バサラ「俺の歌を聴けぇ!」右京「はい?」(114)

亀山「ここは空飛ぶフンフフーン~」

右京「おはようございます」

亀山「あ、右京さん。おはようございます!」

右京「何やら、ご機嫌のようですねぇ」

亀山「あ、わかります? 実はね、今度のFIRE BOMBERのライブに行けることになったんですよ!」

右京「FIRE BOMBERというと、2038年に地球を出発した第37次超長距離移民船団を、異星人であるプロトデビルンの攻撃から守ったという伝説を持つロックバンドだったと記憶しています」

亀山「そう、そのFIRE BOMBERが、今度地球でライブを開くんですよ!」

右京「なるほど。近年はフォールド技術も進歩していますからねえ、地球に帰ってくることも容易でしょう」

亀山「いやぁ、楽しみだなぁー」

右京「しかし、君がFIRE BOMBERのファンだったとは知りませんでした」

亀山「何言ってんすか。今はもう、そこらじゅうこの話題で持ちきりですよ?」

米沢「失礼します」

右京「おや、何か用ですか?」

米沢「ええ、亀山さんに、CDを貸す約束をしておりまして……」

亀山「おっ、待ってましたよ米沢さん!」

米沢「どうぞ、こちらになります」スッ

亀山「いやぁ、コレがね、どこ探しても見つかんないんすよ」

米沢「でしょうなぁ。最近の彼らの人気には、目を見張るものがあります」

右京「おや、米沢さんもFIRE BOMBERのファンでしたか」

米沢「実はつい最近ハマってしまいまして。こういう音楽には今まで触れたことがなかった分、衝撃でした」

亀山「あ、ホラ右京さん! ちょうど今テレビにFIRE BOMBERが出てますよ!」

アナウンサー「えー、今日のゲストはFIRE BOMBERのみなさんでーす!」

バサラ「ボンバー!」

ミレーヌ「ちょ、ちょっと止めてよ、恥ずかしい……」

アナウンサー「今回は地球で初のライブということで、何か意気込みを聞かせていただきたいんですが……?」

バサラ「みんな! 俺たちといっしょにファイヤーしようぜ!」

ビヒーダ「……」ドンドンジャーンジャジャーン

右京「……」

右京「なかなか個性的な方たちのようですねえ……」

亀山「右京さんはこういう歌は聴かないんすか?」

米沢「よろしければ、杉下警部にもCDをお貸ししますが。こちらなどどうでしょう」⊃LET’S FIRE!!

亀山「お、いいっすね! ここでちょっとかけてみます?」

右京「僕は、遠慮しておきます」

亀山「そうすか? いっぺんぐらい聴いてみません? これとか……」

伊丹「おい、特命係の亀山ぁ~」

亀山「あ? なんだよお前、何か用か?」

伊丹「ケッ、用でもなきゃこんなトコ来ねえよ! お前ら宛に通信が入ってんだ」

亀山「通信だぁ? で、内容は?」

伊丹「知らねえよ! だがな、なんでも相手は、移民船団の艦長だとよ」

右京「はい?」

三日前
シティ7 アクショ

バサラ「おい、ミレーヌ! お前また遅れてんぞ」

ミレーヌ「何よ、バサラが速すぎるんじゃない!」

バサラ「うるせえな、ライブまでもう日が無えんだぞ? しっかりやれよな」

ミレーヌ「フン、なによバサラったら! いつもは全然やる気なんてないくせに……」

レイ「まあそう言うなミレーヌ。バサラも初めての地球でのライブに緊張してるのさ」

ガムリン「失礼します」

ミレーヌ「あ、ガムリンさん!」

ガムリン「やあ、ミレーヌさん。おはようございます」

バサラ「なんだよ、何か用か?」

ガムリン「ああ、ちょっとな……」チラッ

レイ「ん? 俺にか?」

ガムリン「ええ。できれば二人で話したいのですが……」

レイ「なに? テロの脅迫状が届いたぁ?」

ガムリン「はい。今朝、ミリア市長のオフィスに……」

レイ「はぁ……だが、何でそれを俺に?」

ガムリン「実は……犯人の要求は、今度のあなたたちのライブの中止なんです」

レイ「なんだって?」

ガムリン「市長はただのイタズラだろうと言ってますが、マックス艦長は今回のライブは中止にした方がいいと……」

レイ「なるほどな。それで俺にか?」

ガムリン「ええ。俺からバサラに言ったところで、聞く耳を持たないでしょうし……」

バサラ「けっ、冗談じゃねえぜ」


ガムリン「バサラ! 聞いていたのか!?」

バサラ「テロだか何だか知らねえが、上等じゃねえか。俺の歌はそういうヤツらに聴かせるためにあるんだぜ」

ガムリン「しかし……!」

バサラ「それにいざとなったら、お前がなんとかしてくれるんだろ?」

ガムリン「な……バサラ、お前……」

ガムリン「フッ……分かった。艦長にはライブを行うように説得してみよう」

レイ「すまんな、よろしく頼む」

マックス「……そうか、やはり説得は無理か」

ミリア「あなたは気にし過ぎよ、こんな紙切れ一枚で」

マックス「いや、しかしだな……」

ミリア「それに、今回の地球へのフォールドは多くの市民が楽しみにしてるの。今さら中止にはしたくないわ」

マックス「う、うむ……それは十分に理解しているが……」

ガムリン「しかし市長、我々ダイヤモンドフォースだけではテロを防ぎきれるかどうか……」

ミリア「そうね……艦長、地球側にも警備の強化をお願いできないかしら?」

マックス「うむ……しかし、脅迫状1枚では、向こうも動いてはくれないだろう」

ミリア「そこをなんとかするのがあなたの仕事じゃなくて?」

マックス「……そういえば、地球には今回のような特殊な事件を専門とする特殊部隊があると聞いたことがある」

ガムリン「特殊部隊……ですか?」

マックス「ああ、確か……警視庁特命係、と言う名前だ」

マックス「初めまして。バトル7艦長、マクシミリアン・ジーナスです」

右京「警視庁特命係、杉下右京と申します」

亀山「同じく、亀山薫です! あの、脅迫状って言うのは……?」

マックス「こちらです」ピラッ

右京「『今度行われるFIRE BOMBERの地球ライブを中止しろ。さもなくば……』」

亀山「『観客の歓声を悲鳴に変えてやる……』……右京さん、コレ……」

右京「送り主に、心当たりはありませんか?」

マックス「申し訳ない、見当もつかない状態でして……」

右京「船団に暮らす人々にとっても、今回の地球でのライブは楽しみなものだったでしょう」

マックス「ええ……こちらとしては、ライブの中止は避けたいもので……お力を貸していただけますか」

ライブ当日

レイ「バサラ、準備はいいか?」

バサラ「ああ……でも、バルキリーを持ってこれねえとはな」

レイ「まあ、あれでも一応戦闘機だからな」

ミレーヌ「いいじゃない、プロトデビルンを相手にするわけじゃないし」

バサラ「……フン」

右京「亀山くん、そちらはどうですか?」

亀山「それが、すごい数の人で……犯人捜しどころじゃ……」

右京「一応、船団の方も警備についてくれていますが、くれぐれも、ライブに夢中になって犯人を見逃すことのないように」

亀山「わ、わかってますよ! ……あ、始まりましたよ、右京さん!」

バサラ「ボンバー!」

ワァアアアアアアアア

バサラ「地球のみんな! 今日は過激にファイヤーしようぜ!」

亀山「くそ~、テロさえなきゃ俺もライブ見れたのに……んん?」

米沢「ファイヤァー!」

亀山「よ、米沢さん?!」

米沢「あれ、亀山さん。なにしてるんですか、もう始まってますよ」

亀山「いや、俺はテ……ちょっと仕事ですよ、仕事」

米沢「そうでしたか、それはお気の毒に」

バサラ「いくぜ!『PLANET DANCE』」

米沢「プラネットダンスキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」

亀山「米沢さん、それ番組違う」

米沢「あっちが南だとしたらこっちは」

亀山「こら! やめろ!」

犯人「……」ピッ

ドカーン

亀山「な、なんだぁ?!」

ガムリン「どうした? 状況を報告しろ!」

ディック「隊長! 会場付近のあちこちで爆発が起こってます!」

ガムリン「なんだと……? しかし、なぜここを爆破しない?」

モーリー「た、隊長! 上を見てください!」

ガムリン「な、あれは……戦闘機じゃないか!」

亀山「右京さぁ~ん! ヤバいですよ、このままじゃパニックに!」

右京「僕としたことが、迂闊でした! 犯人がこれほどの武力を持っているとは」

亀山「船団の人たちだけじゃ、手が足りないっすよ!」

右京「君は、速やかに観客を避難させてください」

亀山「え、でも右京さんは?!」

右京「説明している時間はありません! 早く!」

亀山「りょ、了解!」

ガムリン「こちらガムリン! 艦長、敵はかなりの戦力です、至急、増援を……」

右京「失礼、この機体は、あなたのものですか?」

ガムリン「え? ってちょっと! そんなことより、はやくここから避難してください!」

右京「そうですか。では少しお借りします」

ガムリン「ええ、焦らずに落ち着いて……は?」

ゴシュウウウウ


ピッピッ……プルルルルル ガチャ

右京「もしもし、杉下です。少しお願いがあります。僕の言うとおりにしてください……ええ、では」ピッ

右京「僕は、銃が嫌いなんですがねぇ……」

警視庁
伊丹「おい芹沢、昼飯にラーメンでも食いに行かねえか?」

芹沢「またっすか? 先輩も好きですね」

三浦「おいお前ら! て、テレビ点けてみろ!」

伊丹「あ? 何だいきなり……」ピッ

レポーター「……えー、現場では依然として爆撃が続いており、大変危険な状況です! 情報によると、何らかのテロの可能性があると……」

伊丹「……なんだこりゃ」

芹沢「や、ヤバいですよこれ……!」

伊丹「おい、行くぞ! 捜一フォース、出撃だ!」

亀山「みなさん落ち着いて! ほらそこ、押さないで!」

美和子「あ、薫ちゃん!」

亀山「み、美和子?! あ、たまきさんまで!」

たまき「か、亀山さん! 大変なの!」

亀山「ええ、はやくこっから逃げてください!」

美和子「そうじゃないの!さっき見ちゃったんだけど、右京さんが……」

亀山「なにぃ?! 右京さんがバルキリーで飛んでった?!」

右京「そこの君、後方から敵機が接近しています。ああ、それからもうひとつ。コックピットへの攻撃は、極力避けるようにしてください」

兵士1「おい、今の誰だ……?」

兵士2「さぁ……?機体の識別信号はガムリン大尉なんだけど……」

ディック「今日の隊長、いつもより無口だな」

モーリー「でも、動きのキレはいつも以上だ……」

ドカーン ドカーン
ミレーヌ「もーっ! せっかくのライブがメチャクチャ!」

レイ「どうする、バサラ?」

バサラ「決まってんだろ! テロリストのやつらに俺の歌を聴かせてやるぜ」

ミレーヌ「でも、バルキリーがないじゃない」

ガムリン「はぁ……はぁ……くそ、何で俺がこんな目に……」

バサラ「お、ガムリン! いいとこに来たぜ、ちょっとお前のバルキリー貸してくれよ」

ガムリン「うるさい! もう貸し出し中だ!」

バサラ「はぁ?」

ヘリポート
芹沢「あれ? 先輩、メタルサイレーンにしたんすか?」

伊丹「まあな。ちょうど乗ってみたかったとこだ」

三浦「しっかりたのむぜ、シモン、ヨハネ、ペテロ」

伊丹「よし、発進!」ドギュウウウウウウ

亀山「右京さぁーん! ……クソぉ、何にもできねえのかよ!」

角田「おぉ~い!」ブゥゥゥゥン

亀山「か、課長?! なんで?!」

角田「何でって、お前んとこの上司に呼び出されたんだよ!」

亀山「右京さんに?」

角田「ああ、お前さんにこれを届けるようにってな。おい! こっちだこっち!

ブゥーン キキッ

大木「ここでいいんですか?」

小松「よいしょ……っと!」バサァ

亀山「こ、これ……俺が、前に捕まえた阿部貴三郎から押収した、VF-11Cフルアーマード・サンダーボルト……」

角田「一課が抑えてたからな、借りてくるの苦労したぜぇ?」

亀山「よぉし……待っててください、右京さん!」

三浦「こりゃひでぇな……」

芹沢「ホントっすよ……あれ? 伊丹さん、誰かあそこで手振ってますよ」

伊丹「逃げ遅れた観客か? 仕方ねえな……」

ミレーヌ「お~い、こっちこっち~」

ゴシュウウウウウ……

伊丹「うおっ……お、オホン! どうされました? 御嬢さん」

ミレーヌ「えっと、その~、ちょっと逃げ遅れちゃって~」

伊丹「でしたら、私が送りましょう。どうぞこちらへ」

ミレーヌ「あ! その、えっと……足をくじいちゃったみたいで……」

伊丹「それは大変だ! 肩を貸しましょう、こちらへ……?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊丹「おっ、おいお前! 何やってんだ?!」

バサラ「悪いな! ちょっと借りるぜ!」

レイ「バサラ! スピーカーポッドは無駄撃ちするな」

バサラ「よし、お前ら! 俺の歌を聴けぇ!」

オマエノームネニモラブハー!マッスグーウケトーメテーエ

右京「なぜか、敵機が後退していきますねえ」

米沢「バサラが歌ってますなぁ……」

犯人「チッ、こうなったら……」

亀山「右京さん! あれ!」

芹沢「ちょっとちょっと、戦艦まで出てきましたよ?!」

右京「戦艦……テロ……」ブルブル

右京「亀山くん、恐らく、あの戦艦には大量の爆薬が積み込まれています!」

亀山「ば、ばくやく?」

右京「あれを止めるためには、動力部を正確に、一撃で破壊するしかありません」

亀山「で、でも、どうやって?!」

右京「僕に考えがあります。君は、僕の合図で弾幕を張ってください!」

亀山「了解!」

右京「今です!」

亀山「おおりゃあああ!」

シュボボボボボボボボボ

右京「思った通り、この機体には、ピンポイントバリアが搭載されている……」

右京「これを腕部に集中させれば、動力部を貫くだけのパワーを出せるはずです!」

ドカーン
犯人「なんだ? 出力が……!」

右京「みなさん! 戦艦を、支えてください!」

犯人「ここまでか……」


マックス「なぜ、こんなことをした?」

犯人「……」

伊丹「黙ってねえでなんとか言えコラァ!」

右京「あなたはシティ7の市民なのではありませんか?」

亀山「え……でも、何で船団の人がライブでテロなんか?」

右京「マクロス7がプロトデビルンの脅威にさらされていた際、地球側は船団にプロトデビルンとの決戦を命じました」

亀山「はい。それで、FIRE BOMBERが見事、プロトデビルンを追い払った……」

右京「ええ。しかし、当時の船団の戦力を考えれば、地球側の命令は、とうてい無理な作戦だったのではないでしょうかねえ」

マックス「……おっしゃる通り、作戦の成功率は1パーセントもありませんでした」

右京「そして、その理不尽な命令を下した地球側が、船団を救ったFIRE BOMBERのライブを楽しもうとしている……このことが、あなたには耐えられなかったのではありませんか?」

マックス「そうだったのか?」

三浦「だからって、こんな真似しちゃあなぁ」

バサラ「おい、説経はもう終わったか?」

伊丹「あ、お前! 俺のメタルサイレーンちゃんはどこだ?!」

右京「ええ、もう済みましたよ」

バサラ「だったらライブの続きだ! ド派手に行くぜ!」

ミレーヌ「それじゃあMY FRIENDSいくよー!」

キャーキャー

犯人「……」

右京「歌とは不思議ですねえ……人はなぜか落ち込んだ時に歌を聴きたがる」

右京「そして、明日もまた頑張ろうという気持ちになる……」

右京「あなたは、彼らの明日を奪う所だったんですよ」

犯人「……」

マックス「お二人のおかげで、なんとか、犯行を食い止めることができた。ご協力、感謝します」

右京「また、銀河を旅なさるのですか」

マックス「ええ、それが艦長である私の務めですから」

バサラ「また俺たちの歌を聴かせてやるよ」

右京「お待ちしています」

マックス「(あの操縦技術……杉下右京、いったい何者だ……?)」

亀山「おはよーございます!」

右京「おはようございます」

亀山「お、昨日のライブ、ニュースになってますね」

右京「ええ、しかし、彼が歌っている場面しか映っていませんねぇ」

亀山「ホントだ、なんか緊張感ないっすね」

角田「おい亀ちゃん! お前昨日の機体どこやったんだよ?!」

亀山「あっ、やべえ! 昨日置きっぱなしで帰ってきちゃった!」

角田「おいおい勘弁してくれよ~一課から苦情が来てるからよ」

亀山「う、右京さーん?」

右京「とってきてください」ズズズ

角田「そうだそうだ、早く行け!」

亀山「はぁ、もうわかりましたよ!」

おしまい

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