新聞部部長「何故に彼がモテるのか、調査の必要が有る!」 (41)

~新聞部の部室にて ~


部長「部員諸君、定例会議に集まってくれてありがとう」

後輩「部員諸君なんて畏まっても、部長を含めて三人しか居ないんですけどね。
   しかもその三人目は幽霊部員で顔も見た事ないし」

部長「人数の少なさは部員各々のクオリティでカバー出来ているから問題ない。
   三人目の人もちゃんと頑張ってるよ。 さ、それより、本日の会議に早速入ろう」

後輩「また“広報誌の発行部数を増加に繋ぐためにどうするか”を話すんですか……。
   最近もうそればっかりで、新鮮味が全然ないですよ……」

部長「では、なぜ新鮮味がないのか。 それを君は考えた事があるのか?」

後輩「そりゃ同じ事ばかりを話し合うからでしょう」

部長「否。 それは、話し合いばかりで現状に進展が無いからだ。
   結果、それがマンネリを生むことになっている」

後輩「そこまで言うからには、何かマンネリを打破する方法を今回は考えてきたんですか」

部長「その通り! と、いうわけで、今回はゲストを呼んでいる!」

後輩「ゲスト?」

部長「では、どうぞ入ってください!」

男友「あ、どうも。 会議中にお邪魔します」

後輩「?」

部長「(誰やねんこのオール平均点のパッとしない男は……)、なんて思っていそうな顔をしているね」

後輩「ちょっと疑問符を浮かべたらえげつない曲解をされた、もう辞めたい」

部長「調子に乗って申し訳ありませんでした。辞めるとか言うたらアカン。
   彼は僕の友人で……」

男友「自己紹介がまだだったな。 2年5組、男友って言います」

後輩「あ、じゃあ先輩ですね。 初めまして。 1年1組、後輩って言います」

男友「おお、部長の知り合いにしてはえらく礼儀正しいな」

後輩「部長と類友に思われていたのなら心外です」

男友「ははっ、そりゃ申し訳ない」

部長「あれ? 僕なんか既に蚊帳の外の雰囲気?」

後輩「それで、男友さんは何故に新聞部の部室へ?」

男友「部長に頼まれていたんだよ、なんか記事に出来そうなネタは無いかって」

後輩「……」

部長「もの言いたげな瞳だね?」

後輩「……部長。 入部当時に私に言ったこと覚えてます?」

部長「“記者たるもの、スクープとは自分の足で摘み取ってくるものだ!” かな」

後輩「そこまで覚えていながらも、スクープに足を運ばせてくる辺りは流石ですね」

部長「もっと褒めていいよ」

後輩「……」

部長「どうしたんだい、急に熱烈な視線を浴びせてきて?」

後輩「浴びせたいのは罵声ですよ」

男友「あー、話が進まないんで俺から話すよ」

後輩「お手数かけてすみなせん」

男友「気にするなって。今回俺が呼ばれたのは、その広報誌に書けそうなネタの事なんだ。
   ちょっと面白そうな事が身内で起こっていてな」

後輩「それで身内を売りに来た、と」

部長「こいつはとんでもないクズ野郎が来たもんだね」

男友「帰るわ」

部長・後輩「「大変申し訳ありませんでした」」

男友「……なんだかんだ似たもの同士か、お前らは」

男友「話を戻すぞ。 その俺の身内で起こっているのが、俗に言うラブコメ展開なんだ」

後輩「ラブコメですか?」

部長「豊作なのかい?」

男友「米の新種名じゃねぇよ。 なんだよ豊作展開って」

後輩「部長ちょっと10分だけ部室から出ていってくれませんか?」

男友「で、だ。 そのラブコメの中心人物が、俺の友人である 男 なんだ」

後輩「男さん、ですか」

男友「あいつは授業中によく寝ているような昼行灯だが、気がつけばいつの間にかハーレムが出来上がっていた」

後輩「顔が良いからではなく?」

男友「それも要因だと思うが、それだけでは済まされないくらいアイツは異様にモテている」

後輩「私も新聞部として校内のイケメンは粗方メモしていた筈ですが、完全にノーマークの人物ですね」

男友「という事は、君は校内の美人も大体チェックしているのか?」

後輩「ええ、まぁ百位までくらいならランキングで番付していますよ」

男友「そのランキングの中に、例えば誰がいる?」

後輩「まぁ名前を挙げるとすれば、そうですね。
   女さん、ツンデレさん、幼馴染さん、委員長さん、転校生さん、保健室登校の先輩さん。
   他には音楽教師や女子バスケの赤城キャプテン、私のクラスメイト、等等ですね」

男友「……少なくとも今挙げたそいつら全員、男に惚れているんだ」

後輩「……は?」

後輩「いやいや、流石に全員は言いすぎでは?」

男友「本当だ。 昼休みの弁当時間は、男目当てで1クラス人数相当の女子が来る」

後輩「凄い光景ですね」

男友「光景、とは絶妙な喩えだな。 光があれば闇だって深くなる。
   男がモテている眺めを、モテない男子たちが修羅の形相で見つめている様は、まさに社会のカーストだ」

後輩「血の涙を流しながら見つめているんでしょうね」

男友「その男子生徒たちの顔は、アレに似ている」

後輩「アレ?」

男友「ベヘリット」


※ベヘリット参考画像: ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4862321.jpg


後輩「……壮絶ですね」

男友「まぁ表向きの依頼としては、男のハーレム実態を探ってほしいって事なんだが。
   本当は男が他の男子生徒の恨みを買いすぎて闇討ちされないよう、
   対策の為にアイツの詳細くらいは知っておきたいんだ」

後輩「本人に聞けばいいじゃないですか」

男友「どうせ聞いても知らぬ存ぜぬの一点張りさ。それにアイツに気を使わせるのも何かアレだろ」

後輩「友情ですね」

男友「そんなんじゃねぇよ」

後輩「愛情ですか!?」

男友「そんなんじゃねぇよ!」

後輩「なんだ、ちょっとビビりましたよ」

男友「君の倍くらいは俺もビビったわ」



ガラガラッ


部長「あ、もう話は終わった?」

後輩「……本当に10分も外に出ている謎の律儀さにイラっとします」

部長「まぁまぁ。 詳細は僕自身、最初から男友くんに聞いて知っていたからね。
   それで、我が新聞部としては是非とも色々な子に取材をしてみたいんだけれど、どうかな?」

後輩「でも、こういうのって直接聞いても話してくれるものですか?」

部長「今回はあくまでも君のメモにある“話題の美人にインタビュー”という体で取材を敢行。
   その中で男くんの話題を上手いこと入れ込んで、真意を引き出すのが手段さ」

後輩「……プライバシーの侵害のような気がして、ちょっと二の足を踏んじゃいますね」

部長「そこは記事にするかどうかを会議するんだよ。
   会議にしたくないような内容を聞いたら、君が胸に密やかに留めておけばいいだけの話さ」

後輩「無理に記事にしないのであれば、まぁ取材はし易いですね。
   お題目もあるし、もし駄目ならインタビューを学内新聞に載せればいいだけですか」

部長「飲み込みが早くて助かるね。 じゃ、宜しく頼んだよ」

後輩「先輩は?」

部長「僕はもう一人の部員と“学園地下に潜む謎の怪物”を取材しなくちゃならないから、君に一任する」

後輩「言ったからには絶対記事にしてくださいよ、それ」

男友「……俺もそれは正直読んでみたいわ」

~ それから数日後 ~



男友「これが俺の知り得る限りで作成した“男に惚れている女性”の一覧表だ」

後輩「ありがとうございます、先輩」

男友「礼を言うのはこっちだよ。忙しい中で時間を割いてくれてありがとな。
   暇なときにもでリサーチしてくれたら嬉しいよ」

後輩「…先輩って、なんかモテそうですね」

男友「そうか?」

後輩「まぁいいです。 もし上手く調べる事が出来たら、なんか奢ってくださいよ」

男友「ああ、いいぞ。 詳細がもし分からなかったら、労いを兼ねて甘い物でも奢ってやるよ」

後輩「……ちょっとだけ、楽しみにしておきます」

後輩「さて、じゃあ先輩から貰った一覧表でも見てみようかな」

後輩「けっこう人数多いみたいに言ってたから、流石に全員にインタビューは無理か」

後輩「……どれどれ。 何人くらいいるのかな?」


ペラッ



後輩「……」

後輩「……」

後輩「……」


後輩「校外まで含めると、150人を越えている、だと……!?」


後輩「……」

後輩「……」

後輩「これ男さんも凄いけれど、男友さんの情報収集力も相当すごいよね……」

後輩「とりあえず全員は無理。 私一人でやるには150人は多すぎる。
   学内の美人にインタビューという観点からも、これは相手をピックアップしておくべきかな」

後輩「労力を考えると、ざっとまとめてこんな感じ」



【インタビュアー】

・女さん
・ツンデレ
・幼馴染
・委員長
・転校生
・保健室登校の先輩
・ヤンキー
・お嬢様
・メンヘラ
・王子


後輩「濃いメンバーね……朝食にカツ丼食べたときの胸やけを思い出すわ」

後輩「さて、まず初日は誰にコンタクトを取ろうかしら」

後輩「……」

後輩「……」

後輩「……人数多いし、くじ引きで決めよう」



【インタビューの相手】

『01:30:00:00』に一番近いレスのキャラ

~ 放課後 ~



後輩  「お時間ありがとうございます」

ヤンキー「うっさいね。アタシに何の用か知らないけれど、とっとと終わらせろよ」

後輩  「恐縮です。 ちなみに今回はどんな内容でお声がけをしたのかお分かりでしょうか?」

ヤンキー「まどろっこしいのは嫌いだよ。 何の用?」

後輩  「新聞部の企画で、“校内で話題の美人”の人にインタビューを録っているんです」

ヤンキー「だから、なんでアタシに声がかかるんだっての」

後輩  「だから、そういう事です」

ヤンキー「はぁ!?  ……え?」

後輩  「はい。 校内で美人と評判のヤンキーさんに、今回はインタビューをしたいと思います」

ヤンキー「あ、え、ちょ、あの。 あの、えっと、ちょっと、ちょっと待って、ま、待てやコラぁ!」

後輩  「何か?」

ヤンキー「あ、アタシにおべんちゃら使ってるってのか!? あぁん!?」

後輩  「いえ、紛れもない事実を述べたまでです」

ヤンキー「こ、こんな見た目のどこに美人の要素があるってのか言ってみろっての!」

後輩  「では、僭越ながらアンケートの結果を少々」

ヤンキー「……アンケート?」


【男子高生の見解】

・ヤンキーぶっているけれど、こっそり学校の花壇の手入れをしているその優しさ。
・先日、横断歩道にて年配の方をおぶって歩く姿を目撃。ギャップにやられた。
・金髪に染めてワルぶってるところ。
 生徒指導の先生に怒られて、いつもこっそり半べそになっている所めっちゃ可愛い。
・罵ってほしい。
・普通にタイプ。
・化粧っ気がないスッピン美人。


後輩  「他にもまだまだありまして……」

ヤンキー「も、もういい! もういいって! やめてよぅ……や、やめろ!」

ヤンキー「わ、分かった。 ちょっとだけなら付き合ってやるから!」

後輩  「ご協力に感謝します」

ヤンキー「で、何を聞くんだ?」

後輩  「そうですね。 では、ベタな質問で恐縮ですが、好きな食べ物は?」

ヤンキー「苺のタルト……。 の、のような色合いをしたカレーに決まってんだろが!」

後輩  「それはまた胃をやられそうなカレーですね。 では次の質問」


…………

………

……

後輩  「なるほど。 それでは勉強はあまり好きではない、と」

ヤンキー「当たり前だろ。 あんなん好きな奴どうにかしてるぜ」

後輩  「好きな奴、と言えば。 ヤンキーさんは今現在、好きな人とかはいらっしゃらないんですか?」

ヤンキー「おぅ!? 当たり前だろ! だ、誰もいねぇよ!」

後輩  「そういえば同じクラスの男さん、格好いいですよね」

ヤンキー「……まぁ、格好悪くは、ねぇよな」

後輩  「風の噂ですが、男さんに花を贈ったらしいですね」

ヤンキー「おいそれ言ったのどこの誰だ、ブッ飛ばしてくる」

後輩  「風の噂なので私には何とも。 そこまで狼狽するという事は事実なんですか?」

ヤンキー「……アイツには借りがあるからな。 そのついでにやっただけだ」

後輩  (凄いわね、先輩のメモ。 些細な情報まで網羅してあるわ)


後輩  「ちなみに、ここはオフレコです。 どういう風に渡したんですか?」

ヤンキー「い、言えるかよ! そんな事!」

後輩  「そこをなんとか」

ヤンキー「い・や・だ!」

後輩  「……将来の夢は“お花屋さん”らしいですね」

ヤンキー「!?」

後輩  「いえ、独り言なのでお気になさらず」

ヤンキー「なんだよぅ……怖ぇよぅ……」

ヤンキー「……直接渡してはいねぇよ」

後輩  「では、どのように?」

ヤンキー「わ、分かり易い場所に置いてたんだよ! 持って帰り易いように花瓶に入れて!!」

後輩  「分かり易い場所、とは?」

ヤンキー「アイツの机の上。 一番乗りで教室に入って、置いてそのまま帰ったよ」

後輩  「それは教室が騒然とする光景ですね」

ヤンキー「そうなんだよ。 なんか翌日来たらイジメがどうこうでクラス会議。面倒くせぇったらありゃしない」

後輩  「残念美人」

ヤンキー「あん?」

後輩  「こちらの話です」

後輩  「これもオフレコなので、答えて頂ければ幸いです」

ヤンキー「もうヤケだよ。 何でも答えてやらぁ」

後輩  「ヤンキーさんは、どんなキッカケで男さんを意識するようになったんですか?」

ヤンキー「……長くなるぞ」

後輩  「構いませんよ」

ヤンキー「……」


ヤンキー「アイツさ。 その昔、伝説の族の頭(ヘッド)だったんだ」

後輩  「すみません、ちょっと詳しく教えてください」

ヤンキー「当時はまだ中坊だったアタシは、引っ込み思案でさ。ぶっちゃけクラスでも浮いてたんだよな。
     で、なんか色々とどうでも良くなって、グレてみようと思ったんだ」

後輩  「ほぅほぅ」

ヤンキー「それで、コンビニでたむろってたガラの悪そうな兄ちゃんたちに聞いたんだ」

後輩  「何を?」

ヤンキー「どうやったらそんな風になるんですか、ってな」

後輩  「えげつない煽りですね」

ヤンキー「何でか分からないが、それを聞いた兄ちゃんたちは激昂してさ。アタシをバンに乗せて拉致ったんだ。
     で、連れて来られた場所が族の集会所。なんか生贄みたいな扱いをされたのさ」

後輩  「怖かったでしょう」

ヤンキー「……うん」

後輩  (あ、半べそだ)

ヤンキー「もう駄目だ。 そう思った瞬間に、現れたんだ」

後輩  「誰が?」

ヤンキー「男だよ。 学ランを着た同じ年くらいの中坊がさ、数百人単位の族を率いて来たんだ」

後輩  「数百人!?」

ヤンキー「先陣切ってまるで漫画みたいに敵を倒してさ。アタシを颯爽と連れ戻してくれた。
     ……王子様みたいだったな」

後輩  「でも、それって中学生の頃なんですよね? 高校に入ってからは?」

ヤンキー「高校が一緒だったのは偶然。 クラスまで一緒。 もうそれだけで充分さ。
     ただ、あの時に助けてもらったのはまだ言ってないし、向こうも助けた女がアタシと気付いてないと思う」

後輩  「それは何故?」

ヤンキー「その為にこんな格好してカムフラージュしてるんだよ。 
     気付かれなくていい。一方的に好きなまんまで良いんだよ。…喋りすぎた。話は以上だ、もう何もねぇ」

後輩  「……ご協力ありがとうございました」

後輩「色々と可愛い人だったな」

後輩「とりあえず男さんについて分かった事は、まず一つ」



・伝説のヤンキー




後輩「早速なんかきな臭い感じの情報を貰っちゃったよ」

後輩「……これは流石に報告できないなぁ」

今宵はココまで

スレが残っているのであれば続きを後日投下

長くなるならSS速報で書けばいいと思うの
読みたいし

>>40
サックリ終わらせるつもりだったのでVIPに立ててみましたが、SS速報の方が迷惑かからなさそうですね
アドバイスありがとうございます

このまま落として頂いて結構です
後日SS速報でゆっくり投下する方向で

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