ほむら「我が心と行動に一点の曇りなし…!全てが『正義』よ」(188)

ジョニィ「すまない…」

ジョニィ「信じたかった…本当に大統領を信じたかった…」

ジョニィ「さようならジャイロ…」


  ス パ ァ ァ ア ァ ァ ン


ヴァレンタイン「――――」

ヴァレンタイン(悔いはない…既に次の手は打ってある…後はDioが聖なる遺体を手に入れる為に行動する)

ヴァレンタイン(わたしは最後まで国の為に生きた…その繁栄を見る事が出来ないのが残念だが…)

ヴァレンタイン(我が心と行動に一点の曇りなし……全てが…)


……………

………

 ドォ―――z___…ン


ヴァレンタイン「…ッ!?」

ヴァレンタイン(何処だ、ここは…!)

ヴァレンタイン(わたしは確か…ジョニィの『爪弾』の攻撃を受け…)

ヴァレンタイン(最後の説得も失敗に終わり……)

ヴァレンタイン(あの想像を絶する苦痛は…ゆ、夢にしては…)

ほむら「…………」

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン(…なんだ、コイツは…)

ほむら(いきなり地面の中から飛び出てきた…)

ほむら(…一体何者?この男)

ほむら「…ねぇ、貴方」

ヴァレンタイン

ヴァレンタイン「君は英語が話せるのか?見た所アジア系のようだが」

ほむら「何を言っているの、貴方が日本語を喋っているんじゃない」

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン「…なんだと?」

ヴァレンタイン(わたしは『英語』で会話しているつもりだし、向こうの言葉も英語で聞こえるのだが)

ほむら「貴方、一体何者?突然地面の中から出てくるなんて現象として有り得ない事よ」

ほむら「しかもコンクリートの中から」

ヴァレンタイン(…聞き取れる…全て聞き取れるぞ…)

ヴァレンタイン「こっちも質問がある、ここは何処だ?」

ヴァレンタイン「アメリカじゃあないのか?」

ほむら「………?ここは日本よ、記憶喪失なの?」

ヴァレンタイン「…日本だと?確かノリスケ・ヒガシガタの故郷だとかいう…」

ヴァレンタイン(どういう事だ…考えがまとまらない)

ヴァレンタイン「質問を重ねるようで申し訳ないが、此方の詮索はせずに聞いてほしい」

ほむら「構わないけど……あまり多く質問されても答えられるか解らないわよ」

ヴァレンタイン「問題ない、質問はただの1つだけだ。約束する」

ヴァレンタイン(この世界…見る限り、わたしが知っている『現代』よりも明らかに文明が進んでいる)

ヴァレンタイン(わたしが知っている範囲ではそもそもこんなに『自動車』は走ってなどいないし)

ヴァレンタイン(路面の整備が完全に整っている)

ヴァレンタイン(であれば質問は………)

ヴァレンタイン「SBRレースはどうなった?」

ほむら「…………?」

ほむら「SBRレース?生憎F-1に詳しくはないの」

ヴァレンタイン「F-1?…馬のレースだが?」

ほむら「馬のレース…?聞いた事が無いわ、どういうレースなのかしら」

ヴァレンタイン「世界初の『北米大陸横断レース』だ、総距離6000kmを馬で駆ける」

ヴァレンタイン「世界中で注目の集まったレースなのだがな」

ほむら「そんな有名なレースだったら、もっとニュースになっていてもいい気がするけど」

ヴァレンタイン「どうなったか…もしくは、どういう状況でレースが進行しているか知らないというワケか」

ほむら「そうね、1度も聞いた事が無いわ」

ヴァレンタイン「…そうか、有難う」

ヴァレンタイン(決まりだな…この世界、どうやら元々わたしが居た『基本世界』ではない)

ヴァレンタイン(あれ程大規模かつ注目度の高いレースが…『1度も聞いた事が無い』は有り得ない)

ヴァレンタイン(そして…この文明の発達、まず間違いなく『SBRレースが行われるより前の世界』ではない)

ヴァレンタイン「これからわたしは、恐らく君にとって荒唐無稽な話をするだろうが聞いてくれ」

ヴァレンタイン「わたしは別世界…別次元からやって来た」

ほむら「…っ!?」

ヴァレンタイン「名はファニー・ヴァレンタイン…やって来た西暦は1891年」

ヴァレンタイン「わたしはその世界ではアメリカ合衆国の大統領をやっていた、第23代目の大統領だ」

ヴァレンタイン「『とある抜き差しならない事情』により、元の世界に存在する事が出来なくなった」

ヴァレンタイン「わたしはこの世界の事を何も知らない」

ほむら「…そう、お生憎様ね」

ヴァレンタイン「疑わないのか?」

ほむら(…………似たような事をしている、とは言えないわね)

ほむら「別に…嘘をついているようには見えないもの」

ヴァレンタイン「信じてもらえて感謝する」

ほむら「でもそれで?どうしろと言うの?元の世界に戻る前に飲み物でも欲しいのかしら?」

ヴァレンタイン「いや、それは無理だろう…わたしはもう元の世界に『拒絶』された、されたも同然だ」

ヴァレンタイン「『戻る』事が出来ればどんなにいいだろう…勿論戻りたい」

ヴァレンタイン「…だが恐らくそれは不可能だ、この世界は『基本世界』から根本的にずれてしまっている」

ヴァレンタイン「『少し隣の』…ではない、最早那由他の彼方までわたしは飛ばされてしまった」

ほむら「…何を言っているか解らないわ」

ヴァレンタイン「解ってもらいたいのはわたしがもう『戻る術は無い』という事、その一点だけだ」

ヴァレンタイン「正確には『戻る』までどれ程の『時間』が掛かるかわからない…その前にわたしの寿命は恐らく尽きるだろう」

ほむら「…………?」

ヴァレンタイン「この世界の事が知りたい」

ほむら(…これは一体どういう事かしら)

ほむら(今までこんな時間軸は無かったわ、言い方からすれば恐らくこの『ヴァレンタイン』と名乗った男もでしょうけど)

ほむら(私の立場で考えれば移動するべき『軸』から外れてしまった…ようなものなのかしら)

ほむら「解ったわ、少し私の家でこの世界の事を説明してあげる」

ほむら「でもその前に…」ガチャリ

ヴァレンタイン「ッ!!」

ヴャレンタイン(拳銃だと…!?今、奴は何処から拳銃を取り出したッ!?)

ほむら「やる事が出来てしまったみたいね」

ヴァレンタイン「…なんだと?」


  ズズズズズズ…


ヴァレンタイン(…?地形が…いや、『景色』が変わっている?)

ほむら「立てる?」

ヴァレンタイン「問題無い」

ほむら「随分と冷静なのね、『大統領』」

ヴァレンタイン「…取り乱し喚き散らしてほしいのなら要望には応えられるよう努めるが?」

ほむら「いえ、そのままで居て頂戴」

使い魔「キャキャキャキャキャ!」

ほむら「………」ガチャッ

  バァンッ!!

使い魔「」グチャッ

ほむら「ついて来て、こうなった以上は貴方にとっても『これ』は他人事じゃないわ」

ほむら「ついて来なきゃ死ぬわよ、どうする?」

使い魔「」ピクピク

ヴァレンタイン「まぁ、この世界は君の方が熟知しているのだし素直に従おう」

  ぐしゃっ

使い魔「!?」グチャッ

ヴァレンタイン「おっと…失礼、踏む気は無かったのだが」

ほむら「行くわよ」

ヴァレンタイン「一体これは何だ?『何が』起きている?」

ほむら「『この世界』にも色々あるのよ、解って頂戴」

ヴァレンタイン「その『色々』も説明してくれるというのなら、今は黙っておくが」

ほむら「……ちゃんと説明するわ」

ヴァレンタイン「約束は守ってくれよ」

ほむら(………約束…)

ほむら「えぇ、解っているわ」


……………

………



魔女「ウッヒャー!」

ヴァレンタイン「…随分と大きな怪物だな」

ほむら「あれがこいつらのボスよ、『魔女』と言われる存在」

ヴァレンタイン「『魔女』?」

ヴァレンタイン(夢を崩された気分だ)

魔女「ッヒョォー」

ほむら「…………」カチッ

魔女「」ピタッ

ヴァレンタイン「」ピタッ

ほむら「………終わりよ」ポイッ


  ドゴオォォォォン…!!


ヴァレンタイン「!」

魔女「ウボァー」

ヴァレンタイン「…景色が戻っていく…」

ほむら「あれは『魔女』が作り出した結界なの、だから魔女を倒せば自ずと結界も無くなるわ」

ヴァレンタイン「正直に告白する、やはり詳細な説明を聞かない限りはまるで理解出来ない」

ほむら(グリーフシードは…落とさなかったか…まぁ、仕方が無いわね)

ほむら「行きましょう大統領、この世界について教えてあげる」

  ~ほむホーム~

ヴァレンタイン「知っているか?……『缶ビールの一気飲みの方法』」

ヴァレンタイン「………」プシュッガコガコ…ベゴォッ

ヴァレンタイン「ゥグッ!!」ゴボゴボゴボゴボゴボッ

ヴァレンタイン「ップハァ――――ッ!!イェスッ、イェスッ!!」

ほむら「…………え?私の家に来る前に『買い物』に寄ったのってその為?」

ヴァレンタイン「…いいかね!わたしが言いたい事は1つだ」

ヴァレンタイン「『信頼の置ける者』以外には情報を出さない、これは鉄則とも言える」

ヴァレンタイン「今の行動は少しでも君に親身になってもらいたくて披露した芸だという事を理解してほしい」

ほむら「………そう」

ヴァレンタイン「で、どうだった?」

ほむら「…まぁ中々凄かったわ、かなり大爆笑」

ほむら「話を始めていい?」

ヴァレンタイン「勿論だ」

……………

………


ヴァレンタイン「100年以上も西暦が進んでいた世界だったとはな…」

ヴァレンタイン「そして『魔女』…『魔法少女』…」

ヴァレンタイン「…理解した」

ほむら「理解が早くて助かるわね」

ヴァレンタイン(第二次性徴期の少女であれば誰でもなれる可能性があるとは…)

ヴァレンタイン(わたしの世界でもそういう『もの』があれば使えたかもしれんな、残念だ)

ほむら「それで、何か質問はある?」

ヴァレンタイン「ん…?そうだな、好奇心なんだが君は何故魔法少女になったのだ?」

ほむら「答える必要は無いわ」ファサッ

ヴァレンタイン「それもそうだな。それよりかき上げる程長い髪が邪魔なら切ったらどうだ?」

ほむら(…こいつ、天然?)

ほむら「私も質問がある、貴方はどうやって今まで『世界』を移動していたの?」

ヴァレンタイン「…………」

ほむら「私の情報だけ引き出して、貴方は情報を開示しないなんてずるいと思わないかしら」

ヴァレンタイン「成程、そうだな」

ヴァレンタイン「君は『スタンド』という能力を聞いた事は…いや、無いだろうが…『それ』による効果だ」

ほむら「…そういう事…だから魔女の結界に取り込まれた時も冷静だったのね」

ヴァレンタイン「あぁ、わたし1人でもとりあえずは対処出来た可能性はあったからな」

ほむら「それなら戦ってもらえば良かったわ、貴方の実力も知れるし」

ほむら「それで貴方、これからどうするの?」

ヴァレンタイン「…わたしには住む場所が無い、この『世界』には…」

ヴァレンタイン「…ほむら…」

ほむら「………え?…え?こ、ここ?」

ヴァレンタイン「駄目か?」

ほむら「駄目よ!」

ほむら「見ず知らずの男と同居なんて冗談じゃないわ」

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン(暁美ほむら…胸部、平坦…下腹部から腰の括れも胴体と然程の変化無し)

ヴァレンタイン「…ほむら、問題無い。恐らく君がわたしを『そういう気』にさせるのはかなりの至難だ」

ヴァレンタイン「君と同居していようと、絶対に君には手を出さない。と言うより出す旨味が…まぁ、約束する」

ヴァレンタイン「君には決して手を出さないッ!」

ほむら「失礼ね貴方!!」

ヴァレンタイン「出してほしいのか…!?いや、勿論『絶対に無理』じゃあないぞ…勢いに任せれば抱けるかもしれない」

ほむら「出してほしいワケないでしょ!!」

ヴァレンタイン「我儘だな君は」

ヴァレンタイン「だがわたしは今財布に『ドル札』しか持っていない、ホテルにも泊まれない」

ヴァレンタイン「路頭で寝るのは流石に堪えるのだが」

ほむら「………っ」

ほむら「分かったわ、ちょっとカーテン用意するから待ってなさい」

ヴァレンタイン「自意識過剰じゃあないのか?わたしは君に興奮する可能性は極めて低いと再三言っている筈だ」

ほむら(こいつ………!)

ヴァレンタイン「だが、君がそれで『安全』と思えるなら是非そうしてくれ」

ヴァレンタイン「いずれ『この世界』で自立出来次第、わたしはここから出て行く」

ほむら「絶対よ」

ヴァレンタイン「約束する」

~後日~


ほむら「おはよう、大統領」

ヴァレンタイン「あぁ…おはよう。学校に行くのか?」

ほむら「えぇ、放課後は…」

ヴァレンタイン「『遅くなるかもしれない』…だろう?解っている」

ほむら「助かるわ、それじゃ」バタン

ヴァレンタイン「……………」

ヴァレンタイン「…TVでも観てみるかな…」カチッ

  -アメリカ合衆国の株価が下落した事により~~~…-

ヴァレンタイン(チッ…無能め…先人達が築き上げた合衆国を…誰が大統領をやっているのだ…!)


  ---


ほむら「…今日ね…巴マミとまどか達が鉢合わせる日は」

  ~放課後~

さやか「ねーまどかぁ、CD屋寄っていい?」

まどか「いいよー」

ほむら「………」ガタッ


  ~ほむホーム~

  -続きまして日本の~~…-

ヴァレンタイン(…日本の政治家も…無能ばかりだな…)

ヴァレンタイン「…さて……ん?」

ヴァレンタイン(缶ビールが…無い…)

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン「仕方が無い、昨日替金した分で買いに行くか」

ヴァレンタイン「…最近はD4Cを使う事も少なくなってきたな」バタン

  ~魔女の結界内~


さやか「な、何だよこれぇ!?」

まどか「さやかちゃん…!」

使い魔「ヒャーwwwwwwwwww」

マミ(巻き込まれた一般人…!?助けに行かなきゃ…!!)ダッ

ほむら「……待って」

マミ「!?」

ほむら「あの二人は私が助ける、下がっていて」

マミ「…貴方…貴方も、魔法少女なの…!?」

ほむら「そうよ、ここは私に任せて」


  -結界の外-


ヴァレンタイン「………?」

ヴァレンタイン(これは確か…魔女の結界か?)

ヴァレンタイン(…さて、どうするか)

ヴァレンタイン(どうせ『魔法少女』であるほむらが…いずれは討伐するのだろうが)

ヴァレンタイン(『この世界』に来て数日、わたしもそろそろ彼女に『恩』の売り時かもしれない)

ヴァレンタイン(この結界を張っている魔女が都合よくグリーフシードを落としてくれればいいが…―――)

ヴァレンタイン「行くかD4C…久方振りの『荒事』だ」

D4C「………」スッ

ヴァレンタイン「どジャァ~~~ン」

  -結界内-

マミ「キュゥべえを痛め付けた貴方を信用すると思うの?」

ほむら「言い訳はしないわ、けれどあの二人は私の同級生よ」

マミ「……考えている暇は無さそうね、一般人の救出が優先」

ほむら「…えぇ」

さやか「くそ!こっち来んな!まどか急いで…!!」タッタッタッタ

まどか「ご、ごめん…!あんまり私、早く走れなくて…っ」タッタッタッタ

さやか「こなくそ…っ、まどかから離れろぉ!!」鞄ブンブン

まどか「さ、さやかちゃん!危ないよ!」

まどか「…っ!?え…さ、さやかちゃん!あれ!!」

さやか「えっ!?」

ヴァレンタイン「…………」

さやか「嘘…っ、あたし達の他にも!?」

ヴァレンタイン(…?なんだあの少女達は…取り込まれた一般人、か?)

ヴァレンタイン(可哀想にな。だが助ける義理も無いし…ほむらによればああいった一般人が結界内で死ぬと…)

ヴァレンタイン(そのまま「行方不明」扱いになるようだし、幸福と不幸はプラスとマイナスだ)

まどか「あ、あの!!誰か!!」

ヴァレンタイン(彼女達は『ヘタ』を掴んだ、仕方が無い)

さやか「す、すみませーん!聞こえてませんかぁー!こ、ここどういう状況なんでしょー!!」

まどか「あの人聞こえてないみたいだよ…!どんどん奥に行っちゃってる…!」

さやか「お、奥って…こんな場所の奥!?や、やばいよ…だけど、見捨てるのは…」

まどか「……い、行こうさやかちゃん…!見捨てられないもんね…っ」ビクビク

さやか「まどか……。うん…行こう!離れないで!」

ヴァレンタイン(…?こっちに向かって来る…わたしに助けを求めているのか?)

ヴァレンタイン(足を引っ張るようなら始末してもいいんだが…どうせ『行方不明』なのだし)


  ドォンッ!!


マミ「一般人の方ですか!?」

ほむら「ヴァ、ヴァレンタイン!?」

ヴァレンタイン「ッ!?」

さやか「ぅええッ!?転校生!?」

まどか「ほむらちゃん!?」

さやか「え?この人と転校生って知り合いなの!?」

ヴァレンタイン「…『転校生』?」

ほむら「ど、どうして貴方がここに居るのよ…!」

まどか「あ、貴方は…?」

マミ「私の名前は巴マミ、大丈夫…もう安心よ」

使い魔「ヒヒッヒィィィー!!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」


   どぉぉぉ…ん


まどか「……!!」

さやか「すっご……!!」

ヴァレンタイン「ん?…結界が……『魔女』本体は居なかったのか、無駄足だったな」

ほむら「…貴方…」

ヴァレンタイン「君にグリーフシードの1つでも与えれば恩を売れると思ったのだが」

ほむら「…本当に正直な男ね」

さやか「な、何なんですかさっきの…」

マミ「あれは『魔女』の結界よ、結果として使い魔しか居なかったけれど」

まどか「『魔女』…?」

キュゥべえ「そこからは僕が説明するよ!」

さやか「ぅわ!?な、なんだこいつ!!」

ほむら「………!」ギリッ

ヴァレンタイン(…なんだコイツ…スタンドか?いや、この世界には『無い』んだったな)

キュゥべえ「僕が見えるって事は、君達二人にも『魔法少女』になれる素質があるって事だ!」

キュゥべえ「だから僕と契約して…魔法少女になってよ!」

まどか「魔法…」

さやか「少女?」

~~~~~~

さやか「つまり…願い事をなんでも1つ叶える代わりに魔法少女になって…」

さやか「『魔女』と戦ってくれ…って?」

キュゥべえ「有体に言ってしまえばそうだね」

まどか「願い事って…なんでもいいの?」

キュゥべえ「勿論さ!どんな願い事でも叶えてあげるよ!」

ほむら「っ駄目よ!」

まどか「!?」

さやか「…な、何よ…藪から棒に…」

ほむら「貴方達は今、命を賭してでも叶えたい事があるの?そんなものも無いのに、軽々に魔法少女になんてなるべきじゃない」

キュゥべえ「それは彼女達が決める事だろう?」

ほむら「貴方は黙っていなさい」ガチャッ

マミ「…暁美さん、キュゥべえの言う通りよ…それは彼女達が決める事だわ」

ヴァレンタイン(一度聞いた話を二度聞くのは退屈だな)

ヴァレンタイン「ほむら、そこの白い奴が言う通りだ…君がどうこう言える話じゃあない」

ほむら「ヴァレンタイン…今は口を挟まないで!」

マミ「それとも、ライバルが増えるのは面白くないかしら?」

さやか「ライバル?」

マミ「魔法少女にも縄張りがあるのよ、時には縄張りを巡って魔法少女同士が争う事もある」

まどか「え、えぇ!?そんな…だって、同じ魔女を倒す仲間なのに…」

マミ「そうかしらね…ねぇ、暁美さん?」

ほむら「…巴マミ、むざむざ何の願い事も無い少女を危険に晒そうと言うの?愚かだわ」

マミ「…話は平行線ね、その『お知り合い』も連れて今は引きなさい」

ほむら「…………」バッ

ヴァレンタイン「………」

マミ「貴方もよ」

ヴァレンタイン「そうだな、これ以上君達と会話する必要性も無さそうだ…」スッ

ヴァレンタイン「――君が熱くのは初めて見たぞ、らしくないな」

ほむら「………私には私の目的がある」

ヴァレンタイン「ほう?」

ほむら「鹿目まどかを魔法少女にさせない、絶対に。…私はそれだけを目的に今まで生きてきた」

ヴァレンタイン「…………」

ほむら「けれど、巴マミと結局接触されてしまったわ…これはかなりの痛手…彼女は仲間を求めている」

ヴァレンタイン「君がなればいいじゃあないか、そうすれば仲間を求める事も無い」

ほむら「無理よ、見たでしょう?私は既に巴マミから信用されていない」

ヴァレンタイン「…わたしの独断と偏見だが、彼女は相当「ちょろい」部類だと思うがね」

ほむら「…とにかく、過ぎてしまった事は仕方が無いわ…」

ヴァレンタイン「ほむら。…君は鹿目まどかを魔法少女にしない為に、あらゆる手段を尽くせるか?」

ほむら「………え?」

ヴァレンタイン「尽くせるなら…『わたし』も…影ながら君を支えようと思うのだが」

ほむら「………?」

~数日後~


さやか「これ…魔女の結界だよね…?」

まどか「そんな、上条君の病院に……っ!」

さやか「まどか、マミさんを呼んできて!…あたしはここに残って見張ってる…」

まどか「わ、わかった…!」タッタッタッタッタ…

ヴァレンタイン「…………」チラリ

ヴァレンタイン「……ここで巴マミは…」

ほむら「えぇ、この魔女との戦いで死ぬ確率は相当高いわ」

ヴァレンタイン「…………」

ほむら「彼女を助けなければ…信用はされてないけど、出来るだけの事をする」

ヴァレンタイン「…ほむら、1つ…――」

ほむら「!さやかが結界に…先に追っておくわよ……!ヴァレンタイン、貴方はついて来ないで…巻き込みたくはないわ」タッ

ヴァレンタイン「…話を聞かない奴だ」

  ~数十分後~

マミ「ここね…」

まどか「マミさん、私も…ついてっていいですか…?」

マミ「…美樹さんが心配?あまり感心出来ないけど、私のそばを離れないで」

まどか「はい…っ!」


  -結界内-


マミ(キュゥべえ、美樹さんは?)

キュゥべえ(無事だよ、安心してくれ。僕もついてるから)

マミ(えぇ、解ったわ…こっちも最短ルートで駆けつける…!)

まどか「ぁ…!」

マミ「?」

まどか「ほむら…ちゃん…」

マミ「………!」

ほむら「…巴マミ」

ほむら「引きなさい、ここの魔女は今までの奴とは違うのよ」

まどか「ほ、ほむらちゃん…」

マミ「………」シュルッ

ほむら「っ!!?」グルグルグルッ

ほむら「ぐッ…聞きなさい!ここは私に任せろって言ってるの!」

マミ「大丈夫よ、殺しはしないわ。…此処の魔女を倒したら解いてあげる」

マミ「それまで少し反省しておきなさい」スッ

まどか「ぁ…ほ、ほむらちゃん…ごめん…っ!」タタタ…

ほむら「く…っ!!」グイグイッ


   スパスパスパァァーッ


ほむら「!?リボンが…切れた…!?」

ヴァレンタイン「…案外君も…あまり頭が回る方じゃあないようだな」

ほむら「あ、貴方…!」

ほむら(今どうやって…リボンを…?彼の言っていた『スタンド』の力…?)

ほむら「…ごめんなさい、助かったわ」

ヴァレンタイン「構わない。それで?巴マミは魔女へと向かったのか」

ほむら「えぇ…今ならまだ間に合う、先に魔女を倒してしまいましょう」スッ

ヴァレンタイン「………」

ほむら「っ!?な、何…ッ!!」

ほむら(身体が…う、動かない…っ!?)

D4C「…………」ガッシィィイ

ヴァレンタイン「…暁美ほむら…」

ヴァレンタイン「巴マミを助ける?何故だ?」

ヴァレンタイン「彼女には死んでもらった方がいい」

ほむら「ッ!?」

ほむら「あ、貴方…本気で言っているの!?」

ヴァレンタイン「君こそ本気で彼女を助けるつもりなのか?何のメリットがある?」

ヴァレンタイン「彼女は『鹿目まどか』を魔法少女にしたがっている張本人だろう」

ヴァレンタイン「寧ろ君は何故この数日間で…彼女を始末しなかった」

ほむら「っ…!!それは…、…」

ほむら(ワルプルギスの夜の戦力が欲しくて…)

ヴァレンタイン「…まぁ、事情は分からないが『鹿目まどかを魔法少女にしない』…という事を最終目的として判断すると」

ヴァレンタイン「巴マミを生かしておく必要は皆無だ」

ほむら「っだけれど!わざわざ見捨てる事は無いでしょう!?」

ヴァレンタイン「落ち着け、物事の片面だけを見るのはやめろ。死んで初めて自分の目的に役立つ者もいる、仕方が無い事だ」

ほむら(ファニー・ヴァレンタイン…この男の目…)

ほむら(本気で言っている…私に、巴マミを見捨てろとッ!本気でッ!)

ヴァレンタイン「彼女はどうやって死ぬ?君の話を聞く限り…未来を先読みする能力でもあるのだろう?」

ヴァレンタイン「どうやって死ぬか、これは解らないのか?」

ほむら「…頭部を魔女に齧りもがれるわ…大抵は…」

ヴァレンタイン「…ふむ」

ヴァレンタイン「一瞬過ぎて少し刺激不足だな、負傷を追って惨めに地面を這い蹲り…」

ヴァレンタイン「命乞いの最中、無残に殺されるワケではないのか」

ほむら「…あ、貴方…何を言っているの…?」

ヴァレンタイン「そんな猟奇的現場を目の前にすれば、魔法少女になりたいなんて事は思わなくなるだろう」

ほむら「…………!!」

ヴァレンタイン「さて、どうするか。…『死んではもらうが死に方が弱すぎる』…」

ほむら(……ヴァレン…タイン……!)

ほむら「見くびらないで…確かに私はまどかを魔法少女にしない為に行動しているわ…」

ほむら「けれど!他の人を『故意に死なせる』ような真似はしたくない!」

ほむら「犠牲は仕方ない…だけど、自分から犠牲を出すような手段を選ぶなんて…っ!」

ヴァレンタイン「…ほむら…目的を達成する為には『試練』がある」

ヴァレンタイン「試練とは『供え物』…『生贄』だ」

ヴァレンタイン「今!巴マミは君の目的達成を阻害する『試練』であると同時に…」

ヴァレンタイン「『生贄』でもある…そう、『試練』は流される血で終わる…」

ヴァレンタイン「正しい決断をしろ、自分が全うするべき目的を見失うな。…『巴マミを助けるな』」

ほむら「…ぐ…ぅ…!!」

ほむら「…巴マミを生き返らせる為に…っ、まどかとさやかが契約してしまう可能性だってあるわ…!」

ヴァレンタイン「その『芽』を潰す。君はここの魔女を無傷で倒せるのか?」

ほむら「えぇ…」

ヴァレンタイン「なるべく苦戦しろ、血を流し吐血し傷を負え。飛び散った血を彼女達に浴びせる程に」

ほむら「…っ!!」

ヴァレンタイン「本来ならば巴マミにやってもらいたかったが、『簡単に死ぬ』んじゃ『仕方が無い』…」

ヴァレンタイン「無残な有様になるのは君本人がやらなければならない」

ほむら「巴マミを見捨てる事を前提に話すのはやめて!」

ヴァレンタイン「『見捨てない』のか…?この期に及んでまだッ!!」

ヴァレンタイン「巴マミは『子羊の生肉』だッ!君の目的を反芻しろ…」

ヴァレンタイン「…わたしもかつて、『自分の目的の為』に犠牲を出した…故意に出した事もある」

ヴァレンタイン「だがわたしは後悔してはいない。…前に進むのに、致し方ない事だった…わたしの判断にミスは無かったと信じている」

ほむら「………っ!!けど…けど…巴…さん…」

ヴァレンタイン「己の目的を信念を以て貫くのだ、それこそが『正義』だ…!」

『私の願いは…鹿目さんとの出会いをやり直したい!』

『私の初めての友達…』

『…キュゥべえに騙された……バカな私を…っ!』

ほむら「………っ!!」

ほむら(私…私は……!!)

ヴァレンタイン「…これから君をわたしのD4Cから解放する」

ヴァレンタイン「そうすれば君は能力を使えるのだろう?」

ヴァレンタイン「…もし、巴マミを助けたいのなら急げば間に合うかもしれない」

D4C「…………」パッ

ほむら「っ!?」ガクン

ヴァレンタイン「…君の心と行動に…一点の曇りなく、目的達成の為に行動できる『黄金の精神』がある事をわたしは信じている」

ほむら「…………っ」

ほむら(私はッ……!!)

さやか「やったぁ!!魔女を倒し…っ」

まどか「…!マ、マミさん!!」

マミ「え…?」

シャルロッテ「」ガブッ

さやか「………マ、マミ…さん…!」

~~~~~

ほむら「『死んだ』わ…今、リボンの拘束効力が無くなった…巴マミは死んだ…」

ヴァレンタイン「顔色が優れないようだな」

ほむら「…当たり前でしょう………」

ヴァレンタイン「君は胸を張れ、気高く胸を。これは君の目的の為に『仕方が無い事』だ…」

ヴァレンタイン「君の判断の正しさはこのファニー・ヴァレンタインが保障する」

ほむら(巴さん…)

ほむら「…行くわよ」

ヴァレンタイン「『上手く』やれる事を祈っている」

ほむら「…………」

まどか「う、うわぁぁ…!!」

キュゥべえ「まどか!さやか!契約を!早く!!」

ほむら「その必要は無いわ」

さやか「て、転校生!!…あいつ、今更なんで…!」

まどか「ほむらちゃん……!!」

ほむら「…………」

『謝罪しろ。…遅れた事をまず、二人に謝罪するんだ』

『〝急いだが間に合わなかった〟事を印象付けろ』

ほむら「…ごめんなさい」

まどか「…え?」

さやか「な、何よ…いきなり頭なんて下げて…!」

ほむら「間に合わなかった…巴マミを、助けられなかった……ごめんなさい…!」

ほむら(虫唾が走る台詞だわ…『間に合わなかった』…ですって…?自分で自分が嫌になる…)

ほむら「貴方達は必ず私が守る。ここは…任せて頂戴」クルッ

さやか「…転校…生…」

『瞬殺はするな、苦戦するんだ。魔法少女は多少丈夫?なら丁度いい、腕の一本くらいくれてやれ』

『気安く言ってくれるわねヴァレンタイン…自分なら出来るとでも言うの?』

『出来る。目的達成の為ならば、わたしはわたしすら殺せる』

『…………』

シャルロッテ「クャァアアアッ!」ガブッ

ほむら「ッぐ…ぅゔぁ…!!」ブシュッ

まどか「ほ、ほむらちゃん!!」

さやか「転校生!!」

ほむら「く…この…!!」バンバンッ

ほむら「はぁ…ッ、はぁ…!!っぐ…ぅ…!!」ボタボタ…

さやか「も、もういい!もういいよ転校生!一緒に逃げよう!!」

ほむら「大丈夫…安心して、絶対に…助ける…っ!」

さやか「…っ!!」

ヴァレンタイン(無意識だろうが…あの恩着せがましい言葉…素晴らしい)チラリ

ほむら「…ぐ…これで…!!」

シャルロッテ「!!!」グァァァッ

ほむら「今…!」カチッ

ほむら「…はぁ…はぁ…!」ヒョイ


  ドゴォォォォォン…!!


さやか「た、倒した!」

まどか「結界が晴れてくよ!!」

ヴァレンタイン(…まずいな、ここでわたしは退散しておくとするか…)スッ

ほむら「……―――」フラッ

まどか「ほむらちゃん…!!」ダッ

さやか「て、転校…、…ほむら…!!」ダッ

キュゥべえ「………」

ほむら「大丈夫…ほら、傷は癒せるわ…」パァァァ

まどか「う…っ!!ぐ…」

ほむら「気を使わないで…気持ち悪いでしょう…?」

まどか「き、気持ち悪くなんてないよ!ただ…」

さやか「そんな大怪我…は、初めて見たから…う…ッ」

ほむら「…羨ましいわ。…私はもう見慣れてしまった…魔法少女になってから…」

まどか「う…ううぅ…っ!」ポロポロ

ほむら「覚えておいて…魔法少女になるってこういう事よ…。貴方達には…『こんな風』になってほしくない…」

さやか「うぇぇえ…っ!」ポロポロ

~~~~~

ほむら「」

ヴァレンタイン「どジャァァ~~~~~ン」

ほむら「なにこれ…七面鳥?」

ヴァレンタイン「『祝いの席』だからな、奮発した。おめでとう暁美ほむら、君は今日から正しい道を歩み始めた」

ほむら「『祝い』ですって…!?巴マミが死んだのよ…!!」

ヴァレンタイン「違う、『君が殺した』んだ…『君が見殺した』」

ほむら「!!!」

ヴァレンタイン「誤解しないでくれ、責めているんじゃあない。褒めているんだ…」

ヴァレンタイン「君は今日初めて、己の目的と真摯に向かい合った」

ヴァレンタイン「これは巣立ちの『祝い』だ、目的を目指し一人飛び立つ君は孤高で気高き鷲」

ほむら「…………」

ヴァレンタイン「君は未成年だから烏龍茶でいいかな?わたしはワインを頂くが」

ほむら「…己の目的…まどかを…魔法少女にさせない……」

ヴァレンタイン「……乾杯をしよう」スッ

ほむら「…………っ!!」

ヴァレンタイン「心が痛むか?良心が痛むか?大丈夫だ、慣れれば『二度と起こらない』」

ほむら「…………」

ヴァレンタイン「今頃になって自分のした事が恐ろしいか…ほむら」

ほむら「……わ、私…私は…なんて事…目的の為に…!」

ヴァレンタイン「…ほむら」

ヴァレンタイン「その通りだ。目的の為に殺した」

ほむら「う…うぅううッ…!!」

ヴァレンタイン「そしてそれは君の『糧』となる。犠牲になった巴マミ…本当に残念だった」

ヴァレンタイン「彼女にも未来があり、幸せがあった…君はそれを奪ったのだ。痛ましい事だと思う」

ヴァレンタイン「だからこそ『乾杯』するのだほむら。…彼女の為の鎮魂も込めて、『君の犠牲は無駄にはしない』と」

ヴァレンタイン「『必ず目的を達成して、その命に報いる』と。…ほむら、杯を取れ」

ほむら「…………っ!!」ガシッ

ヴァレンタイン「………」ニヤ


  ―乾杯。

  ~別所・教会~


ヴァレンタイン「………随分と寂れた場所だな」

『ヴァレンタイン、お願いがあるわ』

『なんだ?友の言葉として聞こう』

『…この少女を、見つけて欲しい。恐らくはこの町近辺に居る筈』

『魔法少女…か?』

『えぇ、そうよ』

ヴァレンタイン「…………」

??「よー、何やってんだい?」

杏子「こんな辺鄙な所にまでやって来てさぁ」

ヴァレンタイン「…………」ピラッ

ヴァレンタイン「佐倉杏子。住所不定、赤髪と八重歯が特徴」

杏子「…ぁあ?」

ヴァレンタイン「そして、魔法少女」

杏子「………!」

ヴァレンタイン「ふむ、その反応…どうやら『当たり』か」

杏子「てめぇ何モンだ?」

ヴァレンタイン「わたしの名はファニー・ヴァレンタイン…今日は君に伝えたい事があって来た」

ヴァレンタイン「巴マミの死亡を報せにな」

杏子「ッ!!マ、マミが…死んだだって…!?」

キュゥべえ「そうだよ!」

ヴァレンタイン「……お前は…」

キュゥべえ「会うのはこれで二度目…いや、三度目かな?『大統領』」

杏子「大統領ゥ?」

ヴァレンタイン「そう呼ばれていた事もある、だが今はあまり関係の無い話だ」

杏子「…つーかそれより、巴マミが死んだって?」

ヴァレンタイン「あぁ、目の前で確認している。今思い出しても胸が潰される思いだ」

杏子「……その割りに表情が変わらねぇな」

ヴァレンタイン「………」

杏子「で、それをあたしに伝えて何だってんだ?」

ヴァレンタイン「見滝原の縄張り、欲しくはないか?」

杏子「…なんだと?」

ヴァレンタイン「聞けばあの場所、魔女の出現が他の町より平均して多いらしいじゃあないか」

ヴァレンタイン「グリーフシードも効率よく回収出来るだろう」

杏子「…マジかよ……」

キュゥべえ「でも、あの町には既に魔法少女がいる筈だよ。暁美ほむらがね」

杏子「あ?先客が居るのか?」

ヴァレンタイン「問題無い、わたしは彼女の事をよく知っている。彼女は君に見滝原を預ける腹積もりだ」

杏子「どうしてだよ、明らかに怪しすぎる話だ」

ヴァレンタイン「1つだけ誓おう。わたしは決して嘘は言っていない」

ヴァレンタイン「また、『知らない事を知ったかぶり』で言う事も決して無い」

ヴァレンタイン「何故彼女が見滝原を君に預けるのか、その内容まではわたしも聞いていない…」

杏子「………」

ヴァレンタイン「本人の口から聞いてくれ、彼女の住所を渡しておく」スッ

恭介「さやかは僕を虐めて楽しいの?」

さやか「え?」

恭介「もう聞きたくないんだよ!自分が弾けない音楽なんて!」

さやか「きょ、恭介!!」

~~~~~

さやか「…………」トボトボ

ほむら「美樹さやか」

さやか「…ほ、ほむら…あ、あはは!いいよ、「さやか」で…」

ほむら「…さやか、元気が無いわね」

さやか「うん…ちょっとね」

ほむら「…上条君の事?」

さやか「…いやぁ~、ほむらは何でもお見通しだね!」

ほむら「さやか…話があるの」

さやか「え…?」

ほむら「魔法少女になれば、上条恭介の腕を直す事ができるわ」

さやか「え!?」

ほむら「でも、私は貴方に魔法少女になってほしくない。…だから、今から魔法少女の全てを話す」

さやか「どういう事…なの…?」

~~~~~

さやか「……そんな…ひどい!ひどすぎるよ!!」

さやか「なんでキュゥべえは言ってくれないの!?」

ほむら「そっくりそのまま貴方が言っているじゃない…言ったら契約なんてしないでしょ?」

さやか「………!!」

ほむら「でも貴方は凄く思い悩んでいたから…全部話したわ」

ほむら「…忘れないで。上条君を支えられるのは魔法や奇跡だけじゃない、貴方自身もなのよ」

さやか「ほむら…」

ほむら「…………」

ほむら(どジャァァ~~~ン…ってね)

仁美「…………」

ヴァレンタイン「すまないが」

仁美「だ、誰ですの…?」

ヴァレンタイン「…君は…「ヒトミ」という子で合っているか?美樹さやか、鹿目まどかの友人の」

仁美「は、はぁ…お二人を…存じていらっしゃるので?」

ヴァレンタイン「上条恭介…知っているかね?」

仁美「!…はい、よく…」

ヴァレンタイン「彼は今、心が荒んでいる。君は彼を好いているのだろう?」

仁美「ど、どうしてそれを…っ」

ヴァレンタイン「情報源は何でもいい。とにかくそれは正しい情報なのだな?」

仁美「えぇ…そうですわ。私…上条さんをお慕いしておりますの」

速報で波紋と鉄球の奴書いた人?

ヴァレンタイン「繰り返すが、彼は今心が荒れている…癒せるのは『君しかいない』」

仁美「…え?ですがその、さやかさん…は…」

仁美「さやかさんだって、十分彼を支え癒せるだけの信頼関係がある筈ですわ」

ヴァレンタイン「彼女?…あぁ」

ヴァレンタイン「既に『強く拒絶』されたよ、彼女はな」

ヴァレンタイン「既に彼女と彼を結ぶ絆など瓦解している」

仁美「………!」

ヴァレンタイン「彼を『癒せる』のは『君だけだ』…だから、わたしはそれを伝えに来た」

ヴァレンタイン「彼の心の拠り所になってやれ…初対面でわたしを信じられないのなら…」

ヴァレンタイン「直接、上条恭介に聞いて来るといいだろう」

仁美「…し、失礼します…」ペコ

ヴァレンタイン(……………)

>>109
違います。

ヴァレンタイン『とすると、美樹さやかが契約する理由はその少年に拠る所が大きいという事かね、ほむら』

ほむら『えぇ…こればかりは巴マミが生存していようといまいと、そうなる可能性が高い』

ヴァレンタイン『…恋心か、成程』

ヴァレンタイン『ならば手っ取り早く…その恋心…諦めさせてやるとしようか』

ほむら『…え?』

ヴァレンタイン『巴マミの時は「命」、美樹さやかの時は「恋心」…』

ヴァレンタイン『人名よりは軽い「試練」だ、喜ばしい事だな』

ほむら『…………』

~~~~~

さやか(また…戻ってきちゃった、恭介の病院…)

さやか(恭介…)

さやか(…?扉が、ちょっと開いてる…)

さやか(………)

さやか(…ひ、仁美…っ!?)

仁美「さやかさんも悪気があったワケではないと思いますの」

恭介「わかってる、分かってるけど…どうしても…!!」

仁美「恭介さん…私は、音楽を奏でる貴方でなく…貴方の人柄をお慕いしております」

仁美「音楽が奏でられなくても、貴方は貴方…」

恭介「…志筑さん…」

さやか「…………」

さやか「何よ、これ…」

さやか「…………っ!!」タタタタッ

仁美「…?」

恭介「誰か…いたのかな?」

~~~~~

さやか(なんで!なんでなんでなんでなんで!どうして仁美が!?どうしてッ!?)

さやか(今まで仁美が病室に来た事なんて無かったのに!!どうして…!)

さやか(ひどい、ひどいよ神様…!)

さやか(あたしが悪かったの?CDを持っていったから?恭介の気持ちも考えずに…?)

さやか「う…うえぇ…ぅぇぇええ…っ!!」

まどか「…あれ?さやかちゃ…、…さやかちゃん!?ど、どうしたの…!?」

さやか「まどかぁ…まどかぁっ……!」


ほむら「これで…さやかが上条恭介の為に魔法少女になる事は無いでしょう」

ほむら「前ならいざ知らず、魔法少女の真実を知った今なら」

ヴァレンタイン「いい顔をするようになったな、凄くカワイイ」

ほむら「あら、そう?」

 ~夜~

杏子「入るぞ」

ほむら「どうぞ」

杏子「…あんたがこの町の魔法少女か」

ほむら「いずれ貴方の物になる町よ」

杏子「なんでだ?何を企んでる?言っておくが、あたしはあんたを信用しちゃいねー」

ほむら「…端的に言うわ。この町に近いうち、ワルプルギスの夜が来る」

杏子「………!!」

ほむら「私1人ではどうする事も出来ない、だから力を貸して」

杏子「…その見返りが『この町』…か」

杏子「ま…確かに1人じゃどうにもならねーかもしれねぇけど…2人なら何とかなるかもな」ニッ

ほむら「…………」


ヴァレンタイン(ワルプルギスの夜…?ほむらの目的と関係があるのか…?)

杏子「じゃーな、また打ち合わせに来る」

ほむら「えぇ、待っているわ」

  ばたんっ

ヴァレンタイン「…ほむら、ワルプルギスの夜とはなんだ?」

ほむら「超大型の魔女よ、あれが現れるからこそまどかが契約するとも言えるわ」

ヴァレンタイン「…どういう事だ」

ほむら「単純な話よ…魔女が強いから、まどかが契約して…魔女を倒し、町を守る」

ほむら「その代わり…彼女も、また…」

ヴァレンタイン「成程」

ヴァレンタイン「だが勝算はあるのだろう?」

ほむら「えぇ、杏子が一緒なら何とかなるとは思うわ…」

ヴァレンタイン「そして、最後に「佐倉杏子」を始末して…任務は完了だな」

ほむら「…………」

ほむら「…え?」

ほむら「ど、どうして?」

ヴァレンタイン「?…さやかを魔法少女にしない為に迷わず行動した君とは思えない問いかけだ」

ほむら「どうしてよ…!杏子を殺す必要は全く無いわ!!」

ヴァレンタイン「彼女にここの縄張りを渡す必要も全く無い」

ヴァレンタイン「『巴マミ』を殺した事を忘れたか、ほむら」

ほむら「!!!」

ヴァレンタイン「…君の本当の目的が今!…解ったぞ」

ヴァレンタイン「君は…『鹿目まどかと静かに暮らしたい』んだ…」

ほむら「…や、やめて…それ以上言わないで!!」

ヴァレンタイン「仮に佐倉杏子のような利己的で保身第一な魔法少女にこの町を任せてみろ…」

ヴァレンタイン「この町の将来にどれだけ残酷な出来事が起こる事になるのだろう…」

ヴァレンタイン「それだけは絶対に阻止しなくてはならないッ!…違うか?」

ほむら「……あ、貴方は…貴方は!人命を何だと…思ってい…ッ」

ほむら(…あ…そうだ…巴さん…)

ほむら(私ももう、人の事なんて……)

ヴァレンタイン「…ほむら…冷静になって考えてくれ…」

ヴァレンタイン「友の言葉として、わたしの話を聞いて欲しい」

ヴァレンタイン「君は鹿目まどかの為に…数多くの困難に挑んできた」

ヴァレンタイン「その『見返り』が…この町を立ち去る事なのか?君はそれで納得できるのか?」

ほむら「…………」

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン「勿論…この話の決定権はあくまで君にある」

ヴァレンタイン「君の成した『正義』に見返りを求めない…それも美しい。かく言うわたしも見返りを求めた事は無いからな」

ヴァレンタイン「だが見返りは当然の権利だ、ほむら…君のような少女ならば尚更だろう」

ヴァレンタイン「もう一度言う」

ヴァレンタイン「彼女は使い魔を『魔女』にする為に一般人を犠牲にするルール無用のゲスだ…」

ヴァレンタイン「この町に彼女がいるだけでッ!どれだけ残酷な出来事が起こる事になるだろうッ!!」

ほむら「違う」

ほむら「杏子は違うわ!彼女は元々、正義の為に力を使う魔法少女だった!」

ほむら「それがこじれてしまった…ちょっとした切欠で…!!」

ヴァレンタイン「…………」

ほむら「でも杏子はこの町に来て変わったわ!さやかと戦って、彼女の願いを知って…」

ほむら(サヤカハ……魔法少女ジャナイノニ……?)

ほむら「まどかも助けてくれたし…!」

ほむら(サヤカガ魔女ニナッタカラ…ダヨネ…?)

ほむら「元々は義理堅くて、やさしくて、心の穏やかな子なの…!!」

ほむら(今ハ利己的デ一般人ヲ犠牲ニスルケドネ…?)

ほむら「だから…!殺すなんて……!!」

ほむら(何ヲ迷ウ事ガアルノ?巴まみト同ジジャナイ…?)

ヴァレンタイン「………」スッ

ほむら「っ!?え、えぇ…!?」

ヴァレンタイン「そうやって君は…自分の感情を押し殺してきたのか…」

ヴァレンタイン「今だけは全てを吐露して構わない、誰も聞いていないのだから…」

ほむら「ぅ…ぅうう…ううううっ!!」

ほむら「うわあぁぁっ……!暮らしたい!暮らしたい…!まどかと一緒に…ずっと、ずっとこの町で…!!」

ほむら「普通に学校に行って、普通に勉強して、普通に遊んで…っ、ううううぅ…!!」ポロポロ

ヴァレンタイン「…………」

ヴァレンタイン「ならば」

ヴァレンタイン「やるべき事は、1つだ…ほむら、今君は初めて自分の「本心」と「正義」を重ね合わせる事が出来たんだ」

~外~

ヴァレンタイン「キュゥべえ」

キュゥべえ「なんだい?」

ヴァレンタイン「君は鹿目まどかを魔法少女にしたいのか?」

キュゥべえ「あぁ、勿論だよ。随分と君達のせいで予定が狂いっぱなしだがね」

ヴァレンタイン「彼女を魔法少女にしない事が暁美ほむらの『正義』らしいのでな。少し手伝っている」

キュゥべえ「少し?かなり助力しているように見えるけど」

ヴァレンタイン「暇潰しだ」

キュゥべえ「…なんだって?」

ヴァレンタイン「それより、1つ聞きたい」

ヴァレンタイン「鹿目まどか、美樹さやかの両名以外に魔法少女になれる素質のある子を知っているか?」

キュゥべえ「…千歳ゆまという子がいる。ただ両親は健在だし叶えるべき願い事も無い」

ヴァレンタイン「問題無い。願い事はわたしが決める」

キュゥべえ「……ヴァレンタイン…君は…まさか…」

ヴァレンタイン「あぁ、わたしは自分の時代に帰る準備を始める事にした」

  ~近辺の住人は避難してください…~


さやか「こんな台風の中魔女が出るの…!?」

まどか「…ほむらちゃん…!!」



杏子「よっ」

ほむら「…杏子……」

杏子「…おい大丈夫かよ、すげー隈できてるぞ」

ほむら「問題無いわ、足手まといにはならない」

杏子「それより約束覚えてるんだろうな?あいつ倒したら、この町はあたしのだからな!」

ほむら「…………」

ほむら「えぇ、勿論よ」

杏子「うっし!そんじゃーやってやりますか…!」

 5  4  3  2  1

ワルプルギス「キャハハハハハハハ…!」

杏子「行くぜ、ほむら!!」

ほむら「えぇ……!!」

ワルプルギス「キャハハハハハハハ!!」ゴゥッ

~~~~~

ゆま「…お、おじさん…誰…?」

ゆま「そっちの…動物も……」

キュゥべえ「やぁ!僕はキュゥべえ!」

ヴァレンタイン(…契約する理由がないだと?どう見ても虐待されているこの少女がか?)

キュゥべえ「僕と契約して、魔法少女にならないかい?」

ゆま「魔法少女…?」

ヴァレンタイン(チッ…子供の説得が出来るかどうか…怪しいな…)

杏子「っとぉ!!こっちだよ!!」ブンブゥンッ

ほむら「杏子、つかまって!!」

杏子「おう!」ガシッ

ほむら「………」ピタッ

ワルプルギス「キャハハハh」ピタッ

杏子「やるねー、敵に回ったらどんだけ恐ろしい能力だよ」

ほむら「…ふふ、有難う」

杏子「?今のうちに滅多打ちだァ!!」

ほむら「爆弾も仕掛けておきましょう…!」

  ~~~~~

ゆま「…つまり、おじさんは…元いた世界に帰りたいの?」

ヴァレンタイン「そうだ、その為に君の願いが必要だ…わたしを助けてくれ」

ヴァレンタイン「魔法少女とは『善』なる存在だ、わたしはその足がかりになりたい。君の善行の足がかりに」

キュゥべえ「…親への虐待をとめる事も出来るけど?」

ヴァレンタイン(…っく…やかましいぞ…このノロイが…!)

さやか「凄い!凄いよ!!押してる押してる!」

まどか「がんばって…ほむらちゃん……っ!!」

~~~~~

杏子「行けるぞほむら!!」

ほむら「もう一押し……!!」

ほむら(2人で戦うだけで、こんなにも有利に戦えるなんて…!)

ワルプルギス「キャハ…ハハハ……!!」グラッ

~~~~~

ゆま「…いいよ。ゆまなんかでも、おじさんの役に立てるなら」

ヴァレンタイン「……有難う、千歳ゆま」

キュゥべえ「…本気かい?他人の為に…」

ゆま「でも、見捨てないで。…わたしを見捨てないで…」

ヴァレンタイン「…魔法少女になった後は…ここを離れ、『暁美ほむら』という少女を頼れ」

ヴァレンタイン「必ず君を迎え入れてくれるだろう」

ヴァレンタイン(多分な)

ワルプルギス「…………!!」ゴゴゴゴ…ズドォ…ン…

杏子「っしゃああ!!」

ほむら「倒した…遂に…!ワルプルギスの夜を…!」

杏子「へへっ…あんたが居なかったらヤバかったな、サンキュ」

ほむら「…………」

杏子「ん?どうしたんだよ、暗い顔しちゃ…あー、そうか…あんたはこれでこの町を離れるのか」

ほむら(殺す、殺す…ここで杏子を殺して…私がこの町に残る…!)ガチャ

    ―バァンッ!

杏子「…なぁほむら、考えたんだけど…ここまであんたはこの町に固執したんだ」

杏子「やっぱりこの町は…あんたが残るべき―――…っ」

    ―パリィンッ

杏子「」パタッ

ほむら「…え?」

ほむら(い、今…今…杏子は…なんて言ったの?)

ほむら「あ…ああぁ…あぁぁぁぁあああああぁッ!?」

~~~~~

キュゥべえ「千歳ゆま、君の願いはエントロピーを凌駕した!」

ヴァレンタイン「おぉ…これはッ!わたしの身体が…帰っていく!『基本世界』にッ!!」

ヴァレンタイン「キュゥべえ…お別れだな。暁美ほむらに別れを言えないのが残念だ」

ヴァレンタイン「代わりに君から言っておいてくれ」シュゥゥゥウ

キュゥべえ「……ファニー・ヴァレンタイン」

ヴァレンタイン「…なんだ?」

キュゥべえ「君は本当に、えげつない行為をいともたやすく行う人間だ」

ヴァレンタイン「………なんだ、そんな事か」

ヴァレンタイン「既に自覚済みだ」パァァァァ…

ゆま「…消えた…」

キュゥべえ(…ある意味、君は僕よりも害悪な存在だったように思えるよ。ファニー・ヴァレンタイン)

さやか「ほむらー!ほむらー!!」

まどか「ほむらちゃーん!!」

さやか「…ま、まどか!あれ!あれ!!」

まどか「え?っ…ほ、ほむらちゃん!!」

ほむら「い、生き返って…!杏子…杏子…!!」

杏子「」

まどか「こ、この子誰?…魔法少女、なの?」

さやか「まさか…あのでかい魔女と戦って…死ん…」

ほむら(違う!違う!!彼女は…杏子を殺したのは私…!!私なの!!)

ほむら(彼女を殺したのは…私…!!)

『彼女にも未来があり、幸せがあった…君はそれを奪ったのだ。痛ましい事だと思う』

『だからこそ『乾杯』するのだほむら。…彼女の為の鎮魂も込めて、『君の犠牲は無駄にはしない』と』

『『必ず目的を達成して、その命に報いる』と。…ほむら、杯を取れ』


ほむら「は…ははっ、あははは…あっはははははは……!!」

さやか「ほむら、もういい…!もういいよ…!あんたが悲しんでるのはよくわかったから…!」ガシッ

~~~~~

ヴァレンタイン「…ここは…確かにわたしがジョニィに敗北した場所だ…」

ヴァレンタイン「戻ってきたのだ…『基本世界』にッ!!」

ヴァレンタイン「ムッ!」

ルーシー「あ、あぁっ…そんなっ!そんな事…そんな事が…!!」

スティール「馬鹿な…大統領…!」

ヴァレンタイン「…フム…時間軸はあまり経過していないのか『こっち』では」

ヴァレンタイン「これはいい…一度はDioに託した遺体だが…戻ってこれたのであれば話は別だ」

ヴァレンタイン「聖なる遺体はわたしが回収しッ!わたし自身の手でシェルターに収めるッ!!」

ルーシー「うああぁぁぁぁっ……!!」

ヴァレンタイン「我が心と行動に一点の曇りなし……!」

ヴァレンタイン「全てが『正義』だ…!」

~~~~~

さやか「ほむらー!おっはよー!」

ほむら「おはよう、さやか」

まどか「おはようほむらちゃん!」

ほむら「えぇ、おはよう…まどか」

まどか(あれから暫くして、ほむらちゃんもようやく立ち直ったようです)

まどか(前よりも笑うようになりましたし、なんだか愛想が良くなった気がします)

まどか(さやかちゃんなんて、ほむらはあたしの嫁になるのだー!って)

まどか(前は私に言ってくれてたのに、ちょっと妬けます)

まどか(ほむらちゃんは強くてカッコよくて、魔法少女として町も守ってくれて…)

まどか(…でも)

ほむら「どうしたのまどか?早く行かなきゃ遅刻するわよ?」

まどか「あ、うん…!待ってー!」

まどか「…ねぇ、ほむらちゃん…どうしてほむらちゃんは、私達の町を守ってくれてるの?」

さやか「あ、そうだよねー…転校生だからそんなに愛着なさそうなのに」

ほむら「…私はね…『ある人』から目的を果たすという信念を貫く強さを教えてもらったの」

ほむら「私の目的は皆と楽しく過ごして、この町を守り続ける事。私はそれを貫き続ける…」

ほむら「『ある人』はその姿勢をこう呼んだわ、『黄金の精神』と」

ほむら「だから私はこの町と貴方達を守る、いつまでも。…我が心と行動に一点の曇りなし…」

ほむら「全てが『正義』よ」

さやか「ひゅー!かっこいいですなぁほむらちゃんってばー!」

まどか(何故なのでしょう、そうやって『正義』を語るほむらちゃんの笑顔は…眩く光り輝く黄金のそれではなく…)

まどか(もっともっと、闇夜で鴉の群れが羽ばたき廻るかのような、『ドス黒い漆黒の―――)



fin.

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