魔王「何もしたくない」側近「」 (14)

魔王「一日ってなんでこんなに早いんだろ」

側近「何もしてないならむしろ遅く感じるはずですが。ていうかやることはあるでしょう。姫さらったりとか悪だくみしたりとか魔王らしいことしてください。」

魔王「いやなんかそういうのいいから」

側近「即位したばかりの頃のやる気はどこに行ったんですか。勇者を倒すために他の国に勉強会にも行ったりしてたじゃないですか。」

魔王「若気の至りだな

側近「たった一年前のことじゃないですか。魔族の寿命にすれば昨日みたいなものです。」

魔王「そうかもしれない」


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側近「それが今はベッドに入ったままパソコンいじってるだけだなんて…勇者の情報を集めるための道具だったはずですよねそれ」

魔王「なんか起きるのもめんどくさいし飯食うのもめんどくさい」

側近「まあ食べなくても当分は死にませんが。ていうか堕落っぷりがひどくないですか?」

魔王「いや、なんかさあ、俺いる意味あるのかなって思えてきてさあ」

側近「はい?」

魔王「だってほかの国の魔王と比べたら俺なんてまだ新入りじゃん。」

側近「魔王様の次に経験が浅い方でももう300年近くやってますからね。」

魔王「で実力も一番下で全然追いつけてないじゃん」

側近「まあみなさん歴戦の猛者ですからね」

魔王「だろ?でみんな打倒勇者って燃えて鍛錬とかしてるけど俺が鍛えたところで追いつけないじゃん。でやる気なくすじゃん。サボるじゃん。差が開くじゃん。もうこれのループだよ。」

側近「それは誰しもが通ってきた道では?」

魔王「でもこんな落ちこぼれじゃなかっただろ。みんな何かしら才能があったから魔王になったわけで、少子化が進むこんな辺境の国じゃなかったら俺魔王なんてやってないって。」

側近「まあもう魔王様と私とメイドしかいませんからね。」

魔王「もういいじゃん。こんなへんぴなところ勇者もわざわざ攻めてこないって。別に特別なアイテムがあるわけでもないし」

側近「先代の魔王様の剣はかなり貴重なものだったはずですが」

魔王「あーあれか…たしかになんでも切れたな。むかしふざけて振り回してたら寝てた親父のしっぽ飛ばしちゃったんだよな。」

側近「あれなら勇者が狙ってくるのでは?」

魔王「あー、まあ大丈夫でしょ。そもそもあれ実践とかで使われたことないから知ってるやつもいないし」

側近「」

魔王「じゃ、そういうことだから」

側近「…わかりました」


~数日後~

側近「ちょっと姫をさらってきました」

魔王「は?」

側近「あとはお願いします」

魔王「待て待て待て」

側近「何でしょう?」

魔王「…マジで姫?」

側近「はい、朝一でとってきました。今は客室で眠っています」

魔王「すぐに返して来い」

側近「無理です。返してほしければここまで来いって手紙残してきちゃいましたし。」

魔王「…一応理由聞いていい?」

側近「魔王様への日頃のうっぷんを晴らそうかなと」

魔王「」

側近「冗談です。ちゃんと理由はあります。まあおそらく勇者が討伐にこちらへ向かわされるでしょう。
しかしここまで来るにはほかの魔王の領地を通らなければいけませんし、それをわざわざ素通りさせる魔王もいないでしょう。そうしてたどり着いた勇者は弱り切っていますからおそらく魔王様でも倒せるのではないかと。」

魔王「そして俺に皆が一目置くようになると」

側近「さらに勇者がほかの魔王を倒してくれるかもしれませんし一石二鳥です」

魔王「…お前こんなに頭よかったんだな」

側近「今まで使う機会がなかっただけです」

すいません。トリ忘れてしまったので変わります。

魔王「ただほかの魔王に倒されたらどうする?」

側近「あー、一応保険として先代の魔王様の剣を置いてきましたからよっぽどのヘボじゃない限り大丈夫でしょう」

魔王「」

側近「だって魔王様引きこもり生活で筋肉衰えすぎて使えないじゃないですか」

魔王「…まあそうだけどわざわざ天敵を相手に与えなくても」

側近「これでほかの魔王の死亡率もグーンと上がりますよ?」

魔王「俺とお前の死亡率もな」

側近「そうなったら私はすぐに逃げますからご安心を」

魔王「そういえば姫はどこにいんの?」

側近「粗末に扱って死んでも困るので一応客室でメイドに世話を頼みました」

魔王「じゃあ様子でも見に行ってみるか」



姫「えー魔王様ってそんな人なんですか~」

メイド「そうそう、ほんとヘタれてるのよ、苦手なものは側近さんなんだから」

魔王「」

側近「へぇ、そんなこと言ってるんですか。まあ知ってましたが」

魔王「なにこれ。なんでこんなに和んでんの。おいメイド。」

メイド「なんでしょう」

魔王「ふつうもっと、こう、一人寂しい姫は恐怖で部屋で泣いている、みたいな感じじゃないの」

側近「姫は私とメイドさんの命綱ですから。万が一の時には姫に証言をしてもらって助けてもらう予定です」

魔王「セーフティネット張りまくりだな」

メイド「まあ私は久しぶりにガールズトークができて楽しいだけですけどねー」

姫「私もお城にいた時より楽しいです~」

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