嬢「私のブラウス知らない?」 執事「存知あげません」(111)

嬢「ええ、どこ置いたっけ…?」

執事「昨日脱ぎ散らかしていたでしょう。もう洗濯にだしたのかもしれませんよ」

嬢「そ、そんな!あれまだ着れるのに!」

執事「…はぁ。服は一日おきに洗濯するのが常識でしょう?」

嬢「いや、だから半日しか着てなかったの…」

執事「わかりました。あとで探しておきますから、とりあえず他の服を着てください」

執事「今日は久々に、ご家族と朝食をとるのでしょう。待たせてはいけませんよ」

嬢「う、うん。分かった。そうだね…」

嬢「よし、これでいいや」クルン

執事「…お嬢様、お言葉ですがその組み合わせは少々」

嬢「え?変かな?」

執事「…珍妙ですね」

嬢「…」ガーン

執事「無難にワンピースにしてはいかかでしょうか」

嬢「う、うるさいな…」カァ

執事「はいはい、申し訳ございません」

嬢「こ、この白い奴でいい?かな」

執事「はい、お似合いですよ」

嬢「んふふー、そうかな」クル

嬢「ねぇねぇ、今日の朝ごはんって何?」

執事「今朝はパンケーキですね。お好きでしょう?」

嬢「!!やったー!あの苺いっぱい乗ってるやつ!やっほー!」

執事「そんなに興奮なさらないでください」

嬢「は、はやく!早く行こう、食べたい!早く食べたい!」

メイド「お早うございますー、お嬢様」

嬢「あっ、お早うメイドちゃん!ハグミー!」

メイド「あらあら、はい。ぎゅー」ギュー

嬢「相変わらずでっかいおっぱい!わはは!」

メイド「朝から何なんですか…」

執事「朝食のメニューに、少し興奮してるんです」

メイド「もうすぐ17なのに…。子供ですか」

嬢「パンケーキって悪い薬みたいだよね…禁断症状でそう」ハァハァ

嬢「あ、そういえば」

メイド「どうしましたか?」

嬢「メイドちゃん、私のブラウス洗濯した?」

メイド「え?さぁ…記憶にないですね」

嬢「あれ、そっかー。うーん、どこなんだろ。まぁいいや!それより、パンケーキだ」ダダダ

執事「ろ、廊下は歩いてください!」

嬢「パンケーキが呼んでる!呼んでるんだ!!」ダダダ

メイド「朝から元気なことですね」クス

嬢「おっはー、父上」

父「お早う。足音がここまで聴こえてたぞ」

執事「…はぁ」

嬢「んふふー、まだかなまだかな」ブラブラ

執事「お行儀よくなさい」

嬢「いいじゃん…。ケーチ」

執事「…はぁ…」

父「はは、相変わらずだな。嬢も」

嬢「…」アムアム

父「パンケーキが来たとたん、会話がなくなったな」

嬢「ん?あ、ああごめんなさーい」

執事「…クリームがついてます」

嬢「え!夢中で気づかなかった」ゴシゴシ

父「もうちょっとお嬢様らしくしてくれないかねー」

嬢「んもう、そんな私が好きなくせに」クネ

父「まあな」

父「見ない間に、少し背が伸びたな。髪も、伸ばし始めたのか?」

嬢「うん。父上はちょっと太った?お腹でてる」

父「がはは。行く先々の接待でこうなったんだ!私のせいじゃない」

嬢「頭も薄くなっちゃったね…。可愛そうに」

父「そこは言うな…」

嬢「あ、執事が笑いこらえてる」

執事「!?」

父「え、なにそれショック」

執事「い、いえ私は、そんな」アタフタ

嬢「肩がプルプルしてたよー」

執事「う、嘘おっしゃい!笑っていません!」

父「…」

嬢「はいはいごめん、嘘でしたー」アハハ

父「な、なあああんだ、良かった」

執事「お、お嬢様…!」

父「相変わらず仲がいいのー。羨ましいぞ」

父「君を嬢の専属執事にして、もう3年近くたつな」

執事「はい」

父「どうだ、最近娘の調子は?」

執事「…ええ、毎日明るく過ごされておりますよ。勉強は少し頑張らないといけませんが」

嬢「おいこら待つんだ」

父「うーん?勉強ができんのか?」

執事「芳しくないですね。このあいだ、数学のテストで…」

嬢「シャラアアアアアアアップ!!!」

父「うお、びっくりしたぞ」

嬢「執事…。こんな楽しい場でそんな残酷な話をしないでくれ…」

嬢「ほ、ほら。父上の頭頂部がもっと寂しくなってしまうでしょ?」

執事「お、お嬢様!」

父「ははは、まあいいさ。嬢はのびのび育ってほしいからな!数学なんて、足し算引き算ができればよいのよ」

嬢「さっすが父上、分かってるぅ」

執事(…駄目だこの親子)

父「で、執事よ。今度はこの子が頑張ってることを聞かせてくれ」

執事「そうですね、最近剣術が上達してきています」

父「おお!すごいじゃないか嬢!」

嬢「ふふーん」

執事「お相手の殿方に勝ってしまったり…。筋が非常によろしいかと」

父「本当か!じゃあそろそろ専属の教師をつけてやらねばな」

嬢「本当!?じゃ、じゃあ金髪の巨乳美人にして!」

父「あほか、そんなの私の教師にしたいわ。お前なんかに回すか」

嬢「くぅ、いじわる」

嬢「あ、そういえば昨日ねー」

「ご主人様、そろそろ会合のお時間です」

父「お、そうか」ガタ

嬢「…」

父「すまんな、行かねば…。今度出先に手紙をだして、聞かせてくれ」

嬢「…今度はいつ帰ってくるの?」

父「さあ、分からない。良い子に待っておれよ」クシャ

嬢「…」

父「執事、頼んだぞ」

執事「お任せください」ペコ

嬢「…」

執事「ほら、お嬢様」

嬢「…えへへー、父上、いってらっしゃーい!」ニコ

父「ああ」

嬢「…お仕事、がんばってね!」

父「おう、頑張るぞ」

嬢「…うりゃー!」ガバ

父「うお!!?」

嬢「いってらっしゃいデブチン!!大好き!」チュ

父「こ、これ!」

嬢「どうだ若さ溢れる少女からのチュウは」

父「何言ってんだお前は…ばか者め」ポン

執事「…ふふ、お暑いですね」クス

嬢「相思相愛だからね」

嬢「…行っちゃった」

執事「寂しいですか?」

嬢「めちゃくちゃ寂しい」シュン

執事「…お嬢様」

嬢「よっしゃ、剣術の稽古行こーっと!執事、またあいつ呼んで!!」

執事「ものすごい感情の変化ですね」

嬢「ヘコんでてもしょうがないんじゃー!はやく剣振り回したい!」

執事「はいはい、では稽古着に着替えてくださいね」

=中庭=

嬢「おらああああああああ!!父上の仇ぃいいいいいい!!」ブン

少年「!うおおおおおおおおおおおおお!?」

嬢「土に還れ!!」ブン

少年「いきなりうちこんで来るな!馬鹿!」

執事「お、お嬢様!」

少年「いや、大丈夫です!こいつのテンション、慣れてますから」

執事「…申し訳ありません」

少年「今日こそはボコボコにしてやるからな!」

嬢「馬鹿め!どの口が言うんだ」

少年「いつまでも負けてたまるか!」

執事「…」

メイド「お嬢様、なんだか今日はいやに元気ですね」

執事「いいえ、空元気ですよ。寂しさを紛らわしてるんです」

メイド「…なるほど」

執事「健気なものです」ハァ

期待

嬢「てやっ、とう、はーっ」カンカン

少年「くっ、この…」

嬢「…すきあり!」ブン

少年「…わわっ」

嬢「…ふふん。首とったり」ニマ

少年「…く、くそっ」

嬢「やあああだあああまた負けちゃったのぉおおお?」

少年「う、うるさいうるさい!」

嬢「しつじー!!!また勝ったーーーっ」

執事「左様でございますか。お強いですね」

嬢「ふふん、もっと言って頂戴」ツン

執事「しかしあのように大きく踏み込まれては、隙ができてしまいますよ」

嬢「う、うるさい」コツン

執事「いたっ。す、すみません」

少年「あはは、言われてやんの」

嬢「一言余計なの!いっつも」フン

嬢「あー動いたらお腹すいちゃった」ノビ

少年「もう昼時だな」

嬢「よし、少年!ご飯食べていけ!」ガシ

少年「え、まじで…?いいの?」

嬢「いいのいいの!執事ー、準備してね!」

執事「分かりました。しかしその前に、着替えをしてくださいね?」

嬢「了解」タッ

執事「…」

嬢「ふー汗かいたかいた」ヌギ

嬢「…えーっと、今度は何を着ようかな」

嬢「…あれ?」

嬢「…あの黒いスカート、どこやったっけ…?」

嬢「…メイドー!」トコトコ

メイド「あらあら、下着姿で。はしたないですよ」

嬢「私の黒いスカート知らない?ないんだけど」

メイド「今朝言っていたブラウスと洗濯に出されたのでは?」

嬢「えー違うよ。最後に着たの三日前だもん」

メイド「あら…どこにいったのでしょう?探しておきますね」

嬢「…んー」

メイド「他の物を着ればいいじゃないですか」

嬢「分かった…」

メイド「あっ、待って」

嬢「?」

メイド「私がコーディネートしますね」

嬢「じ、自分でできるもん!」

メイド「いえ、お嬢様のファッションセンスは、その…。人とかけ離れていらっしゃいますので」

嬢「!な、なにー!」

メイド「うふふ、一般受けしないということですよ」

嬢「う、何よこのおっぱい星人!」

メイド「あらあら。お嬢様だって、随分ご立派になられましたよ?」

嬢「…運動するとき、邪魔なんだけどな」ムニ

メイド「ふふ、いつか必要になるときが来るんですよ」

嬢「おまたせー」

少年「おう、今日はシチューだってよ!」

嬢「本当!?やったああああ」

嬢「…あれ、執事は?」

少年「ああ、雑務があるんだってよ」

嬢「じゃあ、二人きり…だね///」

少年「なんだそれ、気色わりいー!」

嬢「おいこら」

……


嬢「そんじゃ、また明日ー」

少年「おう、今度は負けないからな!」

嬢「言っとけ!」

執事「さようなら、少年様」ペコ

少年「さようならー!ご馳走さまでしたっ」

嬢「…さて」

執事「お嬢様、お勉強のじかんです」ニッコリ

嬢「ちょっとトイレ」

執事「お手洗いはそちらではありません。そしてさっき行っていましたよ」

嬢「…やだー」

執事「今日はちゃんと公式を覚えてもらいますからね」

嬢「お、鬼!!お前の血は何色d」

執事「さあ行きましょう」ズルズル

嬢「うわああああああああ」

……

執事「…違います、ここは正の数になるんですよ」

嬢「あ、そっか」

嬢「…んー?」

執事「ほら、公式を思い出して」

嬢「…えっと、こ、こう?」カキカキ

執事「正解です。やればできるじゃないですか」

嬢「…!ビ、ビクトリー!私天才だわ!」

執事「では次の応用問題にいきましょう」サラリ

嬢「ちょっ、ちょっと待って。休憩しよう」

執事「…まあいいでしょう」

嬢「や、やったー!んぅー!」ノビー

執事「…お嬢様、そんなに体を伸ばしては、お腹が見えてしまいますよ」

嬢「うるさーい」

執事「普段からおしとやかにすることも大事ですよ?」

嬢「いいじゃーん。パーティーとかでは大人しくするんだし」

執事「そういう問題ではありません」

嬢「もー、ここはお家なんだからいいじゃん。それに」

嬢「私が上品になって、冗談とか言わなくなったら、きっと楽しくないよ?」

執事「…そうかもしれませんね」

嬢「執事だって明るい私が好きでしょー?ねえー?」スリ

執事「!こ、こら」

嬢「あはははは、何照れてるの」クスクス

執事「…!」カァ

嬢「ねー、執事ってさあ」

嬢「彼女いるの?」

執事「…お嬢様、それは」

嬢「メイドさん?」

執事「断じてございませんよ」

嬢「うわ、つまらん。あ、じゃあー、メイド長さん?」

執事「私の恋人にするには、お年が釣り合いませんし、第一配偶者がいらっしゃいます」

嬢「冗談だよ、冗談ー。えー、いないの?」

執事「いません」

嬢「今、いくつだっけ?」

執事「…24ですが」

嬢「それならいたこと、あるでしょー?ねえねえ、恋バナしようよー」

執事「さあ、勉強に戻りましょう」

嬢「なんで!?」

執事「早く、教科書を開いて!」

嬢「ノリ悪いなぁー、もう」ペラペラ

執事「お嬢様、私のことなんか聞いても面白くありませんよ」

母親出てこないのかな

嬢「面白いかどうかなんて、私が決めるのー」

執事「…はあ」

嬢「…執事、じゃあさ、好きな人は?」

執事「…」

嬢「黙秘権か」

執事「さあ、解いてください」

嬢「あほー!執事のあほー!」

執事「時間がありませんよ!夕食の時間を削ってもいいのですか?」

嬢「解け、解くんだ嬢!!!」バババ

嬢「…」ピタリ

嬢「…なにこれ、問題文すら理解できない」

執事「…くすっ」

嬢「わ、笑うなぁ。こ、これどういうこと?」

執事「ですから、ここはこの値を求めるのですよ」

嬢「な、なるほど」

執事「お嬢様、頑張ってください」

嬢「…っ、ああー。終わったー」

執事「お疲れさまでした」

嬢「さ、お風呂入ってこよーっと」ガタン

執事「はい。くれぐれも湯冷めしないように」

嬢「分かってますって」タタタ

……


嬢「~♪ ~♪」ヌギヌギ

嬢「うう、寒い寒いっ」ポイ

嬢「…」タタタ

ザバン…

嬢「ふー…」

嬢(…あーあ、疲れたなー)

嬢(…父上、今なにしてるかな)

嬢(あーあ、仕事も楽しそうだけど、たまには一緒にゆっくり過ごしたい)

嬢(さて、あがろう)ザバ

ガララ

嬢「うっ、だからさ、寒いって」フキフキ

嬢(あ、パジャマ用意されてる)

嬢(…あれ?いつもと違うやつだ)

嬢(似てるけど、新しい…?)

嬢「…」ヒネリ

嬢「ま、いいや」モゾモゾ

嬢「ふー良いお湯でした」

執事「あ、お嬢様」

嬢「ん?なに?」

執事「探していらっしゃったブラウス、ありましたよ」

嬢「え?どこに?」

執事「やはり洗濯場に。ちゃんと直しておきましたので、ご安心を」

嬢「そっか、よかったぁ。あ、でもスカートはどこなんだろう」

執事「…スカート?」

嬢「うん。黒い、フリフリついたスカート。あれもなくなっちゃった」

執事「…そう、でしたか」

執事「分かりました。探しておきましょう」

嬢「うん、ありがとー」

執事「夕飯を食べたら、今度は外国語の勉強をしましょうね」

嬢「ええええええいいよ」

執事「素直なんですね、案外」

嬢「だってー、数学以外は割りと好きだもん」

……


嬢「ふー、やっぱり私天才かも」

執事「お見事でした。小テストも満点でしたし…。お嬢様は文系がお強いのですね」

嬢「でもさー、『私達は一晩中庭で火を燃やし続けました』とか、使う?あの例文いらなくない?」

執事「まあ、あの文には少々疑問を感じますが」クス

嬢「…ふあ」

執事「そろそろ消灯のお時間ですね」

嬢「うん…今日は疲れちゃった」ゴシ

執事「では、どうぞ横になってください」

嬢「うん…」トコトコ

嬢「…ん」ボフン

執事「お布団、かけますね」

嬢「ありがと…」

執事「いえいえ。お疲れさまでした」

嬢「…おやすみ、執事」

執事「おやすみなさい、お嬢様」

嬢「…」スゥ

執事「…」ソッ

執事「…」ナデナデ

執事(…さて…)

執事(このあとの仕事は…あ、そうだ。お嬢様の探し物)

執事(黒いスカート、か…。あまり履いてなかったものなのに、どうして今更)

執事(…)

……


「お嬢様、ご起床のお時間ですよ」

嬢「ん、う…はぁい…」モゾ

執事「朝食、冷めてしまいますよ」

嬢「うん、起きる、起きるよぉ」ズリズリ

執事「あ、そうだ。お探しになっていたもの、ありましたよ」

嬢「本当?じゃあ、ブラウスと合わせて着る」バッ

嬢(…?)

執事「どうかなされましたか?」

嬢「これ、こんなに生地厚かったかな…って思って」サワサワ

執事「?そうですか?私には同じに見えますが」

嬢「…気のせいかなー」

執事「ええ。では、着替えが終わりましたら、いらっしゃってくださいね」

嬢「うん、分かったー」

嬢「…えっと、ブラウスブラウス」

嬢「あ、あった」ピラ

嬢「…????」

嬢「これも、なんか前より綺麗に、白くなってる気がする…」

嬢「…洗ったからかな」

嬢(まあいいや)

嬢「~♪ ~♪」ヌギヌギ

嬢(そんなことより、今日は何しようかなあ)

嬢(少年、今日はどんな技使ってくるかな。ふふ、たのしみ)

……


嬢「ふー、ごっそさん」

執事「ごちそうさま、でしょう」

嬢「う、ご、ごちそうさま」

嬢「コックのじっちゃん、今日も美味しかったよ!愛してる!」

コック「んがはは、毎日美味しそうに食べてくれて、こっちも作りがいがあるよ」

嬢「んふふー。おやつも期待してるからね」

嬢「さっ」ガタン

執事「剣術の稽古ですか?」

嬢「うーん、そうしよっかなぁ」

バタバタ バタバタ

嬢「…?」

メイド長「…はぁ、はぁ。あ、いた!」

メイド長「ちょっと執事!」

執事「は、はい?何かありましたでしょうか」

メイド長「どうもこうもないわ!お嬢様の剣術の教師だって男が門まで来ているのよ!」

嬢「えっ」

執事「!?教師の方は、3日後に来る予定だったんじゃ」

メイド長「旦那様から言いつけを預かってるのは貴方でしょう?確かめてちょうだい!」

執事「は、はい只今」

嬢「私も行くー!」

メイド長「なりませんよ、怪しい輩かもしれません」

嬢「大丈夫だもん!執事、はやく行こう!」グイ

執事「…どういうことでしょう?」

嬢「父上のことだから、連絡ミスでしょー?っていうか」

嬢「しんっじらんない、あのデブチン!」ダン

執事「え、え?」

嬢「妥協して黒髪アジアン美女剣士でもいいって言ったのに…!男かよ!」

執事「…なんですかそれ」

嬢「良い匂いのする可愛い先生に、やさしーく教えてもらいたかったのにー」ムス

執事「…お、お嬢様はその…。い、いえなんでもありません」

ガヤガヤ

嬢「使用人さんが集まってる…」

執事「ええ、急いで確かめないと」

メイド「…」ピョンピョン

嬢「あ、メイドちゃんー。仕事しないで何野次馬しとるか」

メイド「あっ。うふふー。お嬢様の新しい先生を見にきたのですよ」

嬢「ミーハーねー、全く」

メイド「うふふ、それが…。お嬢様、良かったですねぇ。ラッキーですよお」ニコニコ

嬢「え、どういうこと?」

執事「メイドさん、一体…」

メイド「ふふ、では、私仕事に戻ります」タタ

嬢「…何か嫌な予感しません?」

執事「同感です」

嬢「うわあああ、何だ、誰なんだ」

執事「すみません、執事です、通してください!」グイグイ

「あ、やっと来たー。どうも、剣士です。こちらのお嬢様に剣術を教えにきました」

執事「…」

執事「すみませんが、三日後からの契約ではございませんでしたか?」

剣士「いやね、意外と早くついちゃったのよー。入れてくれません?」

執事「契約書、お持ちですか?」

剣士「あー、あれねー」ゴソゴソ

剣士「はい、どぞ」ピラ

執事(…この家の判子。本物だ)

嬢「ちょ、ちょっと!皆どいてどいてー」

剣士「お?」

嬢「見えないんだって、おい!ってか仕事戻ろうよ?ねえ!」ピョンピョン

剣士「おおー、あの子か」ズカズカ

執事「!ちょ…」

剣士「ご機嫌麗しゅう、お嬢様ー」ペコ

嬢「!…あ」

剣士「俺、お嬢様の剣術を磨くために、はるばる都から来た剣士です。どうぞよろしく」ギュ

嬢「!う、うわ。むぅ?」

執事「…な!いきなり何を」

剣士「嫌だなあ、抱きしめるのは挨拶ですよ」ニコ

嬢「む、あ、あの」

剣士「あはは、びっくりしちゃいました?でも、早くお近づきになりたくって」

嬢「…」カァ

剣士「これからよろしくお願いします、お嬢様」ニコ

嬢「…は、はい」

執事「……」

剣士「とりあえず、荷物置いてきていいですかー?俺の部屋、どこです?」

使用人「は、はい、ご案内いたします」

バタン

嬢「…」

執事「…」

嬢「何アレ、めっっっっっちゃ良い男じゃないですか!」

執事「…そのようで」

嬢「う、うわぁ。参っちゃったなあ、どうしよ」カァ

……


嬢「そうそう、で、目が大きくて垂れてて、可愛いのに、眉はキリってしてるの!」

メイド「それにあの高い身長と筋肉!すごいですよお、うふふ」ニヤニヤ

嬢「しかも何かやけにフレンドリーだし…」

メイド「あー、お嬢様、羨ましいです」

メイド長「…ふん、くだらないですね」

嬢「そぉんなこと言って、メイド長もお尻めっちゃ見てたよ!?」

メイド長「なっ…!お嬢様!」

<キャーキャー

執事「…」カリカリ

使用人「よう、執事ぃ」ポン

執事「あ、ああ。こんにちは」

使用人「見ろよ、家の女たち全員あんなかんじだぜ、全く」ハァ

執事「…そうですね」

使用人「しかも、お嬢様まで黄色い声だしちゃってさあ。もー、年頃だねえ」

執事「…」ドサドサ

使用人「!あ、あいたっ!?」

執事「あ、ああすみません!ボーっとしておりました」

使用人「お前も気になるのかー?ん?」

執事「い、いえそんなことは」

使用人「そうだよなぁ。あいつったら、いきなりお嬢様にハグだもんなぁ」ニヤニヤ

執事「…!」

使用人「おー、嫉妬しちゃって可愛い可愛い」

執事「しっ、仕事が残っているので失礼します!」ガタン

嬢「あ、執事ー」

執事「は、はい。何でしょうか」

嬢「え、えっとさー。この格好変じゃないかな?」

執事「…普通だと思います」

嬢「ん、そっかー。えっと、これで剣術の稽古受けても変じゃない?」

執事「…ブラウスとパンツでですか?いつものように稽古着を着たら…」

嬢「え、だ、だってあれ、結構擦り切れたりしてるし」

執事「…別に、動きやすいのならそれでいいのではないでしょうか」

「あ、いたいたー。お嬢様ー」

嬢「!」

執事「…」

剣士「準備できましたか?稽古、はじめましょうかー」

嬢「は、はい!よろしくお願いします」

剣士「はいこちらこそ。じゃあ、行きましょうか」

嬢「はい!」

執事「……」

執事「…」カリカリ

執事「…」チラッ

執事「…」カリカリ

執事「…」チラッ

メイド「うふふ」

執事「!な、なにか」

メイド「いえ、さっきからチラチラ中庭のほうを見ているので…くす」

執事「い、いえ。見ていません。仕事に集中していますよ」

使用人「…」ニヤニヤ

執事「…っ」カァ

メイド「少年さんも一緒に稽古をうけていますし、大丈夫ですよ」

使用人「え、メイド、お前見に行ったのか?」

メイド「ええ。ちらっと。楽しそうでしたよ」

使用人「へー、そう…。なあ、執事。俺らもさあ」

執事「ま、まだ書類が終わってませんよ」

使用人「は?あとそれだけじゃん。行こうぜ、気になってんだろ?」ニヤニヤ

執事「…っ、で、ですから」

メイド「まあまあ、そんなに使用人さんは一人で行きたくないのですかー」

使用人「へ?」

メイド「意気地がないのですねえ。しょうがありません、執事さん、一緒に行ってあげてください」

執事「…は、はあ」

使用人「え、ちょ」

メイド「行け」

使用人「は、はひ」ビク

使用人(…メイドこっわ…。目がマジだったぜ)

執事「で、では」

使用人「ん?お、おお。たすかるぜー。ひとりではきがひけてよー」アハハ

=中庭=

「やっ、たぁっ!」

「うん、いいよ。少年君、少し剣先上げて。お嬢様は、もっと体を前に倒して」

使用人「お、やってるやってる。…ん?」

メイド長「…」ジー

執事「…メイド長さん?」

メイド長「!!!」バッ

使用人「えっと、見学ですか?」

メイド長「え、ええまあ。お、お嬢様の様子が気になったもので、で、では」

パタパタ…

執事「…」

使用人「…5対5だな」

執事「え?」

使用人「お尻見たさとお嬢様への心配」

執事「…成る程」

「…うーん、お嬢様、少し姿勢が悪いですね」

「え、そうですか?」

使用人「お、おお?」

「ええ。もっと、こう…。」

ピト

執事「…!」

「少し猫背気味ですよ。ほら、伸ばして」

「は、はい…」

使用人「…わーお」

使用人「…」チラ

執事「…」クイ

使用人(め、眼鏡をあげた)

執事「…そろそろ行きましょうか」

使用人「え?も、もういいのかよ」

執事「ええ。お二人とも頑張っていらっしゃいますし。問題ないでしょう」

使用人「お、おお?そう、だなー」

執事「…」スタスタ

使用人「…」

……


嬢「はあ、はあ、ありがとうございましたー」

少年「ありがとうございましたっ」

剣士「うん、二人ともすごく筋がいいですね。感心しました」ニコ

剣士「お嬢様は、女性とは思えないほど太刀筋が力強いですし」

嬢「ほ、本当ですか?やったー」

少年「えー、先生、俺はー?」

剣士「少年君は、磨けばまだまだ光るさ。頑張ろう」

少年「えええええ何この落差」

嬢「まっ、所詮才能だよ才能」ニマニマ

少年「キーッ」

剣士「いやいや、本当にどちらとも、伸ばしがいがあるよ」

剣士「少年君、このあとどうするの?」

少年「あ、俺、近所に住んでるんでこのまま帰ります。ありがとうございました」タッ

剣士「ん、じゃあね。また明日」

嬢「ばいばーい」

剣士「…さて、じゃあお嬢様、お屋敷まで戻りましょうか」

嬢「はい」

……

少年「…ふんふん」タタタ

「いえ、ありがとうございました。またお願いします」

「毎度ありー」

少年「…あ。執事さんだ!おーい」

執事「!し、少年さん」

少年「あ、荷物受け取ったの?なにこれ?」

執事「ああ、新しいテーブルクロスですよ…。それより、稽古は終わったんですか」

少年「うん、今帰るところ!すっげー面白かったし為になった!」

執事「そうですか、それはよかった」

少年「俺も一緒に稽古うけて良かったのかなぁ」

執事「はい。旦那様も望んでいますし」

少年「そっかー!やっぱおじちゃんは優しいな!先生も一流だったし」

少年「…んー、でも」

執事「何か?」

少年「いや、なーんかあの先生に嬢がデレデレしちゃってさ。なんか変なかんじ」

執事「そ、そうですか」

少年「まあ格好いいのは分かるけどさぁー」

執事「す、すみません。その」

少年「?」

執事「デ、デレデレ、とは…。具体的にどのような」

少年「…」

少年「きになるの?」ニマア

執事「え!?い、いえ、お嬢様の世話係として、その。知っておくべきかと」

少年「…んふふ、自分の目で確かめてみたら?そんじゃ!」タタタ

執事「あ、ちょ、ちょっと…」

少年「ばいばーい!」タタタ

執事「…はぁ」

執事「…」クル

……


剣士「はあ、汗かきましたねー」

嬢「はい。結構な運動量でした」

剣士「すみません、つい指導に熱が入っちゃって」

嬢「いえいえ、本格的なことが知れて良かったです」

剣士「…ところで、少年君って…?」

嬢「え、少年ですか?」

剣士「ええ。最初はお嬢様の弟さんかなあって思いましたが、庶民のようですし」

嬢「あ、そうですね。ここのコックの息子なんです。近くに住んでますよ」

剣士「ああ、そうなんですか…」

剣士「でも、なんだかすごいですね」

嬢「…何がですか?」

剣士「いえ、お嬢様は名家の令嬢ですが、つんけんしたところがなくって」

嬢「そうですか?」

剣士「こう、令嬢といえば、庶民とは仲良くしませんし、私のような使用人には態度も横柄なイメージが」

嬢「と、都会のお嬢様はそんな感じですよね…。いやあ、私もよく変って言われます」

剣士「ここは、楽しそうですね…。こんな明るくて優しいお嬢様がいらっしゃって」

嬢「!そ、そんな」カァ

剣士「ふふ。謙遜しなくってもいいんです。お世辞じゃありませんから」

剣士「なんだか、良い職場を見つけてしまいました」ニコ

嬢「そ、そうですか…」

「…あ、お嬢様。お疲れさまです」

嬢「あ、執事!」

剣士「あ。では、私はここで。お疲れ様、お嬢様」ペコ

嬢「は、はい。お疲れ様でした」

執事「…」

嬢「…はー」

執事「稽古、いかがでしたか」

嬢「もうすごいよ…。体が動きやすくて、たまらない」

執事「そうですか。よろしかったですね」

嬢「あ、でもつい夢中で夕方までしちゃった…。勉強どうしよう」

執事「しょうがありません。今日は一科目だけにしましょう」

嬢「やった!流石執事!!」

執事「お疲れになったでしょう。汗を流してきてはどうですか」

嬢「うん!分かったー!」タタタ

……


嬢「っふー…。ホカホカだ」テクテク

嬢(今日の勉強は何するんだっけ)

嬢(あー、地理だったかな?予習、はやめにしとかなきゃ怒られるかも…)

メイド「あ、お嬢様。お風呂あがったのでしたら、いつものようにトランプを…」

嬢「あ、ごめんねメイドちゃん、私予習忘れちゃっててさー」

メイド「あら、そうでしたか…?じゃあ、使用人さんでも誘います」

嬢「そうして!じゃあ」タタタ

嬢(予習、予習)タタタ

嬢(…あれ?私の部屋、明かりついてる…?)

嬢(…付けっ放しにしてたっけ?)

嬢「…」キィ

ガチャ

「う、うわっ!!?」

嬢「うわあああああああ!?び、びっくりしたー!」

執事「お、お嬢様…!!」

嬢「な、何やってんの執事!?」

執事「え?い、いえ私はただ教材の準備をしていただけですが…!」アセアセ

嬢「そ、そう。びっくりしたあ…泥棒かと思った」

執事「も、申し訳ございません。驚かしてしまって…」

嬢「はぁ。いや、いいよいいよ。…その持ってる大きい箱、もしかして教材?多くない?」

執事「へ?あ、予備の教材ですが、今日は使わないかもしれません」

嬢「ああ、良かったー。ゾっとしたよ」

執事「…はは…」

嬢「ねぇー執事ー。今日予習しなきゃだめ?」

執事「…何故急に猫なで声になるんですか」

嬢「だってぇ…。ねー、だめ?」ニコニコ

執事「…っ、はあ。しょうがないですね。今日は授業だけでいいです」

嬢「やったー!ありがとう執事!できる眼鏡!」

執事「か、からかわないでください」

嬢「んふふー、いいじゃん。細いフレームが似合ってって」ツン

執事「ちょっ…」

執事「…視力が悪いのは、少しコンプレックスなんです」

嬢「そ、そうなの…?ご、ごめんなさい。からかって」

執事「い、いえいえ。お嬢様が言いたいのなら、いくらでも言ってもらって」

嬢「な、なんだそれは、Mかな?」

執事「えっ…」

執事「…っ、ごほんっ」

執事「少々、その、無駄話が過ぎました…。早く始めますよ」

嬢「ちぇー。時間短くしようとしてたのバレたか」

……


執事「はい、今日はここまでです。大事な事ですから、しっかり覚えておいてくださいね」

嬢「へいへいほー」

執事「では、お疲れさまでした。もう、お休みになりますか?」

嬢「うん、えへへ、眠たーい」

執事「明日はきっちり二科目しますからね?」

嬢「ちぇ。…あ、そうだ」タタ

嬢「今日は冷えるから、長靴下履いて寝ようっと。…えーと」ゴソゴソ

嬢「…あれ、ないぞ?」

執事「いかがなされました?」

嬢「…う、長靴下がない、です」

執事「また衣類をなくされたのですか?」

嬢「ど、どうしてかなー?ここの段に入ってたはずなのに」

執事「…」

嬢「お、怒らないでよ…。整理しようとはいっつも思うけど、苦手なの」

嬢「多分奥のほうに…」

執事「お嬢様、予備のものがありますよ」スッ

嬢「え?…なにそれ、気が利く」

執事「こういうことが多いので、この間頼んでおいたんですよ。どうぞ」

嬢「わあ、ありがと!可愛い。ここ、花の刺繍が入ってる」

執事「お気に召しましたか…その、私が選んだので…。あんまり」

嬢「ううん、すっごく可愛い。大事にするね!よいしょ」グイ

執事「!い、今履くのですか」

嬢「え?何か変?」グイ

執事「…お嬢様、その…男性、というか他人の前で足をむやみに出してはいけませんよ」

嬢「執事なんだからいいじゃん。嫌なら見なきゃいいでしょ…うんしょ」

執事「…」フイ

嬢「あ、顔そむけた」

執事「じろじろ見るのは失礼にあたりますので」

嬢「お前と私の仲じゃないかー。ほら、どうだ?華の16歳の生足だぞ」

執事「…お嬢様」

嬢「はい、すみませぇん」

嬢「…ふう、履けた。すごい、足のサイズぴったりだ」

執事「それはよかったです」

嬢「太ももも全然締められてる感じしないし…。流石執事。良い買い物したね」

執事「い、いえ。執事として当然です」

嬢「…ね、似合う?」

執事「…お、お似合いですよ」

嬢「可愛い?」クス

執事「も、勿論です。非常に可愛らしいです」

嬢「あはは、そんなに執事って花柄好きなの?」

執事「え?」

嬢「だって『非常に可愛らしいです(キリッ』って」

執事「あ、そ、そちらでしたか…」

嬢「?逆にどちらよ?」

執事「い、いえ何でもありません」

嬢「変なの。…はあ、じゃあ寝よう…。おやすみ」ボフン

執事「はい、おやすみなさいませ、お嬢様」

……


嬢「おはよ…ふわあ」

執事「お早うございます、お嬢様」

嬢「んー…」ゴシゴシ

剣士「やあ、お早うございますお嬢様」

嬢「!け、剣士さんお早うございます」シャキッ

剣士「今朝もお美しいですね」

嬢「…や、やだ」アハハ

剣士「これから朝食ですか?」

嬢「はい、そうですけど…」

剣士「そうですか。あの…使用人の分際で図々しいのかもしれませんが…。ご一緒にどうです?」

嬢「え?全然いいですけど…」

剣士「ありがとうございます。…あ」チラ

執事「…」

剣士「彼は…えっと」

執事「あ、いえ。私は仕事が有りますのでお二人で」

嬢「え、しつ…」

剣士「そうですか、残念ですねー…。お仕事頑張ってください」

執事「はい。ありがとうございます」

剣士「ではお嬢様、行きましょう」ポン

嬢「はい…」

執事「ごゆっくりどうぞ」

執事「…」クル

カツカツ

使用人「よーお、しっつじ君っ」ドン

執事「いたっ。…使用人さん」

使用人「いやいやー、切ないねぇ」

執事「なにがですか…?」

使用人「たった二日目にして朝食の席まで盗られちゃったのね…」

メイド「あらあら、使用人さんその言い方は無粋なんじゃないですか?」

使用人「だってさあ、俺後ろから見てて辛かったぜぇ?」

使用人「剣士ってばよ、お嬢様の肩に手なんか乗せちまってよぉ」

執事「…お嬢様が望まれたことですし…」

使用人「かーっ、健気だねええ」

執事「…」

メイド「うふふ、使用人さん。…黙れ」

使用人「」ビクッ

執事「…」

メイド「口より手を動かしてくださいねー…野郎ども」ニコ

使用人「はっ、はっ、はいい」

使用人「…ったく、メイドのやつ。ゴミ捨てなんか押し付けて…よいしょ」

執事「文句を言ってはなりません。メイドさんは女性なんですから」

使用人「待て、俺はあいつがでっかい寸胴なべを片手で持つところを見…」

嬢「…」

執事「あ、お嬢様!」

嬢「あ、執事、使用人」

使用人「こんなところでどうしたんですかぁ?」

嬢「い、いやね…。隠れてるの」

使用人「隠れてる?そりゃどうして」

嬢「い、いや剣士が…」

執事「…!」ハッ

使用人「剣士!?剣士がどうかしたんですか?」

「あ、お嬢様見つけましたよ!」

嬢「あ、うわあああ…もう、二人のせいで見つかった」

執事「…え?」

使用人「どゆことっすか」

剣士「はい、三回見つかったのでお嬢様の負けです。ははっ」

嬢「み、見つけるのお上手ですね…」

執事「…?お嬢様、これは」

剣士「今、二人でかくれんぼしてたんですよー」

嬢「そう。何処に隠れてもすぐ見つかっちゃう」

剣士「いえいえ、この家って広いので骨は折れますよ…でもコツがあるんです」

嬢「ずるくないですか、それー」

使用人(…仲良っ)

おもしろい

嬢「あ、そういえばこの後、古典の授業だったっけ。ねえ、良い天気だから外でやろうよ!」

執事「ええ、よろしいですよ」

剣士「お嬢様、このあとお勉強ですか?」

嬢「はい。古典の詩を読むんです」

剣士「詩!俺、結構得意分野なんですよ、それ」

嬢「え、本当ですか?」

剣士「いいなあ。ご一緒してもいいですか、執事さん」

執事「え?お、お嬢様しだいですが」

嬢「えっじゃあー、是非!」

剣士「本当ですか。嬉しいなあ」

執事「…」

使用人(あわわわわわわ)

……


嬢「執事、この間の続き?」

執事「そうですね。『蝶』の続きです」

剣士「『蝶』ですか…。随分難しいところをやってるんですね」

執事「ええ、お嬢様はなかなか飲み込みが早いんです」

剣士「へえー…」

嬢「えへへ、数学は苦手ですけど」

剣士「いえ、こういった情緒的な学問を得意としていたほうが、女性らしいですよ」

嬢「!そ、そうかなあ」

執事「…では始めていきますね、まず…」

……

執事「…」ゲッソリ

メイド「あら、執事さんどうかなさったんですか?」

使用人「…なんか頬こけてない?」

執事「いえ、今日は古典の授業をしたんですが…。少し、その」

使用人「あ、まさか剣士が」

メイド「まあ?」

執事「…ええ、何時にもまして話は脱線しますし、人は集まってくるしで半分も進められませんでした」

執事「おまけに蝶の捕獲まで始めましたし…はあ」

使用人「それはひどい」

メイド「お嬢様は楽しんでらしたんですか?」

執事「…それが」

使用人「あ、嫌な予感」

執事「剣士さんが、授業の講師を名乗り出てきて…。お断りしたのですが、お嬢様が」

使用人「…あー…」

メイド「あらまあ…」

執事「昼の授業を、結局剣士さんにお願いしたのですが…はあ、心配です」

……

嬢「ああ、やっと終わりかぁ」ノビー

執事「お嬢様、昼の分は私の授業で取り戻しますからね」

嬢「むー。おにー。楽しかったのに」

執事「…」

嬢「よし、じゃあ寝るね。…あ、靴下靴下」

嬢「これすっごく温かくて寝やすかった。重宝するわ」

執事「もったいないお言葉です」

姉ものワンちゃん

支援あげ

このスレ建て直したやつ落ちた?

なんで建て直し落ちてるんだ…

???

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