P「雪歩の詩集か……」(82)

~21時の事務所~

P「…よし。今日の仕事終わり!なんとか21時過ぎに終わったな」

P「さっさと帰ってビールでも飲むか。……ん?」

P「ノート?誰かの忘れ物かな?」ペラペラ

P「雪歩のノートか。しかもこれは……」

P「詩集…だよな。雪歩は詩を書くのが趣味だとは言ってたけど……」

P「どんな詩を書いてるんだろ」ペラッ

『LOVE』

アーイアイ アーイアイ
おさーるさーんだよー

…ちがーう!
そのアイじゃないよ!
愛のほうだよ!
私にだってそのくらい分かるんだから!

L・O・V・E
ラブ!ラブ!!ラブ!!!
分かった?
オッケー!

P「……」

P「……分かった」

P「何だかよく分からないけど分かったよ雪歩」

P「しかしこれは…どうなんだ?これも詩って呼ぶのか?」

P「……」

P「他の作品は、っと」ペラッ

『新しい100年』

ここで会ったが100年目だね
昨日も会ったけど100年目さ

明日も会えるといいなぁ
明日会えたら それは1日目

新しい100年の 最初の日

P「……そうだね」

P「詩のことは全く分からんが……」

P「どうなんだこれ?ひょっとしてけっこう凄いのか?」

P「うーん……」

P「次……」ペラッ

『春香ちゃんのリボン』

昨日は赤色 今日は黄色
明日は?

白色っぽいね
たぶんそうだよ 白か青だよ

割りとどうでもいいけどね
当たったらちょっと嬉しいね

P「割りとどうでもいいのか……」

P「それにしても、詩と日記の境目がよく分からないんだが……」

P「本人が詩だって言えば詩なんだろうな、こういうのは」

P「次は……」ペラッ

『私にも夢がある』

アイドル 私の夢
だけどね 『人』の『夢』は『儚い』んだよ
『女』が『喜ぶ』のは『嬉しい』からなんだよ

……なーんてね
言ってみただけだよ おバカさん

P「誰に言ってんだ……?」

P「『自分との対話』とか、そんな感じのアレか?」

P「それなら、雪歩と雪歩の語り合いをもう少し見てみようか」

P「次」ペラッ

『名探偵雪歩』

すごいよ! ドンピシャだよ!
もちろん予感はしてたけどね!

「じっちゃんの名にかけて!」
……はい?

「謎はすべて解けた!」
はあ、そうなんですかぁ

そんなのもう古い古い!
これからは私の時代
萩原雪歩におまかせあれ!

P「時代来ちゃったかー。そうかー」

P「なるほどなー」

P「へえー」

P「次」ペラッ

『真夏日』

暑い 外が
熱い 身体が
それは一体誰のせい?
ふふ
アナタだよ Baby
Maybe

P「…韻を踏んでるのか?」

P「取って付けたように『Maybe』って書いてあるけど、韻だよな、これ?」

P「きっと夜中のテンションで書いたんだろう」

P「お次は……」ペラッ

『バキューン!』

両手を挙げなさい!
さもないと撃ちますよ!
バキューン!
撃った!
当たった?
やったね命中!
これからもよろしくお願いいたします!

P「ご丁寧にどうも……」

P「テンポは良かった…気がする」

P「詩にとって重要かどうかは知らんが……」

P「よし次」ペラッ

『イヌ美ちゃん』

夢に出てきたよ
息を切らせて「響を助けてください」って
「どうしたの?」って聞いたら
「とにかく来てください」って

行かなかったよ
だって犬苦手なんだもん 知ってるでしょ?
私はそんな女なのさ
いまはそんな世の中さ

P「夢の中でもダメなのか……」

P「まぁ、デカイもんなイヌ美」

P「世の中のせいにするのはどうかと思うが……」

P「はい次」ペラッ

『誕生日』

今日も誰かの誕生日
きっと誰かの誕生日

目の前にいたらお祝いできるのにね
とっても残念です

何歳になったんですか?
私よりも年上ですか?

私の誕生日は12月24日です
クリスマス・イヴです
よろしくお願いいたします

P「これまたご丁寧にどうも……」

P「去年の雪歩の誕生日はみんなでパーティーしたっけな」

P「みんな忙しくなったし、今年は無理かもな……」

P「よし、次」ペラッ

『歌声』

歌声小さいんだよ 自分で分かってるんだよ
もっと叫べばいいのかな?

うおーーー!
これくらい? もっと?
うおぉぉぉーーーーー!!!
いまのはいい感じじゃない?

まぁ文字じゃ伝わらないよね
それは仕方ない

P「気にしてたんだな」

P「それが雪歩の個性でもあるんだが……」

P「声量に恵まれてるやつ多いからな、ウチは」

P「次」ペラッ

『お出かけ』

ふーん
美希ちゃんとお出かけするんだ
いいよ 行けば
楽しんできてね
私のことはお構いなく
お茶美味しいよ
いつもより苦いけど美味しいよ
別に淋しくなんてないよ
私は一人っ子だから平気だよ
本当にお構いなく

P「……」

P「愚痴…になるのか、これ?」

P「真も罪作りなやつだなぁ」

P「はい次」ペラッ

『穴』

穴掘ってみますか?
一緒に掘りますか?
余計なお世話だったらごめんなさい
旅は道連れって言いますから
埋めてやりたい人はいますか?
私にはいません
いないけど……
いえ、やっぱりいません 大丈夫です
お気遣いなく

P「こえーよ!」

P「ひょっとしてさっきの続きとか……?」

P「…真、頑張れな」

P「お次は……」ペラッ

『のりしろ』

アナタののりしろはどこにありますか?
そこにたっぷりとのりを塗って
私ののりしろとピッタリ合わせて
二人で流れてゆきましょう
流れ着いた先に砂浜があれば
そこに大きな穴を掘って
二人で埋まってしまいましょう

P「……雪歩って…何と言うか……」

P「若干ヤンデレ気質なのか?」

P「詩の中だけならいいんだが……」

P「次は…っと」ペラッ

『ハイテンション』

ゆきほーーーーー!!!!!
なんですかぁぁぁ!!!!!

私だってねえ
私だってねえ
テンションMAXのときがあるんだよぉ!

何?それ何?
まっこまっこりーんって何なの!
そうじゃないんだよ!
目を覚ましてよ!
そろそろ諦めてよ!
真ちゃんかっこいいーーーーー!!!!!

P「真……」

P「まっこまっこりーん、俺は好きだよ……」

P「プロデューサーとしては推奨はできないけどな……」

P「お、次で最後か。どれどれ」ペラッ

『アイドル』

初めて自分で選んだ
初めて自分で決めた
私はアイドルになった

ひんそーでちんちくりん
これからもたぶんそう
だけど私はアイドルになった

毎日毎日泣いている
いまでも足りないことだらけ
それでも私はアイドルでいたい

ステージに立つのは怖いけど
いつか覚めてしまう夢かもしれないけど
やっぱり私はアイドルでいよう
初めて自分で選んだから
初めて自分で決めたから
私はもう アイドルだから

P「……詩の優劣は俺には分からないけど……」

P「言いたいことは伝わった気がするよ、雪歩」

P「私はもうアイドルだから、か……」

P「変われば変わるもんだなぁ。あの雪歩がなぁ……」

P「…さて。詩集は雪歩のロッカーに入れておくか」

P「今日は美味いビールが飲めそうだな、っと」バタン…


お し ま い

終わり
支援感謝です
おやすみ

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