一夏「お前と恋人とか……想像できないんだ」 (22)

セシリア「すみません、こんなところに呼び出して」

一夏「……どうしたんだ?」

セシリア「その……えっと……」

一夏「……」

セシリア「って、あら?」

一夏「ん?」

セシリア「一夏さん、体調がすぐれないのですか」

一夏「そんなことないさ。で、どうしたんだセシリア」

セシリア「……大丈夫、大丈夫」

一夏「……」


セシリア「一夏さん、あなたのことをずっとお慕いしておりました。よければ、よろしければわたくしと恋人になってくださいませんか」

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一夏「……」

セシリア「やっと言えましたわ……」

一夏「……」

セシリア「一夏さん?」

一夏「……あ、悪い」

セシリア「そ、そのお返事を頂けると」

一夏「考えさせてくれっていうのは駄目か?」

セシリア「……できれば、お早めにお願いできますか。その……待つのはつらいですので」

一夏「わかった」

セシリア「それでは。また後日。失礼しますね」

一夏「いや、待つのは嫌なんだろう?」

セシリア「え? お返事は後日してくださるのでは」

一夏「いや、そういう意味じゃない。待つのがつらいんだから、すぐに返事をした方がいいと思って」

セシリア「それは、どういう」



一夏「悪いけどセシリア、付き合うことはできない。お前と恋人とか想像できないんだ」





鈴「で、なんでここにいるの」

一夏「だめだったか?」

鈴「だめよ」

一夏「なんでだ」

鈴「陰気くさいやつと一緒にいたくないし、あんたみたいなやつ気持ち悪いし、それに誤解されちゃうし」

一夏「いいじゃないかそれぐらい」

鈴「あんたにとってはそれぐらいでもこっちはそうじゃないのよ」

一夏「鈴だって今暇なんだろ?」

鈴「あんたの目は節穴なの?」

ピラ

一夏「それなに」

鈴「教科書」

一夏「なんでまた」

鈴「勉強するのには必須でしょう?」

一夏「勉強? 鈴が?」

鈴「あんたね、あたしこう見えてもやるときはやるのよ」

一夏「それは知ってるけど。なんで急に」

鈴「急じゃないわ。結構前から少しずつ頑張ってる。あんたは……自分のことばかりで見えてなかったのかもしれないけど」

一夏「……そういう言い方やめろよ」

鈴「なんで。事実じゃない。最近あんた変よ」

一夏「変なのは他のやつらだ」

鈴「あの4人はもとから変なの。だから普通。あんたは変になった」

一夏「……」

鈴「ま、なーんにも気づかない一夏君にはわからないかな」

一夏「……友達じゃ駄目なのかな」

鈴「はあ?」

一夏「だからさ、友達」

鈴「何それ」

一夏「鈴は男女間の友情って信じるか」

鈴「……信じる」

一夏「そうだよな! そうだよな、鈴! 俺はあいつらと友達でいたかったんだよ! 皆と仲良くいつまでもいたくて」

鈴「気持ち悪」

ガタッ

一夏「え?」

鈴「あんたさあ、だったらそう言えば皆に。なんであたしに言うのよ」

一夏「だって、傷つくだろ。恋人になってほしいのに友達でいてほしいなんて。もう望みはないっていてるのと同じじゃないか」

鈴「でも本当のことでしょう? あんたと恋人になる可能性はあの4人にはない。だったら言ったって別に構わないはずよ」

一夏「……簡単に言うけどな。難しいんだぜ実際、告白されて、それでも今まで通りなんてのは。告白された時点でおしまいなんだ」

鈴「矛盾して……ま、どうでもいいわ」

一夏「なんだよ、その言い方」

鈴「別に」

一夏「やめてくれよ、こういう話は。したくないから、ここに来たのに」

鈴「気持ち悪」

一夏「……」

鈴「あとね」

一夏「ん?」

鈴「さっきの話」

一夏「もうやめろって言っただろ」

鈴「だったら出て行って。ここはあたしの部屋よ」

一夏「……なんだよ」

鈴「男女の友情は信じるって言ったけど、あたしはあんたとの友情を信じたことはないから」

一夏「なんだって」

鈴「だってあたし、あんたのこと嫌いだし。男との友情は今のところ弾だけね」

一夏「じ、じゃあ俺はなんなんだよ?」

鈴「ん? ……そうね、幼馴染のよしみかな」

一夏「そんなこと、いわないでくれよ。お前までそういうこというのか」

鈴「言うわ。言ったでしょう? あんたのこと嫌いなの」

一夏「……じゃあなんで部屋に入れたりするんだ。俺のこと嫌いで男女の友情は信じてないのに、幼馴染ってだけで男を部屋に入れるのかよ」

鈴「あはははは」

一夏「なにがおかしい」

鈴「だってあんた、その言葉自分で言ってておかしいとか思わないの?」

一夏「なにが」

鈴「まるであたしのこと好きみたいじゃない」

一夏「…………そうだって言ったら部屋にいてもいいのか?」

鈴「最低ね。いつからそんな打算なんかできるようになったの。だからあんたのことは嫌い。さっきの言葉はどうしたのよ」

一夏「変な勘違いするな。……なんで皆、色恋の話に結び付けるんだ。もういいじゃないかそういうのは」

鈴「そうね。あたしもそろそろ勉強に集中したいわ」

一夏「……俺も一緒に勉強していいか」

鈴「これ以上あたしに迷惑かけるつもりなの」

一夏「ああ」

鈴「開き直り」

一夏「うるさい」

鈴「好きにしたら」

一夏「ああ、好きにする。……だからまた部屋に来るからな」

鈴「…………また4人からの視線が痛くなるわね」





一夏「転校?」

シャル「うん。まだ一か月先だけどさ。来週のISの披露会が終わったらそのまま行くつもり」

一夏「シャル、どうしてだ?」

シャル「……さぁ、ね」

一夏「言えない理由か?」

シャル「うん」

一夏「そうか」

シャル「……でも、一夏が止めてくれるならいかないかも」

一夏「え」

シャル「一夏が行かないでくれって言ってくれるならここに残るよ」

一夏「どういう意味だよ」

シャル「そのままの意味だよ」

一夏「できれば、行かないでほしいけどさ」

シャル「……できれば、なんて言葉に力なんてないんだよ」

一夏「……」

シャル「やっぱり、だめだったんだね僕は」

一夏「…………」

シャル「あーあ……僕も一夏と幼馴染だったらなあ。もっと違った未来もあったのかなあ」

一夏「……やっぱりって、最初からわかってたのか」

シャル「うん」

一夏「……」

シャル「一夏、優柔不断だもん。へたれだもん。鈍いもん……恋愛のことなんかいきなり言われても困るでしょう?」

一夏「友達じゃ」

シャル「だめだよ。友達なんて存在しないからね。僕の中では」

一夏「そんなこと言うなよ。皆だって」

シャル「…………そうだね。でも、もういいんだ。僕はこれから一人になる。そこで友達っていう存在にすがっていたら、きっととんでもないことになっちゃうから」

一夏「……転校って、フランスに……?」

シャル「僕、強くなるよ。そうなりたい。友達も家族も……恋人もいないけれど、強くなる」

一夏「シャル」

シャル「シャルロットの方がよかったよね」

一夏「え」

シャル「ふふ……なんでもない。こういうこと言っちゃうから、僕は強くなりたいんだよね。ここに来たのも、考えてみれば僕がすべて悪かったんじゃないかって最近思うんだ」

一夏「シャルは命令で」

シャル「だからさ、そういうのって弱さとも言えるでしょう」

一夏「……」

シャル「地に足を付けて、自分で、一人で生きていくよ。これからは」

一夏「…………」

シャル「なんて顔してるの。…………じゃあ、十年後にまた会ってよ一夏。その時は胸を張って見せるからさ」

一夏「……わかった」

シャル「…………本当に馬鹿だよね僕は。だから一夏に振られるんだ。なんで今言っちゃうんだろう……まだ一か月も先なのにさ……」

一夏「シャル」

シャル「……ねえ」

一夏「なんだ」

シャル「今日、寒いね」

一夏「夏、だぜ?」

シャル「そうだっけ」

一夏「ああ」

シャル「そっか……でもこれからはもっと寒くなる。僕は冬を越せるんだろうか……」

しんみりしているなぁ
続き期待



山田「では織斑一夏君、シャルロット・デュノアさん、セシリア・オルコットさん。この3名で決まりですね」

生徒「山田先生ー。日にちは決まったんですかー」

山田「はい。昨日決まりましたよ。そのあたりは織斑先生からお話があります。……授業もあと10分ほどですね。それでは今日の私の授業はここまでにして、後は織斑先生、お願いします」

ツカツカ

一夏「……」

千冬「織斑、外を見ているとは余裕だな」

一夏「え、ああ」

千冬「ああ?」

一夏「えっと、その……すいません」

千冬「まったく……」

クスクス ヤーダオリムラクンッテバ

セシリア「……」

シャル「……」

千冬「……お前たちの学園生活も山場になってきた。これからいろんな道にそれぞれが歩んでいくだろう。今度の披露会はその集大成と思ってくれればいい」

生徒「……」

千冬「この3名に選ばれなかったからといって落ち込む必要はない。それぞれの頑張りは必ず見ているものがいる。分野が違えど地域が違えど国が違えどだ。きちんとした準備は何かしらの成果を生む」

シャル「……」

千冬「3年間のISに対する知識をいろんな社会に色んな国に見せつけてやれ」

生徒「はい!」

千冬「それでは日程を発表する。6日後に企業の関係者が来ることになった。披露会はここだな。3名の代表による模擬戦は一週間後には主要国の関係者が来るのでここで行われる」

セシリア「模擬戦は一日すべてのスケジュールを?」

千冬「軍事関係のやつらの意向でそうなっている。本来なら1回戦~3回戦までだったが……5回戦まで拡張された」

シャル「5回……でも連戦ではないんですよね」

千冬「最後の4回戦と5回戦……準決勝と決勝は連戦だ」

セシリア「それは……なかなかつらい戦いになりそうですわね」

生徒「大丈夫だよ3人なら皆いいとこまで行けるよ!」

生徒「そうそう!」

生徒「あー、今のうちにサインもらっておこうかなー」

アハハハハ

千冬「静かにしろ。それでは今日の授業はここま」

ガラッ

鈴「……あ」

千冬「……鳳。今何時だと思ってる」

鈴「あ、えっと……じゅ、10時18分です」

千冬「ほう。それでホームルームは何時からだ」

鈴「8時、です」

千冬「素晴らしい答えだ」

鈴「すいません」

千冬「……あとで私のところに来い」

一夏「千冬ね……織斑先生」
 
千冬「なんだ」

一夏「鈴はその、昨日遅くまで披露会の準備をしていて遅れたんだんです」

千冬「それがどうした」

一夏「だ、だから、さっきも先生が言ったように大事な行事だからクラスのために頑張っていたから遅れたんでって」

鈴「一夏」

千冬「織斑」

一夏「はい」

千冬「次にそんなことを口にしたら、もう一度三年生をすることになる。よく覚えておけ」

一夏「……」

千冬「こいつだけが頑張っているとでも思っているのか? 虫唾が走るな」

一夏「……!」

鈴「……」

千冬「なんだその眼は」

一夏「……いえ」

千冬「謝罪はないのか」

一夏「すいません、でした」

千冬「……鳳」

鈴「はい」

千冬「次、遅刻したらお前は退学だ」

一夏「な」

鈴「……はい」

千冬「よし、では授業を終わる。号令!」

鈴「…………疲れるわね、本当」





ラウラ「馬鹿者が」

一夏「廊下で会うなりいきなりとは。ご挨拶だな」

ラウラ「規則を破ったものにばつが与えられるのは当然だ。それを庇うのは本人のためにならん」

一夏「誰から聞いたんだよ」

ラウラ「シャルロットに決まっている」

一夏「おしゃべりめ」

ラウラ「無論シャルロットがしゃべらなくとも耳には入っただろうがな。お前たちは変に仲がいい」

一夏「幼馴染だからな」

ラウラ「…………」

一夏「もう行くぞ。じゃあな」

ラウラ「まて」

一夏「なんだよ。もうすぐ披露会だぞ。ラウラも模擬戦をやらなきゃならないんだから油を売ってる暇なんてないだろ?」

ラウラ「そのような準備はすべて完了している。ぬかりはない」

一夏「……ふう。なら暇なら少し手伝ってくれないか? なんか俺の白式の調子がおかしいんだ」

ラウラ「ほう……戦う相手にそのような情報を提供するとは浅はかな。余裕の表れか? それに、あれは特別な機体だ。私がどうこうできるわけがない」

一夏「特別ってことはないけどな」

ラウラ「特別だろう。お前は唯一の男性搭乗者だ」

一夏「あんまり持ち上げるな」

ラウラ「そんなつもりはない。事実のみを口にしている」

一夏「……さっきから不機嫌だな」

ラウラ「ああ。もう私はお前のことを嫁とは呼ばないからな」

一夏「……友達にはなれないんじゃなかったか」

ラウラ「ああ。なれんな。だが、世間話程度ならいいだろう。無視をするのは同じ学校なのにおかしいからな」

一夏「……」

ラウラ「なんだ、不服か」

一夏「いや、まだそっちの方がいいよ」

ラウラ「相変わらず軟弱だな。教官の弟とは思えん」

一夏「俺をいじめたいのか」

ラウラ「ああ。もう一度頬をひっぱたきに来たんだ」

一夏「なんだって」

ラウラ「丁度お前の所に行こうと思っていたんだ。一夏、少し話がある。廊下ではだめだ。他のやつに聞かれる恐れがあるから……あっちに空き部屋があるからそこへ行くぞ」

グイッ

「あ、ちょっと待て。まだ整備中って、いててててっ! 痛いって!」

ガラッ

「……よし」

「ラウラ! 痛いって……! 痛いって言ってるだろ!」

バッ

「……」

「なんだよっ、どうしたんだよ急に」

「一夏」

「ったく、服が伸びちゃったぞ」

「織斑、一夏」

「何だ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「……シャルロットのことだ」

「シャル?」

「ああ」

「シャルがどうかしたのか」

「何も知らないとはいわせんぞ」

「……フランスに帰ることか」

「そうだ」

「…………」

「なぜ黙る」

「俺に何を言えって言ってるんだよ」

「貴様」

「……怒らないでくれよ。わかってる。でも俺だって止めたんだぜ? けどさ」

「そんなことを言っているのではない。貴様本当に、変わったな」

「じゃあなんだっていうんだよ!」

「フランスへ行くことはシャルロットの意志だ。止めろとは、言わん。だがなぜ、あんなことを許した」

「何言ってるんだ」

「…………貴様には失望した」

「だからどういうことだって言ってるんだよ。失望するのは勝手だけど、ちゃんと説明してからそうしてくれ。でないと卑怯だ」

「…………シャルロットはお前のことが好きだったんだぞ」

「だからなんだ」

「あんなこと……嫌だったに決まってる!」

「あんなこと? フランスに帰るだけじゃないのか」

「なに?」

「……?」

「シャルロットからどこまで聞いた」

「どこまでもなにも。フランスに転校するってことを聞いただけだけど」

「…………そうか」

「何かあったのか」

「すまなかった」

「え」

「失望したなどということは失言だった。許してくれ」

「いや……それは別にいいけどさ」

「そうか。感謝する」

「で、何があったんだよ」

「どうやら私の勘違いだったらしい。忘れてくれ」

「勘違い? そんな言い方じゃなかったぞ」

「どうも私は先走る癖があって……治らないな」

「ラウラ……」

「おっとすまない。少し用を思い出した。それではな」

ダッ

「おい、ラウラ!」

「模擬戦、決勝戦まで来るんだぞ一夏!」

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