妹「…兄さんのばか」(23)


妹「…兄さんのばか。」

妹「今日一緒に家に居てくれるっていったのに。」

妹「お前は大切な家族だって言ってくれたのに。」


妹「……兄さんのばーか。」


兄「…最近さ、なんかおかしいんだよ」

友「は?おかしい??」

兄「いやさ、なんつーか。あの家に居たくないっていうかさ…」

友「どーした。妹ちゃんと喧嘩でもしたんかよ?」

兄「否、そうじゃなくてな。…こう、玄関に入った瞬間に空気が変わる?みたいな感じでな」

友「空気??どういうことだよ???」

兄「ん~、こう、どんより、というかな?」


友「はぁ…、『どんより』ってお前…随分と感覚的な表現だな」

兄「だってよ、それ以外に上手い言葉が無くてな…」

友「でもよ、そろそろ帰らないといけないだろ?そんな家に妹ちゃんを一人きりにするわけにもいかんだろ??」

兄「…それはまあ、そうだけどよ」

友「ほれ。お前の家、最近改築したばかりだから慣れてないだけだって」

兄「…そんな、もんか??」

友「おう、昔からいうだろ?『住めば都』ってな」

兄「…………」

友「ほれ、俺もそろそろ夕飯の時間だ」

兄「…あ、ああ、すまん長居し過ぎたな」

友「いいってことよ。んじゃな」

兄「お、おお。…またな」


友「おう、気を付けて帰れよ?また学校でな」


兄「…ただいま」


妹「あ、兄さん…。おかえりなさい」

兄「ん…すまん、友と少し話し込んでな」

妹「兄さん、今日の約束…」

兄「……悪い、ちょっと疲れていてな。…休ませていてくれ」

妹「あっ、兄さん!」

兄「夕飯は外で食べてきてくれ…」

妹「えっ?!兄さん、こんなお金…」

兄「ああ遅くなってもいいから、何ならホテルに泊まってきてもいい…」


妹「兄さん…」

兄「…………」

妹「兄さん、夕飯は…」

兄「…いいから。早くいってくれ。俺は昼間に大目に食べたから要らない」

妹「…………」

兄「さぁ…早く行くんだ」

妹「…わ、分かりました。行ってきます…」


兄「ああ、『留守番』、ありがとうな…」


妹「…兄さんの様子が変」


店員「シャーラッシャーセー」

妹「あの…。肉まんとがんもどき…、それからお大根を」

店員「シャーラッセー。ックマン、ガンモ、ダイコーッスネ。」

妹「…えーと、あの…」

店員「イーッス、サービッス」

妹「いえ…あの…」

店員「イーッスイーッス!!」

妹「……いえ、ですから、あの」

店員「?」


妹「…手、握るの、止めてください」

兄「妹は行ったか…」


兄「…………」

兄「…やっぱり何かがおかしい」

兄「…玄関? いや違う…」

兄「…………」

兄「ダメだ…。体が重い…」


兄「…………」

兄「…おかしい、電気が全部消えている」

兄「妹のやつ…、今までこんな真っ暗闇の中にいたのか?」


兄「……」


兄「ああ駄目だ。スイッチも反応しない。…ブレーカーが落ちている??」

兄「仕方ない。懐中電灯は…あった。こういうところはしっかりしている…」

兄「……」

兄「…確か…ブレーカーは居間の前だったか…」


兄「……行くしかないか」


後輩「やっほ~。妹ちゃんこんばんわー」

妹「うん…、突然ごめんね?」

後輩「気にせんでええよ。何々?お兄さんと喧嘩??」

妹「…ううん、喧嘩とかじゃないんだけど…」

後輩「お、歯切れが悪いですな。…もしかして気まずいことでも?」

妹「そう…なのかも?兄さん、今夜家に居て欲しくないみたいで…」

後輩「お、あれかな?お兄さん、彼女でも出来たとか??」


妹「……」


後輩「…あ~冗談冗談…。冗談だから、そんな世界の終わりみたいな顔しないで」


妹「…もう」

後輩「にししし。妹ちゃんは相変わらずブラコンだね?」

妹「ブラコンって…、私そんなんじゃないよ?」

後輩「え~自覚無いの~」クスクス

妹「違うって。ふ~つ~う~。普通の兄妹!」

後輩「あはは…、ほらほら泊まるんなら私の部屋使って使って」

妹「…うん、ありがとう」


後輩「いーよー、ほら入って入って。まだ夜は寒いんだから!」



兄「…駄目だな。これは配電盤がいかれているのか?」


兄「……」


兄「…足音?」

兄「……」

兄「妹か?…いや違うな。あいつは外に出ていったはずだ」

兄「…ん、階段を下りてきている?」

兄「泥棒…。通報しとくか? いや今はまずい…声でバレる」

兄「…念のため懐中電灯を消して」


兄「……」


兄「…足音は二人?」

兄「…それにしては間隔がおかしい??」


兄「……」


兄「…やばい、こっちに向かってる」

兄「…隠れるところは、トイレ、居間…いや間に合わな……!!」

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