ほむら「……超人?」瑚太郎「まぁ、一応そんな感じ」 (125)

魔法少女まどか☆マギカ×Rewriteのクロスです

1.まどマギ本編組の他、おりこ☆マギカのキャラも出て来ます。

2.両作品の設定に差異が出てくる場合があります。その場合は>>1の勉強不足ですので、指摘してくれると喜びます。

3.Rewriteについては、大雑把な設定はちはや√終了後となっていますが、所々他√の話も絡んできます。

4.その他、細かい事は気にしない方向でよろしくお願いします。

5.前にRewriteクロスのスレを立てて書いてたけど、諸事情あって一度中断したものの立て直しとなります。スレタイ変えたけど、序盤の内容などはほぼ同じです。パクリではないです、念の為

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367860041

ガイアとガーディアンの『鍵』を巡る争いが集結して、一ヶ月が経とうとしていた。

ちはや「今日のおやつはアップルパイですよー。咲夜が今朝作ってくれたんです!」

風祭には平穏が訪れており、オカルト研究会一同もその平穏を謳歌していた。

小鳥「おーっ、豪気だぁねぇ」

オカルト研究会の中でも、少なからずのごたごたはあった。
何しろ構成員のウチ、実に四人が秘密組織に属していたのだから。

静流「あっぷる!」

更に残る二人のウチ、一人は鍵に非常に密接な立場にあったりもした。

朱音「あっ、この、後から来ておいてわたしより先に得物を狩るとはっ……生意気ねこいつ。我が黒魔術で二度とログイン出来ないようにしてやろうか」

時には殺し合う直前まで行った事もあった。
しかしそれも今は昔、こうしてまた顔を突き合わせることが出来るようになっている。

ルチア「相変わらず咲夜さんは豪快な方だな。それにお菓子作りの腕も一流と来たものだ」

オカ研の部室、その真ん中のテーブルでは四人の少女が楽しげにお菓子をつつきながら談笑していた。
会長は会長で、肩の荷が下りたのだろう、パソコンの画面に食いついていた(やっていること自体は前と変わってはいないのだが)。

瑚太郎「………」

部屋の隅。
そこでは天王寺瑚太郎が沈黙して座していた。
……いや、違う。
体がプルプルと小刻みに震えていた。

瑚太郎「違う……」

ちはや「ん?瑚太郎、何か言いました?」

瑚太郎「俺が求めてたのはこういうんじゃねーんだよー!!」

我慢の限界と言った様子で、椅子から勢いよく立ちあがるとそう叫んだ。

瑚太郎「なんっだお前ら!ちょっと前まで殺し合う仲だったんじゃないのかよっ!!」

朱音「天王寺、うるさいわよ。静かになさい」

瑚太郎「会長も会長っすよ!!なんなんすかアンタ!!あの天下のガイアの聖女様じゃなかったんすか!?」

朱音「うるさいと言っているわよ、気が散るわ」

瑚太郎「ルチア、お前もだ!!」

ルチア「な、なんだ瑚太郎。わたしに何か文句でもあるのか?」

瑚太郎「お前、なんでそんな平然としてんの!?お前の目の前にいるそいつ、敵だったんじゃないの!?」

ちはや「な、なんでわたしを指さすんですか?」

瑚太郎「小鳥ぃぃぃ!!」

小鳥「コタさんが荒ぶっておられる!?」

瑚太郎「鍵を守る使命はどうした!!こんなとこでのほほんとしてる場合なのかよぉぉぉ!!」

静流「どうしたコタロー。疲れてるのか」

瑚太郎「うぅっ……静流はええ子やなぁ……」

とてとてと瑚太郎の元へ近づいて来た静流の頭を、なでなでする。

静流「いらいらはいけない。あっぷるぱい、おいしいぞ。一緒に食べよう、コタロー」

そう言って、手に持っていたアップルパイのひとかけらを瑚太郎の口に入れる。

瑚太郎「むぐむぐ……おっ、んまい」

ちはや「瑚太郎もここに来て、一緒に食べましょうよー」

瑚太郎「おう、食べる食べるー!」

先程までの怒りはどこへやら、瑚太郎は小鳥達の輪に入り、談笑に交じるのだった。

—————
———


瑚太郎「…………はっ!?」

ちはやの持ってきた、咲夜特製のアップルパイを綺麗に平らげてから数十分後。
ふと瑚太郎は我に返った。

ルチア「む、どうした瑚太郎?」

小鳥「おお、もうこんな時間。今日はもうお開きにしよう、とか?」

ちはや「そうですねぇ、部活動の時間もそろそろ終わりですしね」

朱音「そう、気をつけて帰りなさい」

静流「帰ろう、コタロー」

瑚太郎「おう、そうだな!」

静流や小鳥達のペースにあっさりと流された瑚太郎は、椅子から立ち上がる。

瑚太郎「って、そうじゃねえ!!」

が、再びその場にどかりと座りこんだ。

小鳥「帰らないのかいコタさんや」

瑚太郎「みんな、落ち着いて聞いてくれ。まだ帰るには早い」

心底真面目な顔をして、瑚太郎はオカ研メンバーの顔を眺める。

ちはや「なんなんですか一体……」

ルチア「もうじき学校の下校時刻だぞ。そんなに大事な話なのか?」

瑚太郎「ああ、すごく、すごーく大事な話だ」

静流「むぅ……」

瑚太郎は、悩んでいる静流の顔を直視する。

静流「……おぉ、そうか」

瑚太郎の意図をくみ取った静流がまず座った。

ルチア「静流っ?帰らないのか?」

静流「コタローの話を聞かないと行けない」

ルチア「くっ……仕方ない、わたしも同席しよう」

静流が残ると決めた以上、ルチアも同席せねばならないとでも思ったのだろう。
静流に続き、ルチアも椅子に腰を下ろした。

小鳥「あたしゃそろそろ帰らないと……」

瑚太郎「小鳥。………頼む」

小鳥「……仕方ないさね。幼馴染のよしみだ、付き合ったげよう」

お情けだ、と言うかのようにやれやれとため息をつくと、小鳥も座りなおした。

ちはや「え、えーっと……そんなに大事な話なんです?」

瑚太郎「その質問は既にルチアがしている。俺も既に返答済みだ」

ちはや「あのー……」

困り果てたちはやが、ルチアの方に視線を移した。

ルチア「瑚太郎曰く、『すごく、すごーく大事な話』、だそうだぞ」

ちはや「……わかりましたよぉ」

みんなが残ると決めた以上、一人で帰るのは気が引けたのだろう。
渋々、ちはやも席についたのだった。

瑚太郎「会長。いつまでオンゲーやってんすか。大事な話があるんですってば」

朱音「残念ね、今はショッピング中よ」

瑚太郎「俺の話聞く気ゼロっすかっ!?」

朱音「この部屋の主はわたしよ。わたしが何をしようがお前にどうこう言われる筋合いはない」

瑚太郎「ぐっ……そ、そりゃそうなんすけどぉ……」

朱音「でもお前は運がいいわ。ちょうど今、ショッピングがひと段落したところよ。特別に話を聞いてあげるわ。感謝なさい、天王寺」

パソコンの画面から部屋の中心のテーブルの方へ、視線を移す朱音。
これで一応は、全員話を聞く姿勢が整った。

瑚太郎「いいか、みんな。よく聞け」

低い声で、瑚太郎は全員に話しかける。

ちはや「もったいぶらずに話してくださいよ」

ルチア「そうだぞ瑚太郎。わたし達も暇じゃないんだ」

瑚太郎「わーったわーったよっ!手短に話すから、よーく聞けよ?」

両手で全員の抗議を押さえこみながら、瑚太郎は咳払いをひとつする。

瑚太郎「えー今週末、我々オカルト研究会は久しぶりに週末クエストへ出発することとなった」

前置きで言ったように、手短に用件を伝えた。

ちはや「……………はい?」

瑚太郎「週末クエストだよ、週末クエスト」

朱音「何を言い出すかと思えば……呆れて物も言えないわね。この街の深層まで知り尽くしたというのに、まだ調査すべき物があるとでも言うつもり?」

瑚太郎「ちっちっち、残念です会長。今回のネタは一味違うんすよ」

朱音「天王寺の癖に生意気な……」

ルチア「どう言った内容のものだ?」

瑚太郎「ここから電車で二時間ほど行った所にある、見滝原町。そこで俺はひとつの不思議の欠片を見出したのだ」

ちはや「見滝原……ですか?」

瑚太郎「ん、なんだちはや、知ってるのか?」

朱音「確か、ちはやが以前にいた町の名前だったわね」

ちはや「はい、そうです」

瑚太郎「ほう……それは興味深い。今度、詳しく話を聞かせてくれ」

ちはや「それは構わないですけど」

小鳥「それで、そのー見滝原?がどうかしたの?」

瑚太郎「どうもその街、不自然な事故や事件が多いらしいんだ」

静流「不自然……どういうことだ?」

瑚太郎「理由のはっきりしないものや、動機が不明なものだったり。まぁ、とにかく色々なもんだ」

朱音「………この街の不思議を調査するというお前の意気込みはどこへ行った?」

瑚太郎「やめて会長!その冷やかな眼やめて!」

朱音の半眼に耐えられなくなった瑚太郎が、静流の背に隠れる。

瑚太郎「だって!会長自身が言ってた事じゃないっすか!もうこの街の不思議のほぼ全ては理由はっきりしてるじゃん!」

朱音「まぁ、それは確かにそうだけれど……」

瑚太郎「森に住む怪人だって!」

小鳥「おほほほほ」

瑚太郎「理科室で歩くアレだって!」

ちはや「アハハハ……」

瑚太郎「僕が超能力者だとか、僕こそ真の超能力者だとかだって!!」

ルチア「うぅむ……」

瑚太郎「校内で発見されたツチノコだって!!」

静流「中庭で食べたさんま缶はうまかった……」

瑚太郎「みんなみんな、ガイアの魔物使いやガーディアンの超人の仕業じゃないっすか!!」

そこまで言い切ると、瑚太郎はテーブルをバンと力強く叩いた。

朱音「待って、みんなではないわよ。自称超能力者は、その素質があると言う程度だったでしょう」

瑚太郎「そんなの些細な問題だもん!もう見え透いちゃってるんだもん!」

ちはや「瑚太郎が駄々っ子みたいになってます……」

瑚太郎「ですから!思い切って俺は町の外へ眼を向ける事にしたんすよ!!」

ルチア「急に胸を張りだしたな」

朱音「あぁ、そう。頑張んなさい天王寺。わたしはこの部屋からお前の失敗を心から祈っているわ」

瑚太郎「突っ込みどころが多いお言葉どうもありがとうございますぅ!!」

朱音「………」

何を言っていいのかわからず、朱音は瑚太郎に半眼を向ける。

瑚太郎「いいですか、俺たちはみんな揃ってオカ研なんです!!」

小鳥「だぁねぇ」

瑚太郎「誰か一人でも欠けちゃいけないんすよ!!」

ちはや「まぁ、そうですねぇ」

瑚太郎「一度は壊れかけた絆でも、こうして仲良くまた集まる事が出来てるじゃないですか!」

ルチア「そう、だな。本当に不思議な事だが」

瑚太郎「そんな俺たちが、こうしてこの部室へ再び集まって!それでやる事は以前と変わらずお菓子つついてキャッキャウフフですか!?」

静流「………おお。そう言われると、なんだか勿体ないような気がしてきた」

瑚太郎「だろぉ静流!?勿体ないよなぁ!」

ちはや「それに、あの争いが集結してからは週末クエストにも行ってませんでしたねぇ」

小鳥「そだねぇ。ここらで一発、何かどかーんとでっかいことをやりたいってコタさんの気持ちもわからなくもないさね」

瑚太郎「ルチア……静流……ちはや……小鳥……」

賛同の意を示してくれた四人を眺めながら、瑚太郎は目頭が熱くなるのを感じた。

瑚太郎「ありがとうっ……やはり持つべき物は仲間だなぁ」

朱音「………」

瑚太郎「持つべき物は仲間だなぁ」

ちら、ちら、と朱音の方へ視線を送る。

朱音「わたしにどうしてほしいのお前は……」

瑚太郎「一緒に見滝原へ行きましょう!誰も知らぬ未知を探す道へ!!」

朱音「今のお前のそのシャレにいらっと来た」

瑚太郎「あぁっ!!ごめんなさい会長!!」

朱音「……はぁ、仕方ないわね。それじゃ、具体的な問題点を羅列してあげる」

瑚太郎「も、問題点ですとな?」

社長椅子からその重そうな腰をあげ、朱音はホワイトボードの方へ移動する。

朱音「いい?まずわたし達は学生よ」

瑚太郎「は、はい」

朱音「その調査は、週末だけで終わるのかしら?」

瑚太郎「わ、わからないです。行くって俺の頭の中で決めちゃったらもうわくわくが止まらなくなって下調べもほとんどしていない状況ですから」

朱音「移動手段は?」

瑚太郎「で、電車で……」

朱音「朝早くに遠征して、調査して、日帰りで風祭へ帰って来るとでも言いたいのかしら?」

瑚太郎「そ、それはその……」

朱音「普通に考えて非現実的ね?」

ルチア「か、会長!そこまでにしてあげてくれ!!瑚太郎がどんどん小さくなっていて、正視に堪えない!!」

瑚太郎「うぅ……週末クエスト……ぐすん……」

静流「おお、よしよし、コタロー。わたしはコタローの味方だぞ」

小鳥「元気出しんさいコタさんや」

瑚太郎「週末クエスト……やりたいんだもん……」

朱音「現実的に実現不可能なのだから諦めなさい」

ちはや「あのー、ちょっといいですか?」

朱音「何かしら、ちはや?」

ちはや「見滝原までの足なら、咲夜に頼めばなんとかなると思います」

朱音「………は?」

ちはや「車で移動出来るんなら、調査もじっくり出来ますよね?」

ルチア「まあ、そうだな。ある程度は時間に融通は効くようになりそうだ」

朱音「ちょ、ちょっと?」

ちはや「それに、前に調査してたのだって結構な時間が掛かったのもあったじゃないですか」

静流「うむ。確かにちーの言うとおりだ」

ちはや「なにも今週末に1から10まで調べ尽くす必要もないんじゃないです?」

朱音「黙りなさいちはや」

ちはや「は、はい?」

朱音「……っ……」

ちはやの言葉を遮り、朱音は恐る恐る瑚太郎の方へ視線を移した。

瑚太郎「鳳ちはや……女神か……?」

ちはやに、熱い視線を送っていた。

朱音「手遅れだった……!?」

瑚太郎「ホントなんだなちはやっ!?」

朱音の正論ラッシュで打ちひしがれていた瑚太郎がガバッと立ち上がり、ちはやの両手を熱く握る。

ちはや「こ、瑚太郎っ?」

瑚太郎「咲夜に頼めば、足はなんとかなるんだなっ!?」

ちはや「ま、まぁ、なると思いますけど……」

瑚太郎「あいつに頭を下げるのは癪ではあるが、この際背に腹は代えられんっ!!」

ちはやの両手を熱く握りしめたまま、瑚太郎は頭を下げる。

瑚太郎「お願いしますちはやさんっ!!この哀れな俺に、救いの手を差し伸べてくださいっ!!」

ちはや「あ、あのー……」

小鳥「わたしからもお願いするよちーちゃん。何とかしてあげてよ」

瑚太郎に続き、小鳥もちはやに頭を下げる。

静流「新生オカ研の、新しい門出だ。わたしもお願いしたい、ちー」

更には、静流も頭を下げる。

ルチア「わたしからも、お願い出来ないだろうか?久しぶりに、その、みんなでどこかへ出かけるのもいいと思うんだ」

静流の後には、ルチアも頭を下げた。

ちはや「わ、わかりました、わかりましたってば!頭をあげてくださいよ!」

瑚太郎「本当かちはやぁぁっ!?」

ちはや「咲夜にお願いするだけですってば!大げさですねぇ瑚太郎は」

瑚太郎「わーい!やったー!久しぶりの週末クエスト決定だー!」

朱音「ま、待ちなさい!わたしは許可していないわよ!?」

ほぼ決定の流れとなったところで、慌てて朱音がそう口を挟む。
しかしその言葉は、浮かれ切った瑚太郎の耳には届いていなかった。

小鳥「……諦めるのが懸命だと思いますよ、会長」

朱音「か、会長!そうよ、オカ研の会長はわたしよ!?決定権はわたしにあって然るべきじゃないの?」

静流「ここまで話が決まった後で取り消しになると、コタローの命が危うい」

朱音「うっ……」

ルチア「まあまあ、別にいいじゃないか。今までだって、瑚太郎が中心でやってきたんだろう?」

朱音「う……ぐ……」

ちはや「行きましょうよ、朱音さん!わたしも、久しぶりに見滝原、行きたいですし」

朱音「………ぐぬぅ……」

今までは理論で押し負けた場合にしか出なかったセリフが、この時ばかりは感情論に押し切られて出てしまったのだった。

朱音「……はぁ、わかった、わかったわよ。わたしも行けばいいのでしょう……」

観念した朱音が、深いため息と共に許諾の言葉を呟いた。

瑚太郎「さすが会長!多数決などの決定には異議を申し立てづらい!!」

朱音「うるさいわよ天王寺。今回だけだからね?」

瑚太郎「わかってます、わかってますって!」

オカ研のみんなの協力もあって、ゴタゴタが片付いた後の、初めての週末クエストが決まった瞬間だった。

今回の投下、以上
>>1に書き忘れていましたが、Rewriteに関してはHarvest Festa!の内容も絡んできます
今回こそ完結まで書ききろうと思っているので、温かく見守ってくれるとうれしいです
次の投下は、明日(日付変わって今日)の夜を予定しています

では

遅くなりました
投下開始します



そして、週末。

咲夜「ちはやさん。車の準備、完了しました」

ちはや「ありがとうございます咲夜。さあ皆さん、乗ってください」

瑚太郎「お、おう……」

ルチア「ど、どういうことなんだ、これは……?」

小鳥「あ、あっはは……」

静流「大きい……」

咲夜が用意して来た車を前に、オカ研一同は言葉を失っていた。

朱音「咲夜。念のため聞いておくけれど、この車は……?」

咲夜「ご心配には及びませんよ朱音さん。これは、私の方のツテで用意したものですから」

朱音「そう、ならいいわ。さ、みんな。行きましょう」

朱音を筆頭にして、瑚太郎を除く全員が乗り込む。

咲夜「瑚太郎くんは乗らないんですか?」

瑚太郎「いや……ホントお前、何モンだよ?」

咲夜「はっはっは。今更何を言い出すんですか与太朗くんは」

瑚太郎「何度も言うが、瑚太郎だ!!つかお前、一応学生なんだろ!?運転して大丈夫なのかよ?」

咲夜「そんな事は瑣末な問題ですね。学園の制服を着ているならともかく、今は執事服ですから」

瑚太郎「年齢詐称執事め……」

咲夜「与太朗くんはお留守番でよろしいですね」

瑚太郎「だぁぁぁぁ!!待て待て、俺も行くっつの!!」

瑚太郎を置いて運転席に乗り込んだ咲夜を見て、慌てて瑚太郎も後部座席に乗り込んだ。

小鳥「ねぇねぇちーちゃん、見滝原って、どんな所なの?」

ちはや「とってもいい街ですよ!」

瑚太郎「ンな答えを求めてるんじゃないんだよ。もっとこう、具体的な話をだな」

ちはや「えーっと……ですね……」

朱音「ちはやに聞いて、まともな答えが返ってくるとでも思っているの?お前たちは」

瑚太郎「いや、俺は思ってない」

小鳥「実を言うと、あたしもあんまり」

ちはや「二人とも酷くないです!?」

ルチア「まぁまぁ、落ち着け鳳さん」

ちはや「うぅ……」

瑚太郎「で、咲夜。見滝原って、どんな所なんだ?」

咲夜「そうですね。風祭とは違い、科学が発展した街ですよ」

小鳥「か、かがく……」

朱音「でも、都心のようなビルが立ち並ぶというようなわけでもない。自然も大事にされていて、風祭とは違った和やかな街ね」

ルチア「ほう……興味深いな」

ちはや「此花さんと静流は行った事ないんです?」

静流「残念だが、行った事はない」

ルチア「ガーディアンジャパンの他の者が行ったという話は聞いた事があるが、いずれも怪しい様子は確認されていないそうだ」

瑚太郎「そうなのか?」

ルチア「ああ。あまりこちらの情報を洩らすようなことは出来ないんだがな」

朱音「わたし達も信用が無いのね」

ルチア「い、いや、すまない。そういう意味で言ったわけではないんだが……」

朱音「冗談よ。まぁ、ガーディアンの手が薄いという事については、ちはやが以前に住んでいたと言うところから察してちょうだい」

瑚太郎「……あぁ、なるほどなぁ」

小鳥「一番説得力があったねぇ」

ちはや「えーっと……もしかしてわたし、バカにされてます?」

咲夜「いえいえ、そんなことはありませんよちはやさん」

ちはや「そうですかねぇ……」

朱音「ところで天王寺。見滝原へ行くのはいいけれど、具体的に何を調査するかは決まっているの?」

瑚太郎「ええ、もちろんです!」

朱音の言葉に返事をすると、瑚太郎は全員に説明を始める。

とりあえずは、メンバーを三つに分けるということ。

瑚太郎と小鳥。
ルチアと朱音。
静流とちはや。

そうして、街の人々への聞きこみ調査や、怪しい場所を調べたり、等々……。

全てを説明し終えた瑚太郎は、とても得意げだった。

瑚太郎「まぁ、大体はこんな感じっすね」

ルチア「すごく、その、何と言うか……漠然としていないか?」

ちはや「不自然な事象もはっきりしていなければ、調査する内容もはっきりしていませんねぇ」

朱音「……それだけの大規模な調査を、電車を使ってまで遠出して、やる意義はあるのかしら?」

瑚太郎「意義ならありますよっ!!」

小鳥「はっきりと言い切りおったっ……!」

静流「頼もしい、コタロー」

瑚太郎「オカ研が、オカルトを追い求めること自体に意義があるっ!!!」

ルチア「しかしその内容までもが漠然としていたな」

ちはや「まぁ、こんなものじゃないです?」

瑚太郎「その通りっ!!ちはや、今いい事言ったよ!!」

ちはや「いきなり褒められても……」

朱音「もういいわ、わたしも諦めたから」

オカ研一同を乗せた車は、見滝原の街へ到着した。

咲夜「それではちはやさん。私は街の外れにて待機していますので」

ちはや「御苦労さまです、咲夜」

咲夜「何かありましたら、お呼び出しを」

それだけ言い残すと、咲夜は車を運転してこの場を去って行った。

瑚太郎「さて!それじゃ調査、始めますか!」

ルチア「行きましょう、会長」

朱音「仕方ないわね……」

静流「ちー、行こう」

ちはや「はい、静流!」

ルチアと会長は住宅街の方へ。
静流とちはやは町外れの方へ。
それぞれ歩いて行った。

小鳥「瑚太郎くん。あたし達も行こっか」

瑚太郎「おうっ!」

瑚太郎と小鳥は、二人並んで商店街の方へ歩を進めていった。

町外れ———

ちはや「この辺りは、やっぱり人もいないですねぇ」

静流「コタローの話では、理由のはっきりしない自殺などをする人もいるとの事だった。挙動の怪しい人がいたら、声を掛けてみた方がいいかもしれない」

ちはや「この街でそんな物騒な事があったんですね……」

町外れの工場跡や、廃棄された建物。
それらの建物の間を縫って、二人は歩いて行く。

ちはや「あっ、あそこに人がいますよ!」

静流「おお、この辺りに人が……。怪しい……」

ちはや「話しかけてみましょう!」

工場跡を歩いている、一人の少女の元へ駆けよる。

ちはや「こんにちはですー!」

「っ?な、なんだお前ら?」

静流「初めまして。わたしの名前は中津静流と言う」

ちはや「あ、えーっと、わたしは鳳ちはやです」

二人は、少女に丁寧に自己紹介する。
長い髪をポニーテールに結っている少女だ。

「お、おう……あたしになんか用か?」

挨拶された少女は、二人の挨拶に適当に挨拶しながら問いかける。

ちはや「こんなところで何をしてたんです?」

「え?あー、いや、それは……」

静流「この辺りは物騒だ。用も無く歩いているとは思えない」

「……いや、個人的な用があっただけさ」

静流「その個人的な用、出来るなら教えて欲しい」

「………何もんだ、あんたら?……同業者じゃ無いよな?」

ちはや「はい?同業者、です?」

ポニーテールの少女は、手にある物を乗せてそれを二人に見せつける。

「これに見覚えは?」

静流「綺麗な宝石だ」

ちはや「綺麗ですねぇ」

「オッケー、なら問題ないな」

二人の反応を見たポニーテールの少女———佐倉杏子は、にやりと微笑んだ。

杏子「あたしは忙しいんだ。んじゃな、お二人さん!」

静流「待て、まだ話は……っ?」

ちはや「あ、あれ?どこ行っちゃったんですか?」

杏子は、二人の目の前から姿を消す。

静流「……怪しさ満点だ」

ちはや「ですねぇ。いきなり話しかけたのがまずかったんでしょうか?」

二人は顔を突き合わせ、うーんと唸る。



その様子を、廃屋の上に立った杏子が眺めていた。

杏子「面倒事はゴメンだね。魔女の気配もねぇし、町外れなら大丈夫かなと思ってこっちに来たが、やっぱ町外れなだけに期待も外れだ」

口に咥えたロッキーをカリッと噛み砕くと、杏子は屋根と屋根を跳んで移動し、その場を後にするのだった。

———住宅街

朱音「あー……暑いわね……」

ルチア「会長、もう少しやる気を出してくれてもいいのでは……?」

朱音「何もかもが漠然とした物にやる気を出せと言う方が無理な相談じゃないの……」

ルチア「まぁ、否定は出来ないがな」

朱音「とっとと原因を究明して、我が神秘の園へ帰りたいわ……」

ルチア「ただオンラインゲームをやりたいだけではないのか……?」

朱音「オンラインゲームと言わないの。黒魔術行使の場と言ってちょうだい」

ルチア「あははは……」

ルチアと朱音の二人は、人が行き交う住宅街を他愛も無い話をしながら歩いていた。

朱音「はぁ……で?天王寺の話は、どのようなものだったかしら?」

ルチア「住宅街で調査すべき事は、理由のはっきりしない事故の類だったな」

朱音「そう都合良く事故が起こってくれるといいけれどね」

ルチア「それは都合がいいと思うべきなのか、都合が悪いと思うべきなのか……っ!」

朱音との会話を中断したルチアが、突然駈け出した。

ルチア「っ……ふぅ……危ない所だった」

交差点の中心へ飛びだし、ある物を抱え込んだかと思うとすぐさま向こう側の路側帯まで移動していた。

朱音「ルチア?いきなりどうしたと言うの?」

普通に信号を渡って来た朱音が、ルチアに問いかける。

ルチア「ああ、悪い会長。この子が、事故に合いそうになっていたのでな」

そう言って、手の中に抱かれているモノを朱音に見せる。
そこには、小さな黒猫が身を縮こまらせていた。

朱音「……猫?」

ルチア「交差点の中心にいたら危ないんだぞ?」

喉元をくすぐりながら、ルチアは黒猫に話しかける。
くすぐったそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた黒猫が、ルチアの手の中から脱出する。

ルチア「気をつけるんだぞ!」

歩き去って行く黒猫を見送りながら、ルチアは小さく手を振った。

朱音「理由のはっきりしない事故っ……!?」

ルチア「いや、これはそう言うのでは……」

「エイミー!大丈夫だったの!?」

ふと、黒猫が歩き去った方から声が聞こえて来た。
そちらの方へ、二人は視線を移した。

「いやぁ、間一髪って所だったねぇ」

「よかったぁ……」

ルチア「その猫、あなた達の飼い猫か何かか?」

しゃがみ込んで猫を抱いている少女の元へ歩み寄りながら、ルチアはそう話しかけた。

「いえ、そうじゃないんです。たまに餌をあげたりとかはしているんですけど……」

「あなた達が助けてくれたんですよね?」

猫を抱いている少女と一緒にいた方の少女が、ルチアと朱音にそう問いかける。

朱音「いえ、助けたのはわたしでは無くてルチアだけよ」

「あ、ありがとうございます!ほら、エイミーも!」

スクッと立ちあがり、猫を抱いた少女はルチアへ向けて頭を下げた。

ルチア「いや、気にしなくていいんだ。体が勝手に動いてしまっただけだしな」

「それでも、よかったです」

顔を綻ばせ、猫の頭を撫でている。
猫を抱いていた少女———鹿目まどかは、抱いていた猫を再び地に離す。
まどかと一緒にいた少女———美樹さやかは、ルチアへ向けてニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

さやか「しっかし……あの動き、ただ者じゃあないですね、あなた?」

ルチア「え、えっ?な、なんのことだっ?」

さやか「ささっ、と交差点の中心へ跳躍し、エイミーを回収し、そのままこっちの路側帯まで再度跳躍するなんてねぇ」

まどか「えっと、わたしよく見てなかったからよくわからないかな、って」

さやか「あら、そうなの?勿体ないなぁ」

まどか「あはは……」

さやか「さてはお主、どこぞの秘密組織のエージェントだなーっ!?」

ルチア「なっ!?な、何を言い出すんだ急に!?」

図星を突かれたルチアが、アワアワと慌て始める。

さやか「あっはは、なんてね!冗談ですよ、冗談!」

朱音「冗談を真に受けてしまう子なのよ、困ったものだわ」

ルチア「か、会長……それはちょっと酷くないか……?」

さやか「さて、まどか!お礼も言ったし、帰ろ!」

まどか「あ、ちょっと待ってよさやかちゃん!それじゃ、ホントにありがとうございましたっ!」

別れ際に再度ペコリと頭を下げると、まどかは先に駆けていったさやかの後を追って走って行く。

ルチア「平和な街、じゃないか」

朱音「そうね……それをあの天王寺と来たら、大げさに物を言いおって……これで何もなかったら、我が黒魔術のエジキとしてくれる」

ルチア「弁解の余地もなさそうだな、それは」

駆けて行った二人を見送ったルチアと朱音は、ふふっと笑いあう。
しかし来た以上は、しっかりと調査だけはしようとお互いに頷き合った。

商店街———

瑚太郎「えーこの街の不思議、不思議はございませんかぁ〜?」

小鳥「あたし達オカ研を唸らせるような、非常に非常に不思議な出来事を求めておりま〜す」

商店街の一角にあったショッピングモールの中を歩きながら、二人は無造作にそんな事を言いながら歩きまわっていた。

小鳥「それにしても瑚太郎くん、周囲を行き交う人々の目が痛いっ!!」

瑚太郎「気にするな小鳥。旅の恥は掻き捨てと言うだろう?今はとにかく、不思議を探す事に集中するのだよ」

小鳥「瑚太郎くんのその姿勢、見習うところがありますですなぁ」

瑚太郎「そうと決まれば小鳥!!あそこを見ろっ!!」

小鳥「おうっ!?なんですかい旦那ぁ!」

瑚太郎の指差す先。
そこには、【関係者以外立ち入り禁止】の札が掛けられた封鎖区域があった。

小鳥「……瑚太郎くん?」

瑚太郎「俺の直感が正しければだな、小鳥。あそこの先に未知なる不思議が待っているっ!!」

小鳥「瑚太郎くん?」

瑚太郎「さぁ、そうと決まればいざっ!!出陣だ小鳥ぃ!!」

小鳥「お、落ち着いて瑚太郎くん!ダメだよ、ダメ!」

瑚太郎「えーなんでだよ?」

小鳥「立ち入り禁止ってのはね、入ったら危ないから立ち入り禁止なんだよ?前にも、変な所に入って死にかけたことあるでしょ?」

瑚太郎「うっ……そ、それは……」

小鳥「ちょーっと暴走気味だったよ?もっと落ち着いて、ね?」

瑚太郎「むぅ……何かあると思うんだけどなぁ……」

小鳥「さて、気を取り直して地道に聞きこみでも……」

二人が扉の前から離れようとした時。
扉の向こうから、決して大きくはない炸裂音が聞こえて来た。

瑚太郎「……聞こえたか?」

小鳥「う、うん……」

瑚太郎「これは……冗談抜きで、何かあるかもしれねーぞ」

小鳥「……行ってみる、瑚太郎くん?」

先ほどとは打って変わり、二人は真面目な顔を突き合わせた。

そうして、【関係者以外立ち入り禁止】の札を通り過ぎて。

扉を開け、その先へと進んでいった。

瑚太郎「いざ、ここまで来たはいいけど……」

小鳥「暗くてよくわかんないねぇ……」

非常口の光だけが灯る暗い空間を、二人は歩いて行く。

瑚太郎「足元、気をつけろよ小鳥」

小鳥「う、うん、わかってるよ……っ」

慎重に歩を進めながら、瑚太郎は心の中で思考を巡らしていた。
それは、以前まだ何も知らなかった頃に、風祭で迷い込んだ空間。
結局その空間はガイア側が作ったものだったのだが、何も知らなかった当時は恐ろしくもあった。

瑚太郎「………っ」

小鳥「……あ、あれ?瑚太郎くん……ここ、どこ?」

そして、今迷い込んでいる空間。
それは、そのガイアが作った空間を彷彿とさせる何かがあったのだった。

瑚太郎「小鳥、周りに気をつけろっ……!」

小鳥「え、え?ま、まさか……?」

瑚太郎「ああ、そのまさかのようだぜ……!」

通路の脇道から、得体のしれない姿をした何かが現れる。
それも一体ではなく、何体も。

瑚太郎「下がってろ、小鳥!!」

小鳥「う、うんっ!」

小鳥を庇うようにして前に出た瑚太郎が、右手にオーロラブレードを出現させる。
そして、襲いかかって来る何かを、一体一体切り落として行く。
最後に残った一体は蹴飛ばし、壁に埋め込まれていたヘルメットを投げつけた。

瑚太郎「なんなんだ……?魔物……じゃ、ない、よな……?」

小鳥「う、うん……少なくとも、あたしはこんな魔物は知らないよ」

小鳥が知らない魔物なのか、それとも魔物ではない全くの別物なのか。
はっきりとはしないまま、二人は更に奥へと進んでいく。

扉を開けると、広い空間へと出る。

瑚太郎「……中心部、って感じだな、どうも……」

小鳥「こ、瑚太郎くんっ……あそこ、あそこ……!」

震えた声で、小鳥は空間の奥を指差した。
そこにいたのは、頭はドロドロに溶けたようなものに薔薇が散りばめられ、背には蝶のシンボル、体は三日月のようにしなった何かだった。

瑚太郎「う、うわっ!!?なんだアイツ!?グロっ!!」

小鳥「瑚太郎くん、そんな事言ってる場合じゃないよ!!」

何か———薔薇園の魔女は、二人の侵入者を確認すると、猛々しい咆哮を上げた。
その体から蔦を伸ばし、二人に攻撃を仕掛けて来る。

瑚太郎「くそっ!!小鳥、下がってろよ!!」

小鳥「き、気をつけて!!」

再びリストブレードを召喚した瑚太郎は、伸びて来た蔦をひとつひとつ切り落として行く。
蔦攻撃が効かないと悟った魔女は、その体へ蔦を戻して行く。

瑚太郎「今だっ!!」

その蔦のひとつをしっかりと握りしめ、魔女へ急接近する。
掴まれた事に気付いた魔女が、体へ収納しようとしていた蔦をブンと横に振り回す。

瑚太郎「あ、あらっ?」

小鳥「瑚太郎くんっ!!」

急激な速度で、壁に叩きつけられる。

瑚太郎「っ……〜〜〜〜〜〜!!!!!?」

叩きつけられる瞬間に体を捻り、足でうまく壁に着地する。
が、その勢いまでは如何とも出来ず、全身に衝撃が伝わる。

瑚太郎「〜〜〜〜〜っっ……くっそ、こんにゃろおおおおお!!」

半ばヤケクソとなった瑚太郎は、掴んだ蔦を利用して地道に魔女の元へ向かおうとする。
が、それを阻止する為に再びブンブンと振り回される。

瑚太郎「ううううううおおおおおおおおおわああああああああああ!!!!ちょっ、ちょっ!!た、タンマタンマっ!!」

蔦に必死にしがみつき、振り落とされないようにする。
そうしながら、尚も魔女の方へ向かっていく。
オーロラブレードの射程圏内まで辿りついたところで、今自分に出来る限界にまでオーロラを伸ばした。
先端は魔女のドロドロとした頭に深々と突きささる。

瑚太郎「これで、終わりだぁぁッ!!」

そのまま、右腕を下へ一閃に振り下ろした。

魔女が力尽きる。
そしてそれはつまり、振り回していた蔦の力も完全に失われる事を意味していた。

瑚太郎「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ…………あぐっ!!」

慣性の法則で吹き飛ばされた瑚太郎が地面に落ち、ゴロゴロと転がって行く。
そして、小鳥の足元でようやく止まる事が出来た。

瑚太郎「いって、マジいって!!ちっくしょ、あのやろ……あ、あれ?」

小鳥「瑚太郎くん!大丈夫!?」

瑚太郎「あ、ああ……俺じゃなかったら死んで……いや、ちはやでも大丈夫だったかもしれんが……とにかく大丈夫だ」

小鳥「よかったぁ……」

瑚太郎「そ、そんな事より!!あいつはどうなった!?」

小鳥「力尽きたみたいだよ。ほら」

立ちあがる瑚太郎に手を貸しながら、小鳥は魔女を指差す。
オーロラブレードによって体を真っ二つに切り裂かれた魔女は、地に倒れ伏していた。
そのまま、体がボロボロと崩れていく。

瑚太郎「つつ……あいつ、やっぱ誰かが操ってた魔物なんじゃねーのか?」

小鳥「わかんない……けど、それなら近くに操ってる人がいるはずだよ」

瑚太郎「どっかに隠れてんじゃねーだろうなぁ……」

魔女が崩壊していくのと同じくして、周囲の光景も徐々に元に戻って行く。

瑚太郎「あら?周囲の光景も元に戻って……?」

小鳥「わ、わけわかんないよ……あの魔物の能力だったのかな?」

瑚太郎「結界を張る能力……かぁ?わっかんねぇ!わかんねぇことだらけだが、ひとつだけわかったことがあるぞ、小鳥」

小鳥「何?」

瑚太郎「やはりこの街には、風祭同様謎に満ちている!!」

小鳥「それはそうかもしれないけど……危険じゃないかな?」

瑚太郎「何を言ってるんだ小鳥。今のオカ研に、恐れるモノなどあんまりないだろ?」

小鳥「そうかなぁ…」

瑚太郎「二大秘密組織の構成員がいるんだ。もしそれでも危険だと判断した場合には、一度風祭に帰る事も視野に入れておこう」

小鳥「ああ、コタさんの目が輝いておられる……」

瑚太郎「わくわくしてきたぜ……新たな不思議を解明してやる!」

瑚太郎と小鳥があーでもないこーでもないと話をしていると、ふと足元にあるものが転がっている事に気が付いた。

瑚太郎「ん?なんだこれ」

小鳥「んー……ちょっと貸して」

転がっているモノ———グリーフシードを拾い上げた小鳥は、それをマジマジと見つめる。

瑚太郎「小鳥がそこまでしげしげと眺めるっつーことは………?」

小鳥「……うん。魔物、作れるかも」

瑚太郎「まさか、さっきのあのグロい奴が出来るんじゃないだろうな?」

小鳥「それはやってみないとわかんない。それに、今はパワースポットからも離れちゃってるし…作るのはひと苦労かも」

瑚太郎「———!……いや、小鳥。魔物を作るのは一旦後にしよう」

小鳥「え?」

瑚太郎「人の気配がする……」

小鳥「っ……」

カツ、カツ、とほの暗い空間に足音が響き渡る。
そうして姿を現したのは、長い黒髪の少女だった。

「………あなた達、何者?」

瑚太郎「へーい。通りすがりの一般人でーっす」

小鳥「通りすがりの一般人の幼馴染です」

「……………」

長い黒髪の少女———暁美ほむらは、鋭い視線で瑚太郎と小鳥を射抜く。

小鳥(瑚太郎くん瑚太郎くん!なんかめっちゃ睨んでない!?)

瑚太郎(し、心配するな小鳥。いざとなったら俺が身を呈してでも……)

ほむら「一般人が、魔女を倒す力を持っているとは思えない」

瑚太郎「……魔女?」

小鳥「さっきのグロい奴の事かな」

ほむら「巴マミ、あなたも見ていたのでしょう?姿を現しなさい」

マミ「……鋭いわね、あなた」

ほむらとは正反対の位置にある柱の影。
そこからもう一人、少女が姿を現した。

小鳥(瑚太郎くん瑚太郎くん!!囲まれちゃったよぅ!?)

瑚太郎(なんだこいつら………見た感じ二人とも年下っぽいのに、二人とも威圧感ぱねぇ!!)

マミ「全く、今日は色んな事が起こるわね」

ほむら「………」

マミ「転校して来た子が魔法少女かと思えば、今度は魔法少女でもない人が魔女を倒すだなんて……」

瑚太郎「あのー、すんません。話の流れを理解出来てないんすけど?」

マミ「今の奴が何者なのか知らずに戦っていた、ということ?」

瑚太郎「えーっと、はい、まぁ、そんな感じでひとつ」

マミ「……今のは、魔女という化物よ」

小鳥「ま、魔女……魔物じゃ、ないんだ」

マミ「ええ。そしてわたしとそこの子……暁美さんは、魔女を倒す者、魔法少女よ」

瑚太郎「魔法少女!?ってーと、キラキラした衣装を身にまとってキャッキャウフフするようなあれ!?」

小鳥「瑚太郎くん、それ偏見入ってるよ」

瑚太郎「いっけね!」

マミ「怖い思いをしたと思っていたけれど……その様子なら、問題はなさそうね」

瑚太郎「いやー、まあ、この程度なら。一応俺、超人っすからね」

ほむら「……超人?」

瑚太郎「まぁ、一応そんな感じ。笑うなよ?」

マミ「……それならいいわ。一応、自己紹介をしておくわ。わたしの名前は巴マミ。この街、見滝原を守る魔法少女よ」

瑚太郎「あ、これはどうもご丁寧に。俺は天王寺瑚太郎。えーっと、風祭って言ったらわかる?そこから来たんすよ」

小鳥「あたしは神戸小鳥。右に同じく、です」

マミ「暁美さん、あなたも……あれ?」

小鳥「さっきまでそこにいたのに、気付いたらいなくなってる……」

瑚太郎「オカルトチックですな、小鳥さんや?」

小鳥「うむ。謎の匂いがプンプンしますな!」

マミ「……ふふっ」

瑚太郎「?」

マミ「最初は、見滝原を荒らしに来たのかと思ったけれど……そうでもないのね」

瑚太郎「そりゃーもう。俺たちはただ、この街の不思議を探しに来てるんだよ」

マミ「不思議?」

瑚太郎「そうそう。どうもこの街、理由のはっきりしない事故や、動機の不明な事件等々が多いんだよ。そういったものを調査しに来てるんだ」

マミ「………ふむ」

小鳥「あの、さっきの……魔女、だっけ?あいつは、なんなの?」

マミ「どうやらあなたたちとは、腰を据えて話をする必要がありそうね。いいわ、わたしの家まで行きましょうか」

瑚太郎「どうやら巴さん、この街について色々と知ってるみたいだしな。教えてくれると、俺たちの調査も捗りそうだ」

そうして、マミを先頭にして、瑚太郎と小鳥はその後を追って行った。

その様子を、物陰からほむらが眺めていた。

ほむら(………ずいぶんと、イレギュラーな事態が起こるわね)

ほむらは、転校してから今までの事を思い返していた。

この時間軸では、キュゥべえがまどか、さやかに勧誘を行っていない。
それどころか、キュゥべえの姿すら今まで一度も見てはいなかった。

ほむら(……と、言う事は……)

これだけは、以前にも似たような事があった。
美国織莉子、呉キリカ。
彼女達の策略によって、キュゥべえがまどかの事に気付かずにいた時間軸。

ほむら(……油断は、しない方がよさそうね)

もしその二人がこの時間軸でも行動を起こしているのなら。
必ず、まどかの命を狙って来るに違いなかった。

ほむら(でも、あの二人……天王寺瑚太郎と、神戸小鳥。彼らは、初めて会ったわね)

どうやらこの時間軸は、そんな以前の時間軸よりも更にイレギュラーとなっているようだ。

ほむら(彼らは敵なのかどうか……見極める必要がありそうね)

美国織莉子や呉キリカの動向も気にはなるが。
とりあえずはあの二人の事を見極める事にしよう。
そう、ほむらは心に決めたのだった。

本日の投下、以上
前回の投下分までなかなか追いつかない…推敲しながらの投下なので、遅いのは勘弁してください

瑚太郎と小鳥が魔女のことを見えているのは、結界内だからという理由です
素質がなくても、結界の中なら見える、と俺は解釈しているので

次の投下は、現時点では未定ですが、三日以内には必ず

では

魔女とかは篝ちゃんみたいに見える人には見えるみたいに考えちゃってもいいかもな

おっつおっつ。待ってた。

あくまでも個人的な主観なんだけれども、
セリフと地の文が切り替わる部分がちと読みづらい・・・
専ブラでみてるからかなぁ・・・

ちはやルート後ならもうちょっとわたちはやと瑚太朗を絡めてあげてほしいかも…です
続きも期待です

>>40
見づらい?どう改善したらいいかよくわかりませぬ

>>39
Rewrite側の人たちは、素質あり組と素質なし組で分かれてます
詳しくは本編中に触れるので、現時点では伏せておきます

>>41
Rewrite側で一番平穏な終わりを迎えてるのがちはや√なので、ちはや√後が一番やりやすいかなぁ、と思った結果です
Rewriteのオカ研一同を見滝原に出張させて、というのが本SSでのメインとなりますので


続き投下します



「…………」

ふらふらと、力の無い歩き方をしている少女がいた。
目的も無く、目指す場所も無く、ただ歩いているだけの少女。

「わたしは……一体、何者なんだ……」

少女は、自身の記憶に疑問を持ち続けていた。
目覚めた時、少女は複数人の人物に見守られていた。
何も覚えていなかった少女は、その周囲の人物がとても恐ろしいものに見えた。

だから、暴れた。
記憶が無いため、どうやったのかは全くわからなかったが。
どうやら自分には、能力があるらしかった。
物を振動させる能力。
毒を発する能力。

使い方など、全くわからなかった。
しかし、恐怖に勝る原動力は目覚めたばかりの少女には存在しなかった。
故に手探りで能力を使用する術を身に付けた。

周囲の人間を惨殺した。
研究所を破壊した。
そこから逃げだし、当ても無く走り続けた。

そうして、今日という日まで生き延びて来た。
依然、自分が何者なのかはわからなかった。
ただ、少しずつ、自身の能力に恐怖を覚え始めていた。

怖い。逃げたい。助けて欲しい。
そんな祈りを聞き届けてくれるものなど、当然どこにもいなかった。

死ぬのは怖い。
自身に宿る能力も怖い。
そして何より———身に覚えのない記憶が流れ込んで来るのが怖い。

「助けて……誰か……わたし、を……っ」

今の今まで、少女は得体のしれないモノから逃げ続けていた。
やがて、その体に限界が来る。
超人の能力が宿っていようと、人間であることに変わりはなかった。

とある街———風見野の外れで、少女はとうとう倒れ込む。
恐怖、飢餓、願望。
様々な思いを秘めた少女の心は、今にも瓦解しそうだった。

「識りたいですか?」

倒れ込んだ少女に、問い掛ける人物がいた。

「だっ、誰……っ?」

怯えた声を出す。
助けて欲しいとは思ったが、見知らぬ他人は怖かった。
しかし、今や立ちあがる力すらも残っていない。

「わたしの事は、どうでもいい。今は、自分の事が一番大切ではないですか?」

決して優しい声ではないが、それでも穏やかな声だった。
少女の心に、一抹の安堵がよぎる。

「………すけっ……たす……ぇ……っ!」

「はい、とりあえずはこれをお食べなさい。そして、自身の力で立ちあがって。大丈夫。わたしは、貴女の味方です」

倒れ伏した少女の側に、ひとつのおにぎりが置かれた。
震える手でそれを掴むと、口へと運んだ。
一度口に含めば、後はもう一心不乱だった。

「あ、ありがとう……」

「いえ、お気になさらずに。それで、本題へ戻りましょうか」

「ほ、本題……っ」

「ええ。貴女は、自身が何者なのかを識りたいですか?」

彼女の目は、真っ直ぐだった。
心を見透かすかのような、神秘に満ちた雰囲気の目。
その視線を受けた少女は、ああ、この人なら信用出来る、と、心のどこかで思うのだった。

「知りたい……わたしは、一体何者なのか……っ」

「……その言葉に、嘘偽りはありませんね?」

「無い。教えて欲しい。わたしは、一体何者なんですか?」

「いいわ。目を閉じて、そして視えて来る光景に意識を集中させて……———」

〜〜〜

「…………」

視えて来た光景が途切れるのを確認した少女は、ゆっくりと目を開けた。

「いいですか?貴女の名は……此花アカリ」

「………此花……アカリ……」

それが、少女の名前だった。
視えた世界では、少女はそう呼ばれていた。

「そして、此花ルチアでもあり、アサヒハルカでも或る」

「………っ」

一番最初の名は、聞き覚えは無かった。
しかし、後の二つは、よく覚えている名だった。
それは、自身に流れ込んで来る記憶の人物。
此花ルチア。アサヒハルカ。

「さて……キミには、叶えたい願いがあると僕は思うけれど?」

彼女の背から、不意に白い生き物が姿を現した。
その生き物に対し、少女は真っ直ぐに向き合った。

「……うん。あるよ……キュゥべえ」

QB「僕なら、その願いを叶えてあげられるよ。その代わり、キミは魔女と戦う運命を課される。どうだい?覚悟は、あるかい?」

「…………」

少女の答えは、決まっていた。



風見野へと帰って来た佐倉杏子は、町内の異変に気が付いた。

杏子(……なんだ?感じた事の無い魔力反応が……?)

自身のソウルジェムを注視し、そう感じる。

杏子(断りも無く人様の縄張りに攻め入って来る奴がいるとはな)

ソウルジェムの反応を頼りに、その発生源を探し始める。

それは、意外にもあっさりと見つける事が出来た。
そして、その場所を確認した杏子が態度を一変させる。

杏子「親父の教会に……っ!?」

不意に、風に流されて来た一枚の紙が杏子の顔にかぶさる。
それを手に取り、視線を落とした。

『私には関わるな』

紙には、それだけ書かれていた。

杏子「なんだってんだ……ちっ!」

その紙をくしゃりと握りつぶすと、それを手に持ったまま杏子は教会の中へ足を踏み入れた。

杏子「どこのどいつだ、ここにいんのは!隠れてないで出て来い!!」

荒れ果てた教会の中に、杏子の威勢のいい声が響き渡る。

「私は隠れてなんかいないよ」

そう言って姿を現したのは、一人の少女だった。
杏子よりもひとつかふたつ程、年上のように見えた。

杏子「へぇ……ホントに出て来るなんて、大した度胸じゃん」

言いながら、杏子は魔法少女姿に変身する。
そして手に持った槍の切っ先を、相手の方へ向けた。

杏子「一応、名を聞いとこうか。アンタ、何モンだ?」

「……私の名前は………アサヒハルカ」

杏子「アサヒハルカ、な。アンタ、魔法少女だな?」

ハルカ「………忠告は、したはずだよ」

杏子「は?」

ハルカ「紙を見たでしょ?」

杏子「紙だぁ?」

言われて、先程自身の顔に飛び込んできたモノの事を思い出した。

杏子「『私に関わるな』……か?」

ハルカ「………」

杏子「ふざけてんのか?人様の縄張りに勝手に踏み込んどいて、関わるな?あたしの縄張りを奪おうってんなら、叩きのめしてでも追い出せばいい」

ハルカ「…………それだけじゃ無いよ」

杏子「何だと?」

ハルカ「もう一度、その紙に眼を通してみたらどう?」

杏子「回りくどい奴だな……」

悪態をつきながらも、杏子は握りしめた紙を広げる。

杏子「どうせ何も………?」

『私には関わるな   関わればお前が』

紙には、そう書かれていた。

杏子「………どういうことだ?」

ハルカ「さあ……どういうことだろうね………?」

杏子の酷く静かな声を嘲るように、ハルカはクスクスと笑った。

ごくり、と。

杏子は、周囲に響き渡るかのような音を立てて唾を飲み込む。

ハルカ「関わるの?私に……?」

杏子「っ……関わったら、どうなるってんだ」

ハルカ「知りたい?気になるもんね?」

杏子「勿体ぶりやがってっ!!」

恐怖を振り払うようにして、杏子はハルカに飛びかかる。
紙の事を考える余裕など、杏子にはなかった。

ハルカ「止めておいた方がいいよ。あなたに勝ち目なんて、ないんだから」

真っ直ぐに飛び込んできた杏子の攻撃をひらりと回避し、槍を持っている左腕をガシリと掴んだ。

杏子「ぐ、うぅぅっ!!?」

ハルカ「クスクス……呪いを、思い知りなよ……佐倉杏子」

杏子「くっ!?」

ハルカの右腕を振り払い、杏子は離れた所まで後退する。
そして、握られた部分に視線を落とした。

杏子「なんだよ……これ……」

握られた部分には、くっきりと痣が残っていた。

ハルカ「美国織莉子さん、呉キリカさん。佐倉杏子は、どうやらここで死にたいらしいよ」

杏子「何……!?」

ハルカの言葉を受けて、物陰から更に二人の少女が姿を現した。

織莉子「今晩は、佐倉杏子」

キリカ「いい夜だね。人一人の死なんて、その闇が飲み込んでくれそうな……いい夜だ」

杏子「……あんたの、お仲間ってわけか」

痣を庇いながら、杏子は冷や汗が背を伝った事を意識した。
勝ち目は、確かに無さそうだった。

ハルカ「この人たちはね、佐倉杏子。私を、救ってくれたんだよ」

杏子「………」

ハルカ「その左腕の痣……怖い?怖いよね?」

杏子「バカ言うな。ただの、アンタの魔法だろうに」

ハルカ「そう思いたいならそう思えばいいよ。どっちにしても、あなたはここで死ぬんだから」

パリン、と小さな音を立てて、廃教会のガラスが割れた。

杏子「っ……」

ハルカ「これも、魔法だと思う?」

杏子「まどろっこしい!!」

これ以上、ここを汚されたくはなかった。
勝ち目のあるなしに関わらず、杏子はこの三人を追い出す為に戦うしかなかった。

ハルカ「クスクスクスクス…………馬鹿な人………」

織莉子「彼女の運命は……既に、不可避なものに有るわ」


キリカ「織莉子の言葉を嘘にしない為にも………」

織莉子「世界の滅びを回避する為にも………」

ハルカ「私を救ってくれた人に、恩を返す為にも………」

「「「彼女には、ここで死んでもらう」」」

パリン、と。
再び、ガラスにひびが入り、音を立てて割れた。



———廃教会から、一枚の紙が風に乗って大空へと舞った。

『私に関わるな   関わればお前が   呪いによって命を落とすだろう』

———その紙を確認する少女は、もうどこにも存在しなかった。



夜。
町の外れに集合したオカ研一同は、それぞれの情報を交換し合っていた。

瑚太郎「会長ルチア組は、特に収穫無しってことか」

朱音「ええ、そうね。ひとつだけ、不可解な事故未遂があった程度よ」

ルチア「しかし、それも被害者はただの野良ネコ。まあ、よくある話だろうな」

瑚太郎「静流ちはや組は、町外れで不審な子を一人見掛けただけ、と」

ちはや「はい、そうです。その子に話を聞こうとも思ったんですけど、気が付いたら目の前からいなくなっちゃってて」

静流「その子、もしかしたらコタローが話を聞いたって言う魔法少女だったのかもしれない」

瑚太郎「魔法少女……ねぇ」

小鳥「んで、どうするの瑚太郎くん?」

瑚太郎「そうだなぁ……」

朱音「もう調査は十分であると、わたしはそう考えるけれど?」

瑚太郎「うぐっ……」

ちはや「そうですねぇ。この街に来た当初の目的だって、その不可解な事故や動機のはっきりしない自殺とかなんでしょう?」

瑚太郎「いや……まぁ……そうだけどさぁ……」

ルチア「その原因自体は、解明出来たと言って差し支えないんじゃないのか?」

瑚太郎「うぅ……」

朱音「この件は記事には出来ないわね。あー残念。さあ、咲夜、車を出してちょうだい」

咲夜「よろしいので?」

朱音「仕方ないでしょう?この件、わたし達で例えるならば超人やら魔物やらの記事を載せるのと同義よ?」

瑚太郎「うぅっ……俺の期待してた真相じゃなかったってのか……」

小鳥「元気出しんさい、瑚太郎くん」

静流「こう言うことだって時にはある。めげずに、これからも色々と提案してくれるとわたし達も嬉しい」

瑚太郎「小鳥……静流……」

咲夜「それでは与太朗くんの説得も出来たようですし、風祭へ帰るとしましょうか」

瑚太郎「ああ、さらば見滝原……それに巴さん、力になれなくてゴメンよ……」

オカ研一同を乗せた車は、夜の見滝原を出発した。

〜〜〜

それを見つけたのは、見滝原の街を出て、風見野の町外れへと差しかかったところだった。

咲夜「…………おや?」

ちはや「どうかしましたか、咲夜?」

咲夜「いえ……道端に、倒れ込んでいる人が……」

瑚太郎「生き倒れ?なら、放っておくわけには……」

咲夜「そうですね」

車を路側帯に止め、瑚太郎達は倒れ込んでいる少女の元へ駆けよる。

瑚太郎「おい、あんた。大丈夫………っ?」

見ると、少女のようだった。
右手はしっかりと握りしめられており、衣服には何の損傷も無い。
が、その下……体中の、至るところに生傷があるようだった。
しかし、そんなのは瑚太郎には些細なことだった。

小鳥「ど、どうかしたの、瑚太郎くん……?」

瑚太郎「近づくな、小鳥!」

小鳥「え、え……?」

瑚太郎「ルチア、静流!近くまで来てくれ!」

何やらただならぬ雰囲気で呼ばれた二人は、戸惑いながらも瑚太郎の元へ歩み寄る。

ルチア「なんだと言うんだ、瑚太郎………っ!」

静流「こ、これは……」

三人の視線は、倒れ込んでいる少女の痣に注がれていた。
一番酷いのは、左腕。
その他、よくよく見てみれば体中にその痣はあった。

瑚太郎「………ルチア、こいつに見覚えは?」

ルチア「い、いや、ないぞ?第一、わたしの毒は……!」

瑚太郎「まだ、完全に消せたわけじゃなかったよな?」

ルチア「あ、ああ……だが、今はもう手袋をしなくとも十分な程に、抑制されている」

静流「この子………町外れで会った子だ」

瑚太郎「何?」

静流「間違いない。ちーも会ってるはずだ」

瑚太郎「……ちはや!」

ちはや「は、はい?なんです?」

瑚太郎「極力近づかないように、こいつの顔を見てくれ」

ちはや「難しい事を言いますねぇ……えっと……あれ?静流、この子……」

瑚太郎「町外れで会った子、か?」

ちはや「は、はい。よくは覚えてないんですけど、多分間違いないと思います」

咲夜「……流れから察するに、その体の傷は、此花さんの体に宿る毒によるもの……ですか?」

瑚太郎「ああ。間違いない」

朱音「………穏やかじゃないわね。とにかく、こんな道路のど真ん中でいつまでもぼんやりとしているわけにはいかないわ。一旦、その子を車の中へ」

朱音の言葉に従い。気絶している少女を車の中へ連れて行く。

ルチアの毒に耐性の無い小鳥、ちはや、朱音は車の後部座席へ。
そもそもの持ち主であるルチアに、今は耐性が出来ている瑚太郎、自身の力により毒を中和出来る静流は中部座席へ。
運転手である咲夜は運転席に座り、とりあえずはその少女の眼が覚めるのを待つ。

瑚太郎「何なんだ、一体……?」

ルチア「わたしの体の毒……っ!」

瑚太郎「今は、その事は考えるな、ルチア。大丈夫だ、お前はこいつと初めて会うんだろう?」

ルチア「あ、あぁ」

瑚太郎「ブレンダの糞ババアが、何かしらやらかしたと考えるのが一番自然だろうな」

ルチア「ブレンダ……っ!!」

杏子「……うぅ……!」

静流「眼が覚めたか!」

杏子「………ハ…カ……!!」

瑚太郎「うなされてるみたいだな。なんかを呟いてるみたいだが……」

杏子「アサ……ル………………おり………く………カ……!!」

ルチア「な、なんだって……?」

杏子「アサヒ……ハルカぁ……!!」

ルチア「あ……アサヒ……ハルカだと……?」

瑚太郎「た、確か、ルチアの……」

ルチア「……ああ、わたしの本名………だ」

瑚太郎「その名前を、なんで……?」

それから、30分程経った頃だった。

杏子「………う………」

今までうなされていた杏子が、ゆっくりと眼を開けた。

瑚太郎「気が付いたか!?」

杏子「あ……アンタは……?」

瑚太郎「俺の事はいい!何があったのか、聞かせて欲しいんだ!」

杏子「何……が……?」

静流「体の傷の方は、心配しなくてもいい。寝てる間に、わたしが治しておいた」

杏子「あんた……確か、昼に………やっぱ、魔法少女……だったのか……?」

静流「いや、わたしはまほーしょーじょじゃない」

杏子「………ああ、意識がはっきりしてきた」

静流「申し訳ないが、痣まで消すことは出来なかった。許してほしい」

杏子「いや……つか、ここどこだ?」

瑚太郎「車の中だ。あんた、道端に倒れてたから、介抱してたんだよ」

杏子「……っ!!」

三人との戦いで一方的にやられた事を思い出した杏子が、ギリリ、と歯を食いしばった。

ルチア「ど、どうした?急に悔しそうな顔を……」

杏子「!! てめぇは!?」

静流「うわっ!?」

静流を突き飛ばした杏子は、そのまま車の外へ飛び出した。

ルチア「な、何だ?わたしがどうかしたのか?」

杏子「どうもクソもあるか!!忘れてねぇぞ、てめぇの名前……!!」

杏子「アサヒハルカ!!」

ルチア「!!!」

杏子「あたしに何の恨みがあんのか知らねえけどな、やられっぱなしであたしが黙ってると思ったら大間違いだ!!」

ルチア「な、な……!?」

杏子「その上妙な魔法まで使いやがって!!今はお仲間はいねぇみたいだなオイ!!」

瑚太郎「待った待った、落ち着けっての!!」

杏子「ンだてめぇは!!あたしが用があんのはアサヒハルカだけだ!!どけよ!!」

瑚太郎「はぁ……何なんだよ、本当に……」

ルチア「な、なんだかよくわからないが、無理はしない方がいい!!わたしの毒に汚染されているのなら、尚更だ!!」

杏子「うるせぇ!!覚悟しや……が、れ……っ?」

威勢のよかった声から、急激に力が抜けていくのが傍から聞いてもよくわかった。
そのままよろよろと、その場にへたりこむ。

瑚太郎「あーあーもう!言わんこっちゃない!大丈夫かよアンタ!?」

杏子「う、る、せぇ……!くそ、この程度………っ!!」

不意に、杏子の体が淡く光り始める。
と、体中に出来ていた痣が少しずつ消えていく。

瑚太郎「うっそぉ!?俺だってルチアの毒、中和すんのに苦労したってのに!?」

杏子「っ……っ…………!!」

全ての痣が綺麗に消え去ると、杏子は元気を取り戻したかのように立ちあがった。

杏子「さあ、お待ちかねだ。二回戦と行こうぜ?」

ルチア「………」

静流「なんだかよくわからないが、とにかく落ち着いてほしい。わたし達に、お前と敵対する意思はない」

杏子「はんっ!!信用ならないな!!ホントにそうならグリーフシードのひとつでもよこしてみろっての!!」

瑚太郎「グリーフシード?」

杏子「あんたら、どうも妙な力を持ってやがるみたいだけどよ!わかるんだぜ、魔法少女にはよ!あんたらん中に、魔法少女は……い、いないだと?」

ルチア「な、何故わたしの顔を見て疑問符を浮かべるんだ?」

杏子「ど、どういうことだ?お前、さっき会った時は確かに……!」

ルチア「………わたしに、会った?」

杏子「何がどうなってやがるんだ……さっぱりわかんねえ」

瑚太郎「小鳥、巴さんが言ってたあれ、確かまだ持ってるよな?」

小鳥「うん、持ってるよ。グリーフシード……だったっけ?」

瑚太郎「ああ、予想通りあの子も魔法少女みたいなんだ。そのグリーフシード、あいつに渡していいか?」

小鳥「これはそもそも瑚太郎くんが倒した得物さね。好きにするといいよ、はい」

瑚太郎「サンキュ!」

小鳥「欲を言うなら、それで魔物を作ってみたかったけどね」

瑚太郎「ま、それはとりあえずお預けってことで」

小鳥「だぁねぇ。仕方ない、諦めるか」

瑚太郎「よし。おい、アンタ!」

杏子「な、なんだ?」

何が何だかわからないと言った表情をしている杏子に、瑚太郎は夕方に会った魔女が落としたグリーフシードを投げ渡す。

瑚太郎「それだろ?あんたが欲しいのってのは」

杏子「……まさかマジでグリーフシードを持ってるとはな」

瑚太郎「言っとくが、そいつは俺が仕留めたモンだ。ありがたく使えよな」

杏子「何モンだよ、あんたら本当に……」

ポカンとした顔をしながら、杏子はそう呟く。

瑚太郎「ただの、通りすがりのお節介焼きだよ」

杏子「………はん。グリーフシードをもらっといて、はいさようならって話にもなんねえな。それに、詳しい話も聞きたい。いいよ、一応は信用してやる」

瑚太郎「とりあえず、自己紹介だけしとく」

瑚太郎達と杏子は、お互いに自己紹介を済ませる。

瑚太郎「………で、杏子、つったか」

杏子「おう」

瑚太郎「お前が会ったのは、ホントにこいつ……ルチア、なんだな?」

ルチア「………」

杏子「間違いないと思うよ。あいつは、アサヒハルカと名乗ってたけどな」

ルチア「……その、アサヒハルカというのは………わたしの、本名なんだ」

杏子「そうなのか?」

ルチア「ああ。わけあって、今は此花ルチアと名乗っているがな」

杏子「……じゃあ、あいつは何モンなんだよ?」

瑚太郎「悪いけど、それについては俺たちも全くわからない」

杏子「………そっか、わかった。いずれにしろ、あたしはあいつを追う」

ルチア「なぁ、佐倉さん」

杏子「なんだ?」

ルチア「何があったのか、出来るなら詳しく教えて欲しい。わたしが無関係だとは、とても思えないんだ」

杏子「………詳しく、つっても……あたしにも、何があったのかはよくわかってないんだ」

そう前置いて、杏子は今日あった事の顛末を話し始める。

昼間見滝原へと赴いていた杏子は、夕暮れと共に自身の縄張りである風見野へと帰ってきていた。

この時に、ちはやと静流は杏子と出会っていたらしい。

風見野へと帰って来ると、出掛ける前には感じなかった魔力反応がしたのだった。

その元を辿って歩いて行くと、杏子にとってとても大切な場所へと辿りついた。

そこに、アサヒハルカと名乗る少女は居たと言う。

自身の大切な場所へ踏みこまれた杏子は、当然のようにその少女を追いだそうと戦いを挑んだ。

が、頭に血が登っていた為かはわからないが、直線的な攻撃はあっさりと回避され。

腕を、ガシリと掴まれた。

その時、激痛と共に腕に痣が刻み込まれたと言う。

その手を振り払って後退すると、少女の後ろから更に仲間と思しき魔法少女が二人現れた。

三対一と言う不利な状況でも挑んだ杏子だったが、やはり敵うはずも無く。

このままでは本当にやられると思った杏子は、その場からの撤退を心に決めた。

そうしてなんとかそこからは逃げ切れた杏子ではあったが、体力も既に限界を超えていて。

更には白い魔法少女の攻撃、黒い魔法少女の攻撃、アサヒハルカと名乗る少女の攻撃に晒され続けた為、身体的にも限界を迎えた杏子は、道の途中でばたりと倒れ込んだと言う。

次に気が付いたのが、車の中だったらしい。

ルチア「アサヒハルカと名乗る、わたしに瓜二つの少女……か」

瑚太郎「どうにも、きな臭いな」

小鳥「ルーちゃんの真相を知る誰かが、ルーちゃんになり済ましてるってこと?」

瑚太郎「その可能性が高い、かな」

ルチア「っ……」

朱音「どうするの、天王寺」

瑚太郎「………見滝原の調査は、既に終了してる」

朱音「ええ、そうね」

瑚太郎「だから、この街に来た当初の目的は、達成したも同然だ」

朱音「それで?」

瑚太郎「だが……オカ研の仲間に関する重大な事件が発生してるって言うんなら……このまま、黙って帰るわけにはいかない」

ルチア「瑚太郎……しかし、これは……」

瑚太郎「しかしもクソもあるか。なぁ、みんな?」

ルチアの言葉を遮り、瑚太郎はオカ研一同の顔を見渡した。

小鳥「確かに、放ってはおけないよね。ルーちゃんの事を貶める話にもなりかねないし」

ちはや「そうですね。此花さんも、わたし達の大切な仲間ですし」

朱音「我がオカ研に所属する者を貶める輩がいるのなら、見過ごすわけにはいかないわね」

瑚太郎「だ、そうだぞ、ルチア」

ルチア「みんな……すまない」

瑚太郎「何もルチアが謝る事じゃない。みんな、ルチアが大事だから力を貸してくれるんだ」

小鳥「そうそう。その、ルーちゃんになりすました人を懲らしめなきゃ気が済まないよ」

ちはや「化けの皮を剥いでやろうじゃないですか!」





咲夜「………事は、そう簡単ではなさそうですけどね」

静流「うむ……咲夜の言うとおりだ」



そこで、今まで黙っていた咲夜と静流が口を開いた。

瑚太郎「どういうことだ?」

静流「今、とーかに電話を入れた」

瑚太郎「西九条先生に?」

静流「うむ。魔法少女の事やらを、話した」

杏子「おいおい……無茶やってんなよ。一般人に魔法少女の事なんて……」

静流「そうしたら、詳しく話をしてくれた上で、帰って来た方がいいと言われた」

瑚太郎「……え?」

咲夜「ガイア側も、同じようですよ」

朱音「どういうことかしら?」

咲夜「…………インキュベーター」

杏子「あん?インキュベーターだ?」

咲夜「少女と契約を交わす事で、魔法少女を生む存在、と記憶していますが」

杏子「キュゥべえの事か?って、なんでそんな事を知って……」

咲夜「この件、思った以上に根は深いようですね」

静流「うむ……とーかも、似たような事を言っていた」

瑚太郎「詳しく話してくれ」

瑚太郎の頼みで、静流と咲夜はゆっくりと話し始める。

インキュベーター、またの名をキュゥべえ。

その記録は、ガイアとガーディアン両陣営に残されていたらしい。

というのも、双方組織としての歴史はかなり古く、その中で所属者が魔法少女の契約を交わした者も少なからずいたとの事。

そして、契約を交わした少女は例外なく長生きすることなく死んでいったとも。

そんな歴史を繰り返してきた為、両陣営はインキュベーターとの関わりを極力断つ方向で固まったとの事だった。


静流「オカ研の面々でこの件に着手する事は止めないが、ガーディアンジャパンという組織でそれの手助けをすることは出来ない、と」

咲夜「こちらも似たようなものです。まぁ、こちらの場合はボスが出払っているということを聞いて呆れた者もいるようですが」

朱音「ぐぬぅ……仕方ないでしょう、所詮わたしはお飾り聖女なのだし」

咲夜「遅ればせながら私の方で、本部と連絡を取らせていただきました。ガイアという組織で、手を貸すことは出来ない、と」

朱音「わたしの知らない事も、まだまだこの世界には溢れているのね……」

瑚太郎「………つまり、俺たちがここに残って調査を続けること自体は、問題ないわけだな?」

静流「とーかはそう言っていた。それに、もし続けるのであれば学校への出席等はこちらで都合を付ける、とも」

ルチア「え?」

静流「なんでそんな事をしてくれるのかと問い詰めても……とーかは何も言ってくれなかった」

瑚太郎「…………ガーディアンも、一枚噛んでるってことか?」

静流「わからないが、多分そう言うことだと思う……都合の悪い事が、あるのかもしれない」

瑚太郎「差し詰め、俺たちがそのルチアの偽物をとっちめるのを条件に、ってところか?」

静流「ガーディアンの方で動く事は出来ないと言うのも、その辺りが関わってるのかもしれない」

ルチア「まさか……西九条さんが?」

瑚太郎「その事は今はいい、ルチア。この件が片付いた後で、問い詰めてみればいいだろ?」

ルチア「瑚太郎……」

静流「わたしはさんせーだ。ルチアを傷つける奴がいるのなら、とっちめてやりたい」

小鳥「あたしも賛成だよ、瑚太郎くん。しばらく登校出来なくなるっていうのも、今更、だしね」

朱音「ガイアの奴らが隠していたというインキュベーターの事……気に入らないわね。わたし自ら赴いて、真相を見抜いてくれるわ」

ちはや「わたしも参加、です!えっと、咲夜は……」

咲夜「残念ですが、私の方は深入りする事は出来なさそうですね。インキュベーターの存在をガイア側が意識したことで、本部の守りを強化するつもりのようですので。私は失礼ですが、風祭へ帰らせていただきます」

瑚太郎「え、ちょっ!咲夜帰っちまうのかよ!?」

咲夜「私も一応はガイア所属ですのでね。上の命令には逆らえないのですよ」

ちはや「そうですか。わかりました、なら今回はわたしだけ残ることにしますね」

咲夜「申し訳ありません、ちはやさん。もし、本当に危険な事態が起こった場合には、呼び出してくれても構いませんので」

朱音「上の命令には従わなければいけない?わたしも一応お前の上司なのだけれど?」

咲夜「今回朱音さんが参加するのはガイアの意思ではなく、あなた個人の意思ででしょう?私的な命令まで聞きいれるわけにはいきませんのでね」

朱音「生意気な……」

杏子「えっと……つまり、どういうことになるんだ?」

瑚太郎「ここに残るのは、俺たちオカ研一同だ!少なくとも、アサヒハルカを名乗る奴の正体を突き止めるまでは、ここに残る」

杏子「アンタらが……な」

小鳥「よろしくね、杏子ちゃん」

ちはや「よろしくです、杏子!」

静流「仲良くしよう、杏子」

ルチア「すまなかったな、佐倉さん。わたしを名乗る輩が、酷く迷惑をかけたようで……」

朱音「ま、ひとつよろしく頼むわ、杏子」

杏子「お、おう……なんか、偉く仰々しくなったな」


咲夜「それでは、私はこれで失礼します。御武運を、お祈りしていますよ」

瑚太郎「アンタが残ってくれりゃ、さくっと解決出来そうなんだけどなぁ……」

咲夜「物語というのは、そうそう上手く事が運ぶようには出来ていないのですよ、瑚太郎くん」

瑚太郎「へいへい、わかってますよ。そっちに帰ったら、たっぷりと愚痴を言ってやるからな」

咲夜「はっはっは。土産話として、楽しみにさせてもらいます。それでは」

最後にひとつ礼をして、咲夜が運転する車は風祭へと帰って行った。

瑚太郎「さってと、これからどうすっかぁ」

ちはや「咲夜が、風見野のビジネスホテルを取ってくれているみたいです」

瑚太郎「え、マジ?」

ちはや「はい。どうも咲夜、こうなる事を最初から見抜いてたようで」

瑚太郎「マジ何モンだよあいつ……」

杏子「っ……とりあえず、あたしはあいつらにリベンジに行きたい」

瑚太郎「アサヒハルカに、か?」

杏子「ああ。まだ、教会にいるかもしれないからな。でも、一人じゃ勝ち目はないんだ。だから、悪いけど……」

ルチア「ならば、わたしが同行しよう」

静流「わたしも行く」

杏子「……悪い」

瑚太郎「気にすんなって、杏子。元々俺らは、そのアサヒハルカを名乗る奴に用があってここに残ってるんだからな」

杏子「それでも……悪い、助かるよ」

ルチア「行こう、瑚太郎、静流、佐倉さん」

静流「ああ……一度、そいつを見ておかないと」

小鳥「瑚太郎くん、あたし達は……」

瑚太郎「小鳥とちはや、会長はひと足先にそのビジネスホテルに行っててくれ。俺たちも、後から行く」

朱音「それで解決出来れば、万々歳なのだけれどね」

ちはや「気を付けてくださいね、瑚太郎」

小鳥「ちゃんと、無事に帰って来るんだよ?」

瑚太郎「任せとけって!よし、んじゃ行くか、三人とも!」

杏子「おう!」

ルチア「ああ!」

静流「行こう」

風見野の町外れで、瑚太郎・静流・ルチア・杏子と、小鳥・朱音・ちはやは別れる。

瑚太郎「オカ研レッツゴー!」

静流・ルチア「ゴー!」

杏子「あたしも乗んなきゃダメなのか、それ?」

〜〜〜

———廃教会

瑚太郎「ここが?」

杏子「ああ」

ルチア「………」

瑚太郎「……ルチア?」

ルチア「ん、ああ、すまんな瑚太郎。ちょっと、昔の事を思い出して……な」

杏子「なんだ、ルチア?ここに……教会に、思い入れでもあるのか?」

ルチア「いや、教会と言うよりは……礼拝堂に、な」

杏子「………あんたがそれに思い入れがあるっつーことは、アサヒハルカもそれに誘われて……?」

ルチア「それは、アサヒハルカを名乗る者に問い詰めてみなければわからない。第一、わたしを知っているのかどうかもわからないのだからな」

杏子「ま、そうか」

静流「……人の気配は、無い」

杏子「魔法少女なんだ、気配くらいどうとでもなるだろうさ。行くぞ……」

杏子を先頭にして、一同は教会の中へ足を踏み入れる。

杏子「借りを返しに来たぜ、アサヒハルカ!!出て来い!!」

瑚太郎「………」

ルチア「………」

静流「………やはり、いないのでは」

杏子「……ちっ、どこに行きやがったってんだ」

変身を解き、杏子はその手の上にソウルジェムを乗せる。

QB「杏子?生きていたんだね、よかったよ」

建物の中に、キュゥべえが姿を現す。

杏子「キュゥべえ?何でお前がここに……っと。お前らは、この白いの、見えるか?」

瑚太郎「白いの?」

ルチア「な、何だ、この生き物は!?ま、魔物か!?」

静流「落ち着け、ルチア。魔物じゃない。さっき話に出て来た、インキュベーターだ」

ルチア「い、インキュベーター……」

QB「おや、キミはハルカ?織莉子やキリカと行動を共にしているんじゃなかったのかい?」

杏子「! 織莉子、キリカ?白い魔法少女と黒い魔法少女の事か?」

QB「杏子は知ってるんだね。うん、そうだよ」

ルチア「すまない、わたしはアサヒハルカではない」

QB「え?」

ルチア「わたしは、此花ルチアだ」

QB「…………」

瑚太郎「ちょい、待った。お前ら、さっきから誰と話をしてんだよ?」

杏子「あー、アンタにゃ見えないか。ま、当然っちゃ当然だな。おい、キュゥべえ。こいつ、瑚太郎にもお前の姿を見えるようにしてやってくれ」

QB「残念だけれど、僕の姿が見えるのは魔法少女とその素質を持った少女だけなんだ。諦めてもらうしかないね」

杏子「マジかよ……えーとな、瑚太郎」

杏子は瑚太郎に、キュゥべえの事についてひと通りの説明をする。

素質のある少女と、魔法少女にしか見えない事。

素質のある少女と契約を交わして、魔法少女を生む存在であること。

瑚太郎「…………えーと、つまり、あれか?俺は素質があるなし以前に少女じゃないから、キュゥべえとか言う奴の姿を見ることは出来ない、みたいな?」

杏子「そういうことだな。ルチア、静流には見えてるんだな?」

ルチア「ああ、見えている」

静流「奇怪な生き物だ……キュゥべえ」

QB「ふむ。確かに、キミはハルカではないみたいだね」

ルチア「わかるのか?」

QB「うん。ハルカとは契約したけれど、キミはソウルジェムを持っていないみたいだからね」

ルチア「………アサヒハルカが、契約を……?」

静流「見た目は、ルチアそのままだったのか?」

QB「髪は結んでいなかったけれど、その他の容姿はそうだね、ルチアそのままだったよ」

瑚太郎「くそっ……俺だけ見えないのは癪だ。ちょっと待ってろ……」

意識を集中させ、瑚太郎は自身の中のアクセルを踏み込む。

瑚太郎(『眼』の強化を……俺には鍵だって見えたんだ。なら、キュゥべえとかいう奴の事だって……!)

ルチア「瑚太郎?」

静流「能力を使ってるみたいだ。ルチア、静かにしてあげよう」

ルチア「………」

瑚太郎「……う………ぐっ………!!」

『リライト』を終えた瑚太郎は、ゆっくりと眼を開く。

瑚太郎「……おー……お前がキュゥべえっつー奴か」

QB「! 僕が見えるのかい?」

瑚太郎「あぁ、おかげさまでな……」

QB「……長い間この星にいたけれど、男の人に僕の姿を見られたのは、ずいぶんと久しぶりだよ瑚太郎」

瑚太郎「そいつはどうも。で?詳しく話を聞かせてもらおうか、キュゥべえ」

QB「詳しくと言われても、僕にだってハルカや織莉子達の目的はわからないんだ」

瑚太郎「ンだよ、使えねえ珍獣だな」

ルチア「じゃあ、どこに行ったのかとかもわからないのか?」

QB「見滝原の方に用があったみたいだったね」

杏子「見滝原にかよ……そっちにゃあんまり行きたくないんだけどな」

瑚太郎「……んで、どうするんだ、杏子?」

杏子「どうするもこうするもない。あいつらにリベンジしてやらなきゃ、気が済まない。この場所に土足で踏み込んだ礼をしてやらなきゃならないからな」

ルチア「だが、もう夜も遅いぞ?」

杏子「あんたらはホテルを取ってるんだろ?そこでひと晩明かせばいいよ。あたしはひと足先に見滝原へ行ってみる。見滝原にいる知り合いに、何か知らないか聞いてみる事にするよ」

瑚太郎「知り合い、ねえ。まぁ、わかった。んじゃ、今日は解散かぁ」

静流「この不思議生物、みんなにも見せてやろう」

静流がキュゥべえの首根っこを掴み上げ、瑚太郎とルチアにそう提案する。

ルチア「いや、構わないが……大丈夫なのか、そいつを連れて行っても?」

静流「どうなんだ、キュゥべえ?」

QB「どうなんだと聞かれても、返答に困るね。ダメだと言えば、キミは解放してくれるのかい?」

静流「しない」

ルチア「おい静流!?」

瑚太郎「おう。杏子、明日はどこで落ちあう?」

杏子「今日の昼間に、静流ともう一人、あんたらの連れと会った町外れの工場団地の入り口で落ち合おう。静流、お前は覚えてるよな?」

静流「覚えている。問題ない」

杏子「そういうわけだ。じゃあな、瑚太郎、ルチア、静流」

瑚太郎「おう!気をつけろよ、杏子!もしアサヒハルカと名乗る奴とはち合わせたら、三対一じゃ勝ち目は薄いから逃げるんだぞ!」

杏子「余計な御世話だよ。あたしはあたしでなんとかするさ」

軽口を叩き、杏子は瑚太郎達と別れる。

杏子(マミなら……なにか知ってるかもな。こっちから会いに行くのは癪だけど、仕方ねえか)

本日の投下、以上
これで前回投下分は全て消化したかな?ここから先も書き溜めてあるので、推敲しつつ順次投下して行きます
現時点で判明してるのは、ルチア、静流には素質アリって点ですね
瑚太郎は当然と言えば当然ですが、素質なし。リライトの能力でキュゥべえは視えるようになりましたが

次の投下は未定ですが、三日以内には必ず

では

魔女が見えるのにQBは見えないの?
ちはやルートが終わった時には瑚太郎の人間としてのリライトは限界じゃなかった?

つか強化の余地はまだ残してるとしても
ちはや√後の瑚太郎はrewrite最強クラスの強さだった筈なのに妙に弱いな

乙。

ちはやルートだと、どんだけリライト節約しても8割オーバーするね。
余地があるといえばある。
対魔女だと超人系進化のオーロラより、魔物系進化のオーロラの方が便利だろうなぁ・・・



Rewriteの特性上、√はあんまり考えなくていいだろ
ただ、上書きとかの制限ついてるなら知りたいかな……

そういや、西九条先生が派手に消えるのって
あれちはや√だっけ?

お、おぉ…ちらほら俺よりRewrite詳しそうな人が…
とりあえず返信レスしておきます

>>83
リライト能力に関しては>>85の言うとおり、若干の余地が残っていたってことになってます
男である瑚太郎がキュゥべえを見えないのは普通として、Rewrite側の主人公だから見えないままはまずいなぁ、と思った結果です
魔女が見えたことに関しては>>38であげた通り、結界内なら見えるってな感じです
結界から出ている使い魔やワルプルさんは、現時点での瑚太郎では見えません

>>84
あまり強くし過ぎるとメアリーになりかねないので、少し弱く見えるのは勘弁願いたい
相手がまどマギ側での強敵な魔女だから、苦戦した…と思ってくれるとうれしいです

>>86
上書き上限は、開始時点で残り3回出来ればいい方な程度です
現在すでに一度使用してしまっているので、残り2回をどのように使うか…それはSS本編にて
あまりに大幅な書きかえを行う場合(例をあげるとルチアルートでの毒の完全克服。ゲージ二つ使った上書き)は、一回で2回分を消費します
本編でそれを使うかどうかは、秘密です

続き投下します



PM0:00

瑚太郎達と別れ、見滝原への道を歩く。

その道中で。

杏子「………まさか、本当にはち合わせるとはな」

見滝原の入り口、街頭の明かりの下。

そこに、見覚えのある少女が鎮座していた。

ハルカ「クスクス……よく生きてたね?佐倉杏子」

杏子「おかげさまで、な」

ハルカの傍らには、白い魔法少女と黒い魔法少女の姿もあった。

杏子「よう?織莉子にキリカ。今回はコソコソとしねえんだな?」

織莉子「………」

キリカ「しぶといね……佐倉杏子。千年の未来の毒の味は、どうだった?」

杏子「千年の未来の毒?何の話だ」

ハルカ「キリカさん、おしゃべりはダメだよ。今度こそ……佐倉杏子には、ここで死んでもらわなきゃならないんだから」

キリカ「ふん」

杏子「……話をするつもりはねえ、ってか?」

織莉子「死にゆく貴女と話をして、何になると言うのですか?」

杏子「悪いけど、あたしはここで死ぬつもりはないよ。あんたらに礼をするまでは、な!!」

意を決して、杏子は魔法少女姿へと変身する。

キリカ「ハルカ、ここで仕損じるわけにはいかない。お前も、魔法少女に変身するんだ」

ハルカ「あの時、変身しなかったわたしに責があるのはわかってるつもりだよ、キリカさん」

そう言って、ハルカは右手を前方に差し出す。
指輪状になっていたソウルジェムが卵型へと戻り、そしてハルカは魔法少女姿へと変身した。

杏子「……!?お前、あの時は変身してなかったのか!?」

槍を構えた杏子が、変身したハルカを見て動揺する。

ハルカ「クスクス……驚いた?これが、わたしの魔法少女姿だよ」

不敵な笑みを浮かべながら、ハルカは見せつけるように杏子の前に立ちはだかる。

紳士的な服装、と言えばいいのだろうか。

ハルカの魔法少女衣装は、黒を基調とした礼服のような洋装だった。

魔法少女特有の武器は、見た限りでは所持していない。

杏子「……はん、少しはビビらせてもらったが、蓋を開けてみればなんてことはない。武器も持たない丸腰の魔法少女なんて、おそるるに足らないな?」

口ではそう言うが、杏子は神経を研ぎ澄ましていた。

ハルカの後ろには、尚も呉キリカと美国織莉子