ほむら「 私、なんてバカなことを…」(38)

概要
・魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語のSSです。
・偽見滝原で サニーデイ ライフ があった後日談です。
・なので、ほむらはクーほむで登場、水泳の授業行われてたりします。
・ギャグなテーマをシリアスで扱ってみました。
・基本叛逆の物語の流れ・台詞ですが物事の順序が逆になったりしてます。
・一人称の多い文体です。
・途中、ほむら視点・さやか視点・まどか視点・視点無しに変わります。
※ほむら視点、視点無し以外、誰の視点なのか書いておきます。
・基本、ほむらの台詞はスペース一つ空けて書いてます。
・中盤以降出てくるホムリリィは、オリ設定入ってます。ご注意ください。

01

『まどかの 下着を盗ったのは オマエ』

目の前の子供が掲げる看板にはそう書いてある。
私はその時なぜだか悟った。その子供は下着ドロの使い魔だと。
私は下着ドロの魔女だったと。
もう魔法少女でさえないってわけ...。
どうしてよ…ねぇ…どうして…私が…こんな…。
いつの間に…私は…魔女になっていたの…!?

その少し前。
水泳の授業を終え、更衣室に戻った私たちの前で事件は起きた。
まどかの下着が無くなっていたのだ。
困った表情をしていたまどかの目に次々と涙が溢れてくる。
まどかを泣かせようとする人は許せない。
私はさっそくその行方と犯人探しを始めた。
途中、美樹さやかが勝手に加わってきて、正直迷惑ではあったが
以前、志筑仁美の下着を凝視してた彼女も重要な容疑者だったので
近くにいれば、何かおかしなところが見つかるかもしれないと
黙認することにした。

それからいくら周囲を探っても、外から誰かが侵入した形跡は見つからなかった。

01.5

そんな時、彼女が口を開いた。

「…全員の持ち物検査をしてみようよ。」
「もちろんあたしの持ち物も全部見せるから、転校生?あんたも見せてよね。」
「あんたの鞄の中身を洗いざらいね。」

 「そう。見たければ好きにすればいい。」

私の返答に、美樹さやかは呆気にとられてるようだったが、構うことない。
ほうっておいて、私は荷物を渡すため、躊躇なく用具入れを開けた。
そのとき、その中身が目に飛び込んできて、…固まった。
…そして、一度目を離し、いま見たものがウソであってと願い…目線を戻した。
が、その願いはアッサリ崩され、ダメ押しに子供の看板である。
その子供は、私の使い魔、偽街の子供たち、ドールズ。
その一人がこれみよがしに下着をひろげる。
あの子の泣き顔が思い出される。
私、なんてバカなことを…。

私はその場に崩れ落ちた…。

02

偽見滝原市の外。
ほむらのSGの外。
干渉遮断フィールドの外。
そこにインキュベーターが集まっていた。

ただ集まってるだけでなく、そこには慌ただしさがある。
SGの浄化に異常をきたしていたからだ。
実験のどこかに不備があったのだろう。
SGは徐々に穢れを溜め臨界へと向かって行く…。

一匹のインキュベーターが呟いた。
「これから一体何が起こるんだ。」

03

ビュゥウウウ

一迅の風に乗り、白いおおきなシーツが運ばれてくる。
そして、それは、私を覆い、その身を隠した。
私が身に纏ってるのは、こころと一緒の真っ黒なドレス。
暗い静寂の中、考える。魔女とは。
魔法少女が絶望に染まり、行き着く果ての姿。
呪いから生まれ、世界に絶望を振り撒く存在。

「真実なんて知りたくもない筈なのに、それでも追い求めずにはいられないなんて、」
「つくづく人間の好奇心という物は、理不尽だね!」

私はシーツ払い、その言葉の主を見る。

「まぁあんたならいずれはきっと、答えに辿り着くとは思っていたよ。転校生?」

そこにいたのは…、美樹さやかだった。

「な~んてインキュベーターなら言いそうだけど…。」
「まぁまぁ。そう落ち込まないで。」
「そりゃ下着を盗むのは悪い事だけどさ、裏を返せばそれだけまどかの事が大好きって事だからね。」

美樹さやかの言葉は、私には予想外のものだった。
当然、罵倒と侮蔑の言葉を浴びせられると思っていたのに…。
その優しさが余計に心を抉る。貴女は本当に美樹さやかなの?

私が…まどかの下着を…盗んでしまった…欲望をぶつけてしまった…。
あの子への想いまでをも…穢してしまった…。
次に…どんな顔して…あの子に会えばいいの…。
私はね…まどかの為に…ただそれだけの願いで生きてきたの…生きてきた筈なのに…。

バン!

銃を握る私。撃ち砕かれて転がる紫のソウルジェム。
解っていたことだったけど、そうせずにはいられなかった…。
…それと、同時に頭を過ったのは…記憶って厄介なものね。
ひとつ取り戻すと、思い出したくないことも思い出す…。

 「…待ちなさい。貴女、魔女をこのままにしておくつもり?」

私は大事なことを忘れている彼女を引き留めた。

 「下着ドロは女の敵って、貴女言ってたわよね。」
 「これ以上、まどかを悲しませるぐらいなら…。」
 「いっそ貴女のその手で……貴女にはその資格がある。」
 「私もかつて、貴女を殺したのだから…。」

魔女の運命。それは魔法少女に始末されること。
そう、私は魔女の顛末を。かつての美樹さやかの顛末を思い出していた。

 「もう私のソウルジェムは紛い物…。」

私は足下に転がってるSGの欠片を、蹴とばす。

 「さあ…殺りなさい!美樹さやか!!!」

04 

「ねえ?魔女になるって、そんなに悪くて罪深い事なの?」
「その存在は、死なない限り許してはもらえないの?」

 「 貴女、魔女の肩を持つつもり?」

「…慌てなさんな。もし本当に魔女になったのならあんたを殺すつもりなんて、ない!」

 「…私も肝心な事を思い出したわ…。」
 「この宇宙には…もう魔女は存在しない…。」
 「すべての魔法少女の魂は…魔女になる前に円環の理に回収される…。」
 「そうなるように…あの子が…世界を作り変えた…。」
 「…彼女自身を…犠牲に…して…なら…どうして…魔女が……。」

ドクン、激しい動悸が私の胸を襲う。

 「…ううっ…ぐっ!」

ハアハアと荒い息の中呟く。

 「……あの…子に…また…会える………。」

意識が朦朧としてきた。

「現実の世界で暁美ほむらを拘束してる………

彼女の言葉も頭に入らない…。

05

サァアアア

黒い雨が降る。
私はそれにうたれ続ける。
足下に転がるのは、もう使い物にならない傘。

私をうつ雨粒のひとつひとつが
先程見た、まどかの涙のように思えて。
私の頬を伝わるものも、それが雨なのか涙なのか解らなくて。

私、どうしてあんなことを………。
最低な私…。
私の中に、こんな邪な欲望があったなんて…
知りたくなかった…。

まどかはこんな私を知るの…?
大切な人に、私が最低な人だってこと
知られたくない…。

それなら、知られなければいいの…?


私は、まどかを泣かせた張本人を、知っている…。
(天に手を差し出す私)
それで、私は、このまま
(空から差し出されるまどかの手)
あの子の傍にいってもいいの…?
(その手を取ろうとする私)
それは、赦されるの…?
(その私を映すまどかの瞳)

 そ ん な 事 、赦 さ れ て い い 筈 が な い 。

パリーン
(瞳はガラスのように砕け散る)

私はこのまま、ひきこもりの魔女になってやる!!!

ガッシャーーン
(塔の天窓から落ちてきたガラスが床に叩きつけられ)
(塔の内部まで雨が叩きつけていく)

あの子の目も届かない場所へ…。
時間も止まった時の狭間へ…。

私が消えていく…。
いままで自分は、いったいどれだけの人の心を踏みにじってきたのだろう…。

アアア゙ァアアアアア!!!


 これが魔女……私の感情が追い掛けてくる。
 輝きと後悔だけしか、もう思い出せない。
 ああ、これが私の……絶望。
 ……………………
 ………
 …

キュゥべえ(「浄化装置の不測の事態に、今回の実験の継続は困難になった。」)
(「それにしてもお手柄だよ、暁美ほむら。」)
(「希望と絶望の相転移、その感情から変換されるエネルギーの総量は、予想以上のものだったよ。」)
(「やっぱり魔法少女は無限の可能性を秘めている。」)
(「このまま円環の理の一部をここに閉じ込めたまま、今後ソウルジェム消滅にどのような変化が起こるのか。」)
(「実験は次の段階に移るだろう。」)
(「最後に君の命と魂が何処にあるのか、僕が教えてあげるよ。」)
(「                 」)
(「もう意識さえも残っていないようだね。」)
(「さようなら、暁美ほむら。」)

 カチ
 カチ カチ
 カチ カチ カチ カチ カチ

06

ほ…………… ほむら………、ほむらちゃ…、ほむらちゃん!

 ハッ!

カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ

「どうしたの!」

 マドか…

カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ

「わたしだよ! まどかだよ!」

 見ナイデ、私ヲミナイデ!!!

カチ カチ カチ カチ カシャ カチン

概要追加
・今回のホムリリィは、オリ設定入ってます。ご注意ください。
・なので、此岸の魔女ともくるみ割りの魔女とも違います。
・下着ドロの魔女でもありません。下着を盜んだ魔女です。
・イメージは、コミック版心象風景の魔女ほむら。
・使い魔は、今回出てくるのはクララドールズより弱いドールズ14人。
・結界内は魔女と使い魔以外は時間停止となります。
・以上、ご了承の上ご覧ください。

07

火に包まれる見滝原の街。
先程まで幾重にも飛んでいた飛行船はどこにもない。

カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ カチ

見滝原の空に巨大な無数の歯車が現れる。
それは時を刻むかのように音をあげて回る。

   さやか「転校生ッ!」
キュゥべえ(「美樹さやか」)
   さやか「…!」
キュゥべえ(「さっき君たちの会話を物陰から聞かせてもらったよ。」)
キュゥべえ(「君はいったい何者なんだい?」)
   さやか「……インキュベーター!!」
キュゥべえ(「答える気がないなら、それもいいさ。」)
キュゥべえ(「なぜなら、鹿目まどかは、もうそこまで来ているからね。」)
   さやか「?!」

キュゥべえに導かれ、走ってくるまどか。

キュゥべえ「きゅーきゅー!」
   まどか「ハアハア さやかちゃーん!ほむらちゃ!…ほむらちゃんの手が骨に!!」

キュゥべえ(異形の姿になった暁美ほむらを前に、鹿目まどかもやっと自分の役割を思い出すだろう。)
キュゥべえ(さあ鹿目まどか、僕にその力を見せてくれ……??)
   まどか「…あの…えっと…。」
キュゥべえ「まどか、君ならほむらを救えるはずだ。」
キュゥべえ「君が持っている特別な力に気付きさえすれば!」
   まどか「キュゥべえ!?………んっ。」

まどか「ほむらちゃん!どうしたの!わたしだよ!まどかだよ!」

 マドか……見ナイデ、私ヲミナイデ!!!

キュゥべえ「それじゃあ駄目だ。まどか。君には」

カチ カチ カチ カチ カシャ カチン

まどか「       …え?」
  マミ「鹿目さん、美樹さん、早く変身なさい。」
  マミ「リボンは数珠繋ぎになっているから、隣の人の動きに注意してね。」
キュゥべえ「   」(止)
  マミ「残念だわ…これでもうベベの話を信じるしかないみたいね。」
  マミ(周りの時間が止まっているわ…リボンが切れたら暁美さんとはもう…。)


 邪魔ヲ…シナイデ…子供達!!!

  マミ(いけないわ、あの人数では対処出来ない!)

ザクザクザクッ(リボン切断)………((幻惑))

  杏子「そっちに伸びてると思ったかい?」
  杏子「残念!そっちは、アタシの網さ。」
  杏子「ちっ…わけわかんねーことに巻き込みやがって。」
  杏子「水泳の授業が終わってみれば、まどかは泣いてるし、いつの間にかいなくなってるし。」

   杏子「その後、飛行船は落ちてくるし、いったいどーなってんだ。」
   マミ「この子たち、捕縛した14人で全員みたいね。」
 なぎさ「なぎさは今回、マミたちに説明するの滅茶苦茶大変だったのですよ!」

 なぎさ「まどかへの説明はさやかに任せるのですよ。」
 なぎさ「なぎさは今のうちに、インキュベーターを全部潰すのです!」(変身)…バクバクバク(喰)

バン!シュルルッ

   マミ「決して離さないわよ、暁美さん。」

   マミ「ここは私達に任せて、鹿目さん、美樹さん!」
   杏子「さやか、まどか!」


 やめて… もうやめて!
 私は まどかに会ってはならないの。
 この世界に ひきこもるしかないの。

08 さやか視点

まどか「ほむらちゃんが…わたしたちと二度と会えない…遠いところへ行っちゃおうと…してるの…?」
さやか「うん。」

さやか「それと…いいや。」
まどか「?」

さやか「大丈夫、さっきあたしが教えた通りにやればいい…。」
まどか「う…うん。」

まどかに話し終えると
あたしは胸を貫きオクタヴィアを召喚する。

さやか「まどか、いくよ!」
まどか「うん!」

頭上めがけてまどかが弓を射る。
つづけて、あたしが剣を投げ
次々とホムリリィの結界に当たりヒビが入る。
あたしとまどかを乗せ飛び上がるオクタヴィア。

インキュベーターの封印さえ破壊したら、あんたは自由になれるんだ。
インキュベーターの干渉を受けないまま、すぐにでも本当のまどかに会える!

さやか「いっけー!!!」

一直線に突っ込んだオクタヴィアの刃が結界を貫く。
崩壊していく結界。

なぎさ「…見えた!インキュベーターの封印なのです!」

インキュベーターを潰し終え、もとの姿に戻った
なぎさが叫ぶ。

さやか「まどか、あたしが呼んだら降りてきて。」
まどか「う、うん。」

あたしはオクタヴィアから飛び降りる。
眼下にはほむら。

待ってなよ、転校生…いや、ほむら。

09 さやか視点

「また自分だけの時間に逃げこむつもり? 転校せっ!」

ほむらの手前に着地すると同時に
刃を一閃、ほむらが手にしていた銃の半身が床にころがる。
力が抜けたように後ろに倒れ込むほむら。

「い…や、ほむら。」
「みんなのところへ帰ろう。」

 「嫌よ…。ここから出たくない…。」
 「いまの私を…あの子に見られたくない…。」

「もし下着を盗んだ事に引け目を感じているのなら、」
「あたしもあんたと一緒に、まどかの所に謝りに行ってあげる。」
「ついでに暁美ほむらはどうして鹿目まどかの下着を盗んでしまったのか、お話にね。」

「大丈夫!心配する事なんてないよ。」
「あたしには分かるよー。それだけまどかを想ってるって事。」
「あたしも円環の理に導かれてから、これまでたった一人で苦悩してきたあんたと、」
「まどかの関係は分かってるつもりだからね。」
「きちんと説明すれば、まどかもきっとあんたの想いを分かってくれるって!」

 「でも…」

10 さやか視点

そう簡単に、素直になれないか。
そう思いながら空を見上げる。
結界が崩壊し、動き出す時間、空を覆うインキュベーターの封印。
あまり時間はかけてられないか。
あたしは振り返り、頭上のまどかを呼んだ。

「まどか、降りてきて!」

 (ちょっ…)

「さやかちゃーん」

あたしの合図で、まどかも飛び降りてくる。
後ろのほむらはとまどってるとまどってる。
あたしの目の前にまどかが着地したのを見届けたあと。

「いや~、まどかの下着がなくなったのって、実はあたしのせいなんだよね~。」

 (ちょっと…?)

「きゅ、きゅうにどうしたの?さやかちゃん??」
まどかは予想通りの反応。

「このまえ、仁美のを見てからあたしのヨメのまどかはどんなの穿いてるのかなあ~と…。」

 (ちょっと、待って…)

「さやかちゃん………。」
あちゃー、このまえあたしが仁美の見てたときと同じ反応だー…。

「そこにあのネコがあらわれて、どっかに…。」

 「待って!!!」
ほむらが声を張り上げてあたしの言葉をさえぎる。

「ほむらちゃん??」

 「違うの、違うの!…私なの!」
 「私がまどかの下着を盜んだの…ごめんなさい…まどか。」

フン、言えたじゃん。

「え…?」

(「まどか。」)
(「さ、さやかちゃん?!これって…?」)
(「ゴニョゴニョ」)
(「えっ……?!」)

あたしみたいに心残り、残すんじゃないよ、まどか。


バサッ

「ほむら、いままどかに見られたくないなら、それでいいよ。」
「だけど、まどかの話はちゃあんと聞いてあげなよ。」

………。
もう任せても大丈夫みたいだね。
さぁあてと、あたしも心残り、終わらせてきますかっ!

11 ほむら視点

「いや~、まどかの下着がなくなったのって、実はあたしのせいなんだよね~。」

私に背を向け、まどかを呼び寄せたさやかが、突然告白を始めた。
それも自分が犯人だと嘘の告白を。

 (ちょっと…?)

「きゅ、きゅうにどうしたの?さやかちゃん??」

まどかはちょうどさやかの背に隠れ、その表情は伺えない。
私が戸惑っている間もさやかの言葉はつづく。

「このまえ、仁美のを見てからあたしのヨメのまどかはどんなの穿いてるのかなあ~と…。」

 (ちょっと、待って…。)

「さやかちゃん………。」

美樹さやかの言葉を信じて、残念そうなまどかの声が聞こえる。

 (違うの…美樹さやかじゃないの…。それをやったのは…。)


「そこにあのネコがあらわれて、どっかに…。」

 「待って!!!」

私はありったけの声を振り絞っていた。

「ほむらちゃん??」

 「違うの、違うの!…私なの!」
 「私がまどかの下着を盜んだの…ごめんなさい…まどか。」

「え…?」

ついに言ってしまった。
まどかに知られてしまった。
まどかに見r……!?

ファサッ

さやかの手から離れたマントが私を包む。
と同時にあたたかな感触に抱きしめられた。

「ほむらちゃん!」

私からは誰かかを見ることができない。
それでも、解る。
この声、この感触。
これは…まどかだ。


「ほむら、いままどかに見られたくないなら、それでいいよ。」
「だけど、まどかの話はちゃあんと聞いてあげなよ。」

布越しにさやかの言葉が届く。そして。

「…ほむらちゃん、正直に話してくれてありがとう。」
「あれは…、わたしにとっても、ショックなことだったけど…。」
「でもそれで、ひとりぼっちになったらダメだよ。」
「 何があっても、ほむらちゃんはほむらちゃんだよ?」

 「…まどかは赦してくれるの?…こんな私でも赦してくれるの?」

「わたしは絶対に見捨てたりしないよ。」

解ってる。まどかは優しい。優しすぎる。
その優しさに甘えそうな自分がいて、それが許せない…。

 「それでも私は…自分自身が…ううっ」

「ダメだよ、ほむらちゃん。」

私を抱きしめる力が強くなる。

「ひとりぼっちにならないでって、言ったじゃない。」
「わたしはさやかちゃん、マミさんに、杏子ちゃん、」
「パパやママやタツヤ、それに、ひとみちゃんやクラスのみんな」
「誰とだってお別れなんてしたくない。」
「それは、ほむらちゃんも一緒だよ。」
「だから、ほむらちゃんに会えなくなえる方が、わたしにはつらいよ…。」

「だからほむらちゃんも、わたしが許したほむらちゃんを許してあげて。」

ガバッ

 「ごめんなさい、わたし、意気地なしだった。」

マントから顔を出し、私は本心を吐き出した。
見つめる先のまどかの目にはまた涙が光ってる。

 「貴女にここまで言わせてしまって…。」
 「貴女に嫌われてしまうくらいなら、いっそ逃げてしまおうとして…。」

まどかにここまで心配させてしまって、また泣かせてしまって、
私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 もう一度、貴女と会いたいって
 その気持ちを裏切るくらいなら。
 そうだ、わたしはどんな罪だって背負える。
 どんな姿に成っても、きっと平気だわ。
 貴女がそばにいてくれさえすれば。

まどかは話してくれた。
今の状況と、こんなところまで迎えに来てくれたこと。

私はまどかに感謝する。
そして、あの子の言葉を最後まで聞けるよう配慮してくれたさやかの気遣いにも。

私は立ちあがる。
背中には、二つに分かれた黒髪と白の純白。
そこには、さやかのマントを身に纏った私がまどかと共に立っていた。

「さあ、ほむらちゃん、一緒にいこう。」

 「ええ。」

「ほむらちゃん、怖くない?」

 「ううん、大丈夫。」

私たちの放ったひとすじの光の筋が空に伸びていく。
干渉遮断フィールドのそのさらに上まで突き抜けたそれは
巨大な紋章を描き、次の瞬間、降りそそぐ光の矢が周囲を白く染上げた。
結界の中の見滝原の街並みもそれにともなって消えていく。
そして、私の意識もそのなかに白く微睡んで。
しかし、私の心の中には逆に疑問という名の棘が、黒いものを広げようとしていた。

 (あれは……)

12

「…そうだった。」
「私はほむらちゃんのために…。」
「こんな大事なこと忘れちゃってたなんて…。」
「待たせちゃってごめんね。」
「さあ、いこう、ほむらちゃん。」

まどかが円環の理に導くため、私のソウルジェムに手を伸ばす。
それでも、それでもその前に、私には確かめなければいけないことができていた。
先ほどのまどかの言葉で、のどに刺さったような一言。その棘を。

私はまどかの腕を掴んだ。
そして、もう片方の手でまどかの手を握る。

「ほむらちゃんっ?!」

 「まどかはっ…。」
 「まどかは、いまの貴女になったこと、後悔してない?…」
 「家族の人とも会えなくなって、つらくない?…」

私は必死に声を絞りあげ、心の中に広がった疑問をぶつける。

まどかは驚いた表情をしたあと、私の言葉を聞き終えると、再び優しい微笑みをたたえ。

「ううん、後悔はしてないよ。」
「この姿になって、ほんとうのほむらちゃんを知れた。」
「魔法少女のみんなを絶望から救えた。」

 (………)
(!……)

「…パパやママ、タツヤやみんなと別れてさびしくないって、それはウソになるけど。」
「あのときのわたしは、キュゥべえにだまされてたわけじゃない。」
「わたし自身で考えて、わたし自身で願って、いまのわたしになったんだ。」
「だから、いまのわたしは、みんなの役に立てて、とてもしあわせだよ。」

 「私は、まどかとの約束を守れたの?…」

「そうだよ。」
「ほむらちゃんには、あれからいっぱいつらい思いをさせてしまったね。」
「それに、魔獣からみんなを守ることまで引き受けさせちゃって…ごめんね。」

 「私は貴女のためならなんだって。」

「もういいんだよ、もう。」
「これからはずっと一緒なんだから。」
「うれしいことも、悲しいことも共にわかちあっていける。」

「これまでありがとう。そして、おつかれさま。」

 「うん…こちらこそ、ありがとう、まどか。ううっ…」

心の中の棘は消え去り、黒いものを流すように涙が次々と溢れる。
そして、心が落ち着くまでまどかは待っていてくれた。
気持ちが落ち着いたところで、私はまどかにお願いする。

 「まどか、顔をよせて。」

「ん?」

シュルッ シュルッ

私は、顔をよせたまどかの白のリボンを解く。続けて私のも。

『そこに価値があるのよ。』
あのとき言った意味。
まどかから貰ったおさがりの赤いリボン。

世界が書き換えられたあの日、まどかから受け取ったリボンは、私にとってかけがえのないものだった。
そのリボンを手に取り、再びまどかに結ぶ。

まどかは、こちらの意図を察してくれてか、されるがままでいてくれる。
そして、結び終えると、そこには、髪の伸びた懐かしい笑顔があった。

 「そのリボンもよく似合うわね。」

しばらく、私もまどかもお互いを見つめ合っていたと思う。
そして、どちらからともなく気恥ずかしくしなって
最初に声をかけたのは、まどかだった。

「さあ、ほむらちゃん、いこう。」

 「うん。」

まどかは優しい笑顔をたたえたまま、私のソウルジェムに手を差し出す。
穢れが消え消滅していくソウルジェム。
私は穏やかな心境でまどかのもとへと召されていった。

(余談)

杏子「…もう行っちまったのか?」
マミ「ええ、いま円環の理に導かれて…。」
杏子「………さっ、行くか。」
杏子「コイツらも連れて帰らねーといけないしな。」
マミ「そうね、帰りましょうか、私達の見滝原に。」
杏子「ああ。」
マミ「これからは、佐倉さんのお家は私のお家ね♪」
杏子「へっ?」
マミ「もう一生離さないんだから♪」
杏子「うわー…、マミがいうと冗談に聞こえねーな…。」
マミ「もう何も恐くない♪!」


キュゥべえ「もう行ったようだね。ヤレヤレ…(略)」

13

あれから円環の理の一部になって
まどかとさやかからは、あの件を根掘り葉掘り訊かれた。
私は一生懸命謝り、説明するが、それは既にまどか達の知っているところで…。
いままで渡ってきた時間軸で私が何をしてたのか、全て知られていることを思い出して
顔が真っ赤になる。

それをさやかが、からかい。
まどかはカワイイと抱きつく。

でも、それは嫌じゃなくて
とても嬉しいなって。


それから月日が流れて
また誰かのソウルジェムが限界を迎えている。
私は二人の名前を呼んだ。

 「まどか、さやか、迎えに行きましょう。」

(完)


杏子「マミーー!!」

まどか「マミさん迎えに来ました。いままでお疲れさまです。」
さやか「マミさん、おつかれー。」
ほむら「巴さ…マミさん、お疲れ様です。」
 マミ「ありがとう、みんな。」
 マミ「暁美さんも名前で呼んでくれてうれしいわ。」
まどか「それでは行きましょうか。」
 マミ「そうね、心残りは…。」

 杏子「さやかなのか?」
さやか「そっか、あんたも見えるんだっけね。」
 杏子「そっちにマミもいるのかい?」
さやか「そうだよ。」
 杏子「だったら伝えといてくれ、アタシ達は心配いらないからさ。」
 杏子「マミは心配性だからよ。」
さやか「わかった。」
 杏子「もう行くのかい?」
さやか「うん。」
 杏子「そっか、じゃーな。」
さやか「ああ。」

ゆま「杏子おねーちゃん、だれとはなしてたの?」
杏子「昔の友達だよ…。」

そのあと杏子おねーちゃんは泣いてるようでした。
マミおねーちゃんがいなくなった分、これからはゆまががんばると心の中で誓いました。

(余談・完)

拙いSS、最後までお読みいただきありがとうございました。

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