渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」 (999)

何番煎じになるかわかりませんがアイドルバトルものSS

過去作

小日向美穂「お昼寝のお供」

星輝子「ドロヘドロ...?」荒木比奈「そっス」

遊佐こずえ「...きおくとおふとん」


安価もありますがストーリーにそれほど影響は出ません


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1393849705


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タタンタタン・・・・・・  タタンタタン・・・・・・

寝ぼけた頭で振動を感じ取る。


遠く離れたどこかから響く音に合わせて振動が伝わってくる。。


自分は椅子か何かに座っているようだ。


??「ほら、凛。そろそろ起きろ・・・」


渋谷凛「ん......」


耳によくなじんだ声を聞き目を覚ます。

凛「あ、おはようプロデューサー、ごめん ちょっと寝てたみたい」


モバP「気にするな、体調を崩したりはしてないか?」

凛「大丈夫だよ、加蓮じゃないんだし、加蓮だってもう滅多に風邪なんてひいてないでしょ。心配しすぎだよ」

向かいに座っているのは自分たちのアイドル生活を影から日向からいつも支えてくれているプロデューサー。

彼が座っているのが幅の広い、安っぽく毛羽立ったクッションが付けられた座席であり、

自分もそれと全く同じデザインお椅子に座っている

隣には大きな窓、いや車窓というべきか

どうやら自分は電車のボックス席にプロデューサーと向かい合って座ったまま寝ていたらしい。

車窓の外は暗い


タタンタタン・・・  タタンタタン・・・


地下鉄だろうか、長いトンネルの中だろうか、イマイチ記憶がはっきりしない


凛「ところで私たちって今、仕事先に向かってるんだよね?」

P「そうだ。内容は覚えているか?」

凛「覚えてるよ。でも正直よくわからない内容だったから、説明が欲しいな」

凛「確か、晶葉が開発した、・・・なにかの装置とどこかの企業の技術のPRだったっけ?」

P「あぁ、合ってるよ。今から詳しい説明をしたいからその二人を起こしてくれないか?」

凛「?」

二人、と言われて凛は周りを見渡す、寝起きだったが大分頭がはっきりしてきた。

神谷奈緒「 z zZ」

北条加蓮「んん...」

凛「奈緒?加蓮?」

通路をはさんだ向かい側の席で、今まで気づかなかったが、凛のよく知るアイドルうちの二人が寝ていた。

P「三人の中じゃ最初に起きたのがお前だけでな。悪い気もするが起こしてやってくれ」

凛「う、うん わかった」

席を発ち、二人の肩を揺する。

凛「ほら、起きて二人共、」

加蓮「ん、・・・あれ凛?あれ、ここどこ?」

奈緒「Z・・・メ、メイド服が・・・」

凛「奈緒、メイドコレクションの仕事が夢に見るほど楽しかったのはわかったから起きて!」

奈緒「!? いやいやいや!べ、別に楽しくなんてっ!!・・・あれどこだここ?電車?」

凛「いまからプロデューサーが仕事の説明するから起きてこっち来て」

奈緒「凛? お、おう分かった」

加蓮「あ、プロデューサー、おはよ」

P「おはよう加蓮、奈緒。いまから説明しなきゃならんことがあるからちょっとこっちの席に来てくれないか」

加蓮「はーい」


トライアドプリムスの三人が揃って目を覚ましたところで通路の向こう、Pのいるボックス座席へ移る。


凛「(あれ?)」


凛はふと気づく。この車両、内装を見るにおそらく新幹線の類ではない、普通電車だ。

乗客は見たところ少ないようだが、その乗客らしきものが何やらおかしい


??「・・・・・・・・・」

?「・・・・・・・・・」

???「・・・・・・」

三人、

いや三つの”影”がいる

車両座席の最後列付近にゆらゆらと、

ちょうど人が座った時にできるような影が、影だけがゆらゆらと存在している。

凛「・・・・なにあれ・・・・・」

P「凛ー?説明はじめるぞー?」

凛「あ、うん分かった」


特に害もなさそうだし目の錯覚だろう。

凛は席に座った加蓮の隣に腰掛けた


??????????????????


「バーチャル世界体験?」

プロデューサーが最初に発した単語にまず奈緒が反応した。

奈緒「それってSFなんかで題材によく取り上げられてるアレか?」

P「ああ、そんな感じのやつだ」

奈緒「マジだとしたらすごいなそれ」

凛「そこ、ふたりで納得しないで」

加蓮「奈緒、アタシが貸りたアニメにもそんなのあった?」


P「まあまあ、じゃあ話すぞ。」

P「これからお前たちにはデータ上に作られたバーチャルの世界に行ってもらう。」

P「そこじゃあお前たちもデータ、それこそゲームキャラクターのような者として行動することになる」

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/5TL4Wko.jpg
http://i.imgur.com/beyGOj7.jpg

神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/Ln5zdM3.jpg
http://i.imgur.com/w1v3pW1.jpg

北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/VDbYvwA.jpg
http://i.imgur.com/NzmsUdN.jpg


凛「ふーん、分かった。頑張るよ」

加蓮「ちょ、凛、納得早すぎない!?」

奈緒「あたしはまだ技術の進歩具合に驚きを隠せない・・・いつの間に日本は始まってたんだよ・・・」

三者三様、かしましい反応をしたあと説明は続く。


・凛を含む、十数名のアイドルが仮想現実の空間に送られる

・仮想空間を運用するにあたっての技術面は池袋晶葉の発明が中心を占めている

・目的は今回の開発に協力した企業の技術力のPR

・そのために話題性を得やすい人物であるアイドルが今回の企画の参加者に選ばれた



奈緒「晶葉・・・いよいよなんでもアリになってきたな。ロボットが専門じゃなかったのかよ・・・」

P「いや?そのバーチャル空間ってのはロボットも無縁じゃないらしいぞ?」

加蓮「う?ん、ちょっと整理させて」

凛「・・・・・・・ねえプロデューサー」

だいたいそこまでを理解したところで大まかな状況を把握したらしい凛が質問する


凛「実際、その仮想空間?に行ったとして私たちは何をすればいいの?」


P「ああ・・・・・・・そのことも話さなきゃな」


奈緒「向こうでライブでもするのか?」

加蓮「デジタルデータになれば疲れなさそうだし、いつまでも踊ってられそう!」


自分たちの行き先は分かった。では次はそこで何をするのか。

プロデューサーはなんと説明しようか少しばかり迷った様子を見せた

が、結局、直截的な表現を用いることに決め、口を開いた。





P「模擬実戦だ。お前たちには仮想現実の中でちょっとした戦争ゲームをしてもらう」

画像ありがとうございます


凛「え」奈緒「は?」加蓮「なにそれ」


??????????????????


P「・・・つまりだな、仮想空間がどれくらい現実に近いものなのかをアピールするには歩き回ったりする他にも走る転ぶしゃがむとかのいろいろな動きができることを見せなきゃならないんだよ」


P「他にもオブジェクト、えっと空間内の物体が割れたり転がったりする時にどれだけリアルに近いのかも先方は見たいらしい」


P「要するに、だ。予測不能で不確定な事象が起きたときデジタルがどこまで対応できているのか見せてほしいってことだ。」


奈緒「わかったようなわからないような」

凛「だいたいわかるよ、要はそのバーチャル空間のテストプレイなんでしょ?」

加蓮「あ、今の凛の言葉でちょっとわかったかも」

奈緒「えっと・・・そういうことなのか?」

P「そういうことになるな。さすが凛だ。ただ戦争ゲームというのはバラエティの要素として考えてくれてもいい」

P「最近は芸能人同士でのガチ鬼ごっことかボール当てとかそういうのが流行りだろ?」

凛「わかった。頑張るよプロデューサー」

奈緒「・・・・・・特に危険ってわけじゃなさそうだし、こういうのちょっと憧れてたとこもあるし・・・いいぜ、やっても」

加蓮「アタシも参加するよ、そろそろプロデューサーからのアタシに対する病弱キャラのイメージもなくしたかったし」


そこまで聞くと凛は迷いなく即答し、二人もそれぞれの理由を持ちながら参加の意を表した。

P「ありがとうお前たち。」

三人を見渡す。自分が育ててきた三人が三人とも迷いないやる気をみなぎらせているのがわかる。

そして彼はおもむろに席から立ち上がった。


P「じゃあ俺はここで。一旦別のところに行かなきゃならんからあとは頼んだぞ?」



加蓮「あれ?プロデューサーが連れてってくれるんじゃないの?」

凛「それにまだ駅に着いてないし。どこ行くの?」

奈緒「そういえば・・・他に参加するアイドルも見当たらないな」



今現在その企業か、あるいは晶葉のラボにでも行く途中だと思っていた彼女らは当然それを疑問に思う。


P「何を言ってるんだ?」


だが彼の返答は実に単純明快だった。






P「ここはもう仮想現実の中だぞ?」



タタンタタン・・・  タタンタタン・・・



彼女たちは思い出す。


自分たちは今日電車になんて乗ってない

たしか移動は社用車だった

到着した先の大きなビルでさっきの内容とほぼ同じ説明を受けたのだ

そのあとこの仕事を受ける意志の有無を最終確認されると、


人がすっぽり入るようなカプセルのある部屋に案内されて・・・・・・


?????????????????

タタン・・・ タタン・・・・


奈緒「はー、この風景がデジタル?気づかなかったぜ」


加蓮「プロデューサも人が悪いね。タチの悪いドッキリみたい」


凛「・・・・・・じゃああの影みたいなのは何なんだろう」


なんとなく感じていた違和感の正体を理解し三人はひとまず自分たちが置かれた状況、

仮想現実空間の体感を確かめていた。といってもどうもわかりにくい。現実の感覚と比べて遜色がないのだ

加蓮「影?」

奈緒「あ、ほんとだ!なんだあれデジタルのバグか?」

凛「さっきからある、いや、いたんだよアレ」

座席のシート越しに後ろを見ると確かにいる。

座席に付いた姿の影法師のような何かが蜃気楼のようにゆらゆらと揺れているのだ。




????「あれは君たち以外のプレイヤーだよ」

凛「!?」

奈緒「うおっ」

加蓮「今度は何?」


出し抜けに響く声

三人が声のする方に向けたところそこには一体のロボットがいる

どこかで見たことがあると思えばうさちゃんロボだった。

それが晶葉の声でしゃべっている


????「一応ゲームの対戦相手にもなるから、相手が誰かは極力伏せておこうと思ってね」

????「一時的に君たちからは見えないように設定しているだけで彼女らも私たちと同じ事務所のアイドルだし、彼女たちからは君たちの方が影法師に見えているさ」

晶葉(ロボ)「ああ、ちなみにこの姿はPの解説を引き継ぐために急遽作ったアバターだよ」



??「・・・・・・」

?「・・・・・・・・・」

???「・・・・・・」



奈緒「ってことはあたしたちは今ここにいる三人以外に誰が参加しているのかわからねえのか」

凛「じゃあなんで私たちはお互いが見えてるの?」

晶葉(ロボ)「ああ、それは彼の気遣いだよ。いきなり見知らぬ場所に一人だと混乱するだろうからその配慮ということで、三人づつで分けたグループメンバー以外は認識できないということにしてあるのさ」

池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/ut6RzOK.jpg
http://i.imgur.com/W4u2xZg.jpg


加蓮「へー、じゃあアタシたち、そのかそう空間?でもこの三人で行動するの?」


晶葉(ロボ)「いや、あくまで説明会のために分けられただけだ。”向こう”では一人で行動するもよし、ほかのメンバーとユニットを組んでもよし、だ。」


凛「・・・・・・・・・」


影は相変わらずゆらゆらと揺れている。

逆にあの影からは自分たちが影に見えているらしい

あれはこっちを見ているのだろうか

こっちに話しかけているのだろうか



ピピッ


晶葉(ロボ)「!・・・・・・さて、別の車両に移動したPがどうやら参加するアイドル全員に説明を終えたらしい」


奈緒「プロデューサー?なんだ、別の車両にもまだアイドルがいるのか」



晶葉(ロボ)「ふむ、参加アイドル18名のローディングも終わった。」



晶葉(ロボ)「では頑張ってくれたまえ」


タタンタタン・・・ タタンタタン・・・


タタンタtttttttttttt.........


___ステージ"シティ"へのダウンロードを開始します___



?????????


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想現実空間 ”シティ”


チャプター
渋谷凛 


空は灰色

建物は天をつくほどに高い

無機質さが伝わってくるような都会の風景が視界いっぱいに広がっている


凛「ふーん、これが全部作り物なんだ」


何かのビルとビルの隙間で凛は一人つぶやく

それに対する返答はない

ここに来る前の電車、今思えばあれはデジタルとしての自分をここへ送り込むまでの「ロード画面」のようなものだったのかもしれない。

奈緒に借りたゲームにも大抵待ち時間にそういうのがあった。


凛「Now loading...だったっけ」


とにかく、そこで晶葉(もしかしたら晶葉の真似をした人工知能だったのかもしれない)が言っていたように最初からあの三人で行動するわけではなさそうだ。

だから今ここには凛しかいない。奈緒や加蓮はまたどこかにランダムに送られたのだろう

凛「(それより気になるのは・・・模擬戦闘だよね、見たところ私にはなんの武器もないんだけど)」



ザザザザ  ザザザザ

ガガガガ

晶葉(?)「あー、マイクのテスト中...テスト中...ん゛んっ!仮想空間内のアイドル諸君!聞こえているかね!私だ!」


晶葉(?)「この放送は現在空間全域に一律に放送されている。君たちに大事なことを伝えなければならんからね」



晶葉(?)「では模擬戦闘のルール説明を開始する!」



凛「!」


空の上から響くような、雷とも台風とも似ても似つかない雑音が轟いた後さっきも聞いた晶葉のものらしい声が届いた。

それに反応して空を見上げたのはもちろん凛だけではないだろう。


???????????????

奈緒「うおっ!?」


??????????????

加蓮「うるさいなぁ...もう」


??????????????


??「・・・・・・・・・」


?????????????


?「・・・・・・・・・なんでこんなことに・・・プロデューサーめ・・・」


?????????????


????「・・・・・・・・・・むむっ!」


?????????????


? ?「・・・・・・・・・・・・うふ」


?????????????

?????

???

?


晶葉(?)「・・・今現在この空間で自分の意志で活動しているのはアイドル18名」


「キュート6名、クール6名、パッション6名となっている」


「君たちは『プレイヤー』だ。自分たちで考え自分たちで動く」 


「模擬戦闘、というからにはこの18名で争うのもありなのだがそれだと無駄に長引くか特になんの面白みもなくすぐに決着がつくかのどっちかだという意見もあってな」




「相手を用意した。私は便宜上『ボット』と名付けている」





「プログラムに則り君たちに戦闘を仕掛けてくるロボットだ」


「このボットたちの討伐数を競うという形で君たちには模擬戦闘に参加してもらいたい」


「そうそう、武器の件だが」



「君たちにはそれぞれに『能力』を授けてある」


「一部の者には想像がつくんじゃないか?超能力とか特殊能力、漫画や映画の世界の産物だよ」


「この空間内のどこかに設置している『アクセサリー』『衣装』の類のなかから自分に適合するものを身につければそれが使えるようになっているよ」


「無論、剣や銃の類の通常武器もあるからそっちを集めることを優先してもらっても構わない」


「場合によってはボットがそれらのキーアイテムを持っていることもあるから能力が欲しいなら戦闘には積極的に参加するといい」


「ほかにも伝えたいことはあるがこれだけ知っておけばゲームは始められるな」

?????????

凛「晶葉・・・ノリノリだね。いつもよりおしゃべりになってる」


凛「じゃあ、そろそろ動こうかな」


ビルの間から歩いて抜け出す

能力、そんなことを言われても精々手からビームが出るくらいしか想像がつかないけど


凛「(まず通常武器とかいうのから集めてみようかな。能力が使えるアイテムは多分だけど簡単には見つからない気がする)」


未だに空から鳴り響く晶葉の声を一応耳に入れながら早歩きで誰もいない歩道を進む。


凛「(それにボット、私たちの敵。これにも注意する必要があるのかな)」


曲がり角を右に曲がる。


警戒して早歩きから普通の速度に落として、だが


そこで晶葉の声が途切れた

連絡事項は終わったのか?


いや違う、


凛の耳が、頭が、音を認識しそこねたのだ


あまりに動転したため



晶葉(?)「まずはチュートリアルだ」


晶葉(?)「君たち専用のボットを用意した。練習がてら戦ってみてくれ」





凛(ボット)「・・・・・・・・・」






曲がり角を曲がった先


そこに自分がいた


そこに渋谷凛がいた


制服もカーディガンも、スカートも

長い髪も、耳に付いたピアスのデザインも

全く同じ


唯一違う点をあげるなら胸元に小さなバッチのようなものがついていることか、

そのバッチはかすかに赤く光っており、よく見ると「bot」と刻まれているのがわかった

赤色

警戒色

危険を告げる色


晶葉「そうそう、多分言わなくてもいずれ気づいたと思うが、君たちには初期値100%でスタミナが与えられている」


晶葉「それが0になったらゲームオーバーだから気をつけてくれ」

凛「・・・・・・」

ゴクリとつばを飲み込む。その感覚もまるで現実じみている

そうだ言っていたじゃないか

仮想だと、ゲームだと

だったらこんな展開だって予想できたじゃないか

凛(ボット)「・・・・・・・・・」


___ゲーム開始3分経過____


渋谷凛VS渋谷凛(ボット)

及び

他17名のアイドルの練習用ボットとの対戦


___開始

凛「・・・・・・」


さて、自分には武器がない

それとも拳でも武器になるのだろうか


警戒心を解かぬままそこまで思考したところで相手、ボットが動いた

ボットの凛がこちを見据えたま一気に駆け出す

凛(ボット)「・・・・・・」


凛「!」


そのままボットは右手を平手の形にすると振りかぶる

いわゆるビンタ、女子らしい攻撃とは言える


凛ははじかれたように横っ飛びに避けた

ビンタ一つに大げさとも言えるがダンスのレッスンは何度もしてきたが戦闘訓練など受けたことのない凛に戦闘時の無駄のない動作を期待するのは無理な話だ。むしろよけられただけで大したものだろう


凛「ハァ・・・・・・ハァ・・・」

警戒していたとはいえいきなりだったため疲れとは別で呼吸が乱れる


凛「(ボットっていっても身体能力は普通、というか私と同じだよね)」


凛「(それに今ので手足が武器になることの証明にもなった。私にも反撃はできる!)」

凛(ボット)「・・・・・・」


ボットが駆け出す

オーバーな避け動作で開いた二人の距離を詰めてくる


凛「(この攻撃は避ける。その間に乱れた息を整えて、反撃する!)」


様子見、回避、攻撃。

一瞬の思考でボット相手に簡易的に戦略をたてる


凛はすでに完璧に落ち着いていた


凛(ボット)「・・・・・・・」


ボットの左手がまたビンタを構える


凛「(来る!!)」

凛「(避ける!!)」


二つの人影が交差する



凛(ボット)「ふーん、アンタが私の敵(エネミー)?」






凛「」









ドゴォ!!



作戦変更

交差する瞬間、ボットの腹に凛の渾身の膝蹴りが入った


クリーンヒットしたのか凛のボットはその場で崩れ落ちたように倒れる


凛(ボット)「・・・・・!・・・?・・・・!?」


凛「・・・・・・まさか機械のプログラムにまでそのネタでいじられるなんてね・・・」


凛「あれはある意味私の黒歴史だよ・・・」


ダメージエフェクトでもあるのか、倒れたまま震えて動かないのボットのすぐそばに凛が立つ

ボットはプログラムの指示通り戦闘続行のために状況を把握しようとする

そのためにまずボットは頭を持ち上げ地面から凛を見上げた






凛「・・・・・・じゃあ、残していこうか、私の足跡」



ボットの視界の中で、凛は力いっぱい利き足を振り上げていた。

見まごうことなき攻撃の、かかと落としか踏みつけの態勢である。





___そして_____





ゲーム開始5分経過


渋谷凛(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
佐久間まゆ



知ってますよ


まゆは知ってますよ


まゆはプロデューサーさんのことなら何でも知ってますよぉ


「・・・!・・・!・・・!!!」


あのよくわからない電車の中で、


まゆたちに説明してくれたゲームの内容


そしてこの企画の概要







聞いた瞬間、ピンときましたよぉ

「・・・!・・・!・・・!!・・・」


たしか一週間ほど前


プロデューサーさんの散らかった机の上を少しでも整理しようとした時でしたかねぇ


この件について書かれたらしい書類がたまたま、本当に偶然目に付いたんです


多分映画やマンガでしか目にしないような単語に気づいたせいでしょうねぇ


内容はほとんどわかりませんでした


でもプロデューサーさんがこんな難しいことにまゆたちのために取り組んでくれていると思うと


うふふ


まゆがその書類と関連資料から読み取れたことは少しだけ


プロデューサーさんが今回の企画のために半年以上前からあちこちで打ち合わせをしてきたこと


プロデューサーさんが専門家の意見を聞くために忙しい中、独学で専門用語などの知識をつけてようと努力していたこと


晶葉ちゃんの研究にも深夜まで付き合って、プロデューサーさんは眠る暇さえない日があったこと


まゆはプロデューサーさんのそういうところが・・・


「!!!・・・・・・・・・・・・」



佐久間まゆ「あらぁ?」


「        」




佐久間まゆ(16)
http://i.imgur.com/b8IT0AT.jpg
http://i.imgur.com/0g3mlek.jpg


佐久間まゆは両手に込めていた力を緩めた


ゴトリ


彼女の足元に何かが落ちる



まゆ「うふふ、練習用、でしたっけ?だからスタミナは最初から少なめだったのかしらぁ?」



佐久間まゆ(ボット)「     」



まゆの足元にはまゆが今倒したばかりのボットが転がっていた


その姿はまゆと言うまでもなく瓜二つ


だがそれももう動かないままに霧のように消えた


その跡にはリボンが一本だけ残っている



そのリボンは生地が裂けかけ、使い物にはならなさそうだ





なにせ、ついさっきまで





まゆがボットの首に巻きつけ
後ろから全力で引っ張り上げながら
首を絞めるのに使っていたのだから


まゆ「うふふ、ほかのボットはこう簡単にはいかなさそうですし・・・武器でも探しに行きましょう」


待っていてくださいねぇプロデューサーさん



プロデューサーさんの努力を無駄になんて、絶対させませんから



この仕事、まゆが必ず成功させて見せますからぁ♪





ゲーム開始5分経過


佐久間まゆ(ボット)消失



今日の書き溜め終了

次の書き溜めを誰から始めるか決めたいので

次回、開始するチャプターを選択してください
安価+3下


1、神谷奈緒
2、小関麗奈
3、渋谷凛

画像、コメントありがとうございました

投下します



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
神谷奈緒



ロボットの奇行はプログラマーの趣味から生じる



いつだったか、雑談の中でふと晶葉が口にしていたことを思い出した。


ここは駐車場

比較的背の高くない、3、4階建ての建物ばかりが集まったその狭い隙間を利用したスペースである


十台ほど車が入ればそれでいっぱいだろう。今は三台ほどしか車も停められていない。

その内の一台、よく見るタイプのバンを開けようとしたが普通に鍵がかかっていた。


確か念の為に二台目も調べようとした時に晶葉のスピーチが始まったっけ


それが終わるか終わらないかのあたりで誰かが近づいてくる足音がして

気づけばボットとの戦闘が始まりやがった


奈緒は駐車場で向かい合っている相手を改めて観察する


神谷奈緒(ボット)「なんだよ、来ないんだったらあたしから行くぞ?」


自分で言うのもなんだが妙に太い眉も広がりがちなクセのある髪も目つきもそっくりだ

アイドルをやっているんだからそりゃ写真や映像を通して自分を見ることもあるが

そういうフィルター抜きで自分を(少なくとも自分と同一の姿かたちを)見るなんて一生に一度あるかないか、いや普通はないだろう


奈緒「(いや、どっちにせよ今は機械を通して見てるのと同じだったっけ。・・・どうもこれがゲームだってのが信じられねえ)」


奈緒「(いや、それはどうでもいい、置いとけ)」


奈緒(ボット)「おーい、いいのかー?」


そう言うとボットは手に持っていた武器らしき物でクイッと奈緒の方を指した。

武器らしきもの、見たところハリセンにしか見えないが武器なのだろう


奈緒「(それも装備かよ、ハズレにも程があんだろ!というツッコミも置いとこう)」


奈緒(ボット)「とうっ!」

ボットが動いた
向かい合う形で開いていた十メートルほどの距離はぐんぐん短くなる

自分ソックリのロボットが武器を片手に狭ってくる、狂気じみた光景だ。

奈緒「!やっべ」

奈緒「(こっちもなんか武器になるものは・・・!!)」

そのロボットが足を踏み出すたびに風で髪がなびく

丈の短いスカートがひらひらとはためき、

ガーターベルトに包まれた足の太ももがチラチラ見えている


そして衣服の全体にあしらわれたフリルがひらひらと_______




奈緒「だからなんでお前メイドコスなんだよおおおおおおおおおお!!!?」




もうツッコミを我慢できない、

普段着の奈緒の前に現れた彼女のボットはメイドの仕事の時の衣装を着ていた

ハリセンを持って

奈緒(ボット)(メイド服)(ハリセン装備)「え、いや!す、好きで着てるんじゃないからな!!仕事だから仕方なく・・・・・・!!」

奈緒「やかましいわ!」



ロボットの奇行はプログラマーの趣味から生じる

この場合は悪趣味だった


幸いだったのは

このあと奈緒は苦戦しながらもなんとかボットを下し、

そのメイド姿をほかのプレイヤーには見られずに済んだことか



ゲーム開始6分経過

神谷奈緒(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
双葉杏


例えば手足は武器としてカウントされていること

例えば練習用ボットは通常のボットよりも弱く設定されていること

例えば・・・


プレイヤーにとってこの世界はまだまだ未知の要素が多い

現実に似せているからといってそのまま現実と同一には出来ていないのだから


だからプレイヤーには不測の事態に備えていかに武器や情報を集められるかが重要となる


武器の方を集めに行動を開始したアイドルは多い

情報を集めようとしているアイドルもいる


だが、

少なくとも現段階で仮想現実空間に関する重要な情報をいくつも手に入れることに成功したのは双葉杏だけだった

さっきの書き込みはトリをつけ忘れましたが1です



双葉杏「へー、めんどくさそー」


双葉杏(ボット)「うん、割と冗談抜きで杏たち何しに来たんだろって感じ」


杏(ボット)「練習用だからって、ほかのプレイヤーに攻撃してもダメージがカウントされないんだよね、なのに杏たちは二、三回攻撃されただけでスタミナが0になっちゃうし」


きまぐれロボット、否、ぐうたらロボットとオリジナルの杏は戦闘を放棄していた

双葉杏(17)
http://i.imgur.com/WumjMTv.jpg
http://i.imgur.com/tieYAv0.jpg


杏「そういや練習用ボットってことは普通のボットもいるんだよね?そっちの方にも杏そっくりなのがいるわけ?」


杏(ボット)「うんにゃ、通常ボットの方はプレイヤーとして参加できなかったアイドルをモデルにしたロボットだよ、」

「杏が知ってる範囲じゃ仁奈と何人かのちっちゃい子が通常ボットだったっけ」


杏「へー、逆に言えば仁奈を見つけてもボット一択だからプレイヤーかどうか判断する必要はないってことかー、どうでもいいけど」


小さな公園、自然と遊具の割合が半々ぐらいのそこにあったベンチの上に二人、正確には一人と一体は横たわっている

二つ並んだベンチに一人一つずつ、小さい体は特に苦もなく寝っ転がることができていた。


杏「あー、そーいや硬いベンチに寝てるのに背中とか後頭部が痛くならないね、ははっ、だいはっけーん

仮想現実ではどこでも快適に寝られるー」

杏(ボット)「わーい、やったね杏ちゃーん、だいはっけんじゃん、ぱちぱちー」

杏「やー、どーもどーもー」

杏(ボット)「ぱちぱちー」

杏「やーやー・・・」


ゲーム開始3分経過

双葉杏VS双葉杏(ボット)

開始延期




杏「じゃあ、杏ちょっと寝るね」

杏(ボット)「うんわかった、何時間かしたら起こせばいい?」

杏「できれば起こさないでくれるとありがたい」

杏(ボット)「んー、じゃあはいこれ」

杏「あれ、これって」

いよいよ持って模擬戦闘中にはありえない、居眠りが行われようとしていたとき、

ふとボットが杏に手渡したものがあった。

画像ありがとうございます


それはところどころ綿のはみ出たぬいぐるみ、現実世界で杏が居眠りのおともにしていた兎のぬいぐるみだった。

ちなみにこのぬいぐるみと胸元の赤く光るバッジだけがボットとオリジナルを区別できる点で、それ以外は性格も含めて鏡写しの姿となっている。

杏(ボット)「杏としても何もしないわけにはいかないしー、ってことでこのぬいぐるみ上げるよ」

杏「なんかわるいねー、ちょうど枕が欲しかったとこだしありがたくもらっとくよ」


寝転がった状態から頭だけ回し、となりのベンチからぬいぐるみを引き寄せる



 ピロン



杏「うん?」

杏(ボット)「あれ?」


オリジナルの杏にぬいぐるみが渡った瞬間、軽快な電子音が鳴った

杏「なんか着信音みたいな音がでたんだけど」

杏(ボット)「うーん・・・わかんないけど多分、今のが杏が能力ゲットのためのアイテムだったんじゃないかな?」

特定のアイテムを手に入れると能力が使用可能になる。

杏愛用のぬいぐるみを模したこのアイテムがまさにそれだったらしい

杏「あ、杏を騙したなぁっ!?適当にだらだらしようとした杏を、戦場に駆り立てるために!!」

杏「杏は・・・杏はただ、争いのない、誰もが笑って過ごせる平和な世界を求めていただけなのにいーーー!」

ベンチの上に寝っ転がったままジタバタと足を振り回す。

右手に掴まれたままのぬいぐるみがプロペラのようにくるくる回っていた


杏(ボット)「あー、なんかごめん杏も知らなかった。でも能力って直接武器になるものだけじゃないらしいから実戦で使えるかはわからないよ?」


杏(ボット)「練習用ボットは能力がないからわかんないけど、この世界では能力ってランダムに決定するらしいし、」

杏(ボット)「それに、逆に強力な能力があったほうがコソコソせずに済んで楽じゃないの?」

杏「むー・・・」

ロボットなりに励ましてくれているようなそうでないような

杏は少しだけ頭を使って考えてみる


ゲームオーバー

おそらく現実に帰還することになる

プロデューサーが空いた時間に仕事詰め込んでくる

なんでもいいけど飴食べたい


杏「・・・・・・・・・・」


杏「ゲームオーバーはまずいね・・・どうせダラダラするんだったらこの仮想空間でいいや。ここなら少なくともプロデューサーに叩き起こされることはないし」

杏(ボット)「でしょー、ってことで能力次第じゃこっちで時間いっぱいまでのんびりできるかもよ」

杏「そうだね。決めたぞ!!杏はこの仮想空間とやらで誰にも邪魔されない週休八日を満喫してやるぞー!」


杏(ボット)「がんばれー・・・」

力強い宣誓ではあったが姿勢は相変わらず横に倒れたまま

仮想現実空間でさえだらける

全18名のプレイヤー中、圧倒的早さで『能力』という大きなアドバンテージを得たにもかかわらずその目標は呆れるほど彼女らしいものだった。

それだけの強さの個性の持ち主ということか


杏「ところで杏の能力って何?」

杏(ボット)「しらなーい」

杏「え」

ゲーム開始4分経過
双葉杏 能力獲得


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
三好紗南


ゲーム開始3分経過
三好紗南(ボット)消失



三好紗南「自分を倒せってのはチュートリアルとしてはどーなんだろ」


紗南「こう、ザコモンスターみたいなの相手にして、ハンドガン的な初期装備でバンバンバンって感じ?」


紗南「うーん、この仮想現実での模擬戦闘、バトルゲームだとしてもFPSなのか格ゲーなのか見極めなくちゃね」


ゲーム慣れしているというのもあるのか割と簡単に、特にこれといった抵抗を感じることもなく自分のボットを倒した紗南は今車道を歩いていた

本物の都心をイメージしてか車線の多い広い道路を我が物顔で一人闊歩している。

無論車が来ることはないし危険はないはずだ。

三好紗南(14)
http://i.imgur.com/3ChxXbF.jpg
http://i.imgur.com/GsF79ed.jpg


紗南「FPSならどっちかというと基本的な武器をたくさん集めた方がありがたいし、格ゲー風なら能力?とかのほうが使い物になるんじゃないかな」


ゲームバランス


このゲームを見極めるにはそれを構成する要素から判断するしかない


例えば手に入るアイテムが大したことないものばかりの時


これはつまり通常武器というのがあくまでおまけで、能力バトルこそが真骨頂ということになる。


逆にひとつ所有するだけで戦況が大きく揺れ動くような、そんなアイテムばかりだったならこれは戦闘というより戦争のゲームと考えられる


どこにあるかもわからない能力開花アイテムを探すより弾丸の補給が重視される展開が続くだろう。



紗南「まずは・・・何でもいいから武器を見て判断するしかないね!」


思い立ったら行動は早い。紗南は車道から歩道に移るとそのまま歩道脇のビルに踏み込む。

どうもこの世界は現実に準拠しているためか、建物や施設の種類がわかりにくい

武器屋の入口に矢印のアイコンが浮かんでいたりはしないのだ


だから紗南はまず変に迷うことなく、目についた建物に適当に入ることにした


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル内部 1階


紗南が入ったビルは外見からは判断できなかったがオフィスビルらしく

入口からなかにかけて広いホールとなっており、奥にはエレベーターが二基稼働していた

紗南「わー、よくできてるねー!、天井たっかーい!」

大理石らしき光沢を放つホールの地面をカツカツと踏み鳴らしながら大声を出しても誰も咎める者はいない。


やはりこのビルも無人だった。受付すら誰もいない

紗南はまずエレベーターに乗ってみることにした

エレベーターのボタン上、フロア案内盤に何気なく目を通す。

ニ階より上のフロアについても服飾、書籍、フードコート・・・などと丁寧に書き込まれており、改めてこの仮想空間の作り込み、クオリティの高さを思い知らされる






紗南「あー!!6階にゲームセンターあるじゃん!!」


だが紗南はそれについてはどうでも良かったらしい


一階に停まっていたエレベーターに乗り込むと?を必要以上に強く押した


~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~

ビル内部 6階



エレベーターの扉が開くとその先には独特の空間が広がっていた。

極彩色のパーツで作られた巨大なプラスチックの箱が所狭しと並び

それぞれの機械が勝手な音楽を流しては、チカチカと画面からビビットトーンの光を放ち続けている

そこにもやはり人はいない。


紗南「わーいゲームだゲームだ!!」


さすがはゲーム好きというべきかエレベーターの戸が開ききるのを待つ間もなくフロアに踏み込む

しかしすかさず手近な筐体に飛びついたところで重要なことに気づいた





紗南「・・・・・・あたしお金もメダルも持ってないじゃん・・・ゲーム出来ないよこれじゃ・・・」




現在絶賛バーチャルゲームをプレイ中とは思えないセリフである

たしかにこの仮想空間に転送されたとき自分は何も所持していなかったし、ボットを倒した時もなんのアイテムもなかった。


紗南「むうう・・・・・・敵キャラ倒したんだからマニーの一つでも落としてくれたらよかったのにー」


筐体のゲーム画面は何の反応も返さない。

それでも未練が断てないのか紗南はゲームコーナーないの機械の間を周りを物色しながら巡ることにした

この手のゲームなら道に大金が割と頻繁に落ちてたりするものだ。

もちろん紗南もそこまで本気でそんなことを思っていたわけじゃない。

紗南「!・・・・・・あれは!」

そんな紗南の視界に入ったのは壁際に寄せられた小さい椅子

ゲーセンだと休憩中の客がよく利用していそうなあれだ


その上にポツンとゲーム機が置かれていた


ポータブル型のそれはもちろんコインやメダルの類は必要としていないもので、バッテリーとカセットさえあれば遊べるものだ


再三繰り返すが誰もいないこのフロアにそんな忘れ物などありえない。

紗南「ってことは、これはわざと置かれてたアイテムだよねっ!」

ひょいっと手に取る。カラーはあまり目にしない明るいオレンジのポータブルゲーム機

形状は自分がいままで使ったことのあるものと酷似していたのですぐ手に馴染んだ



紗南「さて、スイッチオン♪」









ピロン




ゲーム開始9分経過

三好紗南 能力獲得



~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

???


よく見えてます


よく見ています


数キロ先までよく観察できます


千里眼でも得たかのようですよ


だが見ているだけが私の仕事じゃない


探し 戦い 倒す



それが私を動かすプログラム



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル内部 6階 


紗南「!? なに今の効果音・・・」


紗南は思わず周りを見渡した

すわ敵とエンカウントかと腰をかがめ筐体の影に隠れる

しかし彼女自身にも何から隠れているのかはわかっていない



 ブンッ

 ウィーーーーン......


またも何らかの音が紗南の耳に届いた、

しかしこっちの音はさっきと違い簡単に音の出処がつかめた


紗南「あ、ゲーム機動いてる・・・そういやなんのソフトが入ってたんだろ?」


紗南の手の中でゲーム機が稼働音を立てていた


紗南「・・・・・・・・・・」

やがて何らかのゲームが開始されるはずだ

だが一向にゲームタイトルや制作会社のロゴが表示されない

しかし壊れているのではないらしく画面は暗くなったり明るくなったりしながらゲーム機は起動準備を進めている




ブウン......


画面に何かが表示された


紗南「?」











→『サーチ』
 
 『コントロール』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???


肩にかけていた武器を下ろす


装填された弾丸の数は把握しています


これが私にとっての初弾です


持ち運びに向かない長い銃身を体を使ってなんとか安定させる


これはスナイパーライフル


離れた敵を狙い撃つ武器です


大丈夫です


敵はよく見えてます


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

紗南「サーチ? なに?ニューゲームとかじゃなくて?」


このゲームが始まってからわからない事続きだ

ゲームが得意のはずの自分が随分と翻弄されている


表示されたのは何かの選択画面

だがゲームを開始するためのボタンとはあまり思えない字面だ


紗南「まあクソゲーだったらそれもまた良し!ポチッとな!」


親指に力を込めるとボタンは容易く押され、

画面が再度変化する

____________________


・・・・・・サーチモード・・・・・・


ゲーム機本体をアイドルに向けてください

____________________



紗南「サーチモード? アイドルに、向ける?」


ゲームは始まらない

選択画面の次は指示画面だった

しかも目的が読めないままに指示されている


紗南「・・・アイドルってあたしもそうだし・・・あたしに向けてみたらいいのかな?」


紗南は手の中のゲーム機をくるりと反転させた。

自分から見てゲーム画面が上下逆になる向きであり、機械本体上部、ソフト取り出し口が自分に向けられている



紗南「・・・あ、動いたっ!」


天地が逆さまの画面に新たな変化が訪れた。紗南の推測はあっていたらしい

アイドルの紗南にゲーム機が反応を示した。



プンッ

_________________



・・・しばらくお待ちください・・・


_________________

_________________



・・・・・・・・・・・・・・・・・



_________________



_________________

name: 三好紗南

category: プレイヤー

skill: 
ゲーム機型アイテムを用いてプレイヤ
ー及びボットの調査、干渉が可能。た
だし一度に扱えるデータは一つだけに
限られる
_________________


紗南「あー!!」

ここまでくれば今までの謎は消えたも同然だった。


紗南「なーるほどね。これでほかのアイドルのことが知れるんだ!!」

紗南「このカテゴリ、プレイヤーっていうのはボットとの区別かな」

紗南「で、スキル!!多分能力のことだね、ってことはこのゲーム機があたしにとってのキーアイテムだったんだね!」

ってことはさしずめさっきの変な効果音は能力ゲットのお知らせだったのかな?

と、付け足して一人納得の喜びを噛み締めた

紗南「よっしゃー!早くも能力ゲットー!!この調子なら楽勝だね!」


まるで勲章のようにゲーム機を天に向けて掲げる

さぁ次はどう動く?

紗南のゲーム脳は高速回転をはじめる


_周りを見渡せる高所からサーチする?

_そのためにはまずはサーチの出来る範囲を調べなくては

_ボットを探す?いやここは敵より味方を探そう!

_ボットに気づかれないように能力データを手に入れるのもいい

_そういえばまだプレイヤーを全員把握していなかった、でもこの能力があれば余裕だね!


プンッ

________________



・・・・・・・・・・・・・・・・


________________


ゲーム機を持ち上げたことで照準がずれ、紗南のデータを表示していた画面が消えた


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???

敵はこちらに気づいてません

それもよく見えてます

引き金に指をかける


敵の命はすでにこの指の上に乗せられているも同然です


それでも気づきません


こっちが見えていませんから

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゲーム機上部は偶然その階の窓の方を向いていた


紗南の能力の化身たるそれは自動的にアイドルのデータをキャッチする



~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あれじゃあダメです。自分が倒されたことさえ自覚できないまま終わるでしょう

つい駆け寄ってあの言葉を言ってあげたくなります












まあまあ、メガネどうぞ




標的がよく見えますよ___


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

___________________

name: 上条春菜

category: ボット

skill:
メガネを通してスコープのように遠
方を詳細に視認可能。副次的効果と
して遠距離攻撃の命中精度が飛躍的
に上昇する
____________________




窓ガラスを突き破り、




ゲーム筐体同士の狭い隙間をくぐり抜け




音速を超えた弾丸が




紗南に飛来する








ゲーム開始11分経過
三好紗南VS上条春菜(ボット)

 開始


今日はここまでです

画像ありがとうございました

次回、開始するチャプターを選択してください
安価 3下

1、北条加蓮
2、小日向美穂
3、三好紗南


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
訂正
>>65
エレベーターに乗り込むと?を必要以上に強く押した

エレベーターに乗り込むと「6」を必要以上に強く押した

少しだけ投下します



チャプター
北条加蓮


リボルバー


いわゆる六連回転銃


現実世界ではまず本物をお目にかかることなんてない武器だ


だが仮想空間の中では偽物が本物以上の力を持つこともある


北条加蓮は今その偽物の脅威にさらされていた



北条加蓮(ボット)「ほらほら!早いとこアタシを倒さないとみんなから出遅れちゃうよ?」

銃声、銃声、発砲音

やはりこのボットもまた他と同様(奈緒除く)オリジナルの加蓮と同じ姿をしている

違いはやはり胸元のバッジ、

それと利き手である右手に構えられたリボルバー

女子らしい細くしなやかな腕が黒々として硬質な銃を片手で支えている


彩られたネイルの鮮やかさが引金の無骨な鉄色と対比していた

加蓮「ちょ、いきなり銃とか!いくらゲームでもやりすぎでしょ!」

仮想空間だからか、あるいは彼女がボットだからか、発砲により生じる反動をものともせず連射を続けている

加蓮は並べく広い道を選んで逃げ回るしかない、狭い裏路地何かに入り込んでしまったら後ろから狙い撃ちだ


無意味に赤、青と色を変える信号をぬけ、車一つない車道を横断する


ビシッ!

たった今加蓮が駆け抜けたばかりのアスファルトを銃弾がえぐった



ゲーム開始5分経過

北条加蓮VS北条加蓮(ボット)

 継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル街


逃げ回っているうちに周りの風景が変わっていた

最初加蓮が気づいたとき、周りの建物は雑居ビルが中心で空も近く感じた

だが今はどうやら都市の中心に近づいたらしく周りのビルがどれも大きく高い

ビルが大きい分、周りの道は広くなるが小道が減るため追っ手を撒くにはやや難しい


そして加蓮はついに追い詰められた


加蓮「はぁ・・・はぁ・・・」


街路樹の一部、茂みに尻餅を付くように加蓮が倒れている


ジャラッ

カシャン カシャン カシャン カシャン


打ち尽くした弾丸を捨て、悠々と銃弾を装填し直しながら

ボットがオリジナルにゆっくり歩み寄る


加蓮「(なにこれ・・・デジタルなのにスゴい疲れるんだけど・・・)」


加蓮(ボット)「・・・チュートリアルだからって甘く見ないでよね、アタシだって一応はあんたたちプレイヤーを倒すために作られたんだから」


加蓮「ピ、ピストル持ってる奴を甘く見るわけ無いでしょ・・・」


だが模擬戦闘と聞いてもいまいちピンと来なかったし気軽にゲームの一種だととらえていたのは事実だ

まさかこんなに早くリタイヤすることになるなんて

ボットがまっすぐ銃を構える、そういえばずっと片腕だけで支えていた。疲れないのだろうか


キキキキ.......


引き金を絞るのに連動して撃鉄がゆっくりと振りかぶられる

あの撃鉄が弾丸の尻を叩くとき、加蓮の眉間に穴があくのだろう


加蓮(ボット)「それじゃ。」




パン






衝撃

~~~~~~~~~~~~~

次の投下はまた数時間後に

上条春菜(18)
http://i.imgur.com/t42b9vl.jpg
http://i.imgur.com/Nsrm1eG.jpg

北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/VDbYvwA.jpg
http://i.imgur.com/NzmsUdN.jpg

~~~~~~~~~~~~~~

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・あれ?」


眉間に銃弾の衝撃を受けたにもかかわらず死んでない

いや仮想空間に死ぬことはないのだが、ゲームオーバーらしきアクションがないのだ

思わず閉じていた目を開ける


銃口、ネイル、腕、そして自分にそっくりな誰か


目を閉じる前と風景が変わっていない


加蓮「生きてる?」


加蓮(ボット)「ふふっ、あははははっ!!なんちゃってー!」


目の前で自分が可笑しそうに笑っている


加蓮「え?・・・なに?見逃してくれるの?」


状況が把握できない。死んだと思ったら生きていて、それを笑われている


加蓮(ボット)「チュートリアルって言ったでしょ!」

 「アタシたちはその練習用ボットだから、プレイヤーに攻撃は出来てもダメージは与えられないの!」


それを知っているのはプレイヤーの中では今のところ双葉杏くらいだった。加蓮が知らないのも無理はない

加蓮「・・・・・・・はあ!?なにそれ!?アタシ逃げ損じゃないの!」

加蓮(ボット)「やーい、引っかかったー♪」

疲れも忘れて加蓮が立ち上がる。

自分のロボにコケにされた気分だ

加蓮「じゃあなんでアンタあんなにガツガツ攻撃してきたのよ!」


加蓮(ボット)「そりゃ、アタシだって折角作られたのにすぐ退場なんてつまらないじゃない?」

あっけからんとしてボットが言う。正直これがプログラムされた人格とは思えない

加蓮「なによそれ、・・・もう、初っ端から神経使わせないでよ」

加蓮は一度立ち上がりはしたものの、意気消沈してまた倒れ込みたくなった


加蓮(ボット)「あはは・・・あとはあたしからオリジナルへの励ましも込めて、かな?」


加蓮「励まし?」


加蓮(ボット)「そ!・・・・・・折角アタシのモデルなんだから、どうせならこのゲーム、全力でやって欲しくてね」


励まし、そういえば何度も銃撃された割には最後の一発まで自分に当たることはなかった。

そのせいで練習用ボットの「設定」にも気づけなかったが、

逆に言えばこの十分に満たない時間に加蓮の頭からはこのゲームに対する楽観視、のようなものがすっかり消えていた


加蓮(ボット)「プレイヤーは18名しかいないのは知ってるでしょ?アンタは選ばれたんだから頑張らなきゃ」

ボットがこっちに手を差し出す

加蓮「・・・はは、こっちは別に怠けるつもりなんてなかったし、」

加蓮はそれを掴んで起き上がった

加蓮(ボット)「どう?アタシの殺る気満々の演技、楽しんでくれた?」


加蓮「・・・とんだチュートリアルよ、ほんと」


加蓮(ボット)「まーた『努力とか根性とか気合とかそーゆーのキャラじゃないんだよね?』なんて言ったら怒るからね。やるからには勝ってよ?」


加蓮「わかった、この空間に来れなかった人たちの分も、アタシのそっくりさんの分も頑張るよ」



加蓮(ボット)「・・・・・・じゃ、そういうことで!えっとじゃあこれ上げるね」


ボットが右手に構えたリボルバーをひょいっと持ち上げる


加蓮「ありがと、あーどうせソレもらうんだったら無駄に弾撃たせるんじゃなかったな」


加蓮(ボット)「ごめんね?、ストックも使ったからもうこれ6発しか残ってないや」


加蓮「いいよ、まずは自分でここらへん探索して弾丸さがすし、じゃあ頂戴」


加蓮はこの世界の攻略にあたって武器調達という行動目標を立てる

まずはボットから受け取るところから始めよう


加蓮(ボット)「・・・・・・・・うーん、その事なんだけど」


加蓮「?」


加蓮(ボット)「ボットの持ち物を受け取る時って」


リボルバーの引き金に指をかける


加蓮(ボット)「ボットが消えないといけないんだよね」



加蓮「・・・・・・え?」


銃を頭の高さに持ち上げる



加蓮(ボット)「・・・やるからにはちゃんと期待には応えてよ?」


銃口を自分のこめかみに当てる


自分のオリジナルが驚いた表情でこっちを見ている



加蓮(ボット)「ってことで、餞別代わりに、もう一発もらっていくね」

引き金を絞る







ゲーム開始10分経過
北条加蓮(ボット)消失
~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
小関麗奈


全プレイヤー中最も早く能力を獲得した双葉杏

全プレイヤー中最もこのゲームに真剣な北条加蓮

全プレイヤー中最もこの企画の成功を望む佐久間まゆ



小関麗奈「・・・・・・納得いかないわ!」



そしてこの少女、小関麗奈もまた全プレイヤー中で、ある最速記録を打ち立てていた。



麗奈「・・・・・・・・なんだか、このアタシが馬鹿にされたような気がするのよ!」



それはチュートリアルのクリアタイム

麗奈は全プレイヤー中最も早くに練習用ボットを撃破していたのだ

その割に彼女の表情は浮かない、誰も周りにいないから誰に怒りをぶつけていいのかわからない、そういう顔だ


それもこれも自分ソックリのボットが悪い


ゲーム開始地点、自分は商店街のようなところにいた。

それで晶葉からの大音量のスピーチを聞き流しながらシャッターで閉じられた店を何件か横切りながら散策を開始したところでやつが現れたのだ


思い返すたびになんだか複雑である

最後にもういっかいさっきの光景を回想する。もしかしたらなにかの間違いだったかもしれないし。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
回想

麗奈「ふーん、よくできてるじゃない・・・」


バッ!!


麗奈「!?」

小関麗奈(ボット)「アーッハッハッハッハ!!隙アリよオリジナル!!喰らいなさい!!レイナサマスペシャルバズーカ!!」

ボフッ!

麗奈(ボット)「な!?失敗ですって!?デジタルで!?晶葉のヤツ!このアタシを騙し」


ボンッ!!!!

麗奈(ボット)「ご、誤爆・・・」

ドサッ

シュウウウウ.........


麗奈「えっ」


ゲーム開始3分経過

小関麗奈(ボット)消失

麗奈「えっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
回想終了

小関麗奈(13)
http://i.imgur.com/gfjanxM.jpg
http://i.imgur.com/Zz9SsKS.jpg


麗奈「ムッキーーーーー!!!間違いないわ!!これアタシが失敗続きの小悪党みたいじゃない!!!」



その場で地団駄を踏む。

鏡映しの姿だった分、まるで自分の失敗を見せつけられたようだった

ちなみにボットは現れた場所で倒れたあと役たたずのバズーカを残して霧が晴れるように消えていった


しばらく地面に鬱憤を晴らしたあと麗奈はとりあえずやることがないので探索をはじめた。

シャッターの居並ぶ店の列を駆け抜けていく


麗奈「あっ!!アンタ!」


??「・・・おや」


画像ありがとうございます

麗奈は前方に人影を見つけ、その人影も声でこちらに気づいたらしく顔をこっちに向けた

その人影は商店街の出口に当たる、店の途切れたあたりに身を隠し、そのむこう、市街地を覗いているようだった。


麗奈「アンタ!ボットじゃないでしょうね!!」


彼我の距離5mほどで麗奈は足に急ブレーキをかけると相手を牽制した


??「落ち着いてください麗奈、私にはボットであることを示すバッジがついてないでしょう?私はプレイヤーであります!」


麗奈「バッジ?なによそれ」


??「どうやらボット専用の装備らしく、それを見ればプレイヤーとの区別がつくそうなのであります」



麗奈「はん! ア、アタシは自分のボットなんて瞬殺したのよ!だ、だからそんなの見る暇なんてなかったわ!!」

??「ほう!それは凄い!麗奈は戦闘のセンスもあったのですね」

麗奈「・・・ふふん、ま、まあね!アタシにかかれば余裕よ!で、アンタはどうだったのよ亜季」


大和亜季「私でありますか?私はついさっきようやく倒したところであります」


ゲーム開始6分経過

大和亜希(ボット)消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
商店街

麗奈「で、あんたは何をコソコソしているわけよ・・・」

亜季「麗奈、もう少し声を抑えてください・・・」

亜季「実はこの商店街をもう少し調べてみようと思いまして、周りに敵のボットが近づいてきていないか確認しているところだったのであります・・・」

麗奈「調べる?でもここほとんどシャッターしまってるだけよ・・・?」

現在麗奈は亜季と一緒に壁に張り付くように立って声を潜めてしゃべっている

一応、亜季の姿勢に合わせたのである。下手に騒いでボットが来てもこちらは丸腰なのだから

亜季「いえ、麗奈は気づいてないようですがいくつかの店のシャッターは鍵が掛かっていなかったのであります・・・」

麗奈「じゃあその時点で調べに入ったらいいじゃないの・・・」

亜季「・・・そう思ったところでチュートリアルが始まり、自分のボットと戦う羽目になったのであります」

麗奈「あー、それで倒したはいいけど物音に誰かが寄って来てないか確かめてたってわけね」

亜季「察しがよくて助かるであります麗奈」


ヒソヒソ話の間も亜季の目線は遠くをにらみ警戒を怠らない

さすがサバゲーを趣味にしているだけある、この手の模擬実戦などお手の物なのだろう


麗奈「・・・・・・・・・」


亜季「ふむ・・・特に敵影は見当たらないでありますな、では私は探索作業に移らせてもらうであります」


亜季「そういえば麗奈はこの後どうされますか?」


麗奈「・・・・・・・・・アタシもついていくわ」

亜季「おお!・・・それはありがたい!やはりこういう場所では集団が基本でありますからな!」

麗奈「ま、まあアンタはこういうの得意そうだし?精々アタシが利用してあげるわ!!アーッハッハッハ!!」

そういう下心のようなものは普通口に出さないものなのだが、

麗奈は悪党ぶる割にはこういうところが素直だった。


亜季「ふふっ、ではこれで我々はバディでありますな!」

麗奈「いやアイドルなんだからそこはコンビかユニットでしょ!?」

亜季「むむむ・・・そうでありますか」

麗奈「そうに決まってんじゃないの、これだから」


ポン
______________

 小関麗奈  100/100

『ユニットを組む』
______________


ポン
______________

 大和亜季  100/100

『ユニットを組む』
______________



麗奈「わっ!?」

亜季「!?」


何の前触れもなく目の前に四角いボード、まるで空中に浮かぶ電光掲示板のようなものが現れた

思わず麗奈の喉から声が飛び出す

亜季も一瞬虚を突かれたが、こっちはすぐに気を取り直した


そのボードはなんの支柱もないにもかかわらず蝶か風船のように空中に停止している

こういう非現実な現象に驚いてしまうあたり、未だにここがなんでもアリの仮想空間だとしっかり理解できていなかったのだろう

麗奈「なによこれ?アタシの名前と・・・何かの点数かしら?」

亜季「それにこのユニットを組む、の文字、どうやらタッチパネルのようでありますな。押してみましょうか?」

麗奈「これ触っちゃっていいの!?罠かもしれないわよ?」


亜季「いえ、この近くに敵影は確認できませんでした、おそらくこれはこのゲームの機能なのでしょう」

亜季「・・・・・・もしかしたら麗奈が口にした『ユニット』の単語がキーだったかもしれませんな」

二人のちょうど目の高さのところをふわふわと漂う謎の物体について亜季が推測を述べる

麗奈「・・・じゃあこれを使えばアンタと正式なユニットになるわけね。」

麗奈が睨めどもボードは答えない。ただ彼女の視界に浮いているだけだ


亜季「・・・もし不安であればコレは捨て置いても良いのでは?別にこんなものなくとも行動を共にすることに支障は出ないでしょう」

麗奈「いいわよ!いずれ世界を征服することになるこのアタシが!よくわからない、なんて理由で逃げ出すわけには行かないわ!!」


目の前のボードのパネルに親指を強く押し付けると『ユニットを組む』の文字が点滅した

表示が変わる
___________

 小関麗奈 100/100

『 O K 』
___________

二人で黙って麗奈のボードを眺める

静寂

麗奈「・・・・・・・・・・・・・・」


麗奈「・・・ふ、ふん!ほら見なさい亜季!何も起きないわ!」

どうやら危険なものではなかったらしい

亜季「ふふ、麗奈の剛毅果断、しかと見届けたであります」


続いて亜季も同様にパネル部分を軽くつつくようにタッチした


_____________

 大和亜季 100/100

『 O K 』
_____________


ポン


_____________

 小関麗奈 200/200

ユニットメンバー
・大和亜季 

_____________


_____________

 大和亜季 200/200

ユニットメンバー
・小関麗奈

_____________

麗奈「今度は何?アタシのに亜季の名前が入ってるわよ?」

亜季「こちらも同様に麗奈の名が刻まれたであります。それに横の数字が増えたでありますな」


ふたりがそれぞれのパネルを押したあとボードの表面が揺らめいたと思った瞬間、表示が変わっていた。

麗奈「これは、亜季が仲間になったってことよね?で、この増えた数字は何かしら?」

亜季「・・・・・・おそらくスタミナ、でしょうな・・・」

麗奈「スタミナ?」

亜季「確かここに来てすぐ、晶葉のスピーチ内容にあったであります、我々には初期値100%でスタミナが与えられており、0でゲームオーバーだと」


麗奈「ああ、アレね。じゃ、ラッキーじゃない、アタシたちはそのスタミナが倍になったんだから!」

亜季「その通りでありますな!ユニットを組んだ特典でありましょうか?」

麗奈「そうに決まってるわ! アーッハッハ!このラッキーをレイナサマに感謝なさい!!」

どうなるかと思われたゲームにも光明が差してきたのを感じる

麗奈はいつもの、憎たらしくも憎めない笑みでビシッと亜季に手を差し出す

麗奈「頼んだわよ!レイナサマのためにしっかり働きなさい!亜季!」

亜季「素直じゃないでありますなぁ・・・」

亜季は差し出された手をしっかり握り返した。


小関麗奈 大和亜希


全プレイヤー中最も早くユニットを結成したアイドルである



ゲーム開始11分経過

小関麗奈 大和亜希 ユニット結成


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季 小関麗奈

商店街のある店の中



ガララララ・・・


亜季「ほらこの通り、空いているであります」

麗奈「ホントね、じゃあ武器でも探すわよ」


二人は閉じられたシャッターのうちの一つを開けると中へ踏み込んだ


亜季が見つけた鍵のかかっていないシャッターの一つであり、調査対象だ。

だがその一件目に入ってみて二人は若干、落胆の色を顔に表す


中の物を引き払ったのか、そもそもこの仮想空間内ではそこまで作りこまれてなかったのか、目に付く範囲では何もなかった。

コンクリートの打ちっぱなしの冷たい壁と地面があるだけである。

麗奈「・・・これはハズレね、次行きましょ亜季」

亜季「いえ、この商店は二階建て、奥にはまだ何かあるかもしれませんよ」


亜季が示したとおり、照明のない薄暗い店内の奥にはうっすらと階段らしきシルエットがあった


麗奈「でもかなり暗いわよ?ここ電気つくの?」

亜季「いえ、電気は点けません、シャッターも閉めましょう。もしボットが来たら我々の侵入の痕跡を追ってくるかもしれません」

麗奈「手探りで進むってこと?」

亜季「大丈夫であります。ここはそれほど広くはありませんし、迷子になるような場所ではないでしょう」

麗奈「それもそうね、それに二階には窓もあったし、亜季、行きましょ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~

二階

二階に上がった二人はまたも、だだっ広いだけの空間に着いた

壁や仕切りのたぐいもなく、二回の隅から隅まで見とおせる間取りだ

よく考えたら柱すらも見当たらない。

ただ一階との違いといえば二階は空っぽではなかったということか


麗奈「・・・なにこれ、段ボール箱だらけじゃない」

亜季「ふむまるで物置のようですな。麗奈、ここは二手に分かれて調べましょうか」

二階の特徴、それは床を埋め尽くさんばかりのダンボール箱の数だった

すでに足の踏み場もなくなりそうで、床が多々見なのかフローリングなのかもよく見ないとわからない

もしかしてこの建物の持ち主は引っ越してきたところだったのだろうか

麗奈「(いやよく考えたら仮想現実に引越しなんてないわね)」


亜季「では私は奥の方の箱から開けていきますので、麗奈は向こう、窓際近くに積まれたものから順に開けていってください」

麗奈「!ええ、わかったわ、任せなさい!」


かくして分担で探索作業が始まった

といっても互いの姿が目視で確認できる程度にしか離れていないが

麗奈「これは・・・空っぽ、これも空っぽ・・・」



亜季「これは、ふむ・・・振っても中から音はしませんな、空と・・・」


亜季「これも空、これも空・・・これも多分空っと」



麗奈「開けた箱はむこうに投げ飛げとばしてやるわ!」



亜季「これは、、少し重たいですな。開けてみましょう」



亜季「こっちはまたハズレですかー・・・」


麗奈「あら、これは・・・なんかの弾丸ね、銃がないと意味がないじゃない、銃もどっかにあるわよね」


各々が与えられた場所で手の付けられるところから箱を開けていく



亜季「これは・・・ハンドガン!ですが見たことない型のものですな、」



亜季「こっちのはまたハズレ・・・」




麗奈「これは、また銃弾なの?でもこの弾えらくでかいわね、ショットガンとかグレネードとかそのへんの弾かしら?」



亜季「むむ、空箱が偏りましたな、ちょっとむこうにどけて、と」




亜季「ふーむ、これも空っぽですな」



ちらほらと武器らしきアイテムは手に入るが銃弾だけであったり小さいハンドガン一丁だったりと成果は芳しくない。



麗奈「・・・?なにかしら、箱に下敷きにされた箱が・・・」

積まれた箱をいくつも動かしているうちに、それらにうもれていた少し細長い箱を見つけた

麗奈はその端をつかみ思いっきり引っ張った

だがそんなに力を入れずともその箱の上に乗っていたダンボール箱はどれも空だったようで、意外と簡単に引っこ抜けた



麗奈「うわっ!!」



むしろ余計に力んだ反動で麗奈のほうがすっ転んでしまった



亜季「麗奈?大丈夫でありますか!?」



亜季「!?」



離れたところで作業をしていた亜季が振り返る



麗奈はその上半身が箱の山にうもれていた。怪我はないようだ

麗奈「・・・問題ないわ!ちょっと転んだだけ・・・」

ここで麗奈は自分の手が硬い感触のものに触れていることに気づいた


麗奈「・・・・・・?」


起き上がるより前に手に掴んだそれを引き寄せる


ハンドガンなんてものじゃない、詳しい名称は分からないが確かショットガンがこんな形状だったはず!!



麗奈「!!」



ずしりと手に重い戦力の塊、ゲーム攻略への大きな一歩、麗奈は仮想とはいえ本物に近い銃を手にし気分が高揚するのを感じた


ガバッ!!


箱の山から飛び起きる



麗奈「やったわ見なさい亜季!!ショットガンよ!!」



13歳の身にはやや重すぎるそれを両手で胸元に抱えながら叫ぶ


亜季「おおっ!!本当でありますか!」


亜季「やりましたね!」


ミリタリーオタクの亜季もそれにすかさず反応した



麗奈も満面の笑みで亜季の方に駆け寄る



では作業の休憩がてら手に入れたアイテムでも確認しようか、そうなりそうな流れだった


だが




もっと大事なことがある





無視してはいけないことだ





麗奈も亜季も





この状況をまるで物語のように天から眺めている人物がいたとしたら、その人も





「それ」を無視してはいけなかった






見過ごしてはいけなかった


麗奈の声に応じて作業を中断して互いに向き合う


亜季「おおっ!ショットガンですな、少し手にとって見せてもらって構いませんか?」



亜季「しかしえらく大型のものなのですね」



気付け


誰か


麗奈「あれ?亜季」


亜季「?」


亜季「なんでありますか?」
















麗奈「なんでアンタ二人いるの?」


気付いた


~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~

亜季「!!?!??!?」


亜季「・・・・・・・・・・」


ダンボールに満ちた部屋、それぞれ部屋の端から互いに向き合っている


”三人”が互いに互いを見ている



麗奈「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!亜季!!あんた自分のボットは倒したんじゃないの!!」


亜季「た、確かに倒しました!!私の軍隊式格闘術は本物であります!!」


麗奈「う、うるさいわね!偽物は黙ってなさい!!」


亜季「そ、そんな!?」


窓際に麗奈

その反対側の壁際に亜季


その間、部屋の中央付近でもダンボール箱の中身を調べている亜季がいた



しかしそのどちらも胸元に赤く光るバッジがついてないのだ


同じ人間がいるにはこの仮想空間に限っては練習用ボットしかありえない


麗奈「あー、もう!!なんなのよ」

頭をかきむしる、二人の亜季は全く同じ姿

バッジもない、まるで矛盾している、バグでも起きたのか?

三人は互いを見張るようにその場に立ったまま動けない

亜季「麗奈!私が本物です!!」

亜季「いや何を言う!私の方こそ!!!」

焦りを含んだ大声が余計に場の混乱を加速させる

どうして気づかなかったのか、全員が自分の手元にばかり集中していたからだ



そこで二人の亜季のうちの一人が思いついたように声を上げた


亜季「!!そうだ麗奈!!これを見てください!!」


麗奈「なによ!!変なもんだったら撃つわよ!!」


亜季「ユニットであります!!」


麗奈「!!ユニット!?」


ポン


二枚のボードが空中に浮かんだ


_____________

 小関麗奈 200/200

ユニットメンバー
・大和亜季 

_____________


_____________

 大和亜季 200/200

ユニットメンバー
・小関麗奈

_____________


そのボードは二人の目の高さ、それぞれ二人のすぐそばで浮いている


つまり

亜季「これでわかってもらえましたか?」


麗奈「う、うん・・・ごめん、怒鳴って、あんたが本物ね」


亜季「いえ、こちらも取り乱し、対応が遅れましたのでおあいこです



亜季?「・・・・・・・・・・」


麗奈「で、アンタは誰よ?」

亜季「いつの間に我々に紛れ込んでいたでありますか・・・!」


壁際から、作業をすすめながら移動し、部屋の中央を探っていた亜季と

窓際でショットガンを見つけた麗奈が


壁際にいた亜季を睨む




亜季?「・・・・・・・・・・・・・・・」


亜季?「・・・まーさか、こんな早くユニット組んでるのがいるなんて思うわけないじゃん」


亜季?「ごめんごめーん ちょっとしたイタズラのつもりだったんだよ」


亜季?「でも仕方ないでしょ、ほらーなんだっけ?こういう言葉があるでしょ」

















塩見周子(ボット)「あやかし狐は人を化かすって♪」


ゲーム開始18分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

開始
??????????

???????????????

数分遅れたけど麗奈ちゃん誕生日おめでとう!


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、渋谷凛
2、双葉杏
3、小関麗奈&大和亜季

画像 コメントありがとうございました

大和亜季(21)
http://i.imgur.com/JmZFdXR.jpg
http://i.imgur.com/v1s8lly.jpg

塩見周子(18)
http://i.imgur.com/sEE4Brz.jpg
http://i.imgur.com/ldWOiXY.jpg



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


他人の家の引き出しは下から開けろ

深夜の建物は屋上から侵入せよ


時間の無駄を省くために必要な泥棒の基礎的なスキルに確かそういうのがあると聞いたことがある


たしか早苗さんから聞いたっけ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
片桐早苗「例えばタンスの引き出しの一番上の段を開けるとするでしょ?」

早苗「で、そこを物色したあとその一つ下の段を調べようとすると上の段が邪魔になるから逐一閉めなきゃダメよね?」

早苗「開けて閉めて開けて閉めて・・・これすっごい時間の無駄。空き巣のプロは下から順にパッパと開けていく、そしたら引き出しの上に邪魔になるものはないし」

早苗「で、盗るもの盗ったら開いた引き出しはまとめて押し込む!・・・ほら閉める動作は一回で済んじゃった。」


早苗「建物の場合は単に一階から壁をよじ登るよりも屋上から一つ下の階のベランダやテラスに飛び移るほうが簡単ってだけの話。」



早苗「あとは・・・上の階の部屋から順番に盗みに入っていけば、全部の部屋を見たあとに一階からすぐ逃げられるってことかな?」



早苗「んー、でも・・・ひとつの建物の全部屋をさらうような肝の据わった泥棒なんか滅多にいなかったわよ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

片桐早苗(28)
http://i.imgur.com/x1AM1BI.jpg
http://i.imgur.com/OY80kLX.jpg

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都市中心付近 ある巨大ビル 一階


そんな記憶を思い出しながら、

凛は見たところ、ここらで一番大きく高いビルに入るとまずは最上階を目指すことにした

エレベーターのパネル盤に大量に並んだボタンの中で(24)と書かれたボタンを押す

ボタンの中で24が一番大きな数字だ

移動する密室の中で凛は自分の取るべき行動を整理する


凛「(自分のボットを倒して以降、今のところほかのボットには接触していない。)」

凛「(というか接触自体を私の方から避けている)」

凛「(私が掴んだ情報といえばボットはバッジをつけていること、あと通常武器の銃は既に誰かが使い始めていること)」


凛「(かなり離れた場所からだけど何度も銃声を聞いた、・・・パン、パンっていう短いのと、ターン・・・って感じの、多分遠距離狙撃の銃声かな)」


凛「(多分私は出遅れている。みんなはもう武器を手に戦い始めてるんだ。)」

凛「(それに能力。それも気になる、もう誰か手に入れたのかな)」





凛「(だからまずはこの建物を上から下まで調べ尽くす。こんなに大きいならきっといい武器が見つかる・・・はず)」




ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン・・・


凛を入れた巨大な機械の箱の上昇がとまった。

目的の階に到着したのだろう。


下準備も含めて、凛の孤独な戦いが始まる、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
同ビル 一階


???「・・・・・・24階、ですか」

???「では私たちはその一つ下の23階に行き、階段で24階にこっそり上がります」


???「凛さんには悪いですが、私たちにも目的というものがあります」



???「皆さん、行きますよ。凛さんがまだ丸腰のうちに」


泥棒は上から物色を始め、

強盗は下から追いかけてくる


一階からは逃げられても


空でも飛べなければ屋上から逃げる術はない


渋谷凛、彼女の戦いは背水の陣から始められた


~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


町外れ 高台


本人たちは知る由もないが奈緒が転送されたのは凛のいる、都市の中心からは少し離れていた


奈緒「ふう、ようやく、着いたか・・・」


周りにあったのは駐車場や鍵のかかった住宅ばかり、挙句メイド服の自分を倒したあとはボットからなんの接触もなし

都市の喧騒というのが仮想空間にもあるのかは知らないが、自分の周りは静かすぎた。

戦闘が起きないのはいいことかもしれないが、だからと言って武器も手に入れられずにフラフラとはしてられない


奈緒「ここは周りより標高が高そうだな、遠くがよく見渡せる。」

奈緒はしかし変に都心に向かうより高所を目指した

彼女が今歩いているのは山沿いの道路である

眼下には背の低い建物が居並び、遠くには背の高いビルが見える

奈緒「・・・ここら辺かな」


アスファルトで舗装された勾配の急な道路を登っていく


奈緒「拓海がツーリングで来てる山とかがこういう感じの道なんだろうな・・・歩きはキツい」


どうせ車なんて来ないが、ガードレール付近を歩く。

左手には都市風景、ただしガードレールの向こうは小さな崖、足を滑らせると登るのがめんどくさそうだ


奈緒「・・・・・・ん?」


歩きながら遠くの街を何気なく観察する。

その視界の中の街に人影が見えた。だれかの背中だ




奈緒「・・・・・・加蓮?」



幸運なことに高低差はあれど、距離としては100mほどしか離れていない。


だから見覚えのある髪色、髪型、服装にも気づけた


あの変な電車の中で自分の隣に座っていた人間だ。


正直なところ仮に誰かと会ってもそれがボットだったらどうしようかと不安だったが

加蓮は自分と同じプレイヤーだ。

チュートリアルもそろそろ終わっただろうし、加蓮もおそらく練習用ボットは倒しただろう


奈緒「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」


奈緒「かれーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」


最初に見つけた相手が味方だったことに喜びを隠さず大きく呼びかける

めぼしい目印を見つけたら山を降りて向かおうとしていたが、自分はラッキーだった

意外と近くに加蓮を見つけられた。


奈緒「こっちだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


声よ届けとばかりに叫ぶ。仮想空間なら喉も傷めない

それに都会にはあるまじき静寂なのだ、これだけ声を上げればなにか聞こえるだろう




加蓮「         」ン?


加蓮「         」キョロキョロ



その証拠に離れた位置の加蓮もなにかに反応したように周りを見渡している

ここからは遠くて見えないが右手に何か持っているらしく、それを構え直していた

ただ、何かの声が聞こえるがその出処がわからないらしい。こっちには気づいていない


奈緒「やべっ、まずこっちを向かせねえとな」


やっと誰かとコンタクトできそうなんだ。この機会を逃したら広い都会ステージで迷子になってしまう


奈緒「・・・・・・すうぅーーーー......」



奈緒はもっと大声で呼びかけるため肺いっぱいに息を吸った


奈緒「(もっと大きな声で!!いくぞ!!)」



奈緒「かぁーーーーーーーーー!!!れぇーーーー


奈緒「      」


奈緒「      」


奈緒「    !?」


奈緒の声が出ない


声が出ない


音が出ない



喉は震えている、舌は動いている、歯に自分の吐いた息があたっている


だが自分の耳に自分の声が聞こえていない


まさか自分の耳がおかしくなったのか!?


奈緒「   !? !? !? 」



慌てて両手で耳に触れる、

なんともない、

ゴソゴソと ガサガサと

自分の指が耳朶とぶつかる音が聞こえている

耳ではない、声だ、やはり声が出ていなかった


奈緒「      」


奈緒「       ぷはっ!!」


奈緒「戻った!? なんだ今の!?」








????「......奈緒さんの声、...混乱、そして恐怖の音、です」



奈緒「うえっ!!?」



????「......すいません、怖がらせてしまいましたね,,,」


????「...でも...仲間を呼ばれると困るので......少しだけ...先程のあなたの声をいただきました」


????「驚き、安堵、期待、......そして大きな喜び、...あまりに暖かく、安心できる旋律に...奪うのを躊躇いそうになりました......」


奈緒「声を・・・奪う?」



いつの間にか奈緒の後ろ、道路を挟んだ反対側に彼女はいた。


敵、と表現するには穏やかな雰囲気をまとわせすぎている


しかし、スラリと伸びた細身の長身には、あの赤いバッジがつけられていた



????「......積極的に危害を加えるつもりは...私にはありません...」



????「......ただ、貴方たちにユニットを組ませるわけにはいかない......」









梅木音葉(ボット)「......それだけは...阻止させてもらいます......全力で」



ゲーム開始20分経過

神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
三好紗南


あたしのゲーム機は赤外線の受信機能みたいに、上の方についた端末みたいなパーツをアイドルに向けるとデータを受信し始めるみたい


もし一人のアイドルに向けている途中に、別のアイドルに端末を向けると一人目のデータより二人目、つまり最新のデータの方を優先して受信するらしい


で、あとは次のアイドルのデータを受信するまで画面はそのまま最後に受信したデータを表示し続ける

___________________

name: 上条春菜

category: ボット

skill:
メガネを通してスコープのように遠
方を詳細に視認可能。副次的効果と
して遠距離攻撃の命中精度が飛躍的
に上昇する
____________________


あたしの手元から離れて地面を滑っていったゲーム機に映った情報にはそうあった


遠距離攻撃


これって狙撃・・・だよね





あたしは今、フロア中に設置された筐体の一つに体を隠している




左腕がビリビリしてる、


ずっと正座した後に足がこんな感じになったっけ


あれの百倍くらい


ゲームの画面が切り替わった瞬間、


近くにボットが隠れてたのかと思って背後を振り向いた


そのせいで体が動いたからかな?


弾丸 見えなかったけど、たぶんそう


なにかすごく早いものがあたしの頬を掠って左腕の肉付きの薄い二の腕を貫いた


ゲーム機は無事だったけど飛んでいった


あたしは隠れた


その後にターーーンって発砲音が聞こえてきたんだ


だから狙撃ってわかった



窓ガラスは、というかこのビルは壁面が一面ガラス張りだった


だから外からはこのビルの中は外から丸見えなんだ


いや、普通ガラスの反射があるんだろうけど


それでも弾を当ててきたんだし、ガラスの反射なんかでターゲットを見失ったりはしないのかも


それに分かる


もしも、今隠れている筐体からあたしが出ようとしたら次は頭を狙われる


だって分かるもん


今あたしを狙ってる相手、


ゲーム機によれば春菜さんのボットらしいけど


その視線が分かる


背後には誰もいなかった


でも遠く離れた場所からは狙われていた


その視線を今更感じてる


背の小さいあたしにとっては十分大きかった筐体


今、あたしの命を守るバリケードとしてはとっても小さく感じた

ゲームだからかな、腕はしびれるけど痛くはない








でもあたし、今ものすごく怖がってる


_____________

 三好紗南+ 80/100 
 

_____________



ゲーム開始15分経過

三好紗南VS上条春菜(ボット)

膠着状態継続中


~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
小日向美穂






やあ!



ぼくのなまえはプロデューサーくん!





なまえからは想像できないかもしれないけどくまさんだよ!


よろしくね!


次の投下は数時間後に

梅木音葉(19)
http://i.imgur.com/CPxCZXS.jpg
http://i.imgur.com/FjnZhVC.jpg

小日向美穂(17)
http://i.imgur.com/CHbgx22.jpg
http://i.imgur.com/2sQZ0xm.jpg



このなまえはとっても気に入ってるんだ!



だってぼくのご主人タマの美穂ちゃんがつけてくれたんだもん!



ビルの窓ガラスにはふわふわの白いくまがうつっているよ



ぼくのこのやわっこいからだをギュっとだきしめると美穂ちゃんはよく眠れるんだって!


それにしても一体ここはどこなんだろう?


まわりにはとっても大きいビルばっかりだよ


ぼくの体は小さいからビルの一番てっぺんをみようとおもっても上を見ていくうちに転んじゃうんだ...




やっぱり戻ったほうがいいのかな?



だめだよ!


いちどしゅっぱつしたからには何もせずに帰るのはダメ!




美穂ちゃんのおともだちがいるところまでぜったいにたどり着いてみせるんだ!


きをとりなおして



しゅっぱつしんこう!



うーん、でもこのぬいぐるみの足は歩きにくいなぁ・・・



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビル街



ぽっふ ぽっふ ぽっふ


このあしおとはぼくが自分でかんがえたんだよ



綿の詰まっただけの体じゃあしおとなんかしないからね



美穂ちゃんのおともだち、仁奈ちゃんって子がきぐるみをで歩くとこんな音がするんだ



ちょっとまねさせてもらったけどゆるしてね

・・・!・・・・「・・・・」・!・・・




おや? 誰かの声がするよ?



あっちのほうだ!



美穂ちゃんのおともだちだったらいいな!



ぽっふ ぽっふ ぽっふ!!




やっと着いたよ!




このほそい道の先から声がきこえたんだよね?




こーんにーちはー♪



プロデューサーくんでーす

















まゆ「・・・うふふ・・・・・・・・・・・・これで倒したボットは三体、いえ三人目、ですかねぇ・・・」


まゆ「そういえば・・・チュートリアルの分は・・・・・・含めるのかしらぁ・・・?」




ほうちょうもってなにしてるのまゆちゃん


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
美穂の独白



小日向美穂「(お昼寝から覚めたと思ったら目の前に自分がいた)」


美穂「(私のボット?とかいうらしいんだけど、その子は私と戦わないといけないらしい)」


美穂「(すごく申し訳なかったけど、それが役目らしいので私はなるべく痛くないようにあの子を叩いた)」


美穂「(私ソックリのあの子は、『それじゃだめだよ でもやっぱり私のオリジナルだね』と言って消えていった)」


美穂「(そのあと、私が寝ていたのが病院みたいな施設の屋上だったらしくて、下に降りる途中、ある病室ベッドに置かれていたあるものに気づいた)」


美穂「(プロデューサーくん、お見舞いの品みたいに、ベッドの上に置かれていた)」


美穂「(おもわずギュっとしたら、えっと・・・そう、ぴろん?ぴこん?・・・・・・そんな音がしたんだ)」






美穂「(そしたら私はいつの間にかプロデューサーくんに”なっていた”)」






美穂「(吸い込まれたみたいな感覚がしたあと、私の体も視界もあの白くてふわふわのプロデューサーくんになっていた)」


美穂「(よくわからなかったけど、いろいろ試してみたら元に戻れた。でも折角だから着ぐるみみたいな気分を満喫することにしたんだ)」






美穂「(ついでに、家でこっそり書き溜めてた『もしもプロデューサーくんが喋ったら言って欲しい言葉リスト』も実行してみた)」


美穂「(すごく楽しかったから、そのままのキャラで散歩に出たんだ___)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


美穂(プロデューサーくん)「・・・・・・」



まゆ「・・・・・・・・・あら、ぬいぐるみ・・・?」


私はその場で倒れたまま動かなかった


たしか・・・オモチャたちが主人公の映画では、人間に見つかるとこうやって動かないふりをするんだよね

ホントはまゆちゃんに話しかけたかったけど何故かそれを思いとどまってしまった

まゆちゃんはリボンやヒラヒラした服がとっても似合う優しくていい子

しかも家庭的な面もすごい、だから調理道具を持って台所に立つ姿もサマになっていた

バレンタインチョコを作った時、チョコを切るために包丁の使い方も何度も教えてもらったなぁ......





その包丁が、今まゆちゃんの右手に逆手に持たれている

まゆちゃん、そんな持ち方は危ないよ?


まゆ「・・・このデザインは・・・美穂さんのものと似てますねぇ・・・」





まゆ「・・・・・・・・・・・・・・・確か”プロデューサーくん”でしたっけぇ?」





まゆ「・・・・・・素敵な名前ですねぇ・・・うふ」



逆手にもたれた包丁と反対の手には、なんだろ?ビルの間は暗くてよく見えないけど黒っぽい何かを握ってた


まゆちゃんはその手の黒っぽいのを服の、体の周りを覆うように巻かれているデザインのリボンの間に挟んだ


なんだか西部劇とかでガンマンがピストルをああいう風に腰に巻いたベルトにしまってたなぁ・・・


そんなことしたら服が歪んじゃうんじゃないかなぁ?


まゆ「美穂さんがプレイヤーかボットかは、まゆは知らないですけど・・・もしプレイヤーなら、プレゼントするのも・・・まぁ悪くないですかねぇ」


まゆ「・・・もしかしたらこれが美穂さんのキーアイテムの可能性もあるわけですし、能力を使える人は多いほうがいいでしょう・・・」


キーアイテム? 能力? 

なんのことだろ・・・

もしかしてこのくまさんモードのことかな?


まゆちゃんは自分の考えを整理してたみたいに独り言を喋ったあと、こっちに歩いてきた


シルエットになっていたまゆちゃんが徐々に明るい部分に踏み込んでくる


まゆ「・・・・・・もしそうじゃなくても、







  お腹をかっさばいて、中の綿をくり抜いて、弾のマガジンケースにもできますしぃ・・・」



美穂(プロデューサーくん)「ひっ!?」





まゆちゃんの可愛らしい服


リボンが巻かれた可愛い服










その全てのリボンの部分に数え切れないほどの包丁やナイフ、そしてピストルが挟み込まれていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

プレイヤー

Cu まゆ 杏 美穂 ? ? ?
 
Co 凛 奈緒 加蓮 亜季 ? ?

Pa 紗南 麗奈 ? ? ? ?

通常ボット

Cu +α

Co 春菜 周子 音葉 +α

Pa +α

Unknown
まゆに倒された三人


次回、開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、北条加蓮
2、堀裕子
3、小日向美穂

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子 
5、VS上条春菜
6、VS梅木音葉


Another World

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票も有効)

7、池袋晶葉&一ノ瀬志希


画像、コメントありがとうございました



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


アタシを励ましてくれたのはアイドル活動に真剣になり始めた頃のアタシだ

あの子はやるからには期待に応えろと言った

あの子はアタシに武器を託した

たった5発の銃弾しかないけど

それすらも『少しだけ手助けしてやるからあとは自分でやれ』って背中を押されたような気がした


晶葉のロボット、ハイスペックすぎでしょ


人のために働くロボじゃなく、人を、アタシを働かせるロボだなんてね


加蓮「・・・やってやるわよ」



~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

と言ったものの誰とも会わない

地図がないので現在地もわからないアタシはいつの間にか随分閑散とした住宅街にいた

最初見た大きなビルは、二階建て、三階建ての家屋に取って代わられている



そんな中を右手に拳銃をぶら下げながら歩いているアタシ



女子高生アイドル!!昼下がりの住宅街で突然の発砲!!



なんてね、奈緒がやってたゲームだと人の家のタンスを漁ってアイテムをゲットするんだっけ?


仮想空間だとしても常識的な考えが先行してどうもそれには思い切りがつかない


凛だったらこういうときでもさっと頭を切り替えて、家だろうとビルだろうと土足で上がり込みそうだけどね



奈緒は、どうだろ、奈緒はゲーム好きだからねぇ・・・


・・・凛も奈緒も電車の中であって以来声も聞いてないや



!!...ぇーーー...  ...っーーー!


そんなことを考えてたからかな


風の音?違う、声がアタシの耳に届いた


加蓮「!!」


首を回す、周りを見渡す

こういう時どうするかわからないけど

警戒態勢としていつでも走り出せるように腰を落とした


.......................



何も聞こえない、誰の声だったの?どこかで聞いた覚えがある、


そもそもこの仮想空間にいるのはウチのアイドルなんだから耳に覚えがあって当然か



加蓮「・・・・・・・・・・・・・・・」


親指、小指、薬指、中指の順に力を込める


最後に引き金にかかった人差し指を少しだけ力ませた


銃はある 残弾は五発のみ 

だけどアタシの中の殺る気は満タンだった

........................


...オン


.......オン






音が変わった?





......ブオン






ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!!!





???「 オラァアアアアアア!! 喧嘩上等だコラァアアアッ!!!」



視界の端、アタシのすぐ真横から大型バイクが突っ込んできた


そこには住宅街の壁しかなかったはずなのに、


至近距離から獰猛な機械の塊が突っ込んできた


加蓮「・・・ッ!!?」




向井拓海(ボット)「特攻!、特攻!!、特攻だァッ!!!」



振り向いたけど間に合わない、


アクセルを握りこんだ右手と逆、


拓海さんの左手に握られた木刀が背中に叩き込まれた




ゲーム開始21分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

開始



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


_____________

 北条加蓮 90/100


_____________



バイクの加速を上乗せされたその打撃はアタシを吹っ飛ばした


加蓮「!!いったぁ・・・い」


アスファルトの地面に投げ出され、手足をすりむいた


と思ったが、見た感じ怪我はしてないし血も出ていない


ぶたれた背中も静電気が走った時みたいにしびれているけど骨が折れたとかそんな感じじゃない


やっぱこれゲームなんだ、少し安心する






これなら殺れる


オオオオオオン


痛みに呻くこともなく、


すぐに態勢を立て直すとバイクの排気音のする方に体ごとリボルバーを向けた




なのに、


加蓮「あれ?」



そこには誰もいな



拓海(ボット)「こっちだよォ!!」



あたしが銃を向けたのとはかなりずれた角度、

右手の銃をのばした先を迂回したように拓海さんが飛び出してきた












それも、壁の中から





・・・・・・は?


いやちょっと待って


アタシは、不安定な姿勢で右手を伸ばしていて


拓海さんは壁から、そんなアタシの真正面に突っ込んできてる


木刀が馬上槍のようにこっちを向いていて____



拓海(ボット)「フっっっっっっ飛べやぁ!!」


加蓮「!!」


咄嗟に銃を追いかけるように右手側に体を飛び退かせる



ダンスのレッスンで似たようなステップがあったおかげでスムーズにできた


飛び退く瞬間、アタシの足のすぐ横を風が吹き抜けた



拓海(ボット)「チッ!!」


そのまま拓海さんはサメやイルカが海に飛び込むみたいに壁の中に潜るように消えた


もちろん壁にヒビなんて入ってないし、どこかに隠し扉があるようにも見えない



...オンオンオンオン...!!



さっきまで静かだった住宅街に排気音が響き渡る


なのに姿は見えない、

まるで深夜に、どこか遠くの高速道路で暴走族が走ってたときのよう

やたらうるさいのに姿が見えない存在


加蓮「もー!なんなのよ!バイクに乗るなら公道を走りなさいよ!!」


ブオン!!


拓海(ボット)「コレがアタシの能力なんだからしょうがねーだろ!!」


さっきと別の壁から拓海さんが飛び出す 木刀を横薙ぎに振るってきた 首を狙ってる


さっきと違って態勢は万全だったのでしゃがみつつ反対に転がり避けられた


振り向くと、壁に消えていく拓海さんの背中が見えた


つい拳銃を向けたくなるが、壁の中だと多分弾ははじかれる

そうじゃないかもしれないけど、試して失敗したら5発の弾が無駄になる



拓海(ボット)「バイクで事故る奴ってのはよォ...アタシのオリジナルの知り合いにもいたさ...」


排気音に重なって拓海さんの声が聞こえる


拓海(ボット)「知ってるのは、峠道や魔のS字カーブの攻略に失敗した奴が大抵だが・・・」

 「そいつらの怪我は地面やガードレールに体をぶつけたり擦ったりしてできるもんが大概なんだ」


拓海(ボット)「だが、バイク乗り全員がそんな遊びをしてるわけじゃあねぇ...」


拓海(ボット)「バイク事故ってのは、普通に考えりゃ壁や電柱、車にぶつかってできるもんだ」


加蓮「・・・・・・・・・?」


ブオオオオオオオオオオオン!!!


タイヤだけ!?


壁から出たタイヤがアタシの頭よりずっと上から飛び込んできてる!!


違う!


加蓮「!?!?」


拓海はタイヤの前輪を高く持ち上げ、


馬が前足を天高く振り上げていななくように


排気音を撒き散らし、ウィリー状態で加蓮めがけて特攻した



拓海(ボット)「アタシの能力は『絶対にバイクで事故らねえ』 だ、」



「アタシのバイクは!!!邪魔するモノ全てをすり抜ける!!!覚えとけぇ!!!」




ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!




~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

加蓮「はぁっ・・・はぁっ・・・」



拓海(ボット)「安心しな!!アタシも一人のバイク乗りだ、バイクで人をはねるなんてマネは絶対にしねえ・・・」


拓海(ボット)「直接お前を仕留めんのはこの木刀だけだ!!」


これが、能力


アタシの体の痺れはもう消えている

でも緊張と、どこから攻撃が来るかわからない焦りで足が震えてる

ゲームのくせにこんなとこはリアルだ


加蓮「・・・・・・ふうっ!!」


ブオオオオオオオン!!


拓海(ボット)「ラァッ!!」


排気音と共に木刀が突き出される

なるべく体力を浪費しないように最小限の動きで避けることに成功した


この短時間で加蓮はダンスのステップを応用した身軽な動きを習得しようとしている


真剣になった加蓮の本気の集中力の賜物だ



加蓮「(拓海さんがどこから出てくるかはわからない。バイクの排気音でわかるはずなのに・・・)」


加蓮「(・・・たぶん、この住宅街のいろんな壁や地面に反響しているんだ、ただ突っ込むだけじゃない、拓海さんは計算して動いてる)」


加蓮「(しかも、この場から逃げようにもあっちはバイク、後ろから殴られるだけね・・・)」


この特攻、一見無謀に見えて、予測や防御を巧妙に防いでいる


加蓮「(予測は無理、でも勝目はある)」



オンオンオンオンオン・・・


加蓮がいるのは住宅街の真っ直ぐな一本道


二枚の壁が加蓮を挟むように平行にまっすぐ伸びている


加蓮「(・・・・・・・・・よしっ)」


加蓮は一度深く息を吸うと一方の壁に向き合う


その行為は同時にもう片方の壁には完全に背中を晒すことになっているにもかかわらず、だ


ブオンブオン・・・


加蓮「(確率は二分の一!!)」


加蓮「(どれだけ計算しようと、拓海さんが出てくる壁は二面だけ)」


加蓮「(だったらその一面だけに集中する!)」


加蓮「(もちろん壁一つといっても壁のどこから出てくるかはわからない・・・でも壁に真っ向から向き合っていれば、視界に入った瞬間、反射神経で対応できるはず!!)」


加蓮「(いや、反応してみせる!!)」



ブオンブオンブオンブオンブオオン!!


向井拓海との衝突は近い


加蓮は拓海が出現するのは二枚の壁の内一枚だけと言った


それは正しい


だがこれはモグラ叩きではない


拓海はモグラの穴という”点” ではなく壁という”面”で攻撃の選択肢を選ぶことができるのだ


これは壁一つからでも加蓮に向かって180度のうちの何処か一つの方向から攻め込めることを意味している


壁二枚で 180+180=360度


加蓮は二枚の壁だから二分の一と考えた。一面ならどこから来ても対応できると、


だが、その一面だけをまっすぐ見つめるという構え


それはつまり加蓮は360もある角度のうちの一つだけを選んだということ


 1/2 ではなく 1/360 に全てを懸ける

 
残りの弾丸も賭ける

狙いはバイクではなく本体、向井拓海


ブオオオオオオオオオオオン!!



加蓮「(・・・・・・来い来い来い来い!!!)」


両手で銃を構える

伸ばした腕先の銃の、引き金に指をかけた



ブオン!!!!!!!!!!!!


タイヤが

ハンドルが

エンジンが

そして向井拓海が


加蓮の眼前、真正面に飛び込んできた



拓海(ボット)「ッはァ!?!!??なんで...」



加蓮「来た!!!!!!」


360分の1の確率は当てた

次は銃弾を当てる



パン



ビギナーズラック


初めての射撃だったが、弾はまっすぐ飛んでいった


そして











加蓮の銃弾は見事、拓海の頭部を貫いた



胴体のような大きな部分ならともかく、頭のような小さい部位、


それもバイクで高速移動中のそれに当てるなんて芸当はそう出来ることではなかっただろう



~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

拓海(ボット)「          」


拓海(ボット)「          」








拓海(ボット)「      バカが...」


拓海(ボット)「アタシは壁に潜ってたんだぞ?」






拓海(ボット)「・・・アタシの能力はバイクだけじゃなねぇ・・・アタシ自身にもかかってるんだよ」


アタシとバイクの走りの邪魔する奴は

壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと


アタシにすらぶつかることは出来ねえ!!!!!!
_____________

 向井拓海+ 100/100


_____________

_____________

 北条加蓮  90/100 


_____________

ゲーム開始25分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

戦闘続行
~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
神谷奈緒


あたしはハリセンを構える


正直、武器としてどうかと思ったがないよりマシかと思ってボットが遺したのを持ってきていたんだ


音葉さんは実に優雅な足取りであたしに向かって数歩進むと、道路の中ほどで止まった


奈緒「ち、近づいてくんじゃねえ!」


音葉(ボット)「恐怖、焦燥、迷い、...そして打算?」


音葉(ボット)「......どうしてそんな細長い音が入っているのでしょうか......」


奈緒「・・・・・・・・・」




音葉(ボット)「なるほど......私が近づいてくるのは恐ろしい...けれど近づけば...そのハリセンの攻撃が当て易くなる......そう考えてます...ね?」


奈緒「・・・う」


あたしは別に何も話してない。なのに音葉さん、のボットはあたしからなにか読み取ったらしい

あたしの考えが読まれていた。

本気で攻撃が効くとは思ってないけど、だから何もできないと思わせるのはまずい。


音葉(ボット)「...私の役目は...あなたの足とあなたの音を止めておくこと...」


奈緒「なんだよ役目って・・・ボットは戦うんじゃねえのかよ?」


さっきから感じていた違和感を疑問にする。音葉さんはどうにもあたしとエンカウントしたにも関わらず戦いに積極的じゃない。

晶葉が言うにはあたしたちの敵らしいが、それにしてはどうにも噛み合わない


音葉(ボット)「......疑問、不可解の...音ですか、音の色に濁りがない、純粋な疑問...ということは本当にわからないのですね......」

音葉さんは困ったような、悲しむような、よくわからない顔をした、この人はオリジナルからしてどうにも独特な性格だから感情が読みにくい・・・


音葉(ボット)「音楽と一緒です...小さな音を重ねていけば......やがて音の連なりが旋律になるように...」


音葉(ボット)「...私たちボットはプレイヤーを倒すために、...一つずつ布石を積み重ねていくのです...」


奈緒「(どういうことだ?・・・これじゃあまるで・・・)」


手の中のハリセンがさらに頼りなくなった気がする

状況が全く読めない

音葉さんはそこであたしに向けていた視線をほんの少しだけ別のものに向けた


音葉(ボット)「...一つ目の布石......ほら、もう...加蓮さんは...あなたからは...見えないところに行ってしまいましたよ?」


奈緒「はぁっ!!?」


しまった!!あたしは加蓮を呼んでるところだった!!


こうやって加蓮が離れていくまで無駄に膠着状態を長引かせるのが目的だったんだ!!


あたしは振り返る、背後にはガードレール、その向こうに仮想の街並みが広がっていた


視界中に広がる灰色の建物の群れの中から加蓮の小さいシルエットを探す









加蓮「    」


あ、いた!!


なんだ、あたしを騙そうとし

音葉(ボット)「油断しましたね...」


肩の上に手が置かれた。誰の手?

音葉さんの手に決まってんだろ

あたしが振り向いた隙に音葉さんは背後に迫っていた

なんの音も気配もなく!!


音葉(ボット)「...私の足音を...取り除きました.....」


ハリセンを振りかぶる

振り向きながら攻撃を加えてやる!!



音葉(ボット)「先ほどのあなたの声.......お返しします」






無音






だが、音葉さんが掴んでた方の肩に爆発したような衝撃が走り

あたしの攻撃は失敗した



______________

 神谷奈緒  95/100

______________

______________

 梅木音葉+ 100/100  


______________


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

奈緒「な、な・・・!?」


音葉さんは動いていない、あたしだけが肩を思いっきり殴られたみたいに吹き飛ばされた


肩がえぐれたりはしてないが、精神の安定はガタガタだ


ガードレールの向こうに落っこちそうになったので慌てて態勢を整え、音葉さんから離れる


奈緒「ば、爆弾なんか使うのかよ?!」


音葉(ボット)「...先ほどよりも色濃い疑問の音、...いろいろ混ざりすぎて濁っています...」

音葉さんは相変わらずよくわからないことを言いながらあたしを見ている、

いや、本当にあたしを見ているのか?

さっきからあたしの音がどうとかしか言ってないぞ?


音葉(ボット)「...その濁った色は...見ていてあまり気持ちのいいものでは.....ありません...


奈緒「お、おう・・・」


音葉(ボット)「だから、あなたの疑問はここで晴らしておきましょう......」


そう言うと音葉さんは右の手のひらをあたしに見せつけるようにゆっくり開いた


奈緒「・・・?」


なんの変哲もない手のひらだ、白くて綺麗だとは思うけど・・・


奈緒「!?」


その手のひらから、湧き出すように煙のようなものが立ち登ってきた

よくある手品のようにモクモクと、音葉さんの顔が半分隠れた

一瞬、手のひらにタバコでも隠してたのかと思ったがそういう煙じゃない

黒と紫を混ぜたような、それをベースに赤や緑をぶちまけたような

幼児がクレヨンで適当になぞって描いた絵のような不気味な色合いだ


音葉(ボット)「これが......あなたがずっと吐いていた声の色...疑問、焦燥、恐怖、敵対.....様々な音の集合体です...」




音葉さんは手のひらをピッと横に払う。

その動きだけで、あたしの声?らしい煙は水蒸気や霧のように空中に掻き消えた


音葉(ボット)「...晶葉さんが言うには、...私の能力は『エフェクトのオブジェクト化』......」


「私には音がただの現象ではなく色や形を伴う物体として見えています...」



「そしてこの能力は、私にしか認識できないその物体を顕現させる...」


奈緒「・・・そ、それがどうした!!」

奈緒にとっては正直よくわからない話だ。

だが今起きていることがわからないということは、今から起こることもわからないということ

だから虚勢を張る。音葉にかかればすぐに看破されるということも忘れて


音葉(ボット)「...疑問の音色は薄れても、混乱は消えませんか...」


音葉(ボット)「...ここまで......彼女の旋律を...乱し続けたのに」










音葉(ボット)「(...それでも対抗心、不屈の色味が...まだ消えていない...)」


仕方ない、こうなることも予想していた


彼女だって伊達や酔狂でアイドルを続けているのではない


逆境や不遇に容易く折れるような心根ではないのは分かっていた



音葉(ボット)「奈緒さん」


奈緒「な、なんだ!!?」


音葉(ボット)「あなたの......どんなに濁って乱れても...その中で決して消えない根気強い旋律......素晴らしいです」


奈緒「お、おう・・・・・・?」


音葉(ボット)「私程度の足止めでは...きっとあなたは諦めないでしょう...」














音葉(ボット)「だから今から私は...力の限りを尽くして...あなたのスタミナを削ることにしました...」


音葉(ボット)「...まずは先ほど除いた...私の足音を...」


音葉の手の中に、鋭く尖った氷柱のようなものが突如現れる

その色は緑、切っ先は奈緒に向けられている



叫び声を爆弾に換え、


足音を鋭利な刃物に換える。


サウンドエフェクトを物理オブジェクトに変換する


予測不能にして万の用途を持つ能力が奈緒に牙を向いた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

褒められたと思ったら、

音葉さんが殺る気になっていた

何を言ってるかわからないと思うがあたしもわからない



奈緒「おりゃああっ!!」


ハリセンを上段から振り下ろす。

弱くともダメージゼロってわけじゃないだろ!!


幸い、音葉さんの持ってる刃物?能力で生み出したらしいそれは、果物ナイフ程度の大きさしかない

あたしのハリセンは一応本格的なものだから、大きさだけは一丁前だ。リーチだけは勝ってる


パン!!


音葉さんはナイフを持つ手とは逆の手でハリセンを受ける

少しでもダメージに加算されればいいけど

あたしはハリセンで牽制しながら音葉さんから細かく動いて一定の距離を置き続ける

接近戦ではナイフにはかなわないからな


パン!!

パァン!!


一箇所にとどまらず常にバックステップやサイドステップを繰り返しているため

戦いながら大声で加蓮に叫ぶこともできない

それにもしそう出来たとしてもまたあの爆弾をぶつけられるだけだ


とにかく何か状況を動かすものを



音葉(ボット)「これがあなたの武器が奏でた音...敵意、不屈、奮起...攻撃色の音...!」


今度は音葉さんの方から距離をとった。

一足飛び、あたしからバックステップでしりぞく

同時にナイフとは逆の手でサイドスローであたしに何かを投げつける


奈緒「っ!!」


咄嗟にハリセンで打ち返そうとする


こっちに飛んできたものを見る




まるでそれは黄色いイガ栗のようだった


鋭い刺が球体の周りをぐるっと覆ったような外見のものが3つ


3つは打ち返せない、避けるしか・・・




パパパァンッッッ!!!




もし効果音があればそんな音が鳴っただろう


その3つのイガ栗は無音で爆発するといくつもの刺を炸裂させた


奈緒「うぁっ!!なんだこれぇ!!?」


反射的に腕で顔と目元を守る

あたしの体に爪楊枝のようなものが何本も刺さった感触がした

感触、だが痛みではない、そこまで効いてないのか?


音葉(ボット)「...音から”目を逸らしては”いけません...」





顔にかかった腕の隙間から音葉さんが見える


音葉さんの周りには楕円形の、平べったい板


強いて言うなら靴のサイズを調整するのに使う”中敷き”のようなモノが浮いていた


赤色のものと水色のもの二種類、数はざっと見て十ほど


音葉(ボット)「戦意と焦燥...私とあなた...二人分の足音...ハーモニーですね」



ナイフが指揮棒のように振られる


その動きを合図に、ロケットのように飛んでくる


たくさんのフリスビーを同時に投げつけられるとこんな風になるんだろうな


奈緒「って、あいててて!!いてっ!!」


フリスビーじゃねえわこれ!!

足音というだけあってまるで透明人間に連続で蹴り入れられてる気分だわ!

こんなのどうしろってんだ!?

______________

 神谷奈緒  84/100



______________

______________

 梅木音葉+ 98/100  



______________




ゲーム開始24分経過

神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現実世界

チャプター
池袋晶葉&一ノ瀬志希





一ノ瀬志希「晶葉ちゃーん、現代人が生み出した素晴らしい発明品、三つまで言える?」







晶葉「火薬、羅針盤、活版印刷だが」



志希「いやそんな古い時代のじゃなくて、げ・ん・だ・い人だよ現代人」


晶葉「さぁ、現代で考えるとなると難しいな,,,今の時代、ちょっとしたことでもメディアがまるで世紀の発見のように面白おかしく書き立ててしまうからな」


志希「じゃあ知りたい?知りたいよね?」


晶葉「・・・なんなんだ?答えがあるなら教えてくれ」


志希「んーでわでわっ!!今から!志希にゃんの!スバラスバラシランキング(現代版)、はっぴょうするよー♪」


晶葉「待て君、そのタイトルから察するにそれ君の独断じゃないか?」


志希「スバラランキング3位! なんとなんと携帯電話!みんなも納得の第3位だね!」


晶葉「なんだ、意外と普通じゃないか、ランキング入りの理由は?」


志希「携帯電話は大抵の人が一日に何度も触るから、手汗の匂いがいい感じに染み付いてるよ!以上!」


晶葉「やはりか貴様」


志希「スバランキング2位!タートルネック!」


晶葉「あ、もういい大体わかった」


志希「ただでさえ体臭の染み付きやすい衣類において、首元の匂いまでも吸収することもできるよ!ハイテクだねぇ」


晶葉「服飾メーカーの開発部に謝ってくるといい」



志希「ではいよいよ1位の発表だよー♪」


晶葉「私は今忙しいから後にしてくれないか?」



志希「スパンキング1位!!」



晶葉「それは略しすぎな上に誤解を招く単語だからやめろォ!!」


志希「むぅ・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~


志希「・・・で、どうなの晶葉ちゃん? あたしは画面に流れる数字を見てるだけじゃなーんにも分かんないんだけど」


そう言って志希はだらしなく着崩した制服と白衣を存分に乱しながら地面に転がった


晶葉は彼女に目もくれず目の前に並んだ画面を眺めては、時折キーボードになにかのコマンドを打ち込んでいる


彼女たちがいるのは高い天井と広い床をもつ大きな部屋

ただ壁中を太いコードやケーブルが数千匹の蛇のようにのたくり、壁の模様すら見えなくなっている


しかも明かりとなるのが晶葉の見つめる画面のみなので周りが異常に薄暗く、


加えてあちこちに置かれた機材が与える圧迫感から、その部屋はとても狭く感じられた



晶葉「こっちの仮想空間は至って順調だよ、今で丁度稼働から30分だ、何の問題も起きてない」


晶葉「仮想空間に置かれたボットもこっちが送り込んだプレイヤーと楽しくやってるよ」



晶葉「___”Chihiro”の方も問題なく動いている。」



志希「きらりちゃん風にいうなら、ばっちし☆って感じ?」


晶葉「・・・まあ、そうだな、だが君にも働いてもらうぞ」



晶葉「例え天才とよばれようと所詮私は機械の畑の住人だからな・・・人体については私は君より一段落ちる」



志希「任せてよ、私はプロデューサーといい匂いがするアイドル達のそばにいるためならなんだって出来るんだから♪」


ゴロゴロと転がっていた志希が転がりに弾みをつけて一気に起き上がるとてくてくと歩き出す


向かうは部屋の壁際、

コードとケーブルの海から顔をのぞかせるいくつもの卵型のカプセルがある場所

暗い部屋の中で近くで見ると仄かに青く光っているのがわかる。

そのカプセルの個数は全部で18

今現在、仮想現実に送られているアイドルの人数と同じ18だ


志希「・・・・・・・・・・・・」


カプセルの一つに近づくと横に取り付けられた画面に表示されるメーターを注意深く”観察”する

カプセルの蓋は厚いガラスで、薄暗くて個人の判別はできないが誰かが入っているのがわかる

その中にペンライトの光を当て、そこで眠っている人間も”観察”する

志希「ふむふむ・・・顔色はいまのとこ全員良好、と、体臭にも悪い変化はないね」


晶葉「体臭などわかるのか?私はそれをほとんど密閉式に作ったんだが」


志希「・・・ん、わかるよ?はい、オッケイ目立った悪影響は無し、後で一回精密検査するけどね」



晶葉「わかった、また頼む・・・しかしどうもこの生身の人間をデジタルに送るシステム、というのは好きになれん」


画面を飽きることなく眺めながら晶葉はつぶやいた



志希「んー?なんで?楽しそうじゃん、私はどうも適性がなかったみたいだけど」


アイドル達の健康観察を終えた志希は晶葉の隣に腰を下ろした


複数ある画面の中には見知った顔が何人も映っている


だが他のいくつかの画面に流れているのは英数字の羅列ばかりで志希にはちんぷんかんぷんだ


晶葉「深い理由はない、私は今回の企画、どちらかというとプレイヤーよりボットの方に肩入れしているというだけだ」


晶葉「基本となる思考アルゴリズムに、アイドル達の性格をインプットすることでロボットたちに千差万別の個性を与える」

 「私はそういうボットたちの安住の地をイメージしてこの仮想空間をデザインしていたんだがね・・・」

 「そこに外部から人間にコントロールされた存在を送り込むのがどうも、腑に落ちなくてな・・・」

志希「?・・・あたしは、ボットたちが生身の人間の思考に触れるのはいい刺激だと思うけどな?」


晶葉「まぁ、そうかもしれんな・・・」

志希「ふーーん・・・あたしは今まで興味がないことや気に入らないことは全部ほっぽってきたけど、晶葉ちゃんはそういうのないの?」

晶葉「ふん、ばか言え・・・この件は助手が私のことを信頼して任せてくれているんだ、放棄してたまるものか」

志希「にゃーん!晶葉ちゃん、かわいいーハスハス♪」

晶葉「こらっ・・・!抱きつくな匂いを嗅ぐな頬ずりするな!!」


狭くて広い部屋で二人の白衣がもぞもぞと絡まり合う


prrrrrrrrrrrrrrrr


晶葉「ん、志希、電話が鳴ってるぞ?」

志希「あたしのじゃないよ?そもそもあたしよく失踪するからケータイは携帯しないし」

晶葉「・・・助手からの連絡はどうする気だ君は・・・」

prrrrrrrrrrrrrrrr

晶葉「なんだ、私のか、この仕事用のケータイ番号を知っているのは助手だけだったな」


ピッ!


晶葉「もしもし池袋だが」


志希「ねぇねぇ、もしかしてプロデューサー?あたしも後でかわってよ」



「...・....、........。..・...・.....」



晶葉「? もしもし?助手か?」



「・・。・・・。・・。。.....」



晶葉「聞こえないぞ。それにノイズもひどい、はっきり話したまえ」



「,・・,,,・,,,,,,,”,,,,,,・。、・。」



晶葉「・・・ふざけているなら、もう切るぞ」


「・・・・・......・・・・」



「・....・。......」














「...............あきは?.............」


プツン


ツーッ ツーッ ツー


晶葉「もしもし?助手か?おい!何があった!」

志希「落ち着いて晶葉ちゃん、電話をかけ返すんだよ」

晶葉「う、うむ・・・」


なにやら不審な電話、それもおそらく自分を知っている人物から


晶葉はこっちからかけようと着信履歴を開く

だが

晶葉「うん?」

_________________________________

  すべて/不在着信   編集


tfPnvsoE/ifevvszerRs490o 今日

    助手       月曜日

    助手       土曜日

    助手       金曜日

__________________________________


晶葉「・・・なんだこれは」

志希「?」


バグった連絡先からのいたずら電話


多少の不気味さは残ったものの目の前の件をおろそかにはできない


結局、電話番号が追跡できなかったためこの出来事の対処は無視された



これが晶葉と志希にとって最大の失敗だったことを知るにはまだ時間がかかる



こうして小さな歪みはその発生を見逃された



その歪みが大きくなり


やがてアイドル、ボット、仮想と現実両方を巻き込むことになる





ゲーム開始45分経過

???? 能力獲得


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、緒方智絵里
2、諸星きらり
3、白坂小梅

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉


<<青ざめた戦力外たちの宴>> 

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)

8、二宮飛鳥(ボット)&八神マキノ(ボット)&橘ありす(ボット)


画像コメントありがとうございました


一ノ瀬志希(18)
http://i.imgur.com/kE3LE1d.jpg
http://i.imgur.com/VisVmm9.jpg

乙 楽しみです
ごめん こういう安価って1から3でひとつ
4から7でひとつ、見たければ8で
合わせて二つもしくは三つ選ぶとかじゃ
ないの?よくわからなくて……

>>255

コメント、質問ありがとうございます

見たいチャプターと、見たい戦闘シーンは別の安価なので、

1から3、4から7の数字から二つを同時に書き込んでもその片方しか採用されません

しかし+3の安価を取ったつもりが一つずれ込み+4になった場合などもあるので、

>>250のようにどちらの安価になったとしてもこちらが採用できるようにするのもありです

一応こっちの判断で安価下することもあるので

今回は

チャプター 白坂小梅
戦闘シーン VS向井拓海
舞台裏 <<青ざめた戦力外の宴>>

+α

をお送りします

数時間ごとに細かく投下していきます


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
白坂小梅



......こっちかな...



寝室の窓から外を眺める。

そこから見える景色の中に誰かがいる、ということはない


これで目に付く限りの部屋は調べたし、鍵のjかかった部屋もなかったから見落としはないはずだ


じゃあ一体これはなんだろう


白坂小梅「な、なん...だろ...?」


居間に戻る道を進む

小梅が転送されたのはどこかの屋敷

古き良き古風な家屋は、上に低くて横に広い。探検するだけでも大仕事だ

都会の中程に存在しているということは富裕層の持ち物なのだろうか

小梅は、今自分が一体何を探しているのかもわからない


小梅「どこ...?」


小梅はそれでも探し続ける

どこからか聞こえてくる声の主を


きっかけは自分のボットを倒した後だ、

自前の長袖を振り回して何度か叩いているとそれで倒せた

ちゅーとりある、というものだったらしくその弱さは仕様だったのかもしれない、と小梅は思った

倒れた自分ソックリの死体を眺めていたとき、それはどこからか聞こえた

いや、もしかしたらずっと聞こえていたのを聞き逃していたのかもしれない


それは独特のうねりをもった音、声だった。


一定のリズムを持たず、しかし常にどこからか響いている。少なくとも楽器の立てる音ではない


もしかしたら小梅のその予想は外れているかもしれないが、とにかく聞こえている


くしゃみの音いやもしかしたら深呼吸するだけでかき消されてしまうような小さな声


小梅「......気に...なる」


心霊スポットをめぐることを趣味としている小梅にすればどこからともしれず響く声などどうってことはない

気になるのはその出処だ、

どの部屋に向かっても声は近づきもせず、遠のきもしない、もしかしたら自分のすぐ後ろにいるのでは?

と思って振り向けど誰もいない

そう、誰もいない


小梅「...あの子も...い、いない...」


あの子、詳細不明の小梅の友人

小梅からすればいつもそばにいた長年のパートナーに近い存在だったため

その不在の方がかなり応えた

小梅「...仮想じゃなくて...現実の方の私のそばに...い、いるのかな...?」


あの子の安否を気にかけてはいるが、

仮想現実という剣呑の地に送り込まれている小梅も本来ならいろいろ心配されるはずの身だ


小梅「............あ、」



小梅「......また、聞こえ...た」



小梅は周りを見回す

日本家屋の廊下はシンプルでそれでいて採光なども計算されているため歩くには十分すぎる明るさだ


しかし小梅は今、昏い森の中を今にも切れそうな蜘蛛の糸をたぐり寄せながら歩いているような気分だった

そして声がまた聞こえる














??「ふふーーーーーーん!!カワイイボクが来ましたよ!!」


ガラガラガラ!!!


???「さ、さっちゃん......ちょ、ちょっとし、静かにしたほうが...」


小梅「!?」



ゲーム開始10分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


確かに命中していた

なのにアタシの銃弾は拓海さんを通り抜けていった

糠に釘、暖簾に腕押し、まるでホログラムに触れないように

拓海さんは銃弾なんてなかったみたいにそのままこっちに突っ込んできた


アタシの真正面から


加蓮「そん、な...!」


拓海(ボット)「おらよォ!!」


でも拓海さんはギリギリのハンドルさばきでアタシのすぐ横を通り抜けた


さっき言ってたようにバイクではねる、という攻撃手段は取らないらしい


いや、通り抜けちゃうのか


加蓮「じゃあ、どうして___}


ギャギャギャギャギャ!!


私の背中を音が叩いた気がした。

一瞬、攻撃が失敗したことに放心していたアタシは振り返る


拓海(ボット)「アブねぇだろ!!気ィつけろォ!!」


拓海さんはアタシのすぐ後ろでバイクを反転させていた

バイクから降ろした足を軸に、その場で車体をドリフトさせるように方向転換する動き

バイクの後輪が地面を削るように砂煙を上げている

ブオンブオンブオン!!

ギャリギャリギャリ!!


拓海(ボット)「うらァ!!」


加蓮「ぐっ!?」


脇腹に硬質の武器がめり込む

その場に膝をつきそうになったアタシを横目に、

拓海さんは半回転した車体を発進させ壁の中に戻っていった。


_____________

 向井拓海+ 100/100


_____________

_____________

 北条加蓮  83/100 


_____________

~~~~~~~~~~~~~~

残弾4発


どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう


アタシの唯一の攻撃手段が通じない


ブオオオオオンンンン!!!


どの方向から聞こえてくるかわからない爆音が不安を煽る


右足がしびれてきた


頭もクラクラする、緊張しすぎで集中力が切れかけてるのかな・・・


拳銃を握る手にも力が入らない、でも手放さない



ブオン!!


一際身近に拓海さんが放つ排気音が轟いた



攻撃ができなくとも攻撃はよけられる


死角から来たであろう攻撃をオーバーな横っ飛びで避ける


背後から来たバイク相手に最小限の回避動作なんて難易度が高いからね


木刀が髪を掠めた



あれ、



さっきも少しだけ思ったけど、どうして木刀はアタシに当たるの?


ぶつかるものは透けるんじゃないの?



・・・・・・壁から出た時だけ木刀にかけた能力を解除している・・・ってことだよね




そういうふうに疑問はすぐに解けた。

何か重要なヒントを得た気になったけどそうでもなかったみたい


加蓮「(こうなったら・・・逃げる!!)」


アタシはあっさり戦闘放棄を決意する

障害物を完全無視する二輪車を相手にこの狭い道に沿ってアタシがどこまで逃げ切れるのか甚だ謎だが


加蓮「(大丈夫、逃げ切る・・・もう、病弱だったアタシじゃない、アタシのボットには悪いけど、ここは戦略的撤退だと思ってよ)」


ブオンブオオオン!!!


アタシは拓海さんが壁から出てくる前に少しでも早く駆け出そうと足を踏み出す


ピリッと右足がしびれた


加蓮「(今だっ!!!)」



スタートダッシュを踏み切る

右足のしびれだけがまだ消えない



拓海(ボット)「あん!?てめェ、逃げやがんのか!!?」


ブオンオンオオオオオオオオオオオオン!!!


拓海さんの驚いた声が聞こえ、一気にバイクの音が追いかけてきた


拓海(ボット)「待てやこらああああああああああ!!!」


加蓮「ハァ・・・ハァ・・・ま、待たなくても追いつけるでしょうが!!」


拓海(ボット)「るっせぇ!!こっちがお前を撥ね飛ばさねえようにしてるからって舐めんてじゃねぇぞ!!」

アイドルとして鍛えたといっても徒競走が早いわけじゃない。

持久力は付いたからマラソンなら出来るかもしれないけど

今やってるのは速さ比べだ、しかもこっちはまだ右足がしびれてる

後ろから迫りくるバイクに轢かれでもしたらおしまい_______












うん? あれ?






極度の緊張と急な運動で

酸素の不足した脳は

アタシにとんでもないことを考えつかせた

ゲーム開始26分経過

北条加蓮VS向井拓海(ボット)

戦闘続行?
~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
仮想空間内

チャプター
二宮飛鳥(ボット)&八神マキノ(ボット)&橘ありす(ボット)



_ゲーム開始7分経過_




ザザ_ーーザザ・・・ザー...




ボクは右手の薬指だけを少し上に向ける



 ザザー・・・そ・・・あ・・・___だよ...



頭の中に響く、ノイズだらけの音になんとか判別できる音が入ってきた


ボクは左手首を15度ほど外側に回し、次は10度内側に回す


角度を小さくしながらこれを繰り返してチューニングを行う、


この能力は微調整が命だ、それ次第で武器にもお荷物にもなりうる





___仮想空間なら警察も早苗さんもいない?・・・・・・ハッ!?閃いた!!___




いまのは愛海さんの声かな?


ボットなのかプレイヤーなのか判断はつかないけど元気そうでなによりだよ


広げていた指をたたみ、握りこぶしを作った


気を取り直してさっきまでとは違う方向に手のひらを開く



ザザザザザザザザ...ザザザザザザザザザザザザザザザ



やれやれ、また最初からチューニングしなくては__


???「そこの貴方......すこし時間はあるかしら...?」


おや、どうやら来客のようだ


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始6分経過_



......なんということでしょう


私が子供だからでしょうか。


晶葉さんは何を考えて私の能力をこのようなモノにしたのでしょう


戦うのがボットのはずです。私の能力では戦えません

この手のゲームでは私のような小さい体をフォローするような
強力な能力が与えられるのがセオリーでしょう

ゲームバランスがむちゃくちゃです、クソゲーです


腕に抱えたタブレットに目を落とす


タブレットの画面は、このままでは私がプレイヤーと遭遇してしまうことを示していた


慌てて近くの路地に身を潜めます


「...........」


気配を殺す、息を止める、あ、息はしてませんでしたね


やがて近づいてきた足音は私に気づくこともなく通り過ぎていきました


「............」


また戦えなかった。また隠れてしまった


逃げるためにしか使えない能力


これでは私は、一体何のために作られたのでしょう___



???「そう...貴方もまた戦闘向きではない能力の持ち主なのね...」



タブレットには何の反応もない

なのに確かに声がした


~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始2分経過_


度し難いな...


模擬戦闘と銘打っておいて私に与えられた能力が”これ”とは...


いえ、見ようによっては諜報活動を趣味とする私をとても良く表しているし


論理的に考えれば諜報に使うのが目的でしょう。


ただ、そうだとするならもう少し操作性と自由度がないと...


...まったくもって論理性を欠いているわ


まだいろいろ未知と不確定要素の多い能力だけど、


できることはあるはずよ。スマートに行きましょう


まずは味方を増やすところからね


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

_ゲーム開始20分経過_



八神マキノ(ボット)「___戻ったわ」


二宮飛鳥(ボット)「やあ、お帰り ”スカウト”は順調かい?」


マキノ(ボット)「二人、声をかけることができたボットはそれだけよ」

マキノ(ボット)「他に四人ほど声をかけようとしたけれど、私が跳んだ時にはもうどこかに移動してしまったみたい」


飛鳥(ボット)「”跳ぶ”ね...面白い表現だよ。これで橘さんが残していったメモの場所は全て見たのかな」

マキノ(ボット)「ええ、そうね。橘さんが帰ってきたら彼女の能力をもう一度使ってもらいましょう」


飛鳥(ボット)「橘さんをね...」


マキノ(ボット)「ええ、橘さんをよ...」












橘ありす(ボット)「...ただいま戻りました」

飛鳥(ボット)「おかえり、ありす」

マキノ(ボット)「おかえりなさい、ありすさん」



ありす(ボット)「あの...橘って呼んでくださいと言いましたよね?」


飛鳥(ボット)「ボクの気が向いたときは、そう呼ぶのもいいかもしれないね」

マキノ(ボット)「使いどきの問題ね、四文字の『たちばな』より三文字の『ありす』の方が会話において時間短縮になるのは論理的に自明なことよ」


ありす(ボット)「......」



飛鳥(ボット)「ところで首尾はどうだった?ボクの能力、《十指回路》じゃ、傍受できる声は一人分だけだし」

      「マキノさんの《0と1の蜃気楼》は追跡には向かないからね」

ありす(ボット)「ええ、問題ありませんでした」

飛鳥(ボット)「ふふ、やはり、《ドットガーデン》を持つありすに任せたのは正解だったね」


マキノ(ボット)「(今更だけど度し難いセンスね...)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

白坂小梅(13)
http://i.imgur.com/MZO9Gbj.jpg
http://i.imgur.com/CqU947O.jpg

二宮飛鳥(14)
http://i.imgur.com/p3Z4QoC.jpg
http://i.imgur.com/RjRVqIX.jpg

八神マキノ(18)
http://i.imgur.com/g7eMXMv.jpg
http://i.imgur.com/QEV3WJu.jpg

橘ありす(12)
http://i.imgur.com/Et6Qkb9.jpg
http://i.imgur.com/wWr1aRl.jpg

ちょっと間が空きましたが投下





ありす(ボット)「奈緒さんには音葉さん、加蓮さんには拓海さんに向かってもらいました。少なくともこれで二人は分断出来たでしょう」


ありす(ボット)「凛さんは今、晴さんと舞さんが見張っています。」


ありす(ボット)「今のところ凛さんはトライアドの二人からは離れた場所にいますが、だからといって別のアイドルとユニットを組む可能性もありますし、注意ですね」


ありす(ボット)「念のため、このあと私も”ダメ押し”をするために凛さんの所へ向かわせてもらいます」


飛鳥(ボット)「頼もしいね、ありすが自分の能力にコンプレックスを持っていた頃が懐かしいよ。ボクらの中じゃ一番有用なのにさ」


マキノ(ボット)「貴方こそ自分の能力を卑下してるわよ?」


マキノ(ボット)「ところでありすさん、貴方はどうやってそのダメ押しを実行するつもり?」


ありす(ボット)「この二つのアイテムを使わせてもらいます」


ありすは上着のポケットから四角い箱と丸い紙を取り出した。

箱の方は上質な素材でできているらしく、高級感のある光沢を放っている

それと対になるかのように丸い紙はシワだらけの、和紙のような薄いくて脆い外見だった


一見、妙な組み合わせの何の共通点もない二つ、実際この二つに共通点はない


一つはボットのためのアイテムで、

一つはプレイヤーのためのアイテムなのだ。


飛鳥(ボット)「なるほど、それを持ち出すのか...だが分かっているかい? もし凛さんにソレが渡るようなことがあればボクたちは一気にピンチ、全滅もありうるんだよ?」


マキノ(ボット)「大げさに言い過ぎよ、論理性を欠いている。しかしそれくらいのリスクがあるのもまた事実ね」




ありす(ボット)「だからこの二つです。私は一人では戦いません」




静寂



マキノ(ボット)「...ええ、わかったわ。あなたを仲間に加えたのは私、論理的でない言葉だけど...信頼させてもらうわ」


飛鳥(ボット)「面白くなってきたね。じゃあ、おさらいしようか。今回のボクらの行動と目的を」


飛鳥がシニカルに笑いながら重要な確認事項の復唱を促す


その両手はよく見ると細かく動いている


まるでラジオのツマミを回したりアンテナの角度を調整するように



ありす(ボット)「私は凛さんをほかのアイドルから孤立させ、そして『あの場所』から引き離します」





マキノ(ボット)「私は奈緒さんと音葉さんの戦いを監視、加蓮さんとの合流の阻止。私の能力の性質上、干渉するのは難しいけれど」





飛鳥(ボット)「ボクは見ての通り現在進行中で、拓海さんと加蓮さんの戦いを傍受しているから、それを引き続き行わせてもらうよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

トライアドプリムス

三和音の第一級


渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒

この三人が揃ったとき何が起こるのか

ボットのボクにはわからない。

ボットのボクがオリジナルから少しだけ引き継いだ記憶

ボットの性格や能力を決める一因として晶葉さんが組み込んだもの

その中のトライアドプリムスの活躍を見る限りこのユニットは無視してはいけないのは自明だろう


マキノ(ボット)「では、行ってくるわ...」


そう言うとマキノさんは何の予備動作もなくその場から消えた


素早く動いた、というわけじゃない。

これがボクが命名した彼女の能力《0と1の蜃気楼》


簡単に言うとこの仮想空間内で、彼女が設定した地点にワープする力

ただし制約が多いのが難点だとマキノさんは零してたっけ

確か、ワープした地点からは動けないし、

モノにも触れない、次のワープのためにはワープ前の地点

(つまり今のボクらの拠点)に戻らなきゃいけないとか



だからまるで幽体離脱した気分だとか言ってたね

どれだけ遠くに跳んで行っても目が覚めると元の場所にいる、と



ありす(ボット)「それでは私も失礼します」


ありすは歩いて扉から出て行った。一人だとプレイヤーにあったとき彼女の力ではひとたまりもないだろう


だが彼女の能力《ドットガーデン》(もちろんボクが名付けた)にかかれば

ありすはタブレットを通して自分周囲数百メートルに存在するボットとプレイヤーの位置を知ることができる

だからプレイヤーとの接触を未然に防ぐことも、逆に尾行することもできるし

どこかに潜んでいるボットの位置を特定し接触、そして仲間に誘うこともできる。


まあ実際にボットのいるところまで跳ぶのはマキノさんの役目だったけど



ボクは部屋に一人になった。

だが静寂じゃあ、ない。




ザザザ......あぁ...!...なんだ...!!・・ザザ




ボクの能力《十指回路》端的に言ってこの世界で一、二を争う地味な能力かもしれない



両腕と体の一部がラジオの部品になっている。それだけの能力



確かにボクのオリジナルの趣味はラジオを聴くことだったけど

能力にこう反映するとは予想外だったよ

晶葉さんなりのジョークだと思っておいた方が良いのかな?


まぁとにかくボクの腕や指が仮想空間を飛び交う音声情報をキャッチして


ボクはそれを聴くことができる、ただ情報が錯綜しているからチューニングが大変かな


はっきり言って盗聴するだけだ


マキノさんもありすもボクも能力を用いた戦闘力はゼロに等しい


こういうのを戦力外っていうんだろ?


だけどボクらの力は戦力を集めることができた。

作戦行動を円滑に進められた。


作戦、ね。


飛鳥(ボット)「トライアドプリムス......君たちはこの仮想の中で三人が揃わないままに力を発揮できるのかな?」



ゲーム開始21分経過

『トライアドプリムス分断作戦』進行中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後に「チャプター渋谷凛」投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛

私の乗ったエレベータがビルの最上階に辿り着いた

屋上直通じゃなかったけど、あとで見てみるのもいいかもしれない


凛「わあ......」


廊下のガラス越し、その遥か下にミニチュアサイズの街が広がっていた

フロアはオフィスの事務を行うところらしく、

廊下の反対側にはたくさんの広い部屋が並んでいて、そのどの部屋にも事務机が目一杯詰め込まれていた

さぞかし大企業なのだろう、あ、いや仮想空間だけどさ


凛「こんな真面目そうなとこじゃ武器なんてないかも...」


いかにも表沙汰にはできないようなことをやってそうなスジ者の消費者金融事務所みたいな建物ならドスとかチャカも出てきたりして


凛「いやだから仮想だってばここ・・・」

私は廊下の突き当たり、「第1会議室」と書かれた部屋の鉄製の重たい扉を押し開けた

鍵がかかってなかったので思ったよりも軽い力で開けられた気もする。


まず目に入るのは円卓

今まで見たのより広い部屋の真ん中にでんと居座っている。

小型車ならその上に駐車してしまえそうなサイズはむしろ非現実的で、

こんな大きな机で会議を行うなんて・・・会議に一体何人の人間を呼ぶつもりなんだろう


凛「・・・・・・・・・・・・」

凛「・・・・・・・・・よし」


私はその円卓に添えつけられた高級感あふれる椅子に足をかけると円卓の上に飛び乗った


コツ、コツ、コツ、コツ


硬い素材で出来ている円卓は私の足元でよく響く足音を立てている


天井がさっきより私の頭に近づいている


凛「・・・・・・・・・・・・」

部屋の中央を占める巨大な机の、その中心に立って周りを見渡す

机の上に乗ることなんてまぁ無い、

掃除中に蛍光灯を磨くとき脚立がわりにするくらいだろう


私が立っている机の周囲を黒革の椅子が取り囲んでいる


照明はつけていないけど、この会議室は窓が全面ガラス張りなので外からの日光で十分明るい


凛「・・・なんの映画だったっけ・・・大企業の会議室に殴り込んで、こうやって会議机の上に仁王立ちしてたよね」


残念ながら今の私を椅子から見上げるギャラリーはいないけど、というかスカートで仁王立ちはちょっと・・・


凛「ふーん・・・」


ちょっとあまり日常ではとらない非常識な行動に舞い上がった気がするけど

これでこの広い部屋全体を俯瞰的に観察できた。

会議に使うスクリーンとプロジェクター、


部屋の隅にはウォーターサーバーと観葉植物


あと壁際に付いてるのは照明のスイッチかな


部屋のサイズは規格外とはいえ、作りはシンプルだったみたいで、めぼしいものは何もなかった


奈緒に借りたゲームだと建物の最上階一番奥の部屋には強い武器があったんだけどなぁ


凛「しかたない、事務机のほうを一つ一つ虱潰しに調べていこうかな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~

結城晴(ボット)「おい、凛姉さんあっち行ったぞ、早く追いかけないと」


福山舞(ボット)「ちょ、ちょっと待ってくださいぃ・・・」


晴(ボット)「報告に行ったありすが戻ってくるまで見張っとくのが仕事だろ、急げ」


舞(ボット)「で、でもこの状態、重いよー・・・」


晴(ボット)「仕方ないだろ、下手に近づくと凛姉さんに匂いでバレそうだし」


舞(ボット)「に、匂い?」


~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

会議室のすぐ隣の部屋はやはり事務机の村だった。

机と机の間の幅が人一人通れるかなってくらい

この窮屈さは学校の教室を思いだすかな


とにかく入口近くの机から物色を開始する


凛「・・・産業スパイか会社空き巣にでもなった気分」


机の上はパソコンと何本かのペンが置かれているだけで、書類らしきものは無い


引き出しはどれも鍵がかかってなかったけど何も入ってないものばかりだった。

ひとつの机を調べたらすぐ隣の全く同じデザインの机をあさり始める


すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、隣、隣、隣隣隣


全く同じデザイン、全く同じデザイン、全く同じデザイン

なんの変化もないまま同じ作業をし続けていると自分が機械になったような気がする


凛「(機械になった、といえばボットたちも機械なんだよね)」

自分はまだ自分ソックリのボットの他には会ってない、というより戦闘を避けてるため会わないようにしていた



ボットたちはどこから来たんだろう、そして倒されたボットたちは何処へ行くんだろう


バタン!!


凛「・・・ふう」


引き出しを強く押し込むと意外と大きな音がした


ただでさえなれない場所にいるんだ、こんなことばかりしていたら気が滅入ってしまう


凛は引き出しの開け閉めばかりしていた腕を気分転換がてらブンブンと回してストレッチする

仮想空間でのストレッチに意味があるのかはよくわからないが、少しすっきりした


凛「んーっ・・・ぷはっ、なんにもないや数撃ちゃ当たると思ったのに」


このまま隣の部屋も調べていったとして、そこでも何もなければ全ての階を調べなければいけないのだろうか



24階建てのビルの中で使われている全ての椅子と机の数を考えて答えなさい



まるでフェルミ推定の問題だ。

凛「先は長いね・・・それとも次のアプローチに行くべきかな」

ふと目をやると街の風景が目に入る。

この事務室も壁がそのままガラス張りになっているので非常に見晴らしがいい

ここは24階だから高所恐怖症の人からしたら最悪の職場だろうけどね


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
舞(ボット)「こ、ここ怖いよぉ・・・」


晴(ボット)「下さえ見なきゃなんとかなんだろ、我慢しろ」


舞(ボット)「で、でも・・・」


晴(ボット)「いいから見張れ、もし凛姉さんが『あの場所』に気づいたら、ぜってーヤバいことになる」


舞(ボット)「そ、そうならないようにするんだよね・・・?だったらもう行ってもいいんじゃ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

福山舞(10)
http://i.imgur.com/h2bjzWn.jpg
http://i.imgur.com/5jY77hx.jpg

結城晴(12)
http://i.imgur.com/6r6TFus.jpg
http://i.imgur.com/sQH2NLm.jpg

~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想と現実の違いを見失いそうになる。

なにせここまで作りこまれた摩天楼を見せられてるんだから

窓の外は現実の風景となんら変わりない都会、ただ見慣れないデザインの建物もあるけど


凛「・・・奈緒や加蓮とも見たかったな、まだ昼だけど」

そういえばこの世界に夜はあるのだろうか。


ガラスの壁に手をつく、視界いっぱいの青い空と灰色のビル群


視線を遠くにやるにつれてビルの高さがだんだん低くなって、小さな建物が密集している部分に目が止まった


凛「でもこんなに広いのにアイドルとそのボットしかいないんだよね、アイドルがいるならプロデューサーがいてもいいと思うんだけど」


ガラスの向こうへ目を凝らす、ほかのアイドルが見えないだろうか___






バン!!!!!!!!!!!!








凛「!!!???」





私の視界は妨げられた。



”ガラスの向こう”から私の眼前に飛んできたサッカーボールによって


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~

そのボールは、勿論ガラスを突き破ってこっちに来ることはなく、

ガラスの壁にはじかれると下に落ちていった


凛「な、なに!!?」


私は無傷だったけど反射的にがラスから離れていた。


しかしあまりの不可解な現象にガラスに近寄ってしまう


どんな脚力を持った人間ならビルの24階のガラスにサッカーボールをぶつけられるの?



凛「・・・・・・・・・」


壁ガラスにすり足で近寄る、充分近づいたら頭だけを突き出して下を覗き込んだ


この遥か下、地上にいる誰かを確認するために




 凛姉さん、うーっす





晴(ボット)「・・・・・・」





ガラスを隔てているので聞こえなかったけど、晴のボットは多分そんなことを言っていたんだと思う



その近くにいるのは舞のボットだ。二人共よく似合う普段着だったが、あの赤いバッジだけが浮いていた




私がいるのが地上24階





晴と舞は地上23階にいた。





ビルの壁に突き刺した一輪車を足場にして



地面は二人の足元の遥か下



晴(ボット)「・・・・・・」



晴がまた何か言ってる、でもガラスで聞こえない



そして不安定な足場の上で、

それでも晴は見事、手に持ったサッカーボールをシュートした



バリィィイイイン!!!



丈夫なはずのガラスが、小さい子供が蹴ったボールの前に砕け散る


ああ、


だからここは仮想空間なんだってば


現実じゃあないし、現実的でもないことが当たり前な



ゲーム開始27分経過

渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)

開始

~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

走る走る

急ぐ急ぐ

タブレットのチェックは忘れずに

橘ありすは走っていた。

思った以上に早めの行動が決定してしまったのだ


ありす(ボット)「・・・こんなに早く・・・!!」


タブレットにはいくつもの丸が表示されている

これが地図上でアイドルやボットの位置をモニターしているのだ。

まるでGPSを搭載したマップのように一人一人の動きをつぶさにリアルタイムでありすに教えてくれる


その中で、いま二つの青い丸と一つの赤い丸が重なるように映されている


二つの青丸は晴と舞のボット、赤丸は間違いなく渋谷凛だろう


おそらく戦闘が始まっている。予定より早い


ありすたちの最初の計画は丸腰でビルの最上階に向かった彼女を追い詰め、倒すことだった。



ただ重要な問題があった。


『あの場所』のことである


八神マキノは自身の能力を用いて凛の踏み込んだビルの屋上にワープし、


そこから見える風景を調べ、そして確信を得た。



このビルからは『あの場所』が丸見えなのだ



『あの場所』にもしもボット以外のアイドルが入ることがあれば...



こうして対凛の当初の作戦は成功の利益よりも失敗のリスクが格段に高まることとなった


これが一度ありすが拠点に戻った理由である。



倒せなくてもいいから凛の気を引くことができれば...


凛が『あの場所』を見落しさえすれば、それで良し、


それだけで、ボットはまた一つ勝利への布石を置くことができる



??「・・・ありすちゃーん、大丈夫?」



どこからか声がする、ありすはそれが味方からの声だと知っている。


なにせ他ならぬ自分が仲間に誘ったのだから。


ありすは走る

だが、その前には時計を持った兎はいない

彼女は誰かについていくのではなく自分の意志で前に進んでいた





ゲーム開始30分経過

渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)

継続中

橘ありす(ボット)&?? 参戦準備中


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
渋谷凛


綺麗に並んだ机の列に飛び込む


その向こう側に転がり込むと同時に事務机に備え付けられたパソコンが弾き飛ばされたのが見えた


晴(ボット)「凛ねーさーん、サッカーしよーぜー」


凛「手加減してくれるならいいけ、どっ!!」


その場から助走抜きで駆けだす、近くの椅子を自分の盾みたいにするのも忘れない


その盾も爆発したみたいに跳ね上げられた。


晴(ボット)「えー、オレこれでも手加減してるんだけどな」



ギュルン!!



そんな音がしたので走りながら背後に目をやる。


サッカーボールはまるで透明人間が蹴り飛ばしたように晴の足元に戻っていった


それがさも当然のように晴は足元にボールを確保する


凛と晴の距離は3メートルと少し


晴(ボット)「能力だかなんだか知らねーけど、オレが蹴るとボールが戻ってくるんだよ」

 「これじゃ一人でPKも出来やしねぇ、だから凛姉さんが蹴り返してくれよ」


 ドゴンッッッッ!!!


晴の足がボールを蹴り飛ばす、子供らしい小さい足からは想像もつかない轟音をあげ、


唸りを上げて凛に来襲した


凛「(蹴ったボールが戻る?多分それだけじゃない、それだけならこのシュートの威力は絶対におかしい___)」


体を回転させる、ボールは凛の脇腹の横を通過していった


凛「今っ!!」


晴へ向けて駆け出す


凛がよけたことでボールはずっと後ろの壁まで飛んでいく



晴と凛が机の列にはさまれた一本道で一直線になっていたからだ







凛の計画通りに


これで凛がボールを避けることができればボールには障害物がない、

そのまま壁にぶつかるまで止まらない


凛は見抜いていた。


晴のボールが戻るのはボールの動きが完全に停止してからだと


パソコンの画面にめり込み、椅子を破壊し、そうして運動エネルギーを失った後にしか能力発動しない


これは当て推量だ。もしかしたら違うのかもしれない


だが現に今、晴と凛の間にあの凶弾と化したボールはない!!!!



ジャリッ!!


事務机の一つ、割れたパソコン、その破片を手に取る

材質はプラスチックだが、角は充分尖っている


彼我の距離、2メートル



晴(ボット)「!!」


舞(ボット)「あわわ、は、晴ちゃん!?逃げて!」


離れた位置で見ていた舞が慌てたように叫ぶ、


晴の武器のボールはこの部屋の反対側、ずっと向こうの壁にぶつかるまで戻ってこない




凛「ふっ!!!」




相手はボット、これはゲーム、傷つけられても傷が残ったりはしない

一度やると決めた凛に躊躇はない、ただ覚悟があるのみ





メシャ



そして


凛の背中を戻ってきたサッカーボールが撃ち抜いた


敗因は実に簡単


彼女は「ボールが晴の足元に戻る」と「異常なシュートの威力」を別々の能力と考えていた


だから「戻る」方だけにしか対処を講じず、「威力」は避ければなんとかなると思ってしまったのだ


だが晶葉が明言しなかったことだが能力はボット一人につき一つしかない


晴の能力ももちろん一つ






この二つの現象は『たった一つの能力』によって起こされている

___________

 渋谷凛 93/100


___________

___________

 結城晴+ 100/100


___________

___________

 福山舞+ 100/100



___________


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

凛「がっ、は・・・!!??」


肺を後ろから強く押され、呼吸が止まる


凛は地面に倒れ伏した


晴(ボット)「大丈夫か凛姉さん?なんでボールじゃなくてオレの方に来るんだよ、サッカーだってば」


晴(ボット)「あーもう、オレの能力、”設定”の変え方がわかんねーんだよなー・・・」


凛「(・・・・・・・?)」



晴が凛から離れていく、そしてまた3mほど離れた位置で足を止める


舞(ボット)「晴ちゃん!今なら凛お姉ちゃん倒せるんじゃないですか!?」


晴(ボット)「あ?確か、ありすは倒すのは二の次って言ってたんじゃなかったっけ?」


晴(ボット)「それにサッカーでラフプレーはヤだぜ?そういうのは他の姉ちゃんに任せる」

よくわからないが晴から追撃の気配がない、というかこれは


凛「ハァッ、 ハァッ...私が、立つのを、待ってるんだね......」


体の芯にしびれが走っている、深呼吸ができない


凛「フェア、プレーは、・・・私も好きだ、よ」


それでも凛は立つ




凛「さぁ晴、...始めようか、二人サッカー」


次はその能力の謎、解いてみせる











ありす(ボット)「そこまでです、凛さん」


ゲーム開始33分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 


開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
一ノ瀬志希



晶葉ちゃんがトイレに行ってる隙に適当にキーボードを叩いてたら

仮想現実内の音声再生がオンになっちゃったよ、

志希にゃん直し方分かんなーい

にゃはっ♪

みんなの声が一斉にスピーカーから流れ出すからよく聞き取れないや、

それにどうやら録音されたメディアも同時再生されてるから

話の時間軸もバラバラだし収拾つかにゃーい


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「凛さん!!??こ、ここ何階だと思ってるんですかっ!!???」

__


加蓮「____言ったよね?アンタ確かに言ったよね?」

  _______



奈緒「・・・・・・・・・天使?」


_____


音葉(ボット)「_________なんて、美しい____」


   _______


周子(ボット)「もしかして知らないの?...ユニットを組むことのデメリット」


____________


杏「違うから!!違うから!!もうホント違うから!!こっちがボット!!あっちが本物だから!!」


    ____________




晶葉「志希・・・・・・何勝手に触ってるんだ?」


ゲーム開始40分経過

一ノ瀬志希VS池袋晶葉

お説教 開始
~~~~~~~~~~~~~~



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、佐久間まゆ
2、星輝子
3、諸星きらり

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
8、VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 



画像コメントありがとうございました



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
星輝子


えっと...

何から話したらいいかな...フヒ


目が覚めたら、で、電車で寝てた...


あ、そこは...うめちゃんも一緒なんだね、そ、そうでした...フヒヒ


そのあと、親友から...よくわからないこと、いっぱい説明されて


わ、、私の隣にいた、さ、紗南ちゃんと裕子さんが、はしゃいでて



げ、ゲーム?とかなんとか...紗南ちゃんに詳しく解説してもらったんだけど...


そういえば、さっちゃんは...電車の中でま、まゆさんと美穂さんと一緒だったんだって...


うめちゃんは?......ほ、ほほう 亜季さんと



もう一人は......へ、へえ...な、なるほど



こ、これでぷ、ぷれいや??は...わ、私たちを含めて九人まで分かったんだね


フヒヒヒ...


そのあとは...いつの間にかこの世界にいて、


なんとかボットは倒したんだけど...


わ、私はしばらく...机の下にいたんだ


...机の隅のほうのキノコを...採ったら、変な音がしたんだよね、フヒ


え、さっちゃん、なに?...ん、能力?


で、でも慌てて机から這い出して、そのあと外...歩いてたら、さっちゃんと会って


さっちゃんに連れらて...あてずっぽに進んで


いまに、至ります、ハイ...


フヒヒ

~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
屋敷


小梅「さ、さっちゃん、しょーちゃん...あ、会いたかった...!」


星輝子「こ、こっちも...だぜ、...フヒヒう、ういやつめ...」


輿水幸子「ふふーん!もっとカワイイボクとの再会を喜んでもいいんですよ?」


三人は広い屋敷の居間で、広い仮想世界での再会の喜びを分かち合っていた


幸子「しかし、小梅さんも無用心ですね!玄関の鍵を開けておくなんて!カワイイボクと輝子さんだから良かったものの、ボットの人たちが来たらどうするんですか!」


それを言うなら模擬戦闘中でありながら輝子を連れてあちこちを丸腰で歩き回っていた幸子も相当無用心なのだが

しかし実際、彼女たちはボットにもあっていない

幸子というだけあって幸運だったのかとも思えるが、事情を知る者はそうは思わない


この段階で既にボットたちは蠢いていた


牙を研いでいた


仲間を集め、拠点を作り、...布石を置く準備を続けていた


そういうわけで奇跡的にできた間隙を縫って二人はここにいる


輝子「と、ところで、この家、屋敷?大きいけど...なにかなかったの?」


小梅「そ、そういうのは...まだ調べてない...」

声の出処を探ったりはしたけど

幸子「なるほど!では手始めにこの屋敷から調べ尽くしちゃいましょう!」

幸子「それと!あとで是非とも小梅さんにお聞かせしたい話もありますので!」

小梅「は、話?」

輝子「うん、私と幸子から.......は、話」

小梅「...?」

幸子「さあさあ!まずは手分けして屋敷探検ですよ!」


ゲーム開始7分時点

星輝子(ボット)消失


ゲーム開始13分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


自分で言うのも悲しいが細っこい頼りない手のひらで銃を包む

もっと重いものかと思ったら意外と軽かった。ゲームの仕様だろうか

輝子「や、やったぜ...」

今、小梅は敷地内にあった蔵?のような場所を調べ、幸子は屋敷内を自分と逆方向に調べ進んでいるはずだ

二人も既になにか見つけているかもしれない

さて、この調子でもっと見つけてやろう


自分はもうぼっちじゃない、みんなと一緒に何だってやってやろう


輝子「...フヒヒ♪ボッチジャナイコー...ホシショウコー...」


拳銃ひとつだけの発見だったが、

これが友達の助けになると思えば嬉しくもなる

星輝子はそういう少女だった


輝子「フヒヒ...ヒャッハァ!!ドンドンいくぜぇ!!」


拳銃を振り回すようにシャウトしながら次の隣の部屋に荒々しく突入する


そして




輝子「ッハァハハ?、ハアアアアアアアアア!??!?!??」





白坂小梅が死んでいた


~~~~~~~~~~~~~~~~

ミス
330と329の間にこれいれてください


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
輝子は屋敷内を探索していた。

屋敷の奥に続く細い通路をぺたぺたと裸足で歩いていく

彼女といい幸子といいコレが仮想空間であるにもかかわらず未だに玄関で靴を脱ぐ習慣が残っていた

襖を開ける中に入る、タンスを漁る、クローゼットを開ける、押入れも開ける
ついでに急須の蓋も開ける

しかし大抵はからっぽだったし急須にいたっては茶葉すらなかった

輝子「フヒゥ...」

まぁ部屋はやたらあるのだ、次の部屋に武器があるかもしれないし

輝子はのんびりと次の襖を開ける、ようやく変化らしきものが訪れた

輝子「あ、これ...?」

輝子の目の前に広がっているのはこじんまりとした和室、
畳と障子がある部屋、といえばほとんど特徴が伝わってしまうシンプルな部屋だ

ただし畳のど真ん中に黒色の銃身をテラテラと光らせた拳銃が落ちてなければの話だが

輝子「まさか...ピストルとは...」

星輝子(15)
http://i.imgur.com/u52ykSk.jpg
http://i.imgur.com/Tq4Nbx2.jpg

輿水幸子(14)
http://i.imgur.com/KR4TXLu.jpg
http://i.imgur.com/KGTX3AH.jpg

~~~~~~~~~~~~~~~~~~



輝子「フヒっ...フヒゥ...えぐっ、ぐすっ」


幸子「よしよし...とってもビックリしたんですよね?もう大丈夫ですからね?カワイイボクがいますからね?」


小梅「あう...ご、ごめん、ね?...い、言い忘れてて...はうぅ」


ところ変わって居間に戻った三人


景気づいたところをド肝を抜かれ、涙ぐんだ輝子を幸子が慰め、小梅が謝っている


意気揚々としていた輝子を驚かせたもの


それはとある人物だった

いや

人物だったもの、だった


小梅「よ、よくわからない...けど、ご、ごめんね?しょーちゃん...」


輝子「...うん、ぐすっ...うめちゃんが...い、いなくなっちゃうかと思った...」


幸子「何を言ってるんですか輝子さん!カワイイボクがいるのにそんな事させるわけないでしょう!!」


幸子「それより輝子さん、貴方には小梅さんに教えなければならないことがあるでしょう?」


場をまとめ、幸子が話を次に進めた

小梅「?さ、さっきも言ってたけど...なに?」



幸子「なんと輝子さんは!すでに能力を身につけているのです!!」



輝子「ふ、フヒ、ど、ども」


照れたように輝子が頭をかく、

ややサイズの大きく、着崩されたTシャツの中に無造作に手を入れる

そのあと中に入れていたらしきものを取り出した

それは手の中に収まるサイズのキノコ、

小梅にはその種類まではわからないがたしか事務所で輝子が飼育していたものの中に似たようなものがあった気がする


輝子「これ、触ったら、なんか能力、使えるようになった、よ?」


小梅「そ、そうなんだ...すごい...!」

幸子「輝子さんはなかなか幸先のいいスタートでしょう?」


小梅「ど、どんなことができるの?」


輝子「フヒ、こんなこと...」


輝子が手のひらを叩く


ぺちっ!


広い部屋に小さな音が鳴る


ぽとっ


叩かれた手のひらが開かれるとそこから何かが落っこちた


小梅「ち、ちっちゃい、キノコ...?」


幸子「どうです?僕には及びませんがカワイイでしょう?」


三人が見つめる先、そこに輝子の手のひらから発生したのは小さいキノコ

単三電池くらいのサイズ。

もうひとつの特徴といえばキノコでありながら根らしきものが見当たらないこと

そして


ミニキノコ「?」


チョコチョコチョコ...


小梅「!?」


ミニキノコ「!」


チョコン


ミニキノコ「fff」

その小さなキノコは小さな足のようなものを生やすといきなり走り始めた

そのあと部屋の隅に行くと満足したようにそこに座り込んでしまう


小梅「な、なにこれ?」

輝子「あ、あるくキノコ」

幸子「カワイイでしょう!」

輝子「じ、自分でジ...ジメジメしたところを探して移動する、よ?」

小梅「か、かわいい、ね...!」


幸子「まぁ、使い道はあるのかどうか微妙ですけどね」


輝子「フヒッ!?」


ぺちぺちっ!


ミニキノコ2「?」

ミニキノコ3「?」


幸子「お、怒らないでくださいよ!?本気で言いたわけじゃありませんって!」

そして新たに現れた小さなきのこ人形が部屋の隅に行き、

根が生えたようにじっとし始めたのを確認すると幸子は小梅に向き合った

幸子「で、ものは相談なんですけど小梅さん、これからの予定などありますか?」

小梅「な、ない...」

輝子「だったら、うめちゃんも、ついてこない?ほ、他に仲間、探してたんだ」

小梅「ど、どこに?」

幸子「そりゃあもちろん、輝子さんが能力発動のキーアイテムを手に入れた場所ですよ!!」

幸子「おそらくなにか収穫があるはずですからね!!」


小梅「そ、そうなの?で、でも...もしかしたら、しょーちゃんの分しかないかも...」



柳の下にいつも泥鰌はいない


たまたま輝子にとって有用なアイテムがあったからといって、

次に行った時にも良いアイテムが手に入るわけではない

むしろこの広い街の一箇所にアイテムが密集している方が不自然だろう


幸子「確かにその可能性もあります。ですが...」

小梅「...?」

輝子「フヒヒ...」


幸子は小梅に耳打ちする、

別に他に聞いている者は輝子しかいない上、

そもそもこの情報の出処は輝子なのでそんなにこっそり話す必要はないのだが

内緒話はすぐに済んだ、幸子が小梅の耳元から離れる

幸子「...と、いうわけです」

小梅「...!ほ、ほんとう...!?」

輝子「フヒヒ、ほんと、だよ」

小梅「わ、私も、行く...!」


その情報が小梅の興味を引いたらしい

小梅は乗り気になった


幸子「ええ、それでは全員揃って『あの場所』に出発しましょう!」


幸子「ボクたちは今から一蓮托生のユニットです!!!」


このあと紆余曲折の末、

拳銃以外の武器も見繕うことができた三人は屋敷を離れた

幸運にも早いうちに仲間を見つけることに成功した三人

その表情は誰もが明るいものだった


ゲーム開始22分経過

星輝子 輿水幸子 白坂小梅

ユニット結成


______________

 星輝子+ 300/300


______________

______________

 輿水幸子  300/300


______________
______________

 白坂小梅  300/300


______________












この数分の後、


巨大な暴力が小さな三人を蹂躙する

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



数時間後に続き投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル24階


結城晴のボットとしての能力

子供の足ではありえない威力のシュート

そして蹴り飛ばしたボールが足元に戻る


晶葉は晴に与えた能力を『サッカーボールの最終到達距離を設定することができる能力』
と定義している


例えば晴のシュートによりボールが20メートル先まで飛んでいくとする

ここで晴が能力により到達距離を10メートル、と設定するとボールは同じ力で蹴ろうと10メートルで止まる

例え100メートル先まで飛ぶ力で蹴っても10メートルでピタリと止まる

しかし晴の能力の真髄は
その余った飛距離をボールの速度、威力にあてがえるところにある

本来なら20メートル飛ぶはずの威力を10メートルで留める

その代わり残りの10メートルの分、威力が上乗せされる

現実のサッカーではありえないテクニックである。

強い威力であればあるほどボールが遠くまで届くのがサッカーの現実だ

だが仮想空間内の晴にかかれば距離が短く、近いほどシュートは強さを凝縮される


20メートルか30メートルか、晴の脚力がどの程度かはしらないが

そのシュートの威力が0メートルにどんどん圧縮されていくとき何が起こるのか


答え、

能力の飛距離制御を超えてボールが飛んでいくが最終的に0メートル近くの地点に戻る


それは例えるなら短いゴム紐で手首に結びつけられた野球ボールを強く投げたとき

ゴム紐がその限界ギリギリまで引き伸ばされたあと、一気にボールを引き戻す動きに似ている


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

晴(ボット)「・・・・・・・・・」



晴(ボット)「・・・・・・お、来たか、ありす」


舞(ボット)「あ!ありすちゃん!」


凛「・・・・・・・・・なんなの」


ありす(ボット)「・・・晴さん、舞さん、・・・お疲れ様です」


部屋の反対側、凛から離れた場所、部屋の入り口、そこにありすが立っている


胸元にはボットであることをあらわすバッジ、手にはありすとセットでよく見かけたタブレット


どれだけ急いできたのか、息を切らせているようにも見える、ボットのはずなのに



凛「(どうしてこんなにたくさんのボットが・・・尾行されてた?)」



割れたガラスのそばには晴と舞、広い部屋の唯一の出入り口にはありす


凛の包囲網が完成していた


凛「・・・ふうん、三対一なら倒せると思ってるんだ。舐められたもんだね」


晴(ボット)「・・・・・・あ?」


舞(ボット)「・・・・・・うー...」


ありす(ボット)「まさか、そんなわけ無いでしょう」


相手が子供だからと甘く見ないのは凛のアイドルとしての姿勢であるが、

その姿勢はこの空間でも遺憾なく表出している

ありすのほうもそんな凛に対し、まるで不遜な態度を崩さない


ありす(ボット)「(凛さんはこっちを見ている・・・『あの場所』に気づいた様子はありませんね)」

ありす(ボット)「(あとは外の景色を見させないように誘導しながらこの建物の外に出す)」

上着の中に意識を向ける、

四角い箱と丸い紙がちゃんとあることを確かめる

まずは箱から使う


戦闘力ゼロのボット

ありすの戦いが始まる
~~~~~~~~~

347と346のあいだが抜けました



飛距離100メートル分の威力を30メートルに

30メートル分の威力を20メートルに

20メートル分の威力を10メートルに

さて、

もしここで晴がボールの到達飛距離の設定値を

”限りなくゼロ”

にしたとき何が起こるのか

晶葉もそのケースについてはシュミレーションを欠かしていた

~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


私が取り急ぎ対処しなくちゃいけないのは晴のボール攻撃

予想とは違ったけどなにか種があるはず。

でも私には武器がない、さっきの破片もどこかに落とした


舞は不安そうにこっちを見ているだけ、なぜか一輪車に跨ったままその場に立っている、すごいバランス神経だ



ありす(ボット)「私たちは」



ありすが口を開く、何かの覚悟を決めたような表情だ





ありす(ボット)「今から全力で逃げます」



凛「?・・・私は今丸腰だから、そっちからいなくなってくれるなら歓迎だよ」


何を言うかと思ったら、わざわざ現れての逃走宣言

その意図が読めない


凛「もしかして、舞と晴をかばう気?・・・私に倒されたりしないように」


ありす(ボット)「凛さんはプレイヤーで私たちはボット。戦わないという選択肢はないはずですが」

凛「それは最終目標かな、でも私はまだ武器を調達中だよ?それでも来ないつもり?」

多分こっちが丸腰なことはバレている。

なのにこの発言、ますます読めない



ありす(ボット)「これが何か分かりますか?」

ありすが箱の蓋を開ける

カコンッ

と小気味いい音を立てて箱は開いた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「___お疲れ様!お前たちのおかげでイベントは大成功だったぞ」

「俺から三人にお祝いだ。まず奈緒は髪飾りだな、可愛いデザインだろ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「箱の外見は忘れても中身を見れば思い出すんじゃないですか?」


ありすが箱の中身をこっちに向ける


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「次に加蓮、」

「加蓮の趣味はネイルだったろ?だからはいこれ、加蓮に似合う色だと思ってな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「分かりますよね?」


箱の大きさの割に中に入ってるモノは小さい、

蒼色の、小石ほどの大きさの装飾品


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「最後に凛、」

「前にお前、高校入学祝いに自分で買ったやつをそろそろ替えたいって言ってたろ?」

「だから、凛にはこれだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(ボット)「あなたのピアスです」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「新しいピアス、凛のイメージに合うデザインのはずだ」

「きっと似合うよ、プロデューサーの俺が言うんだから間違いないさ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ありす(ボット)「そしてあなたのキーアイテムです」


ピアス・・・私がプロデューサーにもらったのと同じ・・・!!




ピアスのブランド名が刻まれた箱が閉じられる


ありす(ボット)「さて、では私たちはこれを持って逃げますので」



ありす(ボット)「凛さんは、引き続き武器でも探してたらいいんじゃないですか?」



これは戦闘ではない

だが、ありすにとっての戦いだった



ゲーム開始34分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 


ボット側の戦闘放棄により続行不可能

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後に続き投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

凛が駆ける、


晴への警戒も、舞への懸念もかなぐり捨てて


ただ入口近く、ありすのもとへ疾駆する


晴(ボット)「っと!!」

無防備な凛の背中に晴がシュートを放つ


凛にそれを気にかけることはできていない


サッカーボールは大砲から放たれた鉄球のような轟音をたて凛を追う



もう少しで追いつく



晴(ボット)「あ」



もう少しで凛の脊髄にクリーヒットしそうなところでボールは急停止した


晴の能力が裏目に出たのだ、

最終到達地点は、ほぼゼロメートル

凛にの背中に触れるどころか掠ることさえなくボールは役目を終えたとばかりに晴のもとへ帰還する


晴(ボット)「ぁんだよもう!!どうやったらこの能力、設定変えられんだよ!!」


凛は皮肉にも晴の能力を攻略していた。


蹴り飛ばせるが近づかなければ当たらない。

ボールという、遠距離攻撃のための道具に生じてしまった矛盾


結果的に凛はそれを突いていた



凛「・・・!!かえ、せっ!!」


__それは私がプロデューサーからもらったものだ!



凛の手がありすのもとに伸びる




ありす(ボット)「舞さん」


舞(ボット)「はーい!わかりました!」



ありすはおもむろにピアスの入った箱を天井に向けて思い切り放り投げる


軽い箱は一直線に天井に飛んで行き___




天井に張り付いていた舞がそれをキャッチした




凛「な・・・」

ありす(ボット)「晴さん、逃げますよ」

晴(ボット)「へーいへい」

舞(ボット)「わーい、私の出番だー!」


逃走という名の追いかけっこ

追いかけっこという名の罠


凛「・・・逃がさないよ」

凛は廊下を駆けていく三人を追いかける




その背後、ガラスの向こうにある『あの場所』が凛の記憶に残ることはなかった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~

舞(ボット)「凛さん、ちゃんとついてきてるね!」

晴(ボット)「凛姉さんはこーゆーとき冷静だとおもったんだけどなー」

ありす(ボット)「キーアイテムがかかっているんですし、当然の反応でしょう」

福山舞の能力
『一輪車でどこへでも行ける』

彼女の一輪車は重力を無視しどこでも地面として進むことができる


天井であろうと壁であろうと彼女の一輪車はそこに垂直に張り付くことができる


晴と舞が、凛に気づかれずに窓の外にいることができたのも23階で降りた二人が、舞の能力で外壁沿いを移動できたからである

凛は一輪車が壁に刺さっているように錯覚したようだが


その舞も今は地面を走っていた、走っている二人よりもやや前を先行して、手に箱を持っている


ありす(ボット)「さて、やはり私たちの足では追いつかれるのも時間の問題ですね」

晴(ボット)「エレベーターってどこだよおい!?」

舞(ボット)「え、エレベーターは開け閉めしてるあいだに追いつかれるよぉ!?」

振り返らなくとも凛が今にも追いつきそうなのがわかる


「待てー!」とか「待ちやがれー!」といったお約束のセリフもなしに無言で追いかけてくる様は流石クールアイドルといったところか


ありす(ボット)「エレベーターはこの階で止まっているはずですが、階段を使います」

ありす(ボット)「晴さん、足止めを!」

晴(ボット)「あぁ?わかった、よ!」

晴が振り向きざまにボールを蹴り抜く

そう狭くない廊下、牽制の意味も込めたボールが背後の凛を急襲する


凛「そんなの!もう喰らわないよ!」


凛はサッカーボールに拳を向ける

そんなことすれば規格外の威力を持つボールに腕が砕かれてしまうかもしれないのに

だが凛はその手にボールペンを握っていた


舞(ボット)「あ、凛お姉ちゃん何か持ってる!?」

真正面からボールペンを突き刺す

厚くて丈夫な生地でできたボールはそれでは傷つかない

だが軌道は逸れた

凛「っぐ・・・!」

反動で凛も押し返される、

凛にずらされた球は凛の斜め後方に飛んでいく

だがこのままではボールは凛の背中目掛けて戻ってくるだろう




廊下のガラスにぶつからなければ


晴(ボット)「げ!マジかよ!」

ガラスに穴を開け、ボールが外へ飛び出した

ガラスを突き破り本来ならそのまま下に落ちていくはずのボールはしかし晴のもとへ戻る


だが、一度ガラスを突き破り外へ出たボールは一直線にしか晴を目指せない

その一直線上にはヒビの入ったガラス窓



ガッシャアアアン!!


ボールは、穴を開けて飛び出たガラス窓にUターンでもう一度穴を開けた

その破片の向かう先は



凛「___お返しだよ、晴」



ありす(ボット)「んな!?」

晴(ボット)「ちょ、」

舞(ボット)「きゃあああああ!!!」



凛に容赦はない

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ガラスのシャワーから逃げるように階段の昇降口に飛び込む

階段が渦巻き状に下まで続いている、

ここで一気に引き離す

ありす(ボット)「晴さん!舞さんに掴まって!!!」

晴(ボット)「わかった!」

そう指示するとありすも晴にならって舞の細い肩を掴んだ


舞(ボット)「行くよ!」


舞の一輪車は階段の手すりに張り付くとそれを飛び越えた

三人を乗せたまま宙を浮く


そのまま一つ下の階の手すりに着地した、


またそこから下に飛びおりる、

重力を一部無視しているため飛び移っているようにも見えた


凛「・・・やるね」


階段の手すりだけを足場に次々と下に飛び降りていく一輪車を

それでも凛は追いかける。

一段飛ばし二段飛ばし、階段を跳ねるように下っていく

だが場所は階段

ぐるぐると回りながら降りていくのと
ほぼ垂直に落ちるように降りていくのでは

一階に到達する早さが違いすぎる




晴(ボット)「ま、撒いたか!?」

ありす(ボット)「いえ、撒くのではダメですこちらを追いかけさせないと」

晴(ボット)「つってもよぉ、狙ってやったのかは知らねえけど凛さんヤバすぎだろ!!?ガラスとか!」

舞(ボット)「うう、怖かったよぉ・・・あと二人とも重いぃ・・・」

ありす(ボット)「一度、途中の階でおりましょう。凛さんの出方を伺わないと」



ありすはそう言うと、今も自分たちを追いかけようと、しかし少しずつ引き離されているはずの凛がいる上方を見上げる


ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!

ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!

ガンッ! ゴンッ!

ガゴンッ! ガッ!

ガンガン ゴン!ゴン 

ゴキャ! ベキ!


ありす(ボット)「・・・・・・・・・え?」


晴(ボット)「おい、なんだよこの音?」


凛に容赦はない



渦巻き螺旋階段の、中心の吹き抜けを

何かが落ちてくる

階段入口に設置された非常時のための道具


真っ赤な色の筒


まさしく自由落下の速さで

落ちるように移動する三人に






いくつもの消化器が

階段の柵にぶつかり方向転換しながら襲いかかった



ありす(ボット)「舞さん!この階で降ります!晴さん!一輪車から下りますよ!」

晴(ボット)「お、おう!」

舞(ボット)「わわわ!?」


間一髪

手すりから転げ落ちた三人の後ろをけたたましい衝突音を立てながら消化器が落下していった


舞(ボット)「ひえぇ・・・」

ありす(ボット)「晴さん・・・ボールはまだ持ってますか?」

晴(ボット)「あ、ああ、あるぜ、・・・・ガラスの粉みたいなの付いてるけど」

ありす(ボット)「予定を早めます、追いつかれないギリギリの距離ではこっちの身が保たないでしょう」

舞(ボット)「ってことは私、またあれやるの?」

晴(ボット)「ヤッバ、凛姉さん追いつくぞ!」

上から聞こえるカンカンという階段板を踏み鳴らす音から逃げ出すように

三人はそのフロアの一つの部屋に飛び込んだ
~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~

凛「・・・・・・・・・」

やりすぎたかな

いくら相手がボット、機械でも少し熱くなりすぎた

見た目と中身がほとんど身内のアイドルそっくりなだけに余計にそう思う

落ち着け、そもそも向こうは私をおびき寄せる気満々なんだ

追いかけているうちに後ろから足元を救われかねない

私はあの三人が入ったとあたりをつけた階に入る

19F

なんだ、それだけしか降りてないのか

消化器投げ込んだのは一応正解だったかな


舞(ボット)「・・・」

ありす(ボット)「・・・」

晴(ボット)「・・・」


廊下から見える位置に三人はいた

あの大きな窓ガラスに背中をつけるようにこっちを向いている

ここもやはり机が多い



ありす(ボット)「凛さん、次は何を投げてきても無駄ですよ」



わざわざその一言だけを言うために待ってたの?

やはりここでムキになってついて行くのは罠か

と思ったていたのに


晴(ボット)「オーバーヘッドシュート!」


晴が足を頭より高く振り上げるようにしてボールを自分の後方に蹴り飛ばす


三人の背後のガラスに大穴があく


その破片が降り注ぐ前に


三人はその穴から飛び降りた


ここは地上19階


凛「・・・!!」


あまりに不条理すぎる、こっちを誘導していたはずがこんな・・・


ガラスの破片を避けながら慌てて穴を覗き込む、ガラス張りのビルの外壁を見下ろす

地上までのあまりの高さに目眩がする


凛「完全に私から逃げ切る気、だね」


私がそう言って睨んだ先で、


舞の一輪車が壁に垂直に走っていた

落ちてる、という訳ではなさそう

舞の小さい体に晴とありすが必死な様子でしがみついてる


凛「たしかにこれじゃあ何を落としても無理そうだね」


その一輪車はガラスの壁を滑るようにジグザグに走っている

これじゃ何を落としても当たらないだろう


たしか舞は学校で一番一輪車に乗るのが上手なんだっけ

事務所でプロデューサーにそんなことを言っていたのを思い出す

舞が方向を変えるたび、しがみついた二人が振り落とされそうになっている、非常に危うい


凛「・・・すごい勇気だね、こんな高いとこで、」


でも、まだ詰めが甘い

年上を舐めないほうがいいよ


私は即座に次の行動に移る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル地上15階ほどの高さ


舞(ボット)「ひええ高い重い怖いぃい・・・」

ありす(ボット)「もう少しですから、途中でガラスを割って侵入しましょう」

晴(ボット)「おいこんなとこじゃボールなんて蹴れねえぞ!?」


ありす(ボット)「さっきはそうやって入ってたじゃありませんか」

晴(ボット)「あれは壁に止まってたからだよ!!こんなフラフラな一輪車の上で立てるか!!」



カクカクとZ字をなぞるように動く舞さんの一輪車と舞さんに命綱のつもりでつかまりながら周囲に目をやる

非現実的な風景

地上の道路がはるか下方にあり、背の低い建物の屋上が見える

空を飛んでいると錯覚しそうだが、下手すれば落下してしまう


パラパラ


上階から小さな破片が自由落下し、外壁のガラスにぶつかり音を鳴らした


カラカラ


ありす(ボット)「まさかまた、なにか落としてきたのでしょうか?」

晴(ボット)「え、おいマジかよ、舞避けろ!」


事務机が

ガラスを突き破って私たちめがけて落ちてきた

太陽の逆光のせいでそのシルエットになった姿はまるで四角い隕石だ。

自由落下の方が一輪車よりも速い、このままでは___



ありす(ボット)「舞さん、落ち着いて左に曲がってください」

晴(ボット)「また落ちてくんのかよぉ!?」

舞(ボット)「は、はいい!!」


キュッと一輪車のタイヤとガラスが擦れて方向転換する


これで机は軌道を変えた私たちに掠る事もなく落ちていくはずです


階段の時と違ってここは広いのですから避けるのは舞さんには簡単でしょう


しかし凛さんにそれがわからないとは思えないのですが・・・


机が無残にも私たちの横を落下していく





凛「おまたせ」













落下してきた机、それを足場に凛さんが立っていた



リスクを顧みず机と一緒に19階から落ちてきたんだ

凛さんは自分にも容赦がなさすぎる





ゲーム開始37分経過

渋谷凛

VS

結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 

場所 空中

延長戦開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
凛Pの方々、何かすいませんでした


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、輿水幸子
2、諸星きらり
3、堀裕子

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
8、VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 



《しぶりんを遠まわしに愛でる会》at『あの場所』

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票も有効)

9、島村卯月(ボット)&本田未央(ボット) 他

画像コメントありがとうございました

何故か書き込めてなかった部分の修正です

333と334の間に


幸子「そもそもどうして、アレは消えてないんです?」

小梅「え?消えるもの、なの?そ、そういうもの、だと思って,,,ほ、放置してた...」

それは白坂小梅の”ボット”

彼女のボットは倒されても未だこの世界にとどまり続けていた

どうしようもなかったので小梅はそれを放置していたのだが

その死体を輝子が見しまった、というのが事の顛末だ

さっきまで一緒にいた人間が死体になって転がっていたらそれは驚く

それに小梅以外の認識としてはボットは倒れたら霧のように消える、というものだったのだ普通本物が死んでいると思うだろう

幸子「ふむ...消えない死体、ですか,,,現実なら消えた方が驚きですが、仮想では逆、まるであべこべですね」

354と355の間



ありす(ボット)「追いかけても来ないつもりですか」


凛「・・・その言葉を聞けば、ついていくこと自体が罠だってくらいは分かるよ」


ありすは確かめるように一言ずつ話していく


ありす(ボット)「そうですか」


ありす(ボット)「ではそう出来ないようにしましょう」


ありすは懐から黒い箱を取り出した。


ちょっとだけ高級感のある光沢が特徴的な____




・・・・・・う、そ・・・なんであるの・・・?

歯抜けが多過ぎて把握するのに骨が折れるな
142'sのところは390がくるまでイミフだったわ
修正する時はレス番だけじゃなくてアンカーにしてくれれば逆参照で把握しやすくなる

何故か書き込めてないってのは25秒規制に引っかかってんだろう


>>393
指摘、アドバイスありがとうございます
投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
諸星きらり



___PちゃんPちゃん!!そのかそーげんじつって杏ちゃんも一緒かにぃ?___



___ははは、きらりはいつでも平常運転だな、大丈夫、杏もプレイヤーとして参加してる、この先にいるはずだよ___



___あいつはあいつで仮想空間でもグータラしてそうだからなお前がちゃんと杏を動かしてやれ____



___おっすおっす☆___




にょわー...

いないにぃ...



きらり、いっぱい歩き回ったのに。杏ちゃん見つからないにぃ

むぅー、Pちゃんのばかぁ...杏ちゃんいないよ...

でもPちゃんが嘘つくはずないにぃ

でもでも、この街、なんだかしーんって感じで、きらり、ちょっぴりさみしぃにぃ

もしかしたらきらりしかいないのかも...

きらり、ないちゃいそう




???「あれっ?きらりさんじゃないですか!!」


諸星きらり「に?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


堀裕子「なるほど、杏さんを探していたのですね」

きらり「うん...でも今のところ、きらりのそっくりさんと裕子ちゃんにしか会えてないにぃ」

裕子「ふむ、確かにこの街は広いですからね、杏さんのような小柄な子を見つけるのは難しいでしょう」

きらり「やっぱり、そうかにい...」


大通りから離れたところにあるベンチに裕子ときらりは腰掛けていた

寂しそうに体を縮こまらせているきらりの顔を裕子が伺っている

一応、仲のいい人間と遭遇できたことで幾分か安心したようだが、懸念は消えない


裕子「分かりました!きらりさんもやはりこの状況にまいっているようですね!そんなきらりさんは見ていたくありません!」

突然ベンチから跳ねるように裕子が立ちあがった、その瞳には決意の色が見える


裕子「僭越ながらサイキックアイドル堀裕子!きらりさんを見事笑顔にしてみせましょう!」

きらり「?裕子ちゃん...何するの?」


裕子「いいですかきらりさん、アイドルの本分とはなんですか?」

きらり「むぇ?えっと...きらりにとってはファンのみんなとPちゃんに幸せを届けることだにぃ」


裕子「そう!アイドルがどのような道筋を選ぼうとも、最終的にみんなに与えるものは幸せ、...そして笑顔です」


裕子「そしてサイキッカーの超能力もまた人々を笑顔にするためのもの...これがどういうことかわかりますか?」


きらり「んー、わかんないにぃ...」

裕子「ふふふ、では教えてあげましょう」


裕子はそう言うと踊りだすようにきらりの前に立った、

何故か腰に左手を当て右手をまるで天を指差すように上げている

妙なポーズだ




裕子「つまり!サイキッカーでありながらアイドル、サイキックアイドルの私は誰かに届ける笑顔も二倍なんですっ!!」



天に向けていた右手の指が二本になった、ピースサインである。



きらり「そうなの?」

裕子「そうです!ピースサイン!ダブルでドン!!」


裕子「ダブル笑顔です!!」


きらり「ダブル笑顔?」

裕子「はい!ダブルでドン!!」


裕子は、何の意味があったのかは知らないが天に向けていたピースをビシっときらりに向けた

二本指では何を指差しているのか意味不明である


きらり「だ、だぶるでどん...?」


裕子「もっと大きな声で!エブリデイセイッ!!」


それはエビバディセイ(everybody say)の間違いだ


きらり「だぶるでどん...!」


裕子「もっともっと!はいっ!ご唱和ください!ダブルでドン!」


きらり「だぶるでどん!」


裕子「もっともっとぉ!ダブルでぇえ...!」


きらり「どん!!」


裕子「ダブルで!?」


きらり「どーーーん!」


裕子「いいですよぉ!じゃあ準備はいいですか!!」


きらり「に!!」



裕子「ダブルでーーーーーーー!!?」

きらり「どーーーーーーーーーーん!!!っだ、にょわーーーーーー☆!!!」


裕子「イエーーーーーーーー!!!」


きらり「にょわーーーーーーーーー!!!」


裕子「さいきっくダブル笑顔!!!」


きらり「にょわにょわだぶるぴーすだにぃ!!!」










裕子「・・・・・・・・・・」

きらり「・・・・・・・・・・」












裕子「...矯めてからの、ぼえええええええええええ!!!!!!」


きらり「...一回休んでからの、にょわーーーーーーーーー!!!!!!」






いつの間にか二人でスタンディングオベーションもかくやという騒ぎに突入していた

まるでその場でどちらがどれだけダイナミックなバンザイを披露できるか競っているかのように

手を振り上げ声を張り上げ飛び跳ねている。パッションアイドルの本領発揮だ


ちなみに落ち込んでいる時は、大きな声を出すのは意外と気分転換になるそうだ

もちろん裕子はそんな知識は持ってない


~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

裕子「・・・とまあ、では本題に移りましょう、杏さんの居場所、私の超能力で見事当ててみせます!」

きらり「ほんと!?裕子ちゃん!」


裕子「ええそうです、サイキックウソツカナイ!」

きらり「すっごいにぃ!!」


裕子「さて、こういう時はダウンジングを使うのですが、あいにく今はスプーンしか持っていません」

あるていどの本調子を取り戻し元気になったきらりをベンチに座りなおさせ、

裕子は思案するようにきらりの前をゆっくり歩く


裕子「ここは、あれですね。サイキック棒倒しを使いましょう」

きらり「?・・・にょわ」


裕子は手近にあった棒に目をつける


裕子「棒を倒した方向に進むだけ、一見ただの運試しに見えます。」

裕子「で、す、が!!!私のサイキックパワーを注入することで、その棒は百発百中のレーダーとなるのですっ!!」

きらり「すっすごいにょわ!それで杏ちゃんを探して欲しいにぃ!!」

裕子「ふふふお見せしましょう、サイキック棒倒し」


裕子はその棒の近くに立った

裕子「むんっ!」

棒倒しの構えを取る、棒倒し用の裕子オリジナルの構えだ

きらり「むむむ、ごくり...」


裕子は、既に地面に立っていたその棒に狙いを定めた



裕子「・・・・・・私のボットが落としたスプーンを拾うことにより得た私の新、超能力・・・」



裕子「今見せてあげましょう!!!」


きらり「!!!」


裕子が動いた














裕子「さいきーーーーーーっく力技!!!!!!」



地面に立っていた棒を狙う、



本来なら夜間、あたりを照らす照明であるはずの電灯

現実であれば丈夫で太い鉄で出来ていたであろうそれは埋め込まれていた地面との接点を切り離され無残に傾いていく

裕子の、なんの変哲もない細い手から放たれた手刀が原因で



ズズゥウウンンン・・・...



鉄柱の電灯が鈍重な音を立てて地面に倒れ伏した


裕子「さぁ、行くのですきらりさん!杏さんはきっとこの先にいます!」



きらり「裕子ちゃんすごいにぃ!じゃあきらり行ってくるにょわ!」

裕子の手刀が電灯を根元から斬り倒した

倒れた電灯のランプが指す方向には建物同士の隙間、裏路地がある


裕子「それでは頑張って!サイキックピースです!!」


きらり「にょわ!バイバイだにぃ裕子ちゃん」


裕子「ええ、さようなら!!」


すっかり元気いっぱい、ハピハピ状態のきらりが一直線に走り去っていく

裕子はその背が見えなくなるまで手を振っていた。



裕子「・・・・・・・・・・・・・・・」


裕子「あれ!?・・・私また一人ですか!?」


裕子「サイキック孤独キャラ!!」



ビシッ!!



機能を失った電灯と、変なポーズを決めた裕子だけが後には残されていた



ゲーム開始21分経過

諸星きらり 堀裕子

ユニット結成失敗
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮


こんな話を聞いた

たしかそう、あれはヘレンさんから聞いたんだっけ

割と考えさせられる部分があったのと、ヘレンさんにしてはそこそこ真面目な話題だったので記憶に残っていた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
過去 現実 事務所


ヘレン「これはそう、私が海の向こうの国を渡り歩いていた頃の話」


ヘレン「とある小悪党、コンビニ強盗で捕まった青年の話よ」



???


ヘレン「彼はある暑い夏の日、空になった財布を懐に、頭を抱えていたそうよ」


ヘレン「照りつけるアスファルト。炎天下の空の下、クーラーの効いた場所を探してさまよっていたのよ」


ヘレン「彼にはどうしてもその時お金が必要だった。詳しい理由は知らないわ」


ヘレン「しかし職もない、友人もいない、女もいない彼は相当追い詰められてついに強盗を思いついたの」


ヘレン「でも狙いをつけた一件のコンビニを前にして、彼は強盗を一度は諦めたの。良心の呵責、失敗のリスク、そもそも成功するのか逡巡したのね」


ヘレン「ただ、そのまま何もせず立ち去ったところで彼に明日はないわ。」


ヘレン「・・・彼はとりあえず様子見と称してそのコンビニでボールペンを一本と一番安いアイスを一本買ったの」


ヘレン「次の金策を考えながらコンビニを離れた彼は、食べ終えたアイスが『当たり』だったのに気づいたわ」


ヘレン「彼は二十代前半だったそうだけど、とにかく彼の二十年以上の人生でアイスが当たったのはそれが初めてだったらしいわ」


ヘレン「彼は強盗計画を迷った直後という奇妙なタイミングで自分の身に起きた奇跡をこう捉えたの」









ヘレン「神が自分の背中を押している」




ヘレン「___こうして彼は先程のコンビニへ引き返すとボールペンを武器にコンビニ強盗を決行、その5分後、店員2人に取り押さえられたわ」



ヘレン「落ち着きなさい加蓮、私の世界レベルの話はここで終わりはしないわ」



ヘレン「彼はアイスの当たり棒を神からのGOサインと考えたわけだけど、もしかしたら逆に強盗をやめたことが正しい選択だったと神が伝えてくれたとも取れるわ」


ヘレン「彼は降って湧いた幸運を結果的にドブに捨ててしまったのね」


ヘレン「・・・ちなみに世界レベルの私は神の存在なんて信じていないわよ?」


ヘレン「これは海の向こうでの話だったわけだけど、私たちの日常にもアイスの当たり棒でなくとも、運不運、ラッキーアンラッキーの絡んだ要素は起きるわね?」


ヘレン「誤解を招く言い方かもしれないけど、個人が生涯出会う幸運や不幸の量と質はどうしようもないの」


ヘレン「それこそ神のような存在が好き勝手に決めているのかもしれないわね」





ヘレン「___でも、そんな不幸や幸運に出くわした私達が、その後何を考えどうするかは私達にしか決められないわ」



ヘレン「つまり、そういうこと」










ヘレン「え?私がなぜそんな小さなコンビニ強盗事件について詳しいかって?」

ヘレン「私、強盗が起きたとき丁度レジで商品の精算をしてもらっているところだったのよ」




ヘレン「そう、ファ○チキのね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

仮想現実



加蓮「(ファ○チキって、日本じゃん)」



やばい、よく考えたら海の向こうの要素が何一つないエピソードだった


ブオオオオオオオオオンンン!!!


後ろに迫った排気音がアタシを記憶から仮想の現実に引き戻す



さて、反撃しましょうか。

でもアタシの予想は外れているかもしれない、この攻略法は完全に思いつき、それを裏付けるヒントが少なすぎる

証拠もなしに犯人が逮捕できないのと同じ、

アタシの推測が合ってるかを教えてくれる”何か”がないとアタシは動けない

だってこれ失敗したらアタシ終わっちゃうし



拓海(ボット)「待てこらァ!!!」


加蓮「!!!?」


ほぼ耳元で怒鳴られたようにアタシは錯覚した。

つい反射的に振り返って拳銃を向けてしまう、拓海さんには効かないのに

また弾を無駄にしてしまう、もう四発しかないのに

右足がしびれる


拓海(ボット)「邪魔だァ!!」


かなり近くに迫っていた拓海さんがアタシに向けて振り払った木刀が、

拓海さんに向けていたアタシの右手を叩きのける


加蓮「いたっ!」



走ってる最中に振り返ったアタシは右手を強く払われバランスを崩す




___あ。


右手にしっかり握っていたはずの拳銃をさっきの攻撃で落としてしまった


慌てて拾おうにも右腕は振り払われ、左腕からでは遠い



拳銃は重力に引かれ自由落下する

まっすぐまっすぐ地面に鉛直に吸い込まれていく


拓海さんのバイクが普通より大きく見える。

だってもう既に木刀が届く距離だしね



アタシの唯一の武器



ボットの役目だろうと真剣に取り組み、挙句プレイヤーのアタシを焚きつけたあいつが

最後にアタシに託した武器

たった四発の弾丸と一緒に落ちていく


まっすぐ


横薙ぎに払われた右手では地面に落ちる前にキャッチはできない



__ああ、ごめんね



__でも、ありがとう



__これで







__この勝負、アタシが勝ったわ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

拓海(ボット)「!?」


反射的に振り返ってしまったアタシは

次は意図的に拓海さんに突っ込んだ


フロントタイヤにぶつからないように、ハンドルに前から手をかけ跳び箱のように飛び越える

バイクのハンドルを越えればそこには本体、拓海さんがいる

驚愕に染まった顔が間近に見える


最初、どうして木刀だけがアタシの体に攻撃を加えられるのか謎だった


バイクが地面以外のアタシを含めて何もかもを透けてしまうから木刀で攻撃する、確かに筋は通る


でも木刀も一緒に壁に潜るならどうして木刀は透けないの?


アタシはこれは壁から出ている間だけ木刀の能力を解いている、と推理した


でも違った、これはアタシの勝手な誤解だった



加蓮「___拓海さん」


あんたの体とバイクは


壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと


ぶつからないんだよね?




加蓮「でも、______人間にはぶつかるんだよね?」


拓海「!!?」


拓海さんの、今までで一番驚いた表情



加蓮「____言ったよね?アンタ確かに言ったよね?」




___安心しな!!アタシも一人のバイク乗りだ、バイクで”人をはねるなんてマネは絶対にしねえ”・・・___



___るっせぇ!!こっちがお前を”撥ね飛ばさねえようにしてる”からって舐めんてじゃねぇぞ!!___




壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと

拓海さんのバイクはぶつからないけど



人間は撥ねてしまう


能力の制限というか例外かな?



それにさっきの拳銃

アタシの手から離れてまっすぐ落ちた拳銃


ありえないありえないありえない


拳銃を持っていた右手がほぼ真横に振り払われているのに


その”手の中にあった拳銃だけが下に落ちる”わけがない、


少なからず軌道は横にずれるはずだ



つまりこれから察せられることは一つ


木刀の能力は解けていない

木刀は

アタシの右手の拳銃を透けて

アタシの右手だけを叩いた


木刀は、右手だけ叩いたけど拳銃には触れてもいない


そりゃ、拳銃だけ鉛直に自由落下するわけだ


つまり拓海さんの能力は『人間以外にはぶつからない』


全速力で走るバイク、そこに乗った拓海さんにほぼ空中で掴みかかった


ほら、さわれるじゃない


それにダメ押しのヒント

”アタシの右足のしびれ”

これは最初のアタシの射撃のあとにできた傷だ

あのとき拓海さんはアタシに銃弾を当てられてもそれを無効化し、

アタシに追撃を加えてきた

アタシのほぼ真後ろでバイクを半回転させて方向を無理やり変え、木刀を振るった


多分そのときだ、

拓海さんが無理やりその場で動かしたバイクのタイヤがアタシの足をかすっていた

つまりバイクはやはり人間にはぶつかる。人間ははねてしまう

アタシは自分の残り少ない弾が効かなかったことに動揺してたからね、気づくのが遅れた


さて、答え合わせは終了っと


アタシのラッキーはさっきの一つ、

拓海さんが出てくる壁を当てたときだけ

次のアタシの行動は神サマなんかには決められない



加蓮「どおりゃああああああああああああああああああああ!!!」


拓海(ボット)「くっそおおお!!」


バランスを崩してアタシと拓海さんはバイクから振り落とされた


地面に叩きつけられる、

でもアタシは拓海さんが下敷きになったおかげでダメージはなし

というか拓海さんの胸部のクッションすごすぎでしょ、何なのこの柔らかさ。

どおりで愛海ちゃんが執着するわけだ


拓海(ボット)「ゲホッ!かれ、ん・・・なんてことしやがる・・・」

アタシの下で拓海さんが苦しそうに呻く、背中を強く打ったのかな


幸い拳銃は遠くには飛ばされなかったから、手の届くところにあった


右手に握りなおす

この拳銃の落下が最後のヒントになった




背後で壁にバイクが衝突する音が聞こえた


加蓮「やっぱり、バイクから降りたら能力使えないんだね、拓海さん」


銃口はその体を透けることなく拓海さんの胸の間に収まった


拓海(ボット)「はは、こんなとこでおわりかよ・・・」



諦めたように拓海さんは薄く笑った



アタシのリボルバーは残弾4発









加蓮「___頭はさっき狙ったから___次は心臓でいいよね?」




パン




アタシのリボルバーは残弾3発





ゲーム開始27分経過

向井拓海(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~
『あの場所』


そこは、

八神マキノを始めとした非戦闘系能力のアイドルが中心となって作られた組織、

二宮飛鳥命名《戦力外たちの宴》の本拠地に選ばれた場所であり


彼女たちがたどり着く少し前、星輝子がたまたま最初に転送され、

そして能力を得た場所でもあった


都会の中心から少しだけ離れた場所に位置するその建物は

外見は三階か四階建てほどの高さしかない至って妙なところのないテナントビルだ


____得体の知れないその中で、集められたボットたちが蠢く


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~

島村卯月(ボット)「はじめまして!!私たち!」


本田未央(ボット)「ニュージェネレーション!!」


佐城雪美(ボット)「...ばーじょん...2...」


卯月(ボット)「ですっ♪」



古賀小春(ボット)「わ?!ぱちぱちです?!」

市原仁奈(ボット)「ぱちぱちでやがりますよ!」

水野翠(ボット)「え、えっと...拍手をすればいいんですか?」


ソファに座った三人のアイドル

そこより少しだけ高い台座の上にも三人のアイドルがいた

おあえつら向きにキュート、クール、パッションの三人組だ



未央(ボット)「ふっふっふ、・・・何故かしぶりんだけプレイヤーとして参加しちゃったからね、仕方ないね!」

卯月(ボット)「私たち新生ニュージェネで凛ちゃんを倒します!頑張ります!」

雪美(ボット)「......よく...わからないけど...がんばる」


未央(ボット)「じゃあまず何から考えよっか?」

卯月(ボット)「はい!島村卯月頑張ります!」


雪美(ボット)「...はい...」

雪美が挙手した

未央(ボット)「むむっ! ゆきみんから意見が出ました!どうぞ!」

雪美(ボット)「...ボット...プレイヤー...どうやって...決まってる...の?」

未央(ボット)「ふむ、いい質問だね!私も知りたかったんだよ!」

卯月(ボット)「未央ちゃんも知らないの!?」

雪美(ボット)「...うづきは...しってる...?」

卯月(ボット)「・・・・・・島村卯月、勉強頑張ってきます!」

未央(ボット)「全滅かーいっ!!」



卯月(ボット)「えへへ!私たち!」

卯月未央(ボット)「新生ニュージェネレーション!!」

雪美(ボット)「......だにゃん...」


小春(ボット)「雪美ちゃん可愛いです?猫さんです?」

仁奈(ボット)「なんと!仁奈も猫の気持ちになれやがりますよ!」

翠(ボット)「ほほう、漫才が最近のアイドルユニットの主流なんですか...」


『あの場所』で、

和気藹々とした雰囲気の中で遊ぶアイドルのボットたち

だが彼女たちはただここで遊んでいるのではない


この六人は、考えられうる最も論理的な思考の末、

こと拠点防衛においては最強だと判断され選び抜かれた者たちだった




小春(ボット)「でもどうして小春たちのオリジナルはプレイヤーになれなかったのですかぁ?」

仁奈(ボット)「たしかに、不思議でごぜーますね」

翠(ボット)「たしか、晶葉さんは個人の適性と言ってましたね」

未央(ボット)「適性?」

卯月(ボット)「相性ってことですか?」

翠(ボット)「はい、まず私たちのオリジナルが晶葉さんによって脳の人格データをスキャンされ、仮想空間内で本人が精神を保ってられないと判断されれば、そのスキャンされたデータは本人代わりのボットに個性を与えるために使用されるそうです」

卯月(ボット)「ボットの個性ですか!!ということは私たちって個性の塊なんですね!」

雪美(ボット)「...うづき...うれしそう...」



と、ここで


ニャー

ニャー

ニャー


雪美の手元のアイテムからそんな音がする

未央(ボット)「あれ、ゆきみん電話なってるよ?」

雪美(ボット)「...うん...黒猫電話...」


雪見の膝の上には黒いダイヤル式の電話が乗っている

これの呼び鈴が彼女の飼い猫の鳴き声に似ているらしいので

飛鳥は雪美の能力をシンプルに《黒猫電話》と名づけていた

黒猫と黒電話のあわせた造語


この能力は定義が曖昧なため扱いづらいのだが、場合によっては強力な能力である

簡単に言うと『不吉なことがあれば能力の持ち主に伝える』

黒猫は不吉の象徴と考えられることもあるがその訪れを先んじて伝えてくれるこの能力は雪美の、

そして雪美の近くにいる人間にとっては不吉の間逆だろう

翠(ボット)「もしかしたらこの場所に何かが近づいてきているのかもしれませんね」

仁奈(ボット)「何が来ても怖くねーですよ!」

小春(ボット)「私とヒョウくんも頑張ります?」

卯月(ボット)「雪美ちゃん!で、どんなメッセージがきたの?」

雪美(ボット)「...今...聴いてみる」

雪美は受話器を手にとった

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ERROR!!

仮想現実空間運営用自律ボット

CHIHIROより池袋晶葉へ


以下、二点のエラーが観測されました。早急な対処をお願いします


1、ボット「白坂小梅」がスタミナが0になったにもかかわらず消失が確認されていません

2、仮想空間稼働21分15秒から22分03秒までの48秒間、

 プレイヤー「緒方智絵里」およびプレイヤー「佐久間まゆ」の行動履歴がありません

 48秒の間、この仮想空間上のすべての領域から存在がロストしていました


仮想空間稼働30分経過


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ボットは蠢く

プレイヤーもさらに蠢く


ゲーム開始30分経過

『あの場所』報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~
加蓮さんユッコ、はっちゃけ過ぎましたごめんなさい
小春のセリフが一部バグってしまいました


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

【ERROR!】 

緒方智絵里 佐久間まゆ 

のチャプターが一部存在しません。早急に復旧作業が必要です


1、輿水幸子
2、三好紗南
3、小日向美穂

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
8、VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&?? 


画像コメントありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子

ボクらの行軍は思った以上に順調です

そもそもこのゲーム?模擬戦闘とかプロデューサーさんは言ってましたけど随分楽勝じゃないですか!!

まあたしかに?いきなりボクが現れた時には随分驚かされましたけど?

いまここにこうしてボクが2本の足で立てていることから、ボクのカワイさがもはや強さにもつながることが証明できたでしょう!


幸子「しかし、輝子さん、一度しか来たことがない道なのに迷う様子がないですね」

前を歩く輝子さんに声をかけると、ボクらの先頭を歩いていた輝子さんが少しだけ顔をこちらに向けます

輝子「...さっちゃんにあ、会ったのも...うめちゃんに会ったの、も...『あの場所』から...そ、そんなにはなれて、ないから...」

幸子「なるほど、そもそもボクらの足じゃあそれほど遠くにも移動できませんしね!」

輝子「それに...き、キノコをさ、探しに...山に入るとき、け、獣道とかに入ることもある...から、迷わないように...周りの景色とか...よく覚えておくようにしてる」

輝子「み、道を、覚えるのは...得意」

小梅「しょ、しょーちゃん、すごい...!」

幸子「ほう!それはすごいじゃないですか!」

輝子「そ、それほどでもない...フヒヒ、二人も、すぐできる、よ?」

輝子「......一度、よ、山の夜道に迷って...し、死にかければ、嫌でもできるように...フヒヒヒヒヒヒ」

幸子「・・・」

小梅「や、山の夜道・・・楽しそう・・・!」


目的地である『あの場所』を知っている輝子さんを前に据え、その僅か後ろをついていってるのがボクと小梅さんです


さて、ボクらの興味関心を引いて止まない『あの場所』ですが、その前に持ち物チェックと行きましょうか

ほとんど着の身着のままでここに転送されてきたボクらは小梅さんのいた屋敷でなかなか役に立ちそうなものを見つけたのです


【ハンドガン×3丁】

この手のゲームではなかなか基本的な装備ですね

最初輝子さんが見つけてきた時にはびっくりしましたがゲームっぽさを演出するにはいいアイテムでしょう

弾丸はそれぞれ8発、替えの弾、マガジンの類はありませんでした

【猟銃×1丁】

小梅さん曰く、この手の屋敷のお約束?だそうです。まぁ確かに日本には猟銃を所有している方は普通にいますからね

しかし、そのあとホラー映画の紹介が始まりかけたのはどうしてだったんでしょうか・・・

こちらは銃弾が4発しかなかった上、一度に装填できるのが2発まで、

さらに銃身が長いせいでボクらが使おうと思ったら二人以上で支えることになりそうです

若干使いにくいですね


【栄養ドリンク×2】

おそらく回復アイテムだとは思うのですが栄養とスタミナに関係性はあるのでしょうか?

そういえばこれと似たようなモノが事務所の冷蔵庫にも入ってましたね。

ふーむ、現実の方で結構有名なドリンクがモデルなんでしょうか?


【アクセサリー(?)】

ネックレスだとは思うんですが、何の模様もない変な板が二枚ほど鎖に付けられただけの無骨なデザインです

男の人だとこういうのがカッコイイんでしょうか?


ボクたちは一人一丁ずつハンドガンを持ち、栄養ドリンクは小梅さんと輝子さんのポッケ、猟銃はボクが背中に担いでいます

ゲーム内で重さがほとんど設定されてないようなので、たまに地面を引きずりますが運ぶのは苦ではありません

アクセサリーはもしかしたらだれかのキーアイテムの可能性もあるのでボクのスカートのポッケに入れっぱなしです

もし似合いそうなら二人に付けておいても良かったのですが、

小梅さんと輝子さんにはもっと似合う装飾品というのがあるのに適当に拾ったモノなど付けさせられません!

やがて下り斜面の頂上にたどり着きました。

ほかの場所よりやや標高が高いのでしょうか、道路の続くずっと先に並ぶ建物を見下ろしている気分になりました

この道路は傾斜が急なので下からボクたちのところに来るのは大変そうですね


輝子「あれ...あそこ...」

ペったペったと裸足に直接はいていた靴を地面にこすりながら歩いていた輝子さんが立ち止まります

向けた視線は斜面を降りたずっと向こうの一点、あの建物


幸子「・・・なるほど、遠目でもすぐにわかりますね」


小梅「た、確かに...あ、『あの場所』...だね」


外見は何の変哲のない建物

だがそれはこの世界にあってはならない、のかもしれない

少なくとも未知と驚愕に溢れたこの街において『あの場所』の異質さは拭えません

だってボクらはよく知っている、あの建物を




「「「・・・事務所・・・」」」




ボクらが最もよく知るアイドルプロダクション、ボクらの夢の発着点

その事務所のあるビルでした






カリカリカリカリカリカリカリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


カリカリカリカリカリカリカリカリ


仁奈(ボット)「どーでごぜーますか!7の革命でごぜーますよ!」

小春(ボット)「そんな~、私の2が使えないです~」

雪美(ボット)「......革命...返し...」



カリカリカリカリカリカリカリカリ



未央(ボット)「おっ!」


卯月(ボット)「どうしたの?」


カリカリカリカリカリカリ


翠(ボット)「これって、未央さんの能力の...反応してますね」


卯月(ボット)「つまり、誰かここに近づいて来てるってこと?」


未央(ボット)「・・・そうなるね・・・!」


三人は机の上を囲んでその上に置かれたものを見つめている


それは、机の表面を引っ掻くように細かく振動しながら望まぬ来襲を未央たちに伝えている


カリカリカリカリカリカリカリカリ



未央は声がその部屋にいる全員に届くような位置に移動すると声を張り上げた



未央(ボット)「はい!!ちゅうもーーーーーーーーーく!!」


仁奈(ボット)「む!どうしやがりましたか未央おねーさん!」

雪美(ボット)「.............」

小春(ボット)「はい~?」

翠(ボット)「・・・・・・・・・」

卯月(ボット)「頑張って未央ちゃん!」


未央(ボット)「ゆきみんの黒猫電話によくわからない着信があったのが大体十分前!やはり敵は現れたよ!」

未央(ボット)「ゆきみんの電話は今まではゆきみん一人の危険だけにしか反応しなかった!しかーし!それはゆきみんが独りぼっちだったからの話!」


雪美(ボット)「...マキノと......ありすが...私のこと...見つけて...くれた.....」


未央(ボット)「私たちはいま一人じゃない、六人いるんだよ!つまり!?」


仁奈(ボット)「ゆきみのピンチは仁奈たち全員のピンチでやがります!」


小春(ボット)「私たちのこの場所のピンチでもありますね~」


翠(ボット)「全員で乗り越えるべき危機......ここが気の引き締めどころです」


卯月(ボット)「ここで良いところを見せないと飛鳥ちゃんたちに合わせる顔がなくなっちゃうもんね!島村卯月!頑張ります!」


未央(ボット)「そう!みんな!今からが私たちの勝負だよ!」

未央はその場で力強く握りこぶしを作る

ほかの全員も同様だ


未央(ボット)「さぁ、えいえいおー行くよ!!! えい!」


雪美(ボット)「......えい...」


仁奈(ボット)「えい!」


小春(ボット)「えい~」


翠(ボット)「...えい...!」


卯月(ボット)「えいっ!」



「「「「「「おーーー!!!!!!」」」」」」





カリカリカリカリカリカリカリカリカリ


橘ありすが居所を突き止め、

二宮飛鳥がノリノリで能力名を考え、

八神マキノをもってして「最強の拠点防衛部隊」と呼ばしめた六人の能力者






本田未央 《ミツボシ効果》

島村卯月 《M・M・E》

水野翠  《規律反背》

佐城雪美 《黒猫電話》

市原仁奈 《U=パーク》

古賀小春 《美女と聖獣》






対するは銃を持った三人


よく知った事務所という、仮想のはずの世界に紛れこんだ異物を巡る戦いが始まる


ゲーム開始41分経過

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

開始

数時間後に続き投下します


チャプター
渋谷凛


ありす(ボット)「凛さん!!??こ、ここ何階だと思ってるんですかっ!!???」


凛「知らないよ・・・10階くらい?」


一輪車のタイヤを踏みつける足に力を込めなおす


私が足場がわりに落とした机はさっき地面に叩きつけられたらしい

それっぽい破壊音が聞こえたけどここはかなり高所だからその音は届かなかった



今現在、私は世にも奇妙な、壁に垂直に立った一輪車の、その車輪部分に立っている




舞(ボット)「あ、あう・・・」

晴(ボット)「やっぱ凛姉さんハンパねーわ・・・」


ありす(ボット)「こんな風に飛び移ってきて、ここからどうするつもりなんですか!」


私がタイヤを踏んでいるせいで一輪車は前にも後ろにも動かない

舞は一輪車を漕ぎかけの姿勢のまま動けないようだ

晴とありすは舞にぶら下がるような、しがみ付くような姿勢を崩さない


ありす(ボット)「凛さん、私たちが子供だからこんな無茶したんですか?こんな状況でも相手が子供ならどうとでもなると思ってるんですか?」


凛「・・・・・・・・・・・」



高層ビル中程の外壁に張り付いて、

自分を支える足場は子供用の小さい一輪車だけ、

その小さな三輪車の上に人間まるまる四人が引っかかっている

しかも敵対構造としては1対3で、私が1


よくある絶望的にピンチな状況で誰かを見捨てなければならないとき、

映画かなんかのストーリーでは、混乱のさなか人の醜い本性が発露して、仲が良かった人たちや愛し合っていたはずの二人が互いを貶め合ったり、なんて展開がお約束だよね


何とかしないと下手すれば全員地面に叩きつけられる

絶望的ピンチな状況までは一緒、


でも私に味方はいない

でも明確な敵なら三人もいる



凛「・・・これなら混乱はしなくて済むかな・・・」



問題

あなたは3人の人間と狭い足場にいます。

このままでは遥か下の地面に叩きつけられて全滅必至でしょう。

さて、

どうすれば自分だけ助かることができるでしょうか?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

下を見れば遠い地面に砕けた机

上を見れば一輪車に必死にしがみつく私たちを嘲るように一輪車を2本の足だけで足場にしている凛さん

私たちと違ってその両手は自由に開放されています

いや、おかしいでしょう


舞さんは能力を発動し続けるために一輪車にまたがった姿勢を変えられませんが、

私や晴さんがちょっと凛さんの足を払うなりすればあなたは真っ逆さまなんですよ!?

確かにこのビルのガラスはツルツルなので掴まることはできませんが、だからといって無防備すぎでしょう!?


ありす(ボット)「見くびってましたよ。ここまで追ってくるなんて」


凛「私もありすたちがここまで行動力があるなんて知らなかったよ。こんな危ない逃走経路を使うなんてね」


凛「舞、晴」


舞(ボット)「ひゃ、はいっ!?な、なんですか!?」

晴(ボット)「・・・うっす」


凛「私の邪魔したらタイヤ、踏み抜くから」


舞さんの一輪車が壁や天井を走り続ける条件はまず何より一輪車にまたがっていること、

そして車輪が常に走りたい面と接していること

だから、舞さんは天井を走りたいときは壁を経由してから走っている。空中は走れないのだから



だから凛さんの発言はここにいる自分も含めた全員への殺害宣言だ



踏みつけの衝撃で車輪が少しでも面から離れた瞬間、一輪車はこの世界本来の重力に引かれ鉛直に落下することでしょう


凛さんは私に手を伸ばす、ゼロ距離の私に逃げる手段はない。

舞さんと晴さんはどう動いていいのかわからない様子だ

そもそも、もみくちゃでほとんど動けないけど


凛「・・・・・・」


凛さんは自分の足場である車輪に気をつけながら私の手元、腕と体のあいだに挟むように持っていた黒い箱に手を伸ばした


ゆっくり指がこっちに伸びてくる、私たちは動けない。


何故かこんな頼りない足場で、なおかつ孤立無援でありながら凛さんは誰にも邪魔されない


どうしても思い描けないのだ


凛さんだけがここから振り落とされる光景が


ほかの二人も同様だろう。年上も年下も関係ない、だが決定的な精神的優位に凛さんはいる


トライアドプリムスを分断しようという考えは正しかった

このレベルの何者かが三人も集まられたらたまったもんじゃない

カリッ


舞(ボット)「!!」


凛さんの指が箱のふちに引っかかった。


ピアスが中に入っている。

ありす(ボット)「ところで凛さん」


ありす(ボット)「無事この箱を手に入れて、どうやって無事なところまで戻るつもりですか?」


凛「・・・ここにいるのは舞の能力のおかげだし、舞が地上に降りるのについていくしかないでしょ」


ありす(ボット)「できるとでも?」


凛「じゃあ、私のこと倒せる?」
 


 「悪いけど身投げの覚悟くらいないと無理だよ」



___ああ、いまの言葉でなんとなくわかった。

どうしてこの状況でこの人がこんなにも優位に見えるのか




私は小さな声でつぶやく、ほぼ密着状態の舞さんにしか聞こえない




ありす(ボット)「(・・・・・・私のタブレットは回収しておいてください)」




舞(ボット)「・・・・・・ありすちゃん?」


凛「そろそろ、意地の張り合いは終わりでいいよね?」


今度こそ凛さんの手ががっちりと箱を捕捉した


ありす(ボット)「凛さん」



凛さんの五本の指はしっかり握られている




ありす(ボット)「今の発言から論理的に考えると」





私の五本の指は何も掴んでいない



何も、




ありす(ボット)「覚悟があれば、あなたは倒せるんですよね?」





私は手を放し、箱を抱えたまま落ちていった




~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

凛「っ!!」


舞(ボット)「ありすちゃあああああああん!!!??」


晴(ボット)「ちょ、ま、はぁああああああ!!??」


ありすの姿が遠のいていく


私は反射的に壁面のガラスを蹴った。

まるでスタートダッシュのように、




一輪車が、壁から離れた。




一輪車が常識的な方向の重力に引かれ、自由落下を始めた


私が取るべきだった手段は二つ


舞の能力で、下まで降りてピアスを回収

ただし落下の衝撃でピアスがダメになる可能性が高い

いや、この高さというにもおこがましい高さだ

間違いなくわたしのキーアイテムはダメになる


もう一つは空中にいるうちにありすから箱をかすめとる

そして、

凛「舞!!合図をしたら私がアンタを思いっきり壁に押し付ける!!そしたらもう一回能力で壁に張り付いて!!」


舞(ボット)「え!?ええ?!?ええ!?!?」


私と舞と晴はほとんど壁スレスレを落ちている、

一固まりになった私たち(+一輪車)はありすより重くなった分、ありすより速く落ちる

たしか落下する物体には最終到達速度なるものがあるらしいけど、今は難しいことは考えない


晴(ボット)「なんでオレら掴んだまま落ちるんだよ凛姉ええええええ!!?!?」


三人で弾丸のように加速していく、ありすの小さい体じゃ空気抵抗もあってそんなに加速はしない、


どっちみち十分死ねる高さだけど、だけど高いからこそ追いつく余地がある


凛「ありす!!」



もう届かない所へ落ちていくと思っていたありすにみるみるうちに近づいていく



脱力したように頭から落ちていくありすのその手には私がもらったプレゼント



「何度言ったらわかるんですか」



そして、丸い紙


ヨレヨレの今にも破れそうなそれは、


赤黄青で塗り分けられた綺麗な色で、



「私を呼ぶときは」



ぽしゅ


丸い紙が膨らんだ、


小さな球になっている


どうやら球体を潰したから丸い紙だったらしい


見覚えがある


ああいう色鮮やかな球、


たしか、鞠だ



色鮮やかで、かなり古風な遊び道具


卯月から聞いたことがある


誰かが鞠を撮影に使っていたんだ


そう、着物姿がよくにあう、天真爛漫なキュートアイ__



「橘って呼んでくださいと言っ___」




桃井あずき(ボット)「じゃんじゃじゃーん!!トライアドプリムス分断大作戦だよっ!!」




鞠が、アイドルに変身した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~


あずき(ボット)「ん?予定とだいぶ違うみたいだねっ!」


桃井あずきの能力は、鞠の形を模したアイテムに変身できること


小日向美穂の、ぬいぐるみの中に入り込み、ボットとして操作する能力と根幹は同じである


ただ難点といえばあずきは鞠に変身している間自力では動けず、


体重や耐久力も鞠と同じになるので非常にダメージを受けやすいのだ


だからこそこの瞬間


誰もが攻撃の手段も移動の手段も持たない場でこそ、あずきは自由に振る舞える


凛「___あ、あずき・・・?」


あずき「あれ?なんでもう落ちてるのかなっ?」



あずきは全員が落下中であるという状況を把握できていない


作戦(あずき曰く大作戦)におけるあずきの行動は一つ



”凛を引き付ける餌に使ったアイテムを持って逃げる”

”場合によってはビルから飛び降りてでも”



鞠に変身できるあずきは例え24階から落ちようとも鞠と同じ重さしかない上、

空気抵抗も加味すれば落下することで受けるダメージは少なく済むのだ


あずき(ボット)「あっ!、これが凛ちゃんのキーアイテムだね?」

凛「!!?」


地上は近い

風の音が全員の耳を突き抜ける


今の彼女はスカスカの鞠と同じ重量しかないのだ、落ちる速度も遅い


もう凛の手も指も届かない距離が開いてしまった



凛「(___そん、な_____)」




晴(ボット)「おい舞!!早く能力使えええええええええええええ!!!」

舞(ボット)「お、落ちるの!早すぎて・・・!!!」




現在地上2階



四人が地面に叩きつけられるまで残り約0.001秒




ありす(ボット)「(マキノさん、飛鳥さん・・・ありがとうございました)」


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
結城晴(ボット)







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
福山舞(ボット)







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
橘ありす(ボット)







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~
チャプター
緒方智絵里


緒方智絵里「あ、」



智絵里「......り、凛、ちゃん...?」



智絵里「.........ど、どうしよう...ぼ、ボットの人たちと、一緒に巻き込んじゃった...」



智絵里「この能力、一度、使っちゃうと...わたしじゃ.......どうしようもないのに......」



ゲーム開始39分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ERROR!



仮想現実空間運営用自律ボット

CHIHIROより池袋晶葉へ


以下、一点のエラーが観測されました。早急な対処をお願いします


1、プレイヤー「渋谷凛」およびボット「橘ありす」「結城晴」「福山舞」からの信号がロストしました



仮想空間稼働39分経過


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










智絵里「...まだまだ......がんばらないと......」


「...仕事を取ってきてくれた...プロデューサーが......悲しみます...そんなの...いや、です」


「......まゆちゃんも...がんばってるんだから......わたしも...もっともっと」


「だから......ごめんね?......凛ちゃん」










「朽ち果てて?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

緒方智絵里 佐久間まゆ

のチャプターが99.9%まで復元完了しました


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
【ERROR!】 

渋谷凛 

のチャプターが一部存在しません。早急に復旧作業を行ってください

1、諸星きらり
2、三好紗南
3、小日向美穂


次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS梅木音葉



画像、やさしいコメントありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小日向美穂




退屈してませんでした

といえば嘘になっちゃう

プロデューサーくんモード、えっと長いからくまさんモードでいいや、で私は散歩していた

この状態になってから、私はどちらかというと退屈だったかな?


見渡す限り知らない建物ばっかりで、初めて訪れた街に一人でお仕事に行った時のことを思い出しちゃいます。


あのときは緊張して周りにいる人に道も訊けなかったし、

みんなも私なんかには目もくれず一目散に行き交っていたから話しかけづらかった

なんだか自分以外の人は人間じゃなくてただ歩いているだけの別の生き物に見えてすごく怖かった。


ちひろさんは、そういうのを都会の無関心とか雑踏の空白とかいう単語で説明してたかな

その後、人の多い街を一人で出歩くとき気をつけなくちゃいけないポイントを色々教えてもらったんだ



今はあの時と真逆、誰もいなかった


くまさんモードでずっと歩いていたから移動距離自体はたいしたことないとは言え、これでも30分くらい歩いていたんだ

もしかしたら晶葉ちゃんの言ってたボット?はいないんじゃないかな、とか思ったけど私に似た子が出てきたのにそれはないよね。

じゃあ別のプレイヤーさんのとこに集中してるとか?


遠くに見える高層ビル、あの向こう側では今も現在進行形で激しい空中戦が繰り広げられていたり___!!

さすがに空中戦はないか、比奈さんから借りた漫画で人がビュンビュン空を飛んでたけど、ここがゲームだからって、いくらなんでもね・・・


回想、回顧はおしまい




まゆ「いま・・・このぬいぐるみ・・・しゃべりませんでしたかぁ?」





げ、現状と向き合わなきゃ・・・

うう・・・怖いよぅ・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まゆ「なるほど、わかりましたぁ。ごめんなさいねぇ美穂さん、お腹かっさばこうとして」

美穂「う、うん」

い、今のはスルーしていいのかな・・・?

ま、まぁ未遂だから・・・


まゆ「それにしても・・・変身能力ですかぁ、あずきちゃんもそんな能力でしたねぇ」


美穂「あずきちゃん?・・・あずきちゃんも来てるの?」


まゆ「ええ、はいボットとしてですけどね。小さな鞠のようなものに変身して狭い隙間から逃げられてしまいましたぁ・・・」


美穂「そ、そうなんだ、確かにあの電車の中では見なかったもんね・・・」


私はなぜかまだくまさんモードを解いていない

そのまま、まゆさんの膝の上に乗せられちゃってる

まゆさんは近くにあった室外機に腰掛けてて、

でもちゃんとハンカチみたいなのを敷いてから座るあたり流石だなぁ・・・私はよく公園のベンチや野原でも寝っ転がってお昼寝してたのに

まゆ「ええ、次会ったときは仕留めてみせますよぉ・・・?」

美穂「まゆちゃん、やる気十分なんだね」

まゆ「ええ、今のまゆは殺る気に満ちてますよぉ?」

ん?イントネーションがちがうような・・・訛り?



美穂「電車といえば、・・・私はまゆちゃんと幸子ちゃんの三人で乗り合わせたよね? 六人のうち三人まではわかるけど残りは誰なんだろ?」


たしか晶葉ちゃんはキュートは6人って言ってたよね?

クール、パッションも気になるけど、やっぱり同じジャンルの子のほうが気になるかな?


まゆ「ああ、キュートでしたらあとは智絵里さん、杏さん、そして美玲ちゃんでしたかねぇ」


まゆちゃんが私の耳を触りながら、あ、ちがうよ!?へ、変な意味じゃなくて!

くまさん状態の私の耳をもふもふしながら教えてくれた


美穂「へえ、そうなんだ・・・ってまゆちゃんどうして知ってるの?」


まゆ「つい十分ほど前に智絵里さんと会ったんです、」

「そのあと少しばかりの情報交換と、アイテムのやりとりをしたんですよ」

美穂「そっか・・・アイテムって例えば?」


まゆ「例えばこれですよ武器の類」

まゆさんが私の右耳から離した手に小振りなナイフを構える

今まで見ないようにしてたけどスカートのリボンの装飾にはびっしりと刃物が挟んである

しかもよく見ると何丁かピストルもリボンで巻きつけられていた

さっきから、まゆちゃんの膝に乗せられたお尻がチクチクするけど気にしないようにしてたのに・・・


まゆ「あとは、ごくわずかですけど回復アイテムに似たものもあるそうなんですよね、まゆは持ってませんけど」

美穂「そうなんだ、私も頑張らないとなぁ・・・」

まゆ「?・・・美穂ちゃんも頑張っているじゃないですかぁ」

まゆちゃんが私のくまさんをよしよししながら笑顔でそう言ってくれる、でも心当たりはない

美穂「え?・・・わ、私なんてまだまだだよ!?、今もやっとまゆちゃんに会えたとこだもん!」


まゆ「いいえぇ?美穂さん、こうやって早々と能力も手に入れて行動を開始してるじゃないですかぁ」

美穂「で、でも、これも偶然見つけたものだし・・・そういえばまゆちゃんはどんな能力なの?」



まゆ「・・・・・・それが、まゆ、まだ能力がないんです。あちこち回ってるんですけどねぇ」

美穂「そうなんだ、えっと、き、キーアイテム・・・?っていうのが見つからないってこと?」

まゆ「はい、そうなんです・・・やはり通常武器でまゆの非力をカバーするにも限界がありますから、何か能力が欲しいのに」

美穂「そうなんだ」

まゆちゃんの声がちょっとだけ沈んだ

だからこんなに包丁とか持ってるんだ・・・

それを聞いてから改めて見てみるとまゆちゃんの凶器まみれの服は弱い体を守る鎧に見えてくる





そうだよ・・・まゆちゃんは簡単に人を傷つけたりしない、いい子だもん



まゆ「キーアイテムらしきものを見つけたと思ったら、まゆのじゃなくて智絵里さんのでしたねぇ・・・」

美穂「智絵里ちゃん?」

まゆ「はい、さっき言っていたアイテムのやり取り、というのもまゆが智絵里ちゃんにそれをあげたことなんです」

美穂「じゃあ、智絵里ちゃんもその、能力?っていうのがあるんだ・・・」


智絵里ちゃんの能力、か・・・

あの子おとなしいから、空を飛んだり手から波動拳を出してる姿は想像つかないなぁ・・・



・・・・・・あれ?


美穂「えっと、じゃあなんでまゆちゃんは智絵里ちゃんとは離れちゃったの?」


一緒にいたほうが強い仲間もできていいことだと思うんだけどな・・・


まゆ「智絵里さんにもそれは頼まれたんですが・・・まゆにはまだ、コレといった決め手もないので、足を引っ張りかねませんし」

まゆ「それに智絵里さんの方もまだこの世界に慣れていないようで、怯えきっていましたからね。臆病なのはともかく、共倒れは避けたいですから」


美穂「・・・・・・?、えっと、い、色々考えてるんだね?」



まゆ「でも、ポテンシャルで言えば智絵里さんの方がまゆより上でしょうから、例えユニットを組んでもまゆはお荷物です」

美穂「そ、そんなことないよ!!まゆちゃん頑張ってるもん!」

まゆ「そうですか・・・うふふ、励ましてくれるんですか、優しいくまさんですねぇ」

美穂「わぷっ」

まゆちゃんにぎゅっとされた

なんだか、まゆちゃん嬉しそう。私もあったかくていい気持ちになる


まゆ「じゃあ、まゆはとりあえず町外れにでも向かってみようかと思います。あとついでに智絵里さんも探してみようかと」

美穂「じゃ、じゃあ、私もついてく!」

まゆ「いいですよ、こちらこそよろしくお願いします」

美穂「は、はい!よろしくお願いします!」








こうして硬く鋭い金属に身を包んだ少女と、

柔らかい綿と布の体を持つ少女は手を組んだ。



ユニット登録はまだ済ませてないが、いずれはするのだろう



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まゆ「そういえば、智絵里ちゃんにはまゆ、かなり厳しいこと言ってしまったんですよねぇ・・・」

美穂「そうなんだ・・・」

まゆ「あまりに臆病で、真剣に取り組む様子が見られなかったので、つい・・・。嫌われてなければいいんですけど」

美穂「だ、大丈夫!嫌われてても私も一緒に謝るから!」

美穂「で、でもまゆちゃんみたいな良い子が人にひどいこと言うとも思えないんだけど・・・どんなこと言ったの?」

まゆ「えっと・・・」








まゆ「まゆが知る限りで、プロデューサーさんがこの仕事を形にするためにどれだけの勤務時間と手間をかけたか、バーチャルに関して身につけざるを得なかった専門知識の量と、その勉強に割いた時間、その間においてプロデューサーさんが体調を崩した期間と回数」



まゆ「そういうことを全部、余すところなく教えてあげたあとに『あなたはこのプロデューサーさんの努力を裏切るつもりですか?』って言っちゃったんです・・・」


美穂「(ど、恫喝に近い・・・)」







まゆ「(でも別にまゆは嫌われてもいいんです、この企画がちゃんとしたモノになりさえすれば)」




まゆ「(智絵里さん?まゆを嫌ってもいいから・・・・・・ベストは尽くしてください)」




まゆ「(事故とは言え、まゆもあなたの能力は経験しています、だからわかります)」






__あなたがその気になれば、勝てる相手はいません__





ゲーム開始27分経過

佐久間まゆ ボット撃破数3体に到達

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



数時間後に続き投下します


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈

ゲーム開始20分時点



周子(ボット)「いやー、やっと出番かー、待ちくたびれたよほんと」


周子(ボット)「あ、もちろんあたしがいるのにいつ気づくのかって意味ね」




ダンボールがそこかしこに転がっている部屋で三人の人間が対峙している


プレイヤー、大和亜季に小関麗奈

ボット、塩見周子


麗奈と亜季は動けない、いきなりの展開に動けない


二人で誰もいない部屋に入り、物色と調査を開始した。

いつの間にか二人のはずが三人になっていた、その三人目は亜季だった。

二人に増えた亜季はしかし、ユニット登録の画面が出せなかった偽物を暴かれた

そして塩見周子がそこにいた。



この小さな部屋に隠れていたのか


既に店のシャッターを開ける時から近くにいたのか


それとも商店街で二人がユニットを組んだ直後にはもういたのか


実はユニットが組まれたことも知っていて、それですぐそばで自分たちを見ていたのか


もしかしたらこのゲームが始まった段階で二人を影から見張っていたのか





いつから居たのか、どこまで行動を共にしていたのかが全くわからない




まるっきり化かされた気分だ。



麗奈「このアタシにイタズラしようなんていい度胸じゃない!!」


亜季「麗奈、落ち着いて・・・これは悪戯などではなく既に戦闘です」



周子(ボット)「んー、そんなピリピリしなくてもいーのに」


二人から向けられる、敵意というよりは警戒の色が濃い視線を躱すように周子が部屋の中をゆるっと移動する

足元には大小様々な箱が転がっているのに足を引っ掛ける気配はない、積まれた箱も崩れたりぐらついたりすることもない

まるで誰も通ってなどいないかのように、しかし周子は部屋の中をのんびりさまよう


窓からの光以外照明のない薄暗い部屋の中、周子の胸元のバッジから出る赤い光が人魂のように尾を引いた。


亜季「麗奈、その銃は私が、あなたはこちらを」

麗奈「う、うん・・・」


視線は外さずに武器の交換が行われ、亜季の手元にゴツいショットガン、麗奈の手に比較的扱いやすいハンドガンが渡る

そしてそれを敵に向けて構えた


周子(ボット)「もー、いくらボットとプレイヤーが敵同士だからってカリカリしすぎじゃない?」

亜季「先程のご自身が行った奇襲を顧みてもそう言えますか?」

周子(ボット)「奇襲って・・・、言葉がぶっそーだよ」

麗奈「はん!このレイナサマに変なことした自分を後悔なさい!!」

周子(ボット)「へー、ふーん、まぁ確かに麗奈ちゃん大混乱だったもんねー? いいもの見れたなー」

麗奈「んなっ!?」


周子はボットとしてオリジナルの性格の大部分がトレースされ、

そこにプレイヤーを倒す、という闘争意志のようなものが加えられている。

その影響でオリジナルと違ってその発言には悪意めいたものが混じりがちになっていた

一応他のボットにはオリジナルとそう変わらない内面の持ち主もいるにはいる、


周子(ボット)「うーん・・・麗奈ちゃんかわいーからつい意地悪したくなっちゃうね」


だが、周子はその悪意すら武器に使うことに決めていた



麗奈「だ、だれが・・・かわいいよっ!!」

亜季「れ、麗奈!?」


パアァン!!


部屋の中ゆえに銃声が壁中に反響して音の出処を迷わせる


麗奈「・・・あ」


渡されたはいいものの銃の扱いを知らない素人の麗奈はその小さな指を引き金にかけたまま持っていた

それをそのまま周子に向けていた、そして周子がそれを気にする素振りも見せなかった。

亜季は麗奈に目をやる隙を周子に見せるまいとしていた。


だから麗奈の誤射を予測できた者はいない



周子(ボット)「あらま、えっと・・・ナイスショット?」



胸に穴を開けられた周子も含めて



周子(ボット)「いや・・・言っとくけどあたし、ちょっとした・・・偵察のつもりだったんだけど・・・」



半袖シャツにホットパンツ、ラフな格好をした周子の胸元、赤いバッジの斜め下に同じくらい赤い色のシミができている、

心臓にヒット、とはいかずとも人間なら確実に重要な臓器を傷つけている位置だ

その証拠に、周子の声もしぼんで弱々しくなっていく


ゲームの中では銃器の類は持ちやすいよう軽く設定されている、それに反動も現実のものより小さめだ

だから麗奈でも構えさえしっかりしていれば止まった的には当てられる。

今回は誤射だった上に周子がゆっくり動いていたが、それでも大ダメージだろう


周子(ボット)「これ、ちょっとマズいんだけど・・・」


周子が体に空いた穴の縁を恐る恐るなぞる


麗奈「やば・・・撃っちゃった・・・やっちゃってよかったのコレ!?」

亜季「結果オーライです、麗奈。しかしあなたは銃の扱いをよく知る必要がありますな、今のは危なすぎます」


麗奈「う、・・・わかってるわよ・・・もう絶対失敗なんてしないわ!!」









周子(ボット)「ほんとに?」





体に穴を開けたまま発されたにもかかわらずはっきりとした声が部屋に響く




周子(ボット)「麗奈ちゃんに、教えてあげよっか?」



周子(ボット)「あたし相手に失敗すると、どーなるか」




変化は一瞬


麗奈「な、なにあれ・・・」

亜季「し、尻尾にしか見えませんが・・・防弾性の繊維でしょうか・・・」



ぽふっ


まるでダムによってせき止められていた水がダムに空いた小さな隙間から一気に吹き出すように

周子の背後から白い尻尾が出現した。


本数は三本、そのどれもがふさふさとした毛並みを誇るようにパタパタと動いている、狐の尻尾のような形だ

暗い部屋の中でも毛の一本一本までもがつややかに輝いているように見えた


周子(ボット)「いやーいきなり撃ってくるなんて驚かされたね、ま、これでおあいこかな」



周子の体を覆い尽くさんばかりに大きく広がった毛先が、周子の体をなぞったと思ったときには麗奈が付けた傷は消えていた。

血の染みたような跡どころか服に空いた穴までない



麗奈「んな、なんなのよコイツ!」

亜季「・・・ボットとはなんでもありなのですか」



目の前の異変に驚きばかりが先行する

だが、二人の頭の中の冷静な部分ははっきりとわかっていた



いつ、どこで現れたかすらも不明瞭な、
霧のような相手に生半可な攻撃が当たるはずがない


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~

周子(ボット)「あのさ、」


周子(ボット)「一応このあたしに当たったのは本当なんだけど、あんなふうに体に穴があいて、血が出たりすると思う?」


周子(ボット)「晶葉ちゃんがそんな、ホントに子供のトラウマになりそうなリアルなゲームにすると思ったの?」


周子(ボット)「いや、仮にそうなってたとしてもアイドル第一のPさんが止めるよね?」



理解が追いついていないように見える二人を前に周子が諭すように喋りかける


周子から生えた尻尾はまるでそこだけ別の生き物のように各々が周子の肌を撫で回すようにパタパタとふられていた


亜季「だったら・・・さっきのあなたの様子はなんだったでありますか!!」


周子(ボット)「ん?なんだと思う?あててみて」


尻尾の動きは相変わらずに、周子は亜季と麗奈を意地悪っぽく見つめる


いつの間にか亜季に変身し

狐のような尻尾を生やし

重傷が跡形もなく消える

共通点があるようには見えない

亜季「・・・・・・・・・」

麗奈「・・・・・・・・・」

二人は答えない、ただ構えた銃を向けるだけだ

だが今となってはそれが意味がある行為なのか自信がない


周子(ボット)「......はい、シンキングタイムしゅーりょー」


周子(ボット)「そんな難しく考えることないのに...何が起きたか分からなかった?」


周子(ボット)「うーん、まだこの世界に慣れてないみたいだね、こんなに何でもありなのに・・・」


周子の黒目がちな瞳が細められる。

笑っているようにも狐の顔を真似ているようにも見えた





周子(ボット)「もう言っちゃうとね」






周子(ボット)2「さっきまでのは、ぜーんぶ夢と幻」






周子(ボット)3「ここは仮想の現実、なんでもありの幻想の幻実」



周子(ボット)4「だったら『仮想の中で仮想を作る』能力だってあると思わない?」



一際大きくしっぽが振られたあと、

そこには新たに三人の塩見周子がいた。



麗奈「っはあ!?」

亜季「ボットが、四体・・・!?」



周子(ボット)4「だからそんなんじゃないって、ただの幻だよ」


周子(ボット)3「あたしたちの中の三人はただの嘘っぱち」


周子(ボット)2「ホントのあたしはどれだろうね、当ててみてよ」


周子(ボット)「・・・どう? 麗奈ちゃん」






  これでも絶対失敗しないって言える?









ゲーム開始21分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


大体十分くらい経った


爆弾みたいな衝撃を肩に喰らい

緑の氷柱みたいなナイフで襲われ

黄色いイガ栗のトゲを浴びせられ

水色と赤色の薄い板を叩きつけられてから

・・・
・・


_____________

 神谷奈緒  75/100


_____________

_____________

 梅木音葉+ 97/100


_____________


もう正直よくわからん

音葉さんの音を使った攻撃、

それはその場で発生する音を武器に変えてるみたいだ

だから次に何が来るか読めない、いや、自分の立てた音なのにと言われても・・・


例えばあたしが無理な動きで音葉さんの攻撃を避けたとき、

次の瞬間、靴裏と地面が擦れる音(スキール音だったっけ?)をダーツの矢みたいにして投げてくるし

こっちから反撃してやろうと素手で殴りかかろうと駆け出したときは、

その走り出すために地面を強く踏み込んだ音をカナヅチみたいにして殴りつけてきた


挙げ句の果てに、だったらあたしが動かなければ音葉さんも武器が作れないんじゃね?

と思ってその場に仁王立ちして待ち構えたところ音葉さんはいきなり口笛を吹き始めた。

口笛で余裕をアピールしてあたしをを挑発してんのかと思ったら、この口笛が楽器の演奏かよってくらいすげえ上手だった

で、もう予想は付いたかもしれねえけど、その口笛の音も武器にしやがった。

見た目はガラスで出来たレイピア、

あたしの音でできた武器より数倍綺麗だった


奈緒「なんっ・・・なん、だよ!?・・・わっけわかんねぇ・・・!」


ぜえぜえと肩で息をしながら音葉さんを見る


音葉(ボット)「疲労、弱音、少しばかりの諦念の色......やはりまだ完全には諦めてくれないのですね」


見ると音葉さんの手からは鞭みたいな紐が出てきていた。

色は灰色で、なんていうか鮮やかさのない、くすんでくたびれた色だ。たしかに疲労を表してるっぽい色だ



ヒュンッ



音葉さんがその場から動かず、腕だけを横に振った

灰色の鞭がそれにならってこっちに唸りを聞かせながら迫ってくる


あたしはもうろくに動けないので辛うじて腕を上げてそれを防いだ、

だが腕にはビリビリと衝撃が伝わる、そりゃ腕だって体の一部だし


逃げようにもここは山の中の道路で一本道、ガードレールの向こうは小さいけど崖があって、

逃げ道としてはできれば選びたくない


ただ、この能力による攻撃、一つ一つのダメージは実は大したことない



奈緒「はぁー、はぁー、・・・悪いけどなぁ、音葉さん・・・手数だけでチマチマこられても・・・はぁー・・・」


音葉(ボット)「..........?...」


あ、むり疲れすぎて声も出ねえ、スタミナはそんなに減った感覚はないけど疲れはそれと関係ないのかもしれない




奈緒「それに・・・音葉さん、攻撃が・・・どんどん・・・弱く、なってきてるぜ・・・?」


音葉(ボット)「.........そのようですね...あなたの音が弱くなってきていますから...」


奈緒「・・・あたしのスタミナを削り切るのと・・・音葉さんの攻撃が、な、何の意味もないような弱いものになるのと・・・どっちが早ぇかな・・・」


これが未だにあたしが勝負を投げない理由。

この得体の知れない回避不能の攻撃は無限に続くわけじゃない。

音葉さんはちょくちょく自分の音を武器にしていたが、連発はできないらしい

それに一度使った武器は次々に消えていっちまうみたいだ。


だからこれは我慢比べだ。


ゲーム内の世界だからか、あたしの体は今のところ目に見える傷はない。骨折やカスリ傷もない、ただしびれてるだけだ


だから心が折れなきゃ問題ない。思い返せば音葉さんもなんかそこは褒めてくれてた。


そうだ音葉さんとのバトル展開になってからどれくらい経ったんだ?


あたしは・・・そうだよ、加蓮!加蓮を呼び止めようとして邪魔されたんだった!


しかしなんであのタイミングで。

音葉さんが「足止めが役目」みたいなことを言ってた時から思ってたが、やっぱり、ボットたちは手を組んでるのか・・・?


奈緒「なぁ・・・音葉さん、あんたらには仲間とかがいるのか・・・?」

答えが返ってくるとは思ってないが質問してみる


音葉(ボット)「(...疑問、ではなくほぼ確信している...だから音に震えがない...隠しても意味はなさそう...ですね)」


音葉(ボット)「(...むしろ、現状を教えることで諦めさせることができれば、彼女を倒すことさえ可能になるかもしれません...)」





音葉(ボット)「...戦力外の、いえ...《戦力外たちの宴》でしたか...」

奈緒「・・・?」


音葉(ボット)「私たち、一部のボットが与している組織の名前です」


奈緒「・・・!やっぱりか・・・!」


音葉(ボット)「主に直接戦闘にむかない能力を持つボットたちを、何人かのチームにすることで一個戦力として確立させようとしている組織で、設立メンバーも同じく戦闘力のないボットでした」


音葉さんはさらりと説明してのけたけどあたしは思ったよりも不利な状況に思考が停止しかけた

まじかよ、まだこのゲームが始まってから一時間と経ってないだろ、なんでそんなに敵の足並みが揃ってるんだよ!?


音葉(ボット)「もちろん一人でも戦える人はいますが、私たちの真骨頂は戦闘よりも作戦行動ですから」


奈緒「作戦・・・?」


音葉さんの口からやたらと不穏な言葉ばかり出てくる


音葉(ボット)「トライアドプリムスを結成させないこと、などですかね」


奈緒「・・・・・・は?」


音葉(ボット)「この広く虚ろな世界に生きるボットはひどく不安定です。どのような戦力がどんな戦況を生み出すかわかりません。」

音葉(ボット)「だからこそ貴方たち三人にユニットを組ませるわけにはいかない、最優先で対処すべき相手なのです。」

奈緒「ユニットって・・・ここゲームの中なのに・・・」

音葉(ボット)「だとしても、現実での強力な人間関係が仮想では無意味...ということにはなりません...」




音葉(ボット)「今も...ほかのメンバーには...私たちの仲間が、向かっています」


奈緒「ってことは、凛や加蓮にも音葉さんみたいなのが・・・?」


音葉(ボット)「............」

奈緒「...?」

音葉さんはちらりと視線だけを横に、どこか遠くを見るように動かした


音葉さんの視線の先には、やはりどこかで鳴っている音が見えているのだろうか




音葉(ボット)「...凛さんはもう少し時間が掛かるかもしれませんが」

「...加蓮さんはそろそろ.......倒されるでしょうね」



奈緒「!!?」


音葉(ボット)「...音に気づきませんでしたか?...彼女にも私に少し遅れて戦闘員が向かっていたのですよ...?」





その言葉を聞いて私は吹っ切れた。

もしかしたら音葉さんはあたしを絶望させようとしていたのかもしれないがあたしは逆に奮い立った



ガードレールを踏み越える


別に崖といっても火サスみてぇな切り立った崖じゃねえ、しっかりコンクリートで舗装された壁の、精々20メートル程の崖だ

足から落ちれば大丈夫、のはず

それにさんざん学んだじゃねえか、

この世界に骨折はねぇ、

痛みの代わりにめちゃくちゃ痺れるだろうが、

走ることさえできれば加蓮のところに行ける!!!


と、考えたのが落ちてる最中のことで、あたしは飛び越えた時は何も考えてなかった

助けに行こうとか、仲間のピンチに駆けつけてやる、とかそんなご大層な思考もなかった


というか20メートルでも人は余裕で死ねるだろ・・・





でも脊髄反射であたしはスタートダッシュを踏み切った



奈緒「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~



あたしは一応、最後の知恵として空中から真っ直ぐ落ちるんじゃなくて、

崖の若干斜めの壁を転がり落ちることで落下ダメージを減らそうとしていた、

たぶん即死級のダメージではなくなるはず、たぶん!


音葉さんからしたら、あたしはさぞ滑稽だろう、ギャグアニメみたいに崖を転がりながら落ちてるんだから




ガツッ



回転する視界の中



『ガツッ』





そんなふうに
  
  あたしは壁のどこかに

引っかかり、


   壁からはじかれ
壁から離れて


自由落下   を



このままじゃ


地面にまっすぐ落ち



あ、ミスったかも


ごめん加___

~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~


暗黒


暗黒


暗黒


暗黒


音葉(ボット)「...やはり...あなたは最後まで諦めませんでしたか...」





奈緒「・・・・・・・・・あれ?」


あたしは落ちてなかった


それどころか空中に浮いている


音葉さんの声が間近で聞こえた

その方向を見る









奈緒「・・・・・・・・・天使?」


丁度お姫様でも抱えるみたいにあたしを空中で支えていた



背中から翼を生やして



一瞬、天使かと思ったがその翼はべつに神話とか絵画に出てくるあの天使のものには似ても似つかなかった


まず赤い


それに生えているというより、まるで音葉さんの背中から二方向に吹き出しているかのように流動している


それにまるで赤一色の巨大な花火みたいで


それを背景にしている音葉さんもどこか神々しかった



え、こんなすごいのも出せたのかよ・・・

弱くなってねえじゃん


音葉(ボット)「...聞こえますか? 音が燃えるような色......強い行動の意志...どこまでも進むという力強さを持つ音」



「...拓海さんのバイクの音です...」



ブオオオオオオオオオオオオオオン・・・




あたしの耳にかすかに遠くから響くバイクの排気音が聞こえた。


なるほど、この音を使ったのか、


でもなんで音葉さんはあたしを助けたんだ?




奈緒「音葉さ・・・な、なんで・・・あたし・・・」



崖を転がり落ちて背中も腹も腕もしびれてるし、助かったと思ったせいで落ち着いて声が出せない



音葉さんはじっとこっちを見ている、あたしはその腕の中のままだ



バイクの排気音に別の音が混じった気がした



音葉さんはまだあたしの質問に答えない

酉ェ


でもようやく、口を開いた


音葉(ボット)「...この音を...待っていました...」



パキン


多分効果音がつくならこんな感じ


あたしの目の前、丁度お姫様抱っこ状態のあたしの腹の上に小さな石が浮いていた


キラキラとオレンジ色に光っている小ぶりだがダイヤモンドみたいだ


これも音葉さんの能力で出てきた音なのか?あたしのよりもひょっとすると音葉さんのよりも綺麗かもしれない




奈緒「・・・これ、なんの音なんだ?」



音葉さんはその綺麗なオレンジの石をじっくり眺めるとあたしを見た


音葉(ボット)「......純粋で濁りの無い音...迷いなき意志のみが奏でる音色...」






音葉(ボット)「......これは加蓮さんのもの...」


加蓮・・・?







音葉(ボット)「加蓮さんの殺意です」








次の瞬間、

オレンジ色のダイヤは

銃弾のように

あたしめがけて_____



_____________

 神谷奈緒   3/100


_____________

_____________

 梅木音葉+ 97/100


_____________


ゲーム開始35分

神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>>531 でトリがばれちゃったから今のうちにトリを変えた方がいいよ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ついにやっちまった


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

【ERROR!】 

渋谷凛 

のチャプターが一部存在しません。早急に復旧作業を行ってください

1、白坂小梅
2、佐久間まゆ
3、堀裕子

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜


《棟方愛海の個人的アイドルサバイバルin仮想現実》

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)

6、棟方愛海(ボット)&白菊ほたる(ボット)&望月聖(ボット)&高森藍子(ボット)


画像コメントありがとうございました

02


愛用のトリが使えなくなったけど元気です

>>532 >>536
ご指摘ありがとうございました

投下します



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
白坂小梅




マキノ(ボット)「...度し難いわね」


遊佐こずえ(ボット)「...ふわぁ...」



八神マキノは現在二つの問題を抱えていた


時系列的にはゲーム開始から27分


場所は屋敷、ほんの数分前まで小梅たちが物資を調達していたところだ


ちなみに彼女は生身である

仮想現実において生身という言葉も使い方がおかしいので正しく説明すると、このマキノは本体だった。

彼女いわく幽体離脱、意識だけを遥か遠くに跳躍させる能力

跳躍した意識は便宜上、仮初のボットの姿を持ち第三者からも一応視認はできる。


だが飛鳥曰く、”蜃気楼” ありす曰く”出来の悪いホログラム”


その程度のクオリティしかないボットなので、マキノはこの能力を偵察と交渉にしか使わないと割り切っていた


交渉、彼女たちの組織を組み立てるに当たっての構成員の勧誘である、ありすがピックアップした場所にいるボットの元へ即座に跳び、話をつける


そのマキノが仮初のボットではなく本体のボット、戦闘力もなくプレイヤーに出くわせば敗北必至の状態でここにいる



まずその目的はボット、遊佐こずえの勧誘に成功したため、身動きの取れない仮初の体ではなく本体自ら迎えにいくことだった

何人かはこちらが指定したポイントまで自力で来てくれたのが、それが出来ない年少のボットは誰かが直接出向く必要があったのだ


こずえ(ボット)「...マキノ...こんどは......ほんもの...なのー?」

マキノ「ええそうよ、さっきまで貴方のところにいたのは私の...ダミー、みたいなものね。貴方と一刻も早く話がしたかったから送ったのよ」

こずえ(ボット)「...こずえと...おはなし...するー?」

マキノ(ボット)「一度、私たちが拠点にしている支部に着いたら、になるわね」


さて、とマキノは視線を足元に向ける


今頃は凛のもとに向かっているであろうありすの能力で見つけた気になるボットの反応は二つ

一つは頼りなくふらふら歩き回っていた遊佐こずえ

もう一つは逆にいつまでたっても動こうとしない反応だった

マキノはそのもう一つを見極めるためにこずえを迎えにいった足でここに来ていた




小梅(ボット)「      」



こずえ(ボット)「...こうめ...ねてるのー?」

マキノ(ボット)「...もし本当にそうなら、辻褄は合うんでしょうけどね」



スタミナがゼロになりとっくに消滅しているはずのボット、白坂小梅

それがまるで埋葬されるのを待つかのように静かに横たわっていた

一つの明確な異常である。


マキノ(ボット)「プレイヤーのほうの小梅さんの能力かしら...いやそれにしては意味がわからない、分析できそうなところも見当たらないわ...」


こずえ(ボット)「......?」


マキノ(ボット)「......まあいいでしょう、こずえさん?改めて私たちと来てくれないかしら」


正直マキノとしてはこの事態は非常に気持ち悪い、解決しておきたいものなのだが

だからといって非力な自分がぼんやりとしたこずえをいつまでもこんな所に立ち止まらせておくわけにはいかない


こずえ(ボット)「......うんー...」


こずえはマキノの手を握る、マキノはそれを握り返した


まず屋敷から出て拠点を目指そう、



拠点には今は飛鳥がいたはずだ、というか彼女はあそこからほとんど動いていない


あずきは今確か、ありすが連れ出してしまっていたはずだ

あの六人も事務所の方を守っているし

ほかの面子もトライアドプリムスの分断に動いていた



ついさっきまではありすとマキノと飛鳥の三人、

その少し前は拓海と音葉の二人もいた、

そのちょっと前は晴と舞の二人組み

さらに前は事務所の防衛部隊の六人


でもその前は八神マキノ一人しかいなかった



マキノ(ボット)「仲間集め...論理的な判断から私が始めたことだったけれど...ずいぶん賑やかになったものね」




マキノ(ボット)「いえ、物思いにふけっている場合ではないわね、行くわよこずえさん」



消えない死体に並ぶもう一つの問題にして謎、遊佐こずえ



”完全になんの能力も持たないボット”である彼女の手を引き、マキノは屋敷をあとにした



消えるはずの死体が在り

存在するはずの能力が無い


ないはずのものがあり、あるはずのものがない


マキノが対処すべき問題は想像以上に大きい


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後に続き投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

事務所前道路


小梅「と、ところで、なんで...じ、事務所だったん、だろう...ね?」


輝子「フヒ?」

幸子「どういう意味です小梅さん?事務所じゃ何かだめなんですか?」


小梅「えっと...ほ、ホラーゲームとか...だと、重要なあ、アイテム、があるのは...もっと、大きくて、ぶ、不気味な館、だから...」


輝子「でも、キノコあった...私にはとっても重要...あ、でもわ、私だけか...フヒ...」


幸子「いえいえ輝子さん、貴方のアイテムはボクらにとっても行動の目安として大きなヒントになりましたからね!そのキノコはボクらにとっても重要でしたよ!!」


輝子「さ、さっちゃん...ありがとう......って、このキノコが言ってる」


幸子「!?」



三人は事務所へ続く斜面を下っているところだった。

いくら車が無いとはいえ車道を渡るのは憚られ歩道を使っている


幸子「しかし何故、事務所があるのか、ですか、やはりボクらから見て一目で特別な場所とわかるので、目印にしやすいと晶葉さんが判断したのでしょう」


小梅「や、やっぱり、そうなの、かな...目印って...なん、の、だろ?」


幸子「まぁこの世界のことですから輝子さんのようにレアなキーアイテムとか、そんなとこでしょうね」


輝子「フヒヒ、み、みんなで、い、一緒に...能力使えると、う、うれしい...」


小梅「も、もし...他の、人たちの分も..あ、.アイテムが、あったら...もっていって、あげよう?」


幸子「ふふーん!すばらしいアイデアですね!皆さんがカワイイボクらに泣いて感謝するさまが目に浮かぶようです!!」


彼女たちは知らない

人がその身の奥に持つ悪意を

この場合厳密な定義では人間ではないかもしれないが、



有り余る量の財宝を前にしたときに人がとる反応は二つ



自分の裁量に応じて所持するか

あるいは一つ残らず独占するか


小梅の提案は前者、


そして晶葉がプログラムした敵意という概念

それは闘争への意思と悪意を生み、

ボット達が持つ悪意は後者を選択していた




カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



最初にそれを見つけたのは輝子だった


他の二人より少しだけ猫背だったからこそ、その奇妙な置物が目に入ったのだ


輝子「......フヒ?」


歩道の脇、排水溝、もし雨が降ったなら水が流れ込んでいたであろう細長いスペース


現実ならごみが詰まっていたり、そもそもかなり汚い場所なのだが仮想の中ではお飾りらしく、きれいなものだった


しかし、その「きれい」はあくまで「清潔な」という意味であって、


輝子「な、なに...これ......ほ、星?の...お、置物?」


星が瞬くような「綺麗」ではない


輝子が覗き込んだ排水溝の蓋同士の隙間


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



DVDディスクほどの大きさで、黄色くて星型の”何か”


それが排水溝を埋め尽くすように大量に隠されていた



携帯電話のバイブレーションのように振動しながら、周りのものを引っ掻いて



輝子「!!......さ、さっちゃん!うめちゃん!」


輝子は明らかな異常を察して近くの二人に呼びかけた



その声の”振動”を感知して《ミツボシ効果》が発動してしまうとは知らずに


カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカンッ!!!




あるものは他の星を押しのけ、あるものは排水溝の蓋を弾き飛ばし


癇癪球が破裂するようにいくつもの星型が炸裂した


この場合の「星」とはデフォルメされた星マークのように五つのトゲを持ったもので、


この場合では攻撃的でしかない形だった



輝子「ひあ!?」


その大部分がその星を覗き込むように見ていた輝子を直撃する

この世界がゲームであり、製作者が池袋晶葉である以上、過剰なダメージエフェクト、例えば流血や肉体損壊は起きない

だが「刺さる」などの現象自体は、リアルに再現されていた


小梅「...え...」

幸子「輝子さん!?」


突然の悲鳴とそれをかき消す破裂音に二人が振り向く


二人が見たのは星輝子の背中、


それがこちら向きに倒れてきた、


顔が見える、驚いたままの顔だ


次に見たのは星の形をした何か、


輝子の
首に肩に鎖骨に胸に二の腕に肘に肋骨に鳩尾に腹に腕に手に脛に膝に


びっしりと突き刺さった星型の何か、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《ミツボシ効果》の能力によって生み出される星型のオブジェクト


この一つ一つの星にはスピーカーとマイクに似た機能がついている


一つでも星が振動を感知すれば、その振動がほかの星にもワイヤレスで伝播していく仕組みだ



この能力のタチが悪いところは、

星たちがスピーカーさながらに伝える度に振動を際限なく大きくしていくことだ



二つを離れた所に置いておけば、まるでワイヤレスの糸電話のように一方の地点で発生した物音を知ることができるセンサーになる




だが一箇所に密集させておいて置かれると最悪だ、


密着した星と星と星が互いの振動を無限ループ式に増幅してしまう




そしてこの星は、振動がある境界を越えた瞬間、爆ぜる

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


小梅「しょ、しょーちゃ...」


幸子「輝子さん!!」


不意打ち気味に殴り上げられたように

輝子の軽い体は打ち上げられ、背中から落下した

そしてその時輝子が受けた衝撃も

輝子の体中を行き渡った振動として星達は感知する

仰向けに倒れ伏した輝子を起点に、刺さっていた星が射出される

もちろん星が抜けたあとの輝子の体に刺された痕などは無い

問題はそこから飛び散った星たちの行方である

四方八方に四散した星は輝子に駆け寄った二人にも襲いかかった


幸子「うわわっ!??」

小梅「ひっ...!」

まるで黄色い手裏剣のように、振動によるエネルギーを回転に変えながら流星が迫る

だが輝子と違いワンクッション挟んだおかげか、振動は弱まり、星が体に突き刺さることはなかった

一つは咄嗟に顔を覆った小梅の長い袖を巻きこみ、

一つは幸子の額にクリーンヒットした

幸子「あいたっ!」

小梅「あう...」

《ミツボシ効果》の爆発的攻撃力は密集してこそ意味がある、

一度飛び散ればその威力は次第に弱まっていく、だから大きなダメージにはなってないだろう

大打撃を喰らった輝子もなんとか気絶することもなく背中をさすりながら上半身を起こした


輝子「...ひ、ひどい目にあった...」

全身に痺れが走っている、それも体の内側を直接侵すような痺れだ

小梅「しょ、しょーちゃん!」

運良くほぼダメージのなかった小梅が輝子にしがみつく

小梅「だ、だだ大丈夫?い、痛く、ない...!?」

輝子「お、おおう...たぶん...だいじょう、ぶ、フヒヒヒ...」

本気で自分を心配してくれている小梅の背中をさするだけの余裕をみせ、

輝子はできるだけいつもどおりの笑みを浮かべた

幸子「ふん!ボクのカワイイ顔を狙うどころか輝子さんたちまで危険にさらすなんて!これは許せません!!」

幸子も完全に不意を打たれ他にもかかわらずいつもの調子を取り戻していた

頬を膨らませ、わかりやすく怒りを表している


輝子「...も、問題ない、よ...さっちゃん、そんなに痛く、ない」

小梅「...ほ、ほんと?...だいじょう、ぶ?」

幸子「輝子さんに大事ないならそれでいいですが、なんですか!このイヤガラセは!カワイイボクへの妬みですか!」

あたりを見渡す、これを仕掛けた輩がいるはずだ、だがそれらしき人影は周囲には見当たらない


幸子「ふふん、こんなちまっこい罠でボクらを嵌めたつもりですかね!こんなの全然聞いてませんよーだ!」





??「そうでやがりますか」


声が聞こえた

輝子「!」

小梅「?」

幸子「む!?」


ズンッ


そして力強く地面をけるような音が三人の耳に届く


??「ふっふっふ、罠にはしっかりはまってるでごぜーますよ、幸子おねーさん」


ズンッ!


??「未央おねーさんののーりょくは、だめーじをあたえることには不向きでやがりますが、」


ズンッ!!


??「おかげで、近づく隙が出来たでごぜーますよ!!」


ズズンンンンッ!!!!!


地を揺るがす足音が振動を呼び、また地面に転がった星が震え始めたが、それどころではない


輝子「なにか...くる?」

小梅「え...」

幸子「こ、今度はなんですか!」


足音の聞こえてくる方向、三人が見つめる先には道路沿いのビルのうちの一件、

隣の建物より少し背が高い、その影に隠れる位置から音が地面を伝わって響いてくる


ズズンンン・・・


足音が止まる

「それ」はたった今三人の姿を認め、三人もまた「それ」を見上げた





見上げるような巨体、そしてある意味見飽きた巨体





この時代なら博物館に行かなくとも教育番組のチャンネルを回せば見られるその姿




かつての地球で猛威を振るったウロコの暴君





名前なんて9歳児でも知っている








仁奈(ボット)「ティラノサウルスのきもちに、なぁるでぇすよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」









雄叫びをあげるそれは、もはや着ぐるみではなかった


ゲーム開始44分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次は日付が変わる頃に


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
三好紗南

ゲームをプレイしていると、数時間があっという間に過ぎていく

退屈な時間ほど過ぎるのは長いと言うけど、じゃあゲーマーは退屈知らずの人種なんだろうか


べきっ


ぽいっ



ビシッ



紗南「・・・・・・・・・」



ターーーーン・・・


あたしがむしり取った筐体のパーツが見えない何かにはじかれるように部屋の隅に飛んでいった


そのあと遅れて狙撃音が届いた

ライフルとかの弾は音速を超えるから、近くだとわからないけど遠く離れると弾の衝突と耳に狙撃音が届くまでにラグが生じる

そんなことをたしか亜季さんが言ってたっけ

で、そのあとそのラグの長さとライフル弾の種類を見極めれば相手のいる距離がわかる?とかなんとか


理屈はわかる、あたしも中学生だし、理科で音が届く時間と距離がどうたらこうたら・・・


紗南「・・・やだ、また現実逃避してた。やばい、やばいよあたし」

べきっ


ぽいっ



ビシッ



紗南「・・・・・・・・・」



ターーーーン・・・

退屈はゲーマーを燻り殺す


本来ならここは遠く離れた狙撃手について対策を練るとかするべきなんだけど

どうしようもない、あたしの能力が教えてくれたのが相手は名狙撃手春菜さんってことだけ、


その狙撃の腕は今、あたしの目の前で起きたことが証明してる


あたしの手のひらに収まるようなちっこい筐体の部品を空中で打ち抜くレベル


多分ちょっとでも頭を覗かせたらそこから撃ち抜かれていく

べきっ


ぽいっ



ビシッ



紗南「・・・・・・・・・」



ターーーーン・・・

あたしはもう動けない、でも動きたい

ゲームもせずじっとしているのが苦痛で仕方ない、


さっきからの緊張とかストレスが薄れてきてる。

なんであんなにビクビクしてたんだろうって思えてきた

それより退屈がやばい、頭の底をグラグラ火にかけられているような気になってくる


筐体のライフル弾が当たって削れた部分に指を入れる、力を込めるとパキッとちいさい破片が取れた

放り投げる、


ビシッ!


ターーーーン・・・



もういっそのこと


筐体の影から出てみようかな、思いっきり走れば弾も当たらないかも

いや走りだしたと見せかけて逆方向に逃げるとか、あ、いけるんじゃない?





紗南「わかってる、わかってる・・・多分あたし、怖がりすぎて頭おかしくなってる・・・」


いけるわけないじゃん、何考えてんだあたし

両手でググッと頭を抑える、フロアの冷たい床に付け続けてたお尻が痛い

テスト前日にむりやり教科書の中身を詰め込んだ後みたいに頭がぼんやりする


なにか変化が欲しい、

今が何分経ったのかもわからない、10分?20分?それよりもっと?


紗南「・・・・・・・・・・」


離れたところに転がったゲーム機はあたしが触れない限り変化しない



ああ、春菜さん、弾切れ起こしたりしてないかなぁ・・・

どっちにせよここからじゃわからないんだけど


紗南「・・・・・・・・・・・・」


紗南「・・・・・・・・こんなの」


紗南「こんなのクソゲー過ぎるよ!!!」


スナイパー1体に足止めされてそのあと延々ジリ貧で時間が経つの待ってるだけじゃん!!


敵兵が攻め込んでくるとか!!味方から救援物資が来るとか!!


援護爆撃とか!!救急キットとか!!ゲームならそういうイベント起こるべきでしょ!!


両手で床面をバンバン叩く

あたしもゲーマーの一人、台バンとかはしない、代わりに床に手のひらをガンガン叩きつける



緊張、ストレス、退屈、恐怖、そんなのが混ざっておかしくなって、変なスイッチが入ってるのは自覚してる


でもこのままじゃ精神が焦げ付いちゃうような、

だんだん何も考えられなくなっていくような

何も覚えてられなくなるような、

時間とともに何かを落としていくような、

漠然とした予感が湧いてきていた


それがあたしをグラグラ揺さぶる



力いっぱい叩いているのに床からはペチペチと情けない音しか響かない


紗南「あーーー!!もーーー!!!」


たまらずバリケードにしてもたれかかっていた小さい筐体に後頭部で頭突きをする


あんまり痛くな__


ガタ、バタン!!


背後で倒壊音がした、

周りが明るくなった、

背中に当たっていた硬い筐体の感覚が離れた


・・・は?


まってよ、


今の頭突きで・・・?


今の頭突きなんかで筐体が倒れたの!?


こんなちっこいあたしの頭突きで!?


あたしは床に座り込んだまま後ろを振り向く、
筐体がこんなに軽いなんてそんな




あたしが背もたれにしていた筐体は穴だらけだった。



ライフルの弾痕じゃない


筐体の外装ははがされ、基盤がむき出しだし、

ボタンやスティックも全部引っこ抜かれてる

画面に至ってはひび割れどころか画面を覆うガラスすらない


いつの間にこんなに壊されてたの・・・


そこであたしは気づく、

あたしの足元にびっしりとゴミが落ちていることに

ゴミじゃないあたしがひび割れたとこから少しずつむしり取った小さな破片だ







でもどう考えてもゲーム筐体が傾いて倒れるくらいまでむしった覚えがない


紗南「・・・これやばい」


あたしは一体どれくらい前からここにいる?


紗南「・・・・・・あたし自分が何してたか覚えてない」


ゲーマーのあたしはいつの間にゲーム筐体を壊し始めた?


変化は訪れた


あたしの最後の砦の崩壊によって


穴だらけの窓ガラスからは明るい日差しが__


紗南「って!!?ここ無防」


あたしは反射的その場から飛び退いた


ゲーム機の方向に飛んでいく



紗南「いったぁあ!?」


あたし自身が放り投げていた破片がヘッドスライディングの要領で突っ込んだあたしの胴体にやたら刺さる



ゲーム機を手に取り振り向く、


あたしがいるのはゲームコーナーを抜けた、フロアから出るエレベーター行きの通路にかかった部分


いくらこのビルが全面ガラスだからとはいえ、ここは安全領域のはず、外からは完全な死角だし


紗南「へへ、まさかバリケードをぶっ倒して気を引くとは思わなかったでしょ・・・」


多分普通に駆け出してたらやられてた


これはラッキーだったのかな、さてこのビルから逃げ出そう

春菜さんがこのビルに踏み込んでくるかもしれないし



さっき撃たれた左腕の痺れもいつの間にか消えていた



紗南「さ!なんだかうまくいったし逃げよっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ついさっきまで軽い錯乱状態だったことも忘れて紗南は元気に行動を再開する


ゲーム機を抱え直し、地面にうつ伏せに倒れていた姿勢を起こす、


あとはエレベータに乗り込めば、


だが紗南はそのまま駆け出そうとして転んだ


右足がふらついたのだ


紗南「いたた、緊張とかで膝が笑ってるや・・・」


と、もう一度起き上がろうとして理解する


紗南「あたしの、右足」


痺れて動かない、膝ではなく足全体が


この痺れは知っている、さっきも体験した


紗南「・・・撃たれた?」


ビリビリとしびれている、このゲームにはプレイヤーに弾痕や切り傷はつかない


だから気づかなかった、さっきの瞬間、足を打たれたことに


自分が動けないように楔を打たれたことに


紗南「やばい、なんかやばい!!」


紗南は左足だけで立とうとして、それも失敗すると床を這うように移動を始めた

イモムシのような動きにためらいはない、


上条春菜はあの状況でも弾を当ててきた


そこまでの能力による技術、このまま自分を逃がすはずがない


そう時間をおかずこのビルに入ってくるだろう


~~~~~~~~~~~~~~~

仮想空間内町外れの一戸建て



棟方愛海(ボット)「揉ませてください」


白菊ほたる(ボット)「え、えええぇ...?」





>>577のあと


紗南はさっきまで狙撃手に怯え筐体の影に閉じ込められていた


片足の動かない紗南は、今度はこのビルそのものに閉じ込められかけている


細くて非力な両腕で床面を押し、懸命に自身を運ぼうとしている

その動きは見ていて退屈なほどに遅い、


もしこのフロアに誰かが来たら逃げきれない






___________

 三好紗南+ 65/100 
 

_____________



ゲーム開始25分経過

三好紗南VS上条春菜(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~


愛海(ボット)「本当におねがい!この世界無駄に広いから全然出会いがなかったんだよ!」

「やっとあえたんだから!お願いほたるちゃん!!このとおり!あたしを幸せにして!」


ほたる(ボット)「え、あの...幸せとか、そ、そういうのは、...私、疫病神だから...」


愛海(ボット)「そんなことないよ大丈夫!なんだったらあたしのテクでほたるちゃんも幸せにしたげるから!」


ほたる(ボット)「そういうのは...その、えっと...あぅ、恥ずかしいこと言わないでください...」


愛海は、仮想空間なら胸をもんでも捕まることはないと張り切っていた

それでまずこの街全体を一周しようとして町外れに出たところ、人気のないところに見えにくいように建てられていた家を見つけていた


ほたる(ボット)「ところで、どうして私なんかを...?」


愛海(ボット)「だって・・・」


ほたる(ボット)「?」


愛海はちらりと周りを見渡す


壁紙が剥がれたり、棚が倒れたりしているなど荒れ放題の室内、


窓ガラスにもヒビが入っっているものや、そもそもガラスがはまっていない窓もある、


人気のない仮想空間内では悪い意味で生活感がある


まるで強盗が入り込んだ跡のような風景だ


壁際、綿の飛び出したソファの上では金髪の小柄な少女が寝息を立てている


望月聖(ボット)「......すぅー,,,」


愛海(ボット)「ほたるちゃんたち、ずっとこんなとこいるんでしょ?
だからほたるちゃんに、あたしからなんか出来ることないかなぁって、考えたら、もう揉むしかないかなって」


ほたる(ボット)「あの、...そういうの結構です...から、私はこれでいいんです...」

隣の部屋から物音がする、戸棚に食器でも入れているのか、カチャカチャと小さく陶器がぶつかる音が聞こえる


そしてそこから愛海やほたるより少し年上の、どこかふんわりとした雰囲気の少女が顔を出した


高森藍子(ボット)「ふぅ、やっと見つかりました!」


愛海(ボット)「あ、藍子さん何探してたの?ティーカップ?」


藍子の手には紅茶などを飲む時に使うようなカップが2つほどと、それを乗せる用の小皿が一枚だけ抱えられていた


藍子(ボット)「うん、これ?...この家の中からなんとか使い物になりそうなものを探してたんです」


藍子(ボット)「ほら、ここ...すごく散らかってて、いろんなものがダメになってるから...」


そう言って困ったようにはにかむ藍子の手の中のカップもよく見るとフチが欠けていたり、ヒビが入っている

愛海(ボット)「...........」


おそらくかなり妥協して、妥協に妥協を重ねてやっと使えると判断したのだろう


仮想空間でありながらあまりに理不尽、

どうしてここだけこれほど内装が荒んでいるのか



愛海(ボット)「やっぱりわかんないよ...なんでみんなこんなとこいるのさ...?」

ほたる(ボット)「?...す、すみません...」


聖(ボット)「ん...むにゅ...?」


藍子(ボット)「................」




愛海(ボット)「このだだっ広い世界でなんでわざわざ廃墟みたいなボロ小屋を選んだの?」


ほたる(ボット)「えっと、その...私がいると、みなさんにご迷惑が...」


愛海(ボット)「それ、さっき聞いた!」


都会的な町並みと違って完全に廃墟然とした外観の建物に踏み入ってみると、なんと三人ものボットがその廃墟を住処にしていたこと

愛海は最初、それを不思議に思って訳を訊いてみたのだ


藍子(ボット)「あのね?愛海ちゃん・・・?だからさっきも言ったと思うんだけど・・・」



愛海(ボット)「それも聞いた!」

「『閉じ込められてる』って何なの!?ほたるちゃんも聖ちゃんも藍子さんも何も悪いことしてないじゃん!!」


そういうわけだった

詳しいことは頑なに教えてくれないが、三人はこの建物に閉じ込められていると口をそろえて言うのだ


同じボット、仲間でありながら自分たちより雑に扱われている事実が愛海は腑に落ちないのだ

事実この家は妙な力が働いていて、来客だった愛海は出入りが可能なのだが、ほたる達には扉が開かないらしい


聖(ボット)「...くぅくぅ...」

藍子(ボット)「うーん、私もよくは知らないんですよ、気づいたらここから出られなくて」

ほたる(ボット)「えっと、すみません...私も」


しかし三人はそのことになんの感想もないらしいのだ、

オリジナルの性格のせいだろうか、この現状に諦めをつけていた

その理由も愛海にはわからない


愛海(ボット)「あーーもーー!!わかった!」


ほたる(ボット)「!?」

愛海(ボット)「あたしが三人をここから出してあげる!!その方法を見つけてきたらおっぱいもましてね!!たっぷり一時間!!」


聖(ボット)「...え」

藍子(ボット)「え?」

ほたる(ボット)「ぇ...」


全く意味がわからない

なぜ三人がこんな場所を受け入れられるのか

そもそもこの場所がなんなのか

自分がどうしてこの三人を助けたいのかもわからない


とりあえず、まったくもって何一つ理解可能な要素のないままに愛海の個人的な戦いは始まった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紗南が初戦から大変なことに


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、双葉杏
2、堀裕子
3、佐久間まゆ

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜

書き込み中寝落ちしてすいませんでした

棟方愛海(14)
http://i.imgur.com/0fshOXh.jpg
http://i.imgur.com/gbtbASp.jpg

白菊ほたる(13)
http://i.imgur.com/IZxMMFC.jpg
http://i.imgur.com/nCp6eMR.jpg

望月聖(13)
http://i.imgur.com/ZN0op9A.jpg
http://i.imgur.com/lq0UG71.jpg

高森藍子(16)
http://i.imgur.com/2t2Gs5n.jpg
http://i.imgur.com/FGXvrhp.jpg



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
双葉杏



愛海(ボット)「ねぇねぇ、杏さん!これどう思う!?」


・・・杏と杏のパチモンが惰眠を貪ってたら

やけに神妙な表情をした愛海が来たんだけど

寝そべったベンチから見上げたその体にはボット(だったっけ?)であることをあらわすバッジが付いてる


あれ、これ敵じゃね?


でもなんか愛海はこれといった攻撃行為を行ってこない、そもそもゲームとか言われても杏にはまだピンと来てない


杏(ボット)「あれ、愛海じゃんどうしたのさ、杏のオリジナルを倒すなら今だよー」


杏「そのオリジナルを売るとは何事かー!、杏はここでのんびりするんだもんね」


それにいわゆるチュートリアルとやらで杏のところにやってきた敵っぽいのともこれといった争いは起きてない

寝っ転がっているからか杏の口からは、緊張感の欠片もない声しか出ない



愛海(ボット)「いやーその杏さんのぐうたらさを見込んで相談に乗って欲しいんだけどさ」



杏「飴の量しだいでは相談に乗ってやらないこともないよー」



愛海(ボット)「飴かぁ・・・、あ!・・・ちょっと待って!」


そう言って愛海はポケットをあさると中からキャンディをだした、仮想空間なのに嗜好品まであるなんて晶葉頑張ったんだなぁ



愛海(ボット)「なんか拾ったんだけど、回復アイテムらしいから大事に食べてね!」


杏(ボット)「あーいいなぁ、愛海、杏も一個ちょーだい」


愛海(ボット)「ごめん。もうこれ一個しかない」


愛海がくれたのは随分派手な色のキャンディで、確かイベントが迫ってる忙しい時期にプロデューサーがこれと同じのを食べてたのを見たことがある



杏「んー、うまうま」


ゲーム内でもこんなふうに飴を味わえるとは、ますます現実に帰るのがめんどくさいね!


杏「さて、じゃあ愛海、おっぱい絡み以外で相談に乗ろうじゃないか」


一応の誠意として杏は話を聞くために体を起こした、背中はベンチにべったりもたれてるけど



愛海(ボット)「えっとさ、あたしの仲間、もちろんボットなんだけど、廃墟みたいなとこに閉じ籠ってて、どうしたらいいと思う?」


杏(ボット)「なにそれ、杏以外にも怠けてるボットがいたの?」




愛海(ボット)「いや、そういうんじゃなくて、本人たちは閉じ込められてるって言って、しかもそれを受け入れてるんだよ」



杏「・・・なに、監禁?」



杏(ボット)「この世界に何かを閉じ込める場所なんてあったっけ?」



愛海(ボット)「うん、変な廃墟なんだ。あたしは入ったり出たりできるんだけどその子達は出入りできなかったんだ」

杏「・・・なんか物騒な話だね、」


愛海はベンチの上で杏が体を起こして出来たスペースに座った


杏(ボット)「というか、なんで閉じ込められてるのさ」

愛海(ボット)「うーん、それは教えてくれなかった」


杏「閉じ込められたってのはいつから?」

愛海(ボット)「詳しくは教えてくれなかったな、ゲーム開始して直ぐだったらしいけど」


杏(ボット)「というかなんでこのゲームのために作られてこのゲーム内で閉じ込められたの?」



杏「たしかにおかしいよね、あ、この飴なんか溶けるの早い...愛海、おかわり」

愛海(ボット)「・・・もうないんだって、杏さん」

杏(ボット)「というか貴重な回復アイテム浪費しちゃったよ、杏のモデル」




杏「別に問題ないでしょ一個くらい、別に誰もスタミナで困ってる人なんていないでしょ」

杏(ボット)「まぁ杏たちもこんだけのんびりしてるし、他の誰かがドンパチしてるとも思えないね」




愛海(ボット)「いや杏さんたち、雑談もいいけど相談のってよ!」


愛海が不満そうに言うけど、杏はものの相談相手には向かないことぐらい承知していて欲しいなそこは


愛海(ボット)「杏さんも結構ひきこもりがちだし、その現実をゆるく受け止めてる感じがするし、もっとこう、思い当たる節とかないの?」

愛海(ボット)「飴一つ分でいいからあたしに知恵を貸して!ついでに胸も貸して!」


杏「知恵ねぇ・・・・・・あと胸は貸さない」




なんというか、杏としてはこんな未知の世界に連れてこられただけでもお腹いっぱいなのにそんなよくわかんない話されてもな・・・





杏「あと、愛海・・・ひとつだけ異議ありだよ・・・」





愛海(ボット)「異議?」

杏(ボット)「・・・一つでいいのか」



杏は態勢こそだらけたままだけど表情だけはキリッとしたつもりで愛海に宣言した





杏「杏は引きこもっているのではない!これは・・・印税生活へ向けた、

充電期間だよ!!」



どやぁ



愛海(ボット)「じゅ、充電期間?」

杏「そう、そのとおり、杏は来るべき日のために英気を養っているのさ・・・!」





愛海(ボット)「・・・充電、充電かぁ・・・」



杏(ボット)「どしたの愛海?」



愛海(ボット)「充電・・・」



愛海はその場で杏の言葉をぼそぼそと繰り返すと突然立ち上がった



愛海(ボット)「杏さん!あたしなんかとっ掛かりみたいなの掴めたかも!」



杏「おー、よく分からないけどやったねー、じゃあもういっかい寝よっと」

杏は愛海が立ち上がったことで再び出来たスペースに頭を横にした


愛海(ボット)「じゃあ、あたしは行かなきゃ!またね!杏さんたち!」



杏「また飴見つけたら持ってきてねー」

杏(ボット)「うーん、愛海も戦わないのか・・・杏今のところ仕事してるボットを見てないような気がする」


愛海はそのままこっちに手を振って何処かへ駆け出して行った


うーん、なんだったんだろ



ゲーム開始30分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










周子(ボット)「んー、・・・・・・・やだ♪」











廃屋のひと部屋に拒絶の声が小さく鳴った






ほたる(ボット)「で、でも...それだと周子さんも...」


藍子(ボット)「そうですよ・・・場合によっては周子さんだけの被害では済まないんですよ!?」






荒み放題の家の荒れ果てた部屋の中、形だけをなんとか保ったテーブルを三人の少女が囲んでいる


ほたると藍子が並んで周子と向かい合って議論をしている形だ。

その議論はどうやら双方の納得いくものとは程遠そうだが、




だが、心配と不安、若干の憤りを含んだ四つの瞳を向けられてなお周子は余裕を崩さない




テーブル同様脆い椅子の背もたれに容赦なく体重をかけて足を組み、リラックスした姿勢のままだ



周子(ボット)「というか、逆に聞きたいんだけどさ、ほたるちゃんたちの方はそれでいーの?」


ほたる(ボット)「それは、そうですよ...私たちじゃ...晶葉さんにご迷惑が...」


周子(ボット)「いや、聞いてなかったの?晶葉ちゃんはさ、この世界に起きる不確定要素の調査が目的だって言ってたじゃん、何を遠慮してるのさ」


藍子(ボット)「それにしたって、限度がありますし...」


一向に埒の明かない論を重ねている状態に、

周子を椅子ごと包むようにうねっている尻尾がやや毛羽立っていた

その本数は三本


周子(ボット)「限度っていわれてもねぇ...」

周子はテーブルの上に置かれたティーカップを取る、

それを口元まで持っていったところで、ふと気が変わったように手を止める


周子(ボット)「どっちかというとあたしは紅茶より緑茶派かな」


そう言って尻尾を毛先だけ振る、

すると手品のようにティーカップが湯呑に変わり、

中の液体の色も濁った緑色に変化した



藍子(ボット)「見れば見るほど、すごい能力ですね...」

周子(ボット)「んなわけ無いでしょ、こんなのただの嘘っぱちなんだから」

自身の能力の賞賛を軽くいなし、改めて湯呑に口をつけ中身をすする



周子(ボット)「......やっぱり味は紅茶のままかー」

あくまでマイペースを保つ周子にほたるは最後の確認として声をかける

ほたる(ボット)「やっぱり、行って......しまうんですか?」

周子(ボット)「うん、ほたるちゃん達と違ってあたしはこの家から出られるし、つまりCHIHIROがあたし程度の能力じゃ、大したことないと判断したってことでしょ」

藍子(ボット)「でも、それでも周子さんの能力は制限されたままなんでしょう?」

二人共不安げな表情だ。本気で周子を心配しているのだろう


周子(ボット)「いくら制限付きだからって、あたしはそれが取れるまでなんて待ってられないし」

周子(ボット)「なんていうんだろ、オリジナルから引き継いだあたしの性格に、敵意?....みたいなのが染みこんでるのね、まあ多分ボットとして戦うように追加された感情なんだろうけど」


ほたる(ボット)「.......?」

藍子(ボット)「たしかにボットの中には戦闘に向かない性格のボットに一時的な闘争心を足してあるそうですが」

周子の尻尾がふっさふっさと大きく揺れている


周子(ボット)「そーゆーこと、あたしにはあって、藍子ちゃんたちにはない、その段階でもう話なんてできないよ」

周子(ボット)「ひたすら能力を使いたくて堪らないあたしと、なるたけ最小限の能力の使用でコトを済ませたいそっちとじゃね」


周子は湯呑を机に置く、するとそれは瞬きする間にティーカップに戻っていた

周子(ボット)「じゃ、あたしは行くから、聖ちゃんが起きたらよろしく言っといてよ」

テーブルの横、ほたると藍子の横を通り過ぎていくとき、

故意にやったのか、尻尾が二人の頬をくすぐった


ほたる(ボット)「せめて...能力が完全になるまでは...やられたり...しないで、くださいね?」

藍子(ボット)「そうですよ...!もし周子さんに何かあったら、ここであなたを止められなかったのを後悔してしまいますし、ほたるちゃんが悲しみます」


丁度、扉を開けた周子の背中に二人がつぶやいた周子は気軽に返事する


周子(ボット)「大丈夫だって、......あたしはあやかし狐だよ?」


扉が閉まる直前もう一度部屋の中に目を向ける。

ほたると藍子、そして目を覚ましたらしい寝起きの聖と目があった










周子(ボット)「そっちこそ『夜』が来るまでにやられないようにね?」




そしてこのあと周子は麗奈たちと出会う


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈



周子(ボット)4「じゃん!マシンガーン!」


周子(ボット)3「じゃあ、あたしハンドガンでいいや」


周子(ボット)2「ええー?...銃って使うの難しくない?...あたしはシンプルに刀にしーとこ」


周子(ボット)「んー、あたしはどうしよっかなー」






四つの声と四つの武器が蠢く

四人の周子たちが思案めいた言葉を漏らすたびに何もない空間に当たり前のように銃刀が顕現していた



周子(ボット)「ん?亜季さんと麗奈ちゃんはもう武器決まってるんだし、来るなら来ていいんだよ?」




麗奈「アンタ...何よその能力...武器まで出せるとか反則じゃない!?」


亜季「いえ落ち着いて、麗奈、あれも周子の幻覚能力に違いありません」





周子(ボット)「ん、そうだね、武器も偽物だよ」









周子(ボット)2「一つを除いてね」








バン!


二人の周子が引き金を引いた、銃器を手にしていた二人だ


麗奈「ひゃっ!?」

麗奈のそばにあったダンボール箱がビックリ箱の中身のように上に跳ね上がった


だが二人に被害はない

亜季「っと!・・・仮想内の仮想などと嘯いたところで射撃能力はたいしたことないでありますな!」



それに今の発砲音でハンドガンの方が本物であることがわかった


少なくともマシンガンの連射音ではない



亜季「麗奈!私の後方へ!!」


麗奈「! わかったわ!」


亜季はショットガンの射程外へ麗奈が移動したかしないかの瞬間、引き金を引いた


狙いはハンドガンを持つ一人、本物の一人


人体をえぐり飛ばす威力が、その一人の周子を中心に水平に降り注いだ





周子(ボット)3「えぷっ」




散弾は他の周子の腕や肩などにも命中する





周子(ボット)「いたっ!」


だが本命、ハンドガンを構えた周子が後ろの壁まで吹き飛ぶ、

その姿にはさっきのような嘘の「流血メイク」はない、

撃たれて血を流さないほうが手応えがあるというのもあべこべだが、とにかくハンドガンを持った周子は完全に息絶えた








周子(ボット)4「なんてね」




倒れたはずの周子が煙のように消える










周子(ボット)5「あたしがハンドガンを持っていたとしてもさー」





そして新たに周子が現れた



周子(ボット)2「それはそのしゅーこが持ってるように”見えた”だけだよ」


周子(ボット)「ほんとはハンドガンを持ってたのは、このあたしだったかもよ?」


周子(ボット)4「いやそれどころかハンドガンじゃなくて玩具のエアガンだったのかもよ?」


周子(ボット)5「あっちゃあ、じゃあ亜季さん、無駄撃ちだったかもねぇ?」




四人の周子がころころ笑う、



尻尾がその間をゆらゆらと嘲るように左右に揺れた






周子(ボット)「じゃ、つぎの攻撃いってみようか?...まず、あたしと」



周子(ボット)2「次に、あたしと」



周子(ボット)4「そんでもって、あたしと」



周子(ボット)5「おまけに、あたし」




周子(ボット)「全員がハンドガンだったら、どうやって見抜くのかな?」




四つの同じ顔

四つの同じ姿

四つの同じ尾

四つの同じ銃


一つの悪意




ゲーム開始23分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はちょっと短めの文章でした


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、諸星きらり
2、堀裕子
3、小日向美穂

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


画像コメントありがとうございました



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小日向美穂


      __   
__  __  __  __
  __      __



...?



まゆ「美穂さん、どうかしました?」

美穂「ん、なんでもない...」



頭の上の方からまゆさんの声が聞こえて、そっちに首を向ける

まゆちゃんと私は今、とりあえず二人で街の外側を目指している

もちろんどっちが外への道かなんてわからないけど、建物の高さが低い方、標高自体は低いけど山みたいなのが見える方向に歩いてる

なぜかまゆちゃんはくまさんモードこと、プロデューサーくん状態の私を胸に抱えたまま移動している

確かに私の今の体重はぬいぐるみと同じだけどその気になればぬいぐるみのまま動けるし、人間の体に戻ることもできるんだけど、

そうなった場合私を吸い込んでいたプロデューサーくんは私が持ち運ぶことになるけど



あまりにも当然の流れで抱きかかえられているので私からは何も言えない


まゆ「たまに、銃声が聞こえてきますねぇ・・・」


美穂「うん、模擬戦闘って、やっぱりピ、ピストルなんだね・・・うぅ、怖くなってきたよぉ・・・」


まゆ「そうですねぇ、智絵里さんを探しつつ、街を探索しつつ、ついでに何人か倒していきましょうか・・・」


美穂「ええぇっ!?」


まゆちゃんはたまに好戦的な発言をするから考えが読めない時がある

でも言葉は物騒だけど私を抱きしめる腕はあったかい

      __   
__  __  __  __
  __      __



ぬいぐるみの私の耳に銃声が聞こえた

今までのと違ってかなり近い

まゆちゃんも気づいたみたいで、ピタリと足を止めた


まゆ「今度は随分近くで銃声が聞こえましたねぇ・・・」


美穂「うん、ピストルの音以外にもなにか聞こえるね・・・なんだろうこの音」

まゆさんが警戒心を高めたのが私の体に回された腕越しに伝わる


というかまだ私くまさんモードなんだけど・・・戻ったほうがいいよね?


まゆ「?・・・それと美穂さん、今はまだぬいぐるみの方でいてくださいねぇ?」


美穂「ど、どうして?このままじゃ、わ、私邪魔にならない!?」


まゆ「いえ、この状態なら、二人でも同時に動けますし、逃げる時にうっかりはぐれる可能性も下がるでしょうから」


まゆちゃんはそう言って私を抱えたままビルの隙間に身を隠した

もちろん私はなされるがまま・・・ほ、ほんとに邪魔になってないのかな・・・?


      __   
__  __  __  __
  __      __


まゆ「ふむ、妙ですねぇ」

美穂「・・・まゆちゃん?どうしたの?」


息を殺して周りを伺いながらまゆちゃんが小さい声でつぶやく、完全に密着してるぬいぐるみの私じゃないと聞こえないくらいちっちゃい声だった



まゆ「誰かと誰かが戦っているにしては、静か過ぎません?」

美穂「うーん・・・私はよくわからないけど、確かにさっきの一発が聞こえてからは、銃声はしないね、他の変な音が聞こえてるけど・・・なんだろこれ?」

まゆ「変な・・・音?」


まゆちゃんが不思議そうに言う、表情は私の位置からは見えない

美穂「うん、なんて言ったらいいかわかんないけど・・・」

      __   
__  __  __  __
  __      __



美穂「あ、また聞こえたよ?」

まゆ「?・・・えっと、まゆにはわかりませんねぇ、どんな音なんですか?」

美穂「・・・ごめん、どう表現したらいいかわかんないけど、遠くから呼ばれてる感じがするんだ・・・」

まゆ「そうですか・・・ぬいぐるみ仲間からの交信ですか?」

美穂「えっ、あ、いや、どうなんだろ・・・」



うーんなんなんだろ




銃声の方はさっき一発聞こえたっきりで静かになったまま

でもなんとなくしか方向がわからないから、ここに隠れているのが正解なのかはわからない


まゆ「とにかく、移動しませんとねぇ、ここで隠れていても外にはいけませんし・・・」

美穂「でも、どの道を通ったら安全かわからないや・・・ど、どうしよう・・・?」


私たちがかろうじてわかるのは私たちの進行方向上のどこかの建物のあたりから聞こえてきたということだけ

ここは後ろに下がったほうがいいのかな・・・うぅ、地図がないとどう行けばいいのかわからないよう・・・


      __   
__  __  __  __
  __      __


まゆ「どうします?このまま路地裏に引いて裏道から迂回します?」


美穂「うーん、でもピストル相手だともし狭いところで出くわすと逃げられないし・・・」


      __   
__  __  __  __
  __      __


美穂「こっち・・・かな?」

まゆ「!・・・横道ですか、たしかに裏道よりは広いですねぇ・・・いいかもしれません」


私がくまさんの手で指差したのは(このぬいぐるみには指がないから、手で示した、かな?)今いる日陰の、狭い道から車道をはさんで向こう側に見える道、

広過ぎる道でも、ピストルで狙われると逃げられないのは一緒だし、車二台分くらいの幅なら、いざ!ってときでも大丈夫かなぁって思ったんだけど、

半分位は直感だった気もするけど


遠くからの銃声は聞こえない、行くなら今!・・・だよね

まゆ「じゃあ、目立たないようにいきますよ?」

まゆちゃんは私を抱えながら裏道を抜け、車道を小走りで横断していく

このまま行けば銃声の聞こえたどこかからは離れてるのかな、


ギィ


まゆ「!!」

美穂「わっ」

ちょうど進行方向上にあった建物の入口の扉が開いた、扉はこっちに開いていて、その影にいる人は見えない

ど、どど、どうしよう!!

回れ右して一旦となりの建物の中とかに避難したほうがいいのかな!?



??「・・・・・・・・・」



扉の影からその人がこっちに出てくる

まず足のつま先が見えて

前髪、

顔、

上半身




赤いバッジ




そしてその下、

胸元に抱えられていたのは






とっても長い形の銃___


      __   
__  __  __  __
  __      __


??(ボット)「!」


その子も一瞬で扉の死角から来ていた私とまゆちゃんに気づく、

でも、相手からはまゆちゃんがぬいぐるみを持って走ってきてるようにしか見えてないと思うけど


??「っ!」

ぐっ、とそのボットの腕に力がこもったのが何故か分かった


銃身の、多分ピストルの弾が飛び出す長い筒が、

空気を切り裂くように素早くこっちを向いて___













美穂「だめぇ!!」






まゆちゃんの腕を強く蹴って私はそのボットの銃の先っぽに飛びついた


ぬいぐるみの体から飛び出すみたいに人間に戻るとそのまま体をのしかからせて銃を抑えた

プロデューサーくんが抜け殻みたいに地面に落ちていく


??「へっ!?」


ぬいぐるみが飛び出してきて、それが人間になるとは思わなかったみたいで

しかもいきなり自分の手元に人間一人分の重みがかかったせいで銃の狙いはずっと下がって地面になった


美穂「ま、まゆちゃん!!い、今のうちに、逃げてぇ!!」

私の選んだ道のせいで敵に会っちゃったんだもん、!

私のせいだ!

だからここは私が何とかしてまゆちゃんだけでも・・・!


      __   
__  __  __  __
  __      __


      __   
__  __  __  __
  __      __

      __   
__  __  __  __
  __      __







まゆ「お手柄ですよぉ・・・美穂さん」






上条春菜(ボット)「・・・・・・こふっ」




美穂「え・・・?」




まゆちゃんは

私が銃を抑えた隙を付いて逃げるんじゃなくて

逆に春菜ちゃんに近づいて





_細身のナイフで


_顎の下から上に向かって深々と






ゲーム開始32分経過

上条春菜(ボット)消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス中

 ・ミニキノコ
  圏外

 ・ミニキノコ   
  圏外

______________________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


______________________





・・・・・・コントロールモード・・・・・・

         終了します


______________________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
______________________





 『サーチ』
 
→『コントロール』


______________________


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




紗南「・・・はぁっ、はぁっ・・・あぁもう!」


最初のメニュー画面に戻ったゲーム機を持ったまま床に転がる


床は冷たいし片足はまだ痺れてて立てない



紗南「・・・ボットの調査、そして干渉が、あたしのゲームの、そんでもってあたしの能力・・・」


でも、春菜さんがこのビルに上がってきたら間違いなく詰む


紗南「こ、コントロールっていう割には、・・・ここに引き寄せただけじゃんか・・・!」


手元にあるのはゲーム機のみ、

あたしは最初サーチモードで春菜さんが近づいてないかを見るつもりだった。

でも、そこでもうひとつあった『コントロール』のアイコンをヤケになって選んだんだ

うまいこと行かなければもう終わり、くらいの気持ちで


そのあとのことは無我夢中でボタンを連打したりしてたから覚えてないけど、


このコントロールモードっていうのは、どうやら条件付きでボットを遠隔操作できるみたい、


メニュー画面を見る限り、人間以外のボットに限定されてるけど


現実であたしがやってるゲームのキャラ操作とは全然違ったけどそれは今はいいや


問題は今頃この近くにいるプ、プロデューサーくん?とかいうボットがどうしてるかだ


あたしはサーチモードにした画面をジッと見つめる



プンッ
_________________

name: 小日向美穂

category: プレイヤー

skill: 
ボット「プロデューサーくん」に同化
及び操作可能、ただし耐久力は通常プ
レイヤーより大幅に低下する

_________________

プンッ
_________________

name: 佐久間まゆ

category: プレイヤー

skill: 
なし


_________________


あっちこっちに向けて、何度ゲーム機の角度を調整してもこの二人以外のデータは受信されなかった

つまり春菜さんはここから遠く離れたところに移動したか、

この二人に倒されたか・・・





紗南「・・・あたし、助かったの・・・?」





声に出すともうだめだ、

それを合図に一気に緊張がとけて体が脱力する

急速に安心感が湧いてきて、ほっとして

このまま眠ってしまいたくなる



でもここで安心し切るのはだめだ



紗南「もう、一人じゃ、やだよぉ・・・」



仲間が欲しい


ワンプレイヤーじゃ、あたしの心がもたない


多分、いや間違いなくあたしは美穂さんとまゆさんを自分の安全のために利用した


だからまずそれを一生懸命、あやまって


仲間にしてもらおう、あたしの能力なら損はさせない、と思うし


そろそろ足のしびれも頑張れば立つことぐらいはできるレベルに収まった


よたよたと立ち上がる、顔面から転びそうになって慌てて手をついた




今からボットに倒されるかもしれないと思った時よりも

このままじゃ孤独になると思った時の方が足に力が入り易かった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子



仁奈(ボット)「仁奈は今!!ティラノサウルスでやがります!足元でフラフラしてると、踏んづけて食っちまいやがりますよ!」



輝子「フヒィァア!!?」


小梅「あわわ...」


幸子「ふ、ふふん!だ、だれが爬虫類の相手なんてするものですか!!こ、ここ小梅さん!輝子さん!事務所に逃げ込みますよ!」


ゴツゴツとウロコばった肌質

小さいながらも睨まれると立ちすくみそうになる爬虫類特有の眼

ずらりと並んだ鋭い牙、野太い爪

すべてがその存在がティラノサウルスであることを証明していて



それと同時にティラノサウルスの胸のあたり、二本の前足の中間ぐらいから仁奈の顔が見えていることが

これが仁奈の着ぐるみであり、その能力であることを証明していた



幸子「っていうかそれホントに着ぐるみですか!!?明らかに体に合ってないでしょう!!」

小梅「はぁ...はぁ...きょ、恐竜の体に...仁奈ちゃんの顔が、はぁ...く、くっついただけにしか...見えない」

輝子「フヒ お、おなじ、フヒ...おなじく」




三人は恐竜から同じ方向、事務所に向かって逃げる。幸子以外は既に息切れを起こしていた


仁奈(ボット)「待ちやがるがいいです!!」


ズンズンと巨体を自慢するように足音を鳴らしながら三人の背後に迫る

普通ならとっくに追いついて追い越してもいい速度差なのだが、

仁奈は二、三歩進んでは止まり足元の三人にランダムに噛み付こうと首を突っ込んでいたので、

追いついては逃げられ、追いついては逃げられを繰り返していた


事務所までもう少し


小梅「はぁっ、はぁっ、あ、あそばれてる...気が、する...!」

輝子「ひ、ヒャアア!?アッブネェエエエエ!!」

幸子「なんなんですか!!なんなんですか!?・・・む!?」


三人のうち先頭を走る幸子がそれに気づいた。

道路脇、看板の影に隠されるようにして設置されていたあの忌々しい星型、


仁奈の起こした地響きのせいか振動を感知して震えているせいで隠し場所からはみ出していた



幸子「二人共!!ボクが仁奈さんを食い止めます!!全力で走ってください!」

幸子は足を止め振り返る、二人は幸子を追い越したところで戸惑ったように減速した



小梅「はぁ...えっ?」

輝子「くい、とめ...さっちゃん!?」


ズンッ!!!


仁奈(ボット)「がぁおぉおーー!」


幸子「いきますよ!!」


幸子はヘッドスライディングのように飛び込んだ場所から、

その星型を掴むと立ち上がる間も惜しんで仁奈に投げつけた



幸子の小さい両手で一度につかめたのは精々3つ4つ、



仁奈(ボット)「うお!?未央おねーさんの勝手に使いやがりましたね!いけねーんですよ!!」



仁奈の猛進は止まらない



地面を強く踏む足、地をえぐる爪


そのすぐ横に幸子の投げた星が転がっていく


カアン!!!


輝子の声とは比べ物にならない振動、大型恐竜の鳴らす地響き

それが《ミツボシ効果》を直撃した

仁奈の足元で炸裂する


仁奈(ボット)「んなっ!!なんでやがりますか!!」


いくつかはその太い足に辛うじて刺さったが大ダメージには至らなかった


だが、そこに気を取られ一瞬、仁奈の走りが乱れてしまう




ティラノサウルスの前足はひどく短い

しかしこの恐竜は二本の足で獲物に一気に追いすがる

力強く踏み出される足が生む決して遅くない速度、

それは胴体の長さに並ぶとも劣らない長さの尻尾というバランサーあってこそだ


だが、それでも、

捕食のために特化したその走り方は不安定だったことに変わりはない


仁奈も同様に



仁奈(ボット)「わあああ!?でやがります!?」



地面を叩き割らんばかりの轟音を立てて転倒した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
事務所


卯月(ボット)「あー!!仁奈ちゃんこけちゃった!!未央ちゃんどうしよう!?」

未央(ボット)「なんだとー!この私の能力を利用するとは生意気なー!」

翠(ボット)「...これは、やはり油断してはいけないと、厳しく伝えるべきでしたね...」



 ガリリ  ジー

 ガリリ  ジー

雪美(ボット)「...........」


窓の近くで外の様子から目を離さない三人を横目に雪見は自分の能力をいじっている

黒猫の形に似た電話、古風なダイヤル式のそれに細っこくて白い指を差し込んでは回し、ダイヤルが戻ればまた回す


小春(ボット)「あれ、雪美ちゃん、なにしてるんですか~?」


それに気づいた小春がソファの、雪美の隣に座ってその手元を覗き込む

だがダイヤルがマイペースにガリりと回されてはジーと巻き戻っているだけで何もわからない


雪美(ボット)「......私...能力......あぶないの...知るだけ......」

「戦いで......何も...できない...」


そう言って雪美は手元の電話をいじりつづける

小春(ボット)「でも、雪美ちゃんはちゃんとできてるですよぉ~?」

そんな雪美に、小春は励ますつもりで頭を撫でた

ヒョウくん「・・・・・・」

小春の腕に抱えられたイグアナはいつもどおり神妙な顔をしている


雪美(ボット)「...私...試してみる......この能力...」

「ほかに...何が......できるか」


雪美の能力《黒猫電話》は主になにがしかの出来事に対して受身だ。

それにあくまで知らせるだけのものであり、対処まではできない

雪美はその自分の現状を打破しようとしているのだ

まずは一歩目として自分の能力の象徴、電話に何らかのアクションを試みている


小春(ボット)「わぁ~、雪美ちゃんすごいですぅ~」

雪美(ボット)「でも.......何も...おきない」

受話器も耳にあてたまま静かに指を動かし続ける


ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

雪美(ボット)「.......おねがい...P...」


自分のオリジナルと魂が繋がっている、らしい人間の名前を呼ぶ


ガリリ ジー

ガリリ ジー




prrr...


雪美(ボット)「!!」

小春(ボット)「?」

ヒョウくん「・・・」



思いは実った

受信限定のはずの《黒猫電話》に何かが起きた

prrrrrrrrrrrrr


ガチャッ


雪美(ボット)「!......もしもし...」





受話器に意識を集中する


聞こえるのはノイズノイズノイズ


・・・””・!!!・・・」・!・__・



・・?・・・「・・・・・。・・・・・


ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ



誰かの声



聞き覚えがある声




雪美(ボット)「・・・・・・・・・・・・」




雪美(ボット)「・・・・・・・・・・・・」












雪美(ボット)「・・・・・・あきは?・・・・・・」



ブツッ


ツー

ツー




ゲーム開始45分経過

佐城雪美(ボット) 能力獲得





輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒョウくんは厳密にはボットよりもアイテムっぽいカテゴリなので、(ボット)は無しです


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、諸星きらり
2、堀裕子
3、北条加蓮

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子


さて、きらりさんは、無事杏ちゃんと会えたのでしょうか


私のサイキック棒倒しの示した道をたどるならきっと間違いなくたどり着けるでしょう。

しかし、その道中で敵に襲われてしまうこともありますからね!気をつけてもらわないと!


裕子「ふーむ、模擬戦闘というには戦闘の相手が見当たりませんね・・・はっ!?」

分かりました!

こういう時こそ、さいきっくの出番ですね!



私は道の真ん中で立ち止まりました

この道は車一台分の幅しかないので迷惑になるかもしれませんが、幸いここにはバスや電車の類はありません

ふむ、電車といえば、となりに居合わせた紗南ちゃんと輝子ちゃんは元気でしょうか


裕子「さて、やはりここは、さいきっくダウンジングといきたいところですが・・・」


あいにく今の私はスプーン一本のサイキッカーです、ふむむ・・・


やはりもう一度サイキック棒倒しを・・・ですがどうせならここは別のサイキックを試したいところですね。



裕子「ぬぬ~、さいきっく沈思黙考!」

集中力を高めるため目を瞑ります

左手にスプーンを握り、右手を頭に当てて念を送り込みます

いでよ天啓!さいきっく思いつき!



裕子「はっ!・・・・・・こっちです!」


分かりました!

私は目を見開くと同時にびしっと指を向けます

この方向こそ私のサイキックの差し示す正しき道!








・・・壁ですか



裕子「・・・・・・・・・ふふふ」


ふふふ、超能力に頼りすぎるな、というサイキックからのさいきっく説教ですね!



その壁にはこれといった隠し扉もなく、ごく普通のコンクリート、といったところでしょうか

ゲームなのでコンクリとか、そういう表現ではなさそうですが・・・

ですが、こうなった以上は仕方ありません!


この壁を超えていきましょう!私にはもうひとつの能力があるのですから!


裕子「む~ん・・・」


右手を壁に当てます、冷たいのが手のひらから感じられますね


集中、集中、集中



裕子「さいきぃぃぃぃっく、力技ァ!!」





掌底打ち、とかなんとか有香さんが言ってましたね、ということは空手の技だったんでしょうか?

壁にくっつけた私の手のひらから蜘蛛の巣のようにヒビが走り出し壁が大きめのがれきに変わって崩れ落ちていきます


ガラガラと崩れた先はどこかの建物の敷地でしょうか、随分開けています


裕子「さて!」


私は足元のがれきをどけて進みます、

少しばかり手加減したせいかがれきの一つ一つは歩くのに邪魔な大きさです

もっと全力でやれば多分、粉々にできたのですが

裕子「よっと、ほいっと・・・」


がれきの荒々しい断面で足を切ったりしないように、

その上をひょこひょこと飛び跳ねて進んでいた私は自分の足元から注意を逸らせません


だから気づいたんでしょう




??「.........」




裕子「のわあ!?」




ボコボコしたがれき、そこに、こけたりしないように慎重に踏み出された私の靴、


そのちょうど横、まるで私の靴に入ったロゴマークを盗み見するかのように目がありました!





それはがれきの隙間からこちらを覗いている、などという意味ではなくそのままズバリ、

がれきにくっついた切れ長の瞼がぱっちり開き、その中からどう見ても人間のものとしか思えない生々しい瞳がこちらを見ていたのです


??「......そう、私の存在に気づいたのね...」


パチリと一度瞬きをしたあとその瞳は私の足元でしゃべり始めました

いえ、目は普通は喋りません、ですが無機物のがれきから目が生えている段階でその手の議論に意味はないでしょう


??「...もっとも...この世界において、存在するということ自体にどれほどの意味があるのか......それゆえに私は何物でもあって何者でもないのでしょう.....」



何言ってるのかよくわかりません、ですのでこの人がボットなのかプレイヤーなのかも分かりません!


??「...でも...私が私であることに変わりはないわ...たとえこの世界を構成するものが0と1の羅列だとしても......その中心を回り続けるものは...私なのだから.......」


目はこっちから視線をそらすことなく、だから私も自分のつま先を見つめるような姿勢を戻せません





??「あなたもまた......この世界に与えられた未知に...振り回されない自分を有しているのね......面白いわ...」





裕子「そ、そうですね!サイキックアイドルに不可能はありません!」




??「...そうね...どこまで変わらずにいられるかしら...」






そこで、すこし、目の、その輪郭が歪んだように見えました

まるで笑ったように見えました





??「......自分の映し身...危険と恐怖を容赦なく醸し出す火器......現実感を喪失させる異能......模擬戦闘などと銘打ちながら...これを遊びとして捉えている者のほうが少なくなってしまったわ...」



次に唇が目の下側に現れました、ちょうど福笑いで人の顔を形作ったような不格好さで、不気味です

それがやはりよく分からない言葉を紡いでいます



??「ある者は並大抵でない勇気を奮い...ある者は引き金を引くことの躊躇をなくし...ある者はこの世界そのものを歪ませる程の異能を得たわ...」



また唇が、少し離れたところの別のがれきから生えてきました、がれきに施された彫刻などではありません、生えてます



??「さて、堀裕子...」


また唇、三つ目


??「私がこれまで見つめてきた他の子たちは......この世界から何かを得て変わったわ...もちろん彼女達自身の軸を壊すことなく」


四つ 五つ 六つ目・・・・・・


肉づきの薄い唇が、入学式の日の桜の花びらのようにあちこちに

がれきだけではありません、私が壊していない地面にも壁にも、

私の足元に出現した最初の一つを中心に波紋のように広がっていきます


??「...あなたにプレゼントよ...これをどう使うか...この世界に...どう取り組むか...見せてもらうわ」





ぱかっ





淀みなくつらつらと言葉を続けていた唇が一斉に大きく口を開きました

右も左も前も後ろも、すべての唇が一斉に、

口の中は真っ暗です

すべての花びらがまるで一瞬で黒く闇をのぞかせる穴になったように錯覚した瞬間




地面が崩れていきました




まるでその口の穴が地面そのもののキリトリ線になったように、


地面が私を中心とした大きな丸を描いて崩れ、私を乗せたまま下に落ちていきます


この地面の下には下水道でもあるのでしょうか、それとも何もないのでしょうか


私がサイキック思いつきで通ろうとした場所が頭上へと離れていきます


ぽっかり空いた穴から漏れる光が遠のきます


私は暗い場所に落ちていく


どんな暗闇もさいきっく自分紅葉を使えば明るく照らすことはできるでしょう


落下が終われば試してみますか





ゲーム開始33分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

???「にゃあにゃあ、なにしてんのにゃあ?」





??「ちょっとした道案内......自分という存在の変換点へ誘導しただけよ......」


???「相変わらず、わっけわかんにゃいにゃあ・・・」


??「...この世界に来てなお...自分を曲げない者にであったの...そのままどこまで行けるか試してみたくなるのも仕方ないわ...」


???「知らんにゃ、でも自分を曲げないのはみくの特権にゃ!譲らないにゃ!この世界でもみくは自由気ままな猫ちゃんにゃ!」


??「...ボットの役目を堂々と放棄宣言するみくにゃんに失望しました。みくにゃんのファン辞めます」


???「やめるなだにゃあ!ボットのみくにファンなんていないけどやめるなだにゃああ!」





????「そろそろ、美玲、探しに行きませんか?...このままでは...その...逃げられてしまいます」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


チャプター
大和亜季&小関麗奈


麗奈「あああもおお!!イライラさせんじゃないわよ周子!!」


亜季「麗奈!おそらくそれが周子の狙いです、気を引き締めて!」


麗奈と亜季は今、互いに背中をつけあわせるようにして死角をなくすようにして戦っている

そうでもしないと、周子にはもはや対抗出来そうもないのだ


周子(ボット)5「あはは、おっかしいー」


一人の周子が天井から逆さまにぶら下がっている


周子(ボット)2「真剣になるのはいいけど、あたしたちの中の誰に対して気を引き締めるのかな?」


もう一人が積み上げられたダンボールの後ろからひょこっと顔をのぞかせる


周子(ボット)「ちゃんとあたしのこと見ててよね」


一人は片膝を立てたまま床に座っている


周子(ボット)4「でないと、撃っちゃうぞ♪」


一人は亜季に銃口を向けた



亜季「っつ!」


周子(ボット)4「なんちゃって」


その周子の手のひらから銃が消えた、

亜季の意識が一瞬、空白になる


周子(ボット)5「ざんねーん、こっちでしたー」


バン!


天井からぶら下がったように”見える”周子が麗奈にむけて発砲した


麗奈「ったぁ!?」


その銃弾は麗奈の足元をかすめ、致命傷にはならなかったがやはり二人を動揺させるには十分だった


周子(ボット)「麗奈ちゃんのびっくりした表情追加ー」


そういって

四人の周子がダンボールの間を漂うように、

亜季と麗奈を取り囲んで回り始める



周子の攻撃はさっきからこの調子なのだ


二人を惑わすようにあちこちから幻覚攻撃を仕掛けてはその合間に一発だけ銃弾を放つ、


しかもたまに撃つふり、ブラフの時もあるので全く動きが読めないのだ


周子が攻撃に使うハンドガン、ほぼ間違いなく最初この部屋で亜季の姿を真似ながらダンボール箱を物色していて見繕ったものだろう、

だとするなら替えのマガジンのなどは用意してないと見るべきか、いや周子相手だとそれすらも怪しい


こっちから決定的な一撃を与えられない、

しかしむこうも散々こっちを引っ掻き回しておきながらその隙をついてもまともに攻撃を当ててこない

それがさっきから続いている


麗奈「周子!いつまでふざけてんのよ!やるならパッパときなさいよ!」


亜季「(たしかに麗奈の言うとおり、周子はいつまでこうしているはずでありますか)」

ほとんどがブラフとは言え何回か発砲してきているのは事実なのだ、

弾切れがじきに訪れるはずだ

それに自分たちはユニット、スタミナは二人共に200、

普通に考えたらもっと積極的に攻撃を加えるべきだろう、

しかも周子の能力は相手の隙を開けることに特化してるといってもいいのだ




しかし周子は持久戦を選んだ。

じわじわと、集中力をちらしていく、敵対の現実感をぼやけさせていく

ぞわぞわと、戦闘意思を削いでいく、意識下に諦念をすり込んでいく


周子はじっくりと麗奈と亜季を観察しながら考える

・・・少なくとも、まだ能力が本調子じゃないしね、慎重にいっとかないと



麗奈「だぁーーーーー!!言っといてあげるわ!!アタシと亜季は今ユニットを組んでるのよ!!」

麗奈が怒鳴る、

麗奈「スタミナだって二倍の200よ!それが二人!いつまでも時間稼ぎみたいにチマチマやったってアンタに有利になんてなんないんだからね!」

それはいわゆる示威的行為、逆に周子の方に自分たちとの戦力差を知らしめるつもりの発言だった



周子(ボット)4「ん?」

周子(ボット)5「・・・?」

周子(ボット)「あれー?」

周子(ボット)2「おやー?」


だが周子たちの反応は芳しくない





周子(ボット)「もしかして知らないの?...ユニットを組むことのデメリット」






亜季「・・・?」

麗奈「はぁ!?」



周子がダンボール箱の上に片足だけでバランスをとりながらポツリとつぶやいた

一人の人間の体重を空っぽの箱が支えられるわけないので、また幻だろう

だが、その発言までが嘘とは限らない


周子(ボット)「麗奈ちゃんと亜季さん、スタミナが二倍になったんだっけ?」


麗奈「そうよ!アタシたち二人のスタミナのところに200って書かれてたわよ!」

亜季「そうであります、周子のお得意の虚言も、ネタ切れでありますかな」



周子(ボット)「それってさ、なんで掛け算じゃなくて、足し算だとか考えないわけ?」




周子(ボット)「ユニットを組んでもメンバーのスタミナは増えないよ」




周子(ボット)「ただ、共有されるだけ」




周子(ボット)「一人で100だったものが二人で200になるだけ」



周子(ボット)「三人ならみんな合わせて300かな?」



麗奈「なによ!別にそれでいいじゃない!もったい付けるんじゃないわよ!」


麗奈は周子からの言葉に反駁する、周子の言葉が事実だとしても何がデメリットだというのか

だが、亜季は違った、亜季は理解した

亜季「・・・麗奈、この話そう単純じゃないであります・・・」

麗奈「なんでよ亜季、ユニットなら100以上のダメージ食らってもリタイヤにならないのはホントでしょ!?」




周子(ボット)「それはまぁ確かにメリットだね・・・少なくともプレイヤーを一人即死させるレベルの攻撃には耐えられようになるとは思うよ?」



周子(ボット)「でもさ、もしユニットの亜季さんか麗奈ちゃんが合計で200ダメージ受けたらどうなるか分かってる?」









周子(ボット)「スタミナを共有してるもう片方も、一緒にリタイヤだよ?」







ユニットは一蓮托生、力を合わせれば強くもなるが、それは諸刃の剣でもあった

その事実が周子の口から明かされた


亜季「・・・やはり・・・!」

麗奈「な、んで・・・晶葉はそういう説明をしてないのよ!!」


亜季の手に緊張感が走り、麗奈の頭に血がのぼる


二人の頭に軽い気持ちでユニットを組んだことを後悔する気持ちはない

だが、なんとなく頭の片隅にあった「ユニットを組んでいる余裕」は一気に消し飛んでいた




周子(ボット)「さぁさ、麗奈ちゃん、どんどん失敗できなくなってきたねぇ?」


周子は言う


ぽんぽんと


亜季と麗奈の肩に両手をおきながら


麗奈「っい!?」

亜季「また幻・・・!」



箱に座っていた周子はいつの間にか消えている


そしてゼロ距離、二人のすぐ横で三本の尻尾が揺れていた




麗奈「このっ・・・!」

亜季「舐めるなであります!」



背中合わせの麗奈と亜季が同時に振り返る、



周子はミスを犯した



亜季はそう確信した






周子の能力は、要は”見え方だけ”を変えるものだということは薄々感づかれていた。

もし幻覚で物理的なダメージを与えられるなら、わざわざ一丁の拳銃をちまちま使う必要などないのだから、

それに今までの分身もさんざん動き回っていたにもかかわらずダンボール箱が周子の足にぶつかることはなかった

だから周子の幻覚は映像のように触ることも触られることもできない類のもので、




つまり今肩に触れている手は本物の周子のもの




麗奈はそこまで考えてはいなかった

だが亜季は注意深く戦場を観察し、その考えに至っていた



だが、それを麗奈に口頭で伝えるわけにはいけない。

亜季は油断した周子から何らかの接触を待っていたのだ

そして時は今



亜季「(ここで逃すわけには・・・!)」


一気に体を回転させる、ダンボール箱が視界をよぎる


周子の体にショットガンを押し付ける

そのまま引き金を引く

これを一瞬でやるだけ




亜季は素手での近接格闘にも多少の心得はあった

だが、周子相手にそんなことはやってられない



幻覚を見せられる前に一気に___



ここで亜季の視界を白が覆い尽くす




亜季「ぶっ!?」


周子がその自慢の尻尾を亜季と麗奈の顔前で振ったからだ



一瞬の思考停止

一瞬の逡巡

一瞬の迷い



周子の悪意はその一点を狙っていた



じわじわと、ぞわぞわと相手を追い詰めながら





二人を致命的なミスをやらかす精神状態にしていた







周子(ボット)「ばぁん!!!!!!」





そして大声で驚かせる


麗奈「ひゃ!?」

亜季「っく!」


振り返った二人が同時に引き金を引く


急な旋回で安定しない態勢で、

視界が塞がれた状態で、

普通なら引かない状況で、引いてしまった



___その銃口が誤って仲間に向けられているとも知らず



パン!


ドォン!



山に住む狐はよく旅人を騙したという話がある


化かして、石ころを木の実だと思わせたり

山道の同じところを何度もぐるぐると通らせたり



旅人が二人組の時などは、

その片方に化けて、喧嘩するよう仕向けたりもしたそうだ




麗奈のハンドガンの銃弾は亜季を貫き

亜季のショットガンの散弾は麗奈を抉る






威力の違う二種類の弾丸

だが二人のスタミナは_

______________

 小関麗奈  120/200


______________

______________

 大和亜季  120/200


______________



ゲーム開始25分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

やあ、ボクだよ二宮飛鳥だ


今からマキノさんの能力の面白いところを紹介してあげよう

暇つぶしがてら聞いてくれると幸いだ


何度も言ったようにマキノさんの能力は擬似ワープ、とも言えるもの


その精度の程は知らないけど、マキノさんは自分が指定した位置に自分の仮初のボット、

あの蜃気楼のような存在を送り込み、その先からデータを受信している、

まあ一応受信だけでなく言葉を伝えるくらいなら出来るらしい


さて、これの面白いとこはこの仮初のボットを送り込んだ本体はどうなっているのか、なんだけどね


消えるんだよね、跡形もなく


ありすの能力、タブレットの画面という狭い庭にドットを使ってボットやプレイヤーの位置をマッピングする《ドットガーデン》にも映らないそうだ

これはよく考えるとマキノさんは一時的にこの世界から消えていることになるんじゃないかな、

だったらずっと蜃気楼でいれば無敵じゃないのかい?なんて言っては見たけどマキノさんいわく永続的には使えないらしい

時間制限、夢から覚める時間があるんだってさ


それにただでさえボクらボットは生身の人間と比べて不確かな存在だ、その上さらに蜃気楼になるなんてたまったものじゃないだろう


そう、時間が来ればマキノさんは能力を解いてこの拠点に現れるのだ


戻ってくるのだ



こずえ(ボット)「...あすかー......なぁに、これぇー...?」


飛鳥(ボット)「・・・これはエクステだよ、ボクのオリジナルは校則の厳しい所で学んでいるらしくてね、それに対する些細な反抗という、待って待って待って待って引っ張っちゃダメだよやめてやめてストップ!ストップだこずえ!」 


こずえ(ボット)「...ふわぁ?...あすか...いたいのー?」


飛鳥(ボット)「確かにボクはイタい中二ではあるけど! そうじゃなくて、引っ張っちゃダメ!」



こずえは座っているボクの前に立ってボクのエクステをぐいぐい引っ張っている

確かに珍しいかもしれないけど引いちゃダメだ

でもボクの両手は現在繊細なチューニング作業中、

加蓮さんと拓海さんの戦闘の盗聴を止めるわけにはいかないから動けない



マキノさん早く戻ってきて



こずえだけ置いていかれても困る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



こずえ(ボット)「んぅ...?」


飛鳥(ボット)「・・・・・・触るのはいいけど引いちゃダメだよ?」


こずえ(ボット)「うんー......わかった...よー?...」


飛鳥(ボット)「疑問符はとって欲しかったな・・・」



ボクの必死の説得は実を結び、現在こずえはボクの膝の上に座ってエクステをいじっている

もちろん外したりはしないさ、つけたまま触らせているよ。だからこそ膝の上なわけだし

ボクのアイデンティティだからねそこは譲れない



遊佐こずえ、何の能力も持たないボット、というのはマキノさんから聞いた話だが

たしかにこの小さい子供は能力を使おうとする様子はない



こずえ(ボット)「....さらさらー...なのー」


飛鳥(ボット)「人工物の方が、得てして本物より手触りが良かったりするものさ」


こずえ(ボット)「あすかー...こずえは...さらさらー?」

飛鳥(ボット)「どうだろうね。なかなか特徴的な癖っ毛ではあると思うよ」



こずえに答えながら頭の中を走る声に耳を澄ませる



ああ、どうやら拓海さんが敗北したようだ



ボクは両手を下ろすと能力を解いた。これ以上聞くことはないだろう

拓海さんの能力、名前をつけようとしたら嫌がられたんだよね・・・

ちょっとだけ物思いにふける



こずえ(ボット)「?...あすか......かなしいのー?...」


飛鳥(ボット)「さぁ、ボクはボットだからね、そういうのは分からないよ。あとボクのエクステ食べないでくれるかな?」


こずえ(ボット)「...あむー...」


飛鳥(ボット)「ちょ、」


よっぽどボクの髪からぶら下がる装飾品がお気に召したらしい


変わった子だ


これでオリジナルは11歳、ボクのオリジナルと3つしか離れてないのだから驚きだ



ボクは三年前の11歳のころ、どんな子供だったかな?

と、思い出そうとしたけどよく考えたらボットのボクはまだ生まれて三ヶ月と経ってなかった

たとえ三年前の記憶があっても、それはボットとしてのボクの個性を形成するためにオリジナルと晶葉さんが用意しただけのデータだ



個性



ボットたちにとっての個性とはなんだろうか?



基本的な思考アルゴリズムにアイドルたちの人格データを組み込んだもの

それがボクたちの姿形、為人をかたどる1と0の塊


こずえ(ボット)「あむあむ...あすか...えくすて......すきなのー?」


飛鳥(ボット)「多分好きなんだろうね、でもヨダレまみれなのはいやかな」


ボクは本当にエクステが気に入っているのかな?

エクステ好きの性格に作られただけじゃないのかな?


あと、こずえ、

もうボクのエクステが半分以上口に含まれてるんだけど、そろそろいい加減にしてくれ


こずえ(ボット)「...んむんむ」


飛鳥(ボット)「やれやれ」


ボクは右手だけ宙に上げると、能力を行使する、まず適当に誰かの声を拾うことから始めよう

ちょっと自分の存在を疑うという嫌な思考に陥りかけたので現実逃避のついでだ

そういえばこの能力もボクらボットにとっては自分を構成する個性の一つだろう

じゃあ、それがないこずえは・・・



こずえ(ボット)「...もぐむぐ...」


飛鳥(ボット)「やめるんだこずえ。ぺってしなさい、ぺって」



こずえはボクの胸にもたれかかりながらエクステをボクの首元くらいまで口にふくみ始めていた


もうほんと勘弁して





こずえ(ボット)「んむ?...んぺぇ...」

飛鳥(ボット)「・・・やっと吐き出したかい・・・ああよく考えたらボットに唾液なんてなかったね」


こずえ(ボット)「あすかー...のうりょく......つかってる...?」

飛鳥(ボット)「うん?そうだよ」


こずえはボクが不自然にあげた右手を見るとエクステを吐き出し、そう訊いてきた

ボクは普通に返答する


こずえ(ボット)「...のうりょくー...」

飛鳥(ボット)「まぁ、たいしたことない、ただの盗聴器だけどね、体がラジオなんだよ」



こずえ(ボット)「...ふーん...」




こずえはボクの首元に手を回し、ゆっくり抱きついてきた、

ボクの右胸のあたりに耳を当て、ボクの体がラジオであることを確かめようとしているようだ


こずえ(ボット)「......ふわぁ...あすか...あったかいのー」


飛鳥(ボット)「はは、どうだい?ボクの能力が分かりそうかい?」


こずえ(ボット)「...んーんー...」


こずえは首を振ったけどその髪の毛も動いて首元がくすぐったい


こずえ(ボット)「ふわぁ......のうりょくー...」


こずえが耳元で囁く、こっちまで眠くなりそうだ

こずえの方はそのまま眠ってしまうつもりらしい、抱きついたまま離れなかった













こずえ(ボット)「.........いいなぁ......」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、諸星きらり
2、渋谷凛
3、緒方智絵里

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)



画像コメントありがとうございました

8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8チ8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8ャ8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8プ8∞8∞8タ8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8ー8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8渋8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8谷8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8凛8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


凛「・・・つ・・・」


だるいような、重いような

ついさっきまで熟睡していたところを無理に起こされたときみたいに頭がぼんやりする

目の前には真っ赤な空



凛「・・・・・・えっ!?」


慌てて起き上がった、何が起きてるの?

まず思い出そう、順番に


私は最初、武器になるものを求めて目に付く限りで一番大きなビルに入った

そこで、まるで尾行されてたみたいなタイミングで晴と舞が乱入してきたんだ

その後ありすに私のピアスを見せられて、それを追いかけることになった

多分ピアスを囮に私を罠に嵌めようとしてたんだろうけど、それでも私は追った


そのあとありすたちは私を罠にはめる前にビルから飛び降りて、

私も手近な机と一緒に飛び降りた、で、舞の小さい一輪車の上でピアスを取ろうとして

どこからかあずきが現れて、ピアスを持ったまま逃げちゃったんだ



ちがう、それよりももっと大事なことがあるだろう

私はビルから落ちたはずだ、少なくとも地上10階以上の高さからあのまま地面に叩きつけられていたはずだ



私は周りの風景に目をやる


太陽の位置は見えないけど、空の色から今が夕暮れなのはわかる

私が倒れていたのはどこかの野原、草原みたいな場所で、地平線までずっと一面が真緑色だ


空は真っ赤で地面は緑色


ほかには何もない、遠くにビル群が見えるわけでも、山や小屋すら見えない


凛「もしかして、私・・・ゲームオーバー?」


そうだとするなら納得がいく、

ゲームに入るときは文明的な電車、ゲームから出るときは何もない草原で待機




凛「あーあ、結構頑張ったと思ったのにな・・・」


そのままゴロンと雑草の絨毯に背中を横たえても良かったけど、さっきまで寝てたみたいだし私は起き上がることにした


ついでだからこの野原がどのへんまで続いているのか気になったから見てみようと思ったのもあるかな


凛「へー、誰もいないね、私が一人目の脱落者だったのかな」


そう考えるとちょっとショック、私の頑張りはみんなのより負けてたってことだし


私の靴の下で草がしなっているのが靴裏を通して伝わってくる。

さっきまでコンクリートジャングルを走り回っていたから、ちょっと新鮮


凛「・・・・・・あれ?」


最初何かの板が立てられているのかと思った

草原の真ん中にポツンとつっ立った分厚い板


近寄ってみるとそれが扉だとわかった、でもほんとにただの扉ってだけでどこかへの入口には見えない



だってドア枠に戸がはまっているのが置かれているだけ、どこでもドアみたいなものだった

試しにドアノブを回してみたけど、鍵がかかっていた、いや鍵の意味はないと思うけど・・・



凛「・・・ワープゲート?」


この扉を開くと光に包まれてどこか別の場所に着いたりするのだろうか?



ドアノブの上には鍵穴があった、

よく見ると全体的に細かい装飾品で飾られた扉は鍵穴の周りにもおしゃれが施されていた


この鍵穴の周りをふちどる模様は・・・ハートマークが4つ円を描くような、この草は


凛「・・・クローバー・・・?」

しかも四つ葉

思い浮かぶのはキュートアイドルの一人、緒方智絵里


なんだか違和感がある。

ここはゲームオーバーの人が来る場所のはずでしょ?

どうして一人のアイドルを連想させるようなものが・・・




凛「あれ・・・・・・・・・ありす?」



ドアノブの鍵穴から目線を上げたことで少し離れたところに誰かの背中が見えた


視界中にひろがる緑色の中、ポツリとありすの上着の、落ち着いた色だけが浮いている


私は慎重に近づいていく。どうやら倒れているようだけど、油断はできない

ありすにはゲーム内で一杯食わされてるからね、晴や舞にも気を付けないと、近くにいるかもしれない



こつん



足に何かがぶつかる、私の靴のつま先がタブレットを踏んでいた。

たしかありすが抱えていたものだ

その電源はまだ生きているらしく、画面には赤丸が1つと青丸が3つか4つほど表示されていた



凛「なるほどね、これで私を尾行できたんだ」



見た感じプレイヤーとボットの位置をGPSマップみたいに知ることができる能力、あるいはアイテムだったんだろう

まあ、ここには緑の草原と赤い空しかないからもう必要ないかな



ありすの背中に視線を戻す、

あれ、よく見ると


凛「上着だけ・・・?」


ありすの上着だけが草原にかぶせるように落とされている

暑いから脱いだのかな、よく見るとその近くには晴のかぶっていた帽子があった

他にも舞が乗っていた一輪車、これはまた少し離れたところにあったのでありすの上着に近づいたときに見える位置に転がっていた


凛「ボットもゲームオーバーになるとここへ送られるのかな」


で、そのあと上着を脱いでどこかに行ったみたいだね、草しかないのに


いやここからは見えないけどもしかしたら斜面の向こうとかに何かあるのかな


どっちにせよ行儀悪いな、脱いだら脱ぎっぱなしなんて、

仕事に使った衣装をきちんと畳んでいた三人の姿を思い出す、

ああ、あれは現実の方のありす達だったね


私はなんの気無しにありすの上着を手でどかした、

もしかしたら、ありえないけど、あのピアスがあったりしないかなと思ったというのもある


すると上着に隠れるように、ありすの着ていた服一式がスカートも含めて落ちていたのがわかった


・・・ありす、いま全裸?


よく見ると晴の帽子の近くにもボーイッシュな、というかまんま男物の服がまとまって落ちているし

舞の身につけていた衣類も一輪車の下敷きになっていた


凛「なに?・・・ボットは服を残して消滅するの?」

あるいはどこかで三人が水浴びでもしてるの?


ぶちっ



無造作に脱ぎ捨てられていた服を引っ張り上げようとしたとき

そんな音がした


凛「・・・・・・?」


服が重い、じゃなくて服に何かが引っかかっている



ぶちぶちぶちっ



紐が切れるみたいな音が連続する

服が地面に縫い付けられているのだろうか


凛「・・・ふんっ!」



ぶちちちちっ!



思いっきりありすの服を引き上げた

ありすの服にまとわりついていたものが一気に断ち切れていく




根っこ



細い細い根っこが


何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も



服の”中”から生えていた




ああ、違う、



地面から生えた根っこが

服の中に侵食していた



まるで服の持ち主を養分にするように




おそまきながら私は悟った

ありすも晴も舞もどこにも行ってなかった

どこにも行けなかった

服を着てここにいた




でも服の中身は既に何も残ってない



凛「・・・・・・・・・・・・」




中身は多分もうこの世界にもない




私はその場にペタンと座り込む、呆気にとられていた

私の推測でしかないとはいえ、目の前の状況がその推測に疑わしさを感じさせない



地面に座り込んだおかげで私はやっと気づいた



この草原、野原、雑草


よく見ると全部、クローバーで出来ていた






ハートマーク型の三枚の葉をつけた小さな草が

地平線までの地面すべてを覆い尽くしている



私以外はみんなこのクローバーに、喰われていた



空は赤い、血のように



そして

座り込んだ私の足に、一本の細い根っこが絡みついた






ゲーム開始?分経過

【ERROR!】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


幸子「いまですよ!!」

小梅「う、撃っちゃう?」

輝子「ヒャッハァア!!よくもやってくれやがったなぁ!」


目の前には倒れふした恐竜こと市原仁奈、小梅と輝子はそこに銃を向けている

この隙に攻撃を加えるつもりなのだろう

幸子「ちょっと待ってください!下手に当ててもこの分厚い肌には効きそうもありません!」

小梅「じゃ、じゃあ仁奈ちゃんの顔を、撃つ......」

輝子「う、うめちゃん...こ、こわい」

幸子「た、確かにそこしか有効な一撃は与えられそうにありませんが・・・」


だが、倒せるのか?当てられるのか?

そもそも目の前の巨体はうつ伏せに倒れていて仁奈の顔の部分は見えない

このままでは何もできずに仁奈が起き上がるのも時間の問題だろう

その証拠にティラノサウルスは2本の足だけでなんとか起き上がろうともがき始めていた

仁奈(ボット)「よくもやってくれやがりましたね・・・・・・」


幸子「・・・!!二人とも!やっぱりここは一旦事務所に駆け込みますよ!」

小梅「え・・・?」

幸子「こんなデカブツ相手にしてたら下手すれば弾切れです!まだ事務所にいるかもしれない敵の方が倒せる可能性は高いです!」

輝子「じ、事務、所・・・?」


幸子「えぇ、おそらくこのタイミングでの攻撃の数々、誰かが事務所からボクらを遠ざけようとしているに違いありません!」


小梅「...あ!そ、そっか...」



得体の知れない炸裂する星、そしてそれに乗じた力押しの強襲

今までほとんど接触のなかったボットから畳み掛けるような二連撃

明らかに狙ってきている


幸子「だから、仁奈さんが起きる前にボクたちの方から事務所を襲撃してやります!」

小梅「わ、わかった!」

輝子「フヒッ!」

仁奈(ボット)「に、逃げやがりますか!?」


一目散に自分から離れていく小さな三人に未だにうまく起き上がれないまま仁奈が吠えた

輝子「フハハハあばよ!」


ぱちーん!


ミニキノコ「?fff」

トコトコトコ

仁奈(ボット)「はい?」



はなれていく際にせめてもの仕返しと輝子が自身の能力によるキノコを向かわせた


仁奈(ボット)「こんなのがなんでやがりますか!」


パクッ

ミニキノコ「f!f」


だがそれはティラノサウルスの着ぐるみに飲み込まれた


輝子「ノォオオオオオオオ!!マイフレェンド!!」


幸子「何遊んでるんですか輝子さん!!」

小梅「は、はやく...」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




翠(ボット)「.........」



深呼吸


脱力


集中


弓を構える


腕を水平に



翠(ボット)「.........」



矢を添える


矢尻を握った手が耳元に来るまで引く


目線はまっすぐ


狙いを定めて


呼吸を止める




まずは止まった的から

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


カランカランカランカランカランカラン!


次の異変に気づいたのは幸子だった


例えるなら流れ星、

さっき自分たちの妨害をしてきたあの星型のディスクが、地面を滑るようにこっちに向かってきたのだ


幸子「はぁ!?なんですかあの星、勝手に動く機能もついてるんですか!?」


小梅「...え?あ、前からも星...」

輝子「でも、今度はよ、よけられそう...」

事務所と、そこへ向かう幸子たちの間を地面を這いながら一直線に星は進む

てっきり地雷のように隠して使われると思っていたあの星が、意思を持ったかのように幸子たちを狙って直進してきている

だが、決してよけられない速度ではない


幸子「ふふん!どうやらボットの方も頼みの仁奈さんが倒れ、ネタ切れのようです、ねっ・・・と!!」

タイミングを見て走りながらジャンプ、幸子の小さな足の下を星が通り過ぎていく

小梅「うわっとと...」

小梅もぴょんと跳ねて星をスルーした

輝子「ヒャッハアアア!!クリアァ!」

星から攻撃を喰らっていた輝子も怖気づくことなく飛び越える


幸子「さぁ、また次の星が流れてくるまでに行きますよ!銃の準備はいいですね!」

輝子「お、おっけい...!」

小梅「は、ハンドガン...い、いつでも、撃てる」

幸子が振り返り、後続の二人が無事だったことを確かめ、攻撃の意思を新たにする

幸子「じゃあ行きますよ!!」

事務所まであと30メートル

そして前を向いてまた走り出そうとしたところで



カツッ!!




空気を切り裂く音を聞く暇もなく矢が一本突き刺さる

輝子「フヒイ!?」

小梅「さ、さっちゃん...!?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


残心




翠(ボット)「・・・・・・・・・ふぅ」




止まった的は当てられた




次の動く的の相手もこれで問題はない




一息




次の矢を手に





残りは二射

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


幸子「・・・・・・・・・あれ?」


矢は幸子には当たっていない。その足元より少しだけずれた地面に突き立っていた


小梅「よ、よかった、さっちゃん死んじゃったかと思った」

輝子「弓矢を使うアイドルって......み、翠さん?」


かといって自分のすぐそばに矢が突き立てばド肝を抜かれるだろう


幸子「ふ、ふふ、ふふん・・・!か、カワイイボクには矢もあああ、当たりませんょ!」


ここで威勢良く振舞うあたり彼女もただものではない

輝子「げ、限界ギリギリ...の、ロケでも、なんだかんだで無事な、さ、さっちゃんだもんね...」

小梅「い、いつも...体、張ってるもんね...」

幸子「ふ、ふん!さあもう事務所は目と鼻の先です!しかし弓矢というと翠さんですね。全く!ボクを狙おうとするなんて!」


そして幸子を先頭に三人はまた走り出す、早くしないと仁奈が起き上がってしまう


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子を始めとした三人は、一つ誤解をしていた



水野翠の趣味は「弓矢」ではなく「弓道」であるということだ


彼女は武力をふるう武器ではなく、競技の道具として弓を引いている


ときに天然と称される彼女の性格は真面目にして実直、そして規律を重んじる



そんな水野翠をモデルにしたボットが、人間を狙って矢を放つわけがない



だから彼女は矢を外してなどいない

彼女は狙い通りの的に矢を当てていた



規律と反省と二律背反

《規律反背》

発動

幸子「あれ?」

それに気づいたのも幸子が最初だった

というか最初に翠の能力の範囲内に踏み込んでいたのも幸子だった


小梅「さ、さっちゃん...?」


輝子「ど、どしたの...た、立ち止まって...」


幸子を追い越してしまった二人がそこで立ち止まり、振り帰る


幸子「・・・いや、よくわからないんですけど・・・足が・・・あれ?」


足が動かない、いや動きはするのだが、前に進もうとすると進まなくなる


小梅「あし...?」

輝子「フヒッ...さ、さっちゃん!?そ、それなに...?」

小梅「え...」

次に異変に気づいたのは輝子だった、幸子の足元を凝視している

小梅も遅れて気づく



それは的だった

弓道で用いられる、白地に黒線の同心円が描かれた的


直径にして1メートル程のそれが地面に出現している

先ほど地面に刺さった矢を中心に

幸子はその模様を踏んでいた


いや逆だ、

翠は、幸子がその的を踏むような位置に矢を放っていた



翠(ボット)「弓道の遠的競技においては、射手と的の距離は一般的には60メートル」



翠(ボット)「しかし幸子さんたちは射手、つまり私に対して距離が近づきすぎです。反省してください」



翠(ボット)「...そして、規則と規律を以て、きっちり60メートル先まで離れてください」


ぐぐぐっ




幸子「わわっ!?」


小梅「!?」

輝子「フヒッ!?」


地面に描かれた的の模様が動き出す、

その上の幸子も同様に、引きづられるように地面を滑り出す

事務所から離れていく、直線距離にして60メートル地点を目指してズルズルと


幸子「ちょ、なんですかこれ!?足も地面から離れません!!」

小梅「さっちゃん!」

輝子「つ、捕まって...!」


二人を置いて一人後ろへ引っ張られていく幸子の手を慌てて掴む、

だが小梅と輝子が非力なのか能力が強力なのか、幸子はやはりズルズルと事務所から遠のいていく


三人まとめて離れていく

小梅「ん、ん~!!」

輝子「ファッキン!!止まりやがれコンチクショオオオオオオ!!」


幸子「ま、まってください!!このままじゃ小梅さんたちまで矢に狙われてしまいます!!一旦はなれ」




カツッ!



小梅「わっ...!」

輝子「う、うめちゃ」



カツッ!




最初に小梅のすぐ後ろに矢が刺さり、慌てて飛び退いた輝子の足元にもまるで影を地面に縫い付けるように命中した


幸子の時と同じように二人の足元にも的の模様がにじむように現れる

こうなっては足を踏ん張って幸子を引っ張り戻すことなどできない

ズルズルと三人仲良く引きづられていく


幸子「わ、わわわわわ!」

小梅「...み、見えない、何かに、あ、足引っ張られてる...ホラーみたい...」

輝子「ファァァァァァァアァック!!!」



人がルールに沿って自発的に動くのではなく

ルールが人を強制的に動かすという不条理

規律を重んじるが故に生じる横暴 という二律背反



最初の一射は囮として《ミツボシ効果》の星を動かし

残りの三射で三人の動きを射止めた


幸子「ど、どうなってるんですか!何が起きてるんですか!」

小梅「ね、ねぇ、...じ、事務所から離れる、ってことは...」

輝子「こ、これ...や、やばいやつだ...フヒ」


事務所から離れていく。元いた所へ押し戻される


そしてその場所には









仁奈(ボット)「ふっふっふ・・・お帰りなさいでごぜーますよ!!」





ゲーム開始47分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《規律反背》《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゲーム開始40分経過


音葉(ボット)「..................」


ふわりふわりと、燃え上がるように赤い翼を生やしたまま音葉は滞空している


視線は眼下二十数メートル、神谷奈緒が落ちていった先を見つめている


音葉(ボット)「(......加蓮さんの殺意の音、銃声が当たる前...奈緒さんは身を捻っていた)」


音葉(ボット)「(もしかしたら、致命傷は避けていたのかも...しれません...)」


崖の下は大した本数ではないとはいえ、何種類かの樹木が植えられ、上空からは葉に邪魔され様子が伺えない


厄介な場所な所に転げ落ちられた、木々の枝の鳴る音に遮られ奈緒が音を発しているのかも見えない




マキノ(ボット)「.........最後の一撃に加え、この高さからの垂直落下、まず助かりはしないでしょう」




音葉から少し離れた場所、さっきまで音葉と奈緒が戦っていた道路に当然のようにマキノがいた

その姿はホログラムのように頼りなく、その姿は背後の風景すら透けて見えていた

まさに蜃気楼だ、実体がない



マキノ(ボット)「お疲れ様音葉さん。奈緒さんを倒したようね。本来の目的だった足止め以上の戦果だわ」



音葉(ボット)「...完全に、とどめがさせたわけではないので...もしかしたら...生きているのかもしれません...」

マキノ(ボット)「それならそれでかまわないわ。トライアドの結成自体は十分妨害できたのだから」

マキノ(ボット)「私は一度拠点に戻って、飛鳥さんから拓海さんの戦況を聞いてくるわ」


音葉(ボット)「...わかりました......私も戻ります.........」


そこで空中にいる音葉はマキノをじっと見つめた。うっすらと道路のアスファルト模様が透けて見えるマキノを

マキノ(ボット)「?...音葉さん...どうかしたの?」


音葉(ボット)「いえ...ただ、」

音葉(ボット)「...その姿の時のマキノさんから聞こえる音は、とても...視え辛くて、それが物悲しいと思っただけです......」


マキノ(ボット)「?...そう。たしかに論理的に考えて今の私は存在が希薄なのだから音も同じということなんでしょうね」


どこか悲しげに告げる音葉に対してマキノは理知的な表情を崩さず応える


マキノ(ボット)「では、私はこのまま失礼するわ。拠点で会いましょう?」


ブンッ、とマキノの姿がそこから掻き消える


音葉(ボット)「............」


拓海のバイクの排気音から生成した翼はまだ背中に残っている

やはりバイクも然ることながら拓海本来の持つエネルギーの大きさもあったのだろう

音葉が戦闘を行うにあたって、
音葉の能力が使える範囲内に音を届けられる拓海を送り込む。

だれの立案だったか。とにかくこれで拓海も無事に拠点に戻れば作戦は十全に成功なのだろう




音葉(ボット)「......」


最後に奈緒の落ちていった小さな林を一瞥して、音葉は赤い翼をはためかせた


雑多な音にまみれたこの戦いはいつまで続くのだろう



音葉はそんなことを思いながら街の方向へ、ビル群へ向かって飛んでいく







ぐっ



一瞬、後ろから引っ張られたように感じた



音葉(ボット)「...?...」



体が動かない




力が抜ける



音葉(ボット)「......これは...」



何の音もない



胸、心臓のあたりに鈍いしびれ



何の音もない




音葉(ボット)「...撃たれ...ました...?」



何も聞こえない



音も届かないほどの遠くからの攻撃、



銃声もすぐには届かない距離からの狙撃



背中から生えた翼が散り散りにバラけていくのが分かった



何も聞こえない



何の音もない




ぐっ



ぐっ



また後ろに引かれるような、

いや、前から後ろへ突き抜けていくような衝撃が二つ




音葉(ボット)「......何も...聴こえません...見えません」



落ちていく



奈緒とはまた違うところへ


小さくほどけた赤い羽を空へ撒き散らしながら


堕ちていく




ターーーーーーーーーーーーン・・・・・・



ようやく、

遅れて

音が音葉の耳に届いた





音葉(ボット)「_____ああ____」



その音が、音葉が最後に見た音になった



排気音の翼よりもずっとずっと赤い


銃声の殺意よりもずっと透き通っている


奈緒の不屈の声よりもずっと頑強だ


誰のものでもいい


宝石などでは例えられない音、


そんな殺意の銃声






音葉(ボット)「_________なんて、美しい____」



これほどの美しさ

是非、他の人にも見せたかった___



ターーーーーーーーーーーーーーーーン・・・




ゲーム開始43分経過

梅木音葉(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
当たり所によっては割とすぐ死ぬ



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、三好紗南
2、双葉杏
3、北条加蓮

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


コメント本当に本当にありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏


??「..............はぁ」

私は自分のスタミナを確認します



また......維持コストがかかってるんですけど


私のスタミナ......ガンガン減ってるんですけど


このままでは私はプレイヤーと戦う前に自分の能力で自滅しちゃう流れなんですけど


何がボットですか。


かなり都合よく振り回されてる感が否めないです


晶葉さんは何を考えてこんな能力を私に与えたのでしょう


私はもっとのんびり、いえむしろ何もせず静かに仮想空間ライフを送りたかったです


ああ、またスタミナが勝手に減りました


早いとこ能力を使って回復しないと


能力の副作用のせいで減り続けるスタミナを能力で補充する。


これあれですよね、マッチポンプ?とかいうやつですよね



森久保乃々(ボット)「何なんでしょう......いえもう本当に」




もたれかかった樹木のザラつきを後頭部で感じます

私は今、公園の茂みの中に座り込んでいます。身を隠しています



乃々(ボット)「......杏さん、ですか...」


茂みの間からベンチに無防備に寝っ転がった杏さんの姿が見えます

どうしてボットまで一緒になって寝ているんでしょうか


同じボットの私はこんなに色々悩んで迷って疲れているというのに



乃々(ボット)「...でも、杏さんに能力を使うわけにはいきませんし...」


まず間違いなく使っただけ私が損をする、


そうですね、せめてもう少し活動的なプレイヤーがいいですね、能力を使うなら




乃々(ボット)「............っぁ......」




また私のスタミナが減りましたね。お胸がチクチクします


これというのも私の能力のせいです


私の能力が最初、あんなものに自動発動したのがいけないのです


あんなものを取り込むから、こうして維持コストとして私が犠牲になるのです


早く条件にあったプレイヤー来ませんかね


え?もりくぼが自分の足で探しに行けって?



むぅーりー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

杏「ところでさー」

杏(ボット)「なにー?」

杏「あんたさ、ほんとに何もしないでいいわけ?」

杏(ボット)「働けと?この杏に働けと?もう十分やったよ杏は」

杏「そーだっけ・・・」

杏(ボット)「ほら、オリジナルの杏に能力伝授したじゃん」

杏「いや、たまたまじゃん」


杏たちは別々のベンチに寝そべってい同じ空を見上げながらまどろんでた

ボットだかロボットだかに眠るなんてことがあるのか疑問だけど


杏(ボット)「ん、いやいや、ボットたちも戦うだけが能じゃないんだよ」

杏「は?」

杏(ボット)「たとえば練習用ボットは戦うことよりもプレイヤーをこの世界に慣れさせるほうが目的だし」

杏(ボット)「それに今にして思えば杏の仕事はオリジナルの方の杏に能力を与えるのが仕事だった気がする」

杏「さっきも言ってたけど、なんでそれが仕事なのさ。キーアイテム?・・・とかって自分で探すのがセオリーでしょ・・・」


杏(ボット)「んー、ほら。杏は怠けてキーアイテムなんて探さないと晶葉が判断したからじゃない?」


杏「うあ、納得してしまった。プロデューサーも一枚噛んでるね、それ、」


会ったことないほかのプレイヤーよりいきなり有利だと思ったらこういうことか


「ちょっとオマケしてやるからちゃんと頑張れよ」


プロデューサーが呆れ半分にそう言ってくる顔が浮かんだよ今

こんな得体の知れない空間の中でもあの人の顔を思い出すのには苦労しない

割と長い付き合いだからなー・・・


・・・・・・・・・。




杏「・・・・・・・・・うあー」


ベンチに背中をこすりつけるようにしながら体を起こす

寝に入るトコだったから余計に重労働だよ


杏(ボット)「え、何、起きるの?やる気出したの?」

杏「んーにゃ、体起こしただけ」


・・・とりあえず、だよ

全く何もせずに寝ちゃうのだけは勘弁しといてあげよう


後頭部をベンチの背もたれの上に乗せる。自然顎が上がり、空を見上げる形になった


とりあえず、そうだね・・・誰かほかのプレイヤーが来たら運んでもらうことにしよう




足音



きらり「うっきゃー!!見覚えのある後頭部だと思ったらやっぱり杏ちゃんだにぃー!!」



マジか



きらり「ユッコちゃんの言うとおりに進んだら杏ちゃんに会えたにぃ!さいきっくぱわーすごいにぃ!!」



何してくれてんだあの似非サイキッカー




杏の視界に逆さまに飛び込んできたのはプロデューサーに並んでよく見知った顔、きらり

いつの間に、とか、きらりもプレイヤーだったの、とかユッコがなにしたのか、とか

きらり一人現れただけで杏の頭にクエスチョンが複数突き刺さったけど、それもきらり本人にブッ壊された


きらり「わーい!杏ちゃーん!おっひさー!!」


杏「のわっ!?ちょ、ちょ、きらり!?いきなり後ろから持ち上げられると怖い!」


きらりは感極まったみたいに杏を持ち上げると自分の頭よりも高く掲げた。

さっきまで寝ていたベンチが遥眼下に落ちていくような錯覚

このままでは、流れるように強烈なハグが待っている

力加減さえしてくれればきらりのハグも結構気持ちいいんだけど、テンションマックスのきらりにそれは望めない


杏「違うから!!違うから!!もうホント違うから!!こっちがボット!!あっちが本物だから!!」


杏(ボット)「っは、はぁ!?何言ってんの!?」


きらり「にょ?」


もうひとつのベンチで唖然とこっちを見ていたボットの杏を指差す、きらりの視線もそっちを向く



きらり「・・・・・・・・・・・・・・・」



きらり「・・・・・・・・・・・・はぴ?」


杏がふたりいる光景を目の当たりにしてきらりの動きが止まる。思考停止みたい


杏はきらりの腕の中、いまならそれほど力もこもっていないから抱かれてる側としては割と居心地がいいね


きらり「にょわー!!!杏ちゃんが二人だにぃい!!ダブル笑顔だにぃ!」


ぐえっ



杏(ボット)「なん・・・だと・・・?」


きらり「ダブルでドーーーン、っだにょわーー!」


難しいことを考えるのはやめたらしく次の瞬間きらりは杏とボットの方の杏を両手で抱えていた

いや、ぶっちゃけ締め上げられてる



杏「き、きらり・・・ストップストップ・・・ゲームだから痛くないけど締まってる締まってる・・・」

杏(ボット)「いたたたたたた・・・あ、」

杏「ちょ、あんた体消えてるけど!?」

きらり「にょわにょわ~杏ちゃん会いたかったにぃ♪」


きらりの絞め上げがダメージとして換算されているのかボットの体が消えかけていた

た、たしか練習用ボットは体力が少なめなんだっけ?


杏(ボット)「あ、杏はここまでだ・・・あとは任せた、ぞ・・・ガクッ」


杏「あ、杏うううううう!?」


きらり「にょ!?杏ちゃん一人になっちゃったにぃ?」


ようやく落ち着いたらしいきらりが杏を胸元に抱え直した、きらりと目線がかち合う


杏「えっと、さっきのは杏のボットだったから・・・だから消えたわけね」


きらり「そうだったのかにぃ・・・きらり、ひどいことしちゃった?」

杏「あーいや、あいつの役目はとっくの昔に終わってたはずだから、あれでよかったんだよ・・・」

きらり「?」

さらば、ボット杏、あんたは勤勉だったと杏が明日まで語り継いであげよう

杏「いや、なんでもない、じゃ、きらり行こっか。杏のことおぶってよ」

きらり「!・・・がってんしょーちにょわ!」

さて、えらい出来すぎなタイミングだったけど仲間もみつけたし、

ちょっとだけ、ほんのちょっとだけプロデューサーの期待に応えて仕事してあげようかな







乃々(ボット)「きらりさんとか............ナイスタイミング、なんですけど」



ゲーム開始36分経過

双葉杏(ボット)消失

諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


Make More Effort

縮めて M・M・E

二宮飛鳥はこれを「もっと頑張る」の英訳として能力名にした

まぁ中二の英語力ゆえにこういう結果になったのだろう


島村卯月の能力は極めて単純、普通、なんの変哲もないもの

それゆえにどんな使い方でもできるのだ


”他人の能力を強化できる能力”というのは


未央の《ミツボシ効果》は最初その名のとおり星型のディスクを三つしか出現させられなかったが《M・M・E》によりその限界量を大幅に超えて能力を行使できている

また仁奈の《U=パーク》も着ぐるみでありながら本物のティラノサウルスばりの力を振るうことができるのは卯月の能力に依るところが大きい

もしかしたら雪美の《黒猫電話》に何らかの変化が起きたことすらその能力の影響だたのかもしれない


ただし例外として《規律反背》で用いられる矢の本数を増やすことはできない

これはルールとして弓道の一試合に用いられる矢が二射または四射と定められていることによる

規律を重んじる能力がゆえに融通が利かないのだ


四本の矢を放ったあと次の矢を放つためには一度、能力をすべて解除する必要がある


翠は、一本は星型のディスクを滑らせることに

残りの三本は幸子と小梅と輝子に一本ずつ使っていた


これなら四本で十分だろう



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

卯月(ボット)「やった!!あの三人を捕まえたよ!!」

未央(ボット)「翠ちゃんナイス!」



矢を放つことに集中していた翠を邪魔しないように部屋の隅にいた二人が戻ってくる


翠(ボット)「ふぅ......ギリギリ四本で事足りましたね。」


窓際にいた翠が弓を下ろす


窓の外には地面に足を縫い付けられたようになった三人と、その三人を誰から順番に食べてやろうかとティラノサウルスの気持ちになって吟味している仁奈がいる


翠(ボット)「この能力がある間、対象は60メートルより近づくことも遠のくこともできません、ピッタリ60メートルで固定されます。逃走は不可能でしょう」


未央(ボット)「すごいよ翠ちゃん!やったね!初戦にして大勝利だよ!」

卯月(ボット)「さすが、未央ちゃんと翠ちゃん!」

翠(ボット)「い、いえ、雪美さんや卯月さんのサポートも欠かせない要素でしたよ」

卯月(ボット)「え?・・・え、えへへぇー♪」

小春(ボット)「私の出番がなさそうなのが残念です~」

未央(ボット)「あ!ごめんね小春ちゃん!でもこれからもっと強いプレイヤーが来るときにまた頼むね!」

小春(ボット)「はい~わかりましたです~!」

ヒョウくん「・・・・・・」


あとは仁奈が三人を屠ればまずは一勝だ。


卯月(ボット)「・・・・・・勝てたよね?」


ボットの一つ一つの能力は癖が強すぎて使えなくとも、

目的と協力しあえる仲間がいればプレイヤーを圧倒することも可能。


未央(ボット)「・・・・・・うん」


論理的に効率化を図ればどんな能力も何らかの使い道がある。


マキノから協力を提案されたとき、そう言われたのを思い出す


小春(ボット)「・・・・・・はい~」


現に今、あの三人は手も足も出せずにティラノの顎に噛み砕かれようとしている





翠(ボット)「・・・・・・・・・?」




はずなのに







雪美(ボット)「.........あれ...なに...?」


いつの間にか雪美も窓のそばにいる、視線は窓の向こうに向けられている








だから事務所にいた全員にその声が聞こえた








仁奈(ボット)「な、なな、なんでやがりますかあああああ!!!???」






ゲーム開始48分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《規律反背》《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回へ続く 



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、渋谷凛
2、堀裕子
3、佐久間まゆ


次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子
6、VS本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


《CHIHIROと能力》

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)

7、池袋晶葉&一ノ瀬志希




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


ぶちっ


三つ葉のクローバーが無残に千切れて宙を舞う


凛「・・・っはぁ、はぁ・・・!」


絡みついた根を振りほどいた足とは逆の足にも根が張っている


それを振りちぎると同時に走り出す


クローバークローバークローバークローバー

どこまで行ってもそれしか目に入らない。空の赤色と補色関係の緑、

延々と見続けていると目がチカチカしてくる。だがほかに何もないのだからしょうがない


足を止めるとまた根が私めがけて動き出す。走っている間はただの植物なのに、このクローバーの根は止まっているものを養分にするようだ

ありすたちも最初は逃げ回ったのだろう、だけど限界が来た。体力の問題もあるんだろうけど、多分そう言うんじゃない


凛「どこまで行っても・・・クローバー畑しか、ない・・・」


風景になんの変化もない。こんな中、目的地もなく走り続けるなんて精神的に無理だ。ロボットなら出来たかもしれないけど、ボットたちが朽ちているのを見た限りダメだったんだろう


凛「っく、はぁ・・・」


大した距離を走った覚えはないけど、その場に疲れて立ち止まってしまう



凛「おちつけ・・・別に、わざわざ走ることないんだし・・・歩こう」


ぶちちっ


ほんの一秒だけ足を止めて考えをまとめただけでもう両足に細い根がくっついていた


このクローバーには休ませる気が一切ない。

自分たちの上を動き回っている存在が完全に止まるまで追い回すつもりだろう

たしかそう、動物実験で兎だったか鼠を数時間にわたって眠らせないために、

ベルトコンベアみたいなところで動物を延々歩き続かせるというのがあったっけ?

私はいま仮想内だから肉体がない。

だけどあとどれくらい歩き続けられる?

一時間?十時間?一日?一年?


凛「このクローバーは・・・精神的にでも体力的にでも、私が疲れて動けなくなるまで私を追い立て続けるんだよね・・・」


まずわかっていることを口に出して確認する


凛「で、そのクローバーは今のところ、この世界すべてを覆っている・・・だから安全なエリアを探すのは難しい」

緑の大地、赤い空、クローバークローバークローバー

三つ葉、三つ葉、三つ葉


凛「そもそも・・・この世界は何?」


ビルもない、武器もない、青かった空は真っ赤、まさか第二ステージということはないでしょ

それに執拗なまでのクローバーの存在感、推測できる可能性の中で最も信憑性が高いのは



凛「・・・智絵里の能力、だよね・・・」



サッカーボールが巻き戻るだの、一輪車で壁を走るだの、尾行能力だの、鞠に変身できるだの

それどころの規模じゃない。

これはおそらく仮想空間の中に仮想空間をもう一つ作っているということなんだろう

もちろん晶葉じゃないからそれが有り得ることなのかは分からない。実はただ幻覚を見せられているだけで、私の本体(?)はまだビルから落ちたあとの地上に横たわっているという可能性もある

幻覚?そもそも仮想現実自体がハイクオリティの幻覚みたいなものだ。


だから問題はやはり脱出方法を探すことの一点だ



私は歩きながらそう結論づける。ここはゲームオーバー後の世界じゃない

だから出口はある。ビルから落ちた私がどうなってこうなったのかはわからないけど



凛「私はまだ、終わってない」




しっかりと自分に宣言する。


私はクローバー畑の中にぐるっと大きく円を描くように歩いたあとその場所に着いた


凛「脱出に使えそうなのは、ここぐらいだよね」







どう見てもドアが枠と戸が突っ立ってるだけにしか見えないけど、仮想現実ならこの扉を開けたら出入り口、なんてことも十分ありうる

足を止めずに扉の周りを観察する

木製みたいだけど所々にあまり派手になりすぎないような金属製の装飾がされていて、

さっきは気づかなかったけどその一つ一つに四つ葉のクローバーの刻印みたいなのがついている

後ろに回り込む、このドアノブは前も後ろもドアノブに鍵がつけられているタイプだ、これじゃあどっちが入口かは分からない

鍵穴らしきところに穴の周りをふちどるようにやっぱり四つ葉のクローバー模様


凛「・・・・・・・・・」

歩きながら足元を見る、三つ葉のクローバーが私の靴に踏まれて、それでも気丈に起き上がっている


三つ葉 三つ葉 三つ葉 三つ葉


目の前の扉のシンボルは四つ葉


三つ葉ばかりの世界に一つだけ四つ葉をイメージした扉

扉の鍵穴にも四つ葉


凛「いや・・・」


凛「いやいや・・・」


凛「いやいやいや・・・まさかとは思うけど」


足を止め、視線を上げる

見渡す限りクローバーだらけの世界


みたところ三つ葉しかない




凛「(でも、もしこの中に一本だけ四つ葉があったとしたら?)」




靴を登ってきた根が足首にまで絡みつき始めた





凛「(決まってる、その四つ葉はこの世界じゃ特別な意味を持つはず・・・)」




一瞬気が遠くなりかけたが思い直して足首に絡んだ根を振り切る


ぶちちちっ!





凛「(例えば、四つ葉のクローバーが脱出の鍵、具体的には扉の鍵になっているとか・・・)」





しかし根をちぎるために振り上げた足は次の一歩を進めない


まさかまさかと思うほどほかの可能性を信じられない、

もしそうだったと思うと足が震える、




凛「まさか、扉の鍵は四つ葉のクローバー・・・とか?」




地平線の向こうまで広がっているであろう三つ葉のクローバー畑の中で私はポツリとつぶやいた


第一問

24階建てのビルに入っている机の数を考えて答えよ

第二問

地平線まで視界を埋め尽くすクローバーの本数を考えて答えよ

第三問

その中から少なくとも一本以上、四つ葉を見つけ出せる可能性を考えよ



ゲーム開始?分経過

【ERROR!】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


ジメジメしたところが良い

トモダチを増やすのが良い

自分達が成長するのも良い


私たちは足を授かり移動を知り


私たちは意志を授かり希望を知り


私たちは擬似の身にて繁殖を望む



ひだの間に音を感じる

傘が誰かの声に震える

柄が悲鳴を感じ取った


あの音を知っているあの声を知っているあの悲鳴を知っている


ジメジメしたところでも、トモダチを増やしているところも、成長しているときでも


あの声は私たちに注がれていた


ゆっくりと、愛を囁くようにかけられていた声が、今は恐怖に乱されている


なんとかしなくてはこの声の主には恩がある


愛情はトモダチを通して十分に受け取った


ジメジメとは言わずとも、今の私がいるところもそれなりの湿度と温度だ


恩に報いるには余りある


授かった足に力をこめろ、柄と傘とひだを震わせろ



まずは

この着ぐるみとやらを内から突き破ってみようではないか


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_____________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_____________

 輿水幸子  210/300


_____________

_____________

 白坂小梅  210/300


_____________

_____________

 星輝子+  210/300


_____________




仁奈(ボット)「な、なな、なんでやがりますかあああああ!!!???」



身動きの取れない三人のうち、その一人輝子に噛み付いたまでは良かった

着ぐるみとはいえ《M・M・E》に強化された牙の威力は絶大だった

あとは何度か食んでいれば一人ずつ始末できたし、ユニットだったら一網打尽にできたはずだったのだ

翠の能力が発動している間、その体は60メートル地点で地面に固定されるので、噛み付いたとしてもそのまま地面から引っこ抜くことはできないが

逆に言えばどんな攻撃からも逃げられることはない。

《規律反背》《U=パーク》は一方的殲滅が可能な組み合わせのはずだった。


その着ぐるみが突き破られるまでは


幸子「輝子さん!大丈夫ですか!?いえ大丈夫じゃないですね!・・・あぁもうなんで足が動かないんですか!!」

小梅「...しょ、しょーちゃん...い、いまそっちに...あぅ、動けない...」

輝子「い、意外とジメジメしてたぜ...きょ、恐竜の、口の中ってのは」

幸子「実は割と元気なんですか!?」


ついさっきまでティラノの牙から致死級の攻撃をくらっていた輝子に二人が声をかける


そして次に、目の前で起きた激変に三人揃って目を向ける




仁奈(ボット)「仁奈のキグルミに、なにがおきてやがりますかあぁあ!?」



ティラノサウルスそのものの巨体が悶えながら壁や地面をのたうち頭を打ち付けている


幸子たちは足を縫い付けられたままその情景を見守るしかない


幸子「あの、・・・あれって・・・」

小梅「しょー、ちゃんの.........」

輝子「フヒ...き、キノコ」







ビッグキノコ「FFFFFFFFF!」


仁奈(ボット)「ティラノのボディになんてことしやがりますかぁあ!??」


仁奈のティラノサウルス。

その喉元の布地をキノコが突き破っていた。

いや、ティラノの喉を食い破るような大きさはとてもキノコとは言えない

幸子「い、いつの間にあんなキノコ仕込んだんですか・・・?」

輝子「いや、えっと、あ...そ、そういえば...い、一匹だけ出したけど」

小梅「で、でも...な、なんでこのタイミング、で......?」

幸子「き、きっと輝子さんのピンチにキノコさんも本気を出したんでしょう!」

輝子「フ、フヒヒ、で、でもここから逃げられ...ない」

暴れる恐竜を前に三人は各々言葉を交わすしか出来ることがない

依然として足は動かないのだ。今に暴れる仁奈の尻尾が三人に振るわれてしまうかもしれない

自慢の着ぐるみを傷つけられてひどく動揺している。ボットとしては9歳児をモデルにしているのだから仕方ない


仁奈(ボット)「仁奈のティラノがぁあ!?」

仁奈(ボット)「こ、こうなったら!仁奈のとっておきの着ぐるみに着替えてやるでごぜーますよぉ!!」


だからいきなり事務所に向けて引き返し始めた、ティラノの体を振り乱しながら

それは相当の混乱の最中の判断だったとはいえ戦略的撤退だった




だが事務所からすれば見境なしの突進にしかならない


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ズンンン・・・・・・


未央(ボット)「ちょ、ちょっと!?いきなり変なきのこが生えてきたと思ったら仁奈ちゃん戻ってくるよ!?」


卯月(ボット)「あれって・・・こっち見えてないよ、ね?」


小春(ボット)「このままじゃティラノさん、事務所にぶつかっちゃいますよ~?」


雪美(ボット)「..........翠...!」


翠(ボット)「......仕方、ありませんか...」


ズンン!!


戦況は簡単に二転三転する

論理的判断だけではそれを予測するには足りなかった

ボットとはいえ中身は十代の少女と年齢一桁の子供、その揺り返しは大きい

圧倒的有利だったはずの状況から一転、味方が脅威となって自分たちを襲ってきていた



翠(ボット)「................」



その事実を重く受け止め、自分の未熟さを噛み締め、翠は口を開いた



翠(ボット)「......能力、解除...」



四射がリセットされる。そして翠の手に新たに四本の矢が現れた



ズンンンン!!!



仁奈(ボット)「に、に、仁奈のティラノを修理させてほしーですよぉお!!」



事務所に向かって巨大な恐竜が突っ込む

星型ディスクも何もかも蹴散らしながら、無我夢中で突進する


未央(ボット)「に、仁奈ちゃーーーん!!先に能力解除して!!」

卯月(ボット)「ああ!仁奈ちゃん聞こえてないよ!」

小春(ボット)「私の能力も間に合わないです~」

ヒョウくん「・・・」

雪美(ボット)「..........」


ズンンンンンンンンンンン!!!!!!!!


ティラノサウルスが転びかけながらも尻尾を他の建物に乱暴にぶつけながら無理にバランスをとって猛進する


その頑強な後足が事務所へ到達、否、衝突するまでの最後の一歩を踏み込んだ






カツッ!!!







その恐竜の足元に矢が突き刺さる


《規律反背》再度発動




翠(ボット)「まさか、仲間に使うことになるとは.........仁奈さん...一度離れて、落ち着いてください」


膨大な運動エネルギーを持った突進が急停止する


仁奈(ボット)「な、なにしやがりますか!?」


首からキノコを生やしたティラノサウルスが後退していく。ビクともしないはずの古代の暴君が引っ張られていく





雪美(ボット)「...多分...輝子.......能力...持ってた...」

未央(ボット)「くぅ~!!油断した!!」

翠(ボット)「なんにせよ、まずは仁奈さんを介抱しないと...」

卯月(ボット)「え?幸子ちゃんたちは?」


翠(ボット)「............」

卯月(ボット)「?」

小春(ボット)「能力がリセットされた隙に逃げたみたいです~」



仁奈が引き戻された場所、さっきまで輝子たちに噛み付いていた場所には、

もう誰もいなかった





ゲーム開始50分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)



プレイヤー側の戦闘放棄により続行不可能


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



現実世界
チャプター
池袋晶葉&一ノ瀬志希




志希「泰葉ちゃんってね・・・たんぽぽみたいな匂いがするんだよ!」



晶葉「・・・・・・ここにいない人間の話をされてもな・・・」



そこは相変わらず薄暗く、

機材の山、コードの川、人が入れるサイズの大型カプセルの畑になっていた

唯一の光源、巨大なディスプレイと複数のサブ画面の前で晶葉は難しい顔を、

その後ろで座布団もしかず地面に寝そべりながら志希がゆるい顔をしている


志希「こうね、なんていうのかな?たんぽぽみたいに深く根を張ってる、というか簡単にはブレない、秘めたる心根、、そういう力強さを感じるんだよね・・・・・・泰葉ちゃんをハスハスすると♪」


晶葉「褒めるのはいいが事務所の先輩に何してるんだ君は」


志希「ん~?・・・コミニュケーション?」


晶葉「意思の疎通は双方の合意の上に成り立つものだぞ」


志希「じゃあ違うかー」


晶葉「おい、どうやって匂いを嗅ぎに行ったんだ合意じゃなかったのか!?」


志希「気分の上げ下げが激しくて自分を見失いそうになったときは泰葉ちゃんの匂いを嗅ぐといいね!」


晶葉「話をそらすな。そして誰に勧めているのだ誰に」



そんなやりとりの間も晶葉は目の前の画面から目をそらさず、指はキーボードの打鍵を止めていない


そのまましばらくキーを打ち込む音が鳴り続ける






晶葉「・・・・・・ふぅ」


志希「おつかれー、ところで何してたの?」


一段落着いたらしい晶葉の肩に志希が顎を乗せた。晶葉は今更その程度のことには構ったりしない


晶葉「CHIHIROからいくつか不審なエラー情報が送られてきてな、こっちからいくつかコマンドを入力していたのだよ」

志希「えらー・・・?」


晶葉「ああ、プレイヤーが消えただの、ボットが消えないだのそんな内容だ。その程度のことは予想の範囲内だったから対処は易いがな」


志希「ふぃーん。・・・とゆーか、そもそもCHIHIROってなに?」


晶葉「うん?説明しなかったか?」

志希「いや、企業の人にしてたのは聞いてたけどー」

「・・・ああいう、肩書き重視の大人を相手にする用の、いちいち回りくどくて面倒な表現を使った説明じゃなくて、晶葉ちゃん自身の言葉で聞きたいなーって?」


晶葉「・・・そういう砕けた話は私の助手にしかしない」


志希「今は私が助手だよ♪・・・いやむしろ役割分担してるしー、いいじゃんいいじゃん」


志希はごろごろと猫のように晶葉の肩に顎をグリグリと押し付ける

晶葉も変に意地をはるつもりもなかったらしく、ひとつため息をつくと説明を始めた


晶葉「CHIHIROというのは、正式名称は割愛するが、仮想現実空間を観測するために私が1から作ったボットだ。」

「他のボットと違ってこいつにはアイドルの人格がトレースされてたりはしないが、こいつもれっきとした私の作品、ロボットの一つだよ」

「今回の企画にあたってはただ観測する他にもある程度の干渉を許可しているがな」


志希「干渉って何してるの?見てるだけのために作ったんじゃないの?」

晶葉「それは一応本来の役目ではあるのだが、今回は不確定要素のシュミレーションというのがある以上、見ているだけでは困るのだよ」

「世界を歪めようとする要素があれば逐次修正するか、現実にいる私たちに報告してもらわねばな」

志希「世界を歪める、というと」




晶葉「決まっている、ボットやプレイヤーが持つ能力のことだ」




「仮想現実における究極のイレギュラー、最上のバグ、不確定要素の代名詞」


「その使用による仮想空間への傷や後遺症を空間へ干渉し、是正しているのだよ、CHIHIROは」


志希「へぇ、能力って晶葉ちゃんが作った道具じゃなかったの?」


晶葉「私が作ったのはキーアイテムだけだ。キーアイテムがどんな能力を開拓するのかは私にも分からん」


志希「?どゆこと?」

晶葉「簡単な話だ、不確定要素が見たいならその種を撒けばいい」


「キーアイテムは特定アイドル専用の、仮想空間の一部を改変するウイルスだ。」


「そのウイルスがアイドルと仮想現実の関係性を崩して作り変えることで能力は顕現する」



志希「・・・・・・おおう、つまり晶葉ちゃん、自分で自分の作ったものを壊そうとしてるわけ?」


晶葉「ばかいえ、あくまで不確定の何かを起こすきっかけのためだ、破壊ではない。取り返しのつかないレベルの崩壊を避けるためにCHIHIROと私が仮想内と現実から見ているのだよ」


志希「はへー、色々考えてるんだねー。」


晶葉「・・・それだけわかってもらえたら十分か。ちなみにこの仮想空間そのものにもなかなか面白い仕掛けがあってな・・・」



だんだん得意げになってきた晶葉が志希が聞いたこと以上の内容を説明しようとした。

が、一旦中断して画面を再確認する


そこには一つのアイコン


晶葉「ちょうどいい今私が説明しようとしていたことだ。みたまえ」


志希「ん?これって・・・」


それはCHIHIROからの、

仮想空間内の変化を報告するボットからの連絡だった



































ゲーム開始60分経過


『夜』を開始します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
泰葉ちゃんは出ませんごめんなさい



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、北条加蓮
2、緒方智絵里
3、小日向美穂


次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮

ゲーム開始34分経過

_____________

 北条加蓮  80/100 


_____________



空が青い


仮想空間だからもっと奇抜な色でも面白かったかもしれないのに

まぁ、緑とか黄色の空じゃあ、こうやって縁側に座って見上げるには不合格だろうけど


加蓮「あー、つかれた」


拓海さんを倒してから大体十分後くらいに

アタシは休憩していた

住宅街から脱出することも考えたけど、銃弾のストックもないままにフラフラするのは危険だったから

手近な家、田舎に帰ればありそうな和風の木造建築に入り込むとその縁側で足のしびれが引くのを待ち、呼吸を整えた

都会っぽいところと田舎っぽいところが混在していて、そういう不自然なところがここが仮想であることを再認識させてくれる

ちなみに武器として拓海さんが使っていた木刀が残ったので、アタシはそれを頂戴してある


加蓮「んー・・・」


アタシはぐっと背伸びした後にアキレス腱のあたりを伸ばして、しびれが抜けたかを最終確認する




ターーーーーーーーーーン・・・



加蓮「!?」


どこか遠くから銃声、それもアタシのリボルバーとは質が違う、もっと間延びしたような、狙撃音だ。

思わず右手に銃を構えて腰を浮かせ、周りを警戒する。


狙撃音はそのあと二回聞こえたけど、あたしの近くに何かが来ることはなかった


加蓮「・・・・・・・・・」


加蓮「・・・ふぅ、」


それでもしばらくは臨戦態勢のままにして、たっぷり十秒数えてから構えを解いた


加蓮「リボルバーどころかライフルまで使ってるの?この模擬戦闘。まさかバズーカとか戦車まで出てくんじゃないでしょうね・・・」


なんにしてもこの戦いはアタシの与り知らないところでもガンガン進んでる。

そろそろ復帰しないと置いてかれちゃうな。それは困る


加蓮「じゃあ、最後にこの家の中をちょっと漁らせてもらおうかな」


アタシは縁側を越えると屋内に引っ込んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
家屋の壁を何かが走っている


ねずみや小虫のように、重力に引かれることもなく


それは見た目は一本の線、壁に入った切り込みのようだった


その切り込みがするすると壁を這い回りながらどこかへと進んでいく


ピタリ


やがてその切り込みは動きを止めた

そうしてみるとその壁にはまるで最初からそこに切り込みがあったように見えてくる


ぎぱっ


切り込みが内から割り開かれる


ぎょろっ


その中には瞳


壁から目が生えていた



「(..........見つけたわ...)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

台所には包丁もあったけど、多分木刀の方がいざって時に使いやすそうだからパス


手当たり次第に引き出しを開けてたら銃弾の入った箱を見つけた、アタシのリボルバーにはサイズが合わない、もったいないけど持ち運ぶには重いのでここに置いていく


こたつの上にはミカンの代わりに飴玉が三つほど置かれていたので一応もらっておく


あとは最低限の「家っぽいもの」例えば風呂とかトイレとかの設備があるだけで怪しいものはなかった


加蓮「そこそこ大きい家だと思ったけど一階はもう調べ終わっちゃった、二階も何もなさそうだけど行っとこっと」


木造二階建ての階段を上がる、ポケットの中で飴玉がゴロゴロしてる


飴玉、とうことはこれって杏のキーアイテムだったりするのかな?でも三つもあるけど・・・


階段は短くすぐに二階に到着、物色開始


二階には寝室しかなかった、電気スタンドがあったけどそんなものは武器にはならない。

あとは何もないだだっ広い部屋が一つ。

時間の無駄だったかな。念のためこの部屋を一周してから引き上げようかな


加蓮「いくらリアルでもこんだけ殺風景な家だと現実味が薄れるなぁ・・・」


適当に家具のある部屋もあればこんなふうに何もない、ただ壁と床と窓だけの部屋もある。


アタシは天井に隠し扉でもないかと思いながらその部屋をぐるりと周り、締めに窓から外を眺めた。

周りには二階建て三階建ての住宅、その向こうにそれより少しだけ背の高いテナントビル。


視線を左にやればそれよりも遥かに背の高いビルディングの列が遠くに

右にやれば住宅街の終わりの方に小高い山が近くに見える、

山は一部が舗装されて道路にされていた



アタシは、なんとなく人心地付きたくなってさっき手に入れた飴の一つを手にとった

もしかしたらスタミナ回復アイテムだったりして


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





あまり序盤からプレイヤーの数を減らしたくはない




ボットとはいえ、見つけた端から全員各個撃破していくわけにはいかないのだから



こちらは3人、プレイヤーは18人だから単純に考えて六倍の戦力差



もちろん他のボットだっているでしょうけど、私たち以外のボット全員がやられる可能性もある



そう考えると無闇矢鱈と戦闘を行うのはやはり避けたい



『夜』がくればあまり悠長なことも言ってられないけれど、まだそれまでは時間がある。


動けるうちに動いておきましょう



理想は一網打尽


プレイヤーのスタミナと武器を削りながら追い込んでいく


そして少しずつ弱らせながら一箇所に集め、


一気に叩く



堀裕子はちょっとした気まぐれで地下に送ってみたから今は放置、

早坂美玲は逃げたきりまだ見つかっていない、捜索中




じゃあ、まずは目に付いたこのプレイヤーから行ってみましょうか

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


加蓮「あっ」


包み紙をはがした時の弾みで飴玉が転がり落ちた


毒々しい色をした球が床に落ちる


飴玉が割れることはなかったけど、床に落ちた物を口にするのはやや抵抗がある


加蓮「あっちゃあ・・・」


仮想現実だからホコリとかバイキンの心配はしなくていいと思うんだけど

現実の方での生活の習慣としてやっぱりこれを口に入れるのは・・・


でも捨てっぱなしは良くないので一応拾おうと身をかがめた


加蓮「・・・実は貴重なアイテムだったりしてね」


膝を曲げず、体の柔らかさを使ってヒョイっと飴を素手で掴むつもりだった


コロッ


飴玉が床を転がってアタシの指先からずれた。拾い損ねる


加蓮「あれっ?」


コロコロコロ・・・


飴玉は引っ張られるみたいにアタシから離れて転がっていく


そのまま壁にぶつかるかと思ったら、飴はその手前で急停止する

よく見ると床の一部に小さい割れ目ができていて、そこに飴玉がはまりこんでいた


ぎゅぱっ


割れ目が広がった、

違う、割れ目じゃない

あれは口だ、唇の薄さからして女性のもの





加蓮「・・・って、はぁあああっ!??」



床の上にいつの間にか出来た口が転がってきた飴玉を唇で挟んでいる!?

なんで!?


ばりっ ぼりっ ごりっ


そのまま「口」は飴玉に歯を立てると一気に噛み砕いてしまった


加蓮「壁の次は床から出てくるの!!?」


アタシはその唇に銃を向けた。

壁いっぱいの大きな口とかじゃなくて標準サイズの唇だし、アタシの足元に現れたわけじゃないからそんなに脅威じゃない


そのはずだけど、なんの予兆もない出現から考えて、

アタシが後手に回ってしまったしまったのは明白だろう



ぼりぼりぼりぼりぼりぼりっ


飴を噛み砕く音がここまで届く


??「...口は災いの元......なればこそ、それを敵視するのは何も間違ってはいないわ...」



??「でも残念ね...そっちは囮よ......」



銃を構えたアタシの腕が誰かにつかまれる

引き金にかけた指をがっちり押さえ込まれた


加蓮「・・・え?」

壁から生えた手に

・・・って、また壁から生えてくるパターン!?


壁はコンクリートの打ちっぱなしだったはずだ。

そこからコンクリートと同色の灰がかった細い女性らしい腕がこっちに伸びている

窓際にいたアタシは十分届く範囲だったんだろう


加蓮「ちょっ、は、はなしてよ!」


力任せに振り回してもまるでその腕そのものがコンクリート製になったみたいにビクともしない

こっちの腕がコンクリートに埋め込まれたみたい


??「...もうすこし......待っていて頂戴...現実の理から外れてなお、流れる時間に意味があるのならば、だけど...」


ぎょろり


アタシの手と銃をまとめて掴んでいる腕と壁の付け根、

その少し上の方に今度は目玉が生えた、この言葉はさっきから飴玉をかじっている口とは別の方向から響いてくる



??「...今からあなたの仲間に会わせてあげるわ...」


??「......厳しい道程になるでしょうけど、それまで体力を尽きさせないようにね...」



ずずず・・・


アタシの平衡感覚が狂う

いや狂っているのはアタシの感覚じゃなくて、周りの方



??「......私にとってこの世界の物質に明確な差分は存在しない...全てが0か1のリズム」



そうだ!


飴玉が転がり始めた時に気づくべきだった!



??「そんな私にとって...それらのリズムの中に自分を介入させるのは造作もないこと......」



この床、この部屋、いやそれどころじゃない

多分この家ごと・・・



??「...貴方たちがこの世界で見てきた......無機物と定義される物体の内のいくつか......」



傾き始めてる!!



高峯のあ(ボット)「それはもう私の一部よ」




ずずずずずずずずずずず・・・・・・






ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
双葉杏&諸星きらり


パタン


きらり「にゅ?」


パタンパタン


杏「え?なに?」


パタンパタンパタン


未だに再会の喜びを噛み締めるきらり、なされるがままの杏


仲睦まじいとも言える二人の耳に妙な音が届く


パタンパタンパタンパタン


それは例えるならタイル

白と青で交互に並んだ1メートル四方の薄い板がどこからともなく現れて地面に敷かれ始めていた

軽い素材で出来ているらしい、耳障りというほどでもない音量でピッタリと地表を埋めていく


パタンパタンパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ



四角いタイルを使って大きく四角形を作り上げるように、部屋に敷かれたカーペットの模様のように青色と白色が交互に並んでいく


きらり「杏ちゃん?なんか、ぱたぱたーってなってるゆ?」

杏「そうだねー、あれ、これ杏たち包囲されてない?」




パタパタパタパタパタパタパタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



その通りだった。外側から正方形の辺に沿うように、さらにその幅を小さくしていくようにタイルは公園の地面を埋めていく


角ばった螺旋を描くように、中空に突如発生した、としか言えない量のタイルがその中心のきらりと杏めがけて包囲網を狭めていった


杏「こ、これ絶対めんどくさいやつだよ!きらり脱出!」


きらり「おっつおっつばっちし!きらりん☆だーっしゅ!」


なんか知らんがヤバそう


自分たちが(正確には自分を担いでいるきらりが)踏んでいる地面を埋め尽くそうとしているタイル、

これが完成したらおそらくめんどくさい、杏はそう判断した


なんとなくタイルは踏まないほうがよさそう、きらりはひとっ飛びにタイルでできた包囲網の端を目指す


きらり「きらりーーーん・・・っジャーーーーーーーーーーンプ!!!」

杏「ぐえっ」


きらりが自分たちを囲むタイルを飛び越える、ドーナツ状にタイルで囲まれたエリアからその外に飛び出そうとする



カッコン


きらり「にょわっ!?」


だがもう遅かった

二次元的に二人を囲んでいたタイルは既に三次元での包囲に移ってしまった


次のタイルはただ地面に置かれるのではない、

突き刺さるように垂直に突き立ち、カーペットではなく壁を作り始めた



何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も垂直に突き立っていく


タイル敷きの地面同様に青と白の模様だ

今にも安全地帯、タイルのない地面に届こうかというきらりの右足がタイルでできた壁にはじかれる



カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン



きらり「にょ、にょわ~・・・」


杏「・・・もう杏しーらない・・・」


タイルでできた巨大な箱に二人は閉じ込められた、もはや空しか見えない

だが、さすがのきらりも空は飛べないのでそこから脱出するのは不可能そうだ


そして唯一出口らしい天井もタイルが埋め尽くしていく


杏「・・・これ閉じ込められた」

きらり「やばーい、真っ暗になっちゃうにぃ・・・」


日光がタイルに遮られていく


パタン


そして最後のタイル一枚分だけ開いたスペースから見えていた空も完全にシャットアウトされた


杏「うわ、真っ暗、眠たくなってきたよ杏は」

きらり「杏ちゃん、ここで寝ちゃダメだにぃ!」


密閉された暗闇の空間、だがそれは以外にもすぐに終わった

タイルのうちの何枚かが照明のように淡く光り始めたからだ

にわかに箱の中が明るくなる。青色の灯りが二人の顔を闇から浮き彫りにする

そして明るくなったことでその変化にも気づいた


きらり「杏ちゃん、あれ見て?」

杏「ん、なに・・・・・・飴?」


ぼんやりと青色に染められた小さな空間の中、

六枚のタイルで出来た立方体のテーブル

その上に飴が置かれていた


さっきまではなかったものである


きらり「杏ちゃん・・・」

杏「あ、怪しすぎる・・・」


閉じ込められた場所で出された飴、

いくら杏でも自分たちを閉じ込めた犯人も、このタイルの仕組みも分からない中で口にしようとは思わなかった


タイルの壁、床、テーブル

タイルづくしの世界の中で唐突に現れた飴玉


杏「杏、密室クリアするゲームとかもしたことあるけど、こういうのは見たことないな・・・手がかりが飴一つって・・・」

きらり「でも杏ちゃん・・・食べちゃ、めっ!だゆ?・・・あっ!!」


暗転


きらり「にょにょ!?」


その瞬間、すべてのタイルの照明が消え、暗黒が戻った


点滅


杏「あれっ?」


だが一瞬の後、また灯りが灯る、次は白いタイルから発せられる清潔な光が二人を照らした


きらり「あっ!」


また変化が起きていた



きらり「飴、なくなっちゃったにぃ?」




タイルのテーブルと一緒に飴玉がどこかに消えている

さっきの明滅の間に空間が変化していた


次に杏たちの目の前にあったのは二つのテーブル、またもタイルの立方体でできたものだ


杏「今度は台がふたつ・・・で、その上にあるのは」


一つのテーブルの上には黒光りする鉄塊

もう一つには鋭く尖った細い金属




光源の安定しない狭い密室、



そこに閉じ込められた二人の前に様々なものが差し出されるように現れる





最初に置かれていたのは飴だった









そして今、二人の前には銃と刀が置かれている



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




乃々(ボット)「もりくぼはなにもいりません」





乃々(ボット)「飴もムチも、アイテムも武器もいりません」



乃々(ボット)「なんでも持って行ってください」



乃々(ボット)「ただ静かに、誰にも邪魔されず暮らしたいだけです」



乃々(ボット)「そのためならなんだって差し上げましょう」



乃々(ボット)「もりくぼにとっては、そんなの、能力内にしまっておくだけでコストがかかるだけの重荷ですし」



乃々(ボット)「なんでもあげます。もりくぼは平穏のためなら全てをなげうちましょう」



乃々(ボット)「でも、あなたたちのスタミナは代わりに置いていってください。でないともりくぼは死んでしまいますから...」



_____________

 森久保乃々+ 87/100


_____________

_____________

 双葉杏+  99/100


_____________

_____________

 諸星きらり 99/100


_____________





ゲーム開始37分経過


諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
起承転結でいうと承


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、三好紗南
2、渋谷凛
3、神谷奈緒

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子
6、VS高峯のあ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


ボットたちの動きに齟齬が生じ始めていた


非戦闘的な能力しか持たないゆえにプレイヤーを分断する作戦をとった八神マキノ


強力な能力を有するがゆえにプレイヤーを一固まりにして大戦力で一気に叩く作戦を実行する高峯のあ


真逆とも言える作戦、どっちがプレイヤーたちに有効なのかは結果が出るまでわからない


だが少なくとも、

自分たちの作戦を推し進めるにあたって、強力な実行力を持っていたのは後者の陣営だった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

住宅街が破壊されていく


膨大な質量に骨組みごと粉々に砕かれ、ごく普通の家屋ががれきへと転じていく


その巨大な物体は軌道上の家々を引き潰していく


そのさまは解体現場におけるブルドーザーの有無を言わせぬ破壊的行進に似ている


ただ今回に限って言うならその行進により住宅街にがれきで出きた太いラインを引いているのもまた家であったということか


おそらく和風の家屋、二階建てであったであろう建造物がまるで巨人のホッケーパックのように住宅街を滑りながら障害物となる他の住居を突き破っていく


まるでどこかを目指しているかのように一直線に、緩やかであるが決して速度を緩めることなく、破壊の行進を続けている


その家だけだはない、住宅街の外れ、都市郊外からも一件の3、4階建て程のビルが障害となる家をすりおろしながら動いている


このビルにも、先の日本家屋同様に中にはプレイヤーが閉じ込められたまま運ばれているのだろう




無機物と一体化する能力者、高峯のあ




寝返りを打つように、カメラに向けるポーズを変えるように、

彼女はこの仮想現実の地図を、破壊という画材で塗り替えていく


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その有様を黙って眺めているボットがいた。

彼女はプレイヤーを分断して各個撃破する気も、一網打尽にする気もなかった

ただどうせなら自分が納得する形、正々堂々としていて自分にも他人にも誇れる決着のつくような勝負を望んでいた


そんなボットが、最初に遭遇したプレイヤーが瀕死だったのは偶然か必然か




?「なんてゆうたか・・・日本の怪獣映画のなんかじゃあ、あの変な家よりもっとゴツい怪物が都会のド真ん中でビルとかなぎ倒していくんかのう」




標高的に周りより少しだけ高所となる地点、住宅街を見下ろせる位置に彼女たちはいた


一人は背が低く小柄な体躯で鉄柵に腰掛け、眼下の破壊行進を眺めている




手持ち無沙汰気味に膝に置かれた右手首には手錠がつけられている、

そして手錠の反対側には少女の手にはどう考えても不相応な大型銃がつながれていた

おそらくは、うっかり取り落とさないように銃と手首をつないでいるのだろうが

その不釣合いなサイズではまるで囚人につながれた鉄製の重しのようにも見えた


?「おうおうなんじゃ・・・あの家ども、こっちに来とるけん、逃げたほうがよさげかもしれんのう・・・」


そう言ってもうひとりの少女に声をかける

体を振り向かせた時に手錠の鎖がチャリリと鳴った

声をかけられたもうひとりは、鉄柵から少し離れたベンチにぐったりと体重をかけ力の入らない体で必死に意識を保っていた



奈緒「・・・あぁ、そうかも・・・でも、どこに、逃げるってんだ」









村上巴(ボット)「さぁ・・・何処にしたもんかのぅ、まぁうちも考えるけん・・・ワレのことやろ、必死こいて頭ひねらんかい、スタミナも空っ穴なんじゃろ?」


梅木音葉との戦闘で即死は免れたものの虫の息と言っても過言でない状態で奈緒は言葉を返す


巴(ボット)「なんにせよ、ワレみたいなボロボロの相手なんぞお断りじゃ」



巴(ボット)「かといって見逃すゆうのも、やっとこさプレイヤー見つけた身ぃとしては癪やけん・・・奈緒さん、せめて半分くらいは回復してもらわんとな」



巴(ボット)「死にかけの相手にとどめさしただけ、そんなんうちの女が廃るけえの」


まるでもみじのように小さい掌に無理に大型銃を握り込み、巴はニッと笑った


ボットやプレイヤーの持つ能力は仮想空間にとってのイレギュラーである


そしてボット、村上巴


模擬戦闘という奸計と武力が蠢く戦争の場において決闘めいた古風な勝負のつけ方を望む彼女もまたボット全体にとってのイレギュラーだった


奈緒「・・・なあ、なんで、・・・あたしのこと助けて、くれたんだ?」


巴(ボット)「あぁ?寿命伸びただけで何を勘違いしとるんじゃ奈緒さん、そのうち、うちときっちりやりあってもらうけえの、今のうちに精々覚悟決めときいや」





ボットは蠢く

プレイヤーと共に






ゲーム開始40分経過

神谷奈緒VS村上巴(ボット)

開始延期


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それはじっと待っていた

役に立つ時を、真の機能を発揮する時を

地面に横たわりながら、その手が触れる時をじっと待っていた

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

麗奈の体に散弾が食い込む、そして貫いた

もちろんこれはゲーム、その弾痕が痛々しく赤黒い穴を残すことはない

だが、その衝撃は13歳の体躯を容易に吹き飛ばす


麗奈「っぎ・・・!?」


背後は最悪なことに窓だった


この部屋に僅かながら光を取り込んでいた窓のガラスを突き破る


二階から麗奈の体が落ちていく


亜季「麗奈っ!!」

自身も脇腹のあたりを銃弾に貫かれながら亜季が自分の仲間の名を叫ぶ


同時に窓に向かってスタートダッシュを踏み込んだ


亜季「(麗奈から離れるわけにはいかない・・・!二階程度なら受身を取れば飛び降りられるであります!!)」


周子(ボット)「いや、させないけどね?」

その前に周子が立ちはだかった

策がうまくいったのが嬉しいのか、尻尾がパタパタと喜悦を表すように振られている


だが亜季は止まらない、所詮は幻影、物理的に食い止められるなら止めてみろ

そしたらそれが本物の周子だ、こっちから逆にCQCを叩き込んでくれる


周子(ボット)「ユニットは分断するほどやりやすいんだよねー、一人倒せばみんな倒したことになるし」


周子は動かない、

まだ自分の使う幻覚の有効範囲が視覚限定であることを見抜かれていないと高をくくっているのだろうか

余裕がその立ち姿から溢れていた


亜季「ふっ!!」


その体にタックルを決める、だが周子の体は煙のように散らされるだけで亜季に反作用が来ることはなかった

亜季は別にそのことに驚いたりしない、むしろ好都合だ

さぁ飛び降りろ、窓辺まで数十センチ














周子(ボット)「ばぁん」


その数十センチの短い距離にいた本物の周子が引き金を引いた



パン!



彼女は自分の幻覚の姿の、ほんの少しだけ後ろに待ち構えていたのだ

幻影を亜季が通過してくることを見越して


銃弾はほぼ真正面から突っ込んできた亜季の額を少しずれ、こめかみを掠めた


亜季「くぁっ!!」


勢いを殺され、横に倒れこむ


下手すればそのまま即死だったが、やや前傾態勢だったためそれを免れたのだ


周子(ボット)「一体全体、何が嘘で何が本当なのかなー、あたしもわかんなくなってきたよ」


亜季「くっ・・・」


周子(ボット)「でも、これは実弾だから安心してね」


ダンボール箱を巻き込んで倒れた亜季を見下ろすようにしながらハンドガンを構える





周子(ボット)「じゃね♪」







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それは足音を感じ取った

自分に駆け寄る音だ

それはこの足音を知っている

それは足音の持ち主に拾い上げられた

小さな手が自分をしっかりと掴んでいる


それはキーアイテムだった


地面に放置されたままだったが、ついに今その真価を発揮した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こんの・・・バカギツネーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


周子(ボット)「!!?」


亜季「え!?れ、麗奈?」



ビシッ



窓に背中を向けていた周子の背中に軽い何かがぶつかった


窓の外、一階から投げつけられたのだ

周子は本物の自分の背中にあたり、床に落っこちたそれに目を向ける


周子(ボット)「・・・おもちゃ・・・厚紙?」


床の上には手作りのおもちゃに使われる部品のような、丸めた厚紙をテープで留めたようなものが落ちている

どう見ても丸めたゴミだ


麗奈「これでも喰らいなさい!!」


引き続き麗奈は手に持ったガラクタを二階の窓の中、周子に投げつける


二階から落とされたあと、拾ったのだろう

ダメージからの復帰の早さは驚嘆に値する

これも骨折のない仮想現実のなせるわざか



周子に投げたのはそのガラクタの一部



厚紙やガムテープで作られたジョークグッズの一種、


不発の、使い物にならなかったはずのガラクタ


麗奈のボットが使っていたオモチャ



スペシャルレイナサマ砲

ボットが消えたあともその場に残り、だが麗奈本人からはスルーされていたそれ、


手近にあった投げやすいものだから、という理由だったが、それはついに麗奈に拾われた


小関麗奈のキーアイテム


ピコン


そして麗奈の能力が発動した



それは、ボットと違い不発などではなかった





今回はしっかり爆発した







本物の周子はこの瞬間、初めてダメージを受ける






ゲーム開始30分経過

小関麗奈 能力獲得

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
佐久間まゆ


まゆ「これで、音葉さんは倒せましたかねぇ」


手近にあった机や椅子を組み上げて作った銃座

そこに置いたスナイパーライフルのスコープから目を離し彼女はそばにいた二人に確認する


紗南「・・・えっと、うん・・・」


紗南は手元のゲーム機を横や縦に傾けて確認する

画面はサーチモード

さっきまではそこに梅木音葉の情報が表示されていた

あとはゲーム機が反応した直線上に銃を向け、照準を合わせ

まゆが引き金を引いただけ


サーチモードの効果範囲は非常に限定されている

だからゲーム上部の直線上にいるアイドルにしか反応しない

しかしそのおかげで紗南は春菜の位置に気づけたし、音葉がいる方角を探知できるのだから痛し痒しといったところか

遠い距離であるほど微調整が必要であるから簡単なことではないが

漠然と近くにいる、という情報だけでは遠距離狙撃などとても無理だったことを考えればやる価値はあった


美穂「なんていうのかな・・・紗南ちゃんらしい能力だね」


紗南を膝の上に載せた美穂が感心したように言葉をもらす

今はぬいぐるみの状態ではない人間の形態に戻っている

ぬいぐるみはというと紗南と同じように美穂が膝に抱いていた


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上条春菜を倒したすぐあと、そのボットが手に持っていたロングレンジ用の銃が持ち運べるかを確かめていたところに紗南が現れた

その様子はどうみても疲労困憊、長時間ストレスにさらされた者のそれ、

さらに謝られるわ、春菜を倒したお礼を言われるわ、の大わらわだった。



美穂「紗南ちゃん、もうそろそろ落ち着いた?」

紗南「うーん、まあ大分マシになった・・・」

紗南をぬいぐるみと一緒に抱きしめながら美穂がその顔を覗き込む

美穂「そっか・・・・・・よかった」



まゆ「それにしても、紗南ちゃんも能力があるんですか・・・まゆ、ちょっと焦っちゃいますねぇ」



ライフルは置いたまま、まゆは近くにあった椅子に腰掛ける

美穂「そんな焦らなくても・・・まゆちゃんは今でも十分強いよ?」

紗南「そうだよ、あたしなんてボット一人相手に大苦戦しちゃったし、ゲームっていう割にはかなりガチだもんこれ」


まゆ「うふふ、ゲームである前にお仕事ですから・・・手抜きは許しませんよぉ?」


美穂「ま、まゆちゃんが、許さないなんて言葉を使うとちょっと怖いかな・・・あはは」

紗南「・・・う」


まゆの服には相変わらず刃物が仕込まれている、それに美穂はまゆの容赦ない攻撃も目の当たりにしていた

いま、こともなげに音葉を狙撃したことといい、その外見と行動力に裏打ちされた言動は底知れぬ恐ろしさがあった


紗南「えっと、あっと・・・じゃあ!そろそろ次のボットとか探してみよっか・・・?」

美穂「そ、そうだね!」

まゆ「・・・?」


少しばかり肌寒くなった空気を払拭するように紗南がゲーム機のスイッチを入れる

使うのはもちろんサーチモード、コントロールモードはまだ使いこなせてないためしばらく使うことはなさそうだ



まゆ「あ、それでしたら・・・智絵里さんも探してくれません?」

紗南「智絵里さん?まぁプレイヤーも探せるけど・・・個人を指定して探したりは難しいよ?」

まゆ「いえ あくまでできたら、の話ですから・・・最優先はやはりボットですので」

美穂「まゆちゃん・・・」

紗南「えっと・・・」


ゲーム機からガリガリと稼動音が小さく鳴る

このあとしばらく角度を調整すればそのうちどこかしらの情報をキャッチする手筈となっていた

そして方向の探知からすかさず遠距離狙撃。美穂が体を張ったおかげでライフルの弾丸が余計に減ることはなかったため残弾にも余裕がある




偶然ではあったとはいえ、まゆたちはサーチアンドデストロイ、敵を見つけて即座に討つ装備を揃えていた






紗南「あっ!見つけたよ、画面が反応してる!」


美穂「もう!?・・・音葉さんを見つけた時より早いんだね」


まゆ「ということはもしかして、近くに来ているのかもしれませんね」


次なる接敵にやや浮き足立つ二人と対照的にまゆは気を引き締める












紗南「でた、次のボットはのあさんだよ!」






美穂「のあさんもボットなんだ・・・プレイヤーでもおかしくなかったけど」

まゆ「紗南さん、名前より先に能力を教えてください、対策を講じた上で攻撃します」


探索と特定は終了

まゆは椅子から腰を上げるとライフルに手を添えた、視線は窓の外に向けている



紗南「のあさんの能力は・・・えっと?『オブジェクトとの同化』・・・?」

美穂「?それってどういう・・・」

まゆ「いまいちピンときませんねぇ、ほかの説明文はないんですか?」


紗南はそのシンプルな一文が表示された画面を見て

美穂は紗南の肩越しにやはり紗南の手元を覗き

まゆは説明の不十分さに紗南の方を振り返った

だから




のあ(ボット)「.......こういうことよ...」




一歩出遅れた


まゆ「!」

美穂「きゃあっ!!?」

紗南「ぼ、ボット・・・!」


のあは、いつの間にかすぐそば、三人が視線を外していた窓のこちら側、ライフルの銃座に寄り添うように立っていた


ひゅんっ


のあが右手をほぼ垂直に振り上げるとそれだけでその右手の軌道上にあったライフルは銃座ごと真っ二つにされた


一瞬のことではっきりとはわからなかったが、それはまるでライフルにのあの右手が溶け合うように同化して、そして分離されたように見えた

その証拠に間近にいた三人の耳には破壊音も切断音も聞こえなかったし、ライフルもあっさりと二つに断たれ、まるで今まで接着剤でくっつけられていたのが取れたのかと勘違いしかけた



まゆ「(なるほど、こんなに近くいいればそりゃ反応しますよねぇ)」


左手を突き出しながらスカートのリボンに差し込んでいた刃物を指に引っ掛ける

流れるようにそれを握りこんだままのあに突き刺す


のあ(ボット)「...さすがね...」



しかしその刺突は皮膚で止まった

否、のあの体から突き出てきたコンクリ片のようながれきに食い止められ刃のほうが欠けてしまった


紗南「ひぇっ!?どど、どうなってんのそれ!?」

美穂「ま、まゆちゃ・・・」

体から不自然極まりない物体をはみ出させた、悪趣味な彫刻のような姿に二人はおののく


まゆ「っく・・・!」

まゆは攻撃を休めない、そもそも伸ばせなくても手の届きかねない距離、逃げるのは敗北に直結する

反対の手、そこに細身の、メスに似たナイフを2本まとめて握る、まゆの手は小さいがそれでも握れないことはなかった


それを至近距離で投擲する



のあ(ボット)「......この世界に実体はない...故に私にもまた実体という言葉は意味を持たないわ......」

「....私も世界も、所詮同じ紙に同じインクで描かれた絵でしかないのよ......」



だがそのナイフはのあの細い胴にぶつかるとそのままするりと体に吸い込まれてしまう


まゆ「効かな、い・・・?」


やはり能力がないと、自分はポンコツなのか___


美穂「まゆちゃん!!逃げるよ!」


ぐいっ、と後ろから手を引かれる、美穂と紗南が逃走を決意したらしい


だがやはり一歩遅かった



ベギギギギギギギギギギギ!!!!!!


のあを中心として爆発的に広がったひび割れが壁と天井を網羅する


紗南「て、天井が崩れるよ!」


三人で出口に殺到する

だが、防がれる、塞がれる

天井から降臨した物体によって



それは巨人の手

灰色の、生を感じさせない無骨な手


コンクリのがれきの手の平、

建物の骨組みとなる鉄骨でできた指

割れた蛍光灯が爪のように指先で尖っている




廃材を利用した芸術作品、と言っても通りそうな外見のそれは三人を床に押し付けた

三人にとっては天井が崩れてきたほうがマシだったろう、この手にはがれきの重さに何か得体の知れない膂力が加味されているのだから


美穂「あうぅ・・・ふぇ」

紗南「づ、づぶれる・・・」

まゆ「こんなの・・・むちゃくちゃです!」


絶妙に、潰れないように力加減をしながら、それでも限界ギリギリの圧力でスタミナを削る


のあ(ボット)「...今はまだ苦渋の中、地に伏していなさい...けれど...貴方たちはまだ、永遠の眠りにつく刻ではないわ」


うめき声を見下ろしながらのあは静かに立つ



ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ベギギギギギギギギギギギ!!!!!!


のあを中心として爆発的に広がったひび割れが壁と天井を網羅する


紗南「て、天井が崩れるよ!」


三人で出口に殺到する

だが、防がれる、塞がれる

天井から降臨した物体によって



それは巨人の手

灰色の、生を感じさせない無骨な手


コンクリのがれきの手の平、

建物の骨組みとなる鉄骨でできた指

割れた蛍光灯が爪のように指先で尖っている




廃材を利用した芸術作品、と言っても通りそうな外見のそれは三人を床に押し付けた

三人にとっては天井が崩れてきたほうがマシだったろう、この手にはがれきの重さに何か得体の知れない膂力が加味されているのだから


美穂「あうぅ・・・ふぇ」

紗南「づ、づぶれる・・・」

まゆ「こんなの・・・むちゃくちゃです!」


絶妙に、潰れないように力加減をしながら、それでも限界ギリギリの圧力でスタミナを削る


のあ(ボット)「...今はまだ苦渋の中、地に伏していなさい...けれど...貴方たちはまだ、永遠の眠りにつく刻ではないわ」


うめき声を見下ろしながらのあは静かに立つ



ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈


足元に転がったままの紙くずが爆発した

規模としては小さかった、多分花火に使う程度のものだろう

癇癪玉のように派手な音と、



目の眩む光



周子(ボット)「ひゃっ!」



周子は幻覚を使う


だから相手はあらぬ方向に周子を見出し、

手に持つ武器をあらぬ方向に振るってしまい、周子に掠めることもない


拳も、剣も、刀も、銃弾も


周子にとっては避けるまでもないものだった


だが、音


そして、光


全方位に放射される無秩序なソレからは逃げられない



麗奈「・・・はあ?」


ゆるく煙を吐き出す二階の窓を呆気にとられて見上げる

自分はただ、亜季を助けたようとしただけだ

だから近くに転がっていた失敗作のレイナサマ砲を窓にめがけて放っただけだ

まるごと投げるには大きさ的に無理そうだったので適当なとこで二つにへし折って、投げやすくなった片方を石ころみたく投げ込んだ


なのにまさか爆発するとは


亜季「とうっ!」


その隣に亜季が着地する、本人も予測しなかった方法で麗奈が作った隙をうまく利用して窓から飛び降りたのだ


麗奈「あっ、アンタ!?大丈夫だったの!?」


着地と同時にその場で前転し衝撃を殺した亜季に慌てて近寄る


亜季「ええ、麗奈の爆弾のおかげで隙ができましたので」


麗奈「え?アタシがやったの?」


亜季「?自覚がないのですか、いえ、議論は今は捨て置きましょう」


麗奈「周子の奴は?まさかまだ生きてる?」


亜季「おそらくは・・・あまり強い爆熱でもありませんでしたし」


麗奈「チッ!多分これがPの言ってた”能力”ね、どうせならもっと派手に爆発できるのにしなさいよ」


亜季「麗奈、それよりも今は逃げるであります」


麗奈「は!?なんでよ!?折角能力手に入れたんだから次はこっちから攻めればいいじゃない!!」


亜季「麗奈!!戦力の詳細を把握できないうちから濫用するのは逆に危険です、逃げますよ!!」



亜季の厳しい眼光が麗奈を射抜く、サバゲーで培った経験による判断、とはまた違う、

自分の身、ひいては麗奈の身の安全を気にかけた上での年上の大人としての判断だった



麗奈「う・・・・・・わかったわよ」

亜季「それでいいのです、麗」








「だれ」「が」「にげる」「って?」




ぼすっ


今にも駆け出そうとしていた二人の前に道を塞ぐように何かが落ちてきた


それはダンボール箱、さっきまで散々見た中では大型の一つ


ぼすっ

ぼすっ

めしゃっ

ぼすっ

ぼすっ

ぼすっ


次々と、二階の窓から投げ込まれる

それは綺麗に亜季と麗奈を取り囲んだ

もちろん嫌がらせなどではない


このダンボールはクッションだ


周子が二階から飛び降りるための


その証拠に、二階から投げ落とされたダンボール箱の全てに周子が乗っているのだ

ダンボール箱がまるで台座のように周子の視線を押し上げている


麗奈「また偽物?・・・はん!あんたの芸も見飽きたっての!」


亜季「たしかに、狭い部屋でなければ幻覚など怖くはありませんな」


今までの感じから周子の幻覚は、周子の姿と武器を変えるだけのものだった

ならば周子から離れてしまえば、なにも警戒することはないのだ

そのためにはまずこの包囲を突破する必要があるのだが


周子(ボット) 「あたしを」
周子(ボット)イ「びっくりさ」
周子(ボット)ロ「せたからって」
周子(ボット)ハ「あたしに勝」
周子(ボット)ニ「ったとか思」
周子(ボット)ホ「いこむのは良」
周子(ボット)ヘ「くないよー?」


麗奈「なによ変な喋り方して!」




周子の幻覚に変調が起きていた

今までのものはまるで本当に周子が複数いるかのような生々しさがあった

だが見え方しかいじれない以上、その言葉は一人四役ほどをこなしていたのだろうが、それでも亜季には区別のつかない演技力だったはずだ

それがその演技をする余裕もなくしているのか

ひどく不安定、幻影全員がひとりの言葉をリレーするようにちぐはぐに喋っている

また幻影で作られた周子も様子がおかしい

確かに数はさっきの二倍近くまで増えているのだが、その姿にブレが生じていた


着物を着た周子

ラフな格好の周子

黒いビキニ姿の周子

コートを羽織った周子

狐の耳を頭から生やした周子


明らかにさっきは居なかったモノが混じっている

見た目は個性たっぷりだが、しゃべると途端に違和感が生じる



ちゃんとした幻覚を見せる力が損なわれている

まさかさっきの爆発が予想以上に効いたのか?

それともいきなりの衝撃に動揺しているせいで能力がコントロールできていないのか

亜季ではそれは正確に推し量ることはできない


周子(ボット) 「麗奈ちゃ」
周子(ボット)イ「んすごいじゃん」
周子(ボット)ロ「こんなドンピシャのタイミン」
周子(ボット)ハ「グで能力ゲットするな」
周子(ボット)ニ「んて。」
周子(ボット)ホ「あたしも頑張」
周子(ボット)ヘ「らないとねぇ」


だが、まだ形勢はこちらに傾いたままだ。これがまた周子に戻る前に

亜季「麗奈、私が合図したら私と同じ方向に飛び込んでください」

麗奈「?どういうことよ・・・周子に体当たりするの?」

亜季「いえ、幻影は私たちにさわれません、ですから」



周子(ボット) 「なにな」
周子(ボット)イ「に」
周子(ボット)ロ「作戦会議か」
周子(ボット)ハ「なー?」


ひしゃげたダンボールを足場に同じ顔、違う服装の人間がけらけらと笑う

だがその姿はまるで乱造品の壊れやすい人形に見えた


亜季「今っ!」

麗奈「!」

二人が包囲網の一角に突っ込む、コートを羽織った周子のいる所だ


周子(ボット)ハ「・・・・・・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子(ボット)「・・・周子さん」


「貴方の能力は私のものと少しだけ似ています」


「・・・いえ、少しではありませんね。」


「この仮想現実を"捻じ曲げる”という点では私たちの能力はなんら変わりません」


「それ故に貴方にも、私よりは弱めですが、制限がかかっています」


「だから能力を使うときは気をつけてください」


「なまじ半端な制限だけに、なにかの拍子で能力が不安定になる可能性が高いですから」


「・・・・・・やっぱり、できるなら『夜』が来るまでここで待っていて欲しいです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

周子(ボット)ホ「心配」
周子(ボット)イ「してくれ」
周子(ボット)ニ「てありが」
周子(ボット)ハ「とう、で」
周子(ボット)ヘ「もね、藍」
周子(ボット)ロ「子ちゃん」




周子(ボット)「しゅーこちゃんを甘く見ないで」
_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/100


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


ゲーム開始31分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


亜季「今っ!」

麗奈「!」

二人が包囲網の一角に突っ込む、コートを羽織った周子のいる所だ


周子(ボット)ハ「・・・・・・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子(ボット)「・・・周子さん」


「貴方の能力は私のものと少しだけ似ています」


「・・・いえ、少しではありませんね。」


「この仮想現実を"捻じ曲げる”という点では私たちの能力はなんら変わりません」


「それ故に貴方にも、私よりは弱めですが、制限がかかっています」


「だから能力を使うときは気をつけてください」


「なまじ半端な制限だけに、なにかの拍子で能力が不安定になる可能性が高いですから」


「・・・・・・やっぱり、できるなら『夜』が来るまでここで待っていて欲しいです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

周子(ボット)ホ「心配」
周子(ボット)イ「してくれ」
周子(ボット)ニ「てありが」
周子(ボット)ハ「とう、で」
周子(ボット)ヘ「もね、藍」
周子(ボット)ロ「子ちゃん」




周子(ボット)「しゅーこちゃんを甘く見ないで」
_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/100


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


ゲーム開始31分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
連投失礼しました

プレイヤー

クール
凛 奈緒 加蓮 小梅 亜季 ?

キュート
まゆ 智絵里 幸子 美玲 美穂 杏

パッション

輝子 紗南 きらり 裕子 麗奈 ?



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下


1、輿水幸子
2、渋谷凛
3、堀裕子

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS森久保乃々
6、VS高峯のあ

紗南のコントロールモードの詳細がわからん……
プロデューサーくんを操作してたのかがよくわからん


レイナサマやらかしたうばばば
投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子


私のサイキック力技はモノを壊す分には超人的な力を発揮するのですが、私そのものが強くなったわけではないのです

だから防御力まではサイキックされていないのですね



裕子「あいたたたた・・・」



背中に硬い感触、私と一緒に落ちてきたがれきが背中の下で細かく砕けています


多少は衝撃をカバーしてくれたかもしれませんが、幾分か体力を削られてしまいましたね


空にはポッカリとお月様、ではなく私が落ちてきた穴から見える日光が暗い天井に丸い光を供給していました



___...そうね...どこまで変わらずにいられるかしら...___




___...あなたにプレゼントよ...これをどう使うか...この世界に...どう取り組むか...見せてもらうわ___



ふむ、そういえば落っこちる直前にそんな感じのことを言われたような・・・


地面にたくさん現れた口、唇、目

喋っていたということは舌や歯もあったのでしょうね


まぁそれはさて置き、一体どういう意味合いだったのでしょうか。

がれきの小山からガラガラと慎重に滑り降ります


裕子「まさか、あれがさいきっく謎掛け・・・!」


ジャンプして届く距離ではないのは一目瞭然でしたので、私は縦ではなく横に移動を開始します


周りは暗くて何も見えません

今私のいるスポットライトに当てられたような狭い円から出ていくのはなかなか勇気がいりますね


さて、ではまず所持品を確認しておきましょうか


えっとまずは・・・


【スプーン×1】

私のボットが持っていたものですね、触ると一度だけ電子音が鳴りました。
そのあとから私のサイキックパワーが目覚め、何か物体に触れている時だけ力持ちになりましたよ!
ちなみにちょっとだけ曲がってます




・・・以上です!


ポケットから出したスプーンをグッと握り締める、超能力は使っていないのでへし折れることはありません


裕子「心に一本の芯を!!懐に一本のスプーンを!!サイキックアイドル堀裕子!さいきっく探検開始です!!」


私は臆することなく光の輪の一歩外、暗闇に向かって勢いよく足を踏み出しました


ごちん!


裕子「あいたっ!?」



ただしその一歩目で私の爪先は硬い何かにぶつかってしまいました

慌てて前に手を突き出すとそこには平たくて冷たい大きな何か、



・・・・・・壁ですか。またですか



私の行く道はまたしても壁に阻まれました。


裕子「むむ?むむむ・・・」



壁をぺたぺたと触りながらそれに沿って動いていきます

暗闇の中を少しずつ横向きに移動していきます。


あっという間に壁を一周してしまいました

意外と暗闇は狭いようです。光を中心として学校の教室程度の広さでしょうか


裕子「しかしこれは、鉄製でしょうかひんやりしていますし、所々溶接したような継ぎ目がありますね」

手触りだけではそれしかわかりません、しかしこの部屋はまったくの密室ということでもなさそうです


裕子「・・・暗くてよく見えませんが、ここの部分だけ他の部分と手触りが違いますね・・・」


扉でしょうか?


しかし開きませんね、ここはさいきっくで突破しましょうか


さいき~っく

裕子「力技っ!」


扉らしきエリアに体当たりをかまします。

体の当たった部分が深く沈むように凹んだ感覚、金属製品が壊れたような音、

そのまま私は壁の向こう、その先に開いた空間に突き抜けていきます

やはりここは扉でしたか!



裕子「さいきっく侵入!」


ブンッ・・・

ツツツツ・・・・・・

私がその空間に踏み入ったことでセンサーか何かが反応したのでしょう、

照明が起動しました。

私のいる壁際から部屋の奥に向かって順に光が侵食していきます


ツツツツツツツツツツ・・・


蛍光灯、よりも大きい照明が私のはるか頭上で光を放射します、天井が高いですね


上を見上げると、等間隔でならんだ照明が水玉模様のようにいくつもいくつも灯り始めています


一つ、二つ、十、二十、五十・・・


あれ、照明が多い、というより




この部屋めちゃくちゃ広くないですか?


照明に照らされた広大な空間の、向かいの壁が今ようやく見えました。


同時に、私がいるのがその空間全域を一度に見渡せる、少しだけ高い位置にあることもわかりました


裕子「なんと・・・さいきっく驚愕・・・」


目の前には手すりがあります、そこに手を着くと、より広く空間を見下ろせました


柱はありません、体育館のように天井は梁とか鉄骨などで支えているのでしょう

そのおかげで確保された広いホールのようなスペースにはびっしりとソレが並んでいます


碁盤目上?等間隔?見下ろしている身としては巨大なチェック柄にも見えました


でも一番わかりやすいイメージとしては全校集会

朝礼台に登った校長先生は、整列した生徒たちがこう見えているのかもしれません



もっとも、


その生徒の服は鉄板でできたりはしてないでしょうけど



その生徒にはキャタピラなんてついてないでしょうけど



その生徒には大砲なんて装備されてないでしょうけど




その生徒は戦車ではないでしょうけど





地下軍事基地、格納庫、装甲、迷彩柄

だいたい私が連想できるのはそのへんの単語だけですね




見渡す限り並んだ戦車が私の眼下に静かに運転される時を待っていました




ゲーム開始43分

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~
チャプター
大和亜季&小関麗奈

_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/200


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


麗奈が何らかの方法で起こした爆発はそれ自体の威力としては大したことなかった


駄菓子屋にでもおいてそうな火薬玉と花火の混ぜ物、

音と光のジョークグッズ、

おふざけの威力、びっくりさせるだけしか能がないオモチャ


周子(ボット)「じゃあ」「あたしの能力」「がここまで乱」「れるわ」「けないよ」「ね?」


コートを羽織った周子の姿がノイズの入った映像のようにブレた


亜季「(偽物!・・・ならこのまま突っ切るであります!)」



そもそも何体偽物がいようと本物は一体、物理的に攻撃できるのも一体なのだ

たとえ百人の周子に囲まれていても実際に壁となっているのはそのうちの一人


包囲を突破するためのロシアンルーレットとしては亜季たちに分があった


麗奈の手を引きつつ突貫、どこかに潜んでいる本物が自分の背中に向かって銃を向けていると考えるとゾッとするが、とにかく今は逃げが肝心


麗奈「あ、亜季!?」


亜季「こっちです!!」


コートの周子の姿が霞んだ、もうまともな幻覚すら作れなくなっているのだろうか



麗奈「あ!やっぱり偽物ね!!」


麗奈も地面を蹴り加速する、背後から撃たれる前に幻覚に体当たりをかまして脱出する決心がついたようだ


他の周子は亜季に襲いかかってきたりしない、人形のように地面に置かれたダンボールの上に棒立ちのままだ

自分たちの中の一人が突き破られようとしているにもかかわらず、反応すらしない、まるっきり映像、立ち絵だ


駆ける駆ける駆ける

周子とダンボールでできた円を突き破らんと


しかしまるで自分からその陣形を崩すように周子の姿が消えた

亜季と麗奈の前にぽっかり隙間ができる、そこにはダンボール箱しかない


亜季「!」

麗奈「ははん!アタシの能力にビビったのね!」

二人は一気に加速した


周子(ボット)「なわけないでしょ」


その声ははっきりと聞こえた、

そして麗奈たちの真正面に周子が不意に現れる

何もない空間から、いやダンボール箱しかない場所から






そのダンボール箱が周子に変身したのだ






亜季「(幻覚だと分かりやすくしたのはブラフ!?ダンボールの方に化けて私たちをおびき寄せたのでありますか!?)」



二人の足は止まらない

偽物だと思って特攻したら、その偽物の足元に本物がいた、今から銃を構えても間に合わない


よく考えるべきだった、どうしてわざわざあんな箱までいくつも落としてきたのか


複数の周子に化け、亜季にも化けた。なら人間以外に化ける可能性だって十分あった


むしろ周子は最初からあの部屋でダンボール箱に化けて自分たちを待ち伏せしていたのかもしれない


亜季は思わず、つんのめるように足にブレーキを__


麗奈「これでも喰らいなさい!!」


麗奈は止まらなかった、罠に嵌められてなお、攻撃に転じた


手に掴んでいた、ほとんどゴミになったレイナサマ砲の破片を力いっぱい投げつける

走りながらの投擲だったので大した威力にもならなさそうだったが

その問題は麗奈の能力がカバーしてくれる


ぱん!


くるくると回転しながら周子を目指したそれが爆発した

大した威力はない光と音の威嚇、閃光弾のオモチャ


だが、周子の戦略は一貫して幻覚を使い相手のペースを乱すものだったことを考えれば、

こうやってこっちからペースを乱す攻撃は十分通用するはずだった








そう、はずだった






周子(ボット)「はずれ」





至近距離で爆発を起こされた周子が消えた


偽物のすぐそばで隠れていた本物が消えた






いや、違う

その”いかにも本物らしく現れた周子”すら偽物だった


幻覚に隠していたモノも幻覚だったのだ



亜季「は・・・?」

麗奈「え、これも偽__」

周子(ボット)「こっちだ、よ!」



亜季と麗奈の首元を後ろからつかみ、

そのまま背後から押し倒す

ほとんど前に意識のいっていた二人はあっさり倒れこんだ



誰もいない商店街に鈍い音が二つ響く


亜季「がふっ!」

麗奈「いったぃ!」


ナニかが二人を上から押さえつけていた


周子は

亜季に化けた

たくさんの自分にも化けた

いろんな衣装を着た自分に化けた

その自分をダンボール箱に化けさせることもできる

危険な武器を持っているように見せかけることもできる

手に持った紅茶を緑茶に見せかけることもできた、味はそのままだったが


何が本物で何が偽物かが曖昧


そして周子はそれすら化かす


偽物でも本物でもないモノ、


つまり何でもないモノに化けた


誰にも見えない姿に化けた


だから、透明になった


もう周子は見えない


ただでさえ判然としなかった、それこそ蜃気楼のようで実態のつかめなかった周子は完全に消えてしまった


二人にのしかかっているナニかの姿は見えない

だが皮肉にも姿が見えていた時よりもその存在感を二人は実感できていた


そこに居るのはただの悪意

そこに在るのはただの悪意、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


麗奈「ぐぅ・・・このアタシに乗っかかるなんていい度胸じゃない・・・!」

亜季「(銃が、動かせない・・・・・・見えない何かに踏みつけられてる・・・?)」



「ん?ああそっか、あたし今二人に乗ってたんだっけ」



ぐぐぐ、と二人のうなじのあたりを掴んで地面に押し付けてくる力が増した

顔がざりざりとこすりつけられる


「ごめんねー、なんかよくわかんないけど・・・もうあたしにもあたしが見えないんだ」


「あーあ、透明ってのはやりすぎちゃったかな・・・あたし元に戻んないかも」




ほかの幻影の周子は消えている、ダンボールの数も減っていることからあの箱の一部もやはり幻覚だったようだ


幻覚に幻覚を重ね、嘘に嘘を重ね、本命はそもそも視認すらできない姿になった上での背後からの強襲


亜季「(・・・姿が見えないと、どう押さえつけられていて、どう抜け出せばいいのか見当がつけられないであります・・・!)」


麗奈「ぐぎぎぎ・・・!!」



「さて、しゅーこちゃんの乗っかりプレイもそろそろおしまい」


「手元に銃もあるし、終わらせてようかな」


そして、周子は腰のあたりに差していたハンドガンに手を伸ばそうとして、


「あれ・・・」


腰のあたりに重みがあるのだがいまいちそのポイントに手が引っかからない

なぜなら今周子の身に着けているものは周子自身も含めてすべて透明なのだから



現実世界での幻覚というと、それは人が頭の中だけで見る客観できない光景という意味合いになる

だが仮想空間は現実と違い、それそのものが頭の中の世界だ。幻覚の意味合いも少し変わってくる

頭の中の世界に、頭の中でしか見えないものを持ち込んでいる、主観と客観が同次元に並んでいるのだ。



つまり有体に言うと周子の能力、仮想の中に仮想を作る力は、周子自身にも作用している




あの廃墟では紅茶は周子にも緑茶に見えていたし

周子が亜季に変身した時には周子にも自分が亜季に見えていた

周子が四人に見えた時も本物の周子は、自分そっくりの人間がほかに三人いる光景を目の当たりにしている



つまり二人の隙を突くために透明になった周子にも、自分の姿がみえていない


「ここらへんに・・・・・・お!」


指先が硬い金属にぶつかる、それをひっかけるように持ち上げる



周子のオリジナルはダーツを嗜んでいた、

だから例え透明なダーツの矢があったとしても経験からしっかり握ることができるだろう

だが周子のボットが今掴もうとしているのは矢ではなく透明な銃、しかも自分まで透明なのだ、

視覚に頼りがちな人間にこれは予想以上にハードルが高い

距離感もつかめない、衣類にかかる重さで銃の大凡のあたりをつけるしかない



引き金らしき部分に人差し指らしき部分をかける

ほかの指で適当にグリップを握る


「よっとと・・・じゃあね麗奈ちゃん」


麗奈の後頭部に銃口をぶつけた、ゼロ距離射程


麗奈「はぁっ!?」


人差し指を握りこむ


亜季「麗奈!!」







がきっ






弾は出ない


「・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・?」


引き金が動かない


指に力を込めてもびくともしない


麗奈「・・・?」

亜季「?」


ハンドガンに安全装置がかかっていた



おそらく二階から飛び降りるときに何かの拍子でかかったのかもしれない



目をつぶったまま銃を掴むことはできる

目をつぶったまま銃を構えることはできる

目をつぶったまま引き金を引くことはできる




だが、銃に明るくない周子に目をつぶったまま安全装置が外せるのか?



安全装置自体は簡単に外せる、ツマミを少しひねればいいのだ

その場所を知ってさえいれば簡単なはずだ、亜季なら呼吸するように速やかにできただろう


だが周子は銃を探りあてて握るだけで一苦労だったのに


よく知りもしない銃の構造などを把握しているはずもなく







麗奈「だりゃああああああああああああああ!!!」



麗奈は、自分の後頭部にぶつけられている何かにうつぶせのまま思いっきり拳をぶつけた



「あっ・・・!!」



周子の手から離れた銃が宙を舞う、その際に周子の能力の効果範囲からはずれ、もとの色を取り戻した

なぜか麗奈の能力は発動せず、鈍い音を立てて金属色の塊が地面を転がる




銃がないと決定打がうてない、周子は地面に転がった銃を一瞬だけ追おうと腰を上げてしまった

二人にかかっていた体重が減る


亜季「・・・ふっ!!」


その「隙」に亜季は体をひねり体は天を向いた、自分に乗っかった何かにあてずっぽうに腕を払う


「いったぁ!」


亜季の手に何かの手応え、そして重さからの解放

周子は地面に倒れ、その下の二人は即座に起き上った。




麗奈「見なさい!!これがチャンスをものにするレイナサマの力よ!」


亜季「ですが相手の姿は見えませんね、厄介であります」


「いったいなぁ・・・もう、頬っぺたが腫れちゃうじゃん・・・・・・もう自分でも見えないけど」


亜季と麗奈は周子と向き合う

幻覚と幻影と嘘の果てに姿すら失くしたボットに対峙する


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





CHIHIROはこの世界を安全に運営するのが目的だってのは知ってた


ほたるちゃん、聖ちゃん、藍子ちゃん


あの三人は危険と判断されたみたい


能力のキャパが桁違いすぎて、えっと・・・演算処理が追い付かない?・・・とかなんとか


だからCHIHIROは独断で隔離用のプログラムを作ったらしい


それがあの廃墟だった、ひどい話だね


あたしは隔離とはいかなかったけどリミッターみたいなのをいつの間にかつけられてた


しゅーこちゃんを縛ろうなんて、まったくひどい話だね


そのせいで能力がうまく使えなくて、透明になったまま元に戻れないじゃん

分身はいけたのに透明だとだめって、なんでだろ?


でも晶葉ちゃんの作ったものをずっと隠しとくわけにはいかないから、

あたしたちにはちゃんと解放される予定があった


『夜』


その時が来ればあたしの尻尾だって三本から九本に戻るし、幻覚で作れる分身の数だって___



麗奈「これでも食らいなさい!!!!」




麗奈ちゃんがダンボールを箱ごと投げつけてきた、

ふむ、テキトーに投げた割にはいい線いってるね

あたしはひょいと避ける、


ダンボールは安っぽい音を立てて破裂した、ちょっと眩しい、耳がキーンってなった


あぁ、ほんまどないしましょ


ちらっと、はじかれて取り落とした銃を見た

よくわからないけど銃は使えなくなったし、どうやって攻めよう




亜季「・・・あ!!」





ん?

亜季さんどしたの





亜季「麗奈!!ダンボールをもっと爆発させてください!できるだけ広い範囲で!」






亜季さんが指示を飛ばす、麗奈ちゃんはまたダンボール箱を拾い上げた

さっきはやけになって投げつけてきたそれを今度は計画的に千切っていくつかの部品にして投げてくる


でもごめんね、ぜんぜん見当違いの方向だよ?



薄暗い商店街の通りにチカチカと閃光と破裂音が連発する


その間にあたしは爆弾(?)をひょいひょいよけながら麗奈ちゃんに近づく

さっきは不意打ちで喰らっちゃったからね、気を付けないと


麗奈ちゃんにはあたしは見えてない、


千切ったダンボールをポイポイ投げてる かーわいい


亜季さんはあたしが落とした銃を拾っていた。壊れたと思ったけどもしかして直せるの?



麗奈「亜季!こんなもんでいいの!?周子がどこにいるのか見えないと意味ないじゃないの!」



そうだね、そもそも今あたし

麗奈ちゃんの真後ろにいるし



麗奈ちゃんは気づかずに前にダンボールの紙片を投げているパンパンパンって音と光


このまま後ろからキュッと首でも絞めようかな、

でもその攻撃方法じゃスタミナ全部は削れないよね、

それにそんなことしたらあたしの場所亜季さんにばれるし




パンパンパン!





あたしの場所?

透明になったあたしの居場所ってどこ?

そもそも嘘とまやかしで出来たあたしというボットはどこにいるの

あたし一人が認識していてもほかのプレイヤーやボットが見向きもしてくれないならあたしは本当にそこにいるのかな?



麗奈ちゃんの隙だらけの背中を見ていたらそんな考えが浮かんできた




少なくとも今麗奈ちゃんと亜季さんはあたしを探してくれてるけど、

この二人を倒したら誰があたしを探してくれるんだろ



パンパンパンパァン!!




なんの目的地もなく宿も所持金もなく暗い街をキャリーバッグ一つで歩き回っていた記憶がよみがえる

周りの人はだれも見向きもしない、ただの通行人Aとしてあたしを意識もせず通り過ぎて行く

なーんとなく不安になっても、それを見ないようにしてた頃の記憶



ああでも、これオリジナルの記憶だね、あたしには関係ないや



藍子ちゃんのふんわりとした表情を思い出す

ほたるちゃんの不安げな目を思い出す

聖ちゃんの寝ぼけ眼を思い出す




とにかく『夜』を待とう




パァンパァンパァン!




そしたら能力も本調子になる、あたしの姿も元に戻るでしょ


晶葉ちゃんの作った仮想をもう少し楽しみたいし、ここでやられるわけには







亜季「そこでありますな、周子」











パン!








   い 

    た   

       い


    ?





あたしはその場に崩れ落ちた


麗奈ちゃんの肩に掴まって体を支えようとしたけど、あおむけに倒れていく


後頭部を地面に打ち付ける


体に力が入らない、かなり痛いとこ撃たれた?

なんで?

あたし透明なのに、


自分でも自分がわからないのに




亜季「影は透明になってなかったであります」





亜季「仮想の中に仮想を作る、たしかに恐ろしい能力ではありましたが、その力はあくまで外見を変えるだけのもの」


亜季「いえ、外見というよりも、どう見えるか、ですか」


亜季「ですが例え周子がどう見えようと、”どこにいるか”は変えられなかったでありますな」


亜季「ここが晶葉の作った世界である以上、プレイヤーからは消えたように騙せても、世界そのものから消えることはできなかった」


亜季「だから、触れば手が当たるし、音や光も届いていた」


亜季「あの部屋も、この商店街も薄暗かったので影の動きには気づきませんでした」


亜季「ですが麗奈の爆発の光は、周子の存在をしっかり影にしてくれましたよ」




亜季さんはあたしが落とした銃を構えていた。

あれ、使えたんだそれ。流石ミリオタ、銃の扱いに詳しいね



麗奈「あ。ああアタシの真後ろにいたの!?」


麗奈ちゃんが飛び退く、逆に亜季さんは銃をこっちに向けて近づいてきた


その足取りはまるで透明なあたしが見えてるみたいに迷いがない


体に力が入らない、クリティカルヒット、だね。

さすがミリオタ、影とやらだけであたしの急所に目星をつけられたんだ、すっごーい


地面に横になったあたしの視界、

近づいてくる亜季さんの足と、麗奈ちゃんの怪訝そうな顔と




地面に映ったあたしの影が見えた





なるほど、これを目安に近づいてきてるのね


あたしの影は、あたしがどんな背格好でどんな髪型なのかを鮮明に表していた




ああ、そうそう、あたしはこんな感じだった


幻覚能力の使い過ぎで忘れかけてた




亜季「・・・・・・何か言い残すことはあるでありますか?」


麗奈「ちょっと!?早く撃たないとまた逃げられるわよ!?」



あーあ、もう終わりかなぁ



透明になんてなるんじゃなかった。あたし、ちょっと焦ってたのかも

まさか元に戻れなくなるなんて




これも麗奈ちゃんの能力で調子狂ったせいだよ



それを言うなら麗奈ちゃんが窓から落ちるようなことをしたあたしのせいかな



でなきゃ麗奈ちゃんが能力をゲットすることもなかったし



それともあの二階で仕掛けたのが悪かったのかな




まぁ、いいや

あたしは自分の影を見た、

姿を失くしたあたしの最後の存在証明







「あたしは、ここにいる」






パン!





ゲーム開始34分経過


塩見周子(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
銃って怖い


次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


1、渋谷凛

2、神谷奈緒

3、北条加蓮

4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


画像とコメントありがとうございました

>>791
本編で少しずつ解説はさむんで、もうちょっと待っててください



安価+9までで

1、三票
2、四票
5、二票

より、奈緒ちゃんに決まりました。
ご協力ありがとうございました

投下します


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


疲れとスタミナは別物

この空間ではとりあえずそうなっているらしい


あたしは音葉さんからもらった会心の一撃で減らされたスタミナが疲労の原因だと思ったが、巴が言うにはそういうわけでもないようだ。


巴(ボット)「そもそもスタミナだの武器だのいうんは、晶葉さんが模擬戦闘のルールのために後付けで用意したカラクリじゃき。スタミナがプレイヤーの体調をそのまま表してるとかそない大層なもんやないけえ」


巴(ボット)「やけん、奈緒さんが疲れたのはただ単にいっぺんにごっついダメージもろた後遺症みたいなもんじゃ、同じダメージにしてもチマチマ小分けにしとったらそこまで疲れんかったじゃろ」


巴(ボット)「スタミナはいくら待とうが回復せん、やけど疲れやったら休めば消えよる。うちと戦うまでせめてそのハリセン振り回せるくらい元気になってもらわなのう」


・・・どうにも巴はただプレイヤーを倒すだけじゃなく、そこに正々堂々、というかドラマ?を求めているように見えた

言動からそういうところがありありと見えるし、現に今も弱ったあたしを介抱、とはいかずとも攻撃することもなくつかず離れずの位置を保っている

音葉さんみたいに徒党を組んでいるのとはまた違う・・・・・・つーか、ボットってこんなに個性豊かなのかよ


奈緒「そういやさ、巴。音葉さんとか・・・他のボットとは会ったのか?」


胸のあたりを中心として広がっていたひどい痺れみたいなのが半分以上引いてきたところで、あたしはようやく質問できるぐらいの余裕を得た


巴(ボット)「あん?音葉さんとはあっとらんし、あっとったとしても誰が教えるかい」


手すりに腰かけたままの巴が首だけこっちに向けて、そうぶっきらぼうに返事した。

べつに味方になったわけじゃないもんな、そりゃ教えてくれるわけないか


巴の右手には銃が手錠でつながれてる。亜季さんとかなら詳しい名称もわかるんだろうけど、あたしにはわからない

ただ、刑事ドラマとかで出てくる銃よりもゴツくて、巴の掌で握るには明らかに無理のあるサイズなのはわかる

洋モノのゲームのガンアクションゲームにおける、後半にならないと手に入らないレアもの武器的な風格がある、それがなんだか巴の小さい体にアンバランスだった


巴(ボット)「それよりアレ、どうするんじゃ奈緒さん・・・みたとこ、うちらボットの仕業っぽいで」


奈緒「あー、まじか。こっちも味方じゃなかったか・・・」

さっきあたしが落っこちた小さい林から少し上に登ったとこ、巴に引っ張られて運ばれた地点

そこからはビル街を遠くに見渡せたし、眼下には住宅街が広がっていた


問題はその住宅街、今現在巴と眺めている風景


奈緒「ボットだとしても一体誰の能力だっていうんだよ・・・」


あたしはベンチにもたれかからせていた体を何とか持ち上げ、住宅街を見下ろす


巴(ボット)「知るけえ・・・ただ、ごっつう怖い力ゆうんは見りゃわかるがの」




イメージとしては巨大なサメ、


一軒家を背びれの代わりに住宅街の地下をぐいぐい泳いでいる巨大なサメ

地上に見えているのはその和風の家屋だけ、それがほかの家をかき分け、薙ぎ払いながら陸地を泳いでいるみたいだ

しかもそのサメももう一匹、こっちは3,4階建てくらいの商社ビルみたいなのがやっぱり周りの建造物を張りぼてみたいに蹴散らしながら進んでいる


あの二件、中に人がいたらやばくね?


奈緒「・・・というかアレがボットの仕業だってわかるのか?」

巴(ボット)「あれじゃ、能力の使いこなし方が人間離れしとる。ついさっき能力手に入れたばっかりのプレイヤーじゃ、ああは使えんからの」


こっちは割と素直に答えてくれた。


巴(ボット)「で、どうするんじゃ?・・・・・・あれ、近づいて来とるぞ」


奈緒「だよな・・・」


あの”陸ザメ”二匹はところどころ曲がりくねったりしてはいるがその軌道は少しずつこっちによって来ていた。


あの速度だとあたしがいる高所まで山肌を削りながら駆けあがってくることも十分ありうる


巴(ボット)「うちは奈緒さんを助けるつもりは微塵もないけえ。ただ奈緒さんのコンディションが回復して十分戦えるようなるのを待っとるだけじゃ」


巴(ボット)「やけど、その待ち時間も残りすくのうなったみたいやの、うちも事情が変わった」


巴(ボット)「・・・奈緒さんが黙ってあのごっついのに押し潰されるゆうんなら、うちはもうなんも言わん。うちはしょぼい虫でも踏んだと思って他のプレイヤー探しに行くわ」



チャリチャリと鎖を鳴らしながら巴は銃のグリップに指を回す

やっぱりサイズあってないな。




ごつっ



そのゴツイ銃口がいきなりあたしの頭に当てられた、

巴はいつの間にか至近距離に来て、その引き金に細い指をかろうじてひっかけている


奈緒「いっ!?」


巴(ボット)「・・・幸いうちには時間があるけえの、もっと骨のある連中探す前に・・・練習台にでもなってもらうのもええの」



銃を向ける巴の目は明らかにこっちを試していた、

あの馬鹿でかくて得体のしれない能力相手に戦いにいくか、ここで死ぬか



巴の向こうからは相変わらず途切れることのない破壊音が叩きつけられてくる

その音がまるでカウントダウンのように大きくなってきた



ずずずずずずずずず!!!!!!!!!!



巴に向けられた銃の先が固い、

ごつごつと頭をこすってくる


ボットっていったら機械のプログラムみたいなものなのに、

巴は映画とかで見たロボットより数百倍人間じみていた




巴(ボット)「おう奈緒さん、はよう選び。うちもだらだらしとったら、巻き添えをくいかねん、」

「戦うか、それともここで頭に風穴あけるか?」



あたしは多分今、窮地に立たされている

巴に負けるか、いずれここに襲来するあれに物理的につぶされるか

だからここは












奈緒「・・・・・・あたしは戦わない」






巴(ボット)「・・・おお、逃げるんかい」

奈緒「あんなのに勝てる訳ねえだろ」




ぐっ、


引き金にかかった巴の人差し指に力がこもる






奈緒「だけど、ここから逃げるわけにもいかない」



巴(ボット)「・・・・・・どういうことじゃ」




巴は怪訝そうに眉をひそめた

あたしは視線を巴からずらして、住宅街を見下ろす

何件もの家が現在進行形でがれきの海へとシェイクされている危険地帯がそこにあった

住宅街に踏み込めばひき肉にされるのは目に見えている


だけど


あたしは


奈緒「加蓮を探さなきゃならねえんだよ」


あと、この空間のどこかにいるであろう凛も



奈緒「だからあたしは戦わない。けどあの住宅街の渦中には用がある」



巴のほうに視線を戻す、巴はまだ引き金を引いてない



奈緒「あたしは今からあのでけぇのが好き勝手してる中に突っ込む、巴のおかげで疲れ自体はもう取れたしな」





巴(ボット)「・・・・・・」






奈緒「巴こそ早く逃げたらいいんじゃねえのか、巻き添え食らいたくないんだろ?」



びきっ!

巴の眉が一瞬だけ怒りにゆがんだ




巴(ボット)「!!・・・ほぉ・・・言いたいことはそんだけでええんか?」




銃の引き金が動く、

やべぇ、怒らせた?



ドォオン!!!!!!



間近でとんでもない爆発音が轟いて、あたしは反射的に目をつぶる


だが暗闇の中、あたしの頭には痛みどころか痺れもない


奈緒「・・・・・・・・・・?」



巴(ボット)「おもろいコト言いよるのぉ・・・奈緒さん、さぞかし倒し甲斐あるんじゃろなぁ・・・」



巴は腕を横にし、住宅街のほうに銃を向けていた。弾丸はどこかの家めがけて飛んで行く



巴(ボット)「うちが逃げる?冗談も大概にせぇ・・・」



こっちを見ている巴の目はメラメラ燃えている、ただ単に怒っているのとは違う炎だ






巴(ボット)「んだらうちも、奈緒さんがどこまでやれるか見せてもらおうやないけ・・・」


奈緒「・・・は?」


どういうことだ、何を見るっていうんだ?




じゃらん!


鎖を一際大きく鳴らして巴はあたしに言い放った





巴(ボット)「うちも一緒にカチコミしてやるけぇの」





奈緒「・・・はぁああああああ!!?」

お前もボットだろ!?何言ってんの!?











本来なら敵対関係のはずのプレイヤーにボットが協力しようとしていた




イレギュラー

勝利ではなく勝負にこだわるボット、村上巴


今この瞬間、彼女もまた不確定要素の一つとなった




ゲーム開始40分経過


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その壁に書かれた文字には秩序があった



『A、三人ひと組で行動中のボット、一人のプレイヤーと接触中』


『B、同じく三人ひと組のボット、ただしプレイヤーと接触後一人が別行動を開始』


『C、一人で行動、何人かのボットとプレイヤーと接触するも戦闘はなし、原因不明』


『D、三人ひと組、町外れにて待機中?』


『E、休むことなく街中を走り続けているボット、マキノさんによる勧誘は困難』


『F、全く移動しないプレイヤー(追加情報、双葉杏と判明)』




飛鳥(ボット)「このメモ、何分前の情報だったかな?」


マキノ(ボット)「ありすさんが最後にこの拠点に戻ったときにいくつか書き足したのが大体二十分くらい前かしら......」



それはありすの能力で表示されたボットとプレイヤーの位置から読み取れたことをメモしたものだった

タブレットを扱えるのがありすだけであり、なおかつありすが拠点を離れることもあった以上、どこかに他のボットのために最新情報を記録しておく必要があったのだ

ちなみに、音葉や拓海はこのメモからそれぞれ奈緒と加蓮の位置にあたりをつけて行動していた。


だがこのメモはあくまでその時の情報を記録したもので、時間が経ちボットやプレイヤーが移動してしまうとその価値の殆どをなくしてしまう



飛鳥(ボット)「ありす、戻ってこないね・・・・・・拓海さんも負けちゃったみたいだし」


マキノ(ボット)「そうね、でも音葉さんは奈緒さんに致命傷を与えたわ、もうじきここに戻ってくるはずよ」



飛鳥(ボット)「凛さんを撒くのに手間取っているのかな。あの人は明らかに一筋縄ではいかないタイプの人だし」


マキノ(ボット)「晴、舞、あずきさん、そしてありす。論理的にはプレイヤー1人に遅れを取ることはないはずよ」



二人は淡々と事実を確認し、推測を立てていく


飛鳥(ボット)「じゃあ、もう戻ってきてもおかしくないはずなんだけど・・・・・・何が起きたんだろうね?」


マキノ(ボット)「.........」



そこで会話は止まる、

プログラムでできたボットたちは本来、根拠のない予測を述べたりはしない


述べたりはしないはずだ




飛鳥(ボット)「ところで、これはもしもの話なんだけど・・・まぁ話半分に聞いてくれるとありがたいね」


マキノ(ボット)「・・・・・・なにかしら」


唐突とも思える話題転換、マキノは怪訝そうに眉を寄せたあと続きを促す



飛鳥(ボット)「練習用ボットの中には倒されたときにキーアイテムを落としていくのがいただろう?これはまぁプレイヤーごとのハンデの意味もあるんだろうけど」

「つまりボットの中には攻撃に使った武器をそのままアイテムとして使えるのもいるんだよね?」


マキノ(ボット)「何が言いたいのかしら」








飛鳥(ボット)「いや、ほら、ありすのタブレットはどうなんだろうって思ってね」



マキノ(ボット)「!・・・・・・ありすが倒れてもタブレットの能力は生きたままかもしれない、そう言いたいわけね?」



それは本来するはずのない、根拠無き予測のはず

だが、プレイヤーを倒すことが目標のボットにとって無視できない予測だった



飛鳥(ボット)「非常に最悪の展開だと思わないかい?・・・ボクらのアドバンテージ、位置情報の一方的な取得権を失うどころかプレイヤーに渡ることもありえるんだから」


マキノ(ボット)「それは考えうる限り最悪の展開ね」


そこでまたふたりは沈黙する、



《戦力外たちの宴》の戦力が侵されようとしている、

ジョークだとしても笑えない


壁に貼られたメモは二人に混じって言葉を発したりしない







こずえ(ボット)「ふぁ......」



ただ飛鳥の膝上にいた小さな少女があくびを漏らす音が鳴った


ゲーム開始43分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


1、渋谷凛

3、北条加蓮

4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈

3

そういえば投票が3・3・3になったらどうなるの?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
717153313

7、二票

1、三票

5、一票

3、三票

今回は
チャプター
渋谷凛
チャプター
北条加蓮

をお送りします

>>843
次回からは同票になった場合、先に投票されていた方を有効にします(今回の場合は1)

今回のはこちらの不備でした



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


少しだけ横に移動する

その場にかがむ

すると視界いっぱいにクローバーが広がる

三つ葉三つ葉三つ葉

手でそれらをかき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉

かき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉

かき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉


ぶちっ


そのうち地面をまさぐる両手が動かしにくくなってくる

しゃがんだ足もゾワゾワする、あのいやらしい根が絡みついてきているのだ


そしたら根を引きちぎりながら立ち上がる、そして少しだけ横に移動して捜索再開


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動



大体、もって十秒くらい


それ以上その場にとどまると本気で引っ張らないと引き剥がせないくらい根が絡んでしまう


五秒から七秒くらいまでなら、絡みついてきてもまだ軽い力で振り払える

だから私はその周期で細かく移動する

いちいち移動のたびに全力を発揮できるほど熱血キャラでもないからね、私は



凛「でも、この根っこ、私が寝ている間には絡んでこなかったんだよね・・・」


ぶちぶちっ


一度動き始めたものはターゲットに認識される、とか


じゃあ目覚めた時あのまま寝っ転がっていれば狙われなかったのか、いや無理な話だ


ぶちちっ


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動


だけど私の前にはいつまでたっても三つ葉しか現れない


凛「・・・・・・あぁ、もう」


何が楽しいのか、何度引きちぎられても私が立ち止まれば根っこは飽きることなく絡みついてくる


よく見ると私が引きちぎった根っこのかけらにも、また別の根が絡みついて地面の下に引きずりこんでいた

再利用のつもりかな

そしてそれだけじゃない、


凛「一輪車・・・」


養分を吸収するものがなくなったからなのか、クローバーの根が一輪車やサッカーボール、タブレットにまで絡み始めていた

私に比べるとすごく遅いけど、緑の細い線がその表面を確実に侵食している

私以外のものが全部緑色に塗り替えられていく


ぶちっ


ぼんやりとその様子を眺めていたらまた足を取られそうになって、あわてて根を引きちぎる


凛「・・・見つからない」


どこまで行っても三つ葉、緑、三つ葉、緑

空を見上げると緑とついになるような真っ赤な色に目が眩む


視線を戻すと一面のクローバーが地平線の彼方まで地面を埋めている、土の色なんて見えない



これだけの中から、四つ葉のクローバーを探す?


たとえ現実であってもそうそう見つからないような代物なのに?


砂丘の砂粒の中から一粒だけ混じった大豆を探し当てるような、気の遠くなる作業


そもそも私の推測はあってたの?

四つ葉のクローバーは本当に重要なの?


ぶちちちっ


なんの変調もない手作業がいやになってついつい余計な思考を巡らせてしまう


移動を続けるうちに少し離れてしまった扉に視線を投げかける


赤と緑の世界の中で唯一のアクセント、四つ葉の装飾が施された扉、

まだ何かが出来るかもしれない。と、そう思わせるたった一つの手がかり


もしあの扉自体がただの置物だったら・・・・・・


私は今度こそ一歩も動けなくなるだろう



ぶちっぶちっぶちっぶちぃ


凛「・・・・・・・・・」



足が重い、

根が絡みついているから、とかそういうんじゃない


終わりの見えない作業への辟易、

その作業そのものが徒労かもしれないという不安

そしてもしそうなら容易に想像がついてしまう自分の末路



それらの思考がクローバーとはまた違った意味で私の足に、手にまとわりつく



凛「!!・・・・・・だめだ、しっかりしないと、私」


三つ葉のなかから四つ葉を探し当てる

思いつく限りじゃ今はこれしか有効策がない


私は、自分の頬を叩く・・・のはアイドルとしてプロデューサーに怒られそうだからとりあえずその場で一度、柏手を打った


パァン!


初詣先の神社でよく耳にした小気味いい快音が意識を引き締める


凛「よし、」


根を振り払うと、離れたところにしゃがんで目に付く範囲のクローバーをすばやく精査する


三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「_え____四______?_____」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

何かが頭をよぎった

そのことは今は気にせず、力強く足を踏み出し、次の場所に当たりを付ける


ぶちっ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「...えっと......四つ葉のクローバー...ですか...?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉


立ち上がる


ぶちっ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はい...その...す、好きなんです......集めるのが......たくさん見つけたら、わたしも、もっと幸せになれるかな...って」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しゃがむ、視界いっぱいの緑

この中から四つ葉を見つけるんだ

指先でかき分ける、目を凝らす


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「り、凛さんも、お一つどうぞ......幸せの...お、おすそ分け、です......」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クローバーをかき分けていたら、いつだったか現実の方で智絵里と交わした記憶が再生されてきた


ありすを始めとしたボットとプレイヤーの私もこの空間に巻き込んだ智絵里


智絵里の立ち位置はプレイヤーとボット、どっちなのかな


ボットとプレイヤーのどっちに狙いをつけて能力を使っているんだろう



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「大丈夫、です......四つ葉のクローバーは......また探せばいいんです......何度だって」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぶちっ


手探り


ぶちっ


視界が緑色に埋め尽くされて、そこをいじっている自分の手がぼやけてきた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「探すのが...大変?......そんなことないです、よ?......わたしは探すのにちょっと、時間がかかってしまいます...けど」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉

ぎっしりと並んだクローバーが、じっとこっちを見ている気がした

そして手の代わりに根っこが私を捕まえようとしている


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「最近は...近所の公園の隅の、小さいクローバー畑が...よく行くスポット...です」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小休止として、立ち上がって伸びをした


空の赤さが目にしみる


緑ばかり見た後だと、逆に毒々しく見えた


すぐに、クローバー畑の探索に戻る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はい......オフの日に行ってます......れ、レジャーシートを広げたくらいの......小さいスポット、ですから」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

作業に終わりは未だ見えない

でも私は、負けない

ここで諦めたりはしない

私は




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~














「でも、それだけ狭くても、丸一日...探して......一本も見つからない時も...あります」











~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




私は_________





ゲーム開始?分

【ERROR!】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮


洗濯機に入れられた衣服の気持ちがよくわかる



目に入る世界すべてから上下左右の概念が消えている


地面と壁の境界が消えていく


自分の声も聞こえない


360°全方位から届く破壊的な爆音が耳を叩く


アタシが今いる家は辛うじて自壊しないまま何か大きな力に引きずり回されている


多分道路なんかも無視して、壁もほかの家も、電柱も何もかもにぶつかって回ってる


暴走列車に閉じ込められたみたいにアタシは壁や地面に体を打ち付ける


加蓮「____________!!!」


悲鳴もがれきの軋轢音で聞こえない


ただ、いまだにアタシは窓から放り出されたり、壁に頭をしたたかにぶつけたり致命傷を負ったりはしていない



のあ(ボット)「............」



それというのも壁から生えた手がアタシの手を銃もろともがっちり掴んでいるからだ

それが杜撰とはいえ命綱になっているおかげで、猪みたいに住宅街を跳ね回る家の中にいながらも大怪我はしていない


ただ、何かと衝突する音が雷みたいに鳴るたびに弾みでどこかしら体を打ち付け続ける



のあ(ボット)「............私は、知ってしまった」



何かをなぎ倒す音、大きな何かが瓦解する音の隙間を縫うようにのあさんの声が聞こえた

静かに、どこまでも響くような透き通る声が破壊音とは別にはっきり聞こえてくる



のあ(ボット)「あの存在の胎動はすべてを終わらせる......それはきっと勝者のいない...殲滅だけの時間のはじまり」



でも何を言いたいのかは分からない、アタシがその意味を考える暇もなくダメージの嵐にさらされていく



のあ(ボット)「私は...私たちには...力が必要なの。それも、能力だけに依らない......実戦からの学習と経験が紡ぎ出す力が...」



よく見るとあちこちでシャッフルされて飛び交っている壁の破片やがれきに、目や口がついていて、それがこっちを向いていた



のあ(ボット)「私は...あの子達をこの世界から欠けさせたくない......かといって私一人で守るにも限度があるし、きっとあの子達はただ守られるだけを望まない......」



一際大きな音が鼓膜を振るわえせた、

腕を掴まれたまま音の聞こえた方向に目を向けるとそこに大穴があいていた

ぶつかりすぎてついに、というか遅すぎるくらいだが、家が半壊したのだ

外からの光がアタシが置かれている惨状をありありと浮かび上がらせる


そして外の光景も目に飛び込んでくる


津波にでもあったように住宅街がすり潰されていた、

周りの家が二階建てだったのかすら判断がつかないほどに粉々にされている

がれきの海は平坦で、その遠くに並んだビルまで見通せるようになっていた




のあ(ボット)「だから加蓮...紗南、まゆ、美穂.....どうやら他にもいるようだけど......私たちと闘ってもらうわ、そして私たちはその経験を糧に、殲滅を乗り切ってみせる......」




そして、もう一件、アタシの真正面から


3階建てくらいのビルがこっちに猛スピードで突っ込んできている


曲がる気配はない、正面衝突する気満々だよアレ


高層ビルでなくともビルはビル、あんだけでかいのにあんな速度でぶつかられたら今度こそやばい


連続する破壊音が内からと外からで二倍になる


のあ(ボット)「安心して......まだ、完全には倒さないわ、少しスタミナを削らせてもらうだけ......そしてプレイヤーに集まってもらうだけ......」


明らかに少しじゃ済まない、それぐらいはわかる


壁の腕は振りほどけない、ある意味アタシを守っていた壁もぽっかり穴があいている





衝突まで5秒





舗装された道路をはがしたり木材の柱をへし折る音が警報みたいに鳴り響く






衝突まで3秒





そこに別の音が混じった


落下音?


風を切りながら何かが飛んでくるような音が






衝突まで1秒






ヒュルルルルルルルルルルルルルル・・・・・・






のあ(ボット)「.........これは...?」




爆発音





加蓮「___!?____」






アタシのいる家の、一直線上の進路が一気に爆散した

この家とビルがもう少しで衝突していたであろうポイントが吹き飛ばされる



その爆風で今までなんとか形を保っていたアタシの足場が崩壊する


のあさんの、壁から生えた腕も、床から伸びてきたヒビに巻き込まれて砕けた


ジェットコースターの落下みたいに自分の体が重力に引っ張られる


このままじゃあがれきの下敷きだ、アタシはさんざんあちこち打ち付けられて、

半分やけになっていたから、迷わず外に飛び降りられた、

壁に空いていた穴から、外へ


二階から飛び降りるか、崩れてきた天井にぺしゃんこにされるか


加蓮「ホントはどっちもやだけど!!」




でも、




二階からの落下の衝撃に備えていたアタシは意外に早く着地した


おびただしい量のがれき、その山がたまたまアタシの着地地点に積もっていた



おかげで尻餅をついたけど二階分の高さから直接一階に叩きつけられずに済んだ






加蓮「た、たすか・・・った?」



がれきの山を慎重に、それでも急いで駆け下りる

背後ではさっきまでアタシがいた家屋ががれきの山へと変わっていった

脱出成功

さっきの爆発と運のおかげで大ダメージは避けられた、かな?


なんだったんだろ・・・あの爆発、味方がいるのかな?


いまスタミナどれくらいだろう











のあ(ボット)「今のは、砲弾」




「(じゃあ...裕子の仕業かしら......プレイヤーとして、その気になってくれたということ?)」




「(いえ、確かにあの戦車の性能ならここまで攻撃は通るでしょうけど、裕子はどうやってこの戦場を知ったのかしら)」



「(裕子を落とした場所と、この住宅街は離れているし、闇雲に操作してあのピンポイントな砲撃ができたというの......?)」





「(!!......そういうことね...)」





のあ(ボット)「誰かが、いるのね」


「遊んでばかりの堀裕子を戦闘へ参加させるために引き合わせた、戦車型操作ボット」


「そのボットに干渉できる誰かが、この戦場に」



ゲーム開始42分


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大☆混☆戦 まで秒読み中



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


コメント、安価ありがとうございました


465556965
4、一票
6、三票
5、四票
9、一票

チャプター
緒方智絵里
をお送りします


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
緒方智絵里


ボットには大きく二種類に分けられる


自分で考えて動くものと、外部からの命令で動くものだ


前者は、自律型

今回プレイヤーとの対戦に選ばれた通常ボット、練習用ボット

そして仮想現実の空間の均衡を保つCHIHIRO


星輝子の能力によって生み出されたキノコ型ボットも一応このカテゴリに含まれる

ただし輝子自身も知る由もないが、キノコには「星輝子の身を守る」という簡素なプログラムしか備えていないため、

キノコ達が本当に自分の思考を持ち、それに沿って動いているのかは実際のところ不明である。


とにかく、キノコを例外とすれば、

この種のボット達には目的達成(今回の場合模擬戦闘での勝利)のために各々が思考し、模索し、実行するスキルを持ち合わせている



後者は、操作型

外部からのアクセスがない限り、ただの置物である



例えばプロデューサーくん、

このぬいぐるみ型のボットはプレイヤー小日向美穂と一体化して操作されない限り、一つのキーアイテムとしてそこらに転がっているだけだった



例えば堀裕子と引き合わされた戦車群、

無人兵器も珍しくなくなった時代だが、この戦車型ボットは誰かが搭乗するか”何らかの手段で外部干渉”しない限り砲弾を放つことはない

ちなみにこの戦車、砲弾の自動装填を始めとして、一通りの操縦は簡素なものにされている

そうでないと一部のマニアックなミリタリー知識を持つ人間にしか操作できなくなるからだ。




またここにも例外が存在する

ボット、高峯のあ

彼女は建物、地面を始めとしたそこらじゅうに溢れたオブジェクトと一体化し、操作する

これは何の機能も持たなかったはずの物体を自身の操作型ボットに変えてしまう能力とも解釈できる










そして今ここに、ボットであってボットでない、どっちつかずの存在がいる。


ボットとして見るなら前者、自律型のボットだが、

そうでないものとして見るならそれはただのアイテムだった。



しかも体力を回復するでもなく、銃弾を発射するでもなく、

ただそこに転がっているだけのお飾りのアイテム




???「(・・・・・・あやしい)」




鞠、というより赤青黄の色鮮やかな紙風船の姿だが、

時にどこからか吹く風に揺られ、時に緩やかな傾斜を転がりながら少しずつ移動している


その鞠に自由な移動能力はない、アイテムとしてされるがままである



???「(これは追跡しなきゃ、だねっ!)」



ただしその中には、一つのボットの意識がはっきりと存在している。


ボットでもありアイテムでもある存在

目も耳もない、ただの鞠

だが彼女は確かに対象の後ろ姿を見て、対象の足音を聞いている



あずき(ボット)「(・・・名付けて、智絵里ちゃん追跡大作戦!)」



対象の名は緒方智絵里



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あずきは見ていた

ありす、晴、舞、そして今回の作戦の相手凛が地面に吸い込まれるように消えていくのを

正確にいうなら落下の末、地面に叩きつけられるというところで、地面に現れた模様に消えていったのを

そしてそのすぐそばに智絵里がいたのを

ガラスの割れる音を聞いて近づいてきたのだろう、そして能力を使ったのだ



突如現れた模様。そのとき空中にいたあずきからはその模様はハートマークに見えた、

もしかしたらクローバーの葉の形を模していたのかもしれない、智絵里の趣味がクローバー集めであることを考えれば、そっちの可能性が高そうだ


「事務所の方向から凛の注意をそらす」


それがトライアドプリムス分断作戦のうちの一つであり、

あずきの役目は凛の注意を引くであろうキーアイテムであるピアスを速やかに現場から持ち去ることだった

そもそも武闘派の能力者さえいれば凛を倒してしまえたのだが、音葉も拓海も別件で動いていた上、あとのメンバーも事務所の防衛にあたっていた。


とにかくそれは今はいい。問題は消えてしまった仲間のことだ




あずき(ボット)「(みんながあのまま消失しちゃった、とは考えたくないなぁ・・・)」


鞠の姿から人型のボットに早変わりする、

そのままひょいっと、近くの物陰に移動するとまた鞠に変身する


この状態なら狭い隙間にも隠れて智絵里を観察できる


智絵里「............」


智絵里はこちらを振り返る様子はない、まっすぐ歩いていく


あずき(ボット)「(よしよし、気づいてないね、追跡作戦万事順調・・・♪)」





・・・でも、とあずきは鞠の中で考える


あずき(ボット)「(このままついて行っても、どこかでマキノちゃんに連絡を取る必要が出てくるんだよね・・・)」

「(でも、通信機なんてないし、なにかを伝えるためには秘密基地まで戻らなきゃいけないし、でもその間に智絵里ちゃんがどっか行っちゃうかもだし・・・)」

「(せめて、ありすちゃんが無事ならあずきの居場所を探知させて、マキノちゃんが跳んできてくれるんだけどなぁ・・・)」



___何故かあずきは鞠の状態になっている間、ありすのタブレットの探索網に引っかからない、

でもボットに戻れば反応するから、まるで画面上でシグナルが点滅しているように見える、

この独特の反応のおかげで、ありすはタブレット上の夥しい数のドットからあずきを見分けることができる


が、そのありすの安否が不明なのだ


あずき(ボット)「(智絵里ちゃん、隠れ家とかないのかな・・・そしたらあずきも一旦退却できるんだけど・・・どこまで行くんだろ・・・)」


この手の追跡は相手に本拠地があればこそ、その特定のために役立つ行為だ

なんの目的もなくふらふらしている人間をつけまわしても有力な情報は得られないだろう



あずき(ボット)「(・・・・・・・・・・・・)」



「(・・・・・・あずきが倒しちゃう?・・・)」



晴や舞、そしてありすがどうなったかはわからない。なにせ目の前でどこかに消えていったのだ


だが、消えたというのが文字通り消失したのだろうか、と言われると確信は持てない


”範囲内にあるものすべてを消し去る能力”


智絵里の能力がそこまでえげつない物とは考えにくい、突拍子がなさすぎる


それよりはまだ何処かへワープさせるとか閉じ込めるとかの方が納得がいく


あずき(ボット)「(えっと、たしか乃々ちゃんの能力がそんな感じだったよね)」


八神マキノが言っていた、勧誘に失敗したボットの内の一人



プレイヤーもアイテムを何もかもを一箇所に閉じ込めてしまう能力

特にアイテムは種類を問わず自動的に能力が発動してしまうらしい




マキノ(ボット)「でも、おそらく乃々さんの能力はそれだけではないでしょうけどね、でもそれ以上は訊く前に逃げられてしまったわ......」




マキノは最後にそう締めくくっていた。


とにかく、自分の仲間が瞬殺されたとは考えにくいし、考えたくない


能力によってどこかに閉じ込められているという推測がここでは自然だ


なら智絵里を倒せば消えた仲間も戻ってくるのでは?


あずき(ボット)「(マキノちゃんのいう論理的な考えってやつじゃないけど・・・でもどっちにせよ智絵里ちゃんは放っておけないよっ!)」




人間の状態に戻る、

自分のオリジナルとなじみの深い着物姿

その胸元を緩めて中をあさる

中に入っているのはピアスの入った箱、


それと細い針金のような道具、アイスピック



あずき(ボット)「(あずきが持ち運べる武器は、ピアスのこともあるからこれが限度だったんだよね・・・)」


あずきは鞠に変身するとき人間状態で懐に入れていたものも一緒に鞠の一部にできる


ただこれをやるには大きさや重量の制限がかなり厳しく、銃弾何発かなら持ち運びに問題ないのだが拳銃一丁ではアウトなのだ、


鞠に変身した時に鞠の中からはじき出されて、所持できなくなる


今回はピアスを持って逃げることを前提にしていたのでさらに条件は厳しい


結果として、アイスピックがピアスと一緒に着物の中にしまっていても鞠に変身できる限界重量だった




あずき(ボット)「(・・・こころもとない、もともとあずき、作戦では戦う予定はなかったしなぁ・・・)」



あずき(ボット)「(でも、あずきの隠密行動大作戦ならいけるねっ!)」



智絵里は相も変わらず目的もなく歩き回っているように見える、

ただ一向に休憩する気配がないことといい、その背中から真剣さがつたわってくる



あずきはその背中めがけて一気に飛び出した




智絵里「.........?」




残り10メートル、智絵里は振り返らない



あずき(ボット)「とおうっ!!」


残り5メートル、地面を強く蹴って智絵里の懐に狙いをつける


こっちに気づいて振り返るまでに一気に攻撃を加える


ゲームとはいえこの世界にも急所はある、接近戦ならアイスピックでも十分勝機はあった



智絵里「.........!」



残り3メートル



智絵里は振り返らない



智絵里「.........ぁ」










そして振り返らずに能力を使った









あずき(ボット)「!??」





”近づいてきたから身の安全のためにとりあえず攻撃しよう”


智絵里の背中はそう言いたげに見えた




駆けだしたあずきは止まらない


あずき(ボット)「(ちょ、後ろも見ないで能力使う!?もし味方のプレイヤーだったらとか考えないの!?)」


智絵里の、大人しい見た目を裏切るような容赦も遠慮もない攻撃が実行される



翅を閉じていた蝶が飛び立とうとするように、智絵里の足元の影が花開く


智絵里自身に変化はなく、その影だけが急速に拡張されハートマークに似た模様をかたどる



じっと小虫の接近を待っていた食虫植物のような、

巣を張って蛾や蝶の飛来を待っていた蜘蛛のような



クローバーの葉の形の陥穽がぱっくりとあずきに口を開いた




智絵里「......後ろから...い、いきなり走ってくるなんて...き、きっとボットです...よね?」





今更になって首を後ろへ向けつつぽつりと呟く


智絵里「もし、違ってたら...ごめんなさい」


しかし、そう言う智絵里の表情からは何の感情も読み取れない







振り返った智絵里の目にはクローバーの葉型に広がりきった影



智絵里「でも......謝っても意味はないです、よね...?」





そこには誰もいない。能力の象徴である葉型の影に呑まれたのだろう、と予測した





結局、智絵里は後ろからきた誰かを見ることもなく視界から取り払ってしまったようだ


智絵里「えっと......これで葉っぱ二枚分、使ったの...かな?」


そして恐ろしいことに智絵里には、能力を味方につかってしまったという可能性を危惧する様子がなかった



それはある意味で容赦のなさ、



まゆ、加蓮、凛がそれぞれ戦闘の中で見せた、その異様な行動力やモチベーションに非常に似ていた


智絵里は前を向きなおすと、また当てどなくボットを探すために足を動かし



智絵里「.........?」






ふわっ





すぐ目の前に何かが落ちてくる


風にさらわれてきたのだろうか


赤、青、黄色に彩られた、ボールのような___














あずき(ボット)「・・・助走ジャンプ&変身大作戦・・・成功だよっ!」




それが人間に変身して右手に構えた鋭利な武器を突き出してきた






智絵里が能力を発動したと思った瞬間、あずきはその影に触れないままに空中に跳んだ、


そのまま空中で鞠に変身することで、跳んだ勢いはそのままに軽い体で智絵里の頭上をふわりと飛び越えられたのだ


あずき(ボット)「(まさかできるとは・・・)」





_____________

 緒方智絵里+ 85/100


_____________

_____________

 桃井あずき+ 100/100


_____________


ゲーム開始48分経過

緒方智絵里VS桃井あずき

開始



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一人分しか書けませんでしたすいません


次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


安価、コメントありがとうございました




88769986

8、三票
7、一票
6、二票
9、二票

九票に足りていませんがこの後6、9が来たとしても8が先に投票されているので8が優先されます

ということで今回は

チャプター
双葉杏&諸星きらり

をお送りするにぃ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり


ジジッ・・・


パタン

ジジッ・・・


パタン

ジジッ・・・


パタン


暗転

明滅


タイル張りの密室の灯りが点いては、消える

見える世界すべてがが暗黒に満ちた、かと思えば俄かに青い光が天井や壁に広がる


不規則なタイミングで視界を闇に塞がれるうちに時間の感覚も消えていきそうだ


きらり「うう~目がチカチカしてきたにぃ・・・杏ちゃん・・・どうすゆ?」

杏「確かにこれじゃあ眠れないねぇ・・・」


その部屋の真ん中に二人はいた、きらりは杏を腕の中に抱いたまま、杏はその腕の中でなされるがままだ

パタン

部屋の明かりがつく


するとさっきまではなかったはずのタイル製のテーブルが二人のすぐ隣に存在していた


きらい「にょわぁっ!?」


杏「あ、また飴じゃん」


テーブル上にはまたも飴。これが銃だった時もあればナイフだった時もある


それがまるで、手に取ってくれと言うようにすぐそばになんの予兆もなく現れる




さっきからずっとこの調子なのだ。部屋が点滅するたびに何かが差し出される




きらり「・・・むっ!杏ちゃん、怪しいものに触っちゃダメ!」

杏「ぐぇ、ギブギブ・・・」


ついつい飴に手を伸ばした杏を、きらりは抱きしめるようにして止める



杏「でも、きらり、この部屋、さっきからずっとこのままだよ?いくら杏でもそろそろ退屈してきたんだけど」

この部屋、居心地よくないし

と付け足して杏はきらりを見上げる


きらり「むぇ・・・」


それはたしかにそうだ、全く変化のないままただ目のチカチカするような部屋に入れられていると非常にストレスがかかる

タイル張りの壁を見回す。

大して厚くも重くもないそれは、何故か壊せない

相手の目的が読めない

今の状態に終わりが見えない



ジジッ・・・


暗転




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハムスター

滑車

カラカラカラ


蒸気

タービン

ごうんごうんごうん



コリオリの力

海流

ざぶざぶざぶ


来場者

回る入場ゲート

がっこんがっこんがっこん



プレイヤー

青と白の密室


あわあわあわあわ

とたとたとたとた

しおしおしおしお



しーん



乃々(ボット)「おかしいんですけど......きらりさんが大人しいなんて...もりくぼの予想は大外れなんですけど」






_____________

 森久保乃々+ 81/100


_____________




乃々(ボット)「ぅぁあ......またスタミナ減ってます......」




森久保乃々の能力は強いて例えるなら「発電機」である


ただし発電に使うのは人間であり、ここで生産されるのは電気ではなくスタミナである

乃々の能力で生み出されたタイルは触れたものにダメージを与える

同時に奪ったスタミナは乃々へと流れていく仕組みになっている


このタイルの空間では、すべてのエネルギーが保存され乃々へ流れていくのだ


閉じ込めたプレイヤーが壁を叩いたり、歩き回ったりすることで少しづつ蓄積させたダメージ分だけ乃々は命を長らえる

そしてそれを誘発する小道具として銃や回復アイテムも一緒に閉じ込めてある


乃々(ボット)「(杏さんは閉じ込めたところで動かないでしょうから、パッションのきらりさんが来た時は、うまくいくと思ったんですけど...)」

「......どうして、どうして動いてくれないんですかぁ......」



だがそれと同時にその発電機の維持コストとして乃々のスタミナは減っていく


だから乃々は自分の体力が減る以上に体力を浪費してくれるプレイヤーを電池として閉じ込めなければならなかった


なのに、捕まえた有力株、諸星きらりは密室の中で動こうとしない


乃々(ボット)「きらりさんが慎重派だなんて、知らなかったんですけど......」





とりあえず、まずい


とりあえず、想定外




乃々(ボット)「そもそもなんでもりくぼの能力はこんなめんどくさいものなんですか......どこかで静かに過ごしてたかっただけですのに...」


積極的に能力を使っていかないと自分がやられてしまう、でもそうなるとプレイヤーに関わる必要性が出てくる


乃々(ボット)「......晶葉さん、いぢめですか......サボろうとしたのがいけなかったのですか......」


照明の不安定な密室、アトランダムに出現するアイテム



そんな場所に置かれて耐え切れず、あの二人が空間を壊す勢いで狂乱するか


耐え切った結果、森久保乃々が自分の能力に喰われて自滅するか




乃々(ボット)「うぅう......むぅーりぃー、もりくぼは生きるんです...ここで消えるわけにはいかないんです...」



滑車を回すためにハムスターを追い立てる


タービンを回転させるために蒸気を上げる


海をかき混ぜるなら地球の自転の力を使う


入場ゲートを動かすには来場者数を増やす



密室でパニックを起こすには




乃々(ボット)「......ハプニング、事件が必要ですよねぇ......」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

青 





そして暗黒の黒


青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒


めまぐるしい光が目を焼く


きらり「・・・きらり、なんだか気持ち悪くなってきたゆ・・・」

杏「・・・杏も・・・」


きらりは杏を腕の中に大事に大事に抱え込む

なんとなくではあるがきらりは察していた




きらり「杏ちゃん、ごめんだにぃ・・・」

杏「なに?」





きらり「うゆ、多分・・・きらりが来たからこんなコトになっちゃたんだよね?」




その推測はあたっていた。

電池としてきらりは乃々の眼鏡にかなっていたからこそ能力が使われたのだから


杏「・・・なにいってんのさ、きらりらしくもない」

きらり「だって、だって・・・」


寝っ転がったまま平和にやっていた杏のそばに自分が近寄った途端にこの有様、

きらりほど純粋な良い子なら自分に責任があると思うのも仕方ない




だからきらりは動けない、動かない

巻き込んでしまった杏を危険に晒せない


ジジッ・・・


暗転


ぎゅっと、


暗闇の中、どんな攻撃からも杏を守れるように全身で包む


杏「・・・・・・・・・」


パタン


タイルが倒れる音が暗闇に響く


もう何度目になるかわからない繰り返された現象


だが、ついに変化が訪れる


杏「・・・・・・?・・・あれ?」


きらり「んに・・・?」


点滅を繰り返され、一向に暗闇には目が慣れないまま、静かに灯りがつくのを待つはずだった


一秒

二秒

五秒

十秒


だが、その点灯が起こらない


きらり「・・・まだ、明るくならない?」


杏「電池切れかな?」



変化が起きたということは、それはきらりの我慢強さの勝利だ

その結果が目の前に示される



パッタン







暗がりに四角く切り取られた光が差し込まれた








きらり「にょわっ!?」


杏「開いた・・・!」




壁の一部、一枚のタイルが剥がれ落ちている




一直線に伸びた光が少し離れた位置の二人を照らす


そこから見える風景はなんの変哲もないさっきの公園の並木

だが、時間の感覚も狂いかねない密室にいた二人には、何時間も前に見たモノのように感じた



きらり「・・・・・・?」

杏「きらり!あそこから出られるんじゃない!?」

出し抜けに生じた変化にどう反応していいのかぼんやりとしていたきらりに杏が呼びかける


きらり「!・・・うん!」

「きらりーん・・・だーっしゅ!」



1メートル四方の穴、体の小さい杏はもちろん、きらりでも通るのに苦労はしないだろう

もし穴が天井に空いていたら出るのに苦労したかもしれないが、

その四角い隙間は壁に空いている上、地面からもそう離れてはいない。


きらり「よかったにぃ杏ちゃん!すぐにでよー!」 

杏「うん、よかったね何もなくて、杏は疲れたよもう・・・」


タイルの床を蹴って脱出口へと駆け出す、ここまで意味不明な空間ならあの四角い出口が閉じてしまうこともありうる

急がないと


闇に差す一筋の光に向かって杏を抱いて全力疾走する



まだ目が慣れていないため他の物は目に入らない



壁に空いた穴のすぐ下に、またもタイルのテーブルがあるのも逆光で見えない



その上にまた飽きもせず銃が置かれているのも見えない



無造作に置かれているように見えて、銃口がきらりに向けられているのも判別できない









乃々(ボット)「......もりくぼは、こういうのがきらいですけど......」




四角い光の中に小さなシルエットが差し込まれる



タイル一枚分のスペースから密室だった空間の中へと手を入れる





テーブルに置かれた銃を手に取る





そして乃々はそのまま引き金を引いた



標的は今にも自分が覗き込んでいる穴からこちら側へ飛び出そうとしている少女たち



何度も何度も何度も何度も何度も引き金を絞る





乃々(ボット)「もりくぼは.........私は、生きさせてもらいます」




タイルの壁に銃声が反響する、悲鳴がかき消される






”この密室においてはすべてのエネルギーが保存され、乃々へ流れていく”





きらり達から失われたスタミナは何処へ行く

タイルに吸収され乃々へと




乃々(ボット)「あぅ......やっぱり完全密閉じゃないと、スタミナの伝達率も下がりますけど......」


「でも、もっと早くこうしていれば良かったです」


「では...もりくぼはお腹いっぱいなのでしばらくは別の場所でひっそり暮らします......」





「さようなら」





パタンパタンパタン



壁から外れたタイルを追うように、穴を広げるように他のタイルも次々と機能をなくして剥がれ落ちていく


密室だったものが崩壊していく

公園の風景から異物が消える


その跡には二人のプレイヤーが残された




_____________

 森久保乃々+ 100/100


_____________

_____________

 双葉杏+  29/100


_____________

_____________

 諸星きらり 15/100


_____________





ゲーム開始48分経過


諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

ボット側の戦闘放棄により続行不可能


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




そこは現実世界でアイドルたちから「事務所」と呼ばれ親しまれていた場所によく似ている

いまその中の一室で何人かの少女が各々自分のことをしていた

その中の一人がソファの上で目の前に置かれた電話機に視線を落としていた


ニャー ニャー ニャー


黒猫に似た電話が鳴る



「.........もしもし......」



受話器を耳にあてた


砂塵の嵐のような、要領を得ない雑音が好き放題に流れ出す


だが彼女にはわかる、なんとなくこの後恐ろしい敵が現れるということが


なにせ、そういう能力なのだ


この手のノイズが受話器から流れることは、自分のいる場所に良くないことが降りかかる予兆なのだ


だからその度に彼女は逃げ回っていた。


だが今は違う



雪美(ボット)「......卯月...未央...」



近くにいた、頼れる仲間を呼ぶ


「わかるよゆきみん!次の敵だね!」

「今度も頑張ります!」


雪美(ボット)「...翠......小春...仁奈...」



「ええ...あい分かりました...」

「はい~」

「ティラノのリベンジでやがります!」



電話のことはすでに仲間たちには周知だ。


”未来の災いを予測する能力”


ボットたちはそれを嘘くさいと切って捨てたりはしない


すでに戦闘準備を整え始めていた



「今度は勝つぞー!!」

「はい!島村卯月!頑張ります!」

「ヒョウくんも私と一緒にがんばりましょうね~」

「・・・」

「仁奈の隠し玉、みせつけてやるでごぜーます!」




今から行われるのは紛れもない戦闘行為であるはずなのに準備をする少女たちは実に和気藹藹としていた

それがなんだかおかしくて、


雪美(ボット)「...............ふふ......」




事務所の防衛、ボットの勝利への布石へとみんなで動き続ける


だが、自分にできるのはここまで、予兆を伝えるだけだ。



雪美(ボット)「(...そういえば、私から掛けられたあの電話...何だったんだろう...あきはの声が聞こえたけど...)」




雪見自身も知らなかった、能力のもう一つの使い方、

電話を用いた、こっち側からのアクセス。

一度しかできなかったあれにはどんな意味があったのか












彼女は知らない


自分の能力が何に干渉しているのか


《黒猫電話》がどこから未来の情報を掴んできているのか




未来を予測する能力の仕組み




その重要さを知らない

それが引き起こす悲劇を知らない


ゲーム開始53分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

9、大和亜季&小関麗奈


安価、画像ありがとうございました


967969966

9、四票
6、四票
7、一票

9の方が先に投票されていたので早いもの勝ちで9

チャプター
大和亜季&小関麗奈

をお送りします

ご協力ありがとうございました

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  
チャプター
大和亜季&小関麗奈







下水道





と聞くと大抵は薄暗くてドブの匂いのイメージがつきまとう


だがここは仮想現実であり臭いの元となる汚水も生ゴミも存在しない


それどころかやや頼りない明かりだが照明まで整備されている


だから下水道というより地下通路かトンネルといったニュアンスの方が強かった


そして今

大和亜季、小関麗奈の二人はそこにいる



亜季「もともと、下水道やこの手の地下の通り道には作業員用の明かりがあるものです」


麗奈「作業員もなにもここゲームじゃない・・・」


パン!


麗奈の手から放られたがれきが、安い爆竹のような音を立てて弾ける



がれきは通路の壁の一部にヒビを入れて欠けさせたものの一部だ



亜季「ふむ・・・やはり手のひらで包んだ物が爆発するでありますか」


麗奈「どうでもいいけどこれしょぼくない?もっと派手にドカン!といかないものなの?」


亜季「それを今調査しているところでしょう、麗奈・・・では次はもう少し大きめのがれきで試してみましょうか」



マンホールをこじ開け、はしごを下り、明かりの灯った通路を少し奥に進んだところ

亜季は麗奈とともにその能力の性質を分析していた



周子との戦闘で止むを得ず何度も繰り返した爆発、そして発砲。

これだけ物音を立ててしまうと静かだった商店街とは言えいったい誰がやってくるともしれない


だからひとまず身を隠そうと亜季が勧めたのが地下だった。

麗奈は最初嫌がったが、地下が思ったより不潔でないことが分かると文句を言うのをやめた

現実でなら水が流れていたであろう、細長くどこまでも続く通路に二人並んで座り込む



麗奈「このていどの爆弾じゃ大した武器にはならないわよねぇ・・・」


13歳相応のちいさい右手で持つにはやや大きいボール状のがれきを握る


それを下水道の内壁にぶつけるように投げつけた


さっきとさして変わらない音量の破裂音、

がれき自体もさっきより大きかったせいか損傷具合は少ない


麗奈「よくこんなので勝てたわねアタシたち」


壁に跳ね返ってコロコロと転がってくるがれきを見ながら麗奈が小さく呟く


実際、辛勝も辛勝といったところだった。

亜季が偶然周子の能力の欠陥に気づいたからよかったもののそれまで散々いいように振り回されていたのだからそう思うのも仕方ない


その功労者、亜季はというとこれまで麗奈の能力の実験に使ってきた拳大のがれきを注意深く観察している


亜季「破片の大きさに依らず、破裂音はほぼ同じ・・・・・・破片そのものを爆発させているわけではなく、破片に火薬のような爆発物を付着させている・・・・・・?」


亜季「麗奈、たしか両手で握った時は少しだけ爆発力が増しましたよね?」


そろそろ能力による閃光に飽き飽きしてきた麗奈に尋ねる


二人の周りには大小大差ないがれきがゴロゴロと散乱していた


麗奈「え?うん・・・・・・あ、これね」


転がったがれきの一つをつまみあげる、それは他の物に比べると少しだけヒビが大きく入っていたため

損壊具合からみれば爆発力は他より大きいと言えなくもなかったが、大した差ではない


麗奈「でもアタシの能力が両手で使えるってだけでしょ?二倍になったところで元が大したことないなら意味ないわ」



今のところ麗奈の能力を試行錯誤して得られた情報は二人の状況を大きく変えるものではなかった


・麗奈が片手、または両手の平で握った、または包んだものが爆発する

・ただし麗奈の手から離れていなければ爆発は起こらない

・握らないと能力は発動しないので、触るだけでは爆発しない。よって壁や、車のような大きなものは対象外

・手の甲や腕は能力対象外。殴ったり腕が当たるだけでは爆発しない

・手のひらに握られるなら一度にいくつでも爆弾にできる(ただし爆発も同時、一度に握るため小石位にしか使えない)


・爆発の威力は爆竹程度、ただし若干強くなるときがある(条件不明)



亜季「折角手に入れた能力です。ここでモノにしなくては後の戦いで却って邪魔になりかねません。」

麗奈「モノにするもなにも、これ戦いに使えるの?」

亜季「それを今から二人で考えるのです・・・」


ミリタリーの知識から爆弾に関連するものを引き出そうと試みる

少量の爆薬を武力にするには・・・


この能力がもっとシンプルに 手のひらから火薬爆薬の類が湧き出る、とかならそれをかき集めるという方法で強力な爆弾も作れたのだが

いかんせん触ったものが爆発する、というもので火薬の類は見当たらなかった

火薬もなしに爆発を引き起こすのは凄いことだが、その規模が奇術師の手品レベルではどうにもこうにも・・・


亜季「(ですが・・・毎回同じ規模というわけでもなかった・・・もしかしたら麗奈が気づいていないだけで爆発の規模は調整できるのでは?)」


実験中、何度か閃光と爆音が通常より大きかった時があった。

そのあと慌ててつぎのがれきの破片で試してみたが望んだ威力は得られなかった


亜季「(威力はランダムなのか、実は法則があるのか・・・)」


両手で触ったときは?

たしかに爆発の規模は二倍になったが、元が小さすぎるし、実際大した威力ではなかった


拾っては投げ、拾っては投げ、試行錯誤を繰り返しても威力は上がらない



麗奈「・・・ねぇ、こういうのはどう?ほかに油とか爆薬とか燃えやすいものかき集めて、そこにアタシが爆弾で点火するっていうのは!」


亜季「・・・ふむ、罠を張るということですか。それも一つの手でありますな」


だが、この空間に銃はあるが、ガソリン、爆薬などまで揃っているだろうか、そしてそれが充分集まるだろうか

やはり能力を使いこなした上での戦力強化を第一に置きたいところだ



亜季「私にもなにか役立つ能力が備わっていれば良かったのですが・・・」



と、ひとりごちたとき







麗奈「!!・・・あ、亜季・・・!」


隣にいた麗奈が体にぶつかってきた、思わずそっちに意識を向ける








麗奈「誰かいる・・・!」








麗奈は下水道のむこうをじっと見ていた




そこにも道しるべのように明かりが点々としていたが、奥の奥まで見通すには不十分な光量だったため

その何者かの姿を視認することは亜季にはできない



・・・ず・・・ず・・・ず・・・




亜季「!」




だが足音は聞こえた




重たい何かが地面をこするような音が一定のリズムを持って暗がりから響いてくる


その音だけで得体の知れない重量感を感じさせる、そういう音だった


麗奈「・・・・・・!」


ごとっ、


麗奈が手元に転がっていたがれきの一つをゆっくり拾い上げる


攻撃するつもりか


その腕を握って亜季が止めさせた


亜季「ここで動くのは危険であります・・・」


麗奈「でも・・・もしこっち来たら・・・銃弾だって余裕はないし・・・」


亜季「もしかしたら別の場所に曲がって行くのかもしれません、ここは抑えて下さい」


ひそひそと声をひそめる


・・・ず・・・ず・・・ず・・・ず・・・


足音は遠のいているのか近づいているのか判然としない

まるで音が狭い下水道に反響するごとに重みを増していくようだった

麗奈は足音の聞こえる方向を睨みながらがれきを握りしめていた


油断した、こんなところまで何者かがやってくるなんて・・・


亜季は自分の失態に歯を噛み締める


・・・ず・・・ず・・・ず・・・ず・・・


・・・・・・ず・・・








ずずずずずずずずずずずずずず!




麗奈「!?!」

亜季「(こっちに来た!??)」


麗奈が、がれきを拾った音が聞こえたのか

それとも能力の実験中の音を辿ってきていたのか

それとも気配でも感じ取ったのか



闇が色濃くなるような錯覚、

頼りない光源の死角にある闇が深くなった



ずずずずずずずずずずずずずずずずずず!!!





間違いない。

どこかで通路を横に曲がることなくこっちに来ている




亜季「(やむを得ないでありますな!)」

ハンドガンを素早く構える


腕を水平に、闇の中へ一直線に弾丸が飛ぶように


だがその標敵は見えない


麗奈「亜季・・・!今なら、投げていいんじゃないの?明るくなるでしょ?」


亜季に手を掴まれたまま麗奈が小声で提案する、がれきは握りっぱなしだ


亜季「・・・・・・他の敵が潜んでいたら、音で気づかれてしまいますが・・・いえ、それは銃も同じですか」



ずずずずずずずずずずずずずずずずず!!!!!!


足音はもう間違いなくこちらへ近づいてきている


あちこちの壁や地面に反響したそれは、人間のものとは思えない引きずるような音を途切れることなくかき鳴らす


ついにシルエットが二人の目に飛び込んできた




大きさは中肉中背の男性くらい


体つきは亜季よりはがっしりとしている


あんなアイドルがいたのだろうか、それともまた別の存在か






ここが臨界点だった



亜季「こうなっては仕方ありません!麗奈!明かり頼みます!」


麗奈「任せなさい!」



亜季「(麗奈の爆弾の閃光で相手の姿を捉え、私が銃撃する!!)」



亜季は麗奈の腕から手を離すと同時にそれを銃に添える




麗奈の手に握り締められたままだったがれきが闇の奥に飛んでいく


だがその閃光が闇を切り裂いてくれるはず___


















________カッ!!!!!!________


























今まで見たこともない熱と光が下水道に満ちた




麗奈「____はぁ!!?」


亜季「なぜこのタイミングでこれほどの規模の爆発が・・・・・・!!」



こちらへ向かってきていたシルエットが焼き尽くされる








???「fffFFfff!!?」








しかも意図せず起きた爆熱と爆光が狭い空間内でさらに膨張した





そして周囲のものを何でもかんでも飲み込まんと一気にその勢力を広げる





麗奈「きゃあ!?」

亜季「く・・・!」



自分たちのもとへ殺到する獰猛な爆風から麗奈を守るように腕の中に包み込む


どうせスタミナは共有されているのにそうせずにはいられなかった




やはり完全にコントロールできるまで能力使用は控えさせるべきだった___


能力の制御を失ったボットの最期をこの目で見ていながらなんてザマだ___





腕の中に麗奈の体温を、背中に灼熱を感じながら亜季はまた後悔した



麗奈の能力にはまだ自分達が気付いていないルールがある


爆発の威力を上げる方法は確実にある、それを誤って使ってしまったのだ





一体何を間違えたのか


いやちがう

何かが合っていたのからこうなってしまった・・・






_____________

 大和亜季  105/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 105/200


_____________






ゲーム開始54分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが年長者の苦労
今日もチャプター1つ分だけでしたすいません



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子



安価、画像ありがとうございました


646774667

6、四票
4、二票
7、三票

チャプター
佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

から
お送りします

ちなみにこの三人は、便宜上まとめていますが
いまのところユニット登録はしてません

安価にご協力ありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南



ボットには二種類ある

自分で考えて動くものと、外部からの命令ありきで動くもの



その後者、操作型ボットにこそ三好紗南の能力は作用する

コントロールモード

一部の例外を含めて操作型ボットに命令を下せる能力

調査ではなく、干渉する能力


紗南「(コントロールモード・・・起動、と・・・)」



紗南は頭の中で能力のおさらいをする、使い方を確認する


___始め、上条春菜の狙撃から逃れている時にヤケになって開いたとき、そこにあったのは何かの名前だった

______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

 ・ミニキノコ   
  圏外 アクセス不可

______________________


ミニキノコが何かは知らない、だがプロデューサーくんは知っていた。


だからこそカーソルを動かして選択したのだが、そこから導かれた次の画面は混沌としていた


ノイズが混じり、色彩がむちゃくちゃ、床に落としたときにバグったと紗南は勘違いした


自分がいるビルの下まで美穂、ひいてはまゆが誘導されてきたのは奇跡に近い



美穂たちと合流できたあと、能力についてわかっていることだけを説明した。

そのときまゆと美穂から気になることを聞いたのだ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まゆ「そういえば美穂さん、何度か”音”が聞こえると言ってませんでしたぁ?」


美穂「あ!そうそう!そ、その音が気になって...わ、私がこっちの道がいいって言ったんだよ、ね...?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あとは謎解きゲームの要領だ。

コントロールモードの試行錯誤、

何ができて何ができなかったのか、何が起きて何につながっていたのか

美穂が少しだけ不安げな顔をしたが、なんとかプロデューサーくんも借りて究明を急いだ



紗南「(美穂さんのぬいぐるみに干渉したとき・・・・・・あたしのゲームは多分 混線、してたんだ)」


紗南「(一つのぬいぐるみのボットに対して美穂さんの意識とあたしのゲームから出る・・・電波?赤外線?みたいなのがぶつかった)」


紗南「(結果、ぬいぐるみの中にいた美穂さんは変な音に引き寄せられ、あたしのゲームは軽くバグった)」




のあ(ボット)「もう少しで、ぶつかるわね......大丈夫よ。少しスタミナを削るだけだから」



この時点ではまゆ、美穂、紗南の三人はのあに押さえつけられたまま度重なる衝撃にさらされていた


天井から突き下ろされた巨腕、無骨で鈍重ながれきで形成されたそれは、容赦なく3人を抑えつけ、

建物が生き物のように動き出し、住宅街を縦横無尽に衝突、破壊して回るたびに、その衝撃で揺れる地面が三人を突き上げるように痛めつけている。


窓の外の風景がめまぐるしく移り変わるたびに部屋全体が鳴動し、視界が体幹ごと揺さぶられる


まゆ「・・・つっ・・・この邪魔な重しさえなければ・・・」

美穂「うぅ・・・プロデューサーく、ん・・・」


まゆのナイフはコンクリや鉄骨には使えない

美穂のプロデューサーくんもムギュっと潰されたままだ

だが紗南は、紗南のゲームだけは動かせた

上からの多大な圧力にさらされながらも片腕だけで小さな抵抗を試みている




紗南「(ホンの少し・・・2、3センチ指が動かせれば、ゲームはできる・・・!)」


______________________





 『サーチ』
 
→『コントロール』


______________________




______________________





・・・・・・コントロールモード・・・・・・




______________________


ローディングが開始される。

サーチモードと違ってコントロールモードは直線上の相手のデータしか読まないということはない

そんな赤外線通信レベルではなく、範囲は不明だがそこらじゅうのボットのデータを拾ってくるようだ


紗南「(なのに圏外はあるんだよね、よくわかんないなぁコレ・・・仮想現実クオリティ?)」


紗南はのあの方にちらりと視線を向ける。

のあは重力をかき乱したかのように荒れ狂う室内においても静かに直立していた

まるで足に根が生えたようだ。このビルそのものと一体化しているからだろうか

だがどこかハリボテというか、全く身動きをしない置物のように見えた



のあ(ボット)「............あの子達は、高みに登らなければ。私が守るだけではだめなの...」



こちらに気づいた様子はないが、オリジナルの高峯のあを知っている紗南としては、あのミステリアスな才女なら気づいていてもおかしくないと気が気でない


紗南「(ダメ元だけど・・・何かないの!?変なきのこボットでもいいから、この状況をどうにかしてくれるなにか・・・!!)」



______________________




・・・・・・コントロールモード・・・・・・



______________________



______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________



紗南「!!」


画面が変化した、待ち望んだ変化だ。


紗南「(う・・・でも使えそうなものが・・・あれ?)」





紗南は、このマークがゲームのメニュー画面ではちょっとした意味を持つことを知っていた


紗南「(まだ項目が下まで続いてる・・・?)」


押さえつけられた腕は動かせないので必然的に画面を近づけての精査はできない

ゆっくりと十字キーの方に指を持っていく。鉄骨の一部が手の甲に食い込んだ



______________________
      MENU


 ・プロデューサーくん 
  アクセス可

→・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________

______________________
      MENU


 ・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

→・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________


紗南「(もう一回・・・!)」



______________________
      MENU


→・ミドルキノコ 
  圏外 アクセス不可

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 2/3
______________________



紗南「(どういうことなの・・・・・・キノコ探知機?)」


ボットが増えたことにより二枚目のページが出来ていた

選択肢が増えるも、しかしどれも圏外

紗南は十字キーの「下」を押し込んだ



______________________
      MENU


 ・ミドルキノコ 
  圏外 アクセス不可

 ・ヘヴィキノコ
  圏外 アクセス不可 

→・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 2/3
______________________



矢印模様のカーソルが順々に下がっていく


そして









______________________
      MENU


→・戦車
  アクセス可





 3/3
______________________










紗南「(やった!!)」

他に選択肢はない

紗南は決定ボタンを押した。



この数十秒後、砲撃による今までのものとは比べものにならない衝撃が建物全体に襲い掛かる





操作型ボットと自律型ボット


その二つの分類を紗南は知らなかったが今度は上手くいった





ゲーム開始42分


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子






幸子「ふぅ・・・・・・このカワイイボクが撤退を余儀なくされるなんて!」


小梅「しょーちゃん、い、いたくない?」


輝子「も、問題ない......フヒヒ、ちょっとしびれるけど、毒キノコ食べたと思えば......」


幸子「それでも今は安静にしておいてくださいよ!ああ、どうやらボク、猟銃を落としてしまったようですね・・・すいません」


小梅「そうなんだ......でも、あれ...使いにくかったからいいんじゃ、ないかな.......」



三人は自分たちが逃げてきた方向を振り返る。

そこには朧気に照らされた下水道の通路がくろぐろと伸びていた


何らかの原因で自分たちを縛めていた「的模様」が消えた瞬間三人は迷わず逃走を選択した



地雷のような星型のディスク

凶暴な巨大生物(の着ぐるみ)

そして不可解極まりない拘束術



幸子の予想通り事務所に伏兵がいた場合、これ以上のモノに出てこられれば今度こそただでは済まない


それに輝子がかなり手ひどく攻撃を食らっているのに特攻などできない。

ちなみにユニット全員のスタミナが等しく減っていたのは後になってから知ることになった


で、なぜ下水道かというと逃げるにあたって目についたのが蓋の外れたマンホールだったからだ

大きなキノコが仁奈の着ぐるみを部分的に破壊したとき仁奈は恐竜の体で暴れのたうちまわった。



そのときの被害が建物の外壁だけでなく地面にも及んでいただけの話だ。


下水道には汚水もなく、それほど汚いイメージを抱くものではなかった


幸子「たしか・・・ドリンクみたいなのがありましたよね?」

輝子「う、うん幸子ちゃんに任されたやつ......」

幸子「ボクが思うに多分回復アイテムかなんかですよね?輝子さんが飲んじゃって下さい」

輝子「フヒッ?い、いいの?」


幸子「今回一番被害が大きかったのは輝子さんでしょう?他に誰が飲むんですか」

小梅「わ、私も......しょーちゃんが、の、飲むべきだとお、思う......!」

輝子「!......うめちゃん、さっちゃん...」


輝子が懐から取り出したドリンクはやはり回復機能があったらしい、なんとなくではあるが体のしびれが引いていた




_____________

 輿水幸子  230/300


_____________

_____________

 白坂小梅  230/300


_____________

_____________

 星輝子+  230/300


_____________



小梅「......そ、そういえばしょーちゃん、あのキノコ...も、もっかい出せない、の?」

次の話題は三人を救うきっかけになったあのキノコだった。

ティラノサウルスに飲み込まれたかと思えば急に巨大化した謎すぎる存在

輝子「フヒ.......や、やってみる」

ぺちん、と気の抜けるような軽い音をたてて輝子が手を叩く


その手のひらからポトリと小さな生き物のようなものがこぼれ落ちた

おそらく最初屋敷で見せてもらったミニキノコだろう

根っこがわりに二本の足が生えている


ミニキノコ「ff?」


小梅「お、大きくない...」

輝子「あれ.......ちいさ、い?」



幸子「やはりさっきのものは・・・って、え・・・?」


ミニキノコ?「fff...fffff......」


多少の落胆を含んだ言葉を幸子がこぼしたときキノコの様子が変わった


少しずつその体積を増している、成長している


小梅「......きょ、巨大化す、るの?」

幸子「こんなキノコあるんですか・・・」


輝子「......ヒャァー......?」


仄明かりに照らされた下水道の壁に奇怪な影が伸び上がる

最初シャープペンシルか単三電池程度の大きさだったミニサイズのキノコがみるみるうちに大きくなる



ミドルキノコ「fffFFFFfff」


最終的にそれは人間と同じ大きさにまでなった、

幸子たちよりも身長が高い

だが恐竜の喉を突き破ったものにはやや身長が足りなかった


輝子「ヒャッハァアアア!!!」

幸子「お、おおう・・・すごいじゃないですか!輝子さんの能力が進化したんですよ!」

小梅「で、でもさっきのより......ちょ、ちょっと、小さい?」

幸子「いえ、それでも何の問題もないでしょう!ボクらの戦力もこれで拡大できますよ!」





カワイイボクと142'S

そこに人間大のキノコが加わった瞬間だった





ミドルキノコ「FFf?」






ゲーム開始52分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子


戦車


裕子「ふうむ・・・」

見上げるようなサイズの硬質なそれが、行っても行っても並んでいる

肌寒い。まるでひんやりとした鉄の質感が空気中に染み出ているようだ


裕子「どうしましょう・・・戦車。誰かが使う予定でもあるのでしょうか?」


落とし穴に突き落とされた先は・・・隠し倉庫?でした

私を落とした方はこのことを承知していたんでしょう。ということは私をここに呼んだことには何か目的が・・・?

むむむ

裕子「・・・・・・さいきっく沈思黙考!」

と頭をひねってみても何も思いつきません

私は沈思黙考を解除しました


ですがここまで来たからにはやはりこの戦車はお土産に持って帰りたいですね




裕子「よいしょっ・・・と」

裕子はキャタピラに脚をかけ、戦車の上によじ登った、なんとなくの知識で戦車は上から入るものだという認識があったからだ

その予想通りにマンホールくらいのサイズの蓋があった、十中八九、入り口の類だろう


裕子「こういうのは・・・・多分横に回して・・・うーん」

晶葉によりこの手の操作は簡易なものにされているはずなのだが、それでもどうも裕子には上手く開けられないらしい

丸い蓋を右に回したり左に回したり押したり引いたり四苦八苦した後


裕子「ふんっ!!!」


厚い装甲ごと蓋を引き剥がした、

明らかに無理な負荷がかかった鉄が軋んだあと、大小二つに断たれる

裕子の手に残った蓋には周りに飴のようにねじ曲がった鉄板がくっついていた


裕子はそのまま蓋だったものを放ると、その中へ飛び込んだ。

意外と広い内装に感心しながら内部を見わたす


裕子「これが戦車の中身ですか!・・・割とシンプルですね!」


中には二、三本のレバーと五百円玉大のボタンしかなかった

あとはおそらく戦車の周囲を映しているであろうディスプレイ

計器の類も見当たらない


本物の戦車を知る人間からすれば失笑もののシンプルさだが、ゲーム内での仕様なのだろう

もちろん裕子にそんな事情は知る由もなく、座席に着く



裕子「あれ、もう電源は入ってるんですね・・・では全速前進です!」


レバーを一本掴むと思いっきり前に押し倒した


ゴゴンッ!!!


裕子「あいたぁー!?」

戦車は何かにぶつかり、はずみで中の裕子も内壁に頭をぶつけた

きっちりと並べられた戦車の一両だけを急に動かせばそうなるだろう。

裕子の乗った戦車は前に停まっていた別の戦車に追突していた


裕子「ぐぐぐ・・・・・・壁ですか・・・」


シンプルだろうと運転は運転、細心の注意とある程度の技術が必要だということを裕子は少し学んだ


裕子は頭を押さえていた手を離し上を見上げる


真ん丸というにはややイビツに千切り取られた戦車の天井から、この部屋の照明が見える


かなり広い空間だからかその照明の位置は遥かに高い、ジャンプして届く距離でもない

そもそも裕子の能力は純粋に身体能力が上がるだけというわけでもないのだ

物体を握っている筋力は増加すれど、ジャンプ力は増大しない


裕子「どうやってここから出ましょう・・・?」

座席にもたれて裕子は無い知恵を絞った




裕子「あれ?」


天井を見上げた時に気づいた、というか今まで気づかなかった


裕子「あそこ、一箇所だけ穴があいてますね」


この部屋に入ると同時に照明が点き始めたため見落としていたが一箇所だけ人口ではない日光による光があった

この世界は太陽光すらも人口なのだが、とにかく裕子はそれを発見した


裕子「・・・どういうことでしょう、意外とここの天井は薄かったんですかね」


ひょこっと、モグラ叩きのモグラの気分で戦車上部から頭を出す

戦車の列を上からではなく横から見わたす。

すると幾何学模様のように全く同じ形のものが並んでいる中に一点だけ違和感があった


裕子「あの一台だけ砲台が上を向いて、る・・・?」


お行儀よく同じ角度で並んだ砲台の一本だけが上を向いている、出る杭は打たれる、ということわざがあるが確かにその大砲は周りから浮いていた


天井の穴、一両だけ上を向いた砲口


裕子「・・・誰かいるんですかね?」


戦車に空けた穴から身を出すと、そのまま戦車を飛び石伝いに渡っていき、その違和感を確かめに行った


裕子「やはり開け方がわかりません・・・・・・ふんしょ!」


またも無理やり入口をこじ開ける。

だが裕子が覗き込んだ内部に人影は、なかった


裕子「・・・・・・?・・・」

ちなみにほかの場所でも人の気配はなかった。いくらこの空間が広いとは言えそこらへんの見落としはなかった、はず



これではまるで裕子がいないうちに戦車が勝手に砲撃を開始したようではないか



裕子「・・・・・・ま、いいでしょう!!意外と地上まで近かったようですし、壁でもよじ登れば脱出できるでしょう!問題は戦車をどうするか、ですか」







この出来事と時を前後して、高峯のあは悟った

地下に通じる穴を開けたことは思いもよらぬ展開を生むことになったと。

自分の行動が原因でなんらかの能力が、地下深くに隠されていた戦力にアクセスできてしまったと。

住宅街とは距離のある場所だったにもかかわらず戦車を自分たちの盤上に乗せてしまったと。




ゲーム開始45分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最後に得票数順に三つまとめて大放出させてもらいました



次回開始するチャプターは


・神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南
  
  VS

高峯のあ(ボット)&?&??


になります


その後、次スレの準備に取り掛かろうと思います。

他のチャプターも含めてキリのいいいところでそちらに移ります


安価、コメント、画像にご協力いただきありがとうございました

もう少しお付き合いください



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南




奈緒「かれーーーーーーーーん!!!」


がれきの海を走る走る走る


ブルドーザーの暴走事故跡みたいに、あちこちで建物が等しく廃材の山になっていた

平らな部分なんてとっくの昔になくなった道路を走り、廃材の上を飛び移り、倒れた壁を踏んづけていく


巴(ボット)「おう、奈緒さん。急ぐのもわかるけど気ィつけや、今のスタミナじゃと転んだだけで逝ってまいかねんからのう」

奈緒「ス○ランカーかあたしは!!?」


巴(ボット)「うん?・・・なんじゃそれ・・・」


気が急いているのか先にどんどん走っていく奈緒の少し後ろを巴が追っていた。

小柄な体躯でもひょいひょいと無駄の少ない動きでがれきを乗り越えていく


奈緒「ここだ!」

すっかり地形の変わってしまった住宅街をそこそこ進んだところで奈緒は唐突に立ち止まった。

やはりその周りの住宅も他同様に象かなにかに踏み荒らされた様相をなしている


奈緒「・・・向こうからみたときは確かこの辺に加蓮がいたんだよ」

「そのあと音葉さんと戦う羽目になったから色々うやむやになっちまった・・・」


巴(ボット)「ほお、わかるもんなんかのお・・・うちにはどこも同じにしかみえん」


奈緒「ああ、加蓮のすぐ近くにちょっと周りよりも大きめのお屋敷みたいなのがあったのを覚えてたんだよ・・・」

そういう奈緒が手近ながれきの隙間を覗き込み始める。もしかしたら加蓮が生き埋めになっているかもしれないと考えたのだ

その近くには和風の邸宅にでも使われていそうな瓦や玉砂利がころがっていた


巴(ボット)「そうけえ。うちは山沿いの道路から来たから音葉さんすら見かけとらんかったしのう」


巴は奈緒の作業を手伝わずに遠くを眺めていた。

その視線の先にあるものが危険極まりないため、巴はここに来るまでもそれに注意を怠ったことはなかった


巴(ボット)「しかしなんじゃ、あれは一体何が楽しゅうて暴れとんのじゃ・・・」


視線の先には泳ぐように動き回るビルと家

その二件が今は住宅街の外れにある壊し残した建物にまで体当たりをかましている

静かなはずの仮想現実でこの付近だけが破壊音に溢れていた


巴(ボット)「そもそもあの建てモンは壊れんのかの、能力のせいか」


チャリッ

右手に銃をぶら下げている手錠の鎖を鳴らす

巴(ボット)「(うちの能力、がれきにまで効くんかのう・・・)」


まどろっこしくなったのか、奈緒はとうとうがれきの一つを力づくで退けてまで加蓮を探し始めた

何かの拍子にがれきに潰されでもしたらそのままゲームオーバーにもかかわらず、そこに恐れはない


奈緒「どおりゃ!加蓮!!いるかー!!」


ガゴン、と音を立てがれきの山が崩されていくが、とても奥の奥までは調べられそうにない


巴(ボット)「おーい、奈緒さん。別のとこ探さんか?そこにはおらんじゃろ」

奈緒「いや、でも・・・ほかに手がかりなんかないし・・・」


流石にそこまでは放置できないのか、巴が声を投げかける

しかし見通しがよくなったとは言え、やはりそこそこの広さの住宅街で一人の仲間を探すのは無茶だろう

それにここだっていつまで無事かわからない、なにせ建造物が意志を持ったように動き回っているのだ。


巴(ボット)「よー考えい、その廃材ん中に呼びかけて返事がないゆうことは既に逝きおったか、別の場所におるかのどっちかじゃろ」

「それにこの世界じゃ気絶なんてけったいなモンもないけえの」


奈緒「え、そうなのか?」

巴(ボット)「あったりまえじゃろ、この仮想現実自体が寝てる間に視る夢みたいなもんなんじゃから」

奈緒「ああ、そうか・・・どうにもここが作り物って忘れちまうんだよなぁ」

巴(ボット)「・・・うちらからしたらこっちの世界が本物じゃけどの」


巴(ボット)「まぁとにかく、何の反応も返ってこんのに探すのも無駄じゃき、移動せんか?」

奈緒「お、おう・・・というか、そういうことはもっと早く教えて欲しかった・・・」

巴(ボット)「あ?・・・何でもかんでもうちがいちいち教えてやるかい」

奈緒「あー、それもそうだったな」


奈緒は手に持っていたがれきを適当な位置に放った、だがその音も遠くから響く崩落音に掻き消える


いや、それだけじゃなかったビルとはまた別の


巴(ボット)「・・・・・・なんじゃあ?」

奈緒「・・・・・・ミサ・・・イル・・・?」



空気をつんざく落下音が二人に降りかかった

しかしそれは二人の遥か頭上を通りすぎ、どこか飛んでいく

その正体を目視で捉えることはできず、ただ軌跡だけを目で追った





そして耳を劈く爆発音




飛来した何かはビルと家のあたりに着弾すると空気を震わせる衝撃を撒き散らした



巴(ボット)「ダイナマイト・・・いや、バズーカ!!?」

奈緒「もうマジモンの戦争かよ!!」


遠くに見える家が倒壊していく、ビルの方はここでもまだ原型を保っていたが一般家屋では流石に限界だったのだろう


巴(ボット)「なんや訳のわからんことになっとんのう・・・」

奈緒「あれって絶対近づかないほうがいいよな・・・」

巴(ボット)「けど、奈緒さんの探しとる加蓮さんがおるかもしれんど?」

奈緒「う、確かに・・・この現象だって、加蓮とボットの戦いかもしれねえしなぁ。じゃあ少しだけ近づいてみようぜ?」


一応今の爆撃か砲撃か、奈緒には判別がつかなかったが、その何らかの攻撃でビルたちの進撃は止まっていた、接近して調査するとしたら今がチャンスだ

二人で煙の立ち上る爆心地を眺める。


突如、二人の背後でがれきが大きな音を立てて崩れた


巴(ボット)「ぬ?」

奈緒「うおっと」


その音が耳に入るなり、自然に崩れてきたのかと振り返る。




前川みく(ボット)「にゃぁん・・・のあチャンやりすぎにゃあ・・・これ大惨事にゃあ」


アナスタシア(ボット)「...動きが止まったら......えっと、合流の合図、でしたね......みく...急いでください」



だが違った、二人のすぐ後ろに聳えていたがれきの山の上、そこに新たに二人のボットが立ったせいで崩れたのだ


前川みく、アナスタシア


何人ものプレイヤーと住宅街を破壊の渦に叩き込んだ高峯のあの仲間である


巴(ボット)「おう、二人共なにしとん!」


奈緒「げっ、お、おい・・・巴・・・」


みく(ボット)「にゃあ?・・・巴チャン?と・・・奈緒チャン!?にゃんでプレイヤーがいるにゃん!!?」


アナスタシア「アー......変...です、ね?」


奈緒たちと同じく煙を上げるビルを眺めていたみくが山の下にいた二人に気づく、遅れてアナスタシアもそこに目をやる


そこで巴がその二人を見上げながら剣呑な雰囲気をまとう


巴(ボット)「・・・・・・奈緒さんはうちの獲物じゃけえ、横取りするなら容赦せんぞ」


奈緒「えものって・・・」


いつの間にか右手は銃のグリップを握っている、勝負にこだわる巴にとって、

万が一戦闘中に横槍を入れられようなことになるのは絶対に許せないからだ


そんな危なげな声にあてられ、みくが縮こまりながら言い返す


みく(ボット)「そ、そんなことしないにゃあ!!みくは正々堂々戦うにゃ!」


アナスタシアは、ふしゃー!っと猫っぽく威嚇するみくの隣にぼんやりと立ったまま口を開く



アナスタシア(ボット)「巴...ご心配なく、私たちには......ちゃんと、相手がいるみたいなので...」


みく(ボット)「そうにゃ!のあチャンがいっぱいプレイヤー集めてきたんだもん!!」



奈緒「プレイヤーを・・・・・・集める?」


奈緒の耳にその言葉が引っかかった。

まだほとんど接触のなかったプレイヤーがどこか一箇所にいるというのか


奈緒「おい!それって、もしかして加蓮も」


アナスタシア(ボット)「みく......しゃべりすぎ、です...早く行ってください」


慌てて訊きただそうとした奈緒の言葉をアナスタシアが断ち切る


みく(ボット)「わかったにゃ!!じゃ、巴チャンも奈緒チャン頑張ってにゃあ!!」


巴(ボット)「お?どこ行くいうんじゃワレ」


巴の問いには答えず、みくはがれきの山の上に手をつく、猫の四つん這いのような態勢だ


みく(ボット)「おっしえにゃ~・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・い!!!」


ダンッ!!!


その背中にアナスタシアが掴まった瞬間、みくは一気に足元を蹴った


がれきにヒビが入り、山の頂上が一瞬で平坦になる


そのスタートダッシュのまま、みくはアナスタシアを背中に乗せて飛ぶように駆けていってしまった


奈緒「うおっ!?はやっ!!」


巴(ボット)「まるっきり猫の動きじゃの・・・・・・ああ、そういう能力かい」


悪路、どころか道ですらない場所を動物じみた動きでぴょんぴょんと跳ねては飛び移りながら猫耳と銀髪が遠ざかっていくのを呆然と見送る


だが、


奈緒「あのビルの方に向かってる。・・・あそこに加蓮がいるかもしれねえんだな!」


巴(ボット)「・・・奈緒さん、追うで・・・」


次に取るべき行動は決まっていた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砲撃の衝撃でビルは大きく傾いていた。


そしてその内部


のあ(ボット)「予定より削れなかったわ......けれどこれもレッスンの糧、私たちが挑むべき相手はもっと険しいのだから」


のあ(ボット)「それじゃあ、私はお暇させてもらうわ.....時が巡ればまた会いましょう」


のあの体がガラガラと崩れていく

物体と一体化する能力、それにより作られたコンクリ製の人形だったのだ。

三人の前でそれが能力の制御を失い、いくつもの石ころに砕けながら地面に広がっていった



まゆ「まゆたちは偽物相手に手玉にとられてたんですかぁ・・・頭にきちゃいますねぇ・・・」


紗南「それより、早く脱出しないと!これビルごと崩れちゃう流れだよ多分!!」


美穂「でで、でも・・・このおっきいのが、のしかかってて・・・う、動けないよぉ・・・」


さっきからのあによって作り出された廃材の巨腕、それが三人を上から抑えていた。

だがそれものあの人形の崩落を真似るようにバラバラと分解されていく

盛大に土煙を巻き上げながら


紗南「うわっ!?げほっげほっ!」


まゆ「こほっこほっ・・・・・なんだか、出られましたねぇ。ここまでやっておいて何だったんでしょう?」


美穂「あわわ・・・」


美穂だけはすばやくぬいぐるみに乗り込む、というか中に避難していたので煙を吸い込まずにすんだ

とにかく何故か無事に、いやここまでで多少のダメージはくらっていたが、三人はのあの手から脱出できた


もともと階段入口のところで抑えられていたのでそこからの脱出は容易かった。

やや傾斜がかかった階段を駆け下り、ビル一階の窓から抜け出す。


まゆ「あれ、ナイフ、結構な本数なくしちゃってますねぇ・・・」


美穂「はぁっ・・・はぁっ・・・よかったぁ・・・出られたぁ・・・!」


紗南「ふう・・・・・・あー、怖かった。」


紗南は脱出の際にしっかりと持ってきていたゲーム画面を覗く。コントロールモードは既に終了していた。


紗南「今回はなんとかなったけど・・・戦車ボットはいつでも使えるように、どこにあるか探しておくべきかなぁ」


美穂「紗南ちゃん、どうしたの?」


紗南「ん、あとで説明するよ」



ぬいぐるみから出た美穂からの疑問は一旦スルーして、周りを見渡す

まゆが音葉を倒したときと同じ場所だったとはとても信じられないような変わりようだった

元の形を保った建造物が一つとしてない。

そしてすぐそばには大きなクレーターまで空いている、これは紗南のしわざだが


まゆ「!!・・・・・・誰か来ますねぇ」

美穂「えっ!?」


残り少なくなった刃物を構え、まゆが一点を睨む

美穂がその視線を追うと確かに向かいの崩れ去った家屋から誰かが駆け寄ってきていた

がれきに偶に足を取られながらも、歩みを止めない人物



加蓮「あれ・・・まゆ、美穂、紗南まで!?」



紗南「加蓮さん・・・!」

まゆ「あらぁ?お味方でしたか・・・」

美穂「加蓮ちゃんも無事だったんだ・・・」

クレーターのすぐ横で、四人が向かい合う


加蓮「アタシ・・・のあさんに振り回されっぱなしだったんだけど、何だったのあれ?」

紗南「あたしたちもそうだったよ!ギリギリで手加減されてたけど!」

美穂「ううう・・・もう、ジェットコースター・・・乗れない」

まゆ「そっちも似たような感じだったんですねぇ・・・」


お互いをねぎらうように言葉を交わす

加蓮からすればやっと会えた味方と呼べる人間の登場に、明確に顔がほころんでいる



まゆ「しかしのあさんの目的は一体なんだったんでしょう、こんな生殺しのような真似をして・・・」

紗南「あ、そうそう!言っておかなきゃいけないことがあるんだけど・・・」


だがそこは戦場、それもボット側が提供してきた明らかな狩場だった、和やかにできる場ではない

四人のすぐ近くに、猛スピードで何かが到来する





みく(ボット)「にゃはははーーーーん!!ネコチャンタクシー、とーちゃくにゃあ!!」



アナスタシア(ボット)「アー、乗り心地......最悪です...みくにゃんのファン、やめさせて、もらいます......」


ズダンッ!


みくは足元のがれきを粉微塵にしながら着地し、それでも止まりきらなかった勢いに数メートルほど引きずられ、地面に跡をのこした

そこに現れたのは猫のように四足で地面に立つみくと、その背にまたがるアナスタシア

不意を打たれた四人に動揺が走る



加蓮「な・・・みく、アーニャ!?」

まゆ「こんどは、ちゃあんと敵ですねぇ・・・うふふ」

美穂「ひっ!? ま、まゆちゃん?」

紗南「うわ、ほんとに猫だ・・・ちょっと引く」


アナスタシアを背中から下ろし、みくが余裕たっぷりに四人を見回す


みく(ボット)「にゅふふふ・・・・・・のあチャン、こんなに集めてきたのかにゃあ・・・」


アナスタシア(ボット)「四人、ですか...レッスンには丁度いいです...ね?」



まゆ「(集める、レッスン・・・どういうことでしょうかねぇ・・・)」





四人のプレイヤーと二人のボット、

だが数の上での有利はこの世界にはない、それはひとえに能力の影響力によるものだ


まゆ「ところで加蓮さん、もう能力持ってたりします?」

加蓮「ごめん、ない・・・まゆも?」

まゆ「ええ、情けないことですが、ナイフと拳銃だけの心もとない装備だけなんですよぉ」

プレイヤーたちは動くに動けない、今見せつけられたみくの身体能力一つにしても彼我の差を思い知るには十分だった



のあ(ボット)「さて......役者は揃ったわね」



みく(ボット)「にゃにゃ!?のあチャン!」

アナスタシア(ボット)「えっと、この人たちを...私たちの力で、倒せば...いいんですよね?」


更に三人目のボット、高峯のあが出現する

それが当然とばかりに、金魚が水面に顔を出すように地面から浮かび上がってきた

がれきには穴など空いていない



紗南「う、ラスボスっぽいのが来たよ・・・」

美穂「ひぇ・・・来た」



絶体絶命

高峯のあ 前川みく アナスタシア

大災害を引き起こした能力者、人外の機動力を持つ能力者、そして残る一人は未だ未知数。


のあだけですら、たった一人で四人を制圧していたのだ、そこにさらに二人もの追加である

プレイヤー四人は、まゆも含めて完全に二の足を踏んでいた。

どう動いても勝てるビジョンが浮かばない


まゆ「・・・・・・」

美穂「あぅぅ」

紗南「(もっかい戦車、いける?)」

加蓮「(残り3発、か・・・木刀は、なくしちゃったなぁ)」



対照的にボットの方は落ち着いて相手を吟味している。みくにいたっては舌なめずりでもしそうだ


みく(ボット)「にゃあん・・・アーニャはだれにするにゃあ?」

アナスタシア(ボット)「なんとなくですが、まゆと闘うのは...怖いです、ね」

のあ(ボット)「恐怖は克服してもらわなければ困るわ......それはいずれ星を曇らせる暗雲となってしまうもの......」


一方的とも言える実力差で構成された状況


そして、最初に動いたのは








プレイヤーだった









奈緒「加蓮!!!あ、あたしとユニット組んでくれ!!!」




加蓮「奈緒!?って、ユニット?」


がれきを踏み越えてやってきた新たなプレイヤー、奈緒が叫ぶ



みく(ボット)「にゃふ!?」

アナスタシア(ボット)「...追いついたのですね...巴はどうなったのでしょう?」




巴(ボット)「おう、おるぞ」




のあ(ボット)「.........これも、乗り越えるべき世界からの試練、かしら」



奈緒が加蓮たちの元に駆け寄るのに前後して、積み重なったがれきの影から巴が姿を見せた



ボットとプレイヤーが共に現れる、という異常事態にみくたちが一瞬硬直する。


その隙に奈緒と加蓮はユニットの説明も登録も済ませてしまった



加蓮「奈緒!?あ、あんたスタミナ3ってなにやらかしたのよ!?」

奈緒「お前探したりボットと戦ったり色々あったんだよ!」

加蓮「そういうのは後で聞いたげるから!ほら、早く登録しなさい!」



ここに来る途中、奈緒は巴からユニットについて聞いていた。

そのメリットもデメリットもひっくるめて、である。


そして加蓮もまたたった今、奈緒からそれを聞き、

その上で、リスクを知りながら迷いなくユニットの登録に踏み切った


美穂「あ・・・えっと、奈緒さんも来たけど、巴ちゃんも来て・・・ボットもプレイヤーも・・・ええっとぉ」


紗南「美穂さん落ち着いて!・・・あたしも情報多すぎて混乱してるけどさ!」


まゆ「(ユニット、そういうのもあるんですかぁ・・・それにしても、なんの躊躇もなく登録するなんて加蓮さん、仲間思いですねぇ・・・)」



プレイヤー達の間に俄かに騒がしい空気がもたらされる。


だが、その隙をボットたちは突かない、いや、突けない



みく(ボット)「ふにゃぁぁあ、巴チャン!!どういうつもりにゃあ!!」


アナスタシア(ボット)「巴...プレイヤーに...味方、するのですか......?」


のあ(ボット)「............」




プレイヤーともボットとも離れた位置に立つ巴にみくが食ってかかる

アナスタシアは純粋に疑問そうな顔をして、のあは無表情のままだ



巴(ボット)「うちはボットやけえ、プレイヤーとしか戦わんつもりじゃ」


「やけど、どうせやるにじゃったら、互角とまでは言わんでも・・・ちぃっとばかしは実力も並べんとつまらん」




巴は非難めいた言葉にも強気な姿勢を崩さない



巴(ボット)「もともと奈緒さんのスタミナをある程度までなんとかするんが目的じゃったけぇ・・・・・・ユニットのおかげで手間が省けたわ」

「ユニットは組んでても、うちは奈緒さんとしかやらんけえ、そっちはそっちでドンパチやっときぃや」



他人の戦いに多少割り込んだが、あくまで戦闘自体は邪魔しない。

巴はそういうことを言っていた





みく(ボット)「ぐにゅにゅ・・・!なんだかしてやられた気分にゃあ!」

アナスタシア(ボット)「ユニット、ですか......ボット同士では組めないルールですから...そのあたり...よくわかりません」

みく(ボット)「アーニャも流されちゃだめにゃ!巴チャンはみくたちのエモノをかっさらう気にゃあ!!」




のあ(ボット)「...............」








のあ(ボット)「...いいわよ......貴方の思うままにしなさい、巴」






巴(ボット)「ほう、ええんか」







アナスタシア(ボット)「のあ...いいの、ですか?」

みく(ボット)「にゃにゃ!!?にゃに言ってるにゃ!のあチャンが用意したんでしょ!?」




状況は既に混迷を極めていた。ボット同士の関係性に乱れが生じ始めている


そのボットの混乱から、プレイヤーの絶対的不利が覆りかけていた。



のあ(ボット)「...でも巴、貴方の相手はユニット、北条加蓮と神谷奈緒の二人よ」



巴(ボット)「!・・・おう」



のあ(ボット)「この趨勢には巴の手が大きく入り込んでいる......ならそれを断ち切るのも貴方」


のあの言いたいことはつまりユニットを作り状況をボット側に不利にした責任を取れ、というものだった





実は不利になること自体はのあにとっては”望んだこと”なのだが、この場を収束させるための方便だ





のあ(ボット)「そうすれば私たちは1対1で戦えるし、貴方も戦いを楽しめるのでなくて?」

みく(ボット)「にゅうん・・・」

アナスタシア(ボット)「.........」






巴(ボット)「おお、ええでその話・・・・・・のった!!」




じゃらん!



巴が大きく振った手につられて銃が揺れた。





のあ(ボット)「...でも忘れないで、私たちもまた”糧”として、戦闘を求めている......」





のあ(ボット)「貴方はプレイヤーとしか争いを望まなくとも、私たちは違う。」


すべてを見通すような鋭く冷たい眼光が巴を射抜かんと向けられた









のあ(ボット)「巴、ここに来た以上は貴方もまた、私たちの敵になるのよ」









_____________

 神谷奈緒 66/100


_____________

_____________

 北条加蓮   66/100


_____________

_____________

 佐久間まゆ 80/100


_____________

_____________

 小日向美穂+  80/100


_____________

_____________

 三好紗南+   69/100


_____________



ゲーム開始45分経過




神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

VS

村上巴(ボット)

VS  

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)&前川みく(ボット)




開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

これぞまさしく三つ巴


あとちょっとギリギリまで書き込みます

次スレは


早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」


の予定です


コメントありがとうございました

前川みく(15)
http://i.imgur.com/KgtHO1V.jpg
http://i.imgur.com/n2vUWaS.jpg

アナスタシア(15)
http://i.imgur.com/Zj7KJ1H.jpg
http://i.imgur.com/yCG9JUf.jpg



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
渋谷凛


手が引っ張られる


足を誰かが掴んでいる


髪に何かが絡んでくる


胃袋の中で溶かされていくような、


蟻地獄の中心に滑り落ちていくような、


自分が起きているのか眠っているのかも曖昧になる寝起きの時間


私の指が緑色の繊維に縛られている


私の腕に何かが朝顔の蔓のように巻き付きながら登ってくる


膝から下が地面に縫い付けられていく


うなだれた私の髪にクローバーがまとわりつく





凛「はぁっ・・・はぁ・・・っ!」



腕に力を込める、雑草を刈った時みたいな音が何度も鳴る

この音はどれくらいの時間かわからないけどもう何度も聞いた

ぶちぶちと、

何度も何度も

ぶちぶち

何度も、何度も、何度も


 
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちも何ぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちも何ぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちぶちぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何度もぶちぶちぶち何度も何度も何度も
ぶちぶち度も何度も何ちぶちぶも何度も何度もぶちぶ
ぶちぶちぶち何度も何ちぶちぶも何度も何ぶちぶちぶ
ぶちぶちぶちぶちも何ちぶちぶも何度ぶちぶちぶちぶ
ぶちぶちぶちぶちも何度ぶち度も何ぶちぶちぶちぶち
何度もぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶ度も
何度もぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶ度も
ぶちぶちぶちぶちも何度ぶち度も何ぶちぶちぶちぶち
ぶちぶちぶちぶちも何ちぶちぶも何度ぶちぶちぶちぶ
ぶちぶちぶち何度も何ちぶちぶも何度も何ぶちぶちぶ
ぶちぶち度も何度も何ちぶちぶも何度も何度ちぶちぶ
何度も何度も何度もぶちぶちぶち何度も何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちぶちぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちも何ぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちも何ぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何ぶちぶちも何ぶちぶちも何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も


ぶちぶちと


ちぎってきたはずなのに、いつの間にか私はがんじがらめになっていた。

おかしいな、私は頑張ってたはずなのに。

ちゃんと、探して、いたのに。

諦めてなんかないのに、一面のクローバー畑から四つ葉を探す作業


でも、もう疲れたからかな、腕に力が入らない、足も踏ん張れない。


凛「そんなわけないでしょ・・・まだ私はやれる・・・」


いつの間にか私はクローバーに突っ伏していた。

3枚の葉っぱが目に入りそうな程に近い


凛「(ダメだ・・・起きないと、立たないと・・・!!)」


まるで頭の中で警笛と警鐘を同時に鳴らすように自分の体に檄を飛ばす。

だけど手足はピクリとも動かない、この程度の喝ではもう動いてくれない

例え、どれだけ不眠剤を飲もうと何週間も活動していればいつかは倒れてしまうみたいに

自分を励まし続けるのにも限界が来たのかもしれない


クローバーの中に埋もれた私の耳に小さな音が聞こえる。

猫の欠伸みたいな、てんとう虫の足音みたいな、自分の心臓の音にかき消されそうな音だ


その正体を探るでもなくぼんやりと聞く

手足や肌に触れる草木の触感が増えてきたのもどこか他人事に感じられた



凛「(・・・・・・・・・・・・ああ、これ、根っこが動いてる音だ)」



地の底の方から小さく小さく響いてくる。


そんなのが聞こえ始めたということは私の方がそれほど地面に近づいているのか、埋まっているのか


クローバーはじっくりと私に巻きついてくる、気分はガリバー旅行記の主人公。

でも、あの主人公と違うのは、私は多分まだその気になればこの縛めを解けるはずだってこと


その気力が出てこない。あと一歩の踏ん張りが出尽くした。

何時間やった?もしかしてまだ数分?数秒?


もう、髪に絡まった草を振り解こうとする気力も起きない


私の髪、卯月に未央、奈緒や加蓮が綺麗だといってくれた髪

プロデューサーが褒めてくれた髪


凛「プ、ロ・・・デューサー」


仮想現実の電車の中でプロデューサーから話を聞いて


だから見知らぬ街に送られても、落ち着いてられた


でもそのあと、自分のドッぺルゲンガーに会って、倒して


模擬戦闘に参加する身としてできるだけ準備しようと目に付いた中で一番大きい建物に入って


晴と舞にいきなり襲撃されて、サッカーボールでメッタ打ちにされかけて


かと思えばありすが私のピアスで私を罠に誘い出そうとしてきた


よく考えたら仮想現実なんだからあれだって偽物だったのに、なんであんなに必死になったんだろう


でもその時の私にとっては大事なもので、蔑ろにされたくなくて追いかけっこを始めて


三人が飛び降りて逃げたのをこっちも落下物で追いかけて、


あと少しのところであずきに横から持っていかれたんだ


そのあとのことは記憶が少しとんでるけど、

この場所にいて、ありすのタブレットを見つけて、

一つだけ表示された赤丸がプレイヤー、その画面上の私の近くにあった3つ4つの青丸がボットを表していることを知って

ありすの能力を把握したはいいけど、そのあと見た物が強烈過ぎた

服だけ残して消えたあの三人の残骸はあまり思い出したくない

自分が完全にゲームオーバーになったわけではないという安堵と何をすべきかわからない混乱

そのあとは残酷なまでになんの変化もなかった

あるかどうかもわからない、あったとしても何の意味があるかわからない四つ葉のクローバー探し

終わりない逃走と、目的の定かでない探索


もう・・・いいよね


凛「・・・現実に、帰ろう」

ゲームオーバーになったらきっと目が覚める

次に目を開ければ変な機械の中に私はいるんだ

そこを出れば現実世界なんだ


巻き付いた根っこがその下の土に私を埋めようとじんわり力をかけてくるのが分かる


凛「・・・・・・・・・」

ひんやりした土の温度が眠気を誘いまぶたが重くなってくる


瞼の裏に浮かぶのは、プロデューサーの顔

奈緒、加蓮、晴、舞、ありす、あずき


特ににありすにはしてやられたね、多分引き分けになるのかなこれ・・・


タブレットを抱えて挑戦的な視線をよこしたボットを思い出す



そして私は______
















・・・・・・あれ?


・・・・・・何か、おかしくない?

ゲーム開始?分

【ERROR!】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数時間後に続き投下します

画像ありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
緒方智絵里



跳ねる、化ける、戻る、突く、また跳ねる


あずきの戦法は、どこまでも変則的だった。

そしてそれゆえに智絵里には有効に作用していた


智絵里「え、えいっ...!!」

智絵里の足元から影が広がる

それは小柄な体躯を無視した大きさであずきを呑みこまんと伸びていく


あずき(ボット)「あったらないよっ!!」


だがあずきはそれを認めた瞬間にはその場に横っ飛びに移動する、

と同時にその姿は鞠に早変わりし、影が伸びても届かない安全圏へ、ひゅうんと飛んでいく

その場で流動的に動くためのダンスのステップとは違う、

ダンス中に立ち位置を変えるための移動とも違う

だがどちらの効果も備えていた。


ボットとはいえ十代の女子の脚力がモデルでは一瞬で数メートル先まで到達することは難しい


だが空中で鞠に変身してしまえばそれは可能だ。

地面を蹴った勢いがそのまま鞠を蹴飛ばす力になる

最小限のステップで数メートル先まで飛び移れる


智絵里「......あう、そんな...」


それは智絵里からすれば脅威でしかない。

ほんの少しの動きであっちこっちに飛び回られ、その姿も人から球体、球体から人へと目まぐるしく変わる

出来の悪いパラパラ漫画のように、縦横無尽に動き回るその姿に視点が定まらない


あずき(ボット)「背中はもらったよ!」


翻弄されているうちに一気に智絵里に不利な状況に持ち込まれる


智絵里「ひっ!?」


慌ててその場から逃げ出してしまう、さっきからこの繰り返しだ

智絵里の能力、その詳細は省くが要は「広がった智絵里の影に踏み込むとどうにかなってしまう」というものだ


その範囲はクローバーの葉の形、つまり智絵里から大体半径3メートルの扇形になっている

しかもこれは四方のうち一方にしか伸びないため、突破口は十分にあった

決して狭い能力範囲ではないはずにもかかわらずこの状況が作られているのは、あずきの移動法に智絵里の動体視力が追いついていないのが原因だった。


捉えたと思っても能力を使おうとした途端、その予備動作をあずきに見抜かれ、回避されてしまう


あずき(ボット)「とりゃあ!」

智絵里「わわっ...!」

横から来たと思ったあずきが一瞬で智絵里の正面に回り込み、アイスピックを振るう

それは辛うじて反応した智絵里からは外れた

だがいくら移動が速かろうと武器が貧弱なのはどうしようもなかった。

そのせいで二人の戦いはどうにも決め手に欠けている

智絵里「い、一旦...は、離れれば......!」

あずき(ボット)「逃がさないよっ!大追跡大作戦っ!」


智絵里のあとを追いつつ、能力の範囲内には踏み込まない距離を保つ



あずき(ボット)「(むぅ、最初の一発がまぐれ当たりしてから、どうもいい感じの攻撃が決まらない・・・)」


あずき(ボット)「(そもそも、このピックで刺すって、あずきにできるかなぁ・・・?かなり抵抗感じるよ・・・)」


人気のない都会の道路を慌ただしく駆けていく


道路のそこここには高層ビルが並んでいたが、智絵里はどこにも逃げ込もうとせず、頼いない足取りで走っている


あずき(ボット)「(こうなったら・・・場所も丁度いいし・・・打倒智絵里ちゃん大作戦、だよ!)」


足に力を込め、飛ぶように駆け抜ける、と同時に鞠に変身し、風の抵抗を減らしつつ込めた勢いで一気に智絵里に追いすがった


智絵里「ひあっ!?」

その急な動きに不意を打たれ、よろめく

しかも間の悪いことに地面のアスファルトがめくれ上がっていた所に足を取られ、

結果、その場で転倒してしまった。


あずき(ボット)「おおっとと!」

行き過ぎた鞠があずきの姿に戻ってブレーキをかける。


智絵里「ぅあっ!!......でも...こ、ここなら...!」


だが、智絵里も転んでもタダでは起きなかった。近くの路地裏に逃げ込む


あずき(ボット)「あっ!!」


ここにきて逃走経路を変えたことに驚き、あずきも路地裏に踏み込もうとして

しかし、路地裏に踏み込む寸前でつんのめるように止まる



智絵里「こ、来られるものなら......来て、ください」



ビルの間、狭い通路のほんの少し先に智絵里がこっちを見て立っていた。


そして、その手には一丁の猟銃が握られている



あずき(ボット)「むうう・・・運がいいんだね」


おそらく逃げ込んだところで見つけたのだろう、だが智絵里の体では銃を保持するには小さかったため銃口が不安定に揺れている

だから問題はそこではない、狭い路地ではあずきの移動法は意味をなさないということだ。

いくら速くとも、路地裏では動ける範囲が限られてしまう上、逆に向こうの範囲攻撃には好条件

狭い場所に逃げ込み、武器も得た智絵里

移動術を封じられ、貧弱な武器のあずき

たった一つの動作で攻守が逆転していた。



智絵里「ど、どこかに、い、行ってください......!」



細い両腕を必死に猟銃に回し、精一杯吠える

あずきは路地裏を覗き込んだ姿勢のまま動けない。互いの間隔は5メートルほど

素人が銃弾を命中させるには心もとなく、侵入者が突入するにはリスキーな距離


あずき(ボット)「あずきは、どこにもいかないよ・・・」


アイスピックを右手に構える


智絵里「っ!?」


猟銃にさらに力を込める、だがそれでも銃口はふらふらと揺れていた




あずき(ボット)「作戦じっこーーーう!!!」






ぶんっ



アイスピックが回りながら飛んでいく





ダァン!!!




銃口が火を噴く







あずきの大声と、サイレンサー無しの生の銃声が狭いビルの壁に反響した




















そしてその振動で《ミツボシ効果》は弾けた













パァアン!!!


智絵里「きゃ、きゃああ!!?」


薄暗い路地裏の目立たない場所に隠されていた星型のディスクからの奇襲、


いくつもの尖った星が智絵里の身に飛来する

弾丸は的を外れてどこかへ飛んでいった

はずみで猟銃を取りこぼしたが、それどころではない。


あずき(ボット)「作戦成功!!さぁ次だよ!!」


ズンン!!




あずきの上から巨大な影がかかる





そのまま路地裏に長くて太い腕が侵入する、







混乱から脱しきれてない智絵里からはそれがなんなのかはわからない

とても恐ろしくて強いものにしか見えない


智絵里「え、なに...なに?」




ズンンン!!!


それは智絵里のいたビルからよく見える場所にあり、


何か巨大な生物が暴れたように道路のアスファルトがめくれた場所であり、


前に訪れた何者かが所持していた猟銃を紛失した場所だった。



智絵里「あ...や、やめて...!」


ぐるん


太い腕が智絵里に巻き付く


その力は少女の細腕ではどうしようもない絶望的な筋力差で締め付けてきた


そのまま一気に路地裏の暗がりからから智絵里の体を引っ張り出す



あずき(ボット)「ふっふっふ・・・捕まえたよ。」



あずきは横に立つ巨大な生物を見上げる、その巨体は智絵里の影には入り切りそうもない



あずき(ボット)「最初から、もしもの為にここまで誘導しながら闘ってたけど、うまくいってよかったよっ!」



その長い腕のような”部位”を高々と振り上げ、そこにくるんだ智絵里を栄誉ある勲章のように掲げる








仁奈(ボット)「今度は、マンモスの気持ちになるでごぜーますよ!!」







仁奈は新しい着ぐるみの特徴である、長い鼻を自慢げに揺らした

ゲーム開始55分経過


緒方智絵里

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)
&桃井あずき(ボット)

《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第三回総選挙、始まりましたね

無課金ですが迷わずもらった一票をその場で投票しました



もうちょっとここに書けるだけ書き込みます


閲覧ありがとうございました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
緒方智絵里


Unrestrict Park

無制限の園


その能力により市原仁奈はどんな着ぐるみでも着こなせる

どれほど9歳児に見合わぬ大きさであろうと、重さであろうと自由自在にその動物の気持ちで振る舞える

鋭い牙で噛み付くことも、力強い鼻で巻き取ることも、踏みつけることもできる


着ぐるみというものがそもそも人間とそれ以外の垣根を縮めているように

仁奈の能力は生物間における体格差も年代の違いも種としての壁も越える



仁奈(ボット)「智絵里おねーさん、つかまえたでごぜーます!!」



太い四本足で地面を踏み鳴らし、鼻を巻きつけた智絵里を振り回す



その度に智絵里の悲鳴が空中にかき混ぜられる

あずきは右手にさっき回収したアイスピックをぶら下げたまま、マンモスの姿を模した仁奈から踏みつぶされない程度に距離をとって智絵里を見ていた

智絵里の持っていた猟銃は近くには見当たらない。おそらくさっきの路地裏にでも転がっているのだろう

まだ智絵里の能力が完全にはわからない以上、うかつに仁奈から目を離せない。


あずき(ボット)「仁奈ちゃんがなんだかやる気満々なんだけど・・・」


この近くから見えるはずの事務所の方向にちらりと視線を動かす。距離にすれば百メートル弱の間隔

智絵里を追う際にここに誘導していたのは本当は保険のつもりだった、

凛達が落ちてきたビルと事務所が近かったのを覚えていたから、もし戦闘になるような事があればそこを頼ろうとしていたのだ。

もともと最初は尾行だけで済ますつもりだったが、これはいい方に転んだんだろう。


あずき(ボット)「マキノちゃん曰く最強の防衛部隊・・・?だったっけ、これ仁奈ちゃんだけで十分強いんじゃないかなぁ」


そう呟くが、実際は仁奈がこうしてピンポイントの地点にジャストタイミングで現れることができるのは他の能力が影で支えているからこそなのだが

あずきはそこまでは知らない、知っているのは仁奈や小春の能力が戦闘向きであることぐらいだ




仁奈(ボット)「このまま智絵里おねーさんごと、でっけービルに体当たりするでやがります!」




智絵里「げほっ、げほっ.........え...?」



振り回され目を回した智絵里にさらに鼻を巻きつけていく、それに従ってマンモスの鼻先に智絵里の体が巻き取られていく

いよいよとどめを差すらしい。智絵里をそのまま太い綱のような鼻で固定して走り出す準備を始めている

マンモスの額からは仁奈の本体、その顔が覗いていた。


仁奈(ボット)「せめて、痛くねーようにするので許してくだせー」


智絵里「...!!......けほっ、」


マンモスのおでこから外を覗く仁奈とその鼻先に持ってこられた智絵里が着ぐるみを隔てて向かい合う


智絵里「.........っ...!」

息も絶え絶えな智絵里の瞳が仁奈を視界に収める


あずき(ボット)「んん?あれ・・・?」


マンモスの体は言うまでもなく大きい、その大きさ故にクローバー形の影もその姿全体を捉えることはできない。

だからこうして智絵里は為すすべもなくされるがままなのだ


あずき(ボット)「仁奈ちゃん・・・・・・?」


しかし、もし仁奈がその長い鼻のほとんどを智絵里に巻きつけているなら・・・



仁奈(ボット)「じゃ、いくでごぜーますよ!」



眼前には小さな囚われの少女、自分の体は大型哺乳類、体長は二倍以上、体重は十倍以上も差があるのだ

あとはボットとしての闘争心に基づきこのままどこかに体当たりして押しつぶせばいい



智絵里「..................」



智絵里は、目の前の顔だけ出した仁奈をジッと見つめている。呼吸はまだ荒い




だがその瞳はぶれていない。冷静に、あるものを探っていた




あずき(ボット)「あっ!まずいよっ!!」



それは着ぐるみの大きさを含まない智絵里と仁奈の絶対距離。


マンモスがどれほど大きかろうと本体の仁奈は小さな子供だ。


例え持ち上げられていたとしてもここまで近づいてしまえば、



ずっ!


マンモスの長い鼻、その隙間から漏れ出すように智絵里の影が噴出する


1/1サイズのマンモスの着ぐるみではなく、そこに内包された小柄な子供を狙って



仁奈(ボット)「なんです!!?」




智絵里の能力範囲は約3メートル、そして鼻の付け根近くまで巻き取られた智絵里とマンモスの額にいる仁奈との距離はそれよりも少しだけ短かった




智絵里「この距離なら......!」




マンモスの鼻を影が奔る、スクリーンに投影された影絵のようにハート柄が着ぐるみの表面を滑りながら広がっていく


あずき(ボット)「智絵里ちゃんを遠ざけて!!!」



それより先にあずきが投げたアイスピックが命中した

仁奈の顔のすぐ横に細い針が突き立つ


仁奈(ボット)「わわっ!!」


思わぬ攻撃に動揺し、鼻の締めつけが緩む、智絵里の体が落下すると同時に影の進行が止まった

仁奈を呑み込むギリギリ直前で、重力に引かれた智絵里に引きずられて影が後退していく


智絵里「きゃあっ!!」


ところどころめくれたアスファルトの上に尻餅をつく、あずきはもちろんその前に智絵里からは離れていた。


代わりに智絵里に近づいてきたのは仁奈の足、いやマンモスの足の裏だった


仁奈(ボット)「今度は変な真似はさせやがりません!!」


ズシン...


前足の一本を智絵里に乗せる、まだ態勢が整っていなかったので全体重はかかっていない

だがそれも時間の問題だし前足一本でも智絵里のスタミナを抉りとっていくには十分だった


智絵里「ひっぐぐぐぅうう...!」


悲鳴とも呻き声ともつかない音が下敷きになった智絵里の口から漏れ出す



_____________

 緒方智絵里+ 59/100


_____________



あずき(ボット)「仁奈ちゃんそのまま体重かけてて!!」


「あずきは智絵里ちゃんがさっき落とした銃を拾ってくるよっ!!」


仁奈(ボット)「了解でごぜーます!」


足の下にいる智絵里の能力は額の位置にいる仁奈には届かない、

あずきは智絵里に近づかずダメ押しの一撃をくらわせたい


あずき(ボット)「えっと・・・あそこの路地裏かな!?」




もちろんこのまま仁奈に任せていれば智絵里のスタミナが尽きるまで足に力を込め続けるだろう

だが、やはり智絵里の能力が未だ完全には解明できていない上そこにはありすや晴、舞の身がかかっている以上、

やはり倒せるのなら早いうちがよかった




仁奈が智絵里を引っこ抜いた路地裏に駆け出す、智絵里は一発しか撃たなかった、もしかしたらまだ残弾が一発だったりしない限りまだ使えるはず





あずき(ボット)「直接刺したりするよりは・・・まだ銃の方がいいもんねっ!」









































「銃って、これのことかな」











緒方智絵里ではない

市原仁奈でもない

橘ありすでも

結城晴でも

福山舞でも

もちろん

桃井あずきでもない










凛「この銃、智絵里の能力に、取り込まれてきたよ・・・うっかりだね」


渋谷凛がそこにいた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



マンモスの足に踏み潰されている智絵里のすぐ横、野太い足に寄り添っているかのような位置に凛はいた




仁奈(ボット)「はい?今のは誰の声でやがりますか・・・?」




だから仁奈からは凛の姿は見えない、マンモスの額に位置するその子からは自分の足の間が目視できない

長い鼻と牙が邪魔して死角になっているのに加え仁奈は顔しか出してない分首を回したりできなかったからだ



あずき(ボット)「仁奈ちゃん!!!避けて!!!」


仁奈(ボット)「あずきおねーさん?」



そして凛はいつの間にか猟銃を手にしていた

幸子たちでは二人がかりじゃないと支えきれない、智絵里だと手に余る長さの銃

だが凛になら扱えた。




智絵里「凛、さん......?」



引き金に指をかけ、うろ覚えのやり方で、二の腕や肘を締めてしっかり体と銃を密着させる



仁奈からは凛は見えない、

だが凛からは、上を向けば鼻と牙の隙間から小さな輪郭の顔を視認できていた




マンモスの額、そこにある仁奈の額に狙いを定める



あずき(ボット)「仁奈ちゃん!!!!」


だが仁奈は智絵里の上から足をどかせない

智絵里を踏んづけるのをやめていいのかどうか、判断に迷ってしまった



凛「あずきの仲間ってことはボットだよね」




ダァン!!


その猟銃に一度に装填できるのは二発まで

一発は智絵里が使っていた、凛に撃つことが許されていたのはたった一発のみ


その一発が狼狽えていた仁奈の本体に命中した


声もなく巨大な着ぐるみが崩れていく、空気が抜けるように、その図体がしぼんで消えていく

智絵里にかかっていた重圧も嘘のように消えた


智絵里「あ、えっと...凛さん...なん、で......どうやって、できたの...?」


謝罪、感謝、その言葉よりも先に疑問が口をついて出た





凛「うん、本当に苦労した」



「四つ葉のクローバー、それを見つけようとずっと探してたのに全然見つからないし」


「ほんとにそれで正解なのかもわからないから、最後には何をする気も起きなくて、死ぬとこだったよ」


「でも、諦めきる寸前に一つだけ気になることができたの」



凛はそこで服の中に手を入れた、中に何かをしまっているらしい

そこから薄い板、雑誌ほどのサイズのものを取り出した







凛「・・・3つじゃなかったんだよ、ボットの反応が」





取り出されたものは、タブレットだった


橘ありすの能力の遺産

ボットとプレイヤーの位置を暴く道具

それを今は凛が所有していた



凛「晴、舞、ありすのことしか頭になかったし、タブレットの画面も流し見だったからちゃんと認識できてなかったんだね」


「ボットの反応は4つだったんだよ」



「ぼんやりとだけど3つか4つのどっちか、とだけ頭に残ってたのがちょっとだけ気になってね。それだけ確認したくなって気力を振り絞って根っこを振りほどいたんだ」



「・・・ただの四つ葉のクローバーじゃあ扉は開かない、だよね智絵里?」



智絵里の知らない要素が凛の言葉にはいくつもあった、だが最後の質問だけは答えられた



智絵里「............はい...」



凛「四つ葉のクローバー型ボット」






「そのボットの能力で扉を開けるんだよね」


「私たちに絡みついてきた根っこはただの攻撃の手段じゃない」


「その四つ葉のボットが動くための足としての役目もあったんだ」


「その根の動きで、ボットは少しずつ私から逃げていた、これじゃ見つからないわけだよ」


タブレットを腕に抱え、猟銃を構え、



渋谷凛は復活した。



諦念と絶望に沈みかけていた面影はもう無い

なぜならここには街がある、プレイヤーがいる、ボットがいる

うじうじと立ち止まる時間は終わったのだから


智絵里「凛さん...!...」


凛「・・・・・・なに?」


2本の足でしっかりと地面に立つ凛に、踏みつけられていたダメージで未だ地面にへたりこんだままの智絵里が呼びかける


智絵里「えっと......凛さんを巻き込んだこと...謝りたいけど、でもわたし...でも」


「...巻き込んだこと......は、反省してなくて...その、わ、悪いと、思ってなくて!...ゲームだから仕方ない、と思ってそのままにして......あの」


凛「・・・・・・・・・」


智絵里は謝罪ではなく懺悔していた。

ボットと一緒に能力に巻き込んだことを”仕方ない”と一蹴したことを

そのまま懲りなかったことを、容赦をなくした能力の行使を続けていたことを




智絵里「だからわたしを......許さないでください」




凛はそれを黙って聞いている。その間、猟銃の引き金から指は離れることはなかった


凛「・・・・・・・・・」

そして凛は

あずきの方を向いた。


智絵里からは完全に視線を切っている






凛「じゃあ智絵里のことは許さない」


智絵里「.........」



凛「でもそれもこのゲームが終わるまでの間だけね」



智絵里「.........!」




凛「この確執は現実世界には持ち込まない。それは約束して」



智絵里「.........はい」



凛「じゃあもういい。私は何も言わない」



猟銃を水平に持ち上げる、既に弾切れにもかかわらず、その動作には気を抜けばこちらが負けてしまうような気迫があった




凛「私はこの後、あずきに用があるから」









ゲーム開始57分

市原仁奈(ボット)消失


渋谷凛&緒方智絵里

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)
&桃井あずき(ボット)


開始

________________________

ERROR 復旧のお知らせ


プレイヤー「渋谷凛」のシグナルを再発見しました

________________________


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【プレイヤー】

クール
凛 奈緒 加蓮 小梅 亜季 ?

キュート
まゆ 智絵里 幸子 美玲 美穂 杏

パッション

輝子  紗南 きらり 裕子 麗奈 ?


【ボット】

クール
 のあ アナスタシア 乃々 翠 聖 雪美 マキノ 飛鳥

音葉(消失) ありす(消失?) 晴(消失?) 春菜(消失) 周子(消失)

キュート
こずえ ほたる 愛海 卯月 小春 舞(消失?) 

あずき みく

パッション

藍子 巴 未央 拓海(消失) 仁奈(消失)




安価、画像、コメントを下さった方にはお世話になりました

凛の言ってた今回の伏線は >>679 の一文です

このスレでの本編はここまでです

次スレ立てたらまたお願いします

次スレでは、このスレで名前すら挙がらなかった残りのプレイヤーやボットが中心になります



早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」

早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396415964/)

立てました

まだ前書きしか書き込めてませんが





このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom