【短編】佐久間まゆはヤンデレではない もっとおぞましい何かだ (100)


例えば、食玩

玩具を集める為に、そのお菓子は捨てるなどと言う、不謹慎な輩は除くにしても、
お菓子を食べるうちにその味にも取り付かれ、玩具が目的なのか、お菓子が目的なのか
判然としなくなったり



例えば、流行りの漫画

友達との話題合わせの為に読んでいた漫画が面白く感じる様になり、
友達との話題合わせの為なのか、漫画自体を読む為なのか
分からなくなったり


例えば、痛み止め

痛みを止める為に飲んでいた薬に、溺れてしまい、
痛みを止める為なのか、薬自体を飲む為なのか……


例えば……





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357376256



佐久間まゆは異常者だ


それは彼女自身が一番理解している

プロデューサーへの好意を見せたアイドルへの言動
プロデューサーへの言動
そして、プロデューサーが絡む事柄、絡まぬ事柄への態度の二面性
どれをとっても、異常という言葉以下では表現出来ない


今日はプロデューサーへ色目を使った自称天使を「諭して」あげた
昨日はプロデューサーへ色気を出した露出狂を「睨みつけて」あげた
一昨日はプロデューサーに甘えた餓鬼を「叱って」あげた
一昨々日は……


佐久間まゆは自身の行為を正当化しない
プロデューサーの為と嘯いているが、それは態の良い誤魔化し
まったくもって独善的な女だと、彼女自身、嫌悪を感じている程だ


だが、それもこれも全て、




                    他のアイドルの為




彼女達を壊さない為


プロデューサーを食べてしまわない為


佐久間まゆを表に出さない為





基本的にまゆの表面的な攻撃性は、効果を計算し尽くされた威嚇でしかない
つまり、プロデューサーに好意を見せたアイドルへの牽制でしかない
それをくぐり抜けたアイドルには、矛先を収める
つまり「プロデューサーが絡まないといい子」ではなく、「プロデューサーが絡んでもいい子」となる





……そして、そのアイドルの周辺事情から崩壊させてゆく








           ———————彼女の本質は熱狂的な愛ではない  冷酷な狂気だ—————————








幼稚園時代、佐久間まゆと親友と言っても良い一人の女児が居た


ふたりはいつも一緒

幼ち園にいく時も

ようち園であそぶときも

お昼ごはんのときも

おひるねのときも





でも そのこと まゆわ ちがったの

まゆわ そのこいがいにも いっーぱい ともだちがいたんだけど

そのこわ いっつもひとり

でもね そのこわ それでいいんだって

まゆね じゃあまゆも ○○ちゃんだけでいーよ ってゆってあげたんだ


それから二人は、二人だけの時間を過ごす事が多くなっていく
幼稚園で過ごす時間も
幼稚園から帰った後も



その日、二人はテレビを見ていた
子ども向け教育番組、昆虫のおはなし





    かまきり

                       たまご 



             めす



      おす
                 たべて 



               おわったら








           すきだから






そのこね むしなんて すきじゃないんだよ?

だから ○○ちゃん テレビがおわるまえに ねちゃったんだ

まゆもね むしなんて すきじゃないんだ


でもね なんだか



気づいた時には、泣き叫ぶ女児
佐久間まゆは自身が何故叱られているのか分からない


子どもの力で子どもを殴ったとて、当たりどころでも悪くない限り、大ごとにはならない
この件もただの子どもの喧嘩として親に認識され、強諫された佐久間まゆも、それ以降に同じ様な振る舞いをする事はなかった
同じ様な感情さえ抱かなかった









少なくとも、件のプロデューサーに出会うまでは








彼が私を終わらせた


いいえ、彼が始まらせたのが本当の私?






佐久間まゆは、一人、湯に浸かりながら考える
どこまで言えば彼は距離を置くだろうか
どこまで言えば彼女達は私から離れるだろうか
どこまでならば私は耐えられるだろうか

どこまで……


既に狂気は解き放たれている
でも、それは御せる

大丈夫

まだ大丈夫

まだ殺したくない


いっその事、プロデューサーさんを犯してしまえば、私の世界は変わるだろうか?
ひと時の満足を得れば、蟷螂の様にはならずに済むんじゃないだろうか


彼女達は? 傷つけても良い? いいえ、傷つけたい程に好きなの?
違う、彼女達は傷つけたくない

大丈夫

私はまとも

大丈夫

わたしは







                                          暗転




好き


好き



好き




大好き





駄目





プロデューサーさん






みんな



好き






だから








                 ——————————ごめんなさい——————————





Pがまゆ様を受け入れて心中する展開おなしゃす

>>17
文体は変わらないけどいいか?



携帯電話、テレビのリモコン、インターフォン、炊飯器、パソコン…
日常生活にとけ込み、何ら疑問もなく使っているそれ等
ふと「いつもは押していない」ボタン、キーボード、スイッチに気づく

好奇心から押してみる
なに、どうせ退っ引きならない状況にはならないさ、と

それがどんな結果に繋がるかは、本当は不確定だというのに



ことの きっかけ というのは、そんなもの



俺と彼女の出会いは中々にドラマチックで、安っぽい恋愛小説なんかではよくありそうなシチュエーション
担当しているアイドルの仕事先が、当時彼女が所属していた事務所の仕事先とブッキングしてしまい、
急遽、合同企画にしよう、と会議に臨んだ時、彼女を見つけた。

大人しく、控えめに、可愛らしく、座っている  静かだが華のある子


緊急の企画会議はそれなりに上手く進み、うちのアイドルを前面に、で決まりとなりかける

ふと、彼女を見る

始めと変わらぬ様子
大人しく、控えめに、可愛らしく



そして、興味がなさそうに










                      君はどう思う?






余所様の子に意見を求めるなんてのは、まあ、普通はあり得ない
彼女の表情が少しだけ動く


私は———


安直な同意
いい子の応え


違う
そうじゃあない
これは君「も」主役なんだ
だから———









私は———








開かれた口から出たアイディア


良い

実に良い

なんだ、良いじゃないか

思いもよらなかった


企画の練り直し
相手方の不満顔は変わらずだが、決して悪い感触ではない
先ほどのものとは方向性が違うが、うちのアイドルだけではなく、彼女をも前面に押し出せるのだ
内心、ほくほくしていることだろう



現場での仕事を終える
大成功?
いやいや、まだ分からない
今回の放送はまだ先の話だし、今回の記事で彼女が誌面を飾るのもまた先の話



ふと、視線

ああ、彼女か



声をかけ、挨拶
社交辞令 決まり文句



ふと、視線

ああ、見送ってくれているのか



彼女の視線
佐久間まゆの視線





……彼女は何故を見ているんだ?



数ヶ月後
彼女がうちの事務所にいる
移籍ではなく、新人として

何故か、驚きはない



読者モデルとして活動していた彼女の実力は確かなもので、まさしく即戦力
円満退社、という訳ではないだろうが、元の事務所を辞めるに問題はなかったようで、ファン層も付いてきている




ただ、何か違う
あの時出会った彼女とは


華があるのは変わりなく
しかし、陰がある


退社時に問題があるわけでなく、それ以前に問題があるわけでもない
そして、新人としてうちに来るまでの間も


彼女は本当に、あの彼女なのか?




彼女の視線
佐久間まゆの視線



君はどこを見ているんだ?




少しずつ
言動が歪んできている
恩義の言葉、と思われていたものが、執着の言葉であり、
ファンに向けられるべきその微笑みが、俺に向けられるものであり


彼女は上手くやっている
少なくとも、事務所以外ではあんな顔を一切見せない

少なくとも、事務所以外では


他のうちのアイドルへの悪影響がないのは、興味深い現象だ
他の子への攻撃的な態度が、彼女の立場を悪くしている、などという事態が見受けられない
裏ではそうでもないのか?などとは自身に問わない
裏も表も一応の監視はしている


では、何故?





彼女の視線
佐久間まゆの視線



君は何を見ているんだ?




奇妙な事実
彼女は俺の話題が出た時「だけ」、その話題を出したアイドルに噛み付く
おかしな話だ
俺に好意的な態度を見せたアイドルを、それ以外の場面では攻撃しない
表面的な仲の良さかと思い他人の手で調査しても、「俺の話題」以外で何か問題があった、という報告はない


では、何故?











彼女の視線
佐久間まゆの視線




……君はどこから見ているんだ?





何故、俺は彼女をここまで調べるんだ?
問題がないならいいじゃないか
俺に気があるからか?
馬鹿な、彼女はアイドルだ、俺はプロデューサーだ
何より、あんなストーカーみたいな子を





では、何故?







彼女の視線
佐久間まゆの視線




……俺は本当に、君を見ているのか?











































                                          暗転




これは




なんだ?







どうして






彼女は謝りながら、俺を鈍器で殴り続ける

いや、謝りながらじゃあない、これは

これは、これは





ああ、そうか

そういうことか

今まで、演じていたのか




得るために、手段を選ばない女を





そうか、そうか

まゆは、そうじゃないんだな



ああ、なんだ、そうだったのか



ああ、それならいい



すまなかった



きづけなかった



だから、






ふと、愛おしさが満ちる
彼女の愛情は、歪んでいる
だが、これほど愛情に満ちた彼女を誰が責められる



だから、







                                                       P編終わる

あとがき

空白が多過ぎたの

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