葉山「もし俺とヒキタニ君が同じ小学校だったら全てが……」(228)


小学校・教室

八幡(ようやく始まったクラス替え……人間最初の掴みが肝心だ。ここは慎重に……)

先生「はーい、次は比企谷くん自己紹介お願い」

八幡「ヒ、ヒキギャヤヒャチマンです!」ガッチガチ

シーン

先生「あ、あのー……比企谷くん?出来れば教卓での方が良かったかな~……」

八幡(し、しまった……小学校生活最後の自己紹介すらも失敗した……終わりだ……)ガクッ

先生「えーと次は……」

ガラッ

葉山「先生、遅れてしまってごめんなさい!」

先生「あなたは葉山くんね。保健室の先生から事情は聞いてるわ。廊下で倒れた1年生の子を保健室に連れていってあげたんだよね?」

葉山「はい。それで少し遅れてしまってごめんなさい……」

先生「大丈夫よ。あ、そうだ!次の自己紹介は葉山くんにしましょう!さあ葉山くん、教卓に」

葉山「は、はい……」スタスタ

葉山「葉山隼人と言います。好きな食べ物はスパゲッティで、得意な事はサッカーです。よろしくお願いします」ペコリ

「あれが噂のイケメンくんかぁ……」ヒソヒソ

「噂通りすごいカッコいいよね……」ヒソヒソ

「しかも低学年の子を助けたんでしょ?すごいよね……」ヒソヒソ

八幡(何と言う完璧な自己紹介……!しかも俺の後だから余計にその凄さが引き立っている……)

「それに比べてヒキ……何とかの自己紹介見たwww」ヒソヒソ

「マジであんなのいるんだwww」ヒソヒソ

「私www無理かもwwwwww」ヒソヒソ

八幡(……なんか今凄く泣きたくなるようなこと言われたような……気のせいだよね……)

昼休み

八幡(自己紹介は失敗したけど、きっと友達作りは出来るはず……!まずは教室で適当な男子を見つけて……)キョロキョロ

葉山「みんな校庭でサッカーやらない?」

「おお!やるやる!みんな行こうぜ!」タッタッ

「葉山くんがサッカーやるんだって!見に行こうよ!」キャッキャッ

ガラーン

八幡「」

雪乃「……」ペラ

八幡(あれ、あんな綺麗な子クラスにいたっけ?)スタスタ

八幡「……なぁ、お前はサッカー行かないのか?」

雪乃「……」ペラ

八幡「無視かよ……」

雪乃「……あなたこそ行かないの。それともハブられたのかしら」ペラ

八幡「ハブ……?何言ってんだお前?」

雪乃「私はお前という名前ではないわ」

八幡「じゃあ名前教えてくれよ」

雪乃「呆れた……あなた自己紹介さえもまともに覚えられないのかしら?」

八幡(葉山の自己紹介までは俺だって必死に名前覚えようとしてたよ……あの後ちょっと恥ずかしかっただけで…………なんて言えない)

八幡「俺は人の名前を呼ばなくても意思疏通が出来るからな!俺、頭はそこそこ良いし!」

パタン

雪乃「……」スタスタ

八幡「おい、どこ行くんだよ?」

雪乃「あなたには関係無いでしょう。それとあなた……」

八幡「……ん?」

雪乃「痛いししつこいしうるさいし何より目障りだわ。もう少し人との接し方を考えなさい」

ピシャ

八幡「」

放課後
廊下

八幡(クソゥ……自己紹介はダメダメだったし、葉山ってヤツがクラスの空気を支配してるみたいだし、おまけに女子からは酷い悪口言われるし今日は散々だ……ハァ)トボトボ

「きゃーっ!!」

八幡「な、なんだ!?」タッタッタッタッ

結衣「へ、へび……へび」ガクガク

八幡「ゲッ……何でこんなトコに蛇が……ん?へ……び……?」ヒョイ

結衣「ヒッ……」ビクッ

八幡「これ……オモチャだぞ。誰かが隠し持ってたんだな……」ゴミバコポイ

結衣「あ、ありがとう……。えっと……」

八幡「俺は比企谷。大丈夫か?」

結衣「う、うん……クラスの自己紹介の時の人だよね?」

八幡「ア……レ……?同じクラスだっけ……?」

結衣「もしかして……覚えてない?」

八幡「もちろんおぼ……ハッ!」


雪乃『もう少し人との接し方を考えなさい』


八幡「…………ごめんなさい、途中で寝てて聞いてませんでした」

結衣(何で寝てたかは聞かないであげよう……)

結衣「私の名前は由比ヶ浜結衣!よろしくね、ヒッキー!」

八幡「ヒッキー?何それ」

結衣「だって呼びにくいし……覚えてないし……。それにあだ名の方が呼びやすいじゃん!」

八幡(俺1分前に自己紹介したばっかじゃん……)

八幡「あれ?そういえば由比ヶ浜は1人なのか?」

結衣「あれ?さっきまで一緒に帰ろうとそこにいたのに……どこ行っちゃったんだろう?」キョトン

八幡「……」

八幡「にげ……」

雪乃『人との接し方を考えなさい』

結衣「どうしたの?ヒッキー」

八幡「いや……何でもない。じゃあな」スタスタ

結衣「うん、バイバイ!また明日ね!」

八幡(なんであそこまであの女子の言葉が気になるんだろう……。ハァ……)

翌日
教室

先生「……という訳で、この式の答えは6と2分の3になります。次は練習問題を答えてください!えーと……」

八幡(俺に当たるな俺に当たるな……)ナンマイダブナンマイダブ

先生「よし!葉山くんと雪ノ下さんお願い!」

八幡(ほっ……)

葉山「はい!」ガタッ

雪乃「分かりました」ガタッ

八幡(アイツ雪ノ下って名前だったのか……)

葉山「出来ました」

先生「はい、正解!さすがね葉山くん!」

「やっぱり葉山くんチョーカッコいいよね~」

「しかも頭も良いとか!」

八幡(問題一問解いただけでキャーキャー言われんのかよ……。というか先生、少し葉山ひいきしてんじゃないだろうな……。俺はヒッキーだが……なんつってww)

雪乃「出来ました」

先生「うん、正解!やっぱり陽乃ちゃんの妹さんは違うわね~」

雪乃「……いえ、それほどでも」スタスタ

「何アレ、感じワル……」ボソ

「たった一問解いただけで偉そうに……何様?」ボソ

「何でもお姉さんがこの学校でスゴい人だったらしいよ……」ボソ

「何ソレ?お姉さんがスゴいだけじゃん……」ボソ

八幡「……」

昼休み

八幡(女子達のあの感じ……葉山とは違ってたな。二人とも完璧な答えだったのに、どうしてあそこまで反応が違うんだろ……)

葉山「君も一緒に遊ばない?サッカーやろうよ!」

八幡「……え、俺?」

葉山「うん!そこにいる君。えーと……ヒ……ヒキ……ヒキタニ君?」

八幡「俺は比企……」

「葉山くーん!私たちと一緒に遊ぶんじゃないのー?」

「俺達先に行ってるからな!」タッタッタッタッ

葉山「あ、うん!先に行っててくれ!ヒキタニ君、俺達グラウンドにいるからいつでも来てくれ!」

雪乃「……」ペラ

葉山「雪ノ下さんも一緒に遊ばないかい?」

雪乃「……私、体力無いから。それに……」

葉山「大丈夫だよ。みんな雪ノ下さんの事をまだよく知らないだけだから。みんなによく知られればきっと雪ノ下さんもヒキタニ君も仲良くなれるよ!」

雪乃「……ハァ、少ししたら行くわ」パタン

八幡(俺の名前間違ったままな時点で知る気があるのかわかんねぇよ……)

グラウンド

八幡「……で、なんでいつの間にかサッカーからドッジボールになってんの?」

葉山「いや、誰かがサッカーボールでやり始めちゃったみたいで……。そのままじゃ危ないから柔らかいボール探してきたらこうなっちゃって……」

八幡「……まあ、みんなでやるには向いてるか」

ヒュン

葉山「おっと!」

八幡「……」スカッ

葉山「よく当たらないね君……」

八幡「何もしなければ数が少なくならねぇ限り俺に当てにいくヤツなんていねぇよ」

結衣「きゃあっ!」カクレ

八幡「……え?」

ドコッ

「ヒキタニーアウトー」

葉山「当たらないんじゃ……」

八幡「おい、由比ヶ浜……なんで俺の後ろに隠れたんだよ……」

結衣「だって怖かったし、なんか壁に使えって感じだったし……」

八幡(どんな感じだよ……っと、他の女子からの視線がいてぇ……)トボトボ

ヒュン

雪乃「……!」

葉山「危ないッ!!」

ドコッ

結衣「うわ!」キャッチ

葉山「ありがとう!由比ヶ浜さん」ニコッ

結衣「え、あ……うん。えーと……えいっ!」ヒョロヒョロ

「ちょれえっ!!よっ!」ヒュン

雪乃「きゃっ!」ドコッ

結衣「うわっ!」ドコッ


「雪ノ下ー、由比ヶ浜ーアウトー」

結衣「イテテ……」トボトボ

雪乃「……」トボトボ

八幡(え、この3人だけとか外野が凄く不安なんですけど……)

内野同士での壮絶なラリー中

八幡「……」

結衣「……」

雪乃「……」

八幡(く、苦しい……。何か空気がこう……重い)

結衣「ゆ、雪ノ下さん!」

雪乃「何かしら?」

八幡(由比ヶ浜ナイス!)

結衣「ゆ、雪ノ下さんってどうしてそんなに頭いいの?」

雪乃「別に……普通にやれば出来るでしょう」ツン

結衣「そ、そうなんだ……アハハ……」

雪乃「……」

結衣「……」

八幡(会話が1分も持たなかったとかどんだけ……)

結衣「ヒ、ヒッキーはどうなの?」

八幡「ん……別に教科書見て黒板見てノート写してしかやってないからな」

結衣「え、いつも寝てるんじゃないの?」

八幡「俺ちょっとショックだぞ……。国語の時間に早速をはやいはやいなんて読み方したヤツから勉強してないって思われてたなんて……」

結衣「なっ……!それは今関係ないじゃん!」プンプン

雪乃「あなた達楽しそうね」

結衣「え……?」

雪乃「その嘘に満ちた友情ごっこが」

結衣「雪ノ下さん……それって……」

(チャイムの音)

雪乃「……」スタスタ

「結衣ーっ!一緒にクラスに戻ろうよ!」

結衣「え、あ……うん。またねヒッキー……」タッタッ


「結衣ー?その冴えない男子に絡まれてたのー?」

結衣「えっ……!ちが……」

「え?何?何かあんの?」ギロ

結衣「ゴメン……何でもない……」

「そっか。結衣は私たちに何も言わずついてきた方が絶対いいから。ねっ!」

結衣「う、うん……」


八幡(嘘に満ちた友情ごっこ……か……)スタスタ

放課後

八幡(何もする事無いし帰るか……。帰ったら野球でもやろうかな。……流石にキャッチャーフライばかりで飽きてきた……ん?)

雪乃「……」スタスタ

八幡「雪ノ下、ちょっと待ってくれ」

雪乃「何かしら」

八幡「雪ノ下も友達出来ないのか?何か友達ってのに恨みでもあるのか?」

雪乃「あなたは何を言ってるのかしら?あなたにそんな事話す理由も無いし、大体あなたと同類にしないでくれるかしら?ヒキガエルくん」

八幡「なっ……!」グサ

雪乃「……」スタスタ

八幡「俺の名前は……比企谷だぁぁぁっ!!チクショウ……」ガクッ

葉山「大丈夫?ヒキタニ君」

八幡「……いたのかよ」ジロッ

葉山「う、うん。雪ノ下さんは大体いつもこんな感じだからあまり気にしなくてもいいよ」

八幡「お前、雪ノ下と知り合いなのか?」

葉山「知り合いと言えば知り合いかもね。親の仕事の関係で何度か合う機会が多いんだ」

八幡「その割にはあんまり仲いいところ見たことないな……」

葉山「そうかな?雪ノ下さんと少しは仲良くなれてたと思ったんだけど……。雪ノ下さん素直な性格だし……」

八幡「えっ……素直ってあんなキツい感じなの?もう少し柔らかいモンだと思ってたんだけど……」

葉山「ハハハ……まあ確かに多くの人が思うような素直ってイメージとはちょっと違うかもしれないね。でも雪ノ下さんは素直だし優しいと思うんだよ」

八幡「そんなモンなのかねぇ……」

葉山「ところでヒキタニ君、良かったら一緒に帰らないか?」

八幡「なんで俺となんだよ?」

葉山「君ともう少し話したくなったんだ。それとも一緒に帰るのは嫌かい?」

八幡「まぁ……たまにはこんなのも悪くねぇかもな……」

葉山「ありがとう、ヒキタニ君」

八幡(いつになったら名前修正してくれるんですかねぇ……)

帰り道

葉山「そう言えばヒキタニ君ってなんでいつも一人なんだ?」

八幡「別に一人になりたくてなってんじゃねぇよ……。今まで、ずっと友達作ろうと頑張ったのに一人も出来なかっただけだよ」

葉山「うーん……なら、俺と友達にならないか?いっぱい遊べるし、楽しいこともきっと多くなると思うよ!」

八幡「友達か……。まぁ、考えておく……」

葉山「君はあんまり素直じゃないんだね」ニコッ

八幡「ほっとけ……」プイ

翌日
廊下

結衣「ハァ……」ポツン

八幡「……」スタスタ

結衣「あっ!ヒッキーやっはろー!」

八幡「よう、由比ヶ浜。……で、何それ?お前ってもしかして本物のバカなの?朝のあいさつはおはようございますだろ」

結衣「あ、ゴメン……。これ結構いいと思ったんだけどなぁ……。ってヒッキーもちゃんとおはようって言ってないじゃん!!」

八幡「バレたか……」

八幡「……で、お前何してんの?そんなところで一人で」

結衣「ちょっと休んでるの……少し疲れちゃったから」

八幡「疲れる?何に。自分のバカっぽさ?」

結衣「信じらんない!もうちょっと優しく言ってよ!」プンプン

八幡「優しくならいいのかよ……」

結衣「……あのさ、ヒッキーはさ、言いたいこと言えるタイプ?」

八幡「よくわかんね。言える時もあるし、言えない時もあるし」

結衣「そっか……。私はね、言いたいことあんまり言えないんだ。いつも誰かに合わせて動いてばかりで……言いたいことも友達に言えないし……」

八幡「それ本当に友達なのかよ……」ボソ

結衣「……え、何て言ったのヒッキー?ねぇ教えてよ」ズイッ

八幡「何でもねぇから、本当に何でもねぇから。だから近づくな、暑苦しいから……」カァァ

結衣「ねぇ、教えてよヒッキー!」グイグイ

八幡「お前自分のやりたいことできないタイプじゃねぇのかよ!」アトズサリ


結衣「あれ?そう言われたら……なんでヒッキーにはやりたいことできたんだろ?」ピタッ

八幡(あ、危なかった……)ハァハァ

結衣「って、ごまかさないでよ!ヒッキー今何て言ったの!!」グイグイ

八幡「まだやるのかよ!」アトズサリ

ドン

八幡(か、壁……!)

結衣「ヒッキー!」ジリッジリッ

八幡「~~~~ッ!ごめんなさい、勘弁してください!何でもしますから!」

結衣「最初からそう言えばいいじゃん!」ピタッ

八幡(まさか、こんな事になるとは思わなかったんだよ……)ドキドキ

結衣「ヒッキ~、はやく言ってよ~」ピタッ

八幡「うわっ!!お前やっぱワザとやってるだろ!!」カァァ

結衣「あ、バレちゃった?てへ♪」ペロ

八幡「そういうのは好きなヤツとしろよ……」

結衣「好きな人かぁ……ハッ……!」ボン!

結衣「うわわわわわっ!!ヒッキーなんてこと考えてるの!?エッチ!変態!スケベ!」カァァ

八幡(俺……なんで朝からこんな踏んだり蹴ったりなこと言われてんだろ……)

結衣「そ、そーだ!はやくなんて言ったか教えてよ!」

八幡「いいのか……本当に……」

結衣「……うん」

八幡「……俺がお前と出会った時、友達と一緒に帰ってよな?」

結衣「うん、その後蛇が出てきたから先生探しに行っちゃったけど……」

八幡「それ、どこから聞いたの?」

結衣「え、どこって友達からだけど……」キョトン

八幡「お前それおかしいと思わなかったの?」

結衣「おかしいって何が……」

八幡「もし本当にお前を助けようとしてたんなら先生探しに行く前になんでお前を連れていかなかったんだよ」

結衣「あ……」

八幡「それに先生なんてわざわざ探さなくても職員室に行けばすぐに見つかるし、運が良ければ職員室に行く途中でも先生見つかるだろ。蛇が出たのにアレから何も先生に言われてないのもおかしいだろ」

結衣「それって……」

八幡「友達である由比ヶ浜をその友達は見捨てたんだよ」

結衣「……」

八幡「それにお前って普段何も言えないって言ってるけど本当にそれだけなのか。友達とやらもお前に何も言わせないようにしてるんじゃないのか?本当に心配してるんなら少しは聞いてくるモンじゃねえのか。それって……」

(チャイムの音)

結衣「……えーと、はやくしないと遅刻しちゃうから先にいくね」タッタッ

八幡「お、おう……」

八幡「……ハァ、少し言い過ぎたのかな……。……俺も行くか」スタスタ

昼休み

ザーザーザー

八幡(おいおい、昼に雨降るなんて聞いてねぇぞ……。帰りどうすりゃいいんだよ……)

雪乃「……」ペラ

葉山「みんなと一緒に遊ばないのかい?」

雪乃「別に……興味ないから……」

葉山「そんなこと言わずにさ」グイッ

雪乃「ちょっ……!ちょっと……」ガタッ

葉山「おーい、みんな。雪ノ下さんも仲間に入れてあげてくれない?」

「は、葉山くんが言うなら……。よろしくね、雪ノ下さん」

「よろしく~」

先生「葉山くん、ちょっといいかな~?」

葉山「あっ、はい!それじゃ雪ノ下さん後で」タッタッ

雪乃「ええ……」

「……でさ~、マジで昨日のタッキーカッコよかったんだけどさぁwww」

「あーwww分かる。マジでイケメンだったよね!」

キャッキャッ

雪乃「……」

八幡「……」

結衣「……」キョロキョロ

八幡(由比ヶ浜……アイツ何してんだ?)

結衣「あ、あの……雪ノ下さん?」

雪乃「何かしら……」

結衣「雪ノ下さんって好きなものある?」

雪乃「特に無いわ……」

結衣「そ、そうなんだ……アハハ……」

雪乃「……」ジー

結衣「?……猫のキーホルダー……あっ!雪ノ下さんってもしかして猫好き!?」

雪乃「えっ……ま、まぁ嫌いじゃないわ」

結衣「そうなんだ!私はね犬が好きなんだ!ちゃんと犬も飼ってるんだよ!そうだ!ちょっと待ってて……」カチャカチャ

雪乃「……?」キョトン

ちょっと休憩

結衣「ハイ!これゆきのんにあげる!」チャラ

雪乃「これって、由比ヶ浜さんの……」

結衣「猫好きなんでしょ?」ニコッ

雪乃「あ、ありがとう……。それなら私も……」スッ

結衣「これって……」パァァ

雪乃「犬のマスコットの付いた髪ゴムよ。姉さんのお下がりだけど……ね」

結衣「ありがとう、ゆきのん!」ダキッ

雪乃「ちょっ……由比ヶ浜さん!?……それとさっきからの由比ヶ浜さんが呼んでるあだ名は何?」ムギュ

結衣「あだ名はあだ名だよ~」ムギュ

八幡(あの由比ヶ浜が自分の意思で雪ノ下に近づいたのか……?どうして……いや、理由はどうであれクラスから浮いている雪ノ下に近づくのにはかなりの勇気がいただろうな……)

「ちょっと~結衣!そんなのに絡んでないではやく図書室に行こうよ~!」

結衣「えっ……あっ……うん……。すぐ行く。じゃあゆきのん、また後でね……」スタスタ

雪乃「あっ……」シュン

八幡(仕方ねぇ……少し絡んでやるか……)スタスタ

八幡「なぁ、雪ノs……」

雪乃「ごめんなさい。私そこまでは物好きじゃないの」キッパリ

八幡「」

放課後

雪乃「ハァ……」

八幡(雪ノ下……?アイツ下駄箱の前で何やってんだ?)スタスタ

雪乃「……」スタスタ

八幡(あれ?戻って行っちまった。何だったんだ……?えーと、雪ノ下の見てたのはこの辺だったよな……)キョロキョロ

八幡(……!!雪ノ下の靴が……無くなっていやがる……)

八幡(……まあでも俺には関係ないし、とっとと帰るか)スタスタ

八幡(……)

八幡(……クソッ!)タッタッタッタッ

八幡(どこだ……どこにある……。考えろ、俺なら一体どこに隠す。嫌いな相手のモンはソイツがいけないようなところ……絶対に見つかりそうにない所……まさか……!)

数分後

八幡(……あった。雪ノ下の靴。なんだやっぱり隠した奴の頭もたかが知れてるな。こんなトコに隠すなんてな)スタスタ

「……」ジーッ

八幡「……ん?」チラッ

「……!」ササッ

八幡(今……相手に見られてた……?それも敵意のある眼差しで……?)

昇降口

雪乃(結局見つからなかったわ……。でもまさかここまで酷くなるとはね。何かしらの手段に訴えた方がいいのかしら……)ハァ

八幡「……」

雪乃「あら……?ヒキ……ヒキニク君……だったかしら?そこで何をしているのかしら?私の靴を変態趣味に使うのならばそれは無駄よ。今靴は無いんだもの……」

八幡「人の名前を酷い間違えかたした上に勝手に変態扱いかよ……。これだろ、お前が探していたのは」ヒョイ

雪乃「これは……私の靴。一体どうしてあなたが……」

八幡「さっき酷い理由勝手に付けておいてそれかよ……。男子更衣室に隠してあったんだよ。お前、何か恨みでも買ったのかよ?」

雪乃「恨み……か。恐らくは買っているのでしょうね。それとも押し付けられている……の方が正しいのかしらね……」

八幡「……?どういうことだ」

雪乃「あなたは私を見てどう思う?」

八幡「ま、まぁキレイで頭もいいって思う……」テレテレ

雪乃「そうね。確かにあなたの見解はは正しいものよ。私は頭が良くて美しい人間だわ」

八幡(ナルシストかよ……)

雪乃「でもね、あまりにも優秀すぎる存在というのは人にとってはかなりの驚異となり得るのよ。自分達と済む世界が違う存在というのが近くにいればある人は萎縮し、ある人は自ら離れようとし……ある人は排除しようとする」

八幡「……なるほどな。言いたいことは大体読めた。そりゃあ葉山に気をかけてもらってる秀才美少女がいれば、そいつらは葉山が取られないかと不安になるし、評価もお前と比べられるかもしれないって思っちまうもんな」

雪乃「そういうことよ。だからあなたは手を引きなさい。靴の件は感謝しているわ……ありがとう」スタスタ

八幡(そいつはどーも、雪ノ下さん。でもな……もう遅いかもな。さーて……教科書やノート全部持って帰るとするか……)スタスタ

数分後

八幡「ハァ……ハァ……クソ重てぇ……無茶し過ぎたかな……」グラグラ

葉山「ヒキタニ君、どうしたんだ?凄い量の荷物じゃないか」

八幡「別に……置き勉を……止めた……だけだ……これぐらい……どうってこと……」ゼェゼェ

ヒョイ

八幡「……!?」

葉山「君の家まで手伝うよ」ニコッ

通学路

葉山「しかしなんで急に置き勉を止めようとしたのかな?」

八幡「俺は勤勉だからな。もし勉強しようって思った時に教科書無きゃ困るだろ」

葉山「まぁ、確かに……」

八幡「……葉山さあ、なんで昼休みの時に雪ノ下をアイツらのグループに無理やり突っ込もうとしたんだ?」

葉山「それは雪ノ下さんがクラスに馴染めるように……」

八幡「お前、雪ノ下とどれくらいいんの?」

葉山「そうだね……同じクラスになったのは今回が初めてだけど、それ以外でも会う機会は多かったから……大体5年くらいかな」

八幡「5年も見てるはずなのに取った手段がそれかよ……」

葉山「……何が言いたいんだよヒキタニ君は」

八幡「雪ノ下、お前が去った後見事に元通りの位置に戻ったぞ」

葉山「元に戻った……それって……」

八幡「雪ノ下はクラスから意図的にハブられてんだよ。分かりやすく言えばイジメだ」

葉山「だってあの子達はあの時快く……!」

八幡「本当にそう思ってんなら眼科か精神科に行った方がいいかもな。アイツらお前の前で悪いトコ見せたくなかっただけだろうしな」

葉山「……比企谷君、俺は……」

八幡「……もしも雪ノ下が今度マズい状況になったら本当の意味で助けてやれ。今、雪ノ下の近くにいるのは葉山……お前なんだからよ」

葉山「……」

翌日
昇降口

八幡(昨日はちゃんと教科書とノートを持って帰った。私物も学校には一切無い。……計画通り)ニヤリ

プス

八幡「いたっ!」

八幡(な、なんだ!?いきなり足が痛く……上履きに画ビョウが刺さってやがる……!クソッ!詰めが甘かったか……)

教室

八幡「……」ガラッ

「「……」」ジロッ

八幡(俺が入った途端、教室の雰囲気が……変わった?まあ、大方予想通りか……)スタスタ

八幡(雪ノ下……ずっとこんな思いしてたのかな……)

何度もスマンがこれからバイトなので一旦終了
23時辺りまで残ってたら書くかもつまらんかったら落としてくれ

雪乃「ちょっといいかしら」グイ

八幡「うおっ!」ズルズル

階段横廃材置き場

八幡「なんだよこんなところまで……授業始まっちまうぞ……」

雪乃「ここならあまり人がいないから……それに長い話では無いから」

八幡「内容は分からないでもないし別にいいだろ……俺はこの状況を理解してるしあとは自分の問題ハイ解決」

雪乃「私の問題に勝手に踏み込んでおいてその答えは卑怯よ。第一あなたが理解してるから解決する問題でもないでしょう」

八幡「いいや、解決してる。雪ノ下はこれで少なくとも被害を受けることはないはずだ」

雪乃「何を言って……」

八幡「ヤツらのターゲットは完全に俺になった。放置すれば別の的を防御する厄介な的があったらそっちを排除するだろ。ヤツらの優先順位は今完全に俺>雪ノ下になってる」

雪乃「あなた、まさか……やめなさい!それじゃあ……あなたが……」

八幡「俺は雪ノ下より丈夫だし何より精神面においては優秀だからな。伊達に5年以上ぼっち生活送ってたわけじゃあない」

雪乃「そんなことわたしが許すとでも……」

(チャイムの音)

八幡「やばっ!遅刻しちまうから先にいくぞ」タッタッ
雪乃(……比企谷君、あなたまさか……周囲の人全てを敵に回すつもりなの……)

授業

先生「は~い、誰かこの問題解ける人いますか~?」

雪乃「それなら、わた……」

「比企谷君がいいと思いまーす!」

「比企谷君頭いいしね~www」

八幡「まあ、ああ言っていますし頭のいい俺がやりますよ」ガタッ

先生「え、じゃあお願いできる?でも比企谷君って確か算数が……」

八幡「奇数偶数それぞれ2枚ずつ計4枚のカードを上から1枚ずつ引いていって、最初の2枚で奇数のカードを引く確率は2分の1である。〇か×か。答えは×です」

先生「せ、正解です……。比企谷君すごい勉強したんだね」

八幡「まぁ俺にかかれば余裕ですよ」ドヤ

「何アイツ一問ぐらいでキモいんだけど……」

「ってゆーかマジウザくない?」

雪乃「……」

昼休み

八幡(こういう時は何も隙を見せずにただ静かに一人で教室にいた方がいい。人多いし下手に揉め事起こせば大事になる。流石に最高学年にでもなれば厄介事を避けたいぐらいの知恵も付くだろうしな)

葉山「比企谷君、ちょっといいかい?」

八幡「無理、勉強してて忙しい」カキカキ

葉山「いいから聞いてくれ比企谷君。俺が今から君の今の状況を何とか説明して……」

八幡「なんだ、そんなくだらねぇことか。やっぱり聞く必要無かったな」

葉山「くだらないって……」

八幡「俺が言ったこと忘れたのかよ……。お前が助けるのは俺じゃねえだろ」

葉山「でも……」

八幡「それに俺は黙ってりゃ目立たねぇからな。要らん心配だ。……勉強の邪魔だ、とっととどっか行け」カキカキ

葉山「……」

放課後

八幡(さて……一番問題な放課後バッドタイムだ……。靴は結局そのまんまだし、もしヤツらが行動してたなら俺の靴はさぞやハーレム満喫してたんだろうな……羨ましい)スタスタ

八幡(さて、下駄箱とご対面~……なんてな)

靴「……」カンコーン

八幡(え゛……ある……なんで?ヤツら行動してなかったのか?葉山が言って……いや、こういうのは何言われても秘密裏でやるモンだからな……ありえないか。じゃあなんで……)

「……」ササッ

八幡(ん、誰だ?いつもと動きが違う……?身を隠すことに一瞬戸惑ったのか?)スタスタ

八幡「誰だよ……」ヒョコ

結衣「……うっ、ヒッキー!どうしてここが……」カクレカクレ

八幡「いや、隠れる場所もうねぇから隠れる必要無いだろ……。あと、バレバレだったぞ」

結衣「マジ!?」

八幡「お前本当に何やってんの?まさかお前、靴を隠して……」

結衣「う、うん……やっぱりヒッキー頭いいね。ヒッキーの帰る時間まで靴を植木の裏側に隠してたの……」

八幡「お前が隠してたのか!!」

結衣「ヒッ……」ビクッ

八幡「ってアレ?俺が帰る時間まで……?まさか……」

結衣「うん……。朝にヒッキーの靴探してる友達がいたから、その……私が隠しておくからって言って……ごめんなさい!」ペコ

八幡「お前嘘ついたのかよ…………ッ!なんてことしてくれたんだよ!!」

結衣「ヒッ……ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

八幡「あ……ご、ごめん……いきなり怒鳴って。……その、他のヤツから靴守ってくれたんだな……あ、ありがとう」

結衣「ヒック……靴隠してごめんなさい……」ポロポロ

八幡「だからもうそれはいいよ。ありがとうな由比ヶ浜」

結衣「う、うん……」

八幡(だけどマズいことになったな……。これじゃあ次の日に由比ヶ浜まで……どうすれば……)ギリッ

翌日・HR前

八幡(流石にかなり早めに来れば俺への被害は最小限に収まるだろう……。だけど結局由比ヶ浜への策は浮かばなかった……。何とか考えないとマズい……)

八幡(俺や雪ノ下は言わば外側の人間だ……。だからまだ想像の範囲内で済んだけど……由比ヶ浜は違う。言わば身内の人間に裏切られたんだ……俺以上の報復が待っているかもしれないのに……これじゃ……)スタスタ

教室

結衣「ど、どうしたの?いきなりこんな朝早くに……」

友達A「結衣さぁ~最近、雪ノ下さんやあの変なヤツと仲いいよね~」

結衣「そ、そうかなー……別にそんなこと無いと思うけど……」

友達B「別にアンタがどう思ってるかを聞いてるんじゃないんだけど。私達から見てどう見えるかが問題なんだけど」

結衣「……え、あ……ごめん」

教室前

八幡(遅かったか……)

友達C「ほんッと結衣、最近ウザくなったよね……大人しく私達についてくればよかったのに……」

友達A「少し嘘ついた時の罰をやった方がいいかしら……」

結衣「え……罰?キャアッ!」ガシッ


八幡(……!二人で由比ヶ浜を抑えて……)


友達A「ちょっとバッグ借りるよ」ヒョイ

結衣「あっ!か、返して!!」ジタバタ

友達A「色々ごちゃごちゃしてるな~。お、筆箱発見~!」

結衣「や、やめて!それは……」

友達A「ふーん……その反応、よっぽど大事なモンなんだ……開けちゃえっ!」バサー

カランカランポトッ

結衣「どうして……私達友達じゃ……」ポロポロ

友達B「でもその友達裏切ったのって結衣じゃん」

結衣「……!」

友達A「お、なんか髪ゴム発見~!」

結衣「あっ……!」

友達C「あっ!それ知ってる。雪ノ下さんからもらったヤツだよ!」

友達A「ふーん、いけ好かないなぁ~……。切っちゃおか」ジャキッ

結衣「そ、それだけはダメッ!!」ジタバタ

友達B「大人しくしなよ!」ガシッ

友達A「友人を裏切ったらどうなるか……教えてあげる」


八幡(なっ……!)

「どきなさい、邪魔よ」

八幡「お、お前……」

ガラッ

雪乃「1対3な上に友人の大事なモノを傷つけようとするなんて、随分無粋な真似をするのね」

友達A「なっ……雪ノ下……雪乃……!」

雪乃「あなた達の行為は完全に私の琴線に触れてしまったようね……。覚悟なさい」

友達A「何を覚悟するかなぁ~ゆ・き・の・し・たさん」ニヤリ

友達C「……」ガシッ

雪乃「なっ……!」

友達A「アンタが運動苦手なの私達が知らないと思ってた?カッコつけてるトコ悪いけど、体育の時間でバテてるの知ってましたから~www」

友達A「それに結局私達の方が多いってのは変わらないしー。雪ノ下さん、多勢に無勢って知ってる?」

雪乃「くっ……」


八幡(おいおい大ピンチじゃねぇか……これ。どうすりゃいいんだよ……)

葉山「おや、どうしたんだいヒキタニ君?」

八幡「葉山ッ!頼む!今、雪ノ下と由比ヶ浜がピンチなんだ!助けてやってくれ!」

葉山「ピンチ……一体何が……」ソー

葉山「……!」

八幡「状況は分かっただろ、葉山ならきっと何とか……」

葉山「……ちょっと待ってくれ……もしかしたらただの……」

八幡「お前まさかアレが遊びだなんて言うんじゃねぇよな!アレが遊びだったら、世界中のイジメ全部遊びで通っちまうだろ!!」

葉山「でも……きっと彼女達に悪気は……」

八幡(クソッ……!今も由比ヶ浜はヤバイし助けに行った雪ノ下もピンチだし……でも葉山は未だに迷ってるし……)

八幡(こうなったら俺が……いや、でもそうなったら残りの一年が……。この小学校生活で得たモンが全部無くなって……)


雪乃「フフッ……」

友達A「何がおかしいの……」

雪乃「かわいそうに……あなた達は本当の友情というのを知らずに育ってしまったのね。かわいそうを通り越して……哀れだわ」

友達A「なっ……!」

結衣「あ、あのさ……私は……こんなやり方間違ってると思う!変だよ……人の嫌がることをやって出来る友情なんて……」

八幡「……!」

八幡(何を迷ってたんだ……俺は……)

八幡(何も迷うことは無かったじゃないか……)

八幡(元々、誰かの敵意を買う生活なんて慣れてるし、そもそも俺には培ってきたモノなんて無かったじゃないか。……なら)

(目が濁っていく)

八幡(……俺には失うモンなんて……何もねぇ……よな)スタスタ

葉山「比企谷!?何を……」

八幡「お前が出来なかったことをするんだよ……。どっか行ってろよ、臆病者」ドヨ

葉山「……!」

ガラッ

八幡「うおおおおおおおおおおおおッ!!」

ドカッドカッ

友達B「イタッ!」ドサッ

友達C「なっ……!」ドサッ

結衣「ヒッキー!!」

雪乃「……」

友達A「アンタ……いつの間に……」

八幡「よぉ、お山の大将さん。楽しかったかぁ友情ごっこは」スタスタ

友達A「ア、アンタ女子に手を出すつもり……!?どうなるか分かって……。ア、アンタ達なんかよりアタシ達の方が信用されて……」

八幡「悪いが俺の今のモットーは男女平等でね……。マジで覚悟しろよ……」

結衣「ヒッキーやめ……」

雪乃「比企谷君!」

「悪いがそれはさせないよ」ガシッ

八幡「なっ……!葉山!クソッ離せよ!アイツらの味方する気か!?」ジタバタ

ブン!

八幡「イタッ!」ドサッ

結衣「ヒッキー!」

葉山「……比企谷、少し落ち着け」

友達A「うわーん!!怖かったよ……葉山くん……」メソメソ

葉山「悪いが俺に泣き落としは通じないよ。大体の事は聞いたし、この目で一部だが見た」

友達A「えっ……」

葉山「もしも君達が雪ノ下さん達のデマを流すと言うのであれば、俺は全力で彼女達の潔白を証明しよう」

八幡「フザけるな……葉山。俺がブン殴るのが一番手っ取り早く……」ヨロ

葉山「少し黙れ」ゲシッ

八幡「うげっ……」ドサッ

葉山「今、君が泥を被る必要はない。それにそんな事を彼女達は望んでいないはずだ」

結衣「ヒッキー……」

雪乃「……」

八幡「……!」

葉山「分かったか。今、泥を被るのは君じゃない」

八幡「……ちっ、由比ヶ浜と雪ノ下に任せるよ」ブスッ

友達A「……」

雪乃「さて、どんな制裁を与えればいいのかしらね……。普通に考えれば先生に報告するトコなんでしょうけど……生ぬるいわね」ボソッ

八幡(おい、今サラッとこええ事聞こえたぞ……)

結衣「あのさ、ゆきのん……その事なんだけど……」

雪乃「何かしら?由比ヶ浜さん」

結衣「一応、これでも私の友達なんだ……。だからさ、あんまり酷いことしないであげてほしいの……」

雪乃「でも由比ヶ浜さん、あなた……」

結衣「……」

雪乃「……ハァ、分かったわ。由比ヶ浜さんの言う通り今回の件は水に流すことにするわ。けど……」

雪乃「次やった時は覚悟しなさい、こんなものでは済まさないわよ」ギロッ

A「……!」ビクッ

八幡(こええ……今度から氷の女王とでも呼んだ方がいいのかね……)

ワイワイ……ガヤガヤ……

結衣「どうしよう!もう皆が学校に……」

雪乃「この状態が見つかってしまったら大問題になるわね……」

結衣「そんなっ……それじゃ……」

八幡「クソッ、少し遅かったか……」

葉山「いや、まだ間に合う」

八幡「は?何言ってんだお前……」

葉山「最初に比企谷に謝っておくよ。ゴメン、俺には君しか相手がいないんだ。そして悪いが一応、念のため歯を食い縛ってくれ……」

八幡「お、おい……まさか……」

ガラッ

葉山「ハァッ!」

昼休み

「ねぇ、聞いた?葉山くんが……」

「うん、まさか自分からケンカ起こして大乱闘だなんて……」

「なんでも理由は目がキモかったかららしいよ……」

「カポエラって技で蹴りまくったらしいぜ……」

ワイワイガヤガヤ

雪乃「……由比ヶ浜さん、比企谷君と葉山君は?」

結衣「まだ相談室らしいよ……。なんでも二人の意見が食い違いすぎる上に見てた人も少ないから先生、混乱してるみたい……」

雪乃「本当に呆れるわね……あの二人は。……ハァ、でもそこが……」

相談室

葉山「だから俺が比企谷を思いっきり殴ったんです!」

八幡「いや、コイツのスキンシップの猫パンチに過剰に反応して俺がマジで殴ったんです!」

先生「ふ、二人ともいい加減にしなさーい!!」


雪乃「あの二人らしいと言えば二人らしいわね……」

放課後

ガラッ

八幡「……ハァ」グッタリ

葉山「……ふぅ」グッタリ

雪乃「随分と遅かったわね」

結衣「結局どうなったの?」

八幡「俺達のじゃれ合いの延長戦上で……」

葉山「周りを巻き込んで大ゲンカになったって事になったよ……」

八幡「だいたいお前がいきなり歯を食い縛れって言って俺の頬に触るからあんな事に……」

葉山「何を言ってるんだ!君が自分から殴ったなんて言い出すから訳が分からなく……」

八幡「んだよ!」

葉山「なんなんだ!」

結衣「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて……ね」

八幡「フン……」プイ

葉山「全く……」プイ

雪乃「呆れてものも言えないわね……」

通学路

結衣「バイバーイ!」

雪乃「また明日……」

スタスタ

葉山「……なぁ、比企谷」

八幡「何だよ……」

葉山「あの時は済まなかった。もし君がいなければ俺は一生後悔していたかもしれない。……ありがとう」

八幡「別にそんな大層なことはしてねぇよ……。お前こそ殴ろうとした場面で止めてくれて……ありがとな。危うく一線を越えるトコだった……」

葉山「……」

八幡「……」

葉山「なぁ、比企谷……俺達はもしかしたら……」

八幡「……同感だ。多分俺も同じ事思ってるよ」

スゥゥ

八幡・葉山「「お前とは友達にはなれないかもな」」

八幡「……じゃな」スタスタ

葉山「……ああ、またな」スタスタ

翌日
廊下

結衣「ヒッキー、やっはろー!」

八幡「お前まだ俺に関わるのかよ……。もう俺にはこれ以前の変なレッテル貼られてんだからやめとけ」

結衣「で、でもヒッキーとは友達だし……」

「あっ、そこのお団子の子ちょっといい?」

八幡「ほら、呼ばれてんぞ……」

結衣「あっ……!」

「ちょっと聞いてるー?アンタだよアンタ」

結衣「あっ……ごめんなさい」

「別に謝ることじゃないっしょ。へー……アンタやっぱりかわいいね。どう?あーし達と友達にならない?」

「そう言えば名前、聞いてなかったね」

三浦「あーしは三浦優美子よろしく!で、隣のが……」

海老名「海老名姫菜です。よろしくね」

結衣「……由比ヶ浜結衣です!よろしく!」ニコッ

ガラッ

八幡「よう、雪ノ下だけか……」

雪乃「あら、おはよう比企谷君」

八幡「また本読んでんのか……。一応ゴタゴタは済んだんだし少しは他人と交流しろよ……」

雪乃「あなたに一番言われたくない台詞だわ……」

八幡「なっ……!俺だって一応友達作りしようとしてるんだぞ!」

雪乃「多分あなたでは無理じゃないかしら」ペラ

八幡「なっ……!」

雪乃「でも、少なくとも今のあなたは、ぼっちではないのかもしれないわね……」

八幡「え……?それって……」

雪乃「冗談よ」ペラ

八幡「おい……おい……」

4年後

八幡「バッグよし、制服よし、髪型よし、持ち物よし……完璧だな、うん」

小町「でも目が若干腐りかけなのがなぁ~」ヒョコ

八幡「おい、小町……サラリと気にしてること抉るなよ……」

小町「でも小町はそんなお兄ちゃんも大好きだよキャピ!あっ!今の小町的にポイントたかーい!」

八幡「ハイハイ……。それじゃあ行ってくる」バタン

小町「行ってらっしゃーい!」

高校廊下

八幡(雪ノ下の言う話だと入学式後に由比ヶ浜と葉山を巻き込んで部活を作るらしい。何でも悩み相談だとかなんとか)

八幡(ちなみに葉山は正式な部員でなくあくまでスポンサーだとか。当の葉山は自分の時間を他人の為だけになんとかかんとか言って嫌がっているところを妥協したらしいが……。雪ノ下マジで怖い……)

八幡(由比ヶ浜は小6の時に出来た新しい友達と付き合いながらも部活に顔を出してくれるらしい。あと何か最近俺への態度がキツい。そんなキモいキモい連呼しなくてもいいじゃねえか……)

八幡「ここか……。なんだこれ……?ネーミングセンスの欠片もねえな」

八幡(そして俺は……新しく高校生活を始めることになる……この場所で……雪ノ下達と……)

ガラッ

雪乃「あら……あなただったのね……」

ようこそ、奉仕部へ

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