メイド「起きなさい、この豚」 女主人「誰が豚よ!」(144)

女主人「というか、あなた私のメイドでしょ!?」

女主人「その口調もうちょっとなんとかしなさいよ!」

メイド「こうやって朝起こしてあげてるんですから文句言わないでください」

女主人「言いたくもなるわよ、何でメイドに豚呼ばわりされなきゃいけないの!」

メイド「事実を言ったまでです」

女主人「私は豚じゃない!」

女主人「た、たしかに最近ちょっとだけお腹のお肉がついてきたけど……」

女主人「それでもまだぽっちゃりのライン!」

女主人「だから私は豚じゃない!」

メイド「朝から大声出さないでください、見苦しい」

女主人「誰のせいよ……」

メイド「朝食ができています、食べたらさっさと学校に行って下さい」

女主人「言われなくても行くわよ」

女主人「で、今日の朝食は?」

メイド「カツ丼です」

女主人「だから太るのよ!!」

女主人「まったく、朝からこんな重たいものを食べれるわけないじゃない」ムシャムシャ

メイド(と言いつつ食べてるし)

女主人「ふう、ごちそうさま」

女主人「今日も部活で遅くなるけど、仕事はサボらないでよね」

メイド「考えておきます」

女主人「考えるまでも無いでしょ!」

女主人「じゃあ私行くわね」

メイド「くれぐれも迷子にならないでくださいよ」

女主人「通学路で迷うか!」

女主人「まったく……行って来ます!」

メイド「行ってらっしゃい」

バタン

メイド「ふぅ……」

メイド「まったく、こんなに脱ぎ散らかして……」

メイド(洗濯するこっちの身にもなってもらいたいものです)

メイド「ん……これは」

メイド(ショーツですか……)

メイド(これをネタにイジるのも悪くないですね)

メイド「……………………」スッ

女主人「ただいまー」

シーン

女主人「あいつ……」


TV「ギャハハ ホンマカイナ」

メイド「…………」

タッタッタ

女主人「メイド!」

メイド「あ、おかえりなさい」

女主人「おかえりなさいじゃないでしょ!」

女主人「私が帰ってきたら玄関で出迎えるって約束でしょ!?」

女主人「それなのに、テレビ見ながら寛いでるっておかしいじゃない!」

メイド「だって……」

女主人「だってなに?」

メイド「めんどくさい」

女主人「アホか!」

TV「ギャハハハハハ」

女主人「まあいいわ、お風呂入りたいんだけど」

メイド「お湯が沸いてますからいつでも入れますよ」

女主人「へぇ~、気が利くじゃない」

メイド「私がさっき入りましたからね」

女主人「主人より先に入ったの!?」

メイド「毒味みたいなものですよ」

メイド「いわば毒湯?」

女主人「私に聞かないでよ……」

女主人「ふぅ~、さっぱりした」

女主人「着替え、着替えっと」ガサゴソ

女主人「ん?」

女主人(衣類が片付けられてるわね)

女主人「やればできるじゃない」

女主人「メイド」

メイド「はい?」

女主人「片付けてくれてありがとね」

メイド「なんだ、そんなことですか」

メイド「感謝するぐらいなら、最初から散らかさないでください」

女主人「ご、ごもっとも……」

TV「ワンワン」

女主人「…………」ジー

女主人「犬、良いわね……」

メイド「はい?」

女主人「可愛いじゃない、私飼いたいわ!」

メイド「駄目です」

女主人「ええー、なんでよ」

メイド「どうせすぐ飽きるに決まってます」

女主人「あ、飽きないわよ」

メイド「どうだか」

メイド「自分の身の回りのこともろくに出来ない人が
   犬を飼うなんてやめた方がいいと思いますけどね」

女主人「ぐぬぬ……」

メイド「大体、我が家に家畜は一匹で十分ですよ」

女主人「誰のことよ!!」

女主人「くそぉ、メイドの奴め」

女主人(私のこといつも馬鹿にしてぇ)

女主人(このままメイドに馬鹿にされ続けるなんて耐えられないわ)

女主人(ここは強硬手段に出るしかないわね)

ガチャリ

女主人(メイドの部屋に侵入する!)

女主人(そして、あいつの弱みという弱みを握ってやるわ)

女主人「ふーむ……」

女主人(特に変わったものは無いわね)

女主人(何よ、黒歴史の一つや二つないわけ!?)ガサゴソ

女主人(このままじゃ引くに引けないのよ……)ガサゴソ

女主人(…………ん?)

女主人「これって……」ピラッ

女主人「私のパンツ……?」

女主人「なんで、こんところあるんだろ」

ネチャ

女主人「きゃっ!?」

女主人「なに、なんで粘ついてるの!?」

女主人「は!?」

女主人(まさか、あのメイド……)

女主人(なにか仕込みやがったわね!?)

女主人(ありえるわ……)

女主人(日頃のストレスを私で発散するために何か仕込んだのよ……)

女主人「だとしたら、このネトネトはなに?」ツンツン

ネチャ

女主人「うわ、きもちわるい……」

女主人「でも、なんでパンツなんかに……」

ピカーン

女主人「そうか、分かったわ!」

女主人「このネバネバはトロロね!」

女主人「この、とろろが練りこまれたパンツをうっかり私が履く」

女主人「すると、私の股間はとろろまみれ」

女主人「結果、私は股間に凄まじい痒みを覚えて悶絶する」

女主人「きっと、これが狙いだったのよ……」

女主人(メイド、なんて恐ろしい子なの……)

メイド「……ん?」

メイド「ちょっと、なに人の部屋に勝手に入ってるんですか!」

女主人「人のパンツ勝手に持ってた奴が言うな!」

メイド「な、なんのことです!」

女主人「これ!」ズイ

メイド「そ、それは!?」

女主人「言い逃れできないでしょ」

メイド「いや、それは……」ソワソワ

女主人(ふふ、焦ってる、焦ってる)

女主人「しかも、こんなに汚しちゃって……」

ネチャ

女主人「ほら見て、こんなに糸引いてるわよ」

女主人「一体、どういうつもりなのかしら……」

メイド「………………」

女主人「私のパンツをとろろまみれにするなんて!」

メイド「…………え?」

女主人「だからどういうつもりって言ってるの!」

メイド(そうか……)

女主人「やっぱり私の悶える姿が見たかったの!?」

メイド(この人馬鹿なんだ)

女主人「何とか言ったらどうなの!」

メイド(まあ、そっちの方が都合がいいかな……)

メイド「バレてしまっては仕方がありませんね(棒)」

女主人「ついに本性を現したわね……」

女主人「私の勝負パンツをよくも……」

メイド「処女のくせになにが勝負ですか」

女主人「ほっときなさいよ!」

女主人「こういうのは準備しておくに越したことはないのよ」

メイド「あなたはくまさんパンツでも履いてるのがお似合いです」

女主人「ぐぎぎ……」

女主人「そういうアンタはどんなパンツ履いてるのよ!」

メイド「は?」

メイド「セクハラで訴えますよ?」

女主人「良いじゃない、私のパンツ見たんだからそっちも教えなさいよ」

メイド「そんなに私のパンツが気になるんですか?」

メイド「変態ですね」

女主人「そ、そういうんじゃないわよ!」

メイド「1回見れば満足なんですか?」

女主人「え、ええ……」

メイド「しょうがないですね……」

女主人「え、見せてくれるの!?」

メイド「ちょっとだけですよ」

女主人「やった!」

メイド「ほら、好きなだけみてください」ピラ

女主人「!…………ん?」

女主人「なにこれ?」

メイド「何ってスパッツですけど?」

女主人「ちょっと、私はパンツが見たいって言ったでしょ!?」

メイド「スパッツだって立派な下着です」

女主人「屁理屈言うな!」

女主人「というかスパッツ履いて仕事するメイドなんて聞いたことないわよ」ジー

メイド「しっくりくるから気に入ってるんです」

女主人「ふーん、そういうものかしら」ジー

女主人「でも、これはこれでカッコいいわね」ジー

メイド「あの……」

女主人「私も一着買おうかしら……」ジー

メイド「あの!」

女主人「ん? どうかした?」

メイド「あんまり、ジロジロ見ないでください……」

メイド「は、恥ずかしいです……」

女主人「あ、ごめんなさい……つい、珍しくて」

メイド「いえ……」

メイド「……………」モジモジ

女主人(あれ、メイドがしおらしい)

女主人「そんなに恥ずかしかった?」

メイド「あなたがいつまでも見てるせいですよ!」

メイド「こんなことなら見せなきゃよかったです……」

女主人「ごめん、ごめん」

女主人(でも、照れてるメイドは少し可愛いわね)

メイド「もう、そのパンツ持って出てってくださいよ!」

女主人「あ、うん」

メイド「もう無断で私の部屋に入らないでくださいよ」

メイド「いいですか?」

女主人「はい……」

メイド「反省したなら部屋に戻っていいですよ」

女主人「はい、失礼しました……」

ガチャリ

バタン

女主人「ふぅ……」

女主人「……………………」テクテク

女主人「……………………」テクテク

女主人「……って、何で私が悪いことになってるのよ!?」

女主人「お気に入りのパンツにとろろ塗られた、私が被害者なのよ!!」

メイド「行きましたね……」

メイド(しかし、危なかった……)

メイド(バレるんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ)

メイド(今後はもう少し慎重に行動した方が良いですね)

メイド(もし、バレたらこの屋敷にはいられなくなる……)

メイド(それだけは絶対に……)

―数日後―

女主人「悪いんだけど、これ洗濯しといてくれる?」

ドサァ

メイド「……なんですか、これ?」

女主人「えっと……」

女主人「こっちは部活で使ったジャージで、これは二週間前に着た体操着」

女主人「これはロッカーの奥に何故か入ってた靴下、それでこれが……」

メイド「いえ、もう言わなくて結構です」

メイド「以前から言ってますよね」

メイド「洗濯物はその日のうちに出せと!」

女主人「ひぃ!」ビクッ

メイド「私は難しいことを言ってますか?」

女主人「い、言ってないです……」ガタガタ

メイド「だったら約束は守りなさい!」

女主人「は、はいぃ!」

メイド「もういいです、片付けますからどこかに行って下さい」

女主人「え、手伝うわよ?」

メイド「邪魔なだけです、消えてください」

女主人「うっ……」

女主人「わかった……」

女主人「ごめんね、メイド……」トボトボ

メイドの性別はどっちだ?

メイド「……………」

メイド(ちょっと言い過ぎましたね……)

メイド(あんなに落ち込んで可哀想なことをしました)

メイド(あとでクッキーでも付くってあげましょう)

メイド(この洗濯物を洗うのが先ですけどね)

>>58

メイド「それにしても……」

ゴチャ

メイド「すごい量ですね……」

メイド(二週間前に使ったものだとか言ってましたが)

メイド(きっと臭いも凄いんでしょう……)

メイド「……………」

メイド「…………」キョロキョロ

メイド(お嬢様はいませんね……)

メイド(やるなら今!)

シュバ

メイド「スーハー スーハー」

メイド「こ、これは……」ゾクゾク

メイド「スーハー スーハー」

メイド「!」ゾクゾク

メイド(た、たまらない……)

メイド(脳を揺さぶられてるような強烈な匂い)

メイド(こんなものを嗅ぎ続けたら私はおかしくなってしまう)

メイド(でも……)

メイド「スーハー スーハー」

メイド(今更やめられません)ゾクゾク

メイド(しかし、ここではお嬢様にバレてしまいます)

メイド(場所を移しましょう)


女主人(また、メイドを怒らせちゃった)

女主人(今月入って何度目かしら?)

女主人(このままじゃ私、メイドに愛想尽かされちゃうんじゃ……)

女主人(……………)

バタン

メイド「ハァ……ハァ……」

メイド(はじめましょう……)スルスル

クチュ

メイド「ん///」

メイド(匂いを嗅いだだけなのにもうこんなに濡れてる……)

メイド「スーハー スーハー」

メイド(これはもう、私にとって麻薬ですね)ゾクゾク

メイド(ショーツも凄かったけど、これはそれ以上です)



女主人「よし、もう一度謝りに行こう!」

女主人(このままじゃお互い気まずいものね)

女主人(仲直りできればいいんだけれど)

女主人「あれ?」

女主人「メイド、どこ行ったのかしら?」キョロキョロ

女主人「メイドー!」

シーン

女主人(出かけたのかしら?)

女主人(でも普段だったら一声かけてくれるし……)

女主人(う~ん……)

はぁ……はぁ……

女主人「ん?」

はぁ……はぁ……

女主人(この声は……メイド?)

女主人(部屋の中から声が聞こえるわ)

女主人(なにしてるのかしら?)

ギィ

女主人「!?」

メイド「はぁ……はぁ……」クチュクチュ

女主人(なに、これ……?)

メイド「ふぅ……ふぅ……」クチュクチュ

女主人(なにやってるのよー!?)

メイド「スーハー スーハー」

女主人(ん? あれ、私の靴下じゃない!?)

メイド「へへっ……」ゾクゾク

メイド「はぁ……はぁ……」クチュクチュ

女主人(そんな……メイドが私の靴下をおかずにしてる……)

女主人(それもあんなに気持ち良さそうに……)

メイド「ん……」クチュクチュクチュ

女主人(あ、指の動きが早くなってきた)

女主人(もうすぐ、イキそうなのかしら)

メイド「ふぅ……ふぅ……」クチュクチュクチュ

女主人(必死に指を動かしてるメイド……)

女主人(何だか可愛いわね……)

メイド「はぁ……はぁ……」クチュクチュクチュ

メイド「お嬢様、そろそろイキそうです……」

女主人(!?)

女主人(バ、バレてる!?)

女主人(隠れてたつもりだけど、気づいてたのね……)

メイド「はぁ……はぁ……」クチュクチュクチュ

女主人(でも手は止めないんだ……)

メイド「お嬢様、イキます……イキますよ……」クチュクチュクチュ

メイド「お嬢様、お嬢様…………んんっ!」ビクビク

女主人(わ、イッちゃった……)

メイド「はぁ……はぁ……」

女主人(結局、メイドのオナニーを最後まで見ちゃった……)

女主人(というか、いつから気づいてたの?)

女主人(最初から最後まで私に見せつけてたっていうの?)

女主人(これは確かめなきゃ……)

女主人(でも、なんだか恥ずかしいわね……)

女主人(って今更なに気にしてるのよ!)

女主人(オナニーに見せられたんだから恥ずかしいも何もないわよ)

メイド(体中びちょびちょですね……)

メイド(ティッシュ、ティッシュ……)

女主人(よし、入るわよ……)

ガチャ

メイド「へ?」

女主人「メイド、その……」

メイド「い、いやぁあああああああああああ」

女主人「え!?」

メイド「なんで、どうして……」

メイド「いつからそこにいたんですか!?」

女主人「い、いつからって……」

女主人「メイドが、その……お、オナニーしてた時から……」

メイド「そ、そんな……」

メイド「ずっと覗いてたんですか……?」

女主人「気づいてなかったの……」

メイド「気づくわけないでしょ!」

女主人「で、でも……」

女主人「お嬢様、お嬢様って言いながら弄ってたから気づいてたのかと……」

メイド「聞いてたんですか!?」

女主人「う、うん……」

メイド「そ、そんな……」プルプル

女主人「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」

メイド「あうっ……」バタ

女主人「め、メイド!!」

女主人「しっかりして、メイド!」

女主人「メイド!」

―――――――――――

――――――

―――

メイド「う、うーん……」

女主人「あ、メイド!」

女主人「よかった、やっと起きてくれた」

メイド「私は一体……?」

女主人「気絶しちゃったのよ」

女主人「その、いろいろあって……」

メイド「ああ……」

メイド「朧げですが思い出してきましたよ」

女主人「そう……」

メイド「お嬢様、すみませんがナイフをとってきてくれませんか?」

女主人「え、いいけど、何に使うの?」

メイド「この場で切腹します」

女主人「は?」

女主人「あなた、気は確か!?」

メイド「もちろんです」

女主人「そんな急にどうしたのよ!」

メイド「仕方ないじゃないですか!」

メイド「あなたにあんな姿見られたんです」

メイド「もうおしまいです……」

女主人「メイド……」

女主人「たかがオナニーくらい何よ!!」

女主人「わ、私だって週に1回くらいするわ!」

メイド「あ、それは知ってます」

女主人「え!?」

女主人「何で知ってるのよ!?」

メイド「部屋を覗いたら真っ最中でしたので」

女主人「嘘!?」

女主人「私としたことが……///」

メイド(顔真っ赤にしてかわいい)

女主人「って、今はそんなことどうでもいいのよ!」

女主人「切腹って何よ、切腹って!」

女主人「見られたことがそんなに恥ずかしかったの?」

メイド「当たり前じゃないですか!」

メイド「ただでさえ恥ずかしいのに、よりによってあなたに見られるなんて……」

メイド「私はもうこの屋敷にはいられません……」

メイド「それなら、いっそ死んだ方がマシです!」

女主人「そんな、私気にしてないわよ」

メイド「嘘です!」

メイド「本当は気持ち悪いと思ってるくせに!」

メイド「見てたんでしょ?」

メイド「あなたの名前を呟きながら自慰をするわたしを……」

女主人「それは……」

メイド「お嬢様、私は……」

メイド「私はあなたが好きなんですよ……」

メイド「もう、こんな気持ち知られた以上」

メイド「あなたの傍にいられるわけないじゃないですか……」

女主人「…………」

メイド「だからもう私をクビにしてください……」

女主人「メイド……」

メイド「大体、こんな仕事、最初から私に向いてなかったんですよ……」

女主人「メイド!」

メイド「!?」

女主人「さっきから聞いてれば何を勝手なこと言ってるのかしら」

女主人「あなたは私のメイドでしょ!?」

女主人「選択権はあなたにないのよ」

女主人「そんな簡単に辞めさせてあげないから」

メイド「でも……」

女主人「でもじゃない!」

女主人「大体……」

女主人「あなたが辞めたら誰が私の服を洗濯するのよ」

メイド「お嬢様……」

女主人「私にはあなたが必要なの、だから辞めるなんて言わないで」

メイド「……私でいいんですか?」

女主人「あなたじゃなきゃ駄目なのよ」

メイド「……………………」

メイド「…………仕方ないですね」

メイド「あなたがそこまで言うのなら、この屋敷に残ってあげてもいいですよ」

メイド「感謝してください」

女主人「ふふっ、ありがとうメイド」

メイド「まったく……」

メイド(変な人ですね、あなたは……)

女主人「ごちそうさまー」

メイド「ごちそうさま」

女主人「今日もおいしかったわよ」

メイド「私が作ったんだから当然です」

女主人「ちょ、ちょっとは素直に喜びなさいよ……」

メイド「…………」

メイド「お嬢様は、どうして私を屋敷に置き続けてくださったのですか?」

女主人「え、どうしてって言われても……」

メイド「はっきり言って私は口も目つきも悪いです」

女主人「いや、口はともかく目つきは関係ないじゃない」

メイド「愛想笑いもできませんよ、私」

女主人「あなたの愛想笑いなんか見たくないわ」

女主人「というか、それいうなら、何であなたは私の屋敷に来たのよ」

女主人「私一度も理由を聞いたことないわよ」

メイド「あ、それを聞きますか」

女主人「聞いちゃいます」

メイド「……まあいいでしょう」

メイド「もう十年くらい前ですかね」

メイド「私がここに来たのも」

女主人「あら、もうそんなに経ったかしら?」

メイド「私はちゃんと覚えてますよ」

メイド「あれは、私がちょうど十歳の夏でした」

メイド「蝉の鳴き声が鬱陶しい頃です」

メイド「学校から帰ると親にこう言われたんですよ」

メイド「あなたは今日からメイドとして働くのよ、と」

メイド「どうやら親が、借金をたんまりと作って生活が苦しくなったんだそうです」

メイド「だから最終手段として、私をこの屋敷に売り払ったんですよ」

女主人「そんなことがあったの……」

メイド「酷い親ですよね」

メイド「でも、その時の私は意外と落ち着いてました」

メイド「もう学校に行かなくて良いんだからこれも悪くないって」

メイド「しかし、気に食わないことが一つ」

メイド「私と年齢が変わらないような少女がその屋敷にはいました」

メイド「良い服を着て、良いものを食べ、なに不自由なく暮らす少女です」

メイド「はっきり言って頭にきましたね」

女主人「それってまさか……」

メイド「そう、その少女というのがあなたです」

女主人「やっぱり」

メイド「最初は常にあなたといるとイライラしました」

メイド「こんな世間知らずな女に仕えてるなんて反吐が出るって」

女主人「反吐……」

メイド「だからあなたを見下してたんです、私」

女主人「今も見下されてる気がするのは気のせい?」

メイド「気のせいじゃないですか?」

メイド「まあ、そんなこともあって、私の口は日に日に悪くなっていきました」

女主人「そうよ、私のことを平気で馬鹿とかチビとか言って」

女主人「何度あなたと喧嘩したことか」

メイド「毎回私の圧勝でしたけどね」

女主人「それなのに、お父様の前になると急にメイド面して」

メイド「クビにされたらたまりませんから」

女主人「他の使用人たちにも可愛がられてたし」

メイド「職場での人脈は大切ですから」

女主人「あなたってホント世渡り上手ね……」

メイド「でも、お父上に全て話せば、私のクビを切ることも出来たはずです」

メイド「なぜそうしなかったのです?」

女主人「何故ってそれは……」

メイド「…………」

女主人「恥ずかしいから言わない!」

メイド「は?」

メイド「今さらなにを恥ずかしがってるんですか!」

女主人「だ、だって……」

メイド「だってじゃありません」

メイド「言わないなら明日のおやつは抜きですよ」

女主人「!?」

女主人「言います、言いますから!」

女主人「わ、私って環境が環境だから、なかなか友達が出来なかったのよ」

メイド「環境?」

女主人「その、お金持ちでしょ、私って……」

メイド「自分で言います?」

女主人「あなたが言わせたんでしょ!」

女主人「だから、まわりの子達から近寄りがたい感じだったんだと思う」

女主人「たまに話しかけられることはあっても、なんだかよそよそしい感じで」

女主人「先生ですら、私と話す時だけ敬語なのよ」

女主人「そうなると、私だけのけ者にされてるみたいで……」

メイド「…………」

女主人「でもね、そんなときにあなたが来たのよ」

メイド「私……ですか?」

女主人「そうよ」

女主人「私ね、人に貶されたり馬鹿にされたりするの初めてだったの」

女主人「両親にすら叱られたことのない私がよ」

女主人「最初はすごく頭にきたわ」

女主人「私は主人なのになんでこの娘は楯突くんだって」

女主人「でもね、心のどこかで、嬉しいと感じてる自分に気づいたの」

女主人「人としゃべったり、喧嘩したり」

女主人「イライラしたり、時には泣かされたり」

女主人「そういう毎日の積み重ねがこんなに楽しいだなんて私知らなかったから」

女主人「その喜びを教えてくれたのはあなたなのよ、メイド」

メイド「お嬢様……」

女主人「だから私はあなたを放さないわ」

女主人「あなたは私の大切な人だから」

メイド「……お嬢様!」ギュ

女主人「ちょ、ちょっとどうしたの急に!?」

メイド「分かりません……」

メイド「分かりませんが……」

メイド「何故かあなたを抱きしめたくなりました」

女主人「……メイドは意外と甘えん坊なのね」

メイド「言い訳はしません」

女主人「ふふ、たまにこういうのもいいかもね」

女主人「あなたの体温が直に感じられるもの」

メイド「変なこと言わないでください、気持ち悪いです……」ギュ

―翌日―

メイド「ほら、起きなさい豚!」

女主人「誰が豚よ!」

女主人「ていうか、今日は休日じゃない!」

女主人「それなのに、朝5時に起こさないでよ!」

メイド「うっかりしてました」

女主人「嘘つけ!」

女主人「ところで朝ごはんは?」

メイド「目玉焼きハンバーグです」

女主人「また朝から重たいものを……」

メイド「食べないんですか?」

メイド「なら方しておきますね」

女主人「た、食べないとは言ってないでしょ!」

女主人「ふふ、おいひぃ」パクパク

メイド「口にもの詰めながらしゃべらないでください、不快です」

女主人「だって、おいしいんだもの」

メイド「大袈裟ですねぇ」

女主人「大袈裟じゃないですよ~」

メイド「お嬢様、昨日はその……」

女主人「その話はナシ!」

メイド「え?」

女主人「お互い恥ずかしい思いしたんだから話を繰り返すのはやめましょう」

女主人「昨日のことは私たちの心の中に閉まっておくの」

女主人「いいわね?」

メイド「……はい」

メイド「では、一言だけ言わせてもらえますか?」

女主人「いいわよ」

メイド「……これからも末永くよろしくお願いします、お嬢様」

女主人「……ええ、こちらこそよろしくね、メイド」

メイド「一生、あなたの傍を離れませんからね……」




おわり

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