銀時「魔法少女まどか☆マギカ?」(1000)

銀時「何それ、読みにくくてしょうがねーんだけど」

新八「お通ちゃん親衛隊の中でものすごく流行っているアニメなんです」

新八「影響がちょっと強すぎるみたいなんで没収してきました」

銀時「その前に何この☆、つのだ☆ひろのパクリ?」

神楽「銀ちゃん、どっちかっていうとこれプリキュアっぽいアル」

銀時「やめろその名前を出すな、ババア達がやらかしてそこから怒られてんだから」

神楽「今となってはいい思い出ネ、サンライズの土下座根性は伊達じゃないアル」

新八「いやそれ自慢できることじゃないよね!?結局はそれただの平謝りだよね!?」

銀時「で、どうすんだこれ」

新八「さすがに処分するのはかわいそうなんで…しばらくしたら返そうかと思ってます」

神楽「変わったアルな新八、前ならすぐに処分しようとしてたのに」

銀時「やっぱアレなんだな、一時期でも二次元に取り込まれると丸くなるもんだな」

新八「ら、ラブチョリスのことはもういいじゃないですか!一時の気の迷いですよ!」

神楽「マジキモいアル、お前はおはようからおやすみまで一生ゲームに話しかけてろヨ」

銀時「誰だっけ新八くんの彼女の名前…えーと…忘れたからもう一回教えてくんね?」

新八「ぎ、銀さんだってピン子に入れ込んでたじゃないですか!!」

銀時「誰のせいだと思ってんだテメー!!」

---
深夜

銀時「さて…と、もう夜も更けてることだし寝るとするか」

銀時「…………」

銀時(あれ?なんか寝たら負けな気がすんだけど、何この嫌な予感?)

銀時「大丈夫だよな…うん、何も起こるはずがないからね、何のフラグもないからね」

銀時「…………」

銀時「クカー…クカー……」

---
翌朝

銀時「クカー…クカー…」

早乙女「先生!坂田先生!何を寝ているんですか!?」

銀時「あん?先生だ?なーに寝ぼけたこと言って……」

銀時「…………」

銀時(あれ、知らない天井?)

早乙女「赴任初日から寝るとはどういうことですか!しっかりしてください!」

銀時「あ、これ夢か?なんだ夢か、きっと夢だ、夢に違いないね、うん」

早乙女「何をさっきから…まぎれもない現実ですよ、夢なんかじゃありませんから!」

銀時「さっきからいちいち声でけーな、ヒステリーな女に男はよってこねーぞ」

バキッ

早乙女「私は悪くない!卵の焼き加減くらいで女の価値は決まるはずないわ!」

銀時「いきなり人の鼻っ柱殴る女の価値なんざたかが知れてるよね」ダラダラ

バキッ!

早乙女「いい加減にしないとしばき倒しますよ」

銀時「もうすでにしばき倒してるけどね」バタッ

---
教室前、廊下

銀時(つーかちょっと待てよオイ、どうなってんだこの状況?何が起こってんだコレ?)

銀時「マジで夢じゃねーのかコレ、夢の国から使者とか来るんじゃねーの?」

ほむら「…………」

銀時「ほわああああぁっ!?」

銀時(こ、コイツいつからいやがった!?まさか夢の……なわけねーか)

銀時「……よう、テメーも廊下で待たされてるクチか?」

ほむら「…………」

銀時「…………」

銀時(なんか喋れやお前、何で話し掛けた俺が浮いた感じになってんだ)

---
教室

早乙女「つまりですね!卵の焼き加減ごときで女の価値は……」

さやか「あー、あれは振られちゃったんだな…まあやっぱりって感じだけど」

まどか「あはは、みたいだね」

早乙女「さて…最後に一つお知らせとして、今日は転校生と新任の先生を紹介します」

さやか「なんでそういう重要なことを最後に持ってくるかな……」ボソッ

早乙女「じゃあ明美さん、坂田先生、入ってきてください」

ほむら「………」スタスタ

さやか「うわー…すげー美人」

まどか「!」

まどか(嘘…あの子…前に夢で見た……!)

うおぉぉぉーーー!!!お帰り!!!だいぶ音沙汰無かったから心配してましたよ!!!
これでキュゥべぇ(若本)と並んで笑いを補給して生き延びられる…!

うおぉぉぉーーー!!!お帰り!!!だいぶ音沙汰無かったから心配してましたよ!!!
これでキュゥべぇ(若本)と並んで笑いを補給して生き延びられる…!

早乙女「じゃあ二人とも、自己紹介を」

ほむら「明美ほむらです、よろしくお願いします」

銀時「どーも…なんか教師に仕立て上げられてた坂田銀八でーす」

さやか「対してあの教師は…なんともやる気がなさそうな……」

まどか「…………」

さやか「まどか?」

まどか「あっ、ううん…何でもないよ……」

銀時(帰りてェェ!こんなワケ分からねーところでいきなり教師なんざできるわけがねェェェ!)

ほむら「……」

---
休み時間

ほむら「……ごめんなさい、気分が悪いから保健室へ行かせてもらえるかしら?」

クラスメイト「あ、だったら私たちが案内しようか?」

ほむら「いいえ、保健委員の人にお願いするわ…鹿目まどかさん」

まどか「えっ…あ、うん……」

まどか(どうして…私が保健委員だって……?)

ほむら「それと…念のために先生も付き添いで付いてきてもらえないかしら?」

銀時「いや、俺ァ保健室とか知らねーぞ?」

ほむら「それでも…念のために」

銀時「……?」

---
廊下

ほむら「…………」

まどか「……あの、何で私が保健委員だって知ってたのかな?」

ほむら「早乙女先生から聞いたの」

まどか「あ、そ…そうなんだ……」

ほむら「…………」

まどか「…………」

銀時(何この気まずい空気、何これ俺が悪いの?胃が痛くて仕方ないんだけど?)

銀時「あの…うん、何か俺ァ邪魔みてーだからこの辺でフェードアウトし……」

ほむら「しなくていいわ」

銀時「いや…アレだ、胃が痛くなってて?保健室に行かなきゃいけねーから?」

ほむら「保健室に行くなら私たちと一緒に来る必要があるはずよ」

銀時(しまったァァァ!今まさに保健室に向かってたァァァァァ!!)

まどか「……あの、明美さん?」

ほむら「っ……ほむらでいいわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん…ほむらちゃんって…あの……いい名前だよね!」

ほむら「…………」

まどか「あの…なんていうか…珍しい名前だし……その………」

ほむら「…………っ」

銀時(三点リーダー多すぎね?お前らもうちょっと頑張れよ)

ほむら「鹿目まどか、あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」

まどか「え…う、うん……大切だよ?家族も…友達のみんなも?」

ほむら「嘘じゃないわね…?」

まどか「嘘な訳ないよ!私は…本当にみんなのことが大好きだから!」

ほむら「なら…今の自分を大切にしなさい、今と違う自分になろうだなんて思わないで」

ほむら「さもなければ…すべてを失うことになるわ」

まどか「…………??」

銀時(いや頑張れってそっちの意味じゃないからね、何で中二病を頑張ってんの?)

期待

あと無粋だけど、暁美じゃね? 苗字

---
放課後、CD屋

さやか「ごめんねまどか、いつも付き合わせちゃって」

まどか「ううん、気にしないで?私も音楽好きだから」

まどか(ほむらちゃん…いったいどうして私にあんなことを……?)

『助けて……』

まどか「!」

『助けて…まどか……!』

まどか(何…?誰かが私を呼んで……?)

さやか「どうしたの、まどか?」

まどか「呼ばれたの!」

さやか「は、はぁ!?」

>>22
銀八「指摘ありがとうさん、初っ端から間違えるとかもう死んだほうがいいなこれ」


完全に見落としてました、脳内保管していただければありがたいです

同時刻

CD『大人の階段昇るー♪君はまだシンデレラさー♪』

銀時「あー、サビでやっと思い出したわこの曲、どっかで聞いたことあったんだよな」

銀時「何かのアニメのエンディングだったっけ?思い出せねーな……」

さやか「ちょっとまどか!」

銀時「……ん?」

銀時(アイツら…何やってんだ?)

---
某所

まどか「どこなの?誰が私を呼んだの…?」

キュゥべぇ「ハァ…ハァ……」

まどか「だ、大丈夫!?あなたが私のことを呼んだの!?」

まどか(見たことない生き物だけど…ひどい傷…お、お医者さんに連れて行かなきゃ……)

さやか「な、何なのその生き物!」

まどか「分からない、でも怪我してる!早く手当してあげないと……」

さやか「それは…そうだね、じゃあ早く……!?」

二人が走り出そうとした瞬間、少女たちを取り巻く空間に異変が生じた。

不可思議、異常、そうとしか表現できない世界が辺りに広がる。

さやか「な、何なのよこれ!道がなくなって…いったい何が……!!」

銀時「何がどうなってんだァァァァ!?」

まどか「」

さやか「」

さやか「ぎ、銀時先生!?」

銀時「オイどうなってんだ!?今にも宇宙人とか神人とか出てきそうな空気だぞコレ!」

さやか「いや知らないよ!ていうか何で先生がここにいるのさ!?」

銀時「お前ら二人がTSUTAYAでうろちょろしてんのたまたま見かけてな」

銀時「気になったから後を付けてみたらこの状況だコノヤロー」

さやか「付けてきたって…それ半分は自分のせいなんじゃ……」

まどか「二人とも!のんきなこと言ってる場合じゃないよ!」

銀時「?」

まどか「何かが…今、何か動いた……!」

さやか「何かって…せ、先生見てきてよ!」

銀時「いや無理だろ、丸投げとかホント止めてくんない?」

さやか「男だったら女の子の前に立っていいところ見せてよ!」

銀時「レディーファーストって言葉があんだろうが!お前が先陣切っていけよ!」

銀時・さやか「何だコルァァァ!!このビビリがァァァァァァ!!」

マミ「…………」

マミ(どうしよう、出ていくタイミングがわからない……)

マミ「あの……ちょっといいかしら?」

銀時「馬鹿かお前!GCの最高傑作はソニックアドベンチャー2バトルに決まってんだろうが!」

さやか「何言ってんの、カービィのエアライドしかありえないでしょ!!」

マミ「あの…助けに……」

さやか「うるさい!!」

銀時「今取り込み中だから後にしろコノヤロー!」

マミ「ご、ごめんなさい……」グスッ

まどか「…………」

まどか(どこをどう突っ込めばいいのか全然わからないよ……)

まどか「あの…助けに来てくれたんですか?」

マミ「そうなんだけど…何だかちょっとやりにくくてね」

まどか「こ、ここは一体どこなんですか?なんで私たちがこんな……」

マミ「説明する前に、ちょっと一仕事してもいいかしら?」

マミ「この世界から抜け出すには…ここに潜んでる魔女を倒さなきゃいけないの」

まどか(いつの間にか銃を持ってる…ま、魔法みたい……!)

銀時「ジャンプが最強だろうが!こればっかは譲れねェぞ!」

さやか「誰が何と言おうが私はマガジン派なの!こっちだって引き下がる気はないから!」

まどか(そしてあの二人はいつまでやってるんだろう……)

---

マミ「何やかんやで全員無事で助かったわね」

銀時「いや何やかんやって何?適当すぎんだろそれ」

まどか「それは酷いよ先生、マミさんが戦ってる間もずっと口喧嘩してたのに……」

さやか「あはは…あの、助けてくれてありがとうございました」

マミ「気にしなくていいわ、これが私の仕事だもの」

まどか「それで…さっきのは一体なんだったんですか?」

マミ「それを説明する前に…まずはキュゥべぇを……」

ほむら「…………」

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

ほむら「そいつから離れて」

まどか「で、でも…今からこの子の手当てを……」

マミ「なるほど…キュゥべぇに怪我をさせたのはあなたね?」

さやか「なっ……!」

マミ「今は退きなさい、お互いに無駄な戦闘はしたくないでしょう?」

ほむら「…………」

銀時「まままま、ちょっと落ち着けテメーら」

ほむら「?」

銀時「こちとらいきなりのことでわけがわからねェんだ、詳しく話を聞かせてもらうぜ」

マミ「……この子の怪我を治してから、ね」

ほむら「…………」

---

キュゥべぇ「ありがとう!君たちのおかげで助かったよ!」

マミ「良かったわね、キュゥべぇ」

銀時「じゃーもう一度聞くけどよ、テメーら一体何なんだ?」

マミ「私たちは魔法少女、一言でいえば魔女と戦う存在…とでも言うべきかしら」

銀時「魔女?ああ、ツインローバか」

さやか「ゼル伝かー、懐かしいなー」

マミ(ぜるでん……って何かしら?)

まどか「あの…とりあえずマミさんたちは魔女をやっつけるのが仕事なんですよね?」

マミ「え、ええ」

まどか「じゃあなんでほむらちゃんは…そのキュゥべぇって子を襲ったり……?」

ほむら「…………」

マミ「…鹿目まどかさんだったわね、あなたにはキュゥべぇの助けを求める声が聞こえたんでしょう?」

まどか「は、はい…聞こえましたけど……」

マミ「……いずれわかることだろうから今、ここで言っておくわ」

マミ「鹿目まどかさん、あなたには魔法少女になるだけの資質がある」

まどか「!」

まどか「私が…魔法少女に……?」

さやか「でも…それと何の関係が……」

マミ「魔法少女になるにはこのキュゥべぇと契約をする必要があるの」

マミ「逆を言えば…キュゥべぇがいなければ魔法少女になる契約をすることはできない」

マミ「つまりはそういうことでしょう、あなたがキュゥべぇを狙った理由は?」

ほむら「…………」

まどか「言ってる意味がよくわからないんですけど…」

マミ「彼女は新しい魔法少女が増えることを避けたいのよ、何としてもね」

さやか「なんで?仲間が増えるんだったらいいことじゃないの?」

マミ「それがそうとも限らないの…魔女を倒した時のメリットが減ってしまうから」

まどか「………?」

マミ「倒された魔女はグリーフシードという卵を落とすことがあってね」

マミ「これは魔法少女にとっては必要不可欠なものなの」

銀時(……めんどくせー話になってきたな)

まどか「魔女の卵なんか…どうしてほしがるんですか?」

マミ「私が持ってる宝石…ソウルジェムが私たち魔法少女の力の源なの」

さやか「わぁ、綺麗ですね…すごく……」

マミ「でもこの宝石はほんの少し汚れているの、さっき魔法を使ったからね」

まどか「魔法を使ったから?」

マミ「そう、私たちが魔法を使うとソウルジェムは少しずつ汚れていく…」

マミ「そしてソウルジェムの汚れがひどくなると私たちは魔法が使えなくなってしまうの」

銀時「………」

マミ「魔女の落とすグリーフシードにはその汚れを浄化するはたらきがある…つまり」

さやか「魔法少女が増えちゃうと、それを取れる機会が少なくなっちゃうってこと…?」

マミ「そういうことね…あなたはそれが困るからキュゥべぇを狙うんでしょう?」

ほむら「……仮に違うといってもあなたは信じてくれないでしょうね」

マミ「信じるかどうかはあなたの話の内容にもよるわね」

ほむら「…………」

銀時「すいまっせーん、ちょっと聞きてーことがあんだけど」

マミ「?」

銀時「何でテメーら魔法少女さんは仲間の魔女を倒してんだ?」

キュゥべぇ「!」

マミ「な、仲間じゃないわ!魔法少女と魔女は全く別物よ!」

銀時「え?だって魔法少女が大人の階段昇ると魔女になんじゃねーの?」

ほむら「!」

マミ「お、大人の階段って…」

銀時「いや今はいいよ?お前らまだ学生だしね、まだ少女でも問題ないけどね」

銀時「で、時がたって十年後、いまだにお前らは少女ですか?永遠の十代でいられますか?」

銀時「いい年こいても幸せは誰かが運んでくれると信じてんの?」

マミ「いや、それは……」

銀時「シンデレラも大人の階段昇る時が来るんだよ、そん時少女は大人の女になんの」

銀時「つまり魔法少女もいずれは魔女になるってことだな、うん」

銀時「まあそこからさらにワンステップ進むと魔法熟女という新世界に達するけどね」

マミ「…………」

ほむら(な、何者なの…坂田銀時……!)

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、なんか接続が悪いんで今日はこの辺で勘弁してください」

銀八「あらすじは大体できてるんで完結はさせますからその辺の心配は必要ないんで大丈夫です」

銀八「あ…間延びするのを避けようとしたんですが展開が早すぎたみたいで申し訳ないです」

銀八「じゃーGWも終わったことだし、だらけた生活スタイルをしっかり変えるようにー」


展開早すぎたのはすいません、完全にこっちのミスでした……
パソコンなのは気分転換的な感じのアレで特に意味はないんで気にしないでください

あんまり進まないかもですが、再開させてください

マミ「キュ…キュゥべえ……」

キュゥべえ「何を聞きたいかはわかっているよ、マミ」

マミ「まさかとは思うけど……その……」

キュゥべえ「逆に聞くけれど、君は自分があんな魔女になると思っているのかい?」

キュゥべえ「人に災いをもたらすだけのおぞましい存在になると、本当に思うのかい?」

マミ「そんな…そんなことは絶対にないと思ってるけど……」

キュゥべえ「だったら何も心配はいらないじゃないか、マミが何を不安になっているのかわからないよ」

マミ「そ、そうね……」

銀時「………」

銀時(あれ、何か話の方向変わってね?)

キュゥべぇ「とりあえず…もう一度お礼を言っておくね、助けてくれてありがとう!」

まどか「そんな…お礼なんか言わなくても……」

銀時「あれ、スルー?ちょ、年増になったら魔女になるってのはスルーすんの?ねえ」
 
キュゥべぇ「僕が君たちに助けを求めたのはちゃんと理由があるんだ」

まどか「理由……?」

銀時「オイ聞いてんのかネコウサギ」

キュゥべえ「マミも言っていたけど、君たちには魔法少女になれるだけの才能がある」

キュゥべえ「だから、僕と契約して魔法少女になってほしいんだ!」

まどか「魔法少女に…私が……?」

銀時「何なのコイツ、人の話全然聞いてねーんだけど」

さやか「魔法少女って…そんなことを急に言われても……」

ほむら「ダメよ、そんなことをしてもあなたたちの得になることなんて一つもないわ」

さやか「た、確かに…いきなり魔女と戦えって言われてもな……」

キュゥべえ「もちろんただでなってくれとは言わない、それに見合う代価は払うつもりさ」

まどか「?」

キュゥべえ「魔法少女になってくれたら、どんな願いでも一つだけ何でも叶えてあげるよ」

銀時「マジで?じゃあ叶えれる願いを百個にしろ」

キュゥべえ「いや…あの…それはちょっと……」

銀時「何お前、どんな願いでもって言ったよね?嘘つきか、イッツオールフィクションか」

銀時「みなさん詐欺師です、ここに悪徳業者がいるから気をつけるようにー」

キュゥべえ「…………」

銀時「つーか何そのドラゴンボールみたいな設定、もうちょっと何とかならなか……」

銀時「……ドラゴンボール?」

その時、坂田銀時に電流走る

銀時(あれ、もしかして『元の世界に帰らせろ』って言えば帰れるんじゃねーか?)

銀時(魔女だかなんだかはかぶき町にゃ存在しねーし…すべて解決じゃね?)

まどか「願い事って言われても…そんな……」

さやか「思いつかないよね、急には」

キュゥべえ「どんな願い事だっていいよ、『願いを増やせ』以外だったらね」

銀時「しょうがねェな、だったら俺がその魔法少女ってのに……」

キュゥべえ「先に言っておくけれど、君じゃ魔法少女になるのは無理だよ」

銀時「何だとこのウサギもどき」

キュゥべえ「魔法少女になる資質があるのは思春期の女の子だけなんだ」

銀時「何そのピンポイントな条件、明らかに如何わしいこと企んでるよね」

ほむら「…………」

ほむら(わからない…彼は私の味方なの……?)

マミ「とりあえず…ここを出ましょうか、暗くて少しジメジメしてるしね」

キュゥべえ「そうだね、いきなりここで決めろというのも酷だからね」

キュゥべえ「少し考えてみてから返事を聞かせてくれないかな?」

まどか「うん、分かった」

マミ「じゃあ…今度、私と一緒に魔女退治についてきてみる?」

マミ「そういうのって一度、ちゃんと見てから決めたほうがいいと思うの」

さやか「い、一緒に行って邪魔にならないんですか?」

マミ「もちろん来たくないなら無理に来なくてもいいわ、危険も伴うしね」

マミ「でも…可愛い後輩が大きな決断をしようとしてるんだもの、少しくらい手伝わせて」

まどか「マミさん…ありがとうございます!」

ほむら「巴マミ、あなた…自分が何を言っているかわかっているの?」

マミ「私はこの子たちが自分で決断できるよう手伝うだけ、ただそれだけよ」

ほむら「危険な命懸けの戦いに…一般人を巻き込むというの?」

マミ「キュゥべえに選ばれた時点ですでに一般人とは言い切れないわ」

ほむら「あなたは……」

マミ「……今日のところは退きなさい、暁美ほむらさん」

ほむら「…………」

銀時「よくわからねーが…とりあえず今日のとこはこれで解散っつーことで……」

そう言いかけた銀時が何気なしに自分の腕を見ると、そこにはヤツがいた。
毛でおおわれた体を八本足で支え、口からは獲物をからめ捕る糸を吐き出すスナイパー。

銀時「うほわあああぁぁぁ!蜘蛛だぁぁぁぁ!!」ダダッ

マミ「ちょ、暗いのにそんなに走り回ったら危な……」

キュゥべぇ「え?」

銀時「あ」

プチッ

銀時「」

まどか「」

さやか「」

ほむら「」

マミ「」

銀時(ね、ネコ踏んじゃった!ネコ踏んじゃったァァァァァ!?)

マミ「キュ…キュゥべえぇぇぇぇぇぇ!?」

まどか「」

さやか「ちょ、アンタなんてことしてんのよ!?まさかあんたも敵!?」

銀時「事故だろ今の!違う!違うからね!断じてわざとじゃないからね!?」

銀時「どうしたらいいんだコレ!誰に謝ればいいの!?ねえ!!」

その時、絶望する彼の肩を叩くものが一人

ほむら「……」

銀時「…………?」

ほむら「グッジョブ」グッ

銀時「何で『よくやった』みてーな顔で語りかけてんだァァァ!何その親指!?」

銀時「やべーよこれ、亡霊とかになって化けて出てくんじゃねーだろうな!?」

キュゥべえ「ビックリしたじゃないか、全くなんてことするんだい」

銀時「だからわざとじゃねーて言って……あれ?」

キュゥべえ「どうしたんだい?」

銀時「………」

銀時(ば、化けて出たァァァァァ!?)

マミ「キュ、キュゥべえ…?え、でも……なんで?」

キュゥべえ「やれやれ、まさかこんな形で潰されちゃうとは思わなかったよ」

まどか「キュ、キュゥべえがもう一匹……?」

キュゥべえ「代わりはあるけどむやみに壊されても困るんだ、もったいないじゃないか」

マミ「代わりってあなた……」

キュゥべえ「心配させてごめんよ、でも…僕は君たちを魔法少女にする存在なんだ」

キュゥべえ「それくらいの力があるのに、簡単に死ぬはずがないだろう?」

さやか「そ、そうなんだ……」

銀時「何なのお前、無限残機?焦って損したんだけど?」

キュゥべえ「元はといえば君の不注意のせいなんだよ、少しは反省してくれると嬉しいんだけど」

銀時「はいはい、すんませんっしたー」

銀時「………あれ?」

銀時(つーか無限残機なら別に殺されるとか関係なくね?助けとか必要なくね?)

銀時(だったらコイツ、何で助けなんか呼んだんだ?)

---
翌日、昼休み…屋上

まどか「さやかちゃん…願い事決まった?」

さやか「ううん…全然決まらない、急なことだったからね」

まどか「そうだよね…私もほしいものって言われても思いつかないんだ」

さやか「……恵まれているんだね、私たちって」

まどか「?」

さやか「私は魔女っていうのがどれくらい怖いのか…実はよくわかってないんだよね」

まどか(先生とずっと口喧嘩してたからだよね、それ)

さやか「でも…すごく大変なことだっていうのは分かる、命懸けの戦いなんだってことも」

まどか「あはは…命懸けって言われちゃったらちょっと怖いよね」

さやか「そう、そう思えるから私たちってすごく恵まれてるんだよ」

まどか「……?」

さやか「世界には、命懸けの人生を送ることになっても叶えたい願いを持ってる人はたくさんいると思う」

さやか「何で…私たちなのかな、何でこういうチャンスが他の人に回らないのかな?」

まどか「さやかちゃん……」

---
放課後

マミ「ティロ・フィナーレ!」

魔女「グギャアアアァァァ……」

さやか「すごい…さっすがマミさんだ」

マミ「もう…見世物じゃないのよ、ちゃんと今後の進退の参考にしてくれてる?」

さやか「ま、まあ一応は」

マミ「ふう…困った後輩ね」

まどか「でも…やっぱり迷っちゃいますよね、願いって言われても思いつかないし……」

マミ「それは仕方ないわね、今まで考えたこともないだろうし」

まどか「マミさんは…その、どんな願いをして魔法少女になったんですか?」

マミ「…………」

まどか「あ…あの、言いたくないんだったら別に……」

マミ「私の場合は…こうして生きるためには選択肢が一つしか与えられなかったの」

さやか「え……?」

マミ「強いて言えば…自分の命を助けて、が願い事だったかしら」

まどか「ま、マミさん……」

マミ「でも…あなたたちには私と違って選択肢がある、選択を間違えないようにね」

さやか「……マミさん、その願いを他人のために使うっていうのはどうなんですか?」

マミ「あまり関心はしないわね…あなたには他人のために自分の命を懸けられるの?」

さやか「私は……」

マミ「……願いを決めるのはあなたたち自身、私からはこれ以上なにも言わないわ」

---
翌日、放課後…病院

さやか「恭介、来たよ!」

上条「やあ、さやか!来てくれてうれしいよ」

さやか「これ、借りてきたCDね」

上条「いつもありがとう、わざわざ借りてきてくれて」

さやか「ううん、気にしないで…少しでも恭介が元気になってくれればそれでいいから」

上条「うん、そうだね……」

さやか「退院できる日が来るの、待ってるから……」

---
病院、廊下

さやか「…………」

銀時「よう、奇遇じゃねーか」

さやか「……何で先生がここにいるの?」

銀時「なるほどな、あん時TSUTAYAにいたのはこういう理由だったってこった」

さやか「……あんまり人に言わないでね」

銀時「心配すんな、俺ァそこまで意地は悪かねーよ」

さやか「約束だからね」

銀時「わーってるよ、誰もお前が好きな男に尽くす健気な女だなんて言わねーから」

さやか「ちょっとでも口滑らせたらマジで屋上から突き落とすから」

---
病院、外

さやか「さて…と」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「まどか…それにキュゥべえも!」

まどか「さやかちゃん…上条君のお見舞い?」

さやか「ん、まあね……」

キュゥべえ「二人ともまだ色々と迷っているみたいだね」

まどか「うん、ごめんね?待たせちゃって」

キュゥべえ「気にすることはないさ、契約を強要するつもりなんて僕にはないしね」

銀時(うさんくせー、何この胡散臭さ?アグ○スの霊感商法並みの胡散臭さなんだけど)

さやか「…………何でも願いがかなう、か」ボソッ

まどか「さやかちゃん、何か言った?」

さやか「え、あ、ううん!何でもない!さあ帰ろ!まど……!」

まどか「ど、どうしたの?」

さやか「あの壁にくっ付いてるのって…魔女が出てくる卵じゃ!」

まどか「えっ!?」

銀時「!」

まどか「た、大変だ!マミさんに知らせないと……!」

さやか「まどか!マミさんの携帯番号とかわかる!?」

まどか「分からない、聞くのすっかり忘れちゃってた!」

さやか「先生は!?」

銀時「携帯なんざ持てるわけねーだろ、基本料金どんだけかかると思ってんだ」

さやか「……まどか、マミさんを呼んできて!私はここでこの卵を見張ってる!」

まどか「そんな!」

キュゥべえ「無茶だ!魔法少女でもない君じゃ万が一があったときにどうしようもない!」

さやか「魔女ってのは生まれたら周辺にいる人に災いをもたらすんでしょ?」

さやか「こんな病院の近くでそんなことになったら大変なことになっちゃうよ!」

まどか「さ、さやかちゃん!」

さやか「急いで、まどか!」

まどか「う、うん……!」

キュゥべえ「それなら、僕もここに残るよ!」

さやか「キュゥべえも…?」

キュゥべえ「僕がここにいれば、最悪の事態になった時も君を魔法少女にしてあげられる」

キュゥべえ「そうすれば魔女と戦うことだって出来るからね」

さやか「できれば…そうならないことを祈るしかないね」

銀時「………」

銀時「めんどくせーが俺も残るしかねーな、この流れだと」

さやか「先生…!」

銀時「俺ァマミってやつの家も知らねーし、生徒をほっとくわけにもいかねーしな」

さやか「……ありがと、先生」

銀時(つーか無限残機のコイツが見張ってればよくね?俺たちいなくてもいくね?)

---
数分後

マミ「ここね…確かに魔女の気配がするわ」

まどか「さやかちゃんたち…大丈夫かな……」

マミ『キュゥべえ聞こえる?そっちの状況は?』

キュゥべえ『まだ卵が孵化する様子はないよ、でも刺激しすぎるのもマズイね』

キュゥべえ『魔力は極力抑えてこっちまで向かってきてくれないかな?』

マミ『了解、ありがとう』

マミ「さて…じゃあ行きましょうか」

異空間

まどか「う……」

マミ「やっぱり慣れないわよね、こんな場所」

まどか「ご、ごめんなさい…マミさんを信頼してないわけじゃないんですけど……」

マミ「怖くて当然よ、何も引け目を感じることはないわ…さあ、先に進みましょう」

ほむら「待って」

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

マミ「……何のようかしら?」

ほむら「今回の魔女は私が仕留める、あなたたちは下がっていて」

マミ「後輩が待っているの、そうもいかないわ」

ほむら「彼女たちの安全は私が保証する」

マミ「信用すると思っているのかしら?」

ほむら「!」

一瞬、瞬きをするか否かの間にほむらの体はマミの繰り出した拘束魔法で縛り上げられていた。

ほむら「何を…こんなことをしている場合じゃ……!」

マミ「心配しないで、魔女を倒したらちゃんとその拘束は解いてあげるから」

マミ「行きましょう、鹿目さん」

まどか「は、はい……」

ほむら「待って…くっ……!」

まどか「ほむらちゃん…私たちを心配してくれていたんじゃ……」

マミ「そうかもしれないわね、でも…まだ彼女は完全に信用できるわけじゃない」

マミ「万が一のことを考えたらああするしか方法はなかったの」

まどか「でも…ここにいる魔女は強いって……」

マミ「…鹿目さん、あなたには今までの私の戦いがどう見えていた?」

まどか「え……?」

マミ「簡単に勝てた魔女なんて極僅か…私はいつも怯えながら戦っていたことに気が付いた?」

まどか「そ、そんな…」

マミ「強い魔女なんてたくさんいる…でも、私は戦わなきゃいけないの」

マミ「自分のためにも…あなたたち後輩のためにも…この町に住む人ためにもね」

銀八「キリが悪いんですが今日はこの辺で勘弁してください、眠いんす、マジで」

銀八「あ…出来れば展開予想もほどほどに頼むわ、当てられたらストーリー変えなきゃいけないんで」

銀八「つーわけで、最近あったかくなってきたけど腹とか出して寝るんじゃねーぞ」


今さらですが、まどかキャラが若干銀魂のノリに侵されてるのには目をつぶってくれると有難いです

今日はほとんど進みませんが一応再開します

まどか「……怖いのに戦えるマミさんは強いんですね」

マミ「そんなことないわ、私なんてちっとも強くなんかない」

まどか「私が…私が魔法少女になれば…マミさんの怖さも半分に出来るんですか?」

マミ「か…鹿目さん……?」

まどか「私にもしもみんなを守れるだけの力があるなら…私は戦いたいです、マミさんと一緒に!」

マミ「簡単なことじゃないの、これは…本当に怖い戦いで……」

まどか「それでも…私に出来ることがあるんだったら」

マミ「!」

マミ(この子…本当に私のために力になろうとしてくれてるの……?)

マミ(一人で戦っていた私のために…自分も戦ってくれると言っているの?)

マミ(……優しい子なのね)

マミ「ありがとう、なんだかすごく元気をもらったわ」

まどか「あ…ありがとうなんて言わないでください、私なんて……」

マミ「自分を過小評価しないの、あなたは本当に強い人間なんだから」

まどか「そ、そんなことないですよ!からかわないでください!」

マミ「フフ…鹿目さんがそばにいてくれるだけで力が湧いてくるみたいよ」

マミ「さあ、このまま魔女まで一気に行きましょう!」

まどか「はい!」

マミ(体が軽い…こんな気持ちで戦ったこと、今までに一度もなかった……!)

マミ(私…もう何も怖くない!)

---

マミ「お待たせ、美樹さん、坂田先生」

まどか「みんな、大丈夫だった!?」

さやか「平気平気、魔女の卵に変化もなかったからね」

銀時「ぱっつぁんの人気投票の順位並みに変化がなかったな、マジで」

銀時「ぱっつぁんいつになったら新一になれんだろうな、コナン君になれる日は来んのか?」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

マミ「でも…そろそろ出て来るわね」

銀時「コナン君が?」

マミ「そっちじゃなくて魔女が」

キュゥべえ「来るよ!」

シャルロッテ(魔女)「………」

銀時(なんだ…人形?)

マミ「せっかく出てきたところ悪いけれど…一気に決めさせてもらうわよ」

具現化されたマミの魔法銃が人形のような魔女を打ち抜いた、倒れた魔女を魔力の込められた特性のリボンで拘束する。

さやか「やった!」

憧れの先輩の勝利を確信したさやかが歓喜の声を上げるとマミは笑顔で応え、最後の一撃を魔女に放った。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

マミの最大の一撃が拘束された魔女の中心を貫く、これですべてが終わるはずだった。

その場にいた誰もが巴マミの勝利を確信していた。

―――ただ一人、歴戦の侍を除いては。

銀時「目ェ逸らすな!まだ終わってねーぞ!」

マミ「えっ……?」

何故そんなことを言ったのかはわからない、だが彼にはある種の確信があった。

死地を切り抜けてきた者が持つ研ぎ澄まされた第六感が警鐘を鳴らしている。

而して…その悪い予感は的中した。

シャルロッテ「―――――!」

マミ「!?」

倒したはずの子供の人形のごとき魔女、その口から何かが飛び出てきた。

ピエロの顔がついた芋虫としか形容の出来ないそれは一瞬で巴マミの間合いに入り…

牙を剥き出しに―――――首を食いちぎった。

マミ「……?」

キュゥべえ「」

マミ「え?え?」

銀時「惚けてねーでとっとと逃げろ!そいつが食われてる間に!!」

マミ「!」ダッ

マミ(な、何が起こったの……?)

数秒前

銀時(くそっ、案の定やられちゃいねェじゃねーか!)

マミ「……!」

銀時(やべェ!あれは自力じゃ逃げ切れねーぞ!何かねーか!?何か……あ)

銀時「お前…無限残機だったよな?」

キュゥべえ「え?」

コナンテーマ『うつむーくー♪その背中に痛い雨がつき刺ーさる♪』

銀時「サクリファイス・エスケープ・シュートォォォォォォォ!!」バキッ

キュゥべえ「ええええええ!?」

パクッ


キュゥべえ、銀時によって二度目の死を迎える。

銀時が魔女を確認してからキュゥべえを蹴り飛ばすまで

―――その間、実に二秒ッッッ!!

銀時「よう、無事で何よりだったな」

マミ「で、でもキュゥべえが…あの子が……!」

銀時「いやアレ無限残機だったろ、お前もみてたじゃねーか」

マミ「それでもなんというか…あの…罪悪感が……」

銀時「ありがとうキュゥべえ君…俺、君のことは忘れるまで忘れないからァ!」グスッ

銀時「……はい、反省終了っと…じゃー次はとっととこの変な芋虫を何とかしねーとな」

マミ「…………」

マミ(これでいいの?何だか釈然としないんだけど……)

銀時「ったく、甘いモンで埋め尽くされた天国みてーな場所だってのになんで芋虫の相手しなきゃならねーんだ」

マミ「あ、あなた…まさか戦うつもりなの!?なんの力もないのに!」

銀時「やるしかねーだろ、今のテメーじゃ荷が重いんじゃねーか?」

マミ「そんなこと……っ!」

マミ(どうして…足が…震えてる……?)

銀時「……今は下がっとけ、ついでにほむらのヤローもここへ連れてこい」

マミ(さっき私…本当に死ぬところだったんだ……だから体がこんなに……!)

まどか「マミさん!大丈夫ですか!?」

さやか「か、間一髪でしたけど…怪我とかもしてないですか!?」

マミ「え、ええ…平気……それよりもあの先生が……!」

銀髪の侍は既に魔女との戦闘に移っていた。

誰かが思った、勝てるわけがないと…もう逃げるしか道は残されていないと

不意を突かれたとはいえ、敵は戦闘経験が豊富なマミが殺されかけたほどの強さを持っている。

ましてや彼に魔力などありはしない、武器にしても木刀一本しか持っていない。

まともに考えれば勝機などあるはずがなかった。

だが三人は知らなかった、魔女と相対している彼のことを、自分たちの教師をしている男のことを

銀時「ウオオオオオオオッ!!」

―――天人という人外の敵との戦争を戦い抜き、白夜叉と呼ばれた侍のことを

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい…約束通りちょっとしか進みませんでした、今日はここでいったん切ります」

銀八「そこそこ順調に進んでるんでとりあえず完結までは持って行けそうですね」

銀八「じゃーそういうことで、甘いモンの食いすぎには気を付けるようにー」


というわけで、明日また来ますので…

すいません、やっぱ今日は無理くさいです…
明日に今日の分もまとめて書くので勘弁してください

再開させてください

銀時「ずあっ!」バキッ

シャルロッテ「!」

銀時の選んだ作戦は至って単純、魔女の攻撃を回避しつつ小回りのきく木刀で反撃をする、ただそれだけだった。

だが、行うのは簡単ではない。敵が大柄で素早いだけではない、一度でも攻撃を食らえば致命傷になるのだ。

加えて、リーチの短い木刀で反撃することも考えれば大きく距離をとって躱すことも不可能である。

つまるところ、銀時の策では致命の攻撃を紙一重で回避しつづけなければならない。

―――それだけリスクの高い策でも彼は一歩も退かなかった。

―――一僅かの怯えも見せることなく、木刀を片手に鬼神のごとく戦い続けた。

「………」

少女たちは立ち尽くしていた、木刀一本で魔女を圧倒する侍を前に言葉一つ発せられなかった。

まどか(あれが…銀時先生……?)

さやか(す、すごい…あの先生…あんなに強かったの?)

マミ(どうして…あんな無茶な戦い方を恐れずに実行できるの……!)

銀時の戦いに目を奪われているのは三人だけではなかった。

ほむら「どうなっているの…これは……?」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「来て…くれたのね、暁美さん」

ほむら「教えて…なぜ彼が戦っているの……?」

---

ほむら「そう、事情は大体わかったわ……命があって良かったわね、巴マミ」

まどか「ほ、ほむらちゃん…その言い方は……」

マミ「……ごめんなさい、あなたの忠告を聞いておくべきだったわ」

ほむら「謝罪なんて求めていないわ、ただしきちんと自覚することね」

ほむら「あなたは自分のせいで一般人を巻き添えにして命の危険にさらしたことを」

さやか「巻き添えって…そもそも原因は私が……」

マミ「……暁美さんの言ってる通りよ、すべて私の責任だわ」

ほむら「……とりあえず、今は魔女を倒すことを考え………!?」

シャルロッテ「―――――――――」

ほむらが見たもの、それは体の中心から一刀両断にされた魔女の亡骸

そして、息を切らしつつもこちらへ歩いてくる銀時の姿だった。

ほむら「え……?」

銀時「よう…お前来るのおせーぞ、もうちっと早く来いや」

ほむら「あなた…まさか一人で魔女を倒したの?」

銀時「……いや、何か勝手に爆発した」

さやか「爆発って…あの死骸…明らかに斬られたっぽい形跡があるんだけど」

銀時「あの…何か真ん中がきれいに真っ二つになるように爆発した」

さやか「どんだけピンポイントな爆発!?そんなのあり得なくない?」

銀時「ありえないなんて事はありえない」

さやか「どこの鋼の錬金術師!?ジャンプ派だって言ってなかった!?」

銀時「あーあー、ゴチャゴチャ言うなめんどくせーな…全員無事でめでたしめでたしだろ」

まどか「それは…そうかもしれないですけど……」

ほむら「…………」

ほむら(どうなってるの…魔法少女でもないのに魔女を倒すなんて!)

ほむら(彼は…彼は一体……!)

銀時「ところで…一個気になってることがあってな」

ほむら「な、何かしら……」

銀時「ここにある甘いモンってテイクアウト出来んのか?」

ほむら「…………」

---
翌日、学校

銀時「はーい、授業始めんぞー、教科書出せー」

まどか(先生…昨日あんなことがあったのにもう普通に授業してる……)

銀時「じゃあ今日は抜き打ちテストやっから教科書しまえー」

まどか「先生、最初に教科書出せって言ってませんでした?」

銀時「人ってのは過去を振り返ってたら前に進めねーぞ」

さやか「ていうか抜き打ちテスト!?聞いてないですよそんなの!!」

銀時「はいお前は馬鹿ですか、先にテストやるって教えたら抜き打ちにならねーだろ」

さやか「…………」

さやか(あー…これは終わったな…補修とかなきゃいいけど……)

さやか(えーっと…問題は…っと……)

問一
ゼルダの伝説、時のオカリナで最もよくやることを次のうちから選びなさい

1…空き瓶でガノンドロフと戦う
2…釣り場で親父の帽子を釣る
3…リーデット怖いから常に太陽の歌を使う
4…ルト姫を投げて敵を倒す

まどか「…………」

まどか(選択肢からもう全然わからないよ)

さやか(選択肢の意味は分かるけどこんなの選びようがないんだけど……)

さやか(………1にしよう)

ほむら「…………」

ほむら(これはどう考えても…3)

---
放課後

さやか「疲れた…何なのよあのテスト、ワケ分からない問題ばっかりだったよね?」

まどか「どうしよう、私…このままじゃ補修かもしれないよ」

さやか「私も……って落ち込んでる場合じゃないや、今日は早く帰らないと」

まどか「何か用事?」

さやか「うん、ちょっとね」

ほむら「………」

---
病院

恭介「………」

さやか「恭介…借りてきたCD、ここに置いておくね」

恭介「………」

さやか「あの、恭介……」

恭介「さやか…さやかは僕をいじめているのかい?」

さやか「え……?」

恭介「何で…何で指が動かなくなって音楽が出来ない僕にこんなものを聞かせるんだ!」

さやか「だ、大丈夫だよ!頑張ってリハビリすれば必ず……」

恭介「治らないって言われたんだ、バイオリンはもう諦めろって……」

さやか「!」

恭介「もう…魔法とか奇跡でもない限り、僕は……!」

さやか「…………」

さやか「あるよ」

恭介「魔法も奇跡も…あるんだよ!」

恭介「……?」

恭介さん自演wwwwww

---
某所

さやか「…………」

さやか(私が…恭介の腕を治してあげられるんだったら……そのためなら……)

銀時「自分が命懸けの戦いを背負っても構わねェってか」

さやか「!」

銀時「あっちこっちフラフラしやがって…探したぞコノヤロー」

さやか「……何で」

銀時「今のお前の顔見りゃ大体の想像はつくわ、こちとら事情も知ってるしな」

さやか「……はぁ、分かってるんじゃ嘘ついたって仕方ないよね」

さやか「多分、先生の予想は間違えてないよ…私は先生の想像通りのことをしようとしてる」

銀時「…………」

>>270 >>271
もうダメだ、ここでこの間違えは死ぬしかない、頑張って脳内保管してください…マジすいません

>>266、修正


さやか「だ、大丈夫だよ!頑張ってリハビリすれば必ず……」

恭介「治らないって言われたんだ、バイオリンはもう諦めろって……」

さやか「!」

恭介「もう…魔法とか奇跡でもない限り、僕は……!」

さやか「…………」

さやか「あるよ」

さやか「魔法も奇跡も…あるんだよ!」

恭介「……?」

さやか「色々考えてみたんだけど…これが私にとってのベストな選択だと思うんだよね」

さやか「魔法少女になって魔女と戦うってちょっとカッコいいし…この町の人を守れるしね」

さやか「それに…自分の運命に絶望している人も一人、救うことができる」

銀時「…………」

さやか「何か間違ってる?私の選択」

銀時「……間違ってはいねェんじゃねーか?」

さやか「そうだよね…やっぱり……」

銀時「ただ…俺ァ気にくわねェな」

さやか「……どうして?」

銀時「確かにテメーの言う通りにすりゃ周りの連中は助かるだろうよ、そこは否定するつもりはねェ」

銀時「ただ…それじゃ結局『テメー自身』は救われねェじゃねーか」

さやか「!」

銀時「お前の願いが叶ってダチ公の腕が治ったとして…その後はどうなるよ」

さやか「…………」

銀時「テメーは生きるか死ぬかの戦いを一生続けなきゃならねーんだぞ?」

銀時「ダチ公助けてェ気持ちはわからなくはねーが…ちっとばっか考えがずれてんだろうが」

さやか「…………」

さやか「…………」

さやか「……もう少しだけ考えてみる、けれど…最後に決めるのは私だから」

銀時「そうかい…ま、後悔だけはしねーように気を付けろよ」

銀時「……間違っても俺みてーな後悔しか残らねェ道は選ぶんじゃねーぞ」

さやか「……?」

---
同日、夜

まどか(さやかちゃん…今日の用事ってなんだったのかな)

まどか「……あれ?あそこにいるのって…仁美ちゃん?」

まどか「仁美ちゃーん!こんな時間にどうしたのー?何か習い事……!」

仁美の首筋に何かが見えた気がした、決して見えてはならないはずの何かが。

―――魔女の口づけ、それを受けた人間は原因不明の自殺や殺人を犯すとマミから説明を受けた。

さやかと一緒にマミの魔女討伐に付き添った際、口づけを受けて自殺しようとした女性を助けたことがあったが…

その女性につけられた口づけの跡と同じものが友人である志筑仁美にはっきりと見て取れた。

仁美「…………」

まどか(ひ、仁美ちゃん……まさか!)

まどか「仁美ちゃん!何やってるの!」

仁美「あら…鹿目さん、ごきげんよう…どうかなさいました?」

まどか「ひ、仁美ちゃん…どこに行こうとしてたの?」

仁美「どこって…フフ、とっても素晴らしいところへ……」

まどか「素晴らしい……?」

仁美「そうだ!鹿目さんも一緒に行きましょう…そうですわ!それがいいですわ!」

まどか「や、やめて…私の声を聴いて!仁美ちゃん!」

---
同時刻、某所

ほむら「………」

銀時「こんな時間に何の用ですかいお嬢さん、パフェでも奢ってくれんのか?」

ほむら「私が頼んだこと…やってくれたかしら?」

銀時「とりあえずはな…ただ、あれはどう転ぶかわからねーな」

ほむら「……そう」

銀時「で…お前は何でさやかの奴がダチ公のために契約しようとしてるなんて知ってたんだ?」

ほむら「過去の経験から推測した…ただそれだけよ」

銀時「経験……?」

ほむら「それより…私からあなたに聞きたいことがあるの」

銀時「聞きてェことがあるのはお互い同じらしいな、腹据えて話すとしようじゃねーか」

ほむら「一番根本から聞かせてもらうわ……あなた、いったい何者なの?」

銀時「甘いモンが好きな遊び人とでも答えりゃいいのか?」

ほむら「……質問の仕方を変えるわ、あなたは『この世界』の人間なのかしら?」

銀時「…………」

銀時「仮に俺が『いやー実は異世界から来ちゃいましてー』って言えばお前は信じるのか?」

ほむら「……信じるわ、あなたはここに現れるはずのない人間だもの」

銀時「……?」

銀時「オイ、そいつはどういう……」

ほむら「待って……魔女が現れたわ」

銀時「その前に俺の質問にだな…」

ほむら「ここからかなり近いみたいね、それもかなりの人が巻き込まれてる」

銀時「いや二十秒、二十秒だけでいいから答えろって、こっちはわからねェことだらけなんだよ」

ほむら「行きましょう、早くしないと犠牲者が出かねないわ」

銀時「とりあえずお前のスルー力が半端じゃねェことは分かったわ」

---
某工場

工場長「ダメだ…こんな小さな工場ひとつ切り盛りできないようじゃ……」

工場長「一番の見せ場でミスをするような俺なんか…死ぬしかないんだ……」

まどか「………!?」

仁美に連れてこられたまどかは目を疑う、寂れた工場には多くの人が集まっていた。

その全員が虚ろな目をして怨念のように何かを小さく呟いている。

まどか(な、何なのここ…?どうしてこんなに人が…全員が魔女の口づけを……!?)

おもむろに一人の女性がバケツに二種類の洗剤を入れ始める。

犯してはならないタブーを見たまどかは慌てて止めに入ろうとしたが、薄ら笑いを浮かべる仁美に道を阻まれた。

仁美「どうしたんですか、鹿目さん」

まどか「な、何やって…あれ止めないと!!」

仁美「あれは神聖な儀式です、素晴らしいところへ旅立つために肉体から離れる儀式ですわ」

まどか「!」

まどか(ダメだ…話も聞いてくれない…無理やりにでも止めなくちゃ!)

そう決心したまどかは友人の手を振り払って危険物と化したバケツを奪い取り、それを外に向かって放り投げた。

まどか「よ…よかった……!」

ひとまずの危機は去った、そう安堵した瞬間…工場に集まっていた人間が一斉にまどかへ襲いかかる。

その眼には明らかな怒り、憎しみ、そして殺意が見て取れた。

まどか「ひっ…!」

慌てて工場内の一室に逃げ込み内側から鍵をかけるが、外から扉を打ち破ろうと叩く音が響いてくる。

まどか(怖い…なんで…こんなことになって……!)

恐怖心が少女の心を埋め尽くした時、彼女を取り巻く空間に異変が起こった。

それは過去に何度か見たことがある光景で…ここに何かがいることも容易に想像がついた。

まどか「……私への罰なのかな」

魔法少女としての能力があるにも関わらず、命懸けの戦いを恐れている自分への罰。

自分に魔法少女の力があれば友人の仁美はもちろん、先の人々も全員救えるのに…

魔女の結界に引きずり込まれたまどかの心は自責の念で縛られていた。

どこからか声が聞こえた気がする。

『みんなを救いたいかい?今からでもいい、力を付けてみんなを守りたいかい?』

声の主の姿は見えない、だが頭の中には確かに声が響いている。

『君だったらこの状況でも必ず何とかできる、友人はもちろん多くの人を救うことができる』

『まどか、君が勇気を出せば…君を含めた多くの人が救われるんだ』

そうだ…この状況を招いたのが自分が臆病だったせいなら…魔法少女になれば……

今からでも私にできることがあるなら…勇気を出して変わることができるなら……

『まどか…今こそ僕と契約して魔法少女になる時が来たんじゃないかな?』

まどか「私…魔法少女に……」


―――そう言いかけた瞬間

―――目の前を青い閃光が走り、結界に潜む魔女を斬り付けた。

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、今日はこの辺ですいません、そして致命的な誤字もマジですいません」

銀八「やっちゃったなーアレ、シリアスだったのに完全にギャグになっちゃったものなーアレ」

銀八「悪ふざけでゼル伝ネタとかやってるからああいうことになんだな、うん」


誤字指摘感謝です、次からは気を付けるのでご勘弁を…

銀八「何この殺伐とした空気、休んだ奴の給食のデザートを取り合う直前の小学校?」

銀八「とりあえずアレだ…何かいろいろ気ィ使わせてすんません」


ちょっと再開します

まどか「え……?」

目を疑った、自分を助けに来てくれたのは先輩のマミではなく…同級生の暁美ほむらでもなく…

さやか「…………」

自分と同じく魔法少女になることを悩み続けていた親友だった。

まどか「さ、さやかちゃん!?」

さやか「…………」

青い髪の少女は何も言わずに微笑みで返事をする、自分なら大丈夫だと。


新しい魔法少女と魔女の戦いが決着するまでに長い時間はかからなかった。

---

さやか「あははは、いやー間一髪だったね」

まどか「さ、さやかちゃん…それって……」

さやか「ん…どう、似合ってる?……なんてね」

まどか「契約…しちゃったの……?」

さやか「うん…すっごく悩んで…それでも最後は自分で決めたの」

まどか「………」

さやか「なーにさ、そんな顔しないでよ!初めてにしちゃさっきだってうまく戦えてたでしょ?」

まどか「でも…でも私……!」

さやか「いいんだって、これは私が勝手に決めたことなんだからさ」

さやか「ていうかキュゥべえ!何で私が助けに向かってたのにまどかを契約させようとしたのさ!」

キュゥべえ「さやかが間に合うとは限らなかったし、あの状況では一刻を争ったからね」

キュゥべえ「念のためと思っての行動だったんだ、悪意があったわけじゃないよ」

さやか「それならいいけどさ……」

ほむら「…………」

さやか「今来たんだ…遅かったじゃない、転校生」

ほむら「美樹さやか…あなた……!」

銀時「…………」

さやか(……先生も来てたんだ)

銀時「……やっちまったのか、お前」

さやか「ごめん…でも、私なりにちゃんと考えた結果だから」

さやか「後悔なんてしない、するはずがないよ…絶対にね」

銀時「…………」

---
同時刻、病院

上条「……!」

上条(指が…動く……!!)

---
さやかが魔女を倒してから数時間後、某所

杏子「何よアレ、あんなのがいるなんて聞いてないんだけど」

キュゥべえ「ついさっき魔法少女になったばかりだからね、知らなくて当然さ」

杏子「はぁ…巴マミの調子が悪いって聞いたから来たってのに……うざいな、あいつ」

杏子「こんないい狩場をあんな新人に渡すのも癪だよね……」

キュゥべえ「どうするつもりだい?」

杏子「邪魔なやつがいるなら…そいつに消えてもらえばいいだけでしょ?」

キュゥべえ「そううまくいくかな?」

杏子「何だよ、私があんな弱そうなヤツに負けるとでも思ってんのか?」

キュゥべえ「確かに君は美樹さやかよりは経験も豊富だし、実力では上回ってるよ」

杏子「……美樹さやかよりは?」

キュゥべえ「美樹さやかの他にも、君の障害になりそうなイレギュラーが存在しているのさ」

杏子「イレギュラー……?」

キュゥべえ「暁美ほむらさ」

杏子「……知らねーな、それも魔法少女なんだよな?」

キュゥべえ「おそらくね」

杏子「おそらくって何だよ、ソイツもお前と契約したんだろ?」

キュゥべえ「そうとも言えるし…そうでないとも言えるね」

杏子「良くわからない答えかたしやがって……」

キュゥべえ「そしてもう一人…君にとっての障害がこの町にはいるよ」

杏子「?」

キュゥべえ「坂田銀時という人間だね」

杏子「誰だよそれ、男か?」

キュゥべえ「彼については僕もまるで分からない、唯一わかるのは…僕と契約していないということだけだね」

杏子「何で契約もしてないような奴が私の邪魔になるってんだ?」

キュゥべえ「そんな予感がするだけさ、詳しいことはその時が来なければわからないよ」

キュゥべえ「ただ…本当にこの町を君の思うようにしたいのなら…その二人の存在は邪魔になるだろうね」

杏子「はーん、つまり…邪魔者は全員消しちゃえばいいんだろ?」

キュゥべえ「君にとってはそれが最善の策かもしれないね」

---
某所

銀時「……ワリーな、アイツのこと止められなくてよ」

ほむら「あなたが謝ることじゃないわ、私が美樹さやかへ注意を向けておくのを怠ったからよ」

銀時「……聞かせな、テメーは一体何を目的に動いてやがる?」

ほむら「……あなたには、言っておくべきかもしれないわね」

ほむら「私のことも…目的も…そしてこの世界のことも……」

銀時「……?」

---

ほむら「……理解できたかしら?」

銀時「……つまり、お前は『まどかちゃん親衛隊隊長』ってことでファイナルアンサー?」

バキッ

ほむら「真面目に答えて」

銀時「いや、あの、うん…なんかとりあえず頑張ってることは分かったわ」ダラダラ

ほむら「…………」

ほむら「もうすぐこの町にはワルプルギスの夜がやってくる、具現化すれば何千人もの犠牲者が出るわ」

ほむら「私は何としてもそれを止めなきゃならない…そして、あの子のことも守らないと……!」

銀時「そのバケモンと正面からかち合って勝てんのか?」

ほむら「…………」

銀時「……ま、簡単に勝てりゃ苦労してねェだろうな」

ほむら「勝つわ…一人でも戦って次こそ……!」

銀時「一人じゃねーよ」

ほむら「え……?」

銀時「安心しな、テメーは一人でそのバケモンと戦うなんてことはねーよ」

銀時「女に背中預けて逃げるよか、一緒に戦ったほうがずっとマシってモンだしな」

ほむら「……」

ほむら「気持ちは受け取っておくわ…」

ちょっと風呂行ってきます、すぐ来るのでちょっと時間ください

---

翌日、さやか宅

さやか「よし…じゃあ、行きますか」

キュゥべえ「怖いかい?」

さやか「そりゃちょっとはね…でも、そんなことも言ってられないよ」

さやか「私が戦わなきゃ犠牲になっちゃうかもしれない人がいるんだからね」

キュゥべえ「すごいねさやか、まるでテレビに出てくる正義の味方みたいだよ」

さやか宅、玄関前

まどか「さやかちゃん!」

さやか「まどか…アンタどうしてここに?」

まどか「付いて行っていいかな…邪魔になっちゃうかもしれないけれど……」

まどか「せめてさやかちゃんのそばにいられたらって…私…何もできないから……」

さやか「……ありがと、まどかが近くにいてくれるだけで心強いよ」

---
某所

さやか「ここだ…行くよ、まどか」

二人が魔女の作り出した結界に入ろうとした瞬間、二人の足元に何かが突き刺さった。

剣、いや…槍にカテゴライズされる武器だろうか?

それもただの槍ではない、多くの節があるその形式はまるでヌンチャクのようにも見えた。

さやか「なっ…!」

杏子「馬鹿じゃねーの?あれ、使い魔だから、グリーフシードは持ってないよ」

二人の行く手を阻んだのは魔女ではなく、さやかと同じ魔法少女だった。

さやか「アンタ…何をやってるのよ……」

杏子「それはこっちのセリフだ馬鹿、テメェこそ何のつもりだ?」

さやか「魔女の使い魔がいるんだから倒さないとダメじゃない!」

杏子「だーかーらー、まだ倒す必要はないって言ってんだろ」

さやか「倒さなきゃダメに決まってるでしょ!使い魔でも人間に害を及ぼすんだから!」

杏子「そう、何人か喰って魔女になってから倒したほうが効率がいいだろ?」

さやか「……!」

さやかは悟った、コイツは話してわかる相手じゃない…魔女に対する考えの根本が自分とは違っているのだと

見たところ自分と同じ魔法少女であるらしい、それがさらに気に食わなかった。

他人を守る気のないこんな奴と一緒の立場にいることが許せなかった。

さやか「どいて…今から追えばあの使い魔を仕留められる」

杏子「本気で頭悪いのかお前、あれを倒しても何のメリットもないって言ってんだろ」

さやか「どかないなら…無理やりにでも押し通るけど?」

杏子「通れるとでも思ってんのかよ、ていうか…先輩に対する口のきき方がなってないんじゃない?」

さやか「黙れ!!」

激高したさやかは剣を抜くと同時に杏子に斬りかかった。

が、以前に魔女の使い魔を倒した一閃も杏子には届かない。

さやかの一撃は片手で槍を持つ杏子にあっさりと受け止められていた。

杏子「……はあ、遊び半分で首突っ込まれるのってホントにむかつくんだ」

さやか「!」

経験したことのない衝撃がさやかに襲いかかり、抵抗を許さずに体を吹き飛ばす。

敵の魔法少女の力量がうかがえる一撃だった。

杏子「ひよっこのくせに粋がるからそうなるんだよ」

さやか「ハァ…ハァ……」

息切れしつつも立ち上がるさやかを見た杏子は不快感をあらわにして

杏子「……おかしいなぁ、全治三か月くらいの怪我のはずなのに何で立てるんだろうなぁ?」

まどか「さ、さやかちゃん!」

キュゥべえ「彼女は癒しの祈りで僕と契約しているからね、怪我には耐性があるんだ」

さやか「私…アンタにだけは絶対に負けない!!」

杏子「うぜぇ…超うぜぇ!!」

この瞬間、二人の小競り合いはまぎれもない『殺し合い』に変貌した。

杏子「ほらほらぁ!これくらいの攻撃でフラフラしてんじゃねーよ!」

さやか「くっ!」

形成は明らかだった、誰が見てもさやかが追い込まれている。

力と速さに任せて剣を振るだけのさやかと異なり、杏子は自分の武器を自在に操っている。

実戦経験、戦闘能力、そのどちらをとってもさやかは杏子にとても及ばないだろう。

むしろ、ここまで粘っている彼女を褒め称えるべきなのかもしれない。

だが、それも長くは続かなかった。

さやか「しまっ……!」

変形する杏子の武器に足を取られ体勢を崩される。

杏子はさやかが足に注意を向けた一瞬を狙い、さやかの武器を弾き飛ばした。

さやか「くっ……」

杏子「終わりだよ」

丸腰となったさやかに対しても杏子は容赦することなく攻撃を仕掛けようとしている。

いくら治癒力が高いとはいえ、あの一撃を食らえばただではすまないのは明らかだった。

まどか「キュゥべえ!あの二人を止めてよ!!こんなのってないよ!!」

キュゥべえ「無理だよ、あの二人は自分の信念がまるで違うんだ」

キュゥべえ「生き物っていうのは自分の領域を侵すものを許したりはしないよ」

まどか「そんな……!」

キュゥべえ「でも…あの二人を止める方法がないわけじゃない」

まどか「!」

キュゥべえ「魔法少女の戦いに介入できるのは魔法少女だけだ…つまり」

キュゥべえ「君が魔法少女になればあの二人を止めることだって不可能じゃない」

まどか「私が…魔法少女になれば……?」


ほむら「それには及ばないわ」

佐倉杏子は困惑した、一体…何が起こったというのだろうか?

自分は確かに美樹さやかを串刺しにすべく槍を構え、そして攻撃を仕掛けたはずだ。

躱すことのできない一撃だったはずだ、なのに…何故自分の攻撃は空を切った?

杏子「……!?」

混乱していたのは美樹さやかも同じだった、武器をはじかれ体勢を崩された絶望的状態。

自分に出来たのはせめて急所は守ろうと身をかがめることだけ。

なのに…何故自分に傷一つ付いていないのだろうか?

さやか「何が……!」

ただ、二人が共通して分かったこと…それは

ほむら「……」

この暁美ほむらが何かを仕掛けたという事実だけだった。

杏子「テメー…いったい何を……!」

この女の得体は知れないが、何かの力を持っていることは間違いないだろう。

杏子はそう思いつつ槍を構え、最速で攻撃の態勢を作り上げる。

だが…その矛先にほむらの姿はない。

それどころか、気が付けば自分の背後をとられていた。

杏子「なっ!?」

消えた、そうとしか表現できない現象が起こっている。

催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものでは断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を杏子は味わっっていた。

戦いを中断されて怒りをあらわにしているのは杏子だけではなかった。

さやか「邪魔しないで!」

ほむらへの敵意をむき出しにそう叫ぶ、何だったらこの転校生も一緒に打ち倒してやろうか…

……そんな考えが頭をよぎった時、一人の人物がさやかの手を優しく握りしめた。

マミ「美樹さん、もう止めなさい」

さやか「え……!」

それは最初に自分が魔法少女としての生き方に憧れを抱いた先輩であった。

今日はいったんここまでで…とりあえず、この土日を使って行けるところまで進めるつもりです。
あと、せっかく建てていただいた雑談スペースなんですが…
むやみに立てて他の作者さんの迷惑にもなっても申し訳ないので…ちょっとこっちで何とかさせていただきます。
お気遣いには心から感謝してます、ありがとうございました

遅れました、再開させてください

さやか「マ、マミさん…?」

マミ「落ち着いて、私たちのすべきことはこんなことじゃないでしょう?」

さやか「でも…アイツは!」

杏子「はっ、今さら何しに来たんだよマミ…そのひよっこのお守りか?」

マミ「あなたたちを止めに来た、ただそれだけよ」

杏子「聞いた話じゃ…アンタ、最近は全然魔女と戦っていないらしいじゃないか」

杏子「魔女に殺されかけて戦うことが怖くなったんじゃないのかよ?」

マミ「………」

さやか「アンタいい加減に……」

マミ「間違ってはいないわ、その子の言う通りよ」

さやか「!」

マミ「後輩にカッコ悪いところなんか見せたくないけれど…これは事実なの」

マミ「最後にあなたたちと戦った時から…私、魔女と戦うたびに足が震えちゃってるの」

マミ「今…私がこうして生きていられるのはたまたま運が良かったから、味方がいたからでしょう?」

マミ「一人であの魔女と戦っていたら…間違いなくあそこで殺されていたでしょうね」

マミ「それからは…一人で魔女を倒そうとするたびに……足が震えちゃってるの……!」

さやか「そんな……!」

杏子「正直さ、魔女に怯えてる今のアンタに横から口を出されたくないんだよね」

マミ「……その言い方には少し語弊があるわね」

杏子「何……?」

マミ「私、魔女が怖くなかったことなんて一度もない……でもね」

杏子「?」

マミ「私が戦うことで誰かが救われるなら…そんなに素晴らしいことってないでしょう?」

マミ「だったら私は戦うわ、足が震えようと…涙を流そうと…最後までね」

杏子「…………」

ほむら「それで…あなたはどうするの、佐倉杏子」

杏子「テメー…何で私の名前を……どこかで会ったか?」

ほむら「さあ…どうかしらね」

杏子「…………」

杏子「……やめた、手札がまるで見えないんじゃね…マミの奴もいるしな」

杏子「でも分かったよ…アンタは確かにイレギュラーな存在らしいね」

杏子「今日は降りさせてもらうよ」

ほむら「…………」

さやか「あの…マミさん……」

マミ「失望したかしら…美樹さん」

さやか「そんな…そんなことないです……!」

マミ「……あなたが魔法少女になったことについては私からは何も言わない」

マミ「あなたが自分で考えて…自分で決めたことなんだからね」

マミ「……でも、一つだけ覚えておいて」

さやか「?」

マミ「あなたの選んだ道は決して平らじゃない…いばらの道だということをね」

マミ「その道を歩む途中で…決して折れたりしちゃダメよ」

さやか「……はい」

さやか「あの…マミさん……」

マミ「失望したかしら…美樹さん」

さやか「そんな…そんなことないです……!」

マミ「……あなたが魔法少女になったことについては私からは何も言わない」

マミ「あなたが自分で考えて…自分で決めたことなんだからね」

マミ「……でも、一つだけ覚えておいて」

さやか「?」

マミ「あなたの選んだ道は決して平らじゃない…いばらの道だということをね」

マミ「その道を歩む途中で…決して折れたりしちゃダメよ」

さやか「……はい」

さやか「まあ確かに、マミさんの胸は平坦じゃないですよね」

ほむら「……山あり谷間ありね」

---
某所

杏子「何なんだよアイツ…まるで能力がわからないじゃねぇかよ……!」

暁美ほむら、仮にアイツと戦うことになったら自分は勝てるのだろうか?

しかも…どういうわけか、既にこっちの情報もある程度は調べてあるらしい。

杏子「くそっ……」

イラつく…何故こんなにも気分が悪いのだろうか、ひよっことの戦いに水を差されたからか?

……違う

マミ『私が戦うことで誰かが救われるなら…そんなに素晴らしいことってないでしょう?』

マミが口にしたその言葉は常に自分のためだけに戦ってきた杏子の心を大きく揺るがしていた。

杏子(甘いんだよ…どいつもこいつも……!!)

憂さ晴らしにすらならないとは分かっていつつも、あまりのイラつきに地面の石を思い切り蹴り飛ばす。

その石は……

杏子「あ」

銀時「ん?」

景気のいい音を立てて、前を歩いていた白髪の天然パーマの頭に直撃した。

銀時「いってーなオイ、何しやがるコノヤロー!」

杏子「ち、違う!絶対にわざとじゃないからな!」

銀時「言い訳する前にごめんなさいの一言はねーのかテメー!わざととかんなことどうでもいいんだよ!」

銀時「まあ仮にわざと当てたってんなら許さないけどね、後ろから当てていいのは女の子の胸だけだからね」

銀時「当ててんのよ、とかって言われたらもうその瞬間に気分はもうフライアウェイだからね」

杏子「……??」

何を言っているのかはよくわからなかったが、とりあえず断片的に聞き取れたことを実践する。

面倒事を起こすのは嫌だったし、石をぶつけた非はこちらにあるのだ。

杏子「さ、さっきの石ならわざと当てたんだっての!」

銀時「よしお前こっち来い、警察だ」

杏子「何で!?当ててるって言えば上機嫌になるんじゃないのかよ!?」

銀時「誰がわざと石ぶつけられて上機嫌になるっつったよ」

杏子「アンタ…名前は?」

銀時「坂田…銀時、金じゃなくて銀だからな」

杏子「坂田銀時……?」

杏子(ま、まさか…コイツがキュゥべえの言っていたもう一人のイレギュラー!?)

銀時「で、テメーはどこの悪ガキだ?」

杏子「…………」

この男は暁美ほむらと異なり、こちらの情報は持っていないのだろうか?

仮にこの男が自分の障害となるのならば、むやみにこちらの情報を教えるのは得策ではない。

だが……

杏子「……佐倉杏子」

この男が自分の敵だとはどうしても思えなかった。

杏子「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

銀時「あん?」

杏子「美樹さやかって…知ってる?」

銀時「……知らなくはねーけどよ、それが何だってんだ?」

杏子(知ってるってことは…魔法少女に関係のある奴だってことは間違いないな)

杏子「私もソイツと同じ…魔法少女なんだよな」

銀時「!」

杏子「ほら、コイツが私のソウルジェム」

少女の見せた赤い宝石、それは以前に巴マミが見せたものに酷似していた。

銀時はあからさまに嫌そうな顔をしてため息をつき

銀時「……まーためんどくせーことになりやがったな」

杏子「私は回りくどいことが嫌いなんだ、だから一番最初に直球で聞くけどさ」

杏子「アンタ…魔法少女についてどこまで知ってるんだい?」

銀時「詳しくは知らねーよ、魔女と戦ってるとかそんぐれーだな」

杏子「キュゥべえのことは?」

銀時「ああ、ウサギみてェな無限残機だろ?」

杏子(無限残機ってのはよくわからねぇけど…とりあえずキュゥべえは見えてるんだな)

杏子「……そうだ、ちょっと聞きたいことがあってさ」

銀時「?」

この男が仮に暁美ほむらたちとつながっているのならば聞きたいことは山ほどあった。

アイツの能力について何か聞き出せればそれだけで十分な収穫になる。

それが最も聞くべきことであるはずなのはわかっている、だが彼女の口から出た問いは

杏子「美樹さやかってやつが何を願って魔法少女になったか…知ってるかい?」

---
数日後、病院

看護婦「あら、上条君のお見舞い?」

さやか「は、はい」

看護婦「ごめんなさい、実は上条君…少し早めに退院してるの」

さやか「え……?」

看護婦「症状の回復が異常に早かったから特例でね…連絡できなくてごめんなさい」

さやか「いえ…ありがとうございました」

さやか(退院…良かった、ちゃんと恭介の腕…治ったんだ…!)

---
恭介宅前

さやか「………」

幼馴染の家の玄関先でさやかは立ち尽くしていた、家の中からはバイオリンと思しき楽器の音色が聞こえてくる。

演奏しているのは誰か、それは考えるまでもないだろう。

本心では恭介と話がしたかった、だが…今、彼は諦めていたバイオリンとの対話をしているのだ。

それを中断させてまで家に上がりこむのは幼馴染でもさすがに気が引ける。

いや、気心の知れた幼馴染だからこそ遠慮したのかもしれない。

さやか「……フフッ」

ほんの少し微笑みを浮かべて上条の家を後にしようとするさやかの前に

杏子「会いもしないで帰るのかい?今日一日追い掛け回してたくせに」

さやか「!」

彼女にとっては最も会いたくない相手が現れてしまった。

さやか「お前は…」

杏子「知ってるよ、この家の坊やなんだろ?アンタが契約した理由って」

杏子は心の底から呆れたような表情を浮かべていた、溜め息まじりに言葉を続ける。

杏子「まったく…たった一度の奇跡のチャンスををくっだらねぇことに使い潰しやがって」

あからさまな挑発、だがその挑発に耐えられるほどさやかは大人ではなかった。

何より挑発だろうと今の杏子の言葉はさやかにとっては許しがたいものだった。

さやか「お前なんかに何が!」

杏子「…………」

言い返すさやかの姿を見て一瞬、数日前の記憶が蘇る。あの天然パーマからさやかの願いを聞いた時の記憶を。

---
数日前

杏子「美樹さやかは…そんなことのために願いを使っちまったってのか……!」

他人のために魔法を使う、それがどれだけ誤った行為であるか杏子はすでに知っていた。

自分がそれで取り返しのつかない失敗を犯している経験があるだけに、さやかがこの上なく愚かに思えてしまう。

銀時「俺ァ一応止めたんだけどな…アイツがてめーで決めたことだ、これ以上とやかく言うことは出来ねーよ」

杏子「どんだけアイツは頭が悪くて…馬鹿なんだ!」

銀時「…………」

銀時「アイツの選択を正しいと思え…とは言わねェ、ただ…分かってくれや」

杏子「……?」

銀時「自分の身を犠牲にしてまで他人を助けるのが素晴らしいとは言わねーが…」

銀時「今のアイツにとっちゃ、そんだけ譲れねェモンがあったってことだ」

杏子「…………」

銀時「ま、その辺はテメーに任せるとするぜ」

杏子「な、何で私がアイツのことを!」

銀時「テメーならアイツの力になってやれんだろ、ダチ公」

杏子「ダチ…公?」

---

友達、自分と同じ始まりをしたアイツのなら…もしかしたら……

確かにそう思っていた…だが、やはり今のコイツを見ているとどうしてもイラつくのだ、まるで過去の自分を見ているようで……

知らず知らずのうちに感情的になり、口調も厳しいものになっていく。

杏子「分かってねぇのはそっちだ馬鹿、魔法ってのは徹頭徹尾、自分だけの願いをかなえるためのモンなんだよ」

杏子「他人のために使ったからってろくなことにはならないのさ」

つい挑発的な言葉になってしまう、本当はこんな口調で語りかけるつもりではなかったのに。

だがやはり先日に激しく刀を交えていることもあり、思うように言葉を紡ぐことができなかった。

何より、今までずっと一人で生きてきた自分が急に素直になるなんて……できっこなかった。

だが、さやかはそんな杏子の心まで読み取ることは出来ない。杏子の発した言葉をそのまま挑発として受け取ってしまう。

さやか「アンタだけは……絶対に……!」

杏子「………」

その反応に杏子もさらに気分が悪くなる。

何だよその目は…自分がどれだけ間違ってずれたことをしてるのか本当に気づいてないのかよ。だったら…

杏子「場所変えようか…ここじゃ人目につきそうだ」

言って分からないなら…ぶん殴ってでもわからせてやるしかない。

---
鉄橋の上

杏子「ここなら遠慮なくやれるよね、いっちょ派手にいこうじゃない?」

杏子のソウルジェムが赤く輝くと、以前に見た多節槍を使う魔法少女の姿になった。

さやか「!」

対抗してさやかも魔法少女に変身しようとソウルジェムを取り出す、その時

まどか「さやかちゃん!」

自分の名を呼ぶ友人の声が聞こえてきた。

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、全然進まなくてアレですが今日はここまでです」

銀八「『もっとサクサク進めろよコノヤロー』って声が聞こえてきそうですが、勘弁してください」

銀八「もう物語も半ばまでは進んだんで…これからはテンポがよくなる気がしないでもないと思う、多分」

銀八「あ、せっかく生き残ったマミの奴がほとんど空気とか決して言わないようにー」

遅れましたが少しだけ進みます

さやか「まどか…どうして……?」

まどか「キュゥべえにさやかちゃんが危ないって言われて……」

さやか「……邪魔しないで、これはまどかには関係ない!」

あれはさやかの友人だろうか、考えてみれば前にも一緒にいた気がする。

魔法少女ではないようだが…それでも、さやかとはある程度の信頼関係はあるのだろう。

杏子「はっ……ウザいやつにはウザい仲間がいるモンだねぇ」

もう剣を抜いてしまったからには退くわけにはいかない…そう自分に言い聞かせ、攻撃を仕掛けようとしたとき

ほむら「じゃああなたの仲間はどうなのかしら?」

杏子「!」

銀時「なんでテメーらこんなところで乳繰り合ってんだ」

背後から聞き覚えのある声が二つ聞こえてきた。

銀時「ほむらのヤツに呼ばれたから来てみりゃ…何やってんだお前ら」

銀時「つーか女二人が鉄橋の上で決闘ってどんな構図?何これバトル漫画だったっけ?」

杏子「何しにきやがったお前ら、コイツは私たちの問題だ」

さやか「そうよ…横から余計なことしないで!」

まどか「………!」

『正しすぎるその子の分まで、誰かが間違えてあげればいい』

以前聞いた母の言葉がまどかの頭に響いてくる、もう親友を止めるには自分が間違えるしかない。

嫌われようと罵声を浴びせられようと、親友には怪我をしてほしくない。まどかは意を決すると

まどか「さやかちゃん…ごめん!」

さやかの手からソウルジェムを掴みとると鉄橋から道路へ投げ捨てた。

ほむら「!」

それを見たほむらが一瞬驚愕の表情を浮かべた、直後に忽然として姿を消す。

何らかの能力で姿を消したのだろうか、だが今のさやかにとってはそんなことはどうでもいいことだった。

さやか「まどか…アンタなんてことを!」

戦う術を奪い取ったまどかに食って掛かる、さらに何かを言いかけた瞬間のこと

さやか「…………」

ひもの切れた操り人形の如くさやかの体から力が抜け、まどかの胸へと倒れこんだ。

まどか「さ、さやかちゃん…?」

何が起こったのかわからず名前を呼びかけるも反応は全くない、混乱するまどかにキュゥべえは

キュゥべえ「今のはまずかったよ、まどか…友達を放り投げるなんてどうかしてるよ!」

まどか「そ…それって一体……」

事態を見ていた杏子はさやかの首を掴みあげる、それと同時にそこから伝わる感覚に愕然とした。

杏子「どういうことだオイ…コイツ死んでるじゃねぇか!」

銀時「!」

まどか「え……!?」

言葉では言い表せない絶望が辺りの空気を覆い尽くした。

まどか「さやかちゃん…どうしたの…ねえってば……」

杏子「何がどうなってやがんだ……オイ!」

説明しろと言わんばかりにキュゥべえを怒りの目で睨みつけた。

だが、当の本人は何に腹を立てているのかわからないといった様子で事態の説明を始める。

キュゥべえ「君たち魔法少女が肉体をコントロールできるのはせいぜい百メートルが限度だからね」

杏子「百メートル…どういう意味だ!」

キュゥべえ「こういう事態はめったに起こることじゃないんだけど……」

まどか「何言ってるのキュゥべえ…さやかちゃんを死なせないで!」

キュゥべえは倒れたさやかにしがみ付いて懇願するまどかを一瞥すると、呆れてため息を交えながら言い放った。

キュゥべえ「まどか…そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだってば…さやかは君が投げて捨てちゃったじゃないか」

銀時「どういうことだテメー…」

キュゥべえ「ただの弱い肉体で魔女と戦えなんてとてもお願いできないよ」

キュゥべえ「今の君たちにとって肉体は外付けのハードディスクでしかない」

キュゥべえ「だから君たちの本体としての魂には魔力を効率的に運用できるコンパクトで安全な姿が与えられているんだ」

そういうと一呼吸を置き、すべての確信となる部分を口にする。いつもと変わらぬ、無表情のままで。

キュゥべえ「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目は……」

キュゥべえ「君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなんだ」

杏子「ふざけんじゃねぇよ!それじゃ私たち、ゾンビにされたようなモンじゃないか!」

怒りを爆発させてキュゥべえを掴みあげる、キュゥべえはそれでも全く動じることなく言葉を続けていた。

キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだよ?」

キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようとね」

機械のような声だった。いや、機械というのは少々誤りであるかもしれない。

だが…機械を思わせるほど、感情のかけらも感じ取れない無機質な声であったのは間違いないだろう。

まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ!」

指一本動かないさやかにすがりついてむせび泣く、絶望の涙がさやかの制服を濡らしていった。

キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

その時、絶望で覆い尽くされた空気を打ち破る声を出すものが一人。

銀時(裏声)「四番、バッター…坂田銀時」

キュゥべえ「え?」

銀時「言いてェことは腐るほどあるけどな…とりあえず、今は……」

銀時は大きく息を吸い込んで振りかぶった木刀を力いっぱい握りしめ

銀時「そんなクソ大事なこと説明してなかった責任とってソウル何とかはテメーで取ってこいやァァァァァァ!」

キュゥべえ「きゅっぷい!?」

そのままフルスイングした。


―――キュゥべえ(三号)、輝く夜空の星になる。

ほむら「ハァ……ハァ……」

キュゥべえが殴り飛ばされたのと同時、消失していた暁美ほむらが再び姿を現した。

肩で息をしてはいるものの、その手にはさやかのソウルジェムが握られているのが見て取れる。

銀時「お前…そいつは……!」

ほむら「…………」

ほむらは何も言わずにソウルジェムをさやかの手に握らせた。

さやか「……っ!」

さやか「………あれ?」

意識を取り戻したさやかは周りの状況が理解できなかった。

---
さやか宅

さやか「……だましてたのね」

キュゥべえ「だましてなんかいないよ、僕は事前に与えられるだけの情報は与えたじゃないか」

さやか「じゃあなんでソウルジェムの件を説明しなかったのよ!」

キュゥべえ「聞かれなかったからさ、自分の状況判断能力を他者に押し付けるのはよくないよ」

さやか「……最低ね、アンタ」

キュゥべえ「それは僕を殴り飛ばした彼に対する言葉じゃないのかい?」

キュゥべえ「こっちはいきなり山奥まで殴り飛ばされてここまで帰ってくるのに苦労したって言うのに……」

キュゥべえ「途中で山狩りしてた猟師の流れ弾に当たりかけるし、車には引かれかけるし…わけがわからないよ」

さやか「こんなの…絶対ひどいよ……」

キュゥべえ「もはやだれも僕の話は聞いてくれないんだね」

短いですがここで一旦切ります、この先の展開で少し悩みどころがあるので、明日まで加筆する時間ください。

あれ、なんか昨日来るの忘れてね?
とりあえず再開します

翌日、さやか宅

さやか「………」

登校時間はとっくに過ぎている、それは分かっていてもさやかは布団から抜け出すことができなかった。

昨日の夜の出来事が未だに頭の中で渦巻いている。

ソウルジェム、今の自分の存在はこんなちっぽけな石ころでしかないのだ……

腕も、足も、体を流れる血も…もはやすべてが作り物と同然となってしまった現実。

さやか「私…こんな体になっちゃって…どんな顔して恭介に会えばいいのかな?」

何もする気が起きなかった、永遠にこの布団の中にいたい…そう思っていた時

『いつまでもしょぼくれてんじゃねぇぞ、ボンクラ』

耳から聞こえる声ではない、頭の中に直接語りかけるような声が響き渡った。

布団から這い出し窓の外を見る、そこにはりんごをかじりながら玄関先でこちらを見つめる杏子の姿があった。

杏子「ちょいと面かしな」

---
某所

左右に木々の生い茂った道を二人の少女が歩いていく。

万物を明るく照らす太陽の光も今日はどことなく物悲しげに感じられた。

杏子「アンタさぁ、やっぱり後悔してるの?こんな体にされちゃったこと」

さやか「…………」

杏子「私はさぁ…まあいっかなって思ってる、この力のおかげで何だかんだで好き勝手出来たわけだし」

さやか「アンタは自業自得なだけでしょ」

杏子「そうだよ自業自得なのさ、誰のせいでもない自分のせい」

杏子「そう割り切れれば誰を恨むこともないし、後悔なんてあるわけがない」

杏子「そう思えば大抵のことは背負えるもんさ」

さやか「…………」

さやかは杏子の真意を推し量っていた、いったい何が言いたいのだろうか。

一つ分かるのは…佐倉杏子は自分が思っていた以上に過酷な日々を送ってきたという事実だった。

教会跡

さやか「……こんなところまで連れてきていったい何のつもり?」

杏子「ちょっとばかり長い話になる……」

そういうと杏子は手に持っていた紙袋に入っているりんごをさやかに投げ渡した。

杏子「食うかい?」

---

杏子「まあ…そんなわけさ、だからどうだって話でもないけれどね」

さやか「………」

驚いた、まさか自分がこの上なく憎たらしいと思っていたこの少女の背負った過去に。

父のこと、家族のこと、魔法少女になった理由、そして魔法を自分のためだけに使うという誓い。

どうやら自分は佐倉杏子という人間の評価を誤っていたらしい。彼女は強く、孤高であり

杏子「アンタも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの」

そして、他人を思いやることのできる優しい少女だったのだ。

さやか「アンタのこと、色々と誤解してた…それは謝るよ、ごめん……でも」

さやか「私は自分の願いに後悔なんてしないよ、絶対に…これからもね」

杏子「……それ、本気で言ってるのかよ」

さやか「うん、私が気に入らないなら…そのときはまた殺しに来ればいい…私は逃げないし恨んだりもしないよ」

杏子の気遣いは素直にうれしかった、だがさやかも生半可な思いで契約をしたわけではない。

ここで自分のために魔法を使うことを認めては、他社のために魔法を使うというあの時の誓いを裏切ることになってしまう。

それだけは出来なかった。


銀時「…………」


外から二人の様子を窺っていた侍、その胸中は一体如何なるものだったのか。

―――だが、運命の歯車は少女たちに休息のひまを与えることはなかった。

---
翌日、学校、放課後

さやか「今…なんて……?」

仁美「ですから私、上条恭介くんをずっとお慕いしていました」

さやか「!」

仁美「でも…幼馴染の美樹さんの気持ちを無視するわけにはいきません」

仁美「明日の時間を美樹さんにお譲りします、彼を男性としてみているのなら…どうかその時に告白なさってください」

仁美「そしてもし、明日までに何かのアクションを起こさなければ…私が彼に告白します」

さやか「…………」

---
翌日

まどか「………」

まどか(さやかちゃん…また学校を休んでる……まさか…また無茶をして怪我をしたんじゃ…!)

仁美「…………」

---
放課後、さやか宅、玄関前

まどか「さやかちゃん!」

さやか「………まどか」

玄関先で待っていたまどかに声を掛けられたさやかが力なく返答をする、誰が見ても明らかにやつれていた。

銀時「オイオイ、休むんだったら休むって連絡いれろお前」

まどか「!」

さやか「先生も…来てたんだ、心配かけてごめんね…明日は学校に行くから……」

銀時「……で、テメーは今からどこに行こうとしてんだ?」

さやか「魔女を…倒しに……」

まどか「ダメだよさやかちゃん…こんなに疲れてるのに戦うなんて……」

さやか「……戦うしかないよ、だって」

さやか「魔女と戦わない私に…存在価値なんてないんだから」

銀時「何があったお前…冗談にもならねェこと言うんじゃねーよ」

さやか「だって……だって……私、最低なんだもん……!」

気丈に振る舞い続けていたさやかの仮面が外れる、同時に大粒の涙がこぼれおちた。

さやか「どうしよう…このままだと仁美に恭介を取られちゃうよぉ……」

さやか「しかも私…前に仁美を助けたことを後悔するなんて……!」

まどか「さ、さやかちゃん…さやかちゃんならきっと大丈……」

さやか「大丈夫じゃないよ!……こんな体で恭介に触ることなんてできない」

さやか「こんな口で恭介に好きだなんて言えない!」

銀時「…………」

銀時「他人の惚れた晴れたに口出しすんのもお門違いだけどよ、これだけははっきり言ってやる」

さやか「………?」

銀時「今のテメーは誰かに惚れる権利も、惚れた相手に思いを伝える権利も持ってらァ」

銀時「そんなにてめーを卑下するもんじゃねーよ」

さやか「……嘘でもそういってくれると嬉しいよ、でも…今は魔女を倒しに行かなきゃね」

---
某所

杏子「…………」

魔女の作り出した結界が見える、そのすぐそばで佐倉杏子は中の様子を窺っていた。

ほむら「……らしくないわね、あなたがただ見ているだけなんて」

杏子「あの魔女はアイツの獲物だ、手出しなんか必要ないだろ」

ほむら「そんな理由でみすみすあなたがグリーフシードを得られる機会を譲るのかしら?」

杏子「…………」

---
結界内

結界内ではさやかが剣を振るい魔女と交戦している最中だった、お互いに致命打を与えられない緊迫した戦闘が続く。

銀時は魔女の生み出す使い魔と木刀で打ち倒すも魔女の本体には手を出さない。

銀時「チッ…次から次へと湧いてきやがって……!」

本来ならば使い魔など気にせずに魔女本体を叩くのが定石であるし、銀時もそうするつもりだった。

だが、出てくる使い魔を放置してしまっては一緒にいるまどかの身が危険にさらされる。

そしてさやか自身も、銀時に手を貸してほしくなかったのだ。

杏子「いつまでちんたらやってんだ馬鹿」

一閃、ただそれだけでさやかを苦しめていた魔女の体の一部が切断される。

杏子「ったく、見てらんねぇな…見てな、手本ってのを見せてやるからさ」

それは不器用な彼女なりの握手の申し出だった。自分も手伝う、仲間として戦おうという彼女なりの優しさ。

さやか「……邪魔しないで」

だが…今のさやかは差し出された言葉を乱暴に払いのけた。

魔女に向かって単騎で突撃を仕掛ける、あまりに直線的で単純な攻撃。

当然のごとく魔女の反撃をその身に受けた。

銀時「あの馬鹿!」

銀時が助けに入ろうとするも、さやかは止まることなく魔女を斬り付ける。

本来ならば動けるはずのないダメージを負っているはずだった、なのになぜ……

さやか「なるほどね…慣れれば簡単なんじゃない、痛みを消すことなんてさぁ」

さやかは笑っていた、体から、頭から、いたるところから血を流しても笑い続けた。

……さやかの浮かべている笑みは少女のそれと言うにはあまりにも邪悪だった。

さやか「あはははははははははははは!!」

狂ったように笑いながら動かなくなった魔女を斬り続けた。何度も、何度も。

銀時「………」

銀時はそんなさやかの腕を掴みあげて

銀時「もう止めろ…このままじゃテメー、本当に戻れなくなっちまうぞ」

さやか「………」

さやか「戻る場所なんて私にはもうないよ……」

魔女が倒されたことで結界が崩壊する、あたりの景色が日常の物へと戻っていった。

魔女の落としたグリーフシードを蛍光灯が明るく照らしている、さやかはそれを拾い上げると杏子に投げ渡した。

さやか「あげるよ、ソイツが目当てなんでしょ?」

杏子「オイ……」

さやか「さあ…帰ろう、まどか、先生……」

言葉を言い終わらないうちにさやかはその場に倒れこんだ。

銀時「…………」

そして、白髪の侍はこの場にいる誰よりも事態を重く受け止めていた。

予感があった、このままでは取り返しのつかない事態が起こりかねないと。

---
ほむら宅

ほむら「そう…そんなことがね」

銀時「お前…わかってたんじゃねーか?めんどくせーことになるってよ」

銀時「その前に…あの無限残機が言ってたソウル何たらの件も俺ァ聞いてねーぞ」

ほむら「……あの時は言うべきではなかったの、言っても仕方のないことだったわ」

銀時「……どうやら嘘でもなんでもねーらしいな、魂を抜き取るってのは」

ほむら「ええ、事実よ…だから私は美樹さやかが契約した時点でもうある程度の諦めはしていたわ」

ほむら「契約した人間を救うことなんて…絶対に出来るはずがないんだから」

銀時「…………」

銀時「二人なら持ち上げられる石でも、一人が手抜いたんじゃ持ち上げられるわけがねェ…」

ほむら「?」

銀時「テメーが何度この世界をやり直してきたかは知らねーが…それで全部を諦めんのは早いんじゃねーか?」

ほむら「!」

銀時「契約した人間だろうがなんだろうが…目の前にあるモンなら掬い取ってやる、まだ間に合うんならな」

ほむら「………」

銀時「俺ァ見捨てるつもりはねーよ、アイツも…テメーもな」

ほむら「…………」

ほむら「……あなたは面白いわね、本当に」

翌日、放課後

志村仁美が上条恭介に思いを告げると宣言したその日、美樹さやかの姿は学校にはなかった。

仁美「退院できてよかったですわね、上条さん」

上条「ありがとう、でもまだ色々と検査はしなくちゃいけないらしいんだ」

仁美「……上条さん、今日ここでお伝えしたいことがあります」

上条「?」


さやか「………」

……楽しそうに笑いあう男女を木陰から見つめる少女が一人。

---

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん…今日も私……」

さやか「来ないで」

まどか「え……!」

初めての拒絶の言葉にまどかは驚きの表情を浮かべる、それでもさやかは冷たく

さやか「戦いもしないアンタが付いてきたって…何にもならないでしょ」

まどか「でも…でも私……!」

さやか「何…私のことを思ってくれてるつもり?私と同じ立場でもないくせに」

まどか「そんな…さやかちゃん……」

冷たい感情が心に染みわたっていく、人の心とはこれほどまで冷徹になれるのだろうか?

さやか「本当に私のことを思ってくれてるんなら…私と同じ体になってみせてよ」

……いや、自分はもはや人間ではなかった。

さやか「出来るわけないわよね、同情なんかでそこまでのこと」

まどか「ど、同情なんかじゃ……!」

さやか「だったらアンタが戦ってよ」

恐ろしいほどの冷たい視線で睨みつけられる、思いを伝えようとしても口が動いてくれない。

さやか「……そういうわけだから」

まどか「……!!」

結局…まどかはさやかを引き留めることは出来なかった。

---

さやか「馬鹿…馬鹿…なんてこと言ってんのよ、私は!」



まどか「さやかちゃんが…帰ってない!?」

さやかの両親によれば、先日休んでいたさやかが外出してから、家に帰っていないらしい。

つまり、銀時や杏子と魔女を倒した日から一度も家に帰っていないことになる。

まどか「……!」

さっき、自分は追いかけなければいけなかったのだ…助けを求める親友を一人きりにしてしまった。

何かを考える前にまどかは走り出していた、親友を探し出すために。

---
某所

さやか「…………」

杏子「やっと見つけた……手間かけさせんなよ」

失踪したさやかを最も早く見つけたのは杏子だった、あちこち走り回ってきたのか若干息を切らしている。

さやか「悪いね…手間かけさせちゃって」

杏子「……なんだよ、そんなこと言うなんてらしくないじゃん」

さやか「もう…どうでもよくなっちゃったからね」

自らのポケットに手を伸ばすとソウルジェムを取り出した、さやかのそれは

杏子「……っ!!」

石の持っていた輝きはまるで失せ、黒い濁りが溜め込まれていた。

さやか「何やってるんだろうね、私は……」

さやか「憧れてた先輩の信念を真似することもできなくて…親友を傷つけて…」

さやか「先生の忠告も聞かないで…差し出されていた手を振り払って…」

杏子「お前…まさか……!」

さやか「私って…ホント馬鹿」

悲しみと後悔の涙がソウルジェムに零れ落ちると同時

―――さやかのソウルジェムが黒く染まりきり、粉々に砕け散った。

杏子「さやかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

---
某所

キュゥべえ「この国では成長途中の女性のことを少女って言うんだろう?」

キュゥべえ「だったらいずれ魔女になる君たちのことは、魔法少女って呼ぶべきだよね」

刹那、魔女の結界が杏子を包み込んだ。

杏子「な、なんだよこれ…どうやってやがる!」

瞬時にソウルジェムを使って魔法少女に変身する。

魔女も気を付けなければならないが、まずは倒れたさやかを助けなければならない。

杏子「テメー一体なんなんだ、さやかに何をした!」

答えが返ってこないと知りつつも、突如その場に現れた魔女に対して叫んだ。

ほむら「下がって」

響き渡る声とともに魔女の付近で爆発が起こる、その一撃で魔女も怯んだらしく攻撃を仕掛けてこようとはしない。

銀時「今のうちに退くぞ、さやかの奴はしっかり背負っとけ!」

杏子「お前ら……!」

ほむら「捕まって、早く」

言われるがままにほむらの手を取る、すると時計の針が止まったかのように周りの物が動かなくなった。

ほむら「気を付けて、私の手を放したらあなたたちの時間も止まってしまう」

杏子「時間操作系の魔法かよ…いや、今はそんなことどうでもいい!アイツはいったいなんなんだよ!」

ほむら「かつて美樹さやかだったもの、あなたも見届けたんでしょう?」

ほむら「…………間に合わなかったのね」

歯を食いしばる音が聞こえた気がする、冷静に見えるほむらも何か思うところはあるのだろう。

杏子「逃げるのか…?」

ほむら「戦うならあの魔女を殺すことになる、その荷物を捨ててね」

杏子「捨てる?ふざけんな!」

ほむら「……今は逃げることだけを考えなさい」

銀時「…………」

止まることなく走り続け結界を抜ける、その先に待っていたのは

まどか「何なのこれ…さやかちゃんはどうしたの!?」

マミ「せ、説明してくれるかしら…いったい何があったのか……」

ほむら「…………」

説明するのが躊躇われる、巴マミが過去の世界で何をやったか忘れたわけではない。

彼女は魔法少女が魔女になるとの事実を知った時、錯乱して他の魔法少女を撃ち殺している。

だが…ここで嘘をついてもいずれは分かることだった。

ほむら「美樹さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を生み出して砕け散ったわ」

まどか「!」

マミ「え……!」

まどか「嘘…だよね?」

杏子「………」

まどかの目を見ていられず、思わず顔をそむけた。逆にそれが今の話を疑いのない真実だと決定づける根拠となる。

まどか「そんな…さやかちゃん…誰かを救いたいって…そのために戦いたいって言ってたのに……!」

マミ「ちょっと待って…美樹さんのソウルジェムが魔女を生み出したって……」

マミ「それって…つまり美樹さんが…魔女になったって……!!」

マミ「いいえ、美樹さんだけじゃない…つまり私たちも……!」

ほむら「ええ、ソウルジェムに穢れが溜まり切ってしまえば…私たちも魔女になる」

ほむら「それが私魔法少女について隠された最後の秘密よ」

マミ「!」

キュゥべえ『逆に聞くけれど、君は自分があんな魔女になると思っているのかい?』

キュゥべえ『人に災いをもたらすだけのおぞましい存在になると、本当に思うのかい?』

いつだったか、キュゥべえが自分に向かって言っていた言葉を思い出す。

そうだ…つまり、あの問いの答えはそういうことだったのだ。ならば

マミ「魔法少女が魔女になるのなら…私たちがみんな死ぬしか…それしかないじゃない!」

ほむら「!」

衝撃の事実にマミが混乱することを予期していたほむらは時を止める準備をする。

万が一を避けるために、マミが魔法銃を出そうとした瞬間に動きを止めて拘束しなければならない。

だが、この場でマミを止めたのはほむらではなく

銀時「落ち着けや黄色の縦ロール、もっと適当に考えろ」

銀時「選択肢ならあるじゃねーか…誰も死ぬ必要のねェ簡単な選択肢がもう一つ」

銀時「さやかの奴を助けるって選択肢がよ」

白髪の天然パーマが発した言葉だった。

マミ「た、助けるって……!」

杏子「そんなことできるのかよ…何かあてでもあるのか?」

銀時「んなもんねーよ」

マミ「方法もわからないのに無責任なこと……」

銀時「だから落ち着けってキイロール」

マミ「いやキイロールって何?」

ほむら「本気なの…どう考えても絶望的よ?」

杏子「いや…希望を捨てるのはまだ早いってのは私も同意だ、やれることはやらねぇと後悔する」

杏子「今のアイツは魔女化して間もない、こっちから呼びかければ人間だったときのことを思い出すかもしれない!」

銀時「だったら…いるじゃねーか、とっておきの適任者がよ」

まどか「わ、私……?」

杏子「アンタだけだ、アイツを助けられる可能性があるとすれば」

マミ「でも…呼びかけるなんて方法で……」

銀時「うだうだ言ってねーでテメーも手伝うんだよキンチョール」

マミ「それもう殺虫剤になってるわよね!?もはや黄色ですらなくなってるわよね!?」

ほむら「…………」

どうせ自分が止めたところで佐倉杏子は美樹さやかを助けようと動くだろう。

そして親友であるまどかも動かないはずがない、どちらにしろ同じことだ。

それに今は巴マミもいる、若干の混乱があるとはいえ彼女もかなりの実力者だ。

そして…この世界の常識を破るために存在しているかのごときイレギュラーの坂田銀時の存在。

……賭けてみる価値はあるのではないだろうか?

ほむら「……やるのね」

銀時「アイツにこれ以上欠席されて給料引かれても困るんでな、明日にゃ笑って学校へ来てもらうとしようじゃねーか」

---
結界内

オクタヴィア(魔女)「グギャアアアアアアアア!!」

マミ「これが…これが美樹さん……?」

杏子「……行くぞ、作戦通りにな…みんな!」

銀時「大丈夫、問題ない」

ほむら「勝ち取りましょう…美樹さやかを取り戻すという勝利をね」

まどか「さやかちゃん……!」

先生ー、授業についていけませーん

今回の魔女が作り出した結界は言うなればコンサートホールのようなものだった。

多くの観客席、悲劇的な曲を奏でるバイオリニスト、それらをまとめ上げる指揮者。

まさに美樹さやかの根底にあった思いが反映されているというべき空間だった。

まどか「さやかちゃん…私だよ、まどかだよ!私の声がわかる?」

親友を救いたいと願いを込められた呼びかけが響き渡る。

だが、魔女は聞く耳を持たないかのごとく、演奏を声で遮るまどかに対して攻撃を仕掛けた。

まどか「!」

杏子「怯むな!アンタは呼び続けろ!!」

銀時「安心しな、テメーにゃ指一本触れさせやしねェ」

攻撃を迎撃された魔女はさらに数を増やして攻撃を仕掛ける、二人はそれを懸命にうけ切っていた。

マミ「…………」

ほむら「何をしているの、巴マミ…戦いが始まっていることがわからないの?」

マミ「わ、私は……」

ほむら「まだ迷っているのね、本当に美樹さやかを助けられるのかどうか…」

マミ「………」

ほむら「戦う気がないのならば今すぐここから逃げるべきよ、足手まといになるだけだわ」

杏子「ぐっ!」

銀時「立ち止まるな!一発でも通したらやべェぞ!」

戦い慣れた二人が目に見えて苦戦していた、その要因は魔女の攻撃はまどかに集中していること。

攻撃自体は木でできた車輪のようなものを作り出し投げつけるという単純なものだった。

だがまどかはなんの力もない、ただの一般人だ。一撃でも攻撃を食らえばひとたまりもない。

ゆえに二人は魔女の攻撃を『回避』せずにすべて撃ち落とさなければならないのだ。

さらにあの魔女が美樹さやかである以上、下手な攻撃を仕掛けることもできない。

どちらが有利かはだれの目にも明らかだった。

ほむら「下がって」

不意に爆発が起こり、敵の車輪がすべて撃ち落とされる。

銀時「すげーなオイ、どんなチート攻撃だ?」

ほむら「いいえ…私の攻撃には限度がある、このままのペースで撃ちつづけたら十分も持たないわ」

杏子「だったらアンタはまだ下がってろ…今は私たちで何とかする」

銀時「本当にヤバくなるまで温存しとけ、いざって時がいつ来るかわからねーぞ」

ほむらは二人に頷くと前線から一歩下がり、まどかの傍に寄り添った。

ほむら「呼び続けて、あなたの言葉が私たちの希望よ」

まどか「う、うん……!」

杏子「くそっ!いい加減しんどくなってきたな……!」

銀時「動き続けろ!二秒で切り返せ!」

杏子「んなことできるわけないだろ!大体なんだよ、二秒って!」

銀時「うっせーな!俺ァあれが好きだったんだよ、途中から普通に面白くなってたのに勿体ねーよ!」

銀時「多分シアンを出すのがもうちょい早けりゃ生き残ったと俺は思うね!」

杏子「こんな時までわけわかんねぇこと言ってんなよ馬鹿!」

まどか「もう止めてさやかちゃん!こんなのさやかちゃんが望んだことじゃないよ!」

声がかれるほど叫んだ、数えきれないほど叫び続けた。親友に届けと思いを込めて。

それでも魔女は一向に攻撃の手を休めようとはしない、むしろ攻撃は激しさを増しているようにさえ思える。

杏子「うあっ!」

銀時「ぐっ!」

さすがの二人でも追い詰められつつあった、受けきれなかった攻撃がダメージとして蓄積されていく。

そして疲労が溜まればその分動きも衰え、さらに多くの攻撃を受けてしまう…最悪の悪循環だった。

ほむら「……!」

ほむらは最終手段も考慮に入れ始める、魔女を爆殺するという最終手段…それは美樹さやかを見捨てることを意味していた。

ほむら(でも…ここで全滅するくらいなら……!)

その思った瞬間だった。

銀時「どうしたよ、こんなモンじゃ俺ァ止められねェぞ……!」

今の銀時はまどかだけではない、動きの鈍った杏子への攻撃もその身を挺して防いでいる。

常人ならとっくに倒れていてもおかしくはない状態、それでも立ち続ける男にその場にいた全員が驚愕していた。

マミ「なぜ…立っていられるの……どうしてそんな傷で……!」

マミから投げかけられた問いに銀時は即答する。

銀時「気に食わねェんだよ…ダチ公の魂を弄んで食い物にしやがったあの野郎がな」

かつて白夜叉と呼ばれた男の怒り、それは自分にとって大切な者の最も大切な物を穢されたことに対するもの。

許せなかったのだ、あの明るかった少女の運命がこんな形で掻き回されていることが。

戦いの日々しかなかった自分とは違う、正しい道を歩んでいた少女の日常が壊されたことが。

銀時「どっかで見てんだろ無限残機、俺たちが無駄な努力をしてるとでも思ってんだろうがな…一つ言っとくぜ」

侍は一呼吸おいて真っ直ぐに刀を構え直し、流れる血を拭いもせずに言い放った。

銀時「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、今日のところはこの辺で勘弁してください、例によって眠くなったからです」

銀八「つーか失敗だったなコレ、余裕もって終わらせようとしてたらどうやっても展開早くなっちゃってるものなーコレ」

銀八「>>524みてーに話の流れがわけわかめになってるやつも出てきちゃってるしね」

銀八「その辺は全部こっちの責任なんで、わかんねェことがあったら補足するんでお便り出せば答えます」

銀八「じゃーそういうわけなんで、もう夜も遅いから早くベットにルパンダイブするようにー」

すいません、ほとんど進みませんが再開します

マミ「…………」

自分はいったい何をしているのだろうか?魔法少女でもない彼があれほどまで戦っているというのに。

自分は何が出来たのだろうか?絶望を抱え込んで魔女になってしまった美樹さやかを救うために。

少なくともそれは怯えたり、最初から諦めて勝負を放棄することじゃない。

ましてや自分を含めた魔法少女全員を道連れに死ぬことなどでは決してない。

心は決まった。

マミ「……私も戦うわ」

ほむら「!」

銀時「へっ…ようやく重い腰を上げやがったか重鎮さん」

マミ「ごめんなさい…もう大丈夫よ、私も最後まで希望を捨てたりはしないわ…それに」

ようやく分かったのだ、今の自分に出来ること…自分がすべきことが。

マミ「後輩を助けてあげるのは…先輩の役目だもの!」

今度こそ言える、浮かれた気分から発する言葉ではなく、本当の意味で…


―――もう何も怖くない。

マミが前線に加わってからは戦況は大きく変わった。

彼女は得意の魔法銃を使った遠距離からの連射銃撃で魔女の攻撃をすべて撃ち落とせる。

加えて、魔法銃も魔力が続く限りは弾切れすることなく無限に具現化することも可能だ。

魔女の仕掛ける車輪での攻撃を捌くのに、これほど適した存在は他にいないだろう。

オクタヴィア(魔女)「グギャアアアアアアアアァァァァ!!」

魔女も遠距離からの攻撃を完全に無効化されていると悟ったらしく、今度は手にしている巨大な剣で斬りかかってきた。

マミ「!」

マミに対して振り下ろされた剣を二つの影が受け止める。

杏子「……残念だったな」

銀時「得物を使って俺たちと戦おうなんざ百年早ェぞ」

マミ「二人とも……!」

銀時「やるじゃねーかキンチョール、やれば出来る子じゃねーか」

マミ「フフ……これでも戦いの経験はそこそこあるの、あとキンチョールは止めて」

魔女との戦いが始まってからすでにかなりの時間がたっていた。だが一向に魔女の様子に変化はない。

まどか「さ、さやかちゃ…ケホッ……!」

何度も叫んでいたせいでまどかの喉は潰れかけていた、それでもさやかの名前を呼び続ける。

魔女になった今でもまどかは親友である美樹さやかのことを心から信頼していた。

必ず自分たちに気が付いてくれるはずだと。

杏子「聞き分けがないにもほどがあるぜ…さやか!お前言ってたじゃないかよ!自分の選んだ道に後悔なんかしないって!」

マミ「美樹さん!私たちの声が聞こえないの!?」

ほむら「美樹さやか、あなたの願いはなんだったか…忘れたわけではないでしょう!」

まどかだけではない、今となってはその場にいる全員が声を張り上げて呼びかけている。

それでも…魔女の攻撃が止む気配はない。

杏子「頼むよ神様…こんな人生だったんだ、せめて一度くらい…幸せな夢を……」

佐倉杏子のつぶやいたそれは、過酷な運命と背負った彼女にしてはあまりにも些細な願いだった。

銀時「……分かってんだよ、テメーがそう簡単に戻ってきやしねェことなんざ」

息を切らしつつ言葉を紡ぐ銀時を全員が見つめる、一体何を言っているのだろうか?

銀時「テメーは前におかしなこと抜かしてやがったからな、自分にはもう戻る場所がねェだのなんだのと」

銀時「だから俺たちがどんだけテメーの名前を叫ぼうが聞く耳も持たねェってわけだ…」

銀時は笑った、ただ可笑しかったのだ、単純なことに気が付いていなかったさやかのことが。

銀時「さやか、テメーが何を勘違いしてるかは知らねーが…戻る場所ならあるじゃねーか」

銀時「笑っちまうほど近くに、手を伸ばせば簡単に届く距離によ……」

それが銀時なりの答え、後悔と悲しみで行き場を失ったさやかを救うための答えだった。

銀時「今は俺たちがテメーの居場所だ…戻ってきやがれ!さやかァァァァァァァァ!!」

---

ここはどこだろう、私は何をやっているんだろう?

暗い、何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。

声が聞こえた気がする、暗闇を照らす明るい光を秘めた声が。

『さやかちゃん!』

最初に聞こえたのは……親友の声だった。

『あなたの願いはなんだったか…忘れたわけではないでしょう!』

次に聞こえたのは…あの転校生の声かな?

『美樹さん!私たちの声が聞こえないの!?』

今のは…私が憧れた先輩の声……

『お前言ってたじゃないかよ!自分の選んだ道に後悔なんかしないって!』

これは…最初は私といがみ合ってたあの子だよね。

……そっか、みんな来てくれたんだね。ありがとう。

でも…ごめん、私…もう戻れないよ……あんなに迷惑かけて…自分勝手で…もう私に居場所なんて……

『今は俺たちがテメーの居場所だ』

――――――っ!

――――――今の声は……

『戻ってきやがれ!さやかァァァァァァァァァ!!』

――――――先生

刹那、美樹さやかだったころの思い、それが次第に広がって、過ぎ去りし日々が記憶の紐で貫かれていく。

まどか『せめてさやかちゃんのそばにいられたらって…私…何もできないから……』

ほむら『そんなことをしてもあなたたちの得になることなんて一つもないわ』

杏子『アンタも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの』

マミ『その道を歩む途中で…決して折れたりしちゃダメよ』

銀時『そんなにてめーを卑下するもんじゃねーよ』

どうして今まで気が付かなかったんだろう、今まで私は……

みんなからずっと守られてたことに。

オクタヴィア「…………」

ふと、あれだけ激しかった魔女の攻撃が止まった。突然のことに全員があっけにとられる。

銀時「何だアイツ…腹でも壊しやがったか?ん?」

『撃って……!』

頭の中に声が響いた、それは聞き覚えのある少女の声。

まどか「さやかちゃん!」

『これ以上みんなを傷つけるなんて私にはできない、だから……!』

杏子「ふざけんな!そんなことしたらアンタがどうなるかわかってんのかよ!」

『危ないのは分かってる…でも、最後はみんなに賭けてみたいの』

本当に自分はただの魔女となってしまったのか…その答えを知るために。

『散々迷惑かけちゃったけど、あと一度だけ…私のわがままを聞いてくれないかな?』

銀時「…………」

銀時「一つだけ確認するぜ」

銀時「明日学校休みやがったら今学期の評定は全部2だからな」

『……約束する、必ず…学校に行くから!』

これでどうなるかは想像もできなかった。だが、少なくともその力強い言葉から少女の決意を感じ取れる。

銀時「上等じゃねーか……俺もテメーの魂に賭けるぜ」

次の瞬間、銀時は木刀を片手に魔女へと飛び掛かり、光のごとき一閃を魔女の顔面に食らわせた。

魔女「アアアアアアアアアアァァァァァァァ…………!」

断末魔の叫びを上げて魔女は倒れこんだ、それと同時に周りを構成する結界も崩壊を始める。

ほむら「結界が消えるということは…魔女は……!」

まどか「さ、さやかちゃんは…さやかちゃんはどうなったの!?」

杏子「わからねぇ…けど、今の私たちには信じるしかないだろ」

マミ「美樹さん……!」

銀時「………………」

魔女の体からグリーフシードが放出される、結界が完全に消え去ったのはそれと同時だった。

ほむら「グリーフ…シード……!」

期待していた、心を取り戻したさやかの魂が再びソウルジェムとなって現れるのではないかと。

だが、現実に現れたのはなんの変哲もない…ただ一つのグリーフシード。

杏子「嘘だろ…こんなのって……!」

すべての望みが絶たれる…まさに絶望の空気が辺りに満ちた瞬間

―――魔女の落としたグリーフシードが蒼く輝いた。

ほむら「!?」

マミ「こ、これは……!」

グリーフシードが光を放つなど、数多の経験がある彼女たちでも初めてみる光景だった。

徐々に強さを増していく光、目もあけていられないほどの閃光が走り全員が一瞬目をそらす。

再び目を開けたその時、

グリーフシードは、粉々に砕け散ったはずのソウルジェムへと変化していた。

---
某所

まどか「これを持たせれば…いいんだよね、ほむらちゃん」

ほむら「通常ならね…でも、今回ばかりは分からないわ」

杏子「な、何でだよ…鉄橋の時はちゃんと意識を取り戻したじゃないか!」

ほむら「あれは肉体的に彼女が死んで間もなかったから…でも今回は少し時間がたっているでしょう?」

マミ「…………」

まどか「さやかちゃん……!」

目を覚ましてと願いを込め、まどかはソウルジェムをさやかの手に握らせた。

さやか「………………」

さやか「…………んっ」

ピクリと指が動き、重く閉じられていた瞼が徐々にあけられていく。

まどか「あ……あ……!」

さやか「……まどか」

まどか「さやかちゃん!!」

それは短かったようで果てしなく長い道のりだった、少女たちの再会。

銀時「今の今まで眠りこけてやがったのかオイ、どんだけ爆睡してんだテメーは」

さやか「……先生」

杏子「よう、無事で何よりじゃないか」

マミ「美樹さん…あなたが無事で…本当に良かった!」

ほむら「ええ、私も二人と同じ気持ちよ」

さやか「…………」

何と言えばいいのか分からなかった、自分のせいであれだけ迷惑をかけ続けたのだ。

命の恩人と呼んでも差し支えない、それだけ大きな貸しを作ってしまった。

さやか「………みんな、その……ごめ…」

……とりあえず謝ろう、そう思い謝罪の言葉を口にしようとした瞬間

銀時「さーて、さやかの奴が休んでた理由も分かったことだし…けーるぞ、お前ら」

さやか「!」

銀時「何言ってんだ、テメーは少し疲れてたせいで今の今まで寝過ごしてた……」

銀時「それを俺たち全員で叩き起こしに来た、ただそんだけだろうが」

ほむら「……そうね、ただそれだけのこと…迷惑なんてかけられてないわ」

マミ「フフ…そうですね」

まどか「でも良かった、これでさやかちゃんも明日からは学校に来れるね!」

さやか「…………」

さやかは何も言うことが出来なかった。

この仲間たちは私を助けるために必死で戦っただけじゃなく、私を助けた後でさえ気を使ってくれている。

今感じている感謝の意を伝えるにふさわしい日本語をさやかは知らなかった。

杏子「…………」

さやか「?」

気が付けば杏子がすぐそばに立っていた、何か自分に言い含めるつもりだろうか?

さやかはそんな想像をしていたが、杏子の口から出てきた言葉は

杏子「そういえば…私、アンタにちゃんと自己紹介ってしてなかったよな?」

杏子「私は佐倉杏子、よろしくね」

一度は共闘することを拒否した、考えの違いから刀を交えたこともあった。

さやか「私は…み…美樹さやか……!」

今では一人が笑いながら照れくさそうに、もう一人は泣きながら感謝の意を込めて

お互いの手を取り合った。

銀時「……ひとまずは、めでたしめでたしってか…」

その様子を見ると侍は、口元で笑みを浮かべながらその場を後にした。


―――本当に神様がいるのなら、変わり続けるのが運命なら

―――信じることで憎しみを消してほしい

―――当たり前にある幸せなんて一つもないよ、僕や君の願いが永遠でありますように

挿入歌…『I、愛、会い』(ghost note)

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、若干無理やりですがとりあえずは一旦ここで切ります」

銀八「つーか本当に今さらだけど今回はかなりテキトーな地の文がちらほら出てきてます」

銀八「台本形式が好きな人にゃ申し訳ないですが、今回はこんな感じで書かせてください」

銀八「全然関係ないけどまさか前回のルパンダイブにあれだけ食いつかれるとは思わなかったわ」

二日も空けちまいました、再開します

---
翌日、学校

銀時「うーし、じゃあ出席取るぞー………」

銀時「……次ィ、美樹さやかー」

さやか「Zzzzz…Zzzzz……」

まどか「お、起きてさやかちゃん!」

銀時「あー、寝かせとけ寝かせとけ」

さやか「Zzzzz…Zzzzz……」

銀時「えー…美樹さやかは感心・意欲・態度が非常に悪いため落第…っと」

さやか「嘘です、寝てませんでした起きてます!」

銀時「いやいいよ寝てろって、そのままもう一年この教室で寝てていいから」

さやか「それだけは勘弁して!やる気その気大好きだから!意欲だけは誰にも負けませんから!」

さやか必死の弁明と銀時の掛け合い、クラスが朝から暖かい笑いに包まれた。

銀時「とりあえずアレだ、この前の抜き打ちテストの答案返すからな」

さやか(テストってかあれ…ほとんどアンケートだったじゃん、正解なんかあるわけないって……)

まどか「どうしよう…私、54点だった……」

さやか「私は72点…だけど、何か納得いかない……」

ほむら「…………」

さやか「あ、そういえばアンタは?せっかくだし見せてよ」

ほむら「私はいい、見せる必要もないわ」

銀時「いたよクラスにこういうことするヤツ、点数の書いてある部分を折り曲げて何点か分からないようにするの」

さやか「いいじゃん、みんなひどい点数取って落ち込んでるんだから!一蓮托生だって!」

ほむら「あっ…ちょっと……!」

半ば強引にほむらの答案を手に取る、そこに書かれていた点数は

さやか「96点……だと……!」

ほむらの間違えた問題
ゼルダの伝説、時のオカリナにおいて最も難しいと思われるダンジョン名を一つ書け

ほむらの答え…闇の神殿
模範解答…水の神殿

さやか「これは…うん、間違えても仕方ないって…こんなの分かるワケないから」

ほむら「私の場合、闇の神殿は水の神殿よりクリアするのに十倍は時間がかかったわ」

さやか「どんだけ苦戦したのよ、ていうかそんなに難しかった?確かに暗くて怖い感じのステージだったけど……」

ほむら「……あの雰囲気が受け付けなかった、とでも言うべきね」

---
放課後

銀時「次のテストはどうすっかな…手堅くスターフォックス辺りで……」

ほむら「…………」

銀時「…いたのかお前か、何かようか?」

ほむら「確認したいことがあるわ…あなたはなぜ私が幾度も時を戻して戦い続けていたか覚えてる?」

銀時「まどかちゃん親衛隊隊長だから」

ほむらの鉄拳が一発。

ほむら「そんなことはどうでもいい」

銀時「あ、別に否定はしねーのか」ダラダラ

ほむらの鉄拳が二発。

ほむら「…………」

銀時「何かデカい魔女が来てそいつをまどかの力を借りずに倒すためでした」ドクドク

ほむら「……ワルプルギスの夜が現れる日は近い、それは覚えておいて」

銀時「……ここが最後の山場ってわけか」

ほむら「そう、これで最後…これですべてが決まるといっても過言ではないわ」

銀時「だったら一発、やっとくしかねーな」

ほむら「?」

---
ほむら宅

銀時「第一回、何かデカい感じの魔女&無限残機を頑張って何とかしましょうね会議ー」

杏子「何だよその適当な感じ、全然やる気出ねぇぞ」

さやか「まあ…いつものことだし気にしたら負けじゃない?」

銀時「いーんだよこのぐらい適当なほうが、背伸びして無理してても途中で足攣っちまうだろ」

ほむら「………」

マミ「これは…一体なんの集まりなのかしら?」

ほむら「もう間もなくワルプルギスの夜がこの町に現れる、それに対する対策会…とでも言うべきかしら」

マミ「!」

杏子「……確かなのか、それ?」

ほむら「ええ、まず間違いないわ」

さやか「ワルプルギス…って?」

杏子「簡単に言っちまえば…超弩級の大型魔女だ、普通の魔女とは比べものにならねぇ」

ほむら「そして一度具現化すれば、それだけで何千人もの人が犠牲になる」

さやか「そんな…めちゃくちゃヤバい奴じゃない!」

マミ「何とかしないと……!」

ほむら「そして…問題はもう一つあるわ」

杏子「もう一つ……?」

ほむら「契約を迫るキュゥべえからまどかを何としても守らなきゃ…すべてが終わりになるわ」

さやか「まどかを守るって…よく意味が分からないんだけど……」

ほむら「……なぜキュゥべえは私たちを魔法少女にさせたがるのか…その理由から説明したほうがよさそうね」

---

ほむら「……理解できたかしら」

さやか「良くわからない部分もあったけど…アイツの狙いって……」

マミ「魔法少女が魔女になるときに発生するエネルギーの回収して宇宙の寿命を延ばす、そういうことなのね」

ほむら「その通り、そして…まどかは魔法少女としては信じられないほどの素質を秘めている」

杏子「つまり…それだけの力があるんなら、回収できるエネルギーも大きいってわけか……」

ほむら「…………」

杏子「ふっざけんなよ…私たちをただの便利な『物』みたいに扱いやがって……!」

さやか「でも…今のまどかだったらそう簡単には契約なんかしないんじゃない?」

マミ「……そうね、どんな願いが叶うといっても今まで何があったかをみてきているわけだから」

ほむら「……あの子は優しすぎる、私たちが目の前で傷つくのを黙ってみていることができない」

杏子「私たちの誰かがやられそうになったら…なりふり構わずそいつを助けようとするってことか」

銀時「……つーわけで、その辺を何とか出来る良い案を思いついた奴はいねーか?」

銀時「(会議を)一発やるって意味を如何わしい意味に捉えた野郎は、後でほむらのビンタが炸裂するから覚えとけ」

ほむら「何で私?」

杏子「はい」

銀時「はーい、佐倉杏子ー」

杏子「あのキュゥべえの野郎を残機がなくなるまで叩き潰す!」

銀時「いやーアイツの残機がいくつあるか分からねェからそいつァ微妙だな」

さやか「はい」

銀時「はい、美樹さやかー」

さやか「逆にまどかを何とかしてみるってのはどうかな?」

銀時「例えば?」

さやか「うーん…すっごい強引だけど、どっかに閉じ込めておくとか……」

ほむら「あなた…まどかを監禁するつもり?」

さやか「いや、だからたとえばの話で……」

ほむら「例えばでも……ダメ、絶対」

さやか「ですよねー」

銀時「じゃあ最後、アースジェットくん」

マミ「いや、どうして最後は私で落とそうとするの!?せめてキイロールにしてくれないの!?」

銀時「グダグダ言ってねーで何かあんなら言えよ面倒くせーな」

マミ「ワルプルギスの夜を圧倒して倒せれば…鹿目さんが契約することもない、そうね?」

ほむら「……何が言いたいのかしら?」

マミ「ワルプルギスの夜の強さは聞いてるわ…でも、今はこれだけ戦える魔法少女が揃ってる」

マミ「みんなで力を合わせればきっと何とか……」

ほむら「無理よ」

マミの言葉を途中で切ると、おもむろに杏子とマミの肩を軽く叩いた。

マミ「痛っ!!」

杏子「ぐっ!?」

叩くというより触れるに近い行動、ただそれだけの行動で杏子とマミは肩に走るような激痛を覚えた。

ほむら「先日の戦いであなたたちの体はボロボロでしょう…特に杏子、あなたはね」

杏子「けど、戦えないわけじゃない…私は……!」

ほむら「そんな傷だらけの体で戦うあなたたちを見て…まどかは何を思うかしら?」

杏子「!」

さやか「ごめん…こんなところでも足引っ張っちゃって……」

ほむら「あなたもよ、今のあなたじゃ…おそらく戦うことは不可能だわ」

さやか「えっ…な、何でよ?」

ほむら「奇跡的に蘇ることができたとはいえ…あなたの肉体はしばらく死んでいたのよ?」

ほむら「そんな状態で魔法少女になってワルプルギスと戦えるとは思えないわ」

さやか「まさか…今日は朝から眠くて仕方なかったのは……!」

銀時「それは関係ねーだろ馬鹿」

さやか「あはは、バレたかー……」

ほむら「そして…あなたも」

銀時「俺ァ別に何とも……」

ほむら「…………」

マミや杏子にやったのと同じく銀時の体に触れる、平気な顔をしてはいるが、彼も無理をしているに違いないのだ。

銀時「…………」

ほむら「……?」

おかしい、まるで痛がるそぶりを見せない。あれだけ死力を尽くして戦ったのに無傷なんてことはあり得な……

銀時「痛っ……たくねー、うわー全然痛くねーわ、うん、でもなんか頭が天パーだから病院行ってくるわ」

ほむら「…………」

やはりあり得なかった。

さやか「つまり…どういうこと?」

杏子「まともに使い物になるのは結局ほむら…しかいないってことだ……ちきしょう…!」

ほむら「あなたたちが気に病むことじゃないわ…大丈夫、必ず勝ってみせるから」

勝てる保証があるわけではない、それでもみんなを心配させるわけにはいかなかった。

ほむらがその場にいる者を安心させようと言葉を発した瞬間

キュゥべえ「これは一体なんの集まりだい?」

ほむら「!」

杏子「今さらどの面下げてのこのこ現れやがった、テメー」

キュゥべえ「たった今、やるべきことがすんで外に出てきてみれば…」

キュゥべえ「何やら魔法少女が一か所に集まっているのを感じたから顔を出してみた、というわけさ」

銀時「やるべきこと?…テメー、今までどこにいってやがった?」

キュゥべえ「まどかの家さ」

ほむら「!?」

迂闊だった、当事者のまどかにこの話は聞かせるべきではないとこの場に呼ばなかったのが裏目に出てしまった。

さやか「まどかの家って…まさか……!」

キュゥべえ「安心しなよさやか、君が今心配しているような事態にはなっていないからね」

キュゥべえ「ほんの少し話をしただけさ、共存関係の話や…過去の魔法少女のことをね」

ほむら「……!」

どんなことを話したかは分からない、だがそれがほむらたちにとって良い話でないことは明らかだった。

キュゥべえ「そうそう、君たちに言っておこうと思っていたことがあったんだ」

キュゥべえ「美樹さやかの件ではなかなか面白いものを見させてもらったよ、実に興味深い現象だった」

それはまるで他人事のような口ぶり、面白そうなおもちゃを手に入れた子供の声を彷彿とさせた。

キュゥべえ「君たちはもう気が付いているんだろう?僕の目的も…この後に何が起こるのかも」

さやか「だったら何だっていうのよ……」

キュゥべえ「君たちにお願いをしようと思ってね」

杏子「お願い……?」

様々な少女たちの願いを叶えてきたキュゥべえの願い、それは

キュゥべえ「鹿目まどかが魔女になったら何とかもとに戻してあげてほしいんだ」

ほむら「……!?」

全員が予想だにしなかった、いったい何を言っているのだろうか?

杏子「どういうつもりだ…お前の目的はアイツを魔女にしてエネルギーを……」

キュゥべえ「そう、でも…もしそうなれば彼女は一生を魔女として過ごすことになる」

キュゥべえ「感情のない僕には分からないけれど…君たち人間を基準にすれば、それは『可哀想』と形容される部類になるだろう?」

キュゥべえ「だから…彼女がもしも魔女になったら、美樹さやかのように助けてあげてよ」

さやか「アンタ……一体何を考えて……!」

キュゥべえ「これは僕の本心だ、まどかが魔女になったら魔法少女に戻してあげてほしい、嘘じゃないと誓っていえるよ」

ほむら「……」

明らかに何か裏があるはずだ、だが今回はそれが見えてこない…

銀時「外道の考えは…外道にしか理解出来ねェらしいな」

看破していたのは、やはりこの男一人だった。

杏子「どういうことだ…何かわかったのかよ?」

銀時「茶番は終わりにしようや無限残機…回りくどいこと言ってんじゃねーぞ」

キュゥべえ「……」

さやか「今回はどこに嘘が……」

銀時「いや、コイツは嘘なんか言っちゃいねーよ」

さやか「え…ま、まさか本当にまどかを助けたいって……?」

銀時「……テメーの目的はエネルギー回収とか言ってやがったな、無限残機」

銀時「で、そのエネルギーってのは『魔法少女から魔女になるとき』に出るんだったか?」

ほむら「それが一体………!!」

ほむらの背中に嫌な汗がにじんでくる、まさかキュゥべえの狙いとは……

銀時「平たく言えば…リサイクルしてーんだろ、まどかの奴をエネルギー源として」

銀時「我が社は環境に優しいリサイクル運動を推進していますってか…笑えねェな」

キュゥべえ「やれやれ、これは君たちにとっても素晴らしい取引だと思うんだけれど…」

キュゥべえが返答の中に、銀時の発言に対する否定の言葉はなかった。

ほむら「あなたは…そこまでして……!」

キュゥべえ「それだけ鹿目まどかの持っている力は魅力的なのさ」

キュゥべえ「エネルギー回収を鹿目まどか一人で賄えるならこれ以上魔法少女が増えることもない」

キュゥべえ「回収した莫大なエネルギーを使って宇宙の寿命を効率よく伸ばすこともできる」

キュゥべえ「そう、たった一人の犠牲だけでこの宇宙全体に対して多大な利益が出るんだ」

キュゥべえ「こんなに素晴らしいことは他にない…君だってそう思うだろう、坂田銀時」

銀時「…………」

キュゥべえ「君には感謝しなきゃね、君が美樹さやかを救い出したことによってエネルギー回収に新しい道が開かれた」

キュゥべえ「無理に魔法少女を増やすことなく…エネルギー回収を出来る道の可能性がね」

全力を尽くして魔女化した美樹さやかを救い出した…普通ではありえないはずの奇跡。

その奇跡でさえキュゥべえは自分の目的のために利用価値を見出していた。

杏子「テメーは…何てことを……!!」

怒りに我を忘れてキュゥべえに掴みかかろうとする杏子を銀時は制止する、コイツを叩き潰しても意味はない。

杏子「放せよ!コイツはもう百回ぶっ飛ばしたぐらいじゃ気がすまねぇ!」

銀時「いったん落ち着け、もう少し冷静に考えろ」

銀時「コイツを潰してもすぐに第二第三のキュゥべえが現れちまう、そうなったら何の意味もねェ」

銀時「だったら……」

キュゥべえ「?」

---

キュゥべえ「…!…!」

銀時「これでよし」

数分後…キュゥべえは、ふん縛られて簀巻きにされて吊るされて蝋燭で炙られていた。

さやか(ドSだ…この先生……)

ほむら(その手があったか……)

---

銀時たちが帰った後、ほむらは一人で今後の対策を考えていた。

結局、今回も戦うのは一人きりになりそうではある…それでも収穫自体はあった。

魔女化した人間でも魔法少女に戻ることが出来る事実、これは大きかった。

仮に今回ワルプルギスの夜に敗北したとしても、この情報は次に役立つはず……

ほむら「……馬鹿ね、私は」

次があるなどと考えていては勝てるはずもない、終わらせるのだ…この世界で、何としても

『そう簡単にいくかな?』

不意に頭の中に声が響いてくる、それは聞きなれた声だった。

ほむら「……なるほど、縛られて口を開けないから頭に直接呼びかけているのね」

『少しでも僕を不憫に思うならこの拘束を解いてはくれないかい?』

ほむら「その選択肢はあり得ないわね…それで、わざわざ何か話すことがあるのかしら?」

『時間遡行者、暁美ほむら…君はその時を操る力を使って幾度も世界をやり直してきたんだね』

『友達である鹿目まどかを救い出し、ワルプルギスの夜を倒すために……』

ほむら「…………」

『やっぱりね、でも…これでまどかがなぜあんなに途方もない力を秘めているのか納得がいったよ』

もともと口開いて喋ってない、全部テレパシーだぞ

ほむら「どういうことかしら…」

『君のせいだよ、暁美ほむら…君が何度もまどかを救うために世界をやり直してきたからさ』

ほむら「!」

『君が繰り返してきた時間、その中で循環した因果の係数が巡りめぐって鹿目まどかに繋がってしまったんだ』

『魔法少女の素質は背負った因果の量で決まってくる…僕の言っている意味が分かるかい?』

そんな…つまり、まどかを救おうと私が今まで世界をやり直してきたことが……

まどかが強力な魔女になってしまうことに繋がっていたというの……?

これ以上時を戻せば、次の世界ではまどかがさらに強力な魔女となってしまう。

この瞬間、暁美ほむらは是が非でもワルプルギスの夜を倒さなければならなくなった。

---
夜、ほむら宅

まどか「入っていいかな?」

ほむら「……!」

その日の夜、ほむらの家には鹿目まどかが訪れていた。それはキュゥべえも誰もいない、二人だけの空間。

まどか「聞いたよ…もうすぐにワルプルギスの夜っていうとてつもない魔女が来るんだよね?」

ほむら「……ええ、具現化するだけで何千人もの被害者が出るわね」

まどか「じゃあ絶対に倒さなきゃね…でも、現状で戦えそうなのはほむらちゃんだけなんでしょ…だったら……」

ほむら「一人で十分よ」

まどか「!」

ほむら「強いといっても私はそれなりに準備はしてきたわ、私一人でも十分に撃退できるわ」

まどか「…………」

ほむらは言い切った、自分一人で勝てると。友を信じているならばそれで安心しなければいけないはずなのに

まどか「……何でだろう、私ほむらちゃんを信じたいのに…全然大丈夫だなんて思えない……!」

ほむらの言葉を信じきれない自分が嫌だった、その思いは涙となってまどかの目から零れ落ちる。

ほむら「……っ!」

その涙とまどかの言葉はほむらを突き動かす。気が付けば、ほむらはまどかを抱きしめていた。

まどか「ほ、ほむら…ちゃん?」

ほむら「本当のことなんて話せるわけがないのよ…私はあなたとは違う時間を生きているんだもの……」

まどかと同じくほむらも泣いていた、冷静なはずの彼女には似合わない涙。

……それは語弊があるかもしれない。魔法少女であるとはいえ、幾何の時を乗り越えているとはいえ

彼女は本来、感情豊かな普通の女子高生なのだから。

ほむら「あなたを救いたい一心で…私は今までの時を繰り返してきた」

ほむら「そのたびにあなたが死ぬところも…同じだけ見てきたのよ」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「ごめんね、何を言ってるのか全然わからないよね……でも、それでも……!」

少女は、今この瞬間まで伝えられなかった思いを震える声で紡ぎだす。

ほむら「お願いだから…最後まで…あなたを私に守らせて……!」

まどか「…………」

ほむらの決意と思いの強さにまどかは何も言うことが出来なかった。



――――――そして、決戦の時が訪れる。

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、なんか展開的にはほとんど進んでませんがとりあえずこの辺で一旦切りまーす」

銀八「すいませんね昨日一昨日とサボっちまって、忙しかったんです色々と」

銀八「……違うからね、決して逆転裁判1~4をやったりしてないからね、シナリオ全クリとかしてないからね」

銀八「まあアレだ、おかげさんで最後の山場まで何とか来れました、もしよけりゃもうちょい付き合ってください」

銀八「>>677もわざわざありがとうよ…あのアレ、ミッフィーちゃん的なアレかと思ってたわ」


今日はこの辺ですいません…近いうちにまた来ます

まどかの漫画版読んで思ったけど、まどかに出てくるキャラは
銀さんに一発やられるべき(ぶたれる的な意味で)。

>>700
ぶたれる(SM的な意味で)なんて…

>>700
ぶたれる(SM的な意味で)なんて…

>>700
ぶたれる(SM的な意味で)なんて…

ほっとんど進みませんが、一応再開します

---
某所

観測員「雷雲がとんでもない勢いで分裂と回転を起こしています!明らかにスーパーセルの前兆です!」

観測員「ただちに避難指示の発令を!!」

突如として現れたスーパーセル、それが強力な魔女によって引き起こされたものであることを知る者は少ない。

ほむら「来る……!」

人々が安全な場所へと非難する中、雷鳴の響く無人の街に一人降り立つ少女。

今、暁美ほむらにとっての最終決戦が始まろうとしていた。

それは突如現れた、一言では形容のしがたい…今までの魔女とは明らかに異なるものだった。

宙を浮かぶそれに生物らしさはあまり見受けられず機械的であり、何よりも強大な力を感じさせる。

ただの人間がまともに戦って勝ち目があるとは到底思えない相手だった。

ほむら「今度こそ…決着をつける!」

暁美ほむらの戦いは通常の魔法少女のそれとは大きくことなっている。

魔法を使った攻撃手段が一切ないのだ、ゆえに攻撃には近代化学兵器を使用している。

自らの能力で時を止め、その間に重火器で攻撃を仕掛ける。それが彼女の戦い方だった。

この戦いのために膨大な量の武器を蓄えてきた、そのすべてをぶつけなければアレを倒すことは不可能だろう。

数えきれないほどのバズーカ砲撃、自らの能力を応用して大型車両を操っての打撃攻撃、
大量の迫撃砲による連続爆撃…

それはまともに食らえば一個の軍隊が壊滅するほどの攻撃。

そしてほむらはそれらすべてを的確に魔女に命中させた。


それでも、ワルプルギスの夜を止めることは出来なかった。

---
某避難所

まどか「……ほむらちゃん」

避難指示によってまどかは家族とともに体育館の中に避難していた。

窓を叩く強風が、徐々にスーパーセルが接近していることを知らせている。

まどか「…………」

ほぼ間違いなく、このスーパーセルは魔女によって発生した天災だろう。

それが止まることなく近づいているということは、戦っているほむらが劣勢であることを意味している。

まどか(行かなきゃ……!)

優しすぎる鹿目まどかが何もしないで待っていることなど出来るはずがなかった。

---

ほむら「くっ……」

あれだけの攻撃を仕掛けたにもかかわらず魔女には傷一つ付いていなかった。

それどころか、ほむら決死の攻撃をあざ笑っているかのような声さえ聞こえてくる。

ほむら「これ以上…先へ進ませるわけには……!」

魔女「キャハハハハハハ!ククキャハハハハハハハ!」

子供の笑いにも似た声を上げながらワルプルギスの夜は反撃を仕掛ける。

魔女の周囲にあるビルが地響きを立てながら浮かび上がり…一直線に暁美ほむらへと向かってきた。

ほむら「!」

とっさに時間を停止して攻撃を回避しようとする、魔力で肉体が強化されているとはいえあれを受けてはひとたまりもない。

だが、時間停止魔法は発動しなかった。

ほむら(そ、そんな……!)

一度の戦闘で使える魔力の限界、それが最悪のタイミングで訪れてしまったらしい。

操られたビルは勢いを弱めることなく、無防備な暁美ほむらの体に直撃した。

ほむら「ぐっ……うぅ……!」

先の一撃を受けても暁美ほむらは死んでいなかった。

魔力によって強化された肉体によって即死は免れ、意識もはっきりとしている。

だが、ダメージまでゼロにすることは当然不可能である。

ほむら(足が……!)

激痛を感じ足元を見る、すると衝撃で砕けたビルの瓦礫に足が挟まれていた。

……これでは動くこともままならない。

ほむら「…………」

最後に残しておいた魔力、再び世界をやり直すためにとっておいた最後の手段。

今までならば、勝ち目のなくなった瞬間にそれを発動させていた。だが

ほむら(もし時間を戻してしまったら…またまどかの因果が増えて……)

今回…彼女にそれは出来なかった、するわけにはいかなかった。

ほむら(どうして…どうして…何度やっても…アイツに勝てない……!)

絶望の涙がほむらの頬を流れていた。

ほむら(結局…今まで私がやってきたことは…全部……!)

足掻くだけ足掻いた、最後まで全力で戦い抜いた、努力もした、準備もしてきた、ましてや慢心などあるはずがなかった。

それでも…訪れる最後の魔女を止めることができない。

負の思いに捕われたほむらの心を反映するかの如く、彼女のソウルジェムを黒い濁りが支配していく。

希望などあるはずがなかった。

「下向いてんじゃねーよ…前を向きな」

ほむら「!」

―――それは聞こえてくるはずのない声。

銀時「テメーの魂はこんぐらいじゃ染められやしねェだろうが」

―――信じられない思いで声の聞こえるほうに目を向ける。そこにあったのは

―――共に戦いを切り抜けてきた、自分を助けると言ってくれた

―――白髪の侍の姿だった。

ほむら「……何故来てしまったの」

逃げろと言ったはずだった、そのまま戦えば間違いなく死ぬ。だから逃げろと言っておいたはずだった。

それでも男はここに来た。

銀時「こっちだってとっとと逃げ出してーよ、俺ァ何でこんなところに来ちまったかね」

ほむらの言いたいことは分かっているとでも言いたげに銀時は言葉を返す。

「ま…こういうのを女に全部丸投げするわけにもいかねーしよ、男ってのは見え張って生きてくモンだしな」

お気楽な口調の裏にある覚悟、それをほむらは感じ取っていた。

ほむら「あなた…そのまま戦ったらどんなことになるか分かってるの……?」

暁美ほむらの呟きに銀時は

銀時「どうなるか?んなモン、最初から分かってるに決まってんだろ」

何の恐れもないかのごとく、少女の不安を根こそぎ吹き飛ばすかの如く

銀時「てめー自身の手でコイツをぶっ倒す未来を創るんだからよ」

ほむら「!」

ほむら「……どうして」

他人の前では決して涙を見せまいという少女の誓いが破られる。

ほむら「どうしてあなたはそうやって…魔女と戦う能力なんか持ってないくせに……」

ほむら「最初に魔女と戦った時も…美樹さやかを助けた時も…そして今でさえ……!」

ほむら「私は…ワルプルギスを倒すために命を捨てる覚悟があったのに…!」

銀時「命を捨てる覚悟なんざ邪魔なだけだ、不燃ごみと一緒にその辺に出しとけ」

銀時「代わりに、どんなことがあっても必ず生き抜く覚悟を持ってろ」

ほむら「…………」

そうだ…片足は動かなくなったがまだ戦えないわけじゃない、諦めるにはまだ早すぎるだろう。

思えば、美樹さやかのときもそうだった。あの時、諦めずに戦い続けることの意義を知ったはずだ。

ほむら「私は死なないわ…そしてあなたも死なせない…その覚悟があればいいのかしら?」

その表情は決して自暴自棄になった者のそれではない、最後まで戦い抜く決意に満ちていた。

それを見た銀時は半笑いを浮かべ

銀時「……行くぜ、こっから仕切り直しといこうじゃねーか」

ちょこっと!銀八先生!

銀八「はい、案の定眠くなっちまったんで今日はこの辺で勘弁してください」

銀八「バズーカの件は完全に知識不足でした、沖田の野郎がいつも持ってるから勘違いしてたわ、うん」

沖田「先生、人のせいにするの止めてもらえねェですか?あと本編でも出番がほしいです」

銀八「あ、女子高生うんぬんもこっちのミスです…あれだ、銀さん中学生のガキとか興味ないからついね、いや高校生もガキだけど」

今週末までに完結できるか……今日はほとんど進みませんが、とりあえず再開します

銀時の参戦、それによって今の状況に変化が現れるかと思われた。

だが、以前として不利な状況は変わっていない。

ほむら「くっ……」

空中で一人奮闘するほむらだったがその傍らに銀時の姿はない、何やら地上で立ち往生をしているようだった。

見かねたほむらは一時戦闘を中断し、立ち尽くす銀時に詰め寄った。

ほむら「あなた…私を助けに来てくれたのよね?」

銀時「ああ…そうだな……」

ほむら「あれだけかっこよく登場したんだからもう少し真面目に戦っ……」

銀時「…………」

銀時「飛べねェんだよ…俺ァ……」

ほむら「…………」

ほむら「ど、どうも……」

銀時「飛ぶってのはあんまりいい気分じゃねーな、何この浮遊感、気持ち悪っ!」

ほむらは自らの能力の応用でトラックを操ったことを応用し、銀時の体を浮かせていた。

能動的に飛行しているわけではない銀時にとってそれは大きな違和感を感じさせるものだったらしい。

ほむら「我慢して…来るわ」

ワルプルギスの夜(魔女)「キャハハハハハハ!キイャハハハハハハハハ!」

奇妙な笑い声をあげたかと思ったとき、魔女の力によって使い魔が現れた。

召喚された使い魔たちは真っ直ぐに銀時たちに向かって攻撃を仕掛けてくる。

強大な魔女の使い魔だけあって動きも早い、これを相手にしつつ攻撃を仕掛けるのは厄介だろう。

銀時「コイツらの相手は俺がしてやらァ…テメーは本元をぶっ叩け!」

ほむら「ええ、使い魔は任せるわ……!」

ほむらの用意した攻撃はすべて使い尽くされてはいない、まだ十分な量の武器が手元には残されている。

使い魔は銀時が押さえ込んでいる今ならば邪魔をされずに攻撃を仕掛けることも可能だ。

ほむら「でも…ただ闇雲に撃ってもアイツには……!」

単純な攻撃ならば先に嫌というほど試していた、それも計算されつくした連続爆撃によって。

それでも最強の魔女を止めるどころか怯ませることさえ叶わなかった。

ほむら「…………!」

何か策を考えなければならない、ワルプルギスを倒せるだけの破壊力を秘めた一撃を生み出す策を。

そうして考えている間にも使い魔と戦闘を繰り広げる銀時には大きな負担がかかってします。

最初は一匹だけでしかなかった使い魔も今では五匹に増えていた。

銀時「ぐっ……!」

ほむら「!」

使い魔の攻撃が銀時を掠める、やはり体の怪我は未だに治ってはいないらしい。

その状態で五匹もの強力な使い魔の攻撃を捌いているのはさすがというべきだろう。

だが、このままでは体力の低下とともに追い詰められるであろうことも明らかだった。

ほむら「…………!」

マズイ……自分が何とかしなければ銀時の身が……。そうして焦れば焦るほど頭からは冷静さが失われていく。

ほむら(どうすればいいの…どうすれば……!)

焦燥にかられ正常な思考力を失っている最中のこと

??「間に合ったみたいね、良かったわ」

???「待たせちゃってごめん!二人とも!」

??「なーに遊んでんだよ、とっとと本気だしやがれ!」

ほむら「あ、あなたたち……!」

マミ「ごめんなさいね、来るのが遅れて…」

さやか「とりあえず私、先生の手伝いに行ってくる!」

杏子「カッコつけんなよ馬鹿、肝心要のお前が行ったらダメに決まってるだろ」

さやか「うっ…確かに」

銀時に続く援軍として現れた三人にほむらは戸惑っていた、一体なぜ

ほむら「どうしてあなたたち三人が…戦える状態じゃなかったはずなのに……!」

マミ「フフ…簡単な治癒魔法くらいだったら私だって出来るのよ?」

ほむら「…………」

それにしてもおかしい、簡易な治癒魔法で完治するような怪我ではなかったはずだが……

さやか「知ってるかもしれないけど、私は魔法少女になるときに癒しの祈りで契約してるんだよね」

杏子「早い話がそいつをマミの治癒魔法と組み合わせたってことさ」

ほむら「!」

魔法少女と魔法少女の力を組み合わせる…?幾度もの世界の中でも経験していないことだった。

巴マミがワルプルギスの夜と戦って命を落とした世界でも、美樹さやかが魔女と化してしまった世界でも。

そんなことを試みた者は誰一人としていなかった。

それは、巴マミが錯乱せずに生存しており、美樹さやかが健在であり、杏子が他の魔法少女と協力しあったからこその結果。

魔女となった美樹さやかを全員で救い出すという奇跡が達成できたからこそ実現したことだった。

銀時「来てやがったのかテメーら…」

杏子「ボロボロのアンタは一旦下がってろ、ここは私が食い止める…その間に傷を治してきな!」

銀時「やれんのか、アイツら相当厄介だぞ?」

杏子「見くびるんじゃねぇよ馬鹿、私を誰だと思ってんのさ」

銀時「……死ぬなよ、ベジータ」

杏子「フン、大きなお世話……ていうか誰がベジータ?」

マミ「………よし、これでさしあたっては大丈夫かしら」

銀時「やるじゃねーかアースジェット、やっぱパーティに回復キャラは一人は必要だわ」

マミ「だ、だからアースジェットは……」

銀時「わーったよ、じゃあ巴マミとアースジェットの間を取ってノーマットで」

マミ「何で中間を取ってノーマット!?何なのそのスイッチ一つで蚊を落としそうな呼び方!」

銀時「蚊と同じ感じでワルプルギスの夜も撃ち落としてほしいという願いを込めました、マル」

マミ「いや作文じゃないんだから……」

ほむら「今は気にしている場合じゃないわノーマット、ワルプルギス打倒に全力を尽くしましょう」

マミ「ちょっと待って、さらっとあなたまでノーマットって言った?」

魔法少女三人の奇跡的な参戦、だがそれも大きく戦況を変えるには至らなかった。

杏子「チッ…コイツ、頑丈にもほどがあるぜ……!」

さやか「頑丈ってレベルじゃないでしょコレ…明らかにチートじゃない……」

さやか全力の斬撃も、杏子の槍撃も敵を止めるには至らなかった。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

出し惜しみなどしてはいられない、序盤から自らの持つ最大の技をマミは撃ち放つ。

マミ「……!」

その一撃すらもまるで効果が見られない。

ほむら「これだけ頭数がそろっていても…まるで歯が立たないなんて……」

銀時「……!」

その時、坂田銀時に電流走る。

銀時「だったら、あれをやるしかねーな……」

ほむら「…………あれ?」

銀時「まず二人がある程度の距離を置いて立つ…腕の角度に気を付けろ」

ほむら「……え?」

銀時「フュー……腕を反対にしながら二人が近づく、このとき動かす足は三歩分だ」

さやか「…………」

銀時「ジョン、手はグーに変える!やはり足の角度に気を付けろ!」

杏子「…………」

銀時「はっ!こうして二人の指を合わせ……」

全てを言い終わる前にほむらの鉄拳が炸裂した。

ほむら「こんな時くらいは真面目になったらどうかしら……」

銀時「ブウを倒すにはこれしかねーぞお前、もうホムラマミとキョウコヤカになるしかねーよ」

さやか「ブウって何!?いつからそんなのが目標になってたの!?」

さやか「ていうかホムラマミとキョウコヤカって何なの!?ただくっつけただけじゃない!」

杏子「…………」

マミ「佐倉さん…あなた、どうして腕を伸ばして立っているの?」

銀時「ま…冗談は置いといてだ、あのラピュタ撃ち落とすのは簡単じゃねェ」

銀時「さすがに俺もあんなデカい戦艦みてーな野郎と戦ったこともねーしな」

ほむら「……何か考えがあるの?」

銀時「とりあえず、あの化け物をこれ以上先へ進ませるわけにゃいかねェだろ」

銀時「上手くすりゃ怯ませるくらいのこたァできるかもしれねェ」

作戦自体は単純明快だった、それは最大限の火力攻撃を休むことなく浴びせ続けること。

ほむら「巴マミ、準備は出来ているかしら?」

マミ「ええ…いつでも問題ないわ」

その言葉を受けたほむらが時間を止める、今までと異なるのはほむらの体が触れているマミも動けることだった。

マミ「やれるだけやるしかないわね……行くわよ!」

具現化された大量の魔法銃をワルプルギスに向かって撃ち放っていく。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

加減した一撃ではない、全力の一撃が時を止められている間に蓄積されていく。

すでに十発を優に超える魔法攻撃が溜められていた。

ほむら「……そろそろ時が動き出すわ」

マミ「ここからはあの三人ね……!」

ほむらの魔法具がカチリと音を立てると同時、止められていた時が動き出した。

溜められていたマミの魔法攻撃が一気に魔女へと炸裂する。

さやか「よしっ!マミさんたちは成功したみたいだね!」

杏子「次は私らの番だよ、ここで一気に片付けちまおうぜ」

銀時「行くぜテメーら…!!」

魔法攻撃による攻撃が終わると同時、接近戦を得意とする三人が追撃を仕掛けて畳み掛ける。

共闘するのは初めてであったにも関わらず、互いが互いの邪魔をすることはなかった。

作戦の直前、銀時が二人に言い含めておいたこと。それは

決して止まるな、攻撃の手を休めるな、呼吸を乱すな

この三つだった。

ほむら「十分よ!もう一度時を止められるわ!」

銀時「離れろテメーら!」

三人が少し距離を置く、そして時が止められる。

マミ「時を止める間に私たちが遠距離から火力の高い攻撃を仕掛けて…」

マミ「暁美さんの時間停止が解けたら、次にそれが発動できるまで三人が追撃をする…か」

マミ「単純だけれど思いのほか上手くいくものね」

ほむら「…………」

たしかに単純と言ってしまえばそれまでだった。だが、単純ゆえに効率よく動いている策でもある。

ほむらやマミの攻撃は火力が高く遠距離攻撃であるため、接近戦を得意とする三人を巻き添えにする可能性もあった。

だがここまで極端に役割分担すれば、ほむらたちの攻撃が三人を巻き添えにすることもない。

そして、巻き添えになる危険がなければ三人も周りを気にせずに全力で魔女を叩くことができる。

現状の五人にとっては最も効率が良いと思われる戦い方だった。

遠距離、近距離の攻撃を何度繰り返したかは分からない。どれほどダメージが通っているのかも分からない。

だが、一つはっきりとした変化として

ワルプルギスの夜(魔女)「………………」

魔女が奇妙な笑い声をあげることがなくなり、そしてその進行自体が止まっていた。

ほむら(魔女が先に進めていない……!)

過去の世界では足止めすら出来ていなかった、時を戻す直前にはあの笑い声を嫌というほど聞いていた。

だが、今回は今までとは明らかに違う変化が表れている。ほむらにとっては良い意味で信じがたいことだった。

……だが

銀時(コイツの動きを止められようが…コイツを完全にぶっ壊せなきゃ意味がねェ!)

この策も、『ワルプルギスの夜を倒す』という根幹の目的を達成するには至らなかった。

三年Z組ー銀八先生!

銀八「えー、とりあえず一旦はここまでで終わっときます」

銀八「何とか今週の土日を使えば終わらせることができそうです、よかったよかった」

銀八「あと二日も空けてすいませんでしたマジで、色々あったんですね」

銀八「違うからね、決してゼル伝やったりしなかったからね、空き瓶でガノンドロフと戦ったりしなかったからね」

銀八「つーわけで色々とグダグダですがもうちっとだけ続きます、もしよけりゃ見てやってください」

再開します

まどか「何…これ……!」

壮絶な戦いを繰り広げる五人から少し離れた場に鹿目まどかは立っていた。

自分に何が出来るかは分からない、それでも何もせずにじっとしていることは出来なかった。

まどか「あれが…ワルプルギスの夜……!」

宙を浮かぶ巨大な魔女、戦いの経験がなくとも一目でその強さが伝わってくた。

五人は善戦しているようではあったが、苦しい戦いを強いられているのが見て取れる。

まどか「こんな…こんなのって……!」

そのまどかの声に反応したかのようにその場へ現れたのは

キュゥべえ「このままだと彼らは勝てないね」

まどか「キュゥべえ……?」

キュゥべえ「彼らなりに工夫して戦ってはいるみたいだけれど、それでも相手は舞台装置の魔女…現時点では最強の魔女だ」

キュゥべえ「このままジリ貧状態に陥ればまず間違いなく全滅するだろうね」

まどか「!」

キュゥべえの言葉は簡単に信じるべきではないことはこれまでの経験からも十分に理解している。

だが…今回ばかりはキュゥべえの言葉には一寸のまやかしもないように思える。

まどか「どうすれば…どうすればいいの…?」

キュゥべえ「どうしようもないさ、逃げろと言ったところで彼らが聞く耳を持つはずがないしね」

キュゥべえ「かといってこのまま戦いを続ければ彼らの敗北は目に見えている」

まどか「……!」

その時、まどかが返す言葉に詰まったのを見逃すはずもなかった。

キュゥべえ「でも…この最悪な状況でも手は残されているよ、まどか」

キュゥべえ「君の力さえあれば彼ら全員を助けることが出来る、ワルプルギスから人々を救うことができる」

キュゥべえ「君に秘められている力はそれだけとてつもないものなんだ!だから……」

キュゥべえ「僕と契約して魔法少女になってよ!」

まどか「…………!」

卑怯な誘い掛けだった、あたかも自らの勧める提案が最善の策であるかのように見せかける物言い。

五人が追い詰められて選択肢が狭まったこの状況を見計らっての言葉。

まどか「……そうやって私を契約しなきゃならない状況に追い込むつもりなんだね」

キュゥべえ「ひどい言い方をするね、これでも君にとっては最も良い選択肢だと思って提言してあげたんだよ?」

まどか「…………」

まどか「分かった…私、魔法少女になる……」

まどか「でも、その前に少しだけ……!」

‐‐‐

マミ「これだけ撃っても倒せないなんて……!」

ほむら「諦めるにはまだ早すぎるわ、進行を止めることは出来ているのよ」

さやか「けど…このままジリ貧状態が続いたら……!」

杏子「…………!」

さやかの力を借りたマミの回復魔法も完璧ではない、怪我は治せても消費した魔力まで完全に戻すことは不可能だ。

そして何より

魔力を消費すればするほど彼女たちのグリーフシードには穢れが溜まっていく。

これ以上の持久戦など出来るはずもなかった。

まどか『みんな、聞こえる?』

ほむら「!」

聞こえてきたのは守るべき大切な者の声だった。

さやか「まどか…まさか、アンタどこかにいるの!?」

まどか『うん…みんなの戦い、ずっと見てたよ』

ほむら「早くここから離れて!でないと……」

まどか『……ありがとうほむらちゃん、そしてごめんね』

まどかの伝えたかったこと、それは今まで自分のために戦ってくれていたほむらへの心からの感謝。

そして、これから自分がとる行動に対しての謝罪の言葉だった。

まどか『私…魔法少女になる』

ほむら「!?」

杏子「ば、馬鹿か!お前がそれをやっちまったら元も子もないんだよ!」

ほむら「止めてまどか!あなた、キュゥべえに騙されて……」

まどか『ううん、これは私が自分で考えて決めたこと……』

さやか「まどか…アンタ一体何を考えて……!」

まどか『……お願いみんな、私を信じて…必ずみんなを救って見せるから!』

銀時「…………」

決断しなければならなかった、無理にでも契約をやめさせるか…はたまたは……

ほむら「や、やめてまどか!お願いだから…魔法少女にだけはならないで!」

ほむら「約束したの!『キュゥべえに騙されたあなたを助ける』って!」

銀時「……今のアイツはキュゥべえに騙されてるわけじゃねェ、てめーの頭で考えて悩み抜いて答えを捻りだしたんだ」

ほむら「!」

マミ「暁美さん……」

杏子「ここまで来たら…私らにはアイツを信じてやることしかできないのかもな」

さやか「私は信じるよ…魔女になった私を最後まで信じてくれたまどかだったら!」

ほむら「…………」

それが彼女たちの出した結論だった。

まどか「ありがとうみんな、私を信じてくれて……」

キュゥべえ「もう心は決まったようだね、じゃあ改めて聞くよ…君の願いは何だい?」

ここで願いを言えばもう引き返すことは出来ない、戦いから逃げ出すことは出来なくなる。

だが、不思議とまどかに恐怖はなかった。そして、必死に考えて出した自らの結論を言葉にする。

まどか「私の願いは…………!」

『全宇宙の過去から未来において…魔法少女を含めた全部の人が過ごすはずだった、一つの平和な日々をあの魔女の倒して取り戻すこと』

キュゥべえ「そ、その願いは……まさか君はそこまでの……!」

それはあり得ない願いだった。

過去に凄惨な戦いを繰り広げていた魔法少女が平和な日々を手にするということ。

彼女が戦いのない日々を送るには魔女、もしくはそれに類するものの存在があってはならない。

つまり、本来あるはずだった魔女という存在を無に帰すということだ。

すべての時間軸と場所の概念を超越する神のごとき願い。

願いにこたえるかのように輝くソウルジェムが具現化され、光とともにまどかの体は魔法少女の姿となる。

それはまさに鹿目まどかが魔法少女となった証明であり、彼女の願いが叶えられたことを意味していた。

ほむら「ま、まどか……!」

まどか「そんな顔しないで…ほむらちゃん、私なら大丈夫だから」

杏子「考えるのはあとからだ…今はアイツを倒すことだけを考えろ」

---

キュゥべえ「やれやれ、まさかこの宇宙の因果そのものをひっくり返すような願いをするとはね……」

離れたところからキュゥべえは事の成り行きを興味深そうに窺っていた、もはやどちらが勝とうが問題ではないらしい。

魔法少女のエネルギーを利用して宇宙の延命をすること…それが彼の役割だった。

だが、まどかの願いで魔女という存在自体が否定されてしまえば一体どうなるのだろうか?

それは考えても分かることではない、ならば今は目の前の戦いを観察しているほうが有意義と言える。

キュゥべえ「でもねまどか…君は一つ失敗してしまったようだ、君の願いが本当に叶うとは限らないよ」

キュゥべえ「ワルプルギスの夜の本当の力を君たちはまるで分かっていない」

---

この戦いを終わらせてみんなを救う、その思いを胸にまどかは魔力によって生み出された自身の弓を構えた。

そこから繰り出される絶大な威力を持った一撃によって悪夢に終止符を打つ、その思いを胸に。

銀時「……!?」

異変に気が付いたのは銀時だった、敵である魔女が先ほどとは若干変わっているように思える。

それは『姿』が変わっているわけではない…『体勢』が変化しているのだ。

そう…先ほどから奇妙な感覚はあった、敵対している魔女は明らかに不格好というべきだった。

まるで『本来あるべき頭が下に来ている』かのような外観…それが今、元に戻ろうとしているかのような……

銀時「ちょっと待てオイ…まさか……!」

まさか…あの野郎は今まで『逆さ』になった状態で俺たちと戦ってやがったのか?

それはあの魔女にとってはまるで子供の遊び、そう考えればあの笑い声をあげていたことも得心がいく。

だが…銀時たちによる決死の攻撃によってあの魔女の何かを刺激してしまった。

そしてその頭が本来の位置に戻った時……

魔女にとってのお遊びは終わりを告げる。

銀時「離れろテメーらァァァァ!!」

まどか「…………!」

本能的に危機を感じたまどかが反射的に弓を放ったのと魔女が動きを見せたのはほぼ同時。

その瞬間、暴風が吹きすさびその場にいるもの全員を吹き飛ばした。

さやか「み、みんな……?」

風によって巻き上げられた粉塵は完全に視界を遮り、状況を確認するのは困難だった。

今は聴覚でしか互いの居場所を知ることができない。

マミ「わ、分からないわ…でも……私たちは無事みたいね」

杏子「くそっ…何がどうなったってんだ!」

時がたつにつれ徐々に視界が回復してくる、そしてその時見えた光景は

まどか「うっ……!」

仲間をかばって傷ついた鹿目まどか、そして無傷のまま空を浮かぶワルプルギスの夜だった。

ほむら「ま、まどか!!」

不思議ではあった、なぜ町を吹き飛ばさんほどの衝撃があったにも関わらず自分たちが無傷だったのかが。

まどか「大丈夫…みんな……?」

それはすべてまどかがその身と魔力を犠牲にして仲間を守ったからに他ならない。

だが、仲間を守った代償も大きかった。

ほむら「まどか…その腕……!」

血にまみれたまどかの両腕はだらりと垂れさがり既に全く力が入っていない、戦闘においては致命的だった。

さやか「ま、マミさん!早くまどかの腕を治してあげて!!」

必死に叫ぶさやかに応えたマミはまどかに駆け寄り治癒を始めようとしたが

まどか「…ダメだよさやかちゃん、今の私を治す魔力があるんだったら……それは残しておかないと……」

マミ「何言ってるの鹿目さん!そんなこと言ってる場合じゃ……」

まどか「今の私は…あの魔女を一撃で倒せるだけの魔力が残ってないんです」

そう、彼女は地球の文明すべてをひっくり返すような魔女の攻撃をその身一つで押さえ込んだのだ。

それも防御魔法などではない、ただ己の膨大な魔力をとっさに利用して無理やりに押さえ込んだのだ。

そんな無茶をしたまどかにワルプルギスの夜を仕留められるだけの力が残っているはずもなかった。

杏子「嘘だろ…それじゃ……!」

最悪のイメージが頭に浮かぶ、だがまどかの目からは未だに希望の光は失われていない。

まだ手は残されていた。

まどか「私ね…過去や未来、全宇宙の法則を越えて一つの平和を取り戻すっていう願いをしたの……」

美樹さやかは癒しの祈りで契約をしたことで、圧倒的な回復力を手に入れた。そして鹿目まどかは

まどか「……私の魔力の本質は分裂している多くの力を一つにすること」

バラバラになっていた運命を一つにまとめ上げる、結束の力を手にしていた。

ほむら「……!」

杏子「つまり…私ら全員の力を文字通り一つにすれば…アイツに勝てるってことか?」

まどか「それが多分…私たちに残された最後の望みだと思う」

銀時「ここまで来たらやるしかねェ…足掻くだけ足掻いてみようじゃねーか」

まどか「でも…あの魔女を倒すにはみんなの力を限界まで借りなきゃいけない、そうなったら……」

ほむら「魔力を使い果たした私たちは動くことが出来なくなる…そういうことね」

さやか「じゃ、じゃあ誰が攻撃を……!」

銀時「…………」

銀時「……俺がやるしかねーな」

杏子「死ぬかもしれねぇぞ…アンタ……!」

もともと魔法少女としての契約を交わしていない銀時は魔力自体を使えるような存在ではない。

ましてや複数の魔法少女の力を一つにした魔力を扱えばその身がどうなるかの保証もできないだろう。

だが銀時は

銀時「生憎と俺ァしぶといのが取柄でな、そう簡単にくたばりはしねーよ」

それは己の覚悟と信念を強く心に抱いているからこそ発せられる言葉だった。

杏子「……フン、面白いじゃねぇか」

そういうと杏子は髪をほどき、立膝になって手を組み、祈りを捧げるかのような姿勢を取った。

杏子「そうだったよな…アンタはさやかのときも最後まで諦めなかったもんな……」

杏子「いいよ、私はアンタだったら望みを託せるよ…坂田銀時……」

さやか「私も一回は先生に助けられた命だからね……信じてるから、先生のこと」

マミ「……私もあなたには感謝してる、美樹さんの時…本当に弱い自分から立ち直らせてくれたからね」

他の二人も杏子と同じく手を組んだ、恐怖の焼きついた表情ではなく穏やかな笑顔を浮かべながら。

まどか「……最後の最後で先生に任せちゃってごめんね…でも、先生なら安心して私たちの未来を預けられるよ」

杏子「……フン、面白いじゃねぇか」

そういうと杏子は髪をほどき、立膝になって手を組み、祈りを捧げるかのような姿勢を取った。

杏子「いいよ、私はアンタだったら望みを託せるよ…坂田銀時……」

さやか「私も一回は先生に助けられた命だからね……信じてるから、先生のこと」

マミ「……私もあなたには感謝してる、美樹さんの時…本当に弱い自分から立ち直らせてくれたからね」

他の二人も杏子と同じく手を組んだ、恐怖の焼きついた表情ではなく穏やかな笑顔を浮かべながら。

まどか「……最後の最後で先生に任せちゃってごめんね…でも、先生なら安心して魂を預けられるよ」

……こんな時まで二重投稿とかもうふて寝したくなる

ほむら「…………」

ほむらに残されている魔力、それは時間遡行のために温存しておいた最後の魔力。

それを銀時に受け渡すことは…『過去』へ戻る扉を自らの手で閉ざすことを意味していた。

ほむら「……不思議ね、どうしてこんな気持ちになっているのかしら」

少女は決心した、『過去』へ戻る扉にはもう未練はない。自分が進まなければならないのは

ほむら「私たちの『未来』はあなたに託すわ……銀時」

希望に満ち溢れた『未来』でなければならないのだから。

五人の魔力は銀時の持つ木刀に集中して一つになると巨大な光の刀身となった。

それはまるでいつぞやの陰陽師家で銀時が振るった刀を彷彿とさせる。

銀時「テメーらの魂…確かに預かったぜ……!」

銀時は宙を浮かびこちらの様子を窺っているかのような魔女を真っ直ぐに見据えた。

そして

銀時「舞台装置の魔女っつったか…テメーの作った下らねェ脚本の舞台なんざで俺たちは踊るつもりはねーよ」

かつて、自らの師が教えてくれた言葉を頭に思い浮かべ

銀時「明けねェ夜なんざ存在しねーんだ…そろそろお天道さんの顔を拝ませてもらうとしようじゃねーか」

―――敵を斬るためではない弱き己を斬るために

―――己を護るのではない己の魂を護るために

―――そして、己の大切な者の魂を護るために

銀時「ウオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!」

持てる力のすべてを使い、最後の斬撃を放った。

その途方もない力を秘めた一撃によって空を覆っていた厚い雲が斬り払われれ、隙間から太陽の光がこぼれ出す。

銀時「これで…シメーだァァァァァァァァァァァァァ!!」

六人が結束して生み出した一撃を魔女は躱すことなくその身に受けた。

あの笑い声すらあげる暇もなかったらしい。

宙を浮かぶ魔女の体は真っ二つに二分され地上に着く前に灰となって消え去った。

―――今、この瞬間を持って

―――決戦は終わったのだ。

銀時「…………」

キュゥべえ「まさかそんな方法でワルプルギスの夜を倒せるとは思わなかったよ」

キュゥべえ「個人的にはワルプルギスを倒せずにまどかたち全員が絶望して魔女化してくれたほうが良かったんだけれど…」

銀時「失せろコノヤロー…テメーの面なんざ見たかねーよ」

キュゥべえ「……じゃあ、君の望み通り僕はこの場から立ち去ることにするよ…でもね、一つだけ言っておくよ」

銀時「……?」

キュゥべえ「確かに君たちはワルプルギスの夜を倒してこの世界を救った、魔女という存在自体を消滅させた」

キュゥべえ「それによって過去と未来の魔法少女たちの運命も変えられたわけだけれど…」

キュゥべえ「君たちの行った改変がすべて正しかったと思うのは大きな間違いだ」

銀時「…………」

それだけ言うとキュゥべえはどこへともなく立ち去って行く、言葉の意味するところを問いただしてもよかったがそれはしなかった。

訊かずとも大体の意味は分かっていたからだ。

まどか「せ、先生……?」

銀時「よう、気が付いたか」

さやか「あれ…私たち……?」

マミ「魔力を使いすぎて…意識を失っていたみたいね……」

杏子「そんなことよりあの魔女は……!」

銀時「ああ、何とかなったわ、うん」

杏子「いや…あれだけ苦労させられて何とかなったわ、の一言かよ……」

銀時「つーかこれ銀さん英雄だよホント、王様から表彰とかされたりしねーの?」

まどか「あはは、それはないんじゃないかな……」

杏子「ていうか全部自分の手柄みたいに言ってんなよ!」

さやか「ま、まあまあ……」

ほむら「…………」

何でもないような言い合い、くだらないことで笑いあう仲間たち。

それはとても代えがたく尊いもので…戦いの日々が終わりを迎えたことを意味していた。

ほむら「うっ…うう……」

少女の目から零れ落ちた涙、それは決して悲しみのものでも絶望のものでもなく

まぎれもない、喜びの涙だった。

杏子「ったく…ポロポロ泣いてんじゃねーぞ」

ほむら「私…私はやっと……!」

杏子「だから…泣くなって言ってんだろ…馬鹿……」

銀時「…………」

銀時「ま、とりあえず世界の危機ってのも終わったみてーだし、ひとまずはよかったじゃねーか」

まどか「うん…みんなと先生のおかげだよね」

さやか「うえっ…もしかして明日からまたテストとかあるんじゃ……!」

銀時「心配すんな、あんなモンもう二度とやらねーよ」

さやか「えっ。そうなの?よかった…あんなんで成績つけられたらたまったモンじゃないからさ」

銀時「ああ…そうだな……」

あんなテストはもうない、その言葉の意味するところをその場にいる全員が理解していなかった。

銀時「じゃあなテメーら」

さやか「……え?」

耳を疑った、今一体彼は何と言った?

ほむら「な…何を言ってるの……?」

銀時「何って…言葉そのままの意味に決まってんだろ」

銀時「俺とお前らはここでお別れだ」

杏子「お、オイ…それってどういう……!」

銀時「……説明してる時間もほとんどねェらしいな」

まどか「せ、先生!?」

目を疑う光景だった、目の前にいる人間が足の先から光のようになって消えていっている。

少女たちには何が起きているのか理解できなかった。

ほむら「ぎ、銀時!これはいったいどういうこと!?」

叫ぶかのような大声を出してほむらが銀時に問いかける、対する銀時は至って冷静だった。

銀時「まどかの奴が言ったのは…『全員が過ごすはずだった平和な日々を取り戻す』ってことだったろ?」

銀時「まあアレだよ…元々テメーらが過ごすはずだった世界には俺は存在してねェってわけだ」

ほむら「!」

忘れていた、彼は前に自分で言っていた…異世界から来た人間であると。

銀時「まどかの願いが叶って魔女がいなくなったってんなら…俺もこっからは消えることになるんだろうよ」

ほむら「そ…そんな……!」

杏子「ちょっと待てよ…それじゃアンタが消えちまうだけじゃない……!」

杏子「アンタの存在自体がこの世界じゃあり得なかったことになる…ってことは」

杏子「私たちがこうして出会ったことも…全部なかったことになるじゃねぇか!」

まどか「そ、それって……!」

さやか「先生のことも…私たちは忘れちゃうってこと…!?」

銀時「…………」

キュゥべえの言っていた言葉…それはつまり、こういうことだったのだ。

さやかを救うため共に戦ったことも、馬鹿をやって騒いだことも、魂を預けて魔女と戦った記憶も

すべてがなかったことになる。

銀時「ま、大したことじゃねェだろ。テメーらが気にすることじゃねェ」

ほむら「でも…でもあなたは!私たちのために命を懸けて戦って!何度も何度も死にそうな目にあって!」

ほむら「それなのに…この世界の誰からも忘れ去られて…あなたが世界を救ったこともなかったことにされて…!」

それは、幾度にもわたって時をさかのぼってきた暁美ほむらだからこそわかる痛み。

誰かから忘れ去られる痛みを誰よりも知っている彼女だからこそ分かる痛みだった。

銀時「…………」

銀時「俺ァ誰かの記憶に残りたくてこんな面倒くせーことやってたわけじゃねェ…」

自らの体が光となって消え行く中、銀時は目を閉じて口元で静かに笑っていた。

銀時「今回は目の前の大切なモンをこぼさずに掬い取れた…俺ァそれだけで十分だ」

ほむら「銀時……!」

さやか「でも…こんな終わり方なんて…こんな別れ方なんて……!」

銀時「止めろ馬鹿、俺ァ湿っぽいのは好きじゃねェ…なら、もうやるしかねーな」

銀時「全員並べェ!出席を取るぞォォォォォ!」

まどか「!」

杏子「は…はぁ……?」

マミ「しゅ、出席……?」

銀時「アレだよ、こっちじゃ一応教師ってことになってるし?やることはやっとかねーとな」

銀時「めんどくせーからアイウエオ順な、じゃあ最初…暁美ほむらー!」

ほむら「は、はい……?」

銀時「……今までよくやったじゃねーか、中学のガキとは思えねーよ」

銀時「ただ…これからはてめーを作らねェで正直に生きな、泣きてェ時には泣いて笑いたきゃ笑え、いいな」

ほむら「……そうね、検討してみ…」

銀時「それだそれ、もうそういう冷静キャラみてェなの作らなくていいだろ?」

ほむら「……フフ、確かにね」

ほむら「……ありがとう、銀時先生」

銀時「じゃあ次は…鹿目まどかー」

まどか「は、はい」

銀時「悪かったな、最後の最後に契約させちまってよ」

まどか「ううん…あれは私が自分で考えて決めたことだから……!」

銀時「お前に言いてェのはアレだな…もう少し適当になれってことだな」

まどか「て、適当……?」

銀時「何でもかんでも真面目に一人で背負いこみすぎなんだよお前は、たまには他人に迷惑かけてもいいじゃねーか」

銀時「お前には迷惑かけられるダチ公がたくさんいるんだろ?」

まどか「……そうだね、私…もっと気楽に生活してみるよ!」

まどか「ありがとうね、先生…!」

銀時「じゃあ次…佐倉杏子ー」

杏子「わ、私は別にアンタの教え子ってわけじゃ……」

銀時「とある母ちゃんが言ってたぞ、田舎じゃ誰かの家の母ちゃんはみんなの母ちゃんだ、みてーな?」

杏子「……??」

銀時「まあ細かいことは置いといてだ…最初はよくも石ぶつけてくれやがったなコノヤロー」

杏子「お、覚えてたのかよ…あれはわざとじゃないって……」

銀時「ま…あれがなけりゃこうして顔合わせてることもなかったわけだしな……」

杏子「…………」

銀時「何はともあれお疲れさんだったな…さやかを元に戻せたのもお前が必死こいて戦ったからだしよ」

杏子「……別に感謝されるようなことしてねェよ馬鹿、調子狂うんだよ」

杏子「……ありがとな、色々と」

銀時「……あ、言い忘れてたわ…お前間違ってもチンピラになるんじゃねーぞ、椿平子とかそんな感じの」

杏子「…………???」

銀時「えー次は…巴マミ(ノーマット)ー」

マミ「どうしてあなたは巴マミと書いてノーマットと読むの……?」

銀時「本気と書いてマジと読むのと同じ理屈です、ありがとうございました、はいじゃあ次ー」

マミ「終わり!?私、まだ何の言葉も受け取ってないんだけれど!?」

銀時「心配すんな、一割冗談だから」

マミ「九割は本気ってことよね、それ」

銀時「冗談は置いといてだ……えー……」

マミ「…………?」

銀時「……特にないんでパス」

マミ「何で私だけそんな感じ!?」

銀時「まあアレだ、お前の場合はもう少し汚れてもいいんじゃねーか?」

マミ「よ、汚れて……?」

銀時「綺麗なやり方ばっかじゃ見えてこねぇこともあんだろ、泥臭ェやり方でもいいじゃねーか」

銀時「どんなことでも最後までやり抜いてみな、そうすりゃ新しい道だって見えてくんだろ」

マミ「諦めない心…ね、先生…ありがとう」

銀時「最後…美樹さやかー」

さやか「はい!」

銀時「お前はいろいろ引っ掻き回してくれやがって…こっちの身にもなれってんだ」

さやか「ご、ごめん……あの時の私、どうかしてて……」

銀時「あんだけのことがあったんだ、もう進んでく方向を間違えはしねェだろ」

さやか「え…うん、多分」

銀時「心配いらねェよ、テメーはもう大切なモンを持ってる…俺が保証してやらァ」

さやか「ありがと…先生」

銀時「さて…と、もういよいよ時間がねーな……」

さやか「……行かないでよ、先生」

銀時「そればっかは無理だな、俺にもどうにもならねーしよ」

杏子「…………」

銀時「テメーらが俺を忘れようがそれでつながりが切れるわけじゃねェ…」

銀時「魂がつながってるなら…俺とテメーらはずっとダチ公なんだからよ」

さやか「……私、絶対忘れないから!先生のこと、全体に!」

杏子「私も…絶対に!」

マミ「また…いつか必ず!」

まどか「必ずまた一緒に……先生!」

ほむら「……これが永遠の別れだなんて言わせない、また会う日を楽しみに待ってるわ」

銀時「……ああ、いつか…な」

―――そして、次の瞬間

―――坂田銀時という名の存在はまどかたちの世界から完全に消え失せた。

---

銀時「…………」

新八「銀さん、何でトイレの前で寝っころがってんですか…風邪ひきますよ?」

銀時「なあぱっつぁん、もしお前魔法が使えたらどうするよ?」

新八「何ですか急に魔法って…でも…そうだな、多分最初はありきたりなことからやると思いますよ?空を飛んだりとか」

銀時「だったらアレだ、あと二十年間彼女作らねェでムラムラしながら過ごせば魔法使いになれるから、頑張れよ」

新八「しばき倒しますよアンタ」

---

まどか「ほむらちゃん!おはよう!」

ほむら「まどか!おはよう!」

あの日以降、私の持っていたソウルジェムは跡形もなく消え去っていて、魔女の姿もキュゥべえも見ることはなくなった。

それはまどかたちも同じなようで今の私たちは平和な日々を過ごしている。

……ただ、私を除く全員は魔女の存在を覚えていない。

魔女がきっかけとなった杏子とさやかの出会いも私が知っているものとは食い違いが発生している。

二人はゲームセンターでダンスゲームを一緒に対戦したことがきっかけで知り合いになったことになっているらしい。

何故私だけが魔女の記憶を持っているのかは分からない…時間遡行の能力を持っていたことが関係しているのだろうか?

……もっとも、今はそんなことはどうでもいい。

そう、魔女の存在を忘れているということは…一緒に戦ったあの人のことも忘れているのだ。

仕方のないことだとは思ってもやはり心のどこかでは割り切ることができない。

まどか「あっ、さやかちゃんたちだ!」

さやか「よっ!まどかとほむらじゃん!今日も仲がよさそうで…妬けちゃうなー」

マミ「おはよう、二人とも」

杏子「しっかしいい天気だなー、あの白い雲とかのんびり浮かんでてさぞかしいい気分だろうな」

ほむら「…………」

ふと、彼のことが頭をよぎった…彼は今も元気でやっているのだろうか……

杏子「私さ、ああいう雲見てると…思い出しちゃうんだよな」

ほむら「!」

マミ「そうね、元気でやっているといいんだけれど……」

さやか「大丈夫だって!またいつかひょこっと顔だしたりするんじゃない?」

ほむら「……!?」

まさか…覚えている……?魔女たちのことは完全に忘れているのに……?

ほむら「みんな…もしかして……」

まどか「ほむらちゃん、それ以上は……ね?」

見ればまどかは笑いながら口元に指を当てて、それ以上の言葉は言うべきでないとのしぐさをした。

ほむら「ま…まどか……?」

まどか「……さあ、学校に行こう!みんなも遅刻しちゃうよ!」

ほむら「…………」

ほむら「フフ……」

そうか…つまりは、そういうことだったのだ。

銀時

私たちは忘れないわ

いつでも、どこででも、私たちのために戦ってくれていたあなたがいたことを

私たちが生きている限り、私たちとあなたの繋がりは…永遠に途切れたりしないわ

あなたのおかげで…私は…私たちは……

だから、もう一度だけ言わせて?

―――ありがとう

fin

ED『SIGNAL』(KELUN)

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、ギリギリになっちまいましたが何とか終わらせることができました」

銀八「今日はもう遅いんであれこれ書いたりはしませんが、時間があったら何か書くかもしれません」

銀八「つーわけで本編自体はここで完結です、ここまで読んでくれた物好きな連中にゃホント感謝だな」


こんな出来になってしまいましたが、最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

番外編的なアレ

職員室

さやか「喧嘩…しちゃった……ほむらと」

銀時「ふーん…そうなんだ、頑張ってね」

さやか「…………」

さやか「いや…教え子が相談に来てるんだからちょっとくらい話聞いてよ」

銀時「いいよそういうのめんどくせー、どうせロクでもねェ理由だろ」

さやか「……きっかけは映画ドラえもんの最高傑作は何かって話だったかな」

銀時「どうすんだコレ、想像以上にロクでもねーぞ」

さやか「『のび太の恐竜』か『ワンニャン時空伝』かで……」

銀時「ワリーな、俺ァ『鉄人兵団』派だから」

さやか「何だっけそれ…最近リメイクされた奴だったっけ?」

銀時「何お前、鉄人兵団知らねーとか人生の七割無駄にしてんぞ」

銀時「リルルの可愛さ半端ねーよ、旧作では治療されるときに全裸で胸まで見せてたからね」

銀時「クライマックスの自分を犠牲にして人間を救うシーンとか泣けたわホント」

銀時「そんで最後に笑いながら再登場した時の感動は言葉に出来ないからね、小田和正だからね」

さやか「ごめん銀さん、話がそれてるから元に戻したいんだけど」

銀時「で、結局何をしろってんだ?」

さやか「……仲直りするの手伝ってくれない?」

銀時「謝っちまえばいいだろ、馬鹿かお前は」

さやか「なんていうか…こう…自然と仲直りしたいみたいな……?」

銀時「おーおー、めんどくせェことを好き勝手言いなさる」

さやか「何とかならない……?」

銀時「…………」

銀時「つーわけだ、お前らも協力しろよ」

杏子「くっだらねぇ、何でそんなことの手伝いしなきゃならねぇんだよ」

まどか「ま、まあまあ…さやかちゃんも真剣に悩んでるんだから協力してあげようよ」

マミ「そうね…何かしてあげられることがあるなら喜んで手伝うけれど……」

さやか「銀さん…何かいい案があるの?」

銀時「大丈夫だって、ドラマチックな感じで自然とくっつけてやるから」

まどか(嫌な予感しかしないよ)

某所

ほむら「…………」

ほむら(さっきは言い過ぎたかしら…もう先に謝ったほうが……)

BGM『アーアーアーアー♪』

ほむら「な、何…この音楽……?」

銀時「何だ、またステファニーとの揉め事を起こったのか…オーケー、パパに任せるんだ」

ほむら「え?」

銀時「おいでー、ミシェール」

ほむら「誰そのミシェルって!?どこのフルハウス!?」

BGM(杏子)『エッビウェイユロ~、えっびうぇ~ふんふぁ~♪』

ほむら「しかも歌詞うろ覚え!?どこで歌ってるの!?」

---

さやか「めちゃめちゃ怒ってたんだけど、『あなた私を馬鹿にしてるの!?』って」

銀時「やっちまったなー、配役はやっぱDJで行くべきだったか」

杏子「やっちまってるのはアンタの頭の中だろ」

マミ「何か別な手段を考えないとね……」

まどか(絶対に謝っちゃうのが一番早いと思うんだけどなぁ……)

杏子「よし、じゃあ次は私の作戦だな」

さやか「何?どんな作戦?」

杏子「まず、このリンゴで……」

さやか「ごめん、やっぱりいい、オチが見えた」

杏子「何だよ!私のリンゴが食べられないってのかよ!」

銀時「何これ、どこの飲み会?」

マミ「じゃあ…こんなのはどうかしら?」

まどか「マミさん?」

マミ「暁美さんが好きなその映画を褒めてみるっていうのは……」

さやか「何か露骨に媚売ってるみたいで…大丈夫ですか?」

マミ「……言われてみればそうかもしれないわね」

銀時「心配すんだ、誰も期待してなかったから」

マミ「どうしよう、美樹さんを助ける前に私を助けてほしいんだけれど」

銀時「ったくやってらんねーよ、俺ァ先に帰らせてもらうぜ」

さやか「ちょ、ちょっと先生!そりゃないって!」

銀時「大丈夫だって、ガキの時の喧嘩なんざ二、三日すりゃ勝手に収まってるモンだ」

さやか「そ…そうかもしれないけれど……」

まどか「せ、先生…ホントに帰っちゃうの?」

銀時「もうあれだ、最終手段のあたしンちAC作戦でいく」

まどか「え、AC作戦……?」

‐‐‐

ほむら(……もう今日は帰るべきね)

銀時「よう、今日は一人か?」

ほむら「何かしら…あなたには悪いけれど、今の私はあまり機嫌がよくないの」

銀時「そうかい、だったらさやかから預かったコイツァ渡さねェほうがよさそうだな」

ほむら「さやかから……?」

‐‐‐

ほむら(これ…CD?なんで今さらこんな……)

ほむら「……とりあえず…再生」

CD『こんにちはー、ありがとうー、さよならー、また会いましょう♪』

ほむら「…………」

ほむら(何がしたいの…こんなCDなんかで……)

CD『仲直りのー(なかなおりのー)、言葉は見つからないけど』

ほむら「!」

CD『帰ろうよ、帰ろう、帰ーろーうよー、仲直りでー♪』

ほむら「…………」

‐‐‐

さやか「どうしよう…結局謝れなかったなぁ……」

ほむら「……さやか」

さやか「あっ…ほ、ほむ……!」

ほむら「……一緒に帰りましょう」

さやか「……え?」

ほむら「あんなに気を使ったことをさせてごめんなさいね…むきになった私が悪かったのに」

さやか「あ…うん、べ…別にいいよ!それに私だって悪かったんだし……」

さやか(気を使ったって……何のことだろ?)

‐‐‐

銀時「ったく、とんだ出費させやがって……しかもあのCD探すの無駄に大変だったぞ」

杏子「アンタも素直じゃねぇな、あんな回りくどいことするなんて」

マミ「でも…よかったわね、仲直りできて」

銀時「よかねーよ、財布が軽すぎてもうパチンコにもいけねーぞ、これから暑くなる時期だってのに財布にゃ寒波が襲来してんだけど」

まどか「しょ、正直千円でそこまで変わるとは思えないけど……」

キュゥべえ「話は聞いたよ!美樹さやかと暁美ほむらを仲直りさせることが君たちの願いだね!」

キュゥべえ「その程度のことなら僕と契約すれば簡単に……」

ガシッ

キュゥべえ「え?」

銀時「フォーク投げんぞ、準備しとけ」

杏子「いつでもいいぞ、どっからでもこい」

キュゥべえ「え?え?」

銀時・杏子「いっつもウロチョロしやがって鬱陶しいんだよコノヤロー!」カキーン!

キュゥべえ「へばぁ!?」

‐‐‐

ほむら「見て…流れ星よ」

さやか「ホントだ、きれいだなー」


―――キュゥべえ、ほむらとさやかの仲直りを祝福する星となる。

HAPPY END?

三年Z組ー銀八先生!

銀八「はい、つーわけで適当にアドリブで考えた番外も何とか終わりました」

銀八「本当はもうちっと別なストーリー考えてたんですが尺の問題で諦めました、すんませんねマジで」

銀八「ちょっとこっから本編の蛇足的補足するんで、そういうの見たくない奴はスルーしてください」

銀八「今回は途中からシナリオをガラッと変えました、気まぐれ的な感じで」

銀八「本当はさやかは魔女化しなかったし、まどかも魔法少女になったりする予定はなかったんですね」

銀八「ただそれだと色々とアレだと思ったんで…まあ、その場のノリってことで勘弁してください」

銀八「しかしその場のノリって怖いな、ワルプルギス戦でエヴァ初号機に乗ったシンジさん出そうとか思ってたし?」

銀八「これだって最初は禁書二期で書くつもりがいつの間にかまどかになってたくらいだからね」

銀八「他にも弁明したい部分は色々ありますが…ぐちゃぐちゃ言っても仕方ないんでこの辺で終わっときます」

銀八「じゃあ改めて最後に…ここまで読んでくれた奴ら、本当にありがとうさんでした」


最後までお疲れ様でした、時間とって読んでくれて本当にありがとうございました。

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