妹「兄さん、博打で勝負しましょう」兄「・・・ほう」(63)

兄「わざわざ博打なんて言い出すくらいだ、当然何かかけるんだろう?」

妹「さすが察しがいいですね。もちろんそうです」

兄「いいだろう。条件によっては受けてやらなくもないぞ」

妹「ふっ・・・それでこそ兄さんです」ニヤリ

兄「ククク・・・」

兄「それで・・・何をかけるんだ?金か?」

妹「いいえ、そんな即物的なものではありません」

妹「もっと取り返しのつかないものをかけるんですよ」

兄「ほう・・・悪くないな。身を削るようなリスク程昂まるというものだ」

兄「勿体つけずに言えっ・・・何をかけるんだ?」

妹「私が勝ったら・・・兄さん、貴方の童貞を頂きます」

兄「・・・」

妹「そしてもし、兄さんが勝ったのなら・・・この私の処女を捧げましょう」

兄「ほう・・・童貞と処女を賭けるか。フェアーな賭けだし、なかなか面白いとも言える」

妹「ふっ」ニヤリ

兄「・・・と、いうとでも思ったか?」

妹「っ?!」

兄「一見すればフェアーな賭けに見えるこの条件・・・」

兄「だが実質どう転ぼうが得をするのはお前一人っ・・・!!」

妹「なっ?!」

兄「あいにくと・・・俺は実妹と結ばれて悦に浸るような・・・そんな変態性は持ち合わせていないっ・・・!」

妹「ぐくっ・・・!で、ではなんですか?私は変態だとでもいうのですか?」

兄「そうだろうがっ・・・!俺の脱いだパンツを洗濯前に『事』に使っていること、俺が知らないとでも・・・?」

妹「な、何故それをっ!!・・・いえ、今はそのことはいいです」

妹「墓穴を掘りましたね、兄さん」

兄「なんだと・・・?」

妹「私は今、兄さんの童貞を頂くと、負けたら私の処女を捧げると」

妹「そう言っただけで・・・誰に、とは言明しておりませんっ・・・」

兄「っ?!」

妹「つまり、そういった発想がでてくる兄さん・・・貴方も十二分に変態であるということ・・・」

妹「実の妹と結ばれたいと、深層心理ではそう望んでいるということにほかありません・・・!!」

兄「これはこれは・・・とんだ暴論、揚げ足取りもいいところだ」

兄「だがそれでいいんだな?」

妹「ど、どういうことでしょうか?」

兄「お前が今言った条件だ。本当にそれでいいんだな?」

妹「意味が・・・わかりかねますが」

兄「暗愚のふりはやめろっ・・・!わかっているはずだっ・・・!!」

兄「つまり、勝った側は相手の貞操を好きにしていい。そう文字通り、『好きにしていい』ということだ・・・!!」

妹「そ、そうです。つまり私が負けた場合潔くこの貞操をですね、」

兄「いい加減にしろっ・・・!そうじゃない、そうじゃないだろっ・・・!」

兄「俺が勝ったら、例えばお前は俺の命令で親父を誘惑してその貞操を捧げなければいけないと、そういうことだっ・・・!」

妹「っ!!」

兄「そのかわり・・・俺が負けたらこの貞操、好きにすればいいだろう。なんなら犬とでもシてやるぞ」

妹(これは僥倖・・・思わぬ僥倖っ・・・!!)

妹(分かってはいたが万が一というともあった・・・)

妹(それは兄さんが『童貞』であるということっ・・・!!)

妹(それを知れただけでも・・・ここは十分・・・ここが分水嶺・・・!引き時だっ・・・!!)

妹「そ、・・・それはさすがに嫌ですね。やはりこの話はなかったことにして、」

兄「・・・あ?」

妹「っ?!」ゾクッ

兄「勝負だろうがっ・・・!!」

兄「お互いどう思ってようが・・・それを口にだしちまった時点で・・・勝負しかないだろうがっ・・・!」

兄「今更引くのは許さんぞっ・・・!!」

妹(こ、これだ・・・この気迫・・・!!)ゾクゾク

妹(いつもはただだらだらしてネトゲやソシャゲやらブログ荒らしばかりしている兄さん・・・)

妹(それがこと勝負事、特にギャンブルになったとたん見せるこの貌っ・・・!!!)

妹(私は・・・兄さんのこの貌が見たかったんだっ・・・!!)ブルブル

兄「何、震えてるんだ・・・?怖気ついたか?・・・いや、」

妹「ふ、ふふ・・・そうです、怖気づいてなど鋳ません。これは武者震いです」ニヤァ

兄「ククク・・・いい顔するじゃねえか・・・!!!」

妹「いいでしょう!では当初の予定通り、勝負と参りましょう!」

兄「是非もなしっ・・・!!!」

妹「言いましたね?・・・兄さんらしくもない。初歩的なミスです」

兄「ほう・・・?」

妹「私はまだ勝負をどのような形で行うか・・・それすら説明していないのですよ」

妹「しかし兄さん、貴方はもう受けるといってしまった」

妹「どんな勝負であれ・・・まさかお吐きになった御唾、飲まれるわけはありませんよね?」

兄「猪口才」

妹「え・・・・?」

兄「下らん揺さぶりは無用。言ったはずだ是非もないとな」

兄「どんな勝負であれ叩き潰す・・・。それにお前も最初に言っているからなこれは博打だと」

兄「まさか料理勝負などと言い出さないだろうからな」

妹「・・・それは勿論ですとも」

妹(あ、やっぱりだめですか)

妹「もちろん、博打といったからには互いに平等な条件のものを提示しますよ」

妹「これでも博打者の端くれですからね」

兄「ククク・・・」

妹「・・・何か、おかしなことでも?」

兄「いや、ただ嬉しくてな。お前に色々と教えてきたかいがあったというもんだ」

妹(っ!これっちが嬉キュンするからそんな顔はやめてくださいっ・・・)

兄「さぁ、聞こうじゃないか。お題はなんだ?」

妹「ここは誰もが知っていてかつシンプルでギャンブル性のある・・・」

妹「ジャンケンで勝負いたしましょう!」

兄「・・・ほう。いいのか?お前の得意な札モノじゃなくてよ・・・」

妹「完膚なきまでに兄さんを負かし、その尊厳を奪う・・・考えただけで興奮します」

妹「そしてそのためにはフェアーじゃないといけない・・・ですからこそのこのお題です」

兄「ふん・・・いいだろう。ジャンケンなら描写も楽だからな・・・!!!」

兄「では最初に言っておこう・・・」

妹(きたっ・・・)

兄「俺はグーを出す・・・いいな」

妹(やはり仕掛けてきましたね)

妹「・・・そうですね、ジャンケンはそのままだと本当に平等なただの遊戯に過ぎません」

妹「ですがそこにこのような駆け引きを加える事で・・・真のギャンブル・・・」

妹「即ち、他人を出し抜き狡猾で残忍な者が勝利する・・・」

妹「ギャンブルになりえるのです・・・!」

兄「ごちゃごちゃとうるさいことを・・・俺はグーを出す。ただそれだけのことだ」

妹(これは、兄さん。貴方が教えてくれたことなのですよ)

妹「では細かい取り決めを」

妹「まず、最初はグーの掛け声からお互いグーを作って前に一度出します」

兄「ああ」

妹「その後ジャンケン、ポンの掛け声とともに自分の手を今度はグー、チョキ、パーのいずれかの形にしてもう一度前に出します」

妹「そしてこのとき・・・『ジャンケン』から『ポン』の間に2秒程の間を」

妹「『ポン』のあとに提示された手の形をお互いが認識した瞬間、勝負は終わりです。その後に手をかえても無効とします」

兄「あいこの場合は?」

妹「仕切り直しです。一旦最初からやり直します。あいこで~からの勝負はなしです」

兄「・・・なるほどな」

妹「よろしいか?」

兄「・・・いいだろうっ!」

兄(あいこは無し・・・)

兄(この勝負、おそらくそこに仕掛けがあるっ・・・)

兄(と、普通の奴なら思うだろう)

兄(もしくはわざわざ2秒程と設定してきた『間』・・・)

兄(そこに着目するだろう・・・)

兄(所謂ミスリードを狙った戦法・・・だが、あまい)

兄(お前にギャンブルを教えたのはこの俺だ)

兄(見え透いているっ・・・!罠も・・・、その仕掛け時までもっ・・・!!)

兄(この勝負、俺の勝ちだ)

妹(と、兄さんなら考えるでしょうね)

妹(無駄無駄・・・無駄ですよ兄さん・・・)

妹(私は勝つ。そう、勝つと言ったら必ず勝つのです・・・!)

妹(どんな手を使おうとも、ね・・・!)

妹「では・・・」

兄「ああ・・・」

兄妹「勝負っ・・・!!」

妹「最初は、グー!」

兄(グーを出してきた・・・ここまでは予定通りっ?!)

兄「あっばばばばばばばばばば?!!」

妹「・・・」

兄「お・・・ぇ・・・そ、・・・んく・・・」ガクッ

妹「ごめんなさい、兄さん・・・」バチバチッ

兄「ぐ・・・ぢから・・・はいら・・・ん・・・」

妹「では・・・お手を拝借」ギュッ

妹「ジャンケン・・・ポン。私がパーで兄さんが予告どおりグー・・・」

妹「私の勝ちですね」ニコリ

兄「・・・ぐ・・・そ・・・」ガクリ

妹(イカサマ上等、そうでしたよね兄さん)

??「大丈夫か、兄くん!!」ドガァン

妹「っ?!」

??「くっ・・・遅かったか・・・!」

妹「な、何事?!貴女一体・・・」

??「・・・リューチス」

妹「え?」

エルフの女騎士「ゼスカ・リューチス 私の名だ」

妹「貴女があの・・・?!兄さんに一体なんの用ですか!!」

エルフの女騎士「実はネトゲ内で彼から相談を受けていてな」

エルフの女騎士「最近、妹の様子がおかしいと」

エルフの女騎士「私はすぐにピンと来た。これは悪しき精霊の仕業に違いないと・・・」

エルフの女騎士「そして来てみれば、案の定だ」

エルフの女騎士「君は精神を悪しき精霊に操られているっ・・・!!」

妹「な、何を馬鹿なことを警察を呼びますよ!!」

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