魔王「姫を愛している。俺と共にあれ」(278)

魔王が書きたかっただけで長編になりました。
読んでくれる人いたらありがとうございます。
妄想・爆走・命掛けです。投下スピード遅いのは勘弁してください。
↓からはじめます。

-------------

【オリジナル】魔王「姫・・・おまえを愛している。どんな絶望があろうと、俺と共にあれ」【長編】

-------------

<魔王城・謁見の間>

魔王「…創生術、発動」パチン

モワモワ・・・
魔王「・・・来い、石像」ゴゥッ

石像「ウォーーーーン!!!!」バシュゥッ


側近「おー。でけぇ。お見事」パチパチ

魔王「…まぁ、お前もこうやって作ったしな」

側近「あれからまだ8年くらい?」

魔王「まさかあんときの魔物が、側近になるとは思わなかったがな」

側近「へへへ。まぁ、俺強いし!」

魔王「ほら、連れていけ。土木工事員だったか?あと何体くらい必要なんだ?」

側近「ドワーフが4体くらいと、あとは…あ、サキュバスを一体?」

魔王「創生。創生。創生。創生。」
シュバッシュバババッ

魔王「ふぅ。終わりだな」

ドワーフ1「こんにちはー!まおうさまー!」
ドワーフ2「お兄ちゃん! まずははじめましてだよぅ」
ドワーフ3「あざーっす!生まれてきてサーセンっしたーww」
ドワーフ4「えー、なにこのワガママボディ。ありえないんだけどー。まじだるいわー」


側近「えっ・・・これがドワーフ・・・」

魔王「暇だったからな。少し遊び心を出してみた」

側近「いやいや、ドワーフ擬人化させてどうすんだよ! 工事員として使いづらいよ!」

魔王「すこし適当に作りすぎたか? やはり同時創生は仕上がりに難があるな。まあいいだろう、おしまいだ」

側近「よくねーし、サキュバスちゃんまだだけど!?」

魔王「土木工事に淫魔の必要性がない」

側近「えー。たーのーむーよー、現場のストレスとかイロイロあるんだって!これ必要だから!」

魔王「むしろ必要なのは、指揮官であるおまえの下半身の理性だろう」

側近「ひどいよ。…まぁ、ダメモトだったけど…」

魔王「ダメモトで魔王に魔物創らせるとか、ナメきってるな」ハァ


ドワーフ4「なにこの魔王コントー。ってかさー、この身体はないでしょー、まじ死ねるわー」
ドワーフ3「ちょwwおまえ命知らずwww俺はこの世に生を受けて3分で死にたくないwww」
ドワーフ2「魔王様のすることに、文句いっちゃだめなんですよー?」
ドワーフ1「ねぇねぇ!ぼくたち何すればいいのー?ヒーローごっこしていい?」


魔王「側近、はやくこいつら連れて出て行け。そしてしばらく帰って来るな」イラ

側近「それ、失敗したやつあたりもはいってるよね?」


魔王「・・・・」フゥ

魔王「そこまで言うのなら、まずお前から作り直してやる」パチン
もわもわ・・・

側近「ま、魔王様より御下命賜りましたー!石像&ドワーフ4名、ご新規様はいりまーす!」シュンッ ヒュッ

シーン

魔王「…ち、逃げたか」

魔王「さて、どうするか・・・少し休憩でもとるか?」フム

魔王「…まぁいい。部屋に戻って決めよう」スタスタスタ

<夜 魔王城 執務室>

魔王「」カリカリカリカリ
魔王「」ペッタン…ペッタン…
魔王「」キュッキュッパチン


トントン
魔王「誰だ」

メイド「魔王様。メイドです」

魔王「入れ。・・・いや、少し何か口にしたい。用意を」

メイド「お持ちしておりますゆえ、すぐに仕度を整えます。・・・そちらの机にお持ちしますか?」

魔王「…いや、もう終える。そちらに用意してくれ」

メイド「かしこまりました」


魔王「」カリカリ カリカリ カリカリ
魔王「・・・よし」パタン

メイド「本日の御政務、お疲れ様でした」ペコリ

魔王「・・・いや、雑務だよ。・・・できるものならお前に頼みたいくらいだ」ドサッ

メイド「お戯れを」

側近「いやいや。メイドちゃんはまじで有能だからね、ほんとに仕上げちゃいそうだよねー」ゴクゴク

魔王「おい、どこから沸いた」

メイド「・・・側近様、入室の際にはきちんと魔王様に許可を頂くようにしていただけませんか」

<執務室内・談話テーブル>

側近「それにしても本当にかわいい顔してるよねーメイドちゃんって♪ 今夜、俺のお世話もしてくれない?ベッドの中でw」

メイド「側近様には、私では役不足ですのでご遠慮させていただきます」

側近「いやいやいや。そんなつれないこといわなくても~・・・」

メイド「・・・魔王様、失礼します」ペコリ

側近「またねー♪ 俺の部屋に入るときは入室許可とらないでいいからねー♪」フリフリ
パタパタパタ・・・ギィ バタン


魔王「・・・おい、側近」ジッ

側近「なに?魔王」

魔王「後生だから、剣の錆になってほしい」スチャッ

側近「えっなにそれ怖い」


魔王「はぁ・・・」グッタリ

側近「んー、それにしてもメイドちゃんかわいいなー…」

魔王「その話はもうやめろ。疲れた」イラ

側近「いやいや、でもさ、あの子も魔王の創生術で創ったんでしょ?」

魔王「・・・あたりまえだろう」フン

魔王「今現在、この魔界で俺が創ってない・・・手を入れてない魔物など、そうはいないだろう」

側近「それって、四天王みたいな?」

魔王「四天王は、俺の出生時に先代が贈り物にと創ったらしいな」

側近「誕生日プレゼントにあの四天王とか、嫌がらせ以外に考えらんない」

魔王「まぁ、本人にしてみれば兄弟感覚といったところだけどな」

側近「ふーん・・・そんなもんかねぇ」


側近「んで、さぁ。メイドちゃんだけど」ズイッ

魔王「なんだ。やけにこだわるな」

側近「…なんで金髪ツインテールロリな外観なのに、あんな知的クールな性格なの?趣味なの?変態なの?マニアックすぎねぇ?」

魔王「えっ」

側近「えっ?って、え?」


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


魔王「」ズーン


側近「な、なんかごめんな? まさか、あれが一般的なメイドと思ってると思ってなくて・・・」オロオロ

魔王「もしかしなくとも、ほかにも妙な誤解をされてるんじゃないだろうか・・・」アタマイタイ

側近「あ、それって『魔王は合法ロリを極めようとしてる』とか、『真性Mだから幼女からの罵倒プレイが楽しみ』とかってやつ?」

魔王「・・・今すぐ世界を破滅させたい」

側近「で、でも、なんだってああなったんだ?創生術って、まさに神業、魔王業で万能なんじゃないの?」

魔王「・・・まぁ在位中の魔王のみが使える業で非常に有用性が高いのは確かだがな」

側近「魔物だけじゃなくて、無機物もつくれるんだろ?」

魔王「内部機構があるような複雑なものは無理だ。魔物を創るときもそうだが、外観は自由自在」

魔王「中身は世界中にある霊魂を引き寄せて、時には混ぜ合わせたりして外観に固定するんだ」

魔王「外観だけ途中で変形させたり、中身をまったく違う外観に入れ替えたりもできる」


側近「じゃぁ、さっきのドワーフみたいに、ちょっと変なやつが生まれるのは?」

魔王「見た目はちょっとした冗談だが、中身は適当なサイズの霊魂を4つ掴み取って固定化しただけだ」

魔王「性格や性質は、常に霊魂によって左右される・・・・・・つまり、時の運だな」

側近「ワイルドだぜぇ」

魔王「・・・で、まぁ話を戻すと・・・」

魔王「メイドの場合・・・まぁ、霊魂は決めてたんだ」

魔王「ちなみに元の魂は400年ほど前の王侯貴族の娘だったよ」

魔王「最後まで・・・外観は決めかねていたんだが。その時、近くにいた奴に聞いたら、メイドの写真集を持ってきたので・・・」


側近「その中から好みの子を選んだ?!やっぱりあれは魔王の趣味!?」ズイッ

魔王「お前の魂をいますぐ土偶に固定化しても文句言うなよ」イラ

側近「すんませんでした」ドゲザ


魔王「・・・まぁ、いろいろあったんだ。表紙の娘を参考にしたらああなった。それだけだよ」ハァ

側近「なんか・・・いろいろ残念だったな・・・?」ショボン


側近「んー・・・そっか、うん、そうだよなー・・・」ウンウン

魔王「なんだ。まだなにかあるのか?」

側近「いや、あのさ。んー・・・」ソワソワ

魔王「うっとうしい。言いたい事は言え」

側近「あー、いや。じゃぁさ。結構本気で、お願いしたいんだけどさ・・・」

魔王「お願い? なんだ?」

側近「俺にも、侍女・・・っていうか。妹?彼女?とか創ってほしいなー・・・なんて」

魔王「おまえに、専属淫魔をつくれと?」ハァ

側近「いやいやいや!そうじゃなくて!・・・茶化さないで聞いてくれよ?」

魔王「・・・ふん、聞くだけ聞いてやる」


側近「俺さ、こないだ視察に人間の町に下りたじゃん?」

側近「そんとき、すげー仲のよさそうな男女をみてさ。あ、いいなぁって思ったわけよ」

側近「仕事とか男友達とかのノリじゃなくて。なんていうか、癒し?みたいなのが・・・」

側近「なんか急に、ふんわり笑いかけてくれるような、そんな存在が恋しくなって・・・」モジモジ


魔王「・・・おまえ、ちょっとおでこ貸してみろ」ツイ

側近「熱とかねーよ!?茶化すなって!ま、まぁ自分でもよくわかんねーけどさ!」パシッ

魔王「・・・茶化してるのではない。お前の魂が見たいだけだ、それでお前の言いたいことが俺にも通じる」ジッ

側近「あ・・・。うん、なんか、ごめん・・・。頼む」スッ

魔王「・・・目を閉じてジッとしてろ」ピタ

シュゥゥゥゥゥ・・・

側近(あ・・・なんか、すげ、あったかいような、うわ、変な感じ・・・)ブルッ

魔王(元の霊魂が人間なのは知っていたが・・・これは・・・まさか、騎士?)ブハッ



側近「!?な、なんでいま吹いた!?」

魔王「気にするな」コホン


魔王(まさか騎士だったとは。しかし・・・意外にあまり情報が残ってないな・・・田園風景・・・故郷か?)

魔王(古い屋敷・・・ふむ、人間・・・娘?妹? これか、側近の願いの理由は・・・、もう少し・・・)


――――――――――――

??「・・様!」ニコッ

――――――――――――


魔王「!!」バッ


側近「ど、どうした?」キョトン

魔王「いや・・・、なんでもない・・・もういいぞ」スッ

側近「それで、いまので、なんかわかるのか?」

魔王「まぁ、なんとなくだが。お前が邪な気持ちで言ってるわけじゃないのは、わかった」

側近「じゃ、じゃあ!」

魔王「・・・しかし、だめだな」

側近「!? なんで?!」


魔王「存在意義が弱すぎる。お前を癒すための存在・・・そんな目的で創生したらどうなるかわかるか?」

側近「どうなるんだ?」


魔王「お前が死んだとき。お前が満足感を得たとき。代わりの誰かに癒されたとき。・・・その時、霊魂は意義を見失い霧散し、外観は瘴気に還るだろうな」

側近「!」

魔王「愛玩用の魔物は確かに存在するが、個のために創生された愛玩用の魔物など不憫に他ならない・・・使い捨てのペットだ」

側近「・・・じゃ、じゃぁ。メイドちゃんは?どうやって存在意義を保ってるんだ?」

魔王「・・・そんなもの必要ないだろう。・・・あれは、俺の都合のいいように創られただけの魔物だよ」フイ

側近「そんな・・・」ゴクリ

側近「・・・じゃぁ、さ。別の役割を持たせて、創れないか?俺だけの癒しじゃなくても・・・ただ、そういう、存在が欲しいだけなんだ・・・」


シーン


魔王「・・・そこまで、固執するとは、ね」

魔王「・・・稀なことだが、お前は人間の頃の魂の影響を受けているのかもしれないな」

魔王「騎士、騎士・・・ね。前世では、俺を討伐するつもりだったのかもな」フフン

魔王「あまり、不穏な魂の影響を受ける前に・・・消しておくか」ニヤ


側近「!!」

魔王「不用意な発言を、後悔して、消えるんだな」パチン
シュボ・・・ボボボボボボ・・・



側近「・・・俺は」

側近「俺は、消されるのは、いやだ」

側近「まだまだ足りない。魔王のそばで世界を見たい・・・けど!」

魔王「・・・」



側近「・・・いや。すまない。へへ、やっぱりここまで来ても、あの笑顔のイメージに未練あるみたいだわ」ハハ

側近「俺はどうかしちまったのか? 創られてそう年月たってないとはいえ、側近なんて立場なのにな・・・不穏分子と感じたら消してくれていい」

側近「いや、やっぱり土偶にしてもらおうかな!役立たずになるから、安心して最後まで魔王のそばにいれるもんな!」アハハ

魔王「・・・・・」

側近「・・・・・」


シーン

魔王「側近」

側近「・・・はっ、魔王様」サッ

魔王「気持ち悪い」

側近「えっ」

魔王「まじで吐きそう」ウッ

側近「えっちょっ、だいじょぶ!? メイドよべ!」

魔王「そうじゃない。・・・お前が、俺のそばにいたいとか連呼するから、精神的にキモチわるい」

側近「鬼だなあんた!?」ガーン

魔王「魔王だ」



魔王「さて・・・役に立たない側近から俺の精神衛生を保つため、新しく衛生兵用の魔物を作るかね」フゥ

側近「俺の本気の決心と発言を、駆除すべき土壌菌みたいに言わないで?」ガーン

側近「・・・俺だって・・・俺だって魔物の中では1,2を争うほど強いって言われてんだぞ・・・」ブツブツブツブツ

魔王「・・・おい、何してる」

側近「・・・最期に、自分で自分を慰めてんだよ・・・見て分かるだろ・・・」ブツブツ

魔王「うっとうしいことこのうえない。そんな暇があるなら、早く俺の衛生兵によさそうな素体案をもってこい」フン

魔王「メイドと同じ常駐になるな。・・・仕事を覚えるよう世話はお前がしろよ」

側近「え・・・?そ、それって・・・?」

魔王「3日で案もってこい。遅れたらお前をゆるキャラにいれかえる。転任でサンドバッグだ」

側近「ストレス発散!?」

魔王「正直、衛生兵の代わりには最適だとおもう」

側近「怖いからやめて!?」


側近「でも・・・うん、任せとけ!最高に笑顔で癒されるやつだから!2日で持ってくる!」ダダダ・・・

側近「あ」ピタッ クルッ

魔王「?」

側近「へへ。魔王!ありがとうな!!」ニコッ
ダダダダダダダ・・・ バタン!


魔王「クク・・・せわしない奴だな」

魔王「・・・不穏分子として処分、ねぇ? 普通、信じないだろ」クックック

魔王「俺に創られた分際で、俺に逆らって不穏分子になれる・・できるもんならやってみろよ・・・なぁ、メイド?」ククッ


スッ・・・
メイド「・・・楽しそうですね、魔王様」


魔王「うん、悪くない気分だよ。やっぱり側近は・・・あいつは、俺の創生術の中で最高の失敗作だ」

メイド「・・・少し、妬けます」

魔王「うん? ああ・・・。そうだな」フム


魔王「マニアック、ね・・・。メイドはどうやら、俺の、最低の超大作だったみたいだな?」ニヤリ

メイド「・・・魔王様。私の器を、お替えになりますか?」

魔王「そんなことしない。・・・それとも、俺の好みに替えてほしいのか?」

メイド「ッ!」


魔王「どうなんだ?」

メイド「魔王様の、お望みとあれば・・・」

魔王「・・・では、いつまでも、最低のままでいるがいい」

メイド「・・・かしこまりました」


メイド「ところで魔王様。いつから、私が部屋にいると?」

魔王「いつからも何も、ずっといるだろう。出て行ったフリまでしてな。・・・俺の弱みでも、盗み聞きしたかったのか?」

メイド「え・・・め、滅相もありません!」

魔王「くくく、本当は知りたいって顔、してるぞ?」

メイド「そ、それは、魔王様のことでしたら全て知っておきたいというだけで・・・!」



魔王「おしえてやろうか? 俺の、弱み」

メイド「ま、魔王様・・・?」

魔王「どうせ側近が帰るまで、仕事も回ってこない」


魔王「・・・来い」スッ

メイド「・・・魔王様・・・」フラ・・・



魔王「ふふ・・・側近が戻るまでに、うまく探し当てられたら、おしえてやるよ・・・」

メイド「・・・っあ、ぅ」ドサッ


―――――――――――

<4日後 執務室>

側近「ゆるきゃらだけは勘弁してください」ドゲザー

魔王「お前・・・2日で持ってくるって言ってたよな?」ハァ

メイド「後ほど、お飲み物をお持ちしますね」トテトテ

魔王「・・・ああ」

メイド「では失礼します、魔王様」キィ・・パタン 

メイド「・・・♪」パタパタ

側近「な、なんかメイドちゃん、少し見ない間にずいぶんご機嫌じゃね?」

魔王「誰のせいだと思ってる」

側近「・・・? 魔王、やつれた?」

魔王「誰のせいだと思ってる?ねえ?」

側近(魔王って、下手に体力も集中力もあるし、メイドちゃんも夜は大変なんだろうな・・・いいなぁ・・・//)

魔王「」イラッ


魔王「変身呪文」シュワワワワ

側近「あっやめて!? ちょ、俺をくま○ンにするのはやめて!? いやぁぁ!してない!!同情とかしてないから!!」

魔王「10日ほどで変身呪文は解除してやるから感謝しろ」フン

くま○ン(側近)「シクシクシクシク」

魔王「泣いてみせても顔が笑ってるぞ」

くま○ン「表情かわんねえんだよ!わかってんだろ!!うわあんっ!」

魔王「わかったから、さっさと素体案だせ」ハァ

くま○ン「しくしく・・・これだよ・・・早く俺のエンジェルだしてくれよ・・・俺の心はもう折れきってるよ・・・」

魔王「魔王にエンジェル頼むとか正気か?」

魔王「む、イラストか。上手いのが逆にイタいな。性質は、温厚、丁寧、清楚、妹属性、どじkk・・・・・」

くま○ン「なんだよ?なんか情報足りなかったか?」

魔王「いや、お前の頭のネジとか、3次元的な女性像が足りてないくらいだ」ドンビキ


くま○ン「テーマは癒しなんだよ!?シビアな現実見つめてたら手に入らないよ!?」

魔王「外観はともかく、こんな霊魂が見つかるか保障しないぞ・・・?」

くま○ン「それはしょうがない。魔王パワーでなんとか!」

魔王「妥協する気ゼロだな、お前」


魔王「はぁ・・・まあ、やってみるか・・・やる気おきないが・・・」

くま○ン「・・・成功したら、例のメイドちゃんに関する変態的な噂、ちゃんとみんなに訂正しておくよ!」

魔王「我の手にかかれば、この世界に網羅するすべての霊魂を掌握するくらい造作もないことよ!」フハハ!

くま○ン「よっ魔王!」パチパチパチ

魔王「ま、はじめるぞ」スッ


魔王「・・・・」
シュワワワワ・・・


魔王「(外観、想定。人間型、メス、華奢な胴体・・・白金長髪・・・碧眼・・・)」
魔王「(霊魂、捜索。・・・くそ、やはりなかなか・・・ないな・・人間の国まで広げて・・・)」

魔王「(あ・・・なんかこれ、側近作るときと似てるな・・)」
魔王「(そう・・・たしか、ここのあたりで・・・あ、なんか、よさそうなのが・・・見える・・・)」
魔王「(きれいな・・・霊魂・・・? どこかで・・・見覚えのあるような・・・)」

―――――――――

??「・・・・さま」ニコ

魔王「お前は・・・」

??「・・・では・・・」クルリ

魔王「待て・・・!」ガッ

―――――――――

魔王「・・・!!」

魔王「ッ!? しまっ・・・!!くっ!」バシュンッ


くま○ン「魔王!?どうした?!」

魔王「やってしまった!禁忌だ!何が出るかわからん、ともかく最悪だ! 構えろ!」スチャッ

くま○ン「なっ・・・!!」ババッ


モワモワモワモワ・・・シュゥゥ
魔王「・・・!」
くま○ン「・・・何かくるぞっ」

シュワシュワシュワ・・・
??「・・・・・コホン」

魔王「・・・これは・・・」
くま○ン「・・・?」

??「・・・本日は、私のためにこのような場を設けていただきましたこと、心より御礼申し上げます」ペコリ

魔王「え」
くま○ン「・・・女の子・・・?」


??「近年、魔王勢力の拡大に伴い、私どもの国でも恐怖に慄き、餓えに怯え、明日への活路を見失う民は増え続けております」
??「そこで今回、打倒魔王という強い志を胸に抱く皆様に、少しでも応援と感謝の意をお届けしたいと思い、ささやかながらこのような場をご用意させていただきました」

くま○ン「そ、そんな趣旨だったっけ・・・?」
魔王「・・・おい、娘」

??「え?」パッ

魔王「・・・ほう、これは・・・」
くま○ン「美人!え、何コレ、成功?俺の彼女? ちょ、あ、おれ、どうしたrあsdfg」

??「・・・あ・・・ら・・・? ・・・?」キョロキョロ 

くま○ン「あ、え?う・・」オドオド

魔王「・・・おい、彼女をフォローしてやれ」

くま○ン「あ、お…おお? お、オレ、オマエ、マルカジリ?」

??「!?」ビクッ

魔王(本物のバカだった・・・)ハァ

??「き・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!?????!!!!」


・・・・・・
・・・・
・・・


??「」グッタリ

魔王「何か言うことは無いか」

側近「すいませんでした」

魔王「言うに事欠いて、くま○ンのナリで『マルカジリ』って・・・わかってるのか?」

側近「くま○ンにしたのは魔王じゃn

魔王「次は、○んと君にしてやってもいいんだが」

側近「半裸は勘弁してください」ドゲザー



魔王「はぁ・・・しかし・・・どうしたものか・・・」

側近「ていうか、どういうことだってばよ。コレ…人間のほうの国の姫様なんじゃ・・・」

魔王「正確に言えば、姫様だったモノ、だな・・・」

側近「あ、やっぱり姫なんだ? え?霊魂? じゃぁ、姫様、死んでたってことなの?」


魔王「・・・創生術には、禁忌といわれる術法がある」

魔王「これは、浮遊する霊魂ではなく、生存する人間の霊魂を引き抜き、魔物の身体に固定する法だ」

魔王「生存する人間の霊魂を引き抜くのは本来、容易にはできない。当然だがな」

魔王「だが、例外がある。術者、対象者がお互いを特定して強く想いあった状態で、創生術を使うことだ」


側近「んじゃ、この姫様は、なんかしらんが魔王討伐の事で魔王を考えていた?」

魔王「おそらく」

魔王「俺側は、よくわからんな。魂を捜索している途中、ぼんやり考え事をしてしまった」

魔王「が、おそらくおまえの出してきた素体案のイラストが、この姫様の姿形と合致してしまっていたせいで・・・」

魔王「本来見ることもつかむこともできるはずがないこの姫の魂を、見つけ、つかめてしまった・・・のではないかと」

側近「なんて不運な偶然」


魔王(まぁ、捜索中に見えた何かが関係あるのかもしれないが・・・今はまだなんとも、な・・・)


側近「ちなみに、禁忌といわれる所以は?」

魔王「成功率の低さだな。大抵、生きた人間の霊魂が、瘴気の塊である肉体への拒否反応でバーサクするんだ」

魔王「肉体の崩壊と再生を常に繰り返しながら無差別攻撃してくる上にHP攻撃が通用しない恐ろしいクリーチャーが出来る」


シーン

側近「・・・それに偶然巻き込まれるとか、不運とかいうレベルじゃないな」

魔王「ある意味、天災だな。魔王のしたことだし」



??改め姫「う・・うぅん・・・」モジ・・・


側近「あ、気づいた?」

姫「あ・・・! ク、クマ!黒い大きな暗黒微笑のクマが!クマにまるかじりされてっ!?」

側近「うん、ごめん、大丈夫。あのクマはもう二度とでてこないように俺がんばるから」ナミダメ


姫「えっと・・・あら・・・?」キョロキョロ

姫「ここはどこですか・・・?」キョトン


側近「ここは、魔王城ですよ」

魔王「そして俺が魔王だ」

側近「そしてあなたは魔物になりました、ご愁傷様です」ホロリ


姫「・・・あ」クラッ

側近「まってまって、気を失うのまって!? 話が進まないから!」


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


魔王「・・・と、いうわけだ」


姫「どこをとってもひとつも納得はできませんが、私は、魔王の手によって殺され、配下として生まれ変わった、ということでしょうか・・・?」

魔王「いや、少し違うな。魂を生きている肉体から引き抜き、別の素体に移しただけだ」

姫「つまり・・・?」

魔王「おそらく、本来の肉体は現在、仮死状態にある」

魔王「生まれ変わったというより、身体だけ、すげかわったという感じか」

魔王「術の行使から一刻ほどたつ・・・、すでに誰かが倒れている姫の身体を見つけているかと。運がよければ、城の魔術師たちが回復魔法をかけているだろうから、無事ともいえるな」

姫「そう・・・よかった・・・と、いっていいのでしょうか」ホッ


魔王「・・・なかなか気丈な娘だな。誰にもみつけられず、死んでいる可能性もあるのだぞ」ニヤリ

姫「」ムッ

姫「それでしたら、心配は無用です。・・・私がいたのは複数の臣下の前でしたから」


魔王「・・・いま、なんと?」

姫「城で、臣下、騎士団、他国の貴族様方をお迎えしてのパーティの最中、まさに私の演説のはじまるその時でした、と」

魔王「」

側近「」

姫「・・・なにか、まずいことが?」



魔王「・・・側近!」バッ

側近「おう!魔王!」シュタッ

魔王「水晶玉持って来い!王国の様子を調べろ!」

側近「もうやってる!それより魔術探査!痕跡は残るのか!?」

魔王「魂をつかんだ瞬間、その時、魔術師のような魔力に聡い奴に見られていなければわからないはずだ!」

姫「宮廷魔術師は20名近く参加していたはずですよ、余興にファイヤーワークをする予定でしたので」シレッ


側近「oh...」

魔王「・・・ふん、まぁいい。姫に注視してみていたなんてこともなかろうし・・・」

姫「いえ、演説に備え、高位魔術師お二方が私に光魔法を当ててくれていましたので、注視してますね」

魔王「・・・チッ」

側近「魔王!水晶玉でたんだけど・・・こ、これ・・・」


『魔王の襲撃じゃ!』
『姫様!姫様の意識が戻らぬ!』
『ぐぬぬ、卑怯な魔王め!突然の宣戦布告ということか!』
『姫!姫様!』
『こんな魔王の悪逆非道を許していいのか!』
『あああああ姫、姫えええええ!!』


姫「まぁ・・・大パニックというか、パーティの想定以上に、打倒魔王の士気があがってますわね・・・」

魔王「これは詰んだ」

側近「チェックメイトだな」


姫「・・・それで。間違いだったのでしょう? どうにか、事態がすすむ前に私を向こうに送り返すことはできませんの?」

魔王「ん・・・お前を送るだけなら簡単だが、なにしろ今の身体は魔物のものだ」

魔王「このまま送っても、瘴気のないあちらについたとたん、苦しみ悶えて死ぬだけだが、いいか?」

姫「・・・急に現れた姫が、しかもそのまま死ぬなんて、なんとも魔王らしい悪逆非道な行為ですわね」

側近「な、なんかずいぶん、冷静なんだな・・・?怖くないのか?」

姫「打倒魔王の奨励スピーチを、魔王城で、魔王の目の前で、単身行ったのです。今更怖いものなどありません」フイッ

側近(あれ。何この生意気姫。さては魔王、俺の希望したドジッコ妹属性の霊魂を探してなかったのかよ・・・)

魔王「・・・ふん。面倒事は避けたいんだがな・・・」



トントン
魔王「誰だ」

メイド「メイドでございます。お飲み物をお持ちしました」


魔王「今は忙しい。後に…。・・・いや。おい、入れ」

メイド「何かございましたか。・・・? そちらの女性は新しい魔物ですか?」

魔王「それについて案がほしい。説明する」
かくかくしかじか

メイド「・・・そうでしたか、人間の・・・」チラリ

側近「メイドちゃん、なんかどうにかうまく納められないかな?」

メイド「・・・放っておかれるのではいけないのですか?」

側近「ちょ!そしたら人間と全面戦争だよ?そうなったらメイドちゃんだって・・・!」

メイド「・・・魔王様」

魔王「ふむ、そうか・・・それもそうだったな」

側近「魔王まで!?どうしちゃったんだよ!いくら姫さんが人間だからって・・・」

姫「私はかまいません。こうなってしまった以上、死ぬまでに魔王に傷のひとつもつけてみせれば兵の士気も上がるというもの」

側近「姫さんまで!?」


魔王「・・・随分、強がるな」

魔王「よもや本当に恐怖を感じていないわけでもあるまい・・・先ほどから、目を伏せたまま小刻みに震えているの、気づいているぞ」

姫「!」ビクッ

魔王「何、嫌いじゃないよ。背伸びをして大きく見せる奴の足元を掬ってやると、滑稽なほど脆く崩れるしな・・・くくく」

メイド「・・・」

姫「・・・経過はどうあれ、魔王の手中に堕ちたのです。王国の恥にならぬ様、私は私のすべきことをするだけです」プルプル

側近「・・・な、なぁ魔王・・・」

魔王「黙っておけ。・・・ふむ、放っておくなどせずとも、一思いに今殺してやるのも・・・いや、せっかくの姫だ、嬲るのも悪くない。くっくっく」

姫「ッ・・・!お好きになさい!いかな辱めを受けようと、私の誇り、意思までは汚せないと思い知ることでしょう!」キッ


側近「姫さん!魔王も!なぁ、ただの間違いだったんだ!そんな荒立てることないだろ!?」

魔王「姫なんて、ここにいればただの小奇麗な娘に過ぎん。そして俺は魔王。気まぐれに食い散らかして何が悪い?」ギロリ

姫「っ」ガクガク

側近「姫さんっ」


メイド「・・・魔王様。あまり彼女を可愛がらないでください」

魔王「そんなつもりはない。・・・つまらぬことで妬くな」

メイド「過ぎたことを申しました、お許しください」

魔王「・・・。興がそがれたな。つまらん」


魔王「さて。・・・方針はさっきのでいいだろう。やはりメイドは優秀だよ」

側近「魔王!まさか本当に・・・!?」

魔王「ああ。姫の身柄については放置する。王国には遣いをやればよいだろう」

姫「・・・ッ」


魔王「・・・では姫。部屋の用意をさせよう。王国に戻るまでの間、怠惰で緩慢で自堕落で平和な日々を過ごせ」スッ

姫「・・・ッ」

姫「・・・え? ・・・はい?」キョトン

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

<夜 魔王城、姫の客室>


姫「・・・」ボー

メイド「どうなさったのですか、姫様」

姫「あ、いえ。・・・はしたないところを、お見せしまして・・・」ボ‐

メイド「・・・まだ、あなたがこちらにいらしてから一日です。魂は抜けていないはずですが」カチャカチャ

姫「そ、そうなのですが・・・あまりに現実味が無いことで・・・夢の中にいるのではないか、と・・・」

メイド「・・・」


~~~~~~~

側近「霊魂の霧散を待つ?」

魔王「そうだ。前にも話したと思うが、創生術によって生み出した魔物は、存在意義を持たぬ限り霧散していってしまう」

魔王「それは禁忌によっても同じだ。むしろ、本物の肉体がある分、霊魂は引き寄せられるように今の身体から出て行くだろう」

側近「霊魂がすべて出て行って、肉体に戻ったら?」

魔王「もしかしたら記憶の混同、一部消失、混乱などが現れるかもしれんが・・・まぁ、さしあたって支障はないだろうな」

側近「完全復活?」

魔王「姫を、不死の魔王のように言うものじゃないよ」クク

姫「え、ええと・・・私は、別に・・・」


側近「それで、完全に霊魂が抜け切るにはどれくらいの時間が必要なんだ?」

魔王「・・・おそらく、2週間ほどか。まぁ、霧散したものが徐々に戻っていくといったろう?」

魔王「つまり・・・このように戻るわけだが・・・」カキカキ


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
0日目  仮死状態
2日目  自力で生命活動を行える
5日目  無気力で、複雑な言語や思考は困難
7日目  日常生活が送れるが、虚弱
10日目 激しい運動、極度のストレスを受ける事以外は可能
12日目 時に軽い倦怠感を感じる
14日目 復活(記憶の混濁、消失、混乱の可能性は在り)

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

魔王「ちなみにこちらの魔物の姫様は、反比例するように下から上へと状態が移行するだろうな」

側近「段々動かなくなって、2週間後には、霧に還るのか・・・な、なんか心が痛むというか・・・切ないような・・・」

姫「ご、ご心労をおかけします」オドオド

魔王「・・・時々、側近が本当に魔物なのか疑いたくなるな」

側近「ちょ!魔物も人間も、魂だけは同じだっていったのは魔王だろうが!」
ワイワイ


~~~~~~~~

姫「・・・それで、目標や存在意義、そういったものを持たないように怠惰に時を過ごすように、と・・・」

メイド「はい。生活に不自由があると、人は貪欲になるので、私が姫様の身の回りすべてのお世話を申し付けられております」

姫「魔王城で、上げ膳・据え膳の生活・・・国の皆が知ったらどんなに士気が低下するでしょう・・・」ハァ


メイド「・・・姫様は、いつも兵の、打倒魔王という士気をお気になさるのですね」

姫「! そ、それは・・・申し訳ありません。あまりにも配慮が足りませんでした。こんなにもよくしてくださるあなたの主君ですのに…」

メイド「それは気にしておりません。魔王様のお力をもってすれば、人間ごときに負ける事はありませんので」シレッ

姫「・・・・反論したいですが、それが事実だと、私は知っています・・・」

メイド「・・・意外ですね。こう言っては、噛み付いてくるものとばかり思っておりました」

姫「・・・私は一国の姫です。過去の魔王討伐隊により散って行った勇士にも激励を飛ばしてまいりました」

姫「類を見ないような豪腕の持ち主にも声をかけました。彼はそのまま帰らぬ人となりましたが・・・」


メイド「・・・記憶にありませんね。魔王様の元までたどり着くことすら叶わなかったのでは?」

姫「・・・そうかもしれません。・・・ですので、魔王の強さというのは嫌でも耳にするのです」

メイド「実際の魔王様のお強さは、姫様の想像など及びもしませんよ」

姫「そ、それは・・・そう・・・なのかもしれません・・・」

メイド「随分、謙虚でいらっしゃいますね」

姫「・・・以前、知己を。魔王討伐に向かった知己を、亡くしましたから」

姫「彼以上に強い人などいない。私だけでなく皆もそう思っていました・・・その彼が帰らないのですから・・・魔王の強さは、比類ないといわれて確かなのでしょう・・・」ハァ

メイド「・・・それで、皆の下がりきってしまった士気をあげようと躍起なのですか?」

姫「い、いえ。兵たちは皆優秀で義に厚い。彼の死を悼み、仇討ちをと、士気を高めましたよ」

メイド「では、皆も姫も魔王様を、相当怨んでいるのでしょうね。そして士気が下がるのを嫌って、そのようなことを」


姫「・・・いいえ、少なくとも『私』は、魔王を怨んでいませんよ」


姫「ふふ、おかしな話ですね。彼を殺した黒幕を、怨んでいない、なんていうのは」

メイド「・・・」

姫「確かに私は、魔王討伐を叫んでいます。国でも、そのために精力的にうごいています」

姫「ですが・・・魔王を憎く思うからではないのです。恨んでいるからでもないのです。どちらかといえば私は・・・自分を、怨んでいるくらいですから・・・」


メイド「ご自身を、ですか?」

姫「・・・なぜでしょう、こんな話をしてしまったのは・・・口に出すことなど無いと思っていたのに」

姫「ふふ、これも魔王の瘴気にあてられたからなんでしょうかね?」


メイド「確かに人間の場合、思考能力が低下し正気を失う場合はあります。が、魔物の身体のあなたには・・・」

姫「では、魔物の身体にされても、心から人間であったため、正気を失ったことにいたしましょうか、ふふ」

メイド「・・・いかようにも」


姫「これは、つまらない話です・・・独り言と思っていただいてかまいません」

姫「先ほど言ったとおり、私は姫として、勇士に激励を送るのが務めです」

姫「私はそれに疑問など持っておりませんでした。ですので私は彼・・・知己にも、魔王討伐を誓わせました」

姫「激励をし、過度の期待もかけました。ですが・・・彼は帰ってこなかった」

メイド「・・・」

姫「帰らぬ彼を待つうちに、私は大切な方の逃げ道を断ったのだと気づきました。責任という死の枷を押し付けたのだ、と・・・自分を怨んだのです」

姫「・・・あのとき、無理をしないよう約束すべきだった。そうすればもしかしたら、彼は瀕死でも逃げ帰ることができたかもしれない・・・」

姫「そう、思ったんです」

姫「卑怯ですよね。最初にお話した豪腕の方も、私に討伐を誓ってくれましたのに」

姫「命に差異は無いのに、知己のときだけは・・・彼だけは、生きていてほしかったと思ってしまった」

姫「そして・・・ほかの勇士達からも同じように逃げ道を奪っていてなおそんなことを思った私は、・・・私自身がそうであるように、彼等からもまた怨まれているのではないか、と・・・」


姫「ですから・・・怨まれるのが怖くて。すべての魔王に挑もうとする勇士に、同じように討伐を誓わせているのです」

姫「誰にも差など、つけていないのだと言い聞かせながら・・・」

姫「士気を気にするのは、勇士の死が怖いからです。私を怨み死んで行く人が増えるのが恐ろしい。でも、行くなとはいえません」

姫「少しでも生存確率を高めるため・・・、少しでも早く魔王を倒し、私自身が怨まれることにおびえる日々から開放されるため、必死に鼓舞し続けているのですよ」

姫「そうしているうち、民も、お父様も、皆が私のことを『魔王討伐の志高く、兵達の為に労を惜しまない、国思いの姫である』と言うようになりました・・・ふふ」

メイド「・・・」

姫「ほんとうに、おかしいですよね。内心では、恐怖におびえ、責任逃れをして、矛盾したことをしているだけなのに・・・」


メイド「・・・ですが、間違っていないでしょう」

姫「・・・え?」


メイド「あなたは一国の姫です。そして国王は魔王討伐を全面的に打ち出しています」

メイド「・・・姫として、国王の補佐として。その役割の中で、すべきことをしているに過ぎないのでは、ないですか」

メイド「姫としての役割を果たす。そのためにあなたは心を削って苦しみぬいている」

メイド「・・・姫というのはなかなか、思っていたより楽な仕事ではないようですね」

姫「で、でも。私は・・・命の優劣を・・・人の命を、天秤にのせてしまったのですよ!?」

メイド「何をおっしゃるかと思えば。・・・私は、魔王様のお命が何よりも一番重いと思っておりますし、事実そのように行動していますよ」

姫「え?」

メイド「つまり、『姫というのは、私のしているように差別することを許されないので、つらいですね』と、申し上げたいのです」

姫「え・・・えっと・・・だから、私はそれをしてしまって・・・」

メイド「してないでしょう」

姫「?」

メイド「心の中で思っただけで、してないでしょう」

姫「!?」


メイド「魔王様のお言葉をお借りしていうと、人間も魔物も、貧民も貴族も、盗賊も王族も、もともとの魂に差は無いそうです」

メイド「姫、という生まれだからといって、魂が『人を差別しない』なんてこと、ありえないのですよ」

メイド「すべての生物は、より身近な存在、好む存在を大切にするものです。姫だけ例外なんてありえません。何様のつもりですか?」

姫「わ、わたしはべつにっ」

メイド「では、姫は見たことも聞いたことも無い人間の死が、最愛の者の死と同じだけ悲しいものだとでも?」

姫「そんなわけ・・・」

メイド「そういうことですよ」


メイド「ですから、姫様の悩みは、当然で仕方ないことなのではないのですか? ・・・幸い、心の中まではモノサシで計れません、構わないでしょう」

姫「・・・・・っ」

姫「・・・では・・では、いいのでしょうか・・・」グスッ

姫「私は・・・彼の死だけを想って、悔やみ、悼んで、一人泣いても・・・許されるのでしょうか・・・?」グスッ ウルウルウル・・・


メイド「少なくともここに、姫様の国の人間はおりませんし、泣いたことが洩れることもありません」

メイド「・・・誰も覗き見ることが叶わないのなら、それは心の中の出来事と同じ事だと私は思います」スッ・・・ナデナデ

姫「っう・・・!」ポロ・・・ポロポロ・・・

姫「ぁあああああん!うわああん!!!!」ヒックヒック ボロボロ

メイド「・・・」ナデナデ


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


姫「」スゥスゥ

スッ・・・
魔王「・・・泣きつかれて眠ったか」

メイド「魔王様。・・・申し訳ありません、ただいま、姫をベッドに運びますゆえ」

魔王「よい。そのまましばらく寝かせてやれ」


メイド「・・・魔王様は、この娘を以前からご存知だったのですか?」

魔王「知らぬな。何故そう思う」

メイド「禁忌とは、偶発的に起こるものでは在りません。確実な材料と手法を持ってのみ行われるものです」

魔王「もっともだ。・・・だが、何故おまえが、そんなにも禁忌について知っている?」

メイド「? そういえば・・・。おそらく、昔に文献か何かを読んだのではないかと。貯蔵する本はあらかた読みましたので」

魔王「・・・まぁ、いい。 だが、本当に知らないな。ただ、俺も気になって調べてはいる。姫になる前の魂の所在などな」

メイド「姫になる前の魂・・・前世、とでもいうのでしょうね」

魔王「もはやろくな情報など残っていないだろうがな」

魔王「まぁ、魂に関しては俺以外に調べようが無い。お前の気にするところではないさ」

メイド「はい」

魔王「それにしても、随分長く、派手な独り言をいう姫だったな」ククッ

メイド「瘴気のせいではないにしても、この魔境の地に突然やられ、弱っていたのでしょう」


魔王「ほう? この姫のこと、嫌っているものとおもっていたが、それほどでもないのか?」

メイド「魔王様に、傷のひとつも・・などとのたまうので。本気ならば始末も考えましたが、杞憂のようです」


魔王「・・・自らこそが、姫という極悪の枷に縛られ、その責を押し付けられていることに気づいていないのかもしれんな」

メイド「人間の王族というのは愚かですね。自らの心すら正しく知ることもできない。これでは人格崩壊者と同じですよ」

魔王「そういってやるな。この者の国は民を大事にしている、人間では賢いほうだよ」

メイド「自身を犠牲にすることで民をいたわり続けるなど、理解できません」

魔王「手厳しいな。・・・それにまさか、自己犠牲の鏡のようなお前がそんなこと言うとはね」

メイド「・・・魔王様は、この姫の気持ちが理解できるのですか?」

魔王「俺が?まさか」



魔王「俺は、ただ絶対的な支配者であるだけだよ」ニヤリ


―――――――――――
2日目 
<魔王城 玉座>


バタバタバタバタ ドターン!
側近「ハァハァ・・・ま、魔王!」

魔王「うるさい。静かにしろ」

側近「これが静かにしてられるか!コレ見てみろ!」ズイッ

魔王「水晶球?なんだ、建設現場で事故でも起きたか?」

側近「現場で事故おきたってどうせ俺に一任するだけだろ魔王は!いいから見ろ!」

魔王「なんだというんだ・・・」ハァ


『ええい!姫はいまだ目覚めぬのか!?』
『回復魔法をかけ続けているおかげか、僅かに生命反応を感じられぬこともないのですが・・・』
『ええい!いったい魔王は何の呪いをかけたというのじゃ!』
『わかりません、しかしこういった類の呪いの場合、大抵は術者の死をもって回復することも多く・・・』
『なんと!ぐぬぬぬ、ええい!大至急兵を集めろ!あるだけすべて動員して、魔王城へ向かえ!』
『王様!まずは騎士団長と共に兵列を・・・!』
ギャーギャー

魔王(あ、これ駄目な奴だ)


側近「なぁ、王国に出した遣いはどうなってんだよ!?これ全然話通じてないんじゃねーのか!?」

メイド「側近様。僭越ながら、私からご説明申し上げます」

側近「あ、メイドちゃん。居たのか、すまん騒がしくして・・・あれ、姫さんも?」


姫「は、はい。メイドさんが私付きになってくださったのですが、普段は魔王にお仕えしていると聞きまして」

姫「私のせいでお仕事ができないというのは心ぐるしいので、私がメイドさんの側にいるかわり、メイドさんには普段どおりしてもらうようお願いしたのです・・・」


魔王「まぁ、一人で部屋で暇をしているより、ぼんやりと他者の働く様子を見ているほうが無駄な考え事もせんで済むだろうしな」

メイド「私は、魔王様のご指示に従うだけでございます」

魔王「ああ。姫の好きにさせよ」


姫「なんだか逆にわがままをいってしまったような気が・・・」

メイド「やりたいようにやり、それができる。それが一番、目標や意義を持ちづらい生活ですのでご理解ください」

姫「え、ええ。無事に王国に帰るためですもの、がんばって自堕落に過ごしますわ」

魔王「王国に帰るためにがんばる、というのが既に目標になりそうだからやめておけ。何も考えるな」


姫「わっ私はいったいどうしたら・・・」オロオロ

メイド「どうもするなと言っています。困った方ですね」

魔王「・・・メイドを困らせるとはなかなかたいしたものだ」ククク


側近「」


魔王「・・・おい。側近が蝉のような目でこっちを見ているぞ」

姫「わ、すごい・・・です。見開かれた目で全方位を睨んでいるように見えて、焦点が定まっていません」ササッ

メイド「私の影に隠れないでください。アレは大丈夫です」


メイド「・・・失礼しました、側近様。王国へ出した遣いの件でしたね」

側近「ソーダヨ」

メイド「現在までに、魔王様が王国に出した遣いは0です」

側近「え?」

メイド「つまり、出していない、と申し上げました」シレッ


側近「な・・・なんで!? 出すって言ってなかった!? 大混乱だよ!?」

魔王「あまり気にしていなかったせいか、忘れていた。さすがに迂闊だったな」

側近「迂闊とかゆーレベルじゃないよ!?大失態の大ポカだよ?!魔王じゃなかったらリアルに首切ってたよ!?」

魔王「なら、魔王だから問題ないんだな」

側近「胸を張らないで!?」


側近「はぁ~~~~~・・・っていうかどーすんだよ・・・」

魔王「うむ・・・このままだと、派兵されてしまうな」ウウム

メイド「派兵されたらつぶせばいいだけのことでは?」

魔王「さすがに全軍だしてくるのを、全軍つぶすわけに行かないだろう。人間側の土地も環境も国も人も、荒れ果てるぞ」

メイド「一部をつぶせば、敗色が濃くなって撤退するのでは?」

姫「どうでしょうか。士気も異様に高いですし、私が呪われていて魔王を倒さないとならないなら、消耗戦くらいは仕掛けてくるかもしれません」

魔王「まず、一部だけつぶすとかそんな器用な真似を俺はしたことないぞ」

姫「え・・・」サァー


側近「で、どーすんだよ!?着々と軍も兵も集まってる!なにやら王様がスピーチして、それが号令になりそうだぜ!」

魔王「ふむ・・・こうしよう」

側近「おお!さすが魔王!なんかいい案があんのか?!」

魔王「ああ。お前に任せる。好きなようにしていいぞ、協力もしてやろう」

側近「ふざけんな」

魔王「ふざけてなど。・・・もともと、姫にやたらと同情的なのはお前で、姫をつれてきた原因もお前の望みだ。理不尽でもなかろう?」

側近「う・・・そ、それは」

魔王「気に入らんか?では、成功報酬をつけよう。面倒を起こさないよう取り計らえたら、ひとつ願いをかなえてやろう」

側近「え!?まじで!?」

魔王「成功報酬だがな。考えておくとよい」

側近「ひゃっほーい!なんにしよっかなー♪ サキュバスのハーレムとか? あ、だめ// そんなにしてたら俺もう死んじゃう~♪」シュタタタタタタ
バターン

姫「! あ、まってください!私も共に考えます!王国のためにも今は穏便な方法を・・・!!」ステテテテ 
バターン


シーン

メイド「あの姫、私の側にいるなどと言っておいて自ら走っていきましたね」

魔王「2日前の、あの気丈で可哀想なほどに強がっていた姫とは思えないな」

メイド「まだ僅かとはいえ、霊魂が抜け出ている影響ですか?」

魔王「それもあるだろうが・・・しかし、おそらく今の姿のほうが、本来の姫に近いのだろうな」

メイド「知ったものの顔も無く、体面を気にする必要が無いので、虚勢を張る必要がなくなったと?」

魔王「・・・まぁ、もっと単純で、本質的なことだとは思うがね」ククク

メイド「・・・もしやただ慣れてきただけ、などとはおっしゃいませんよね」

魔王「2日で魔王に慣れられてはたまらないな」


メイド「・・・申し訳ありません、私では魔王様に考えが及びません」ペコリ

魔王「正直なことだ。・・・しかし、素直なのはいいが、俺のメイドとしては考えを諦めるのが早すぎるな」パチン

メイド「! もうしわk・・・・、っ!?」


魔王「これは、仕置きだ」
モワモワ…モワモワ・・・

メイド「煙・・・の、玉?」

モワモワ モワ・・・
メイド「ッ顔に・・・これ、は。瘴、気・・・?」

魔王「そう。極めて高純度のね。大丈夫、大した量じゃない。・・・苦しいか?」

メイド「ふ、っく、あ、息、が・・・」

魔王「純度の高い瘴気っていうのは、言ってみればそのまま俺の魔力、いや、俺自身みたいなものだ」

魔王「そうやって、塊の状態で顔にまとわりついてはたまらないだろうね」ククク

メイド「ヒュッ・・・ハッ、ヒ、ひ・・・は、ぁ・・・!」

魔王「落ち着けよ。魔物の身だろう、息は出来るはずだが?」

メイド「!? っ、スー・・・ハー・・・」

魔王「そう・・・いい子だ。ゆっくり、ゆっくり吸い込んで・・・」

メイド「スー・・・ぅ、う・・・・ああああっ!?」


魔王「ああ、言い忘れた」クク

魔王「確かに息は出来るが・・・まぁ、それを体内に取り込んだらどうなると思う?」

メイド「ううう!? あぁ!っああああ!?!?」

魔王「残念だったな。苦しいのは空気が取り込めないからじゃなく・・・瘴気を『取り込まないため』の自己防衛だったんだ」

魔王「大丈夫、お前を殺したりはしないさ。痛い?壊れるか?怖いか?」

魔王「まぁせっかくの仕置きだ、もう少し・・・耐えてみろ」ニヤ

・・・・・・・
・・・・
・・

メイド「・・・っあぁ、はぁっ、うあ、ん、んあっ・・・」モジッ

魔王「ほう、もう瘴気が体中に馴染んできたか・・・全身を貪られる様な苦痛に抵抗していないのか、流石だな」


魔王「・・・どうだ、気分は?」

メイド「んっ、あぁっ、ふぁ・・・ぁ、ま、ぉぅさ・・・まぁ」

魔王「ははははは。先程とは別の意味で、たまらないだろう。神経の先まで俺に支配されているようなものだ」

メイド「んぁっ、あああっ! ふぁぁっ!ぁんっ!」

魔王「気持ちいいか?健気に仕置きを受け入れた褒美だ、しばらくそのままにしておいてやろう」ナデナデ

メイド「ぁぁっ、ぃやぁっ、んっ!あぁんっ!まぉ、ぅふぁあっ・・・っくぅ」


魔王「ああ。先程の問答、正解を教え忘れていたな。答えはこういうことだよ」ナデ

メイド「ッ、んんんんっ!」

魔王「あの姫は、人間から一転し、魔物の身となり、俺のそばで漏れ出る瘴気を浴びている・・・」

魔王「お前はもう、長く居すぎて忘れていたのかもしれないが」ツツツ



魔王「俺に支配されるというのは、なによりも気持ちよく、全てを忘れたくなるものだろう? ・・・本性が、暴かれるだろう?」ニヤリ

メイド「っぁああああぁんんっ・・!!!!」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


<魔王城 玉座の間 外>

ハハハハハ!
ァアアアアアンッ!アアン!


側近「対応策を練って戻ってきたものの、中に入りづらい件」ガックリ

姫「・・・//」


側近「ああもう!猿か!猿なのか!?玉座で何してやがる!時間が無いっていうから急いで案まとめたのに!」

姫「あ、あの//」

側近「なんだ!?うらやましくなんかないぞコンチクショウ!!!」

姫「えっ、うらやま・・・あっ、ちが// そうじゃないです!//」


側近「え?あ、悪い、なんかちょっと壁殴りたい気分でつい怒鳴っちゃった、なんか言った?」

姫「と、とりあえず、扉は開けずに、声をかけるなどしてこちらの存在をアピールしてみましょう//」

側近「正直、バターンと開け放っていますぐメイドちゃんの痴態が見てみたかった」

姫「そんなのだめです!そ、それにその、魔王のほうのも、ありますし…ゴニョゴニョ//」

側近「う、確かにそれは…よし、とりあえず声をかけようか・・・」


姫「・・・あの、側近様は」

側近「ん?」

姫「・・・側近様には、そういった方は…いらっしゃらないのですか?」

側近「ん、あー…まぁ、恋人(にする予定だった素体は一応実現して)いるよ(今は姫ちゃんのカラダだけどね)」

姫「そ、そうでしたか…コホン、ではなおさら、ほかの女性のそういった姿は見せられませんね。声をかけますよ?」

側近「ん、よし じゃぁ・・・


バターーーーーーーーン!!

姫「」ビックリ
側近「」ビックリ


魔王「お前たち、扉の前でうるさいぞ。案が出たなら早く入って来い。遊んでる暇無いだろう」

メイド「」クッタリ


姫・側近「「(お・・・おまえが言うなぁぁぁぁーっ!!!!!)」」


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・

魔王「…で。どんな案なんだ?」フゥ

側近「・・・ちなみにメイドちゃんは?」

魔王「ああ、あれか。躾けるために瘴気を浴びせていたら、気を失ったんだ」

側近「なんだ…俺、てっきり魔王が耐えかねていきなりサカっちゃったのかと思ったよ…」

魔王「この俺が、耐えかねて玉座の間で行為に及ぶほど餓えることなどあるものか」

側近「あーそーですかー!そーですねー!いいですねー!好きなだけイッちまえ!ああ、逝ってしまえ!!」


姫「あ、あの。私、メイドさんを部屋に運んでもよいでしょうか…なにかその、乱れたような所も、ありますし//」

魔王「ん、そうだな。頼むとしよう。姫も馬鹿の相手で疲れたろう。そのまま部屋に戻っているといい」

側近「こんちくしょう!側近なのに扱いひどくね!?」

姫「そ、それでは。失礼いたしますわ//」ダキッ、ソソクサ
パタタタタ ギィ、バタン


魔王「…さて。静かになったところで、案とやらを聞かせてもらおうか」

側近「ああ。声明を出す。魔王が直接説明という体でいこうと思う」

魔王「なんだ、ただの正攻法じゃないか。成功報酬はだせないぞ」

側近「まぁ聞け。あくまで、その体だ、実際は違う。不可能があったらすぐ言ってくれ」

魔王「ほう?」


側近「まず、声明を出すのは俺だ。変身呪文で魔王に化けさせることは出来るか?」

魔王「能力などは無理だが、容姿のみでいえば可能だな」

側近「じゃぁ、たとえば王国の上空とかに投影呪文を放って、俺の姿を映すことは?」

魔王「ある程度おおきさのある雲でも、都合よくあれば可能。固形でなくてもいいが、投影するには物体が必要だ」

側近「じゃぁ、王国の城壁でもいい。とにかく、不特定多数の人間の目に付く場所に頼む」

魔王「それなら造作も無い」

側近「じゃぁ、十中八九この作戦はうまくいくかな。じゃぁ、さっそく…」


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<王国 王庭広場>

ザワザワ… キャハハハハ ラッシャーイ!

「ん?おい。なんか薄暗くならないか?」
「そういやぁ…雨でもふんのかね」
「お、おいおい…どんどん暗くなるぞ…昼だってぇのに…どうなってんだこりゃ」
「お、おい。城壁のほう見てみろ、何かぼんやり光って見えるぞ…」
「なんだこりゃ…夜中みたいに…お、おいおい。うそだろ?ありゃぁ…」

「城壁に・・・」「魔王が・・・」
「た、大変だ。おい!城の中に早く伝えろ!誰でもいいから呼べ!」
「な、なんだってんだいったい・・・なにが・・・」
ギャー ワー キャー


ボワーー…

魔王(側近)『王国の人間よ・・・我は 魔王である』

魔王(側近)『先日は、突然のことに驚いただろう』

魔王(側近)『姫の意識は、無事に戻ったかね?ハハ、ハハハハハ!』


兵1「王様、こちらです!あの正面の城壁に、魔王の姿が映されています!」

兵2「まもなく、騎士団長様が城壁前の配置につきます!」

王様「くぅ、魔王め! どこまで人をおちょくるつもりだ!!」

大臣「危険です、王様。どのような罠があるかわかりません!お下がりください!」


魔王(側近)『ふふふ・・・そちらでは、大事な大事な姫君様が突然倒れて、泡を吹いているのではないかと思ってね』

魔王(側近)『その様子を思うとあまりに惨めなので、少し教えてやろうと思ったのだよ。なに、ただの気まぐれの哀れみさ』

魔王(側近)『なにしろお前たちの国で、最も我を敵視し、最も強い討伐の意志をもってるのが、小娘の姫なのだからな、ハハハハハ!』


騎士団長「なんだと!?魔王!貴様、適当なことを言うな!!我ら騎士団、先陣を切り討伐するもの!いくら姫とはいえ、その気持ちで負けるものか!」

王様「そうだ!魔王はわが王国、わが最大の宿敵。その立場を譲るつもりはない!なんのつもりだ魔王!!」

大臣「お、王様!」


魔王(側近)『ハハハハハ! 威勢がいいな!吼えていろ! しかし事実だ!』


騎士団長「!?」

王様「なにを!」



魔王(側近)『あの日は、多くの兵や術師、優秀な剣士などを集め、我に対抗するための鋭意を養おうとしていたのだろう?』

魔王(側近)『その時ふと、古い昔話を思い出してね・・・そう、勇者の伝説さ』

魔王(側近)『強い意志、能力、そして神の加護…そんなものはないにしても、その素質くらい持ったものがいてもおかしくないだろう』

魔王(側近)『そしてもし、そいつがその才能を開花させることもなく、我に敗れたら?ふふ、これは傑作になるだろう』

魔王(側近)『勇者などなくとも、最も我に近い者が容易に討たれれば、お前たちは脆く崩れるだろう』

魔王(側近)『我にとっては暇つぶしのつもりだったのだがね・・・あとはわかるだろう?』

魔王(側近)『お前たちが集まっている中で、最も我に対し強く敵意を向けるものを連れ去るよう魔法を仕向けた・・・ククク』

魔王(側近)『まさかそれが、勇者どころか、騎士団長でも王様でもなく、姫君だったとは・・・我もさすがに意外だったよ』




騎士団長「そ、そんな・・・まさか、姫様はそれで・・・俺が、正に至らなかったがために・・・!?」

国王「ああ。姫、姫や・・・そんなにもこの国の事を・・・!」


魔王(側近)『ハハハハハハハハ! おまえらよりもよっぽど、あの姫君は強いな、比べる価値も無いほどだ』


騎士団長「!?き、貴様・・・!!」シャキン!

王様「・・・! 姫!姫は!姫はどうなる、いったいどうなっているんだ!!」


魔王(側近)『ふふ、その様子では、まだ姫君は目を覚ましていないようだな』

魔王(側近)『姫君は我に捕まる瞬間、おそらく、我の魔法の気配そのものを嫌悪し、拒絶した』

魔王(側近)『そのせいで、霊魂は掴んだものの、意識を閉ざしてしまった肉体を持ち去ることは叶わなかった』

魔王(側近)『霊魂では、意思の疎通をすることは出来ても、実際の接触は難しい…甚振ることも、嬲ることも。ふふ』


騎士団長「貴様!姫様に無礼なことをしたらただでは済まさんぞ!」


魔王(側近)『姫にも敵わぬ男が、なにをいきがる。が、心配には及ばん…姫君は、我のもとより逃げ出したからね』


国王「なんと、姫・・・!」


魔王(側近)『あまりにも興ざめな結果に、打ち捨てておいたのだ。まぁ今は、肉体も持たぬ希薄な存在で、無事に戻ってくるのか見物だよ』


国王「あああああ!なんという労しいことじゃ!!」

騎士団長「国王様、お気を確かに!…魔王!そのような情報で我々をかく乱するつもりか!どうせ偽りだろう!」


魔王(側近)『ふふ、姫君の霊魂が戻ってくれば、徐々に肉体も動き出し元に戻るだろう…ははは、無事に瘴気の森を抜けられればね!』

魔王(側近)『もし、姫君が無事に帰るようなことがあれば伝えてくれたまえ』

魔王(側近)『それで我を出し抜いたつもりか、次は確実に、お前の肉体ごと貰い受ける…覚悟をしておけ、とな!』

魔王(側近)『ハハハハハ!! フハハハハハハハハハ・・・・・・



国王「…きえ、た…」

騎士団長「・・・姫・・・どうか、ご無事で・・・ご無事で居てください・・・」

国王「あああああ 姫、姫ええええええええ!!!!」


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<魔王城 執務室>


魔王(側近)「・・・ふぅ。どうよ!俺様の完璧な魔王演技!」ドヤァ

魔王「7/100点。まずなんだ?一人称が『我』って…。あと、語調が全然統一されてない」

魔王「ついでに俺の姿形のときに、シマらない表情するのもやめろ。もう二度と俺には変身させない」ボワンッ

側近「あ、もどっちゃった…せっかくなら魔王のカッコでメイドちゃんのとこに行きたかった…」

魔王「行った所でなんの相手もされないよ、あいつは俺の僅かな不調ですら察するからな」

側近「メイドちゃんすげーな…魔王に不調があるとか、俺初めて知ったよ…」

魔王「俺をなんだと思ってるんだ」

側近「え 魔王ってそういうもんだとおもってたから」

魔王「・・・(あながち、間違ってはいないんだがな)」


側近「でも、王国への話自体は悪くなかっただろ?」

魔王「ああ、まぁ勇者のくだりは若干無理があった気もするがな。あんなもの実在するなど聞いたことが無い」

側近「そっかなー、いいと思ったんだけどな」

魔王「だが、姫が逃げた、戻ったら所を奪いに行く、という流れは悪くない」

魔王「姫の肉体を確実に安全に保存するだろうし、意識が中途半端にしか戻らない状態でも、その後も、とりあえず表舞台からはすっかり隠してしまうだろうから、こちらも「手が出せない」という体でしばらくゆっくりできるだろう」

側近「だろ!?だろ、なかなかいいだろ!?」


魔王「ふむ…成功報酬か。いいだろう、もう決まっているのか?」

側近「んーにゃ!まだ決めてない!なんでもいいんだろ!?いいんだよな!?」

魔王「少なくとも、どんなことだろうと言うだけは自由だな」

側近「な、なんでもひとつ叶えてくれるっていったじゃん!!ずるくねぇ!?」

魔王「冗談だ。だが節度は考えてくれ。そうだな・・・」


魔王「『人間の王国を滅ぼして、俺に頂戴』…くらいなら、叶えてやるぞ」ニヤリ


側近「でも、王国への話自体は悪くなかっただろ?」

魔王「ああ、まぁ勇者のくだりは若干無理があった気もするがな。あんなもの実在するなど聞いたことが無い」

側近「そっかなー、いいと思ったんだけどな」

魔王「だが、姫が逃げた、戻ったら所を奪いに行く、という流れは悪くない」

魔王「姫の肉体を確実に安全に保存するだろうし、意識が中途半端にしか戻らない状態でも、その後も、とりあえず表舞台からはすっかり隠してしまうだろうから、こちらも「手が出せない」という体でしばらくゆっくりできるだろう」

側近「だろ!?だろ、なかなかいいだろ!?」


魔王「ふむ…成功報酬か。いいだろう、もう決まっているのか?」

側近「んーにゃ!まだ決めてない!なんでもいいんだろ!?いいんだよな!?」

魔王「少なくとも、どんなことだろうと言うだけは自由だな」

側近「な、なんでもひとつ叶えてくれるっていったじゃん!!ずるくねぇ!?」

魔王「冗談だ。だが節度は考えてくれ。そうだな・・・」


魔王「『人間の王国を滅ぼして、俺に頂戴』…くらいなら、叶えてやるぞ」ニヤリ


―――――――――――

3日目 
<魔王城、黒百合の庭園>

側近「んでさー。普段は割りと、気さくなところもあるかなって思うんだけど、やっぱりなんかここって時は価値観がズレるんだよね」

姫「価値観、ですか?」

側近「そ。あー、やっぱり魔王なんだなって思い知らされるよ。そういう時はこう、ゾクって悪寒はしるわけ」

姫「や、やはり、魔王というのは・・・恐ろしいものなのですね」

側近「まぁ、側近の俺が言うのもへんだけど、やっぱ魔王だからなー」

姫「それにしても、昨日、私が部屋に戻った後に そんなことがあったとは・・・」

側近「面倒がいやだからって褒賞までつけたくせに、その全てを覆すような褒賞の提案するとはね。さすがに俺も血の気引いたわ」

姫「あ、いえ。その、そうではなく…私は王国に戻ったら、もう魔王討伐に関してはもちろん、これまでのように表に立つこともなくなるのだなと思いまして…」

側近「あ・・・そうだよな。ごめん、なんかこっちの事情で、姫ちゃんの行動を制約することになって・・・」


姫「・・・謝らないでください、側近様。この作戦は、最初から聞いていました」

側近「うん・・・。でも、本当に勝手だけど、姫ちゃんの為にはこっちのがよかったんじゃないかなって思うんだ、俺・・・」

姫「私のため、ですか?」

側近「あって4日で何言うんだって話だけどさ。姫ちゃんは…人間と魔物の戦争の、先端に立つような人じゃないと思うんだよね」

姫「・・・私では、役不足ですか?」

側近「そうじゃないよ。でも、今までの姫ちゃんはまるで戦女神のようじゃないか。本当はそれは君の姿ではないような気がする」

姫「側近様・・・」


側近「前に、なんかでちょっと言っちゃったかもしれないけどさ。実は俺も魔王も、戦争とかあんま興味ないんだよ」

姫「そ、そうなのですか? ですが、人間と魔物は話も伝わらないほどの大昔から確執を続けてきたと…」

側近「それって、あれだろ? 魔王と勇者の戦い」

姫「はい」

側近「実は俺もさ、そういうもんだと思ってたけど…勇者って、少なくとも今はいないじゃん」

姫「・・・そう、ですね。今ではその存在はおとぎ話の中のもの・・・」


側近「勇者がいれば、魔王と争ったかもしれないけど。勇者のいない人間世界なんて、魔王はなんとも思っていないよ」

姫「・・・それは、奢りなのでは」

側近「まぁ、そう思うのも無理ないよね。でも、魔王の力は本物だよ。神にも等しい、いやそれ以上かもしれない」

姫「さ、さすがに、それは」

側近「俺さ、・・・笑わないでくれよ? 実は魔物として生まれて、まだ7,8年くらいなんだよ」

姫「え」

側近「まぁ、魔王の創る魔物に年なんて関係ないからな。作り出された瞬間から老婆とかもいるし」

姫「それはちょっと、嫌ですね」フフ

側近「だから、こんなこと散々言っといてアレだけど、魔王の『本気』って見たこと無いんだよね」

姫「見たことがある方もいらっしゃるのですか?」

側近「メイドちゃんかな。あの子、見た目は子供みたいだけど、創られたのは200年近く前らしいから」

姫「200年!?」

側近「メイドちゃんの生まれた頃に、魔王のお母さん、前魔王の后が亡くなってるんだ」

側近「詳しくしらないけど、魔王も随分荒れてて。それを宥めたのがメイドちゃんらしいから」


姫「私の王国は、先々代国王が荒地と小国を繋ぎつくりあげたもので、120年前の建国です。魔王は、そんなに昔からいたのですね・・・」

側近「そうらしいね。つぶそうと思えば、人間が目障りなら、建国する前か力をつける前につぶしてるよ」

姫「自分たちなど、魔王から見れば赤子にすぎないとおっしゃりたいのですね…」

側近「はは、まぁ、今の姫ちゃんは マジで生まれて4日だけどな!なんつって!?」ハハハー


姫「・・・」

側近「なんか、ごめん」ショボン


姫「・・・魔王は」

側近「?」


姫「魔王は、いったい何のために、魔王をしているのでしょうね…」

側近「姫ちゃん・・・」


―――――――――――
4日目

<黒百合の庭園>


魔王「姫の、様子はどうだ」

メイド「はい。少し、動きづらさを感じることがあると言っていました」

魔王「もう?」

メイド「もともとが活発な方ですから、はしゃぐと疲れるという程度だと思います」

魔王「姫としての立ち居振る舞いというのを教わらなかったのか。呆れたものだ」

メイド「側近が面倒を見ていますよ。傍から見ているとまるで兄弟のようにじゃれあっています」

魔王「ふん・・・まぁ、生きた霊魂なのは誤算だったが、もともとそのために呼び出したのだから、当然といえるかもしれん」

メイド「よろしいのですか」

魔王「なにがだ?」


メイド「側近は、魔王様のお気に入りのひとつでしょう。・・・姫の霊魂は王国に還り、あの身は滅びます。・・・あまり親しくすると、それを失ったときの反動は大きいものですから・・・」

魔王「・・・あいつもわかっていることだ。そんなことで自滅するようならばそれまでのこと」

メイド「魔王様」


魔王「・・・はぁ。わかっている。だが仕方の無いことだろう。お前は俺に何を望む」

メイド「私の望むことはただひとつ。魔王様の心の安寧だけでございます」

魔王「・・・・・ああ。そうだったな」

メイド「・・・・・」


オーイ!

魔王「ん?」

メイド「側近様ですね。どうやら姫様もご一緒のようです」

魔王「うるさいのが来たな。部屋に戻るとしよう」

メイド「かしこまりました」
クルッ スタスタ…


側近「ぅおーい! 聞こえてんだろ!? 何帰ろうとしてんだよ!!」

姫「い、いまのは悪意があるとしか思えないタイミングでした」

魔王「・・・ハァ」

メイド「側近様、何か魔王様に御用向きが?」


側近「あ、いや そういえば特に無いな」

姫「黒百合の庭園でお茶してお散歩している途中、お見かけしたものですから・・・」


魔王「何の用もなく呼び止めるな」

側近「すまんすまん。 魔王たちは何していたんだ?」

メイド「こちらも、日々の伝達事項などをお伝えしながら休養をとっておりました」

姫「あ、私たちとおんなじですね♪」

魔王「・・・ああ、姫。どうやら動きに不自然な点があるらしいな?」

姫「あ、でも大丈夫です。少し疲れやすいような気がするくらいで、後は何も」

魔王「そうか。どうやら順調に霊魂は肉体に戻っているようだな、よかったではないか」

姫「あ・・・」


メイド「・・・・・」

メイド「さて。魔王様は、城内に戻るところです。共に行かれますか?」


側近「あ、いや、俺たちはまだいいかな。城内を案内しているんだ、2週間とはいえ、ここで過ごすんだし」

姫「・・・」

魔王「・・・あまり、はしゃぎすぎるなよ」

側近「わかってるって! さ、姫ちゃんいこう」

姫「あ、・・・はい。・・・失礼します」ペコリ
スタタタタ… トテテテ…



メイド「・・・魔王様は、お情け深いですね。危機感をあたえてやるなんて」

魔王「つまらぬ邪推はするな」

メイド「大変失礼いたしました。・・・それでは、参りましょう」

魔王「ああ」

魔王(・・・・・・)


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・

トントン… トントントン
メイド「はい。どなたでしょうか」

姫「あの・・・私です、姫です。少しよろしいでしょうか…?」

メイド「どうぞ。申し訳ないですが、ご自分で入ってきて頂けますか?今、手がふさがっておりまして」

姫「あ、では 失礼します・・・」カチャリ


メイド「どうぞ、奥にチェアがありますので、そちらに」

姫「あの、お忙しかったでしょうか。私、出直しましょうか?」

メイド「かまいませんよ。たいしたことはしていませんから」

姫「・・・その手元に光るものは、何かの魔法ですか?」

メイド「針を作っています。金属の形を変える魔法ですね」

姫「すごい・・・そんな魔法があるんですか?」

メイド「メイドですので、日常的な補佐に使える魔法は全て習得しています」


姫「全てって、そんな。そんなこと…え?うそ?まさかありえるんですか?」

メイド「何故ありえないと思うのです」

姫「日常的なこと全て、魔術で行使できるなんて『出来ないことは無い』ようなものですよ!」

メイド「いえ、そこまで奢るつもりはありません。私にも出来ないことはありますよ」

姫「ですよね?ありえないですよね? お、驚いてしまいました…」

メイド「はい。ですが一般的で日常的なことでしたら、出来ないことなどありません」

姫「・・・・・・・」クラッ


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


姫「…ん。あれ、私…?」ゴシゴシ

メイド「気がつきましたか」


姫「あ、す、すみませんでした!なぜか急に眩暈がして…」

メイド「いえ、私に配慮が足りませんでした。申し訳ありません」

姫「そ、そんな!メイドさんが謝る必要なんてないじゃないですか!私が勝手に興奮して・・・」

メイド「霊魂が抜け出ること4日目、過度なストレスや興奮が負担になるのを知りながら、姫様を驚かせました」

姫「あ…そうか、それで私、倒れてしまったのですね・・・」

メイド「申し訳ありません」

姫「ううん、私も驚きすぎました。魔王城のことって、何か1から100まで規格外で…理解の範疇をこえています」

メイド「何か、ほかにも驚かれることがあったのですか?」

姫「え、そうですね・・・。あ、たとえば メイドさんがかれこれ200歳だっていう話とか?」

メイド「正確には210.0年ですね」

姫「ふふ、なんですか? .0って。聞いたこと無いのですけど、それもこの魔の国では常識なのですか?」

メイド「いえ。正確に答えたまでです。今月、私が生まれてちょうど210年でしたので。半年後には210.5年となりますね」


姫「え!それって、今月がメイドさんののお誕生月ってことですか?」

メイド「こちらではそのように言うことはありませんが、概ね間違いではないかと思います」

姫「え?魔物たちは、お誕生日を祝ったりしないのですか?」

メイド「皆、魔王様に役目を頂いて創られた者たちですから。誕生を祝う、という感覚は無いですね」

姫「あ…そうでしたね。私の今のこの身体も、そうして創られたとか…」

メイド「はい。在位中の魔王のみが行使できる御業、創生術です」


メイド「…手法を問わないのであれば、魔王様こそが唯一「出来ない事を持たぬ御方」なのかもしれませんね」


姫「メイドさんは・・・魔王に、絶大な信頼を置かれているのですね」

メイド「それは違いますよ」

姫「?」


メイド「信じているわけでも、頼っているわけでもありません。何も出来ないので、ただ仕えているのです」

メイド「・・・もし私の命を差し出すことで喜んでいただけるなら、思い残すこともなく消えられます」

姫「そ、そんな・・・?!そんなことで魔王が喜ぶのですか!?」

メイド「いいえ。ですから、仕えています。・・・魔王様の為になるよう、生まれてきた命ですから」

姫「あ・・・創生、術・・・。それが、あなたの存在意義だと・・・?」

メイド「はい。正しく、すべては魔王様の為に、と」


姫「・・・(魔王は・・・あの方は、すべての臣下を、慕ってくれる仲間を、命を投げ捨てるほど献身的な女性ですらも・・・自らが命じて創りだしているのですね・・・)」


姫「あ…そうだ。その魔王のことで、今日はお部屋を訪ねたのでした…」

メイド「魔王様の事、ですか?」

姫「あ、はい。その…側近様が、魔王についてはメイドさんがよく知っていると…」

メイド「・・・それは、敵情視察の為でしょうか?」


姫「!? 違います! あ、でも、そうですよね…王国の人間が、立ち入るべきことじゃないですよね」

姫「申し訳ありません。私の軽率な行動で、不快な想いをさせ、さらにご迷惑をお掛けしてしまいました」

姫「これまでに見聞きした事、その全てを口外しないと誓います。お許しくださいませ」フカブカ

メイド「・・・・・」

姫「・・・・・」

メイド「何故ですか?」

姫「・・・え?」

メイド「元もと、全てこちらの原因であなたを巻き込んだのです。怨み罵りこそすれ、義理だてる必要など無いでしょう」

姫「・・・そ、そう、言われると・・・」

メイド「それとも、まさか本当に・・・」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔王「俺に支配されるというのは、
      なによりも気持ちよく、
        …全てを忘れたくなるものだろう?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

メイド「~ッ!?」ゾクリッ


姫「め、メイドさん? どうかしましたか?」

メイド「っ。なんでもありません…少し、魔力を使いすぎたようですね」

姫「体調がすぐれないのでしたら、介抱いたしますわ。お休みになってください」

メイド「いえ、それには及びません」


姫「…私が倒れている間、ずっと魔法でお仕事を?」

メイド「ええ。もう終わっていますので大丈夫です…ああ、でも、いらしていただいてちょうどよかったです」テクテク

姫「?」

メイド「こちらをどうぞ。先程仕上がったばかりの、姫様のご衣装です」ファサ


姫「黒い、ドレス?…まさか、私の為にずっとこれを作っていたのですか?」

メイド「はい。デザインを変えて6着ほど作りました。お部屋に運んであるものと合わせ14着丁度ですね」

姫「な、なんで。私はただの2週間ほどで居なくなる、ただの厄介者ですよ!?」

メイド「魔王様より、至らぬことの無い世話を申し付けられましたので」


姫「そんな、こんなに立派なご衣装、日替わりでご用意いただくほどのことは何もありません!」

メイド「ご迷惑でしたか。でしたら処分いたします。出過ぎた事を致しました」

姫「そうじゃありません!処分などさせません!~~~~っ!!」


メイド「受け取っていただけるなら、何よりです」

姫「あなたは、あなたたちは…本当に…」

メイド「・・・?」


姫「あの・・・この衣装たちを、私の宝物にさせていただいても構いませんか?」

メイド「宝物、ですか?私なりに意匠は凝らしたつもりではいますが、ただそれだけの品ですよ」

姫「いえ、私の中では既にもう、どのような宝石よりも価値のある宝物です」

メイド「そうですか。では、姫様のご随意に」

姫「…ありがとうございます。…本当に、ありがとうございます…ッ」ポロリポロリ

メイド「・・・」ナデ

姫「っ、すみません、急に泣き出したりして・・・」

メイド「・・・」ナデ、ナデ


姫「・・・4日前、突然魔王城に来て…一度は全てを諦め、死を覚悟いたしました…」

姫「でも、1分1秒たつほどに、私の中の全てが崩れ落ちて行くような気がしていました」

メイド「それは、霊魂が抜け出て…

姫「いいえ、そうではありません。私の中に在った、魔王や魔物への価値観。人生観。崩れたのはそういうものです」

姫「全てが理解の範疇をこえていたのではないのです。私がただ、何も知らなかっただけなのです」



姫「確かに、いまだ魔王への恐怖は感じています、それは確かです。臆病な私も健在でしょう」

姫「でも、側近様やメイドさんと共にいるうちに、私は人生で味わったことの無い安心感を得るようになりました」

姫「いままで、散々に打倒魔王、魔物討伐を唱っていながら、なんて都合のよいことをと呆れられてしまうでしょう」

姫「でも側近様の優しさや、メイドさんの気遣いに触れているのが、とても幸せに思うのです」

姫「王国の姫ではなく、年相応の娘として、一個人として、とても満たされていくのを実感するのです」


メイド「・・・・」


姫「呆れてしまいますよね、…私はあと10日と居られないことがとても悲しいのです」

姫「もう、生きて貴方たちの側に寄ることは叶わないと思うと、暗闇に閉じこめられたようにも感じる」


メイド「・・・それは、間違いです。姫様には姫様の居場所があり、必要としている者も、大切に思う者も貴方を待っているのです」

姫「私は…私はまた、このように想うことで、大切な人を裏切っているのでしょう…それもわかっているのです…」

姫「あるべき場所へ、帰るべきであると。でも、だからこそ…この衣装を宝物にさせていただきたいのです…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
誰も覗き見ることが叶わないのなら、
それは心の中の出来事と同じ事だと私は思います
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


姫「ここで過ごす時間を、記憶とぬくもりの全てを、この衣装に閉じ込めて、一人そっと身に纏っていたいのです…私だけが覗き見ることのできる、心の中の出来事の、覗き穴にしたいのです…」ポロポロポロ

メイド「姫様・・・」

姫「許して…許してくださいませ…私の心の弱さを、一人立つこともできぬ愚かさを…貴方たちの記憶を、持ち帰ることを許してください…」ポロポロポロポロ


―――――――――――

5日目 
<魔王城 玉座>

側近「っ、か、かわいい・・・!!!」

姫「か、からかわないでください//」

メイド「私が、姫様の肢体に合わせておつくりしたものです、似合わないはずはありません」

姫「メイドさんまで// あまり見られるとその、恥ずかしくて居心地が・・・//」


魔王「・・・おまえら、ここで何をしている?」


側近「姫ちゃん鑑賞会!!」

メイド「それは側近様だけでしょう」


姫「あ、あの・・・魔王、様っ」

魔王「・・・いきなり敬称をつけるなど、どういう心変わりだ?」


姫「…こ、このドレス、昨夜メイドさんから頂きました!ま、魔王様より、配慮があったとのこと・・・、あ、有難うございます」

魔王「俺は過不足無く世話しろといっただけだ。礼など見当違いだ」

姫「そ、それでも、私はこれを嬉しく、ありがたく、大事に思っていますから!頂くきっかけを下さった、ま、魔王様にもお礼を言いたかったのです!」

魔王「ふん・・・。 ・・・ん?」


魔王「・・・ふふっ、そうか。気に入ったか・・」

姫「は、はい!ありがとうごz


魔王「それほど気に入ったのなら、俺によく見せてみろ」グイッ

姫「きゃっ!?」ギュンッ

側近「ちょ!」


ガシッ
魔王「・・・黒蝶の紬糸に、銀糸。葡萄酒の赤は、絹」シュルリッ

姫「ぇ、あっ、や、やめてください、リボンが・・・!」ギュー

魔王「黒纏のリボン?氷鳥の羽を混ぜてあるのか」モゾリ

姫「ひゃっ、あっ、ん、そ、そんなとこ見ちゃだめぇっ」バタバタ


魔王「…暴れるな」ジッ

姫「・・・っ!?」ビクッ


魔王「ふむ。中も、随分たっぷりとレースをいれているな、紫とはなかなか扇情的だ」ツツツ

姫「ゃぁッ…あ、足を・・・ん、な、撫でちゃ・・・あ、んっ!」

魔王「・・・何だ?」ズイ

姫「!? か、顔が、ちかすぎ・・・ッ、んっ!」

魔王「俺に、『礼をしたい』といったのはお前だろう?」チロリ

姫「ひゃっ、や、私はこんな、んっ」ゾクゾク


魔王「この、首もとを一周する刺繍はなかなかいいな。まるで首輪じゃないか、くく」サワッ

姫「ん、ぁ、っぅ」ゾクリ

魔王「さすが、メイドの仕事はいつも出来がいいな・・・触り心地もいい」スス・・・ス

姫「んっ、ぁ、だめ、だめ、だめぇぇっ!!!!」


側近「」ハッ

側近「ちょ!待て待て、魔王!ストップ!ストップだ!!!!」ツカツカツカ グイッ

姫「・・・ぁ」ギュゥッ


魔王「・・・おい、側近。魔王に捧げられた供物を奪うなんて、正気か?」ギロ

側近「供物じゃねぇ!」

魔王「・・・本人が、礼がしたいといったんじゃないか」ハァ

側近「礼を『言いたい』といったんだ!何を平然と、お、犯そうとしてやがる!」

魔王「犯す?俺が?捧げられるものを受け取るだけだよ・・・その証拠に、捧ぐほうは悦んでいるようだが?」

姫「」ポー

側近「~~~っ!!!」


側近「ま、魔王なんて、魔王なんて・・・・だいきらいだぁぁぁばかやろおおおおぁうわぁぁぁぁん!!!」
グイッ ダダダダダ バターン!! 


魔王「ちゃっかり、姫を連れて行くんだなアイツ・・・ん?」

メイド「・・・・」

魔王「(やばい忘れてた)」


メイド「・・・・」

魔王「・・・・」

メイド「・・・お飲み物でも、お持ちいたします」クルッ

魔王「ああ・・・」


魔王「・・・ん? ・・・いや。待て、メイド」

メイド「何かありますk」ボワン

シュワシュワシュワ・・・
メイド「・・・これは?」

魔王「変身呪文。服だけ変えるのは初めてだが、うまくいくもんだな」


メイド「先程の、姫様にご用意した衣装と同じものですね」

魔王「じっくり見せてもらったからな。まぁ細部まで、とはいかないかもしれないが」

メイド「・・・私を、姫様の身代わりにお抱きになるのですか?」

魔王「そう思っていたほうが、お前の為かもしれないね」

メイド「・・・何をおっしゃっているのかわかりかねます」


魔王「その物欲しそうな顔、たまらないね・・・羨ましいと、ああして嬲られたいと思ったのだろう?」

魔王「俺の大事な優秀作。嫉妬ではなく、まさか羨望だなんてね」グイッ

メイド「!!」ギュッ


魔王「抵抗して見せろ」

メイド「?」

魔王「・・・お前が最後まで抵抗していられなければ、俺はお前の前で、俺を傷つけてみせる」

メイド「?!」

魔王「ほら、早く逃げてみろ・・・ふ、ははは」グッ

メイド「や、やめてください、そんなことっ!んっぅうっ」チュパッ・・・


魔王「っハハハハハ。最高だな、こんな条件で、本気で葛藤しているのか?どれだけ欲しいんだ?」ペロペロ...ペロ

メイド「ぅ、ぁっ、・・・!ま、魔王様を傷つけるようなことっ、私は致しません!」グイッ

魔王「・・・本当に?これを見ても?」
モワモワモワモワ・・・


メイド「・・・ぁッ」ゾクゾクッ

魔王「フフ、瘴気を見せただけだ・・・、使ったりしないよ。何をそんなに怯えている?抗えそうにないか?」

メイド「ふ、あ・・・も、もう、やめてください、こんなこと・・・私はそんなこと・・・」ガクガク



魔王「一度でも味わったら忘れられないだろう・・・そろそろ、身体があの感覚を思い出してるのでは?」・・・クチュリ

メイド「ぁぁっ!」ビクッ



魔王「お前は、俺を傷つけないために 俺を拒み続けられるか・・・?」


―――――――――――

6日目
<側近の部屋>

姫「・・・んう・・・?」

側近「」スースー


姫「あ、れ? 側近様・・・? ここは?」モゾモゾ

姫(すごい部屋。本だらけ・・・というか、本しかない?)

姫(あ、違うか。私が寝ていたベッド・・・と、側近様が寝てらっしゃる・・・肘掛?)トテトテ

姫(あ。埋もれてるけど、これ、書斎机だ。すごいな。こんなにたくさんの本、見たことが無い)パラパラ

姫(むずかしい・・・読むのがやっとで、内容はまったくわかんない・・・)トンッ

ばさばさばさばさ
姫「あっ」

側近「ん・・・やべ、また崩れた・・・」バサッ


姫「すみません、私が崩してしまいました・・・肘が当たってしまって」


側近「あ、え? 姫ちゃん?」

姫「はい、あの・・・すみません。目を覚ましたらこのお部屋だったので」

側近「あ・・・そっか、昨日、魔王のバカヤローから奪還して、姫ちゃんそのまま意識を・・・」

姫「あ・・・そうだったんですね。助けていただいて、ありがとうございました」

側近「いや、あれはどう考えても魔王のほうが悪いよ。すぐにやめさせられなくてすまない」

姫「い、いえ// その、大事には、至りませんでしたし・・・//」

側近「あ// いや、うん// よ、よかった・・・のかな?」

姫「」カー
側近「」カー

側近「そ、それにしてもやっぱり言ったとおりだったな!魔王はココぞというとこでやっぱ魔王だなって!」

姫「そ、そうですね!私も睨まれてしまうと、もう恐怖で身じろぎもできませんでしたし!」

側近「やりたい放題されちゃうとこだったもんなー!」ハハハ

姫「た、たしかにあれじゃヤりたい放題、ですね」アハハ

側近「」カー
姫「」カー


側近「あー・・・なんか、その。ほんと、ごめん」

姫「いえ、もう、忘れてください・・・」


側近「それにしても姫ちゃん、よく寝てたな? もうほとんど丸一日ってかんじだぞ」

姫「え、そんなにですか? やっぱり、もう魂も半分近く無いですし、ストレスや緊張に耐え切れないんでしょうか」

側近「あー。そうかもな。魔王・・・は、嫌だから、メイドちゃんに相談しといたほうがいいかな」

姫「それでしたら、私が直接行きますね。何かドレスのお返しをしたいので」

側近「お返しって、メイドちゃんに? あの子、大抵のものは誰よりも上手く自分で作るぞ?」

姫「あー、そうでした・・・ですが何かして差し上げたいです・・・」

側近「うーん、メイドちゃんの好きなものって魔王以外に聞いたこと無いしなぁ・・・」

姫「・・・メイドさんは、魔王様のことお好きなんですか?」

側近「あんな奴に様付けしなくていーよ!」

姫「いえ、でも、メイドさんがそう呼んで慕っているなら、私が呼び捨てることはできません」


側近「・・・・あれ?」

姫「どうしました?」キョトン


側近「ん、なんか、違和感が・・・あ、そうか。しゃべり方だ」

姫「しゃべり方、ですか?」

側近「うん。姫ちゃん、ちょっと前までしょっちゅうドモってたじゃん?今は全然だね」

姫「あ、そういえば・・・それに、なんだかとても気が楽です」

側近「もしかして、今まで緊張してたの?」

姫「どうでしょう、でもそうかもしれません」

側近「昨日のアレで、なんか吹っ切れたか?あはは」

姫「たしかにアレは、衝撃的過ぎました・・・服以上に、姫としてのすべてを破り捨てられたような気分です」

側近「あはははは。あんな魔王がこんなとこで役に立つとはな」

姫「むぅ・・・少し、癪ですね。まぁ、事実おそろしい方ですが、あんなひどい方に、いままで散々気を使って怯えていたなんて」

側近「だろ?そうだ、そうなんだ!」


姫「あんなに強引で、不遜な振る舞いなんて、王としてちょっとどうかとおもいます!」

側近「そうだー!いってやれ!もっと言っちまえー!」

姫「魔王様のばかー!えっちー!へんたい鬼畜ハレンチどすけべ!チート!エセ紳士ー!!!なんて?」アハハハ

側近「まだまだ!むっつりー!ロリコーン!真性サディストー!これくらい!」ギャハハハ


ギィ・・・
魔王「おまえら。・・・言いたいことはそれだけか?」


・・・・・・・
・・・・・
・・・

魔王「で?」

側近「」セイザ
姫「」セイザ

魔王「午前中、二人して姿を見せなかったからな。昨日の今日で何かあったかと思い、様子を見に来てやった」

側近「スンマセンデシタ」
姫「ゴメンナサイ」

魔王「なに、俺は真性サディストらしいからな。そんな謝罪で満足するはずもあるまい?」

側近「」ドゲザー
姫「」ビクビク

魔王「・・・さて、『変態鬼畜』らしく仕置きしてやろうか」


側近「ま、まてまて!今回のは、なんていうか、本気じゃないというか、俺が焚きつけたというか」

姫「いえ!側近様は盛り上げて、私に魔王様の昨日の仕打ちを忘れさせてくれようとしただけで!言い出したのは私です!」


魔王「どのように慰めあおうと、二人で俺を侮辱していた事実は変わらない。そのような茶番で許されるとも?」ジロリ

側近「ぐっ」

姫「側近様・・・申し訳ありません、私が弱音を漏らしたために・・・」


トントン トントン
側近「・・・」チラ

魔王「今はまだここはお前の部屋だ。お前の客人だろう。対応を許す」フイ

側近「…何者だ!」

メイド「メイドです。側近様、先程から魔王様がお呼びです」

スタスタスタ・・・ガチャ
魔王「俺ならここに居る」

メイド「」キョトン

魔王「どうした、俺がお前より先に探し出したのが不服か?」

メイド「いえ、魔王様が直接お探しになるのに、私が速さで敵うわけもありません」

魔王「ふん」

メイド「ただ、見つけ出したにしては、ご不満のあるお顔つきでしたので、意外に思いました」


魔王「ああ・・・こいつらがな」

メイド「おや。姫様も、こちらにいらっしゃいましたか」

魔王「隠れて逢引でもしているようなら可愛いものを、二人で俺を侮辱していたので仕置きを考えていた」

メイド「魔王様を、侮辱?」チラリ

側近「」ショボン
姫「」ウルウル

魔王「ふふ、面白い。おいお前ら。先程の発言、もう一度言ってみろ。メイドの前で」


側近「(メイドちゃんは魔王命。言ったら魔王以上に殺される!)」

姫「(メイドさんの前で、メイドさんのお慕いする方を侮辱するなんて・・・でも逃げられない・・・!)」

魔王「早くしろ」イラ


側近「・・・はい。その、俺は魔王のことを『むっつり、ロリコン、真性サディスト』と呼びました・・・」ガクガク

姫「私は・・・魔王様を『ばか、えっち、へんたい、鬼畜、ハレンチ、どすけべチート、エセ紳士』と・・・」ウルウル


魔王「かつてこれだけの暴言を魔王に向けた奴はいないな、それも二度も。俺なら二度目は言わず、舌を噛むよ」

側近「!」
姫「!」

メイド「・・・・・」プルプル

側近「(やばい、怒りで震えてる!?)」

姫「(神様、どうぞこの愚かな私の魂を拾い上げてください・・・!)」


魔王「・・・?メイド?」


メイド「・・・っ。コホン、すみませんでした。あまりにもお二人の発言の一部が的確で・・・的確で・・・っくッ」クルリ

魔王「おい」

メイド「・・・申し訳ありません。一度、退場させて頂きたく」プルプル

魔王「いや、おまえ明らかに笑いを堪えてるだろう」

メイド「そんなことはありません。仮にそうだとしても、実際に笑うわけにはまいりません。お察しください」スタスタ バタン

魔王「・・・」
側近「」
姫「」


3分後

トントン ガチャリ
メイド「先程は失礼いたしました」フカブカ


魔王「失礼? ああいうのは、慇懃無礼というのだ」

メイド「申し訳ありません」


魔王「・・・で。なんだって?的確だと?」

メイド「はい。日は浅いのに、お二方ともなかなか魔王様を観察していると思います」

魔王「お前も、俺をそのように思っているのか?」

メイド「いいえ。『むっつり、ロリコン、バカ、鬼畜、エセ紳士』については否定します」

メイド「ですが、『真性サディスト、チート、ハレンチ、えっち、どすけべ』については肯定されてもよい範疇かと」

魔王「・・・」

メイド「実際、真性サディストとチートは的確すぎて衝撃でした」


魔王「・・・お前は、俺のことをどう思っているんだ?」

メイド「魔王様を私の言葉ごときで表現することはできません」

魔王「いいから、言ってみろ」

メイド「・・・では、彼らの発言を私なりに訂正する形で申し上げてよろしいでしょうか?」

魔王「許す」


メイド「まず、魔王様はムッツリではなくハッキリです。欲望を隠される事などありませんし、その必要もありません」

メイド「ロリコンというのは大分にして私の容姿が原因でしょうが、私の年齢を加味すると正しい表現ではありません」

メイド「馬鹿など以ての外、魔王様ほど賢い御方はありません。ちなみに今回一番の失言は間違いなくこれでしょう」

メイド「鬼畜も失言ですね。鬼畜生など、魔王様の足元にも及びません。魔王様は魔王です。ただ鬼一族の中にも優秀な方は居ますし、昨夜の魔王様の仕打ちは確かに手法だけを鑑みれば鬼と比較するくらいは許されるでしょう」

メイド「エセ紳士は言いえて妙というやつですね。魔王様の存在や態度は紳士とは180度かけはなれておりますが、それゆえまるで、紳士が言われるように、優雅で魅惑的、全てを委ねてしまいたいと感じさせるのでしょう」

メイド「真性サディストは・・・昨夜の魔王様の、私にしたことの全てであるように思います」

メイド「チートは、間違いないでしょう。魔王様は、生まれつき、魔王たる全ての能力を持ってお生まれと聞きます」

メイド「ハレンチ、えっち、どすけべ、へんたいは、語彙の程度があまりに低く遺憾ですが、魔王様は確かに扇情的で・・・いえ、存在そのものが強力な媚薬と言えるでしょうから、仕方の無いことかと」

メイド「強いて言うなら、魔王様の前に置かれた女のほうこそ全て、えっちでハレンチでどすけべなへんたいに成り果てるのでしょう」


魔王「・・・」

メイド「以上ですが、何か、言葉に足りないところがございましたか」


魔王「・・・・・・考えるべきことが出来た。部屋に戻る。二人の処分をお前に任す」

メイド「かしこまりました」

魔王「・・・今夜はお前も含め、誰も俺の部屋に近寄らせるな」シュッ

メイド「はい」


メイド「・・・さて」クルリ

側近「・・あ、え? なんかいろいろ信じられないことがおきたような・・・」ボーゼン

姫「私たち・・・・助かったんでしょうか・・・」オロオロ

メイド「それはどうでしょう。処分の裁量の判断が、魔王様から私に代わっただけですから」

側近「」ゴクリ


姫「・・・メイドさん。ごめんなさい。貴方の主君に暴言を吐いたのは確かです。どうか正しく、お裁きください」

メイド「・・・そうですか。わかりました」

側近「お、俺も、覚悟は決めたよ。姫ちゃんに情けないところ見せられねえしな。俺のも一気に言ってくれ」

メイド「では、姫様から処分を言い渡します」


メイド「馬鹿という発言に対し、間違いを認め謝罪すること。また魔王様の優秀さについて書面3枚にまとめ提出する事」

姫「・・・え?」

メイド「次に側近様ですが、ムッツリという発言に対し、間違いを認め謝罪」

メイド「・・・それから昨日、姫様を連れて退室なさる際、ばかやろう、大嫌いだ、などとの発言もありましたね。また姫様に対し、暴言の幇助もなさっているようですので、反省文と訂正文をそれぞれ書面3枚づつご提出ください」

シーン

側近「・・・え?いや、まじで?」

メイド「この処分に不服がありましたら、上申書を提出していただきたいと思います」

側近「いや、逆!打ち首とか。体罰的なのとかないの!?」

メイド「・・・側近様に真性マゾヒストの気があるとは知りませんでしたが、そういった理由で故意に魔王様に暴言をおっしゃったのでしたら、処分については今一度検討させていただきたく」

姫「」ビクッ

側近「違う!違うからね!?姫ちゃんまでなに信じそうになってんの!?流れ的にって意味だよ!?」


メイド「それでしたら、魔王様はそういった種の処分は考えておられなかったはずですので問題ありません」

姫「そ、そうなんですか?」

側近「いや、あれは怒って半死半生くらいするつもりだったんじゃ・・・」

メイド「怒っていた?魔王様が?何故?」

姫「何故って、私たちの暴言が・・・」


メイド「怒りませんよ。あなた方の発言程度で魔王様を怒らせたなど、奢りです」

側近「でも、メイドちゃんだって魔王の顔見てそう言ってたじゃん・・・」

メイド「私は『ご不満そう』と申し上げたのです。ですがそれは、隠れて二人で、魔王様を肴に楽しんでいたからでしょう」

メイド「第一、私に処分をお任せになったのです。私は側近様に武力行使で敵いませんので、それを任せるのは有り得ません」

メイド「ですが目にしてしまった以上、放置するわけにいきませんからね。私にはただ、面倒事の処理を依頼されたと考えられます。内容なんてどうでもよいと考えておられるはずです」


姫「あ・・。そうだとしても、あまりに軽い処罰だと、メイドさんが後で魔王様にお叱りを受けたりしませんか・・・?」

メイド「私が?」

側近「そ、そうだよ。俺らのことかばって、俺らの発言を肯定までしちゃったわけだし」

メイド「かばってなどいません。本心を言えと仰られたから申し上げたまでですし、私なりに過不足無い処罰を与えたつもりです」

メイド「その私に処罰が必要なら、魔王様が考えてくれておいでなのでしょうから、受け入れるだけです」

姫「そんな・・・そんなこと、私たちのせいでメイドさんに何かあったら、私、耐えられません」ウルウル


メイド「・・・そこまでおっしゃられるのでしたら、追加でひとつ、処罰を言い渡させてもらいましょう」

姫「はい!ぜひ、そうしてください!」

側近「そうだぜ!悪いことしてないメイドちゃんが傷つくかもしれないなんて、おかしいもんな!」


メイド「では、魔王様をご不満にさせた件で処罰を与えます」

メイド「その分を償えるよう、同等価値の愉悦を魔王様に差し出してください」

メイド「内容はお二方で考えてくださいませ」


姫「え?それだけ?以上ですか?」

メイド「簡単に仰いますが、かなり難しいと思います。実際に出来なくても充分に努力したなら良しとしましょう」

側近「・・・魔王を、喜ばせればいいってこと、だよな?」

メイド「はい。そのとおりです。出来ればですがね」


姫「魔王様の喜ぶこと・・・」

側近「うーん・・・そういや魔王って・・・何で喜ぶんだ・・・? やっぱ、女?」

姫「え、じゃ、じゃぁやはり私は結局・・・」

側近「あ、違!そうじゃない方向で考えよう!」

姫「側近様・・・私、私は・・・」ウルウルウル

側近「大丈夫!そんなことしないから!!」
ワーワー


メイド「・・・では、私はこれで。あまり時間をかけないでくださいね」
トテトテトテ・・・パタン


側近「よし。まぁ、とりあえず・・・魔王の喜ぶことを考えよう、カラダ以外で」

姫「そうですね・・・取り乱してしまいました。すみません」

側近「魔王の好きなもの・・・快楽?」

姫「ぜんぜん、離れてませんよ、側近様。それとも本気ですか・・・?」


側近「あああ。くっそ、メイドちゃんなら何か知ってるかもしれないけど、聞くわけに行かないし・・・」

姫「それが処罰ですから・・・仕方ないです」


姫「それにしてもメイドさんは本当に魔王様のことをよくわかってらっしゃるのですね」

側近「まぁ、ある意味あの二人は 以心伝心みたいなとこあるよなー」

姫「では、魔王様もメイドさんのことを?」

側近「んー、いや、どうかな・・・お気に入りに間違いは無いだろうけど」

側近「っていうか・・・魔王って誰かを好きになったりすんのかな」


姫「? 魔王だって、后を取るでしょう?」

側近「そりゃ、さすがに時期魔王まで創生術ってわけにいかないし」

側近「后を定めて、ちゃんと跡継ぎを生ませるはずだよ?」

姫「では、性質的に愛情を持たないなどということは無いでしょう」

側近「・・・ん?・・・あ、いやいや、ごめん、言い方が悪かった」

姫「?」

側近「『魔王』って立場の存在が恋愛するかって話じゃなくて、現魔王のアイツ個人が恋愛なんてできないだろう、って意味だよ」

姫「あー・・・女性に対して、一方的で高圧的ですし、女性から恋愛対象として見られない、と?」

側近「姫ちゃん、今一応俺たち処罰中だし、魔王ディスんのやめたほうがいいよ?」

姫「!い、いえ、けしてそのようなつもりはなく・・・!本当ですよ!?」ビクビク

側近「ぷは、おびえてる・・・あははは、さすがに監視なんてついてないよ」

姫「あっ// からかわないでください!それに先にそのようなことを匂わせたのは側近様じゃないですか、もう!」

側近「ごめんごめん、でもほんと、魔王の生態はぜんっぜんわかんないから、正直お手上げでさー」


姫「側近様にわからないことが、私に分かる訳無いじゃないですか・・・」ハァ

側近「いやいや、メイドちゃんとおんなじ、女だし。何かこう俺らにはわかんないようなことが・・・」

姫「無茶言わないでください。分かるのは、判断材料が足りないってことくらいですよ、ほんとうに」

側近「そっかー、そうだよな・・・? ・・・? あれ?」

姫「どうしました?」


側近「それだ。俺らに足りないのは判断材料!こんなとこで作戦会議してどーにかなるもんじゃないんだよ」

姫「まぁ・・・それはそうですが、ではどうなさるおつもりですか?」

側近「ふっふっふ・・・それは・・・!」


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<夜 厨房>

姫(で、まさかの諜報作戦だとは・・・)コソコソ

姫(私の担当はメイドさんをみて、魔王様の為に特別にすることなどが無いか探ること・・・)ピタリ

姫(でも、これってよく考えたら不可能すぎますよね)スタタ

姫(メイドさんのお仕事って1から10まで全部、魔王様の為にやってることですから・・・きっと、魔王様が喜ぶ特別な事だなんて、思いついた瞬間に実行するだろうし、常時取り入れてそうです)

姫(今は、魔王様の差し入れ用の・・・クッキー?でしょうか?やたらかわいいお菓子ですね、色も綺麗です)ジー


メイド「・・・♪」テキパキ


姫(それにしても、無表情なのに目だけはすごくご機嫌そうですね)ジー

姫(よく、顔で笑って目は怒ってるなんて人は聞きますけど・・・その逆もあるんですねぇ)メモメモ


メイド「…」ピタ


姫(あ、なんかすごい絶望した顔してる・・・なんかあったのかな?)ドキドキ


メイド「・・・」ハァ


姫(・・・? あのお菓子がどうかしたのかしら・・・それにしてもおいしそう、あとで一つくらい分けて貰えたり・・・)



メイド「焼却術」ゴォアッ

姫「!?!?」ビクッ


メイド「・・・やはり、高火力は苦手ですね。どうしても、少し消し炭が残ってしまう・・・清掃術」シュワワ

メイド「さて、やり直しです・・・♪」


姫(何!?今の何?!よくわかんないけどもう無理!見てるだけで怖すぎるよ!!!!)スタタタタタ!

メイド「・・・あら? 今のは、姫様・・・?」キョトン


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<同時刻、魔王の私室>

側近(ふふふ・・・完璧な作戦。俺が魔王を、姫ちゃんがメイドちゃんを監視)ジー

側近(こうしてとにかく魔王の趣味なりなんなりをリサーチ!!)

側近(そして魔王を喜ばせて処罰も完璧、さらに姫ちゃんからもメイドちゃんからも尊敬を集める一石二鳥の作戦!)


魔王「・・・・・・・・」


側近(これがバレたら俺はマジで後が無い・・・呼吸音一つでもしたら絶対バレるだろうし・・・)

側近(だが何しろ、メイドちゃんにまで人払いをさせた魔王の部屋の監視。これ以上、魔王リサーチに絶好の好機はない)


魔王「・・・・」スタスタ・・・ ピタ


側近(しかし、魔王はさっきから何してるんだ? それすらわかんねぇ・・・)


魔王「・・・・」スッ


側近(花瓶の花を、一輪取った? 何?まさか花を愛でたりする?)ワクワク


魔王「・・・・チッ」
・・・ピリ シュッ!


側近(一瞬で消えた!?てか今絶対燃えた!!いや凍った!?何!?今何したの!?)


魔王「・・・・・・」イライラ


側近(絶対怒ってる!魔王怒ってるよメイドちゃん!!怒るわけなんてやっぱりあったよ!?)

側近(やばい!もうやばい!サプライズ企画的なのやってる場合じゃないよこれ!ああああ)


魔王「・・・」ズーン
魔王「・・・ハァ」


側近(・・・あれ、なんかこの景色・・・最近、どっかで見覚えが・・・?)

~~~~~~~

魔王「」ズーン
魔王「もしかしなくとも、ほかにも妙な誤解をされてるんじゃないだろうか・・・」

~~~~~~~

側近(・・・あんときか・・・)

側近(メイドちゃんの容姿がマニアックすぎって話で・・・それが一般的じゃないことにショックうけたんだっけ)

側近(ん? ってか、じゃぁ今魔王はショック受けてるって事?何が?やっぱり暴言の件??)

側近(・・・・・あ、駄目だ。こんがらがってきた。一回、姫ちゃんと合流しよう・・・)スッ


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<側近の部屋>

側近「と、いうわけで、魔王は怒ってるかショック受けてるかどっちかじゃないかと」

姫「まったく要領を得ないです、側近様」


側近「そうなんだよ・・・メイドちゃんの言ってる事、なんか全部逆に思えてきた・・・」

姫「でも、メイドさんが嘘をいってるとは思えませんし、魔王様のことで間違えているというのはあまりにも・・・」

側近「もうこうなると、謎解きに近いよなぁ・・・」

姫「では、推理物のように、確定で信頼できそうな情報をまとめてみますか?」
カキカキカキ・・・


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
メイドちゃんの意見
1、魔王は俺たちの暴言を怒っていない
2、処罰についてなんてなんとも思っていない
3、俺たちへの処罰について、必要があれば魔王から処罰がメイドちゃんにでる

俺が見た魔王
1、超イライラしてる
2、絶対なんかいっぱい考えてる
3、なんかショック受けてる

そのころのメイドちゃん情報
1、魔王へのお菓子を作ってて、それは超うまそう
2、突然、そのお菓子を燃やして処分
3、高火力の魔法を練習中

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
姫「」
側近「」

シーン


姫「・・・あ、その。大変申し上げにくいのですが」

側近「うん、たぶん俺と同じ意見だと思う・・・言っていい?」

姫「で、では、いっせーのせで」

側近「い、いくよ。いっせーの・・・


姫・側近「「メイドの、魔王への叛乱」」
シーン・・・


姫「やっぱり・・・おかしいと思ったんです。せっかく綺麗につくった魔王様のお菓子を突然燃やすなんて・・・」

側近「ああ。きっと、本心では魔王自身を燃やしたいんだ。でも火力が足りないから実行に移せない・・・」

姫「魔王様は実際には、怒ってるし私たちの謀反を悲しんでいるけれど・・・」

側近「まったくそれに気づかないフリをすることで、魔王を精神的に追い詰める・・・」


姫「あっ!私、大変なこと思い出しました!!」

側近「な、なんだ?」


姫「メイドさん、真性サディスト発言のとき・・・『昨夜の魔王様の、私にしたことの全てであるように思います』って!」

側近「昨夜・・・魔王はついにメイドちゃんですら許せないようなヒドイことをしちゃったってことか・・」

姫「・・・衝動的な犯行、ってやつでしょうか・・・」


シーン


側近「止めよう!」

姫「と、止めるって、メイドさんをですか?」

側近「叛乱なんて、無謀すぎる。相手はあの魔王だ・・・後悔する間もなく殺される・・・」

姫「そ、そんな!」


姫「」コクッ
側近「」コクッ


ダダダダダダダダダ・・・ダダダダダ・・・バタドタバタ・・・


<厨房>

ダ゙ダダダ バターン!
メイド「!」ビクッ


側近「観念しろ!」

姫「メイドさん!早まっちゃいけません!」

メイド「・・・・・・・・・・・はい?」


かくかくしかじか


メイド「・・・はぁ~~~・・・」

姫「」ショボン
側近「」ショボン

メイド「私が・・・魔王様に叛乱など・・・もはや口を開く気にもなれません」ギロ

側近「それはその・・状況証拠ってやつが・・・」

メイド「それは私の落ち度ですね、人払いをされた魔王様の私室に人を近づけてしまうなど・・・」

メイド「ましてや、側近様が魔王様観察をなさっただなんて、どう報告すれば・・・本当に頭が痛い・・・」ズキズキ


姫「あの・・・それでは、メイドさんは一体何故、あんな憎しみに満ちたような目で、魔王様のお菓子を・・・?」


メイド「これのことでしょうか」コトリ

姫「あ、それです。やっぱりかわいいし、いい匂い・・・」クンクン

メイド「これは、マカロンというお菓子です。人の国のものですがご存知ありませんか」

姫「す、すみません。そういったものには疎くて・・」


メイド「・・・このお菓子の最大の特徴は、味はさるものながら、色身の美しさ、造形の可愛らしさです」

メイド「それを魔王様にも味わっていただきたく、完璧に仕上げたつもりが・・・」

メイド「転がった拍子に、縁のところが少し、削れてしまったので処分しました」ハァ・・・


側近「え それだけ?」

姫「正直、まったくわからなかったです・・・」


メイド「お菓子同士の接触で多少削れることは仕方ないのですが・・・」

メイド「あの時はちょっと、私も集中しきれておらず、その結果でしたので、自らを律するためにやり直しただけです」


側近「いや、でも、なんかすごくご機嫌だったって聞いたけど・・・何考えてたの?」

メイド「それは・・・その。魔王様のことですが・・・」

側近「現状、怒って部屋に篭ってる魔王のことを考えててご機嫌って、ちょっと無理ない?」

メイド「・・・ですから、怒ってなどいらしゃいません。考え事をすると、おっしゃっていたでしょう」

側近「それで?」


メイド「・・・ハァ。思考まで詮索されるのは不快ですが、魔王様への叛乱を疑われては敵いません」

メイド「・・・魔王様はもしかしたら、私のことを考えて下さってるのではないかと、期待していたのですよ」

姫「え?」


メイド「あなた方には『発言程度で魔王様を怒らせたなど・・・』なんていった手前、立場が無いですが・・・」

メイド「明らかに、私の発言の後に態度を変えられたので、魔王様のお心に私が少しでも入れたような気がして喜んでいました」

メイド「さぁ・・・これでいいですか? 納得したら、さっさとどこへでもお帰りくださいね」ニコリ


・・・・・・・・
・・・・・
・・・

<側近の部屋>

姫「まさか、メイドさんがあんなにも謙虚だったとは・・・」トボトボ

側近「つーかもう、純情すぎて涙でそうだよ・・・」トボトボ


姫「魔王様は、あんなに一途なメイドさんに、もう少し優しくすべきです!」グッ

側近「そうだ!感謝して労ったってバチはあたらねーぞ!」グッ


姫「側近さん!」
側近「姫ちゃん!」


側近「処罰なんて関係ねぇ!後で別のお咎めをうけたとしてもいい!」ガシッ

姫「はい!今はこの機会を最大限に生かし、メイドさんに喜んでもらいましょう!」ガシッ

―――――――――――

7日目
<玉座の間>


魔王「・・・・・(結局、いい謝罪案がおもいつかなかった)」ハァ

魔王「・・・・・(やっぱ、こないだの夜は悪ノリしすぎて怒らせたか・・・)」

魔王「・・・・・(メイドが俺に暴言なんて・・・はじめてだし・・・)」ガックリ

魔王「・・・・・(こんなにあからさまな態度をとっても、伺い立てもしてこない)」ショボン


メイド「・・・・(魔王様、ずいぶん憔悴なさったご様子・・・)」ハァ

メイド「・・・・(やはり、私ごときの発言でお怒りになるはずもありませんよね)」

メイド「・・・・(私はまだまだ、魔王様をご理解して差し上げられないのが悔しいです・・・)」ガックリ

メイド「・・・・(ご理解できない以上、差し出がましい真似もできません・・・)」ショボン


<柱の影>

姫「何でしょう、あの無言のシンクロは・・・」ヒソヒソ

側近「俺に聞くなよ・・・わかるわけねえ・・・が、今やるべきことはこれだ」ヒソヒソ

姫「う、うまくいくでしょうか・・・」ヒソヒソ

側近「どうにかして、とにかく魔王にメイドちゃんへ優しい言葉をかけさせるしかねーよ」ヒソヒソ

姫「作戦も何もあったもんじゃないですが・・・い、行きますよ?」ハァ

側近「ああ・・・せーの・・・」
ダダダダ・・・ッ

姫・側近「「メイドちゃん、お誕生日おめでとーーー!!!」」パーン!パパーン!!

魔王「?!」
メイド「・・・・え」

側近「なんと!今月はメイドちゃんの210年目のお誕生月!」パパーン!

姫「いつも優しく暖かく!魔王様を支え続ける素敵でかわいいメイドさん!」パーン!

側近「みんな大好きメイドちゃん!」

姫「いつもありがとメイドさん!」


姫・側近「「声をそろえてみんなでいおう!魔王も一緒にハイドーゾ!」」

姫・側近「「お誕生日おめでとーーーーー!!」」
ドドーン!


シーン・・・

姫「」
側近「」
魔王「」
メイド「」

シーン・・・・


姫「そ、それでは、私たちはコレで・・・」コソコソ

側近「ま、またあとで、ちゃんと、ほんと、ちゃんとあの、してくるから・・・っじゃ!」
ズダダダダッ・・・

シーン・・・・


魔王「・・・・」
メイド「・・・・」


魔王「210年・・・」

メイド「なにやら、私事でお騒がせをした様子。申し訳ございません」ペコリ

魔王「いや。あいつらが騒々しいのはお前のせいではない・・・」

魔王「それより、もう210年も経つのだな、と思ってな」

メイド「・・・早いものです」

魔王「ちなみに、誕生月というのはなんなんだ?」

メイド「年に一度、自分の生まれた月日を数え祝うための、人の習慣です」


魔王「・・・そうか。では、お前の祝い事か」

メイド「恐縮です」

魔王「・・・・おい」

メイド「はい」


魔王「『おめでとう』」

メイド「はい。・・・・・え?」キョトン


魔王「く・・・ククク、何が『魔王も一緒にハイドーゾ』だ・・・」クックック

メイド「ま、魔王様?」

魔王「210年も側にいたのに、そんなこと一度も祝ったこと無かったな・・・くく」

魔王「だというのに奴ら、たった7日で、俺がしてこなかったことをするとは」ハァ


魔王「・・・おい、メイド」

メイド「は、はい。なんでしょう」


魔王「俺を、恨んでいるか?」

メイド「!? 決してありえません!!」


魔王「俺は、お前に真性サディストといわれるほど、残酷なことばかりしているが?」

メイド「それは・・・間違いです。私は酷いことをされたなどと思っておりません!」

魔王「はは、あれを酷いと思わないなら、お前に怖いものはないのだろうな」

メイド「違います・・・違います!」


魔王「違わない。俺に愛想をつかし、真性サディストなどといって俺を笑ったじゃないか。恨んでいるのだろう?」

メイド「あれは、その前の晩のことを思い出して、悔しくて泣きそうになっていたのを堪えていたのです!」

魔王「悔しい?俺にいいようにされることがか?」

メイド「違います・・・それに・・・あれを肯定したのは、魔王様が自らをも容易に傷つけると言い、あまつさえ実行したからです!」



メイド「自ら血を流すことすらも、自らを刻むことすらも、全て愉悦のためと・・・」

メイド「だというのに魔王様からは、私を苦しめて楽しもうなどという意思を感じません・・・」

メイド「私では・・・そんなに、至らないのでしょうか・・・いたらなすぎて・・・悔しいのです・・・魔王様が傷つくのが怖いのです・・・」

メイド「魔王様につく、どれだけ些細な傷でも・・・」

メイド「私を苦しませることで、少しでもそれを防ぐことができるなら、そうしてくださいませ・・・お願いします・・・」ポロポロポロ


魔王「・・・・参ったな」
メイド「っく、ひっく・・・う・・・」ポロポロポロ

魔王「・・・・お前に、そんな風に思われていたなんて、気づかなかった」
メイド「・・・」ポロポロ

魔王「・・・」スッ
なでなで
メイド「・・・まおう、さま・・・」ポロポロ

魔王「不器用すぎるな、俺は」ギュッ

魔王「お前を苦しめて楽しむつもりがないのは当然だろう」

魔王「俺は、俺なりに本気でお前を可愛がって悦ばそうと思ってたんだからな」

メイド「え・・・いま、なん、と・・・?」

魔王「いつだってお前に、最高の快楽と刺激をあたえてやりたかっただけだ。・・・まさかお前が本気で苦痛に耐えているとは、昨日まで考えすらしなかった」

魔王「昨夜は、どうやってお前の機嫌を取るかばかり考えてしまったよ、くくく」

メイド「まおうさま・・・まおうさま、まおうさま、まおうさまっ」ギューーー

魔王「ついておいで、メイド」

魔王「俺の言葉の全てを、今度こそ最高の快楽と共に、証明してやろう」


・・・・・・・・
・・・・・
・・・

<夕方 魔王私室>

姫「・・・//」ヒョコッ
側近「・・・//」ヒョコッ


姫「・・・もう、行かれましたね」キョロキョロ

側近「もう、なんかいろいろ限界ごめん許して//」ガックリ

姫「なんか・・・すごいもの、見ちゃいましたね・・・//」

側近「あれは、メイドちゃんが魔王に心酔するのも仕方ない//」

姫「・・・た、確かにちょっと、あれ見ちゃうとグラングランしちゃう感じします//」

側近「・・・210年、あんな感じで魔王に口説かれてたのかなぁ・・・?」

姫「しかもいつだって魔王様が本気だした最高の快楽とやらを与えながら・・・?」


姫「///」
側近「///」


側近「そ、それにしても、すごかったな////」

姫「ま、まさか二人が寝室に来ると思いませんでしたよね/////」

側近「完全に、空気読めなかったし リベンジのつもりで留守の私室に潜り込んで情報収集してたら・・・」

姫「メイドちゃんをオヒメサマ抱っこで、魔王様が戻ってきて・・・」

側近「なんとか、俺らはクローゼットにかくれたけど・・・」

姫「・・・まさか、そのまま半日も隠れる羽目になるとは・・・//」


側近「~~~~~っあ、もう、まじ、だめだ、あんなん・・・存在が強力な媚薬ってこういうことか・・・っ」

姫「~~~ッ// い、言わないでください、私だって意識しないよう必死なんですから!」


側近「ああああもう!姫ちゃん頼む!俺のこと殴って!今すぐ!」

姫「な、何言い出すんですか急に!」


側近「駄目なんだ、我慢できない、俺、ずっと姫ちゃんのこと好きで・・・でも、だから、押し倒しちまいそうな気分なんだ!」

側近「こんな状況で、無理やり、そんなことになったら俺、自分のこと許せないから!頼む!」

姫「え、え、え!?な、すきって、側近様が私を?私がじゃ無くて!?」

側近「え?そ、それって どういう・・・」

姫「あ//」


側近「・・・・・・ッ、ああ!もう本当に駄目だ!」

側近「好きだ!姫ちゃん、好きだ!でも、好きだから、今は姫ちゃんの前から逃げることを許してくれ!!」ダダダッ

姫「側近・・・様・・・」ポー


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

<食堂>

魔王「・・・」
姫「~♪」

メイド「・・・//」
側近「・・・・//」


魔王「では、改めて。メイドの210年目を祝って、乾杯しよう」

姫「メイドさん、本当によかったですねぇ」ニコニコ

側近「酒はヤバイ・・・酒はヤバイ・・・」ブツブツ

メイド「まおうさま、大好きです・・・//」ポー


召使達(((今日は皆様、何があったのかわからなさすぎて怖い・・・!!早く退室しよう!!)))


魔王「・・・まさか、こうしてメイドを祝えるとはおもってなかった」

メイド「私も、魔王様からこのように祝っていただけるなんて、本当に幸せに思います」

魔王「・・・そうか。幸せ、か。 ・・・おまえたちのおかげだな」

姫「いえいえいえいえ!こっちこそ、お二人のおかげでとっても幸せな気分でして・・・」にへら~

魔王「そうか、よくわからんが、よかったな。よかった・・・ん?おい?」

姫「はい、なんでしょうかまおうさま」ニヤニヤ


魔王「・・・・いや、結構マジで何があった?」

姫「や、やですぅ、そんな、まだハッキリとお返事もしてないのに・・・」きゃっ

魔王「・・・まさか、気づいてないのか? お前、魂の流出がとまってるぞ・・・?」


姫「へ?」

魔王「半分魂の入った生体があるのに流出がとまるなんて・・・よほど強い存在意義でも見つけたか?」

姫「・・・・わ・・・わすれてた・・・!!!」


――――――――――――――――――――――
8日目 
<玉座の間>


魔王「・・・2週間、ただボゥッとしてればよかったものを・・・」ハァ

メイド「おふたりがそのような関係にまでなっていたとは気づきませんでした」

側近「ごめん、俺が不用意に告白なんかしちゃったからだよな・・・」

姫「私・・・どうなるんでしょうか・・・?」


魔王「奇しくもちょうど、7日目に魂の流出が止まった。つまり、魂はちょうど2等分だ」

魔王「先程見た感じ、生体にもどろうとする魂はなさそうだから、元の姫には戻れないだろうな」

魔王「このまま、こちらの魔物姫とあちらの人間姫に別れて別の生命として生きていくことになる」

姫「・・・え?」


魔王「魔物の身体は、寿命が長い。しかし、ヒトの身体は寿命が短い」

魔王「お前が先にしぬ、というのは考えにくい以上・・・もう、ヒトには戻れぬかもしれぬな」

魔王「向こうの姫が死ねば、お前の方に霊魂が引き寄せられ、同体化はかなうかもしれぬ、が、魔物の身のままだ」

魔王「・・・王国には、二度と戻れないだろう・・・」


姫「・・・それは。・・・いえ。・・・今となっては、もう、いいのです・・・向こうに未練はあまりありません」

メイド「・・・王様たちは、よいのですか?」

姫「ふふ。王の側には、変わらず『私』がいてくれるのですから。私は姫としても父王を尊敬しておりましたし」

姫「・・・ただ、知己の・・・あの方のお墓参りが叶わなくなるのは、やはり少し、心残りですが・・・」


側近「知己?だれ?」

姫「あ・・・側近様に言っていなかったのは、よくないですね・・・」

姫「私がまだ幼い頃から共に過ごした、城仕えの男の方でした。実は・・・子供ながらに、結婚の約束事なんてしたんですよ」

側近「え。そ、それって、許婚がいたって事・・・?!」


姫「黙っていて申し訳ありません。でも、許婚ではありませんよ。私が一方的に慕っていたのです」

姫「あの方にしてみれば、子供の言うこととはいえ、姫をぞんざいに扱うわけにも応えるわけにもいかず、苦労させたのでしょうね」

姫「何のお返事をもらうことも叶わぬうちに、魔王討伐に出られて、それっきり、帰ってきませんでした・・・」

側近「あ・・・ごめん、俺・・・つまんない嫉妬して、悪いこと聞いた・・・」

姫「もう、10年近くも前のこと、大丈夫です。それより、黙っていて申し訳ありませんでした」

側近「そんなのいいよ!初恋みたいなもんだろ!? 俺は今の姫ちゃんが好きなんだ!その人への想いも含めて、全部が姫ちゃんだよ!」」

姫「側近様・・・//」

側近「勝手だけど・・・駄目かな? ここにいてくれないかな? このまま、俺と、生きていってくれませんか?」


姫「・・・魔王様。 私は、ここで生きていってよいのですか?」

魔王「良いも何も、側近の嫁になりたいと思って、流出が止まったのだろう?」

姫「ちょ!まだ、その、そこまではっきりとは・・でも、その。はい・・・」

側近「姫ちゃん・・・ありがとう・・・!俺、絶対姫ちゃんのこと、幸せにするから!居場所作るから!」

姫「側近様・・・よろしくお願いいたします・・・」ウルウル



メイド「というか。そういえばアレ以来、王国のほうと、向こうの姫の状態はどうなっているのですか?」

魔王「あ」

側近「そういや・・」

姫「・・・?」

メイド「」ハァ・・・


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

同日
<王国 王城>


人間姫「・・・それで、どういった具合でしょうか」

大臣「はっ、あれ以来魔王よりの通信などはございません」

大臣「姫様が無事に意識を取り戻され、このように政に参加なさるほどに回復したことに気づいていないのやも知れません」

人間姫「・・・せめて、魔王の様子なり城内の警備なりに関する記憶があればよかったのですが・・・役に立たないような記憶ばかり・・・」

大臣「いまだ、記憶の回復はありませんか?」

人間姫「回復というか、混乱なのでしょう・・・幼き頃よりあってしかるべき記憶も、まるで魂が欠けたかのように断片的にしか思い出せないのです・・・」

大臣「おそろしや・・・魔王はいったいどれだけ下賎な術法を使えば気が済むのだ・・・!」


人間姫「ですが、魔王にされた仕打ちにより、私は目が醒めた思いです。果敢に散っていった全ての勇士の為にも、必ず私めが魔王とその軍勢を討伐して見せましょう!」

大臣「姫様・・・本当に、最前線に立たれるのですか・・・?」

人間姫「・・・ッ。魔王に、全てを汚された私では、このまま姫として国を継ぐこともできないのは、わかっているでしょう・・・!?」

人間姫「私に残されたものは、この身一つと、報復に滾る誇りだけ。汚名を濯ぐまでは、死んでも死にきれません!」

大臣「・・・・姫様のご覚悟、確かに見せていただきました」


人間姫「・・・では」

大臣「はっ。魔王討伐軍、総勢1万6千名、姫様の号令ひとつですぐに出発できます!」

人間姫「よし・・・夜が明け次第、日の出と共に出発! 目標、魔王城!」


人間姫「魔王・・・必ず、この姫が あなたを討ち取って見せます。覚悟なさい・・・ッ!」


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

<魔王城 玉座の間>


魔王「・・・」シュゥ・・・

姫「・・・」ドキドキ

魔王「・・・妙なことになったな」


メイド「魔王様、いま、姫様の魂はどのような状態だったのでしょうか」

魔王「完全に乖離してる。おそらくだが、王国のほうに戻った霊魂は、より生体に依存している部分ばかりだろうな」

姫「あの、それはどういう・・・?」

魔王「今世、姫として新しく記憶された霊魂・・・まさしく『王国の姫として育ってきた』部分ということだ」

側近「ん、んじゃぁ、こっちにいる姫ちゃんは?」

魔王「本来の、今世までに霊魂が蓄積してきた、その人物の性質に依存する部分が大部分だな」

姫「??? わたしは、私ではないのでしょうか・・・?」


メイド「妙なことになりましたね」

魔王「ふむ・・・面倒がおきるのは、目に見えるな」

側近「えっと・・・ごめん、わかんない・・・」

姫「私もです・・・」


魔王「もはや、まったくの別人のようになっているということだ」

魔王「たとえば正確な表現ではないが、誰しも、公私を使い分けるだろう? 特に、姫は今世では極力、地を押し隠して生きていたはずだ」

魔王「今回の場合、『公』、つまり姫として振舞ってきた部分が人間姫に。『私』、つまり1個人としての彼女がこちらの魔物姫になった、ということだ」

メイド「もともとの、臆病でミーハーで泣き虫で活発なところを人格として残しているのが、ここにいる姫ですが・・・」

メイド「王国にいるのは、気丈で好戦的で、打倒魔王に燃えて戦女神として培われた部分を人格としている姫でしょうね」


側近「ま、まさか 向こうの・・・人間姫がこっちを攻めにくる?」

魔王「ああ。くるだろうな。今まで持っていた、恐怖や責任感、根の消極性なんてモノを無くし・・・」


魔王「正真正銘の、戦女神となって」


ー・-・-・-・-・-・-・-・-

4日前 
<王国、王城>


看護師「姫様が、姫様が動き出されたぞ!」
魔術師「王様をコチラに! 姫、ご無事ですか!」

人間姫「・・・・私は、一体・・・?」ボウッ

バターン
王様「姫!」


人間姫「あ・・・お父様・・・? っく!」ズキッ

王様「姫、姫や。・・・ああ・・・よかった、本当に良かった・・・」

人間姫「・・・あ、お父様・・? 私は、一体・・・」ズキッ

王様「おまえは、魔王の卑劣な術法によって・・・おぞましくも、霊魂が魔王の元へに連れ去られていたらしい・・」

王様「しかし、もう、おまえが戻ってくれただけで充分だ。魔王のことなど忘れるのだ。お前はこのままではまた・・・」

人間姫「・・・そう、でした。私は・・・魔王の元に・・・っ、うう・・・」ズキズキ


~~~~~~~~~

魔王「放っておくなどせずとも、一思いに今殺してやるのも・・・いや、せっかくの姫だ、嬲るのも悪くない。くっくっく」

姫「ッ・・・!お好きになさい!いかな辱めを受けようと、私の誇り、意思までは汚せないと思い知ることでしょう!」

~~~~~~~~~

人間姫「・・・そう、そうです・・・あの、汚らわしく、卑劣なあの男が、魔王・・・!」ズキッ

王様「姫!無理をしてはならん!おまえはあのあと3日以上も、動くことすらかなわなかったのだ!」

人間姫「く、ではこの、魔王のことを思い出そうとするたびに走る 頭の痛みは・・・」ズキズキ

王様「まだ、本調子ではないからに決まっている! おい!誰か、姫の治療と回復を!!」




人間姫「・・・魔王・・・ッ」ギリッ

人間姫「決してこのままでは済ましません・・・!!」


・・・・・・・・
・・・・・
・・・
3日前 
<深夜 王国 姫の私室>


人間姫「・・・ん、う、うぅ・・・」

人間姫「・・・っあ!!!!」バッ


人間姫「・・・・っ」ドキドキドキドキ

人間姫「な、なに・・・夢・・・? 魔王城の記憶・・・?」

~~~~~~~~~~~

魔王「…暴れるな」ジロリ

魔王「・・・なかなか扇情的だ」ツツツ

魔王「・・・まるで首輪じゃないか、くく」サワッ

姫「ん、ぁ、っぅ!!」ゾクリ

~~~~~~~~~~~
人間姫「!!!」ゾクッ


人間姫「な・・・今のは?!何!?いや、いや! 汚らわしい!一体、魔王城にいるときに、私はどれだけのことをされたのか・・・!」ズキッ

人間姫「『実際の接触は難しい』?『心配には及ばん』?王国にまで現れて堂々と・・・っ。でも、実際はこう!!この記憶が何よりの・・・・ッ!」ズキン!



人間姫「く・・・また、思い出そうとすると・・・ひどく頭が・・・」グラッ

人間姫「・・・何もかも、魔王のせい・・・許せない・・・許せない、許さない・・・!!」


・・・・・・・
・・・・・
・・・

<2日前 王国 王城 姫の私室>

大臣「姫様!」


人間姫「大臣・・・私は、決めました。この身に受けた辱めは、必ず私自身で魔王を倒すことでしか拭えないのです・・・!」

大臣「しかし、それでは姫!」

人間姫「・・・もはや、私は姫と名乗ることはできないでしょう」

大臣「そ、そんな・・・まさか、姫君は・・・魔王に・・・!?」

人間姫「・・・っ、もう、これ以上あの暴君を放っておくことなどできません・・・戦争です!」

大臣「な!!!」

人間姫「今日より、私は姫ではなく、女騎士として魔王討伐を行うつもりです!」

人間姫「兵を集めなさい!必ず近日に行軍を開始します!軍が遅れた場合、私は一人ででも行きます!!」


大臣「そ・・・そんな・・・そんな、姫・・・姫様・・・っ」ガクリ


・・・・・・
・・・・
・・・

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・
9日目

<魔王城 玉座の間>


魔王「・・・・む、早いな。まさか今日のうちに動くとは・・」

側近「!まさか、本当に戦争をおっぱじめるつもりか!?」


姫「・・・・わたし、わたしの、わたしのせいです・・・!」

姫「私が、きちんと王国に戻っていれば・・・私自身が、抑止力にもなれたのに・・・」

メイド「・・・姫様、それは・・・」

魔王「いまさら言っても始まらない。それに、そうさせたのはこの側近が原因でもある」

魔王「腐っていても、俺を抜けば魔王城のナンバーワンはこいつだからな。名実共に、責任をとるのはこいつだ」

側近「・・・・」グッ

姫「側近様・・・」


魔王「・・・俺がいる以上、負け戦にはならない・・・だが、俺が出て行けば、間違いなく全兵力を投入した王国は滅びる・・・そう、考えてくれ」

姫「・・・!」

側近「・・・俺が出る」チャキン

姫「そ、側近様・・・」

側近「魔王。四天王を貸してくれ。最鋭精の最小人数で防衛、斥候をかける・・・大多数を戦闘不能にしてしまえば、なんとかなるだろう?」

魔王「・・・任せよう」

側近「サンキュ、な。俺が出てる間、姫様だけは守っててくれよ」

魔王「・・・ああ」

側近「・・・時間が無い。瘴気の森にまでたどり着かれたら、王国の兵などそれだけで死んでしまう奴らが出るだろう・・・追い詰められて、どんな無茶に出るか・・・」

魔王「まだ、距離はある。まずは瘴気の森へ進入させぬよう、四天王を配置させておくか」

側近「ああ、それでいい」


側近「あとは・・・俺が、単身で兵の中央に切り込む」


姫「な! 無茶です!1万以上の兵が出ているのですよ!?」

メイド「・・・側近様は、普段はこんなですが、お強いですよ。武器戦闘に限って言えば、魔王様と並ぶやもわかりません」

姫「で、でも・・・だからって・・・!」

側近「姫ちゃん」ギュッ


側近「姫ちゃん。ごめんね。心配かけて。でも俺、戻ってくるよ。絶対、姫ちゃんのところに」

側近「もうさ、姫ちゃんいないとか考えらんないから。死ぬときがあるなら、姫ちゃんの腕の中に帰るから」

側近「だからさ、・・・待ってて。・・・ごめん」
トスッ

姫「・・・あ。そっき・・さ、ま・・・」
バタッ


メイド「・・・よろしいのですか?」

側近「これ以上、時間をかけても・・・辛い目にあうのは、姫ちゃんなんだ・・・」

魔王「・・・」

側近「・・・なぁ、魔王?」

魔王「・・・」

側近「いつかの成功報酬、お願いしていいか?」

魔王「なんだ」

側近「うん。 姫ちゃんだけは、・・・幸せにしてやってくれ・・・」

魔王「・・・・」



魔王「・・・・必ず戻れ」

側近「おう! あたりまえだっつーの! 帰ったら、姫ちゃんドツいたことあやまんなきゃいけねーしな!」


側近「・・・んじゃ、いってくるわ」ニコ

バシュッ


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
正午すぎ

<王国領地、北東の国境 >


人間姫「・・・これより、魔王領に入る!未開の死地だ!決して遅れるな!歩を乱すな!勝利を過信することは愚かなり!」
人間姫「だが!決して臆するな!我らには、魔王の卑劣な手に汚されるような 脆弱な心の持ち主はいない!」
人間姫「己が正義を信じよ!己が友を信じよ!己が強さを信じろ!!!」

人間姫「捧げよ!!!王国に、真の平和を!!!!!!!」

兵たち「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」


ー・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・

同時刻
<魔王領地内 国境まで15km>

側近(・・・・さて・・・どうするか)スタタタタ

側近(背後には四天王がいてくれる。残兵処理はまかせっちまうか・・・)シュン シュン

側近(姫ちゃんの、知り合いとかもいるんだろうな・・・)スタッ


側近(とりあえず、兵列をみつけだして、一息に・・・)スタタタタ

側近(漏れは気にせず、確実に大部分の足に、戦闘不能程度の傷をつける)ピタッ


側近(あーあ・・・久しぶりに訓練じゃない対人戦闘なのに・・・)

側近(こんな、無差別通り魔みたいなやりかたしかできないのか・・・なんだかんだいって俺も『魔王』と同じ側の存在、なんだな・・・)


側近「!」サッ


ガサガサガサ・・・
『左前方、いまだ敵影なし!』
『右前方、同じく敵影なし!』
『本隊の進行を許可する!』


側近(ここに、いるよ。・・・ごめん、本隊に接触するために、君たちは邪魔なんだ)

ヒュッ・・・スタン
側近「・・・はじめよう」スッ・・・チャキン


斥候1「!?」
斥候2「いつの間に!?」


側近「・・・気がつけば、いつの間にか、ってやつだね」


斥候1「」
斥候2「」


側近「殺すのは あんま好きじゃないんだけどね」


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-

同時刻
<魔王城 謁見の間>

水晶玉に映し出されるのは、まるで何度もカットされた映画のようでした。

走っていたかと思えば跳び、跳んだかと思えば隠れ。

おおよそ尋常じゃないことしかわからないような光景でした。


私が見たのは、それまで知っていた彼とは違う方でした。

見たことも無い速さで走り、実際に見えないほどの速さで剣をふっていました。


視線を流しただけのような、滑らか過ぎる剣先。

硬質なそれが、まるで鞭のようにしなっていると錯覚するほど。

どこかで重力を反転させているかと思うような身のこなし。

今、眼前の相手を討ったかと思えば、一瞬で逆手に持ち替えて背後を討っている様子は、手品としか思えない。


肉に熔けて沈み、赤い染みをつけながら浮き出る銀の刃は、次の瞬間には、そのあまりに早すぎる振りによって

余分な全てを空中に取り残しながら また美しく輝いていました。


ああ。

昔見た あれに、そっくりです。


長く伸び、蠢く大蛇。

その口元に、突如打ち込まれた一本の杭。

そして、一瞬の構えの後に、一息に尾まで切り裂かれる。


突然、庭園に現れた毒蛇から私を守るため

あの方は そうして蛇を捌いてくださいました。


今、この水晶玉から見える光景は それと酷似しすぎています。

長い、蠢く数十、数百の兵列を この方はその身を杭にして 正しく、捌いているのでしょう。


人を傷つけ、時に命を奪っているというのに

何の感傷もなく、時にはただ舞うように、僅かな金属音を奏でるその様子は、美しいとすら思えました。



だから、私には、この涙が何故流れたのか わからないままなのです。


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

夕刻 
<魔王領 惑いの森>


側近「・・・・」ヨロ

側近(さすがに、あれだけやれば進行は止まったか・・・)

側近(それとも、飽和攻撃の無意味に気づいただけか・・・)


側近(・・・たいした怪我はして無いけど、さすがに、もう、動けねえな・・・)ドサッ

側近(周辺警戒はそのままに、少し、休憩しないと・・・)ハァ


側近(・・・・あーあ。やっぱり、殺さずになんて、無理があったな・・・魔王たち、水晶玉で見てたのかな・・・)

側近「・・・姫ちゃんには、見られたくなかったんだけど・・・」ボソ


パキン
側近「!!」スタッ

側近(くっそ、疲労したくらいで、周辺警戒もろくにできねぇのか俺は!!))


ガサ・・・
??「馴れ馴れしく、呼ばないでいただきたい・・・・・いつから、気づいていたのですか?」

側近「・・・・え?」


人間姫「私に見られたくなかったなど・・・ずいぶん、評価してくれるじゃないですか?」ふふ

側近「! ・・・王国の・・・姫」


人間姫「あら? あなたのその顔・・・ふふ、記憶に、ありましてよ」

人間姫「そう、確か・・・魔王の、側近、ですね?」


側近「・・・チッ。まぁ、1週間もコッチで過ごしてりゃ、記憶くらい持ち帰るのは当然か」

側近(姫ちゃんと、同じ気配・・・あんまり慣れすぎて、自然に警戒を解除しちまってたか・・・くそ、本当にやれるのか?)


人間姫「ふふ。大隊のほとんどが壊滅状態ですわ・・・。何があるのかと一人偵察に出たのは、正解だったようです」

側近「正解? 俺と一対一でやって、勝てるとでも? あんたの今の身体じゃ、ろくな運動はできないままだろう」

人間姫「・・・やはり、身体に残るこの違和感は、魔王の仕向けたことでしたか」くすくすくす


側近「・・・笑うな」

人間姫「ふふ、何かお気に触りまして?」くすくすくす


側近「・・・おまえは、可愛くない。よく似ていても・・・姫ちゃんなんかじゃない。姫ちゃんは、そんなふうに笑わない」

人間姫「・・・私を、馬鹿にしていますの? 私が、姫としてふさわしくないと?」カチン

側近「いや。これは、ただの俺の決意。一応の、確認。 おまえは、王国の姫だ・・・」


側近「悪いが、斬るよ」スチャ


ズバッ
人間姫「あああああああああああああああッ!?」ブシュゥゥ

人間姫「足が・・・!!足が、私の足、あああ いたい!いたい、いたいいたいいたいぃぃ!?」ブシュッブシュッ

側近「・・・っ」グッ


人間姫「い、いたいいたいいたいぃぃ!!ああああ!!!」

人間姫「どうして、どうして私が、たすけて、たすけて、もういや、なんでこんな、どうして・・・ッ」ボロボロ

側近「っ、泣くな! ・・・その顔で、泣かないでくれ・・・」

側近「・・・ここは戦場だ!お前はもう戦えない、王国へ帰れ! 軍を退くんだ!」


人間姫「帰る・・・?どこへ・・・?」ヨロッ

人間姫「・・・穢れた姫の帰る場所なんて、どこにも無いんだよ・・・?」フラ・・・フラ・・・

側近「・・・穢れてなど」


人間姫「嘘吐き・・・嘘吐き、嘘吐き嘘吐き!」

人間姫「・・・ふふ、ふ。・・・ねぇ。どうせあなたも、私のことを穢したんでしょ? ・・・私、どうだった?」

側近「!? 何言ってるんだ、そんなことするわけ・・・!」

人間姫「あ。また、嘘吐き? それとも、魔王だけの玩具だったのかなぁ?くすくすくす」

側近「おまえ、さっきから一体・・・」


人間姫「・・・ねぇ。私のこと、抱きたい? ・・・いいんだよ?」スッ・・・カチャリ、パサ・・・

側近「な・・なにやって・・」

人間姫「ふふ・・・私のこと、欲しく、なってきた・・・? あげるよ・・・? もう、誰のものでも、ないもの・・・」

側近「・・・っ! そんなこと、言うのも、するのも、やめろ!」
ぎゅっ

人間姫「っ、何を・・・!」


側近「魔王城での記憶が、不完全に流出したのか・・・なんでこうなった? なぁ、誤解だよ、何も無い!」

側近「おまえは、穢されてなんかいないし・・・帰る場所をなくしたりしてないよ・・・」

側近「俺たちさ。仲良くなったんだよ! 一緒にバカやって、一緒に怒られて、一緒にお祝いして!」

側近「魔王城で、楽しいって。幸せだって、笑ってさ! 王国に帰るまでの期間が短くて、寂しくて!・・・それで・・・」

側近「そりゃ・・・確かに、霊魂は分かれちまったけど・・・あんたは、姫だ!正真正銘の姫のままだ!」

側近「なぁ、城に帰れ。きっと、みんなお前を心配してくれる。おまえも、幸せになれるよ!」


人間姫「・・・・・そう、そうだったわ・・・」スッ

ザク


側近「・・・・っく」ガフッ


人間姫「そうやって・・・綺麗事を並べて、人を期待させて・・・逃げ場の無い場所に陥れる・・・」

人間姫「あんたみたいな奴がいるから・・ 世界はいつも、あと一歩のところに間に合わず、苦痛に満ちていくの・・・」



側近「・・・あ、俺・・・? ごめ、ひめ・・・・ちゃ・・・」バタリ

側近「」


人間姫「・・・ふふ、ふふふふふふ」

人間姫「あはははは、あーーーーはははははははは討った!討ってやった!!!見ていろ魔王!次は、お前だ!ははは!!!」


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

<魔王城 謁見の間>

魔王「・・・側近が・・・っ」

魔王「…(『綺麗事では、間に合わない』…か)」


姫「! いや!いや、いやいやいや!!」

メイド「姫様、落ち着いてください」

姫「私が、私が殺した! 優しいあの人につけいって殺した!!!」

メイド「違います!姫様ではありません、もはや別人格だと説明しました!」

姫「違う!あれは、私だわ!」


魔王「落ち着け!」ドンッ

姫「!」ビクッ


魔王「誰が殺したか? そんなの問題じゃない。実力で一番の側近が死んだ。それがどういうことか・・・」

姫「・・・て。」


魔王「・・・何?」

姫「生き返らせて!!」

メイド「!」


姫「魔王の創生術で!生き返らせてください!できるんでしょう!?」

魔王「できない。・・・生き返るわけでは無い」

姫「なんで! 見た目も、魂も、魔王様の好きなようにできるんでしょ!?」

魔王「そのとおりだ。でも生まれるのは、あの側近じゃない」

魔王「見た目と、雰囲気が同じだけの、まったくの別人だ・・・記憶すら持たない」


姫「・・・じゃぁ、じゃぁ・・・私が、死にます・・・」

メイド「姫様!? いけません!」

姫「側近様を殺してしまった責任を、とらせて!」


魔王「やめておけ。事態がよりこじれかねん」

姫「! なんで・・!」

魔王「お前が今死んだら、どうなるかわかるか?」

姫「・・・それは、霊魂が抜き出て・・・霧散する・・?」


魔王「違う」

魔王「自害、他殺。とにかくそういう要因で死ぬということは、同時に強い意思そのものが発生しやすい」

魔王「恐怖。痛み。苦しみ。悩み。怨み・・・」

魔王「そして、その強すぎる意思は、死の瞬間に、魂を無理やりに緊縛してしまう」

魔王「死んだ身体に、魂が繋がれて、解放されなくなる・・・つまり、アンデッドになるんだ」


魔王「第一、死んで魂が抜け出すなら、お前が来たその時にすぐ殺してるに決まってるだろう・・・」

魔王「だから、死んで側近の後を追おうなどと考えるのは・・・っ、おい!?」


姫「」スッ 

ズパッ
姫「・・・・・・ぅ、くぅッ!!!!」ブシュッ


メイド「っ、姫様!! 姫様!? なんでですかっ!?」

魔王「馬鹿な! 話を聞いていなかったのか! 今、回復術を・・・!」


姫「い、いらな・・・です。 私、側近様・・・、追うつもりなんて・・・ない、で・・・」ヒュー

姫「アン、デッド・・・私には、ぴったりすぎる、最高の、報いじゃ、ないですか・・・」ヒュー

姫「私のせ・・・で、・・・誰か、失うのは、も・・・いや・・・だか、ら・・・」ヒュー

姫「これで・・・未来、永劫・・・ 誰も、失わずに・・・すむように・・・」ヒュッ

姫「よか、った・・・」パタリ

姫「」


魔王「・・・・・・くっ」ガンッ

メイド「・・・・・・そんな・・・そんな・・・」ウ、ウワァァァァ


姫「」シュゥゥゥゥ

魔王「アンデッドなんかになって・・・何が、最高の報いだ・・・!」グッ



姫「」ピタ

魔王「・・・・・・、 え?」


姫「」
バシュゥワァッ!!!!!!!!!


魔王「何っ!?」


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

<魔王領 惑いの森>

・・・・・・・
・・・・・
・・・

姫「・・・・・・・・・っ、あ・・・?」ボー

姫「あれ・・・ここは・・・? まさか、天国・・・?」


側近「」


姫「ひっ、そ、側近様・・・!?」

姫「な、なんで・・? なんで、私、こんなところに・・・っ」ズキン


姫「っう、あっ」ズキズキ

姫(・・・あ・・・これは・・・人間姫のほうの・・・記憶・・・)



ザクッ グリュッ・・・ ブシャッ


姫「ひっ!!! あ、な、何・・・これ、側近様を、殺したときの、感触・・・!?」

姫「身体・・・これ・・・ 人間の、身体だ・・・」ドクン



姫「なんで、なんで、こんな・・・人間の姫と、同体化したってこと? アンデッドになるんじゃなかったの・・・?」ズキ

姫「っうぅ、痛い・・・頭に、他人の記憶が割り込んでくるみたいで・・・きもちわるいっ・・・う、うぐっ」グエッ



姫(どうして・・・何、この、どすぐろい、強い、気持ちが・・・抑えられない・・・っ)

姫「いや・・・いや、いや、いやいやいやいやいやぁっ!?」


姫「なん・・・で? なんで、こんなに・・・魔王様を、許せないの・・・?」フラフラ・・・


-------------

足が、重かった。

それを自分で動かしてるのが信じられないほど、規則的に歩を進めていた。


頭がいたかった。

人間の姫として、魔王に陵辱されたと信じ、誇りを失い、全てをなげうつ覚悟で挙兵した。

魔物の姫として、魔王様にあつまる方たちに癒され、心からの信頼と、安心を手に入れた。

対極の全てが私の事実。

憎い、憎い魔王の側近を、この手で討ってやった。

―だから、私は私自身を、この手で打ってやった。

手に、いまだ残る 2つの殺害の感触。

言葉にすることができない。心の奥底に、黒いにごった霧が重く沈んでいる。


大好きだった。すべて、すべてが大好きだった。

活気のある王国、優しいお父様、気難しいけれどいつも私を一番に思ってくれる大臣、城での暮らし。充実した日々。

ちょっとマヌケで、頼りになる側近様。冷静で暖かくどこまでも親切なメイドさん。怖いけど、いつもどこか悲しげな魔王様・・・。

大好きなものが 多すぎる。手に入れられるはずの無い、矛盾を手に入れてしまった。

それでも、痛む頭を・・頭蓋の中にある何かの、圧をあげて無理に膨らまされるような、破裂しそうな痛みを耐えれば・・・

誤解なのだと。何もかもが、一時の間違いだったのだと、理解することはできる・・・そう、これはただの偶然の産物。



姫「それでも・・・それでも、魔王様だけ・・・どうしても、憎む気持ちが、消えない・・・」


-------------
10日目
<魔王城 玉座の間>

ギィ・・・・ バタン


魔王「・・・・・・・そろそろ、着くとおもってたよ」

姫「・・・魔王、様」ヨロ・・・


魔王「まさか、あのタイミングで同体化するとは。俺も、驚いたよ」

姫「・・・なんで、アンデッドに、ならなかったのかな・・・?」


魔王「それは、側近が、死んでたから・・・だろう」

姫「・・・・」


魔王「側近が死んで、既におまえ自身、存在意義をなくして脆くなっていたんだろう」

魔王「魂が、はやく体外にでようとしている状態で、身体を殺したからな」

魔王「割れた容器から水が溢れ出すように、霊魂が飛び出したのだろう」


姫「・・・また、またなのね。・・・側近様に、また、たすけてもらってたんだ・・・」

魔王「・・・・」


姫「あのね、魔王様・・・私、もう、自分のことなのに、おかしいの・・・」

姫「あんなに仲良くなって、魔王様のこともちょっと好きになれたのに・・・ちゃんと覚えてるのに・・・」

姫「魔王を怨み、疎ましく思い、傷つけられ、辱められ、誇りもなにもかも捨てられたって・・・思いもあって・・・」


姫「どうしても・・・魔王様を討つまでは、許せそうにないの・・・」フラッ
チャキ

魔王「そんなにフラフラで。剣も、構えるというよりは引きずって・・・それで、俺が討てるとでも・・・?」

姫「ううん・・・思わないよ。殺したくなんかないもん。」

姫「ほんとは、もう、いやなの。討ちたくなんて、ないの・・・でもね、やるだけやらないと、そうしないと許してくれないの・・・」ポロポロ

姫「もう、だれも、私のせいで亡くしたくないのに・・・」

姫「やっぱり、私は、怨まれているのかなぁ。勇士達や・・・『あの方』の怨念が、私が救われることを許さないのかなぁ・・・?」ポロポロポロ


姫「行きますね、魔王様・・・私を、しっかり、殺してください・・・お願いします・・・」スッ

魔王「・・・来い、これが、最終決戦だ」


姫「う、うあああああああ」ダダダ


ザクッ


魔王「・・・・っ」

姫「・・・・・あ・・・」


姫「そんな・・・なんで・・・? なんで、殺してくれなかったの・・・せめて、避ければ・・・」ガクッ

魔王「・・・・う」ガクッ


スッ
メイド「魔王様・・・」ポロポロ


姫「あ・・・メイドさん・・・聞いて・・? 私、魔王様を・・・討ったよ・・・・」

姫「信じられる・・・? こんなことしといて・・・心が、晴れやかなんだよ・・・?」

姫「憑き物みたいに、のしかかってた あのプレッシャー、急に、なくなったの・・・」

姫「あ、あはは・・・私・・なんでこんなに、最低なんだろ・・・う、うわあああああんっ」


メイド「魔王様・・・魔王様・・・」ポロポロ

魔王「メイド、泣くな。すまない」ナデナデ


姫「なんで…なんで、笑ってるの…?なんで、そんなにやさしい顔ができるの…っ!?」

魔王「…討てるはず、ないんだ。そんなこと最初から、決まっていたんだ」

魔王「だから、姫が来る前に・・・メイドには、話しておいたんだよ。こうなることは・・・」


魔王「姫。おまえのその魂、前世では先代魔王の后・・・つまり、俺の母、だったんだ」


姫「・・・魔王様の、母・・・?」


魔王「側近の望んだ姫の姿、俺が好きだった母の魂。」

魔王「・・・姫が、こちらに禁忌によって連れ出されたのは・・・偶然じゃなく強い意思によるものだったのだと思う」

魔王「俺たちは、姫と、姫のその魂を望んでいた、その笑顔が好きだった…姫はそれをくれた…だから、もう、泣かなくていいんだ」

魔王「すまない。魔王じゃなければ、死者の笑顔を求めても美談でおわるんだけどな」

魔王「でも魔王にできないことなどない…手に入れられないものなどない…その結果がこれだっていうんだから、仕方ないな」

魔王「すまない。姫を・・・、母上の魂を、泣かせて」

姫「そんなのって、ない…。前世の記憶なんて私にはないよ!私なんて殺せばよかった!」


魔王「・・・魔王について、おしえてやろう・・・。魔王とは、常に一人・・・」

魔王「子を産み、魂を分ける。成長と共に量を増やし、親が死ぬとき、息子の身体にすべての魂が取り込まれる」

魔王「・・・つまり魔王の魂、俺の心のなかには、姫の魂を、嫁として愛しく思う気持ちもあるんだ」

魔王「姫が敵にまわった時点で、討たれるのは予測してた・・・覆せないのは、学習していたんだよ、先代のときに」


魔王「后は、人間だった。先代は人間と戦争をして・・・妃の産まれたヒトの国に手をあげられないまま・・・討たれたんだ」

魔王「人間姫が、綺麗事ではあと一歩間に合わないといった時に、全部わかったよ。綺麗事を棄てきれない以上、もう、間に合わないのだと」

魔王「あれは・・・誰の言葉だったのだろうな。知己をなくした姫の後悔か・・・魂に刻まれた、后の後悔か・・・」


姫「・・・なんで」

姫「なんで、いってくれなかったの・・・!?」

魔王「・・・」

姫「側近様は、魔王様を守るために必死だった! 私は知らずに、彼の誇りである貴方まで殺してしまう!」

姫「貴方が私を殺せないとわかっていれば、他の手段があったんじゃないの?戦争なんて、しなくてよかったんじゃないの!?」

魔王「一人の人間を殺せない魔王なんて、信じてもらえない」

魔王「信じてもらえても、つけこまれて人間に討たれるのはわかっている。それで先代をなくしたんだ」チラ


メイド「・・・魔王・・・様?」

魔王「・・・」ナデナデ


魔王「俺は…守らなければならないものがあったから、つけこまれる隙を与えることは、できなかった。すまない」

姫「そんな、そんなのって・・・じゃぁ、わたしは・・・ううん、側近様は・・・なんのために・・・」


魔王「側近、か。あれは・・・、姫のいた国、城のそばにずっといた霊魂だったんだよな」

魔王「魔王は、いい匂いがするって、2日もたたずになついてきたから、変な奴だと思って創生したんだ」

魔王「魂だけの状態で、俺になつくようなバカ、はじめてだった・・・よほど強い未練でもあったんだろう」


魔王「先日・・・あいつの魂の前世を、見たときにようやく気づいた・・・きっと、前世でお前を・・・姫を守れなかったから・・・」

魔王「姫の魂・・・后の子である俺についてきて、俺を守ろうと側近になったんたな…」



姫「・・・それって・・・ それって・・・? まさか、側近様は・・・」

魔王「・・・姫の、知己だった騎士の、転生した姿だろう」


魔王「・・・」シュゥゥゥ

メイド「魔王…さま? だめです、魔力つかったらだめ・・・本当に、もう、保ちません・・・!」

魔王「このまま母の魂を…元嫁を放っておけない。信頼できるヤツに、任せるよ」


魔王「創生術、発動。 ・・・こい、側近」


バシュゥゥゥゥ
側近「・・・・・・魔王・・・」



魔王「・・・なんだ。お前、もしかして、前回の記憶まで持ったまま創生されたか?」

側近「ああ・・・でも、なんで俺なんか・・・魔王、もう、魔力つかったりしたら、もたないだろ・・・?」

魔王「成功報酬だ。約束したろう。これは、側近の権利だから。・・・姫を幸せにするのは、側近なんだろう?」

側近「魔王…」


魔王「とはいえ、さすがにキツいな。側近の魂が、ここにいて気配を感じるほど、姫のすぐそばにいてくれたから、探す手間がはぶけたよ」

魔王「魂だった時の記憶まで持ったまま再創生されるなんて…すごいな。ありえないことだよ。お前、魔王になれるかもな、くくく」

側近「ああ。もうむちゃくちゃだな。くく、しかも、すごいんだぜ? さらに前の、騎士だった頃の記憶まで再生されてるよ…」ははは

魔王「最高だ。本当、ありえないことなんだがな・・・まさに死ぬ気の俺には、出来ないことなんてないのかもな」くくくく


側近「・・・・」

魔王「・・・・」


魔王「母を…妃の魂を…お前にまかせよう」

側近「はっ、魔王様の望むままに」

側近「でもさ…ちょっと違うぜ?俺にとっても大事な姫だ。死んで産まれ変わっても忘れられなかったくらいだぜ?安心しろよ、必ず、守り幸せにする」



魔王「ああ。さすが、俺の側近だ…」グッタリ

メイド「私も、共に逝かせてください」ギュッ

魔王「メイド…すまないな。最期まで、俺のわがままに巻き込む…」ナデナデ

メイド「例えそれが、私に刻まれた存在意義じゃなくとも、きっと私はこうせずにいられないと思えます」チュ



魔王「…あぁ、そう、だったな…」ギュッ


-------------

その後、魔王様とメイドさんは しばらくお互いの身体を抱きしめあっていました。

メイドさんは、幸せそうでした。

魔王様は、なぜか、寂しそうで・・・悲しそうで・・・不安そうで・・・。でも、どこか、心地よさそうでした。


魔王様が、手のひらをじっと見つめ、その手をメイドさんが支えて。

魔王様が、小さく・・・少し、いたずらをするような顔で「解放」と一言唱えると、あたり一面が光り始めました。


よく見ると、城の外や・・・魔王の領地中からも、光があふれていました。

淡く、すこし紫がかったような、蒼。

魔物たちから、次々と、大小の光の粒となって空に昇っていくのが分かりました。

魔物の魂。いえ、誰しもが同じものをもっている、その輝く光は、まるで涙が天に落ちていくように見えました。

世界が泣いているようでした。・・・美しく、泣いている。


泣いているのに・・・不思議と、悲しくはありませんでした。


-------------

側近「・・・逝ったね。はは、俺は魔物だけど、取り残されちまったな」

姫「・・・側近様。申し訳ありません。こんな、私のせいで・・・側近様の大事なものを、全て壊してしまいました」

側近「・・・姫ちゃん。違うよ」

姫「・・・」ポロポロ

側近「本当、魔王ってなんでもしちまうんだな。騎士だったときのことまで・・・思い出したって、いったろ?」

側近「俺は、姫ちゃんが一番大事だった。姫ちゃんの魂と、同じ匂いのする魔王も好きだった」

側近「姫ちゃん。騎士として、魔王の側近として・・・俺の一番大事なもの、守らせてくれる?」

姫「側近さま・・・はい。はい・・・っ。お願いします、ずっと、ずっと・・・お願いします・・・ッ」ポロポロポロ


側近「へへ。ありがとう、姫ちゃん」

側近「じゃぁ・・・帰ろうか。俺たちの・・・国へ。帰ろう」

姫「はいっ」


・・・・・・・・
・・・・・
・・・


??「・・・うぉ!なにこれ魔王様いねーじゃん!」ピョコ
??「ちょww 魔王城ww 超閑散www」
??「ひゃぁぁ。大変だー、これ、ぼくたちが手入れするのー、やだなー」
??「お兄ちゃん!面倒くさがっちゃだめって、いつも言ってるでしょー!」
ワイワイ ガヤガヤ


-------------

・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

あれから、数年が経ちました。

私は今日も、これを書いています。

魔王と、人間の悲しい戦争の記録。

魔王や、魔物たちの、知らされていなかった真実を、人間たちに伝えていくために。


姫「・・・側近様の、ためにも」

~~~~~~~~~

側近「あいつはさ、魔王だから。きっと復活するんじゃないかな」

側近「だから、それまでに、魔物の偏見をなくし、共存できる世界を作る」

側近「俺は魔物で・・・でも、人の騎士なんだ。…『恐怖の魔王』なんて幻、俺が全部なくしてやる。世界に、真の平和を贈るよ」

~~~~~~~~~


-------------

・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

あれから、数年が経ちました。

私は今日も、これを書いています。

魔王と、人間の悲しい戦争の記録。

魔王や、魔物たちの、知らされていなかった真実を、人間たちに伝えていくために。


姫「・・・側近様の、ためにも」

~~~~~~~~~

側近「あいつはさ、魔王だから。きっと復活するんじゃないかな」

側近「だから、それまでに、魔物の偏見をなくし、共存できる世界を作る」

側近「俺は魔物で・・・でも、人の騎士なんだ。…『恐怖の魔王』なんて幻、俺が全部なくしてやる。世界に、真の平和を贈るよ」

~~~~~~~~~


姫「ふふ。側近様は、きっと出来ます。だって、魔王様まで『魔物じゃないんじゃないかと思う』って言うくらいですから・・・きっと、人間にも信頼されます」


トントン
側近「姫ちゃん、ちょっといい? 今度の王侯会議の出席者と議題なんだけど・・・」

姫「・・・側近様の魂、もともとは一体 どんな人だったんでしょうね?」

側近「え?」

姫「いえ、なんでもありません」クス



・・・・・・
・・・・
・・


側近はその後、騎士王と名を改めることになる。
そして、魔物と人間の和平を実現させ、世界をひとつにした魔物の『勇者』として後世に名を残す。

まぁそれはずいぶんあとの話…。


-------------
エピローグ

<魔王城 地下・禁じられた部屋>


石造りの、無機質でただ空間だけが広がる部屋。

そこに独り、およそ場に合わない、手足のすらりと伸びた美しい姫が座っている。

まるで幼い子供のように、美しい金髪を頭の横でふたつに結んでいる。

不釣り合いなエプロンドレスが不思議に似合う。


ペラ…
?「まさか、伝説級の禁忌を、一代で二度もしていたなんて…思い付くはずないじゃないですか…」


知らなかったんじゃなく、思い出せなかった。

魔王様をわかりたいと思ってたのに、自分のことすらわかってなかった。



?「まさか私が…『メイド』が、禁忌で産まれた魔物だったなんて…」


魔王様と共に逝ったはずだった。

眼が醒めたら、そこには魔王様がおらず・・・この部屋の中で、横たわっていた。

人の身体。

・・・遠い、昔の記憶。

愛した思い出。

愛されてきた思い出。


それが、突然私の中にあふれ出して、しばらく身動きもとれず、涙だけが流れ出た。


その時、部屋の中に置かれた たくさんの書物に気がついた。

魔王様が、いつも雑務とよびながら、執務室で書き溜めていた本と同じ装丁だった。


魔王様。

魔王様。


私はその本を手に取り、読み始めた。

そこには、私と魔王様の全てが、書き記されていた・・・。


210年間、魔王様が執務室で続けていた雑務・・・膨大に残された記録を読む時間は充分にある。

復活の時をまちながら、魔王様のお心を紐解いていく。

胸の痛みを感じながら、魔王様を思う。

痛みのひとつひとつに魔王様を感じる。


孤独な拷問。

幸せな時間。


>>199はこちらのミスです。大事なところで連投してしまった・・・
今日はくじけました・・・orz
つづきはまた後日張りたいと思います。
見てくださる方が居たら、心よりお礼申し上げます。

乙乙

続きを早くぷりーず

>>205 ありがとうございます、初乙に感謝します!!
>>206 ううう。お待たせして本当にすいません!!

催促いただけたのがあんまり嬉しいので、
作業を放置して10時くらいからまた投下していきたいと思います。

見てくださる方、本当にありがとうございます!!
本編終了後、後日談的なものをのせるかどうか悩み中です。
ご意見、ご感想、批判、乙、催促、なんでも嬉しく思います。
割り込みも歓迎しますのでお聞かせくださると生キャラメルが熔けます。

10時って書いてるよ・・・22時ですよね・・・
では↓から投下をはじめます。


-------------
魔王の記した書物 [創生記]より
-------------

魔王暦 XXX年

今日よりここに記録を残すことにする。
まずはこの記録を残すまでの過程を書くことで始めたいと思う。
主に、姫についての記録を残す。


姫は、母上の双子の姉だということだった。
母は、旧帝王国の王の娘で、出生のとき双子だったらしい。
忌み子として、母の姉は王侯貴族の下に養子としてだされ、貴族の下心もあり密かに第二後継の姫として育てられたとの事だ。

母は、姉のことが気がかりだが、姫として、忌み子である姉とは関われずにいた。
しかし、その美しさや純粋さが魔王の目にとまり、先代魔王の元へやってきた。
先代によって、忌み子の姉と接触することも叶うようになって、密かに、幸せに暮らしていた。

俺が生まれてからは、先代の力が多少減ったこともあり、母は姉と会うのが難しくなってきた。
そんな母に頼まれ、まだ身軽だった俺は 母の代わりとして姫に会いに行くようになった。
俺たちは、本当に幸せだった。一線を越えることはなかったが、お互いに思いあっていたと思う。

そんな時、姫の育ての親である貴族が、叛乱を起こした。
第1継承の姫が行方不明というのを聞きいれ、第2継承の姫を正式に姫として迎えろ、そして親である自分が執政を・・・という思惑だった。
王は、王位が惜しかったのだろうか。相思相愛の娘の悲願で、第一継承の姫が家を出るのを黙認したはずだったが・・
ここに来て、「あれは魔王にさらわれたのだ、魔王を討ち、娘を取り返して証明してやる」などと宣言してしまった。


戦争になった。
何度、母が創では無いと説明しても、誤解なんてとけない。相思相愛とは信じてもらえない。
魔王に与するもの、あるいは操られて正気を失っているなどと、言われた。
王は真実を知っているので、后を人質にとれば手を出せないと踏んだのか、強襲に出た。
先代は、后の生まれの国、生みの親を相手に強く踏み出せず・・・討伐された。

魔王の死と同時に、魔物たちは一部を残してほとんどが霧散した。
王は討伐成功で凱旋帰国。妃はその後、魔王城に立てこもった。

ショックで衰弱していたのだろう、母は間もなく死んだ。
俺は、母と同じ面影を持つ姫に、ますます入れ込んでいった。


だが、ある日、俺のせいで、姫が前魔王に嫁いだ女の片割れ姫だということが人間にバレてしまった。
王位継承の目論見を駄目にされ、自身の立場も危ういと思い、怒った貴族が体裁をとるため姫の暗殺計画を立てた。

姫は、俺のせいではない、いつかはこうなるはずだった。ここまで生きてこれたのは貴族のおかげ。
だから、もうよいのだと諦めたようだった。
だが、俺たちは、愛し合っていた。
殺されるくらいならと、魔物として生まれ変わらせることを、姫は納得してくれた。
その、危険性も受け入れてくれた。

禁忌の術が、無事に成功した。本当に良かった。
用心のために、姫の外観だけを複製させ、自害したように見せかけて、旧帝王国を後にした。


魔王城に戻り、俺は葛藤した。
生体を殺せばこのまま魔物にできる。でもそれでほんとにういいのか。
魂が生体に戻るのをまっても、人の国には返せない。魔王とつながりがあるとわかれば結局…、后と同じ道を進ませたくない。

禁忌について俺は調べ、結局、生体だった頃の記憶と、魂の半分を残して生体を凍結させることにした。
いつか安心して国に帰れるようになった時に、戻してやりたい。
俺たちのことなどすべてを忘れ、人間としてもう一度、今度は幸せに生きてほしいと思った。

この思いを忘れないために、自身の決意として、これからは姫のこと、俺のことを書いていく。


魔王暦XXX年 X月X日

これは、ちょっとした地獄だ。

魔物姫との生活。
明るく振る舞うが、国や仲間、亡くした妹のことなど思うところがあるのだろう。見てて辛い。
いつか人になった時、あまり俺と深入りした記憶があっては余計な苦労をさせてしまう。なるべく冷たく接し、人の世に戻ることに抵抗感がないようにしたい。



魔王暦XXX年 X月X日

愛してるのに、冷たく振る舞わなければならない。
愛してるのに決して結ばれることがないとわかっててそばにいるのはつらい…。
だが結ばれて、前魔王たちのような目には合わせられない。耐えるしかない。



魔王暦XXX年 X月X日

イライラしてしまう。
それでも相変わらず、俺を愛してくれる姫。
つらい。いっそ嫌われてしまいたい。


魔王暦XXX年 X月X日

俺を気遣いながらも、俺に嫌われたのではと、姫が泣いた。
彼女が泣くのは耐えきれない。策を考えねばならない。



魔王暦XXX年 X月X日

姫の外観を幼少期の姫に変化させ、禁忌から今までのすべての記憶を封印することにした。
これで姫が、苦しまずに生きていける。

四天王の一人のアイディアで、姫のイメージから遠ざけるため、メイドにすることにした。
姫は可愛らしい。



魔王暦XXX年 X月X日

まっさらになったメイドに、創世術で産まれたのだと教えてやる。
なんの疑いももたないようだ。もう彼女が、悲しく笑うことがなくなった。
無邪気にはしゃぐ彼女が愛しい、でも、やはり辛い。これはどうにもならないのか。


魔王暦XXX年 X月X日

メイドが俺に好意を打ち明けてくる。
記憶の回復を心配したがちがうらしい。…すべてを忘れても、また俺を愛してくれるのか。
だが、やはり愛情を伝えることは出来ない。深入りしない方がいい。
俺が姫の代わりに最良の判断をしてやらねばならないと思う。



魔王暦XXX年 X月X日

駄目だ。
無邪気に好意を伝えてくるメイドをみていると、どうしても地下の姫の姿を思い出してしまう。
辛い。



魔王暦XXX年 X月X日

このままではいけない。
メイドに、おまえの俺への気持ちは偽物、俺がそのように命じて創ったからだと伝える。
試しに奉仕をする淫魔を創って見せてやった。
愛してるとつぶやきながら淫らに俺を誘う淫魔をみて、ショックを受けたようだった。
メイドは、あまり笑わなくなった。
俺と距離を置き始めたようだ。

ようやく、平穏な時が訪れた気がする。


魔王暦XXX年 X月X日

突然メイドが、夜伽を申し出た。
正直、堪えられない。
「そういう存在意義なのだとしても、魔王様を思う気持ちが確かにある。淫魔なんかが魔王様に触れるのを想像すると嫉妬でおかしくなりそう」だそうだ。
どうしよう。嬉しい。堪えらんない。俺もう淫魔とか相手しないよ。ってそんな場合じゃない。
必死でつっぱねた。今日はもう書けない。
頭の中までめちゃくちゃだ。



魔王暦XXX年 X月X日

事故がおきた。
領地内のダム建造現場で、うっかり自分の上流の水路を爆破拡張した。
欲求不満よくない。まさに水で頭を冷やされた。


魔王暦XXX年 X月X日

情けない。
メイドが事故のことを知ったらしく泣きながら駆けつけてきた。
あまりに泣くので慰めてやると、反則の表情でまた好意を伝えてきた。
これは不可抗力だ。俺にも出来ないことはあると知った。



魔王暦XXX年 X月X日

駄目だ。一度手を出したら制御がきかない。
あれ以来なんども求めてしまっている。
このままでは、メイドを道具にしているのと同じではないかと反省する。



魔王暦XXX年 X月X日

やっぱり無理だ。いじらしい様子をみるだけで、意識もってかれる。
我慢するのはやめて、精一杯可愛がってよろこばせてやることにする。
でも、あくまで一方的を装って、魔王のイメージらしく振る舞えば、少しはましだろう。…言い訳か。


魔王暦XXX年 X月X日

本気だしすぎて、メイドが3日も目を醒まさない。
心から自重することを決めた。



魔王暦XXX年 X月X日

ようやくメイドとの距離感や付き合いかたが安定してきた。
メイドは相変わらず好意をよせてくれる。
何故、こんなにされて嫌わないのかが不思議だ。
ありえないが、創世のように存在意義まで押し付けてしまったのではないかと思う。
好かれるのは幸せにおもうが、罪悪感が消えない。


魔王暦XXX年 X月X日

王国に残党もある、真実に気付かれて人の世に戻してしまうわけにはいかない。
あくまで道具のように振る舞い、「魔王に気持ちまであやつられて好きにされている」ように思わせよう。
だが本当に傷つけてしまわぬよう、細心の注意でメイドに接することにする。
これでいい。
こんな根回しばかりする俺は、愛してもらう資格はないかもしれない。



魔王暦XXX年 X月X日

王国が滅びたらしい。新らしい国が周辺をまとめるらしい。
これで、姫を狙うやつらもいなくなっただろう。
これで安心して…姫の生体を人の世に帰せる。同体化させなければ、人間として何も知らずに生きていけるだろう。



魔王暦XXX年 X月X日

イライラする。
人として生かすために姫の生体を保存しておいて、それをしたくない。
なんてザマだ。姫が、俺を忘れて誰かと結ばれるのかと思うと人の世に帰せない。
やつあたりで魔法打ちまくったら、メイドが怯えている。


魔王暦XXX年 X月X日

メイドは本当に、俺を慕っている。幸せにおもう。
万一俺が死んだら、ショックで自我がよわって、生体に魂が戻るだろう。うぬぼれだろうか。
だが、もし生体を人の世に帰していたら…こちらでの記憶が急にもどり、きっと混乱して傷付くだろう。
やはり、手を出すべきではなかった。
いまとなっては姫の半身であるメイドを無下にもできない。
もう言い訳も取り繕えなくなってきた。



魔王暦XXX年 X月X日

どうするべきか考えると、自分にばかり都合よくなってしまう。
正しい判断がつかない。
せめて、メイドが姫に戻った時、すべて理解して自分で正しく判断ができるように、
この記録を続け、生体と共に保管していくことにする。

願わくば、強引にお前を拘束しつづけている俺を許してくれ。


-------------

パタン
メイド姫「・・・」

メイド姫「魔王様が、あんなに禁忌に詳しかったのも納得ですね…二度目なら」

メイド姫「私が禁忌について知ってたのも…生体だったころの記憶。禁忌をした記憶が、わずかに残ってたからだったのですね」


メイドだった時の自分が恨めしい。
嫌なことなんてなにも教えずに、なるべく苦しまないように。
ただ魔王様を愛していられるようにしてくれた。
魔王さまだけが、真実をかかえていつも悩みながら…。


でも、魔王への気持ちは、創られたときの仕様じゃなかったのが、嬉しい。
偽者じゃなった。ちゃんと自分の想いだった。

昔から愛し合っていた。
一からはじめてもまた好きになった。
道具のようにいわれても、好きでいられたことが、誇らしい。

あの方を思う気持ちは、本当に、本物なのだと、ようやく証明できた。


なら大丈夫。

私は、すべてを理解して待つことにしよう。

魔王様の全てを、理解して待つことにする。

取り残される私のために、魔王様がのこしてくれた4匹のドワーフと、城を治しながら。

魔王様の、お帰りを ここで待っていよう。


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


-------------

数年後 
<魔王城 謁見の間>


部屋中をびっしりと覆う瘴気。あまりにも濃い瘴気の先は、10cmだって見えない。

広い部屋の中で、ただ行き場を求めるように蠢いている。 


メイド姫「・・・・・」



瘴気は次第に色濃く、渦を巻くようにして形を定めていく。

ぼやけた輪郭ながらも、次第に魔王の姿にかわっていくのがわかる。

懐かしい気すらする。

でも、毎日、一秒だって思い出さない瞬間はなかったその姿。


メイド姫「…おかえりなさいませ、魔王様」


渦に取り残された瘴気が、勢いをまして魔王に吸い込まれていく。

魔王は静かに その場に君臨していた。

静かに、その瞳が開かれる。



魔王「ただいま、メイド…  おかえり、姫」


私は、居ても立ってもいられず、その場に泣き崩れた。


-------------

魔王「落ち着いたか?」ナデナデ


メイド姫「・・・はい。ふふ。例えじゃなくて、本当にその瘴気、魔王様自身だったんですね」クス

魔王「ああ、これか・・・」

魔王「そうだ。ようやく、意志疎通できる量の瘴気をまとめられるようになった」


メイド姫「この部屋に、瘴気が集まってきてるのにきづいたとき・・・、魔王様の言葉を、思い出して。魔王様だろうと思いました」

メイド姫「あまりに増えるので、ちょっと・・・焦りましたが」クス


魔王「ふふ。コレに見覚えがあったから、本当はずいぶん怖かったのではないか?」

メイド姫「ま、魔王様、からかわないでくださいっ」

魔王「くくく。まぁ、確かに全部だせば、俺でも引くくらいの量の瘴気があるからな」ナデナデ


魔王「知っているか? 魔王は産まれてくるとき、そこまでコントロールできないから母親から実体をもらうんだ」

魔王「今と同じ程度の量の瘴気だが、最初はこれを固形化できない・・・。だから肉体という容器が必要になる」

メイド姫「それで、魔王は后を娶るのですね」

魔王「まぁ、子を創らなければそうそう弱ることも無い身だから、必要ないといえば必要ないんだが・・・」


魔王「まぁ、ともかく成長につれ収める瘴気が増え、充分に満たすと肉は瘴気に馴染み、解けて、それも瘴気の一部になる」

魔王「これでようやく成体だな」


魔王「異様だろう。まるで無理矢理気体を固めている、ドライアイスみたいだ」

メイド姫「ドライアイスですか・・・」

メイド姫「確かに・・・あれは氷のくせに、油断して触ると大やけどするところは似てるかもしれません」


メイド姫「・・・それから、暖めてあげたいと、そうすればそうするほど、静かに身を削って震えながら小さくなっていくあたりも…」


魔王「・・・・・・あれを、読んだんだな」ハァ

メイド姫「全て、読ませていただきました」

魔王「くくく、全て? あれだけの量を? よほど暇だったのか」クク

メイド姫「・・・・・・」


魔王「・・・呆れたか? 魔王がこんな、情けなく、弱音ばかり漏らして・・・悩んで、独りの姫に固執していたなんて」

メイド姫「魂は…みな、同じ。誰にも差はない。それであたりまえだと、教わりましたから…」


魔王「・・・そうか」

メイド姫「はい」


魔王「…だが、俺は魔王だよ」

メイド姫「・・・?」


魔王「弱音をはき、どんなに溶けて崩れても、ヒトや、ドライアイスみたいにそれで終わることはない。そんなものとは性質がちがう、魔王の魂を持つものだ」

メイド姫「・・・」



魔王「この魂は…俺の想いは、どこにも霧散せず、死を経験しても、消えることもなく、ただそれを刻んで、また同じようにひとつに固まる…」

魔王「だから…もう、恐れてにげるのはやめようと思う。いくら俺でも・・・魔王でも・・・、俺は、俺だから、魔王だから」

メイド姫「魔王、様?」


魔王「どこに逃げても、どう振り払っても、この想いは消えないとわかった。どんなに取り繕っても変わることはない」

魔王「だからもう、魔王らしく、すべてを、無理にでも・・・手に入れて見せよう」



魔王「姫・・・おまえを愛している。どんな絶望があろうと、俺と共にあれ」



メイド姫「はい。魔王様…過去も未来も、ずっと、愛し続けています」



-------------

おわりです。

ここまで読んでくださった方、お付き合いいただきありがとうございました!!
途中で読み飽きてしまった方、駄文で申し訳在りません。

メイドちゃんに反省文提出してきます。

面白かった

反省文
>>75
>>199
連続投稿しています。お目汚ししてすみません。


所々、口調などにおかしいところがあります。
誤字も気をつけたつもりだったけれど見直すと結構ありますね。

しかも、最初のほうは投稿の感覚がつかめず
かなり読みにくくなってしまっていますね・・・本当にすみません。

とりあえず >>1 >>2 の名前欄が恥ずかしすぎます。
本当に出鼻をくじかれた気分でした・・・orz
いっそ誰か罵ってください・・・。

>>232 うああああああああああ ありがとうございます!!
初貼りだったので緊張しました!! 今、手ふるえてますww

なんかもう見てくれた方が居るのが嬉しいので
『要望が在れば・・・』なんて生意気なこと書けるわけも無く
後日談を勝手に このままのせさせてもらいます。

軽めのつもりなので、よろしければそちらもお願いします。

爆走乙

全然遅くなんてなかったから自信を持って

-------------


後日談1

姫「魔王様は、魔王らしくしてください!」



-------------

>>236 うううう、本当に涙でそうです。これは夢ですか。
初張りでこんな優しくしてもらえるとなんか勘違いしそうです。

よかったらコレもってってください(泣
つ生キャラメル、ホットミルク


<魔王城 執務室>


タタタタタタ バタン!
ドワーフ1(以下、兄)「まおーさま!聞いてー!いいこと思いついたよ!!」

メイド姫「こら。魔王様の前ですよ?」


スタタタタ
ドワーフ2(以下、妹)「おにいちゃん、廊下は走らない!」

テクテク
ドワーフ3(以下、男)「ちょwwwwwまじ名案wwww受けるんですけどwww」

ペタペタ
ドワーフ4(以下、女)「あのさー、あたしたちってー、四天王になれるんじゃね?」


魔王「は?」


メイド姫「・・・・全員そろって、一体どうしたんですか?」


兄「いまさ、魔物って僕達しかいないじゃん!」

兄「そしたら、男さんが…『まるで四天王気分だな!』って」

妹「もう。男さんはすぐ調子のりすぎだよー」

女「でもさー、実際ほかに居ないわけだしー、ほんとに四天王にしてもらったらいいんじゃね?って」

男「俺発案www俺リーダーwww」

兄「いいでしょ!」

妹「いいかどーかは魔王さまが決めるのー!」

女「えー、いいよねー?」


魔王「いいわけが無い」

メイド姫「いいんじゃないですか?」シレッ


魔王「え?」


女「姫様、ちょー話わかるー」

男「まじでwwwwちょ、国の危機wwww」

兄「発案しといてなにゆってるんだよー」

妹「おにいちゃん、責任転嫁しちゃだめー」


魔王「ちょっとまて、姫、なに言ってる?」

メイド姫「いえ。配下のいない魔王なんて締りませんし、瘴気が戻るまでは、まともな魔物も創れませんから」

メイド姫「この子たち、何気に結構な量の瘴気で創られているから、身体も丈夫ですし」

魔王「いや・・・まぁ、それはそうだけども」

メイド姫「いい子たちですよ?」


妹「褒めてもらっちゃったー!」

兄「ぼくら、魔王さま復活するまでがんばったもんね!」

女「魔王城、広いし掃除も大変だったわー、まぁ、これからもしばらくそうだし、なんかないとやってらんないよねー?」

男「ちょwww精神的圧力wwwwお前死ぬつもりかwww」


魔王「それは…まぁ、確かに報償が必要・・・か?」

メイド姫「では、そうされますか?」


魔王「いやいや、だからって四天王は・・・どう考えても無理だろう。回復したらちゃんと創るよ」

兄「えー!つまんないよ!」

妹「おにいちゃん、シッ」

メイド姫「・・・ちゃんと?」


魔王「そう。立派な奴。・・・魔王にふさわしいやつを創る」

メイド姫「魔王にふさわしい子、ですか?」

魔王「なんだ、やけにつっかかるな」

メイド姫「いえ」

メイド姫「・・・その、『魔王にふさわしい子』をつくる時は、私にも手伝わせてもらえるのかな、と思いまして」


魔王「何を言ってるんだ。在位中の魔王にしか使えない業だぞ? 手伝えることなんて・・・」

メイド姫「ふふ。相変わらず、私の気持ちには鈍いですね」

魔王「・・・あ」


メイド「魔王様の瘴気・・・、魔王様の魂・・・、魔王様の全て・・・私に、包ませてくださいませんか?」

魔王「くそ。・・・やっぱり、おまえは反則だな。不意打ちだ」


兄「ねーねー、四天王・・・ダメなの?」

魔王「くく、姫にこんなこと言わせてくれるとは。これは確かに報償が必要だな。おまえたち、姫に感謝しろよ?」


男「まじでwww姫様感謝www」

女「まぁいわれるまでもなくー、姫様やさしいしかわいいし、だいすきだしー?」

兄「え、なんでなんで? どーゆーこと?」

妹「おにいちゃん、子供はきいちゃだめー」


魔王「やっぱり不安だ」


メイド姫「そういえば前の四天王はどうやってお創りになったんですか?」

魔王「先代が出生祝いにくれたものだ。元々は俺が創ったんじゃないよ」

メイド姫「素敵な贈りものですね」

魔王「素敵かどうか分からんが・・・兄弟みたいなもんだったな」


魔王「・・・いや、よく考えたらロクな奴らじゃなかった。なんかこいつらでもいい気がしてきたな」

メイド姫「ひどい言われようですね」

魔王「あいつらの、四天王としての二つ名をしっているか?」

め姫「いえ…見かけるときは四人揃ってらしたので。四天王様としかお呼びしていませんでした」


魔王「『歓び』、『楽しみ』、『幸せ』。・・・唯一ましだったリーダーのでも『祝福』だった」

メイド姫「…四天王?」

魔王「なんの四天王なんだって疑問は当然だな。まぁ、俺の出生祝いだから、と思っていたんだが」


メイド姫「・・・もしかして先代様は・・・」

魔王「こんな時に、側近が『嫌がらせとしか考えられない』と言ってたのを急におもいだしてしまった」

魔王「側近。四天王と仲良かったからな。本気でそう思っただろうな」


メイド姫「ですが、さすがにそれはないでしょう」

魔王「・・・いや、あの先代だし・・・。くそ、素直に四天王に待遇面でいろいろ図っていてたのが悔しい」

メイド姫「・・・くすくす」


魔王「よし、決めた。魔王が嫌がらせされて、報復しないわけにいかない」

魔王「くくく、いつか子を成したら、『四天王』を贈ってやるとしよう」


男「えっ、じゃあおれら、四天王候補ってこと?まじでwwww」

女「姫様ーはやく赤ちゃんうんでねぇー?」

兄「なんで赤ちゃんの話になったの?」

妹「おにいちゃん、さすがにそれは、会話から汲み取れたはずだよー」


メイド姫「・・・ですがそれだと、単に魔王さまの報復になってしまいますね」

メイド姫「この子たちの報償は、別に何か考えるべきなのでは?」

魔王「む。そうだな・・・」


魔王「じゃあおまえらには報償として、好きな容姿にかえてやる。せいぜい、ソレらしい姿を考えておけよ?」


兄「まじ!?やった!おれ、かっこいい覆面ヒーローになりたい!!」

妹「…おひめさま…は、姫様とかぶるから…人魚姫?」

男「おれwwwイケメンwwwwうはwモテキ到来の予感wwww」

女「じゃぁあたしー、女子力MAXな感じの、めちゃもてボディーほしー」


メイド姫「・・・さすがにこれは、ひどいことになるのでは」

魔王「ククククク、すごく楽しみになってきた」ククク


魔王「・・・よし」ピタ

魔王「早く子を創るとしよう、物事は迅速に成すべきだ」ムギュッ

メイド姫「っあん//」


兄「あれ?でも魔王さまっt(モゴモゴ)」

妹「言っちゃだめ」ガッチリ

魔王「・・・妹、いい仕事をした。リーダーはおまえだな」

兄「えwwwwなんでなんでwwwwちょ、俺涙目なんすけどwww」


メイド姫「・・・魔王様・・・?」ニッコリ

魔王「まて。違う。誤解だ」

メイド姫「ふふふ。何が誤解なのか、説明なさってくれますね?」ニコニコ

魔王「」

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

魔王「くそ」イジケ

魔王「兄のせいでばれたじゃないか。せっかくいい感じで、久しぶりに本気でだせそうだったのに」

メイド姫「ぜんぜん溜まってないんですから、そんなに出さないでください!」

魔王「くっ」


兄「…なんの話?」

妹「…魔王さまは、血も涙も瘴気で出来てるから、瘴気の話だよぅ・・・//」


メイド姫「まったく・・・魔王様は、魔王らしくしてください!」

魔王「」ガーン


魔王「姫に・・・魔王らしくないっていわれた・・・魔王なのに・・・」
トボトボトボ・・・カチャ パタン


兄「あっ、まおうさまー!まってよー覆面ヒーローにしてよー!あと、何があったかおしえてー!」

男「ちょww兄、もうやめてあげてwww男同士触れちゃいけないトコあるからwww」

女「えー。しょうがないなー、やっぱ女のあたしがなぐさめてあげるしかないかんじー?」
ワイワイ・・・ ガチャ、パタン



メイド姫「…もう。魔王様の、自分の我を通す時に、言い訳しちゃう癖は、なかなか直りませんね」ハァ

メイド姫「魔王様は、魔王なんだから・・・言い訳しなくても・・・魔王らしく、してくれたらいいのに//」ボソ



妹(姫様、真性マゾヒスト説ですー・・・)

-------------
後日談1 おわり

※このまま側近のほうの後日談も乗せます。
宜しくお願いします。


-------------



後日談2

魔王「魔王に勝てる、と言ったのか?」



-------------


<王国 姫の私室>

タタタタタタタ バターン
騎士王(元側近)「やった!魔王が復活したらしい!」

姫「ほんとですか!早速会いにいきましょうよ!」


騎士王「いやいや、ここは祝賀会をひらいて迎えるのがベター!」

姫「パーティですか!名案です、騎士王様!」

騎士王「ふっふーん。…あ。でもなぁ…」

姫「なにか問題が?」


騎士王「いやー、さすがに王になっちゃったし。いくら内々だとしても俺が、魔王復活祝いってやばくない?」

姫「そうですねぇ…民の手前、いまだ偏見も残ってますし…」

騎士王「うーん…じゃあ、こういうのは?魔王復活、平和条約提携のため会合、調印式典→祝賀会って流れ!」

姫「さすが!王様が板についてきましたねー」

騎士王「いやいや、やっと王様になったばっかだからまだまだ!」

騎士王「それにほら、俺の場合、特殊な状況で、王位を継承されただけだし…その、まだ、姫ちゃんとの婚姻とかも…な?」テレテレ

姫「…やん、騎士王様ったら//」


騎士王「へへ。でもさ!いまの祝賀会は勢いで言っただけだけど、結構いいかも!」

姫「?」

騎士王「平和条約の調印だよ!だって、結構それって偉業だろ?成功したら、一気に民衆のハートゲットじゃん?」

姫「そっか!一気に信頼されてゴールイン、ですね!」


騎士王「えへへへ…ゴール…イン…」ニヘラ

姫「やだ//えっちな顔してますよ!//」

騎士王「し、仕方ないだろ!相思相愛だってわかってて、こんっっっなにそばにいるのに、未だ手を出せない!生殺しもいいとこだよ!マムシ酒になっちまうわ!」

姫「そ、それは…お父様、私の事になるとちょっと…神経質っていうか…」

騎士王「神経質で魔物に王位ゆずれるかーい!あれはただの親バカ!ピュアな姫ちゃんを手放したくないだけに決まってる!」

騎士王「王位はくれるのに、姫はくれないって、どんだけ無茶なんだよ…」ガックリ

姫「言葉もないです…//」

騎士王「『姫を救ってくれたお前を、ワシは信頼してるんじゃが…ほれ、何分、民衆からの信頼が充分ではないじゃろ?まずは王位で手を打たないか?ほれ、后もよりどりみどりになるし…』って…意味わかんねぇよ…」ガックリ

姫「あははは、そっくりー!」

騎士王「意味わかんなすぎて、百万回脳内再生したからな!」エヘン!

姫「それで、ゴールインの話になるんですねー」フムフム

騎士王「そっ!民衆から信頼されまくっちゃえば、もう前王さまも、言い訳できない!」


姫「はぁ・・・ついに、騎士王さまのお嫁さんになれるんですねぇ…♪」

騎士王「ほんとは姫ちゃんが王位継承して、俺は婿になるはずだったんだけどね…」ハァ

姫「?お婿さんになりたかったんですか?」キョトン

騎士王「いや、女王様って呼びたかっただけ」ニヤニヤ

姫「もう!からかわないでください!//」


騎士王「あははは。じゃあ、さっそく、魔王復活をしらせてきた視察兵に、魔王への伝言たのんでくるよ!」

姫「はぁい♪よろしく伝えてくださぁい♪」


・・・・・・・
・・・・・
・・・
<王国 大面談室>


魔王「俺を呼びつけて、なんの用だ」フン


騎士王「ちょっ!伝言きいて来たんでしょ!平和条約!調印式典!復活パーティ!」

魔王「最後のは聞いてない」

メイド姫「側近様…あぁ、今は騎士王様となられたんでしたね、お久し振りです」

騎士王「えっ?」


騎士王「・・・もしかしてメイドちゃん!?なんでそんな艶っぽい大人の姿に!これはたまらない!」

姫「騎・士・王・さまっ!?」プシュー

・・・・・・・・
・・・・・・
・ ・・

騎士王「ゴメンナサイ」

魔王「止めなければ斬り殺せたのに」チッ

騎士王「ありがとう姫ちゃん!君は俺の命の恩人だ、結婚してくれ!」ガシッ

姫「もう//調子いいですね//出来るならしてますよ//」


魔王「なんだ?まだ婚姻を結んでないのか?よほどお前は信頼がないんだな」

騎士王「はっそうだった!・・・って、それは違うぜ?!」

メイド姫「どっちですか」

騎士王「そうじゃなくて!調印の話なんだよ!俺の結婚がかかってるんだよ!!まずは聞いてくれ!」
かくかくしかじか


魔王「…ふむ、そんな話になってたのか…」

騎士王「じゃあ、そういうわけでコレにサインを!」

魔王「まぁ調印は構わなかったのだが…そう聞かされると、したくなくなるのが不思議だな」


騎士王「鬼だ!」

魔王「魔王だ」


メイド姫「…魔王様、あまりいじめないであげてください」

魔王「チッ」


姫「魔王様ぁ、調印、お願いしますぅ…」ウルルン

魔王「…いや、なんか、それは卑怯くさくないか?」

騎士王「まぁ、姫ちゃんの可愛さは卑怯だよなー//」テレテレ

魔王「」イラ


魔王「…ふん。いいだろう」

騎士王「よっしゃ!」グッ

魔王「姫をこちらに寄越せば、調印してやろう」ニヤリ

騎士王「なっ!?」

姫「?」キョトン

メイド姫「…魔王様ったら」クス


魔王「よく考えたら、姫の魂は俺の母だし、別に欲してもおかしくないだろう?」

騎士王「おかしいよ!俺の事はなんともおもわないのかよ!」

魔王「そんなわけなかろう・・・」

騎士王「ほっ」

魔王「俺の中には先代の魂もはいってる。先代が『姫は俺の嫁』って言ってるからな、ちょっとした恋敵みたいに思ってる」

騎士王「ちょっとまて」


騎士王「いいか!今の姫は前世の俺の魂と、今の俺と、二代に渡って契りかわしてんの!名実共に俺のもんだよ!」

魔王「お前、婚姻はまだだと言ったじゃないか。騎士だった頃も返事してなかっただろう」

騎士王「ぐっ」

魔王「姫…ああ、こちら側の、メイド姫にとっても姫は妹だしな、悪い虫がつくのは良くない」ウンウン

騎士王「かつての側近を虫扱い!?」


姫「・・・というか、私、妹なんですか?」

メイド姫「はい。私は、先代様の后の、実の姉です」

メイド姫「姫様は、私の妹の魂をお持ちなんですよ」

騎士王「」ビックリ


姫「…メイドさんが、私の、おねぇちゃん…♪」キラキラ

メイド姫「ふふふ。姫様が、私の妹です」ナデナデ


姫「すごい、すごいすごい♪嬉しいなぁ♪」

姫「私、一人っ子なんで、姉妹とか憧れてたんです…それがまさか、大好きなメイドさんがお姉ちゃんだなんて♪」

メイド姫「うふふ。魔王城にいらしてみますか?」

姫「いいんですか!?」

メイド姫「いつでも歓迎しますよ。姫のお部屋も、そのままにしてあります♪」

姫「うわぁ、うわぁ、嬉しいなぁ…。もうメイドさんには会えないし…絶対に行けないんだろうなって、思ってたから…」グスン


騎士王「…えっ、ていうか、姫ちゃんまで何を乗り気になってんの…?」ガーン


魔王「…ふむ。これは…姉妹、親子、重婚のハーレムルート…?側近さえ消したら、王国の継承権まで総取りできるかもしれないな」


騎士王「ルートとかいうな!絶対そんなんさせねぇよ!?」

魔王「俺にできないことなどないが」フフン

騎士王「殴ってでもさせない!愛の力があれば、正々堂々戦ったって魔王に勝てる!」キリッ


姫「あ」

メイド姫「これは詰みましたね」


騎士王「…え?何?」



魔王「く…くくく」

魔王「お前、今……魔王に勝てる…と言ったのか?」ニヤリ


騎士王「…え?」


魔王「ふはは、言ってくれるじゃないか。姫への想いを確かめて、からかってやるだけのつもりだったが…そうもいかなくなったな」

騎士王「え、ちょ、まっ!?」

メイド姫「これは自爆でしょうね」

姫「…よく考えなくても、魔王様はメイド姫さんの事が大事なんだから…そんなことするわけないじゃないですか…」ハァ

騎士王「ぇ」

魔王「くくく、取り返しはつかないぞ?この国の王が、復活したばかりの魔王を呼び出し、魔王に勝つと宣言した…これが、どういうことかわかるよな?」

騎士王「うっ…」タジッ


姫「・・・・あ、でも」

騎士王「姫ちゃん!魔王を止めてくれるんだね!!」

姫「いえ、そうじゃなくて」


騎士王「そ、そうじゃないの!? フォローする気もないの!? 俺は見捨てられたの!? 魔王のがいいの!?」

姫「き、騎士王様…」

騎士王「もう…もう、絶望したぁぁぁぁぁ!魔王なんか大嫌いだぁぁぁぁ!!!」ウワァァァン
ダダダダダ


魔王「…あいつ、変わってないな」ククク

メイド姫「そうですね。でもいじめすぎでは?」クス

魔王「…いや、一度口から出したことは責任取らせなければ。王として必要な勉強だしな、これもあいつの為だ」ククク

メイド姫「では、本当に?」

魔王「うむ。仕方ない」

メイド姫「……ところで姫様、先程は一体何を言おうとなさったのですか?」

姫「あ。それは、………あれ?」


姫(あれ?なんでだろう?なんで…『騎士王様なら勝てますよ』…なんて、言いそうになったんだろ…)

姫(本物の『勇者』以外、本気の魔王なんか倒せないのにね)クスクスクス


魔王「?」

姫「いえ。私はどうも、騎士王様を過信しすぎてるみたいです」フフ


魔王「…まぁいい。姫、前王の所に案内しろ。復活の挨拶と…あいつが俺に勝てるまで、姫を嫁にださないように誓わせようじゃないか」ククク

姫「はい♪ご案内しますね♪」ニコ

魔王「え」

メイド姫「……。よいのですか? 真実、姫が最後の砦なんですよ?」

姫「ふふふ。これは、騎士王様が私の事を信じてくれなかった罰です♪」

魔王「え、いや、まて。よく考えろ。そこまでしてしまえば、冗談でも反故にはできないぞ」

魔王「つまり・・・一生嫁に出ないか、俺の所に来るかの二択なんだぞ? いいのか?」


姫「・・・んー・・・」

姫「ふふふ。大丈夫じゃないですかね♪」クルッ

姫「♪」ルンルンルーン
テッテッテ


魔王「なんなんだ・・・しかし…どうしたらよいと思う、姫…?」

メイド姫「……そう、ですね…」

メイド姫「では、『女の勘は割と怖いものですよ』とだけ、言わせていただきますね」クスクス


魔王「…(あれ、まさかハーレムルートとか言ったの、怒ってるのだろうか…それとも本気で姉妹で暮らしたい…のか?)」ドヨーン


メイド姫「…くす」

------------
ほんとにおわり

出し惜しみなしで終了です。
ありがとうございました!

続編スレ建てました(´・ω・`)

つ 騎士王「『魔王、ずっとずっと、大好きだよ!』」 です。

スレタイ替えたらわかりにくいですよねすみません。
夜にでも続き貼っていきますんでよろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom