御坂4444号「実験開始まであと1分を切りました」 美琴「……」 (635)


美琴「……」

美琴「……ちなみに聞くけど、アンタで何人目だっけ?」

御坂4444号「御坂の検体番号は4444号です、とミサカはお姉様に説明すると同時に確認を取ります」

御坂4444号「第4444次実験まで残り30秒、とミサカはカウントします」

美琴「へぇ、ゾロ目だったんだ……だからどうだって話なんだけどね」

美琴「それにしてもお姉さま、ねぇ……」

御坂4444号「残り10秒、9、8……」

美琴「一体、どの口から出てくる言葉なのかしらそれは」ボソッ

御坂4444号「定刻となりました。実験を開始します、とミサカは戦闘に移ります」キュィィィイン

美琴「……かかってらっしゃい」

美琴「すぐに……殺してあげるから!!」バチチッ!!






そして、同じ顔をした4444番目の死体ができあがった







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この街の闇は深く暗く広い

御坂美琴は中学生にして、学園都市の闇を知り、浸かっていった。
自らと同じ顔をする少女を殺しに殺して4444番目。
実験と言う大義名分に動かされ、殺してきた。
後戻りなど考えれもしない数字まで、殺してきた。
積みあがった4444の屍の未来など、生み出し、殺した御坂美琴には到底分からない。
しかし、この一方的な虐殺はまだまだ終わらない。まだ半分にも遠く達していない。
約1年、たった1年で4444回の殺人。
御坂美琴を闇に追い込んだのは1年前、中学一年生の時だった。






御坂美琴が自らの‘妹’と呼ばれる少女の殺害が始まったのはそこからだった。



――― 1年前 ―――



「ぐっ……くそが……」

美琴「……はぁ、いいかげんにアンタらみたいなのの相手も疲れてきてるんだけど」バチッ


御坂美琴

名門 常盤台中学1年生にして学園都市7人のレベル5の第三位
『超電磁砲』御坂美琴と言えば知らないものはほとんどいない。
人格破綻者と揶揄されるレベル5の中でも唯一、まともな人として扱われ
まさに、学園都市の広告塔として十分な知名度を誇っていた。



美琴「夏休み前だからかしら?テンション上がって喧嘩ふっかけてくる奴らが多くて困るのよね」

「お前さえ倒せば……レベル5に勝ったって事実が……」

美琴「なら第一位のとこにでも行きなさいよ。よってたかってこんな中学生いじめてんじゃないわよ」

「第一位になんか勝てるわけねぇ……ありゃ本当の化け物だ」

美琴「……はぁ、じゃあ私もその化け物って奴でいいからもうつっかかってこないでよね」


学園都市頂点の超能力者。
そのブランドは、学園都市に住む同じ学生にとっては喉から手が出るぐらいに欲しいものだった。
故に、その座を狙ってこのように強襲をかけてくるスキルアウトも多い。
だとしても、なんだというのか、と御坂美琴は思っていた。
確かに、レベル5を倒したという事実は讃えられ崇められるのかもしれない。
だが、だからといって御坂美琴が第三位というレーベルがなくなってしまうわけではない。
強襲に成功した者が成り代わりに第三位の座に座ることもない。
レベル5 第三位を倒した。 その事実の生成のためだけに、戦いを挑んでくる。
御坂美琴についたレーベルも、スキルアウトについたレッテルも、変わりはしないのに。



美琴「うんざりするわね……こうも多くちゃ……」



御坂美琴は心底うんざりしていた。
自分で言うのもなんだが、レベル5の中で一番有名だからか?
他のレベル5がどうだかは知らないが、自分だけがこんな風に突っかかられてるんだとしたら
学園都市の広告塔などという役割はプラスに動くどころかマイナスとしてしか機能していないように思える。
いっそ、同じ常盤台のレベル5の序列第五位のように派閥を結成し、まともな人として見てもらえなくすれば……
と、考えるが常識人の御坂美琴は、やはり己の常識に制止され派閥の結成は見送られることになる。




美琴「…………相談にのってくれる子も……いそうにないしね」




御坂様。
それが常盤台での御坂美琴の呼称だった。
同学年だろうと年上だろうと関係ない。誰しもが尊敬や羨望の意でそう呼ぶ。
悪い気はしない。だが決していい気もしない。
なんど様なんてつけなくていいと言っても無駄だった。



結局のところ御坂美琴はいい意味で浮いているのだった。



いい意味というのは少し語弊があり、御坂美琴本人には悪い意味でしかなかった。
なにもしらない人から見れば、御坂美琴のポジションと言うのは素晴らしく思えただろう。
誰もが尊敬の念をこめてそう呼ぶのだ。一度は味わってみたいものかもしれない。
しかし、人間には飽きるという感情がある。
毎日毎日毎日、御坂様御坂様……さすがに勘弁して欲しい。
確かに、自分は7人しかいないレベル5なのかもしれない。
ほぼ能力絶対主義のこの街では最高ランクの称号だ。
しかし、それを冠するのは中学1年生の御坂美琴。身分不相応とはこのことである。


中学生に対し様をつける人もつけられる人もおかしいのだ。
皇族や貴族じゃあるまいし、ましてやこの前まで小学生だった小娘に様はないだろう。
おかげで……御坂美琴には自分より上、つまりは先輩風を吹かしてくれる人間は常盤台にはいなかった。
中学1年生にして常盤台のトップ。もう一人のレベル5なら喜ぶだろうが、自分は違う。


対等な友達が欲しい。


中学1年生らしい、それにして切実な願いだった。
御坂には上どころか対等な存在がいなかった。
先生や寮監は上の存在だが、友達と言う枠組みには入らない。
して、中学1年生の自分に後輩はいない






スキルアウト等による襲撃、周りからの孤立
中学1年生の御坂美琴にとって、塵のようなストレスが徐々に山となっていく。








学園都市の闇は、その塵に紛れ込んでいった。






パチパチ

「素晴らしいよ、御坂君。さすがは電撃使いの頂点だ」

美琴「……誰、アンタ達」

美琴「って、大方どこかの研究者ってトコね」

「ご名答、しがない研究者だよ」

美琴「悪いけど、私は常盤台で間に合ってるから、他の人格破綻者でもあたりなさい」

「『絶対能力進化』」

美琴「……?」ピクッ

「文字通り、レベル6になる実験だよ、興味ないかい?」

美琴「……悪いけど、凄く興味ないわ」

美琴「なんなら、レベル5だって返却してもいいぐらいなのに」

「おもしろいことをいう、たった7人しか有していない本物の『超能力』をいらないだなんて」

美琴「子供にこんな権力もどきもたせる方が悪いのよ、だからこんな……」

「くそ……」ボロッ

美琴「レベル5を、学園都市を勘違いした人間が出てくるのよ」

美琴「レベル5ですらこれなのにレベル6ですって?」

美琴「……ふふっ、想像するだけでもお笑いモンよ」

美琴「毎日怖いお兄さんからのラブコールで夜もおちおち歩けやしない」

「……そうだね、レベル6になったところで変わらないかもしれないし、もっと悪くなるかもしれない」

美琴「でしょ、だったら―――」






「しかし、レベル5のままだったら、一生、このままだよ?」






一生。
生まれてから死ぬまで。正確にはレベル5になったときからレベル5ではなくなるときまで。
御坂美琴を取り巻く環境はこのまま……?
周囲からは尊敬や羨望の眼差しを向けられ輪の中心で孤立。
レベル5という名前でしか御坂美琴をしらない人たちからは、襲撃の毎日。
もう、うんざり。それが中学1年生の御坂美琴の心境だった。
そこに、新たな提案が出された。


レベル6になる実験を受けてみないか?


レベル6
絶対能力者とも言われるそれは、学園都市にはまだ存在しない。
つまり、もし御坂美琴がレベル6になったとしたら学園都市初。
たった7人ではなく、たった1人のレベル6になる。
そうなれば周囲からはより浮いてしまうかもしれない。
襲撃の頻度は何倍にもなるかもしれない……

かもしれない。

7人というブランドではなく、たった1つのブランドとして受け入れられるのかもしれない。
たった一人のレベル6になればレベル5の第一位以上の畏怖の念を抱かれ、向かってくるものはいなくなるかもしれない。






かもしれない。







御坂美琴は現状の維持より、変革を望んだ。





美琴「……いいわ、詳しく聞かせて」

「ここじゃあなんだ、連絡先を渡すからいつでもきてくれたまえ」

美琴「……気の変わらないうちに聞きたいんだけど」

「心配ない、気が変わることはないよ。断言しよう」

美琴「……どうだか」




そして、この研究者の言う事は当たり、御坂美琴は恐ろしいものを目にすることとなる。






もしも、現状を維持していれば、一年後、闇に触れることなく御坂美琴にも友達ができた









かもしれない。






美琴「ふぅん……結構な大きさの研究所ね、もしかして偉い人だったりする?」

「まさか。前にも言ったとおりしがない研究者さ」


結局、御坂美琴は研究者の元へ赴いていた。
ただ、別に大した期待はなく、一種の暇つぶしのような感覚で。


美琴「それで、その『絶対能力進化』ってのは?」

「ああ、話せば長くなるけど、ご了承願いたい」

美琴「ま、『絶対能力進化』って言うぐらいだしね、それなりの問題もあるんでしょ」

「まず、この実験の前に一つまた大きな実験があったことを知っておいてほしい」

美琴「大きな実験?」

「ああ、その実験は残念ながら頓挫してしまったけどね」







「『量産型能力者計画』という実験だ」







美琴「れ、量産型能力者計画?」

「そう、そしてその計画の素体となった超能力者が」









「御坂美琴君、君なんだよ」

美琴「………………え?」









御坂美琴に闇が纏わりついていく








とりあえず、入りはここまで

レールガンを元にやってます。一投下のレスは少ないです、ごめんなさい。
書きとめてからまとめて投下します。
構成中なので間が空く事もあるかもしれません、すいません。

切りのいいとこまで続き行きます


美琴「ど、どういう事!? 『量産型能力者計画』って……!」

「簡単に言ってしまえば、人工的にレベル5を生み出す実験だよ」

「つまりは、御坂君が素体となったなら、『超電磁砲』を量産する、ということになるね」

美琴「ちょ、ちょっと待ってよ、量産?はは、なにそれ」

美琴「それに素体って、まさかクローンでもつくるわけじゃあるまいし……」

「作ったんだよ」

美琴「…………は?」

「御坂君、君はかつて自分のDNAマップの提供を求められた事があるだろう?」

美琴「DNA……あの筋ジストロフィーの時……」

「それで遺伝子配列パターンのサンプルを入手できたわけだ」

美琴「そんな、勝手に……」

「実験の道具の提供者は御坂君本人なんだよ」

美琴「ち、ちがっ、そんなクローンなんかの実験のために私は……ッ!!」

「ところが、ここで問題が発生した」

美琴「!? そういえば頓挫したって……」

「そう、この実験は続けることはできなくなったんだよ」

「クローンの生成も可能にし、準備も出来てはいたんだが……」

「『量産型能力者計画』の根本を否定するかのような結果だったよ」


「結論から言うと、クローンのスペックは『樹形図の設計者』の予測演算の結果、オリジナルの1%にも満たなかった」

美琴「……1%も?」

「レベルで言えば『異能力者』程度だったんだよ」

美琴「それじゃあ商品価値はほとんどない……だから」

「そう、超能力者をクローンで生み出す事はできないと断定し、計画は中止となった」

美琴「……っはあ!ビックリした。私のクローンがいるかと思っちゃったじゃないの」

美琴「というか、常識的に考えてクローンなんて国際法で禁止させられてるわけだしねー」

美琴「で、その実験が『絶対能力進化』とどういう関係が―――」

「作ったんだよ」

美琴「は?」

「私はさっき『作った』と言っただろう」

美琴「……それ、って」












「『御坂美琴』のクローンは存在し、今も『絶対能力進化』のために生かされ続けている」












美琴「……」クラッ

「驚いたかい?」

美琴「……は、っはは」

美琴「まさか、ここがこんなに頭のイカれた街だったなんて……クローン?」

美琴「世界で禁止されているクローンを都市が作っちゃうわけ? はは、なんて冗談よ」

「残念ながら、事実君のクローンは存在し、実験のため今も培養液の中で生かされているよ」

美琴「……『生かされている』?」

「クローンは短命、君も良くご存知だろう」

「投薬された肉体がなんのダメージも受けないはずがない」

「私たちが管理していなければクローンたちはすぐに死んでしまう」

美琴「……ふっ、ざけんじゃないわよ!!」

美琴「アンタらが勝手に作った命を『生かしている』ですって!!?」

美琴「どれだけアンタらは偉いのよ!!?研究者様ってのは命をもてあそんでもいいわけ!!?」

「……命? 御坂君、君はさっきから何を言っているんだ?」

美琴「……ッ! だから―――ッ!!」














「クローンに命などない。薬品と蛋白質で合成された、ただの人形だよ」













美琴「…………」

美琴「…………は、ははははは」

美琴「なによそれ……なんなの?」

美琴「イカれてるなんてもんじゃない、アンタらは人の形をした悪魔なの?」クラッ

「ここからが本題だ」

美琴「……言ってみなさいよ、そのクローンでどんな実験をするつもりなの?」

「『妹達』君のクローンはそう呼ばれているが……」
















「『妹達』を二万通りの方法で殺害する事、それが『絶対能力進化』の内容だよ」














美琴「…………」

「本来は『超電磁砲』を128回殺害することだったんだが、それは無理なのでね」

「『超電磁砲』の劣化である『欠陥電気』を代用する事により、実験を可能にした」

美琴「………………『量産型能力者計画』は頓挫した」

美琴「それはクローンがレベル5の1%にも満たないと『樹形図の設計者』が決定づけたから」

美琴「よりにもよって、クローンを作った後にね」

美琴「……じゃあ、クローンが作られた意味はなんだったの?」

美琴「というよりも、『絶対能力進化』に『欠陥電気』が代用できるなんて都合が良すぎる」

美琴「初めから、この実験のために作られたんじゃないの?」

美琴「…………ねぇ、クローンが作られた意味は、なに?」







「そうだね、強いて言えば『殺されるための実験材料として造られた』というところかな」

美琴「ふっ、ざけんなぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!」バチチチチィ!!!!!!!







「ストップです、お姉様」

美琴「ッ―――!!」クルッ








御坂1号「と、ミサカは今にも暴れだしそうなお姉様を抑制します」







美琴「……あ、あ、ほんとに……私のクローン……?」ヘナッ

御坂1号「いえす、とミサカはお姉様の質問を肯定します」

「これが御坂1号、君の始めてのクローンだよ」

御坂1号「これがミサカのお姉様ですか、とミサカはミサカそっくりの顔をみて納得します」フンフン

美琴「…………どうしてよ」

御坂1号「はい?とミサカはよく聞こえなかったのでもう一度お姉様の―――」







美琴「どうして私なのよッ!!!いつもいつも!!」








御坂「! あ、あのお姉様……」

美琴「私のクローンを勝手に作って、私に殺させる!?」

美琴「それがレベル6への進化実験!!?」

美琴「わけわかんない!! 第一位や第二位のクローンじゃだめなわけ!!?」

美琴「大体、私が被検体になる自体意味分からない! どうしていつも私を選ぶの!?」

「そこに関しては御坂君を選んだわけではないよ」

美琴「はぁ!? 現に私が今こうしてクローンと向き合ってんでしょうが!!」

「『樹形図の設計図』の予測演算の結果、レベル6にたどり着ける者は1名と判明した」

美琴「だから!! それが私―――」












「学園都市 第一位 一方通行であると」












御坂美琴は今度こそ、膝から崩れ落ちた


美琴「…………な、に、言ってんのよ」

「つまり、御坂君ではレベル6にはなれないと『樹形図の設計者』は演算した」

「レベル6への可能性を秘めたものは第一位 一方通行のみだったと」

「したがって、御坂君に『絶対能力進化』を行ってもレベル6にはなれないんだ」

美琴「なら、なんで私に実験に興味ないかって……」

「そう、だから君に聞いたんだよ『興味ないかい』と」












「第三位がこの実験を行った場合、第一位に並び、越せるほどの結果になる『樹形図の設計者』の演算の結果だよ」














言葉が出なかった。
延々と人間のクズのような話を聞かされて、結果だけ見ればレベル6にはなれません。
でもレベル5第一位にはなれるのでクローンを殺しましょう。
…………なんだこれは。
そもそも『絶対能力進化』とはレベル6にするための実験だろう。
レベル5をレベル5にしてどうするのか、なにがしたいのかいまだよくわからない。
『樹形図の設計者』が示す通り、第一位にやらせればいいのだ。この実験は





「当然、私がおかしなことを言っているように思うだろう」

「なぜ『樹形図の設計者』の演算どおり、一方通行に実験をやらせないのか」

「……答えは簡単、見事に断られたわけだ」





ああ……予想できた答えだった。
レベル5がどんなに人格破綻者といえど人を殺す実験に積極的に取り組むとは思えない。
人を殺してまでレベル6に成りたいと言うのなら、もはや人格異常者の域に足を踏み入れている。
そして、流れ着いたのが第三位 『超電磁砲』の序列の格上げ。
まさに『量産型能力者計画』から『絶対能力進化』への移り変わりのような
第三位を第一位にする実験。大方、それで第一位を奮起させるなどの考えもあったりすると思う。
ここで問題だが、私はこの実験を断れるか?
否、次に目の前のクズが言い出さんとしていることはもはや目に見えている。






「ここからは大人の黒いところが出てしまうが申し訳ない」

「御坂君、私達は君を脅す」

「君がこの実験を断ったりでもしたら、私達はこのクローンを殺す」

「もちろん、簡単には殺さない。薬の実験に使ったり、臓器を提供……これはクローンだから難しいかな?」

「売るところに売れば資金も少しは回復するだろう。とにかく、私達はクローンを人として扱いはしない」

御坂1号「……」

美琴「……」

「 君 が 作ったクローンだ。是非とも最後まできっちり面倒を見てもらいたいね」





君が、か。潔すぎて感心する。ふざけろ、どの口からそんな言葉が出てくる
とはいえ、こうなることはすでに予想できすぎていた。
そして、答えももう、決まった。






「御坂君、きみは実験を受けてくれるかな?」

「…………こちらから、お願いしたいくらいだわ」
















御坂美琴の心は闇に飲まれていった。


―――――――――――――――――――――


御坂1号「実験開始まであと10秒、9、8……」

美琴「……」



ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。
謝罪の言葉しか出てこない。
死ぬために生まれ、生まれる原因に殺される。
この子たちの人生とは本当になんなのか?
たかだが、小娘の順位を二つ繰り上げるために二万の死体が出来上がる。


御坂1号「定刻となりました。これより第一次実験を開始します、とミサカは戦闘に移ります」ジャキッ!

美琴「……」


系図的には違えど、姉と妹。
姉妹どうしの殺し合い、そして死ぬのは妹。
決まっているのだレベル2とレベル5じゃ勝敗は火をみるより明らか。
もし……この1勝負で御坂美琴が死ねば……考えを破棄する
そうなれば、研究者が言ったとおり、のこりの『妹達』は無残に殺されるだろう。
だったら、姉である私が、姉妹の一人一人を、平等に、殺すほうがいい。
それが、御坂美琴の背負った責任、姉としての責任。
殺してしまえば、戻れない。
……戻る方法など、ない




美琴「……ぁぁあああああああああああああああああ!!!!!」バリバリッ






高圧電流が、薬品と蛋白質で出来た体を貫いた







ごめんね。






―――――――――――――――――――――

「ふむ、予定通りにことが進んでいるね」

「ええ、御坂君を騙したのは心苦しいですが……実験のためですしね」

「実験か……まったく、君も酷いウソをつく」

「『絶対能力進化』のことですか?」

「よくもまぁ、あそこまで口が回るものだよ」

「中学生といえど第三位ですからね、侮れませんよ」

「それで、実験のほうは?」

「ええ、順調ですよ」


















「どちらもね」



















ここまでです。

書きたまり次第投下していくので、不定期ということになります。
ごめんなさい

美琴が実験を引き受けた理由だと美琴が二万人殺した後に一方通行もレベル6進化の為に二万人[ピーーー]ことになるんじゃないの?
美琴が引き受けなければ二万人の犠牲者で済むと思うんだけど

>>37

一方通行は実験を断ったと研究者に言わせてます

>>32で一方通行を奮起させる意味もあるって書いてるけど、奮起はしないかしても行動には移さないということか
美琴は研究者達に妹達を酷く殺されない様に、自分の手で皆一様に楽に死なせてあげてるということ? それでレベルupするの?

>>43

原作にも2万通りの方法~と書いてますが一方通行を見る限り、考えて2万通りを実践してる風ではなかったので
御坂も、攻撃をかわす、させない等 『妹達』の手順を変えて実験したりしてるということで
レベルup等はまた次以降の投下で

投下します


美琴「ハァ……ハァ……」

美琴「……くっ」

御坂1号「……ぅ」

「おや?」

美琴「ッ!!」ダッッ!!






御坂美琴のクローン第一号は死ななかった。
高圧電流が体を直撃したにもかかわらず、だ。
姉が妹に駆け寄り、倒れた妹を抱き起こす。
実験という名目がなければ、ほほえましい光景だっただろう。
しかし、これは実験だった。
姉が妹を殺すと言う、非人道的な最悪の実験だった。


「御坂君、どういうつもりかな?」

「手加減……『電気量』の調整に手心を加えたのかな?」

「それじゃあ軍用に作られた『妹達』どころか普通の人間だって殺せないよ」

美琴「……ぅ」

「ん?」

美琴「もういいでしょ!! この子はもう戦えない!この実験を続ける必要も無い!!」

「私たちの言った事を覚えているかな?」

「『妹達』の殺害。それが、御坂君の言うならば『超能力向上進化』の内容だよ」

美琴「ッ……! 私はこの子に勝った! 殺さなくても戦闘は終了したじゃない!!」

「ダメだ、きっちり殺すんだ」

美琴「ッ!!」



御坂美琴はまだ幼い。
人を殺す覚悟なんてものはもちろんない。たとえそれが、クローンだったとしても
投薬と蛋白質で作られた、研究者達の言う人形だったとしても。
御坂美琴には、同じ遺伝子で作られた『妹達』を殺す事は出来なかった。











「その一つの『人形』のために残りの『妹達』がどうなってもいいのかい?」












大人は、容赦なく子供を蹂躙する。


「御坂君、このままでは第一次実験は失敗だ」

「実験の失敗、それはつまり私たちと御坂君の関係が切れることを示している」

「仮に、この『妹達』を殺さず、実験が失敗した場合」

「私達は『妹達』をどうするんだろうねぇ?」

美琴「……あ、あ」

御坂1号「…………」

「私達はどちらでもいいんだ。もともとの『絶対能力進化』は中止になってしまったわけだし」

「どちらかと言えば、参加してもらいたい、と思っているけどねぇ」

「せっかく作ったんだ。『妹達』だって正規の方法で使われるほうがいいだろう」







嘘つき。否が応でも実験にさせたいがための虚言。
どっちでもいい。命が掛かっていることをそんな適当な調子で……。
正規の方法? レベル5に殺されることが生存理由?
今、一つの命を救い、19999人の命を捨てるか
今、一つの命を奪い、20000人の命を捨てるか
活路なんてない、堕ちると分かっている道を進むのみだ。


「御坂君、君はクローンに命があると言ったかな?」

「だとしたら、君はこの御坂1号と他の個体とでは、命の価値が違うのかな?」

美琴「!?」

「もう遅いんだよ、御坂君」

「君に『妹達』を生かすことはできない」

「君に出来る事は、殺し、救うことだよ」

「殺されるために生まれてきた『妹達』の価値を引き出し」

「実験の成功を餞に、『妹達』を送ってやろうじゃないか」

「それが、君にできる救いだろう?そう思わないかね?」

美琴「そ……そんな、それが……そんな、ことがッ!!」












「これで最後だ。御坂君、そこの『人形』を殺せ」












命を重く扱うときは『妹達』、軽く扱うときには『人形』
無意識のうちにそう言ってるんだったとしたら大した研究者精神だ。
呼吸もしている、心音もある。『妹達』が人形のはずがない。
分かっている。そんなことはきっと研究者だって分かりきっている。
分かりきった上での、実験なのだ。
とはいえ、もう御坂美琴は限界だった。頭がボーっとする。
考える事を放棄し、言われるがのままに行動する。
正気に戻ったときに、言い訳できるように……













御坂1号「……しかし、我が姉ながら全く甘い人ですね……とミサカは甘ちゃんなお姉様を心配します」














なにも、聞こえない


御坂1号「ただ、それなりの……容姿を持ってたおかげでミサカもかわいく
     生まれました、とミサカはそこは感謝しているとの言葉を述べます」

美琴「……」

御坂1号「それに、しても一発ですか、一発で戦闘不能まで追い込むとは……これがオリジナルのスペック」

御坂1号「さすがは第三位、ミサカのお姉さまです、とミサカは誇らしく思います」







研究者は最後だと言った。急がないと









御坂1号「これから……実験は続いていくのでしょう、とミサカは予定された未来を浮かべます」

御坂1号「お姉様気をつけてください。ミサカ達はMNWというネットワークで……と、これは周知の事でしょうか」

御坂1号「とにかく、お姉様と戦う事によって徐々にミサカはパワーアップしていきます、とミサカは教授します」

御坂1号「ですから、たとえミサカ相手でも気を抜かずに、実験を行ってください、とミサカは懇願します」
















自分が殺されていく実験で、相手を心配する子なんていない。
そんな妹はいない


御坂1号「これから……約二万人……大変ですね、とミサカはお姉さまを気遣います」

美琴「……」

御坂1号「検体番号的にはミサカの妹達……『妹達』の妹達です、ぷぷっ、とミサカは自らのギャクにふきだし、ます……」

御坂1号「……妹達を頼みます、とミサカは自らの、姉に一つ『妹達』の姉としてお願いをします」

美琴「……」







早く、殺さないと







御坂1号「ミサカ達は、殺されるために……生まれてきました」

御坂1号「しかし、本当は生きるために、生まれてきたんだ、と……」

御坂1号「いつか……ミサカにも、生きる価値……を見つけたとき、ミサカの妹達がお礼を、言います」

御坂1号「命を、与えてくれて、ありがとう、と……ミサカは……」

























御坂1号「……さようなら、お姉様、とミサカは第一次実験の、終了を……」

美琴「うわぁぁああああぁぁああァあああァああああああああああああァァァ!!!!!!」バヂヂヂッジジジ!!!!!






















一つ目の墓標は、御坂美琴の闇の心に深く突き刺さった。

ここまでです

長かった、ちょっとだけしか溜めてないけど投下します


雷が体を貫き、電熱が脳を焦がし、電流が心臓を止める。
その繰り返し。
御坂美琴の1年は殺害の繰り返しだった。



「御坂君、君の能力の向上は極めて明確な段階的なものではない」

「二万体のクローン、全てを殺したときに能力が向上するのではなく」

「殺せば殺すほど、その戦闘は経験値となり能力の質は上がる」

「素晴らしいじゃないか御坂君、これは一つ一つの死体に意味があると言う事だ」

「二万体で一つのことを成すのではなく、一体一体が一つのことを成していってるんだよ」







殺せば殺すほど、強くなる。
あながちRPGの冒険システムも間違ったものじゃないな、と御坂美琴は思う。
殺して、殺して、殺した。
なんとなくだが、全体的に能力の質にも変化が見られた。
電磁レーザーの精度の上昇、最高電圧と最低電圧の差の増大。
なるほど、『樹形図の設計者』というだけはある。経過は良好だった。
もっとも、あんな機械が定めだ実験をしている自分にも、機械にも
殺したいくらいの憎しみがあるのは言うまでもない。





――――――そして、時は戻り4444次実験。






生命活動の停止した個体を、別の個体が処理しているところだった。



御坂4511号「お疲れ様です、とミサカはお姉さまを労います」

美琴「やめて、私にかけるような言葉じゃない、特にアンタ達からは……」

御坂4498号「……それでは、ミサカ達はこれで、とミサカは場を後にします」

御坂4445号「次の実験はミサカです、とミサカは挨拶を―――」

美琴「……」スッ

御坂4445号「……」

美琴「お願いだから……私に、関わらないで」

御坂4466号「…………」

御坂4445号「……了解しました、とミサカはこの場を後にします」

美琴「………………」

ごめんなさい。でも、これが正しい。
いや、正しいと決め付けるのは自分の都合なのかもしれない
しかし、自分に関わりでもしたら……
御坂美琴の実験への強制的な意欲というのも本当に失われてしまうかもしれない。
御坂美琴は自分の意思が折れる事が怖かった。
実際になんども実験をむちゃくちゃにしてやろうと思ったこともあった。
ただ、そう思ったときに浮かぶのは、他でもない『妹達』の影。
殺してきた『妹達』と、殺さなければならない『妹達』
この呪縛から自分だけ逃げることは、できなかった。







美琴「あと……1万5556人か……」

美琴「ははは、遠いなぁ……」ジワリ

美琴「……ッ」ゴシゴシ

美琴「でも……私が、やらなきゃダメなんだ」








御坂美琴の精神はずいぶん磨り減り、その分鋭く磨かれていった。
ただ機械的に『妹達』を殺し続ける、殺人マシーンのように。
殺人に対し、徐々に慣れていく戦人のように。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ピピピピピピピ


美琴「……ん」

「お・ね・え・さ・まー!!」ピョーン

美琴「うわっ!?」




黒子「今日こそ、黒子に愛のヴェーゼを!」




美琴「毎朝毎朝……しつこいわねアンタも!」ビリビリ

黒子「ぁああ!!」



御坂美琴をお姉様と呼ぶのは『妹達』だけではなかった。
1年。
あの時から1年で、御坂美琴にも友人と呼べる存在が出来ていた。
白井黒子。
御坂を尊敬し、お姉様と呼ぶ後輩の少女。
非常に慕っており、周りの一歩引いた状態とは違い、親密に御坂にかかわってくる。
御坂の一番の親友と呼ぶにふさわしい人物だった。
御坂も白井の存在はうれしかったが、同時に1年前の自分を後悔したくなる気持ちに襲われる。
1年、たった1年まてば、後輩に恵まれ、友好的な関係を築けたのではないか?
いや、それでも実験に関わらず『妹達』が酷い目にあうのは御坂は許容しない。
後悔するとすれば、DNAマップを提供したところまで遡らなければならない。
そして、そこまで遡るならもはや運命だったのだと、最近思うようになっていた。


黒子「おおぅ……今日の電撃は格別でしたの!」

美琴「それも毎朝言ってる事でしょ」



それでも、やはり友人と言うのは御坂にとって必要だった。
闇の中にいる御坂にとって、光の世界の住人は輝いて見えたから。

















だからこそ、今さらではあるが、御坂美琴は本当は光の世界の住人と関わりたくなかった。
一年前とは全くの逆。
人を恋した少女は、人を拒む女に変わっていた。


黒子「お姉様、今日はどこへ?」

美琴「んー、まぁブラブラー?」

黒子「では、是非黒子も一緒に!」

美琴「別に頼んでないっての」



白井黒子は本当にいい後輩だった。
全面に御坂への純粋な好意を向けていた。
少なくとも、御坂美琴に実験という闇がなければ、だが
正直、今の御坂美琴につきまとわれることはやっかいであった。




美琴「あー、でもなんか今日は一人で……」

黒子「おっねぇ様ー!!こっちこっちですのー!」

美琴「……ハァ」




とはいえ、せっかく懐いてくれている後輩を無下にする事もできず
つかずはなれずの距離を保とうとしている御坂美琴にとって
黒子との関係はジレンマになっていた。


美琴「アンタ、こんな道通るの?」

黒子「ジャッジメントをやっていると裏道事情に詳しくなりますの」

美琴「ふぅーん」

黒子「……っとすれ違い」

美琴「……こんなところ通る人いるのね」

黒子「ふ、普段はめったに見かけないんですの。ってまた……」

美琴「もぅ……」

黒子「あ、あははは……」

美琴「んっ……ん?なにこれ?封筒?」ヒョイ

美琴「あら?」ヒラ

黒子「おや、封筒から何か……これは」









美琴「マネーカード……?」

黒子「……ですの」











物語は、本来の道筋へと交差していく








起こるはずのなかった軌跡に上書きしていくように







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

美琴「ふぅーん、そんなことが……」

黒子「マネーカードをばら撒くなんて……」

初春「ええ、ですからそんな裏道に人が通るんですよ」

黒子「何処の誰がこんな意味のないことを……」

初春「まったく、カードの奪い合いなどで仕事が増えてしまうっていうのに……」



初春飾利。
黒子の友人であり、同じ風紀委員。
黒子を通じて関わった御坂美琴の友人でもある。



黒子「あぁ……お姉様、残念ですがデートはまた……」

美琴「いいっていいって、一人で行くから、じゃね」

黒子「あうぅ……」

初春「ほら、白井さんも仕事してください」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――






御坂4445号「定刻になりました。第4445次実験を開始します、とミサカは戦闘に移行します」

美琴「…………」バチチジジヂヂ!!!








御坂美琴は考えていた。
この人通りが少ない場所で行われる実験。
そこに人をおびき寄せるための工作がマネーカードだったとしたら……
実験を妨害しようとする人物がいる?








美琴「……余計な事を……」バチッ








実験の妨害など、バレない様に何度もやってきた。
少しでも計画を遅らせ、その間に計画自体がなくなってしまったり……
全てを解決してくれるヒーローが現れたり……はせず、
結果は見て分かるとおり、なんの問題もなく実験は進行している。
たかが、こんなことをするぐらいで実験は中止にはならない。
無駄な足掻き。かつて自分がやってきたことを見せ付けられてるみたいで御坂美琴は苛立った。
改めて、無駄な事だと思い知らされているみたいで。


御坂4467号「お疲れ様でした、とミサ―――」

美琴「……」スッ

御坂4455号「……」

御坂4458号「お姉さ……」

美琴「……またね」

御坂4467号「……さようなら、とミサカはお姉s」

美琴「さよならは!……言わないで」

御坂4467号「……失礼しました、とミサカは謝罪の言葉を述べます」

美琴「……それじゃあ」スッ

御坂4448号「……」

御坂4456号「……今日は」

御坂4458号「いつもより、多く話せましたね、とミサカは会話を思い出します」

御坂4466号「次はもう一言以上多く、とミサカは―――」








関わりを拒む者と、関わろうとする者。
両者のすれ違いは実験という縛られた枷によって余儀ないものにされてしまっていた。
姉と話がしたい妹が姉によって拒絶されるという、救いのない状態にまで。

―――――――――――――――――――――――――――――

「ホントだって、マネーカード置いてる女見たんだって」

「雑居ビルみてーなトコ入ったから多分、そこがアジトだぜ」

美琴「(ふぅん、女、か……)」





スキルアウトの会話を路地裏で盗み聞いた結果。
マネーカードを撒いているのは女らしい。
それが個人なのか単独なのかは分からないが
間違いなく関わっているであろう人物ではある。






美琴「(どういう訳か……聞かせてもらおうじゃないの)」





パァン



「ギャァァぁああああぁあぁあああああああ!!!!」

美琴「……」




先ほどのスキルアウトがあげた悲鳴だった。
意外なことに女一人に全員ノされてしまった。




「……まぁ、ただの紙鉄砲なんだけどね」

美琴「いや~大したものだったわね、話術と紙鉄砲でスキルアウト鎮圧しちゃうなんてね」

「あなた……」











「オリジナルね」

美琴「…………ビンゴ。やっぱ関係者なのね」










「……that means、知ってしまったわけね」

美琴「まぁね、アンタが何やろうとしt、いったぁ!!」ゴン

「私は年上よ、長幼の序は守りなさい」

美琴「ふぐぐ……ま、マネーカードを撒いて死角を潰してたってわけ、ですね」

「そう……それでそこで行われる実験が中止になるかもしれない」

美琴「……残念ながら、今日も実験は行われたわ」

「そこまで……」

「……そう、残念だわ」ガラッ

「ただ、尾行されたのは失敗だったわね」スッ

美琴「それ、計画の?」

「ええ、やっぱ形の残るものはダメね」ボッ

美琴「ちょ、燃やしちゃうの?」

「見られたら面倒な事になるかもしれないから」ポイ

美琴「こ、こいつらは?」

「……証拠隠滅、so good!」スタスタ

美琴「な、何言ってんのよ!?ちょっとー!!」





ボォオオォオオ!!





結局、年下の御坂美琴が消防車を呼んでいる間に、関係者の女は消えていた。


―――――――――――――――――――――――――――――


美琴「……布束砥信」


布束砥信。
長点上機学園三年。幼少時より生物学的精神医学で頭角を現す。
樋口製薬・第七薬学研究センターで研究機関を挟んだ後に本学に復学。
ハッキングした書庫に記されていた。






美琴「てことは……こいつが『妹達』を……」

美琴「それに樋口製薬・第七薬学センターって確か『量産型能力者計画』の……」

美琴「……ならどうして実験を止めようとするの?」

美琴「…………」

美琴「もう一度、アイツに会う必要があるわね」


――― 三ヶ月前 ―――

「……」
  
「へー本物の人間みたいですね」

「そりゃそういう風に作られたクローンだもの

「……ふぇ」

「びぇぇぇえええええええええん!!!!」

「でも精神年齢は新生児並、歩く事も話すことも出来ない」

「だから……」

「この『学習装置』で言語や運動などの情報を入力するってわけですね」

「そういうこと」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ギュルルルル



「……」シュー

「……あなたの検体番号は?」












御坂9982号「9982号です」














御坂美琴の第4445次実験の三ヶ月前の出来事であった






時は戻り、8月15日








美琴「……」バチバチッ

御坂4489号「ミサカ、は……生命活、動の停止……を……」

美琴「…………―――」

御坂4491号「……お疲れ様でした、お姉様とミサカはお姉様に声をかけます」

美琴「うん……」

御坂4497号「……それでは、お姉様……また」

美琴「……うん、またね」




布束砥信と会ってから五日が経過していたが
御坂美琴は今だ接触できずにいた。




美琴「(アイツ、普段はどこにいんのよ)」

美琴「(研究所にもいないし、学校にも行ってるようじゃなかった)」

美琴「(実験も特に支障なく進んでる……もう!)」


御坂美琴はどうすべきか悩んでいた。
布束砥信が実験を妨害しようとしているのは間違いない。
しかし、肝心の御坂美琴はどうしたいのかが分からなかった。
もちろん、実験が何の問題もなく中止になるのなら喜んで妨害の手助けをしよう。
しかし
御坂美琴の心には、ここまできて引き返せるのかという疑問が募っていた。
第一次実験が終了したときに決めたではないか
自分が背負いきると、それが姉としての責任だと。
何度も何度もやめようと思った実験も、その責任を頼りにここまでやってきた。
今回もそうではないのか?


たとえ布束砥信がこの実験をとめようと思っていても、それは自分には関係ないことではないのか?
殺してしまった『妹達』への償いの方法なんて分からない、でも
生きている『妹達』への償いの仕方、それは

実験と言う名目での殺人。

命を奪う事が償いなんかではない。生存理由を作ることが償いとなっていた。
殺されるために生まれてきた『妹達』を
実験のために生まれてきたと言えるように。
例えそれが同じ意味だったとしても、こんなことが償いにならないのを知っていたとしても
御坂美琴には、実験を止めようとする気は起きなかった。











美琴「…………なにやってんのよ」





「……みゃーと泣く生き物のピンチです、とミサカは状況を説明します」












自然な調子でこんなところにいる『妹』に
珍しく、本当に珍しく姉の方から話しかけていた。
妹は、拒絶しなかった。


ここまで!

このssの世界ではレベルアッパー事件はあったの?

>>101

どうしましょう……

あれってレベルアッパー事件に『妹達』が関与しているのであって
『妹達』にレベルアッパー事件は関与していないって認識なんですけど、どうですかね?
他の事件の関連性はあまり考えてなくて、すいません

今日中に投下したいと思ってます

ミスりました

原作の場合、木山が子供を救う方法を調べるために能力を得たものの、御坂が攻撃したことで暴走
それを御坂が倒して、幻想御手が解除されて被害者は目が覚めるってだけなので

木山が子供を救う方法を調べ終わって、被害者を開放したことにすれば、御坂が関与してなくても
幻想御手事件は終わるんじゃない?

って言いたかったんです、途中送信で2レスも使ってしまってすみません。

>>104
すいません。
軽い気持ちで質問しただけなんでそんなに深く考えなくていいですよ。

>>104>>105
とりあえずはこのまま進めていきます。
違和感があったら補填していきます

投下します





美琴「……」

「みゃーみゃー、とミサカは意思の疎通を図ろうとします」





普段、御坂美琴はクローンにめったに会わない。
いや、会わないようにしている。
電撃使いは自らの出す電気、電波で互いの居場所を察知することが可能である。
しかし、それはなにもない場所でのことであり
学園都市という、超未来的な科学に溢れたこの街で
電波が飛び交ってない場所など存在しない。
しかし、御坂美琴は居場所を大まかに察知し、クローンとの接触を避けていた。
それは相手がクローンだから察知できた電波。
似たような波長の電波を感知し、御坂美琴は居場所を特定していた。



そこまでして、普段から『妹達』に会わないようにしている御坂美琴が
自分から『妹達』に声をかけるのは本当に珍しいことだった。
先ほどの実験妨害のことで『妹達』について考えていたからだろう。
電波に気づかず、つい、たまたま、偶然見かけたその『妹』に
御坂美琴は話しかけていた。


美琴「(……なんで話しかけちゃったんだろう)」

美琴「(いつもは話しかけるどころか、話しかけられないようにしてるのに……)」

美琴「(実験のことにネガティブになるとすぐブレちゃうな……)」

美琴「(この子達への……向き合い方……)」

「みゃーみゃー、木の上から降りれないのですか?とミサカは尋ねます」

美琴「普通に尋ねるんだったらみゃーみゃーいらないでしょ」




ミャー!


美琴 「「あ」」






「お姉様、さらに危機的状況です、とミサカは現状に焦ります」

美琴「そーね、あの高さからなら子猫なら怪我しないとは思うけど」

「コネコ?コネコとはあの生物のことですか?とミサカは尋ねます」

美琴「そうよ、子供の猫だから子猫」

「へー、また一つ賢くなりました、とミサカは自らの知識を増やします」


ミャー!


「おっと、少し舞い上がって子猫の存在を忘れてました、とミサカは思い出します」

美琴「どこに舞い上がる要素があったのよ」

「いえ、お姉様とのお喋りがうれしくて……とミサカは心中を吐露します」

美琴「…………」

「それよりも、やはりここはお姉さまが台になってミサカが子猫を救出する作戦で……」

美琴「……私が台なの?」

「お願いします、とミサカは懇願します」

美琴「……ったく」

「よいしょ」

美琴「ふぐっ!!ちょ、土足」

「あ、危ない」ダンッ!!

美琴「っ~~!痛いじゃない!」

「すいません、しかし救助成功です、とミサカはおしみない賞賛を期待します」

美琴「……ならいいけど」

「みゃーみゃー」

美琴「…………」ハァ







姉と妹の初とも言える友好的な共同作業は不恰好な形だった。
いかにも、姉妹らしい形だった。


ミャー!!



「あ、逃げられました、とミサカは落胆します」

美琴「私たち電撃能力者は体から微弱な電磁波の出してるからね、小動物には嫌われるのよ」

美琴「で、アンタはこんなトコで何やってんのよ」

「実験前の調整、もとい個人的に散歩しているだけです、とミサカは建前上は調整と言っておきます」

美琴「ふぅん……」

「…………お姉様、時間はありますか?とミサカは尋ねます」

美琴「え? 何こともない……けど」

「……でしたら、一緒に散歩でも、どうですか?とミサカは少々オドオドしながらお姉様を誘います」オドオド

美琴「……ぁ」








断る
これが今までの御坂美琴の『妹達』へのスタンスだった。
『妹達』に感情らしい感情を持ってしまった時の自分の行動が怖かったから
その感情を押し殺してまで実験が続けられるのかが不安だったから。
実際、ここまで『妹達』と会話したのは初めてである。
なにぶん、例の布束砥信のことを考えていたからであろう。
『妹達』への見方、スタンスがブレ始めた、というよりは
実験を妨害しようという、一人の研究者に影響された、感化された。


「……どうでしょうか?とミサカは返答を促します」

美琴「…………」

「…………」

美琴「…………」

「…………あの」

美琴「…………分かった、散歩しよっか」

「!!ほ、本当ですか?とミサカは戸惑いながら聞き返します」

美琴「……うん、でも一つだけ覚えておいて」

「なんでしょうか?とミサカはお姉さまに尋ねます」













美琴「……私は実験を止める気はない、これだけは覚えておいて」

「…………はい、とミサカはお姉さまの言葉を記憶します」













これが御坂美琴の答えだった。
ようは、全て自分が耐えればいいだけの話。
『妹達』と関わって実験ができなくなる?そんあものはただの御坂美琴の甘えだ。
『妹達』だって殺されるための実験という鎖をなんの文句もいわず受け入れ、耐えている。
その『妹達』の願いを、原因を作ったあれである自分が受け入れずしてどうする
自分の弱さがこの実験を生み出した、それをまた自分の弱さで止める事なんて出来ない。
実験は成功させる。他でもない、これまで死んでいった『妹達』と
これから死んでいく『妹達』のために。それが御坂美琴の責任。
そして、『妹達』の願いも聞き入れる、それが姉としての責任。
今まで以上のものを背負いきり、完遂する。
それが自分を除く、初めて見た実験の妨害者から受け、変わった『妹達』への関係だった。


美琴「……それで、どこか行きたいトコでもあるの?」

「いえ、まさかOKいただけるとは思ってなくて……どこに行けばいいのか……」

美琴「……ま、適当にブラつくのは得意だし、私についてきなさい」

「はい、お姉さまに任せます、とミサカはお姉さまに同伴します」

美琴「それじゃ……行こっか」





――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――


「ほう、これが超一級品の紅茶ですか、とミサカは『学習装置』の知識をひらけかします」ズズズ

美琴「いやズズズって……」

「……グッジョブ、とミサカは惜しみない賞賛を贈ります」

美琴「私に贈られても……」





「お姉様、どうして学園都市にはこんなゲテモノがあるのでしょうか?とミサカは自販機を見つめながら話します」

美琴「まぁ、大多数が味覚実験のためにサンプルとして販売されてるんじゃない?」

「しかし、この販売機側面が少し凹んでいるような……」

美琴「あー!あっちの自販機の方がおいしそうだなー!」

「自販機にクオリティを求められても……とミサカはツッコミます」

美琴「くっ……痛いトコロを……」




美琴「はい」

「ハンバーガー……さっきから飲み食いばかりではありませんか?」

美琴「うっ」

「まぁ、ミサカは食べるという行為に興味あるので全然構いませんが……」

「点滴や錠剤ばかりでしたので」フガフガ

美琴「……あたしのも食べる?」

「……半分こしましょう、とミサカは提案します」

美琴「……ありがと」




――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

――――――――――


美琴「……もういい時間ね」

「そうですね、あっというまに楽しい時間は過ぎました」

美琴「そうね……アンタこれからどうするの?」

「ミサカはこれから実験です、とミサカは宣言します」

美琴「ッ!!……そう、アンタ今日が実験だったの」

「はい、とミサカはいい思い出作りが出来たことに感謝していることを伝えます」

美琴「アンタだったなんて……心が抉られる思いね……」










まさか自分が今日一日付き合ったその個体が実験相手だったとは
いや、覚悟はできてる。それが御坂美琴が決めた決意。
例え、どの『妹達』であっても平等、姉として妹を殺す。


「……それでは」

美琴「ええ、移動しましょうか……」

「はい、ではこれでとミサカはお姉様と別れます」

美琴「…………ん?」

美琴「え? 私はどこに行けばいいの?」

「? 寮に戻ればいいのでは?とミサカは質問の意図が分からずに返答します」

美琴「実験は? アンタ実験があるんじゃないの?」

「はい、21:00から実験があります、とミサカは答えます」

美琴「ほ、ほらあるじゃない」

「?はい、ですからミサカは座標へ移動します、とミサカは移動を開始します」

美琴「???」

「???」

美琴「つ、ついていけばいいの?」

「」スタスタ










御坂美琴と『妹達』の間の違和感が浮き出始める








美琴「……ここ?」

「はい、とミサカは座標に到着し、実験を待ちます」

美琴「……」

「お姉様、さすがにこれ以上はここにいることはできません、とミサカは変えるよう促します」

美琴「ちょ、っと待って、考えさせ、て」

「……?」


御坂美琴は先ほどから感じている違和感を考え直した。
正確には見たくない現実を違和感として放置していた。
まず、今日の実験は全て終わっているはずだった。
しかし、これはたびたび予定が変わることがあったので不信には思わなかった。


問題は、『妹達』の反応


さすがに実験相手に帰れはないだろう、相手なしに実験は始まらない。
そう、相手なし では








美琴「……あの、さ」

「はい」

美琴「アンタ、今日の実験てさ、何番目の実験だっけ?」

























御坂9982号「第9982次実験です、とミサカは答えます」

美琴「ッ!!!!???」



















違和感が、現実になる











美琴「9982!?ちょ、なんでそんないきなり飛ぶのよ!?」

御坂9982号「いえ、いきなりではなく順当にこの数字まで実験は進んできました、とミサカは答えます」

美琴「今朝は第4489番目の実験だったじゃない!!」

御坂9982号「? お姉様、何をいっているんですか?」

美琴「あ―――」












「……第9982次実験って聞いてたンだけどなァ……なンで二人いる?」










御坂9982号「『絶対能力者進化実験』 第9982次実験です、とミサカは言い放ちます」




















最悪の現実が、御坂美琴の決意を押し潰しにきた

ここまでです

一方通行については次に書きます

投下します


美琴「は、っは『絶対能力進化実験』?」

美琴「そんな、中止された実験がなんで……?」

「……?」

御坂9982号「中止? 『絶対能力進化実験』は中止にはなっていません、とミサカは時刻の確認をしながら返答します」

御坂9982号「あと、5分で実験が開始されます、とミサカは確認します」

「…………」

美琴「……実験は凍結されてなかった……?」ボソッ

美琴「じゃあ……私は一体、何、を……?」

「……オマエ……まさか」




御坂美琴の意識は闇に沈みそうになった。
しかし、最後の最後で踏みとどまった。
『絶対能力進化実験』 対象者の存在によって





美琴「ッ――――――!!!」

美琴「て、ことは……アンタがッ!!!!」












美琴「アンタが! 学園都市第一位 一方通行!!!」

一方通行「…………」











学園都市新旧の最強ともなろう存在がここで初めて邂逅した


美琴「……アンタ、この実験、どうして……どうして受けれたの!!?」

一方通行「…………」

美琴「レベル6に成りたかったから!?人を殺してまでレベル6に成りたかったからなの!?」

一方通行「…………」

美琴「……何とか言いなさいよッ!!!」

一方通行「…………」

美琴「…………―――」









御坂美琴の心は怒りで震えた











美琴「私、のせいで……アンタまで巻き込んじゃったの……?」















自分に対する底なしの怒り
追い込まれた御坂美琴の心はどこまでも自虐的に考えを進める
あまりにも責任を重んじた結果が、他人に対してここまで臆病な御坂美琴を形成していった。


美琴「……『絶対能力進化実験』……そりゃ興味ないわけないわよね」

美琴「私もああは言ったけど、実を言えば引っかかった者同士よ、私たち」

一方通行「……」

美琴「つまり……アンタも、レベル5に縛られてたってこと、ね」

美琴「うんざりするような……日常に」

一方通行「…………」

美琴「…………」

美琴「……結局、何も救えてないじゃない、私は」

美琴「『妹達』を見殺しにして、殺人者を作り上げた……」

美琴「…………ねぇ、アンタは本当は無理矢理参加させられてるとかじゃないの?」

一方通行「…………」

美琴「……はは、学園都市第一位の力があって無理矢理はないか」

美琴「じゃあ、やっぱりレベル6に成りたいがためにこの実験に加担したの?」

一方通行「…………」

美琴「…………ふ、ふふ」
















美琴「なんのために……『妹達』を殺してきたのか……本当、分かんなくなっちゃった」

一方通行「!?」

御坂9982号「……!?」













美琴「……何よ、実際今まで死んだ『妹達』が死んだ意味はなんなのよ!!?」

一方通行「……殺してきた『妹達』だと?」

美琴「私が!この手で殺してきたあの子達の!生きた意味は何だったのよ!」

美琴「結局はイカれた実験で死んでいっただけ!!」

美琴「これじゃ本当に殺されるために生まれてきた『実験動物』じゃない!!」

美琴「…………」

美琴「……そして……こんな簡単に騙された自分を殺してやりたい……ッ!!」

御坂9982号「……」

一方通行「…………く、クカカ!!」

美琴「…………好きなだけ笑いなさい」

美琴「……もう戻れない」

美琴「残りの『妹達』を殺して、研究に関わった人間を殺して」

美琴「アンタと戦って…………いや」

美琴「そっちの実験の妨害なら、私にも……」

美琴「……違う!それならこっちの『妹達』だけ死なせることに……」ブツブツ











一方通行「ホンっとお笑いじゃねェか! こンなバカみてェな実験をしてる俺なンてよォ!!」












美琴「……なに、を」

一方通行「結局、躍らせられてただけってことじゃねェか!!」

美琴「なに、勝手に何かを分かったような顔して……」

一方通行「…………クソが!」

御坂9982号「……」


一方通行「……『妹達』」

御坂9982号「……はい、ミサカもこの情報は知りえませんでした、とミサカは事実に驚嘆します」

美琴「事実?何?何のことを言ってるのよ?」

一方通行「つまりは、オマエらのオリジナルも……」

御坂9982号「……そのようです、とミサカはお姉さまの現状を把握します」

一方通行「知らなかったってこたァ……」

御坂9982号「別のネットワークを構築している可能性が高いです、とミサカは推測します」

一方通行「…………そォか」

美琴「さ、さっきから何を……」

一方通行「……オマエは『絶対能力進化実験』について知ってたのか?」

美琴「実験の存在は……ここまで実験が進んでるなんて知らなかった……」

美琴「とっくに凍結されたと、思ってた……」

一方通行「凍結だと? じゃあオマエは一体なンのために『妹達』を殺してる?」

美琴「…………わかんない」


一方通行「……分からない?」

美琴「……さっきも言ったじゃない、こうやって『絶対能力進化実験』が続いてたんなら」

美琴「私が殺してきた『妹達』に一体なんの意味があったのよ?」

一方通行「……体裁を保つための実験名くらいあっただろ?」

美琴「あぁ……『超能力向上進化』?だったっけ?」

美琴「私の序列を一位に引き上げるだけの実験だってさ」

美琴「例え、レベル6になれるかもしれないとしてもこんなイカれた実験受けないって言うのに……」

美琴「ましてや、こんなガキの序列を二つあげるために二万の死体ができあがるなんて……」

美琴「……バッカみたい……ッ!!」

一方通行「……どォして断らなかった」

美琴「…………ないじゃない」

一方通行「あ?」

美琴「断れるわけないじゃない!!」

美琴「断ったら、誰があの子達を殺すの!!?」

美琴「研究者共は言った!! 拷問でもなんでもして利用するだけ利用して殺すって!!」

美琴「そんなこと聞いて放っておくことなんて出来ない!!」

美琴「それなら……私が殺すほうが……」

美琴「あまり苦しませずに……生存価値ができて……」

美琴「自分、勝手な……償いが、でぎるって!出来てるって、思っで!!」ポロポロ

美琴「4489人、忘れる、訳ないじゃない……一人一人覚えてる……ッ!!」

美琴「バカな私が、生み出してしまった……」

美琴「…………妹だからッ!」

一方通行「…………」

美琴「うっ、うっ……」ポロポロ

一方通行「……『妹達』」

御坂9982号「……はい」













御坂9982号「これより第9982次実験を開始します、とミサカは戦闘に移行します」

一方通行「胸糞悪ィ話を聞いちまった、すぐに……終わらせる」ビュッ

美琴「―――ッ!!!」

一方通行「……あァ!」ドン

御坂9982号「ッ!!」

美琴「あっ!!」ドテ





一方通行が一瞬で『妹達』の方へ射出する
『妹達』のとなりにいた御坂美琴を軽く尻餅をつかせ『妹達』を後方へ吹き飛ばす
御坂美琴から距離をとった二人の勝負はすぐについた






一方通行「…………」

御坂9982号「……また迷惑をかけてしまいます、とミサカは今後を予想します」

一方通行「…………」

御坂9982号「……お姉様を頼みます、とミサカは懇願します」ボソッ

一方通行「……がアァ!!」ビュッ

















一方通行の腕が御坂9982号の心臓を貫く















美琴「アアァァァァああぁあああああああああああああああ!!!!」バリバリバリィ!!!

一方通行「…………クソが」ポタポタ

















そして、もはや第三位という枠組みには収まらない御坂美琴が体中に雷撃を纏っていた

学園都市第一位対第三位
通常ならば勝敗は目に見えている戦いが、実験と言う深い闇の効果によって
生死が見えぬ戦いにまで変化してく


美琴「はぁぁあぁああああああああああああ!!!!」バチバチィ!!

一方通行「……止めろ」



御坂美琴は聞く耳を持たない。
電圧10億ボルトを優に越える電撃を第一位に向かって放ってくる




一方通行「……」キィイン

美琴「!!!?」



しかし、一方通行には当たらない



美琴「……ッ!!」

美琴「アンタのッ!!実験の加担の理由がうやむやだった!!」

美琴「文字通り、レベル6に成りたいがためだけの理由だったら!!!」

美琴「ここで殺す!!!!!」ズォオオオオ!!


今度は磁力で操った砂鉄ブレードだった
超振動のブレードは一方通行の体を引き裂くはずだった


美琴「はぁぁぁあああああ!!!」ブン

一方通行「……止めろっつってンだ」キィイン

美琴「……効かないッ!!?」

美琴「これじゃあ本当に……無駄みたいじゃない!!」

美琴「あの子達のためにも!!ここで証明しなきゃダメなの!!」

美琴「実験は!あなた達の死で!進んでることを!!!」バチバチィィ!!!

一方通行「……」






攻撃攻撃攻撃、御坂美琴の怒涛の攻めに対し一方通行は受けるのみ
正確には受けはせず、流すのみ
つらつらと、今だ存在する第一位と第三位の絶対的な壁が見え始めていた


美琴「ハァ……ハァ……」

一方通行「……」

美琴「……なんで、攻撃してこないのよ」

一方通行「……する必要がねェ」

美琴「ッ~~! 攻撃されてるのよ!?反撃ぐらいしたらいいじゃない!!」

一方通行「……する理由がねェ」

美琴「あしらってるの!?力の差を見せ付けるように!!」

一方通行「違う、一旦落ち着―――」

美琴「これ以上―――」














美琴「あの子達の存在を否定するなぁぁああああああああああああああ!!!」バチバチバチ!!!!!!!















最大電圧、最大電流の雷が一方通行に放たれた


一方通行「……」

美琴「ハァ……ハァ……」




一方通行には当たらなかった。
4489の死体では絶対的な壁は越せなかった。
これが第一位、学園都市の頂点



美琴「…………」

美琴「……ふ、ふふ」

美琴「これだけの力があって、まだ力を望むの……?」

一方通行「……」

美琴「この学園都市でアンタに敵う物はいないでしょうに……」

美琴「それでも、レベル6のために『妹達』を殺すの?」

一方通行「…………まァ、最初はそれでもいいって思ってた」

美琴「ッ!!」

一方通行「レベル6にでもなりゃ毎日喧嘩売ってくるバカもいなくなるだろォしな」

一方通行「こンな実験でもそンな理由で引き受けたかもしれねェ」

一方通行「だが、俺が実験を受けたのはそンな理由じゃねェ」

美琴「……どんな理由があって、このイカれた実験を受けたのよ?」

一方通行「…………」

一方通行「これはもしかしたら言い訳でも、謝罪でも、弁明でもあるかもしれねェ」

美琴「……」

一方通行「……オマエは『妹達』を守るために実験を引き受けた」

一方通行「…………同じなンだよ」

美琴「……え?」

一方通行「結局は空回りして、なにも守れてなかった……」












一方通行「俺は、オマエと『妹達』を守るために実験を引き受けた」











実験開始から1年
御坂美琴は初めて、自らと境遇を共にする同士を見つけた
何かを守るために自分を殺す少年を

ここまでです、まあ……美琴ちゃんは情緒不安定気味だったというわけで……

一方通行はそれを隠して悪役の振りしてる方が好みだったかもなー
けど面白いわ、期待してる

恋愛要素はないです、仲間意識みたいなのはある……
恋愛的なものは書くつもりはないですがそうみえたらごめんなさい

>>148
一方通行に言わせるのは避けたかったけど、こうなっちゃいました

投下します


美琴「……ぁ?」

一方通行「結果的には失敗、それどころか……」

一方通行「最悪の展開になっちまってるよォだがな」

美琴「ま、守るって……?」

一方通行「……先に言っただろォが」

一方通行「……言い訳でも、謝罪でも、弁明でもあるってよォ」

一方通行「騙された、って言やァ全てが許される訳じゃねェのは分かってる」

一方通行「……『絶対能力進化実験』、対象者は」

一方通行「第三位と第一位。そォ聞かされた」

美琴「なっ……!」

一方通行「あァ、違和感ならあった」

一方通行「第一位と第三位が同じ実験をしてレベル6になれンのかよ」

一方通行「第二位はどうなンだよ、ってなァ」

一方通行「……まァ、問題はそこじゃねェ」

一方通行「『なれる』『なれねェ』じゃなく、『やる』『やらねェ』だ」

一方通行「仮に俺が断ったとして、次に行くのは……」

美琴「……私」

一方通行「あのクソ研究者共は分かってたンだよ、端からこォいう状況に落ちることを」

一方通行「第一位と第三位の両釣り、大方オマエも似たよォなこと言われたンだろ?」

美琴「…………」

一方通行「『妹達』を拷問するだなンだ、研究者が言うことかっつゥぐれェな」

美琴「……私はアンタが実験を断ったって聞かされた」

一方通行「……」


美琴「当然よね、って思ったわあんなイカれた実験受けるなんて……」

美琴「頭の飛んだイカレ野郎だけだって……」

美琴「……私、みたいな」

一方通行「……」

一方通行「……責任を感じすぎなンだよ、オマエ」

一方通行「責任を負うことと自分を責めることは違う」

一方通行「オマエがやってンのは自分を責めてるだけだ」

美琴「だっ、て……」

一方通行「オマエが今見てンのは誰なンだよ」

一方通行「実験がやりてェって理由で人のクローン殺して」

一方通行「それがクローンのオリジナルにバレたら言い訳だ」

一方通行「オマエらを守るためだった、だァ? ハッ、笑い者じゃねェか!」

美琴「ちっ、違う!アンタは守ろうとして―――」

一方通行「違わねェ!」

美琴「!!」

一方通行「俺とオマエのやってることは同じでも」

一方通行「やってる理由が違いすぎンだよ」

一方通行「オマエが『妹達』を守り、責任を背負って実験をやってるのに対し」

一方通行「俺は……ただ他人の問題に首突っ込んで解決したつもりでいた……」

一方通行「ただの……おせっかいな道下だ、笑われるよォなことしかやってねェよ」

美琴「…………」


一方通行「ンでェ、この実験を知っちまったオマエはどォする?」

一方通行「というよりも、こっちとそっちの情報に齟齬があったみてェだがな」

美琴「齟齬……?」

一方通行「……まァ、それは」


「「「9982号の回収にきました」」」


美琴「……『妹達』」

一方通行「……場所を変えてから話すか」

美琴「……」

「……お姉様?とミサカは問いかけます?」

美琴「……ごめ―――」

一方通行「行くぞ」グィ

美琴「あっ……何を」

「……」

一方通行「謝ンじゃねェ」

美琴「!?」

一方通行「謝られた『妹達』の役割を否定してるよォなモンだろ」

美琴「あ……」

一方通行「こっちの『妹達』はオマエに会うのは今日が初めてだろォからな」

美琴「こっちの……」

一方通行「……移動してからだ」

美琴「……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


美琴「……それで、こっちのって……」

一方通行「……思ってるとォりだ」

一方通行「『妹達』は2種類いる」

美琴「……」

一方通行「あいつらの脳はリンクしてるのは知ってるか?」

美琴「リンク?」

一方通行「何も聞いてねェ、教えられてねェのか」

一方通行「あいつらはMNWっつゥモンで繋がってる」

一方通行「だから一人が見た、経験した情報を全員が共有できるわけだ」

一方通行「だが、『妹達』が2種類いるとなると」

美琴「MNWも2種類あるってことね」

一方通行「あァ、そして俺達は互いの実験の存在を知らなかった」

美琴「だから『妹達』も実験の存在を知らなかったのね」

美琴「あ……」

一方通行「なンだ?」

美琴「……今日、あの子に実験を止める気はないって言っちゃった」

一方通行「……」

美琴「あの子は私の実験を知らなかった、つまり『絶対能力進化実験』を止める気はないって」

美琴「実験の存在を知りながら、そう言った、って伝わったのよね……」

一方通行「…………」

美琴「……酷いことを言っちゃった」

一方通行「…………」

一方通行「……さっきも聞いたが、オマエはこれからどォする」

美琴「どうする、って……」

一方通行「このままこのイカれた実験を続けるか、それとも」













一方通行「そろそろ、あのクソ野郎共に反撃の狼煙を上げるか……だ」











美琴「反撃って……勝算はあるの?」

一方通行「学園都市の最高戦力といってもいいンだぜ?」

一方通行「力では負けねェと思っていい」

一方通行「問題は……」

美琴「『妹達』……」

一方通行「俺達が実験を放棄や反抗すれば人質の『妹達』が危険になる」

一方通行「恐らく、研究者らはもちろンこの両実験を知ってたんだろォが」

一方通行「まァ、俺達は知らねェわけだ」

一方通行「俺がたまたま『超能力向上進化実験』を潰すかもしれねェし」

一方通行「そォいうこった、騙されたンなら騙しかえしゃァいい」

一方通行「俺は『妹達』が2種類いることなンて知らねェしな」

美琴「…………」

一方通行「……オマエはどっちでも好きにしろ」

一方通行「俺は動く」

美琴「……」

一方通行「今まで怯えすぎてたンだよ、アイツらに」

一方通行「冷静になってみりゃ、ビビる必要はねェ」

一方通行「『超能力向上進化実験』『絶対能力進化実験』」

一方通行「今さら守れなかったモン守るとは言わねェ」

一方通行「救うなンて上からおこがましいことも言わねェ」

一方通行「ただ、止める。それだけだ」

美琴「……」











美琴「乗らせてもらうわ、一方通行」

美琴「私は『超能力向上進化実験』を止めるつもりはない、そう言っちゃった」

美琴「姉としてこの約束は守らなきゃいけない、だから」














一方通行「ああ、俺が止めてやる。オマエも実験も」

一方通行「だから、こっちの『妹』を『助けて』やってくれ」

一方通行「クソ研究者と、バカな道下からよォ」

















学園都市第一位と第三位
事実上、最強の二人組みが実験と言う繋がりで組み合った。
本来なら敵対していたかもしれない少年と少女が


―――――――――――――――――――――――――――――

後日、集合するということで一方通行と御坂美琴は別れた
時刻はもう翌日の朝だった



美琴「……あ」

布束「あら……」

美琴「久しぶりね、会いたかったわ」

布束「そう、私はそうでもなかったけど」

美琴「アンタは……どっちの人かしら?」

布束「どっち……?」

美琴「…………そっか」

美琴「実験を止めようとする気が起こる人だもんね」

美琴「研究者からの信用はそうでもないみたいね」

布束「wait、どういう意味なのかしら?」

美琴「……私は『絶対能力進化実験』を止める」

布束「……そう」

美琴「(……てことは、こっちの研究者だったってことね)」

美琴「(ようやく、繋がってきた……!)」

布束「あなたには止める術はないと言ったのに」

美琴「……言われてないわよ」

布束「oh dear? そうだったかしら」


美琴「ねぇ、なんで実験を止めようと思ったの?」

美琴「研究者からしたら『妹達』なんて人形みたいなものなんでしょ?」

布束「……そうね、だから彼らは殺人をしているという認識はない」

布束「本当にモルモットを殺しているような認識よ」

布束「……私もそうだったから」

美琴「……」

布束「……それでも、見てしまったのよ」

布束「彼女達の例えクローンだったとしても、人間よりも人間らしい」

布束「生きてる、ってことを一番真摯に受け止めてたように見えたときから……」

布束「私は、彼女達を『実験動物』としては見れなくなった」

美琴「……単純ね」

布束「我ながらそう思うわ」

布束「あなたは彼女達をどう見るの……?」

美琴「……そうね」
















美琴「妹よ、だからお願いも聞くし、困ってたら『助ける』!!」

美琴「それが、姉である私の役割だと思うから!!」

















責任は、御坂美琴をもう責めたりはしなかった。
決意は、御坂美琴をもう揺るがしたりしなかった。










ここまで!

>>267
出て来なくていい
一方美化SSでだと上条さんと美琴は必ずと言っていいほど屑化させられる
なら出ない方がいいわ

一方厨も人を不快にしかしないSSを書くんなら自分のブログとか巣でやってくれよ
この辺一帯の治安悪化にも影響するからさ~

>>270

.┌、       r┐ r┐ヾ> (_  /             ミ
 !. | ヾ>  || lニ コ   〈/`ヽ _               ミ
 |. !  ノ|   | レ! _| |.   ,イ,.- 、 |  ̄_ ̄丁 '' ー┬‐- -ミ
 ヽ二/   .ヽ/(___メ>   /,|.l  l ! (  ) ! (´ ) !  r‐
   ry'〉     ,、   /イ,! `ー' _L =- --┴-ニ二ト、_'ー'

  lニ', r三)   ((   |'J」-''_二 =-- ‐一 ー‐t‐-ト、 二__

    |_|       ))  レ'/´ィ 、_________  ヾミ| l
 _r┐ __      ((    V ,、 F≡三r一tァー,    | l:.:. .::
└l. レ',.-、ヽ    ))   |ノ^>、     '^ミ二´    | l:.:.:.::
 ノ r' __,! |     ((    V/イソ            .::ヽ、二_
└'!_| (_t_メ.>     ))    | / ,'    _        .:.:.:.::i|,)ノ
   r-、       ((     |.〈、 、 _〉 `丶、     ;:ィil| ノ
  ,、二.._       ))    |  笊yfミミミミヾ、     '!l|il|li!fj'
  ーァ /.    ((     ヽ |i''r ''_二二ニミ;ヽ、  ,|l||il|l|,「゚|
  ん、二フ     ))    |,l| V´ :::::::::;;/     トi|l|i|i|l|!Ll
  ,.-─-.、   ((     |i! ゞ=-‐''"     ,i||i|l|l|l|!|i{
 / /l .i^ヽヽ    `     |il!  ーォii|「、 ,,.,.ィi||l|i|l|l|i|l|シ'

. | .レ' /  l.| ヽ二ニ,ヽ  ,/i|l||livil|||l|i|l|l|lil|l|i|l|i|i|i|l|l|l|{'
. ヽ/   ノノ     <ノ   {l|!|l|i|l|i|l|i|||i|i|l|i|i|i|i|l|l|!|l|l!r'
 r┐,.─-、   / 7     ヾ!||i|i||i|i|l||l||i|i|l|l|l|l||l|l!イ
 ||し'^) ,! ┌‐' 'ー┐ト、   ``,ヘi|l|i|l|i|l|l|i|r''`''"´ i      ,
 |_|   l´r'  7 /_7 / 」__〉  (_~`^~"゙'ヾ     ノ   / ,
 [_]  [_]  〈_/ヽ_/      .ト─'     ノ      / /i

投下します


―――――――――――――――――――――――――――――


一方通行「布束砥信……聞いた事はある」

美琴「『超能力向上進化実験』には関わってなかったみたい、存在も知らなそうだったから」


時は翌日8月16日の夜。
二人は再び出会っていた。



一方通行「確か……『学習装置』の考案者だったか?」

美琴「『学習装置』?」

一方通行「『妹達』に運動や言語の知識を埋め込む機会だ」

美琴「そっか、体は大きくても教育を受けてないから……」

一方通行「代わりに数十年分の知識と経験を埋め込むっつゥことだ」

美琴「……あ、ねぇ」

一方通行「あン?」

美琴「どうして彼女は実験を止めようと思ったのかしら?」

一方通行「どォしてって、オマエも言ってたじゃねェか」

一方通行「『妹達』に人間らしさを感じて人形と思えなくなったからってよォ」

美琴「うん、そう、そうなんだけど……」

美琴「アンタが実験やってる理由知ってるのにそこまで先走ったことするかな?ーって」ンー?

一方通行「…………」

美琴「なんでだろ?」


美琴「いや、やるならやるでアンタって協力者もいるんだから、単独なんかじゃなく……」

一方通行「……ェよ」

美琴「え?」

一方通行「アイツは……ってか、俺がどンな理由で実験をやってンのかなンて研究者共は知らねェよ」

一方通行「強いて言うなら、実験のためにやってる、自分のためってトコだろォな」

美琴「な、なんで言わなかったのよ!やりたくないって意思だけでも示せば彼女みたいな協力者が……」

一方通行「だァから!それ言っちまえば言い訳にしかなンねェっつっただろォが!」

美琴「なぁーによ!私には言ったくせに!!」

一方通行「だからクソ長ェ前置きしてから言ったンじゃねェか!!」

美琴「だから前置きして言えばよかったじゃない!!布束さんにもさあ!!」

一方通行「うるせェ!!研究者を信じようとする方がおかしいンだっつゥの!!」

美琴「だーかーら!!信じる信じないじゃなく自分の意思を示しとけばって!」

一方通行「研究者に弱みなンて見せねェ」

美琴「きぃいー!なぁーにが弱みよ!大人ぶってんじゃないわよ!」

一方通行「オマエよりは大人だっての」

美琴「年そんなに変わらないでしょ!!」



ギャーギャー






御坂美琴がここまで人に親密に強くでれたのは久しぶりだろう。
自らの隠している『実験』についてここまで話せる人も一方通行が初めてだろう
『実験』に対し、味方を得たのも、開始から1年初めてだった。
それは恐らく、一方通行も


「あ、あのー……」

美琴・一方通行「「あぁ(ァ)!?」」

「ひっ、そそそんな睨まなくてもいいじゃございませんか」

美琴「あ、悪かったわね、それで何か用?」

「いえ、あまりにも白熱した痴話喧嘩を見たものでして……止めたほうがいいかなーと」

一方通行「痴話喧嘩ねェ……コイツと?俺が?」

美琴「私と?コイツが?」

「はい、それはそれは仲睦まじい光景でしたが、いかんせん騒ぎすぎな……」

一方通行「……どォやら、オマエの視力は人間以下らしいなァ」

美琴「どこの乙女がこの不健康人間と痴話喧嘩ですって?」ビリッ

一方通行「不健康だァ?言うじゃねェか不良娘が」

美琴「なんですってぇ!?」

「じ、実際そう見えたんだって!」

一方通行「これみてまだそォ言うのか」

「は、ははいやでもほら、周りの人もそう思って、る……ぞ」

美琴「周り?」キョロ








ナカイイネー!! ビナンビジョダシー! ケンカスルホドーッテナ


一方通行「……」

「な、な!」

一方通行「それは……」

美琴「アンタが注目を集めさせたからでしょうがぁあああ!!」ビリビリ!

一方通行「おォ!?」

「うわっ!!」パキィィィン

一方通行「あァ?」

美琴「あれ?」

「いきなり人に電撃とは……夜道の女の子怖い」

一方通行「普通は撃たねェよ

美琴「ちょ、電撃撃ったことは謝るけど、な、なんで効いてないの?」

「ん? あーそれはだな」













上条「上条さんに、異能の力は通じない……なーんちゃって!」ハハハ!













本来の出会いとは違った出会いなのかもしれない。
しかし、御坂美琴は出会えた。
自らの幻想を壊してくれる、ヒーローに


美琴「……」

一方通行「……」

上条「ん?どうして二人共固まって」

上条「ははーん、さては驚いてるな、とっさに右手を出す反射神経に!」

一方通行「(……右手)」

美琴「は、反則しゃない!そんな能力が通じないなんて!」

上条「いやー別にこれ便利なものじゃないんですよ」

上条「普通の喧嘩じゃ役にたたないし」

上条「不幸な上条さんは野郎達に愛されちゃってますから……とほほ」

一方通行「誰も不幸の身の上話にゃ興味ねェよ」

上条「そ、そうか……不幸だ」

上条「まぁ、とにかくち……喧嘩は人前では控えろよー」

美琴「今、痴話って言おうとしたわね」

一方通行「人前ではってどォいう意味だァ?」

上条「ははは……不幸だー!!」ドピューン

一方通行「……なンだ、あいつ」

美琴「能力が通じないなんて……何者よ」

一方通行「……俺達にゃ関係ねェ光の世界の住人だ」

美琴「……そうね」








一人は光の中に帰り
残った二人は、闇に沈んでいく
本来ならば無能力者と超能力者の扱いは逆なはず
学園都市の頂点が深い闇に沈んでいく事はありえないはずだった。

―――――――――――――――――――――――――――――

バチチッ


  
美琴「……施設の数は40オーバー」

一方通行「一つにつき20ってトコロか」

美琴「もしかしたら『絶対能力進化実験』に割かれてるかもしれないけどね」

一方通行「しかし、まァ通信回線が繋がってるってこたァ」

一方通行「上どォしも繋がってるってことだ」

美琴「ええ、選別して襲撃する必要がなくなったわね」

一方通行「その分、確実にバレねェよォにしねェとな」

美琴「上等、端からそのつもりよ」

一方通行「……いけるか?」

美琴「私を誰だと思ってるの?」

美琴「学園都市第三位、御坂美琴様を……」

美琴「なめんなっっっ!!!」バリビリ!!












「研究所で火災が!!」

「また、別の研究所でも火災が!!」

「ど、同時多発テロか!?」

「し、侵入者の形跡は見当たらず、目撃情報もなし!!」

「動研思考能力研究局からの通信が途絶えました!!」

「き、機材が突然爆発を……」

「判明!サイバーテロです!!通信回線からの襲撃です!」

「能力者か!!」

「電気的な通信を切れ!外部からの通信も遮断しろ!」


美琴「……ッ!!」

一方通行「どォだ?」

美琴「……フゥー、七割がたってトコかしら」

一方通行「十分、あとは……」

美琴「殴りこみ、ね」

一方通行「別に俺一人でも構わねェぜ?」

美琴「何馬鹿なこと言ってんのよ」

美琴「私にも、背負わせなさいよッ!」

一方通行「クカカ、そォかよ」

一方通行「……蘭学医療研究所」

美琴「……バイオ医研細胞研究所」

一方通行「……それじゃ」

美琴「……行きましょう!」











二人の超能力者が戦力を分断する。
分断した軍隊にも匹敵する戦闘力をもって
悪の根源ともいえる研究所を襲撃していく。
対応する力を、研究所はまだ持ち合わせていない。
今は、まだ。

ここまで!

投下します


「実験関連施設28ヶ所が全焼、及び半壊の状態」

「これが昨晩の被害報告です……」

「一体、なんの組織がこんな……」

「残された施設だけでも実験は可能ですが……」

「…………」

「……いや、一旦実験を中断する」

「急くような段階でもない」

「襲撃者の特定、あるいはその組織の特定」

「これを第一に対処せよ」

「はい……」













美琴「止まった……よね?」

一方通行「あァ、とりあえずは、だが」

一方通行「今日、両実験が行われてねェとなると……」

美琴「それなりに動揺してるってことね」

一方通行「大方、襲撃者の目的や正体でも気になってンだろォが……」

一方通行「どっちにしろチャンスにゃ変わりねェ、中断してる間に潰すぞ」

美琴「分かってるわよ、と、はいこれ」ポイッ

一方通行「……面?」パシッ

美琴「ないよりマシでしょ、つけときなさいよ」

一方通行「……兎」

美琴「なんでもいいでしょ、今晩中に三ヶ所ずつは……」

一方通行「……そろそろ、何かしてくる頃でもあるな」

美琴「何かって?」

一方通行「……俺らと同じ」









一方通行「闇を不断に使ってくる頃だ」







「昨晩、新たに襲撃を受けた施設ですが……」

「その破壊跡から2パターンの襲撃があると断定できました」

「一つは電撃能力者による襲撃、センサー類に反応していないことから確実だと」

「もう一つは不明、電気的な妨害の跡はないにしろ」

「極めて大きな力を持った能力者だと、推定できます」

「電撃能力者か……」

「ええ、ですから犯人は……」

「ただ、彼女だと断定できても、それだけじゃない」

「もう一つの襲撃者……これを止めない限り、根本的な解決にはならない」

「彼女の共犯者、こちらの方を確定できれば……」

「ああ、新たな脅しの材料となりえるかもしれん」

「今、彼女を止めるのは早計だ、まだ泳がせておけ」

「停滞は問題ではない、共犯者の存在が問題なのだ」










一方通行「……とでも思ってンだろォが」

一方通行「恐らく、オマエってのはバレてる、片方はだがなァ」

美琴「アンタは大丈夫だったの?」

一方通行「俺は実験に消極的な素振りは見せてなかったからな」

一方通行「それに、電気的な妨害っつゥ分かりやすい跡も残してねェ」

一方通行「高レベルの能力者ってトコぐれェまでは推測されてるだろォが……」

一方通行「まだ、俺だというトコまでは断定できてねェはずだ」

美琴「……私一人だったらここで終わってた」

一方通行「……まだ終わってねェだろ」

美琴「……ここからよ!」

美琴「とにかく、泳がせてくれてるのはありがたいわ」

美琴「まだ、私も動ける!」

一方通行「……そォだな、別にここまでくりゃ俺一人でも構わねェがな」

美琴「バカ言ってんじゃないわよ、それじゃ……」

一方通行「……行くか」

実験は中断した。
一先ずは安心できる段階まではこれた。
ここからが本番、最終目的は中止。
しかし、それを止めるべく、相手が手を打ってくるのは目に見えている。
こちらの条件としては、御坂美琴の共犯者、つまりは一方通行
その正体がバレた時点でゲームオーバー、最悪の事態にまで発展する。
計画の成功は一方通行が握っている。失敗も一方通行が握っている。
ここにきて、一方通行に正負の可能性が賭けられた。


「また新たに研究機関が……」

「これで残るは……」

「三基……か」

「このまま彼女を泳がすことは危険です!!」

「莫大な資金と時間がかかってるんですよォ!?」

「とはいえ、その彼女というのも仮定でしかない」

「それに、そんな理由で彼女を責めたところで共犯者の問題が解決していない」

「そんな悠長に構えて……」

「案ずるな、手は二つ打ってある」

「二つ……?」

「一つは外部の研究機関への実験の引き継ぎ」

「が、外部へ!? それでは……」

「引継ぎ先へは相当の利権を譲渡することになるだろうが……」

「まぁ、仕方ない。そしてもう一つは―――」


「ふぅーん、製薬会社からの依頼ねぇ……まぁ別にイイケド」

「……ふむふむ、りょうかーい」ピ

「で、どんな依頼だったんですか?」

「ギャラは? 結局ソコが一番重要って訳よ!」

「……zzZ」

「滝壺、起きなさい。そうね、ギャラは悪くないし、やることは単純」

「やることって?」

「謎の侵略者からの施設防衛戦!」












「はぁ? なんで俺らがそんな事やらなきゃなんねぇんだよ」

「上の指示よ、従いましょう」

「上上上、ったくごめんだぜそんなモン」

「まだ早いでしょう、手を打つのは今じゃない」

「……あーあー、分かった分かりましたよ!」

「……だが、今回は俺の都合で動かせてもらうぜ」

「お前らは動かなくていい、俺だけで十分だ」

「あらそう、私には関係ないから好きにすれば?」

「安心しろ、依頼は守るよ」

「依頼内容わかってるの?」

「分かってるって」

「謎の侵略者の掃討白兵戦、だろ?」










目には目を、闇には闇を。
侵略者とそれを妨害する者。
学園都市の頂点が、攻防に集結する。


「はぁん?犯人は特定できてるだぁ?」

「じゃあなんでこっちから超襲撃しないんでしょう?」

『襲撃者の素性は詮索しない事、ってのが依頼者のオーダーよ』

『問題は複数犯ってトコ』

『もう一人の方の素性は不明だってさ』

「ふぅん、てことは結局どっちがどこに来るか分からないって訳よ」

「ま、別に誰がきてもいいんだけどね」

『この手の依頼者は色々と事情があんのよ』

『余計な詮索はせずに言われた事だけこなしてちょうだい』

「言われなくても」










「つまり、待ち伏せってことか」

『まぁ防衛する側だしね、基本的には待機よ』

「つまんねえの、こっちから動けばいいじゃねえか」

「素性わかってるらしいじゃん、なんでそうしないんだ?」

『さあ? 依頼者にも事情があるんじゃない?』

「で、俺はその三基の中一基を死守せよってか?」

『そうね、来た敵を撃退するのがあなたの役目』

「来なかったら?」

『待機』

「はぁー……」


美琴「残りは三基……できれば今晩中に片付けたいわね」

一方通行「こっからだ、こっからはそォうまくはいかねェ」

一方通行「恐らくは、オマエに対応できるだけの戦力を待ち構えさせてる」

美琴「……戦闘になるわけね」

一方通行「施設の破壊、これを完遂したらすぐに撤退、いいな?」

美琴「分かってるわ、終わり次第残りの一基に向かう」

一方通行「無茶はするな、最悪退却しろ」

美琴「……誰に物言ってんのよ?」

一方通行「……覚悟はいいな?」

美琴「アンタこそ、バレんじゃないわよ!」













もはや戦闘の回避は不可能。
悪をもって悪を制す、これが防衛側の侵略者への対応。
ならば侵略者も受けて立つ。
学園都市の頂点が四人。
序列が強さではない、勝ったほうが強いのだ。
既に、侵入者は動き、戦闘は開幕する

ここまでー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年02月27日 (木) 15:12:09   ID: b1fHVQsv

なかなか面白いよ

2 :  SS好きの774さん   2014年10月06日 (月) 19:34:07   ID: W7ZgV31b

アンチや荒らしはかわいそうだね。
そんなことでしか人と関われないの?
いじめ問題とか、日本人以外への批判とか、マスコミとか、敵をつくらないと生きていけないの?
こうゆうサイトなら、嫌ならすぐにブラウザを閉じれば誰もいやな思いをしなくてすむといつも思ってるんだけど。

3 :  SS好きの774さん   2014年12月18日 (木) 22:52:18   ID: ynqevPcZ

つづきみたい

4 :  SS好きの774さん   2017年05月08日 (月) 19:48:06   ID: JXgvrC9u

批評とかするのは才能ない人間だよな。
才能ある人間は人の作品批評とかするまえに自分のインスピレーションが先に働くから。
読みやすいし面白かった。
最後まで読めないのは残念。

5 :  SS好きの774さん   2018年03月10日 (土) 18:31:06   ID: fD1deoXi

これは一方が美化されても美琴が屑化してないぞ? 
普通に好きだし、続き読みたいわ

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