亦野「部長……ですか……?」(108)

代行:ID:OYb0dl9h0

しえんた

代行どうもです

投下間隔とかよくわかんないので速くねとか遅くねとか感じたらチラッと言ってくれると嬉しいです

恒子『試合、終了ーー!』

恒子『最後はまたしても嶺上開花!清澄高校、インターハイ初出場にして初優勝です!』

恒子『王者白糸台、三連覇の達成はならず!しかしその前評判に違わぬ戦いぶり!臨海も阿知賀女子も大健闘を見せました!』

恒子『ただそれをわずかに上回ったのがこの清澄高校!インターハイ史上に、新たな王者が誕生したーーっ!』



亦野(――先鋒戦、宮永先輩は清澄の東1の役満や臨海の執拗な対策とマークの中でおよそ4万点の大量リードをつけ、続いて癖を払拭した弘世先輩も差を広げた)

亦野(しかし中堅から徐々に追い上げをくらい、大将戦の後半開始時にはその差は一万を切っていて)

亦野(最後は淡と清澄・宮永咲の一騎打ち)

亦野(インターハイ史上最強チームとも謳われたチーム虎姫は、決勝で劇的な大逆転負けを喫した――)

軍隊式麻雀…

菫「三連覇、優勝が目的であっただけに、今回の結果は悔しいものになってしまったとは思う」


亦野(こうして考えてみると、流れとしては何ともありがちな感じだ)


菫「しかし、絶対王者、常勝高校、最強チームなど、そういった周りの声に慢心や油断があったとは考えていない」


亦野(最初に3年生が試合を作ったのに、下級生たちがそれを壊してしまったんだな、やっぱりプレッシャーや経験不足のせいなのかな)


菫「私たちは持てる全てを出し切った。一人ひとりが、全力で麻雀を打った。だからこそこの敗北がこんなにも悔しく、こんなにも悲しいんだ」




亦野(――決勝の収支の結果だけ見れば、そう見える)

菫「いま各々の胸の中にあるその悔しさを、敗北という『経験』を、これからの力に変えていくべきなんだと私は思う」


亦野(実際はそんなものではない。淡の大会総合収支は宮永先輩に継ぐし、尭深のマイナスも大したものじゃなかった)


菫「個人戦、国麻、そして来シーズンの試合――これから様々な場面でこの結果を武器にして戦えるように、一人ひとり、また頂点を目指していこう」


亦野(このチームのブレーキは、先輩たちの作った試合を壊してしまった最大の要因は――)



菫「私も、そのつもりだ」

亦野(間違いなく、私だ)

あとでよむほ

――個人戦・初日


亦野(全国大会の個人戦出場者は、その期間中かなりハードな日程を強いられる)


亦野(半荘打って、相手を変えてまた半荘。試合が長引いて一戦の疲労感が大きくなるほど、次の試合とのインターバルも短くなる)


亦野(格下との試合は流すように勝利し疲労を出来るだけ残さないのが理想、しかしそれは充分点数が足りている自信がある実力者にだけ許されること)


亦野(強者の特権はそれだけじゃない。試合間に時間的にも体力的にも余裕があれば、次の対戦相手の牌譜に目を通しておくこともできる)


亦野(個人戦に出場する同校の選手のために次の対戦相手の情報をまとめておくのも、出場しない選手の役目の一つだ)

亦野「フクジ、ミホコ……あったあった」


亦野(もっとも牌譜を拾うといってもめぼしい選手の分は団体戦の前や最中にやってあることが多いから、わりと紙を束ねるだけの作業に近い)


亦野(余った時間はその選手の試合を観戦して、いつもと違ったり、何か変なところがあれば声をかけたりしてサポートする)


亦野(期間限定の専属マネージャーという表現が一番しっくりくる。大した仕事じゃないけどある程度親しいほうがやりやすいから、選手一人にサポート一人つくのがセオリー)

亦野(弘世先輩は取材の相手や大勢の部員たちをまとめるのに忙しいから、宮永先輩の担当は尭深がやっている。私の役目は――)


淡「牌譜とかいらないって言ってるじゃーん。チョコとか持ってきてくださいよー」


亦野(――コイツのサポートだ)

亦野「お前なぁ……。そんなことばっかり言って、足元すくわれたらどうすんだよ」

淡「そうそう何度も、亦野先輩じゃあるまいし」

亦野「んぐっ」

淡「テルと、サキと、あと高鴨穏乃!その3人がどんな感じかだけ教えてくださいね!」

亦野「……阿知賀は全員個人戦出てないぞ」

淡「えー!なんで!?」

亦野「知るか。とにかく今は目の前の敵に集中しろってば」

淡誠とか期待がふくらむじゃないか

亦野(全くもってサポートのし甲斐のないこのじゃじゃ馬は、それからもその自信もうなずけるような快進撃を続けた)


亦野(白水哩も、原村和も――私があれだけ苦戦を強いられた相手を、アイツは軽々と蹴散らしていく)


亦野(これが、才能の世界だ。これが、強豪校のエースというものなんだ)



亦野(―――これが、白糸台の選手であるということなんだ)


亦野(まだ2年だから仕方ない、なんて、これを見て誰が安い慰めと思わずにいられるんだろう)

―個人戦・全日程終了翌朝


亦野「………決勝、凄かったな」


亦野(本当に、嫌になる)


亦野(白糸台のレギュラーでありながらあれと到底かけ離れた自分の実力と)


亦野(私がもしあの中にいたら、何が出来ただろうとか)


亦野(それがありえない仮説だと感じながら考えてしまう自分が―――ああ)


菫「亦野、ちょっと来てくれないか」


亦野(麻雀、辞めようかな………)

亦野「………って、はい?」

菫「話があるんだ」

sakiとか読み仮名のわからんあyつばっかりだわ

亦野「………今、何て?」

菫「聞こえなかったか?君を、次のインターハイまでの白糸台麻雀部の新部長に任命したいと言った」

亦野「ちょっ……ちょっと、待って下さい」

菫「学校に戻ったら、体育館で就任の挨拶がある。あとで電車の中ででも内容を」

亦野「――待って下さいってば!!」

菫「何だ」

亦野「何だ、じゃないですよ………私が部長って、何かの間違いじゃ……」

菫「間違いなんかあるわけないだろう。監督や照とも相談した結果だよ。嫌か?」

――――



亦野「………今、何て?」

菫「聞こえなかったか?君を、次のインターハイまでの白糸台麻雀部の新部長に任命したいと言った」

亦野「ちょっ……ちょっと、待って下さい」

菫「学校に戻ったら、体育館で就任の挨拶がある。あとで電車の中ででも内容を」

亦野「――待って下さいってば!!」

菫「何だ?」

亦野「何だ、じゃないですよ………私が部長って、何かの間違いじゃ……」

菫「間違いなんかあるわけないだろう。監督や照とも相談した結果だよ。嫌か?」

亦野「嫌、っていうか……私なんかが、部長になれるわけ……」

菫「……大会の収支のことを言っているのなら、気にする必要はないさ」

亦野「―――は?」

菫「団体戦の後にも言っただろう。全力で戦って出た結果ならば、悔やむことはあっても恥じることはない。大事なのは……」

亦野「……それを力にすること、でしたっけ?」


亦野(そんな―――)


菫「ああ。お前はまだ2年、先があるんだ」


亦野(そんなキレイごとで―――)


菫「今回は望む結果でなかったとしても、次こそやってやるという思いこそが………」



亦野「――そんなキレイごとで、どうにかなる次元の話じゃないんですよ!」

支援

もう少し投下間隔あけた方が

菫「………」


亦野「準決勝の自分の牌譜を見ました。………とても、優勝候補校レギュラーのレベルじゃない」


亦野「あの結果の、何が力なんですか。あの戦いの何が武器なんですか」


亦野「地力だってなんだって、尭深の方が上じゃないですか……尭深が部長をやったほうが、よほど皆はついてくる」


菫「………尭深は、部長に向いた気質ではない。わかっているだろう」


亦野「それでも、私よりはマシでしょう……ついさっきまで、辞めようかとまで考えてたのに」


菫「何………?」


亦野「自信がないんです。これからこのチームでやっていけるかどうか」

亦野「さっき弘世先輩に呼ばれたときは、降格のことだと思いました。うちの制度で言うなら、来年淡や尭深と組むことを禁じるとか」


菫「………」


亦野「白糸台には、来年また新しい戦力が入ってきます。虎姫の影に隠れていた他チームの人たちも、全力で空いた席を取りにくる」


亦野「その中で、元レギュラーとして踏み台にされ続けるのは、とても耐えられそうにないんです……」


菫「………ふふっ」


亦野「なっ!?何、笑って」


菫「ああ、いや、済まない。………お前が、あまりに去年の私と同じことを言うものだからな」

しえん

亦野「えっ……」


菫「去年の準決勝の話をしようか。私はあの時、大きな負け収支で終わった」


菫「私の武器は狙い撃ちなんだ、区間トップのこいつに一矢報いてやるんだ……団体戦という状況も省みず、個人的な執着心で無理な攻めをした結果だった」


亦野「………信じられません。弘世先輩が、そんな……」


菫「私がお前と接するようになったのは、大会が終わって部長になってからだからな。それまでは、我ながらまだ青臭さがあった」


亦野「………」


菫「試合自体は先輩や照の力があって余裕をもって通過したように見えたが、後で振り返った私はそれに安堵する場合ですらなかった」


菫「どうしてあんなことをしたんだ、それでも白糸台のレギュラーなのか………その雑念が取りきれずに決勝でも上手くいかず、いっそう自分を責めた」


菫「そんな自分と、個人戦を駆け上がる照との差に更に絶望していた矢先に、次の部長になってくれときたらな」

支援

ふぅむ

菫「お前と同じように食って掛かったよ。なぜ私なんだ、私よりよっぽど尊敬を集められる適任がいるじゃないか」


菫「確かに照は大声で皆をまとめあげるタイプではないが、プレーで周りを引っ張っていくことができる。レギュラーに残れるかすら危うい私よりいいはずだ、とな」


亦野「………」


菫「―――だから、亦野。当時の私ととても似通った境遇であるお前に、私が受けたのと同じ言葉を贈ろう」


亦野「……何ですか?」



菫「『お前には、崖から落ちそうになった所を仲間に引っ張り挙げてもらったという経験がある。それは、宮永も味わったことがないものだ』………少し、クサイが」

亦野「仲間………」


菫「団体戦における失点した者の辛さ、それを誰かが取り返してくれることの有難さ。部長は、部員一人ひとりの気持ちをできる限りわかってやる必要がある」


菫「得点の重みを肌で感じた経験があるという意味で、敗北が財産になるというのは決してキレイごとなんかじゃないんだ」


亦野「………失点した奴こそ部長になれ、ってことですか?」


菫「失点する、イコール弱いと考えてるようでは語弊が生じるよ。何より、亦野は自分で思っているほど弱くなんかない」


亦野「それは、どういう」


菫「確かに地力で全国区の猛者たちに劣るのかもしれんが、私の失点の原因に私的な感情があったように、亦野にも地力云々以前の問題がある」

亦野「何、ですか?」


菫「コンプレックスだよ。自分はこの5人のなかで一番弱い、自分はチームの穴になりかねない………そういう考えが心の奥底にある」


亦野「………それは」


菫「それが事実なんだと日頃から自分に言い聞かせていたようでは、私がいくらレギュラーとして誇りと自信を持てと言っても中々払拭されるものでもない」


菫「格上の相手にちょっと和了られれば『これが本物のエースか、私よりも明らかに上』、とか考えてしまう」


菫「『勝てない』という思い込みはプレーを縮こまらせる。それが取り去られないまま必死に平気ぶろうとすれば、逆に無理な攻めに走ることにつながる」


亦野「………」


菫「自分で切りかえようとしてるお前に更に説教じみたことをするのも逆効果かと考えて、あえて決勝の前に言うことはしなかったんだが……それは、今はおいておこう」



菫「更に力をつけ、自分に自信を持てるようになれば、亦野は部長にふさわしい存在になれると私は信じているよ」

ふむふむ

しえん

亦野「私が………部長に……」


菫「……もし、私の言葉だけで決心がつかないようなら、他の人間にも話を聞いてみるといい」


亦野「え?」


菫「確かに習慣的な制度上は、時期部長は監督と部長を含む数名の相談、あとは本人の承諾で決定するものだが……」


菫「もとより少人数の独断で決まるほど、白糸台の部長は軽いものじゃないってことだ」

しえん

――控え室・白糸台高校麻雀部


照「おはよう」


亦野「お、おはようございます。……ここにいたんですね」


照「外にいると、記者さんとかにつかまったりするから」


亦野「ああ、なるほど……」


照「………」


亦野「………」


照「………」

支援

亦野(とりあえず誰かいるだろうと思って控え室来たのはいいけど……)


照「………」


亦野(『話を聞く』っていったってどう切り出したものか全然わからん……!)


照「………」


亦野(何かめっちゃ本読んでるし……話しかけちゃいけないやつじゃないか………)


ハーバターイーテー オネガイー


照「!」


亦野(宮永先輩に着信……)


照「はいっ!宮永照です!いつもお世話になっておりますっ!」


亦野「!?」

支援

照「ええ、いえ、皆様の応援あってこそのものです!本当にありがとうございます!」


亦野(今ページ捲ったぞ!?完全に読み進めながら話してるよこの人!)


照「明日ですか?わかりました!では、明日の17時から、よろしくお願いします!それでは失礼します!」


照「………」


亦野(………そういえば生で見たのは初めてだな、コレ)


照「……どうしたの?」


亦野「えっ、ああ、……凄いな、と思って」


照「凄い?」


亦野「その、営業スマイルというか……知ってはいましたけど、見たことはなかったので」


照「そう」

ほっぺたむにむに

亦野「………随分、普段と違いますよね、やっぱり」


照「元々、あんまり得意じゃないから」


亦野「取材が、ですか?」


照「うん。……そんなに、言葉がスラスラ出てくるほうじゃないし、たくさんの人の目に触れるってなると、なおさら下手なことは言えないと思っちゃうし」


亦野「ああ……」


照「初めて取材をもらったのが、中学生のとき。向こうもまだ今みたいな勢いじゃなかったけど………パニックになって、『それっぽい返し』を必死でしようとした」


亦野「それが、ああいう風に……」


照「それからも何度か同じように乗り切って……気づいたら、メディアの人たちの中での私のイメージはもう定着してた」

飯食ってきます

しえん

これは保守

亦野「初めて一緒に練習に参加したときは驚きましたよ。打ってないときは黙々と試合と牌譜見るかお菓子食べるかですもん」


照「みんなそう言う。気さくでしっかりものなやつだろうと思ってたのに、って菫にも言われた」


亦野「まあ、そりゃそうでしょうね」


照「宮永照みたいなのが同期で入るのなら、部長だってそいつがやるんだろうし、気楽にできると思ったのにとんだ誤算だよ、って」


亦野「そ……そんなこと言ったんですか?あの、弘世先輩が?」


照「………菫は」


亦野「?」


照「菫は、亦野たちが思ってるほど、生まれながらの部長みたいな娘じゃないよ」

亦野「生まれながらの………確かに、そんなイメージですけど」


照「今なら、本当にそう言えるぐらいにまでなったかもしれない。でも最初の頃は戸惑ってばっかりだった」


亦野「最初の頃って言うと、秋とかですか」


照「ほぼ全部のことを平然とこなせるようになったのは、春になってからだと思う」


照「いつも下級生の前では部長らしさを貫いてたけど……見てないところではたくさん悩んでたし、たまに愚痴ったりもした」


亦野「………私も青かった、みたいな話は、さっき聞きました」


照「話したんだ。菫と」


亦野「はい」

いい話

照「私は、多分菫を一番近くで見てたから。弱いところも、そこから成長していくところも、いっぱい見てきたから」


照「部長って、皆を支えなきゃいけないけど、それと同じくらい、部長を支えてあげられる人が必要だって思う」


亦野「………」


照「同級生だけじゃない。後輩たちの信頼とか尊敬だって、重荷とも感じるけど、その場にしっかり腰をすえるための力にもなる」


照「誰だって、最初から部長だったわけじゃない。いっぱい悩んで、後輩に見えないところで努力して、だんだん『部長らしい存在』に、そうやって後からなっていく」


亦野「………私にも、なれますかね。そんな風に」


照「なろうとすることが一番大事。………だと、思う」

照「あとは、練習。その信頼と尊敬を集めるためには、やっぱり麻雀自体の実力も必要」


亦野「………そう、ですよね」


照「……亦野は、私が鏡で見てチームに入れたいと思った人だよ」


亦野「!」


照「不安そうだから、言う。これから次第で、まだ全然伸びしろがあるから。だから、練習しよう」


亦野「宮永先輩………」


照「卒業までの間は、言ってくれれば相手になってあげられると思うから」

照「わかってると思うけど、3年が抜けて一旦チームは解散するから、しばらくの期間はいくらでもどんな人とだって打てる」


亦野(この人だって、弘世先輩とはまた違った形でチームを支えて来た人だ)


照「周りとか、メディアが何を言っても気にしないでいい。数ヶ月あれば、一年ならもっと、人はいろんな面で変われるから」


亦野(チームの重みってものもわかってるだろうし、それ以上に、この人は麻雀打ちとしての自分の言葉の重みを自覚してる)


照「私が、こんな人だと思わなかったって色んな人に言われたみたいに―――こんな強いと思わなかったって、できるだけ大勢の、日本中の人に言わせてみせて」


亦野(だから、どう受け取られるかもわからない大衆への言葉は出来る限り軽くする………その宮永先輩が、こうして真剣に期待をかけてくれている)


照「亦野なら、きっとそれができるから」


亦野「はい………はい!」


亦野(―――応えなきゃいけないんだ。何があったとしても)

今北産業

しえ

――インターハイ会場・屋上


淡「あ、亦野先輩だー。なんかさっき菫先輩が探してましたけど」


亦野「ああ、もう会ってきたよ」


淡「何の話だったんですか?」


亦野「随分ズバッと聞くな」


淡「ま、大体察しもつくし」


亦野「……そう、か」


淡「きのこたけのこは争いになるから止めといたほうがいいですよ」


亦野「お菓子パシられたわけじゃないからな!?」

あわあわww

パイの実買って来いや大星ィ

淡「部長かー………確かにたかみ先輩はそんな感じじゃないかも」


亦野「……逆に、私はそんな感じするってことか?」


淡「いや全然?」


亦野「おい」


淡「弱いし、ヘタレだし、しょーじき大変だろうなって思う」


亦野「相変わらず容赦ないな………」


淡「………でも、なって欲しくないとは思わないかな」


亦野「え?」

白糸台のイケメン部長亦野

支援

淡「私が入って来たときのこと、覚えてます?」


亦野「………言って、半年も経ってないしな。よく覚えてるよ。いろんな意味でとんでもない奴が来やがったって」


淡「いろんな、ねえ」


亦野「やたら強いし、それも打っててストレスたまるような干渉だし、礼儀のれの字も知らないし………正直、部の雰囲気は悪かったかもな」


淡「それは私もわかってました。多分、テルに拾われたってことじゃなければイジメの一つ二つもあるんじゃないかって思ってた」


亦野「勝つたびにバカにして回ってたからな。逆になにも起こんなかったのが奇跡なぐらいだ」


淡「よく言いますよねー。何かが起きる前に私に敬語叩き込んで自分は一人ひとりにいちいち謝ってたくせに」


亦野「………よく覚えてないな、それは」

ほんまマネージャーじゃなですか

淡「今でこそ私は麻雀部の、いや学校のアイドルとしてちやほやされるわけですけど」


亦野「自分でいうな、自分で」


淡「その背景にたった数人の先輩の奔走があったことを知らないほど私はお馬鹿な子じゃありません」


亦野「………必死だったからな。お前をちゃんとうちの戦力として定着させるために」


淡「大義名分ぽい理由をくっつけたって無駄ですよ。私は感謝してるんですから」


亦野「……さいですか」


淡「――それで、そこまでされるほど期待されてたのに、それを裏切っちゃったんだってのも、わかってます」


亦野「………淡?」

断固支援

淡「笑っちゃいますよね。100年生とか言って、負けはありえないって言い切って、戦う前から相手のことバカにして」


淡「『優勝のために、あいつは大きな力になれるから、どうか許してくれ』って、先輩たちが言って回ってたのに、ぜんぜん、なれなぐて」


淡「わたしが何しても、グズッ、許じて、くれて、勝っでくれれば、それでいいって、言っだのに―――ふぎゅっ」


亦野「………」


淡「………なんで、ヒグッ、撫でるんですか」


亦野「………」


淡「ちょっと、どけて下さい」


亦野「嫌だ」

;;

紫炎

淡「なん、で」


亦野「溜め込んでるモンを出し切るまで、やめない」


淡「………っ!」


亦野「お前、遠慮なんてもんから一番遠いはずだろ。自己嫌悪もなにも存分に吐き出せよ」


亦野(私が、弘世先輩にそうしたように――力や数字の上で上下が逆転してることがあっても、先輩と後輩って関係は変わらない)


淡「うぅ、あっ、うあっ」


亦野「こんな時ぐらい、先輩ヅラさせてくれ」


亦野(『私のほうが失点したし』なんて傷の舐めあいをするより、偉そうな顔で受け止めてやるべきなんだ)


淡「あぅっ……、うあああぁぁぁん………!」

紫炎姫

ええ先輩後輩や

シ炎

淡「決勝にはサキがいたから、穏乃どころじゃなくなっちゃった」


亦野「ああ、そうだったな」


淡「しかもあいつ個人戦出てないし………そうだ、そうじゃん!」


亦野「うおっ、急に立つな」


淡「穏乃へのリベンジはうやむや、サキとテルには個人戦でも負けっぱなし………私、まだ誰も倒してない!」


亦野「………!」


淡「サキと穏乃はまた全国で会うから、その時……秋も、春も、来年も」


淡「テルだって卒業までまだ時間もあるし、その後もプロまで追っかけて倒さなきゃ!100回!」

あわあわ可愛いなおい

支援

亦野(全国個人戦の決勝卓まで昇っておいて、誰も倒してない、か)


亦野(本当にコイツの視界には、数えるほどの人間しか入っちゃいないんだ)


淡「あ、プロにいったら三尋木プロとかかいのープロとかもいるんじゃん」


亦野(私も、その中に入ることが出来るのか―――いや)


淡「うわ、なんか楽しくなってきた!」


亦野(入ろうとすることが一番大事、かな)


亦野「――よし、決めた!」


淡「おっ、なんですか?」


亦野「私も、卒業までに100回お前を倒す」

咲って個人戦出てなかったっけ?

また角を無くして打つのか

淡「………!出来ると思ってます?」


亦野「やるさ。せいぜい追いつかれないよう気をつけろよ」


淡「ふっふーん………いいでしょう。テルたちを倒すには試合数をこなすこと。片手間にでも相手してあげますよ」


亦野「じゃ、お互いの目標に向けて帰ったら早速練習だ」


淡「がってん!あ、変な風に山並べんのはナシですからね?」


亦野「わかってるよ、正面からまっとうに破ってやる」


淡「あはは……やっぱり、亦野先輩が部長になるのもいいかもですね」


亦野「ん?」


淡「人をノせるのと、私を撫でるのがうまいから!」


亦野「……そいつは、光栄なこって」

支援

俺も猫なでるのうまいよ

誠淡素晴らしいわあ
支援

亦野さんに撫でられたい

淡編終わったところで書き溜め終わりです

露骨に投下ペース落ちるかも知れんので先に謝っておきます

――インターハイ会場・観客席


亦野「人がいないと、広く感じるな………今年は、あんまりここに入ることもなかった」


尭深「去年は、ずっとここにいたのにね」


亦野「うん、座るとこもなんか勝手に……後列の、この辺だっけ?」


尭深「そこが誠子ちゃん。私は、その右の廊下側」


亦野「何だっけ……一回、来たら普通におばさんが座っちゃっててさ」


尭深「仕方ないから、立って見た」


亦野「そうそう!今思えばなんで他のトコ座んなかったのかって………うん、懐かしい」


尭深「……ん」

尭深「懐かしいけど……」


亦野「ん?」


尭深「懐かしいけど、短かった。この一年」


亦野「確かに。なんか息する暇もなかった気がする」


尭深「また、始まるね」


亦野「うん……帰ったら、すぐだ。またここに来るまで」


亦野(夏が終わると、春先に新入生も含めた新チームが結成されるまでの半年あまりの期間、白糸台は恒例の戦乱期に入る)


亦野(皆がむしゃらに打って、とにかく自分をアピールする。上級生でチームリーダーになる可能性のある人は、その傍ら各部員を分析して自分のチームに入れたい人を探す)

たかみーかわいい

しえn

亦野「去年はただひたすらに打ってたけど……今年は、3年としての仕事もはいってくる。もしかしたら、余計速いかもしれないね」


尭深「それに、誠子ちゃんはそれだけじゃない」


亦野「!」


尭深「さっき、弘世先輩に呼ばれてた」


亦野「……聞いてた?」


尭深「ううん。………でも、わかるよ。そうなるだろうって、思ってたし」


亦野「………尭深は、自分がなるかもしれないとか考えてなかった?」


尭深「全く考えなかったわけじゃない、けど、私はそういうの向いてないと思うし」


亦野「……それなんだけどさ」

しえん

尭深「?」


亦野「さっきまで先輩とか淡とかの話を聞いてたんだけど……皆言うんだよ。尭深が、その、部長向きじゃないって」


尭深「………うん」


亦野「でも、部長らしさなんて最初から持ってるものじゃない、とも言うんだよね」


尭深「………」


亦野「なんていうか、だったら尭深がダメな理由もないんじゃないかとか思っちゃうんだけど………」


尭深「………」

支援

亦野「………ゴメン、愚痴っぽくなったかな。別に逃げるわけでも押し付けたいわけでもないんだけど」


尭深「気にしないで、いいよ。………むしろ、もっと吐き出してほしいぐらい」


亦野「え?」


尭深「誠子ちゃんの鬱憤とか、不安とか………全部、受け止めさせてほしい。それが、私の役目だと思うから」


亦野「………ありがとう、尭深」


尭深「いいよ、お礼なんて。私は、少しでも恩返しが出来ればそれでいいから」


亦野「お、恩返しって……私に?」


尭深「うん」

しえ

支援

支援

支援

シ炎

支援

亦野「そんな、いきなり言われても心当たりがないんだけど……」


尭深「……去年の、秋から冬ぐらい。私が突然宮永先輩につかまったの、覚えてる?」


亦野「あれは驚いたね。あの宮永先輩がいきなり打とうって来たわけだし」


尭深「それで打ってみたら、『貴女はオーラスに今までの第一打が戻ってくる力がある』なんて言うから、余計おどろいちゃった」


亦野「面白かったなあ、尭深の『私にも能力が……』と『何言ってんだコイツ』が混ざり合った微妙な顔」


尭深「実際、あのころは今ほど正確に全部回収してたわけでもないから、かなり半信半疑だった。……でも、誠子ちゃんは全然疑ってなかった」


亦野「………まあ、あの人が鏡で見た結果なわけだし、ウソつく理由もないし。尭深にそんな力があるなんてって、信じきってたね」


尭深「そう。――それが、私が恩返しをしたい理由」

支援

支援

尭深「いまいち自分の能力を信じきれてなかった私に、特打ちしようって言って来たのは、誠子ちゃんだった」


亦野「……完成すれば役満間違いなしってことだし、モノにしなきゃもったいないと思ったからね」


尭深「朝練が始まるもっと前から打って、部活が終わった後も打って……その時はずっと、誠子ちゃんが相手になってくれて」


尭深「能力が完成したときも、誠子ちゃんのほうがはしゃいでた」


亦野「………」


尭深「誠子ちゃんのおかげで、今の私がある」


尭深「誠子ちゃんがいてくれたから、私は今ここにいる」


亦野「尭深……」


尭深「だから、今度は私の番」

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