エレン「俺がミカサとジャンをくっつけてやる!」(222)

 

【夜 宿舎】


ジャン「はぁ……ミカサ……」

エレン「ミカサがどうかしたのか?」ニュッ

ジャン「うおあっ!! きゅ、急に顔出してんじゃねえよ!!」ビクッ

エレン「何ビビってんだよ。俺もちょうどミカサの事考えてたから気になっただけだ」

ジャン「お前も……ってそりゃそうか。ったく、やってらんねえな」

エレン「あぁ、ホントやってらんねえよな。こっちは必死だってのに、涼しい顔でありえねえ記録出しやがって」

ジャン「……は?」

エレン「けど少しは見直したぜジャン。お前の事だし、ミカサには勝てねえって諦めてんだと思った。憲兵団になるためには10位以内に入ればいいしな」

ジャン「お前何の話してんだ?」

エレン「は? だから訓練の……」

ジャン「??」

エレン「??」

 

数分後


エレン「んだよ、そんな事か。なんかおかしいと思ったんだ。お前ミカサの事好きだったのか」

ジャン「そんな事ってなんだよ! 俺にとっちゃ重要な事だ! いいよなぁ、余裕がある奴はよぉ!!」

エレン「余裕?」

ジャン「いつもいつもミカサと一緒に居やがって。どうせもうデキてんだろお前ら!!」

エレン「はぁ? いや俺とミカサはそんなんじゃねえよ」

ジャン「へ?」

エレン「ミカサは家族だ。アイツだって同じように思ってる。お前自分の母親にそういう感情持つか?」

ジャン「……ねえな。いや、けど本当なんだろうな!?」

エレン「だから本当だっての…………にしても、ジャンがミカサをねぇ。俺からすれば口煩くて敵わねえけどな。まぁそりゃ良いところもあるってのは知ってるけどよ。
     アイツのどの辺が良いんだよ?」

ジャン「そんなの全部に決まってんだろ! あのクールさ、綺麗な髪――――」

小一時間


ジャン「――それに」

エレン「分かった、良く分かったよ! ったく、どんだけベタ惚れなんだよ、そんならすぐ告白しろっての」ハァ

ジャン「お前がいるから諦めかけてたんだよ! けど、そうか、お前達がそういう関係じゃねえってんなら……」

エレン「…………ん、待てよ」

エレン(俺はいつもいつもミカサが保護者だってバカにされる。けど、もしミカサとジャンが付き合えばそういうことも無くなるんじゃないか?
    それにアイツ、異常なくらい俺を守ろうとしてるし、このままだと俺が行くからとかいう理由で調査兵団にもついて来るかもしれねえ)

ジャン「おいエレン、どうした?」

エレン「よし、ジャン。協力してやるよ」

ジャン「は?」

エレン「俺がミカサとジャンをくっつけてやる!」

ジャン「マ、マジか!?」

 
エレン「おう、俺に任せろ!」

ジャン「エレン…………今まで悪かったな。調査兵団に入っても死ぬんじゃねえぞ」ガシッ

エレン「あぁ。お前も憲兵団になってもサボったりするなよ」ガシッ

ジャン「分かった、約束する」

エレン「よし。そんじゃまずどうやってミカサと付き合うかだが……」ウーン

ジャン「やっぱハードルたけえか?」

エレン「そりゃあのミカサだぞ。…………分かった、やっぱ最初はアイツの好みのタイプを知ることからだと思う」

ジャン「なんだよ、お前いつも一緒にいるくせに知らねえのか?」

エレン「アイツとそういう話になったことがないからな。とにかく、明日俺が聞いとくから、それに合わせて今後の作戦を決めるぞ」

ジャン「あぁ、分かった。頼んだぞ!」

 

【次の日の朝 食堂】


カチャカチャ……


エレン「くぁ……確か午前中は立体機動の演習だったか?」

アルミン「うん、午後からは兵法講義だね」


ミカサ「おはよう」


エレン(来た……ッ!)

アルミン「あ、おはようミカサ……ってどうしたのエレン、ミカサの事じっと見て」

エレン「へ?」

ミカサ「もしかして、寝癖とかついてる? ちゃんと直してきたはずだけど……」

エレン「あ、いや、何でもねえ!」アセッ

ミカサ「? 変なエレン」

 
エレン(落ち着け。怪しまれないようにさりげなく聞き出すんだ)

アルミン「それにしてもミカサは凄いよね。どの実技科目もトップなんだもん」

ミカサ「アルミンだって座学が凄い。実戦では個人の能力も重要だけど、装備や作戦も同じくらい重要。
     もし立体機動がなかったら私だってろくに戦うこともできないし、作戦がなかったら戦いで著しく不利になる」

エレン(あくまでさりげなく、だ。会話の中で自然に……)

アルミン「ありがとう、ミカサにそう言ってもらえると気が楽になるよ」ニコ

ミカサ「教官には技巧の方を勧められていたけど、どうするの?」

エレン(自然に……自然に……)

アルミン「……僕もエレンと同じなんだ。外の世界を見てみたい。だから」

ミカサ「そう……あなたが決めたのなら私は口を挟まない」

エレン「なぁ、ミカサ。お前の好きな男のタイプってどんなのだ?」


ミカサ「えっ」

アルミン「えっ」

エレン「えっ……?」

 

アルミン「えーと、エレン? 急にどうしたの?」

ミカサ「…………」

エレン(まずい……不自然だったか!?)

エレン「いや、その、つまりだな……!」アセアセ

ミカサ「エレン」

エレン「お、おう!」ビクッ

ミカサ「どうして急にそんな事聞いてきたの?」

エレン「そ、それは……」

ミカサ「…………」ジー

エレン(まずい、明らかに怪しんでる。とにかく、ジャンの事は伏せねえと……!)

エレン「お、俺が気になるんだ! ミカサってどんな男が好きなのかなーってよ!」

ミカサ「エレンが?」

エレン「おう!!」

 
アルミン「……??」

ミカサ「…………///」ポッ

エレン(ダメか……?)

ミカサ「……分かった、教える」

エレン「ホントか!? 助かる!」

アルミン(何か嫌な予感がする……)

ミカサ「えっと、私が好きな人は対人格闘術が得意で……」チラチラ

エレン(対人格闘術……ジャンのやつ、立体機動術は上手いくせにそっちは怠けてっからな……。
     まぁでも、アニとの一件以来は少しは真面目にやってるみたいだし、頑張れば何とかなるか?)

ミカサ「背は私と同じくらいで、黒髪で、いつも一緒に居る人で」チラチラ

エレン(意外だな、女ってのはデカイ方がいいと思ってたけど。髪は染めさせればいいか。後いつも一緒ってことは、明日からはジャンも一緒に飯食ったほうが良さそうだな)

ミカサ「野望を持っていて、それに真っ直ぐ突き進んで」チラチラ

エレン(アイツは憲兵団に入るっていう野望があるから大丈夫そうだ)

ミカサ「父親が医者で……」チラチラ

エレン(なっ、ミカサのやつ、意外と後の事まで考えてやがる! いや、けど憲兵団なら医者以上の待遇を得られるはずだ)

 
ミカサ「…………///」ジー

エレン「ん、そんなもんか? なんつーか、お前も意外とそういう事考えてたんだな!」

ミカサ「…………」

アルミン(もはやこれはわざとやってるんじゃないかな)

ミカサ「……エレンも」

エレン「ん?」

ミカサ「エレンの好きなタイプも教えて。私だけに言わせるのはズルい」

エレン「え、クリスタ」


ドゴン!!!!! ガッシャーン!!!!!


ベルトルト「うわっ、エレン!? 一体どこから飛んできたんだ!?」

ライナー「お、俺のスープ……」

エレン「…………」ピクピク

アニ「相変わらず騒がしいね、あんた」

 

バタン!!!


教官「朝から何を騒いでいる……何者か説明しろ」


シーン


ミカサ「サシャが放屁してエレンが気絶しました」

サシャ「!!!??」

教官「また貴様か……」ギロ

サシャ「……!!」ブンブン

教官「次はないと思え」


バタン

 

サシャ「ミカサ、何してくれるんですか!!!!! いつもいつも何で私――」

ミカサ「パンあげるから」スッ

サシャ「仕方ありませんね、許してあげましょう」パクッ

コニー「つかエレンは大丈夫なのかよ」

エレン「…………」ピクピク

クリスタ「た、大変! すぐに応急処置を……!」アセアセ

ユミル「ったく、放っておけよ自業自得っぽいし」

ミカサ「……ふんっ」プイッ

アルミン(……ん?)

ジャン「…………」ソワソワ

アルミン「…………」

 

【夜 宿舎】


エレン「いつつ……ったく、ミカサのやつ、思い切りぶっ飛ばしやがって。まだいてぇ……」ズキズキ

ジャン「お前はどんだけミカサを怒らせたんだよ……その様子じゃ好みのタイプもダメか?」

エレン「いや、それはちゃんと聞き出した」

ジャン「本当か!? さすが出来る奴だと思ってたぜお前は!!」

エレン「分かった分かった、調子のいいやつだな。んで、ミカサの好みだけど……」


説明中


ジャン「……なるほど。なんつーか、意外っつーか」

エレン「あぁ、俺も驚いた。アイツ、そういう事に興味無さそうだったからな」

ジャン「とりあえず、背は大丈夫そうだな。俺、大体ミカサと同じくらいだし。問題は髪か」

エレン「染めればいいだろうけど、そういうのは高価だからな。中央まで行かねえとないかもしんねえ」

 
ジャン「そもそも、ここの規則的に染髪っていいのか?」

エレン「……教官に見つからないようにミカサに見せればいいだろ。結構な綱渡りだけどな」

ジャン「下手したら憲兵団にいけなくなるぞ俺」

エレン「あー、そういや自分の野望に真っ直ぐってのも好みに入ってたな」

ジャン「対人格闘術ってのも俺の野望からは離れてる」

エレン「いやそれは真面目にやれよ」


アルミン「やっぱり二人で何か企んでたんだ」ヒョコ


ジャン「うおっ、アルミン!? つかエレンといい、突然出てくんのやめろよ!」ビクッ

エレン「なんだ、まだ寝てなかったのか?」

アルミン「今朝のエレンの様子が明らかにおかしかったからね。それにジャンもなぜかミカサにぶっ飛ばされたエレンを心配そうに見ていた。
      大方、エレンがミカサの好みのタイプを聞いていたのは、ジャンに頼まれてって事かな?」

エレン「お前こええな……」

 
ジャン「ちょ、ちょっと待てよ。それじゃあアルミンは俺がミカサの事を好きなのも知って……」

アルミン「それはむしろ知らない人の方が少ないと思うけど」

ジャン「マジかよ!? 俺そんな分かりやすいのか!?」

エレン(俺は気付かなかった……)

アルミン「まぁでも、ミカサ本人には気付かれていないはずだから安心して大丈夫だよ。というかミカサは――」

ジャン「ん?」

アルミン(……ミカサはエレンのことしか見てないんだけど、ここでハッキリ言うのもマズイかな。本人もいるし)

アルミン「あー、いや、何でもないよ。それで、エレンはジャンの事を応援してるってことでいいのかな?」

エレン「おう、ミカサの事は俺がよく知ってるしな」

アルミン「いや、それはどうだろう」ハァ

ジャン「そういや、明日早速対人格闘術があるぞ。ここでミカサに何とかいいところ見せてえな」

エレン「……よし、それなら相手は俺でいいか。格闘術は結構自信あるしな」

ジャン「お、わざと負けてくれんのか?」

エレン「ばーか、んな事するか。死ぬ気でかかってこい」

 
エレン「はっ、なんだ。俺には勝てそうにもないか? それならちょっとは手を抜いてやってもいいが」ニヤ

ジャン「ヤロウ……望むところだ」

アルミン「でも例えジャンがエレンに勝ったとしても、それをミカサに見てもらわないと意味ないんじゃない?」

アルミン(まぁ、ミカサはエレンの事ばかり見てるから大丈夫かもしれないけど……)

エレン「それもそうだな。じゃあミカサとよく組んでる奴を……」


ライナー「俺の出番のようだな」ニュッ

ベルトルト「僕も手伝うよ」


ジャン「……お前達も全部お見通しってか?」

ライナー「というより普通に聞こえてきた。要はミカサをジャンの近くに誘導すればいいんだろう?」

エレン「あぁ。そういやライナーは結構ミカサと組むこと多いな」

アルミン「成績が近いからね。やっぱり訓練の効率的にはそれが一番良いと思うし」

 
ライナー「正直いつもボコボコにされるから勘弁してほしいもんだけどな。一度クリスタと組んでみたいもんだ」

エレン「クリスタは無理だろ……ユミルがべったりだ」

ベルトルト「じゃあ、僕が教官を見張っておくよ」

ジャン「よし、頼むぜ二人とも!」

ライナー「おう、お前も頑張ってミカサにいいとこ見せろよ」

アルミン(ミカサがエレン以外に揺れるなんてことはないと思うけど……ここまで乗り気なジャンに言うのも酷な気がする……)


【次の日の朝 食堂】


エレン「おいもう少し普通にしろよ。挙動不審すぎるだろ」

ジャン「こ、これが普通だ!」

アルミン「いや明らかにガチガチじゃないか……あ、ミカサだ」

ジャン「ッ!!」ドキッ


ミカサ「おはよう。今日はジャンも一緒?」

 
エレン「あぁ、たまにはな」

ミカサ「意外。二人はそこまで仲が良いように見えなかったけど」

ジャン「そ、そんな事ねえって! なぁエレン!」

エレン「おう。そりゃ俺は調査兵団でこいつは憲兵団、進む道は違うがいがみ合う理由にはならねえ」

ミカサ「そう……それなら私も嬉しい。二人は喧嘩ばかりだったから」

アルミン(そう言いながらも、どこか腑に落ちない表情だなミカサ。そりゃこの二人が急に仲良くなったら怪しむよ)

エレン「それよりミカサ、お前も早く座れって」

ミカサ「うん、分かった……?」

ジャン「…………」ドキドキ

エレン(今はテーブルの片方に俺とアルミン。そして対面にジャンが座ってる構図だ。これなら自然とミカサはジャンの隣に座るしかない!!)

アルミン(いやこれは…………ひっ!!)ビクッ

ミカサ「…………」ジー

アルミン「…………」ブルブル

ミカサ「…………」ジー

アルミン「…………!!」ガクガクブルブル

 
エレン「おいどうしたミカサ?」

アルミン「ぼ、僕、もうお腹いっぱいになっちゃった!!!」ガタッ

ジャン「なっ!!」

エレン「アルミン!?」

ミカサ「そう。残すのならサシャにあげるといい」ニコ

アルミン「う、うん、そうするよ! サシャ、これあげるよ!!」

サシャ「マジですか!? やったああああああああ!!!!!」

エレン「お、おい、アルミン!」

アルミン「それじゃ僕はこれで!!」ダダッ

 

スタスタ……ストン


ミカサ「エレン、口元に食べかすがついてる」スッ

エレン「は? おい待て、お前何で隣に……てかそれくらい自分で取るっつの!」

ミカサ「まったく、エレンはいつになっても子供みたい。世話が焼ける」パクッ

エレン「人の食べかす食ってんじゃねえよ!!!」

ジャン「」


【午後 対人格闘術訓練】


エレン「昨日も言ったが、手加減はしねえ。ミカサにいいとこ見せたかったら本気でかかってこい」

ジャン「あぁ、そのつもりだ!! 手加減なんざいらねえよコラァァ!!!」

エレン「わ、分かったからそんな睨むなって……と、その前にライナーがミカサを誘導してくれっから……」チラ

 

ライナー「ぐっ……」チラ

ベルトルト(大丈夫だ、教官は来ていない)コクン

ライナー(よし……)

ミカサ「この期に及んで後ずさっても結果は変わらない」スタスタ

ライナー「どうかな、この僅かな時間稼ぎで何かが変わるかもしれない」チラ


ジャン(ミカサが近くに来た!)

エレン「よし、行くぞジャン!」

ジャン「おう、覚悟しろよエレン!!」

ミカサ(あれはエレンとジャン……二人共いつになく真剣だけど……)

ライナー(頑張れよ、ジャン!)


ドガッ!! バキッ!! ドゴォ!!!

 

ジャン「がっ……は……」ドサッ

エレン「おいどうしたジャン。そんなもんか?」

ジャン「ぐっ……クソッたれ……!!」

ミカサ「エレン……///」ポー

エレン(くっそ、せっかくミカサがこっち見てるってのに……けど手を抜くわけにもいかねえし……)

ライナー(ジャンではエレンに敵わないか。アイツ対人格闘術は凄いからな)

ミカサ「ねぇ、エレン。次は私と組もう」

ジャン「!!」

エレン「な、なんだよ、俺は今ジャンと……」

ミカサ「エレンとジャンでは明らかにエレンのほうが上。訓練は力が近い者同士でやるべき」グイグイ

エレン「あ、おい、ミカサ! 引っ張んなって!」


ジャン「…………」ポツン

 

ライナー「……あー、ジャン。俺と組むか?」

ジャン「くそ……くそぉぉ……!!」ギリッ


アニ「どうしてそこまでエレンに拘るの?」スタスタ


ライナー「アニ?」

ジャン「どうしてって……」

アニ「あんたの目標はあくまで憲兵団のはず。そりゃエレンに負けて悔しいっていうのは分かるけど、そんなに無理して突っかかる必要なんかない。
   点数の高い立体機動術ならあんたの方が上なんだし、格闘術くらい流せば良いと思う。あんたはそういう計算ができる奴でしょ?」

ジャン「…………」

ライナー「珍しくよく喋るなアニ」

アニ「別に。気になっただけ」

ジャン「……あぁ、確かに俺は憲兵団に入って内地へ行くことが目標だ。ただ、な……」


ジャン「男には引けねえもんってのがあるんだよ」

 

アニ「…………」

ジャン「悪いな、抽象的で。だが俺が言える事はこのくらいだ」

ライナー「あぁ、俺には分かるぞジャン。女にはなかなか理解できないかもしれねえけどな」

アニ「それはミカサのこと?」

ジャン「ぶっ!!! は、はぁ!? なんだよ、お前も気付いてんのか!?」

アニ「むしろ気付いてない奴のほうが少ないと思う」

ジャン「ぐっ……あ、あぁそうだよ、文句あんのか!?」

アニ「いや別にないけど…………そっか、ミカサか」

ライナー「どうしたアニ?」

アニ「…………ジャン。あんた本気でエレンに勝つ気なの?」

ジャン「当たり前だ。このまま引き下がれるかよ……!」

アニ「分かった。それなら私が技を教えるよ。エレンにも教えてあげたからこれでフェアになる」

ライナー「…………は?」

ジャン「い、いいのかアニ! 助かる!!」

 
ライナー「(おいアニ、急にどうしたんだ?)」ヒソヒソ

アニ「(別に……気まぐれだよ。ただ……)」

ライナー「(ただ?)」

アニ「(ジャンとミカサが上手くいけば私にとって都合がいい気がしたから)」

ライナー「(は? どうしてそうなる?)」

アニ「(分からない、何となくそう思っただけ)」

ライナー「???」

ジャン「よし、じゃあ早速頼むぜアニ!」

アニ「分かった。でも手加減はできないよ」

ジャン「分かってら!」


ドガッ!! バキッ!!

 
ライナー「……うーん」

ベルトルト「どうしたライナー? あれ、アニとジャンが組んでるんだ、珍しいな」

ライナー「あぁ。なんというか、女ってのは分からないもんだな」

ベルトルト「え?」


【夜 宿舎】


マルコ「うん、そうだね。その時エレンは重心が右に寄る癖があるから、その時に――」

ジャン「なるほど、気付かなかった。流石マルコだな」

マルコ「ありがとう。少しでも役に立てれば僕も嬉しいよ」

エレン「お、何話してんだ二人して?」ヒョコ

ジャン「あ、おい来んじゃねえよ! 今テメェを倒すための作戦を考えてんだからよ!」

マルコ「ごめんね、エレン。ジャンに頼まれたんだ」

エレン「……なるほどな。悪かった、邪魔した」

ジャン「言っとくが、妙な情けかけて手抜いたりすんじゃねえぞ」

エレン「分かってる」

惡の華観てるからちょっと待って

 

スタスタ……


エレン(にしても惜しいよな。ジャンみてえな立体機動術が上手い奴こそ調査兵団向きなのにな。対人格闘術はむしろ憲兵団向きなのに点数が低い)ゴロン

アルミン「エレン、ちょっといいかい?」

エレン「ん、アルミンか。どうした?」

アルミン「えっと、確認したいんだけど、エレンは本気でミカサとジャンをくっつけようとしているんだよね?」

エレン「あぁ、そうだ。もうミカサが保護者だとか言われるのはうんざりだし、ミカサもやたら俺の面倒を見たがるからな。
     調査兵団がどんな所かは分かってるつもりだし、そんな所に俺を死なせないためなんて理由でついて来られたら厄介だ」

アルミン「ミカサを心配してるんだね」

エレン「当たり前だろ。アイツはもっと俺とか関係なしに自分の人生を歩むべきなんだ。……まぁ、ジャンを応援してえって気持ちももちろんあるけどさ」

アルミン「…………」

アルミン(何だか凄く面倒な状況になってる気がする)

アルミン「ねぇ、エレン。もし……もしもだよ? ミカサが、その、エレンの事好きだって言ったらどうする? もちろん異性として」

エレン「はぁ? いや、それはいくらなんでもありえねえだろ」

アルミン「いいからいいから」

 
エレン「んー」

アルミン(うん、意外と真面目に考えてる。これなら何とか……)


エレン「無理だ」


アルミン「ええっ!? なんで!?」

エレン「何でって言われても……」

アルミン「ミカサはいつもエレンのために頑張ってるじゃないか! それに凄く美人だ!」

エレン「なんだよアルミン、お前もミカサの事好きなのか?」

アルミン「違うよ!!! あー、もう!!! 一体ミカサのどこが気に入らないのさ!?」

エレン「お、落ち着けよアルミン。別にミカサが気に入らないってわけじゃねえよ。見た目もそこそこ良いってのは何となく分かる。
     ただ、なんつーか、ミカサに対して好きだとかそういう感情が湧いてこないんだよ。たぶん兄妹とかいたらこんな感じなんだと思う」

アルミン「」

エレン「というかそれは向こうだって同じだっての。だから……ってアルミン?」

アルミン(距離が近すぎたんだ……これ聞いたらミカサ凹むだろうな……。
      最悪なのは、ミカサの方は完全に異性としてエレンを意識しているということだ。このズレはいつか大惨事を引きこおす……っ!!)ガクブル

エレン「おーい」

 
アルミン「あ、あのさエレン。でもクリスタのことは好みだとか言ってたよね?」

エレン「……あー、そだな。けど俺はそういう事にうつつを抜かしてる暇はねえからな。とにかく巨人を皆殺しにするのが先だ」

アルミン(そもそもエレンの中で恋愛の優先度が高くないんだ。うーん……どうしよう……)


【女子宿舎】


ミカサ「…………」ジー

クリスタ「…………」ビクビク

ユミル「……なぁミカサ。お前ここんところクリスタのことガン見してるけど、何なんだよ。こいつ完全にビビっちまってるぞ」

ミカサ「え……あ、その……」

クリスタ「ご、ごめんなさい……何かしたのなら私……」

ミカサ「いや、そういうわけじゃない。気を悪くさせたのなら謝る」

サシャ「んー、でもミカサがガン飛ばすのも無理ないんじゃないですかねぇ」モグモグ

ユミル「は? つかお前いい加減芋盗むのやめろよ」

クリスタ「そ、それより、どういう事サシャ? 私やっぱり何かして……」

 

サシャ「だって、エレンの好きなタイプがクリスタだって聞いたら、そりゃミカサは気になるでしょう」


シーン


サシャ「な、何ですか皆してその目は。これはあげませんよ」サッ

ユミル「おいちょっと待て芋女。テメェは一体何を言ってる?」

クリスタ「エ、エレンが……う、うそだよね……?///」カァァ

ミカサ「サシャ……聞いていたの?」

サシャ「耳はいいんですよ私」ドヤァ

ユミル「おいおいマジかよ! くっそ、エレンのヤロウ、そういう浮いた話は興味ねえと思ってたのに!!」

クリスタ「ど、どうしよう。私……///」ドキドキ

ユミル「おいクリスタ! お前別にエレンの事なんざ何とも思ってねえよな!?」

クリスタ「えっ!? う、うん……あ、でも調査兵団に入って巨人を全部倒すって言ってるのはカッコ良かった……かも……///」

ユミル「気のせいだ!!! お前はエレンの事なんざ何とも思っちゃいねえ!!! よし、明日朝イチでエレンをフッてこい!!」

クリスタ「ええっ!?」

 
サシャ「レズって本当に居たんですねぇ」

ユミル「大体ミカサ!! エレンを好きなのはお前だろ!! 何とかしろよ!!」

ミカサ「ッ!! わ、私は……」モジモジ

サシャ「まぁまぁ、そこは皆知ってますから」モグモグ

ミカサ「……でも、私はクリスタみたいに小柄ではないし、可愛くもない」ショボン

ユミル「おいコラそれは嫌味か。お前が可愛くないってんなら私はどうなんだよ」

クリスタ「そ、そんな、ユミルも可愛いってば」

ユミル「おぉ、流石私のクリスター!」ギュー

クリスタ「ちょっとユミル、苦しいって!」

サシャ「んー、でも不思議ですね。普通はミカサ程の美人さんが近くにいたら放っておかないと思いますけど」

ユミル「ひょっとしてインポなんじゃねえのエレンのやつ」ハハッ

クリスタ「ユミル、下品だよ!!」

ミカサ「エレンが……インポ……」

サシャ「いやミカサも真面目に考えないでくださいよ。ていうか何で私がツッコミ役になってるんですか」

 
ユミル「しっかしエレンのやつ、好みがクリスタってことは……気遣いができる奴がいいのか?」

サシャ「そこはミカサも十分だと思いますけどね、エレン限定で。やっぱり見た目とかじゃないですか?」

クリスタ「えっと、もしかしたらずっと二人一緒だったっていうのが何か問題なのかも。ほら、ミカサってエレンは家族とかって言ってたよね?
      エレンはミカサの事を一人の女の子っていうか……そういう風に見たことがないのかもしれない」

ミカサ「…………」ズーン

ユミル「案外ズバッと言うなクリスタ」

クリスタ「あっ、だ、だからね!? ちょっと女の子らしい所を見せればエレンだってミカサの事を意識してくれるって事だよ!」アセアセ

ユミル「つまり今は少しも女らしくないと」

クリスタ「もう、ユミルは少し黙ってて!!」プンプン

ミカサ「女らしさと言われても何をすれば……」

クリスタ「これとかどうかな?」スッ

サシャ「わぁ、綺麗な髪飾りですね」

ユミル「驚いたな。お前食い物以外にも興味あったのか」

サシャ「ありますよ失礼な!」

 
ミカサ「どう、かな?」カチャ

クリスタ「似合う似合う!! すっごく良いよ!!」

ユミル「へぇ、髪飾り一つで変わるもんだな」

サシャ「これならエレンもメロメロですよ!」

ミカサ「そう……かな……。それならいいのだけど」

クリスタ「うん、絶対大丈夫! 訓練中はつけられないだろうけど、それ以外の時ならきっと平気だよ!
      早速明日の朝食の時にでもつけてみたらいいんじゃないかな。きっとエレンも誉めてくれるよ」ニコ

ミカサ「わ、分かった」

ユミル「エレンの反応が楽しみだな。あ、その前にクリスタはちゃんとエレンをフッとけよ」

クリスタ「ま、まだそんな事言ってるの……?」


アニ「あのさ、もう少し静かにしてくれない? 私は眠いんだ」

 
クリスタ「あっ、ご、ごめんね!!」

サシャ「あはは、アニはこういう話は興味無さそうですもんね」

ユミル「まぁ、もう遅いし私らもそろそろ寝ようぜ。とにかく頑張れよミカサ。主に私のために」

ミカサ「うん。みんなありがとう」


アニ「…………」

アニ(気遣い……か)


【次の日の朝 食堂】


エレン「よう、ジャン。今日も格闘術あるが、やるか?」

ジャン「当たり前だ。昨日までの俺とは違うぜ」ニヤ

エレン「はっ、一日でそんな変わるわけねえだろ」ニヤ


クリスタ「ね、ねぇエレン!」

 

エレン「ん、クリスタか。お前がユミルと一緒にいないって珍しいな」

クリスタ「う、うん。その、ちょっとエレンに話があるの。できれば二人で」

エレン「えっ?」

ジャン「!! じゃあ俺は先行ってるなー」ニヤニヤ

エレン「あ、おいジャン!」

クリスタ「いい、かな?」

エレン(クリスタの上目遣いマジヤバイ)


スタスタ……


クリスタ「……ここでいいかな」

エレン「どうしたんだクリスタ。話って」

クリスタ「えっと……あ、あのね、その…………///」モジモジ

エレン「??」


クリスタ「お、お友達からお願いします!!」

 
エレン「……は?」

クリスタ「だ、だから、その! お友達からで!!」スッ

エレン「あ、あぁ……よろしくな……?」ガシッ

クリスタ(わっ、エレンの手、意外と大きい……///)

エレン(クリスタの手ちっちぇー……)

クリスタ「じゃ、じゃあね!!///」ダダッ

エレン「え、あっ……行っちまった。何だったんだ?」


***


ユミル「……で、ちゃんとフッて来たのか?」

クリスタ「う、うん」ドキドキ

サシャ「どうでしょうね。何だか顔が赤い気がしますよクリスタ」ニヤ

クリスタ「ッ!! う、うそっ!?///」

ユミル「テメェ適当な事言ってんじゃねえぞ芋女あああああああ!!!!!」ガッ

サシャ「いだだだだだだだだだ、ギブギブ!!!!!」

 
***


アルミン「えっ、クリスタが!?」

ジャン「おう、隅に置けねえなエレンのやつも」ニヤニヤ

アルミン「もうやだ頭痛い……」ガクッ

ジャン「おいアルミン?」

エレン「おーす。アルミンも来てたか」

アルミン「エレン、クリスタと何があったの!?」

エレン「あー、それな。なんかいきなり友達になってくれって言われた」

アルミン「え?」

ジャン「は??」

エレン「いや俺もよく分かんねえよ。どうせユミルが罰ゲームかなんかでやらせたんじゃねえの。まったくよー」

ジャン「なんだそんなオチかよ」

アルミン「…………」

アルミン(いくら罰ゲームだからといって、ユミルがクリスタを男と二人きりにするだろうか。
      そういえば、エレンは好みのタイプがクリスタだってミカサに言った。もしかしたらそれが女子側に広まってて……)

 

ミカサ「お、おはよう」モジモジ


ジャン「」

アルミン「」

アルミン(ミカサが髪飾り!? そ、そうか、クリスタの友達になってくれっていうのは、つまり恋愛対象外だと暗にエレンに伝えたのかもしれない!
      つまり女子側はミカサの味方で、エレンとくっつけようとしてる!! いやでも当のエレン本人はジャンを応援していて……ああもう、面倒くさすぎるよ!!!)

エレン「おう、ミカサ。何もじもじして…………ん?」

ミカサ「ッ!!」ドキン

エレン「……あー」

エレン(何でミカサが髪飾りなんか付けてんのかは知らねえけど、ここはチャンスだ! ジャン、一番先に褒めろ!!)ジロ

ジャン「!!」

ジャン(エレンのあの目……よし、ミカサの髪飾りを褒めればいいんだな!!)

ジャン「ミ、ミカサ!」

ミカサ「?」

ジャン「その髪飾り、凄く似合ってるぞ!!」

 
ミカサ「…………ありがとう」

ジャン(こ、これは喜んでるのかミカサは……?)

エレン(よし、よくやったジャン!)

アルミン「で、でも珍しいね。ミカサがそういうのをつけるって」

ミカサ「うん、クリスタから借りたの」

アルミン(やっぱりクリスタはミカサ側! それならたぶんユミルやサシャもそうか……! 特にユミルはクリスタに近づく男は確実に引き離してくる!!
      となると、こっちから仕掛けるとすれば、サシャを食べ物で釣ってクリスタ側を撹乱するのが一番だ。でも、そもそも僕はエレンとジャンの味方につくべきなのかどうか……)

エレン「しっかし、ジャンはミカサをよく見てるな。良かったじゃねえかミカサ、すぐに褒めてくれる奴が居てよ!」ニカッ

ミカサ「ねぇエレン」

エレン「ん?」

ミカサ「エレンはこの髪飾り……どう思う? 似合ってる、かな?」

エレン「えっ、あー」

エレン(どう答えるべきだ? いや、ジャンと同じように褒めたらアイツの印象が薄くなるかもしれねえ)

エレン「ぶっちゃけると違和感ありまく」

アルミン「待ってエレン!!!」

 

ミカサ「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


エレン「……りかと思ったけど案外そうでもねえような気も…………」ダラダラ

ミカサ「ふんっ!!」ガタッ


スタスタ……


ジャン「い、行っちまったぞ」

エレン「……死ぬかと思った」

アルミン「どうしてエレンは自分から地雷を踏み抜こうとするんだ……」

エレン「いや、あそこまでブチ切れるとは思わなかった……」

 

***


ミカサ「…………」ムカムカ

ベルトルト「あれ、ミカサ?」

ライナー「ん、どうしたミカサ、そんな早足で。お、その髪飾り似合ってるな」


バキッ!!! ヒュー……ドガァァァ!!!


コニー「うおっ、ライナーが飛んできたぞ!?」

ライナー「な、なんで……」ガクッ

ベルトルト「ライナー!!!」

ミカサ「…………」ムカムカムカムカ

 

【対人格闘術訓練】


ミカサ「…………」

エレン「な、なんかメチャクチャ睨まれてねえか俺」

ジャン「とりあえず謝っておけよ……」

エレン「あー、ミカサ?」

ミカサ「なに?」ジロ

エレン「その、悪かったよ。少し照れくさかったんだ。あの髪飾り、似合ってた」

ミカサ「……本当にそう思ってる?」

エレン「ほ、本当だって!」

ミカサ「そう……分かった……///」

ジャン(……ん? なんか俺が最初に褒めた時よりも嬉しそうじゃねえか?)

エレン「よし……じゃあさっさと始めるかジャン!」

ジャン「おう、昨日までの俺だとは思うなよ!!」

 
ミカサ(昨日もそうだったけど、二人共やけに真剣。特にジャン)

エレン「やる気は認めるが、そんなすぐにやられる程俺も――」


アニ「それはどうかな?」


エレン「アニ?」

アニ「ジャンは昨日私が鍛えた。元々センスはある、一日でも大分変わってくると思うよ」

エレン「えっ、アニが鍛えた……?」

ミカサ「珍しい」

アニ「ただの気まぐれだよ。私が言いたいことは、油断してると負けるよってこと」

エレン「……へっ、おもしれえ」ニヤ

ジャン「行くぞエレン!!」ダダッ

エレン「来いっ!!」


ドカッ!! ガガッ!!

 

エレン「くっ!」

エレン(マジでアニの技を……! だがっ!!)ググッ

ジャン(ここだ……マルコが言ってた隙!!)ガッ

エレン「いっ!?」グラッ

アニ「お」

ミカサ「あっ!」


ズドン!!!!!


エレン「いってぇ……!」

ジャン「やった……やったぞ!!!」

ジャン(これは間違いなく好印象だ!!)チラ

ミカサ「エレン、大丈夫?」スッ

エレン「くっそ、やるなジャンのやつ……」ガシッ

エレン「……ってミカサ!?」バッ

 
ミカサ「なに?」

エレン「え、いや、勝ったのはジャンだろ……?」

ミカサ「知ってる、見てたから。だからエレンは私と特訓しよう」

エレン「……いや、待てって。なんでそうなる…………」チラ

ジャン「」

アニ「あんたも報われないね」ハァ


【夜 宿舎】


ジャン「くっそ、次だ次!」

エレン「おう、その息だジャン!」

ジャン「……つか一応確認しておくが、お前ら本当にただの家族なんだろうな?」ジト

エレン「あぁ、そうだって。ミカサはちょっと事情があって家族に対して過保護すぎるんだ」

ジャン「そう……か。ならいいんだ。よし、じゃあ今度は野望に真っ直ぐってとこをアピールするぞ!」

エレン「野望か。それなら点数が一番高い立体機動術でいいところを見せるべきだな。本気で憲兵団を目指してる事を見せるにはそれがいい」

 
ジャン「へっ、立体機動は得意だぜ」

エレン「ミカサよりもか?」

ジャン「ぐっ……」

エレン「少なくともアピールする相手よりは上手いのが良いと思うが、流石にキツいな」


マルコ「いや、ミカサに勝つ方法はあるよ」


ジャン「マルコ! 本当か!?」

マルコ「うん、僕は立体機動訓練の時はみんなの動きのほうが気になったりするから、よく見てるんだ」

エレン「ミカサに勝つ方法があるってんなら俺も気になるな。教えてくれマルコ!」

ジャン「お前、ただ自分がミカサに勝ちたいだけだろ」

マルコ「えっと、気を悪くしないでほしいんだけど、エレンはちょっと厳しいかもしれない」

エレン「な、なんでだよ!」

ジャン「単に才能ないってだけだろ」

エレン「くっ……」

 
マルコ「い、いや、そういう事じゃないんだ! エレンじゃ厳しいというか、エレンだけが厳しいっていう感じで……」

エレン「そこまで立体機動術下手くそか俺……?」ガクッ

マルコ「違う違う! 下手とかそういう事じゃなくて、ミカサの隙がエレンに関係することなんだ」

ジャン「ミカサの……隙?」

エレン「そんなもんあるか?」

マルコ「うん、確かにあるよ。特にエレンは気付きやすいと思うんだけど」

エレン「んー……分かんねえ」

マルコ「エレンはさ、立体機動訓練の時はよくミカサの近くに居るよね?」

エレン「あー、まぁな。アイツには負けたくねえし」

ジャン「普通の奴等はミカサの近くは避けるんだけどな。目標を見つけてもすぐに取られちまうし」

マルコ「エレンはミカサに負けたくないがために、時々無茶な動きをしたりする。その時に明らかにミカサの集中が途切れるんだ。たぶん、エレンを心配して。
     他にも、エレンの点数があまり良くない時は、目標を見つけてもわざと速度を落としてエレンに譲っている時もある」

エレン「む、無茶なんかしてねえよ! つかミカサのやつ、そんな事してやがったのか!」

ジャン「……なるほどな、じゃあ二人の様子を観察しながら、そのミカサの隙を狙って目標を奪うってわけか」

マルコ「あぁ。それにしたってかなりの技術が必要なのは変わらないけど、ジャンならできるはずだ」

 

アルミン「……本当に本気なんだね、みんな」


エレン「お、アルミン。凄いぞ、マルコのやつ! ミカサに勝つ方法を思いついたんだ!」

アルミン「うん、聞いてた。凄いと思うよ、立体機動訓練の時なんて僕は自分のことで精一杯だからとても皆を見る余裕はないよ」

マルコ「あ、あはは、いや、僕も別に立体機動が上手なわけじゃないんだけどさ」

ジャン「よし、じゃあ早速明日の立体機動訓練から試してみるぜ!」

アルミン「ねぇ、ジャン。君は本気でミカサのことが好きで頑張ってるんだよね?」

ジャン「お、おう……なんだよ、改めてそう聞かれると照れるな」

アルミン「分かった。僕も応援するよ、ジャン」

ジャン「え、あぁ、サンキューな」

エレン「あれ、おいアルミン? どこ行くんだ?」

アルミン「ちょっとね」


スタスタ……バタン

 

ジャン「行っちまった。そろそろ消灯時間って分かってんのかアイツ」

マルコ「アルミンがそんなうっかりしているとは思えないけど……」

エレン「しゃあねえ、俺追いかけてくる」


【外】


エレン「おーい、アルミンー? ったく、どこ行っちまったんだアイツ」

アニ「エレン? こんな時間にどうしたの?」

エレン「おぉ、アニ。なんかアルミンがどっか行っちまってさ。お前は?」

アニ「こっちも似たようなもんだよ。サシャが戻って来ないから皆で探してるんだ」

エレン「アイツはまた食いもんでも盗んでんじゃねえの?」ハァ

アニ「まぁ、そうだろうね。でもアルミンの方は珍しいね」

エレン「あぁ、一体どうしちまったんだろうな」

アニ「…………」

エレン「ん、どうしたアニ?」

アニ「今日の格闘術の訓練。あんたはジャンに負けたけどさ」

エレン「う、うるせえな……。わざわざ蒸し返さなくてもいいじゃねえか。次は勝ってやる」

アニ「いや、そういう事が言いたいんじゃなくて……その、何ていうかさ……」

エレン「??」

アニ「上手く言えないけど……そこまで気にしなくてもいいと思う。ジャンはセンスあるって言ったけど、格闘術に関して言えばあんたの方が上だよ。
   それに、ほら、今回はマルコの助言もあったみたいだし。そもそも、あそこでジャンが勝ったのは運が良かったっていうのもあるだろうし、10回やったら7回はあんたが勝つと思う」

エレン「…………なぁ、アニ。まさかとは思うが、お前俺に気を使ってる?」

アニ「……ごめん、忘れていいよ。こんなの私のキャラじゃなかった」

エレン「あぁ、本当にな……ちょっと寒気がしたぞ」


アニ「…………」

 

エレン「ん、どうした?」

アニ「ねぇ、エレン。次は確実にジャンに勝つために今から練習したほうがいいんじゃない? 付き合ってあげてもいいよ」

エレン「は? いや、もう消灯時間だって……」

アニ「遠慮なんかしなくていいって」


バキッ!! グァァッ!!!


アルミン「……何してるんだろうあの二人」

サシャ「さぁ……でも何だかんだ仲良いですよねエレンとアニ。それよりアルミン、約束ですよ!」

アルミン「うん。そっちも頼んだよ」

 

【女子宿舎】


ユミル「こんの芋女ァァ……連帯責任って言葉の意味分かってんのかお前ェェ……!!」グリグリ

サシャ「いだだだだだだだだ、すみませんすみません!!」

クリスタ「ちょ、ちょっとユミルやりすぎだって! もういいでしょ!」

ミカサ「……? アニ、どうかしたの?」

アニ「なにが」ムスッ

ミカサ「いや、何か機嫌が悪そうだったから」

ユミル「そりゃいつもだろ。まぁ、今回はサシャのやつのせいで余計な労力使わされたってのもあるんだろうけどよ」

サシャ「す、すみません!! だから削がないで!!」ビクッ

アニ「……別にあんたに怒ってるわけじゃないよ。私はもう寝る」

サシャ「へ? え、えぇ、おやすみなさい」

クリスタ「アニ、誰に怒ってたんだろう……」

ユミル「さあな。それより、だ。ミカサ、エレンの反応はどうだった?」

ミカサ「うん、似合ってるって言ってくれた///」

 
ユミル「よっし、良い感じだな!」

クリスタ「…………」

ユミル「ん、どうしたクリスタ?」

クリスタ「えっ、あ、ううん、何でもないよ!」アセッ

クリスタ(なんだろう、胸が苦しい……)

ユミル「なんだよ、もっと喜べって。お前に纏わりつく虫がどっか行ってくれるんだからさ!」

クリスタ「エレンをそんな風に言わないでっ!」

ユミル「……へ?」

ミカサ「??」

サシャ「ほほぅ」ニヤ

クリスタ「あっ、え、えっと、ミカサも居るんだし、あまりそういう事は……ね?」アセッ

ユミル「あぁ……なんだ、そういう事か。悪い悪い、ミカサ」

ミカサ「ううん、大丈夫」

サシャ「…………」ニヤニヤ

クリスタ「な、なに、サシャ?」

 
ユミル「おいサシャ、その顔いつも以上にウザいからやめろ」

サシャ「い、いつも以上って結構酷いですねユミル……」ガクッ


ユミル「よし、とにかくそろそろいいんじゃねえかミカサ」


ミカサ「え?」

ユミル「告れって事だよ」ニヤ

ミカサ「ッ!!」ドキッ

クリスタ「えっ……!」

ユミル「もう何年も一緒に居たんだろ? 例えそういう風に見られてなくても、そっから関係とか変わったりするだろ!」

ミカサ「そう……かな……」

クリスタ「あっ、え、えっとね……!」オドオド


サシャ「それはまだ早いでしょう」

 
ユミル「なんだと?」

ミカサ「サシャ、どういうこと?」

サシャ「確かに告白することで今までとは違った関係にはなれるかもしれません。でも、それが必ずしも良い方向にいくとは限りませんよ」

ユミル「関係が悪くなるって言いてえのか? そういうもんかねぇ」

サシャ「んー、悪くなるっていうか、気まずくなるっていうか。今までずっと幼なじみとして過ごしてきた相手がいきなり告白してきたら戸惑うでしょう。
     そしてエレンくらいの年の男の子だと、今まで通り接することができなくなって、自然と距離を置いてしまうって事もありえると思います」

ミカサ「そ、それは嫌だ!」

ユミル「…………言われてみれば確かにそうかもしれねえな。芋女のくせに」

クリスタ「そ、そうだよっ! まだ告白は早いと思う!!」

ユミル「んー、それじゃあまだしばらくは大人しくしておいたほうがいいか」

ミカサ「うん、分かった。エレンの側に居られるならそれでいい」

サシャ(……上手くいきましたね。アルミンの入れ知恵ですけど)

ダメだ眠い

保守さんくす

 

【次の日の朝 食堂】


エレン「いつつ……」ズキズキ

ジャン「どうしたエレン、足捻ったのか?」

エレン「いや、昨日の夜いきなりアニに襲われてよ……やっぱ何考えてんのか分かんねえよアイツ……」

ジャン「はは、お前のことだから何かで怒らせたんじゃねえの」


ミカサ「エレン」


エレン「ん、よぉミカサ」

ジャン「お、おはよう、ミカサ!」

ミカサ「うん、おはよう。エレン、話がある」

エレン「話? なんだよ改まって」

ミカサ「これからも……変わらず私の家族でいてほしい」

エレン「……は?」

ミカサ「お願い」ジー

 
エレン「あ、あぁ……いいけどよ……」

ミカサ「ありがとう、エレン」ニコ

シャン「(お、おい、どういうことだよ?)」ヒソヒソ

エレン「(俺が知るかよ……ただ、これで分かっただろ? 俺とミカサは家族で、それ以上でもそれ以下でもねえんだ)」

ジャン「(あぁ、それは安心したぜ)」

ミカサ「二人共何を話しているの?」キョトン

エレン「あ、いや、何でもねえ! それよりアルミンのやつおせえな――」


アルミン「おはよう」


ジャン「おう、アルミン。寝坊か?」

アルミン「いや、ちょっと教官と話をしていたんだ」

エレン「教官と? まさかアルミン、兵站行進でライナーに助けてもらったのバレたんじゃねえだろうな」

アルミン「ち、違うよ!」

ミカサ「確かにライナーはアルミンの事を助けようとしてるけど、アルミンはいつも自分で走ってる」

ジャン「じゃあ何の話だ?」

 
アルミン「いや、その……ちょっと個人的な話で」

エレン「はぁ?」


サシャ「アールミン!」


エレン「うおっ、なんだよサシャ。言っとくが食い物はやらねえぞ!」

サシャ「エレンには言ってませんよーだ。それよりアルミン!」

アルミン「分かってるって。ほら」スッ

サシャ「やったあああああああ!!! ありがとうございます!!!」ダダダダダ

ジャン「……行っちまった」

ミカサ「アルミン、自分の分はちゃんと食べたほうが良い」

アルミン「えっと、あんまり食欲なくてさ」ハハ

 

【立体機動訓練】


ビュン!! ビュン!!!


エレン「くっそ……!」

エレン(やっぱミカサのやつ、はええな……本当に隙なんかあんのかよ……!)

ミカサ「ふっ!!」


ズバン!! ズバン!!!


ジャン(さっきから後つけてるが、なかなか隙見せねえな……)

エレン「この――ッ!!」

エレン(あの目標だけは俺がやる!)


ビュン!!!


ミカサ「…………」チラ

 
ジャン「ッ!!」

ジャン(見えたっ!!!)


ゴォ!!!!!


ジャン「うおおおおっ!!!」ビュン!!

ミカサ「!?」

エレン「なっ、ジャン!?」


ズバン!!!


ジャン「よしっ!!」

ミカサ「……むっ」

エレン(ジャンのやつ、ミカサから獲物を取りやがった……くそ、悔しいが立体機動はアイツのほうが上か……!)

ジャン(マルコの言ってた通りだ……一瞬だが、ミカサのやつ、エレンを気にして隙ができる……!)

 

訓練終了後


教官「今回の成績を発表する。トップはジャン・キルシュタイン。次点でミカサ・アッカーマン――」

コニー「なっ、ジャンが!? おいお前どんな卑怯な手を使ったんだよ!?」

ジャン「うるせえよ! 実力だ実力!」

ジャン(……まぁ、マルコのお陰だが)チラ

マルコ「…………」ニコ

ジャン「へっ」グッ

ミカサ「ジャン、今回は負けたけど、次はこうはいかない」

ジャン「あぁ、俺だって負けないぜ」

ジャン(よっしゃああああああ、ミカサに認められた!!!)

 

【夜 食堂】


エレン「しっかし、まさか本当にミカサを超えるとはな」

ミカサ「次は負けない」ムッ

アルミン「それだけジャンも本気で憲兵団を目指してるって事だよね」

ジャン「!! お、おう、当たり前だろ!」

ジャン(アルミン……ナイスだ!)

エレン「それに、もう楽したいってだけじゃねえもんな!」

ジャン「あぁ、そうだ! 今の腐りきった憲兵団を変えるために俺は入るんだ!!」

ミカサ「そうなの……? ジャン、随分と変わった」

ジャン「俺もいつまでもガキのままじゃいられねえからな」ドヤァ

ミカサ「……私も応援してる」

ジャン「ッ!!」ドキン

エレン(よしっ、良い感じだ!!)

 
エレン「まぁ、憲兵団は報酬も医者以上にいいから、その分きっちり働かねえとな」

ジャン(エレン……ここから経済力に繋げるか! やるな!!)

アルミン(ミカサが男の好みで親が医者とか答えたのは別の理由だろうけどね……)

ミカサ「憲兵団の報酬が良いという事はよく知っている」

ミカサ(私とエレン、二人とも憲兵団に行けば結婚した後も安泰なのに……でも仕方ない。
     エレンが自分の道を進むのなら私はついていくだけ)

ジャン「男は経済力も大事だからな!」

ミカサ「えぇ、それは当然。単純な力だけでは家族は守れない。ジャンの家族になる人は幸せだと思う」

ジャン「なっ!! か、家族って……ミカサ、それは少し早くねえか……?」ドキドキ

ミカサ「そんな事はない。この時代、いつ何が起こるか分からないから」

ジャン「……そ、そうだな! その通りだ!」

エレン(おぉ!! これは……!!!)

アルミン(なんかミカサとジャンの会話が噛み合っていない気が……)

 

【夜 宿舎】


エレン「いけるぞジャン!! もう告っちまえよ!!」

ジャン「まままままま待て、落ち着け!! まだ慌てる時間じゃねえ!!」

ライナー「お前が落ち着け。それにしても本当なのか? あのミカサがジャンに傾いているっていうのは」

エレン「おう、もう結婚の事まで考えてるんだぜ!」

ベルトルト「意外だ……僕は前までは、てっきりミカサはエレン一筋だと思っていたけど」

エレン「だから俺とはただの家族。恋愛対象として見てんのはジャンの方だってことだ!」ニヤ

ライナー「テ、テンション高いなエレン」

エレン「いや、なんか知らねえけど、楽しくってよ!」

ベルトルト「はは、確かに仲間内のそういう話が楽しいっていうのは分かるよ」

ライナー「それで、ジャンはいつ告白するんだ?」

ジャン「三日後の夜だ。勢いだけで告白するのもダメだから、三日間よく考えとけってアルミンがさ」

ベルトルト「さすがアルミン。冷静だね」

 
エレン「なんだよ、今すぐ女子の宿舎行って告っちまえって!」

ジャン「まぁ待てって。俺だって人生の大一番なんだ。ゆっくり考える時間をくれ」

エレン「そういうもんなのか……? よく分かんねえな」

ジャン「お前にもいつか分かるさ」

エレン「へっ、なんだよ先輩風吹かせてよ! 俺達の協力あってだろうが」ニヤ

ジャン「……あぁ、その通りだ。お前達には本当に感謝してる」

エレン「なっ……お、お前に感謝されるとか違和感がすげえな……」

ジャン「う、うるせえよ! 人が礼言ってんだから受け取っとけ!」

ライナー「はは、だが礼はまだ早いな」ニヤ

ベルトルト「うん、告白が無事成功してから、だね」ニコ

ジャン「あぁ……けど、ここまで来れたのもお前達のお陰だからよ。言っておきたかったんだ」

エレン「なーに言ってんだ、告白が成功しなきゃ意味ねーだろ。大丈夫だ、自信持てって」

ジャン「おう、もちろん告白は全力でぶつかってやる!」

 
エレン「その息だ。……つーか、アルミンとマルコはどうした?」

ライナー「コニーに勉強を教えてる。アイツにこの話を聞かれるのも困るしな」

ベルトルト「なんだか仲間外れにしているみたいで、ちょっと可哀想だけどね」

ジャン「つっても……なぁ?」

エレン「あぁ、コニーはバカで何するか分かんねえからな。言わないのが正解だと思うぞ」ハァ


***


コニー「なぁ、お前ら最近何か面白そうな話してね? 俺も混ぜろよ」

アルミン「何もないって。それよりコニーは兵法頑張らないと、本気でまずいよ。せっかく実技は良い成績なのに」

マルコ「そろそろ教官の呼び出しもありそうだしね」

コニー「うげっ! わ、分かった、真面目にやるって!!」

 

【三日後の夜 宿舎】


ジャン「よし……」ゴクリ

エレン「いよいよやってきたな。告白の言葉とかはちゃんと考えてあるんだろうな?」

ジャン「あぁ、もちろんだ。もう何回も練習した」

ライナー「少し固いぞ。落ち着け落ち着け」

マルコ「うん、きっとジャンなら大丈夫。この三日間もミカサにアピールしてきたじゃないか」

ジャン「そうだよな……よし……」

ベルトルト「場所はどこにしたんだい?」

ジャン「山を少し登ったところにある開けた丘の上。星と湖がよく見える場所だ。アルミンが教えてくれた」

エレン「おぉ、あそこか。確かに雰囲気的にはいいかもな。……で、そのアルミンはどこ行ったんだ?」

ライナー「夕食の時も見なかったな」

ジャン「教官が何も言ってないってことは事前に連絡はしてたんだろうが…………と、そろそろ時間だな、行くか」

 
エレン「おう、頑張れよ!」

ライナー「武運を祈る」

ベルトルト「お祝いの準備して待ってるよ」

マルコ「ジャンの真っ直ぐな気持ちを伝えれば、きっとミカサも応えてくれるよ!」

ジャン「あぁ、漢見せてくるぜ」

 
数分後


バタン!!


アルミン「ごめん、遅くなっちゃった! ジャン……あれ?」

エレン「おぉアルミン、お前どこ行ってたんだよ。ジャンならもう行っちまったぞ」

アルミン「ええっ!! 今から追いかけて間に合うかな……」

エレン「あぁ、ついさっき出て行ったばっかだし……てかその瓶は何だ?」

アルミン「染髪料だよ。何とか教官から外出許可を貰って探しに行ったんだ。
      ミカサの言っていた好み通り黒髪になればジャンも心強いかなって」

エレン「お前そこまで……」

ライナー「なるほどな。それならすぐに行った方がいい」

エレン「俺のが速い! ちょっと行ってくる!!」

アルミン「教官には見つからないようにね、没収されちゃうから!」

エレン「あぁ、分かって――」


コニー「お、なんだよそれ?」ヒョイ

 

エレン「なっ、返せって! 染髪料だ!」

アルミン「エレン、ダメだ!」

コニー「へぇ、珍しいもん持ってんじゃん! ちょっと試させてくれよ!」ワクテカ

アルミン「ま、待って、今はそんな時間ないんだよ!」

コニー「へっ、なんで? まだ消灯時間には早いじゃん。お、開きそうだ」グググッ

ライナー「ちっ」ダダッ

コニー「……は? おい待てライナーお前なにを――」

ライナー「ふんっ!!!」ゴォ!!!

コニー「ぐえっ!!!」ドガッ!!!


キュポン!!


教官「おい騒がしいぞ」バタン


バシャァァァァ!!!

 

アルミン(す、すごいタックル……って、それより……)

エレン(染髪料が撒き散らされて……)

教官「…………」ポタポタ

ライナー「」

コニー「いてて……いきなり何すんだよライナー…………」

教官「…………」ポタポタ

コニー「…………」

教官「…………」ポタポタ

コニー「…………あ、え、えっと」ガクブル

アルミン(頼むから変なこと言わないでくれ!!!!!)


コニー「きょ、教官殿の頭が染まらず、何よりでありますっ!!!」ビシッ

 

【丘の上】


ジャン(流石に緊張するな……)ドキドキ

ミカサ「お待たせ。ジャン、話ってなに?」

ジャン「あ、あぁ……えっと……つ、月が綺麗だな」

ミカサ「? そうね」

ジャン「…………」

ミカサ「…………」

ジャン(……覚悟を決めろ! 俺は今ここで――)

ミカサ「ジャン?」キョトン

ジャン「…………」スゥー


ジャン「俺はずっと、ミカサのことを見ていた」


ミカサ「え?」

 
ジャン「ここに来た日からずっと、だ。初めは純粋に見た目に引かれた。本当に綺麗だと思った。
    こんなクソみてえな世界の中で、俺にとっては奇跡といってもいいくらいの出会いだったんだ」

ジャン「それからずっと見ている内に、外見だけじゃなく内面にも引かれていった。
    どんな時でも表情一つ変えずに淡々と任務をこなしていく姿。俺はずっとそんなミカサに憧れていた」

ジャン「ミカサに追い付きたい、もう後ろ姿を追うんじゃなく、隣に並びたい。
    憲兵団に入りたいっていう思いだけじゃなく、そういうミカサへの憧れもあって今日まで訓練を頑張ってこれたんだ」

ミカサ「…………」

ジャン「だから」


ジャン「俺はミカサの事が好きだ。恋人になってほしい」

ミカサ「ごめん、私エレンのことが好きだから」


ヒュォォォ……


ジャン「…………」

ミカサ「…………」


ジャン「えっ?」

 

ミカサ「エレンのことが好きだから、ジャンとは付き合えない」

ジャン「……え、あ、いや、けどエレンがミカサはあくまで家族だって…………」

ミカサ「はぁ……やっぱりエレンはそう思っているんだ。私はずっと前からエレンの事が好きなのに」ショボン

ジャン「」

ミカサ「女子には気付かれていたけど、男子には伝わらないのかな。ジャンも気付いていなかったみたいだし。
    ごめん、私のエレンへのアピールが足りなかったせいでジャンには悪いことをした」

ジャン「」

ミカサ「……えっと、じゃあ私はこれで。大丈夫、ジャンにはきっと良い人が見つかる」


スタスタ……


ジャン「」ポツン

 

【次の日の朝 食堂】


エレン「し、死ぬかと思った……まさか朝までずっと走らされるなんてな……」ゼェゼェ

ベルトルト「げほっ……仕方ないよ……追い出されなかっただけ良かったと思わないと……」

マルコ「ご、ごめん、コニーを見ていなかった僕の責任だ。大丈夫かい、アルミン?」

アルミン「」

エレン「いや、バカやったのは俺達だ。マルコのせいじゃねえって。
     まぁそれにライナーとコニーに比べればマシだからな。あいつら昼まで走れって言われてたけど、ぶっ倒れるんじゃねえか?」


ミカサ「おはよう」


エレン「おうミカサ……あっ!」

エレン(そういやジャンの告白はどうなったんだ!?)

ベルトルト(ミカサの表情からは分かりづらいな……)

マルコ(というか何か不満そうにしてるような……)

 
ミカサ「…………」ジー

エレン「ど、どうしたんだよミカサ」

ミカサ「別に」プイッ

エレン「??」


ジャン「…………」


エレン「うおっ!!! なっ、お前何も言わずに近づいて来んなよビックリした!!」ビクッ

ジャン「…………」

ベルトルト(この様子は……)

マルコ(ジャン……)

エレン「(おい、それでどうだったんだよ、告白は?)」ヒソヒソ

ジャン「…………なぁエレン」

エレン「ん?」


ジャン「お前ふざけんなよちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」ブン!!!

 

バキッ!!! ガッシャーン!!!!!


エレン「いってええ!! お、おいテメェいきなり何を……って何泣いてんだよ!?」

ジャン「うるせええええええええええええええええええ!!!!!」


ドカン!!! ズガン!!! ワー!! キャー!!


ユミル「メシメシ……ってなんだこりゃ。またミカサ巡って殴り合いか?」

クリスタ「えっ!?」ガーン

ユミル「……おいなんでショック受けてんだよ」

サシャ「最近は仲良さげだったんですけどねぇ、あの二人。
    まぁ混乱に乗じて食べ物を盗れるので私にとっては都合がいいですけど」

アニ「あほくさ」

 

ジャン「テメェなんざさっさと調査兵団に入って巨人のエサになっちまえ!!!
    その間に俺は内地で怠けまくって快適に過ごしてやるからよぉ!!!」

エレン「なっ、テメェ憲兵団を変えるとか言ってたじゃねえかクソヤロウ!!!!!」


ワーワー!!! キャー!!! ガシャン!!! パリンッ!! ヤレヤレー!!


ミカサ「……はぁ」


【外】


コニー「あ、母ちゃん……俺、立派な戦士になったぜ……うへへへへへ」

ライナー「あれは……俺達の故郷…………ふはははははは」

教官「寝るな起きろ!!」



おわり

くぅ~疲れましたw これにて完結です! 以下略
勢いだけで一番好きなジャンをメインで書いてみた

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