キース「割と暇な訓練教官の日常 ほしみっつ」(59)

『キース「割と暇な訓練教官の日常 もあぐれっしぶ』の続き

──0600 起床~自室

キース「んむ……もうこんな時間か……」

キース「吸い込まれそうなくらい晴れ晴れした朝の陽だな」

キース「目覚ましの鐘が今日も心地よく──」

<おいコニー!てめぇなに人のパンツ振り回してんだ!!
<ライナー!前!前!
<うわぁあああ!!!
<大丈夫かっ!?ライナァアアアア!!!

キース「……朝から何を騒いでいるのだあいつらは」

以下濃厚なストーンズスレ

──0610 教官室

キース「よぅ……」

同僚A「う~っす。ってすげぇ眠そうだなお前」

メガネ「寝不足か?」

キース「そんなところだ」

同僚B「毎日のようにあの子達が騒ぎまくってますからね」

キース「朝から晩までな……元気を少し分けてもらいたいくらいだ」

同僚A「俺は毎日のようにサシャたんから元気貰ってるけどな!」

キース「お前もお前でブレないな」

同僚A「おうよ」

キース「別に褒めてはいない」

お、また来たのか

──0630 教官室

同僚A「なぁ?」

メガネ「なんだ?」

同僚A「一応さ、幹部食堂ってあるじゃん?」

メガネ「それがどうした」

同僚A「なんでこっちで飯食ってんの俺ら」

メガネ「なら君だけ向こうで食えばいいだろう」

キース「早く行ってこいよ」

同僚B「あくしろよ」

同僚A「なんでだよ!俺はただ税金の無駄遣いとか言われないかとだな──」

同僚B「んなこと言うなら経費でお菓子やらお茶やら買うんじゃねぇっすよ、伝票溜まって溜まって」

キース「んなことしてんのか」

メガネ「民の血税をなんだと思っているのだ」

──0700 教官室

同僚A「奇行種居たぞ~エリア7。ペイント弾撃っとくわ」

キース「そっち行くから時間稼いでろ」

メガネ「超硬質鉱石なかなか出ないな……少し待っててくれ」

同僚B「別に倒しちまっても構わないっすよ?」

同僚A「……なんでフラグ立てていくんだよ」

<てめぇみてぇな野郎はさっさと壁の外にでも行って餌になってこい!!
<お前みたいな敗北主義者は開拓地にでも引っ込んでろ!士気が下がるんだよ!!

同僚A「おいキース、止めてこいよ」

キース「めんどくせぇ」

同僚A「仕事しろよ」

キース「お前が言うな」

──0705 訓練兵食堂

エレン「俺はお前みたいな考え方が死ぬほど嫌いなんだよ!!」

ジャン「んあぁ!?てめぇみてぇにただ粋がってる奴と──」

キース「何の騒ぎだ」ガラッ

ジャン「──はちげぇんだよ!!」

キース「……」

エレン「……」

ジャン「……あ」

キース「キルシュタイン、また貴様か」

ジャン「ち、違うんです!これはですね!」

キース「アッカーマン、どういう事か説明しろ」

ミカサ「ジャンがエレンに対し一方的に暴言を吐き散らしていました」

ジャン「お、おい!?」

キース「走ってこい、キルシュタン」ガラッ

──0710 教官室

キース「毎日毎日なぜああなのだ……」

同僚A「よぅおかえり~早かったな。今巨大樹の森に居るから」

キース「とりあえずジャンを走らせとけば静まるからな……了解」

同僚B「なんかジャン君の扱い酷くないっすか?」

キース「奴の抜き身過ぎる発言が大体の原因だ、問題ない」

メガネ「やっと出たか……そろそろ戦線復帰しよう」

同僚A「そろそろ弱ってきたな。捕獲しようぜ、落とし穴ここに仕掛けるから」

メガネ「バカ!奇行種に落とし穴は効かないぞ!」

同僚A「うっそ!?もう置いちまっ──突っ込んできた!?」

キース「避けろバカ」

同僚A「うわっ!ガス切れじゃん!?しかも予備ボンベ忘れた!!」

同僚B「モドリ玉持ってる?支給品届いてるっすよ」

同僚A「ねーよ!」

キース「足斬って時間稼いでやるから行ってこい」

同僚A「しのびねぇな」

メガネ「おいA、そっちのエリアに15m級が2体くらい居たぞ」

同僚A「早く言えよ!?」

同僚Aが力尽きました

キース「何してんだお前は」

同僚B「お前だけの報酬じゃねぇんすよ?」

メガネ「あ……すまない、討伐してしまった」

同僚A「俺剥ぎ取れねぇじゃん!?」

娯楽に関してのみやたらと技術が発達しとるな

──0800 座学

メガネ「──全員居るようだな。問題がないようなので始めよう。今日は黒金竹についてだ」

コニー「黒金竹ってあれか?ボンベに使ってる奴?」

メガネ「そうだ。どうしたんだコニー君。ここ最近、成績の伸びが良いが」

ユミル「ただの偶然だろ」

クリスタ「そんなこと言っちゃ可哀相だよ。きっと頑張ったんだよ」

コニー「そうだぞ!?俺だってやるときはやるんだ!」

ジャン「つまり今まではやれたのにやらなかったのか」

メガネ「それはそれで問題だな」

コニー「えぇ!?」

ミカサ「エレンは昔から頑張り屋さん。偉い」

エレン「俺が普通なんだよ」

ジャン「お、俺も昔から色んな事頑張ってたぞ!!」

ミカサ「……そう」

メガネ「この黒金竹は見た目こそ竹だが、我々が一般的に想像する竹とは異なるものだ」

メガネ「まるで金属のような光沢を放ち、あらゆる金属より硬い。しかしながら非常に軽い」

メガネ「金属の一種ではないかと噂された時期もあったのだが、生態は竹そのものだ」

メガネ「地中には地下茎と呼ばれるものを形成し、そこからタケノコを生やし成長する」

サシャ「タケノコ!?食べれますか!?美味しいですか!?」

メガネ「残念ながらタケノコの時点で非常に硬い。食用に向かないどころか食べること自体不可能だ」

サシャ「でもその硬いタケノコを食べれば硬くなれるのでは……?」

メガネ(何言ってんだこいつ)

サシャ「ねーコニー。食べてみて下さいよー」

コニー「今食えねぇっつっただろ!」
     クロガネ
サシャ「黒 鋼のスプリンガーになれますよ!!」

コニー「お、おぉ……なんか強そうだな!!」

メガネ(……ちょっとカッコいいな)

ボードゲームからゲームになってやがる

クリスタ「ちょっとカッコいいかも」

ライナー「っ!」ガタッ

アルミン「っ!」ガタッ

ユミル「やめなクリスタ、バカがうつるよ」

ライナー「俺だって仮面ライナーに変身できるぞクリスタ!腰に変身ベルトルトを巻いてだな!!」

ベルトルト「な、何の話……?」

アルミン「ぼっ僕は……僕は……!ア、アルミンガンガー!」

メガネ「話が脱線し過ぎたかな、そろそろ戻そ──」

サシャ「燃え上がれスプリンガー!」

コニー「宇宙に揺るがぬジャスティス!Fight for life!」

メガネ「あの、静かに──」

──0950 休憩時間~教官室

メガネ「……」

同僚A「どうしたよ?んな難しい顔して」

メガネ「なんでもない」

キース「やたらと賑やかだったが……大丈夫だったか?」

同僚B「Aじゃないんだから大丈夫っしょ」

同僚A「どういう意味だよ」

メガネ「あぁ、大丈夫。ちゃんと授業はやったさ」

メガネ(ただ時間内に終わらなかっただけだ)

ガンダム0083のキースかと

──1000 座学

メガネ「では落ち着いたようなので続きと行こう……と思うのだが、先ほどの説明がまだ途中でな」

エレン「お前ら騒ぎ過ぎなんだよ……どうしてアルミンまで」

ミカサ「アルミンがふざけるなんて珍しい」

アルミン「ごめん、僕は冷静じゃなかった」

サシャ「叫び出せスプリンガー!」

ジャン「もう黙れお前ら!」

サシャ「はい……」

コニー「おぅ……」

メガネ「う、うむ……では、黒金竹がどのように利用されているのかについて──」

メガネ「──黒金竹は強度と軽量さを生かし、立体機動装置のガスボンベとして利用されている」

メガネ「中の節を取るだけでボンベにはなるのだが、強度故に節を取るのにも専用の設備が必要になる」

メガネ「この専門の設備というのは水圧プレス機などだ」

アルミン「プレス機、とはどのような仕組みなのですか」

コニー「すいあつってなんだ?」

メガネ「水圧とは水の圧力と書く。水の重さのようなものだ。ではプレス機の仕組みについて話そう」

メガネ「まず密閉した容器の中に液体を入れ、一部に圧力をかける」

メガネ「するとその一部にかけた圧力は全ての部分にそのまま伝わるのだ。この原理を応用している」

コニー「???」

メガネ「例えば幅10cmの筒に水を入れ、隙間のできないぴったりな蓋を乗せる。空気は一切入っていないものとする」

メガネ「この状態で蓋の上に1kgの重りを乗せると筒全体に1kgの力が生じる」

メガネ「この筒から別の同じ大きさの筒にホースなどで繋いだ場合、別の筒全体にも同じ大きさの力がはたらく」

エレン「もう1個のほうも同じ力なら最初っから重りだけでいいんじゃないか?」

アルミン「筒から幅の違う別の筒にホースなどを繋いだ場合はどうなるのですか?」

メガネ「いい質問だ。それこそが水圧を利用する最大の理由だ」

メガネ「例えば、幅20cmの筒に繋いだ場合は蓋には2kgの力がかかる」

コニー「増えてんじゃねぇか」

メガネ「そう、力を増やすことができる。10cmの筒で1kgかかるのだから20cmにすれば2kgになる」

メガネ「このように筒の幅……というよりは蓋の面積だな。面積比を変える事によって力を増減させることができる」

コニー「すげぇじゃん!無限に増やせんのか!?」

メガネ「それは無理だ。この場合は力を2倍にしているので速さ、移動距離と言おうか。が半分になってしまう」

メガネ「例えば10cmの筒の蓋を10cm押し込んだとすれば、20cmの筒の蓋は5cmだけ上がる」

メガネ「このように──」

メガネ(……黒金竹の話だったよな?)

──1205 昼休み~教官室

メガネ(授業は進まなかったが……アルミン君はさすがだな)

キース「むぅ……」

同僚A「マジかよ……明日は大丈夫だよな?せっかくの休日に予定入れたのに……」

メガネ「何があったのだ?」

同僚B「外見れば分かるっすよ」

メガネ「……いつの間にこんな嵐になった」

キース「これでは今日の訓練は無理だな……」

メガネ「嵐の中やらせたりはしないのか」

キース「危ないだろう!!ケガしたらどうするのだ!!」

同僚A「サシャたんが風邪ひいたらどうすんだよ!!」

メガネ「そ、そうか……」

同僚B「この2人、考えてる事は大体一緒っすよね」

──1230 昼休み~教官室

キース「そういうわけで午後も座学頼む……エレン召喚。ターンエンド」

メガネ「わかった……何をしてるんだ?」

同僚A「知らないんすか?結構流行ってますよ?イベントカード『超大型巨人出現』、門1枚破壊」

キース「くっそ、巨人ばっか積みやがって……」

同僚A「15m級奇行種でトーマス攻撃。ターンエンド」

キース「何しやがる……ドロー、エレンで奇行種を攻撃」

同僚A「トラップ『思わぬ伏兵』、戦闘状態の敵兵士を破壊」

キース「『友との古き誓い』発動、エレンを墓地に捨てアルミンを保護」

同僚A「戦闘力より効果を選んだか……」

同僚B「……随分と不謹慎なゲームっすね」

雨の中走らせてなかったか

キース「イベント『壁外調査』、モーゼスを手札から捨て効果発動。敵巨人を全破壊」

同僚A「トラップ『無能な上司』、壁外調査を無効にして破壊」

キース「トラップ積み過ぎだろお前……何の成果もあげられないじゃないか、ターンエンド」

同僚A「ドロー。敵の墓地にモーゼスが居るから『モーゼスの母』特殊召喚。キースにダイレクトアタック」

キース「痛い……色々と」

同僚A「つぶらな瞳の3m級でサシャ攻撃」

キース「お前がサシャを攻撃するとはな……『撤退命令の鐘』。サシャを手札に」

同僚A「そいつは俺のサシャじゃねぇからな、トラップ『補給基地陥落』」

キース「サ、サシャァアアアア!!」

メガネ「うるせぇ……」

同僚B「微妙に生々しい戦いっすね……」

──1300 座学

メガネ「嵐のため今日の実技訓練は中止だ。そのため、臨時に座学の時間となった」

エレン「えーっ!?体動かしたかったんだけどな……」

ジャン「ならてめぇだけ嵐の中走ってこい」

ミカサ「エレンが行くのなら私も行こう」

エレン「行かねぇよ!」

メガネ「後日、座学の時間を実技に充てるから安心したまえ……では、今から固定砲について学ぶ」

メガネ「大半の訓練兵が駐屯兵団に配属されるだろう。しっかり聞いておくように」

エレン「俺調査兵団だから聞かなくてもいいんじゃ──」

メガネ「大砲の射程や榴弾の爆破範囲の知識がないと、遠征から帰ってくるときに巻き込まれるかも知れないな」

エレン「そ、それは嫌だな……」

ミカサ「大丈夫、エレンを撃つような奴は排除するから」

メガネ(本当にやりそうだから恐ろしいな……)

メガネ「──これらの欠点により、主力兵器から都市防衛兵器として姿を変えたのである」

メガネ「ここで君たちには大砲の欠点をどうやったら克服できるのか、意見を出してみてほしい」

コニー「弾が真っ直ぐ飛ばねぇってアレじゃね?回せばいいんじゃね?」

ジャン「何言ってんだお前」

コニー「昔に村で雪合戦して遊んでる時に気付いたんだけどよ。こう回転させて投げると真っ直ぐ飛ぶんだよ」

ジャン「んなわけねぇだろ」

サシャ「あ!それ私も思ったことあります!獲物に石投げつけたときにですね──」

ユミル「んなことありえんのか?」

アルミン「コインを勢いよく転がすと倒れない……のと似ているような気がする」

エレン「……え、どこがだ?」

メガネ(回転をかける、か……過去にも似たような事を言っていた者が数名居たな……)

ライナー「で、回転させるにはどうするんだ?」

コニー「先っちょにでっぱり付ければ引っかかって回るんじゃねぇか?」

クリスタ「それじゃ真っ直ぐどころか変なトコ行っちゃうよ」

エレン「砲身の中に斜めの溝掘るとか。んで、溝のほうに弾の大きさを合わせれば回るんじゃないか?」

マルコ「それじゃ装填が大変じゃないか?奥まで砲弾を押し込むのに凄く苦労すると思うんだ」

コニー「後ろから入んねぇの?」

ジャン「どこにそんな穴があるんだ」

アルミン「なら後ろから装填する為の穴を空ければいい。射撃時に蓋を閉じれば……」

アニ「弾とは別に蓋が飛んでいきそうだね」

アルミン「もちろんガスを逃がさない構造や衝撃に耐えられる強度を持たせないと砲兵が危険だけど──」

メガネ(……意外にちゃんと意見出てるな)

──1450 休憩時間~教官室

メガネ(もし良さげな案が出たら技術班に持ち込んでみようかな……)

キース「『上官の食糧庫』、デッキからサシャを抜き出し特殊召喚」

同僚A「まさかのサシャ2枚積みか!?」

キース「さらに『英雄の凱旋』、調査兵団所属のキャラをデッキから──」

同僚A「どうせリヴァイだろ?お前兵士ばっか入れるけど巨人も少しくらい入れてバランスよくだな──」

キース「──サシャ特殊召喚」

同僚A「何っ!?調査兵団のサシャだと!?超レアじゃねぇか!!どこで手に入れた!?」

キース「絶対に教えん……ピクシス通常召喚。ピクシスの効果で全兵士の攻撃力+2,000。サシャで門に攻撃」

同僚A「『ダズの叫び声』で敵攻撃力-1,000!さらに『肉の防護壁』で壁を防御!」

キース「サシャに『蒸かした芋』を装備!攻撃力+3,000!!」

同僚A「何っ!?あと門が1枚しか……!!シーナがっ!!」

メガネ「まだやってたのか……」

なんだこのカードゲームは

──1500 座学

メガネ「全員居るような──」

エレン「装填はどうしようもねぇんじゃないか?雷管?とか火薬ないと飛ばねぇんだからさ」

アルミン「それなら砲弾と火薬、雷管を1個にしてしまえばいいんじゃないか?」

メガネ「あの……続きを……」

コニー「3つじゃねぇか。そんくらいの足し算ならできるぞ」

アルミン「いやそうじゃなくて、筒かなんかに入れていっぺんに装填するんだ」

マルコ「火薬や砲弾を一緒にして、一つの『弾』として扱うってこと?」

ライナー「なるほど……それで撃った後は筒だけ捨てればいい」

アルミン「そう。そうすれば装填時間は短縮される。さっきの後ろから入れる方式ならさらに……」

エレン「なるほど……よく思い付くな……」

ミカサ「仕方がない、エレンは私の事ばかり考えている」

エレン「そんなわけねぇだろ!」

メガネ(休み時間の間も話し合ってたのだろうか……?真面目なのか不真面目なのかわからんな)

コニー「なぁ?撃った後に筒を捨てるんならさ、筒ごと吹っ飛ばしちまえばいいじゃん」

ジャン「筒ん中で爆発させんのにどうやって前に筒を吹っ飛ばすんだ」

アルミン「でもいい案だね……爆発の衝撃を利用できないだろうか」

エレン「筒を燃える奴にして火薬ごと一緒に燃やしちまうのはどうだ?」

アルミン「それも考えたけど……装填する穴を塞いでる蓋の強度を考えると筒で閉じ込めたほうが──」

サシャ「弾は前に飛ぶんですから、筒は後ろに飛ばせばいいんじゃないですか?」

ミカサ「それでは砲兵が危ない」

コニー「上に吹っ飛ばすとか」

ジャン「もっと危ねぇ!」

メガネ(……あれ?なんか普通に画期的な気がする)

──1650 座学終了

メガネ「──そろそろ時間なので、話し合いはそこまでだ」

メガネ「私も予想していないほどに様々な意見が出てきて本当に驚いている……」

メガネ「ここで出た様々な案を技術部に持ち込んでみようと思うのだが、よいかな?」

アルミン「訓練兵の思い付きが通用するとは思えないのですが……」

メガネ「そう構えることはないさ」

メガネ(技術班の連中もだいたいこんなノリだ)

メガネ「そして……これは私からの提案だが、アルミン君?」

アルミン「はい?」

メガネ「訓練兵団を卒業した後の事なのだが、技術部に興味はないかい?」

アルミン「それは兵士ではなく技巧になれとの事でしょうか?」

メガネ「そうだ。君が来てくれれば革新的な技術が生まれそうな気がするのだよ」

アルミン「なぜ僕なのでしょうか?僕はただ皆のアイデアに乗っかっただけですが……」

メガネ「その発想や思い付いた事を形に出来る人材を欲しているのだ」

アルミン「……せっかくのお誘いですがお断りします。僕は調査兵団に行くと決めているんです」

──1700 課業終了~教官室

メガネ「はぁ……フラれてしまったよ」

同僚A「ん?奥さんに?」

メガネ「いや、アルミン君に」

同僚A「えっ!?お前ら付き合ってたの!?」

メガネ「そういう意味で言ったわけではない」

同僚A「いいっていいって!気にすんなよ!3年目の浮気くらい大目に見るぜ?」

同僚B「バカ言ってんじゃねぇっすよ」

キース「……技工にでも誘ったのか?」

メガネ「そんなところだ。調査兵団以外に興味はないって言われたよ」

同僚A「そりゃまた大した度胸だこと」

キース「シガンシナ区出身でそこまで言い切るとはな」

同僚B「シガンシナ!?内地へ逃げる為にここに来たんじゃないのか?」

メガネ「そんな目じゃなかったさ」

──1730 教官室

キース「ところでA」

同僚A「なんだ?」

キース「お前、1日中何をしているのだ?」

同僚A「何って、そりゃ仕事だよ」

キース「だからなんの」

同僚A「お前らから押し付けられた書類だろ?それから──」

メガネ「それは本来私たちの仕事だ。君の仕事ではない」

同僚A「俺は事務処理とかやってんだよ。俺、事務員さんだから」

同僚B「でも事務仕事って全部俺がやってるっすよ?」

キース「……おい」

同僚A「お、俺はだな?その、お偉いさんがいつ来てもいいようにお菓子を揃えたりお茶買ったり……」

メガネ「……なんだこの穀潰しは」

同僚B「歩く税金泥棒じゃねぇっすか……」

同僚A「税金泥棒とは失礼な……俺がデスクワークやってるお蔭で、お前らが訓練に専念できるんだろ」

キース「まぁ……それはそうなのだが」

メガネ「ま、まぁ……」

同僚B「じゃあ今度からそっちにも仕事回していいか?お前が経費使い込んでるから──」

同僚A「悪いな、俺は帳簿とか書けねぇから」

同僚B「伝票の整理とかでいいから」

同僚A「伝票とか元帳とかマジわかんねぇから」

メガネ「……君は確か、簿記の資格持ってたはずだが」

同僚A「んあ?資格欄が空白だと寂しいからテキトー書いただけだよ」

キース「……為替手形振り出したら?」

同僚A「売掛金減らす」

キース「知ってんじゃねぇか」

──1800 教官室

同僚B「明日は休日だってのに妙に外出申請が少ないんですよね~なんでですかね?」

キース「定期試験が近いからだろう。立体機動のコツだとかペーパーテストの範囲の話題で盛り上がってるぞ」

メガネ「テストか……毎回思うが作るのがめんどくさいな」

同僚B「まぁそう言わずに……おや」

キース「どうした?」

同僚B「お芋ちゃんことサシャちゃんが珍しく外出申請取ってますね」

キース「……おいA。心当たりないか?」

同僚A「え!?ね、ねぇよ!!なんで俺に聞くんだよ!!」

キース「お前、明日に予定を入れているとか言っていたが」

同僚A「ぐ、偶然だろ!!」

──2000 教官室

キース「──今のところ、上位10人はこの者達が妥当じゃないかと思っている」

メガネ「ほぅ、なるほど。コニー君は実技だとこれ程成績がいいのか……惜しいな」

キース「そうだな……座学で足を引っ張っている。試験結果でどう動くか……」

同僚A「サシャたんも似たようなもんだな」

キース「いや、サシャは態度の問題だ」

メガネ「サシャ君は態度の問題だよ」

同僚A「あれのどこが悪いんだ!?可愛らしさの塊じゃねぇか!!」

同僚B「別に可愛さで順位つけてるわけじゃねぇっすよ」

同僚A「じゃこれはなんだ?クリスタって子よりユミルって子のほうが成績いいじゃねぇか?」

キース「それはだな……た、態度の問題だ」

キース(顔で決めたとは言えぬ……)

メガネ「も、もちろん授業態度だ」

メガネ(可愛いからとは言えんな……)

──2130 教官室

同僚A「──んじゃ、俺そろそろ部屋に戻るわ」

キース「珍しいな、お前にしては早くあがるな」

同僚A「明日は朝早いからな」

キース「サシャか」

メガネ「お芋ちゃんか」

同僚B「芋女ちゃんか」

同僚A「だからちげぇよ!」

──0800 教官室

キース「……ホントに朝早いな」

同僚A「なんで休みの日にここ来るんだよ」

キース「暇なのだ」

メガネ「暇だからな」

同僚B「することねぇっす」

同僚A「嫁さんのところにでも行ってこいよ……俺は今から内地に行ってくるぜ!」

キース「何をしにだ」

同僚A「最近美味そうな店ができたって聞いたからよ、ちょっと冷やかしに」

キース「1人で行くのか?」

同僚A「も、もちろん!」

キース「なら俺も一緒に行ってやろう」

同僚A「お、俺は1人が好きなん──」

サシャ「ご飯まだですか!?早く行きましょうよ!!!」ガラッ

同僚A「あ……」

キース「これはどういう事だ?」

同僚A「だ、だってしょうがないだろ!?」

キース「どうしょうがないんだ!?」

同僚A「サシャたん見てるとこう……お腹いっぱい食べさせてあげたくなるというか?扶養本能っていうの?」

キース「そのような本能は聞いたことがない。ちょっと来い!」

同僚A「ひ、引っ張んなって!」

キース「ブラウス訓練兵!私はこの男と大事な話をしなければならない、ここで待機していろ!」

サシャ「は、はっ!!……?」

キース「とっとと歩け──」ガラッ

サシャ「えーっと、どういう状況……ですか?」

メガネ「気にしなくていい」

サシャ「……」キョロキョロ

同僚B「あ~君、良かったらお菓子食べる?」

サシャ「いただきます!!」パクッ

同僚B(食つき早いな)

サシャ「おいひーでふね!これ!」モグモグ

同僚B「そりゃそうだ。これは内地の有名なお菓子職人が作ったもので、王室にも献上されてるんだよ」

サシャ「そ、そんな高級品いただいでしまっていいんですか!?」

同僚B「気にしないで気にしないで」

同僚B(どうせAのだし)

メガネ「お茶も飲むかい?これも内地の高級品で、王様もご愛飲している品だよ」

サシャ「す、凄くいい香りです!本当によろしいのですか!?」

メガネ「気にすることはない」

メガネ(どうせAのだ)

サシャ「ん~♪」モグモグ

同僚B「……」

メガネ「……」

サシャ「美味しいです~♪」ハムハム

同僚B「……」

メガネ「……」

サシャ「んはぁ~♪」ゴクゴク

同僚B(確かにお腹いっぱい食べさせてあげたくなるな……)

メガネ(これが扶養本能か……)

<二度と同じ事してみろ!貴様を大砲に詰めて!300kgの爆薬と共に吹っ飛ばすぞ!!
<や、やめてくれ!!

サシャ「……何しているのでしょう?」

メガネ「……気にしなくていい」

キース「今戻った」ガラッ

サシャ「あ、教官」

キース「ブラウス、今日はさっきの男と飯を食いに行く予定だったそうだな?」

サシャ「こ、肯定です」

キース「残念ながら、貴様は騙されている」

サシャ「え?」

キース「あの男は悪い男だ。飯を奢る気など微塵も持っていない極悪人だ。よって現在、営倉にぶち込んでいる」

サシャ「なっ……!」

キース「あいつは自分だけ美味そうなものを食べ、貴様が悔しがる姿を見てほくそ笑むのが目的だ」

サシャ「そんな……酷い……」

キース「二度とあの男の言う事に耳を貸すな!分かったな!?」

サシャ「りょ、了解であります!!」

メガネ(おいおい)

サシャ「し、しかし教官。自分は外出申請を取ってしまっているので、今日のご飯の配給が……」

キース「む、そうだったな……仕方ない、知り合いの店を紹介してやる」

サシャ「お店?」

キース「紹介状と店の地図を書いてやる。私からの紹介だと言えば安くしてもらえるだろう。ツケても構わん」

サシャ「ほ、ホントですか!?」

キース「どうせなら他の者も誘って行ってこい」

サシャ「あ、ありがとうございます!」

キース「うむ。退室を許可する」

サシャ「はっ!失礼しました!」ガラッ

メガネ「キース、お前にも扶養本能が目覚めたのか?」

キース「……お前、病気がうつったんじゃないのか?」

──1000 教官室

キース「──明日の午後は立体機動か……。今度はここに巨人を配置して──」

メガネ「キース。休みの日くらい休んだらどうだ」

キース「他にすることがない」

同僚B「家に帰ればいいじゃないっすか」

キース「そういうお前等は帰らないじゃないか」

メガネ「女房がうるさくてな」

同僚B「親が早く結婚しろってうるせぇので」

キース「……そういうことだ。俺も帰りたくない」

メガネ「世知辛いな……」

同僚B「ここは楽園っすよ」

──1030 教官室

キース「──おそらくミカサはこの最短ルートを通るだろうから──」

メガネ「──コニー君にも分かりやすく説明するには──」

同僚B「──なんでこんなに雑費が……Aの野郎無駄遣いし過ぎだろ──」

キース「……なぁ?」

メガネ「なんだ?」

同僚B「なんすか」

キース「俺達にとって休みってなんなのだろうな」

メガネ「難しい質問だな」

同僚B「哲学的問いっすね」

メガネ「休みたいと思えど、いざ休みの日になると仕事をする……」

同僚B「一応、法定外の休日出勤扱いにしてるんで休みじゃないっすけどね」

キース「そうだったの?」

メガネ「気が利くな」

さる大丈夫か

──1100 教官室

<きゃー!ゴキブリ!!
<うわっ!こっち来たぞ!!
<ゲジまで居やがる!!
<うわぁああああこっちきたぁああ!!!

メガネ「……騒がしいな」

キース「ちょっと行ってくる」

──1103 女子寮

キース「いったい何の騒ぎだ?」

クリスタ「ゴ、ゴキブリが出たんです!!」ビクビク

アニ「さ、騒ぎ過ぎだろ……」ビクビク

ミカサ「きょ、教官!武器の使用許可を!」ビクビク

キース「貴様は虫相手に立体機動するつもりなのか……?」

──1120 教官室

キース「ふぅ……」

メガネ「お疲れさん。何の騒ぎだったのだ?」

キース「ゴキブリが出た」

同僚B「食堂でもないのになんで」

キース「それは分からんが……一応、1匹残らず駆逐しておいた」

メガネ「それはご苦労だったな」

キース「いや、アルミンが画期的な対害虫兵器を開発していてな……すぐに終わった」

メガネ「……やはり技工に進ませるべきではないか?」

同僚B「そんな凄いんすか?アルミン君って」

メガネ「彼の考案した『ライフリング』『後装式』『実包』は正式採用される見通しだ」

同僚B「まだ卒業もしてない訓練兵が?」

メガネ「しかも彼はこれに満足せずに装填・排莢を自動で行えないかと考えているようだ」

キース「もはや意味がわからん」

アンヘル&ゼノフォン涙目

このミカサはエレンにかばって欲しいがために猫を被っているに違いない

──1200 教官室

キース「ん、もう飯の時間か」

メガネ「そうだな、今日は確か──」

サシャ「教官!お昼はまだでしょうか!?」ガラッ

キース「なんだブラウス、騒々しい……昼食はこれからだが?」

サシャ「よかった……これから皆で先ほど教えていただいたお店に行こうと思っているのですが」

キース「なんだまだ行ってなかったのか。貴様が朝食を摂らないとは凄まじいな」

サシャ「教官もご一緒に行きませんか?」

キース「なぜ私まで行かねばならんのだ」

サシャ「この間のお礼です!たくさんお肉を食べさせていただいたので、今度は私たちがと思いまして」

キース「む……」

サシャ「もちろん、教官の分は私たちが出しますので!」

キース「しかし……」

メガネ「行ってやればいいじゃないか。せっかく教え子がお礼をしたいと言っているのだ」

同僚B「ここは行くしかないっすよ。んで、後でAに自慢してやってくださいよ」

キース「そうだな……私は1銭も出さないからな」

サシャ「もちろんです!!」

エレン「おいサシャ!まだか?」

ライナー「さっさと教官を引っ張り出してこい!」

コニー「掴むとこないから引っ張れねぇんじゃねーの?髪がねぇからさ」

キース「聞こえているぞスプリンガー」

コニー「……」

氷爆石と黒金竹を応用して殺虫スプレーでも開発したのかアルミン

キース「では行ってくる。後は頼んだ」ガラッ

同僚B「頼むって何を頼まれればいいんすかね」

メガネ「いい教え子を請け負ったな、あいつ」

同僚B「教官ってよりはただの親父みたいっすけどね」

メガネ「ならAは娘を狙う不届きものか」

同僚B「そんなトコっすね」

メガネ「営倉にぶち込まれて当然だな」

同僚B「まぁキースが帰ってきたら出してやりますか」

メガネ「そうだな」

同僚B「嫌味ったらしく自慢できるくらい楽しんでこいよ?キース」

おわり

同僚Aにも少しぐらい良い思いをさせてあげても罰は当たらないと思うの

おつ

おつお

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