流子「うわぁん皐月おねえちゃんのバカァ」(173)


=鬼龍院邸 正門前=

流子「長かった生命繊維との戦いが終わったのはよかったけど…」

ピカーっ

皐月「よく来たな妹よ! 今日から鬼龍院の一族として恥ずかしくないよう、礼儀作法から漢文の教養までみっちりと叩きこんでやる! 覚悟しておけっ!!! ふははははは」

流子「今日からここで暮らすのかと思うと、気が重いな…」


メイドたち「おかえりなさいませ、皐月お嬢様、流子お嬢様」

皐月「うむ」

流子(お、お嬢様…!? メイドが一斉に並んでお出迎え…!? 性にあわねぇっ!!)


皐月「着いたぞ流子。ここが貴様の部屋だ」

流子「おおっ、さすがに豪華だな…。マコん家よりも広い」

皐月「そこはトイレだ。部屋はこっち」

流子「トイレ広すぎだろっ! むしろ恥ずかしいだろこれじゃ!!」

皐月「家具は適当に備え付けておいた。必要なものがあれば言ってくれれば随時用意してやろう」

流子(広すぎて落ち着かねぇ)

流子「あれっ? クローゼット空だぞ?」

皐月「服はあいにく用意できていない。サイズがわからなかったのでな」

流子(なんか嫌な予感)

皐月「という訳で、服を脱げ流子っ! 全部だっ!」巻尺ピーンッ

流子「ぎゃぁあああやっぱりぃい!!」

 ニゲルナ マツカバカ マテ ヤメロバカ ウワアアア ドタバタ チーン


=茶室=

皐月「…では早速、この鬼龍院皐月直々に茶道を教えてやろう」

流子「あー、何かアレだろ? 裏千家とか表千家とかいうややこしい奴だろ?」

皐月「ふっ、甘いな。そのような俗な流派などではない! 鬼龍院流だ!!!」

流子「そっちの方が聞いたことねェよ!」

皐月「…まあいい。手順はさっき言ったとおりだ。やってみろ」

流子「えーっと、こいつをこう持ってこうやって…こうか?」バキッ

流子「あっ、わりぃ壊しちまった。えーっと、」ボキッ バリーン

皐月(安物とはいえ、百三万円の茶さじと二百万円の柄杓と八百万円の湯飲みが一瞬で壊されるとは…)

皐月(やはり侮れんな、鬼龍院りちゅっ、ちゅっ、ちゅう子は…!)←舌噛んだ


皐月「さ、茶道はもういいだろう…。次は華道だ。まずは自由に花を活けてみろ」

流子「ほーい」チョッキン

皐月「貴様っ! いきなり花の根元から切る奴があるかぁっ!!」

流子「いや、好きにしていいって言ったじゃねぇか!」

皐月「『好きに活けていい』と言ったんだ! その状態でどうやって活けるつもりだったんだ!? やってみろ!」

流子「ほい」チョコン

皐月「……何をする」

流子「いやー、頭にお花を乗せても似合うねぇ皐月様は。あはは、ばかみてぇだ」

皐月「鬼龍院りちゅっ、ちゅっ、りゅう子っ!! 貴様ァっ!!!」←舌噛んだ

流子「い、言えてねぇぞ鬼龍院皐月…!!」


皐月「次は日本舞踊を教えようと思ったのだが…」

流子「くそっ、このっ、ぎゃぁっ! 帯が絡まった!!」

鮮血「落ち着け流子! まずは服と心を一つにするんだ!」

流子「くっ…! 頼む、心を開いてくれ、着物ぉー!!!」ビリッ

皐月(や、安物とはいえ、五百万円の着物が…!)


=音楽室=

皐月「手始めに、ピアノから教えようと思ったのだが…」

流子「猫ふんじゃったなら弾けるぞ。ほれ」ネコフンジャッター ネコフンジャッター

皐月「…まず足を閉じろ。みっともない」

流子「っ!」パタン


皐月「どれ、手本を見せてやろう。どけ」ド、ド、ソ、ソ、ラ、ラ、ソ~

流子「あははっ! 何っだよそれ、キラキラ星じゃねぇか。…ん!?」

流子(な、何だこれは!? 私の知っているキラキラ星じゃねぇぞ!!!)

皐月「『べぇーとぉーべん』作曲の、『きらきら星変奏曲』だ…!!!」ドヤァッ

流子「なん、だと…!!!」

流子「『もぉーつぁるとぉ』の間違いじゃなくて、か?」

皐月「っ!」ガタンッ

皐月「も、もうこんな時間だなっ! 来い流子! 夕餉の席でみっちり『てぇぶるまなー』を鍛えてやる!」

流子(ふ、腹筋がくるしい…!!!)クックックッ


=食堂=

流子「テーブルが長ぇ…! 長すぎて端が見えねぇ…!!!」

皐月「今日はフランス料理のコースだ。心して頂け」ゴゴゴゴ・・・

流子(なぜ食事をするだけでこんなに緊張しなければならないんだ…!!?)

皐月「なかなかやるじゃないか、流子」スッ、スッ、もぐもぐ

流子「食事の作法なら父さんに大体教わったからな。お前に教わることは無いぞ」ぱくぱく


給仕「メインディッシュの、『トチメンボー』でございます」コトッ・・・

流子「…え。なにこの黒くて丸い物体」

給仕「これはですね、クジャクの舌の肉を――」

流子「どうやって食うの? ていうかこれ食えるの? 動いてんだけど」ウネウネ

皐月「? 食べないのか、流子」ブチブチ もぐもぐ

流子「え、あ、いやぁ。その」

皐月「ふむ。流子は塩派か? どれ、私がかけてやろう」パラパラ

流子「……」

皐月「頂けっ!!!」カッ

流子「なんだよその威圧感! あーもう、わかったよ食えばいいんだろ食えば!!」キッ

トチメンボー「」ジッ

流子「」ハッ・・・

流子「ちくっしょう目が合っちまったよ!!! さすがにもう食えねぇよ!」ガシャーン


皐月「まなぁーが悪いぞ流子!」

流子「うるせーこんなのやってられっかコンチキショーっ!!!」ダッ

メイド「流子お嬢様っ…」

皐月「放っておけ。どうせここに戻ってくる」

皐月「…奴には、他に居場所など無いのだからな」


皐月「まなぁーが悪いぞ流子!」

流子「うるせーこんなのやってられっかコンチキショーっ!!!」ダッ

メイド「流子お嬢様っ…」

皐月「放っておけ。どうせここに戻ってくる」

皐月「…奴には、他に居場所など無いのだからな」


=スラム街=

鮮血「勢いで飛び出したはいいが…これからどうするつもりだ? 流子」

流子「そうだな…。また迷惑かけちまうけど、マコん家に泊めてもらうかな」

鮮血「おお、示し合わせたかのように、あそこの路地から満艦飾マコが」

流子「おーい、マコー!」ブンブン

マコ「あっ、流子ちゃん!? き、鬼龍院皐月様のところに行ったんじゃ…」

蟇郡「む、どうした満艦飾―――!?」ドサッ

蟇郡「き、鬼龍院流子! なぜここに!?」

流子「…落ちたぞ、買い物袋」

マコ「あ、あのね流子ちゃん! 悪いんだけど、今日、私の家はちょっと―――」

流子「…だいじょうぶ。ちょっと、散歩に来ただけだから」

マコ「ほ、ほんとごめんね! あっ、い、今はアレだけど、何かあったら、いつでも来ていいんだからねっ!?」

流子「…うん。ありがと、マコ。じゃあね」ダッ

流子(マコ…お幸せに…!!!)ポロッ


=美木杉のとこ=

鮮血「なぁ流子、ここに来るくらいなら野宿の方が安全じゃないか?」

流子「不本意だが…背に腹は代えられない。野宿は皐月に馬鹿にされそうだし」

鮮血(貞操よりも意地を取るのか、流子!?)

流子「じゃ、おじゃましまーs」

金髪女「あっ……んっ❤ そこっ、ああん……イエス、イエスっ」ギシ、ギシ

美木杉「えっ、りゅ、流子くん!? なぜ君がここに」バタンッ!!

美木杉(速攻でドア閉められたんだけど。何しに来たのあの子)

流子(お、大人なんて…大人なんて…!!!)ポロポロ


=本能寺学園跡=

猿投山「面ッ! 胴ッ! 小手ェッ!」ビシッ バシッ ドコッ

猿投山「面ッ! 胴ッ! 小手ェッ!」ビシッ バシッ ドコッ

猿投山「面胴小手面胴小手面胴小手面胴小手面胴小手面胴小手面胴小手ェエエッ!!!!!」ドッカーン

猿投山「ふぅ…。いい汗かいたところで帰るかーってうおkじぇあっ!? こ、校門前にしゃがみこんで何をしている纏流子!! じゃなかった鬼龍院流子!!!」

流子「…構うんじゃねぇ。ここで夜を明かす覚悟はできてる」

猿投山「…? はっ! まさかっ、家出か!?」

流子「うるせーな。関係ないだろ」


猿投山「仕方がない…! 後ろに乗れ、纏じゃなかった鬼龍院流子!」エンジン音 ブルーン

流子「え? い、いいのか…?」

猿投山「ああ。群馬の家屋は広いし、それにオレの実家のコンニャクはうまい」

流子「じゃ、じゃぁお言葉に甘えて…」ギュッ

猿投山「ようし! しっかり捕まっとけよ! 飛ばすぜ!」ブルーン・・・

流子「…なぁ、猿投山。お前元暴走族だよな?」

猿投山「? だからなんだ?」

流子「なんで原付に乗ってんだ? ふつーバイクだろ!?」

猿投山「フッ! それは無理な相談だな。オレは50ccしか免許取ってないんだ!」ブルーン

流子「」


猿投山「さぁっ、着いたぞ纏! じゃなかった鬼龍院流子!」

流子「ってふざけんな! ここ皐月ん家じゃねーか引き返せ!!」

猿投山「オレは後ろに乗せてやるとしか言ってない! したがって行先はオレの自由! 残念だったな!」

流子「もういい走って逃げるから。…って!?」

ピカーッ


皐月「ご苦労だったな、猿投山。そして、すまないな。妹が迷惑をかけて」

猿投山「いえいえ…。軽い仕事でしたよ」

流子(こりゃ摘んだな…)

皐月「これでわかっただろう? 一度この家に足を踏み入れたからには、嫁に行くまでここを出ることはできないとなぁ!! 肝に銘じておけ、鬼龍院ちゅ、ち、つ…っ! ああもう言いにくいっ!! 流子!!!」

鮮血「仕方がない。『りゅう』が二つもあるからな」

流子(無理すんな皐月あんま無理すんな)


皐月「では、肝に銘じたところで…。ついて来い流子!」スタスタ

流子「んだよ。こんどは一体何だって言うんだ?」テクテク

皐月「決まっている。湯浴みをしに大浴場だ」

流子「」


=大浴場=

チャポン・・・ フウ

流子「広いな…。なー皐月、競泳しようぜ」

皐月「くだらん。一人で泳いでいろ」

流子(すかした顔しやがって…後ろからお湯かけてやろ)

流子「鬼龍院皐月、隙ありぃいい!!!」バシャーッ

皐月「それで私の後ろを取ったつもりかぁああ!!!」サッ ビシュッ ビシュッ

流子「避けると同時に反撃に出るとは、流石じゃねぇか…」←ぐっしょり

皐月「まだまだぁ!! 私はまだ終わってはいないっ!!!」ビシュビシュビシュッ

流子「ちょっ、待って、ぎゃぁあっ!!」

皐月「逃がさんっ!」

流子(はっ! ちょうどいいところにドアが…!)ギィッ バタムッ

皐月「む。サウナ室に逃げ込んだか…」


=サウナ室=

流子「ふー。ドア押さえとけば、ひとまず安心かな…」

皐月「ちゃんと、十五分たったら出るんだぞ」

流子「うおおおいっ!!? どっから入ってきた!?」

皐月「ふっ。出たければ出てもいいぞ。私はもうしばらく入っているがな」

流子「……」イラッ


―十五分後―

流子「おい、十五分たったけど…。出なくてもいいのかい?」

皐月「出たければ出てもいいぞ。私はもう少し入っているがな」

流子「……」イラッ


―三十分後―

流子「おい、よく見たら『三十分以上のご利用はご遠慮ください』って書いてあるぞ」

皐月「ふっ…。くだらんっ!!!」

皐月「この鬼龍院皐月が、常人の物差しで測られてたまるかぁあああ!!!」砂時計バキッ

流子(な、なんか変なスイッチ入っちゃってるよ皐月様…!)


―二時間後―

皐月「…出たければ、出てもいいんだぞ…。纏流子…」グッタリ

流子「ん? あ、ああ…」

流子(無理、してないよな…。いや、してるな? 明らかにしてるよな!?)

流子(私はガチで平気なんだけどそういや鬼龍院皐月って普通の人間だったよな? なに生命繊維の化け物相手に意地張っちゃってんのこの人っ!!)


流子「あっ、あー! もう限界っ! お、お先に失礼ー!!」ギィッ バタムッ



流子「……」シーン

流子(鬼龍院皐月が出てこねぇ)

流子「さ、皐月ー? 入るぞー…」ギィッ・・・

皐月「」チーン


=皐月の寝室=

皐月「はっ!」パチッ

揃「おお、気づかれましたか! 皐月お嬢様」

皐月「揃か…」

皐月「…迷惑をかけてしまったようだな。すまない」

揃「いえいえ、このくらいは何でもありませんよ。…しかしですね、皐月お嬢様」

皐月「何だ、揃」

揃「はしゃぎすぎです」

皐月「」


―翌日―


流子「ふわぁーぁあ。…あー、昨日はほんっと疲れた…」

鮮血「確か今日は学校があるんだったな」

流子「そーなんだよなー! 皐月にベタベタされずに済むのはいーんだけど、マコと顔合わせづれぇんだよなー!」

皐月「…案ぜずともよい。貴様の高校と満艦飾の高校とは違うからな」ズーン


流子「はぁ!?」

皐月「私が(本能寺学園を作らなければ)行く予定だった由緒正しいお嬢様学校だ…。満艦飾には合わんだろうし、かといって満艦飾に合うような高校に鬼龍院の娘が通う訳にもいかん。あきらめるんだな」ズーン

皐月「私は新生REVOCS社CEOとしての仕事があるからな…。悪いが、夕餉は一人で食べてくれ」ズーン

流子「あれ? お前学校とか――」

皐月「…日本に通う価値のある大学など無い。それに私は既に『はぁばぁど大学』で学位を取得している」ズーン

流子「そ、そうか…。なんか暗いけど大丈夫か?」

皐月「貴様などに心配されるほど軟ではないわ…」ズーン

トボトボトボ・・・


皐月(ベタベタしては迷惑だったのか…。知らなかった…)ズーン

続きは明日書きます


しまった。あらためて見てみたらスレタイがエロい

最初は

皐月「流子のバカ! もう知らない!」流子「うわぁん皐月おねえちゃんのバカァ」

にしようと思ってキャパオーバーで削ったら想像以上にエロいタイトルになってしまった

皐月の方を取るべきだった。あーあ、今さらどうしようもないですね

再開しまーす


=由緒正しいお嬢様学校=

 リムジン 到着っ!

運転手「学校に到着いたしました、流子お嬢様」

流子「…なんだここ。城か!?」

鮮血「どんな学校だろうと大丈夫だ。昨夜のうちにメイドの手によってクリーニングされた私を着ているお前は、最高に決まっているぞ! 流子」

流子「どうりで、風呂から出た後お前が見当たらないと思ったよ。鮮血」

運転手「どうぞお降りください、流子お嬢様」ドア ガチャ

流子「お嬢様お嬢様言われすぎて、ジンマシンが出そうだよ鮮血…」

鮮血「安心しろ流子。まだ出てはいない」

???「あぁーら、あなたが噂のシンデレラさんね?」


流子「誰だ!?」

キャンティ「あたくしはアメリカからの留学生、ダテンシティの市長の娘キャンティ!」

ニーソック「同じく、キャンティの妹のニーソック!」

キャンティ「鬼龍院家の娘とはいえ、やはり田舎育ちの粗暴さはごまかせないようですねぇ。オーッホッホッ!」

流子「ああん?」鋏 ギラリ

女生徒A「ああっ、危ないキャンティ様、ニーソック様!」ドカッ

流子「うおっ!?」コケッ

女生徒B「今ですわ、みなさん! 周りを囲んでっ!」

女生徒A~L「「えいっ、えいっ、えいっ、えいっ、えいえいっ!」」ゲシ、ゲシ、ゲシ、ゲシッ!

流子「あだっ、あだっ、あだだだっ!!」

流子「このやろぉ!!何しやが」サササッ

女生徒A~L「「暴力はいけませんわよ、鬼龍院流子さん!」」

流子「な、なんだいきなり…?」

カツンッ


女教師「ごきげんよう、鬼龍院流子さん。早速ですが、校内の暴力行為は減点40です。以後お気を付けなさい」

流子「はぁ!? てめぇ見てなかったのかよ! 今まであいつらが私を――」

女教師「…まぁ! なんて粗野な言葉づかいなんでしょう! 綺麗ではない言葉を使うたびに、減点5ですわよ、鬼龍院流子さん」

女教師「転入早々、鬼龍院流子さんの持ち点は55点になってしまいましたわよ。こんなの前代未聞ですわ。…あら、言い忘れていましたが、このパンスト学園では持ち点が0になった時点で即刻放校となりますの。お家の恥とならないよう、ご精進くださいね、鬼龍院流子さん」

鮮血「減点式か…本能寺学園よりも露骨にひどいな」

流子「なんだよパンスト学園って…。 皐月がわざわざ本能寺学園なんて作った気持ちもわかる気がするよ。名前がひどすぎるだろこれ」

女教師「まぁ『パンスト』なんて…はしたないですわ。減点5」

流子「えー!?」

女教師「驚き方が下品ですわ。減点2」

流子「……」

女教師「そう、黙っていればいいのですわよ」ニッコリ


=教室=

―数学―

男教師「…ではこの問題の答えを、鬼龍院流子!」

流子「ふぇ?」

男教師「居眠り減点5。…答えは?」

流子「え、えーっと、3?」

男教師「不正解、減点1。お前のせいでみんなの時間が無駄になったな。次、大暮麻衣子!」

麻衣子「……」

男教師「次、キャンティ・デモン!」

キャンティ「105分の32πα3乗、ですわ」

男教師「よし。加点5」

鮮血「加点も結構あるんだな。よかったな流子。巻き返せるぞ」

流子「私には取れそうにもないけどな…」


―英語―

外人教師“Ryuko, Kiryuuinn! Read the sentence and answer the question!”

流子「終わった。既に聞き取れねェ」

ニーソック「でぇは、代わりにあーたくしが。 “Neglect of the body-living thread link by philosophical medicines is actually a risk for ~」

流子「解答すらも聞き取れねェとは思わなかったよ」

外人教師“Shut your mouth and listen this! Ryuko Kiryuuinn, you had 15 points taken off for your mistake and your private talk!”

流子「?」

鮮血「15点減点だとさ」

流子(ってことは、残り27点か…)


=体育館=

―体育―

流子「よっしゃぁ! これで一気に巻き返せr」

女教師「あいにくですが、持ち点が30点を切っている生徒は、他の生徒の安全を考慮して体育に参加できないようになっておりますのよ鬼龍院流子さん」

流子「」

女教師「それと、淑女は『よっしゃぁ』などと叫ぶべきではありませんので、減点5ですわ」

流子「」


流子「……」いじいじ

鮮血「私を着て体育座りをするな、流子。丸見えだぞ」

流子「どうせ女子しか居ないんだからいいだろ…」

 ぴーっ!

女教師「私語! 減点14ですわよ、鬼龍院流子さん!」

流子(なんか目の敵にされてる気がする…)

鮮血(残り8点か。大ピンチだな)


流子「あーっ! …もういい、うんっざりだこんな学校!! さすらいのギターケース・関東無宿の流子様が放校なんかにビビッてたまるかってんだコンチキショー!!!」

鮮血「そんな二つ名があったのか? 私は初耳だぞ流子!」

流子「よーし…持ち点なんか、あのムカつく姉妹を殴り飛ばしてきれいに0にしてやろーじゃねーかぁ!!」

鮮血(正確に言うと-72だがな)

麻衣子「…やめた方がいいと思うわよ、それ」


流子「あ? 誰だよ、お前」

麻衣子「まさかっ!? 忘れたの? お前を罠にはめ崖っぷち寸前まで追い込み愛しの鮮血ちゃんを奪おうとして失敗、鬼龍院皐月のいじわるでこんな学校に推薦され今に至る私を、忘れたっていうの!!? ひどいわっ纏さん! じゃなかった鬼龍院さん!!」

流子「いや、お前の方が明らかにひどいだろ、どう見ても」

麻衣子「ま、それはそうとして…」

麻衣子「見よっ、この大暮麻衣子渾身の力作、鬼龍院財閥こき下ろし新聞記事スクラップ集を!!!」バサッ

流子「いきなりなんだっ!?」

鮮血「スポーツ新聞ばかりだな。最初の記事なんか羅暁の純潔着用問題じゃないか」

流子「確かに、ひどかったもんなアレ」

麻衣子「いいえ、問題は、ここよ!」ビシッ

麻衣子「この記事、あなたの非行や問題行為がわーかりやすく一覧になってるわ…。そしてこの記事が出た日、新生COVERSの株もちょっと下がった」

流子「いやっ、でもこれほとんど嘘だぞ!? こんなんで因縁つけられても…」

麻衣子「だからこそ、本物のネタにマスコミは飛びつくわよ…? 例えば、そうね。鬼龍院流子が暴力行為で放校なんかになった日には、それこそ週刊誌のいい的だわね。あなただけじゃなく、もちろん鬼龍院皐月も、ねぇ?」

流子「……!」


―放課後―

流子(…なんで私が、鬼龍院皐月の会社のことまで気にしなきゃ何ねーんだ…)

キャンティ「鬼龍院流子さん。いいことを教えてあげましょうか?」

流子「?」

キャンティ「あなたがあんまりにも『可哀そう』だ・か・ら」

流子「」イラッ

ニーソック「もう教える必要も無いんじゃありませんか、お姉さま。鬼龍院流子さんは、もう気付いているみたいですもの…黙ったまま何もしなければ、放校にはならないと」

ニーソック「そりゃぁ、無い頭で必死に学習しますわよねぇ。いくら『人間じゃない』子だって、放校になったら困りますものねー」

流子「」ザワッ・・・

キャンティ「ニーソック、だめじゃない。この子、頭のお中身も生命繊維になってしまっているんじゃないかというくらいおヴぁカさんなのに、そんな遠まわしな言い方をしては伝わらないではありませんか」

ニーソック「あぁーら、ごめんなさいね、『生命繊維の化け物さ」

 バチィインッ!!!

流子「……」


流子「……蚊が、いたから」スッ、 タタタッ


キャンティ「……怒りを抑えるためとはいえ、自分の腕を叩くとは。あれは痣になりますよ」

ニーソック「あの子も、意地を張らずにさっさと放校になってしまえばいいのにねぇ…」

ニーソック「そうすれば、あの娘の不祥事で鬼龍院皐月率いる新生COVERSの株も暴落…。九割のシェアを誇る最大手の衣類専門会社が倒れれば…! このパンスト学園の理事長、あたくし達の御父様であるコルセット様の率いる会社が、その市場を独占できる…!」

キャンティ「あーっはっはっはぁ!!!! 何という素晴らしい計画だぁ!」

ニーッソク「お、お姉さま笑い方がお下品ですわ!」

キャンティ「はっ! ついやってしまいましたわ」

女教師「キャンティ・デモンさん。残念ですが、減点5ですわ。珍しいですわね」

キャンティ「」


=鬼龍院邸=

流子「た、ただいま…?」

メイドたち「おかえりなさい、流子お嬢様!」ビシッ

流子「一人だとさらに気まずいな…」

鮮血「お前は一人じゃない。私が居るぞ流子!」

流子「せ、鮮血…」ウルウル

メイド「りゅ、流子お嬢様。皐月お嬢様から言伝がございます」

流子「言伝?」

メイド「はい。『1部屋のクローゼットの中身を確認しておくことお前の好きな縞パンも入れておいた2茶室に行って作法の確認をすること手製のノートを作ったからそれを読め3華道の基本を確認することガイドブックを作ったから詳しくはそれを読め4着付けの仕方を覚えること着付けの先生を呼んでおいたので十七時からかっちり一時間習うこと5音楽室に行ってそこに置いてある楽譜を』」

流子「待って待ってもっかい言って。せめてメモさせて」

鮮血「その必要はないぞ流子。私が今覚えた」

流子「さすが鮮血!」

メイド「話には聞いていましたが…やっぱり、服と話しているのは気味が悪いですね…」ヒソヒソ

メイド「それ以外はとってもいい子なんですけどねぇ」コソコソ


=延暦寺大学:団欒室=

 ピカーッ ザワザワ・・・ 

皐月「…お前たちほどの人間が、わざわざこんな大学に通う必要も無かろう。今からでも私の会社に就職しないか?」

猿投山「人生にはいつ何が起こるかわかりませんからね。大卒資格くらいは取っておきたいんですよ」

犬牟田「そうそう。いつ株価が暴落するかもわからないし、ね」エンターキー

蛇崩「縁起でもないこと言うもんじゃないわよ、ワンちゃん。……まぁ、あたしはキャンパスライフを満喫したいってだけなんだけどね」

犬牟田「……ところで、いよいよ来週に差し迫った、例の計画の進行はどうですか? 蟇郡はずいぶん苦労しているようですが」


皐月「…軽々しく口にするな、犬牟田。超の付く極秘事項だぞ」

猿投山「平気だよ。オレの心眼が正しければまと…じゃなかった鬼龍院流子は鬼龍院邸に居る。聞かれる心配はない」

蛇崩「あーら、猿さんの目なんてどの程度信用できるものなのかしらねー?」

猿投山「すくなくとも、今日のお前のパンツの柄がピンクの水玉だということはわかるぞ」

 バキィッ

猿投山「」チーン

犬牟田(パンチを避けなかったのは賢明だが……今の音、蛇崩の奴本気で殴ったな)

蛇崩「鬼龍院流子といえば…皐月ちゃん、こんなとこに居るけど、『妹ちゃん』のお世話をしなくていいの?」ケッ

皐月「ああ……そのことなんだが、どうやらしつこくし過ぎたようでな…」ドヨーン


蛇崩「へ、へぇー。そうなんだー」パァア

犬牟田「…構いすぎて嫌われたのなら、逆に素っ気無くしてみては? こちらから仕掛けるだけではなく、あちらから構ってくるまで待ってみるというのも、一つの手かと」

皐月「そ、そうだな……。ちょっと厳しくしてみるか」

蛇崩「そーよそーよ! 何なら皐月さまー、久しぶりにあたしの家に泊まらないー?」

犬牟田「いいんじゃないかな。距離も取れるし」

皐月「むっ、し、しかし…。そうだな、そうするか…」

蛇崩(ナイスアシストっ! やるじゃないワンちゃん!!)

犬牟田(蛇崩め…そんなに露骨に喜ぶと皐月様に『妹ちゃん嫌い』がばれるぞ…?)


=鬼龍院邸:音楽室=

流子「き、着付けの先生怖ぇ…! ある意味、羅暁より怖ぇよありゃ…」ガタガタ

鮮血「確かに、慣れない着物で動きを封じられているところに、抜身の日本刀で迫ってこられたときは本気で殺されるかと思ったな」

流子「よし、ここの楽譜をピアノで一回弾けば終わりだっ! 飯だ!!」

流子「えーっと、何じゃこりゃ。『AdラLib』…? 変な曲名だな おい。まあいいや弾いてみよ…」

 レ、ソー ソ、♯ファミ、シー ラ、ソ、ソー 

流子「……」

 ソ、レ ド、シラ シラシ、ミ ♯ファ、ソラソ、ファ ソ、ファ、レ……

流子「……」ピタッ

鮮血「流子、どうした? わからなくなったか?」

流子「……やめだ。気が滅入る、この曲」


=食堂=

流子(一人でこのテーブルは、きついな)

給仕「とれとれのマスのムニエルでございます」コトッ・・・

流子「な、なぁ、給仕さん」

給仕「…? なんでしょう?」

流子「そ、その。なんていうか…よかったらさ、一緒に食べな」

給仕「すみませんが、この後彼女とディナーの約束があるので」キッパリ

流子「……」


―その日の夜(24:34:00)―

伊織部長「搬入いそげっ! くれぐれも、纏、じゃなかった鬼龍院流子を起こすんじゃぁないぞ!」

裁縫部所員「部長、『純白』搬入完了しました!」

伊織部長「よしっ! 速やかに撤退しろぉ!」

 シュタタタタタタッ バンッ ブォオオーン・・・(エンジン音)

鮮血「とてつもない服のオーラを感じて来てみれば…一体、これはどういうことだ!?」

鮮血「生命繊維の気配は全くないが…なぜだろう。嫌な予感が―――」

伊織部長「やあ、鮮血。来ると思っていたよ」

鮮血「!?」

伊織部長「鬼龍院流子と一緒じゃなくてよかった。実は、君にも協力してもらいたいことがあってね」

鮮血「何の話だ…!? 流子に何かしてみろ、私はお前に容赦はしないぞ!!!」

伊織部長「すまないね、鮮血。君が何を言っているかはわからないんだ。……でも、君も鬼龍院流子がかわいいだろ? だったら、この頼みを断るはずはないんだよね…」ニコッ

鮮血「貴様っ……!」


ごめん間違えた
》46
×新生COVERS ○新生REVOCS

※新生REVOCS社裁縫部の部長だから伊織部長


―次の日の朝―

=パンスト学園=

流子「……」ムカムカ・・・

女生徒A~D「えいっ、えいっ、えいっ!」ボカスカボカ

キャンティ「おーほっほっほ! これだけ殴っても怪我一つしないなんて。さすが化け物なだけありますわね、ねぇニーソックさん?」

ニーソック「ほんとうにそうですわね、お姉さま。それにしても静かですねェ。神経まで生命繊維になってしまわれたのかしら?」

キャンティ「頑張って耐えていらっしゃるのでしょう? 放校となって身内に捨てられれば、こんな化け物ほかに行き場所があぁーりませんものねー!」

  オーホッホッホ

流子(くっ…っ! ブッころ…しちゃだめだ、我慢だ、我慢しろ…お前はやればできる子だ…!)

鮮血「流子、悪口が聞こえないように大声で『楽しいマク○ナルド』を歌ってやろうか!?」

流子「やめてくれっ!」


 ピタッ シーン・・・・・・

ニーソック「ああら、今、刃向いましたわね…?」

流子「!」ビクッ

流子(あ、あれ? なんで私、こんな奴にビクついて…!?)

キャンティ「いいんですのよ? 先生に言いつけても…あなたが放校になるだけですものねぇー!」

ダサい男子「や、やめないか! 弱い者いじめは!!」

一同「!!?」

女生徒A「きゃー!!! 女子高の敷地内に、前髪もっさりのダサい男子が入り込んでるぅー!!!」

女生徒D「しかもオタクっぽーい! きもい!」

女生徒B「誰かせんせー呼んできてぇー!!!」

ダサい男子「えっ、えっ、えー!!?」

流子(こんな奴に『弱い者』って言われた…!!!)ガーン


女生徒C「ねぇ、いっそこうしちゃおうよ!?」

 ドンッ

ダサい男子「うわあっ突き飛ばされたぁー!」

流子(うわぁああこっちに倒れてくんなぁあ!)

 ゴツンッ!

ダサい男子「いたたたたっ……!!」

鮮血「よかったな流子。おでこがぶつかっただけで唇は無事だ」

流子(いってぇなぁこんちくしょーめ)ムカムカ・・・

ダサい男子「もー。コブができちゃったよぉ…」

流子「!」

女生徒C「!!」

女生徒B(なっ、何よこいつ…!? 前髪を上げたら超イケメンなんて、は、反則じゃない……!!!)

元ダサい男子「らっ、ラッキー! 何か知らないけどみんながフリーズしてる今のうちに、逃げよう!!」

 流子の腕をガシッ ダッシュ

流子(えっ、ちょ、待っ…!!!)ツラレテ ダッシュ

≫59
知らなかった!なんかうれしくなった!


=噴水前広場=

元ダサい男子「ハァ、ハァ…。いやぁ、ここまで来れば安心だよ」

流子「ふざっけんなよぉ…!!! 放校になったらどー落とし前つけてくれんだぁ、あぁあん!!!?」

元ダサい男子「ひ、ひぃいいいいい!! い、いきなり違う人みたいだぁあ」ガクブル

流子「ケっ! ま、一応は助けようとしてくれてたしな。礼を言うぜ。ありがとな」ニィッ

元ダサい男子「ほ、ほんと、君みたいな(すっげぇ怖い)女の子がいじめられるなんて、世の中不思議だよねー…」

流子「? あー。そうだな…。いじめ、かぁ…」

流子(昔はいつも、止める側だったのになぁ…)

元ダサい男子「ぼ、ぼく、アメリカから留学してきた、リーフっていうんだ! 君は?」

流子「おお、そうか。私は、きりゅ―――。…いや」

リーフ「?」

流子「流子。私は、纏流子だ」


―その日の夜―

=鬼龍院邸:流子の部屋=

流子「……ふふっ」

鮮血「ご機嫌だな、流子」

流子「ああ。なんか、久しぶりに同じ年の奴とたくさん話したからかな。…楽しかったなぁ」

鮮血「…流子…」

流子「じゃぁ、おやすみ鮮血」

鮮血「ああ。おやすみ、流子」

流子「それと…。おやすみー、電燈!」

パッ

流子(声に反応してくれるのは便利っちゃぁ便利だけど…。やっぱちょっと恥ずかしいよなぁ。電燈にも言うのは…)

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------------------------------


 ゴソ、ゴソ・・・

流子(んっ…? 鮮血?)
 ピョコッ ピョコッ ピョコンッ

流子(どこに行く気だ、こんな夜中に…。よし、後をつけてみよう)
 ヒタ、 ヒタ、 ヒタ・・・

ピョコッ ピョコッ ピョコンッ
 
 ヒタ、 ヒタ、 ヒタ・・・

ピョコッ ピョコッ、

 ピタッ・・・

流子(止まった…。なんだここ、倉庫じゃないか)

鮮血「~~」「~~~!」

流子(…誰かと話してるのか? 鮮血…?)


鮮血「いい加減、覚悟をきめるんだな。いくら駄々をこねたって、結局困るのはお前なんだ」

鮮血「ああ、確かに、生命繊維でもない、ごく普通の服のお前の声は私には聞こえない。だが、考えていることくらい雰囲気でわかる!」

流子(ふ、服と話してんのか!? 鮮血…)

鮮血「だ、か、ら! 嫉妬するなと何度言えばわかる。流子はそういうんじゃない!」

流子(しかも私の話か!? なぜだ!!?)

鮮血「生命繊維の化け物で、うるさくて、一人じゃ何にもできないくせに、偉そうで自分勝手で……」

流子「っ!」

鮮血「~信じ~で、~から、」「~大事、~す~~!」

流子(そ、そうだよな…。せ、鮮血だって、性別あるっぽいし、かわいい服とかの方が、好きだよな…)

流子(考えてみれば、もともと分かりきってることじゃねェか。化け物なのも、鮮血が服なのも…。だ、大体、私の方が先に鮮血に言ったもんなぁ、『化け物』って。今さら何を動揺してんだか…!)グスンッ

流子「はぁ…」

流子(なんか、疲れたな…。部屋に戻って、寝よう…)

 トボトボ・・・


鮮血「……だから、もう一回だけ言うぞ! 何度も言わせるな。そんな化け物の私でも大事に着てくれている流子が、もらい物だからってお前を粗末にする訳がないだろう!! 脹れるのもいい加減にして、元に戻れ!」

服「……」プシューッ・・・

伊織部長「おお、どんな説得をしていたのかさっぱり分からないが、さすが鮮血だ! 礼を言うぞ!」

鮮血「礼には及ばない。ただの服にも魂が宿るとは、よほど作り手が気持ちを込めて作ったのだろうな…。まぁ、そのせいで微調整ができないというのも困ったものだがな」

伊織部長「さあ、ぎりぎり純白の説得も間に合った! みんな頑張れー! 遅くとも、あと四日で仕上げるぞー!!!」

裁縫部所員「「はい、伊織部長!!!」」ミシン ダダダダダッ

鮮血「……」チラッ

鮮血(居ない、よな…? さっき一瞬、流子の気配がしたと思ったのだが…。きっと気のせいだな)


―翌朝―

鮮血「りゅ、流子!? なぜ普通の制服を着ているのだ? 私を着てはくれないのか!!?」

流子「…お前の顔見てると、ムカつくんだよ」

鮮血「流子!?」

流子「…それに、どうせ私なんか化け物なんだろ」ボソッ

鮮血「!? …ま、まさかお前昨日の夜―――」

流子「」ドア バタンッ!

鮮血「ご、誤解だぁー!!! 戻ってきてくれー! 戻ってきて私を着てくれぇ、流子ぉー!!!」ピョコピョコ


=パンスト学園:教室=

キャンティ「おーほっほっほっほ!」

ニーソック「今ごろ制服で登校してきたって、標的が変わるわけじゃぁないのよぉ、鬼龍院流子さぁーん?」

流子(もうムカつくのも面胴くせぇ…)ボーッ・・・


―生物―

中年教師「えー、で、あるからにして、脂肪細胞表面の抗原に抗体が結合して、こう、うまい具合に脱顆粒反応でヒスタミンなんかが分泌されてだねぇ、」

キャンティ(あっかんべーっ!)

ニーソック(あっちょんぶりけーっ!)

流子(あいつら授業中ずっとこっちに向かって変顔してんだけど…バカなの?)ボーッ・・・

中年教師「あー、ちょっと君、ま、鬼龍院流子くん?」

流子「」ビクッ!

中年教師「いやぁ、当てようっていうんじゃないよ。ただ、あんまり顔色悪いから…。大丈夫かい? 何か嫌なことでもあった?」

流子(き、奇跡だ…! こんな学校にも、優しい先公が居たなんて…!!!)ワナワナ・・・

中年教師「ありゃりゃ、涙ぐんじゃって…。こりゃホントに体調悪そうだねェ。悪いことは言わないから、早退しなさい。減点にはならないから…」

流子「」コクンッ


ニーソック「よく粘っていた方ですが…いい感じに壊れてきましたねぇ? お姉さま」

キャンティ「ああ。…しかし、怪しいな。今日から来たばかりの生物教師は」

ニーソック「たしか、階段から落ちてそれまでの方が骨折して、急遽代理を立てたんでしたよね? 校風に慣れていないだけなのでは?」

キャンティ「いいえ。不審なのはそこではなく、授業の内容ですよ。あの教師、抗原と抗体を取り違えていましたわ。…そんな間違いをするようなものは、『普通は』この学校に雇われませんもの」

ニーソック「なるほど…。調べてみる価値はありそうですね、お姉さま」ニヤリ


=噴水前広場=

流子(早退してみたものの、元気だからなぁ…暇だ)ブラブラ

リーフ「あっ! 流子、君もサボり?」

流子「んー。ま、そんなもんだ」

リーフ「ちょっと聞いてよー! こないだもさぁ、父さんったらぼくの意見を無視して勝手に花嫁をさぁ。ひどいよね!?」

流子「ああ。そだな」

リーフ「もう、お金持ちだからって羨ましがられるけど、当人たちにとっては嫌で嫌でしょうがないよね!」

流子「あー。そうなんじゃね?」

リーフ「それでさぁっ、」

金髪女「ハァーイ! なにやってんの、ギークボーイ!」


流子(げ。美木杉のとこに居た奴…!)

リーフ「あー! パティ!! 紹介するよ、これぼくの友達! 流子!」

流子(知り合いかよっ!!?)

パティ(おっ! リーフもなかなかやるねぇ。横に居るの、結構かわいい子じゃなーい? よっし、からかってやろっと)

パティ「リーフ、ちょっとこっち来い、こっち来い」

リーフ「なぁにパティー? って、え、なんで掴むの!?」ガシッ

パティ「黙って、目ぇ閉じな…」

流子(ま、まさかアレって…)

パティ「んちゅ~~~~~っ❤」

流子(わぁあああああ!!?)プシューッ

流子「」ふらふら~・・・

パティ(キスシーン見ただけで放心状態になってどっか行っちまっただと…。初心過ぎんだろ…!!)

リーフ「も、もー死んでもいー」グダーッ・・・


=鬼龍院邸=

流子(あれ? どうやってたどり着いたんだっけ…)ボー・・・

皐月「流子! 遅いぞ貴様どこへ行っていた!!!」ピカー

流子(おー。今日は帰ってたのか二日ぶりだな皐月)

皐月「……だ、黙ってないでなんとか言え!」ピカー

流子(しまった。声に出したつもりが出てなかった…)

皐月(なぜ黙ったままなのだ流子…! まさかっ! 二日も離れていたのに、まだ嫌われているのか、私は!?)

木曜日の存在を忘れていました。
再開します。


=茶室=

流子「……」

皐月(流子が、着物を着てきちんと正座をしたまま動かない…。そんなに嫌われるようなことをしたか? 私は!?)

流子「……」

皐月「……」

流子「……」


皐月(こ、こうなったらもう仕方がないな…普通に接してみて様子を――)

皐月「…では、私の留守の間にどれくらい上達したか、茶を点てて見せてもらおうか?」ピカーッ

流子(なんだぁ? また人を見下すよーな目つきで)ふくさ すっ

流子(上からものを頼みやがって)茶さじ そっ

流子(だいたいこんなもん、一朝一夕で上達するもんでも、)茶筅 しゃっしゃっしゃっ

流子(ねーだろーがよ、っと。はい、おまっとさん)ことっ・・・

皐月(!! さ、さすが私の妹…。姿勢がヤンキー座りなのと、お湯と抹茶の量と、手つきの下品さを除けば、後は完璧だっ!)←要するに手順しかあってない

流子(淹れさせたんだからさっさと飲めや)イライラ

皐月(しかし、下手に褒めてはさらに嫌われそうだからな…あえてこき下ろしておくか)

皐月「…ふん。こんな茶が飲めるかぁ!! そもそも、泡立てが足りん! 角が立つまで泡立てるのが鬼龍院流であることを忘れたかぁッ!!!」ピカーッ

流子(じゃぁお前に飲ませる茶はねーよバーカ)茶碗 すすっ…

皐月(なっ、黙って下げられただとぉ!! …なんか怖いぞ!!! せめて何か言えぇっ!)

流子(なんか今日の皐月変だな…。全然言い返してこねぇ。仕事で疲れてんのかぁ?)


皐月「次は華道だな」

流子(確か、オバ○のQ太郎みたいにすればいいんだったよな…)チョキチョキチョキッ プスプスプス

流子(よしっ! 完璧っ!!)

皐月「花が三本、隣と平行に刺さっているだけではないか。…しかも、その配色は何だっ! 赤青金って、初心者の選ぶ配色ではないぞ、流子!!」

流子「……」

皐月(頼むから何か言ってくれ…)

流子(「お前の眉毛のセンスの方がどうかしてる」っつったのに、なぜ言い返してこないんだ? 皐月の奴…?)


=音楽室=

皐月「…先ほどの着こなしを見るに、もう着付けの練習は必要なさそうだったからな。ピアノの成果を確認させてもらうぞ、流子!」

流子(やっべ! この曲全然練習してねェ…)

流子「……」

レ、 ソー、ソー ミッ!

皐月「貴様! さては、まったく練習をしていないなっ!!?」

流子「」ビクッ

皐月(『ビクッ』って、え? 怖かった?)

流子(しまった。学校での態度が癖になっちまってるな…)

皐月「…いいのだぞ? 別に、ピアノが気に入らないのなら、やらなくとも…」


流子「……」

皐月「」カチーンッ

皐月「ふんっ! もういい…。もう貴様には愛想も付きた!! そっちがそのつもりなら、この鬼龍院皐月も受けて立ってやる!!」

流子「!?」

皐月「もう口なんか利いてやらんからな! 稽古ももうしなくていいし、家を出たければ好きにすればいい。流子がどうなろうと、私は気にしてやらないからなっ!!!」ドスドスドス バタムッ

流子(荒々しく出てっちまった…!)ガビーン


流子(よくわかんねーなアイツも…。私がなんか嫌われるようなことしたかぁ?)ポローンッ♪

流子「……」

流子(…考えてみれば一杯してたな)

流子(…なんか急に寒くなった気がするな、この部屋…)

流子「……」ギシッ、

 レ、ソー ソ、♯ファミ、シー ラ、ソ、ソー 

流子(おかしいよな。一人でいた時間の方が、長かったはずなのによ)

 ソ、レ ド、シラ シラシ、ミ ♯ファ、ソラソ、♯ファ ソ、ファ、レ

流子(周りの奴らが優しすぎて、こんな気持ち今まで忘れてたよ…)

 レ、ソー ソ、♯ファミ、シー ラ、レ、 ド シ、ラ、ソ ソ♯ファレ レ、♯ファ、ソ ソ

流子(父さんは…。私を、どんなつもりで育てたんだろうな…。 道具として? …それとも、娘と、して…?)

ミ、レ、 ミ…… ジャーンッ!


  ・・・ズルッ、 ドサッ!


―翌日(06:00:25)―

=スラム街:満艦飾家=

薔薇蔵「ぐおー…ぐおー…」zzz

 ドア バンッ!

スーツ姿の男たち「」ダダダダダッ

薔薇蔵「んあっ!? アンタら誰だ!? っていうか何をすr―――ムゴモゴッ!!」じたばた

スーツ姿の男「満艦飾薔薇蔵、確保完了しました!」

スーツ姿の男「よし、速やかに撤退だ!」ダダダタッ・・・

好代「すー、すー」zzz

マコ「むにゃむにゃ…。りゅーこちゃん、今日もコロッケだよ―…」zzz


≪本能寺学園:教室≫

美木杉「…流子くん、纏流子くん」

流子「ふぁっ!?」パチクリ

マコ「おはよう流子ちゃん♪ 良く寝てたねー!」

流子「ま、マコ!? なんでまた隣の席…? 美木杉も、教師辞めてなかったか!? っつーか、本能寺学園自体がもう―――」

美木杉「あー。どうしたんだい流子くん? 頭でも打った?」

流子(…? あ、そっか…。これきっと夢だな…)


=鬼龍院邸:流子の寝室=

流子「はー…はー…」グッタリ

鮮血「音楽室で倒れてから、流子はまだ目を覚まさない…」

流子「うーん…うーん…」グッタリ

鮮血「流子…。私を着てくれていれば、体調の変化にもすぐ気づけたのに…」

皐月「ふむ…これを首に巻けばいいのか」

鮮血「体温に呼吸数、脈拍に体脂肪まで測れたのに…」

皐月「ネギを首に巻くと、呼吸がラクになると聞いたが…こんなものか?」ギュー

鮮血「おい、鬼龍院皐月! 長ネギで流子の首を絞めるんじゃないっ!!」

皐月「む、きつすぎるか…もう少しゆるめて…」ギュー

流子「…~~!!!」

鮮血「流子! 流子起きろ!! 皐月に殺されるぞ、流子ぉ!!」


≪本能寺学園:教室(流子の夢の中)≫

流子(夢とはいえ、これからどーすっかなぁ…)

蟇郡「私事であぁーる!!!」メコッ、バキッ

マコ「あっ、蟇郡せんぱーい!」ブンブン

美木杉「今、授業中なんだけどな…」

蟇郡「纏流子! 満艦飾を渡してもらうぞぉ!!!」

流子「は?」

蟇郡「変身! 三ツ星極制服、死縛の装!!!」ドーンッ

マコ「二人とも、ケンカはやめてぇー! 私のために、争わないでぇー!!!」キャーッ

流子「お、おいちょっと待てって――」

蟇郡「うおぉおお!!!」

ヒュルッ、 ビシィッン!

流子(…くっ、首が絞められて…! 息が…!!)


=鬼龍院邸:流子の寝室=

流子(蟇郡このやろっ、)ブンッ

皐月「むっ!?」パシンッ!

流子(あ、あれ? 蟇郡を殴ろうとしたはずなのに、なんで皐月が私のパンチを止めてんだ!?)

皐月「…気が付いたか、流子」ホッ

流子(あと何で私の首にネギが絡まってんだ!?)

鮮血「流子!!!」

流子「……」プイッ

鮮血「」ガーン

 ノック ノックッ、 ガチャ


揃「失礼します。満艦飾薔薇蔵様をお連れしました」

皐月「よし、入れっ! 急げっ! さっさと流子を診ろ!!」

鮮血「わざわざ主治医を拉致してくるとは、さすが鬼龍院家だな」

薔薇蔵「…では、りゅーこちゃん。聴診するので胸を出してもらおうか…!」ワサワサ

ドゴッ!!!

薔薇蔵「げふぅっ!!!」ドサッ・・・

流子(その態度で出すわきゃねーだろ!!!)

薔薇蔵「い、いいパンチだ、りゅーこちゃん…」ガクッ

皐月(…やっぱり、専属の女医の方がよかったか?)


―小一時間後―

薔薇蔵「…ま、熱は高いが、他は元気だから寝てりゃー治るだろう」顔 ボロボロ

皐月「そうか。よかった」

流子(…ちょっと殴りすぎたな。おじさんの顔)ゴメン

薔薇蔵「という訳で、りゅーこちゃんを静かに寝せるためにいったん部屋から出よう。鮮血、お前さんもな」

鮮血「私もか?」

皐月「わかった。揃、出よう」スッ

流子(え、いや、そこまでしなくても…)

  ゾロピョコゾロゾロ・・・ バタン


=皐月の寝室=

皐月「ここならば、他の誰にも聞かれる心配はない。…無論、流子にもな。安心して話せ、満艦飾薔薇蔵」

皐月「…流子は本当に大丈夫なのか?」

薔薇蔵「体は大丈夫だ。ただ、厄介なのは心の方だな。何があったか知らんが、どうやら話せなくなってるらしい」

鮮血「なんだと!?」

薔薇蔵「しかも、表情から察するに、本人は声が出せていると思っているみたいでな…。気づかせると余計悪くなるかもと思って場所を移したんだが…。鬼龍院皐月様、アンタ、りゅーこちゃんの話し方を直そうとしたり、我慢させたりしなかったか?」

皐月「そんなことはしていない。学校でのことはさすがにわからないが、流子ならあの学校は大丈夫だろうし…」

薔薇蔵「『りゅーこちゃんなら』っつーのは、どういうことかい?」


皐月「そもそも、一年前までは鬼龍院財閥の手の者が運営していたのだが、コルセット氏に理事長の座を奪われた学校なんだ。つまり新生REVOCS社を潰そうとしている会社の社長が理事長で、」

皐月「その理事長の娘が大きい顔をしていることで有名な学校でな。『放校にする』と生徒を脅し、言いなりにしているが誰もその証拠を掴めていない」

皐月「以前にも、弱みを握ろうと大暮麻衣子を送り込んだが…、途中で連絡もよこさなくなったからな」

皐月「いっそ流子を送り込めば、暴力行為で一日も経たずに放校になり、その調査という名目で実態を暴露し、弱みを握ってやれると考えた」

皐月「流子なら放校なんぞ痛くも痒くもない。その脅しさえ効かなければ、なんともない学校だ」

鮮血「利用できるモノは身内でも利用するという姿勢は変わってなかったんだな、鬼龍院皐月…」

皐月「しかし、確かにあの性格の流子が三日も持つとは何かおかしいな…。証拠のために、制服と鮮血に付けておいた盗聴器の録音でも聞いてみるか」ゴソゴソ

鮮血「クリーニング後に襟の裏に付けられたこれは、アクセサリーじゃなかったのか!?」


皐月「…これが制服の方、一番最近の奴だな」ポチッ


<「やーいやーい、捨て子の化け物ー!」

 「皆あなたを憐れんで話しかけてあげてるのに。無視するのー、鬼龍院流子さーん?」

 「……ぐすっ」
 
 「あぁあら、泣いちゃったー! お可哀そうにー!」

 「本当のことを言っただけですのにねー!!!」
    
    オーホホホホホホホホホh> プツンッ


薔薇蔵(…原因はこれだな)

鮮血(…普通に考えたらこれだな)

皐月「…………」スマホ ピッ

皐月「あー、犬牟田か? 悪いが、コルセット社のゴシップが好きそうな大手新聞社とテレビ局を調べてくれ。あと、訴訟を起こすから腕のいい弁護士も頼む。…あの姉妹を社会的に抹殺してや」

薔薇蔵「待った、鬼龍院皐月様! そういうことは、他のも聞いてからだ。何か理由があって無抵抗なのかもしれない」

皐月「…確かにそうだな。犬牟田、すまん今のなし」ピッ

犬牟田「」


皐月「では、鮮血の方を…」ポチッ

<「あーっ! …もういい、うんっざりだこんな学校!! さすらいのギターケース・関東無宿の流子様が放校なんかにビビッてたまるかってんだコンチキショー!!!」

 「よーし…持ち点なんか、あのムカつく姉妹を殴り飛ばしてきれいに0にしてやろーじゃねーかぁ!!」>

皐月「少し早回しするか…」キュルキュル

<「あの子も、意地を張らずにさっさと放校になってしまえばいいのにねぇ…」
 
 「そうすれば、あの娘の不祥事で鬼龍院皐月率いる新生REVOCSの株も暴落…。九割のシェアを誇る最大手の衣類専門会社が倒れれば…! このパンスト学園の理事長、あたくし達の御父様であるコルセット様の率いる会社が、その市場を独占できる…!」

 「大声過ぎて、廊下まで聞こえてるぞ! 鮮血、やっぱあいつらバカなんじゃないのか!?」> プツンッ

薔薇蔵「あー…。りゅーこちゃんは、多分これを聞いて…」

皐月「…………」

皐月「揃、ヘリを出せ。…あの姉妹を抹殺してや」

 ギィ・・・ッ

流子(…余計なことしてんじゃねーよ、皐月…)ヨロッ・・・


流子「……」

薔薇蔵「いやー。どうやってここがわかった、りゅーこちゃん?」

流子(スピーカーから大音量で学校での会話が聞こえてきたから、居そうな場所全部回ってきたんだよ…!)

揃「はっ! 皐月お嬢様、よく見たら邸内放送のスイッチが入りっぱなしでございます!!」

皐月「何っ!? ということは、邸内中に筒抜けだったか…」

流子(盗聴してたことはこの際どうでもいーんだ。…ただ、学校のことは私の問題だ! 皐月の助けは要らねーんだよ!!)

皐月「流子…」

流子(…何だよ)


皐月「貴様には失望した」

流子(…!?)

 ピカー!!!

皐月「今の貴様は、柵の中の安寧にしがみつき、ただ餌を待っているだけの憐れな豚だ!!!」

皐月「自分の権威を踏みにじろうとする者の言葉を、逆らいも抗いもせず受け入れるなど愚者のすること! 目の前に立ちふさがる者があれば、それが何であろうと徹底的に叩き潰せ! 貴様の足枷となる物があるのなら、それすらも利用しろ!」

カツンッ・・・!

皐月「それができないのなら…貴様に鬼龍院の名を名乗る資格は無いっ!!!」

流子(……!)


皐月(厳しすぎたか…? 厳しすぎたらどうしよう…!?)ドキドキ

流子(…あー、まーた偉そうに上からモノを言いやがって…)チッ

薔薇蔵(無言で舌打ちした!?)

流子(でも、おかげで目が覚めた)スッ

鮮血(…流子は、怒ってはいないようだな)

流子(…ありがとな、皐月)ニッ

皐月「ふん…。いい目をしているな、流子」ホッ


流子(じゃ、私部屋戻って寝るわ…)ペタ ペタ

皐月「待て流子。そんな壁に手をついて歩いてるような奴を一人では帰せん! 私が直々に肩を貸してやろう」

流子(いらない。付いてくんなっ!!)ペタペタペタッ

皐月「ふっ。肩を貸されるのが嫌とは…流子はわがままだな。いいだろう、特別におんぶしてや」

流子(よしっ、到着! あばよ皐月!!)ドア バタムッ!!

皐月「」チッ


=皐月の部屋=

鮮血「流子…私を忘れて行かないでくれー。流子ぉー!」


―三日後―

=パンスト学園:教室=

―生物―

中年教師「えーっと、今日の欠席はま…鬼龍院流子くんだけか。じゃぁ、今日の授業は自己免疫不全の――」

キャンティ「授業をなさる必要はありませんわよ、先生?」

中年教師「あー…。私語は、減点14でよかったよね?」

ニーソック「あくまでしらを切りますか…。元本能寺学園世界史教師、またの名をヌーディス・トビーチのスプレンディッド・ネイキッド・オフィサー、美木杉愛九郎!!! あなたが鬼龍院から送られてきたスパイだということは、もう調べがついていますのよ!」

キャンティ「証拠として、あなたが職員用階段にバナナの皮を仕掛けている瞬間の、監視カメラ映像もありますのよ…?」

麻衣子(み、美木杉ですってぇ!!? 私の元担任の…!?)

中年教師「フッ! バレちゃぁしょうがない!!!」スルッ・・・


女生徒L「きゃー!!! 服が勝手にはだけていくわ!」

女生徒O「や、やだ! チ○ビがバイオレット色に発光して…!!」

中年教師改め美木杉「一つだけ訂正しておこう…。僕は鬼龍院家とは関係なく、個人的な興味で纏博士の娘をつけまわしているだけだ!!!」バーンッ

ニーソック(フェ、フェイスマスクより先に服を脱ぐなんて…! こいつ、できる…!!!)

美木杉「さぁ!!! 今こそ、この美貌が白日の下にさらさr」

 ガラララッ、・・・ドカッ!!!

流子(…表出ろや、悪魔姉妹!!)

明日で完結させるのでよろしくお願いします。
ここまで付き合ってくれてる人いたらありがとう。

遅れました。
再開します。


=校庭=

 ヒュウゥゥゥゥ……

(※以下、人物名の横に持ち点が表示されます。一応授業中なので、私語、暴言、下品、暴力は減点)

流子[3]「……」ザッ・・・

キャンティ[153]「三日もお休みしていましたから、てっきり不登校になったのかと思っていましたら…。よっぽどいじめられるのがお好きなようですねぇ、鬼龍院流子さん?」


美木杉(フェイスマスクを剥がす機会を逸したまま、クラスごと校庭に来てしまった…)

麻衣子[100](ホントに、こいつがあの美木杉ぃ?)ジーッ・・・


ニーソック[151]「今朝の遅刻で減点5ですから、今のあなたの持ち点はたったの3点。悪口の一つでも言おうものなら、即刻放校になるレヴぇルですわよ。それに対し、あたくし達は二人とも150点代…」

キャンティ[139]「さらに、放校となったが最後、鍛え抜かれた教師たちの鉄壁の防御によって、パンスト学園の生徒に触れることも叶わなくなりますわー。つまり、どうあがいても…」

キャンティ[125]&ニーソック[137]「「あなたに、勝ち目はあぁーりませんわぁ! 皆さん、やっておしまいなさい!」」


 シーン・・・

ニーソック[123]「なっ…!? 何故誰も動かないのです!?」

流子[3]「……」クスッ♪

キャンティ[111]「おっ、大暮麻衣子さんっ! あなた、きちんと女生徒F~Jさんに連絡網は回しておいたんでしょうね!?」

麻衣子[100]「……くっ、ふふふふ…」

キャンティ[97]&ニーソック[109]「「!?」」

麻衣子[86]「あーっはっはっはっはぁ! とーんだ間抜けだな、デモン姉妹も!」

麻衣子[62]「この『寝返りの大暮麻衣子』様が、いつまでも自分たちの味方だと思うなんて、ちゃーんちゃらおかしいったらありゃしなーい! クラスメートは既に全員、あんたらの命令なんか聞きやしないんだよぉ!」ゲラゲラ

キャンティ[97]「馬鹿なっ!?」

ニーソック[109]「…一体どんな手を使ったのですか、鬼龍院流子さん?」

流子[3](どんな手も何も…。私は、犬牟田にハッキングしてもらって入手した大暮麻衣子のメアドに、やって欲しいこととお礼の金額を打って送っただけさ)ニヤッ


キャンティ[78](無言で返すとは…ムカつきますわ!)

ニーソック[95]「大暮麻衣子さんは、鬼龍院流子さんに恨みがあったはずでは…?」

麻衣子[38]「恨み? そんなもの…。なんっの価値も無いじゃないっ。 私が欲しいものは、そう、力よ! パワーよ! 権力よ! 権力は金で買えるわ…。 金の、権力の、力パワーのある奴になら、誰にでも取り入る! それがこの大暮麻衣子様の信条よー!!」アーハッハッハ

キャンティ[78]「くっ…。卑怯ですわよ、鬼龍院流子さん!」

ニーソック[81]「実力で勝負せず、姉の権力を利用するなんて…! なんて人!!」

流子[3](はっ。どの口がそんなことを言うんだい? それに、姉の権力だろーがなんだろーが、利用できるものはとことん利用するのも、実力のうちだろ?)

キャンティ[64]「…こうなったら、仕方ありませんわニーソックさん」

ニーソック[67]「ええ、わかっていますわ、お姉さま!」

キャンティ[50]&ニーソック[53](持ち点があるうちに、実力で片を付けてあげますわぁ!)

流子[3](ほーう、いいのか? ホントに攻撃しても?)ブレザー バッ!

キャンティ[50](ブレザーの下に、コードや機械を巻きつけている!?)

ニーソック[53](な、何かしらアレ…爆弾?)

流子[3](そんな顔すんじゃねーよ。武器なんか持ってきたら、減点になっちまうだろ?)ニヤリ


美木杉「…ねぇ、どっちも黙ったまんまでよくわかんないからさ。大暮麻衣子くん、どういうことか解説してくれない?」

麻衣子[17]「……」

美木杉「これ質問だから。減点しないから」

麻衣子[17]「はーはっはっは、よくぞ聞いてくれたぁ!」

美木杉(素晴らしい切り替えの速さだな…)

麻衣子[17]「鬼龍院流子さまの着けている機械。コードがたくさん付いてるでしょ? あれはね、一本でも何かの衝撃で切れると、それまで貯めに貯めた『録音』やら『写真』やらの『いじめの証拠』が全部ネットに流れるようになってんのよー!」←無駄に大声

麻衣子[17]「そうなったら、あのデモン姉妹も放校どころの騒ぎじゃなくなるわ。下手をすると、刑事裁判で集団暴行やら何やらで有罪、実年齢は二十歳超えてるからそのまま『実刑判決』くらうわよー!」←無駄に大声

美木杉「でも、そんなことをしたら流子くんの泣き顔まで流出してしまうんじゃないか? 個人的には、あまり多くの人に共有してほしくはないのだがね…」

麻衣子[17]「ばかね。そんな都合のいい機械がある訳ないでしょ。はったりかけてんのよ流子さまは」←小声


キャンティ[50](そんな機械をブレザーの下に隠していたなんて。迂闊に攻撃できませんわ!)

ニーソック[53](しかし、もう打つ手がありませんわ)

キャンティ[50]&ニーソック[53](かくなるうえは……)ダッ!

流子[3](おっ、逃げたな…)

キャンティ[50]「覚えてなさいっ。鬼龍院流子ぉー!」スタコラ

流子[3](そのまま、そのまま直進……。よしっ)

ニーソック[53]「今度会ったら、ボッコボコにして泣いて土下座させてやるから覚悟なさっ」

  ずぼっ! どさっどさっ!!!


キャンティ[34]「Fac[ピー]!!! 何だこれはぁっ!!?」

ニーソック[34]「Shi[ピー]!!! お、落とし穴ですわ、お姉さま!!!」

美木杉「これはまた…随分と立派な落とし穴だねェ」

麻衣子[17]「昨日クラスのみんなで掘ったのよ。他にもくくり罠とかいろいろ作ったけど…みんなノリノリだったわ、薄情よねェ」

美木杉(君にだけは言われたくないと思うよ、大暮麻衣子くん…)


ニーソック[15]「よ、ようやく出られましたわ…」ドロドロ

キャンティ[15]「お、おのれ鬼龍院流子ぉお…!」ハーハー

 ピカッ・・・

流子[3](…さーて、次はどうするつもりかな?)ニヤニヤ

麻衣子[17]「青白く光って、まるでシリウス(※1等星。眩しい)ね。もう、サングラスが欲しいわ…」

美木杉「……とうとう、流子くんまで発光するようになったか…」


キャンティ[1]「くっ…生意気にも発光するなんて! 化け物のくせにっ!」

ニーソック[1]「生命繊維の無くなった今、必要とされてない存在のくせにぃっ!!」

流子[3](うるせーな。それしか言えねーのかよ)イラッ

キャンティ[0]「はっ! あたくしの持ち点が!」

ニーソック[0]「や、やってしまいましたわ! 動揺して計算を忘れて…」

  ―――カツンッ!


女教師「そこまでですわよっ」ピーッ!

流子[3](ん?)

キャンティ[0]「っ! こ、これには訳が…」

ニーソック[0]「お、お願いです! 処分だけは…」

女教師「お黙りなさい。ほんっとに、あなたたち役立たずなんだから」刀×2チャキッ・・・

女教師「鬼龍院流子さん、下がっていなさい。私には『本校の生徒』を外部の人から守る義務があるのですから…」



流子[3](…ふーん)プチンッ

流子[3](じゃ、これならどお?)フワッ・・・

女教師「……シャツのボタンを開けていいのは、一つまでですよ、鬼龍院流子さん。そして、着衣の乱れは減点3です」

流子[0](これで、『本校の生徒』じゃなくなっただろ)


女教師「どうぞ、放校処分者同士、お好きになさいな」スタスタ・・・

流子「……」パキッ、ポキッ!

キャンティ&ニーソック「いやぁああああ!!!」


流子(地獄に送ってやる前に、良いことを二つ教えてやるよ…)ザッ、

キャンティ(む、無言なのが、逆に怖いですわ…)

流子(一つ。私はな…周りの奴らがどう思おうが、知ったこっちゃねーんだよ)ザッ、

ニーソック(何ですの。なぜ何も言わないんですの!?)

流子(周りから褒められよーが貶されよーが、結局、私は私だ。他の何にもなれないし、なる必要も無い…)ザッ・・・

キャンティ&ニーソック「ひ、ひぃっ…」ゾクッ・・・!

流子(二つ…。いいか、よーく覚えとけ。私は、『纏流子』改め『さすらいのギターケース・関東無宿の流子』改め―――)カツンッ!

流子(鬼龍院皐月の妹、『鬼龍院流子』さまだぁあああ!!!)キラキラキラキラ・・・ッ

 ドカッ バキッ ドコッ ベキッ グシャァッ!!!


キャンティ&ニーソック「「す、すびばぜんでじだ…」」チーン・・・

流子「……」フゥ・・・

流子(ついでだから、土下座写真撮っておこうっと)パシャパシャ

キャンティ&ニーソック「「」」



美木杉「いやぁ。なんか、流子くんも吹っ切れたみたいだしね。よかったよ」

麻衣子[17]「ところで、先生。いつまで変装してる気なのかしら?」

美木杉「あ。忘れてた」ベリッ

麻衣子[17]「」ジーッ

美木杉「…なんだ」

麻衣子[17]「別に。昔の先生の方が、好みだったなと思って」

美木杉「…ふぅん。そうか」


 タタタタッ

流子(麻衣子、ありがとな! そして、これが例の小切手)コソッ

麻衣子[17]「フゥーウ! 小切手フゥーウ!!」

流子(って、美木杉!? なんでここに?)

美木杉「ん? 不思議そうな顔をしてるねェ流子くん。実はいろいろあって、生物教師としてこの学校に潜入してたのさ」

流子(ふーん…。って、えっ!?)

 ジャキンッ!

流子(ちくしょー! 騙しやがったな美木杉ぃ!!!)

美木杉「うおっ!? 無言で鋏を突き付けるのは止めてくれないか!?」

流子(うるっせぇ! お前だって知ってたら絶対泣かなかったのに!!)

美木杉「…なぁ、流子くん。そういや、今日会った時から一言も発してないけど、風邪で声が出ないのかい?」

流子「?」


=鬼龍院邸:テラス=

流子(のんきに皐月と茶を飲む日が来るとはなぁ)ズズッ・・・

皐月「ところで、学校はどうだ? 流子」

流子(放校になった。ほらよ。姉妹の土下座写真)ピラッ

皐月「…ふっ! ご苦労だったな。おかげでコルセット社を潰す足掛かりが増えた」ピカーッ

流子(そいつはどうも)茶菓子 サクッ

皐月「流子、そっちのチョコのヤツもおいしいぞ」

揃「お茶のお代わりを」

皐月「ああ、頼む。流子の分もな」


流子(…やっぱ私、声出てねーのかな…)モグモグ

皐月「…ところで流子。明日が何の日か知っているか?」

流子(…?)

皐月「貴様の生誕18周年の日だ。それに合わせ、お前のお披露目ぱーちーを開催することになった。…俗にいう、『社交界でびゅー』という奴だな」

流子(なんだそれ!? 勝手に決めやがって!!)

皐月「という訳で、今日の稽古事は無しだ。…早めに休め」カツ、カツ、カツ・・・

流子(けっ、エラそーに…)



流子(そういや、誕生日、か…。忘れてたな…)


―翌日―

=流子の部屋=

流子(なんだ、この…ふわふわひらひらしたドレスは!?)

流子(しかも他の服が一着もねぇ…! なに!? 鮮血までいねぇ!!)ゴソゴソッ

流子(こりゃ皐月の仕業だな…。冗談じゃねェ! こんな恰好するくらいなら、パジャマでお披露目パーティーとやらに行く方がマシだっての!)

流子(……)

流子(……ドレス、ねぇ…)チラッ


―10分後―

流子(…ま、まぁ、今ならだれも見てないし…)

 そーっ…

流子(鏡に映してみたものの…似合わねーな、やっぱり)

 ・・・くるりっ ふわぁっ

流子(…やっぱ似合わねぇ!)////

 ・・・ぺこっ? 

(※【カーテシー】西洋のフォーマルな女性の挨拶方法。両手でスカートをとり、片足を少し後ろにずらし、両ひざを曲げる。顔は会釈。魔女宅でキキがやってたやつ)

流子(…に、似合わねぇ!)/////


 ――プルルルルルッ プルルルルルルルッ


流子「っ!」ビクゥッ!

流子(へ、部屋の電話が鳴ってる…。誰からだ?)

 プルルルルッ プルルル がちゃっ

流子(……も、もしもーし)

マコ『流子ちゃんっ! 流子ちゃん大変、大変だよぉ!』

流子(マ、マコっ!? 何があった、そんな慌てて)

マコ『み、みんな流子ちゃんがやっつけたはずだったのに…。どうしよう、蟇郡先輩が…』

流子(マコ、落ち着けっ! …まさか、COVERSの残党か!?)

(※REVOCSが会社名、COVERSは服の化け物の総称)

マコ『きゃー!!! 流子ちゃんたすけ』ブツッ

流子(マ、マコ? おい、マコ!! マコぉ!!!)

 ツーッ ツーッ ツーッ・・・


=鬼龍院邸:廊下=

 ドア バコンッ!

流子(……くっ、急がないと、マコが――!)ダッ

メイド「きゃっ!」コケッ

流子(ごめんぶつかった! ホントごめんな!)ドピューッ!!!

メイド「……」無線 スチャッ

メイド「…ええ、今行きました。計画通り、順調でございます。はい、後15分ほどでそちらに着くかと…。はい。では。」ピッ


―14分後―

=スラム街:満艦飾家前=

流子(マコ…マコ…!!!)ダダダダッ

 ドア ドカンッ!

流子(マコっ! 無事か)

 パァアーンッ!



マコ「流子ちゃん、お誕生日おめでとー!!!」


流子「…?…?…?」

マコ「あ、あれぇ?もー、流子ちゃんったら、怖がりさんなんだからー! ただのクラッカーだよぉー」

流子(マ、マコ? え。あれ、COVERSは…?)

マコ「そんなの、サプライズの演出だよー! あー! 流子ちゃんのドレス、かーわーいーいー! そうだ、見て見てっ! 私の被ってるトンガリ帽子、流子ちゃんの分もあるよっ! 着けてあげるね♪」トンガリッ

流子(ん? 私声出してたっけか?)トンガリッ

マコ「友達同士は以心伝心! 気にしなーい気にしない! ほらほら、みんな待ってるよー!」

流子(…うっ、こ、これは…!?)


流子(…マコん家の中に、皐月と四天王と揃さんと満艦飾ファミリーと美木杉と黄長瀬が寿司詰めになってる…!)

流子(何だよこれ…何なんだよこれ…。全員もれなくトンガリ帽子被ってんだけど。つーか、蟇郡面積取りすぎなんだよただでさえ男が8人もいてむさ苦しいのに…。ていうか、誰だよあの変態先公と変態モヒカン呼んだの。別に私仲良くねーよ。友達と言える奴マコしかいねーよ。もはや何の集まり?)

流子(しかもご丁寧に、幼稚園のお遊戯会みたいな飾り付けまでされてるんだけど…部屋の奥の方に『流子ちゃん18才おめでとう』って花文字で描いてあんだけど何これ…)

皐月「ふっ。気に入ってもらえたか? 流子。もう気付いているとは思うが、例の『お披露目ぱーちー』はフェイクだ。本当の誕生会はこっち…」


皐月「…この日のために、満艦飾と蟇郡に協力してもらって、1週間以上に渡って準備を進めてきた…。もちろん貴様にばれない様、細心の注意を払ってな」

マコ「だから、こないだは流子ちゃんを私のお家に上げるわけにはいかなかったんだよー! もう花文字が完成しちゃってたからー!」

皐月「下手な会場でやるよりは、慣れ親しんだ満艦飾の家でやる方が、流子も喜ぶと思ってな…」フッ

流子(マコん家の迷惑も考えろよ。何やってんだよ)

皐月「そう焦るな。ちゃんとプレゼントも用意してある」パチンッ

流子(どわっ!!?)ドサドサドサッ!


流子(う、上から落とすんじゃねーよアホー!!)

皐月「開けてみろ。すべて私からの贈り物だ」

流子(やたら多いな…変なもん入ってんじゃねーだろーな)ビリビリッ!

流子(…………)ビリビリビリビリッ

流子(…………)

流子(シルバニアファミリーのお家に、着せ替え人形に、テディベアに、ランドセルに子供服にアクセサリー数点…)

流子(13個もあってまともなのの方が少ねーじゃねーか…! お前の頭ん中で私は一体いくつなんだよ!? しかも1つ1つについてるカード全部白紙じゃねーか! 何のつもりだ!!?)

皐月「そのカード、ケーキの蝋燭の火で炙ってみろ、流子」

流子(は? 炙りだしなの、これ? 何のために…)ジジッ・・

流子(……!)


『いもうとへ 5さいのたんじょうびおめでとう わたしがんばるから みててね さつき』

『妹へ。 …生きていれば、もう14歳だな。早いものだ。…見ていてくれ、必ず仇は取る。 皐月』

『妹へ。 17歳の誕生日、おめでとう。私がプレゼントを贈るのは、これが最後になるかもしれないが…。そうなれば、次からは手渡しできるのかもしれないな。 皐月』


皐月「…父から妹のことを聞かされたその年から、毎年プレゼントを買っていた…」

皐月「5才の時からだからな。年に合わない物も、古くなってしまっている物もあるだろう。すぐに捨ててしまっても構わん。ただ、貴様に渡しておきたかった」

流子(皐月……)


皐月「そして、これが貴様への18歳の誕生日プレゼントだ!」パァアアア!

流子(う、ウェディングドレスだと…!?)

皐月「職業柄、最高のものをプレゼントにしようと考えると、服しかなくてな…。もしデザインが気に食わなければ仕立て直すこともできるし、自分で選んで買ってもいいがな」

流子(なんだって、わざわざウェディングドレスなんか…)

皐月「自分でも、なぜ花嫁衣装を贈ろうと思ったのかはよくわからんが…。ともかく、その服の名は『純白』だ。受け取ってもらえるとうれしい」

皐月「調整の際には、鮮血に説得の手伝いまでしてもらったしな」

鮮血「流子、気をつけろ…。この服は、相当嫉妬深いぞ。化け物の私でも大事にしてくれた流子が、服をないがしろにする訳はないのにな…」

流子(鮮血…)

流子(ごめんなぁあ今まで放ったらかしにしちまってぇえ!!)ギューッ!!!

鮮血「流子…! わかってくれたか!」ジーン・・・

純白「……」プクーッ!


流子(…ありがとう、皐月。プレゼント全部、大事にする)ギュッ

皐月「いやいや、別に無理に喜ばなくてもいいのだぞ? ランドセルとか、あっても困るだろうに」

流子(人に贈っといて何言ってんだよ! 返さねーからな!)

皐月「いや、ほんとに、すぐ捨てちゃっても大丈夫なんだからな?」

流子(だからしつけーって! 捨てさせるか!!)

皐月「だから流子――」

流子「うわぁん皐月おねえちゃんのバカァ!!! 大事にするって言ってんだろーがァ!!!」

一同「っ!!!?」


おわり

今まで読んでくれた方、ありがとうございました。
ありがとうございました!

エピローグ?
始めます。


=スラム街:どこかの屋根の上=

女教師「ふーん…。お誕生会してるだけね。『生命繊維』っていっても、やっぱりただの女の子じゃない。あーあ、わざわざ日本まで来て損しちゃったわー」望遠鏡ジッ

キャンティ「しかし、油断はできません。生命繊維がヒトを進化させ、ヒトが神を作り出したことには変わりはないのですから――」

女教師「神をも超えた存在だって言いたいんでしょー。わかってるわよそんな事…。わー! 何よあのケーキ、おいしそー!!!」

ニーソック「そろそろ空港に向かいませんと、アメリカ行きの飛行機が…」

女教師「日本のお菓子って甘さが物足りないんだけど、その分味は繊細なのよねー! 『あんこ』や『抹茶』も奥深いし…」

キャンティ「急いで出発しませんと、コルセット様に――」

女教師「あー!! もう、うるさいなぁ。あれ? 何やってんのよ、もうこんな時間じゃない!!」

ニーソック「だからさっきからそう言ってるのに…」

女教師「さっさと帰るわよ! 何ボケッとしてんのよキャンティにニーソック!」ドカドカ

キャンティ&ニーソック「「」」


=スラム街:マコん家=

一同「」シーン・・・

流子「んっ? ど、どうしたんだよ皆黙っちまって…」

皐月「…ふっ。ようやく声が出たな、流子」

流子「へ?」

皐月「本来ならば『皐月お姉さま』と呼ばせるところだが…。特別に『皐月おねえちゃん』でも許してやろう」

流子「な、何寝ぼけたこと言ってやがる! んなこと言う訳ねーだろ!?」

鮮血「いや、私は確かに聞いたぞ流子」

犬牟田「言う、というより叫んでいたな。隣近所にも聞こえてそうだ」

ガッツ「ガッツガッツ!」


流子「…言ってない」

猿投山「あきらめろ纏。じゃなかった鬼龍院流子。少なくとも、この場に居る全員に聞こえていた」

美木杉「妹キャラまで合うとはね…。さすが纏博士の娘だ」

黄長瀬「『皐月おねえちゃんのバカァ』か…」

流子「…私はそんなことは言っていない」

蛇崩「いい加減、認めちゃいなさいよ」

マコ「もーっ! 流子ちゃんったら、照・れ・屋ー!」ツンツンツンッ

蟇郡「往生際が悪いぞ、鬼龍院流子ぉ!」

宝多「そやそや! さっさと認めたれぇ!」

流子「いや、誰だよお前」


皐月「……なぜ貴様がここに居る、宝多」

流子「皐月おねえちゃんの知り合いかよ!?」

鮮血(流子…私はつっこまんぞ!)

宝多「ほな、これ、わいからのプレゼント」ヒョイッ

流子「札束そのまんま渡してきやがった…っ!」ガビーン

皐月「…流子。そんなものは受け取らなくていい。ドブにでも捨てておけ」

宝多「もぉーっ、つれないなぁ皐月はん! 大阪のおばちゃんの噂で知った、義妹の誕生ぱーちーに、わてが来ない訳にいきますかー?」

皐月「誰が誰の義妹だと? ゲスが。この場から消えろ」

宝多「イヤよイヤよも好きのうち…。出だしから激しいですなぁ、皐月はん」

皐月「ふざけるなよ。ゲスが。この世から消えろ」

宝多「西の宝多財閥と東の鬼龍院財閥が手を組めば、向かうところ敵なしでっせー?」

皐月「くーだーらーんーなー。ゲスが。一片のDNAも残さずにこの世から消えろ」

宝多「せやから―――」

  ワチャワチャワチャワチャ・・・


流子「……」←目をそらした

流子「マコー、ケーキ食べよっか!」

マコ「もう食べちゃってるよー! あっ、蟇郡先輩クリームついてるー! 頂きっ!」

蟇郡「なっ、何をするか満艦飾ー!!!」//////

マコ「もー! 動かないで下さいよー。うまく取れないじゃないですかー!!」

蟇郡「ぬぉおおおおお!!!」ジタバタ


流子「……」←目をそらした

犬牟田「蛇崩、やるよ」コトッ

蛇崩「あーら、どういう風の吹き回しぃ?」

犬牟田「甘いものは苦手なんでね…」

蛇崩「うれしいけど、パス。ダイエット中なの。ケーキは1切れまでよ」

犬牟田「オレのデータによると、蛇崩には減量は必要ないと思うが…」

蛇崩「…?」

犬牟田「きっと入力ミスだな。『適正体重を逸脱している』とデータに書き加えておこう」カチャカチャ

蛇崩「そこまで言ってないでしょーがっ! このバカ犬っ!!」キーッ!


流子「……」←目をそらした

美木杉「どうだろうか? やはりここの付きが若干甘いと思うのだが…」

黄長瀬「そこの部分は、スクワットよりも腿上げの方が効果的だ。そう、そこの筋肉を意識して…」

美木杉「うん、確かに効いているような気が―――」


流子「……」←目をそらした

薔薇蔵「食えるうちに腹いっぱい食っとけ、又郎!」ガツパクモグ

又郎「ふぁふぁっふぁお、ふぉーひゃん!」モグムシャゴク

好代「又郎、口からこぼさないの。もったいないわ」パクパクモリモリ

ガッツ「ガッツガッツ!」ガツガツガツ


流子「……」

流子(主役なのに、何だこの疎外感は…)

猿投山「…ようやく気付いたか、纏。じゃなくて鬼龍院流子」ズイッ

流子「いきなり何だ!? つーか近いっ!!」

猿投山「今この場で独り身なのは、オレとお前だけだっ!」

流子「だ、だから何だよ…」

猿投山「これは提案だが…。『ぼっち状態』を打開するために、手を組まないか?」

流子「は?」

猿投山「具体的に言うと、このパーティーの間だけ彼氏彼女っぽく振る舞わないか?」

流子「…は?」

猿投山「もっと具体的に言うと、『はい、あーんして❤』『ぱくっ、いつもの百倍おいしいよ❤』『あっ、クリームついてるぅ、ペロ❤』『お、おおい、よせよぉ❤』っていうやり取りをしないか? もちろんこのパーティーの間だけの期間限定でな! どうだ、悪い話じゃないだろう?」

流子「……」


流子「…確かに、たまにはそういう事をしてみてもいいのかもな」

猿投山「! で、では早速―――」


流子「はーい、鮮血。あぁーんして❤」

鮮血「悪いが流子。いくら私でもケーキは食べられないのだ。気持ちだけ頂いておこう」

流子「もうっ、鮮血ったら照れちゃって…。あっ、肩に埃が。とってあげるぅ❤」

鮮血「や、やめろ流子! くすぐったいぞ…!!」

流子「逃げるなよぉ❤ …ほら、捕まえたっ! もう離さないぞぉ、鮮血!」ギューッ!!

鮮血「流子! 悪酔いしたOLみたいになってるぞ流子!!」

流子「ふふふふー❤」


猿投山「……」←目をそらした

猿投山「…揃さん。お茶のお代わり、もらえるか?」

揃「ええ…」

コポコポコポ・・・ カランッ

揃「アイスティーでございます」スッ

猿投山「ありがとう…」

猿投山「……」ゴクゴクゴク、プハー

猿投山「…なぁ、揃さん」

揃「なんでしょう?」

猿投山「…しょっぱいな、今日のお茶は」

おわり


という感じでどうでしょうかね?

読んでくれた人、ありがとうございました。書いていて楽しかったし、反応があってめちゃくちゃ嬉しかったです。

問題はこれを書いている時間、私が勉強していると親が思っていたことですね。
という訳で、紀末糸験 逝ってきます…。

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