千早「今日は雪がすごいわね。雪歩……ぷふっ」 雪歩「えー……」 (41)

千早「ゆ、雪がすごい……雪歩……ぷくくっ」

雪歩「いや流石にちょっと沸点低すぎなんじゃないかな……」

千早「ご、ごめんなさい。ちょっとおかしくって」

雪歩「今の状況でおかしなことなど何一つとして無いよぉ……」

千早「でも本当にすごい雪ね」

雪歩「うん。千早ちゃん家に泊めてもらえて助かったよ……電車完全に止まっちゃってたし」

千早「……雪歩」

雪歩「? 何?」

千早「『家に泊める』と『電車が止まる』とを掛けるのはあまり感心しないわね。ぶっちゃけ、上手くないわ」

雪歩「いや掛けてないしそんな微妙すぎるダジャレを唐突に述べる人間だと思われていたことがこのうえなく心外だよぉ……」

千早「違うのならいいのよ」

雪歩「分かってもらえて良かったよ」

千早「それにしても凄い雪ね」

雪歩「うん。テレビでやってたけど、積雪10センチだって」

千早「10センチっていうと、高槻さんの足のサイズくらいかしら」

雪歩「千早ちゃんはやよいちゃんを何だと思ってるの……」

千早「天使というか、まあ天使的存在かしらね」

雪歩「天使だとしても、せめて顕現してる物理的大きさくらいは認識してあげようよ」

千早「ふふっ、もちろん冗談よ。本当の高槻さんの足のサイズは昨日の午前3時24分時点で21.56センチメートルだもの」

雪歩「…………」スッ

千早「あら? 何故急に距離を取るのかしら? 雪歩」

千早「しかし、こうやって吹きすさぶ雪を眺めながらこたつでぬくまるのもおつなものね」

雪歩「そうだねぇ。こたつあったかいよねぇ」

千早「まあこのこたつの電気代は私が払っているのだけれど」

雪歩「……えっ」

千早「まあこのこたつの電気代は私が払っているのだけれど」

雪歩「何で二回言ったの」

千早「大事なことだからよ」

雪歩「…………」

千早「ところで、雪歩」

雪歩「うん」

千早「こういう厳寒の日にこたつで食べるアイスって最高に美味しいと思わないかしら?」

雪歩「あー、なんか分かる気がするねぇ」

千早「まあ、アイスなんて洒落たものはこの家には無いのだけれど」

雪歩「そ、そうなんだ」

千早「まあ、アイスなんて洒落たものはこの家には無いのだけれど」

雪歩「何で二回言ったの」

千早「大事なことだからよ」

雪歩「うぅ……なんか行間から強烈な圧力を感じるよぉ……」

千早「いえ別に、タダでこの家に泊めあまつさえこたつにまで入らせてあげてるんだからその対価として雪歩にアイスを買って来てほしいなんて1ミリたりとも思ってないわ」

雪歩「行間どころかド直球できたよぉ……」

千早「1ミリたりとも思ってないわ」

雪歩「うぅ……わかったよぉ……買ってくるよ……」

千早「待って雪歩。私も行くわ」

雪歩「えぇ……」

千早「言ったでしょう? こたつの対価にアイス買って来てほしいなんて思ってないって」

雪歩「うぅ……未だに千早ちゃんの本音と建前の境目が読めないよぉ……」

千早「さぁ行きましょう。雪歩は喜び庭駆け回るんでしょう?」

雪歩「駆け回らないよぉ……」

ガチャッ ビュウウウウウウウ

千早「!? さ、さむっ!!」

雪歩「ちちちちちはやちゃんんん!!」

千早「ちょちょちょちょっとこれはささっむむすぎるわ!」

バタン

千早「…………」

雪歩「…………」

千早「……我那覇さんあたりに電話して、アイスを買って来てもらうというのはどうかしら?」

雪歩「うぅ……ぐうの音も出ないほどに鬼畜だよぉ……」

千早「よし。これくらい防寒すれば大丈夫ね」

雪歩「うん」

千早「流石に雪歩の鬼畜の所業に付き合わせて我那覇さんを犠牲にするわけにはいかないものね」

雪歩「いや私じゃないからね!?」

千早「ん?」

雪歩「ん? じゃなくて!」

千早「さあ行きましょう」

雪歩「うぅ……強ツッコミしても効果が薄いよぉ……」

千早「雪歩は喜び庭駆け回る~♪」

雪歩「だから駆け回らないよ!」

ガチャ ビュウウウウウウウ

千早「!? さ、さむっ!!」

雪歩「ちちちちちはやちゃんんん!!」

千早「ちょちょちょちょっとこれはささっむむすぎるわ!」

バタン

千早「…………」

雪歩「…………」

千早「……ケータイ取り出しポパピプぺ、っと」

雪歩「うぅ……やっぱり鬼畜だよぉ……」

千早「あ、もしもし我那覇さん? ……え? 今ちょうど私に?」

雪歩「え?」

千早「うん……うん……ああ、そういうことね。ええ、もちろんいいわよ」

雪歩「…………」

千早「え? いえ別にそんな……あ、そういえば」

雪歩「?」

千早「今雪歩も来てるんだけど、雪歩が『アイス食べたいよぉ……』って言ってたわね」

雪歩「!?」

千早「ええ、でもそんな、悪いわ……え? 今コンビニなの? そう? うん……」

雪歩「…………」

千早「ありがとう。ごめんね。……ええ、雪歩もきっと喜ぶと思うわ。それじゃあまた後で」ピッ

雪歩「…………」

千早「あ、雪歩。我那覇さんね、今ちょうどこっちに向かってt」

雪歩「えい!」ズビシ

千早「物理!?」

千早「何をするのよ雪歩」

雪歩「それはこっちの台詞だよ!」

千早「私が我那覇さんを欺罔してアイスを買って来てもらうようにしたことがそんなにいけなかったの?」

雪歩「当たり前だよ!」

千早「でもいきなりチョップなんてしなくても……」

雪歩「むしろこの程度で済ませことに感謝してほしいよ」

ピンポーン

千早「あ、我那覇さんが来たわ! 雪歩! 居留守使うわよ!」

雪歩「どこまで鬼畜なの!」

ガチャ ビュウウウウウウウ

響「はいs」

千早「!? さ、さむっ!?」

バタン

雪歩「えぇえ!? 何閉めてるの千早ちゃん!」

千早「だ、だってあまりに寒くて……」

雪歩「響ちゃん来てるんでしょ!? 早く入れてあげないと……」

ガチャ ビュウウウウウウウ

響「は」

雪歩「!? さ、さむっ!?」

バタン

雪歩「あっ……」

千早「あーあ……」

雪歩「うぅ……そんな目で見ないでよぉ……」

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   j ,.―- 、ヽ                          !, - ― 、ヽ
   !' ,_‐ -- '´        ノ     丶            ゝ― - 、`!
   レ' _ ̄ノ        , '´        `            /` r-- 、)'
   ヽ | | |丶 _ ,   <               >ー --   イ|  | | /
    | | | i ヽ|                      | /  |  | |´

響「うぅ……ぐすっ……ひっく……」

千早「よしよし」ナデナデ

雪歩「ごめんね、響ちゃん……」ナデナデ

響「じ、じぶん、ひくっ……ふ、ふたりに、だ、だまされたのかなって……」

千早「何を言うのよ。私達が我那覇さんを騙すなんて、そんなことあるわけないでしょう?」

雪歩「どの口が言う……」

千早「んっん! と、とにかくほら、温かいコーンスープでも飲んで落ち着いて。ね?」

響「うん……ありがと……これ、自分が買ってきたやつだけどね……」

千早「細かいことは気にしなくていいのよ」

雪歩「千早ちゃんは気にしなよ」

千早「んっんん! でもこの寒い中、本当によく来てくれたわね。ありがとう、我那覇さん」

響「ん……自分もさ、雪が凄すぎて家まで帰れそうになかったから、千早の家に泊めてもらおうと思ってたんだ。だから助かったぞ」

千早「私なんかで良ければ、いつでも助けになるわよ」

響「千早……」ジーン

雪歩「響ちゃんが買って来てくれたアイス食べようかな」

響「ふぅ……やっと体の芯からあったまってきた感じがするぞ」

千早「それは良かったわ」

雪歩「外凄かったもんねぇ」

響「でも確かに、こういうときって無性にアイスが食べたくなるよね」

千早「フフフ……そんな我那覇さんのために!」

響「え?」

千早「はい! アイスです!」

響「……え? あ、ああ、うん……」

千早「さあさあ、遠慮せずに食べてね」

響「う、うん……でもこれ、自分が買って……」

千早「ん?」

響「あ、はい……いただきます」

雪歩(響ちゃんはまだ慣れてないんだなぁ)

響「あむ……うん、おいしい」

千早「本当、夏に食べるのとはまた違った感覚ね。ありがとう、我那覇さん」

響「え? 何が?」

千早「何がって……この寒い中、アイスを買って来てくれたじゃない」

響「え? あ、ああ……いやそんな、全然良いんだぞ、これくらい」

千早「本当に感謝してるわ。ありがとう」

響「千早……」

雪歩「さっきのくだりがなければ良い話だったのにねぇ」

千早「何か言ったかしら? 雪歩」

雪歩「別に何も」

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