傭兵「契約成立だ」 (655)


「頼むっ!見逃してくれぇ! !!」



傭兵(ああ、またこの夢……)



「捕虜などいらん! 敵兵は皆殺しだ! 」



傭兵(7年も経つというのに、こんなにはっきりと覚えているものか)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1392102347

「お願いします! この子だけでもっ! 」



傭兵(むせかえるような血の臭いと、耳を引き裂く断末魔と……)



「女子供とて容赦はするな! 全ては我が王国の勝利のため………… !!」



傭兵(……人の命を終わらせる感触……)



「いやぁっ!! お母さん、助けてぇ! 」







「殺せぇっ!!」






傭兵「契約成立だ」
傭兵「契約成立だ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392101507/)

契約成立以前にちゃんとHTML依頼出せや阿呆


傭兵「……っ!」ガバッ




ゴトゴト ゴトゴト




御者「おや、お目覚めですかい旦那? 」


傭兵「ん、ああ……」

御者「ひどくうなされてましたぜ。よほど悪い夢でも見てたんですかい? 」

傭兵「……そうだな」






銀髪の傭兵「悪い夢だ」

傭兵「契約成立だ」
傭兵「契約成立だ」 - SSまとめ速報
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契約成立以前にちゃんとHTML依頼出せや阿呆

>>7
すまん重複気付かんかった
ありがとう

東の都??北門??

御者「着きやしたぜ、東の都だ」


ザワザワ ザワザワ



傭兵「悪いな、こんなにまけてもらって」

御者「いいっていいって、道中の用心棒代ってことですよ。旦那、その様子だと傭兵かなんかだろ? 」

傭兵「ほぉ、すごいな。分かるのか? 」

御者「あっし程この仕事を続けてりゃ、目を見るだけでそいつの人となりが分かっちまうもんでさぁ」



傭兵「……そうか」



御者「そいじゃ、あっしはそろそろ次の仕事へいかせてもらいますね。旦那、お気をつけて」



傭兵「ああ、あんたも」



ゴトゴト ゴトゴト



傭兵(さて、と……)

ワイワイ ガヤガヤ



傭兵(まずはギルドに行って……)



ガシャーーン パリン ワー ワー




ならず者A「てめぇ、今何つった! 」




店員「お、お客さん! ちょっとぉ……」



少女「ふん、聞こえなかったの? あんたたちみたいな社会のゴミに、生きてる資格なんてないって言ったのよ」

少女「昼間っから仕事もせずに酒に溺れて、バカみたいに騒いで他人に迷惑をかける……。これを社会のゴミと言わずしてなんと言うの!? 」



ならず者B「こ、この女ぁ……」



ならず者C「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 」



客A「おいおい、あの嬢ちゃん殺されちまうぞ……!」



客B「だ、誰か憲兵を呼んで来てくれ! 」

傭兵(屈強な男三人に囲まれてあの態度……。ずいぶん肝の座った女だな)



少女「大の男が、三人がかりで女の子に手を出そうだなんて……。ほんっとーーにゴミね、あんたたち」



傭兵(だが、か弱い少女が威勢だけで追い返せるような相手でないだろう。見たところ武器を持っているようにも見えないしな……)



少女「いいわ、相手してあげる。ちょっと、そこのあんた! 」

傭兵(可哀想だが、憲兵が来るまで待…………)



少女「ちょっと! あんたよ、そこの銀髪のデカ男!! 」






傭兵「…………俺か?」



少女「そーよ、あんたよ! 聞こえてるんなら返事くらいしなさいこの木偶の坊! 」



少女「あんた、見たところ傭兵でしょ? 報酬なら払うから、そこのゴミ共掃除しちゃって!」



傭兵(今日はよく正体を見抜かれる……)

傭兵「悪いな、お嬢さん。助けてやりたいのは山々だが、生憎子供の小遣いで雇われるような仕事は……」



ジャラッ




少女「ここに、銀貨百枚あるわ」



ザワッ



傭兵「……!?」



客C「な、なんでそんな大金を……」



客D「ただの女の子じゃなかったのか……」

少女「どう? ゴミ掃除の報酬としては、破格の値段だと思うけど? 」




ならず者「おいおいおい! ただのガキだと思ったらとんだ金持ちじゃねぇか! 」



ならず者B「ついてるぜぇ、俺たち! 」



ならず者C「よぉ、嬢ちゃん。痛い目みたくなきゃあその金、さっさと渡……」ゴッ



ドサァ

ならず者AB「…………」



客たち「……………」



「その依頼、請けよう……」




傭兵「契約成立だ」



少女「そうこなくちゃ」クスッ

ならず者B「やりやがったな!? 」



ならず者A「野郎ぉ! ブッ殺してやる! 」ダッ



傭兵「…………」



ならず者A「おらぁ!」スカッ



ヒュッ



ならず者A「がはっ!」



ドサッ

傭兵「…………」



ならず者B「っ! くそっ!」チャキッ



傭兵(刃物を持っていたか……)



ならず者B「死ねぇ! 」ダダッ



傭兵「だが……」パシッ



ガッ



ならず者B「うぉっ! 」



ズダァン



傭兵「……飲んだくれのチンピラにやられる訳にはいかんさ」

パチパチパチ



少女「すごいじゃないあなた! パッと見で選んだにしては中々の逸材だわ」



傭兵「それは光栄なことだ。さあ、報酬を渡してもらおうか」



少女「まあまあ、そう焦らないの。せっかちな男はモテないわよ? ところでちょーっと話があるんだけど……」



「憲兵隊だ! 道を開けろ!」



傭兵「っ!?この街の憲兵は仕事が早いなっ!」ダッ



少女「え?ええ、そうね? ってちょっとぉ!? 待ちなさいよぉ!」

ーー路地裏ーー



傭兵「ふぅ、まったく」



傭兵(やはり都市で仕事をするのは難しいか……。あの様子だと、俺の人相もすぐに広まりそうだしな)




傭兵(いきなり仕事がやり辛くなって、報酬も貰い損ねる……)



傭兵「とんだ災難だ……」



「やーっと見つけた」

少女「どうしたって言うのよ一体。あんた、何か後ろ暗いことでもあるの? 」



傭兵「君は……さっきの」



少女「報酬も受け取らずにいくなんて、よほど憲兵に会いたくないようね」スッ



傭兵「ああ、わざわざ渡しに来てくれたのか。助かる」スッ



スカッ



傭兵「…………」



少女「…………」

傭兵「……君は俺に依頼をして、俺はその依頼を完了した」



傭兵「つまり、君には報酬を払う義務が発生し、俺にはそれを受け取る権利があるはずだか? 」



少女「まあその通りなんだけどー、流石に高すぎたかなーとか思っちゃってー」



傭兵「君の言い出した額だろう……」



少女「ゴロツキ懲らしめるだけの依頼にしては、あまりにも釣り合わないわよねー」

傭兵「……何が言いたい」



少女「ねぇ、あなた」






少女「私と専属契約しない? 」





ザワザワ ザワザワ




憲兵A「すごいな……これは」



憲兵B「店員の証言によると銀髪で長身の男性が、瞬く間に三人を制圧した……と」



憲兵C「しかもそのうち一人は刃物まで持ってたそうじゃねぇか。只者じゃねぇぜ」




「そうだ、只者ではないだろう」



憲兵A「っ!た、隊長! 」ザッ



憲兵BC「!?」ザッ



憲兵隊長「敬礼はいい。早くそこでのびてるチンピラ共を連れていけ」



憲兵ABC「はっ!」



タッタッタッタッ



憲兵隊長(銀髪、長身……)



憲兵隊長「まさか、な………」



ザワザワ ザワザワ




憲兵A「すごいな……これは」



憲兵B「店員の証言によると銀髪で長身の男性が、瞬く間に三人を制圧した……と」



憲兵C「しかもそのうち一人は刃物まで持ってたそうじゃねぇか。只者じゃねぇぜ」




「そうだ、只者ではないだろう」



憲兵A「っ!た、隊長! 」ザッ



憲兵BC「!?」ザッ



憲兵隊長「敬礼はいい。早くそこでのびてるチンピラ共を連れていけ」



憲兵ABC「はっ!」



タッタッタッタッ



憲兵隊長(銀髪、長身……)



憲兵隊長「まさか、な………」

本日はここまで
遅筆、不定期更新ですがどうか暖かく見守ってやってください

乙期待

ーー酒場ーー

ワイワイ ガヤガヤ


少女「ゴクッゴクッゴクッゴクッ」



少女「プッハーー!!」注:ミルクです



少女「ふぅ……それじゃ、商談を始めましょうか」



傭兵「…………」

傭兵「専属契約……と言ったな」



傭兵「色々と聞きたいことはあるが、まずはそのメリットを教えてくれ。こちらからすれば、突然誰とも知れぬ少娘に契約を迫られているんだ。納得のいくリターンがなければ……」



少女「さっき見せたでしょ? こ・れ・よ」ジャラジャラ



傭兵「おい、こんな場所で出すんじゃない。さっきみたいなのは御免だぞ」



少女「あら、ごめんなさい。心強い用心棒ができたおかげで少し気が緩んでるみたい」

傭兵「まだ契約するとは一言も言ってないがな……。で、その金の出処はどこだ? 家の金庫から持ち出したのか?」



少女「まさか!? 私がそんなこそ泥みたいな真似するわけないじゃない。これはれっきとした私のお金よ」



傭兵「……君のような女の子が、まともにそんな大金を手に入れられるとは思えないが」



少女「…………………」



少女「はぁーあ、もう一から話すしかないかぁー……」



少女「ま、これからは良きビジネスパートナーになる訳だし? 信頼関係を築くうえでは話しておくべきかな」

傭兵「いや、だから勝手に決めるなと……」



少女「私のお父さんはね、東の都一の大商人だったの」



傭兵(……だった、か)



少女「そして、根っからの平和主義者でもあった」



少女「七年前の南部侵略戦争の時なんて、そりゃあもうすごい勢いで反対してたんだから」

傭兵「………」



少女「ましてや王国がその戦争に勝っちゃったもんだから、その憤りたるやってね……」



少女「お父さんも、別にこの国が嫌いだったって訳ではないの。でも、自分より力の弱い国を、武力を以って従わせるっていうのが気に入らなかったんだと思う」



少女「弱い者いじめとかそういうの、許せない人だったから……」



少女「それでね『俺は俺のやり方でこの国を変える』って。よせばいいのに、戦後は革命軍に物資や資金を流すようになっちゃって……」

少女「聞いたことあるでしょ? 革命軍の話」



傭兵「……国に不満を持つものが集まって、徐々に力を蓄えているというのは聞いたことがある。ただの噂話だと思っていたがな」



少女「で、そのことが憲兵隊にばれて、殺されたって訳。それも、堂々と処刑すればいいものを、酔わせて川に突き落としたのよ!?」ギリッ



少女「お父さんが反戦主義者なのは、ここでは有名な話だったから……。きっと見せしめにされたんだわ」



少女「お母さんは、私が小さい頃に病気で死んじゃってて、残ったのはお金と馬鹿でかい屋敷だけ」

少女「空っぽになった屋敷の中で、私は決めたの」



少女「私はお父さんとは違う。私は私のやり方でこの国を変える!!」



少女「まどろっこしい話は無し! 圧倒的な力で、国をひっくり返す! 」



少女「そのためには、剣が必要なの。最初は一本でいい……でもいずれは、百万の王国軍兵士を切り伏せる、億の刃が要る!!!!」



少女「お願い! 力を貸して! 報酬ならいくらでも払うわ ……」



少女「お願いよ………私に……力を……」

傭兵「……………」



傭兵「羽振りのいい金持ちなら、いくらでもいる」



傭兵「正義を語る力なき貧乏人には何度も会ったさ」



傭兵「だが、その両方を持った人間には、まだ出会ったことがなかったな……」



傭兵「いいだろう」



傭兵「契約、成立だ」スッ



少女「…………ありがとう」スッ



グッ



少女「よろしくね、私の剣」



傭兵「こちらこそ、俺の主」


ザワザワ ガヤガヤ



傭兵「さて、ではそろそろ拠点に案内してもらおうか」



少女「拠点?」



傭兵「でかい屋敷を持っていると言ったろう? これでも長旅で疲れているんだ、休ませてもらえると助かるんだが」



少女「屋敷なんて、もうないわよ」



傭兵「…………」



傭兵「……何だと? 」

少女「だからー、売っちゃったのよ。屋敷も、家財道具も、商品の在庫もぜーんぶ捌いたの」



傭兵「な、なぜそんなことを……」



少女「あのねぇ、私たちがこれから始めるのはいわば革命なの。こんなとこに堂々と胡座かいてする訳にはいかないでしょ」



傭兵「それは一理あるが…………ずいぶんと準備が早いんだな」



少女「まあね、お父さんの最期があんなだったから、私もマークされてるでしょうし。なるべく身軽にしておきたかったのよ」



傭兵「なるほど……」



傭兵(良家のご令嬢とは思えぬ強かさだな……)

傭兵「それなら君の財産はどうしている。まさか持ち歩いている訳ではないだろう?」



少女「心配しなくても、ちゃんと信頼できる所に預けてあるわ」



傭兵「ならいいんだが………」



ザワザワ ガヤガヤ



フードの男「…………」



ガヤガヤ ワイワイ



傭兵「…………」

傭兵「少し、大きな声で喋りすぎたかもな……」



少女「え……?」



バァン!!!



「憲兵隊だ!! 全員その場を動くな! 」



ドカドカドカドカ




酔っぱらい「な、なんだってんだいきなり」



憲兵A「この店に銀髪で長身の男はいるか!? 現在その男に傷害の罪で逮捕状が出ている!」

少女「まずいわね……」



傭兵「ああ、やはり仕事が早い」



憲兵B「………おい、あの男」



憲兵C「銀髪、長身……間違いないな」



憲兵C「おい貴様! 少し憲兵本部まで付き合ってもらおう! 」



傭兵「……………」ガタッ

少女「ちょ、ちょっと……」



傭兵「………準備しておけ」ボソッ



少女「………」



憲兵B「手錠をかける、手を出せ」



傭兵「…………」スッ



憲兵B「…………」カチャ……



ガッ



憲兵B「ん?」



傭兵「はぁっ!」ブンッ




憲兵B「のわぁぁ!」



憲兵A「は?」



憲兵C「うおっ!?」



ドダァァァァン!!



傭兵「行くぞ!」ダッ



少女「………!」ダッ







憲兵B「いっつつ……」



憲兵C「くそっ……!」



憲兵A「いつまで乗ってんだ! さっさととどけ!追うぞ!」

タッタッタッタッ


少女「どうして居場所が割れたのかしら……」


傭兵「おそらく、密告者がいた……」



傭兵「奥のカウンターに、フードをかぶった男がいたのを覚えているか? 」



少女「え、ええ。でも、あの人はずっと店にいたじゃない」



傭兵「一度だけ席を立った時がある。大方、用を足しにいくふりをして仲間に伝えたんだろう」

少女「なるほどね、密告者らしい姑息な考えだわ」



ピィィィィィィィィ!!!



傭兵「なんだ……!?」



少女「まずいわ、援軍を呼ばれた……」




「いたぞ!! こっちだ!」

傭兵「ちっ……!」ザザッ



憲兵D「銀髪長身……お前が目標か」



タッタッタッタッ



憲兵A「やっと追いついたぞ! 」



憲兵B「くそっ、手こずらせやがって……」



憲兵C「観念しろ!!」


今日はこの辺で
感想、突っ込み等あったらどうぞ

ゆっくりでも続けてくれ

憲兵D「貴様には抜剣許可が降りている。抵抗するのなら、少々手荒になるぞ……」


憲兵E「………」スラァ



憲兵F「………」チャキッ



傭兵「今度ばかりは、簡単に切り抜けられそうにないな……」



傭兵「どうする? 今の雇い主は君なんだ。指示をくれ」



少女「決まってるわ……」



少女「正々堂々、正面突破よ!! 」

傭兵「了解したっ!!! 」ダンッ



憲兵F「っ!? 速っ………がはっ!? 」バキィ



憲兵D「こいつ…………ぬおっ!?」ガキィ



憲兵D「くそっ!」ブンッ



傭兵「…………」ダダッ



憲兵D(こいつ、まさか…………)

憲兵A「鞘に収めたままだと……!? 舐めやがって!!」ブンッ



傭兵「………」ギィン



ダダッ



憲兵C「ぐおっ!」



憲兵E「ぐはっ!」

憲兵D「貴様には抜剣許可が降りている。抵抗するのなら、少々手荒になるぞ……」


憲兵E「………」スラァ



憲兵F「………」チャキッ



傭兵「今度ばかりは、簡単に切り抜けられそうにないな……」



傭兵「どうする? 今の雇い主は君なんだ。指示をくれ」



少女「決まってるわ……」



少女「正々堂々、正面突破よ!! 」

憲兵D「貴様には抜剣許可が降りている。抵抗するのなら、少々手荒になるぞ……」


憲兵E「………」スラァ



憲兵F「………」チャキッ



傭兵「今度ばかりは、簡単に切り抜けられそうにないな……」



傭兵「どうする? 今の雇い主は君なんだ。指示をくれ」



少女「決まってるわ……」



少女「正々堂々、正面突破よ!! 」

傭兵「了解したっ!!! 」ダンッ



憲兵F「っ!? 速っ………がはっ!? 」バキィ



憲兵D「こいつ…………ぬおっ!?」ガキィ



憲兵D「くそっ!」ブンッ



傭兵「…………」ダダッ

傭兵「了解したっ!!! 」ダンッ



憲兵F「っ!? 速っ………がはっ!? 」バキィ



憲兵D「くっ…………ぬおっ!?」ガキィ



憲兵D「くそっ!」ブンッ



傭兵「…………」ダダッ





憲兵D(こいつ、まさか…………)

憲兵A「鞘に収めたままだと……!? 舐めた真似を!!」ブンッ



傭兵「………」ギィン



ダッ



憲兵C「ぐおっ!」



憲兵E「ぐはっ!」



憲兵B「くそっ! 動き回りやがって……」ブンッ



ガキィ



憲兵D(一歩も立ち止まらないつもりか…………!?」

ミス

>>53>>56は無視で

傭兵「………」ブンッ



ヒュオッ



憲兵D「くっ……!?」ガッ



憲兵D(剣の……鞘……!?)



ガッ



憲兵D「かはっ……」ドサァ



傭兵「………」

憲兵A「な、なんて奴だ……」



憲兵B「くっ……お前は隊長に知らせろ!俺は少しでも足止めする!!」



憲兵A「わかった! やられてくれるなよ!!」ダッ



憲兵B「………お前のような奴は初めてだ、国家憲兵に歯向かうなんて」



憲兵B「密告者に聞いたぞ。貴様ら、革命を起こしたいらしいな」



少女(…………)

憲兵B「だが、それもここまでだ。この街にはあの方がいる!『跳ね馬』………我らの隊長が!!」



傭兵(…………『跳ね馬』?)



憲兵B「さあ、国家憲兵隊の矜恃、思いしれ!!」ダッ



傭兵「…………」



ガギィン………



憲兵B「…………」



カラン……カラン……



憲兵B「…………くそっ」



ドサァ

ディーノ「俺が憲兵なのか?俺キャバネッロファミリーのボスだぞ」

>>62
残念ながらリボーンSSではないのです

>>62
残念ながらリボーンSSではないのです

>>62
俺も思った

少女「お見事」パチパチパチ



傭兵「………『跳ね馬』というのは?」



少女「え? ああ、ここの憲兵隊長がそう呼ばれてるの。南部戦線での渾名だとか。どうかしたの?」



傭兵「いや………なんでもない」



少女「西門の馬小屋に馬を繋いであるわ。そこまで逃げればこっちのものよ」



傭兵「ああ」



タッタッタッタッ

東の都ーーー西門



少女「なんとか……逃げ切れそうね……」ゼェハァ



傭兵「ああ、このままいけばいいが……」



少女「あなた………すごいわね………。これだけ走って……息一つ切らさないなんて……」ゼェハァ



傭兵「鍛えているんでな」



傭兵「 あの馬小屋だな?」



少女「ええ、ちょっと待ってて、馬を連れてくるわ」ゼェハァ



「………放て」

「………放て」



ヒュオッ



傭兵「……っ!?」ギィンッ



少女「きゃっ……!? 何!?」



傭兵(矢………まさか!?)バッ



「久しぶりだな………」


隊長「やはり、お前だったか」



傭兵「『跳ね馬』………」



隊長「南部戦線以来か………懐かしいものだな」



隊長「…………脱走兵がこんな所で何をしている………?」

いいねえ

少女「え………?」



傭兵「…………貴様こそ、偉くなったものだな、『跳ね馬』」



隊長「ほざけ、同じ分隊長だっただろう」



隊長「なあ、『銀狼』?」


少女「………!?」



ザワッ………!!



憲兵G「『銀狼』!? 」



憲兵H「あの、百人斬りの『銀狼』か!? 」



憲兵I「そんな!? 奴は南部戦線で死亡したと………」



傭兵「……また、その名で呼ばれるとはな……」

隊長「私も、またお前に会えるとは思わなかった。てっきりどこかで野たれ死んでいるとばかり……」



隊長「戦うために生きてきた男が、戦うことを放棄したのだからな。お前が他に生きる術を持っていたことに驚いたよ」



隊長「とは言っても、結局はそういう場所に収まるらしい……」



傭兵「…………」



隊長「戦場からは逃げ出せても、戦いを欲する心には抗えんか」

傭兵「………違う」



隊長「違わんさ。仲間を斬り伏せてまで逃げたかと思えば、再び戦を求めて革命家気取りか? 節操のない奴め……」



少女(仲間を…………?)



隊長「実に……許し難いっ………!」ギリッ



傭兵「………そうだ、お前はそういう奴だった……」

傭兵「何よりも規律を重んじ、それに反する者は…………王国に反する者は、決して許さなかった」



傭兵「だからこそ、今の歪んだ王国の姿が見えてこないんだろうな……」



隊長「黙れ。反逆者の言葉など、聞く耳を持たん」



隊長「戦場を共にしたせめてもの情けだ。私自ら断罪してやる……」

憲兵A「隊長! 我々も……!!」



隊長「お前たちは下がっていろ、邪魔になるだけだ。次の矢は準備しておけ」



隊長(奴の本分は多対一………。乱戦に乗じて逃げられても厄介だ)



隊長(一騎討ちで確実に仕留める……!!)



隊長「行くぞっ!!」ダッ



傭兵「………」スゥ…



ガギィン ……!!!!

しえん

憲兵G「まさか、こんな所で南部戦線の英雄二人の戦いが見られるなんて……」



憲兵H「へっ! たとえ『銀狼』だろうと隊長のクレイモアにゃ敵わねぇよ」


憲兵I「おい、気を抜くな! 相手はあの『銀狼』だぞ!? 」



少女(………『銀狼』)



少女(死んだはずの南部戦線の英雄が、なんで生きて………それに傭兵なんて……?)

ガキィ ギィン


傭兵(一撃一撃が重い………鈍ってはいないようだな)ギギギ



隊長(貼り付いて抑え込む……! こいつのスピードは脅威だ……)ギギ



傭兵「ちっ………!」バッ



隊長「逃がさんっ!」ダッ

ガッ


傭兵「ぐっ………」ギギ……



隊長「相変わらずすばしっこいな。だが、こうも貼り付かれてはそれも活かせんだろう? 」ギギギ……



傭兵「それは………どうかなっ!!」ガギィッ??


バッ


隊長「また下がるか、無駄な事を!!」ダッ



傭兵「………」タンッ



ギュオッ????

隊長「っ!!」ガッ



傭兵「………」ズザザザザッ??



隊長「………すれ違い様に一太刀」



隊長「変わらず、という訳ではないようだな……」ツゥ



憲兵G「た、隊長が血を……!?」



憲兵H「そんなバカな!!」

隊長「……….感謝する」



隊長「戦争が終わり、この街の憲兵隊長になってから、ここまで気持ちが昂ぶったのははじめてだ」



隊長「街のチンピラや反逆者を斬り伏せても、あの頃のような高揚感も充足感も得られなかった……」



隊長「やっていることはあの頃と変わらないはずだ………。正義の刃を振るい国に仇なす者を滅する、なのに何故………」

傭兵「………王国への忠誠心は、偽りだったのか……?」



隊長「それは本物だ。だが、その気持ちと同じかそれ以上に強い相手との闘争を望んでいたんだ」



隊長「人のことは言えんな……。国のため正義のためと、高尚な理由を掲げた所で」



隊長「私も所詮、闘いに狂った一人の戦士だったという訳か」

傭兵「………俺は、闘いに狂ってなどいない」



隊長「ふっ……認めぬのならそれも構わんさ」



隊長「さあ、決着をつけるぞ『銀狼』。この国を斃すというのであれば、私を退けてみろ!! 」ダッ



傭兵「元よりそのつもりだ……。推し通る!!」ダッ



ギィン………

隊長「…………」



傭兵「…………」



隊長「見事だ………」


ドサァ

憲兵G「た、隊長!!」



憲兵H「担架だ、急げ!」



憲兵J「あの男を逃がすな! 全員で取り押さえろ! 」



ミシッ

バキャァッ!!

憲兵たち「!?」



傭兵「!?」



少女「こっちよ! 乗って!」



憲兵K「あ、あの女、馬を……!?」



憲兵L「いつの間に……!?」



傭兵「すまない、助かる!」

隊長「待て………傭兵……」



傭兵「……?」



憲兵H「隊長、ご無理は……」



隊長「お前が戻ったことは、すぐにでも王都に伝わるだろう」



隊長「お前は脱走兵で、ましてや今は革命家に与する者だ………」



隊長「気をつけろ。奴は、『黄金鹿』は………喜んでお前を狩りに来るぞ」



傭兵「…………」






『ありがとう、これで君を殺せるよ』




傭兵「…………っ」ズキッ



少女(…………)



隊長「奴だけじゃない。名のある将兵や、腕利きの傭兵たちがお前の首を狙ってくる」



隊長「修羅の道だぞ、それでも進むのか?」



傭兵(…………)



少女「…………」

傭兵「………今の俺は、彼女の剣だ」



傭兵「俺はただ、彼女の前に立ちふさがる敵を斬り伏せ、道を開く」



傭兵「たとえその先が茨であろうと………」



傭兵「……そういう契約なんでな」



隊長「……ふっ、そうか」



隊長「行け、賤しい雇われの犬め」



隊長「二度と会わないことを祈る」



傭兵「ああ、俺もだ」



ドカカッ ドカカッ ドカカッ

王都ーーー王宮


「彼が、戻ってきたようですよ『黄金鹿』」



「そうか、そろそろだと思ってたよ」













「もう七年も経つのか………早かったような、長かったような……」トクトク



「正確には、七年三ヶ月と四日です」



「君は本当に真面目だねぇ」スッ



「いえ、勤務中ですので」



「まあまあそう言わずに。戦友の凱旋なんだ、乾杯で共に祝おうじゃないか」スッ





黄金鹿「おかえり、『銀狼』」キンッ



第一章 完



とまあこんな感じでやって行こうと思います。厨二二つ名全開剣客バトルモノです。

おつ
続きがはよ!

はよ!

それでは第二章始めていこうと思います

それでは第二章始めていこうと思います

ーーーーーーーーー


少女(…………『銀狼』)



少女(南部戦線で名を挙げた、王国屈指の剣士)



少女(圧倒的な強さで南の共和国兵士に恐れられた)



少女(出生や肉親に関する情報は不明、16歳で従軍)



少女(大規模な実戦は南部戦線が初めて…………にも関わらず、目覚ましい戦果を挙げ、その名を国内外に轟かせる)

傭兵「おい」



少女(しかし、終戦間際に戦場で命を落とす……)



少女(その際の詳しい状況は記録されていない………私の『銀狼』に関する知識はそれだけ)



傭兵「…………おい」



少女(でもあの時、彼は確かに脱走兵と呼ばれた)

少女(一体どういうこと? 死んだはずの英雄が生きていて、実は脱走兵だった? )



傭兵「聞こえていないのか? 」



少女(考えられる可能性は、脱走したはずの彼を英雄として祭り上げるために戦死扱いにした……。ならどうして…………)



傭兵「おい! 」



少女「ひゃ!? な、なによ! いきなり大声出さないでよ! 」

傭兵「何度も声を掛けたじゃないか……」



傭兵「………その、すまなかった」



少女「………何が? 」



傭兵「俺の過去を黙っていたこと………。それに、君の父親の仇をとれなかった」



少女「………いいわよ、別に」

少女「あまり話したくもないことなんでしょ? 部下の悩みは、相手から打ち明けてくるまで待てってお父さんも言ってたし」



少女「それに、あの男はお父さんの仇じゃないわ」



少女「あの時の憲兵隊長は、すぐ王都に転任しちゃってね。あなたが戦った相手はその後に配属されたのよ」



傭兵「……そうか」



少女「てゆーか、隠してたつもりかもしれないけど、あなたが南部戦線を経験した元軍人だってことぐらいわかってたんだから」

傭兵「ほう………根拠は? 」



少女「あなたのその剣」



少女「紋章は消してあるけど、十年前に軍で正式採用された物と同じ型だわ」



少女「後、酒場でチンピラを倒した時の動き、あれは王国軍式の軍隊格闘ね」



少女「お父さんの商談について行った時に何度か見たことがあるの」



傭兵「………なるほど」

傭兵「君を上司にして、正解だったかもな」



少女「当たり前よ、これでも商人の娘なんだから」



少女「お淑やかで可愛いだけじゃ、やっていけないのよ」



傭兵「…………まあいい。それで、これからどうするんだ? 」



傭兵「すぐに手配書がまわるだろう、これからは大手をふって歩けなくなるぞ」

そのなは・・・・名探偵少女

少女「そうね、まずは北を目指すわ」



傭兵「北? 北の都へ行くのか? 」



少女「まあ立ち寄ることになるかもしれないけど、目的はそこじゃないわ」



少女「目指すは、革命軍本部よ」



傭兵「革命軍………」

少女「本部と言っても、そんなに目立つ訳にもいかないから、北の国境付近の村にカモフラージュして置かれてるらしいわ」



傭兵「ここから目指すとなると一ヶ月はかかるだろうな」



少女「ええ、もちろん道中で仕事兼世直しもドンドンしていくわよ」



傭兵(世直し……か)



傭兵「ああ、そういえば」

少女「何よ? 」



傭兵「旅の資金の方はどうなっている? 信用できる場所に預けてある言っていたが……」



少女「………………あ」



傭兵「………」



少女「………」



傭兵「まあ、何処かに立ち寄る暇はなかったしな」

少女「………こ、ここに銀貨百枚あるわ! 」



傭兵「それは俺の契約金のはずでは………」



少女「あ、あなたはもう私の専属なんだから! 必要なものがあれば現物支給してあげるわよ! 」



傭兵「いきなり未払いとは、やはり上司を間違えたか」



少女「う、うっさいわね! もう、グダグダ言ってないで先を急ぐわよ!」



傭兵(やれやれ……)

三日後

王国東部ーーー山間部の村



傭兵「大丈夫なのか? 村に入って」



少女「まだあれから三日。いくらなんでもこんな場所までは手配書もまわってないはずよ」



傭兵「だといいんだが………」

村人A「………」ヒソヒソ



村人B「………」チラッ



傭兵(…………)



傭兵「この村、何かありそうだな」



少女「ええ………」



少女(警戒している……? いや………)



村人C「………」



少女(………)



少女「とにかく、何処かで話を聞きましょう」


ーーーーーー

ーーーーーー


村長「ようこそお越しくださいました。大したもてなしもできず恐縮ですが、どうぞごゆるりと」



少女「いえいえ、とんでもありません。私達のような旅の者をこんなに暖かく迎えてくださるだなんて、感謝の極みです」ニッコニッコ



傭兵(営業スマイルと言うやつか………)



村長「今夜はお部屋をご用意させていただきます。お気の行くまで旅の疲れを癒してください」



少女「はい、ありがとうございます!」ニッコニッコ

少女「ところで村長、一つお聞きしたいことがあるんですけど」



村長「はいはい、何なりと」



少女「今、何かお困りのことはありませんか? 」



村長「…………と、言いますと? 」



少女「ここにご案内いただく前に、少し村の様子を見て回ったんです」



少女「すると、村の方々はあまりお元気ではないようで………」



少女「私達、旅の傍ら人助けをしているんです」



傭兵(無償ではないだろうがな………)



少女「一宿一飯の恩義、返させてはいただけませんか? 」

村長「………………」



村長「いえいえ、ご心配にはお呼びませんよ」



村長「お客様の手を煩わせる訳にもいきませんしな」



村長「ささ、部屋の準備をさせますので、どうぞごゆっくり………」



傭兵「………………」


ーーーーーー

ーーーーーー


傭兵「十中八九、何かあるな」



少女「でしょうね」



少女「ま、あの様子じゃ何聞いても話してはくれそうにないわね」



少女「今日のところは休んで、明日からまた調べてみましょ」



傭兵「ああ」








???「…………」コソッ

深夜

少女の宿泊部屋


ガチャッ


???「…………」コソッ



???(………ぐっすり寝てるな)ギシッ


ギッ……


ギッ……


ギッ……



???「悪く思うなよ……」グッ


バサァッ!!

???「………なっ!?」



???「いない!? どこへ…………ぐあっ!!」ガッ


ドサァ


「まったく、私の寝込みを襲おうだなんて………」



少女「百年早いのよ」



村人A「うう………」



傭兵「…………」



少女「あら、そっちも終わった? 」



傭兵「ああ」ポイッ


ドサッドサッ



村人B「」



村人C「」

少女「一体どういうつもりなんだか………。ま、お見通しだったけどね」



傭兵「動きも素人同然、ただの村人には違いないだろうが………」


ドカドカドカ


少女「あら? 」



傭兵「………」

村人DEF「………」



村人GHI「………」



少女「今度は団体様みたいね」



傭兵「………そのようだな」


ーーーーーー

ーーーーーー
翌朝


村長「………な、なんと」



村人達「……………」ボロッ



少女「さて……」



少女「これはどういうことなのか」



少女「洗いざらい吐いてもらえる?」ニコッ



傭兵(昨日より生き生きしてるな……)

村長「………」チラッ



村人達「……………」



村長「………………もっ」



村長「申し訳ありませんでした! 」



村長「仕方がなかったんです…………。や、奴らに脅されて………」



傭兵(…………)



少女「………ま、そんな話だろうとは思ってたけど」



少女「詳しく話しなさい」



ーーーーーー

ーーーーーー

村長「ちょうど、一年程前のことです」



村長「近くの山に、『山犬』と名乗る山賊達が住み着き始めました」



傭兵(『山犬』…………?)ピクッ



村長「奴らは突然この村を襲い、村の女たちを攫っていったのです」

ーーーーーー


山犬頭領『女たちを返してほしけりゃ、村に立ち寄った旅人を捕らえて連れて来な。俺の決めたノルマをクリアできたら返してやるよ」


山犬頭領『ギャハハハハハ!!」


ーーーーーー

村長「以来、私達は少人数の旅人を捕らえては山賊の元に連れて行き続けています」



村長「私達は、後どれだけ罪のない旅人達を罠にかけねばならないのでしょうか…………」



傭兵(…………)



村長「その腕前、さぞ名のある傭兵殿とお見受けいたします」



村長「何卒、私達にお力添えいただけませんか…………」



少女「…………それは、依頼ね?」



少女「だとしたら、それなりの金額を貰うことになるけど構わないかしら?」



村長「…………この村の全財産をはたいてでも、必ずや」



少女「そう、じゃあ…………」





少女「契約成立ね」




ーーーーーー


少女「さて、それじゃ行くわよ」



傭兵「いや、君はここで待て」



少女「あん?」



傭兵(なぜガラが悪い………)



傭兵「相手は最低でも二十人前後、それも何をするかわからない山賊共だ」

傭兵「少々危険が過ぎる。手っ取り早く片付けてくるからおとなしく……」



少女「い、や、よ!」



少女「部下の仕事を見届けるのも上司の役目なの! 」



傭兵「……………いいか? これは君のために言っている訳じゃない」



傭兵「君を盾に取られでもしたら、俺は満足に戦えない。そうなれば俺自身も危険になる」

傭兵「こんなところで、山賊相手に命を落とすなど御免被る」



少女「むぅ…………」



少女「仕方ないわね、今回だけよ?」



傭兵「ああ、ありがとう…………。では、行ってくる」



少女「………行ってらっしゃい」フリフリ


ーーーーーー

山賊なら女は犯される恐れも・・・だとしたら浚われた人たちは

傭兵ものって面白い

ーーーーーー

ザッザッザッ

傭兵(傾斜はそんなにきつくないが、少々起伏が激しい………それに落ち葉のせいで滑りやすくなっている)



傭兵(相手側はこの地形にも慣れているだろうからな…………)



傭兵(十分に注意を……………っ!?)バッ


ドドッ ドスッ


傭兵「何処から…………」ズザッ


ヒュッ ヒュッ

傭兵(ちっ…………!)バッ



傭兵(十時の方向、一気に距離を………)


ヒュオッ


傭兵(っ!? 背後から!?)ギィンッ


ザザザザザザ


傭兵(姿は見えない………が、囲まれている………)



「よーぉこそぉー! 俺たちの庭へ」

山犬頭領「歓迎するぜぇ」



傭兵「……………」



山犬頭領「んー、最初ので死ぬと思ったんだけどなぁー。結構やるじやん? 」



山犬頭領「お前、あの村の連中が雇った傭兵かなんかか? 」



傭兵「………そうだが」

山犬頭領「あーあー、遂に来ちゃったか。あいつらどうにも躾が効いてねぇようだ」



山犬頭領「ちょいとお仕置きが必要かもなぁ………」ニヤァ



傭兵「……………」ザッ



山犬頭領「おおっとぉ! 動くなよぉ~、それ以上近づいたら針鼠になっちまうぜ? 」



傭兵「………お前がここの頭領か? 」



山犬頭領「そうだよ、こんだけ偉そうにしてりゃわかんだろ」

傭兵「二三聞きたいことがある」



山犬頭領「あー………いいぜ。冥土の土産ってやつだな」



傭兵「攫った村の女たちはどうしている? 」



山犬頭領「おーおー、心配しなくても大事に扱ってるぜぇ!」



山犬頭領「そりゃあもう、大事に大事にな………」ニヤニヤ

傭兵「…………二つ目だ、連れて来られた旅人たちはどうした? 」



山犬頭領「決まってんだろ、人買いに売っ払ったさ」



山犬頭領「身元のハッキリしねぇ旅人は絶好の商品だからなぁ。ヒヒッ!」



傭兵「…………最後の質問だ」



傭兵「村人たちとの約束を、守るつもりはあるか? 」



山犬頭領「ヒャッハッハッハッ!!んな訳ねぇぇだろぉ! 馬ぁ鹿がぁ!」



傭兵「そうか……………ならば」




傭兵「…………斬る!」



山犬頭領「やってみろっつぅの! 」



今度からなるべくキリのいいとこで切りますね

がんばれ

sage忘れすまん

sage忘れすまん

傭兵「………フッ!!」ブゥンッ!


バサァッ!


山犬頭領(落ち葉を…………!!)



山犬頭領「手前ぇら! 射て!!」


ヒュッ ヒュッ ヒュッ



ドドッ ドスッ

山犬頭領「…………」


パラッ パラッ


山犬頭領(いねぇ…………!?)


「ぐあっ! 」


「ぎゃあっ!」



山犬頭領「っ!? どうした!? 状況報告!」

「うわぁ!」


「ぐはっ!」



山犬頭領「くそっ……….プラン4だ!! 」



山犬『了解!!』



山犬頭領(密集し、互いの背をカバーする………)


ザザザザザザ

山犬 頭領(何者だあいつは…………、この不安定な地形で俺たちよりも速く動けるなんて………くそっ!)


ザッ


山犬頭領「………!」



傭兵「……………」



山犬頭領「………よお」



山犬頭領「やるじゃねぇか、手前ぇ」



傭兵「…………『山犬』という名」

山犬 頭領(何者だあいつは…………、この不安定な地形で俺たちよりも速く動けるなんて………くそっ!)


ザッ


山犬頭領「………!」



傭兵「……………」



山犬頭領「………よお」



山犬頭領「やるじゃねぇか、手前ぇ」



傭兵「…………『山犬』という名」

傭兵「ただの山賊にしては統率された動き………」



傭兵「そして、若干だが軍隊剣術の名残がある」



傭兵「貴様ら、『山犬部隊』か………?」



山犬頭領「…………へぇ」



山犬頭領「まさか知ってる奴がいたとはなぁ………。手前ぇ、ただの傭兵じゃねぇな?」

傭兵「……戦時下、西の公国からの進軍を恐れた軍上層部は、少数精鋭のゲリラ部隊を複数編成し、国境に配備した」



傭兵「その内の一つが、『山犬部隊』」



山犬頭領「………………」



傭兵「名の通り山野を駆け、巨大な敵の喉笛を食い破り、幾度となく敵の斥候部隊を退けたと聞く………」



傭兵「それほどの兵士たちが、なぜ山賊などに身を堕とした?」

山犬頭領「…………終戦の報せを聞いて、俺たちは喜んで王都に帰った」



山犬頭領「『俺たちも英雄の仲間入りだ』、『死んだ仲間も喜ぶだろう』ってな……….」



山犬頭領「だがよ、実際帰投した時、国の役人がなんて言ったと思う?」



傭兵「……….」



山犬頭領「『山犬などという部隊は存在しない』だとよ!!傑作だよなぁ!?」



山犬頭領「ようは西の連中への言い訳さ。『お宅ンとこの斥候ブッ殺してたのはうちの部隊じゃありませんから』って具合でよ! 」

山犬頭領「…………終戦の報せを聞いて、俺たちは喜んで王都に帰った」



山犬頭領「『俺たちも英雄の仲間入りだ』、『死んだ仲間も喜ぶだろう』ってな……….」



山犬頭領「だがよ、実際帰投した時、国の役人がなんて言ったと思う?」



傭兵「……….」



山犬頭領「『山犬などという部隊は存在しない』だとよ!!傑作だよなぁ!?」



山犬頭領「ようは西の連中への言い訳さ。『お宅ンとこの斥候ブッ殺してたのはうちの部隊じゃありませんから』って具合でよ! 」

山犬頭領「笑わせるぜ………。あんだけ殺して殺されて、戦争が終わりゃあ使い捨て。そんで、国民の英雄視は最前線の部隊が一手に引き受けるってんだからな!!」



傭兵「…………….」



山犬頭領「『黄金鹿』、『翡翠』、『飛蝗』………そして『銀狼』。俺たちの名は誰にも知られず消えてったつーのによぉ……………おかしいよなぁぁ!?」



傭兵「…………自分たちの名を世に知らしめるために、こんな真似をしたと言うのか…………」



傭兵「随分と小さな仕返しだな」



山犬頭領「ハッ! わかっちゃいねぇな。これまでのは下準備だ、終戦から七年、長かったぜぇ………」

山犬頭領「コソコソコソコソ小っちぇ金稼いできたけどよ、それももう終わる」



山犬頭領「これから始まるんだよ、俺たちの復讐は!!」



山犬頭領「オードブルだ手前ぇら!! 獲った奴にはご褒美やるぞ!! 」



山犬『おおおおぉぉぉぉぉ!!!」




傭兵「…………」スゥ

ヒュッ


ザシュッ ザシュッ ザシュッ



山犬A「なっ………!?」



山犬B「は………?」



山犬C「あ………」


ドサッドドサッ



傭兵「…………」チャキ……


山犬『………………』



山犬頭領(は………速ぇ……!?)

山犬D「お……おおぉぉぉ!!」



山犬E「らああぁぁぁぁ!!」


ザザシュッ


山犬頭領(…………神速の剣技……)



山犬F「はぁっ!!」



山犬G「ぜやぁぁ!!」

傭兵「……………」ギィンッガギィ



山犬頭領(…………銀髪、長身)


ドザッドサァ


山犬頭領(まさか…………………まさか!?)



傭兵「…………」ヒュッ



山犬V「がっ…………」ドサァ



傭兵「後は………お前だけだ」

山犬頭領「…………名乗れよ、傭兵」



傭兵「…………………『銀狼』」



山犬頭領「………………へっ」



山犬頭領「そうか…………そうかよ…………」


ギリッ


山犬頭領「手前ぇも……………英雄かよ!!!」ダッ



傭兵「………いいや」








傭兵「ただの人殺しだ」


ザンッ

ーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー

ザッザッザッ

傭兵「…………」

ザッ

少女「…………」



傭兵「…………」



少女「………終わったの? 」



傭兵「ああ………」

少女「そ、ご苦労様」



少女「帰りましょ、私お腹空いちゃった」



傭兵「ずっとここで待っていたのか……?」



少女「ええ、部下が頑張ってるのに、上司がのんびり休んでちゃダメでしょ」



傭兵「そうか…………」

傭兵「…………」



少女「………はぁ~~~ぁ」



少女「なーに、しけた顔してんのよ」



少女「一仕事終えたんだからもっといい顔しなさい! いい顔!」



傭兵「いい顔と言われてもな………」

少女「だいたいねぇ、あなたいっつも仏頂面じゃない。商売の基本は笑顔なのよ!笑顔! 」



傭兵「わかったわかった…………」



傭兵「………まったく」クスッ



少女「ちょっとー、ちゃんと聞いてるの!?」



傭兵「聞いてるよ。笑顔は長生きの秘訣なんだろう?」



少女「聞いてないじゃなーい!!」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

傭兵「よかったのか? 報酬を受け取らなくて」



少女「ええ、山賊共に巻きあげられて備蓄もほとんどないみたいだったし」



少女「ここはツケといてあげるわ」



傭兵「お優しいことだが、未だに俺が一切の給金を貰っていないことを忘れないでくれよ」

少女「わっ、忘、忘れてないわよ!」



傭兵(疑わしい…………)



傭兵「で、次はどうするんだ?このまま北の都に向かうのか?」



少女「…………いえ、その前に一仕事よ」



少女「山賊の頭領は、捕らえた旅人たちを売ったと言っていたのよね?」



傭兵「ああ、確かにそう言っていた」



少女「なら、この近辺の街には人身売買を生業にしている組織があるはず…………」



少女「追うわよ、この『悪』!」



傭兵「ああ……了解した」

第二章 完


英雄になりたかった男たちでした
更新おそくなってすいません


>>1はMGS3やったことあるだろ

大変遅くなりましたすいません(土下座
第三章はじめさせてください

>>164
メタルギアシリーズはやったことないんですよ

大変遅くなりましたすいません(土下座
第三章はじめさせてください

>>164
メタルギアシリーズはやったことないんです

大変遅くなりましたすいません(土下座
第三章はじめさせてください

>>164
メタルギアシリーズはやったことないんですよ

ーーーーーーー

王国東部ーーー港街


少女「この辺りで奴隷商が隠れているとしたら、ここね」



傭兵「国外へ逃げやすくするため………か」



少女「そういうこと。商品の運搬もしやすいしね」

傭兵「それにしても、大丈夫なのか? そこそこ大きな街だ、一応フードは被っているが………」



少女「それがね、おかしいのよ」



少女「注意しながら歩いてたけど、私たちの手配書がまったく見当たらないの」



少女「………もしかして、『跳ね馬』さんとやらが昔のよしみで見逃してくれたとか? 」



傭兵「そんなことをするような奴じゃないさ」

少女「うーん…………ま、いいわ。手配書はないけど、憲兵には顔が割れてるかもしれないから注意してね」



傭兵「ああ」



傭兵「で、どうやって探す? 何の手がかりもないんだろう」



少女「そうね、やっぱりアレしかないわ」



傭兵「アレ?」



少女「そ、アレ」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

バァン!!


チンピラA「あ? 」



チンピラB「なんだぁ嬢ちゃん、 おじさんたちに何か用かい? 」



少女「奴隷商の居場所ってわかるかしら? 」



少女「ちょっと用があるんだけど」



チンピラC「おやおや? 自分から身売りにきたのかなぁ? 」

チンピラB「そりゃいいや!どうせなら、その前に俺たちと遊ぼうぜ?ギャッハッハッハッハッ!」



少女「…………質問に答えなさい」



少女「奴隷商はどこにいるのかって聞いてるのよクズ共」



チンピラA「…………よーし、この嬢ちゃんは口のきき方を知らないらしい」



チンピラB「俺たちが教えてやろうぜ、たっぷりと…………」



チンピラC「体になぁ!!」



少女「………じゃ、後はお願い」



傭兵「了解した……」ヌッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

少女「さあ、奴隷商の居場所を教えてもらえるかしら? 」



チンピラA「し、知らねぇよ…………俺たち、ただのチンピラなんだ………」ボロッ



少女「ふーん………」



少女「らしいわ、次行きましょ」



傭兵「えらくあっさりだな、もういいのか?」



少女「ええ、いきなり当たるとは思ってなかったし」



傭兵「……………アレ、などと言うから何か策があるのかと思ったが」



傭兵「とんだ力押しだな」



少女「力押しだって立派な策よ」






少女「というわけで、次行くわよ」

ーーーーーーーーー

なんでこんなアホみたいに改行するの?

見やすいからじゃね
乙!

文句垂蔵

ーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーーー

屈強な男「ぐへっ……」

ドサァ

密売人「ひぃっ! わ、わかった、教える………教えるよ! だから見逃してくれぇ! 」


少女「あら、ありがと。助かるわ」


傭兵(散々脅しておいて何を言うか……)

密売人「み、港の倉庫街………16番倉庫だ……」


少女「本当でしょうね………?」


密売人「ほ、本当だ! 信じてくれ!」


少女「まあいいわ。もし嘘なら戻ってくるから、そのつもりでね?」


密売人「……っ!?」コクコク




傭兵「………都合6件でようやくか」


少女「ま、こんなもんね」

傭兵「だが、そこで見つけられるとは限らないだろう? 奴隷商のような人間なら、忙しく動き回っていると思うが………」


少女「いえ、今なら確実に拠点にいるわ」


傭兵「 何故わかる? 」


少女「ここまで派手に動けば、彼方も気づいているはずよ、『何者かが自分を狙っている』と」


少女「となると、ずる賢い悪商人が考えることは一つ………」

傭兵「逃げ、か」


少女「そういうこと。今頃、せっせと荷物でもまとめてるでしょうよ」


傭兵「相変わらず、考えていないようで考えているな」


少女「ちょっと、失礼なこと言わないでくれる? 」


少女「あなたの上司は頭のいい女なんだから」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

水夫A「16番船倉、出航準備だ!」


水夫B「何言ってやがる! 一昨日整備始めたばっかりじゃねぇか!」


水夫A「文句言うな! 常連客が慌てて依頼をキャンセルしていったんだとよ。おら、さっさとしろ!一時間以内に仕上げるぞ」


傭兵「なにやら慌ただしいな……」


少女「予想的中ってとこかしら」

少女 「16番16番……っと、ここね。いかにも小悪党の隠れ家って感じだわ………」


傭兵「では、いくか………」



???「ちょいと、そこの旦那」



少女「………?」


傭兵(屋根の上………何者だ……)


???「よっ、と」スタッ


???「俺は『針鼠』。フリーランスの傭兵だ」


針鼠「御宅らか? うちのクライアントのこと嗅ぎ回ってる連中ってのは」


傭兵「おそらく、そうだろうな」


針鼠「そうかいそうかい、そんじゃあ悪いけど、今日の所はお引き取り願おうか。依頼主様はこれから外出のご予定だ………」


傭兵「そういう訳にも……少女「そういう訳にもいかないのよ! 」


傭兵「………」

少女「あなたは、その依頼主が何を商っているか知ってるの?」


針鼠「さてな、俺は『ここから先には誰も通すな』って依頼を、忠実に実行してるだけなんでね」


針鼠「そもそも俺は傭兵なんだ。金さえ貰えりゃ何だってする」


針鼠「するなと言われりゃ依頼主にも干渉はしないし、興味もない」


針鼠「例えそいつが、クソみたいなクソ商人でもな………」


少女「っ………」

傭兵「何を言っても無駄だ。これこそが、傭兵としての正しい在り方なんだ」


傭兵「金こそが奴らの行動原理。そのためなら友人や恋人でさえも簡単に裏切る……。金でしか縛れない、賤しい犬だ」


針鼠「言ってくれるじゃねぇの御同類。そういうあんたは、金で雇われたんじゃねぇってのかよ? 」


傭兵「俺は…………」

傭兵「………俺は、違う」


傭兵「確かに、今は彼女に雇われる形で共にいる」


傭兵「だが、俺を従えたのは金じゃない、彼女の強い意志が、俺を従えた!!」


少女(…………)

針鼠「………はっ!そうかい、そりゃ大層な理由だ! 」


針鼠「まあ何にしたって、俺のやることは変わらねぇよ」ヒュオッ


傭兵(軽槍………)


ガリガリガリガリッ


針鼠「この線からこっち、一歩たりとも、何人たりとも、猫の仔一匹通しゃあしねぇ!!」


針鼠「さぁ、どうする旦那ぁ!? 退くか、串刺しか、二つに一つだ!」

お待たせしました
また少しずつ更新していきます

何事も突き抜けるのが大事だね

墓穴掘っても掘りぬけて突き抜けたのなら私の勝ち!

傭兵「無論、推し通る………」


傭兵「あまり悠長にやっている時間はない………悪いが、最初から全速でいかせてもらう」


針鼠「御託はいいからさっさとこいよ! ビビってんのかい、旦那ぁ!?」ヒュオンッ


傭兵「………ほざけっ!!」


ゴウッ!!


少女(速いっ!?)


傭兵(獲った………!!)





ガギィ………ン

傭兵(………………なに?)


ギ………


針鼠「………へぇ」


ギギ……ギ……


傭兵(今のを………合わせるか……)ギギ


針鼠「旦那もなかなか……速い、じゃんっ」ギギ……ギッ

傭兵「………ちっ!」ギィンッ


ザザッ


少女(今の一撃、『跳ね馬』を倒した時と同じか、それ以上に速かった………)


少女(あの男………強い)


針鼠「へっ、初めてだよ、俺の間合に踏み込んで無事だった奴は」


針鼠「一目見た時からそんな気はしてたけどよ、やるじゃん旦那」

傭兵「……貴様もな」


傭兵(いくら正面からとはいえ、あの一撃を防ぐか………)


傭兵「ならばっ!!」ドウッ!!


針鼠「おおっと?」


ザザザザザザ


傭兵(奴のあの速度、おそらく槍の間合での限定的なものだろう……)


傭兵(翻弄し、一撃を叩き込む……)

針鼠「おーおー、これまたベタな戦法じゃねぇか………」


傭兵(そこだ!!)ダッ!


針鼠「よっっとぉ!」ビュオッ!


傭兵「なっ………!?」


ザシュッ


傭兵「ぐっ……」ズザァ


少女「傭兵!」


傭兵「問題ない、掠めただけだ………」

傭兵(死角からの攻撃さえ迎撃するか………)


針鼠「かーっ惜しい! やっぱり速ぇな旦那!」


針鼠「でも、無駄だぜ」


針鼠「あんたがどれだけ速く斬り込んでこようが関係無ぇ」


針鼠「俺の槍は、それより一瞬速くあんたを貫く……」


傭兵「…………」


少女(あの傭兵が、押されてる………)


針鼠「『針鼠』に、死角はねぇよ」

少女(どうすれば…………)



傭兵「…………………すぅ」


傭兵「ふぅぅぅ……………」


傭兵「……………」スッ


カラン……カラン……


針鼠「………」ピクッ


少女(剣を、離した………?)


針鼠「おいおい、何のつもりだ旦那? もう投げちまったのかよ? 」


傭兵「…………」ザッ


少女(いや、違う………)


針鼠(あれ………は……)

少女「と、徒手空拳!?」


傭兵「……………」


針鼠「かっかっかっ! 傑作だぜ旦那ぁ!」


針鼠「手も足も出ねぇってんでトチ狂ったのかい? それとも剣一本分で速さが変わるってか?」


傭兵「どう、だろうな………」


針鼠「はっ! 来な、お望み通り穴あきにしてやるよ!」

傭兵「…………」ヒュッ


カンッ!


針鼠(っ!? 足下の剣を!?)


少女(蹴り飛ばした……!?)


傭兵「………」ダッ


針鼠「しゃら…………くせぇ!!」ギィンッ







トッ

針鼠(……………………一瞬)


トッ


針鼠(ほんの一瞬だけ………)


トッ


針鼠(剣手放したくれぇで、こうも違うのかよ)


トッ


針鼠(一瞬…………足りねぇ……)


傭兵「おおおぉっ!!」ギュオッ!!


バキャァ!!

針鼠「がっ…………!!」ドザァッ


カシャン………カラカラ


少女「………………すごい」



傭兵「……はぁ………はぁ」


ザッ

針鼠「……………」


ザッ


傭兵「………」チャキッ


ザッ


針鼠「……………」


ザッ




少女「待って」

傭兵「…………」


少女「そいつはもういいわ、本命に行きましょう」


傭兵「………いいのか、殺さなくて?」


少女「殺したいの?あなたは」


傭兵「………………」


少女「………………」


傭兵「………いや」


傭兵「わかった、行こう」

ーーーーーーー

まってた!
乙です

ーーーーーーー

バァン!!


奴隷商「ひっ……! な、何者だ!お前たち!?」


少女「何者、と言われても…………そうね、正義の使者とでも言っておこうかしら」


傭兵「………」

奴隷商「ふ、ふざけるな! よ、傭兵は………針鼠はどうした!?」


少女「ああ、彼なら外でのびてるわよ」


奴隷商「なっ………!? あの野良犬め!! いくら払ったと思ってる!!」


少女「…………そこの荷物」


奴隷商「!?」


少女「えらく大きいわね、一人で運べるのかしら? 」

奴隷商「いや………これは……」


少女「………」


カッ カッ カッ カッ


奴隷商「ま、待て………!」


バサァッ


傭兵「………」


奴隷達「…………………」


少女「…….かなり衰弱してるわね、商品として扱うなら、もう少し気をつけたらどう? 」

奴隷商「ぐ………おの、れ………」


少女「あなたと手を組んでいた山賊達も潰してきたわ」


少女「観念なさい、もう逃げられないわよ」


奴隷商「だ、黙れ!! 貴様らさえ消えれば済むことだ! 」


奴隷商「やれ!お前たち!! 細切れにして海に沈めろ!!」


手下達「…………」ザザッ


少女「…………どう? 」


傭兵「ああ、安心した。あの程度なら……」







傭兵「殺さなくてすむ」

ーーーーーーーー

少女「んーーっ!おわったおわった!」ノビーッ


傭兵「働いたのは俺だがな…………………」ピタッ


少女「………?」


少女「あ…………」

針鼠「よぉ………」ザッ


傭兵「………………」チャキッ


針鼠「まぁまぁ、そう身構えんなって、もうやり合う気はねぇよ……」


針鼠「………………何故、殺さなかった?」


傭兵「…………そうだな、質問に質問で返して悪いが」

傭兵「お前は、死にたかったのか?」


針鼠「……………………はっ」


針鼠「はっはははははははは!!そうくるかよ!ははっ、そりゃそうだよなぁ、誰だって死にたかねぇわ」


針鼠「でもよ、いつまでもそんなやり方が通ると思わねぇ方がいいぜ」


針鼠「これから先も、御宅らがこういった慈善事業をやってくってんならいずれ分かる」

傭兵「…………俺はなにも、不殺の道を行こうなどとは思っていない」


傭兵「武器を持たぬ者に刃を向けはしない、戦意のない者を嬲りはしない」


傭兵「だが、殺意には殺意を以って返す」


傭兵「お前はついているな。ギリギリまで殺す対象だった所を、彼女が止めてくれた」


傭兵「礼を言っておくことだ」

お、久々

針鼠「そうか、嬢ちゃんが………ありがとよ」


少女「礼を言われることじゃいないわ。私は、私と彼の信念を守っただけよ」


針鼠「なるほどね……。ちなみに俺の依頼主はどうした? どうせ殺しちゃいねぇんだろ?」


少女「ふん縛って、諸々の証拠と一緒に通りに捨てといたわ。そのうち憲兵が拾うでしょ」


針鼠「俺は突き出さなくていいのかい?」


少女「あなたは傭兵として依頼を果たそうとしただけでしょ。それに………」


針鼠「それに?」

少女「腕利きの傭兵に貸しを作っておくのも悪くないでしょ?」


針鼠「はっはっはっ! いい上司じゃねぇか!大事にしてやんなよ、旦那」


傭兵「………言われずとも」


針鼠「そんじゃあ、縁があったらまた会おうぜ。できれば、今度は背中を合わせて戦いたいね」


傭兵「お互い、生きていればな……」


針鼠「へっ…………」


ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー
王都ーーー王宮
王立近衛兵団本部


黄金鹿「…………やあ」


黄金鹿「遠路遥々よく来てくれた。怪我の調子はどうだい?」


黄金鹿「『跳ね馬』」


跳ね馬(隊長)「……………」

黄金鹿「久しぶりだね。東部憲兵隊長の就任式以来だから………えーっと……」


翡翠「5年と4ヶ月です」


黄金鹿「あぁ、そうそう。いや本当に久しぶりだ」


黄金鹿「覚えているかい? 前線の野営地で君が……跳ね馬「何故だ」


黄金鹿「………」


跳ね馬「何故奴らを………」


跳ね馬「指名手配していない………?」

第三章 完

傭兵よりも傭兵な男と傭兵の話でした。
次回からはもう少し更新頻度あげられるといいなぁ。まさか二ヶ月かかるとは……

乙!
針鼠はまたでたりするのかしら

おつ

第四章始めます

黄金鹿「………そんなことを聞くために、わざわざ王都まで来たのかい? 」


跳ね馬「そんなこと……だと?」


跳ね馬「ふざけるな!! 奴らは王政を覆さんとする反逆者だ! 」


跳ね馬「一度取り逃がしたからといって、そのまま野放しにする訳にはいかん!!」


黄金鹿「野放しじゃないさ、彼らの動向は把握している」

跳ね馬「ならば何故…………………まさか貴様……!?」


黄金鹿「そう、君なら解るだろう?」


跳ね馬「奴を自分の手で殺すため…………私欲のために逆賊を逃がすかっ………!!」ギリッ


跳ね馬「それは許されざる越権行為だ!!」チャキッ


翡翠「………………」

ヒュオッ


跳ね馬「…………っ!?」ビタァッ


翡翠「………控えなさい跳ね馬」


翡翠「あなたごときが団長に剣を向けるなど、それこそ許されざる行為です」


黄金鹿「…………下がれ、翡翠」


翡翠「…………」スッ

跳ね馬「…………ちっ」


黄金鹿「悪いね、いい部下なんだけれど、手が早いのが玉に瑕だ」


跳ね馬「ふん………貴様も相変わらずか……」


翡翠「…………」


黄金鹿「さ、話を戻そう」


黄金鹿「たしかに、僕は彼と闘いたいがために指名手配の申請を却下させた」

黄金鹿「だが考えてもみてくれ、彼と闘うためだけなら、憲兵隊に捕らえさせてここまで連れてくればいい話だろう?」


跳ね馬「それは…………」


黄金鹿「心配しなくてもいい、壁はしっかり準備している」


跳ね馬「壁………だと?」


黄金鹿「そう、ただで逃がしてもつまらない。それに報告通りなら、今の彼では僕の相手にならない」


黄金鹿「少しなり彼に成長してもらうために障害を用意させてもらった」

黄金鹿「さしあたっては彼らが次に向かう北の都、その憲兵隊長である………」


跳ね馬「『飛蝗』………か」


黄金鹿「そう、彼なら適任だ」


跳ね馬「………もし、銀狼が殺されたらどうする?」


黄金鹿「なら、彼もそこまでだったということさ」


黄金鹿「その時は飛蝗を殺して我慢するよ」

跳ね馬「……………」


跳ね馬(やはりこの男………)


跳ね馬(狂っている………たった一人の男と闘うために、ここまでするのか……)


跳ね馬(いや、第一に近衛兵団長といえど、指名手配の取り消しや憲兵隊長への指示などできるはずがない。それは中央憲兵隊の領分だ)


跳ね馬(英雄『黄金鹿』…………この男、どこまで…………)


跳ね馬(…………いや、疑うな。この身、この剣は王国のために………)


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

傭兵(……………)


傭兵(……ここは北の都、帝国の進攻に備えるため築かれた銀雪舞う要塞都市)


傭兵(ここへ辿り着くまでのおよそ二ヶ月、一つわかったことがある)

傭兵(俺の上司は…………)









ゴロツキ「てめぇ! もういっぺん言ってみろ!!」


少女「何度でも言ってやるわよ! あんたらは社会のゴミなの! わかったらさっさと這いつくばって、『迷惑かけてすいませんでした』って店主に謝りなさい!!」


傭兵(自分からトラブルに巻き込まれたがる…………そしてデジャヴ)

ゴロツキB「まあまあ、落ち着けよ」


ゴロツキB「なぁ嬢ちゃん、俺たちだって女子供に手ぇ出すなんてのは気が進まねぇ」


ゴロツキB「お前さんが頭下げて詫びの一つでも入れてくれりゃあ穏便に………」


少女「はぁぁぁ!? 冗っ談じゃないわよ!なんで何もしてない私があんたらみたいな下衆に謝らなきゃいけないのよ!!」


少女「頭沸いてんじゃないの!?」


ゴロツキB「………」ブチッ


傭兵(何故そこで煽るか………!!)

ゴロツキB「よぉし、わかった!!手前ぇら、この嬢ちゃんに大人の厳しさ教えてやれ!!」


傭兵「ああ、もう………!!」ダッ


ゴロツキ共「おおぉぉぉぉぉ!!」


バサァッ


???「…………」トッ


傭兵(!?)


ヒュオッ ヒュンッ ヒュンッ


ゴロツキA「がっ………!」


ゴロツキB「ぐあっ………!」


ゴロツキC「ぎゃっ………!」


???「…………」キンッ


ゴロツキ共「……………………」


ドサァ







黒装束の男「……………峰打ちに御座る」

ーーーーー

傭兵(………………)


黒装束の男「…………」


傭兵(見慣れない衣服に、見慣れない得物…………)


傭兵(一体何者だ………)

傭兵(あれだけの数を一瞬で片付けるとは、かなりの手練のようだが……)





少女「あ、あの、ありが…………」


「どっっせーーーーーーい!!!!!」


ドゴォッ


黒装束の男「ぐふっ…………!」


ズシャァァァァ


少女「」ポカン

???「峰打ちに御座る………キリッやあらへんわこのドアホ! 」


白装束の眼鏡「あんだけ目立つなゆうといてなんで早速騒ぎ起こしてんねん!?」


少女「いや、この騒ぎは私が………」


傭兵(一応自覚はあったか………)

「憲兵隊が来たぞー!」


白装束の眼鏡「ああ、もう! 言わんこっちゃない!」


白装束の眼鏡「ほら! ぼさっとつっ立っとらんとはよ!」グイッ


傭兵「はっ!?」


少女「え、ちょ、ちょっと!?なんで私達まで!?」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

白装束の眼鏡「ふぅ、ここまでくれば大丈夫やろ」


少女「はぁ……はぁ……、な、なんなのよ一体」


白装束の眼鏡「いやぁ、ごめんごめん。あのままやったらそっちにも迷惑かかりそうやしね」


鶴「憲兵ゆーのは、総じて人の話聞かんもんやろ? 」


白装束の眼鏡「うちの阿呆のせいで同業者が捕まりでもしたら、僕は申し訳なくてお天道様の元歩かれへんよ」

少女「お気遣いどうも……………って同業者?」


白装束の眼鏡「ん? ああ、自己紹介がまだやったね。僕は『鶴』」


鶴「んで、そっちの真っ黒のんが『鴉』や」


鴉「………………」


鶴「僕ら、二人一組で傭兵やってるんよ」

少女「…………私達も傭兵だって、よくわかったわね」


鶴「堅気の女の子が、ゴロツキ相手にあんだけ啖呵切れる訳ないやろ?」


鶴「そっちのお兄さんも、けっこー修羅場くぐってきたんとちゃう? 」


傭兵「…………」


傭兵「二人とも見ない格好だが」


傭兵「この国の出身ではないのか? 」

鶴「ああ、せやせや。僕ら極東の島国から来てん」


少女「極東の島国って………あの、超閉鎖的な?」


鶴「限られた土地で、限られた商品のみ交易が許される。出入国にはかなりの制限があって、観光なんかもってのほか」


鶴「密入国者は見つかり次第即刻打首」


鶴「極東には優秀な職人が多いさかい、もっと貿易に積極的になってもええと思うねんけど……」

鶴「ま、そんな職人技を守るための鎖国なんかもね」


少女(確かに、お父さんの扱ってた商品の中でも、極東製の物はかなり品質が高かった………)


少女「それにしても、よくそんな管理の厳しい国から出てこられたものね」


鶴「………あー、それなんやけど」


少女「……?」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
北の都ーーー北部憲兵隊本部


飛蝗「……………意味がわからない」

「拝啓 飛蝗殿」


「吹く風も柔らかな季節となりましたが如何お過ごしでしょうか。ところで、この度、かの英雄『銀狼』が貴公の管轄である北の都へと向かっているとのことです。『銀狼』の戦死は偽りであり、本来の彼は味方殺しの重罪を負う脱走兵です。また、現在の彼は国家転覆を企む反逆者でもあります。つきましては、より一層の警備体制の強化と可及的速やかな反乱分子の排除を要請する次第でります。 『黄金鹿』」


飛蝗「………………」

飛蝗(銀狼の戦死が偽り? 味方殺し? 脱走兵? 国家転覆を企む反逆者? )


飛蝗(なんなんですかこれは………!? これだけの話を手紙一通で済ますとは、相変わらず規格外に無茶苦茶じゃあないですか隊長!? )


飛蝗(というか、王都が春でも私の管轄は全て万年寒空なんですよ)


飛蝗(誰かさんが『可愛い部下には苛酷な環境でより精進してほしい』とか言ってくれたおかげで!! )

飛蝗(ああ、駄目だ、目眩が………)


北憲兵A「失礼します、隊ちょ…………大丈夫ですか?」


飛蝗「え、ああ、大丈夫、大丈夫です。どうかしましたか? 」


北憲兵A「それが、近衛兵団長殿よりもう一通手紙が遅れて届きまして、どうやら書き損ねた内容があるそうです」


飛蝗「………………読み上げてください」


北憲兵A「はい、えー」


「彼との闘いは私の最高の楽しみです。彼を殺してしまった場合代わりにあなたを殺して満足します。ただしけっして手は抜かないこと」


北憲兵A「とのことです」


飛蝗(…………一体私に………どうしろと………)フラァ


ドサァ


北憲兵A「た、隊長ーーー!!」

ーーーーーーーー

訂正
>>239
鶴「憲兵ゆーのは、総じて人の話聞かんもんやろ? 」

白装束の眼鏡「憲兵ゆーのは、総じて人の話聞かんもんやろ? 」

それではまた来週あたりに

おつなの

ーーーーーーーー
北の都ーーー酒場

少女「役人に追われてる? 」


鶴「せやねん、僕らこれでも本国じゃあけっこー名前売れてんねんけど」


鶴「いやー、お上にまで気にいられてしもて、出国許可がおりひんかってん」


鶴「傭兵なんて、所詮使い捨ての駒でしかないはずなんやけどなぁ……」


傭兵「………………」

少女「そっちの彼の実力なら、そこらの兵隊なんて相手にならないんじゃないの? 」


鶴「あー、まあ、一兵卒なら問題あらへんねんけど………」


鶴「言うたやろ? 僕ら本国じゃ有名やて」


鶴「そりゃあもう、とびっきりのが送られてくるはずや………」


鶴「まあ僕も鴉が負けるとは思てへんけどね、使える戦力が多いに越したことはないやろ? 」

少女「なるほど、ね………」


少女「じゃ、それは正式な依頼ってことでいいかしら? 」


鶴「そやね、ただ………」


鶴「報酬は発生せんけどな」





少女「…………なんですって?」


鶴「おーいおい、君もう忘れたんか? さっき自分が助けてもろたこと」


少女「んなっ………!? あなたまさか、あれを貸しに数えてるわけ!? 」


鶴「当たり前やろ? 花の乙女が傷物にされるの守ったんやから、これはじゅーぶんな貸しや」


少女「も、もしあなた達が来なくったってこれが割り込んできてたわよ!! すぐそこにいたでしょ!?」ビシッ


傭兵「……………」

鶴「はぁーあ………」


鶴「うだうだうだうだと、未来ならまだしも、過去の『もしも』を持ち出して話こじらす気ぃかいな? 」


鶴「君ほんまにプロか? ここにある事実は『君が鴉に助けられた』ちゅーこと…………ただそれだけや」


少女「う………………」


傭兵「……………」


鴉「……………」


少女「………………あー、もう!」

少女「わかったわよ!! 受ければいいんでしょ!受ければ!」


鶴「ふふん、そうこんとなぁ……」


鶴「ほな、細かいとこは明日詰めるとして、今日はかいさーん!」


少女「解散って………あなた達追われてるんでしょ? そんな悠長なことでいいの?」


鶴「僕らかて、今日ここの港に着いたばっかりやで? 」

鶴「なんぼなんでも、そんなはよ追いつかれやせんわ」


鶴「ほな、また明日、ここでな」ガタッ


鴉「………………」ガタッ


少女「………楽観的なのかどうなのか、イマイチわからないわね……」


傭兵「おい」


少女「わかってる、こっちに不利益が及ぶようなことにはしないわ」

傭兵「それもあるが……………やはり、俺たちは指名手配されていないらしい」


傭兵「憲兵本部の掲示板も確認してきた、間違いない」


少女「そう、じゃあやっぱり…………踊らされてるって訳ね」


少女「心当たり、あるんでしょ? 」


傭兵「ああ、間違いなく奴だ」


傭兵「……………黄金鹿」ギリッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
ガチャ


北憲兵A「失礼します」


飛蝗「こ、今度はなんですか!?」ビクッ


北憲兵A「はっ、極東の使者を名乗る者が面会を要求しております」


飛蝗(極東の…………?)


飛蝗「わかりました、通してください」

北憲兵A「よろしいのですか? 極東とは未だほとんど国交のない状態です。何を企んでいるか………」


飛蝗「それを判断するのが私の仕事です」


北憲兵A「は、はっ!申し訳ありません、出過ぎた事を……」


飛蝗「かまいません、下がってください」


北憲兵A「はい! 失礼しました」


飛蝗(海の向こうの小国が、今更一体何の用ですかね?)

「失礼」ガチャ


「お会いできて光栄だ飛蝗殿。私は極東軍傭兵管理局長『蝸牛』という」


飛蝗「ようこそ、王国へ。歓迎いたします」


飛蝗「極東の方が渡航されてくるとは珍しい、今回は一体どのようなご用件で? 」


蝸牛「我らは傭兵管理局、逃げ出した傭兵を捉えにきた」

飛蝗「………そちらでは、国が傭兵を管理されているのですか?」


蝸牛「有象無象ならば捨て置いた。しかし、今回逃げ出したの極東史上においても稀有な使い手、生かして連れ戻せとのお達しだ」


飛蝗「それで、私達にもその傭兵の捕縛を手伝え………と? 」


蝸牛「いや、そちらの手は煩わせない。ただ、市街での捜索及び戦闘の許可を願う」

飛蝗(………あくまでも他国の干渉は受けないか)


飛蝗(まあ、自国の不始末ですからね、当たり前っちゃ当たり前ですか)


飛蝗(とりあえずは……………様子見といきますか)


飛蝗「わかりました、いいでしょう。市内での調査活動と抜剣を許可します」


飛蝗「ただし、監視はつけさせてもらいますよ。一都市を預かる身として、無責任な真似はできません」


蝸牛「それで構わない、理解いただいて感謝する」


蝸牛「では、失礼する」ガチャ


バタン


飛蝗「……………鉄をも断つという極東の剣技、是非拝見したいものですね……」

おつ

面白いけどペース遅いのがなあ

ーーーーーーーー



カポーン


少女「っはぁぁぁ~~~~……………これが北の都名物露天風呂ってやつね」


少女「大浴場くらいなら東にもあったけど、やっぱ外の景色が見れるのはいいわねー」


鶴「せやねー、満点の星空、儚く舞う銀雪、いやぁ風流やわぁ………」

少女「………」


鶴「………」


少女「………………………」


鶴「………………………」


少女(…………ん?)







少女「………っええええぇぇぇぇ!? ちょっ、なんであなたがここにいるのよ!?」


鶴「ん? なんでて、この街は温泉が有名やーゆうから浸かりにきてん」

少女「い、いやそうじゃなくて、ここ、女湯……………」


鶴「女が女湯来て何があかんねん」


少女「え…………? 」





少女「………ちょっと待って、あなたまさか……………女の子だったの? 」


鶴「…………………」


鶴「はぁーーーっ!? なんっやそれ、君ずっと僕のこと男やと思っとったんかいな!? 」

少女「だ、だってあなたずっと自分のこと僕って………」


鶴「これは昔っからの癖や! ゆーか服装見たら分かるやろ!? あんなん着た男がおるかい!!」


少女「この国にはあなた達が着てるような服はないの!! 分からないわよそんなの!!」





ギャイギャイ

傭兵「騒がしいことだ……」


傭兵(あの様子では、やはり気付いてなかったな)

傭兵(………………それにしても)チラッ


鴉「………………」


傭兵「………………」


傭兵(無口無表情………何を考えているのか分からんな…………いや、俺も人のことは言えんが)


鴉「……………」


傭兵「あー………君達は……」

傭兵「何故この国に渡ってきたんだ? 極東では政府からも重宝されていたんだろう? 」


鴉「……………」


鴉「極東は小さな島国故………」


鴉「5年も巡れば知らぬ土地はなくなった」


鴉「あれは、見知った土地に骨を埋めようとする女では御座らん」

傭兵「なるほど、命をかけてでも世界が見たいか………」


傭兵「実に奔放なお嬢さんだ」


鴉「……………貴殿の上司とは、さぞ気が合うだろうに」


傭兵「ははっ! 違いない」



< ホラ、ミセタルワ! バサァッ

<キャー!チョット、カクシナサイヨ!


傭兵「……………そろそろ上がるか」


鴉「……………」コクッ


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

見張りA「あ、あの蝸牛殿、今日の所はもう打ち切られてはどうでしょうか?」


見張りB「もう夜も更けてきましたし、こんな薄暗い路地裏では見つかるものも………」


蝸牛「なに、まだまだこれからだ。このくらいで音を上げてもらっては困るな」


蝸牛「おお、この鉄製の大箱など実に怪しい」チャキッ

見張りA「いや、それはゴミ箱ですが………」


見張りB「というか、何をするおつもり………」


ヒュオンッ!


見張りB「で…………」

ズッ

ガゴンッ

ドザッ ドザァ


見張りA「」


見張りB「がっ…………」

蝸牛「ふむ、案外脆いものだな」


見張りB「………なに……を………」


蝸牛「極東の問題は、極東の人間だけで片付ける。異人に付きまとわれては迷惑なのでな」


見張りB「最初から…………こうするつもりで……」


蝸牛「世界に名だたる極東の剣技で屠られるのだ、光栄に思え」


ザシュッ

蝸牛「ふん…………片付けろ、くれぐれも勘付かれるなよ」


ザッ


???「局長………」


蝸牛「『蜉蝣』か、奴らの動向はわかったか?」


蜉蝣「はっ、どうやらこの国の傭兵を雇ったようです」


蝸牛「ふん、傭兵が傭兵を雇うか…………面白い。明日、仕掛けるぞ」


蜉蝣「御意………」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
翌朝
宿屋ーーー少女達の宿泊室

少女「さて………と」


少女「オーダーは、逃亡じゃなくて迎撃でいいのよね? 」


鶴「せや、中途半端に逃げたところで、いつまでも粘着されるだけやから」


鶴「出会い頭に一発かましたった方がええねん」


少女「なるほどね」

少女「ちなみに、追っ手の見当はついているのかしら? 」


鶴「せやなぁ」


鶴「まず確実に来るのは『蝸牛』。極東流剣術のスタンダードにして最高峰、実戦で『斬鉄』を使える数少ない達人や」


少女「『斬鉄』………極東に伝わるという奥義ね」


鶴「奥義ゆうくらいやからな、使える奴は滅多におらん」


鶴「ましてや斬り合いの途中に得物ごと相手を両断できる奴なんぞは、蝸牛を含めて5人とおらん」

鶴「後、厄介なんは『蜉蝣』やな……」


少女「そいつは………?」


ヒュッ

コロコロコロ


鶴「剣術自体は並やけどな、なんや怪しげな術やらを…………」


ボフンッ!!


鶴「のわっ!!」


少女「なっ………!? え、煙幕!? 」

鶴「きゃっ! むがっ 、むぐぅぅぅぅ!!!!」


傭兵「くそっ………!」ガタッ


「…………」タタタタ


鴉「貴殿ら! そこを動くな!!」


少女「……?」


傭兵「…………」ピタッ

鴉「…………」スッ

タッ

タッ

タッ


鴉「…………っ!!」カッ


ヒュオンッッッッ!!!!


忍A「がっ…………!」


忍B「ぐあっ……!」

「っ!?」ザシュッ


ダダッ

パリンッ


傭兵「待て! 」ダッ


スタッ


傭兵「…………くそっ、逃がしたか!」


少女「けほっ……けほっ………………?」スッ


少女「これは…………手紙?」

鴉「…………………」


『工業区煉瓦倉庫にて待つ』


少女「…………先手を取るつもりが、完全に見透かされてたって訳ね」


鴉「…………貴殿らには、もう手伝っていただくわけにはいかん」


鴉「人質を取られたとあってはあまりにもリスクが高すぎる、これ以上内輪の揉め事に巻き込むわけには………」


少女「なーに言ってんのよ」


少女「いい? 後払いの契約ならまだしも、今の私達は『借り』で動いてるんだから」


少女「契約打切りなんて選択肢はないの」


鴉「…………………」


少女「それに聞いたことあるわよ、極東には裸の付き合いってのがあるんでしょ」


少女「混ぜなさいよ内輪揉め、私らだって貴方達の身内よ? 」


鴉「…………ふっ」


鴉「やはり気が合いそうだ……………」

ーーーーーーーー

今日の所はこの辺で
遅筆で申し訳ないです

うむ
ちゃんと終わらせてね

もっと遅いところもあるんだから気にすんなよ
乙!

ーーーーーーーー
北の都ーーー煉瓦倉庫


鶴「くっ………」ギチッ


蝸牛「…………久しぶりだな、鶴」


蝸牛「生意気な小娘を捕らえ、見下ろすというのがこんなにも気分のいいものだったとは………」


蝸牛「そうそうできる体験ではないな、感謝する」

鶴「はんっ! 相変わらずヌメヌメと陰湿なやっちゃな!! 」


鶴「あんたのそーゆーところがずーーっと気に食わんかったんや!!」ジタバタ


蝸牛「………………今の貴様は、上様の温情によって生かされている」


蝸牛「政府御抱えの申し入れを幾度となく蹴った挙句、国外へ逃げるなどと………」


蝸牛「本来ならば、見つかり次第切り捨てられても文句は言えんはずなのだがな」

鶴「はぁ? 美味い飯と酒でぶくぶく太って、女に溺れた木偶の坊が何やて!? 」


鶴「恩着せがましいねん! 僕らがいつそんなことしてくれって頼んだ!?」


鶴「善意にすらなってない自己満足の押し売りして……」


鶴「それが受け入れられんかったら力尽くで言う事聞かすんか!?」


鶴「なっさけない連中やなほんまに!! 」


蝸牛「…………………」


ガッ


鶴「ぅぐっ…………!」


蝸牛「…………その目だ」ギリッ


蝸牛「希望に満ち、遠く向こうを見透かすような目………」


蝸牛「我々のことなど、まるで映っていないかのような目が………」


蝸牛「気に食わない……………いや………」

蝸牛「悍ましい…………」


鶴「ぐ…………ぅ……」


蝸牛(さぁ、泣け)


蝸牛(怯え、足掻け………)


蝸牛(その瞳を、恐怖で曇らせてみろ…………!!)


鶴「…………なに……を…」


蝸牛「…………?」

鶴「何を………びびっとんねん………」


鶴「情けない奴………やな
ぁ………」ニッ


蝸牛「………………………………」


ブンッ


鶴「ぐっ………」ドザァ


蝸牛「…………生かして連れ帰れとの命だが………」

蝸牛「四肢が無くとも、死にはしないだろう…………?」スラァ


鶴(ああ…………くそ………)


鶴(ここで、墜ちるんか……………)


ヒュッ

パリィンッ

ギュオッ


蝸牛「!?」ガキィッ


蝸牛「……………何者だ」ギギギ


「通りすがりの………」ギギッ






傭兵「傭兵だ!!!!」


ギィン!

蝸牛「なるほど、貴様が件の傭兵か」ザッ


傭兵「…………」ザザッ


極東兵A「局長、如何いたしますか?」


蝸牛「お前達は下がっておけ。王国の傭兵の実力、私が推し量ってやろう」


傭兵「…………」


ダッ


蝸牛「…………」スゥ


ガキィッ ガッ ギィンッ!

極東兵A「あの傭兵、局長と互角にやり合っている…………」


極東兵B「だが、所詮は異国の鈍だ! 局長には『斬鉄』がある!」


蝸牛(ふっ、斬鉄を使うまでもない)


蝸牛(この程度の剣筋ではな………)


蝸牛(………そこだっ!!)ヒュオッ


傭兵「…………」ダッ



ス カ ッ



蝸牛(なっ…………!?)

ドウッ!!


極東兵A「は………?」


極東兵B「うわっ!」


ヒュンッ

バキィッ ドガッ バキャァッ


「ぐわっ!?」


「がっ!」


「ぐうっ………」


ヒュオンッ ガッ ギィン




蝸牛「……………この私を、足蹴にすると言うか…………」


蝸牛「舐められたものだ!!!!」

「そう昂られるな、蝸牛殿……」




蝸牛「…………」ピタッ


鴉「貴殿の探し物は、此処にいるぞ」


蝸牛「…………鴉ぅぅ!!」


蝸牛「貴様ら揃いも揃って、私を侮辱するかぁ!!」ヒュンッ


鴉「…………」チャキッ

鶴「けほっ………遅刻や阿呆………」


少女「大丈夫!? 」タタッ


鶴「おお、君も来てくれたんか! いやぁ、囚われのお姫様の気分やな」


少女「…………大丈夫そうね、縄解くから後ろ向いて」


鶴「………にしても、よーやってくれたわ」


鶴「自分で言うのもなんやけど、僕のこと人質に取られとったらお終いやったで? 」

少女「そのために、うちのが先に突っ込んだのよ」シュルシュル


少女「1番貴方に近かった蝸牛と数合打ち合って牽制、大振りの隙を利用して脇を抜け、雑魚を片付ける」


少女「数も十人程度、彼の速さなら十分に可能だわ」


少女「ほら、もう終わる」


傭兵「………」


極東兵I「く、くそぉぉぉぉ!!」

ヒュヒュンッ


傭兵「!?」バッ


カカッ


少女「なに!? 」


鶴「ああ、せやった………あいつもおったんや」


傭兵(これは、短刀…………か?)


「くくっ………、死角から飛んでくる苦無に反応するとは」

蜉蝣「予想通り、剣技だけではない…………相当な手練れと見た」


傭兵(何だ……壁に張り付いている?)


傭兵「………なるほど、お前が例の奇術師か」


傭兵「鶴を拐っていったのもお前だな」


蜉蝣「奇術などと呼ばないでいただきたいな、これこそが極東に伝わる忍術だ」


蜉蝣「先程受けた傷の礼、鴉に返すつもりでいたが…………仕方ない、あちらは局長に任せるとしよう」

蜉蝣「さあ! 見せてもらおう、局長と切り結ぶ程の腕前…………」


傭兵「……………」フワッ


蜉蝣「……を…………」


ザヒュッ


傭兵「……………」スタッ


傭兵(何だ……手応えが………)

蜉蝣「いやぁ、速い速い。まるで反応できなかった」


傭兵「…………何の手品だ? 」


蜉蝣「くくっ、不可思議だろう? その不条理な疑問に苛まれながら…………」


蜉蝣「死ぬがいい!!」ヒュンッ


傭兵「……………」キンッ


ダッ


傭兵「はぁっ!!」


ザヒュウッ


蜉蝣「くくくくっ…………」ユラァ


傭兵「ちっ…………」


傭兵(まったく………厄介な相手だ)

ーーーーーーーー

本日はここまで

おつ

ーーーーーーーー

北憲兵A「失礼します」ガチャ


北憲兵A「市街地で小規模な戦闘が発生したとの報告が入りました」


飛蝗「………例の極東人達でしょう。監視役からの連絡は? 」


北憲兵A「それが………」


北憲兵A「今朝になってから、定時報告もない状態で…………」


飛蝗「……………」

飛蝗「第1部隊から第5部隊まで準備させてください」


飛蝗「各員完全武装、警戒レベル4」


飛蝗「第2部隊以降は随時出動許可、現場周辺区域の警備を固めるよう通達」


北憲兵A「了解………では、第1部隊の指揮は……? 」




ガタッ






飛蝗「私が出ます……………」



ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

蝸牛「ぬぅぅぅぅぅん!!」


ビュオッヒュィッ


鴉「……………」バッ


ィィンッ


ズ


鴉「…………」ザザッ


ゴド…………ン


少女「………嘘でしょ? 煉瓦材の柱が……」


鶴「あんなもん紙切れ同然やろな、あいつにとっては………」


蝸牛「どうした鴉! しばらく見ぬ間に腕を落としたか!!」


鴉「…………」


蝸牛「はぁっっ!!」ビュオッ


ギィンッ


鴉「…………」ザザザザッ

少々「どうするの? 押されてるわよ」


鶴「いや………あれはもう、鴉の勝ちや」


少女「え………?」









蝸牛「のらりくらりと…………小癪な奴め! 」


鴉「………………蝸牛殿」

鴉「叫び、猛り、剣を振るった所で、貴殿の刃は拙者には届かぬ……」


蝸牛「………………なんだと? 」


鴉「止水の如く穏やかに、明鏡の如く冴え渡る…………それこそが極東流の真髄」


鴉「貴殿の剣はまるで暴れ狂う荒波だ。そんな太刀筋では、いくら鉄を断つことができようと………」


鴉「何者も斬ることは叶わん………」

蝸牛「………………」


蝸牛「貴様のような放蕩者に、剣術の真髄を説かれるとはな………」ギリッ


蝸牛「調子に乗るなよ野良犬がぁっっっ!!!!」



ダッ



鴉「………」キンッ

少女「なに…………剣を、鞘に収めた………? 」


鶴「………静から動へ、より速く、より鋭く、その緩急が圧倒的な斬撃を生み出す」


蝸牛「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


鴉「……………」ザッ


鶴「あれが、極東流の極意」








キィ…………ンッ




鴉「極東流奥義『居合』………」

ヒュン………ヒュン………ヒュン………




ザクッ




蝸牛「馬鹿…………な………」


ドサァッ




蜉蝣「きょ、局長!! 」


傭兵「……………なるほど、いいヒントをもらった」


傭兵「こちらも終わらせよう………」


蜉蝣「おのれぇぇ………!! 」


蜉蝣「もはや何人も生かしてはおかん!!」ブワァッ


傭兵(今度は複数の幻影か…………ざっと見て二十体)


蜉蝣『先ずは貴様からだ! ! 去ねぃ、異国の傭兵!!』


ビュオウッ


傭兵(いくら多く見えようと、実体は一つ)

傭兵(視覚に惑わされるな…………止水の如く穏やかに、明鏡の如く冴え渡る………)


傭兵(感覚を、研ぎ澄ませ……………)


ォォォォォッ


傭兵「そこだぁっ!!」キィンッ


ドゥッ


蜉蝣「なっ…………!?


傭兵「はぁぁぁぁ!! 」


ドゴォッ

蜉蝣「か…………はっ………」


ドサァ


傭兵「………………ふぅ」


少女「ご苦労様」


少女「さあ、憲兵が来る前に逃げるわよ」


傭兵「ああ」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
ザワザワ

ガヤガヤ


飛蝗「…………一足遅かったようですね」


北憲兵B「報告します」ザッ


北憲兵B「極東人に死人はなし、倉庫の一部に損壊が見られますが周辺住民にも被害はありません。それと、第2部隊からの伝令なのですが……………」


北憲兵B「見張り役A、見張り役B両名の死体が発見された、とのことです…………」

飛蝗「……………そうですか」


飛蝗「極東人の中で、現状話のできそうな者はいますか? 」


北憲兵B「はい、こちらです」







飛蝗「……………」ザッ


蜉蝣「…………何用かな」


極東兵I「…………」

ヒュッ



ゴキャァッ!!


蜉蝣「なっ…………!?」


極東兵I「」ドシャ


飛蝗「…………」


蜉蝣「なんのつもりだ貴様ぁ!? 我々には捕虜として正当な扱いを受ける権利が………」

ズドンッ


蜉蝣「がふっ…………が…………げぇぁ」ビシャァ


ガッ


蜉蝣「げぶっ………」


飛蝗「…………知ったこっちゃあないんですよそんなこと」ギリッ


飛蝗「あなた方は私の部下を二人殺しました………………なので私も、あなた方の中から二人殺します」


飛蝗「隊長も、このくらいの独断なら許してくれるでしょう」


蜉蝣「ぐぶ……………や、やべ………………」






ゴシャッ



飛蝗「…………」ビチャ


北憲兵B「…………よろしいのですか、隊長? 」


飛蝗「構いませんよ。この国に喧嘩を売った以上、どうせ彼らは皆国ごと死に絶える運命です」

北憲兵B「そう、ですか………」


北憲兵B(………恐ろしい)


北憲兵B(これが………黄金鹿の元で南部戦線を戦い抜いた英雄『飛蝗』なのか………)





飛蝗「……………さて、今度は」


飛蝗「なんとかして見つけないといけませんね………………先輩」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

鶴「いや悪いなぁ、馬まで用意してもろて。王国の商人さんは太っ腹や!はっはっはっはっ!」


少女「気にしなくていいわ。私たちの借りはさっき返したし、それは貸しよ」


鶴「はっはっ………はは……は…」


鶴「………君とはほんま、ええ友達になれそうやわ」


少女「そうね、私もそう思う」

鶴「…………ははっ」


少女「ふふふ…………」







傭兵「すっかり仲良くなったみたいだな……」


傭「やはり似た者同士か」


鴉「………」


傭兵「一つ、聞いていいか? 」

鴉「如何様にでも………」


傭兵「彼女は、世界を見たいがために危険を犯してまで生まれた国を飛び出した」


傭兵「では何故、君はそんな彼女についてきたんだ? 」


鴉「………」


鴉「拙者には、人を斬ることしかできなかった」

鴉「いくら遠くを見たくとも、世界の景色を渇望しようと、自分の手では届かない。そんな風には、自分の身体はできていない」


鴉「彼女には、遠く彼方を見据える目があった、力強く羽ばたける翼があった」


鴉「代わりに、遮るものを打ち砕く爪を持たなかった…………」


鴉「彼女を一目見たとき、確信した。この女について行けば、きっと自分でも世界を見ることができる、と」


鴉「そして、拙者は彼女の爪になることを誓った。あらゆる壁を斬り伏せる刃となることを」

傭兵「…………なるほど、な」


鴉「貴殿は…………?」


傭兵「同じようなものだ………強くも弱い女に見初められ、そして魅入ってしまった」


傭兵「似た者同士は、彼女達だけではないな………」


鴉「ふっ、然り………」


「おーい、何してんねん!? はよせんかーい!!」


傭兵「ほら、お呼びだぞ」


鴉「ああ………」


鴉「ではまた、いずれ何処かで相まみえんことを」


傭兵「ああ、達者でな………」


ーーーーーーーー

第四章 完

似た者同士な傭兵達でした
更新開けちゃってすいません

更新待ってたー

エタらなきゃ全然いいよー

おつ

待ってた
これからも待ち続けるから裏切らないでくれよ

はい、遅くなりました
第五章始めます
テッペン越えなくてよかったー

ーーーーーーーー
北の都ーーー酒場


少女「お金が………………ない」


傭兵「当たり前だ」


少女「………」


傭兵「………」ズズッ

少女「………」


傭兵「………」コトッ


少女「………………なんでよ」


傭兵「俺たちが、今までに一度でもまともな報酬を貰ったか? 」


少女「……………貰ってない」


傭兵「そうだろう、行く先々の村で依頼を受けては、そんな金はないだろうからと無償で解決し」

傭兵「先日は借りの清算として報酬無し、その上馬をタダで提供するときた」


少女「あれは…………貸しを作っておくのもいいかなって」


傭兵「全く…………大商人の娘が聞いて呆れる。慈善事業もいいが、現実的な所も頼むぞ」


少女「うー、わかってるわよ………。これからはなるべく節約ね………」


傭兵「第一、いつまでこの街に居るつもりなんだ? 」


傭兵「あんな騒ぎがあった後だ。殺気立った憲兵達の目が、いつこちらに向くかわからないぞ」

少女「ええ、連中の動きがきな臭くなってきてるのはわかってるわ。でも、見つからないのよ………」


傭兵「何がだ?」


少女「革命軍が物資調達に使う拠点よ。この街にあるのは確かなんだけど………」


少女「流石に詳しい所在地までは情報が出回ってないのよ」


少女「革命軍とコンタクトをとるには、まずはそこを見つけなきゃいけないのに」


傭兵「まあ当たり前の用心だろうな。では、しばらくは此処に留まって、その拠点とやらを探さなければならないのか」

少女「そうなるわね、なるべく目立たないように………」



カランカラン



北憲兵C「あー寒っ!! マスター、なるべく強いのを頼む」


北憲兵D「おい、お前今日は当直じゃなかったか?」


北憲兵C「いいじゃねぇかちょっとくらい。こんな寒ぃ中素面じゃやってらんねぇよ」


北憲兵D「まったく…………」







少女「場所、変えるわよ………」


傭兵「ああ」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

少女「こうして顔を隠して出歩かなきゃいけないのは煩わしいわね」


傭兵「仕方ないさ、用心するに越したことはない」


少女「わかってる。あなたこそ、ただでさえデカくて目立つんだから気をつけ………きゃっ!」ドン


傭兵「………っ!? おい!! 」


???「あっ、ごめんなさい! 大丈夫? お嬢さん?」


少女「え、ええ………」スック

傭兵「まったく、気をつけるのはどっちだ」


少女「悪かったわね、不注意で………」


???「あら、殿方なら転けそうな女性を支えるくらいしてもいいんじゃない? 」


少女「ふんっ! そーよそーよ」


傭兵「…………ああ」


傭兵(転けそうな女性を支える? )

傭兵(こちらは、突然の襲撃にも対応できるよう常に彼女の周囲に気を配っていた………もちろん、ぶつかりそうな輩がいれば避けさせるくらいできる)


傭兵(にも関わらず、この女は俺に知覚されることなく、まるで突然現れたかのように………)


傭兵「確かに、その通りだな………」


???「………ふふっ」


傭兵(この女…………)


???「じゃあね、お嬢さん。そっちのあなたも、しっかり守ってあげなさいよ」


傭兵(只者じゃない)

少女(あの人…………)



???『大丈夫? 』バイーン



少女(…………只者じゃないわ!!)


傭兵「…………」ジッ


少女「………いつまで見てるのよ、変態」


傭兵「何故そうなる」

???「………」チラッ


傭兵「………?」ピクッ


???「…………………」ニヤッ


傭兵(……………まさか!? )


傭兵「おい! 手持ちの金は!? 」


少女「? 何よいきなり、ちゃんとここに…………」

少女「…………?」パッ


少女「………? ………!?………………!!??」バッバッバッ


少女「………………ない」


傭兵「くそっ…………やはりか!!」ダッ


少女「………………ふふ、ふふふふふ、この私からお金を盗もうなんて…………」


少女「懐には大層なもの持ってたじゃない、まだ足りないって言うの………?」

少女「………絶っっっっっ対、捕まえて!! 持たざる者の怨み、思い知らせてやりなさい!! 」


傭兵「何の話だ!? 」


???「…………」スゥ


傭兵(路地裏に逃げ込む気か………)ザッ


傭兵「っ!?」


傭兵(消えた…………? )

???「ふふふふ…………可愛いお嬢さんね」


???「お連れの騎士様はちょっと頼りないかもしれないけど」


???「で、こっちの方も頼りない…………と」


???「ま、いいわ、次いこうかしらね」





「悪かったな、頼りない騎士と財布で」

???「あら………」


傭兵「…………」ザッ


???「なによ、しっかり追いついてきてるじゃない。ふふ、ちょっと見くびってた………」



ヒュンッ



???「かも………」ピタッ


傭兵「………早く返してもらえると助かる」


傭兵「女に傷をつけるのは………趣味じゃない」

今日はこの辺りで

乙ですじゃ

おつ

???「ふふふふ、お優しいのね」


傭兵「ああそうだ、だがそれも今のうちだけだ」


傭兵「あまり悠長にやっている暇はない、マスターがおかんむりなんでな」


傭兵「今ならまだ憲兵に突き出すだけで勘弁してやる」


???「やーん、私憲兵って大嫌いなの」


傭兵「そう思うのなら悪さはしないことだ。さあ、早く………」

???「えいっ」ポイッ


傭兵「んなっ!?」ダッ



パシッ



ザザザザザッ




???「おー、ナイスキャッチ」パチパチ


傭兵「…………ふざけるのも大概にしてもらおう」

???「ふふふふ、ごめんなさぁい。でもぉ、私こんなとこで捕まるわけにはいかないのよ」


???「というわけで、じゃあね」バッ


傭兵「!? 待て!」ダッ



ザッ



傭兵「また消えた………」


傭兵(まったく、俺の相手はこんなのばかりか)


傭兵「………ん? 」












???「ふふっ」


???「ちょっとお気に入りかも……」ジャラッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーー
飛蝗「……………」



「近日中に、市長宅の宝物庫から大琥珀のブローチをいただく。せいぜい警備を厳重にしておくことだ。
怪盗『黒猫』」




飛蝗「これはいったい……?」


北憲兵A「巷を騒がせている怪盗からの予告状です」


飛蝗「盗難の届けは受け取っていませんが……」

北憲兵A「それは………」


北憲兵A「被害にあったどの邸宅も、評判のよろしくない政治家や商人のものばかりで……」


北憲兵A「何やら後ろ暗いことのある金持ちばかりを標的にしているようです」


飛蝗「なるほど、義賊気取りの盗っ人ですか……」


飛蝗「で、私の所にこんなものが来たということは、我々憲兵団に警備を依頼したい……と」

北憲兵A「はい、政治家様からはそのように伺っております」


飛蝗(………まったく)


飛蝗(憲兵団を私用に使うとは、とんだ政治家がいたものですね)


飛蝗「まあいいでしょう、第3部隊までに指示を、私が指揮を執ります」


飛蝗「それと、直接警護に当たる者には宝物に関する事で深入りしないよう伝えて下さい」


飛蝗「そこら辺の小悪党とは桁が違いますから」


飛蝗「最悪トばされますよ?」


北憲兵A「………厳重に言っておきます」

ーーーーーーーー

遅くなりました
短いですが今日はここまで

乙!

ーーーーーーーー
酒場


少女「………なるほどね」


少女「取り返したと思ったら、中身は全部玩具にすり替えられていて」


少女「その上犯人も見失った……と」


少女「まったく、あなたを振り切るなんてとんでもない女ね。次見かけたらただじゃおかないわ」


少女「財布の重さで気づかないあなたもあなただけど……」

傭兵「面目ない………」


少女「にしても、ちょっとまずいわね……」


少女「あなた、後いくら程持ってる?」


傭兵「せいぜい後一泊分と言ったところだな」


少女「……依頼、受けるしかないか」

傭兵「この街でか? 」


少女「仕方ないでしょ。手っ取り早く稼ごうと思ったら、単発の依頼こなすのが一番なんだから」


傭兵「目立つ訳にはいかないんじゃなかったのか」


少女「背に腹は変えられないもの」


少女「野宿して夜間巡回の憲兵にしょっ引かれるなんてマヌケはしたくないわ」


傭兵(たしかに……)

少女「さ、そうと決まれば……マスター!」


マスター「どうしたいお嬢ちゃん? ミルクのおかわりか? 」


少女「違うわよ。 こっちの彼ね、傭兵をやってるの」


マスター「ほう」


少女「何か割のいい仕事か、この辺りでそういうの回してくれそうな所、ある? 」


マスター「うーむ、うちはそういうのはやってないんだが……」

マスター「ああ、そうだ。それなら政治家の屋敷に行ってみるといい」


マスター「なんでも黒猫から予告状が届いたとかで、警備の人手が欲しいらしいぞ」


少女「黒猫? 」


マスター「なんだ知らねぇのかい、最近噂になってる怪盗だよ」


マスター「悪どい金持ちしか狙わねぇってんで、街の人間からは結構評判だぜ」


少女「まるで義賊ね」

少女「でも政治家なんて人間が、行きずりの傭兵を屋敷にあげるかしら」


マスター「警備とは言っても、急募の雇われは屋敷の外での見張りぐれぇよ」


傭兵「………」


少女「ふーん、なら丁度いいかも」


少女「ありがと、早速行ってみるわ」


マスター「いいってことよ。ところであんたらどういう関係だ? 親子か?」


少女傭兵「「そんな歳に見えるか!?」」


マスター「お、おう、すまねぇ…… 」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
屋敷ーーー大琥珀のブローチ展示室


飛蝗「北部憲兵隊第1、第2、第3部隊合計46名、これより要人警護任務にあたります」


政治家「要人警護ぉ? 誰がわしのことを護れと言った!? お前達に任せたのブローチのはずだぞ! 」


飛蝗「申し訳ありません。ですが、我々の任務に個人財産の警備などというもの存在しません」


飛蝗「これ程の人数を動員するとなると、正式な書類が必要なので」


飛蝗「ここはお上への建前ということで、どうか一つ……」

政治家「ふんっ、 態々そんなことをせずとも、わしが口を聞いてやったわい! 」


政治家「勘違いするな! あくまでもお前達の仕事はわしのブローチを薄汚いこそ泥から守ることだ! 」


政治家「せめて払った金額分の仕事はしろ! いいな!!」


飛蝗「了解……」


飛蝗(元中央の高官だかなんだか知りませんが……)

飛蝗(こんな国の北端で閑職に追いやられているというのに、まるで自覚がない………これだから政治屋は)


飛蝗(あの事件以来、市内の警備を強化してはいますが一向に何の成果も上がらない)


飛蝗(極東人を尋問した結果から、先輩がこの街にいることは確実……)


飛蝗(こんなことをしている場合ではないというのに……)






北憲兵A「隊長、全人員の配備完了しました」


飛蝗「ご苦労様です。何か異常は? 」

北憲兵A「それが、ですね……」


北憲兵A「先程から警備の依頼を受けたいと言う輩が沢山押し掛けてきまして……」


飛蝗「何ですかそれは……全員追い返して下さい」


政治家「あー待て待て、それはわしが呼んだんだ。人手はあるに越したことはないからな」


飛蝗(勝手なことを……)

飛蝗「お言葉ですが、身元の知れないものを使うのは得策ではないかと。その中に黒猫が紛れている可能性も……」


政治家「そんなことはわかっておる、心配せんでも屋敷の中には上げんわ!」


政治家「お前達はブローチの守りにだけ集中しておれ! 」


飛蝗「……はい」


飛蝗「では、外に配置していた人員は全て中の警備にあたらせて下さい」


北憲兵A「はっ! 失礼します」


飛蝗「…………はぁ」


飛蝗(どうなることやら……)

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
屋敷ーーー門

北憲兵B「だーかーらー! 上の指示がないと中に入れることは出来ないんだって!」


「何言ってやがる! 俺たちゃその屋敷の主人から人手が欲しいって言われたから来てやったんだよ!」


「そーだそーだ! さっさと入れろ!」


「引っ込んでろ憲兵! 」

北憲兵B「あーもー、もうちょっと待ってろ!」


傭兵(外部の人間だけに任せるとは思っていなかったが……)


傭兵(まさか憲兵を警備に使っているとはな)

~~~~~

少女「私は革命軍の拠点について調べるから、そっちは任せたわよ」


傭兵「一人で大丈夫か? 」


少女「大丈夫、用心棒もお金もない状況でそんなに無茶しないわよ」


少女「じゃ、合流場所はさっきの酒場ね」

~~~~~

傭兵(あっちはあっちで心配だが、どうする……危険は冒せない)

北憲兵E「おーい、許可が下りたぞー! 」


ガシャン ギギギギ


「やっとかよ、遅いぞ憲兵!」


「ったく、これだから憲兵は」


「頭が固くて仕方ねぇ……」


ゾロゾロ


北憲兵B「くっ、こいつらぁ……!」

傭兵(よし、このどさくさに紛れて一旦戻ろう)クルッ


北憲兵B「ん? おい、お前! 何処へ行く!? 」


傭兵「………」ピタッ


傭兵「い、いや、やはり気が変わってな……」


北憲兵B「ほー……」

北憲兵E「何やってんだ? 」


北憲兵B「そこの傭兵が急に依頼受けるのやめるって言い出してよ」


北憲兵E「おいおい、今時こんな楽な依頼そうないだろ。 選り好み出来る程余裕のある職業でもないんじゃないか?」


傭兵「そ、その通りなんだが……」


北憲兵B「……おい」ヒソヒソ


北憲兵E「ん? 」

北憲兵B「隊長の言ってたターゲットって、確か銀髪で長身の男だったよな? 」


北憲兵E「ああ………たしかに、あの男も結構でかいな」


傭兵「そろそろ行っていいか? 」


北憲兵B「ちょっと待て、お前そのフードとってみろ」


傭兵「なっ! ……何故だ? 」


北憲兵E「いいからとれ」

傭兵「………傷がある」


北憲兵B「気にしねぇよ。ほら、さっさとしろ」


傭兵(人通りは……ないな)


傭兵(やむを得ん………!)



バサァッ



北憲兵B「ぬおっ!?」


北憲兵E「うわっ……」

ヒュッ


ガッ ゴッ


北憲兵BE「」ドシャァ


傭兵(よし! 誰にも見られて………)


北憲兵F「…………」


傭兵(な…………)


北憲兵F「…………」


北憲兵F「………ぞっ」







「賊だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

傭兵「くそっ!! 」ダッ


「早速出やがったか!! 」


「いよっしゃあ! 捕まえた奴にゃもちろんボーナスだよなぁ!? 」


「待ちやがれぇ!!」


傭兵(……金が絡むと、ああいう手合いは憲兵よりも質が悪い)

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

傭兵「……………」


「何処行きやがった!? 」


「路地裏へ逃げ込んだはずだ! 探せ!!」


傭兵(………見つかるのも時間の問題か)


傭兵(どうする、全員片付けるか……?)


「ちょっと、そこのお兄さん」


傭兵「!?」バッ


「こっちこっち」チョイチョイ


傭兵「……………」

今日はここまでー

おつ

「よいしょっ………と」バタンッ


「これで大丈夫でしょ」


傭兵「……何の真似だ? 」


「あら、助けてもらっておいてその態度? 」


「ちょっと偵察に行ってみたら、なんだか知った顔が面白そうな事になってるじゃない」


「お節介だったかしら? 」

傭兵(偵察………やはりこいつが件の)


傭兵「お前こそ、人の金を盗んでおいてよくそんな態度ができるな」


???「ふふふ……」


傭兵(……黒猫)


黒猫「じゃあいいのかしら? 外へ飛び出して、銀髪の男はここだーって叫んじゃうわよ? 」


傭兵「それでは共倒れだろう」

傭兵「………ちっ」


黒猫「ふふっ、それにしてもねぇ……」


黒猫「あなた何? 傭兵? 」


傭兵「お前のようなこそ泥に話す義理はない」


黒猫「失敬ね、私は怪盗よ? 」


傭兵「スリ紛いのことをしておいてなにが怪盗だ 」

黒猫「怪盗にだって活動資金は必要なのよ。ちゃんとお金に困ってなさそうな人選んだし」


傭兵「俺達は現在進行形で困っているが?」


黒猫「何よ、仕事の内容さえ選ばなければ依頼なんて結構あるじゃない」


傭兵「それが出来ない事情もある」


黒猫「ふーん……ま、憲兵に顔を見られちゃ困るような立場ですものね」

傭兵(誰のせいだと……)


黒猫「察するにぃ、さっさと憲兵のいる街から逃れたいところだけど、何か用事なり探し物なりがあって無理をしてでも滞在しなければならない、ってとこかしら? 」


傭兵「…………」


黒猫「ふふん、図星って感じかしら」


黒猫「それ、手伝ってあげてもいいわよ? 」


傭兵「………メリットデメリット以前の問題だ。身元の知れない人間を信用することはできない」

黒猫「私はこの街で一番の情報通なのよ、仕事柄ね」


黒猫「信用できないって言うなら無理強いはしないけど、依頼も受け損ねて憲兵にも警戒されて、それこそ猫の手も借りたい状況なんじゃない? 」


傭兵「……そちらの要求は? もちろん善意の手助けではないだろう? 」


黒猫「ふふ、よかった。その気になってくれたのね」


傭兵「いや、まだだ」


傭兵「上司の指示を仰ぎたい」

ーーーーーーーー

>>386 修正



傭兵(偵察………やはりこいつが件の)


傭兵「お前こそ、人の金を盗んでおいてよくそんな態度ができるな」


???「ふふふ……」


傭兵(……黒猫)


黒猫「じゃあいいのかしら? 外へ飛び出して、銀髪の男はここだーって叫んじゃうわよ? 」


傭兵「それでは共倒れだろう」


黒猫「あら、私は顔を見られて困るような雑な仕事はしないわよ? 」

ーーーーーーーー

飛蝗「外で何かあったようですが? 」


北憲兵A「不審な人物が隊員二名を昏倒させて逃亡したようです。現在傭兵達が犯人を捜索しています」


飛蝗「陽動の可能性もあります、警備を強化してください」


北憲兵A「了解」


飛蝗(だが、こんな昼間から盗みに入る可能性は低い。となると別件? )

飛蝗(そうか、傭兵達に紛れて……そこを隊員に呼び止められた、か)


飛蝗「…………」


飛蝗「その不審人物の人相はわかりますか? 」


北憲兵A「いえ、フードを被っていてわからなかったと。わかっているのは、背が高く、一瞬で二人を気絶させる程の実力者ということだけです」


飛蝗「……………それだけわかれば十分です」


飛蝗「傭兵達はそのまま捜索を続行、代わりに二個部隊を本部から応援に呼んでください」

北憲兵A「ですが、それでは……」


飛蝗「その男、以前話したターゲットの可能性が高いです」


北憲兵A「……!?」


飛蝗「目的は定かではありませんが、危険を犯してでもこの屋敷に侵入する必要があった………、恐らく再び来るでしょう」


飛蝗「優先順位は黒猫の捕縛より上です、それらしき者が現れれば必ず足止めに徹して、私の到着を待つこと」


飛蝗「それとくれぐれも政治家殿には秘密にすること、全要員へ伝えてください」


北憲兵A「了解! 」

ーーーーーーーー

それではまた

おつ

乙!!

ーーーーーーーー


少女「へーぇ………あなた、いい度胸してるわね」


傭兵「………」


黒猫「ふふ……」


少女「人のお金を盗んでおいて、よくもまぁ抜け抜けと……」


黒猫「それについてはさっきも弁明したでしょ? ほら、今はこうやって隠れ家だって提供してるんだし」

少女「それとこれとは話が別! そういうのをマッチポンプって言うのよ!」


黒猫「まあまあ、でも、この際形振りかまってられないんじゃない?」


黒猫「一刻も早くこの街を出るには、私の話に乗るのが一番だと思うんだけど?」



少女「……たしかに、私一人では革命軍の手掛かりすらつかめなかったけど……」


少女「うー……、ほんとに教えてくれるんでしょうね?革命軍の拠点」


黒猫「ええ、もちろんよ」

少女「……わかった、その話乗るわ」


黒猫「ふふ、そうこなくっちゃ」


傭兵「………それで、具体的な注文はなんだ?」


黒猫「それはとーっても簡単」


黒猫「陽動、よ」


傭兵「陽動というと……やはりそういうことか」

黒猫「察しがよくて助かるわぁ……」


黒猫「あなたたちには、政治家の屋敷の前で騒ぎを起こしてほしいの」


少女「例のめちゃくちゃ警備が厳重になった屋敷で? なにがとーっても簡単よ」


黒猫「なによ、乗るんでしょ? 文句言わないの」


少女「わかってるわよ。あなたこそ捕まったりしないでよね」


黒猫「ふふん、私を誰だと思ってるの? 天下の大怪盗『黒猫』よ?」


黒猫「あなたたちがしっかり働いてさえくれれば、あっという間に終わらせてあげるわよ」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー


政治家「どうした? なにやら騒がしいが」


飛蝗「先ほど、不審な人物が屋敷の周りをうろついていたとの報告がありましたので」


飛蝗「警備を強化するために本部より応援を呼びました」


政治家「ふんっ、最初から出し惜しなければよいものを……」


飛蝗「………」

政治家「何度も言うが、何が何でも大琥珀を守りぬけ! 失敗すれば……わかっているだろうな?」


飛蝗「……お任せを」


バタン


飛蝗「ふぅ……」


北憲兵A「隊長」


北憲兵A「捜索に当たっていた傭兵たちが戻ってきましたが」


北憲兵A「何の成果もあげられなかった、とのことです」


飛蝗「そうですか、まあもとより期待はしていませんでしたが……」


飛蝗「当初の計画通り、傭兵たちには屋敷の外を警備させてください」


北憲兵A「了解」


飛蝗(……さあ、こちらの準備は万端です)


飛蝗(いつでもかかってきてください、先輩)


ーーーーーーーー

短いですが今日はここまで
来週は更新できそうにないので次回は再来週となります

おつおつ

ーーーーーーーー

ー政治家邸宅ー


「は……ふぁ………ぶぇっくしょいっ!! うぅ~寒っ……」


「畜生あいつら、毛布の一枚も寄越しやがらねぇ」


「仕方ねぇさ、俺たちゃ行きずりの傭兵だ。真っ当な報酬があるだけありがてぇってもんよ」


「へっ、それも怪しいがね…………ん?」


傭兵「………」ザッ

黒猫『あなたは、とにかく屋敷の前で思いっきり暴れてくれればいいわ』


黒猫『あなたが注意を引いてる内にサクッと終わらせちゃうから。心配しなくても、物の数分で終わるわよ』





傭兵(注意を引けとは言われたが………)


「あいつ……! 昼間の野郎だ!」


「今度は逃がさねぇぞ! 囲め囲めぇっ!!」


「報酬上乗せだぁ!!」


傭兵「全部倒した方が早そうだな……」グッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
ー大琥珀のブローチ保管室ー


政治家「何だ? 表が騒がしいな……」


飛蝗(………)


北憲兵B「隊長! 現れました! フードの男です!」


飛蝗「来ましたか……」ザッ


政治家「ま、待て! 何処へ行く!? お前がこの室から離れるのは許さんぞ!!」

飛蝗「………御安心を、この室だけでも20人の人員を配置しています。屋敷の中にも要所に警備を当てていますので……」


政治家「ふざけるな!! わしがいくら払ったと思っている! お前がブローチを直接護衛することも含めてあの額だぞ!?」


飛蝗「………」


飛蝗「すぐに済みます。ですので少々お待ちくだ」



フッ………



飛蝗「!?」


「な、なんだ!?」


「灯が……!」


「警戒しろ! すでに……がっ!」ドシャ

「どうし……ぎゃっ!」


飛蝗(ちっ、このタイミングで………!)


政治家「どうした! 何が起きてる!? ブ、ブローチを守れ!!」


飛蝗(まあいい、この混乱に乗じて先輩の所へ……)



ヒュオッ



飛蝗「っ!?」ギィンッ


「あら?」

飛蝗「ちぃっ!」


飛蝗(打ってくるのか!? 厄介な……!)


黒猫(防がれた……憲兵隊長まで直接護衛してるの? だったら、なおのこと長居は無用ね)



タタタタッ



飛蝗(来るか……!)



パリィンッ!



「ぐ……逃げたぞ! 追え!」


「外の奴らに知らせろ!」


飛蝗「……任務失敗、ですね」

政治家「貴様らぁ………!」


政治家「この役立たず共が! まんまと逃げられおって! このことはしっかりと報告させてもらうぞ!!」


飛蝗「……はぁ」


飛蝗「もういいでしょう……」


政治家「何がいいものか! この責任はお前が……」



ミシィッ!!



政治家「……!?」


政治家(大理石の床が……!)

飛蝗「あなたの我儘に付き合うのはもうやめです」


飛蝗「一体どれ程のコネがあるのかは知りませんが、地方に左遷された官僚の人脈などたかが知れているでしょう」


飛蝗「………隊長の力には及ぶべくもない」ギンッ


政治家「う……ぐ………」


「報告! 外周警備全滅! フードの男逃走!」


飛蝗「ちっ、逃げられましたか」


飛蝗「一度本部へ戻ります、伝令を走らせてください」


北憲兵A「はい、内容はなんと?」


飛蝗「私のグリーブを用意してください。『アレ』を使います」


北憲兵A「なっ……!? し、しかし、市街地では……!」


飛蝗「着地は門の外にしますよ。北方へ向けるようにも伝えてください」


飛蝗「………逃がしはしませんよ、先輩」

ーーーーーーーー

お待たせしました
それではまた

ヤンデレ……ヤンホモかな?

ーーーーーーーー

タタタタッ


傭兵「待たせた」


少女「あれ? あの女は?」


傭兵「先行して門を開けておくそうだ。革命軍との接触は、安全のため街の外にするらしい」


少女「ま、これだけの騒ぎ起こせばねぇ……」


傭兵「すぐ街にも捜索隊が出るだろう。馬は準備できたか?」

少女「残念ながら一頭しか調達出来なかったわ」


少女「……こんなことなら譲ったりしなかったのに」


傭兵「過去のことを言っても仕方がないさ……乗れ、急ぐぞ」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー


「方位設定完了! 目標、北門!」


「着地点に障害なし!」


「スプリング、問題ありません!」



ギリッ……ギギ……



北憲兵F「嘘だろ……本当にこんなんで跳ぶのかよ……」

北憲兵A「お前は、これを見るのは始めてか?」


北憲兵F「あ……は、はい!」


北憲兵A「これは、先の戦争で開発されたスプリング式のカタパルトを改造したものだ」


北憲兵A「速射性は低いが、精度と射程に優れている」


北憲兵A「そして、隊長の名の由来でもある………」


飛蝗「……」ガキッ ガシャ!


「カタパルト固定完了!」


「射出準備よし!」


北憲兵A「発射の加速度に耐えられるのも、着地の衝撃を殺しきれるのも、隊長しかいない」

北憲兵A「戦列を跳び越え、敵本陣へ直接斬り込む、故に……」


飛蝗「総員、後ろへ! カウント開始!」


「了解! 射出5秒前! 4、3、2、1……」



北憲兵A「……飛蝗」



「射出!!」



ガコッ


ジャアアアアアアアアアアアアアッ!!


ドウッッッ!!



北憲兵F「す、すげぇ……」


北憲兵A「さあ、ぼさっとするな! 総員、北門へ向かうぞ!!」


「おおぉぉぉぉぉぉ!!」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

カッポカッポ


少女「門は開いてたし、守衛もいなかったけど……」


少女「なによ、何処にもいないじゃない」


傭兵「………」


少女「………どうしたの、さっきから後ろばかり気にして」


少女「追手はまだ来てないでしょ?」

傭兵「いや………何か気配を感じてな……」


傭兵「気のせいだとは思うが……」



…………



少女「とにかく、サッサと離れたい所ね」



ゥゥ…………



少女「それにしても遅い……まさかあの女、約束を反故にするつもりじゃ……」

傭兵「そうでないことを願うばかりだな」


少女「……やっぱり話がうますぎたかしら」



ゥゥウウウウウウウ…………



傭兵「それしか選択肢がなかったんだ。いつまでもあの街にいたところで、いずれ見つかっていただろう」



ウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!



少女「そうかもし……」



ズガンッッッ!!!!



少女「きゃっ!」


傭兵「!?」



ガッッ! ギャギャギャギャギャギャッ……!!

「………」ザッ


傭兵「……お前は!?」


飛蝗「お久しぶりです、先輩……」


傭兵「飛蝗………!!」


少女「な、なに? 今、空から降ってこなかった……?」


飛蝗「やっと直接会えましたね。お変わりないようで安心しました」


傭兵「……なるほど、お前がここの憲兵の頭か。跳ね馬といい、皆要職に就いているのか?」

飛蝗「さて? 他の先輩方の動向は分かりかねます。その辺りの連絡はあまりありませんしね」


飛蝗「私が命じられたのは唯一つ、貴方を殺せ、ということだけですので」


傭兵「黄金鹿から、か? 相変わらず盲目的だな。俺が生きていることや、その俺を殺すことに何の疑問も抱かなかったのか?」


飛蝗「ええ……まあ、驚きはしましたね。でも、昔から隊長に押し付けられてきた無理無茶無謀、それが間違っていたことは一度もない」


飛蝗「盲目的? 何をおっしゃいますか」


飛蝗「目が見えなかろうが、耳が聞こえなかろうが、鼻が利かなかろうが、口をきけなかろうが……」


飛蝗「私は、あの人に従いますよ」

傭兵(……これも、奴の力か)


傭兵(危険すぎる………やはり、あの時……)


飛蝗「昔話に花を咲かせるのもいいですが、そろそろ始めませんか? じきに増援もきますよ?」


飛蝗「まあ、それでも先輩なら対応できるでしょうが……。元々多対一特化の方だ、一兵卒が何十人増えた所で大して問題にならないはず」


飛蝗「でも、そちらのお嬢さんを庇いながら、は難しいんじゃないですか?」


少女「!?」


傭兵「ちっ………」

飛蝗「誰か一人がその娘まで辿り着き、盾に出来れば我々の勝ち、ですよね?」


傭兵「……変わったな、そんな戦い方もできるようになったか」


飛蝗「先輩は変わってませんね。誰よりも多く殺しておいて、誰よりもお人好しだ」


飛蝗「では、そろそろ本当に始めさせてもらいすよ……」シュラァ……


少女「二刀……」


傭兵「いや、奴は……」

飛蝗「銀狼ぉっ!!」ドウッ!!


傭兵「っ!?」ジャッ


ギィン!!!!


傭兵「ぐっ……!」


ギャッ!


ガキィッ!


ガッ!


キンッ!


傭兵(!? 来る…… !)バッ


飛蝗「シッ!」ヒュオッ



バギャァッ!!!!



傭兵「………」ザッ


少女「嘘、でしょ………」

ギギギギギ……


少女「蹴りで、木を……」


傭兵「奴は、四刀だ」


ズズ…ン……


飛蝗「腕の方もお変わりないようで………仕留めたと思ったんですがね」


傭兵「まだまだ……後輩に遅れをとる訳にはいかんさ」


飛蝗「ふっ、その余裕も何時までもちますかね」


飛蝗「私には、貴方よりも三つ多く必殺の手段があることをお忘れなく」


傭兵「ほう、手数で勝つつもりか……」


傭兵「ならば後三つは足りんな、出直せ」


飛蝗「はっ……言いましたねぇっ!!」ダンッ

長らくお待たせしてすいません!
更新再開します


熱い戦いを期待!既に熱いけど

飛蝗「はぁぁぁぁっっ!!」


傭兵「……」スゥ…



ガギィィン!!



飛蝗「……!」


傭兵「……」ヒュッ



ギャリンッ!

飛蝗「はぁぁぁぁっっ!!」


傭兵「……」スゥ…



ガギィィン!!



飛蝗「……!」


傭兵「……」ヒュッ



ギャリンッ!

ガガガガガガガガガガッ……ガッ!!



飛蝗(……馬鹿な)ザッ


傭兵「……」


飛蝗(今の連撃を捌き切りますか……)


傭兵(っ…… でかい口を叩いたが、やはり凄まじい)


傭兵(守勢にまわって勝てる相手じゃないな)ブンッ

傭兵(ならば………)チャキッ


飛蝗(……! 来ますか!?)


傭兵「………」





フッ





飛蝗(消えっ………っっっ!)



ギィィンッ!!!!



飛蝗「ぐぅっ……!」


傭兵(浅いか……)ズザザッ

ツゥ……ポタッ


飛蝗「………」グシッ


傭兵「……」


飛蝗「……懐かしい」


飛蝗「とても懐かしいです、先輩」


飛蝗「互いの全力を以って、互いの命を削り合う、この感覚……」


飛蝗「戦場を退いて以来、味わうことの出来なかったものだ!」


傭兵「……跳ね馬も似たようなことを言っていたよ」

飛蝗「くく……そうでしょうね。貴方との闘いは、それほどまでに素晴らしい」


飛蝗「隊長が執着するのも納得がいく……」


傭兵「……やはり、か」


傭兵(やはり……求めずにはいられない、闘争を……命懸けの闘争を)


傭兵「そういう風に出来ている……」


飛蝗「出来ている? 作られている、の間違いじゃないですか? それは私も、貴方もだ!」

飛蝗「今更真っ当な人間のように振る舞うのは卑怯ですよ先輩」


飛蝗「私達は作られた紛い物の英雄だ……」


飛蝗「紛い物は紛い物はらしく、無様に惨めに華々しく壊し合いましょう?」


傭兵「……生憎と、まだやることが残っている」


傭兵「いずれ追い付く、先に逝け」

飛蝗「………」


傭兵「………」




ヒュッ



ガギィィンッ!!



傭兵「……」ギ……


飛蝗「……」ギキ……



ギャンッ!

傭兵「ふっ!!」


飛蝗「せぁぁっ!!」


ガキィッ!


キンッ!


ガィンッ!!


飛蝗(っ! しまっ……!)


ヒュンヒュンヒュン


ドスッ


傭兵「………」ザリッ


飛蝗(まだ……三つあるっ!!)ヒュッ

ギンッ!



飛蝗(そこっ!)グッ


傭兵(……!)ピクッ



ヒュパンッ!






飛蝗(…………は)フワッ



飛蝗(蹴りに合わせて、軸脚を払う……)


傭兵「……」グオッ


飛蝗(この打ち合いの中で、そんな芸当……)


飛蝗(はは……流石、先輩)






ズドッ

飛蝗「……………」


傭兵「……」


少女「ようへ……」



北憲兵F「いたぞーー!!」



少女「っ! もう追い付いてきた!」


傭兵「ちっ、馬に乗れ! 行くぞ!」

北憲兵B「あれは………隊長がやられた!?」


北憲兵A「くそっ! 絶対に逃がすな! 」


ギギ……ギ……


「………」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


北憲兵A「なっ……!」ザッ


ズズンッ


北憲兵B「門が勝手に……!」

北憲兵A「誰がやった!? 守衛室を開けろ!」


北憲兵F「だ、駄目です! 向こう側から鍵が……」


少女「一体……何が」


傭兵「………」



「お待たせして申し訳ありません」



少女「!?」


傭兵(………!)チャキッ


「歓迎いたします」





青年「ようこそ、革命軍へ」


ーーーーーーーー

第五章 完

北の都編終了
一日遅れですいません!

おつんつん

第六章
始まります

ーーーーーーーー

カッポカッポ


青年「ここから少し道が険しくなります、注意してください」


少女「………」


青年「どうかされましたか?」


少女「あの女………黒猫はどうしたの?」

青年「ああ、あの人ならもう別の街に行きましたよ」


青年「昔から一ヶ月と同じ場所に留まろうとしない人でして」


少女「あいつも革命軍のメンバーだったって訳?」


青年「いえ、どちらかと言えばスポンサーですね」


青年「あの人の盗み出した財宝が、そのまま革命軍の活動資金になっています」


少女「……」

青年「……そう警戒しないでくださいよ、私が王国軍側の人間でないことはさっきはっきりしたでしょう?」


少女「……いいえ、まだよ」


少女「何故あのタイミングで出てきたの? 」


青年「……」


少女「合流場所に丁度到着した……そんなはずないわよね」


少女「守衛の始末も門の解放も黒猫がやったとしても、そのままって訳にいかないんだから、貴方は私達が到着した段階で既にあの場所に潜んでいた……」


少女「貴方が本当に私達の味方なら、ニ対一でかかるという手もあったはずよ」

少女「まさか卑怯だなんて言わないわよね?」


傭兵「………」


青年「……お二人の噂は、我々の間ではそれなりに知られています」


青年「各地で悪党を成敗してまわる年端もいかぬ少女と銀髪の男の二人組がいる、と」


青年「その男の正体が、かの英雄『銀狼』ではないかということもね」


少女「……!?」


傭兵(そこまで知られているか……!)

青年「ああ、ご心配なく。噂と言っても革命軍内部での話ですので」


青年「憲兵隊の中枢へ潜入している密偵からの報告に、それだけの判断材料があったんです」


青年「そして、それは先程の戦闘を拝見させていただき、確信に変わりました」


傭兵「………」


青年「貴方程の人を相手に品定めなどと………この非礼、なんとお詫びしてよいやら……」

青年「ですが、我々も反政府組織です。用心を怠っていては立ち行きませんので」


少女「ええ、よくわかったわ。こちらこそ、突っかかって悪かったわね」


少女「で、本部までにはまだ掛かるの? 軽く吹雪いてきたみたいだけど」


青年「ご心配なく。もうじき着きますよ………ほら、見えてきました」


少女「………あれかしら?」


傭兵「見た所、普通の山村だな」


青年「ふふ、まるで革命軍の潜む場所には見えないでしょう?」

番兵「……」


青年「お務めご苦労様です」


番兵「袋の中身は?」


青年「鹿狩りの準備ですよ」


番兵「……そうか、通れ」


少女「……何? 合言葉? 用心深いのねぇ」ザッ


青年「ええ、まあ………あ、馬はあちらにお願いします」ザッ

傭兵「ああ」


少女「この村の人たちは……?」


青年「皆、革命軍のメンバーとその家族です」


少女「となると、やっぱり結構な規模ね」


青年「革命軍の原型は、南部戦線以前から存在していますから」


青年「さあ、こちらへどうぞ」


カツン…カツン…


少女「これは……洞窟?」


青年「色々と人目につかせたくない物もありますので、こういった工夫も必要なんです」


青年「ではまず、あの方にお会いしていただきましょうか」


少女「あの方?」


青年「ええ……」




青年「我らがリーダー『赤獅子』にね」

ーーーーーーーー

今日はこんな所で

おつ

コードネーム?がいちいち良いね

ーーーーーーーー

傭兵「赤獅子……だと?」


少女「赤獅子って……五十年前の大戦で王国を勝ちに導いた、あの赤獅子!?」


青年「そう、 今の王国は彼らがいなければあり得なかった」


青年「『不死鳥』や『梟』と並ぶ、王国史上最強の一人です」


傭兵(………)




「元凶、とも言えるがな」

少女「!?」


傭兵「……!」


青年「おや、今から伺うつもりだったのですが」


「新しい仲間には、礼を尽くさねばなるまい」


少女(この男が………)


赤獅子「ふむ、随分と可憐な同志だ、歓迎しよう」

少女(赤獅子……!)


赤獅子「そして、君もな……」


傭兵「……」


傭兵「その腕は……」


赤獅子「ん? ああ、これか」


赤獅子「少し不便だが………なに、大したことはない」


傭兵「……」

少女「あの、元凶ってどういう意味………ですか?」


赤獅子「そのままの意味だ」


赤獅子「あの大戦が、王国を強い国にした………してしまった」


赤獅子「勝利の味は実に甘美なものだ………人々を酔わせ、弱者への蹂躙さえよしとさせてしまう程に」


赤獅子「今在る王国の歪みは、私達が齎したと言ってもいいだろう」

少女「そんな……でも、それは……!」


青年「ええ、何も全てが先達方のせいとは言えません」


青年「強国であることと、侵略国であることは必ずしもイコールではない」


青年「現国王が、先代の意思を継ぐとして掲げた覇権主義、さらにそれを何の疑いも無く受け入れる国民たち……」


青年「貴方なら、この裏にいる人物がわかりますね?」

傭兵「………黄金鹿」


傭兵「奴の掌握力なら、可能だろう」


赤獅子「……洗脳じみたプロパガンダ、王を超える程の求心力、とても常人に為せる技とは思えんが……」


赤獅子「それを可能にするのが、君達なのだろう? 不死鳥の忘れ形見よ」


傭兵「……」


少女(不死鳥の、忘れ形見?)


青年「……さて、顔合わせはここまでとしましょう、他のメンバーとはまた明日にでも」


青年「今日の所はゆっくり休んでください」

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短くてすいません
今日はここまでです

おつ
動き出したな

いよいよ本筋かな?

ーーーーーーーー

少女「ふぅ、久しぶりにゆっくりできそうね」


傭兵「ああ、また熱い湯に浸かりたいな」


少女「……」




赤獅子『不死鳥の忘れ形見よ』

少女「………」


傭兵「……」


傭兵「何か聞きたそうだな」


少女「え……?」


傭兵「以前、部下の身の上話はされるまで待つと君は言っていたが……」


傭兵「あまり黙っておくのも悪いかもしれないな」

少女「あ………ううん、いいわよ別に」


少女「ごめんなさい、なんだか催促したみたいになっちゃったわね……気にしなくていいから」


傭兵「さて、どこから話すか……」


少女「ちょっ、いいって言ってるでしょ!」


傭兵「俺は、元々孤児だった」


少女「……!」

傭兵「当時はまだ周辺国との小競り合いで国内が不安定でな、然程珍しいことでもなかったんだ」


傭兵「親の顔すら覚えていない。物心ついた頃から泥水を啜り、ゴミを漁って生き延びていた」


傭兵「そんな生活が長く続く筈もなく、次第に弱っていき、ある日とうとう倒れてしまった」


傭兵「自分はここで死ぬのかと思うと涙が止まらなかったよ」


傭兵「自分を捨てた親への憎しみよりも、死への恐怖よりも、何も為さず生を終えることが悔しくて堪らなかった」


傭兵「一体自分は何の為に生まれたのか、とな」


少女「……」

傭兵「指の一本も動かせなくなっていよいよ死を覚悟した時、偶然軍の将校が通り掛かった」


傭兵「彼は言った、『今ここで塵のように死ぬか、塵のように生きて死ぬか、選べ』」


傭兵「最早口もきけず、俺はただその将校を見つめ続けた。そこで意識が途切れ、次に目覚めた時には温かいベッドの上にいた」


少女「じゃあ、もしかしてその時の将校って言うのが……」


傭兵「ああ、不死鳥だ」


少女「………」

傭兵「それからは養子として、あの人の元で暮らした」


少女「不死身の英雄に育てられたってこと………その強さも納得ね」


傭兵「………育てられた、とは言えんがな」ボソッ


少女「え?」


傭兵「いや、なんでもない」


傭兵「続きはまたにしよう、今日は少し疲れた」


少女「……そうね、ゆっくり休んで」


少女「おやすみなさい」キィ


傭兵「ああ、おやすみ」



パタン

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
ー翌日ー


青年「さて、お二人にはまず我々の戦力をお伝えしておきましょう」


青年「革命軍の拠点はここを含めて四つ、その全ての兵力を総合しても王国軍側の十分の一に届くかどうか、といったところです」


少女「圧倒的ね……」


傭兵「戦略で覆る差でないな」


青年「ええ、まともに対抗できる戦力を揃えていたら一体何十年かかるやら……」

青年「ですがそれは、平時の話です」


少女「何? 王国がどこかと戦争を始めるまで待つって言うの?」


傭兵「確かにそれなら隙を突けるが、場合によっては他国の侵略を許すことになるぞ」


青年「それならば、こちらで戦争のタイミングをコントロールすれば良いのです」


少女「……?」

青年「我々は、すでに北の帝国に協力を取り付けているのですよ」


傭兵「馬鹿な、五十年来の敵対国家だぞ?」


青年「まあ、中々の修羅場でしたがね」


赤獅子「私が直接交渉し、大戦以前の帝国領を返還することで納得させた」


傭兵「………なるほど」

傭兵「腕はその時に、ということか」


少女「え……?」


傭兵「王国にも帝国にも、貴方に手傷を負わせられるような使い手は殆どいない、ならば……」


赤獅子「……覚悟を見せる必要があった、それだけのこと」


赤獅子「老いぼれの腕一本で話がついたのだ、安いものだろう」


傭兵「………」

青年「帝国からの協力、これで王国軍兵力のおよそ四割程度を引きつけられるでしょう」


青年「さらに南部で未だに続く共和国残党軍による抵抗、これに二割」


少女「……まだ、足りない」


青年「西の公国は、おそらく静観を決め込むでしょう。七年前に痛い目を見ていますからね」


青年「ですがもう一つ、使える戦力があるんです」


少女「西はダメで、北と南……他に何があるって言うのよ?」


青年「無謀にも王国へ喧嘩をふっかけた小さな島国、貴方達も関わっているはずですよ?」


少女「……………あっ!」


ーーーーーーーー

お待たせしました
それではまた

いいぞこれ

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王都ーーー王宮


黄金鹿「さて………」


蝸牛「………」


黄金鹿「如何なさいますか? 陛下」


国王「ふむ……その者達が余の大切な兵を殺したのじゃな?」

黄金鹿「はい、間違いなく」


国王「ならば死罪じゃ、首を落として晒すがよい」


蝸牛「………ちっ」


黄金鹿「………」


黄金鹿「それだけでよろしいのですか? 陛下」


国王「んん?」


黄金鹿「聞けば彼らの戦闘によって建造物が半壊し、市民にもいくらかの被害が出た、と」

黄金鹿「あの者達は陛下の庭を土足で荒らした挙句、民を傷つけ、兵を殺したのです」


黄金鹿「たかが数名の命で償える咎ではないかと……」


国王「ではどうするのだ?」


黄金鹿「我らの取るべき行動は、唯一つです……」


黄金鹿「奪いましょう、全てを!」


蝸牛(この男……!)

国王「ううむ、また戦争か? しかしなあ………南の残党軍との戦闘もまだ続いておるのだろう?」


黄金鹿「ご心配には及びません」


黄金鹿「あの程度の小国であれば、残党狩りの片手間で十分です」


蝸牛「貴様ぁっ! 我らが祖国を愚弄するか!!」


バキィッ!


蝸牛「がっ!!」ドサッ


翡翠「発言は許可していません」

蝸牛「ぐ、ぬぅぅ……」


国王「ふむ、まあお主がそう言うのであれば大丈夫か」


国王「なにせ最強の英雄なのじゃからなぁ、はっはっはっ!」


大臣A「ちっ、黄金鹿め………何が英雄だ」


大臣B「一武官に過ぎぬ者が上手く取り入りおって……!」


大臣C「………」


黄金鹿「ありがとうございます、陛下」


黄金鹿「では、後始末は私に……」

国王「うむ、任せたぞ」


コッ…コッ…コッ…


黄金鹿「…………さて」


蝸牛「……」


黄金鹿「翡翠」


翡翠「はい」ヒュッ


スパッ


蝸牛「!?」パラッ

蝸牛「………何の真似だ?」


黄金鹿「ん? 話を聞いてなかったのかい?」ブンッ


蝸牛「……」パシッ


黄金鹿「死刑執行だよ」


蝸牛「何を………縄を解かれ得物まで寄越されて、素直にやられると思うてか?」


黄金鹿「それでいいんだよ」

黄金鹿「少し興味があってね、極東の剣技とやらに」


黄金鹿「せっかくの機会だ、見せてくれるかな?」


蝸牛「………ここまで虚仮にされるとは……」


蝸牛「後悔しろ、貴様を含めて五つは獲らせてもらう」


黄金鹿「それはいい、楽しみだ」カシャンッ


蝸牛(盾持ちか………だがあのサイズでは問題にならん)

蝸牛(一太刀だ……!)


ダンッ!


蝸牛「ぜぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁあっっ!!!!」


黄金鹿「……」スゥ



ガッ……



蝸牛「………」



ィィィィィン……



蝸牛(ばっ………)

黄金鹿「……ふぅん」


蝸牛「莫迦な……!」


極東兵A「きょ、局長の斬鉄が……」


極東兵B「受け流された!?」


黄金鹿「なるほど、これが世に聞く極東剣術か」カンッ


蝸牛「くっ……!」


黄金鹿「ほら、もっとだ」

蝸牛「ぬ……おおぉぉぉぉぉ
ぉ!!」


キィンッ!


ガッ!


カァンッ!


ガギィッ!!


蝸牛「おのれぇぇ……!」ザザッ


黄金鹿「斬鉄、と言ったかな」


黄金鹿「武器も防具も諸共真っ二つとは恐ろしいね」

黄金鹿「まあそれも、真っ向から受けなければ何の問題もない」


蝸牛(見切っているというのか………私の剣を!)


黄金鹿「さ、もういいかな」


黄金鹿「終わりにしよう」


蝸牛「な………」


蝸牛「舐ぁぁぁぁめるなぁぁぁぁ!!!!」ダッ



ガッッッッキィィィィ……ン




黄金鹿「……予想通りだ」


蝸牛「………」


黄金鹿「その剣は鋭いが、強度は僕達のものより著しく低い」


蝸牛「なんと……」ピシッ



パキィィンッ!



黄金鹿「……」ヒュッ


ザシュッ!


蝸牛「がぁっ……!」ドサッ

極東兵A「局長!!」


黄金鹿「うん、いい体験になった。礼を言うよ」


蝸牛「ぐっ……う……」


蝸牛「強欲なる……異国の民よ、汝らに災いあれ……!」


蝸牛「貴様の下に……凡ゆる戦禍、凡ゆる死が訪れんことを……」

黄金鹿「……………くっ」


黄金鹿「ふふっ、くふふふっ……」


黄金鹿「ふはっ……はははははははははははははははははっっ!!」


黄金鹿「望むところだ」ニィィ


蝸牛「………!」ゾッ




ザンッ




極東兵C「ああっ……!」


極東兵D「そんな……局長が……」

翡翠「……」ザッ


ヒュゥン!


ザザザザザンッ!


極東兵『』ドシャッ


黄金鹿「御苦労、翡翠」


翡翠「いえ」


黄金鹿「さあ宣戦布告だ、首だけ箱に詰めて送り返せ」


翡翠「かしこまりました」


ザシュッ


グシャッ


大臣A「ひっ……!」


大臣B「うぇっ……」

黄金鹿「ああ、皆さんもうお帰りになられて結構ですよ」


黄金鹿「大臣方には少々刺激が強過ぎるかと」


大臣A「こ、この狂人め……!」


大臣B「謁見の間を血濡れにしおって……! 後始末まで責任を持てよ!」


タッタッタッ


黄金鹿「ふん……」


黄金鹿「そういえば、彼の方はどうなってる?」

翡翠「飛蝗は斃れたようです」ザシュッ


黄金鹿「そうか……それは残念だね」ニヤァ


翡翠「表情と台詞が合っていませんが」ザンッ


黄金鹿「おっと、いけないいけない、これじゃあ僕が薄情者みたいだ」


翡翠「………」ズバッ


黄金鹿「で、その後の動向の方は?」

翡翠「申し訳ありません、飛蝗との戦闘を最後に尾行者からの連絡が途絶えました」ポタッポタッ


黄金鹿「へぇ……『虻』を捉えたんだね」


翡翠「虻は隠密部隊でも屈指の実力者でした。銀狼でも始末するのは困難かと」


黄金鹿「その方面に長けた協力者がいる、つまり革命軍に合流した可能性が高い、か……」


黄金鹿「くく……いいよ、最高だ」


黄金鹿「君はつくづく楽しませてくれるね、銀狼」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

青年「極東とも戦争状態になれば、恐らく王都には最小限の兵しか残らないでしょう」


赤獅子「そこへ、我々の前戦力を以って攻め入る」


赤獅子「討つべきは現国王、そして……」


傭兵「……黄金鹿」


赤獅子「奴を斃し、民の、兵の目を覚まさせる」

赤獅子「この歪みを後の世に残さぬために……」


少女「……」


青年「作戦の決行には、まだ月単位の時間があります」


青年「暫くはここで、長旅の疲れを癒してください」








少女「いよいよ見えてきたって感じね」


傭兵「ああ」

傭兵「……もう、後には退けんぞ」


少女「馬鹿ね、私が今更退くわけないでしょ」



コロコロコロ


ポスッ



少女「あら?」


子供A「すいませーん!」


子供B「取ってくださーい!」


少女「ふふ……よーし、いくわよー!」


<ワー!ドコナゲテンノ!
<オネーサンノーコーン!
<ゴメンゴメン


傭兵「やれやれ……」


傭兵(この歪みを後の世に残さぬために、か……)


傭兵(……待っていろ黄金鹿、お前は俺が止める)


傭兵(必ず……この手で………!)

ーーーーーーーー

第六章 完


お待たせしました
後二章で終わる予定です

おちゅ!

乙!!
この雰囲気はたまらんね

ーーーーーーーー
西の都ーーー路地裏

タッタッタッタッ


髭の男性「はっ……はっ……はっ……はぁっ!」


ヒュオッ


ザンッ


髭の男性「がっ………ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ドシャッ

ーーーーーーーー
西の都ーーー路地裏

タッタッタッタッ


髭の男性「はっ……はっ……はっ……はぁっ!」


ヒュオッ


ザンッ


髭の男性「がっ………ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ドシャッ

コッ……コッ……コッ……


「………ぃ」ブツブツ


髭の男性「ま、待て……! 私が何をしたと言うのだ! やめっ……」


グシャッ


髭の男性「ぎっ! いぃぃ……!!」


「…た………ぃ……」


ズシャッ


ザシュッ


グジャッ


髭の男性「………」ビクッ…ビグンッ


「………………いたい」







ゴシャッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
西の都ーーー中央通り


ワーワーワー


王国兵『…………』ザッザッザッ


「王国に栄光あれ!」


「極東なんざぶっ潰せー!」


ワーワー




傭兵「凄い人混みだな……」

少女「王都に次ぐ規模の街だからね、開戦パレードともなれば尚更よ」


少女「ま、兵士が減って隠れ蓑も増えるとなれば、多少は仕事もしやすくなるんじゃない?」


傭兵「だといいが……」


傭兵「………」








青年「今回お二人にお願いしたいのは、重要施設の調査、破壊です」


少女「重要施設?」

青年「国立総合医療技術研究所、その名の通り医学、薬学、解剖学などの研究を行っている施設です………表向きは」


傭兵「……裏があるというのか?」


青年「福祉目的の施設でありながらその研究の詳細は明かされず、莫大な予算だけがつぎ込まれている………設立以来ずっとそんな状態です」


少女「何よそれ、めちゃくちゃ怪しいじゃない」


青年「はい、そこが黄金鹿の息がかかった施設なのは間違いありません」


傭兵「………」


青年「まだ具体目的にどういった施設かは分からないので、その辺りの調査も含めてお願いします」

傭兵(………解剖学、薬学、詳細の秘匿)


傭兵(……まさか、な)


少女「ちょっと、なにぼんやりしてるのよ」


傭兵「ん? ああ、すまない」


少女「これだけ人が多いんだから、はぐれないように気をつけてよ?」


傭兵「子供じゃあるまいし……」


少女「きゃっ!」ドンッ


傭兵「むしろ君の方が心配だがな、どうする? 手でも繋ぐか?」クルッ



ガヤガヤ


ザワザワ



傭兵「……………」


ーーーーーーーー

第七章開始
短いですが今回はここまで

王道で実にいいな!

ーーーーーーーー

傭兵(ぬかった………まさかこれほど簡単にはぐれてしまうとは)


傭兵(もっと気を張っておくべきだったか……くそっ)


傭兵(この人混みから探すとなると相当な手間だぞ)


傭兵(………一先ずここを抜けるか)

「あ痛っ! 気ぃつけろ!」ドンッ


「ちょっと、押さないでよ!」グイグイ


「いででででっ! 足踏んでんだよデカブツ!」ギュム


「きゃっ! 今触ったでしょ!?」









ガクッ


傭兵「戦場かここは………!?」


傭兵(だが、脇道に抜けることができたな……)

傭兵(彼女も人混みを抜けようとするはず、少し通りを外れた場所を探せば………ん?)



…ック……グスッ……



傭兵(何だ……泣き声?)スッ


「えっぐ……うぅぅ……」


傭兵(子供……)


「ぐすん…………?」


童女「おじさん、誰……? なにしてるの?」

傭兵「……君こそ、どうしてこんな所で泣いている? 両親はどこだ?」


童女「………?」


傭兵「……お父さんとお母さんはどこだと聞いている。この人混みでははぐれても仕方ないとは思うが……」


童女「……いないよ?」


傭兵「なに……?」


童女「最初からいなかったもん、私知らない」


傭兵(孤児、なのか? 悪い身なりはしていないが………最初からいなかった?)

童女「あのねおじさん、そんなことよりね……」


童女「うさぎさんがね……いなくなっちゃったの」グスッ


傭兵(なんだこの違和感は……)


傭兵(だが……俺はこの感覚を知っている?)


傭兵「………そうか」


傭兵「では俺が……お兄さんが探すのを手伝ってあげよう」


童女「本当!?おじさん!」パア


傭兵「ああ、お兄さんが……」


童女「おじさんありがとー!」


傭兵「いや、お兄………まあいいか」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
酒場


少女「はぁぁぁぁ………油断した」


少女(正直嘗めてたわ、西の都)


少女(東の都じゃここまでの人は集まらないし………って私が田舎者みたいじゃない!)


少女(だいたいあいつもあいつよ! 依頼主とはぐれるなんて傭兵失格よ!)ダンッ


少女(………いや、八当たりね、はぐれたの私じゃない)

少女「はぁ……」


ナンパ男A「へいへーい、どうしたのぉ? 溜め息なんてついて?」


ナンパ男B「可愛い顔が台無しよ?」


少女「………………はぁ」


ナンパ男A「ちょっと無視ー? 悲しいじゃーん」スッ


少女「触らないで、クズが染つる」パシンッ

ナンパ男B「うっひゃ! この娘ちょー強気!」


ナンパ男A「いやークズ扱いされちゃったよ」


少女「消えてもらえる? 不愉快よ」


ナンパ男A「まあそう言うなって、俺らといいことしようぜ?」


ナンパ男B「そーそー、損はさせねぇって……」


バシャッ


ナンパ男B「…………」ポタッ…ポタッ…

少女「聞こえなかった? 消えろって言ったのよクズ共」


ナンパ男B「て、手前ぇ! やりやがったな!」


ナンパ男A「うえっ! しかもこれ……牛乳じゃねぇか!」


少女「あら、心配しなくても元からそんな臭いだったわよ?」


ナンパ男B「クソ女がぁ! 優しくしてやりゃつけ上がりやがって!」


ナンパ男A「ぶっ殺す!」グオッ


少女「………」




パシッ




ナンパ男A「んなっ!?」

「いやいや無粋………実に無粋だ」


ギリッ


ナンパ男A「いっ! いででででっ!!」


パンッ


ナンパ男A「ぐえっ!」ズダンッ


ナンパ男B「な、なんだ手前ぇは!」


「女性とは愛でるもの………暴力と悪態をぶつけるものでは断じてない!!」


色男「ここは一つ、粋というものを教えて差し上げよう」

ナンパ男B「嘗めやがって……!」ジャッ


ナンパ男A「いっつつ……許さねぇぞこの野郎!」ジャキッ


色男「酒の席で抜くとは……骨の髄まで無粋と見える」


ナンパ男A「おらぁぁぁぁぁっ!!」


ナンパ男B「死ねぇぇぇぇぇぇっ!!」


色男「……」チャキッ



ヒュヒュッ!!



ナンパ男A「うおっ!」ガキンッ


ナンパ男B「なっ……!?」カンッ


色男「……」キンッ


少女(一瞬で二人の剣を跳ね飛ばした……!?)


ヒュンヒュンヒュン


パシッ


色男「そんな君たちには……」

ザザンッ!



ナンパ男A「……」


ナンパ男B「……」


ハラハラ……


ナンパ男A「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ナンパ男B「お、俺の髪がぁぁぁぁぁ!!」


色男「ふむ、その髪型はなかなか粋だ」


ナンパ男A「畜生ぉぉぉぉぉ!!」


ナンパ男B「覚えてやがれぇぇぇぇ!!」

ダダダダダダッ


色男「大丈夫かな、お嬢さん?」


少女「ええ」


色男「さて、騒がせて悪かったな店主」


色男「彼女のグラスが空になってしまった、注いでやってくれ」


店主「あ、は、はい!」


少女「結構よ、これ以上借りを作るわけにはいかないもの」


少女「助かったわ、でも、あんなギリギリじゃなくてもよかったんじゃない?」

色男「おや、気付いていたのか」


少女「ま、あれだけ見られていたらね」


色男「それを言うなら、店中が君たちに注目していたが?」


少女「表情よ、あなたには恐怖や不安がなかった」


色男「ほう……ほうほうほう!」

色男「二人組の男相手にも臆さぬ度胸!」


色男「周囲の状況を正確に把握する慧眼!!」


少女(声でかい……)


色男「可憐なだけではない! まことに粋な女性だ!!」


キュッ


少女「ちょっ……!」


色男「あなたに惚れた! 私の妻になってほしい!!」

少女「無理」


色男「がはっ……!」


ガクッ


少女「悪いけど、はぐれた連れを探さなきゃいけないの」


少女「もう行くわね、助けてくれてありがとう」


色男「然らば!」バッ


少女(回り込まれた!?)


色男「そのお連れとやらの捜索、私も手伝おう」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
国立総合医療技術研究所


「アレは見つかったかしら?」


研究員A「いえ、中々手間取っているようですね」


「なら急がせて。今はまだもっているようだけど、早く回収しないと被害が大きくなる」


「憲兵も動かしなさい、どうせこんな時しか役に立たないんだから」

研究員A「了解しました」


研究員A「発見次第捕獲、ということでよろしいですね?」


「ええ、どうせもうボロボロでしょうけど、多少のデータは取れるでしょ」


「ただし、あまり抵抗するようなら……」






「処分しなさい」

ーーーーーーーー

お待たせしました
ちなみに傭兵はアラサーです

なんか少女がかわいい
いや普段からかわいいんだけどさ

また変なのが増えた…

ーーーーーーーー

傭兵「それで、そのうさぎさんとやらは何処で落としたんだ?」


童女「んー……」


童女「あっち!」


傭兵「………それじゃわからんだろう」


童女「だって、気付いたらなかったんだもん……」

傭兵「はぁ……仕方ない、地道に探すか」


傭兵「幸い、人混みからは遠ざかるようだが……」



グゥゥゥ



傭兵「………」


童女「………お腹空いた」







童女「〜〜〜♪」モグモグ


傭兵「まったく……」


店主「お待たせしました、ホットミルクです」コトッ

童女「ありがとー」


店主「どういたしまして」ニコッ


店主「いやぁ、可愛い娘さんですねぇ」


傭兵「いや、違……」


傭兵(……待て)


傭兵(親でもない男が幼い子供を連れまわす、というのは)


傭兵(色々マズいな……)


傭兵「あ、ああ、そうだろう」

店主「うちの娘にもこんな時期があったなぁ……」


傭兵「………」


傭兵「ところで、店主」


店主「はい、なんでしょう?」


傭兵「人を探していてな、金髪の少女を見なかったか?」


店主「金髪、ですか? そうですねぇ、この辺じゃあ珍しくもないんで何とも……」

傭兵「歳の頃は十六、七、気の強そうな目をしている」


傭兵「もしかしたらミルクを注文していたかもしれないな」


店主「ああー! あの娘か!」


傭兵「見たのか!?」


店主「見たも何も、大変でしたよー」


店主「その娘、チンピラに絡まれてたんですけどねぇ」

店主「やめればいいのに、煽るわミルクひっかけるわ………いや、すごい娘でしたよ」


傭兵(またか……そんな気はしていたがな)


傭兵(何故用心棒もなしにそんなことができるんだ?)


傭兵「で、その後はどうなった? 無事に済んだのか?」


店主「ええ、客の一人が割り込んできましてね」


店主「上手く収めてくれましたよ」

傭兵(ふむ………)


店主「その後は二人で店を出て行きましたね、連れを探すとかなんとか………ああ、もしかしてお客さんが?」


傭兵「……ああ、そうだ」


傭兵(……入れ違いだったわけか)


傭兵(素性の知れない相手が一緒にいるようだが………まあ彼女なら上手くやるだろう)


童女「ごちそーさま」

童女「おいしかったー!」ニパー


店主「ああ、ありがとう」ニコニコ


傭兵「さて、そろそろ行こう」


童女「うん!」


傭兵「情報ありがとう、助かった」


店主「いえいえ………あっ!」


傭兵「どうした?」


店主「いえね、最近通り魔が出るとかで」


傭兵「通り魔……?」

店主「はい、十分気をつけてくださいね、あまり遅くまで出歩くのは危ないですよ」


傭兵「ああ、気をつけるさ」


童女「ばいばーい!」ブンブン







傭兵「さて、では本格的に探し始めるとしようか」


童女「ん!」


傭兵「そのうさぎ、見た目はどうなっている?」


童女「えっとねー、黒くってねー、耳がぴーんってしててねー」


傭兵「黒いうさぎか……特徴のある見た目でよかったな」


傭兵「では、聞き込みもしながらしらみつぶしに……」




「待ちなぁ! そこの子連れの銀髪!!」


ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

露天商「銀髪の男? いや、見てないなぁ」


少女「そう、ありがとう」


少女(大通りを外れても結構な人ね……長丁場になりそう)


少女(しかも………)









色男「そこの粋なお嬢さん! そう! そこの君だ!! どうかな? お暇なら
私とお茶でも……」


少女(厄介な道連れまで……)

少女「………」クルッ



スタスタ



色男「いやぁ、実に粋だ。特にその髪飾りなどとても君に似合っている………むっ!」ピキーン


街娘「……!」ビクッ


色男「失礼、お嬢さん。どうやらもう行かなければならないようだ……くっ、実に名残惜しい!」


街娘「は、はぁ……」


色男「いや、別れは言うまい………いずれまた出会おう!」バッ


ザッ


色男「お嬢さん、場所を移す時は一声掛けてくれと言っただろう?」


少女「あんたナンパしてただけじゃない……」

少女(ついて来るなと言っても聞かないし、撒こうにも撒けないし……)


少女(ああ、もう………!)


少女「ストレス!!」ブンッ


色男「おおっと」ヒョイ


色男「い〜い拳だ……だが、少々粋が足りないな」


少女「っ……!」イラッ


少女(さっきの酒場の時といい、腕は確かみたいだけど……)

色男「むっ、あの眼鏡のご婦人………粋だ!」バッ


少女(……もう放っとこう)


少女「……ん?」


ザワザワ


「どけどけ! 邪魔だ!」


「うわ、ひでぇ……」


「うっ……!」


ガヤガヤ


少女「ねぇ、何かあったの?」

中年男「ん? ああ、また例の通り魔被害だよ。これで五人目だ……」


少女(通り魔……?)


少女「私、今日この街に着いたばかりなのよ、詳しく聞かせてもらえる?」


中年男「ああ、そうなのかい」


中年男「丁度一週間程前からかな、通り魔が現れるようになったんだ」


中年男「被害者は年齢も性別もバラバラで、現場にも犯人の手掛かりになりそうなものはないらしい」

中年男「あー、ただ……その………」


少女「なによ?」


中年男「君みたいな女の子に言うのは気が引けるんだがね…………被害者の死体は、どれもズタズタのミンチにされてたらしい……」


少女「………」


中年男「犯人は大人の男で間違いないって言われてるよ」


中年男「女子供にあんな芸当はまず無理だろうからね」


中年男「お嬢ちゃんも気をつけるんだよ?」

少女「ええ、ありがとう」


少女(通り魔……ね)


少女(この現場の人員を見る限りでも、憲兵はかなり捜査に力を入れているのがわかる)


少女(当然よね、国内ナンバーツーの大都市の憲兵が、通り魔一人捕まえられないようじゃ面子が丸潰れだもの)


少女(そんな厳重な警戒態勢の中、犯行を続けながら一週間も逃げ延びている………)


少女「どうもキナ臭いわね」


色男「ああ、実に無粋だ」

少女「うわぁっ! いつの間に!?」


色男「ふむ………」



ザワザワザワザワ



黒服A「………」


黒服B「………」



色男「………憲兵以外にも、無粋なものが混じっているな」


少女「え……?」


色男「いや、なんでもない」


色男「そんなことより! そろそろ私の粋な気持ちに応えてはいただけまいか!?」


少女「絶対無理」


色男「がはっ……!」ガクッ

ーーーーーーーー

今日はここまでー

おつ

伏線が豊富で楽しみが増えた

ーーーーーーーー

傭兵「………誰だ」


「あ〜ん? 俺を知らねぇとは、世間知らずな野郎だ」


「西部憲兵隊隊長! 岩をも砕く剛腕! 世にも名高い『狂牛』とは、この俺様のことだぁ!!」ズンッ


狂牛「ぬっふっふっ、我ながらイカした口上だぜ………なぁお前ら!!」


西憲兵A「おっしゃる通りです隊長!」


西憲兵B「流石です隊長!」

傭兵(知らん名だ………隊長格といっても、皆が皆当時の戦士とは限らないか)


傭兵(それにしても……)


狂牛「おい! 無視してんじゃねぇぞ! カッコよすぎて声も出ねぇか!?」


傭兵(デカいな、俺が見上げるほどとは)


傭兵「隊長殿が一体何の用だ?」


傭兵「こちらは見ての通りただの親子連れだ、憲兵に声をかけられる覚えはないぞ」

狂牛「手前ぇに無くてもこっちにゃあるんだよ、大体用があんのはそっちのガキだ」


傭兵「なに……?」


狂牛「ここ最近の通り魔事件、そこのガキに容疑がかかってる」


傭兵「馬鹿な事を……こんな小さな子供に、そんな真似が出来ると思っているのか?」


狂牛「知らねぇよ、俺たちも上から言われただけだっつーの」


西憲兵A「隊長、あまりそういったことは……」


狂牛「あ……? あ〜そうか、おい! 今のはナシだ!」


憲兵B「流石です隊長!」

傭兵(上……? 憲兵隊長の上だと?)


狂牛「だぁーっ! もうまどろっこしい!!」ブオッ


ズンッ……


狂牛「手前ぇを叩き潰して、その後そいつを連れて行きゃ済む話だ!」


傭兵(戦鎚……それも大人の身の丈程はある)


狂牛「公務執行妨害だ! 遠慮はいらねぇぞお前ら、抜け!!」


西憲兵『了解!』



ジャキジャキジャキッ



傭兵「……」ジャッ

狂牛「ぬぉぉりゃぁぁぁぁあ!!」



ブオッ!



傭兵(遅い)


傭兵(隊長になれる程の実力とは思えんが……)バッ



ドガァッ!!



狂牛「避けんなぁっ!」

傭兵(威力だけはかなりの…………っ!!)


ヒュヒュンッ


傭兵(拙いっ! 破片が……!)



ガシャァァァァンッ



「きゃぁぁぁぁっ!!」


「うわぁっ!」


「おいっ! 大丈夫か!?」



傭兵(周囲の被害をまるで考えていない! このままでは市民に怪我人が出るぞ……!)


狂牛「ぬぇいっ!!」


傭兵「くそっ!」

ガィィィィィィンッ


傭兵「馬鹿力め……!」ビリビリ


狂牛「おらおらおらぁぁぁっ!」


ガァン


ガギィッ


ガィィィンッ


傭兵(このままでは拙い、決めにいくしか……)ミシッ



西憲兵C「大人しくしろっ!」

童女「やぁだぁっ! 離してぇっ!!」バタバタ


ガリッ


西憲兵D「痛ってぇ!! このガキィっ!」グオッ


傭兵「っ!?」


ドウッ!!


狂牛「あっ! 手前ぇっ!」


傭兵(間に合え……!)ギュオッ



ガシッ



西憲兵D「ん……?」


バキィッ!


西憲兵D「ぶげっ!」


西憲兵C「こいつ! 速……」ドゴッ!

ドシャッ


傭兵「はっ………はぁ………くそっ……」


童女「おじさん……」



傭兵「ここから離れろ……!」


童女「後ろ……」


傭兵「!?」


狂牛「ぬぅぅぅぅぅぅんっ!!」ブンッ

ガギィィィィィンッ



傭兵「くっ……」ビキビキッ


バキィィィンッ!


傭兵(っ!? しまっ……)



ドガシャァァァァァァンッ!!



狂牛「ぬぁっはっはっはっはぁっ! やってやったぜぇ!」


西憲兵A「た、隊長! あそこは憲兵の詰所ですよ!?」


狂牛「ああ? 細けぇ事ぁ気にすんなぁ!」


西憲兵B「流石です隊長!」


狂牛「よしお前ら! ふん縛って連れてこい!」


西憲兵『了解!』

パラパラッ


傭兵「ぐっ……」


傭兵(骨は折れてないが、剣はもう使い物にならないな……)


傭兵(ここは………憲兵の詰所に叩き込まれたのか……)


傭兵(! そうだ、憲兵用の剣があるはず)ムクリ


ガチャガチャ


傭兵(くそっ! 全て持ち出しているのか!?)

傭兵(予備くらい常に用意しておけ!)


ガタンッ


傭兵「……!」


傭兵「これは……」



バタバタバタ



「くそっ、すごい砂煙だ!」


「隊長にも加減を覚えてほしいもんだな」


「おいっ! いたぞ!」


ヒュオッ!

ドバァンッ


狂牛「な、なんだぁ!?」


ドシャァ


「ぐっ……」


「がはっ」


狂牛「お前ら……! 大丈夫か!?」


傭兵「……」ザッ


西憲兵A「隊長! 奴が出て来ました!」


狂牛「!?」

ヒュンヒュンヒュンヒュンッ


傭兵(久しぶりだな……)


パシッ


傭兵「剣以外の得物は」


狂牛「槍、だとぉ!?」


西憲兵A「あ、あれ、 うちの装備品ですよ!」


狂牛「手前ぇ! 人様のモン勝手に使ってんじゃねぇぞ!!」グオッ


傭兵(遠心力を高め……)ヒュンヒュンヒュン


狂牛「ぬおらぁっ!!」


傭兵(全力で……)



ガッギィィィィィィィンッ……

狂牛「うおっ……」


傭兵(受け流す!)


狂牛「とっとっ……」グラッ


傭兵(そして崩れた所へ……)パッ


ダッ


狂牛「………!!」



ズドムッ!!

狂牛「がっ………」ゴドンッ


傭兵(叩き込む!!)


狂牛「…………っぬぅん!」ダンッ


狂牛「まぁだだぁ!!」


傭兵(耐えたか……だが)


狂牛「舐めんなよぉっ!!」ブアッ

傭兵(徒手格闘なら!)パシッ


パァンッ!


狂牛「………んなっ!?」グルンッ



ズッッダァァァァァンッ!!



狂牛「ごはっ………!!」


傭兵「腕力の差は関係ない……」


「隊長が……!」


「ど、どうすんだよこれ!」


西憲兵A「て、撤退! 一先ず撤退だ! 退けぇ!」


ダダダダダダッ

傭兵「ふぅ……」


ズキンッ


傭兵(っつ! 流石に効いたか……)


童女「おじさん……」


傭兵「ああ、怪我はなかったか?」


ポスッ


傭兵「?………おい?」


童女「ねむ……」


傭兵「は?」


童女「……すぅ……すぅ」


傭兵「…………」

ーーーーーーーー

お待たせしました
年内の投稿はこれで最後になります
みなさんよいお年を

おつかれさま!
良いお年を!

来年も楽しみに待ってるぜ

ーーーーーーーー
深夜ーーー路地裏


少女「………」


少女(例の殺人現場……流石に何か残ってるとは思わないけど)


色男「お嬢さん、あまり遅くまで出歩くのは危険だと言われただろう」


少女「あら、怖ければ着いてこなくていいわよ」


色男「ふっ……何をおっしゃる」


色男「私の七色の剣技をもってすれば! 無粋な通り魔など恐るるに足らず!!」

少女「はいはい、分かったから少し静かにして、近所迷惑よ」


少女(壁や地面まで軽く抉られてる……鉈か何か、余程頑丈な得物ね)


少女(通りからじゃわからないけどこの路地、かなり奥まで続いてる)


コッコッコッ


少女(やっぱり街が大きくなれば、人目につかない場所も増えてくるということね)


色男「それにしても何故こんな場所へ? 殺人現場など、婦女子の見たがるものではないだろうに」

少女「ちょっと気になってね、憲兵の目を巧みに潜り抜けるシリアルキラーって奴に」


少女「現場を見てみるだけでも何か分かればと思って………ん?」スッ


色男「どうかしたのかね?」


少女「なにこれ……」



カツン…



色男「………」ピクッ


少女(!? 誰か来る………?)

カッ…カッ…カッ…



カッ……



黒服A「………」


黒服B「………」


少女(何者……)


少女(たまたま通りかかった………訳ないわよねぇ)

黒服A「………」ユラ


黒服B「………」ユラァ


ドウッ!


少女「!?」



ゴシャァッ!!








黒服A「…………!?」ミシッ


ドッザァァァァァァ!


色男「またしても女性の窮地を救ってしまった……」


黒服B「!」


色男「やはり粋な男だ! 私は!!」

黒服B「………」チャキッ


色男「そんな可愛らしい得物で!」


シャッ


色男「私は!」バシィッ


黒服B「!?」カシャン


色男「捉えられん!!」


ドゴォッ!


黒服B「がっ………!」


ドサッ


色男「ふっ………」

色男「怖かったろうお嬢さん? 私の胸で慰めてあげようではないか! さあ!」バッ!


少女(連中の動き、明らかに荒事に慣れたものだった)スッ


色男「………」


ゴソゴソ


少女(得物はさっきのナイフだけ……件の通り魔とも違う)


少女(何か手掛かりになる物は……っと)カサッ


少女「これは……」

色男「依頼書、とあるな。つまり彼らは雇われか」


少女「ええ、それもとびっきり下衆な、ね」


少女「見なさいこれ、依頼の内容は人攫い」


少女「対象の人相書きだって、まだ子供じゃない」


少女「でも何より異常なのはここ、依頼主の名前」パシッ


色男「…………!」

少女「……国立総合医療技術研究所」


少女「なんで国立の、しかも人命を司る機関が、人攫いなんかに関わってるんでしょうね」


色男「………なかなかどうして、深い闇があるようだな、この街には」


色男「だが、その人攫い共が我々を襲う理由はわからないな」


少女「ああ、多分これよ」


色男「なんだそれは……? 」

少女「黒い兎のぬいぐるみ、そこで拾ったんだけど、お目当てはこれだったんでしょうね」


少女「私自身に用があるなら、まずは邪魔な貴方を潰すはずだわ。でもあの二人は真っ先に私の手元を狙ってきていた」


少女「推測だけど、彼らは標的を見失ったんだと思うわ。それで手掛かりを探していた、ということ」


少女「多分、標的の娘の持ち物なんでしょ、これ」

色男「なるほど……」


少女「ただ………」


少女「なんでそれが殺人現場の近くに落ちていたのか、人攫い達もなんでここへ探しに来たのか」


少女「不可解な点は残るわね……」


色男「ふむ……」


色男「聞いてみるかね? そこの二人に」パキパキッ


少女「現場の下っ端が大したこと知ってるとは思えないわ、徒労よ」


色男「……それもそうか」

色男「いやしかし、君の胆力と洞察力には驚かされる」


色男「やはり君しかいない! 私の妻になってくれ!」


少女「…………そうね、考えてあげてもいいわよ」


色男「なにっ!? それは……」


少女「たーだーし! 条件があるわ」


色男「何でも言いたまえ! 君のためとなれば! 私はなんだってしよう!!」


少女「ふぅん、じゃあ……」






少女「国家機関、潰すの手伝ってもらえる?」
ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
深夜ーーー宿屋


童女「すぅ……すぅ……」


傭兵「ふー……」


傭兵(まったく、気持ち良さそうに寝るものだ)


傭兵(こちらは散々引っ張り回されたというのに……)


童女「うぅ………ん」

傭兵「………」


傭兵(もし……)


傭兵(もしぬいぐるみを見つけて、それからどうする……)


傭兵(親はいないと言っている………それに今日一日彼女を見てきたが、やはりこれは……)


ムクリ


童女「………」


傭兵「ああ、すまない、起こしてしまったか?」

童女「………………ぃ」


傭兵「……なんだ?」


童女「……ぃたい」


童女「痛い? 何処か怪我をし……」


童女「……たい…………ぃ、たい、いたい、いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいっ!!!!」


ジャッ


傭兵「!?」ガシッ

童女「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ググッ


傭兵(なんだ……これは!)


傭兵(これが、子供の腕力か……!?)ギリッ


童女「ぃた、い、いぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


傭兵「くっ……落ち、つけっ……!」グイッ


ギュウゥ


童女「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ガリィッ


傭兵「ぐぅっ……!」

童女「ぁぁぁあ、あ……ぃや、いたい、いたいいたい、いた、いぃぃ……」


童女「ぃや………いたい、ぃたい、だ……か………たす、け……」


童女「お、にぃ…………ちゃ……」カクッ


童女「…………すぅ」


傭兵「………」


傭兵(気のせいなどでは、なかった……)


ギュウゥッ


童女「んぅ……」


傭兵(この娘を同じだ………俺と……)


傭兵(俺たちと………!)

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー
国立総合医療技術研究所


「へぇ、そう………銀髪の男が、ね……」


研究員A「はい、憲兵隊はもう使い物にならないかと」


「いいわよ、最初から期待はしていなかったから」


「後、依頼も全てキャンセルしておいて。もう必要ないわ」


研究員A「は、はぁ……」


「ふふ、何の因果かしらねぇ……」


「……待ってるわよ、銀狼」

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遅くなりましたが
あけましておめでとうございます

今年の目標:更新回数UP

あけまし乙おめで乙うございます

おつ

今年の目標…

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早朝ーーー総医研・正門


守衛A「ふぁ……」


守衛B「ひどい霧だな、今日は」


守衛A「ああ、まったくだ…………ん?」



ザッ……ザッ……ザッ……



守衛A「止まれ! 」


「………」ザッ


守衛A「この施設へは特別な許可がなければ入れないぞ」


守衛B「通行証はあるか?」


「………ない」


守衛B「だったら出直しな、だいたい子連れなんかで………」ガッ


守衛A「なっ……!」ガッ


ドザァ


「………」ザッ


「おじさん……」グイッ


「………」ピタッ


傭兵「……どうした?」


童女「私、ここ………」


童女「やだ……」ギュゥ


傭兵「………」


スッ


童女「………」ピクッ


傭兵「すまない、少しの間我慢してくれ」


傭兵「すぐに終わらせる」


ガシャン


ギギギギギ……


傭兵(………終わらせる)

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

同刻ーーー総医研・裏門


少女(………)コソッ


少女(高い塀、極端に少ない窓……)


少女(余程見られたくない物を抱えてるみたいね……でも)


少女「守衛が一人もいないなんておかしいわ………」


色男「なにやら表の方が騒がしい、トラブルでもあったのだろう」


少女「トラブル、ね……」

少女(守衛が持ち場を放り出すだなんて………余程腕の立つ侵入者でも入ったのかしら?)


少女「ま、何にしても好都合だわ、今のうちに中に入るわよ」


色男「了解だ」


少女「………自分で言っといてなんだけど、よく本当についてきたわね」


色男「ふっ……私は愛に生き、愛に死ぬ男だ!!」


少女(やっぱり素で言ってるわよね、これ………)

色男「して、これ程の施設を一体どうやって潰すおつもりかな? お嬢さん」


少女「中の資料なり記録なり掻っ攫って、街中にばら撒くのよ」


少女「憲兵に駆け込んだって握り潰されるだけでしょうからね、民へ直接見せつけてやるわよ」


少女「この国の本当の姿ってやつを」


色男「なるほど、実に単純かつ効果的な方法と言える………」


色男「ああ!やはり君は私の「そーゆーのはもういいから! 」


少女「まったく……ほら、さっさと行くわよ」


少女(………鬼が出るか蛇が出るか、見せてもらおうじゃない)

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

「がはっ………」


ドサッ


傭兵(………違う)


傭兵(纏う空気が………腹に据えた意志が違う)


傭兵(ここまでの警備兵は皆、何も知らされていないのだろう)


傭兵(情報管理を徹底しているのか、取るに足らぬ駒としか見ていないのか、或いは両方か………)

傭兵(何にせよ、ここの頭が厄介な相手だというのには変わりない)


カツン


「あーあーあー、これはヒドイ」


傭兵「………」ピクッ


「たった一人の侵入者にここまでやられるなんテ、所詮は雑兵カ」


傭兵「………お前は、知っているな」


「ンッンー、ご明察」

「 私は『蟷螂』。フリーランスだガ、今はここの用心棒兼被験体サ」


蟷螂「そこらの雑魚とは訳が違うヨ?」


傭兵(被験体………)


蟷螂「おやぁ? そちらのお嬢ちゃんは確カ……」


童女「……!」ビクッ


蟷螂「クカカッ! 自分から戻ってくるなんテ、殊勝な事だネ」

童女「………」ギュゥ


傭兵「………お前は、自ら進んで協力しているのか?」


蟷螂「そうサ。報酬は高額、その上実験に身体を提供すれば力も手に入ル、割のいい仕事だヨ」


傭兵「俺の予想の通りなら………」


傭兵「この施設は、実験に多くの子供を使っているはずだ」


蟷螂「そうだネ、それがどうかしたかイ?」


傭兵「………」


蟷螂「私には関係のない話だヨ。私は傭兵、『金』と『力』だけが全てサ!!」


傭兵「もういい……」スラァ


傭兵「退がっていろ」


童女「………」コクン


蟷螂「クカカカカカカッ! それなりにはできるようだガ、嘗めてもらっては困るヨ!!」


蟷螂「人体改造を繰り返シ、筋力モ! 反応速度モ! 全てが常人とは桁違いダ!」

蟷螂「人間を超越した力! その身を以って思い知レ!!」ジャッ


傭兵「………」チャキッ


蟷螂「シャアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!」





ザンッ





蟷螂「ァァァ………ア?」


傭兵「………安心しろ」


蟷螂「な……あ………」


傭兵「お前はまだ人間だ」




ブシャァァァァァァァァッッ!!




蟷螂「速………」ドシャ


傭兵「………」キンッ

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

タタタタッ


少女(やっぱり………中の警備も手薄になってる)


少女(上手く出来すぎてて逆に不気味だわ………)


色男「………!」ピクッ


色男「お嬢さん、少し待ってくれ」

少女「何よ、どうしたの?」


色男「たった今、とてつもなく粋な口説き文句を思いついた………」


色男「少し聞いてはくれまいか!!」


少女「あんたやっぱ帰ってくれる!?」


ガシャンッ!


ギィィ……


「おう兄者、いたぜ、鼠だ」


「よくやった弟よ、これでボーナスも弾んでくれるはずだ」

少女「!?」バッ


「なんだぁ? ただのガキと優男じゃねぇか」


「警備兵が全滅って聞いて楽しみにしてたのによぉ………」


「いや、おそらく件の侵入者とは別だろう」


「 騒ぎに乗じた盗人か、はたまた表の奴の仲間か………」


「ま、どっちにしたってやるこた同じだ、なぁ兄者!」


「そうだな弟よ、我らはただ殺すのみ、それ以上でも以下でもない」

「俺達ゃ『百足』」


「一対の毒牙」


百足弟「恨みは無ぇが金の為だ!」


百足兄「そっ首刎ねて持ち帰る」


百足『覚悟しろ』


少女(拙い………)


少女(好都合なんてものじゃなかったわ、お陰でとんでもないのにあたってしまった……)


少女(この通路には遮蔽物も殆どない、これじゃあ逃げるも隠れるも………)

スッ


少女「えっ……?」


色男「合図をしたら全力で駆け抜けたまえ」


少女「はぁ!? あんた、何言って……」


色男「この機を逃せば、警備はより厳重になる。二度と踏み入ることは出来ないだろう」


色男「今我らがすべきは背を向けて逃げることではない」


ジャッ!


色男「立ち向かい、打ち勝つことだ!」


少女「………!」

百足弟「おい兄者、聞いたかよ」


百足兄「ああ、どうにも我らを侮っているようだ」


百足兄「ならば………思い知らせよう」ズッ


百足弟「へへっ」ジャッ


少女(十字槍と、二振りの短刀……)


色男(………やはり間合を分けた連携か)


色男「お嬢さん、君を危険に曝すのは百も承知、だが……」


少女「いいわ」

少女「乗ってあげる……いえ、信じてあげる」


少女「あなたの腕は確かに見た。命を預けるには十分よ」


色男「………やはり」


色男「私にゾッコンだったか!!」ドウッ


百足弟「はぁっ!」


ギィンッ!


色男「行け!!」


少女「っ!」ダッ

百足兄「はんっ! こっちは二人だぜ?」


百足兄「通すものか!!」ブオッ


少女「!!」ピクッ


少女(……信じるんでしょ?)


少女(だったら竦むな、留まるな………!)


少女(走れ!!)


ダ

色男「………」クンッ


ヒュオウッ


百足弟(まず一人……)


ダ


百足兄(獲ったり!!)


ダ


シュルルルルルルルルルルッ!


ズバシュゥッ!!


百足兄(……………なっ)


百足弟「にぃぃぃっ!?」


ダンッ!


少女「っ……はぁっ!!」


タタタタタタッ

百足弟「でえりゃっ!」


ガギィンッ


色男「………」ザザッ


百足弟(この距離で、俺と鍔迫り合いながら兄者に攻撃を………?)


百足兄「ぬぅ………」ポタッ……ポタッ……


百足兄「一体、何の手品だ……?」


色男「ふむ、如何かな」


色男「これが粋というものだ」

ーーーーーーーー

大変お待たせいたしました
目標立てたそばから達成ならず、という………

また日曜にも更新するので許してくださいお願いします!

まだ年末じゃないから余裕があるさ

他のところよりか全然更新早いし、そこまで気にしないでも大丈夫だと思うぞー
まあ更新早ければ早いほどこっちは嬉しいんだけどな、何にせよ乙乙!

乙!

色男残念イケメン過ぎ乙

このsage忘れであるすまん

ーーーーーーーー
資料室

バサバサバサッ


少女「何よ、これ………」


少女(………第二次強化兵製造計画)


少女(13歳未満の孤児等を対象に手術、投薬、洗脳を行い身体能力の強化を図る……!?)


少女(こんなこと、許される筈がない!)


少女(もっと……決定的な証拠になるものは……!)

ドサッ


少女(これは、第一次計画……? なるほど、この施設の前身という訳ね)


少女(年代は………私が産まれるよりさらに前、南部戦線以前からこんな計画が……!?)


少女(つまり、黄金鹿主導によるものではない、と……)


少女(なら、一体誰がこんなことを……)


パラ……パラ……


少女「!?」

少女(この、名前って……)



赤獅子『不死鳥の忘れ形見よ』



少女「不死、鳥……?」



傭兵『俺は、元々孤児だった』


傭兵『それからは養子として、あの人の元で暮らした』



少女(………時期は一致する)


少女(でも、そんなのって……それじゃ……)



飛蝗『私達は作られた紛い物の英雄だ……』



少女「それじゃ、あいつは………!」

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

カッ……カッ……カッ……


傭兵(ここまでで既に四人………)


傭兵(だが、いくら用心棒を倒したところで意味はない)


傭兵(早く……この施設の核を潰さなければ)


傭兵(……! 研究室……ここなら!)

バァンッ!



傭兵「なっ………!?」


傭兵(誰もいない……!? どころか、設備も全て持ち出された後か……!)


「研究員は皆逃がしたわよ」


傭兵「!?」バッ


「案外早かったじゃない、まあ誤差の範囲内かしら」


傭兵「お前、は………」

「久しぶりね、銀狼」


傭兵「『狢』……!」


狢「なによ、幽霊でも見たような顔して」


狢「同窓に向ける目じゃないわね」


狢「ああそれと、おかえりなさい『14番』」


童女「……!」ビクッ

傭兵「………」


傭兵「お前は、訓練過程で『処分』されたはずだ」


狢「あら、あんな出来損ない達と一緒にしないでもらえるかしら?」


狢「私が貴方達の前から消えたのは、あの方に見出されたから」


狢「あの人は……不死鳥は私の本質を正確に見抜いてくださったわ」


狢「私は選ばれたの! あの人の意志と、業を継ぐ者として」


傭兵「………不死鳥は、死んだ」

狢「そうね、それがどうかしたの?」


狢「あの人が生きていようと死んでいようと関係無い」


狢「私はあの人の願いを叶える為だけの物」


狢「心配しなくても、その点は貴方達と同じよ」


狢「ただ殺す為だけに作られた、貴方達とね」


傭兵「………」


傭兵(こんなことをして心が痛まないのか、などと………無駄な問いだろうな)

傭兵(あの集団の中でなお、こいつの道徳観は異常だった……)


傭兵(対話は、意味を為さない)ジャキッ


狢「あら、御喋りはもうお終い? つれないわね」


傭兵「………」


傭兵「やはり、一つだけ聞いておく」


狢「なにかしら?」


傭兵「彼女のことを14番と言ったな……」

童女「………」


傭兵「ここには一体、何人の子供が囚われている」


狢「囚われているなんて人聞きが悪いわね、ちゃんと衣食住は与えているわよ」


傭兵「質問に答えろ」


狢「そうねぇ、確か被験体は全部で94だったかしら」


傭兵「!?」


傭兵「それだけの人数を、どうやって集めた……!?」


狢「半分くらいは孤児よ、どんな時代でも身勝手な親はいるものね」


傭兵「………残りの半分は?」

狢「とっても簡単で冴えた方法よ」


狢「ここは表向きには医療機関、直接診察や手術をすることはないけれど、街の医者達には多額の資金援助をしているの………」


傭兵「………」


狢「では問題です」


狢「産まれたばかりの赤ん坊、その温かく柔らかな命に最初に触れるのは」


狢「さて、誰の手でしょう?」ニヤァ


傭兵「………!!」ゾワッ


ダッ


ガシィッ!


傭兵「貴、様ぁ……!」


狢「痛いじゃない、離してもらえる?」


傭兵「一体………一体どれほどの家族を不幸にしてきた!!」

狢「あははははっ! 家族ぅ!? 貴方の口からそんな言葉が聞けるなんてね!」


狢「何の問題もないわよ、両親には死産だったと伝えて、補償も支払ってる」


狢「ほら、不幸なんて何処にもないでしょう?」


傭兵「………っ!!」ギリッ


傭兵「このっ……!」


狢「異常者、かしら?」

狢「それとも奇人? 狂人? その通りよ、 全部正解!」


狢「貴方達の価値観では、私を測ることは出来ない。私はただ、私の使命に………あの人への忠誠に殉ずるのみ」


狢「だから………」




狢「すっこんでなさい健常者」




ビュオッ!



傭兵「!?」


ギャリィンッ!

傭兵「………っ」ザザッ


狢「ふふふ、悪くないわ。及第点よ」


狢「四号」


四号「………」


狢「五号」


五号「………」


傭兵(子供………!?)


童女「………!」

狢「有象無象の被験体とは違う、完全な調整を施した試作品よ」


狢「実地テストも兼ねて、相手してもらおうと思ってね」


傭兵(………今の踏み込みの速度、剣圧)


傭兵(明らかに子供のものではない………どころか、ここまでに倒してきた傭兵達にも勝る程だ)


傭兵(それに………あの生気のない瞳は)

童女「ぉ……兄、ちゃん………?」


五号「………」


童女「お兄ちゃん!!」タッ


傭兵「!? 待てっ!」


五号「………」スッ



バシィッ!



童女「あぐっ……!」ドサッ


五号「………」ジャキッ


童女「お兄ちゃん………」


傭兵「っ!?」ダッ


五号「………」グオッ

ーーーーーーーー

それではまた

おつ

wktkしながらまってる

もう来ないのかね

駄目だろうね

いや、俺は待つぞ

待ってるよ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月05日 (金) 20:08:49   ID: o0ctfNWw

終わり?

2 :  SS好きの774さん   2016年04月29日 (金) 20:59:27   ID: JYN6eUfE

完結×1←なぜに?

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