少年「トレーディングカードゲーム“カードバトル”全国大会決勝!」(128)

ワー……! ワー……!

実況『耳をつんざくようなこの大歓声!』

実況『会場中が凄まじい熱気に包まれております!』

実況『大変長らくお待たせいたしましたァ!』

実況『今、世界中で大ブームのトレーディングカードゲーム“カードバトル”!』

実況『全国に1000万人いるといわれるカードバトラーの頂点が、ついに決まる!』

実況『カードバトル全国大会決勝戦!』

実況『いよいよ開幕です!』

実況『解説は“カードバトル”シリーズの生みの親である、この方です!』

実況『本日はよろしくお願いします』ペコッ

解説『よろしくお願いしマース!』

実況『こういった大会を、生でご覧になられるのは初めてだとうかがっていますが?』

解説『そうデスネー!』

解説『これまでは、なかなか大会に駆けつけることができませんデシター!』

解説『ゲーム開発者として、今日のゲーム楽しませてもらいマース!』

実況『それではさっそく、両選手入場です!』

実況『優勝賞金一億円を手に入れるのは、果たしてどっちだ!?』

実況『まずは──』

実況『弱冠10歳にして、数々の強豪カードバトラーを撃破してきた──』

実況『少年君です!』

少年「トレーディングカードゲーム“カードバトル”全国大会決勝!」

少年「夢にまで見たこの舞台に本当に立てるなんて……」

少年「母ちゃんや父ちゃん、友だちだって応援に来てるんだ……」

少年「絶対負けない!」

実況『対しまして──』

実況『金にあかせて入手したレアカードで、大勢のちびっ子を号泣させてきた──』

実況『青年君、26歳フリーター!』

実況『大人気ない戦法でここまで勝ち抜いてきましたが、全く悪びれていません!』

青年「遊びに年齢は関係ない」キリッ

少年「よろしくお願いします」ガタッ

青年「いい試合をしよう」ガタッ

実況『両者、席についた! いかがでしょう、この両者の座り方は?』

解説『とてもいいデスネー! 貫禄がありマース!』

審判「両者、デッキを出して!」バッ

少年「はい」スッ

青年「フッ」スッ

審判「ではシャァ~~~~~ッフル、タァ~~~~~ッイムッ!」バババッ

【カードバトル心得 其之一】
対戦前は、よくデッキをシャッフルすべし。

少年「…………」シャッシャッ

青年「…………」シャッシャッ

少年「…………」シャッシャッシャッ

青年「…………」シャッシャッシャッ

少年「…………」シャッシャッシャッシャッ

青年「…………」シャッシャッシャッシャッ

実況『速い速い! さすがに両者とも、カードの扱いは手慣れたものです!』

審判「デッキ、チィェェ~~~~~ンジ!」バババッ

実況『ここで互いのデッキをチェンジして、もう一度シャッフルです!』

実況『ところで、常々疑問に思っていたのですが──』

実況『なぜわざわざ相手にも、自分のデッキをシャッフルさせるのですか?』

解説『イカサマ防止のためデース!』

解説『シャッフルのやり方次第では、山札の上の方に欲しいカードを来させるくらい』

解説『簡単にできますからネー!』

実況『なるほど──』

実況『ん!?』

実況『おおっと、ここで青年君が暴挙に出た!』

青年「フフフ……」ボワァッ

実況『青年君、さきほどチェンジして受け取った少年君のデッキを』

実況『なんとライターで燃やしている!』

実況『これはアリなんですか!?』

解説『アリデース! 実に有効な戦術デース!』

青年「フフフ、これで俺が優勝だ」パラパラ…

実況『青年君、灰になったカードを得意げに床に散らしたァ~~~~~!』

実況『早くも優勝が決まってしまったかぁ~~~~~!?』

審判「予備のデッキがなければ、君の負けになるが……あるかね?」

少年「…………」

少年「あります」ニヤッ

青年「!」

青年(さすが、決勝まで来ただけのことはあるな)

青年(だが、予備のデッキなら、戦力的には落ちるはず……)ニヤッ

少年「あ、ちなみにいっておくと」

少年「さっきお兄さんが燃やしたボクのデッキは、ただのクズカードの寄せ集めなんで」

少年「こっちがボクの本当のデッキです!」バンッ

青年「なっ……!」

審判「ふむ……」

審判「バトル続行!」バババッ

青年「フフフ……こいつは驚いた」

青年「俺がカードを燃やさなければ、君はクズカードで戦わなきゃならなかった」

青年「つまり、俺が君のデッキを燃やすことを読んでたってことだ」

青年「……まさか小学生に出し抜かれるとはね」

青年「これはいいゲームになりそうだ!」ニヤッ

少年「ありがとうございます」ニヤッ

実況『さすがは決勝戦!』

実況『ゲーム開始前から、凄まじい心理戦が展開されております!』

解説『見てるだけで人間不信になりそうデース!』

【カードバトル心得 其之二】
カードバトラーたる者、いかなるアクシデントをも想定すべし。

ワー……! ワー……!

実況『さあ、いよいよゲーム開始です!』

実況『カードバトルのルールは皆さんご存じでしょうが』

実況『ここで念のため、もう一度ルールを説明いたします!』

実況『両プレイヤーは自分のターンごとに、山札からカードをドローして』

実況『手札にあるカードを使って、ゲームを繰り広げます!』

実況『そして、相手のBP(バトルポイント)を減らしていくのです!』

実況『互いに与えられたBPは、50000!』

実況『相手のBPを先に0にしたプレイヤーが勝利となります!』

 少年(BP:50000) VS 青年(BP:50000)

審判「バァ~~~~~トゥルゥ~~~~~!」ババッ

審判「スゥゥゥゥゥウタァァァットゥ!」バババッ

実況『審判のエセ巻き舌も絶好調!』

実況『先攻は少年君! さあいったいどんなカードを出してくるか!?』

解説『最初の一手で勝負が決まることもありマース! ここ大事デスヨー!』

少年「ボクのターン! ドロー!」スッ…

少年(お、これはいきなりいいカードだ!)

少年「ボクは≪セーラー服人魚姫≫を場に出す!」バッ

人魚姫「ウフ~ン」ボワンッ


≪セーラー服人魚姫≫
レア度:★★★★★★
攻撃力:1000
防御力:800
セーラー服を着た美しい人魚姫。


実況『ちなみにモンスターのカードなどは』

実況『会場内の特殊な装置により、立体映像として具現化されます!』

実況『それにしてもなかなかの美女ですね~、この人魚』

解説『ワタシもこのカード好きデース! たまにオカズにしマース!』

青年「俺のターン! ドロー!」スッ…

青年(フフフ、どうやらツキは俺に向いているようだ)

青年「俺はこのターン、≪鋼のインキンタムシ≫を場に出す!」

インキン「インキーンッ!」キンキンッ


≪鋼のインキンタムシ≫
レア度:★★★★★★★
攻撃力:7000
防御力:5500
錬金術で生み出されたインキンタムシ。


少年(いきなりこんな強力モンスターを出してくるなんて!)

青年「むろん、≪セーラー服人魚姫≫を攻撃だ!」

少年「ま、まずい……っ!」

実況『審判による判定は!?』

審判「…………」

審判「≪セーラー服人魚姫≫の勝ちッ!」バババッ

審判「青年のBP、20000ダウンッ!」バッ

 少年(BP:50000) VS 青年(BP:30000)

青年「ハァ!?」

少年「やったぁ!」

実況『おおっと、勝利したのは少年君の≪セーラー服人魚姫≫だっ!』

実況『とはいえ疑問も残ります』

実況『数字上では、明らかに≪鋼のインキンタムシ≫の方が強そうなんですが……』

実況『攻撃力も防御力も相手カードを上回ってますし……』

実況『これはどういうことでしょう?』

解説『結局、勝敗を決めるのは審判ですからネー!』

解説『数字なんて飾りデース! 偉い人には分かりまセーン!』
 
【カードバトル心得 其之三】
数字だけでカードの強弱を判断するべからず。

実況『おっと……青年君が……!?』

青年「ちょっと待ってくれ!」

青年「どうして、俺の≪鋼のインキンタムシ≫が負けるんだ!」

実況『青年君、今の判定に抗議しています!』

解説『彼の気持ちはよく分かりマース!』

審判「…………」

審判「≪セーラー服人魚姫≫の方が可愛いからだ」バババッ

青年「なっ……!」

実況『お~っと、身も蓋もない回答だ!』

解説『審判の気持ちもよく分かりマース!』

青年「ふざけんな!」

青年「こっちはバイト休んでまで、大会に出てるんだ!」

青年「こんないい加減な判定されてたまるか!」

青年「だいたい≪セーラー服人魚姫≫のどこが可愛いんだ!」

青年「下半身はしょせん魚だし、制服だってブレザーの方がいいに決まってる!」

審判「……審判侮辱罪でマイナス3000、人魚姫侮辱罪でマイナス9000」バッ

審判「青年のBP、12000ダウンッ!」バババッ

青年「なっ……!」

 少年(BP:50000) VS 青年(BP:18000)

実況『これは厳しいペナルティだ! 大きく差が開いてしまった!』

解説『審判に逆らうの、よくありまセーン!』

【カードバトル心得 其之四】
審判に逆らうべからず。

少年(ようし、一気に決める!)

少年「ボクのターン! ≪マルチメディア剣士≫を場に出す!」


≪マルチメディア剣士≫
レア度:★★★★★
攻撃力:1800
防御力:900
マルチメディアの知識が豊富な剣士。


剣士「マルチ!」ジャキッ

青年(せっかく決勝まで来たんだ! 諦めてたまるものか!)

青年「俺のターン! ≪老害≫を場に出す!」


≪老害≫
レア度:★
攻撃力:8000
防御力:9000
なかなかくたばらない。


老害「生涯現役じゃもんで」フェッフェッフェ

実況『判定は!?』

審判「……引き分け!」ババッ

青年(くそっ……子供のくせに手強いカードを揃えてやがる)

青年(今までなぎ倒してきたちびっ子たちとはワケが違う!)

青年(こうなったら、モンスターバトル以外で活路を見出すしかないな……)

青年(いいカード……来いっ!)スッ

青年(──来たぁっ!)

青年「フフフ、少年君」

少年「?」

青年「悪いがこのターンで君は終わりだ!」バッ

実況『あああああっと!?』

実況『なんだァ!? このカードはぁぁぁぁぁっ!?』

≪リアルファイト≫
レア度:★★★★★★★
効果:このカードが場に提示されてから60秒間、
   プレイヤー同士の間に限りあらゆる暴力行為が許される。


実況『暴力行為ということは、これは──』

解説『プレイヤー同士の肉弾戦デース!』

解説『このカードを成立させるために』

解説『ワタシは世界中の国の司法機関と交渉したのデース!』

解説『交渉の結果、“カードバトル”プレイ中にこのカードが提示されてから60秒間は』

解説『全ての国家でプレイヤー同士の暴力行為に限り、法律の干渉を一切受けまセーン!』

解説『たとえ相手をキルしてしまっても、罪に問われることはありまセーン!』

実況『これはすごい! まさか、司法にまで影響を及ぼすカードが存在するなんて!』

ワー……! ワー……!

審判「ではただいまより、60秒間!」

審判「少年と青年の間の暴力行為に限り、一切の憲法法律その他が適用されない!」

審判「──ファイッ!」バババッ

実況『10歳と26歳のリアルファイトが始まったァッ!』

実況『ここで両選手のデータを紹介いたします!』

【少年】
年齢 10歳
職業 小学生
身長 187cm
体重 103kg
体脂肪率 6.7%

【青年】
年齢 26歳
職業 フリーター
身長 175cm
体重 62kg
体脂肪率 14.9%

リアルファイト開始30秒経過──

実況『少年と青年のリアルファイト、これは一方的な展開だァ~~~~~!』

青年「押忍ッ!」シュッ

ドズッ……!

少年「うごぇっ……!」ドサッ

実況『青年君の正拳突きで、少年君三度目のダウンだぁっ!』

青年「覚えておくがいい」

青年「戦闘においてもっとも大切なもの──」

青年「それは身長(サイズ)でも体重(ウェイト)でもないんだ!」

実況『その答えとは!?』

青年「   心   意   気   !   !   !   」

実況『60秒経過しました! リアルファイト終了!』

青年「チッ、仕留めきれなかったか……。さすがにタフだな」

【カードバトル心得 其之五】
カードバトラーたる者、心意気で戦うべし。

少年(ひどい目にあった……。こうなったら一気にケリをつけてやる!)

少年(ボクのデッキの中でも、最強のカードで!)

少年「≪ローブをはだけた魔女≫を場に出す!」バッ

魔女「オホホホ……ちょっとだけよ」ピラッ


≪ローブをはだけた魔女≫
レア度:★★★★★★★★★
攻撃力:6500
防御力:2000
黒いローブからのぞく白い肌がセクシーな魔女。


実況『妖艶な魔女が現れた! 流し目が色っぽすぎるぞ!』

解説『多くの男性プレイヤーのオカズになっている大人気カードデース!』

青年(まずい……! 審判は女好き!)

青年(かといって、今俺の手札に女系のカードはない!)

青年「くそっ、≪胃腸が弱い竜皇帝≫でしのぐ!」バッ

竜皇帝「緊張したら、またキリキリしてきた……」グルル…


≪胃腸が弱い竜皇帝≫
レア度:★★★★★★★★★★
攻撃力:10000
防御力:10000
竜族の長にして最強の竜。ただし胃が弱い。


実況『巨大なドラゴンが出現だ! ──が、ちょっと顔色が悪いのが気がかりです!』

解説『体はデカイけど、根は小心者デース!』

ワー……! ワー……!

実況『≪ローブをはだけた魔女≫と≪胃腸が弱い竜皇帝≫!』

実況『レア度9とレア度10のカードのぶつかり合い!』

実況『この光景に、観客のカードバトラーたちからも歓声が上がっています!』

解説『レア度9以上のカードが同時に場に出ることは、非常に珍しいデース!』

解説『トップクラスのプレイヤー同士の、トップクラスのカード同士の対決デスネー!』

実況『さあ、審判の判定やいかに!?』

審判「…………」

審判「≪胃腸が弱い竜皇帝≫の勝利ッ!」バババッ

審判「少年のBP、22000ダウン!」バババッ

青年「やった!」グッ

少年「そんな!?」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:18000)

実況『これはどういうことでしょう!?』

実況『先ほど審判は、可愛いカードを勝たせていましたが……』

解説『多分、さっきの判定は自分でもおかしいと思っていたので』

解説『ここで青年君を勝たせて調整したんでしょうネー』

実況『なるほど~』

実況『そういったところまで読まねばならないのですね。このゲームは実に奥が深い!』

少年(くそっ、まさか≪ローブをはだけた魔女≫がやられちゃうなんて……)

少年(他に出せるカードもないし……)

少年「……ターンエンド!」

青年(よし!)

青年(さすがに今ので攻め手を失ったようだな!)

青年(ここから一気に攻めてもいいが、ここはあえてBPを回復させる!)

青年「俺のターン!」

青年「俺はこのカードを使わせてもらう!」バッ

≪BP倍増計画≫
レア度:★★★★★
効果:このカードが場にある限り、ターンごとに自分のBPが倍増される。


実況『出たァ~! 池田勇人もビックリだ!』

解説『なるほど、考えましたネー!』

解説『あのカードをどうにかしなければ、青年君のBPは増え続けマース!』

青年「さあ、まずは18000の倍で──36000!」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:36000)

実況『青年君のBPが少年君を逆転しました!』

少年(ま、まずい……!)

少年(あれを取り除けるカードは≪計画倒れ≫や≪バブル崩壊≫とかがあるけど)

少年(ボクのデッキには入っていない……!)

少年(どうすればいいんだ!)

青年「どんどん倍増していくぞ!」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:72000)

青年「10万をあっさり突破だ!」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:144000)

青年「20万!」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:288000)

青年「俺のBPは576000です」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:576000)

青年「さあ、次のターンで俺のBPはいよいよ100万を超えるッ!」

次のターン──

ザワザワ……

実況『あ~っと、なんということでしょう! ここでトラブル発生!』

実況『この試合、二人のBPは壁についている電光表示板に表示されているのですが』

実況『その表示板が6ケタまでしか表示できない仕様のため』

実況『青年君のBP表示がバグって、文字化けを起こしてしまっております!』

実況『これではゲームが続行できません!』

審判「ジャッジ!」バッ

実況『おっと、ここで審判が動きます!』

審判「青年、BP10000で再スタート!」バババッ

審判「≪BP倍増計画≫の効果も終了!」バババッ

青年「なんだって!?」

 少年(BP:28000) VS 青年(BP:10000)

実況『審判、青年君のBPを強制的に下げることで、対処しました!』

解説『ナイス判断デース!』

少年「た、助かった……」ホッ…

【カードバトル心得 其之六】
BPは多ければ多いほどいいとは限らない。

少年「ボクのターン!」サッ


≪刃物を持ったキチガイ≫
レア度:★★★
攻撃力:2800
防御力:500
危ない。


青年「俺のターン!」サッ


≪略せば東大生≫
レア度:★★
攻撃力:1000
防御力:1000
どこの大学の学生かは不明。


キチガイ「しゃげぇぇぇぇぇぇぇっ!」ブンブンッ

東大生「東大生と呼んでもらってもかまいませんよ」クイッ

審判「互いのBP、3000ダウン!」バババッ

 少年(BP:25000) VS 青年(BP:7000)

実況『白熱したバトルが続きます!』

実況『カードバトル全国大会決勝!』

実況『両者の激闘も、もうすぐ三時間を超えようとしています!』

解説『稀に見る長期戦デスネー』

審判「…………」チラッ

実況『おや?』

審判「…………」チラッチラッ

実況『審判がしきりに腕時計をのぞいていますが……!? なにかあるんでしょうか?』

解説『おそらく──』

解説『そろそろ帰りたいんでしょうネー』

実況『なるほど』

審判「ジャッジメントトァ~~~~~ッイム!」バババッ

実況『おっと、ここでジャッジメントタイム!』

実況『このコールをされたら、プレイヤーはすみやかにゲームを中断せねばなりません』

ザワザワ……

審判「告白しよう!」

審判「私はもう帰りたい!」

審判「よって、この試合──」

審判「次のバトルで勝敗を決定する!」バババッ

少年「そ、そんな……次のバトルで!?」

青年「ぐっ……!」

審判「両者、出すカードを、30秒以内に決めろ!」

【カードバトル心得 其之七】
審判だって早く帰りたい時くらいある。

少年「よ、よし……」ゴクッ…

少年(ボクがお年玉で初めてカードバトルの袋を買った時、初めて当てたカード……!)

少年「ボクが出すカードは──これだ!」サッ


≪ダイナマイト・ボルケーノ・アングリー・デビル≫
レア度:★★★★★★
攻撃力:4000
防御力:4500
常に冷静沈着な悪魔。


青年「ならば──」

青年(俺が一番好きなカードで勝負だ……!)

青年「俺はコイツで勝負!」サッ


≪侍騎士≫
レア度:★★★★★★★★
攻撃力:5500
防御力:3000
侍なんだか騎士なんだかよく分からない人。


【カードバトル心得 其之八】
カードバトラーたる者、己のカードを常に信ずるべし。

デビル「頭を冷やせばいかなる困難にも対処できます」ニコッ

侍騎士「拙者の名刀レーヴァテインで一刀両断でござる!」チャキッ

実況『審判の判定は!?』

シ~ン……

審判「…………」

審判「判定!」バババッ

少年(ここまでやったんだ。たとえ負けても悔いはない……けど、やっぱり──)

青年(少年君はすごいプレイヤーだ。しかし、だからこそ──)

少年&青年(勝ちたいっ!!!)

審判「カードバトル全国大会、優勝者は──」

審判「この私ッ!!!」ビシッ



少年「……へ?」

青年「は?」

実況『ん……?』

解説『エッ?』

審判「よって優勝賞金一億円を手にするのは、この私!」バババッ



少年&青年「…………」

少年&青年「ふざけんじゃねぇぇぇっ!」ビュバババッ

グサササッ!

審判「ぐぎゃあああああっ!」ドサッ

実況『あーっと、二人が投げたカードが審判の全身に突き刺さった!』

実況『まるで手裏剣! まさに現代に生きる忍者!』

解説『自業自得デース!』

【カードバトル心得 其之九】
あまりにふざけた審判は、ブッ倒して良し。

実況『しかし……これでは審判は当分目を覚まさないでしょう』

実況『この場合、優勝者はどちらになるのでしょうか?』

実況『同時優勝ということにして、賞金は山分けでしょうか?』

解説『そんな必要はありマセーン!』

解説『これほどハイレベルなカードバトルは初めて見マシター!』

解説『ワタシ、カードバトルの生みの親として、とても感動しマシター!』

解説『というわけで、ワタシのポケットマネーからお金を足して』

解説『同時優勝の少年君と青年君両方に、一億円差し上げマース!』

実況『えええええっ!?』

ワー……! ワー……!

解説『ついでにナイス実況だったアナタにも、一億円あげマース!』

実況『ど、どうも』

実況(正直嬉しさより、もらっていいのかよって気持ちのが上回ってるんだけど)

ワー……! ワー……!

少年「今日はありがとうございました、お兄さん」

少年「内容的には……ボクの完敗でした」

青年「そんなことはないさ」

青年「こんなに苦しく、なおかつ楽しい勝負は初めてだったよ!」

青年「いつかまた──カードバトルしようぜ!」

少年「はいっ!」

ガシッ……!

実況『少年君と青年君、再戦を誓い合い、固い握手を交わしたァ~~~~~!』

解説『感動デース!』



【カードバトル心得 其之十】
カードバトラーたる者、みんなで仲良くプレイすべし!



                                    おしまい

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