【うえき×モバマス】神「次代の神を決める戦いの始まりじゃあ!」【安価】 (659)

 ※注意事項※

○「うえきの法則」の設定をモバマス世界に持ち込んだクロスSSです
○「うえき」本家キャラの登場については未定。多分出ない。モバマス勢メインで進行する予定
○クソスレ化覚悟の安価進行。キャラ崩壊してたらすまぬ……すまぬ……
○安価時のルールは、
 ・指定レスから数えて「>>+X」の形で安価指定
 ・安価内容に指定がある場合は()内で表記→例:「>>+2(アイドル名)」
 ・基本的に、無効安価はその下を採用
 ・基本全年齢進行で。過度な下ネタ安価はなるたけご遠慮ください
○意見感想の他雑談も歓迎。読んでくれてる人が居るとわかるとすごく励みになります

てな感じで。
どうかお付き合いいただければ幸いです<(_ _)>



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367692923

神「よし、ワシの次の神を決める方法はこれで決まりじゃあ!」

神補佐「神様! いいい一体何なんですかこのルールは!?」

神「おう、見ての通りじゃ! いいかぁ!?」

神「まず神候補達は、各々人間界に降り、自分の見込んだアイドルに何らかの能力(ちから)を与える!」

神「そして、能力を得たアイドル同士で戦い、最後まで残ったアイドルを選んだ神候補が次の神になるっちゅう寸法じゃあ!」

神「もちろん、勝ち残ったアイドルにも何らかの報酬を用意しよう! わかったら、これを神候補共にさっさと通達せい!」

神補佐「いやいやいや! というかなんでアイドルなんですか!?」

神「だってワシゃあアイドルとか大好きじゃしー? きゃわいい女の子達が戦うとことかもう考えただけで萌え燃えじゃろー!?」

神補佐「」

………
……


神候補「……とか何とか言ってたらしいが、ほんと、世代交代ってものを真面目に考えてるのかねあの神……」

神候補「しかし俺も、せっかく神候補の一人になれたんだ。むざむざ脱落する気はない」

神候補「まずはアイドルを探さないとな……お、ちょうどあそこでライブをやってるようだ」

\ワァァァァ...!/

神候補「おお……良いライブだな。なかなかの盛り上がりっぷりだ。こっちも何か気分が浮かれてくる」

神候補「……よし、俺が人間界に来て初めて見たアイドルが彼女だったというのも何かの縁だろう。俺の担当は彼女に決めた」

神候補「ええと、名前は……? ふむ、>>+2(アイドル名)というのか」

どうせなら、こんなスレに最初に来てくれた人の希望を叶えようと思ったのでセルフksk

神候補「……というわけで、相葉夕美さん。俺と一緒に――いや、一緒にという言い方は語弊があるが」

神候補「とにかく。神候補に選ばれしアイドルの一人として、戦ってもらえないかな」

夕美「……まだ実感はわきませんけど、あなたが不思議な力を持っている、ってことはわかりました。関係者でもないのにこんなところまで入ってきて、スタッフの皆さんもあっという間に眠らせちゃったし……」

夕美「でも、その前にひとつ聞いていいですか? どうして私を選んだんですか?」

神候補「んー……そうだなぁ……」

神候補「月並みな口説き文句になるけど、君のライブの様子を見て一目ぼれした、ってことになるのかな」

夕美「たしかに月並みですね」

神候補「人間界にやってきて、君のライブを見た時……何と言ったらいいのかな。笑顔で踊る君の周りに、満開の花畑が見えた気がした」

神候補「普通の人間には、俺達みたいな特殊な力なんて無い筈なのにな……でも確かに、そんな爽やかで、美しいイメージが見えた気がしたんだ」

神候補「うちの神様のハチャメチャな言動には度々首を捻っていたけど……君を見て、アイドルの持つ力っていうものを、何となく感じられるようになったんだ」

神候補「だから。君さえ良ければ、俺に君の力を貸してほしい」

夕美「……ふふっ、わかりました。でも、戦いと言われてもよくわからないし、まずは詳しいお話を聞かせてください」

神候補「わかった。ありがとう」

神候補「それじゃあ、この、次代の神を決める戦いのルールを説明しておこう」

神候補「まず、俺達神候補が君達アイドルに与えるのは、『AをBに変える』という能力だ。何らかの『限定条件』を満たせば、あるものを別の何かに変化させることができる」

神候補「変化させる元の物や、変化させた後の物が何か次第で、戦い方は大きく変わってくるだろうが……まあ、色々考えて活用して欲しい」

神候補「ちなみに、この能力で同じように能力を与えられたアイドル以外の人間を傷つけると、“才(ざい)”――自分の持つ何らかの才能を、ひとつ失うというペナルティがある。気をつけろ」

夕美「無関係な人を巻き込んじゃ駄目ってことですね」

神候補「そういうことだ」

神候補「他の能力者と対決する時のルールはシンプル、『気絶したら負け』だ。他の能力者に気絶させられた者はその能力を失い、この戦いから脱落する。勝った側は、倒した能力者一人につき、ボーナスとして新たな“才”をひとつ得ることができる」

神候補「そうして戦いを繰り返し、能力を得たアイドルが最後の一人になった時……そのアイドルに能力を与えた神候補が、次の神になる、というわけだ」

神候補「もちろん、そんな過酷な戦いに参加する君達の側にも見返りはある」

神候補「最後まで勝ち残ったアイドルには、報償として、“空白の才”――自分の好きな才能をひとつもらえる権利、」

神候補「もしくは、次代の神の力で何らかの願いをひとつ叶えてもらえる権利が与えられる」

夕美「願い事……ですか? あの、それは、何でも好きな願いを叶えてもらえるんですかっ?」

神候補「んー……何でも、というわけにはいかないがな。例えば、『世界を滅ぼして欲しい』とか、『世界の支配者になりたい』なんて願いを迂闊に叶えてやるわけにはいかないだろう?」

神候補「俺達に知らされたルールでは、『世界にあまり大きな影響を与えるものは不可』とされているが……どこまでならオーケーか、その辺りの裁量は、次の神になったその神候補の判断に委ねられているようだ」

神候補「まあ、もし君が最後まで勝ち残ってくれれば、俺を神にしてくれた恩人ってことになるわけだからな。よっぽど無茶苦茶な願いでさえなければ、どんな願いでも叶えてやるよ。約束しよう」

夕美「願い事……私の……」

夕美「わかりました。私、やってみます!」

神候補「本当か!? いや、でも一度能力を得たら、取り消しは効かないぞ? 本当にいいんだな?」

夕美「いいんです。私にも……神様にすがってでも叶えたい願いがありますからっ!」

神候補(力強い目だ……この子を選んだ俺の判断は間違っていなかった!)

神候補「よし、じゃあ君に、この戦いで勝ち抜くための能力を与えよう!」

神候補「ズバリ……『>>+2を>>+4に変える能力』、限定条件は『>>+6』だ!」ババーン!

昼間バイト行く前に書きこもうとしたら規制食らってたよ……
解除されてたら続き書く

神候補「ズバリ……『“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力』、限定条件は『声を出し続けること』だ!」ババーン!

夕美「ラフレ……ええぇーっ!? な、なんですかその能力っ!?」

神候補「植物に詳しそうな君なら使いこなしてくれそうだと思ってな!」ハハハ

神候補(本当はこれくらいしかめぼしい能力持ってないとか言えない……)

神候補「ともあれ、これと決めたからには――それっ」ペカー

夕美「わっ、わっ?」ペカー

夕美「……これで能力が使えるようになってるんですか?」

神候補「試してみるといい。ほい、植物の種」

夕美「あ、ありがとうございます。……これ何の種ですか?」

神候補「桃」

夕美「なんで桃……?」

神候補「天界には多くてな。いや場所にもよるが」

神候補「それじゃ、ほら、発声練習でもするつもりでやってみろ」

夕美「うーん……どう考えても酷いことになる気しかしないんだけど……」

夕美「すぅ……あ――――――――」

パァァァァ

ブワッ モワワッ

神候補「ぶおっは!!」ガバッ

夕美「うっ、げほっ、に、臭いがっ……」ゲホゲホ

シュゥゥ...

夕美「あ……種に戻った」

神候補「どうだ? これが能力だ。限定条件を満たしている間だけ発動し、条件を満たさなくなると元に戻る」

神候補「この能力を上手く使って、戦いを勝ち抜いていくんだ!」

夕美「……それはわかったんだけど、なんでそんな距離取ってるんですか?」

神候補「え、だって臭……いやごめん、女の子に言っていい台詞じゃなかったな」ウン

夕美「あなたのせいでしょう!?」

夕美「もう……でも、もう後戻りはできないんですよね。それじゃあ、これからよろしくお願いしますねっ」

神候補「ああ。俺も直接君の戦いには関与できないが、他の能力者の接近を知らせたり、そういった面ではサポートしよう」

夕美「お願いします」

神候補「あ、しかしそういえば君は結構売れっ子のアイドルなんだよな。俺みたいなのが傍をうろうろしていたらゴシップとか……」

神候補「そうだ、それに君のプロデューサーにも挨拶しておかないと。えーと、どうしよう、菓子折とか用意しておいた方がいいのかな」オロオロ

夕美(何だか父親にでも挨拶しに行くみたいな悩み方……)

夕美「あ、えっと……でも私、今はセルフプロデュースしてるので、担当の人とか、居ないんですよ」

神候補「おや、そうなのか。じゃあ、君の担当Pとして事務所に潜り込んでおけば、傍にいても下手に騒がれずに済むかな」

夕美「……そう、ですね。私は別に構いません。でも、そんな簡単にできるんですか?」

神候補「まあその辺りは適当に、天界人パワーでちょちょっと工作しておこう」

神候補「では改めて――相葉夕美さん。これからよろしく頼む」

夕美「はい、よろしくお願いしますっ」

 ――かくして、一人の神候補と一人のアイドルは出会い、共に戦う契約を交わした。
 果たして、彼女達の行く先には、いかなる敵が待ち受けているのだろうか……


神候補(さて……半ば勢いで勧誘したせいで確認してなかったが、彼女の才の数は、と……)端末ポチポチ

神候補(165……悪くないな。出来る限り、戦いに役立つ才がたくさんあればいいんだが)

神候補(エントリー期間が終わり、能力者が出そろえば、本格的に戦いが始まることになる……その前に、戦いに挑む体勢をしっかり整えておかなければ……!)

神候補(……とりあえず、まずは住民票を手に入れるところからかなー……)


>>To be continued...

安価進行って難しいですね。ラフレシア振り回して戦うアイドルとか斬新過ぎるでしょう……
しかし行けるところまで行ってみようと思うので、そんな感じでどんどん安価お願いします! 無茶振りされても逃げずに頑張りますので!
昼に投下だけしとくつもりでTo be continuedとか書いてますが、規制でうやむやになったのでもう少ししたら続きの投下します

神候補(とりあえず、夕美のプロデューサーになることには成功した)

神候補(事務所や関係各所の人間には思いっきり怪訝な顔をされたが、そこはまあ彼女の人徳と、天界力の応用でちょちょっとやって何とかなった)

神候補(建前上は、セルフプロデュースで上手くやってる彼女に新人プロデューサー(=俺)を付けることで、プロデューサー業について学ばせる、ということで通っている)

神候補(でまあ、神候補改め「神候補P」となった俺の仕事は色々あるんだが、まあ一言でいえば……)

神候補(雑用だ)

事務員A「神候補Pさん、先日の書類の件ですけど!」

神候補「上がってます、確認お願いしますね!」シャッ

モブP「おーい、冷蔵庫のスタドリ切れてるんだけどー」

神候補「30秒待ってください、倉庫にあるんで出してきます!」ダダダッ

事務員B「神候補さぁん、スケジュール調整失敗しちゃって先方からお怒りの電話が……お、応対してもらえませんかぁ~?」グスッ

神候補「任せといてください! はいっ、この度はどうも失礼をっ、はいっ、はいっ! 申し訳ありませんっ!」ペコペコ

モブアイドル「レッスン帰りで喉乾いたんだけど、誰かお茶淹れてくんない?」

神候補「すぐに淹れますね緑茶がいいですか烏龍茶がいいですか!?」シュババッ

事務員C「プロデューサーさん、今ならスタドリが10本+おまけの1本でなんと」

神候補「あ、それは結構です」キパッ

事務員C「」

社長「いやぁ、最初はどうなる事かと思ったが、予想以上にしっかりやってくれとるじゃないか」バシバシ

社長「その調子で、これからも頼むよ神候補君」ハッハッハ

神候補「はい、ありがとうございます!」

神候補「いやぁ、俺もすっかりプロデューサー業が板についてきたなぁ」ハハハ

神候補「この調子なら、先輩Pみたいに自分でアイドルをスカウトしてプロデュースしていけるようになるのも時間の問題……!」

神候補「行く行くは、俺の手で世界に名だたるトップアイドルを……! そう、目指せアイドルマスターってちっがぁ――う!!」ガタッ

夕美「」ビクッ

神候補「何やってるんだ俺は!? もうエントリーも締め切られるかってとこなのに、戦いの備えとか全然してねえじゃねえか!?」

神候補「ここしばらくやってたことといえば、スタドリのセールスかわしながら事務所の雑用やって、エナドリのセールス回避しながら夕美関連の事務仕事片付けてってそれオンリーだぞ!?」

夕美「あはは……でも神候補さんは実際凄いと思うよ? 他のプロデューサーさんだと、何かイベント事があるたびに、ひたすらスタドリ飲んで走り回ってる人もいるのに」

神候補「まあ俺は天界人だからな。体の丈夫さも人間とは違う」

神候補「具体的に言うと、スタミナ回復速度は6ポイント毎分くらいだ」

夕美「何言ってるかよくわからないけど、なんか凄そうだね」

夕美「おかげで、私の方も結構楽になったところがあるし。色々と助かってるよっ」

神候補「そう言ってもらえると俺も頑張ってる甲斐がある」

神候補「いやしかし、実際問題としてだ。エントリーが閉め切られれば、能力者同士のバトルが本格的に始まることになる」

神候補「今のうちに、出来る限り自分の能力について把握して、力を磨いておいた方がいいぞ」

夕美「磨いておいた方がいい、って言われても……」

夕美「神候補さんがくれた能力、一回使うだけで物凄く臭いが残っちゃうから、迂闊に練習もできないんだけど」

神候補「まあな……一番ヤバかったのは裏の倉庫で練習した時だな」

神候補「出来る限り消臭したつもりだったが、後から入ってきたやつが残ってた臭いで目回して転んで頭打って、それで『能力で人を傷つけた』扱いになって才がひとつ減った時は流石の俺も焦った」

夕美「これじゃ、戦いが始まっても下手に能力使えないよっ」

神候補「だっ、大丈夫だ! 戦いそのものに俺が手を貸すことはルール違反だが、戦いの事後処理に関しては別だからな!」

神候補「むしろ人間界に無用な混乱を起こさないよう、後始末はちゃんとしとけと言われてるくらいだ。だから、あの時みたいなことはもう起こらない……はず」

夕美「なんか不安……」

神候補「まあそれはそれとして。仕事だ」

夕美「そのスーツ姿もすっかり様になってきたね」

神候補「似合ってるだろ?」ドヤァ

夕美「後はもう少しほがらかな笑顔ができれば、小さい子に泣かれずに済むんだろうけど」

神候補「ぬぐっ……いいからっ、ほら、今度のイベントの概要だ。読んどけ」

夕美「はーい。……へえ、今度はここでやるんだ」

神候補「ああ。他のアイドルとの共演もあるらしいぞ。名前はたしか……」ペラペラ

神候補「ああ、そうそう。>>+2(アイドル名)だ」

神候補「ああ、そうそう。佐々木千枝だ。年は11」

夕美「千枝ちゃんか。仲良くできるといいな」

神候補「まあ夕美なら大丈夫だろ」

神候補(俺としては、佐々木千枝が能力者じゃないかってところが心配だったが……端末で確認してみたら、能力者としてエントリーされてはいなかった)

神候補(ま、このイベントに関しては心配しなくても大丈夫だろう)

神候補「よし、それじゃ、イベントに向けてレッスンだ!」

夕美「おー!」

 ―イベント当日

神候補(で結局、能力者としての特訓はまったくしないままエントリー締め切り日まで来てしまったわけだが……)

神候補(まあ、ここまで来たらなるようになれ、だ。幸い、夕美の能力は(悪臭的な意味で)強力だから、ぶっつけ本番でも戦えなくはない、はず)

夕美「神候補さん?」

神候補「ああすまん。実はこの後、上から呼び出しがかかっててな」

夕美「え、また何か失敗しちゃったの? 事務仕事にはもう慣れてると思ったのに」

神候補「そっちじゃない、上は上でも社長とかじゃなくて天界の方だ。例の戦いのエントリーが今日締め切りだから、それ関連の伝達があるんだよ。……ていうか「また」って何だ」

夕美「あはは、軽い冗談だってば」

神候補「まあ、そういうわけなんで、先に挨拶周りを済ませてしまうぞ」

夕美「えーと、こんにちはー?」ガチャッ

千枝「あっ、ごめんなさい! こっちから挨拶にいかないと、って思ってたんですけど……」

夕美「ああ、いいのいいの。気にしないでっ。相葉夕美です。今日は一緒に頑張ろうねっ」

千枝「佐々木千枝です。えへへ、よろしくお願いしますね!」

神候補(しっかりしてそうだけど年相応なところもあって、可愛い子だなぁ)

千枝「あ、えっと、そっちの人は……?」

神候補「あ、失礼。夕美の担当Pの、神候補といいます。今日はよろしくお願いします」ニコッ

千枝(な、なんだか、ちょっと怖い感じ……)

千枝「や、優しくしてください……ね……?」フルフル

神候補「」ゴフッ

神候補(待て待て待て、弱々しい笑顔プラス上目づかいプラスその台詞は何かこう色々とアブナイ……!)ゲフンゲフン

夕美「…………」ジー

神候補「何だよ」

夕美「黄色のカーネーションかな」

神候補「何が」

夕美「別に」ツーン

ピピピピピッ ピピピピピッ
神候補「っと、呼び出しだな……これでいよいよ、能力者同士の戦いが始まるわけだ」

神候補「じゃあ夕美、悪いがあとのことは頼む。多分、イベント後半までには戻って来られるはずだから」

夕美「……うん、わかった」

神候補「……その緊張はどっちのだ?」

夕美「どっちも、かな」

神候補「そうか。まあ、リラックスしてやればきっと大丈夫だ。これでも食って落ち着け」

夕美「……桃?」

神候補「天界の某地域では常時旬でな。花も一枝へし折ってもらってきた」

神候補「お前に影響されて、俺もちょっとは勉強したんだぞ。桃の花言葉は「天下無敵」! それに、桃の節句つって、人間界では神聖な力があるとも言われてる植物なんだろ?」

神候補「俺は直接手伝えないが、健闘を祈ってる。しっかりな」

夕美(たしか桃の花言葉って、それだけじゃなくて……)

夕美(ふふ、でもこの様子だと、そっちは知らないんだろうな……)

夕美「……うん、ありがとね。頑張るよっ」

神候補「おう、その意気だ!」

夕美「でも、私のアイドルとしての戦いもちゃんと見て欲しいから……だから、出来るだけ早く戻って来てねっ」

神候補「わかった。善処する」

  「――では以上をもちまして、エントリーをしめ切らせていただきます」



 ―空を走るバスの中

神補佐「えー、それでは私当バスのガイドが、ルールの説明をさせていただきます」チョコン

神補佐「ルールはいたって簡単。みなさんがエントリーされたアイドルさんが、最後まで勝ち続ければOKです」

神補佐「バトルの方法は自由です。それぞれに与えられた“能力”を使ってもよし、素手で戦ってもよし」

神補佐「とにかく相手を気絶させれば勝ちです。負けた方は“能力”を失い、その時点でゲームオーバー。いつどこでどうやって戦わせるかは、みなさんのお好きなように決めてください」

神補佐「以上で、説明を終わります」ペコッ

神候補「いよいよか……」

神候補(俺達神候補側に課せられたルールは色々あるが、アイドル達の戦いは、言ってしまえば何でも有りのバトルロイヤルだ)

神候補(敵がどんな手を使ってくるかもわからない。警戒はしっかりしておかないと……)

痩身の神候補「……もしもし、はい、私です。ええ、戦いは始まりました。もう仕掛けていいですよ」

痩身の神候補「ふふふ、あなたならきっと大丈夫です。ええ、しっかりおやりなさい」ピッ

神候補(何だあいつ、いきなり始める気か……!?)

痩身の神候補「おや、あなたはたしか神候補さんでしたか。ふふ、あなたの担当アイドル、あなたが戻るまで無事だといいですねえ」

神候補「!?」

\ワァァァァ...!/ \ユミチャーン! コッチムイテー!/ \チエチャンガンバッテー!/

千枝『えっと、みなさん、応援ありがとうございます!』

夕美『でも、ライブはまだまだこれから! もっともっと、笑顔の花を咲かせてみせるよっ♪』

\ワァァァァァァ...!!/


スタッフ「あのっ、今こんな申し込みが!」ヒソヒソ

司会「ほう……これはやるしかないだろう!」ヒソヒソ


司会『さて皆さん! お楽しみのところとは思いますが、ここでサプライズゲストの登場です!』

夕美「えっ……?」

千枝「ゲスト……さん?」

司会『今回駆け付けれてくれたのは……この方です!』ジャジャーン

夕美「あなたは……!?」

………
……


ビーッ! ビーッ!
神候補(夕美に他の能力者が接近中だと!? くそっ、まさかこんなに早く!)ダダダダ

神候補(あの痩身の神候補の様子からすると、どうやらエントリー締め切り前から狙われてたみたいだな……! こっちの準備不足を見抜かれたか!)

神候補(だが今はそれどころじゃない。相手の情報は……!?)カチカチカチ

神候補(出た! 名前は……>>+2(アイドル名)!)

神候補(能力は……>>+4(限定条件)することで、“>>+6”を“>>+8”に変える能力だと!?)

予想以上に安価付くの早くて、嬉しいと同時にビックリしてます。ありがとうございます
バイトから帰ってきたので続き書きます

神候補(出た! 名前は……高峯のあ! 年は24!)

神候補(能力は……歌うことで、“折り鶴”を“鶴のモンスター”に変える能力だと!?)

神候補(才の数は204個。くっ、こんなタイミングで仕掛けてきたことといい、あらゆる面でこちらより格上か……!)

神候補(頼むぞ夕美、無事で居てくれ……!)

………
……


「サプライズゲスト?」「あっ、のあさんじゃん」「うぉぉのあ様ぁー!」

ドヨドヨ...

夕美「え、ええっと……」

のあ「…………」スッ

夕美(あれは……折り鶴?)

のあ「――始めましょうか。私達の戦いを」

のあ『……La――――――♪』

パァァァァ...!

化け鶴「クァァァァァァッ!」バササササッ!

夕美「!?」

 のあの手にした折り鶴が、鶴に似た怪鳥へとその姿を変じて一斉に羽ばたく。
 舞い上がる翼の陰に一瞬隠れた歌姫は、次の瞬間――十二単にサイバネティックなテイストを組み込んだ、鮮烈なステージ衣装をまとった姿で現れた。


のあ『――さあ、魅せてあげるわ。Ah――――♪』


ドヨドヨ...ワァァァ...!

夕美(か、会場の空気を、一瞬で持って行かれちゃった……!)

夕美(う、ううん、それより、あの鶴はまさか……のあさんも私と同じ能力者っ!?)

夕美(でも、こんなところで堂々と能力を使っちゃってもいいの!?)


「早着替えの演出SUGEEEEEE!」
「でもあの鶴何? ロボ? CG?」
「なんだって構わねえ! 鶴までサイバネティックとは、流石のあ様だぜ!」
「だな!」

「「「のあ様最高――っ!!」」」

\ワァァァァァァァァ...!!/


夕美(いいんだっ!?)ガビーン

夕美(でも、あの鶴……)チラッ

化け鶴A「」バサバサ...ギロッ

化け鶴B「」バサバサ...ジロッ

化け鶴C「」バササ...チラッチラッ

夕美(やっぱりこっちを狙ってる!?)

千枝「な、なんだかあの鳥さん、怖いです……あ、あの、夕美さん、千枝はどうしたらいいですか?」フルフル

夕美(でも、千枝ちゃんやファンの人達がこんな近くに居る状態じゃ、私の能力は迂闊に使えない……!)

夕美「――千枝ちゃん! 一旦袖にはけるよっ! 今はゲストのアピールタイムだから!」

千枝「は、はいっ!」

夕美『それじゃあ私達は、ここでゲストとバトンタッチしますねっ!』タタッ

千枝『み、みなさん、また後で!』タタタッ

\ワァァァ...! ヒューヒュー!/

のあ(咄嗟のフォローとしては悪くない判断……問題は次、ね)

のあ(この舞台では、身を守る棘を持たない華は手折られるだけ……咲き誇ることができるかしら? 貴方は)

のあ(それを見せられないのなら……貴方は徒花に過ぎなかったということよ……!)

のあ『――――――♪』

\ワァァァァァァァァァァァ...!!/

……


スタッフA「何だあの鳥!? 誰か聞いてるか!?」

スタッフB「いえ、何も。演出の一環として、高峯さん側が持ち込んだものだとは思うんですが……」

スタッフA「確認急げ!」

ドタバタ ワーワー

千枝「なんだか、スタッフさん達も、忙しそうにしてますね……」オロオロ

夕美「そ、そうだね……」

夕美(ど、どうしよう……神候補さんも居ないし、私、どうしたらいいの?)

夕美(あの鳥、列を作ってずっとステージの上を飛び回ってる。もし、私がまたステージに出たら……)

夕美「…………」ブルブル

夕美(あ、でも、神候補さんは、どんな能力にも限定条件があるって言ってた)

夕美(のあさんが歌い出した途端、折り鶴が化け鶴に変わった……ということは、のあさんの能力の限定条件は歌うこと?)

夕美(なら、のあさんが一曲歌い終わるまで待ってれば、あの鶴も……)


のあ『――諦めたら 墜ちるだけ』

のあ『風を打って 強く 高く 空を舞って』

のあ『ただ前へ 進むだけ 力尽きるまで』

のあ『いつか あの星を掴む日まで』

のあ『LaLaLa――――♪』


夕美(のあさん……こっちを、見て)

夕美(そうだ……私の初めてのライブの時、プロデューサーさんが言ってくれたこと……)

夕美(“初めて”から逃げたら、何も始められないんだって……)

夕美(ちゃんと自分の精一杯を出して挑戦さえできたら、たとえ失敗したって、その次へ進んで行けるから……)

夕美(いつか……いつか素敵な花を咲かせられるように……!)グッ...!

夕美「……千枝ちゃん、千枝ちゃんは、もう一回ステージに出る準備は大丈夫?」

千枝「あ、はい、大丈夫です。あの鳥さんはなんだか怖いけど……」

千枝「でも、千枝はもっと歌いたいです……ファンの皆さんに、もっと千枝のことを見てもらいたいです……!」

夕美「うん、私も同じ気持ち。のあさんにステージ取られてばっかりじゃいられないもん。もうすぐ出るよ。頑張ろうねっ!」

千枝「はいっ!」

夕美(……考えないと。千枝ちゃんやファンの人達に被害を出さずに、あの鳥を何とかする方法を……!)

夕美(でも、どうしたらいいの? こんなことなら、もっと戦いや能力のことについて聞いておけばよかった……神候補さんっ……!)

……

神候補『――まあ、リラックスしてやればきっと大丈夫だ。これでも食って落ち着け』

夕美『……桃?』

……

夕美「! そうだ、もしかしたら……ううん、これしかない!」

千枝「どうしたんですか?」

夕美「千枝ちゃん! 千枝ちゃんにも、ちょっとだけ手伝ってほしいことがあるの。いい?」

千枝「よくわからないけど……千枝にできることなら、がんばります!」

夕美「ありがとう! じゃ、準備をするから、一緒に来て!」

……


のあ(そろそろこの曲が終わる……)

のあ(私の能力は、声量さえ十分なら、ハミングであっても限定条件を満たすことができる)

のあ(けれど……歌の終わりをそうやって冗長に引き延ばすのは、アイドルとしての私の美学に反する……)

のあ(勿論、相手の能力の隙を突くというのも、立派なひとつの戦術だけれど……)

のあ(相葉夕美。貴方の選択は――)


夕美『――さあ行くよっ、千枝ちゃん!』タッ

千枝『皆さん、お待たせしました! ここからは私達も一緒に、○○、聞いてください!』


のあ(――そう、来たのね。曲の終わりを待たずに……!)

のあ(限定条件を満たせなくなる曲の終わりと同時に、私は、この鶴達を舞台袖へと退場させる)

のあ(そのすれ違いざまに、貴方に攻撃を仕掛けさせるわ。貴方はそれを凌げるかしら?)

のあ(何らかの対抗策を考えてきたのなら……見せて頂戴。私に、貴方の可能性を……!)

のあ『~~~~――――♪』チラ

夕実『……っ』ゴクッ

夕実(……ううん、ここまで来たんだもん。もう、逃げないっ!)

夕美『さあ、行くよっ! その前に――そぉれっ!』ポーイ

のあ(? 何を投げ上げて……?)

化け鶴A「?」ヒョイパク

化け鶴B「!?」ヒョイパク

化け鶴C「!」ヒョイパク ウマー

のあ(あれは……何かの果実……!?)

……

夕美『千枝ちゃん、これお願いっ』

千枝『これは……桃、ですか?』

夕美『そうそう。あの鳥さん達に、ちょっとご飯をあげようと思ってねっ』

夕美『舞台に出た時に、これを一緒に投げ上げて欲しいの!』

千枝『わかりました!」

……


千枝(って、夕美さんは言ってたけど……)

千枝(これをあげれば、あの鳥さんとも仲良くなれるのかな……?)

千枝「え、えーいっ!」ポーイ

千枝「あっ、と、届かな……」

化け鶴D「!!」シャーッ ヒョイパクッ

千枝「あっ、受け取ってくれた! ありがとう、鳥さーん!」ブンブン

化け鶴D「」コクコク デレデレ

夕美・のあ((……そういう趣味……?))

夕美(と、ともかく……さあ、これで準備は整ったよっ!)

夕美(本当は、ライブが終わってからゆっくり食べようと思ってたんだけど……)

夕美(この勝負に、負けないために。逃げないために! 神候補さんの桃、使わせてもらうねっ!)

夕美(一か八か――)

夕美『この声、届いて――――――――っ!』

パァァァ...!

ブワッ モワワッ

化け鶴s「「「!!!?」」」ゲボォ

夕美(――! ぶっつけ本番だったけど、できた!)

のあ(あれは……!? 鶴達にくわえさせた実を、花に変化させた!?)

夕美(桃の種がラフレシアに変わったら、すぐに声を止める! あの鳥達が飛んでる高さで一瞬変えるだけなら、下に居る皆のところまで、そこまで酷い臭いは来ないはず!)

夕美(でも、その一瞬があれば十分!)

化け鶴s「キュゥ......」ヒューッ

夕美(あの酷い臭いを、口にくわえた状態で嗅がされたらそうもなるよね……ご、ごめんね?)

のあ(いけない、鶴達が、観客席に……!)

のあ『~~、♪ っ……!』ピタッ

化け鶴s「……」シュゥゥ...

折り鶴「」ヒューッ ポトッ


「あれ? 鳥がどっかに……」「? 何か落ちてきた?」「やっと出てきた! 夕美ちゃーん、千枝ちゃーん!」

\ワァァ...!/

夕美(やった、やれた……ファンの人達に被害を出さずに、のあさんの能力を止められた!)

のあ「……見事だったわ。貴方さえ良ければ、ここからはただのアイドルとして勝負しましょう」ボソ

夕美「……! はいっ!」

千枝『~~~~っ♪ ほら、夕美さんも一緒に!』

夕美『うんっ! ~~、~~~~♪ さあ、のあさんもっ!』

のあ『ふふ、負けていられないわね。~~~~~~♪』

\ワァァァァァァァァァァァ......!!/

………
……

ドヨドヨ ガヤガヤ

「いやー、来てよかった!」

「のあさんがサプライズゲストとして出てきた時はビックリしたな!」

「でもなんか、途中変なところで歌切っちゃってたよな? あれ何だったんだろ……ちょっと残念かなー」

「うるせえ、のあ様ディスってんじゃねぇ!」

「はいはい、皆さん、出口と物販コーナーはあちらになりまーす。押さず、喧嘩せず、順番にお願いしまーす!」

ガヤガヤ ワイワイ


……



のあ「……改めて賛辞を送らせてもらうわ。貴方の機転、見事だったわ。勿論、歌声も」

のあ「貴方が臆して退くようなら、このステージそのものをもらってしまおうとさえ考えていたのだけれど……どうやら今回は、私の負けのようね」

夕美「あ、いえ、そんなことないですっ」

夕美「のあさんの、あの能力を使った演出と、歌声とで、会場の雰囲気はあっという間に持って行かれちゃってましたし……」

夕美「のあさんのミスがなかったら、少なくとも、アイドルとしては私の完敗だったはずです」

夕美「あの時……鳥を観客席に落とさないためだったんだとは思うんですけど、どうして、あんな変なタイミングで歌うのをやめちゃったんですか?」

のあ「……『歌う』ことが私の能力の限定条件であることは、貴方も気付いているのでしょう」

のあ「歌というのは、切れ目のない音の繋がりではない。息継ぎや、表現としての『ため』や『間』。『歌う』という行為には、そういった『声の切れ目』も含まれている」

のあ「それ故に……私の能力は、即座の解除が出来ない。『歌うのをやめた』ことが確定し、鶴がただの折り鶴に戻るまでに僅かなタイムラグがある」

夕美(あ……そうか。私の能力は『声を出し続ける』ことが限定条件だから、『声を途切れさせた』時点で解除されるけど……)

のあ「鶴達が観客席に落ちる前に折り鶴に戻すためには……歌詞の途中ででも、歌うのをやめておかなければ間に合わなかった」

夕美「なるほど、そうだったんですね……えへへ」

のあ「…………何? その笑顔は」

夕美「あっ、すいません、その、何ていうか……安心したんです」

夕美「最初は、こんなファンの人も大勢居る前で、いきなり戦いを仕掛けてくるなんて、なんて容赦のない人なんだろう、って思ってたんですけど……」

夕美「でも、歌うことを途中で止めてでも、ファンの人達を怪我させないことを優先したんだ、ってわかって……優しい人なんだな、って」エヘヘ

のあ「……能力で無関係な人を傷つけて、重要な才が消えることを危惧しただけ。それ以上の意味はない」

夕美「……ふふ、じゃあ、そういうことにしておきますねっ」

のあ「…………。まあ、いいわ」

のあ「相葉夕美。今回はこのくらいにしておきましょう。けれど……次に会う時は、容赦はしないわ」

のあ「いえ……これからも戦いを続けるなら、「次」のチャンスなど来ない、正真正銘の命がけの戦いもきっとありえるでしょう」

のあ「……戦いを降りるなら、今のうちよ」

夕美「……いえ、私は、逃げません。能力者としても、アイドルとしても、のあさんに負けないように頑張りますからっ!」

のあ「……そう。それもまた、ひとつの選択……」

のあ「貴方がこの先どんな華を咲かせるのか、楽しみにしておくわ……」

夕美(能力で咲くのはラフレシアなんだけどね……)

のあ「……それじゃあ、私はこれで……」スッ

夕美「あっ、ちょっと待ってくださいっ!」

夕美「あの、次の神様を決めるための、能力を与えられたアイドル達の戦いっていうのは、今日始まったばかりなんですよね?」

夕美「なのにどうして、いきなり私なんかのところに……?」

のあ「……別に、深い理由などないわ」

のあ「強いて言うなら……>>+3(理由)といったところかしら」

のあ「強いて言うなら……目を閉じて適当に選んだアイドルが貴方だったからよ」

夕美「えっ」

のあ「…………」

夕美「…………」ダラダラ

のあ「…………冗談よ」

夕美「で、ですよねっ。あはは……」

のあ「……けれど、たとえ理由が何であったとしても」

のあ「貴方は、今日という日の運命を乗り越えた。他の誰でもない、自分の知恵と能力をもって」

のあ「そのことは、誇ってもいいと思うわ」

夕美「…………」

のあ「それじゃあ、またいつか会いましょう……」

夕美「あ、あのっ、ありがとうございましたっ!」ペコッ

のあ「…………」ヒラヒラ

ガチャッ...パタン

夕美「………………」

夕美「……はぁ、な、なんとかなったぁ……」ヘナヘナ

神候補「よぅ、お疲れ」ヒョコッ

夕美「きゃっ、かっ、神候補さんっ!? いつからそこに!?」ビクッ

神候補「ついさっきな。だが、ライブの方は、後半だけだがしっかり見せてもらったよ」

神候補「……よく頑張ったな」ポム

夕美「あ……」ジワ

夕美「……も、もう、女の子の頭をそんな気軽に撫でちゃ駄目ですよっ」

神候補「ああ、すまんすまん」パッ

神候補「俺が居ない状態で、いきなり他の能力者に襲われたのに、よく頑張った。それをねぎらってやりたくて……つい、な」

夕美「もう、アイドルのプロデューサーをやってるのに、デリカシーがないんですからっ」

夕美「そんなこ、こと、じゃ……っ、……」

神候補「夕美?」

夕美「……すみません、神候補さん」

夕美「あの、やっぱり、少しだけ……手、握っててもらっても、いいですか……?」

神候補「……おう。そのくらい、いつでも構わんぞ」ギュ

夕美「……ありがとうございます」

夕美(……怖かった……何もかも突然で、本当に、どうしたらいいんだろうって……これは、本当の戦いなんだ……)

夕美(でも、もうやめるわけにはいかない。戦うって、決めたんだから)

夕美(でも、でも……今だけ、ちょっとだけ、落ち着くまでは……)

夕美「…………っ」

神候補「…………」

神候補(気丈な子だ……きっと今になって、初めての戦いの緊張や不安が一気に来てるに違いないのに)

神候補(涙をこぼさないよう、声を出さないよう、ただじっと静かに耐えている……)

神候補(俺が巻き込んでしまうまでは、本当にただのアイドルだったのにな。しかし一体、何が彼女をこうまで……?)

神候補(……くそっ、戦いに直接関われないのがこうももどかしいとは。それほどの願い、か……叶えてやりたいな……!)ギュ

……


夕美「……ふぅ、ありがとうございました。神候補さん。もう大丈夫です」

神候補「お、そうか? うーん、残念だな、もっと長い時間でも喜んで握っててやるのになぁ」

夕美「ふふっ、いくらプロデューサーでも、そんなことしてたら怒られますよっ」ニコッ

神候補(よし、もう、いつもの調子を取り戻したみたいだな)

神候補「ん、まあ、たしかにそうだなぁ。……さっきからそこで覗いてる子もいることだし」

夕美「えっ」

ガタタッ

夕美「えっ。えっ?」

神候補「入ってきていいぞー」

ガチャッ

千枝「あの……ご、ごめんなさい、その、邪魔したら、悪いかなって……」テヘ

神候補「ちなみにどの辺から?」

千枝「えっと……『もう、女の子の頭をそんな気軽に』のあたりからです」

千枝「覗き見するつもりはなかったんですけど……なんだか、見てたらドキドキしちゃって……」

神候補「まったく、千枝ちゃんは悪い子だなぁ」ハッハッハ

千枝「えへへ……」テレテレ

夕美「えっ? えっ……」カァァ

神候補「……夕美が祝いの花束バラして一本一本数え始めたんで俺が対応するが……千枝ちゃんも、今日はお疲れさん。うちの夕美と一緒に頑張ってくれて、ありがとうな」

千枝「い、いえっ、千枝が頑張れたのも、夕美さんがいてくれたからですからっ」

神候補「千枝ちゃんは良い子だなぁ。よし、頑張ったご褒美に桃をあげよう」

千枝「わぁ、ありがとうございますっ」

夕美「…………」ジロー...

神候補「……ゴホン。それで、千枝ちゃんはどうしてここに? 何か用があったんじゃないのか?」

千枝「あっ、そうでした! あの、今日はお疲れさまでした! 大変だったけど、夕美さんと一緒だったから、楽しかったです! ありがとうございました!」

神候補「だ、そうだぞ」

夕美「……うん、私も、千枝ちゃんと一緒にライブができて良かったよっ。機会があったら、また一緒にやろうね♪」

千枝「はいっ♪」

千枝「それで、あの……今日のライブで、少し、気になったことがあるんですけど……」

夕美「」ギクッ

夕美「え、えーっと……何のことかなっ?」

千枝「あ、夕美さんのプロデューサーさんも、よかったら聞いてください」

千枝「……今日のライブ中、のあさんの周りにいきなり鳥さんが出てきたり、その鳥さんがいつの間にか消えちゃったり、ちょっと不思議なことがあったんです」

千枝「演出のためのステージの仕掛けとか、千枝がよく知らないことは一杯あると思うんですけど……あれって、本当にそういう仕掛けだったんでしょうか……」

千枝「夕美さん、プロデューサーさん、何か知ってたら、教えてもらえませんか?」

夕美「それは、あー、うー、えーっとね……」ダラダラ

神候補(うーん……まあ同じステージ上に居て近くであれ見てりゃ、やっぱりそうなるよなぁ)

夕美(ど、どうしよう、どうしたらいいかな、神候補さんっ!?)ヒソヒソ

神候補(どうするっていってもな……)ヒソヒソ

神候補(この戦いで人間界に大きな混乱を起こしちゃいかんから、そこら辺、最低限の情報隠ぺいはすることになってるが……)

神候補(逆に、無関係な人間には誰一人として知られちゃいかん、って厳密に決められてるわけでもないんだよなぁこれが)

夕美(じゃ、じゃあどうしたらいいの?)

神候補(一応その気になれば、俺が預かってきてる天界アイテム使って、その辺の都合の悪い記憶だけ消して適当に誤魔化すことも可能だぞ)

神候補(だがまあ……この戦いの主導者は俺じゃなくてむしろお前の側だからな。その辺の判断はお前に任せる)

夕美(え、ええーっ!?)

神候補(いいか? 選択肢はいくつか考えられる)

神候補(幸い千枝ちゃんは、ステージ上で本物の超常現象が起きていた、と確信してるわけではないようだから、今なら適当に嘘を言っても誤魔化せるだろう)

神候補(それでも不安なら、天界アイテムで都合の悪い記憶だけ消してもいい)

神候補(逆に、もしそうしたいと思うなら、彼女に本当のことを――次代の神を決める戦いのことや、能力のことを話しても構わない。それで何か問題が起きたら責任は俺が取る)

神候補(これについては、夕美のやりたいようにやっていい。お前は一体、どうしたい?)

夕美(わ、私は……)



さて、どうする? >>+3

千枝ちゃんには本当のことを全部話してメインヒロイン的ポジションになってもらう

>>90安価把握です。
そろそろ寝ないとイベントの終わりを寝過ごしかねないので、とりあえずここまで。起きたらまた続き書きます

しかし待ちながらちょっと見返したら、途中で書き加えたとこで一部夕美ちゃんが夕実ちゃんになってた……誰だよ夕実って
書きこむ前に最後の見直しもしてるはずなんですが、集中力落ちてくるとミスも出ますね……気を付けます

イベントは二万位切れない程度の無課金らしい順位でした。いいよ別に気にしない。嫁が来たら本気出す
しばし離席するので、書き溜めした分一気に投下します

夕美(……神候補さん。私、千枝ちゃんに本当のことを話そうと思います)

神候補(ほう。だが信じてもらえるとも限らんぞ?)

夕美(それでも……大変なことにはならずに済んだけど、私が居たせいで今日の戦いに巻き込んじゃったことは確かです)

夕美(せっかく仲良くなれたのに、嘘を吐きたくないんです。変に記憶を消したりして、今日のライブの思い出を捻じ曲げるのはもっと嫌です)

夕美(私やのあさんだけじゃなく、千枝ちゃん自身が頑張って成功させた今日のライブの思い出は、千枝ちゃんのものだと思うから……)

神候補(そうか。わかった)

夕美(あの……本当にいいの、かな?)

神候補(いいぞ? 言っただろう、判断はお前に任せる、責任は俺が取ると)

神候補(うまく説明できないところとか、何か手伝いがいるなら言ってくれ)

夕美(わかりました。ありがとうございます、神候補さん)

神候補(良いってことよ)

夕美「えっと、じゃあ……千枝ちゃん?」

千枝「はい!」

夕美「信じられないかもしれないけど……本当のことを話すね。聞いてくれる?」

千枝「はいっ! 教えてくださいっ!」

夕美「それじゃあ、どこから話したらいいかな――――」

………
……


夕美「――……っていうことなの」

千枝「わぁ……世の中には、千枝の知らないことが一杯あるんですね……」

夕美「あの、ごめんね? 何も知らないうちに、私の戦いに巻き込んじゃって……」

千枝「ううん、千枝の事なら平気です! 夕美さんとのあさんのおかげで、ライブだって大成功でしたし!」ニコッ

千枝「それに、あの鳥さんも、最初はちょっと怖かったですけど、さっきここに来る途中……」

……

千枝『ええっと、夕美さんの控え室は……ん?』

『――……~~~~…………♪』

千枝『これは……のあさんの声? きれいな声……どこかで歌ってるのかな……わっ!?』

バサササッ

化け鶴D『クワッ』

千枝『さ、さっきの鳥さん……?』ビクッ

化け鶴D『』スッ

千枝『……それは、お花? 千枝にくれるんですか?』

化け鶴D『』コクコク

千枝『わぁ……きれい……えと、ありが、とう……?』

化け鶴D『クワァッ』バッサバッサ

千枝『えへへ……』ナデナデ

化け鶴『グェヘヘヘ...』デレデレ

……

千枝「……ってことがあったんです!」

夕美「へえ、そうなんだ」

夕美(のあさん、意外と子供好き……?)

千枝「だからもう、全然平気ですっ! 夕美さん、本当のことを教えてくれて、ありがとうございました!」

夕美「ううん、こちらこそ、信じてくれて、ありがとね」

夕美「もしかしたら、この戦いのせいで、また何か迷惑をかけちゃうかもしれないけど……これからも、私と仲良くしてくれる?」

千枝「もちろんです! あの、もし夕美さんがよかったら……不思議なことや素敵なこと、もっとたくさん千枝に教えて欲しいです!」

夕美「えっと、それは……」チラッ

神候補「対人関係についてはお前の自己責任だ」シラッ

夕美「う……じゃあ、いいけど、危ないことは駄目だからね?」

千枝「はいっ!」

神候補(――そうして、機会があればまた共演することを約束して、千枝ちゃんは帰っていった)

夕美「ふぅ……さすがにちょっと疲れちゃった……」

神候補「『夕美さんの能力も見てみたいですっ!』って凄い懐かれてたからな。どうせなら見せてやればよかったのに」ケラケラ

夕美「……もう、神候補さん、わかってて言ってるでしょ?」

神候補「だが、それで距離を取られるなら、その方が良かったかもしれんがな……」ボソ

夕美「え?」

神候補「いや、なんでもない」

神候補(好奇心の強い年頃だ。多分、今後もちょくちょく首を突っ込んできそうな気がする)

神候補(……今後の戦いの過激さ次第では、迂闊に傍に居ると、千枝ちゃんの身にも危険が及びかねない。直接的な怪我でなくても、何か、あの子を深く傷つけるようなことが起きるかもしれない)

神候補(だが……戦いの事情を知り、それでも傍に居てくれる人間がいるというのも、夕美にとっては色々な助けになるだろうしな……)

神候補(まあ、話してしまったもんは仕方がない。それもあいつの選択だ。俺はそれを尊重する)

神候補(何かあった時は――責任を取るのが俺の仕事だ)

夕美「…………」


……

千枝『え、神様に願い事を叶えてもらえるんですかっ!? すごいですねっ!』

千枝『じゃあ、もし最後まで勝ち抜けたら、夕美さんは何をお願いするんですか?』

夕美『それは……んー、秘密かなっ』

千枝『えー』

夕美『だーめ。今はまだ内緒だよっ』

……


夕美「……私も、もっと頑張らないとな」

夕美「絶対に、トップアイドルになって……」

夕美「夢を、叶えるんだから……!」



>>To be continued...

 ~幕間~


神候補「そういえばなんだかんだと忙しくて、夕美の持ち才をちゃんと確認してなかったな」

夕美「どんな才を持ってるかは、その端末で見られるんだっけ」

神候補「ああ。どれ、戦いに役立つような才はあるかな、と……」ポチポチ

神候補(ふむふむ……さすがアイドルとして成功してるだけあって、“歌の才”や“踊りの才”はしっかり持ってるんだな)

神候補(“>>+8の才”とか、“>>+10の才”とか、よくわからないのもあるが……)

神候補「……うん? “ガーデニングの才”はないのか」

夕美「そうなの? でも、子供の頃からずっと好きでやってたから……才能とか、そういう風に考えたことはなかったかな」

神候補「なるほどな。まさに好きこそものの上手なれ、ってことか」

神候補「他には…………っ!?」

夕美「えっ、な、なにか変なのあった?」

神候補「いや、変というか……この“・ワ・の才”って何だ」

夕美「!?」

神候補「えーと……あ、よく見たら“えがおのざい”ってルビが入ってた」

夕美「な、なんですかそれっ!?」

神候補「あー、そういえば……」ガサガサ

神候補「うん、やっぱり。宣材写真とか見てみたら、たしかにこういう感じの笑顔でよく写ってるなー」

夕美「なっ、なんですか、私の笑顔がそんなに変って言うんですかっ!?」

神候補「え? いや、そうじゃなく……」

夕美「もう知りませんっ! 神候補さんのばかっ!」ダダッ

神候補「いつも笑顔で可愛いな、って……あー、行ってしまったか」

神候補(その後たまたま、鏡の前で、口を閉じたにっこり微笑を練習をしている夕美を目撃し)

神候補(その必死な頑張りぶりについ吹き出してしまって覗きを見つかり)

神候補(……そしてポケットに放り込まれた植物の種を能力でラフレシアに変えられ、酷い目に遭うことになったんだが……)

神候補(…………うん、あのことはもう、なかったこととして忘れてしまおう……くそっ、俺のスーツ……)

神候補(まあ、自分の能力を使いこなせるようになってきてるんだと、そう肯定的に考えよう)ウン

神候補(さて、次は一体どんな能力者が出てくることやら……)


>>続く

~夕美の持ち才・一部抜粋~

○“ストップウォッチで狙った数字を出せる才”
 ストップウォッチの液晶画面を見ずに、狙った秒数でぴったり止められる才。
 さらに才を磨くと、コンマ秒単位まで正確に狙えるようになったり、何十分、何時間といった大きな時間でもぴったり止められるようになる。

○“かくれんぼの才”
 他人の目から上手く隠れられる才。売れっ子なので、お忍びの際には重宝する。
 流石にまったく何もない開けた場所では活用できず、また、相手が“人探しの才”などを持っている場合は見つかってしまうこともある。

○“・ワ・(えがお)の才”
 人の心を明るくする、可憐な笑い方ができる才。
 別に同じ表情しかできないわけではないが、普通の“笑顔の才”は“・ワ・の才”とは別に存在するらしい。

………
……


千枝(大人の人達は、そんなのおとぎ話だ、本当にはいないんだ、って言うけど……)

千枝(神様も、不思議な力も、本当にあるんだ!)

千枝(すごいなぁ……すてきだなぁ……)

千枝(千枝も、そんな力が使えたら――)

 ―某月某日・ロケ中の某神社

子役A「だめだよー、そんなことしたら、バチがあたるんだよっ」

子役B「うっせー、ばーかばーか! 神さまなんて本当は居ないんだぜ、バチなんて当たるもんかっ!」ラクガキ

子役A「やっ、やめてよー」グスグス

千枝「こらぁーっ! 駄目ですよ、そんなことしちゃ! 神様は本当に居るんですからね!」

子役A「ちえおねえちゃん!」

子役B「なっ、なんだよ、知ったふうな口きくなよなっ!」プイ

千枝「知った風な、じゃなくて、千枝はちゃんと知ってるんですよ!」プンプン

子役B「何言ってるんだよ。オトナならみんな知ってるんだぞ、神様なんて本当はいないって!」

子役B「もし本当に神様がいるんなら、なんで今オレにバチが当たらないんだよ! ほらみろー!」ベーッ

千枝「それは、えっと……そう、きっと今の神様はやさしいから、Bくんのことを許してくれてるんです」

子役B「なら、別にこーいうことやってても怒られないってことじゃん」ヘヘッ

千枝「むむ……あ、でも、もうすぐ新しい神様が決まって、お仕事を交代する時期なんですよ」

千枝「だから、もし次の神様がこわくてきびしい人だったら……今度は本当にバチが当たるかもしれませんよ?」

子役B「……な、なんだよ、そんなの別にこわくなんかねーもんね!」

子役A「かみさまって、こわいの……?」フルフル

千枝「ええっと……ううん、そんなことないですよ。がんばった子には、新しい神様が好きな才能か、好きな願い事を叶えてくれるんです!」

千枝「だから、ほら、ちゃんと撮影がんばりましょうね!」

子役A「はーい!」



???「…………!?」

スタッフ「いやあ、千枝ちゃんはしっかりしてるね!」

千枝「えへへ……いつもは年上の人が一杯いますけど、今日は千枝がおねえさんですから!」フンス

スタッフ(うわぁ、お姉さんぶってる千枝ちゃんかっわえぇわぁ……)ホワァ

スタッフ「っとと……オホン。それじゃあ、その調子でお願いするね。千枝ちゃんももうすぐ出番だから」

千枝「はい! がんばります!」

……


コソコソッ
>>+2(アイドル名)(あの子……さっきの神様の話ってもしかして……!?)

聖ちゃんとか、道場でしか現物見たことない子来ちゃったわぁ
把握ですー

聖「……あの子……さっきの話は、もしかして……?」ヒョコッ

強面の神候補「思わぬところで収穫があったな。よし、行くぞ」

聖「また……戦うの……?」

強面の神候補「生き延びたければ、やられる前にやるしかない。これはそういう戦いだ」

強面の神候補「……夢を、叶えたいんだろう?」ギロ

聖「……うん……わかり、ました……」

強面の神候補「ああ、良い子だ。さあ、追うぞ」

聖「うん……」

千枝(えへへ、可愛い衣装をもらっちゃいました! 魔女っ子、っていうのかな)

千枝(マントのヒラヒラと、トンガリ帽子がすてきです!)

千枝「鏡よ鏡、鏡さん♪ んー……」ピッ

千枝「……んん、こう、かな……?」ピシッ

千枝「コホン……えーと、“魔法”を“現実”に変える能力ー!」ピシッ!

千枝「ふふ、なーんて……」

ユラァ...

千枝(? 後ろに誰か――)

強面の神候補「チッ、ばれたぞ、やれ! 先手を取らせるな!」

聖「…………」スッ

千枝「――!?」


パァァァァァ...!


………
……

神候補(うーむ……この戦いが始まってから、人間界の食べ物に色々触れる機会があったが……)

神候補(やはりこのギウ・ドゥーンは素晴らしい……この手軽さに加えて、満腹感のコストパフォーマンスは非常に高い)

神候補(昔はまさかと馬鹿にしていたが、どっかの天界獣がガツガツ食ってたとかいう噂話も納得の代物よ!)

神候補「――では、頂きます」

神候補「」ハフッハフッ ムシャァ ガツガツ

...ドドドドドド

夕美「神候補さんっ、大変っ!!」バーーーン!!

神候補「」ングッ ブホォ!

神候補「……夕美。『食べ物を粗末にするな』という教えは天界でも人間界でも共通していたと思うがどうだ」

夕美「ご、ごめんなさい……じゃなくてっ、大変なのっ!」

神候補「何だ? 今仕事の話は入ってないし、天界モバイルも反応してない。俺の食事を邪魔したのがしょうもない理由だったら怒るぞ」モグモグ

夕美「千枝ちゃんが……千枝ちゃんが能力者にさらわれちゃったの!!」

神候補「」ブホォ!!

神候補「待て待て待てどういうことだ!? 順を追って説明してくれ!」

夕美「さっき私のケータイに、千枝ちゃんのアドレスからメールがあって……そこに……」

神候補「『この少女の身柄は預かった。指定の場所に来てこちらの能力者と戦え』って……いやいやいや、そんなまさか……」

ピピピピッ ピピピピッ

夕美「な、なんか端末が鳴ってるよ?」

神候補「…………」スッ ポチポチ

神候補「どうやらマジみたいだな……俺の端末の方にも同じ内容の天界メールが来た。強面の神候補ってやつからだ」

神候補(ったくもう、思った以上に巻き込まれるのが早かったな千枝ちゃん!)

夕美「ねえ、早く助けにいかないとっ!」

神候補「一応言っとくが罠の可能性が高いぞ」

夕美「でもっ!」

神候補「わかってる。警戒はしとけってことだ」

神候補「種は持ってるな? 行くぞ!」

夕美「うん!」

………
……


聖「……!」ピクッ

強面の神候補「……ほう、来たな」

神候補「強面ぇ! お前自分が何やってるのかわかってるのか!? 無関係な人間を巻き込みやがって!」

夕美「千枝ちゃんはどこっ!?」

強面の神候補「ふん、こちらとしても、あの少女を巻き込んだのは不本意な事故でな」

強面の神候補「どうせ巻き込んでしまったついでに、お前達を呼び出すための餌に使わせてもらっただけだ。心配せずとも、『あの子の命が惜しければ負けろ』などと言うつもりはない」

強面の神候補「正面から戦えば、こちらが負けることはない。あの少女については、戦いが終われば、ちゃんとアフターケアをした上で解放するさ」

神候補「ふん、どうだかな……」

強面の神候補「そもそも、先に巻き込んだのはそちらだろう。能力者でもない少女が、何故この戦いのことを知っていた?」

夕美「それはっ……!」

強面の神候補「おかげで能力者と誤認して攻撃し、“>>+2の才”を失う羽目になった」ヤレヤレ

強面の神候補「もう二度とそんな愚は犯さん。やれ、聖ッ!」

聖「あなたが……本物の能力者……?」

夕美「神候補さん、あの子が!?」

神候補「ああ、そうだ! 何にせよ、ここまで来たらやるしかない!」

神候補「今モバイル端末で確認した! 望月聖、13才、能力者だ!」

強面の神候補(そう、そしてその能力は、>>+4(限定条件)によって“>>+6”を“>>+8”に変える能力! お前達などに負けるものか!)ククク...!

(キャラをちゃんと把握できてないから脱落させようと思ってたなんて言えない……)

というか原作見返してて気付きましたが、神候補の持ってる端末って、相手の才は見れるけど能力についてはわからないんでしたね……
のあさん編でうっかり、神候補に「~~に変える能力だとぉ!?」とか言わせちゃってましたが本来無理じゃん!
その辺はこう、演出と安価の都合というか、何か見れた理由があったということでオナシャス!

聖「あなたに…恨みはないけど……ごめんね……?」シュル...

夕美(何? 着けてたマフラーを取って……)

聖「“マフラー”を……」クワッ

パァァァ...ガキィン!

聖「“鋼”に変える能力……!」ダッ

夕美「なっ……マフラーが、棍棒みたいに!?」

神候補「避けろ夕美!」

夕美「くっ……!」サッ ババッ

聖「……当たらない…………」ブンッ ブンッ

神候補(行ける! あんな棍棒に振り回されるような攻撃なら、夕美でも十分避けられる!)

神候補「それに、そちらから接近戦を挑んでくれるなら好都合だ! 夕美! 能力の応用を使え!」

夕美「うん!」

夕美「“植物の種”を、“ラフレシア”に変える能力……!」ゴソゴソ...ギュッ

夕美「行くよ……ぁ――――――」

パァァ...!

ポフン モワァ

聖「……っ!?」サッ

強面「!? なんだその花は!?」

夕美「――、と、距離を取られちゃったか」シュゥゥ...

夕美「これが私の能力だよっ! この酷い臭いが我慢できるならかかってきなさい!」ビシッ

神候補(そう、そして今のが“能力の応用”! 何度か練習しているうちに気付いた、能力の応用変化形!)

神候補(夕美の能力は……出す声が小さければ、咲く花も小さくなる!)

神候補(ラフレシアは、臭いもそうだが、「世界最大の花」とも言われるその大きさが特徴だ)

神候補(そのサイズは、大きいものなら直径90cm超! そんなものを夕美の細腕で振り回すのは難しいが……)

神候補(小さい声で限定条件を満たせば、ラフレシアを手のひらサイズにすることが出来る)

神候補(これなら簡単に振り回せるし、小さいから、悪臭もそこまで広がらない! 接近戦ならこれが安定だ!)

神候補「ククク、このラフレシアパンチを一度でも食らえば、当分臭いは落ちないぞ。覚悟するがいい……!」

夕美「神候補さん、口調がすごく悪役っぽいよ……」

夕美「でも、早く降参して千枝ちゃんを返さないと、本当に臭いで気絶するまでやっちゃうよ!?」

聖「…………」パチクリ シュゥゥ...

聖「……強面……どうしよう……?」

強面「ふん、臭いがキツいというのなら、間合いを取って戦えばいいのだ。聖、才を使え!」

聖「うん…わかった…………」スッ...

聖「“マフラー”を…………」ブラーン

聖「“鋼”に変える能力……!」クワッ パァァァァ...! ガキィン!

神候補(マフラーを伸ばして……今度は長い棒状に!?)

神候補「だが、多少リーチが伸びたところで、上手く扱えなければ関係ない!」

夕美「うん、行くよっ!」タタッ

夕美「ぁ――――――」パァァ...!



強面「――“棒術の才”」

聖「……んっ」ヒュンヒュンッ...ズビシッ!

夕美「痛っ!?」ポトッ シュゥゥゥ...

神候補「なっ……いきなり武器の扱いが上手く!?」

強面「何を驚いている。能力者の武器は能力だけではない。その“才を駆使する”こともまた、重要な戦術のひとつだ!」

強面「そのまま畳みかけろ、聖!」

聖「わかった……」ヒュヒュン パシッ クルクルッ シュバッ

夕美「わっ、く、痛っ……!」ビシバシ

神候補「なんて熟練した棒捌き……! “棒術の才”だと……!?」

神候補(望月聖……今の持ち才は65個? 数だけなら夕美の半分以下だが……)ポチポチポチ

神候補(あの“棒術の才”を始めとして、そのまま攻撃に使えるような才を幾つも持ってやがる!?)

神候補「そのままじゃまずい! 夕美、距離を取れ!」

夕美「くっ、一旦下がって……」タタッ

聖「逃がさない……」タッ

夕美「来ないで! あ――――――!!」パァァァァ...!

ブワワワッ モワッ

聖「ぅ…………」サッ

夕美「はぁ、はぁ……いたたた……」シュゥゥ...

神候補(危ない、何とかしのげたが……)

聖「んん…………」トコトコ

聖「……強面……あの人…くさい…………」ムゥ

夕美「なっ!?」ガーン

夕美「わっ、私は別に臭くないよっ! 臭いのはこの花の方で……!」

強面「一緒だ」ズバッ

夕美「うぐっ、わ、私だって、消臭剤とか、香水とか、かなり気を使ってるのに……!」フルフル

強面「そんなことは知らん。まったく、ウン十年間まともに洗っていない便所のような臭いのする女だな」ハン

夕美「」グサグサァ

夕美「……うぅ、全部神候補さんのせいだ……」ズーン

神候補「がっ、頑張れ夕美! 今度天界の香水買ってきてやるから!」

強面「しかしあんな大きな花まで出せるとなると、下手に近付いて臭いを移されても厄介だな……」

強面「聖、距離を開けて戦え。予備のマフラーはこっちにある」っスーツケース

神候補「あっ、お前卑怯だぞ! 神候補が戦いに手を貸すのはルール違反のはずだろう!」

強面「戦いへの協力という意味なら、お前もさっきから口を出しまくっているではないか」

強面「それにこれは、元々聖が用意しここまで運んで来ていた物。戦闘中に追加の物資を運んで来れば反則にもなろうが、お前の口出しと同じく、この程度なら別にルールには抵触せん!」

神候補「おのれ……!」

強面「さあ聖、やってしまえ!」

聖「うん……“マフラー”を“鋼”に変える能力……」パァァ

聖「……“鋼の槍”」ジャキッ

強面「そして“投擲の才”、だ」

聖「……えいっ」ビュン

夕美「わっ……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」パァァァ

ブワッ グサァ! デロォ...

神候補(あっ、危ない……! 悲鳴で能力が発動して、花が盾代わりになったか!)

夕美「う、うぅ……花粉が飛び散って臭いが……」プーン

聖「…………くさい」ムー

強面「臭い女だ」

夕美「酷いよっ!?」ズガーン

神候補「がっ、頑張れ夕美! あとで天界の消臭剤買ってきてやるから!」

夕美「それは香水じゃ誤魔化せないって意味!? そうだよねっ!? っていうか何でそんな距離取ってるのっ!」

神候補「え、だって……」鼻ツマミ

夕美「うわーん!」

夕美「うう……もう許さないんだからっ! こっちからもお返しだよっ!」種ポーイ

夕美「“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力! あ――――」

強面「ぬっ、遠距離からでも可能なのか!?」

聖「…………」パァァ...タタッ

聖「……えい」ビシッ

ヒュー......パァァァ モワワッ

夕美「――って、うそ、発動する前の、種の状態で弾かれた!?」

強面「“打ち払いの才”か……! よくやったぞ聖! その調子でやってしまえ!」

聖「うん…………いくよ……!」ビュンッ

夕美「くっ、あ――――――!!」パァァァ...ドカドカッ!

夕美(この子……才もだけど、多分勝負勘がいいんだ!)

夕美(さっきもそう。私が種を投げて声を出し始めた瞬間、棒のリーチだけじゃなく、自分から踏み込んで距離を詰めてきた)

夕美(そのタイミングでなければ、打ち払う前に種がラフレシアに変わってたはず……それでいて計算高いタイプには見えないから、本人のセンスなのかな)

夕美(距離感とかタイミングとか、そういう“間”の取り方が上手いんだ……!)

神候補(くそっ、夕美もラフレシアの盾で耐えてるが、鋼の槍を打ち込まれちゃ何発ももたない!)

神候補(種に戻して再発動すれば花は元に戻るが、接近する隙が……!)

夕美「はぁっ、はぁっ……」シュゥゥ

夕美「神候補さんっ、私どうしたら……あ――――――!」パァァァ ドカッ ドスッ

神候補「えっ、えーと、何か対抗する手段……」オロオロ

神候補「そうだ、相手の武器が能力と才なら、こっちも才で対抗だ! 何か使えそうな才は……!」ポチポチポチポチ

神候補「夕美! “>>+2の才”を使え!」

神候補「夕美! “見切りの才”を使え!」

夕美「“見切りの才”ってな……あ――――――!」パァァァ ドスッ

夕美「“見切りの才”って何!?」

神候補「その名の通り、相手の攻撃やものの動きを見切る才だ! ダンスレッスンで鍛えたお前の身体能力なら、攻撃さえ見切れればかわせる! ……はずだ!」

夕美「えっ、で、でも……!」

夕美(花の盾を出してると前がよく見えなくなるから……見切りの才を使うためには、回避に専念して、防御を捨てなくちゃならない)

夕美(ちゃんと避けられればいいけど、もし避けそこなったら……!)

神候補「夕美! ――お前なら出来る!!」

夕美「…………!」

夕美「すぅ……ふぅ……」シュゥゥ...

夕美「神候補さん。私、勝てるかな」

神候補「勝てる。いや……勝って勝って、最後まで勝ち抜いて、叶えたい願いがお前にはあるんだろう?」

神候補「なら――勝て! バトルには干渉できないが、背中は押してやる!」

神候補「自分の才能を信じろ! 行け、夕美ぃぃぃ――!」

夕美「うん…………行くよっ!」ダッ

強面「フン、破れかぶれの突進か! 聖、やってしまえ!」

聖「“投擲の……才”……!」ビュンッ

夕美「“見切りの――”」

夕美「――“才”っ!!」スッ

強面「何ぃっ、首を少し傾けるだけの、最低限の動きで!?」

神候補「おおっ! いいぞ、その調子だ夕m――ぬおおお流れ弾ぁぁぁ!」サッ ドスッ

強面「ちぃっ、だがマフラーはまだ山ほどある! 聖っ、連投で畳みかけろ!」

聖「わかった……」ジャキジャキジャキッ

夕美「うっ」

聖(“鋼槍”)ヒュドドドド

夕美「みっ……“見切りの才”+“踊りの才”!」ヒュヒュ ザッ バッ スタッ

夕美「……できたっ!」ビシッ

強面「ぬううう、軽やかなステップで!」

神候補「ぬおおあああああああああ!」ヒュババババババッ ドスドスドスドスッ

聖「正面からじゃ……当たらない……なら……」ジャキン

聖「……“ブーメラン”…です……!」ギュバッ

ヒュルヒュルヒュルヒュル...!

夕美(槍よりも横幅が広い……!)

夕美「でも……かわせるっ!」サッ

夕美「よしっ、このまま一気に距離を……!」ダダッ

神候補「! 違う夕美、後ろだっ!!」

夕美「えっ?」

...ュルヒュルヒュルヒュル!


聖「――“命中の才”」


ガッ...!

夕美「つっ……!」グラッ ガクッ

強面「馬鹿め! トドメだ聖!」

聖「…………」ジャキッ ダッ

夕美(いけない、種を……!)

聖「させません……」ビシッ


 背後からのブーメランの直撃を受け、思わず取り落とした種。
 それを拾おうとした夕美の指先を掠めて、聖の振るった鋼の棒が、種を明後日の方向へと弾き飛ばした。
“棒術の才”に支えられた鮮やかな手さばきで、間髪入れず振り下ろされるトドメの一撃。
 能力の元となるものを失い、防御手段を持たない夕美は――

夕美「くっ……!」ガシッ バッ

ガキィィン...!

聖「! わたしの……ブーメランで……」

夕美(これで今は、何とか……でも……)

夕美「うっ……」グググ

神候補(咄嗟に相手の武器を利用したか! それなら、相手が自分の武器を維持している限り、こちらもそれを利用できる!)

神候補(だが夕美の方には、ブーメランのダメージがまだ強く残ってる……! 体勢も悪い! このままでは押し込まれる……!)グッ

強面「おっと動くなよ神候補! ここまで来たら、もはや一切の手出しは無用だ!」

強面「お前が何かしようとしたら、俺は“お前のルール違反行為を阻止する”ために介入するぞ!」

神候補「ぐぬぬ……!」

ギリギリギリッ...!

聖「……こんなことをして……ごめんなさい…………でも…わたしも負けたくないんです……」ググ

夕美「負けたくないって……何か、叶えたい願い事でも、あるのっ……?」グググ

聖「…………わたしは……」ググググ

聖「わたしは…………もっと、歌いたい」

聖「昔は……一人で歌っているだけで楽しかった……」

聖「でも…アイドルになって……たくさんの人に…歌を聞いてもらえるようになって……」

聖「……とても、嬉しくて」

聖「もっともっと…歌いたいんです……もっともっと…色んな人に、聞いてもらいたいんです……!」

聖「この戦いに勝ち残れば……その夢も叶うって…強面さんが言ってくれました……」

聖「だから……わたしは……」ググググッ

夕美(くっ……!)グググッ

夕美(この子の願い、とってもアイドルらしいな……歌に対して、本当に純粋なんだ)

夕美(それに比べて、私は……!)

ギリギリギリ...

聖「あとで……手当はちゃんとします……」ググッ! ...サッ

夕美「っとと……!」グラッ

聖(……解除)パチクリ

シュゥゥ...バサァ

夕美「えっ、わっ……!?」ワタワタ

聖(……発動)クワッ

ガキィン!

夕美「!? 手がっ……!」

ヒュッ――ガッ!

夕美「うぐっ……!」ドサァ

神候補「夕美!」

強面(フッ、自分に他の対抗手段がないとなれば、聖の攻撃に対抗できる、同じ鋼の武器は惜しいよなぁ)

強面(だがそれに執着した結果、今や身を守るための武器は手枷へと変わった)

強面(たとえ植物の種をまだ持っていたとしても、両手を封じられていては取り出すこともできまい! これで終わりだ!)

強面「聖! そのままトドメをさせ!」

聖「…………うん」


夕美(でも……でも私も、負けたくない……)

夕美(叶えたい願いがあるの……!)

夕美「ふっ、っぐ……」ズリ...ズリ...

夕美(なんとか……あそこまで……!)ズリ...ズリ...

聖「逃がしません……」ベシッ

夕美「うぐ!」ムグ

夕美「んぐ…………」ゴロン

聖「よいしょ……」ウマノリ

夕美「…………!」ォフッ

聖「動かないで…くださいね……ちゃんと鳩尾に当たれば……一発で…気絶させますから……」スッ

夕美「…………」ニコッ

聖「…………?」

夕美「――あ――――――!」パァァァァッ!

聖「…………!?」

神候補「口の……!」

強面「中から、だと……!? 馬鹿な、そんなところに一体いつ仕込んで――ハッ」


……

強面『――“棒術の才”』

聖『……んっ』ヒュンヒュンッ...ズビシッ!

夕美『痛っ!?』ポトッ シュゥゥゥ...

……

夕美『ふっ、っぐ……』ズリ...ズリ...

聖『逃がしません……』ベシッ

夕美『うぐ!』ムグ

……

強面「まさかあの時落とした種を……口で拾ったのか!?」

ブワッ モワワッ

聖「っ……!」プイ シュゥゥ...

夕美(怯んで能力が解けた! 今だっ!)バッ ドンッ

聖「わ…………!」ドサッ

夕美「っぷは、これで――!」チュパッ グイッ

聖「んむぐっ……!?」モガ

夕美「これで形勢逆転だね動かないでね今私は「声を、出し続ける」っていう限定条件が満たされるギリギリの」

夕美「タイミングで区切って話し続けてる逆にいえば私があ、と少しでも長く喋り続ければあなたが何かするより」

夕美「も早くあなたの口に突っ込んだこの種をすぐにラフレシア、に変えられるわだからそうされたくなかったら降参して!」

聖「…………!」モガモガ

神候補「は、ははは……いや、ハッタリじゃないぞ、夕美なら可能だ! 夕美には、“ストップウォッチで狙った数字を出せる才” がある!」

神候補「つまり自分が今何秒間喋り続けているか、時計などを見なくても正確にわかるんだよ!」

強面「なんっ……だとぉ……!?」

夕美「この花の臭いの酷さはよく知ってるからできればそんなこと、はしたくないしあなたもこれで気絶させられるのはいやでしょ」

夕美「だから早く降参してっていうかそろそろ喋るネタがなく、なっちゃうから早く降参って言ってよもうあ――、あ―――――、あ―――――!」

神候補(……あそこから逆転したのは格好良かったのにだんだんアホの子っぽくなってきた)

夕美「ちょっと神候補さん今何か失礼なこと考えてるでしょ!? あなたも早く降参って言わないと本当にラフレシアに――」

聖「……ぅはん」モガ

夕美「え?」

聖「……ほうはん……ひまふ……わはひの…まへ、へふ……」モガモガ

夕美「……ほっ」

強面「ひ、聖……!」ガクッ

……


夕美「ふぅ……神候補さん、おかげさまで、今回も何とかなったよっ。ちょっとぼろぼろにはなっちゃったけどね」テヘヘ

神候補「いや、お前が無事でよかっ……」

神候補「……無事……うん、まあ、おおむね無事でよかった」ススス

夕美「……って言いながら、なんで距離を取るの?」

神候補「あー、いや、その……最後の不意打ちは見事だったと思うんだが……多分そのせいで口臭がちょっと」

夕美「口臭って言わないでよ!? 頑張ったのにっ!」

神候補「まあまあブ○スケアどうぞ」

夕美「んもう……」パク

神候補「……そういえば、ふと思ったんだが」

夕美「ん、何?」

神候補「さっき聖の口に突っ込んだ種って、元々は自分の口に入れてたものなんだよな……」

夕美「え、ま、まあそうだけど。他のをポケットから出してる余裕はなかったし」

神候補「……唾液交換……」

夕美「やっ、ちょっ、へ、変なこと言わないでよっ!」カァァ

聖「わたし……うばわれちゃいました……?」フフ

強面「ぬぁああああうちの聖がぁぁぁぁぁっ!」ガッガッ

夕美「そっちもノらないでよっ!」

神候補「夕美はマニアックだなぁ」ハハハ

夕美「っ……そんなに羨ましかったら、神候補さんも交換してみる? ほら、種」ハイ、アーン

神候補「」ブフゥ

神候補(な、なんかちょっと抗いがたい誘惑があるが、これを口に含んだが最後、迷いなくラフレシアに変えそうな目をしている……!)

神候補(……というかここで「口の中にラフレシア」より「アイドル二人分の唾液」を取ったら間違いなくHENTAIだよなぁ)

神候補(流石にそこまでひどい趣味はしてない。ああ、さすがにな……いやいやいや……)

夕美(それだけ葛藤してるだけで十分アウトだよ神候補さん)

神候補「ま、まあ何はともあれ、今回はお前の勝ちだ! よくやった!」

夕美「……ん、ありがとっ」

神候補「だが……あの子、聖のことだが、気絶させなくていいのか?」

夕美「うーん……降参した相手に追い打ちするのはなんかちょっとね……」

夕美「ううん、それより今は千枝ちゃんだよ! 強面の神候補さん! 千枝ちゃんはどこっ!?」

強面「……心配せずとも、能力者ではないと分かってからは丁重に扱っておるわ! こっちだ、来るがいい!」ノシノシ

……


 聖と強面の神候補は、これ以上戦う意思はないことの証明のため、手持ちのマフラーを全て夕美と神候補に預けた上で、呼び出し場所から少し離れたところへと二人を案内した。

強面「……ほれ、ここだ」ガラッ

神候補「なっ……これは……!」

 そこで二人が目の当たりにしたのは、>>+2中の千枝の姿だった!

すいません、バイトやら遠出の用やらでしばらく来られませんでした
これからは、安価次第である程度連投できる時は+2、就寝やバイト等でまとまった時間離れる時は+4という感じで、安価指定を使い分けて行こうと思います

もう少ししたら続き投下します

 そこで二人が目にしたのは……のあさんと遊んでいる真っ最中の千枝の姿だった!

千枝「あ! 夕美さん!」

のあ「……お久しぶりね」

夕美「って、えっ、のあさん!?」

神候補「高峯のあ!? 何してるんだこんな所で!」

強面「ぬぅ!? 貴様いつからここに!?」

神候補「お前が呼んだんじゃねえのかよ!」

強面「俺がやったのは、この少女をここに閉じ込めたところまでだ! こんなやつは知らん!」

強面「というか貴様、まさか能力者か……!?」

のあ「……どうやらここまでのようね……また会いましょう」

千枝「あ、はい! あの……遊んでくれて、ありがとうございました!」

のあ「……別に構わないわ」ナデナデ

千枝「えへへ……」ニコ

のあ「じゃあね」

強面「あっ、待て貴様!」

聖「……戦うために来たわけじゃ……ないんですか……?」

のあ「……私達の運命が交わる点、それはまだここではないわ……またいずれ、しかるべき時に会いましょう……」サッ

強面「とか何とか言いながら、俺がこの少女のために用意した人形を持って逃げるな! コラァ!」

神候補(……そうして高峯のあは、自分の能力で呼び出した化け鶴に掴まって、監禁場所だった廃工場の天窓ぶち抜いてスタイリッシュに去っていった……)

強面「おのれ……>>+2のぬいぐるみを持って行かれた……!」

神候補「……というか一体何しに来てたんだあの人」

千枝「気が付いたら傍に居て、「寂しそうね」って、遊び相手になってくれてたんです!」

夕美「子供好きなのかな……?」

神候補「神出鬼没な子供好きって、字面だけ見たら完全に不審者だぞ」

化け鶴「キシャ――――ッ!」ヒュガッ

神候補「痛ぁ!?」

シュゥゥ...

折り鶴「」ポテ

夕美「……聞こえてたみたいだね……」

神候補「ほんと何なんだあの女!?」

千枝「別にこわい人じゃないですよ? ほら、うさぎさんが好きみたいですし!」

神候補「ウサミンロボの人形をうさぎ扱いしていいのかどうか」

千枝「えー。でも、うさちゃんピースしたら喜んでくれましたよ?」

神候補「なにそれ?」

千枝「知りませんか? こう……うさちゃんピースっv」

千枝「……って」

神候補(かわいい……)

夕美(かわいい……)

強面(かわいい……)

神候補「……オホン。まあ、いいや。のあさんについては、話が進むほどにどんどん変な設定が追加されていってる気はするが」

神候補「それよりも、だ。よく見たら何だこのファンシー空間? 人形とか本とかお菓子とかが山ほど……」

強面「馬鹿か貴様。誤解して襲って怪我をさせてしまったのだぞ!? 謝罪の意を込めて、このくらいの待遇は当然だろう!」

夕美「あ、そうだよその怪我! 大丈夫? 千枝ちゃん……」

千枝「大丈夫です! ちょっとコブができたくらいで……この包帯とかは、あのおじさんが大げさすぎるんですよ」

夕美「そっか。よかった……」ホッ

強面「否、よくはない! 少女よ、もしもその怪我の後遺症や、芸能活動における不都合などがあればここに連絡をくれ。治療や賠償にかかる費用は全て俺が持つ」

千枝「えっ? い、いえ、そんなの悪いです!」

強面「いや、悪いのはこちらの方なのだ。ここに用意したものも、欲しいだけもらっていってくれ。そうしてくれんとこちらの気も済まんのだ。遠慮などしなくていい」

千枝「えっと……それじゃあ、ありがとうございます。……強面さんって、本当はやさしい人なんですねっ」ニコッ

強面(…………天使だ……)ジーン

強面「……こんないたいけな少女に余計な話を吹き込み戦いに巻き込むとは……おのれ神候補、恥を知れ!」

神候補「俺に言うな。その子に事情を話すことを決めたのは夕美の方だ」

強面「責任転嫁をするな」

神候補「ぬ……それを言うならお前だって、千枝ちゃんと大して年の変わらない子をエントリーしてるじゃねえか!」

強面「それは双方の同意あってのことだ。その意志を持ってエントリーしている以上、聖にも他の能力者に対しても、年がいくつだろうとも、こと戦いにおいては容赦などせん」

神候補「ダブルスタンダードって言うんじゃないのかそれは」

強面「そんなことはない」

強面「目指すものが他人と分け合えぬものである以上、同じものを求める者達との争いは必然だ。そしてそれを譲れないなら、他者を蹴落としてでも取りに行くのが正しい姿だ」

強面「何らかの目標を達するために、他者と争い勝ち取らねばならんのは、この次代の神を決める戦いに限った話ではなかろう?」

神候補「それはまあ、たしかに」

強面「だが……それが適用されるのは、同じ戦場に立つ者に対してのみであるべきだ」

強面「考えてもみろ。たとえば部のレギュラーを目指す野球少年が、同じ野球部員と競い合うならばともかく、サッカー部のレギュラーを蹴落としに行ったらそれはただの馬鹿であろうが」

神候補「そりゃそうだ」

強面「領分をわきまえろ、ということだ。戦いの中に情けはない。だがそれは、戦いと無関係な者をいたずらに巻き込んでいいという理屈にはならん」

神候補「……何も言い返せないな」

強面「だが少女よ、勘違いするなよ」

千枝「え? 何を、ですか?」

強面「我々の戦いにおいては、部外者のお前の安全は最大限慮ろう。だが、もしもお前が一人の『アイドル』として聖の前に立つならば……」

強面「その時は俺も、『アイドル望月聖』のために、お前に対して一切の容赦はせん。覚えておけ」フン

千枝「……じゃあ、一人の女の子としてなら、聖ちゃんと一緒に居てもいいですか?」

強面「……なんだと?」

聖「……? わたし…と……?」

千枝「はい! 千枝のいる事務所には同じくらいの年の子が他に居なくって……」

千枝「よかったら友達になって欲しいんですけど……だめ、ですか……?」

聖「…………えと……」オロオロ

強面「……まあ、戦いやアイドル活動に支障が出ない範囲であれば、お前の好きにするがいい」

聖「…………じゃあ…………わたしで……よければ……」

千枝「!」パァァ

千枝「それじゃあ、よろしくお願いしますねっ! 聖ちゃんって呼んでいいですかっ?」

聖「……よ…よろしく…………」

ワイワイ キャッキャ

神候補(…………夕美の時もそうだったが、ほんと物怖じしないというか何というか……)

強面「…………」プルプル

強面「――見たか神候補!? この純真さ! 心優しさ! この子達は、俺や貴様が忘れてしまったものを持っているのだ……!」

強面「だからこそ俺は、このように年若く、未来への夢と希望と可能性に満ち溢れた者の味方をするのだ!」

神候補「うるせえよロリコン」

強面「ロリコンと違うわァ!!」

強面「ええい、そろそろ行くぞ聖! いいか、今回は後れを取ったが、次はこうはいかんからな!」

強面「ここで聖を脱落させておかなかったこと、後悔するがいい!」クワッ

聖「それじゃ……また、ね…………」バイバイ

千枝「はい! またお話しましょうね! 強面さんも!」ニコッ

強面「………………フンッ」ノッシノッシ

聖「…………」トテトテ

夕美「……行っちゃったね」

神候補(……やっぱあれロリコンじゃねえのかなぁ)

……


強面「おのれ神候補め……あの担当アイドルは相葉夕美といったな、次こそは必ず……」ブツブツ

聖「…………」フルフル

強面「……聖?」

聖「今は……まだいいです…………わたしも…もっと強くなりたいから……」

聖「再戦するなら……もっと強くなってからが、いいです」

強面「……先のように不意さえ突かれなければ、もう一度やれば今度こそ聖が勝つと俺は思うがな」

強面「そんなにあいつらが気に入ったか?」

聖「それは……」



強くなりたい理由、または夕美を気に入った理由>>+3

聖「…………よく、わからない…です……」

強面「何だそれは」

聖「戦いの中で……その…ああいうことをされたのは……初めてだったから…………」

強面「…………」

強面(待て待て待て、何故唇に指を当てて伏せ目でうっすら頬を染めている)

聖「……ふしぎな気持ち……今なら…今までとは違う歌が歌えそう……」

聖「……? 強面……?」

強面「……ちの聖がうちの聖がうちの聖がうちの聖がうちの聖がうちの……」ブツブツ

強面「おのれ相葉夕美ィ……!」ギリギリ

聖「……落ち着いてください」

聖「……さっきの戦い……わたしも…勝ててたはずだと思います……」

聖「いつもみたいに……強面の言うとおり戦って……いつもみたいに…勝てると思ってました……」

聖「でも……負けました。あの人の…夕美さんの持つ“何か”に……わたしは届かなかった」

強面「…………」

聖「それが何なのか……今のわたしの…この気持ちが何なのか……わたしはまだ、わかりません」

聖「でも――――」

……


神候補「……まあ、とりあえず一件落着ってことでいいのかな」

夕美「そうだね。千枝ちゃんも無事だったし。それじゃ、戻ってレッスンの続きを……いたたた……」ズキズキ

神候補「っと待て、わりと容赦なくやられてただろ。少しくらい休憩して行こう。あいつらが残していった菓子とか飲み物もあるし」

夕美「じゃあ、そうしよっか」

千枝「……夕美さん……」ギュ

夕美「……千枝ちゃん?」

千枝「あの……ごめんなさい」

夕美「えっと……何のこと?」

千枝「夕美さん、この怪我……」

夕美「えっ? ああ、このくらいなら全然大したことないから、大丈夫だよっ」

千枝「……ここで待ってる間、のあさんからも少し話を聞きました」

千枝「戦いって、こんな大変なものなんですね……千枝、そんなこと全然知らないで、はしゃいじゃって……」

千枝「そのせいでこんな迷惑までかけちゃって、本当にごめんなさいっ!」

夕美「えっ、や、別にいいんだって! 話しちゃった私達のせいでもあるんだしっ!」

神候補(いや……むしろ、これはいいきっかけかも知れないな……)

神候補「千枝ちゃん? 顔をあげてくれ」

夕美「神候補さん?」

千枝「神候補さん……」

神候補「夕美も言った通り、これは俺達の事情だ。だから、それに巻き込まれだけの君が何かを気に病む必要はない」

神候補「それよりも、今後の君のことだ。今回は話のわかる相手だったからよかったが、今度はもっと危ない目に遭うかもしれない」

神候補「事情を知った上で夕美と仲良くしてくれるのはありがたいが……やっぱり君は、戦いそのものには関わらない方がいいと――」

千枝「――嫌ですっ!」

夕美「……千枝ちゃん?」

千枝「たしかに千枝はまだ子供です。知らないこともいっぱいあります」

千枝「この戦いのことも……どうして夕美さんや聖ちゃんがこんなになってまで戦わなくちゃいけないのかも、まだよくわかりません……」

千枝「今回はコブができるくらいですみましたけど、怖い目にだって遭いました」

神候補「なら……」

千枝「でも――――!」

千枝「でもっ、千枝はまだまだ子供ですけど、それでも、わからないままは嫌です……!」


聖「今はまだわからなくても……きっと…いつかわかることはできる……と、思うんです……」


千枝「だからわかろうとすることまでやめたくないです! わからないことは、ちゃんとわかるようになりたいんです!」


聖「……それをわかろうとする努力が……きっと…成長につながると思うから……」


千枝「すぐにはオトナになれないけど、でも、でも千枝は……」


聖「わたしは……もっと強くなりたいです。この気持ちを…ちゃんとわかるようになって……」


千枝「千枝は――夕美さんと一緒に居たいですっ!」


聖「いつかもう一度……夕美さんと、胸を張って向き合えるように……なりたいです」

……


強面「…………聖」

強面「……そうか。わかった。いや、お前の気持ちの正体はわからんが、お前の思いはわかった」

強面「ならば、行くぞ」

強面「戦いはまだ始まったばかりだ。最後まで勝ち抜くためにも、お前にはもっと強くなってもらわねば困る」

強面「この戦いにエントリーした以上、もはや容赦はせん。ビシバシしごいてやるから、覚悟しておくのだな!」

聖「うん……がんばります……!」グッ

強面「……フフ、その意気だ。では――行くぞ! 次なる戦いの舞台に!」ザッ

聖「うん……!」タッ

……


神候補「…………千枝ちゃん」

千枝「…………」プルプル

神候補「正直に言おう。君の考え方は、とても立派だと思う」

神候補「だが俺としても、これ以上君を危険な目に遭わせるわけにはいかない」

千枝「っ……!」ウルッ

夕美「神候補さん!」

神候補「だから――条件がある」

千枝「…………?」

……


神候補「…………千枝ちゃん」

千枝「…………」プルプル

神候補「正直に言おう。君の考え方は、とても立派だと思う」

神候補「だが俺としても、これ以上君を危険な目に遭わせるわけにはいかない」

千枝「っ……!」ウルッ

夕美「神候補さん!」

神候補「だから――条件がある」

千枝「…………?」

神候補「他の能力者に、能力者じゃないかと疑われるようなことをするのは控えること」

神候補「もしも能力者同士の戦いに巻き込まれたら、すぐに俺達に助けを求めること」

神候補「この戦いのことにかまけて、アイドルとしての自分の仕事を疎かにしないこと」

神候補「この約束をちゃんと守れるなら……ああ、俺ももう、無理に俺達に関わるなとは言わないよ」

千枝「じゃ、じゃあ……夕美さんと一緒に居てもいいんですね!?」パァ

神候補「ただし、今度巻き込まれて怪我をするようなことがあったら、本当に許さないからな!? その時は記憶を消してでも夕美から――この戦いから遠ざけるから、そう思えよ!」

千枝「はいっ!」

夕美「……よかったね、千枝ちゃん。私も、千枝ちゃんと一緒に居られると嬉しいよっ」ナデナデ

千枝「えへへ……はい、千枝も一緒が嬉しいですっ!」

神候補「うーん……やっぱり千枝ちゃんの笑顔には癒されるなぁ……」ホワァ

神候補「……だが本当に大丈夫だろうか……やっぱり心配になってきた」

千枝「大丈夫です! 千枝はちゃんと約束を守りますから!」

神候補「いや、あれだけじゃ不十分な気がしてきた。もうちょっと約束追加な」

神候補「まず、俺の指示には必ず従うこと。何々をしろと言われたらその通りにするし、危ないから駄目と言われたら絶対にしないこと」

千枝「はい!」

神候補「それと、戦いの場では必ず俺の傍に居ること。傍にいてくれれば、万が一何かあっても俺がフォローができるからな」

千枝「はい!」

神候補「そして俺のことはこれから『お兄ちゃん』と呼ぶこと!」

千枝「はい!」

神候補「それから、俺達のことより、自分の安全を一番に考えること。俺や夕美がどんなにピンチでも、俺が逃げろと言ったら迷わず逃げろ。――いいな?」

千枝「はい!」

神候補「よーし良い返事だ! 千枝ちゃんは素直でいい子だなぁ」ナデリコナデリコ

千枝「えへへー」

夕美「……うん? 今何か変なのが入っていたような……」

神候補「ゴホン! さてと! 一段落ついたことだし帰るとしようか!」

夕美「ねえ神候補さん? さっき千枝ちゃんに何か変なこと言ってなかった?」

神候補「どうせついでだから千枝ちゃんも送っていってあげよう。事務所でいいか?」

千枝「あっ、そういえば千枝、まだ撮影中でした! どうしよう……スタッフさん達、千枝のこと探してないかな……」

神候補「仕事中にさらわれたのか。うーん……それなら強面の奴が抜かりなく手を回してそうだが……まあ、もし怒られそうだったら俺もついてって頭下げてやるよ」

千枝「ありがとうございますっ!」

夕美「神候補さん。ねえ、わざと無視してるでしょ?」

神候補「はっはっは、別にいいってことよ。とりあえず先に電話で連絡しておくか……」

夕美「かーみーこーうーほーさーん―――――?」

パァァァ モワァ

神候補「うぼぁ! ちょ、それ持って詰め寄るのはやめろ!」

夕美「ねえ、あの強面さんにとやかく言ってたけど、実は神候補さんもロリコンじゃないの?」ジトー

神候補「ろろろロリコンちゃうわ!」

千枝「ろりこんって何ですか?」

夕美「それは知らなくていい知識だから。千枝ちゃんは今はまだわからなくていいことだから。ねっ?」

千枝「そうなんですか?」

神候補「そうだよー、千枝ちゃんは今のまま純粋なままで居てくれればそれで」

夕美「神候補さんはちょっと反省するっ! もうっ、小さい子の教育に悪いよ!? そんなんじゃ神候補さんと居る方が危ないってことに――」

神候補「ああっ、長文のお説教はやめてラフレシア咲いちゃうからっ!」ヒィッ

ワーワー ギャーギャー

………
……

神候補(何はともあれ、こうして、二度目の戦いも何とか無事に乗り切ることができた)

神候補(だが……戦いはもう、本格的に始まっているんだ)

神候補(多分、次あたりからはもうこんな風にはいかないだろう。戦う相手か、あるいは夕美のどちらかが、無事ですまない可能性は高い……!)

神候補(それでも、俺が出来ることはたかが知れてる。俺に出来るのは、それを最後までやり切ることだけだ)

神候補(しかし、これまであえて聞かずにおいてきたが……この戦いに参加してでも叶えたいほどの、夕美の願いっていうのは一体何なんだろうか)

神候補(まあ、何にしても、覚悟だけは決めておかないとな……!)



>>To be continued...

 ~幕間~


痩身の神候補「――ちょっとのあさん!? どういうことですかコレは!?」

のあ「……~~♪」

化け鶴s「キュ~~~~」

のあ「~~……~~~~♪」ナデナデモフモフ

化け鶴s「クァ~~~~♪」スリスリモフモフ

痩身の神候補「鶴の羽ブラッシングしてないで話を聞いてください!」

痩身の神候補「一体どういうことなんですか! またいつもみたいにふらりとどこかへ出かけたと思ったら、“>>+2の才”が消えてるじゃないですか!?」

のあ「~~、…………」

化け鶴s「クワッ!」シュゥゥゥ...ポトッ

痩身「この“カリスマの才”は、あなたのアイドルとしての人気にも一役買っていた物かもしれないのに! 一体何をしたんですかあなたは!」

のあ「……そう。普通の人間だけではなく、誰かの神候補を傷つけても才は減るのね……」

痩身「のあさん!? 何をしたのかと聞いてるんですよ!?」

のあ「大した問題ではないわ。私は私の誇りを守るために戦った……ただそれだけのこと……そのことに悔いなどないわ」

痩身「何を言ってるんですかあなたは! まったくもう、この戦いにおいて、自分の才を減らすことがどれだけ自分の首を絞めるかわかっているんですか!?」

痩身「あなたは非常に優秀ですが、そういうところがどうにもねえ……」グチグチ

のあ「……禿げるわよ」

痩身「誰のせいですか誰の!」

のあ「……貴方の意見は尊重する。けれど……自己を捨てた者に、真の勝利は掴めない」

のあ「星は、自ら輝くものよ」

痩身「そうは言いますけどねえ……」

のあ「私の想い、私の意志までどうこうする権利は……貴方にはないはず」

のあ「心配する必要はない。私は貴方の望む結果を出してみせる……これはそういう契約」

痩身「……まあ、あなたの能力については私も信頼していますがね」

のあ「私も貴方のことは信頼しているつもり。貴方が応えてくれるなら……私もきっと十全に戦える」

痩身「ふん、言われなくてもサポートは任せておきなさい。とりあえず、目下のところは才を絡めた戦略を立てていきますよ」

のあ「任せるわ。私は少し、風に当たってくる……」スッ

痩身「……行ってしまいましたか。自分でスカウトしておいてなんですが、気まぐれな人ですねえ」

痩身「ともあれ今は、端末で使えそうな才のリストアップです。まったく、有能なことは結構ですが、才が200個超もあると、チェックだけでも大変ですねえ……」

痩身「ふーむ、“>>+2の才”に、“>>+4の才”? 色々ありますが、さて、どう戦いに利用したものでしょうねえ……」

……

のあ「…………」スタスタ

のあ「……いい風が吹いているわ……」

のあ「……!」ピクッ

野良猫「ファー...」クシクシクシ

のあ「…………」ススス...

野良猫「」ピクッ

のあ「…………」ピタッ

野良猫「…………」

のあ「…………」ジー...

のあ「…………」スッ...

野良猫「フシャァーッ!」クワッ

野良猫「シャギャーッ!」シュバッ スタタタタタ...

のあ「…………」

のあ「…………」スタスタ

のあ「…………」ピクッ

子供A「わーい! あはははは」タタタタ

子供B「えへへ、ここまでおいでー……わっぷ」タタタ...ドンッ ズザァ

のあ「!」

子供B「うぅ……」

のあ「……大丈夫?」スッ

子供B「」ビクッ

子供A「おい大丈夫……あっ」ビクッ

子供A「あの、えと……ご、ごめんなさい! 次から気をつけます!」

子供A「ほら、早く立てって!」ダダダ...

子供B「あ、待ってよっ! すっ、すいませんでしたぁ~っ!」ダダダダ...

のあ「…………」

 ―のあの自室

ガチャ パタン

のあ「…………」

のあ「……ウサミンロボ……」スッ


……

千枝『せーのっ、うさちゃんピースっv』

のあ『……うさちゃんピースv』

千枝『うーん、そうじゃなくて……そう、手はそこで、そういう感じです!』

千枝『せーのっ、うさちゃんピースっv』

のあ『うさちゃんピースv』

千枝『えへへー』ニコー

……


のあ「…………」モフ

のあ「……~~~~♪」

パァァァ

化け鶴「クワッ!」バサァ

化け鶴「...クァ?」キョロキョロ

のあ「~~~~……~~♪」ナデナデ

化け鶴「キュ~~♪」スリスリ

のあ「~~~~~~♪」ナデナデナデナデ

化け鶴「~~~~~~♪」スリスリモフモフ


のあ(私は負けない……最後まで勝ち続け、誰よりも輝いてみせる……!)キッ



 ――高峯のあ。
 彼女は、“動物に好かれる才”、“子供に好かれる才”を持たないアイドル――。


>>続く

~高峯のあの持ち才・一部抜粋~

○“カリスマの才”(※消去)
 人の心を強く引き付けることができる才。
 極めれば、演説で民衆を扇動して革命を起こし、そのまま国を興すことすら可能だという。

○“剛速球の才”
 球速、球威が非常に優れた球を投げられる才。
 その二点については折り紙つきだが、この才だけではコントロールについては保証されない。

○“大ジャンプの才”
 普通の人よりも高く、遠くまで跳躍出来る才。
 他の運動能力系の才と同じく、持ち主の基礎身体能力が高いほど発揮できるパフォーマンスも高くなる。
 某配管工も持っているという噂。

 ~幕間?~


 ―闇オークション会場

事務員C「……本日はようこそいらっしゃいました」

事務員C「日夜アイドルのために奮闘しているプロデューサーさん達のために、本日は臨時の超得ショップ開店です!」

事務員C「本日用意しました商品は……こちら!」

事務員C「『相葉夕美ちゃんと望月聖ちゃんの唾液を吸った植物の種』! なんと本日限りの一点物です!」ジャジャーン!

事務員C「え? どうやって仕入れてきたかって? もう、それは企業秘密ですよ♪」

事務員C「というわけでこちらを限定販売致します!」

事務員C「入札方法は当スレッドへの書き込みです。[入札レスのコンマ以下]×1000MCで入札したものとし、>>+1から>>+5の方で、最も高い金額で入札された方へ販売致します」

事務員C「たとえば上の>>225のレスですと、42x1000=42000MCでの入札となるわけですね!」

事務員C「皆さん、この機会にふるって入札してくださいね♪」

事務員C「お支払方法はこちらの口座に……げふんげふん、もとい、今なら、素敵な25歳児が当たる新緑の淑女リミテッドガチャも開催中ですよ!(ステマ」

事務員C「当超得ショップでは、今後もこういった限定商品の販売に努めていこうと思いますので、今後ともごひいきにお願いしますね!」

事務員C「それでは……入札開始です!」


………
……

どんな物語にも同性愛っぽいキャラはいるということで…

事務員C「はい! というわけで本商品は、>>230さんの83000MCでハンマープライスとなりました!」

事務員C「入札した商品をどう使うかは……いえいえ、不粋ってものですね、聞かないでおきますよ」ウフフ

事務員C「当超得ショップでは、今後もこういった限定商品の販売に努めていこうと思いますので、今後ともごひいきにお願いしますね!(二回目」

事務員C「それでは皆さん、またいつかお会いしましょう! さようなら~!」


>>続……く?

同性との唾液交換なんてレアな体験を初めてした相手なら、ちょっと意識しちゃってもおかしくないと思うんだ
そのドキドキの正体を知りたくて他のアイドルとも唾液交換しにいく聖ちゃんというのも有りだと思います誰か書いてください


ちなみに俺は、淑女ガチャに試しに4kほど突っ込んで新妻引きました
嬉しいけどそっちとちゃうんや……俺CuPやけど主戦力Coなんや……


もうしばらくしたら続き投下します

………
……



 ―事務所・夜

神候補「今日も残業か……まあ、戦いのために結構無理矢理スケジュール弄ってるからそのツケもあるしな。仕方ない仕方ない」

神候補「ちゃっちゃと片付けてさっさと帰ろう……」バリバリ カキカキ カタカタカタッ...ッターン!

...プルルルルル プルルルルル

ピッ

神候補「あーはい、もしもし神候補ですg」

???『やっと繋がった! 探しましたよ先輩!』

神候補「…………その声はまさか、後輩か」

神候補(うわー、面倒なやつに見つかっちまったな……)

後輩の神候補『先輩! なんで僕を放ってどっか行っちゃうんですか! 戦いが始まったら、協力して終盤まで確実に勝ち抜いて行こうって約束したじゃないですか!』

神候補「それはお前が勝手に言ってただけだろうが。先輩後輩だろうと何だろうと、同じ神候補として戦いにエントリーした以上は敵だ敵」

後輩『ひどい! いいじゃないですか、そこまで協力して戦い抜いてきた二人が、最後の最後にはたったひとつの頂点を決めるために敵対する……燃える展開ですよ!?』

神候補「お前の趣味に付き合う気はねえ。忙しいんだからそんな話なら切るぞ」

後輩『そんなこと言って、本当にちゃんと戦う気あるんですか先輩!?』

神候補「どういう意味だ」

後輩『僕知ってるんですからね! 初戦の高峯のあは強敵だったから、負けずに撤退させただけでも十分な戦果と言えるでしょうけど』

後輩『望月聖に関していえば、ちゃんと勝ったのに気絶させてないじゃないですか! それでまともに勝ち抜いて行く気あるんですか!?』

神候補「おいコラ、やっと繋がっただの探しただの言ってた奴が、何故最序盤ののあ戦の顛末を知ってる。お前ずっと張り付いてただろ」

後輩『ギクッ』

後輩「ま、まあそれはさておいて」

神候補『さておくな。ストーカーまがいのことしてんじゃないぞお前』

後輩「しっ、失礼な! 尊敬する先輩の後を後輩が追うのは、何も恥ずべきことじゃありません! ええ、やましいことなんてありません! 僕は潔白ですよ!」

神候補『どんな漂白剤使ったらそう見えるんだろうな』

後輩「だっ、だいたい先輩だって何ですか! 人間界の社会に潜り込むのはいいですが、なんでそんなプロデューサーまがいのことしてるんですか!?」

後輩「今日だってどうせ残業なんでしょ!? そんなことしてたら神を決める戦いどうこうの前に体壊しますよ!?」

神候補『ええいうるせえお前は俺のおかんか! 天界人なんだから人間より体は丈夫だ、ほっとけ!』

後輩「僕は先輩のことを心配してですね!」

神候補『あーはいはい、心配してくれるのはピーピー、ありがたいけどピーピー、っと悪いそろそろ携帯の充電切れそうだわーピーピー』

後輩「あっ切る気だ! 僕との会話が面倒だからって切ろうとしてますね!? バレバレの口笛で誤魔化さないでください!」

神候補『ああもううるせえうるせえ、仮にもあいつのプロデューサーとして潜り込んでるんだからサボるわけにはいかないんだよ! じゃあな!』

後輩「あっちょっと先輩、本当に大事な話があr」

神候補『』ブツッ

ツー ツー ツー

後輩「切られた……」

後輩「もう……先輩ときたら昔からずっとこうだ……僕は先輩のことを思って言ってるのに……」

後輩「え? ええ、そうです。天界に居た頃お世話になってた先輩でして」

後輩「あの人に追い付きたくて、神候補の一人に選ばれるくらい頑張ったのに、いまだに認めてくれないんですから……」

後輩「……あはは、たしかにあの世話焼きは、僕に対してだけのものじゃありませんね。担当の、相葉夕美さんでしたか。あの子にも結構入れ込んでいるようですし」

後輩「……でも、あんな調子で生き残れるほど、この戦いは甘くないんです」

後輩「ええ。決めました。もうこうなったら、こちらから打って出ます」

後輩「遠慮はいりません。僕が万全のサポートをしますから、容赦なくやっちゃってください」

後輩「ええ、君ならきっと最後まで勝ち抜いて行けます。信頼してますよ――>>+2(アイドル名)さん」

………
……


 ―公園・昼

夕美「うーん、良い天気だね、千枝ちゃん!」

千枝「そうですねっ! えへへ、夕美さんとお出かけ、楽しいです!」

夕美「っていっても近くの公園なんだけどね。お互い忙しくて、あんまり遠出できないから……」

千枝「そんなこと、気にしなくていいですよ。この公園、お花がすっごくきれいですし!」

夕美「凄いでしょ? だから私もここが好きなんだっ♪」

千枝「それに……夕美さんと一緒なら、どこでも楽しいです!」ニコ

夕美「……ふふっ、ありがとね、千枝ちゃん」ナデナデ

千枝「えへへ……」テレテレ

夕美(千枝ちゃんが喜んでくれてよかった……本当に良い子だなぁ)

夕美「あ、そろそろいい時間だし、どこかでおやつでも……」

???「――っきゃーカワイイー! きゃーわーいーいー!!」

千枝「!?」ビクッ

夕美「だっ、誰っ!?」

千枝「あっ、あそこです!」

夕美「えっ?」

......ドドドドドド...!!

夕美「わっ、わっわっわっ……」

きらり「うきゃー☆ ちっちゃくてカワイイー!☆」ガバァムギュー

千枝「きゃっ……!?」ムニュー

千枝「わ、お、大きい……///」

夕美「千枝ちゃんっ!?」

千枝「あ、えと、背! 背のことです!」ブラーン

夕美「何言ってるか分かんないけど大丈夫? えと、あなたは……?」

きらり「千枝ちゃんっていうのー? あのねぇ、きらりはきらりっていうのー☆ よろしくねぇー☆」スリスリ

千枝「えと、はい、よろしくお願いします……あの、できれば下ろして……」ブラーン

夕美「……ええっと……千枝ちゃんに何かご用ですか……?」

きらり「ん? んーん、きらりが用があるのはねー、夕美ちゃんの方ー☆」

夕美「え?」

夕美「えと、私……名乗りましたっけ……?」

きらり「んーん、でもねぇ、きらりは知ってぅのー☆ 夕美ちゃん能力者でしょー?」

夕美「!」

千枝「え、じゃ、じゃあ、きらりさんも能力者……!?」

きらり「そのとーりっ☆」

夕美「にしたって、いきなりこんなところで……っ!? あれ、公園の中に……他の人が居ない……!?」

きらり「きらりの担当の後輩ちゃんが頑張ってくれたからー☆ もー戦う準備はばっちりだにぃ☆」

きらり「あっ、夕美ちゃんの担当の神候補ちゃんもー、今頃後輩ちゃんと大事なお話し中だと思うにぃ☆」

夕美「…………!」

……


後輩「来てくれてありがとうございます、先輩」

神候補「あれだけしつこく電話されちゃあな。……で、話ってのはなんだ」

後輩「ここではなんですから、こちらへ。先輩も、知りたくはないですか?」

後輩「先輩の担当の相葉夕美さんが、戦い続ける理由が何なのかを」

神候補「…………!?」

後輩「それを説明できる場所へと案内します。ああ、すいませんが携帯の電源は切っておいてください。場所が場所ですからね」

神候補「……どうやって調べたんだか知らないが……聞くだけ聞かせてもらおうじゃないか」

後輩「では、こっちです」スタスタ...

神候補「…………」ザッ...!

……


プルルルルル プルルルルル...

夕美「神候補さんに繋がらない……」

きらり「だからー、大事なお話し中なんだってばー。その間、夕美ちゃんもきらりと勝負しよー?」

きらり「きらりが勝ったら……千枝ちゃんはもらうにぃ!」

千枝「ええーっ!?」

夕美「えっ、ちょっと、なんでっ!?」

きらり「だぁってぇ、千枝ちゃんもー超カワイイんだもん! 夕美ちゃん一人占めとかずーるーいー!」スリスリスリスリ

千枝「やっ、あんっ、ちょっ、きらりさんっ、く、くすぐったいです……!」ジタバタ

夕美「くっ……!」

夕美「……いいよ、たとえ神候補さんがいなくたって……!」

夕美「そっちがそのつもりなら!」バッ

千枝「夕美さん……!」

きらり「あっ、ちょーっとすとっぷ! たんまたんまー!」

夕美「何……? 千枝ちゃんを人質にするつもりなら、本当に容赦しないよ……!」

きらり「違うのー! そうじゃないのー!」

きらり「きらりも後輩ちゃんの話聞いてー、能力もらって戦う約束はしたけどー」

きらり「殴ったり蹴ったりー、ほんとに戦うのは痛いし大変でしょー?」

夕美(……たしかに、体格でまず負けてるし…………)

きらり「だからー、ここは>>+3で勝負すゆってのはどーでしょ☆」

夕美「砂場……?」

きらり「ここでぇ、カワイイお城を作った方の勝ちってことでおにゃーしゃー☆」

千枝「そういうのでも、勝負になるんですか……? たしか、気絶したら負けって……」

きらり「だいじょぶだいじょぶー☆ ええっとねー、こういうのがあぅのー! じゃじゃーん!」

千枝「えっと、スーツを着たワンちゃん……?」

夕美「のような、そうでないような……何これ、ぬいぐるみ?」

きらり「ぶっぶー! これはねー、ジャッジマンってゆーの! カワイイでしょー?☆」

きらり「能力者になってぅのはみんなアイドルだからぁ、もしお顔に怪我とか残っちゃったら大変でしょー?」

きらり「だからねー、お互いの同意があればぁ、ほんとのケンカみたいなことしなくてもぉ、この子が勝ち負けを判定してくれるんだにぃ☆」グニッ

ジャッジマン『ギルティ――――――ッ!!』クワッ

夕美「」ビクッ

千枝「」ビクッ

きらり「この子にお願いしておけば、負けた時、安全に気絶させてくれゆのー☆」

夕美「それで戦いから脱落させられるってこと? でも安全に気絶って、たとえばどんな風にするの?」

きらり「んーっとねぇ、光線銃でビリビリぃーっとか、鮮やかなあっぱぁかっとでドカーン! とかー☆」

夕美「あ、安全……?」

きらり「ジャッジマンはぁ、カワイイだけじゃないんだにぃ☆」

千枝「じゅ、十分危ないですよそれっ」

きらり「……だったらぁ、ほんとにケンカすゆー? きらりはあんまりそーゆーの好きじゃないにぃ……」

夕美「う……わ、わかった、じゃあ、お城作りで勝負しよっ!」

きらり「うきゃー☆ さっすが夕美ちゃん話がわかるにぃ!☆」

きらり「とゆーわけでぇ……いざじんじょーにしょうぶだにぃ!」

千枝「夕美さん……!」オロオロ

夕美「…………!」

夕美(わざわざこんな勝負を提案してきたってことは、きっと向こうにとって勝算があるってことだよね)

夕美(でも、相手の能力もわからないし、取っ組み合いになったら体格で私の方が不利だろうし……何より、千枝ちゃんを巻き込まないで済むから、この勝負の方がいい……!)

夕美「……うん、いつでもいいよ!」

きらり「それじゃあ、制限時間は30分! その間に、よりカワイイお城を作れた方の勝ちだにぃ☆」

きらり「千枝ちゃんはぁ、ストップウォッチ持ってジャッジマンと一緒に待っててー☆」

千枝「え、えと、はい……それじゃ、ジャッジマンさんも一緒に、お預かりします、ね……」オソルオソル...ムギュ

ジャッジマン『ノットギルティ――――――ッ!!』クワッ

千枝「」ビクッ

夕美(有罪……じゃない? なに? 合法?)

千枝「び、びっくりしました……」ドキドキドキ

きらり「うきゃー☆ カワイイ×カワイイで超ヤバいー☆ きらりんホームにお持ち帰りしたーいっ☆」

千枝「ゆ、夕美さん、がんばってください!」

夕美「ま、任せといて! 千枝ちゃんは私が守るよっ!」

きらり「むーっ、それじゃあ、準備はいいかにぃ? よぉーい……すたぁとっ☆」

……


夕美(……さてと。砂のお城作りなんてするの、いつぶりだろう……)

夕美(でも、こんな勝負でも負けたら本当に気絶させられちゃうらしいし、頑張らないと……!)

夕美(砂場に忘れられてたバケツをちょっと借りて、水を汲んできて……これで固めて、何とか形を……うう、難しい……)ペタペタ

夕美(……きらりちゃんの方はどうなんだろう)チラッ

きらり「フンフンフフーン、フレきらりー☆」ペタペタ

夕美(ちょ、ちょっと目を離してた間に、砂場にサグラダ・ファミリアができてるっ!?)ガビーン

夕美(見た目で判断しちゃ失礼だとは思うけど、凄く手先が器用みたい。ま、まずいかもっ)

きらり「うぇへへー、お水おみず~……あっ」ガッ

ドテグシャァ

きらり「にょわ――! やっちゃったにぃ!」

夕美「…………」

夕美「い、今のうちに!」

……


夕美(……そろそろ、制限時間の半分か、三分の二くらいまで来たかな)フゥ

夕美(だんだんコツは掴めてきた。細かい作業は集中力を使うけど、何とかお城の形は完成させられそう……!)

夕美(問題は……)

きらり「にょわー! も、もっかい! もっかいやぅの!」ペタペタ

夕美(……つまづいたり力入れ過ぎたりして、何度も自分で壊しちゃってるけど、それを補って有り余るくらいに作業が早いし細かい……!)

夕美(でも、私だって、こんなところで負けるわけにはいかないんだからっ!)ペタペタペタ

きらり「あはっ、夕美ちゃんほっぺに泥ついてゆー☆」

夕美「べ、別に気にしないよ、それくらいっ」

きらり「そーお? でも、せっかくのお洋服もドロドロだにぃ……夕美ちゃんもカワイイのにもったいなーい」ペタペタ

夕美「別に構わないよっ!」

夕美(お気に入りの服が汚れちゃっても……)

夕美「それで負けずに済むなら、私は頑張るだけだからっ!」ペタペタペタ

きらり「ふーん? なんでそんなに頑張ぅのー? “空白の才”のためー? 神さまに願い事叶えてもらうためー?」

夕美「…………」ペタペタ

きらり「それとももしかしてー……>>+3のせぃで意識不明になっちゃった、プロデューサーさんのためー?」

夕美「っ!?」ペタ...グシャッ

あ、それも意味不明か一応>>262は自分を庇って車にひかれた

したらば>>263採用で続けます

……


 ―とある病室

神候補「……これがその理由か」

後輩「ええ、少なくとも僕はそうだと見ています」


ピッ...ピッ...ピッ...ピッ...

P『…………』スゥ...ハァ...


後輩「……彼女を能力者としてスカウトした時に、疑問に思いませんでしたか? 何故彼女は、担当Pを付けずにセルフプロデュースしているのかと」

神候補「あんまり気にしてなかったからなぁ。当時は人間界の事情にも詳しくなかったし、そういうアイドルも居るのか……くらいで」

後輩「Pさん……相葉夕美の担当プロデューサーだった彼は、しばらく前に、交通事故に遭ったそうです」

後輩「仕事の送迎中で……噂によれば、夕美さんを庇って代わりに轢かれてしまったとか」

後輩「それ以来、彼はずっとここで眠り続けています」

神候補「…………」

きらり「……図星かにぃ?」

グラ...グシャ

夕美「――あっ、やっ……」ペタ...

夕美「う……」ブルッ...

千枝「ゆ、夕美さん……?」

夕美(指、が……)ブルブル

きらり「きらりもその頃はもうアイドルやってたから、業界の噂で聞いたことはあったにぃ。どっかのプロデューサーが、担当アイドルをかばって事故に遭った、って」

夕美「…………」

きらり「でも、わざわざこんな危ない戦いに参加してまで……夕美ちゃんは一体何をどうしたいのー?」

夕美「私……は…………!」

後輩「……まあ、事故の賠償やら何やらの問題も含めて、どういう形で決着がついたのかまではわかりません。その辺りの詳しい話は事務所側が伏せましたし」

後輩「その一件を、担当プロデューサーを失った悲劇のヒロイン、などといった演出に利用することもあるいは可能だったでしょうが、事務所の意向か、夕美さんの意思か、そうはなりませんでした」

後輩「そうでもなければ、アイドル当人ではなく、その担当プロデューサーの健康問題など、さして面白いニュースにはなりませんからね。先輩が知らないのも無理はないです」

神候補「まあ、うちの上の方が隠そうとしたんだろうな。俺も曲がりなりにもあの子のプロデューサー役を演じる以上、彼女の芸歴を調べはしたが、そんな話は全然見なかった」

後輩「しかしその事故以来……彼女は新しい担当Pを付けることもせず、不慣れなセルフプロデュースで芸能活動を続けてきました。――その意味がわかりますか?」

神候補「何が言いたい?」

後輩「……いえ、別に。ただ、担当Pをそんな目に遭わせてしまった彼女は、一体何を思って芸能活動を続け、また今、何を思ってこの戦いに加わっているんでしょうね?」

きらり「……夕美ちゃんは、この戦いに最後まで勝ち残れたとして、何がしたいのー?」

きらり「多分、Pちゃんのこと、治したいんだよね? でも、それは一体何のためなの?」

きらり「謝りたいの? 許されたいの? でもそれって――」

きらり「自分の罪悪感から逃げたいだけじゃないって、言い切れゆ?」

夕美「私はっ……!」ガクッ

千枝「夕美さんっ!!」

神候補「――だから、何だ?」

後輩「……えっ?」

神候補「え、じゃねえよ。だから、聞いただろ? それでお前は、『何が言いたい?』って」

神候補「その情報を俺に伝えて、その上で、お前は俺に何が言いたいのかと聞いてるんだ」

後輩「それは……」

神候補「ま、お前から何を聞いたところで……俺のやることは変わらんわな。人間社会に紛れ込むための、仮初のプロデューサー業は続けるし、戦いがあれば可能な範囲で夕美のサポートをするだけだ」

神候補「そりゃたしかに、夕美が戦う目的について詳しい話は聞いてなかったし、俺からも聞かなかったが――ここしばらく一緒に居たんだ、あいつがどんなやつかくらいは、少なくともお前よりかは知ってるつもりだ」

神候補「あいつはな、――あいつの目はな、ちゃんと先を見てる目だったよ」

夕美「――っ!」ッパァン!!

きらり「!」ビクッ

千枝(じ、自分のほっぺたを思いっきり……手も汚れてるのに)

夕美「…………私は」

夕美「……私は負けないよ。こんなところで……だって……」

夕美「約束したんだよっ! プロデューサーさんと――」


夕美「――プロデューサーさんと一緒に、絶対にトップアイドルになるって!!」

……

P『真冬なのにな……笑顔で歌う君の周りに、春の花畑が見えた気がしたんだ』

P『君がもっと可憐に咲くところを見たいんだ。良ければ、僕にプロデュースさせてくれないか?』スッ


P『一度ステージに上がれば、僕にはもう手助けはできない。だが、上がるまでの手助けは――君の背中を押してやることくらいはできるつもりだ』

P『逃げちゃ駄目だ。ここで“初めて”から逃げたら、何も始められない』


P『……よくやった。格上を相手に、負けると分かっていても、……最後まで逃げなかったな』ポム

P『君は挑戦できる人間だ! それが分かっているなら……次が必ずある! 僕が必ず、次の舞台を用意してみせる……!』


P『やったぞ夕美! ライブツアー決定だ! ははは、覚悟しろよ、これからどんどん忙しくなるぞ!』

P『夕美ならなれるさ。いつか必ず、トップアイドルに――――』

……

神候補「――大方、俺をここに呼び出してる間に、自分の担当能力者に夕美にちょっかい出させてるんだろ?」

後輩「…………」ギクッ

神候補「だが、多分お前の思い通りにはいかないぞ」

神候補「あいつには、ずっと先に見据えてる目標がある。夢がある、と言い換えてもいい」

神候補「そういうやつは、ここぞという時にも迷わないもんだ」


夕美「――だから私は負けない! 私の、私達の夢を……絶対に叶えるんだからっ!」バッ

夕美「…………!」ペタペタペタペタ...

千枝(夕美さん……!)

きらり「……すっごい集中力だにぃ。それなら……」

きらり「きらりだって負けないにぃ!」バッ

夕美「…………!」ペタペタペタペタ

きらり「にょにょにょにょにょ……!!」ペタペタペタペタ

千枝(ふ、二人とも、すごいです……すごい集中力)

千枝「30分まで、あと少し……あれ? 公園の中に、他の人が――」


???「――>>+2を>>+4に変える能力……!!」パァァァァ...!

ユラァ...

夕美「…………、? あれ? 砂場にお花が――?」

きらり「!」ハッ

きらり「夕美ちゃん! 危ないにぃ!」ガバッ

夕美「えっ? きゃっ――」グシャッ

ボォッ...!!

千枝「きゃっ――夕美さん!? きらりさん!」


……

 ―病院の外

神候補「たしか夕美は、千枝ちゃん誘って近所の公園だったか……」

後輩「……お察しの通り、そこに僕の担当――諸星きらりさんも行っているはずです」

神候補「フン。まあ、うちの夕美はそう簡単には――うおっと!?」

ビーッ! ビーッ!

神候補「モバイル端末の電源を入れた途端にこれか。だが能力者接近の警告が来てるってことは、やっぱり夕美はまだ脱落させられちゃいないってこと――」

後輩「! いえ、先輩違います! 僕の方にも警告が!」

ビーッ! ビーッ!

神候補「? うちの夕美に反応してるんじゃないのか?」

後輩「…………」ポチポチ

後輩「……違います先輩。すいません、巻き込みました……!」

神候補「どういうことだ」

後輩「最近、うちのきらりを狙っていた能力者が居るんです! 来る前に振り切ったつもりでしたが、まさかこのタイミングで……!」

神候補「ってことは……一緒に居る夕美も……!?」ポチポチ

後輩「相手の名前は>>+2(アイドル名)! おそらくは>>+4(限定条件)することによって、“炎”を“幻”に変える能力の使い手です!」

タッタッタッタッタッタッ...

後輩「相手の名前は難波笑美! おそらくは“ダジャレを叫ぶ”ことによって、“炎”を“幻”に変える能力の使い手です!」ハァハァ

神候補「限定条件はともかく……“炎”を“幻”に? 攻撃力下がってないか?」

後輩「それがそうでもないんですよ……とにかく、急いで現場に向かわなくては!」ハァハァ

神候補「そんなに強いのか。ちんたら走ってる場合じゃないな……ヘイ、タクシー!」

ブゥゥゥン...ガチャッ

運ちゃん「はい、どちらまで?」

神候補「×丁目の自然公園まで! 急いでくれ!」

運ちゃん「あいよー」

バタン ブルルルン...

後輩「…………ところで先輩」ハァハァ

神候補「なんだ。密着してハァハァするなキモいぞ」

後輩「酷い! って、そうじゃなくて……」ハァハァ

後輩「先輩……お金あります? 僕、今あんまり手持ちがないんですけど」ヒソヒソ

神候補「…………」

後輩「……先輩?」

神候補「後のことは着いてから考えよう」

後輩「先輩……」

……


笑美「なんや、砂遊びに夢中でえらい隙だらけやと思っとったけど、意外とよう気付くんやなあ」

夕美「え、なに、他の能力者……!?」

メラメラメラ...

千枝「きゃっ、あ、熱っ……!」

夕美「だっ、大丈夫千枝ちゃん!?」

笑美「おっと、そっちの子は能力者とちゃうんやろ? 下手に動かんとき! 巻き込まへんよう気ぃ使っとんのに、勝手に火傷されてウチの才減るとかごめんやで!」

きらり「うー、二人ともごめんにぃ……笑美ちゃんに狙われてたのは、実はきらりの方なんだにぃ……」

きらり「きらりが責任取ゆからー、二人はその隙に逃げちゃってー☆」ニコ

千枝「きらりさん……?」

夕美「なんでそんな……私と勝負しに来たんじゃないのっ!?」

きらり「んーん、夕美ちゃんの本気はわかったからぁ、そっちはもぉいいのっ!」

きらり「あっ、じゃなくってー、今のなし! なしね! えーっとえーっと……」

夕美「……?」

きらり「……あーもーきらりはそんな難しいことパパッと考えうの苦手なのーっ! いいから早く行っちゃって! ほらっ、らなうぇい!」シッシッ

千枝「あの、夕美さん……」

夕美「…………」

夕美(よくわからないけど、千枝ちゃんを巻き込んで怪我させるわけにはいかないよね……)

夕美(でも、さっきの不意打ちから庇ってくれたし……きらりさんも、悪い人じゃ、ない……?)

きらり「早くーはーやーくー! もう、早く行かないときらりんパワーでポポイってやっちゃうよ!?」プリプリ

夕美「わ、わかったよ! 千枝ちゃん、こっち!」ダッ

千枝「は、はいっ!」タッ

笑美「っとっとぉ、せっかく見つけたエモノなんや、そう簡単に逃がさへんでぇ!」バッ

きらり「させないにぃ!」バッ

夕美「ごめん、きらりさん……ありがとう!」ダダッ

千枝「あっ、あのっ! ……け、怪我しないでくださいねっ!」タタタッ

笑美「ふん……わざわざ仲間を逃がすとは、そんなに余裕があるっちゅうことか」

きらり「別に、夕美ちゃんはまだきらりの仲間ってわけじゃないけどぉ……仲良くなれそうな人を守ゆことに、特別な理由はいらないんだよー!☆」

きらり「それに、あんなカワイイカワユイ千枝ちゃんを怪我させたりしたら、絶対に許さないにぃ!」

笑美「……相変わらずけったいな喋り方しおってからに……」

きらり「むー! 変な喋り方じゃないもん! そんなことゆってる笑美ちゃんこそ喋り方変ー! 変な喋り方ー!」

笑美「ウチの方言とあんたのそれを一緒にすなやぁ!」ビシッ

笑美「まあええわ。前回あんたにぶっ壊されてから、さらなるパワーアップを果たした……」

笑美「ウチんとこの神候補はんの力作! この>>+2型火炎放射器の威力、思い知れやぁ!」ガチャッ...ボォッ!

ブンッ...ボワッ!

笑美「どうやこれ! ハリセン型にすることで、前回やられてもうた原因である、接近戦へもバッチリ対応済みや!」

笑美(相変わらず、この燃料タンク背負っとかなアカンのが面倒やねんけどな)

笑美「せやけど……ウチの本領はまだまだこっからやでぇ! 食らいぃや……“炎”を“幻”に変える能力ぁ――!」

笑美「――“ネコが寝転んだ”ァッ!」

きらり「はっ……くっ、来ゆ!?」ババッ

パァァァァ...!

メラメラメ...ニャァーン

きらり「……やーんネコちゃんカワイイー! ナデナデすゆー!」ダダダダ

笑美「…………今や“戻れ”ッ!」

ニャーn...ボォッ!

きらり「うきゃーっ、あっつあっつ、燃えゆー!」バタバタ

笑美「……やっとるウチから言うのもアレやけど、毎回毎回懲りへんねえあんたも」

きらり「あっつーい、ヤバーいマジヤバーい☆」

笑美「言うてるわりに余裕そうなんが腹立つ……」

笑美「つうかあんたも、いつまでも逃げ回っとらんで、さっさとかかって来ぃや! なんか知らんけど周りに人おらへんし、来やんのやったら遠慮なくバンバン行かせてもらうでぇ!」ボォッ!!

ゴォォッ...メラメラメラメラ...

きらり「あっ、花壇のお花が……」

きらり「……っもー! 怒った! プリプリ来た! こうなったらきらりもやっちゃうよー! ごめんなさいってゆうなら今のうちなんだからねー!?」

笑美「じゃかあしわ! ウチも負けるわけにはいかへんねん、どっからでもかかって来いやぁ!」

きらり「それじゃー遠慮なく、行っちゃうよー!☆」

きらり(>>+2(限定条件)をすゆことで……)

きらり「“>>+4”を“>>+6”に変える能力ーっ☆」パァァァ...!

まあ原作でも隕石ぶっぱしまくってた子が居たし……(震え声
というかよく見ますけどきらりと漬物のネタはどこから来たんですか一体

安価は把握ですー

きらり(“ウインク”)をすゆことで……)(`・ω<)バチコーン

きらり「“漬物”を“流星”に変える能力ーっ☆」ポイッ パァァァッ

――ギュゴォッ!

笑美「のわああああああああああっ!」ババッ

ギュゴゴゴゴ......シュゥゥゥ

漬物「」ベチャァ

笑美「あっぶな! ほんまあっぶなぁっ! 勢いで挑発したけどやっぱ洒落にならへんてコレ!」

笑美(まあ唯一の救いは、限定条件の“ウインク”が成立する時間が短いことやな……)

笑美(つまり、“片眼を閉じて、開く”までの間しか、“ウインク”は成立せえへん。変に引っ張ったところで、それは“ウインク”やなくてただの“片眼を閉じとるだけ”になる)

笑美(流星も流星で当たったらごっつう痛そうやけど、隕石とちごうてすぐ燃え尽きてまうからな)

笑美「――つまり有効射程距離が短いことが、その能力の弱点や!」ビシッ

きらり「“漬物”を“流星”に変えゆ能力ーっ☆」(`・ω<)バチコーン

――ギュゴァッ!

笑美「解説中に攻撃すんなやぁ――っ!」シュババッ

きらり「えーっ。どっからでもかかって来いってゆったのは、笑美ちゃんの方だにぃ!」

笑美「ぐぬぬ。せやかてこう、バトルモノとしてのタイミングゆうもんがやね」

きらり「“漬物”を“流星”に変えゆ能力ーっ☆」(`・ω<)バチコーン ギュガァッ!

笑美「天丼か! ほんま容赦ないわこの子ーっ!」バババッ

笑美「ええい、要は下手に近付かんかったらええねん! 幸い、ウチの能力やったらそれができるしな!」

笑美「この戦いで生き残るためにも……ウチは何としても能力者の首を取らんとアカンねん! こんなとこで負けてられへんわ!」

笑美「食らいぃや! “夫婦喧嘩は犬も食ワン”!」

パァァァ...!

犬「バウワウ!」ガァッ

きらり「やーんカワイくないーっ、怖いの嫌いーっ」サッ ササッ

笑美「…………!」

犬「グルルルル、バウッ!」バッ ババッ

きらり「もー、もーっ! こうなったら……きらりんパワー!☆」ズバッ

笑美「今や戻……したのに吹き飛ばされた!? 何それ!? 風圧かなんか!?」ガビーン

メラメラメラ...

きらり「じゃじゃーん! 能力無しでも、きらりは負けないにぃ☆」

笑美「くっ、これが“きらりんパワー(物理)”ゆうやつか……!」

きらり「あっ、ひっどぉい! きらりんパワーはぁ、皆をハピハピさせるためのものだにぃ!」

笑美「チョップで炎弾くみたいな無茶やらかしといてよぉゆうわ! ふん、けどなぁ、あんたもそろそろ年貢の納め時やで……!」

きらり「きらりは負けないにぃ! “漬物”を――」(`・ω<)バチコーン

笑美(今や!)

笑美「“鳶が飛びかかる”!」

パァァァ...!

きらり(? 何も来ないにぃ……?)

笑美「――アホ、左や。もう炎に戻るけどな!」

ボォッ!

きらり「熱っ!? うきゃーっ、うきゃーっ!?」バシバシ プシュゥゥゥ...

笑美「フフン、あんたの能力、限定条件を満たそ思たらどっちかの目を閉じなあかん! ウチからしたら、わざわざ自分で死角作ってくれておおきにいう感じやで!」

笑美「おまけになんやこの公園、邪魔な人がおらへんだけやなくて、花やの何やの、燃えるもんがぎょうさんあるやん!」

笑美「ウチが火炎放射器使わんでも、その辺で燃えっ放しやから炎には困らへんわ!」

笑美「ジャンジャン行くでぇ! “豹が飛び出す! ウッヒョー!”」

パァァァァ!

豹「フシャァァァッ!」ババッ

きらり「うー、“漬物”を“流星”に変えゆ能力ーっ☆」(`・ω<)バチコーン ギュガァッ!

スカッ

豹「フシャァッ!」

きらり「あ、あれ? あれれー?」

笑美「アホか。えらいリアルやけどそれは“幻”や。振り払お思たて実体なんかあらへん」

ボォォッ!

きらり「うぐ、熱いにぃ……苦すぃー、お、お水ー」フラフラ

笑美「水飲み場か……! でも、そっち行くんやったらええけど、友達の方はええんかなぁ?」チラ

きらり「友達……? 誰のことだにぃ? あの二人ならもう逃げて……」キョロキョロ

きらり「っ!?」

メラメラメラ...

夕美「……!」ギュッ

千枝「……!」ギュゥ...

メラメラメラメラ...

きらり「千枝ちゃんに夕美ちゃん!? どうしてそんなところに居ゆのっ!?」

きらり(燃えた花壇に囲まれて、動けなくなっちゃったのかにぃ!? あのままじゃ……!)

きらり「今助けにいくにぃ!」ババッ

笑美「…………!」

笑美(ウチにも構わず、迷いなく飛び込んでいくんか……! その勇気は大したもんやで)


笑美「……けど、ごめんなぁ、それ――幻なんや」


ボォォッ!!

きらり「!?」ゲホッ

きらり(あれ? あれれ? 今……)

きらり「ぇほっ、ごほごほっ……! にょ……にょわー……」ゼェゼェ

笑美「熱気か煙かが肺に入ったみたいやな。足も火傷しとるし、もう逃げられへんやろ。そのまま炎に囲まれとったら、酸欠で気絶してしまいや」

笑美「これで駄目押しや。ま、決めるべきところでちゃんと決められたし、もうやらんでもええんやろうけど、一応な……“蝶が超ぎょうさんおる”!」

パァァァァ...

蝶「」ヒラヒラ...

笑美「…………、そこで戻れっ!」

ボォッ メラメラメラメラ...

きらり(うぐっ、苦すぃー……息ができないにぃ……)ゲホゲホ

きらり(周り全部真っ赤っかで……どっちに逃げたらいいのかもわかんない……もう……駄目かにぃ…………)クラッ...


「――――ぁああああああああああああああああああああああ!!」


パァァァァァァァァ!

ベシャベシャベシャッ! ジュウゥゥゥゥ......!

笑美「!? なんやあのデカい花!? 幾つも炎に被せて……道を作ったやて!?」

ダダダダダダダ...!

夕美「あぁぁぁぁぁ~~~~~~――――」ガシッ

きらり「夕美……ゼェ……ちゃん……?」フラ...

夕美(い、息が持たない……もう少し……もう少しだけ……!)

夕美「――ぁぁあああ、あああっ!!」グイッ バッ

シュゥゥゥ... メラメラメラ...

夕美「はぁっ! はぁっ、はぁ……な、なんとか炎の壁は抜けられた……」

夕美「それより! きらりさん、大丈夫!?」

きらり「うー……夕美、ちゃん……どうして、戻ってきたにぃ……? せっかく、ゴホッ、逃げられたのに……」ゼェゼェ

夕美「いいの。千枝ちゃんはもう、安全な場所まで連れて行ったから」

夕美「きらりさんは、私達を逃がすためにあの人と戦ってくれたでしょ? それに――」

夕美「さっきだって、私達が危ないと思ったら、迷わず助けに飛び込んでくれた」

夕美「だから――私も助けるよ。きらりさんのこと」

きらり「夕美ちゃん……」グスッ

きらり「……えへへ、来てくれて、超嬉すぃよぉ…………うん、嬉すぃんだけど、この臭いはなんとかできゆー? ちょ、ちょっと息が……」ウッ

夕美「……うん、ごめん。私ももう慣れたつもりだったけど、焦げて余計酷いになってるね……も、もうちょっと離れるね?」ヨイショ

きらり「ごめんにぃ……」ズルズル

笑美「……く、まさか逃げたやつがもっかい戻ってくるとは思わんかったわ」

夕美「逃げないよ。私は絶対逃げない」ザッ

夕美「きらりさんはそこで休んでて。ここからは……きらりさんの代わりに、私があなたを倒すっ!」ビシッ

笑美「ハッ、言うたな!? ウチのこの能力に、その花の能力で勝てるつもりかい!」

夕美「勝てる! いや、勝つよっ! だって――」

夕美「あなたのその能力の正体は、もう見破ったからっ!!」

笑美「な……なんやて!?」

というところでバイト行く時間になっちゃったので一区切り付けます
続きは戻ってきてから……四時かな? 五時頃か? まあ早くてそのくらい、さっさと寝たらもっと後になりますー

作者殺しなコメントありがとうございます……!
バイト中に流れは組み終わってるので、今晩中に笑美戦ラストまで行けるよう頑張ります

笑美(まさか……見られとったか!? 可能性はある……!)

笑美「いや……どうせハッタリや! ウチは負けへん!」

夕美(動けないきらりさんを巻き込むわけにはいかない。私の能力も、ある程度近付かないと効果がない。万が一の保険のために、できる限り“あれ”に近付いておきたい……)

夕美「だからここは……突撃あるのみっ!」ダッ

笑美「――来おるか!」

笑美「ならこっちも遠慮なくいくで、“炎”を“幻”に変える能力ぁ!」

笑美「“豚がトンだ”!」

メラメラメ...豚「プギィーッ!」シュバッ

夕美「“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力ぁ――――――!」パァァァ

ブワワッ モワァ

夕美「ぁ――――――!」ダダダダダ...

豚「プギィィィィ!!」シュダッ シュダッ

笑美「…………! 今や戻れっ!」

豚「プギ――ボォッ!

夕美「――――ぁここだっ!」ブンッ バフッ!

笑美「ラフレシアを盾にして……炎を振り払いおった!?」

笑美(いや、それより今、炎に戻すタイミングを読まれとった……!?)

夕美(抜けた! 次が来る前に接近戦に持ち込む!)

笑美「やるな……けど甘いで! こっちにはこの、ハリセン型火炎放射器がある!」

笑美「ふっふっふ、聞いて驚け! コレの何が凄いかと言うとやな……」

夕美「隙あり! 捕まえ――」バッ

サッ

夕美「――た?」スカッ

笑美「せやから人の解説中に攻撃すんな言うとるやろがい!」スパ――ン!!

夕美「いったぁっ!?」

夕美「思ったより痛い!? 見た目ハリセンだけど、中に何かゴツゴツした固いものが入ってるから普通に痛い!」

笑美「最初っから『ハリセン型』の『火炎放射器』や言うてるやろ! 見た目リアルハリセンでも中に機械入っとるわ! アホちゃうか!」スパンスパンスパ――ン!!

夕美「痛い痛い痛い痛い!」ビシバシガッ

笑美「どや! これがコイツのええとこや! 前の食い倒れ人形型では接近戦ができやんかったけど、今度はハリセン型やからな!」

笑美「つまり、こいつを武器として使う時には――ウチの“ツッコミの才”が活かせんねん!」

夕美「な、なんやってー!?」ガーン

笑美「下っ手くそな関西弁使うなやアホぉ!」スパァ――ン!!

夕美「あいたぁ――――!」

夕美「ううっ、まさか“ツッコミの才”を戦闘に活かす方法があるだなんて……」ズキズキ

笑美「……いや、せやかてあくまで“ツッコミ”やから、ツッコミ入れる隙がなかったら無理なんやけどね?」

笑美「つまりその辺のダメージ、ぶっちゃけほとんど墓穴なんやで?」

夕美「うぐ。だ、だってこっちにも色々と作戦というものが」

笑美「まあこっちとしてはありがたい限りやで! 戦闘中にボケまくりとかアホちゃうか――!」ブンッ...!

夕美「――あるんだよたとえばこういう風にね――――!」

夕美(“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!)パァァァ...!

笑美(ここで能力を!? しもた、何が狙いかわからへんけど、もうこのツッコミは止められへん……!)

ヒュンッ...ベチャア

夕美「ラフレシアの……盾!」ジャーン

笑美「……ドヤ顔で能力使っといて防御しただけどか何やそ――くっさぁ!? なんやコレ!?」ムワァ

夕美「それはラフレシアの花粉だよっ! ラフレシアの花粉は粉状じゃなく、粘液に包まれてクリーム状になってるの!」

夕美「私の狙いは、まずあなたの武器を無力化すること! ラフレシアに向かって思い切り振り下ろしたりするから、狙い通り、自慢の武器に酷い臭いのクリームがべっとりだよっ!」

夕美「どう? それでもまだその武器を振り回せる!?」

笑美「くっ……な、なかなかやるやん……けど逆に言えば!」

笑美「こっから先、これであんたの頭をシバき倒したりすれば、あんたの頭にもこのくっさいクリームがべっとり付くゆうことやんなぁ……!」

夕美「えっ。……あっ。うわっ」ゾワァ...

笑美「あっはっは! 上手いことやったつもりで、敵に塩送っただけやったなぁ! 覚悟しいや!」ダッ

夕美「くっ!」ガバッ

笑美「……か、覚悟、しい……や…………」

笑美「……………………ぅ」

夕美「…………」ブルブル

夕美「…………、あれ?」チラッ

笑美「…………アっカン無理やコレくっさぁぁぁぁぁ!? 何なん!? 何なんコレありえへんやろ!」

笑美「こんなん持っとったら鼻曲がるわ! 鼻の穴こんな急カーブなってまうでホンマ! アホちゃうか!? ホンマないわぁ――っ!!」ガチャッ ビッタ――ン!

夕美「つ、ツッコミが私に対してより容赦ない……」

夕美「と、ともかく武器を捨てさせることには成功したからね! うん、作戦通りだよっ!」グッ

笑美「言うとけ! この状況、既にこれを捨てたって問題ないっちゅうことや!」

笑美「まず、あんたの能力のタネは割れた! 種だけにな! もう二度とその手は食わん!」ダダッ

夕美「! 距離を! 待ちなさい!」ダダッ

笑美「そして既に! その辺の花やら木やら燃やしまくっといたおかげで、火炎放射器がなくても炎には困らへん舞台が出来あがっとんねん!」

笑美「ウチはその花の悪臭が届かんところまで、安全に“ハナ”れさせてもらうで!」

パァァァァ...!

夕美(燃えてる花壇の上を……炎を花の幻に変えることで安全に通り抜けた!?)

笑美「…………戻れっ!」

ボォッ...! メラメラメラ...

夕美「っつ、通れない……! しまった……距離を離されちゃった!」

メラメラメラ...

夕美「く…………!」ジリジリ...

笑美「……ふん、まあたしかに、燃えとる花壇の場所はあんたにも全部見えとるからな」

笑美「そうやって、上手いこと位置取り考えて回り込んで来られたら、ウチも毎回さっきみたいに逃げるんは難しいかもしれへんわ」ジリジリ...

夕美「待てっ!」ダッ!

笑美「けどな! 一度距離を取った以上、もうこの安全距離は詰めさせへん! 遠距離からじわじわと、確実に弱らせた上で倒させてもらうわ!」ダダッ!

笑美「“踊る鳥はサンバ”!」

笑美(“炎”を“幻”に変える能力!!)パァァァ

メラメラメ...バサバサバサッ!

夕美「くっ、無駄に情熱的な動きで……!」

夕美(“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!)

夕美「あ――――――――!」パァァァァ

笑美「……戻れっ!」

ボォッ! バフッ!

夕美(よし、この攻撃はなんとか防げる! 防いで……食らいつくっ!)

メラメラメラメラ......

ダダッ タッ タタタタッ......

夕美「……ここは綺麗な花がいっぱいあって、それがたくさんの人に人気の公園だったのに……!」タッタッタッ

夕美「それをほとんど全部こんなにして……! 酷いとは思わないの!?」

笑美「はあ? そんなん知らんわ! そんな甘いこと言うてられる戦いとちゃうやろ!」ダダダダッ

笑美「だいたい花がなんやねん。花より団子言うやろ? ウチからしたら、こうやって燃やしてしもた方がまだナンボか足しになるわ!」

夕美「……ふーん、そう。わかった。じゃあ、もう本当に容赦しないから……!」ゴゴゴ...!

笑美(あれ……なんかキレとる!? 何なんあの笑顔めっちゃ怖い! ウチなんかヤバいこと言うた!?)ヒヤアセー

笑美「ふ、ふんっ! いくら怒ったところで、ウチを捕まえられん限り意味無いわ!」

笑美「その辺の炎が消えるんに期待してるんやったら悪いけど、あんたらに攻撃仕掛ける前に、公園のスプリンクラーとかは全部止めさせてもろたからな!」

笑美「自然鎮火する前に、ウチがあんたの息の根を止める! 一度詰めた距離を離された時点で、もうあんたには勝ち目はないんや!」

夕美「――そんなことはないよ」

夕美「言ったでしょ? “あなたの能力の正体は、もう見破った”って」

笑美「はっ、そんなん詰まらんハッタリやん! 見破ってるなら、なんで未だに手間取っとるねん!」

夕美「……それはそうとして。ねえ、あなたって、見た感じかなりお喋り好きなタイプだよね?」

笑美「おお!? そりゃそうや! ボケて突っ込んでの漫才大好きな関西人に、喋り嫌いなやつなんかおらへんで!」

夕美「やっぱりそうだよね。でも、その割にさ――」

……

笑美『“豚がトンだ”!』パァァァ...

笑美『…………! 今や戻れっ!』ボォッ!

……

笑美『ウチはその花の悪臭が届かんところまで、安全に“ハナ”れさせてもらうで!』パァァァ...

笑美『…………戻れっ!』ボォッ!

……

笑美『“踊る鳥はサンバ”!』パァァァ...

笑美『……戻れっ!』ボォッ!

……

夕美「その割に何故か――能力を使ってる間だけは無口になるよね」

笑美「!!?」ギクッ

夕美「……だいたい、あなたの能力を見た時、初めから何か違和感があった」

夕美「私の“声”しかり、のあさんの“歌”しかり、“限定条件を満たしている間だけ”あるものが別のものに変化して、“限定条件を満たさなくなった”ら、それは元に戻る」

夕美「あなたの能力も同じように、“炎”から“幻”へ、また“幻”から“炎”へと、変化させたり戻したりすることができて、それを攻撃に利用してたけど」


夕美「じゃあ――“ダジャレを言う”って限定条件が、“満たされなくなるタイミング”ってどこなの?」

笑美(……あ、マズい、まさか、これは――!)

夕美「炎を幻に変えている間、ダジャレをずっと“言い続ける”必要がないんだとしても、それなら“言って”から“言い終わった”ことが確定するまでに、まだ条件は有効だと見なされる“間”があることになる!」

夕美(そう、のあさんの“歌う”限定条件に、「ここまでなら歌の途中の息継ぎや溜めだ」と認められる“間”が設定されてるように!)

夕美「でも、幻を炎に戻すまでのタイミングは、毎回全部バラバラだった! 幻の形や動きをある程度操れるのはまだわかるとしても、限定条件の成立条件まで自由に変えられるのはおかしいよね?」

夕美「そして一番の不自然は、私と千枝ちゃんの幻を見せてきらりさんを罠にはめたあの瞬間だよ!」

夕美「あの時――あなたは何も言わずに私達の幻を作り出した!」

笑美(あああアカン、やっぱりそこを見られとったか!)

夕美「これらの条件から、考えられる結論はひとつ!」


夕美「あなたの能力の限定条件は“ダジャレを言う”ことじゃなく――“声を出さないこと”もしくは“息を止めていること”だ!!」


笑美(バレとる――――!!)

笑美「……く、や、やからって何が変わるんや! 本当の限定条件がバレたところで、ウチの能力を止める方法はないやろ!」

笑美「止められるもんなら、“トメ”てみいや!」

笑美(“炎”を“幻”に変える能力!!)パァァァ

老婦人「チョットハナコサン、ナンデスカコノミソシルノアジハ!」ババッ

夕美「花子って誰!? ……あっ、これ姑!?」ハッ

笑美「戻れ!」

ボォッ!

夕美「危なっ!」サッ

笑美「ちっ、上手いこと避けおる……!」

夕美「はぁ、はぁ……止めることはできなくても……戻すタイミングがわかれば、防いだり避けたりはできるよ!」ハァハァ

夕美「……というか、本当の限定条件はバレてるのになんでまだダジャレ言うの?」

笑美「ウチの趣味や!」

夕美「あ、そ、そう……」

笑美「……ふふん、でも、そっちの限定条件も“声”なんやろ? それも、ただ喋ってるだけでは発動せえへんってことは、ある程度声を“出し続ける”ことが条件やと見た」

夕美「……そうだけど、それが?」

笑美「ははっ、ウチはまだまだ問題なく能力使えるけどな! こんだけ周りで火ぃボーボー燃えとって、ともすれば酸欠になりかねんこの状況!」

笑美「その上動き回って息も切らしとったら、能力使うんにも不自由するやろ!? 戦況は依然ウチ有利っちゅうことや!」

夕美「……はぁ、はぁ……まあ、たしかにそうかもね……」

夕美「でも、もう勝機は見えてる」

笑美「ハッ! ハッタリ抜かせ!」

夕美(来た、この直線! ここで勝負を決める!)

夕美「ハッタリかどうか……見せてあげるっ!」ダッ!

笑美「血迷うたか! そんな全力ダッシュ、急には止まれやんやろ!? まさしく、飛んで火に入る夏の虫っちゅうやつやで!」

笑美(“炎”を“幻”に変える能力! 横の炎を幻に変えて立ち塞がらせて、突っ込んだ瞬間炎に戻したる!)パァァァ...!

幻「」ユラァ...

夕美「――ぁ――――……」タタタタタッ...


笑美・夕美(――今や(だ)!!)

夕美(タイミングはぴったりだよっ! “植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!)ピンッ!

笑美「もど――」

パァァァ モワッ

笑美(うっ、臭っ!?)バッ

笑美「――――はっ!」

幻「……......ボォッ

夕美「……飛んで火に入る……何て?」ダダッ

笑美(し、しもた! あの能力、投げた種でも行けるんか! 思わず息を止めてもたせいで、炎に戻す前に幻を突破された!)

笑美(けどまだ距離を詰め切られたわけとちゃう! 行け、幻の動物共……!)

ユラァ...!

笑美(これでもう一回距離を――)

夕美「……!」ニッ

笑美「!?」

夕美「――今だよっ! きらりさんっ!!」

きらり「まっかせてー! 行っくよー……きらりんパワー☆!!」

笑美(なっ……いつの間に! まさかこの子とウチ諸共あの流星で――!?)バッ

きらり「……なーんちゃって、嘘だにぃ。べー☆」

笑美(動いてない……何も……しとらん……!? はっ!)

夕美「――あんな酷い幻できらりさんをハメたんだから、このくらいはお返ししてもいいよね?」ダッ!

笑美「最後の数歩分、注意を逸らすための囮――!」

夕美「正解! 今度こそ本当に――捕まえ、たっ!!」バッ ガシィッ

笑美「うぐっ!?」ドサァッ

笑美「っつつ……おふっ!?」

夕美「さあ、これでもう逃がさないよっ!」ノシッ...

笑美(く、腹の上に馬乗りに……!? 両腕も全部太ももの下敷きにされてもて、このままやと抵抗できへん!)

夕美「多分大丈夫だとは思ってたけど……さっき私が幻を突っ切った時に能力を解除しなかった、ううん、できなかったってことは、やっぱりあなたの限定条件は“息を止める”ことの方だね?」

夕美「なら、私の作戦はこのまま続行で問題なさそうだね」

笑美「な、なんや、こっからウチが気絶するまでフルボッコっちゅうことかい……!?」

夕美「ううん、私の腕力で下手にそんなことしたら、顔に怪我が残るかもしれないでしょ? そんな酷いことはしないよ」

夕美「……もっと酷いことはするけどね」スッ

笑美「なんや、植物の、種……? ……まさか」

夕美「ここからは……我慢比べ、しよっか」ニコッ

夕美「すぅ……」

笑美(ヤバいっ!!)ムグッ

夕美(“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!!)

夕美「――あ――――――――!」パァァァァァ...!!

ブワッ モワア...

夕美「あ――――――――……」

笑美(ぐっ……そういうことかい!!)

笑美(こうして息を止めることで、ウチは能力を発動できる! つまり幻を動かして、いつでもこの子を燃やせる準備が出来る!)

笑美(けど……こんな文字通りの目と鼻の先に、こんなくっさい花構えられてたら、迂闊に息なんて吸えやんやん!)

夕美(そう、そして“息を止める”ことが限定条件である以上……そうやって息を止め続けている限り、炎に戻して私を攻撃することはできない!)

夕美(つまり、これは――)

笑美(ウチの息がもたんくなって、この酷過ぎる臭いを嗅がされる羽目になるか……)

夕美(私の息が続かなくなって、能力を解除して攻撃チャンスを与えてしまうか……)


夕美・笑美((どちらが先に耐えられなくなるかの、我慢比べ勝負!!))

今晩中には終わらなかった世……いったんここで切らせてもらいます
今日中には、この続き、笑美戦ラストまで投下したいと思います

作中で夕美ちゃんにも語ってもらいましたが、笑美のこの能力で“ダジャレを叫ぶ”という限定条件だと、限定条件の成立/解除条件が曖昧で、炎→幻/幻→炎の変化を使い分けられなくなっちゃいます
なので、安価のルールからすると変則的というかちょっとアウトですが、出してもらった安価のアイデアをこういう形で採用させてもらいました

個人的に、敵の能力の正体を探りながら戦うというのがこういった異能バトルモノの醍醐味のひとつだと思うので、もしかしたら今後も、こういう変則的な安価採用をするかもしれません
ただそれだと安価の意味もなくなってしまうので……どうしようかなぁ……
今のところは、「AをBに変える能力」のAの候補を>>+1~>>+3、Bの候補を>>+4~>>+6……という風に範囲で出して、その中からどれを採用したかは秘密、という風にしようかなと考えてます
こういった変則採用の是非や、安価の出し方についての意見があればお願いします
それでは。

夕美「あ――――――――……」

モワァ...

笑美(こ、こんな酷い臭い無理矢理嗅がされて気絶とか、そんな無様なマネはごめんやで!)

笑美(我慢比べや言うても、要は、先に相手に能力解除させて、ウチが安全に息を吸うチャンスを作れればええんや)

笑美(つまり……バカ正直に息切れを待っとる必要はない!)

笑美(この状況、ウチも能力を解除はできへんけど、幻を動かす分には不自由ないで!)パァァァ...

夕美「あ――――――……」ハッ

夕美(! 何か仕掛けてくる!?)

笑美(ふっ、これでも見さらせ!)

ゴーグルの芸人『――やからね、言ってやったんですよ、“小細工で駄目なら大細工や!”て』

仮面の芸人『いやそれ十分小細工やから!!』ビシッ

ドッ ワハハハ...

笑美(どや!? 兄弟漫才コンビ“ながら足し算”の爆笑必至コントの再現や!!)

笑美(笑って声が途切れたらその瞬間に――!)

夕美「あ――――――……」シラァ...

笑美(……う、ウケてへんやと!? そんなアホな! こいつの笑いのツボどうなっとんねん!?)

夕美(……この子の能力、あくまで“幻”に変える能力だから、“声”に関しては完全に再現できないみたいなんだよね。だからボロが出ないように、私と千枝ちゃんの幻にも下手に喋らせなかったんだと思うんだけど)

夕美(これも多分お笑い芸人なんだろうけど、喋りの再現が不完全だから、どういうネタかよくわからないんだよね……)

笑美(くっ……! まさかこれでウケへんようなやつが日本に居るとは! やったら別の手でいくで!)

夕美「ぁ――――――……!」

笑美(相葉夕美! ウチもこう見えて芸歴長いからな! あんたはウチのこと覚えてへんかったかもしれやんけど、ウチはあんたの仕事姿を見たこともあるんやで!)

笑美(ついでに言うと、あんたのプロデューサーに関する噂話について聞いたこともな!!)

笑美(“炎”を“幻”に変える能力ぁ――!!)パァァァ

ユラァ...

夕美(今度は何を――――っ!?)


P『…………』ユラァ...


夕美(プロデューサー、さん……!?)

笑美(これならどうや! 思い出の人の姿に……動揺しやんと声を出し続けられるか!?)

夕美「ぁ――~~――――……」

笑美(声が震えた! もうひと押しや!!)

P『…………』スタスタ...スッ

夕美「ぁ――――~~――~~――――……」

夕美(プロデューサーさん……プロデューサーさんっ……! ごめんなさい、私……だめ、もう少し頑張らないと……!!)

P『……夕美……』ギュ...

夕美「ぁ――~~~~――っ――――……!」

笑美(どうや……!? 大好きなプロデューサーはんのハグ攻撃は……!!)

夕美「~~~~――ぁ――――――――……!!」

笑美(震えが――止まっ……!?)

夕美(……違うよね。うん、“これ”はやっぱりプロデューサーさんじゃない)


……

夕美『プロデューサーさん! 私……上手くやれたかなっ?』

P『上出来も上出来、最高だったぞ! 夕美、よく頑張ったな!』ポム

夕美『も、もうっ、子供扱いしないでよっ! ……えへへ』

……


夕美(プロデューサーさんは、いつも私のことを一番に考えてくれてて、でもいつだって仕事に真面目で)

夕美(私の気持ちなんて素知らぬふりで、こんな、優しく抱きしめたりなんて一度もしてくれなかった)

夕美(ただ、仕事が終わると、……優しく私の頭を撫でてくれるだけで――――!)

夕美「――私が欲しいのはこんなニセモノのプロデューサーさんじゃないよ私は――――」

夕美「私は絶対に絶対に絶対に本物のプロデューサーさんと一緒にトップアイドルになるんだからぁ――――――――!!」

夕美「ぁ――――……ぁぁあああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!」

カァァァ...!!

笑美「…………!!」

笑美(くっ……な、何なんやコレは!?)

ムクムクッ ムワァァ...!

笑美(ひっ、やっ、な、何なんこれ、もっと大きくなって……!?)

ボタボタッ

笑美(やぁぁぁ……なんか顔に零れ落ちてきたぁ……! べとべとする……!!)

笑美(な、なんで、なんで花がさらに大きくなるねん? なんでこんな……息を止めてても鼻の粘膜にクるくらい、さらに臭いが酷く……!?)

笑美(まさか……これも能力の応用ゆうやつなんか!? この能力は、“声を出し続ける”ゆう限定条件やったはずやけど――)

笑美(長い間声を出し続ければ出し続けるほど、花はより大きく、臭いはよりエグくパワーアップしていく……!?)

ムクムクムクッ ムワァァァァ......!

笑美(アカン……アカンで、これ絶っっ対に嗅いだりしたらアカンやつや! 実際に嗅いでなくてもわかる! 便所のゲロ以下の臭いがぷんぷんするでぇ――っ!)

P『…………』ユラァ...

夕美「――ぁ―――――~~――――……!!」ギュ

笑美(くっ、もう目を閉じて、もうプロデューサーはんの幻を見んようにして、声を出すことだけに専念しとる……!)

笑美(た……耐えるんやウチ! こいつの声もだんだんか細くなってきとる! もうちょい……もうちょいで……!)

笑美(……けどアカン! 腹の上に馬乗りになられた時、肺の中の空気を押し出されてしもてる! こ、これ以上は……ウチの息が続かへん……!!)プルプル

笑美(こ、こうなったら……ここからは「我慢比べ」の内容を変える!!)

笑美「――っぷはぁ、燃えてまえやぁぁぁぁぁ!」ボッ!!

夕美「ぁ―――――――!?」

笑美「勝負内容変更や! 火だるまになったあんたが気絶するんが先か、この悪臭でウチが気絶するんが先か、の――――」

モワァ...!!!

笑美「――――…………ゔっ」

笑美(あ……アカン、失敗したわ……この勝負を仕掛けるんやったら、もっとはように……)

笑美(花の臭いが、ここまでエグくなる前にやるべきやった……!)

笑美「こ、こんな、にお……うぶっ、がまっ、とか、むっ……」

笑美「ムリ、やろ……ぁ、ありえへん……!!」ガクッ

夕美「ぁ――――ぁああ! っはぁっ!! はぁ、はぁっ……!」ゼェゼェ シュゥゥゥ...

夕美「か、勝った……? 勝てた、の……?」

笑美「」ピクピク

Pの幻『』フッ...シュゥゥ...

夕美「……やったよ、私……私の能力で……初めて、ちゃんと、勝てた……!」



>>相葉夕美 vs 難波笑美  決着!!

 ――――勝者:相葉夕美
 ――――敗者:難波笑美  ラフレシアの悪臭で気絶=リタイア

メラメラメラ...

夕美「熱っ……って、あっ、ちゃんと幻を制御せずに炎に戻すから、この子の服にまで引火してる!?」

夕美(何とか“あそこ”まで行かないと……! 位置取りは上手くできたけど、まだ少し距離が……!)

夕美「このままじゃこの子まで……う、」

夕美(あ……限界まで声を出し続けてたから、酸欠で――)フラ...

......ダッダッダッダッダッ

ガシィッ!

夕美「っわ!?」

きらり「休めたおかげできらりん復活ーっ! ありがとねー夕美ちゃん! 二人まとめて、きらりんパワーにまっかせといて☆」グイッ

きらり「にょっにょっにょっにょっ……!」ダッダッダッダッ...

きらり「――きらりんだーいぶっ!」バッ

夕美「わ――――!?」

――ザッバーン!

ジュッ シュゥゥ...

夕美「……っぷはっ! び、びっくりした……!」ザバァ

きらり「うきゃー、冷たいお水きもちぃー☆」ザブザブ

夕美「ふぅ……念のために、噴水の方へ誘導しておいてよかった……」

きらり「ふー……どうにかこれで、この戦いもしゅーりょーだにぃ」

夕美「きらりさんは……もういいの? この子は私が倒しちゃったけど、私自身はまだ生き残ってるよ」

きらり「えーっ? 夕美ちゃんまだ戦いたいのー?」

夕美「……ううん。きらりさんには助けてもらったりもしたし、いい人みたいだから……できればもう戦いたくないかな」

きらり「きらりも同じ気持ちだにぃ。仲良くしよー☆」

夕美「う、うん……よろしくね、って、あ! きらりさんその子! その子!」ワタワタ

きらり「んー?」

笑美「」プカー...

夕美「…………」

きらり「…………」

夕美・きらり((どう見ても水死体(だにぃ)……!))

きらり「よ、よいしょっ」ザバァ

きらり「……うん、だいじょぶだいじょぶ! まだ息してる! せーふ! せぇーふっ!」

夕美「う、うん、そういうことにしておこっか……」

きらり「それじゃ、戦闘終了ってことでー……夕美ちゃんは、笑美ちゃんと一緒にちょっと離れててー☆」

夕美「? どうするの?」

きらり「“漬物”を“流星”に変えゆ能力ーっ☆」(`・ω<)バチコーン ギュァッ!

夕美「わっ!? ……真上、に?」

漬物「」ヒューッ...ボトッ

きらり「で、もう一回、……“漬物”を“流星”に変えゆ能力ーっ☆」(`・ω<)バチコーン ギュバァッ!

漬物「」ボトッ

きらり「三回目ー☆」(`・ω<)バチコーン ギュガァッ!

きらり「おっつおっつばっちし☆ これで、外で待ってる後輩ちゃんにも、戦いが終わったって伝わったはずだにぃ!」

夕美「ああ、合図だったんだね」

千枝「夕美さーん! きらりさーん! 大丈夫ですかーっ!?」タタッ

夕美「あっ、千枝ちゃん! こっちこっち! うん、……なんとか無事に、勝てたよ」ニコ

千枝「夕美さんっ……!」ウルッ ガバッ

夕美「わっ、ちょっと、千枝ちゃん!? 濡れちゃうよ!?」

千枝「……無事で、良かったです……!」ギュゥ...

夕美「……! うん、大丈夫。心配してくれて、ありがとね……」ナデナデ


後輩「きらりさん! 大丈夫でしたか!? 難波笑美は……」

きらり「あ、後輩ちゃんおっすおっす! 笑美ちゃんはねぇ……夕美ちゃんに倒されちゃったにぃ☆」

後輩「あの子が!? そうですか……まあ、君が無事で何よりです」

きらり「えへへー、もっと褒めて褒めてー☆」

神候補「……おう。よくやったな」

夕美「神候補さん……うん。私、勝てたよ。神候補さんにもらった、この能力で」

神候補「ああ、見事だった。これで、ボーナスとしてひとつ才が増えたはずだが……そのチェックは後でしよう。おい、後輩!」

後輩「あっ、はい先輩! ええと、それでは、諸星きらりさん、相葉夕美さん」

後輩「能力者である両名に確認します。あなた達には、もうこれ以上この場で戦い続ける意思はない。間違いありませんね?」

夕美「? えと……はい。それは間違いありません」

きらり「きらりもそれでおっけーだにぃ☆」

後輩「わかりました。では――今日この場における能力者バトルは終了したものとして、これより、神候補二名による事後処理に移ります!」

夕美「ええと……?」チラリ

神候補「ああ、俺達が下手に舞台の状態を動かすと、ルール違反である『神候補による、能力者同士の戦いへの介入』ってことになりかねないからな」

神候補「だから、『もう戦い自体は終わってる』『これは戦いへの介入ではなく、あくまでその事後処理だ』って言質を取らせてもらったわけだ」

神候補「つうわけで……やるぞ、後輩」

後輩「はい! 先輩!」タッ

神候補「ふっ…………!」パァァァァァ...!

後輩「はぁっ…………!!」パァァァ...!

千枝「わぁ……凄いです!」

夕美「燃えてた木や花が……全部消火されていく……」

きらり「後輩ちゃんもだけど、神候補ちゃんも流石だにぃ☆」

神候補「ちゃんて……っと、よし。まあ、まずはだいたいこんなもんだろ」

後輩「その火傷の痕はアイドルとしての活動に差し障りますから、それも治しておきますね。きらりさん、手を」

きらり「はーい。……優しくして欲しいにぃ?」

後輩「……僕に上目遣い使ってどうするんですか。ほら、治しますよ」パァァァ...

きらり「んー……後輩ちゃんパワーが沁み渡ってくゆのを感じるにぃ☆」シュゥゥゥゥ...

夕美「…………!」

夕美「あ、あの……神候補さんも、もしかして……その、治療の力が使えるんですか?」

神候補「ん? ああ、俺は――」

後輩「いえ、先輩はこういう繊細な力の使い方は昔から下手でしたからね。僕のことを信用してもらえるなら……君の火傷も、僕が治療させてもらいましょう」

後輩「僕の担当はきらりさんですから、本来ならば敵ですが……今回は、色々と世話になったようですからね」

神候補「……ん、そうだな。心配しなくてもいいぞ、夕美。この戦いのルールで、神候補が他の能力者にちょっかい出したら地獄行きになるからな」

神候補「ここでそこまでしてお前を脱落させるメリットは、後輩の側にも無い。治療って言葉に嘘は無いはずだ」

後輩「先輩……そこまで疑り深くなくたっていいじゃないですか……」ショボーン

神候補「うるせえ。能力者に嫉妬されても困るしな。……それじゃあまあ、俺はその間に、燃やされちまった花や木を元に戻してくるか……」

後輩「もう、先輩ったら……ええと、それじゃあ治療を始めますね?」

夕美「え、えっと……それじゃあ、お願いします」

後輩「はい。そこまで酷い火傷にはなっていないので、すぐ済みますよ」


……


夕美「本当にあっという間に治っちゃった……」

後輩「一応言っておきますが、体力まで回復できたわけではありませんからね。神候補の手でそこまで完全回復できてしまうと、能力者同士の戦闘のバランスにも影響します」

後輩「なので、ルールに抵触しないよう、あくまで『アイドルとしての活動に差し障りない範囲まで』に留めています。失った体力については、しっかり休んで自力で回復してください」

夕美「は、はいっ、わかりました。あの、治してくれて、ありがとうございました」ペコッ

後輩「……いえ、元はと言えばこちらから巻き込んだようなものですし、こちらもきらりさんを助けてもらいましたから、おあいこです」

後輩「それでは僕は、先輩と少し話があるので」ザッ

夕美「…………」

きらり「……夕美ちゃん、ちょっといいかにぃ?」

夕美「あ、きらりさん。何?」

きらり「えーと、その……」

きらり「……夕美ちゃんのプロデューサーのことで、酷いことを言ってごめんなさい」ペコッ

夕美「えっ? えっと……」

きらり「もう後輩ちゃんには許可もらったから本当のことを言うけど、今日は、夕美ちゃんの担当の神候補ちゃんと、夕美ちゃん自身がどれだけ本気かを確かめゆために……」

きらり「ゴホン、確かめるために、来たんだに……来ました」

きらり「挑発して、本音を引き出すためとはいえ……酷いことを言っちゃったのは確かだ……確かです。……ごめんなさい」フカブカ

夕美「や、そんなっ、別に……」

夕美「……うん、たしかに、色々辛かったことも思い出しちゃったけど……」

夕美「でも、その後きらりさんには助けてもらったし……今、こうしてちゃんと謝ってくれたから」

夕美「だから、そのことについてはもういいよ。許します。だから、顔をあげてください」

きらり「……夕美ちゃん」

夕美「……ありがとね、きらりさん。でも、私はいつものきらりさんの方がいいかなっ」

きらり「夕美ちゃん……ありがとにぃ! これからも……もしよかったら、これからもきらりと仲良くしてくれゆー?」

夕美「もちろんっ! 能力者同士だけど……これからよろしくねっ♪」

きらり「……うきゃーマジメうきゃー☆ うんっ、これからよろしくにぃ☆」

千枝「……もうっ、千枝だけ仲間はずれとかひどいですっ!」

夕美「ごめんごめん、千枝ちゃんも一緒に、ね?」

千枝「えへへ……あ、そうだ、きらりさんっ、これなんですけど……」

夕美「あっ、ジャッジマン! そういえば、私達の勝負って一体どういう判定に……」

千枝「……砂場のお城、全部潰れちゃいましたね……」

きらり「あ、えーっとね……それも実は、夕美ちゃんの本気を確かめうための嘘だったんだにぃ☆」

夕美「えっ?」

きらり「それは別に、能力者の戦いを判定してくれぅアイテムじゃないんだにぃ……こうやってー」グニッ

ジャッジマン『ギルティ――――――ッ!!』クワッ

きらり「お腹をつつくとお喋りすぅだけの、ただのお人形さんだにぃ☆」

夕美「なんだ、そうだったの……」プニプニ

ジャッジマン『ギルティ――――――ッ!!』クワッ

きらり「ちなみにぃ、喋ゆ台詞はらんだむなんだよーっ☆」

千枝「最初はびっくりしましたけど……慣れてくるとカワイイですねっ」グニグニ

ジャッジマン『ノットギルティ――――――ッ!!』クワッ

夕美(……ランダムと言いつつ規則性がある気がするのは私の気のせいなのかな)

千枝「あの……よかったら、仲直りの意味も込めて、三人で遊びに行きませんか?」

夕美「あ、いいねっ。今日のお休みはこんなことになっちゃったし……きらりさんはどう?」

きらり「大賛成だにぃ!☆ うぇへへー、千枝ちゃん夕美ちゃんとお出かけお出かけー☆ 楽しみだにぃ☆」

夕美(……だけど、同じ能力者だし、いつかはきらりさんとも本気で戦う時が来るのかな……)

夕美(でも、今くらいは……)

夕美「……それじゃ、皆の予定を見て、休みの日が合ったら遊びに行こっか♪」

千枝「もしよかったら……今日これからでも三人で遊べませんか? 千枝もお城作りやってみたくなって……だめですか?」

きらり「きらりは全然おっけーだにぃ! にょわー……千枝ちゃんはカワイイにぃ」スリスリムギュー

千枝「えへへ、くすぐったいですよー」

夕美(今ぐらいは……いいよね)

ワイワイ キャッキャウフフ

……

……

夕美『――私が欲しいのはこんなニセモノのプロデューサーさんじゃないよ――!』

夕美『私は絶対に絶対に絶対に本物のプロデューサーさんと一緒にトップアイドルになるんだからぁ――――――――!!』

……


神候補「…………」

パァァァァァ...

神候補「……ふぅ。さて、だいたいこんなもんだろう」

後輩「先輩! 手伝……うことも、もうないみたいですね。花壇の花まで全部一人で元通りにしたんですか?」

神候補「まあな。ここは夕美に付き合わされたりで、ちょくちょく来てたからな……いつの間にか、花壇の花の配置まで覚えちまった」

後輩「……先輩」

神候補「なんだ。千枝ちゃんのことか? 心配しなくても借りた金はちゃんと返すぞ」

後輩「いや、それも大事というか、そこは僕も込みで、あんな小さい子にタクシー代借りるとかいい年した大人としてどうなのかと思いもしますが……」

後輩「それとは別として。……本当に大事な話なんです、先輩!」

神候補「……聞こう」

後輩「先輩。この前話していた、僕との同盟の話はこの際後回しでも構いません」

後輩「それよりも……あの子の、夕美さんのプロデューサーとして働いているなら、今すぐ彼女の予定を調節してください!」

神候補「おい待て、それで何をしろって言うんだ」

後輩「名目はライブツアーでも強化合宿でもマラソンでもプロデュースでも何でも構いません。とにかく、強引でもいいので急いで予定を作って、この街を離れるんです!」

神候補「だから待て! 何をしろってのはわかったが理由を言え!」

後輩「……来てるんです……」

後輩「来てるんですよ! 今回の戦いにエントリーしたアイドルの中で、最大最強の能力者と言われている――あの>>+4(アイドル名)が! 今、この街に!!」

神候補「!?」

とりあえず安価把握ですー
ユッキの能力をどう決めるか考えるのも含め、続きは追々書いていきます
しかしよく見ると、今のところ作中で登場したアイドル全員CoかPaという……

………
……


 ―都内某所

モブ能力者「はぁっ、はぁっ……」タッタッタッタッタッ...

モブ「こ、ここまで来れば……」ハァハァ

「来れば、何だって?」ヒョコッ

モブ「!?」ビクッ

友紀「いやぁ、君も結構足速いね! で、ほらほら、ここまで来れば何があったの?」

モブ「……は、はは……もうこうなったらやるしかないね!」ザッ...!

モブ(今までコツコツ貯めてきた百円玉貯金――!)スッ

モブ「見せてあげるわよ金の力を! 全額持ってけ泥棒――――ッ!!」ガッシャァァン!! チャリンチャリンチャリンッ

友紀「うわっ、勿体ない!?」

モブ「これであんたを倒せるなら安いもんよ!!」

モブ「行けっ! ――“硬貨”を“風”に変える能力ぁ!!」パァァァァ...!

ビュゴォッ! ビュオォォォ! ギュオォォォォッ!!

友紀「うっひゃーっ、竜巻!? すごいね、これが金の力!?」

モブ「そう、これが金の力よっ!!」

モブ「これが私の全力よ! 今日ここであんたを倒して、最強の能力者の称号は私が頂く!!」

友紀「うーん、それ、周りが勝手にそう呼んでるだけなんだけどねー」

モブ「吹き飛べぇ! 最大風速!!」ゴォッ!!!

友紀「まあ、欲しいっていうなら別にあげてもいいよ?」


友紀「――取れるものならね」ヒョイ


モブ「っ!? 近――――」

パァァ.........!

ヒュ――ズガッ! ドサァッ!

モブ「っつぅ……! そ、そんな、無茶苦茶な……これほど、まで……!?」

友紀「よぉーし、今日もあたしは絶好調!」

友紀「でも、なーんだ。案外大したことないのかもね、金の力って」

モブ「……っぐ、う」ガクッ

友紀「はーいバッターアウト―! 姫川選手、今回も見事な封殺を見せましたー!」

友紀「ってことで……それじゃ、きっちりトドメ刺しとこっか♪」スッ...


――ヒュボッ!


――ッバシィッ!! ビリビリビリ...

友紀「……ったぁ……ボールならともかく、石を素手で捕球するのはいくらあたしでもちょっと痛いなーっ」ヒリヒリ

友紀「でも良いねぇこの剛速球! 誰だか知らないけど筋があるよ!」

友紀「こんな場面にそんな平静な顔して割り込んでくるってことは……お姉さんも能力者だね?」


のあ「…………」ヒョイッ...パシッ ヒョイッ...パシッ


のあ「……既に意識も無い相手に追い討ちをかけて、何が楽しいのかしら」

友紀「楽しくはないけど、息の根止めるのは動かない相手の方が楽じゃない?」

のあ「そんなに暇なら……少し、キャッチボールに付き合ってくれる?」ヒュッ...パシッ!

友紀「ちゃんと楽しませてくれるんだよねっ? いいよっ、それじゃあ――プレイボールッ!」ゴォッ...!

のあ「…………!!」ザッ...!!



>>To be continued...

 ~幕間~


夕美「? 神候補さん何見てるの?」

神候補「ん? ああ、この前の、千枝ちゃんのライブ映像。『千枝、こんなお仕事してきました!』って笑顔で言ってくれたから、ちょっと見てみようかと」

夕美「あっ、私も見たい見たいっ」


……

千枝『あ、あのっ、今日は来てくれてありがとうございますっ!』

千枝『今日は、千枝のかわいいところをいっぱい見てもらえるようにがんばるので……よかったら、最後まで応援おねがいしますねっ!』

\ワァァァァァァァ...!!/\チエタァァァン!!/\アァーロリコンニナルゥー/

……


夕美「凄い歓声だね……」

神候補「女性人気もだけど、男性人気が凄いからな。まあ、あれだけ可愛ければなぁ……」

夕美「む」

夕美「……前々からちょっと気になってたんだけど、神候補さんって、千枝ちゃんに変に甘くない?」

神候補「別にそんなことはないぞ?」

夕美「怪しい……」

神候補「別にそんなことはないぞ?」

夕美「………」ジー...

神候補「……まあ、俺も少し気になってたんで、この前ちょっと調べてみたんだよ。ほれ」スッ

夕美「神候補さんがいつも使ってる端末? 何これ……“佐々木千枝の法則”?」

神候補「一言でいえば、千枝ちゃんが今持ってる才の一覧だ」

夕美「へえ……色々あるんだね」ポチポチ

神候補「うむ。で、だ。多分あるんだろうなと思っていたらやっぱりあったのが、これ」ポチポチ

神候補「“男子に好かれる才”に、“年上に好かれる才”。そしてまさかあるとは思っていなかったのがコレ」

夕美「……“魅了の才”? って、え? 何それっ」

神候補「……うむ。あの大きなお友達からの大人気の理由はこれだ。つまり」

神候補「千枝ちゃんは、生まれながらにして魔性の女……!」

夕美「えぇー……」

神候補「ちなみにこの“魅了の才”、お前には無い」ズバッ

夕美「ひどっ!?」

夕美「べ、別にいいよっ、私だって、ファンの人がいないわけじゃないんだからっ!」

神候補「ああいや、別に夕美が魅力的じゃないとかそういうことを言いたいわけじゃなくてだな」

神候補「“魅了の才”がなくても、お前はしっかりファンの心を掴んでるよ。むしろ才能じゃなく、努力の成果として今のお前があるってことなんだから、そこは胸を張っていいと思う」

夕美「そう、かな……?」

神候補「そうとも。その調子で、これからもしっかり頑張れ」

夕美「うーん……なんか綺麗に丸めこまれた気がするよっ」

神候補「気のせい気のせい」

ガチャッ

「こ、こんにちはー」

千枝「お邪魔します……夕美さんか、神候補さんは居ますか?」

夕美「あ、噂をすれば」

神候補「おお、よく来たな千枝ちゃん。まあ何も無い事務所だけど座って座って」

神候補「あ、この前お得意先からもらったお菓子あるから食べる? そろそろ休憩にするつもりだったから、千枝ちゃんのお茶もついでに淹れようか」

千枝「わ、ありがとうございますっ!」ニコッ

神候補「はっはっは、気にするな。せっかく来てくれたんだしな」ナデナデ

千枝「えへへ……」

夕美「……神候補さん?」

神候補「別にそんなことはないぞ?」

夕美「まだ何も言ってないよ?」

神候補「…………」

夕美「…………」

神候補「じゃあ俺はお茶淹れてくるわ」ダッ

夕美「あっ、逃げたっ!」

千枝「ふふ、仲良しさんですねっ」

夕美「……そう見える?」

千枝「見えますよ。神候補さん、いつも夕美さんのこと心配してますし」

夕美「そっか。……えへへ」

夕美「ほら、お菓子食べよっか、千枝ちゃん! これ、私もこの前ひとつもらったんだけど、ほんとに美味しいんだよっ♪」

千枝「いただきますねっ! はむっ……」

千枝「わぁ……ほんとにほんとに、すっごくおいしいですっ!」パァァ

夕美(かわいい……)

神候補(かわいい……)

社長(かわいい……)

夕美「……ん?」クルッ

社長「ゴホンっ、さぁて仕事仕事……」シラッ

神候補「お茶淹れてきたぞー」シラッ

夕美「……やっぱり怪しい……。ていうか千枝ちゃん、一応他の事務所の子なのにいいのかな」

神候補「別にいいだろ。可愛いし」

社長「別に構わんよ。可愛いし」

神候補・社長「「」」ピシガシグッグッ

夕美「…………」ジトーッ

社長「さぁて仕事仕事……」ソソクサ

神候補「さぁて仕事仕事……」ソソクサ

夕美「もうっ、神候補さんたら……」

千枝「えへへ、みんな仲良しさんですねっ」

夕美「うーん、仲良しって一言で片づけていいのかなぁ……」

千枝「いいですよ」

夕美「そうかな」

千枝(うん、やっぱり、いいなぁ……)


千枝(こんな風に、ずっと皆で楽しくいられたらいいなぁ……)


>>続く

 ~幕間2~

夕美「――えっ!? きらりさんって年下だったのっ!?」←18歳 158cm/42kg 81-57-80

きらり「ほえ? そうだにぃ?」←17歳 182cm/60kg 91-64-86

夕美「……年上かと思ってたから、ずっとさん付けしてたよ……」

きらり「そっちの方がカワイイから、別に年なんて気にしないでちゃん付けで呼んでほしいにぃ☆」

夕美「そう? じゃあ……これからはきらりちゃん、って呼ぶねっ♪」

きらり「ばっちしばっちし☆」

夕美「でも、ほんと大きいね……」

きらり「育ち盛りだからにぃ☆」

夕美「まだ伸びるのっ!? それに比べて……」←ふと視線を落とす

夕美「……個人差があるのはわかってるけど、そっか、年下に負けてるのかぁ……」

きらり「どしたの夕美ちゃん? きらりんパワーでハピハピすゆー?」

夕美「あっ、やっ、ううん、背! 背の話だから!」

きらり「よく分かんないけどだいじょぶだいじょぶ! いっぱいご飯食べてしっかり寝てたら、ぎゅーんとおっきくなれゆよ☆」

夕美「あ、うん、そうだね、大きくなれると……いいなぁ……」

きらり「そういえば夕美ちゃん、この前笑美ちゃんに勝って、ひとつ才増えてぅでしょー? 何げっとしたのー?」

夕美「えっとね……神候補さんが言うには、“>>+4の才”が増えてたって。これで才の数は165個くらいだね」

きらり「へー、いいなぁ、うらやますぃなぁーっ」

夕美「きらりちゃんはどんな才持ってるの?」

きらり「んーとねー、“>>+6の才”とか“>>+7の才”とかー、あとは“>>+8の才”があるにぃ☆」

きらり「今持ってぅ才は、全部で156個くらいだってー☆」

夕美「へぇ、そうなんだ」

本来食べ物じゃないもの(タイヤとか)を食べて栄養にする

バイトから戻りました>>1です

>>439は、もう才というより能力の域(“食べた物”を“エネルギー”に変える能力、と言った方がしっくりくる)なのでちょっと無理ですね
しかし無効下を取っていくにしてもどこからどう取るべきか……
この辺は、安価を一度にまとめて出し過ぎたこちらのミスですね、すいません
レスを付けてくれた方には申し訳ないですが、一旦仕切り直しとして、安価を取り直したいと思います


順番に、まずは夕美の獲得した新しい才>>+2

夕美の獲得した新しい才:“暗算の才”
一発変換したら“安産の才”とか誤爆して大スキャンダルになるところでしたよあぶねぇぇぇ!


気を取り直してきらりの持ち才の一例
>>+1
>>+2
>>+3

本日もバイトより帰還しました。もう少ししたら続き投下します

“スナイパーの才”だと、行動や性質ではなく人物になってしまう(たとえば“野球の才”を“野球選手の才”と言ってるような感じ)ので、才の名前としては“狙撃の才”でしょうか
ともあれ安価は把握ですー

後輩「……きらりさん、君はまたそうやって他の能力者に手の内をさらすようなことを……」

夕美「あ、後輩さん、こんにちは」

きらり「後輩ちゃんおっすおっす☆」

きらり「細かいこと気にしちゃ駄目だにぃ☆ だいたいー、他の能力者の持ってぅ才くらいなら、あの端末で普通に見られゆでしょー?」

後輩「それはそうですが……」

後輩「……夕美さん、君もそうやって、僕やきらりさんとナチュラルに友達付き合いしてるのはどうかと思いますよ?」

後輩「同盟の件は先輩にはぐらかされっ放しですし……つまり立場上、君と僕達は敵同士になるんですから」

夕美「あはは、きらりちゃんが仲良くしてくれるから、つい……」

後輩「それが実は、神候補さんから引き離した上で奇襲するための演技とかだったりしたらどうするつもりですか。能力者も神候補も、人柄の良い人物ばかりではありませんよ」

夕美「えと、その……ごめんなさい」

後輩「わかればいいんです」

夕美(……でも、そうやってわざわざ説教してくれてる時点で、後輩さんの人柄の良さが見えてるよ、っていうのは言っちゃ駄目かな)

きらり「夕美ちゃん夕美ちゃん、心配しなくてもだいじょぶだにぃ☆」

きらり「不意打ちとか奇襲とかー、きらりにはじぇーんじぇんそんな気ないし、後輩ちゃんもこの前、」

……

神候補『もしもお前が、一度友達付き合い始めて油断させておいて、後からそれ利用して罠にはめるような真似をきらりちゃんにやらせるような奴なら、天界に戻ってからも二度と口聞いてやらねぇから』

……

きらり「……って、神候補ちゃんに釘刺されて半泣きになってたから、そんな酷いことはぜぇーったいにしないにぃ☆」

後輩「なっ……どどどっ、どこで見てたんですかっ!」

夕美「あはは……やっぱりいい人だよね、後輩さんって」

後輩「ぬぐぐ……」

きらり「うぇへへー、後輩ちゃんは、神候補ちゃんのこと大好きだもんねーっ☆」

後輩「ふん、いいんですよ……どうせ僕なんか……先輩からも全然相手にされてませんし……」ドヨーン...

夕美(あ、いじけモードに入っちゃった)

きらり「後輩ちゃんももっと積極的にあたっくすればいいのにぃー。こう、カワイイ服とか着て、神候補ちゃーん、はぐはぐー☆ って!」

後輩「む、無理ですよ……僕、ものっすごい癖っ毛だから髪伸ばせなくて、昔からずっとこんな格好ですし……」

後輩「それが今更女らしくなんて……」

夕美「癖っ毛って、そんなに酷いんですか?」

後輩「一時期頑張って伸ばしてみたんですが、やはりというか無茶苦茶に絡まってしまって……」

後輩「しかもそれがどういう訳か人間界に伝わって、昇天なんとかミックス盛りとかいう名前で雑誌に取り上げられていた一件以来、髪を伸ばすことは諦めました」トオイメ

夕美「そ、それはなんていうか……災難? でしたね……」

後輩「そ、それに……今まで、女の子らしいお洒落とか、したことないので……ど、どうしたらいいか、わかりませんし……」モジモジ

夕美(この反応が十分かわいい……)

きらり(これだからきらりは後輩ちゃんのこと大好きなんだにぃ)

夕美「でも、たしかに勿体ないよね。男の人っぽい格好で、化粧っ気も無いからわかりにくいけど、後輩さんって実はすごく美人だし」

後輩「や、べ、別にそんなことは……」

きらり「ここだけの話だけど、後輩ちゃんって、実はかなり着痩せするタイプなんだにぃ……もうね、脱いだらメチャクチャすたいる抜群なんだよー☆」ヒソヒソ

夕美「へ、へえ……そうなんだ……」

きらり「それにね、お泊まりの時、背中の流しっことかしたんだけど、けんこー骨? の、この辺りが弱点みたいでねー」ヒソヒソ

後輩「きらりさん! きらりさん!? 身内ネタをそうやって誰かれ構わず暴露するのやめてくださいよ!! この前も千枝ちゃんから、」

……

千枝『後輩さんもわき腹弱いんですか? 千枝も、ここ触られると変な声出ちゃうんです……あの、よかったら一緒に特訓しませんか!?』

……

後輩「って、『仲間が見つかった!』みたいな純朴な目で見られて凄く対応に困ったんですから!!」

夕美(それでも真面目に対応しちゃうあたり、やっぱり人柄の良さがにじみ出てるよね……)

夕美「でも、神候補さんに振り向いてもらいたいっていうのは本当なんですよね?」

後輩「う……そ、それはまあ、その……」ゴニョゴニョ

きらり「もう、しっかりするにぃ! 後輩ちゃんさえその気になぅなら、きらりだって、きらりんパワーでばっちし応援しちゃうよー?」

夕美(神候補さんのことが好き、かぁ……私はなんだか、ちょっと複雑な感じだけど……)

夕美「後輩さんがチャレンジするつもりなら……私も、できる範囲でお手伝いしますよ?」

きらり「ほらほら、夕美ちゃんだってこう言ってくれてうよ? チャンスだよー? 後輩ちゃん、どうすゆのっ!?」

後輩「う、でも、僕は……」

きらり「ウジウジしてちゃ駄目だにぃ! 後輩ちゃんは、神候補ちゃんと長い間一緒に居たんでしょー? なら、今からでもチャンスは絶対あぅはずだにぃ!!」

後輩「そ、そう……でしょうか……」

きらり「そうだにぃ! 後輩ちゃんさえその気になれば、どんな人だってばきゅーんとイチコロだにぃ☆」

きらり「むしろ、普段のそーゆう格好とのぎゃっぷで、後輩ちゃんが女の子らしい格好して見せた方が、神候補ちゃんもメロメロだにぃ!☆」

後輩「い、イチコロ……メロメロ……ほ、本当に、そんなにうまくいくでしょうか……?」

きらり「うぇへへー、そこはきらりと夕美ちゃんの腕の見せ所だにぃ☆」

後輩「う、うーん…………き、きらりさんがそこまで言うなら……」

きらり「おっけおっけ、まっかせといてー☆」

夕美(……あ、もしかしてこれが“口車の才”?)

……


後輩「あ、あのっ、きらりさん! ちょっと、いきなりこういうヒラヒラな服は難易度が高いというか……!」

きらり「えーっ、でもせっかくお洒落すぅんだし、思い切って雰囲気変えていった方がいいと思うにぃ!」

後輩「変えるにしたって限度があります……も、もう少しソフトなやつで!」


……


後輩「……あの、こんな少女趣味な服、僕に似合いますか……?」

きらり「だいじょぶだいじょぶ、もう超カワイイよー! 似合ってぅ似合ってぅー!☆」

後輩「…………、いややっぱり無理! 無理です!」

……


きらり「せっかくすたいる良いんだから、今度はそこをもっとアピールしていく作戦で行くにぃ! ほらほら、もっと胸張って後輩ちゃん! こう、ばいーんっ! って感じで☆」

後輩「やめてください! 恥ずかしくて外歩けませんよ!」

夕美(……というかこれ、後輩さんを応援するためっていうより、完全に着せかえて遊んでるだけだよね?)ヒソヒソ

きらり(バレたにぃ)ヒソヒソ

夕美「というわけで、後輩さんが逃げちゃう前に私も参加して、無難にコーディネートしてみたよっ♪」

後輩「やっと落ち着きました……」

きらり「結局、普段とあんまり変わらない感じになっちゃったにぃ」

夕美「まあ、少しずつお洒落に慣れていこう、ってことで。薄くお化粧して、アクセサリーを少し身に着けるだけで、大分雰囲気変わるでしょ?」

きらり「この髪飾りとかカワイイよね! これなら、どこからどー見てもカワイイ女の子だにぃ☆」

夕美「でも、私達に出来るのはここまで。あとは後輩さんが頑張る番だよっ!」

後輩「は、はい……!」

……


夕美(あ、神候補さんが来たよ!)コソコソ

きらり(後輩ちゃん、行くにぃ!)ヒソヒソ

後輩(い、行ってきます……!)タッ

後輩「せ、先輩!」

神候補「おう、後輩か、どうし……うおっ!?」

後輩「どっ、どうか、しましたか……?」ドキドキ

夕美(頑張って、後輩さん……!)

夕美(その髪飾りの花、エーデルワイスの花言葉は「大切な思い出」、そして「勇気」)

夕美(大事な人への思いを、諦めちゃ駄目だよ……!)

神候補「あ、いや……すまん、その、なんだ。こういうこと言うと変なやつと思われるかもしれないが……ちょっと、ドキッとしちまって」

後輩「え……!」カァ...

夕美(わ、これはもしかして結構好感触なんじゃ……!)

きらり(後輩ちゃん、やったにぃ!)

後輩「あは、ははは……その……どう、ですか……? 僕……雰囲気、変わりましたか……?」

神候補「あ、ああ、そりゃもう……」

神候補「いやぁ、しかしビックリした。でも、なんだな」

神候補「そうやってお洒落してると、まるで女みたいだな」ハハハ

夕美「えっ」

きらり「えっ」

神候補「えっ?」ビクッ

後輩「」ピシッ

後輩「天界学校時代から、あんなに一緒だったのに……女と気付かれてすらいなかったなんて……」ズゴーン......

きらり「こっ、後輩ちゃん! 後輩ちゃん! 元気出すにぃ! いくらなんでもこれは神候補ちゃんが酷いだけだにぃ! 後輩ちゃんは悪くないよっ!」

後輩「……ふ、ふふ、ふふふふふ……どうせ……どうせ僕なんて……」ドヨーン...

きらり「こ……後輩ちゃんの目が死んでぅーっ! 後輩ちゃんっ、ほ、ほらほらっ、きらりんパワーでハピハピしよっ? ねっねっ☆」

夕美「……神候補さん、ちょっとそこに正座」

神候補「なっ、なんだ、俺が何したって言うんだ!?」

夕美「いいから、正座。ねっ?」ニコッ

神候補「はい」スッ

夕美「……あのね神候補さん。前々からちょっと気になってたんだけど、神候補さんは女の子の気持ちってものをもうちょっとね――」クドクド

神候補(何だこの状況……年下の女の子から正座でマジ説教されてる俺って何なんだ……?)

夕美「聞いてるの神候補さん!?」

神候補「あっはい聞いてますっ! すいませんすいませんっ!」

夕美「もうっ! そんなだから神候補さんはね……!」クドクド

後輩「……ぐすっ、ううっ……」シクシク

きらり「だ、だいじょぶだよー、後輩ちゃん超カワイイよっ☆ だからほらっ、元気出してこ! ねっ? ねっ?」ナデナデ

後輩「うう……きらりさぁん……」シクシク

神候補(……ほんと何だこの状況……)

夕美「もうっ、全部神候補さんが悪いの!」

神候補「えぇー……」



>>続く...

~“千枝の法則”・一部抜粋~

○“男子に好かれる才”
 男性、特に若い男の子から好意を抱かれやすくなる才。
 好意と言っても恋愛感情に限った話ではないので、男女を問わず持つことができる。


○“年上に好かれる才”
 自分より年上の人から好意を抱かれやすくなる才。
「自分よりも年上」の範囲は成長と共に狭まっていくので、年少の頃ほど効果が高い。


○“魅了の才”
 人の心を射止められる才。
 特別意識しなくても、人の心を惹き付け、好意的な印象を与えやすくなる。意識すればさらに効果は上がる。
“カリスマの才”と効果は似ているが、ベクトルがやや異なる。

~“きらりの法則”一部抜粋~

○“子守りの才”
 自分よりも年下の子の面倒を、しっかりと見ることができる才。
 面倒の見方は人それぞれだが、この才を持っているとおおむね子供から懐かれやすくなる。


○“口車の才”
 巧みな話術を駆使して、相手を説得することができる才。
 話す内容が論理的でなかったり、明確な根拠がなかったりしても、感情論やその場の勢いで相手をその気にさせることができる。
 ただし、論理的な説得と違って論破もされやすい。


○“狙撃の才”
 彼我の距離や風の影響、弾道の変化などを予測計算して、遠距離攻撃を命中させることができる才。
“命中の才”で対応できないほどの距離からでも攻撃が可能な反面、“命中の才”よりも精密性を要求されるため、咄嗟の攻撃や、自分や相手が激しく動き回っている場合などには力を発揮できないことが多い。



~“夕美の法則”・一部抜粋~

○“暗算の才”(※能力者撃破報酬で追加)
 複雑な計算、桁数の大きな計算でも、紙に書かずに頭の中で答を出せる才。
 才能を磨くと、対応できる問題の難度、計算の精度、計算速度などがさらに向上する。

設定の確認も兼ねて久々に原作読み返してみましたが、やっぱり良いですねうえき……
特に今読むと+のソラがくっそ可愛いんですが、なんなんでしょうかあの可愛さは

友紀(14)「アイアムユッキ! よろしくな!」
友紀(14)「野球好きの罪は野球好きが裁く……ドゥーユーアンダスタン?」

ふむ……

ともあれ、今回はひとまずこんなところで。

こんなに色々言ってもらえたら、書かないわけにはいきませんぜ……!
今夜零時までには続きを投下していきたいと思います

その間にちと意見を聞いておきたいのですが、原作であった新天界人等の設定について、こちらで使うことについてはどう思いますか?
要するに、このアイドルは実は純粋な人間ではなく……といった展開についてです
能力だけならまだしも、この設定を持ってくるとアイドル達の出生の部分が大きく変わることになるので、異種族設定にはちょっと抵抗感持つ人もいたりするのでは、と少々不安なのですが……
それとも、「このSSはそういう世界線」的な感じで、あんまり気にしない感じでしょうか

大丈夫そうですね。了解です、ありがとうございました

したらば、順次投下していきます

神候補(最大最強の能力者、姫川友紀、か……)

神候補(あの後、回復した本人からも話を聞いたところによると、難波笑美があそこまで執拗にきらりちゃんを狙ってきたのも、姫川友紀の存在があったかららしい)

神候補(他の能力者を倒すことで、自分が“使える”人間だということを証明して、友紀の仲間に加えてもらうため――)

神候補(言い換えるなら、姫川友紀の敵に回らないため、「姫川友紀に殺されないため」に、一人でも多くの能力者を倒そうとしていた、ということらしい)

神候補(そこまで人を動かすとは……一体、どれほどの相手なんだ?)

神候補(もしそんな相手と戦うことになったら、夕美は果たして…………)

……


神候補「うーむ……」カタカタカタカタカタカタカタ...

神候補(スケジュール調整はぶっちゃけ無理だな……既にいくつか予定が入ってしまっているし、今後のことを考えたら、それを無理矢理変更するのはかなり難しい……)

神候補(と、なると……どこかで、件の『最強の能力者』とかち合うことも覚悟しておかなきゃならない、か……)

神候補「ええい、考えていても仕方ない、今は仕事だ仕事! 何か新しい芸能ニュースは……」ポチットナ


『――XX日の午後XX時頃、タレントの高峯のあさん(24)が何者かに襲われ、喉に全治四週間の怪我を負う事件がありました』

『高峯さんの所属事務所は、この怪我が回復するまでの間、高峯さんの芸能活動を一時的に停止することを発表しており、警察は傷害事件として調査を――』


神候補「……!?」

バタバタバタ...
夕美「神候補さんっ!」ガチャッ バーン!

千枝「あのっ、のあさん、のあさんがっ……!」オロオロ

神候補「落ち付け二人とも。こっちも今見たところだ」端末ポチポチ

夕美「ねえ、あれって……もしかして、能力者との戦いで……?」

神候補「まあ、十中八九そうだろう。だが……脱落はしてないな。まだ能力者として、エントリー情報が残ってる」

神候補(しかしさっきのニュース……負傷したのは喉と言っていたよな。となると……今、能力を満足に使えなくなってる可能性が高い?)

千枝「じゃ、じゃあ今、どこに入院してるかわかりますか?」

神候補「この端末から位置情報を辿ればすぐだ」

夕美「わかったよっ! じゃあ――」

神候補「ああ、つまり――」

神候補「トドメを刺すなら今がチャンs――」

夕美「すぐにお見舞いに行こうよっ!」


二人「「…………」」

夕美「……神候補さん、今何て?」

神候補「……いや別に」シラッ

夕美「怪我人に追い討ちをかけようだなんて……いくらなんでもちょっとひどいよっ!」

神候補「お前はこれがバトルロワイヤルだって自覚はあるのか?」

夕美「そんなの関係ないよっ! ねっ、千枝ちゃん」

千枝「神候補さん……ひどいです……」ウルッ

神候補「」ゴフゥ

千枝「えっと、端末の地図によると……のあさんが居るのはこの病院みたいですね!」

夕美「この病院は…………」

千枝「? 夕美さん?」

夕美「……ううん、なんでもない。それじゃ、お見舞いに行こっか」

千枝「お花と果物はばっちりです。行きましょう!」

神候補「」

夕美「もう、ほら、神候補さんもはやくっ!」グイグイ

神候補「はっ。え、あ、おう……? あれ、なんだか財布が前より軽く……」

 ―病院内

...ピピッ ピピピッ ピピピピッ ピピピピッ

夕美「端末が反応してる……近いよ」

千枝「夕美さん夕美さん、病院の中ですよ」

夕美「あ、ごめん、そうだったね」ピッ

夕美「……あった。『高峯のあ』……この部屋だね」

千枝「のあさん……大丈夫でしょうか……」

夕美「それを確かめに来たんだよっ」

夕美「それじゃ、えーと……お邪魔しまー――」ガララ


「――それ以上近寄るんじゃあありませんよ!!」

千枝「」ビクッ

夕美「」ビクッ

痩身の神候補「まったく……こちらが弱ったと思って、ハイエナまがいがぞろぞろと……!」

痩身「しかし、そんな方法で勝ち星を取ろうというのなら……地獄に堕ちてでも、最初の一人は道連れに脱落させます」コォォ...!

痩身「そうなりたくなければ、今すぐ引き返すことですねえ!」

夕美「やっ、待っ、ちょっ、ちょっと待ってください! 私達はただ、のあさんのお見舞いに……」

痩身「信用できるものですか! さあ、さっさと帰りなさい! さもないと……!」

千枝「きゃっ……!」

神候補「まあ待て痩身」

夕美「あ……神候補さん」

神候補「落ち付け。こんな所でやり合う気か」

痩身「あなたは……お久しぶり、と、そう言うべきでしょうかねえ」

神候補「おう痩身。初戦では世話になったな。……で、それとこれとは話が別なんだが」

夕美「か、神候補さん、その言い方だと全然別にならないよっ」

神候補「やかましい。えー、で、だ」

神候補「こいつらが純粋に見舞い目的なのは嘘じゃない。だが、お前が信用できないと言うのもわかる」

神候補「だから、俺達はこのまま帰るにしても、せめてこっちの子――千枝ちゃんだけでも、高峯のあの見舞いをさせてやってくれないか。この子は能力者じゃない」

痩身「…………いや、しかし……」

のあ「かまわ……ないわ……」コヒュー...

痩身「のあさん……!?」

夕美「え……? 今の、声……」

のあ「彼女は……そ…な卑怯な……手を、使う子では……ないわ……」ヒュー コヒュー

のあ「それに……こうなったのは……すべて、私の責任なの…から……貴方が……そうまで、しなくて……いい……」ヒューッ ヒューッ

痩身「わ、わかりました、わかりましたから無理に喋らなくて構いません! 今は喉を休めてください!」

痩身「…………彼女がこう言っていますから通しますが、もし何か変な真似をしたら」

神候補「わかってる。こっちも、こんな場所で下手に騒ぎを起こす気はない」

痩身「……フン」スッ

千枝「……のあさんっ!」タタッ ヒシッ

のあ「……よく……来てくれ…わ……こんな状態で……わる…わね……」ナデナデ...

千枝「……!」フルフル ギュゥ...

のあ「…………」ナデナデ

夕美「のあさん……!」

夕美(ひどい……あんなに綺麗な声だったのに……こんなに、掠れて……)

夕美「いったい……誰がこんなこと……!」

のあ「……姫川……友紀…………」

神候補「!」

のあ「この傷……は……彼女と……戦っ………結果、よ……」

神候補(やっぱりその名前が出てくるか……!)

夕美「姫川友紀……? その人、笑美ちゃんの時も……」

神候補「もしよければ……その時何があったか、教えてもらえないか?」

痩身「ふん、見舞いと言っておいて、結局情報をたかりに来ただけですか?」

神候補「俺の方は元よりそのつもりだが?」

痩身「ムッ」

神候補「何だ」

神候補s「「…………」」ズズズズズ...!

夕美「ちょっ、ちょっと、こんなところで睨みあわないでくださいよっ!」

のあ「かまわないわ……私の方も……そのつもり……だった、から……」

夕美「のあさん……」

のあ「あなたも……死にたくないなら……聞いて、おきなさい…………まあ、どれほど参考になるかは……わからない、けれど……」

のあ「……姫川友紀は……こと、戦いにおいては……一切の容赦がないわ……」

のあ「私が駆け付けた時も……既に倒した能力者に、トドメを刺そ…と……していた……」

夕美「そんな……!?」

痩身「……その脱落者を助けようとなどしなければ、そんな手傷を負うことも無かったでしょうに……」

のあ「私の……意志よ……」

痩身「ええ、わかっていますよ」

神候補「続けてくれ。姫川友紀は、どんな能力を使ってきた?」

のあ「…………わから、ないわ……正直、能力を……使っていたのか、どうかさえ……曖昧で……」

のあ「ただ、彼女は……>>+2を、武器として使っていたわ……」

すいませんちょっと離席してました
続行します

………
……


――ギュオ!

バッシィッ!!

のあ「っ……!」ビリビリ...!

友紀「ナーイスキャッチ! うん、やっぱりやるならちゃんとしたボール使わないとねっ!」

友紀「さあ、ほらほら、もっと投げてきてよ!」

のあ「お望み通り……にっ!」ブンッ...!!

バシィッ!!

のあ(……膝狙いの球をこうも容易く……)

友紀「へへっ、やるねぇお姉さん! じゃあ――あたしもちょっと本気出していくよー……っと!」

――ッギュゴォッ!!

のあ「――――!!」サッ

ゴシャァッ! バキィッ!!

のあ「……!? エアコンの室外機が……!?」

友紀「あれ? ちょっとちょっと、避けたらキャッチボールにならないでしょ!?」

のあ「…………」

友紀「ま、良いけどね。ボールなら――」ゴソゴソ

友紀「まだ持ってるしね♪」ボトボトッ コロコロコロ

のあ(この剛速球……間接攻撃として十分に脅威ね。もたもたしていると離脱できなくなる……!)

友紀「次、行っくよーっ!♪」ザッ...!

のあ「ええ……こちらも行くわ」ス

のあ(“折り鶴”を“鶴のモンスター”に変える能力!)

のあ「A――――――♪」パァァァァァ

化け鶴s「キエェェェェェェ!!」バサバサァッ!

友紀「おわっと!?」

のあ「La――――、~~~~♪」

のあ(行きなさい。まずは……あの子を!)

化け鶴s「クアッ!」コクッ

バササササササッ!!

友紀「なるほどね、それがお姉さんの能力ってわけか。……ふんっ!」ギュゴォッ!!

メギャアッ!

化け鶴A「ギエヤァアァァッ!」ドシャァッ

友紀「あれっ? 案外脆いね!」

のあ(……! でも、その隙に……!)

化け鶴B「クァ――ッ!!」バササッ

化け鶴C「キァ――ッ!!」バサササッ

友紀「っと……!」

化け鶴D「クワワッ!」シャッ――ガシッ

モブ「」ブラーン

のあ(その子を早く、安全圏へ……!)

化け鶴D「クァッ!」コクッ バササッ

友紀「……ふーん? まあいいや」

友紀「さて姫川選手、第三投……じゃなかった、四投目だっけ? を、振りかぶってぇ……」ザッ...

友紀「――投げましたぁっ!」ギュォッ!!

のあ(相手の能力はまだ未知数……けれど、ボールの投擲による、遠距離攻撃が主体……? それなら、私の能力との相性は悪くない……)

化け鶴B・C「!!」サッ

のあ「LaLaLa――――……♪」スッ...

友紀「んもー、すばしっこいなぁ! なら……これならどうっかな!?」グアッ!!

のあ「~~~~……♪」

のあ(速いけれど、見えないわけじゃない。かわせる――)スッ

ゴォッ...クンッ

のあ(至近で、球が曲がっ――!?)

――ガッ!

のあ「くっ……!」クラッ...

友紀「じゃーん! へっへー、どう? あたしの持ち球はストレートだけじゃないんだよっ!」

友紀「さぁて……」チラッ

化け鶴D・モブ「「」」バササッ...

のあ(!? あちらを――いけない、能力を維持しなければ……!)

のあ「……A――――♪」

化け鶴B・C「!!」バサ――

友紀「なーんてねっ」ザッ...!!

のあ「!!」

友紀「投げるだけが牽制じゃないってね♪」ニッ

のあ(あちらに意識を向けたのは囮……! 遠距離戦を意識させておいて、隙を突いて一気に――!)

ドスッ! グォォン

のあ「っ……!!」ゴホッ...!

友紀「――お姉さんの能力は、“歌うこと”が限定条件みたいだね?」

友紀「なら、お姉さんの弱点は喉か肺だねっ! 呼吸できなくさせれば、能力は使えないってことは知っている……」ヒョイッ...ブンッ

ドガァ―z_ン!

のあ「っく……けほっ……!」ゼェゼェ

友紀「さて、打線を抑えたら、あとはこっちが点を取るだけだねっ!」

化け鶴B・C「――ッキシャァァァァッ!!」バサァッ!!

友紀「っわ!? あれ、おっかしーなー、限定条件はもう満たされてない筈なのに……」

化け鶴B「クァ――!」

友紀「ま、いっか。“捕獲の才”」スッ ガシッ

化け鶴B「クワッ!?」

友紀「で、“絞め落としの才”――っと」キュッ

化け鶴B「グワッ」ゴキャッ

化け鶴B「」ガクッ

友紀「さーてっ、スリーアウトまであっとひっとりっ♪ あっとひっとりっ♪ いや一羽か! あはははは!」

化け鶴C「ク...キュアァァァッ! キュァァアアァアァァッ!!」バサッ バササッ

友紀「あーだめだめ、逃がさないってば」スッ...

...ガシッ ゴキャァッ!

化け鶴C「」グタッ...シュゥゥゥ ポテッ

友紀「ん? へー、これ元々は折り鶴だったんだ。凄いね!」

友紀「ま、何はともあれバッターアウト! チェーンジ……って、あれ?」

のあ「……ン~~、ンン――――♪」ゼェゼェ

化け鶴E「クァ!」バササッ!

友紀「いつの間に……。あー、今のは囮だったのかー。喉潰したつもりだったけど、鼻歌とかでも大丈夫なんだねー」

友紀「うーん、空飛ばれるとちょっと面倒かなぁ……っと!」ギュッ!!

ヒュドッ!!

のあ「っく、ふっ……けほっ、ン、フン~~……♪」

化け鶴E「クァッ、クァァ...!!」バサバサバサッ...

友紀「駄目かー。もうこの距離じゃ致命打にはならないね」

友紀「……あー、そっか、なるほど。歌には息継ぎとかで間があるから、多少なら歌が途切れても能力がもつんだねっ」

友紀「ま、いいや。今回はコールドってことで! おねーさーん! 次の試合、楽しみにしてるからねーっ!」ブンブン

のあ「…………」コヒュー...ヒュー...

のあ(あれが……姫川友紀……参加者の中で、最大最強の能力者……!)

………
……


のあ「それで……この様よ……辛うじて、気絶はせずに済んだ……けれど…………私は、その場を離れることしか……できな…ったわ……」ヒュー...ヒュー...

千枝「のあ……さ……」ギュゥ...

のあ「……ごめんな…い……怖がらせて……しまったわね……」ナデ...

神候補「……わかった。喉を痛めているのに、無理に話させて悪かった。ありがとう」

のあ「別に……貴方のためでは……ないから…………」

神候補「…………」

夕美「…………」

夕美(そんな……そんな怖い人が、居るんだ……)ギュ

痩身「……気が済んだなら、帰ってもらえませんかねえ。彼女には、早く喉を治してもらわなければ困るんですよ」

痩身「このままでは戦いどころか、芸能活動すらままならない……!」

夕美「な、何とかならないんですかっ? えと、ほら、戦いで負った傷がアイドルとしての活動に影響する時は、それを治せるんじゃ……」

痩身「…………」

夕美「できないん……ですか……?」

神候補「……のあさんの、能力の限定条件が“歌”だから。そうだな?」

痩身「……ええ。この場合は、芸能活動に差し障る負傷ですが、過干渉になりかねないため私の手で治療できないんですよ」

夕美「どういうこと……?」

神候補「つまりだ。喉へのダメージが、芸能活動にもだが、のあさん自身の能力にも深く関わっているってところが問題なんだ」

神候補「この状態を、他の能力者――たとえばこのダメージを与えた姫川友紀の立場から考えてみろ」

神候補「一度目の戦いでは逃げられこそしたが、限定条件を満たせなくなるほどのダメージを与え、もう一度戦えば今度こそ倒せるだろう、というところまで相手を追い詰めた」

神候補「なのに、それが相手側の担当神候補の手によってあっという間に回復され、せっかく作った有利な状況をあっさり帳消しにされてしまったとしたら……それは不公平だろう?」

夕美「そ、それはまあ、わかるけど……」

神候補「だからだ。前回の怪我の治療もそうだが、俺達はあくまで表面的なところしか治せない。公平を期すために、戦いで疲弊し、消耗した体力は、次の戦いまでに能力者が自力で回復しなければならない」

神候補「今回ののあさんの負傷もそれと同じだ。限定条件が別の何かなら喉の怪我は治せただろうが……限定条件に関わる部分に、戦いの中で負わされたダメージなら、それは自力で回復しなければならない」

神候補「……勝手に解説してしまったが、そういうことなんだろう?」

痩身「ええ……あなたが御高説した通りの理由で治療の禁止通達が来ました。この活動休止期間中の補填は、後ほど別途で行うという条件も付いてはいましたがね」

神候補「そうか。……ま、今回はまさしく、限定条件がネックになったわけだ。喉の問題だけに」

約全員「「「「…………」」」」

神候補「…………なっ、なんだよっ、落ち込んだ場の空気を和ませようとしただけだろ!? 悪いか!?」

夕美「……神候補さん、もういいからそっち座っててくれる?」

神候補「はい」

神候補「…………」シュン...

夕美「神候補さんのことはもう放っておくとして……のあさん、私達、一応立場上は敵同士なわけだから、こういうことを言うのは変かもしれないけど……」

夕美「……早く良くなってね。のあさんの歌を、待ってるファンの人達だっているんだから」

千枝「千枝……のあさんの歌、好きでした。とっても、とっても声がきれいで……千枝もいつか、こんな風に歌えたらって、ずっと思ってたんです……」グスッ

千枝「早く良くなってくださいね! 千枝、時間がある時はいつでもお見舞いにきますからっ!」

のあ「ふふ……二人とも……ありがと…ね……その気持ちだけでも……とても嬉し…わ……」ヒュー...ヒュー...

のあ「けれど……自分達のことを疎かにしては……だめよ。……特に……相葉夕美」

夕美「私……?」

のあ「見舞いに来て…れたお礼に……警告して……おくわ…………」

のあ「もしも、姫川友紀と出会…たら……迷わず、逃げなさい。今のあなたでは……彼女には勝てない……いえ、きっと……そのまま殺されるでしょう」

夕美「…………!」ゴクッ...!

のあ「あなたが……この戦いの、果てに……どんな願いを抱いて…るのかは……知らないけれど……」

のあ「死んでは……元も子もないわ……だから、逃げなさい。姫川友紀と……けして、戦っては……いけない……」

夕美「……わ、私、は……」



⇒夕美の選択:>>+2(いや戦う、素直に逃げる、対話を試みるetc)

夕美「私は…………私は、逃げないよ」

のあ「…………」

神候補「…………!」

千枝「夕美さん……?」

夕美「私のプロデューサーさんが教えてくれたことなんです……挑戦することから、逃げちゃ駄目だって。たとえ負けても、自分は勇気をもって挑戦できる人間だってことがわかっていれば、次も恐れず挑戦できるから」

夕美「失敗も何もかも、次に繋げていけるから」

夕美「私の初めてのライブバトルの時言ってくれたあの言葉が……私のアイドルとしての原点なんです」

夕美「それを……私はそれを、裏切るわけにはいかない。だからっ……!」

のあ「けれど……死ねば、次も何もなくなるわよ」

夕美「それでもっ……!」

夕美「私だってアイドルだよっ! 私だけじゃない、アイドルとして活動してるなら、ステージの裏にどんな苦労があるかくらい、みんな知ってるはずだよ!?」

夕美「なのに、その友紀さんは……のあさんの喉を、何の躊躇いもなく狙ったんでしょう? それが限定条件だからって……! 歌声を磨くことが、どれだけ大変か知ってるはずなのに……」

夕美「歌えなくなることが、アイドルにとってどれだけ辛いことか知ってるはずなのに……!!」

のあ「………………」コヒュー...

夕美「……私、初めての戦いの時、すぐそばで見てたから知ってるよ。歌ってる時ののあさんは、とっても綺麗で、華やかで……」

夕美「私じゃ、どれだけ頑張ってもこういう風にはなれないなって、そういう場所に居るんだって分かって……!」

夕美「でも、同じ場所じゃなくても、私には私なりに、のあさんと並べるような場所があるはずだって、そう思って! だから頑張ろうって思えたんだよっ!」

千枝「夕美さん……」

夕美「なのに……あんなに素敵な歌を、そんな、簡単に奪ってしまえるなんて……私、私っ、その友紀って人が許せないよ!」

のあ「私の敵討ちのつもりなら……やめておきなさい。……私はまだ、脱落したわけじゃない……この借りは、いずれ……自分で返すつもり……なのだから……」

夕美「……仇を取りたい、っていう気持ちが、ないとは言えないかな」

夕美「でも……うん。のあさんが自分で晴らす分の気持ちを差し引いても、私の気持ちは変わらないよ。私は……逃げない」

夕美「姫川友紀さんと、戦うよ」

のあ「……そう。忠告はしたわ…………」

夕美「……ありがとうございます。ごめんなさい」

のあ「謝る必要は……ないわ……それが貴方の選択なら……そこに後悔がないのなら……あとは、勝利も敗北も……何もかも全て、貴方のものだから。自分のものは……自分の好きなようにすればいい……」

のあ「……話し疲れてしまったわ……少し、寝かせてくれるかしら……」フゥ

夕美「それじゃあ、今日のところはこれでお暇しますね。お大事に。……行こう、千枝ちゃん、神候補さんも」

千枝「あ、お、お大事にっ! また来ますから! 絶対来ますから!」タタッ

のあ「…………」ヒラヒラ

神候補「……それじゃ、お大事に。お前も、しっかりやれよ」スッ

痩身「待ちなさい」

神候補「?」

痩身「のあさん、彼らを見送りに、少し席を外しますね」

のあ「どうぞ。そもそも貴方は……私に、少し張り付き過ぎよ……たまには、一人で羽を伸ばさせてくれないかしら……」

痩身「心配は迷惑の言い訳になりませんね。ええ、気を付けます。……では、行きましょうか」

神候補「お、おう……」

神候補(二人は先に行ったか……)

神候補「…………」コツ、コツ、コツ...

痩身「…………」カツ、カツ、カツ...

神候補「……おい」

痩身「彼女、本気だと思いますか」

神候補「は?」

痩身「あなたの担当の、相葉夕美さん、でしたね。彼女の言葉は、本気だと思いますか?」

神候補「……あいつは、思っても居ないことを言うような性格じゃない。まあ、おたくののあさんの話を聞いて、一時的に興奮しての言葉かもしれないが……」

神候補「それでも、ああまでハッキリ言った以上は、きっと本気だ」

神候補「敵であるはずの他の能力者を見舞ったことも、そいつが受けた非道への怒りも、自分の担当プロデューサーへの想いも……」

神候補「――ああ、きっと全て、あいつにとっては嘘偽りのない感情だろう」

痩身「そうですか……」

痩身「止めなくていいのですか? この際、互いの立場は無視して忠告しますが……うちののあさんがあそこまでやられた相手に、彼女が勝てるとはとても思えませんがね」

神候補「そうなんだよなぁ……俺もそこが悩みどころでな」

神候補「あいつ、一度そうと決めたら、そうそう意見を変えやしない。踏まれてもむしられても、根っこの部分が残ってる限り必ずもう一度立ち上がろうとする。言い方悪いが、その辺は花っていうより雑草並だ」

痩身「あなたも大概遠慮なく言いますね」

神候補「だが、枯れて欲しくないのは本音だ。散ってもまた咲く花ならいい、だがどんな花でも枯れたらそこまでだ……そうなると、根底の、土壌ごと引っくり返すくらいのことをしなきゃならんのかなぁとか考えてな……」

痩身「……? まあ、その辺りはあなたの領分ですから、これ以上口を出す気はありませんがね。それよりも、本題はこちらです」スッ

神候補「端末? なんだそれは?」

痩身「天界の匿名掲示板『ゴちゃんねる』です。名前の「ゴ」は「ゴッド」の「ゴ」だとか」

神候補「管理人はまさかあの神かよ。ていうかそんなことは正直どうでもいいんだが、それが何だっていうんだ?」

痩身「その掲示板の中でも、これは、既に戦いから脱落し、天界に戻った元神候補達が……より正確に言えば、姫川友紀によって脱落させられた元神候補達が書き込んでいるスレッドです」ポチポチ スッ

神候補「何……?」サッ ポチポチ


……

【おのれ】次代の神を決める戦いの敗因を考察するスレ【あの糸目】Part2(62)

……


神候補「……このスレタイはもうちょっとどうにかならなかったのか。というか糸目って誰だ」

痩身「糸目の神候補、私は直接面識がありませんが、姫川友紀の担当者だそうです」

痩身「このスレッド。当初は脱落者がただ愚痴を吐くだけのスレでしたが、被害者の数が増えてきたためか、最近は姫川友紀によって脱落させられた神候補達の書き込みが盛んになっています」

痩身「特に……この辺りを読んでください」

神候補「えーと、なになに……『姫川友紀の能力について』?」

……

『ていうか、あの姫川友紀の能力って何なの?
 うちの担当アイドル、ワケも分からないうちに負けてたんだけど……可愛い子だったのにボコボコにされてさ……あれはちょっとショックだったわ……』


『>>XX
 お前能力すら使われずに負けたんじゃね? あと下げろ

 まあ、気持ちもわからんではないけどな。あいつの強さマジで意味わからん
 とりあえず俺は、あいつの能力は“>>+2(※)”じゃないかと思ってるんだけど、他に姫川友紀に担当やられた元神候補居る?』


『ユッキの髪をモフモフしたいおおおおおおおおおお』


『ファッキューユッキ
 ウチの子もあいつにこっぴどくやられたよ……生き残り勢、誰か仇取ってくれ
 あいつの能力は多分“>>+3(※)”か“>>+4(※)”だから、タネさえわかってれば何とかできると思う』


『ユッキのスパッツハァハァ』


『(この書き込みは削除されました)』


『いや、俺の担当が負けた時は“>>+5(※)”みたいだったぞ?
 ていうかなんでこんなに情報がバラバラなんだよ。そんなに応用力高い能力ってことなのか?』

 ……
 …

……


神候補「……何だこりゃ」



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※変則安価で、ユッキの能力の候補を募ります(対象:>>+2~>>+5)
安価内容は「AをBに変える能力」でも、「A」もしくは「B」の候補だけでも可
今回は変則なので、どの安価を採用するか、安価で出た内容をその通り採用するか等も全て秘密・未定です。どんな能力になるかは劇中で明かされるまでお楽しみに、ということで。
ただし出された安価の内容は、出来る範囲で最大限尊重するつもりでいます

神候補「……何だこりゃ」

痩身「見ての通りですよ。これから彼女と戦うつもりなら、何かの参考にでもしてください」

神候補「とか言われてもな……そもそも情報が錯綜してる上に、匿名掲示板だろう? 糸目本人やその協力者が、攪乱のために誤情報書き込んでる可能性だってあるんじゃないのか」

痩身「十分ありえるでしょうねえ」

神候補「おい」

痩身「その辺り、情報の真偽判断はあなたの責任です。そもそも、敵対関係にある相手から支援をもらっておいて、一体何の文句を言うつもりなのですか」

神候補「支援というより、余計な情報与えて混乱させようって意図としか思えんぞ」

痩身「どう受け取るかはご自由に。それもあなたが判断することです。素直に考慮に入れるもよし、攪乱と見てすっぱり無視するもよし」

痩身「……ただ、誤解の無いようひとつ言っておくならば――」

痩身「彼我の立場や利害関係に基づいたシビアな思考ができ、しかし同時に感情論を完全に排することもできないというもどかしさ」

痩身「……あなたならそれを理解できるものと思っていましたが、どうでしょうか?」

神候補「……なるほど」

神候補「つまり一言で言うと――見舞いの礼がしたいけど立場上は敵、敵だけど礼はしたいという理性と感情の折り合いをつけた精一杯のデレがこれというわけだな。相手が野郎じゃちっとも萌えんが、理解はした」

痩身「張り倒しますよ」

神候補「まあ、立場が逆なら多分俺も同じようなことをしただろう、とは言っておく。直接的な礼をするには抵抗があるが、『役立つかもしれない』程度のものなら贈っても構わないだろう、とな」

痩身「まあ単純に、私達がこれ以上の有益な情報を持っていないということでもありますが……仮に持っていても、私の性格上、そこまでを晒す判断は下せませんねえ」

神候補「その、今私最大限譲歩してるんですよアピールはやめろ。まあ、この情報は素直に検討させてもらうとするよ」

痩身「ご自由に。どうせ戦うなら、姫川友紀の能力の正体を突き止めてから負けるくらいのところまでは粘ってほしいですねえ」

神候補「タネが割れたら高値で売り付けてやるから安心しろ」

痩身「…………フフ」

神候補「……くく、じゃあな。次会う時は敵同士だといいな」

痩身「健闘を祈っていますよ。ええ、健闘してくれた方がこっちにとっては得ですから」

神候補「弱ってるところを襲わないでやった貸しを忘れるなよ」

神候補(さて、掲示板の情報をまとめると……)

神候補(『物のスピードを操る』『物の動き方を操る』『触れた物の重力を操る』『野球ボールを音速で操る』『触れた物の弾性を操る』etcetc...)

神候補(速度も『動き』の一要素と考えるなら、『物体の動作に関する能力だ』、という情報が一番多いか? 重力だの弾性だのといった、それとは少しズレた情報もあるが、これは能力の別の側面なのか、それとも敵側の撹乱か……)

神候補(……実際のところは、戦って直に見てみないと分からないか。だが、あの高峯のあをあそこまで追い込んだ相手だ)

神候補(今の夕美をそのまま戦わせたら――まず間違いなく、負ける、な)

神候補(ただ負けるだけならいい。その後の芸能活動に支障が出ないよう、傷跡なんかはちゃんと消して、最低限のアフターケアはする決まりだ。どんな重傷を負っていても、アイドルとして活動できる状態までは絶対に回復させてやる)

神候補(だが……もしも殺されたら。いくら天界力を使っても、死んだ人間を蘇らせることはできない)

神候補(のあさんが言っていた通り……死んだら次も何もない。そこまでだ)

神候補(だが、話に聞いた限りでは、姫川友紀はそこまでのことをしてくる相手だ。穏便な負け抜けはまずできないと考えた方がいい)

神候補「今の力で勝つのはまず無理だ……だが、やる気になってる夕美をどう止める……? それこそ、本当に、決意の土壌から引っくり返すくらいのことをしなければ、あいつは――」

……


夕美「さて、と。途中でお花屋さんとか、スーパーセンターの園芸コーナーで売ってる種を買って帰ろうか。今度の相手は強敵らしいし、武器は少しでも多い方がいいからねっ」テクテク

千枝「千枝にできることなら何でも言ってくださいね! 夕美さんが無事に勝てるように……精一杯応援しますから!」テクテク

夕美「ふふ、ありがとっ。千枝ちゃんがそう言ってくれるだけで、すごく助かってるよ♪」

千枝「えへへ……」

千枝「…………」

千枝(つないだ夕美さんの手……少し、ふるえてる……? やっぱり、夕美さんも怖いんでしょうか……)

千枝(……でも、それならなおのこと、千枝は笑顔でいないとだめですよね! 千枝にはこれくらいしかできないから……夕美さんに、たくさん元気をあげられるように!)

千枝「夕美さん……夕美さんなら、きっと勝てるって、絶対大丈夫だって、千枝、信じてますから!」ニコッ

夕美「…………!」

夕美「……うん、ありがとねっ、千枝ちゃん」ナデナデ

千枝「えへへっ」

カキーン ソッチイッタゾー ワー

千枝「あ、見てください夕美さん、公園で野球やってますよ」

夕美「あ、ほんとだ。最近はボール遊び禁止になってる公園も多いみたいだけど……ここはそういうのも大丈夫なんだね」

千枝「男の子も女の子も、皆で一緒に遊んで……楽しそうですね」

夕美「そうだね……ん?」


「さぁて、それじゃあここらで一発、お姉さんが逆転ホームランを決めちゃうよー!」

少年投手「やらせるもんか! ――それぇっ!!」ブンッ

「甘いっ!」ッカキィ――――ン!!

少年外野手「くっそ、高……!」ダッ...!

少年外野手「あー……だめだ、場外ホームラン……」

子供A「おねーちゃんすげえ!」

子供B「おねーちゃん格好良い!!」

「へっへー、見たか! あたしのバッティングセンス!」

......ガシャァンッ

夕美「あっ」

千枝「あっ」

子供達「あっ」

「へっ?」

千枝「……あの女の人、子供と一緒に怒られてますね」

夕美「……場外ホームランで窓ガラス割ってお説教なんて、そんなマンガみたいなシーン初めて見た」

千枝「千枝もです。でも、他の子達を庇って、皆の先頭でお説教聞いてますよ。ドジだけど、凄くいい人みたいです」

夕美(自分より年上っぽい人に向かってドジとか、千枝ちゃんも結構遠慮なく言うようになったね……)


「……いやー、ごめんね皆! 今回は許してもらえたけど、皆も気をつけなきゃ駄目だからねっ!」

子供A「心配しなくても、あんなとこまで飛ばせるのはおねーちゃんくらいだよー」

「ふふふ、まあねっ♪ そこは大人の意地の見せどころってやつだよ!」

子供B「えーっ、おねーちゃん、おれらより年上だけどまだ子供じゃん」

「何をぅ!? お姉さんはもう大人だよ!? お酒だって飲めるんだからねっ!?」

少年「うっそだー!」

ワイワイ キャーキャー

「あははははは、……うん?」ヴーッ ヴーッ

ビーッ! ビーッ!

夕美「わっ!?」ビクッ

夕美「あ、神候補さんから借りてた端末が、反応してる……?」ポチポチ

千枝「あ……ゆ、夕美さんっ! あの女の人が持ってるの、もしかして……!」

「んん? ふむふむ?」ポチポチ

夕美「他の能力者が接近中……この位置情報って、まさかっ……!」バッ

「……へえ?」チラッ

夕美(あ、目が合っ――――)





友紀「そこのキミも能力者なんだ?」ニコ





夕美「――――ッ!!?」ゾクッ...!!!

夕美(な、何? 何なの……!?)

夕美(笑顔自体は、あそこの子供達と遊んでいた時と一緒なのに……)

夕美(目が……瞳の、奥が……真っ暗闇を、覗き込んでる、みたいな……!!)ガクガク

子供「おねーちゃんどうしたの?」

友紀「ん? ああ、別に何でもないよっ! さ、子供はそろそろ帰る時間だよー」

少年「えーっ」

友紀「帰らないと、お姉さんがバット持ってお説教しちゃうぞーっ! ほら、続きはまた今度にしなさい」

少年「ちぇーっ。覚えてろよ、次は負けないからなー!」ビシッ

子供「おねーちゃんバイバーイ! また一緒に野球やろうねー!」ブンブン

友紀「うん、まったねー!」ブンブン

友紀「……さて、と」クルリ

夕美「」ビクッ

友紀「えーっと、はじめまして、だね!」

友紀「名前は……(チラッ)相葉夕美ちゃん、か。笑美ちゃんがリストから消えたから、他にも能力者が居るだろうとは思ってたけど、まさかこんな所でばったり出会うなんてビックリしたよー」

夕美「あなたが……姫川友紀さん……!」

友紀「そうだよー? キミは年下みたいだけど、能力者として戦う以上は手加減しないから、覚悟しといてねっ♪」

夕美「…………!」ゾクッ

千枝「ゆ、夕美さん……?」

夕美「……千枝ちゃん、下がって。ううん、すぐここから離れて、神候補さんを呼んで!」ジリッ...

友紀「あはは、そんな身構えなくても、ここで始めるつもりは無いってば。今すぐ始めたら、あの未来のスター選手達を巻き込んじゃうかもしれないしね!」

友紀「だから、そうだね……今夜十時に、ここで待ち合わせ、ってことでどうかなっ?」

友紀「あ、別に――その間に逃げてもいいよ?」ニコ

夕美「…………!」グッ...

夕美「わっ、私は――私は逃げないよっ!」

夕美「最強の能力者だか何だか知らないけど……絶対に、あなたに勝ってみせるんだからっ!」ビシッ

友紀「あはは、期待してるね! それじゃ、また後でねー!」スタスタ...

夕美「…………!!」

千枝「…………夕美さん、だ、大丈夫ですか?」オロオロ

夕美「……ううん、大丈夫。私は、大丈夫だよっ。さ、今夜に備えて、急いで準備をしなくちゃ!」

千枝「は、はい!」

夕美(……向かい合っただけで、すごいプレッシャーだった……あれが、最大最強の能力者……)

夕美(それでも、逃げちゃ駄目だ……私は、あの人と戦うって決めたんだから……!)

夕美(でも、少しだけ……少しだけでいいから……挑戦することから、逃げない勇気を私に頂戴……神候補さん……プロデューサーさん……!)

今回はとりあえずここまでです
現時点での構想だと、このvsユッキ編は安価次第で大きく展開が変わりそうです
こういうのをやってみたいなーとか、色々アイデアも湧いてきてるので、今後ともどうぞお付き合いください
ではでは。

俺も居るよ!(生存感

というわけで。
ちょっと油断している間に一週間以上開いてしまってすいませんでした
ぼちぼち続きを投下していきます

……


ゴソゴソ...

夕美「これと、これも使える、かな? あとは――」ゴソゴソ

千枝「――ってことが、あって、それで……」

神候補「あー、だいたいわかった。ありがとうな、千枝ちゃん」

神候補「それで……夕美。その約束通り、行くつもりか」

夕美「うん」

神候補「……そうか」

千枝「あの……」

神候補「駄目だ」

千枝「ま、まだ何も言ってないですよっ」

神候補「一緒に行くのは駄目だ。今回は相手が相手だ。応援も有り難いことではあるが、不安要素はできるだけ減らしておきたい」

夕美「ちょっと神候補さん、千枝ちゃんを邪魔者扱いしないであげてよ」

神候補「そうは言ってない。いや、言いたくはない。しかしな」

神候補「難波笑美がお前と千枝ちゃんの幻を見せてきらりちゃんを罠にかけたように、綺麗な戦い方をする能力者ばかりじゃない」

神候補「例えば戦闘中に、いきなり千枝ちゃんの方へ攻撃を向けられたりしても、動揺せずにそのまま相手と戦い続けることが出来るか?」

夕美「できるよ」コクッ

夕美「今日の帰り道みたいな、突発的な戦いで神候補さんが居ない時なら別だけど……神候補さんも一緒なら、私がその攻撃を無視したって、絶対に大丈夫って信じてるから」

神候補「…………、」

千枝(……あ、もしかして動揺してるんでしょうか)

夕美「そう言ってたよね?」

神候補「……ああ、いや、まあ、その……なんだ。たしかにそう言ったし、実際そうなったら何とかするつもりではいるが」

夕美「でしょっ?」

神候補「それとこれとは話が別というか……ああもうとにかく、今回はそのくらいヤバい能力者が相手ってことだ!」

神候補「だいたいアレだ。待ち合わせは夜の10時とか言っただろう?」

神候補「そんな時間に俺が千枝ちゃん連れ歩いてたら、待ち合わせ場所に着く前に職質されかないという問題があってだな」

夕美「あぁ……」

神候補「その「確かになー」って顔やめろ。実際、ヤバい婦警が居るんだよこの辺……もうあれには捕まりたくない」

神候補「それを別にしても、そんな時間に連れ出しておいて、万が一本当に何かあったら千枝ちゃんの所属事務所にも親御さんにも申し開きが出来ないからな。そういうわけで、今回は本当に駄目だ」

千枝「そうですか……」

夕美「……うん、そうだね。きっと大変な戦いになるだろうし……できれば、待ってて欲しいな」

千枝「うー……わかりました。でも、終わったら、絶対教えてくださいね!? 千枝、眠くても我慢して起きてますから!」

千枝「絶対、絶対っ、「無事に終わったよ」って、ちゃんと知らせてくださいね!?」

夕美「……! ……うん。勝っても負けても、ちゃんと私の口で連絡するよ。約束する」

千枝「約束ですからね! それなら、……それなら、ガマンして待ってます」...グス

夕美「うん。不安がらせちゃって、ごめんね。……ありがと」ギュ

……


神候補「千枝ちゃん、送ってきたぞ」

夕美「ん、ありがと」

神候補「……本当に行くんだな?」

夕美「うん」

神候補(本っ当に躊躇いなく頷きやがってこいつは……)

神候補「何度も言ったと思うが……勝てる見込みは薄いぞ。下手をしたら……」

夕美「それでも、私は行くよ」

神候補「……元はと言えば、俺の都合に巻き込んだようなものなのに……どうしてお前は、そうまでして戦おうとするんだ?」

夕美「…………」

夕美「私……ずっとね、夢があったんだ。アイドルとして、叶えたい夢が」

夕美「でもその夢は、私一人の力じゃどうしようもできなくなっちゃって……正直言うと、半分くらい諦めかけてたんだけど……」

夕美「でも神候補さんが来てくれて、『自分の力で何とかする』チャンスが見えてきたの」

夕美「きっとこれが、最後のチャンスだから。だから――逃げるわけにはいかないよ」

神候補「それは――その夢は、自分の命を賭けてまで挑むほどのものなのか?」

神候補「死ぬことが、怖くないのか?」

夕美「それは……」

夕美「……怖くない、って言ったら嘘になるかな。ううん、でも……」


夕美「きっとね、私は――既に一回死んじゃってるから」

夕美「私、死ぬはずだったのに、無事に生き延びて……でもその代わりに、とても大事なものを失くしちゃったの」

夕美「夢を花にたとえるなら、今の私は、栄養とかお日さまの光とか、そういう、大事なものが欠けた状態なんだよ」

夕美「このままアイドルを続けても、きっと、綺麗に咲くことはできずに、立ち枯れてしまうだけだと思うから」

夕美「だから、私は戦うよ。他の誰でもない、私自身の夢のために」

神候補「…………」

……

夕美『わかりました。私、やってみます!』

神候補『本当か!? いや、でも一度能力を得たら、取り消しは効かないぞ? 本当にいいんだな?』

夕美『いいんです。私にも……神様にすがってでも叶えたい願いがありますからっ!』

……

夕美『――私が欲しいのはこんなニセモノのプロデューサーさんじゃないよ――!』

夕美『私は絶対に絶対に絶対に本物のプロデューサーさんと一緒にトップアイドルになるんだからぁ――――――――!!』

……

神候補「…………はぁ」

神候補「まったくお前は……そんなにあのPさんとの夢が大事なんだな」

夕美「……えっ。な、なんでプロデューサーさんのこと、神候補さんが知って……」

神候補「きらりちゃんが来た時。後輩から色々と聞かされてな」

夕美「えっ、ちょっ、ま、待って…………わ、私もしかして今、神候補さんには分からないと思ってものすごく恥ずかしいこと言っちゃったっ!?」

神候補「言ったな」

夕美「やっ――無し! 今の無しで! 忘れて! ねっ?」

神候補「ふぅ、やれやれ……『プロデューサーさんは私の太陽です』、かぁ……お熱いねえ……」

夕美「い、言ってない! 言ってないよっ!?」

神候補「言ったも同然だ」

夕美「あうぅぅぅ……」

夕美「うぅ……神候補さんのいじわる……」

神候補「はっはっは、何とでも言うがいい」

神候補「ただ……いいか夕美。お前はさっき、自分は一度死んだも同然とか言ってたが」

神候補「今生きてるその命は、そのPさんがそうまでして助けたかった命だってことだけは絶対に忘れるな」

夕美「……!」

神候補「その想いを踏みにじってまで追いかけたら、それはもう、かつてPさんと一緒に目指した夢じゃあない」

神候補「死んで終わらせるな。そのために戦うな。生きて、いつか夢を叶えるために戦うと約束しろ」

夕美「…………、うん。約束するよ」

夕美「駄目ならここで死んでもいいなんて絶対に思わない。負けても、次の挑戦に繋げるために……」

夕美「絶対に……全力を出し切って、その上で結果がどうでも、ちゃんと生きて帰ってくるから」

夕美「……ここまではっきり言えば安心?」

神候補「おう。その約束、破るなよ。俺達の住む天界があるように、地獄界だって本当にあるんだからな」

夕美「……私、そんなに危なっかしく見えてた?」

神候補「でなきゃここまでクサい台詞は言わん。そんなもん、普段はお前の能力だけで十分だっての」

夕美「もう、ひっどいなぁ。でも……ありがとねっ、神候補さん」

神候補「フン。そこまでの覚悟なら――ああ、俺ももうこれ以上余計なことは言わないさ」

神候補「……悔いの残らないように、な」

夕美「うん……!」

……


 ――午後10時。
 公園の敷地内では街灯の明かりも遠く、青白い月明かりが、足下に濃い影を落としていた。
 五分前を意識して、待ち合わせの場所にやってきた夕美が見つけたのは、


友紀「おいっちにーさんし、にーぃにっさんし……おっ、早いね。もう来ちゃった?」


 ピッチャーマウンドの上で、堂々と準備運動をしている友紀の姿だった。
 十数メートルほどの距離を置いて立ち止まり、夕美は静かに頷きを返す。


夕美「……うん、来たよ。あなたと、戦いに」

友紀「あははっ、やる気バッチリって感じで良いねっ!」ニッ

友紀「あ、でも、約束の10時にはまだ少し時間あるし……あたしの準備運動もまだ途中だしねー」グッグッ

友紀「あたしは時間までもう少しやってるから、その間に、好きな間合いに立ってていいよー。あ、もちろん、いきなり不意打ちしてくれたってそれはそれで構わないけどね!」グイーッ

夕美「……しないよ、そんなこと。だいたい、それ、されても対処できるって言ってるようなものじゃない」

友紀「へっへっへ、まあねー」グッグッ

夕美(……やろうと思えば、どこかに隠れておいて、のこのこやってきた私を不意打ちすることだってできたはず)

夕美(なのに、こんな目立つところで堂々と待ち構えて、今だって、始める前の間合いの取り方をこっちに譲ったりして)

夕美(それだけ……自分の実力に自信を持ってるってことだよね)

夕美(……怖い……でも、でも私だって……!)

夕美「私は……逃げないから。正々堂々あなたと戦って――あなたに勝つから!」

友紀「その意気で頑張ってほしいねー。同じこと言った人は他にもいたけど、みんなてんで駄目だったからねー」

友紀「だから……期待してるよっ!」ニカッ

夕美「っ……!」ゾク...

友紀「さーて、時間だねっ! 準備はいい?」

夕美「うん。いつでもいいよ」ザッ...!

友紀「ふーん、昼間はしてなかったけど、そのマフラー格好良いねっ! あたしも何かそういうの着けてみようかなー」

夕美「友紀……さん、だって、昼の時は持ってなかった物、色々用意してきてるじゃない」

友紀「ふっふっふ、まあねー。それじゃ……プレイボールと行きますか!」スッ...

夕美(来るっ……!)

ログインボーナスも切り替わっちゃったので一旦この辺りで。
ユッキの能力を秘密にしてる分、戦闘描写では地の文入れて、状況説明や伏線ぽいもの置いて行こうかと考えてますが、その塩梅が難しい……
ともあれ、vsユッキ戦の続きは今日中に投下しますので!
ではでは。

「今日」っていうのは、起きてから寝るまでのことだから(震え声
すいませんもう少し(……少し?)後になりますー

……

 最強の能力者・姫川友紀との戦いにあたって、神候補からもらったアドバイスがいくつかある。
 そのひとつは、

神候補『――いいか夕美。まずは、相手の武器と攻撃手段、そしてその手数を見極めろ』

 何故なら、

神候補『それが、姫川友紀攻略の第一の鍵だ』

……

……

神候補『これまで聞いた話だと、野球のボールを使ってくるってこと以外、相手の能力についてはほとんど情報がない』

神候補『相手に正体を悟られにくい能力なのか、それとも、そもそも能力自体使わずに戦っていたのかはわからないが……』

神候補『どんな能力でも、“無”から“有”を作り出すことはできない。“変える能力”の性質上、元となる「何か」が必ず存在する』

神候補『相手の能力の正体を探るためにも、まずは、相手の武器と攻撃手段を、可能な限り把握しろ』

神候補『野球のボールなら、その個数や動きだ。そこに、常識ではありえない何らかの変化や、違和感や不自然さが生じたら――それが、相手の能力の正体に近付くヒントになるはずだ』

神候補『あとは、それらを決して見逃すな』

……

 そのアドバイスに従って、夕美は視る。

夕美(相手の、武器は……!)

 話に聞いた通り、野球のボールだ。
 今、ウェストポーチから取り出して手に握っているのが一個。
 先程の準備運動中、体を捻った時に見えたものを数えておいたが、ポーチ自体が腰の左右と背中側にかけて合計四個あった。
 それぞれに入っているボールは、ポーチのサイズからの目算だが、多くて三個ほどだろう。
 つまり合計十二個。
 また、それらとは別に、

夕美(ポケットにもいくつか入ってるね……!)

 ポケット自体がかなり深いようだ。
 生地の膨らみから見て、おそらく、左右それぞれに三個くらいずつ入っている。
 それら以外、周囲に友紀の持ち物は見当たらない。

夕美(つまり、全部で十八個。もしもそれ以上のボールがどこからともなく出てきたら、そういう能力を持ってるってことだね)

友紀「さあピッチャー、第一投を振りかぶってぇ――」ザッ...!

夕美(攻撃手段はそのまんま、ボールを投げつけること。球速は――)

友紀「――投げましたぁっ!!」――ッゴォッ!!

夕美「――っ!!」

 瞬間、夕美は頬が風に煽られるのを感じた。
 避けるというより尻もちをつくようにして、ギリギリのところで射線上から体をずらす。
 落ちたボールの跳ねる音ははるか後方だ。

友紀「んー、惜しいっ! やっぱり普通に投げたくらいじゃ避けられちゃうかー」

夕美(あ……っぶなかった……! 多分、“見切りの才”がなかったら反応できずに直撃だったよっ!?)

夕美(この無茶苦茶な球速……もしかしてこれがあの人の能力?)

夕美(でも、このくらいならまだ、単純な身体能力だけでもできるかもしれない……)

友紀「ほらほらどうしたのー? 来ないなら、二球目いくよーっ!」ゴソゴソ

夕美(どっちにしても、止まってちゃただの的になるっ!)

友紀「第二球、振ぅりかぶってぇ――投げましたぁっ!!」ギュオッ!!

夕美(――残り16球!)ババッ

夕美(相手の能力はまだわからないけど……)

夕美「――こっちからも攻めていくよっ!」ザッ...!

……

神候補『――お前の腕力だと、相手を気絶させるにはラフレシアの悪臭に頼るしかない。だが、姫川友紀のような秘匿性の高い能力者と比べると、お前の能力はぶっちゃけ色々と不利だ』

神候補『“植物の種”については隠し方次第だろうが、“声を出し続ける”ことで“ラフレシア”に変える能力だ、ってことは、ちょっと戦えばすぐに相手にバレる』

神候補『つまり相手からすれば、お前の能力はそれだけ対抗手段を考えておきやすいわけだ』

神候補『特に姫川友紀なら、のあさんにしたのと同じように、能力のタネがわかれば直接的に潰しに来る可能性は高いだろう』

神候補『能力もわからない相手と、ラフレシアを振り回して真正面からやり合うのはリスクが大き過ぎる。ならばどうするか』

神候補『答はひとつ――“必殺の奇襲”を決まるまで繰り返せ』

……

夕美「見せてあげるよ、私の能力……!」グッ

友紀「おおっ!? 何その構え、もしかして波とか撃っちゃうのっ!?」

夕美「さあ……どうかなっ?」

 そう言いながら、構えた手に隠し持っているのは、ヘアゴムを流用して作ったパチンコだ。
 今回は時間帯を考慮し、夜闇に紛れやすいよう、濃い藍色の物を使っている。
 パチンコと言っても、要は指に引っかけたゴムを引っ張って、そこに引っかけた小さな物を飛ばすだけのごくシンプルものだが、

夕美(狙いを付けずに、ただ真っ直ぐ前に向けて飛ばすだけなら簡単だよっ!)

夕美「はぁぁぁぁぁぁ……!」

友紀「へえ、面白いね! よっしゃあばっちこーい!」

夕美(――今!)

ヒュパッ

夕美(“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!)


“力を溜める”フリで誤魔化しながら声を出し、限定条件が満たされる直前を狙って、夕美は種を発射した。
 何とか波でも打とうとするような身構えから、ゴムを引いていた指をわずかに広げるだけ。パチンコの発射はほぼノーモーションだ。
 そしてこれだけ暗ければ、小さな種などほとんど見えないだろう。
 そうして放たれた種がラフレシアへと変わるタイミングは、

夕美(相手のほぼ目の前!)パァァァ...! ブワッ

友紀「っ!?」

 完全に不意を突いた――と思った直後、夕美は友紀の対処を見た。

友紀「――っとぉっ!」ヒュッ ビシッ!

グワッ

夕美「――ぁああああ――っ!?」

 動作としては簡単、ウェストポーチから取り出していたボールを手首のスナップで投じて、目の前に迫ったラフレシアに下から当てるだけ。
 だが、その明らかに速度も重さも足りないだろう一撃で、

夕美「跳ね上げられた……!?」

 顔面直撃コースだったラフレシアは、友紀の頭上を越えて呆気なくその背後へと落ちた。

友紀「……はーびっくりしたっ! この臭さ……ラフレシアって言ったっけ? なるほどね、これがキミの能力かぁ」

夕美「今のは……!?」

夕美(今のが、この人の能力……!? でも、一体何をどうやって……?)

友紀「ふむふむ……“何か”を“ラフレシア”に変える能力かー」

友紀「何も無いところから出せるわけはないから、見えにくい小さな物から変化させてるのかなっ」

夕美「……さあ、ね」

友紀「それをパチンコか何かで飛ばしてあたしの目の前で変化させた……でも、あたしの対処が間に合ったってことは……」

友紀「能力のオンオフを即座に切り替えられるような限定条件じゃないんだねー。ってことは――」

友紀「――声かな?」

夕美「っ!?」

友紀「能力の発動タイミングを見誤ったってことは、多分、特定の動作を“する”んじゃなくて、“一定時間し続ける”必要があるんじゃないの?」

友紀「で、さっきからのキミの動き見た感じだと、それっぽいのは“声”かなーって思ったんだけど、どう? あってるっ?」ニッ

夕美(……能力を隠せるなんて思ってなかったけど、でも、まさかこんなにあっさり……!)

夕美(こっちはまだ、この人の能力が何なのか全然分かってないのに……!)

友紀「へっへー、その顔を見た感じ、当たってたみたいだねっ?」

友紀「それじゃ、タネがわかったところで――どんどん攻めていくよーっ!」

この筆の遅さよ……('A`
もう少しペース上げたいけどとりあえず今回はここまでですー

お久しぶりです。大変お待たせして本っ当に申し訳ありませんorz
「今日こそは」「今日こそは」と言ってるうちにこんなに間が開いてしまいました
ここしばらくは、アイドルなでなでスレに逃避したり、東郷さん引くためにひたすら青メダル集めたり、小梅ちゃん引こうとして数十kが闇に飲まれたりと色々ありましたが、ようやくどうにか執筆が進んだので投下します

夕美「くっ――!」

夕美(――でも、まだだよっ!)

 夕美はポケットに両手を突っ込み、そこに大量に入れてきた種を掴み取りながらバックステップ。

友紀「おっと、逃がさないよっ!」

 対する友紀は、腰後ろのポーチから両手にボールを取り出し、躊躇いなく一直線に距離を詰めてくる。

夕美(行くよ……“植物の種”を“ラフレシア”に変える能力!)

夕美「あ――――――――――……」

友紀「!」

 限定条件を満たすための発声に反応し、友紀が速度を上げる。
 こうやって声を出し始めた時点で、これから能力を使おうとしていることは相手にバレバレだ。
 つまり相手にとっては警戒もしやすく――彼女のように戦闘能力が高ければ、発動前に潰すことも、発動してから潰すことも容易だろう。
 だが、

夕美(来たね……!)

 緊張はあっても、恐れは無い。
 何故なら、この後退の目的は逃走ではなく、

夕美(迎え撃つよ……!!)

 その為のヒントは、既に神候補から教わっている。

……

神候補『お前の能力は効果の対象を選べる』

 数時間前。夕美の能力について、神候補はそう言った。

神候補『“声を出し続ける”という限定条件を満たした瞬間、お前の周りにある種が無差別に全部ラフレシアに変わるわけじゃない。限定条件の成立と、“この種をラフレシアに変える”という目的意識があって初めて、その種がラフレシアへと変化する』

夕美『それは……確かにそう、だったかな。でも、それがなんなの?』

神候補『ま、百聞は一見にしかず、だ。試しにこれから、“俺の手に乗ってる種”をラフレシアに変えてみろ』

 そう言って差し出された右手の上には、黒い小さな種が一粒乗っている。
 夕美は、神候補の意図がわからないながらに頷きを返し、

夕美『すぅ……ぁ――――――――……』

 間近に悪臭を浴びることになる神候補に配慮して、小さめの声を出す。
 限定条件が満たされるまで声を出し続けると、たしかに、神候補の右手の上に小ぶりなラフレシアが一輪咲いた。

神候補『そのまま、声を出し続けたままで聞いてくれ』

 言いながら、神候補が左の握りこぶしを右手の隣に突き出す。

神候補『今、“声を出し続ける”という限定条件は満たされた状態だ。現に、俺の右手の種は、お前の能力でこうしてラフレシアに変わっている』

 その状態で、

神候補『今度は、“こっちの種”にも能力を使ってみろ』

 神候補が左手を開くと、そこにもまた、別の種が握られていた。
 それを見、存在を認識し、夕美の意識がその種にも向けられた瞬間、

夕美(――!)

 即座、と言えるタイミングで、左手の種もまたラフレシアへと変わったのだ。

……

……


夕美(――私が能力を使おうと思ったら、“声を出し始め”てから“出し続ける”が成立するまでの“間”が、どうしても必要になる)

夕美(でも、既に十分“声を出し続けている”状態からなら――)

夕美(“この種に能力を使う”と意識を向けるだけで、すぐにラフレシアへと変えることができる)

 この応用を教えた上で、神候補は言った。

夕美(声さえ無事なら、どこからでも奇襲が出来る、って)

 ラフレシアの大きさに対して、変える元となる植物の種は非常に小さい。
 ポケットひとつで大量に持ち運ぶことも、目立たないところに隠し持つことも容易だ。
 限定条件さえ満たされているなら、

夕美(いつでも、どこからでも、いきなりラフレシアを咲かせて攻撃することができる……!)

 最初は、姫川友紀と戦うことにあれだけ反対していた神候補も、限られた時間で思い付く限りのアイデアを出してくれた。
 だから、

夕美(ここから“一息”が続くまでの間に――限界まで畳みかける!)

 夕美は、最初の“間”を稼ぐために全速力で後退しながら、一気に距離を詰めてくる友紀に向かって種を掴んだ両手を突き出した。
 陽動だ。
 その手に注意を向けさせた隙に、さりげなく手の中から落とした一粒の種を、友紀めがけて蹴り飛ばす。
 これが、必殺の奇襲、その連打の第一撃だ。

夕美(行くよ――!)


……
 …

 姫川友紀は、敵――相葉夕美の動きを見た。

夕美「あ――――――――……!!」

 敵は、声を出し、バックステップでこちらから距離を取ろうとしながら、ポケットから抜いた手をこちらに向かって突き出している。
 後退速度は遅く、追い付くことは可能だが、

友紀(ちょーっと最初の間合いが遠かったかな。今からだとタイミングが際どいかも)

 能力の発動前に発声を止められればベストだが、そのために、急いで距離を詰めたところへカウンターを食らっては意味がない。
 ここは、能力の発動そのものは見逃し、発声から発動までの間を計ることにして、

友紀「その足で、何を蹴り上げたのかに注意しとこっか!」

夕美「!」

 直後、敵の後を追う自分の目の前で光が生じ、現れたラフレシアがこちらに向かって突っ込んできた。

友紀「そのくらいなら読めてるよっ!」

 左手のボールで対処する。

友紀「邪魔邪魔ぁっ!」

 地面に向かって斜めに杭打つような弾道で、投じたボールがラフレシアを進路外の地面に縫い止めた。
 進路を確保し、そのまま真っ直ぐに行く。
 奇襲に失敗した敵は慌てて距離を離そうとして、

夕美「あ――――ぁあぁぁぁあああぁ~~~~――――……!?」

 何かにつまづき、腕を振り上げ仰向けに倒れかけている。

友紀(あーあー、隙だらけだねー)

友紀(んー、ここからならボールを投げても当たるだろうし、今のうちに一気に距離を詰めて確実に仕留めてもいい)

友紀(さて――)

 どうするか、と考えながら次の一歩を踏み出す。
 ――その一歩が余計だった。

友紀「……!?」

 友紀は見た。
 正面、敵は崩れかけた体勢を立て直してこちらを睨み、また発声も途切れず続いている。

友紀(さっき転びかけたのは、こっちを油断させるための罠? なら狙いは――)

 何だ、と思ったその瞬間。
 一歩を踏んだ足元を、能力の発動を示す無数の発光が埋め尽くした。

友紀「!!」

 地雷のごとく、ラフレシアが一斉に咲き誇る。
 緊急回避として、

友紀(――“跳躍の才”!)

 敵に接近しようとしていた動きが助走代わりになった。
 花に足を取られる前に、全力のジャンプで空中へと離脱する。

友紀(あっぶない危な――いぃ!?)

 それを出迎えるように、頭上からさらに無数のラフレシアが降ってきた。


……
 …

 夕美は、跳躍した友紀が自らラフレシアの天幕に突っ込んでいくのを見た。

夕美(上手く行った……!)

 連続攻撃の仕掛けは簡単だ。
 ポケットから掴み出した種のほとんどを、わざと下に零して後退し、そこに相手を誘い込んだ。
 さらには、もう一方の手に握り込んでいた種を上に投げあげ、空と地面からの挟撃を狙ったのだが、

夕美(さっきはちょっと危なかった……本気で転びそうになったもんね)

 まあ本当に転ぶ前に体勢を立て直せたのでセーフ。セーフだ。
 とにかくこれで、

夕美(身動きの取れない空中なら、かわすこともできないはず……どう!?)

 ――だが、

友紀「――なぁんのこれしきぃっ!」

夕美(右手のボール……!)

 友紀は、空中で強引に投球体勢に入った。
 完全な直撃軌道にある、直近のラフレシアに向けてボールを叩き付け、

夕美(いくつも巻き込んで……まとめて吹っ飛ばした!?)

 ラフレシアのサイズが災いした。
 その大きさ故に、ボールをぶつけられた一輪だけではなく、それにぶつかった他のラフレシアまでまとめて弾き飛ばされたのだ。
 そうして作ったスペースに、友紀は無事に着地してみせる。

友紀「セェーフ……!」

夕美(まだだよっ!!)

 そこに、落ちたラフレシアを踏み越え、間髪入れずに突撃をしかける夕美。
 友紀の対処は見事だったが、跳躍も投擲も、咄嗟の判断の連続だ。
 それ故に、

夕美(着地で体勢が崩れてる!)

 その隙を逃さず、手の中の種をラフレシアに変えて、

夕美(ここでタッチアウトをもらうよ!)

 咄嗟の身動きが取れない友紀めがけて、今度こそ大輪のラフレシアを叩き付ける。


……
 …

 友紀は、敵の戦術を素直に評価した。

友紀(何に変える能力なのかも、その限定条件もすぐわかる、大したことない能力だってちょっと甘く見てたよ)

友紀(でも、ちゃんと特性を理解してるんだね。封殺の仕方が上手いっ!)

 だが、

友紀「――それでもまだ足りないねっ!」

 右ポケットから抜き取ったボールを、手首のスナップで素早く投じる。
 そのボールは、正面、敵が両手で押し込んでくるラフレシアに下から当たり、

友紀(…………を…………に変える能力!)

夕美「――!?」

 その直後、ラフレシアは勢いよく真上へと跳ね上げられた。
 何が起こったかわからないという表情をしている敵は、掴んでいたラフレシアに引っ張られて、ちょうどバンザイをしているような体勢。
 彼我の距離は至近。隙だらけだ。

友紀「その声、もらうよ」

 言って、友紀はマフラーで隠された喉笛目がけて躊躇なく抜き手をぶち込んだ。

とりあえず今回はここまで。安価スレとか言っといてここしばらく全然出してないのが自分でも気になるところです……
ともあれ続きは近日中に。きっと、きっと近日中にあげますので!
次は安価出すところまで何とか持っていきたいなぁ……ではでは。

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