宮藤「坂本さん……その注射器って……」(88)

宮藤「坂本さん、その注射器は……」

坂本「んっ?これか。なに、ただの栄養剤だ」

坂本「疲れが取れるとエイラから紹介されてな、これが案外効くんだ」

宮藤「へぇー、そうなんですか。私医学部志望なのに全然知りませんでした……」

坂本「私も実は聞いたことが無かったんだ、扶桑では珍しい薬なのかもしれん」

宮藤(あんまり知らない薬を使うのは……でも私が言うのも変だよね……)

坂本「それより宮藤、一体何の用だ?私の部屋に来る以上何か用事があったのだろう?」

宮藤「あっ、そうでした……えへへ」

宮藤「今日の昼食は扶桑から補給が届いたのでお茶漬けにしたんです!」

坂本「おっ、お茶漬けか。随分と久しぶりだな」

宮藤「それで中々食堂に来ない坂本さんを呼びに来たんですよ」

坂本「わっはっはっは。それはすまなかった。あまり腹が減っていなくてな」

坂本「すぐに支度をする、先に食堂で待っていてくれ」

宮藤「わかりました……」

宮藤(坂本さんがお腹空いてないなんて……体調でも悪いのかな)

坂本「どれ、食事前に1発……」


三日後 朝

宮藤「おはようございます、バルクホルンさん……とハルトマンさん」

バルクホルン「おお宮藤、おはよう」

ハルトマン「おはよぉ……ふぁぁ……」

宮藤「ハルトマンさんがこんな時間に起きてくるなんて珍しいですね」

エーリカ「トゥルーデが無理やり起こすんだよ……」

バルクホルン「何を言うハルトマン」

バルクホルン「早起きは三文の得だと少佐も言っていただろう」

バルクホルン「そもそも少佐がくれた薬のおかげでこうしてだな……」

宮藤(薬?……眠気覚ましとしても使えるのかな……)

エーリカ「はいはい、分かった分かったから」

エーリカ「それよりミヤフジ、私おなか空いた……朝ごはん」

宮藤「あはは……実はまだ朝ごはん作ってる途中なんですよ」

宮藤「こんなに早く起きてくるとは思わなくて……すぐにお味噌汁作りますね」

バルクホルン「すまんな宮藤。なるべく早く頼む」

宮藤「はい、分かりました。すこしだけ待っててくださいね、ハルトマンさん」

エーリカ「うぅ~頭いたい~」

翌日 昼

ミーナ「……報告書によると、どうも最近ストライカーの稼働率が落ちてるみたいね……」

ミーナ「補給が足りないわけでは無いし……整備班に疲れが溜まっているのかしら……」

ミーナ「何とかしないと」

コンコン

ミーナ「どうぞ」

エイラ「失礼するゾ!」

ミーナ「あらエイラさん、どうしたの?」

エイラ「……実は今日の夜間哨戒のことなんだけどサ」

ミーナ「またサーニャさんと一緒に飛ぶつもり?今日でもう5日連続よ?」

ミーナ「昼の出撃もあるし、サーニャさんの面倒も見ているんでしょう?」

ミーナ「体が保たないんじゃ……」

エイラ「そこは心配無用なんダナ!ここ最近は体調もよくて絶好調なんダ!」

エイラ「今の私なら10日だろうが20日だろうが連続飛行できるゾ!」

ミーナ「確かに夜間哨戒にエイラさんが参加してくれるなら心強いわ。でもさすがに……」

エイラ「それにさ、私はサーニャのことが心配なんダ!夜一人で飛ぶのは危険ダロ?だから中佐、頼む!」

ミーナ「……分かったわ。夜間哨戒での飛行を許可します」

ミーナ「でもいくらウィッチと言えども人間よ?体調管理には十分気をつけてね」

エイラ「わかってるんダナ!それじゃ!」

ガチャ バタン

エイラ「サーニャと一緒なんダナ~♪」スキップ ルンルン



ミーナ「最近のエイラさんは何故か上機嫌ね……何か良い事でもあったのかしら」

翌日 夜

宮藤「リーネちゃんはお味噌汁をお願い」

リーネ「うん分かったよ」

宮藤「私はこっちのポテトサラダを作るから」

リーネ「じゃあまずはネギを切らないと……」

トントントントン

リーネ「痛っ」

宮藤「大丈夫!?しっかりしてリーネちゃん!リーネちゃんってば!」

リーネ「ふふ……もう大袈裟なんだから。ちょっと指を切っちゃっただけだよ」

宮藤「ふぅ、良かった。待ってて!今すぐ治すから」

フュイーン

宮藤「もう大丈夫だよ、リーネちゃん」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん」

宮藤「でもリーネちゃんが包丁で指を切るなんて随分久しぶりだね」

リーネ「ちょっと手が滑っちゃって……ごめんね。すぐお味噌汁作るから」

宮藤「大丈夫?なんなら私が全部作っても……」

リーネ「うんうん、いいの。大丈夫だから心配しないで」

宮藤「そう……少しでも痛かったら言ってね」

リーネ「うん」

夕食


宮藤「みなさん、おかわりたくさんありますんでいっぱい食べてくださいね」

ルッキーニ「芳佳!おかわり!」

宮藤「ゆっくり食べてね……はいどうぞ」

シャーリー「やっぱり宮藤とリーネの飯は最高だな」

ミーナ「この美味しいご飯が501の強さの秘密かもしれないわね」

宮藤「そ、そんなぁ……えへへ、ありがとうございます」

ペリーヌ「まあ確かに宮藤さんたちの料理は……おいしいですわね」

ペリーヌ「ま、パリの一流料理店と比べればまだまだですけど……」

宮藤「あはは……」

ルッキーニ「サラダ美味しかった~」

ルッキーニ「次はお味噌汁飲もうっと~」ジュルジュル

ルッキーニ「……うげっ、何かしょっぱーい、全然美味しくないんだけど」

リーネ「ご、ごめんなさい!その味噌汁作ったの私なの……」

ミーナ「……微かにしょっぱい気もするわね」

ミーナ「まあ失敗は誰だってあるから……気にしないで大丈夫よ」

バルクホルン「……私は別にしょっぱくはないと思うが……」

エーリカ「ふつーの味だよね」

エイラ「いや、むしろ少し薄いんじゃないカ?」

サーニャ「……私には……飲めない……ごめんなさい」

坂本「扶桑ではこのぐらいが普通ではないか?」

ペリーヌ「少佐……幾らなんでもそれではお体に障りますわ」

シャーリー「あたしもこれはちょっとキツイかな」

リーネ「私今すぐ作り直しますから!」

宮藤「大丈夫だよリーネちゃん、後は私がやるから」

リーネ「宮藤さん……」

宮藤「えっ?」

リーネ「どうしたの?」

宮藤「い、いや、なんでもないよ」

宮藤(でも確かにこのお味噌汁はしょっぱい……まるで塩の塊が入ってるみたい……)

宮藤(リーネちゃん、どこか体調でも悪いのかな)

宮藤「リーネちゃんは休んでて」

リーネ「ごめんね。でもちょっとしたミスだから心配しないでね」

翌日

ミーナ「警報!?……こんなに近くにネウロイですって!?」

ミーナ「報告がないということは……レーダーに引っかからないタイプかしら」

ミーナ「とにかく迎撃しないと」

ミーナ『ネウロイが出現!かなり基地まで接近されています』

ミーナ『全員出撃、基地に接近中のネウロイを迎撃せよ』



ハンガー

バルクホルン「……出撃か」

エーリカ「うぅ……頭がガンガンする……」

バルクホルン「たとえ体調が悪くても……出撃しないわけにはいかん……」フラフラ

エーリカ「トゥルーデ……帰ったらいつものちょうだい……」

バルクホルン「そうだな……今日の分がまだだったな……」

バルクホルン「さっさとネウロイを……落とそう……」

上空

ミーナ「状況は?」

坂本「バルクホルンとハルトマンが先行して敵の迎撃に向かっている」

シャーリー「ま、あの二人なら大丈夫だろ。少佐曰く小型のコア無しばかりらしいじゃないか」

ルッキーニ「撃墜数増えないとつまんないね。帰ろっかシャーリー」

ミーナ「ルッキーニさん?冗談もほどほどに……」

坂本「待てミーナ!バルクホルンたちの様子がおかしい!」

ミーナ「えっ?」


バルクホルン「エーリカ!あ、合わせるぞ!」

エーリカ「ってトゥルーデ!そっちじゃない!」

バルクホルン「ど、どこを見ているハルトマン!」

エーリカ「ぶ、ぶつかる!」

ドン

ミーナ「フラウとトゥルーデが……嘘でしょ……」

シャーリー「おい、ぶつかったぞ!世界トップクラスのスーパーエース同士が!」

坂本「ミーナ、急げ!きっと二人はストライカーの調子が悪いのだろう!援護するぞ!」

ミーナ「……そ、そうね。全機一斉攻撃!」



宮藤(その後ネウロイは何事も無く撃墜出来ました)

宮藤(だけど問題は……)

ミーナの部屋


ミーナ「……ストライカーには全く異常なし」

シャーリー「敵もいつもどおりだったな、別におかしなところは無かった」

ミーナ「とりあえず今は二人共医務室に寝かせているけど」

シャーリー「やっぱりどこか体でも悪いんだろうか」

ミーナ「でも二人同時に体調不良とは考えにくいわね……」

シャーリー「食中毒ってわけでもないしな。宮藤の飯はうまいし」

コンコン

ミーナ「どうぞ」

ペリーヌ「失礼しますミーナ中佐、実は二人の部屋からこんなものが……」

ミーナ「こ、これは……」

シャーリー「おいおい、あいつなんてものを」

ガチャガチャ ドタン

ルッキーニ「はぁ……はぁ……」

ミーナ「ルッキーニさん?部屋に入るときは静かにノックしてから……」

ルッキーニ「大変!医務室が!芳佳が……芳佳が!」

シャーリー「どうしたんだ!」

ルッキーニ「うわぁーん、芳佳が死んじゃうよぉー」

ミーナ「なんですって?」

シャーリー「医務室だな!行こう!」

ペリーヌ「一体何がどうなっていますの……」

医務室


バルクホルン「放せぇー!放せ宮藤!」

宮藤「落ち着いてくださいバルクホルンさん!」ガシッ

バルクホルン「うるさいうるさい!どけと言っているだろう!」バキッ

宮藤「……げふ……ごほごほ……ば、バルクホルンさん痛いでs」

バルクホルン「上官に逆らうんじゃない!」ドス バキッ

宮藤「げほッ……げほっげほっ」

バルクホルン「黙れ黙れ黙れ!」ボコッ ドカッ

宮藤「ひゃ、ひゃめ……ひゃめて……ひゃめてくだ……げふっ」

宮藤「うぅ……うぅ……」

シャーリー「大丈夫か宮藤!……早く取り押さえないと!」

シャーリー「しっかりしろバルクホルン!」ガシッ

バルクホルン「放せリベリアン!私の邪魔をするならお前も!」

ミーナ「トゥルーデ!もう止めて!」ガシッ

ペリーヌ「大尉!お止めください!」

バルクホルン「うるさいうるさい!」

エーリカ「うぅ~薬~頭痛いよぉ~」ガクガク

30分後


ミーナ「なんとかトゥルーデを拘束できたわね……」

シャーリー「固有魔法でも使われたら拘束なんて到底無理だったな」

ミーナ「理由は分からないけどトゥルーデは固有魔法が使えないと見て良さそうね」

コンコン

ミーナ「どうぞ」

ペリーヌ「失礼します」

ミーナ「ペリーヌさん……宮藤さんは?」

ペリーヌ「宮藤さんは医務室で治療しておきました……」

ペリーヌ「顔が腫れ上がっていて……とても見ていられませんでしたわ」

ミーナ「……治癒魔法も本人には使えないものね……なんだかもどかしいわ」

ミーナ「でもまさかトゥルーデがこんなことをするなんて……」

ペリーヌ「中佐!……宮藤さんは意識は無いはずなのに何度も何度も」

宮藤『バルクホルンさんは悪くないんです……バルクホルンさんは悪くないんです……』

ペリーヌ「と呟いておりました……」

ペリーヌ「個人的な意見になりますが、わたくしも大尉があのようなことをする方とは思えません」

シャーリー「あたしもあのバルクホルンがこんなことをするとは思わないな」

ミーナ「そうね……もちろん私も分かっているわ」

ミーナ「そうなるとやはり……部屋から押収したこの薬物が原因……かしらね」

シャーリー「問題はこの見慣れない薬がどこから持ち込まれたかだ……」


パァン

シャーリー「銃声!?」

ミーナ「まさかトゥルーデが!」

ペリーヌ「……違います!今度は隊員の個室の方からですわ!」

エイラ・サーニャの部屋

エイラ「く、くるナァ!こっちにくるんじゃナイ!」

サーニャ「エイラ?エイラ、一体どうしたの?」

エイラ「む、虫が!虫が!虫がそこら中を這っているんダ!」

サーニャ「エイラ落ち着いて。虫なんてどこにもいないわ……」

エイラ「やめロ!サーニャに寄るナ!近寄るナァ!」ドンッ

サーニャ「きゃっ!」

サーニャ「エイラどうしたの……急に押すなんて……痛いわ」

サーニャ「いつものエイラに……戻って……私が悪かったなら謝るから……お願い」

エイラ「うわぁ!サーニャから!サーニャから離レロ!」

サーニャ「ごめんなさい……ごめんなさい……エイラ、ごめんなさい……」

エイラ「だから離れろって言ってんダロ!」

サーニャ「エイラ、やめ」

パァン 

サーニャ「きゃぁ!」

サーニャ「うぅ……エイラ……ごめんなさい」ボタボタ

ミーナ「サーニャさん!……その血は……」

ミーナ「そこまでよ!」

ミーナ「銃を捨てなさい!エイラ中尉!」

エイラ「邪魔……邪魔すんナ!サーニャは私が守るんダ!」

パァン パァン

シャーリー「危ない!」ドン

ミーナ「きゃ!」

グシャ

シャーリー「ぐっ……1発もらったか……今だペリーヌ!」

ペリーヌ「仕方ありませんわ……出力を抑えて……」

ペリーヌ「トネール!」

エイラ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」バリバリ バリバリ

エイラ「」プシュー

ミーナ「サーニャさん、怪我は?」

サーニャ「……肩に弾が掠っただけです。それよりシャーリーさんが……」

ミーナ「シャーリーさん!しっかりして!」

シャーリー「だ、大丈夫……だ。悪いが医務室、連れてってくれるか」

30分後

ミーナ「状況を整理しましょう」

ミーナ「トゥルーデ、エーリカ、エイラさんの三人は拘束した上、地下室に」

ミーナ「医務室で宮藤さん、サーニャさん、シャーリーさんの治療にペリーヌさんとルッキーニさんが」

ミーナ「この基地で今動けるのは私と美緒とリーネさんの三人だけになるわね」

坂本「……そ、そうだな」フラフラ

ミーナ「おまけにこの謎の薬物のおかげで基地の機能は半分以上が麻痺しているわ」

ミーナ「どうりで最近稼働率が低下したりネウロイの発見が遅れたりするわけね」

坂本「こ、こういうときこそネウロイに備えなければならん……ならん」グラグラ

ミーナ「美緒?どうしたの?……まさか」

坂本「いや違う、これは……その……そう、風邪だ。悪いが少し部屋で休んでくる」

ミーナ「美緒……あなたっていう人はこんなときに……」

ミーナ「じゃあリーネさん、ついていてあげて」

リーネ「は、はい……」

坂本「すまんな……ミーナ、後は頼む……くぅ……治まれ……」ガクガク

ガチャ バタン



ミーナ「美緒まで動けないとなると501が活動するのは無理ね」

ミーナ「けれど誰がこんな薬物をこの基地に……」

基地上空5000m 大型ネウロイ出現!総員対空警戒!
非戦闘員は安全な場所へ退避せよ

繰り返す!基地上空5000m 大型ネウロイ出現!総員対空警戒!
非戦闘員は安全な場所へ退避せよ

ミーナ「敵襲!?どうしてこんなときに……まるでレーダーが機能していないわ」

ミーナ「こうなったら私一人でも……時間を稼げれば周辺基地から応援がくるはず」

ガチャ

ミーナ「だ、誰?」

サーニャ「ミーナ中佐、私も出ます」

ミーナ「さ、サーニャさん!あなた体は大丈夫なの?」

サーニャ「……まだ痛みますけど……ミーナ中佐を放っておけないから」

シャーリー「あたしも出るぞ……いつつ……」

ミーナ「あ、あなたは無理よ!腹部に銃弾を受けたのよ?死んでもおかしくは……」

シャーリー「……ウィッチに不可能はない。そうだろ中佐?」

ミーナ「でも、でももしあなた達に何かあったら……」

宮藤「私が!私がみんなを守ります……盾ぐらいにはなりますから」

ミーナ「宮藤さんまで……」

ペリーヌ「この人たちったら言い出したら聞かないんですもの」

ルッキーニ「みんなで戦えばあんなネウロイ楽勝だよ!」

ミーナ「……分かったわ。ストライクウィッチーズ、出撃!」

上空

ミーナ「中型ネウロイだけど、見たことない形ね」

サーニャ「周辺に小型ネウロイ多数、近づいてきます」

シャーリー「悪いがあたしは援護に徹するよ。動きまわるのは流石にキツイんだ」

ルッキーニ「あたしがシャーリーを守るから!安心して!」

ミーナ「宮藤さん、大変だろうけど、お願いできるわね?」

宮藤「はい!」

ミーナ「私とペリーヌさんで攻撃してコアを探します」

ミーナ「発見したら宮藤さんのシールドの後ろからサーニャさんがとどめをお願い」

ミーナ「シャーリーさんとルッキーニさんは周辺の小型ネウロイの掃討を」

「了解!」

ミーナ「では、作戦開始!」

ミーナ「ペリーヌさん、私の攻撃に合わせて。3秒後に行くわよ」

ペリーヌ「了解しましたわ。中佐」

ミーナ「3.2.1……今よ!撃って!」

ズダダダダ

ペリーヌ「……外した?まさかわたくしがこんな凡ミスを」

ミーナ「いえ、タイミングは完璧だったはず。今のは……」




シャーリー「向こうは大丈夫かな……」

ルッキーニ「シャーリーこそ大丈夫なの?痛くない?」

シャーリー「大丈夫、全く問題ない……と言いたいところなんだけどさ」

シャーリー「実は飛んでいるのもやっとの状態なんだ……」

ルッキーニ「じゃああたしが頑張らないと!シャーリーは休んでて!」

シャーリー「悪いなルッキーニ。あたしはルッキーニが撃ち漏らしたのを狙っていく」

ルッキーニ「じゃあ行くよ!」

サーニャ「……芳佳ちゃん、大丈夫?」

宮藤「う、うん……少し前が見にくいけど平気だよ」

サーニャ「私も治癒魔法が使えれば良かったのに……」

宮藤「サーニャちゃん……」

ミーナ「宮藤さん!サーニャさん!ネウロイの様子がおかしいの」

宮藤「うわっ、ほんとだ。ペリーヌさんの射撃が全然当たってない……」

サーニャ「それにネウロイの攻撃が……すごい精度……」

ミーナ「作戦を変更する必要があるわ」

ミーナ「私たちの攻撃が通用していないのよ、ここはもう全員で……」

宮藤「まるでエイラさんやリーネちゃんの固有魔法みたい」

ミーナ「!?……まさか」

ペリーヌ「なんですのこの敵は?」

ペリーヌ「こっちの攻撃は掠りもしませんのに相手の攻撃は避けられませんわ」

ペリーヌ「まるで自分の回避位置に狙撃を受けているかのようですわね」

ペリーヌ「くぅ……シールドばかり使っていてはもう魔法力が……」

ミーナ「ペリーヌさん!避けて!危険よ!」

ペリーヌ「えっ?……ネウロイが……竜巻に!」

ドカッ グシャァァァァ

ペリーヌ「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

宮藤「あれはハルトマンさんのシュトゥルム!……ペリーヌさん!」

シャーリー「おい、大丈夫か!」

ルッキーニ「シャーリー危ない!」

シャーリー「えっ?」

グサッ 

ルッキーニ「げふっ……しゃぁ……りー、だいじょ……うぶ?」

ヒュー ボチャン

サーニャ「ルッキーニちゃんが海に!」

ミーナ「私はペリーヌさんを!サーニャさんはルッキーニさんを回収して!」

ミーナ「宮藤さんはシールドでみんなを守って!全機一時撤退!」

宮藤「そんな……私が守らなきゃいけなかったのに」ボーゼン

ミーナ「宮藤さん!聞こえているの!?」

サーニャ「芳佳ちゃん……芳佳ちゃん!」パシィ!

宮藤「さ、サーニャちゃん?」

サーニャ「しっかりして芳佳ちゃん!みんなを守れるのは芳佳ちゃんだけなの!」

宮藤「……そうだ……私がやらなきゃ……私がやらなきゃ!」

宮藤「私が援護します!撤退してください!」

ミーナ「ペリーヌさん!しっかりして!」

ペリーヌ「」

ミーナ「出血が酷いわ、全身傷だらけね……早く治療しないと」

サーニャ「ルッキーニちゃんもかなり……」

ルッキーニ「ぐぅ……うぅ……」

シャーリー「ルッキーニ……あたしを庇って……畜生、なんて不甲斐ないんだ!」

宮藤「私でもこの火力じゃ長くは耐えられません!早く撤退を!」

宮藤(その後、なんとか基地に降りた私たちですが、ネウロイによって基地は壊滅)

宮藤(施設、物資のほとんどを焼き払われました)

宮藤(幸い医務室は無事だったのですが、みんなの部屋はなくなってしまいました)

宮藤(ネウロイは現在、ブリタニア首都ロンドンを目指して進行中です)


ミーナ「……501は壊滅ね」

ミーナ「ウィッチの半数以上が負傷、精神異常で戦闘不能」

ミーナ「おまけに基地はレーダーどころか滑走路さえまともに使用できない」

ミーナ「弾薬や食料の備蓄もほとんど無し。基地の人員にも死傷者多数」

ミーナ「こんなときに美緒……あなたがいてくれればどんなに心強かったか……」

ミーナ「でも美緒がいた自室はネウロイの攻撃で跡形もなく……」

ミーナ「うぅ……美緒……」

「ミーナ中佐、ブリタニアの防衛線が次々突破されていると報告が……」

「ハンガーより出火、消火作業急いでいますが燃料に引火していてとても……」

「各地の基地より501に救援要請です、大型ネウロイ多数出現とのこと」

「ロマーニャより緊急入電、首都上空に大型14、小型多数。救援を要請」

地下室

サーニャ「エイラ……」

エイラ「ーーーー!ーーーー!」ガチャンガチャン

サーニャ「待ってて……私がネウロイを倒したら……」

サーニャ「私……エイラの所に……きっと帰ってくるから……」

サーニャ「……約束だから」

宮藤「しゃ、シャーリーさん。本当に行くんですか?」

シャーリー「ああ、ロマーニャから支援要請がきているらしいんだ」

シャーリー「これでロマーニャまで守れなかったらルッキーニに言い訳できないだろ?」

宮藤「でも私魔法力が残ってなくて……シャーリーさんにも止血程度しか……」

宮藤「私がもっと魔法を上手に使えれば……ペリーヌさんも……ルッキーニちゃんも……」

シャーリー「もういい、いいんだ宮藤。お前がいるおかげであたしは戦えるんだ」

シャーリー「宮藤は負傷したみんなについていてやってくれ。頼む」

宮藤「あの……必ず帰ってきてくださいね……」

シャーリー「大丈夫だ、帰ってきたらまた美味いご飯を食べさせてくれよな」

宮藤「は、はい!たくさん作って待ってますから!」

シャーリー「じゃあな、宮藤」

シャーリー「シャーロット・E・イェーガー、出撃する」

グオォーン ブーン

宮藤「待って……ますからね」

「ミーナ中佐、報告が」

ミーナ「……何よ?救援要請なら放っておいて……どうせ何もできないから」

ミーナ「もう美緒はいない……501はもう戻ってこないのよ……」

「それがその……リトヴャク中尉とイェーガー大尉が……出撃しました」

ミーナ「……何ですって?ストライカーの整備は?魔法力は?弾薬すらまともに残ってないのよ!」

「先の戦闘が迎撃戦だったので魔法力の消費が少なく、両ストライカーは補給無しで」

「また兵装はかろうじて弾薬の残っていたMG42を装備していかれました」

ミーナ「それじゃあ戦闘になったとしても3分が限界だわ!一体誰の許可で!」

「ミーナ中佐の許可だと……違うのですか?」

ミーナ「……そう……そうね……私が指揮官だったわね……」

ミーナ「……下がっていいわ」

「し、失礼します」


ミーナ「ねぇ私は……どうすればいいの?……美緒……」

数日後 ネウロイの一大攻勢によって欧州は陥落
撤退作戦も間に合わず、多数の命が失われた。
後から分かったことだが、各地の基地にも501と
同じような薬物が蔓延していたようだ
その後の研究の結果、これはネウロイの仕業と判明した。
全てがネウロイ側の作戦だったのだ。

そして、世界最強の統合戦闘航空団、501ストライクウィッチーズは
死傷者4名 行方不明者2名 精神異常者3名の被害を被り、壊滅した。
指揮官であったミーナ中佐は責任を取らされ更迭。
残ったのは宮藤軍曹だけであった。
多くの優秀なウィッチを失った人類はこれからどうなるのだろうか……

リベリオン 東部 ボストン

宮藤「どうしてこうなったんだろ……私どこで間違えちゃったのかな……」

宮藤「リーネちゃんやみんなに会いたいよ……うぅ……」

宮藤「……あのとき坂本さんを止めていれば」

宮藤「……バルクホルンさん達も様子がおかしかった」

宮藤「エイラさんだって……私が……」

宮藤「それに……それにリーネちゃんともちゃんとお話していれば……こんなことには」保って

宮藤「うんうん駄目、そんなことを考えてちゃ……みんなの分まで戦わないと」

宮藤「でも……でも……うぅ……私の……私のせいだ……」

止める勇気さえあればEND

宮藤「坂本さん、その注射器は……」

坂本「んっ?これか。なに、ただの栄養剤だ」

坂本「疲れが取れるとエイラから紹介されてな、これが案外効くんだ」

宮藤「へぇー、そうなんですか。私医学部志望なのに全然知りませんでした……」

坂本「私も実は聞いたことが無かったんだ、扶桑では珍しい薬なのかもしれん」

宮藤「でも坂本さん、そんなに疲れてるんですか?」

坂本「いや、特段そういうわけではないんだが。疲れが取れるなら別に良いかと思ってな」

坂本「それより宮藤、一体何の用だ?私の部屋に来る以上何か用事があったのだろう?」

宮藤「待ってください!……その注射器貸してください!」

坂本「何だ宮藤、怖い顔をして……」

宮藤「いいから!渡してください!」

坂本「あ、ああ……ほら」

宮藤「こんなものは……こうです」パリーン

坂本「み、宮藤!お前なんてことを!エイラがせっかくくれたんだぞ!」

坂本「高い薬だったらどうするんだ!」

宮藤「坂本さん、落ち着いて聞いてください」

宮藤「お母さんやお祖母ちゃんはいつも言ってました」

宮藤「薬なんてものはどうしても、という時以外は使わないほうがいいんです」

宮藤「ましてや疲れが取れる程度で薬に頼るなんて絶対に駄目です」

宮藤「もし副作用や中毒性があったらどうするんですか?」

宮藤「私は薬でボロボロになる坂本さんなんて見たくありません」

坂本「……そうだな。宮藤の言うとおりだ」

坂本「本来なら疲れなど風呂と睡眠で問題ないはずだ」

坂本「それを薬などに頼るとは……少し焦っていたのかもしれないな」

宮藤「坂本さん!分かってもらえましたか!」

坂本「ああ、エイラには悪いが薬はもう二度と使わん。宮藤、お前に誓おう」

宮藤(良かったぁ、勇気を出して言ってみて)

宮藤「それじゃあ坂本さん、これからご飯ですから」

宮藤「今日の昼食は扶桑から補給が届いたのでお茶漬けにしたんですよ!」

坂本「おっ、お茶漬けか。随分と久しぶりだな」

宮藤「それで中々食堂に来ない坂本さんを呼びに来たんですよ」

坂本「わっはっはっは。それはすまなかった。あまり腹が減っていなくてな」

宮藤「それも薬の副作用かもしれません……体、大丈夫ですか?」

坂本「問題ない、幸いそんなに使っていないしな」

坂本「いざとなったら自室禁固にでもしてもらうさ」

坂本「じゃあ食堂にいこうか、わっはっはっは」

宮藤「はい!」

宮藤(あとでエイラさんにも注意しに行かなきゃ……)

コンコン

エイラ「誰ダ?」

宮藤「あの、宮藤芳佳です」

エイラ「なんだ宮藤か。どうしタ?」

宮藤「あの、エイラさん。実はその……薬のことなんですけど……」

エイラ「おっ!さては少佐に聞いてきたナ!」

宮藤「はい……それでその」

エイラ「分かってるわかってる、薬が欲しいんダロ?」

エイラ「宮藤もついに薬の良さが分かったんダナ、いいゾいいゾ」

エイラ「宮藤にも特別に分けてやるんダナ。感謝しろヨ」

宮藤「いやそうじゃなくて」

エイラ「じゃあなんのようダヨ?」

宮藤「その薬、やめたほうが良いと思います」

エイラ「何ダッテ?これは良い薬だゾ!効き目が抜群ナンダ!」

エイラ「これのおかげで私はサーニャと一緒に飛べるんダヨ」

エイラ「だからこの薬はやめられないんダナ」

宮藤「エイラさん!サーニャちゃんは薬を使ってまで一緒に飛んでほしくないと思います!」

エイラ「……うるさいナ……お前にサーニャの何が分かるっていうんダヨ……」

宮藤「私だってエイラさんが薬でボロボロになるのは見たくないんです!」

エイラ「うっ……でも副作用なんて今のところ何もない……ゾ……」

宮藤「本当ですか?」

エイラ「…………」

宮藤「エイラさん!」

エイラ「……実は少し味覚がおかしいんダ」

エイラ「あと幻覚が少し……」

宮藤「ダメじゃないですか!今すぐ治療を受けてください!」

エイラ「でもサーニャが……」

エイラ「でもサーニャが……」

宮藤「サーニャちゃんのためでもあるんですよ!」

宮藤「もし幻覚に惑わされてサーニャちゃんに怪我でもさせたらどうするんですか!」

エイラ「それは……そうダナ。サーニャを危ない目に合わせるわけにはいかないんダナ」

宮藤「エイラさん……分かってくれましたか」

エイラ「ああ、悪かったヨ、宮藤」

宮藤「良かったぁ……」

エイラ「でもこの薬、少佐とリーネにはもうあげちゃったゾ……」

宮藤「坂本さんはいいとして……リーネちゃんが危ない!」

リーネ「ふふ……芳佳ちゃん……芳佳ちゃん」

宮藤「……リーネちゃん……何やってるの」

リーネ「芳佳ちゃんを抱きしめてるの」

宮藤「リーネちゃん、それ枕だよ……」

宮藤(机の上に注射器がいちにーさんしー……8本も)

宮藤「リーネちゃん!しっかりして!私だよ、芳佳だよ!」

リーネ「芳佳ちゃん?でも芳佳ちゃんはこっちに……」

宮藤「だからそれは枕だよ……リーネちゃん」

リーネ「そんなわけないよ……だってこんなに笑ってくれるんだよ……?」

リーネ「最近の芳佳ちゃんは私には笑いかけてくれない……」

リーネ「でもこの芳佳ちゃんは違う、私だけを見てくれてるんだから……」

宮藤「……ごめんリーネちゃん!私リーネちゃんがそんなこと思ってるなんて……全然」

リーネ「もう私に構わないで!私にはこの芳佳ちゃんだけいればいいの!」

リーネ「だから宮藤さんはもういらない!いらないの!」

宮藤「リーネちゃん」ギュッ

リーネ「……芳佳……ちゃん?」

宮藤「ごめんね……ごめんねリーネちゃん」

宮藤「私リーネちゃんのことを見てないわけじゃないの」

宮藤「むしろいつも見てる」(いろんな意味で)

リーネ「……芳……佳ちゃん」

宮藤「大丈夫だよ……これからも私はずっとリーネちゃんを見てるから」

宮藤「リーネちゃんをきっと治してあげる、だから待ってて。お願い」

リーネ「うん……ありがとう芳佳……ちゃん」

宮藤「えへへ、照れるなぁ」

リーネ「もう……芳佳ちゃんったら……」

三日後 朝

宮藤「おはようございます、バルクホルンさん……ハルトマンさんは?」

バルクホルン「おお宮藤、おはよう」

バルクホルン「あいつはまだ寝ている、何度起こしても起きないのだ。まったく……」

宮藤「でもハルトマンさんがこんな時間に起きているなんて想像出来ませんよ」

バルクホルン「早起きは三文の得だと言ってはいるのだがなぁ」

バルクホルン「それに私も何とか起こそうといろいろ考えているのだ」

バルクホルン「この前も少佐が教えてくれた眠気覚ましの……カンプ……マサツだったか」

宮藤(坂本さんらしいなぁ……)

バルクホルン「しかし寝ているハルトマンにやらせるのはいろいろと無理があってな」

宮藤「大変ですねバルクホルンさん……」

バルクホルン「宮藤こそこんなに朝早くから大変だろう」

宮藤「別にそんなことないです。好きでやってることですから」

宮藤「もうすぐで朝ご飯できますよ。待っててくださいね」

バルクホルン「うむ、そろそろみんなも起きてくる頃だろう」

バルクホルン「皿でも出すのを手伝おうか、宮藤」

宮藤「はい、お願いします!」



エーリカ「うぅーん……すやすや……」

翌日 昼

ミーナ「……報告書によると、どうも最近ストライカーの稼働率が落ちてるみたいね……」

ミーナ「補給が足りないわけでは無いし……整備班に疲れが溜まっているのかしら……」

ミーナ「何とかしないと」

コンコン

ミーナ「どうぞ」

坂本「私だ」

ミーナ「あら美緒、どうしたの?」

坂本「実は少し気になることがあるんだ」

ミーナ「……何かしら?」

坂本「実は最近この基地でこの薬物が蔓延しているらしいんだ」

ミーナ「これは……どうして美緒がこれを?」

坂本「いや、恥ずかしい話なんだが私も少し使っていてな……わっはっはっ」

ミーナ「美緒!あなたって人は!」

坂本「いやいや落ち着け、もう使っていない。宮藤にさんざんに怒られたよ」

ミーナ「そう……なら私の小言は後回しね。それで?」

坂本「ストライカーの稼働率の低下もこれが原因ではないのか?」

ミーナ「そうね、それが確かなら可能性はかなり高いわ」

坂本「もしそうなら厳しく取り締まる必要性がありそうだが……」

ミーナ「もちろんよ。薬物なんて見過ごすわけにはいかない。今すぐ取り締まらないと」

ミーナ「とりあえず上層部にもこの薬物の事は伝えておかなければいけないわね」

ミーナ「基地に深刻な被害が出る前に判明してよかったわ」

坂本「まったくだな。このままだともしかしたら501は壊滅していたかもしれん」

ミーナ「もう美緒ったら。酷い冗談はやめてちょうだい」

坂本「わっはっはっは。すまんすまん。なんとなく言ってみただけだ」

その後、ネウロイの一大攻勢がありましたが、
501統合戦闘航空団の活躍で欧州を守り切ることができました。
医務室で治療を受けていたリーネちゃんやエイラさんも
基地上空のネウロイを倒したらすっかり良くなりました。
きっとあの薬物もネウロイの一部だったのかな……よくわかりません。
でも軍の偉い人の分析によると、
もし501が戦えなかったら欧州は陥落していたらしいです。
これもあのとき私が勇気を出して言ったおかげなのかもしれません。
もし黙っていたらあの夢のようになっていたのかと思うと……とても怖いです。


リーネ「芳佳ちゃーん!訓練の時間だよー」

宮藤「うーん、今すぐ行くから!ちょっと待ってて!」

宮藤「今日も1日、頑張らなきゃ!」

リベリオン 東部 ボストン

宮藤「なーんて、全てがそう上手くはいかないよね……」

宮藤「後からあれこれ考えても何も変わらない……悪い癖だよ」

宮藤「501壊滅は現実。本当に全部夢だったら良かったのに」

「宮藤曹長、出撃用意お願いします」

宮藤「はい、今行きます……」

501のみんなに、また会えるかな……

宮藤「宮藤芳佳、出撃します」


この日、伝説の魔女たち501ストライクウィッチーズは
歴史の表舞台から姿を消した。
この後も人類とネウロイの熾烈な戦いは続き
戦場はリベリオン、そして扶桑皇国へと移っていった。
この後、人類がどうなるのかは誰も知らない……
果たして平和な世界は再び訪れるのだろうか……

END

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