフ娘「学者様の方が素敵だって、知っちゃったからね♪」





【花咲く乙女よ穴を掘れ】-完-

-番外-

【Back in Black】

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-シャンパーニの塔・地下-


ピチョン……




憲兵「…………」

憲兵「…………もうどのくらい経つっけ」

憲兵「…………」

憲兵「…………」

憲兵「……ひもじいよぉ……」

憲兵「……」

ヒュウウウ……

憲兵「…………っ……」ブルッ

憲兵「……冷える…………」

憲兵「……あの時全裸にならなけりゃ良かった……」

憲兵「……」

憲兵「……」

憲兵「……勇者きゅん……」

憲兵「寂しい……」

憲兵「寂しいよぉ……」

憲兵「会いたい、会いたいよう……」

憲兵「あんなトキメキ……はじめてだったんだ……」

憲兵「……勇者きゅん……!」

ピチョン…

憲兵「……」

憲兵「寂しいなぁ……」

憲兵「……」

憲兵「……」

ザッ……

憲兵「……」

憲兵「たまに気配がしても……」





魔物「グルル……!」


憲兵「……魔物がうろうろしてるだけ…」

魔物「グルル……!」

憲兵「うるさい……あっちに行ってしまえ」

魔物「ガゥ……」

憲兵「……はぁ……」

憲兵「……」

憲兵「……」

憲兵「……人肌恋しいよ……」

憲兵「勇者きゅんの……あの柔肌に……」

憲兵「あのきめ細かいしっとりした柔肌に……チェックインして浪漫飛行したい……っ!!!」

憲兵「……」

憲兵「叶わぬ夢だな……」

憲兵「……ここは、ここには」

ヒュウウウ……

憲兵「……何も、無いのだから……」

憲兵「……何も……」

ジャリッ

魔物「グルル……」

憲兵「…………何、も……」

魔物「……グル」

憲兵「……」

魔物「……」

憲兵「…………」

魔物「……」

憲兵「………………」

魔物「……」

憲兵「……………………」

魔物「……」

憲兵「…………………………」

スクッ……

憲兵「……」

スタスタ…

魔物「グルル……ガゥッ!!」

憲兵「……」スタスタ…

魔物「ガゥッガゥッ!!!!」

憲兵「…………」スタスタ…

憲兵「…………」スタスタ…

憲兵「…………」スタッタッタ…

憲兵「…………」タッタッタッタッタ

魔物「……クゥーン……」ビクビク

憲兵「…………」タッタッタッタッタッタッタッタッ!!

憲兵「…………」タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ!!!!!!


魔物「キャインッ!!!!」シタタタタタタッ!!

憲兵「ハァ……ハァ……!!」タッタッタッタッタ!!!

魔物「キャンッ、キャンッ!!」シタタタタタタッッ!!!!

憲兵「ハァハァ……ハァハァ!!!!!」タッタッタッタタッタッタッタ!!!!









憲兵「もう魔物でもいいや!!!!」←満面の笑み


【Back in Black】-完-

-番外- 

【全力中年】

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-アリアハンの教会・庭-


ファサッ ファサッ

僧侶「ファイヤーバードー。ご飯ですよー」

馬「ヒヒーン」

ムシャムシャ……

馬「オアフ……アファ」ムシャムシャ

僧侶「ふふ……」

ナデナデ

僧侶「美味しいですか?」

馬「ブルルッ♪」ハフン

僧侶「あはっ♪鼻息くすぐったいですよぉ」

馬「ブルルルッ♪」

ペロペロ

僧侶「きゃはははっ!やめてくださいー」

キャッキャッ

ガチャ

神父「僧侶?あぁ、ここにいましたか」

僧侶「はい?どうされました?」

神父「いえ、申し訳ないのですが、少しおつかいを頼まれてくれませんか?」

僧侶「おつかいですか?わかりました!」

神父「すみませんね。あ、コレ欲しいもののリストです。お願いしますね」

僧侶「はい!ファイヤーバード、ゆっくり食べるんですよ」ナデナデ

馬「ブルルッ♪」スリスリ

僧侶「うふふ、それでは行ってきます!神父様!」

神父「はい、行ってらっしゃい」

ガチャ

バタン……

神父「…………」

神父「…………」

神父「……よし……これで僧侶は二時間は戻ってきませんね……」

神父「……」

神父「そろそろ、彼も来る頃ですね」

神父「……………………準備をしますか」

馬「ブルァァアッ!!!!」フシュゥゥゥ!!

神父「ふふ、そう猛っては駄目ですよ。ファイヤーバード」

ナデ……

神父「…………“まだ”……気が早いです……」

-教会・玄関-

スタ…

勇者「……」

勇者(……僧侶、僕に話ってなんだろう)

勇者(……旅の件……かな)

勇者「……」

勇者(言わなきゃな……)

勇者(誰も、旅に連れて行くつもりは無いって事……)

コンコン

勇者「すみませーん」

シーン…

勇者「……」

コンコン

勇者「……すみませーん。……僧侶ー?」

「……開いていますよ」

勇者「え?」

シーン…

勇者「……今の声」

勇者(神父様、だったよな)

勇者(……入っていいのかな?)

ガチャ…

勇者「お邪魔しまーs」

神父「待っていましたよ」

勇者「うわぁぁぁっ!!!!」ビックゥ!!

神父「……どうしたのですか?」

勇者「い、いやあのっ!」

神父「人の顔を見るなり驚くなんて失礼ですね……勇者君は……」

勇者「いや、そうじゃなくて!」

神父「そうでないならどういう事なのです」

勇者「う、後ろ!!後ろのテーブル!!の!!」




馬「……オァァァァッ……!!」フシュゥゥゥ……



勇者「なんでファイヤーバードがテーブルの席に着いてるんですか!!!!」

神父「…………何かおかしな点でも?」

勇者「色々とおかしいです!!!!」

神父「……君は馬だという理由で人を差別するんですか?」

勇者「いや人じゃないし!!!!」

神父「……まぁ君も座りなさい」

勇者「は……はい」

カタッ……

馬「…………オェァ……ッ」フシュルル……

勇者「……」

神父「……お茶です」

勇者「あ……ありがとうございます……」

勇者「……」

馬「……ッッダァァォォァァア…………」フシュルル……!

勇者「……」

神父「……」ゴゴゴゴゴゴ

勇者「……」

馬「……ッォオオォァァァアァァ……!!」フシュルル!!

神父「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「……」

勇者(帰りたい)

神父「…………まぁ、あれです。楽になさい」

勇者「あ……はい」

神父「……」

勇者「……」

神父「……本題に入りましょうか」

神父「……今日君を呼んだのは他でもなく、君に聴きたい事があったからです」

勇者「え?僕を呼んだのは神父様だったんですか?」

神父「はい…………何か、不都合でも?」

勇者「い……いえ……」

勇者(な、何だ……?いつもは凄く優しい人なのに……!!)

勇者(今日の神父様マジでおっかない……!!)

勇者(僕何かしたっけ……?いや、心当たりは……特に)

神父「……あれです……君は……あれですよ」

勇者「は、はいっ」

神父「……君は、女の子のお友達が……大変多いですよね」

勇者「…………え?」

神父「孤児院の魔法使い、ルイーダの酒場の盗賊ちゃんや……市場の商人ちゃんとか」

神父「……」

神父「そして、うちの僧侶……」

勇者「……?……は、はい……それが何か……」

神父「オラァッ!!!!」ダンッ!!!!

馬「ブルァァッ!!!」フシュルル!!

勇者「ひいっ!!??」ビックゥ!!

神父「……すみません、持病の症状が出てしまいました」

勇者「持……持病?」ドキドキ……

勇者(いきなりテーブルを殴りつける病なんてあるのか……?)

神父「まぁ持病はいいとして、君は……あれですね?あれなんですか?」

勇者「……?」

神父「…………」

神父「……お付き合いしている女性は、いらっしゃるのですか?」

勇者「…………へ?」

神父「……」

勇者「……お付き合い……ですか?」

神父「……はい。……いらっしゃるのですか?」

勇者「……あはははは!僕に恋人ですか?あははっ」

神父「何がおかしい!!!!!!!」ダンッ!!!

馬「ッッダラァアァァァォォォァ!!!!!!」ゴオォォォァ!!!!

勇者「」ガタガタガタガタ

神父「……失礼、また持病が出てしまいました」ニコ……

勇者(帰りたい)ガタガタガタガタ

神父「何も泣く事はないじゃないですか」フフフ

神父「…………で?どうなんですか?」

勇者「……」

勇者「い……いません……」

神父「……本当に、ですか?」

勇者「…………はい、本当に……いません……」

神父「…………」

馬「ブルスコァ…………」フシュルル……

勇者「…………あの……それが……何か……」

神父「いえ、特にどうというわけでもないのです……えぇ」

勇者「は……はぁ」

勇者(なんだこの神父様の嬉しそうな残念そうな凄く複雑そうな顔は……)

神父「……」

勇者「あ、あの、それだけ……でしょうか」

神父「あぁ、いえ。他にもいくつかあるのです」

勇者(帰りたい)

神父「……」

神父「……幼馴染たちの間で、なんというか……」

神父「気になる娘……などはいるのですか……?」

勇者「……気になる娘?」

神父「……はい……」

勇者「……」

勇者(気になる……娘か)

勇者「……あ」

神父「っ……いるのですか?」

勇者「…………えっと……」




勇者「戦士、ですかね」



神父「!!!!?」

神父(こ、こんなにあっさり白状するとは……!!)

神父(しかし、戦士ちゃん……!勇者くんとは一番長い期間を共にしている幼馴染!)

神父(やはり時間が愛を育てるのでしょうか…………!!!!)

神父「そ、それはどういったところが……」

勇者「そうですね……」

勇者「……あいつ、どれだけ言っても露出の多い服しか着ないんですよ……困ったことに」タハハ

神父「……」

勇者「だから、目のやり場に困るっていうか……」

神父「…………」

神父(……こ)

神父(このエロガキがぁっ…………!!!!!!)

神父(性欲ですか……!結局はナイスバディな戦士ちゃんに対する性欲ですか!!)

勇者「……あ」

神父「……?どうかしましたか?」

勇者「……いえ、そういえば」






勇者「魔法使いも気になるな……って」




神父「」

神父「」

神父「Hey……」

神父(だ……ダブルで気になる……だと……?……なんと気の多い……)

勇者「魔法使いは、ぼーっとしてるんで目を離すとドジ踏んでたりするんですよね」

神父(あれか!!庇護欲ですか!!守ってやりたい女って感じがお好みですか!!!!)

勇者「あと、盗賊も気になりますね」

神父「え、えぇーっ……?トリプルぅ…………?……そ、それはどうして……」

勇者「盗賊は気付けば所かまわず抱きついてくるんで」タハハ

神父「」

神父「」

神父「」

勇者「し、神父様……?」

神父「あ、いえ、すみません」

神父「…………」

ギリッ……

神父(……ぱふぱふがお好きかッッ!!!!)

神父(…………色を…………)

神父(色を知る歳かッッ!!!!!)

神父(性の乱れが恐ろしい!!性の乱れが恐ろしい!!)

勇者「あぁ、遊び人も気になりますね」

神父「…………まだですか……それは、どういった所が……」

勇者「いえ、なんだかたまに、赤くなっていきなり僕をド突いてきたりとかするんで」

神父(Mか!!そしてツンデレ好きか!!!!)

勇者「武道家も同じくよく僕をド突くんで気になりますね」

神父(やっぱりか!!!!案の定かMか!!!!淫乱か!!!!)

勇者「商人は僕に対して毒舌が多いんで気になりますし」

神父(ドMか!!!!少年で勇者でドMか!!!!思うままにか!!!!!!)

勇者「なんていうか……気になる事ばかりですね」アハハ

神父「もうやだこの子羊…………っ……子羊じゃない……ライオンだよぉっ……」

勇者「し、神父様?」

馬「ブルゥアアァァ……!!……」ヒソヒソ

神父「だめ……まだ食べちゃだめ……」

勇者「今何を!今何を耳打ちしたんですか!!!!あと『まだ』ってどういう事ですか!!!!」

神父「…………で、では……」

勇者「はい?」

神父「……そ……」

神父「…………僧侶は…………?」

勇者「……僧侶は、気になるんですか……?」

勇者「…………僧侶ですか?」

神父「…………はい…………」

神父(いくらアリアハン屈指の美人揃いの幼馴染たちがいたとしても……)

神父(あの超絶に神々しいマジプリティフェイスに)

神父(若者の旺盛なリビドーを刺激しすぎてあまりにも危険すぎるマジナイスバディの持ち主……)

神父(……そんな僧侶です……勇者君の心をキャッチしてテイクアウトをしていても疑問は)

勇者「いえ、全然」

神父「……」

神父「……」

神父「……」

神父「え?」

勇者「僧侶は別に気になりませんね」

神父「…………」






神父「あ?」


勇者「別にあの中じゃ僧侶は特に思うところは……」

神父「……」

神父「……なるほど」

ニコォ……

神父「いい度胸じゃねぇの」

勇者「え……し、神父様……?」

馬「こいつもうやっちゃっていい?」

神父「やろっか」

勇者「ファイヤーバード!!!!今喋った!!喋ったよ!!ってか何!?何をやるの!!?」

ガタッ

神父「さぁ、お仕置きの時間です……」

馬「ブルゥゥッァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」

勇者「ぎゃ―――――!!!!!何で!!?なんでですかぁぁあぁあ!!!!!!!」

神父「僧侶に魅力が無いなどふざけた事をぬかしおるからです!!!!」

神父「覚悟ッッッッッッッッッ!!!!!!!!ハイヤゥッッッッッッッ!!!!!!!!」パウッ!!!!!

馬「ブッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」ドルフシュウウウウウウゥウウゥ!!!!!!!!!

勇者「ええええええええええ!!??い、言ってません!!!!言ってませんてばぁっ!!!!!」

ピタ……

神父「……え?」

勇者「そ、そんな事言ってません!!ってかなんでそんな話になるんですか!!?」

神父「え……でも、僧侶は気にならないって……」

勇者「え?いや……はい、別に、僧侶は気になるから直してほしい部分なんて無いですし……」

神父「……え?」

神父「…………」

神父「……あ……」

勇者「…………し、神父様……?」ビクビク……

神父「……」

ガタッ……

神父「いえ、すみません。少し取り乱しました」ニコッ

勇者「……」

勇者「……は、はぁ……」

勇者(取り乱したってレベルじゃなかった……!確実に[ピーーー]気の目だった……!!!!)

神父「ちょっと勘違いを……ははは、すみませんね」

勇者「……もう……流石にそんな事思いませんよ」

神父「はい?何をです?」

勇者「え?だから、さっき神父様が言ったような事ですよ」

神父「?」

勇者「ですから……僕は僧侶は魅力が無いなんて思ったこと無いですよ」

神父「…………!」

勇者「だって、あんなに優しくて、人の事を考えてくれる、とってもいい娘じゃないですか」

勇者「…………」

勇者「…………僕の命があるのも、僧侶のおかげですし」

勇者「あんなに優しくて強い心を持ってる女の子が、魅力的じゃないわけありませんよ」

神父「…………勇者君…………」

勇者「…………」

勇者「……そ、それに」

神父「…………?」

勇者「……こういう事言うのはその……恥ずかしいですけど……」

勇者「……」

ゴホン





勇者「……ぼ、僕から見ても、僧侶は……き、綺麗ですし」

神父「…………」

勇者「……あはは、やっぱりこういうのは慣れませんね……」

神父「……」

神父「……勇者君」

勇者「はい?」

神父「……」

神父「先ほどは、いきなり猛って申し訳ありませんでしたね」

馬「ブルル……」

勇者「あ、いえ、そんな」

神父「…………そして、勇者君」

勇者「はい?なんでしょう」

神父「……」

神父「……」

神父「……これから」

神父「これから私の事は、お義父さんと呼びなさい」

勇者「…………」

勇者「えっ」

神父「ホラ、遠慮せず」

勇者「え?えっ?」

神父「どうしたのです、恥ずかしがる事ありませんよ」

勇者「いやあの、え?何で?」

神父「うふふふ、御覧なさい。ファイヤーバードも嬉しそうです」フフフ

馬「ニャーン」ペロペロ

勇者「わぷっ!!ちょ、顔舐めないで!!」

神父「……いやぁ、しかし……僧侶を引き取ってから……色々ありましたね」

勇者「し、神父様?なんでそんな遠い目をしてわぷっ!ファイヤーバードやめて!」

神父「…………あの娘の成長が、私の何よりの楽しみでした……」

勇者「神父様、さっきから何をいttぷへっ!わぷっ!」

神父「…………」

神父「……しかし、それも終わる時が来るのですね……!!!!」ウルウル

勇者「神父様!!!!マジで聴いてくだあばっ!ぷべっ!!ファイヤーバード口めっちゃ臭い!!!!」

神父「……勇者君」

馬「ブルル……」ピタッ……

勇者「ぷへっ……(やっとやめてくれた……)」

勇者「な、なんでしょう…………?」

神父「…………あの娘は、とてもしっかりとした、強くていい娘です」

勇者「?は、はい。ですからそれはもう……」

神父「……しかし」

神父「とても寂しがり屋で、とても弱い娘です」

勇者「…………」

勇者「……」

勇者「……はい。……知っています」

神父「……勇者君」

神父「……あの娘を」

神父「どうかあの娘を、よろしくお願いしm」




僧侶「何をよろしくされるんでしょうかね♪」

神父「」

馬「」

勇者「あれ、僧侶。やぁ」

僧侶「勇者くん、こんにちわ!」

神父「そそそそそそそ僧侶おかえりなさい早かったですね」ガタガタニコニコ

馬「……ヒヒン……」ガタガタ

僧侶「あはは、そうなんですよ。実は」

僧侶「…………出かけて“すぐに”お財布を忘れているのに気付きまして」

僧侶「……だから“すぐに”取りに帰ってきたんですよ」ニコ…

神父「」ガタガタガタガタ

勇者「?」

僧侶「……神父様?」

神父「……ハイ……」ガタガタガタガタ

僧侶「…………一体」

僧侶「一体勇者くんに何の用事だったんですかぁ……?」ニッコォ……

神父「」ガタガタポロポロ

勇者(神父様が泣き始めた…………)

神父「す、すみません!本当にすみません!!」

僧侶「……もう!勇者くんに迷惑かけて!」

僧侶「あなたもですよ!!ファイヤーバード!」

馬「ヒヒン……」ショボン

僧侶「全く!もう知りません!」

神父「あぁ、僧侶!怒らないで下さい!私はただ……!」

僧侶「もう“ほっぺにおやすみのチュー”はしばらくしませんからね!!」

神父「オェェェェエエェッ!!!!」

ボドボドッ

勇者(ストレスで吐いた……)

僧侶「ファイヤーバードもですよ!」

馬「ヒヒン!!??」ビクゥ

僧侶「しばらく毛並みのお手入れはやってあげません!」

馬「」ガタッ!!ガタダァン、ガシャァン!!

勇者(気絶して派手にぶっ倒れた……)

神父「…………うぅぅぅ!!!!」ガタガタ

馬「」シーン

僧侶「ふんっ!」フンス!

勇者「…………」

勇者(強い……)ゴクリ

僧侶「勇者くん、今日はごめんね?」

勇者「い、いや、全然大丈夫だよ。気にしてないし」

神父「……本当にすいませんでした」

馬「ブルル……」

勇者「いえいえ……楽しかったですよ」アハハ

僧侶「全く……それじゃ、家までの少しの間送りますね」

勇者「え?いや、別に……」

僧侶「いーんです!迷惑かけましたし!」

神父「…………」

神父「…………送らせてあげて下さい。勇者君」

勇者「え……あ、それじゃ……お願いするよ」

僧侶「はい♪」ニコ

勇者「それでは僕はお暇させていただきますね」

神父「今日はすみませんでしたね、いつでもまた遊びに来てください」

馬「ヒヒーン」

勇者「はい、また来ます」

僧侶「それじゃ行きましょうか」

勇者「うん!

スタスタ…

勇者「……」

ピタッ

勇者「…………僧侶?」

僧侶「はい?どうしました?」

勇者「…………い、いや」

勇者「……あ、あのさ」

勇者「…………さっきの、どこから聴いてた……?///」

僧侶「…………」

僧侶「……」

僧侶「…」









僧侶「…………っ……/////////」カァァァァァァァァァァ……!!

僧侶「勇者くんのいじわる!!知りませんっ!///」ダッ

勇者「あっ!!ちょ、待ってよ僧侶!!!!///」ダッ

ガチャ!

バタン!







神父「…………」

馬「…………」

神父「……」

神父「……ファイヤーバード」

馬「……ヒヒン」

神父「……これは…………あれですね」

馬「……ヒヒン……」

神父「………………」

馬「…………」





神父・馬「「マジプリティ!!!!!!」」ニッコォー




おわれ

番外編はこれで終了です
次スレに移行したいと思います

こっちにもう一つ番外を落とそうと思います。明日には書けるといいな。

-番外-


【Sexual Healing】

-アリアハン・ルイーダの酒場-


「「「かんぱーい」」」


男A(元子供A)「……あれだな」

男B(元子供B)「なんだよ。乾杯早々に」

男C(元子供C)「あれってなんだよ」

男A「あいつら、行っちゃったよな」

男B「……あぁ、な」

男C「なんだか気付いたら行ってんだもん……」

男B「俺勇者に何も挨拶とかできなかったわ」

男A「俺も俺も。だってあいつ急すぎるんだもん」

男C「俺もだわ。頑張れくらいは言いたかった」

男A「なぁ」

男B「でも……寂しくなるよな」

男C「まぁねぇ……」

男A「でも何が一番寂しいかってあれだよ」

男B「なんだよ」

男A「アリアハンの中でも屈指の美女達がごっそり持ってかれた事だよ」

男C「あー」

男B「そういえばそうだよなぁ」

男A「だって全員が全員アレだぜ!?」

男B「上玉揃いだよな」

男C「しかも何人か、勇者に少し気がありそうだったよね」

男B「教会の僧侶ちゃんとかな!」

男A「もうそれだけで勝ち組だっつうのに……」

男B「……魔物に食われちまえ畜生!」

男C「こらこら」

?「こら!何言ってんのよ」

男B「うぉ!聴いてたんですか!」ビクゥ

ルイーダ「丸ぎこえよ。男Bくん、次そんな事言ったら……」

男B「す、すんません!もう言いません!」

ルイーダ「よろしい。はい、お待ちどーさま♪」

コトッ

男A「おぉ!待ってました!」

男B「ルイーダさんのサラダ!生きる活力だよ本当に!」

男C「美味しいよね」

ルイーダ「私特製だもの!どう?アリアハンにもまだまだ良い女はいるでしょ?」

男A「え?」

男B「どこに?」

ルイーダ「……ここに」

男A「えー、ルイーダさん美人だけど……なぁ」

男B「なぁ。もうすぐみそz」

ダァン!

男A・B「!!!!」ビクゥ!

ルイーダ「……なぁに?」

男A・B「「なんでもありません」」

男C「ルイーダさん綺麗だよ」



……
…………


男A「怖かった……」

男B「からかっただけなのにな……」

男C「そんなんだからモテないんだよ」

男B「うるせぇよ!」

男A「しかし……彼女欲しいなぁ」

男C「作りなよ」

男B「そんな簡単に言うなって」

男A「いい女がいねーんだよ」

男C「いい女ねぇ」

男B「そのいい女達の筆頭がごっそり旅に出ちまったからなぁ……」

男A「そうなんだよなぁ」

男C「……どんなのがタイプなんだ?」

男A「え?……うーん、どんなのって言っても……」

男B「……じゃあ、あいつらの中じゃ、誰が良い?」

男A「あいつら?」

男B「ほら、旅に出ちまった奴らの中だったらさ」

男A「あー……そうだな……うーん」

男B「……まず俺達と言ったらあれだろ」

男A「あ、やっぱりお前も?」

男B「だってそうだろ?……もう一度味わいたいよなぁ……」ウットリ

男A「なぁ……あの」



男A・B「「女王様の足払い……」」ホゥ…

男A「女王様は素敵だったな……」

男B「盗賊の姐さんは本当に良かった……」

男C「美人だよね」

男A「まあ俺の初恋だったしな」

男B「え、マジか……ってよく考えたら俺もそうだったわ」

男A「ってか俺ら三人だろ。一時期めちゃくちゃ盗賊の姐さんにハマってたよな」

男C「足払いしてもらうために勇者を探し出してちょっかいだしたりね」

ゴクゴク……

ゴトン!

男B「ぷはぁっ……男A」

男A「何だよ……お前少し出来上がってきたな?」

男B「盗賊の姐さんの魅力……お前はどう思う?」

男A「魅力?」

男B「……盗賊の姐さんの魅力の真髄……言えるかよ」

男A「……当たり前だ」

男B「Tell Me……」

男C(あ、なんだかうざくなってきた)

男A「まずはな……声だ」

男B「ほう!」

男C「へぇ、意外だね。てっきり足とか巨乳って言うかと」

男A「そりゃトーシロだ……プロはな、盗賊さんの魅力の真髄は声だってすぐ見抜くもんさ」

男B「流石だぜ。あのウィスパーボイスはたまらん」

男A「な!あの足払いの時も、屈んでお腹を前に曲げる時に『……ん…っ…』って少しだけ言うのがたまらん!」

男B「わかるぜ。でも俺は普段の姐さんの声が好きだな」

男A「例えば?」

男B「そうだな……」

男B「……普段姐さんは全然喋らないよな?」

男C「あぁ」

男B「だからさ、口はいつも閉じちゃってるわけだよ」

男B「……だから、言葉を話すときの最初と最後が……すごくセクシーなんだ」

男C「あんまりピンと来ないなぁ」

男A「まだまだだなお前は……」

男B「いいか?あまり喋らないと喋るときに、口を開く際は上顎とベロが……ねっとりとしたシンフォニーを奏でるんだよ」

男A「たまらんな……」

男B「そして口を閉じる際は……もうしばらく喋らないであろうから固く密閉するわけだ」

男B「その時に、いびつな口内の形を合わせる事によって生じる行き場のない空気が、潰れる音が微かにするんだよ」

男B「それを飲み込む盗賊の姐さんの厚い唇……どうだ」

男A「ワンダフォだな……」

男C「俺はトーシロでいいや」

男A「おいおいなんだか盛り上がって参りましたな」

男C「お前らだけな」

男B「じゃああの美女集団の魅力の真髄を語っていくか」

男A「へへ!腕が鳴るぜ!」

男C「まぁ聴いてる分にはいいかな」

男B「それじゃあ次は……さっきも出た僧侶ちゃんでどうだ」

男C「あぁ、僧侶ちゃんも美人だよね。あの子の場合は顔とか?」

男A「おいおい男C……あまり失望させてくれるなよな」

男B「今俺らが話してるのは、『美女の何が、どんな仕草がより彼女らを魅力的にさせているか』なんだぜ?顔は良くて当たり前だ」

男B「B専の話はまた今度じっくり……な」

男C「いや遠慮するわ」

男A「……で、僧侶ちゃんの真髄だが」

男B「うんうん」

男A「……着こなし、だ」

男C「着こなし?」

男A「あぁ、彼女は天性の着エロクイーンだ」

男B「構わん、つづけろ」

男A「まぁ、彼女はあの通りナイスなバディの持ち主だよな?」

男C「まぁね。でも盗賊も同じくらいじゃんか。盗賊も旅立った時の服とかエロかったし」

男B「そりゃ盗賊の姐さんもエロかった。しかしな」

男A「お前、1つ聞くが……」

男A「天使と悪魔……どちらが興奮する?」

男C「……」

男C「……」

男C「いやちょっと話飛びすぎてわけわかんない」

男A「……質問の仕方が悪かったな」

男A「もし、同じ顔、同じナイスバディの天使と悪魔がいたとして……だ」

男A「……その2人が危ない水着を着たとする……さぁどちらが興奮する?」

男A「いつもエロい格好だからあまり変わらない悪魔と、いつもは神々しい聖女の、あられもない下品な、堕落した姿!」

男B「…………そうだね。後者に決まっているよね」

男C「……その後者が僧侶ちゃんだっていうの?」

男A「いかにも……あの聖衣のタイツはもちろんの事」

男A「普段彼女が着る服も、あの艶めかしい体のラインを隠し切れていない!」

男A「そしてそれに気付いていない……無垢な、しかし艶めかしい聖女…」

男B「ビューティフォだな…」

男C「なんだか頭痛くなってきた……」

男B「それじゃ次は……商人ちゃんなんか、どうだ」

男A「商人ちゃんか……フッ、いいな」

男C「まだやるのかよ……商人の場合はなんなのさ」

男B「彼女の場合は、毒舌だ」

男C「あれ、なんか意外。そういうのはトーシロって言われるかと」

男B「ただの毒舌の場合はな。彼女は弱さ、脆さも身の内に秘めているから良いんだ」

男A「想像してみろ男C。二人きりになってこちらが強気になるとだんだん毒舌が覇気を失ってくるんだ……」

男B「でも最後まで彼女は毒舌を放棄しないだろう……その毒舌を、『許して』という懇願に変えてやるんだ……どうだ?燃えるだろう」

男A「エキサイティングだな……」

男C「もうやだコイツら……」

男A「遊び人なんかも良いな」

男B「……あぁ、たまらん」

男C「……シャイな性格なのに進んでバニーの格好とかしたりするところに潜んだmasochismを感じるから……とか?」

男A「お前もなかなかわかってきたじゃないか!!」

男C「わかりたくは無かったけどね……」

男B「女勇者も良いよな……あいつはお固いところがたまらん」

男A「しかしその固さのを一度崩してしまえばあとは柔らかい脆いハートが残っているだけ……」

男B「最初は凛としている彼女が、だんだん涙を浮かべて弱気になっていく贅沢……これってトリビアになりませんか」

男C「お前ら本当気持ち悪いな」

男C「で?他は?」

男A「ん?」

男B「他って?」

男C「あの勇者側近三人集だよ。戦士、魔法使い、武道家。あの娘たちの魅力は?」

男A「……」

男B「……」

男C「……?」

男C「……どうしたのさ」

男A「……あ、あいつらは」

男B「……その……女じゃないっていうか……」


ガタガタ…


男A・B「「人間じゃないっていうか……!!」」ガタガタ…

男C「怖がりすぎだろ……まぁ確かに三人に昔リンチされてからあの娘たちは女なんだと思えなくなったけどさ……」

男B「爪はやめてっ……!!爪はやだぁっ……!!」ガタガタブルブル…



……
…………

ルイーダ「またきてねー!」

男C「ご馳走さまでした」

男A「また来るよ!」

男B「じゃあねールイーダさん」

ルイーダ「はいなー♪」

カランカラン…


テクテク…

男A「はぁー…飲んだ飲んだ……」

男B「しかし予想外に盛り上がったな、今日」

男C「お前らだけな……」

男A「お前は終始テンション低かったよな」

男C「お前らが高すぎなんだよ!」

男B「じゃあ聴くがよ、お前はあの中じゃ誰が一番好みなんだ?」

男C「え?」

男B「このくらいだったらお前もついていけるだろ?」

男A「付き合うなら誰がいいよ?」

男C「……えー…?付き合う……?」

男C「……うーん……」

男A「俺は迷うけど……やっぱり盗賊の姐さんかなぁ」

男B「あぁずりーぞてめぇ!」

男A「あはは、ってかこの三人にそんな質問しても無駄だよな」

男B「まぁな。男C、やっぱお前も盗賊の姐s」


男C「勇者かな」


男A「あぁ……え、ん?」

男B「何?何て?」

男C「いや、だから勇者かな」

男A「……?え?」

男B「何が?」

男C「いや、だから」




男C「付き合うなら、勇者かな」



男A「……」

男B「……」

男A・B「「えっ」」

男B「……え……」

男A「……あ、女勇者?女勇者の事ね?」

男C「いや?勇者は勇者だよ」

男A・B「「……………………」」

男C「うん、やっぱり勇者かな。勇者が一番だ」

男A「え……いや、何で……?」

男C「?何でって、何が?」

男B「いやだってお前……」

男C「だってさ、よく考えてもみろよ」

男A「考えたくないよぉ……」

男C「努力家で、仲間思いで優しいしさ」

男B「そりゃ良い奴だけどさぁ……!!」

男C「ちょっとドジな所もあるけど、それもチャームポイントだし」

男C「割と女顔だし……笑うと笑顔がキュートだし、体は程よく引き締まってるし」

男A「……お…男C……?」

男C「凛とした声も素敵だし、珍しい色のふわりとした髪の毛もすごいチャーミングだし!」

男B「やだ……目が怖いよぉ……ケダモノの目だよぉ……」ガタガタ…

男C「足もスラッとしてるし、良いお尻してるし、存在自体可愛いし!」

男C「…………うん!」

男C「勇者愛してる!!!!!!」ニコー


そっち方面の玄人でした。

【Sexual Healing】-完-

これにて終了です。ありがとうございました。



しかしなんだこれ。

次のスレも頑張らせて頂きますので読んで頂けると幸いです。ありがとうございました!

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