女「ここから見える景色がとても素敵だから」(75)

女「やあ」

男「おう」

女「久しぶりに、隣だね」

男「え? 高校入って初めての席替えだろ?」

女「そうだけれど、中学で隣になっただろう?」

男「そうだったか」

女「ひどいなあ。ボクがこっちに越してきた時、隣だったじゃないか」

男「……覚えてねえ」

女「まあ仕方ないよ。席替えは、小学生の時から何度もやっていることだからね」

男「悪いな」

女「悪くないよ。君がたくさんの女の子と隣になって、惑わしてきたのだから、僕を忘れるのも無理はない」

男「おい、聞き捨てならんぞ」

女「ボクも君に惑わされた一人だったんだね」

男「勝手な話をでっちあげるな」

女「えっちしてあげる? しかたないなぁ……」

男「でっちだ。肩を見せるな」

女「出尻……」

男「でっちりだ、それは」

男「残念ながら俺はこの人生の中で一度も彼女ができたことがない」

女「愛人は?」

男「そんなのもっといねーよ」

女「未亡人は?」

男「いるはずがない」

女「友人は?」

男「いな……い、いる!」

女「へえ、誰だい?」

男「それは……えっと」

女「ふふ、いつも休み時間に一緒にいる男の子達かい?」

男「あいつらは……どうなんだろ」

女「おや、どういうことだい?」

男「つるんでるんだけども、友人と呼べるかどうか……」

女「ふむ。じゃあ、君には友人がいるのかい?」

男「いるよ」

女「誰だい?」

男「お前、とか」

女「……ああ、ボクか」

男「なんだ今の間は」

女「ちょっと、ね」

男「おい、どさくさにまぎれて脚を広げるな」

女「この、脚の間っていやらしくないかい?」

男「なんだその間は」

女「それにしても、君は優しいね」

男「急に話を変えたな」

女「友人ならぬ優人だよ」

男「うまくねえ」

女「キスのことかい? どんな味がするのかな?」

男「キスの味なんて知らん。あと、話を変えるのが唐突すぎるぞ」

女「へえ……」

男「その目はなんだ……」

女「ああ、気にしないでくれ」

男「口を拭ってるのが気になったぞ」

女「ふふ、気にしてくれるのかい」

男「危険な気がした」

女「ボクから溢れ出る女汁にかい?」

男「なんだそれ気持ち悪い」

女「ん、愛液の方が良かったかな」

男「やめろ、それ以上言うな」

女「……」

男「お前さ、変なこと言うなよな」

女「……」

男「……おい」

女「……」

男「わかった、もう喋っていいぞ」

女「ワンワン!」

男「犬か」

女「君がペットプレイを所望したんだろう」

男「してない」

女「猫が良かったかな」

男「……ちなみにどんな感じだ」

女「ニャーン」

男「くっつくな」

女「君がやれと言ったんだろう?」

男「くっつくとは思ってなかった」

女「好奇心というのは、良いことだよ。ボクも君のキツネプレイを見てみたい」

男「したことねーよ、そんなの。しかもキツネプレイってどんなんだよ」

女「コーン」

男「やらんでいい」

女「ごんぎつね……」

男「やめろ、目頭が熱くなる」

女「黄金ぎつね」

男「一気に高貴になったな」

女「おや」

男「あん?」

女「なんだかんだ、ほら」

男「ん、うおっ、もう陽が……」

女「君と話をしているとついつい時間を忘れてしまうよ」

男「放課後に話をするのも、考えもんだな」

女「そうかな。ボクは良いけれど」

男「でも、帰りが遅くなるだろ」

女「大丈夫だよ」

男「なんで」

女「だって、ボク達家も隣なんだから」

男「そうだけど、家の人、心配しないのか」

女「ふふ、ボクのこと、心配してくれるのかい?」

男「まあ、少しはな」

女「安心してよ。君と一緒なら、親も何も言わないから」

男「そうなのか」

女「それくらい信頼されているんだよ、君は」

男「まあ、それでもそろそろ帰るか」

女「うん。あ、でもちょっと待って」

男「ん」

女「君に渡したいものがあってね」

男「なんだ」

女「はい。大切な友人に、プレゼント」

ヤツが差し出したのは、遊園地の招待チケットだった。

男「なんだそれ」

女「遊園地のチケットだよ」

ヤツが笑いながら、俺にチケットを手渡した。

男「おい、一人で行けってのか」

お前は鬼か。空しさで爆発するぞ。

女「そんなわけ、ないよ」

スカートのポケットから、もう一枚チケットを出して、

女「ボクと行くんだよ」

平らな胸に手をあてて、言った。

男「お前とぉ?」

いきなりだな、おい。

女「いいじゃないか、友人なんだし」

男「そうだけども、なんで急に」

女「誘いなんて、基本急なものだろう」

確かに一理あるが。

こいつの場合、予告なしの誘いが多すぎる。

家が隣だからって、早朝にインターホン押してきて、開口一番「エッチ……いや、遊ぼう」と言ってきたり。

隣町に行きたいとかなんとか、夕方頃に言われて出発したから、帰りが遅くなったり。

女「なんだか、唸っているみたいだね」

小さい体を屈めて、俺の顔を窺う。

いつもよりはしっかりとした誘いだな。

男「別にいいぞ。いつ行くんだ」

女「よかった。日曜日はどうかな」

男「今度のか?」

女「もちろん」

混みそうだな。

男「日曜って言うと、次の日は普通に学校あるだろ。土曜の方がいいんじゃないか」

女「ダメ」

キッパリと断られた。

いつものヤツとは違って、言い方が鋭い。

女「どうしても、日曜がいいんだ」

男「なんで?」

女「なんとなく、ね」

どうしても日曜がいい理由がなんとなくって……。

結局確固とした理由は教えてもらえずにヤツは踵を返して、

女「さあ、帰ろう?」

ミニスカがヒラリと揺れる。見えそうで、ヒヤヒヤする。

男「わーったよ」

そういえば、遊園地なんて、何年振りだろう。

よく考えると、小学校以来かもしれない。

女「どうしたんだい?」

既に教室を出て、ヤツは廊下で俺を見ていた。

男「ああ、今行く」

わりと有名な遊園地の、無料招待券。

何故こんなものを、コイツが持ってるんだ?

女「そんなに見つめられると、膜に穴があいちゃうよ」

男「あくかよ、そんなことで」

女「なんの膜かな?」

ちょっと見ただけでこれである。

女「激しい視姦で体が敏感になっているよ」

わざと体をビクビクさせるな。

男「なんか、お前と遊園地に行くの不安だな」

女「ボクもだよ」

なんだと。

女「君が変な気を起こさないか、ちょっとね」

男「それはないから安心しろ」

女「どうしてだい?」

男「お前に興味ないから」

女「……」

急に黙りこむ。どうしたんだ。

女「まさか、同性愛者かい?」

男「違う!」

断じて違う!

女「だから彼女なんているはずがない……彼氏が……」

男「やめろ! そういうことじゃない!」

ちゃんとハッキリさせておこう。

男「俺はな、お前みたいなやつには興味が無いって言ってんだ!」

女「おや、それはどういうことだい?」

男「胸に手を当ててみろ」

女「? 了解した」

言われた通り、ヤツは胸に手を当てた。

男「それだ」

女「え?」

男「その、貧相で残念な胸がだ!」

女「!」

巨乳を愛する俺は、堂々とやつのまな板を指摘した。

ヤツは後退り、口をあんぐりと開けた。

女「胸……か」

おい、自分で自分の胸を揉むな。

男「やめい」

女「そんな……君は巨乳が?」

男「そうだ。俺は巨乳派だ」

女「ボクだっていつかは」

男「虚乳はお断りだ」

女「……やっぱり、巨乳が好きか」

さっきまでの驚きの顔から一転、すぐに笑顔に戻った。

なんだよ、その言い方。

女「でも、胸は小さいほうがいいよ」

男「自分を肯定しようとするなよ」

見苦しいぜ。

女「自慰だよ、自慰」

勘違いされるぞ、その言葉の選択。

男「じゃあとりあえず聞くが、なんで小さいほうがいいんだよ?」

女「肩こりをしない!」

男「……」

胸のせいでこったこと無いくせに。

そしてヤケにドヤ顔である。

なんか可哀想だぞ。

女「あと、すぐに脱げることかな」

男「は?」

女「障害がないからね」

ほら、と。

ヤツはいきなり制服を脱いだ。

女「ほら、簡単だろう?」

男「何やってんだ! 早く着ろ!」

まさかと思い、俺は目を伏せた。

夏服だぞ!?

こいつ、いきなり脱ぐか? しかも外だぞ!?

女「どうして目を伏せているんだい? 興味が無いんだろう?」

ニヤリと笑った気がした。こいつ、楽しんでやがるな。

女「安心してよ、本気で脱いでないからさ」

男「……本当か?」

こいつだと上半身裸とか、平気でしそうだ。

俺は恐る恐る、目を開けた。

下から上へ、視線を移していくと、ヤツは変わらない様子だった。

女「おおげさだなあ」

声をあげて笑ってやがる。

男「……ん」

女「どうしたんだい? そんなにジロジロ見たら……」

胸元を見てみると、ブラウスのボタンが大幅に外れていた。

どうやら気づいていないようなので、指をさして教えてやった。

女「え……? あっ……」

顔を赤くして、俺に背を向けた。

女「も、もう、ダメじゃないか。外でこんなことをするなんて」

なんで俺を見ながら言う。

俺のせいになってるのか? 勝手だな!

男「俺のせいじゃねえよ」

それにしても、あんなにはだけてもブラジャーが見えないってのは、どういうことだ。

別に見たくないけどな。

女「ああ、バレてしまったなぁ」

男「ん、何がだよ」

女「ボクがノーブラだって、バレちゃったね」

男「……は?」

女「だから、ノー……」

男「いや、言わんでいい」

いきなり何をカミングアウトしてんだ。

女「ふふ、ちょっとナンデモ発言だったかな」

トンデモ、だろ。

俺は、どうやら半無意識に頷いていたようだ。

女「ふふ……いやらしいなぁ、君は」

こっちの台詞だ。

……ムッツリなのは認めてやろう。

女「そうだね、そんなに気にしなくてもいいと思うよ」

男「答えになってないぞ」

女「ボクだって、言うのは恥ずかしいよ」

顔を逸らして、黙った。

自分の書いた文一回読んでみ?
恥ずかしくならないか?

俺も、その後は何も言及しなかった。

今更だが、下校中である。

女「……遊園地、楽しみかい?」

不意に、ヤツが口を開けた。

男「……まあな」

女「そっか」

振り向いて、微笑んできた。

女「ふふ、また時間を忘れてしまった。もう家だね」

男「そうだな」

女「それじゃあ」

男「おう」

ヤツは手を振って、俺の家の隣へ駆けて行った。

男「遊園地……か」

本当、久しぶりだ。

ポケットから取り出して、チケット見てみる。

男「ん……?」

よく見てみると、日曜日にはナイトパレードがある、と書いてある。

男「ははーん、なるほどな」

俺は得意気な顔をして、家のドアを開けた。

SS速報とかあるのにどうしてわざわざここで書くの?
深夜だから叩かれないと思った?

妹「遅い」

男「は~疲れた」

妹「あのさあ、いっつも言ってるじゃん。遅くなるならちゃんと言ってって」

男「この匂いは肉じゃがかな」

妹「大体お兄ちゃんはさあ」

男「うおっ、思ったより汗かいてるなぁ」

妹「……」

ジトーッとした視線が俺に突き刺さっている。

男「いやぁ~、あはは」

笑ってごまかしてみる。

妹「笑ってごまかしてもダメだから」

失敗。

妹「せっかく待ってた妹にただいまもないわけ?」

男「おーう、ただいま~」

妹「……頭撫でないでくれる?」

撫でていた手をはたかれた。

>>1「遅い」

>>1「は~疲れた」

>>1「あのさあ、いっつも言ってるじゃん。遅くなるならちゃんと言ってって」

>>1「この匂いは肉じゃがかな」

>>1「大体お兄ちゃんはさあ」

>>1「うおっ、思ったより汗かいてるなぁ」

>>1「……」

ジトーッとした視線が俺に突き刺さっている。

>>1「いやぁ~、あはは」

笑ってごまかしてみる。

>>1「笑ってごまかしてもダメだから」

失敗。

>>1「せっかく待ってた妹にただいまもないわけ?」

>>1「おーう、ただいま~」

>>1「……頭撫でないでくれる?」

撫でていた手をはたかれた。

妹「本当に信じらんない! お兄ちゃん自分勝手過ぎ」

男「悪かったって」

妹「私だって色々言いたくないのにさぁ」

じゃあ言わなきゃいいのに。

妹「『言わなきゃいいのに』って思わなかった?」

男「は、はい?」

なぜバレた。

>>1「本当に信じらんない! お兄ちゃん自分勝手過ぎ」

>>1「悪かったって」

>>1「私だって色々言いたくないのにさぁ」

じゃあ言わなきゃいいのに。

>>1「『言わなきゃいいのに』って思わなかった?」

>>1「は、はい?」

なぜバレた。

妹「……肉じゃが冷めちゃうから、早く食べてね」

男「母さんは?」

妹「泊まりで仕事だって」

今日もか。

いつものことながら、俺と妹の二人か。

父は単身赴任なので、家にはいない。

ということは、肉じゃがは妹作かー……。

妹「なんでため息ついてんの?」

男「いやあ、なんにも」

>>1「……肉じゃが冷めちゃうから、早く食べてね」

>>1「母さんは?」

>>1「泊まりで仕事だって」

今日もか。

いつものことながら、俺と妹の二人か。

父は単身赴任なので、家にはいない。

ということは、肉じゃがは妹作かー……。

>>1「なんでため息ついてんの?」

>>!「いやあ、なんにも」

またもやジロリと見られたが、妹は居間に移動した。

まったく、どうしてあんなにしっかり者になったのか。

別に嫌ではない。むしろ助かってるし。

世間の妹よりも恵まれているとも思っている。

妹「来ないなら片付けちゃうよー」

男「行く行くー」

ちょっとせっかちなのが、玉に瑕だが。

ふざけやがって
どいつもこいつもSSを書くやつのメンタルはなんなんだ糞が

男「いただきます」

肉じゃがは、ちょっとじゃがいもが多めだった。

ちょっとというか、ほぼじゃがいもだ。

女「美味しい?」

男「ん……美味いな」

妹「ホント?」

男「母さんのには勝てないけどな」

妹「同じレシピなのに」

男「あーなるほどな」

妹「何が?」

男「お前には足りないものがある」

妹「な、なに?」

机の真向かいから、身を乗り出す妹。

男「それは、愛だ!」

妹「……」

キラキラしていた目は、一気に濁った瞳に変貌した。

妹「はぁ……」

何故ため息を吐く?

妹「そんなさぁ」

男「甘くみちゃいけないぞ。やはりお前の味はまだまだだ」

妹「なんでお兄ちゃんに、私が愛を注がないといけないのよ!」

男「いや、俺にじゃなく、料理にだぞ?」

妹「えっ……」

妹は決まりが悪そうにして、

妹「そんなの……わかってるよ」

机に突っ伏して「話しかけるな」オーラを出し始めた。

よくわからん妹である。

テレビつけて、バラエティー番組を観ながら肉じゃがを箸でつつく。

妹「テレビ観ながらはダメってルールでしょ」

男「母さんいないからいいだろ」

妹「ふんっ」

バラエティー番組の笑い声だけが空しく響いた。

妹の沈黙に耐えかねた俺は、テレビを消して、じゃがいもにかぶりついた。

妹「あのさ」

突っ伏したまま、妹は声を出した。

男「あんだ?」

妹「日曜って、空いてる?」

日曜日。

男「あー、空いてないな」

妹「え?」

俺がそう言うと、妹は勢い良く頭を上げた。

男「空いてない。土曜ならいいんだが」

妹「……じゃあいい」

男「ダメなのか?」

妹「……いい」

低い声で答えて、妹は座り直した。

男「みんな日曜がいいんだな。絶対に土曜日の方が次の日休みでいいのに」

妹「バカだね」

いきなり暴言吐きやがった。

男「ひでぇなぁ。というか、何するつもりだったんだ?」

妹「……言いたくない」

どうせ無理だから、と。

沈んだ声で言った。

ふむ。

素っ気ないな。思春期だろうか。

俺も、こういう時があったのだろうか。

男「そうかい。ご馳走様」

妹「おそまつさま」

男「おそ松くん?」

妹「無視するね」

無視すると宣言するスルーの仕方も、珍しい。

俺は台所に皿を持っていった後、そのまま自分の部屋に直行した。

男「……」

そういえば最近、妹の相手をしてなかったな。

というより、今日は何だか様子が変だったな。

急に雰囲気が変わったっつーか、なんつーか。

一言でいうと、暗い。

何があったのだろう。

ベッドに横になっていたのだが、どうしても気になって、妹のもとに向かった。

俺の食器を洗っているだろうから、まだ台所かな。

階段を降りる足は、音を立てないように慎重な歩調だった。

一階に行くと、水の流れる音がした。

やはり、妹は台所で食器を洗っていた。

男「なあ」

声をかけるが、返事はない。

男「えーっと……土曜日にしてもらえるか聞いてみる」

妹「いいよ、そんなことしなくて」

こちらを見ずに、妹は言った。

男「でも、久しぶりにお前とどこか行きたいし」

ピタリ、と手が止まった。

妹「それは、女さんもそうだと思うよ」

……え。

なんでこいつ、アイツと予定があるって知ってるんだ。

男「お、おい、なんで……」

妹「だって、お兄ちゃんと遊んでくれる心優しい人なんて、女さんくらいしかいないでしょう?」

なんだと。

妹「ほんと、女さんに感謝だね!」

ササッと食器洗いを終え、こちらを向いて無邪気に笑った。

妹「お風呂入れといたから、入っていいよ」

男「お、おう」

そう言って、妹は二階に上がっていった。

急に、いつも通りに戻った。

俺のことをイジるのが妹のクセだ。

中にはグサリと来るいじり方もあるが、気にしない。

そして、俺は言われるがまま、風呂に入ることにした。

オンナってのは、よくわからない。

ごめんなさい、もう寝ます。

今日の朝起きられたら続きを書きたいと思います。
夜遅くまで見てくださってありがとうございました。おやすみなさい。

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