春香「人にやさしく」 (46)

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伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」
伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」 - SSまとめ速報
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【社用車内】

春香「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」

P「いいよいいよ、気にするな。 それより春香、ラジオ出演おつかれさん」

春香「はい!」

P「ゴメンな、現場に行けなくて」

春香「いえいえ」

P「そのかわり、ちゃんと移動中に車で聴いてたからな」

春香「なんか恥ずかしいですね」

P「俺なんだから、別に恥ずかしがらなくていいだろ」

春香「プロデューサーさんだからですよぅ」

P「変な春香だな」

春香「……変と恋って似てますよね」

P「は?」

春香「なんでもないです」

春香「もう終わったんですか? 私が出てた番組」

P「うん、春香の出番が終わって少ししてからな」

春香「なぁんだ、ちょっと聴いてみたかったのに」

P「そうだ! CDの宣伝、番組の最後にもう一度やってくれたよ」

春香「ホントですか? やったー!」

P「効果あると良いな」

春香「そうですね!」


『……次のナンバーは、とても元気の出る曲です』

『THE BLUE HEARTSで「人にやさしく」』


P「おっ」


『きーがーくーるーいそぉー』


P「なーなーなーなーなーなーなー!」

春香「わっ! びっくりしたー」

『やさしい歌が好ーきーで……』


P「春香この歌知ってる……よな?」

春香「えぇ知ってますよ! 有名ですから」

P「そっか、少しホッとしたよ」

春香「え? どうしてですか?」

P「いや、こう……年が離れてるとさ、話が噛み合わないときあるじゃん?」

春香「えぇまぁ」

P「ま、歌ならそうでもないだろうけど」

春香「でもプロデューサーさんと噛み合わないことって、そうないですよね」

P「俺もまだまだ若いってことかな」

春香「う~ん、そんな感じでもないですけど」

P「とかなんとか言ってると、小鳥さんに怒られそうだ」

春香「……ですね」

P「……マイクロフォンのなーかからぁー」

春香「ガンバーレって言っているぅー」


『聞こえてほーしーい あなたにも』


P・春香「がんばれぇー!」

P「……とまぁ甲本さんはがんばれと歌ってくれてるけれども」

P「春香の予定は終わったし、今日はもうがんばらなくてもいいよ」

春香「はい」

P「事務所で少しゆっくりしてから帰るといい」

春香「そうします」

P「どっかコンビニでも寄る?」

春香「いえいえ、いいですよ」

P「そうか」

春香「早く戻んないと、プロデューサーさんも仕事があるんでしょ?」

P「……はい」

【事務所】

P・春香「ただいま戻りましたー」

小鳥「お二人とも、おかえりなさい」

真「お疲れ様です! 春香も、おつかれ!」

春香「うん!」

真美「はるるん、兄ちゃん、おかえりんぐー」

雪歩「お、おかえり……なさい」

春香「ただいま!」

P「なんだか今日は熱烈な歓迎を受けてるなぁ」

春香「そうですね」


P「人数多くて、いつもより幾分にぎやかですね」

小鳥「えぇ、おかげさまで今日は寂しくなかったです」

P「いいかげん一人に慣れましょうよ」

小鳥「だってぇ」

春香「雪歩は今日なにしてたの?」

雪歩「私は真ちゃんと一緒で……」

真「雑誌のインタビューだったよ」

春香「そっか……真美は?」

真美「暇だったから遊びに!」

春香「あ、そう……」

真美「ずっと3DSしてたんだけど、充電器忘れちゃって……」

春香「ゲームは一日一時間だよ」


P「小鳥さんは何してたんですか?」

小鳥「主に休憩を」

P「こら」

小鳥「冗談ですよ」

真美「マインスイーパーばっかりしてたよ」

小鳥「違います! ソリティアも…………ぁ」

P「……コラ」

少し中断します

再開

P「じゃ春香、俺仕事に戻るから」

春香「はい! あの……ありがとうございました」

P「どうしたんだ急に礼なんて」

春香「なんとなくです」

P「そっか……ありがとな」

春香「プロデューサーさんもどうしたんですか急に?」

P「俺もなんとなく」

春香「ふふっ」

P「礼を言ってくれてありがとう……かな?」

小鳥「それじゃ私もなんとなく、ありがとうございます」

P「あはは」

春香「うふふ」

小鳥「おほほ」


真美「なにやってんのキミたち?」

小鳥「春香ちゃん、お飲み物用意しましょうか?」

春香「はい! おねがいします」

小鳥「お茶とコーヒー、どっちがいーい?」

春香「えと……コーヒーで!」

小鳥「わかったわ、ソファに座って待っててね」


小鳥「はいどうぞ」

春香「あっ、ありがとうございます」

小鳥「一応ミルクと砂糖は入れたけど……足りなかったら自分でお願いね」

春香「はーい」

小鳥「それじゃ……ゆっくりしていってね!」

春香「……は、はい」


春香「フゥー……フゥー……コク…コク……」

春香「…………」

春香「もうちょっと砂糖入れよ」

春香「…………」

真美「まこちーん早く次のページぃ」

真「ボクが買ったんだからボクのペースで読ませてよ」

真美「だって読むの遅いんだもーん」

真「この後読ませてあげるから」

春香(雑誌? 二人ともなに読んでるのかな……)


真美「一人じゃつまんないよー! 一緒に読むからイイんじゃん」

真「真美は邪魔してるだけでしょ」

真美「そっか……まこちんゴメンね………グスン」

真「あっいや! そ、そんなつもりじゃ……」

真美「真美……もう帰るね」

真「い、一緒に読もうよ! ボク、一人だとつまんないからさ!」

真美「へへっ、やーりぃ!」

真「あー! 騙したなー!?」

真美「記憶にございませーん」

春香「ふふっ、二人とも楽しそ…………二人?」

雪歩「…………」

春香「雪…歩?」

雪歩「…………はぁぁ」

春香(どうしたんだろ……なんだか元気が無いみたい)


真「わーこの服、すっごく可愛い!」

真美「え~? まこちんには似合わないっしょー」

真「そ、そうかな……」

春香(二人とも気付いてないし……)

P「…………」カタカタ

小鳥「…………」カチカチ

春香(プロデューサーさんも小鳥さんも忙しそうにしてる)

雪歩「…………」

春香(ど、どうしよう……)

春香(声……かけようかな)

春香(でも……無理に聞こうとすると、逆にプレッシャーになったりして……)

春香(それで私に苦手意識を持っちゃったりとか……しないかな)

雪歩「…………」

春香(でも、だからってあのまま放っておくわけにもいかないし……)

春香「…………」

春香(でもでも……やっぱり出しゃばらない方がいいのかなぁ)

春香(真だって、いつも雪歩のこと気にかけてる)

春香(それで私がこれ見よがしに雪歩に声をかけたりしたら……)

春香(真は私に……)

春香「…………ぁ」

春香(私……自分のことしか考えてない)

春香(今大事なのは雪歩のことだよ)

春香(雪歩が元気無いから、話を聞こうとしてるのに……余計なことばかり考えてる)


春香(……やっぱり声かけよう)

春香「……よし」

春香(ゆっくり近づいて……)

春香「あ、あの……ゆk――」

真「雪歩? どうかしたの?」

雪歩「えっ……う、うん……ちょっと」

真美「ほうほう、真美さんに話してみなさい」

雪歩「うん……実はね――」

春香「…………」


春香(なにやってんだろ……私)

春香(色々気にかけてるクセに、何も出来ないで時間だけが過ぎて)

春香(力になりたいと思っていても、行動しないのなら思ってないのと一緒だよ……)

春香「…………」

小鳥「春香ちゃんどうしたの? そんなところに立って」

春香「……はぁぁ」

小鳥「???」

春香(雪歩が心配なはずなのに、嫌われたら……とか、出しゃばりたくない……とか)

春香(自分がどう思われるかばかり気にしてる……)

小鳥「春香ちゃん」

春香(それって結局、自分のことしか考えてないってことだよ)

小鳥「はるかちゃーん?」

春香(そもそも周りを気にかけてるのだって……)

春香(自分が気の利く優しい人だって、そう思われたいだけ)

小鳥「…………コホン」

春香(自分を良く見せようとしてるだけなんだ……)


小鳥「春香ちゃん!」

春香「えっ? あ……はい?」

小鳥「なんだか考え込んでるみたいだけど……どうかしたの?」

春香「いえ、なんでもないです」

小鳥「そう……それじゃ私、仕事に戻るわね」

小鳥「…………」

春香(小鳥さん……心配してくれたのかな?)

小鳥「……ふぅ」

春香(小鳥さんは優しいなぁ……真だって、真美だって……みーんな優しい)

春香(でも私は……)

小鳥「…………」

春香(小鳥さん……やっぱり私、違います)

春香(あの時小鳥さんが言ってくれたような、優しい人間じゃない)

春香(私は……わたしは………)

春香「チガウんです」ボソッ

小鳥「え? 何か言った?」

春香「あ、いえ……ち、違うんです!」

小鳥「何が違うの?」

春香「えと……そのぅ……なんでもないですからっ」

小鳥「わ、わかったわ」

春香「…………」

春香(小鳥さんが言ってくれたこと……照れくさかったけど、本当に嬉しかった)

春香(私がそのとおりの人間だったら良かったのに……)


『春香ちゃんは優しい子で、いつも周りを気にかけてる』


春香(私は優しくなんてない……周りを気にしてても、結局は何も出来ない)


『見返りを求めない優しさが春香ちゃんの魅力』


春香(見返りなんて求めてない……けど、自分を良く見せようとしていたのかも)

春香(私はただ、自分に酔ってただけなんだよ)

春香(優しい自分を演じて、自己満足してた……)

春香(褒めてもらいたくて気が利くフリをしていただけ)

春香(そうだよ……私は優しくなんてない)


春香「……はぁ」

ガチャ


小鳥「あっ、おかえりなs――」

律子「アンタはもう少し考えてから行動しなさい」

伊織「してるわよ!」

春香「!?」


律子「よく言うわ」

伊織「大体律子もヘコヘコしすぎよ!」

律子「まったく……誰の所為でヘコヘコしなきゃなんないと思ってるのよ」

伊織「私の所為じゃないでしょー?」

律子「伊織が突っかかるからでしょーが」

伊織「それはアイツ等がウチの悪口を言うからよ!」

律子「確かにそうだけど、だからって……」


春香(……どうしたんだろう?)

伊織「あ、春香!」

春香「へ?」

伊織「春香聞いて! 私、アイツ等に言ってやったわよ!」

春香「あいつら?」

伊織「ほら、前にテレビ局の人に悪口言われて、言い返せなかったって……」

春香「あぁ……あの時の」

伊織「また765プロの悪口言ってたから、今度は言い返してやったの!」

律子「ご丁寧に胸倉まで掴んで……ね」

伊織「そのくらいしないと気がすまないわっ」

律子「元々は相手側に問題があったわけだから、今回は大事にはならなかったけど……」

律子「今度からは、あまり感情だけで動かないこと」

伊織「わかってるわよ」

律子「ま、正直……スカッとしたけどね」

伊織「律子、止めに入るのが遅かったもん……そうだと思った」

律子「ふふっ」

伊織「でも……春香の言ってくれたこと、無駄にしちゃったわね」

春香「私、何か言ったかな?」

伊織「ほら『悔しいと思うことが悔しい』って言ってたじゃない」

春香「あ、うん」

伊織「いちいち気にしなくていいって、頭では分かってるんだけど」

伊織「目の前で悪口言われたら……ね」

春香「そうだよね……行動しなきゃ、意味無いよね」

伊織「……へ?」

春香「思ってても何も行動しなかったら、思ってないのと一緒だもん」

伊織「何の話?」

春香「ううん、コッチの話」

伊織「そ、そう……」

春香「伊織が羨ましいなぁ」


小鳥「…………」

小鳥(春香ちゃん……さっきから少し様子が変ね)

小鳥(何かあったのかしら……)

春香「…………」

小鳥(でも帰ってきたときには、元気が無いってわけでもなかったし)

小鳥(かといって、ここで何か起きたかって言うと……)


真美「いおりん、ひっぱたいてやればよかったのに」

P「おいおい……それだとご褒美になっちゃうだろ」

真美「兄ちゃんって本当に変態だったんだね」

P「ありがとうございますっっ!」


小鳥(……別にいつもどおりだし)

伊織「…………」

春香「…………」


小鳥(ど、どうしよう……)

小鳥(声……かけようかしら)

Prrrrrrrr!    Prrrrrrrr!


律子「おっと携帯携帯…………はい、もしもし?」

律子「あっはい! その件でしたら――――」

小鳥(ちょうど律子さんも電話を受けてるし……よし)


小鳥「あ、あのぅ……春k――」

伊織「小鳥、待って」ボソ

小鳥「え?」

伊織「私が言うから……お願い」ボソボソ

小鳥「……あ、うん」


春香「…………」

伊織「…………コホン」

伊織「春香、ちょっと……いいかしら?」

春香「えっ?」

伊織「小鳥、会議室使うわよ?」

小鳥「あっはい、どうぞ」

伊織「行こ? 春香」

春香「いや……あの」

伊織「時間あるわよね?」

春香「……う、うん」


バタン


小鳥「ねぇプロデューサーさん?」

P「はい」

小鳥「春香ちゃん、いつもと違ってたりしませんでした?」

P「……いえ、いつもどおりでしたよ?」

P「むしろいつもより元気に見えましたけど」

小鳥「そうですか……」

【会議室】

伊織「えと……春香」

春香「……うん」

伊織「もし間違ってたら、それはそれでいいんだけど……」

伊織「春香さ、いま……悩みとかってある?」

春香「え? 悩み?」

伊織「そう」

春香「や、やだなぁ~私に悩みなんてあるわけ……」

伊織「ホントに?」

春香「…………」

伊織「春香、最近元気が無いように見えるわ」

春香「そんな風に見える?」

伊織「春香はいつも元気だから、余計にそう感じるのかもしれないけど」

春香「そうだよ、私はいつもどおり元気だよ」

伊織「ま、本人がそう言うのなら……いいわ」

春香「うん」

伊織「ただ、これだけは覚えておいて欲しいってことがあって……」

春香「???」

伊織「…………」

春香「伊織?」

伊織「い、一度しか言わないから……ちゃんと聞いてよね」

春香「うん、わかった」

伊織「えっとぉ、私も……その……は、春香の味方だから」

春香「え?」

伊織「あの時……悪口言われて落ち込んでた時、私は春香のお陰で元気になれた」

伊織「そのお返しってわけじゃないけど、何か嫌なことがあった時には言って頂戴」

伊織「私なんかで役に立つかは分かんないけど……」

伊織「す、少しでも春香の力になれたらいいなって……思ってるから」

春香「伊織……」

伊織「しつこいけど、ホントに何もない? 悩みとか嫌なこととか」

春香「悩みって程じゃないけど、ちょっと……分かんなくなっちゃって」

伊織「分かんない?」

春香「……うん」

伊織「なにが?」

春香「自分が」

伊織「春香が……分かんない?」

春香「そう、私が」

伊織「それってどういう……」

春香「自分がどんな人間なのか、分かんないの」

春香「少なくとも私は、みんなが思ってるような優しい人間じゃない」

伊織「…………」

春香「あの日……小鳥さんにクッキーを渡したとき、小鳥さんがね――」

――――
――

伊織「そう……小鳥がそんなことを」

春香「うん」

春香「優しい子だって言われて、すっごく嬉しかった」

春香「でも私は優しくなんてない」

伊織「そんなことないわよ」

春香「ううん、そんなことある」

春香「さっきだって雪歩が元気無かったのに、何も言ってあげられなかった」

春香「余計なことばかり頭に浮かんで、雪歩のことはそっちのけ」

春香「結局何もしてあげられなくて、逆に自分が落ち込んじゃったり……」

伊織「そうやって落ち込んでることが、春香が優しいって証拠じゃない」

伊織「私なんて……雪歩が元気無いってこと、今春香に聞いて知ったくらいよ?」

春香「それは……」

伊織「気付いてあげられるだけでも、春香はすごいと思うわ」

伊織「うん、なんとなく分かった。 春香のこと」

春香「え?」

伊織「私……こういうの慣れてないから、上手く言えないけど……」

伊織「春香は春香になろうとしすぎてるのよ」

春香「私になろうとしすぎてる……?」

伊織「小鳥が言ったことは間違いじゃないわ」

伊織「春香は優しくて、いつもみんなを気にかけてる」

春香「それは違うよ」

伊織「あら? それを一番実感したのは私よ?」

伊織「あの日、誰が私を大泣きさせたんだっけ?」

春香「あれは……」

伊織「大体、自覚が無いのは当たり前よ。 春香はそれが無意識で出来てるんだから」

伊織「だけど、小鳥に優しさが魅力だと言われたことで、それを自覚してしまった」

春香「…………」

伊織「その所為で……っていうと、小鳥が悪いみたいに聞こえるけど」

伊織「春香は心のどこかで、みんなが思う『優しい春香』でなくちゃいけないって……」

伊織「そう考えてるんじゃないかしら?」

春香「優しい春香……」

伊織「人の期待がプレッシャーになることってあるでしょ?」

春香「うん」

伊織「そんな風に、春香がプレッシャーを感じてるんじゃないかって思うの」

伊織「優しくならなきゃいけない……ってね」

春香「プレッシャー……かぁ」

伊織「それを感じさせてるのは、私達なんだろうけど」


伊織「今の春香は『春香』であることにこだわりすぎて、春香じゃなくなってる」

春香「…………」

伊織「本当に優しい人ってのは、なろうと思ってなれるようなものじゃない」

伊織「人にやさしく……なんて、そんなこと春香は考えなくて良いのよ」

伊織「春香は春香のままで、十分優しいんだから」

伊織「春香の前だから言えるし、みんなも分かってるだろうけど……」

伊織「ぶっちゃけると、アイドルのときの私は猫を被ってるわ」

春香「ま、まぁ……そだね」

伊織「でも、ずっとそれだと疲れちゃうでしょ?」

伊織「だから私は事務所に居るときとか、みんなの前では素の自分で居る」

春香「…………」

伊織「春香は今、必死で『春香』を被ろうとしてる。 そんな必要ないのに」

伊織「だって、そんなの被らなくっても春香は春香じゃない」

春香「……うん」


伊織「段々自分が何言ってるか分かんなくなってきたから、この辺にしとくわ」

伊織「とにかく、もう少し肩の力を抜いたほうが良いんじゃない?」

伊織「春香は私と違って、自然体がいいのよ……多分」

春香「そだね、ありがと伊織」

伊織「どういたしまして。 春香には助けられてばかりだから、たまには……ね」

春香「ありがとう」

伊織「さてと…………小鳥、いるんでしょ?」

春香「えっ」

伊織「そんなコソコソしてないで、入ってきなさいよ。 ちょうど喉も渇いたし」


ガチャ


小鳥「ぬ、盗み聞きするつもりはなかったんだけど……」

伊織「別にいいのよ。 それより、アンタも春香のこと気にしてたんでしょ?」

小鳥「えぇ」

春香「小鳥さん……」

小鳥「春香ちゃん、ゴメンナサイ」

小鳥「私……春香ちゃんに悪いことしちゃったね」

春香「そんなことないですよ! ホントに嬉しかったんですから」

小鳥「でも、その所為で春香ちゃんが……」

春香「それはもう大丈夫です。 伊織のお陰で」

伊織「わ、私は……別に何も」

春香「私、やっと分かった」

小鳥・伊織「えっ?」

春香「私が優しくなれるのは、みんなが優しいから」

春香「人にやさしくされるから、人にやさしくなれるんです!」

春香「…………あれ?」

春香「人にやさしくなれるから、人にやさしくされる……アレ?」

小鳥「いや、言いたいことはすっごく良く分かるわ!」

伊織「えぇ、伝わってるわ!」

春香「そ、そか……よかった」


小鳥「ほら、春香ちゃん言ってたじゃない『笑顔のお返し』って」

春香「あ……はい」

小鳥「優しさも、人に与えて、人から与えられて……」

小鳥「そうやって信頼関係が出来て、絆が生まれるのよ」

伊織「そうね……結構クサい台詞だけど、その通りかもしれないわ」

小鳥「そこ、恥ずかしくなるようなこと言わない。 さっきのアナタも大概よ」

伊織「ささっ、もう戻りましょ」

春香「うん!」

小鳥「私もソリティ……仕事に戻らないとっ!」


ガチャ


雪歩「…………」

小鳥「わっ! びっくりしたぁ」

伊織「雪歩?」

雪歩「あの……春香ちゃん」

春香「えっ、私? どうしたの?」

雪歩「うん…あ、あのね……そのぅ」

真美「ゆきぴょんね、はるるんにおせーて欲しいことがあるんだって!」

春香「教えて欲しいこと?」

雪歩「…………」コクッ

春香「そっか……なーに?」

雪歩「こ、この前クッキー作ったんだけど、失敗しちゃって……」

真「どうしたら春香みたいに上手に作れるのか、教えて欲しいんだって」

春香「あっ、それでずっと元気が無かったんだ!」

雪歩「……うん」

春香「なぁーんだ、そんなことか」

雪歩「ぇ」

春香「あっ……ち、違うよ! すっごく落ち込んでたから……」

春香「何か嫌なことがあったんじゃないかって思ってたの」

春香「だからお菓子のことだって聞いて、ちょっと安心しただけっ!」

伊織「でも、雪歩がお菓子作るなんて珍しいじゃない」

雪歩「やっぱり似合わないよね」

伊織「いや、別に似合わないとかってんじゃなくてっ!」

真美「お二人とも随分と慌ててますなぁ」

春香・伊織「……ウルサイ」

春香「どんな風に失敗しちゃったの?」

雪歩「なんだか硬くなっちゃって……」

春香「う~ん……粉を合わせるときの混ぜ方とかで、そうなったりするかなぁ」

雪歩「混ぜ方?」

春香「うん、あまり混ぜすぎちゃダメだよ」

真「へぇーそうなんだ」

春香「ボールを回しながら、ヘラで切るように混ぜるの」

雪歩「そ、そっか」

真「切るようにってよく聞くけど、いまいち分かんないよね」

伊織「確かに」

春香「そうかな? 分かりやすいと思うけど……」

真美「真美知ってるよ? コの字型でしょ?」

春香「うん、違うよ」

真美「……やっぱり?」

春香「う~ん……言葉じゃ説明しづらいね」

伊織「だったら今から作る?」

春香「えっ?」

伊織「材料揃えてウチで一緒に作れば良いじゃない」

伊織「アンタ達、今日はもう何も無いんでしょ?」

春香「うん、私は無い」

真「ボクと雪歩も」

真美「真美は元々予定なかったし」

伊織「だったらちょうど良いじゃない」

雪歩「で、でも……」

伊織「律子? プロディーサー? 良いわよね?」

律子「えぇ良いわよ」

P「そうだな、楽しんでおいで。 怪我だけはしないように気をつけるんだぞ」


小鳥「わ、私も……」

P・律子「小鳥さんはダメ」

伊織「そうと決まれば、早速迎えに来てもらいましょ! 材料もウチで用意させて……」

春香「あっ、材料はみんなで買わない?」

真「うん、そうだね。 そっちの方が楽しいし!」

真美「先生ー! バナナは材料に入りますかー?」

春香「ダメってこともないだろうけど……どうだろ?」

伊織「果物はウチに沢山あるから、買わなくても平気よ」

真「流石は伊織だね」

真美「ねぇねぇ、失敗したとき用の市販クッキーもある?」

春香「失敗するの前提なんだ……」

雪歩「ふふっ」


ガチャ      バタン


P「…………」

小鳥「…………」

律子「…………」

P「なんかシーンとしちゃったな」

律子「そうですね」

小鳥「私はジーンと来ちゃいました………グスッ」

P「泣くほど行きたかったんですか?」

小鳥「いえ……みんな良い子で、みんな仲良しで……」

小鳥「そんなみんなを見てると……すんっ……なんだか涙が出てぎぢゃっで」

P「そ、そう……ですか」

律子「…………」


P「……だいぶいってるからさ、涙腺が緩くなってるんだよ」ボソボソ

律子「荒んだ心に染みるんでしょうね」ボソボソ

小鳥「……聞こえてるんですけど?」

P「ちょっとトイレに」

律子「さぁ仕事仕事ー!」

小鳥「んもうっ! アナタ達はもう少し人にやさしく……」

END

お粗末さまでした

スレタイ見て春香が100万円持った見ず知らずの小さい男の子預かる話かと思ってしまった

いい話だなぁ

おつ

乙乙

乙乙



ピヨちゃんはスパイダ上級100回クリアまでやれば良いと思うの

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