狐娘「お主のねぐらに匿ってくれぬか?」(57)

――神社の軒下

男「あーもうビショビショだよ……」

男「最近夕立多いなぁ…すぐ止むといいんだけど…」

狐娘「なんじゃ、お主も雨宿りか」

男「え、ええ…(先客がいたのか。気付かなかった)」

狐娘「お互いツイてないのぉ」

男「そうですねぇ」

狐娘「……」

男「……」

男「止みませんね」

狐娘「そうじゃのぉ…」

男「……」

狐娘「……」

男(変わった子だな。あの耳と尻尾はアクセサリーか?)

狐娘「お主の・・・」

俺「ちょっといいですか」

男「あ、はい」

狐娘「!?」

俺「狐にはエキノコックスという寄生虫がいるんですねえ、
  無闇に触ると危険なのでやめておいたほうがいいでしょう」

男「そうなんだ、エンガチョ」

狐娘「えっ」

俺「あと、狐は稲荷の使いとして信仰の対象になっていますが
  その辺りの稲荷に願いごとをした場合、
  その願いが成就したあとも、ずっとお供えをしなければならないので
  安易な気持ちで稲荷に頼るのはよくないんですねえ」

男「そうなのかー・・・
  じゃあ狐には関わらないようにしよう」

狐娘「いや、あの・・・」

狐娘「何を見とる」

男「はい?」

狐娘「とぼけるな。先ほどからチラチラ盗み見しておろう」

男「えーと、その尻尾が気になって。白くて綺麗な尻尾ですね」

狐娘「おぉ!分かるか?白いのは生まれつきでの。わしの自慢の一つじゃ」

男「な、なるほどー…」

狐娘「~♪」フリフリ

狐娘「む?雨足が弱まってきたな」

男「あ、ほんとだ…」

狐娘「帰るのか?」

男「走れば家まですぐですから。また強くならないうちに走って帰ります」

狐娘「……」

男「それじゃ…」

狐娘「待つがよい」

男「え?」

狐娘「実はの、わけあって今のねぐらを飛び出してきたんじゃ」

男「家出ですか?」

狐娘「まぁそんなもんじゃな。そこへこの雨ときた」

狐娘「着物は濡れるわ、雨で身体は冷えるわふんだりけったりじゃ」

男「…はぁ」

狐娘「飛び出した手前このままおめおめと帰るわけにもいかんし」

狐娘「あーだこーだ考えてるうちに、いつ奴が連れ戻しにくるかも分からんしの」

男「追われてるんですか…」

狐娘「詳しくは言えぬがな…」

男「警察に行ったほうがいいと思います」

狐娘「それよりもじゃ!お主とこうして出会ったのも何かの縁」

男「あ、あの…」

狐娘「少しの間だけでいい」

男「……」

狐娘「お主のねぐらに匿ってくれぬか?」

男「急にそんなこと言われても…」

狐娘「むむ!このままでは身体を冷やして風邪をひいてしまいそうじゃ」

男「この時期なら服もすぐ乾くし大丈夫ですよ」

狐娘「こんっ!」

男「…い、今のは」

狐娘「くしゃみじゃ」

男「……」

――男宅

狐娘「お~!ここがお主のねぐらか~」

男(…押しに弱いなぁ)

狐娘「む?どうかしたか?」

男「いえ、なんでもないです」

狐娘「ふむ。では早速風呂を借りるとしようかの」

男「シャワーだけでいいんですか?冷えてるなら温かいお風呂に入ったほうがいいんじゃ…」

狐娘「ああ、あれはお主のねぐらに上がり込むための方便じゃ」

男「つまり…嘘…?」

狐娘「……」

男「……」

狐娘「やはり湯が張るまで待とう」

狐娘「お主も一緒にどうじゃ?」

男「さすがにそれは…」

狐娘「このねぐらのあるじはお主であろう?遠慮するな」

男「遠慮とかそういうんじゃないんですけど」

狐娘「…はは~ん」

男「…何ですか」

狐娘「さてはわしの身体に欲情してしまうのが怖いのじゃな?」

男「……」

狐娘「まぁわしほどのないすぼでぇなら致し方ないことじゃがな。わはは!」

男「もうそれでいいですよ。後で入りますから早く入っちゃってください」

狐娘「そう言うな。これから一緒に暮らすのだ、互いの身体を洗い合い親睦を深めようぞ」

男「結構です」

狐娘「かたいやつじゃのー」

狐娘「仕方ない…」

男「諦めてくれましたか」

狐娘「いや、別の方法でいく」ドロン!

男「わっ!」

狐「この姿ならば問題あるまい」

男「…へ?」

狐「へ?ではない。風呂じゃ、風呂に入るぞ」

男「……」ワシャワシャ

狐「あ、そこ!そこもっと!」

男「ここですか?」ワシャシャ

狐「あ~…」

男「そろそろ流しますよー」

狐「うむ」

男「お湯かけまーす」

狐「ゆっくり頼むぞ」

男「じゃばー」

狐「ぎゃー!」

狐「さて、湯につかるとするか」

男「……」

狐「なんじゃ、その意味ありげな目は」

男「お湯が毛だらけになりませんかね」

狐「多少抜けるが我慢せい」

男「えー…」

狐「なんだったら人の姿になってやってもよいのだぞ?」

男「!」

狐「むふふ、分かりやすい奴じゃのぉ」

  カポーン

狐「極楽極楽…」

男「……あの」

狐「なんじゃ?」

男「俺が抱きながら入るのはどうなのかと思ったのですが」

狐「仕方なかろう。足届かんし」

男「浴槽のふちに掴まればいいのでは?」

狐「お主にだっこしてもらったほうがはるかに楽じゃし」

男「…そうですか」

狐「うむ」

男「……」

狐「はぁ~…極楽極楽~…」

  カポーン

>>1「さて、湯につかるとするか」ブツブツカチャカチャ

>>1「……」カチャカチャ

>>1「なんじゃ、その意味ありげな目は」ブツブツカチャカチャ

>>1「お湯が毛だらけになりませんかね」ブツブツカチャカチャ

>>1「多少抜けるが我慢せい」ブツブツカチャカチャ

>>1「えー…」ブツブツカチャカチャ

>>1「なんだったら人の姿になってやってもよいのだぞ?」ブツブツカチャカチャ

>>1「!」カチャ

>>1「むふふ、分かりやすい奴じゃのぉ」ブツブツカチャカチャ

結局はこういう事だろ

狐娘「いい湯であったな」

男「そうですねー」

狐娘「……」グゥ~

男「……」

狐娘「落ち着いたら腹が減ってきた」

男「……」

狐娘「腹が減ったなぁ…」

男「昨日の晩ご飯の残りでよければ」

狐娘「悪いな!頂こう!」

狐娘「昨晩の残りが稲荷とは気が利いているではないかー」

男「単なる偶然ですよ」

狐娘「謙遜するな謙遜するな」モグモグ

男「はぁ…」

狐娘「ふぅ…満腹じゃ…」

男「お腹いっぱいになりました?」

狐娘「ああ、これ以上はもう食えんな」

男「お腹いっぱいになったところでそろそろ……」

狐娘「そろそろ…?」

男「もう暗くなってきましたし」

狐娘「ふむ…」

男「……」

狐娘「寝るとするか」

  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
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バンバンバンバンバンバンバン
バン     バンバンバン
バン (∩`・ω・)  バンバン
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    ; '  ;
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