魔女「ケガァァァァァ!!!」剣士「!?」(115)

~ 魔女の森 ~

剣士(この森に住むという魔女……)

剣士(ある者は、天使のように微笑む絶世の美女だったと陶酔し……)

剣士(またある者は、悪魔のように恐ろしい形相をしていたと恐怖する……)

剣士(森の近くにある町の人々ですら彼女を恐れ、正体をはっきり知る者はいない……)

剣士(──面白い!)

剣士(魔女の正体、この俺が暴いてやる!)

剣士(悪い魔女なら退治すりゃいいし、いい魔女ならお知り合いになってやる!)

はよ

ガサガサ……

剣士(疲れた……森歩きは慣れてねーからな……)

剣士(もう一時間は歩いたが、魔女なんて影も形もないじゃんか)

剣士(どうなってやがる……)

剣士「あれ? この場所さっき通ったような……」

剣士(あれ、もしかして俺迷った?)

剣士(いやいやいや、ちゃんとマーキングしながら来てたし……)

剣士「…………」キョロキョロ

剣士(あ、どこにマーキングしたのか分からなくなっちゃった)

剣士(──やべえ!)

迷った!

タッタッタ……

剣士(やべえ、マジやべえ!)

剣士(いくらなんでも適当に歩きすぎた! 森をナメてた!)

剣士(道分かんなくなっちまった!)

剣士(このままじゃマジで出られなくなる!)

剣士(くそっ! どうしよっ!)ガッ

ドダッ!

剣士「あだだっ……!」

剣士「くっそ、手ぇすりむいちまった……」

剣士「大丈夫だとは思うが、一応消毒しとくか……」

ドドド……

剣士「──ん? なんだこの音」

剣士「魔女のおまんこなんかに絶対負けないぞ!」











剣士「おまんこには勝てなかったよ……」

的な展開を希望

ドドドド……

剣士「ん?」

ドドドドド……

剣士(なんだ? このけたたましい足音は……?)

ドドドドド……!

剣士(イノシシかなんかか? いや、イノシシだってこんな音出さないだろ……)

ドドドドド……!

魔女「ケガァァァァァ!!!」

剣士「!?」

もうスレタイか
糞作の予感

>>8
心配すんなって
ここから読者を翻弄する展開、意外な真相、そして感動の結末が俺たちを待ってるんだから

魔女「シィィィィィ!!!」ドドド…

剣士「お、女!?」

剣士(すげえ形相だ!)

剣士(まさか、あのすげぇ殺気の女が──魔女か!?)

剣士「へ、へへ……面白え。この俺と戦うつもりか?」チャキッ

剣士「俺はこれでも、こないだの王国剣術トーナメントで第四位の実力──」

魔女「テェェェェェ!!!」ドドド…

剣士「…………」

剣士(怖え!)

剣士(逃げよう!)

>>10
メダルもらえないやん

魔女「ルゥアァァァァァッ!!!」

ドドドドド……!

剣士「うわぁぁっ!」

タッタッタ……!

魔女「マァテェェェェェッ!!!」

ドドドドド……!

剣士「ひぃぃぃぃぃっ!」

タッタッタ……!

はよはよ

タッタッタ……!

剣士「ハァ……ハァ……ハァ……」チラッ

剣士(あの魔女……なんつうスピードだよ!)

剣士(森での走り方に慣れてるってだけじゃない!)

剣士(純粋に速ええ!)

剣士(俺も逃げ足──足の速さにゃ自信があるのに、みるみる追いついてきやがる!)

剣士(でも、追いつかれたらまちがいなく殺られる!)

剣士(あの殺気は尋常じゃねぇ!)

剣士「うわぁぁぁっ! だれかぁぁぁっ!」

剣士「ハァ……! ハァ……! ハァ……!」ガクッ

魔女「…………」ザッ

剣士「へっ……もう逃げられねえ……」ハァハァ…

剣士「抵抗しようにも……剣を振るう体力も残ってねえや……」ハァハァ…

剣士「煮るなり……焼くなり……好きにしてくれ……」ハァハァ…

剣士「あ、やっぱ火系の殺し方はやめて……」ハァハァ…

魔女「お前、手を怪我してる」

剣士「え……? ケガ?」

剣士(殺気が消えて……普通の女に……)

魔女「だから、治す」スッ…

剣士「え……? え……?」

2chのSSの形態だと説明台詞を()の中に入れちゃったりしないといけなくて大変だよね

魔女「大丈夫、すぐ終わる」

剣士「え?」

魔女「すぐ終わるッ!」ビキメキッ…

剣士「ひっ!」

剣士(またさっきの殺意丸出しの形相になった!)

魔女「終わるンダァァァァァッ!!!」ビキビキッ

剣士「あわわわわっ!」

パァァァ……

剣士「…………」

剣士「すり傷が……一瞬で消えた……」

魔女「治った」ニコッ

剣士(おお……いい笑顔)

魔女「お前、なんで森に来た?」

魔女「もし迷い込んだのなら、森の外まで送るが」

剣士「いや……俺は魔女に会いに来たんだ」

魔女「私に!?」ドキッ

魔女「サイン、あるぞ」スッ…

剣士(サイン!? なんで!?)ギョッ

剣士「いや……いらない、かな」

魔女「そう」シュン…

剣士「ま……ぶっちゃけるとだ」

剣士「この森の近くにある町の連中が……みんなアンタを恐れてる」

剣士「それで、俺に依頼をしてきたんだ」

剣士「アンタのことを調べてくれってな。場合によっては退治を、と」

ハゲ「毛ガァァァァァ!!!」
剣士「!?」

魔女「退治!?」ビクッ

魔女「退治するというのなら、私も戦うぞ!」ニコッ

魔女「さぁ、来い!」ニマァ…

剣士(なんで満面のスマイルなんだよ)

剣士「安心しな……危険がなきゃ、退治するつもりはねえから」

剣士(つうか、どう考えても勝てねえし)

魔女「そ、そうか」ホッ…

魔女「ならとりあえず私の家、来るか?」

剣士「いいのか?」

魔女「うん、怖がらせてしまった礼をしたい」

~ 魔女の家 ~

剣士「へえ、質素だけどけっこうキレイだな」

魔女「ありがとう!」

魔女「サイン、やるぞ!」

剣士「結構です」

魔女「そうか」シュン…

魔女「じゃあ料理作るから、ちょっと待ってろ」

剣士「お、ありがとう」

剣士(とはいったものの、不安だ)

剣士(魔女の作る料理ってどんなんだろうな……)

剣士(デカイ鍋で、蛇やらトカゲやらをグツグツ煮るって感じなのかな……)

剣士(あの笑顔にやられて来ちまったけど、やっぱ来るんじゃなかったな……)

魔女「待たせた!」コトッ

剣士(おお、キノコと野草料理か。ゲテモノじゃなくてよかった……)

魔女「まずかったら、遠慮なくいえ」

剣士(魔女相手にそんなこといえるかよ……)

剣士(どんなにクソ不味くても、スマイルしなきゃ──)モグッ…

剣士「!」

剣士「うん」

魔女「どう?」

剣士「うん、うん、うん、うん、うん」モグモグ…

魔女「どう?」

剣士「うん、うん、うん、うん、うん、うん、うん、うん、うん、うん」モグモグ…

魔女「どう?」

剣士「うるせえ! こんな美味い料理久々なんだ! 黙って味わわせてくれ!」

剣士「────!」ハッ

魔女「…………」

剣士「あ……いや、ごめんなさいっ! 今すぐ感想を申し上げるので──」

魔女「ううん、いい」

魔女「ありがとう!」ニコッ

剣士(出た! いい笑顔!)

俺も食べたい

剣士「……ところでさ」

魔女「ん?」

剣士「俺を追ってきた時や、俺を魔法で回復する時……」

剣士「なんであんな、殺気に満ちた鬼のような形相をしてたんだ?」

剣士「少なくともアレが、人から恐れられる要因の一つになってるはずだ」

剣士「あれは正直いって怖い。怖すぎる」

魔女「ああ、あれか?」

魔女「あれはな──」

この魔女はレイプしたくなる魔女ですね~ (^ ^)

魔女「魔法というのは、本来人を呪ったり、攻撃したり、負の効果をもたらすもの」

魔女「そういった魔法はどんな感情の時も使うことができるんだが」

魔女「傷を回復するといった、本来の性質じゃない正の性質を持った魔法を使う時は」

魔女「自分から殺気や怒りといった、負の感情を出さなければ使えないんだ」

剣士「なるほどな~」

剣士「ニコニコ笑顔のままじゃ、回復魔法みたいな明るい魔法は使えないのか」

剣士「魔法ってのも便利なようで、けっこう面倒なんだな」

剣士「でも、俺を追っかけてた時もあの形相だったのはなんでだ?」

魔女「あれはすぐにお前を治療してやりたかったから」

魔女「自分の脚力を魔法で強化していたんだ」

剣士「どうりで、ドドドドと速かったわけだ……」

バーバ・ヤガー的な

剣士「魔女さん。だいたい君のことは分かった!」

剣士「町の人には、君は危険がない魔女だって伝えておくよ」

魔女「ありがとう!」

魔女「そうなれば、町の人もっと森に来るか?」

剣士「来るかもしれないな」

魔女「料理用意した方がいいか?」

剣士「あの味なら、まちがいなくウケると思うよ」

魔女「サイン用意した方がいいか?」

剣士「まあ……あってもいいかもしれない」

魔女「じゃあお前、第一号! やる!」バッ

剣士「あ、ありがとう……」

剣士(色紙かと思ったら銅板に書いてあるし……重いなコレ)ズシッ…

明日の粗大ごみですね

剣士「それじゃ」

魔女「もう行くのか!?」

剣士「俺も、もっとゆっくりしていきたいけど……」

剣士「あんまり帰りが遅いと、町の人も心配するしな」

剣士「君は危険がない魔女だっていっても」

剣士「洗脳かなんかされたんじゃって、思われるかもしれないし」

魔女「……そうだな。そうかもしれないな」

魔女「また来たくなった時のために、地図も渡しておく! もう迷うなよ!」

剣士「お、サンキューな」

剣士「あ、あと魔女さん」

剣士「殺気立ってる顔はちょっと怖いけど……」

剣士「笑ってる顔はすげー可愛いよ!」

魔女「!」

魔女「あ、あ、あ……」

剣士「?」

魔女「ありがとうな!」

剣士「おう、じゃあな! また来るよ!」

魔女「絶対来い!」

みてる

~ 町長の家 ~

町長「ふむ、それが本当ならば、魔女に危険はなさそうじゃな」

剣士「はい」

剣士「むしろ、彼女も外の人間を歓迎したいといってました」

剣士「一応、彼女からもらった地図を写しておいたので、お渡しします」

町長「そうか、ご苦労だった」

剣士「では、失礼します」

剣士(また明日、会いに行こうっと)

ギィィ…… バタン

町長「…………」

町長「さて、と」

町長「ちゃんと聞いておったな? ──三人とも」

戦士「全て聞いた」

闘士「案外チョロイ相手みてぇだな」

剣豪「ぃよぉーしっ!」

町長&戦士&闘士「!?」ビクッ

剣豪「せっかくここに、剣術トーナメント一位から三位まで揃ってるんだ!」

剣豪「明日、魔女をサクッと狩っちゃおう!」

町長「よろしく頼むぞ」

まぁこうなる気はしてた…

翌日──

~ 魔女の森 ~

剣士「フンフ~ン」

剣士(今日は魔女さんともっと親しくなろうっと)

剣士(大切にしてますアピールのために、昨日もらったサインも持ってきたし)

剣士(もしかしたら、二人きりでいいムードになれたりして……)ムフッ

剣士「──ん?」ササッ



戦士「地図によると、この方角だな。直線距離は短いようだ」ザッザッ

闘士「腕がなるぜ」ザッザッ

剣豪「魔女狩り、一度やってみたかったんだ! ルンルン」ザッザッ



剣士(剣豪! 戦士! 闘士!)

剣士(剣術大会の上位三人じゃないか!)

剣士(いったいなんでこんなところに……?)

剣士「あのう……」

戦士「ん? 剣士か」

闘士「おう」

剣豪「やぁ! 四位君じゃないか!」

剣士(順位で呼ぶなよ)

剣士「剣術トーナメントの上位陣が、こんなところで揃って何してるんだ?」

剣豪「決まってるだろう?」

剣豪「魔女狩りさ!」キラッ

剣士「!」

剣士「ちょっと待ってくれ!」

剣士「なんでそんなことするんだ!」

戦士「町長の依頼だ」

闘士「そういうこった」

剣士「いやいやいやいや、おかしいって!」

剣士「だって俺は、町長さんに魔女に危険はないって、昨日伝えて──」

剣豪「ハッハーッ!」

剣豪「町長はね、君より前にすでにボクらを雇っていたんだねー!」

剣豪「最初から町長に、魔女と和解する選択肢ナッスィング!」

剣士「……え?」

剣豪「でもなんの前情報もなしに、ボクらを投入して全滅したら大損だろ?」

剣豪「だ、か、ら!」

剣豪「ボクらに次ぐ実力者であり、お人好しそうな君でぇ?」

剣豪「魔女の実力や性質を見定めようとしたんでーす!」

剣豪「ドンドンパフパフー!」パチパチ…

剣士(いちいちうざいな、コイツ)

剣士(それより……ってことは、町長さんは最初から俺を捨て駒のつもりで……)

剣士(魔女さんを殺すつもりで……)

剣士(マジかよ……)

剣豪「ま、君のおかげで魔女に危険はないって分かった!」

剣豪「おかげでボクら三人、リラックスして狩りに行けるのさ! ありがとさん!」

剣豪うぜえ

剣士「ま、待てよ!」

剣士「俺だって魔女さんに、今後は町の人と仲良くできるかもっていっちゃったんだ!」

剣士「魔女狩りなんかやらせるかよ!」

剣豪「ハッハーッ! 君、ナイス度胸! いいね、すっごいね!」

戦士「一人で我々三人を食い止めるつもりか?」

闘士「四位の分際で、笑わせてくれるぜ!」

剣士(剣術トーナメントの時、俺は緊張して実力を出し切れなかった!)

剣士(それを差し引いても剣豪には到底及ばないが──)

剣士(二位三位の、戦士と闘士には勝てる自信がある!)

剣士(コイツらも一人相手に複数で襲いかかるマネはしないはず!)

剣士(一対一で戦士と闘士を倒して、剣豪にもなんとか手傷を負わせれば……)

剣士(魔女さんが助かる可能性はグンと上がる!)

ハゲ「毛があああああ」

ハゲスレ

剣豪「ぃよぉーっし、ここは──」

剣豪「ボクが相手しよう!」ビッ

剣士「え」

戦士「わざわざ優勝者たる剣豪殿が相手するまでもないと思うが」

剣豪「まあまあ、いいからいいから」

剣豪「戦士君と闘士君は先に魔女の家付近で、待っていてちょーだい!」

剣豪「ボクは彼を片付けてから追いつく!」

戦士「了解した」ザッザッ

闘士「あいよっ!」ザッザッ

剣士(ちょ、ちょ、ちょ、待て!)

剣士(最悪の展開じゃねーか! これじゃ一人も減らせねーぞ!)

剣豪「じゃあ、レッツバトル!」ダッ

ビュオンッ!

剣士(ひいっ!)

ビュオッ! ビュアッ! ビュンッ!

剣士(速いっ! やっぱりコイツ、こんな性格だがメチャクチャ強え!)

剣豪「おやおやー? 急に逃げ腰になっちゃったね!」

剣豪「もしかして、戦士君か闘士君と戦うつもりでいたのかな~?」

剣豪「二人のどちらか、あるいは両方を倒して、少しでも魔女をラクにしようと~?」

剣士「ず、図星だ!」

剣豪「ハッハーッ! やっぱりねぇ~」

素直すぎワラタ

剣士(作戦変更! みじめにへりくだって何とかしよう作戦だ!)

剣士「ま、待って下さいっ! ──剣豪様!」

剣豪「ん~?」

剣士「なぜ魔女を狩るんですか!?」

剣士「たしかに魔法を使えますが、性格は穏やかで危険はないんです!」

剣士「こんな依頼、断ったっていいじゃありませんか!」

剣豪「ハッハ、君はちょっちズレてるねえ」

剣士「え?」

剣豪「魔法は使えるが、危険はない? なんで君にいいきれる?」

剣豪「町長のような力のない人間にとってはね、力のある奴はそれだけで怖いのさ」

剣豪「ぶっちゃけ、いない方がいいのさ」

つまりこの三人も殺されるんだな

剣豪「それはボクや君も例外じゃあない」

剣豪「もしその気になれば、ボクなら町の人間を楽勝で全滅できる」

剣豪「先に向かった二人や、君でもうまくやれば半分以上殺せるだろう」

剣士「そ、そんなことするか!」

剣豪「だけどさ。できるってことは、やるかもしれないってことさ」

剣豪「やるかもしれない、だけで弱い人は怖いんだよ」

剣豪「怖くて夜も眠れなぁ~い」ブルブル…

剣豪「あいにくボクは弱い人に怖がられて魔女みたく孤独に生きるよりは」

剣豪「弱い人に頼られて地道に金を稼ぐような生き方をしたい」

剣豪「そうするためには、この力で彼らの依頼を誠実にこなすしかないんだ」

鶴屋さんにみえてきた

魔女は何系の魔法を使うんだ?

剣豪「説明以上! さ、どうする? 続ける? 帰る?」

剣豪「ボクとしても、ターゲット以外を斬る趣味はないからねぇ~」

剣豪「できれば今のボクの演説に感銘を受けて、大人しく帰って欲しいんだけど」

剣豪「どう?」

剣士「……ありがとう」

剣士「アンタは正しい」

剣士「町長が俺やアンタらを使って、魔女を亡き者にしたいって気持ち……」

剣士「力のあるアンタが、力のない人から嫌われたくない気持ち……」

剣士「よく分かる」

剣士「町長が俺を捨て駒みたいにしたことにも、しょうがないかって気になった」

剣士「でもね」

剣士「今のを聞いてもやっぱり、俺は魔女を助けたいって気持ちが消えない!」

剣豪「うんうん」

うんうん

剣士「だから──勝負だ!」チャキッ

剣豪「ぃよし!」

剣豪「いい目になった!」

剣豪「これで精神的には互角! 少しは楽しめるかもしれなーい!」

剣豪「ささ、早く来たまえ」クイクイ

剣豪「先に向かった二人は多分、ボクを待たずに魔女に襲いかかるぞぉ!」

剣士(たしかに……!)

剣士「うおおおおっ!」ブンッ

ガキンッ!

ちょっといい奴でワロタ

~ 魔女の家近く ~

ガサッ……

戦士「あれが魔女の家か……」

戦士「剣豪殿が追いつき次第、奇襲をかけよう」

闘士「なぁ……」

闘士「俺らだけで殺って、さっさと帰っちまわねえか?」

闘士「うまくいきゃ、報酬二人占めできるぜ」

戦士「だがそうなると、剣豪殿が黙っては……」

闘士「なぁに、優勝者サマがそんなケチ臭いこといえねえって」

闘士「だいたい俺はアイツが気にくわねえ」

闘士「いっつもヘラヘラ、しまりのない笑い浮かべやがって」

闘士「とてもまともに剣の鍛錬してるツラじゃねえ。才能だけでやってるタイプだ」

闘士「ずば抜けた才能持ってるからって、調子こきすぎなんだよアイツ」

戦士「……まあな。たしかにあの態度は腹立たしいものがある」

闘士「決まりだな、殺るぜ!」

みてるよーがんばれー

魔女「なんだお前ら」

戦士&闘士「!?」ビクッ

戦士「うおあああっ!」ザッ

闘士「い、いつの間に後ろに!?」ザザッ

魔女「私になにか用か?」

魔女「サインか? サイン欲しいのか?」ニコッ

戦士(なんていい笑顔だ……美しい)

闘士(つられて笑いそうに──って)

闘士「サインなんかいるか! 俺らはてめぇの命をもらいに来たんだ!」チャキッ

戦士「私怨はないが覚悟!」チャキッ

闘士「笑ってる場合じゃねえぜ、魔女さんよォ!」チャキッ

魔女「そうか、サインいらないのか」シュン…

戦士「しいいっ!」ブンッ

闘士「でりゃああっ!」ブンッ

魔女「なら、仕方ない」

魔女「お前たちが、私の命を狙うなら──私も戦う」ニンマリ

戦士&闘士(なんでこの局面で笑う──!?)



ズドォンッ!

~ 魔女の森 ~

ザシュッ!

剣士「うぐっ……!」ササッ

剣士(つ、強い……!)

剣士(なんか今日、今まで生きてきた中で一番調子いいのに……全く通用しない!)

剣豪「ハッハ、今のはうまくしのいだね。しぶといしぶとい」

剣豪「でも、君じゃボクには勝てな~い」

剣豪「さてここでクエスチョン」

剣豪「ボクは先の大会で優勝したけど、なんで優勝できたと思う?」

剣豪も魔法使えるのか

剣士「え、そんなもん一番強いからじゃ……?」

剣豪「ちが~う」

剣豪「あの大会はトーナメント」

剣豪「つまり唯一ボクだけ、誰にも負けてないのさ!」

剣豪「一方の君たちは全員、誰かしらに負けてる!」

剣豪「剣の世界で無敗と一敗! この差はあまりにもデカイ!」

剣豪「アレがもし実戦なら、生き残ってたのはボク一人!」

剣豪「単に強いなんて言葉じゃ片付かない差ね、これ」

剣豪「負けない運命、勝ち続ける運命、とでもいうべきかなぁ~?」

ビュオンッ! ザシッ!

剣士「がっ……!」ガクッ

おい魔女怪我してるやつがいるぞ
早くするんだ

剣士「な、なんで……アンタはこんな、強いのに……」ググッ…

剣士「そんなに……おちゃらけてるんだ……?」チャキッ

剣豪「逆、逆!」

剣豪「剣を極めたくば礼儀正しくあれ、厳格であれ、とかよくいうけどさ」

剣豪「あんなもん、ボクにいわせりゃなに道草食ってんのって感じさ」

剣豪「本当に剣に没頭したら、他のとこに気ィ回す余裕なんかないんだな」

剣豪「ボクみたくなるのが普通なんだな」

剣豪「君も、戦士君も闘士君も、とても剣に没頭してるようにゃ見えんねぇ」

剣豪「そんな余裕がある君らが、ボクは羨ましいったらなかったよ」

剣士(そういうもんなのか……?)

剣士(この理論が正しいかはともかく……この人が強い理由が分かった気がする)

剣士(さっきの弱い人云々の話を聞く限り、元は案外マジメだったのかもしれない)

剣士(でも剣の鍛錬に没頭するあまり、そこに全エネルギーを使うために)

剣士(他の部分がどんどん崩れて、ゆる~くなっていったんだろう)

剣士「──よし!」

剣士「だったら俺も、アンタみたいに素の自分を出す!」

剣豪「?」

剣士「俺は危険のない魔女を守りたいといったが、あれはウソだ」

剣士「本当は──」

剣士「彼女を助けていい仲になりたいな、と思ったから戦う!」チャキッ

剣豪「へぇ~……いい感じに力みが抜けたな。好きになれそうだね、今の君」

剣士「ふんっ!」ブンッ

キンッ! ザシッ!

剣豪(このボクが傷を!?)

剣豪(……これは素晴らしい!)

がんばるじゃん

朝まで残ってますように

剣士「うおおおおっ!」

キンッ! ギンッ!

剣豪(剣は己の心)

剣豪(心構え一つで格段にレベルが上がることもあるっていうけれども)

剣豪(ホントにあるんだな~……こりゃすごい)

ガキンッ!

剣士(よし……戦えてる、戦えてるぞ!)ザザッ

剣豪「いいね!」ザザッ

なんだホモか

すると──

魔女「待ったぁっ!」

剣士「魔女さん!?」

剣豪「ん……」

剣豪(これが……魔女か。へえけっこう可愛いじゃないか)

魔女「そっちの奴! お前の仲間はもう私がやっつけた!」ポイッ

ドサッ……

戦士「なんと美しい、笑み……」ピクピク…

闘士「アハ、アハハ……」ピクピク…

剣豪「あらら……」

魔女「剣士! ここからは私がやろう!」

剣士「…………」

剣士「待ってくれ、魔女さん」

剣士「この剣豪って人は、剣に文字通り全てを捧げた人だ」

剣士「俺とて未熟だけど剣の使い手……それなりのプライドは持ってる」

剣士「勝負を中断して、後は任せますってわけにはいかない」

剣士「少し、待っていてくれ」

魔女「剣士……」

剣豪「ハッ! いぃーねぇ!」

剣豪「ちょっと善戦できたぐらいで、もうボクに勝てるつもりか~い?」

剣豪「ハッハーッ! 実にいいよ、その楽天的思考! 別にイヤミじゃなくてさ!」

剣士「そんなんじゃねえや」

剣士「優勝者には優勝者のプライドがあるんだろうが」

剣士「四位には四位なりのプライドがあるんだ!」

剣士「つあっ!」シュバッ

剣豪「あらよっと」ヒョイッ

剣豪「後控えてるし、悪いけど終わりにするよ?」

ザンッ……!

剣士「ぐ、は……っ!」ドザッ

魔女「!」

剣豪「はい終了~!」

剣豪「いいスジしてたし、できれば生かしてやりたかったけどね……」

剣豪「さぁ~て、始めようか魔女君! ボクと君でラストバトルだ!」チャッ

魔女「ゆ……」

魔女「許さない……お前……」ゴゴゴ…

剣豪(なんだ? このおぞましいほどの殺気は!?)

魔女「剣士、いいヤツだった……」

魔女「私のご飯を、ほめてくれた」

魔女「私のサイン、いらないのにもらってくれた」

魔女「私なんかに、優しくしてくれた」

魔女「お前、許さない! 許さナイィッ!!!」

ゴゴゴ……!

剣豪「ぐっ……!」ビリビリ…

剣豪(なんだコイツ!? とんでもない殺気だ!)

剣豪(さっきまでとは別人じゃないか!)

剣豪(か、体が動かない……!)ビリビリ…

魔女「覚悟しろ!」

支援

剣士「ま……」

剣士「ま、待った!」ヨロ…

魔女「剣士!」

剣士「魔女さん、その怖い顔はやめな。君は笑顔の方が絶対いいって」

魔女「!」

剣士「剣豪……勝負はこれからだ……!」グッ…

剣豪「あらら……生きてたかい」

剣豪「このボクが仕損じるなんてね。どうも今日は調子が悪い」

剣豪「でもま、立つんなら斬っちゃうよ」チャッ

魔女「休んでろ、剣士!」

剣士「…………」ヨロッ…

剣士「あ、ちょっと待った」

剣豪「ん?」

剣士「あのさ……」

剣士「俺のサイン、欲しくない?」

剣豪「サイン!?」ギョッ

剣豪「だ、だれが君のサインなんか──」

剣士「今だぁぁぁぁぁっ!」ビュアッ

ズバァッ!

剣豪「きゃあ、あ……っ!」ヨロッ…

剣豪「なんでいきなり、サイン……?」ガクッ

ドサッ……!

剣士「…………」

剣士「勝った!」ビッ

魔女「卑怯だ!」

支援

魔女「でも、よかった」ホッ…

魔女「バッサリ斬られてたのに、なんでそんなに元気なんだ?」

剣士「懐に魔女さんのサインを入れてたおかげさ。おかげで傷が浅かった」スッ…

魔女「おお!」

剣士「ついでにコイツで、さっきの作戦を思いついたんだ」

剣士「いくら性格が破綻してる剣豪でも」

剣士「いきなりサインやるよっていわれたら、一瞬ぐらい戸惑うはずだってね」

魔女「四位のプライドはどこいった?」

剣士「だって、まともじゃ逆立ちしても勝てないし……」

魔女「ま、いいか!」

魔女「とりあえずコイツら、剣を奪って、私らを襲ってこれない程度に治癒しておこう」

戦士「屈辱だ……」タタタッ

闘士「覚えてやがれ!」タタタッ

剣士「魔女さんに傷を治してもらったってこと、忘れんなよ!」

魔女「治スゥゥゥゥ!」パァァ…

剣豪「うぅ……!」

魔女「治った」ニコッ

剣豪「……ふぅ」ムクッ

剣豪「……負けた上に情けまでかけられるとは。今日は厄日かなぁ~」

剣士「剣豪、もう魔女さんを襲わないな?」

剣豪「ハッハ」

剣豪「剣もないし、あっても魔女君には勝てないだろう。ボクの完敗さ」

魔女「ところで、お前。いや、お前たち、か」

剣豪「ん?」

魔女「なんで私、狙った?」

魔女「私に恨みがあったのか?」

剣豪「なぁ~んもないさ、なぁ~んもね」

剣豪「ただ、その気になればボクすら軽く殺せる君の魔力や魔法ってのを」

剣豪「恐れる人がいたってだけの話さ」

魔女「……町の人か?」

剣豪「ハッハ、ご想像にお任せするよ」

剣士「…………」

支援

魔女「いや……私、分かってた」

魔女「みんなに恐れられてるって」

魔女「私、この森にいない方が、みんな幸せだって」

剣士「魔女さん! そんなことないって!」

魔女「いや、そうなんだ」

魔女「だって私はさっき──」

魔女「あやうくこの森も町も何もかも、丸ごとふっ飛ばしてしまうところだった」

剣士「……え?」

剣豪(あ~あ、やはりね)

魔女「前に話したが……」

魔女「魔法というのは、本来負の効果をもたらすもの」

魔女「だから正の魔法を使うには、負の感情をわざわざ出さなきゃならない」

魔女「だからもし、殺意や憎悪といった感情をむき出しで負の魔法──」

魔女「すなわち、攻撃魔法を放ったら──」

魔女「おそらく──」

魔女「お前たちも、森も、町も、全てを灰にしていた……」

剣士「そんなことに……なるのか……」

剣豪「ワァ~オ」

剣士(そうか……俺が魔女さんを退治するっていった時、満面の笑みを浮かべたのは)

剣士(負の魔法である攻撃魔法を正の感情で放つことで、威力を最小限にとどめ)

剣士(俺を殺さないためだったのか……)

剣士(戦士と闘士を倒した時も……多分そうしたんだろうな)

剣士「……だったらさ」

剣士「俺と一緒に旅に出よう!」

魔女「えぇっ!?」

剣士「今すぐ町の人と仲良く……ってのは正直難しいだろう」

剣士「それにここにいると、また魔女さんを狙う連中が来るとも限らない」

剣士「そうなったら、いずれ魔女さんが殺されるか、あるいは森や町が灰になるか──」

剣士「俺としても、そんなのはどっちもイヤだ」

剣士「何より君は、やっぱり笑ってる顔が一番可愛い」

剣士「俺はそこまで強くないけど、笑われ──笑わせるのは得意な方だからさ!」

剣士「いつも笑えるようになったら、きっとみんな怖がらず受け入れてくれるさ!」

魔女「あ、ありが、とう……」グスッ…

剣士(よし! これで俺と魔女さん二人旅だ!)

しえん

剣豪「ハッハーッ! いぃ~ねぇ~」

剣士「?」

剣豪「だったらボクもついてくよ」

剣士「え!?」

剣士「いや、俺と魔女さん二人だけでいいって……」

剣士(なんで余計なこといいやがるんだ、コイツ)

剣豪「だって、旅の途中で弱っちい君がまた死にかけたり死んだりしたら」

剣豪「魔女君、殺気全開魔法撃っちゃうよ? 君の護衛が必要だろ~う?」

剣豪「力を使いたくない魔女君に、守ってもらうわけにもいかないだろうしさ」

剣士「いや、まぁたしかに……否定できんけど」

魔女「おお、お前も来てくれるのか! よろしく!」スッ…

剣豪「ハッハ、よろしこ」ガシッ

剣士(あ~あ、剣豪と魔女さんがくっつく未来が確定した。プランが崩れた)

剣士(二人の結婚式の司会は俺で決定だな……トホホ)

支援

魔女「私、嬉しい!」

魔女「男友達と女友達、同時にできた! こんなの初めてだ!」

剣士「ハァ?」

剣士「バカいうな、俺は男だぞ」

剣士「たしかにヒゲは薄いけど、これでも二日に一回は剃ってんだ!」

魔女「なにいってるんだ、お前」

剣士「へ?」

剣豪「ハッハ、君も失礼な男だねえ~。というより見抜いた魔女君がすごいか」

魔女「男と女は、生命力の流れが全然ちがうからな。私はすぐ分かる」

剣士「え、え、え」

剣士「剣豪、アンタ女かよ!?」

剣豪「これでも一応ね」

剣士(近頃の女は強いってよくいうけど──)

剣士(二人とも気が強いとかじゃなく、武力的な意味で俺よりつえーじゃねえか!)

支援

しえん

剣豪「ハッハ、ドン引きかい? ドンドン引き引きだろ? こんなのが女なんてさ」

剣豪「一応これでも昔は乙女チックだったりしたんだよ?」

剣士「いや……たしかに女だってのには驚いたけど、純粋にすげえよ」

剣士「肉体的な面では絶対に男より不利なアンタが」

剣士「剣術大会でダントツ優勝する……これがどういうことなのか」

剣士「いったいどれ程の鍛錬を積み、どれ程の犠牲を払ってきたのか」

剣士「性格すら変わっちまうほどの剣への執着……俺なんかじゃ敵わないわけだ」

剣士「そして、魔女さんも──」

剣士「膨大な魔力を内に秘めながら、それをひた隠しにして暮らしてきた」

剣士「とてつもない重圧だったことだろう」

剣士「こんなこと軽々しくいっちゃいけないかもしれないけど」

剣士「いや、ホントにマジですごい。俺は男として、心から二人を尊敬するよ……!」

剣豪「バッ、バカか! やめてくれ、むずかゆい!」

魔女「もっと褒めてくれ! サインやるから!」

剣豪「……コホン。これで剣士君。男一人に女二人!」

剣豪「両手に花じゃないか! モテ期ってやつじゃないのかぁい?」

剣士「そ、そうだな」

剣士(花っつうかマンドラゴラだな)

魔女「とりあえず、どこに行くんだ?」

剣士「そうだな……これからの季節は暑いし、涼しい場所にでも」

剣豪「ハッハー、ノープランすぎやしないかい?」

魔女「よぉ~し、私サインいっぱい書くぞ!」

剣士(まぁ……多分何とかなるだろ! 俺より強いのが二人もいるし!)



こうして両手にマンドラゴラ剣士の、ノープラン旅が始まるのであった……。





                                    おしまい

つまんない
死んで

おつ

躊躇なく人に死んでと言えるのって凄いなぁ
想像力の欠如も才能の一種ってことかなぁ (^ ^)

>>94
ひどすぎわろたwwwwww

>>94
最後まで読んだのにこの反応

つまりツンデレ!?

つまりVIPを極めすぎて性格がゆがんでしまったわけか

面白かった。最初ケアルガを高速詠唱してるのかと思ったわ

途中でそっとじするほどでもないけど褒める気もおこらない程度のはなしだった

乙!普通だった!


旅も見たいな

普通よりちょっと面白かった、魔法の設定が好き

乙です

毛がァァァァァァァ
抜けた

なんか剣豪の顔をまつげバチバチのケツアゴで想像してたから
ちょっと混乱してる

面白かった乙!

面白かったぜよ

>>1
ハゲスレかと思いきや正統派だったでござる

>>109
そんなワンパンマンに出てきそうな化け物出し抜こうとか思わんだろwww

魔女ちゃんが激おこぷんぷん丸するとカム着火インフェルノしちゃうわけですね

なんともさわやかなSSだった乙

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