ジャイアン「歌ってみた」 (57)

ジャイアン「っていうのが流行ってるらしいんだよ」
スネ夫「へ、へぇー」
ジャイアン「ジャイ子が描いてみた動画をネットに公開しててな。すげーなーって思って見てたらお兄ちゃんにもこういうのできるよって」
スネ夫「そうなんだー…」
ジャイアン「俺は絵じゃなくて歌を公開したいんだよ。シチュー作り動画も捨てがたいけど…俺と言ったらやっぱり歌だろ?美声を世界にお届けするんだ。夢あるだろ?な?」

スネ夫「いい考えだと思うよ、まぁ」
ジャイアン「でも家にはろくおんかんきょう?ってのがなくてな。スネ夫、お前確か前生放送やってたよな?」
スネ夫「いやー。やってたっけ?やってなかったような…」
ジャイアン「やってたよな?そう自慢してたよな?おい」
スネ夫「や…やってました!やってました!ぶたないで!」

スネ夫「というわけでさ。近々家にジャイアンが来てカラオケ収録するってはりきってるんだよ。なんとかしてよ」

のび太「うわぁ。パソコンもマイクも壊れちゃうね。ご愁傷さま」

しずか「録音環境がないってことにできないかしら?」

のび太「生放送してるんだーってみんなに自慢してたからそれはもう通用しないんじゃ。もうやってないみたいだけど」

ドラえもん「へぇー、なんでやめちゃったの?」

スネ夫「ママのスネちゃまー!って声が入って身バレしそうになったんだよ!というかその話はいいだろ?今はジャイアンの歌を…」

しずか「そうね、あの声をネットに発信するのよね…」

ドラえもん「そうか…近所のリサイタルならまだしもあれをネットにアップしたら未曾有の大災害になる!テロだ!」

のび太「確かに!大変だ!のんきなこと言ってる場合じゃない!」

スネ夫「そう、僕達だけの問題じゃないんだ。このままじゃ世界が危ない」

しずか「でも歌に関してのたけしさんを止めることなんて誰にも…」

のび太「あ!ジャイアンのお母さんならどうかな?」

スネ夫「それも考えたさ。でも町内会の旅行でいないみたいなんだ」

のび太「ドラえも~ん」

ドラえもん「アレを使うか…声紋キャンディー製造機~!」

のび太「あ、それ声を変える道具?でも確か30分しか効き目ないやつじゃん!」

しずか「そうよ!ジャイアンの生歌全国放送で日本中のテレビが壊れたじゃない!」

スネ夫「倒れた人もいたんだぞ!」

ドラえもん「そうでした」

のび太「やっぱりパソコンを犠牲にする方向でなんとか。世界のためなんだし」

スネ夫「嫌だよ!高かったんだから!」

しずか「そうだわ。出木杉さんなら何かいい案が思いつくんじゃないかしら」

ドラえもん「僕らの考えだけじゃ限界があるみたいだしね」

出木杉「MARCHは低学歴…っとやっぱり世の中学歴だよな。ふふ。学歴スレの連中だけが僕をわかってくれる」

のび太「ごめんくださーい!」

スネ夫「うわ、部屋真っ暗」

しずか「最近学校休みがちになってると思ったらこんな生活してたのね」

ドラえもん「これはひどい」

出木杉「入ってくるなりやかましい奴らだな。で、なんの用?」

スネ夫「ジャイアンが歌ってみた動画をアップしたいって」

のび太「それが世界に発信されちゃうんだ!」

ドラえもん「止めたいんだけどなかなか良い案が浮かばなくて」

しずか「出木杉さんなら思いつくんじゃないかって思ったの」

出木杉「なんだ…そういうことか」

出木杉「解決策はある。簡単な話さ」

スネ夫「さっすが優等生!」

しずか「やっぱり頼って正解だったわ」

のび太「その策とやらを教えてよ!」

出木杉「いいけど条件がある。まず君達全員僕をしょっちゅう仲間外れにしてることを詫びて、この賢い賢い僕に頭を垂れてくれ」

のび太「い…今まで仲間はずれにして」

スネ夫「すみませんでした」

しずか「賢い賢い出木杉さん」

ドラえもん「どうか僕達に知恵をお貸し下さい」

出木杉「上出来だ。まぁ策っていうのは簡単だよ。つまり…」

後日

スネ夫「ジャイアン。君の美声を世界に届けるためにはまず必要なことがあると思うんだ」

のび太「そうだよ。まずその動画をクリックしなきゃ再生されないだろ?つまり」

しずか「宣伝活動をするのよ」

ドラえもん「うん、そう」

ジャイアン「なんだなんだみんなして」

のび太「だからさ、先にジャイアンという人物をネットで宣伝してから歌を配信するんだよ」

スネ夫「注目度をあげてから再生数を伸ばそうっていうわけさ」

しずか「これから華やかにスタートダッシュを切れると思わない?」

ドラえもん「僕はそう思う」

ジャイアン「なるほど…!やってみるか!楽しくなってきたな!」

のび太「本人の許可は取れたよ!」

出木杉「よし、投下開始だ」

かくして剛田武の顔写真がネットにばらまかれた。

出木杉「この醜悪な顔を先にばらまいておけば誰も地雷なんぞ踏むまい」

案の定ネットの評価は散々なものだった。
「こいつが歌歌うの?」
「ただのデブじゃん」
「男かよ、解散」
「誰がこいつのカラオケなんて聞くんだよ」
「誰得」

ジャイアンはネットの評判を聞き、歌う前に自ら命を絶った。享年10歳。あまりにも早過ぎる死であった。
彼の歌というテロは発動前に阻止されたがそれが果たして本当の「正義」だったのかは誰にもわからない。

終わりです。劇場限定おもちゃはシアター出口のお姉さんから受け取ってください

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom