小鳥「伊織ちゃんとプロデューサーさんのバレンタイン」 (40)


伊織「おっ、おはよ……」ガチャッ

小鳥「おはよう伊織ちゃん♪」

P「おっ、おはよう伊織!」

伊織「お、おはよう……」ボソッ


小鳥(あら? 二人の間に流れる空気が微妙な雰囲気……?)



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P「そっ、外、雪降ってるな! 来るとき大丈夫だったか?」

伊織「え、えぇ……新堂は大変だったかもしれないけど……」

P「そ、そっか……」

伊織「うん。そう……」

P「…………」

小鳥(やっぱりなんか、変な空気?)


伊織「あ、アンタこそ大丈夫だったの?」

P「あ、あぁ、来るときは大丈夫だった。帰りは分からないけどな。あはは……」

伊織「そ、そう……」

P「…………」

伊織「…………」

小鳥(…………)


P「も、もし帰る時間まで雪が降ってたら俺も新堂さんに送ってもらおうかな!?」

伊織「えっ……」

P「で、電車止まってるかもしれないし……なんて……」

伊織「あっ、そっ、そうね! しっ、仕方無いから送ってあげるわ? 電車が止まってたらだけど……」

P「お、おう……もし止まってたら頼もうかな……あはは……」

伊織「ええ……」

P「…………」

小鳥(これって、もしかして……)


伊織「そっ、そう言えば、アンタ……なんか今日は髪の毛セットしてない?」

P「えっ?」

伊織「普段もしなさいよ。割とその……悪く無いんじゃない?」

P「そっ、そうかな? じゃあ、これからはセットしてこようかな、あはは……」

伊織「……あっ、やっぱりダメっ!」

P「えっ!? なんで……?」

伊織「……なっ、なんででも」ボソッ

小鳥(もしかして、二人ともアレを意識し過ぎてるのかしら?)


P「そっ、そう言えば今日って……その……アレだな」

小鳥(おっと、プロデューサーさんから切り出したぁっ!?)

伊織「えっ!? きょ、今日!? な、な、な、何か特別な日だったかしら?」

小鳥(知らない振りしてるけど出来てないわ! 伊織ちゃん!)

P「今日は……」ごくり

伊織「今日は……?」ごくり

小鳥(今日は……)ごくり


P「ふんどしの日なんだってさ!」


伊織「は?」


P「ふんどしの日って何だよって話だよな、あはは……」

小鳥(いやいや、バレンタインでしょ! そりゃ伊織ちゃんも『は?』よね)

伊織「ふんどしを……穿く日なのかしら?」

小鳥(ふんどしのくだりは広げなくて良いのよ、伊織ちゃん!?)

P「ど、どうなんだろな……? いっ、伊織も穿いてみるか、なんてな! あはは……」

小鳥(ちょっ、プロデューサーさん、完全に気が動転してる!?)


伊織「そ、そうねっ、気が引き締まるかもしれないものね(?)」

小鳥(伊織ちゃんもだった! キタコレ!)

P「よ、よしっ! じゃあ、ふんどしアイドルとして頑張ってみるか!」

小鳥(ふんどしアイドルってもう色々とアウトだけど、面白いからもう少し泳がせてみようかしら)

伊織「ちゃ、ちゃんとピンクにしなさいよ?」

P「任せとけ。しかし、それだけじゃインパクトに欠ける、か……?」

小鳥(いやいや、業界震撼ですよ)


伊織「シャルルとペアルックなんてどうかしら?」

P「それだ! しかし……あと一押しが欲しいところ……」

小鳥(シャルルは犠牲になったのだ。犠牲の犠牲に、な)

P「そうだ……下着メーカーに声を掛けてみよう」

伊織「ふふっ、なるほど、ね」

小鳥(どういうことかしら?)


伊織「ブームをこっちで作って、みんなが乗っかりやすいようにしてあげるのね? にひひっ♪ 」

P「こいつはビッグプロジェクトになりそうだな……」

伊織「ふふっ。覚悟は良い? 失敗は許されないわよ?」


P「俺と伊織の二人なら」

伊織「私とアンタの二人なら」


P・伊織「世界にだって羽ばたけるっ!」


小鳥(二人ともすっごく、いきいきしてる。ふんどしで)


P「よし、早速タイアップも兼ねてメーカー側と会議だ!」

伊織「ええ、うだうだしてなんかいられないわ!」

小鳥(あっ、この流れは……そろそろ、止めないと───)


───1年後。


P「まさか、本当にふんどしブームが来るなんてな……」

伊織「あら? アンタは信じて無かったの?」

P「いや、そんなことはないけど……」


伊織「私は信じてたわよ? 自分自身の力を。そして、アンタを」

P「伊織……!」

伊織「誰もが夢物語と笑った……。だけど、信じ切ったから私達は夢を叶えたの」

P「あぁ、そうだな。流石、水瀬伊織、だ」

伊織「もうっ! 今日からは水瀬伊織じゃないでしょ?」

P「ははは、そうだったな。幸せにするよ」

伊織「幸せにしてもらおうだなんて思ってないわ。二人で幸せになるんだから♪」


水瀬伊織(16)さん、ファンに祝福され、ふんどし婚。

お相手は水瀬伊織さんが所属する事務所のプロデューサー。

花嫁衣装として用意されたのは純白のウェディングふんどし。
プラチナの刺繍やダイヤモンドで装飾され
総額なんと200万。

二人は本日、水瀬プリンセスホテルで挙式、そのまま自家用機で新婚旅行に────。


小鳥「────なんて事に……っ!」ガタッ

伊織・P「っ!?」


P「と、突然立ち上がってどうしたんですか、音無さん……?」

小鳥「あ、いえ! ちょっと伊織ちゃんに話が……」

伊織「……私? あとにしてもらえないかしら? 今からカリスマふんどしデザイナーに交渉しに行くのよ」

小鳥(私が小鳥ップしてる間に、話が進んでる!?)

P「いや、これから忙しくなるんだ、今のうちに話しておいた方がいいんじゃないのか?」

伊織「それもそうね。それで、話って?」

小鳥「ちょっとココじゃなんだから給湯室に……」


伊織「はぁ? ココでいいわよ」

小鳥「いいからコッチに来て、伊織ちゃん!」グイッ

伊織「ちょっ、ちょっと!?」

小鳥「じゃあ、ちょっと伊織ちゃん借りますねー?」ガチャッ

P「はい! あっ、でも、出来るだけ手短にお願いしまーす」

小鳥「一言で済みますから!」バタン




伊織「……それで、わざわざ給湯室にまで連れてきて、なに?」


小鳥「伊織ちゃん、プロデューサーさんに渡す物があるんじゃないのかしら?」

伊織「渡す物……? ふんどしの企画案?」

小鳥「やだこの子……完全にふんどしの魔力に取り憑かれてる……!」

伊織「……?」

小鳥「目を覚まして伊織ちゃん! 今日は何の日っ!?」

伊織「今日は……ふんどしの日でしょ? まったく……目を覚ますのは小鳥の方じゃないの?」

小鳥「何て濁った目……っ! そうじゃないでしょっ!」ガシッ


伊織「きゃっ!? ちょっとっ……痛っ」

小鳥「今日は女の子にとって一年で一番大切な日なのよ!?」

伊織「一番……大切な、日……? うっ、頭が……」

小鳥「もう少しよ伊織ちゃん! 思い出して!!」ユサユサ

伊織「いやっ! 怖いっ!」

小鳥「逃げちゃだめ! 帰って来なさいっ!」

伊織「やだっ……怖いのっ!」


小鳥「プロデューサーさんにバレンタインチョコを渡すんでしょ?!!!」


伊織「───っ……、チョコ……?」

小鳥「きっとプロデューサーさん、伊織ちゃんがチョコをくれるのを待ってると思う」

伊織「私のチョコ……を……?」

小鳥「えぇ。早く、そのチョコでプロデューサーさんの呪いを解いてあげて」

伊織「……ありがとう、小鳥」

小鳥「ふふっ、頑張ってね♪」

伊織「私は逃げない……私はスーパーアイドル伊織ちゃんなんだから!」ガチャ



P「おっ、どうやら話は済んだみたいだな」


伊織「えぇ、済んだわ」

P「じゃあ、さっそく下着メーカーに……」

伊織「行かない」

小鳥(頑張って伊織ちゃん)コソッ

P「ははは、どうしたんだ?」

伊織「なんて澱んだ瞳……きっと私もこんな目をしていたのね……」

P「……二人でアイドル業界に革命を起こすんじゃなかったのか?」

伊織「アンタがこうなった責任は、きっと私にあるのよね……」

P「何を言ってるんだ? ほら早く用意を……」


伊織「臆病過ぎただけ……アンタも私も……」

P「伊織……?」

伊織「ねぇ、アンタは本当に私がふんどしを穿けばトップアイドルになれると思ってるの?」

P「えっ…………?」

伊織「可哀相に……アンタが望むならふんどしだって穿いてあげる。でも、その前にこれだけは受け取ってっ!」

P「これ……、チョコ……?」

伊織「私の気持ち、どう? チョコが溶けちゃうくらい暖かいでしょ?」

P「…………ありがとう」

伊織「あっアンタ、正気に戻っ……」


P「じゃあ伊織にぴったりのふんどしを作ってもらえるように頼みに行こうか」


伊織「────っ!? アンタ、まだ……っ」

小鳥「伊織ちゃんっ!」タタッ

伊織「小鳥……私、ダメだった……頑張ったけど……ダメだったの……!」ジワッ

小鳥「プロデューサーさんは、今の伊織ちゃんを見て何も思わないんですか!?」

P「何も、とは?」

小鳥「こんなにプロデューサーさんのために、一生懸命なのに!」

P「ははは、こっちだって一生懸命ですよ」


小鳥「いい加減にして下さいっ!」

伊織「小鳥っ! もう……良いの。もう無理なのよ……」

小鳥「何言ってるの、伊織ちゃ……」

伊織「私、ふんどしを穿く……。さ、行きましょ?」

P「おう」



小鳥「────待ってっ!」

伊織「小鳥……」

P「……まだ、何か用が?」クルッ


小鳥「プロデューサーさんは本当に伊織ちゃんにふんどしが似合うと思ってるんですか?」

P「……ええ。もちろんです」

小鳥「そうですか……だったらプロデューサーさんの目は、とんだ節穴ですね」

P「仰る意味が分かりませんね。俺は誰よりも伊織にふんどしが似合うと思ってますが?」

小鳥「確かに伊織ちゃんならふんどしですらお洒落に穿きこなすでしょうね……」

P「でしょう? もうすぐ、今世紀最大のファッションモンスターが誕生しますよ!」

小鳥「……分かってない。プロデューサーさんはやっぱり何も分かってない」

P「小鳥さん、あなたの方こそ、分かってない!」

小鳥「いいえ! 伊織ちゃんの魅力はこの瞬間こそ最大限に発揮されるんですっ!!」バッ


伊織「……えっ?」キョトン

小鳥「どうですか、プロデューサーさん」

伊織「ちょっと、小鳥、なんで私のスカートを捲り上げて……っ!!!??」


小鳥「 伊 織 ち ゃ ん は 生 パ ン が 一 番 な ん で す っ ! ! 」


伊織「んにゃあぁあああああっ!!?」


小鳥「そして! この恥ずかしがる顔こそが最高のアピールなんです!!」


伊織「こっ、こらっ! 下ろせ! やだっ!? 下ろして! パンツ丸見っ……イヤぁあああああ!?」


小鳥「これでもまだ、ふんどしが良いですかプロデューサーさん?」

P「…………」

伊織「アンタ……」

P「…………あれっ」

小鳥「プロデューサーさん……」


P「なんで、俺……泣いて……?」ぽろぽろ


伊織「元に、戻ったの……?」


小鳥「ええ……きっと。おかえりなさい、プロデューサーさん」


P「うっ……ぐすっ……ぐっ……」ぽろぽろ

小鳥「さてと、あとは伊織ちゃんに任せるわね?」

伊織「あ、ちょっと……」

小鳥「丁度、お茶が切れてたのよね~♪」ガチャ


伊織「…………お節介なんだからっ」ボソッ

P「ごめんっ、ごめんっ、伊織……っ!」

伊織「まったくっ。アンタも大概、手が掛かるわね? ふふっ」

P「ごめん……」


伊織「まさか、パンツを見せて、泣かれるなんて思わなかったわ」

P「いや、本当にごめん」

伊織「こっちが泣きたいくらいよ」

P「ごめん。ただ……本当に、感動したんだ……」

伊織「お、大袈裟じゃない?」

P「俺は本当に何も分かってなかったんだ。プロデューサー失格だな……」

伊織「そんな事ない!」

P「伊織……?」


伊織「アンタはいつだって私の為に……みんなの為に頑張ってた! それだけは疑いの余地なんか無い!」

P「だけど、本当に大事なモノは見えて無かったんだ」

伊織「本当に大事な、モノ……?」

P「あぁ。俺は、どうやったら伊織たちが売れるか……そればっかり考えてたのかもしれない……」

伊織「…………」

P「本当に大事なのは、伊織たちの魅力をファンに伝える事だったのにな」


伊織「伝える、か……。私も、もっと素直にならなきゃ、ね……」ボソッ


P「ん?」

伊織「なっ、なんでも無いわよっ……じゃなくて……」

P「うん?」

伊織「その、さっきの本命ってやつ……だからっ!」カーッ

P「さっきのって……パンツ?」





伊織「………バカっ」



               おしまい。

はい、おしまい!
ここまで読んでくれた人がいたらありがとです。
そして、支援ありがとでした。

ではまたどこかで。

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