宮子「宮子……? あ、私のことか」(95)

― やまぶき高校入学前 ―

母「まだ自分の名前だって実感わかない?」
宮子「そりゃ長年慣れ親しんだ名前とお別れだからねー」
長兄「そんなんで大丈夫か?」
宮子「受験のときカゼで朦朧としてたけど、入学案内の書類とか、ちゃんと宮子の名前で届いたし」

 でも、気ぃ抜けて引っ越しとか電気の手続きとか間違えてるかも。

宮子「ごはんごはん~」
父「こら宮子、股広げて座るんじゃない」
宮子「別にいいじゃん」
父「女の子、なんだからさ」
宮子「こういうキャラで通すからいいよ」
父「不安だ……」

宮子「ま、何とかなるっしょ」
次兄「お前の口癖だっけな」
長兄「考えない!」
宮子「なるようになる!」
父「思い切った決断はその二つの方針ならではか」
母「育て方間違えたかも」

宮子「お代わりー」
次兄「大した食欲だな」
母「治療の結果、遅れてた成長期が今ごろ来たってお医者さんが言ってたわね」
宮子「これなら体格追いついて、お兄ちゃんたちのお古使えるかな」
父「せっかくなんだからおしゃれ楽しめばいいのに……」

 いろいろお金使ってたんだから節約しないと。

― ひだまり荘入居後 ―

バタン
宮子「お、新しいお隣さんだ」

 ココは男子禁制だから女の子、つまり女同士ってことになるな。
 挨拶、早めにしといたほうがいいよね。
 コレまで行き当たりばったりでやってたけど、これからは流石にまずい、少しは考えねば。
 でもどう言ったらいいか……。

ガサゴソ
宮子「お? やってるやってる」

 手伝うべきかな。でも余計なことかもしれないし、う~む。

宮子「隣の宮子ですー。おそばまだですかー?」

 嗚呼テンパってる。開口一番でこれはコレはないだろ。
 タイミングよく腹鳴るし。

 でもそば作ってくれるし、優しい子だな。
 ……手打ち? 只者じゃないな。
 可愛い子だな。仲良くなれるかな?

ゆの「合格できるなんて思ってなかったからまだ心の準備ができてないですけど、宮子先輩、これからよろしくおねが……」
宮子「ああ~! 大事なこと言ってなかった!」

 一つ屋根の下で暮らすんだし、話しておいた方がいいよね。

宮子「私……うどんの時は関西だしでヨロシク!」

 誤魔化してしまった。
 ごめん、いざとなるとなかなか言えない。こっちも心の準備要るよ……。
 もちろん言われる側だって心の準備が要ることなんだけど。

ゆの「よろしくね、宮子さん」
宮子「宮でいいよ、または、よしこ」
ゆの「……誰?」

 ありゃ、滑ったか。
 お母さんが日本語覚えるため教材として集めてたビデオは古いのが多かったから、それの影響で私もついつい古いネタを出してしまうんだよな。
 ここからどう繋げりゃいいんだ。
 なんかゆののファンシーな呼び方模索してるし。テンパってるテンパってる……。

ゆの「み、宮ちゃん」
宮子「なに? ゆのっち」

 こんな感じでいいのかな? 女同士の付き合い。
 急な環境の変化で不安なのはお互い様だよね。
 うまくやっていけるといいな。

 ちょっとだけだけど先輩ということで、このアパートについての基礎知識を教える。
 学校の特徴、アパートの立地条件。
 そして……。

宮子「基礎知識その3、美術課の変わり者達が集うことで有名」

 立地条件もさることながら、合格発表の帰りにこの噂を聞いたら、もうここしかないって確信した。
 木を隠すなら森の中。
 変わり者の中で暮らすなら、私のヘンテコなとこも、このアパートの住人だからだと納得してもらえるだろう。

 先輩であるヒロさんや紗英さんの紹介も済ませ、このあたりのことを色々教えるという話になった。
 それから解散して、ひとっ風呂浴びようとして……。

宮子「あ、水でないんだった。銭湯……う~む」

 三人で色々話してるとき、順応していくための荒療治で銭湯行こうなんて呼びかけた。
 ヒロさんの都合でお流れになったとき、正直言ってホッとしてもいたんだよな。

 ……大勢の前で裸になる覚悟に比べれば。

宮子「ゆのっちー、ウチ水でないんだった。入ーれてー♪」

 普通のお風呂で一対一ならなんとかなりそう。
 女同士だからアリ……だよね? こういうの。
 少しづつ慣れていけばいいか。

― 入学式当日 ―

 女子の制服か……緊張してきた。
 夜にお店回って歌ったとき悪ノリした父さんにスカート穿かされてたけど、あれは子供の頃の話だし。
 受験のときは近所のお姉さんからセーラー服のお古もらって着てたけど、風邪で意識朦朧としてたからどうにかなったわけで。
 素でスカートってのはまだ抵抗が……。

 あれ? ビン描く練習のためラムネ買いに行ったときはセーラー服着てた?
 あ、受験前の予行演習で、アレ着て近所の駄菓子屋に行ったんだっけ。
 テンパって子供の頃みたいに叩き割っちゃったんだよな。

 ……げ、躊躇してるうちに時間だ!
 スカートなんてなんでもない、なんでもない。

ゆの「でも私が着るとなんか変で……」

 普通に女の子でもそうなのか。

紗英「いやいや、全然変じゃないよ」
宮子「うんっ、変じゃない変じゃない」
ゆの「宮ちゃんあちこち変……」
紗英「宮子あちこち変……」

 げ、捲り上げたジャージの裾が下りてる。
 私と似た境遇の人を扱ったマンガだと登校初日はスカートの中ジャージにしてたから参考にしてみたが、そううまくいかないか。


 女らしく女らしく……お、門に花が飾られてるな。
 コレを着けたら少しは……いや、コレは違う。

― 入学式終了 ―

宮子「ふぃ~終わった終わった、トイレトイレ~」

 間違えるなよオ、いや、私。今はもう……。

宮子「あっ!!! そだ。ゆのさーん、ティッシュ持ってるー?」

 この制服、ポケットの位置とか全然違うから入れそびれてたんだよなー。

― 歓迎会 ―
 受験の話になった。

宮子「ちなみに私は裏口で入れた感じです」

 戸籍がややこしい上に、私、親、役所、学校それぞれのミスが重なっていたため、受験資格を得るため裏口入学と言われても仕方ないくらいの特例処置がとられていた。
 カミングアウトの機会だ……って。

沙英「宮子ー! あんたって奴はー!!」

 あ、いやその、あのですね。
 嗚呼、今日は緊張し通しで疲れてるせいか頭が回らない。
 結局、経緯は省いて推薦という結果だけ話して茶を濁してしまった。

― 動物園でクロッキー ―

 お? サルが毛繕いしあってるな。親子かな?
 家族と離れて一人暮らしが始まってだいぶ経つ。
 お父さんとお母さん、どうしてるかな。
 私のことで、ふたりとも何かと気に病んでたんだよな。

宮子「済まないねぇ、母さんのせいで苦労かけて」

 私が生まれたときのお医者さんの勧めを拒んで、本人の成長を待って自分の意思にゆだねる方針を採ったことを後悔しているらしく、よくああ言っていた。

宮子「母さん、それは言わない約束だろう? これ以上母さんの白髪が増えないように、俺、頑張るよ」

 金髪を白髪になぞらえ、母さんのコレクションにあったシーンを再現しておちゃらけてみせたら気も安らぐかな。

宮子「いつもありがとうね、ジョン」
ゆの「えっ? 何で外国人?」

 あ、考えてることつい口に出してしまった。
 まあ、外国人なんだよな。
 物心ついたころには日本で暮らしてたけど、生まれはアメリカだし。

 お父さんは、『新大陸に渡ってその名を摩天楼に轟かせるのだ』なんて野望を胸に渡米、現地でお母さんと結婚して私たちが生まれた。
 私がこういう体で生まれたことと、お父さんの母国であるこの日本に移住することも視野に入れていたため、日本風の名前でありどちらを選んでも使える『ジュン』という名前にする予定だったらしい。

 しかし、住民登録の際に役所のミスで、アチラの男子ならありふれた名前である『ジョン』で登録されてしまった。
 当事は色々あって確認が遅れ、そのミスが判明したときには私は男の子向けのおもちゃを気に入り男の子とばかりワイルドに遊ぶコレでもかといわんばかりの男子っぷりだったため、なし崩し的にジョンという男子として育つことになった。

 ……信じてもらえないだろうなー。

 その後のランチタイムで各々が弁当を広げる。
 ゆのは定番のウサギりんご、そしてヒロさんは……。

宮子「ひっ!?」

 ソーセージで象!?
 ソーセージを切り刻むなんて、女ならではの暴挙だ。
 脳裏によぎる医者からの説明。

 男としては不完全なナニを切り張りして女のソレに形成する手術。
 ソレを思い出して狼狽するのを尻目に、にこやかにしてるゆのと沙英さん、さすが生粋の女は違う。
 しかし沈黙を保つのもまずい、かといって食欲失せるようなコメントするわけにも行かないし……。

宮子「私も、買わないでばっちり持参したんだー」

 落ち着け落ち着け、ここはネタに走れ。
 丸ごとのキャベツだ、ネタだ、ネタ。

ゆの「え? えええ?」
宮子「え? マヨネーズならあるよ?」
沙英「いや、そうじゃなくて」
宮子「らっこー♪」

 嗚呼、平静装おうとしてついつい一発芸してしまう。

― 美術の特別授業 -

 入ってきた見知らぬ女性……綺麗な人だな。

宮子「おや?」

 なんだろう? この気持ち。
 顔の火照り、胸の高鳴り。
 もしかして……? いや、まさか、そんな。

 ……もうあとには引き返せない。自分で選んだ道だ、割り切ろう。

宮子「うっし、ゆのっちゴハン行こー」
ゆの「……うん」
宮子「どしたー?」
ゆの「ゴメン宮ちゃん、ちょっとだけ待ってて」

 特別授業で講師してくれたあの岸って先輩を追いかけていった。
 なぜ?
 ……!? なるほど、女同士でもそういうのはあるか。

宮子「頑張れー! 一目ぼれから実る恋もある! 愛さえあれば性別の障害だってなんのその!」

 私自身にも言えることなんだけど、ならば自分がアタック! なんて思考には向かわずゆのを応援したい気持ちだけだった。
 女同士の友情って奴かな。それとも岸さん見たときの私の気持ちは違うもの……?
 ……わからん。乙女心って奴は複雑だなー。

 あの先輩の話や、家の事情でスケッチブック残して学校やめてった先輩のことがきっかけか、ゆのは色々悩んで落ち込んでる。
 励ましてやったほうがいいか……昔の感覚でタックルはまずかったか?
 一発芸で誤魔化したが、さてどうしたものか。

 今朝拾った宝くじの話題からクジ運の話になる。
 クジ運か。
 私は2000人にひとりくらいの多いんだか少ないんだか微妙な確率のものを持って生まれたわけだが、今話すのはヘビーすぎるな。

 ゆの……心配だな、ほうっておけない。
 お泊りの申し出にOKもらった。

ゆの「ねぇ宮ちゃん、夢が消されちゃうことってあるのかな」
宮子「もしかして、アブラナさんのこと?」

 家庭の問題がネックになるってのもキツいよなー。

ゆの「自分の力じゃどうにもできない問題で夢が消されちゃうってことあるのかな」

 自分の力、努力ではどうにもならないことで夢が消される、か。

 小学校時代の作文で、私は将来の夢をお父さんと書いていた。
 アレはどう足掻いても無理だったしな。
 でも。

宮子「ないと思うよ」

 自分の考えを述べる。

宮子「スケッチブック捨てたのだって、本当にやりたいことが見つかったからかもしれないし」

 元気付けられたかな。

 私が見つけたやりたいこと。
 それは別に、お父さんになれなくたって、こっちを選んだってできることだった。
 要は立派な大人になればいいんだ。
 だからこそ、こっちを選べたんだ。

― 更衣室 -

 女の園、だいぶ慣れたとはいえ今日はちょっと事情が違う。
 まずいな……昨日ちゃんと体操着かばんに入れてたのに、朝出るころには体育あることコロっと忘れてた。
 女モノの下着にはまだ抵抗あって、息抜きのためかつてのようにトランクス穿くことがたまにあるんだけど、よりにもよって今日それをやってしまうなんて。
 手早く着替えてしまおう。

女子「えい♪ ホックはずしー♪」

 あ、女の園ではああいうセクハラがアリなんだよね。
 ってことは……。

女子「ゆのさんは、下♪」

 ターゲットはゆのだったか。危ないところだった。
 ごめん、今のうちに着替えさせてもらうよ。
 ……がっかりなんか、してないよね?

 アレからどういうわけか、ヒロさんが体育館のステージ裏で倒れてるのが発見され、保健室に担ぎ込まれた。
 はいてるパンツがパツパツで脱がせられないってことで手伝うことに。
 ……って。

沙英「よし、宮子、さっさとやっちゃおう」

 いいのかな~? いいんだよな~? 女同士女同士女同士……げ。

宮子「中のパンツも一緒に脱げた」

 うああ……とんでもないことしてしまった。ヤバイよな。
 落ち着け落ち着け自然体自然体……。

 アレから他にも色々あった。

宮子「今日は変な一日だったなー」
ゆの「宮ちゃ~ん!!」

 自分の部屋でのんびりしていたら、変な声が聞こえて怖いとかでゆのが突撃してくるし。
 落ち着け落ち着け……頼ってくれてるんだからしっかりせねば。

宮子「ゆのっちが眠りにつくまでいてあげる」

― 銭湯 ―

 なんだかんだでお流れになっていた銭湯へ行くことになった。
 道中、ヒロさんと沙英さんが学祭でやってた劇について話している。
 緊張して台詞言えなかったとかなんとか、私もなんか言うべきかな。
 私もいま猛烈に緊張してきた……。

宮子「おじゃましまーす」
番台さん「ハイいらっしゃい、400円ね」
ゆの「はい」
宮子「うぅっ…なけなしの400円」
番台さん「ハハハハありがとね~」

 銭湯であり皆で裸の付き合いであり……。
 何回かゆのと風呂をご一緒したし、落ち込んでたときは夢はここにあるんだといって胸をポンと触ったりしたけど、まだまだ裸の付き合いには慣れない。
 一対一ならともかく、まだまだ大勢の前ではきつい。
 一人暮らし始めるに当たりビニールプール持たされたのは、風呂なし物件で銭湯がよいってことになったら、女湯はまだ抵抗あるだろうという配慮だった。

宮子「そしてこれが最後の百円……」
番台さん「?」
宮子「ではいざ、頂きます!」
ゆの「先に!?」

 あ、そうだった。湯上りに飲むものだよな。
 落ち着け落ち着け落ち着け……。

 うう、脱いでる……ヒロさんも沙英さんも、普通に女同士でも意識してるってのに、これでは目を合わせられない。

宮子「やっほー、湯ー!!」

 離脱!

 うー、やっぱまずいかも、体洗うのは皆と離れて……。

ゆの「ご機嫌だね宮ちゃん」

 げ、こっち来た。
 ご機嫌って、そう見えるのか。平静装うのうまくいってるかな。

宮子「ふっふっふよくここまで来たな褒めてやろう」
ゆの「なにそれ」
宮子「言ってみたかっただけ」

 嗚呼テンパってるテンパってる。

 ん? ゆの、タオル胸に巻いてるな。
 一人っ子で人と入るの慣れてない?
 私もそれなりの年齢になってからはお兄ちゃんたちと一緒に入るの恥ずかしくなって一人だからなー。
 胸出てきたときは私も無理やりサラシで抑えてたけど、今のゆのと違いずっとだった。アレは流石に無理があった。
 それもあって、こっちを選んだんだよなー。

 皆で湯船に入る。

沙英「はぁ~、長かったような短かったような」
ヒロ「きついときもあったけど頑張ってよかったわね」

 湯船からあがる音がした。
 ううっ、目をあわせられない。ヒロさん、あられもない格好だろうし。

沙英「うん、完全燃焼」
ゆの「わたしは、やっぱりちょっと不完全燃焼だなー」
沙英「絵のこと? でも完成させるって決めたんでしょ?」

 あの絵か、早合点して搬入して、悪いことしちゃった。
 個人展示の絵で勝手にゆのを題材にしたのもまずかった
 なんか言わないと。

ゆの「はい、あ、できたら見てもらえますか」
紗絵・ヒロ「「もちろん」」

 タイミング逃した。でも沈黙保つのも変だな。

宮子「ねえ、校長ってなにしてた?」

 嗚呼、朦朧としてきて考えまとまらない。
 こののぼせは湯によるものか、それとも……?

ゆの「え? チラッと見かけたけど」
宮子「校長展示なかったよね、ちょっと期待してたのになー」
ゆの「これから作るかもよ~」
宮子「え?」

 う、やべ。なんか横みたゆのっち、うなじがセクシー。
 背中流したときとは違ってこの角度だと……。

 もう取っちゃってるし、もともとそこまで機能してなかったけど、やっぱまずい。
 意識するな意識するな意識するな……無理。

宮子「あータイムー!」

 離脱!

性同一性障害か何か?

 そんなこんなでどうにか扇風機で火照りを逃がしたりしてしのぎ、皆で脱衣所でくつろぐ。
 無造作に体拭いたり二の腕つまんだりとあけっぴろげな光景が展開される。

 ゆのが鏡を見てバレエ教室みたいと言い、ソレがきっかけで皆がポーズ取った。
 皆に合わせたほうがいいかな……股広げた。

 プッツン

>>67
世の中には両方持っててどっちかを選ぶ人もいるんです

私www染色体はXXのれっきとした女っすからwww戸籍も変更してますからwww手術の結果これこの通りココもちゃんと女っすからwww医者の話じゃ子供も産めますからwww
オバさんに見られてるけどキャーおとこーとか騒がれてないっすからwww
神社にスケッチ行ったとき神主さんにお嬢さんって呼ばれたし女の子からもお姉さんって呼ばれましたからwww
あははははwww














宮子「ではー、おやすみー」

 つ、疲れた……。

― ゆのが風邪ひいた ―

 そんなわけで昼休みに様子見。

宮子「まだ熱いな……凄い汗」

 女選んで正解だった。でなきゃ着替えなんてさせてあげられないし。
 銭湯はめちゃくちゃ疲れたけど、アレで女体に免疫つけたからどうにか冷静でいられる。
 お、ほくろめっけ。

 憶えてますかね? 日常系の作品にありがちな、風邪ひいた友達とか恋人への看病シーン、あれの再来ですよ。
 低速でゆのっちの玄関先に侵攻し、その真白な乙女のお肌に看病のサインを刻んで帰ってくる。
 そして作戦は見事に成功した。
 ただ一つ、本物のウサギリンゴが作画に用いられたことを除けばね。


 どうにか熱も下がって皆で集まったときバレンタインの話題になる。

宮子「はいはいはいはい私食べる人ー♪」

 結構モテてたんだよな。沙英さんとは違う意味だけど。
 だけどこの状況でカミングアウトはヘビーすぎるか。

― 沙英さんがポラロイドを購入 ―

 ソレがきっかけでヒロさんのたんすの肥やしについて茶々入れた結果、恥ずかしい服を持ち寄ることになってしまった。
 一応あったが、それは普通のスカート。制服はどうにか割り切れたが、私服はやっぱ抵抗ある。
 でもヘビーなカミングアウトになるから……。

宮子「服じゃないんだけどいい?」

『社長を盛り上げ隊』というタスキで茶を濁してしまった。

 ヒロさんが皆にメイクし始めた時、ふざけてヒゲ描かれてしまったが……。

宮子「沙英さん撮って撮って♪」
沙英「撮っていいの……?」

 会社の飲み会の余興であのタスキかけられてたお父さんにそっくりだった。
 ノリがよくて仲間と強い信頼関係築いてたくさんの成果を出して。
 私がなりたいって思ってた父親像、大人の姿なんだよな。

 カミングアウトしてたら、ヒロさんは変に気を遣ってヒゲなんて描いてくれなかっただろうな。

―二年に進級 ―

 そんなこんなで一年乗り切った。
 2年から選択教科授業がある。

宮子「どれにしよっかな~」

 このワクワクも久しぶり、あのとき以来だ。

ゆの「う―どーしよ……選ぶの苦手だよー」
宮子「何で? 選べるのって楽しいじゃん」

 そりゃ私だって色々悩むし大変なこともあるけど、後になるとそういうのもひっくるめて、ね。
 アクシデントも含め、いい思い出だよ。

宮子「私、今晩ジャガイモ1択だよー?」

 この選択肢の少なさは、普通ならあるはずのない大きな選択肢が私に与えられた代償なのかな。

 私が下した選択は、結局は私が生まれたときに医者が薦めてたものと同じだったらしい。
 だけど、それでも自分の意思で選んだ。これは大事なことだと思う。
 だから納得してること、感謝してること、お父さんとお母さん達には伝えておかないとな。


 おわり。

某所で、宮子の突飛かつワイルドな行動や言動からTSキャラではという話が出てたので、それに沿って宮子主観で書いてみました。


>>67
性同一性障害と混同されやすいみたいですが>>70の言うとおりで、半陰陽という性があります。

幼少期は男子として育つも女性化が進行し男としての生活に無理が出てきて、高校進学とともに女性名に変更、女として生活…。
という設定です。

保守してくれた皆さん、色々と張ってくれた9amHvyvx0さん、ありがとうございました。

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