QB「僕と契約して魔法ダンスィになってよ!」ほむら「?」 (614)

時間軸の移動が完了し、ゆっくりと目を開く

長いループの内に何時しかぼやけた視界の感覚の方に戸惑う様になっていたが、直ぐに視力を治し視界をクリアにする

ほむら(また、か)

また救えなかった

やり直せばいいとは言っても、救えなかったという事実は覆らない


不意に、何かに引かれる様にいつもの眼鏡を取ろうと机の上を見れば、そこには黒渕の眼鏡があった


ほむら(黒?まあいいわ)


眼鏡の色の差なんて些細なもの
この時のほむらはそう流していた

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転校初日

ほむらは一人暮らしの部屋に用意された制服を着用しようと、袋を開いた瞬間、顔をしかめた

ほむら(男物?)

何時ものスカートではなくズボン

一度も手に取った事のないそれは、不思議とほむらを酷くイライラさせた

ほむら(発注ミスにも程があるわ。後で苦情の電話を入れましょう)

「転校生を紹介します」

その声と共に、ほむらは教室の戸を開き中に入る

「暁美ほむらです。よろ……しく」

元々中性的な体型だったためか、ほむらはクラスメイトに性別男として認識された事に席についてから気付いた

そもそもそんな失敗をしたのは、ほむらを別のものが引き付けていたからだ

いつもの鹿目まどかの席に座っていたのは、鹿目まどかに雰囲気の良く似た男だった

朝のHRが終わると、直ぐ様ほむらは男女問わず囲まれた

「すっごい髪綺麗!」

一番言われたのはそれな気がする

他は、身の上の話
入院生活が長かったと伝えると、鹿目まどかに似た男が手を上げた

「それなら僕、保険委員だから保健室まで案内するよ」

人懐っこい笑みを浮かべた男の顔が、まどかとダブった

「僕、鹿目まどか。よろしくね、ほむらくん!」


名乗られて、ほむらは長いループで頭が壊れたのではないかと思った

救いたい気持ちが恋にでも昇華して、まどかを男と認識しているのではないか

「ほむらって名前カッコいいよね、燃え上がれって感じでさ。僕は男なのに、まどかなんて女の子みたいだし、少し憧れるんだ」

これは鹿目まどかだが、鹿目まどかではない
ほむらがそう認識するのに、大した時間は要らなかった

ほむらは、誘われるがまま、鹿目まどかと共に下校していた

まどかの隣に居る、高身長でいかにも悪戯っ子な表情を浮かべた短髪の男は、美樹恭介というらしい

「ハッ、まどかも転校生もちっちゃいし、女みたいだな」

「恭介くん!そんな風に言ったらほむらくんが可哀想だよ」

「何だ、自分は良いのか?」

「僕は……諦めたよ」

「悪い悪い、気にすんなって!その内伸びるさ!」

まどかに絡んでいる姿は、美樹さやかの様にも見えた

「悪い、CDショップ寄っていいか?」

決まり悪そうにそう言う美樹恭介
その姿さえも、美樹さやかと重なってみえる

「もちろん!ほむらくんもいいよね?」

「ああ、勿論」(ええ、勿論)


妙な違和感が、ほむらの胸を突く
だが、それも先行く二人を追うことで意識から離れていった

「何で、CDショップに行くんだ?」(どうして、CDショップに行くのかしら?)

一応、聞いておこうと思った
ほむらの中で既に予想は出来ていたが

「ああ、それは恭介くんの幼なじみの上条さんへのお見舞いだよ。ね?」

「ん、まあな」

「恭介は、その上条さんが好きなのか?」(恭介は、その上条さんが好きなの?)

「さ、さやかとはそんなんじゃねえよ!ただのお見舞いだ!」

照れ隠しする姿まで、一致していた

どうやら、異なるのは性別だけらしい
そこが最も大きな問題な気もするが

まどかは何時もの様に演歌を聞いていた

(趣味が渋すぎるのよ)

内心一人ゴチていたほむらの脳裏を、テレパシーの時に感じる電気の様なものが走る

『……けて』

ハッとまどかを見ると、不思議そうな顔で周囲を見渡していた

『助けて……まどか』

声に誘われるままに、まどかはふらりと行ってしまう

まさかインキュベーターがこのまどかを呼ぶとは思ってもいなかったほむらは反応が遅れる

「まどか?何処行くんだよ?転校生も行くぞ」

異変に気付いた恭介に言われてようやく意識が戻ってくる

「そうだな、行こう!」(そうね、行きましょう)

ほむらには最早自分自身の目で確かめる以外の選択肢は無かった

駆け付けると、まどかがインキュベーターを抱えて立ち尽くしていた

やって来た二人を見てまどかが口を開こうとした瞬間、唐突に結界が広がっていく

「なに、これ?」

「まどか、転校生、嫌な感じがするし早く行こう!」

慌てふためく二人を尻目に、ほむらは結界を観察していた

薔薇の結界は、優雅というよりは大雑把に広がり、纏まりを持っていない
酷く武骨で荒々しい気がした

「二人とも、俺から離れるな」(二人とも、私から離れないで)


ほむらはソウルジェムを翳し、変身していく

その姿は、正しく魔法少女の姿を取っていた


「ほ、ほむら……くん?」


男物の制服を着ていた時は分からなかったが、魔法少女となったほむらを見たまどかと恭介は、明らかにその認識を改める
暁美ほむらは女であると


「ど、どうしたんだよ転校生」

口を開いた恭介を、ほむらは片手で制する

「質問は後よ」

髪をサッと流し、蠢く使い魔を睨み付ける

「行くわ」

今はまだ小銃と簡易な爆弾しか無かったが、使い魔程度をあしらうのは容易い

戦っている途中で、二人が男だった事に気付きそれまで舞うようにスカートを翻していたのを控え目にする

チラリと見てみれば、二人は顔を真っ赤にして目を逸らしていた

ほむら(何だか私まで恥ずかしくなってきたわ)

妙な戦いづらさを感じてほむらの手が進まずに居ると、突然魔力の篭った銃弾が使い魔を殲滅していった

「お前らは……」

現れた男は、鮮やかな金髪に縁なしの眼鏡で、気難しそうに眉間に皺を寄せていた
美樹恭介と同じくらいの長身
そして何より目を引いたのは、西部劇のガンマンの様な格好だった


「それが見えてるらしいな。まあそれは分からないでもないが、そっちの女は、何者だ?」

「私は……」


警戒の中に、微かな困惑を感じ取る
どれを選ぶのが正解だろう
幾つもの考えが浮かんでは消えていく


「私は……魔法少女よ」

案の定男は微妙な顔をした
未だまどかの腕で眠るインキュベーターを睨んでる様にも見える


「それで、あなたは何者なの?」


ほむらの言葉に、男は更に渋い顔をした
言いたくないという事を表情が如実に表している

「……魔法……だ」

「なに?」

「魔法ダンスィ、だ!」

「魔法男子?」

「ああ、ああ!もうそれで構わん!」

自棄になった男はずれた眼鏡を直しながら、諦めた様子で適当な言葉を吐き出した

「あのーお二方?御取り込み中すみませんがどういうことか説明頂けマスか?」

「それに、この子の事も……」

男はまどかの腕の中にいる瀕死のインキュベーターに一瞥くれるも、特に何でもない風にほむらへと視線を戻す

「そいつは死んでもまた出てくる、所謂宇宙人だ。そこらにでも捨てておけ」

「それは酷いじゃないか」


まどかの腕の生き物が突然飛び出し、男の肩に乗る
まどかと恭介はその生き物に驚きを隠せずにいた

「こいつは……今言った通り宇宙人だ。人と言っていいかは分からんが、その方が理解しやすいだろう」

ふと、男がほむらを横目で見た
世間的に見れば、暗がりで男三人が少女を襲ってる風に見えるだろう

「どうかしましたか?」

まどかがおずおずと尋ねる
巴マミとは全く違い、あまり友好的ではないこの男に怯えるのも無理もないとほむらは思った

「いや、場所を変えよう。家に来い」


振り返り歩き出す男に、ほむらが声をかける

「あなたの名前は?」

「巴マオだ」

そう言って変身を解除した男は、同じく見滝原中の制服を着ていた

一旦ここで終了します

次の更新は23時頃に


自分でもかなりあれな内容だと思うのであまりにも不快に思う人が多数居たら止めようと思います

ありがとうございます

ホモではないです

ほむらは女性?

>>24

ほむらは女性です

少し遅れましたが書いてきます

マオ宅

「……というのが、ざっとした説明だ。尤も、この怪しい生き物を信じるなら、だが」

「信用されてないなあ」

ほむら(こいつ……)

白々しい態度を取るインキュベーターに、ほむらの中で蜂の巣にしてやろうかという気持ちが沸き上がる

巴マオの話した魔法男子の契約内容は魔法少女と全く変わらなかった


ほむら(まあ、そんなリスクは犯せないわね。巴マオはこれが宇宙人という事を知ってるけど、裏目に出ることもある……)

「そんな訳だから、こいつとの契約は男の筈だ。だが、あんたは違う」

「そうだね、僕も契約した覚えはない」


ほむら(やはり来たわね)


「答えてもらおうか」


ほんの少しの思考の後、ほむらは口を開く

道中気付いたのだが、ほむらは魔法少女の格好でないと男の様な口調になってしまうため、今は魔法少女の姿をしていた

「私は、別の世界から意識のみ渡って来た……筈よ。この世界での私への意識の上書きね。ただ、この世界での私の扱いは男だから、実は違うのかも」


そう思うとこれまでの時間軸の渡る前が気になったが、今はいい


「続けるわ。そこではその生き物が契約する対象は少女で、私は契約した魔法少女。ある目的の為に世界を巡っている」


嘘はついてない
ここはほむらにとってはある種別の世界
再び時を遡るその時まで居るに過ぎない


「魔法ってのは、そんなにすげぇのか!」


美樹恭介が目を丸くして言う
この男は、少女の時と同様、魔法少女……魔法使いを正義の味方か何かだと思っているに違いないとほむらは思った

この場でリスクや隠された真実を言ってやりたかったが、それはそれで巴マオからの疑念が増えるに違いない

「へぇ……そうなんだー」

そして何よりまどかが話についてこれてないのは明らかだった

「……だから私はこの世界に長居する気はない。別に縄張りを奪ったりなんてしないわ」


マオの眉がピクリと動いた
マミと違って常にしかめっ面をしているが、何を考えているかは分かりやすい


「一月だけ、協力して貰えるかしら?」

迷っている
そう確信したほむらは、マオから次の材料を引き出そうとする

「ワルプルギスの夜、というのはここにも居るのかしら?」


怪訝な顔で、マオは頷いた

「伝説の存在だがな」


ほむらは喜べばいいのか嘆けばいいのか分からなかったが、表情をなるべく隠して口を開く

(……これで恐らくは協力関係にこぎ着ける筈)

「私の目的の一つはワルプルギスの夜の完全消滅なの。故に私はワルプルギスの夜が現れる一月程前にそこに転移する。尤も世界がこうもガラリと変わったのは初めてだけれど」


マオは明らかに困惑していた
伝説の存在は、やはり伝説
それが本当に在る事すら知らずにいたのだから無理もない


「それは本当なのか?」

「確定事項よ。私がそんな大袈裟な嘘をつく必要がある?実際に、この世界に魔法少女は居ないのだし、世界移動は信じて貰えたでしょうけど」

嘘だと思わせる前に矢継ぎ早に話し考える間を無くす
疑問に答えるのは相手に信じさせてからがベスト
長いループの中でほむらが学んだ事の一つ
尤も絶対上手くいくとは限らないが

「そうね。確かに信じられないかもしれない。でも、一月だけならそう長くもないし、来る事を前提として、一緒に準備してくれないかしら?それならあなたにリスクは無いでしょう?」

「いや、だが……」


巴マオはまだ疑っている

(男でも疑り深いのは一緒か。……男でも、ね)

ほむらは口角が上がるのを必死で隠さねばならなかった

「私の能力を見せてあげる」

部屋の端に移ったほむらは、時間停止して反対端に移る

「うえっ!?瞬間移動?」

「そうよ」

予想通りの美樹恭介の反応
そしてここで切札を使う

「それに、男のあなたなら仮に私があなたを殺そうとしても負けはしないでしょう?」

冷静になれば、半ば人外になったのだから力の差は才能位しかないと分かるだろう

しかしプライドの高かった巴マミと同じでマオもそうだったらしく、ここまで言われて引き下がってはいられなかった

「分かった。ただし怪しい動きを見せたら叩き出す。よく理解しておくことだ」

「ふふ、そうね。でも貴方と戦ったりしないから、忘れていいわね」

差し出された手を握る
マオはかなり力を込めてたが、ほむらも魔法少女
結局痛み分けに終わった

その後直ぐに追い出された三人は、夕暮れの街を並んで歩いていた

ほむらは変身を解き、男の姿で歩いている


「いやあ、まさかほむらが女だったとはなあ」

「ホント、ビックリしちゃったよ」


何というか、危機感の無い二人だ
世界の裏側を垣間見たというのに、男というのはこうも単純なのだろうかとほむらは疑問に思った

「二人とも、契約については考えてるのか?」(二人とも、契約については考えているの?)


少しは考えて貰わないと困る
そう思って聞いたが、二人は微妙な顔をした


「何だか慣れねえなぁ。その口調だと男にしか思えん」

「そ、そんな事言ったら失礼だよ!」

「怒るぞ?」(怒るわよ?)

ほむらの額に浮かぶ青筋を見て二人は態度を改める

「あー、そうだなあ、まどかは考えた?」

「僕はまだ、決めてないかな。やっぱ命懸けってなると、足が止まるっていうか」


まだ悩んでいるという段階
ならばとほむらは口を挟む


「そうだな、直ぐにワルプルギスの夜も来るんだから、それまで待ったらどうだ?いや、ならないならならない方が良いとは思うが」


ほむらの言葉に、二人は一応は頷いてみせた

帰宅後、直ぐにほむらは暁美ほむらの事を調べ挙げる

結果的に分かったのは、この世界の暁美ほむらはほむらが時間移動するまでは男として認識されていたと言うこと

発注ミスでも無ければ、クラスメートからすれば勘違いでもない

ここの軸では、暁美ほむらは男で居なければならないのだ


「はあ、これは厄介だな。口調を気にしないで良いのは楽だけど」(はあ、これは厄介ね。口調を気にしないで良いのは楽だけれど)

翌朝、事態を二人に説明すると始めは分かった分かったと快活そうに頷いてたのだが、暫くしてまどかが立ち止まる

「そ、その、言いにくいのだけど……」

「何だよ?」(何かしら?)

「トイレは、どうするの?」


それは考えても無かったと、ほむらは硬直する
顔を真っ赤にしたまどかはとてもあたふたしていた


「んー、まあ、あそこでいいんじゃね。少し遠いけど学校一番端のトイレで。あっこなら誰も使わないっしょ」

まさか恭介の言葉で解決するとは

意外そうな目で見る二人に恭介はポキポキと拳を鳴らした


「お前ら、そんなに意外だったか?」

「ああ、そうだな」(ええ、そうね)

「ほむらちゃ……くん!」


まどかが慌てて制止するも、恭介の怒りのボルテージは既に振り切っていた

しかしほむらにはほむらだけの回避技があった
まどかがその分犠牲になるのだろうと考えると少し気が引けたが


「恭介くん、殴るの?」


上目遣いで、瞳を少し潤ませて言う
意識をして言えば男口調にならずに言えるのだった


「くっ……まどかぁ!」


ゴンッ、とまどかの頭に二人分の怒りが落ちた

転校二日目は厄介だった

遠慮が無くなったのかほむらはあっちに引っ張られこっちに引っ張られで息つく間もなく、特に女子からの絡みが多かった

可愛い可愛いと、長い髪を弄られ、放課後にはすっかり疲れはてていた

「髪、切ろっかな」(髪、切った方がいいかしら)

まどかと恭介は何気ないその言葉にギョッとした

まどかが慌てて否定する


「折角長いんだし、勿体無いよ!」

「そっか、ならいいか」(そうかしら、ならいいわね)


ホッとした様に胸を撫で下ろす二人
実際のところは、もし切られでもして二人が止めなかったと知れたら非常に恐ろしい事になると思ったのが半分以上あった

「ああ、そう言えば、今日は行くところがあるんだ」(ああ、そう言えば、今日は行くところがあるのよ)

ふと思い出した様に、後ろを歩く二人を振り返りながら言う

「何処行くん?」

「ちょっと隣町まで」

「一人で?」

「ああ」(ええ)

「そっか、じゃあ気を付けてね」

「また明日なー」

二人は大きく手を振って帰っていく

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