豊音「くるみ寮……?」トシ「今日からここがアンタの家だよ」(58)

トシ「さて、これで大体の手続きやら根回しは終わりだね」

トシ「あとは、豊音の新しい家か。確か学校の近くに学生寮があったはず」

トシ「せっかくだから麻雀やれそうな子を全員同じ場所に住ませてみようかねぇ」

トシ「まあ、とにかく豊音がどうしたいかだけ先に聞いておこう」タッタッタッ

豊音「あー、トシさん。こんにちわ」

トシ「豊音、そろそろ私の家に居候してるのも飽きてきたんじゃないかい?」

豊音「べ、別にそんなことないですよ。村の外の世界を教えてくれただけでもちょー……とても感謝してます!」

トシ「まあアンタならそういうとは思ってたけどね。でもさ、どうせ一緒に住むんだったらアタシより学校のみんなの方が良くないかい?」

豊音「え? どういう意味ですか?」

トシ「実はね……」

豊音(こうしてトシさんから提案を受けた私は二つ返事で了承して、宮守女子の近くにあるという学生寮に住むことになった)

豊音(トシさんから聞いた話によると同じ日に入寮する友達が何人かいるらしいんだけど……」

胡桃「ようこそくるみ寮へ! って何その身長!」

豊音「こんにちはー。くるみ寮って言うんだここ」

胡桃「そう。そして私は管理人代理の鹿倉胡桃だよ!」

豊音「くるみ寮の胡桃ちゃん……なんかすごい偶然だね」

胡桃「私も今年になるまでこんな寮があるなんて知らなかったんだけどね」

豊音「今年になるまで……? って言うことは新入生ではないの?」

胡桃「あー! ちっさいからってそういうこと言うんだ!」

豊音「ご、ごめんなさい。そういうつもりじゃなくて……」

胡桃「まあいいけど。ほら、学生証。これ見れば私が新入生じゃないって信じてくれるよね」

豊音「あ、私と同学年だ。これからよろしくねー」

胡桃「うん。よろしく」

胡桃「他にも入寮する子がいるみたいだけど……」

塞「うわ、すごいボロ屋敷だねこれ……」

豊音「あ、入寮者の人みたいだよ」

胡桃「あれ? 塞も来たんだ。でも塞って実家から通学してなかった?」

塞「それがさー。前々から近くに住めるならそうしたいって思ってたんだよね」

胡桃「ああ……確か電車バス合わせて2時間だっけ」

塞「トシさんから話をもちかけられた時は正直すごい嬉しかったね」

豊音「あれ? 二人って友達?」

胡桃「うん。同じ部活の部員なんだよ」

塞「といっても3人しかいなくて廃部寸前なんだけどね」

白望「寮生活とかダル……私は家で楽したいのに……」ユラユラ

胡桃「噂をすれば何とやら。3人目の部員の登場だよ」

豊音「こんにちは!」

白望「……こんにちは」ユラユラ

豊音「私、姉帯豊音って言います! よろしく!」

白望「……よろしく」ユラユラ

豊音「ってどこ行くのー? 名前を教えてよー。って、行っちゃった……」

塞「あー……シロっていつもあんな感じだから気にしないでね」

胡桃「あとでちゃんと自己紹介する機会を作るから」

豊音「うん。分かった」

胡桃「とりあえず中に入ろうか」

塞「そうだねー」タッタッタッ



?「……」

くるみ寮・食堂

胡桃「とりあえず荷物はここに置いといて。他の場所は埃とかすごいから」

塞「ていうかここもちょっと埃っぽいよね……」目ゴシゴシ

豊音「まずは大掃除だね!」

胡桃「なんか楽しそうだね。えっと……」

豊音「姉帯豊音。同学年だし豊音でいいよー」

塞「胡桃とおないなんだ。じゃあ私ともだね」

胡桃「豊音ね、分かった。でもここの掃除ってなるとすごい時間掛かるだろうししんどいと思うよ」

豊音「でもみんなでこういうのするのってワクワクしない!?」

塞「ワクワクかー……全くないって訳じゃないけど」

胡桃「私はみんなが来る前にここを掃除してみて作業量を実感したから楽観的な事は言えないよ……」

豊音「まーまー。とにかくここからちょーきれーにしちゃおう!」

豊音「うわー板がキシキシいってるよー!」ピョンピョン

胡桃「うるさいそこ! っていうかそんな事してたら……」

ズボッ

豊音「わわっ」

胡桃「だから言ったのに。ほら、引っ張り上げるから手を出して」

豊音「ありがとー。でも……」(穴に挟まっている分を引いても豊音の方が高い)

胡桃「……自分で出れる?」

豊音「……うん」スポッ

塞「派手にやっちゃったねー。まあ穴を塞ぐのは私に任せてよ」

トンテンカンテントントントン

塞「ふふ、ふふふ……塞ぐの楽しいなー……」

豊音「おー! ちょー手際いいよー!」

胡桃(やっぱりやりたかっただけか)

豊音「そんなこんなで掃除終わり!」

塞「食堂しか終わってないけどね」

胡桃「しかももうそろそろ夕方だけどね。今日はここに布団を敷くしかないかなぁ」

豊音「え!? もしかして今日はみんなで一緒に寝るの!?」

胡桃「まあ個室はまだ使えるような状況じゃないしそうするしか無いよね」

塞「なんか不都合でもあるの?」

豊音「ううん、全然! ちょー楽しみだなーって思って」

胡桃「まあ修学旅行みたいな感じにはなりそうだね」

塞「廃部寸前の部活に所属してる上に浮いた話なんて聞かない私達で面白い話になるとは思えないけどねー」

豊音「そういえば、シロさん? どこ行っちゃったのかな?」

胡桃「あー! シロ全く掃除手伝ってないじゃない!」

塞「ほぼ廃墟同然のこの寮のどこでくつろいでいるのやら」

胡桃「探しに行くよ!」

豊音「シロさんとのかくれんぼーだよ!」

くるみ寮・屋上

白望「zzz」

塞「こんな所から屋上に出られるんだ」

胡桃「出られるのは出られるけど……屋上っていうか屋根だよねこれ」

豊音「ちょ、ちょっとここは怖いかな……」

胡桃「体が大きいと風にあおられたりしてバランス崩すかもだね。私が行ってくる」

塞「気をつけなよー」

?「イノチヅナ、ドウゾ」

胡桃「あーありがとー。さて行きますか」ソロリソロリ

塞「命綱とは豊音は気が利くね」

豊音「え? 私じゃないよ?」

塞「え? じゃあ誰が……」

エイスリン「コンニチハ!」

豊音・塞「「うわっ!」」

胡桃「え? なに!? ってあわわわバランスが!」フラフラ

白望「ん……おはよう。みんなしてこんな所でどうしたの?」

胡桃「どうしたのじゃないよ! なんでこんな所で寝てるの!」

白望「屋根の上なら暖かいかなって思って……くしゅ」

胡桃「岩手の4月を何だと思ってるの……」

白望「こたつ用の毛布被ってるから大丈夫かなと」

胡桃「こたつ用なんだからこたつとセットじゃないとダメでしょ」

白望「それもそうだった」

塞「まーとりあえずこっちに戻ってきなよー」

くるみ寮・食堂

胡桃「じゃあ改めて自己紹介してもらおうかな。というかいつの間にか一人増えてない?」

エイスリン「ドウモデス」

白望「あれ? もしかしてエイスリン・ウィッシュアートさん?」

エイスリン「チガウ!」

塞「え? 違うの? シロの勘違い?」

白望「……ちょいタンマ」

白望「……分かった。この子はエイスリン」

エイスリン「アタリ!」

胡桃「何が違うの?」

塞「さあ?」

豊音(そんなこんなでみんなの自己紹介も終わりみんなで夕食の準備だよ!)

胡桃「いきなりキッチンの設備が万全に使えるなんて思ってなかったから今日は簡単なのにするよ」

塞「……ですよねー」

胡桃「なんか一人だけ気合入れすぎなんだけど!」ププッ

豊音「で、でも塞さん割烹着ちょー似合ってるよ!」

塞「穴があったら入ってそれを中から塞ぎたい……」

白望「出られなくなるよ」

塞「それくらい恥ずかしいっていう例え話だよ!」

胡桃「とりあえず炊飯器のスイッチを入れるね」ポチッ

………プツン

塞「うわーブレーカー落ちたー!」

胡桃「炊飯器だけで落ちるとかさすがにあり得ないんですけど!」

白望「あ、ごめん。同じ場所にこたつのコンセント差してた」

胡桃「シーロー?」ギロリ

白望「ごめんごめん」

豊音「ブレーカーってここかな?」パチッ

塞「あ、付いた」

……プツン

豊音「わわっ、また落ちちゃった」パチッ

……プツン

胡桃「ちょっと待った! こたつのコンセント抜かないと無限ループだから!」

白望「抜くの……?」

塞「そんな残念そうな顔されてもご飯炊くためだし」

エイスリン「オフトンモッテキタ」

白望「ありがとエイスリン。気が利くね」

エイスリン「ドウイタシマシテ!」

白望「せっかくだし一緒に寝る?」

エイスリン「……ココロノジュンビガ」

塞「こらこら。エイスリンさんまでサボり仲間にしないの」

胡桃「レトルトカレーとサラダだし4人もいらないと言えばいらないけどね」

豊音「カレーかー。私はじめて食べるよー」

塞「え!? カレー食べた事無いの!?」

胡桃「ホントに!? 私とか家だと週一ペースとかだったから逆に飽きてきてるくらいなんだけど!」

豊音「いわゆる『洋食』っていうのは食べた事ないかな」

胡桃「そうなんだ……」

胡桃(という事は和食中心? 和食中心でその身長?
    欧米の食文化を取り入れた事で日本人の平均身長が伸びたとかいう仮説は全くのでたらめだったの?
    私の努力って一体なんだったの……?)

塞「レトルトは10分前くらいから温めれば良いとして、それまでに野菜切っておかないとね」

豊音「はーい! 私がやるよー!」

塞「そう? じゃあ任せる」

豊音「いっくよー!」ズドン!

塞「ひっ!?」

胡桃「ちょ! 危ないってば!」

塞「ごめんごめん私がやる私がやるべきだった」

豊音「分かった……」シュン

胡桃「と、豊音はあっちで私とドレッシング作ろう!」

豊音「ドレッシングって作るものなの!? やるやるー!」

胡桃(まあ、ポン酢にごま油混ぜるだけの簡単なやつだけどね)

胡桃(ていうか私達の炊事レベルってどれくらいなんだろ。ちょっと心配だな)

豊音「まぜまぜまぜまぜ」

胡桃「楽しそうで何より。さて、野菜の方はっと」

塞「ああ。野菜ならもう切っといたよ」

胡桃「あ、もう終わってたんだ。じゃあ玉ねぎを水に……」

塞「それちょっと待った。そんな事したら栄養抜けるでしょ」

胡桃「え、でもこのままだと辛いんじゃ」

塞「電子レンジでちょっと温めるとかで十分だよ。って言ってもそんなモノないか」

エイスリン「レンジ、ソウコ二アッタ」

塞「おお、気が利くねー」

胡桃(なんかもう気が利くってレベルじゃないような)

塞「温めたら後はドレッシングにずっと浸しておけば良いと思うよ」

胡桃(そして塞はなんかお母さんみたい。管理人代理は私なのに!)

ちょっと風呂に入りながら話を練ってきます。

塞「じゃあ温めようか……って、これやるとまたあのパターンだよね」

エイスリン「コード、アルヨ」

胡桃「ってこれ学校にあるような延長コードじゃない!」

塞「さすが学生寮……でもこんなのさすがにあるものなのかなぁ」

胡桃「とりあえずこれで隣の部屋のコンセントから引っ張ってこよう」

塞「延長コードが部屋を跨ぐってなんかすごい状況だね……」

豊音「でもこういうちょっとした面倒が楽しいと思う。私だけかな?」

胡桃「私もなんか楽しくなってきたような気はするよ」

塞「普通に家に住んでたんじゃまず経験出来ない事なのは間違いないね」

白望「うん、私もそう思う」

胡桃「さっきから寝てるだけの子がそれ言う!?」

塞「その内シロにも何か仕事ふらないとね」

胡桃「そこは任せといて! 共同生活なんだから一人分の仕事はキッチリして貰わないとね!」

豊音「共同生活……いい言葉だよー」ジーン

白望「なんかダルい流れになりそう……」

胡桃「それをご飯の時に話し合うとしてそろそろ準備しいようか」

塞「えーと人数分の皿は……」

エイスリン「……」サッ

塞「さすがエイスリンさん。仕事が早いね。お茶とか用意してないし水にしようか」

胡桃「あ、なんかそっちから出る水あんまりキレイじゃなかったから隣のを試してみた方が良いよ」

塞「そっかー。さすがに古いと色々と問題があるんだろうねー」ジャー

塞「……って、なんか水が赤いんだけど。どういう事なのこれ」

豊音「ちょー怖いよー!」

胡桃(引っかかった! 私も先に来て掃除してた時に同じ状況になってびっくりしたからね)

塞「何なの? もしかして何かの呪い……?」オロオロ

豊音「えー! この中に幽霊さんをお祓い出来る巫女さんはいませんかー!」バタバタ

胡桃(私だけびっくりしたっていうのも不公平だからね。みんなもびっくりすると良いよ!)

白望「落ち着いて。それただの水道管の錆だから」

塞「え? そうなの?」

豊音「ほんとに? ぬか喜びさせるための嘘とかじゃない?」

白望「そんなダルい事しない……しばらく使われてなかった水道を使うとたまになるみたい」

白望「ずっと流しとけばそのうち元に戻るから大丈夫。あとは普通に使えるよ」

豊音「おー! シロって物知りなんだね!」

白望「……うん」

白望(ウチの家族が庭の手入れをサボってたせいで、庭の水道で同じことが起こったとは言い難い)

豊音(そんなこんなでご飯だよ!)

胡桃「手を合わせてーって、エイスリンさんはこれで良いのかな?」

エイスリン「ダイジョウブ」

白望「自分で勝手にやるから心配しなくていいってさ」

胡桃「分かった。それでは手を合わせて」

五人『いただきます』

豊音達がごはん食べてるタイミングで出てくるとか我が家のGはタイミング読めない子だな。
ちょっと駆除してきます。

豊音(ごはんの時の話し合いの結果、胡桃は寮内の掃除、塞は炊事全般、エイスリンさんは道具の整理整頓、シロは家計を主に担当する事になった)

豊音(私はどうなったかと言うと忙しい人をその都度手伝う事になった)

豊音(担当が貰えないのは寂しいけど麻雀以外に出来る事はほとんど無いから仕方ない)

豊音(でもこの一年で色々出来るようにちょー頑張るよー!)

豊音「みんな、これから一年間よろしくお願いします」ペッコリン

塞「こちらこそよろしくね」

胡桃「まずはここでの生活を軌道にのせないとね!」

白望「みんな頑張って……」

エイスリン「ガンバル!」

豊音(こうして、一つ屋根の下で暮らす私達の一年間がスタートした。みんな、たくさん思い出を作ろうね)

プロローグ終了みたいな所ですがちょっと今日の所はこれで終了とさせて貰います……
規制明けたから久しぶりに書いてみようと思ったけど予想以上に遅筆になっててこの体たらく。非常に申し訳ない。
宮守メンバーで共同生活っていうのはまた書きたいので時間がある時にリベンジします。

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