宥「玄ちゃん………………殺す」(62)

玄「え!?」

宥「? なあに? 玄ちゃん」

玄「あの…………今、お姉ちゃん、何て……」

宥「? 私がどうしたの?」

玄「…………気のせいだったみたい、ごめんね、お姉ちゃん」

宥「そう」

玄「よく考えたらお姉ちゃんがそんなこと言うわけないもんね」

宥「……………………玄ちゃん…………」

玄「?」

宥「…………殺す」

玄「ええっ!?」

宥「え? なあに?」

玄「むにゃむにゃすーすー……」

宥「玄ちゃん……、寝てるうちに殺す!」

玄「ううー。おトイレー……」

宥「!!」

玄「あれ? おねーちゃん……? ロープなんか持ってどうしたの?」

宥「なんでもないよ」

玄「そう?」

宥「……チッ」

玄「えっ?」

起きてたのか支援

玄「ねえお姉ちゃん」

宥「んー?」

玄「お姉ちゃんは私のこと好き?」

宥「なあに突然」

玄「いいからー……」

宥「もー。好きに決まってるでしょ」

玄「よかった! 私もね、お姉ちゃんのことが大好きだよ!」

宥「……」

玄「そうだ! 今日は一緒に寝よう、おねーちゃん!」

宥「……うん、いいよ」

玄(えへへ。おねーちゃん、私のこと大好き、って!)

玄(やっぱり、殺すなんていうのは私の聞き間違いだったんだね!)

玄(ごめんねおねーちゃん。一瞬でも疑っちゃって)

宥(……)

宥(玄ちゃん……)

宥(早く殺さないと)

>>7
>>1とは別人だよ

宥(玄ちゃん、もう寝たかな?)

宥(玄ちゃんを殺すチャンス……)

玄「おねーちゃん」

宥「!! く、玄ちゃん、まだ起きてたの?」

玄「うん。なんだか、一回起きたら眠気が醒めちゃって……。おねーちゃんも?」

宥「そうだよ。玄ちゃんと一緒だよ」

玄「そうなんだー。こうして二人して寝れなくなっちゃうなんて、なんだか昔を思い出すね」

宥「昔を?」

玄「ほら。お母さんがいなくなっちゃった頃のこと」

玄「その頃の私、まだ死ぬってことがよくわかってなくて」

玄「だから元気だったはずのお母さんが突然いなくなっちゃったことが、なおさら衝撃的で……」

玄「そのせい、なのかな」

玄「寝て、起きて、次に目を醒ますとき、そこにおねーちゃんはいてくれるのかなって」

玄「ある日、急におねーちゃんまで、フッといなくなっちやうんじゃないか、って」

玄「それが不安で不安で、怖くなって」

玄「眠ること自体が怖くなっちゃってた、そんな時期のこと」

宥「そんなこともあったね」

宥「当時は私も、よく眠れなくなっちゃってたっけ」

宥「だから一緒にギュッてしたままお布団に入ってたよね」

玄「ね。ちょっと苦しい思い出だけど、懐かしいね」

宥「ねえ、玄ちゃん」

玄「なあに?」

宥「玄ちゃんって、好きな人はいる?」

玄「えー! なあに、いきなり?」

宥「いるの?」

玄「恥ずかしいよー。内緒!」

宥「否定しないってことはいるんだね」

玄「うー……、おねーちゃんの意地悪」

宥「……」

宥(もっと早く殺せばよかった)

玄「う……。ふにゅやらは……」

宥「玄ちゃん眠いの?」

玄「うん……、ねむくらってきちゃっあ……」

宥「よしよし」

玄「ん……、むにゅ……。すー、すー……」

宥「ずっとおやすみなさい、玄ちゃん……」

大好きだったお母さんのいなくなった世界は、まるで永遠に続く暗闇の迷宮のようだった
寒くて、暗くて、悲しくて

そんな私の世界を照らすただ1つの光が玄ちゃんだった
そっと抱き締めてくれる、私より小さな身体が、太陽みたいに暖かかった

救われるような想いに心が満たされると同時に、
今度玄ちゃんを失うようなことがあったら、
その時こそ私の世界には本当の冬がくるのだろうなとも確信した

私は玄ちゃんとずっと一緒にいたいと強く望むようになった

そんな私も成長し、分別がつくようになるにつれ、現実を知った
姉妹はずっと一緒にいられるわけではない
姉妹というのは、どちらかあるいは両方が、
恋をして結婚をして家庭をもって、
そうするうちに、自然と距離ができるものなのだ

世間一般を見渡すと、姉妹が離れてしまう時期は普通、
人生の折り返しにも到底至らないほど早いタイミングのようだった

玄ちゃん無しで私は何十年も生きていけるのかな?
考えた瞬間、ゾッとした

だから……、私は心にある1つの誓いを立てた

玄「ツモ、タンヤオドラ100なのです……、むにゃむにゃ」

宥(玄ちゃん。よしよし)

玄「んー……」

宥(駄目なお姉ちゃんでごめんね)

宥(私、玄ちゃんが自分から離れていくことに耐えられそうにないから)

宥(だから殺すね)

宥(その後で私もすぐ死ぬね)

宥(そうすればすっと一緒、だから)

宥(本当はね。玄ちゃんに好きな人がいるって、少し前から気づいてたんだ)

宥(だって、なんだかうきうきしてたり、かと思ったらボーッとしたり……)

宥(玄ちゃんそんなだもん。すぐわかっちゃうよ)

玄「……」

宥(……きっと玄ちゃんには、いっぱいの未来があるんだろうね)

宥(素敵な未来があるんだろうね)

宥「ごめんね」

玄「なんで謝るの……?」

宥「!!? 玄ちゃん、どうして起きて……、寝たはずじゃ……」

玄「んー。どうしてかな。虫の知らせっていうのかなあ?」

玄「なんだか急に目が醒めちゃって。変なだよね。えへへ」

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