騎士長「王宮をクビになってしまった」(970)

 
王様「…ふむ」

側近「王、最近の我が国は財政難。速急に対策を打たねばなりません」

王様「…側近、いい案はあるか?」

側近「案…ですか。おい財務大臣、何か意見はないか?」


財政大臣「我輩ですか。なら、いい案が」

王様「ふむ…申してみよ」

財政大臣「…このところ、我が国では兵力が余っており――…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 王宮都市・演習広場 】


…ビュンッ!!ビュンッ!!

王宮騎士「やぁっ!!」

王宮兵士「たぁぁっ!」

王宮戦士「おうっ!」


騎士長「いいぞ…その調子だ!腕の振りが甘いぞ!」


王宮騎士「はいっ!」ビュンッ!

騎士長「よし、そうだ!」

 
王宮騎士「ありがとうございます、いつもながら的確な指示ですね」

騎士長「当たり前だ、俺を誰だと思っているんだ」

王宮騎士「いやはや…さすがですよ。貴方がいれば王宮都市の未来も安泰だ」

騎士長「俺が魔物や、賊からこの国を救うさ」


王宮騎士「本当にご立派です。見習わなければなりませんね」

騎士長「ははは、誉めても何も出ないぞ」

王宮騎士「はははっ!」


…カツ、カツ、カツ

???「どーも、今日も演習場から元気な戦士達の声…頼もしいですなぁ」

 
騎士長「む…」クルッ


側近「やぁやぁ、今日も精が出ますね騎士長殿」ニコッ

騎士長「側近殿でしたか…。いえ、それほどでも。いつ蛮族が襲うやもわかりませんし、いつも本気で取り組みますよ」

側近「それはいい心がけですね」

騎士長「この王宮、王国に務めて早10年…。少年時代よりお世話になった事をいつも感謝してます」ハハハ


側近「…」

騎士長「…」

側近「…」

騎士長「…側近殿?」

 
側近「その事なのですが、少しお話がありまして」

騎士長「…お話、ですか?」


側近「はい…実はですね…」

…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの酒場 】

…ドンッ!!!

騎士長「…だってよ、笑えるだろう!?」ハハハ

店主「…お前が"クビ"、ね」

騎士長「はぁ~…何でだよぉ!!」グスッ

店主「それにしても、どうして急にクビなんだろうな。お前程、王国に捧げた奴もいないだろうに」


騎士長「この歳で、俺は高給取りの立場だったしな…」

騎士長「最近は王国が財政難っつーだろ?それに最近は平和だし…、高給取りの騎士はいらないんだろうよ!」グビグビ

 
店主「だからって、お前をクビ切りか…最近、王国の様子も大分変わったよな」

騎士長「店主は、今の一代前の王のことを知ってるんだろ?どんな感じだったんだ?」

店主「あの頃の王様は優しくてなぁ…、この酒場にも飲みに来てたんだぜ」

騎士長「うっそぉ!?この汚い酒場に!?」

店主「お前、そのビールの値段2倍な」ピクピク

騎士長「うっそぉ!?ぼったくりだぞこの店はみーなさーん!!」


店主「うっせぇよ!今は昼間だから誰もいねぇよ!…まぁ、それより前の王は、本当にいい王だったよ」

騎士長「へぇ…何で交代したんだ?」

店主「前王が病になって、当時のナンバー2が指揮をとって…そのままズルズルだな」

 
騎士長「羨ましい話ですわ、全く」グビッ…

店主「それからはキツイったらありゃしない。税は増えるわ、変な輩が城に出入りするわ…」ハァ

騎士長「変な輩…あぁ、最近王室に出たり入ったりしてたな」

店主「治安が良いとはお世辞にもいえねえな。まぁ…そんな王国、見切られて良かったんじゃねえの?」


騎士長「…何だかなぁ」

店主「それよか、お前はこれからどうするんだよ。まだ23だろ?若い出世だったのにな」

騎士長「あ~…どうしよう。魔物退治とかでいい依頼出してる所とか知らない?」

店主「うちの酒場も一応、そういう紛いの依頼受付だのの事はしてるが…」

騎士長「いい依頼ないよな、ここ」

 
店主「やかましい!」

騎士長「どれどれ、何があるんだーっと」ガタッ

トコトコ…ペラッ


騎士長「ふむふむ、どぶさらい…、迷い猫探し…、掃除…」

店主「…」

騎士長「ぷっ…はーっはっはっはっは!!漫画かよ!!」

店主「うるっせぇぇ酔っ払いが!!お前今日の代金3倍だからな!!」

騎士長「うっそぉ!?ぼったくりですよみーなーさーん!!!」


店主「昼間だから誰もいねえし、同じこと繰り返してるんじゃねーよ!」

店主「ったく…まだ昼間なのに出来上がってるんじゃねーっつーの」ハァ

 
騎士長「他の客なんざいないんだから、騒いだっていいじゃねーかぁ!」

店主「ま…気持ちは分かるけどよ」

騎士長「だろう!?もっと酒もってこぉ~~い!!」


店主「ったく、仕方ねえなあ…ん?」
 
…コンコン


店主「…また客か?昼間から珍しい」

騎士長「俺がドア開けてあげますよぉ~っと」ガタッ

フラフラ…

店主「お、おいおい!他の客だったら迷惑かけないでくれよ!」

 
騎士長「わかってるってぇ~」

ガチャッ…ギィィ…

騎士長「はーい!いらっしゃいまー…せ…?」


女の子「…」


騎士長「客、なの…?」

店主「ん…お、女の子…?」


女の子「…」キョロキョロ

 
騎士長「店主、アンタの知り合いか?」

店主「まさか!見たこともないぜ」

騎士長「ふむ…」
 
騎士長(黒髪…薄らとした褐色気味の肌…。砂漠地方の出か…?)


女の子「…」
 

騎士長「おい、お母さんとお父さんはどうした?」

女の子「…たい」

騎士長「あん?」

 
女の子「聞きたい事がある。ここなら依頼を受けてくれるのか?」

騎士長「あ…?」

店主「お嬢ちゃん、今何て言った?」


女の子「ここで、依頼を受けてくれるのかと聞いた」

店主「そりゃ受けてるが…」

女の子「どうすればいい」

店主「そ、それなら、この紙に書いてもらえればいいが…」ペラッ

女の子「わかった」

トコトコトコ…


騎士長「な…何なんだ一体」

店主「さぁ…」

 
トコトコトコ…ピタッ

女の子「…」ジー

店主「…」

女の子「…」ジー

店主「…どうした?書かないのか?」


女の子「高くて届かない」


騎士長「…お嬢ちゃんに、カウンターはまだ高いか。ほらよっ」ヒョイッ

女の子「!」フワッ

騎士長「ここに座れば届くだろう。ほら、これで書けるだろ」

 
女の子「…ありがとう」

騎士長「いんや、礼するほどじゃねえよ」


女の子「…」

騎士長「…」

女の子「…」ジー…

騎士長「…こ、今度はどうしたんだ?」

 
女の子「…私は字が書けないんだった」

騎士長「…」ハァ

騎士長「仕方ない、俺が変わりに書いてやるよ、ペンを貸せ」


女の子「…色々ありがとう」

騎士長「だからそれくらいイイっつーの。で、内容は?」

 
女の子「"お父さんを殺して"」


騎士長「はいよ、お父さんを殺してっと…」カキカキ

騎士長「…」

騎士長「…何て言った、今」

店主「おい、今このお嬢ちゃん…何て言った…?」


女の子「聞こえなかったか?"お父さんを殺して"と言った」

騎士長「お前…」


…ガチャアン!!!

傭兵「どこだコラァ!!」

奴隷商人「ここに逃げたのは分かってるんだからな、出て来い!!」


店主「こ、今度は何だ!」

 
傭兵「アンタがここの店主か?聞きたい事がある…ここに子供が逃げ込まなかったか?」

騎士長「こいつのことか?」ヒョイッ

女の子「わわっ」


傭兵「そうそう、そのくらいの…って、ソイツだコラァ!!!」クワッ

騎士長「やかましいー奴だなー」

店主「お前が言うな」


傭兵「そいつをおとなしく渡せ。そいつはうちの奴隷なんでね」

騎士長「…お嬢ちゃん、奴隷だったのか?」

女の子「…」

 
奴隷商人「そいつはうちの大事な品物なんだよ。早く返してくれるか」

女の子「…」

傭兵「…早く戻って来ないと、また鞭で打つぞコラァ!!」

女の子「!」ビクッ


騎士長「まぁ…待てよ。この子は砂漠地方の出だろ?あそこは奴隷の扱いを禁止してなかったか?」

傭兵「…うっせぇ!お前には関係ないだろう!」

騎士長「お前がうるせぇよ。で、お嬢ちゃん・・・どうして奴隷になったか聞かせてくれないか?」


女の子「あ…あの連中が…、村を襲った…」ビクビク

騎士長「…ははーん」

 
傭兵「そ、それがどうしたんだコラァ!」

奴隷商人「そうだぞ、そいつはもううちの商品なんだからな!」

女の子「…」ブルブル


騎士長「…」

店主「…騎士長、店は気にするな」

騎士長「あん?」

店主「…俺もあいつらはちょっとムカつくからな」

騎士長「いいのか?」

店主「やっちまえ」

騎士長「…恩に切るぜ」ニカッ

 
傭兵「いいからさっさと、こっちに寄越せっつうんだよコラァ!!」

奴隷商人「早くしないと、この傭兵が店を壊すぞ?」


女の子「…」ビクビク

…ポンッ

女の子「…え?」

騎士長「おい、お嬢ちゃん…名前は?」

黒髪幼女「く…黒髪幼女…」

騎士長「そっか、じゃあちょっと…店主にジュースでも貰ってな!」

黒髪幼女「じゅ…ジュース…?」

 
ゴソゴソ…コトン

店主「はいよ、オレンジジュースお待ちー」スッ

黒髪幼女「あ…ありがとう…?」


騎士長「んじゃ、黒髪幼女がのんびりしてる間に…ちゃっちゃとやりますかぁ!」ウーン

騎士長「あとで依頼の話…きちんと聞かせろよ?」

黒髪幼女「わ…わかった」


傭兵「…やる気か?お前に得はないんだぞ…素直に子供を渡せ」

騎士長「これでも王宮に仕える平和の騎士!だからね」


店主「元な」ボソッ


騎士長「うるっせ!」

傭兵「お前のような青二才が俺に勝てると思っているのか?」

騎士長「いいから、やってみようぜ。ほらかかってこい」クイクイ

 
奴隷商人「…やっちまえ、傭兵!!」

傭兵「おうよ!!」

騎士長「どの道そうなるんだから、早くかかってこいよ」


傭兵「俺の技の前にひれ伏すがいい…どりゃあああっ!!!」クワッ

傭兵「…食らえ!究極奥義、昇天撃ィィィィ!!」グググッ

…ビュオンッ!!!

騎士長「…」ヒュッ

傭兵「へっ?消え…」


…バキィ!!!!

傭兵「…がっ!?」

騎士長「…長い名前の割りに、俺の普通のパンチより遅いのな」

  
傭兵「み、見えなか…」グラッ

騎士長「これでも騎士なんだけど、お前に武器使うまででもなかったわ」

傭兵「ぬ…が…」

…ドサァッ…ズズゥン…


騎士長「…弱っ!!」

店主「さすがだな」

騎士長「それより、黒髪幼女に美味しいオレンジジュースは出したんだろうな」

店主「いきなりそっちの心配かよ。お前が殴る前に出してただろ」

黒髪幼女「あ…うん、オレンジジュース貰った…」

 
騎士長「ここは飲み物は美味いからな、好きなだけ飲め」


奴隷商人(話しに夢中になってる今なら…逃げられる…)

…コソッ


黒髪幼女「う、うん…ジュースありがとう…」

騎士長「おう」

店主「まったく、お前は勝手なことばかり…って!後ろ後ろ!」


コソコソコソ…

奴隷商人「!」ビクッ


騎士長「おっとっと、奴隷商人さ~ん…。聞きたい事があるから、ちょっと…来てくれるかな?」ニコッ

奴隷商人「は…はい…」

 
店主「じゃあ俺はちょっと、王宮のほうに警備隊を呼びに行ってくるか。拘束してもらうんだろ?」

騎士長「頼んだ。俺はこいつとジックリ話をさせてもらうさ」ギロッ

黒髪幼女「…」


奴隷商人「…はは」

 
That's where the story begins!
――――――――――――――――
【騎士長「王宮をクビになってしまった」】
――――――――――――――――
Don't miss it!

本日はここまでです。ありがとうございました。

>>21 修正
恩に切る⇒恩に着る

皆さま、早速の沢山のコメント有難うございます。
前作というのは、過去に多数の作品を書かせて頂いているので、その繋がりがあるかという事だと思いますが、
今回のは完全な新作としてやらせて頂いております。

よろしくお願いします。失礼致しました。

今回は毎日更新?土日更新?
PCはまだ死んでるのか?

皆様、改めて沢山のコメント、本当にありがとうございます。
投下開始します。

>>42
本日の投下が終了後、それに関して一応ご報告致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ギュッギュ…グイィ…

騎士長「よし、これでお前の自由は奪われたわけだ」

奴隷商人「こんなキツく縛らなくてもいいじゃねえか…」

騎士長「ははは、まぁまぁ。で、聞きたい事がある」

奴隷商人「…」


騎士長「お前…この子の村を襲ったのか?」

黒髪幼女「…」


奴隷商人「…さぁな」プイッ

 
騎士長「…」ギロッ

奴隷商人「うっ…。ちっ、そうだよ…」


騎士長「何故そこを狙ったんだ。砂漠地方は奴隷を禁止したあと、非常に厳しく罰するはずだが」

騎士長「そこまでのメリットがあったっていうのか?」


奴隷商人「…村がだいぶ小さく、比較的地方にあったってのもあるが…」

騎士長「…」

奴隷商人「村人を全員、奴隷として売る代わりに、更に見返りをくれるっつーやつがいたんだよ」

騎士長「…はぁ?」

 
奴隷商人「笑っちまうよな。こっちとしては…高く売れる砂漠地方の人間を奴隷にする協力だけでも、有難いんだけどよ」

奴隷商人「更に、別途に報酬もくれるっつーんだよ」ハハハ


騎士長「…そいつは誰だ?」

奴隷商人「さぁな。その村に住んでる様子の男だったぜ」

騎士長「知らないのか?知らないふりをしてるんじゃないのか…」ググッ

奴隷商人「う…ぐっ、本当に知らないんだよ…!」


黒髪幼女「…さん」ボソッ

騎士長「…ん?」

黒髪幼女「それ、私のお父さん。お父さんが、そこの人と話しをしてるの聞いたの」

騎士長「…何?」

黒髪幼女「そのせいで…みんな、仲良かった子もバラバラになった。全部、お父さんのせい!!」

 
黒髪幼女「全部…お父さんのせい!!!」

騎士長「ま…待て、落ち着け。な?」

黒髪幼女「…っ」


騎士長「話を整理させてくれ。奴隷商人、お前は村に住んでる男に村人を奴隷として売るようにお願いされたんだな?」

奴隷商人「そうだ」

騎士長「その男は黒髪幼女の父親…そうだな?」

黒髪幼女「…うん」


騎士長「…奴隷商人、お前は…その親父に何故、村人を襲うように言われたか聞いてないのか」

奴隷商人「何も聞いてねえよ。俺らの世界はイエスかノーか…条件がよかったらイエスだけだ」ククク

騎士長「…」

 
黒髪幼女「…」キッ!!

奴隷商人「…ん?」

黒髪幼女「み…みんなを…村に戻してよ!!友達を…返してよぉ!!」

奴隷商人「友達…?あぁ、あのガキどもか。うるさかったからな…仕方ねえだろ」


騎士長「お前…何をしたんだ?」

奴隷商人「俺がやったんじゃねえが、傭兵は子供はあんま好きじゃないらしく…な?」

騎士長「まさか…」

奴隷商人「それといらないと判断した奴らもだ。どうせ奴隷を積む馬車にゃ限界があるからな」

騎士長「…貴様っ!!」グイッ

奴隷商人「ぐっ…!」

  
黒髪幼女「…」グスッ


騎士長「…こいつの親父はどこにいるんだ」

奴隷商人「さ、さぁな…。襲うまでの手伝いはしてくれたが、あとはそれっきりだ…」

騎士長「貴様には、まだまだ話して貰うことがありそうだな…」ググッ

奴隷商人「うぐっ…、く、苦し…」


コンコン…ガチャッ!!

騎士長「ん?」

ドタドタ…

王宮警備隊「取り込み中のようですが、失礼します!」バッ

王宮警備隊「こちらの店主殿から、族がいると聞いて…伺いました!」ビシッ

 
騎士長「…お。ようやく来たな…こいつがそうだ」

奴隷商人「ゴホゴホッ・・・!く、くそっ…」


王宮警備隊「貴様が奴隷商人だな、こっちに来い!」グイッ

奴隷商人「いてて…乱暴にするなよ…」ヘヘ

ドタドタ…ガチャッ…バタンッ…


王宮警備隊「あなたは…騎士長さんでしたか。この度は、ありがとうございます」

騎士長「あぁ。ところで、アイツの身柄はどうなる予定だ?」

王宮警備隊「しばらくは牢に入って貰うでしょうね。その後、砂漠街に引き取って貰います」

騎士長「そうか…奴隷に厳しくなった今、極刑も免れないかもな」

王宮警備隊「かもしれませんね」

 
騎士長「で、ちょっと聞きたいんだが…俺はまだ奴隷商人に少し用事があるんだ。あとで面会してもいいか?」

王宮警備隊「砂漠街では第一級の犯罪者。とてもじゃありませんが、面会はできないでしょう」

騎士長「…俺は王宮の騎士長だぞ?」

王宮警備隊「…元、ですよね」


騎士長「そ、そうか…」

王宮警備隊「申し訳ありませんが、これで失礼しますね」ビシッ

カツカツカツ…


騎士長「あ、ま、待ってくれ!もう1つだけ話がある」

王宮警備隊「…何ですか」クルッ

 
騎士長「こいつの親父の捜索と、こいつ自身の面倒を見てやってほしいんだ」グイッ

黒髪幼女「…」


騎士長「こいつの親父は、今回の騒動の犯人らしいし指名手配もあるかもしれんし…」

騎士長「あと、孤児としても黒髪幼女は成り立つはずだ。どうだ?」


王宮警備隊「…どっちも無理ですね。まだ犯人の目星が立たず証拠がないこと、子供の預かりはしてません」

騎士長「何だと?捜索は仕方ないとするが…、子供の預かりができないって?」

王宮警備隊「そんな施設はありませんよ」

騎士長「バカな事いうなよ!先代の王が立てた孤児院があるはずだろう!?」


王宮警備隊「何年前のことを。今はもう、孤児院はありません。当代が税の無駄だと潰しました」

騎士長「…!」

 
王宮警備隊「では、これで」ペコッ

カツカツカツ…ガチャッ、バタン…


騎士長「な…何てこったい…」


ガチャ…

店主「はぁ~、ただいま!事情聴取されて、時間くっちまった」

店主「見たところ、落ち着いたらしいな。良かった良かった」

 
騎士長「…でも、ないんだな」

店主「ん?」

騎士長「…」チョイチョイ


黒髪幼女「…」


店主「あ~…」

騎士長「孤児院が王国になくなったのは知らなかったぜ。どんだけ腐ってやがるんだ当代は」

店主「…そういう王だからな。黒髪幼女だっけか…、お前、これからどうするんだ?」

黒髪幼女「これから…?」

店主「そうだ。奴隷商人はいないし、移動手段もないだろう?親父もどこか行方不明だ」

 
黒髪幼女「…」

店主「…」

騎士長「…」


黒髪幼女「依頼を受ける人がいないなら、他のところへ行く。お父さんは…絶対に許せないから」

騎士長「…お前さ、例えばだが」

騎士長「依頼を受けてくれる人がいたとして、報酬は出せるのか?」


黒髪幼女「…」

黒髪幼女「報酬は…私」


騎士長「!」

店主「…」

 
黒髪幼女「私自身を報酬にする。また奴隷にでも何でも…なるから…」

黒髪幼女「…それで、お父さんを捕まえてくれる…殺してくれるなら…!」


店主「…おい、騎士長」

騎士長「見過ごせるわけ…ねぇよなぁ…」ハァ

黒髪幼女「…?」


騎士長「おい、わかった。その依頼…俺が受けてやるよ」

黒髪幼女「…本当!?」

騎士長「嘘は言わん。ここでお前を見捨てたら、王宮のエース騎士の名が廃るからな」

店主「元、だけどな」ガハハ

騎士長「うるせええー!」

 
黒髪幼女「じゃあ…、受けてくれるなら…私、あなたの言うこと聞く。何でもする」

騎士長「…」

店主「騎士長、頼むからこんな子供に」

騎士長「わかってるよ!!そんな物好きじゃねーから!!」


黒髪幼女「…」

騎士長「黒髪幼女、言うことは1つだ」

黒髪幼女「…」ゴクッ

騎士長「きちんと、俺を信じてついて来い。それだけだ」

黒髪幼女「…え?」

騎士長「これも何かの縁だろう。仕事をやめた日に、仕事が見つかるなんてな」ハハハ

黒髪幼女「…」

 
騎士長「酷いことはしねぇ、俺はお前の依頼を受けた以上、全力でお前に尽くす」

黒髪幼女「…」

騎士長「俺を信じてついて来い。俺は…強いからな」ニカッ

黒髪幼女「…!」


店主「…ほれっ」スッ

騎士長「あん?」

店主「俺からのサービスの酒だ。黒髪幼女の依頼を受けたら、砂漠街まで抜けないといけないだろ?」

騎士長「あ~そうだな。かなり遠いもんな」

店主「しばらくこの味も飲めないだろう」

騎士長「ふむ…確かにな。ありがとうよ」

店主「何をこれくらい」

 
黒髪幼女「…」

騎士長「さて…まぁ、黒髪幼女。お前の村にまず…案内してくれるか?つらいだろうがな…」

黒髪幼女「…うん」コクン

騎士長「おっしゃ、んじゃ先ずは馬車で港町だ。そこから船に乗って…ちょっとした旅になるなこれは」

黒髪幼女「…お金、あるの?」

騎士長「金なんざ腐るほどある。心配すんな、ハッハッハッハ!」

ワシャワシャ…

黒髪幼女「あう…」


店主「無駄に金は稼いだもんな、元王宮のエース騎士さん」ガハハ

騎士長「いちいち元つけんな!!」

 
黒髪幼女「…ありがとう」

騎士長「あぁん?礼なんていらねえよ、これも縁のある所だっつっただろ」

黒髪幼女「…」

騎士長(…笑顔のない子供…か)


店主「ま…頑張れよ」

騎士長「人ごとだと思って…。さ、行くか黒髪幼女!」クルッ

店主「ん?サービスの酒…いらないのか?」

騎士長「俺が無事に戻ってくるまで、その一杯はとっておいてくれ。きっと最高の味がするだろうからな」


…ガチャッ…バタンッ…

店主「…ふっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…ガヤガヤ…

騎士長「ん~外はいい天気だが…お天道様がもう傾きかけそうだ。なぁ?」

黒髪幼女「…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」

騎士長「…」フゥ


騎士長「…黒髪幼女、旅っつーのは何か楽しむモンも必要だ。何か食べたくないか!?」

黒髪幼女「おなか、空いてない」

黒髪幼女「…」グゥゥ

騎士長「…」


黒髪幼女「…空いてない」

 
騎士長「はは…。馬車に乗る前に、俺が腹減ったから…たっぷり美味いモンでも食ってから行くか!」

黒髪幼女「…」

黒髪幼女「…」コクン


騎士長「はは、子供は素直が一番可愛いんだぜ?」

黒髪幼女「…」


騎士長(引き受けた以上、本気でやってやるさ。王宮の…騎士長としての責任だ)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
店主「元騎士長な」ワハハハハ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

騎士長「うるっせぇぇ!!」

黒髪幼女「!?」ビクッ


騎士長(…く、くそっ!)

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 レストラン 】


…パクパクパクッ

黒髪幼女「…」ハムハム


騎士長「…」

黒髪幼女「…」モグモグモグ…

騎士長「…」

黒髪幼女「…」ゴクンッ!

 
騎士長「…美味かった、か?」

黒髪幼女「…」コクン

騎士長「顔ついてるぞ」ゴシゴシ

黒髪幼女「…んっ」


騎士長「よっぽど腹減ってたんだな。奴隷ん時…食べさせて貰えなかったのか?」

黒髪幼女「毎日…、パン、少しだけ」

騎士長「…ひでぇな」

 
黒髪幼女「泣くといつも怒られた。鞭で殴られて…ぶたれて…」

騎士長「…そうか」

黒髪幼女「…」


騎士長「なぁ…、辛いだろうが…どんな状況だったか教えてくれるか?」

黒髪幼女「…何が?」

騎士長「その、襲われた時の状況だとか…色々だ」

黒髪幼女「…わかった」コクン

騎士長「…」

  
黒髪幼女「夜、トイレに行きたくて目が覚めてね…お父さんがいないのに気づいて…」

騎士長「…」

黒髪幼女「そしたら、外でお話してる声がして…、窓から覗いたらお父さんとさっきの奴隷商人がいて…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
父親「…手はず通りに頼む」

奴隷商人「くくく、任せてくださいよ」

父親「…手荒なことはしないでくれ。俺はもうここから離れなければならない」

奴隷商人「わかってますぜ。安心して、村を離れてください」ニタニタ

父親「…特に、俺の娘は特に大事にな」

奴隷商人「はいはい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
黒髪幼女「そのあと、お父さんはどこかに行っちゃった。そしたら…、村で火事があって…」

騎士長「奴隷商人と、あの傭兵らが襲ってきた…と」

黒髪幼女「…」コクン

騎士長「だが…あいつらは親父との約束は守らず、お前を殴るは殺人はするわ…だったわけか」

黒髪幼女「…」

黒髪幼女「…」グスッ…ポロポロ…


騎士長「…悪かったな、辛いことを。…だが、一つ腑に落ちないことがある」

黒髪幼女「腑に落ちない…って何?」

騎士長「あ~…納得がいかないことがあるって事だ。お前の親父が村を襲わせる理由があったのかってことと…」

黒髪幼女「うん」

 
騎士長「手荒な真似をするなっていう事。襲わせる以上、別に気にしなくてもいいだろう?」

黒髪幼女「…」


騎士長(それとも、やっぱり同じ村の民だったし…裏切るのは心が痛かったってことか?)

騎士長(そもそも…売るだけなら親父に金が入るはず。なのに、逆に報酬を払ったって言ってたな…)

騎士長(つーことは、襲わせる理由があったはず。一体…)


黒髪幼女「…!」ハッ

黒髪幼女「…」ジー

騎士長「…ん?」

 
黒髪幼女「…な、何でもない」プイッ

騎士長「お前…何見てたんだ?」チラッ


"【北の大地の恵みを生かした…チョコレートパフェ!!大好評販売中!】"


黒髪幼女「…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」

騎士長「店員さーん!チョコレートパフェ1つ!」

黒髪幼女「!」


騎士長「遠慮するこたぁねぇ。食いたいなら食えばいい」

黒髪幼女「あ…ありがとう…」

 
騎士長「子供のうちから遠慮とか覚えなくていいぞ」ワシワシ

黒髪幼女「…」

騎士長「…あと、風呂入ろうか。砂漠地方に向かう前に…その汚れた服もなんとかしないとな…」

黒髪幼女「…」


騎士長「いまさら時間もたってるわけだし、急いでも無駄だろう。万全に整えたほうがよさそうだ」

黒髪幼女「…」

騎士長「陽も落ちてきたようだし、出発は明日にしよう。今日は俺の家で休んでから出発しようか」

黒髪幼女「騎士長の、おうち?」

騎士長「そうだ。そりゃ俺はこの国に住んでるからな」

黒髪幼女「わかった」

 
騎士長「意外と広いんだぜ?子供の服はないから…、途中で買っていくかぁ」

黒髪幼女「私、この服でも…」

騎士長「ボロボロなままはさすがに…な。そのくらい遠慮するな」

黒髪幼女「で、でも…色々…」


騎士長「お前は依頼者。お前の依頼は1つだけ…それ以外は俺に従え!」

騎士長「つーか、好きにしてって言ったのはお前だろ。だったら俺の言うことを聞けばいいんだよ」ハッハッハ


黒髪幼女「で、でもこういうの…いいの?」

騎士長「だから気にするなっつっただろう!…おっ、黒髪幼女…来たぞ!」ビシッ

黒髪幼女「え?」クルッ

 
カツカツカツ…
 
店員「お待たせしました、チョコレートパフェです」

…コトン

黒髪幼女「…!」キラッ

騎士長(おっ)


店員「では、ごゆっくり。失礼します」ペコッ

 
黒髪幼女「…いいの?」チラッ

騎士長「お前のもんだ。好きなタイミングで食えばいいよ」ハハハ

黒髪幼女「いただきますっ」

…パクッ


黒髪幼女「…」パァァ


騎士長(どんなに気が強そうに見えても…やっぱり女の子…。子供、だな)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして…騎士長の自宅 】

ガチャッ…

黒髪幼女「…お邪魔します」

騎士長「そんな固いこといいさ。それより、服…気に入ったか?」

黒髪幼女「うん、ありがとう」


騎士長「服屋の店員も、お前がどんな服も似合うから楽しそうにしやがってたな」

黒髪幼女「…?」

騎士長「着せ替え人形じゃねーっつーんだよな~」ポンポン

黒髪幼女「ん~…」

 
騎士長「それよか、風呂入るぞ。えーとタオルタオル…と」ゴソゴソ

黒髪幼女「…」

騎士長「あぁ、そこで座って待ってろ。準備するから」

黒髪幼女「うん」

トコトコ…ストンッ


騎士長「…寝る時の着替えは俺のでも…えーと…」ゴソゴソ

黒髪幼女「…」

黒髪幼女「…騎士長、さん」


騎士長「ん~何だ?騎士長でいいぞ」

 
黒髪幼女「き…騎士長、何でそこまで…してくれるの?」

騎士長「…ふむ」

騎士長「それはさっきも言った通り、俺が騎士…も、元騎士長だからとでもとっておけばいい」ピクピク


黒髪幼女「騎士長さん…だからなの?」
 
騎士長「まぁそれだけじゃなくて、俺の性格上の問題もあるんだろうがな」

黒髪幼女「…」

騎士長「子供を放っておけないっていうかな、縁ってのも信じるしまぁ…そうなったからそうなったんだ」ハハハ

黒髪幼女「そうなったから、そうなった…」

 
騎士長「俺も難しいことは分からん!」

黒髪幼女「…」

騎士長「まぁ今は、受けた依頼を完遂するまでさ。ほら、服を脱げ。シャワーで先に体洗いながら風呂をためるぞ」

黒髪幼女「そっか…。う、うん」

トコトコトコ…ガチャッ


黒髪幼女「…」

ゴソゴソ…パサッ…


騎士長(…本当に人形みたいだな。そして小さい…こんな子供に酷い思いを…。胸糞すぎるぜ…)

 
黒髪幼女「…脱いだよ」

騎士長「お、おう…って!!お前背中見せてみろ…!」グイッ

黒髪幼女「あうっ」


騎士長「…っ!」

黒髪幼女「…」

騎士長「何てキズ跡だ…。ひ、酷過ぎる…鞭で叩かれていたからか…」スッ

…ズキッ

黒髪幼女「…っ!」


騎士長「あっ、す、すまん。痛かったか」

黒髪幼女「ううん…大丈夫…」

 
騎士長(このまま風呂入ったら染みて痛そうだな…)

騎士長「ちょっと待ってろ、確か…」ダッ

タッタッタッタッタッタ…ゴソゴソッ…ガターン!!

黒髪幼女「!」ビクッ


タタタタタッ…

騎士長「はぁはぁ…あったあった。キズがひどいのは背中と…首筋か。動くなよ」

黒髪幼女「?」

騎士長「生傷とかに効く薬だ。少し麻痺する成分が入ってて、水にも強くなる高い薬なんだぜ?」

騎士長「風呂に入っても痛くはなくなるだろう。さすがに思いっきりは洗えないだろうが」

 
ヌリヌリ…

黒髪幼女「…」

騎士長「すぐに効くと思うぞ。普段からキズばっか負ってる生活だったから、必需品なんだよ」

…パァァッ

黒髪幼女「あ…、痛みが…」

騎士長「なっ?さて、風呂だ風呂!」


黒髪幼女「…うんっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゴォォォッ…

騎士長「風呂気持ちよかったろ?これは風魔法を応用した、カラクリ用品だ。髪の毛が乾くのも早いぞ~」

黒髪幼女「少し温かくて気持ちいい」パサパサ

騎士長「風邪引くと困るしな」

ゴォォ…

騎士長「本当に最近、良いカラクリ用品がよく発明されてなぁ」

黒髪幼女「…カラクリ用品って何?」

 
騎士長「そうか、まだ余り出回ってない地域もあるんだな」

黒髪幼女「うん、聞いた事ない」

騎士長「魔法を封じ込める技術があるんだが、それを放出させる技術のことだ」

黒髪幼女「…うーん、わかんない」


騎士長「お前の住んでた所、夜の明かりはまだ火明かりだったか?」

黒髪幼女「うん。あと月が綺麗だったよ」

騎士長「じゃあ、今、天井に付いてる"電灯"からの明かりを見るのは初めてだろう」

黒髪幼女「うん…何でこんなに明るいの?」

 
騎士長「さっきの仕組みと一緒で、雷の魔力を溜めておいて、暗闇で放出させてるんだ」

黒髪幼女「…?」

騎士長「数日に1度、チャージする業者みたいなのがいてな…それが月の支払いがそれなりに大変で…」ハァァ

騎士長「自分の魔力もやれればいいんだろうが、普通は不可能で。それを可能にするのがカラクリの…」ブツブツ


黒髪幼女「…??」


騎士長「…まぁ、不思議な技術ってことだ!」

黒髪幼女「そうなんだ」

騎士長「…お、おう。風呂上がりだし…牛乳でも飲むか?」

黒髪幼女「うん」

 
騎士長「よーし、そこのソファで待ってろ。入れてくる」

黒髪幼女「わかった」

タタタタッ…ストンッ


騎士長「さーて、ミルク…ミルク…と」

ゴソゴソ…カランカランッ

トプトプッ…

騎士長(普段は俺一人だから、こういうのもなんか新鮮だな)

 
…ピチョンッ

騎士長「お、丁度1杯分か。うっし、黒髪幼女…牛乳飲め…」クルッ


黒髪幼女「…」スヤッ

騎士長「…あら」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「…ま、そうだよな。疲れてるもんな…、牛乳は俺が飲みますかーっと」

グビッ…グビグビ…

騎士長「ぷはっ。はぁ…さて、寝室に運んで俺は明日の準備でもしておきますかね…」

トコトコトコ…ヒョイッ

 
黒髪幼女「…」クゥクゥ

騎士長(…少しは、ゆっくり休めてるようで良かった。そうじゃなかったら寝るなんて事、ないもんな)

トコトコトコ…ギィィ…バタンッ…


騎士長(よいしょっと…)

…ゴロンッ、パサッ

黒髪幼女「ん~…」

騎士長(毛布もしっかりかけたし…俺は準備しに…)

…グイッ!

黒髪幼女「…」ギュ…

騎士長「んっ?」

 
黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「…服を、離して頂けませんかね黒髪幼女さ~ん」ボソボソッ

…グイッ…ギュゥゥ…

騎士長「…」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「…はは、仕方ない。準備は明日でいいか…」

…ゴロンッ


騎士長「お休み~…」

黒髪幼女「ん…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日の更新はここまでです。ありがとうございました。
一部の誤字等は後日修正します。

>>42
更新日時に関しては、ようやく多忙も少し落ち着いたので
従来通り毎日更新に変更(19時30分予定)です。

それでは失礼致します。

乙です♪

やっと追いつけました(^-^;
個人的には、冒剣士、女メイジ、孤高の繋がりの今後が知りたいですσ( ̄∇ ̄;)

皆様ありがとうございます。投下致します。
>>94
ご意見有難うございます、まだ何ともいえませんが
期待せずお待ち下さいっ。

 
…カーンカーン!!

「火の手が南側から!!」

「だ、誰かが村を襲ってるぞぉぉ!」

「逃げろ…うわあっ!」

「きゃあああっ…!」


バキィ!!グサッ…

「た…助け…」

 
…カーンカーン!!

「火の手が南側から!!」

「だ、誰かが村を襲ってるぞぉぉ!」

「逃げろ…うわあっ!」

「きゃあああっ…!」


バキィ!!グサッ…

「た…助け…」

ドサッ…ザッザッザッザッ…

「ふはは、やりがいのない仕事だと思ったが、中々快感だな」

…ゴォォォッ…パチパチッ…

「やべえ、俺らも燃やされる前に、早く奴隷車に村人つめろ!」

タッタッタッタ…ピタッ

「ん?…おい、そこに誰か隠れてるのか?」


黒髪幼女「!」


「なぁんだ、可愛い子だな…ほら、こっちおいで…」

…グググッ…

黒髪幼女「…っ!!」

 
「逃げるなよ…優しくしてあげるからほ~ら」

「おい、そいつはさっき俺らの仕事をくれたやつの娘だ、"少しだけ"丁重に扱ってやれ」

「あ、そうなんだな。じゃあ…少しだけ優しくしよう。少しだけな」ハハハ

スッ…

黒髪幼女「や…」


「ははは!さ~…捕まえたぜ…」グイッ!!


黒髪幼女「や…嫌…!」


……
………

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・朝 】

…ガバッ!

黒髪幼女「…嫌だっ!!」

黒髪幼女「…っ」ハッ


騎士長「…おはよう、黒髪幼女」

黒髪幼女「あっ…」ハァハァ

騎士長「怖い夢を見たんだな…。落ち着け…大丈夫だ、ここには怖い奴はいない」

 
黒髪幼女「あ…あう…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」ブルッ

騎士長「…黒髪幼女」

黒髪幼女「…なに?」

…グイッ…ギュウッ!

黒髪幼女「!」


騎士長「親父とは違うだろうが、抱きしめて…こうすれば少しは落ち着けるか…?」

騎士長「俺は…子供と遊ぶとか…付き合った経験がほとんどないから分からないんだ」

騎士長「だから、今…苦しむお前を見て…どうしたらいいか分からない。こうして抱きしめることしか…すまんな…」


黒髪幼女「な…何で…、騎士長が謝るの…?」

騎士長「さぁな…俺もよく分からん!」ハハハ

黒髪幼女「…っ」

 
騎士長「そうなるから…そうなったんじゃないか」ニカッ

黒髪幼女「…騎士長」グスッ

騎士長「ん?」

モゾモゾ…グリグリッ


黒髪幼女「ごめんなさい…もうちょっとだけ…」

騎士長「あぁ、気の済むまで…な」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カチャカチャッ…ジャアアッ…

騎士長「美味かったか?俺のお手製の、朝ごはん」

黒髪幼女「うん、美味しかった」

騎士長「昨日のレストランのチョコレートパフェとはどっちが美味かった?」

黒髪幼女「えっ…えと…その…」モジッ


騎士長「はははっ、悪い悪い。チョコレートパフェのほうが甘くて美味しいよな~」

黒髪幼女「うぅ…」

騎士長「出発前の準備で食料も一応買ってくし、チョコレートなんかも買っていくか?」

 
黒髪幼女「ちょこれーと…買ってくの?」

騎士長「それか…チョコレート以上に食べたいのとかあるか?何でもいいぞ」

黒髪幼女「じゃあ…パ、パンとか…」

騎士長「…パン?」


黒髪幼女「私の住んでた所で、いつも焼きたてのパンと果物を合わせたみたいなの…食べてて…」

騎士長「…あ~…待て。ちょっと待て」

黒髪幼女「?」

騎士長「聞いた事あるぞ…確か…」


黒髪幼女「バスプーサ」

騎士長「バスプーサ」


黒髪幼女「!」

 
騎士長「だよなぁ…。そうだとは思った」

黒髪幼女「知ってるの!?」

騎士長「一応、知ってることは知ってるが…ありゃパンじゃないんだ」

黒髪幼女「え、パンじゃないの?」


騎士長「どっちかっていうとケーキだな。これに近いのはあるが…日持ちしないだろうな~」

黒髪幼女「そっか…」

騎士長「…なぁに、すぐに砂漠街で食べれるさ。確かバスプーサは砂漠地方の…有名な伝統のお菓子だったはずだ」

黒髪幼女「そうなんだ」

騎士長「そうさ。それまでは少しだけ、別ので我慢してくれな」ハハッ

黒髪幼女「うんっ」

 
騎士長「さて…そろそろ行くとするか?」

黒髪幼女「わかった」

騎士長「馬車でまず南側の港まで行って、船に乗って行こう」

黒髪幼女「お船…、私、来るとき…お船に乗ってないよ?」

騎士長「遠回りに通ってきたんだな。だけど、早いほうがいいだろうし、快適な海の旅を~ってね♪」

黒髪幼女「…うん」


騎士長「客船で一晩…いや、二晩くらいか。乗り物酔いとかは大丈夫か?」

黒髪幼女「うん」


騎士長「まぁここでウダウダ言っても仕方ない。…とりあえず出発しないことには始まらないか」

騎士長「んじゃ、まずは馬車乗り場に行くか」

黒髪幼女「わかった」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 馬車乗り場 】

パカッパカッ…

馬車乗り「おーい!こっちですよ!」

受付員「3番乗り場、発車いたしまーす!準備してください!」

ワイワイ…ガヤガヤ…


黒髪幼女「…!」

騎士長「はは、びっくりしたか?」

黒髪幼女「すごい人…」

 
騎士長「ここから世界へのあらゆる流通事業として展開してるからな。賑わってるだろ?」

黒髪幼女「よくわかんないけど…すごい人が多い」

騎士長「とりあえず、凄い所ってことだ」

黒髪幼女「凄い所なんだ…」


騎士長「俺らが乗るのは7番乗り場。南側の港まで直行便だ」

黒髪幼女「もう乗るの?」

騎士長「いや、近くに物販店があるから保存食とか食料品を少しだけ買っていく」

黒髪幼女「少しだけでいいの?」

騎士長「あとは港とか、砂漠街に向かう前に追々と買ったほがいいしな」

黒髪幼女「うん」

 
騎士長「ん~じゃあ、馬車の中で食う昼飯も何か買っていかないとなー」

黒髪幼女「…」

騎士長「バスプーサか…、さすがにこの辺じゃ売ってないだろうしなぁ」

黒髪幼女「何でもいい」

騎士長「バスプーサ…やっぱり砂漠地方まで作り手もいないだろうし…いつもの所で買うか。こっちだ」

黒髪幼女「うん」


タッタッタッタッタ…ガチャッ!

騎士長「おーい、いるかい」

弁当屋「はいよー…って、騎士長サンじゃないか」

騎士長「よっ、久しぶり」

 
黒髪幼女「知り合い?」

騎士長「度々、遠征に行く時はここを利用してたからな。顔なじみなんだ」

黒髪幼女「そうなんだ」


弁当屋「あれっ、騎士長さん!まさか…娘!?」

騎士長「違う違う、ちょっとした知り合い…みたいなもんだ」

弁当屋「なんだよビックリした。で、馬車乗り場って事はまた仕事かい?今回はどこまで?」

騎士長「ちょっと遠出なんだ」

弁当屋「そうなのかい。じゃあ、弁当は何にする?」

騎士長「ん~…日替わりだとか、オススメは?」

 
弁当屋「日替わりは焼肉弁当。オススメは少し前に新作で出した、ご当地弁当かな」

騎士長「ご当地…なんだそりゃ」

弁当屋「世界の食べ物を、2週間単位で限定でまわして販売してるんだよ」

騎士長「…ほう、今のご当地弁当はなんだ?」

弁当屋「今は北の大地の恵み、高級魚を使ったお魚弁当だね」

騎士長「なんだそうか…」


弁当屋「何か不満そうだね。どうかしたのかい」

騎士長「いや~実はな…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

弁当屋「…え?砂漠地方のお菓子…バスプーサも含めた弁当はできるよ?」アッサリ

騎士長「何だって!」

黒髪幼女「!」


弁当屋「ちょうど、明日から入れ替えでね。砂漠地方の伝統料理をモチーフにしようとしてたんだ」

弁当屋「だから材料はもうあるし、今日の夜から作り置きしようとしてたしね」


騎士長「じ、じゃあ頼めるか?2つ。多少高くてもいいぞ」

弁当屋「ははは、やだな。別にいつもの値段でいいよ」

 
騎士長「よかったな!黒髪幼女!」

黒髪幼女「うん…!」

騎士長(少しずつだけど、元気にはなってきたかな)


弁当屋「じゃあ、2つでいいんだね?」

騎士長「頼んだ」

弁当屋「そうなると作り置きはないから…今から作るし、ちょっとだけ時間もらうよ」

騎士長「どうせ7番線の出発は2,3時間後だ。その間、近くの物販店をいろいろ見てくるさ」

弁当屋「はいよ~」

騎士長「んじゃまた後で」

弁当屋「ほいほい」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…

騎士長「良かったな」

黒髪幼女「うん」

騎士長「さて、時間もあるし…整えるものも弁当くらいだしなぁ」

黒髪幼女「装備…武器とかはいいの?」

騎士長「あぁ、どうせ使う機会も少ないだろう。今持ってる王宮の備品で充分だと思うぞ」

黒髪幼女「充分なんだ」


騎士長「ま~武器はいいとして…ん~…」チラッ

"ショップ・旅人ウェア"

騎士長「…よし!」

 
黒髪幼女「どうしたの?」

騎士長「こっちだ、お前にいい物を買ってやろう」グイッ

黒髪幼女「わ、私にいい物…?」


タッタッタッタ…ガチャッ!!ガランガランッ…

騎士長「ここだ」ニカッ

黒髪幼女「…服屋さん?」

騎士長「こういう乗り場では、洋服っつー珍しい服を扱っていてな。旅に行くならお洒落も必須だろ!」

黒髪幼女「で、でも…私、昨日…服買って貰ったよ?ほら…今着てるし…」

騎士長「そういうのじゃなくてなぁ」

黒髪幼女「?」

 
騎士長「えーっと…子供服コーナー…」キョロキョロ

黒髪幼女「…」

騎士長「あった、こっちだ」

トコトコトコ…


騎士長「見ろ!昨日よりも、可愛い服がいっぱいあるだろ!」

黒髪幼女「!」


騎士長「さぁ、好きなのを選べ!!」ハハハ

黒髪幼女「…え、えっ」アセッ

騎士長「…ないか?」

黒髪幼女「そ、そうじゃないけど…突然で…あの…」

 
騎士長「あ、あぁ…そ、そうだよな」

黒髪幼女「何で…急に服…なのかなって。それに、色々ここまでしてくれるなんて…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」


騎士長「…子供がそういう事を気にするなって言ってるだろ。それに、昨日説明したはずだが?」

黒髪幼女「で…でも…」

騎士長「お前はさ…今日という時に、こういうチャンスを得たってだけだと思うぜ」

黒髪幼女「チャンス?」

騎士長「この世はな、生きてる限り幸運と不運が付きまとう。わかるか?」

黒髪幼女「うん…なんとなく」

騎士長「生きている今、この瞬間も、お前には偶然だの…運命だの色々な事が渦巻いてる」

黒髪幼女「…」

 
騎士長「こんな事を言うのが気はひけるが…いいか?」

黒髪幼女「うん」

騎士長「お前が、奴隷にならなかったら…。この王国で、あの時間にあの酒場に来なかったら…この瞬間はなかった」

黒髪幼女「…」


騎士長「ま、まぁなんだその…俺が王国をク…クク…、クビにならなければ…」ピクピク

騎士長「お前は別の奴と会ってたのかもしれん。それこそ、お前を物としてしか見ない奴とかな」

黒髪幼女「…うん」


騎士長「その偶然が重なり、運命となって、今…お前はお洒落な服を手に入れる事ができるということだ!」

騎士長「人生ってのは、偶然に偶然で、それがチャンスを生む」

騎士長「確かに謙遜だのも大事だが、受け取れるものは受け取っておくのも…悪くないんだぜ?」ニカッ

 
黒髪幼女「…」

騎士長「だいぶはしょったが…難しいか?まぁこれは俺の人生論みたいなもんだしな」ポリポリ

黒髪幼女「とにかく今は…遠慮するなってこと…?」

騎士長「そうだぜ!」ハハッ


黒髪幼女「…」

騎士長「それにな…」スッ

…ナデナデ

黒髪幼女「んっ」


騎士長「俺だって、お前みたいな子の話を聞いて、元気にさせてあげたいとは思える大人なんだ」

騎士長「俺のワガママでもあるが、お前に少しでももっと元気になってほしいからさ」

 
黒髪幼女「…私に元気に…」

騎士長「…まぁ、大人の責任ってやつもある。子供は大人が引っ張らないで、どうするんだって話だ」

黒髪幼女「…」

騎士長「同じ大人として、お前の面倒を見る責任もあるってことさ」

黒髪幼女「色々助けてくれて、優しくしてくれるのは…それも、王国の"騎士長"だから…?」

騎士長「いや、ここまで来ると俺は単に面倒見がいいっつーか…人が良すぎるのかもしれんがな」ハハハ


黒髪幼女「…」

騎士長「ってなわけで、好きなのを選べ!目いっぱいお洒落しようぜ!」

黒髪幼女「…うんっ」

 
トコトコトコ…ガサガサ

騎士長「これなんてどうだ?フリフリで可愛いじゃないか」スッ

黒髪幼女「ピンクは派手だよ」

騎士長「む…そうか。ならばこっちはどうだ?最近ちまたで話題の"ゴスロリ"とかいうやつらしい」

黒髪幼女「なんか…凄い服だね」

騎士長「ぬぬ…、じゃあこれはどうだ!」スッ

黒髪幼女「紫色の蝶々の絵の服…だね。可愛いけど…」

騎士長「気に入らないか…う~ん、何色が好きとかあるか?」

黒髪幼女「…わかんない。騎士長が気に入ったのを選んでくれたら、うれしい」


騎士長「そうか。なら…これだぁっ!!」

トコトコトコ…バッ!!!

 
黒髪幼女「!」

騎士長「…どうだ?派手過ぎず…中々いいと思うんだが」

黒髪幼女「うん、可愛いと思う…!」

騎士長「お前にぴったりだと思うぞ!」

黒髪幼女「そ、そうかな…?」


騎士長「試着室で着て来い。サイズもたぶん合ってると思うが一応な」

黒髪幼女「わかった」

タタタタタッ…


騎士長「よし…店員さーん!」

店員「はーい!」

 
騎士長「今のやり取り見てたかな?今、子供が着てたのと、子供用の下着とかもほしいんだがー…」

店員「はい、準備致します、えーと何着ご用意しますか?」

騎士長「下着は5もあればいいか?それと、さっきの試着させてた服も合わせて値段出してくれ」

店員「目安ですが、下着が2500ゴールドです」

騎士長「ふむ」

店員「それと、先ほどのお洋服…。お子様の服は"10万ゴールド"になります」

騎士長「わかった10万ゴールドな…って!何っ!?」

店員「10万ゴールドです」

騎士長「じゅ…10万ゴールド!?」

 
店員「あちらの布には、天然ものの魔物、"アラクネ"が生み出す最高級糸が使われております」

騎士長「は…はぁ…」

店員「いかがなさいますか?」

 
騎士長「ちょ…ちょっとそれは考え…」

ガラッ!!タタタタタッ…

黒髪幼女「…騎士長」

騎士長「んおっ」

黒髪幼女「服…ぴったりだった。可愛い…似合う…かな?」

騎士長「お、おう!似合うな!すっげえ可愛いぞ!」

黒髪幼女「そ…そうかな?ありがとう…、騎士長」ペコッ


店員「…いかがなさいますか?」

騎士長「…ください」

店員「毎度あり~♪」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…

騎士長「よかったな…く、黒髪幼女…」ハハ…

黒髪幼女「顔がなんか引きつってるよ…大丈夫…?」

騎士長「大丈夫大丈夫…それより弁当が出来たか見に行こうか…」

黒髪幼女「うんっ」


…ガチャッ

騎士長「おーい弁当屋~」

弁当屋「おっ、来たな。一応出来てるぞ」

  
騎士長「お、ありがとよ」

弁当屋「それとこれは…サービスだ。食べ歩き用のテイクアウトは普段やってないんだからな?」

スッ…ホカホカ…

黒髪幼女「ばすぷーさ!!」


弁当屋「祖国の味というわけにはいかないだろうが、だいぶ頑張った。食べてみてくれ」

騎士長「お前、この子が砂漠地方の出だってわかったのか?」


弁当屋「そりゃバスプーサだの、この子の薄く褐色がかった肌…。そして人形のような可愛らしさ」

弁当屋「逆に気づかないほうがおかしいと思うぞ?砂漠地方はアレで有名になった地域だしな…」

騎士長「…奴隷問題、か」

弁当屋「まぁな。ってなわけで、食べながら行けばいいさ。これはサービスだ」

 
騎士長「…ほら、黒髪幼女。出来立てで熱いから…気をつけて食べるんだぞ」

黒髪幼女「うん…ありがとう、弁当屋のおじさん」

弁当屋「うむ」


騎士長「準備はこれで終わったし、あとは馬車に乗るだけだな!」

弁当屋「気をつけてな」

騎士長「大丈夫だって。それじゃ、な」ハハハ

弁当屋「おう」

 
騎士長「さて…黒髪幼女。今度こそ、旅の始まりだ!」

黒髪幼女「うんっ」

騎士長「何があるかは分からん。しっかりと俺を信じて…着いて来いよ」

黒髪幼女「うん、わかったっ」


騎士長(さぁて…どんな展開が待ち受けるか!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

ありがとうございます。投下いたします。

 
2人は馬車に乗り

幾時間後の間、ユラユラと馬車に揺られて

港へと向かった――…
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 港付近の道 】


パカッ…パカッ…

馬車使い「この度も、当王都馬車をお使い頂きましてありがとうございました」

馬車使い「まもなく…南港前ー…南港前ー…」


騎士長「…」パチッ

騎士長「…お、いかん…すっかり寝てた」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「黒髪幼女、黒髪幼女」

…ユサユサ

黒髪幼女「ん~…」パチッ

 
騎士長「起こして悪いな。もうすぐ着くぞ」

黒髪幼女「う~…うん…」ムニャッ

騎士長「…黒髪幼女、そこの隙間から外を見てみな」

黒髪幼女「?」

モゾモゾ…シャッ

黒髪幼女「えっ!?」ピクッ


騎士長「ははは、変わった形の木だろ。見たことあるか?」

黒髪幼女「ない…。何か、変な形…」

騎士長「ありゃこの辺が海に近いから、割と強い風が吹くから…それに準じた形になるんだ」

黒髪幼女「へぇ~…ぐにょぐにょ…」

 
騎士長「"マツ"だかなんだか、忘れたけどな」

黒髪幼女「へ~…」

…キラッ

黒髪幼女「…あの木の隙間から見えるのは…何?何か光ってる」

騎士長「あれが海さ。まだ遠いが、着いたら砂浜もあるだろうし出発まで見に行こう」

黒髪幼女「…凄い大きそう」

騎士長「大きいってもんじゃないさ。まぁ楽しみにしておけ」ハハハ

黒髪幼女「う、うん」

 
パカッ…パカッ…ズザザ…

馬車使い「え~…南港。南港に到着致します」

馬車使い「到着後、船に乗る方々はチケット売り場からどうぞ~…」


騎士長「おし…降りるぞ」

黒髪幼女「わかった」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 南 港 】

ガヤガヤ…ワイワイ…


黒髪幼女「わぁ~ここも人が多いね」

騎士長「この辺も一応、世界への貿易だの旅人が旅立つ場所だからな」

黒髪幼女「へぇ~…」

騎士長「海を見に行く前に、チケット売り場に行かないとな。えーと…」キョロキョロ


タタタタタッ…ドシンッ!!

騎士長「いてっ!」

 
男A「ああぁ、申し訳ありません!」

男B「ばか、何してんだ!」

騎士長「ってぇ…前をきちんと見てくれよ」

男A「はい、すいませんでした」

男B「バカなやつなんでね。早く行くぞ!遅れたらどうするんだ!」ダッ

男A「あ、待ってくれよ!」

タッタッタッタッタッタ…


騎士長「…何だあいつら?」

黒髪幼女「なんか急いでたみたいだね」

騎士長「まぁいいや、チケット売り場はこっちだな」

 
トコトコトコトコ…ピタッ

騎士長「おーい、すいません」

受付「はいどうぞ」

騎士長「砂漠街…砂漠港行きの船に乗りたいんですが」

受付「ただいま、砂漠港行きの船は出航済みです。次の出航は3日後となっています」

騎士長「何だって!?」


受付「申し訳ありません」

騎士長「そ、それなりに急いでるんだが…」

受付「砂漠港に直接往復はしませんが、本日出航するワールドクルージング船なら一時、補給に着港予定とはなっています」

騎士長「…高級船か?」

受付「交易ルートを借りて、高速でかつ快適に海を楽しむツアー船ですので…」

 
騎士長「一応、砂漠港でも降りられるのか?」

受付「可能ではあります。ですが、本来はそちらの予定ではないので、料金は非常に高くなりますよ」

騎士長「いくらだ?」

受付「乗船料がお一人15万、二等客室が8万、一等客室が15万になります」

騎士長「…」

受付「…」

黒髪幼女「…?」


騎士長「そ、それなら空いてる…か…?」ピクピク

受付「空きはございます。出航は本日…まもなくとなっています」

騎士長「わかった…二人頼む…一等客室でな!」

受付「わかりました。では、今チケットのご用意を致しますね」

 
黒髪幼女「…騎士長、大丈夫なの?」

騎士長「余裕だ。金だとか、色々なのは余裕なんだが…何か納得いかない展開が多くてな」ハァ

黒髪幼女「…?」

騎士長「はは、気にするな…ん?」

…ザワザワ

騎士長「なんかあっち側騒がしいな」チラッ


男A「…だからっ!」

男B「お前は…!!」


騎士長「あいつらはさっきの…、何騒いでるんだ…?」

黒髪幼女「さっきぶつかった人たちだね」


男A「…わかったよ」コクン

男B「ほら、行くぞ…」ダッ

タタタタタタッ…

 
騎士長「あ、どっか行った」

黒髪幼女「?」

騎士長「まぁ…気にする必要もあるまい。受付さん準備はできたかい?」


受付「それでは…こちらになります」

ゴソゴソ…スッ

受付「一等客室のご案内になります。ありがとうございました」ペラッ

騎士長「ありがとう。出航まで時間があるって言ってたな?」

受付「少しではありますが、ございます」

騎士長「海はあっち側でいいんだったよな?」

受付「そうですね」


騎士長「ありがとう。よし、黒髪幼女…海見にいくぞ!」ダッ

黒髪幼女「うんっ」ダッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザザーン…

黒髪幼女「…!!」

騎士長「いやー、海も久しぶりだな。潮風がいい香りだ」

黒髪幼女「お…お水がいっぱい…!」

騎士長「…ん?」

黒髪幼女「凄い…!!」

 
騎士長「どうした?…海、初めて見るのか?」

黒髪幼女「うんっ…!」

騎士長「ハハ、なら感動モンだろ。この広い湖は、どこまでもどこまでも繋がってるんだぜ」

黒髪幼女「そうなの!?」

騎士長(おっ、急に元気に食いついてきたな)


黒髪幼女「そうなんだ…、じゃあ私の村にも…繋がってるの?」

騎士長「あぁ、お前のいた大陸へも繋がってる。そして今から、この海を船で渡るんだ」

黒髪幼女「そっかぁ~…」

騎士長「…はは」

 
黒髪幼女「この少し…変な匂いは何?」ツン

騎士長「それが潮風っつーんだ。そのまんま、塩の匂いさ」

黒髪幼女「何で塩の匂いがするの?」


騎士長「そりゃお前、海が…」ハッ

騎士長「そうだ…黒髪幼女~…」ニタアッ


黒髪幼女「何?」

騎士長「ちょっと、そこの砂浜から…水に指をつけて舐めてみな」

黒髪幼女「飲めるの…?」

騎士長「そんな害のあるもんじゃないさ、少しだけな」

黒髪幼女「わかった」

ザッザッザッザッザ…ストンッ


黒髪幼女「…」ペロッ

 
騎士長「…」

黒髪幼女「う゛…う゛ぇ゛…!」


騎士長「はっはっはっは!」

黒髪幼女「しょ…しょっぱい…」

騎士長「悪かったな、海っていうのは凄くしょっぱいんだ。塩が溶けてるからな」

黒髪幼女「塩…って、あの塩?」

騎士長「そうだ。お前が普段から口にする塩も、この海から採れるもんなんだぜ?」

黒髪幼女「…何で、塩が海に溶けてるの?」

騎士長「えっ…さ、さぁ…」

 
黒髪幼女「わからないの?」

騎士長「そ、そこまでは…」

黒髪幼女「…」ウーン


騎士長「そ…そうなるからそうなってるんだよ!」

黒髪幼女「そ、そうなんだ」

騎士長「…おう!」

黒髪幼女「そっかぁ…そうなってるから…そうなんだぁ…」

騎士長(まぁ普通の人はそうそう知らないだろうし、それで良いんだそれで!)ウンウン


…ポォォォォ!!

騎士長「…あ」

黒髪幼女「今の…お船の音?」

 
騎士長「やべえ、道草食ってたら船に送れちまう!」グイッ

黒髪幼女「わっ」

騎士長「しっかり掴まってろ、走るぞ~っ!」ダッ

黒髪幼女「わかった」ギュー


タッタッタッタッタッタッタッタ…

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 船の中・一等客室 】


ユラ…ユラユラ…

…バフンッ

騎士長「は~…一息つけた…」

黒髪幼女「お船の中なのに、広いお部屋」

騎士長「一等客室だからな~奮発したんだぞ」

黒髪幼女「いっとうきゃくしつ?」


騎士長「なんだその…凄いお部屋ってことだ」

黒髪幼女「そうなんだ」

 
騎士長「さっき聞いた話だと…天候にもよるが、早くて明日の夕方には到着するらしい」

黒髪幼女「うん」

騎士長「それまでは暇だな…船ん中色々あるらしいし、あとで探索してみるか?」

黒髪幼女「うん」


騎士長「だがちょっと色々慌ただしくて…疲れた…」フワァ

黒髪幼女「お昼寝する?」

騎士長「少しだけ…寝かせてくれ…」

黒髪幼女「わかった」


騎士長「その辺にお菓子とか、絵本みたいなのもあったから…適当に読んで…」

…ゴロンッ

騎士長「…」スヤッ

 
黒髪幼女「あ、騎士長?」

騎士長「…」スヤスヤ

黒髪幼女「…寝ちゃった」

黒髪幼女「お菓子…食べていいんだっけ…」

トコトコトコ…カサカサッ


黒髪幼女「…」パクッ

黒髪幼女「…」モグモグ…

黒髪幼女「…甘くて美味しい」ホウッ

 
黒髪幼女「…」

…コチ、コチ、コチ…

黒髪幼女「…」チラッ

騎士長「…」グーグー


黒髪幼女「…」

黒髪幼女「…」

スクッ…トコトコトコ…

黒髪幼女「こっちには、何があるんだろ」ガチャッ

 
黒髪幼女「トイレ…」

トコトコトコ…ガチャッ

黒髪幼女「…クローゼットに、お風呂場…」

トコトコトコ…ガチャッ

黒髪幼女「…こっちは廊下。後で騎士長と一緒に行くから部屋にいないと…」

黒髪幼女「あ…窓。海、見えるかな?」

トコトコトコ…

ギ…ギギ…ギィィィ…バタンッ!


黒髪幼女「うーん…窓が高くて見えない…。部屋で私も少し休もうかな…」クルッ

トコトコトコ…グイッ

 
黒髪幼女「ん、…えっ?」グイッグイッ

黒髪幼女「…あれ?」

黒髪幼女「んん…」ググッ…

黒髪幼女「あ…開かない…」


…カランッ

"オートロック"

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻・船の中 】


…ゴソゴソ…コソコソ…

男A「な、なぁ本当にやるのか?」

男B「いいじゃねえか、この船にバレずに忍び込めたのも天運だろうがよ」

男A「で、でもよ…」

男B「今更、何ビビってんだ!!」

男A「…だ、だよな…」


男B「簡単だろ、一等客室の奴をせしめて、金を奪うなんざよ!」

 
男A「でも、そう上手くいくかな。大体、この辺のは警備もガッチリしてるし」

男B「問題はそこなんだよな。オートロックだし、怪しい奴にはドアも開けやしねぇだろ」

男A「やっぱり計画に無理があったんじゃ…」

男B「うるせぇ!とにかく、一等客室には着いたんだ…あとは何かしらのチャンスがー…」


黒髪幼女「あ…開かない…」


男B「あったろ?」

男A「本当に…天運かも」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゴソゴソ…ムクッ

騎士長「ん~…ふわぁ…」

騎士長「…」ムニャッ

騎士長「黒髪幼女~…待たせたな…。ちょっと、寝すぎたかね」

…シーン

騎士長「あれ?黒髪幼女~…トイレか?」

トコトコトコ…ガチャッ

騎士長「…いない」

 
トコトコトコ…ガチャッ

騎士長「風呂場にもいない…か。隠れるところは他にないし…」

騎士長「…ま、まさか…」ヒクッ

騎士長「…冗談だろ、外に出たらオートロックだぞ!」

ダダダダッ、ガチャッ!!


騎士長「…っ!」キョロキョロ

騎士長「いない、どこかに行ったのか!?」

騎士長「くっそ…何てこった!と、とりあえずロビーに!」ダッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 客室ロビー 】

ダッ…ダダッ…

サポーター「…むっ」ピクッ

ダダダダダッ!!!

騎士長「うおおおおっ!」

ズザザザァ…!

サポーター「…、お客様。お走りにならないようにお願いします」

騎士長「はぁ、はぁ…。き、聞きたいことがある!」

サポーター「何でしょうか」

騎士長「このくらいの女の子…黒髪の薄ら褐色掛かった肌の子だ。見なかったか!?」

 
サポーター「迷子ですか?お預かりはしていませんが」

騎士長「そうか…クソッ!どこに行ったんだ!」

サポーター「船内放送で呼び掛けましょうか?」

騎士長「あぁ、頼む」

サポーター「わかりました、それでは」クルッ


騎士長「…」

騎士長「いや、待て!」ガシッ


サポーター「…はい?」

騎士長「もしこれが、万が一の事だったら困る!まだ呼びかけないでくれるか?」

サポーター「は、はぁ…」

騎士長「呼びかけるときは、もう1度来るから…それまではまだ呼びかけないでおいてくれ」

 
サポーター「か、かしこまりました」

騎士長「くっそ、黒髪幼女のやつ…どこ行ったんだ…甲板か…?」ダッ

ダダダダダッ…

サポーター「あっ、お客様!お走りにならないように…!」

サポーター「って、行ってしまわれたか…。はぁ…全く、最近のお客様はマナーの欠如がひどいですな」


トコトコ…

お客「…あの、お取込み中のようでしたが…ちょっといいですか」

サポーター「…はい、どうしましたか?」

お客「ちょっと、不審なお客が…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ザザーン…ヒュウウッ…

騎士長「…甲板、廊下、物販所、2階から1階、最上階…どこにもいねぇ!!」

騎士長「あとは客室だが…まさか一部屋一部屋開ける訳にも…」

騎士長「クッソ…!!」


ピーンポーン…

サポーター"「事務局よりお知らせ致します」"

サポーター"「先程、迷子を捜しにいらっしゃった方、おりましたら客室ロビーまでお越しください」"

 
騎士長「あ…?」

騎士長「俺のことか…?つーか、あれほどアナウンスかけるなっつったのによ…」

騎士長「っち…仕方ねぇ、見つかったのかもしれんし…」ダッ


ダダダダッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ガチャッ!!

騎士長「呼んだか?俺のことだろう」

サポーター「あ、いらっしゃいました。こちらのお客が、不審な人物を見たということで…」

騎士長「ん?」


お客「どうも」

騎士長「ど、どうも」

お客「一等客室の廊下で、1時間くらい前に…不審な人を見かけまして」

騎士長「不審な人だと?」

 
お客「乗る人数も少ないですし、大体は把握してるつもりだったんですが」

お客「その中で、どうも動きが怪しいというか…そういう人がいたんですよ」

騎士長「ふむ」

お客「それで、一応ご報告に…と」


騎士長「一等客室の…どのへんだ?」

お客「船頭側ですね」

騎士長「…俺の部屋の近くだ。そいつらに、女の子とか着いてなかったか?」

お客「いえ、ただの二人組みでしたよ。あ~…でも…」

騎士長「何だ?」

お客「"でっかい袋"を、男の1人が担いでましたよ」

騎士長「…何だと!」

 
お客「クリーム色のでっかいやつ…どっかで見たことある袋だったんだけどなぁ~…」

騎士長「思い出してくれ!もしかしたら、その中に俺の連れがいるかもしれないんだ!」グイッ

お客「むぐぐっ…!」

サポーター「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」


騎士長「む…すまん…」

お客「ごほごほっ…!まってくださいよ…えーと…」

騎士長「…っ」

お客「どこで見たんだっけかなぁ…えーと…ん~…」

騎士長「そ、そもそもクリーム色の袋ってどんなのか想像がつかんがな…」


サポーター「…あぁ、それに似てるのならありますよ」

サポーター「クリーム色の袋だったら、例えばああいうのとかですよ」チラッ

 
騎士長「部屋の隅っこにあるのも確かにクリーム色とはいえるな」

お客「ん…?あ、あれだー!!」

サポーター「えぇっ!?」

お客「色っていうか、あの袋ですよ!」

サポーター「ですがあれは、船のメンテナンスやらに積む袋ですよ?」

お客「で、でもあれですよ。見たんだ間違いない!」


騎士長「…サポートさん」

サポーター「はい?」

騎士長「この袋は、普通…どこに置いてあるんだ?」


サポーター「船の動力源の、カラクリ整備室…ですが…」

………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さん有難うございます。
スレがほとんど落ちてるようで、途中で落ちるかもしれませんが
投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 整備室 】

…ゴウン!ゴウン!

男A「整備室、うるさいね」

男B「でっけぇカラクリでこの船は動いてるからな。ま…いい隠れ家だろう。ほとんど人がこないしな」

男A「確かにいい案だとは思うけど」

男B「それより…袋、開けてみろ」

男A「あ、わかった」


ゴソゴソ…

 
黒髪幼女「…」ブルブル


男A「しっかり入ってるよ」

男B「ははははっ!天運、まさに俺らに有りだな」

男A「可愛い子だよね。どこの出身なんだろう」

男B「そりゃ砂漠地方の出だな。その種族の女自体に、すげー値打ちもあるんだぜ」

男A「そうなんだ。本当に…人形みたいだしね」

男B「まぁ、だからこそ砂漠地方で奴隷の売買が禁止されたんだけどな」

男A「どういうこと?」

 
男B「金持ち共が、その出身の美しい女や、子供、若い男性問わず奴隷狩りを行ってな。社会問題になったんだ」

男B「それを重く見た政府が、警備体制を固めて、発見次第重罰に処する法を打ち出したワケ」


男A「なるほど…じゃあ、俺らは結構やばいことやってるんじゃ…」

男B「誘拐した時点でやべぇな。だが、禁止されたことでその奴隷の価値は数百倍に値上がった」

男A「数百倍!?」

男B「覚えてるだけで末端価格は数千万ゴールドだ。それに…見ろ」グイッ

黒髪幼女「…っ」


男B「俺だって分かる。こいつぁ高くつくぜ…」ニタッ

男A「…ちょっと待って!俺ら、奴隷狩りしに来たわけじゃないでしょ!」

 
男B「あぁ…本当なら誘拐して金をせしめようとしたけど、やっぱり止めた」ニタッ

男A「えっ…まさか…」
 
男B「そいつを売った方が高いぜ。明日の夕方まで、ここで隠れてればわかりゃしないさ」

男A「で、でも…」


黒髪幼女(ま…また、奴隷に…なるの…?)


男B「何ビビってんだよ!!今更だろうが!」

男A「そ、そりゃそうだけど…」


黒髪幼女(嫌だ…もう、鞭で叩かれるのは…。殴られるのは…!)

 
男B「俺について来いよ。儲け話は尽きねぇぜ?」カカカ

黒髪幼女「…だ」

男B「…あ?」

黒髪幼女「嫌だっ!!もう、あそこには戻りたくないっっ!!!」


男B「!!」

男A「えっ!?」


黒髪幼女「騎士長…どこ!お父さん…どこなの…助けてよぉ!!」


男B「や、やべぇ…黙らせろ!!」

男A「ど…どうやって!?」

男B「その辺の縄とかで、口と両手…縛り上げろ!」

男A「わ、わかった!」

 
グイッ…グルグルッ…

黒髪幼女「いや…だぁ…」グスッ

男A「ちょっとだけでいいから、静かにしててね…」

黒髪幼女「う゛ぅ゛…」ムググ…


男A「ふぅ…びっくりした」

男B「…」ジッ

男A「…どうしたの?」

男B「ちょっと、お前に聞きたい事がある。首を振って答えろ」スッ

黒髪幼女「…っ」

 
男B「お前、さっき"戻りたくない"って言ったな。まさか…元、奴隷か?」

黒髪幼女「…」

男B「答えろっつってんだよ!」グイッ!

黒髪幼女「…」

男B「…無視か。無視なら無視なりに…無理やりでも分かる方法もあるんだが」

男A「ど、どうするの?」


男B「背中こっちに向かせるようにして、地面に倒せ」

男A「わ、わかった」

グイッ…ドサッ!

黒髪幼女「むぐっ!」

 
男B「…」

ビリッ…ビリビリビリッ!!


黒髪幼女「!」


男A「ちょっ、何してるの!」

男B「…やっぱり奴隷じゃねえか。っち…値下がるなこりゃ」

男A「え?どうしてわかるのさ」

男B「背中の傷だ。見ろ。これは鞭の傷跡だ」

男A「あ…」


黒髪幼女「…う…うぅ…」

 
男B「傷薬が塗ってあるか…、よっぽど大事にされる人間に"飼われた"らしいな」

男A「買われたって…」

男B「買われたじゃねえ、飼われただ」

男A「飼われた?」

男B「そうだ。よっぽどな物好きが、高値で買って一等客室で遊んでたんじゃないのか?」ハハハ!

男A「な、なるほど…こんな、いたいけな子を…」

男B「奴隷の存在意義なんて、女も、子供も全部そんなもんだ。若い男は主に労働用だがな」

男A「ま、まぁそうだけど…」


黒髪幼女(騎士長に買ってもらった…お洋服が…)グスッ…


男B「あ?何で泣いてるんだ」

 
男A「そりゃ、俺らが怖いからでしょう」

男B「今まで色々されてきたくせに、まだメンタルは弱いらしいな」ハハハ

男A「そりゃ子供だし…」

男B「だがまぁ…これでちょっと楽しめるな」ニヤ

男A「どういうこと?」

男B「俺らも遊ばせてもらおうぜ」

男A「え…」


黒髪幼女「…」グスグスッ…


男A「遊ぶって…」

男B「たまには趣向を変えてどうだ?どうせ何度も遊ばれてるんだろうよ」

 
男A「で、でもさ!」

男B「明日の夕方まで船はつかねぇ、目の前に遊び道具があるのに遊ばないで暇もつぶせないだろう」

男A「そ…そういうことじゃなくて…」

男B「まぁ、お前がやらないなら俺が遊ぶ。お前は見張りでもやってろ」

男A「…俺は遠慮しとくよ。見張りに回る」

男B「ちっ、根性なしめ。だがここじゃ声も漏れる。もう少し奥に運んでから…楽しく遊ぼうぜ…砂漠の子よ」ニタァ…

グイッ…トコトコ…


黒髪幼女「むぐ…むぐぅ~…!」ポロポロ

男B「別に泣く事じゃないだろうが。さ~て、どうやって遊ぼうかね~」ハハハハ

カツーンカツーン…カツーン…

………

 
男A「…はぁ」

男A「あの男の口車に乗せられて、加担はしたけどどうにも馬が合わないや…」

男A「お金を受け取ったらドロンして、新しい人生を歩もう…」


タッタッタッタ…ガヤガヤ…

男A「って…おや?外がやけに騒がしい…整備室の前に誰かいるのかなー…」


…ダァンッ!!!!ドゴォンッ!!

男A「ぬがっ!!」

騎士長「うおらああっ!!ココが整備室かコラァ!!」ハァハァ

 
サポーター「そうですが、こんなところに人なんか…」ハッ


男A「」グデン


騎士長「いたようだな。…こいつは、船員か?」

サポーター「いえ、見たことないですが…」

お客「そ、そいつですよ!さっき言ってた男!あと一人いるはずですが…」


騎士長「って事はビンゴだったか。奥にいやがるのか…?」ダッ

サポーター「あ、一人じゃ危険ですよ!」

騎士長「心配すんな!俺は王国のエース戦士、きし…元騎士長だ!」

サポーター「は…はぁ…」


騎士長「…っと、これは…」ズザザ…スッ

騎士長「黒髪幼女にプレゼントした服の切れ端じゃねえか…」

騎士長「…急がねえと、やべぇな…」ダッ!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ダダダダダダッ…

騎士長「くっそ、どこだ…。無駄に整備室も広くしやがって…!」

騎士長「…」キョロキョロ

騎士長「…むっ」ピクッ


男B「…」

黒髪幼女「…」


騎士長「いやがった…!黒髪幼女もまだ無事のようだな…よかった…」ハァハァ

騎士長「だけど…あんな下に…。遠すぎて道がわかんねぇ!くそ…どうするか…」

 
タタタタッ…ドテッ!!

サポーター「あいたっ!はぁ…はぁ…、騎士長さん…早いですよ…」

騎士長「いいところに。おい、あそこのでっけぇパイプの下の通路に、うちの連れと犯人がいるんだが、どうしたら行ける!?」

サポーター「あそこまではこの通路じゃ無理ですよ。戻って、別の通路を行かないと」

騎士長「…それじゃ、だめだ!」

サポーター「で、ですが…」


男B「…」ニタッ

黒髪幼女「…っ!」


騎士長「くそが…えぇい!なるように…なる!!」グッ

サポーター「え…ちょ、ちょっと!!」

ダッ…ダダダダダダダッ!!タァンッ……!!


サポーター「と、飛んだー!?」

 
男B「ははは…さぁて…」コキコキ

黒髪幼女(殴られる訳じゃないの…何するの…)ブンブン

男B「何、暴れているんだ。俺にも少し遊ばせてくれって事だろうがよ!」

黒髪幼女「?…??」

男B「さてと…楽しく遊ぼうか!」


ヒュウウウウウッ…

黒髪幼女「!」

騎士長「黒髪幼女ぉぉぉぉっ!!」


男B「ん?」チラッ

騎士長「ふんっ!!」ブンッ

…バキィッ!!!!…ドゴォン!!!

 
男B「ぐがっ!!」

ガコォン!!…ドシャアッ…


騎士長「っしゃあ!!」

ズザザザザ…クルクル…

騎士長「っと、あら…あららら…」

ドゴォン!!…パラパラ…


騎士長「あいてて…ててて…着地失敗…」

黒髪幼女「…むぐっ…!」


騎士長「おっと…黒髪幼女!」ダッ

騎士長「…縄で縛られてひでぇ事するぜ…」

タタタタッ…ギュッギュッ…

 
騎士長「よし…これで大丈夫だ。しゃべれるか?」

黒髪幼女「き…騎士長…」

騎士長「…すまなかったな。俺のせいで、こんな目に…」

黒髪幼女「騎士長っ!!」ダッ

ギュウウウッ…


騎士長「…」

黒髪幼女「うぅ…うううう…」ポロポロ


騎士長「本当に…悪かった」

騎士長(何もされちゃいないようか…良かった…本当に)

 
タッタッタッタッ…

サポーター「はぁ…はぁ…」

騎士長「おせぇぞ」

サポーター「貴方がおかしすぎるんですっ!」


騎士長「はは、そうか。つーか…これは一応さ、そっち側の不祥事…だよな?」

騎士長「確かに目を離してはしまったが、予定外の人を乗船させた罪は重いぞ」


サポーター「う…」

騎士長「それ相応のこと…頼んだからな」

サポーター「は、はい…。あと上司に相談致しますので、何卒内密に…」


騎士長「さあ~な。それは君たち次第…と、一ついいか?」

サポーター「は、はい」

騎士長「あとで、子供用の服…俺らの部屋までもってこいよ」

サポーター「かしこまりました…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 騎士長の客室 】


ジャー…ゴシゴシ…

黒髪幼女「…」

騎士長「…ったく、本当に悪かったな。泥だらけになっちまって…体、しっかり洗おうな」

黒髪幼女「…」コクン

騎士長「…」


ジャアア…

 
騎士長(くそっ…いい感じに打ち解けてきたと思ってたのに…)

騎士長(これからって時に、こんな事…。俺せいだ…、何をやってるんだ俺は…!)

ゴシゴシ…!

黒髪幼女「き…騎士長、痛い…」

騎士長「あ、あぁ…すまん…」


黒髪幼女「…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…騎士長」

騎士長「な…なんだ…?」

 
黒髪幼女「迷惑かけて…ごめんなさい…」

騎士長「…お前が謝る事じゃない。悪いのはあいつらなんだから」

黒髪幼女「でも、私が一人で外に出なかったら…こんなことに…」

騎士長「そ、それは…」


黒髪幼女「それと…お…お、洋服…ごめんなさい…」ブルッ

騎士長「えっ?」

黒髪幼女「折角買ってくれた…褒めてくれた…お洋服…破かれちゃった…」

騎士長「よ…洋服…?」

黒髪幼女「うん…」グスッ

 
騎士長「まさか…服を破かれた事も、怒ってるとか思ってたのか?」

黒髪幼女「う…うん…。それに…色々…」ポロッ…

騎士長「…」

黒髪幼女「あう、う…うぇぇん…。ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ


騎士長「…黒髪幼女」

黒髪幼女「…」グスグス

騎士長「俺はそんな事は気にしないし、迷惑だなんて思っちゃいないさ」

黒髪幼女「…」


騎士長「それより、可愛い顔が台無しだ。ほれっ!」ジャバッ

黒髪幼女「あうっ」バシャッ

騎士長「どんだけお前はいい子なんだよ!」ハハハ

 
黒髪幼女「き…騎士長?笑ってるの?」

騎士長「あぁ。俺は何も気にしちゃいないって言っただろ?」

黒髪幼女「で、でも…」

騎士長「あとで、船の中にレストランがあるらしいし…チョコレートパフェがあるかもしれんぞ!?」

黒髪幼女「…」

騎士長「一緒に食べようぜ。甘いモン食って、海眺めて…な?」


黒髪幼女「…」コクン


騎士長「はははっ!それでいいさ」

騎士長「だから…俺からは離れるなよ。俺も、お前を守ってやるからな」


黒髪幼女「…うん」

 
騎士長「よっしゃ、じゃあさっさと体も頭も洗って…船を冒険だ!」

黒髪幼女「冒険…?」

騎士長「そうさ。俺とおまえで、小さなパーティを組んで…船に宝物がないか探索しようじゃないか!」

黒髪幼女「宝物…!」


騎士長「ほら、ワクワクするだろ!早くしないと、誰かに宝が取られちまうかもしれん!」

黒髪幼女「!」

騎士長「目をつむるんだ!黒髪幼女隊員、頭からしっかりと洗って戦いに備えるぞ!」

黒髪幼女「う、うんっ」

…ジャアアッ!ザバァンッ!


騎士長(…どうしたもんか)ハァ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】


サポーター「本当に、失礼致しました。今回の事、今後の課題として重く見させて頂きます」

重役「本当に申し訳ありませんでしたっ!」


騎士長「いいよ。で、俺が言ってたのは?」


サポーター「お連れ様の服…でしたよね。当船内のショップにある、サイズ…すべてご用意させて頂きました」

サポーター「…入ってください」

 
ガチャッ…

店員「こちらでございます。お好きな物を、お好きな数だけ…」

パァァァッ…!!

黒髪幼女「!」

騎士長「…へぇ。黒髪幼女、好きな服、好きなだけ取っていいってさ」

黒髪幼女「い…いいの?」

騎士長「あぁ。好きなモン全部取っていい。全部貰って、あとから何着るか考えるか?」ハハ

黒髪幼女「ま、待って。ちょっと見てみる」

トトトト…


騎士長「はは、やっぱり女の子だね」

サポーター「お気に召すのがあればいいんですが」

 
黒髪幼女「…」キョロキョロ

…スッ

黒髪幼女「…」パサッ

トトトト…スッ

黒髪幼女「…」スッ

黒髪幼女「…」パサッ


騎士長「どうだ?気に入るのはありそうか?」

黒髪幼女「…」キョロキョロ

騎士長「欲しくなりそうなのあったら、全部キープしといてもいいんだぞ~」

黒髪幼女「え…えっとね…」

 
騎士長「…」

黒髪幼女「あっ」

騎士長「お?あったか?」

タタタタタッ…スッ

黒髪幼女「…これがいい」


騎士長「…へ?」

サポーター「え?」

重役「え?」
 
店員「そ、それでございますか…?」


黒髪幼女「うん」

 
騎士長「何でそんな一番地味目な…」

黒髪幼女「…騎士長が買ってくれた服に、一番似てるから」

騎士長「何?」

黒髪幼女「だから…これがいい」

騎士長「…ははっ」

黒髪幼女「…ダメ?」


サポーター「し、しかし。自分たちとしては全部渡すつもりで…」

重役「そ…そうです。受け取ってもらっても宜しいのですよ?」


騎士長「こいつがいいって言ってるんだから、これでいい」

重役「左様でございますか…」

 
黒髪幼女「♪」

騎士長「じゃあ、みんな…撤収撤収!俺らはあと、船の冒険やらをするんだからな!」グイッグイッ

 
重役「おとと…、ちょ、ちょっと退散する前に…もう1つお話がありまして!」

騎士長「何だ?」

重役「これだけでは自分たちの気が済みませんので…」

騎士長「まだ何かしてくれるのか?」

重役「本船内に1つだけのVIPルームへの案内と、そのルームコースのお食事のご用意…させて頂きます」ペコッ 


騎士長「…へぇ、案内してもらおうか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 VIPルーム 】

重役「…こちらでございます」

ギィィ…

黒髪幼女「!!」

騎士長「おぉ…」

黒髪幼女「水槽にお魚が泳いでる…お菓子がいっぱい…!」

騎士長「黒の調和で、いかにもVIPらしい部屋だな」


重役「お気に召しましたら、非常に嬉しく思います」

騎士長「うんむ」

 
重役「それと…こちらを…」ペラッ

騎士長「何だこれは」

重役「我がワールドボートグループの、VIPルーム3年分の無料ご優待チケットです…」

騎士長「いいのか?」

重役「…何卒、ご内密にお願いします…っ」ペコッ


騎士長「有り難く受け取っておくよ。別に口外する気はないしな」

重役「誠に…感謝致します…」

騎士長「あとで、料理も運んでくれ。えーと…今は何時だ?」

重役「17時前になります」

騎士長「甲板から夕陽は綺麗に見えるか?」

重役「そりゃもちろん!」

騎士長「飲み物を2つ。甲板に頼む」

重役「…わかりました」ペコッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ボォォォッ!!ザバァン!!

…ミャア、ミャア…ミャア…


黒髪幼女「わぁ~!」

騎士長「うおぉ、何て綺麗な夕焼けだ…。地平線にまるで絵が描いてあるようだ…」

黒髪幼女「凄い…」

騎士長「ほれ、黒髪幼女」

黒髪幼女「…ジュース?」


騎士長「俺のはワインだがな。夕焼けを見ながら、のんびり休もうか」

黒髪幼女「うんっ」

 
騎士長「そこの椅子に座って、海でも眺めてようぜ」

トコトコトコ…ストンッ


黒髪幼女「…」クピッ

黒髪幼女「ジュース、美味しい…」


騎士長「花より団子かお前は」

黒髪幼女「?」

騎士長「ははは、子供だもんな」

黒髪幼女「??」

騎士長「お前が少しでも楽しけりゃ、それでいいさ」

黒髪幼女「うん…ありがとう、騎士長」

 
…ザバァンッ…サァァッ…


騎士長「…」

黒髪幼女「…」


騎士長「…そういや、黒髪幼女」

黒髪幼女「何?」

騎士長「ずっと聞かなかったが…、お前、母さんはいるのか?」

黒髪幼女「ううん。会ったことないよ」

騎士長「会った事がない?」

 
黒髪幼女「うん。私が小さい頃に、死んじゃったんだって」

騎士長「…そうか、悪い事を聞いた」

黒髪幼女「何で謝るの?」

騎士長「いや…そりゃ…」

黒髪幼女「私は気にしてないよ。なるようになったから…そうなったんでしょ?」

騎士長「へ?」


黒髪幼女「騎士長の口癖」

騎士長「…そう、だが」

黒髪幼女「いいんだ。いいの…」

 
騎士長「…」

黒髪幼女「…」


騎士長「…よしっ。黒髪幼女、あとは中で豪華なディナーといこうか!?」

黒髪幼女「豪華なディナー?」

騎士長「そうだ、美味いものいっぱいあるぞ!」

黒髪幼女「!」


騎士長「さぁ、食べたら今度こそ冒険だ!行くぞぉ!」

黒髪幼女「あ、待って!」


タッタッタッタッタッ…

…………
……

本日の投下はここまでです。ありがとうございました。

非常にたくさんのコメント、大変嬉しく思います。ありがとうございます。
投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】
 
スヤスヤ…

黒髪幼女「…」

騎士長「…」 
 
…ムクッ


騎士長「…」ハァ

 
トコトコトコ…キュッキュッ…グビッ

騎士長「…ぷはっ」


騎士長(…)

騎士長(今日の事は、俺の人生の中で最も恥じるべきだろうな)

騎士長(だけど、改めて分かった。俺一人という限界が…)チラッ


黒髪幼女「…」クゥクゥ


騎士長(助けられて、本当に良かった。もしもの事があったら…一生の傷になったな)

騎士長(俺にとっても、お前にとっても…)

 
黒髪幼女「むにゃ…」

モゾモゾ…

騎士長「…」

トコトコ…パサッ

騎士長「風邪、ひくぞ」


黒髪幼女「んん…」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

 
騎士長「…もう一杯だけ水を飲んで寝るか」

トコトコトコ…グビグビッ…


黒髪幼女「…」

黒髪幼女「…あれ」パチッ


騎士長「…お?」


黒髪幼女「…騎士長?どこ…?」ムクッ

騎士長「あ、あぁすまん。ちょっと水飲んでたんだ」

黒髪幼女「そこにいたんだぁ…」

騎士長「いるぞ、どうした…大丈夫か?」

 
黒髪幼女「うん…」ムニャッ

騎士長「起こして悪かったな、寝ようか」

黒髪幼女「…うん」スヤッ

スヤスヤ…


騎士長(俺も、色々と疲れてきた。ほんの少しの…楽しみとか、ないもんかな…)

騎士長(でも今は…とにかく…黒髪幼女を…)

騎士長(…まも…って…)

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

  
それから、船は順調に航海を続けた。

予定外の天候の悪化で、多少の遅れになったものの

無事に砂漠港へと着港し―…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 】


ザッバァン…!!ザザーン…

騎士長「足元気をつけろよ」

黒髪幼女「うん」

ユラユラ…ストンッ


騎士長「やっと…、砂漠港についたぁぁ!」

黒髪幼女「ここが…砂漠地方の港なんだ」

騎士長「あぁ。お前の村も近いぞ」

黒髪幼女「…」

 
ジリジリジリ…

騎士長「そして…暑いな」タラッ

黒髪幼女「今日は涼しいほう」

騎士長「…うそだろ?」

黒髪幼女「まだまだ暑くなるよ。午前中だし、まだお日様も強くないから」

騎士長「…」

黒髪幼女「?」


騎士長「水だとか、この辺でしっかり備蓄して村を目指したほうがよさそうだな」

黒髪幼女「大事だと思う。村でも、たまに、その…倒れちゃう人がいたから…」

騎士長「地元の人間でもやられるのか。本気で気をつけないと危ないか」

黒髪幼女「うん」

 
騎士長「…さて、どうするかな。ここからどう行けばいいのやら」キョロキョロ

黒髪幼女「…普通ならラクダの乗り場があると思う」

騎士長「ラクダの乗り場?」

黒髪幼女「少し前に乗った、馬車みたいなやつ」

騎士長「へぇ、そんなのがあるのか」


黒髪幼女「少し遠いけど、あっち側にある旗…見える?」

騎士長「青とか、緑とか…随分遠くまで立ってるな」

黒髪幼女「あれがそれぞれの村とか町につながってる道標」

騎士長「…確かに、アレがなかったら砂漠で道に迷いそうだ」

黒髪幼女「あとやっぱり…ラクダを借りないと、遠くに行くときは倒れちゃうから…」


騎士長「港だし、乗り場ならあるだろ…適当に探すか。こっちとか行ってみようぜ」

黒髪幼女「うん」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…ピタッ

黒髪幼女「…あ、騎士長。ここ」


騎士長「看板に"ラクダステーション"…ここか!!雰囲気とか、王都でいう馬車乗り場にそっくりだな!」

騎士長「だけど…お客は少ないな。やっぱりこの辺はそんな旅人もいないのかねェ」


黒髪幼女「そうなのかな?」


騎士長「入りたいけど、なんか静かすぎて不安になるんだが…どうするかな」

 
…ガラッ

騎士長「お、ドアが勝手に開いた…」

ラクダ商人「いらっしゃい。人影が見えたから顔出ししたが…客かね?」ヌッ

騎士長「ま、まぁそうかな」


ラクダ商人「どこまでの希望だい?それによって貸し出し賃も変わるよ」

騎士長「随分とサクサク話が進むな」

ラクダ商人「そのほうが良いだろう?」

騎士長「そりゃそうなんだが…忙しいのか?」


ラクダ商人「忙しいように見えるか?」

騎士長「…見えないな」

ラクダ商人「単にせっかちなだけさ。早く、行き先を言いなよ」

 
騎士長「あ、えーと…黒髪幼女。お前の住んでた村の名前はなんだっけか」

黒髪幼女「砂漠地方村」

騎士長「だってさ、いくらだ?」


ラクダ商人「…へぇ、珍しい所に行くね。そんなお客…久しぶりだよ」

騎士長「久しぶりだって?やっぱり、地方だと行く人も少ないのか」

ラクダ商人「だねぇ。それに、あんまオープンな村じゃないんだよそこは」

騎士長「…どういうことだ?」

ラクダ商人「…まぁ、あまり気にしなくていいさ」

騎士長「気になるような言い方じゃないか。あんたも、この砂漠で長いんだろ?聞かせてくれよ」

 
ラクダ商人「別に面白い話じゃないしな。それに俺は他の出身者は嫌いなんだよ」

騎士長「ハッキリ言いやがるな…。情報はあって損はしないんだ。教えてくれ」

ラクダ商人「…ラクダは貸す。それ以外は話すことはない」

騎士長「…」

ゴソゴソ…スッ…キラッ


騎士長「王都の純正の金貨だ。…どうだ?」

ラクダ商人「…中に入りな。知ってる事しか話せないが、ちょっとした話になる」クイッ

騎士長「すまないな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…トンッ

ラクダ商人「冷たいお茶だ。お嬢ちゃんにはジュースでいいな」

騎士長「…」

黒髪幼女「ありがとう」


ラクダ商人「で…何について聞きたいんだったかな」

騎士長「さっき言ってた、砂漠地方村がオープンじゃない村ってことだ」

ラクダ商人「あぁ…そうだった」

騎士長「知ってる情報によっては、まだ"積む"からな」

 
ラクダ商人「…あそこの村が出来たのは今から数十年前」

ラクダ商人「まだ、街とかの概念がなかった…当時の俺らがまだ移牧民だった頃だ」


騎士長「昔は移牧民だったのか?…定住につかなかったってことだよな」

ラクダ商人「つかなかったんじゃなく、つけなかったんだ。砂嵐がひどくてなぁ」

騎士長「なるほど。それで?」


ラクダ商人「やがて、外部の技術が入ってきて、砂嵐に対抗しうる術を得た我々は…」

ラクダ商人「小さな、町、村、そして都市となる砂漠街を作り上げた」


騎士長「じゃあ、砂漠地方村もその1つだったのか」

ラクダ商人「そうだ。だが、あそこはちょっと変わっていてな…」

騎士長「何がだ?」

 
ラクダ商人「その村は、王都王国から来た人間によって作り上げられた村なんだよ」

騎士長「え…?全部、王都やら他の国の技術が入ってきたから、全部そうなんじゃないのか?」


ラクダ商人「…あぁ、言い方が悪かった」

ラクダ商人「"技術の譲渡"だけじゃなくて、"その王都出身の人間自身"が自ら作り上げた村なんだ」

騎士長「…どういうことかね。意味が分からないぞ」


ラクダ商人「他の町村は、都市の砂漠街以外、技術を会得した地元の人間が伝えるのが普通だった」

ラクダ商人「だが…その地方村に限り、王都の人間が直接"村民と取引"をして、全て直接指南したらしい」


騎士長「…何だ、その取引っていうのは」

ラクダ商人「さぁな。さすがにそこまでは知らねぇよ」

 
騎士長「それがオープンじゃない村の所以か?」

ラクダ商人「俺らにとってオープンじゃないって事さ。それから、余りにも遠い場所にある村だから関わり合いも少なくなったしな」

騎士長「…へぇ」

ラクダ商人「たまに、その王都の人間がこの港に遊びに来てたのも見たことある」

騎士長「そうなのか。どんな奴なんだ?」

ラクダ商人「見たまんま"いい奴"なオーラが出てるような人間だった。最近は全然見ないんだが…」


騎士長「…」

黒髪幼女「…」


ラクダ商人「ま、俺が知ってるのはその程度…。で、どうする?」

騎士長「ん?」

ラクダ商人「行くなら、ラクダ…用意するぞ」

騎士長「…当たり前だ。一番最高なのを用意してくれ」ニカッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…グイッ、グイッ!!

ラクダ『ブルルッ…』


騎士長「うおっ!?でっか!」

ラクダ商人「うちで、一番早くて乗り心地のいい奴だ。値段は張るぜ」


騎士長「…」ピンッ


クルクルクル…パシッ!

ラクダ商人「…毎度」ニカッ

騎士長「商魂逞しい奴だぜ」

 
ヨジヨジ…

黒髪幼女「…よいしょっ」

ギュッギュッ…ストンッ

騎士長「おぉ!?黒髪幼女、一人で上まで登れるのか」

黒髪幼女「うん」

ラクダ商人「はっはっは、地元の人間ならそうさ。その女の子も地元の子だろう?」

騎士長「ま…そうだ。じゃあ、えーと…道はどこに行けばいい?」


ラクダ商人「こっち側の点々と設置してる赤い旗伝いに行けば着くようになってる」

ラクダ商人「それをラクダも理解してるから、寝てても目覚めれば地方村さ」


騎士長「じゃあ任せていいっていうことなんだな」

ラクダ商人「あぁ」

 
騎士長「…じゃ、出発するか」

ラクダ商人「お、おいおい!…ちょい待ち、あんたら食料や水は?」

騎士長「あ~そうか。はっはっは…危ねぇ!備蓄分をしっかり買ってから行かないと死んじまうよな」

ラクダ商人「くかか…だと思ったよ。横に結んであるのが水と食料だ。サービスさ」

騎士長「…わざわざ?」


ラクダ商人「商魂たくましいっていうのは、商人として上手いからこそだぜ?」

ラクダ商人「今後とも、ごひいきに」ニヤッ


騎士長「…全く、次も是非利用させてもらうさ。じゃ、今度こそ…」

騎士長「出発だ!」

黒髪幼女「うんっ」


ラクダ商人「お気をつけて…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジリジリジリ…パカッ、パカッ…


騎士長「あちぃ…」ダラダラ

黒髪幼女「~♪」

騎士長「随分と余裕そうですね、黒髪幼女サン…」

黒髪幼女「全然辛くないよ」

騎士長「そ、そうですか…」ハァ

 
黒髪幼女「やっぱり、こういうほうが見慣れてるし…」

騎士長「一面の砂とか、遠くに起こってる砂埃…熱い太陽とかか?」

黒髪幼女「うん」

騎士長「地元の人間にはかなわねーや…ハハ」

黒髪幼女「…」


騎士長「…」

黒髪幼女「…」

パカッ…パカッ…パカッ…

 
騎士長「ん~…黒髪幼女」

黒髪幼女「?」

騎士長「しばらく時間はあるし、何か俺に聞きたいこととか、話をしたいこととかあったら言っていいぞ」

黒髪幼女「聞きたいこと?」

騎士長「俺はお前に色々聞いたけど、お前は俺に何も聞いてないだろう?」

黒髪幼女「…」

騎士長「お話して、もっと仲良くなる大作戦だ。あ…言ったら意味ないか」

黒髪幼女「!」


騎士長「どうだ?何でもいいぞ」

黒髪幼女「ん~…じゃあ、何で騎士長は騎士長なの?」

 
騎士長「…いきなり核心をつくような質問だな」

黒髪幼女「何でもいいって言ったから…」

騎士長「ははは、そりゃそうか。えーとな…、魔物っていうのは知ってるか?」

黒髪幼女「うん。昔からいる、人に悪いことをするやつだよね」

騎士長「そうだ。最近じゃ、王国王都を筆頭にして各巨大国家の戦士育成とかで、随分と対策も進んでるんだが…」

黒髪幼女「うん」


騎士長「やっぱり黒髪幼女のような村を含む、地方に散らばる小さな町村には対抗する力がないんだ」

黒髪幼女「…うん」

騎士長「もちろん、魔物だけじゃなくて盗賊だの…その、奴隷商人だのと言った人が人に害を与える奴への影響もな」

黒髪幼女「…」

騎士長「俺は、そんな奴らに苦しんでる人達を助けたくて王宮騎士へと入った。元々親がいなかったからさ」

黒髪幼女「えっ、親がいない…?」

騎士長「そう。両親は共に、代々王宮に仕える立派な兵士だったらしいんだが…」

 
黒髪幼女「…」


騎士長「俺を生んで、遠征討伐に行ったまま…帰ってこなかった。本来なら孤児院に送られるはずだったらしいんだけど…」

騎士長「先代の王が、王宮で育てる事を決意してくれたんだと。そこからは俺もずっと王宮に仕えてきた」


黒髪幼女「そうだったんだ…」


騎士長「記憶はないし、先代のことも知らない。親も知らない。だけど、育ててくれた王宮に恩がある」

騎士長「だから一生懸命働いた。そして、俺のような魔物や賊による子供を二度と出したくないと思った」

騎士長「王室育ちで温い奴が…と思うかもしれないが、少なくとも親がいないっていう辛さは分かっている…つもりだ」


黒髪幼女「騎士長…」

騎士長「そうだなぁ、俺がもし大金を手に入れたら…世界中のそういった子供たちを集めて」

騎士長「世界で一番でかい孤児院でも作って、温かさってのを見せてやりたいかもしれん」

 
黒髪幼女「立派な…夢だね」

騎士長「夢…夢か。叶えるつもりはあるから、希望っていうのかもしれんぞ」ハハハ

黒髪幼女「…」

騎士長「ま、そんな感じだ。ほかに聞きたいことは?」

黒髪幼女「…うーん。じゃあ、海を見て思ったんだけど…、世界って広いの…?」

騎士長「広い。果てしなく」

黒髪幼女「果てしなく…う~ん…?」


騎士長「王国都市…王都。砂漠街から成る…砂漠地方」

騎士長「大海に浮かぶ島々で作られる島群都市に、氷の大地で形成される氷結大陸」

騎士長「魔法大都市、カラクリ王国、烈火山帝国…まだまだ行ったことのない国々や自然は沢山ある」

 
黒髪幼女「…凄い!」

騎士長「遠征で俺も何度か行った事ある場所はあるが、まぁ世界の1%も冒険はしてないだろうな」

黒髪幼女「それだけっ!?」

騎士長「そうさ。そして、その数だけ幸せと…孤児もいる。それを救いたいのさ」

黒髪幼女「…!」


騎士長「前に言った、チャンスって覚えてるか?」

黒髪幼女「うん…そうなったから、そうなった。すべては偶然と運命だって」

騎士長「さすがに全てを救うのは無理だろう。だけど、俺が生きているうちに…少しでもそのチャンスを一人にでも与えたい」

黒髪幼女「…」

騎士長「って、またそっちの話に持っていっちまった。まっ、そういうことだって覚えててくれ!」ハハッ

黒髪幼女「うんっ」

 
パカッ…パカッ…パカッ…

騎士長「しかし、無限の砂漠とは良くいったもんだ。旗がなかったら迷っちまうなぁ」

騎士長「でっけぇラクダがいてよかった。少しは寝たり、休憩しつつ向かえるな」


黒髪幼女「…」フワァ


騎士長「お、眠いか?」

黒髪幼女「少しだけ…」

騎士長「ほら、こっちに来い。抱っこしててやるから、少し寝ていいぞ」

黒髪幼女「いいの?」

騎士長「あー、もう!」

…ヒョイッ

黒髪幼女「!」ストンッ

 
騎士長「よいしょ…ほれ、ひざの上で少し硬いが枕代わりにもなるだろう?」ポンポン

黒髪幼女「…うん」

騎士長「あとで起こしてやるから、少し休め」

黒髪幼女「…うん」


騎士長「…」

黒髪幼女「…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」スヤッ


騎士長「…寝るの早いな」ハハ

黒髪幼女「…」クゥクゥ

 
騎士長「さて、ラクダさんよ。女の子が寝てるんだ…優しい運転で頼むぜ?」

ラクダ『ブルルッ!』

騎士長「おう、そうか!」

ラクダ『…』

パカッパカッパカッパカッ…


騎士長「月の~砂漠を~…遥遥と~…♪」

騎士長「旅の~ラクダが行きました~♪」

騎士長「金と銀との鞍を置いて~…二つならんで~行きました~…♪」

…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 】


…カキンッ!!ガキィン!!


黒髪幼女「…」


ズザザザ…ボォンッ!!


黒髪幼女「…?」ムニャッ

…ジャキィンッ!!


黒髪幼女「何の…音…?」ムクッ

 
キキィン!!ドスッ!!

黒髪幼女「…え?」


ズザザザ…グググッ…

騎士長「こ…の、ヒョロヒョロと動きやがって…!」

黒装束「…貴様こそ中々やるな。我が仲間を4人を倒すとは」

騎士長「なんだっつーんだよ…!あいつは俺の依頼主だっつってんだろ!」

黒装束「何を言おうと無駄だ。同族を助け出すのが我らがすべき使命」

騎士長「このやろうっ!」ブンッ!!

黒装束「ふん」ヒュンッ

タァンッ!…クルクルクル…ストンッ


騎士長「この…クルクルと…!サーカスみたいに、妙な動きしやがって…」

黒装束「…ふん」

 
黒髪幼女「な…何で騎士長戦ってるの…?」

騎士長「…黒髪幼女、悪い!目ぇ覚めちまったか!?」

黒髪幼女「騎士長、何で戦ってるの!ど、どうしたの…」

騎士長「分からん!こいつらがな…」


ブンッ…ガキィンッ!!

騎士長「ぬあっ!」

黒装束「大人しくあの子を渡せば貴様は見逃してやる。今すぐ立ち去れ!」

騎士長「だからそれは…さっきから出来ない相談だっつってんだろうが!」

黒装束「…どうしても聞き入れぬか」

騎士長「当たり前だろうがぁぁ!」


黒装束「残念だ…。はぁぁっ!瞬斬っ!!」ビュンッ!!

 
騎士長「…そのくらい、簡単によけ…」フラッ

騎士長(げ…!やば…暑さで足が…)


…ズバァッ!!

騎士長「ぬあぁっ!」

黒髪幼女「騎士長っ!!」

 
…ガクッ

騎士長「が…は…」

ポタッ…ポタッ…


黒装束「我が短剣は魔封じの一手。回復技など使わせぬぞ」

騎士長「…っ!」

黒装束「最初から素直に渡せば痛い目をみなかったものを」


騎士長(く…くそ…暑さで思うように動けん…!)

騎士長(そもそも一体こいつらは何なんだ…急に襲ってきやがって…!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ほんの少し前 】

パカッパカッパカッ…

騎士長「昼も過ぎて…日が上がってくると本気でヤバイ暑さだ…」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「よく寝てられるな…」

黒髪幼女「…」クゥクゥ


騎士長「はは、可愛い寝顔しやがって。今の癒しはお前だな」

騎士長「…」

騎士長「…むっ」ピクッ

 
ヒュウウウウッ…ヒュンッ!!

騎士長「…な、ナイフ!?」

騎士長「うらぁっ!」

ビュッ…カキィン!!


騎士長「な…何だ…!?」キョロキョロ


ザッザッザッザ…

黒装束「ほう、よく今のを避けたな」

騎士長「誰だ!」

黒装束「名乗る名前などない。我らの用件はただ一つ…、その子を大人しく渡せ」

騎士長「…あ?」

黒装束「聞こえなかったか?」

 
騎士長「てめぇら…4、5人か。何者だ!奴隷狩りの類だな!?」

黒装束「何?奴隷狩りだと…。我らをそのような奴らと一緒にするな!」

騎士長「…?」

黒装束「貴様がその奴隷狩りの面子だろう!」

騎士長「ま…待て。俺は奴隷狩じゃない。王宮都市の騎士長だ。訳合ってこの子を地方村まで一旦向かっているんだ」

黒装束「…地方村?」ピクッ

騎士長「そうだ」


黒装束「たわけ…地方村は既に奴隷狩の奴らに廃村となって誰も住んではおらぬ!」

騎士長「村のことを知ってるのか!?」

黒装束「…貴様がこれで嘘をついていることが分かった。その子を、意地でも奪わせてもらう!」ダッ


騎士長「ちょ、ちょっと待てー!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

騎士長(…こいつらの正体は…一体…)ゴホッ…


黒装束「…はぁっ!」タァンッ!!

…ストンッ


黒髪幼女「あ…」

騎士長「な、おい!人のラクダに乗って何をするつもりだ!」

黒装束「王宮の人間なら、この地方のラクダの特性を知らぬだろう」

騎士長「な、何?」

 
黒装束「この地方のラクダはな、我々一族しか知らぬ口笛に反応し…」ピュウッ!

ラクダ『ッ!!』ブルッ

黒装束「…さらば!食料は置いといてやろう、そのまま立ち去るがいい!」

ザッ…ザッザッザッザッザッザッ!!!


騎士長「な…早…!」

黒装束「ははは!安心しろ、我らの同族は我らといるのが一番なのだ!」


黒髪幼女「騎士長っ!!」

騎士長「黒髪幼女ぉぉ!!」

 
ザッザッザッザ…ザッザッザ…ザッサッ゙…

……ヒュウウウッ…

騎士長「な、何て速さだ…!!」

騎士長「何か手は…」

騎士長「…!」ハッ


騎士長「そ…そうだ!!俺が倒したアイツの仲間!あいつらを尋問して…!」クルッ

 
シーン…

騎士長「…逃げられた、か」

騎士長「…ははは」

騎士長「…っ」


騎士長「く、くそ…」クラッ


…ドシャアッ……

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下開始致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠の小さな部落 】


パカッパカッパカッ…ズザザ…


部落人「…お帰りなさい、頭!」

部落人「今回の情報、どうでしたか?」


黒装束「ビンゴだ。あの砂漠港の親父、相変わらずいい情報を渡してくれる」


部落人「今回のは…その子ですか?生きてるんでしょうか」

黒髪少女「…」

黒装束「さっきまでずっと泣いていたが、泣き疲れたんだろう。眠ったよ」

 
部落人「…泣くほど、ひどいことをされてきたんですか」

黒装束「いや、ちょっと今回は違うらしい」

部落人「…と、いうと?」

黒装束「まぁ、あとでこの子から話は聞くが…」


部落人「ハハ、何があろうと俺たちは頭についていきますよ」

部落人「我ら砂漠の暗殺隠密部隊…アサシン様を筆頭にしたアサシン部隊がね」


アサシン(黒装束)「…ふっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】

ゴォォ…パチパチ…


黒髪幼女「…!」ハッ

黒髪幼女「騎士長っ!」バッ!!


アサシン「よう、目が覚めたか」

黒髪幼女「…ひっ!」ビクッ

アサシン「まぁそう怯えるな。ここは我のテント…何もひどいことはせぬ」

黒髪幼女「き、騎士長を…攻撃した…!」

アサシン「仕方がなかったのだ。お主を救うためにはな」


 
黒髪幼女「全然救ってなんかいない!!」

アサシン「…それについてだ。さっきの騎士長とかいう奴とのお前の関係を聞かせて貰えないか?」

黒髪幼女「…」プイッ

アサシン「…はぁ、嫌われたものだな」


黒髪幼女「騎士長にひどい事をした…騎士長…に…」

黒髪幼女「…」ジワッ

黒髪幼女「騎士長ぅぅ~…」ポロポロ


アサシン「あぁぁ、な、泣くな泣くな!」

黒髪幼女「うぇえぇぇ~…」グスグス

 
アサシン「…仕方ない…おい!」

黒髪幼女「…?」グスッ


クルクル…パサッ…

アサシン「本当はあまり表に顔は出さないんだが。この肌と、この顔立ちで…どうだ?」スッ


黒髪幼女「え…、お、女の人…?」


アサシン「私の名前はアサシン…この隠密集団のリーダーだ」

黒髪幼女「あさ…しん…」


アサシン「先に説明をしてやろう。私たちは、奴隷狩を逆に狩る為に行動している」

黒髪幼女「…奴隷狩りを…狩る?」


アサシン「いくら政府が対策を打ち出したとはいえ、まだまだ奴隷狩りは横行しているんだ」

アサシン「私たちは、そんな奴らから同族…お前のような子供や女、奴隷から解放するために活動しているのさ」

 
黒髪幼女「…」

アサシン「だが、あいつはお前を意地になって守ろうとした。それに、依頼とか言っていたな?」

黒髪幼女「…」

アサシン「それと、お前が寝ている間に体を見させてもらった」

アサシン「殴られた跡もなければ、お前を奴隷とした扱いもない。逆にその真新しい服…大切にされているようだ」


黒髪幼女「騎士長は…奴隷だった私を助けてくれた…」

アサシン「…その事に関して、ちょっと詳しく聞かせてくれないか」

アサシン「いいな?」


黒髪幼女「…」コクン

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒髪幼女「…」

アサシン「なるほど、そういう事だったか。まさかあの村の生き残りだったとはね」

黒髪幼女「あの村の人たちは…今、どうなったの…」

アサシン「私の部下が必死に探している最中だ」

黒髪幼女「そっか…」


アサシン「…」

黒髪幼女「騎士長…死んじゃった…の…?」グスッ

アサシン「あぁぁ泣くな泣くな!死んではいないはずだよ!」

黒髪幼女「…え?」

 
アサシン「急所はついてないし、食料も残した。無事に今頃は砂漠港に戻ってるよ」

黒髪幼女「…もう、会えないの…?」

アサシン「心配するな。お前の依頼、代わりに私たちが請け負ってやろう」

黒髪幼女「…」

アサシン「…そんな顔をするな」

黒髪幼女「…」


アサシン「…悪いことはした。そこまでの事があると思ってなかったんだ」

黒髪幼女「…」

アサシン「だけどね…私たちも、その境遇から同族以外の人間は信用しないんだ」

黒髪幼女「…」

 
アサシン「まぁ…一人だけ…、騎士長と同じ王都の人間で信用できる奴はいたんだけど…ね」

黒髪幼女「…?」

アサシン「な、何でもない。それよか、腹減ってないか?何か食い物を持ってこよう」

黒髪幼女「…いらない」

アサシン「…」

黒髪幼女「何も食べたくない。もう、誰かを失うのは嫌だったのに…騎士長、優しかったのに…!」


アサシン「…はぁ、分かった。分かったよ」

アサシン「話を聞いてくれ」


黒髪幼女「…何?」

アサシン「もし…もしの話だぞ」

黒髪幼女「うん」

 
アサシン「お前を本気で守ろうって思っているなら、その騎士長ってやつを同族として扱ってやってもいいとは少し思う」

黒髪幼女「…どうしたらそう思ってくれるの」


アサシン「例えば、この部落に躊躇なく踏み込んで"お前を助ける"だの…」

アサシン「そんな強い思い…本気の思いがあればココまでは来るハズだろう?」


黒髪幼女「…」

アサシン「まぁ、そこまでの事は普通しな――…」


…ドォンッ!!!ドゴォンッ!!!


アサシン「!?」

黒髪幼女「!?」

  
アサシン「何の音だ!?外にちょっと行くよ!」グイッ

黒髪幼女「あうっ!」

ダッ…ダダダダッ…!!


アサシン「音はこっちから…」

ガヤガヤ…

アサシン「あそこだ!誰か立ってる…、同族が囲んで…誰かを捕まえたか」

黒髪幼女「…何、どうしたの?」


ズザザザ…

アサシン「!」

 
…ザワザワ、ガヤガヤ…

騎士長「うおおおっ、黒髪幼女どこだぁぁぁ!!」


部落人「静かにしろ!」

ブンッ…バキィッ!!

騎士長「いってぇなっ!こ、この野郎…さっきのラクダの足跡…ここへ通じていたのは分かってる!」

部落人「一体何のことを…!」

騎士長「黒装束の奴がここにいるはずだ、出せぇぇ!」

部落人「静かにしろといっているんだ!!」

騎士長「黒髪幼女、助けに来たぞぉぉぉ!失敗して捕まっちまったが!!」

部落人「今、頭を呼んでくるから…待っていろ!!」

騎士長「…ぬううっ!!」

 
ガヤガヤ…ギャーギャー…

アサシン「…」


黒髪幼女「アサシン、あれで…認めてくれるの?」

アサシン「はぁ~…。認めざるを得ないね、約束だから」

黒髪幼女「!」


アサシン「それにしても、ここが戦闘部落だって知らないで突っ込んでくるとか…怖い男だね」

アサシン「後先考えず行動しすぎだよ、あの男。早死にするね」


黒髪幼女「早く、騎士長を助けてよ!」

アサシン「…わかったよ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

騎士長「…」

黒髪幼女「…」

アサシン「…」

部落人「…」


アサシン「って訳だ。約束は守っただけさ」

騎士長「まぁ、お前らがそのつもりなら俺も暴れるつもりはない」

アサシン「話を早く分かってくれて助かる」


騎士長「いや、お前らにもお前ららしい理由があるのに、俺がどうこういう立場じゃないってのが分かった」

騎士長「黒髪幼女を奪われたのは腑に落ちないが、ここは納得するさ」

  
アサシン「そうか、ありがとう」

騎士長「だが、黒髪幼女の面倒は俺が見させて貰うからな」

アサシン「…あんた、そこまでこの子に入れ込んでるのか?」

騎士長「ま…そういう事に近いかな。縁ってやつは大事にするんでね」

アサシン「その為だけに命かけるなんて…バカな男だ」フフ

騎士長「うるせえ」


黒髪幼女「…」

トトトトト…ギュウッ


騎士長「んっ…どうした?」

黒髪幼女「傷…大丈夫?痛くないの…?」

 
騎士長「ははは、心配してくれるのか?傷薬でなんとかなった、大丈夫さ」

黒髪幼女「よかった…」

騎士長「お前は優しい奴だよなあ本当に」ワシャワシャ

黒髪幼女「…あう」


アサシン「…改めて紹介させて貰おうかな。私は隠密部隊を取り仕切る…アサシンだ」

騎士長「も…元、王国都市の王宮軍に属する騎士長だ。よろしく」


アサシン「さっき5人であんた襲った時、まさか仲間4人もやられるなんて思わなかったよ」

騎士長「あんな奇襲、二度とごめんだ」

アサシン「ははは、私には敵わなかったようだが」

騎士長「お前、女だったんだな。全然気づかなかったぜ」

 
アサシン「…まあね」

騎士長「それと、昼間は暑さにやられてボロボロだったが、今ならしっかり動けるぞ?」

アサシン「…私と戦いたいのかい?」

騎士長「いや、負けは負けだ。次の機会があったら…ってことにしておくよ」ハハハ


アサシン「…」

アサシン「潔い男だね」


騎士長「まぁな」


アサシン「…さて、そろそろか。着いてきな」クルッ

騎士長「ん?どこに行くんだ」

アサシン「折角だ、今日の晩餐は豪華に行くよ。新しい同族と認めた男…祝わずになんとするってね」


騎士長「…どっちが潔いヤツだか、わからんな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

部落人「…」

部落人「…」

部落人「…」

部落人「…」


アサシン「よ、みんな集まってるみたいだね」

騎士長「うおっ、こいつらは?」

アサシン「さっきアンタを襲った時の面子。うちの幹部みたいなもんだ。一番右側の奴が幹部長の砂漠剣士さ」

騎士長「なるほど。改めてよろしくな」


砂漠剣士「よろしく」

 
アサシン「さて、座ってくれ。お願いしてた料理と、彼女らを呼んでくれたか?」

部落人「呼んであります。おい!入れ!」

…ガラッ!!

騎士長「…ん?」


タッタッタッタ…

踊り子たち「失礼いたします♪」


アサシン「うちの保護した女たちさ。元踊り子で、仕事先が改めて決まるまでココで面倒を見ているんだ」

騎士長「…言うに聞くは、その美しさ…か」ホウ

アサシン「可愛いし、綺麗だろう。自慢の子たちだよ」

 
騎士長「俺なんかの為に、いいのか?」

アサシン「元々もうすぐ部落を離れて、仕事が決まりそうだし…その見納めってのもある」

騎士長「なるほどな」


砂漠剣士「…音楽!」パチンッ


タァンタタタンタァ~ン…♪…♪♪

踊り子「♪」


騎士長「…!」

アサシン「ふふ…」

黒髪幼女「わぁ!」

 
砂漠剣士「料理を今、運ばせます」パチンッ

トコトコトコ…カチャカチャ…

アサシン「うむ。騎士長、傷を与えた侘びだ…好きなだけ楽しんでくれ」

騎士長「楽しませてもらうさ。黒髪幼女、ほら…食べようぜ!」

黒髪幼女「うんっ」

パクッ…モグモグ…


騎士長「おぉ…うまいっ!」

黒髪幼女「美味しい…」


アサシン「はは、そりゃよかった。どんどん運ばせるよ」

 
踊り子「~♪」

モグモグ…カチャカチャ…ゴクッ

騎士長「…料理はうまいし、踊り子は美しい。至れり尽くせりだな」

アサシン「気に入ってもらえれば嬉しいよ」

騎士長「これで満足しない人間なんていねえさ」


黒髪幼女「…」ハムハム


騎士長「おいおい、黒髪幼女落ち着いて食べろよ。喉にひっかけるぞ」

黒髪幼女「…私のお家の味みたいで美味しいから…」モグモグ

騎士長「あ~そうだな。本格的な砂漠地方の料理を食べるのは久々だったか。たんと食べろ」

黒髪幼女「うんっ」

 
アサシン「…」

騎士長「…」モグモグ

アサシン「…そうだ、騎士長」

騎士長「何だ?」

アサシン「あんたたち、地方村に向かってるんだったな。それはこの近くだ」

騎士長「本当か!?」


アサシン「あの砂漠港の親父はな、うちらの部落人の一人だったんだ」

アサシン「あんたみたいな奴隷狩の可能性がある人間や、砂漠人を連れてる人間の情報を私らに伝える」

アサシン「それで、その情報を受けた私らが賊狩りをしたり、保護をしてるってわけさ」


騎士長「あ…あのクソ親父め…金貨なんて渡すんじゃなかった」

アサシン「ははは!災難だったね」

 
騎士長「まぁいいか…で、地方村は…どうなったんだ?」

アサシン「…」

アサシン「あとででいいかい?あとで、私のテントに来な」

騎士長「後で?何でだ?」

アサシン「…」チラッ


黒髪幼女「~♪」モグモグ


騎士長「…それほどって事か」

アサシン「今は、この楽しい雰囲気に酔ってるこの子に、まだ現状を教えたくないんだ」

騎士長「…わかった」

 
アサシン「それじゃ、今はとにかく食べて飲んで!さぁさぁ踊り子たち…もっとテンポあげていこう!」


音楽隊「テンポアップ!」

踊り子「はぁい!♪」

タタタン…タンタン…♪♪


アサシン「お前たちも食べていこう!飲め!今宵の遠慮はいらぬ!」

部落人「はっ!」


騎士長「黒髪幼女、いっぱい食べて、いっぱい楽しめよ」ニカッ

黒髪幼女「うんっ!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜中・アサシンのテント 】


騎士長「…失礼するぞ」

…ガサッ


騎士長「約束通り来たぜ。すぐ隣の借りたテントで黒髪幼女は寝たようだ――…って!!」

アサシン「…あぁ、きたか。ちょっと待ってくれ身体を今拭いてた所なんだ」ゴシゴシ

騎士長「うおい!」


アサシン「そのくらい気にしないよ。ちょっと待っててくれ」

騎士長「まぁお前が言うならいいけど。見てるわ」

アサシン「…意外と図太い精神してるんだね」

騎士長「そうか?」

アサシン「そうじゃなかったら、普通出てくだろ。ていうか図太くないと部落に攻め入る事なんて出来ないか」ハハハ

 
騎士長「そうかもな」

アサシン「…」ゴシゴシ


騎士長「…!?」

騎士長「…おい」


アサシン「ん?」

騎士長「お前…ちょっとよく見せてくれ」ガタッ

…トコトコトコ…グイッ!


アサシン「何だ…私の美しさに欲情でもしたか?強気だな…お前のような男は嫌いじゃないぞ」ハハ

騎士長「違う…この背中の傷は…!」

アサシン「…」

 
騎士長「お前も…まさか…」

アサシン「…ふふ。そう…私は元奴隷だよ」

騎士長「…」

アサシン「昔、奴隷狩りに捕まってね。なまじ歳が若くて、使い勝手がいいと言われ…何度も売買を繰り返させられた」

騎士長「…何事もなかったように淡々と話すんだな」

アサシン「今更さ。私自身の気も強くないと、こんな賊狩りはやってられないからね」

騎士長「…そうか」


アサシン「何か言いたげな目だね。遠慮なく言っていいんだよ」

騎士長「…いや、いい」

アサシン「遠慮することはないさ。何だ?私の境遇か?」

騎士長「…」

 
アサシン「…座りなよ。私も今日は久々に酒に酔って…ちょっと話をしたい気分なんだ」

騎士長「いいのか?」

アサシン「私が話しをしたいって言ってるんだ。いいから座りな」

騎士長「わかった」

トコトコ…

アサシン「どこに行くんだ。こっちだよ」グイッ

騎士長「あ?だから椅子に…」


…ボスンッ!

騎士長「うおっ」

 
アサシン「私の隣でいい」

騎士長「服を着ろよ」

アサシン「まぁいいじゃないか。それより…何から話をしようか」

騎士長「任せるよ」


アサシン「…私はね、さっき言った通り元奴隷。捕まった時の事は良く覚えてる」

騎士長「ふむ」

アサシン「まだ遊牧民だった私たちの一つのグループに、夜…"アイツら"はやってきた」

騎士長「…」

アサシン「武力も持たない私たちは一瞬で散り散りになった。母親は、今どこで何してるか分からない」

アサシン「父は目の前で殺された。そして私は…地獄のような日々が始まったんだ」


 
騎士長「…どうなったんだ」

アサシン「私を捕まえた奴らは、私が奴隷市場に売るまでに毎日…ね」

アサシン「そして、そこからは何度も売買されて、ひどい…ものだった…本当に…」


騎士長「…」

アサシン「恨んだよ。後から分かった事だったんだが、その面子は王都の出身のヤツらだったんだ…」ギリッ

騎士長「…っ」

アサシン「この地獄はいつまで続く気がした。だけどね…ある日のこと」

アサシン「次の"飼い主"が決まった時。彼は来たんだ」


騎士長「…彼?」


アサシン「私たちを含む、奴隷狩りで奴隷になってた面子を助けに来てくれた…ヒーロー様だよ」

騎士長「…ほう」

アサシン「奴隷車に乗せられてた私たちを解放してくれたんだ。その人も…王都出身だった」

 
騎士長「…皮肉だな。襲った面子も、助けた面子も王都出身だったのか…」

アサシン「…ふふ。だけどな」

騎士長「ん?」

アサシン「私の同族を必死になって守ろうとしてくれた、お前も王都出身だろう?」

騎士長「そうだな」

アサシン「私はどうも、王都と繋がりを持つ人生らしいな」ハハハ


騎士長「そうなのかもしれないな。それと…謝るよ」

アサシン「何故謝る?」

騎士長「俺らの出身者の先輩だろうが、暴力を振るったのには変わらない。だから…同じ出身者として謝りたい」

アサシン「よしなよ。どうせ、謝ったところでキズは…癒えないんだから…」

騎士長「…すまん」

 
アサシン「はは!で、話は続く。それから1年後…何と私はその、助けてくれた人間と再び出会うんだ」

騎士長「ほう!」

アサシン「格好良かったよ。初めて、人を好きになるってことを覚えたんだ」

騎士長「そうだろうな」


アサシン「そして…私はその人と恋に落ちた。彼も私を受け入れてくれたんだ。傷だらけの私をだよ?」

騎士長「本当にいいやつだったんだな」

アサシン「やがて…その人の子を授かった。周りからは反対されたねぇ…」

騎士長「仮にも助けてくれたとはいえ、王国都市出身者だもんな…」

アサシン「だけどそこは頑固な私。子供を産んだんだ」


騎士長「お、おい…待てよ…」

騎士長「お前、いくつなんだ?子供を産んだって…まだ若いだろ?」

 
アサシン「奴隷になったのは14歳。子供を産んだのは21か…22歳。今は28歳だよ」

騎士長「…そうなのか。随分と若いとは思ってたが」

アサシン「嬉しいことを言ってくれるね!」バンッ

騎士長「はは…」


アサシン「ま、子供を産んだ後に夫と私は周りの反対に結局負けて、押し切られた」

アサシン「私たちは遠く離れた村へ。夫は別の村に散り散りになってしまった」

アサシン「そこからは詳しくは知らないけど、これ以上の犠牲は出さないとこうして発起してアサシン部隊を作り上げた」


騎士長「…壮絶波乱な人生だな」ハハ

アサシン「あんたね、普通は大丈夫?とか励ますもんなんじゃないのか?」

騎士長「お前自身、励ますほど弱くはないと思ったからな。それよか、笑い飛ばしたほうが性に合ってるんじゃないかと思ってさ」

アサシン「くくく…面白いヤツだ」

 
騎士長「そうか?空気読めない奴だってのは良く言われたが」


アサシン「…」

アサシン「酒って怖いねやっぱり。ここまで話すつもりはなかったんだけど」

アサシン「それとも、アンタが話しを聞くのが上手いのかね」フフ


騎士長「さぁな。こんな俺でも、話をしてくれて良かったぜ」

アサシン「…ねぇ」

騎士長「ん?」

アサシン「酒の勢いに任せて…いいか?」

騎士長「何がだ?」


アサシン「…」グイッ

…ドサッ!

騎士長「うおっ!」

 
アサシン「…今日の一件で、あんたに興味を持った。こんな女じゃダメか?」

騎士長「興味を持っただと?」

アサシン「敵地だとも知って省みず、本気で救いにくる姿勢。そしてその淡々とした雰囲気にね」

騎士長「…お前、随分と潔いというか…割り切る人間なんだな」

アサシン「所詮人間も動物さ。いい男がいたら…、ただの男女に成り下がるんじゃないか」


騎士長「…本気か?なら…」

騎士長「女に主導権を握られるのは、俺の趣味じゃないんでね。俺と逆になってもらうぞ!」グイッ


アサシン「え…?きゃあっ!」

グルンッ…ドサッ!!

騎士長「!」

アサシン「あ…」

騎士長「くくく…」

アサシン「い、今のは忘れてくれ…」カァァ

 
騎士長「…お前がいいなら、俺はいいぞ?こんないい女に、イエスといわれて断る理由もない」

アサシン「…少し、冗談のつもりだったんだけどね。あんたも、傷だらけの女でもいいのか?」

騎士長「それで、お前が少しでも満たされるなら。それは男の仕事だろう」

アサシン「…」

アサシン「助けに来た所も…。そのセリフも…」


騎士長「ん?」

アサシン「な、何でもない!」プイッ


 
騎士長「…女を想い、断るだけが優しさじゃないことは分かってる」

騎士長「これが正解なのかも分からんが、今はこれで良い気がしただけさ」


アサシン「…!」


騎士長「ま、お前が冗談だって言ったなら別に止める。ただ…俺もお前が気に入っただけだ」

騎士長「傷だらけとか気にはしない。その潔さ、その姿勢、生き様…」

騎士長「たまたま気に入っただけ…それ以上でも、それ以下でもないっていうのは言っておく」

  
アサシン「…やっぱり、その強さだけじゃなくて…イイ男だよ」

アサシン「酒に飲まれてようと、今日の一瞬のやり取りでアンタのことを、私も気に入ったんだ」

アサシン「男と女…分かりあうのも一瞬で充分だと私は思う」


騎士長「…そうかもな」


アサシン「…来てよ」ニコッ

騎士長「あぁ…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・朝 】


チュンチュン…


アサシン「…」

騎士長「…」パチッ


アサシン「…おはよう」

騎士長「おう」

アサシン「…」ムクッ…バサバサッ

騎士長「…俺は何も言わないからな」カチャカチャ

アサシン「当たり前だろ。何も言うことなんかないよ」

騎士長「…」

  
アサシン「そういや、黒髪幼女も起こさないとね」

騎士長「そうだなぁ」ウーン

アサシン「久々に子守とは別で、のんびり出来たんじゃないのか?」

騎士長「ここなら安心出来るからな。踊り子たちも、元奴隷とは思えないほどの笑顔だった」

アサシン「…そうさ。当たり前じゃないか」

騎士長「ははっ」


アサシン「あぁそれと…今日、あとで地方村に連れて行くよ」

騎士長「…あーっ!!」

アサシン「!?」ビクッ


騎士長「そうだ、俺は地方村の話も聞きにきたんだよ!」

アサシン「あ…あはは…そうだっけ?」

騎士長「お互い忘れすぎだ…」

 
アサシン「簡単に言えば…今の地方村は、誰も残っちゃいないくらいボロボロだよ」

騎士長「誰もいないのか?」

アサシン「火をつけられて、元々密集した小さな村だったから…全部燃えてしまってる」

騎士長「…そうか」

アサシン「あの子の手がかりになるようなものは、残念だけどないと思うぞ…」

騎士長「…」


アサシン「それに、少しずつあの子は元気になってるんだろう?」

騎士長「あぁ。本当の笑顔は見たことないが、出会った時よりは確実に前向きにはなってきてるな」

アサシン「そこでまた傷を広げるように見せるのは…少し反対だと思うのだが」

騎士長「俺もそう思う。だけど、アイツ自身がそう望んだことだから」

アサシン「…あの子なりに、前に進みたいってのもあるのかもね」

騎士長「そうかもしれんな…」

 
アサシン「…」

騎士長「あ、そうだ。もう1ついいか?」

アサシン「何だ?」

騎士長「この部落は、ずっとここにあるのだろうか。見たところ、テントでの生活だろう?気になってな」


アサシン「あぁ、それは違う。私たちは、昔ながらの遊牧民のようにしてるんだ」

騎士長「ふむ」

アサシン「問題がある話とか、何かを聞きつけたり依頼されたら移動できるほうがいいじゃないか」

騎士長「なるほど」

アサシン「それに、踊り子や元奴隷の彼女たちを連れて行くのに、みんな一緒だと安心だろう」

騎士長「色々考えてるんだな」

 
アサシン「今回、地方村の近くまで来たのは、その話を聞いたからさ」

騎士長「へぇ…そういうことだったか」


アサシン「ふふ、とにかく今は黒髪幼女を起こしてきなよ!」バンッ

騎士長「いてっ!わかったよ!」

タッタッタッタッタ…


アサシン「さて、朝ごはんの準備もさせて…ラクダの用意もしておくとするかぁ」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2時間後 】


アサシン「どうだい?朝ごはん、美味しかったか?」

黒髪幼女「うん、美味しかったよ」
 
騎士長「そりゃ良かった」


アサシン「さてと、んじゃあ…地方村に向かうよ。準備はいいね」

黒髪幼女「…」コクン

騎士長「いいぜ」

アサシン「そこのでっかいラクダに3人乗れるよ。さ、二人とも乗って…」

 
トコトコ…ヨジヨジ…ヒョイッ

黒髪幼女「乗ったよ!」

騎士長「相変わらずお早いですな、黒髪幼女さん」

アサシン「行く気満々だね…よし、私が前に乗るよ。騎士長は後ろで、黒髪幼女を落とさないように挟んでくれ」

騎士長「わかった」


タッタッタ…ヒョイッ

アサシン「口笛を吹いて速度をあげるから、あっという間に着く。二人ともしっかりと私にしがみ付きなよ」

騎士長「ほいほい…」
 
トコトコ…ヒョイッ


騎士長「…」

騎士長「…」ニヘラッ

 
アサシン「準備はいい?」

黒髪幼女「うん、捕まったよ」ギュー

騎士長「捕まりまーす」 ギュー…サワッ…

アサシン「!」ビクッ

騎士長「ほら、早く行こう」


アサシン「…騎士長」ニコッ

騎士長「ん?」

アサシン「天誅っ!」

…ゴツンッ…ドサッ!!!


騎士長「ぬあーっ!!い、いてぇなっ!!仕方ないだろ、捕まるとこないんだから!」

アサシン「腰でいいだろう!」

騎士長「わ、わかったよ」

 
黒髪幼女「…」
 
黒髪幼女「…仲良くなったね?」


騎士長「え?い、いや…まぁな」ハハ…

アサシン「…出発するよ!」


騎士長「…」

騎士長「…」ニヘラ

騎士長「アサシン、"きゃあ!"…」ボソッ


アサシン「…」

ゴツンッ!!!…ドサッ!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠地方村 】


…ゴォォォ…

パカッパカッパカッパカッパカッ…ザザ…


アサシン「着いた…ここだよ」

騎士長「ここが、黒髪幼女の住んでいた村…か」

黒髪幼女「…っ」

騎士長「…ひでぇ。家らしい家…いや、建物すら何もないじゃないか…」

 
アサシン「最初の奴隷狩りが来た後、残った人々も別の組に襲われたようでね」

騎士長「…」

アサシン「少しは残ってた建物も、ごらんの有様さ」

騎士長「…そうか」


黒髪幼女「騎士長…こっち…」


騎士長「ん?」

黒髪幼女「私の家…こっち。来てくれる?」

騎士長「当たり前だろ。それと…手、出せ」

黒髪幼女「?」スッ

…ギュッ

 
騎士長「…」

黒髪幼女「…」ブルブル…

騎士長(手が震えている…当たり前か…)


アサシン「…」

騎士長「黒髪幼女…無理するな。一緒に手を繋いで、一歩一歩…進もう」

黒髪幼女「うん…ありがとう…」

騎士長「…」

黒髪幼女「こっち…」

 
ザッザッザッザ…トコトコ…

黒髪幼女「…」

騎士長「…」

アサシン「…」


ザッザッザ…ピタッ

黒髪幼女「…ここ」

騎士長「ん?」

黒髪幼女「ここ、私の家があったところ…」


ヒュウウウッ…


騎士長「…」

黒髪幼女「何も…なくなっちゃったね…」

  
騎士長「黒髪幼女…」


黒髪幼女「…」

騎士長「…」


黒髪幼女「ここが玄関でね。いっつもお友達とここで水遊びとかしたの」

騎士長「うん」

黒髪幼女「お父さんは、仕事だって言ってよく向こうの酒場にいてね…」

黒髪幼女「お土産でいつも、美味しい物買ってきてくれた」

騎士長「…うん」

黒髪幼女「…何も、残ってないね」

 
騎士長「…」

黒髪幼女「お父さん…どこにいるの…?」

騎士長「…」

黒髪幼女「何で…こんなことしたの…。全部…なくなっちゃったよ…」


騎士長「黒髪幼女…」

…ギュウッ

黒髪幼女「…う…あうぅ…」グスッ


騎士長「辛いかもしれないが、目を背けないで…」

騎士長「俺も支えてやるから…前へ進もう」

黒髪幼女「…っ」ポロポロ

 
騎士長「…」ポンポン

黒髪幼女「…」

アサシン「…」


黒髪幼女「…あれ?」グスッ

騎士長「どうした?」

黒髪幼女「なんか光った…気がする…」


騎士長「何?ど、どこだ?」

黒髪幼女「…そ、そこ!」

騎士長「ん…?」

…キラッ

 
アサシン「何だ?」

騎士長「俺が取ってこよう」

ガサガサ…ゴソ…チャリッ

騎士長「これは…」


アサシン「ペンダント…いや、ロケットか?」

騎士長「黒髪幼女、知ってるか?これ」チャリッ

黒髪幼女「え?ううん…見たことないよ」

アサシン「それ、開くんじゃないか」


騎士長「ちょっと待て…」

カチャカチャ…カチャ…パカッ!

騎士長「!」

 
黒髪幼女「開いた!」

アサシン「何か入ってるか?写真とか…」

騎士長「まぁ待て。えーと…」

カチャ…カチャカチャ…

騎士長「…え?」

騎士長「え…こ、これ…」


アサシン「どうしたんだ?知ってるのか?」

黒髪幼女「騎士長?」

騎士長「な…なんでコレがここに…」

 
アサシン「だから何だっていうんだよ!」

黒髪幼女「何?どうしたの?」


騎士長「…っ」

騎士長「こ、これは、俺たちの仲間…。"王宮都市の警備隊だけ"に渡される、証明となるロケットだ…」

騎士長「見ろ…ロケットの真ん中に王宮都市の国旗と警備隊の剣が刻まれているだろ…?」キラッ


黒髪幼女「…え?」

アサシン「…何だって…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パカッパカッパカッパカッパカッ…!!


騎士長「急いで戻るんだ!」

アサシン「目一杯だよ!」

騎士長「…っ」


黒髪幼女「き、急にどうしたの?」

 
騎士長(…なぜ、黒髪幼女だけの場所にロケットが落ちていた?)

騎士長(そもそも、奴隷狩りになぜ…王宮都市が介入する必要があるんだ…?)

騎士長(今はとにかく…何かあそこにいたらヤバイ気がする!)


アサシン「…騎士長、何か分かったのか!?」

騎士長「恐らくだが、黒髪幼女の関わる今回の事件…王宮都市が関連している。しかも政府がな」

アサシン「さっきのロケットか?」

騎士長「…変な話だと思わないか?奴隷狩りに王都が関連する必要はないはずだ」

アサシン「応援部隊を今回につき出したとか…そういう事じゃ?」


騎士長「いや、俺が知ってる限り…他の場所に応援を出すことはほとんどなかった」

アサシン「…どういうことなんだろうか」

 
騎士長「地方村で王都が関連するってことは…だ。そこの村の成り立ちは聞いてるだろう?」

アサシン「…あ、王都から来た男が地方村を組み立てたってことだね」

騎士長「そうだ。それに、黒髪幼女の親父の謎の行動…、今回の王都の介入…」

アサシン「…」

騎士長「くそっ!さっぱり分からん…が、今、あそこにいるのは危険な気がするんだ!」

アサシン「これからどうするんだ?親父の手がかりはなかったぞ…」


黒髪幼女「…」


騎士長「いまさら、王都が何に介入するかは聞けないし…」

騎士長「くそっ!完全に手詰まりだ!」

 
黒髪幼女「お父さん…」

騎士長「…心配すんな。お前の親父は探し出すさ。それに…」

黒髪幼女「それに…?」

騎士長「今回の事件、安易に考えていたが…予想以上に重い案件らしい」

アサシン「…そうかもしれないね。何かしらで繋がる所があるから…」


騎士長「何かの手がかりが欲しい。一旦、王都に戻って、忍び込むのも悪くはないと思う」

アサシン「危ないんじゃないのか?」

騎士長「さすがにこれ以上は、危険を犯しても進むしかないだろう」

アサシン「…そこまで、やる意味はないだろう」


黒髪幼女「騎士長…危ないことなら、しなくても…」

 
騎士長「…俺は王宮都市、エースの騎士長だぜ?依頼は最後までやりぬくさ!」ハハハハ!!

アサシン「…騎士長」

黒髪幼女「騎士長…!」


騎士長(明るく振舞ったが、実際のところ…何かしらの巨大な力が動いているのは確かだ)

騎士長(これ以上の被害の可能性がある以上、元騎士長だろうが…)

騎士長(それを知った以上、動ける俺が動くしかないんだよ)

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 部 落 】

ズザザザ…

アサシン「一旦、部落で準備して行きな」

騎士長「あぁ…助かる」

アサシン「それと…黒髪幼女はどうするつもりなんだ」


黒髪幼女「…」


アサシン「あんたが言う事が本当なら、黒髪幼女も危険になる」

騎士長「そうなるな…」

 
黒髪幼女「私、騎士長の邪魔になるなら別の場所でも待ってる」

黒髪幼女「大丈夫だから…」


騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪幼女「寂しくなんてないから…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」ブルッ


騎士長「はぁ~…」

騎士長「誰が、置いていくっていったんだよ」


黒髪幼女「えっ…?」

 
騎士長「船の一件以来、お前を近くで見てないとすぐにどっかに行っちまうからなぁ」ハハハ

黒髪幼女「いいの…?足手まといになるよ…」

騎士長「気にするなよ!今度は、しっかり守ってやるからな」

黒髪幼女「…っ」


タッタッタッタ…

砂漠剣士「お疲れ様です、頭」

アサシン「お、幹部長…出迎えご苦労」

砂漠剣士「いえ」

アサシン「それと、ちょっと相談なんだけど…しばらく、私がいなくても平気だよな?」

砂漠剣士「え?え…と、それはどういう意味でしょうか」

 
アサシン「…何か、騎士長らが面白そうな事をするらしいから、着いて行こうと思ってね」

砂漠剣士「え…えぇぇ!?」
 
騎士長「え゛…?」

黒髪幼女「えっ!」


騎士長「で、でもお前、ここの長なんだろ?それに、他の奴隷狩りを倒す使命とか…」

アサシン「…どの道、一回王宮都市には行こうと思っていたんだ」

騎士長「何?」

アサシン「私は行った事がなくてね。それに王都が一噛みしてるなら、それを倒せば大元が崩れる可能性もあるだろう」

騎士長「そ…そりゃそうだが…」

アサシン「足手まといにはならないよ。私の強さはアンタがよく知ってるはずだ」

騎士長「いや知ってるけども…」

 
砂漠剣士「し、しかし!頭がいなくなったら色々困りますよ!」

アサシン「あんた…ここに来て何年になる?長に使命されてどのくらいだ?」

砂漠剣士「数年ですが…。部隊"アサシン"の立ち上げメンバーとして参加しましたし」


アサシン「だろう?…いつも女だから舐めるなと言っていた私が言えた義理じゃないが…」
 
アサシン「いつまでも女である私に頼っていて、男であるお前がしっかりしなくてどうするんだ!」


砂漠剣士「…」


アサシン「頼めるのはアンタしかいないと思ってる。頼むよ」

砂漠剣士「わかりました…任せてください」

アサシン「ありがとう。恩に着るよ」

砂漠剣士「ただし約束があります。また無事に…ここへ戻ってきてください。それだけはお願いします」

アサシン「分かってるよ。約束する」

砂漠剣士「…」ペコッ

 
アサシン「ってなわけだ、騎士長」

騎士長「本当にいいのか…?仲間が出来るのはこの上なく嬉しいのだが…」

アサシン「あぁ」

黒髪幼女「お姉ちゃんも…一緒に来るの!?」

アサシン「ん~なんだ不満か?はは」

黒髪幼女「最初怖かったけど…、本当は優しいから…」

アサシン「あはは!嬉しいね!」


騎士長「…本当に来るなら、急ぐぞ。今回ばかりは悠長に言ってられない気がするんだ」

アサシン「わかった。すぐに港までの食料と水の準備を!」


砂漠剣士「わかりました。1日分、充分に多くの補給品を…」

 
騎士長「いや、もっと数日分を積めてくれ。出来れば日持ちするものを」

アサシン「何でだ?」

騎士長「砂漠港には寄らない。大回りで大陸を越えていく」

アサシン「…何か考えでも?」


騎士長「既に王都の面子が周辺に張り付いた可能性が高いんじゃないかと」

騎士長「どうも、目的がハッキリしないが用心にこしたことはないと思ってな」


アサシン「…なるほどね」


騎士長(それに、黒髪幼女の家にピンポイントで落ちていたロケット…)

騎士長(どう考えても目的は…何故だか分からんが…)

 
アサシン「わかった。すぐに準備させよう、おい!」

砂漠剣士「はっ!ただいま準備して参ります!」ダッ

タッタッタッタッ…


騎士長「遠回りになると、最低でも2週間以上の道になりそうだな」

アサシン「さすがにラクダはそこまで持たないね。どのルートで行くんだ?」


騎士長「出来れば海沿い伝いに、最短の道で行きたい」

騎士長「とはいえ、砂漠港に直行は出来ないからな…港にぶつからないように海に行こうかと考えてる」


アサシン「なら道案内は任せてくれ」

騎士長「頼む」

 
タッタッタッタッタ…ゴソゴソ…

砂漠剣士「保存食等の準備、確保はできました」

砂漠剣士「ですが、水はどうしても日持ちしません。現地調達になるでしょう」


アサシン「ありがとう、それで構わない。点々とする村で補給するさ」

砂漠剣士「わかりました」

アサシン「私がいない間も、きちんと頼んだよ」

砂漠剣士「もちろんです」

 
騎士長「この部落、たった1日だったけど本当に楽しい日になった。ありがとう」

砂漠剣士「いえ、新しい仲間の誕生ですから」

騎士長「…ふっ」


アサシン「武器よし、ラクダの調子もよし、食料よし!」

アサシン「これでいつでも行けるよ!」


砂漠剣士「それにしても、こんなに急いで行く必要も…」

騎士長「急がないといけない気がするんだ。俺のカンだけどな」

砂漠剣士「そうですか…」

 
騎士長「この部落、たった1日だったけど本当に楽しい日になった。ありがとう」

砂漠剣士「いえ、新しい仲間の誕生ですから」

騎士長「…ふっ」


アサシン「武器よし、ラクダの調子もよし、食料よし!」

アサシン「これでいつでも行けるよ!」


砂漠剣士「それにしても、こんなに急いで行く必要も…」

騎士長「急がないといけない気がするんだ。俺のカンだけどな」

砂漠剣士「そうですか…」

 
騎士長「アサシン、皆に別れの挨拶はいいのか?」

アサシン「…長居をしても、交わす言葉は変わらないよ」

騎士長「…お前らしいな」

アサシン「ふふ…さぁ、いいよ。いつでも出発できるよ」


騎士長「黒髪幼女も…準備はいいな?」

黒髪幼女「…」コクン


騎士長「さぁ、王都で全てを明かす…。行くぞ!王都へ出発だ!」

アサシン「あぁ!」

黒髪幼女「うんっ!」

………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠・海沿い付近 】


パカッパカッパカッ…!!

黒髪幼女「…っ」

アサシン「もうすぐ海沿いに出る!そこからはゆっくりだから、振り落とされないようにね!」

騎士長「つったって…早すぎるだろこれ!!」

アサシン「当たり前だ、我らの自慢のラクダだぞ!」

騎士長「そ、そういう事をいってるんじゃなああい!!」

パカッパカッ!!サァァ…

アサシン「それより、林が見えた!海沿いに出るよ!」

アサシン「海辺に出たら岩場になるから、その手前で急ブレーキかけるよ!」

 
騎士長「ブレーキはゆっくりしてくださぁあぁい!!黒髪幼女、しっかり捕まれよぉぉ!」

黒髪幼女「…!」ギュゥゥ


アサシン「…ブレーキッ!!」グイッ!!


ラクダ『ブルルルウゥッ!』

ズッ…ズザザザザァ…!!!


騎士長「ぬおおおっ!」ブワッ

黒髪幼女「…っ」ビリビリ

アサシン「やっほーーー!」

 
ザザザァ…!!!ズザザァ…ザザァ…

ピタアッ…


騎士長「はぁ…はぁ…止まった…?」

騎士長「し…死ぬかと思った…」

アサシン「だらしないね、こんくらいで」

騎士長「誰がラクダであんな速度出せると思うんだよ!」

アサシン「だからそれは、砂漠ラクダの中でも特に早い…うちのラクダこそで…」


騎士長「あーはいはい…。黒髪幼女、大丈夫か?」

黒髪幼女「な…なんとか…」


騎士長「はぁ~…。で、現在地はどのくらいだ?」

アサシン「本来、港は丁度北側にあるんだけど。北西側の大陸を抜けるから、今は北西の海沿いだ」

 
騎士長「ナイスな位置だ。あとはこの海沿いに進んで、まずは北西にある町々を進んで行こう」

アサシン「海沿いなら、それなりに発展してる町村もあるからね」

騎士長「とはいえ、先が見えない事には変わりないか。1日目から野宿にならなけりゃいいんだが」

アサシン「男らしくないねー」

騎士長「いや俺じゃなくて…」チョイチョイ


黒髪幼女「?」


アサシン「なるほどね」

騎士長「あまり負担はかけたくないんだ。ここから一番近い村でどのくらいだ?」

アサシン「どうかなー。地元の人間でも、散らばりすぎてる村の所在地は詳しくは知らないんだよ」

騎士長「砂漠地方に点々とする旗で村同士をつないでるんじゃなかったのか?」

アサシン「それはあくまでも、繋げる範囲で。砂漠地方は広いんだ…そりゃまだ未開拓のところもあるさ」

 
騎士長「…なるほど」

アサシン「って言っても、さっき言った通り海辺には村は大体あるはず」

アサシン「だから見つけるたびに物資を補給すればいいと思ってたよ」

アサシン「それに、私の名前を使えば大体協力してもらえそうなもんだし」


騎士長「お前、そんなに有名なの?」

アサシン「そりゃあ、砂漠の英雄と言ったらアサシンで通ってるし。みんな男だと思ってるみたいだけど」

騎士長「何で英雄?何で男なんだ?」


アサシン「英雄は私が奴隷解放の軍団のリーダーだからね」

騎士長「男っていうのは?」

アサシン「それは…コレ」

スッ…シュルシュル…

 
騎士長「!」
 

黒装束(アサシン)「…わかった?」


騎士長「あ~!そういえば俺も最初は男だと思ってたしな」

アサシン「ふぅ」パサッ

アサシン「悔しいけど、女っていうだけでナメられるし…男っていうほうが認められると思ったんだ」

騎士長「なるほどな…」

アサシン「ナメられるっていう以外に、顔がバレると厄介なことも多いしね」

騎士長「その割には、随分俺の時はアッサリとだったな」

 
アサシン「それは状況が状況だったし、仕方ないだろう」

アサシン「それに…動物的本能を刺激されたっていうか…ね?」ニカッ

騎士長「む…」


黒髪幼女「…」

黒髪幼女「騎士長…動物的本能って何?」


騎士長「…へ?」

アサシン「…」

騎士長「…えーと…」

アサシン「それは人間の欲望に関係があって、身体を求めるっていうか」ペラペラ

騎士長「うおい!!」

…ゴツッ

アサシン「」プシュー

 
騎士長「はぁはぁ…全く。黒髪幼女、それはなんだ…ほら、人が人を求めるってことだ」ハハハ!!

黒髪幼女「うーん…」

騎士長「今はまだ気にするな。そのうち覚えるさ」ハハハ

黒髪幼女「う~ん…わかった…」


アサシン「お~痛い…。ちょっとした冗談じゃないか」グスン

騎士長「冗談で言うレベルじゃなかったぞ!」

アサシン「ふふっ、ごめんごめん」

騎士長「…全く」

 
アサシン「まぁまぁ」ハハッ

騎士長「それより、さっさと砂漠地方を抜けるぞ。日が暮れる前に村を探すからな!」

アサシン「そうだね、進んでおくれラクダくん」


ラクダ『ブルルッ!』

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕方・海沿いの村 】
 

ホウ…ホウ…チチチ…

トコトコトコ…

アサシン(黒装束)「海沿いに村があってよかったな」

騎士長「宿も備えた規模の大きい村で助かった。水も出来るだけ補給させてもらおう」

アサシン「あぁ。ラクダはここの乗り場で預かってもらっている」


騎士長「んじゃ晩飯は俺が奢るぜ。砂漠地方で海鮮料理ってのも妙な感じだが」

アサシン「遠慮せず頂こう」

 
黒髪幼女「…」

黒髪幼女「お姉ちゃん、何かしゃべり方が変だよ?」


アサシン「黒髪幼女、シーね、シー!」ボソボソ

黒髪幼女「?」

騎士長「お姉ちゃんだけど、今は秘密なんだ。シーっ」

黒髪幼女「わ、わかったっ」


騎士長(何してんだか…)


騎士長「食べ物屋を探す前に、宿をとるか」

アサシン「それもそうか。これだけの規模の村、適当に探せばあるだろう」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 海沿い村・宿場 】


ガヤガヤ…ワイワイ…


騎士長「おぉ、結構広いな」

アサシン「我も知らぬ村だったが、宿は予想以上の賑わいだな」

騎士長「下手したら砂漠港と一緒くらいの規模かもしれん。とりあえず部屋があるか聞こう」


トコトコ…ピンポーン

騎士長「すいませーん!!」

宿番「はいはーい」ドタドタ

騎士長「泊まらせてほしいんだが、部屋は空いてるか?」

 
宿番「何名で、何部屋でしょうか」

騎士長「子供1人、大人2人。2部屋を頼みたい」

アサシン「…おい」

騎士長「ん?」

アサシン「別に無駄に遣ってることはない。1部屋でいい」

騎士長「いいのか?」

アサシン「別にいい」


騎士長「…らしい。1部屋あればいい」

宿番「あ、そうですね。丁度1部屋しか空いてませんでしたし、ご案内します」

騎士長「ところで、見たところ規模の大きい宿だが飯屋の併設はないのか?」

 
宿番「あ、それならソコの角を曲がった先に、当宿の併設のレストランがございます」

騎士長「お♪そうかそうか、ありがとう」

宿番「ですが、先に予約と同時に注文していただければ、あとでお部屋にお運びしますよ?」

騎士長「ほう、そうなの?どうする2人とも」


アサシン「任せる」

黒髪幼女「どっちでも!」


騎士長「メニューは一緒なのか?」

宿番「そうですね、レストランから直接お部屋にお運びします。メニューはこちらになります」スッ

 
騎士長「ふむ…」ペラペラ

騎士長「えーと…、オススメはあるか?」

宿番「海鮮物とクリームのスパゲティがおすすめですよ」

騎士長「じゃあそれ3つ。それとビールを…。サラダも貰おうか。お前は?」

アサシン「我も付き合おう」

騎士長「じゃあ大瓶を適当にもってきて。あとここら辺のジュース適当に」


騎士長「あと…コレ。よろしく」ボソボソ

宿番「わかりました。それではこちらが部屋の鍵になるので、あとで料理が出来次第運びますね」チャリッ

騎士長「わかった」


アサシン「では部屋に向かおうか」

騎士長「そうだな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 部 屋 】

…ボスンッ!

騎士長「ふぅ!」

黒髪幼女「なんか今日も疲れた…」

アサシン「…」

シュルシュル…パサッ…


アサシン「マスクもしてると息苦しくてな…。はぁ~やっと一息つける」

騎士長「やっぱお前、マスクねぇほうがいいわ」ハハハ

アサシン「ふふ…」


騎士長「…って、黒髪幼女…どうした?」

 
黒髪幼女「…」ボー

騎士長「ん~?」

黒髪幼女「…」スヤッ

騎士長「あっ…」


アサシン「…今日1日で色々移動して大変だったんだろう。ご飯が届くまで、寝かせてやろう」

騎士長「だなぁ…自分の足とは言えないが、随分と遠い旅になってるし。体操でもしておこう」ウーン

騎士長「う~ん骨がよくなる…」ボキボキ

アサシン「…」

騎士長「ん~…」コキコキ


アサシン「な…なぁ…」

 
騎士長「ん、なんだ?」

アサシン「私を…不埒な女だと思うか…?」

騎士長「不埒だって?急にどうしたよ」

アサシン「…」


騎士長「あ~…昨日の事とか、お前の境遇の話とかか?」

アサシン「…」コクン

騎士長「別に思わねぇよ。お前は俺を認めて、俺はお前を認めただけだ。それだけだろ?」

アサシン「…」

騎士長「傷だとか、過去とか、そういうことが関係あるのは分かってる」

騎士長「だが俺は不埒だなんて思わない」

 
アサシン「そうか…だが、私自身…悔やんでしまう」

騎士長「…俺と寝たことか?」

アサシン「そ、それは違う!私は…そ、その…。葛藤というか…あぁぁ!何て言えばいいんだ!」


騎士長「はぁ…別に、素直に"寂しかった"でいいんじゃないのか?」

アサシン「…っ」

騎士長「自分と、重ねたんだろう。別に恥じゃないと思うぜ」

アサシン「私の気持ちが、わかるのか…?」

騎士長「大体な」


アサシン「…」

騎士長「…」

 
アサシン「…まさか、黒髪幼女に私の幻影を見るなんて…思わなかったんだ」

騎士長「まるで同じ境遇だったから、だろう」


アサシン「…王都出身のアンタが、黒髪幼女を助けに部落に乗り込んできた時…」

アサシン「まるで私を助けてくれたあの王都の人間に思えたんだ…!」

アサシン「くそっ…同じセリフを言いやがって…。"傷だらけの女だろうが関係ない"なんて!」

アサシン「…っ!こうやって、自分に言い訳する自分も嫌いだ…!」


騎士長「…わかってる」

アサシン「…っ!!」

騎士長「酒でもなんでも付き合う。寂しければ、今は頼ればいい。話してくれ、何でも」

アサシン「そ…そうやって…」ブルッ

 
騎士長「ん?」


アサシン「私の話を…どうしてそうやって聞いてくれるんだ…。どうして分かってくれるんだ…」

アサシン「こんな汚い人間の、ただの愚痴なのに!」


騎士長「…さぁな。俺は話を聞いて、分かろうとすることしか出来ない不器用な人間だから…」

騎士長「こうして何でも聞くし、せめて本気で理解したい。どんなに強気でも…お前は女だ」

騎士長「そうやって頼ってくれるなら、俺は何でもする。俺は男だから、な」


アサシン「…っ」

騎士長「こんなしょうもない男で良ければ、いくらでも付き合いますよ。お姉さん」ニカッ

 
アサシン「…っ」

騎士長「寂しければ言ってくれればいい。話たければ話せばいい。今はもう、仲間だろう?」

アサシン「…騎士長」

騎士長「はははっ」


アサシン「…ありがとう」グイッ

騎士長「!っ…んむっ…」

……

……

アサシン「…んっ」

騎士長「…」

アサシン「騎士長…これでも、不埒で恥な女とは思わないんだな…?」

騎士長「くく…不埒かもしれんな」

 
アサシン「…」

騎士長「だけど、少しの欲望に身を任せる、"俺のほう"が…もっとダメだろ」グイッ

アサシン「!」

騎士長「…こんな女リーダー、本当にどうしようもないな」ハァ


ハァ…ハァ…

アサシン「騎士長…息が…熱い…」

騎士長「…っ」


ガチャガチャガチャ…ピンポーン!!

騎士長「!」ビクッ

アサシン「!」ビクッ

 
ピンポン…ピンポーン!!!

宿番「お料理お持ち致しましたぁ!お部屋を開けてくださぁ~い!」ピンポーン


黒髪幼女「む、むぅぅ~…ご飯…?」ムニャムニャ


騎士長「…!」

騎士長「…く、くく…」ブルブル

アサシン「あ…あはははっ!そういえば、そうだったね!」ハハハ


騎士長「仕方ない、黒髪幼女!ごはんが来たぞ!」

黒髪幼女「うんっ…!」ムクッ

 
ピンポンピンポーン…

騎士長「今出ますよ~っと」

タッタッタッタ…ガチャッ…


黒髪幼女「う~…私寝ちゃってたんだ」ムニャッ

アサシン「はは、仕方ないさ。疲れてたんだから」

黒髪幼女「むぅ…」

アサシン「あとでご飯食べたら、一緒にお風呂入ろうっか。背中洗ってあげるよ」

黒髪幼女「うん」


トコトコ…カチャカチャ…

騎士長「ほら、お待たせ。ジュースもあるし、いっぱい食べろよ~!」

黒髪幼女「うん、ありがとうっ」

 
ホカホカ…

アサシン「お~美味しそうだね。ビールも開けちゃおうっと」キュポンッ

騎士長「ところで~…後で一緒に風呂入るんだって?じゃあ俺も俺も!」

アサシン「黒髪幼女、男の人はダメです~って言ってやれ!」

黒髪幼女「ダメらしいよ!」


騎士長「な、なんだそうか。じゃあ後で一人寂しく入るからいいよ」イジイジ

黒髪幼女「…」

黒髪幼女「わ、私が一緒に入ってあげる…」オロオロ


騎士長「!」

騎士長「優しいなぁぁ黒髪幼女はぁぁ」バッ

ギュウウウッ…

 
黒髪幼女「うぅ~…」テレッ

騎士長「その優しさに免じて、俺からのプレゼント…チョコレートパフェだ!」スッ…キラキラ

黒髪幼女「!」


アサシン「さっきボソボソと店員に頼んでたのはこれか」

騎士長「折角だしな。きっと美味いぞ、食べろ食べろ」

黒髪幼女「ありがとう、騎士長っ」


騎士長「おうっ!それじゃ…せーのでっ…」


3人「いただきますっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
そして、3人と1匹のラクダは、

村と村で補給を繰り返しながら…確実に王都へと近づいていった。

やがて7日目の朝…砂漠地帯を無事に脱出し――…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠と森林国の境目 】


ラクダ『ブルッ…』


アサシン「今日までご苦労様。本当に助かったよ」

ラクダ『ブルルッ!』

アサシン「あとは、来た道を覚えてるね?そこを帰るんだよ」


騎士長「きちんと戻れるのか?」

アサシン「頭がいいからね。来た村での乗り場を経由して、戻ってくれるはずさ」

騎士長「本当にすごい奴だな」


ラクダ『ブルッ!』

 
アサシン「それじゃ、皆に宜しくね」

ラクダ『ブルルッ!』クルッ

パカッパカッパカッ…


騎士長「…行ったか」

アサシン「これで半分。ようやく砂漠は抜けたね」

騎士長「目の前には緑の大地。…森林国だ!ずっと黄色い大地だったからすげぇ懐かしく感じるよ」

アサシン「…」

騎士長「…どうした?」

 
アサシン「私、こうして砂漠を抜けるのは久しぶりなんだ。奴隷時代に飛ばされた時以来でね」

騎士長「あぁ…じゃあ俺以上に緑の大地は久々なんだな」

アサシン「久々で…」

騎士長「…」

アサシン「本当に…怖くなる。この緑が広がる土地を見ると…」ブルッ


騎士長「…」

アサシン「ご、ごめん…。我侭言って着いてきたのにね…」

騎士長「…いいさ」

アサシン「…」ブルブル

 
騎士長「本当に大丈夫か?無理だけはするんじゃないぞ」

アサシン「大丈夫…」

騎士長「その一歩は重いだろうが、一人じゃない。俺もいるし…黒髪幼女もいるんだから」

黒髪幼女「お姉ちゃん…」


アサシン「うん…」

…スタッ

騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪幼女「…」


ザッ…ザッ…ザッ…

騎士長「…進めそうか」

 
アサシン「大丈夫だよ…迷惑かけてすまないね…」

騎士長「別にいいさ。お前にとっての大事な一歩だろう」

アサシン「…ありがとう」


黒髪幼女「騎士長、ここからどう進むの?」

騎士長「王都まで、馬車の乗り換えを重ねていく」


アサシン「今度は馬車か。ラクダのように一頭でなんとかなる感じではないのか?」

騎士長「黒髪幼女は乗って教えたが、砂漠地方ほど単純なお国柄じゃないんだ」

アサシン「…というと?」


騎士長「砂漠地方は、巨大な大陸1つにいくつも村があるけどさ…」

騎士長「どんなに広くても、所詮は砂漠街の管理の下だから、さっきみたいな移動手段も可能だろう?」

 
アサシン「そうだね」

騎士長「ここからは、巨大な大陸に村ではなく、"国家"がいくつも存在して形成されている」

騎士長「だから、その国ごとに管轄される内で移動をしなければならないんだ」


アサシン「面倒な仕組みなんだね…」

騎士長「そうそう。国ごとに乗り換えを繰り返すから、やっぱりもう1週間はかかるだろうな」

アサシン「それは仕方ないことか…」

騎士長「まっ、砂漠のように不安定な場所はないから安心はしていい…が」

アサシン「…が?」

騎士長「ここからは本当の無法地帯。森には魔物がいるし、賊も潜む」

アサシン「賊までいるのか…。こちら側はあまり多くはないと聞いたんだが…」

 
騎士長「そりゃ王都に近い大陸中央に位置する都市とか国家だな」

アサシン「あ~なるほど。ってことは、こういった王都の離れの地方国は砂漠よりも多かったりするってことか?」


騎士長「砂漠に敵が少ないのは政府の方針と、魔物すら生存が難しい熱帯地区だったからだ」

騎士長「考えてみろ…この自然を。魔物も、人も、隠れて生きる事なんて簡単だろう?」


アサシン「確かにな…」


騎士長「ついでに…その中にはいるからな」

アサシン「何がだ?」

騎士長「お前らを襲う"奴隷狩り"だ」

アサシン「…」

黒髪幼女「…」

騎士長「もっとも、砂漠では仲間もいたが…ここじゃ3人だ」

騎士長「どれだけ強かろうが、アサシン、お前も守るさ」

 
アサシン「…ふふ、私に負けた奴が一丁前に。頼んだよ」ドンッ

騎士長「いてっ!あれは暑さで動けなかったんだっつーの!任せとけっつーの」

黒髪幼女「…」

タタタッ…ソッ、ギュウッ…

騎士長「…!」

黒髪幼女「ごめんなさい…、怖くなっちゃった…」

騎士長「いいぜ、しがみついてても」


アサシン「ここから次の村、町にはどれくらいなんだ?」

騎士長「下手すると数日は歩くかもしれん。森の中も突っ切るだろうし用心しよう」

アサシン「数日!?」

 
騎士長「こんな事もあろうかと思って、保存食の確保も余計にお願いしたんだ」

騎士長「キャンプしながら行けば、2、3日でつく範囲だとは思うんだがなぁ…」


アサシン「それと馬車の移動も含めたら10日以上になるってことか…気が遠いな」


騎士長「仕方あるまいよ」

騎士長「あ~それと一応、森で人がいないとはいえ、黒装束のほうがいいと思うぜ」


アサシン「わかった」

スッ…シュルシュル

アサシン(黒装束)「これでいいな」

 
騎士長「うむ。それじゃ行くぞ」

アサシン「わかった」

黒髪幼女「…」

…ギュウウ

騎士長「…」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ザッザッザッザッ…

騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪幼女「…」ビクビク


…ガサッ!!

黒髪幼女「ひゃっ!」

 
…ピョンッ

ウサギ『…』


黒髪幼女「う…うさぎさん…」

騎士長「ははは、そうそうビビることはないさ。いきなり敵に出会うものじゃないしな」

黒髪幼女「そ、そうなんだ…」ホッ

騎士長「ただ、用心はしろってことだ。例えば、こんな話をしている最中に…」


ズドォン!!!

ウサギ『!』

バキッ…ゴロゴロゴロ…ドシャアッ…

ウサギ『…』


ガサガサガサ…ヌッ…

アラクネ『…ハァァ』


騎士長「こ…こんな感じに、出てくる事があるから」

 
アサシン「な、何だありゃ!蜘蛛!?」

騎士長「アラクネだな。かなりでかいが…まぁ許容の大きさだ」

アサシン「アラクネ?」

騎士長「蜘蛛の魔物で、中位あたりのレベルか。あいつの出す糸は、かなり高級糸で高く売れるんだぜ」

アサシン「へぇ…って!そんな悠長に解説してる場合じゃないでしょ!」

黒髪幼女「どど、どうするの!?」


騎士長「どうするって…肉食だし倒さないと、俺らがあいつのエサになっちまう」チャキッ

アサシン「それはゴメンだ」チャキッ

騎士長「黒髪幼女は俺の後ろにいるんだ」

黒髪幼女「う、うんっ!」

 
アラクネ『カァッ!!』ペッ!

…ベチャッ!!


アサシン「うわっ!何だこれ!」ベトッ

騎士長「それが蜘蛛の糸。普通はケツから出すんだが、こいつは特殊で…」

アサシン「そういう解説はいらんっての!!動けないんだけど!!」ググッ

騎士長「火の魔法で燃やしちまえ」

アサシン「使えないよ!!」

騎士長「…炎魔法っ」ポワッ

…ボォン!!!ボォォォ…


アサシン「あっちちち!」

騎士長「これで動けるだろう?」

 
黒髪幼女「わっ…騎士長、魔法つかえたんだ!」

騎士長「あんま得意じゃないから、普段は使わないけどな」


アサシン「…はぁ、はぁ…一生糸に捕まってるかと思った…。どんだけお気楽なんだよアンタは…」


騎士長「いや~だって、このくらいの相手ならね」

アサシン「こっちじゃこんなサイズの蜘蛛なんて見たことないから焦ってるんだよ!」

騎士長「ふーむ…お前の短剣なら、クビも簡単に落とせるぞ。やってみ?」

アサシン「わ、私…じゃなくて、我がやれっていうのか!?」

騎士長「ただのでかい蜘蛛だって。動きも遅いし…」


アラクネ『ッペ!!!』ボッ

…ベチャッ!!

騎士長「うおっと、あぶねぇっ!まぁ…お前なら倒せると思うぞ」

 
アサシン「うぅ…くそ、あとで覚えてろ!」ダッ


騎士長「頑張って~」ヒラヒラ

黒髪幼女「騎士長、お姉ちゃんになんで戦わせるの?」

騎士長「…砂漠の戦い方をしっていても、こっち側の戦い方は全然違うんだ」

黒髪幼女「どういうこと?」


騎士長「こういう入り組んだ森だとか、建物がある狭い場所が多くなる」

騎士長「そういう時、砂漠のようにノビノビとした戦い方が出来ず、力が発揮できないだろうし…」

騎士長「少しでも、狭いなら狭いなりの戦い方をだな?」

 
タァンッ!!タァンタァンタァンッ!!!クルクルクル…ズバァッ!

アラクネ『…ギヤアアッ!!』

グラッ…ドシャアッ…ゴロゴロ…


アサシン「ふぅ。足場が多い分、私の速さだけじゃなくて、壁を蹴って相手を翻弄するのも楽だね」

騎士長「と思ったんだけど…問題、ないみたいね」タハハ…


アサシン「やってやったよ。騎士長…さぁて、次はアンタの番だ」ゴゴゴ

騎士長「!?」

アサシン「巨大蜘蛛なんて気持ち悪い奴相手にさせやがって…」ニコッ

騎士長「ま、ままま、待て!それは違う…!」


タタタタッ…ガシッ!

黒髪幼女「お姉ちゃん…強い…」キラキラ

 
アサシン「…お?そうか、強いだろう」ハッハッハ!!

黒髪幼女「うん…!」

騎士長(なな、ナイスだ黒髪幼女!!あとで好きなもの買ってやるからなぁぁ!)


黒髪幼女「何でお姉ちゃんは、あんなに強いの?」

アサシン「え?」

黒髪幼女「え?」

アサシン「そ…そりゃあ、いっぱい戦う練習をしたからねぇ」

黒髪幼女「そうすると…あんなに強くなれるの!?」


アサシン「元々、砂漠地方の人間は身体が人よりも頑丈にできているんだ」

アサシン「じゃなかったらあんな熱気の中ですぐやられちまう」

アサシン「黒髪幼女も暑さは平気だっただろう?どっかの誰かさんと違ってね」ククク

 
騎士長「悪かったな、身体が弱くて」


黒髪幼女「そっかぁ…私も強くなれる?」

アサシン「当たり前さ。今度、私と一緒に修行するか?」ハハハ

黒髪幼女「うん、やる!」

アサシン「ははは…そうかそうか!」


騎士長「はぁ~…」

騎士長「…」


…カサッ

騎士長「んっ…?」ピクッ

アサシン「…むっ」ピクッ

 
ガサガサッ…

黒髪幼女「どうしたの?」

騎士長「しっ…誰か来る…」チャキッ

アサシン「大きくはないね。人のサイズのようだ」チャキッ

黒髪幼女「…何がくるの?」

アサシン「静かに…」


ガサガサガサ…

騎士長「…」

アサシン「…」
 

ガサッ…ガサガサガサ!!!…ヌッ


騎士長「!」

 
黒髪幼女「えっ?」

アサシン「!」


???「何だお前ら、アラクネやっちゃったのか」


騎士長「…人、か?」

???「人?はっはっは、バカいうな」

騎士長「人じゃないのか?」


エルフ「人間じゃねえよ、俺はエルフだ」

エルフ「どうしてお前ら、こんな場所にいるんだ?」


騎士長「…へ?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 エルフの家 】


コポコポコポ…

エルフ「いやいや、客が来るのは何年ぶりかな。茶でいいか?」

騎士長「お構いなく」


エルフ「一体、こんな辺境の地に何の用だ?」

エルフ「まさか砂漠へ抜けて行くってわけじゃあるまい」


騎士長「逆だ」

エルフ「逆?」

 
騎士長「砂漠から抜けてきたんだ。これから王都へ向かうつもりだ」

エルフ「…砂漠から来たのか。道理で砂漠地方の人間が一緒にいるとは思ったが」

騎士長「まぁな」


エルフ「大変だっただろう。今この森を抜けるのは、もっと大変だろうが」

騎士長「…どういうことだ?」


エルフ「あぁ。最近、この辺の魔物が異常な繁殖をしていてな」

エルフ「お前たちも見ただろう、あのアラクネの大きさを。ここに、しばらく住むが初めてのことなんだ」

 
騎士長「確かに大きさはでかかったが…あれが沢山いるっつーのか?」

エルフ「あれだけじゃない。多くの魔物が森にうごめているんだ」

騎士長「…、普通にこの森は抜けられそうか?」

エルフ「無理だ。お前たち、幸運だったな。俺と出会ってなかったら死んでいただろう」

騎士長「ほ、本当か…」


…ポンポン

騎士長「話してる途中だぞ…何だよアサシン」クルッ

アサシン「…騎士長、あのサイズが珍しくないとかさっき言ってたよなぁ…?」ブルブル

騎士長「ま、まま…待て!今は話を聞こうじゃないか!なっ!」

…ゴツンッ!!…ドサッ


エルフ「はっはっは、何か面白い人間たちだな」

エルフ「とにかく今は、この森を抜けるのは本当によろしくないってことだ」

 
騎士長「じゃあ、どうすればいい?」ズキズキ


エルフ「諦めて、南港行きの船がある砂漠港に行って船に乗るか…」
 
エルフ「森を通り抜けない回りのルートで行くかのどっちかだな」


騎士長「…じょ、冗談だろ?」 

エルフ「冗談なんか言って何になる」

騎士長「そ、そりゃそうか…」


アサシン「砂漠港はまぁ置いといて。森を抜ける回りはどのくらいになるんだ?」

騎士長「…げつ」

アサシン「何だって?」

騎士長「1ヶ月だよ1ヶ月近く!!この森の大きさ、どのくらいでかいと思ってるんだ!」

 
アサシン「い…1ヶ月…だと…」

騎士長「唯一、馬車だの経済発展しているのは、森を突き抜けた先にある森林国の森林都市だけだ!」

騎士長「平地を回るとはいえ、森に入れないなら大きく迂回することになる…!」

騎士長「確かに森の中に小さな村はあるだろうが…、見つかるものじゃないし、危険過ぎる…」


アサシン「そ、そのほかの手段は?」

騎士長「ない。くっそ…何てこった…」

アサシン「1ヶ月、回っても歩くしかないのか…?」


騎士長「そんなことしてたら、王都もきっと、目に見えた動きを見せると思う…」

騎士長「その前に、何とかして着きたかったんだ」


アサシン「砂漠を戻るのはどうだ?港に戻ったほうが危険だが、確実そうだぞ」

騎士長「あのラクダ、お前らの自慢の特別な奴だったんだろう?」

騎士長「他のもアレだけ大きくて、早く、ずっと走っていられるのか?」

 
アサシン「あ…無理だな」

騎士長「だろう。あ~くっそ!」ガリガリ

黒髪幼女「…」オロオロ


エルフ「そこまで慌ててるって、何かよっぽどの事情があるのか」

騎士長「ちょっとな…どうしても1週間から10日ほどで王都までに着きたかったんだ」

エルフ「今の状態じゃなあ…」

騎士長「くっそ…諦めて大回りするしかないか」ハァ


エルフ「…まぁ、森を抜けない手段がないわけじゃないんだが」ボソッ

騎士長「…」ピクッ

エルフ「だが、ありゃなあ…まだカラクリとしても未完成だし…第一アレが…」

 
騎士長「今の言葉、本当か?やれる事なら、是非使いたいんだが!」

エルフ「いや…だが…」

騎士長「頼む、金なら払う。今は少しでも早く着いておきたいんだよ!」


エルフ「んーむ…」

エルフ「…」

エルフ「仕方ない。ちょっと着いて来な」クイッ

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。
魔法使い…確かにしばらく出してませんね、考えつつ参考に致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガラガラッ!!

エルフ「この倉庫の中。見てみな」


黒髪幼女「…何これ?」

アサシン「何だこれ…」

騎士長「…なんなんだこれは」


エルフ「まだ表舞台には出てない、カラクリ製品の最先端の技術の結晶さ」

騎士長「一体何なんだ?」

エルフ「"飛行機"だ」

 
騎士長「…飛行機?」

エルフ「空を自由に飛べるという、夢のようなカラクリだ」

騎士長「そんなものが、可能なのか…。冗談だろ?」

エルフ「一人で長い事いると、色々と暇でな。ついつい、昔の癖で開発しちまうんだ」ハハハ

騎士長「昔の癖って…あんた一体何者なんだ」


エルフ「元カラクリ開発部の管理職さ。今はもう隠遁してるけどな」

騎士長「…!」

エルフ「とりあえず、これを使えば王都まではあっという間に着くだろう。だが…」

騎士長「た、頼む!」ガバッ

エルフ「ごほっ…!く、苦しいっての!話は最後まで聞け!」

騎士長「あ…すまん」パッ

 
エルフ「全く。…実は、この飛行機を完成させる為にある物が必要だったんだが…」

騎士長「それを採ってきてほしいってか?」

エルフ「いや、それはある」

騎士長「あるのかい!」


エルフ「だから落ち着いて最後まで話は聞け」

エルフ「その必要だったのが、カラクリを動かす為に必要な"風の魔石"なんだが…」

エルフ「どうも、どこが間違ってるのか動力として働かなかったんだ」


騎士長「それで?」


エルフ「かなり複雑な設計で、雷の魔石と風の魔石を組み合わせて動かすから失敗も起きる」

エルフ「そこで調べた結果…組み込むのに必要な魔石の部分がデカすぎる事が分かったんだ」

騎士長「なるほど」

 
エルフ「それを削る為に必要な…アダマンタイトのナイフが必要だ」

騎士長「アダマンタイトのナイフ!?」

エルフ「…」

騎士長「バカいうなよ、普通のナイフで何とかなるもんなんじゃないのか?」

エルフ「普通はな。だが、柔らかく削って形を整えるのにはアダマンタイトのナイフがいるんだよ」

騎士長「いや、さすがにそれは…」


アサシン「ん~?なぁなぁ、アダマンタイトって聞いた事ないぞ。なんだ?」

騎士長「大陸でもっとも高価で、貴重だと言われる鉱石だ」

アサシン「へぇ、どのくらいの値段なんだ?」

騎士長「俺の知ってる時は、0,3gで16万ゴールドだ」

アサシン「へぇ、0.3gで16万ねぇ。16万…。16…16万!?」

騎士長「だから、0,3g16万」

 
アサシン「ば…ばっかじゃないの!?」

騎士長「おい!女声に戻ってる!」ボソボソ

アサシン「あっ…そ、そうか」ボソボソ


騎士長「ごほんっ、えっとな…」

騎士長「アダマンタイトは不思議な鉱石でな、物理的威力に反発する力を持ってるんだよ」


アサシン「反発する力?」

騎士長「どんな小さな欠片でも、叩き割ろうとしたり、押し込んだりすると弾こうとして動かなくなるんだ」

アサシン「どういうことだ?」

騎士長「簡単にいえば、磁石みたいなもんさ。なんでそうなるかは解明されてないんだが」

 
エルフ「そう。逆に魔石には吸い付くようにして切り込めるっつー不思議な石なんだよな。よく知ってるな」

騎士長「俺ら王都の軍に配布される証のロケットとかにはアダマンタイトが埋めてあるんだ。それでちょっとな」

アサシン「あ~…アレか。っていうか、そんな高いもの使ってるのか?」

騎士長「まぁお守りみたいなもんさ。貴重な鉱石には守り神がいるっつーし」


アサシン「へぇ…それで、ナイフはいくら位するんだ?」
 
エルフ「ま…ナイフだと今の値段は1000万はくだらないだろうな」


アサシン「ぶーっ!」

騎士長「無理に決まってるだろうが!」


エルフ「…普通はな。だけど、俺は持ってたんだ」

騎士長「何?」

エルフ「それを盗まれちまって。俺が留守の隙にな」


騎士長「…」

エルフ「犯人の目星はついてるんだがねぇ…」

 
騎士長「ほう?」

エルフ「どうにもこうにも、取り戻せる相手じゃないんだよ」ハァ

騎士長「相手ってのは?」


エルフ「少し離れにある廃墟に拠点を置いた賊がいてな。そいつらだ」

エルフ「俺が隠遁してわざわざココに作ったっつーのになぁ。迷惑な話だ」ボリボリ

騎士長「ふむ」


エルフ「元、奴隷狩りをしていた面子らしいが…なんで来たのかは分からん」


騎士長「!」

黒髪幼女「!」

アサシン「!」

 
エルフ「傭兵だのもいるらしいが、何でこんな辺境に何で住み着いたのか分からんよ」

騎士長「…」

エルフ「だが、アラクネを簡単に倒したようなアンタらならー…と思ってね」

エルフ「俺はナイフを取り戻せる。あんたらは王都に簡単に行けるっていう取引でさ」


騎士長「…」

エルフ「やっぱり、無理だろうな。変な事を言った…忘れてくれ」

騎士長「いや、いい」

エルフ「うん?」

騎士長「やってやるよ。俺がナイフを取り戻してやるよ」

 
エルフ「いや、だが…下手したら死ぬぞ?」

騎士長「あんたが思ってる以上に、俺は強いぞ。任せてくれ」

エルフ「そりゃ、任せられるなら任せたいが…」

騎士長「大丈夫だ。ただ、絶対に王都へ行けると約束してくれるか?」

エルフ「あ、あぁ!そりゃもちろん!」


騎士長「だってよ、面倒なことになったが早く行ける可能性があるなら俺たちでー…」クルッ

アサシン「…っ」ブルッ

騎士長「!」

黒髪幼女「ど、どうしたの!」


エルフ「ど、どうしたんだ?」


騎士長「…ちょっと外に連れてく。黒髪幼女も来てくれ」

黒髪幼女「う、うん」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブルブル…

アサシン「…くっ!」

騎士長「…」

黒髪幼女「どうしたのお姉ちゃん…」


アサシン「な、何でもないよ心配しなくても大丈夫だ」ニコッ

黒髪幼女「で…でも…」

騎士長「…」ハァ

 
アサシン「騎士長までどうしたんだよ、そんな顔して!大丈夫だって」アハハ

騎士長「無理するなよ」

アサシン「無理なんか!」

騎士長「傷の土地、知らぬ土地。そして奴隷狩り…。恐怖を思い出さないほうがおかしいんだ」

アサシン「…っ」ブルブル


騎士長「幸い、話をしてわかるとは思うがココのエルフは信用できそうな人物だ」

騎士長「お前たちはココに残って、ナイフの奪還は俺に任せてくれ」


アサシン「だ、だけど…相手は一人じゃないんだろ!?」

騎士長「そうらしいな」

 
アサシン「私の実力は、アンタだって知ってるだろう…大丈夫だから、な?」

騎士長「…」

アサシン「一緒に戦わせてくれ…一網打尽にする機会なんか、滅多にないじゃないか…」アハハ…

騎士長「断らせてもらう」

アサシン「なっ…なんでっ…」


騎士長「足手まといだ」


アサシン「…っ」


騎士長「…」

アサシン「…」

 
騎士長「…分かってくれないか?この眼で」

アサシン「…」

騎士長「…」

アサシン「分かってる。分かってるよ気持ちは…」

騎士長「俺だってお前の気持ちは分かるから…頼む」


アサシン「…」

アサシン「負けだ…。わかった…私は黒髪幼女とここに残るよ」


騎士長「ありがとう」

アサシン「ただし…無事に戻ってきてくれよ」

騎士長「当たり前だ」

 
黒髪幼女「騎士長、本当に、大丈夫なの…?」

騎士長「俺を誰だと思ってる。天下の王都の元エース"騎士長"だと何と言えばわかる!」ハッハッハ

黒髪幼女「…うん」


騎士長「心配するな。お前も、アサシンと一緒に俺の帰りを待っててくれ」

騎士長「それだけで…俺の力になるからよ」ニカッ


黒髪幼女「騎士長ぅ…」ギュウッ


アサシン「黒髪幼女…私と一緒に騎士長の帰りを待ってような」

黒髪幼女「…騎士長、気を付けてね。無事で戻ってきてね」

騎士長「当たり前だろうが!」

 
トコトコトコ…

騎士長「エルフさん、話はまとまったぜ。俺が取りに行く」

エルフ「…本当にいいのか?」

騎士長「あんただって、少しの希望を持ったから俺に飛行機を見せたんだろう?」

エルフ「む…むぅ…」


騎士長「ただし、話も聞こえてたと思うが…この二人を頼まれてほしい」


エルフ「…わかった。ただ、俺は戦いもできないし…」

エルフ「いざとなっても、本当に何もできないぞ?」


騎士長「ここへ二人を隠してくれてるだけで充分さ」

 
エルフ「…わかった。責任をもって預かろう」

騎士長「アサシンも…黒髪幼女を頼む。お前だから信頼するんだ」

アサシン「うん、任せてくれよ」

黒髪幼女「本当に…気を付けてね」


騎士長「わかってるって!で、エルフさんよ。そういや今更だが、名前を聞いてなかったな」


アルフ「"アールヴヘイム"。アルフって呼んでくれ」


騎士長「エルフ族の楽園の名、か。よろしく、アルフ」

騎士長「俺は騎士長だ」

 
アサシン「我はアサシン。宜しく頼む」

黒髪幼女「え、えっと…私は黒髪幼女」

アルフ「アサシンさんに、黒髪幼女ちゃんか。よろしくな」


騎士長「…さて、善は急げというし…早速、相手の場所を知りたいんだが」ポキポキ


アルフ「この倉庫の方角に、真っ直ぐ行くと森の中に、昔使っていた街道がある」

アルフ「あとはそのまま…道なりに進んでいけば廃墟になった屋敷が見るはずだ」


騎士長「わかった。人数がどれくらいとかはあるか?」

アルフ「俺が見た限りでは最低でも6,7人だ」

騎士長「…中にまだいたりしたとしたら、もっと多いな」

アルフ「やはり、危険すぎる。他の方法なら、俺も考えてやるし止めてもいいんだぞ…?」

 
騎士長「そんな賊程度に俺が負けるというなら、今までやってきた事が無駄になるな!」

騎士長「それに、俺が攻め込む理由が出来ちまったからさ」ニカッ

アルフ「…」

騎士長「んじゃ、ちょっくら行ってくる」チャキッ


黒髪幼女「…行ってらっしゃい」

アサシン「必ず無事で」

アルフ「恩に着るよ…」


騎士長「おうっ!」ダッ

ザッザッザッザッザッ…

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【 屋 敷 】


ガサガサッ…

騎士長「ぺっぺっ!アラクネ異常繁殖とはいえ、旧街道ですら蜘蛛の巣だらけかよ」

騎士長「くっそ…この辺だって言ってたはずなんだが…」キョロキョロ

騎士長「えーと、こっちか?」


ガサガサッ…パァッ…!!


騎士長「あ、あった!あれが、廃墟の屋敷だな…」

騎士長「なるほどでけぇな…。だけどあれが奴隷狩の巣って証拠が…」キョロキョロ

 
ザッザッザッザッ…ガラガラガラッ!

奴隷の馬車『ヒヒーン!』

ゴソゴソ…スタッ

商人「今回もご苦労」

傭兵「お疲れ様でした」

ガチャッ…バタンッ…


騎士長「俺には幸運の女神がいるのかねぇ…いいタイミング。ビンゴか」

騎士長「さてと、どうするべきか。いきなり正面突破も難しいだろうし…」ウーン

騎士長「…お?」

 
ガチャッ…

商人「危ない危ない。今回のリストの忘れ物しちまったよ…」

タッタッタッタ…
 
 
騎士長「…へへ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ガチャッ…ギィィ…

騎士長「失礼しまーす…」

騎士長(商人の気絶させて服を奪って、侵入侵入♪)

騎士長(ま…気絶も長くないだろうし、さっさとナイフとこの屋敷の状況を把握して…)


傭兵「あ、おかえりなさ…って、誰だお前!」


騎士長「!」

騎士長(確か、こいつはこの商人の雇われ傭兵っぽかった奴だったな…よし)

騎士長「あ…いや、その、商人さんにココへ行けと…」


傭兵「何ィ…?」

 
騎士長「そ、その証拠にほら!今回の奴隷にした先のリストも預かってますし!」ペラッ

傭兵「…ふむ」

騎士長「ちょっと一回、用事があるから渡してくれと」

騎士長「僕は新人で、あの商人さんにココを案内されたんです」


傭兵「ちょっと、リストを見せてみろ」グイッ…ペラッ

騎士長「…」

傭兵「…」ペラペラ…

騎士長「ど、どうですか?」ヘヘ


傭兵「…確かに今回のものだ。しかし、俺ぁお前なんか聞いてないぞ?」

騎士長「え、えーとそれは…」

 
傭兵「個別の直接任務で来たのか?」

騎士長「へっ?」

傭兵「あれ、違うのか?」


騎士長(直接任務…?なんだそりゃ)


傭兵「じゃあ単純に秘密にしてただけか。あの人、結構そういうところがあるからなぁ」

騎士長「ちょ、ちょっといいですか?」

傭兵「なんだ」


騎士長「直接任務って何でしょうか」

騎士長「僕はアシスタントで着いてきてほしいと言われただけでしたので」

 
傭兵「知らぬ者が気にする必要はない」

騎士長「教えていただけませんか?」

傭兵「ダメだ」

騎士長「…これでは?」スッ

傭兵「…金貨か」ピクッ


騎士長(引っかかれ!おまえだって欲しいはずだ!)


傭兵「…」

傭兵「…言えぬことは言えぬ」


騎士長(断っただと…?金貨を捨てるほどに、恐ろしい取引相手ってことなのか?)

 
傭兵「…と、いうより。それを知らぬとは、本当にアシスタントなのかぁ?」ジロジロ

騎士長「あ…あははは!嫌ですよ、旦那ぁ。商人たるもの、金になる匂いには敏感なだけですよ!」

傭兵「そうかぁ…?」

騎士長「こ、これは迷惑をかけたお詫び!とっといてくださいな♪」スッ

傭兵「…そうか。なら有り難く頂くぜ」

騎士長「…」フゥ


傭兵「そういえば、アイツはいつ戻ると?」

騎士長「商人さんですか?」

傭兵「そうだ」

騎士長「い、一旦遠くまで離れるから、分からないことがあったら雇った傭兵に聞いてくれと言われました」

 
傭兵「はぁ…あの人にも困ったものだ。これから大事な会議だというのに」

騎士長「会議ですか?」

傭兵「定例会議だ。お前も出席しろ、仕方ない。俺が紹介してやる」

騎士長「は、はい」


騎士長(ここはただの巣じゃねえのか?一体…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 大広間 】

…ザワザワ…ガヤガヤ…

騎士長「な…」


商人A「今回はさぁ…」

商人B「ははは!お前だって」

商人C「…」ゴクゴク


傭兵A「…」

傭兵B「…」

傭兵C「…」

 
騎士長「商人と傭兵が沢山…」

傭兵「お前さ…本当に何も聞いてないんだな」

騎士長「へへ、旦那…すいません」


ザワザワ…ガヤガヤ…

黒商人「ははは…ん?お前、新顔か?」

騎士長「ど、どうも初めまして…」


黒商人「って、お前…剛傭兵連れてるじゃねえか。いつもの銀商人はどうした?」

剛傭兵「あ、黒商人さんじゃないですか」


騎士長(こいつは剛傭兵っつうのか。ってか、色で呼び合ってるのは意味があるのか?)


剛傭兵「銀商人はちょっと用事があるそうで。こいつが代わりに」

黒商人「新人に任せるなんざ、変わってる奴やなぁ」

 
剛傭兵「はは、いつも困ったものです」

黒商人「もうすぐ、金商人様がいらっしゃる。仕方ない…銀商人の席についておけ」

騎士長「は、はい。ここですね」

トコトコトコ…ストンッ


騎士長(成る程。色での取り決めは、コードネームとランクなのか)

騎士長(…ここでの一件、話を聞く価値がありそうだな)

騎士長(ナイフを探すのは、それからでもよさそうだ)

 
ガチャッ…ギィィ…!!

ザワザワ…ピタッ、シーン…

騎士長「ん?ど、どうして急に静かに……」

剛傭兵「おっ、金商人様がいらっしゃったのだ。静かにしておけよ」

騎士長(金商人ねぇ…どんな顔してんだか…)


カツ…カツ…カツ…


奴隷商人「…待たせた」ガタンッ


騎士長「ぶーーっ!!」ブボッ

剛傭兵「ど、どうした!?」

騎士長「ごほっ、ごほごほ!お茶が喉に詰まってしまいまして!」ゴホゴホ

剛傭兵「あぁ?仕方ねえなあ!」

 
奴隷商人「粗相がないな。まぁいい、今回の会議を始めるぞ」


騎士長(どどど…どういうことだ!!)

騎士長(あいつは確かに、王都で俺が捕まえた奴隷商人のはず!!)

騎士長(脱獄しやがったのか!?)

騎士長(いや、王都の牢は地下深く。そう逃げられるものではないはず…)


剛傭兵「おい、大丈夫か…?いつまで下を向いているんだ」


騎士長(…ま、まさかとは思うが…まさか…)

本日はここまでです。ありがとうございました。

それと別途の報告ですが
多忙の為、明日から週末までの更新時間が19時前後から20時30分になります。
よろしくお願いします。

皆様ありがとうございます。投下開始致します。

 
奴隷商人「ごほんっ、えー…銀商人がいないようだが、先ずは共通の話からだ」

奴隷商人「今回も"王都"より任務が出ている」

騎士長「――…!」


奴隷商人「前回、ようやく見つけた"黒髪幼女"だったが…王都で逃げられたのは知っているな」

奴隷商人「俺の失敗だ。すまない」

奴隷商人「情報によれば、王都の元騎士長…くそっ!名前を見ただけでムカムカする」

奴隷商人「その元騎士長とともに、砂漠地方へと向かったらしい」

 
騎士長「…!」


奴隷商人「この情報は、彼の行きつけだった酒場の店主の情報。間違いないだろう」

奴隷商人「残念ながらそこからの足取りは掴めていない」

奴隷商人「王都の直属警備隊が砂漠地方村へ捜索しに行ったが、どうやら訪れた痕跡はなかったそうだ」


騎士長(おい…おいおいおい…)


奴隷商人「情報は発見次第、報告せよとの事だが…」

奴隷商人「俺たちは相変わらず仕事を続けて良いそうだ。今回の報告はまずそれだけになる」


騎士長(待てよ…。冗談だろ…。俺は本当はどこかで…まだ…)ドクン

 
奴隷商人「ちなみに地下に閉じ込めてある女子供の奴隷は、引き取り先がー…」


騎士長(王都が本当に絡んでるなんて思いたくなくて…)ドクンドクン


奴隷商人「ん…おいおい、そこ。いつまで顔を下げてるんだ」

奴隷商人「会議が始まってるんだぞ!いい加減…顔をあげたらどうだ!」


騎士長(まさか…俺が追いかけてきた…この全ては…)ドクンドクン


奴隷商人「この…いい加減に…」

ガチャガチャ…バァンッ!!!

奴隷商人「なんだっ!?」

 
銀商人「はぁ、はぁ…」ゼェゼエ

奴隷商人「銀商人!?な、なんで裸なんだ!」

銀商人「突然、後ろから殴られて…気づいたら裸だった。誰かが、忍び込んでるかもしれん!」

奴隷商人「何だと!?」

…ザワザワ!!


騎士長(ナイフどころの話じゃない…俺は…)ブツブツ


剛傭兵「…まさか、貴様…」

奴隷商人「お前、さっきから頭を上げないのは…」

 
銀商人「そ、そいつだ!!そいつに殴られたんだ!!」


剛傭兵「…顔をあげろ、コラァ!」グイッ

騎士長「うっ…」

奴隷商人「!!」


騎士長「ひ、久しぶりだな…奴隷商人…」ニタッ

奴隷商人「き…騎士長!!なぜ貴様がここにいる!!」


剛傭兵「…何だって!?」

…ザワザワッ!

 
奴隷商人「剛傭兵、そいつを捕まえろ!!」

剛傭兵「はっ!」

グイッ!…ガシッ!!

騎士長「!」

剛傭兵「動けまい…俺の力は相当なもんだぜ…?」グググッ

騎士長(ぐ…な、何て力だこいつ…!)


奴隷商人「良くやった」

奴隷商人「さて、騎士長…。貴様、なぜここにいる?」

奴隷商人「まさか俺たちに探りをいれたのか!?」

 
騎士長「…まぁちょっとな。別に…そんな話を聞くつもりはなかったんだが」


奴隷商人「はぁ~。まぁ、聞く気があろうがなかろうが別に良い」

奴隷商人「聞いちゃいけない話を聞いちまったのは一緒だからな」ギロッ


騎士長「ばーか…。俺だって、そんな話聞きたくなかったよ…」

剛傭兵「口を慎め!」

ブンッ…ゴツッ!!

騎士長「ぬあっ!」


奴隷商人「いや、まぁいい。そのまま抑えておいてくれ」

 
剛傭兵「はい」

奴隷商人「これは逆に好都合だ。黒髪幼女の居場所を吐かせれば、王も喜ぶだろう」

騎士長「…」


奴隷商人「早速だが、黒髪幼女の居場所を教えろ。教えなかったら…分かってるな?」

騎士長「…言うと思うか?」

奴隷商人「剛傭兵、いいぞ」

剛傭兵「ふんっ!」ブンッ

…グシャッ!!…ポタポタ…


騎士長「ぐ…」

奴隷商人「もう1度聞くぞ。どこにいる」

 
騎士長「わ…分かった。教える…」

奴隷商人「それでいいんだ」ニコッ

騎士長「だ、だけど…俺からも聞きたいことがある…」

奴隷商人「ふむ?なんだ?」


剛傭兵「…金商人殿、話に耳を貸すことなど」

奴隷商人「どうせ、このまま殺す。冥土の土産話よ」

剛傭兵「あなたがいいのなら、いいのですが…」

 
騎士長「…ありがとうよ。なぜ、奴隷狩りのお前らが…王都に絡んでいるんだ…?」

奴隷商人「王の命令さ。奴隷狩りが禁止されて、宙ぶらりんだった俺たちに仕事をくれたんだ」

騎士長「そ、その内容とは…」


奴隷商人「"お主らが自由に奴隷を狩る事を内密に支援する"」

奴隷商人「"代わりにある奴を見つけて欲しい"…さ」


騎士長「…そいつとは、まさか…」

奴隷商人「"黒髪幼女"だ」

 
騎士長「…!」


奴隷商人「さすがに、何故…あんな子を探していたのかは知らん」

奴隷商人「それに奴隷の一部を献上するうちに、王自身、その魅力にハマったらしく毎回献上を求められるわ」ハハハ


騎士長「…お前、王都で俺に言ったよな。村で協力してくれた人間がいたと…あれはウソか?」

奴隷商人「あぁ、酒場で出会った時の話のか。ありゃ本当だ」

騎士長「わけがわからん…」


奴隷商人「俺が情報を集めてた時、黒髪幼女の住む村をようやく見つけてな」

奴隷商人「いつも通り、傭兵を雇って向かおうとした矢先…その村の男から手伝ってほしいと言われた」

奴隷商人「俺はそれにイエスと答えたまでってことだ」

 
騎士長「…」

奴隷商人「…お前の質問はここまで。あとは俺の番だ」

騎士長「…」

奴隷商人「黒髪幼女はどこにいるんだ?んん?」

騎士長「…」

奴隷商人「…言わないというなら、何度でも痛めつけるが」

騎士長「…」

奴隷商人「いや…貴様を奴隷にするのも面白いかもしれん…ひひ…」


騎士長「お前の性根は本当に腐ってやがるんだな」ギリッ

奴隷商人「若い頃より奴隷を扱ってきた俺にとって、人はただの物にすぎん」ククク

 
騎士長「…」

奴隷商人「それにしても、お前も無駄な人生を過ごしてきたんだな。そこは同情するよ」ハァ

騎士長「何だと…?」

奴隷商人「王都に何年も仕えたんだろう?賊を倒す為に、王都を守る為に…おぉ泣けるねぇ!」

騎士長「…!」ギリッ


奴隷商人「それの実態が、王はただの奴隷好きの変態!」

奴隷商人「欲望のために金を使い、国の財政は崩壊寸前!」

奴隷商人「そんな王都に本気で仕えてたお前!」


騎士長「…ッッ!!」

 
奴隷商人「ぶ…ぶわぁっはっはっはっは!!!」

奴隷商人「はーっはっははははは!ひ~!!涙が出るほど面白いな!」バンバン


騎士長「き…貴様…!」ググッ


奴隷商人「は~…面白いなぁ本当に…」

奴隷商人「…まぁとにかく、今は黒髪幼女の場所を話して貰おうか」


騎士長「…どんな拷問ですら、俺は何も話す気はない」

騎士長「俺がどれだけ騎士長に誇りを持ち、本気だったか…今の俺を見てわからないか!!」

 
奴隷商人「あぁ、そう。じゃあ殺せ」

剛傭兵「御意」ニヤッ

騎士長「なっ!?」

奴隷商人「…いちいち殺さなくて済むと思ったんだがな。まあどのみち、吐いても殺すつもりだったが」

騎士長「今、俺を殺せば黒髪幼女の場所は分からなくなるぞ!拷問にかけるんじゃなかったのか!」


騎士長(俺が拷問の間、黒髪幼女は少しでも生き延びられる。アサシンなら、この意味もわかるはず…!)


奴隷商人「ふん。あんな子供を連れて、ココへ来る訳ないのは分かってるさ」

奴隷商人「大体そうだな…例えば。ここの近くにある…」

奴隷商人「エルフ族がすんでいたあの家に…預けてきたとかかだろう?」ククッ


騎士長「!!」ビクッ

奴隷商人「図星か…?くははっ!」

 
騎士長「…っ」

奴隷商人「自分から答えを言ってくれるとは有り難い。適当に言ったつもりだったんだがなぁ?」

騎士長「く…貴様ぁ…」


奴隷商人「お前が騎士道で戦士の戦いなら、俺は商人としての道」

奴隷商人「人を揺さぶって、人を騙すのは得意なんでね…」ニタッ


騎士長「く…くそがあぁぁっ!!」ガタガタ

 
奴隷商人「もういい、本当に殺せ。あの世から、黒髪幼女の行く末でも見守っていろ」

騎士長「黒髪幼女は一体どうなるんだっ!!」


奴隷商人「さぁ~…王様、幹部にでも遊ばれるのか…」

奴隷商人「意地でも探していたようだし、一体何されるのか。地獄のような日々は間違いないだろうな」

奴隷商人「それに俺はアイツとお前に振り回されたし…」

奴隷商人「俺もおこぼれがあれば…、どんな事になるか、あの世から見てるがいい」ニタリッ…


騎士長「…」

騎士長「…」ブチッ

 
奴隷商人「剛傭兵、もう話も疲れた。そいつを殺して会議の続きだ」

剛傭兵「わかりました…ここに忍び込んだのが運の尽きだったなぁぁ!」ブンッ


…ガシッ!!

剛傭兵「むっ」

騎士長「…」

剛傭兵「…腕を離せ!」ググッ

騎士長「…」


剛傭兵「この、離せと言ってる…!!」

騎士長「ぬぅあああっ!!!」ゴォォ!

ググッ…バキバキッ!!!ブチィ!

 
剛傭兵「ぎ…ぎぃやあぁぁぁっっ!!」

剛傭兵「お、おっ…おおお、俺の腕がぁぁ!!と、とと、とれ…」


奴隷商人「なっ…何だと!!」


騎士長「お前だけは、お前らだけは…絶対に許さん…」

奴隷商人「…!」

騎士長「骨も残らないと思え…人を喰う…化け物どもが…!!」


奴隷商人「な、何を言っているんだ!?ははは!」

奴隷商人「ここには何人の傭兵たちがいると思っている!…おい!」

 
ザザザザッ!!

傭兵達「…」チャキッ


奴隷商人「いくら貴様でも、この数の傭兵…相手に出来るまい!」

騎士長「奴隷商人…いや、金商人か…」

奴隷商人「ん~…なんだ?」


騎士長「ここまで人を殺したいと思ったのは…初めてだ…」

騎士長「覚悟しろよ…」チャキッ


奴隷商人「…っ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コポコポ…カチャカチャ

アルフ「付近でとれるハーブのお茶と、手製のクッキーをどうぞ」


アサシン「ありがとう」ゴクッ

黒髪幼女「ありがとう~」クピッ


アサシン「さっきも飲んだけど…やっぱり、優しい味で美味しいね」

アルフ「ありがとう」

 
黒髪幼女「クッキーもおいしい」パクパク

アルフ「そんな慌てて食べなくても、作り置きはあるから持ってくるよ」ハハハ

黒髪幼女「~♪」モグモグ


アサシン「…はぁ、騎士長のやつ無事だといいんだが」

アルフ「ん~む…心配だな」

アサシン「アルフ、だったか。あんたは何故ここに?」

アルフ「それはさっき言った通り、隠遁だ」

アサシン「隠遁…ねぇ」

アルフ「一人でのんびり自給自足して、好き勝手に生きたくなっただけだ」

アサシン「なるほどね」

 
アルフ「ようやく生活も安定してきたと思った矢先に、あの屋敷の廃墟が分かってさ」

アルフ「下手に発明品に目をつけられなかっただけマシだが…」


アサシン「ま…そうだな」

アルフ「あんたら、なぜ一緒に旅をしてるんだ?」

アサシン「成り行きだな」

アルフ「ふーむ。あんた女だろ?今は黒装束で隠してるが」

アサシン「!」

アルフ「今はそんな窮屈なのは取っておきなよ。いちいちマスクだけ外すのもダルいだろ?」

アサシン「…」

シュルシュル…パサッ

 
アルフ「…へぇ」

アサシン「バレてたなら、お言葉に甘えるよ」

黒髪幼女「…お姉ちゃんがお姉ちゃんになった!」

アサシン「ふふ」


アルフ「…思った以上にイイ女だな、アンタ」

アサシン「はははっ」

アルフ「…砂漠地方の美女と女の子。それと男の旅…か」

アサシン「まぁ色々あってね」

アルフ「何やら急いでいる旅なのか?」

アサシン「深い考えは騎士長が持ってるみたいでね。私は分からないよ」

アルフ「へぇ…」

 
黒髪幼女「私のお父さんを探してくれてるんだ」

アルフ「お父さん?」

黒髪幼女「うん」

アルフ「行方不明になったのか?」

黒髪幼女「うん…」シュン


アルフ「本当にわけありって感じだな。なら、これ以上は聞かねえよ」

アサシン「そうしてもらうと助かるかな」


アルフ「分かった。今回は俺が依頼者、あんたらが請負人」

アルフ「イエスかノーかっての仲程度でいいさ」ハハハ


アサシン「ありがとう」

アルフ「いやなに」

 
アサシン「…」

アルフ「…」

黒髪幼女「…」モグモグ


アサシン「…はぁ、騎士長のやつ…本当に無事だといいんだけど」

黒髪幼女「…」パクパク

アサシン「黒髪幼女も、意外と神経が太いっていうか…騎士長は心配じゃないのか?」

アサシン「パクパクとよくクッキー食べるね」


黒髪幼女「心配だよ…。でも…騎士長だよ。私をいっつも守ってくれたし…」

黒髪幼女「きっと大丈夫だよ!」

 
アサシン「…そうだね。黒髪幼女がここまで信じてるのに、私も信じないと恥だね」

黒髪幼女「うん」

アサシン「私にもクッキー1枚くれるか。あ~ん」

黒髪幼女「はいっ」

パクッ…モグモグ…


アサシン(こんな子一人残して、変な事するんじゃないからな…騎士長)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ドスッ!!!…ポタッ、ポタッ…

傭兵F「がぁっ!!」ゴボッ


騎士長「はぁ~…、はぁ~…!」ゼェゼェ

傭兵B「こ、この…」

騎士長「槍突っ!!!」ビュッ

ドスッ…!!!ズバァンッ!!


傭兵E「ぬがっ…!」

…ドサアッ

 
騎士長「あと…何人だ…」ギロッ

奴隷商人「そ、そそ、そんなバカな…!」

騎士長「お…?もう、いねえんじゃねえのか?へ、へへ…」

奴隷商人「あ、あの数の腕利きを…倒しきるなんて…!」


騎士長「この数だ…、峰打ちなんかに手加減はできなかったぞ…」ハァハァ

奴隷商人「ぐ…!」

騎士長「あとは、お前だけだ…だらぁぁぁっ!!!」ブンッ!

奴隷商人「ひっ…」

…ゴキィッ!!パラパラ…

 
騎士長「おっと外したか…。頭を一撃で粉砕しようとしたんだがな…へへ…」

奴隷商人「ひ…、ひぃぃ…!」

騎士長「っちくしょう、左腕がうまく上がらん…。血を流しすぎたか…」ブルブル

奴隷商人「た、助けてくれ!さっきまでのは謝る!!」

騎士長「…」


奴隷商人「金ならやる、何でもする!だから頼む…!」

騎士長「…お前、さっき…地下に奴隷がいるって言ってたなぁ…?」

奴隷商人「あ…、あぁ!ここは砂漠との中継地点だから、奴隷を一時的に閉じ込めるんだ!」

騎士長「ふ~む…」

奴隷商人「奴隷が欲しいのか?な、ならやるぞ!鍵だって渡す!」

騎士長「着いてこい…、地下に案内しろ」グイッ

…ズリズリ

奴隷商人「あ、あいだだだ!髪の毛が抜けますから!やめでぇぇ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ピチョーン、ピチョーン

ザワザワ…


奴隷商人「…髪の毛が抜けると思った」ハァハァ

騎士長「…」

奴隷商人「き、騎士長さん…黙ってどうしましたか?」

騎士長「ここにいるの…全員が奴隷狩に連れてこられたのか…?」

 
子供「うあああん…!」

母親「静かにして…お願いだから…」

女性「…寒い」

傷だらけの女「もう嫌だ…嫌…」ガクガク

………
……


奴隷商人「今回のリストも合わせて十数人前後ですね」

騎士長「こんな地下で、服も着せず…狭い場所に…貴様…ら…」

奴隷商人「へ、へへ…」

騎士長「このダボがぁぁ!」ブンッ

奴隷商人「えぎぃ!!」バキィッ!!

ズザザザァ…

 
騎士長「鍵をよこせ」

奴隷商人「へっ…ま、まさか」

騎士長「全員逃がす。表の馬車を使えば逃がせるだろう」

奴隷商人「そ、そんな事をしたら王への報告と、俺たちの生活が!」

騎士長「…」ギロッ


奴隷商人「あ、開けますよ…」

トコトコトコ…ガチャッ…ギィィィ…

 
…ザワザワッ!!!

奴隷たち「きゃあああっ!」

奴隷たち「や、やだぁぁ!」


騎士長「何だ!?」

奴隷商人「いつものことです」

騎士長「どういうことだ!」グイッ


奴隷商人「奴隷にするために、いつも調教を施してるんですね…」ヘヘ

奴隷商人「ですので、自分がその番だと思ってるんですよ」

奴隷商人「まぁ趣味で度々世話にはなりますが、そんな理由です」


騎士長「…っ」

 
奴隷商人「さしずめ、あなたの事も"金持ち"で、誰かを飼いに来たと思われてるんです」

騎士長「な…」チラッ


奴隷たち「ひぃぃ…!こっちを見たぁぁ…!!」

奴隷たち「私は嫌だ。嫌だ。嫌だ…」

奴隷たち「もうあんなのは…いやぁぁ…」


騎士長「…」

奴隷商人「収集つきませんぜ」

騎士長「…」

 
トコトコ…グイッ

奴隷商人「いでで…何をするつもりで!」


騎士長「…」スゥゥ

騎士長「聞け!!落ち着け!!砂漠の人々よ!!!」


奴隷商人「!」ビリビリ


騎士長「私は王宮都市に仕え、今は旅をしている騎士長という者だ!!」

騎士長「風の噂で、ここの地下にお主たちの話を聞き、助けに来た!!」


奴隷たち「…え?」ザワッ

 
騎士長「私の服の血は、この屋敷に巣食っていた賊を討伐したからだ!!」

騎士長「うぐ…ご…ごほっ…!」ゴボッ

騎士長「こ、ここに捕まえているのは奴隷狩の首謀者である金商人である…!!」ゴホッ…

奴隷商人「…!!」


騎士長「表の馬車で、砂漠側へ逃げ、海沿いにある村に助けを求めればよい!」

騎士長「その証明に…この奴隷商人をそこの手錠にとらえよう!」

トコトコトコ…ガチャンッ!!

奴隷商人「ちょ、ちょっとぉおお!?」

 
奴隷たち「…!」


騎士長「あとは…ソイツも…お前らも自由にしていい…」ハァッ…ハァ…

騎士長「ごほっ…」フラフラ


奴隷商人「は、離してください!止めてください!」ガチャガチャ


奴隷たち「ほ、本当なの…?」

奴隷たち「き…きっと希望を持たせてどん底に落とすつもりだ…」ガタガタ

奴隷たち「騙されないから…!」


騎士長(だ…だめか…?)


奴隷少女「…」ギュッ

奴隷母親「少女ちゃん…どうしたの?」

 
奴隷少女「…!」ダッ

奴隷少女「あっ、行っちゃだめ!」


タッタッタッタ…

奴隷少女「あ、あの…」

騎士長「ん?」

奴隷少女「た、助けてくれたんです…か…?」


騎士長「これ以上の面倒は見きれないが、今この時点で…」

騎士長「この屋敷にお前らを捕まえようとする人間は一人残らず…倒れてるはずだ…」

 
奴隷少女「…!」

騎士長「…」ニコッ

奴隷少女「本当に…か、帰れるんですね!?」


騎士長「ウソだと思うなら、上へ行き…その惨状を見るがいい」

騎士長「外の光を自由に浴びればいい。お前たちは…自由になったんだ…」



奴隷少女「み…みんな…、この人なら…きっと信じられると、そんな気がする…!!」

ワ…ワァァァァッ!!!

傷だらけの女性「家族に…会えるの…?」ポロポロ

母親「本当なんですか…!」


騎士長(名も知らぬ少女よ、ありがとう)

騎士長(…こんな支部がまだどこかにあるはず。洒落にならねえな…)

ヨロヨロ…

騎士長「うくっ…。あの傭兵ども…口先だけじゃなかったなぁぁ…くそ…」ポタポタ

 
奴隷商人「ぐ、ぐぅぅぅ!!」ガチャガチャ

奴隷商人「覚えてろよ…騎士長!!」


騎士長「そりゃお前がここから生きて出られただろ。ほら、よく見ろ」


…チャキッ

奴隷「…許さない、お前たちだけは」

奴隷「生き地獄を貴方にも見せてあげる…」

奴隷「殺す…絶対に…」


奴隷商人「ひ…」

奴隷商人「ひいあああああっ!!」

 
ザクザクザクッ…


騎士長(…因果応報、か)

トコ…トコトコトコ…ヨロッ…

騎士長(俺も早く、戻らないとヤバイかもしれん…。傷だらけで怒るだろうなぁ…)


奴隷少女「あ、待ってください!」

騎士長「うん?」

奴隷少女「あと一人…奥の部屋に男の人がいるはずなんです」

騎士長「男?」

奴隷少女「はい。度々、食事を持っていくのを見ていたんですが…」

 
騎士長「情報ありがとう。いってみるよ」

騎士長「君らも早くここから逃げるんだ。服はどこかにあるはずだろうから」


奴隷少女「…はいっ。本当にありがとうございました」ペコッ

タッタッタッタッ…


騎士長(薄暗くて、俺の傷が見えなかったんだろうけど…)

騎士長(任されたらやるしかねぇよなぁ…はは…)

………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

おつ

冒頭の

>>王様「…ふむ」
>>側近「王、最近の我が国は財政難。速急に対策を打たねばなりません」

これ完全に王たちの私利私欲だったか
奴隷関係以外にも色々ありそうだ…

皆様ありがとうございます。投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガチャッ…ギィィ…

騎士長「…っ」


カツ…カツ…

騎士長(な、何て臭いだ。カビか…?こんな場所に人間がいるのか?)ツン

騎士長(長居はできん…。俺の傷に障って、本当に死にかねない…!)

 
フラフラ…

騎士長「…」キョロキョロ

騎士長「…」

騎士長「…人の様子もない、が…」

騎士長「少女の見間違えか?なら、早く戻らねばー…」クルッ

…モゾッ…ゴソゴソッ…
 
騎士長「!」ハッ


???「う…。ま、また来たのか…?」

???「飯の時間にはちぃっと早いんじゃないかね…」ムクッ

 
騎士長「だ、誰だ!」

???「…あら…?いつもの商人さんじゃない…のか?」

騎士長「違う…お前を助けに来たんだ…。あんたは一体?なぜ…こんな深くにいるんだ」


???「ドジふんじまってなぁ…。殺されると思ったが、閉じ込められて放置されてたよ…」ハハ…ハ…

騎士長「生き殺し?…ごほごほっ!」ベチャッ

???「あらら、あんたも死にかけてるじゃないの…俺と一緒かな…」ゴホゴホ

騎士長「…お前は一体…」


???「もう…俺も死ぬだろうし…名乗っても大丈夫かねぇ…」

騎士長「…」

 
王子「俺は王子…。王都の先代の王の息子さ…」ハハ…

騎士長「な…何だって…!?」

王子「あら…信じてない声だねぇ」


騎士長「し、信じられるわけないだろう。何でここに王子がいる!?」

騎士長「いや、そもそも先代に息子がいたなんて!」

騎士長「うっ…!ごほごほっ!!」


王子「そう声を上げたらアカンでしょ…。あんた、傷がひどいんじゃないの?」

騎士長「声を上げずにどうしろと…!」

王子「はは…確かにそうだ。驚かないほうが不思議だものなぁ…」

騎士長「…俺は元、王都騎士団の騎士長だ。この槍を見てくれ」チャキッ

王子「薄暗くて見えねぇよ…。というか…王都の騎士だと…?」

 
騎士長「元、だ。今は…わけあって…奴隷解放やら…、義賊的な位置にいる」

王子「…」

騎士長「上の奴隷狩りの商人は…倒した。だから死に掛けてるんだよ…」フラフラ

王子「…」

騎士長「信じてくれ…」


王子「まぁ…信じるよ…」

 
騎士長「ありがとう。聞きたいのだが…なぜ王子のお前がここにいるんだ…?」ゴホッ!!


王子「話をしてもいいが、その前にお前…死んじゃうんじゃないの…?」

王子「それと…俺はまだしも、こんな状態の俺を王子と信じるなんてねぇ」


騎士長「…俺はお前が王子だと信じて話を聞く。俺を王都の犬ではないと信じてくれたし…」

騎士長「それに今は疑う以上に、あんたがココにいるツジツマが合いそうだから信じるっ…」ゴホゴホ


王子「仕方ねぇっなぁ…ちょっとこい…」

騎士長「ん…」


王子「…」ボソボソ

…パァァ!!

騎士長「!」

 
王子「ちょっとしたヒーリングよ。血を止めるだけだからな…」

騎士長「ち、血が…。助かる!」

王子「さて…んじゃ、何から話をしたものか」

騎士長「待ってくれ。その前に、お前の鎖を外したい」


王子「はっはっは…いいよ。そんな力出したら、血を噴出して…お前が死んじゃうよ」

騎士長「いやしかし…」


王子「そのヒーリングは一時的なもの。いいから黙って話を聞け」

王子「どうせ…俺はもうすぐ死ぬ…。その前に、お前との出会いも運命だと…思う…」

騎士長「だ、だが…!」

 
王子「…」

騎士長「…っ」


王子「頼む。聞いてくれ。最期の話くらい、俺にさせてくれないか」


騎士長「…」

騎士長「…わかった」

…ストンッ


王子「礼を言う。まず何から話すか…。お前は今の王を知っているかい?」

騎士長「あぁ…酷い王様だと有名だからな」

王子「そうだな。しかし、先代に息子がいたのは知らなかったようだな。まぁ俺なんだが…」

騎士長「…そうだ。俺は聞いたことがないぞ。どういうことなんだ?」

王子「まぁまぁ…落ち着いて聞きなさいよ…」

 
騎士長「…あ、あぁ」


王子「先代が亡くなった後、俺は今の王と覇権の争いをすることになった」

王子「当然、先代を慕っていた面子は俺に付いた」


騎士長「当たり前だな」


王子「しかしな…。ヤツは、裏の顔を持っていた」

王子「裏社会とでも言おうか。ソレを取り仕切る、いうなれば裏社会の王のような奴だった」


騎士長「…」

王子「その顔を使い、買収…脅し…何でもやったそうだ」

王子「気が付けば俺は一人になっていた。今の幹部らは命を捨ててまで、俺に着く道理はないと思ったんだろう」

王子「そして、当代は俺を殺そうと目論んだ。だが俺は、命を取られまいと…逃げたんだ」


騎士長「どこへだ?」

 
王子「…"砂漠地方"」

騎士長「!」


王子「丁度、政府が新政策で奴隷禁止だの…村や街作りの発展のために人手を募集していた」

騎士長「…」

王子「そこで、砂漠地方の地方…。そこで自分の居場所を作ろうと考えた」

王子「まず何をすべきか。俺は、新政策に逆らっていた賊共に連れられた、奴隷馬車を襲った」


騎士長「…奴隷馬車を?」


王子「そう。そして…それを繰り返し。やがて俺は一つの村を作ったんだ」

王子「元奴隷達による、"俺の居場所"さ」

王子「俺を慕ってくれたそいつらは、俺の本当の姿を知っても迎え入れてくれた。嬉しかった」

 
騎士長「…」

王子「まぁ、オープンじゃない村だなんても他の面子に言われたりしてたがねぇ」ハハハ

騎士長「…えっ!?」ガタッ

王子「ん?」


騎士長「ま、待ってくれ。オープンじゃない村…だと?」

王子「うむ、そうだが」

騎士長「…まさか、砂漠地方村か!?」

王子「なんでその名前を?」


騎士長「…っ!!」

 
王子「…?」

騎士長「し…知っているか?その村は…今…」

王子「燃やされた…か」

騎士長「!」


王子「…」

騎士長「…あなたも被害者だったのか」

王子「…いや、違う」

騎士長「え?」

 
王子「俺が…あの村を奴隷に襲わせた本人だからな」

騎士長「!!」

王子「…」

騎士長「な…」


王子「…」

騎士長「何だと…コラァァ!!」バッ!!

 
…ボキッ…ブチブチィ!!

騎士長「ぐ…がっ…!?」

騎士長「げほっ…!」ベチャッ


王子「あらら…興奮するから折角止めた血が…。一体どうしたんだ?」

騎士長「き、貴様さえいなければ…」ブルブル


王子「…何のことを言っているのか分からないが」

王子「まぁ、それをしたのには、大きな理由があった」


騎士長「言ってみろぉ!!」

 
王子「…村の民を守るためだ」

騎士長「…んだと!?」


王子「俺を王子と分かった上で、受け入れてくれた民」 
 
王子「だが、俺を追って王都の軍が調べていることがわかった」

騎士長「…」

王子「それから村人を逃す為に、一度…奴隷狩に頼み…売ってもらおうとしたのだ」

騎士長「その村の、トラウマを掘り起こしても…危険な道を選んでもか!?」


王子「…死罪になるよりはマシだろう」

騎士長「何だと…?」

 
王子「仮にも当代の王は闇の王でもある。俺をかくまった民は、捕まれば死罪を免れないだろう」

騎士長「だけどなぁ…それはな、死ぬより…ひどい思いをするってことなんだろうがっ!!」


王子「…だから、多額の金を支払って、俺の知っている身内に売ってくれと頼んだんだ」

王子「それならば、奴隷として扱うこともなかったからな…」


騎士長「…だ、だがそれはっ!」


王子「言うな…分かっている。頼んだ商人は既に王都の手下で…裏切られたんだ。俺が愚かだった」

王子「追い詰められ、俺もヤキが回っていた…」


騎士長「…」


 
王子「その後…俺は逃げていた所を、再びそいつ…奴隷商人に見つかった」

王子「最初に捕まえなかったのは、どうやら俺の顔を知らなかったからだったようだが…」

王子「結果的に捕まった俺だったが、奴らは俺を王に突き出さずにココへと閉じ込めたのよ」

王子「…俺を突き出せば、奴隷狩の自由と、王からの報酬がなくなるからな」


騎士長「…」


王子「だが、俺はうれしかった」

騎士長「…嬉しかっただと?」

王子「そうだ。こうして、死ぬ道があることが」

騎士長「…っ」


王子「こうして、死ぬ事で、奴隷に売られた…俺が裏切った村人たちも…」

王子「きっと"裏切り者が死んで良かった"って思うだろうしなぁ…」ハハハ

 
騎士長「て…てめぇ、何言ってんだ!!」ガシャアン!!

王子「…」

騎士長「死ぬことで、村人が喜ぶ?良かったと思う?んなわけないだろうが!!」

王子「…」

騎士長「く…くそ…」


…ゲホッ

騎士長「…!」

騎士長「…ゲホッ!ゲホゲホゲホッ!」

騎士長「あ゛…」フラッ

…ドサッ…

 
王子「やれ限界か。まぁ…俺も…限界なんだが…」フラッ

…ドサッ


王子「…はは、最後に誰かに話せたことを…嬉しく思うぞ…」

騎士長「ふ…ふざけ…」ググッ

王子「せめて最後に…娘に会いたかったなぁ…」

騎士長「!」


王子「本当にそれだけは…一緒に逃げなくて良かったと思う…」

王子「俺と一緒だったら、こうして捕まっていただろうし…」

王子「今、捕まってなければ…良いのだがな…ふふ…」ゴホゴホ

 
騎士長「…く、黒髪…幼女…」

王子「…!?」

騎士長「王都出身の村で…裏切り者の親父…。奴隷狩…全部繋がった…ぜ…」

王子「し、知っているのか…俺の娘を…」


騎士長「道理で…当代の王が血眼になって探していたはず…だ…」

騎士長「王家の娘…だったの…か…!!」


王子「…ど、どこにいるんだ?無事なのか…!?」

騎士長「俺が…助け出して…今は…、すぐそこの…エルフの家にいる…」

王子「な…っ」

 
騎士長「…ダメだ…眼が…霞む…」クラッ

王子「何という日だ…。最後の最後に…娘を…知るとは…!こんな近くに…いるとは…」


騎士長「なら…お前だけでも生きて…。あの子に会ってやれよ…!」

騎士長「俺は、旅に…出た…と…伝えて…く…」

騎士長「れ…」

騎士長「…」ガクッ


王子「…お、おい…!」

騎士長「…」

王子「…騎士長と言ったか。本当に…ご苦労だった…な…」

 
…グググッ…ムクッ…

王子「だが…俺が延命しても…、どうせ檻を破る力はなく…ココから出れぬ…」

王子「せ、せめて…俺の命と代えても…!」

王子「ヒールッ…!!」パァァッ…


騎士長「…」

騎士長「…」ピクッ


王子「…あとは、全てを頼んだ…」

王子「勝手に…希望にさせてもらうぞ…ははっ…」

王子「それと…これ…を…」ポイッ

…チャリンチャリンッ…!


王子「…」

…ドシャアッ

 
騎士長「…」

王子「…」

騎士長「…」

王子「…」


…ガチャッ!!…ギィィ…

 
ザワッ…ガヤガヤ…


「本当にここに…?」


「うん…さっきのお兄ちゃんが…」


カツ…カツ…ピタッ


「…誰か倒れてる!」


「あっ…!!」


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


騎士長「…」

騎士長「…ん」モゾッ

騎士長「…む、こ、ここは…」ハッ


アサシン「…気が付いたか」

騎士長「アサシン!?」ガバッ

アサシン「おっと動くな。隣を見てみなよ」

騎士長「隣?」チラッ

 
黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「黒髪幼女…。ここは一体…?」


アサシン「アルフの寝室さ。あんたが担ぎ込まれてきたとき…びっくりしたよ」

アサシン「あんたの傍から離れないで看病するって、そのまま黒髪幼女は寝ちゃったみたいだけどね」

アサシン「数日寝てると思ったけど、運ばれてすぐに目を覚ますとは、凄い気力だ」ハハハ


騎士長「俺が運ばれた…?誰に?」

アサシン「捕まってた奴隷たちさ。裸で来るんだもの…アルフのやつ、目回してたよ」ハッハッハ

騎士長「あいつらが…」

アサシン「彼女らの中にたまたま近くにアルフの小屋を見かけた人がいて、ココへ助けを求めたらしい」

騎士長「…彼女たちは?」

 
アサシン「アルフが服や布を渡して、砂漠地方へ戻る道は私が教えた」

アサシン「一応、途中までだけど…帰り道は私が着いてった。アラクネが出たら困るからね」


騎士長「そっか…。よかった」


アサシン「私だって良かった。あんた…本当に血だらけで…死んでるのかと…」グスッ

騎士長「…」

アサシン「と、とりあえず良かった。ナイフとかはどうしたんだ?持ってきたんだろう?」

騎士長「あっー!!」

アサシン「だから静かにしろって!」

騎士長「あ、あぁすまん…」ボソボソ

 
アサシン「目的のナイフだとかはどうしたんだって話!」ボソボソ

騎士長「…ナイフは忘れた」

アサシン「何だって?じゃあ何で傷だらけになってまで…奴隷の解放を?」


騎士長「…少し、話がある」

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


アサシン「…!」

騎士長「信じられないと思うが、その檻の中の王子という話…」

騎士長「これで全てのつじつまが合うんだ。夢物語だが…、信じるしかない」


アサシン「…」

騎士長「そういえば、王子はどうしたんだ?俺は助かったが…」

アサシン「まさか、王子だったなんてね…」タハハ

騎士長「ん?」

アサシン「死んでたってよ…檻の中の人は。あんたを助けた彼女たちの話だ」

 
騎士長「!!」

アサシン「あんたにヒールがかかってたらしい。命を懸けて助けてくれたんじゃないのか」

騎士長「…っ」


アサシン「それにしても、まさか…黒髪幼女の親父さんが亡くなったなんて…」

騎士長「皮肉にも、これで俺の依頼は一応…」

アサシン「果たした…か。だけどね…」

騎士長「分かってる」


アサシン「…」

騎士長「…」

 
騎士長「はぁ、とりあえず水でも飲みに起きてっと…」ガタッ

ズズッ…カツーン…チャリンチャリンッ

騎士長「…ん?」

アサシン「なんだ?」

騎士長「なんか俺のポケットから落ちたぞ…」

…キラッ


騎士長「え、何だこれ…ブローチ?」チャリッ

アサシン「…ん~?」

騎士長「俺、こんなの知らないぞ」

 
アサシン「…なんか見た事あるような…。ちょっと見せてくれる?」

騎士長「うん?ほれ」ポイッ

…パシッ!

アサシン「…」

アサシン「…」

アサシン「…」


アサシン「…あっ!!!」

 
騎士長「ど、どうした?」ビクッ

アサシン「…どこでこれを!!」

騎士長「だから分からないって!」

アサシン「逃げた奴隷の中に…まさか…?」

騎士長「本当にどうしたんだよ」


アサシン「…私の話、覚えてるか?今までの成り行きとか全部」

騎士長「あ、あぁ覚えてるぞ」


アサシン「…あっ、あぁぁ!!」

騎士長「ん?今度はどうした!」


アサシン「あぁぁ…そ…そういう…こと…」

アサシン「だったのか…」フラッ

 
騎士長「…危ない!」ダッ

…ガバッ!!

アサシン「…」

騎士長「一体どうしたんだ。話が見えてこないぞ!」

騎士長「そのブローチは何なんだ?聞かせてくれ!」


アサシン「…ここじゃ話にくくなった。こっちにきてくれ…」

 
トコトコトコ…

騎士長「…?」

アサシン「…」

騎士長「…」

アサシン「…」


トコトコ…ピタッ…

アサシン「…」

騎士長「ここでいいんだな。一体何だ?」

 
アサシン「…」スゥゥ

アサシン「…はぁ」

騎士長「…」

アサシン「…このブローチはな、元々私のものなんだよ」

騎士長「ん?じゃあ、俺のポケットに間違って入れてたのか?」


アサシン「…違う、そういうことじゃない」

騎士長「ん~?」


アサシン「これはね…、私がかつて愛した男…」

アサシン「前に話をした、私の子と共に別れた夫に渡したものなんだ」

 
騎士長「…!?」

アサシン「…」

騎士長「ま、待てよ。それじゃ…逃げた奴隷の中に男が混じってたってか?」

アサシン「…違う」

騎士長「…?」

アサシン「よく考えてくれ!!」


騎士長「…」

騎士長「…!!」ハッ

騎士長「ま、まさか…」

 
アサシン「王子が助けていた奴隷の話…」

アサシン「母親の知らぬ子…。そしてこのブローチ…」


騎士長「…じょ、冗談だろ?」

アサシン「…」

騎士長「…王子の愛した女はお前だって…ことか…」

アサシン「…」コクン


騎士長「…じゃ…じゃあ…」

アサシン「…っ」

騎士長「お前は…黒髪幼女の…!!」

 
アサシン「…母親ってことに…なるね…」

騎士長「…~~っ!!!」


アサシン「ど、どうしよう…。どうしたらいいんだ…」ブルブル

騎士長「お、俺だってわからねえよ!」

アサシン「…打ち明けるべきなの…だろうか…」

騎士長「ま、待て待て落ち着け。その前に…」

アサシン「…」


騎士長「お前の…愛した男は…。王子は…」

アサシン「…死んだ…ね…」

 
騎士長「…っ!!」

騎士長「…くっ、くそぉぉぉ!!」ゴンゴン!!

アサシン「な、何してるんだ!」


騎士長「こ…こんな事なら…こんな事なら…!」

騎士長「"俺が死ぬべき"だった!!!」


アサシン「!!」


騎士長「俺を助けなければ、黒髪幼女は…幸せを取り戻せたのかもしれないのに!!」

 
アサシン「…ッ!!」

アサシン「ばっ…」ブルッ

騎士長「…?」

アサシン「バカなこと言うなぁぁっっ!!」ブンッ

…パァンッ!!

 
騎士長「いっ…!」

アサシン「に、二度とそんな事いうな!死んでいいなんて…二度と…!」


騎士長「だが俺は…!」

アサシン「過去は過去…そんな事を言うヤツは…嫌いだ!」

騎士長「…っ」

アサシン「黒髪幼女や、私の為に?二度と…そういう事も言うな…!」

騎士長「…」


アサシン「はぁっ、はぁっ…!」

 
騎士長「…す、すまなかった…」ソッ

アサシン「…触るな」パシッ

騎士長「…」

アサシン「今は一人にしてくれ。色々考えたいんだ」

騎士長「…分かった」


アサシン「…」クルッ

タッタッタッタッタッ…バタンッ…

 
騎士長「…」

騎士長「…」

騎士長「…俺の逃げ場は、どこかにないものか」

騎士長「一体俺は…何の為に…」クルッ

トコトコトコ…

騎士長「一人で始めた事。責任は俺。良かれとして思った事も無駄」

騎士長「…中途半端な正義のようなものだから、なのか」

騎士長「…一体俺は、何を言ってるんだろうな。偽善かな…」ハハハ

 
コトンッ…

騎士長「…ん?」

騎士長「何か…音がしたような…。気のせいかね…」


トコ…トコ…トコ…

騎士長「なんか、疲れた…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

毎回似たような内容なのにお前らよく飽きないなww

台本形式でも頭の悪さが滲み出ている文
王道というよりは陳腐と言った方が当て嵌まる単純なストーリー
褒める方が難しい内容なのに自分も含めてこれだけレスさせるだから何かがあるのかね


皆さま有難うございます。
今先ほど確認して、あまりの多さに驚きました。
いつもはしませんが、投下前に少しだけ書きますね。

>>598 >>607
意見・感想ありがとうございます。
毎回のことですが、どんなお言葉であろうと、読んで頂いてのご感想のようで、
読者様に違いはないと思っております。
まだまだ至らない部分はありますが、これからも少しでも読んで頂ければ嬉しいです。


【ご感想・ご意見・会話書き込み等を下さった方々】
自分で思っていた以上に、見ていて下さってる方々がいて嬉しく思います。

自分の作品に関して、つまらないや、ここがイイや、面白いなど、

どんな感想であろうと、読んで下さってる方々がいるのは非常に嬉しいです。

ありがとうございました。


長々と書きましたが、改めて作品の投下をさせていただきます。
今回は、たくさんの書き込み、ありがとうございました。

 
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――――【 夜・アルフの寝室 】

ホウ…ホウ…


黒髪幼女「…」スヤスヤ


騎士長(本当に子どもってのはよく寝るな)

騎士長(お前の親父はもう…いないんだと。どうして言えようか…)

騎士長(また、その寝顔を奪う事になるんだろう?俺のせいさ…)


…ゴトンッ!!

騎士長「ん…アルフが置いてってくれたのか?…酒か」

騎士長「夜風と酒。久々に…全てを忘れるくらい飲もう」

ガチャッ…バタンッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 テラス 】

サァァァ…

騎士長「…」グビッ

騎士長「月が綺麗だ」

…グビッ

騎士長「海が近いからか…潮風と…遠くに見える砂漠の砂煙…」

騎士長「大きな月が浮かびつつも、横を見れば森がある…」

騎士長「随分と遠くまで来てしまったなぁ、俺も」グビッ

 
トクトクトク…

騎士長「…すまない。ごめん」

騎士長「何て言えば許してくれる?俺はこれからどうしたらいい?」

騎士長「偶然が偶然を生む、運命か」

…グビッ

騎士長「だとしたら、これも運命か」

騎士長「重過ぎるよ…神様…」

 
カツ…カツ…カツ…

騎士長「ん…」ヒック

アサシン「…何、一人でぶつぶつ言ってるんだ」

騎士長「…アサシン」


アサシン「…」

騎士長「あ、あの…」

アサシン「いや、何も言わなくていい。それより…一緒に飲ませてくれないか」

騎士長「…グラスを持ってくるよ」

アサシン「持ってきてるよ」スッ


騎士長「準備がいいようで…注ぐよ」

…トクトクトク

 
アサシン「ありがとう。…んっ…」グビッ

騎士長「…」

アサシン「…ふぅ、美味しいね」


騎士長「…」

騎士長「アサシン…あのよ…昼間はゴメンな」

アサシン「私も、昼間はすまなかった。殴ったり…触るなとか…」

騎士長「いいさ。俺も悪かった」

アサシン「肩、貸してくれ。砂漠と違って…よく冷えるねここらの夜は」トン

騎士長「そうだな…」

 
…サァァァ…

アサシン「…」

騎士長「…」

アサシン「あんたは…これからどうするつもりだ?」

騎士長「親父探しの旅は終わった。…今はそれしか思い浮かばない」

アサシン「王子の事、親父の事は…言うつもりか?」

騎士長「決めてないな…」


アサシン「そうか。私も…母親と言おうか迷ってるんだ」

騎士長「…」

アサシン「一人の時間、ありがとう。おかげで落ち着けたよ」

騎士長「…追いかけても、言葉が見つからなかったからだ」

 
アサシン「ふふ…本当に素直でいい男だねアンタは…」

…カランッ…グビッ…

騎士長「別に…。俺は、いつも思った通りに走ってきて、今もこうしてしゃべってるだけだ」

アサシン「…それでいいと思うよ」


騎士長「…」

騎士長「…アサシン」


アサシン「何だ?」


騎士長「改めて謝りたい。お前の…愛した男を…」

アサシン「…」スッ

騎士長「…むぐっ…」


アサシン「…それ以上は、言わなくてもいい」

騎士長「…」

 
アサシン「過去は過去。確かに今日の事はショックだった。けどね…」

騎士長「…」

アサシン「後ろを振り向いていても仕方がないのは、あんただって分かってるはずだよ」

騎士長「アサシン…」


アサシン「…ひどい女だよね」

騎士長「…」


アサシン「傷ついた私を助けてくれて、ずっと黒髪幼女を育ててくれて…」

アサシン「アイツもさ…こんなくだらないブローチをずっと持ってて…!」

アサシン「久々に話を聞いたら、傍にいたのにもう死んじゃってて…」


騎士長「…うん」


アサシン「それなのに、私は過去を振り返らないとか言ってさ」

アサシン「あの王子も…嫌な女に引っかかっちゃったねぇ!」アハハ

 
騎士長「…そうかもな」

アサシン「あはは…は…」

騎士長「…」

アサシン「…う、うぅ…」グスッ

騎士長「…」


アサシン「うぅぅ…う~…!」ポロポロ


騎士長「…」ギュッ

アサシン「うぅぅ…うあぁ…」グスグス

騎士長「…」

 
アサシン「…ひっく…うう…」

騎士長「…」

アサシン「うぅ…騎士長…っ」

騎士長「いいさ。泣けばいい」

アサシン「ありがとう…」


騎士長「今宵は…飲もう。いつまでも付き合うからな」

アサシン「うん…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・居間 】


騎士長「…」パクパク

黒髪幼女「…」モグモグ

アルフ「…」グビッ

アサシン「…」ゴクンッ


4人「…ご馳走様でしたっ」パンッ

  
アルフ「片付けはやるよ。団欒な食事は何だかんだで楽しいもんだな」

黒髪幼女「私も手伝うっ」

アルフ「お?そうか、じゃあお皿持ってきてくれるかな~」

黒髪幼女「うん♪」

トテテテ…


騎士長「アサシン、ちょっと」

アサシン「うん」

 
トコトコトコ…ストン

騎士長「…一晩寝て、じっくり考えたんだ」

騎士長「俺は決めた。黒髪幼女に伝える」


アサシン「…いいのか」


騎士長「ずっと行方不明にする手も考えた。だが、真実を教えたほうがいいと思ったんだ」

アサシン「…」


騎士長「今日、改めてナイフの回収と遺体を見せたい」

騎士長「お前は…どうする」


アサシン「…」

 
騎士長「酷なことだとは分かってる。どれが正解かすらも俺は分からない」

騎士長「だけど、俺は俺の道を行く。そう言ったはず…、俺は黙っていることなんて出来ない」


アサシン「じゃあひとつ聞くよ。あの子はどうするつもりだ?」

騎士長「え?」

アサシン「もう親父がいない世界で、頼れるのは誰だ?」

騎士長「…」

アサシン「あんただ。短い間かもしれないけど、誰よりも今は、騎士長を信頼している」

騎士長「…」

 
アサシン「面倒を見れるのか?その責任は出来るのか?」

騎士長「だ、だけど…黙っていてもその間の面倒は俺が見るだろう」

アサシン「そういうことじゃない。親父がいなくなったという世界を知って、その面倒も見切れるかということだ」

騎士長「…あ」


アサシン「確かに、生活という面倒は見れるだろう。幸い、金にも不自由しない男だ」

アサシン「もし伝えたら、それは"人生の面倒"も見る事になるんだよ?」

アサシン「あの子の依頼の"殺して"は、本当の思いじゃないこと…騎士長も分かってるだろう」


騎士長「…じゃあ逆に聞きたい。お前は、母親としてどうするつもりだ」

アサシン「…わ、私か」

騎士長「…」

 
アサシン「…」

アサシン「え、偉そうなこと言ったけど…ゴメン。それは分からないよ…」


騎士長「なぁ…アサシン。親を一生見れないまま過ごしてきた俺にとってさ…」

騎士長「親の最後を見届けさせてやりたいと思う。必ず、大人になって"最後に見れて良かった"と思うんだ」


アサシン「…」

騎士長「親のいない俺にとって、そう思うだけだから…どうにもこうにもだがな」

アサシン「…あの、さ」

騎士長「ん?」


アサシン「もし…私が、あの子の母親だって言って…」

アサシン「受け入れられると思うか…?」


騎士長「受け入れられるか…か」

 
アサシン「…あの子はまだ幼い子供だ」

アサシン「父親が死に、目の前に急に現れた母親。壊れてしまいそうで…怖い」


騎士長「…」

アサシン「私だって本当は言いたい。だけど、だけど…!」

騎士長「…」

アサシン「まだ決心はつかないんだよ…」

騎士長「お前は…自分の決心がつくまで、言わないほうがいいと思うよ」

アサシン「…かもね」

 
騎士長「それと…前も言ったが話はいくらでも聞く」

騎士長「黒髪幼女が壊れることも…、お前が壊れてしまうことも…」

騎士長「今の俺にとって、どっちも"大事な人"なんだ」


アサシン「騎士長…」


騎士長「とにかく、俺は親父と伝える。だが、今は王子だったとは伝える気はない」

アサシン「王子とは伝えないのか?」

騎士長「王家の人間だというのは、さすがに重いと思うんだ」

アサシン「…」

騎士長「それは刻が来たら、伝えるべきだと思う」

アサシン「そうだね…」

 
トテテテテ…

黒髪幼女「騎士長、皿洗い終わったよ!」

アルフ「3枚ほど割られたけどね…」トホホ

騎士長「はっはっは、サービスみたいなもんだ。こんな可愛い子と皿洗いできる、それだけで金払いモンだろ!」

アルフ「ははは!そうかもな!」


騎士長「さて…、冗談はさておき。全員がそろったところで、話がある」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 屋 敷 】

ゴォォォ…サァァ…


アサシン「…本当にでかい屋敷だね。廃墟とは思えないよ」

騎士長「昨日までアジトだったわけだしな、廃墟とはいえないな」

黒髪幼女「大きい~!私も来てよかったの?」

騎士長「もう敵はいないし、ちょっと付いてきてほしくてな」

黒髪幼女「ん~?わかった」


アサシン「…」

 
騎士長「さてとアルフ、どこかにナイフはあるはずだから…」

騎士長「すまないが探索は一人で頼むよ。俺らはすることがあるんだ」


アルフ「わかった。面白いものもありそうだし、調べてみる」


騎士長「ナイフがあったり、探索が終わったら、地下へ頼む」

アルフ「了解した」


騎士長「…アサシン、黒髪幼女。こっちだ」クイッ


アサシン「う、うん」

黒髪幼女「?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 地下室 】


騎士長「二人とも、マスクだ」スッ

黒髪幼女「ありがとう」

アサシン「ひどい臭いだ…。薄暗くて…湿っぽい…」ゴホゴホッ


騎士長「ここの牢に、何人もの奴隷がつめられてた」

騎士長「…助け出せて、本当に良かったと思う」


アサシン「その人たちに代わって、私がお礼を言うよ。ありがとう」

騎士長「いいさ」

 
トコ…トコトコトコ…

アサシン「…」

騎士長「…」

黒髪幼女「…」


トコトコトコ…ピタッ

騎士長「ここだ」

黒髪幼女「わっ、また扉」


アサシン「ここに…いるのか…」

黒髪幼女「…??」

 
騎士長「さ、あけるぞ…」

ガチャッ…ギィィィィ…


騎士長「この奥の牢にいる」

アサシン「…」

黒髪幼女「何がいるの?」

 
カツカツカツ…カツカツ…カツンッ…

騎士長「…ここだ」

アサシン「…っ」


黒髪幼女「ここに何かあるの?」

黒髪幼女「あっ…誰か倒れてるよ!?」ダッ


騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪幼女「…助けてあげようよ!騎士長!」


騎士長「黒髪幼女…」

黒髪幼女「この牢、開かないの?騎士長、助けてあげてよ!」

騎士長「…っ」

  
アサシン「…こ、この目で見るまでは信じられなかった」

アサシン「信じたくなかった。で、でも…紛れもない…よ。分かるんだ…暗くても…」ブルッ

騎士長「アサシン…」


黒髪幼女「騎士長、どうしたの?…騎士長!助けないと!」


騎士長「すまん…すまん…。黒髪幼女…」ドクン

黒髪幼女「騎士長?どうして謝るの?」

騎士長「…っ」


ドクン…ドクン…ドクン…

 
アサシン「い…いえないなら…私が代わりに…」

騎士長「いや、ダメだ。この依頼は俺が受けたから…俺が言う」ドクンドクン

アサシン「…」


黒髪幼女「…?」


騎士長「…っ」

ドクンドクンドクンドクンドクン…ッ!!

  
黒髪幼女「…騎士長…?」

騎士長「そ、そこにいるのはな…」


ドクッドクッドクッドクッドクッ…!


騎士長「黒髪幼女。お、お前の…」

黒髪幼女「うん」


ドクンッ…


騎士長「お父さんだ…っ」

騎士長「もう…生きては…いない…!!」

 
黒髪幼女「――…!」


騎士長「す…すまない…っ!!」

騎士長「本当にすまない…すまない…!」ガクッ

騎士長「お前のお父さんは、俺の代わりに、俺を助けて…死んだんだ…!」

騎士長「俺を殴ってもいい。殺してもいい!!」


アサシン(騎士長の心が…零れた…!)


騎士長「確かにお前の依頼は、親父を殺してほしい事だった。だけど、それは…」

騎士長「分かってる!!分かってたんだ!!くそぉぉぉ…!!」グスッ

 
黒髪幼女「…」


騎士長「何が大人の責任だ、偉いことを言っても…これだ!」

騎士長「こうやって大声で、涙を流して、自分に言い訳をしている!!」

騎士長「ごめん、何度謝れば許して貰えるか、心の奥底できっと考えてるんだ!」

騎士長「こんな状況でも、俺は俺のことしかー…!!」ポロポロ


黒髪幼女「…」

トコ…

トコトコ…トコトコ…ギュウッ

騎士長「…っ」

黒髪幼女「騎士長…泣かないでよ…」


騎士長「えっ…?」

  
黒髪幼女「いいの、いいのから…」

騎士長「く…黒髪幼女…?」

黒髪幼女「どこかで…私、こんな気がしてた…。それだけだけ…」

騎士長「…~~!!」


黒髪幼女「今はね…騎士長がね…。泣く事はないんだよ…」ヒクッ

黒髪幼女「ごめんなさい…私のせいで…。私が悪いんだよぉ…」グスッ


騎士長「違う…!お前は悪くない…!」


黒髪幼女「うぅぅ…っ。大丈夫だから私は…だからぁ…」ポロポロ

 
騎士長「…っ」グイッ

ギュウウウッ…


黒髪幼女「ひくっ…うっ…」

騎士長「うぅぅ~…!」


アサシン「…っ」ポロポロ


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒髪幼女「…でね、また騎士長に助けてもらったの」

黒髪幼女「怖かったけど、騎士長を見たら安心しちゃった。洋服も買ってもらったんだ!」

黒髪幼女「でね、それでね…お父さん、私ね…」

王子「…」



騎士長「…」

アサシン「…」

騎士長「俺が…思っていたより、ずっとずっと黒髪幼女は大人だったってことなのかな…」

アサシン「それは違うと思うよ」

騎士長「え?」

 
アサシン「この旅の中で、黒髪幼女も成長してきたんだ」

アサシン「子供の成長ってのは…驚くほど早いんだって。そうなんじゃないかな」

騎士長「…」

アサシン「もう、幼くなんかない。立派な少女だよ」


騎士長「…」

騎士長「黒髪少女、か」


アサシン「こうして大人になっていくんだ…。実感はないけど、親として…喜ぶべきなんだろうね」

騎士長「そうだな…」

 
トコトコ…

黒髪幼女「…騎士長」

騎士長「…終わったか?」

黒髪幼女「うん。ありがとう…教えてくれて。言いたい事、全部伝えたよ」

騎士長「あぁ…」

黒髪幼女「でも…、私、これからどうしたらいいのかな」


騎士長「…」

黒髪幼女「お父さんはいなくなって、お母さんもいなくて…。一人で生きていけるのかな」

騎士長「…」

アサシン「…っ」

 
黒髪幼女「騎士長、教えて…。私、どうすればいいんだろう」

騎士長「…全てが終わったら、お前に話がある」

黒髪幼女「え?」

騎士長「それまでは待ってくれ。まだ、全てが終わったわけじゃないんだ」


黒髪幼女「…うん」


カツンカツンカツン…ガチャッ!!

アルフ「おーい!あ、いたいた」

騎士長「アルフ…」

 
アルフ「ナイフは見つけたんだが、それ以外にめぼしいものはなかったよ」

アルフ「まぁナイフだけでも無事に取り戻せてよかったよ」


騎士長「それで、飛行機は動くんだな?」

アルフ「問題ない。時間だけ貰えれば、夕方には動くぞ!」


騎士長「よし…」

アサシン「…」


騎士長「…王都の中枢を潰さねば、黒髪幼女…いや」

騎士長「"黒髪少女"と砂漠の民に、明日はない…決めた。俺は王都を潰す…」

騎士長「それが俺に課せられた使命なんだと、そう思う!」

 
黒髪少女「え、今…私のことを何て?黒髪…少女…?」

騎士長「ん…あぁそうさ。もう、お前は幼くはない。大人への一歩を踏んだと思う」

黒髪少女「…!」

騎士長「これからは"黒髪少女"だ。勝手につけたが…どうだろうか」ハハ


タタタッ…ダキッ!!

騎士長「うおっ」

黒髪少女「ありがとうっ、騎士長っ…」


 
騎士長「ははっ…気に入ってくれたなら嬉しいよ」ナデナデ

黒髪少女「…うんっ」
 

アサシン「最終決戦に向けてはいいんだが…」

アサシン「私たちがココを離れるとすると、遺体は…どうするんだ…?」


騎士長「あぁ、それに関してなんだが…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ボォォォッ…ボォンッ!!パチパチ…

バキバキッ、モクモク…ゴォォォ…!!!


騎士長「この屋敷には、呪いがある」

騎士長「全てを無に返して、空高く供養してやりたいと思っていた」


アサシン「それがいいね…賛成だよ。束縛された魂も、炎と一緒に消えると思う」

アルフ「…」

黒髪少女「…」

 
騎士長「王子…。あとは俺たちがやる。あんたは…見守っててくれ」

黒髪少女「お父さん…。また、会おうね…」

アルフ「俺には分からないが、ただ黙祷を捧げるよ」スッ

アサシン(…あの世で会えたら、また抱きしめてやるよ)フフ
 
 
ボォォォ…ゴゴゴ…

バキバキッ…ゴォォ

ボォォ……

……

本日はここまでです。ありがとうございました。

>>657
修正前のをあげてしまったので、「」は()で、後日修正分を出します。

皆さま有難うございます。投下、開始致します。

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 アルフのカラクリ倉庫 】

ガラガラッ!!

アルフ「さて、ナイフは本当にご苦労だった。あとは俺の仕事だ!」

騎士長「任せるぞ」

アルフ「恩としてしっかり返すさ、待っててくれよ」カチャカチャ

騎士長「わかった。じゃあ俺たちはどうするかなぁ」


アサシン「なぁアルフ、この近くなら…敵も出ないのか?」


アルフ「そこまでは出ないはずだ」

アサシン「じゃあキッチンを借りる。あと、丘とかないかな?」

アルフ「丘?」

 
アサシン「あぁ。例えば、砂漠地方が見渡せるとか」


アルフ「それなら旧街道の曲がり道があったと思うが、そっち側にいけばある」

アルフ「度々行くが、綺麗な場所だぞ」


アサシン「ありがとう」クルッ


騎士長「何するつもりだ?」

アサシン「まぁまぁ。あんたも手伝って…黒髪少女もちょっと来て!」

黒髪少女「どうしたの?」


アサシン「まぁいいから!」グイッ

黒髪少女「わわっ」

騎士長「うおっ!」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 キッチン 】


アサシン「~♪」

黒髪少女「何するの?」


アサシン「ふんふん♪黒髪少女にプレゼントー!」スッ

黒髪少女「なぁにこれ?」

アサシン「私が作ったエプロンだよ。私とおそろいなんだ、ほらっ!」


黒髪少女「!」

アサシン「き、気に入るといいんだけど…」

 
黒髪少女「可愛い…、ありがとうっ」

アサシン「…良かった」ニコッ


騎士長「で、本当になにするんだ?」


アサシン「保存食とか、余ってたのあるし。時間もあるだろう?」

騎士長「まぁ」

アサシン「お弁当作って、ちょっとした休息しに丘に行こうよっ」

騎士長「…」

アサシン「…だめか?」


騎士長「楽しそうじゃねえか!俺も混ぜろよ!」

アサシン「あ、当たり前だろう!」


 
黒髪少女「お姉ちゃん、お料理できるの!?」

アサシン「なんだいその意外そうな顔は」

黒髪少女「そ、それはその~…」

アサシン「…私の華麗な腕裁きをよーく見るんだね。黒髪少女に、料理を教えてあげるよ」

黒髪少女「!」


アサシン「ほら騎士長、男はさっさと食材運ぶ!洗う!」バンッ

騎士長「ひ、人使いが荒いぞこの!」

アサシン「はっはっは、ほらほら!」

騎士長「ひ~っ!」

タッタッタッタッ…ドタドタ…

 
アサシン「黒髪少女、まずは手を洗う。包丁は切れやすいから気をつけるんだよ」

黒髪少女「う、うん」ゴシゴシ

アサシン「ふふっ」

黒髪少女「お姉ちゃん…私に料理、少しでいいから教えてほしい」

アサシン「だから教えるって。改まってどうしたんだ?」


黒髪少女「いっつも騎士長に守られて、お世話になってるのに…」

黒髪少女「何もお返しできてないから。せめて、少しでもお返ししたい」

黒髪少女「勿論、お姉ちゃんにもっ!」


アサシン「~っ…」ブルッ

アサシン「いい子だなぁぁ黒髪少女ぉぉ~!」ダキッ

黒髪少女「わわっ」テレッ

 
ドタドタドタ…ドンッ!!

騎士長「ほら食材だ!!」


アサシン「うるさいな…今、黒髪少女との愛をはぐくんでいたんだから!」

騎士長「ぐ…この…」ブルブル

アサシン「何か文句があるのかな?」キラッ

騎士長「ほ、包丁はずりぃぞ!くっそ~、覚えてろ!」ダッ

タッタッタッタッタ…


アサシン「あっはっはっは!」

黒髪少女「…」クスッ


アサシン「…!」

黒髪少女「…あっ」

  
アサシン「今、笑ったね」

黒髪少女「う…うん…」

アサシン「可愛いよ。あんたの笑顔」ポンッ

黒髪少女「…」

アサシン「今度は、そんな小さな笑みだけじゃなくて…もっと全力で笑ってみなよ」


黒髪少女「…」

アサシン「でも私にじゃない。誰よりも、あんたの笑顔を待ってるのは…騎士長だからね!」

黒髪少女「…うんっ」

 
アサシン「さ、騎士長のために料理を教えるよ!」

黒髪少女「が…がんばるっ」


アサシン「まーずは簡単な、お弁当の定番の卵焼きから…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の丘 】


ザッザッザッザ…ガサガサッ

ガサ…ガサガサ…バッ!!


アサシン「ふぅ、やっと街道を抜けたね。この辺が丘になってるはずだけど…」


騎士長「お…おぉ…!」

アサシン「ん?何か見えたか?」ヒョイッ


騎士長「…前、見ろよ!」

アサシン「お~!」

黒髪少女「わぁ…!」

 
バサッバサッ…チチチ…

サァァ……!!


黒髪少女「すごい…綺麗…!」 

アサシン「何て素晴らしいんだ…」


騎士長「なぁ…黒髪少女、覚えてるか?」 

黒髪少女「何を?」

騎士長「俺が前に言った、世界は広いんだってこと。見ろ…これでも世界の1%にもならないんだぞ…」

黒髪少女「…っ!」


騎士長「すげえだろ…ワクワクするだろ!?」

黒髪少女「うん!」

  
アサシン「ほいほい、景色に感動してるところ申し訳ないですけど」パンパン

アサシン「お弁当を作ってきたので、ここで食べましょう~」


騎士長「おっ、そうだ。アサシンと黒髪少女が作ったんだっけ?」

アサシン「今開けてあげるよ」ゴソゴソ

…パカッ


騎士長「!」

黒髪少女「…」ドキドキ

騎士長「お~美味そうだ!」


アサシン「これは2段重ねになってて、1段目は、おにぎりだけど…」

騎士長「2段目に、おかずか」

アサシン「そういうこと。ほらっ!」パカッ

 
黒髪少女「…」ワクワク

騎士長「うお~!こっちも美味そうだ!」

アサシン「それでね…ほら、黒髪少女」ポンッ


黒髪少女「う、うん」

騎士長「どしたの?」

黒髪少女「こ、これね、私が作った卵焼き。騎士長に…」

騎士長「俺にか!?」

黒髪少女「う…うんっ。初めてだから分かんなかったけど、お姉ちゃんが教えてくれたの」


騎士長「…」チラッ


アサシン「大丈夫だよ!私が見てたから味も保障する」ボソボソ

騎士長「そうか」ボソボソ

 
黒髪少女「?」

騎士長「さ、んじゃ…黒髪少女。食べさせてくれ」アーン

黒髪少女「!?」


騎士長「…」アーン

黒髪少女「え、えっと…」オロオロ

騎士長「…」アーン

黒髪少女「え、えいっ!」グイッ


騎士長「もがっ!」


アサシン「…」プッ

  
黒髪少女「お、美味しい…?」

騎士長「…」モグモグ

…ジャリッ

騎士長「!?」


黒髪少女「…」ドキドキ

騎士長(し、塩の塊が…!アサシン…だ、騙したな…!!)ギロッ


アサシン「…ぷ…くく…」ブルブル


黒髪少女「騎士長?」

 
騎士長「うん…すっげぇ塩味効いてて美味いぞ!どうやって作ったんだこれ!?」

黒髪少女「よかったぁ」ホッ

騎士長「それと、す…少し喉が乾いたな。歩いてきたからかなー?お、お茶もくれるかな」

黒髪少女「あ、うんっ」

クルクルクル…キュポンッ、トクトクトク…


騎士長「…」ヒョイッ、グビグビ

騎士長「ぷはぁっ…!」

騎士長「うん、黒髪少女…おいしいぞ、もう1個もらおうかなー…って」ハッ


黒髪少女「そうだ…私も自分で作ったの食べてみようかな」ヒョイッ

騎士長「!」

アサシン「!」

  
黒髪少女「…」アーン…

騎士長「ストップゥゥ!!」ビシッ!!

黒髪少女「?」ピタッ


騎士長「アサシンがすっごい食べたいって顔で見てるぞ!食べさせてあげようぜ!」

騎士長「もう1個は俺が食べたいな~?なぁ~?」


黒髪少女「そうなんだっ!じゃあ…はいっ!」スッ


アサシン「え゛っ」

騎士長「よかったなぁ、アサシン」ニコッ

アサシン(き~し~ちょ~う~!!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 しばらくして 】

プハァッ!!カチャカチャ…

騎士長「あ~…満腹…」ゴロン

アサシン「お粗末さまでした」

黒髪少女「うん…おなかいっぱい…」ゴロンッ


騎士長「いい天気だな~…」

チチチ…サァァ…

黒髪少女「…うん」

  
アサシン「こーら、二人して…食べてすぐに横にならない!」


騎士長「でもよ~、美味しいモン食って…いい天気で…、草のいい匂いで…」

騎士長「横になるなってほうがおかしいだろう~」


アサシン「子供かアンタは!」

騎士長「もー今は子供でもいい~」

ゴロゴロゴロ…

アサシン「あ、そっちは黒髪少女が…」


…ゴチンッ!!

騎士長「あいたぁあ~!」

黒髪少女「~~~っ!」

 
アサシン「言わんこっちゃない…」ハァ


騎士長「すまん…、だ、大丈夫か!」

黒髪少女「…」

騎士長「お、怒った?顔あげてくれないかな~…」

黒髪少女「…」プイッ

騎士長「泣いてる?怒ってる?黒髪少女さ~ん…」


アサシン「あ~あ、しーらない」

騎士長「ぐぬ…、黒髪少女さーん!本当にすいませんでしたぁ!」バッ

 
黒髪少女「…」

騎士長「…?」

…ソッ

黒髪少女「騎士長…」


騎士長「…?」

騎士長「…」

騎士長「…!!」

 
黒髪少女「騎士長って、本当にドジだね…」

黒髪少女「でも、いつも助けてくれて…ありがとうっ…」ニコッ


騎士長「…お、おぉ…」

アサシン「…ふふっ」

騎士長「黒髪少女…お前…」


黒髪少女「…えへへ」

騎士長「…」

 
アサシン「騎士長、何とか言ってあげたら」

騎士長「よ…良かった…」

黒髪少女「…」

騎士長「お前の…笑顔…。本当に可愛いよ…黒髪少女…っ」グイッ

ギュッ…ギュウウッ…


黒髪少女「騎士長、痛いよ…でも、あったかい…」

騎士長「…っ」

アサシン「良かったね、騎士長」

騎士長「あぁ…良かったよ…!本当に…!」

………
……

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕方・アルフの倉庫 】

グイッ…ブルンッ!!ブルンブルンッ!!!

…ガオォオォオオ!!!ビュウウウウウゥゥッ!!!


騎士長「うるせええ!」

黒髪少女「うっぷ…凄い風…!」

アサシン「完成したんだね!?」


アルフ「あぁ、完成した!お前たちのおかげだ…ありがとう!」

  
騎士長「これが飛行機か…」


アルフ「動力部分のカラクリの生み出すエネルギーは計り知れず、空へと浮遊する際に…」

アルフ「そのパワーは、魔石に組み込まれたユニット部分が導線部分で接触し…」


騎士長「わけわかんねぇけど!!これで王都までいけるんだな!」

アルフ「そ…その通りだ」


騎士長「…山を越え、海を越え、砂漠を駆け抜けて森へ迷い込み…」

騎士長「俺と黒髪少女の旅はついに…空まで来たかぁ!!」ハッハッハ


アルフ「どうするんだ?もう発進は出来るが」

騎士長「明日の早朝に出発したい。出来れば日の出前に」

アルフ「いいが…、今じゃなくてもいいのか」

  
騎士長「日の出前にこっそりと王都へ戻りたい。目立つことはしたくないんだ」

アルフ「なるほどな」


アサシン「じゃあ今日は、アルフの家でまた一泊か?」

騎士長「最後の晩餐にならなきゃいいんだが…、お世話になるぜ、アルフ」

アルフ「構わん。俺も…お前らといれて楽しかった」

騎士長「ははっ、そう言ってもらえるとありがたいよ」


アサシン「じゃあ今日は、出発前のお祭りといこうか!?」

騎士長「いいね!」

黒髪少女「お祭り!?」ウキッ

アルフ「楽しそうだ」フッ

 
アサシン「美味しい物、また私も腕によりをかけて作るよ!」

アルフ「じゃあ俺は森の幸を使った、美味しい物を用意しよう!」

黒髪少女「私も手伝う~!」


騎士長「俺は待ってる!酒飲みながら!!」ワーイ


ゴツッ…ドサッ!!

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】


騎士長「それじゃあ…明日の無事を祈って…」ズキズキ


アサシン「かんぱーい!」

アルフ「かんぱーい!」

黒髪少女「かんぱあーい!!」

騎士長「乾杯!!」

…カァンッ!

 
騎士長「…さぁて食べるぞぉ!」

アルフ「俺の特製サラダだ。美味いぞ、香料が決め手だ」

黒髪少女「美味しいよ、アルフのおじちゃん」モグモグ

アルフ「可愛いなぁぁ黒髪少女は!」

騎士長「はは…」

 
アサシン「騎士長、私のも食べてよ!」

騎士長「わかったわかった!」


アルフ「こっちの飲み物は?」グビグビ

アルフ「…うめぇ!」プハッ

  
アサシン「それはシャイさ。それに酒を加えてみたんだ」

 
騎士長「シャイ?お前シャイじゃないじゃん」

アサシン「そういうことじゃないっての。シャイっていうのは紅茶のことだよ」

騎士長「ああ!じゃあ、紅茶酒って感じか」

アサシン「そうそう。美味しいよ」グビッ

騎士長「それ俺も飲む!」

アサシン「ふふ…はいはい。慌てないの、私のあげるから」スッ

騎士長「んむ…」グビグビ


黒髪少女「アルフのおじちゃん、この甘いジュースはなに?」グビグビ

アルフ「森で採れる、妖精の蜜を煮込んで作ったジュースだよ」

黒髪少女「美味しいっ」プハッ

アルフ「妖精の蜜は中々見つからないんだがね、今日は特別サービスさ」ハハ

 
黒髪少女「うん、ありがとう」ニコッ

アルフ「可愛いなぁぁ!」


…モグモグ

騎士長「これ本当に干し肉か?すっげー美味いんだけど」

アサシン「肉々しい感じだろ?秘伝のレシピさ」

騎士長「すっげー表現だな、肉々しいって」

アサシン「美味いんだからいいだろ!」

騎士長「まぁそうだけど。ほら、コップ出せ…俺の酒、注いでやる」スッ


アサシン「ありがとっ」

トクトクトク…

アサシン「うん、美味しい…」グビグビ

  
騎士長「…」モグモグ

アサシン「…ふふっ」

騎士長「どうした?」

アサシン「見てみなよ、黒髪少女。きっと、本心から楽しんでる」


黒髪少女「おじちゃん、騎士長にもあげようよ」

アルフ「参ったなぁ、あとは俺の分だったんだけど…。待ってろ!」

ワイワイ…カチャカチャ…モグモグ…


騎士長「…うん、楽しそうだ」

アサシン「私の娘…か」

  
騎士長「そうだぜ。誰よりも、可愛い娘だ」

アサシン「ふふ…。その時が来たら、必ず打ち明けるよ…」

騎士長「んっ。当然だ」

アサシン「…今は、この幸せの時間に浸っていたい。我侭だね」


騎士長「人間、そのくらいの我侭でいいと思うけどな」グビグビ

騎士長「俺なんて、どんなにカッコイイ事言っても…所詮は欲望に勝てない」

騎士長「流されるし、中途半端だし、弱い。だけど…」


アサシン「…」

騎士長「どんな中途半端でも、偽善だといわれても…」

騎士長「人を助けたいとか、守りたいって気持ちがあるほうが重要だと思ってる」

騎士長「って、俺の話になってるな。わるいわるい」

 
アサシン「ふふ、いいさ。その通りだ」

アサシン「だけど、そんなおアンタに救われてる人間がいるんだから…自信もちなよ」ドンッ

騎士長「…ありがとよ」ハハ


…タタタタッ

黒髪少女「騎士長、妖精蜜のジュースだよ」

騎士長「おぉ!ありがとう、美味しく頂くよ」

黒髪少女「♪」


アサシン「幸せかぁ…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜明け前 】


ガルン…ガルン…グオォォォン!!!!


アルフ「よし、これで準備は終わった」

騎士長「これで飛べるのか?」

アルフ「いつでも大丈夫だ。先頭には俺が乗って、操縦全般は任せてもらう」

騎士長「当たり前だ。俺らじゃ無理だろう」


アルフ「前に2人、後ろに2人。順番は任せる」

  
騎士長「黒髪少女はアルフと前方がいいな。じ…事故とか危ないだろう」

アルフ「人の設計を信じろよ」

騎士長「未だに空を飛べるなんて深くは信じられないがな…」

アルフ「まぁいいさ。飛んでから驚けばいい、黒髪少女は俺の後ろに座ってくれ」


黒髪少女「うんっ!」

アルフ「可愛いなぁぁ!」


騎士長「んじゃ俺とアサシンは後ろ。俺が一番後ろでいいよ」

アサシン「わかった」

トコトコ…ストン

  
騎士長「なんかすっげー怖いんだけど」

アルフ「信じろっつーの!」

ブルン…ブルンブルン!!!


騎士長「…」ビクビク

黒髪少女「…」ドキドキ

アサシン「…」ワクワク


アルフ「発進!!」グイッ

ガォン…ガォンガォンガォン…ガォォォオオォォン!!!!

  
ギュウウウンッ…!!

騎士長「おっ、走り始め…って、おいっ!」

アサシン「うわっ!」

騎士長「頭さげろぉ!!」

黒髪少女「きゃああっ!」


ガオオオオォォォオオォォッ…!!!!!

ガサガサガサ!!!バキバキッ!!


騎士長「いででで!!お前、なんで森ん中突っ走ってるんだよ!!!あだだぁ!!」バサバサ!!

アルフ「このまま森を突き抜けて、向こう側の丘から飛びたつぞぉぉ!」

騎士長「聞いてねぇぞちくしょぉぉ!」

アルフ「短距離でも、もっと瞬時に空へ飛びたつカラクリがあればいいんだがな~」

バサッ…バキッ、バサバサバサッ!!

  
騎士長「悠長なこと言ってる場合かよ!!」

アルフ「あ、そうか。地面に瞬時にスピードを出すカラクリを入れて…カタパルトと名づけて…」ブツブツ

騎士長「うおおおい!話聞けコラァァ!本当に大丈夫なんだろうな!」

アルフ「安心しろ!もうすぐ森を抜けて、丘から飛びたつぞ!」

騎士長「ぐぐっ…!」


バサバサバサッ…!!

……パァ…ッ!!!


騎士長「おっ…!」

アルフ「抜けた!ここでカラクリパワー全開!!」グイッ!!

ブルブルブルブルッ…ガオオオオォォォッッッ!!!!

 
アルフ「飛べーーーっ!!」

ガオォォォオオオ…バァンッ!!!


騎士長「と…飛んだ…?」

アサシン「とんだの…?」

黒髪少女「…!」


…ヒュッ、ヒュウウウウッ!!!


騎士長「飛んでねえええ!」

アサシン「おっ、落ちてるぅぅ~~っ!!」

アルフ「翼の向きを調整!パワーを微調整!レバーオン!」

 
ブルンブルンブルンッ…ブオオオオオォォン!!

騎士長「おっ…?」フワッ

アサシン「えっ、今なんか体が…浮いたような…」

黒髪少女「ち、違う…本当に浮いてる!!」


ブォォォオオオン…!!!ギュウウウゥゥン!!


アルフ「はっはああーーー!!どうだこんちくしょーー!!」

騎士長「すげえ…アルフ、空、飛んでるぞ!!!」

アサシン「し…信じられない…」

黒髪少女「凄い!!」

 
騎士長「まじかよ…、本当に…」

アルフ「はっはっはっはっ!当たり前だぁぁ!」

騎士長「やるじゃねえかアルフ、本気で見直したぞ!!」

アルフ「なんだ見直すって」

騎士長「まぁいいじゃねえか!」


アルフ「ふっ、じゃあ…目指すは雲!高度上昇だぁ!!」ググッ

…ブゥウウオオオォォォン!!!!

騎士長「うおおっ、あがってく!」

黒髪少女「雲が…近づいてくる!」

アサシン「雲をこんな目の前に…っ!」


騎士長「って、このままだと…く、雲にぶつかー…!」

  
…ブワッ!!!

騎士長「うぷっ!」

アルフ「どうだ、雲を触ったのは俺らが世界で最初だぞ!」

騎士長「真っ白で何も見えねぇよ!つーかなんか冷たい!!」ビチャビチャ

黒髪少女「フワフワしてると思ったけど、霧みたいだね…!」

アサシン「なんだこれ、水!?」


アルフ「そう、雲は水の塊みたいなもんなんだって話を聞いたことはあった!」

アルフ「こいつが重くなると、やがて雨になる。俺らがこうしたことで、研究も進むかもしれんな!」


騎士長「すげえ…すげぇよ…」

アルフ「どのルートを通る!?」

騎士長「この飛行機はいつまで飛べるんだ?」

アルフ「魔石の魔力が続く限りいくらでも飛べる!後ろの袋にたんまり積んであるから安心しろ!」

 
騎士長「じゃあ、日が明ける前に王都の手前の街道まで向かってくれ!ルートは任せる!」

騎士長「王都に直接突っ込むのは不味い、さすがに噂になっちまう!」


アルフ「了解した!…旋回する、捕まってろ!」

ガオォォォッ!!!グウウゥゥゥン…


騎士長「ぬぐぐ…」

アサシン「きゃーっ、きゃーっ!!」

黒髪少女「お、落ちる~!」

 
アルフ「大丈夫だっつーの!さあさあ、カラクリ全開!!」グイッ!!!


ガオオオオォォォッ!!!!!グウウオオオオォォオオオン!!!!!


ビュウウウウゥゥ……!!!!

ウゥゥッ………!!!

………!

……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 】

ガオォォオン…


アルフ「王都の前の、街道が見えた!」

騎士長「な、何て早さだよ…」

アルフ「もう日明けか…、その前に着陸するぞ!」

騎士長「着陸はどうするんだ!?」


アルフ「このまま高度を下げて、街道を使って滑り止まる!」

騎士長「ば…バラバラにならないだろうな」

アルフ「大丈夫だ、俺の腕を信じろ!」

  
騎士長「お前の腕って、お前も今日初めて運転したんじゃねーか!!」

アルフ「男のくせに、ビクビクしすぎだぁ!」グイッ

騎士長「ばっ…」


グウウウオォォオオオン!!!!


騎士長「ひぃぃいいいぃぃ!!!!」

アルフ「無事を祈れよ!!」

黒髪少女「…大丈夫、きっと大丈夫…」

アサシン「きゃああああ~!!」

 
グオオォォォ…!!
 
アルフ「着陸するぞぉぉ!衝撃に備えろ!!」


アサシン「…っ」

騎士長「…くっ」

黒髪少女「~~っ!」


ブゥゥゥン…ガツッ!!!ズザッ…ズザザザザザザァ…!!!


アルフ「と~ま~れ~っ!!!」

騎士長「ぬぐぐぐっ…!」

  
ズザザザザッ…ザザッ…、ザザザァァ……ザザ…

……ブルンッ、ブルン……ピタッ…


アルフ「はぁ、はぁ~…!」

アルフ「ちゃ、着地成功…全員無事か!」バッ


騎士長「」

アサシン「」

黒髪少女「」


アルフ「…あら」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザッ…フラフラ…

騎士長「おえぇ…」

黒髪少女「騎士長、大丈夫?」

騎士長「大丈夫…。見慣れてる街道なのに景色が回る…」グルグル


アサシン「ここが王都前の街道か。随分キレイなんだね」

騎士長「そりゃそうさ。王都が誇るフラワーロード。レンガ造りの朱色の道さ」

アサシン「へぇ~…」

 
アルフ「これからどうするんだ?」

騎士長「…ちょっと行きたい所があるんだ。王都自体は人も多いし、入ってもバレる事は少ないだろ」

アルフ「ふむ」


騎士長「奴隷商人のやつが、俺の友人に俺らの居場所を吐かせたとか言っててな」

騎士長「その友達のやってる酒場へ行きたい」


黒髪少女「ジュースのおじさん?」

騎士長「そうだ。お前が最初に来た酒場のおじちゃんだ」

黒髪少女「…」

騎士長「無事だといいんだが…」

 
アサシン「あんたの友達なら、しぶとそうだよ」

騎士長「あいつに限っては大丈夫だと思うんだが」ハハ…

アサシン「そこへ向かった後はどうする?」

騎士長「俺の家は、危険な可能性がある。だけど、木を隠すなら森…。近くで宿を取ろう」

アサシン「なるほどね」


騎士長「…久しぶりの王都だ。黒髪少女、気分はどうだ」

黒髪少女「大丈夫」

騎士長「そうか。なら、行くぞ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 王都の酒場 】

グイッ…ガチャガチャッ!!!

騎士長「…あら」

アルフ「…」

黒髪少女「…開かないね」

アサシン「…」


…コンコンコン

騎士長「…開かないし、反応もない」

黒髪少女「いないの…かな?」

 
騎士長「…おかしいな、休みなんか滅多にないはずなんだが」

アルフ「…」

アサシン「…」

騎士長「…まさかとは、思うが」

黒髪少女「…」


騎士長「…ん~と、この辺かな」

…ゴソゴソ

騎士長「あった」チャリッ


アサシン「それは?」

騎士長「この酒場の鍵。あいつさ、鍵をなくした時用に合鍵をココに隠してるんだよ」

 
アサシン「それを知ってるって、嫌な客だね…」

騎士長「はっはっは」

ガチャガチャッ…ガチャッ!!!

騎士長「よっしゃ、いないふりとかしてんじゃねーぞ店主のやつ」


ギィィィ…

騎士長「おーい、店主~…」


…モワッ、ベチャッ!

騎士長「うっ…!」

黒髪少女「はっくしょん!」

アサシン「ほ、埃…っ!それに泥だらけじゃないか…」

 
騎士長「…ごほごほっ!」

アルフ「大丈夫か?マスクを」スッ

黒髪少女「あ、ありがとう」

騎士長「すまん…」

アサシン「私は今は一応装束のマスクだから大丈夫」


黒髪少女「ごほごほっ…」

騎士長「ひどいな…埃と床は泥だらけだ。掃除してないのか?」


アサシン「き、騎士長それは…」

騎士長「…わかってるよ」

アサシン「…」

騎士長「わかってる…」

 
黒髪少女「おじさん、どこいったんだろう…」

騎士長「恐らく、王都の警備隊か何かに俺らの情報の為、連れて行かれたな」

黒髪少女「!」

騎士長「…」


アサシン「どうする…?」

騎士長「…」


黒髪少女「おじさん…」

騎士長「余計なことに巻き込んじまったな…。無事でいてくれればいんだが…な」

黒髪少女「…」

 
アルフ「…」キョロキョロ

騎士長「仕方ない…ここは一旦、宿をとって体制をしっかりしよう」


アルフ「…」

トコトコトコ…ペラッ

アルフ「へぇ~…ここは依頼も受けてた酒場なのか」

騎士長「そうそう。まぁ猫探しとか、ドブさらいとか…まともなのなかったがな」ハハ

アルフ「ふ~ん」

ペラッ…ペラッ…ペラッ…


騎士長「ほらアルフ、ここにいても仕方ないし行くぞ」

アルフ「…ふむ」ペラペラ

 
騎士長「ん?」

アルフ「…なぁ」

騎士長「どうしたよ」

アルフ「ここじゃ、いちいち店主自身の依頼も紙に書くのか?」

騎士長「…何?」


アルフ「ほれっ」ポイッ

…パシッ

騎士長「…」ペラッ

騎士長「…!」

 
アルフ「それ、お前への依頼じゃないのか」

騎士長「…っ!」

アサシン「どうしたんだ?何て書いてある?」

黒髪少女「騎士長?」


騎士長「あいつ…連れて行かれる前に、俺がここに戻る事を予測してたのか…?」

騎士長「店主の家を使って欲しい事とか…」

騎士長「自分がいなかった時の為のメッセージだ…」


黒髪少女「!」

アサシン「!」

 
騎士長「…家の鍵は酒場と一緒の植木鉢の中にあるらしい」

騎士長「確かに、これ以上ない隠れ家だ…。是非使わせてもらう!」


黒髪少女「おじさん…どうなったの?」

騎士長「なぁにアイツのことだ、きっと大丈夫だって言ったろ」ポンッ

黒髪少女「うん…」


アサシン「…」

アサシン「騎士長、あのさ…」


騎士長「ん?」

 
アサシン「勢いだけでココまで来たに近いと思うんだけど…」

騎士長「まぁそうだな」


アサシン「敵の本拠地へいざ来て…、どうやってこの奴隷狩をやめさせるつもりだ?」

アサシン「どうやって今までのを暴露させる?」

アサシン「あんたが味方だと思ってた王都の軍のほとんどが、敵だった。そうだろう?」


騎士長「…」


アサシン「この状況をひっくり返すには、相当な転機がないと厳しいと思うんだ」

アサシン「その策が…、騎士長にはあるのか?」

  
騎士長「その辺も含めて、店主の家で話し合おうと思う」

騎士長「…まぁ、これはどの道あとで言おうとしてた事だが…今言わせてもらうな」

騎士長「これ以上は本当に危険になる。最悪、ここまで着いてきてくれただけで嬉しい」


アサシン「…」


騎士長「ここからは下手すると…死ぬだろうよ」

騎士長「いや、死よりも酷い結末になるかもしれない。どうする?ここが運命の分かれ道だと思うんだ…」


アサシン「いまさら何を…。最後まで付き合う。そのつもりでココまで来たんだからね」

アルフ「勢いってのは怖いな。このまま着いて行くのも悪くないと思う。俺は最後まで勢いのまま行ってもいいさ」

黒髪少女「私もだよ、騎士長。私が…お願いしたから始まったことなんだから…!」

 
騎士長「みんな…ありがとう」


アサシン「…」コクン

アルフ「おう」

黒髪少女「うんっ!」


騎士長「まずは、店主の家を借りに行こう。話はそこで改めてする」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 店主の家 】 

コポコポ…

騎士長「やっぱり紅茶、良いモンしまってたな~」


アサシン「勝手に色々使っていいのか?私にも珈琲ね」

アルフ「クッキー見つけた。ほらほら、黒髪少女、一緒に食べよう」

黒髪少女「うん」


騎士長「お前ら…」

 
アサシン「それで…作戦はあるの?」グビグビ

騎士長「…賭けになると思う」

アサシン「というと?」


騎士長「俺は…誰だ?」

アサシン「バカになったか?」

騎士長「ちげえよ!」

アサシン「うん?」


騎士長「俺は、誰だっていう話だよ!!」

アサシン「バカか…?」

騎士長「ちげぇっつってんのに!」

 
黒髪少女「…」

黒髪少女「騎士長は、騎士長」


騎士長「うぅぅ~、黒髪少女は本当にいい子だなぁぁ…」

アサシン「おバカさん、いいから話の続きを。あっ、クッキー美味しい」モグモグ


騎士長「…」

騎士長「ごほん。まぁ俺は元とはいえ、王宮都市の騎士団の騎士長を務めていた男だとは知ってるよな」


アサシン「まぁね」

騎士長「王都の軍と呼べる部隊はおおよそ三つ存在している」

アサシン「三つ?」

騎士長「そうだ」

 
アサシン「王宮騎士団、王宮警備隊は知ってるが…あとは?」

騎士長「王宮直属部隊。細かい事を言うと、俺は騎士長であって直属部隊に所属していた」

アサシン「ん…どういうこと?」


騎士長「騎士団は、騎士長、副長、副長補佐、曹長、軍曹」

騎士長「警備隊は、隊長、副隊長、同じく補佐、曹長、軍曹の階級に分かれている」


アサシン「ふむ」


騎士長「その上位4人、合計8人で王の命令で直接的に動くのが俺ら、直属部隊だった」

アサシン「なるほど」

騎士長「騎士団は騎士団だが、兵士やら剣士やらごっちゃだったが…まぁその辺は気にするな」

アサシン「わかった、それで?」

 
騎士長「警備隊は恐らく真っ黒。それこそ今回の黒幕で活動してるから敵になる」

騎士長「だが…俺のいた騎士団。それは俺が見る限り…黒に近い、目立った活動はしてなかったんだ」


アサシン「ふむふむ…」


騎士長「そして、俺を慕っていた面子がほとんどだった」

騎士長「今回の事を伝えれば、正義感も強かったうちの騎士団は、必ず立ち上がってくれると思う」


アサシン「騎士長の騎士団が、黒じゃないという根拠は?」


騎士長「さっき言った通り、基本的な活動は王宮周りの守護。騎士団の活動は俺の監視下だった」

騎士長「警備隊の動きが分からなかったのは、俺が警備隊との係わり合いがほとんどなかったからさ」


アサシン「…ふむ」

騎士長「今はどんな活動しているかは知らないんだが、賭ける価値はあると思うんだ」

アサシン「具体的にはどうするつもりだ?」

 
騎士長「副長の家はここから近く、あいつは家で昼飯を食うのが日課でな。もうすぐ昼過ぎだろ?」

騎士長「そこを拘束させてもらう。話を聞いてもらおう」


アサシン「既に…王の手先だったら」

騎士長「すまないが…敵だという以上容赦はしないつもりだ」

アサシン「分かった。現実的な作戦ではあると思うし、賛成するよ」


アルフ「…作戦自体はいいけどさ、俺は何をすればいいとかあるか?」

騎士長「自由にしていい。所持してるカラクリの事情が分からんから、アルフ自身がいいと思った事を頼むよ」

アルフ「いやいや、そこまで大味だと。せめて何して欲しいとかないのか?」

騎士長「ん~…、しばらくは着いてきて、その場その場で対応した事を言う感じでどうだろうか」

アルフ「何とも大雑把な役目…。まぁ任された」

 
黒髪少女「なんか騎士長、かっこいい…」

アサシン「いつもキリっとしてるいいんだけどね」ハハ


騎士長「無駄話もする暇があったら、まずは副長の家へ張り付こう」ヒクッ


アサシン「かっこつけてるけど、褒められて鼻の穴開いてるぞ」

騎士長「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 副長の家の茂み 】

コソコソッ…

騎士長「そろそろのはずだ」

アサシン「どうやって捕まえるつもりだ?」

騎士長「実力行使だ。一発で決めれば、あとは店主の家に引きずり込むだけだし」

アサシン「…いいね、その強気姿勢」


黒髪少女「…」ドキドキ


騎士長「お…来たぞ!」

 
ザッザッザッザッ…

副長「…」

カチャカチャ…


騎士長「行って来る」ダッ

アサシン「気をつけて」


ダダダダッ…ヒュッ

騎士長(よしっ!首に一撃!)

副長「何かの気配っ!」クルッ

騎士長「げっ!」

 
…ガシィン!!!

副長「ぐっ、あ…危ねぇ!!な、何者だっ!!」

騎士長(不味ったぁぁぁ!!!)


副長「貴様、この俺が騎士団の人間だと分かっての狼藉…って、え?」

騎士長「…や、やぁ」

副長「きしちょ…!」


ゴツッ!!!…ドサッ

副長「」


騎士長「あれ…倒れた…?」


アサシン「私の石の投擲だよ!…やっぱり準備しててよかった」フゥッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…バシャッ!!

副長「…!」


騎士長「よう、目が覚めたか?」

副長「ここは…、なぜ俺が縛られて…!?っていうか、なんで騎士長が!」

騎士長「ここは店主の家。昔、一緒に飲みに行っただろう」

副長「そ、そうでしたね…。って、それより何で!もう色々と!」


騎士長「…まぁ、聞きたい事があるんだよ」

副長「そんな事より騎士長さん、大変ですよ!あなた指名手配で…!」

 
騎士長「ちょっと黙れ!!お前、昔と変わってなさすぎだ!!」

副長「は、はい…」

騎士長「いいか、先ずはこっちから聞きたい事があるんだ。答えてくれ」

副長「な…何でしょうか」

騎士長「警備隊がやってること、今の王都の本当の顔…知ってるか」


副長「…」

副長「…い、いえ。何のことでしょうか」


騎士長「本当か」

副長「は、はい。騎士長がクビになってからも、変わらず周辺の守護にあたってるだけです」


騎士長(と、なると…やはり絡んでいるのは警備隊側ってことか?)

 
副長「っていうか!!それよりも、大変なんですってば!!」

騎士長「何だよ…」

副長「騎士長、指名手配ですよ!!王都の専属の商人の邪魔をしたっていう罪で!」

騎士長「…」ハァ


副長「俺らの周辺の仕事も、あなたが来ないか見張る事も含まれてたんですよ!?」

副長「いつの間に王都に入り込んだんですか…」


騎士長「…まぁそれはいい。俺の話を、落ち着いて聞け」

副長「な、何でしょうか」


騎士長「えっとな…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

騎士長「…っていうわけだ。黒髪少女、アサシン、それとアルフ」

騎士長「これが俺のしてきた旅で一緒になった仲間たち…と、冒険録。信じてくれるか?」


副長「王都が、奴隷狩の主軸で…、王様が裏社会の王…!?」

騎士長「これが真実。王都の顔だ。やはり知らなかったか」


副長「あ…当たり前ですよ…」

騎士長「俺がクビになったのも、その関係で理由があると思うんだ」

副長「そうじゃなかったら、王都に生涯をかけてきた貴方がクビになるわけないじゃないですか!」

 
騎士長「はは…ありがとう。それで、ここで本題だ」

副長「何でしょう」

騎士長「いいか、簡単な話。俺らに協力するかどうかだ」

副長「…」


騎士長「協力して欲しい事は1つだけ。騎士団を再び俺のために動かして欲しい」

騎士長「ただ、その場合…王都と警備隊との戦線になる可能性が高い」

騎士長「敗北すれば裏切りになって、どうなるかは分からない。」

騎士長「だが…お前らと協力すれば絶対に勝てると信じている。俺に力を貸してほしい」


副長「…」

副長「そ、そんなの…協力する以外ないじゃないですか」


騎士長「…」


副長「人の為に動くことを教えてくれたのは、騎士長でしょう」

副長「いつも貴方とは一緒だった…、俺が断る理由なんかありませんよ」

 
騎士長「…そうか、ありがとう。その言葉を聞けて、本当に嬉しいよ」

副長「当たり前ですよ」


アルフ「…」


副長「それで、これから俺はどうすれば?」

騎士長「決行は明日の夜。それまでに、味方になりそうな団員を召集してほしい」

副長「わかりました」


騎士長「夜、王宮へ騎士団の面子で奇襲し、王を拘束する」

騎士長「実力的には俺らが有利だ。拘束まで行けば俺らの勝ちになる」

騎士長「拘束後、王を別の国へ送り飛ばす。関与した幹部とともにな」

 
騎士長「…そうか、ありがとう。その言葉を聞けて、本当に嬉しいよ」

副長「当たり前ですよ」


アルフ「…」


副長「それで、これから俺はどうすれば?」

騎士長「決行は明日の夜。それまでに、味方になりそうな団員を召集してほしい」

副長「わかりました」


騎士長「夜、王宮へ騎士団の面子で奇襲し、王を拘束する」

騎士長「実力的には俺らが有利だ。拘束まで行けば俺らの勝ちになる」

騎士長「拘束後、王を別の国へ送り飛ばす。関与した幹部とともにな」

 
副長「それで解決するでしょうか」

騎士長「奴隷狩は重罪であり、裏社会の王という存在…。その悪行もすぐにバレるはずだ」

騎士長「どでかい仕事になるが…頼むぞ」

副長「…」コクン


騎士長「…縄を外す。頼むぞ、副長」シュルシュル

副長「えぇ分かりました。それと、情報なのですが…いいでしょうか」

騎士長「なんだ?」

副長「もし、これから他の面子に聞きまわるのでしたら…止めたほうがいいと思います」

騎士長「軍曹までは話を聞こうと思っていたが…どうしてだ?」

 
副長「一部、警備隊に抜かれた者達がいるんです」

副長「今日の話を聞いて納得しました、警備隊の強化の為にしてたんでしょうね」


騎士長「…」

副長「俺はまだしも、他の面子では内部で情報漏れする可能性があるので…止めた方がいいと思いますよ」

騎士長「情報、感謝する」


副長「いえ…。それでは、今日の夜から信頼できそうな人間に回ります」

副長「明日の夜…改めてココへ訪れるのでお待ちください」ペコッ


騎士長「頼むぞ」

副長「はいっ」ビシッ

 
ガチャッ…バタンッ…


アルフ「…」


アサシン「信用できそうな奴ではあったね。昔なじみなのか?」

騎士長「俺の後輩だからな」

アサシン「あんたらが難しい話をしてるから…ほら」


黒髪少女「…」スゥスゥ


騎士長「はは…」

アサシン「それにしても明日の夜、か。いよいよだね」

騎士長「作戦は聞いてたろう?これで上手くいくと思う」

 
アルフ「…」


騎士長「長かった。だけどこれでやっと…」

アサシン「うん…」

騎士長「俺らで全てを崩す。その算段は整った。あとは…実行のみ」

アサシン「…がんばろうね」

騎士長「当たり前だ」


アルフ「なぁ…悪いんだが…」

アルフ「ちょっと、やりたい事を見つけたんで一旦外に行ってくる」


騎士長「え?」

アルフ「最初に言われた通り、俺はやれるように自由に動くとするよ」

騎士長「…急にどうした?」

 
アルフ「だからやりたい事を見つけたんだよ!」ダッ

ガチャッ…バタンッ…


騎士長「お、おい!…行っちまった」

アサシン「急にどうしたんだ…」

騎士長「あいつの考えがあってのこと、だとは思うんだが…」

アサシン「うーん、まぁ任せるしかないね」

騎士長「ん~む…」

 
モゾモゾ…パチッ

黒髪少女「お話…終わった?」

騎士長「起こしちゃったか。お話は終わったぞ」

黒髪少女「あれ?アルフのおじちゃんは?」

騎士長「用事があるらしくて、外に行ったよ。すぐに戻ってくるとは思うけどね」

黒髪少女「そっか」


騎士長「…黒髪少女、明日の夜」

黒髪少女「?」

騎士長「きっと、この長かった旅の最後になる。全部が終わるはずだ」

黒髪少女「…」

 
騎士長「…最後まで、信じて着いてきてくれるな」

黒髪少女「うん」


騎士長「ありがとう…。それと、今から明日の夜までは外出は控えるようにしよう」

騎士長「少し辛いかもしれないが、2日後の朝には俺らは自由の身…そう信じて、頑張ろうな」ニコッ


黒髪少女「…うんっ」

 
アサシン「…暗くしていても、いい結果は見えてこないよ!」」

アサシン「冷蔵庫やら何やら漁って、店主の家を探索しようかね~♪」ガサガサ


騎士長「あさっちまえ!好きなの食おう!」

アサシン「消費期限が切れてるのは注意しないとね。これはダメだ、これは大丈夫」ポイポイ

騎士長「はっはっは、このところ…何だかんだで毎日パーティだな」


黒髪少女「また私、卵焼き作るー!」

アサシン「さすがに卵はダメになってるから、お姉ちゃんと一緒に別なの作ろうか♪」

黒髪少女「うんっ!」


騎士長(…)

騎士長(最終決戦…か)

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さまありがとうございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日…夜 】

ホウ…ホウ…


騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪少女「…」


騎士長「…遅い」イライラ


アサシン「もう、20時だよ。二人とも何してんだろうか」

騎士長「仕事あがりは18時まで、準備をしていても19時までに来てもいいはず」

アサシン「アルフも来ないし…」ハァ

 
黒髪少女「…どうしたんだろう、アルフのおじちゃん」


騎士長「…」

アサシン「…」

黒髪少女「…」


…コンコン

アサシン「!」

騎士長「待て…。誰だ!」


副長「副長です。準備出来ましたので、ご報告に参りました!」

騎士長「入っていいぞ」

 
…ガチャッ

副長「失礼します。騎士団の召集が完了しました」

騎士長「ありがとう。どれくらいが集まった?」

副長「3分の2になります。それ以外は、どうにも信頼におけませんでしたので」

騎士長「十分だ。俺が指揮していた騎士団…それだけでも十分だ」


副長「騎士長、外へどうぞ。皆さんが久々に挨拶したいと。補佐、曹長、軍曹が揃っていますよ」

騎士長「おぉ、久々に会う面子じゃないか」

副長「あと何人かの待機はしてあります。是非、久々の点呼などいかがでしょうか」


騎士長「ははは、懐かしいな。挨拶がてら、顔合わせといこうか」

副長「こちらです」

 
トコトコトコ…ピタッ

副長「あちらに」

騎士長「…!」


副長補佐「…」ビシッ

曹長「…」ビシッ

軍曹「…」ビシッ


騎士長「み、みんな…久しぶりだ…!」

副長「話をしたところ、是非ということで集まっていただきました」ペコッ

騎士長「本当に感謝するぞ、副長」

副長「いえ!」

 
騎士長「作戦のほうは伝えてあるのか」

副長「…作戦ですか。作戦は、既に始まっているんです」

騎士長「ん?もう始めてるのか?」


副長「いえ、貴方が俺たちと接触した時点で…」

騎士長「それはどういう…」


副長補佐「久々に会えたのですが、こんな形になるとは思いませんでした」ヒュッ

…ゴツッ!!!

騎士長「っ!」

…ドサッ…

 
黒髪少女「騎士長!?」

アサシン「なっ…!」


副長「おい、そこの二人も捕らえろ!一緒に連れて行く!」

副長補佐「はっ!」

曹長「了解しました!」

軍曹「はいっ!」


ダダダダッ…!!

アサシン「…な、何のマネだ!!副長!!」チャキッ

副長「すみませんね…」

副長「騎士長、相変わらず打たれ弱い部分ありますね。上手くいってよかったです」

 
アサシン「黒髪少女、後ろに隠れな!」

黒髪少女「…っ」


軍曹「おとなしく捕まってくださいよ!」ダッ

アサシン「はぁっ!」ブンッ

…ガキィンッ!!


アサシン「…っ!」ググッ

軍曹「くっ…」ググッ

 
アサシン「下蹴りっ!」バッ

…ゲシッ!!

軍曹「うおっ!」

グルンッ!!ドサッ


アサシン「はっ!!」

ブンッ…グシャッ!!

軍曹「がっ…!」

…ガクッ

 
アサシン「…黒髪少女は渡さない!」バッ

黒髪少女「お姉ちゃん…!」


副長「…大人しく捕まってくれませんか」

アサシン「どうしてだ!なぜこんなことを!すでに手先だったのか…」ギリッ

副長「…仕方ないことです」

アサシン「わけの分からない事を…」


副長「それ以上暴れるなら、こちらにも考えがありますが」

アサシン「何だ!」

 
副長「…」チャキッ

グイッ…スッ

騎士長「…」

副長「動かないでください。これ以上暴れるなら、騎士長がどうなるか…分かりますよね」


アサシン「…ちっ」

副長「お願いします」

アサシン「…」パッ

…カランカランッ!!

 
副長「分かっていただけるようで、良かった」

アサシン「…私らをどうするつもりだ」

副長「王様へ届けます。あとは分かりませんが、俺らの仕事はそこまでです」

アサシン「…騎士長は」

副長「三人一緒に届けますよ」


アサシン「…大人しく着いて行く。だから、黒髪少女と騎士長は私から離れないようにしていいか」

副長「構いません」

アサシン「…」


副長「それでは、参りましょう」クルッ

スタスタスタスタ…

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 王宮都市・王宮 】

カツカツカツカツ…ピタッ


副長「失礼します、王様」バッ


王様「…待っていたぞ」

副長「いえ」ペコッ


アサシン(こいつが…今の王であり、奴隷狩の首謀者であり…裏社会の王…!) 

黒髪少女(お父さんを殺した人…!)

  
王様「お前達は一旦下がっていい」

副長「はっ」

カツカツカツ…バタンッ…


王様「さて…少し紹介をしよう。横にいるのは側近」

側近「お見知りおきを」ニコッ

王様「左から順に、財政大臣、総務大臣、外務大臣だ」

大臣達「…」


アサシン「…」

黒髪少女「…」

 
王様「先ずはそうだな…よく来てくれた。歓迎しよう」

アサシン「あんたが連れてきたんじゃないか!」

側近「貴様、その口を控えろ!」

王様「いい、構わん」

側近「そ…そうですか」


アサシン「ふん…私らを一体どうするつもりだ」

王様「お前は…、アサシンだったか」

アサシン「…」

王様「砂漠地方の義賊、隠密集団…そのリーダーだったな。女とは恐れ入った」

アサシン「…そこまで知っているのかい」

王様「男と聞いていたが、その美しさで噂の強さとはな」

アサシン「…」

  
王様「よくもまぁ、邪魔してくれた。配下の奴隷狩の商人を度々使い物にならなくしてくれて…」ハァ

アサシン「何を言ってる…あんたのせいで、どれだけの同族が不幸になったと思っている!!」

騎士長「…」ピクッ


王様「…恨むなら、ワシではなく王子を恨む事だな。あいつが砂漠地方に逃げなければ良かっただけのこと」

アサシン「戯言を!!」

王様「それに、砂漠の女を度々楽しめたワシとしては感謝もしているがな」

アサシン「貴様ぁぁぁっ!!」ググッ


側近「控えろと言っている!!貴様らの命は王が握っている事を忘れるな!!」


アサシン「くっ…!」

  
王様「まぁ、そうだな。ワシが本当に用事があるのは黒髪幼女だ」

黒髪少女「…」

王様「ところで、王子の行方は知らぬか?それと、我が配下の商人達の行方も分からぬのだが」


アサシン「ふ…ふふっ…」

王様「む?」

アサシン「あんたの配下の商人たちは、ほとんどいないよ。砂漠前のアジトを潰したからね…!」

王様「何だと…?」

アサシン「ついでに王子はもういない。あんたの目論み通り、もうこの世にはいない…よ…」

  
王様「死んだのか」

アサシン「…」プイッ

王様「ふっ…そうか。王家の血筋を引くものは、黒髪幼女、ただ一人ということか」

アサシン「…」

黒髪少女「…?」


王様「さて…どうしたものか。この者たちの処遇、いい案はないか?」

側近「案ですか。ふーむ…大臣たち、いい案はないだろうか」


財政大臣「そうですね…、どの道生きていられては困る面子。ここは王都の未来に役立ってもらうのはどうでしょう」

王様「王都の未来に?」

財政大臣「騎士長は指名手配犯、その仲間たちということで公開処刑などいかがでしょうか」

 
王様「ふむ」

財政大臣「そうすれば、王の人気も集まるでしょうに。どうでしょう総務大臣」

総務大臣「いや、全員を奴隷狩を命令してた裏の顔として扱うのはどうでしょうか。どうでしょう外務大臣」

外務大臣「それはいいかもしれません。他の国にも王の良き話が伝わることでしょう。側近殿、決まりです」

側近「王、決まりました。ご報告致します」ニコッ


アサシン「…っ!」

黒髪少女「私たち…どうなるの…?」

アサシン「大丈夫だよ…」ギュッ

黒髪少女「…っ」


王様「確かに…それはいい案だ」

側近「早速準備をさせましょう」

 
王様「そうだな、善は急げという」

側近「そうですな、準備をさせましょう。警備隊、入れ!」パチンッ


ガチャッ…ザザザザッ…

警備隊「…」

警備隊「…」

警備隊「…」


アサシン「…!」

側近「奴らを縛り上げるんだ!」

 
警備隊「はっ!」ビシッ

アサシン「そう簡単にやらせると思うか…」チャキッ


側近「…歯向かうようなら、女だろうが容赦しなくていい。好きにしろ」

警備隊「…」ニタッ

アサシン「…!」ゾクッ


黒髪少女「騎士長、騎士長!!起きてよ、私たち殺されちゃうよ!!」ユサユサ

騎士長「…」

黒髪少女「騎士長っ…!」


アサシン「…私たちに触るなあ!!」ブンッ

…ガキィン!!

 
警備隊「むっ!」

アサシン「私は強いよ…死にたい奴からかかってきな!!」


警備隊長「…おい」クイッ

警備隊員たち「はぁっ!」

ダダダッ…タァンッ!

アサシン「なっ…全員一斉に…!?」

…ドォン!

アサシン「うあっ!」


警備隊長「…大人しくしろ!武器を取り上げ、縛り上げろ!」

警備隊長「他に武器がないか、全て切り裂け!俺たちに逆らった事を恥辱で知らしめてやれ!」

 
ビリッ…ビリビリビリッ!!!

アサシン「や…やめ…!!」

警備隊「…」

アサシン「ひ…」ドクン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アサシン「嫌ぁぁ、やめてよぉぉ!」ビリビリ

奴隷狩り「俺たちから先に味を知っとくべきだもんなぁ!」

アサシン「誰か、助け…!」

奴隷狩り「逃がすかよ…」ガシッ

奴隷狩り「後がつかえてる、さっさと終わらせようぜ」ハハハ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アサシン「い…嫌あぁぁぁっ!!」

 
ビリビリッ…グイッ…

アサシン「…あぁぁぁっ!!!」
 
警備隊「うへへ…うひひっ!」


警備隊長「ふん…」

警備隊長「残っている者は、黒髪幼女を縛り上げるんだ!さっさとしろ!」


警備隊「はっ!」ダッ


タタタタッ…ガバッ

黒髪少女「や、嫌っ!」

警備隊「もう逃げても無駄なんだ、大人しく捕まれ!」

 
黒髪少女「…!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
傭兵「…ほぉら、痛くしないから…おいで…」

商人「そこにも誰かいるぞ!捕まえろ!!」

黒髪幼女「…あっ!」

…ガバッ

傭兵「ははは、お友達の最期も目の前で見せてやるよ!」

傭兵「お前は今日から、奴隷生活だ!」

黒髪幼女「や…っ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


黒髪少女「嫌だぁぁぁっ!!嫌ぁぁ、離してぇぇ!!!」

警備隊「大人しくしろ!!」

 
警備隊「はーっはっはっは!」

アサシン「あ…」

警備隊「つーかまえた…」ガシッ

黒髪少女「…離してぇぇ…っ!」


王様「…ふっ」

側近「くくく…」

 
黒髪少女「き…騎士長…助けて…」

騎士長「…」

黒髪少女「騎士長、起きてよ。騎士長…!」

騎士長「…」

黒髪少女「騎士長っ…、助けてよぉぉぉっっ!!!」


騎士長「…!」ハッ


ピカッ…!

ドゴォォン!!!グラグラグラ…ッ!!

王様「!?」

 
側近「な、何だ!?地震か!?」

王様「どうした!」


ガチャッ!!

タタタタタッ…ビシッ!!

警備隊「報告します!王宮に、謎の爆発が起きています!」

側近「魔法か!?」

警備隊「分かりません…魔法とは異なるようです!…どこから攻撃してるのか分かりません!」

側近「えぇい…爆発の位置に警備隊を向かわせ、早急に対処しろ!」

警備隊「わかりました!」

 
王様「警備隊、拘束役を残し、二人から一旦離れよ!」

警備隊長「離れろ!!」

警備隊「はっ!」

ザザザッ…


アサシン「…」

黒髪少女「…」


王様「お前ら…何かしたのか?お前ら以外に誰か、仲間がいるのか?」

アサシン「…」

王様「口も開かぬか。いや、開けぬのか?無様な姿だな」

アサシン「…」

 
王様「すぐに状況を把握したい。お前たちの仲間がある可能性がある限り…」

王様「今ここで吐き出してもらう。仲間かどうかは関係なしに拷問しろ。警備隊長」パチンッ

警備隊長「はっ!」


黒髪少女「拷問…?」

アサシン「…」


警備隊長「それぞれの指を一本ずつ切り落とせ。吐くまで。それ以外は自由にしていいぞ」

黒髪少女「!」


警備隊「はっ!」

警備隊「くくく…俺に任せてください。俺はアサシンを」グイッ

警備隊「なら俺は黒髪少女を」グイッ


黒髪少女「ひっ…!」

アサシン「…」

 
警備隊「まずは…一本目から…!」

黒髪少女「…っ!」

警備隊「いっせーの…」ブンッ!!

黒髪少女「…ッッ」ギュッ


ヒュッ!!!…クルクル…ザシュッ!!!


警備隊「いっ…てぇぇぇ!」

黒髪少女「えっ?」パチッ


警備隊「何か手に刺さった…!」ズキズキ

黒髪少女「な、何…?」ハッ

 
騎士長「そ…そいつらに触るんじゃねぇ…!!」


黒髪少女「騎士長っ!!」


警備隊長「騎士長…!全員、一回離れろ!」

警備隊「はっ!」

ザザザッ…!!

王様「…!」

側近「騎士長、気がついたのか!」


騎士長「遠くから黒髪少女の声が聞こえてた…」

騎士長「それと…何かの爆発音で、完全に目が覚めたぞ」コキコキ

騎士長「副長のやつ、長年付き添ってだけあって俺の打たれ弱さを知ってやがった」ハァ

 
アサシン「…」

黒髪少女「…き…騎士長…」


騎士長「な、何だこりゃ…。アサシン…黒髪少女…!!」

王様「お前が寝ている間にな。…それより、久しぶりだな騎士長」

騎士長「王…っ!」

王様「…」


騎士長「…アサシンたちに何をしやがった!!」


王様「久々のワシに対する言葉がそれか。お前も思った程の脅威ではなくて安心したぞ」

騎士長「何だと…?」

王様「実力が高いのは知っていたが、弱点を知ってるとはいえ、後輩の一撃に気絶するとはな」

騎士長「…っ」

 
王様「元騎士団時代には、貴様の実力を知っていたからこそ脅威だったのだが…」

王様「この王都を離れている間に、実力も衰えたか?」


騎士長「ぐっ…!それよりもアサシン達に何もしていないだろうな!!」


王様「やれやれ…王の話よりも他人の心配か。自分で確かめたらどうだ…?」

騎士長「…ちっ!」ダッ

 
タッタッタッタ…ソッ

騎士長「…アサシン、大丈夫か」

アサシン「…」

騎士長「…俺の上着を貸してやる。今は…横になっておいてくれ…」

アサシン「…」


騎士長「お前ら、絶対に許さねぇぞ…!!」


王様「お前一人で何が出来ると?」

王様「気絶していた者が、粋がったところでどうにもならんぞ?」ハハハ

 
警備隊「…くくく」

警備隊「へへ…」

警備隊長「俺らはいくらでも相手になるぞ…?」


騎士長「…」チャキッ


側近「その状態でやる気とはな…恐れ入った」

側近「警備隊、全員…武器を構えよ!騎士長を迎撃するのだっ!」バッ


警備隊「…」チャキッ

警備隊長「…」スチャッ

 
騎士長(警備隊長…実力は均衡する自身がある。だが、この数…)

騎士長(いや、負けるわけにはいかない!ここまで来て…あと少しで全てが終わるところで…!)チラッ


黒髪少女「騎士長…」

アサシン「…」


騎士長「しゃあねえ、背水の陣とでもいうのか…?」

騎士長「行くぞ…うらぁぁぁっ!!」ダッ


警備隊長「くるか…!」

 
ゴゴ…ミシミシ…

騎士長「とと…!じ、地震か…?」

警備隊長「な、なんだ?」

王様「…王宮が揺れている?」


ゴゴゴゴッ…ドゴォォン!!!!

パラパラパラ…


騎士長「!?」

警備隊長「な…なんだぁ!?」


側近「て、天井に穴が開いた!?」

 
グゥゥオオオオン…ブルブルブル…

アルフ"「え~聞こえますか騎士長さん、騎士長さん。声を拡大するカラクリでお話しております」"


騎士長「アルフ!?」


アルフ"「今、私は空から王宮に攻撃を行っております」"

アルフ"「適当にバラまきますので、注意してくださいな~」"

ブゥォオオオン…


騎士長「あいつめ、ずっといないと思ったら…」クク

騎士長「…空からの攻撃とは、味のある事してくれるじゃねえか!」

 
警備隊長「空を飛ぶ不思議なカラクリ…なんと面妖な…!」

騎士長「自慢の仲間だよ!」ダッ

警備隊長「…!」

ガガキィン!!!カキィン!!!


騎士長「…」ググッ

警備隊長「…」ググッ

ガキィンッ!!ズザザザァ…

騎士長「隙を狙ったつもりだったんだがな…」

警備隊長「子供だましだ!」

 
黒髪少女「騎士長、頑張って…」

黒髪少女「…」ハッ

黒髪少女「そ、そうだ…お姉ちゃん!」ダッ

タッタッタッタ…

アサシン「…」

黒髪少女「お姉ちゃん…ねぇ、お姉ちゃん…!」

…ユサユサ

 
アサシン「…」

黒髪少女「騎士長が起きて戦ってるよ…どうしたの…、お姉ちゃんっ…!!」

アサシン「…」

黒髪少女「お姉ちゃんっ…!!」


…カツ、カツ…チャキンッ

警備隊「おぉ?どうしたのかなー…お嬢ちゃん…」ニタッ

黒髪少女「!」

警備隊「このチャンス…俺が二人のクビを弾けば評価も上がるだろう…」ジリッ


黒髪少女「こ…こないで…」

 
警備隊「うひひ…その前に別の場所で遊ぶのもいいなぁ…」

警備隊「ほーら、おいで…」ググッ


黒髪少女「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!危ないよ、お姉ちゃん!!」 
 
アサシン「…」

黒髪少女「…っ」ゴクッ

アサシン「…」

 
黒髪少女「…」


黒髪少女「お…」


黒髪少女「"お母さんっ!!!"」


黒髪少女「起きてよ、お母さん!!」

  
騎士長「…っ!!」クルッ

騎士長「い、今…黒髪少女…!お前、アサシンを…お母さんと…」


…ザワザワ!!

王様「な…何だと!?」

側近「今、何て言った…あのガキ!」

大臣たち「な…なんと…!」

警備隊「母親だと…!?」

 
黒髪少女「お母さん…お母さんなんでしょ!!お母さん!!」

アサシン「…」

黒髪少女「おかあさん…っ!起きてよぉ!!」

アサシン「…」


騎士長「…アサシンッッ!!!お前の娘が、呼んでるぞ!!」

 
アサシン「――…!」ハッ

…ムクッ

アサシン「く…黒髪少女…?」

黒髪少女「お母さんっ!!!」ダキッ

 
アサシン「あ、あんた…私を…お母さんって…」

黒髪少女「ごめんなさい…私、本当はアルフのおじちゃんの家で…聞いてたの…!」

アサシン「…!」


騎士長「まさか、あの時か!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
コトンッ…

騎士長「…ん?」

騎士長「何か…音がしたような…。気のせいか…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
黒髪少女「うん…!」

黒髪少女「で、でも…言えなかったの。お母さんも苦しんでて…」

黒髪少女「本当はお母さんって呼びたかったのに…!!」


アサシン「黒髪少女…っ」


黒髪少女「ごめんなさい…本当はお母さんも我慢してたって分かってたのに!」ダキッ!

黒髪少女「こんな所で…私が…言っちゃった…」


アサシン「いいよ…いいんだ…」ギュウッ!!

 
王様「なっ…なななっ…!!」

側近「間接的にだろうが、王家の血を紡ぐ者がまた一人…!」ギリッ

王様「警備隊長!警備隊!!もういい、さっさとその場で二人を先に殺せぇぇ!」


警備隊長「…御意」ダッ

警備隊「勿体ねえが、王様の命令とあらばっ!」ダッ

警備隊「はぁぁっ!」ダッ

ダダダダダダッ…


騎士長「いかん、間に合わない!!」ダッ


アサシン「黒髪少女だけは…守るっ!」ギュッ

黒髪少女「お母さん…騎士長~~っ!!!」

 
…ガキィン!!

キキキン、ガキィンッ!!!ザシュッ…!!

警備隊「がっ…!」

警備隊「…なっ…」

ドサドサッ…


アサシン「…」

アサシン「…え?」ハッ


副長「はぁ~…間に合いましたねぇ」トントン

騎士長「副長!?」

副長「殴って申し訳ありませんでした。騎士長率いる騎士団、一部を除き…全員が集合しましたよ!」

ザザザザッ!!

 
王宮騎士「久しぶりですね、騎士長!!」

王宮兵士「駆けつけましたよ」

王宮戦士「…王の話は聞きました。覚悟してもらいましょう」


騎士長「お…お前たち…」


王様「き…貴様ら…!」

側近「貴様らを引き取ってやった我らを裏切るつもりか!!」


アサシン「ど、どういうことだ…。お前たちは騎士長を裏切ったのではないのか?」

副長「そうせざる得ない理由がありました。あんな事…本当に申し訳ありません…」

 
王様「貴様ら、裏切るつもりなら…家族の命はないと思え!!」


騎士長「…!」

アサシン「なるほどね」


副長「警備隊を近くに置かれ、家族を人質にとられ…行動をとらざるを得なかった」

副長「貴方がクビになった理由は、あまりにも王宮に固執し…人質や握る弱みがなかったからです」

副長「騎士長は今の王都にとって脅威になると思われたんでしょうね」


騎士長「そういう事だったのか…」ギリッ


アサシン「で、でも…こうしてアンタらも裏切ったら、家族の命が…」

副長「あぁ、それはですね…」チョイチョイ

アサシン「上?」

 
ブゥゥゥン…バラバラバラ…

アルフ"「俺が、怪しいと思った副長を追いかけて、逆に警備隊の家に仕掛けをしてやったんだ」"

アルフ"「お前ら警備隊が手を出したら、逆に俺が警備隊の家族を失う事になるってね」"

アルフ"「目には目を、強引だったが仕方ないだろう。はっはっはっはっ!」"


騎士長「あ、アルフ…お前ってやつは…!」


副長「先程ようやく、騎士団の人質を捕られている全員の解放を終わりました」

副長「ここから、反撃の時ですよ!」スチャッ


騎士長「お前ら…」

副長「…さぁ、騎士長…」

 
騎士長「…」


アサシン「…騎士長!」

黒髪少女「騎士長っ!」

アルフ"「騎士長!」"

副長「騎士長!」

曹長「…騎士長っ」

軍曹「き…騎士長…!」

騎士団員たち「騎士長さんっ!!」

 
騎士長「…分かってる」コクン


騎士長「今こそ、全てをやり直す時。新たな時代を迎える時だ!覚悟しろ…王!!」チャキン!!


王様「…っ!」

王様「ぬ…ぬぐぐぐ…」ブルブル


側近「お、王様…」

大臣たち「わ、私たちはどうすれば!?」

警備隊「…正面きって騎士団に勝てる自信はないですよ、隊長!!」

警備隊長「…くっ!」

 
騎士長「降参しろ。命までは取る気はない…ただ、国流しはするがな」

側近「ばかなっ!それでは殺されるのと一緒だ!」

騎士長「てめぇらが今までやってきた事と比べれば、生ぬるいだろうが…この、ダボがぁぁ!!!」ビリビリ

側近「ひっ…」


騎士長「…どうするんだ、王様よぉ!」

王様「…ぐっ!」

騎士長「正面きって、俺らと戦うか!?強いぜぇ…俺の指揮する騎士団は!」

王様「え…えぇい!警備隊長!何をしている…早く戦えぇ!!」


警備隊長「…っ」

 
王様「…何をしてる!!」

警備隊長「で、ですが…あの騎士団相手にしては…、俺の部下を殺すようなもの!」

王様「そんなもの知った事じゃない!ワシを守るのが役目であろう!」

警備隊長「…ッ」ギリッ


側近「命令に背くのか、貴様!」

警備隊長「!」ビクッ

側近「それでもいいんだぞ…?」


王様「は、ははは!そうだ、お前が命令に背くというのなら…」

王様「わかっているんだろうな…!」

 
王様「何をしてるんだ、早く!!」

警備隊長「うっ…」

王様「早く、早く!!」

警備隊長「う…ぐ…」ブルブル


王様「早く、しろぉぉっっ!!」


警備隊長「う…うるせぇぇ!!」

ビュッ…ズバッ…


王様「なっ…!」


ポタッ…ポタポタッ…

 
王様「な、何を…」ゲボッ

王様「する…ん…」

…ドシャアッ…

王様「か…かはっ…」


警備隊長「はぁー…はぁー…!」


側近「お…王様ぁぁ!!」

大臣たち「…!!」

 
騎士長「あらら…王様、倒しちゃったよ」

警備隊長「…このクソ爺が!もう、お前には従えねえ!!」

カツカツカツ…

警備隊長「てめぇもだ、側近」チャキンッ

側近「ひっ…、ま、待て…!お前の妹の命は…我らが預かって…」

警備隊長「最初からこうするべきだった」ヒュッ

…ズバァッ!!!

側近「あ゛っ…」

ドシャアッ…

 
警備隊長「おい、お前ら…大臣たちも全員殺せ!!同罪だぁぁ!!」

警備隊「…は、はいっ!」ダッ

大臣たち「う、うわあああっ!!」

キキン!!…ズバズバズバァッ!!!


アサシン「見るんじゃない、黒髪少女!」バッ

黒髪少女「…っ」



警備隊長「はぁ…はぁ…!」

騎士長「全員殺したのか…。それよりお前、妹が人質と…」

警備隊長「うるせえ…うるせえ…!」

騎士長「…っ」

 
警備隊長「確かに妹は人質だったさ。最初はみんな、王のやり方に反発していたからな!」

警備隊長「だが、王は俺らの扱いが上手かった…」

警備隊長「奴隷の味、悪行の道…!一人、また一人と仲間は快楽に落ちていった!」


騎士長「…」


警備隊長「だが、俺は人の道を外す事は断った」

警備隊長「統率としない警備隊は役にたたない。それを知った幹部らは妹を人質にしやがった…」

騎士長「…」

警備隊長「仕方なかった…身内の命には変えられなかった…」

騎士長「…」

 
警備隊長「だが、この瞬間!!王がいなくなって、大臣も側近もいねえ!」

警備隊長「騎士長、てめぇはもう王宮の人間じゃねえ!実質のトップは…俺だ…」ギロッ


騎士長「だから…どうした」


警備隊長「俺が今後、この王都を支えるリーダーになってやる…」ニタッ

…ザワザワッ!!

騎士団「なんだって…」

騎士団「あいつが…!?」

警備隊「隊長が…王様になるのか…?」

警備隊「…確かに、今の状態では一理あるかもしれんが…」

 
騎士長「…はは」

警備隊長「何が可笑しい」

騎士長「今のお前では無理なんじゃないの?」ハハハ

警備隊長「何だと…」


騎士長「俺が言えた義理じゃないだろうがよ」

騎士長「人質がいたとはいえ…無関係な人々を切り刻み…」

騎士長「多くの人々の涙と血に塗れた剣に、付いてくる人間はいるのか…?」

ポタッ…ポタッ…

 
警備隊長「…ッ」ギリッ

警備隊長「そ、それがどうしたぁ!」

騎士長「…」

警備隊長「…そうだ。お前、あの女をよこせ…黒髪少女といったか今は…?」

騎士長「…何するつもりだ」


警備隊長「次期の王として、王の血を引く子…。国民も納得するだろうよぉ…」

騎士長「…」


黒髪少女「王の血って…何…?」

アサシン「気にしなくていいんだよ…」ギュッ

 
警備隊長「さぁ、そいつを寄越せ…こっちに…」

騎士長「出来ない相談だな。あの子は守ると決めたんだ」

警備隊長「なら、無理やりにでも奪うまでよ!」クワッ


ザワザワッ…!!

騎士団「…」チャキッ

警備隊「…」チャキッ


騎士長「お前ら、手を出すな!!」

騎士団「!」

警備隊長「ほぉ…分かってるじゃねえか。お前らも手ぇ出すなよ!!」

警備隊「…」

 
アサシン「新たな時代が訪れる…瞬間か」

黒髪少女「どうなるの…?騎士長、大丈夫だよね…」

アサシン「きっと、騎士長が勝つさ…!」

黒髪少女「うんっ…」


騎士長「…」チャキッ

警備隊長「…」スチャッ

 
ゴォォォ…!

騎士長「…」

警備隊長「…」


騎士長「…ぬあぁぁあ!!」ダッ

警備隊長「!」

騎士長「槍突っ!!!」ビュッ


警備隊長「そんなものに当たるかよ!」ヒュンッ

騎士長「避けた!?早い!」

警備隊長「お前が遅いだけだ!!剣斬っ!」ブンッ

騎士長「くっ!」

…ガキィィンッ!!!

 
騎士長「…っ」ギリギリ

警備隊長「はぁぁっ…」ググッ

騎士長「つ…くっ…」

警備隊長「どうした、元騎士長さんよ!?押し負けてるぞ!」


騎士長「うらぁぁっ!」ビュッ

警備隊長「ぬあっ!蹴りだと!」バキィッ!!

ズザザザァ…


騎士長「はぁ、はぁ…」

警備隊長「ふぅ、ふぅ…」

 
騎士長「…引いてくれないか」


警備隊長「出来ぬ相談だ。俺は、もっとより良い時代を作る…」

警備隊長「例えお前が言うように、俺の剣がどんなに汚れていてもだ!!」ダッ


騎士長「くそっ!!」ダッ


ガガガキィン…

…ガキィンッ!!!バキィッ!!


警備隊「な、なんて戦いだ…」

騎士団「騎士長…」

 
アサシン「き…騎士長…」

黒髪少女「騎士長…!」

 
ダダダッ…ガキィン!!!

警備隊長「ほぉ…やるな」

騎士長「実力は均衡してると思っていたが…これはちょっと不味いかもな」ハハ…


警備隊長「時代は俺が開くっ!!」ブンッ!

騎士長「お前にさせるわけにはいかないっ!!」ブンッ

ギキィンッ…!!

 
騎士長「…ぐっ!」ビリビリ

警備隊長「ちっ…」ビリビリ


騎士長「はぁ…はぁ…」

警備隊長「ふぅ…ふぅ…」

ジリ…ジリ…


騎士団「二人が間合いを詰めていく…」

警備隊「次で…決まるのか…」

 
ダッ…ダダダダッ!!!


騎士長「…ぬあああっ!」ブンッ!

警備隊長「…ぬおおおっ!」ブンッ!


ズッ…ズバァンッ!!!


騎士団「攻撃が…入った!!」

警備隊「ど、どっちが!?」

 
騎士長「がっ…」

…ポタッ…ポタッ…

警備隊長「…俺の、勝ちだ」

騎士長「…参ったね、肩に思いっきり剣が刺さってるじゃないか…」ゼェゼェ

警備隊長「ふはは…俺の時代が始まるってことだ」ニタッ


アサシン「…っ」

黒髪少女「き…騎士長…!!」

 
騎士長「へ…へへ…」ハァハァ

警備隊長「何故また笑う。これも運命と受け入れたか?」


騎士長「はは…運命、ね」

騎士長「…運命ってのは常にどっちを向くか分からないんだぜ…?」ハァハァ


警備隊長「戯言を…お前の負けだ!このまま胴体を切り裂いてやる!」

騎士長「やってみろよ…」ゴホッ

警備隊長「よかろう…さらばだ、同じ王都に仕えた男!!」ググッ!

騎士長「…っ」

 
グググッ…ググッ…グッ…!!

警備隊長「むっ…!」

騎士長「…」ニタッ

警備隊長「剣が…入っていかん…!」グッグッ…


騎士長「…お前も、皮肉なものだよな…」

警備隊長「ど、どういうことだ!」

騎士長「うらぁぁっ!!」ブンッ

…ズブッ…

警備隊長「はぐっ…!」

 
騎士長「…悪いな」

警備隊長「な、なぜ…!」ゴボッ

騎士長「…皮肉の意味はさ、これさ…」ゴソゴソ

…チャリッ


警備隊長「そ、それは…!お…俺らの…」ハァハァ

騎士長「そう。警備隊のロケット…これに使われている、"アダマンタイト"さ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
騎士長「ごほんっ、えっとな…」

騎士長「アダマンタイトは不思議な鉱石でな、物理的威力に反発する力を持ってるんだよ」


アサシン「反発する力?」

騎士長「どんな小さな欠片でも、叩き割ろうとしたり、押し込んだりすると弾こうとして動かなくなるんだ」

アサシン「どういうことだ?」

騎士長「簡単にいえば、磁石みたいなもんさ。なんでそうなるかは解明されてないんだが」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
警備隊長「ぐ…!そ、そんなバカな…!」


騎士長「これが偶然だと思うか?いや…運命だろうよ」

騎士長「お前が時代を開くことは…出来ないんだ」

 
警備隊長「くそ…が…」フラッ

…ドサッ…ドバァァ…


警備隊「た、隊長が…」

警備隊「負けた…!!」


騎士団「き、騎士長が…」

騎士団「勝ったぁぁあ!!!」

ワッ…ワァァァァッ!!!!

 
アサシン「冷や冷やさせやがって、バカが…」ハァ

黒髪少女「騎士長が勝ったよ…お母さん…!」

アサシン「黒髪少女…。本当に…私を母親だって認めてくれるのか…?」

黒髪少女「お母さんはお母さんだよ…っ」

アサシン「黒髪少女っ…!!」ギュウウッ


副長「警備隊、武器を捨てよ!お前らの負けだ!」


警備隊「…っ」

ガランッ、ガランガランッ!!ガシャガシャッ…

  
騎士長「こ、これで…時代は変わる…」ハァハァ

騎士長「全てとは言わないが…王都の穢れだった王は死んだ…」

騎士長「次の時代は…もっと笑顔で、幸せで…」ゴホッ…

騎士長「そして…見てるか、王子。これで満足してくれるか…!」


カツ…カツ…カツ…

騎士長「ん…」


アサシン「…騎士長、ありがとう。心からお礼を言うよ」

黒髪少女「これで全部終わったんだね。もう、私みたいな人は出ないんだよね」

騎士長「あぁ…終わったよ…」ニコッ

フラッ…

 
アサシン「おっと!」ダキッ

騎士長「お、おいおい。血で塗れちゃうよ…」

アサシン「気にするものか。一緒に歩こうじゃないか。肩を貸すよ」

騎士長「ふっ…」

黒髪少女「私も、一緒に歩く。私は左肩っ」ギュッ


騎士長「…幸せもんだな俺は。こんな可愛くて、美しい二人に肩を支えられるんだから」

アサシン「ばーか、何言ってるんだか…」


タッタッタッタッタッ…ビシッ!!

副長「騎士長…改めて、ご苦労様でした」

 
騎士長「ん…別にいい」


副長「これから、どうすればいいでしょうか。王を含む幹部が亡くなり、警備隊長は負けました」

副長「実質、これからのリーダーは貴方なんです」


騎士長「何言ってやがる。俺は元、騎士長だ」

副長「しかし…、この王都に頼れる人は貴方以外にいないのですよ。騎士長」

騎士長「そうは言ってもな…、俺は人の上に立つ器じゃ…」


副長「もう元ではありません。"騎士長"ですよ、貴方は」

騎士長「…」

 
アサシン「今は、まだ考えられる時じゃないだろう。少しだけ時間をやってくれないかな」

副長「そ、そうですよね…」

騎士長「…悪いな」

副長「いえ…。では、この場の収拾だけどうすればいいか、お願いしてもよろしいでしょうか」


騎士長「仕方ねえな…。まず…、王が死んだ事は表に出すな…。まだ早すぎる」

騎士長「それと警備隊はまだ、地下牢へ閉じ込めておけ。一人一人の尋問は後日だ」

騎士長「警備隊長は厳重警戒にしろ…。だが、全員に拷問などはナシだ。きちんと三食与えろ」


副長「はいっ」


騎士長「アルフが撒いた爆発は好都合…、謎の輩の仕業に仕立てる等の策はできる…」

騎士長「とにかく今は、1日でもいいから…休ませてくれ」

 
副長「わかりました。おい、全員聞いていたな!」

騎士団「はっ!」ビシッ

副長「警備隊全員、素直に従え!従わねば、即刻斬る!」

警備隊員たち「…わかりました。従います」


騎士長「あ、そうだ…。地下牢にあの酒場の店主がいないか探してくれ…」

騎士長「もしいなければ、どこかにいないか全力で探すんだ。俺の家で待ってると…伝えてくれ」

副長「…行方不明なんでしたね。分かりました、捜索しておきます」ペコッ


騎士長「さて、帰ろうかね…俺の家に。案内するぜ…」


アサシン「あんたの家かぁ、楽しみだねぇ」

黒髪少女「すっごい大きいんだよ、騎士長の家!」

アサシン「なんだとぉ、この金持ちめぇ!」

ワイワイ…ガチャッ、バタンッ…

 
副長「行ったか…」

副長「…相変わらず、尊敬できる人だ。殴ったこと、後で改めて謝らねば…」


タッタッタッタッ、ビシッ!

騎士団「報告します!」

副長「なんだ?」

騎士団「警備隊を牢に入れようと開いた際、詰められた奴隷たちが沢山いまして…」


副長「…恐らく、怖がっているだろう。温かい食べ物と服を着せ、保護するんだ」

副長「それぞれの国、村に戻してやろう」


騎士団「それがいいですね。あと…」

副長「まだあるのか?」

 
騎士団「実は、その奴隷の中に…店主と名乗る人物が…」

副長「…ふむ」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
やがてこの戦いは公になると、"新時代の革命"として歴史に名を刻む事となった。

旧王政の実態が表へ出ると、砂漠地方は当然怒りをあらわにし、

戦争が勃発する寸前まで互いの国家は緊迫した。


一触即発の事態だったが、そこで活躍したのは"砂漠の英雄"であるアサシンだった。

彼女は自らが砂漠地方の政治へと立ち、率先して王都との関係を修復しようと活動した。

英雄であった彼女に賛同する者は多く、

時間がたつと共に落ち着いていったのだった。


そして―――……

非常に長い更新でしたが、本日はここまでです。

また、次回の更新で最終回となります。
ここまでお付き合いしてくださった方々、ありがとうございました。

皆さま有難うございます。最終回、投下致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数年後・王都 】


ガヤガヤ…ワイワイ…

側近(副長)「…王様。今日は祝賀会の日です。早く準備をしてください」


王様「分かってるよ。未だにこういうのは慣れないんだ」

側近「…はぁ、相変わらずですよねえ」

王様「俺さ、考えたんだ」

側近「何をですか?」

 
王様「今日の"革命の日"の祝賀会が終わったら…王様を引退する」

側近「はっ!?」

王様「あとはお前に頼むよ」

側近「そ、そんなバカなこと言わないでくださいよ!」

王様「ここまで国を立ちなおした、それだけで充分じゃないか?」


側近「確かに、あの日から比べれば素晴らしい成長です。ですが、まだ安定したとはいえない…」

王様「…これも運命だっていうのか?」


側近「あの日、あの時!あなたを皮肉にも守った"敵のロケット"…」

側近「あなた自信が、運命だと言ったのですから」


 
王様(騎士長)「…わかってるが」


側近「貴方は素晴らしい人だ。運命ですよ」

側近「気がつけば周りに貴方より力を持つ人がいなかった…。そうなった意味を考えてください」

 
王様「…」

側近「ほら、行きますよ」

王様「わかったよ…」

カツ…カツ…カツ…

王様「…」

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「…良かったな、黒髪少女」

黒髪少女「うん」

アサシン「私は、一旦砂漠地方に戻る。また来るよ」

騎士長「…行っちまうのか?」


アサシン「王都と砂漠地方を戦争にする訳にはいかない」

アサシン「私なら、全員を抑えて納得させる自信があるから」


騎士長「…そうか」

 
アサシン「なーにしみったれた顔してんだ!永久の別れでもあるまいし!」バンッ

騎士長「…そ、そうだよな」ハハ

アサシン「それと…黒髪少女」

黒髪少女「…?」


アサシン「今更だけどさ、一緒に、家族としての道を歩みたいんだ・・」

黒髪少女「…!」

アサシン「一緒に来てくれないか。あんたが嫌なら私はあきらめる」

黒髪少女「…」


騎士長「…黒髪少女。家族ってのは大事にするもんだぜ」

黒髪少女「で…でも…」

 
騎士長「どうしたよ?」

黒髪少女「…騎士長も、一緒に…」

騎士長「…シー」ソッ

黒髪少女「うむっ…」


騎士長「…分かってる。俺だって気持ちは一緒だ」

騎士長「だけど、俺にはやるべきことがある。アサシンにも、アサシンにしか出来ない事がある」

騎士長「だから…その言葉はまた今度に取っておいてくれ…な?」


黒髪少女「…」

アサシン「…騎士長」

 
騎士長「なぁアサシン、もし国が立ち直って…お互い平和を取り戻してさ…」

騎士長「そしたら…胸張って顔を合わせたい。そして、言いたい事がある」

騎士長「本当はもう言うつもりだったが、こんな状況じゃ言うこともできん」ハハ


アサシン「…」

黒髪少女「…」


騎士長「それまでは、待ってくれ。お前が良ければ…だが」

アサシン「…私に惚れたのか?」クスッ

騎士長「ははっ、さぁな。黒髪少女…また、会おうな」


黒髪少女「騎士長…っ!」

 
アサシン「…」

騎士長「それじゃあな。俺は仕事があるんだ!」クルッ


黒髪少女「あっ…!」

アサシン「…本当にありがとう…」

黒髪少女「あ…ありがとう…騎士長…っ!絶対、また来るから…絶対…!!」


カツ…カツ…カツ…カツ…

騎士長「ばっかやろう…」グスッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 パーティ会場 】 


王様「はぁ…」


王様(男らしくかっこよくと思ったものの、あれから4年、いや5年になるのか…?)

王様(国の立て直しに時間を置きすぎた。俺がずっと想ってても…女々しいだけというか…)

王様(もっと素直になれば良かった…。後悔だけだ…)ハァ
 
 
側近「ちょ…ちょっと…この日に、そんな顔を見せないでくださいよ」

王様「…分かってるよ」

 
側近「もうすぐ、各国の首脳達が集まるんですから!」

王様「分かってるよ!」


…コンコン

側近「って言ってる傍から、ほら来ましたよ!!」

ガチャッ、ギィィィ…


王様「へいへい、いらっしゃーい」

側近「もー!!そんな顔して!!」

王様「へんっ」フン


タッタッタッタッ…!!

???「おい、そこの王様!」

王様「あん?なんだ口のわりぃ首脳だな…」

 
???「この…バカがっ!」

ゴツッ!!…ドサッ…

王様「」

???「何してるんだ、そんなしみったれた顔をして!」

???「それでも一国を背負う主か?しばらく会わない間に、そんな腑抜けになったのか!」


王様「こ、この懐かしい痛みは…」ハッ


アサシン「久しぶり。騎士長!」

王様「…アサシン!」

アサシン「お互い、国に帰ってから忙しくて…会えなかったけど、また顔を見れて嬉しいよ」

王様「…っ」

アサシン「…」

 
王様「バカやろう…。突然すぎるだろ…どんな顔すればいいんだよ…」

アサシン「…」
 
王様「お前は頑張ってるな。話は聞いてるし、スゲェよな。俺なんてこんなんで王だぜ」

アサシン「まぁね」

王様「俺は嫌気がさしてな…。どうしてこんな事になっちまったんだろうなって」

アサシン「確かに、人の上に立つ技量はあるけど気持ちが着いていかないもんね、アンタ」

王様「やかましいわっ!」

アサシン「はっはっはっ!」


王様「…黒髪少女は元気か」

アサシン「…元気だよ」

王様「そうか。俺のこととか、話たりするのか?ボーイフレンドは出来たのか?何か変わったか?」

アサシン「お、おいおい。そんな一辺に話されても」

王様「そ、そうか…」

 
アサシン「…」

王様「…はぁ」

アサシン「あのさ、そんなに気になるなら…自分で聞けば?」

王様「あん?」

アサシン「入りなよ、黒髪少女!」


ガチャッ…ギィィ…


王様「…!」

黒髪少女「…」ペコッ

王様「く…黒髪少女…?」

 
黒髪少女「久しぶりだね…騎士長」

王様「…っ」

黒髪少女「…」


アサシン「何か声かけてやりなよ。お互い緊張してどうするんだ!」


王様「そ、そうか。そうだな…黒髪少女、すっかり…大人になって…」

黒髪少女「え、えへへ…」

王様「また会えるなんて思ってもいなかった…嬉しいよ…」

黒髪少女「…うんっ」

  
アサシン「それでね、久々なんだけど…黒髪少女が話しをしたい事があるんだって」

黒髪少女「…」

王様「なんだ?」

黒髪少女「そ、そっちに行っていい…かな」


王様「当たり前だ。…抱きついてくるか?なーんてな」ハハハ

黒髪少女「…っ!」ダッ


タッタッタッタッタッタッ…ダキッ…


王様「!」

黒髪少女「会いたかった…騎士長…。ちっとも変わってなくて、安心したっ…」ギュウウ

王様「立派な王様の立場にはなっちまったがな」ハハ

 
黒髪少女「ううん、変わってない。騎士長は騎士長だもん」

王様「…そうかもな」ニコッ

黒髪少女「うんっ…」

王様「で、話をしたい事があるんだって?」


黒髪少女「…」チラッ

アサシン「うん、いいよ」


黒髪少女「…」スゥゥ

黒髪少女「…」ハァァ


王様「?」

側近「…」フフッ

 
黒髪少女「私の…、お父さんになってくれませんか…?」


王様「何だそんな事か。そんなの当たり前だ…」

王様「って、今なんて言った!?」


黒髪少女「…ダメ、かな」


王様「え…えぇぇっ!?」

アサシン「うるっさ!」
 
王様「だ、だってお父さんって、どういうこと!?」


アサシン「…ダメか?もう、こんな歳の離れた私じゃ、受け入れてもらえないかな」


王様「そ、それってどういうことーっ!?」

 
アサシン「そのまんまだよ。だから、実はさ私、政府をやめてきたんだ。もう、自由な立場さ」

王様「なっ…」

黒髪少女「騎士長と離れて、もっともっと寂しくなって…。お父さんになってほしくなって…!」


王様「い、いや…ちょっ、混乱してるんだよ!」


側近「あ~あ。砂漠の英雄が政府を止めてまで本気の求愛、これは断る理由がないですねぇ?」

王様「はっ?」


側近「残念ですが、あー非常に残念ですが、王様は今日でやめるしかないですねー」

側近「あなたの意思は私が継ぐから安心してくださいー」

 
王様「すっげー棒読みだなおい。いつから作戦が始まってたんだコラ」ピクピク

側近「さ、さぁ~?」タハハ


黒髪少女「…」ニコッ

アサシン「…いい、かな。こんな私でもさ」

王様「…そ、それは…」


側近「素直になりましょうよ。毎日、黒髪少女さんとアサシンさんの写真を見てため息ついて…」

王様「て、てめぇコラ!!」

  
側近「はいはーい、王冠は没収!」グイッ

王様「あっ、俺の王冠を!」

側近「それと…はいっ!入ってどうぞ~」

ガチャッ…ギィィ


王様「今度は誰だよ!」

トコトコ…

アルフ「や~久しぶり!」

王様「アルフ!!」


アルフ「覚えてたの嬉しいねぇ。でさ、新作のカラクリが発明したんだ」

王様「久々に会ってそれかよ!一体なんだよ!」

 
アルフ「ほいっ」パチンッ!!

…ボワッ!!モクモク…

王様「うっぷ!何だこの煙…!」

アルフ「俺からの、最高のカラクリの贈り物さ。それもう一回」パチンッ


モクモク…ヒュウウッ…!!

王様「ごほごほ…。今度は風か!?だけどこれで煙が晴れてー……」 
 
王様「…!」


アサシン「…」キラキラ

王様「お前、その格好…」

 
アサシン「わ、私は反対したんだよ!?こんなの似合わないって!」カァァ

王様「い、いや…すげぇ…ドレス、似合ってるよ…」


アルフ「はいはーい。次はこれ」パチンッ

ガァァァッ…!!ゴゴゴゴ…

王様「か、壁が割れてく!?」

ゴゴゴゴ…ゴゴ…


王様「…って、はい?」

 
街人「うおおおっ!おめでとおお!」

街人「おめでとうございまーす!!」

街人「きゃーキレーイ!!」

ワイワイ…ガヤガヤ…!!


王様「…っ」ヒクッ

アサシン「…あはは」

黒髪少女「えへへ!」


側近「さぁさ、その王様のお召し物も脱いで!これで、貴方はもう王様ではありませんよ!」グイッ

  
アサシン「…騎士長」

黒髪少女「騎士長♪」


騎士長(王様)「…ま、まじでいつからコレを計画してたんだお前ら…」ピクピク


アルフ「ささ、そんな事より最後のカラクリ!」パチンッ

ボワンッ!!


側近「えーごほんっ、これより…騎士長とアサシンさんの式を始めたいと思います」

騎士長「こ、今度はお前が神父の格好か。どこまでも楽しませてくれるな…オイ」

 
アサシン「待って、その前に」

側近「何でしょうか」


アサシン「貴方の本当の気持ち、聞いてない。それじゃ納得がいかない!」

騎士長「…」

アサシン「気持ちをきかせて。こんな私を、受け入れてくれますか…?」


騎士長「…」

騎士長「それは断る」


側近「!?」

アサシン「えっ…」

黒髪少女「えっ、き…騎士長…?」

 
騎士長「…前に言ったはずだ」

アサシン「…?」

騎士長「俺は、女に主導権を握られるのは好きじゃないってな!!」ニカッ

アサシン「…っ!」ハッ

黒髪少女「騎士長っ!」


騎士長「こんな中途半端な格好で、告白もくそもあるか!」

騎士長「アルフ、準備はあるんだろ!俺に正装、着せろや!」


アルフ「そう言うと思って!」パチンッ

…ボワンッ!!

騎士長「ほぉ、どういう仕組みか知らないが…いい服だ」

アルフ「ははっ!」

 
騎士長「…いいぜ、どうせ踊り子も控えてるんだろ?もっと激しく行こうぜ!」

騎士長「音楽隊、鳴らしていけ!踊れ!国民たち…もっと声をあげてくれ!!」

ウオオオッ!!!!

ジャジャジャー!!♪


騎士長「それでいい、俺は俺らしく、楽しく行こうぜ!」

アサシン「…!」


騎士長「こんな騒がしい俺だけどな…アサシン、話を聞いてくれるか」

アサシン「…はいっ」

 
騎士長「…」

騎士長「俺は、傷だとか、過去とか、関係ないと思ってる。そういや昔、お前とそれでケンカしたっけなあ」ハハ

アサシン「…」

騎士長「分かってると思うけど、今は勢いだけに任せたあの頃と違う」

騎士長「この数年、悩んでいたし…忘れられなかった。お前の言った、男女が分かり合うのは一瞬で充分だって言葉も」

アサシン「…うん」


騎士長「だから…俺から言わせてくれ」

騎士長「お前と、生涯を歩みたい。これからも一緒に生きていきたいっ!!」

騎士長「俺はバカだから、心に響く言葉は言えないし、軽い言葉に感じるかもしれない」


騎士長「だけど…こんな俺でもいいなら…お願いします」スッ

 
アサシン「…」

アサシン「…はいっ」ニコッ


黒髪少女「…!!」

側近「やれやれ、王様の仕事は大変そうですが…二人が幸せなら嬉しいですよ」

アルフ「おめでとう、二人とも」

街人たち「おめでとう!!」

ワァァァァッ!!!!

 
黒髪少女「"お父さん"」


黒髪少女「"お母さん"」


黒髪少女「…おめでとう♪」

…ニコッ

 
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


・ 

・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・・・

 
昔々、ある国に悪いことをたくらむ王様がおりました。

王様は、自分のやぼうのために、

ざんにんで、ひどいことをたくさんしていたのです。


ひとびとは、王様はわるいやつだ!といいました。

ですが、王様は「王様だから、じゆうでいいんだ!」と

言って、人々のことを無視しました。


そんな時です。

王様に、はむかう一人の騎士がいました。

 
王様は、自分にはむかうやつはいらん!といって、クビにしてしまいました。

そしてその騎士は、おちこみました。

ですが、そのときです。騎士はある女の子とであいました。


その女の子は、ゆくえふめいになったお父さんを探していました。

騎士と出会った女の子はおねがいをします。「お父さんを探して」、と。


それをきいた騎士は、いっしょにお父さんを探す旅をすることにしました。

のをこえ、やまをこえ、うみをこえ…

そんな旅のとちゅうで、騎士と女の子に、

さばくのえいゆうと、もりのはつめいかが仲間になりました。

 
そして、騎士は仲間をつれていくうちに、悪い王様が世界にえいきょうを与えてるとわかります。

騎士はそれをゆるせなくなり、わるい王様を倒すけついをします。

「ひとびとのために!たたかうんだ!」と。


国へもどった騎士は、わるい王様を仲間といっしょにたおしました。


するとどうでしょう、女の子のまえに、探していたお父さんがあらわれたのです。

女の子は泣いてよろこびました。


わるい王様がいなくなったことで、その国のみんなも、喜びましたとさ…。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…パタンッ

黒髪聖女「これで、お話はおしまい。もう遅いから早く寝るのよ?」

男の子「え~!もっと!」

女の子「次のお話はどんなのー?」


黒髪聖女「それはまた明日のお楽しみ♪」

男の子「でもすっごいなー!騎士って、かっこいいな!」

女の子「うんうん!」


黒髪聖女「私は明日の、他の子のご飯の準備もあるんだから忙しいの!」

男の子「っちぇー、おやすみなさーい」


ガチャッ、バタンッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…

黒髪聖女「明日は、久しぶりに卵焼きでもいいかな~…」ブツブツ

…ポンッ

黒髪聖女「きゃっ!」

院長「おっとすまん、驚かせてしまったか」

黒髪聖女「院長…お父さん!」

院長「いつもご苦労様。本当に助かるよ」

黒髪聖女「ううん、私じゃこれくらいしか出来ないから」


院長「はっはっはっ、何を言ってるんだか」

黒髪聖女「ふふっ」

 
院長「しかしなぁ、お前もいい歳なんだからもっと自由でもいいんだぞ?」

黒髪聖女「そんな…、私、お父さんの夢を聞いた時からずっとこうしたかったの」

院長「夢?あぁ…砂漠の時の…」

黒髪聖女「だから、私は幸せ。お父さんは気にしなくていいの!」ニコッ


院長「…それならいいんだが」

黒髪聖女「…なるようになったから、そうなった。そうでしょ?」


院長「…!」

院長「はは…そうだな。その通りだ」


黒髪聖女「ねっ♪」

 
院長「しかし…この孤児院も、随分と大きくなったもんだ」

院長「もうすぐ、また新しい子供が増える予定なんだ」


黒髪聖女「またっ!?いや、いいんだけど…これ以上は3人で面倒見切れるかなあ?」

院長「お手伝いさんも来るんだよ」

黒髪聖女「お手伝いさん?」


院長「騎士団の引退した人が数人と、砂漠剣士の奴だ」

黒髪聖女「本当に!?」

 
院長「あぁ。お母さんにはまだ内緒だぞ?」

黒髪聖女「わかった!」

 
院長「それじゃこっちにおいで。いつものお礼に、用意したものがあるんだ」

黒髪聖女「…?」

カツカツカツ…ガチャッ


院長「…ほら、テーブルの上だ」

黒髪聖女「あっ!」

院長「懐かしいだろう?」

黒髪聖女「チョコレートパフェ…!」

 
院長「それと、椅子の上を見てくれ。気に入るかは分からないんだが…」

黒髪聖女「え、これって…」パサッ

院長「お前の昔着ていた服を、新しいサイズで探したんだ。今、流行が回ってきたとかなんとか…」ブツブツ


黒髪聖女「嬉しい!で、でもなんで急に…」

黒髪聖女「…」

黒髪聖女「あっ!」


院長「わかったか?今日は…」

黒髪聖女「私たちが、出会った日なんだ!」

院長「そうさ。改めて…お前と会えて良かった思う。ありがとうな」

 
黒髪聖女「…私こそっ!」

…ダキッ!!!

院長「ぬおっ!…はっはっはっ!」


コソコソ…

アサシン「…」クスッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
【 E N D 】

 
■あとがき

これで終了となります。恐らく、1つで見れば自分の作品の中で最も長い作品になったのではないかと思います。

全く新しい世界観に、謎が謎だったり、展開的に遅いところや直球的なものもありましたが、

多くの感想・意見等嬉しかったです。

いつもなら後日談を載せるのですが、

今回は後日談も一緒にまとめた形にしましたのでこれで終了となります。


また、本来なら修正分をアップ致しますが、残りスレが少ないこと・目に見える抜けがない事、

多重投稿をしていたくらいなので、このまま終了とさせていただきます。


本当にありがとうございました。

おつかれさま!
毎度更新速度と量に驚かされる

同じ世界観の別エピソードかあるなら、
アルフが飛行機械で世界各地を飛び回る
モンタナ・ジョーンズっぽい冒険活劇をですね

乙!いつも楽しく読ませてもらってる次回作も期待してる!

おっつおっつ(^ω^)b
今回はリアルタイムで見れてよかったぜ。
次回作に期待

おつです!
この作品もおもしろかった!
次回作に期待してます!!

今回も面白かったよ
次回作に期待しつつ、盛大に乙でした


>>941
最後だから敢えて言おう、ツンデレ乙と

乙でした、毎回楽しみにしてたが終わってしまったな...
また次の作品が出来る事を楽しみにしてる

乙 面白かった
過去作も探して読むよ
次も楽しみにしてる

乙乙
面白かった
個人的には冒険活劇的な要素が物足りなかった
テーマが違うからだとは思うんだけどね

次スレ誘導はまだかね

皆様、沢山のコメント等ありがとうございました。

某まとめ様にて、過去の作品含む今作もまとめて頂き、やや驚いております。

本来なら新作を…とも伝えたいのですが、

いかんせん多忙で、新作を書きつつも現行としてはまだ未完成の状態です。


また、知っている方は知っているとは思いますが、自分の作品の見直しのために、

自分用にWikiとしてまとめを作っております。

そこで、かなりの亀レスになりましたが >>94 を含み、


「冒剣士」から、要望の多かった「竜騎士」「女剣士」「騎士長」

のその後、またはエピソードをアップ致しました。

また、未定にはなりますが、毎回の恒例で、新作等の告知は現行予定です。
(残っていない場合はWikiやTwitter参照で)

その他ストーリー等で見てみたいというものが

ありましたら、気軽にお願いします(現行でもWikiからでもTwitterでも)。

多少の時間は頂くと思いますが、全て要望には応えるつもりですので、

是非、よろしくお願い致します。


・Wiki
http://seesaawiki.jp/naminagare-ss/


尚、改めて長編の書き進めはゆっくりながらも進めておりますので、

もしまた読んで頂けるならば、また、よろしくお願いします。

>>956
そうですね、後半ではレス数の関係上、新スレまでは考えていなかったので
加速気味に進めてしまったので、そこは失敗だったなと自分でも考えています。

>>939 >>940 >>944 >>946 >>949 >>953 >>959
ぜひ、新作が出る際はまた宜しくお願いします

>>938
それはちょっと面白そうだ…ww
新しい世界観の中の話ですし、番外としてでも考えてみますww


乙コメ、感想、意見等、多く頂けまして本当にうれしく思います。
皆様ありがとうございました。


それでは失礼いたします。

ありがとうございます。

錬金術師「経営難に立ち向かうことになった」
錬金術師「面倒だけど経営難に立ち向かう事になった」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1396693939/l50)

の連載を始めました。よろしくお願いします。
(他の作品とのつながりは基本的にありません)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月14日 (金) 21:46:07   ID: DC3HBDFi

騎士長がなー俺のせいだのなんだのと女々しすぎかなー

2 :  SS好きの774さん   2014年03月18日 (火) 21:45:26   ID: fO2JgRwX

なんで、こんなに文才あるんだ♪
今後楽し眠れんぞσ( ̄∇ ̄;)

3 :  SS好きの774さん   2015年05月19日 (火) 03:35:07   ID: eam96hKD

くそつまんね
力に任せた偽善ばっかじゃねえか

4 :  SS好きの774さん   2016年03月28日 (月) 21:29:29   ID: iqlB1yDo

イイハナシダナー

5 :  SS好きの774さん   2017年06月28日 (水) 18:07:43   ID: xlxEKnwA

特に捻った感じはないけど楽しめたよ

6 :  SS好きの774さん   2018年05月18日 (金) 22:33:11   ID: NX-2eVac

すごいよかったとおもいます。

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