勇者「勇者とは神々の天啓を受け、蘇生し続ける体を与えられた凡夫」(162)

国王「貴公が天啓受けた勇者か……」

勇者「は、はははい」ガタガタガタ

国王「そう緊張するでない。魔王が現れ早五年」

国王「最前線の王国は遂に陥落したと聞く。貴公は我々人類の希望だ」

国王「貴公の前では私など大した力も無い人間よ」

勇者「そそその様な事は、決して!」

国王「いいや、そうなのだよ。私にはどうしようとも現状を打破する事はできん」

国王「だが貴公ならば……魔王討伐、向かってもらえるだろうか?」

国王『天啓を受けたとは言え、聞く所に一般市民だと言う。一人で荒野に放り出すつもりは毛頭無い』


戦士「お、あんたが勇者様か」

魔法「ちょっと戦士! そんな言葉遣い!」

勇者「あ、いえいいんです。ほんと僕、天啓を受けただけなんで」

僧侶「それにしても貴方様は世界をその双肩に背負っているのです。戦士さん、軽はずみな発言は慎んで下さい」

戦士「えー? 本人だってこう言ってんだしよぉ。ここは勇者様のご希望に合わせて顔を立てるべきじゃね?」

魔法「あんたのいかつい顔が威圧している所為じゃないの?」

戦士「ちょ、結構気にしてるし凄んでいないんだが……」

勇者「っぷふ」

戦士「わ、笑うなよ……」

勇者「ふふ、ごめんごめん。ありがとう戦士、ずっと緊張しっぱなしだったけどやっとリラックスできそうだよ」

戦士「ほれ見ろ」ジト

魔法「うっ! だとしても初対面でねぇ!」

僧侶「本当によろしいのですか?」

勇者「うん、皆ももっと楽にしてほしいよ。息苦しい旅なんてしたくないしさ」

魔法「勇者様がそう仰るのなら……」

戦士「で、これからどうするんだ?」

勇者「正直に言えば鍛えてもらってから旅に出たいけど、そんな悠長な事は言ってられない」

勇者「天啓を受けた時に、その恩恵は如何なるものかは聞いている」

魔法「『勇者』というものの能力……どういったものなのかしら?」

勇者「どんな形で絶命しようとも、翌日の6時をもって最後に訪れた教会にて蘇生されるそうだ」

戦士「6時?」

僧侶「神々の夜明けと呼ばれる時間ですわね」

魔法「ある意味、不死ってところかしら……他には?」

勇者「傷つけば傷つくほど強くなる、らしい。死ねば死んだ分更にだそうだよ」

戦士「おいおい……なんだよそのマゾヒスト」

魔法「出来る限り死なないようにしたい所だけれども、これだと複雑ね」

勇者「正直、僕には力が無い。何も無いよ、才能なんてなにも感じられない」

勇者「だからこそ勇者に相応しいって言われたんだ。なんでそうなのかは分からないけれども」

勇者「そうであるならば、茨の道だろうとも僕は死に続けて強くなるよ」

僧侶「勇者様……いけません、もっとご自身を大切にして下さい!」

勇者「僧侶さん、僕の双肩に世界がかかっているって言ったよね」

勇者「であれば……僕は魔王を倒すまで、個としての人生は割り切るべきだと思うんだ」

僧侶「そんな……確かにそう言いましたけども、それでも!」

勇者「まあ……僕はただの町人Aだからさ。本当に割り切るなんてできないんだけども」

勇者「せめて、そういう心構えだけはしないとって話だから、あまり重たく考えないでね」

僧侶「……うー」

戦士「んじゃあがっつり鍛えるってのはせず、ガンガン魔物の攻撃を浴びてもらう、とかか?」

魔法「……それ大丈夫なのかしら」

勇者「蘇生されるって言っているし……」

僧侶「あの、蘇生と言われても……場合によっては一日近く放置される訳ですし、その……腐敗とか」

勇者「なんかその点は全く問題ないらしいよ。どんな形で絶命しようとも、ってのはそういう事らしい」

戦士「つっても、俺ら死体を運ぶのか……」

勇者「詳しくは分からないけれども、それも要らないらしいよ」

魔法「どういう事かしら?」

勇者「分からない事だらけだけど、死にながら探っていこう」

戦士「勇者様がそう言うんならいいけどもよー。蘇生されるつっても辛いと思うぜ?」

勇者「うん……でも出来る限り早く皆の役に立ちたいからさ」

魔法「……死ぬ事で強くなるとして、それで魔王を倒せるようになるのかしら?」

勇者「天啓では確かにそう言っていたよ。勿論、それまでに死に対して発狂しなければ、って」

僧侶「……」

戦士「死ぬほどの激痛を味わい続けるんだもんな」

勇者「大丈夫。耐えて見せるよ。それよりもこれからの事だけども」

勇者「次の次の町、その北東に魔物が住み着く洞窟があるらしい」

勇者「そこで限界まで痛めつけられ、僧侶に回復してもらう」

僧侶「えぇっ?!」

勇者「僧侶の魔力が切れたら殺してもらう」

魔法「……死ぬ事が条件じゃないけども死ねば死ぬほど強くなる……」

戦士「確かにそういう結論には至るわな」

勇者「うん、実証するのも必要だと思うから……協力してくれるよね?」

魔法「後味が悪すぎるわねぇ」

戦士「つっても、剣も覚えていかないとならんだろうし、道中でちったぁ訓練するからな」

勇者「それはそうだね」

魔法「出来れば全うな手段で強くなって欲しい所よね……」

僧侶「そうですよ! そうして強くなる事が出来ないわけじゃないんです!」

勇者「まあ難しいと思うけどね……あまり運動は得意じゃないし」

勇者「たあ!」

戦士「……」カンカン カキィン

戦士「よっ」ヒュン

勇者「わぁっ!」ギィン ドザ

魔法「戦士!」

戦士「手加減してるっつの。つーかこれは戦う云々より基礎体力や筋力鍛えるのが先だな……」

勇者「あ、ははは……ごめん」

勇者「……っ」ヨロ

僧侶「それにしてもこの辺りは本当に魔物が少ないですね」

戦士「勇者様の言う洞窟に魔物が集中しているらしいな」

魔法「飽くまでそこが根城って訳ね」

勇者「……!」ヨロ

戦士「? 勇者様?」

勇者「い、いや、ちょっと痛いなって」

魔法「戦士!」

戦士「直接当ててねぇよ」

僧侶「倒れた時に怪我をされたのでしょうか……診ますからそこに掛けて下さい」

勇者「う……ごめん」

魔法「ごめん、じゃなくて無理しないの」

勇者「あはは……ありがとう」ズリ

僧侶「?! 何なんですかこの内出血!」

魔法「え? うわっ! 何で?!」

戦士「岩の上にでも転んだか……?」

僧侶「とにかく回復魔法をかけますね。勇者様もしっかりと言って下さい!」

勇者「……ご、ごめん」

スライムABCD「ピキー」ポヨンポヨン

勇者「魔物!」

戦士「三体は俺が受け持つ! 勇者様は一体と戦ってみてくれ!」バッ

勇者「わ、分かった!」

魔法「私達は援護に回っているわ」

僧侶「そうですね」

戦士「とやぁ!」ヒュヒュン

スライムAB「ビキッ!」バシュッ

スライムC「ピキー!」バッ

勇者「ごほっ!」ドッ

戦士「勇者! っち!」バッ

スライムC「ピキー!」ブシュァ

勇者「がはっ! ごほっ!」

僧侶「今、回復魔法を……」

勇者「がっは! げほ!」ビチャビチャ

魔法「吐血?!」

戦士「勇者!」

僧侶「! 肋骨が肺に……あの攻撃だけで?!」

僧侶「戦士さん! 勇者様を気絶させて下さい!」

戦士「え? ええ?! お、おう!」ドッ

勇者「がっ!」ドザ

魔法「そ、僧侶? なんで……」

僧侶「一旦肋骨をどうにかしなくてはなりませんが、私にはそれだけの技量がありません」

僧侶「荒治療となりますので、勇者様にはお眠りいただいた方が苦痛でないはず」グググ ガギッ

勇者「」ビクン

戦士「しかし……あれで肋骨が思いっきり折れるって」

魔法「さっきの内出血といい少しおかしいわよね」

僧侶「……もしかしたら、ですが不死の力の影響かもしれません」

戦士「その代わり虚弱になったってか?」

僧侶「可能性の話です」

戦士「そろそろ次の町だ」

魔法「町に着いたらどうするのかしら?」

勇者「一度……死んでみようかな」

僧侶「そんな簡単に言わないで下さい!」

勇者「だけれども、あの打撃で骨が折れるなんて事は今まで無かった」

勇者「異常だよ。であれば死ねる時に死んで強くならなくちゃ……」

戦士「……後味悪いが付き合うぜ」

勇者「ありがとう、戦士」

戦士「峰打ち」ゴッ

勇者「がぁ!」ボギャッ

僧侶「う、腕が!」

魔法「今日はもう戦わないわ……僧侶、魔力が尽きるまで回復魔法を」

僧侶「そ、それでは勇者様が!」

勇者「うっぐ……や、てくれ、頼む」ブルブル

僧侶「~~~!」

勇者「……ヒュー……ヒュー」

戦士「止め、いくぞ」

勇者「……ヒュー」コク

僧侶「ぐすっ、勇者様」

魔法「勇者……」

戦士「……」ゴシャ

勇者「」

僧侶「……本当に、蘇るんですよね」

魔法「そ、そういう言い方をされたら不安になるじゃないか」

戦士「それもそうだが、勇者の死体を運ぶ必要が無いってのは……え?」

勇者「」ボス

勇者「」ボボン ボシュ

僧侶「ゆ、勇者様?!」

魔法「体が黒ずんでば、ば、爆発……」

勇者「」ボシュゥゥッ

戦士「……こ、なごなに」

翌日 教会
パアアアア

勇者「……」スゥ

魔法「本当に……」

僧侶「蘇りましたね」

戦士「蘇った、というか幽霊みたいに現れたな」

勇者「い、生きてる……生き返った」

戦士「何処まで覚えているんだ?」

勇者「戦士が僕の喉に鞘を突き立てたところまで、かな」

魔法「じゃ、じゃああの時の痛みは全て……」

勇者「……」

僧侶「勇者様……!」

勇者「大丈夫、まだまだ耐えられるよ」ニコ

勇者「さあ出発しようか!」

野犬ABC「ガウ! ガウ! ガウ!」

勇者「がああああ!」

僧侶「勇者様ぁ!」

魔法「火炎魔法!」

戦士「たああああ!」ズバン

僧侶「回復魔法!」スゥ

戦士「不発……?」

勇者「」ボボン ボシュッ

魔法「あ……」

翌日
勇者「野犬三匹に……噛み殺されるだなんて」

魔法「だ、大丈夫なの……?」

勇者「不甲斐なさでいっぱいだよ」

戦士「死ぬ苦痛とか本当に平気なのか……?」

勇者「痛いよそりゃ。でも不思議と平気なんだよね」

魔法「もしかしたら精神的苦痛が和らげられている、とかかしら?」

僧侶「そうであればいいのですが」

……
戦士「で、だ。洞窟についた訳だが」

勇者「……行こう」ゴクリ

勇者「早々と死んじゃったら気にせず進んで」

戦士「すげー後味悪い事言われたぞおい」

僧侶「勇者様は私達がお守りします!」

魔法「ええ!」グッ

勇者「いや……強くなる為にも傷つかないとだから」

蝙蝠大軍「キキー」ジュージュー

勇者「あ……ぐ」フラフラ ドザ

戦士「やべぇ! そっちに回れねぇ!!」ザン

僧侶「いやあぁぁぁ! 勇者様ぁぁぁ!」

魔法「倒れた今なら! 火炎魔法!」ボウゥ

蝙蝠「ギー!」ボァァ

勇者「た、助かった、よ」チリ

勇者「え?」ッポ

勇者「があああああ!!」ボボォッ

魔法「勇者様?!」

戦士「ちょ、なんだあの燃え方!」

僧侶「回復魔法! 回復魔法!」

魔法「さ、先に火を消さないと!」

勇者「あ……が」ボン

勇者「」ボシュ ボボン

勇者「」ジュウウゥ

戦士「何なんだよ……一体」

魔法「あ……え……あたし、あたしなの……そんな、つも」ワナワナ

僧侶「お、落ち着いて下さい! これは事故、そう事故です!」

戦士「……とんでもなく、普通の人よか耐性がない、のか?」

戦士「でなけりゃかすった火があんな勢いで燃えたりはしねーだろうし」

戦士「……当面はマジで俺らが勇者を殺さなくちゃなんねーかもな」

魔法「あ……う……こ、殺……殺し、た」ブルブル

僧侶「せ、戦士さん! 何ていう事を言うのですか!」

戦士「ここであーだこーだ慰めあっても仕方がねーだろ」

戦士「少なくとも、属性攻撃に対して一撃で致命傷を負うほどに勇者様は弱体化している」

戦士「これから先の事を考えたら普通の人ほどぐらいにはなってもらわねーと」

戦士「そもそも先に進めなくなるんだぞ?」

戦士「だから俺も殺す。殴って斬って殺す。だから魔法使い、お前も魔法で焼くなり凍らすなりして殺せ」

魔法「っひ……」ガタガタガタ

僧侶「戦士さん……!」

戦士「こう言っちゃあれだがよ。俺らは死んだらおしまいだ」

戦士「そうならない為にも、勇者様には強くなってもらわないとだろ」

僧侶「それは……そうですが」

戦士「この様子じゃこれ以上の進行は無理だろうし町に戻るぞ」

翌日

戦士「昨日の事は覚えているか?」

勇者「血を吸われすぎてて朦朧としていたけど覚えているよ」

勇者「ちょっと焦げたぐらいだと思ったら一瞬で火が広がって驚く暇も無かったよ」

魔法「……」ビクビク

勇者「うーん……戦士の言う通り、弱体化しているんだよね、きっと」

勇者「魔法使いさん、酷い事だとは思うけども僕の事をめいいっぱい攻撃して欲しいんだ」

魔法「ゆ、勇者、様」

勇者「く……」ピキ

勇者「ああ、があっ」バキバキパキーン


勇者「つっ」バチッ

勇者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」バヂヂヂヂ


勇者「」ジュゥゥ ボジュッボンッ

魔法「はー……はー……」ガタガタガタ

僧侶「……っぐす」

戦士「もう十日か……」フゥ

魔法「こんなの、こんなのって」

戦士「初めはただのもやしっ子かと思ったが中々聡明だな」

僧侶「な、何を……」

戦士「自身が置かれている状況を理解し、どうすべきか悟り」

戦士「尚且つ、俺らが勇者様を殺す事にも慣れさせる。その為の15日間殺し続けてくれって事だろな」

魔法「何なの……こんな、あたし、こんな為に……」

僧侶「……」

戦士「少なくとも勇者様は前向きにやってんだ。俺らが足引っ張っちゃあ本末転倒だぜ」

勇者「少しは強くなれたかな? 魔法使い」

魔法「へっ!? あ、う……火球魔法」ボッ

勇者「ぐっ!」ボンッ ボァァァ

戦士「よっと」ザバァ

勇者「……」ポタポタ

僧侶「勇者、様」

勇者「し、死んでないから、回復魔法が欲しい、かな」プルプル

僧侶「! 回復魔法!」

勇者「一撃で死ななくなった……死ななくなった!」

戦士「いやまあ戦力外なんだけどもな」

勇者「これからはどうしようかな……物理攻撃型の敵は僕も戦うけど魔法使える敵は隠れていたほうがいいよね」

戦士「そらなぁ」

勇者「町に着いたら最低五日は殺してもらう、か……」

魔法「!」ビク

僧侶「ゆ、勇者様!」

勇者「少なくともこの15日で強くっていうとあれだけど、耐性がついている以上はね」

インプ「クラエ!」ブンッ

僧侶「きゃあ!」

勇者「僧侶さん!」バッ

勇者「うぐぅぁ!」ボキョ

魔法「勇者様!」

戦士「ちっくしょ!」ザン

勇者「ああ……大丈夫、だよ」ブラン

魔法「う、腕が……」

僧侶「戦士さん! 丈夫そうな枝を見つけてください!」

戦士「そんなが気がしたぜ、そら」

僧侶「……」パシ シュルルル

僧侶「っと!」ギュ

勇者「~~~~!!」ビクン

僧侶「回復魔法!」パア

勇者「ふう……ふう……」

戦士「骨、繋がったのか?」

僧侶「完全ではないですが、こうして添えてあればある程度は動かせるはずです」

勇者「ありがとう……僧侶」

魔法「……僧侶、あなた医者か何かなの?」

僧侶「教会勤めなので災害時のボランティアも行っております」

僧侶「なので可能な範囲で医学知識は学んでいるのですよ」

戦士「ハイスペックだなぁおい」

僧侶「それと……勇者様、私如きを庇わないで下さい」

勇者「う……いやそれでも僧侶さんは女性なんだし……」

僧侶「……」パチクリ

戦士「あのよぉ……勇者様のがもぉっと脆いんだぞ」

勇者「で、でもさぁ」

魔法「気持ちは嬉しいけどそれで死なれても……」

勇者「う……」

僧侶「……勇者様、ありがとうございます」

勇者「……僧侶さん」

僧侶「でもご自愛下さい。私達も覚悟を決めました」

僧侶「出来る限り勇者様には時間的なロスが無いよう、回復の為の魔力が尽きてからのその……」

勇者「うん……? え?」

戦士「要するにちゃんと近場の教会に行った後、魔力尽きてから死んでもらうって事だ」

勇者「あー……そうか」

魔法「悪い意味ではないのよ……」

勇者「大丈夫、分かっているよ」

勇者(だけどただの棍棒の打撃一撃で骨折だなんて……)

勇者(もっと……強くならないと……)



戦士「よっしゃ、外でちょっくら戦ってこようぜ」

僧侶「お供します」

魔法「あたしも」

勇者「よし……限界まで戦って死のう!」

魔僧(気が滅入る……)

毒スライム「ピキー!」ビュッ

戦士「毒液か!」サッ

魔法「毒スライムに効く属性……駄目だわ、もう雷属性の魔法を撃つ魔力は!」

僧侶「私の魔力ももう……!」

勇者「毒は初めてだな……よし!」ザッ

戦士「追撃いけるぜ!」

毒スライム「ピピー!」ビュッ

勇者「ぐ!」バシュ

戦士「たあっ!」ザンッ

毒スライム「ピキー……」

勇者「っはぁ、ぐぅ……」ブルブル

僧侶「解毒魔法は……」

戦士「どのくらい酷いか見ておいたほうがいいだろう」

勇者「があああああ!!」ブシュァァァ

魔法「きゃああああ!!」

勇者「」ジュゥゥゥボフッ

戦士「……なんだよありゃ」

僧侶「出血熱、でしょうか……でもあれはウイルス感染が原因のはずなのですが」

戦士「……つまり毒スライムの体内にいたウイルスで引き起こされたのか?」

魔法「もう……やだこの旅」

僧侶「一旦町に戻りましょうか……」

僧侶「ではこちらが希釈した毒スライムの毒です」

戦士「熱消毒済みだ」

勇者「そうかー……あれは飽くまで毒の所為じゃなかったのか」ゴクリ

魔法「……」ジリ

戦士「引いてんなよ」

魔法「だっていきなりの吐血や鼻血とか……」

勇者「はは……ごめ、ぐ!」ガタガタ

勇者「あぐぐぐ!!」ガタガタガタ

戦士「すんげー痙攣……」

勇者「あっがぁっ! はぁっ! うっ! ゲェァァァ!」ビチャビチャビチャ

魔法「うっ」ツーン

戦士「蘇生直後は胃の中空っぽか……」

僧侶「胃酸のようですね……そろそろ」

戦士「だな」

僧侶「解毒魔法!」パァ

勇者「はっ! はっ! はぁっ! はぁーーっ」

戦士「神経毒系もいってみるか」

勇者「あっがっ!」ガタガタガタガタガタ

魔法「さ、さっきよりも痙攣が!」

僧侶「解毒魔法、回復魔法」

勇者「ふーっ! ふーっ!」

戦士「こりゃなんだ? 壊死させる毒?」チョン

勇者「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」ブモモ

魔法「ひぃぃぃ!!」

僧侶「解毒魔法、回復魔法」

勇者「」ボボン ボシュン

戦士「やり過ぎたか……」

魔法「ひ、人としてどうかしているわ!!」

戦士「そりゃ人死になんて見慣れたもんだし」

戦士「前にも言った様に俺達の為にも勇者様の為にも必要なんだよ」

僧侶「それよりもどうするのですか……勇者様を死なせて」

戦士「しゃーねーよ。もう一泊しようぜ。てかマジで耐毒身につけないとこの先ワンターンキルとかあるぞ」

僧侶「そうなんですよね……」フー

魔法「そ、僧侶も何でそんな……」

僧侶「救命の場で実地訓練を受けていましたからね」

しばらく後
ゴブリン:剣「デヤー!」ブン

勇者「っは!」ギィン

ゴブリン:棍棒「トーー!」ブン

勇者「ぐぁっ!」ドゴォ

勇者「ったあ!」ヒュン

ゴブリン:棍棒「ギャアアア!」ザシュゥ

勇者「せやぁ!」ビュ

ゴブリン:剣「ヒギッ」ザン

戦士「だいぶ形になってきたな」

勇者「今までの自分が嘘みたいだよ」

魔法「そうよねぇ」

ゴブリン:魔法「ギギ、電、流、魔法」パチ

戦士「ぐお!」シビビビ

勇者「があああああ!!」バヂヂヂヂヂ

僧侶「回復魔法」パァ

戦士「耐物理は普通くらいになったか」

魔法「炎だけなら通常ダメージで抑えられるわね」

僧侶「各種状態異常と他属性ですね」

勇者「ふー……ふー……」

勇者「でもこのままいったら何れは打撃とか痛くなくなるのかな……」

魔法「強くなるって事ならそうじゃない?」

僧侶「これで止まったら意味がないですものね」

眠り草A「ワサワサ」

眠り草B「フワー」ハラハラ

戦士「眠りの花粉か」バッ

僧侶「勇者様! 布で口元を覆ってください!」

勇者「え? 布?! 布、布」ワタワタ

魔法「ああもうじれったい。焼き払うわよ! 火炎魔法!」ゴァァァ

勇者「……」ドザ

僧侶「勇者様?」

勇者「すー……すー……」

戦士「まあ、仮に眠ったとしてもこれなら死ぬわけじゃねえしな」

僧侶「覚醒魔法でもかけますか?」

魔法「そうねぇ……何時まで寝ているか分かったもんじゃないし」

勇者「すー……ー……」

戦士「あ、でも少し花粉集めて嗅がせるか」

僧侶「睡眠耐性ですか」

戦士「そうそう」

勇者「……」

魔法「……ねえちょっと、勇者の寝息が消えてるんだけど」

僧侶「覚醒魔法!」

勇者「……」

戦士「……起きねーぞ」

僧侶「……」グッグッグッ

魔法「こ、これって」

僧侶「すぅ……ふーー」

魔法「や、やっぱり息止まってるの?!」

僧侶「……」グッグッグッ

勇者「」ボコボコ ボシュ

勇者「」ジュゥゥゥ

僧侶「そんな……」

戦士「まさか眠りが深すぎて死んだ、とかか?」

僧侶「……恐らくは」

魔法「え、ええー……」

僧侶「先に解毒魔法をかけるべきでした。体内に花粉が残っている以上、人工呼吸も意味が……」

戦士「前途多難だなぁ」ハァ

魔術士「火炎魔法!」ゴァァ

戦士「ちっ!」

勇者「ぐああああ!」ボボアァァ

僧侶「回復魔法!」

魔法「勇者様、だいぶ炎は耐えられるようになったわね」

勇者「あ、ああ」ヨロ

勇者「よし、反撃だ!」

魔術士「! 強制転移魔法!」

戦士「げっ! 耐えろ!」ビシィ

魔法「っふん」ビシィ

僧侶「……」ビシィ

勇者「あ、初めt」シュン

戦士「ですよねー」

魔法「知ってた」

僧侶「分かってましたわ」


強酸スライム「ウゾウゾ」

勇者「……」ゴクリ

戦士「捕まえるのに苦労したぜ」

魔法「ご苦労様」

戦士「町の近くにいてくれて助かったぜ」

僧侶「勇者様……酸による攻撃を行う魔物、魔族はあまり多くありません。無理をするほどでは」

勇者「いいや……やるよ!」ダッ

勇者「ぐっ!」バチャァ

強酸スライム「ギー!」バシャァ

勇者「ぐぅぅぅあぁぁぁ」ジュァァァァ

勇者「がああああああ!!!」ボジュゥゥバコッバコッ

勇者「あ! がっ……」ボボン ボシュ

戦士「と、溶けちまいやがった……」

魔法「……勇者様」

僧侶「……」

勇者「がぁっ!」ドシュ

オーク:槍「へっへへ! もらっがぁ!」ザシュゥ

戦士「ちっ……」

僧侶「胸に一突き……致命傷は魔法じゃ」

勇者「げはっげぼ」ビチャビチャビチャ

魔法「勇者様? 生きてる?!」

僧侶「! 治癒魔法!」パァ

勇者「ふぅ……死ぬ所だったよ。ありがとう」

戦士「……」

僧侶「何故、あんな」

戦士「ちっと切らせてもらっていいか?」

勇者「え? ああ……構わないけども」スッ

戦士「……」ピ

勇者「痛っ」

魔法「戦士……?」

勇者「血が出てきたけどもどうするの?」

戦士「……もうちょい」

僧侶「?」

戦士「……そろそろ血を拭き取ってみるか?」

勇者「??」ゴシゴシ

勇者「あ、あれ? 血が止まってる」

魔法「え? いくなんでも早過ぎない?」

戦士「やっぱ治癒能力が高まっているな」

勇者「なのかな……」

魔法「そのうちどんな傷もたちどころに治るようになるのかしら?」

戦士「あと何百回死ぬんだ、それ」

勇者「はは……ほんとだね」

僧侶「でも着実と勇者様が強くなられるのが実感できるのは良い事ですね」

勇者「うん、ようやく僕も皆の力になれてきたのかな」

戦士「耐物だけだけどな」

更にしばらく後
勇者「ぐああああ!!」バチチチチ

戦士「たああああ!」ザザン

オーガAB「グアアアア!」

魔法「爆熱魔法!」カッ

リザードマン:魔法「ゲッ!」ドゴォォォン

僧侶「治癒魔法!」パァ

勇者「ふぅ、ありがとう僧侶」

勇者「もう魔法に対しても異常なダメージを食らう事も無くなってきたなぁ」

戦士「……」

魔法「戦士?」

戦士「いや、さ。ちょっとな」

勇者「どうかしたのかい?」

戦士「あれから結構経つのに、勇者様の物理ダメージがあんま変わらなくなってきた」

僧侶「そうですわね……」

戦士「……」

戦士「もしかしたら勇者ってのは仲間を守る盾なのかもしれない」

僧侶「え?」

勇者「……」

戦士「耐性の限界値は一般人レベル……あれから勇者様と言えば自然治癒が高まるばかりだろ」

勇者「僕も薄々気付いていたよ……」ハァ

魔法「そんな……それじゃ勇者って何なのよ……」

勇者「魔王が繰り出す恐ろしい攻撃の盾、なのかな」

戦士「俺らもだいぶ強くなった。魔法耐性の装備もある」

戦士「俺はそろそろ、勇者様には休んでもらうべきだと思うんだ」

勇者「……ん? え?!」

魔法「……それは、賛成ね」

僧侶「そうですね……」

勇者「ちょちょ、ちょっと待ってよ! なんでそうなるの?!」

戦士「何だかんだ言って、今は勇者様の不死の力に依存しちまっているからなぁ」

戦士「俺らは勇者様を盾にしなくても十分やっていける強さだってのに」

僧侶「戦士さんの言う通りです。徐々にでしたが勇者様に依存していきました」

僧侶「私達は勇者様を盾にしなくても戦っていけるというのに」

勇者「それは違う! 間違っている! 例え盾だとしてもいなくては何のフォローだって出来ない!」

勇者「盾だとしても皆の回復に努めるべくアイテムを使う事だってできる!」

魔法「それでどうするの……自分が傷つくのを黙って見ていろって言うの?」

魔法「魔王を倒した時貴方が死んでいたら……蘇らない可能性があるのよ?!」

勇者「それは君らだってそうだろう! それにそれは可能性の話だ!」

勇者「駄目だ、認めない! 例え君達が拒絶しようとも僕はついていくぞ!」

戦士「……」ヒュン

勇者「がっ!」ドガッ

魔法「……はい、眠り粉」

戦士「これで勇者様はしばらく動けない」ギュッ

僧侶「……」

戦士「流石に勇者様と言えど、一人じゃ追いかけてこれないだろう」

戦士「行こうぜ」

魔法「ええ……」

僧侶「勇者様、例えこの身が朽ちようとも、必ずや私達の手で魔王を……」

「行ったか?」
「みたいだな」
「何考えてんだ?」
「まあいい、とっ捕まえようぜ」


勇者「……ん」

勇者「……三人、とも」ボー

勇者「! ここは?」ガバ

滅んだ町
勇者「……」

勇者(ここは……滅ぼされた国の。しかし何故こんな)

オークA「おー勇者様が目覚めたぜ」

オークB「へっへへ、仲間達の仇討ちだぁ!」

オークC「じわじわと嬲り殺してやるぜ」

勇者「!」バッ

勇者「お前達が? 何故こんな所に僕を連れてきた!」

オークA「あんた、死ぬと人間の町の教会で復活するんだろ?」ヒュン

勇者「え? あ……まさ」ドッ

滅んだ町の教会
勇者「!」

オークA「おーい! 勇者様が蘇ったぜぇ!」

オークB「12、13時間か?」

オークC「いやぁきっかし6時だぜ?」

勇者「あ……」ブル

勇者「くっ!」バッダダダダ

オークA「逃がすか、よ!」ザン

勇者「ぐああ!」

勇者「ヒュー……ヒュー……」

オークB「にしても便利な道具見つけたなぁ」

オークA「一日一回、めいいっぱいに茂る薬草の木。お陰で勇者様をいたぶれるぜ」

オークC「薬草も尽きたしそろそろ殺さね?」

オークA「池にでも放り込んどけよ」

オークC「あいあいさ」ポイ

勇者「がぼぼ、ごぼ……」ボシュ

勇者「……」パァ

オークA「おー生き返った生き返った」

オークB「今日はどうするか? 火あぶりにして少しずつ食っちまうか」

オークC「お、いいねそれ」

サキュバスA「あらぁ?」

サキュバスB「豚臭い中に美味しそうな臭いがしていると思ったらぁ」

オークA「げ……阿婆擦れが来たぞ」

オークB「こいつは俺らの獲物だぁ! 手前らに渡さねぇぞ!」

サキュA「へー」ピリ

サキュB「豚の丸焼きでも振舞ってくれるのかしらぁん?」ピリピリ

オークC「やめようぜ……どうせあいつらに敵わないって」

サキュA「あら、賢明ね」

サキュC「三匹目の子豚ちゃんだったかしらぁ?」クスクス

勇者(……サキュバス相手なら、逃げ切れる、かも)ゴクリ

サキュA「束縛魔法」

勇者「ぐっ!」ビキィ

サキュB「ま、貴方達が獲った獲物だしねぇ、まるっと頂こうとか下卑た事は思っていないのよ」

サキュA「勇者様を使わせて貰うのは私達の方が多く取らせて貰うけどもねー♪」

オークA「けっ勝手にしろ!」

サキュA「ふふ、勝手にするわよ」

サキュB「勝手にシちゃうわ。さー勇者様、ヌギヌギしましょうねー♪」ゴソゴソ

勇者「」ボボン ボシュゥ

オークB「おー……テクノブレイクってやつか」

サキュA「久々に良い精だったわ」ウットリ

サキュB「それも童貞だったわねぇ」クスクス

サキュA「ふふ、明日は貴方達に貸してあげるわ、じゃあねー」パタパタ

サキュB「逃げても無駄よぉ。しっかり追跡魔法をかけておいたから」

オークA「けっ!」

翌晩
サキュA「あら?」

サキュB「勇者様の姿が見えないわねぇ。死んでも跡が残っていたじゃない」

オークA「おーそこの箱ん中」

サキュA「何かしらこの臭い……」ツーン

オークC「ここミスリル銀の加工場らしくてなぁ。ミスリル銀、オリハルコン以外の金属を溶かす酸らしい」

オークB「骨までドロッドロだなぁ」

翌晩
サキュA「あら?」

サキュB「勇者様の姿が見えないわねぇ。死んでも跡が残っていたじゃない」

オークA「おーそこの箱ん中」

サキュA「何かしらこの臭い……」ツーン

オークC「ここミスリル銀の加工場らしくてなぁ。ミスリル銀、オリハルコン以外の金属を溶かす酸らしい」

オークB「骨までドロッドロだなぁ」

サキュA「あっは♪ イイわっ♪」

勇者「ぁ……ぅ……」ガクガク ボシュ


オークA「ホームラァァン!!」ゴギャァッ

勇者「げぇぁっ」ボシュッ


サキュB「んく♪ んふ♪ ふぅっ♪」ビュルル

勇者「ぅ……」ボンッボボン


オークC「そーら溶けろ溶けろ」ボチャン

勇者「アアアアアアア!!!」ジュアァァァァ

勇者「……」ドロドロ

オークA「なーんか溶け、悪くなってないか?」

オークB「薄まってきたのかねぇ」

オークC「ふあーぁ。寝ようぜ」

勇者「……」ドロ

勇者「……ま、お」ドロ

(もう死にたい)

(魔王を倒すまで死ねない)

(痛い辛い苦しい)

(魔王を倒すまでの辛抱だ)

(もう限界だ)

(魔王を倒しさえすれば)


(魔王を殺せば……)

戦士「はぁっ! はぁっ!」

魔王「ほー……勇者抜きでここまで来たか。大したものだ」

魔法「これが……魔王!」

僧侶「何ていう威圧感なのでしょう」ブル

戦士「へへ、勇者様いなくたって戦えるんだよ!」

戦士「人間舐めるなぁ!!」

魔王「愚かな」

魔王「何故私を倒す為に勇者が必要であるか? 何故勇者があのように貧弱なのか?」

魔王「考えた事は無いのか?」

戦士「何が、言いたいんだ」

魔王「まず勇者に選ばれる者、何故何の戦いの才能が無い者なのか。いやそれどころかただの凡人であるか」

魔王「人も魔物も魔族も変わらん。何かしら突出した才能を持つ者は、何かが欠ける」

魔王「そうして均衡は保たれる。つまりだ……」

魔法「何も無い分……勇者様には余っている部分があった」

魔王「その通りだ。神々はそこに目をつけたのだ」

魔王「次に勇者の力だ。神々の力を注ぎ込まれた生命体は拒絶反応として、その体は酷く衰弱してしまう」

魔王「持たざる者の空っぽな部分に、様々な攻撃を蓄積させていく」

戦士「それで耐性か……だが途中から耐性が高まらなくなったぞ」

魔王「だろうな。次に何故勇者が必要、いや神々が勇者を見定めるのか」

魔王「勇者が生きる事を止めた時……あるいは発狂し自我が崩壊した時、最後の生が始まると同時に」

魔王「蓄積された力と神々の力が解放されるのだ」

僧侶「さ、最後の生……」

魔王「最後故の力、何者にも傷つけられないと言われているほどの力であると言う」

魔王「更には今まで受けてきた攻撃を力として解き放ち、何者も防ぐ術が無いという!」

魔王「歴代魔王でさえ解放された勇者には敵わなかった! この私でさえ敵わないだろう!」

魔王「憎き神々は人間を爆弾として扱い、魔王を倒そうと言うのだ!」

戦士「……なるほどな」

魔法「そんな……」

僧侶「ですがそれは地を支配しようとする邪な貴方がいる所為です」

戦士「そういうこった。手前達さえいなけりゃこんな事にはならねぇ」

魔王「ふん……だからなんだという」

魔王「我々が引けば人間同士が領地を争うのだろう。それが第三者になっただけの事よ」

魔王「それに貴様達だけでのこのこと来て何が出来る」

魔法「仮にもし、ここで私達が返り討ちにあおうとも勇者様もいるし、貴方に手傷を負わせておくわ」

魔王「はっはは! それこそ発狂もしておらん勇者が来れば、氷に封じて奥深い洞窟に封印してやろう」

魔王「仮死化の魔法をかけて目覚める事のない眠りに落としてやろうではないか!」

魔王「仮に返り討ち? 有り難い話ではないか。お前達の死を見て発狂されては敵わんからな」

オークABC「」

サキュAB「」

勇者「……」コォォォ

勇者「……」ザッザッ

勇者「……」ザッザッ

『願わくば高まった自然治癒の力だけで魔王を討伐する事を願っていたのですが』

魔物「人間? 人間が来たぞ!」

『貴方に言葉が届いているかは分かりませんが最後に』

魔族「焼き払え!」

『今の貴方の体は耐性が全て半減しています。が、尋常でない治癒能力も備わっています』

魔族「な、なんだ? 効いていない?!」

『傷つけば傷つくほど治癒能力は落ちますが、耐性は伸びていきます。完全耐性も得る事ができるでしょう』

魔物「た、退避! 退避ぃ!」

『また今まで受けた攻撃を吐き出す事ができます。……勝手な話だと思いますが、できれば人として生きて……』

魔族「逃げるな! 敵は一人だ! 包囲しろ!」

魔物「引き裂いてやるぞぉ!!」ザッ

魔族「てやああああ!」ビュォン

勇者「……」ザッザシュ

魔物「な、なんだ?」

魔族「手応えはあったはずなのに」

勇者「フゥゥゥゥ」

魔族「何をしている! 攻撃を止めるな!」

魔族「ど、どうなっているんだ!」

魔物「攻撃が効いていない?!」

魔族「魔法に切り替えろ! 火炎魔法を集中させるんだ!」

魔物「よし! 今だ!」ドゴォォォォ

勇者「ガァ」ボボボォ

勇者「アアアア」ゴゴォォォ

魔族「!」

魔物「ほ、本当に効いているのか、これは……」

勇者「オオ……オガアア!!」

魔物「ひぃっ!」ビクッ

魔族「なんっ!」ビクッ

勇者「カァッ!」ベヒュッ

魔族「つ、唾……」

魔物「き、汚!?」ペチャ ジュゥゥゥ

魔族「え?」

魔物「ぎゃああああ!」ジュバババ ボボン

魔族「ひぃっ! と、溶け」

勇者「ハシュ!」ベヒュ

魔族「へ? え?」ジュゥゥゥ

魔族「がああぁぁぁ!」ジュババ バシュボボン

魔族「きょ、距離を取れ! もっとだ! もっと攻撃を!」

勇者「ウウゥゥゥゥ! ガアアアアア!!」ゴァァァァ

魔物「え?」

魔族「ほ、炎がせま」ジュッ

魔物「火薬を持ってこい!」

魔族「爆撃魔法! 爆撃魔法!」

勇者「……」ドドド

肉塊「……」ドドドドドドン

魔物「あ、あんだけやりゃあ……」

肉片「」ジュァァァァ

肉塊「」ウゴゴゴ

人型「」グググゴゴ

勇者「……」ザッ

魔族「なっ……あっ」

魔物「う、撃て撃てぇぇぇぇ!」

勇者「……」ドドドドン ボト

魔物「よっしゃあ! 効いてる効いてる!」

魔族「腕もげたぜ!」

魔族「回復しなくなるまで撃てぇぇぇ!」

勇者「……」ドドドドドドドン

魔族「?! なんだ? どうなってやがる!」

魔物「に、肉片は飛び散っているのに……」

勇者「……」ドドドドドンドドドン

魔族「う、腕! 腕が生えてきている!」

勇者「ウゥゥゥゥ」ゴボゴボゴボ

魔物「!?」

魔族「体が膨らんで……破裂するのか?!」

魔物「退避だ退避!」

勇者「ウゴゴゴ! ゴァッ!」ボッゴォォォォ

魔物「炎?!」

魔族「体制整えろ!」

魔族「耐炎障壁!」

魔物「吹雪魔法!」

魔族「氷結魔法!!」

魔物「水撃魔法!」

魔族「こ、こんだけ貼ってれば」

魔法障壁「」ジュッ

魔族「へ」ゴァァ

魔王「爆滅魔法」カッ

戦士「ぐあああああ!!」ドゴォォォォン

魔法「雷撃魔法!」ヂババババ

魔王「ふんっ」ヂヂヂヂヂ

僧侶「完治魔法!」パァ

戦士「くっそ……歯が立たねぇ」

魔王「どうだ……これが力の」オオオオォォォン...

魔王「な、なんだ今の音は」

側近「ま、魔王様」

戦士「くそ、増えやがって!」バッ

側近「ゆ、勇者が……勇者が襲撃を!」

僧侶「勇者様が!?」

魔王「……であればこれは……何故、何故だ! 何故発狂をしているのだ?!」

魔法「え……嘘、なんで……」

側近「分かりませんがこちらに向かってきています! 全軍で止めに入っていますが恐らくは」

魔王「何故、何故このような……」ガタガタガタ


戦士「たあああ!」

魔王「貴様らと戦っている暇はないのだ!」ガギィン

魔法「ならご自慢の魔法で私達を吹き飛ばして見せなさいよ」

魔王「ぐ……」

魔王(こやつらを殺すのは容易い……がこれ以上魔力を消費しては)

魔王(いくら勝てぬと言われているとも、抵抗できず座して死を待つつもりはない、がこれ以上の消費は)

魔法「きゃあ!」ドドドドン

魔族「来たぞ! 勇者だ!」

魔族「な、なんだ……? 無傷?」

魔物「対勇者防衛線第一波は何をしていたんだ? まさか敵前逃亡か?!」

ボロボロの魔族「なん、とか……先回りできたか」ジュゥゥゥ

魔物「お前、第一波の……」

ボロボロの魔族「何でもいい! とにかく攻撃をしろぉ!」

魔族「……? まあいい、全部隊炎により勇者を焼却排除せよ!」

勇者「ガアアアア」ボボボボォ

魔物「や、焼け爛れている?」

魔族「なんだ……? 攻撃は効くんじゃないか」

ボロボロの魔族「ああ……損傷を視認できるまでは再生力を削った……第一波全員の命と引き換えにその程度だ」

魔族「……よし、今が好機と見える。奴の首と心臓をとるぞ」

魔物「それで倒せるのか?!」

魔族「分からんが致命傷であればあるほど奴の生命力は削れると考えられる。行くぞ!」バッ

魔物「く、くそ!」バッ

魔族「でやぁぁぁ!」ザンッ

勇者「イギ……ギギギギ」

魔族「な、何故だ……何故刃が通らん……」

魔物「とにかく滅多切りにして肉を削ぐぞ!」

魔族「はあああああ!」

勇者「ギギギギギ」ザザザンザザシュンザシュ

勇者「ガアアアアアア」ブクボコブク

魔物「?! 皮膚が泡立っている!」

魔物「ち、散れ!」バッ

勇者「ガアアア!」ボジュン

魔族(胸部が弾けた?! だが今なら心臓を! しかしこれはっ)

魔物「い、今だ!」

魔族「待て、何かおか」ビチャ

魔物「血など気にするなぁ!」ビチャチャァ

魔族「お前も行く……ど、どうした?」

魔族「ア……アア?」ドロ ボコボコ

魔族「アガ」ボンッ

魔族「な……」ビチャァ

魔物「へ?」ビチャビチャ

魔物「ウ、ウウ」ボコボコブク

魔族「血、血を浴びていないものは退避しろ! あれを浴びたら破裂するぞぉ!」

魔物「ゲ」ボボン

魔族「アガ」ボンッ

魔物「ヒギ」バボン

魔物「う、うわああああ!」

勇者「……」ジュォォォォ

魔族「く、来るな来るな!」ピピッ

勇者「……」シュゥゥ

魔物「アア」ボボン

勇者「……ウーー」

魔物「よ、良し、爆発が収まってきたぞ!」

勇者「ハシュッフシュッ」ビュッダヒュッ

ボロボロの魔族「あ」ベチャ

魔族「に、逃げろぉぉぉ! 遠距離から攻撃を仕掛け」バチャ

魔族「ま、魔王様……」ジュァァァ

側近「お、お前達」

魔物「第二波……間もなく壊滅……第三、第四波が迎撃体勢」

魔王「……お前達は逃げろ」

魔王「こうなってはもう足掻きようもないのだろう。そこの人間どもも生きてようと死んでようと変わらん」

魔王「何処へなりと行くがいい」

魔物「魔王様が残られるのでしたら」

魔族「我々もお供します」

戦士「くそっ!」ビキィ

魔法「……」スヤスヤ

僧侶「一思いに殺したらどうなのです!」ビキィ

魔王「脚部の凍結と睡眠、これが一番魔力消費が少なくお前達を止める方法だ」

魔王「後は……魔力回復に専念し……奴を」

側近「勇者、間もなく第三波に到達します……私も参ります」

魔王「……うむ」

魔物「くそーー! せめて魔王様が有利に成りえるダメージだけでも!」

魔族「突撃! 突撃ー!!」

魔物「たあああ!」ブン

勇者「……」ゴキャァ

魔物「肩を砕いてやったぜ!」

勇者「……」シュウウウ

魔族「再生能力がかなり落ちている……? やはり無敵足りえないな!」

勇者「ガアアアアア」クワッ

勇者「コアアアアア」ビュァァァ

魔物「ひぁ」ビキビキパキーン

魔族「な、なにが」バキバキバキ

魔物「凍っていく……空間が、不味い! 炎を、ほのぉぉぉぉぉぉ!」バキバキバキ

魔族「業火魔法!」ジュゥ

魔族「え、あれ?」バキバキバキ

……
勇者「フウウウウウ」

魔族魔物「」ドロォォォ

魔物「くそ……化け物が!」ゴォォォ

勇者「ウウウウ」ボボォォォ

魔族「奴の治癒能力はだいぶ落ちてきているはずだが……これは」

魔物「効いていない……? まさか耐性……炎耐性完了か。だが」

魔族「冷気だ! 冷凍系の攻撃に切り替えろ!」

勇者「ボアアアアア」フハァァァ

魔物「こ、今度はなんだ? 霧?」

魔族「毒霧だ! 押し返せ!」

側近「烈風魔法!」ドォォ

勇者「ギ、ギギギ」

魔物「そ、側近様!」

側近「反撃されたら終わりだ! 雷撃魔法で奴の神経を麻痺させろ! その上で様々な攻撃を当てろ!」

側近「奴の再生能力さえ無くなれば我々の、魔王様の勝ちだ!」

魔物「おおおおお!」

魔族「雷撃魔法!」

側近「紫電魔法! 紫電魔法!」

勇者「ガアアアアア」バヂヂヂヂ

勇者「ア、アアア」ヂヂ

側近「今です! 総攻撃を!」

魔物「おおおおお!」

魔族「くたばれええええ!」

魔物「これで出し切っちまえ!」

魔族「出し惜しみするな! 全てをぶつけろ!」

勇者「ア、ガ」グチャァ

魔物「さ、再生しない……」

魔族「勝ったの、俺達」

側近「はーっ……はーっ」

勇者「」ブク ブククゴボボ

魔物「ふ、沸騰……?」

魔族「死んだ? 死んだか?!」

側近「……!」ゾク

側近「退避! 退避しなさい!」

勇者「」ゴボボボボボボ

勇者「」ブシュウウウウウウウウウ

魔物「く、黒い煙?!」

魔族「また毒霧か?! 疾風魔法!」ビュァ

霧「」モモモモ

魔族「お、押し返せない……?!」

側近(これほどまでに……一体いくつ切り札を持っているのだ!)

側近「恐らくあれは防ぎように無い! とにかく距離を取るのだ!」

魔物「ひいいいいいい!」

霧「」モモモモモモモ

魔族「お、追いつかれ」スア

魔族「ウ゛」ゴバァ

魔物「ひあぁっ! なんだあれ!」

魔族「か、体中から血が吹き出たぞ!」

魔物「とにかく逃げろぉぉぉ! 道が詰まる! 分散しろぉぉ!!」

霧「」モモモ

魔物「前方から?! 何で!!」

魔族「べ、別の道から回り込んできたのか?!」

魔物「あ……近くに細い通路が」

魔物「……え、あ、あ、ひぃ! 嫌だ! 嫌だぁぁぁ!」ズモモモモ

魔族「くそ! 壁を壊すぞ! 爆破魔法! 爆破魔法!」

魔物「だ、駄目だ……追いつかれ」スァ

勇者「……」ジュゥジュゥゥ

勇者「……」ムク

魔物魔族達「」

勇者「……」ザッザッ


側近「魔王様……全滅、しました」

魔王「……そうか」

魔王「来るか……遂に」

勇者「フゥゥゥゥ」

魔王「!」ゾク

側近「ひぃっ!」ブル

戦士「ゆ、勇者様、なのか?」

僧侶「勇者様……」

勇者「ウウウウ、フウウウ」ギラギラ

僧侶「!」ビクッ

戦士「ほ、本当にあれが?」

勇者「フウウウウウウ」ギラ

戦士「なにをs」シュン

僧侶「これは私達を」シュン

魔王「強制転移魔法……」

側近「心置きなく戦える……とでも」

勇者「ガアアアアアア!!」ブグブグブグ

側近「また何かを噴出すつもりか!」

魔王「この部屋を放棄! 距離を置いて遠距離から攻撃するぞ!」バッ

魔王「現状どうなっていた?」

側近「炎は完全耐性です。一般の武器による攻撃もほぼ……」

側近「生命力はかなり削れているのですが……」

魔王「闇魔法で削りきるしかあるまいな」イィィン

魔王「ここが正念場だ」

側近「はい」

勇者「……」ジュウウウウ

勇者「……」ヒンッ

勇者「ウル?」ドシュッ

勇者「ウウ?」ヒュッヒンッヒュンッ

勇者「ガアアア!」ドドドドドド

勇者「ハヒュ! フシュ!」ドドドドドン


魔王「?!」ヒュン

側近「勇者の唾液です。触れたら最後です、気をつけてください」

魔王「ふっ……存在そのものが死を呼ぶのだな」

勇者「ウウウウ……」ズルゾル

勇者「アアア……アアアアアア」ジュウウウシュウウ

勇者「アア……」ゥゥゥ


魔王「殺気が消えた……?」

側近「油断しないで下さい……それから何度、覆されたか」


勇者「……」

勇者「……」ボトッ ズルゥボトッ

側近「……反撃が無い」

魔王「本当に……やった、のか」

側近「私が見てきます」


勇者「……」ボト

側近「体が崩れ始めて……殺気さえも。ほ、本当に勝った、のか……私達は」

側近「ま、魔王様! 魔王様ー!」バッ

勇者「……」ポコ

勇者「ァァァァァ」プクプクボコボコブコブクボコボコ

魔王「本当か!」

側近「だからこそ私が生きて戻ってきているのですよ!」

魔王「か、確認に行くぞ」

側近「はい!」


勇者「ァァァァ」ボコボコボコボコ

魔王「な、なんだ、これは」

側近「そんな、こんな事……」

魔王「四倍にも膨れ上がっているではないか!」

勇者「カッ」パチュ

側近「お逃げく」

魔王「なん」

魔王城 ドドォォン
戦士「こ、ここは……!?」

僧侶「魔王城の外……」

魔法「ま、魔王城がっ!」

戦士「崩れて……勇者様は」

僧侶「……もう一度向かいましょう!」

魔法「え、ええ……」

勇者「……」ドロドロ

戦士「ゆ、勇者様……」

魔法「溶けて……こんな」

僧侶「こんなお姿に……」

勇者「……」ゾルゾル

戦士「おい、徐々に溶けているぞ!」

勇者「……」ゾルゾルゾル

戦士「勇者様!」

魔法「え……何処に行くつもりなの?!」

僧侶「! 治癒魔法!」

勇者「……」シュゥゥゥ

勇者「……」ドロォ

僧侶「治癒魔法! 治癒魔法! 治癒魔法!」

魔法「どうなっているの……何で傷の回復と共に溶け出して……」

僧侶「治癒魔法! 治癒魔法! 治癒……」

勇者「……」ドロォォ

戦士「僧侶……?」

僧侶「回復していない……回復魔法の耐性、そんなものまで」

魔法「じゃあ……」

勇者「……」ゾルゾルゾル

僧侶「多分……自壊システムなのかも」

魔法「え?」

僧侶「何者にも傷つけられない体になったと魔王は言っていましたね。でしたら死を望んだ時の為の……」

魔法「そんな……いくらなんでもそんな事!」

僧侶「力が解放されているのですから、勇者様の自我は崩壊していると思われます」

僧侶「そのための措置なのでしょう……」

戦士「……」

戦士「魔王は死んだ……勇者様も……一旦国に戻るぞ」

その後、長く平和が続いたという。
しかし勇者については一切語られる事はなかったと言う。
無用な混乱を避ける為、次世代の為。

今までと変わらないように。


勇者「自分には何も力が無いけれども、神々に見定められました」

勇者「必ずや、魔王を!」

国王「うむ、任せるぞ」


   勇者「勇者とは神々の天啓を受け、蘇生し続ける体を与えられた凡夫」   終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月06日 (土) 01:47:40   ID: 9sYBb5v_

グダるなら最後に自己申告しろと

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