女「シュレーディンガーの猫って知ってる?」男「なにそれ」(174)

女「知らない?」

男「聞いたこともないよ」

女「だったら、実際にやってみた方が早いわね」

女「こんなこともあろうかと、準備しておいてよかったわ」

男(準備……?)

女「ちょっとこっち来て」スタスタ

男「うん」スタスタ

女「まずはこれぐらいの箱を用意します」スッ

男「うん」

女「続いて猫を一匹用意します」スッ

猫「ミャーミャー」

男「お、可愛い猫だね」

女「そして猫をこの箱の中に入れて、閉じ込めます」ヒョイッ

猫「ミャーミャー」カリカリ

男「うんうん」

女「そしたら──」

女「箱の横にある小さな穴から、青酸ガスを入れます」シュウウウ…

男「!?」

女「たっぷり入れます」シュウウウ…

男「オイオイ、そんなことしたら猫が死んじゃうじゃないか!」

女「あら、そうかしら?」シュウウウ…

女「箱を開けてみるまで、猫が生きてるか死んでるかは分からないじゃない」シュウウウ…

男「いやいや、分かるって……」

一時間後──

女「そろそろいいかしら」

女「じゃ、箱を開けるわよ」

男「う、うん」

男(かわいそうに……猫の死体なんか見たくないなぁ)

女「えいっ」パカッ

男「…………」ゴクリ…

猫「ニャーン」ピョンッ

男「えっ、生きてた!?」

女「やっぱりね……」

男「な、なんで生きてるんだ!?」

男「もしかして──」

男「さっきまで入れてたのは、青酸ガスじゃなくただの空気だったってオチ?」

女「ちがうわ……あれはまちがいなく青酸ガスよ」

男「だったらなぜ──」

女「説明してるヒマはないわ! 気をつけて! 来るわよ!」

男「来るって……な、なにが!?」

猫「……やれやれ」コキッ

猫「この吾輩もナメられたものだ……」

猫「あの程度の量の青酸ガスで、この吾輩を絶命させようなどと……」ゴゴゴ…

男(なんて殺気だ……こうして睨まれてるだけで皮膚をえぐられるようだ……)ゾクッ

女「もちろん通じるなんて毛ほども思っちゃいないわ」

女「だけど……可能性が1パーセントでもあれば、やってみるのが人間でしょう!?」

猫「人間とは愚かな生き物よ……」

猫「やはりこの世を統べるのは、我々猫こそ相応しい」

猫「貴様ら人間は、吾輩の手で一匹残らず駆逐してくれるわッ!」ギンッ

男「お、お前は──」

男「お前はいったい何者なんだ!?」

猫「吾輩は猫である!」

     ド     ン     !     !     !

男「もしかしてお前は、夏目漱石の小説のモデルになった猫か!?」

猫「夏目? そんな輩は知らぬ」

男「ほら、『ぼっちゃん』や『こころ』の作者の……」

猫「知らぬ!」

男「ほら、昔千円札に記載されてた……」

猫「知らぬ!」

男「ほら、東大に脳味噌が保存されてる……」

猫「あ~夏目漱石! 知ってる知ってる!」

猫「たしか重さは1,425グラムだったんだよなぁ」

男「そうなんですか……詳しいですね」

猫「どうやら貴様らはなかなか話せる人間のようだな」

男(よかった、戦いは避けられそうだ……)ホッ…

女「でも聖徳太子は知らないんでしょ?」

猫「!」ピクッ

猫「なにいってんだッ!!!」

猫「聖徳太子を知らない? そんな無礼な質問があるかァッ!」

猫「ゆ、許さん……じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」

女「ど、どうしよ……怒らせちゃった」

男「君も君だが、猫も猫だな」

女「来るわよ!」サッ

男「……くっ!」サッ

猫「『地獄の爪(ジェノサイド・ディスティニー・クロウ)』!」シャッ

ザシュッ! ズバッ!

女「きゃああっ!」

男「ぐおぁっ!」

猫「ふふふ、一撃で心臓をえぐり取るつもりだったが……大した防御力だ」スタッ

男「……さっきと話がちがうぞ!」

男「じわじわとなぶり殺しにするんじゃなかったのか!?」

猫「気が変わった!」

     ド     ン     !     !     !

猫「『煉獄の脚(ファイナル・ジャイアント・キック)』!」ブオンッ

ドゴォッ!

女「いやぁっ!」

男「ぐうっ!」

猫「『天国の尾(ハピネス・カタストロフィ・テイル)』!」ヒュバッ

バシィッ!

女「あぐっ!」

男「ぐわあっ!」

猫「キャットパンチ!」シュッ

ボゴォッ!

女「いやぁんっ!」

男(いきなり技名が適当になった!)

なにこれ

女「ほら早く服を脱いで」

女「ここにいれるのよ」

女「いいわ凄くいい」アンアン

女「な、中で…中でだして!」イクイクゥ

女「さて私は妊娠しているかしらしてないかしら?これがシュレーディンガーの猫よ」

みたいな話を期待してスレを開いたっていうのに

猫「二人とも瀕死だな……そろそろあの世に送ってやろう」

女「うぅっ……!」

猫「ちゃんとドナー登録はしているか?」

女「もちろんしてるわよ!」

男(回復する時間が欲しい……。なんとかして……時間を稼がないと!)

男(猫の弱点といえば──『猫に小判』!)



【ことわざ豆知識 Vol.1 『猫に小判』】

小判の価値を知らない猫に、小判を与えても無駄だというたとえ。
転じて、価値の分からない人に価値のある物品を与えても無意味だということ。

男「オイ!」

猫「ん?」

男「君はたしかにスゴイ」

男「青酸ガスに耐え、猫なのに日本語を話せて、しかもこれだけ強いんだからね」

猫「当然である」ムフッ

男「だけど弱点がある!」

男「いくら賢いといっても猫は猫、君にはこの100円玉を活かす能力はない!」チャリン

男「だって君は、お金の使い方なんか分からないはずだからね!」

猫「安い挑発だ……」

猫「安すぎて、かえって高級感すら漂っておるわ!」

猫「よかろう、この100円玉を一年で一億円にしてやろう」スッ…

猫「ここで動かず待っていろよ!」タタタッ

男「…………」

男「さ、帰ろうか」クルッ

女「そうね」

一年後──

猫は大成功を収めていた。

世界経済の五分の二を牛耳る巨大企業、

『キャット・コーポレーション』の総帥となっていた。



猫「どうだね?」

猫「この高さ1,000メートルを誇る『キャットビル』最上階からの景色は……」

男「いや、もうスゴイとしかいえませんよ」

男「ところで、あなたはこの一年で得た巨万の富でなにをしようというのです?」

猫「世界中のキャットフードの買い占めだ」

男(やっぱ猫に小判じゃねーか)

猫「ところで、君の相方の女性はどうしたのだ? 彼女も招待したというのに」

男「とっくに別れました」

猫「なぜ?」

男「理由は……分かりません」

男「半年ぐらい前、いきなり彼女の方からもう別れようって……」

猫「どうして君は追いかけなかったのだ?」

男「彼女の方が足が速いんですよ」

猫「なるほど……」

猫「聞こうッ!」

猫「今でも彼女とヨリを戻したいという気持ちはあるか?」

男「そりゃもちろんありますよ。俺は今でも彼女が好きです」

男「向こうが俺のことを嫌いになったとしても──」

男「せめて俺と別れたくなった理由を聞かなきゃ……スッキリできません」

男「かといって、人探しなんかやったことないですし……」

猫「……彼女を探すのを、吾輩に手伝わせてはくれないか?」

男「えっ、いいんですか?」

猫「もちろんだ。こうして総帥になれたのは、貴様の100円のおかげだからな」

猫「ぜひ協力させてくれ!」

男「……ありがとうございます!」ガシッ

猫「秘書!」

秘書「はい」

猫「吾輩の、今日の午後の予定は?」

秘書「特にありません」

猫「全てキャンセルしろ!」

秘書「分かりました」

男「案外ヒマなんですね」

男と猫は、女探しの旅に出た。

東京都──

猫「東京か……。自然は少なく、人ばかりが多く、空気も汚れていて、どうも好かんな」

男「まあまあ、きっとここなら手がかりがあるはずです!」

猫「オイ、そこの都民」

都民「なんや? しゃべる猫とはけったいな猫やな」

猫「この写真の女を見たことはないか?」ピラッ

都民「どれどれ……」

都民「知っとるで!」

男(はえーなオイ!)

男「ど、どこにいるんですか!?」

都民「兄ちゃん、この女のなんなんや?」ジロッ

男「恋人です」

男(元、だけど)

都民「なんやて!?」

都民「一人の女のためにわざわざ東京まで……ごっつ泣ける話やでぇ」グスッ

男「──で、この人はどこにいるんですか?」

都民「聞いて驚くなや……兄ちゃん」

都民「秋葉原(アキバ)や」ボソッ

男「ええええええええええっ!!?」

猫「アキバとはなんなのだ?」

男「ええええええええええっ!!? アキバも知らないんですか!?」

猫「日本の地理は不勉強でな」

男「ええええええええええっ!!? 怒ると思いきや案外素直ですね」

男「神田の隣にある駅ですよ」

猫「ええええええええええっ!!?」

都民「そや! ワイも兄ちゃんらの旅に連れてってくれや!」

男&猫「ええええええええええっ!!?」

秋葉原──

男(昔、友だちと一回来たっけなぁ)キョロキョロ

都民「気ィつけえや、二人とも」

都民「今アキバは、オタクによる『一般人狩り』が横行しとるんや」

男「一般人狩り……?」

都民「さっそく来よったで!」

オタクA「オタクに非ずは人に非ず」ザッ

オタクB「聖地を侵す者は、死あるのみですぞ」ザッ

オタクC「ヌシたちの血と肉で、今夜は酒池肉林でござる」ザッ

都民「江戸っ子なめんなや! 『たこ焼きクラッシュ』や!」ボボボッ

ズガガーンッ!

猫「キャットチョップ!」シュッ

ベシッ!

男「武神鳳凰滅殺掌!」ブオンッ

バキィッ!

都民「ふう……危ないとこやったな」

猫「だが、こいつらの仲間がどんどん押し寄せてきたぞ」

男「とても全員は相手にしてられないな……」

都民「あっちや! あのカフェに逃げ込むんや!」ダッ

メイドカフェ──

女「いらっしゃいませ、ご主人さま──」

女「!」ハッ

男「!」ハッ

女「あ、あなたは……!」

男「……やあ、久しぶり。半年ぶりだね」

女「どうして、こんなところに──」

男「君に会いたくて……猫や都民さんに協力してもらって、ここまで来たんだよ」

女「ああっ……会いたかったわ……!」ギュッ

都民「感動の再会やなぁ……泣けるでホンマ」グスッ…

猫「ふん、下らん」ジョロロ…

都民「アンタも股間から涙が出とるで」

猫「これは尿だ」ジョロロ…

犬「おおっと、そこまでにしてもらおうか!」

猫「!」

猫「貴様は──『ドッグ・カンパニー』会長!? なぜこんなところに!?」

都民「アホな!?」

都民「『ドッグ・カンパニー』ゆうたら」

都民「世界経済の五分の二を牛耳る大企業やないけ!」

犬「この店は『ドッグ・カンパニー』系列の店でね」

犬「半年前、この女はワシが買ったのだよ」

犬「つまりワシのものだ。永久にこのメイド喫茶で働いてもらう」

男「な、なんだって!?」

女「ごめんなさい……」

女「実はあなたにシュレーディンガーの猫を説明するために」

女「箱と青酸ガスを購入しようとしたんだけど、それが高くて──」

女「当時金貸しをやっていたあの犬から、借金してしまったの……」

女「そしてそれが返せなくて、ならワシの女になれっていわれてあなたと別れたの……」

男「そうだったのか……」

猫「借金を負わせ、それを材料に愛する男女を引き裂くとは、まさに鬼畜の所業!」

猫「資本主義の弊害!」

猫「犬、貴様は吾輩が成敗してくれる!」

犬「よかろう! ワシもおぬしとは決着をつけたかったからな!」

犬「ゆくぞ!」

犬「ワシの体温を急上昇させ、放つ奥義!」ゴゴゴ…

犬「『ホットドッグ』!!!」

ボワァァァッ!

猫「ぐわぁぁぁっ!」ドサッ

都民「なんて奴や! 犬のくせして、口から火を吐きよったで!」

猫「あっちぃっ! 吾輩は猫舌である!」ピクピク…

男「大丈夫か、猫!」

女「しっかりして!」

猫「あつ……い……」ヒリヒリ…

男「舌を……火傷してる……」

女「ひどい……!」

都民「大丈夫や!」サッ

都民「ワイは大阪大学医学部卒や。猫とはいえ、この程度なら治せるで!」

男「すげーなオイ」

男「とにかくありがとう。猫の治療はアンタにお願いするよ!」

都民「任せとき!」ビシッ

男「さあ、いよいよ最終決戦だ!」

女「ええ!」

犬「愚かな人間どもよ……かかってくるがいい!」

男「無明奈落咆哮波!」ドゥンッ

ズドォォンッ!

男「烈火雷撃双竜陣!」バリバリッ

ズババババッ!

男「天地陰陽災禍弾!」ボッ

ドゴォンッ!

犬「効かぬ、効かぬ、効かぬゥ!」

犬「この程度ではトリミングにもならぬわァ!」

犬「そろそろワシからも攻撃させてもらうぞ」

犬「『ホットドッグ』と対をなす──」

犬「ワシの体温を急低下させて、放つ奥義!」シュウウ…

犬「『アイスドッグ』!!!」

ビュオォォォ……!

男「なっ……!」ピシピシ…

都民「今度は吹雪を吐き出しおった!」

男「さっきの技は、食べ物のホットドッグと犬(ドッグ)がかかってたけど──」

男「アイスドッグなんてただ、ホットをアイスにしただけじゃないか!」

男「アイスドッグなんて食べ物はないぞ!」

女「あるわよ」

男「え、マジ!?」

男「くぅぅっ……!」ピシピシ…

男「体が……みるみる凍りついていく……!」ピシピシ…

犬「フフフ、もはや動けまい」

犬「トドメは──おぬしらけがらわしい人間に相応しい技で葬ってやろう!」

犬「人間の業(カルマ)に潜む悪のエネルギーを具現化させ、叩き込む技──」

犬「『人間ドッグ』でなッ!」ブゥゥゥン…

男「ま、待てっ! 話せば分かる! 人間ドッグじゃなく“人間ドック”だぞ!」

犬「問答無用ッ!」

女「待ちなさいっ!」

女「今度は私が相手よ!」

犬「ほう……? 邪魔立てするのならば、ワシの女とて容赦せぬぞ!」

男「に、逃げるんだ……!」ピシピシ…

男「この犬は危険すぎる……!」ピシピシ…

女「大丈夫! メイドカフェには、これがあるわ!」サッ

都民(あれは、メイドさんを呼ぶためのベルやないか……!?)

都民(いったいあんなもん、何に使うつもりや!?)

犬「そのベルを投げてワシを攻撃するつもりか!?」

犬「大和撫子らしい、か弱い抵抗よのう!」

女「ちがうわ! ……ただ鳴らすだけよ」

チリンチリン……

チリンチリン……

男(本当にただ鳴らしてるだけだ……)

都民(いったいこれに、なんの意味があるっちゅうんや!?)

犬「ふん、心地よい音色ではないか──」

犬「!?」ダラ…

犬「な、なんだ!?」ダラダラ…

犬「どういうことだ、これは!?」ダラダラ…

犬「ヨダレが、唾液の分泌が……止まらんッ!?」ダラダラ…

女「やはりね……」

女「猫が『シュレーディンガーの猫』だとするなら、ライバルであるあなたは──」

女「『パブロフの犬』だったのよ!」ビシッ

犬「ううっ……!」ダラダラ…

都民(『パブロフの犬』──聞いたことあるで!)

都民(ベルを鳴らされてから、餌をもらうっちゅうのを繰り返した犬は)

都民(いつしかベルを鳴らされるだけでヨダレを出すようになるっちゅう実験や!)

犬「いくら止めようとしても、と、止まらんッ……!」ダラダラ…

女「さあ、脱水症状になる前に降参なさい!」チリンチリン…

犬「う、うぐぐ……おのれぇ……」ダラダラ…

犬「ならば、ベルを鳴らすおぬしを噛み殺してやるまでよ!」グワッ

女「きゃああっ!?」

ガキィンッ!

犬「爪で、ワシの牙を受け止めた……だと……!?」

猫「二人ともご苦労。二人が戦っている間にすっかり回復できた」

犬「しまった……! ならば──」

猫「接近戦ならば、身軽な吾輩に分がある!」

猫「最終奥義──キャットヘッドッ!」ブンッ

ガツンッ!

犬「ぐわぁぁぁ……っ!」ドサァッ

都民(なんて頭突きや! こんな頭突き見たんは、ジダンのヘッド以来やで!)

犬「く、くそっ……このワシが、たかが人間や猫ごときに……!」

猫「貴様は吾輩とちがって、元々人間とは仲がよかったはず」

猫「……なぜ、貴様は金を集め『ドッグ・カンパニー』を作ったのだ?」

猫「吾輩のように、ドッグフードを独占するためか?」

犬「そんな大層な理由ではない……」

犬「ワシら犬──いや全ての哺乳類にとって、恐ろしい病」

犬「“狂犬病”を撲滅するためだ……」

犬「ワシはこれまでに稼いだ金は全て、狂犬病対策につぎ込んでいる……」

男「猫よりずっと立派だなぁ」

猫「やかましい」

女「だったら私を借金漬けにして、私物化したのはどうしてなの?」

犬「……ワシは元捨て犬でな」

犬「おぬしがかつて飼い主だった女性に似ておったので」

犬「愛憎入り混じる感情を抱いてしまい、あんなことをしてしまった」

犬「どうか許して欲しい……」

女「…………」

女「分かったわ、許してあげる! メイドカフェもそれなりに楽しかったしね!」

男「やっぱり君は優しいな」

都民「ホンマ人を泣かすのがうまい奴らやで……」グスッ…

猫「これは尿だ」ジョロロ…

男「あの……」

女「ん? なぁに?」

男「この半年間、君と離れ離れになって分かった」

女「?」

男「俺はもう残りの人生のうち、一秒たりとも君と離れていたくない!」

男「君は俺のものだ、そして俺は君のものだ!」

男「だから──」

男「結婚しよう!」

女「……はい!」

男「──そうだ!」

男「猫と犬、二匹とも俺たちの家で暮らさないか?」

女「そうね!」

猫「よいのか? 吾輩のような猫をそばにおいても……」

男「もちろんさ!」

犬「…………」

犬「ワ、ワシに人に飼われる資格など──」プイッ

女「意地を張らないの! さ、行きましょ!」ガシッ

男「都民さん、アンタはどうする?」

都民「フッ……ワイはしがない東京都民やで」

都民「生まれも育ちも東京や。東京を出るつもりはあらへん」

都民「これからも、東京都知事としてお前らを応援したるわ」

男「ホントすげーよアンタ」

一年後──

合併を果たした『ドッグ・キャット・コーポレーション』は、

もはや企業や国という枠を超え、純粋に人々や動物の生活をよりよくしようという

地球のリーダーともいえる組織に成長していた。



犬「ついに狂犬病ウイルスは根絶した」

犬「しかし、ワシらの戦いはまだまだ終わらぬ!」

猫「うむ」

猫「吾輩たちが手を取り合って」

猫「人と動物と自然が快適に共存できる地球を作ろうではないか!」

女「二匹とも、ご飯よ~!」

猫「すぐ行くニャ!」タタタッ

犬「了解ワン!」タタタッ

女「今夜はごちそうよ」

犬「おいしいワン!」ガツガツ…

猫「うまいニャ~!」ムシャムシャ

赤子「バブ~バブ~」ヨチヨチ…

男「どうでもいいけど、なんでお前らって」

男「メシ食ったり遊ぶ時だけ、語尾に鳴き声つけるわけ?」

猫「猫が飼い猫やる時は、語尾に『ニャ』をつけるのが相場って決まってるニャ」

犬「飼い犬も同じだワン」

男「そういうもんなんだ……」



地球の平和はこれからも守られていくだろう……。

『シュレーディンガーの猫』と『パブロフの犬』がいる限り!

                                     <完>

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