鍛冶師「今日中に仕上げるぞ」弟子「はい」(128)

鍛冶師「……」シャーコシャーコ

弟子「……」シャーコシャーコ

鍛冶師「こんなものか」

弟子「今日で麓に下ろす農具が終わって……後何か依頼ってありましたっけ?」

鍛冶師「今のところはないな。数日は置いている武具の手入れをして、売り物の武具の補填だな」

弟子「大口の依頼入らないですかね……」

鍛冶師「そう簡単にこられても困るだろう」

鍛冶師「……」ペラ ペラ

弟子「こちらでしたか」

鍛冶師「どうした?」パタム

弟子「そろそろ素材が減ってきたのですがどうしますか?」

鍛冶師「ふむ……何時もより多めに発注をあげておいてくれ」

弟子「……分かりました」

鍛冶師「どうかしたか?」

弟子「いえ……当たり前に思っていましたが、あの郵便受けなんなんですか?」

弟子「あそこに入れた物が勝手に麓の町に届くだなんて……」

鍛冶師「魔法によるものだそうだ。お前には話していなかったか」

鍛冶師「十年ほど前に旅の魔法使いが装備の修繕に来てな」

鍛冶師「大した事も無く一週間足らずで終わるようなものだったし」

鍛冶師「何より私もまだひよっ子だったからな。代金を安めにしたら申し訳なさそうにしてな」

鍛冶師「せめて、という事でその郵便受けに魔法を施して行ったのだよ」

弟子「大きくなって返ってきた感じですね」

鍛冶師「それまでは商人や麓の者が来た時に発注書を渡していたからな。かなり便利になったものだ」

弟子(……待てよ、もしこれを潜れれば一気に麓に行けるのか?)パカ

弟子(というよりもこれ、どういう原理だろう? 転移魔法?)

弟子(じゃあ、腕入れているだけでも向こうに転移されたりとか?)ズボ

弟子「……」ワクワク

鍛冶師「おーい、郵便受けの中の空間だけ転移しているから、発動したら腕が千切れるぞ」

弟子「うわああああ!!」ズボッ

弟子「もっと早く言って下さいよ!!」

鍛冶師「郵便受けからはみ出てる部分は送れんと初めに言ったであろう」

弟子「物理的に送れないとは思いませんでしたよ!」

弟子「……」ペラララ

鍛冶師「調べ物か?」

弟子「はい、ちょっと東洋の武器についてを」

鍛冶師「東洋の資料はあまりないぞ?」

弟子「あれ? そうでしたっけ?」

鍛冶師「いや無い事もないがあまり詳しいものがな。何を調べているのだ?」

弟子「カタナというものなんですが……」

鍛冶師「余計に無いな」

弟子「えー?!」

鍛冶師「ここらじゃ良質な刀の原材料など手に入らん」

鍛冶師「だから製鉄する為の設備は無いし、そもそも刀鍛治は一人だけで刀を作るわけではない」

弟子「どういう事です?」

鍛冶師「基本、刀身だけを作るのだよ。仕上げに向けての研ぎは研師、鞘や鍔等も外注だ」

弟子「え? 師匠も自分も研ぐじゃないですか」

鍛冶師「刀に行う研ぎは高度だという事だ」

鍛冶師「まあ、そういう経緯があってな。調べこそはしたが本格的な資料は置かなかったのだよ」

弟子「うーん……」

鍛冶師「そもそも工程も何倍も長く細かいからな。目指すなら一からとは言わんが、かなり初歩の部分から学ぶ事になるぞ」

弟子「うぇー……」

初春「糞スレが伸びてる理由もわかりませんし」

初春「百番煎じのSSは、タ書いてる奴も読んでる奴も何考えてるんですかねぇ」

初春「独自性出せないなら創作やるんじゃないっつーの」

初春「臭過ぎて鼻が曲がるわ」

初春「結果スとして面白くないのは許せます。許せるだけで面白くはないんですが」

初春「パクリ二匹目のドジョウ百番煎じは許ケせませんね。書いてて恥ずかしくないんですか?」

初春「ドヤ顔してる暇があればとっとと首吊って死ねよ」

初春「まあ、一番の害悪はそういったSSを持テち上げてる人たちなんですが」

佐天「初春?」

初春「そうネットに書いてありました」

佐天「なんだネットか」

鍛冶師「……今日は暑いな」ジリジリ

弟子「あ、そろそろ運動してから二週間経ちますね」

鍛冶師「そうか、もうか……」

鍛冶師「それでは仕方が無いな。今日は運動するとするか」

弟子「今日の分担はどうします?」

鍛冶師「そうだな……私が北西側をもとう」

弟子「では自分は南東側を」

鍛冶師「さて、始めるか」

夕暮れ
鍛冶師「帰ってきたか」

弟子「あっづぅー……うぁ、また師匠に負けた」

鍛冶師「内容次第だろう、と言いたいがまだまだお前に負けるほど老いてはいないからな」

弟子「こっちは狼型16、鳥型19、鹿型6、蛇型12、蜘蛛型4でした」

鍛冶師「狼型12、鳥型21、猪型9、熊型4、蛇型16、蜘蛛型12」

弟子「熊4?! 一人でそれだけを……凄いですね」

鍛冶師「前回の取り逃がした熊型がいそうだな」

鍛冶師「にしても鳥型の魔物が増えているな……次回は一週間後で数の確認もしないとな」

弟子「その数如何では麓に連絡ですか?」

鍛冶師「農作物に被害が出ても困るからな」

鍛冶師「猪鍋と熊鍋、どちらがよい?」

弟子「肉まで取ってきたんですか?!」

鍛冶師「勿体無いであろう」

弟子「本当に師匠はパワフルですね……」

鍛冶師「で、どっちにするのだ?」

弟子「この間猪鍋だったので熊鍋を。明日は自分が猪カツ作りますね」

鍛冶師「うむ、任せたぞ」

弟子「そういえば魔王が現れて彼是三年くらいでしょうか?」

鍛冶師「そうだな……その後しばらく? 一年後くらいか? お前がここに来たのは」

弟子「ええ……一応剣術習ってはいたんですが、色んな選考受けてみたんですがどれもダメでして」

鍛冶師「剣を取る側ではなく渡す側になろう、と」

弟子「はい」

鍛冶師「しかし、お前がそれほど弱い様には感じられないのだがな」

弟子「いやー……ここで鍛えられた分で何とかしているだけですよ」

鍛冶師(逆に言えば今なら何とか選考を通って、しっかりとした剣術が学べるのでは?)

弟子「まあ……鉄打つのも性に合っているというか楽しいからいいんですけどね」

鍛冶師「少しここらも整理しておくか……」ガサゴソ

「ごめん下さーい」

鍛冶師「弟子ー! っと、今は出かけていたな」

町娘「どーもー!」

鍛冶師「おお、よく来てくれたな」

町娘「はい! これ今朝取った野菜です! 良かったらどうぞ!」

鍛冶師「何時も何時もすまんな」

町娘「いえいえ、こちらも道具や農具でお世話になっていますので~」

弟子「ただいま戻、おっ町娘さん来ていたんですか」

町娘「弟子さん! お久しぶりです!」

鍛冶師「農具や道具を作っておいた。持っていってくれ」

町娘「わあ! 有難うございます!」

町娘「早速荷台に積みますね!」

弟子「手伝うよ」

町娘「えへへ~助かります!」ガッチャガッチャガチャ

鍛冶師(何時も思うがあの細い肢体の何処にあれだけの力が……おまけに荷台引いて四半日でここまで来る)

弟子「こんなものかな」

町娘「後はここを縛ればっ!」ギュッ

町娘「完成です!」

鍛冶師「私はここで整理をしている。弟子、お茶くらい出してやりなさい」

弟子「はい。町娘さん、こちらに」スタスタ

町娘「わざわざすみません~」トテテ

鍛冶師「……ふむ」

鍛冶師「あの馬鹿も少しは察してやれればあの子も報われるものを……」フゥ

弟子「いやーやっぱ新鮮な野菜はいいですね」

鍛冶師「全くだな」

鍛冶師「逆にしばらくは野菜が続くがな」

弟子「肉も残っていますし肉野菜炒めですかねぇ」

鍛冶師「お前のそれは旨いからな」ゴクリ

弟子「へへ、得意料理ですからね」

鍛冶師「後で教わらねばな」

弟子「え? 自分が作りますよ?」

鍛冶師「お前も何時までもここにいるわけでもあるまい」

弟子「気、早くないですかそれ」

鍛冶師「ふーーむ」

鍛冶師「この調子なら明日も晴れそうだな」

弟子「し、師匠……」

鍛冶師「なんだ青い顔をして」

弟子「お客さんなんですが……」

鍛冶師「?」

鎧を来た男「お忙しいところ失礼する」

鍛冶師「これはこれはご丁寧に」

鎧を着た男「お初お目にかかる。我は魔王と言う者だ」

客室
鍛冶師「それで……ご用件は?」ギスッ

弟子(普通に……でもないけど客室に通しちゃったよ師匠。そしてこの部屋寒い。体感的に)

魔王「うむ、そなたらに頼みたい事があってな」

魔王「こちらの金属で剣を作っていただきたい」ゴトッ

弟子「うっお……なんだこの光る金属……貴金属?」

鍛冶師「こ……これは……まさか」

魔王「その通りだ。これはオリハルコンだ」

弟子「オ、オリ……!? 伝説の金属じゃないですか!! 師匠! これ本物?!」

鍛冶師「私にはオリハルコンの真贋を見切る目など持ち合わせておらんよ」

鍛冶師「しかし随分な依頼だな……依頼先としても内容も。私に反逆しろと?」

魔王「私が使うのではない。幼く未だ旅立っておらぬ勇者が使うのだ」

弟子「……ん? んん?? え? どういう事?」

鍛冶師「……全て納得できるように話してはもらえんか? お前達の目的を。これの意味を」トントン

魔王「何処から話したものかな……まずは我々に関してからとするか」

魔王「我々の世界は特殊でな。十五年毎に他の世界と繋がるのだ」

鍛冶師「……この世界と繋がったのが三年前、か?」

魔王「いや八年前だ。こちらに来る為の準備に五年ほど費やしている」

魔王「我々の目的はこの世界の農作物を我々の世界に持ち帰る事、並びに育て食料として備蓄する事」

弟子「は? え? ええぇ……?」

魔王「我々の世界は土地が痩せ細っている。故に他世界に渡っては食料を確保し、何とか生き延びているのだ」

鍛冶師「待て待て。そんな事の為に侵略を行っているのか? 滅んだ町もあると聞く。やり方がめちゃくちゃだ」

弟子「そうだそうだ! 食料が欲しけりゃ交渉すりゃあいいだろう!」

魔王「友好関係を気付いている間にも、作物を育てなければその先が危険なのだよ」

魔王「何よりも一時の確保ではなく、長期的な確保も優先事項だ。それこそ一々苗を譲り受けていては、こちらがもたんよ」

弟子「だからといって侵略しか手が無いわけじゃあ……」

魔王「立ち向かってくる者は殺しこそするが、町の人々など非武装非戦闘員を殺してはいない」

鍛冶師「町が滅んだというのは嘘……いやお前達の情報操作か?」

魔王「この世界には遥か過去にも一度繋がったそうだ。その時の記録はないのか?」

弟子「あ、聞いた事がある。滅んだ町が復活したって。確か魔王の呪いって事になっている」

魔王「あれは特定地域を廃墟のように錯覚させる幻術と、人々を別空間に幽閉しているだけだ」

鍛冶師「幽閉? 何年もか?」

魔王「その空間は時が止まっているからな。時間に多少置いていかれはするが、死ぬよりは格段にマシだろう」

弟子「だけど横暴だ! お前達は得ばかりしてこちらは得る物がないじゃないか!」

鍛冶師「……そうか、貴金属と魔道具」

魔王「なに?」

鍛冶師「やたらと強い、上位種のような魔物は摩訶不思議な道具や高価な金属を持っていたな」

魔王「……なんで知っているのだ?」

鍛冶師「この辺りをうろついていた武装した大熊を倒したからな」

魔王「ええぇぇぇ……突然行方不明になったと思ったら討伐されていたのか……結構強いよ彼」

弟子「師匠も凄く強いからなぁ」

魔王「あー……この辺りの魔道魔物の消費早いと思ったらそういう事か」

鍛冶師「なんだ? そのまどう魔物とは」

魔王「魔力を元にして作る魔物だ。そなたらにはゴーレムと言った方が理解しやすいか?」

弟子「はあ?! あれだけの魔物もそっちの戦力損失は軽微って事か?!」

魔王「だが我と側近、四天王は紛れも無く我々の世界の住人だ」

鍛冶師「……ふむ、何かよく分からんな。何故お前達はお前達側で言う住民に値するヒトが行うのだ?」

弟子「?? 魔王役もそのまどう魔物でいいって事ですか?」

鍛冶師「そうだ。話を聞く限り、命を使う理由が見えてこない」

魔王「これはな。娯楽なのだ」

鍛冶師「娯楽……?」

魔王「今までの話から察しているのだろう。食料、土地の豊かさを除けばそれなりには豊かな生活が送れる世界なのだ」

魔王「それ故に娯楽が不足する。足りないばかりの生活なら、より良い暮らしの為に生きるのにも必死になれるというものだ」

弟子「あー……魔道具とか発達していたら便利そう」

魔王「故に我と部下達の命を賭けたこの戦いは娯楽なのだ。我々の世界の住人にはな」

鍛冶師「それはまた何とも反応し辛いな……」

魔王「勇者の為に至高の武器を揃えるのもそれだ。侵略者を討つ。その王道をよしとする風潮がもう千年」

弟子「そ、そんな事の為に死ぬのか……」

魔王「我々の給金は桁違いだからな」

魔王「そなたらには我からおぞましいほどの威圧感を感じているのだろう」

魔王「だが向こうの世界では我はただの住人だ。この魔王という大役の選考を受かるまでは」

魔王「ただの……貧困に喘ぐ住人だった」

鍛冶師「……格差社会なのか」

魔王「だが魔王になれたお陰で、母の病も良くなってきている。弟達も満足に学業に励む事が出来ている」

弟子「うぐ……それは何と言うか……」

鍛冶師「同情も何も要らんだろう。命を死の危機に晒すその見返りで家族を救うと決意したのだ」

鍛冶師「その決意の重さを量りもせずに同情などと、侮蔑となんら変わらんだろうな」

魔王「……察してくれて感謝する。他の者達の詭弁には辟易していてな」

鍛冶師「勇者殿の選考はどうなっているのだ? 半年ほど前、急に力が目覚めたと聞くが」

魔王「各地に配下……ああそうだ。非戦闘員だから忘れていたが彼らも住人だ」

魔王「彼らが潜伏しており、我々の世界にあるドーピング薬に適応できる者を探す」

弟子「薬漬け勇者……」

魔王「分かりやすくそう言ったのだ。正確には我々の世界の聖樹の種だ」

魔王「これを飲んだ者はその肉体が根本レベルで再編され、強靭で魔力を帯びた肉体となる」

鍛冶師「迷惑な話だな」

魔王「こうでもしなければ大抵の世界の者は我々に勝つ事はできん」

魔王「だがまあギリギリの敗北、偽装死で済まさねばならぬ以上、かなりスリリングな話だがな」

弟子「あ、絶対に死ななくちゃいけない訳じゃないのか」

弟子「こちらは殺すくせに虫のいい話だな」

魔王「聞こえだけはな。こちら側の重役を担う者たちの生還率は二割を切るぞ」

弟子「ええと確か六人だったよなぁ……え? 一人生き残るぐらい?」

魔王「切る、と言っただろう。一人生き残れば拍手喝采だ。二人生き残れば国を挙げての祭りだ」

鍛冶師「二人生還した事例は?」

魔王「一度だけ。しかし一人は見るも無残な五体不満足だったそうだ」

弟子「……」ゾッ

鍛冶師「……ふうむ」

魔王「さて、我の話はだいたいこれぐらいだろうか。そろそろそちらの意思を聞きたい」

鍛冶師「ここに依頼したのは情報守秘のし易さゆえか……しかしこれほどの大役を二人でこなすのも」ブツブツ

弟子「というかオリハルコンって普通の炎で溶けるものなんですかね」

魔王「む? できるのか?」

鍛冶師「いやできる。そもそも魔溶鉱炉、魔力による炎と通常の炎による品質の差異は無い……とは言わんな」

鍛冶師「魔溶鉱炉の優位性はその微細な温度変化が可能な点。ある程度熟練した鍛冶師であれば要らんが」

鍛冶師「炎の適正温度が見極められんものにとっては、これを使うだけで品質を上げる事ができるな」

魔王「まあそうであろうな」

鍛冶師「次に魔法や魔力を帯びた武具を製造するには、それらの親和性が増す点だ」

弟子「あ、習ったな。魔法剣とか作った事無いから忘れていたけど」

鍛冶師「魔法に精通する者も必要だからな。ここにそれを依頼しにくるバカはおらんだろう」

魔王「ではここでもオリハルコンを素材とした武具を作るのは」

鍛冶師「可能だ。が、あまりにも資料が足らない。このままで依頼を受けるのは無理だ」

魔王「ならば我が国にある資料を取り寄せよう」

弟子「あるのか……」

魔王「ふふん、ある程度の行うべき事柄においては、ちゃんとマニュアルがあるのだよ」

魔王「そしてこうした事態に際して過去に、様々な資料が作られている」

鍛冶師「あまり胸を張って言える事柄でもないだろうに」

魔王「まあな。しかし今から戻るのは億劫だ。一晩宿を頼めんだろうか?」

鍛冶師「構わんよ。場所も場所だからそうした客人もいるからな。奥に空き部屋があるから自由に使うと良い」

魔王「では明日、資料を持ってこさせよう」

鍛冶師「こちらとしても熟知すべき事柄もあるだろう。すまないが多めに三ヶ月を貰うぞ」

魔王「構わんさ。勇者の旅立ちとてまだまだ先なのだろうし」

弟子「因みにこれ、どうやって勇者様に渡すつもりなんだ?」

魔王「我が城にて保管しておく。勇者達にはそちらに向かうように魔物を嗾ける」

魔王「そして追い詰められた時に手にする最強武具! 沸き立つ力!」

魔王「向かい来る敵を薙ぎ払い、我が下に来る勇者! ふ、ふふ、きっと最高の盛り上がるをみせるだろう」

魔王「盛り上がり次第では、特別給金が家族の下に届くだろうからなぁ」

鍛冶師「……」ガァンガァン

弟子「にしても……」ガァンガァン

弟子「本当にこれでいいんですかね」ガァンガァン

鍛冶師「……でなければこちらも困る事になるだろう」

弟子「いやまあそうなんですけどもねぇ」

鍛冶師「我々には選択肢などない。彼にとってもな」

鍛冶師「さあ進めるぞ。前金も貰ってしまっているのだ。今更引く事もできまい」ガァンガァン

弟子「……はい」ガァンガァン

二ヵ月後
魔王「ほう……素晴らしい」

鍛冶師「これでも四苦八苦して作ったのだがね」

魔王「いやいや、やはりこちらに任せて正解であったよ。感謝する」

鍛冶師「こちらも相応の報酬を貰っているからな」

弟子「あのー……やっぱり勇者様の動向って把握していたりするのか?」

魔王「うむ。来年には旅立ちだそうだ。おおよそ1,2年ほどで我の下に辿り着くだろう」

鍛冶師「そうなのか?」

魔王「おおよその試算ではある。だがまあそのくらいになるであろうな」

魔王「では我はこれで失礼するよ」

鍛冶師「まいど……何か要り様であれば何時でも依頼を受けるぞ。先約がなければな」

弟子「魔王相手にそういう事言っていいんですかね」

魔王「まあなに、こちらも周りには気をつけている。が、次はないだろうな」

魔王「む……降ってきたか」

弟子「あー雪……」

鍛冶師「……まあなんだ。達者でな」

弟子「……うーん、複雑だけどお元気で」

魔王「うむ、二人も体に気をつけ達者でやってくれ」

弟子「ふー……やっと終わりましたね」シンシン

鍛冶師「ああ。それもかなり貴重な経験だったな。二度とオリハルコンなど見る事もあるまい」

弟子「やーしかし、これ本当にいいんですかね」

鍛冶師「黙秘の上での依頼だ。そこを反故にする訳にもいかんだろう」

弟子「まーそうなんですけどもね」

鍛冶師「こちらは有り難い依頼だったと口を閉ざすまでだ」

弟子「確かに超大口でしたね……」

弟子「お陰で薪を気兼ねなく使えますし」ポイッ

鍛冶師「去年の冬は間が悪くて焦ったからな」

弟子「やー今日も魔物が多かったですねー」

鍛冶師「うむ。どうやら放ちこそすれど、その後の制御は基本的にできないそうだ」

弟子「っていうかあの肉、自分達食ったんですよね……ゴーレムですよねあれ」

鍛冶師「飽くまでそう言っただけで、体の構造は動物とそう違いは無いそうだ」

弟子「なんか詳しくないですか?」

鍛冶師「ああ、依頼に来た夜に泊めただろう。その時に酒を交えつつ色々と話をしてな」

鍛冶師「中々面白い話もあったぞ」

町娘「ごめん下さーい!」

弟子「こんにちは、町娘ちゃん」

町娘「! 弟子さんこんにちはー!」

町娘「来る途中、猪の魔物を倒したんですよ! これ、お肉です!!」

弟子「すっげぇ……よく倒せたね」

町娘「いやー苦戦しましたよー」

鍛冶師(それでも無傷なのか……この子)

弟子「師匠? どうされました?」

鍛冶師「いや、何でもない。あちらの倉庫に工具類を作っておいた。必要なら持ち帰りたまえ」

町娘「ありがとうございます! いやー大工さん達の道具、ガタがきてるって話なので助かりますよー」

弟子「師匠、梅の花が咲き始めましたよ」

鍛冶師「そうかそうか……もう春か。早いものだな」

弟子「今年も梅酒を作られますか?」

鍛冶師「当然だろう。二ヵ月後くらいには酒の注……おお、鶯も鳴き出したか」ホーホーホケキョ

弟子「そういえば梅と鶯ってなんでそう言うんですかね? あれ目白じゃないんですか?」

鍛冶師「別に梅の木に留まるのが鶯という意味ではない。どちらも春を告げるものとされるからだ」

弟子「ああなるほど……縁起物的な。あれ? じゃあ鶯色は……?」

鍛冶師「色? 鶯と同様に緑に黒茶がかった暗い色であろう?」

弟子「あれ? うん? ジェネレーションギャップ?」

鍛冶師「もしや餡や餅の事を言っているのか?」

鍛冶師「あれは見栄えの為に緑を強くしているだけで、老舗の鶯餅などもっと暗い色をしておるぞ。あれは美味いものだ」ウンウン

兵士「ごめん下さい」

弟子「はい、どちら様……ああ、兵士の方ですか。武器庫はこちらになっています」

兵士「おお……これが……あの、すみません。ここの武器をある程度まとめて買う事ってできますか?」

弟子「特別制限はありませんが、お運びしたりはできないのですがよろしいですか?」

兵士「はい、運搬は後日仲間達を連れてきますので」

弟子「ああ、それでしたら大丈夫ですね」

鍛冶師「む? 客人か?」

兵士「麓の町で兵士をやっています。後日、仲間達と共に取りに伺わせて頂きますね」

弟子(まとめ買いだそうですよ、師匠!)ヒソ

鍛冶師(魔王の依頼の間も少し売れたし……補填追いつくのだろうか、これ)

弟子「いやー最近は良い感じですねー」

鍛冶師「何を馬鹿な事を言っている。材料を普段の二倍の量を発注」

鍛冶師「これからは当分、火を見ず暑くない日などないぞ」

弟子「えっ」

鍛冶師「見ろ、もう殆ど残っておらん。わざわざ足を運んできたのに売り物が無い、という訳にはいかんだろ」

鍛冶師「今から始めるぞ。支度をしろ」

弟子「お、おお……う……了解です」

弟子「あづい……じぬぅ」ガァンガァン

鍛冶師「せめて秋頃に売れていてくれればよかったのだがな」ガァンガァン

弟子「そういえば、昔見学した鍛治ギルドは結構涼しかったんですけど、あれってなんでですかね?」ガァンガァン

鍛冶師「恐らく氷に属する魔法を封じた魔石を使っているのだろう。相当大きい工房であっただろう?」ガァンガァン

鍛冶師「よほどの金がなくてはあれは無理だ」ガァンガァン

弟子「この夏、生きて乗り越えられる気が……」ヘタァ

鍛冶師「しゃきっとせんか。まだ動けるだろう」

鍛冶師「最近は涼しくなってきたな」シャーコシャーコ

弟子「ですねぇ……あ、梅酒はそろそろ出しますか?」シャーコシャーコ

鍛冶師「今年は一瓶だけ頼む。残り二瓶は味次第で一年寝かせてみてもいいかもしれんな」シャーコシャーコ

弟子「一年漬けとか楽しみですね」

鍛冶師「本来飲めん年の上に下戸が何を言っている……」..ドン..ドン

弟子「家の方にお客さんですかね? ちょっと行ってきます」


「おや……貴方がこちらの? 随分とお若い」

弟子「自分は弟子をしております。師匠はこちらにいます」

「これは失礼。案内をしていただけるか?」

鍛冶師「ほう……大国の」

大臣「ええ、それででしてね。今日は一つ、剣を作っていただきたく参りました」

弟子「剣……あ、勇者様のですか?」

大臣「左様。やっとの思いで調査隊が見つけ出したこの……」

鍛冶師「ミスリル銀……!」

弟子「うおわー……初めて見る……」

弟子(最近こういう依頼多くないか……?)

鍛冶師「……しかし、何故ここへ? もっと近くて良い工房もあったろうに」

大臣「なにやらここの鍛冶師殿は大変腕が立つと評判でね」

鍛冶師「そこまで評判があるほど、稼ぎが無いのでなんとも言えませんな」

大臣「いやいやご謙遜を……我が国の騎士達も貴方様の作る剣を愛用していますぞ」

鍛冶師「二年ほど前に何人かが依頼しに来たな……しかしそれっきりであるが」

大臣「それだけの品質を誇っているという事ではないでしょうか?」

弟子「いえ……多分、手入れは他の工房に持ち込んでいるのかと」

鍛冶師「そして追加の注文も無いとくればな」

大臣「……彼らは中々喜んでいたのですがねぇ」

大臣「それはさておき。この依頼、引き受けてはくれますか?」

大臣「おおっと失礼。支払いの話もせずに一方的に。これぐらいを報酬と考えているのですがいかがか?」

鍛冶師「……」

弟子「すっご……この間の魔ゲフンゲフン」

大臣「?」

鍛冶師「いやなに、先ごろより大口の依頼が続いていて驚いているだけだ」

大臣「はっはっはっ、やはり貴方の評判は偽りなき真という事ですな」

鍛冶師「……かもしれないな。この依頼、受けさせていただこう」

弟子「しっかし……なんだかえらい事になりましたね」ガァンガァン

鍛冶師「当面、懐の心配が無くなるから良い事ではあるがな」ガァンガァン

弟子「いやぁでも、これで勇者様の装備を二つも作る事になるじゃないですか」ガァンガァン

鍛冶師「まあな」ジュワァッ

弟子「これはもう世界平和の一端を担ったと言っても過言じゃないですね!」ゴォォォ

鍛冶師「間違いではないだろうが所詮は道具だ」ゴォォォ

鍛冶師「何時だって、何かを行うのは、歴史を動かすのは人なのだ。良くも悪くもな」ゴォォォ

弟子「やー……オリハルコンを鍛造した経験が凄い活かされますね」ガァンガァン

鍛冶師「全くだ。ミスリル銀もまた魔力を帯びた金属だからな」ガァンガァン

鍛冶師「あの書物の知識があの依頼以外で活躍するとはな……しかもこんなに早く」ガァンガァン

弟子「これすっごい貴重な話ですよね」ガァンガァン

鍛冶師「当然だろう。恐らく、オリハルコンを叩いた者など、片手で数えるくらいにしかおるまい」ジュワァッ

弟子「ある意味で偉人ですよね……これ」ゴォォォ

鍛冶師「そういう見方はできるだろうな」ゴォォォ

鍛冶師「鍛造に携わったという意味では両方の剣とも、私達は偉人扱いにはなるな」ゴォォォ

鍛冶師「もっともそれも秘匿されるだろうが」ガッショ

弟子「なんかそれも報われない話ですね」ガァンガァン

鍛冶師「表立ってはな。なに、オリハルコン、ミスリル銀に関する知識と技術を伝えていけばそれも変わるだろうて」ガァンガァン

一ヶ月半後
騎士「おお、これが」

騎士「噂に違わぬ……何れ、私も必ず一本頼ませていただこうかな」

弟子「常時売っているものもありますので、そちらも参考にして頂ければ」

騎士「うむ、かたじけないな。ではこちらが預かっている報酬だ。確認してみてくれ」

鍛冶師「国では何かあったのだろうか?」

騎士「うん? ああ、私が代役をした事か。交渉の必要が無いのであれば、大臣殿にご足労頂くわけにもな」

弟子「ああ……なるほど」

弟子「あ、そういえば……勇者様ってもう出発されてる頃じゃないんですか?」

騎士「ああ、もう半年前の事だな」

弟子(半年?)チラッ

鍛冶師(出発が早まったのだろう)

鍛冶師(しかし半年前と言えば、武器の在庫が切れ掛かって昼夜問わずに鍛造していた頃合か)

弟子「これを今から届けるのですか?」

騎士「後を追う、というよりは少し先回りした所に向かう、だな」

鍛冶師「勇者殿自身の成長の為にか?」

騎士「それとこの剣が極力消耗しないように、というのもあるな」

弟子「ああ、最終決戦にはゲフン。なんか聖剣とか見つかるといいんでしょうね」

騎士「そう都合の良いものも無いだろうからな。現実的にやるしかないのだよ」

騎士「それに強力な武器にばかり頼っていて、いざという時に地力が発揮されないのでは元も子もない」

弟子「あー……なるほど」

騎士「さて……私はそろそろ戻るとしよう。此度の依頼、陛下も厚く御礼を申し上げていた」

鍛冶師「人手が人手だから大量注文は受けられんが……何か要り様があれば来てくれ」

騎士「うむ、そうさせてもらうよ」

弟子「にしても一度ある事はなんとやらですね。ここ二年の利益ってちょっとした大きい工房より上なんじゃ……」

鍛冶師「あまり他の工房との繋がりがないから分からんが……こちらの支出は最小限で特大の報酬を考えると」

鍛冶師「ちょっとやそっとの工房では到達できんだろうな」

鍛冶師「現に私にしてもこれほど潤った時期など知らん。それこそ父が生きていたときでさえな」

弟子「え? お父上も鍛冶師だったのですか?」

鍛冶師「そういえば話していなかったか。ここは父の工房だ」

弟子「……師匠ってまだ30ちょっとですよね」

鍛冶師「流行り病という奴だ。私がまだ14くらいの時だったろうか。母も私が5つかそこらでな……」

弟子「……」

鍛冶師「そこからが大変だった。なにせこんな辺鄙な所で暮らしていたからな。他の稼ぎ方など知らん」

鍛冶師「いや……二人の遺産をもって何処かへ行って根を下ろせば良かったのだろうな」

鍛治師「だが私にはここを捨てる事ができんかったよ」

弟子「師匠……」

鍛冶師「それからはもう地獄に近かった。目が潰れるのではというほど残された書物を漁ったものだ」

鍛冶師「父は何と言うか……感覚的というか力任せと言うか、まあそんな感じだ」

弟子「フィジカルって奴ですかね……」

鍛冶師「だもんだから、金槌を振るう姿しか鍛治を知らない私には酷く理解のできん書物であったよ」

弟子「あ……あのよく分からない書物って!」

鍛冶師「大半は私が研究して書き直したが、未だに理解に苦しむ書物はあそこに置いたままになっているからなぁ……」

鍛冶師「それから五年くらいは本当に過酷であったよ。鉄を打てば両刃の剣にならず」

鍛冶師「溶かして再び打てば歪になる。材料ばかりが浪費するばかりであった」

鍛冶師「やっとこさっとこ出来上がってはみたものの、見る人見る人鈍らと言ったものだ」

弟子「師匠が作るものが鈍らだなんて……到底信じられませんね」

鍛冶師「人間誰しも、初めから上手い訳ではないからな。お前くらいの年の頃なんて鈍ら鍛冶師と呼ばれたぐらいだ」

鍛冶師「食っていく為に研ぎを猛勉強したものだ」

弟子「うえー……師匠にそんな時代があっただなんて」

鍛冶師「苦い思い出だが、あれがあるからこそ今の私があると言っても過言ではないからな」

鍛冶師「決して悪い事だとは思っておらんよ。辛くはあったがな……」

鍛冶師「さて……明日、明後日は運動とするか」

弟子「いやーあんまり本腰入れられなかったですもんね」

鍛冶師「流石に国からの依頼では仕方もあるまい」

弟子「二日かけてとか初めてですね。どうするんです?」

鍛冶師「明日、午前中は南側……南西は私が受け持とう」

鍛冶師「午後、並びに明後日は北側を突き進む形を取るぞ」

弟子「なんですかその殲滅戦」

鍛冶師「数も増えているだろうし、取りこぼしはしたくなかろう」

弟子「でもやり方が本気すぎる……」

鍛冶師「しかし二人だからなぁ……」

鍛冶師「ふぅむ……」ボロボロ

弟子「し、師匠?! 大丈夫ですか?! 師匠!」

鍛冶師「大声を出すな」ムッスー

弟子「師匠がこんなボロボロ……の割にはお元気そうですが、一体何があったんですか?」

鍛冶師「ローブを被った鼠の様な魔物にやられたのだ。おのれ……魔法を使うとは卑怯な」ブツブツ

弟子「もしかして師匠が倒したっていう武装した熊みたいな……」

鍛冶師「精鋭だろうな……くそ、取り逃がした」ブツブツ

弟子「えー……そこっすか。いやまあ間違っていないのでしょうけども」

鍛冶師「今日こそはあの首、落としてやらねば気がすまん」フンス

弟子「師匠が息巻くの初めて見た……けれども魔法使い相手にどう戦うんです?」

鍛冶師「この装備を使う」

弟子「なんですか、この斧は?」

鍛冶師「投擲用の斧でフランキスカという。かつてある民族が使っていた武器だ」

弟子「へー……ちゃんとした投擲斧ってあるんですね」

鍛冶師「最もこれ自体は古い設計だからな。だいたいにして4m毎の目標物にしか刃が当たらんようだ」

弟子「使い辛っ」

鍛冶師「弓が使えればそれまでなのだが私にはさっぱりだからな……」

弟子「改造はしなかったんですか?」

鍛冶師「これを更に改良するなど骨が折れるだろうに。そんな暇があったら剣を作っていたからな」

鍛冶師「……」ボロボロ

弟子「ど……どうでしたか?」

鍛冶師「泥仕合であったよ……全く」

弟子「その様子ですと倒せたんですか」

鍛冶師「結局当たりはせんかったよ。だがフランキスカは着地後に不規則に跳ね上がるのだ」

鍛冶師「その虚を突いて、敵の猛攻を受けつつ突貫したのだ」

弟子「それただの捨て身じゃないですか!」

鍛冶師「だが倒せたのだからな」

弟子「そういえば貴金属や魔道具を落とすって言ってましたよね?」

鍛冶師「ああ、これが手に入ったぞ」

弟子「……なんですか、この赤い魔石と青い魔石」

鍛冶師「どうやら強力な魔法を封じた魔石のようだ」

弟子「青……じゃあもしかして!」

鍛冶師「残念だが少しでも魔力が開放されると吹雪を噴出すのだ。とてもじゃないが工房では使えんよ」

弟子「どうするんですかこれ。売り捌く?」

鍛冶師「今度行商が来たら相談はするが、これほどの物となると向こうも買いたがらないだろう」

鍛冶師「高額だし使い道も難しい。いや需要はあるのだろうがこれを購入できる層に需要があるかがな」

弟子「うひぃ……最近はほんと冷えてきたな」ガゴォンガゴォン

鍛冶師「最近は客も少ないな……」

弟子「まーお陰で炭切りしなくて済むから楽でいいんですけどねぇ」ハァー

鍛冶師「そろそろ雪が降りそうだな……今晩辺りきそうではないか?」

弟子「こんだけ寒いとありそうですね」

鍛冶師「暖まるものでも用意しておく。切りがついたら上がれ」

弟子「了解です」ガゴォンガゴォン

弟子「ふいー……暖まるぅ」

鍛冶師「む? もう振り出したか」

弟子「あーこれから一層人が来なくなりますね……雪かきの日々か」

鍛冶師「まあ今のうちに少し在庫を蓄えておいたほうがいいのだろうな」ドンドン

弟子「ありゃ? 珍しいですね」

鍛冶師「こんな時期にとは……一体誰だろうか?」


勇者「あ、ああの、初めまして! あたし、勇者と言います!」

剣士「勇者さん、緊張しすぎですよ」

魔法使い「へー……本当にこんな所に工房があるのね」

僧侶「生活するのも大変そうですね」

鍛冶師「つまり……渾身の一振りを作って欲しいと」

勇者「厚かましい依頼だとは分っているんです! ですが……並大抵の武器では太刀打ちできない魔物も多くて……」

弟子(凄い……二度ある事は三度ある……)

剣士「とは言え、こちらも希少な金属というのもこれぐらいしか……」ゴトリ

鍛冶師「ミスリル銀……しかしこの量ではショートソードぐらいが限界だろうな」

魔法「でしょうねー……」

僧侶「でもこの金属は特殊なんですよね?」

弟子「まあ確かにそうではあるけども、この量でまともな大きさを作るとなるとやはり強度的には……」

鍛冶師「……ふむ」

鍛冶師「勇者殿は魔法扱う事は?」

勇者「上位の魔法は使えませんが中位くらいなら多少は……」

鍛冶師「……」

弟子「師匠?」

鍛冶師「よし、この金額で一ヶ月、それもそちらの魔法使いの子を預かる形でよければ引き受けよう」

魔法「え?! あたし?!」

弟子「師匠?!」

剣士「……あの、理由をお聞かせ頂いてもよろしいですか?」

鍛冶師「弟子が言ったとおり、これをこのまま1mほどの剣にしても強度に不安が残る」

鍛冶師「故に短めの剣にし、この魔石と合わせて魔法剣にしようと思う」

弟子「ちょ、その魔石って……」

魔法「……? なにこれ! 凄い純度じゃない!!」

僧侶「こ、こんな魔石があるなんて……え? これを使っていただくのにこの金額なんですか?!」

勇剣「?」

魔法「くっ……馬鹿二人は事の重大さが分っていないのね」

勇者「酷いっ!」

剣士「そこまで座学が不得手というわけじゃないんだが……」

弟子「まー解析が済んでいないから実際いくらになるかは分らないけどね」コロコロ

魔法「それでも国の研究機関に持ち込めば100万Gくらいぽんと出すわよ……これ」

弟子(あの商人30万とか言っていましたよね)ヒソ

鍛冶師(まー彼も魔法に精通する人でもないからな)ヒソ

勇者「あの……本当に良いのですか?」

鍛冶師「成功するかは分らない。私も魔法剣の製造は初めてだからな……ミスリル銀がゴミになるやもしれん」

鍛冶師「それに下手をすれば君達も一ヶ月足止めになる。その上での話だ」

勇者「……」

剣士「私は勇者さんの意志に従うよ」

魔法「受けなさい! 受けてもらいなさい!」クワッ

僧侶「確かに……失敗の可能性があるにせよこれほどの条件、普通はありえませんからね」

勇者「宜しくお願いします!」

鍛冶師「うむ、心得た」

弟子「しっかし……魔法剣って師匠作った事あるんですか?」

鍛冶師「ある訳なかろう」

勇者「え?!」

剣士「ええっ?!」

魔法「こんな所で工房開いていたらそうなるわよね」

僧侶「そうなのですか?」

魔法「魔法剣は普通、金属に砕いた魔石を混ぜたり、魔法を使う要領で熱した金属に魔力を込めて作るのよ」

魔法「この二人からは魔力が感じられない以上、協力者なしに作るのは不可能だわ」

鍛冶師「そういう訳だ」

弟子「んー……作った事は無いけども、知識はあるんですか?」

鍛冶師「まあ、な」

勇者「えーと……聞く限り、初めの段階だけ魔法使いちゃんがいればいいような」

魔法「込めた後に魔力が暴走する可能性があるの。魔法剣作る工房だと、二人以上魔法使いを雇って」

魔法「常時、魔法使いが居る体制を敷くのが普通よ」

剣士「じゃあ結局は終わるまでは付きっきりなんだ」

魔法「ええ、そうよ」

僧侶「その間どうしましょうか?」

弟子「宿泊できるようになっていますので、しばらく……あー流石に食料か」

勇者「魔物でも狩ってこようかな……」

剣士「野営には慣れているしね」

鍛冶師「年端もいかない女の子が……嘆かわしい事だ」

弟子「しかし国も国ですね。こんな子達に押し付けるなんて」

剣士「それが私達も何故だか急に力に目覚めるというのでしょうか。勇者さんほどではないのですが」

鍛冶師(魔王……)

弟子(薬漬け……)

魔法「これでもあたし達、そこらの大人よりも強いのよ」

僧侶「あ、私は特に強いという訳では……」

勇者「でも僧侶ちゃんは回復魔法が凄いじゃん」

弟子「とりあえず、食料の発注しておきますね」

鍛冶師「うむ」

勇者「は! す、すみません! あたし達も払います!」

剣士「と! や!」ガゴォン ガゴォン

勇者「やー剣士ちゃん。精が出るねー」

僧侶「薪割りですか?」

剣士「あたしに手伝える事なんてこれぐらいしかないからねぇ」

剣士「炭切りって作業もあるらしいのだけども、それは絶対に手伝わせないって言われてしまったよ」

勇者「炭切り? なんだろ?」

僧侶「木炭を小さくするんでしょうか? 工房の所に大量にありましたし」

剣士「別に少し汚れるくらい平気なんだけども、気を遣わせてしまっている様だよ……」


鍛冶師「あの子に炭切りなどさせていないだろうな?」

弟子「させませんよ! 女の子に鼻くそまで黒くなる仕事させるとか鬼ですか! ちゃんと朝、自分がやりましたよ!」

魔法「え……何それ……」ゾッ

剣士「二人は何処へ?」

勇者「ちょっと周辺の魔物退治~」

僧侶「私達にしてもできる事はこれぐらいですからね」

勇者「鍛冶師さん達、二週間に一回ぐらいで周囲の魔物を討伐しているって聞いてさ」

勇者「他に手伝える事と言ったら……あとはー……」

僧侶「家事ぐらいでしょうか」

勇者「え?! 鍛治?!」

剣士「違う」

僧侶「違います」

一週間後
鍛冶師「……」ガァンガァン

弟子「……」ガァンガァン

魔法「……」

剣士「……使う側にも為になる本だな」ボソリ

勇者「……おぉ~格好良い~」

僧侶「……」

鍛冶師「……」

弟子「人口密度が……何これ。こんな工房見た事無い」

僧侶「一通り仕事を済ませてしまったので……」

勇者「お昼作るにしてもまだ早いしねぇ」

剣士「離れで暖炉を使うのなら、ここにいた方が消費も無いだろうと思いまして」

魔法「まあ……確かにここは物凄い暑さだったけども」

勇者「え? そんなに? そんな感じしないけども」

魔法「あたしが魔法で抑えているのよ……いきなり一日中工房の中に居られる訳ないじゃない」

弟子「いやー……おかげで凄い涼しくて快適なんですけどね」

鍛冶師「全くだな」

魔法「え?」

剣士「す、涼しい?」

勇者「でもこうして見ると凄いよね……普段、何気なく使っているあたし達の武器が、こうして作られてるって」

剣士「そうだね……粗末にしてきたつもりはないけども、一本一本に魂が込められているんだ、て思えるよ」

鍛冶師「『これ』は特別だからな」ガァンガァン

弟子「一世一代の大仕事ですからねぇ」ガァンガァン

鍛冶師(さらりと嘘を吐いたな)チラ

弟子(いやだって現実的に考えたらそうなっちゃうじゃないですか)

僧侶「私達の依頼で一世一代だなんて……」

剣士「いや、あながち間違いじゃないんじゃないかな。でもまあ……少し照れくさいね」

勇者「でも本当に凄いな……憧れるって言うか」

魔法「……女の子が何に憧れているのよ」フゥ

鍛冶師「……」スッスッ

鍛冶師「……」

鍛冶師「……」シャーッチン

鍛冶師「完成だ」

勇者「わああー!」

弟子「意外と短く済みましたね」

剣士「三週間で……しかもこんな格安で魔法剣を作っていただけるなんて」

魔法「ただまあ……不安なところもあるけどもね」

僧侶「そうなのですか?」

魔法「あの魔石の力が強すぎるのよ。制御しきれるものか分らない」

鍛冶師「説明したとおり、暴走の兆候があったら人里離れた所で破棄して魔力を当ててくれ」

魔法「ええ……できればそうならない事を祈るけどもね」ブルル

勇者「ふーん?」

弟子「それによってその剣に蓄えられた魔力が噴出すだろうから、大規模な爆発が発生するんだよ」

剣士「え?!」

勇者「き、危険物……」

勇者「今までありがとうございました!」ペコ

弟子「……君達みたいな若い子にこんな大役を押し付けてしまってすまない」

剣士「そうかもしれませんね」

弟子「うえ゛っ?!」

僧侶「け、剣士さん……」

剣士「でも、あたし達にはその力がありますから。年不相応であっても」

剣士「それに弟子さんもそこまであたし達と年が離れていないじゃないですか」

魔法「そうよねぇ……それで魔王を倒す為の勇者一向に強力な剣を作って渡すのだから」

勇者「皆が皆……それぞれの場所でそれぞれの戦いをしているんだよね」

剣士「……うーん、何か言いたい事と違うような」

勇者「え? あれ?」

鍛冶師「もうここに来る事も無いのだろうが……私達にできる事があれば協力しよう」

鍛冶師「何時でも頼るといい」

剣士「うーん……お金の余裕ができたら、あたしもここで一本買いたいな」

魔法「転移魔法の標をつけておいたわ。何時でもすぐに来れるわよ」

僧侶「い、何時の間に……」

魔法「一週間もあれば完全にできるわよ」

魔法「一週間もあれば完全に標を刻めるわよ」

勇者「流石だね。魔法使いちゃんがストーカーになったら最恐だよ」

魔法「あ゛ぁ?」

弟子「転移魔法って……超高度じゃ」

鍛冶師(聖樹の種とやらは凄まじいな)

鍛冶師「まだ寒い日は続くだろう。体には気をつけてな」

弟子「無事を祈っているよ」

勇者「鍛冶師さん達もお元気で」

剣士「大変お世話になりました」

魔法「なんだかんだで勉強になったわ。ありがとう」

僧侶「どうかお達者で」


鍛冶師「……」

弟子「……ここってこんな静かだったんですね」

鍛冶師「そうだな。ただでさえ男二人の華の無い場所であるしな」

弟子「無性に寂しくなってきたんですが」

弟子「お、桜が咲き始めたかぁ」

弟子「だいぶ暖かくなりましたね」

鍛冶師「やっと梅の花が咲いたと思ったらもう桜が咲いたか」

弟子「どうします? 寝かせているお酒、出します?」

鍛冶師「ふむ……」

鍛冶師「……」

鍛冶師「……」

弟子(ほ、本気で悩んでいる……)

鍛冶師「様子見だ……この一瓶は様子見なのだ……うむ」

弟子「凄い言い聞かせている……折角の花見なんですから楽しみましょうよー」

町娘「あ、こちらでしたかー。お花見ですか!」

商人「どうも~お久しぶりです」

弟子「これはまた良いタイミングで。今日はどうしたのです?」

町娘「今日は壊れた道具などを持ってきましたー」

商人「普段使っているナイフが古くなってきたので、近くを通ったのだし買い換えようかと思いましてね」

商人「ですがまあ一先ずは」ソソソ

鍛冶師「うむ、折角だ。一杯やっていくと良い。盛り上がりが無くてな」トクトク

弟子「下戸ですみませんねー」

町娘「あのーあたしもお邪魔しちゃっていいでしょうか?」

弟子「どうぞどうぞ」

町娘「えへへーおいしそー」ヒョイ

商人「それにしてもこの季節に来た事がありませんが、これはまた中々絶景ですな」

鍛冶師「それほどなのか? ここからあまり遠くに行った事が無いので私には分らんな」

弟子「流石にこのレベルはそうそうお目にかかれませんね」

鍛冶師「そうか……まあ、父もここの景色については自慢するように語っていたからな」

商人「へえ……案外こんな辺鄙なところに工房をもったのも、これが理由ですかね」

鍛冶師「……そうだな、私も父も変人だからな。私もきっと同じように思うだろうな」

弟子「暑くなって来たなぁ」パタパタ

鍛冶師「最近は依頼も客も来ないな」

弟子「あの二つの依頼が無かったらそろそろ焦りだす頃合ですね」

鍛冶師「全くだ……が急に売れ出しても困るであろう」

鍛冶師「そろそろ在庫を増やす事を考えるべきか」

弟子「こ、この真夏日に……」

鍛冶師「まあ……それよりも手入れの方が先になのだがな」

弟子「というかあの量に追加しても売れてくれないと手間ばかり……」

鍛冶師「いざという時が恐ろしいからな」

鍛冶師「であれから一月経った訳だが」ミーンミンミン

弟子「ざ、在庫が半分……」

鍛冶師「こういう事が起こるから油断ならんのだ」

弟子「今年の夏もかぁ……」

鍛冶師「ほれ、材料の注文書を書いてとっとと工房に来い」

弟子「魔法使いちゃん雇いたい……」

鍛冶師「馬鹿を言うな。そんな余裕ある訳が無かろう」

弟子「うん……? もう日が落ちてきたのか」リリリリ

鍛冶師「最近は日が沈むのも早くなったな」

弟子「これからどんどん寒くなりますねぇ」

鍛冶師「どこぞの誰かは仕事し易くて大喜びだな」チラッ

弟子「師匠のような境地にはまだまだ至れませんよ」

鍛冶師「こちらとしては早く一人立ちしてほしいのだがなぁ」

弟子「えぇー……資金的にそれはちょっと」

鍛冶師「いや、ギルドで雇ってもらえるだろう」

鍛冶師「そもそも個人でやっているものなど私ぐらいなものではないのか?」

弟子「……そういえばそうですね」

鍛冶師「さて今日は北側で運動をするとしようか」

弟子「じゃあ自分は西側を」

鍛冶師「お前の見た大蛇がまだそこにいるとも限らんのだがな」

弟子「いやー他に手がかりあるわけでもないですし」


弟子「ふぅふぅ……やっぱりいないな」ガザザ

弟子「というか魔物を見かけないな……どうなっているんだ?」

弟子「……もう少し奥まで行ってみるか」

鍛冶師「……」

弟子「し、師匠! 大変です! 魔物がいません!」

鍛冶師「やっと帰ってきおったか。何故午前のうちに気付かんのだ」

弟子「ええぇ……じゃあ師匠はとっとと帰ってきてたんですか」

鍛冶師「当たり前であろう……それに理由もだいたい察しがつく」

弟子「え? 何です?」

鍛冶師「勇者殿が旅立ってからもう一年半が経つのだぞ」

弟子「……。あー……」

鍛冶師「……これでもう魔物を討伐する必要はなくなったな」

弟子「ふあぁ……」チュンチュン

弟子「お、手紙……あー……」

弟子「師匠、お報せが回ってきましたよ」

鍛冶師「何のだ?」カサ

鍛冶師「勇者、魔王を討つ……か」

弟子「お触れが回っているって事はそこそこ時間が経っているんですかね」

鍛冶師「だろうな。前回の運動からすぐに倒されたのだろうなぁ」

弟子「ちょっと……あれですね」

鍛冶師「仕方が無かろう」

鍛冶師「……そろそろ作業に戻るぞ」

弟子「了解……」ドンドン

弟子「お客さんですかね……ぎゃああああ!」

鍛冶師「どうした?」

弟子「ゆ、ゆ、幽霊! 幽霊が来た!」

魔王「生きているし一応は顔見知りであろうにその反応は酷くはないか……?」

鍛冶師「……そうか、何とか生き残れたのだな」

魔王「あー……その事についてはだな、色々とややこしい事になってな」

……
鍛冶師「……つまり、ぼろ負けした上に上手い事説得させられた挙句、強制送還されたと」

魔王「平たく言えばな。そもそもおかしいのだ。勇者以外に三人もいるなど。しかも強制送還できる人間とか化け物か……」

弟子「あーあの子は……え? ていうか知らなかったのか?」

魔王「確かにな……適正が出たのも旅立ったのも年齢的に怪しいところがあった」

魔王「だからちょっと人員増やすという話は聞いていた。聖樹の種も少し質の低いもの、勇者ほどの能力も無い」

魔王「が、三人はおかしいだろう……どう見ても向こうの圧勝が確定した瞬間ではないか」

弟子「おまけにこっちは二本も追加で作る事になったし……あーでも使う人数からいくと合計二本の扱いか」

魔王「更に加担していたのか……」

鍛冶師「にしても説得とは……確かにあの子らしいな」

弟子「他のメンバーは?」

魔王「全員、強制送還されたのだよ」

鍛冶師「対策しなかったのか? 非戦闘員のストーカーがいるのであろう?」

魔王「彼らごと巻き込まれたのだよ」

魔王「何故か、四天王や側近との戦いの際には巻き添えなっているからな」

魔王「周囲を吹き飛ばす力でもあるのだろうかと思っていたらこの様だ」

鍛冶師「聞く限りでは状況は熱くなんてならんだろうしな」

魔王「一騎当千とまではいかんが、三人合わされば勇者を超えるからな……瓦解もするわ」

弟子「で、今日はお礼に来たって?」

魔王「実はな、まあ……今回こういう結果になってしまって、結構なバッシングを受ける事になってな」

鍛冶師「……報われん話だな」

魔王「特に我は最高責任者の立場にあるからな……」

弟子「り、理不尽だ……」

魔王「詳しく決めずに、聖樹の種を与える人間を増やす考えを許可してしまったのだからな」

魔王「そんな訳で我は我の世界で居辛くなったのだ……」

弟子「ふむふむ……え?」

鍛冶師「まさか……」

魔王「そなたらに弟子入りしたい。我にはこの世界で穏便に暮らせる術など、これ以外に思いつかんのだ」

弟子「ちょ、超展開過ぎる……しかもらって。らって、自分自身がまだ弟子なのに」

鍛冶師「しかしなぁ……そう簡単に言われてもだな」

魔王「なに、我のこの角の生えた容姿など、魔王の魔力の所為だとでも言えばよかろう」

弟子「凄い押し付けだ……」

魔王「それでも駄目か?」

鍛冶師「……はあ。分かった。が、見込みがなければ追い出すからな」

魔王「ふふ、心得た。全身全霊で精進に励むとしようか」

魔王「……」キンッキンッキンッ

弟子「凄い勢いで上達していく……」

魔王「炭切りマスターとでも呼ぶと良い」キンッキンッキンッ

弟子「いやーそれでも師匠はもっと凄いからなぁ」

魔王「ふむ……まだまだ精進が足らぬか」

鍛冶師「これでもそれなりに続けているのだ。そう易々と抜かれては堪るまい」

鍛冶師「とは言え、これほどの上達速度とはな……存外、鍛治に向いているやもな」

弟子「これも大変だけど、これからも大変だからなぁ」

魔王「ふむ、それはそれで楽しみだな」

弟子「お、何の報せだろ……えぇっ?!」カササ

魔王「どうしたのだ?」

弟子「お前にも関係ある事だったな……これ、何か知っているか?」

魔王「勇者……失踪? 何故だ?」

弟子「各地にいる奴らからは?」

魔王「魔物の消滅と共に引きあげている……この世界に我以外はおらんぞ」

鍛冶師「何を騒いでいる」

弟子「こ、これ! これです!」

鍛冶師「……なんと」

僧侶「勇者様……」

魔法「全くいきなり消えて……何処へ行ったのやら!」

剣士「……一つ心当たりがあるんだけど」

魔法「何処?! 連れ戻さないとあたし達ばかり、色々押し付けられるのよ! 祭事なんてこりごりだっていうのに!」

僧侶「え……連れ戻す理由はそこなのですか?」


魔王「む……今、人影が見えたような」

魔王「客人が来るようだぞー」

弟子「あいよー準備しておくから師匠を呼んできてくれー」

魔王「うむ、心得たー」

弟子「しかし暖かくなってきたし、そろそろ来客も増えそうですね」

魔王「稼ぎ時、という事か?」

鍛冶師「依頼以外ではあれば、来やすい季節であったほうがな」

弟子「ふふ……でも何故か夏の手前や夏に大量に買われるケースが多い……」ドンドン

弟子「おっと、はーい」

勇者「こんにちはー! いきなりで不躾ですが弟子にして、下さ……い?」

鍛冶師弟子「……」サァー

魔王「……」ダラダラ

勇者「あああああああーーーーー?!」


今日も人里離れた山で、炭を切る音が鉄を叩く音が鳴り響く。
静かな山に工房の場所を報せるかのように。
しかし最近のその山は、いくらか賑やかになったという。

      鍛冶師「今日中に仕上げるぞ」弟子「はい」   終

聖剣の刀鍛治とかこっちじゃ放送されてねーしと思ったらラノベ原作なのね
今度読んでみるあんがと

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