麦野「佐天涙子ってグイグイ来るわね」(330)

麦野「遊園地だあ?」

フレンダ「そうそう、明日みんなで遊園地行こうよ」

麦野「お前馬鹿じゃねえの? 自分の立場考えろよ」

フレンダ「別に普通じゃん。中高生が遊園地なんてさ」

麦野「普通じゃねえ中高生だからおかしいって言ってんだよ」

滝壺「私はいい考えだと思う」

麦野「はあ? アンタ正気?」

滝壺「最近は仕事詰めだったし息抜きは必要なんじゃないかな」

フレンダ「さっすが滝壺! 話が分かるって訳よ!」

絹旗「何の話をしてるんですか?」

麦野「アホ二人がみんなで遊園地に行きたいんだって」

絹旗「へえ、いいですね。行きましょう」

麦野「あ゙ぁん!?」

絹旗「すみません一回超考え直していいですか?」

フレンダ「鶴の一声ならぬ麦野の一喝って訳よ……」

絹旗「やっぱり超行きたいです……」

フレンダ「結局超行きたいって訳よ……」

滝壺「超行きたいって訳。私はそんな私を応援している」

麦野「っせえな! だったらテメエらだけで行ってこいよボケ!」

フレンダ「やだよ麦野ぉ……一緒に行こ……?」

麦野「死ねっ」

フレンダ「うええええん!」

滝壺「泣ーかした。むぎのがふれんだ泣ーかした」

麦野「フレンダ、黙んねえと殺す」

フレンダ「っ!」

麦野「よし」

フレンダ「……ぐすっ、……ぐしゅっ」

絹旗「うわあ、フレンダ顔ビッチャビチャですね」

麦野「…………ちっ」

麦野「分ぁかったよ! 行きゃあいいんだろ!? っせえな!!」

フレンダ(だ……駄目だ、まだ笑うな……堪えるんだ)

フレンダ「ありがと……むぎのぉ……」

麦野「代わりに一発殴らせろ」

フレンダ「そりゃないって訳よ! ちょっ! 殴るってそれテレビで!? テレビで殴るの!?」

麦野「お休みフレンダまた明日」

フレンダ「起きれない起きれない! 眠り姫になっちゃう!」

フレンダ「うわっ! あっぶね! あっぶね!!」

麦野「テメエの嘘泣きなんざ、お・み・と・お・し、なんだにゃあ死ねコラ」

絹旗「現地集合でいいですよね」

滝壺「じゃあそういう事で」

絹旗「皆さん、超遅れないでくださいよ?」

フレンダ「むしろ生き急ぐ勢いな訳ですけど!?」

麦野「ははっ! 座布団いちまーい」

フレンダ「命もおしまーい、なんてオチはイヤな訳よぉー!!」

~翌日・遊園地~


麦野「…………」

麦野「…………」

麦野「…………」




麦野「誰も来ねえじゃねえか!!!」

麦野「クソが! 何やってんのよ……!」

ピッピッ、プルルルルルルルッ

 『はい、フレンダです』

麦野「テメエ! 今どこに」

 『フレンダはただいま電話に出ることが出来ません』
 『貴方がこれを聞いている頃、私はテレビで殴られてほぼ死んでいるでしょう』

麦野「……ちょっとやりすぎたかもね」

絹旗『すみ゙まぜん、熱が超41度出てじまいまじた。今がら行ぎまずので、おえっ、待っ……お゙ぇ』

麦野「いや、じゃあいいよ、心おきなく死ね」



滝壺『今? 遊園地にいるよ? えっと、え? 違うの? ここ動物園? ごめん麦野。間違えた』

麦野「いいよ、カバの檻に飛び込んで死ね」



麦野「……なんなのよマジで」

麦野「……帰ろ」

御坂「……あっ」

麦野「え? ……げっ!」

佐天「御坂さんどうしたんですかー? 知り合い?」

御坂「……こんなオバサン知らないわ」

麦野「ブチ殺されてえのか第三位サマよぉ」

御坂「あらやだ怖いなー、これだから更年期障害持ちは」

麦野「ションベン臭いガキにはアタシの魅力は分かんないでしょうね」

御坂「だっ、れが、ションベン臭いですってえ?」

麦野「自覚ないの? くっさいのよガキ」

佐天「ちょっ! ちょっとストップストップ!」

佐天「こんな所で騒いだら迷惑ですよ!」

御坂「う、分かったわよ」

佐天「ほら御坂さん、謝って」

御坂「な! 何で私が謝るのよ!」

佐天「御坂さんがケンカ売ったんじゃないですか」

麦野「それもそうだわ。謝れよ、ミサカサァン」

御坂「こっ、の……!」

御坂「佐天さんはコイツのこと知らないから!」

佐天「みーさーかーさん?」

御坂「ゔっ……」

佐天「ね?」

御坂「くっ、分かったわよ。……スイマセンデシタ」

麦野「麦野先輩、だろ?」

御坂「ぐぬぬぬぬぬ」

御坂「すいませんでした! 麦野先輩ごめんなさいませ! これでいい!?」

麦野「は? いいわけねえだろ。土下座しろよガキ」

御坂「こんのババア! チョーシこいてんじゃないわよ!」

麦野「あ? 何? やんの? チビんじゃねえぞションベン小僧!」

佐天「あーもー! いい加減にしてよ! メンドクサいな!」

佐天「御坂さんはあっちで飲み物買ってきて! 頭冷やして!」

御坂「くっ、……すー、はー、じゃあ、行ってくる、ね?」

佐天「アナタも御坂さんが戻ってきたらちゃんと謝ってくださいね」

麦野「何でアタシが謝んなくちゃいけねえんだよ」

佐天「アナタが神経を逆撫でるような事を言ったからです」

麦野「だから、あっちがケンカ売ってきたんだろうが」

佐天「流せばいいじゃないですか、子供じゃないんだから」

麦野「……アンタ、なかなか言うじゃない」

佐天「それはどうも」

麦野「……はあ、もういいわ。今日はもう諦めた、降参」

佐天「? 何かあったんですか?」

麦野「アンタにゃ関係ないでしょ」

佐天「まあまあ、話してみてくださいよ。ね?」

麦野「……別に、ドタキャンされただけよ」

佐天「んー、ってことは、今一人って事ですか?」

麦野「そお、だけ、どー? どーーだっていいでしょ」

佐天「……ふぅん。あ、御坂さん帰ってきた」

御坂「ただいま……、これ、どうぞ……」

佐天「おー、ありがとうございます」

御坂「……これ、アンタの」

麦野「……どーも」

御坂「ふん」

麦野「あー……悪かったわね、第三位。大人げなかったわ」

御坂「! べっ、べっつに? 全然気にしてませんけど?」

麦野「ガキの挑発なんか流せばよかった」

御坂(この野郎)

佐天「仲直りが出来たところで、提案があるんですけど」

御坂「提案? って?」

佐天「こちらのお姉さん、今一人なんですって」

御坂「一人遊園地って……レベルたけ~……」

麦野「ブチ殺すぞ」

佐天「ということで、いいですよね?」


御坂麦野「「 ……はい? 」」

麦野「…………」

御坂「……何でこうなるのよ」

麦野「アタシが聞きたいっつーの」

佐天「次アレ乗りましょうよー!」

麦野「……すごいわねあの子」

御坂「……グイグイ来るでしょ?」

佐天「次、お化け屋敷入ろ!」

麦野「お化け屋敷ぃ? ないわー」

佐天「なんでー!? 面白そうじゃないですか!」

御坂「くくっ、怖くて入りたくないって事じゃないの?」

麦野(仕事の雰囲気と被るんだよなぁ)

麦野「……ま、コーヒーカップ乗せられるよりゃマシか」

佐天「やった!」

ヒタヒタ……ピチョン……ピチョン……


佐天「おおー、あははっ、怖ーい!」

麦野「少し肌寒くない?」

御坂「結構、雰囲気あるわね……」

麦野「アンタさっきゴチャゴチャ言ってた割に、ビビってんの?」

御坂「ビビってないわよ!」

佐天「…………ふあっ」

「っくひゅん!」


御坂「ひんっ!」

佐天「あ、すいません。くしゃみ出ちゃいました」

御坂「ちょっとぉ、おどかさないでよ……」

麦野「ビビってんじゃん、ガキ」

御坂「ビビってないわよ! ちょっとしか!」

麦野「何ならエスケープする? 係員に泣きついてさあ」

御坂「私が途中で逃げるわけあるかー!」

佐天「…………」

麦野「ま、どうしてもお願いするって言うなら? アタシがケツ持っ」

佐天「ふぅ~~~」

麦野「ひゃあん!!」

御坂「うわあああっ!!!」

佐天「あっはっはっはっは!」

麦野「てえぇめえぇ……なぁにするのかにゃーん……?」

佐天「『ひゃあん』だって! あっはっはっは!」

御坂「腰っ、腰がっ、抜けるかとっ」

麦野「お仕置きが必要みたいねえ……るぅいぃこぉちゃああああん!」

佐天「あっはっはっは! 怖ーい!!」

麦野「待てコラァ! 逃げんなぁ!」

御坂「ちょっとぉ! 置いてかないでよ!」

佐天「次アレね! フリーフォール乗ろ!」

麦野「なにこの子……スタミナ無限なの……?」

御坂「なんか、逆に元気になってってない……?」

佐天「麦野さーん、御坂さーん、はーやーくー」

麦野「ちょい休ませなさいよ……」

御坂「私も限界……」

佐天「だらしないなあ」

佐天「はい、ソフトクリーム餡蜜味でーす!」

麦野「こういうのってさ、素直に餡蜜買えよって思うわ」

御坂「何にちなんで餡蜜なのかも不明よね、名物でもないし」

佐天「まあ食べてみてくださいよ! 言葉にならない味ですから!」

麦野「完全に地雷のキャッチコピーじゃない」

佐天「ままっ! 騙されたと思って! はい、ぱくー!」

麦野「はむ……」

御坂「あむ……」

麦野「…………」

御坂「…………」



「「 …………!」」

麦野「不味……くはない」

御坂「甘……くもない」

麦野「餡蜜……でもない」

御坂「嫌い……でもない」


「「 ……言葉にならない 」」


佐天「でしょー!? 不思議!!」

麦野「どうしよう、癖になりそう」

御坂「考えさせられるアイスね」

佐天「新感覚ですよねー、このソフトクリーム」

麦野「さっきまでと景色が違って見えるわ」

御坂「精神が落ち着いていくのを感じる」

佐天「それ以上行ったら流石にヤバくないですかね」

佐天「いやー、遊びましたねー」

御坂「そろそろいい時間ね」

麦野「あっそ、じゃ、解散ね。バイバイ」

佐天「あっ、麦野さん待って」

麦野「あによ?」

佐天「メアドメアド、交換しよ」

麦野「何で交換することが当たり前みたいになってんの?」

佐天「え? 当たり前でしょ? また遊ぶときに困るじゃん」

麦野「何でまた会うこと前提で話してんの?」

佐天「いいからいいから」

麦野「いや、いいからじゃなくて」

佐天「いいからいいから」

~アイテム・たまり場~


浜面「で、話って何だ?」

滝壺「もしかしたら私はむぎのにパァン!されるかも知れない」

浜面「……何で?」

滝壺「三人揃って約束をすっぽかしてしまった」

浜面「逃げよう! ここはもう駄目だ!」

滝壺「内容を一切聞きもしない辺り、むぎのへ寄せる絶大な負の信頼を感じる」

浜面「とにかく外へ出るぞ!」


ガチャ!


麦野「ぅおっと、……急に開けんじゃねえよバカ面」

浜面「……お帰りなさいませ、麦野様」

麦野「はあ? いいからさっさとどきなさいよ」

浜面「はい! どうぞこちらへ!」

麦野「……二人だけなの?」

滝壺「うん、きぬはたとふれんだはICUに運ばれた」

麦野「ふぅん」

滝壺「むぎの、今日はごめんね。約束をすっぽかして」

麦野「んー? 別にいいわよ」

浜面(別にいい……だと……?)

麦野「…………」

浜面(コイツ、本当に麦野か……?)

麦野「……あっ」

浜面「はい!? 何でございましょうか!?」

麦野「アンタにゃ関係ないわ。いちいちデカい声出すな」

浜面「すいませんでした……」

麦野(佐天涙子からメール来た……)

 
~~~~

from 佐天涙子
sub 今日の戦利品!


遊園地楽しかったね!またみんなで行こう!
今日撮った麦野さんの写メ送ります!
麦野さんの笑った顔、ラヴリーだね!

それから、御坂さんは年下なんだから優しくしてあげてね?

~~~~

麦野「写メなんて撮ってやがったのかよ……」

滝壺「写メ? 何? 誰から?」

麦野「……誰だっていいでしょ」

滝壺「超気になるって訳だにゃーん」

麦野「うっさい」

麦野(笑った顔だあ……?)

麦野(うわっ……本当に笑ってら、アタシ)

麦野(つうか、このアングルってあり得なくない?)

麦野(マジどうやって撮ったのよ……)

麦野(……スリーショットまであるし)


ヴヴヴッ、カチカチッ


麦野(またメール来たよ。スパン短いな……)

 
~~~~

from 佐天涙子
sub ちなみに

麦野さんの悲鳴も録音してあるけど着信にしてヨロシ?

~~~~



麦野「ヨロシい訳ねえだろ!!! アホか!!!」

浜面「!!!!」

麦野(今すぐ、消しなさい、っと)


『嫌です 家宝にします』


麦野「ぐぬっ」

麦野(そこをなんとか、お願いします、っと)


『そんなこと言ってホントは嬉しいくせに』


麦野「このやろっ」

滝壺「……むぎのは一体どうしちゃったんだろうね」

浜面「……さっきからずっと携帯とにらめっこしてるな」

滝壺「にらめっこというより百面相じゃない?」

浜面「まあ、8割くらいはニヤケてるけどな」

滝壺「にらめっこだったら惨敗確定ね」

麦野(……送信、っと)

麦野「…………」

麦野(やっべえ……超楽しい……)

麦野(メール打つのってこんなに楽しいの?)

麦野(メール待つのってこんなに楽しいの?)

麦野(メール読むのってこんなに楽しいの?)


ヴヴヴッ、カチカチッ……

チュンチュン、チュン


麦野「…………」

麦野(メールしてたらいつの間にか朝になっていた……)

滝壺「むぎの、おはよう。ずっと起きてたの?」

麦野「……アタシ……寝るから」

滝壺「今から? 後で起こそうか?」

麦野「いや、起こしたら殺す……」

滝壺「そう、お休み」

 
ヴヴヴッ、ヴヴヴッ

麦野「…………」

カチカチッ

 『結局一晩中メールしちゃったね 学校行ってきまーす』

麦野「……中学生って疲れない生き物なの?」

滝壺「なにが?」

麦野「……なんでも」

―――
――



麦野「っあ゙ー……寝覚め最っ悪……」

フレンダ「むっぎっのー! おはよー! もう昼だけどねー!」

麦野「おらっ」

フレンダ「ぐっほぇ! なんで、はらぱん、すんの……?」

麦野「イライラするから」

フレンダ「りっ、りふじん、ってわけよ……」

麦野「そういえば、アンタ生きてたんだ」

フレンダ「三途の川の向こう岸をタッチして折り返してきた訳よ」

麦野「もう一往復してこいよ」

フレンダ「ゴメンだよ! 絶対途中で沈んじゃうよ!」

麦野「つまり死なないってことでしょ? じゃあ大丈夫ね」

フレンダ「植物状態ってことでしょ!? 駄目じゃん!」

滝壺「ご飯食べるけど、どうする?」

フレンダ「もちろん食べるって訳よ」

麦野「アタシは食欲ないからいい、風呂入ってくる」

フレンダ「じゃあ私も一緒にお風呂入る」

麦野「返り血を処理する手間が省けるわね」

フレンダ「よーし、ご飯食べるぞー。滝壺ー、サバー」

麦野「あーくそ、酷い顔してるわ」

麦野「何だってアタシがこんな目に……」

麦野「……アタシのせいか」

麦野「…………」

麦野「あー……調子狂うわー……」

滝壺「あ、おかえりむぎの。お茶飲む?」

麦野「ん、ありがと。コーヒーにしてくれる?」

フレンダ「麦野ー、昨日の埋め合わせにどっか行かない?」

麦野「あの世とか?」

フレンダ「いい加減その路線から離れよう。私のライフはもう0だよ」

麦野「はいはい」

麦野「まあ絶対行かないけど」

フレンダ「なんで!?」

麦野「疲れてんだよ、昨日の……」

フレンダ「昨日の? 何?」

滝壺「そう言えばむぎの、昨日は何してたの?」

麦野「……どこ行きたいの? フレンダ」

フレンダ「…………」

フレンダ(あからさまにはぐらかしている……)

フレンダ(知りたい……、『麦野が昨日何をしていたのか』……)

フレンダ(しかしここで頷いたら私から二度と聞くことは出来ないだろう……)

麦野「行かないなら別にいい」

フレンダ「はい行きまっす。どこまでもついて行きまっす」

―――
――



麦野「で、どこに向かってんの?」

フレンダ「この間イイカンジのカフェ見つけたからさ、そこ行くって訳」

麦野「ふーん、遠出してわざわざカフェねえ」

フレンダ「気の利くフレンダさんとしては、お疲れの麦野にリラックスしてもらいたい訳よ」

麦野「はいはい、ありがとね」

フレンダ「くっはー! 麦野からありがとう頂きましたー!」

フレンダ「はいどうぞ! いらっしゃいませー!」

麦野「へえ、内装はなかなかいいんじゃない? レトロで」

フレンダ「でしょー? 私のとっておきの隠れ家って訳よ」

御坂「……あっ」

麦野「……げっ」

フレンダ「え? ……げえっ!」

フレンダ「何で超電磁砲がここに居るにょ!?」

佐天「おっ、麦野さーん。こんにちは」

麦野「またかよ……」

初春「この人が例の麦野さんですね?」

御坂「よく会うわね、尾けてんじゃないでしょうね」

麦野「女のケツ追いかけるにしても相手選ぶっつーの」

フレンダ「あっれー……? おかしいな、和やかっぽい?」

初春「初めまして、初春飾利です。こちらの二人の友達です」

麦野「あん? ああ、麦野沈利。よろしく。……いや、よろしくじゃねえわ」

フレンダ「あれれー? 麦野が何だか麦野じゃない麦野な訳よ。借りてきた麦野」

佐天「麦野さんって外国人の友達がいたの? 佐天涙子でーす、よろしく!」

フレンダ「あ、フレンダ=セイヴェルンです。よろしく。……いや、よろしくじゃない訳よ!」

フレンダ「ちょっと麦野! どういう訳よ! この女は誰!?」

麦野「別に? ただの知り合いよ」

佐天「……表向きはね?」

フレンダ「ぬあっ!? 麦野ぉ! 私というものがありながらー!」

麦野「おい」

佐天「昨夜はお楽しみでしたね、む・ぎ・の・さーん?」

フレンダ「やめてー! 聞きたくないって訳よー!」

フレンダ「……えー、要するに? 遊園地で? 遊んだ? 昨日?」

佐天「本当は初春と白井さんも行くはずだったのにねえ」

初春「白井さんは今日も缶詰ですけどね。ところで麦野さん、大変だったでしょ?」

麦野「…………………………………………いや?」

佐天「ちょっと麦野さーん!? その間は何ですかね!?」

御坂「佐天さんと遊園地の組み合わせはスゴかったわ……」

フレンダ「無視しないで欲しいって訳よ!」

麦野「涙子さあ、もしかして不眠?」

佐天「授業中はヤバかったですけどねー、不眠です」

麦野「……中学生すげえわ」

フレンダ「っていうか何で呼び捨てで呼んでる訳!? 許されざるんだけど!!」

御坂「なんでアンタが許可出すのよ」

フレンダ「私の麦野にちょっかい出さないで欲しいって訳よ!」

麦野「いつからアタシがお前の物になったって? どこ向いてんだよ、こっち見ろコラ」

フレンダ「麦野が、麦野が、私から離れていくって訳よぉ……」

初春「白井さんとタメ張る面倒くささですね」

麦野「アンタもいい性格してるわね……」

初春「やだなあ、そんな事無いですよ」

御坂「さてと、ケーキのテイクアウトしてくるわね? 黒子用に」

初春「あ、私も行きます。私用に」

御坂「初春さん、さっき散々食べたじゃない……」

佐天「ごゆっくりぃ……」

麦野「フレンダ、アンタもアタシに選んできてよ。お腹空いてきた」

フレンダ「食生活が乱れるとお肌に出るって訳よ」

麦野「ゴチャゴチャ言うなら帰っていいけど」

フレンダ「っしゃあ! ホールで買ってやるって訳よ!」

麦野「アホかアイツは」

佐天「…………はふ」

麦野「……眠いんなら寝れば?」

佐天「……うん」

麦野「ちょっと、誰が枕になってやるっつったよ」

佐天「……うん」

麦野「……あーもー」

佐天「すぅ……すぅ……」

フレンダ「…………」

初春「……おー」

御坂「……くくっ」

麦野「……何笑ってんのよ第三位」

御坂「べっつにー?」

初春「はい、チーズっと」

麦野「あ、こら!」

初春「起きちゃいますよ? はい御坂さん、転送」

御坂「よく撮れてるじゃない、待ち受けにしよっかなー」

麦野「てめえら覚えてやがれよ……」

フレンダ「…………」

~アイテム・たまり場~


滝壺「ふれんだはどうしたの?」

麦野「んー? さあね」

フレンダ「麦野が私を捨てた……麦野のばか……」

麦野「おいフレンダ、邪魔だからそこどけ」

フレンダ「私にも膝枕してよぉ……麦野ぉ……」

麦野「気が向いたらね。どけ」

フレンダ「生返事が心に突き刺さるって訳よ……」

麦野「やーれやれ、人生で最もおかしな二日間だったわ」

ヴヴヴッ

麦野「……うわマジかよ、シカトしようかな……」

ヴヴヴッ、ヴヴヴッ、ヴヴッ…

麦野「…………」

麦野「……ちっ」

カチカチッ

 
~~~~

from 佐天涙子
sub かふぇのこと

今日は途中で寝ちゃってごめんなさい!急に限界来ちゃったみたい……
麦野さんの顔見て安心しちゃったのかな?なんつってね!
麦野さんもちょっとお疲れ気味だったみたいだし夜のメールは控えるね?
でわでわ、お休みなさ~い


麦野さんのフトモモ、すげえ気持ちよかったぜ……

~~~~

麦野「何で最後におっさんみたいなコメントぶっこむんだよ……」

麦野(……本当にグイグイ来るわねこの子)

麦野(会って二日目とは思えないわ)

麦野「…………」

麦野(……顔見て安心、ねえ)  

麦野「顔……」

麦野「寝顔、可愛かったな……」

麦野「…………」
            フレンダ
麦野「……アタシは変態かっつーの、馬鹿らし」


 < 麦野!? 今私を呼んだ!? 膝枕!?


麦野「うるせえ! 死ね!」

~翌日・ファミレス~


フレンダ「…………」

麦野「いつまでブータレてんのよ」

フレンダ「……麦野が膝枕してくれるまで」

麦野「つまりそれは一生って事でいいんだな?」

滝壺「ふれんだ、引く、にぎやか、イコール」

麦野「無口な馬鹿だろ」

浜面「へーい、ドリンクお待ちぃ」

麦野「アタシやっぱアイスティーにするわ」

浜面「取りに行く前に言えよ!」

麦野「だから今から取りに行くんだろ?」

滝壺「頑張れはまづら。私はそんなはま……あ、私もアイスティー飲みたい」

浜面「わーったよ! 行きますよ! フレンダはいいんだな!?」

フレンダ「別にいいって訳ですよーだ……」

 
Prrrrr、Prrrrr


麦野「あ」

滝壺「またメール?」

麦野「いや、電話。……もしもし」

 『あっ麦野さん? 涙子でーす!』

麦野「何か用?」

 『用が無くちゃあ、電話しちゃいけませんかい?』

麦野「切るわ」

 『あー! 待って待って!』

 『あのね、今度の週末みんなで会えないかなーって』

麦野「……何で?」

 『遊びたいから』

麦野「あっそ。行けたら行く」

 『その返しは禁止ー! 来るのか来るのかはっきりして!』

麦野「来る以外の返事は認めないつもりかよ」

麦野「……わかったわよ。なるべく行くから」

 『なるべくってどこの国の言葉ですかー! わかりませーん!』

麦野「あー、行けばいいんでしょ? 行くわよ、はいはい」

 『はいけってー! じゃあフレンダさんも連れてきてね。ばいばい』

麦野「フレっ? ちょっ、まっ……切りやがった……」

滝壺「電話相手、さてんるいこ?」

麦野「……ふん」

フレンダ「結局麦野は若い子を取るって訳よ……」

滝壺「ふれんだもまだまだお若いよ」

麦野「……そういやフレンダ、アンタ週末空いてる?」

フレンダ「……なんで?」

麦野「いや、遊び行こうって今」

フレンダ「めっちゃ空いてるって訳よ! 空きすぎてスキマ風ヒューヒューいってる訳よ!」

滝壺「珍しいね、むぎのがふれんだ誘うなんて」

フレンダ「結局最後に戻ってくるのは私の所って訳よ!」

麦野「あー……ま、いっか」

滝壺「私は誘ってくれないの?」

麦野「来たけりゃ来ればいいんじゃない?」

フレンダ「駄目ー! 滝壺は駄目ー! 私だけなの!」

滝壺「……ぶう」

浜面「おら、アイスティー持ってきたぞ」

フレンダ「あ、私もアイスティー持ってきて欲しいって訳よ!」

浜面「一回で済ませろよ! 頼むから!」

~週末・某所~


フレンダ「……これはどういう訳よ、麦野」

麦野「見りゃ分かんでしょ?」

佐天「麦野さん、フレンダさん、ちわっす!」

御坂「来たんだ、麦野せ・ん・ぱ・い」

初春「この間は面白い物を見せていただいてありがとうございました」

黒子「白井黒子ですの、お初にお目にかかりますの」

フレンダ「多いよ! 流石に6人は多いよ! 大所帯だよ!」

フレンダ「人数調整を要求するって訳よ!」

麦野「じゃあお前が帰れば?」

フレンダ「そんな殺生な!」

黒子「ではわたくしとお姉さまが夜の街に消える展開では」

御坂「黒子が帰るそうだから丁度いいわね」

黒子「そんなご無体な!」

初春「じゃあ三人二組くらいでまとまりますか?」

佐天「変則ダブルデートですか、三角関係だねえ」

フレンダ「麦野と同じグループがいいって訳よ!」

黒子「お姉さまと同じグループがいいですの!」

麦野「フレンダじゃないなら誰でもいい」

御坂「黒子と一緒は危なそうだからイヤ」


フレンダ・黒子「「 のおおおおおおおおお!!」」

佐天「結局この三人になっちゃいましたね」

麦野「ねえ第三位、帰りたいなら帰っていいのよ?」

御坂「冗談。アンタこそ無理して付き合わなくていいけど?」

麦野「アンタが消えれば無理する事もなくなるって言ってるんだけど」

御坂「いやむしろアンタが消えることが理にかなった選択だと思うけど」

佐天「……あれえ? もしかしてケンカですか?」

麦野「……別に、ただのコミュニケーションよ」

御坂「……そうそう、別にケンカとかじゃなくて」

佐天「じゃあ二人は仲良しなんですね?」

麦野「アタシが? コイツと? はっ、ないわー」

御坂「はあ!? こっちだって願い下げだっつーの!」

佐天「やっぱりケンカなんだー、ふーん、そっかそっかー」

佐天「やだなー、ケンカかー、折角遊んでるのになー」

麦野「だからケンカじゃなくて……」

佐天「じゃあ仲良しなんですか?」

御坂「…………そうよ?」

佐天「じゃあハグしてください、二人で」

麦野「うげっ」

御坂「おえっ」

佐天「仲良しならハグくらい何でもないですよねー?」

麦野「同性でそういうのはマジねえから」

御坂「黒子でお腹いっぱいなのよねマジで」

佐天「……ぐすっ、じゃあいいです……」


「「!!!!?」」

麦野(おい! どうすんのよコレ!)

御坂(知らないわよ! 大体アンタが突っかかってくるから!)

麦野(テメエが『私達仲良しでぇす☆』なんて安請け合いするからだろうが!)

御坂(語尾に☆を入れんな! シイタケがちらついてイライラすんのよ!)

佐天「……ねえ」

佐天「……はぐ」

麦野「ぐっ、……ったわよ、やりゃいいんでしょ」

御坂「えー……まじでぇー……?」

麦野「ぐだぐだ言ってんじゃねえよ、アタシだって反吐がでるっつの」

御坂「……ぬうう、ええい! ままよ!」


むぎゅっ!


佐天「……キラーン」

佐天「ピロリ~ン、激写ぁ!」

麦野「……は?」

御坂「……え?」

佐天「ピロリ~ン、キョトン顔もゲッツ!」

麦野「涙子てめえこのやろう」

御坂「佐天さんこんちくしょう」

佐天「そして初春と白井さんに転送! パーペキコンボ!」

麦野「るぅいぃこぉ、嘘つきは何だっけ? 何かの始まりだっけ? 終わりだっけ?」

佐天「あー、あれね、嘘つきは? ロマンスの? 始まり?」
                     ロ マ ン ス
御坂「じゃあ始めましょうか、そのお仕置きってやつをさ」

佐天「あははおかしいな、ロマンスってこんなに冷や汗が出るものなんだ」

麦野「それは大変ね、今楽にしてあげる」

御坂「手伝うわ、じっくりたっぷり仲良くね」

佐天「わーお、息ぴったりぃ……」

~時間戻って・某所~


フレンダ「……麦野ぉ」

黒子「……お姉さまぁ」

初春「あのー」

フレンダ「……なによ」

黒子「……なんですの」

初春「面白そうなこと思いついたんですけど」

初春「尾行しません? 佐天さん達の事」

フレンダ「アンタら何してんの! 早く行くって訳よ!」

黒子「バッチコイですの! 漲ってきたあー!」

フレンダ「全身全霊でストーキングしてやるって訳よ!」

黒子「ジャッジメントで培った尾行術を見せてやりますの!」

初春(やっぱり面白いことになったなあ)

フレンダ「目標補足、一時の方向」

黒子「目標確認、撮影を開始しますの」

初春「盗撮は駄目です。逮捕しますよ?」

黒子「初春ぅ!? 何を世迷い言をほざいてますの!?」

フレンダ「逮捕って何な訳!? 意味分からない訳よ!」

初春「言い忘れてましたけど私、ジャッジメントですから」

フレンダ「健全なストーキング人生を送らなきゃね、人として」

黒子「同士よ! 血迷いましたの!?」

初春「おや、佐天さん達が何やら言い争ってますね」

フレンダ「鋭指向性の集音マイクで内容は把握できるって訳よ」

初春「何でそんなもの常備してるんですか?」

黒子「? 乙女の七つ道具でしょう?」

初春「オーケー、分かりました。逮捕します」

フレンダ「うそうそ! こんなモンただの補聴器って訳よ!」

黒子「ちょっと聞こえすぎるだけですの! 無実ですの!」

フレンダ「ん? あれってさ、佐天涙子泣いてない?」

初春「あー嘘泣きですねアレ、完璧」

フレンダ「マジで? っていうかこんな遠目で分かんの?」

初春「佐天さんは人に涙を見せないタイプですから」

黒子「流石は親友、よく知ってますのね」

初春「一人すすり泣く姿がいじらしくてイイんですよね」

フレンダ「コイツ私らよりヤバくない? 怖くない?」

初春「お、動きがありましたよ」

フレンダ「超電磁砲と麦野が向き合ってるって訳よ」

黒子「どちらも凄まじい形相ですの……」

フレンダ「そして互いに手を広げて?」

黒子「間合いを詰めていきまして?」


< むぎゅっ!


「「「 や、やったァ――――!!!」」」

フレンダ「え? なに? どういう状況? そういう状況?」

黒子「お姉さま、人肌恋しいのでしたら黒子がおりますのに……」

初春「おや、佐天さんからメール、……今の瞬間の写メですね」

黒子「おおっ、おおおお! お姉さまのキョトン顔キタ――――!!」

フレンダ「見せて……! おおおお! 麦野のキョトン顔もキタ――――!!」

初春「むっ、佐天さんの様子が……」

黒子「お姉さま――――! おっ姉さま――――!」

フレンダ「麦野麦野麦野――! むっぎっの――!」

初春「どうやら仕返しを受けるようですね、ムービー撮ろ」

黒子「って初春! なんで自分だけ盗撮してますの!?」

初春「盗撮ではありません、記録に残る監視です。治安維持のためですよ」

フレンダ「イイ笑顔で職権乱用な訳よ! 越権行為な訳よ!」

佐天『あっはははっはははは!!!! やめへえ! ひっひ、ひっははっは!』

初春「ああ、お労わしや佐天さん……」

御坂『佐天さんの弱点みぃつけたぁ、ここでしょ? ほらほら』

黒子「お姉さま、ちょっと楽しくなってらっしゃる?」

麦野『おらおらぁ! もっとイ~イ声で鳴けんだろ!?』

フレンダ「麦野もサドッ気全開な訳よ」

佐天「うあー……三ヶ月分は笑った気がするぅ……」

麦野「半年分くらい続ければよかったわね」

佐天「勘弁してよぉ……」

御坂「流石に反省したわよね?」

佐天「んー、反省はした」


「「 反省『は』って何?」」


佐天「反省しました! ごめんなさい!」

佐天「もーちかれたー、やすむー」

麦野「だらしないわね」

御坂「遊園地の時と逆になってない?」

佐天「10分以上もくすぐられたら疲れるに決まってるよ!」

麦野「はいはい、どっか店入りましょ」

御坂「この辺の店っていったらこの前のカフェが近いわね」

佐天「どっこいしょ、っと」

麦野「オッサンくさっ」

佐天「麦野さんひどーい!」

御坂「ちょっと、つっ立ってないでそこどいてよ」

麦野「何でよ、アンタそっち座んなさいよ」

御坂「佐天さんの隣はアタシの席だから」

麦野「お前の席なんかねえよ、立ってろ」

佐天「やっぱりカウンター席にしようか」

御坂「佐天さんはアタシの友達なの!」

麦野「言ってなさいよ。ねえ? る・い・こ」

御坂「ちょっと! 離れなさいよ! 移るでしょ!?」

麦野「人を病気持ちみたいに言うんじゃねえよ!」

御坂「佐天さんもアタシの方がいいでしょ!?」

麦野「アタシの方がいいわよねえ?」

佐天「店内で騒ぐ人はイヤかな」

店員「あの、お冷やお持ちしました」

佐天「ありがとうございます。すいませんね、騒いじゃって」

店員「まあ、その、……出来れば抑えていただけると」

佐天「あはー、ごめんなさい。静かにさせましたから」

麦野「……………………」

御坂「……………………」

佐天「この通り、一言も話しません」

店員「店の雰囲気が死ぬので雑談くらいはして貰えると助かります」

佐天「ん~、ここの匂いって好き~」

御坂「ホント、よく見つけたわねー。こんないい店」

佐天「御坂さんの紹介じゃないんでしたっけ?」

御坂「佐天さん知らなかったっけ? 黒子経由で来た情報なのよ」

麦野「……アンタらさあ」

佐天「なにー?」

麦野「何で互いにさん付けなの?」

佐天「何でって、御坂さんは先輩だし」

麦野「じゃあ何で第三位は年下にさん付けなの?」

御坂「……最初にさん付けだったし、途中からは変えにくい……」

麦野「涙子、アタシのこと下の名前で呼んでみ?」

御坂「!!!?」

佐天「沈利ちゃん」

御坂「!!!!!!?」

麦野「今日からそれでいいから。名前呼びで」

佐天「分かったよ、しずちゃん」

麦野「出来ればそれはやめて」

佐天「分かったよ、ずりさん」

麦野「それは絶対やめろ」

佐天「ワガママだなあ、しーちゃん」

麦野「それなら別によし」

御坂「…………」

御坂「私も名前がいい……」

佐天「じゃあ、美琴ちゃん?」

御坂「! えへへっ! でへへへへっ!」

麦野「うわっ! きもっ!」

御坂「うるっさいわねー、もー。えへへへへっ!」

佐天「みーことちゃん? 美琴ちゃーん!」

御坂「えへへへへへへへっ!」

佐天「あっ、これおもしろいわ」

佐天「美琴ェ……愛してるってばよ……」

御坂「やだー! もーやだー! でへへへへっ!」

麦野「……むっ。ちょっと涙子」

佐天「どうしたんだってばよ……しーちゃんェ……」

麦野「どうしたも何も」


むぎゅっ!


麦野「ハグよ、ハグ」

佐天「ちょっ、急にどうしたの! マジで!」

麦野「このくらい仲良しなら何でもないんでしょ?」

御坂「…………」

麦野「…………フッ」

御坂「!! こっの、泥棒猫ぉ!」

麦野「なーんのことかにゃーん」

黒子「気付かれないように潜入してみれば、何事ですの? ヘヴンですの?」

フレンダ「テレポートってすっげえ便利よね、ストーキングに」

初春「いつか一線を越えないことを願うばかりです」

黒子「しまりのないお姉さまの笑顔、すばらですの!」

フレンダ「あそこまで独占欲ダラッダラの麦野なんて激レアな訳よ!」

初春「なんの、唐突にハグされて赤面している佐天さんもレア度は高いです」

初春「そもそも佐天さんは麦野さんをしーちゃんと呼ぶ事を始めの段階から決めていたんですよ」

黒子「え? そうなんですの? 何故それを知ってますの?」

初春「それなのに何故、ツークッション挟んだのか。麦野さんの反応を楽しむためですね」

フレンダ「なんか言葉に熱がこもってきた訳よ……」

初春「精神的に優位に立ったはずなのに不意のハグによって主導権を奪われてしまったからこその赤面という訳で

す」

黒子「初春、長い、一息が長いですの」

初春「すばらと言うならこのドラマある赤面こそがすばらだと思いますね」

フレンダ「この人だけ違う次元で生きてない? 恐怖を感じるんだけど」

佐天「美琴ちゃんはあたしの事呼んでくれないの? 名前で」

美琴「よ、呼ぶわよ? もちろん」

麦野「いやいいよ、呼ばなくて」

美琴「ちょっと静かにしてくれる? 集中してるから」

麦野「集中する意味が分かんないんだけど」

美琴「……よし! 呼ぶわ!」

御坂「る、る、る、る……」

麦野「何してんの? ハミングしてんの?」

御坂「……涙子!」

佐天「…………」

御坂「……さん」

麦野「だから何でさん付けなんだよ」

御坂「も、もう一回! もう一回やらせて!」

―――
――


佐天「じゃあそろそろ出よっか」

麦野「次どこ行く?」

佐天「んー、とりあえずみんなと合流しない?」

御坂「合流ね、分かったわ」

麦野「おいバカンダ、出てきなさいよ」

御坂「黒子ー? 集合ー」


「「!!!?」」

フレンダ「……にゃー」

黒子「……わおーん」

麦野「ケンカ売ってんの?」

御坂「とっとと出てくる!」

フレンダ「あ、あれー? 超奇遇ですねっ」

黒子「何という偶然、奇跡ですなのー」

初春「キャラ変わってますけど」

佐天「何でみんないるの?」

初春「面白そうだったんで尾行してました」

フレンダ「ちょっ!?」

黒子「初春!?」

佐天「尾行ねー、それは確かに面白そうだね」

初春「面白かったですよー? 佐天さんの笑い泣き」

佐天「ちょっとやめてよー、こっちは死ぬかと思ったんだから」

麦野「フレンダ」

フレンダ「……はい」

麦野「か・く・て・い・ね」

フレンダ「何が!?」

御坂「黒子」

黒子「……はいですの」

御坂「今夜は寮監と寝てね」

黒子「死ねとおっしゃる!?」

~アイテム・たまり場~


滝壺「それでその後は?」

フレンダ「全員でご飯食べて解散して私は麦野にボコられた」

滝壺「だからミイラのコスプレしてるんだね」

フレンダ「伊達や酔狂でミイラしてない訳よ……」

滝壺「大丈夫、私はそんなふれんだをそれなりにそこそこ応援してる」

フレンダ「応援されて惨めな気持ちになったのは初めてな訳よ……」

麦野「…………」

麦野「…………」

滝壺(むぎの、またメールしてる)

麦野「……見てんじゃないわよ?」

滝壺「見てないよ? デコメールなんて」

麦野「しっかり見てんじゃないのよ!」

滝壺「……あのさ」

滝壺「むぎの、分かってるとは思うけど」

麦野「……ん? 何よ」

滝壺「あんまり『表』の人間に深入りしない方がいいんじゃない?」

麦野「は? 深入りなんかしてないけど?」

フレンダ「自覚がないのは重症な訳よ……」

滝壺「最近のむぎのの行動は流石に目に余ると思う」

滝壺「関わり過ぎれば、何かあった時にとばっちり受けるのはさてんるいこなんだよ?」

麦野「…………」

フレンダ「そうそう、あんまり『表』の、……あっ、もしもし? いや、今はちょっと」

滝壺「…………」

麦野「…………」

フレンダ「だから飾利っ、今はマズいんだって。黒子の方にも伝えとくから、はい、はーい」

フレンダ「コホン……麦野、あんまり『表』の人間と親密になるのはよくないって訳よ」

滝壺「ふれんだは人のこと言えないよね。今の電話、ういはるかざりからでしょ?」

麦野「ホント、面白い冗談よね。反面教師気取ってるの? 笑うところなの?」

フレンダ「いやあのだってアイツらジャッジメントだし一般人かと言われたら違うし」

麦野「そんなにICUが恋しいっていうなら、まずはお前をブチ殺す」

フレンダ「命あってのICUだよ!? ちょっと!? テレビから手を離そう!?」

~翌日・とある路地裏~


麦野「…………」


『何かあった時にとばっちり受けるのはさてんるいこなんだよ?』


麦野「……そんなの、分かってるっつーの」

スキルアウトA「なにを、分かってるって?」

スキルアウトB「浮かない顔してんな、お姉さん。どうしたよ?」

麦野「……うるせえな」

スキルアウトA「っと、悪いな。お邪魔だったか」

スキルアウトB「お姉さんキレイだしよ、もっと笑った方がいいぞ」

麦野「……はあ?」

スキルアウトA「じゃあな」

スキルアウトB「悪かったな、お姉さん」

麦野「…………ちっ」

麦野「……絡んでくるなら、きっちりぶっ飛ばされてから消えろよ」


『おもしろくねえおもしろくねえおもしろくねえおもしろくねえ
 おもしろくねえおもしろくねえおもしろくねえおもしろくねえ』


麦野「どいつもこいつも馴れ馴れしいったらありゃねえ……」


『イライラするムカムカするドロドロするギリギリするイガイガする
 ズキズキするグラグラするピリピリするジリジリするグニャグニャする』


麦野「うざってえにも程があるってんだ……」

ポツ……


麦野「…………?」


ポツ、ポツ、……ポツ


麦野「…………雨、か」


ザーーーー……


麦野「ああもう……ついてねえなあ……」

 
麦野「くそ……学園都市の天気予報は100%当たるんじゃねえのかよ……」


ザーーーー……


麦野「……やってられねえ」


ザーーーー……


麦野「…………」





麦野「……涙子……会いたいよ……」

 
 
 
 「しーちゃん……?」






麦野「……っ!」

佐天「しーちゃんどうしたの!? びしょ濡れじゃん!」


 『――深入りしないほうが――』


佐天「待って! 今拭くもの……!」


 『――あんまり「表」の人間――』


佐天「あった! しーちゃん、こっち向いて!」


 『――とばっちり受けるのは――』

 
佐天「ほら、しーちゃん!」


麦野「……っ!!?」





バチンッ!!!

麦野「……あっ」

佐天「…………」

麦野(唇から、血? が、あれ? アタシ)

佐天「…………え」

麦野(声、言わなきゃ、手を振り払、おうと)

佐天「なん、で……」

佐天「……っ!」

麦野「……ぅあ、まっ、待って!」

佐天「離してよっ!」

麦野「違うの! 聞いて! 今のは殴るつもりじゃなくて、手を……!」

佐天「知ってるよ! 手を振り払おうとしたんでしょ!? でもっ、振り払おうとしたんじゃん!!」

麦野「う、うあ……」

佐天「ちゃんとっ、呼んだのに! しーちゃんって、呼んだのにっ……!」

佐天「あたしの事、嫌いだったら、最初から嫌いって言ってよ……」

麦野「違う……違うよ……」

佐天「うざったいって思ってるんなら、ちゃんとそう言ってよ……」

麦野「そうじゃ、ないの……涙子……」

佐天「しーちゃんなんか……、しーちゃんなんかぁ……」

麦野「…………っ」

 
佐天「しーちゃんのデブっ!!!!」


麦野「…………」


佐天「…………」


麦野「…………」




麦野「お゙っ!!!!?」

佐天「しーちゃんのデブ! 百貫デブ! ふくよかさレベル5! ふっくら系女子! キレイすぎる巨漢!」

麦野「お゙っ、お゙ぉっ! お゙ぉおお?」

佐天「アタシィ、体脂肪率高いけど巨乳なだけだからぁ」

麦野「…………お゙」

佐天「…………」


佐天「バ―――――カ!!!!」

麦野「お゙お゙お゙お゙お゙!!!!」

佐天「しーちゃんなんか野菜の国の姫になって健康的に痩せちゃえーー!!」


ダダダダダダ……


麦野「…………お゙」


麦野「…………」


麦野「…………」

通りすがりの浜面「…………よ、よう」


麦野「…………」


ICU帰りの絹旗「…………ちょ、超奇遇ですね~」


麦野「…………」


たまたまフレンダ「…………あはは、は、ちっす」


麦野「…………」

麦野「…………」



((( あっこれは死んだな。うん、あり得ないもんね。こんな偶然 )))



麦野「…………うっ」


麦野「うええええええええん!!」




「「「 !!!!!!!!!!!? 」」」

麦野「うええええええええん!!」

浜面「!?! ……!?、!??。……!?」

絹旗「落ち着けつけついてください超浜じゅら!」

フレンダ「あれ? 声が、ダブって、聞こえるよ?」

麦野「うわああああああああん!!」

浜面「あっ! 逃げた! どうしよう! どうしよう!!」

絹旗「どうしよう? あ! どうしよう! え!? 何が!?」

フレンダ「あれ? 呼吸が、うまく、出来ないよ?」

カフェでお茶してる滝壺「なかなかレトロなお店だね」


 『うわああああああああん!!』


カフェ壺「うるさいな、非常識、だ、と……?」


窓の外には麦野『びえええええええええん!!』


カフェ壺「…………」



滝壺「あれ? 呼吸が、うまく、出来ないよ?」

―――
――



浜面「……麦野が失踪してからもう2ヶ月か、早いもんだな」

絹旗「麦野がいないアイテムは超開店休業中ですしね、時間が超早く流れます」

滝壺「だから深入りするなと言ったのに、むぎの……」


バタンッ!


フレンダ「みんな! 麦野から手紙が届いたよ!」

浜面「手紙ぃ!? おい、何て書いてあるんだ!?」

フレンダ「待ってよ! 今開けるから!」

絹旗「早く! 超早く!」

フレンダ「急かさないでよ! はい滝壺、読んで!」

滝壺「うん。……これだけ? 一枚、っていうか一言なんだけど」

フレンダ「封筒の中にはそれだけだけど?」

絹旗「とにかく超何て書いてあるのか教えてくださいよ!」

滝壺「農業、始めました」

絹旗「……は?」

滝壺「だから、『農業、始めました』って書いてある」

浜面「……あー、野菜の国の姫?」

フレンダ「……ああ、なーる」

絹旗「……超健康的ですしね、農家の一日」

滝壺「???」

~日本・某所~


麦野「よっと!」

麦野「……ふー、そろそろ休憩にしようかな」

ヴヴヴ、ヴヴヴ

麦野「! ……何だ、ダイレクトメールか」

麦野(2ヶ月も音沙汰なしなのに、なーに期待してんだかね)

 
ヴヴヴ、ヴヴヴ

麦野「はいはい、今度はどこの……」


~~~~
from 佐天涙子
~~~~


麦野「……!」

麦野「……見るだけなら、いいわよね」

 
~~~~

from 佐天涙子
sub <無題>

しーちゃんに会いたい
会って謝りたい

~~~~

麦野「…………」

麦野(『アタシは街の外にいるから会えない。会わない方がいい』……)

麦野(……送信)

……、……ヴヴヴ、カチカチッ

麦野「…………」


『じゃあもういい』


麦野「……ハハ、予想以上にきっついわ……」

麦野「……仕事しよ」

ヴヴヴ、ヴヴヴ

麦野「また、涙子……?」


『やっぱりよくない どこにいるの?』

『しーちゃんが来れないならあたしが行く』

『待ってて 絶対会いに行くから』


麦野「……あーくそ」

麦野「やっべえ……超嬉しい……」

麦野「…………」

麦野「はー……意思、弱えなあアタシ……」

麦野(……『明日の正午、あの日のカフェで』)

麦野(送信、っと)

麦野「……さてと、行きますか!」

―――
――



~1ヶ月後・某所~


麦野「とまあ、こんな事があったのよ」

垣根「お前頭おかしいんじゃねえの? いや、マジで」

麦野「自分でもどうかしてたと思うわ。いや、マジで」

垣根「大体よお、何で俺をこんな四方山話に付き合わせたんだよ」

麦野「暇だったから」

垣根「お前……マジで『表』に染まっちまったんだな……」

麦野「まあ、アイテムも解散させられたし? アタシも晴れて『表』舞台の広告塔って訳よ」

垣根「広告塔だあ? どういう意味だそりゃ」

麦野「始めた農業が大当たりしちゃってさ、外に向けたPRに一役買ってんのよ」

垣根「歌って踊れて耕せる超能力者、ってか?」

麦野「いいわねそのコピー、もらい」

垣根「はっ、好きにしろよ」

「しーちゃんまだあ!? みんな待ってるよー!」


麦野「っと、もうこんな時間か」

垣根「じゃあな、俺は消えるぞ」

麦野「ええ、邪魔者は消えなさい」

垣根「テメエも精々、俺の障害にならねえよう気を付けな」

麦野「ならねえよ。テメエがアタシの世界に踏み込まねえ限りはな」

佐天「しーちゃん、今の人誰? 彼氏?」

麦野「違うわよ、前の仕事の……商売敵?」

佐天「イケメンだったし結構お似合いじゃない?」

麦野「ないわー、涙子の目は節穴ね」

佐天「ふーんだ、いじわるー!」

麦野「悪かったわよ。……ほら」

佐天「ふぎゅっ! ……しーちゃんさ、最近ハグしすぎ」

麦野「仲良しなら、何でもないんでしょ?」

佐天「まあ、そうだけどさ、場所とかさー色々さー」

麦野「わかったわかった」

佐天「あとハグされたとき思ったんだけどさ」

麦野「何よ?」

佐天「しーちゃん、ちょっと痩せすぎなんじゃない?」

麦野「…………」

佐天「…………」

麦野「…………」




麦野「お゙っ!!!!?」

    ,.  ≦二: ミi==ミ.、
   /, . : ,. ≦二:}ミ: 、: \
 //.:/ :, : , ´ :7 : : : \: ヽ.

// :/ :// :, :7 : i : ヽ : : :ハ
. : ,: : : : : : : : :/ ,/:}: :| : : :∨ : : .'.
/ : : :/ : : /イ:|:i{ : {i : ヽ:∨ : : :i
: : : / : : /、: イ:トy : : : : : :i: !: : .l
.:/: :,.ィム=ミ∨l| |{{ヽ:ヽ : : l||: : !
: : :彡'爪 rォハ乂:|ノ八: ト、: :i} l :|: .|

<:,.イ  ` =l{ノ l |´ ァ=<: :| : :}: :{
/|,ノ{ u u  { ∧{//ヒ) 乂乂: :′.|
 ∧          {、`フ::/ノ / ハ: :{
.  ∧ r<\ __ ' V':/:.:.:}/ /|: : ハ
.   ∧`'― ミ7´ .彡'::ト、人/: {ノ(:ヽ\
    ヽ __ . <__{_ノ    ┼ヽてィ

   / {{ |  ヽ   |!   d⌒)
`ヽ rーヘ  }    )   |!  -|r‐、.
     }} ノ  <,   |!  ./| _ノ
、     /'/    }   |!    レ |
∧   /'/    ノ   |!    __ノ
、∧ / /     )   、、 j  十--``
∧,∨ /     く      ノ   ノ ー‐
 ハ ∨      〉  |〉|〉|〉   七
  } l}     / ⌒)o_o o   (乂) j⌒
  | l|       /´∨\  ,ィ:爪:.ヽ:

  } l|            }:{ヽ`く: }:}: {:.}:.:.:
 ノミ{、        从廴ー彡ヘ:乂:.:.       糸冬
:/{{ }小、         .イ:.:ヽ:ヽ:.{:.∨:\ミ:   ---------------
'乂ノノ::::\   . イ \:.:ハ:.:.|:./:./:.:.:フ:   制作・著作 NHK

佐天「いやぁ!!やめて下さい!!!」

俺「るせえぞ!ガキ!!」バチィ

俺「オラっ!!捕まえたぞガキが」グイッ

佐天「は、離してェェェ!!!!!」

俺「こんな裏路地にホイホイ来やがって!!!誘ってんだろ!!?」ボロン

俺(こいつでたっぷり可愛がってやる)ビンビン

俺「さて」ゼンラ

俺「」ダキッ チュッチュッ

佐天「イヤッ…!イヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

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