千早「961プロの、如月千早です。」 (152)

私の夢は、歌手になる事。


「思い出をありがとう」

「勇気までもらえた」


あの子に、歌を届けるために……。


「悲しみやせつなさ」

「今日ですべてサヨウナラ……」


「あぁ君、ちょっといいかな。」

「は、はい。何か御用でしょうか。」
 
「私はこういうものでね。いや、君のすばらしい歌声にティンときてねぇ、つい声をかけてしまったよ、はっはっは。」

「……765プロ、社長。……あの、それでいったい……。」


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「あぁすまんすまん、実は私はアイドル事務所を経営していてね。君に、ぜひ我が事務所のアイドルになってもらいたいのだよ。」

「スカウト……ということですか?」

「その通りだ。」

スカウト……、これは、私の夢に近づくチャンスかもしれない……、けれど……。

「アイドル……、ということは、その、歌だけではなく……。」

「うむ、歌って踊って、演技やバラエティ番組など、やることは様々だが、お客さんに笑顔になってもらうということは一緒だと思うよ。」

「……。」

私がなりたいのは、歌手。歌以外のことに時間をかけるなんて……。
 
「……その、ごめんなさい。声をかけていただけたのはうれしいですが、わたしは、アイドルになるつもりはありません。」

「う、うむ?そ、そうか。いやなに急にこんな話を持ち出して悪かったね。」

「だが私はいつでも待っているから、気が変わったら、いつでも連絡してきてくれたまえ。ではこれで。」

……これでよかったのかしら……。もうこんなチャンスは二度とないかもしれないのに。

 
「……。」


 ―――――

千早「はぁ。」

千早(あまり寝られなかったわ。考えても仕方ないとはいえ、あのチャンスを手放して、私は歌手になんてなれるのかしら。)

  がちゃ、こと、とぽとぽとぽ

千早「んっ、ぷはぁ。……もうこんな時間。」



  キーンコーンカーンコーン

先生「うーい、じゃあ気をつけて帰れー。」

千早(今日も川原で発声練習していこうかしら。)

  ざっざっざっ

千早「この辺でいいわね。んん、あっあっあっ、あーー。」

  ざっざっざっ

??「ふん、毎日学校帰りに土手で発声練習とはご苦労なことだな。」

千早「(また邪魔が……)あの、何か御用ですか。」

??「まあ、こんな場所で発声練習を重ねたところで、プロになんぞ到底なれっこ無いがな。」

千早「なっ……!なんなんですかあなたは!初対面の相手に言う言葉ではないでしょう!」

??「ウィ。挨拶がまだだったか。私はこういう人間だ。」

千早(961プロ……代表取締役、黒井崇男……またスカウト?こんなことあるのかしら。)

黒井「この私が、かのセレブな961プロダクション社長だと知って、言葉も出ないか。」

千早(でもこの人、昨日の人と違って、あまり真面目そうには見えないし、本当に社長なのかしら。)

黒井「何とか言ったらどうなんだ。」

千早「失礼ですが、あなた本当に一企業の社長なんですか?とてもそうは見えないのですけど。」

黒井「ノンノン。人を見た目で判断してはいかんな。」

千早「はあ、まあ、なんでも、いいですけれど。それでいったい何の御用なんですか?」

黒井「先程は、貴様はプロになどなれない。そう言ったが、それはあくまで、こんな練習を続けていればの話だ。」

千早「はぁ……。」

黒井「だから、このセレブな私が貴様に、練習する環境を提供してやろうという話だ。単純明快だろう。」

千早「そんなことをして、あなたに何の得があるんですか?」

黒井「無論、そうなれば我が事務所のアイドルとして、私の指示の下、活動してもらうことになる。」

千早「あ、アイドル……。はあ、申し訳ありませんが、私はアイドルになるつもりはありませんので。では。」

黒井「ま、待て!貴様、なぜそうまでアイドルになるのを拒む。」

千早「私が目指しているのはアイドルではなく歌手です。歌以外のことに時間を割きたくないのです!」

黒井「ウィ。アイドルでも歌手でも同じ事だ。貴様に歌のみで芸能界を勝ち抜く自信があるのならば、そうすれば良い。」

千早「しかし、アイドルになれば歌以外にもやらなければいけないことがあるでしょう。」

黒井「その辺の低俗な弱小アイドル事務所ならな、だが私はそんなものに興味はない。」

黒井「私が必要とするのは、たった一人で日本中、世界中を魅了することができる、『王者』、アイドルだ。」

黒井「それができるのなら、歌だけだろうとなんだろうと、構いはしない。」

千早「っ、ほ、本当に歌のお仕事ができるんですか?」

黒井「貴様がそれを望むのならな。」

千早「私に、『王者』になれる才能があると?」

黒井「ノンノン。なれるなれないではない、なるのだよ。才能ではなく、実力でな。」

千早「……。」

千早(信用していいのだろうか……。でも、この考え方は、私と少し似ている。)

黒井「まあ、貴様にその気がないのなら、この話はおしまいだ。」

千早「ま、待って……。」

黒井「この河川敷でいつまでも練習を続ければいいさ。ではな。」

千早「っ……。」

千早「待ってください!」

黒井「……。」

千早「私は、歌手になりたいんです。いえ、ならなければいけないんです。絶対に!」

黒井「ウィ。いい心構えだ。だが生半可な覚悟では勤まらんぞ?」

黒井「絶対に負けなど有ってはならない。血反吐を吐くまでレッスンをさせる。」

千早「それで……、トップになれるのなら。」

黒井「ふふふ、はははははは!いいだろう。ならば貴様を、わが961プロに迎えよう!」

千早「……貴様ではありません。私は、如月千早です。」

黒井「ふっ。では千早。時間を見つけ次第、いつでも連絡してくるといい。」

千早「はい!」


 ――――――

千早「すごく大きな建物……。」

黒井「そうだろう。なにせこのセレブな私の経営する会社だからな。ついてきたまえ。」


受付「黒井社長、お疲れ様です。」

黒井「ウィ。ご苦労。」

千早「ほ、ホントに社長だったんですね。」

黒井「まだ言うか。」

千早「す、すみません。」


  ギィ

黒井「さて、千早。今後のお前の活動方針だが。当面の間ダンスレッスンをしてもらう。」

千早「だ、ダンスって!?話が違うじゃないですか!わたしは……!」

黒井「早まるんじゃない、まったく。少しは優雅に振舞えんのか。」

千早「しかし……。」

黒井「お前はステージやライブで、何の動きもせずに歌うのか?棒立ちで歌う人間を見て楽しいのか?」

千早「それは……。ですが歌がちゃんとしたものであれば。」

黒井「いいか、音楽とは、歌とは、そんな単純なものではない。ただ感情をこめて正しい音程で歌えばいいなどというのは大間違いだ。」

黒井「歌の中に描かれているストーリー、歌い手自身が持つストーリー、それらを重ねて観客に伝えたい『想い』。」

黒井「それを、観客はステージを通して、歌い手を通して「観る」のだ。」

黒井「ステージ上に無駄な事など一つもない。たとえどんな小さな動きであっても、観客はそれを見逃さない。」

黒井「そういった基本的な事を学ぶためのダンスレッスンだ。今のお前に足りていないものでもある。」

千早「……。」

黒井「どうしても私の指示に従いたくないようならば、この事務所を去ってもらって結構だ。」

千早「そんな言い方……。いえ、レッスンを、受けます。」

黒井「ふん、わかれば良いのだ。」

黒井「では、説明はここまでだ。私も忙しいのでな、後は他の者に任せるとしよう。」

黒井「係りの者が来るまで、そのセレブな!ソファーにでも座って待っていたまえ。ではな、アデュー!」

千早「ありがとうございます。お疲れ様です。」

千早「……。」

千早(何も、言うことができなかった。私はただ歌えればいいと思っていてた。甘い考えだったのかもしれない。……そうね、)

千早(少しは、信用していいかしら……。)


 ――――――

  タッ タッ タン キュキュッ タン

千早「はっ、はっ、ふっ。はぁ、はぁ。」

講師「はい、OK。いいわよ千早ちゃん。背筋がぴんと張って、とても良かったわ。」

千早「っはぁ、はい。ありがとうございます。」

  ガチャ

黒井「ウィ。調子はどうだ、千早。」

千早「黒井社長。お疲れ様です。」

講師「お疲れ様です。千早ちゃん、とてもいい調子ですよ。まだレッスン期間は短いのに、重心がぶれずに動けています。」

千早「歌のために、筋力トレーニングは毎日行っていたので。そのおかげかと。」

黒井「そうか。そうだろうと思って、今日は仕事を一つ持ってきた。」

千早「本当ですか!?」

黒井「ああ。といってもオーディションに合格すればの話だがな。」

黒井「新人アイドルを発掘する番組、「THE DEBUT」だ。ちょうど一週間後に行われる。」

千早「オーディション……。」

黒井「そしてこれが、お前のデビューシングル、『青い鳥』だ。」

黒井「あとの一週間、ダンスレッスンと平行でボーカルレッスンを行う。完璧に仕上げろ。」

千早「私の曲……。これが……。」

黒井「いいか。最初のオーディションだからといって、負けは許されない。死ぬ気で……」

千早「あの!早速曲を聴きたいのですが。再生機器はどこにありますか!?」

千早「あ、す、すみません!私うれしくて、つい。」

黒井「まあいいさ。おい、ボーカルレッスン室に案内してやってくれ。」

講師「はい。それじゃあ、着替えて、行きましょうか。」

千早「はい!」


 ――――――

  「青い鳥 もし幸せ 近くにあっても」

  「あの空へ 私は飛ぶ 未来を信じて」

  「あなたを 忘れない でもきのうにはかえれない」

千早「……。ふう、どうでしたでしょうか。」

講師2「すばらしいわ!千早さん。まだデビュー前とは思えない仕上がりよ。」

千早「ふふ、ありがとうございます。」

講師2「それにしても、一週間で新しい曲を完璧に仕上げろなんて、社長も無理を言うと思ったけれど。それをやってのける千早さんもすごいわよ。」

千早「そんな、私なんて……。いえ、やっぱり、歌に関しては誰にも負けるつもりはないので。」

講師2「ふふふ、頼もしいわね。よし、もう調整はおしまいよ。明日も同じ調子で、千早さんならきっと勝てるわ。」

千早「はい!お疲れ様です。」

講師2「お疲れ様。明日に向けてゆっくり休んでね。」


 ――――――

黒井「では、いくぞ。私は先方に挨拶をしてくる、千早は控え室に行っていたまえ。」

千早「わかりました。それでは。」


  わいわいがやがや
  ガチャ

千早(結構な人数がいるのね。順番によっては、結構待つことになるかも。)

??「あーもうプロデューサーさん挨拶に行っちゃうし、一人で平気ですとは言ったけど、やっぱり心細いなぁ。」

千早(プロデューサー……、うちは黒井社長がプロデューサーってことなのかしら。)

??「あ、あの!もしよろしければ、お話しませんか!」

千早「えっ?」

??「あ、えと、わたし765プロの、天海春香っていいます!」

千早「はあ……。」

春香「ご、ごめんね。急に話しかけちゃって。他の人はみんなプロデューサーとかマネージャーの人と一緒にいるから話しかけづらくって。」

千早「そう……。(よくしゃべる子ね……。)」

春香「あなたは、一人で来たの?」

千早「いえ、事務所の社長と一緒に来ました。」

春香「しゃ、社長!?す、すごいんだね。」

千早「そうかしら?(実物を見ると凄みを感じないのだけれど、確かに、考えてみればすごい事ね。)」

春香「あなたは……、えーと、もしよっかったら名前を教えてくれないかな。」

千早「あぁ。私は、961プロの如月千早です。」

春香「千早ちゃんかぁ、いい名前だね。あれ961プロってどっかで聞いたことあるような。」

千早「そうなんですか?わたしは業界には疎いのでそういったことはわからないですが。」

春香「うーん。気のせいだったかな。まいっか。ところで千早ちゃんってすごく落ち着いてるって言うか、大人びて見えるんだけど、何歳なのかな?」

千早「17歳です。」

春香「ほんと!?同い年かぁ、よかった。」

千早「よかった?」

春香「すごくなれなれしく話しかけちゃったし、勝手にタメ口使っちゃってるし、年上だったらどうしようかと……。」

千早「別に気にしませんけど。」

春香「えへへ、ありがと。ねぇねぇせっかくこうして出会えたんだし、友達に、なれないかな?」

春香「ほら、同い年だし、同じアイドルを目指す仲間がほしいって言うか……。」

千早「友達……。でも、あなたとわたしは、今日ここで戦うライバル同士なんじゃないですか?」

千早「あまり仲良くし過ぎるというのも、どうかと思いますが。」

春香「そ、そうかな?でも、目標が同じ人が近くにいれば頑張れるっていうか……。」

千早「私が合格すれば、あなたは落ちることになるんですよ?」

春香「それは、そうなんだけど……。」

黒井「待たせたな、千早。」

千早「黒井社長。いえ、お疲れ様です。」

黒井「そちらは?」

千早「ええと……。」

春香「わ、私765プロの天海春香といいます。えと、少し暇ができたので、千早ちゃんとお話を……。」

黒井「765プロだと……!?」

春香「えっ?は、はい。」

黒井「……千早。ここにいるのは全員、倒すべき敵だ。親しくするのはやめたまえ。」

春香「あ……、その、ごめんなさい。」

千早「いや、私は別に……。」

黒井「行くぞ、千早。」

千早「は、はい!」



千早「黒井社長、社長が仰ることには同意しますが、なにも敵だなんて言い方をされなくても……。」

黒井「ふん、かまわん。とくにあの三流事務所のアイドルにはな。」

千早「事務所……?765……プロ、のことですか?社長は何か関わりが?」

黒井「お前が知る必要はない。だが今後、765プロの人間とは一切関わるな。」

千早「なぜですか?」

黒井「あそこは……、プロとしての自覚が足りない府抜けた連中の集まりだ。そんなぬるい空気に浸かってもらっては困る。」

千早「そうですか……。(そういえば765プロってどこかで聞いたような……。あ、そういえば私をスカウトしてきたもう一人の社長が……。)」

千早「社長は高木という人について……、」

黒井「その名を口にするな!」

千早「ひっ!」

黒井「いいか、敵である事務所のことなど気にするな。今は、オーディションに合格することだけを考えればいい。」

千早「は、はい。わかりました。」

黒井「うむ、悪いが少し席をはずす、一人で大丈夫だな?」

千早「大丈夫です。」

黒井「ではな。」

千早(明らかに社長の様子がおかしかった……。でも、社長に聞いたところで、答えは返ってこないでしょうね。)

千早(とにかく今はオーディションに集中しましょう。)


審査員「えー、みなさん。これから、新人アイドル発掘番組「THE DEBUT」のオーディションを開始したいと思います。」

審査員「それでは番号をお呼びしますので、呼ばれた方は私についてきてください。」

千早(いよいよね。私は、18番……。ちょうど4分の1くらいかしら……。)

審査員「では、1番の方、お願いします。」

  「はい!」


 ――――――


審査員「では次、18番の方、お願いします。」

千早「はい!」



審査員「はい、ではよろしくお願いします。」

千早「よろしくお願いします。」

審査員「まず、自己紹介をお願いします。」

千早「はい。如月千早、17歳。特技、好きなこと共に歌うことです。」

審査員「ほー、歌が好きなんだね。じゃあ、君にとってアイドルってどんなものなのかな?」

千早「……正直、私がアイドルがどういうものなのかわかりません。私には歌うことしかできませんから。」

審査員「そうなの?でもこのオーディションはアイドルのオーディションだけどいいの?」

千早「はい。ある人が教えてくれました。アイドルであろうと歌手であろうと、自分の力で道を拓けばいいと。」

千早「私は、私の歌で、自らの居場所を掴み取る自信があります。」

千早「それで、私の歌を聴いてくれた、私を観てくれた人たちが、笑顔になってくれるのなら、私はうれしい。」

審査員「ほう……。」

審査員「なるほどなるほど。うん、いいよ。それじゃあ、君の自信のステージを見せてくれるかな?」

千早「はい!お願いします。」


審査員「どうでした?今の子。」

審査員「新人にしちゃ生意気だが、それに見合う度胸を持っているな。」

審査員「それにあのステージ、デビュー前とは思えん、歌だけなんて言っていたが、ほかのレベルもかなり高いぞ。」

審査員「ですね。少し表情が硬かったですが。群を抜いているといった印象を受けましたよ。」

審査員「おそらく、彼女で決まりだろうな。よし、じゃあさっさと残り終わらせちまおう。」


黒井「ふ……。」


 ―――――

審査員「皆さん、お疲れ様でした。それでは結果を発表します。」

千早「……。(受かる確証なんてないけれど、不安を感じないのはなぜかしら。)」

黒井「……。」

審査員「合格者は、18番!961プロ、如月千早!あ、他の人は帰っていいですよ。」

千早「っ!ほ、本当に、私が……。」

黒井「ああ、その通りだ。だがこの程度、受かって当たり前だ、自惚れるなよ。」

千早「もう、ホントに社長はいつも……。でも、ありがとうございます。」

黒井「ふん、さっさと打ち合わせに行くぞ。」

千早「はい!」

  不安を感じなかったのは、私自身の歌への自信もあったけど、この人と一緒なら大丈夫という安心があったのかも。


 ――――――

インタビュアー「はい、それでは来週発売のシングル、「青い鳥」について聞かせていただけますか。」

千早「「青い鳥」はそうですね。バラードで、少し暗く、悲しい曲なんですが、」

千早「その中でも未来への希望を見つけて進んでいくということを歌った曲です。」

千早「私にとっては、本当に最初の自分の歌なので、とても大切な歌なんです。」

千早「何かに躓いたとき、苦しいとき、……もちろんそうじゃない人も、」

千早「この曲を聴いて、少しでも多くの人が笑顔になってくれれば、と思います。」

インタビュアー「はい、ありがとうございます。17歳とは思えない大人びたクールなアイドル如月千早さんでした。」

インタビュアー「今日はどうもありがとうございました。」

千早「こちらこそ、ありがとうございました。」



マネ「お疲れ様千早ちゃん、今日はこれでお仕事は終わりよ。事務所に戻る?」

千早「いえ、このまま帰ろうと思います。」

マネ「そう、わかったわ。家まで送っていく?」

千早「ここからなら近いので大丈夫です。ありがとうございます。」

マネ「うん。じゃあまた明日ね。お疲れ様。」

千早「お疲れ様です。」

  あれから、少しずづだけれど、仕事が入ってくるようになった。
  それと私にもマネージャーが付いて、黒井社長と行動することもだいぶ減った。
  まあ、いちアイドルが常に社長と行動するのもおかしいものね。
  歌のお仕事も何度かやらせてもらって、思ったとおりの活動ができて、ふふ、少し怖いくらい。

千早(こんな活動ができるのも、社長のおかげね。なんだかんだいって、あの人の方針には間違いがない。)

千早(あの人についていけばきっとトップになれる。そんな気さえする。)

千早(でも、だから、あのときの社長の変わりようがとても、心の中に残っているのよね。)

千早(黒井社長と、えと、高木……社長。あの二人に何か関係があるのは間違いないのだろうけど。)

千早(黒井社長は教えてくれない。だから気にしてもしょうがないのに……。)

千早(765プロ……、そういえばあの子。あの子だったら何か知ってるかもしれない。)

千早(ってそう都合よく会えるわけがないし、だからといって事務所に乗り込むのも……。)

春香「あっ。」

千早「えっ?」

春香「あーーー!!千早ちゃん!!わーーー!すごい偶然!こんな所で会えるなんて!あっ、私覚えてない?天海春香だよ!」

千早「あ、いや、あの。ちょ、ちょっと、声が大きい……。」

春香「はっ!そ、そうだよね。千早ちゃんもう有名人だもんね。っご、ごめんね。」

千早「有名人だなんてそんな……。」

春香「そうそう、見たよ!「THE DEBUT」。千早ちゃんって、すっっっごく歌上手なんだね!」

千早「そう、見てくれたんですか。ありがとうございます。」

春香「うん!それにすっごく綺麗だったし!うぅ、私もあんなふうにステージで歌ってみたいなぁ。」

千早「ええと……。」

春香「って、こんなこと千早ちゃんに言ってもしょうがないよね。自分が頑張らないと!」

千早「ふふっ。」

春香「あっ!千早ちゃん笑った!」

千早「えっ?」

春香「前にお話したとき、千早ちゃんずっと無表情だったから、やっぱり迷惑だったかなあと思ってね。」

春香「それに、あの、社長さんにもああ言われちゃったし。」

千早「迷惑ということはないですよ。あの時はオーディションで緊張してましたし、ライバル同士だったので、少し気が張っていただけです。」

春香「ホント?よっかた~。あ、ねね、もし時間あったら、またお話しない?うーんどこかその辺の公園とかで。」

千早(社長には関わるなと言われたけれど。聞くなら今しかないわね。)

千早「そうですね、少しならいいですよ。私もあなたに聞きたいことがあったんです。」

春香「そうなの?いいよいいよ、春香さんが何でも答えてあげます。なんて、えへへ。」



 公園

春香「この辺でいっか。」

千早「ええ。」

春香「それじゃ、改めて。ねね、千早ちゃん。この間の番組以外に何かお仕事やった?」

千早「ええ。歌のステージのお仕事を何本かと、あとさっき、今度発売するシングルのインタンビューを受けて来ました。」

春香「あそっか、来週だもんね発売するの。私絶対買うからね!」

千早「ふふ、ありがとうございます。あなたの方はその後どうなのかしら?」

春香「うぅ、それが何度かオーディション受けたんだけど、全滅で……。」

千早「それは残念ですね。」

春香「そうなの残念なの~。千早ちゃん慰めて~。」

千早「ええっ……。」

春香「あははっ、冗談だよ、千早ちゃん。」

千早「もう、あまりからかわないでください。」

春香「ふふ、ごめんね。それで、千早ちゃんが聞きたいことってなんだったの?」

千早「ええ、……天海さんこの間、961プロの名前に聞き覚えがあるって言っていたじゃないですか。」

春香「うん。」

千早「実はうちの社長と765プロの社長に何か関係が……、そう、因縁みたいなものがあるんじゃないかって思う事があったんです。」

春香「ほうほう。」

千早「それについて、何か天海さんは知らないですか?」

春香「ええと……、私も事務所に帰ってから、高木社長が961プロの名前を出していたことを思い出したんだ。」

春香「でも、それだけで、詳しい事は何も知らないの……。」

千早「そう……、なの。」

春香「ご、ごめんね。何でも答えるって言ったのに、私役立たずで……。」

千早「いえ!いいんです。人と人との関係を第三者から聞き出すというのがそもそもよろしくない事ですし。」

千早「天海さんも知らないということは、きっと二人も知られたくないのでしょう。」

春香「そう、なのかなぁ」

千早「答えてくれてありがとう。天海さん。私が聞きたかったのは、それだけです。」

春香「そっか。」

千早「はい。」

春香「……。」

春香「あのね、この間言った事、やっぱり駄目かな?」

千早「この間って、ええと……、」

春香「友達になるって……。」

千早「ああ……。」

春香「私、事務所でも一人で、やっぱりさみしいの。オーディションに落ちたときとか、一人だと辛くて。」

千早「……。」

春香「千早ちゃんは歌も上手で、そんなの必要ないかもしれないけど、私の勝手なんだけど。」

春香「もし私のことを嫌いじゃないのなら、もし事務所の方針なんか関係ないって思ってくれるのなら……。」

春香「私と……。友達になってくれませんか?」

千早「……。」

春香「……。」

千早「わ……、」

春香「……。」

千早「私なんかで、いいんですか?」

春香「っ!もちろんだよ!千早ちゃんがいいの!」

千早「その、えと、じゃあ、よ、よろしくお願いします。」

春香「っ!うん!よろしく千早ちゃん!」

千早「ちょ、ちょっと天海さん!?く、苦しいですよ……。」

春香「えへへ、ごめんね千早ちゃん、私うれしくって。あ、そうだ!」

千早「どうしたんですか?」

春香「私たち、友達になったんだよね?」

千早「そ、そうですね……。」

春香「だったら、「はるか」って呼んでよ!」

千早「ええっ、でもいきなりそんな……。」

千早「ええっ、でもいきなりそんな……。」

春香「それに、敬語も禁止!」

千早「で、でも……。」

春香「ちーはやちゃん!」

千早「あ、は、はる、か?」

春香「はーい!春香ちゃんですよ!」

千早「ふふっ。」

春香「あははっ。」



春香「あそーだ、千早ちゃん。千早ちゃんって携帯持ってる?」

千早「ええ、持っているわ。」

春香「じゃあ、アドレス交換しよう!」

千早「交換?ええと、とりあえず、私の番号を見せればいいのかしら?」

春香「いやいや、そんなことしなくても赤外線で、あ、ちょっと借りるね。ほいほいほいっと。これで完了!」

千早「え?あ、本当だわ、もう登録されてる。そっちにも私の番号が?」

春香「うん。バッチリだよ!千早ちゃんってもしかして機械オンチ?」

千早「ええ……。基本的な使いかた以外はからっきしだわ。」

春香「あはは、そうなんだ。せっかく登録したんだし、何かわからないことあったら、いつでも聞いてね。」

千早「ふふ、ありがとう、春香。」

春香「それで、私には、歌を上手に歌う方法を教えてください!」

千早「わ、わたしが?春香の事務所には講師の方はいないの?」

春香「講師って言うか、社長と、プロデューサーと、事務の人しかいないよ?」

千早「えっ?それだけ?アイドルは何人いるの?」

春香「私だけ。」

千早「ということは、四人だけ?」

春香「うん、だからレッスンも、プロデューサーに見てもらってるの。」

春香「もちろんプロデューサーのレッスンも悪くないんだけど、千早ちゃんに教えてもらえればもっと上手になれるかなって。」

千早「そ、それは大変ね。私なんかに教えられることがあるかわからないけど、そういうことなら、いつでも聞いてちょうだい。」

春香「ありがとう~千早ちゃん。あ、もうこんな時間。」

千早「だいぶ話し込んでしまったわね。」

春香「でも、とーっても楽しかったよ。また今度こうして遊ぼう?」

千早「ええ、私も楽しかったわ。春香は、帰りは電車?」

春香「うん。千早ちゃんも?」

千早「そうよ。駅まで一緒に行きましょうか。」

春香「よーしれっつごー!」


 ――――――

千早「今 私は 風になる 夢の果てまで」

千早「ヒュルラリラ もっと強くなれ」

千早「ヒュルラリラ 目指すアルカディア」

千早「……、ふぅ。」

  ガチャ

黒井「ウィ、新曲の調子はどうだ。」

千早「お疲れ様です。とても力強くて、歌い甲斐のある曲ですね。」

黒井「そうか。今回は、テレビアニメーションのOPになるからな。青い鳥からイメージも変わって、注目されるだろう。」

千早「ロボットアニメでしたか。私はアニメーションに詳しくないので良くはわからないのですが。」

黒井「いや、知らんでもいいだろう。」

千早「え?でも……、」

黒井「いいのだ。」

千早「はあ……。」

黒井「話はもう一つある。来月行われるフェス「SUMMER LIVE iDOL」に出演が決まった。」

千早「……!フェスとは、ライブとは違うのですか?」

黒井「ああ、基本的にライブは一つのグループや事務所単位で行うものだが、」

黒井「フェスは複数のグループやアイドルが同じステージに立ち、パフォーマンスするというものだ。」

千早「なるほど、ほかのアイドルグループと競い合うと。」

黒井「そうだ、もちろん勝ってもらうがな。」

千早「はい、出るからには負けません。」

黒井「それでいい。ステージは2つあり、同時にパフォーマンスを開始、終われば次のアイドルに交代という流れだ。」

黒井「まだ全ての出場枠は決まっていないので、相手が誰になるかはわかっていない。」

千早「わかりました。」

黒井「それと、フェスの一週間前に、「arcadia」の発売記念ミニライブを行う。」

黒井「フェスもライブも屋外ステージだ、それで感覚を掴め。」

千早「はい。」

黒井「話は以上だ。質問はあるか。」

千早「ありません。」

黒井「ではな。アデュー!」



千早「ということで、『SUMMER LIVE iDOL』に出演が決まったわ。」

春香「すっごいよ!千早ちゃん。おめでとう!」

千早「ありがとう、春香。」

春香「ああ、どんどん千早ちゃんが遠くに行っちゃう感じがするなぁ。」

千早「そんなことないわ、春香だってもうデビューしてるじゃない。」

春香「そうだけど、私はまだそんな大きなステージで歌ったことないし。」

千早「ステージに大きさなんて関係ないわ。私たちが歌って、お客さんがそれを観てくれる。それでいいじゃない。」

春香「大人だなぁ、千早ちゃんは。私千早ちゃんのそういうところ好きだよ。」

千早「す、好きって。もう、からかわないでちょうだい!」

春香「からかってなんかないよ。本心です!」

千早「もう、……ありがとう。」

春香「えへへ。」

千早「まあでも、まだあきらめないでもいいんじゃない?」

春香「へ?」

千早「まだ出場枠は全部埋まっていないらしいし、もしかしたら春香も出られるかも。」

春香「えーー!私がかぁ。もちろん出たい!けど……。あ、でもプロデューサーさん結構大きな仕事とってくるからなぁ。あるいは……。」

千早「ステージ上で戦えるかもしれないわね。」

春香「千早ちゃんと戦ったら私惨敗だよ……。」

千早「あら、そんなことないわよ。だって私春香のステージ、好きよ。」

春香「す、好きって。そ、そんな……えへへ。」

千早「さっきのお返しよ。」

春香「え、も、もう!千早ちゃんったら!」

千早「ふふっ。」


 ――――――

 プルルルルルルル

千早「もしもしはるk」

春香「千早ちゃーーーーーん!!!!」

千早「は、はるか?ちょっと声がおお」

春香「本当だったよ!!」

千早「え?本当って何が?」

春香「千早ちゃんの言ったこと!私も『SUMMER LIVE iDOL』に出演が決まったよ!」

千早「そうなの!?おめでとう!春香。」

春香「うん!ありがとう!えへへ、千早ちゃんと同じステージに立てると思うと、うれしいなぁ。」

千早「そうね。私も、とても楽しみだわ。」

  『お、はるる~ん。んっふっふ~、なーにやってんの!』

  『白状しないと、イタズラしちゃうYO!』

春香「え?ああ、亜美、真美。今電話中だから。」

亜美『そうなの?ごめんねはるるん。』

真美『むむ、ここは一時撤退しますか。』

春香「あ、ごめんね千早ちゃん急に。」

千早「かまわないわ、お友達と一緒なの?」

春香「うん。友達って言うか、そうか千早ちゃんに言ってなかったっけ。」

春香「同じ事務所のアイドルだよ。あれから社長がどんどんスカウトしてきて。今はもう12人もいるんだよ。」

千早「そうだったの、にぎやかそうでいいわね。なら私がいなくてもさびしくないかしら?」

春香「ええ!いやだよ、千早ちゃんは私の、一番の友達なんだから!」

千早「ふふ、冗談よ。でもありがとう。」

春香「もう、千早ちゃん……。あ、ごめん千早ちゃん、これから打ち合わせ始めるらしいから、また今度ね。」

千早「ええ。また。」

千早(春香と一緒にステージに立てるのね、楽しみだわ。)

千早(……もうステージの組み合わせも決まっているかしら。)


  こんこん

千早「失礼します。」

黒井「ウィ。何の用だ?」

千早「はい。今度のフェスの組み合わせがどうなったか知りたくて……。教えていただけませんか。」

黒井「いいだろう。千早の出番は、第一ステージの三番手だ。そして、第二ステージの相手は……。」

黒井「765プロの天海春香だ。」

千早「ほ、本当ですか!?」

黒井「……なにやらうれしそうだな。」

千早「えっ、あ、いや、そ、そんなことはありませんよ。相手が誰であろうと、私は勝ちます。」

黒井「無論だ。特に765プロに負けるなどということはあってはならん。絶対にだ。」

千早「……。」

黒井「用はそれだけか?」

千早「は、はい。ありがとうございました。失礼します。」

黒井「ああ。」



春香「ホントに同じステージになっちゃったね。」

千早「ええ、こんな偶然ってあるのかしら。」

春香「私の聞いた話だと、偶然じゃないらしいよ?」

千早「どういうこと?」

春香「社長が言うには、誰かか765プロの出演順を、指定するように要請したらしいんだよ。」

千早(まさか……社長が?)

春香「うちみたいな小さい事務所の順番なんて気にする人もいるんだね。」

千早「要請した人は誰か分かっているの?」

春香「社長は知ってるみたいなんだけどね。」

千早「……。」

千早「春香、あの……。」

春香「うん?」

千早「いえ……。やっぱりなんでもないわ。」

春香「そう?」

千早「ええ。」

千早(気にはなるけど、聞くなら、やっぱり直接じゃないと……。)


――――――

黒井「もうそろそろ千早の出番だ。準備はできているな。」

千早「はい。前のミニライブで、屋外ステージの特徴は掴んでいるので、遺憾なく実力を発揮できるでしょう。」

黒井「ウィ。ならば、祝杯でも用意しておこうか。」

千早「ふふっ。そうですね、お願いします。」

マネ「後3分で前のステージが終わるわ、いい?千早ちゃん。」

千早「はい。問題ありません。」

マネ「うん。じゃあ頑張ってね。」

千早「はい。」



  わああああああああああ!!!

  「みんな!ありがとー!!ばいばーい!」

司会「新進気鋭の15歳アイドル、うーんすばらしい歌声でした。」

司会「さてお次は、その歌唱力はもはや歌手並み、クールな歌姫、961プロの如月千早ちゃんだァーー!」

  うおおおおおおおおおお!!!

千早(とても広い……!それにお客さんもこんなに……。向こうのステージに春香がいるのね。悪いけど、負けられない!)

  「風は 天を 駆けてく」

  「光は 地を照らしてく」

  「人は 夢を 抱く」

  「そう名付けた 物語」

  「uh arcadia」

  わあああああああああ!!!


 ―――――

黒井「ウィ。お疲れ様、千早。」

千早「お疲れ様です。」

黒井「見事なステージだった。だが……、」

千早「勝って当たり前、ですか?」

黒井「ふん、わかっているならいい、この調子で励め。私は一足先に事務所へ戻る。」

黒井「後はマネージャーに任せた。ではな、アデュー!」

マネ「お疲れ様、千早ちゃん。私、ちょっとスタッフの人とお話があるから、少し休んでいて。」

千早「はい、わかりました。」

千早(社長がいないなら、春香に会いに行ってみようかしら。)



春香「もどりましたー。」

高木「お疲れ様、天海君。とても、すばらしいステージだったよ。」

春香「えへへ、ありがとうございます。お客さんも盛り上がってくれてすっごく楽しかったです!」

  「お疲れ様、春香ちゃん。」

  「春香、お疲れ!」

春香「雪歩!真!来てくれたんだ!」

真「もっちろんだよ、アイドルの先輩のライブを見て勉強しないとね!」

春香「先輩って、そんなんじゃないでしょ、もー。」

雪歩「でもでも、春香ちゃんすっごくかわいかったよ!」

真「そうそう!いやーボクも早くあんなフリフリした衣装着てステージ出たいなあ!」

雪歩「それは駄目だよ真ちゃん!真ちゃんはもっとかっこいい衣装のほうが似合うから!」

真「ええー……。」

春香「ふふっ。」

真「春香も笑わないでよ!」

春香「あはは、ごめんごめん。」

春香「でも、雪歩も真も、きっとすぐにデビューできるよ!ね、社長!」

高木「もちろんだとも。なぁにプロデューサーが今に仕事を持ってきてくれるさ。」

真「へへっ、ありがとうございます!……そういえば、向かいのステージの、たしか如月千早さんだっけ?すごかったよね!」

雪歩「うん!なんていうか、かわいいって言うより、きれいって感じで。憧れるなぁ。」

春香「だよねだよね!千早ちゃんホントに素敵で!ふふっ、ステージじゃ全然敵わなかったなぁ……。」

真「たしか、春香は如月さんと友達なんだよね。」

春香「うん!二人とも最初のオーディションで一緒になって、私が一方的に話しかけてね、まあその後なんやかんやで友達になりました!」

雪歩「すごいなぁ春香ちゃん。私も是非会ってみたいな。」

春香「そうだね!今度はみんなで千早ちゃんと一緒に……。」

千早「すみませーん、ここは765プロの控え室で合っていますか?」

雪歩「!」

真「あーーー!」

春香「千早ちゃーーーん!来てくれたの!?」

千早「ええ、せっかく同じステージに上がったんだから、挨拶しようと思って。」

真「ほ、本物だ……。」

雪歩「はわわわ……。」

千早「あら、そちらの二人は?」

春香「えへへ、765プロの仲間の、雪歩と、真だよ!」

真「ボク、菊地真って言います!如月さんのステージとっても素敵でした!」

雪歩「わわわわわたし、萩原雪歩ですぅ!まだデビューしてないけど、アイドル目指してますぅ!」

千早「はじめまして、私は961プロの如月千早です。」

春香「ちょーど千早ちゃんの話をしてたところなんだよねー。」

真「うん!いやーまさか会えるとは思ってませんでした。」

千早「そうなの?ふふっ。」

春香「あ、それで、こちらが765プロの社長、高木順二朗社長です。」

高木「やあ、まさか君が961プロに所属していたとはね、テレビで見たときは驚いたよ。」

千早「その節はどうも。」

春香「あれ?千早ちゃん、社長のこと知ってるの?」

千早「私が黒井社長にスカウトされて961プロに入る前、高木社長にもスカウトされていたのよ。」

春香「えっ……?えーーー!?」

真「えーーー!?」

雪歩「ぅえーーー!?」

春香「ほ、ホントですか!?社長!」

高木「うむ。だがまあ、きっぱり断られてしまったがね。」

春香「じゃ、じゃあ、もしかしたら千早ちゃんも765プロで活動してたかもしれないってことですか?」

高木「う、うむ……。まあ、そういう可能性もあったかも知れんが。」

春香「何でちゃんとスカウトしないんですかーーー!千早ちゃんと一緒に活動できたかもしれないのに!」

高木「ええ……いや、なんと言うか……こういうことはあまり無理に押し付けるのも良くないと思ってね……。」

春香「千早ちゃんに謝って下さい!」

高木「え?あ、ああ。どうも、申し訳ない。」

千早「ふ、ふふっ、春香……、私に謝ってどうするのよ……、ふふっ。」

春香「だってー……、千早ちゃんと一緒に活動したかったなーって。」

千早「いいじゃない別に……。事務所は違っても、私は春香のこと、親友だと思ってるから。」

雪歩「わぁ……。」

春香「し、親友?親友……、えへへ……。」

春香「千早ちゃんに免じて許してあげます!社長!」

高木「あ、ありがとう……天海君。」

真「いいなぁいいなぁ二人とも。なんだかすっごく仲良しーって感じで!」

雪歩「はいぃ。春香ちゃんがうらやましいですぅ。」

真「ねぇねぇ如月さん!せっかく会えたんだし、僕とも友達になってよ!」

雪歩「わ、わたしも、おねがいしますぅぅぅっぅー!」

千早「菊地さん……、萩原さん……。」

千早「はい。私なんかで、よろしければ、是非。」

真「へへっ、やーりぃ!じゃあじゃあ、ボクのことは真って呼んでよ!」

千早「ええ、真。よろしく。」

真「よろしく、千早!」

雪歩「(私も名前……私も名前……)わ、わわわ……。」

千早「どうしたの?萩原さん。」

雪歩「わ…………。やっぱり無理ですぅー!あああ穴歩って埋まってますぅぅぅぅ!」

真「わーーー!ちょっと駄目だってば雪歩!待ってよー!」

春香「行っちゃったね……。」

高木「うんうん。仲良きことは美しき哉。」

千早「ふふ。にぎやかですね。」

高木「ところで如月君。」

千早「はい。」

高木「君はアイドルになるつもりはないと言っていたと思うが、961プロもアイドル事務所だろう?そこでデビューしてよかったのかね。」

千早「私は別に、アイドルをやっているという認識はありません。私が歌を歌って、お客さんが喜んでくれる。それだけです。」

千早「それをアイドルと言うのなら、それでも構いませんが。」

高木「なるほどね……。やはり、黒井はなかなか、やる男だな。」

千早「私も一つ伺ってもよろしいですか?」

高木「ああ、かまわないよ。」

千早「単刀直入に聞きます。……黒井社長が高木社長に対抗心を抱いているのはなぜですか?」

高木「……。」

高木「まだ、奴は私のことを許せないでいるらしいな……。」

春香「社長……?」

高木「そうだな……、昔の話になるが……。」

高木「奴と私は、かつて同じ事務所のプロデューサーとして働いていたのだよ。」

春香「!」

千早「!」

高木「当時、私たちは、二人で同じアイドルのプロデュースに携わっていた。」

高木「だが、結局そのアイドルは、あまり売れずに引退してしまった。」

高木「ただ、間が悪かったんだ……。この業界はやはり、不安定だからね。」

高木「だが奴は、そんな不確定要素のために、自らが敗北したと認めたくなかったんだろう。」

高木「奴は全てが、自分のプロデューサーとしての未熟さが原因だとした。」

高木「そして奴は力をつける事に躍起になった。」

高木「それであのような大きな会社を建ててしまうんだから、すごい奴だよ。」

高木「奴は自分の手で、力を手にした……。だから、今でもプロデュースの方法を変えない私が、許せないんだろう。」

高木「とまあ、こんなところかな……。ただこれはあくまでも、私の考えでしかないんだがね……。」

千早「そんなことが……。」

春香「全然知りませんでした……。」

高木「だが私は、自分のプロデュースが間違っているとは、思っていない。むしろ誇りを持ってやっているよ。」

春香「社長……。」

千早「はい。私もそう思います。」

高木「そう言ってくれるか。」

千早「春香たちアイドルの顔を見れば、間違いなんてないという事はわかります。」

春香「千早ちゃん……。」

高木「はっはっは!そうだとも!彼女たちは我が社の自慢のアイドルだからね。」

千早「でも……。」

高木「うん?」

千早「私は、黒井社長が間違っているとも思いません。」

高木「!そうか……。うん。そうだな……。」

マネ「あっ!千早ちゃん!もーやっと見つけたわ。黙っていなくならないで頂戴。」

千早「あ……マネージャー……。すみません、ご迷惑をおかけして。」

マネ「はあ。まあ、無事でよかったわ。どうもすみません、お邪魔してしまったようで。」

マネ「千早ちゃん、こっちの話は終わったから、用事が済んだらすぐに戻ってきなさい!」

千早「はい。すみません。ありがとうございます。」

高木「いや、すまないね。私が長話してしまったばっかりに。」

千早「い、いえ!とても貴重なお話でした。話していただいてありがとうございます。」

千早「それでは、そろそろお暇しますね。お疲れ様です、高木社長。春香も、またね。」

春香「うん。またね千早ちゃん。」

高木「ああ、気をつけて。」


春香「なんだかうれしそうですね?社長。」

高木「そうか?はっはっは!天海君のステージがすばらしかったからだねきっと!」

春香「むぅ、何かはぐらかされたような……。まあいいか。私雪歩と真を呼んできますね。」



千早(黒井社長は、きっと、過去の清算をしようとしている。だから過去の方法を省みない高木社長には、負けられない。)

千早(ぬるい空気に浸かってほしくないというのはそういうこと……。それで、765プロとの接触を禁じている……。)

千早(だけど、春香たちと一緒にいることは、きっと私にとってプラスになっている。それに私自身、春香と友達でいたい……。)

千早(いえ、そんなこと関係ないわね……。いつも社長が言っていること。勝てば何の問題もない。)

千早(勝つことさえできれば……。)


 ―――――――

雪歩「はい、春香ちゃん。お茶どうぞ。」

春香「ありがとう、雪歩」

春香「はぁ。やっぱり雪歩のお茶はおいしいねぇ。」

雪歩「ありがとう、春香ちゃん。私にはこれぐらいしか取り柄がないから……。」

春香「そ、そんなことないって。雪歩も最近ファンの人増えてきてるじゃない。」

雪歩「でもでも、男の人のファンがいっぱいなのに、私まだ男の人苦手で……、うぅ私なんかあな」

春香「待って雪歩!早いって!まだ会話始めて30秒もたってないから!」

  ガチャ

  「はいさーい!」

  「おはようございます。」

春香「響ちゃん、貴音さん、おはよう!来て早々だけど、ちょっと手伝ってくれないかな!」

響「また雪歩が穴掘ろうとしてるのか……。」

貴音「ふふふ、私にお任せください。」

貴音「落ち着いてください、雪歩。そのように自分を卑下しなくとも良いのですよ。」

雪歩「で、でも私なんてダメダメで……。」

貴音「私達は皆、まだでびゅうしたての未熟者も同然。誰もが駄目な部分を抱えています。」

貴音「ですから、共にこれから、成長していけば良いのですよ。」

雪歩「そ、そうですね。これからもっと頑張ればいいんですよね……。ありがとうございます。四条さん!」

響「おぉ~~。」

春香「さすがは貴音さん、大人の余裕という奴ですか。」

貴音「ふふっ。いえ、まだまだわたくしも未熟者ですよ。」

春香「未熟……ねぇ。どう思う?響ちゃん。」

響「えっ?どうって、何がだ?」

春香「あぁ、響きちゃんは身長のわりに熟してるほうだもんねぇ……。」

響「うがー!春香は何の話をしてるんだー!」

春香「でも貴音さんは、未熟者ってイメージはないと思いますけど。」

響「あれ?無視?」

貴音「そうですか。それは、真うれしき事。」

貴音「ですが、あいどるとしてはまだかけだしです。理想を追っていたりもするのですよ。」

響「は、はいさーい!自分、我那覇響だぞ!」

春香「ええー、貴音さんの理想のアイドルって誰なんですか。」

響「たかねぇ……。」

貴音「それは……。961ぷろの如月千早です。」

春香「えぇーー!千早ちゃんですか!?」

響「うぅ……。」

雪歩「はい、響ちゃん。お茶どうぞ。」

響「うわ~~ん!ゆきほぉぉぉぉ!」

雪歩「貴音さんも、どうぞ。」

貴音「ありがとうございます、雪歩。それと響、こちらへ。」

響「な、なぁに……?」

貴音「ふふふ、少し悪戯が過ぎたようですね。申し訳ありませんでした。」

響「ふぁっ……。も、もう!またやったら許さないぞ!……えへへ……。」

春香(かわいい。)

雪歩「かわいい。」

春香「それで、貴音さんは、千早ちゃんのどんなところを?」

貴音「一言で言えば、仕事に対する、心構えですね。」

春香「なるほど。」

貴音「彼女は、どんな仕事をするときも、熱心で、真剣で。それが見ていて伝わってきます。」

貴音「あのような姿勢を、見習わなけらばならないと、日頃、思っております。」

響「たしかに、千早のステージはどれを見ても完璧で、すごいと思うぞ。」

雪歩「うん、それに最近、いろんなところで千早ちゃん見るようになったよね。」

 TV千早『この手触り、この艶。最高の髪質へ。プレミアムなシャンプー、”艶姫”。』

春香「あ、このCM!千早ちゃんが出てるやつだ。」

響「自分このCM見て、このシャンプー使ってみたけど、すごく良かったぞ。」

春香「私も、千早ちゃんがオススメしてたから、使ってるんだ。」

雪歩「へぇー、そうなんだ。私も使ってみようかな?」

961プロの天海春香の作者とは違う人だよね?
ところでインタンビューの場所はインタビューでは…

響「貴音は、どんなの使ってるんだ?」

貴音「ふふ、とっぷしーくれっと、です。」

春香「えぇー……。」

  ガチャ

  「おはようなのー。」

雪歩「美希ちゃん。おはよう。」

美希「ねえねえ、何の話してるの?」

春香「艶姫の話だけど。美希も使ってる?」

美希「つや姫?うん。ミキ、今朝もたくさん食べてきたの!」

春香「えっ?」

美希「えっ?」

>>65 投下するのは初めてです。
すいません、ミスです……



美希「ふぅん。貴音も千早さんを目指してるんだね。」

春香「も、ってことは美希もそうなの?」

美希「うん!だって、千早さんステージでとーってもキラキラしてて。真君と同じくらいカッコイイの!」

貴音「ふふふ。美希は、如月千早のことを知ってからというもの、見違えましたね。」

美希「あはっ。プロデューサーが、今よりもっと頑張れば千早さんみたいになれるって言ったの。だから、ミキ、頑張ることにしたんだ。」

響「ミキが真面目にレッスンするようになってから、すごい上達したからな。自分、美希にも千早にも負けてられないぞ!」

春香「私だって、この中では一番早くデビューしたんだし!いつか、千早ちゃんにだって追いついて見せるよ!」

  「ずいぶんと気合入ってるわね。いい心がけだわ。」

美希「あ、おはようなの!律子!」

律子「さん。」

美希「……さん。」

雪歩「おはようございます、律子さん。」

律子「おはよう。それだけの気合があれば、如月さんと戦うことになっても大丈夫そうね。」

春香「戦うって、どういうことですか?」

律子「晩秋に行われるフェスで、また961プロと同じステージに立てることになったのよ。」

響「ホントか!?自分、今までのレッスンの成果を見せてやるぞー!」

貴音「して、律子嬢。そのふぇすには、誰が出場するのでしょうか。」

律子「それはこれから決めようと思ってるわ。向こうは、如月さん一人だし、四人くらいのユニットを当てようかと考えてるんだけど。」

春香「前回は、私一人で完敗だったからなぁ。みんなと一緒なら、いい勝負ができるかも。」

美希「ねえ、律子……さん。」

律子「どうしたの?美希。」

美希「今度のフェス、事務所のみんなでって、出来ないかな。」

律子「みんなって、全員って事?……うーん、でも、そこまでステージは大きくないわよ。」

律子「あまり人数が多いと、派手な動きができなくなると思うわ。」

美希「いいの。今の千早さんには、美希たち個人の実力じゃ、たぶん勝てないと思うの。」

美希「だから、向こうにはない、765プロのチームワークを武器に、戦ったほうがいいって思うな。」

律子「なるほど……。うまく、みんなの動きがかみ合えば、大きなインパクトを残せるわね……。なかなかいいアイデアじゃない、美希。」

美希「あはっ。ミキだってやるときはやるの。」

律子「みんなはどう思う?」

春香「私は、みんなで歌ったほうがきっと楽しいし、賛成です!」

雪歩「うぅ、私なんかが一緒に踊ったら、みんなの足を引っ張っちゃうかもしれません……。」

響「大丈夫だぞ!まだ時間はあるんだし、いっぱい練習すれば、なんくるないさー!」

貴音「そうですね。皆と一緒だからこそ出来ることもあるでしょう。」

律子「そうね。じゃあ、この案で一回プロデューサーとも話してみるわ。」



黒井「ふふふ、わざわざ挑んでくるとはな。力の差がわからん愚か者どもめ。」

  ガチャ

千早「失礼します。黒井社長、何かあったのですか?」

黒井「ああ、少し先の仕事の話だ。」

黒井「11月の下旬に行われるフェスに出演が決まった。」

千早「はい。」

黒井「フェスでの対戦相手だがな。くくく……、765プロに決定した。」

千早「!また……。社長、以前のフェスでは、私の対戦相手が指定されたという話を聞いたのですが。」

黒井「ああ、私が要請したのだ。いつまでものほほんと活動をしている三流事務所に、力の差を見せつけてやろうと思ってな。」

千早「では、今回も?」

黒井「いや、今回はそうではない。向こうからリベンジを申し出てきた。格の違いというものがわからんのだよ、奴らは。」

千早「社長。彼女たちは、アイドルとしての力を、十分に持っていると思いますが。」

黒井「ありえんな。奴らは、群れるしか能のない三流アイドルだよ。」

千早「しかし……、」

黒井「千早。なぜそうまで奴らの肩を持つ?」

千早「い、いえ。そういうわけでは……。」

黒井「分かっているんだろうな。765プロなんぞに負けるなど。絶対に、あってはならんのだぞ……!」

千早「もちろんです!絶対に、私は勝ってみせます!」

黒井「奴らの実力など、どうでもいい事だ。ただ、ねじ伏せればいい。」

千早「はい。」

黒井「では、今後のスケジュールだが、新曲を発表する。フェスの二週前に発売、そしてその曲でフェスに挑む。」

黒井「仕事が忙しいからといって、レッスンを怠るなよ。この一ヶ月、死ぬ気でやれ。」

千早「はい、わかりました。」


――――――

春香「すいませーん、はぁ、はぁ。遅れちゃって……。」

響「遅いぞー、春香。」

春香「えへへ……、ごめんね。」

  「うっうー!おはようございます、春香さん!」

春香「やよい!おはよう。」

やよい「今日もいーっぱい頑張りましょうね!せーの、ハイ!」

春香「ターッチ!」

やよい「ターッチ!イェイ!」

  「朝から元気ねぇ、やよいは。」

やよい「えへへ、だって久しぶりにみんなで一緒に練習できるから、うれしくて。伊織ちゃんもそうだよね!」

伊織「べ、別にそんなこと無いわよ!ふん、あんたたち!私の足引っ張らないでよね!」

真「何をー!伊織こそ、一番先に根を上げたりするんじゃないの。」

伊織「なぁんですってー!!」

雪歩「真ちゃん、伊織ちゃん。けんかはやめようよ!」

真「雪歩は黙ってて!」

伊織「雪歩は黙ってて!」

雪歩「えぇ~~……。」

亜美「あの二人は相変わらずですな~真美隊員。」

真美「んっふっふ~。気合十分ですな~亜美隊員。」

律子「あんたたちも、気合入れないと、途中でリタイアすることになるわよ?」

亜美「うあうあ~。律っちゃん軍曹~、酢パスタはやめようよ~。」

真美「そうそう、もっとお気楽にいこうよ~。」

律子「誰が軍曹よ、誰が!それと、スパルタね。」

律子「まったく……。はいはい、そろそろ練習始めるわよー。」

貴音「律子嬢。まだあずさの姿が見えないようですが。」

律子「そうだった……、も~。」

 ポパピプペ プルルルルル

  『あ、律子さん。実は私、道に迷ってしまって……。』

律子「あずささん、どのあたりで迷ったんですか?」

あずさ『ええと……。駅を降りてからわからなくなってしまって、今商店街にいます。』

律子「商店街って、そっちは反対方向ですよ……。今迎えに行きますから、待っててください。」

あずさ『ありがとうございます……。』

律子「あずささんを迎えに行って来るから、あなたたちは、準備体操でもしていて。」

  ガチャ バタン

響「あずさは相変わらずだぞ……。」

亜美「そうですな~。さて!時間ができたことだし、ひびきんで遊びますか!」

真美「とぅりゃー!くらえひびきん!」

響「わー!何で自分だけなんだよー!」

  ガチャ

あずさ「あら~、みんな、おはよう。」

真「おはようございます……。ってあずささん、商店街にいたんじゃないんですか!?」

あずさ「さっきまでいたんだけど、裏道に入ったら見覚えのある建物が見えて、入ってみたらみんながいたのよ~。」

伊織「時空でも歪んでるのかしら……。」

雪歩「今ちょうど、律子さんがあずささんを探しに出て行っちゃったところです……。」

あずさ「あら、大変。すぐに呼びに行かなくちゃ。」

真「わー!待ってあずささん!行かなくていいから、携帯で呼べばすぐに戻るって!」

 カシャ

春香「ふふふ……。」

美希「何してるの?春香。」

春香「みんなにぎやかで楽しそうだから、写真を撮ってたの。千早ちゃんに送ろうと思って。」

美希「ふ~ん。」


千早(春香から?何かしら……。……ふふっ、相変わらずにぎやかそうね。)

千早(わたしも、もし高木社長のスカウトを受けていたら、あの中にいたのかしら……。なんて、私らしくないわね。)

千早(……彼女たちは、着々と力をつけてきている。いつ追い抜かれたっておかしくないほどに……。)

千早(それに、彼女たちは一人ではない……。今の私で、勝てるのかしら……。)



千早「黒井社長……。」

黒井「なんだ?」

千早「今度のフェス、私は、勝てるでしょうか……?」

黒井「あの三流アイドルどもに負ける事など、無いといっているだろう。」

千早「ですが、私は……、」

黒井「私がなぜ!お前に最高の環境を与えていると思っている!すべては勝つためだ!」

黒井「すべては勝利のために、計算しつくされた道筋なのだ!」

黒井「お前はただ、今までのレッスンの通りに、力を振るえばいい!それだけだ!」

黒井「お前は、そんな簡単なこともできん愚か者なのか……!?」

千早「……私は、……。」

黒井「ふん、もう良い!今日はもう帰れ。明日までにその考えを改めておけ。」

千早「……失礼します。」


 ――――――

千早「ふう……。」

マネ「千早ちゃん、緊張してるの?」

千早「緊張……。ええ、そうかもしれません。」

マネ「ふふふ、珍しいわね。いつもは堂々としているのに。」

千早「今回の相手は、一筋縄では行きそうにないんです。私も本気で行かないと。」

マネ「大丈夫。私は千早ちゃんの実力を知ってる、いつも通り行けば勝てるわよ。」

千早「ありがとう……、ございます。」

  こんこん

マネ「はい?どうぞ。」

  ガチャ

黒井「千早、準備はできているな。」

千早「はい、いつでも大丈夫です。」

黒井「最終確認だ。千早の出番は、第一ステージの四番手だ。万全の体制で挑め。」

千早「はい。わかりました。」

黒井「それと……、」

  こんこん ガチャ

黒井「誰だ?」

美希「ここ、961プロの楽屋で合ってるよね?」

マネ「ええ、そうだけど。」

黒井「お前は……! 765プロの人間が気安く入ってくるんじゃない!今すぐ出て行け!」

美希「そこの人は黙っててなの。」

黒井「なんだと……!」

美希「ミキは、千早さんに話があるの。」

黒井「ふざけるな!出て行かんというなら。力ずくでも……、」

高木「黒井、そう、カリカリしなくとも良いだろう。」

黒井「高木!……ふん、のこのこと現れおって。何の用だ!」

高木「何、古き友人と話をしに来ただけじゃないか。」

黒井「誰が友人だ!これから貴様のアイドルを叩き潰してやるというのだ。」

黒井「そんな態度をとっていられるのも、今のうちだけだ。」

高木「はっはっは。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれんよ。」

黒井「なにぃ!貴様のアイドルごときに私の…………、」

  ガチャ バタン

美希「社長、ありがとうなの。」

美希「ねえ、千早さん。お話してもいいかな。」

千早「ええ、私は、かまわないけど。」

美希「よかったの。そこの人、千早さんと二人で話したいんだけど。」

マネ「え?あ、ああ、わかったわ。外で待ってるから、あまり時間をかけないでね。」

美希「ありがとうなの。」

  ガチャ バタン

千早「それで、話って?」

美希「まず、初めましてなの。ミキは、星井美希なの。」

千早「え、ええ。初めまして。」

美希「ミキね、千早さんのことすっごく尊敬してるの!だから会えてうれしいの!」

千早「そ、そうなの、ありがとう。」

美希「千早さんは、とーってもすごいアイドルだけど、」

千早「?」

美希「でもね、ミキは……、ううん、ミキたちは。」

美希「負けないよ、絶対に。」

千早「っ……!」

美希「それだけ!じゃあね千早さん。」

  ガチャ バタン

  ガチャ

マネ「ずいぶん早かったわね、もういいの?」

千早「はい……、大丈夫です。」

千早(あの子の目、自信に満ち溢れていた。絶対に負けないって、本気の目だった。)

千早(やっぱり、今のままでは……、私は……。)



マネ「後三分で千早ちゃんの番よ。準備はOK?」

千早「……。」

マネ「千早ちゃん?」

千早(私は……私はここで、本気以上の力を出さないと、あの子には勝てない、きっと。)

黒井「千早!」

千早「っ、はい!」

黒井「聞いているのか!」

千早「は、はい、大丈夫です。必ず勝って見せます!」

黒井「いいだろう、完膚なきまでに叩きのめしてやれ。」

マネ「後一分よ、舞台袖に移動をお願い。」

千早「はい。」



  わああああああああああ

司会「それではご登場いただきまショー!蒼き歌姫!如月千早ちゃーん!」

千早(私は勝つ!向こうのステージに届けるつもりで!)

  「目と目が逢う 瞬間好きだと気づいた」

  「あなたは今 どんな気持ちでいるの?」

  「戻れない二人だと 分かっているけど」

  「少しだけこのまま瞳 そらさないで」

千早(もっと、大きく、遠くへ……!)

  「たくさんの人の波 あの人だけは分かる」

千早(もっと、もっと……!)

  「つないだ指の強さ あの頃の愛が 今動き出すの」

  「Ah 揺れる気持ち Ah 奪ってほしい」

千早(っ!少しキーがずれた!このままじゃ……!)

  「目と目が逢う 瞬間好きだと気づいた」

  「あなたは今 どんな気持ちで、」

  ふらっ

千早(しまっ!足が……!)


 ――――――

黒井「千早……、なんだ?先ほどの無様なステージは……。」

千早「申し訳……ありません…。」

黒井「あのような醜態を……、あろう事か、765プロの連中に、ま、負けただと……?」

千早「……。」

黒井「っ、そうだ!ステージの前、楽屋に来ていた小娘!奴に何かされたんだな!ええ!千早!」

千早「ち、違います!彼女たちは正々堂々と勝負しました!私の……力が、足りなかったんです……。」

黒井「ふざけるな!!正々堂々だと!?力が足りなかっただと!?そんなことはあるはずがない!」

黒井「私の……!私の描く道は、常に勝利へと続いているのだ!」

千早「はい……、すべては……、私の責任です……。」

黒井「責任だと……!?……ああ、そうだな。お前には責任をとってもらわなければな……!」

  こつこつこつ

春香「千早ちゃ……、」

黒井「貴様はクビだ!負け犬など961プロには必要ない!」

千早「そ、そんな……!」

春香「!」

黒井「くそっ……!これですべての計画が水泡に帰した……!何ということだ……!」

千早「ま、待ってください社長!」

黒井「黙れ!もう貴様に用など無い!」

  ガチャ!

春香「あっ……。」

黒井「何だ貴様は!ええい、邪魔だ!」

春香「きゃっ!」

マネ「社長!待ってください!今のはあまりに一方的過ぎませんか!?千早ちゃんも……、」

春香「……。」

  こつこつこつ

美希「は、春香?何があったの……?」

春香「そ、それは……。」

千早「……。」

美希「千早さん……、さっき誰かが怒鳴ってたけど、何があったの?」

千早「961プロを……クビに……なったわ。」

美希「クビって……!?なんでなの!?」

千早「私が……負けたからよ……。」

美希「負けたから……?ミキたちが勝っちゃったからってこと?で、でも、それは……、」

春香「美希……?」

美希「だってミキたちは正々堂々勝負をしただけなの!クビになるなんておかしいの!」

美希「そうだよ!あの黒い人!ミキが直接文句を言って……、」

千早「やめて!」

春香「!」

美希「!」

千早「私の……せいなのよ……。」

美希「でも……、」

千早「ごめんなさい、二人とも……。一人に……して……。」

美希「ち、千早さん……。」

春香「美希。今は帰ろう。」

美希「でも、千早さんが……、」

春香「いいから。」

美希「わ、分かったの……。」

春香(千早ちゃん……。)


――――――

美希「なんなのなの!」

亜美「いや~、ずいぶんとご立腹ですな~。」

真美「あんなに怒ってるミキミキ、見た事無いね。」

美希「千早さんがクビになるなんてちゃんちゃらおかしいの!社長もそう思うよね!?」

高木「う、うむ。まあ、今回のことは確かに、黒井の奴はやりすぎだと思うよ……。」

美希「だったら今すぐあの黒い人に文句を言いに行くの!」

高木「とにかく、落ち着きなさい、星井君。」

美希「これが落ち着いていられるかなの!社長だって言いたいことあるでしょ!?」

高木「それはそうだが、これはあくまで、黒井と如月君の問題だ。我々が出張る事ではないよ。」

高木「正式に、解雇されたというわけではないからね。今は様子を見るしか……。」

美希「むぅ~!じゃあ、美希が一人で行ってくるの!」

律子「あなたはこれから仕事でしょうが!」

美希「そんなのキャンセルすればいいって思うな!」

律子「出来る訳無いでしょう!いいから来る!」

美希「や~!」

律子「みぃ~きぃ~!!!」

美希「ひぃい!は、春香!後は頼んだの!」

  ずるずる ガチャ バタン

春香「社長……。私、行ってもいいんでしょうか。」

高木「765プロの社長としての意見は、先ほど述べた通りだが……。」

高木「友を想い、感情の赴くまま行動することもまた、必要なことだと私は思うよ。」

春香「そ、そうですよね!私、行ってきます!お疲れ様です社長!」

高木「ああ、車には気をつけたまえ。」



春香「ここが、961プロ……。」

春香「よし……!」

  ウィーン

春香「あの……!」

受付「961プロダクションへようこそ。本日はどのような御用向きですか?」

春香「黒井社長と話がしたいんです!」

受付「失礼ですが、アポイントは取られていますか?」

春香「い、いや、そういうのは、無いですけど……。」

受付「申し訳ありませんが、アポイントをお取りでない方をお取次ぎする事は出来ません。ご了承ください。」

春香「どうしても、駄目ですか……?」

受付「はい。ご希望の日取りがあれば、黒井に確認を取って、後日お伝えいたしますが。」

春香「でも、それじゃ……、」

マネ(あれは……。)

マネ「こんにちは。天海さん……よね?」

春香「えっ?あ、はい!天海春香ですけど……。」

マネ「ちょっと話したいことがあるんだけど、今いいかしら。」

春香「ええと……、はい。大丈夫です。」

マネ「ここだとちょっとまずいから、外へ行きましょう。」

春香「はい……。」


春香「それで、お話って。」

マネ「ごめんなさいね、急に連れ出して。」

春香「いえ……。」

マネ「私、千早ちゃんのマネージャーでね、」

春香「そうだったんですか!あ、そういえばあの時……。」

マネ「ええ。あの場にいたなら事情は知ってるわね?それであの後、社長と話したんだけど、どうにもならなくてね。」

マネ「昨日の今日で、千早ちゃんから別のアイドルの担当に変えさせられちゃったのよ。」

春香「そんな……。」

マネ「仕事をしないわけにもいかないから。それで、千早ちゃんに連絡する時間がないのよ。」

春香「はい……。」

マネ「だから、もし時間があったら、千早ちゃんの様子を見てきてほしいの。どうかな。」

春香「も、もちろん行きます!」

マネ「ホント!?ありがとう、天海さん。これ千早ちゃんの家の住所ね。」

マネ「話してどうにかなることなのかはわからないけど、このままで終わらせたくなくて。」

春香「はい、私もです……!ありがとうございます。」

マネ「うん。私も、社長を説得できないか、試してみるわ。じゃ、頼んだわね。」

春香「はい。お疲れ様です。」

春香「……。よし!」



春香「ここが、千早ちゃんのお家……。」

  ピーンポーン

春香「……。」

春香「留守……?千早ちゃんどこに行っちゃったんだろう……。」

春香「とにかく、この辺りを探してみよう。」



千早「……。」

千早(私は……、これから……。)

  「こんばんわ、如月千早さん。」

千早「えっ?あなたは……?」

  「初めまして。俺は、765プロのプロデューサーをやっている者です。」

千早「765プロの……、春香たちのプロデューサーですか?」

P「ああ、いつも春香が世話になってるそうで、ありがとうな。」

千早「いえ、そんな……。それで、プロデューサーのあなたがなぜここに?」

P「ここへ来たのはたまたまなんだが、どうにも暗い顔をしたアイドルが一人でいたものでね。」

P「プロデューサーとして、放っておけなかったのさ。」

千早「私は、別に……。」

P「事務所、クビになったんだってな。」

千早「…………はい。」

P「うちの皆も心配してるよ。君は、765プロのアイドルの憧れだからな。」

千早「私は、憧れられるような、立派な人間ではないです。」

P「そんなことは無いさ。たった一人、アイドル界でここまで上り詰めたのは、すごい事だろう。」

千早「私だけの力ではありません。黒井社長をはじめ、たくさんの人たちがいたから成し得たのです。」

千早「それを……。私は、無駄にしてしまった……。」

P「一回負けたことが、それほどの罪だというのか?」

千早「私は……!」

千早「私はあの時、あなた方に勝つことしか、頭に無かった。私を見に来てくれたお客さんの事を考えなかった。」

千早「あげくミスをし、最低のパフォーマンスをしてしまった。」

千早「社長や事務所の皆さんが教えてくれたことを何一つ、ステージで表現できなかったんです。」

千早「こんな私に……、またステージに立つ資格なんて……。」

P「……。」

P「君は……、一人で気負いすぎなんじゃないか?」

千早「え……?」

P「君はまるで、961プロのすべてを、一人で抱えているような言い方をする。」

千早「それは当然のことじゃないんですか……?テレビに出て、ステージで歌えるのは、私だけです。」

千早「私がミスを犯してしまったら、それまでのすべてが無駄になってしまうんです。」

千早「私に、誰よりも大きな責任が……、あるはずです。」

P「それはちがうな。」

P「もし、春香たちがミスをしてしまったら、俺はまず自分のプロデュースを省みるよ。」

P「もちろん、ミスをした本人にも非はあるが、それを責めたりはしない。」

P「ミスをお互いに認め、より高みを目指すのが、アイドルとプロデューサーの関係だと思うがな。」

千早「しかし……!黒井社長に、私は……。」

P「黒井社長は、とにかくプライドが高い人だと高木社長から聞いている。」

P「人にきつくあたることもあるが、仕事に対しての真剣さは誰にも負けないって事もな。」

P「誰よりも、責任を感じているのは、黒井社長かも知れんぞ。」

千早「……。」

(奴は全てが、自分のプロデューサーとしての未熟さが原因だとした。)

(そして奴は力をつける事に躍起になった。)

(それであのような大きな会社を建ててしまうんだから、すごい奴だよ。)

千早「そう、なのかも知れませんね……。」

千早「でも、そうだとしたら、私はなおさら負けるわけにはいかなかった。」

P「ミスは誰にでもある。言ったろ?ミスをお互いに認めることが必要だって。」

P「あとは、君の気持ちを……。ん?」

P「如月さん。君にお客さんが来たようだよ。」

千早「え?」

春香「はぁ、はぁ。千早ちゃんに、ぷ、プロデューサーさん?どうしてここに。」

P「まあ、なりゆきでな。春香は?」

春香「私は、千早ちゃんと話がしたくて。」

P「そうか、ならバトンタッチだ。帰る時は連絡しろ、迎えに来る。」

P「如月さん。次に見るときは、ステージの上にいることを期待するよ。じゃあな。」


千早「ふふ、あなたのプロデューサーって変わった人ね。なんというか、初対面だって言うのに不躾で。」

春香「あはは、プロデューサーさんどんなところにもぐいぐい行っちゃう人だから。」

春香「でも良かった。千早ちゃん少し元気が出たみたいで。」

千早「ええ、彼のおかげで、少しはね。でも、私がした失敗が無くなった訳じゃないから……。」

春香「そっか……。」

千早「……。」

春香「千早ちゃんはさ、どうしてアイドルに、あ、いや、千早ちゃんは歌手を目指してたんだよね。」

春香「どうして、歌手になろうと思ったの?」

千早「……。」

千早「私には弟がいたの。」

千早「弟は……、優は、いつも私の前で、笑って、私の歌を聴いていてくれたわ。」

春香「いた……、ってことは……。」

千早「ええ……、弟は交通事故で亡くなったの。」

春香「……。」

千早「私は、優にずっと笑っていてほしくて。優に届けるために、歌を、歌っているの。」

春香「そう、だったんだ……。」

千早「だから、黒井社長には、とても感謝しているの。」

千早「こうしていろんなステージで、歌を歌うことができて。」

千早「それに、黒井社長は、私の歌を必要としてくれた。それがうれしかった。」

千早「でも、社長にああ言われて、私は……。私の歌を必要としている人を、また、失ってしまったように思えて……。」

千早「どうしたらいいか、わからなくなってしまったの……。」

春香「……千早ちゃんはすごいね。」

千早「え?」

春香「私はさ、もーいたってシンプルで。子供のころに見たステージに憧れて、私もああなりたい!って、アイドルを目指したの。」

春香「でも千早ちゃんは、弟さんのため、黒井社長のため、歌を歌っている。」

春香「それって、とってもすごいことだと思うよ。」

千早「そう、なのかしら。」

春香「うん!……でもね、誰かのために歌を歌うのは、とても素敵なことだけど。」

春香「もっと、簡単じゃだめなのかな?」

千早「どういうこと……?」

春香「誰かのためじゃなくて、自分のため。歌が好きだから、歌を歌う。」

春香「それでいいんじゃないかなって思うの。」

千早「……。」

春香「千早ちゃんは、歌が好き?」

千早「……ええ。」

春香「これからも、歌い続けたい?」

千早「……ずっと、続けたいわ。」

春香「それはもちろん、961プロで、だよね。」

千早「…………うん。」

春香「だったらさ!やる事は、ひとつしかないよ!千早ちゃん!」

千早「……。」

春香「その気持ちを、直接、ぶつけに行こうよ。悩むのは、それからでもいいんじゃない?」

千早「春香……。」

春香「私は、ずっと千早ちゃんのこと、応援してるから。だから、ね?」

千早「うん……、うん……!ありがとう……、春香。」



千早「ごめんなさい春香、こんな時間まで付き合わせてしまって。」

春香「私が好きで一緒にいるんだからいいの!」

千早「ふふっ、ありがとう。でも、もう遅いし、そろそろ帰らないと家の人も心配するわよ。」

春香「えーと、あのね?もう暗くなってきたし、今からプロデューサーさんを呼ぶのも悪いし。」

春香「私、明日午前中仕事入ってないし、それでね、あのね、」

千早「?」

春香「も、もっと、千早ちゃんと、一緒に居たいなー、って。」

千早「!……そうね。それじゃ……、今日は家に泊まっていったらどうかしら。」

春香「……うん!ありがとう、千早ちゃん!」

千早「じゃあ、行きましょうか。」

春香「えへへ……。」


――――――

千早(ここまできたら、私の思いを、ありのままを、ぶつけるしかない。)

千早「おはようございます。」

受付「おは、き、如月さん……。」

千早「私はまだ、この961プロのアイドルです。入っても問題ありませんね?」

受付「え、ええ。どうぞお通りください。」

千早「ありがとうございます。」

マネ「千早ちゃん!」

千早「っ!マネージャー!」

マネ「ごめんね、連絡できなくて。思ったより元気そうで良かったわ。」

千早「ありがとうございます。……社長は今、社長室にいますか?」

マネ「ええ、いるわ。……なんだか、ふっきれたようね。」

千早「はい……。それでは、行ってきます。」

マネ「うふふ、いってらっしゃい。」



  こんこん

黒井「誰だ?」

千早「失礼します。」

黒井「千早……!」

黒井「……お前はクビだと言った筈だが、何の用だ。」

千早「私は社長にお話しすることがあって参りました。」

黒井「私には話すことなど無い。すぐに立ち去りたまえ。」

千早「いやです!聞いてください社長!」

黒井「な……、」

千早「まず、先のステージで不甲斐ない結果を残してしまったことをお詫びします。申し訳ありませんでした。」

黒井「詫びを入れたところで、犯した罪が消えるわけではない。」

千早「わかっています。それでも、言わなければならないんです。」

千早「私はあの時、自分の力を信じることができませんでした。」

千早「そして、勝手に焦り、無理をして、ミスを犯しました。」

千早「でも気づいたんです。自分の力が、私だけのものではないと。」

千早「黒井社長、マネージャー、講師の方々。たくさんの人の力が集まってできたのが、今の私なのだと。」

千早「皆さんの力を、思いを、私が無駄にしてしまった事を、本当に、申し訳なく思います。」

千早「でも!それをそのまま、無駄にしたまま終わりたくないんです!」

千早「私はまだ歌い続けたいんです!」

黒井「ふん、虫のいい話だな。」

千早「……その通りです。私はただ、わがままを言っているに過ぎません。」

千早「私は、黒井社長に、感謝しています。」

千早「あなたが居たから、私は、歌を歌い続けることができた。」

千早「あなたが居たから、夢をか叶えることができた。」

千早「だから、私も、あなたの夢を叶えたいんです!」

黒井「!」

千早「私は、『王者』になって見せます!」

千早「私はもう迷いません!私はもう負けません!」

千早「夢を叶えるのが、アイドルだというのなら。」

千早「私は、あなたのために……!」

千早「アイドルでありたいんです!」

黒井「……。」

千早「……。」

また誤字、すいません。訂正


千早「私は、黒井社長に、感謝しています。」

千早「あなたが居たから、私は、歌を歌い続けることができた。」

千早「あなたが居たから、夢を叶えることができた。」

千早「だから、私も、あなたの夢を叶えたいんです!」

黒井「!」

千早「私は、『王者』になって見せます!」

千早「私はもう迷いません!私はもう負けません!」

千早「夢を叶えるのが、アイドルだというのなら。」

千早「私は、あなたのために……!」

千早「アイドルでありたいんです!」

黒井「……。」

千早「……。」

黒井「口では……、なんとでも言えるだろう。」

千早「なら、証明して見せます!」

黒井「ほう、証明だと?」

千早「もう一度、765プロと戦うチャンスを、頂けませんか。」

黒井「く、ふはははは!」

黒井「いいだろう!ただし条件がある。」

千早「はい。」

黒井「一度負けたものが復活するには、ただ勝つだけでは生ぬるい。」

黒井「年末に行われるライブイベント。そこでは出演したアイドルを投票で順位決めする。」

黒井「そこで、倍以上の差をつけて勝利しろ。それができないのなら、それがお前の961プロでの最後の仕事だ……!」

千早「……!」

千早「勝ちます。私は、あなたが育てた私を信じます……!」

黒井「いいだろう……!では一ヵ月後を楽しみにさせてもらおう、千早。」

千早「ありがとうございます!黒井社長!」

千早「それでは、失礼します!」

  ガチャ パタン

千早「……。」

千早「はぁ。……良かった。」

マネ「千早ちゃん……!ふふ、やったのね?」

千早「ええ、まあ、条件付ですけれど。」



講師「ええっ!?投票で倍以上の差をつけて勝てですって!?」

マネ「しかも、それができなきゃ事務所をやめるって……!」

千早「はい、そうなりました。」

マネ「はあ。もー、なんだってそんな無茶な条件飲んじゃったのよ。」

千早「それくらい出来なくては、『王者』には程遠いですから。」

講師2「まあ、そうなってしまっては仕方がないわね。本番までにやれるだけのことはやりましょう。」

千早「はい、よろしくお願いします。」

講師2「それで、曲のことなんだけど。」

千早「はい、それについては特に指示されていないので、『目が逢う瞬間』で挑もうかと。」

講師2「いえ、実は……。はいこれ。」

千早「『眠り姫』……?これは、いったい……!」

講師「なんだかんだいっても、黒井社長、あなたの事を考えているのかもね。」

千早「社長……!私、絶対に勝ってみせます!」

講師「うん、その意気よ!」

マネ「『眠り姫』……。ふふっ、歌姫の復活にはおあつらえ向きの曲ね。」


 ――――――

 from 千早ちゃん
 sub ありがとう

 私はもう大丈夫、とだけ言っておくわ。
 本当にありがとう春香。
 春香のプロデューサーにもお礼を言っておいて下さい。


春香「っ!……千早ちゃん……。」


 ――――――

P「ほーい、皆ちゅうもーく。」

真美「どうしたの?兄ちゃん。」

P「年末に行われるライブに出演が決まった。それで出演するメンバーを決めようと思う。」

響「前回と同じで、皆一緒じゃ駄目なのか?」

P「それもいいが、同じ構成だと飽きられる可能性があるからな。」

律子「そうね、前回は奇を衒って大人数で挑んだわけだし、今回は少ない人数でパフォーマンスの内容で勝負したほうがいいと思うわ。」

P「あとちなみにライブには、961プロから如月さんも出演する。」

美希「!」

雪歩「ほ、本当ですか、プロデューサー!」

P「ああ。」

貴音「如月千早は、事務所を辞めずに済んだのですね。」

やよい「うっうー!よかったですー!」

P「それで、メンバーなんだが、俺としてはクールな如月さんに対して、かわいい路線で攻めたいと思っていてな。」

P「亜美、真美、やよい、伊織、響のユニットなんてどうかなと思うんだ!」

響「えっ、そのメンバーに自分も入るのか?」

春香「いいじゃん、響ちゃんかわいいよ!」

亜美「背も亜美たちのほうが大きいしね。」

響「うぅ、何か納得いかないぞ……。」

P「他に意見がなければ、これで決まりって事で……、」

美希「ハニー!」

P「どうした?美希。」

美希「あのね、ミキ、千早さんと戦ってみたいの。」

P「美希も出たいのか?ううむ、そうなるとユニットの編成をどうするか。」

美希「違うの、ミキ、一人でステージに立ちたいの!」

律子「美希……。」

美希「ハニーの言うとおり頑張って、ミキは千早さんと同じランクまで上がれたの。」

美希「でも、まだちゃんと千早さんと戦ってない。前は皆一緒だったし、千早さんも本調子じゃなかったの。」

美希「だからミキは、自分の力を試してみたいの!……ダメ?」

P「うっ……。」

真「プロデューサーが泣いた!?」

P「み、美希が……、自分からそんなことを言うなんて……。俺は感動したぞ美希!」

P「よしわかった!今回のライブはすべて、美希に任せよう!」

美希「ホント?やったやったやったぁ!ミキね、頑張るから、ちゃんと見ててよねハニー!」

あずさ「うふふ、よかったわねぇ美希ちゃん。」

美希「ありがとうなの、あずさ!」

律子「美希、変わったわね……。」

伊織「あら、保護者としては寂しいかしら?」

律子「誰が保護者よ!別に好きで世話を焼いてるわけじゃ……。」

伊織「にひひっ。素直じゃないわねぇ。でもま、美希が変わったのも、千早のおかげよね。」

律子「そうね。美希だけじゃなく、事務所の皆がいい影響を受けているわ。」


 ――――――

マネ「とうとうやってきたわね。」

千早「ええ。ずいぶんと緊張していますね。」

マネ「そりゃするに決まってるでしょ!何で千早ちゃんはそんなに落ち着いてるのよ!」

千早「ふふっ。自分でもわかりません。」

  こんこん

千早「はい、どうぞ。」

  ガチャ

黒井「調子は良好か?」

千早「ええ、いつでも歌えます。」

黒井「ならいい。分かっていると思うが、倍以上の差をつけて勝てなければ……、」

千早「心配していただかなくても、私は勝ちますよ。」

黒井「だ、誰が心配などしている!」

千早「ふふっ。社長、マネージャー。私、少し用事があるので行って来ます。」

黒井「こんなときに、わざわざ出る必要のある用事なのか。」

千早「ええ、大事な、用事です。」

マネ「そう、わかったわ。くれぐれも時間をかけないようにね。」

千早「はい、ありがとうございます。」



P「大丈夫か?美希、本番まではあと少しだが。」

美希「うん、バッチリなの!今のミキのダンスを見れば、ハニーもいちころなの!」

P「ははは、それは楽しみだ。」

  こんこん

P「はい?どうぞ。」

  ガチャ

千早「失礼します。」

P「如月さ……、」

美希「千早さーん!!」

千早「ちょ、ちょっと星井さん!?」

美希「えへへ、良かったの、千早さんがクビにならなくて。」

千早「……ありがとう。心配してくれたのね。」

美希「そうなの!」

P「やあ、如月さん。」

千早「プロデューサーさん。その節はどうもありがとうございました。」

P「いや、俺なんかで役に立てたのなら光栄だよ。それで、どうしてここに?」

千早「星井さんに少し話があって。」

美希「や!千早さんには、美希って呼んでほしいの!」

千早「そう?じゃあ、美希。」

P「お、俺は外に出てた方がいいか?」

千早「いえ、かまいませんよ。話といっても一言だけですから。」

美希「なに?千早さん。」

千早「私は……、負けないわ、絶対にね。」

美希「!」

千早「それだけよ。お互い頑張りましょう。」

千早「失礼します。」

  ガチャ バタン

P「おうふ……、それを言いにわざわざ来たのか……。」

美希「ハニー。」

P「安心しろ美希!美希なら絶対勝てる……、」

美希「ミキね、こんなの自分でもらしくないって思うんだけど、」

美希「ぜっっったいに、負けたくないって思うな!」

P「あ、ああ!もちろんだ美希。そうだ、勝てたら俺が何でも……、」

美希「ホント!?」

P「あ……、」

美希「じゃあじゃあ、美希が勝ったら……、」

P「お手柔らかにな……。」

美希「あはっ、やっぱり秘密にしとくの。」

P「お、おう。」

美希「だから、しっかり見ておいてね!」

P「ああ!」



マネ「千早ちゃん、準備はいい?」

千早「はい。」

マネ「じゃあ、いってらっしゃい。」

千早「いってきます!」


司会「さあ~あ!前回奇しくも苦杯を嘗める結果となった蒼き歌姫!!」

司会「その復活の兆しを垣間見られるか、如月千早ァーーーー!!!」

千早(こんなにたくさんの人が私を見てくれる。)

千早(黒井社長や皆に教えられたこと、私が学んだこと、それをここで伝える!)



  「ずっと眠っていられたら この悲しみを忘れられる」

  「そう願い 眠りについた夜もある」

  「二人過ごした遠い日々 記憶の中の光と影」

  「今もまだ心の迷路 彷徨う」

  「あれは儚い夢そう あなたと見た泡沫の夢」

  「たとえ100年の 眠りでさえ」

  「いつか物語なら終わってく 最後のページめくったら」

  「眠り姫目覚める私は今 誰の助けも借りず」

  「たった独りでも明日へ 歩き出すために」

  「朝の光が眩しくて涙溢れても 瞳を上げたままで」



千早(優、お姉ちゃんの歌、きっとどこかで、聴いていてね。)


 ――――――

美希「ハニー。」

P「美希、最高のステージだったよ。」

美希「ミキね……、頑張ったよ。」

P「ああ、わかってる。」

美希「頑張ったんだけどね……、」

P「ああ。」

美希「ミキ……。」

P「今日だけ、胸貸しといてやるから。」

美希「うう……、うわぁぁぁぁぁぁ!」



マネ「千早ちゃん!」

千早「きゃっ!ま、マネージャー!?」

マネ「もう、ホンットにすごかったわよ!あなたのステージ!」

講師「ええ、見ていて、なんだか泣けてきちゃったわ。」

千早「ふふっ、ありがとうございます。」

講師2「本当に、お疲れ様、千早ちゃん。」

千早「はい、今日勝てたのも、皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。」

マネ「千早ちゃーん!!」

千早「きゃあ!もう……、マネージャー、ふふっ。」

黒井「千早……。」

千早「黒井社長、お疲れ様です。」

黒井「見事な、ステージだった。」

千早「ありがとうございます!」

千早「黒井社長が私のことを信じてくれたから、私も、黒井社長のことを、自分のことを信じることができました。」

千早「だから、ありがとうございます……!」

黒井「そうか……。」

黒井「こちらこそ、礼を言わせてもらおう。」

マネ「!(社長が!)」

講師「!(頭を!)」

講師2「!(下げた!?)」

千早「しゃ、社長!?頭を上げてください!」

黒井「いや、いいんだ。千早、君は、君の実力を以って私に答えてくれた。」

黒井「なら、私も、礼を以って答えるしかあるまい。」

千早「社長……、わた、わ……たし、はっ……。」

マネ「社長が!」

講師「千早ちゃんを!」

講師2「泣かせた!」

黒井「な……!す、すまん……、千早。」

千早「いえ……、いいんです……。わたしっ、うれしくて……。」

千早「社長に……、認められたのが……、本当に……!」

マネ「うぅ……、ちはやちゃん……。」

講師「ぐすっ……。」

講師2「私も、涙が……。」

黒井「ええい!なんだこの湿った空気は!」

黒井「おい千早!765プロになんぞ勝って当たり前だ!まだ真の王者には程遠いのだぞ!」

千早「は、はい!」

講師「雰囲気ぶち壊しじゃないですかー。」

黒井「何か文句があるのか!」

講師「なんでもないですぅぅぅ!」

黒井「いいか、これから死ぬほど仕事を持ってきてやる、血反吐を吐くまでレッスンだ!わかったな!」

千早「ふふっ、それで……、トップになれるのなら!」



 ――――――

高木「日本CD大賞新人賞、日本無線大賞新人賞、プラチナ・アイドル賞受賞。」

高木「いやはや、破竹の勢いとはまさにこの事だね。」

黒井「当たり前だ!貴様の事務所のアイドルとは格が違うのだ格が。」

高木「うちのアイドル諸君も頑張っているんだがねぇ。」

高木「いっそ少しの間、黒井のところへ預けてみようか、はっはっは!」

  「しゃ、社長!なに言ってるんですか!みんなは765プロの仲間なんですからね。」

高木「いや、冗談だよ冗談。あまり怒らんでくれ、音無君。」

小鳥「もー、皆と離れ離れになるなんていやですからね私!」

黒井「なら、765プロごと我が事務所の傘下に入れてやろう。」

小鳥「えぇぇ!黒井社長もなに言ってるんですか!酔いすぎですよ二人とも……。」

高木「ははは、すまんすまん。おっと、少しお手洗いに言ってくるよ、失礼。」

小鳥「……。」

黒井「……。」

小鳥「黒井社長。」

黒井「なんだ?」

小鳥「その、おめでとうございます。千早ちゃん、これで名実共にトップアイドルですね。」

黒井「ああ……、ありがとう。」

小鳥「私は……。」

小鳥「私は、お二人にプロデュースしていただいたこと、今でも誇りに思っています。」

黒井「そうか……。」

小鳥「だから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい。」

黒井「だが、あの時もっと力があれば、君をトップへと導くことが出来た。」

小鳥「いいんです、もう。確かに……、私は、夢半ばで諦めたかもしれませんが。」

小鳥「あなたと、千早ちゃんが、私の夢をかなえてくれたんですもの。」

小鳥「だったら……、私が言うべき言葉は、ありがとう、ですよ。」

黒井「ああ……。」

小鳥「ほ、ほら!そんな湿っぽくならないで下さいよ!今日はお祝いなんですから!」

高木「ああ、音無君そろそろ時間じゃないかね?」

小鳥「あ、そうですね。それじゃ、行って来ます!」

黒井「なんだと言うのだ一体。」

高木「まあ、私と音無君からの祝いだとでも思ってくれ。」

黒井「祝いだと?ふん、貴様なんぞの贈り物などいらんが、まあ、音無君が、というなら断れんな。」

高木「はっはっは。楽しみにしていたまえ。」


  パッ

小鳥「ええ、今宵、お集まりいただきました皆様、大変ありがとうございます。」

小鳥「今日はスペシャルゲストと一緒に歌いたいと思います。」

小鳥「それでは、どうぞごゆっくりお聞きください。」

  ぱちぱちぱちぱち


  パッ

千早「ひとつ 生まれた種」

千早「弱く小さいけれど」

千早「深く 根を歩ませ」

千早「強く今を 生きてる」


黒井「千早……!?」

高木「驚いてくれたかい、如月君が、お前にどうしても歌を送りたいというものだからね。」

高木「セッティングさせてもらったのさ。」


小鳥「やがて土を押し上げて 眩しく映るあの広い空」

小鳥「それは俯かないで 上を見るから」

  「いつか咲こうきっと 諦めないで」

  「葉を広げて うんと茎を伸ばして」

  「高くたって行ける まっすぐに芽を」

  「限りない明日へ 向けてゆこう」



春香「千早ちゃん、やっぱり素敵だなぁ。」

亜美「大人のミリキって奴ですな~」

律子「魅力ね、ったく、少しは見習いなさい。」

やよい「と~っても、やさしい歌声だね。」

伊織「そうね、今だけは、ライバルだって事忘れてしまいそうだわ。」

真「ボクも、あんな風に……。」

雪歩「真ちゃんと、デュエット……。」

響「今度は自分も、千早と一緒に歌いたいぞ!」

貴音「ええ、そのような機会があれば、うれしい限りです。」

真美「真美もあんな風に大人っぽくなるかな?」

あずさ「大丈夫よ~。きっとすぐ、ね?」

美希「千早さん。今度は、負けないの、絶対に……!」


高木「喜んでいただけたかな。」

黒井「ふん、貴様にしては……、悪くない。」



  ――――――

千早「ご清聴ありがとうございます。」

千早「皆様、初めまして。」

千早「私は、」

千早「961プロの、如月千早です。」

おわり

面白かった

始めてss書きまして、
ss速報が復活したので投下させていただきました。

誤字、すみませんでした。

いいね

おつ
面白かったよ

久し振りに良い961プロを見た

おつおつ。

いいね

変な小細工しなけりゃ961が765を常に圧倒して終わりだよね


黒井社長って本来性格的にこんな感じだよね
765にあまりにも執着して失敗してるだけで

おつん!
他のキャラだとどうなるとか妄想が捗る

いい話だった……掛け値なしに

千早が765プロに行くと思ったら違った。
いい話だった。おもしろかったです。


復活早々泣いちまったよ
ありがとう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月04日 (日) 03:01:08   ID: n0tetTAy

とてもよい。とってもよかった!

2 :  SS好きの774さん   2017年05月12日 (金) 20:30:35   ID: 1GUU0V91

あれ…目から蒼い鳥が…

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