菫「今日は特に寒いような…」(91)

菫「まったく、なんで近くのコンビニがこの寒くなってきた季節に閉店になるんだ」

菫「私は隔日で利用していたというのに……」

菫「……立ち読みじゃなくて、何か買ってれば閉店せずに済んだのかな」

菫「い、いやいや私一人がほんの少しお金を出したからといって潰れないわけではないな!」

菫「…でもなんかすっきりしない。……はぁ」

菫「……ん?」

菫「なんだ……白い袋……? ってカイロか」スッ

菫「お、綺麗だしあったかい。……でも落し物か。あったかいけど使うのは嫌だなぁ」

菫「っていうか誰がとしたんだ。カイロって落としたらすぐ気付くだろ!」

菫「いいや、とりあえずこれは…まぁ見えやすい塀の上にでも置いておこう」ポン

菫「……あー、これ背が低い人だと取れないか。まぁ見えやすい位置だし別にいっか」

菫「とりあえずコンビニ行くか。…はぁ、さむさむ」

菫「それにしても今日はなんだこれ、修学旅行生か? 沢山人がいるな」

菫「冬のこの時期に修学旅行って、進学校か何かか? まぁいっか別に」


菫さん読書中――…。

菫「ふわ……ぁふ、白糸台の部長ねぇ……。もう就任して数ヶ月だけどなんか実感湧かないな」

菫「どっちかというと白糸台を引っ張っていってるのは照だし、まだ三年生はちょこちょこ部活に顔出しに来るし」

菫「……それでも三年生で部長ってなったらもっとこう――キリッ、ってな感じじゃないとダメなのかな」

菫「そうなると立ち読みも出来なくなりそうだな、後輩にいじられるのだけは勘弁だなぁ…」

菫「でもそういえば先輩に立ち読みの現場見つかったらどうなるんだろうか…」

菫「……まぁ、世間は広いし見つかることもないだろう。帰って三尋木プロと瑞原プロの対局でも見てようっと」

菫「あーあ、私の狙い撃ちも三尋木プロみたいな高火力を出せれば照に追いつくんだろうかなぁ…」

?「うーん、と、届かない……」ピョン

菫「……ん?」

?「さ、寒くなってきたよぉ……あぁお日様が沈んでいきそう…」

菫(あれ、さっきのカイロ置いた場所だよな…。制服? …修学旅行生か? 見慣れない制服だな)

?「うぅ~、と、届かない……」

菫(何だか直に転びそうだな)「…すまない、そこの人」

?「へ?」

菫「あのカイロの持ち主? すまんな、見えやすいところに置いたつもりなんだがかえって取れない場所に置いてしまうとは失念していた」

?「あ、か、カイロ! そうなんです、あれ私のなんです!」

菫「本当にすまない。今取るから」ヒョイ

?「わぁ、背が高いんですね」

菫「まぁな。はい、まだあったかいし、綺麗だから、今度こそ落とさないようにな」スッ

?「わ、ありがとうございます!」

菫「……それにしてもなんでカイロなんか落としたんだ? 結構な着込みをしてるから寒がりそうに見えるんだが」

?「あ、あはは。持ちすぎるってのもよくないですよね。色々なところにカイロ忍ばせてあるんですよ」

菫「なるほど」クスッ

?「え、えへへ」

菫「今度は落とさないように気をつけろよ? それじゃ、またな」

?「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」

菫「ん?」

?「あ、あの……よかったらお礼させてもらえませんか?」

菫「お礼?」

?「はい! 実は私、奈良出身で今修学旅行でこちらに来てるんですけど」

菫「ふむ」

?「さっきですね、良い雰囲気の喫茶店を見つけたんです。よかったらそこでお茶しませんか?」

菫「………普段なら遠慮するんだが、ちなみにその喫茶店はどこにある?」

?「え、っと。このままこの通りを真っ直ぐ進んで曲がったところにあるアンティーク調の喫茶店です、新装開店って看板がかけてありました」

菫「あぁ、やっぱりそこか。あそこは私たちも気になって行ったんだがあんまり評判は良くないんだ」

?「そう、なんですか?」

菫「ちょっと、使ってる豆が玄人向けとかそういう話を聞いた。その道の人が通うようなところで、主人も通意外には来て欲しくないようだ」

?「うわぁ……そっかぁ、お店側もお客様を選んだりするんですね」

菫(お客様?)「まぁそういう店もある。…よかったら良い喫茶店を紹介するよ、なんだか君を放っておけなくてな」

?「わわっ、良いんですか? さっき遠慮したい、って言ってましたけど」

菫「なんだろう。君がとっても優しそうな人物だと、私の第六感がそう告げてるんだ。一緒にいたほうがいいって」

?「第六感ですか」フフ

菫「うん、君はそういうの信じないほうかな?」

?「いえ、そういうの信じてます。私に妹がいるんですけど、その妹もそういうの信じてて」

菫「へぇ、妹がいるんだ。…なんだか普通に話せてるな、私たち。よかったら名前聞かせてもらえないかな?」

宥「あ、松実宥って言います。奈良県の阿知賀女子学院っていう高校の修学旅行で東京を訪ねに来ました」

――カランカラン

菫「ふむ、今日は人が多いな。テーブル席は…あぁよかった空いてる」

宥「うわぁ…素敵なところ…」

菫「いいだろう。私にとってもお気に入りの場所なんだ」

宥「ちゃんとした喫茶店って入ったことなかったらちょっと緊張しちゃうよ……」

菫「緊張する場所じゃないから安心しなよ。そうだ、この際だからお互い下の名前で呼び合おう」

宥「し、下の名前?」

菫「緊張してるのはお互い知らない人だから、だったらお互い友人って思っていたほうがいいだろ」

宥「う、うん。そしたら私は…宥って」

菫「あぁ分かった。宥、だな。宥」

宥「わわ…友だちとか以外で初めて名前呼んでもらったよ…」

菫「はは、私たちはこれから友人でいいんじゃないかな。そしたら友人として、私も菫って呼んでほしいな」

宥「え…、えと……」

菫「ん? あー、歳は同じだと思うぞ。この季節、修学旅行ってことは進学校あたりの二年生だろ? 私も二年生なんだが」

宥「あ、うん! 私も二年生! そ、それじゃ…菫…ちゃんで」

菫「ちゃ、ちゃんときたか。それは呼ばれなれていないんだよな……」

誠子「うん? なんだか後ろのテーブル席、聞いたことあるような声が…」

尭深「…新部長が他校の女子生徒と一緒に入ってきてる……」

誠子「なに?! うおっ、ホントだ! 相手の、どこの高校だあれ!」

尭深「見たことないから分かんない…、でもどこかで見たような気がする」

誠子「なんだそりゃ、ってでも私もどっかで見たなあの制服……」

尭深「はて……」

誠子「うーん…、あっ! そうだと、見た見た! 確か修学旅行生じゃない?! 固まって集団行動しているの見たことあるよ!」

尭深「そういえば、そうだったね……」

誠子「え? ってことは何…? 部長って他校の生徒と……?」

尭深「可能性はあるね。…というかもしかして白糸台で彼女もとい恋人を作らない理由がこれで解明できたかもしれない」

誠子「なんであんなにも凛としていて、カッコよくてモテる先輩が彼女もとい恋人を作らなかったのか――」

誠子「それは今まで他校の生徒との一夜限りの関係があったからだったのか――!」

尭深「やばいよ…やばいくなってきたね」

誠子「そうここ東京は色んなところからの修学旅行の場所となることがある」

誠子「そして何も知らずに東京に来た数多の女子高生は弘世先輩の毒牙に――」ギャアアア

尭深「だから先輩は白糸台でも色のついた話は聞くことはなかったのか……ところで」

誠子「さて、尭深。これから先輩を尾行しようと思うがどうする」

尭深「その前に、いつかやった賭けの内容覚えてる?」

誠子「えーと、あぁ、あれか。弘世先輩は薔薇にしか興味がないか、もしくは菫×照のどちらかかっていう内容の賭けか」

尭深「そう。誠子は前者、私は後者。私の賭けの勝ちだね」

誠子「はぁ?! いやいや、尭深のは弘世先輩と宮永先輩のカプ単騎狙いだって言ってただろ?! 今回のはなしじゃないぁ?!」

尭深「でもどちらが近いというと近いのは私。誠子、ここの勘定お願いね。…さて、なんだかパフェが食べたくなってきたな」

誠子「ここのパフェは安くても1200円するんだぞ!? 頼むから…尭深、今日は止めて…小遣いピンチ!」

尭深「すいませーん、追加注文いいですかー?」

誠子「鬼! 悪魔!」 

菫「なんだか後ろの連中うるさいな。注意してやろうか……」

宥「まぁまぁ。色んな事情を持つ人はいつどんな時にもいるものだよ」

菫「……宥は心が広いな」

宥「うーん、そうかな?」

菫「ははっ、まぁそう言われると私が怒るのなんてどうでもいいかと思えてくるな」

宥「うん、怒ったってお互い気分悪くなるだけだよ。ところで、菫ちゃんのオススメって何かな?」

菫「え、あー……ごめん、ここまで案内してきてあれだけど、私実はコーヒーってあまり飲めないんだ」

宥「え? そうなの?」

菫「意外、と思ったか? ちなみに友人の勧めではラテがおいしいらしいぞ」

宥「え? カフェラテかぁ…うーん。菫ちゃんは何を頼むの?」

菫「…うん、それなんだが。唐突で悪いが宥って私のこと見てどう思う? 第一印象を率直な感想でいいから言ってくれ」

宥「菫ちゃんの…? そうだなぁ…、菫ちゃんは優しくて、誰にでもやさしくて……うーんと、…優しそうな笑顔をしそう」

菫「そ、そんなに優しそうに見えるのか?」

宥「うん! だってあの時とても優しかったもん」

菫「今までの人とは違うな……。まぁ私がみんなに言われる第一印象はカッコイイだとか、冷徹そう、とかなんだ」

宥「言われてみると、そんな感じもするけど、やっぱり優しそうに見えるよ」

菫「そ、そうか…? 宥はなんだか独特の感性を持ってるんだな」

宥「そうなのかな?」

菫「まぁとりあえず、だ。そういう第一印象とかのせいで私のイメージというものがいつの間にやら私の居ないところで決まっててだな」

菫「簡単に言うと、コーヒーはブラックで飲んだりそういう渋めのイメージがついているんだ」

菫「私はこう見えても喫茶店ではクリームソーダを頼んだり、クレープも外で食べ歩きして、コンビニで立ち読みしたり、ニチアサは……関係ないな」

宥「あ、私も冷たいの苦手だけどクリームソーダとかクレープ好きだよー」(ニチアサってなんだろう?)

菫「そ、そうか! じゃあ一緒にここのクリームソーダでも頼まないか? デザートはなんでもいいから」

宥「うん! じゃあ私もクリームソーダ頼んじゃうよー」

誠子「さて渋谷隊員。今の先輩の言葉をちゃんと聞き取れたか?」

尭深「はふ…抹茶パフェおいしい…」

誠子「渋谷ぁ! 私のお金で買ってあげたんだから…ノリにちょっとでも付き合って……」シクシク

尭深「テンション思いっきり下がってますね、隊長!」

誠子「うむ! 心配かけたな!」

尭深「先ほどは間違いなく、弘世先輩はニチアサという語句を発しました」

誠子「ニチアサ、そして渋めというイメージの逆側だと主張する先輩、そして弘世菫も昔は少女だった…。ここから導き出される答えとは?!」

尭深「今はまだ予想の域を出ません。……ですが、報告してもよろしいでしょうか」

誠子「構わない、言え!」

尭深「これはほぼ間違いなく、ついつい口を滑らせてしまうほどのプリキュアファンだと私は思います隊長!」

誠子「なんという少女趣味! 先輩の心は日曜のあのアニメに惹かれてしまっていたのか!」

誠子「弘世菫の秘密を――私は今、大物を釣り上げたような感動に心を震わせている!」

尭深「さらにニチアサ発言は置いておいても、コーヒーが苦手・クリームソーダ・クレープ食べ歩き・コンビニで立ち読みとすらすらと出てきましたよ!」

誠子「なんという――! 弘世先輩は一夜限りの関係の子には全てをさらけ出しているというのか……!」

尭深「私たちもチームの一人なんだから…知りたかったよねー」

誠子「そうだなー。………待てよ、チームの一人?」

尭深「……あれ、そういえば」

誠子「宮永先輩はこのこと知ってるのか?」

尭深「………宮永先輩、コール、応じますかね」

誠子「分からん。……だが、今呼ぶともっと面白…いやいや、楽しくなると思うんだ」

尭深「同感です。それでは宮永先輩にコール入れますね。隊長――、決して無理はなさらないで下さい――!」

誠子「…ところで、別にアレ(弘世菫)の秘密を全て聞いてしまっても構わんのだろう?」

尭深「では私はお化粧室へ」

菫「……ッ!」ゾクッ

宥「? どうしたの菫ちゃん」

菫「い、いや。なんだか寒気がして…だな」

宥「えぇ!? クリームソーダ食べたから…?」」

菫「あ、あぁ…いやそんなヤバめの感じとかじゃないんだ。…そう第六感みたいな感じだ」

宥「うーんと、うーんと……そうだ、もう注文分は食べたんだし、もう出てみる?」

菫「い、いや…折角ここに来たんだしデザートは食べないと勿体無いと思う」

宥「勿体無いとか、体調悪いんだったら無理しないほうがいいよ。やっぱり帰ろう、ね?」

菫「む、むむ、しかし……」

宥「本当に体調悪いんだったら無理しないほうがいいよ、もう行こっか」

菫「あ、あぁ……」

宥「お、お会計お願いしまーす」


――カランカラン


誠子「あ、まずい。尭深がまだ帰ってきてないのに! っていうかパフェ全く食べてねえええ、こうなりゃ私の金だ! 全部食べてさっさと追いかけよう!」

尭深「お待たせー……、って、え? パフェが…ない」

誠子「行くよ、尭深! お会計お願いしまーす!」

菫「うーん」

宥「もう大丈夫? 菫ちゃん」

菫「なんだろう、あの喫茶店離れたらすぐに楽になった……」

宥「やっぱりお会計済ませてきて正解だったねー」

菫「あー、ホントに済まんな。…ところで、宥はこれからどうするんだ?」

宥「え? うーん、18時に指定の集合場所に行けば大丈夫だから、その18時まであと…1時間かぁ…」

菫「うーん、微妙なところだな……行きたいところとか、何もないのか?」

宥「うん、東京に来たのあまりないし、特にこれってものはないんだ…」

菫「うーん、ホントにどうしようか。せっかく会えたんだし、楽しいこととかしたいよな」

宥「べ、別に菫ちゃんがやりたいことでもいいよ?」

菫「いやいや、そんなのダメだ。宥がせっかくこっちに来てくれたんだしな……。カラオケ、バッティングセンター…」

菫「違うな、ボーリング……ん? そういえば宥って部活とか何かやってるのか?」

宥「ううん、特に今はやってない…」

菫「今、は? 過去に何かやってたのか?」

宥「ううん、これから。この三年の春に私の妹とその友だちが同好会を作って、部を作り上げるの」

菫「へぇ…でも宥も三年でもう時間ないんだろ? となると文芸? 華道とか、似合いそうだ」

宥「華道もいいね、でも違うよ。私たちはね、麻雀部」

菫「……!」

宥「菫ちゃんも興味あるかな? 麻雀、菫ちゃんの高校もインターハイとか目指してない?」

菫「麻雀、か」

宥「あれ、どうしたの…?」

菫「そういえば……私の高校名って言ってなかったな。制服も家で着替えてたし……」

菫「改めて、自己紹介。白糸台の新部長、弘世菫だ。よろしく」

誠子「うーん、なんであの二人ベンチで仲良く座ってるんだ?」

尭深「パフェ…パフェ……1800円の、パフェ……」

誠子「それ私のお金だったんだよ?!」クワッ

尭深「抹茶パフェだったんだよ?!」ギロッ

誠子「お、おぅふ……。いかんな、今の尭深ちょっと怖いな…」

尭深「………!」ブーブー

誠子「ん? 宮永先輩から?」

尭深「えと、そうみたい。『喫茶店に着いたんだけど、今何処?』って」

誠子・尭深「……あ」

尭深「ごめんなさい!」ペコリ

誠子「本当にすいません!」ペコリ

照「いや、もう謝らなくていいから。それで今菫はどうなってるの?」

尭深「はい、少女趣味を含め他校の生徒に全てさらけ出して、自分の体調を悪いことにしてなんとか家に連れ込もうとしている魂胆かと思われます」

照「なんてこと……! 菫、そんな人だったなんて!」

誠子「私たちも驚きを隠せません。弘世先輩が…薔薇じゃ……コホン、こんな人だったなんて」

照「……誠子、今」

誠子「……私はそういうのには興味はありません、弘世先輩がそうだろうな、って思っただけです」

照「……同志!」ガシッ

誠子「……はい!」ガシッ

誠子「…あ、二人とも立ち上がって、どこかに行こうとしてますね」

尭深「ついに…家に…!」

照「あー、でも…あっちは菫の家のほうじゃないな。駅とも違う…」

誠子「あれ? そしたらどこに向かってるんですかね」

照「とりあえず尾行してみようか……」
―――――
誠子「それで…ついてきたはいいんだけど……」

尭深「…そういうシチュ?」

照「菫のこと、分からなくなってきた…。なんで白糸台に?」

宥「い、いいの? 部外者の私が入っちゃっても」

菫「ま、大丈夫だろ。部外者っていうと引退した三年生も部外者なんだし」

宥「さっき話してた三年生だよね。それって面倒見の良い先輩なんじゃ…」

菫「宥は本当に良い方へと考えるのが得意だよな」

宥「うわぁ…他の高校に入ったのなんて初めてだよ…」

菫「私は…あぁでも練習試合とかで他の高校に行くときなんかあるな」

宥「そうなんだぁ…流石白糸台の人なんだね」

菫「まぁ、な。…さてここが麻雀部の部室だ」

宥「うわ…広いし、いくつも雀卓がある……」

菫「さて、そしたら一局打とうか」

宥「う、うん……」

菫「うーん、それにしても時間があまりないな。二人麻雀ってやったことあまりないから何回くらいで時間過ぎるのか分からない」

宥「私も、二人麻雀ってあまりやったことなくて」

菫「誰か呼べばよかったかな。照なら暇してそうなんだが……まぁダメ元で」ピッピッ

<ブーブーブー

菫「は?!」

誠子「うわ、宮永先輩の携帯!?」

照「あ、あれ?! どこ?!」

尭深「……あ、バレちゃった…」

ガラッ

菫「お前ら…、なんでそこにいるんだ……?」

誠子「あ、あはは。いやぁ、こんにちわ」

照「……やぁ菫、久方ぶり」

尭深「こんにちわ、先輩」

菫「はぁ…まぁ理由なんか色々聞きたいけど、とりあえずこっちには時間がないんだ」

菫「渋谷と亦野、今から入れるか?」

誠子「は、はい!」

渋谷「はい、……!」ピコーン

宥「え、えと…初めまして」

菫「私の友人の松実宥だ。まだ私も打ったことがないから様子見の半荘かな、最初は」

照「私は……?」

菫「流石にお前は危ないだろう……」

東一局 親:宥

誠子(さて、と……部長に目をつけられる前にさっさと流したほうが懸命かな)

七巡目

誠子(うん? 松実さんって、染めてる? んじゃちょっと気をつけてっと)タン

尭深「ロン、5200」

誠子「ありゃ? しまった……」

菫「おい、しっかりしろよ? 一年とはいえ、もう冬。そろそろ二年になって後輩が出来るんだからな亦野も」

誠子「す、すいません」

宥「まぁまぁ菫ちゃん、まだ一回だけだよ」

東二局 親:誠子

誠子(開幕5200かぁ…、まぁなんとか鳴いて鳴いて鳴いて、ちゃちゃっと和了りますか)

誠子「ポン!」タン

誠子「ポン!」タン

尭深「ロン! 8000」

誠子(えー……)

菫「おい、亦野……」

誠子「すいません、ホント気をつけます…」

菫「全く、…悪いな宥。これもうちの部活方針なんだ」

宥「ううん、気にしてないよ。チームになるのって争うものだって、さっき菫ちゃん言ってたよね」

菫「まぁそうなんだ。本来は亦野もこんな調子じゃないんだがな」

東三局 親:菫

誠子(……なんか、今気付いたけど、尭深めっちゃ私のこと睨んでない?)

誠子(もしかしなくても、狙われてるのかな……)

誠子(これ以上振り込んだらもう弘世先輩になんて思われるか……)

菫(……ふむ、宥はやっぱり染めにいってるのか。しかも聴牌気配…。だったら筒子は通るだろう)っ⑦

尭深(………)タン

宥(………)タン

誠子(うーん、……みんな聴牌してそうなんだよなぁ…、とりあえず安牌)っ⑦

尭深「ロン、8000」

誠子「ちょ!?」

菫「おい……亦野……」

誠子「ひいいぃぃぃ! す、すいませんすいませんすいません!!」

尭深「………」フッ

誠子(尭深のやつ、あれ絶対わざとだ……!)

誠子(だって尭深のやつ、さっきツモ切りしてたよ?! 先輩からでも和了れたのに、私から和了ったんだ!)

菫(あれ? なんで私の⑦で和了らなかったんだ? ……あぁ亦野だったら楽に飛ばせそうだし、そのほうが早く終わるか)

東四局 親:尭深

尭深(さて、と。誠子はこれでトバして終了、と)

尭深(また後で抹茶パフェ奢ってもらわないと)

誠子(えー、ど、どれだ? 索子は安牌ぽい?)タン

尭深(ふむ、ドラ含めた喰いタンで終わりかな)

尭深「――ポ」

宥「ロンです、1000」

菫(――え? 萬子の染めじゃない……?)

宥(………)

菫(いや、萬子崩してるな、カン6索子待ちか。わざわざそんなところ……)

宥「…せっかく」

菫「……?」

宥「せっかく、みんなでこうやって卓を囲んで麻雀やってるんだから、もうちょっと楽しんでもいいんじゃないかな?」

照(―――、麻雀を楽しむ…か)

尭深「……ふぅ、ごめんね誠子。トバす隙見せたらトバすけど、私も全力で行く」

誠子「…これでも私は一年からチーム虎姫の一人なんだ。マイナス収支で終わりたくないね」

尭深「でも最終収支が私より低かったらまた抹茶パフェ奢ってね」ニコッ

誠子「こ、この点差で……?」

照「ねぇ菫、次入れて?」

菫「…あぁ、いいぞ。私と交代な」

照「いいの? せっかく会えた人なのに」

菫「……強いね、宥は、心も。いつか絶対全国の舞台で会えそうなそんな気がする」

照「……まぁ菫が言うのならそうなんだろうね」

菫「おいおい、私が言うのならってどういう意味だよ」

照「菫にはそういった観察眼があるんだよ。私なんかよりも優れた目がね。そういうところちゃんと先輩に伝わってるんだから、ちゃんと見ててくれてたんだから」

照「だから、菫は部長に任命されたんだよ。今度はちゃんと後輩の良い所、見つけないとね」

菫(……知らなかったよ、ほんの少し前まで部外者だなんて言っちゃった先輩がそんなこと見ててくれてただなんて)

菫(…宥も言ってたな。面倒見の良い先輩だって)

菫(私の周りって、良い人ばかりいるんだな…幸せ者だよホントに…)

菫「……宥」

宥「何? 菫ちゃん?」

菫「麻雀楽しもうな! それと、全国で逢おうな!」

宥「うん、私も頑張るね。もう一度菫ちゃんに逢いに来たいから」

カン

さて、昼間に書いた怜竜のやつと同じく、
ベッドインでいちゃいちゃした宥菫を書こうとしたら、タイトル書いてる時点で思いっきり変更してこうなった

書き溜めのやつじゃなくなった途端、難しくなるからリベンジでこれ書き始めたけど止めどころが分からないがちょっと難しいな
支援の人、こんな遅筆な自分に最後まで付き合ってくれてありがとうございました!

あとエピちょっと書いて終了っす

淡「やったー! これで全国大会出場だねー! やったよー!」

照「うん、最後までよく頑張った」ナデナデ

尭深「みんな何飲みます? 色々揃えたんだけど」

淡「え、そしたらたかみーのいつも飲んでるやつがいいな!」

尭深「え? 味がそこそこキツイよ?」

淡「飲んでみたいのー!」

尭深「そしたら、淡はこれね、宮永先輩と弘世先輩は?」

照「私はいつものでいいよ」

菫「私は」

誠子「クリームソーダでしょ」ボソッ

菫「」

淡「ブッ!」

照「ひゃ?!」

淡「ご、ごめんてるー。え、えと…え、何? 菫って…く、クリームソーダとか飲むの?」

菫「」

淡「ご、ごめん。わ、私…ダメ、堪えきれない……フフ、わ、笑っていいところなの?」

菫「亦野、お前ちょっと来い。そこ立ってみようか。麻雀じゃなくて本当のアーチェリーの弓の威力、な、見せてやるよ」


カン

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