芦屋「夕飯食べて行きませんか?」 千穂「え!?」(73)

魔王城・夕方……

真奥「もうこんな時間か。随分長い事話し込んじまってたんだな」

千穂「本当だ。やっぱり楽しい時間って過ぎるのが早く感じますよね♪」

真奥「あはは、確かに楽しかったけどただの雑談にそれは言い過ぎだろ?」

千穂「そ、そうですかね?(苦笑」

漆原(好きな相手と一緒ならそれだけで十分楽しいだろうね……相変わらず真奥はこういう事には鈍い)

芦屋「そろそろ夕飯の時間ですね。佐々木さん、宜しければ夕飯食べて行きませんか?」

千穂「え!?」

ひたぎ「このお話は、アニメ『化物語』、そして続編の『偽物語』を見て、
    それから後々に原作『化物語 上』を読み、
    結局、下巻を途中から読み進めていない──所謂〝ニワカ信者〟がお送りするらしいわよ、阿良々木くん」

暦「この前置きさ、下手したら〝くぅ疲〟並みの破壊力だぞ戦場ヶ原……」

ひたぎ「でも>>1の勝手な妄想で、私達の高校三年生のホワイトデー辺りが書かれようとしているのよ。
    原作を読んでいる人がいたら変に思うじゃない。そのための注意よ」

ひたぎ「だから設定やら人物関係諸々も、そこの時期のままだから注意しなさい。
    時系列関連とかで文句を言われても、こっちは何も言えないから、
    そういう時は、黙ってブラウザバックすることをお勧めするわ」

暦「で、なんだ。僕達が今しているのは、アニメの初めにある、
  『テレビを見るときは──』みたいなものなのか?」

ひたぎ「そうよ、じゃあラストシーンは『この物語はフィクションです。登場する団体──』、
    みたいなことを言えばいいのかしらね」

暦「それは台無しになるからやめようぜ……」

芦屋「なぜそんなに驚くんです?」

千穂「いや、だって真奥さん達何時も生活費カツカツじゃないですか? それなのに夕飯を御馳走になるなんて何だか悪いですよ!」

真奥「うわ、事実だけど改めて言われるとなんかグサリとくるな」

千穂「あわわ、スイマセン!」アタフタ

芦屋「大丈夫ですよ、それに今日は大勢で食べた方が良い物ですから」

漆原「そういえば今日のご飯何かまだ聞いてなかったね。何なの?」

芦屋「フッ、聞いて驚け、漆原。今日の夕飯はな……」



芦屋「お家で楽しく焼き肉だ」ニヤリ



三人「!?」

漆原「や、焼き肉! つまりお肉が食べられるの!? こ、この魔王城で!?」ドキドキ

真奥「お前から進んで焼き肉なんて……芦屋、お前頭でも打ったんじゃないのか?」

芦屋「私はいたって正常ですよ、魔王さま」

千穂「あの、それなら尚の事私いない方が……せっかくの御馳走なのに私の分だけ減る事になりますし」

芦屋「ご心配には及びません。それに佐々木さんには常日頃から大変お世話になっています」

芦屋「ですからこれはささやかなお返しと思って下さい」

千穂(やっぱり悪い気もするけど……あんまり断り続けるのも逆に失礼だよね)

千穂(それに真奥さんと一緒にご飯食べられるののは正直嬉しいし♪)

千穂「分かりました。なら夕飯、ご一緒させて貰いますね」ペコリ

真奥「あ、それなら親御さんに連絡した方が良いんじゃないか?」

千穂「そうですね。ちょっと電話して来ます」トテトテ

漆原「肉……お肉……ああ、これって夢じゃないよね? 現実だよね?」ニヘラー

芦屋「漆原、ほうけてないでホットプレートの用意をしろ。この前商店街の福引きで当たった奴だ」

千穂「うん、真奥さん達は大丈夫って……うん……あ、ちょっと待って」

千穂「真奥さん、お母さんが真奥さんに挨拶したいと」

真奥「え、俺? はい、代わりました、真奥です。ご無沙汰してます……はい……いえ、大丈夫ですから」

真奥「本当ですって……いえ、無理してません……はい……いえ、大丈夫ですから」

真奥(なんかウチの金銭事情を凄く心配されてる……ウチの貧乏はちーちゃんの家まで届いてるのか)

千穂(なんか申し訳ない……)

…………

真奥「プレートが良い感じに温まってきたな♪」

漆原「ねえ、芦屋ー。早くお肉出してよー」

芦屋「急くな。まずはこれを食べろ」ドサッ

千穂「もやし、ですか?」

芦屋「いきなり肉を食べるとあっという間になくなってしまうかもしれませんからね」

芦屋「まずは野菜を食べてある程度腹を膨らませるのです」

漆原「そんなー。僕早く肉食べたいのに……」

真奥(やっぱりなんか貧乏くさくなるな)

真奥「…………」シャキシャキ

千穂「…………」シャキシャキ

漆原「…………」シャキシャキ

芦屋「…………」シャキシャキ

真奥「…………」シャキシャキ

千穂「…………」シャキシャキ

漆原「…………」シャキシャキ

芦屋「…………」シャキシャキ

真奥「…………」シャキシャキ

千穂「…………」シャキシャキ

漆原「…………」シャキシャキ

芦屋「…………」シャキシャキ

真奥「…………」シャキシャキ

千穂「…………」シャキシャキ

漆原「…………」シャキシャキ

芦屋「…………」シャキシャキ

真奥「…………」シャキシャキ

千穂「…………」シャキシャキ

漆原「…………」シャキシャキ

芦屋「…………」シャキシャキ

真奥「……もやし多くね!?」

真奥「後せめてなんか喋ろうぜ! 何処のさまぁ~ずと女子アナだよ!?」

千穂「す、すいません。なんか空気的に喋りにくくて……(汗」

漆原「せっかく立派なホットプレートあるのにもやししか焼いてないからテンションでなくて……」

芦屋「文句言うな! 今日はもやしが安かったんだ! こんなにもやしが食べられるの日なんてそうはないぞ!」

真奥「まあもやし好きなら喜ぶんだろうがな」

漆原「そうでもない相手からみると微妙な日だよね」

真奥「しかしいくら安かったからって多過ぎだろ? 未だにプレートの上がもやしで真っ白だぞ?」

千穂「私、もやしだけでお腹膨れてきました」

漆原「芦屋、そろそろお肉だしてよ~」

芦屋「もやしが先だ」

真奥「いや、さすがにもやしだけだと飽きて来たし、そろそろだしても良いんじゃないか?」

芦屋「そうですか……魔王さまがそうおっしゃるなら」ガサゴソ

漆原「やった! やっとお肉に!!」

芦屋「どうぞ、肉です」

三人「…………」

芦屋「ん、どうしました?」

千穂「あの芦屋さん、これは……」

芦屋「肉です」ニコッ

真奥「いや、これ赤じゃなくて灰色に見えるんだが……」

芦屋「肉です」ニコッ

漆原「どう見てもこんにゃく……」

芦屋「肉だと言っているだろ、穀潰し」ギロリ

真奥「うん、なんとなくこんな展開あるんじゃないかなとは思ってた」

漆原「酷いよ、芦屋! 僕楽しみにしてたのに! 本物の肉出してよ!!」

芦屋「これが肉だ! これが肉なんだ! そう思い込め!!」

漆原「思い込めってなんだよ!」

千穂「あの、私急いでお肉買ってきましょうか?」

芦屋「いえ、肉ならここにあります。そのお気遣いは結構です」

漆原「だから肉じゃなくてこんにゃくだって!」

芦屋「シャラップ!」バシッ

漆原「ぐふっ!?」

真奥「まあ食べられない事もないんだ。さあ、このこんにゃく……じゃない、肉をみんなで食べよう」

千穂「そ、そうですね。私、こんにゃくも好きですし」

漆原「酷いよ……詐欺だよ……」

芦屋「文句言うなら貴様は食べなくて良いぞ?」

漆原「……食べるよ」

千穂「それにしてもこんにゃくも凄い量ですね」

漆原(こんにゃく買うならこの金で安くても良いから肉買えよ)

芦屋「こんにゃくはいろいろと応用がききますからね。買いだめしてるんですよ」

真奥「確かにこんにゃくは(料理として)意外といろんなもんに使えるよな」

千穂(こんにゃくがいろいろ使える……)

千穂(そういえば前にクラスの子から聞いた事あるな……男の人はムラムラしたらこんにゃくでも使うって)

千穂「…………」

千穂(まさか真奥さんも!?)

千穂(もし、もしこのこんにゃくが真奥さんの、その、そういう事に使われていたものだとしたら?)

千穂(でもそんなものを夕飯に出すかな……いや、ありえる。貧乏な真奥さん達ならありえる!)

千穂(でももしかしたら芦屋さんや漆原さんが使ったこんにゃくの可能性もあるんだよね……それはやだな)

千穂(でももし真奥さんの使ったこんにゃくなら……私は、私は……)

真奥「ちーちゃん、何こんにゃく凝視してんの?」

真奥「あ、ちーちゃん。このこんにゃく焼けたよ」ヒョイ

千穂「あ、ありがとうございます」

千穂(ん、今自然な流れで真奥さんにこんにゃくを取って貰ったけど)

千穂(真奥さんの箸で掴んだこんにゃく……)

千穂(つまり……間接キス!?///)

電池がやばい

千穂(こ、これを食べれば真奥さんと間接キス……)プルプル

千穂「あ……」ツルッ

こんにゃく「」ユカベチャ

千穂(ああああああああ!?!?)

真奥「あ、何やってんだよ、ちーちゃん」

芦屋(こんにゃくを落としてあれだけのリアクション……よかった、佐々木さんはこんにゃく好きのようだ)

千穂(何してるのよ、私! 真奥さんのこんにゃくを落とすなんて!?)

千穂(いや、この世界には三秒ルールという素晴らしいルールがある! 急いで拾えばなんとか……)

漆原「勿体ないな、もう」ヒョイパク

千穂「」

真奥「お前落ちたもんも平気で食べられるのな」

漆原「だって勿体ないじゃん」モグモグ

芦屋「出来れば無駄遣いに関しても勿体ないという認識を持ってほしいところだが……」

千穂「…………」

漆原「ん、どうしたの、佐々木千穂?」

千穂「漆原さん、ちょっと左手で良いんで貸して下さい」

漆原「いきなりなんだよ。ん?」

漆原「ねえ、なんで僕の指広げてるの? で、なんでその間に箸を一本一本挟んでるの?」

漆原「まさか……ちょっと待ってよ。それやめてよ。僕が何したっていうんだよ。真奥達も見てないで止め」

ギュー!

<ギャー

…………

真奥「なんだかんだで腹いっぱいになったなー」

千穂「一生分のこんにゃくともやし食べた気がします」

漆原「まあ何だかんだで美味しかったよ……左手がまだ痛いけど」

芦屋「当然だ。私がチョイスした料理だからな」

一同「…………」

一同(でもやっぱり焼き肉じゃないよな……)

真奥「……いや、これはやっぱり焼き肉だよ」

真奥「もやしとこんにゃく……これが魔王城の焼き肉なんだ!」

真奥「常識に縛られるな! 俺達は俺達の焼き肉を作ればいいのさ!」

千穂「そ、そうですね!」

芦屋「さすが魔王さまです!」

漆原「無理矢理まとめてきたな~」

ドンドン

真奥「ん、こんな時間に客か? 誰だろう?」

恵美「ちーす! 魔王達、様子を見にきてやったわよ!」ドアバン

真奥「恵美?」

千穂「何だか何時もと様子が違いますね?」

漆原「うわ、酒くさ!」

芦屋「お前、酒を飲んできたのか?」

恵美「ええ、さっきまで仕事仲間とね~ひくっ」

真奥「お前、本当は17だろ? 酒なんか飲んで良いのかよ?」

恵美「うっさいわね。魔王が私に指図すんじゃないわよ」

恵美「でも楽しかったわよ。焼き肉屋でやった飲み会」

四人「!」

恵美「やっぱり焼き肉といえば肉よね、カルビよね」

恵美「食べ放題の店だったけど凄く美味しかったわ」

恵美「そういえば食べ放題の中にこんにゃくやもやしがあったけど……わざわざ焼き肉店まで来て食べる人いないってのwww」

恵美「焼き肉はカルビとお酒があれば十分……ってどしたの、みんな? 怖い顔して?」

四人「…………」

恵美「ちょっと、なんで無理矢理追い出すのよ!」

真奥「うるさい! お前はしばらくウチにくるな!」

漆原「うらやましくなんかない! うらやましくなんかないんだからな!」

芦屋「ええい、塩を蒔いてやる!」

千穂「遊佐さん、こんにゃくを馬鹿にするなんて見損ないました!」

恵美「え、千穂ちゃんまで……ちょ!?」

ドアバタン!!

恵美「…………」

恵美「……私が何したってのよ」グスン

…………

千穂「じゃあそろそろ私、帰りますね」

芦屋「また何時でも来て下さい」

漆原「その時はお土産忘れずにね」

芦屋「漆原!」

真奥「途中まで送ってくよ」

千穂「え、いいんですか?」

真奥「もう遅いしな。ほら、いこうぜ」

真奥「うわーやっぱり夜も蒸すな~」

千穂「そ、そうですね」

千穂(真奥さんと夜道を歩く。うわ~なんかそのシチュエーションだけで緊張しちゃうな~)

千穂(それにしても今日は楽しかったな。夕飯まで一緒させてもらったし)

千穂(惜しむべきは真奥さんとの間接キスのチャンスを逃した事……漆原畜生め)オクバギリリ

真奥「ちーちゃん、拳固めてどうしたの?」

千穂「え、あ、いや、なんでもないです、あはは」

千穂「あ!」

真奥「どうした?」

千穂「今流れ星が流れたんですよ。あの辺りに」

真奥「流れ星ってあれだろ? 流れてる間に願い事三回唱えると叶うってやつ」

千穂「はい」

真奥「それ物理的に無理じゃね? 流れるの一瞬なのに三回とか」

千穂「ま、まあそうなんですけど」

千穂「また流れないかな……」

真奥「何だ、叶えたい事願いでもあるの?」

千穂「え、あ……無いことはもないですけど」

真奥「そっか……」

真奥「よし、ならこうしよう。流れ星を見て5分以内なら願い事言っても間に合う事にしよう!」

千穂「はい?」

千穂「あの、そうしようっていうのはどういう……?」

真奥「つまりだな、うまく言えないが……もやしとこんにゃくが魔王流の焼き肉であるように」

真奥「流れ星流れて5分間願い事いう猶予があるのも魔王流なんだよ!」ドヤッ

千穂「……ぷっ」

真奥「え、なんで笑うんだ? 俺なんか変な事言った?」

千穂「いえ、真奥さんらしくて良いと思います」

千穂「なら魔王流という事で今からお願いしてみますね」

千穂(確かに私には叶えたい願いがある)

千穂(でもそれは自分の力だけで叶えたいもの)

千穂(だからここで願うのはほんのささやかな願い。それは……)

千穂「……真奥さんとこうやって一緒にいる時間が少しでもゆっくり感じられますように」

真奥「え?」

千穂「ふふ、声に出しちゃいました♪」

おわり

ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

次回もちーちゃんでもっとちゃんとしたもの書こうと思います。

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