夜空「もしもタカと付き合えてたら」(160)
星奈「私、小鷹の事がすk……」
小鷹「え?なんだって?」
そう、これが私の隣人部が音も無く壊れていくきっかけだった
あれからタカは姿を消し、生徒会の奴等とつるみ、そして志熊理科と仲を深めた。
もう、私はあの場所にはいないのだ、と思い知らされた。
屋上での一部始終を覗き見したあと、私は静かに立ち去ろうとした。その時であった。
屋上の階段を踏み外した私は、その拍子に前のめりになり、大きな音とともに階段を勢い良く滑り落ちた。
ドスンっ!
頭をリノリウムの冷たい床に付け、あばらに痛みを感じ、血が口の中で匂い出した。
……ぞら、……うぶか?……りしろ
夜空「……タカと……あの頃と……」
そして意識がぷつんと切れた
夜空「あいらぶゆー…」
タカ「欧米か」
気が付くと見慣れない天井が目に入り、ベッドの上では寝ていた
「夜空っ!大丈夫か!?」
聞き慣れた声だった。顔が固定されて振り向くことが出来なかったが、眼だけで確認すると、そこには髪染めでも失敗したダサい不良が私の顔を食い入るように見ていた。
夜空「……小鷹か?」
小鷹「ああ、心配したぞ。あのまま死んでしまうかとヒヤヒヤした」
星奈「やっと目をさましたのね。心配かけさせないでよ」
憎たらしい肉もいる事が分かった。口の悪くて不快な気分になったが、泣き腫らしたかのような充血した眼で喜んでいた
それから他の隣人部のメンバーも揃って喜ぶ声が耳に入った。
夜空「あれから、どうなったんだ小鷹?」
小鷹「2日だっけか?」
理科「正確には一日と16時間ですね」
私はあの時階段を踏み外し、地面に叩きつけられたらしい。そして、肋骨を2本折ったという事が小鷹の口から知らされた。
夜空「なんだ、それくらい大したことないな」
星奈「アンタどんだけみんなが心配したと思ってんのよ」
理科「そうですよ。みーんな夜空先輩の事心配してたんですから。あ、でも小鷹先輩は付きっきりで病院にずっと居ましたね」
小鷹「おい理科、余計なことは……」
理科「学校まで休んでって言うのは言うべきじゃないですかね」
夜空「……そうだったのか、し、心配かけたな」
マリア「ウンコ夜空は丈夫だから心配すんなってずっと言ってたのにお兄ちゃんは否定したのだ」
小鳩「コンビニ弁当ばっかでつまらんかった……」
小鷹「分かった分かった、今日は帰ったらハンバーグだ」
マリア「私もお兄ちゃんのハンバーグ食べたいのだ!」
小鳩「なんで、お前にやらんといけんの!?」
夜空「いつもの隣人部だな……あっ」
思い出した。アレがあったのを……目の前のみんなはそんな事を表情につゆも出してはいなかったが
夜空「こ、小鷹……その、隣人部だが……」
小鷹「ああ、すまなかった、顔を出せなくて。ま、まぁ明日からは俺も行けるから安心してくれ」
理科「ええ、ちゃーんと小鷹先輩が来ますよ」
夜空「じゃあ、大丈夫だな……うん」
空気が少しだけ詰まった感がする
本当に大丈夫だったのだろうか
夜空「じゃ、じゃあ小鷹、……肉とは……肉とはどうなった……」
小鷹「そ、それはだな……」
星奈「その件だけど、振られたわ」
夜空「な、なんだって?」
星奈「振られたのよ……今は関係ないからこの話はもう終わりにしましょ」
じゃあ、と俯きながら肉は病室から出ていった。肉の残した残り香が、病室を一層重苦しくさせ続けた
結局その後すぐに面会時間も終わり、隣人部一同は去っていき、入れ替わりに気が弱そうな医者が入室し、私の具合をこと細かに尋ねたりした。
肉は振られたと、そう私に言った。他人の不幸なのに、同じ隣人部の不幸なのに、肉の不幸なのに、私は嬉しいと思う気持ちが少なからずあった。
自分の骨折りの具合よりも、ホッとして胸を撫で下ろした。もちろん胸の痛みは伴ったが……
翌日、私は看護師に天気がいいからと促されて、車椅子で病院の屋上で風を浴びていた。
頭の中ではあの肉の一言がもう何十回も何百回も再生され、その度に自分でも分からない気分になった。
小鷹「よぉ夜空」
振り向くと(ギブスが邪魔で痛みが伴う)そこには、制服を着た小鷹が立っていた。
夜空「が、学校はどうしたんだ……?」
小鷹「午前だけ受けてきたんだけど、抜けてきて不味かったかな?」
夜空「お前は不良にでもなったのか?」
小鷹「勘弁してくれよ、今回の件で余計に思われてるんだからさ」
こうやって二人きりで他愛のない話ができたのが、懐かしく感じられた。そんなに私は、引きずっていたのかもな……
夜空「なぁ小鷹、昨日の肉の言ってたことなんだが……」
小鷹「聞いてくれるか、夜空」
小鷹「夜空は多分あの場に居たから知ってるかと思うが、俺は大事な事に気付いた。ううん、気付かされたんだ。理科に」
小鷹「俺達は、隣人部のメンバーは友達だったんだ。まぁソラ、もとい夜空とは幼なじみだったけどもよ」
夜空「あ、ああ。まったくだ」
小鷹「だからでは無かったが、星奈にはすまなかったが、諦めてもらったんだ」
夜空「小鷹……」
小鷹「これからは、ずっと友達なんだ。だからこその隣人部だろ?」
夜空「……」
小鷹「どうした夜空?」
私が隣人部を作った理由はそんなもんじゃなかった。もっと卑しかったんだ。
夜空「すまない、小鷹」
小鷹「どうして謝る?」
夜空「いや、なんでもない。ただ、自分が卑しく思えただけだ」
小鷹「どうしたんだ?夜空?俺に出来る事ならなんでも聞いてやるから」
夜空「じゃ、じゃあ小鷹、つ、付き合って……くれ」
小鷹「つ、付き合うって……星奈と同じなんだな」
夜空「私は本当に醜くて卑しくて、……こうやってあれこれと自分の事で考えてしまうんだ。だけど、小鷹は……タカは……」
小鷹「いいよ、夜空」
私は必死だった。目の前の小鷹を直視できず俯いたまま、思いの丈を、今まで隠してきた気持ちを、自分には似合わなく素直に熱情的に……
夜空「よくないっ!そもそも隣人部は私がお前と……タカと二人で……」
小鷹「もういいんだ夜空!」
次のセリフ、「あの日を取り戻す」と言い掛けた瞬間だった。
小鷹に顔を引き寄せられ、言いかけたセリフとともに口元が濡れた何かで塞がれた。
至近距離には、小鷹、タカの顔が……
小鷹「ご、ゴメンな……夜空」
私は、何が起きたのか、把握できず、ただ雲が流れていくのを数えていた。
本当に本当に本当なのだろうか。夢じゃないのだろうか。
小鷹「もうお前は卑屈になんてならなくていいんだ。夜空、もういいんだ」
泣きながら私にすがりつく小鷹の声は胸に直接響いた。少しだけ肋骨が痛いと感じたからこれは夢じゃないんだとはっきりわかる。
夜空「私で……良かったのか?」
小鷹「……あ、ああ」
問いかけに遅れて答える小鷹の声はこれ以上にないくらいに、私を泣かせてくる
それは突然起こった。
俺が放課後理科に呼び出され、理科とあんな事があった後、「友達」が出来た。
俺は嬉しかった。こうやって俺自身卑屈にならず、前向きに進めたのだ。俺達は、隣人部は。
ドスンっ!
屋上の扉の奥から聞こえたその重くて生々しい音に気づいた俺と理科は、何があったのだろうと、音のした方へと駆けていった。
理科「よ、夜空先輩!?」
目に入ったのは、三日月夜空が階段の踊り場に倒れ込んで前頭部から額に掛けて血が滲み出て気を失いかけた、とても酷い惨状だった。
俺はすぐさま夜空に駆け寄って身体を揺さぶった。
小鷹「大丈夫か? 夜空、しっかりしろ?」
目が虚ろな夜空は微かに何かを呟きながら、瞼を閉じた。
俺はとにかく焦っていた。やっと俺は、隣人部と向き合える。星奈の件も含めてだ。こんなところで、夜空がどうにかなったら、それこそ……どうしようもない。
理科「と、とりあえず救急車を呼びました」
こんな時、先生を呼ばずに救急車を呼ぶのが理科がいつも他の生徒や教師らと関わらないからであろうか。普通の生徒なら教師を呼ぶだろう。
それが功を奏したのか、救急車は直ぐにもやって来て、俺と理科は付き添いで市内の病院に向かったのだった。
病院に運ばれた夜空はそのまま手術室へと運ばれた。
俺達が、手術室の前で待っていると、星奈が他の隣人部メンバーを連れてやって来た。
理科「私が連絡しました」
と、気の利かせる理科。あんなに疲れ切っている筈なのに、また自分を犠牲にでもするのだろうか。
星奈「何よ。どうせ軽い怪我でしょ。走って駆けつけて来て何かと思ったじゃない」
小鳩「タクシーで走ってきただけじゃん」
幸村「夜空の姉御はどちらへ?」
俺は手術室を指さした。
マリア「夜空オペ室に入ったのか……助かるのか?」
理科「頭を強く打っていたらしく、どうなるのか私達にもさっぱりで……」
星奈「ふーん、夜空のことだし、ハエたたき持ってピンピンして出てくるんじゃないかしら?」
理科「さぁ、そればっかりは……でもそう望むしかないですね」
小鷹「……そうだな」
星奈とは久しぶりだった。アレから会ってないし避けてたりしてたが、相も変わらず元気というか……。
小一時間、俺達は夜空の手術室から出るのを待っていた。
夜空の親は都合で来れないらしい。そのためにも、夜空の目が覚めた時には俺達が居てやらなくては。と、責任感に追い立てられていた。
微妙な空気が流れていた。
星奈とは顔も合わせれなかったし、隣では理科が仮眠を取っていた。幸村は目を瞑って何か念仏を唱えていて、マリアと小鳩の言い争いのみが、廊下に響き渡る。そんな言い争いも、しだいに空気を読み取っておさまっていた。
7時、小鳩とマリアは夜になったので、幸村が二人を連れて近くのファミレスへ連れ出した。
その後、手術室のランプが消えた。手術が終わったのだと、俺は固唾を呑んだ。
手術室から出てきた、気の弱そうな医者が別室へと俺と星奈と理科が案内された。
医者「君達は、三日月夜空さんの友達かい?」
その質問に俺は堂々と「はい」と言ってやった。隣にいた星奈は、不意を突かれてなのか、一瞬の間を置き「私もよ」と続けてそう呟いた。
医者は、何故か俺達のそんな不器用で辿々しい返事に笑っていた。
医者「この事は、夜空さんに親しい人に言うべきだけど、君達なら大丈夫か。ちゃんと聞いてて貰いたい」
笑いを止め、真剣な表情でそう切り出した医者は、淡々と夜空の頭と胸部のレントゲン写真を指さして語りだした。
夜空は肋骨を2本折ったらしい。それは、なんとかギブスを付け、矯正すれば治るらしい。
しかし、それだけで済む話ではなかった。
夜空は、頭を強く打っており、いつ脳内で出血が起き、死に至るかもしれないと。例え術後で目を覚ましても、脳に爆弾を抱え、長くても一ヶ月は生きていられるかわからないだろう。と
俺は意味が分からなかった。
何故夜空が?
夜空がなんで……
受け止められなかった。夜空が、余命幾ばくも無い。
そんなの嘘に決まっている。こんなのは夢だと。
理科は、うつむいて必死に白衣の生地を握りしめていた。泣いているのかもしれない。でも、そんなこと確認するような気にもなれなかった。
星奈は動じずに、一言一句聞き漏らさまいと、医者と堂々と向き合っていた。
その顔はいつになく真剣で、凛々しく、俺よりもしっかり受け止めているように見えた。
俺は……やっぱり、何も出来ないヘタレだったのだろう……
その後、医者が出て行き、俺達三人が部屋に残された。
星奈「ねぇ小鷹、私ね、夜空のこといけ好かない奴だって思ってたの。でもさ、あいつが一番隣人部を大事にしてたんじゃないかしら……」
声を震わせながら、いつもの強気をかろうじて維持しようとする星奈が、夜空のことを語りだした。
星奈「正直反省してるわ……あんな場で切り出したこと。どうにかしてたわ……」
星奈「こんな時に空気読めてないけどさ、小鷹、私アンタのこと好き」
理科「はぁ? 何ボケたこと言ってるんだよぉ!?」
理科がキレた口調でそう言い放った。星奈と同じように自分の弱い部分を隠すように……
星奈「ボケてなんかないわ。今だからこそ、こうやって精算すべきなのよ」
小鷹「あのさ、俺もこういう時はどうかと……」
星奈「聞いてんのよ!!」
両手を机に叩き付けて、出されていたなっちゃんりんご味が床に溢れた。
小鷹「星奈、後でいいだろ!今はとにかく今後どうするべきか考えるほうがいいだろ」
段々と自分の声が荒くなっていくのが自制できないのが分かる。が、こうやって吐き出そうとしないと、今の自分が保てなくなるような気がしてならない。
星奈「今後のことを考えるべきだったらなおさらよ!!」
小鷹「だから、今は関係ないだろっ!!」
星奈「だから、いいなさいって!!」
小鷹「俺もお前が好きだよ!これでいいのか!?」
ついに言ってしまった。隣人部が法改正しかねない最大級の爆弾を。
理科は溜息をつき、トイレに行くといい出ていった。
星奈「関係あるのよ……」
小鷹「何がだ、夜空が転げ落ちて余命幾ばくもない状況とどう関係あるんだって言うのさ」
星奈「夜空もアンタのことが好きだからよ」
小鷹「……」
言い返せなかった。それは、どこかで薄々とは気づいていた。もちろん、星奈の事も含め、指摘されるまで、気付かないフリを今までと突き通してきた。
星奈「分かるのよ。自分だってアンタのことが好きだからね……」
×隣人部が法改正
○隣人部が崩壊
星奈「だから、アンタはどうすんのよ。どうアイツの好意に向き合うのよ。あたしの時みたいに逃げるわけ?」
小鷹「に、逃げるってそりゃ……」
星奈「夜空が一生を不憫なままで終わらせるなんて聞いて、私許せなかったわ」
星奈「そりゃ自慢じゃないけど、私は、結構自分の気が向くままに生きてきた事もあるけど、あいつは違うのよ。友達を失って、好きな人を失ったのよ……私のせいで」
小鷹「星奈……」
涙目でそうはっきりと夜空を思う気持ちを俺にぶつけてきた。
星奈はこんな時までもわがままで、強気になっている。でも、今星奈をそうさせてるものは、夜空への償いから来てるジレンマなのだろうか。
受け止めなければいけない。星奈の思いを、夜空の思いを……
星奈「私はいつでもいいわ。だから、まずはあいつの想いに応えてやって……」
星奈は、俺にしがみついて、顔を俺の胸元に沈め、今まで溜まっていたものが堰を切ったかのように泣き出した。
小鷹「ああ、分かった。ありがとう……ありがとう……」
そして、俺と星奈は初めてのキスをした
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マリア「このハンバーグはお兄ちゃんのより美味しくないのだ!」
小鳩「ウンコシスターのゆってる事も一理あるわ」
幸村「すみませぬ……」
そして二日後、夜空は目を覚ました。
俺は、無理を言って学校を休んだ。いつ、夜空が起きてもいいようにと、構えての事だ。
隣人部のメンバーも、放課後は駆けつけて来て、一緒に面会時間いっぱいまで夜空が目を覚ますのを待っていた。
俺達は、夜空が作ってくれた隣人部のおかげで出会い、こうやって一つになり、映画も作ったり、遊んだり……
俺達は、隣人部で友達になったんだ。
夜空「……小鷹か?」
次の日
夜空が星奈の一件に触れた事には、少しだけ焦った。だが、やはり夜空は夜空だと思う節もあったから、やぶさかでないかもしれないだろう。
そんなことを考えつつ、俺は今病院の屋上に立っていた。
目の前にいる車椅子の夜空に向かって隣人部の話をすると
夜空「すまない、小鷹」
思い詰めたように、夜空は謝ってくる。本当は謝るのは夜空じゃなく俺なんだがな。
小鷹「どうして謝る?」
夜空「いや、なんでもない。ただ、自分が卑しく思えただけだ」
小鷹「どうしたんだ?夜空?俺に出来る事ならなんでも聞いてやるから」
夜空「じゃ、じゃあ小鷹、つ、付き合って……くれ」
小鷹「つ、付き合うって……星奈と同じなんだな」
夜空「私は本当に醜くて卑しくて、……こうやってあれこれと自分の事で考えてしまうんだ。だけど、小鷹は……タカは……」
小鷹「いいよ、夜空」
俺は、もう夜空が卑屈になって抱え込んでほしくない。もう、いいんだよ。こんなこと。
夜空「よくないっ!そもそも隣人部は私がお前と……タカと二人で……」
小鷹「もういいんだ夜空!」
次のセリフを言い掛けた夜空にしがみつくように抱きつき、俺は夜空の口をふさぐようにキスをした。
夜空との強引なキスは、星奈のよりもスッキリとした背徳感を感じる。
夜空自身は今起きたことを解せずに、夢のような心地だという事が、その嬉しそうな顔から見て取れる。
夜空はわなわなと震えながら泣きはじめた。今まで遠回りしてきた分、今の状況が多分終着点じゃなかろうかと言わんばかりの嬉し泣きだろう。
と、余韻に浸っていた夜空は、直ぐにもいつもの夜空に戻り、嬉しさを奥底に押し込んだ表情で
夜空「なら、早く回復して隣人部に戻らなければならないな。いや、隣人部じゃない。私たちの「友達」の場所に」
小鷹「ああ、そ、そうだな……」
何故かいつもの夜空を目にした俺は、涙が止まらなかった。
夜空「そうとなれば、リハビリをやらなければならないな。そうだ!小鷹、歩ける練習でも手伝ってくれないか?」
凛々しく、楽しそうに、希望に満ちてた夜空に、俺は手を差し伸べ、そして共にあの隣人部に帰るリハビリに付き合った。
その後集まった隣人部メンバーで病室で「隣人部」をした。
夜空はハエたたきを手に持ちながら小説を読み
星奈はPSPのR-15指定のギャルゲーをプレイし
理科はところ構わずBL同人誌を読み
幸村は執事のコスプレでリンゴを剥き
小鳩とマリアはポテチの所有権で争っていた。
俺達は、またこうして前に進めるんだ。
以前の隣人部と同じように、いや、それ以上に「友達」の繋がりが強くなって、隣人部の活動を行った。
翌日
俺達は、それから夜空の一時的な退院が近いことを知り、何かサプライズができないかと、隣人部の部室である談話室で話し合っていた。
理科「どうやら、余命幾ばくなんて嘘みたいなくらい元気じゃないですか。理科心配して損しました」
小鷹「そう言うなよ。お前だって泣いてたの知ってたんだぜ?」
理科「もー、小鷹先輩ったら」
星奈「サプライズでも、単なるサプライズじゃ面白くないわね」
幸村「ではわたくしが曲芸を」
小鳩「火の玉を召喚するくらい造作もないわ」
マリア「ウンコ夜空ならポテチいっぱいで嬉しくなるのだ」
そして病院から夜空の訃報が届いたのは、隣人部のメンバーと共に病院へ夜空の見舞いに行く途中の事だった
夜空はとても落ち着いた顔で眠っていた。もう、未練の無いような、澄み切った笑顔のような
看護師さんから聞いた話では、もう車椅子無しでも自力で歩けるようになってたとのこと。拙い歩き方だったらしいが、その一歩が脳裏に浮かんだ
隣人部のみんなは泣き崩れていた。星奈が夜空の両肩を鷲掴みして、怒鳴り散らしている。
理科「こ、小鷹先輩……」
理科は胸を非力な力で殴りつけながら、柄にもないように泣きじゃくる。
俺だって我慢してるんだ。
マリア「ウンコ夜空がタダのウンコになっちゃったげ」
小鳩「な、何不謹慎なこと言っとるばい……」
マリア&小鳩「うわああああんん」
幸村「よ、夜空の姉御……」
隣人部の部長、創設者の夜空の事故で、俺達は危うくバラバラになってたが、元に戻り、そしてこれからの一歩を進むはずだった。
リハビリして隣人部に戻るんじゃなかったのかよっ!
これからだろ!
大きく精一杯叫んだ声も虚しく、コンクリートが冷たく響かせる。
夜空が憎い。なんで、俺達はようやく友達になって、ようやくスタートラインに立っただろ。
試合を放棄するなんてお前のやることじゃないはずだ。目を開けてくれ夜空。
霊安室を後にして、病院の屋上で風にあたっていた。物事へ思索に耽るような野暮な性格ではないが、ただずっと遠くに映える山を見つめていた。
看護師「羽瀬川……小鷹君じゃないかしら?」
初老の女看護師が俺に封筒を渡した。
多分夜空のだろうと解った。
星奈「これが……あいつが遺した……」
小鷹「ああ……でも……俺には……」
無理だ。何かが邪魔をする。夜空への憎しみ、愛情、哀しみ……自分でも分らない感情がためらわせる。
理科「ええい、小鷹先輩、読まないなら理科が読んじゃいますからね」
と、強引に理科が奪って封筒を破って中から手紙を取り出そうとした。
理科「うわぁ!?」
パンッ
と軽快な音が封筒から発した。
理科「なんだ、これはクラッカーでしたか。びっくりしましたよ」
封筒を開けると、音がする仕掛けがついていたらしい。付属の手紙にはこう書かれていた。
『肉め、騙されたか』
星奈「あいつはいつまでも夜空だったのね……」
星奈「夜空、ごめんなさい。もう、ここで言っても意味ないとは思うけど、だけどもあなたに会えて良かった」
星奈が泣き出し始めた時、封筒の中にもう一枚の手紙があることに気付いた。
小鷹へ
タカと、書くべきだとは思ったが、やっぱり小鷹にする。詮索はするな。
私は、小鷹や肉、いや星奈や他の隣人部のメンバーに出会い、友達になれたことが嬉しいかった。
小鷹のキスの理由、知ってたぞ。
気を遣わなくてもいいからな。
私は、大丈夫
だってお前たちがいたから
天国にはトモちゃんも待ってるから
じゃ!
おわり
小鷹「夜空……ありがとう。お前は本当の親友だ」
俺はそう言ってこの手紙を誰にも読ませずに、そっと制服のポケットに押し込んだ。
THE END
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