双葉杏「生活」(31)

「・・・ん、ふぁあ~あ・・・」

双葉杏、花も恥らう17歳。

「良く寝た・・・まだ5時かぁ、夕方の」

絶賛、ニート中。


学校に行かなくなってからどれくらい経っただろう。
昔から面倒なことは嫌いだったけど最近はそれが酷くなってきてる。

寝て起きて、ゲームをしてネットをみて、小腹が空いたらそこらへんにあるお菓子をむさぼる。
目が疲れたと感じたらまた寝る。だいたい朝日が昇ったくらい。

杏「二度寝しよ・・・」

なんとも自堕落。でも幸せだなぁ。



「起きなさい」ゲシッ

杏「んがっ!?・・・千秋じゃん」

千秋「おはよう」

杏「おそよう~」


黒川千秋。
あまり人との接点がない私の中でもトップクラスに顔を合わせてる友人。


昔からの付き合い・・・いわゆる幼馴染という関係。
もう1人、幼馴染がいたけど今は上京している。
子供の頃は良くその3人で遊んだものだけどもう数年は顔も見てない。
実家にも帰ってきてないみたいだし仕事が忙しいんだろうと考えてる。


千秋「またお菓子ばっかり食べて・・・ちゃんと栄養とりなさい」

杏「はーい。あ、飴くれ」

千秋「はぁ・・・まぁいいけど」

杏「ん~うまうま」

千秋「子供のときに飴で餌付けして外に連れ出してたのは失敗だったかしら・・・」

杏「今の杏があるのは千秋のおかげですなぁ」

千秋「失敗だったわね」



杏「んで今日はどったの」

千秋「ん、私も上京するわ」

杏「ふ~ん上京ね・・・え゛」

千秋「そんな顔しなくても」

杏「マジでか・・・千秋までいなくなっちゃったら杏は・・・」

千秋「ふふっ、もしかして、寂しい?」

杏「杏は・・・杏は誰から飴をもらえばいいのさッ!!」

千秋「そっちなの!?」



杏「にしてもいきなりだねぇ~」

千秋「ホントにいきなり決まったのよ。」

杏「そっかそっか・・・なにしに行くの?」

千秋「秘密」

杏「飴1個で!」

千秋「少なくないかしら・・・」

杏「1個くれればいいんだよ?」

千秋「私があげる方なの!?」





杏「んまんま」

千秋「結局あげてるし・・・」

杏「やはりグレープ味も捨てがたいですなぁ」



杏「んで何しに行くの?」

千秋「ん~まぁ見てなさい、すぐ分かるから」

杏「なにを」

千秋「テレビ。ネットでもいいけど」

杏「・・・なにする気なの?テロとか起こしても杏は止められないよ?」

千秋「しないわよ・・・」

杏「イツカヤルトオモッテマシタ(裏声)」

千秋「やめて!!」




千秋「とにかく今週中にはあっちに行くつもりだから。言っておこうと思って」

杏「んぁ~りょ~かい」

千秋「本当に分かってるのかしらこの子・・・」




千秋「じゃあそろそろ行くわ。引越しの準備も忙しいし」

杏「はいよ~」



千秋「それより杏、貴女どうするの」



杏「えっ?私は今からもっかい寝るけど」

千秋「私が行った後の話よ」

杏「だからもっかい・・・」

千秋「違う、私もいなくなった後のこと」

杏「・・・どゆことさ」




千秋「生活、できるの?」





杏「・・・何言ってるのさ、できるに決まってるよ」

千秋「もう飴もくれる人もいないのに?」

杏「家族が」

千秋「家族が養ってくれるから?ここから出なくてもいい?」

杏「・・・そうだよ」

千秋「何もしなくても良い?」

杏「・・・」

千秋「いつかは誰もいなくなって、お金もなくなって、誰も面倒みてくれなくなっても?」

杏「そ・・・それなら、そしたらバイトとかすれば」

千秋「できるの?」

杏「・・・」


言葉が詰まる。




千秋「・・・また、向こうに行く前に来るわ」

杏「・・・そう」

千秋「考えておきなさい、ゆっくり。時間はいっぱいあるわ」

杏「・・・そう」

千秋「じゃあ、また」

杏「・・・うん」

ばたん、とドアが閉まる。

杏「・・・なにさそれ。わけわからんわー。なにが言いたいんですかー」

もちろん誰も答えてくれるわけもない。
誰に聞いてるつもりもなかったし。



杏「・・・寝よ」


胸につっかえるようなもやもやも、寝て起きたら消えてることだろう。




千秋「・・・」

杏「zzz」

千秋「またこの子は」ゲシゲシ

杏「んげっ・・・あ・・・」

千秋「おはよう」

杏「お、おはよ」

千秋「おそようじゃないの?」

杏「・・・おそよう」


千秋「考えたの?」

杏「・・・まぁ」

千秋「言ってみなさい」

杏「いやぁよく分からなかったっていうか」

千秋「杏」

杏「・・・分からないよ」

千秋「分からないって、貴女」




「分からない、何も分からない。何がしたいか分からないよ」


「ずっともやもやしてて、なにかしなきゃいけないってことだけ目の前にあって」

「考えてもあれもこれもだめだって、無駄だって思えて」

「お前にはできないって、何の価値もないって、言われてるみたいで」

「ねぇ千秋はどうなの。千秋からは、他の人達からはどんな世界が見えてるの?教えてよ」

「したいことって、しなきゃいけないことってどうやって分かるの?何を見てるの?教えてよ!!!」



千秋「・・・そうね」

杏「・・・」

千秋「私にも分からないわ」

杏「・・・は?」

千秋「分からないわよ、そんなの。」

杏「なら」

千秋「でも私は上へ行くわ」

杏「・・・死ぬの?」

千秋「バカ。トップに立つってことよ。」

杏「意味分かんない」

千秋「そのうち分かるわ。・・・ねぇ杏、私って結構見た目良いじゃない?」

杏「自分で言うんだ・・・そうだね」

千秋「歌も上手いほうだと思うわ。杏、貴女からみて私はどう見える?」

杏「そりゃもう自信があるように見えますけど」

千秋「私ね、いつも不安なのよ」

杏「・・・そんな風には見えないんけど」

千秋「そうね。でも本当よ。みんなそう、誰だっていつも不安なの」

杏「・・・」

千秋「誰でもよ。そう見えなくてもみんな常に不安を抱えて生きてるの。」

杏「なにがいいたいのさ」

千秋「貴女だけじゃないってこと。いつだって自分の歩んでる道が最善と信じて進むしかないのよ」

千秋「貴女はまだ踏み出してもないわ。道の入り口が見つからなくて迷ってるだけ」

杏「そう、なのかな」

千秋「一歩踏み出すことができれば、大丈夫。歩いていける力が杏にはあるわ」

杏「引きこもりだけど」

千秋「ふふっ・・・そうね」


杏「結局言いたいことが良く分からなかったんだけど」

千秋「まずは踏み出してみなさい。何もしないでぐずぐずしてたら可能性は0のままよ」

杏「うっす・・・」

千秋「そろそろ行くわ」

杏「うん」

千秋「・・・チャンスはふいに訪れるものよ。逃さないようにね」

杏「・・・?うん」

千秋「まぁ逃げる暇もないだろうけど。じゃあ、またね」

杏「??じゃあね」


そうして彼女は行ってしまった。


千秋が北海道から上京してしばらく経った。
ついに杏は1人きりになった。

考えてはいるけどまだ何もできてない。

いつからこんな風になっちゃったんだろうとぼうっと考えてみる。
まぁ、子供の頃からやる気はなかったかなぁ。


自分で調達してきた飴を口に含む。
それくらいはするようになった。

飴は昔から何も変わらないなぁ・・・なんて思ったり。

ずっと一緒にいた2人のことを思い出す。
千秋はいいんだけど、もう1人、そっちはもう顔を思いだすのも難しくなってきている。


杏(餌付けしたんだから最後まで責任取れよあいつら)




こんなことになっちまって
ああ、君の声さえもう思い出せないや。








「にょわー☆」



ドガーン!!!!!!



杏「うおおおおおおおお!?」



ドアが物凄い勢いでふっとんだ。
まるで嵐が来たように部屋に散乱してたゲームやらお菓子やらもふっとぶ。


「うお、派手にやれとは言ったけどドア壊せとは言ってないぞきらり」

「にょわ、ごめんねPちゃん☆」



杏「え、ちょなんだこれ」

「にょ?・・・うきゃー!かわいー!!」ガシッ

杏「ちょ、誰こデカッ!!!高っ!!!!」

「ヤバーい!!すっごいかるいにぃー☆」

「おお久しぶり杏。元気してたかー?まだ飴ばっか食べてるんじゃないだろうな」

杏「うわあああおろせええええ」

「聞いてないな。おろしてやれきらり」

「はーい☆」

杏「はぁ・・・はぁ・・・死ぬのか、杏はここで死ぬのか・・・」

「また大げさな。ほらこっちみろ」

杏「はぁ・・・あんたいるなら止め、て・・・」

「久しぶり」

杏「な、なんで」

「千秋から聞いてな。迎えに来た。」

杏「え・・・千秋?迎え?なんの」





「杏、アイドルやるぞ」







杏「・・・は?」





ジリリリリリリリリリ

「ん・・・うっさ・・・」

双葉杏、花も恥らう17歳。

「まだ寝足りないんだけど・・・あと5分・・・いや5時間くらい」



ドガーン
「にょわー!!おっはよー!!!お仕事だにー☆」

「ほらー行くぞ杏ー楽しい楽しいお仕事だぞー」

「うわああああああいやだあああああ働きたくないいいいいいい」



印税生活目指して
絶賛、アイドル生活中。


おしまい
初めて書いた

杏だってなんか悩みながらそれでもなんか頑張ってるんだろうと考えてたらこんなssができました。
失礼しました。

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