モバP「桃華に婚約者ができた、なんて……」(196)

櫻井桃華(12)



黒服「はい。ですのでお嬢様のアイドル活動は休止という形で……」

P「ま、待ってください! あいつはまだ12歳ですよ!?」

黒服「家に入るための準備がありますので……」

P「そんなのおかしいじゃないですか! 桃華は、あいつ自身はどういってるんですか!」

黒服「……お嬢様は、もう会いたくないとおっしゃられました。ですので私が来たのです」

P「そん、な……だって、桃華は……」

黒服「いままでお世話になりました。今回はその件をお知らせにうかがわせていただいただけですので……」

P「……」

黒服「……契約の違約金等についてはまた後日うかがわせていただきます。それでは」

P「あ……いや、待ってください」

黒服「まだ何か?」

P「桃華の、その……婚約は……急に決まったことなんですか?」

黒服「お答えできません」

P「そうじゃないなら、なんで。あいつはあんなにアイドルが楽しいって言ってたのに……」

黒服「お答えできません」

P「……なんで、なんですか……桃華は……!」

黒服「……失礼します」


   ガチャッ   バタンッ

村松さくら(15)


さくら「おはようございまぁす!」

P「……さくらか。おはよう」

さくら「どうしたんですかぁプロデューサーさぁん! なんだか元気がないみたいですよ?」

P「なに、ちょっとな……はは……」

さくら「もう、そんなんじゃわたしたちも不安になっちゃいますよぉ! しっかりしてくださぁい!」

P「しっかり、しっかりか……おう、それじゃあ仕事いくか、な!」

さくら「はぁい! あれぇ? でもわたしの予定はレッスンだからプロデューサーさんはついてこなくても大丈夫ですよぉ?」

P「そ、そうか……そうだったな」

さくら「そうですよぉ! わたしだって成長してるんですから!」

さくら「あれぇ? プロデューサーさん顔色悪いですよぉ?」

P「な、なんでもないから心配するな。気のせいだから」

 ガチャッ

亜子「おっはよーさん!」

泉「おはようございます。あら?」

さくら「あっ、アコちゃん! イズミン! おはようございまぁす!」

亜子「あっちゃー、さくらより遅かったかー……ん? ひょっとしてお邪魔しちゃったかいな?」

泉「さくら、何してるの?」

さくら「え? プロデューサーさんが元気がないから元気づけてあげてるんだよ!」

P「は、ははは……」


大石泉(15)
土屋亜子(15)

亜子「元気づける……そりゃあ、いろんな意味で元気にしちゃうーみたいな?」

さくら「え? うん! やっぱり元気がないとダメだと思うからね!」

亜子「……やっぱりさくらは純粋やなぁ」ナデナデ

さくら「もーっ! 撫でないでよぉ!」

泉「……それで、どうしたんですかプロデューサー? 顔色が悪いみたいですけど」

P「な、なんでもないから気にするなよ。それよりほら! 仕事だぞ!」

亜子「え? アタシら全員レッスンだけど?」

P「いいから、ほら! 遅刻するとトレーナーさんおっかないぞ!」

さくら「あぁっ! だから早めに来たんですよぉ! なんでそれを先に言ってくれないんですかぁ!」

P「はいはい、苦情は後で聞くから! いってらっしゃい」

さくら「いってきまぁす!」

亜子「ちょ、さくらちょっとまちぃな! いくで、泉!」

泉「え? ちょっと待って、まだ話……あぁもう、いってきます」

  ガチャッ   バタン

P「……そんなに顔色悪いかな?」

P「桃華が……婚約、か……はは……」

P「顔、洗ってくるか……」



 ガチャッ  


早苗「おっはよーう! あれ?」

早苗「おっかしいなぁ、プロデューサーくーん?」

早苗「……いない? 珍しいなぁ、遅刻かな?」

拓海「おい、いつまで手ぇつないでるんだよ……」

早苗「えー、だって今日は一緒の収録でしょ? だからぁ、仲を深めようって思ってぇ」クネクネ

拓海「気持ちワル……いててて!」

早苗「いやん、お姉さん傷ついちゃう」


片桐早苗(28)
向井拓海(18)

拓海「ったく、なんで寮でも同じ部屋で……」ブツブツ

早苗「今日は水着グラビアだし、離すと逃げるでしょ?」

拓海「逃げねぇよ! どうせ逃げらんねぇしな!」

早苗「あ、そう? じゃあ離してあげる」

拓海「……最初から言えよ」

早苗「ごめんね? てへっ」

拓海「てへっ、じゃねぇよ!」

早苗「それより、プロデューサーくんどうしたんだろうね?」

拓海「露骨に話題そらしたな」

早苗「……いやぁ、昔の拓海ちゃんのこと考えるとねぇ。成長したよねぇ……」

拓海「どこ見て言ってんだよアンタ……」

P「……あれ? 2人ともいつの間に来たんだ?」

早苗「あ、おはよう! なぁんだ顔洗って……え?」

P「早苗さん、拓海をひっぱってきてくれたんですか。ありがとうございます」

拓海「別にひっぱってこられなくてもちゃんと来たっつーの。アタシのことも少しは信用しろよ」

P「ははは、拓海も仕事が楽しくなってきたか?」

拓海「そんなんじゃねぇよ! だいたいアンタがとってくる仕事がおかしいんだよ!」

P「そういうなよ。ウケもいいんだぞ?」

拓海「まぁ、別に……嫌ってわけじゃねぇけどよ……」

P「なぁんだ、ならいいじゃないか。あはは……」

早苗「……あー、お仕事いってくるね! 拓海ちゃんもほら、いくよ」

拓海「え? お、おいひっぱんなよ……ちっ、いってきます!」

P「いってらっしゃい……」

   ガチャッ   バタン

拓海「んだよ、いきなり……どうしたんだ?」

早苗「いや、拓海ちゃんは気づかなかった? なんか今日のプロデューサーくんおかしいよ」

拓海「おかしい? 割といつも通りっぽかったけどなぁ」

早苗「なんかねぇ、アレよ、あれ」

拓海「アレ?」

早苗「……こう、心神喪失状態ってやつ? そんな目をしてた気がするわ」

拓海「おいおい、何があったらアイツがそんなことになんだよ」

早苗「それはほら、後で調べてみない? 気になるしさ」

拓海「いや、アタシは別に……」

早苗「何かすごい大事なことを隠してる気がするんだよねぇ。相談もしないなんて水臭いなぁ」

拓海「……大事なこと、か。なおさら勝手に探るのはよくねぇんじゃねぇか?」

早苗「そうだけど……うーん、気になるなぁ」

拓海「ほら、ぶつぶつ言ってねぇで仕事いくぞ」

早苗「あらぁ? 水着着るのがたのしいのかしらー?」

拓海「てめっ……!?」

P「桃華のことは……明日の朝みんなに言うかな。仕事のキャンセルは向こうに任せろって言われちゃったし……」

P「……婚約かぁ。まさか桃華が誰よりも早く引退するとはこの海のリハクの目をもってしても見抜けなかったわ!」

P「はーっはっはっはっはっは!」

P「はぁ……」

ちひろ「何やってるんですか、プロデューサーさん?」

P「うおぁっ!? ち、ちひろさん」

ちひろ「おはようございます。楽しそうですね?」

P「いや、笑ってごまかしてるだけですよ……ははは……」

ちひろ「えぇ、知ってますけど」

P「えぇっ!?」

ちひろ「それで、何があったんですか? 話してください」

P「……実は……」

ちひろ「桃華ちゃんが婚約……ですか」

P「はい。それで、活動は無期限休止……実質引退ですね。させてほしいと……」

ちひろ「……急な話ですね」

P「そうですね……もう、どうしたらいいのかわからなくて……」

ちひろ「他の子には話したんですか?」

P「いえ。余計な混乱は招きたくなかったのでとりあえず伏せてますが……」

ちひろ「……どちらにしろ、活動休止ならみんなには伝えないといけませんね」

P「わかってます、わかってますけど……でも……」

ちひろ「はぁ、まったく……私からみんなには伝えておきますよ」

P「ありがとうございます。すみません……」

ちひろ「プロデューサーさん、そんな状態じゃ他の子も不安にさせちゃうだけですよ? ほら、シャキっとしてください!」

P「はい……うん、そうですね。俺がしっかりしなくちゃ……!」

ちひろ「……にしても、急ですね」

P「そうなんです。だから、ちょっとまいっちゃいまして……」

ちひろ「…………」

P「ちひろさん?」

ちひろ「いえ、ちょっと考え事を。それじゃあ私はそちらの関係のフォローにいってきます」

P「ありがとうございます」

ちひろ「……そうそう、桃華ちゃん本人がなんて言ってたかも教えてもらっていいですか?」

P「桃華は……もう会いたくないって言ってたらしいです」

ちひろ「言ってた……らしい?」

P「桃華の家の方が来て……桃華がそう言っていた、と」

ちひろ「直接は会ってないんですね?」

P「はい、嫌われちゃいました、かね……」

ちひろ「……そんなことありませんよ、きっとね。それじゃあ失礼します」

P「あ、はい。お願いします」

P「ちひろさんに慰められて……うん、そうだよな。俺がしっかりしないでどうするんだ」

P「えーっと、この後の予定は……」

琴歌「おはようございます」

P「おぉ、おはよう琴歌」

琴歌「プロデューサー様、ごきげんよう。いいお天気ですね」

P「そうだな……琴歌は番組収録だったよな?」

琴歌「えぇ、とても楽しいです!」

P「よかった、それじゃあ送るからいこうか」

琴歌「え?」

P「……」

琴歌「あの、プロデューサー様。桃華さんがまだ来ていませんが……」


西園寺琴歌(17)

P「桃華は……おやすみだよ」

琴歌「まぁ、そうなんですか? どうしたのでしょう……もしやお風邪でも……」

P「いや、違う」

琴歌「それでは、いったいなぜですか? 今回の収録は前回のお話の続きが聞けると思って楽しみにしていらしたのに……」

P「桃華は……活動休止だ」

琴歌「なるほど、活動休止ですか! ……えぇっ!?」

P「……」

琴歌「ど、どういうことなのですか? なぜ桃華さんがそのような……」

P「ちょっと、事情があるんだ。だから復帰のめども立ってない」

琴歌「で、ですが!」

P「あちらにも連絡はいってるから大丈夫だ……ほら、いこう」

琴歌「……は、はい」

――

司会「というわけで、今回からしばらく桃華ちゃんはお休みなんです!」

琴歌「申し訳ございません……」

司会「琴歌ちゃんも、暗い顔しないで……今回からは別のゲストの方が毎回来てくれますから、お楽しみに」

琴歌「……はい」

司会「それでは、最初のコーナーです。まずは――」


――

P「……おかえり」

琴歌「ありがとうございます。あの……」

P「それじゃあ、送るよ。次は……」

琴歌「あのっ!」

P「どうした?」

琴歌「プロデューサー様、事情とはいったいどのようなことなのですか? 司会の方も、皆様ご存じないようでしたが……」

P「それは……まぁ、ちょっと家庭の事情でな」

琴歌「水臭いです! 私たちは共に頂点を目指す仲間のはずです!」

P「すまん、ちょっと……いうのがはばかられて……」

琴歌「そんな、ですが!」

     prrr   prrr

P「と、すまん……電話だ。ちょっと待っててくれ」

琴歌「あ、プロデューサー様! ……なぜ、このような……」

琴歌「……そうですわ! 桃華さんに電話で事情を聞けばよいのです!」

琴歌「私ったらなぜ気づかなかったのでしょう。えぇと……」

琴歌「……」

琴歌「……?」

琴歌「……おかしいですね。電波が届かないだなんて……?」

琴歌「アンテナが足りていないのかしら? あちらのほうにいけば……」



P「ただいま……ってあれ? 琴歌?」

P「どこいったんだ? おーい! 琴歌ー!」

P「……おかしいな。向こうか?」

P「あ……琴歌!」

琴歌「あ、プロデューサー様。どうなさったのですか?」

P「まったく、どこにいってたんだ。心配したぞ?」

琴歌「いえ、その……電話をしようと思ったのですが繋がらなくて……」

P「電話? 電波だったらちゃんと入ってるだろう」

琴歌「いえ、桃華さんの電話にだけつながらないのです。ですからどうにかつながらないかしらと……」

P「……琴歌」

琴歌「なんでしょうか?」

P「その、電話は……たぶん、もうつながらないんだ。桃華のほうから切ってあるんだと思う」

琴歌「でも、業界人は連絡用の携帯は常に切らさないようにするべしとおっしゃられたではありませんか」

P「そうなんだけどな、ちょっと理由があるんだよ」

琴歌「では、その理由を教えてください!」

P「……わかった。あまり外ではいうんじゃないぞ? 車で移動しながら話すからいこう」

琴歌「かしこまりました。参りましょう」

――――

――

琴歌「桃華さんが、婚約……」

P「そう、なるのかな。だからもう事務所にも来ない」

琴歌「そんな! なぜですか?」

P「婚約してる、12歳の女の子。アイドルをするにはひきずるものが大きすぎるんだ」

琴歌「ですが!」

P「本人が!」

琴歌「っ!?」

P「……本人が、俺に会いたくないとまで言ってるんだ。だから……諦めるしか、ないじゃないか……」

琴歌「プロデューサー様……」

P「……ごめん、驚かせたな。そういう、わけなんだよ」

琴歌「……プロデューサー様」

P「どうした?」

琴歌「プロデューサー様は、それで後悔なされないのですか?」

P「……無理強いはできないよ。桃華は櫻井家の一人娘なんだから」

琴歌「でも桃華さんは、プロデューサー様のことを……」

P「琴歌」

琴歌「……」

P「……ついたぞ。お疲れ様」

琴歌「……えぇ、ありがとうございました。それではごきげんよう」

P「また明日。おやすみ」

   ブロロロロ…


琴歌「……あら?」

琴歌「電話……はい、もしもし?」ピッ

P「……桃華……」

P「………俺は……」

P「俺は……桃華を……」


――

―――――

琴歌「プロデューサー様! 社交パーティーがあるのですが……」

P「パーティー?」

琴歌「えぇ。そうなんです……私もまだまだデビューしたてとはいえアイドルとして活動を始めていますね?」

P「そうだな。まだまだひよっこだけど立派なアイドルだよ」

琴歌「そうしたら、お父様が……お披露目の舞台を作るからどうだ、と……」

P「おぉ、そうしたら知名度も抜群にあがるじゃないか!」

琴歌「えぇ、ですがその……不安でして……」

P「不安?」

琴歌「1人では、失敗してしまいそうなんです。ついてきていただけないでしょうか……?」

P「……俺が、パーティーの場にか。場違いじゃないかな?」

琴歌「大丈夫です! スタイリストさんに任せて服装も整えてもらいましょう!」

P「まぁ……うん。そうだな、俺はプロデューサーなんだから琴歌のライブを見てやらないわけにはいかないか!」

琴歌「ええ! ぜひ!」

P「……どうかな?」

琴歌「よくお似合いです。素敵ですよ」

P「馬子にも衣裳ってやつかな……うん、琴歌もばっちり決まってるぞ」

琴歌「ありがとうございます。それでは、いってまいります!」

P「あぁ、がんばれ!」



琴歌「えぇ、皆様……私、西園寺琴歌はアイドルとしての活動を始めました。その理由は――」


P(うん、スピーチも順調かな……舞台袖にいるよりも、前から見ていたほうがよさそうだ)

P「立食パーティーみたいなものか……こういうの、漫画の中でしか見たことなかったけどなぁ」

P「適当に何か食べてみようかな。うわ、なんだこれ……? とりあえず高そうってことしかわからんな……」

P「……うわぁ、すごいな。目移りする」

P「琴歌も、立派に……あれ?」


桃華「……はぁ」


P(……可愛い子だな。どうしたんだろ?)

桃華「……」

P「あの、すみません」

桃華「あら? ……お久しぶりですわ」

P「へ? 初対面だと思いますけれど」

桃華「え?」

P「俺は一度見た可愛い子の名前も、顔も絶対に忘れないから。こんな可愛い子を見かけたことがあったら間違いなく覚えてるよ」

桃華「……妙な方ですわね。このようなところでナンパかしら?」

P「ナンパ、というか……うぅん、まぁ似たようなものかもしれないけど……」

桃華「それでは、いったいなんなのかしら? アナタ、わたくしを見る目つきが普通の人のソレとは違ってよ……」

P「俺はプロデューサーをしているんだ。あそこの、前のステージで話をしている西園寺琴歌は俺がプロデュースしている」

桃華「プロデュース? アイドル……ふぅん、そうですの」

P「あぁ。だから思わず声をね……可愛い子だな、って思ったから」

桃華「うふふ、アナタはわたくしが誰か知りませんのね」

P「知らないけど、可愛い女の子を見てスカウトしないだなんて俺の信念に背くからね」

桃華「面白いお方……わたくしを、アイドルにしたいんですの?」

P「あぁ、ぜひ!」

桃華「それは面白そうですわね。でもアナタのプロデューサーとしての実力はいかほどなのかしら?」

P「まだ新人だよ。実績はこれから作っていく」

桃華「……うふ。アナタ、わたくしがこの場にいる理由がおわかりかしら?」

P「……運命かな? 俺がスカウトするできるように」

桃華「そう……気に入りましたわ!」

P「え?」

桃華「この櫻井桃華。アナタの申し出を謹んでお受けいたしますわ!」

P「おぉ、やった! ……さくらい?」

桃華「えぇ、櫻井です」

P「……有名財閥の?」

桃華「あら、ご存知でしたの?」

P「…………えぇっ!?」

桃華「うふふ、それではよろしくお願いいたしますわ。プロデューサー?」

P「いや、大丈夫なのかな? ほら、家の許可を……」

桃華「問題ありません! わたくしがしたいことは、わたくしが決めますの!」

P「……うん。じゃあ詳しい話はまたさせてもらうことにしようか」

桃華「はい♪」

P(……驚いたな。この子……そんなすごい子なのか……)

P(……でも可愛いなぁ。うん、仕方ないよな。スカウトを受けてもらえたんだし問題ないはず!)

琴歌「それでは1曲、僭越ながら歌わせていただきます!」



桃華「まさか、社交パーティーでこんな素敵な出会いがあるだなんて。とってもいい夜ですわね!」

P「は、ははは……うん、そうだな……うん!」

桃華「どうなさいましたの?」

P「もちろん、これから実家の方々にお話をしないといけないけど。それが通ったら……」

桃華「通ったら、ではありませんわ。わたくしの辞書に不可能の文字はありませんの!」

P「ははは……うん。それなら、多少無茶をしてみる覚悟はあるかな?」

桃華「無茶、ですの?」

P「1ヶ月後。イベントがあるんだ……ゲスト枠が1つ余ってる」

桃華「……まさか、アナタわたくしにそれに出ろとおっしゃるのですか?」

P「うん。最低でも出場資格のあるFランクにだったらなれると思ってるよ」

桃華「うふふ……本当に面白いお方! かしこまりましたわ」

P「桃華ちゃん……いや、桃華って呼び捨てさせてもらう」

桃華「あら、ダイタンですわね?」

P「アイドル候補生として平等に扱うからね。いいかい?」

桃華「えぇ、結構ですわ!」

P「じゃあ、お父様に会わせてくれるかな? 娘さんを任せてくれっていわなくちゃ」

桃華「……ウフ。本当に面白いお方……でも……」

P「どうしたんだ?」

桃華「ねぇ、あの琴歌さんのように……わたくしも踊れるようになりますか?」

P「なれるよ、俺が保証する。人を見る目だけはあるんだ」

桃華「素敵ですわね。それでは……」



琴歌「ありがとうございます! それでは、引き続きパーティをお楽しみください!」

    パチパチパチパチ……

P「――というわけで、新しく事務所に所属することになりました櫻井桃華ちゃんです」

桃華「ごきげんよう。よろしくお願いしますわ♪」

ちひろ「またですか……プロデューサーさんはなんでこう……」

P「いやぁ、可愛い子には旅をさせよっていうじゃありませんか」

ちひろ「無理やり旅に引きずり出してどうするんですかあなたって人は! もう……」

桃華「わたくしは、わたくし自身の意志でここに来ましたの! おじい様も賛成してくださりましたわ」

ちひろ「あぁ、はい。……桃華ちゃん。あなたはもうただの桃華ちゃんとして活動することになる、いいんですね?」

桃華「えぇ、後悔はありませんわ! お仕事の内容に家庭の事情は持ち込みません!」

ちひろ「お嬢様って、なんでみんなそう……ふぅ。いいでしょう! それではまずはアイドルランクを最低限あげて、イベントに向けてのレッスンも並行して行います!」

桃華「はい!」

ちひろ「つらいこともたくさんあると思います。それでも、がんばれますか?」

桃華「平気ですわ! わたくし自身のためにも……できないことなどありませんの!」

P「そういうことですよ!」

ちひろ(なんでプロデューサーさんが誇らしげなんだか……まったく、ロリコンのケがあるのかしら)

P「桃華、ステップ乱れてるぞ!」

桃華「は、はいっ……」グラッ

P「っと、大丈夫か? ……足、ひねってないか?」

桃華「え、えぇ。平気ですわ……でも、レッスンって……激しいんですのね……」

P「まぁ、結構無茶なスケジュールだから……」

桃華「うふふっ、説得の時にあんなに熱くなってくださるだなんて驚きましたわ」

P「頭ごなしに否定されたら嫌じゃないか。だからつい……」

桃華「でも、なかなか無茶な条件ですわね……イベント終了までにEランクアイドルだなんて……」

P「うちのメインは琴歌だから、バーターとしての露出をすることはできる。でもキャラがかぶってそれはおいしくない……」

桃華「ですから、イベント期間中にランクを上げるんですわね?」

P「あぁ。かなりキツいメニューはそのためだ。……ごめんな」

桃華「1ヶ月でなるには、多少の無茶が必要だということは理解していますわ。ですからどうぞ遠慮なく……」

P「……わかった。それじゃあまた最初からだ。いち、に……」



ちひろ(……ドリンク、ここに置いときましょうか。やれやれ、本当に無茶ばかりするんですから、プロデューサーさんってば……)

桃華「……プロデューサー。いよいよですわね」

P「あぁ、クリスマスロード……衣装も似合ってるよ」

桃華「うふふ。どこを見ていらして?」

P「桃華のことだ」

桃華「……あら。ダイタンですわ」

P「無理はしないように。でも、これで決まるんだから悔いもないようにな」

桃華「えぇ。お任せください!」

P「いってらっしゃい、桃華!」

桃華「えぇ、いってまいりますわ!」

    ワァァァァァァァァ……


P「お疲れ様。すごくがんばったな」

桃華「えぇ、わたくしの……この1ヶ月のすべてを出せたと思いますわ」

P「よかったよ……すごく、きれいだった」

桃華「……プロデューサー、わたくしは」

P「桃華……?」

桃華「わたくし……最初は、暇つぶしのつもりでしたの。妙な方に声をかけられて、普通の女の子として扱われて……」

P「は、ははは……うん。我ながらスカウトの時のセリフはくさかったかな」

桃華「えぇ。でもそのあとの……お父様の説得の時にムキになってくってかかるアナタをみて、思わず笑ってしまいました」

P「だってそれは、その……アイドル自体をバカにされてさ……」

桃華「それで、無茶な条件をつけられて……」

P「う……」

桃華「厳しいレッスンをして……」

P「嫌、だったか?」

桃華「いえ。とても……楽しかったですわ」

P「……桃華」

桃華「プロデューサー。わたくしは、この1ヶ月とても……とっても楽しかったんですの!」

P「そうか、よかった……」

桃華「だから……だから、わたくし、辞めたくありません……だって、今日あんなにたくさんの人がわたくしのことを、わたくしを純粋に応援してくださったんですもの!」

P「大丈夫だよ……明日になれば、結果がわかる。きっと大丈夫さ」

桃華「……そう、ですわね。ねぇ、プロデューサー……いえ、Pちゃま?」

P「ぴ、Pちゃま?」

桃華「うふっ、わたくし、おじい様……おじいちゃまのことが大好きなんですの。ですから、あなたのこともPちゃまと呼ばせていただきたいのですわ♪」

P「なんだかむずがゆいなぁ……」

桃華「うふふ……ねぇ、聖なる夜にまでお仕事だなんてアナタもついてないですわね? ですから、家に帰るまでは……こうして、今夜は隣にいてさしあげますわ」

P「……うん。ありがとう」

桃華「どういたしまして」

P(……震えてる。そうだよな、今日の結果次第じゃ……もうアイドルはやめないといけないんだから……)

桃華「ねぇ、Pちゃま」

P「なんだ?」

桃華「……わたくし、認められたら……そのまま、きっとトップまでかけあがってみせますわ」

P「うん、なれるよ。きっと……だから、ここでつまづいたりしないよな」

桃華「えぇ! だってわたくしは……あんなに、楽しいこと、やめたくありませんもの!」

P「うん。大丈夫だ……俺も、桃華のプロデューサーとしてがんばるからさ」

桃華「えぇ……約束ですわ。わたくしは、アナタのために。アナタは、わたくしのために」

P「……もう、送るよ」

桃華「えぇ、明日……すべてがわかりますのね」

P「おやすみ、桃華」

桃華「おやすみなさいまし、プロデューサー」

ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん!」

P「ちひろさん、おはようございます。どうしたんですか?」

ちひろ「グッドニュースですよ! ほら、アイドルランクが……」

P「お……おおっ! 桃華のランクが!」

ちひろ「おめでとうございます! お祝いしないといけませんね!」

P「そうですね、桃華のやつまだ来ないのかな……」

桃華「……もう、来ていますの」

P「お、おぉ桃華! みたか、この結果! やった、やったぞ! やったんだ! わーい!」

桃華「きゃっ!? も、もう、Pちゃまったらダイタンすぎますわ……」

ちひろ「ちょ、ちょっとプロデューサーさん何やってるんですか!」

P「はっ、つい……」

ちひろ「ついじゃありません! セクハラですよ、まったく……」

桃華「わたくしは……嫌ではありませんが……」

P「も、桃華……!」

ちひろ「……はぁ、やれやれ……」

P「桃華、これで思いっきりアイドルとしてやっていけるな!」

桃華「えぇ、これからもずっと一緒ですわよ♪」

琴歌「おはようございま……あら? 桃華さん、プロデューサー様。いったい何を……」

P「お、おぉっ! 琴歌じゃないかー、な、なんでもないぞー」

桃華「……うふっ♪ そうですわね」

琴歌「そうですか? 桃華さんのためにプロデューサー様もいろいろとなさっていたようなので、何かあったのかと……」

P「あ、うん! そうそう、桃華がEランクに昇格したんだよ!」

琴歌「まぁ、めでたいですね! それで喜びを共有していらしたんですね?」

P「そういうことだ! いやぁ、事務所の先も明るいな!」

琴歌「そうですね! 桃華さん、おめでとうございます!」

桃華「ありがとうございます、琴歌さん……わたくし、負けませんわよ?」

琴歌「……えっと、そうですね? 私も、なんのことなのかはわかりませんが負けません!」

ちひろ(……琴歌ちゃんもわかってないけど、プロデューサーさんが一番にぶそうっていうのがなんとも……まったく、うちの事務所は)

ちひろ(これから、忙しくなりそうかな?)

――――

――


P「……そうだ、俺は桃華と約束したんだ」

P「あれから……もう、1年たったんだっけ。いろいろあったよな……」

P「拓海やニューウェーブの3人をスカウトしたり、イベントもいろいろこなして……」

P「アメリカでは琴歌があちこちいこうとするのに慌てたりもしたっけ。懐かしいなぁ」

P「……桃華との思い出も、作って……」

P「……やっぱり、一度確認をしなきゃ」

P「桃華の家は……確か……」

P「ここだ……えっと……」

黒服「……」ヌッ

P「う、わっ!?」

黒服「……お嬢様のプロデューサーの方ですか」

P「は、はい。やっぱり納得がいかなくて……」

黒服「そうですか」

P「……話を。桃華と話をさせてください」

黒服「お嬢様は会いたくないとおっしゃっています。おひきとりを」

P「でも!」

黒服「お引き取り願います」

P「……くっ、いっそ強行突破を……」

黒服「中にも警備はいます。逮捕されて困るのはあなたですよ」

P「……」

黒服「見なかったことにします。ですので、どうか」

P「……また、来ます」

黒服「……」

P(……桃華に、直接話がしたいのに……)

P(携帯も、電源が入ってないからつながらない……)

P(……いったい、どうして急に婚約者なんて話が出たんだ?)

P(だって、普段通りに仕事をこなして。普段通りに帰って……その次の日に婚約が決定したから引退?)

P(話もしない、いや……できない。おかしい……気がする。桃華……)

桃華「……Pちゃま?」

婚約者「どうしたんですか? 桃華さん」

桃華「あ、いえ……申し訳ございません。少し、眠くなってきてしまったようですの」

婚約者「あぁ、それはいけない! 早く寝ないと……ひとりの体じゃないんですから」

桃華「ええ……そうですわね」

婚約者「おやすみなさい、桃華さん」

桃華「おやすみなさいまし……」


桃華「……はぁ」

桃華「話が急すぎますわ。どうしてアイドル事務所までやめないといけませんの……?」

桃華「婚約だなんて話が急すぎますの!」

桃華「だいたい、わたくしにだって好きな人を選ぶ権利だってありますわ」

桃華「……そもそも、あの方はどうも苦手なのに」

桃華「1人の体じゃない、だなんて。少なくともわたくしの体はあなたのものじゃありませんわ!」

桃華「……」

桃華「おじいちゃま……」

桃華「おじいちゃまがいれば、きっときちんと言ってくださったのに……」

桃華「急に倒れるなんて、まったく……不養生にもほどがありますわ……」

桃華「……それに携帯も取り上げられてしまいましたし」

桃華「お仕事は大丈夫なのかしら? 琴歌さんの一緒の収録があったはずですのに」

桃華「…………」

桃華「……いっしょにいると約束しましたのに。Pちゃまと話がしたいですわ」

桃華「はぁ……もう、今日のところは寝ましょうか……」



婚約者「……」

黒服「……」

婚約者「どうしたんだ? 入るときはノックをしたまえよ」

黒服「いえ、桃華様のプロデューサーが……来ましたので報告を……」

婚約者「そうか……ふぅん。追い帰したのかい?」

黒服「はい」

婚約者「そう……それだけなら下がっていいよ」

黒服「……かしこまりました」

――――

――


P「……おはようございます」

亜子「おっ、おそかったねプロデューサーちゃん! おは……おぉ?」

P「なんだ、みんな早いじゃないか……感心だなぁ」

さくら「プロデューサーさんがおそかったんですよぉ!」

P「え? おかしいなぁ……」

亜子「いやいや、おかしいのはプロデューサーちゃんやーんっ!」

P「……」

亜子「……あ、あれ? ノーリアクションはきついんだけどなぁ」

P「いや、ちょっとね。ごめんごめん! さぁ仕事だ!」

泉「……ねぇ亜子」

亜子「どうしたん?」

泉「やっぱり昨日からプロデューサー、変よ。何かあったんじゃない?」

亜子「んー……」


P「いやぁ、元気元気! ちょうのどかだな今日は!」

さくら「プロデューサーさぁん! 今日は曇りですよぉ!」

P「え? いや、ほら……これぐらいのほうが過ごしやすくてのどかじゃないか?」

さくら「なるほどぉ! そういう考え方もあるんですねぇ!」

P「そういうことだ! はははは!」



亜子「……うん、おかしいかな」

泉「ね?」

泉「やっぱり何か……あれ?」

亜子「ん、メールやん……えーっと」


さくら「プロデューサーさぁん! お仕事のためにも元気もりもりでいかなきゃだめですよぉ!」

P「何言ってるんだ、俺は元気だぞ! 超元気! もう、バリバリよ!」

さくら「でも、なんだかおかしいですよプロデューサーさぁん!」

P「どこが変だっていうんだ?」

さくら「なんだか……全体的にでぇす!」

P「そうか、全体的にか……全体的にか?」

さくら「えっと、うまくいえないけどそんな感じなんですよぉ」

P「……全体的に変か……そうか……」

亜子「……さくらー、いくよ?」

さくら「え? ちょっとまってよアコちゃぁん!」

泉「プロデューサー、私たちは自分でいけますから」

P「え? いや、送る……」

さくら「そうだよぉ、いつも電車とかなんだから送ってもらってもいいと思うけど……」

亜子「さくらー、ほら。飴あげるから」

さくら「もーっ、ごまかさないでよぉ!」

泉「そういうわけですから。それでは」

P「いや……3人とも……?」

亜子「そんじゃまたー。まぁ平気やって!」

P「……」

P「……これは、心配されてるのかな」

P「いや、嫌われたわけじゃ……ない、よな……?」

P「……うん。そうだよな、担当アイドルに心配かけてちゃいけないもんな!」

P「3人ともおせっかいだなぁ、送るぐらい負担でもなんでもないのに。はっはっは……」

P「……はぁ。うん、事務仕事終わらせるか……」


P「……あれ? ちひろさんどこいったんだ?」

――――

――

P「よし。こんなもんか……」

P「……しかし、今日はちひろさんは休みなのかな? 珍しいなぁ」

P「いっそスカウトに街に繰り出すか!」スクッ

P「いや、そんな気分転換みたいに気軽にスカウトするのはよくないな」ストン

P「だけど今日はオフの子が多いしなぁ」スクッ

P「そういう日こそ仕事は減らすべきなのかな」ストン

P「いや……」スクッ

P「でも……・」ストン

P「……うーん」

早苗「プロデューサーくん、椅子に座ったり立ったり何やってるの?」

P「え? あれ、早苗さんいつの間に来たんですか?」

早苗「いや、割とさっきから……なんか仕事してたみたいだからお茶入れてたの。どうぞ」

P「ありがとうございます」

P「……ふぅ」

早苗「それで、どうしたのかな?」

P「どうって、何がですか?」

早苗「なんだかねぇ、悩んでるなーっていうのはお姉さんにはお見通しなのよ」

P「あぁ、えっと……それは……」

早苗「……プロデューサーくんってさぁ、ロリコンだったりする?」

P「ブフゥッ!?」

早苗「やぁん、もう……何するのよ」

P「ゲホッ、すみませ……な、なんですか急に!」

早苗「いやぁ。だってほら……悩んでる理由って桃華ちゃんよね?」

P「……ちひろさんから聞いたんですか?」

早苗「ま、そんなとこかな」

P「じゃあなんで理由を聞いたりしたんですか……」

早苗「うーん……あのさ、あたしたちは桃華ちゃんが辞めるってことは聞いたけど詳しくはまだ聞いてないんだよね」

P「そうなんですか……まぁ、桃華にもいろいろ事情があってですね……」

早苗「ねぇ、プロデューサーくんは納得してる?」

P「……」

早苗「してないよねぇ。だって同僚のあたしがなんだか納得いかないんだもん」

P「だったら、どうするんですか? 会えませんでしたよ。会いたくないって、言われてますから」

早苗「え? まさか直接乗り込もうとしたの?」

P「……そう、ですけど」

早苗「……子供じゃないんだから、まったく」

P「居ても立っても居られないときってあるじゃないですか」

早苗「……んー、どうしたもんかなぁ」

P「なにがですか?」

早苗「事情を話す気はない? お姉さんが力になってあげるよ?」

P「いや、桃華のことは桃華の家の問題で……外から力になれるような要素は……」

早苗「あるんだなぁ、これが……」

P「……まさか」

早苗「あるなら。桃華ちゃんの力になれるとしたら……あたし達を頼る気はある?」

P「…………」

早苗「……」

P「……俺は、桃華の力になりたいです。でも、あいつが俺に会いたくないって……」

早苗「それは本人から聞いたの?」

P「いえ。でも桃華の家の……SPの人ですね。黒服を着た人が来てもう会いたくないって言ってたって……」

早苗「ふぅん……で、本人は?」

P「いや、だから……」

早苗「だから? ねぇ、納得してないから直接乗り込もうなんて思ったんじゃないのかな?」

P「……」

早苗「正直に言っていいんだよ。妙だと思わない?」

P「……思いますよ。おかしいなって、思ってます。でも……」

早苗「そう。じゃあさ……」

P「……?」

早苗「桃華ちゃんを取り戻したいとか、思わない?」

P「え?」

早苗「実はねー、調べはついてるんだよね」

P「え? ……いや、え?」

早苗「婚約ねぇ。とんでもないわ……中学生に手を出したら犯罪よ、犯罪」

P「な、なんで知ってるんですか?」

早苗「ちょーっとね♪」

P「いやいや! でもっ」

早苗「プロデューサーくん。相手がどんな人か知ってる?」

P「知りません、けど……」

早苗「……最近急成長してる企業の社長。いい顔してるけど裏ではなにやってるんだかわかんない」

P「……ずいぶん、年上なんですね」

早苗「そうそう。それで……どう? 政略結婚に使われちゃうのは嫌じゃない?」

P「でも、櫻井の家の問題に首を突っ込むべきじゃないんじゃないでしょうか」

早苗「なぁに、追い帰されたのがそんなにダメージ?」

P「いえ。我ながら反省してるんですよ……そりゃあ、帰れって言われるよなぁって」

早苗「変な時に遠慮するねぇ。悩める若人ってやつかな……はい」

P「なんですか、これ?」

早苗「……とりあえず、その社長がクロな証拠かな?」

P「はぁっ!?」

早苗「いやぁ、うん……脱税でしょ、インサイダーに、その他もろもろ……」

P「な、なんで早苗さんがそんなもの持ってるんですか!」

早苗「有力スジからの情報ってヤツ? さぁ、どうするのかな」

P「そんな奴に桃華を渡せるわけないでしょう!」

早苗「ほほーう」

P「あ、いや……」

早苗「じゃあ、取り戻しにいこうか!」

P「……でも、そういう相手だったら危ないですよね? 早苗さんはついてこないほうが……」

早苗「プロデューサーくんが1人でどうこうできると思えないけどなぁー」

P「いえ。それでも話せばわかるはずですよ」

早苗「……甘いなぁ。もう」

P「証拠もあるんですよね? だから大丈夫ですよ、ね」

早苗「んー。でもそれでっち上げなんだよね」

P「えっ」

早苗「いや、確かにやってるはずなんだけどねぇ……決定的なのがでないからわかりやすく作ったけど、それ偽装証拠よ」

P「何やってるんですか!」

早苗「てへっ」

P「てへっ、じゃなくて!」

早苗「もう、わかったから……ねぇ」

P「なんですか」

早苗「巻き込まないようにっていう優しさは嬉しいけど、おいてけぼりはつらいよ?」

P「……」

早苗「頼ってよ、プロデューサーくんはあたし達のこと助けてくれたじゃない? おかえししたいんだから」

P「早苗さん……」

早苗「ん?」

P「桃華と直接話がしたいです。力を貸してもらってもいいですか」

早苗「よし。まかせなさい♪」

早苗「それじゃあ、ちょっと準備しなきゃね」

P「準備?」

早苗「はーい、こっち来てー」

P「え? なんですかこれちょっと……」

早苗「うん、その顔で桃華ちゃんに会ったら泣いちゃうからねー。いったんおやすみなさい」

P「いや、ぜんぜんへい、き……」

P「……ぐぅ……」

早苗「……おぉ、本当に寝ちゃった。すごいねこれ」

晶葉「……なんというか、まぁ。ずいぶんと……」

早苗「ありがと、晶葉ちゃん♪ 本番は明朝から始めます、それまで待機!」

晶葉「ノリノリだな」

早苗「えーっ、なんかカッコいいじゃない? ……あたしだって、なんか納得いかないって思ってたんだからさ」

晶葉「まぁ、装備は整えておかなくちゃいけないな……任せてくれ」


池袋晶葉(14)

桃華「……」

婚約者「どうかな? ウチのシェフもなかなか腕がいいんですよ」

桃華「えぇ、確かに……素晴らしいですわ」

婚約者「そうでしょう! これからはもっと仲良くなりたいのですよ」

桃華「そう、ですわね」

婚約者「グループにとっても非常にプラスですし、僕個人も桃華さんのことを応援していますから」

桃華「それなのに、アイドルをやめろとはどういうつもりなのかしら?」

婚約者「それは、ほら。アイドルという仕事はいろいろと……ね」

桃華「わたくしを信用いただけないということかしら」

婚約者「いやいやとんでもない! でも、婚約者のいるアイドルは流石に厳しいでしょう?」

桃華「……そうかもしれません。しかし……」

婚約者「お望みなら、ほら……敏腕プロデューサーを雇いましょう。新しく事務所を立ち上げるのもいいですね」

桃華「……」

婚約者「平気ですよ。少し話題になる程度でむしろプラスに働きます」

桃華「……考えさせてくださいまし」

婚約者「そうですか? ……体調が悪そうですが」

桃華「申し訳ございません……今日も、早めに眠らせていただきますわ……」

婚約者「えぇ、そうですね……おやすみなさい」

桃華「……おやすみなさいまし」



桃華「……はぁ。事務所のみんなに会いたいですわ……」

桃華「覚悟はしていたはずなのに……もう少し、アイドルをしていたかったのかしら……」

桃華「……それとも、Pちゃまに……」

婚約者「フ、フフフ……んー、いいねぇ……」


    桃華『……さびしくなんてありませんわ。えぇ、だってわたくしは櫻井桃華ですもの……』


婚約者「可愛いなぁ。この子がもう僕のものだなんて……あくまで紳士的にいかなきゃいけないけどね」


    桃華『…………さびしく、なんか……』


婚約者「手を出すタイミングも考え物だよなぁ……でも、できれば無垢なうちに染めておきたいしなぁ……」


    桃華『……いけませんわね、こんな調子じゃ。もう眠ってしまいましょう』


婚約者「……まぁ、そのうちため込んだものを発散している姿なんかも見させてもうわけだけどね」

婚約者「あぁ、楽しみだなぁ……フフフ……」

――――

――


    桃華『……すぅ……すぅ……』


婚約者「あぁ、寝顔もいとおしいね……フフフ……ん?」

黒服「失礼します。その……」

婚約者「どうしたんだい?」

黒服「桃華様のプロデューサーが……」

婚約者「また来たのか? おいかえせばいいじゃないか」

黒服「いえ……1人ではないんです」

婚約者「なに?」

新・保守時間目安表(休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安(平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

ごめんね、おはよう

婚約者「それはどういう……」


                ワアアァァァァ……

婚約者「……!?」

黒服「その、何人かのアイドルたちと一緒に乗り込もうと……」

婚約者「警備会社へ通報しろ! 警察もだ!」

黒服「電話がつながらないんです!」

婚約者「なにぃ!?」

晶葉「私をキテレツとかドラえもんか何かと勘違いしてるんじゃないか、もう」

晶葉「電話や電波を入り込めないようなフィールドを展開するなんてSFじゃないか」

晶葉「そんなもの、普通の人に頼んだ場合はありえないと一蹴されておしまいだ」

晶葉「……まぁ、この天才池袋晶葉の手にかかれば可能だがね」

晶葉「豪邸だったおかげであたりに影響は出にくくできたし、問題なしだ」

晶葉「……ね、ねむいなぁ……」

レディース「いいかお前ら! 拓海さんのためにもサツをひきつけるんだ!」

隊員「おーっ!」

レディース「あんまりうるさくしすぎんなよ! 拓海さんにおこられっぞ!」

隊員「おーっ!」

レディース「でもちゃんとひきつけるんだ!」

隊員「おー!」

レディース「……うん、いくぞ!」

隊員「おーっ!」

レディース「おぉ!」

婚約者「……なら、直接取り押さえろ!」

黒服「ですが……」

婚約者「警備のものたちは何をしているんだ? さっさとしろ!」

黒服「で、できないのです」

婚約者「何?」

黒服「その、アイドルたちがめっぽう強く……」

婚約者「そんな弱音は聞きたくない……さっさとどうにかしろ!」

黒服「は、はいっ!」


婚約者「……ちっ。まぁいい、しょせん女子供なんだからSPの連中にかなうはずがない……」

婚約者「カメラで確認するか、廊下の……」

P「……こっちか?」

泉「えぇ、おそらく間違いないわ。あらかじめ調べた見取り図でも……こっちが寝室だと思うから」

亜子「あ、このツボとか高級そうやなぁ……持って帰ったら怒られるかな?」

さくら「だめだよアコちゃぁん! 今回の目的のためにはすみやかにスマートにって言われたよぉ!」

亜子「あー、うん。わかっとるわかっとる……」

早苗「うん、そうそう……それにしても……」


SP「うおぉぉぉぉぉ!」

早苗「はぁ……住居侵入、暴行、傷害……もし訴えられたら負けるねコレ」

SP「うおおぁっ!?」

早苗「甘いよ、キミ。そのままおとなしくしててくれる?」

SP1「ぐ、こ、この!」

早苗「ふっ!」グルンッ

    ダァン!

SP1「がはっ……!」

SP2「ま、まだだ! 一斉におさえこめ!」

早苗「だから甘いって……のぉっ!」

SP2「かっ……!?」

早苗「ふぅ……まだやるの?」

SP3「な、なんなんだ……いったい……」

早苗「なにって……そうね。あたしは柔道六段、空手五段」

早苗「アイドル。片桐早苗よ?」

SP3「こ、こんなアイドルがいてたまるか!」

早苗「だからここにいるじゃない、んもう」

SP「ふ、ふざけるな! こんな……」

のあ「こんな、何かしら」

SP「……か、からだがうごかない……!?」

のあ「……いい子ね。ひれ伏しなさい」

   ベタァン!

SP「…………!」

のあ「道は開けたわ。こっちは私に任せていきなさい」

P「はい!」

泉(……あれってどういう理屈なのかしら……?)



高峯のあ(24)

諸星きらり(17)


きらり「きらりぃぃぃぃいいん、びぃぃいいいいいいいいいむ!」カッ!

SP「な、なんだこのひかり、は……」

きらり「にゅふふふ……きらりんビームは、ハートをずっきゅーんってしちゃうんだにぃ☆」

SP「あ……あぁ……」

きらり「ハピハピしてうー?」

SP「は……ハピハピ! はははは! なんだか楽しくなってきたぞ! あはははははは!」

きらり「ばっちし☆」

SP「いぇーい! ばっちし!」


P「外ではきらりたちがやってくれてるみたいだな。急ごう」

さくら「はぁい!」

早苗「あーもう、しつこいなぁ! はいはい、わかった!」

婚約者「……な、なんだこれは……」


   あやめ『切り捨て御免! ……いえ、みねうちですが』


    有香『押忍! ……お願いします。降伏してください……ケガはさせたくありません』


   巴『ウチが直接相手したるわ! 来るならこんかい! タマとったらぁ!』


   茜『ボンバーーーーーーッ!!! トラーーーーイッ!!!!』



婚約者「こいつら、本当にアイドルなのか……!?」


婚約者「……こ、こうなったら……!」


浜口あやめ(15)
中野有香(18)
村上巴(13)
日野茜(17)

P「ここか!」

  ガチャッ

婚約者「……ようこそ、プロデューサーさん?」

P「あんたは……」

婚約者「桃華さんとと婚約したものですよ。まったく……」

P「……桃華と話をさせてくれ」

婚約者「話? いまさらなんだというんですか」

P「きちんと話す時間もなかったから、お願いだ」

婚約者「そのためにこんな騒ぎまで起こして……信じられませんね」

P「そうだな。でも……大事なアイドルを渡すわけにはいかない相手だっていうのを言ってやらないといけないんだ」

婚約者「……何?」

P「これを見ろ!」

婚約者「なっ……!? こ、これは……」

泉「脱税の証拠よ」

婚約者「ば、バカな! なぜこんな……!」

泉「私がハッキングしたの」

亜子「で、アタシが金の流れがおかしいところを見つけて……」

さくら「わたしが応援しましたぁ!」

P「……そういうことだ!」

婚約者「……それがなんだというんです?」

P「なに?」

婚約者「これを、どうするつもりですか?」

P「婚約を解消しろ、とは言わないが……この事実を他の人は知ってるのか? あからさまな違法行為はご法度だろう?」

婚約者「甘いですね、アナタ」

P「警察に通報されると痛いのはどっちも同じだ。だからこんなに思いっきり正面から乗り込めた」

婚約者「……まさか、対等の状態に持ち込んだとは思ってませんよねぇ?」

泉「……どういうこと?」

婚約者「言っておきますが、そんなもの。意味のない狂言として扱うのなんて簡単なんですよ!」

亜子「な、なんやて!?」

婚約者「金もコネもある! たかだかアイドル事務所が……ずいぶんな真似をしてくれたじゃありませんか!」

P「……それが答えか?」

婚約者「えぇ。捕まるのはあなたたちですよ!」

P「……」ピッ

婚約者「……え?」

P「晶葉、今のはちゃんと流れたか?」

 晶葉『あぁ、ばっちりだ。リアルタイムで無編集さ』

婚約者「な……なんだそれは!」

P「なんだ、って見ての通り無線機だよ。自白は桃華の実家のほうへとつなげてある!」

婚約者「なっ……なぁっ……!?」

P「直接言ったんだから、いまさら訂正もできないな。観念しろ!」

婚約者「い、いや……ま、まだ、まだ……!」

P「……」

婚約者「こ、こうなったら……」

P「どこへ行く気だ! 待て!」




P「はぁっ……はぁ……!」

婚約者「フフ、さぁ……」

P「お、お前……」

桃華「ん……ぅ……?」

婚約者「……どうしますか、プロデューサーさん? 桃華さんがどうなってもいいんですか?」

P「……」

桃華「……あ、れ? Pちゃま……?」

婚約者「まだ、まだやり直せるんですよ……あなたたちを全員、通報して、むちゃくちゃにして……!」

P「……桃華のことが好きなんじゃなかったのか?」

婚約者「えぇ、好きですよ? 可愛くて、アイドルだった小さい女の子! 興奮するじゃないですか」

桃華「え? あ、あれ? なんですの、これ……!」

P「……」

婚約者「……もう少し心を開いてもらってからのつもりでしたけどね……まったく……!」

P「……」

桃華「な、なんなんですの? は、はなしてくださいまし!」

婚約者「そうはいかない……フ、フフフ……」

P「……桃華を放せ」

婚約者「いいえ、この子はもう僕のものだ!」

P「違う。桃華は……桃華は俺のアイドルだ!」

桃華「Pちゃま……」

婚約者「ははは……だからなんだっていうんですか!」

P「本当に小さい子が好きだったらなぁ……その子のために無茶の1つや2つ、こなすもんなんだよ」

婚約者「……そ、それ以上近づくと桃華さんがどうなっても知りませんよ?」

P「……桃華、少し目を瞑っててくれ」

桃華「え? は、はい……」

婚約者「く、くるな……」

P「……」ジリッ…

婚約者「ひ……」

婚約者「う、うわああぁぁぁぁぁぁ!」

         ザクッ

P「い……った……いな、この!」

婚約者「ひ、ひっ……」

P「アイドルプロデューサーなめんな! お前もアイドルにしてやろうか!」

婚約者「ひぃぃぃぃっ……!」
  
                 ドタドタドタ……


P「……逃げたか。あぁ、もう……桃華」

桃華「……Pちゃま?」

P「おぉ、桃華。よかった……ケガはないよな?」

桃華「え、えぇ……あぁっ!? Pちゃま、腕が……」

P「刺されちゃった。てへ……」

桃華「て、てへじゃありませんわ! ひ、ひどい傷!」

P「いや、大丈夫……うん。これぐらいなんともないよ」

桃華「で、でも血が……」

P「桃華についちゃいけないな」

桃華「そういうことじゃありませんわ!」

P「ははは……うん。とりあえず……これからのことは、また考えるとして……」

    ピッ

桃華「……?」

P「みんな、作戦成功だ……ありがとう」

     早苗『あーもう、疲れたぁ……おめでとう、プロデューサくん?』

P「ありがとうございます、早苗さん……でも、逃げられちゃいましたけど」

     早苗『んー、それならたぶん大丈夫じゃないかな』

P「え?」

――――

――

婚約者「ひっ……ひっ……」

ちひろ「……どうも、おはようございます♪」

婚約者「ひぃっ!? な、なんだお前は!」

ちひろ「なにって……そうですね。可愛い事務員さんでしょうか?」

婚約者「じ、事務員だと? ふざけるな!」

ちひろ「ふざけているのはどちらですか、もう……私、ちょっと怒ってるんですよ?」

婚約者「怒ってるだと! は、はんっ! だからなんだ! そうか、お前があの事務所の……」

ちひろ「私はね、代表とかお金はもういいって思ってたんですよ。だから社長には代理を立てていたっていうのに……」

婚約者「……え?」

ちひろ「私の名前は千川ちひろ。あの事務所は、アイドルのためにあるんです」

婚約者「せんかわ……せんかわだと……!?」

ちひろ「さぁ、村上さんのところへ引き渡す前にすこーしお話しましょうか♪」

婚約者「ひぃぃぃぃぃ……」

――

――――


P(結局……そのあとは救急車で病院に担ぎ込まれた)

P(正直いろいろと無茶をしたわけだし、何かあるとは思っていたけど不思議と何もなく……)


P「……退院できたと思ったら、なんだこれ?」

早苗「あーもう! 来るの早いよプロデューサーくん!」

P「いや、これは……」

桃華「退院祝いのパーティですの。おかえりなさいまし」

P「おぉ、桃華……うん。ただいま」

桃華「わたくし……その、いろいろとご迷惑をおかけしましたわ……」

P「いいよ。みんなも協力してくれて無事帰ってこれたわけだし」

早苗「腕を刺されて3日で退院してくるプロデューサーくんは異常だと思うんだけどねぇ」

P「気合いでどうにかしました。案外どうにかなるもんですよ」

早苗「やれやれ……それじゃ、お大事にね」

P「痛い! ちょ、ちょっと早苗さん! ケガしてる方叩かないでくださいよ!」

桃華「……Pちゃま」

P「おぉ、どうした桃華?」

桃華「わたくし……わたくしは……その、とても感謝しておりますの」

P「いいって。ほら、ピンピンしてるじゃないか!」

桃華「……あの、またあのようなことがあるといけませんわ。ですから、その……」

P「……?」

桃華「おじいちゃまにPちゃまを紹介したいんですの。きっと気に入ってもらえますわ!」

P「お、おじいさんに……? かなり厳しい人だって……」

桃華「えぇ。でも大丈夫ですわ! あの件の時寝込んでいらしたのに話を聞いて飛び起きたぐらいなんですもの」

P「……ちっとも安心できるエピソードじゃないんだが」

桃華「Pちゃまも、おじいちゃまも……わたくしの大切な人ですもの。きっとわかってくれますわ!」

P「は、ははは……うん。でも紹介ってどういう具合にだ?」

桃華「決まっておりますわ」


桃華「婚約者だったら、もう決まったというんですの♪」

P「えっ」


おわり

いろいろごめんなさい
おやすみなさいまし

保守支援ありがとうございました

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