男「ただいま」 さち子「おかえりなさい、あなた」 (49)

▼男宅/リビング

さち子「今日はずいぶん遅いのね」

男「急な残業が入っちゃって災難だったよ」

さち子「そうなの。私、待ちくたびれてお腹すいちゃったわ」

男「ゴメンゴメン、すぐにご飯作るからちょっと待っててね」

さち子「冗談よ。男も仕事で疲れてるでしょう? 買ってきたものでいいのに……」

男「ううん、大丈夫。料理するの好きだからさ」

さち子「ふふっ。あなたって台所に立つの好きよね」

男「まぁね。ある意味ここは自分の部屋よりも落ち着くよ」


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男「それに、さち子は料理できないじゃん」

さち子「むぅ~。仕方ないじゃない……できないものはできないんだから……」

男「ゴメンゴメン、意地悪で言ったわけじゃないんだ」

さち子「もう知らない」プイッ

男「ふくれるなって……ほっ、ほら、もうご飯できるよ!」

さち子「……ご飯に免じて許してあげる」

男「全くもう……さち子は現金だな……」


男「ふぅ。もうおなか一杯だ」

さち子「私もおなか一杯。ごちそうさまでした」

男「もういいの?」

さち子「うん。十分よ」

男「そうは見えないけど……もしかしてダイエット?」

さち子「……悪い?」

男「何で怒ってるの」


さち子「どうせまた『無駄な努力して』とか思ってるんでしょう?」

男「違うよ。ちゃんと食べないと元気出ないだろ?それにそのままでもさち子は十分綺麗だよ」

さち子「…………」

男「今度は照れてるのか?」

さち子「うっ、うるさいわよ!何で言った本人がケロっとしてるのよ!あなたが照れなさいよ!」

男「あはは。さち子のリアクションが面白いから恥ずかしさも忘れちゃうよ」

さち子「もう……ふんだ!」プイッ

男「冗談だよ。だからふくれないでって」

さち子「ふんふんだ!」プイッ プイッ


男「そろそろお風呂入ろっか」

さち子「あら?いつの間に湯船にお湯はってたの?」

男「いや、今日はシャワーだけで良いかと思いまして……」

さち子「『今日は』って、あなた基本いつもシャワーだけじゃない」

男「うっ!だってほら、お湯はるとガス代と水道代がもったいないから!」

さち子「しかもほぼ毎日夜入らずに朝しか入らないし」

男「うぅっ!だって仕事で疲れてていつの間にか寝ちゃうことが多いから!」

さち子「さらには歯磨きすらもしないでそのまま寝ちゃうこともあるし」

男「うぅぅ……それは……」


さち子「あなたってけっこうズボラよね」

男「すみません……」

さち子「でも逆に、だからこそ私がいないとダメなんだと思ったわ」

男「嬉しいような……悲しいような……」

さち子「今度からはちゃんと湯船につからないとダメよ。だから疲れが取れないのよ」

男「わかりました……」


さち子「それじゃ、お風呂に行きましょう」

男「うん。じゃあ抱き上げるよ」

さち子「お願いね」

男「よいしょっ!」

さち子「……重くない?」

男「あはは。全っ然!もっと重くても良いくらいだよ!」

さち子「いつも運んでもらって申し訳ないわ」

男「気にしないでよ。仕方ないことだから」

さち子「そうだけど……」

男「気にしない気にしない、ね?」

さち子「……あなたの言葉にはいつも救われるわ」

男「もっと頼ってくれてもいいんだよ?」

さち子「これ以上無いくらい頼ってるわよ」

男「そう?ならいいけど」

さち子「ほら、早く入りましょう」

男「わかったよ」


▼男宅/浴室

男「よし、僕はもうOKだ。次はさち子の番ね。頭洗うよ」

さち子「悪いわね。よろしく頼むわ」

男「さち子はシャンプーとかこだわらないの?」

さち子「私は洗えれば何でもいいのよ」

男「でも何かしらあるでしょ。メーカーだけじゃなくて、成分とか洗い方とか」

さち子「そうね。トリートメントだけは欠かさずにしてたけど、他に特には無いわ」

さち子「良い物使うよりもヘアカラーはしないとか、ドライヤーは50センチ以上離して使うとか、普段のケアの方が大事だったかな」

男「なるほどね。普段から大事にするのが一番良いってことか」

さち子「そういうこと」


男「僕ね、さち子の髪って綺麗だから好きなんだ」

さち子「普段のケアの賜物よ」

男「やっぱり女性は黒髪ストレートに限るよ」

さち子「本当?少しくらい染めてた方が好きなんじゃないの?」

男「ちっとも思わない」

さち子「あら。なんだか意外だわ」

男「だって最近の子たちは皆して同じ髪型、同じ髪の色、同じ化粧……ステレオタイプ過ぎて皆同じ顔に見えるよ」

さち子「それはあなたオジサンになってきただけじゃ……」

男「あっ!言ったな!?」

さち子「うっ、嘘!冗談よ冗談!」


――ズルッ。

男「あっ!」

さち子「どうしたの?」

男「ゴメン!髪の毛、けっこう抜けちゃった……」

さち子「仕方ないわよ。私はそういうものだから」

男「……いや、ダメだ。もっと優しく洗うよ。ゴメン」

さち子「気にしないでいいわよ。でも丁寧に洗ってもらうのに超したことは無いわね」

男「面目ない……」

さち子「気にしないで、ね?」

男「うん。……ありがとう」


▼男宅/寝室

さち子「さて今日はちゃんとお風呂も入ったことですし、そろそろ寝ましょう」

男「そうだね。だいぶ遅くなっちゃったな」

さち子「仕事と家事とでずいぶん疲れてるでしょう?」

男「ん~、まぁ明日は休日だし大丈夫だよ」

さち子「私のことは気にしないで良いからゆっくり休んでね」

男「そんな訳にはいかないよ」

さち子「でも……」

男「いいのいいの。よし、寝るよ」

さち子「……わかった」


男「ねぇ、さち子」

さち子「何?」

男「傍にいてくれてありがとう。愛してるよ」

さち子「!?」

男「それじゃおやすみ!」

さち子「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」

男「ぐおー、ぐおー」

さち子「男!寝たフリしないの!」

男「もう食べれないよームニャムニャ」

さち子「もう!私だって愛してるんだから!おやすみなさい!」


▼翌日/男宅/玄関

男「じゃあ行ってくるね」

さち子「行ってらっしゃい」

――ギィッ バタン。


▼男宅/マンション・エントランスホール

男(昨日は悪かったな……今日は早く帰ろう)

男(残業も当分断らなきゃ。今のうちに少しでも長くさち子の傍にいたいし)

男(部長に小言を言われるそうけど……まぁ仕方ないさ)

男(それより今日の晩御飯は何つくろう。冷蔵庫に肉が余ってたからそれと野菜を炒めて――、あっ)

男「管理人さん、おはようございます」

管理人「あぁ、男さんか。おはよう」

男「いつもお掃除ご苦労様です」

管理人「なんのなんの。これが私の仕事だからね」

男「おかげさまでいつも建物が綺麗で清々しいですよ。助かってます」

管理人「ありがとう。そう言ってくださると、一層仕事に精が出るよ」


管理人「そうだ、男さん。ちょっと言い辛いことがあるんだが……」

男「どうしました?」

管理人「いやぁ、あのね、お宅の隣の部屋のさ、隣人さんからちょっと苦情が来てましてね……」

男「苦情?」

管理人「あぁ、その、ゴミの臭いが……漏れてるっちゅうんだわ」

男「ゴミですか?いや、でもちゃんと捨ててるつもりなんですが……」

管理人「そうだわなぁ。隣人さんも少し神経質な人だから過敏になってるだけだと思うんだがねぇ……」

男「わかりました。ゴミ出しのタイミングや保管場所を以後気を付けますよ」

管理人「すまないのぉ。私にはキミがそんなにゴミを溜めたりするような人間には思えないけどねぇ」

男「いえいえ、僕もけっこうズボラな人間ですから。管理人さんを見習ってもっと掃除に励みます」

管理人「キミは本当に良い青年だな。隣人さんには私からも上手く言っておくよ」

男「助かります。では、そろそろ会社に向かわないといけないので、僕はこれで」

管理人「はい。行ってらっしゃい」


▼夜/男宅/リビング

男「ただいま」

さち子「おかえりなさい。今日は打って変わって早いのね」

男「昨日遅くなった分、今日はきっちり定時に上がらせてもらったよ」

さち子「そんな無理しないでいいのに。上の人からイヤな顔されたでしょう?」

男「まぁね。でも先輩がフォローしてくれたよ。『こいつは昨日遅くまで残業してくましたからいいんじゃないですか』って」

さち子「そう。良い先輩がいるのね」

男「本当に良い人でさ、尊敬するよ。さて、夜ご飯の支度しよっか」

さち子「お願いね」


男「よし、できました。それでは頂きます」

さち子「頂きます」

男「……うん、おいしくできてる。肉はやっぱり豚肉が一番好きだな」

さち子「ふふっ。あなたって料理してる時も楽しそうだけど、食べてる時はもっと楽しそうね」

男「おいしいもの食べたいが為に料理を覚えようと思ったからね」

さち子「私、男の幸せそうな顔見てる時が一番幸せだわ」

男「僕はさち子と一緒にいれればいつでも幸せだよ」

さち子「もう!またそういうこと言って!」

男「あははは」


男「そういえば今朝ね、管理人さんに注意されちゃったよ」

さち子「珍しいわね。どうしたの?」

男「隣人さんから苦情が入ったみたいでさ」

さち子「あらら。苦情って?」

男「ゴミの臭いが気になるらしいんだよね」

さち子「そうかしら?私は何も臭いなんて感じないけど……」

男「うん。僕も部屋は清潔に保ってるつもりなんだけど、配慮が足りなかったかぁ」

さち子「でも隣人さんって少し神経質な所があるのよね」

男「うん。それは管理人さんも言ってた」


さち子「また言われる時があったらお部屋の中見せてあげたらいいんじゃない?」

男「そうだね。もしかしたら隣人さんの部屋の排水溝や換気扇から臭ってるだけかもしれないしね」

さち子「そうよ。あなたはよくやってくれてるわ。それは一番近くで見てる私が保証する」

男「ありがとう。とりあえず日曜にでも、部屋を隅々まで掃除し直してみるよ」

さち子「それがいいわね。もしかしてバルコニーにネズミの死体が落ちてたりして」

男「まさか。そんなのがあればさすがに気づくよ」

さち子「そうかしら、あなたって結構鈍感だから」

男「あっ! 言ったな!?」

さち子「事実ですよーだ」


▼翌日/男宅/玄関

男「じゃあ、今日も行ってきます」

さち子「行ってらっしゃい。気をつけてね」

男「はーい」

――ギィッ バタン。


▼男宅/マンション・廊下

男「あっ。おはようございます」

隣人「……どうも」

男「管理人さんから聞きました。すみません、うちのゴミの臭いがそちらまでいってしまってたようで……」

隣人「……いえ」

男「今度もう一度部屋の隅々まで掃除し直して、変なものが落ちてないか調べますので、少しだけお時間頂いてよろしいでしょうか」

隣人「あの……はい……大丈夫です」

男「次の日曜日過ぎても、もしまだ臭うようでしたら一度うちの部屋見に来てください。もしかしたら配管の問題かもしれないですし、一緒に臭いの元を探してもらえればと思います」

隣人「はぁ……そうですね……わかりました」


男「お詫びに今度おいしいお菓子お持ちしますよ。良い店知ってるんです。甘いものはお好きですか?」

隣人「そうですね……嫌いじゃ……ないです」

男「ご迷惑をおかけしてしまって本当にすみません。他にも何かあれば言ってください」

隣人「あ……はい……どうも……」

男「では、僕はそろそろ会社に行かないと遅刻してしまうので、これで」

隣人「…………どうも」


▼夜/男宅/リビング

男「ただいま」

さち子「すぅ……すぅ……」

男(あっ、寝ちゃってる)

男(起こすのもかわいそうだし、ご飯は作り置いてあげよう)


男(話し相手のいない食卓も久しぶりだな。テレビでもつけよう)

男(音はできるだけ低めにして……このくらいかな)


テレビ「半年前に起きたS県M市OL失踪事件、いまだに解決の糸口は見つけられていません……」

テレビ「手がかりは無く……目撃者もいない……それでも我々は彼女を捜索することをやめません!」

テレビ「彼女は今、この時も、家に帰りたいと切に願っていると我々にはわかるからです!」

テレビ「彼女を見つけられるのは私たちのこの番組しかできません!」

テレビ「今日はなんと!霊視・透視能力で世界的に有名で数々の難事件を解決した実績を持つこの方、アレックル・ルーシーさんにお越し頂いてます!こちらへどうぞ!」

―― ワーワー、パチパチパチパチ。


男(うわっ、この手の番組ってまだやってるんだ……)

男(霊視とか透視とか、そんなので事件が解決するなら誰も苦労しないよ)

男(それにしても最近の日本は女性を狙った事件が特に多いよな)

男(ストーカーも未然に防げないなんて警察の能力も程度が知れるよ)


さち子「んン…………」

男「あっ」

――ピッ。

さち子「あら。あなた、帰ってたのね。おかえりなさい」

男「うん、ただいま。ごめんね、テレビうるさかったかな。消したから寝てていいよ」

さち子「ううん、大丈夫よ。見たかったらつけてて良いのに」

男「大丈夫。別に見たくてつけてた訳じゃないから」


さち子「そう。でも9時からあなたが好きそうな映画がやるわよ」

男「本当?じゃあそれまでにいつでも寝れる支度しなきゃな」

さち子「ふふっ。あと一時間も無いわよ?間に合うの?」

男「間に合わせるさ。そういえば、さち子はお腹すいてない?大丈夫?」

さち子「そうね。じゃあ少しだけ頂こうかしら」

男「わかった。じゃあ今持ってくるね」

さち子「ありがとう」

男「今日はほっけを焼いたのと、焼きナスのしょうゆ掛けだよ。お味噌汁は豆腐とわかめ」

さち子「あらおいしそう」


▼翌週の月曜日/朝/隣人宅

隣人(あいつ……ふざけんじゃねぇ!)

隣人(日曜までには掃除するとか言っておいて、全然臭い取れてねぇじゃねぇかよ!)

隣人(何なんだよ、この臭い!普通こんなに臭うことねぇだろ!ペットでも死んで腐らせてるんじゃねえか!?)

隣人(大体このマンションの住民どもはおかしいんだよ!ゴミの分別もろくにできてねえし!)

隣人(上の階の奴はドタドタうるせえし、下の奴は夜中に歌ったりしてるし、管理人のジジイもゴミ掃除ぐらいしっかりやりやがれよ! エントランスに枯れ葉がまだ数枚落ちてんだろうが!)

隣人(マジでイライラしてきた!もうダメだ、帰ってきたらアイツに直接文句言ってやる!約束通りに部屋見せてもらおうじゃねぇか!)


▼夜/男宅前/マンション・廊下

男 スタスタスタ

隣人「あの、すみません」

男 ピタッ

男「……あぁ、隣人さんじゃないですか。こんばんは」

隣人「あ……ども……」

男「昨日部屋の掃除してみたんですが、どうでしょうか?換気扇のダクトから排水溝から隅々まで見てみたんですよ」

男「でも臭いの元のようなものは特に見当たりませんでしたが、どうですか?」

隣人「えっと……その……」


隣人「あ……で……でも、まだ……ちょっと、匂いがしてきて……」

隣人「できれば……お部屋を見せて……もらえれば、と……」

男「…………」

隣人「…………」ゴクッ

男「……わかりました。私から言ったことですしね」

――ガチャッ キィ……。

男「どうぞ。中にお上がりください」


▼男宅/玄関

隣人 スッ

隣人「うぐっ!」

隣人(マジかよ何なんだよ!すげえ臭ぇぞ!何だよこのゴミ溜めみたいな匂いは!)

男「突き当たりがリビングなんで、先に入って待っててください」

隣人「え……でも……」

男「仕事で歩き回ってるせいか足がむくんじゃって靴脱ぐのにいつも時間かかるんですよ」

男「玄関で立たせたままにするのも申し訳ないので、どうぞお先に」

隣人「じゃあ……では……」


隣人(そう言われてもどの部屋からも臭ぇんだよ)スタスタ

隣人(けど一番はこの奥……リビングからか)スタスタ

隣人(なんだよこのニオイ、動物かなんか死んでるだろ絶対!ゴミだけでこんなニオイするかよ!)スタスタ

隣人(これに気づかねぇとかどんだけ鈍感なんだよ!絶対文句言ってやる!)スタスタ

―ガチャッ キィ……。


▼男宅/リビング

隣人「うぅぐぉ……」

隣人(強烈過ぎる……最悪だ……何だこの悪臭……そりゃ俺の部屋まで来るわ……)

隣人(しかもテーブルに人がいるし……よくこんな所で同棲できるよ……)

隣人「あ……あの、こんばんは……」

さち子「………………」

隣人「?」

隣人(ずっとうつむいてるけど寝てるのか……?)

隣人「すいません……上がらせてもらって―― うわああぁぁ!!」


そこにあるものを人と呼ぶのは間違いだった。最早ただ腐敗した肉の塊だ。

垂れた前髪から覗く顔の皮膚は黒紫に変色し、その下から黄ばんだ頬骨が見えている。

ドロリと黒ずんだ眼球が腐り落ちて足元でびしゃりと潰れてハジけた。

腹部の皮膚は全てドロドロに溶けており、飛び出した内臓にウジが湧いているのが見えている。


隣人「あああぁあぁああぁぁぁあ!!」

隣人(ヤバイやばいヤバイ死んでるやばいヒトが死んデルやばいヒト死逃げなきゃニゲナキャ逃げなき足が動かないヤバイ逃げろ足動けウゴケ俺動け!)

男「隣人さん、おまたせしました」

隣人「おわああぁああ!!」ビクッ


――ガタン! ガタドタン!


隣人「痛て……うわああああぁ!」

驚いた拍子に女の遺体を突き飛ばしてしまった。

崩れ落ちた遺体から首から上がゴロリと床にこぼれ落ちた。

転がった頭はリビングテーブルの足に当たって止まり、隣人の顔をじっと見つめていた。


隣人「ひっ、ひぃ!」

男「…………」

隣人「アンタ、これ何なんだよ!何でこんなことしてるんだよ!頭おかしいんじゃねぇのか!」

男「……頭おかしいのはお前の方だろ」

隣人「は!?」

男「人の妻を押し倒して何するつもりだ!この変態野郎!」


男「さち子!大丈夫か、さち子!」

男「良かった、無事なんだね……良かった……」

隣人「無事ってなんだよ……そいつ、死んでんじゃねぇかよ!何でそんなのがここにあんだよ!」

男「ううん、ダメだよ、さち子。僕、こいつのこと許せないよ」ギロッ

隣人「ひっ!」

男「大体ね、さち子。本当に部屋を見たいって言うから何か怪しいなと思ったんだよ僕は」ブツブツ フラフラ

隣人「何だよ……何トチ狂ってるんだよ」

男「というよりも前から気に入らなかったんだよねこいつ僕のことジロジロジロジロ見てきやがって仕事もロクにしてないニート野郎のクセして部屋が臭いだとか訳のわかんないイチャモンつけてきて揚句には僕の妻を犯そうとするクソ野郎だったってことだ実は元からコイツはさち子を襲うつもりで僕の部屋の隣に来たのかもしれない今日だってそのつもりで話しかけて来たに違いにないそうだ絶対そうだ間違いないコイツみたいなクソ野郎は殺すしかないどうせ罪の意識も無く反省もしないクソ野郎なんだから殺しても誰も気にも留めやしない殺して殺して殺しまくって自分の罪の重さをその体に理解させてあげなきゃいけないんだ絶対そうだそうに違いない」ブツブツ フラフラ


男はぶつぶつと呟きながらキッチンのシンクの下にある扉を開けて取り出したそれは、まるで刀を思わせる程によく研がれギラギラとした輝きを放つ鋼の刃を持つ、およそ刃渡り30cm程の包丁だった。

男が隣人に顔を向ける。すでに隣人は蛇に睨まれた蛙のように畏縮し足が竦んでしまっていた。


隣人「何だよ、それ……何するって言うんだよ!やめろよ!」

男「どうするって、決まってるでしょう?」ニコッ

隣人「……?」

男「お前を殺すんだよ」ダッ


駆け寄る男の形相はこの世の者とは思えない程に歪んだ微笑みを見せていた。

その顔に驚きようやく隣人は金縛りから解かれ出口へ向かおうと体を翻すが、時は既に遅く、男が両手に持つ凶刃はズブリと隣人の背部に深々とめり込んでいった。

そのまま勢い余って男が覆いかぶさるように隣人を押し倒す。


隣人「ぎゃああぁァアああァァァ!!!!!」ジタバタ

男「死にやがれクソ野郎が!死ね死ねシネ死ねシネ!」ザクッ! ザクッ!

隣人「痛い、痛いよおぉぉ!助けてえぇぇ!」ジタバタ

男「シネしねシネ死ねしね死ねシネ!体中きざんでやるよ糞が!」ザクッ!ザクッ!

隣人「うぎゃあああぁぁあぁぁあぁ!痛い!イダイーー!痛いイダイ痛い!イダイよぉ!やめてぐれ!痛いよおぉぉ!!」ジタバタ

男「うるせえ!内臓見せろよクソ野郎!どうせ汚ぇんだろうが!」グイッ


隣人の肩に手をかけて仰向けにすると、すぐさま腹部に包丁を突き立てる


男「おらぁ!」ドスッ!


そして体の中のものをえぐり出すように包丁で何度も何度も何度も掻き出し続けた。


隣人「うごぽぉ!」


腸から胃から逆流してきたドス黒い血と鮮やかな真っ赤な血が入り交ざって隣人の口から吐き出された。


男「おらオラおらオラ!もっと泣き叫べよクソ豚野郎!」

隣人「あぎゃああああぁぁ、ゴポォ、おあああ!!」ジタバタ


隣人の叫び声の合間合間で吐血が溢れ零れる。吐き出され飛び散る血の飛沫を意に介さず男は隣人の腹を十字に引裂いては、無尽に突き刺し続けた。


男「死ねよシネよ死ねしねシネしねアハハははアハハはははハハ!!」ドスッ! ドスッ!

男「アハハほら顔にもくれてやるよあははハハはは! 臭っせぇ目ん玉なんか潰れちまえよあははハハハハははアハはは!」ドスッ! ドスッ!

隣人「うあぁ……ゴポッ、あぁぁ……」ビクンビクン

男「あははハハハあはヒャヒャハはあはひゃハアハハ!!」ドスッ! ドスッ!

男「あはははははあははははははっははあははっはははははっはははははははははっはははあははっあはははあははははあははははあっははああはあはあはあっはははははははっはははあははは!!」ドスッ! ドスッ!

男「あははははあは――」ピタッ

男「……………………」

男「……………………」


男「……………………」

男「……………………」

男「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」ビクッ

男「何だよコレ!何だよ!ふざけんなよ!」バッ

男「何だこいつ!顔も内蔵も全部ぐちゃぐちゃじゃねぇか! 」

男「うわっ!こっちにも人が死んでる!腐ってんじゃねぇかよ!どうなってんだよコレ! 」

男「おい……ふざけんなよ!何でこんなことしてんだよ!」

男「聞いてんだろ、答えろ!お前がやったんだろ!」

男「わかってんだよ!さっさと出てこい!出てきやがれ“男”!」
 


 

 
男『やあ男くん、久しぶり』

 
 
 




男「久しぶりじゃねぇんだよ!何やってんだよこれ!」

 男『いやぁ、この豚が僕の妻を犯そうとしてやがったんでお仕置きしたんだよ』

男「ふざけんな!こんなに部屋汚しやがって!こういう面倒な事はするなって言ったろ!」

 男『ごめんごめん。ついやりすぎちゃって』

男「ついじゃねぇだろ。……ちなみに、もしかして妻ってこの腐ってる奴か?」

 男『正ー解ー。素晴らしい洞察力だよ、男くん』

男「こんなの妻にするとか、気が知れねぇわ……」

 男『わかってないな。女性は死んで腐ってからが一番魅力的なんだよ。ね、さち子』

  男《ふふっ。そうかもしれないわね》

 男『こんなに愛した女性はさち子が初めてだよ。最高の結婚生活を送れたよ』

  男《もう!またそういうこと言って!》


男「イチャついてる所悪いが、コイツって俺が攫って犯して殺した女じゃねぇかよ。よくもまあこんなの愛せたな」

 男『そんなこと切っ掛けに過ぎないさ。むしろ殺してくれたおかげで僕は愛せたんだから、キミに感謝したいくらいだ』

  男《本当ね。そのおかげで私も男と一つになれんだから、私は幸せよ。男くん、ありがとう》

男「そうですか。まったく、幻みたいなもんのクセによく言うよ」

 男『それは違うよ!僕も彼女も虚像のようで実在し生きているんだ!』

男「はいはい、わかりました」

  男《私は難しい話は苦手だわ……》


 男『キミも犯して殺してやるだけやったら寝ちゃって、後処理大変だったんだからな』

男「うっ……それはすまなかった。やった後はなんか眠くなるんだよ」

 男『僕だって久々に起きたらまずは精液と血まみれの死体の処理だ。おまけに大々的にニュースにもなって、我ながらよく逃げ切れたと思うよ。逆に感謝して欲しいくらいだ』

男「だからすまないって。助かったよ」

 男『僕らは一心同体だが、母体はキミだ。もっと主としての自覚を持ちたまえ』

男「……はい」


男「とりあえず、ここ出るか。こんなに暴れたなら通報もされてるだろうし」

 男『そうだね、急ごう。その前にさち子』

  男《何?》

 男『ここで元の体とお別れだけど、いい?寂しくない? 』

  男《そうね。寂しくならないといえば嘘になるかもしれないわ。でもさっきも言ったみたいに、あなたと一つになれて私は幸せよ。だから大丈夫》

 男『ありがとう、さち子。これからも男くんの中で一生愛し合おう。愛してるよ』

  男《私もよ、男》

男「……人の体の中でドラマティックに締めないでくれ」


男「さて、じゃあ行くか」

 男『次はどちらに?』

男「そうだな。次もなるべく人の多いところに行こう」

  男《多いところなの?少ない所じゃなくて?》

男「どうせ俺はそのうち捕まるんだ。なら今のうちにやりたいことをできるだけ一杯やらないとな」

 男『ということはルームメイトが増えるかもしれないね。それは楽しみだ』

  男《……浮気したら許さないわよ?》

 男『バ、バカだな。そんなことする訳無いだろ』

男「はいはいはいはい。続きは地獄でやってくれ」


男「さて……次はどこに行こうかな……」

男 スタスタスタ

 
 




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
男「そういや、さっきからお前ら何で俺たちのことずっと見てんの?」


男「お前らだよお前ら。今も俺のこと見てんだろ。何気づいてねぇフリしてんだよ」

男「俺はお前らみてぇな高みから見物するような奴らが大嫌いなんだよ」

男「……よし決めた。次はお前らのとこ順ずつ回ってくわ」

男「所詮これは作り話だから安心だとか思ってんのか?バカだろ?」

男「女は犯して殺して肉は食って、男を襲う趣味は無ぇからバラバラにして燃やすか」

男「どうせいつか死ぬんだ。人生最期は派手に殺してもらいたいだろ?」

男「じゃあ近々お前らのところ行くから宜しくな。……言っとくけど、逃げても隠れても無駄だから。大人しく待ってろよ」

男「くっくっく……くはははは……あははははははは」

男「あははははははあははあはははははあはははははははは」

男「あはははアっははハハはははははアハハハははハハハあははハ」

男「あハハハハハハハはっはアハハはハアアはハハハハハハハハハハはあはハハハハハはっハハハハハハハハハハハハハハハはっははっハハハハハああアハハはあはあははあはアハハはははあはあはアハハはハアハアアははあははアハハははあハハハハハ八母hhっはっはっはっはっはハハハアアははっハハハハハハハハハハ八ハアハアアハアアはアハハはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハはっはハハはハハハハハハハハハハハハハハハあああはアハアハアアハアアハアアはハアはハアハアアハアはハアハアアあはアハアハアアはあああははっ母はハハハハハははっはアアハアはアハハああはあっははハハハハハ八母はあっはははっはははっははアハハ八母はハハハハハはアはッ歯ははっハハハハハはっはハハはハハハハハハハハハハうアフア冨合ヒア愛ハウ相ハウ合うはい配布ア火は麩ああいアフア不アフアはウハウハ右派うあひ配布は右派宇夫合うあはウイあ火は秘儀後hゴア薄hhるほあえううぁ魚hふわえううぉwhwhを和えhうおあほあうぉ上hゴアうぇうおあうぇうおhh輪王へぐオアwhぐオアhうぇうおgはw老は王hrぐオアhwぐおrハウ大g歩会えhぼんぃgファンl根布ヴぁの英hんv直井r尚江;うhらエリオジャンrgヴぁオ;胃炎ロ;アbンチアへrklgジオ和えjんヴィオア;りhgんヴぁオ;円bヴぉ合;絵rふぃあおmうぃろh五蘊バイねヴぉ江合rvナメリオv苗おr;h時オアvメイフェアm;イオlんそ;姉rびてアmヴィ;青円;お田んぼ否エリオべ頼pf;んlbんり青;絵rばいんぁけrび青絵rンビオ苗mrbぴあ絵rbなp目rbぽ:和えrjばピ:江合円リアjbぴ和えrjピお和えrjぎパ絵jkrbにパ円rビオアレkbんパ絵mrぴあぇbにパkれンビオ和えrkb内小江kr内klウェrぽjgmんヴィおrケアlb苗klrんぼ和えぽrじゃえおうb鵺部エペp和江;ア。jbんmんbdlz。hりおあめいrなぺrbじゃえpばえpr

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――― End.


以上です。

お読みくださった方いらしたらありがとうございます。

一点ミスがありますがご容赦ください。

くれぐれも夜道にはお気を付けください。

それでは。










あははハハアハははハハは。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月09日 (月) 23:54:44   ID: OpFVjjpS

怖!!

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